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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】粘膜治癒をモニタリングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20240319BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N33/493 A
G01N33/483 C
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556853
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 US2022022556
(87)【国際公開番号】W WO2022212510
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/169,568
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175301
【氏名又は名称】メディビーコン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タール、フィリップ・アイ
(72)【発明者】
【氏名】ドーショウ、リチャード・ビー
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB03
2G045DA80
2G045FA27
2G045FB07
2G045FB12
4C085HH11
4C085KA27
4C085KB56
4C085LL05
(57)【要約】
本開示は、消化器疾患を患う患者の粘膜治癒をモニタリングするための方法、又は疾患前状態で使用するための方法を提供し、腸透過性が増加する腸管障害及び腸管外障害を含む。本方法は、患者の基準値を確立することと、消化器疾患又は疾患前状態について患者を治療することと、治療後の患者の腸透過性を測定することと、回収された投与用量の第2の基準値総比率を、回収された投与用量の第1の基準値総比率と比較することと、を含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化器疾患を患う、又は疾患前状態にある患者の粘膜治癒をモニタリングするための方法であって、
前記患者の基準値を確立するステップであって、
健康な腸によって実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の第1の投薬量を腸内投与すること、
一定期間にわたって前記腸の外側に見出すことができる前記投与用量の第1の量を、蛍光法を用いて測定すること、及び
回収された前記投与用量の第1の基準値総比率を決定することを含む、該ステップと、
前記消化器疾患又は前記疾患前状態について前記患者を治療するステップと、
治療後の前記患者の腸透過性を測定するステップであって、
前記蛍光トレーサを含む前記組成物の第2の投薬量を腸内投与すること、
一定期間にわたって前記腸の外側に見出すことができる前記投与用量の第2の量を、蛍光法を用いて測定すること、及び
回収された前記投与用量の第2の基準値総比率を決定することを含む、該ステップと、
回収された前記投与用量の前記第2の基準値総比率を、回収された前記投与用量の前記第1の基準値総比率と比較するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記投与用量の前記第1の量及び前記第2の量は、前記患者の尿中で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与用量の前記第1の量及び前記第2の量は、経皮センサーを介して経皮的に測定され、
前記経皮センサーは、
前記患者の血液及び/又は組織中の前記組成物を非電離放射線で照射して、前記組成物を蛍光発光させ、
前記患者の血液及び/又は組織中の前記蛍光トレーサの前記蛍光を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非電離放射線は、少なくとも350nmの波長を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
回収された前記投与用量の前記第2の基準値総比率と、回収された前記投与用量の前記第1の基準値総比率及び正常な集団において回収された投与用量の値の分布との比較に基づいて、前記患者の粘膜治癒を評価するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回収された前記投与用量の前記第2の基準値総比率が、回収された前記投与用量の前記第1の基準値総比率未満であり、かつ正常な集団における回収された前記投与用量の平均より2標準偏差以下だけ超える場合、前記患者は、粘膜治癒している可能性が高いと評価される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
回収された前記投与用量の前記第2の基準値総比率が、回収された前記投与用量の前記第1の基準値総比率未満ではあるが、正常な集団における回収された前記投与用量の平均より2標準偏差超えた状態を維持する場合、前記患者は、粘膜治癒していない可能性が高いと評価される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記患者のための介入を選択することと、前記介入後の粘膜治癒を評価することと、を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粘膜治癒は、治療後に少なくとも1週間評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記消化器疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、及び移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の投薬量及び前記第2の投薬量は、約1.5mg/kg~約50mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光トレーサは、ピラジンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ピラジンは、3,6-ジアミノ-2,5-ビス{N-[(1R)-1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル]カルバモイル}ピラジン又は3,6-ジアミノ-N2,N5-ビス(D-セリン)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
消化器疾患を患う患者の粘膜治癒を判定するための方法であって、
健康な腸に実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の投薬量を腸内投与するステップと、
一定期間にわたって前記腸の外側に見出すことができる前記投与用量の量を、蛍光法を用いて測定するステップと、
回収された前記投与用量の総比率を決定するステップと、を含み、
回収された前記投与用量の前記総比率は、前記患者の粘膜治癒に相関する、方法。
【請求項15】
前記投与用量の前記量は、前記患者の尿中で測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与用量の前記量は、経皮的センサーを介して経皮的に測定され、
前記経皮的センサーは、
前記患者の血液及び/又は組織中の前記組成物を非電離放射線で照射して、前記組成物に蛍光発光させ、
前記患者の血液及び/又は組織中の前記蛍光トレーサの前記蛍光を検出する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記非電離放射線は、少なくとも350nmの波長を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記患者の粘膜治癒を評価するステップを更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
回収された前記投与用量の前記総比率が1.5%以下である場合、前記患者は粘膜治癒している可能性が高いと評価される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
回収された前記投与用量の前記総比率が2%を超える場合、前記患者は粘膜治癒していない可能性が高いと評価される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の粘膜治癒は、回収された前記投与用量の前記総比率と、正常な集団において回収された投与用量の値の分布とを比較することによって、評価される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
回収された前記投与用量の前記総比率が、正常な集団における回収された前記投与用量の平均より2標準偏差以下だけ超える場合、前記患者は、粘膜治癒している可能性が高いと評価される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
回収された前記投与用量の前記総比率が、正常な集団における回収された前記投与用量の平均を2標準偏差超上回る場合、前記患者は、粘膜治癒していない可能性が高い、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記消化器疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、及び移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記投薬量は、約1.5mg/kg~約50mg/kgである、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記蛍光トレーサが、ピラジンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記ピラジンは、3,6-ジアミノ-2,5-ビス{N-[(1R)-1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル]カルバモイル}ピラジン又は3,6-ジアミノ-N2,N5-ビス(D-セリン)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月1日に出願された米国仮出願第63/169,568号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、患者の腸粘膜治癒をモニタリングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
健康な状態では、腸管バリアは、未消化の食物、高分子、微生物の体内への侵入を防ぐ一方で、腸管内腔から全身循環への水分、電解質、栄養素の選択的な移行(吸収)を可能にする。腸透過性の増加は、主に上皮細胞間の緊密な接合部の破壊を通じて、バリア完全性の喪失を暗示する。腸透過性は、クローン病、移植片対宿主病、及びセリアック病を含む、様々な腸炎症状態で増加する。
【0004】
内視鏡検査は、粘膜治癒を評価するための主要な方法である。内視鏡検査は、胃腸科医が粘膜を視覚的に調べ、炎症又は他の組織損傷の兆候について顕微鏡で調べることができる生検を得ることを可能にする。しかしながら、炎症性腸疾患(IBD)を患う患者は、多くの内視鏡検査を受け、これは、特に腸管前処置のために、不満の原因となる可能性がある。また、内視鏡モニタリングには(仕事を休む時間も含めて)費用がかかり、場合によっては腸穿孔及び出血を引き起こす可能性もある。
【0005】
腸透過性の通常の測定には、プローブ分子の経口摂取が含まれ、プローブ分子は腸内又は循環内で代謝されず、尿中で排泄され、そこで測定することができる。最も広く使用される試験は、二重糖吸収試験(DSAT)であり、二糖(通常はラクツロース)及び単糖(マンニトール又は、次第に、ラムノース)による経口チャレンジ、並びに宿主によって糖が吸収される程度を決定する尿のアッセイを伴う。DSATは、腸透過性を評価するための最先端技術とみなされるが、いくつかの制限は、その有用性を低下させる。これらのほとんどは、標本のタイミング、取り扱い、及びアッセイの変動性に関連する技術的制限であり、これらの各々がDSATの理論的魅力を低下させる。
【0006】
したがって、内視鏡検査を反復する必要性を減らしながら、粘膜治癒をモニタリングし、消化器疾患及び腸透過性の増加を伴う他の状態を患う患者を管理するための改善された方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の原理及び実施形態は、概して、消化器疾患を患う患者又は疾患前状態にある患者の粘膜治癒をモニタリングする方法に関する。方法は、患者の基準値を確立することと、消化器疾患又は疾患前状態について患者を治療することと、治療後の患者の腸透過性を測定することと、回収された投与用量の第2の基準値総比率を、回収された投与用量の第1の基準値総比率と比較することとを含み得る。
【0008】
患者の基準値を確立することは、健康な腸によって実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の第1の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外側に見出すことができる投与用量の第1の量を、蛍光を介して、測定することと、回収された投与用量の第1の基準値総比率を決定することとを含み得る。治療後の患者の腸透過性を測定することは、蛍光トレーサを含む組成物の第2の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外側に見出すことができる腸内投与用量の第2の量を、蛍光を介して、測定することと、回収された投与用量の第2の基準値総比率を決定することとを含み得る。
【0009】
本開示の他の態様は、消化器疾患を患う患者の粘膜治癒を判定するための方法に関する。本方法は、健康な腸によって実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外側に見出すことができる投与用量の量を、蛍光を介して測定することと、回収された投与用量の総比率を決定することとを含み得る。いくつかの態様において、回収された投与用量の総比率は、患者の粘膜治癒に逆相関する、すなわち、吸収が少ないほど、皮膚を介して排泄又は測定されることが少なく、バリアの完全性が高い。
【0010】
追加の実施形態及び特徴は、以下の説明に部分的に記載されており、明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、又は開示された主題の実施により学習され得る。
【0011】
説明は、以下の図及びデータグラフを参照して、より完全に理解されるであろう。以下の図及びデータグラフは、本開示の例示的実施形態として提示され、本開示の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】経腸蛍光色素分子送達後の様々な時点におけるインドメタシン誘発性腸損傷を患う2匹のラット(赤色及び青色の線)及び2匹の対照ラット(緑色及び黒色の線)の尿中のMB-404対MB-301の濃度の比率を示す図である。
図2】インドメタシン誘発性腸損傷を患う2匹のラット(赤色及び青色の線)及び2匹の対照ラット(緑色及び黒色の線)における蛍光色素分子濃度をモニタリングするための二重波長経皮蛍光検出を使用した、MB-301及びMB-404の経皮検出を示す図である。示されているのは、経時的なMB-301(破線)及びMB-404(実線)蛍光の曲線下面積(AUC)である。
図3A】2つの別々の実験における、インドメタシン誘発性腸損傷を患う2匹のラット(赤色及び青色の線)及び2匹の対照ラット(緑色及び黒色の線)におけるMB-404濃度の経皮蛍光検出を示す図である。
図3B】2つの別々の実験における、インドメタシン誘発性腸損傷を患う2匹のラット(赤色及び青色の線)及び2匹の対照ラット(緑色及び黒色の線)におけるMB-404濃度の経皮蛍光検出を示す図である。
図4A】インドメタシン誘発性腸損傷を患う2匹のラット(青色及びオレンジ色の線)及び2匹の対照ラット(灰色及び黄色の線)にMB-102を送達した後のMB-102の排泄を示す図である。示されているのは、投与後の様々な時点で尿中において回収された投与用量の%である。
図4B】インドメタシン誘発性腸損傷を患う3匹のラット(赤色、黒色及び緑色の線)、並びに4匹の対照ラット(紫色、ピンク色、ターコイズ色及び黄色の線)におけるMB-102濃度の経皮蛍光検出を示す図である。
図5】対照研究参加者及びクローン病を患う研究参加者において回収されたラクツロース又はMB-102の投与用量の比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の様々な実施形態が、以下に詳細に考察される。具体的な実装形態が論じられるが、これは例示目的のみのために行われることを理解されたい。当業者は、他の構成要素及び構成が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用され得ることを認識するであろう。したがって、以下の説明及び図面は例示であり、限定として解釈されるべきではない。本開示の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、特定の事例では、説明を不明瞭にすることを避けるために、周知又は通例の詳細は説明されていない。本開示における1つ又はある実施形態への言及は、同じ実施形態又は任意の実施形態への言及であり得、そのような言及は、実施形態の少なくとも1つを意味する。
【0014】
本開示全体に適用される複数の定義がここで提示される。本明細書で使用される場合、「約」は、明示的に示されているか否かにかかわらず、整数、分数、比率等を含む数値を指す。「約」という用語は、一般に、数値の範囲、例えば、列挙された値の±0.5~1%、±1~5%又は±5~10%を指し、例えば、同じ機能又は結果を有する列挙された値と等価と考えられる。
【0015】
「含む(comprising)」又は「有する(having)」という用語は、「含む(including)が、必ずしもこれに限定されない」ことを意味し、具体的には、そのように説明された組み合わせ、グループ、シリーズ等における開放的な包含又はメンバーシップを示す。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、包括的及び/又は開放的であり、追加の、記載されていない要素又は方法プロセスを除外しない。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」よりも限定的であるが、「からなる(consisting of)」よりは限定的ではない。具体的には、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、特定の材料又はステップ、及び特許請求される発明の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさないものにメンバーシップを限定する。「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数及び単数を包含すると理解される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「粘膜治癒」という用語は、基準値透過性測定値と比較して腸透過性の意味のある低下であり、正常な集団の平均透過性測定値に近づくものとして定義される。基準値透過性測定は、治療前の消化器疾患の診断時、疾患前状態の判定時、症状の増悪中、又は治療が部分的に完了した後に行われ得る。
【0017】
本明細書で使用される「意味のある」(例えば、腸透過性の意味のある低下)という用語は、有益な臨床効果又は非効果を示すのに十分な大きさを説明するために使用される(及び用量/治療の漸増、漸減、又はそのままの状態を維持するための決定を支持する)。
【0018】
本明細書で使用される「腸(gut)」、「腸(intestine)」、及び「GI」という用語は、患者の胃腸管の中空の臓器、特に胃、小腸、大腸、及び食道を説明するために使用される。本明細書で使用される場合、「健康な腸」という用語は、医師によって定義され得てもよく、消化器疾患を患っておらず、疾患前状態ではない患者の腸であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される「回収された」という用語は、血漿、尿、循環血液、組織、又は腸管腔の外側の体の任意の位置におけるトレーサの量の測定値を指す。例えば、回収されるトレーサの投与用量の総比率は、体液試料中のトレーサの量の直接測定値であっても、トレーサの経皮測定を介する腸の外側のトレーサの量の間接測定値であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される「正常な集団」という用語は、医師によって定義されてもよく、消化器疾患を患っておらず、疾患前状態ではない2人以上の患者を含んでもよい。一実施例において、正常な集団範囲は、参照正常な集団の平均を上回る/下回る2標準偏差であり得る。標準偏差及び百分位数は、正常な集団値の分布の正規性に左右され得、年齢、性別、及び/又は人種に基づく変動に左右され得る。
【0021】
本明細書で使用する「実質的に」という用語は、最大約95%、最大約98%、最大約99%、最大約99.5%、又は最大約99.9%を指してもよい。例えば、「健康な腸によって実質的に吸収されない蛍光トレーサ」という用語は、健康な腸によって、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、又は0.1%未満吸収される蛍光トレーサを指してもよい。
【0022】
本明細書で使用される用語は、一般に、開示される主題の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈内で、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本明細書で論じられる用語のいずれか1つ以上について代替の言語及び同義語を使用することができ、用語が本明細書で詳述又は議論されるか否かに特別な重要性は置かれるべきではない。場合によっては、特定の用語の同義語が提示される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書のどこかの例の使用は、例示にすぎず、本開示又は任意の例示的な用語の範囲及び意味を更に限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0023】
本開示の原理及び実施形態は、患者における粘膜治癒、GI炎症、及び/又は治療有効性をモニタリングする方法に関する。したがって、本開示の様々な実施形態は、消化器疾患を患う、又は疾患前状態にある患者の粘膜治癒、GI炎症、及び/又は治療有効性をモニタリングする方法を提供する。
【0024】
蛍光トレーサ剤に基づくモニタリングシステムは、腸透過性の増加に関連する消化器疾患又は状態の管理において、リアルタイム及び治療時点で、測定された胃腸(GI)透過性定量化を提供し得る。腸透過性の増加に関連する消化器疾患又は腸管外状態の非限定的な例としては、広くはクローン病及び潰瘍性大腸炎、腸の移植片対宿主病、非アルコール性脂肪性肝疾患、セリアック病、及び好酸球性食道炎、ならびに1型又は2型糖尿病からなるIBDが挙げられる。治療中に患者をモニタリングして、治療の進行に伴う腸透過性の程度及び透過性の低下(又は粘膜治癒)を決定してもよい。クローン病及び潰瘍性大腸炎において、粘膜治癒は、最も重要な患者の転帰、すなわち、手術及び入院の回避、並びに高品質の生活の維持に結び付いている。これらのIBDについて、粘膜治癒は、粘膜潰瘍の治癒を含み得る。いくつかの実施形態において、患者は、症状前又は疾患前の状態にあり得る。例えば、患者は、遺伝的又は代謝的危険因子によって、前IBD、前糖尿病、又は前脂肪性肝疾患若しくは前線維性肝疾患(脂肪性肝疾患の延長)であってもよい。透過性の増加は、明らかな消化器疾患(例えば、IBD)又は腸管外疾患(例えば、1型糖尿病)に先行し得る。このような状況においては、腸管透過性の増加は、疾患に至るプロセスの進行のマーカーとして使用することができ、早急に対策を講じ、その後、バリア機能の回復(すなわち粘膜治癒)を試験することで、対策の効果を追跡することができる。
【0025】
治療中に粘膜の治癒をモニタリングすることによって、生物学的製剤がこれらの状態の主要な治療法としてしばしば使用されるため、患者及びヘルスケアシステムに大きな利益をもたらす。生物製剤は高価であり、長期治療で有害な副作用を引き起こす可能性がある。粘膜治癒の早期検出は、臨床医に、用量を減らす、又は投与間隔を延長する能力を与えることによって、治療コストを低減し、一次投薬からの副作用を減少させる能力を提供することができる。
【0026】
一実施形態において、消化器疾患を患う患者における粘膜治癒、GI炎症、及び/又は治療の有効性をモニタリングする方法は、患者の基準値を確立すること、消化器疾患について患者を治療すること、及び治療後の患者の腸透過性を測定することを含み得る。
【0027】
基準値は、患者特有であってもよく、その結果、基準値は、治療前の診断時に、又は症状の増悪中に確立されてもよい。いくつかの実施形態において、患者の基準値を確立することは、健康な腸によって実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の第1の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外で見出すことができる投与用量の第1の量を、蛍光を介して測定することと、回収された投与用量の第1の基準値総比率を決定することとを含んでもよい。腸の外側のトレーサ剤の出現及び定量化は、腸の透過性が増加したことを示す。基準値は、患者の治療が開始された後に行われた測定値と比較するために使用され得る。
【0028】
患者の治療において、臨床医は、消化器疾患又は腸透過性の増加の治療のための薬物を患者に処方してもよく、腸透過性に直接的又は間接的な効果を有する他の介入を処方してもよい。これらの薬物及び/又は介入としては、食品の操作、プロバイオティクス、他の微生物管理戦略、小分子治療薬、既存薬の転用、免疫寛容を誘導する薬物、抗生物質、静脈内免疫グロブリン、ラチグルテナーゼ若しくは食品グルテンを分解する他の薬物、及び/又は組織トランスグルタミナーゼがグルテンを修飾するのを防ぐ薬物が含まれるが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施例において、治療は、薬物療法を含んでもよい。消化器疾患の治療のための薬物の非限定的な例としては、抗炎症薬、抗生物質、免疫系抑制剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、及び生物学的製剤が挙げられる。抗炎症薬としては、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びブデソニド等のコルチコステロイド、並びにスルファサラジン、バルサラジド、オルサラジン、及びメサラミン等の経口投与される5-アミノサリチル酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。抗生物質としては、シプロフロキサシン及びメトロニダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。免疫系抑制剤は、単独で、又は組み合わせて使用することができ、これとしては、アザチオプリン、シクロスポリン、6-メルカプトプリン、タクロリムス、及びメトトレキサートが挙げられるが、これらに限定されない。トファシチニブ等のヤヌスキナーゼ阻害剤は、中等度から重度の潰瘍性大腸炎を治療するために使用され得る。クローン病を治療するために使用される生物学的製剤の種類としては、ナタリズマブ、ベドリズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びウステキヌマブが挙げられるが、これらに限定されない。他の治療としては、目標達成に向けた治療として知られる戦略が含まれ得、この戦略は、症候的、ならびに内視鏡的及び顕微鏡的な改善又は消失が認められるまで、炎症の標的を治療することを伴う。
【0029】
いくつかの実施形態において、治療後の患者の腸透過性を測定することは、蛍光トレーサを含む組成物の第2の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外に見出すことができる投与用量の第2の量を、蛍光を介して測定することと、回収された投与用量の第2の基準値総比率を決定することと、を含んでもよい。患者は治療を開始した後、治療中の異なる時点で、腸透過性の変化を測定して、薬物、投薬、及びレジメンの有効性を決定し得る。粘膜治癒は、治療後、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、及び/又は少なくとも6ヶ月間評価されてもよい。投薬及びレジメンが粘膜治癒に影響を及ぼしているかどうかを判定するために、その後の評価を週ごと又は隔週で行い得る。
【0030】
一実施形態において、この方法は、回収された投与用量の第2の基準値総比率を、回収された投与用量の基準値の総比率と比較することを更に含み得る。いくつかの実施形態において、この方法は、回収された投与用量の第2の基準値総比率と、回収された投与用量の第1の基準値総比率との比較に基づいて、患者の粘膜治癒を評価することを更に含み得る。治療開始後に基準値から特定の時点まで測定された蛍光の減少は、粘膜治癒があり得、薬物及び/又は治療レジメンが有効であり得ることを示す。治療のための薬物の用量は、この時点で調整されてもよく、レジメンは変更されてもよく、又は薬物及び/若しくはレジメンは維持されてもよい。治療開始後に基準値から特定の時点まで測定された蛍光の変化又は増加がないことは、粘膜治癒の欠如を示し、投薬又は投与レジメンを再評価する必要があることを示す。いくつかの実施形態において、患者の粘膜治癒は、2回以上評価され得る。病気の最中(例えば、IBDを患うことが知られている人々のフレア、又は新たに特定された患者についての診断時の基準値)では、蛍光値の意味のある低下は、粘膜治癒の改善とみなされ得る。
【0031】
一実施例において、回収された投与用量の第2の基準値総比率が、回収された投与用量の第1の基準値総比率の40%、50%、又は60%以下である場合、患者は粘膜治癒されている可能性が高く、治療は継続、低減、又は中止されてもよい。治療を中止することは、患者を薬物療法からゆっくり離脱させることを含んでもよい。別の実施例において、回収された投与用量の第2の基準値総比率が、回収された投与用量の第1の基準値総比率の60%、50%、又は40%を超える場合、患者は粘膜治癒されていない可能性が高く、実際には、追加の介入が必要とされ得る。いくつかの実施例において、基準値の決定から透過性を意味のあるほどには低減させることはできない(例えば、患者が高い未治癒状態にある間に、基準値が決定されると仮定して、基準値からはほとんど又は全く変化がない)と、介入、エスカレーション、又は少なくとも再評価が促され得る。
【0032】
介入は、治療を中止すること、治療を最適化すること、又は1種以上の後続の治療を提供することを含み得る。例えば、介入は、第1の薬物を第2の薬物に置き換えること、初回治療の用量を増減させること、又は用量が供給されるタイミングを調整することを含んでもよい。その後、介入後に、患者の粘膜治癒は、評価されてもよい。いくつかの実施例において、治療又は粘膜治癒されない患者と比較して、粘膜治癒、深い寛解、及びプレドニゾンの使用の減少のより高い比率につながり得る介入。
【0033】
別の実施例において、回収された投与用量の第2の基準値総比率を、正常な集団において回収された投与用量の平均総比率と比較してもよい。回収された投与用量の第2の基準値総比率が、回収された投与用量の基準値の総比率未満であり、かつ正常な集団において回収された投与用量の平均総比率の95パーセント以下である場合、患者は、粘膜治癒している可能性がある。この場合において、粘膜治癒の兆候は、治療をエスカレートさせない、又は治療をゆっくりと減少させることさえあり得る。更なる実施例において、回収された投与用量の第2の基準値総比率が、症状の悪化の前に確立された個人基準値又はそれに近い場合、患者は粘膜治癒していてもよい。代替的に、回収された投与用量の第2の基準値総比率が、回収された投与用量の第1の基準値総比率よりも小さいが、正常な集団において回収された投与用量の平均総比率の95パーセントを上回る場合、患者は粘膜治癒されていない可能性があり、集団に基づく正常な範囲を達成しようとするために、治療により積極的となるための指示となり得る。更なる治療が値を更に低減させない場合、それは許容され得、次いで、回収された投与用量の第2の基準値総比率は、患者の暫定基準値であり得、更なるモニタリングを用いて、暫定基準値と比較して粘膜状態の悪化がないことを確認し得る。1つの実施例において、粘膜治癒の大腸内視鏡的証拠を伴う十分に制御された患者は、回収された投与用量の平均総比率の95パーセントに戻らない可能性があるが、より積極的であることの副作用は、完全な粘膜治癒の理論的価値を打ち消す。この場合において、治療は、エスカレートされなくてもよく、又はゆっくりと減少してもよい。
【0034】
別の実施形態において、消化器疾患を患う患者の粘膜治癒を判定する方法は、健康な腸に実質的に吸収されない蛍光トレーサを含む組成物の投薬量を腸内投与することと、一定期間にわたって腸の外側に見出すことができる投与用量の量を、蛍光を介して測定することと、測定された量に基づいて、回収された投与用量の総比率を決定することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、回収された投与用量の総比率は、患者の粘膜治癒に相関し得る。腸の外側に見出すことができる投与用量の量は、患者の血液、組織、又は尿中で、直接又は経皮的に、測定され得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、この方法は、患者の粘膜治癒を評価することを更に含み得る。腸の外で回収又は測定された投与用量の総比率が、約0.5%、1%、又は1.5%以下であるか、又は蛍光の測定値が、投与用量の約0.5%、1%、若しくは1.5%以下に相関する場合、患者は粘膜治癒している可能性が高い。回収された投与用量の総比率が約1.5%、2%、又は2.5%を超える場合、又は蛍光の測定値が回収された投与用量の約1.5%、2%、若しくは2.5%を超える場合、患者は粘膜治癒していない可能性が高い。回収された投与用量の比率は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、又は少なくとも48時間にわたって評価され得る。粘膜治癒は、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、及び/又は少なくとも6ヶ月の期間、少なくとも毎日から少なくとも毎週評価され得る。粘膜治癒は、評価期間内に1回以上測定され得る。
【0036】
一実施形態において、患者の粘膜治癒は、患者の腸の外側で回収又は測定された投与用量の総比率を、健康な腸を有する患者で回収された投与用量の総比率と比較することによって、評価され得る。いくつかの実施形態において、回収又は測定された投与用量の総比率を、正常な集団において回収された投与用量の値の分布と比較してもよい。患者への投与用量は、正常な集団への投与用量と同じ又は類似であり得る。したがって、回収又は測定される投与用量の比率は、2つの群間で比較され得る。患者において回収又は測定された投与用量の総比率が、正常な集団において回収又は測定された投与用量の平均総比率の約100%、150%、200%、又はそれ以上よりも低いか、又はそれと等しい場合、患者は粘膜治癒している可能性が高い。一実施例において、回収又は測定された投与用量の総比率が、正常な集団において回収又は測定された投与用量の平均総比率の95パーセント以下である場合、患者は粘膜治癒している可能性が高い。別の実施例において、回収又は測定された投与用量の総比率が、正常な集団において回収又は測定された投与用量の平均から2標準偏差以下である場合、患者は粘膜治癒している可能性が高い。患者において回収又は測定された投与用量の総比率が、正常な集団において腸の外で回収又は測定された投与用量の平均総比率の約200%、150%、又は100%を超える場合、患者は粘膜治癒を有しない可能性が高い。一実施例において、回収又は測定された投与用量の総比率が、正常な集団で回収された投与用量の平均総比率の95パーセントよりも大きい場合、患者は粘膜治癒していない可能性が高い。一実施例において、回収された投与用量の総比率が、正常な集団で回収された投与用量の平均を2標準偏差超上回る場合、患者は粘膜治癒していない可能性が高い。別の実施例において、消化器疾患を患う患者において回収された投与用量の総比率は、正常な集団における信号の2~2.5倍であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、消化器疾患を患う患者の粘膜治癒を判定するための方法は、健康な腸によって実質的に吸収されない第1の蛍光トレーサを含む組成物の投薬量を腸内投与することと、第2の蛍光トレーサを投与することと、一定期間にわたって、腸の外側で見出すことができる投与された第1の蛍光トレーサ及び第2の蛍光トレーサの量を、蛍光を介して測定することと、直接的又は経皮的のいずれかで、患者の血液、組織、又は尿中の第1の蛍光トレーサの濃度と第2の蛍光トレーサの濃度との比率によって、患者の粘膜治癒を判定し、健康な腸粘膜と疾患の腸粘膜との区別を可能にすることと、を含んでもよい。
【0038】
第1の蛍光トレーサの濃度と第2の蛍光トレーサの濃度との比率は、患者の粘膜治癒を予測し得る。例えば、この比率は、患者の腸透過性が増加する消化器疾患又は別の状態の治療後に、改善され得る。未治療状態における比率は、正常な集団における比率(例えば、正常範囲)の上限の2~3倍であってもよい。いくつかの実施形態において、疾患又は状態の治療は、比率を正常範囲内に低下させ得る。様々な実施形態において、蛍光色素分子は、マンニトール、ラムノース、及び/又はラクツロースと同様の分子量を有し得る。例えば、第1の蛍光トレーサは、ラクツロースと同様の分子量を有し得、第2の蛍光トレーサは、ラムノース及び/又はマンニトールと同様の分子量を有し得る。1つの実施例において、約0.07~0.10の範囲の比は、クローン病の炎症を示し得、正常範囲は、約0.05~0.02であり得る。
【0039】
いくつかの実施例において、患者の粘膜治癒の評価は、内視鏡又は結腸鏡を介する撮像又は生検によって、更に裏付けされ得る。蛍光トレーサの使用及び測定があるため、これらの評価はそれほど頻繁に実施されなくてもよい。
【0040】
各実施形態において、蛍光トレーサ剤は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。用量は、例えば、使用される特定の蛍光トレーサ剤又は検出方法に応じて変化し得る。例えば、トレーサ剤の投薬量は、約0.1mg/kg体重~約35mg/kg体重、約1.5~約50mg/kg体重、約0.5~約5mg/kg体重、約1.5~約3mg/kg体重、約5~約10mg/kg体重、約10~約15mg/kg体重、約15~約20mg/kg体重、約20~約25mg/kg体重、約25~約30mg/kg体重、約30~約35mg/kg体重、約35~約40mg/kg体重、約40~約45mg/kg体重、又は約45~約50mg/kg体重の範囲であり得る。様々な実施例において、第1の投薬量及び/又は第2の投薬量は、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/mg、約30mg/kg、約35mg/kg体重、約40mg/kg体重、約45mg/kg体重、又は約50mg/kg体重であってもよい。
【0041】
蛍光トレーサは、生理学的pHで可溶性であってもよく、血液中のタンパク質に結合していなくてもよく、代謝されていなくてもよく、腎臓糸球体で自由に濾過されてもよく、尿細管に吸収されなくてもよく、及び/又は胃酸若しくは胆汁を含有する液体による分解若しくは変性に抵抗してもよい。蛍光トレーサは、約340Da~2,500Daの分子量を有し得る。例えば、蛍光トレーサは、約340Da~約380Da、約350Da~約400Da、約375Da~約450Da、約400Da~約500Da、約450Da~約550Da、約500Da~約1,000Da、又は約1,500Da~約2,500Daの分子量を有し得る。一実施例において、蛍光トレーサは、372Daの分子量を有してもよい。蛍光トレーサは、約350nm以上の吸収波長、励起波長、及び放射波長を有し得る。いくつかの実施形態において、蛍光トレーサは、約400nm~約500nmの吸収波長を有し得、約540nm~約620nmの放射波長を有し得る。一実施例において、蛍光トレーサは、約445nmの吸収波長及び約560nmの放射波長を有し得る。
【0042】
蛍光トレーサとしては、アクリジン類、アクリドン類、アントラセン類、アントラシリン類、アントラキノン類、アザアズレン類、アゾアズレン類、ベンゼン類、ベンズイミダゾール類、ベンゾフラン類、ベンゾインドカルボシアニン類、ベンゾインドール類、ベンゾチオフェン類、カルバゾール類、クマリン類、シアニン類、ジベンゾフラン類、ジベンゾチオフェン類、ジピロロ染料類、フラボン類、フルオレセイン類、イミダゾール類、インドカルボシアニン類、インドシアニン類、インドール類、イソインドール類、イソキノリン類、ナフタセンジオン類、ナフタレン類、ナフトキノン類、フェナントレン類、フェナントリジン類、フェナントリジン類、フェノセレナジン類、フェノチアジン類、フェノキサジン類、フェニルキサンテン類、ポリフルオロベンゼン類、プリン類、ピラジン類、ピラゾール類、ピリジン類、ピリミドン類、ピロール類、キノリン類、キノロン類、ローダミン類、スクアライン類、テトラセン類、チオフェン類、トリフェニルメタン染料類、キサンテン類、キサントン類、及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、蛍光トレーサは、ピラジンを含み得る。
【0043】
ピラジンは、式Iの化合物であってよく、
【化1】
【0044】
及びXの各々は、独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)又は-CONH(PS)であり;Y及びYの各々は、独立して、-NRからなる群より選択され、
【0045】
【化2】
【0046】
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、又は-SO-であり;RからRの各々は、H、-CH(CHOH)H、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)CHOH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO ,-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から独立して選択され;AAは、ペプチド結合又はアミド結合によって連結された、天然及び非天然アミノ酸からなる群から選択される1種以上のアミノ酸を含むペプチド鎖であり、AAのそれぞれの例は、他のそれぞれの例と同じであっても異なっていてもよく;PSは、グリコシド結合によって連結された1個以上の単糖単位を含む硫酸化又は非硫酸化多糖鎖であり;「a」は、1~10の数であり、「c」は、1~100の数であり、「m」及び「n」は、それぞれ独立して1~3の数である。
【0047】
いくつかの実施形態において、X及びXのうちの少なくとも1つは、-CO(PS)又は-CO(AA)である。更に別の実施形態において、X及びXの両方は、-CO(AA)である。いくつかの実施形態において、(AA)は、21個の必須アミノ酸からなる群から選択される単一のアミノ酸である。他の態様では、AAは、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-グルタミン、D-ヒスチジン、D-ホモセリン、D-リジン、及びD-セリンからなる群から選択される。好ましくは、AAは、D-アスパラギン酸、D-グリシン、D-セリン、又はD-チロシンである。最も好ましくは、AAは、D-セリンである。
【0048】
表1は、例示的な蛍光トレーサ剤の非限定的なリストを示す。少なくとも1つの実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ジアミノ-2,5-ビス{N-[(1R)-1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル]カルバモイル}ピラジン又は3,6-ジアミノ-N2,N5-ビス(D-セリン)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。別の実施例において、ピラジンは、N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-3,6-ビス[(S)-2,3-ジヒドロキシプロピルアミノ]ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ジアミノ-N,N-ビス((2R,3S,4S,5S)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)ピラジン-2-5-ジカルボキサミドであり得る。別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ジアミノ-N,N-ジ(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68-トリコサオキサヘプタコンタン-70-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。更に別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ビス(((S)-2,3-ジヒドロキシプロピル)アミノ)ピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)であり得る。更に別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ビス(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカオキサヘプタトリアコンタン-37-イルアミノ)-N2,N5-ジ(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカオキサヘプタトリアコンタン-37-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。更なる実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ビス(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカオキサオクタトリアコンタン-38-イルアミノ)-N,N-ジ(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカオキサヘプタトリアコンタン-37-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。更に別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、D-セリン、N,N′-[[3,6-ビス[[(2S)-2,3-ジヒドロキシプロピル]アミノ]-2,5-ピラジンジイル]ジカルボニル]ビス-であり得る。一実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-ジアミノ-N、N-ジ(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71-テトラコサオキサトリヘプタコンタン-73-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドであり得る。別の実施例において、蛍光トレーサ剤は、3,6-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,5-ピラジンジカルボキサミドであってもよい。
【0049】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0050】
蛍光トレーサ剤は、それを患者の胃腸管に送達する任意の好適な方法によって投与され得る。経腸投与の例としては、経口、内視鏡的滴下、舌下、口腔及び直腸経路、並びに飲み込まれた診断デバイス(すなわち、Pill-Cam)による送達が挙げられるが、これらに限定されない。経腸剤形としては、経腸使用のための溶液等の液体剤形、カプセル、乳剤、ゲル、シロップ、エリキシル、濃懸濁液若しくはそれらの混合物等の水性懸濁液、又は粉末、発泡性粉末、カプセル、錠剤、発泡性錠剤、徐放性錠剤及び徐放性カプセル等の固体剤形を挙げ得るが、これらに限定されない。1つの実施例において、舌下剤形及び口腔剤形は、錠剤及びトローチ剤を含み得る。直腸剤形には、坐剤、浣腸剤、及び軟膏が含まれ得る。1つの実施例において、蛍光トレーサの急速静注薬は、視覚化への追加の感度を得るための方法として、内視鏡を通して、結腸内視鏡検査の間に結腸内の最も近位の点で送達されてもよい。この例では、臓器の健康を評価し得、生検を粘膜治癒の更なる測定基準として扱ってもよい。
【0051】
蛍光トレーサの検出及び/又は測定は、皮膚上の光学センサー、内視鏡、カテーテル、耳クリップ、ハンドバンド、ヘッドバンド、指プローブ等といった侵襲的及び/又は非侵襲的プローブを使用する光学蛍光、吸光度、及び/又は光散乱方法によって、達成され得る。イメージングは、平面イメージング、光断層撮影、光コヒーレンス断層撮影、内視鏡検査、光散乱技術、レーザー支援誘導手術、共焦点顕微鏡検査、及び/又は光散乱デバイスを使用して、達成することができる。一実施形態において、投与用量の量は、患者の尿中で測定される。患者の尿中の蛍光トレーサの量は、光学センサー及び/又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、測定され得る。別の実施形態において、患者の血液及び組織中の蛍光トレーサの量を示す蛍光は、光学経皮的センサーを使用して測定され得る。蛍光トレーサは、米国特許第10,765,354号、同第10,548,521号、同第10,264,977号、及び同第10,194,854号、米国特許第11,261,165号、並びに米国特許公開第2021/0369164号及び同第2022/0022820号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる経皮センサーのような無傷の皮膚を通して蛍光トレーサを照射及び検出するように動作可能な任意の経皮センサーを使用して、測定されてもよい。一実施例において、経皮センサーは、患者の血液及び組織中の蛍光剤を非電離放射線で照射して、その薬剤に蛍光を発生させ、蛍光トレーサ剤の蛍光を検出し得る。非電離放射線は、約350nm以上の近赤外線(NIR)又は可視スペクトルの光であってもよい。いくつかの実施例において、非電離放射線は、少なくとも350nmから約900nmの波長を有し得る。
【実施例
【0052】
実施例1:小腸損傷を患うラットの尿中で回収された蛍光色素分子の高い比率
【0053】
マンニトール及びラクツロースと同様の分子量を有する2つの蛍光色素分子、MB-301及びMB-404を使用して、DSATを模倣した(表2を参照)。ラクツロースと同様に、MB-404は、健康な腸に吸収されるには大きすぎるが、透過性の増加を示す病気の腸内の細胞間空間を横断することができる。
【0054】
【表2】
【0055】
更に、DSATで使用される両方の糖と同様に、MB-301及びMB-404は、代謝されず、糸球体濾過によって排泄され、管状分泌も再吸収もない(又は無視できるほど少ない)。健康な腸と病気の腸とを区別する能力を試験するために、小腸損傷のラットモデルを、2匹の負傷したラット及び2匹の対照ラットと共に使用した。インドメタシン誘発性腸損傷の翌日、ラットを麻酔し、尿収集のためにカテーテルを挿入し、両方の蛍光色素分子を強制経口投与によって送達した。経口強制投与前及び強制投与後の一連の時点で尿を収集した。HPLCを使用して、尿中のMB-301及びMB-404の濃度を決定し、それらの濃度の比率を経時的に図1にプロットした。
【0056】
予想通り、尿中のMB-404とMB-301との比率は、損傷したラットにおいて、対照ラットと比較して高く、損傷したラットにおける腸透過性の増加を反映していた。このため、MB-301及びMB-404の使用は、DSATを効果的に模倣し、尿中のそれらの濃度の比率は、健康な腸粘膜と病気の腸粘膜とを区別することを可能にした。加えて、蛍光トレーサは、より滑らかな曲線を示し、経皮的検出システムを使用する場合、標本を所有することなく、測定され得る。
【0057】
実施例2:腸損傷のラットモデルにおける高分子量蛍光色素分子の経皮検出
【0058】
標本なしのリアルタイムな方法における腸機能を評価する能力を調べるために、二波長経皮蛍光検出システムを利用して、腸損傷のラットモデルにおけるMB-301及びMB-404をモニタリングした。これらの蛍光色素分子の励起スペクトル及び放出スペクトルは重複しないため、それらの存在を同時にアッセイすることができる。麻酔後、蛍光検出システムを、各ラットの背面の脱毛領域に医療用接着剤で固定した。次いで、経皮蛍光モニタリングを開始し、経口強制投与によるMB-301及びMB-404の送達前に基準値蛍光を検出し、継続的にモニタリングした。経皮蛍光測定によって決定されるMB-301の濃度は、この蛍光団が小腸によって比較的迅速に吸収され、その後消失されるため、損傷した動物及び対照動物(図2、破線)の両方で低いままであった。同様に、対照動物におけるMB-404の濃度も、実験の過程を通して低いままであり、この蛍光色素分子が腸関門を横断して循環に入らなかったことを示した。一方、損傷した動物におけるMB-404の経皮検出は、これらの動物における腸透過性の増加を反映して、時間の経過とともに増加した。したがって、MB-301及びMB-404の蛍光の経皮検出は、腸の健康の非侵襲的なリアルタイムの表示を提供するために使用され得る。
【0059】
このデータの更なる分析は、各成分分子結果を別々に見ることによって行った。MB-404単独の経皮検出は、図3に示すように、健康なラットと腸損傷を有するラットとの間の明確な区別を可能にした。したがって、単一の高分子量蛍光色素分子を使用して、腸透過性を評価することができる。これは、規制及び商業的ニーズにとって有利である。
【0060】
この目的のために、MB-102を、小腸損傷のラットモデルにおいて試験した(図4A及び4B)。経皮測定は、MB-102の経口強制投与の前に開始され、経皮測定は、尿とともに、経時的に収集された。尿試料に基づいて、回収された投与用量の比率は、対照よりも腸損傷を有するラットにおいて高かった(図4A)。MB-404(図3A及び3B)で見られるように、経皮蛍光データ(図4B)において、損傷したラットと健康な対照との間にも明確な描画があり、MB-102が腸透過性を評価するために単独で使用され得ることを実証した。
【0061】
実施例3:ヒトクローン病における腸透過性の定量化
【0062】
腸内投与された、DSAT(L、1000mg及びR、200mg)と比較して、1.5又は3.0mg/kgのピラジン由来蛍光色素分子(MB-102)18.6mg/mLを含有する溶液を評価する、単一施設、無作為化、非盲検、交差研究を実施した。本研究で使用するためのMB-102溶液の組成を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
蛍光色素分子とDSAT浄化値とのダイナミックレンジを比較するために、健康な成人と、磁気共鳴腸管造影において小腸クローン病の証拠を有する成人とを登録した。参加者は、無作為化され、治療1日目に蛍光色素分子トレーサ又は糖のいずれかを投与され、続いて3~7日後に他のトレーサを投与された。基準値及びトレーサ摂取後1、2、4、6、8、10、及び12時間に、尿を採取した。蛍光体トレーサの累積尿中回収比率は、蛍光検出器付き超高性能液体クロマトグラフィーシステムを使用し、累積L、R、及びL:R比は、順相、アイソクラティックHPLC-タンデムESI質量分析計を使用して算出した。
【0065】
健康な成人5人及びクローン病を有する成人4人は、重篤な有害事象なしで研究を完了した。図5に示すように、尿中の蛍光色素分子トレーサ(MB-102)の回収比率は、全ての参加者について尿中で回収されたラクツロースの比率と相関する(r=0.867、p=0.005)。加えて、対照において回収されたラクツロース又はMB-102の比率は、参加者間で類似していた。健常参加者における投与後12時間で、投与用量の約0.5%~1.0%が回収され、腸透過性が正常であるときには、MB-102が腸関門を横断することができないことを反映した。対照的に、クローン病患者は、回収されたラクツロース又はMB-102の幅広い範囲の比率を有し、これは、研究時の疾患制御の可変度を反映している可能性が高い。
【0066】
加えて、2人の健康な参加者及び1人のクローン病を患う参加者に、MB-102の経口用量を投与し、投与後6時間及び12時間に血液試料を収集した。HPLCによって、MB-102の血漿濃度レベルを測定した。これらのデータは、クローン病において、MB-102用量の排泄の増加及びMB-102血漿濃度の上昇が、投与後6~12時間の間に見られることを実証する(表3)。
【0067】
【表4】
【0068】
MB-102は、小腸損傷動物モデルにおいて尿中で検出され、経時的に回収された%用量によって測定されるように、腸損傷と対照とを区別することができる(図4A)。加えて、この同じ動物モデルにおけるMB-102の経皮蛍光検出も、腸損傷と対照とを区別することができる(図4B)。ヒトへの移行において、MB-102の経口投与は、対照と比較して、病気の参加者における尿排泄の増加をもたらす(図5)。
【0069】
経口投与されたMB-102は、重篤な有害事象を引き起こさず、耐容性は良好であった。重要なことは、ラクツロースとMB-102との排泄比率は、広い範囲の値にわたって高い相関関係があるということである。研究を実施したときに寛解していた患者は、尿から回収されたMB-102が正常値に近い値を示し、これはおそらく治療後の粘膜治癒と解釈することができる。
【0070】
実施例4:大腸炎における粘膜治癒の測定
【0071】
大腸炎において、結腸透過性は増加する。結腸内視鏡検査中、内視鏡医は、粘膜治癒の測定基準である視覚化及び生検への追加の感度を得る方法として、内視鏡を通して、大腸の最も近位の点でMB-102の急速静注薬を送達し得る。この実施例において、送達時に開始する患者の系への取り込みの経皮的測定があり得る。いくつかの例において、蛍光色素分子は、液体が離脱時に結腸鏡の視野を覆い隠さないように、ゲル内にあってもよい。追加的に、最初の(診断的)結腸内視鏡検査では、内視鏡医は、臓器透過性の「基準値」となる治療前測定として、MB-102のペイロードを送達し得る。
【0072】
潰瘍性大腸炎において、病気が常に最も遠位で最悪となるような軸方向の勾配がある(又は、重度の場合、結腸全体で同様に異常であり、全結腸炎と呼ばれる)。したがって、結腸の遠位部分は、最後に改善する領域である。MB-102の直腸への少量の滴下は、粘膜の完全性の比較的速い(短い出力期間)評価を提供し得る。潰瘍性大腸炎におけるがんの調査モニタリングのための全結腸内視鏡検査には価値があるが、蛍光トレーサを使用することで、全結腸内視鏡検査を1年又は2年に1回に制限することができ、疾患制御の中間評価は、蛍光色素分子の直腸導入によって行える。
【0073】
実施例5:移植片対宿主病(GVHD)における粘膜治癒の測定
【0074】
腸のGVHDは、骨髄/幹細胞移植後の罹患率及び死亡率の主な原因である。この障害では、移植された(ドナー)細胞がレシピエントの臓器を攻撃する。治療は、免疫抑制の増加を介して行われる。治療期間は経験的に導かれる-症状が改善すると、一定の間隔を置いた後に免疫抑制が軽減される。
【0075】
MB-102を投与し、次いで、骨髄/幹細胞移植後に回収/測定される蛍光トレーサの量の増加に基づいて、GVHDの発症を予測するように測定してもよい。GVHDの発症後、MB-102の使用を使用して、消散(例えば、粘膜治癒)を示し得る。回収/測定された蛍光トレーサの量の減少に基づいて粘膜治癒が判定されると、免疫抑制は軽減され得る。
【0076】
実施例6:IBDにおける粘膜治癒の測定
【0077】
クローン病等の炎症性腸疾患で、罹病期間が様々な患者は、粘膜が十分に治癒していることを確認する必要がある。前回の治療変更(生物学的製剤Aから生物学的製剤Bへ)からの改善を判定するために従来から使用されている基準は、臨床検査に基づくものである(炎症マーカーであるC反応性蛋白の循環濃度、便中カルプロテクチン)。これらの値が現在の治療で減少した場合、患者は、多くの基準により、大幅に改善した。しかしながら、便中カルプロテクチンは、標本内での採取誤差、及び収集時間の影響、及び輸送における分解の傾向があるため、完璧な試験ではない。
【0078】
薬物療法の前回の変更/開始以来、患者のハーベイ-ブラッドショー指数が大幅に改善されているにもかかわらず、1週間のうち何日も軽い腹痛があり、便が緩いままであると報告された場合、医師及び患者はその転帰にそれなりに満足するかもしれない。患者は、仕事に復帰し、体重及び食欲が増加し、生物学的製剤への副作用がない場合もある。以前は、客観的な値(CRP、便中カルプロテクチン、体重)及び主観的な評価(ハーベイ-ブラッドショー指数、食欲の改善)におけるこの改善は、治療を維持できるという信頼を提供するであろう。しかしながら、生物製剤の用量を増やしたり、より頻繁に投与したり、補助治療を追加したり、さらには別の生物製剤に切り替えたりする等、操作の余地が常にある可能性がある。これは、粘膜が実際に治癒していることを保証する最良の技術に依存する。
【0079】
この場合において、医師は、軽度の症状が不完全に治癒した腸を反映しているかどうかを理解したい。たとえ患者が無症状であっても、粘膜が完全に治癒していることが非常に望ましいという観点から、患者は腸の内壁(粘膜)を観察するために内視鏡検査を受けることになるだろう。現在のところ、生検を行うことで視覚的評価が高まるかどうかについては、ほとんどデータがない。粘膜(結腸、小腸遠位部)に正常な所見があれば、それが評価の限界かもしれない。全てが良好に見えるようであれば、一般的に治療がエスカレートすることはないだろう。しかしながら、この方法にはリスクがある。というのも、患者は、結腸鏡が届く近位に活動性の病変を残している可能性があり、外見が正常であっても透過性の欠陥が散在している可能性があるからである。
【0080】
したがって、MB-102を投与してもよく、腸の外側で回収/測定された量を使用して、粘膜の治癒を評価してもよい。このような全腸的な評価はない(粘膜の外観は、直前に述べたように鈍感になりやすい)。正常への透過性の逆転(データベースによって定義される範囲(参照範囲))を見出すことは、最初に、内視鏡的に又は結腸鏡的に粘膜治癒を評価するタイミングが適切であると評価するために使用され得る。代替的に、透過性の欠損は、治療の開始時、又は生物学的製剤が切り替えられたときの基準値に関連しているかもしれない。透過性が正常に戻らない場合は、結腸内視鏡検査前に継続的な治療が必要であること、又は免疫抑制を増加させる必要がある可能性があることを意味する場合がある。内視鏡手術の間隔は約9~12ヶ月であるため、透過性試験から得られるより迅速な情報は、かなりの中間的価値を提供する可能性がある。
【0081】
実施例7:腸管外疾患における腸透過性の測定
【0082】
ある出来事(例えば、1型及び2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、及び当然ながら炎症性腸疾患)が起こると、腸管透過性が亢進する。これら最初の3つの疾患については、腸管透過性の亢進が発症に先行するというデータもある。この一連の出来事は、腸透過性の亢進が膵臓や肝臓への損傷、又はインスリン抵抗性の一因になっている可能性を示唆している。患者は、(ヘモグロビンA1C、空腹時血糖、肝臓酵素検査等のより標準的な評価と併せて)障壁機能のこの欠陥を検出するためにスクリーニングされ得、これらの血液検査が基準値から開始されると、又はこれらの代理検査が異常になる前でさえ、透過性は、治療の標的(腸内微生物叢の操作、食事、医薬品)のいずれかであり得るか、又はより根気強い頻繁なスクリーニングを指摘する。
【0083】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な改良、代替の構成、及び均等物を使用することができることが当業者によって認識されるであろう。追加的に、本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知のプロセス及び要素は記載されていない。したがって、上記の説明は、例示として解釈されるべきであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された全ての一般的及び特定の特徴、並びに本方法の範囲の全ての記述を包含することを意図しており、これらは、言語の問題として、それらの間に該当すると言われ得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】