IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アフィロジックの特許一覧

特表2024-513711抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用
<>
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図1
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図2
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図3
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図4
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図5
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図6
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図7
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図8-1
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図8-2
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図9
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図10
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図11
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図12
  • 特表-抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】抗C3因子SAC7Dバリアントおよびその補体介在性障害を治療するための医学的使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240319BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240319BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/195 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/7088
A61P7/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P21/04
A61P11/00
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557089
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022057163
(87)【国際公開番号】W WO2022195081
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21305336.6
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21305904.1
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.DALI
(71)【出願人】
【識別番号】515292543
【氏名又は名称】アフィロジック
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シニエ マチュー
(72)【発明者】
【氏名】シェブレル アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】キトゥン オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA81
4C084ZA94
4C084ZB08
4C084ZB11
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB08
4C086ZB11
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、補体成分3(C3)および/またはC3の加水分解後に得られる成分C3bに特異的に結合して補体カスケードを阻害する、Sac7dファミリータンパク質のバリアントを含む、ポリペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントを含むポリペプチドであって、該バリアントが、該Sac7dファミリーメンバーのその天然リガンドへの結合の界面において4~20個の変異残基を含み、該バリアントがW24Y変異およびR42W変異を含み、付番はSEQ ID NO: 1に示されるSac7d残基の付番に対応する、ポリペプチド。
【請求項2】
K9T、S31LおよびA44Yからなる群において選択される少なくとももう1つの変異をさらに含み、付番はSEQ ID NO: 1に示されるSac7d残基の付番に対応する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
D16E、N37QおよびM57Lから選択される少なくとも1つの変異をさらに含み、付番はSEQ ID NO: 1に示されるSac7d残基の付番に対応する、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記Sac7dファミリーメンバーのその天然リガンドへの結合の界面における変異残基が、SEQ ID NO: 1に示されるSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、D36、N37、G38、K39、T40、A44、S46、E47、K48、D49、A50およびP51からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記Sac7dファミリーメンバーが、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7d、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7e、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSso7d、スルホロブス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7b、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7a、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のDBP7、スルホロブス・アイランディカス(Sulfolobus islandicus)由来のSis7a、メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)由来のMse7、メタロスファエラ・クプリナ(Metallosphaera cuprina)由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)由来のAho7a、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7b、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7c、およびスルフリスファエラ・トコダイイ(Sulfurisphaera tokodaii)由来のSto7からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 74、SEQ ID NO: 79、SEQ ID NO: 84、SEQ ID NO: 89、SEQ ID NO: 94またはSEQ ID NO: 99を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO: 87、SEQ ID NO: 88、SEQ ID NO: 82、SEQ ID NO: 83、SEQ ID NO: 77、SEQ ID NO: 78、SEQ ID NO: 102、SEQ ID NO: 103、SEQ ID NO: 97、SEQ ID NO: 98、SEQ ID NO: 92、SEQ ID NO: 93、またはこれらの配列の1~54番目のアミノ酸を含む、請求項1~6のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントで構成される(consists in)、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントが、有機分子にコンジュゲートしている、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントが、別のポリペプチド、特にSac7dファミリータンパク質の別のバリアントにコンジュゲートしている、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1~8および10のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項11記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
医薬としての使用のための、請求項1~13のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項14記載の核酸。
【請求項14】
補体介在性障害の治療のための使用のための、請求項1~13のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項14記載の核酸。
【請求項15】
前記補体介在性障害が、補体介在性の赤血球損傷を特徴とする疾患、特に発作性夜間ヘモグロビン尿症または非典型溶血性尿毒症症候群、自己免疫疾患、特に多発性硬化症、腎臓に関する障害、特に膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、IgA腎症(IgAN)、原発性膜性腎症(原発性MN)、C3糸球体症(C3G)、または急性腎障害、中枢神経系もしくは末梢神経系または神経筋接合部に関する障害、特に視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多巣性運動ニューロパチー、または重症筋無力症、呼吸器系に関する障害、特に肺線維症、および血管系に関する障害、特に血管炎を特徴とする障害から選択される、請求項14記載の使用のためのポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
緒言
補体分子の産生および/または活性化の亢進に伴う補体バランスの崩壊は、免疫系の調節異常や、自己免疫障害、炎症性障害、変性障害、血液障害、または虚血性障害の出現または悪化につながる可能性がある。したがって、補体カスケードを阻害できる分子を同定することは興味深い。
【0002】
WO2008068637(特許文献1)は、タンパク質に結合できるSac7dのバリアントを同定することが可能であることを記載している。
【0003】
Goux et al(Bioconjugate Chemistry, vol. 28, no. 9, 2017, 2361-2371(非特許文献1))は、インビボで腫瘍を診断するための薬剤としての抗EGFR結合体の使用を記載した文書である。
【0004】
WO2013152024(特許文献2)は、抗C3抗体を記載している。
【0005】
WO2020234432(特許文献3)は、抗C5アンタゴニストを用いた疾患の治療に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008068637
【特許文献2】WO2013152024
【特許文献3】WO2020234432
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bioconjugate Chemistry, vol. 28, no. 9, 2017, 2361-2371
【発明の概要】
【0008】
第1の局面において、本発明は、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントを含むポリペプチドに関し、該バリアントはSac7dファミリーメンバーのその天然リガンドへの結合の界面に4~20個の変異残基を含み、該バリアントはW24Y変異およびR42W変異を含み、付番はSac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応する。特に、バリアントはSac7dファミリーメンバーのその天然リガンドへの結合の界面に5~14個または5~13個の変異残基を含む。
【0009】
特に、ポリペプチドは、K9T、S31LおよびA44Y変異のうちの少なくとも1つをさらに含み、付番はSac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応している。一態様において、ポリペプチドはK9T変異をさらに含む。一態様において、ポリペプチドはS31L変異をさらに含む。一態様において、ポリペプチドはA44Y変異をさらに含む。一態様において、ポリペプチドはK9TおよびS31L変異をさらに含む。一態様において、ポリペプチドはK9TおよびA44Y変異をさらに含む。一態様において、ポリペプチドはS31LおよびA44Y変異をさらに含む。特に、ポリペプチドは、K9T、S31LおよびA44Y変異をさらに含み、付番はSEQ ID NO: 1に示されるSac7d残基の付番に対応する。
【0010】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、D16E、N37QおよびM57Lから選択される少なくとも1つの変異をさらに含み、付番はSac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応している。
【0011】
特に、Sac7dファミリーメンバーのその天然リガンドへの結合の界面における変異残基は、Sac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、D36、N37、G38、K39、T40、A44、S46、E47、K48、D49、A50およびP51からなる群より選択される。
【0012】
特に、Sac7dファミリーメンバーは、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7d、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7e、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSso7d、スルホロブス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7b、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7a、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のDBP7、スルホロブス・アイランディカス(Sulfolobus islandicus)由来のSis7a、メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)由来のMse7、メタロスファエラ・クプリナ(Metallosphaera cuprina)由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)由来のAho7a、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7b、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7cおよびスルフリスファエラ・トコダイイ(Sulfurisphaera tokodaii)由来のSto7からなる群より選択される。
【0013】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 74、SEQ ID NO: 79、SEQ ID NO: 84、SEQ ID NO: 89、SEQ ID NO: 94またはSEQ ID NO: 99を含む。
【0014】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 87、SEQ ID NO: 88、SEQ ID NO: 82、SEQ ID NO: 83、SEQ ID NO: 77、SEQ ID NO: 78、SEQ ID NO: 102、SEQ ID NO: 103、SEQ ID NO: 97、SEQ ID NO: 98、SEQ ID NO: 92、SEQ ID NO: 93、またはこれらの配列の1~54番目のアミノ酸を含む。
【0015】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントで構成される(consists in)。
【0016】
いくつかの態様において、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントは、有機分子にコンジュゲートしている。
【0017】
いくつかの態様において、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーメンバーのバリアントは、別のポリペプチド、特にSac7dファミリータンパク質の別のバリアントにコンジュゲートしている。
【0018】
本発明はまた、記載されるポリペプチドをコードする核酸分子、そのような核酸分子を含む(および宿主細胞における転写を可能にする要素を含む)発現ベクター、および該核酸分子または該発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0019】
本発明はまた、本開示のポリペプチド、本開示の核酸、本開示の発現ベクター、または本開示の宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、本開示のポリペプチドを作製するための方法であって、
a. 本開示の発現ベクターによって細胞が形質転換された細胞培養物を培養する段階、
および
b. ポリペプチドを回収する段階
を含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、医薬としての本開示のポリペプチドまたは核酸に関する。
【0022】
本発明はまた、補体介在性障害の治療のための使用のための、本開示のポリペプチド、核酸、発現ベクター、または細胞に関する。
【0023】
特に、補体介在性障害は、補体介在性の赤血球損傷を特徴とし、特に発作性夜間ヘモグロビン尿症または非典型溶血性尿毒症症候群を特徴とする。
【0024】
いくつかの態様において、補体介在性障害は自己免疫疾患であり、任意で該障害は多発性硬化症である。
【0025】
いくつかの態様において、補体介在性障害は腎臓に関与し、任意で該障害は、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、IgA腎症(IgAN)、原発性膜性腎症(原発性MN)、C3糸球体症(C3G)、または急性腎障害である。
【0026】
いくつかの態様において、補体介在性障害は中枢神経系もしくは末梢神経系または神経筋接合部に関与し、任意で該障害は、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多巣性運動ニューロパチー、または重症筋無力症である。
【0027】
いくつかの態様において、補体介在性障害は呼吸器系に関与し、任意で該障害は肺線維症を特徴とする。
【0028】
いくつかの態様において、補体介在性障害は血管系に関与し、任意で該障害は血管炎を特徴とする。
【0029】
本発明はまた、補体介在性障害を有するかまたは補体介在性障害のリスクがある対象を治療する方法であって、有効量の本開示のポリペプチド、核酸、発現ベクター、宿主細胞、または薬学的組成物を含む組成物を対象に投与する段階を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
特に、本発明は、補体成分3(C3)および/またはC3の加水分解後に得られる成分C3bに特異的に結合するSac7dタンパク質のバリアントまたはSac7dファミリータンパク質のバリアントを含むポリペプチドに関する。特に、当該バリアントはC3およびC3bの両方に結合する。また当該バリアントは、好ましくは補体カスケードを阻害し、特に、コンプスタチンと競合することができる。そのようなバリアントは、(例えば、補体介在性障害を有するもしくは補体介在性障害のリスクがある対象における)補体介在性障害の治療および/または補体の調節に有用である。特に、ある種の態様において、バリアントは、C3加水分解後(C3b断片が放出されたとき)または加水分解前(C3b断片がまだC3タンパク質内にあるとき)のいずれかで、C3タンパク質のC3b断片に結合する。
【0031】
好ましい態様において、そのようなバリアントは、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48またはSEQ ID NO: 49を含む。これらの配列は、Sac7dファミリーのコンセンサス配列をベースとし、Sac7dファミリーのあるタンパク質から別のタンパク質への変異の移植を実施することが可能であり、これらのタンパク質は類似の構造および結合部位ならびに類似のアミノ酸配列を呈していることを示すWO 2012/150314の教示にしたがって得られた。
【0032】
特に、ある種の態様において、バリアントは、Sac7dタンパク質のバリアントであり、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23 SEQ、ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 54を含む。ある種の態様において、バリアントは、Sso7dタンパク質のバリアントであり、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58を含む。
【0033】
上記の配列はN末端にメチオニンを含むこと、しかし各配列のN末端に記載されたそのようなメチオニンが含まれない場合も本発明を実施可能であること、に留意されたい。同様に、タンパク質の末端に位置するアミノ酸は省略されうる。特に、Sac7dの残基L58の後に位置するアミノ酸(SEQ ID NO: 16のL60またはSso7dのL59の後に位置する残基)は省略されうる。その結果、バリアントは、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23 SEQ、ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 53もしくはSEQ ID NO: 54の2~58番目のアミノ酸、またはSEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23 SEQ、ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 53もしくはSEQ ID NO: 54の2~59、2~60、2~61、2~62もしくは2~63番目のアミノ酸を含みうる。Sso7d足場をベースとする場合、バリアントは、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28 SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57もしくはSEQ ID NO: 58の2~59番目のアミノ酸、またはSEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28 SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57もしくはSEQ ID NO: 58の2~60番目のアミノ酸を含みうる。
【0034】
Sac7dをベースとする場合、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 74、SEQ ID NO: 75、SEQ ID NO: 76、SEQ ID NO: 77、SEQ ID NO: 78、SEQ ID NO: 79、SEQ ID NO: 80、SEQ ID NO: 81、SEQ ID NO: 82、SEQ ID NO: 83、SEQ ID NO: 84、SEQ ID NO: 85、SEQ ID NO: 86、SEQ ID NO: 87もしくはSEQ ID NO: 88のいずれか、またはこれらの配列のいずれかの1~57、1~58、1~59、1~60、1~61、1~62、1~63番目のアミノ酸を含みうる。
【0035】
Aho7cをベースとする場合、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 89、SEQ ID NO: 90、SEQ ID NO: 91、SEQ ID NO: 92、SEQ ID NO: 93、SEQ ID NO: 94、SEQ ID NO: 95、SEQ ID NO: 96 SEQ ID NO: 97、SEQ ID NO: 98、SEQ ID NO: 99、SEQ ID NO: 100、SEQ ID NO: 101、SEQ ID NO: 102もしくはSEQ ID NO: 103のいずれか、またはこれらの配列のいずれかの1~56もしくは1~57番目のアミノ酸を含みうる。
【0036】
これらの配列は全て、Sac7dファミリータンパク質をベースとする特定のバリアントを記載している。以下に説明されるように、図1のアライメントを用いて、ファミリーの他のタンパク質のバリアントをデザインすることが可能である。
【0037】
タンパク質Sac7dおよびAho7cのコンセンサス配列は、SEQ ID NO: 104である。C3および/またはC3bに結合するバリアントは、このコンセンサス配列をベースとする、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 61、SEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 63、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 65、SEQ ID NO: 66 SEQ ID NO: 67、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 70、SEQ ID NO: 71、SEQ ID NO: 72、またはSEQ ID NO: 73を含むこともできる。
【0038】
本明細書と配列表との間に矛盾がある場合、本明細書に記載されている配列が優先される。
【0039】
上記のように、本明細書はSac7d(SEQ ID NO: 1)、Aho7c(SEQ ID NO: 14)、Sso7d(SEQ ID NO: 2)のバリアントを具体的に開示するが、本教示は、Sac7dファミリーの他のタンパク質、特にSac7dおよびAho7cに非常に類似しているSto7(SEQ ID NO: 15)に適用可能である。この教示は、WO2007139397に開示されているように、他のOBフォールドドメインにも適用可能である。本発明は、当初、ウイルスアダプタータンパク質v-Crkにおける保存配列として記載され、PFAMデータベースにおいてPF00018の下に記載されている、約60アミノ酸残基の小さなタンパク質ドメインであるSH3ドメインにも適用可能である。SH3ドメインは、2つの密集した逆平行βシートとして配置された5本または6本のβ鎖からなる特徴的なβバレルフォールドを有する。リンカー領域は短いヘリックスを含みうる。OBフォールドドメインおよびSH3ドメインは相同性を共有していること、ならびにこれらのドメインの配列および構造に関する知見を考慮して、OBフォールドドメインまたはSH3ドメインのいずれにおいても、Sac7dについて以下に開示されるアミノ酸にどのアミノ酸が対応するかを決定することが可能であることに留意されたい。
【0040】
特定の態様において、ポリペプチドは、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリータンパク質のバリアントで構成される(consists in)。
【0041】
特定の態様において、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリータンパク質のバリアントは、別のタンパク質またはポリペプチドに連結または融合されている。特に、他のタンパク質またはポリペプチドは、C3および/もしくはC3bに結合する、または別の標的に結合する、Sac7dファミリータンパク質の同じまたは別のバリアントでありうる。この態様において、Sac7dファミリーの他のバリアントがアルブミンに結合する場合が好ましい。
【0042】
特定の態様において、バリアントは、ポリペプチド中に存在し、したがって、生物学的関心対象を呈する他のタンパク質またはポリペプチドにアミン結合によって共有結合されている。
【0043】
一態様において、ポリペプチドは、いくらかの機能性を呈する有機分子、特にVEGF阻害剤として使用されるキナーゼ阻害剤にコンジュゲートしている。
【0044】
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドをコードするDNA配列を含む遺伝子コンストラクトに関し、そのような遺伝子コンストラクトを含むベクターに関し、および遺伝子コンストラクトをそのゲノム中に含む宿主細胞に関する。
【0045】
本発明はまた、本明細書に開示されるポリペプチドを作製するための方法であって、
a. 本開示の遺伝子コンストラクトによって細胞が形質転換された細胞培養物を培養する段階、
および
b. ポリペプチドを回収する段階
からなる段階を含む、方法に関する。
【0046】
本発明はまた、医薬としての本明細書に開示されるポリペプチドに関する。
【0047】
本発明はまた、単独でまたは別の適応した処置との組み合わせで、補体関連疾患または補体介在性疾患の治療に使用するための、本明細書に開示されるポリペプチドに関する。
【0048】
本発明はまた、特に対象が補体介在性疾患を有する場合に、治療量の本明細書に開示されるポリペプチドを対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象を治療するための方法に関する。
【0049】
本発明はまた、補体関連疾患または補体介在性疾患の治療において同時に、別々にまたは連続的に(経時的に広げて)使用するための、本明細書に開示されるポリペプチドおよび別の薬剤を含有する組成物に関する。そのような他の薬剤は、補体関連疾患または補体介在性疾患を治療するために既に知られている薬剤の中から選択される。
【0050】
それは特に、疾患が以下に開示されるような場合に適応される。
【0051】
本発明はまた、治療使用、診断使用または精製使用におけるこれらのバリアントに関する。本発明はまた、ポリペプチドまたはバリアントを含有する組成物、特に経口または局所(皮膚)組成物に関する。
【0052】
Sac7dの配列は
であることに注意されたい。
【0053】
Sso7dの配列は
である。
【0054】
本明細書に開示されるC3および/またはC3bに結合するバリアントは、Sac7d配列の位置番号7、8、9、21、22、24、26、29、31、33、40、42、44および/または46に対応する位置に変異を含む。しかしながら、位置番号33のスレオニンは、位置番号40のスレオニン、位置番号44のアラニン、位置番号26のバリンまたは位置番号46のセリンと同様に、バリアントにおいて維持されうることに留意されたい。しかしながら、本明細書に開示されるC3および/またはC3bに結合するバリアントは、SEQ ID NO: 1と比較して(または由来するSac7dファミリータンパク質の配列と比較して)少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも9個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも11個、より好ましくは少なくとも12個の変異アミノ酸(すなわち、SEQ ID NO: 1の、対応しているアミノ酸とは異なるアミノ酸)を含む。概して、SEQ ID NO: 1と比較して(または由来するSac7dファミリータンパク質の配列と比較して)多くとも20個、より好ましくは多くとも18個、より好ましくは多くとも16個、15個、14個または13個の変異アミノ酸が存在する。
【0055】
好ましい態様において、ポリペプチドは、配列SEQ ID NO: 45またはSEQ ID NO: 45の2~60番目のアミノ酸を含む。
【0056】
本出願の文脈において、別段の定めがない限り、Xは任意の天然アミノ酸、特に標準アミノ酸(すなわち、標準遺伝暗号にコードされている20アミノ酸)のいずれかであることができる。
【0057】
好ましい態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 17の2~60番目のアミノ酸を含む。アミノ酸D17は、特にD17E(SEQ ID NO: 31)として改変されうる。SEQ ID NO: 31の2~60番目のアミノ酸も使用されうる。
【0058】
これらの配列は、Sac7dファミリータンパク質に共通する配列であるSEQ ID NO: 16をベースとする。SEQ ID NO: 17およびSEQ ID NO: 31は、変異W25Y(これはSac7dでの変異W24Yに対応する)およびR44W(これはSac7dでの変異R42Wに対応する)の存在によりSEQ ID NO: 16とは異なる。実際、本発明者らは、これらの2つのアミノ酸が存在しないと、バリアントのC3および/またはC3bへの結合能力が変化することを示した。SEQ ID NO: 31はさらに、D17E変異によりSEQ ID NO: 16とは異なる。
本明細書において提供される配列は最初のアミノ酸としてメチオニンを含むことがさらに示される。しかしながら、このメチオニンは、本明細書に開示されるポリペプチドでは省略することができる。さらに、本明細書に開示されるタンパク質のC末端は、ポリペプチドの生物学的効果を得るために必要ではなく、省略することができる。これについては以下でさらに示す。
【0059】
これらSEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 17、およびSEQ ID NO: 31の配列において、位置番号8~10、22~23、27、30、32、34、42、46、および48のXと指定されたアミノ酸は、表2に示された通りである。Xと指定された他のアミノ酸を表1または表10に示す(ここで「-」は、アミノ酸なしを意味する)。
【0060】
(表1)SEQ ID NO: 17~SEQ ID NO: 21およびSEQ ID NO: 31~SEQ ID NO: 35およびSEQ ID NO: 45~SEQ ID NO: 49におけるアミノ酸の説明。
【0061】
(表2)SEQ ID NO: 17およびSEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 45におけるアミノ酸の説明。
【0062】
別の態様において、ポリペプチドは、配列SEQ ID NO: 46またはSEQ ID NO: 46の2~60番目のアミノ酸を含む。
別の態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 18の2~60番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 32の2~60番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表1、3および10に示されている。
【0063】
(表3)SEQ ID NO: 18およびSEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 46におけるアミノ酸の説明
【0064】
好ましい態様において、ポリペプチドは、配列SEQ ID NO: 47またはSEQ ID NO: 47の2~60番目のアミノ酸を含む。
別の態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 19の2~60番目のアミノ酸または:
もしくはSEQ ID NO: 33の2~60番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表1、4および10に示されている。
【0065】
(表4)SEQ ID NO: 19およびSEQ ID NO: 33およびSEQ ID NO: 47におけるアミノ酸の説明
【0066】
好ましい態様において、ポリペプチドは、配列SEQ ID NO: 48またはSEQ ID NO: 48の2~60番目のアミノ酸を含む。
別の態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 20の2~60番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 34の2~60番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表1に示されている。
【0067】
好ましい態様において、ポリペプチドは、配列SEQ ID NO: 49またはSEQ ID NO: 49の2~60番目のアミノ酸を含む。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 21の2~60番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 35の2~60番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表1に示されている。
【0068】
(表10)SEQ ID NO: 45~SEQ ID NO: 49におけるアミノ酸の説明
【0069】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 50の2~58番目のアミノ酸を含む。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 22の2~58番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 36の2~58番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表5および11に示されている。
【0070】
(表5)SEQ ID NO: 22およびSEQ ID NO: 36およびSEQ ID NO: 50におけるアミノ酸の説明
【0071】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 51の2~58番目のアミノ酸を含む。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 23の2~58番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 37の2~58番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表6および11に示されている。
【0072】
(表6)SEQ ID NO: 23およびSEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 51におけるアミノ酸の説明
【0073】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 52の2~58番目のアミノ酸を含む。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 24の2~58番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 38の2~58番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表7および11に示されている。
【0074】
(表7)SEQ ID NO: 24およびSEQ ID NO: 38およびSEQ ID NO: 52におけるアミノ酸の説明
【0075】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 53の2~58番目のアミノ酸を含む(表11も参照されたい)。
【0076】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 25の2~58番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 39の2~58番目のアミノ酸を含む。
【0077】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 54の2~58番目のアミノ酸を含む(表11も参照されたい)。
【0078】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 26の2~58番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 40の2~58番目のアミノ酸を含む。
【0079】
(表11)SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 54におけるアミノ酸の説明
【0080】
上記の全ての配列について、そのようなポリペプチドは、「ERE」パターン後のC末端にK(リジン)をさらに含むようなものでありうる。
【0081】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 55の2~59番目のアミノ酸を含む(表12も参照されたい)。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 27の2~59番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 41の2~59番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表8に示されている。
【0082】
(表8)SEQ ID NO: 27およびSEQ ID NO: 41およびSEQ ID NO: 55におけるアミノ酸の説明
【0083】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 56の2~59番目のアミノ酸を含む(表12も参照されたい)。
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 28の2~59番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 42の2~59番目のアミノ酸を含む。
アミノ酸Xの性質は表9に示されている。
【0084】
(表9)SEQ ID NO: 28およびSEQ ID NO: 42およびSEQ ID NO: 56におけるアミノ酸の説明
【0085】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 57の2~59番目のアミノ酸を含む(表12も参照されたい)。
【0086】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 29の2~59番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 43の2~59番目のアミノ酸を含む。
【0087】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
またはSEQ ID NO: 58の2~59番目のアミノ酸を含む(表12も参照されたい)。
【0088】
さらなる態様において、ポリペプチドは、配列
もしくはSEQ ID NO: 30の2~59番目のアミノ酸、または
もしくはSEQ ID NO: 44の2~59番目のアミノ酸を含む。
【0089】
(表12)SEQ ID NO: 55~SEQ ID NO: 58におけるアミノ酸の説明
【0090】
Sac7d足場をベースとする場合、好ましい配列はSEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 39もしくはSEQ ID NO: 40、またはこれらの配列の2~58番目のアミノ酸である。
【0091】
最も好ましい配列はSEQ ID NO: 39もしくはSEQ ID NO: 40、またはこれらの配列の2~58番目のアミノ酸である。
【0092】
Sso7d足場をベースとする場合、好ましい配列はSEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 43もしくはSEQ ID NO: 44、またはこれらの配列の2~59番目のアミノ酸である。
【0093】
本明細書に開示されるC3および/またはC3bに結合するバリアントは、野生型対応タンパク質と比較して4~20個の変異を含む。これらの変異は、好ましくはSac7配列の位置番号7、8、9、21、22、26、29、31、33、40、44および46に対応する位置にある。変異の中でも、バリアントがSac7dの24位に対応する位置のチロシン(Y)およびSac7dの42位に対応する位置のトリプトファン(W)を含むことに留意されたい。これらの2つのアミノ酸がないとC3/C3b結合は変化することが実際に示されている。
【0094】
いくつかの態様において、バリアントは、Sac7dの16位に対応する位置のグルタミン酸(E)および/またはSac7dの37位に対応する位置のグルタミン(Q)も含む。これらの変異はC3/C3bへの結合に必須ではないが、バリアントの薬理学的特性を改善する。
【0095】
上記の配列に見られるように、バリン26および/またはセリン46は、ポリペプチドがSac7d足場をベースとする場合、スレオニン33および/もしくはスレオニン40、ならびに/またはアラニン44と同様に維持することができる。
【0096】
Sac7dタンパク質ファミリー
Sac7dファミリーは、Sac7dタンパク質に関するものと定義され、好極限性細菌から単離された7 kDaのDNA結合タンパク質のファミリーに相当するものである。本明細書では、本発明の文脈において好ましく用いられる、OBフォールドドメインの代表種として開示される。SH3ドメインはOBフォールドドメインと相同性を共有しているので、Sac7dに関する教示はSH3足場にも適用可能である。
【0097】
これらのタンパク質およびこのファミリーは、特にWO 2008/068637に記載されている。したがって、本発明の文脈のなかで、タンパク質は、配列SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15の1つを有する場合に、またはコンセンサス配列(SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 12~SEQ ID NO: 15から得られる。このコンセンサス配列において、ダッシュ-は、アミノ酸がないことを示し、タンパク質が全て同じサイズを有しているわけではないことを示す)である配列SEQ ID NO: 16に対応する配列を有する場合にSac7dファミリーに属する。このSac7dファミリーは、特にスルホロブス・アシドカルダリウスに由来するSac7dまたはSac7eタンパク質、スルホロブス・ソルファタリカスに由来するSso7dタンパク質、スルホロブス・トコダイイに由来するSto7タンパク質とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7bタンパク質、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7aタンパク質、メタロスファエラ・セデュラに由来するMse7、メタロスファエラ・クプリナに由来するMcu7、アシディアヌス・ホスピタリスに由来するAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・アイランディカスに由来するSis7aまたはSis7bおよびスルホロブス・ソルファタリカスに由来するp7ssタンパク質を含む。Sac7dファミリータンパク質の配列の広範な類似性を考えると、Sac7dの所与のアミノ酸に対応するSac7dとは別のタンパク質のアミノ酸を同定することが直接的に可能かつ容易である。特に、そのようなタンパク質が重ね合わせ可能であることを(図中で)示し、(明細書中で)説明しているWO 2008/068637の教示を用いることもできる。本書面の内容は、特に様々なOBフォールドタンパク質を整列させ、重ね合わせるための方法の記載に関して、参照により本明細書に組み入れられる。上記のように、特定のアミノ酸を指定するためにSac7dタンパク質からのアミノ酸の付番を用いることが有用であり、相当するアミノ酸は図1から得ることができる。
【0098】
WO 2012/150314には、Sac7dファミリーのあるタンパク質からの変異が同じファミリーの別のタンパク質に持ち込まれうることが示されている。この移行性は、Sac7dファミリーの1つのタンパク質の変異体から出発して、Sac7dファミリーの別のタンパク質の変異体を作出することに相当する。最初の変異体は、特にWO 2008/068637のプロセスを実行することにより得られたものでありうる。その結果、特にWO 2012/150314の教示および図1の教示を用いて、Sac7dファミリーの任意のタンパク質の変異体を、そのようなファミリーの任意の他のタンパク質の変異体から出発して、得ることが可能である。実例として、Sac7dの変異体の場合、図1の配列アライメントを用いて、Sac7d変異体の変異したアミノ酸を別のタンパク質足場に導入することができる。実例として、本明細書に開示されるSac7dバリアントから得られるSso7dのバリアントは、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28 SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57およびSEQ ID NO: 58として記載される。
【0099】
バリアントは、コンセンサス配列を用いて、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48またはSEQ ID NO: 49によって示される。
【0100】
バリアントを得るために野生型タンパク質配列に導入される変異残基の数は、好ましくは4~25個であり、またはより具体的には4~22個もしくは4~20個である。したがって、野生型OBフォールドタンパク質(またはドメイン)と比較して、少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7または8個、さらにより好ましくは少なくとも10個、しかし一般には25個未満、より好ましくは22個未満、さらにより好ましくは20個未満または15個もしくは14個未満の置換アミノ酸を好ましくは有するバリアントを得ることが可能である。本明細書では全てのおよび任意の範囲(5~20または7~25など)が考慮されることに留意されたい。特に好ましい範囲は、4~20、4~17および6~17、4~14および6~14である。
【0101】
野生型OBフォールドドメインと比べて、OBフォールドドメインの結合部位において7、8、9、10、11、12、13または14個のアミノ酸が変異している場合が、好ましい。したがって、これらの変異は、好ましくはSac7d(SEQ ID NO: 1)のV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50およびP51に対応するアミノ酸に導入される。
【0102】
特に、変異アミノ酸の数が7~14個(両端の値を含む)である場合が興味深い。特に、バリアントは、WO 2008/068637に示されるようにアミノ酸の挿入を含むこともできる。
【0103】
示されるように、Sac7dファミリータンパク質は、スルホロブス・アシドカルダリウスに由来するSac7dまたはSac7e、スルホロブス・ソルファタリカスに由来するSso7d、スルホロブス・トコダイイに由来するSto7とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7b、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7a、メタロスファエラ・セデュラに由来するMse7、メタロスファエラ・クプリナに由来するMcu7、アシディアヌス・ホスピタリスに由来するAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・アイランディカスに由来するSis7aまたはSis7b、およびスルホロブス・ソルファタリカスに由来するp7ssを含む。Sac7d、Sso7d、Sac7e、Ssh7b、Ssh7a、DBP7、Sis7a(3対立遺伝子)、Mse7、Mcu7、Aho7a、Aho7b、Aho7c、およびSto7タンパク質の様々な配列は、それぞれSEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15によって表される。
【0104】
このSac7dファミリータンパク質のバリアントは、ナノフィチンと呼ばれうる。したがって、本発明は、SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15によって表されるタンパク質、またはSEQ ID NO: 16で読み取られる配列(コンセンサス配列)を有するタンパク質のバリアントに対して、特にSac7dのバリアントに対して選択的に実施される。
【0105】
Sac7dタンパク質とOBフォールドタンパク質およびSH3ドメインとの関連
OBフォールドタンパク質は、当技術分野において公知である。それらは特に、上記で引用した書面に、またArcus(Curr Opin Struct Biol. 2002 Dec; 12(6):794-801)にも記載されている。OBフォールドは、5枚のベータ(β)シートを有する円柱の形態である。大部分のOBフォールドタンパク質は、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、金属イオンまたは触媒基質でありうる天然リガンドと同じ結合界面を使用する。この結合界面は、主にβシートに位置する残基を含む。ループに位置する特定の残基も、OBフォールドタンパク質とその天然リガンドとの結合に関与しうる。したがって、WO 2007/139397およびWO 2008/068637の出願ならびにArcus書面(2002, op. cit.)には、その天然リガンドと結合するためのOBフォールドタンパク質ドメインが記載されている。
【0106】
特に、書面WO 2008/068637には、OBフォールドタンパク質の結合ドメインを特定する方法が正確に記載されている。OBフォールドドメインを有するタンパク質のいくつかの配列および3次元構造を重ね合わせることにより、WU-Blast2(Lopez et al., 2003, Nucleic Acids Res 31, 3795-3798)、T-COFFEE((Notredame et al., 2000, J Mol Biol 302, 205-217)またはDALI lite(Holm and Park, 2000, Bioinformatics 16, 566-567)を用いて、結合ドメインの位置、および特に改変することができるアミノ酸を特定することが可能である。Sac7dの配列(SEQ ID NO: 1)を参照すると、これらには残基V2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D35、D36、N37、G38、K39、T40、G41、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50およびP51がある。
【0107】
WO 2008/068637には、DALIウェブサイト(http://www.ebi.ac.uk/dali/interactive.html)(Holm and Sander, 1998, Nucleic Acids Res 26, 316-319)を用いて、OBフォールドタンパク質またはドメイン(本出願では、Sac7dを含めて、10ドメインを用いた)の3次元構造の重ね合わせを実施することが可能であると記載されている。したがって、任意のOBフォールドタンパク質(または任意のOBフォールドドメイン)について、結合部位に関与し、上記のSac7dアミノ酸に対応するアミノ酸を特定することは容易である。その結果として、これらのタンパク質の1つにおいて変異させることができるアミノ酸を提供することにより、他の任意のOBフォールドドメインについて対応するアミノ酸を特定することが可能になる。
【0108】
OBフォールドドメインがSH3ドメインに似ていること、およびSH3ドメインにおけるSac7dのアミノ酸の等価体を特定することも可能であることにも留意されたい。
【0109】
OBフォールドまたはSH3ドメインの例
本発明によって使用することができるOBフォールドタンパク質の非限定的な例は、Sac7d、Sso7d、SEBのN末端ドメイン(Papageorgiou et al., 1998)、志賀様毒素IIeの鎖A(PDB 2bosa)、ヒト好中球アクチバチンペプチド-2(Neutrophil Activatin Peptide-2)(NAP-2, PDB 1tvxA)、アゾトバクター・ビネランジィ(Azotobacter vinelandii)のモリブデン結合タンパク質(modg)(PDB 1h9j)、SPE-CのN末端ドメイン(Roussel et al., 1997)、大腸菌(E. coli)志賀様毒素のB5サブユニット(Kitov et al., 2000)、Cdc13(Mitton-Fry et al., 2002)、ヒトYボックスタンパク質YB-1の冷ショックDNA結合ドメイン(Kloks et al., 2002)、大腸菌無機ピロホスファターゼEPPase(Samygina et al., 2001)、または(Arcus, 2002)による論文の表3に記載されているタンパク質のいずれか、例えば1krs(リシル-tRNAシンテターゼLysS, 大腸菌)、1c0aA(Asp-tRNAシンテターゼ, 大腸菌)、1b8aA(Asp-tRNAシンテターゼ, P.コダカラエンシス(P. kodakaraensis))、1lylA(リシル-tRNAシンテターゼLysU, 大腸菌)、1quqA(複製タンパク質A, 32 kDaサブユニット, ヒト)、1quqB(複製タンパク質A, 14 kDaサブユニット, ヒト)、1jmcA(複製タンパク質A, 70 kDaサブユニット(RPA70)断片, ヒト)、1otc(テロメア末端結合タンパク質, O.ノバ(O. nova))、3ullA(ミトコンドリアssDNA結合タンパク質, ヒト)、1prtF(百日咳毒素S5サブユニット, 百日咳(B. pertussis))、1bcpD(百日咳毒素S5サブユニット(ATP結合), 百日咳)、3chbD(コレラ毒素, V.コレラエ(V. cholerae))、1tiiD(易熱性毒素, 大腸菌)、2bosA(ベロ毒素-1/志賀毒素, B-五量体, 大腸菌)、1br9(TIMP-2, ヒト)、1an8(超抗原SPE-C, 化膿性連鎖球菌(S. pyogenes))、3seb(超抗原SPE, 黄色ブドウ球菌(S. aureus))、1aw7A(毒素性ショック症候群毒素, 黄色ブドウ球菌)、1jmc(主要な冷ショックタンパク質, 大腸菌)、1bkb(開始翻訳因子5a, P.アエロフィラム(P. aerophylum))、1sro(PNPaseのS1 RNA結合ドメイン, 大腸菌)、1d7qA(開始翻訳因子1, elF1a, ヒト)、1ah9(開始翻訳因子1, IF1, 大腸菌)、1b9mA(Mo依存性転写調節因子ModE, 大腸菌)、1ckmA(RNAグアニリルトランスフェラーゼ, クロレラウイルス, PBCV-1)、1a0i(ATP依存性DNAリガーゼ, バクテリオファージT7)、1snc(ブドウ球菌ヌクレアーゼ, 黄色ブドウ球菌)、1hjp(DNAヘリカーゼRuvAサブユニット, N末端ドメイン, 大腸菌)、1pfsA(遺伝子Vタンパク質, 緑膿菌バクテリオファージpf3)、1gvp(遺伝子Vタンパク質, 糸状バクテリオファージ(f1, M13))、1gpc(遺伝子32タンパク質(gp32)コア, バクテリオファージT4)、1wgjA(無機ピロホスファターゼ, 出芽酵母(S. cerevisiae))、および2prd(無機ピロホスファターゼ, 高度好熱菌(T. thermophilus))である。
【0110】
SH3ドメインを有するタンパク質の非網羅的な例は、シグナル伝達アダプタータンパク質、CDC24、Cdc25、PI3キナーゼ、ホスホリパーゼ、Ras GTPase活性化タンパク質、Vavがん原遺伝子、GRB2、p54 S6キナーゼ2(S6K2)、SH3D21、C10orf76(可能性)、STAC3、いくつかのミオシン、SHANK1,2,3、ARHGAP12、C8orf46、TANGO1、インテグラーゼ、局所接着キナーゼ(FAK, PTK2)、プロリンリッチチロシンキナーゼ(Pyk2, CADTK, PTK2beta)、またはTRIP10(cip4)である。
【0111】
Sac7dおよびAho7cをベースとするC3および/またはC3b結合バリアントの説明
Sac7dおよびAho7cは、大きな類似性を有するタンパク質である。Sto(SEQ ID NO: 15)もこれらのタンパク質との類似性を提示することに注目することもできる。
【0112】
SEQ ID NO: 104は、Sac7d(SEQ ID NO: 1)の2~66番目のアミノ酸およびAho7c(SEQ ID NO: 14)の3~60番目のアミノ酸のアライメントの後のコンセンサス配列に対応する。開始アミノ酸は、タンパク質の構造において不可欠でないため、省略されている。
【0113】
このコンセンサス配列において、X(またはXaa)は表13のとおりである。
【0114】
(表13)SEQ ID NO: 59~73においてXaaとして表されるいくつかのアミノ酸の説明。
【0115】
C3および/またはC3bに結合するバリアントのコンセンサス配列は以下によって表される。
【0116】
(表14)Sac7d-Aho7cのコンセンサス配列をベースとするバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表13、15、および16にさらに説明されている。
【0117】
(表15)SEQ ID NO: 59~103においてXaaとして示されるアミノ酸の説明。この表は、上記の配列について、それらが保有するXaaについて使用されることに留意されたい。いくつかの配列の場合、表15のいくつかの位置でアミノ酸が指定されているため、表の横列は適用されない。一覧表の配列は、この表の2番目の縦列のXaaを示す。
【0118】
これらの配列において、結合に関与しないいくつかのアミノ酸も、タンパク質の結合特性および生物学的特性を変化させることなく、バリアントにて改変することができる。それらを表16に表す。
【0119】
(表16)SEQ ID NO: 59~103においてXaaとして表されるアミノ酸。位置番号56のXaaは、SEQ ID NO: 74~88において存在するのみである。
【0120】
Sac7d(SEQ ID NO: 1)をベースとするC3および/またはC3b結合バリアントの説明
C3および/またはC3bに結合する、Sac7dをベースとする特定のバリアントは、SEQ ID NO: 74~SEQ ID NO: 88によって示される。
【0121】
これらの配列において、Sac7dタンパク質の開始メチオニン(M)は省略されている。このアミノ酸が欠失してもタンパク質の活性は変化しないことが、本出願人によって実際に示されている。同様に、バリアントから最後の7個のアミノ酸を省いても、活性を保持することが可能である。
【0122】
その結果、SEQ ID NO: 74~SEQ ID NO: 88のいずれかの1~57番目のアミノ酸によって示されるタンパク質も、本発明によるバリアントである。SEQ ID NO: 74~SEQ ID NO: 88のいずれかの1~58、1~59、1~60、1~61、1~62、1~63番目のアミノ酸によって示されるタンパク質を挙げることもでき、これらも本発明によるバリアントである。
【0123】
その結果、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 71~SEQ ID NO: 88のいずれか、またはこれらの配列をベースとするいずれかのトランケート型タンパク質、および上記に開示されるものを含む。
【0124】
そのようなバリアントは以下によって表される。
【0125】
(表17)Sac7dをベースとするバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表15および16にさらに説明されている。
【0126】
上記のように、表16に開示される通り、Sac7dのD16(これは、Sac7dに存在するM1が省略されているため、SEQ ID NO: 74~SEQ ID NO: 88における位置番号15に位置している)、Sac7dのN37(本明細書では位置番号36に位置している)またはSac7dのM57(本明細書では位置番号56に位置している)を改変することが可能である。
【0127】
Sac7d/Aho7cのコンセンサス配列に関しては、配列表が全てを示していなくても、置換の任意の組み合わせが予見される(付番はSEQ ID NO: 74~SEQ ID NO: 88に対するものである):
D15 N36 M56 SEQ ID NO: 79~83
D15 N36 L56
D15 Q36 M56
D15 Q36 L56
E15 N36 M56
E15 N36 L56
E15 Q36 M56
E15 Q36 L56 SEQ ID NO: 84~88
【0128】
上記のように、配列は全て、Sac7dに天然に存在するアミノ酸とは異なる、変異したアミノ酸Y23およびW41(N末端メチオニンを含むSEQ ID NO: 1の位置番号24および42にそれぞれ対応している)を含む。
【0129】
本出願人は、これらのアミノ酸がC3および/またはC3bに結合する様々なバリアントに存在すること、およびそのような改変が結合の減少(親和性の喪失または結合の喪失)をもたらすことを実際に見出した。他のアミノ酸は、表15に記載されている条件下で、可変させることができる。
【0130】
バリアントがT8(SEQ ID NO: 1の位置番号9に対応している)、L30(SEQ ID NO: 1の位置番号31に対応している)およびY43(SEQ ID NO: 1の位置番号44に対応している)を含む場合が好ましい。
【0131】
非常に興味深いバリアントは、SEQ ID NO: 76、SEQ ID NO: 77、SEQ ID NO: 78、SEQ ID NO: 81、SEQ ID NO: 82、SEQ ID NO: 83、SEQ ID NO: 86、SEQ ID NO: 87、SEQ ID NO: 88によって示される。これらのバリアントは全て、A7、D28、S32、I39およびS45(SEQ ID NO: 1の位置番号8、29、33、40および46にそれぞれ対応している)をさらに含む。
【0132】
SEQ ID NO: 87(B10-3と名付けた)は、SEQ ID NO: 82と同様に、特に注目の対象である。
【0133】
SEQ ID NO: 88(H03-3と名付けた)も、SEQ ID NO: 83と同様に、特に注目の対象である。
【0134】
Aho7c(SEQ ID NO: 14)をベースとするタンパク質の説明
C3および/またはC3bに結合するAho7cのバリアントは、SEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103によって示される。上記のように、そのようなタンパク質は、Sac7dに非常に類似している。また、Sac7dの変異がSac7dから別のタンパク質に持ち込まれうること(WO 2012/150314)が、本明細書において示され想起されている。
【0135】
これらの配列において、Aho7cタンパク質(SEQ ID NO: 14)の開始メチオニンおよびアラニン(MA)は省略されている。これらのアミノ酸が欠失してもタンパク質の活性は変化しないことが、本出願人によって実際に示されている。同様に、バリアントから最後の4個のアミノ酸を省いても、活性を保持することが可能である。
【0136】
その結果、SEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103のいずれかの1~55番目のアミノ酸によって示されるタンパク質も、本発明によるバリアントである。SEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103のいずれかの1~56、1~57、1~58番目のアミノ酸によって示されるタンパク質を挙げることもでき、これらも本発明によるバリアントである。
【0137】
その結果、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103のいずれか、またはこれらの配列をベースとするいずれかのトランケート型タンパク質、および上記に開示されるものを含む。
【0138】
そのようなバリアントは以下によって表される。
【0139】
(表18)Ao7cをベースとするバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表15および16にさらに説明されている。
【0140】
上記のように、表16に開示される通り、Aho7cのD17(これは、Aho7cに存在するM1A2が省略されているため、SEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103における位置番号15に位置している)、またはAho7cのN38(本明細書では位置番号36に位置している)を改変することが可能である。
【0141】
Sac7d/Aho7cのコンセンサス配列に関しては、配列表が全てを示していなくても、置換の任意の組み合わせが予見される(付番はSEQ ID NO: 89~SEQ ID NO: 103に対するものである):
D15 N36 SEQ ID NO: 94~98
D15 Q36
E15 N36
E15 Q36 SEQ ID NO: 99~103
【0142】
上記のように、配列は全て、Aho7cに天然に存在するアミノ酸とは異なる、変異したアミノ酸Y23およびW41(N末端メチオニンおよびアラニンを含むSEQ ID NO: 14の位置番号25および43にそれぞれ対応している)を含む。
【0143】
本出願人は、これらのアミノ酸がC3および/またはC3bに結合する様々なバリアントに存在すること、およびそのような改変が結合の減少(親和性の喪失または結合の喪失)をもたらすことを実際に見出した。他のアミノ酸は、表15に記載されている条件下で、可変させることができる。
【0144】
バリアントがT8(SEQ ID NO: 1の位置番号10に対応している)、L30(SEQ ID NO: 1の位置番号32に対応している)およびY43(SEQ ID NO: 14の位置番号45に対応している)を含む場合が好ましい。
【0145】
非常に興味深いバリアントは、SEQ ID NO: 91、SEQ ID NO: 92、SEQ ID NO: 93、SEQ ID NO: 96、SEQ ID NO: 97、SEQ ID NO: 98、SEQ ID NO: 101、SEQ ID NO: 102、SEQ ID NO: 103によって示される。これらのバリアントは全て、A7、D28、S32、I39およびS45(SEQ ID NO: 14の位置番号9、30、34、41および47にそれぞれ対応している)をさらに含む。
【0146】
SEQ ID NO: 102(B10-3に基づく)は、SEQ ID NO: 97と同様に、特に注目の対象である。
【0147】
SEQ ID NO: 103(H03-3に基づく)も、SEQ ID NO: 98と同様に、特に注目の対象である。
【0148】
同定されたバリアントの作製
同定されたバリアントの配列は、当技術分野において公知の任意の分子遺伝学的方法によって任意の適切なベクターにクローニングすることができる。
【0149】
上記のバリアントを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むこれらの組換えDNAコンストラクトは、プラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターなどの、ベクターに関連して使用される。
【0150】
これらの組換え酸分子は、Sambrook et al. , 1989(Sambrook J, Fritsch EF and Maniatis T (1989) Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている技法によって作製することができる。あるいは、DNA配列は、例えば、合成機を用いて化学的に合成されてもよい。
【0151】
本発明の組換えコンストラクトは、RNAを発現することができる、かつしたがって上記遺伝子配列からのタンパク質の産生をもたらす発現ベクターを含む。したがって、ベクターは、本明細書に開示される遺伝子配列の読み取り枠(ORF)に機能的に連結された適当なプロモーターを含めて、調節配列をさらに含みうる。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子などの選択可能なマーカー配列をさらに含みうる。細菌を発現宿主として使用する場合、コード配列の効率的な翻訳には、特定の開始シグナルおよび細菌分泌シグナルも必要とされうる。
【0152】
分子の産生
細胞は、上記に開示されたようなバリアントを含むポリペプチドをコードする配列を含むベクターでトランスフェクトまたは形質転換される。
【0153】
細胞は、タンパク質を発現し、良好に分泌するような条件において培養される。細胞の培養条件は、一般に組換え抗体産生に用いられる条件であり、当技術分野において公知である。当技術分野において公知であるそのような条件も、必要に応じて当業者により最適化されうる。KunertおよびReinhart(Appl Microbiol Biotechnol. 2016; 100: 3451-3461)には、そのような方法が概説されており、それに対する十分な参考文献が提供されている。
【0154】
細菌、ファージ(Shukra et al, Eur J Microbiol Immunol (Bp). 2014; 4(2): 91-98)または真核生物の産生系を用いることができる。
【0155】
グリコシル化などの適切な翻訳後修飾を得るために真核細胞を用いることが好ましいであろう。
【0156】
特に、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、PER.C6細胞(ヒト細胞株、Pau et al, Vaccine. 2001 21;19(17-19):2716-21)、HEK 293b細胞(ヒト胎児腎臓細胞293)、NS0細胞(非分泌性マウス骨髄腫に由来する細胞株)またはEB66細胞(アヒル細胞株Valneva, Lyons, France)を用いることができる。
【0157】
また、本開示によって提供されるのは、本明細書に開示されるバリアントを含むポリペプチドをコードするDNAコンストラクトの少なくとも1つを含む宿主細胞である。宿主細胞は、発現ベクターが利用可能な任意の細胞であることができる。上記のように、それは哺乳類細胞などの高等真核生物宿主細胞、酵母細胞などの低級真核生物宿主細胞、または細菌細胞などの原核生物細胞でありうる。
【0158】
宿主細胞への組換えコンストラクトの導入は、当技術分野において公知の任意の方法(リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、DEAE、デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーションまたはファージ感染などの)によって実施される。ベクターは、宿主細胞のゲノム内に挿入することができ、またはゲノム外ベクター(細菌人工染色体もしくは酵母人工染色体などの)として維持することができる。細胞ゲノム内に導入される場合、そのような導入は、当技術分野において公知の方法(相同組換えなど)を用いてターゲティングされてもよいし、ランダムであってもよい。
【0159】
細菌宿主および発現
細菌での使用に有用な発現ベクターは、適当な翻訳開始および終結シグナルとともに組換えDNA配列を、機能的プロモーターとの機能的な読み取り相に挿入することによって構築される。ベクターに1つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製起点を含めて、ベクターの維持を確実にし、望ましい場合には、宿主内での増幅を提供する。
【0160】
形質転換に適した原核生物宿主は、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の様々な種を含む。
【0161】
真核生物宿主および発現
真核生物宿主細胞の例としては、脊椎動物細胞、昆虫細胞、および酵母細胞が挙げられる。特に、上記の細胞を用いることができる。
【0162】
形質転換またはトランスフェクトされた細胞は、当技術分野において公知の方法により培養され、ポリペプチドは細胞内または細胞外画分(分泌されるか否かに依る)から回収される。
【0163】
分子の単離
産生された組換えタンパク質は、タンパク質の物理的または化学的特性を利用した公知の各種分離方法のいずれかにより、細胞内または細胞外画分から分離および精製することができる。
【0164】
特に、沈殿、限外ろ過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの各種の液体クロマトグラフィー、透析、ならびにそれらの組み合わせなどの方法を用いることができる。
【0165】
概して、組換えポリペプチドを精製するために知られ、用いられている任意の方法が、本明細書に開示される分子の精製に適応される。
【0166】
組換え配列内にタグ(ポリヒスチジンタグなどの)が導入されている場合は、このタグを用いて分子を精製することができる。しかしながら、ある種の態様において、親和性を用いて分子を精製することが好ましい。
【0167】
特に、本明細書において産生される分子は特定の標的に結合するという事実を用い、および任意のアフィニティー方法(アフィニティーカラム、FACS、ビーズ)を用いて、そのような分子を単離することができる。
【0168】
本明細書に開示される分子の1つの特別の利点は、それらが活性であるためにグリコシル化される必要はなく、したがって任意のタイプの細胞において産生されてもよく、必ずしも真核細胞でなくてもよいということである。それらは細菌細胞において特によく産生される。
【0169】
バリアントの改変
C3および/またはC3bに結合する能力を有する上記のバリアントは、当技術分野において公知の任意の方法によって改変することができる。
【0170】
バリアントを含むポリペプチドの調製
1つが本明細書に開示されるバリアントに対する、およびもう1つが関心対象のタンパク質またはペプチドに対する、2つのコード配列をインフレームで含むDNA配列を調製することが可能である。したがって、結果として生じる発現タンパク質は、両方のタンパク質を含むポリペプチドとなるであろう。ベクターは、発現ポリペプチド中の2つのタンパク質の間に位置するリンカーをコードする配列を含むような方法で構築されうる。
【0171】
その結果、本発明はまた、別のタンパク質またはポリペプチドに(好ましくは上記に開示のようにアミン結合を通じて)融合または連結されているC3および/またはC3bに結合する(好ましくはSac7dファミリーの)OBフォールドタンパク質のタンパク質バリアントを含むポリペプチドを包含する。
【0172】
特定の態様において、他のタンパク質またはポリペプチドは、Sac7dファミリータンパク質の別のバリアント(特に本明細書に開示されるもの)を含む。
【0173】
特に注目の対象は、以下である:
- アルブミンまたはPD-L1に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントと融合している、C3および/またはC3bに結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントを含む、ポリペプチド。特に、アルブミンに結合するSac7dファミリーOBフォールドタンパク質のバリアントは、SEQ ID NO: 117、SEQ ID NO: 118またはSEQ ID NO:119から選択され、C3および/またはC3bに結合するバリアントのN末端またはC末端に結合していることができる。具体的には、SEQ ID NO: 119と融合しているSEQ ID NO: 25を含むポリペプチド、またはSEQ ID NO: 119と融合しているSEQ ID NO: 26を含むポリペプチドを挙げることができる。特に注目の対象は、SEQ ID NO: 25がそのC末端で、SEQ ID NO: 119のN末端に(場合によってはリンカーにより)融合しているものを含むポリペプチドである。特に注目の対象は、SEQ ID NO: 26がそのC末端で、SEQ ID NO: 119のN末端に(場合によってはリンカーにより)融合しているものを含むポリペプチドである。特に注目の対象は、SEQ ID NO: 25がそのN末端で、SEQ ID NO: 119のC末端に(場合によってはリンカーにより)融合しているものを含むポリペプチドである。特に注目の対象は、SEQ ID NO: 26がそのN末端で、SEQ ID NO: 119のC末端に(場合によってはリンカーにより)融合しているものを含むポリペプチドである。これはまた、SE QID NO: 119がSEQ ID NO: 117またはSEQ ID NO: 118のいずれかによって置換される場合にも当てはまる。
【0174】
別の態様において、他のタンパク質またはポリペプチドは抗体である。この態様において、OBフォールドドメインのバリアントは、免疫グロブリン単量体の重鎖または軽鎖の少なくとも一方に、好ましくは軽鎖または重鎖のN末端またはC末端で、融合される。別の態様において、バリアントは、重鎖または軽鎖の両方に融合されうる。
【0175】
そのような化合物を得るために、以下からなる群より選択されるDNA配列を含む遺伝子コンストラクトを用いることができる
a. 抗体の重鎖をコードする配列がその3'末端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(潜在的にはリンカーをコードする配列により)融合された、配列
b. 抗体の重鎖をコードする配列がその5'末端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(潜在的にはリンカーをコードする配列により)融合された、配列
c. 抗体の軽鎖をコードする配列がその3'末端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(潜在的にはリンカーをコードする配列により)融合された、配列
d. 抗体の軽鎖をコードする配列がその5'末端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(潜在的にはリンカーをコードする配列により)融合された、配列。
【0176】
この融合は、抗体鎖(重鎖および/または軽鎖)のN末端および/またはC末端の位置で行うことができる。特に、Sac7dファミリー由来のタンパク質などの小さなOBフォールドドメイン(約70アミノ酸)を使用する場合、抗体領域、および改変されたOBフォールドドメインからなるさらなる結合領域を有する、抗体の構造(2つの重鎖に対合された2つの軽鎖、およびそのような共に対合された二量体)を有する分子を得ることが可能であることに留意されたい。
【0177】
特定の態様において、本明細書に開示されるタンパク質の抗体部分は、IgG分子である。
【0178】
別の態様において、本明細書に開示されるタンパク質の抗体部分は、IgA分子である。
【0179】
別の態様において、本明細書に開示されるタンパク質の抗体部分は、IgM分子である。
【0180】
別の態様において、本明細書に開示されるタンパク質の抗体部分は、IgD分子である。
【0181】
別の態様において、本明細書に開示されるタンパク質の抗体部分は、IgE分子である。
【0182】
抗体は、ヒト抗体、げっ歯類抗体(例えば、マウス抗体もしくはラット抗体)、ネコ抗体、イヌ抗体、ニワトリ抗体、ヤギ抗体、ラクダ類抗体(例えば、ラクダ抗体、ラマ抗体、アルパカ抗体、もしくはナノボディ)、サメ抗体、または任意の他の種に由来する抗体でありうる。抗体は、キメラ抗体やヒト化抗体でありうる。ウィキペディアにおいて想起されるように、ヒト化抗体は、ヒトで自然に産生される抗体バリアントとの類似性を高めるためにタンパク質配列が改変されている、非ヒト種由来の抗体である。キメラ抗体は、異なる種に由来する配列を含む。
【0183】
本明細書に開示される分子の一部である抗体が2つの同一の重鎖(約400~500アミノ酸、一般的には450アミノ酸前後)および2つの同一の軽鎖を含む抗体である場合が好ましい。その結果、抗体は同じFab可変領域を含む。この抗体はそれゆえ、抗体の両方の部分(軽鎖および重鎖の組み合わせ)が抗原の同じエピトープに結合する単一特異性抗体である。
【0184】
しかしながら、抗体は異なる重鎖および/または軽鎖を提示しうる。特に、いくつかの態様において、抗体は二重特異性抗体である。したがって、「抗体」という用語は、同一の重鎖および軽鎖を有する上記に開示されたような「古典的抗体」、しかし同様に2つ以上の特異性を有する操作された抗体の両方を包含する。
【0185】
特定の態様において、抗体は、1つの抗体由来の1つの重鎖および軽鎖ならびに別の抗体由来の別の重鎖および軽鎖を提示する。
【0186】
抗体は、以下からなる群の中で選択される標的に結合しうる:
細胞表面受容体: インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1、トランスフェリン受容体、上皮成長因子受容体、上皮成長因子受容体バリアントIII、TrkA、TrkB、TrkC、Her2、Her3、Her4、PMSA、IGF- 1R、GITR、RAGE、CD28。
細胞表面タンパク質: メソテリン、EpCam、CD19、CD20、CD38、CD3、TIM-3、CEA、cMet、ICAM1、ICAM3、MadCam、a4b7、CD7、CD4、CD138。
血管新生因子および成長因子: アンジオポエチン2、HGF、PDGF、EGF、GM-CSF、HB-EGF、TGF
免疫チェックポイント阻害剤または活性化剤: PD-1、PD-L1、CTLA4、CD28、B7-1、B7-2、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、LAG3、KIR、4-1BB、OX40、CD27、CD40L、TIM3、A2aR
循環タンパク質: TNFa、IL23、IL12、IL33、IL4、IL13、IL5、IL6、IL4、IFNg、IL17、RANKL、Bace1、αシヌクレイン、タウ(Tau)、アミロイド。
【0187】
あるいは、ポリペプチドは、上記に開示されたようなバリアント、およびエリスロポエチン、インターフェロンまたはエタネルセプトなどの生物学的に活性な分子を含んでもよい。
【0188】
別の態様において、OBフォールドドメインのバリアント(特に、Sac7dファミリータンパク質のバリアント)は、有機分子にコンジュゲートしている。これは、当技術分野において公知の任意の方法によって行われうる。特に、分子をタンパク質に化学的に連結させることができる。分子として、細胞毒性化合物(例えば、広域スペクトル)、血管新生阻害剤、細胞周期進行阻害剤、PBK/m-TOR/AKT経路阻害剤、MAPKシグナル伝達経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質シャペロン阻害剤、HDAC阻害剤、PARP阻害剤、Wnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤およびプロテアソーム阻害剤を含む抗増殖剤(細胞毒性剤および細胞増殖抑制剤)を挙げることができる。抗炎症性分子を用いることもできる。
【0189】
特に、DNA結合性薬物またはアルキル化薬物、例えばアントラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン)およびその類似体、アルキル化剤、例えばカリケアマイシン、ダクチノマイシン、ミトロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンなどを挙げることができる。CDK阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、チェックポイントキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PLK阻害剤、およびKSP阻害剤などの細胞周期進行阻害剤を挙げることもできる。サリドマイドならびにその誘導体であるレナリドミドおよびポマリドミドを挙げることもできる。炎症障害を治療するために、バリアントを含むポリペプチドにコンジュゲートする分子として、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ケルセチンおよび/またはレスベラトロールを用いることもできる。
【0190】
興味深いおよび好ましい分子も上記に開示されている。
【0191】
バリアントの使用
バリアントは、特に治療法、特に補体介在性疾患または補体関連疾患の治療に用いることができる。
【0192】
したがって、本発明は、治療量の本開示のポリペプチドまたは治療量の本明細書に開示されるOBフォールドのバリアント(特にSac7dファミリータンパク質のバリアント)を、それを必要とする対象に投与することを含む、補体介在性疾患または補体関連疾患の治療方法に関する。本発明はまた、有効量の本開示のポリペプチドまたは有効量の本明細書に開示されるOBフォールドのバリアント(特にSac7dファミリータンパク質のバリアント)を対象に投与することを含む、対象における補体カスケードを阻害するための方法に関する。
【0193】
本明細書において用いられる「治療量」または「有効量」という用語は、臨床結果などの有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な量であり、「有効量」は、それが適用される状況に依存する。有効量は、副作用または有害作用を最小限に抑えながら、治療上の改善をもたらす量である。治療上の改善とは、補体介在性疾患または補体関連疾患の退行、対象の生活の質の改善、併用治療の効力の改善でありうる。有効量はまた、臨床的に観察されるように、補体カスケードの阻害につながる量でありうる。
【0194】
いくつかの態様において、C3結合バリアントは、対象の脳内で目標濃度を達成するのに十分な量で投与されうる。いくつかの態様において、約60~約66アミノ酸の長さを有する本明細書に記載のC3結合バリアントの目標濃度は、脳組織1グラムあたり約0.2マイクログラム(μg/g)~約0.375 μg/gである。いくつかの態様において、目標濃度は約0.375 μg/g~約0.75 μg/gである。いくつかの態様において、目標濃度は約0.75 μg/g~約2.0 μg/gである。いくつかの態様において、目標濃度は約2.0 μg/g~約5.0 μg/gである。C3結合バリアントが別のポリペプチド、例えば別のバリアントまたは抗体に融合されているいくつかの態様において、モル基準でC3結合バリアントについて記載されているものと同等の目標濃度の薬剤が用いられうる。
【0195】
いくつかの態様において、例えば、脳内の目標濃度を達成するために、ヒト対象に投与される用量は、約5 mg/日~約500 mg/日、例えば、約5~50 mg/日、約50~150 mg/日、約150~300 mg/日、または約300~500 mg/日でありうる。C3結合バリアントが別のポリペプチド、例えば別のバリアントまたは抗体に融合されているいくつかの態様において、モル基準でC3結合バリアントについて記載されているものと同等の薬剤の用量が用いられうる。
【0196】
当技術分野の任意の方法によりバリアントを投与することができる。
【0197】
特に、バリアントを注射することができる。別の態様において、WO 2014/173899に開示されているようにバリアントを局所的に(患者の皮膚上または眼球上に)塗布することができる。別の態様において、WO 2016/062874に開示されているように、バリアントを経口投与することができる。
【0198】
他の投与経路も企図される。いくつかの態様において、バリアントは静脈内または皮下に投与されうる。いくつかの態様において、バリアントは、眼障害を治療するために眼内(例えば、硝子体内)に投与されうる。いくつかの態様において、バリアントは髄腔内経路によって投与されうる(例えば、中枢神経系に影響を及ぼす障害を治療するために)。いくつかの態様において、ポリペプチドまたはバリアントは、血液脳関門受容体に結合する部分(例えば、抗体、ポリペプチド、または低分子)に融合またはコンジュゲートされてもよく、該ポリペプチドまたはバリアントは、受容体媒介性トランスサイトーシスによって血液脳関門を通過する。いくつかのそのような部分は脳シャトルとして知られている。血液脳関門受容体は、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、およびヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB-EGF)(例えば、Tucker, Ther. Deliv. 2:311-27 (2011); Pulgar, Front. Neurosci. 12:1019 (2019)に開示のように)を含む。
【0199】
いくつかの態様において、ポリペプチドまたはバリアントは、ウイルスベクター(例えば、遺伝子治療に適したベクター)、プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミド、ファージミド、人工染色体などのような、発現ベクターを用いて対象に送達されうる。いくつかの態様において、ポリペプチドまたはバリアントをコードするヌクレオチド配列は、ウイルスベクターに組み込まれる。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ラウス肉腫ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、およびポリオウイルスが挙げられる。
【0200】
いくつかの態様において、ポリペプチドもしくはバリアント(またはポリペプチドもしくはバリアントをコードするヌクレオチド)は、ナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの送達剤と会合(例えば、物理的に会合)されうる。
【0201】
バリアントまたはバリアントを含むポリペプチドを、診断法において使用することもできる。特に、そのようなバリアントまたはポリペプチドは、当技術分野において公知の任意のマーカーに連結され、画像法において用いられうる。
【0202】
したがって、本発明はまた、サンプル中のC3および/もしくはC3bの存在を検出するため、またはC3および/もしくはC3bを定量するための方法であって、
a. C3および/またはC3bに結合する本開示のバリアントに、そのような結合が可能であるような条件にてサンプルを曝露する段階
b. バリアントを回収する段階ならびに/あるいはバリアントに結合したC3および/もしくはC3bを検出する段階または該C3および/もしくはC3bの量を測定する段階
を含む、方法に関する。
【0203】
b)の回収は、当技術分野において一般的な様々な洗浄または方法によって実施することができる。検出または定量は、ELISA、クロマトグラフィー、蛍光などの任意の方法または当技術分野における他の方法によって実施することができる。
【0204】
補体関連疾患または補体介在性疾患
補体関連性または補体介在性の疾患または状態は、補体系の亢進が観察され、対象の臓器、組織、または細胞に対する補体介在性障害につながる可能性のある任意の疾患または状態に関する。
【0205】
本明細書に開示されるポリペプチドは、補体を阻害するために、単独で、あるいは同様に補体系を阻害するもしくは疾患に関連する他の標的を標的とする、または疾患もしくは状態の治療もしくは緩和において有効性を有する、1つまたは他の製品との組み合わせで、対象に投与することができる。
【0206】
以下を挙げることができる
- 特に発作性夜間ヘモグロビン尿症または非典型溶血性尿毒症症候群における、赤血球(RBC)の保護;
- 移植された臓器、組織、および/または細胞の保護(一般に他の免疫抑制薬と併用)、特に虚血再灌流(l/R)傷害の軽減。
【0207】
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、補体介在性の血管内溶血、ヘモグロビン尿症、骨髄不全、および血栓症を特徴とする稀な障害である。非典型溶血性症候群(aHUS)は、微小血管症性溶血性貧血、血小板減少症、および急性腎不全を特徴とする慢性障害であり、多くの場合に補体調節タンパク質をコードする遺伝子の変異に起因する不適切な補体活性化によって引き起こされる。補体介在性溶血は、原発性慢性寒冷凝集素疾などの自己免疫性溶血性貧血や、薬物および他の異物に対するある種の反応を含む、多様な他の病態群においても起こることがある。
【0208】
移植(グラフト)は、臓器および組織の置換に関し、本明細書では輸血も「グラフト」とみなされる。虚血再灌流(l/R)傷害は、臓器がドナーから採取されてから宿主に移植されるまでの間に酸素不足にさらされた場合に起こる。本明細書に開示されるポリペプチドは、l/R傷害および移植の拒絶反応を予防するためにいくつかの有用性がある。それらは、移植培地中で用いることができ、ドナーから宿主への移植臓器の運搬中に用いることができ、または移植後に宿主に投与することができる。
【0209】
他の補体介在性または補体関連性の障害には、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障、またはぶどう膜炎などの眼障害、特に1つまたは複数の自己抗原に対する抗体によって少なくとも部分的に媒介される場合の自己免疫疾患が含まれる。関節リウマチ、重症筋無力症、視神経脊髄炎(NMO、デビック病)、いくつかの腎糸球体症を挙げることができる。
【0210】
本明細書に開示されるポリペプチドによって治療することができる他の疾患には、脳内出血、神経変性疾患、アナフィラキシーまたは輸注反応、喘息、副鼻腔炎、鼻ポリポーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または特発性肺線維症が含まれる。いくつかの態様において、当該疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症 進行性核上性麻痺、レビー小体病(すなわち、レビー小体型認知症もしくはパーキンソン病性認知症)、前頭側頭型認知症、外傷性脳損傷、外傷性脊髄損傷、多系統萎縮症、慢性外傷性脳症、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、多巣性運動ニューロパチー、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性疼痛(例えば、神経障害性疼痛)または軟膜髄膜転移である。本明細書に開示されるポリペプチドによって治療することができる他の疾患には、乾癬、アトピー性皮膚炎などの、自己免疫疾患でありうる慢性炎症性疾患; 全身性強皮症および硬化症; 炎症性腸疾患(IBD)(クローン病および潰瘍性大腸炎などの); ベーチェット病; 皮膚筋炎; 多発性筋炎; 多発性硬化症(MS); 皮膚炎; 髄膜炎; 脳炎; ぶどう膜炎; 骨関節炎; ループス腎炎; 関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、血管炎; 中枢神経系(CNS)の炎症性障害、慢性肝炎; 慢性膵炎、糸球体腎炎; サルコイドーシス; 甲状腺炎、組織/臓器移植に対する病的免疫応答(例えば、移植拒絶反応); COPD、喘息、細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、歯周炎、ならびに歯肉炎が含まれる。
【0211】
筋骨格系に影響を及ぼす障害(例えば、関節リウマチもしくは乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、ライター症候群、痛風)、または循環系に影響を及ぼす障害(血管炎もしくは血管炎症に関連する他の障害、例えば、血管および/もしくはリンパ管の炎症、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、顕微鏡的多発血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、高安動脈炎、川崎病、ホートン病、またはベーチェット病)を挙げることもできる。
【0212】
いくつかの態様において、障害はがんである。
【図面の簡単な説明】
【0213】
図1】Sac7dファミリータンパク質のアライメント。
図2】選択されたC3結合バリアントのC3bへの結合の検証。
図3】配列の類似性に基づく、C3およびC3bに対する結合体のクラスタ再分割。
図4】異なるクラスタのナノフィチンのC3b結合についてのコンプスタチンとの競合アッセイ。
図5】各種ナノフィチンのC3b結合についてのELISAにおけるEC50。
図6】様々なナノフィチンの補体カスケードの阻害。
図7】様々な用量レベルでのC3 NFのカニクイザルへの髄腔内投与後のC3阻害NF(「C3 NF」)のCSF中濃度(左パネル)および血漿中濃度(右パネル)を示すグラフ。
図8-1】表示された用量での髄腔内投与後のカニクイザルの脳の様々な領域へのC3阻害NF(「C3 NF」)の分布を示すグラフ。図8に示された「目標組織中濃度」は、場合によっては達成することが望ましい可能性があるC3 NFの濃度を表し、限定することを意図していない。
図8-2】図8-1の続きのグラフ。
図9】カニクイザルへのC3阻害NF(「C3 NF」)または媒体の髄腔内投与後の脳組織におけるC3aのレベルを示すグラフであり、C3 NFで処置したカニクイザルの認知関連脳領域におけるC3切断の機能的阻害を実証している。
図10】C3 NFをコードする発現プラスミドをトランスフェクションされたhiPSC由来脳細胞の培地中のC3阻害NF(「C3 NF」)のレベルを示すグラフ。P1およびP2は異なるプラスミドを示す。
図11】C3 NFをコードする発現プラスミドをトランスフェクションされたARPE-19細胞の培地中のC3阻害NF(「C3 NF」)のレベルを示すグラフ。
図12】単回IV投与後のラットの脳における脳シャトルを可能にされたC3阻害NFの脳内レベルを示すグラフ。
図13】特定の変異の存在に基づく、C3およびC3bに対するいくつかの結合体のクラスタ再分割。
【実施例
【0214】
実施例1. C3およびC3bに結合するバリアントの同定
C3からC3bへの変換には大きな構造変化が伴う。
標的として固定化C3bを用い、C3およびC3bに結合する190種のバリアントを粗細菌上清として、ELISAによりスクリーニングしたところ、高い割合で陽性結合体を確認することができた(図2)。その後の配列決定により、強い配列多様性が示され、繰り返し配列はほとんどなかった。さらに、結合部位の相同性に基づいてナノフィチンをいくつかのクラスタに分別すると、特異的なパターンの濃縮が強調され、ヒットの50%超がクラスタ1と2で見つかった(図3)。Sac7d配列をベースとするそのようなバリアントは、ナノフィチンと呼ばれる。
【0215】
実施例2. コンプスタチンと競合するナノフィチンの同定
コンプスタチンは、C3のマクログロブリン(MG)ドメイン4および5に結合する13残基の合成ペプチドである。この結合部位は、ドメインMG1~6によって形成されるMGリングの一部であり、C3とそのトランケート型バリアントC3bおよびC3cによって構造的に保存されている。興味深いことに、このドメインはC3上の他の既知の結合部位から遠く離れていることから、コンプスタチンの阻害活性は立体障害に基づく作用機序に関与していることが示唆される; ゆえに基質C3の転換酵素複合体へのアクセスを制限することによって補体の活性化および増幅を遮断するものである。
コンプスタチンのエピトープと重複するエピトープを標的とする候補は、C3bに特異的であり、各配列クラスタ(クラスタ1~6)を代表するナノフィチンを用いたバイオレイヤー干渉法による競合アッセイによって同定された。C3bにおける結合応答と、コンプスタチン類似体と複合体を形成したC3bにおける結合応答との比を、種々のナノフィチンの競合可能性の尺度として用いた。
クラスタ1~5のナノフィチンの結合応答はコンプスタチン類似体の存在によって影響を受けないことが分かったが(比およそ1)、これは、これらのナノフィチンがコンプスタチンとは異なるC3b上のエピトープに結合することを示唆している。
クラスタ6のナノフィチンは、コンプスタチン類似体の存在下で結合応答の低減を示し(比>1)、これは、コンプスタチンがそのエピトープをマスクしていることを示唆している(図4)。
【0216】
さらなる特性評価には、ELISAによる用量応答性の評価と、古典経路に基づくWieslabアッセイにおける4つの濃度(1、0.1および0.01 μM)での補体カスケード阻害活性のスクリーニングを含めた。
クラスタ6の3つのクローンは補体カスケードを阻害する能力があり、その中和能はELISAにおけるEC50と相関していることが分かった。また、クラスタ1のNf4はELISAでのEC50が低いにもかかわらず弱い阻害剤のようであり、そのため、C3bへの結合は補体カスケードの効率的な阻害を引き起こすのに十分でないようであることも注目すべきことであった。これらのデータを総合すると、クラスタ6のクローンが、同様のエピトープを標的とすることおよび同様の中和活性を提供することの両方により、機能的なコンプスタチン様の作用機序を示すことが示唆される。これは図5および6に示されている。
Nf1と名付けられた1つのクローンをさらに研究し、特性評価した。このクローンの配列はSEQ ID NO: 22に該当する。
【0217】
実施例3. クローンNf1の特性評価/改善
C3に対する特異性に関わる重要な残基を同定した。
解離速度を調整するために、他の残基をさらに改変した。
ナイーブ・ナノフィチン・ライブラリにおいて最初にランダム化された全ての残基をアラニンに置換することによって、変異体を作出した(Nf1では既にアラニンであると思われる位置番号8を除く)。
次いで、これらの種々のバリアントの結合能力を、10 nMおよび100 nM(それぞれ、Nf1のEC100およびEC100の10倍)でELISAにて評価した。
Y24およびW42は、良好な親和性でC3b結合を維持するために最も重要な残基であることが分かった。
また、C3bの良好な親和性を維持するには位置番号9、31および44も(程度は低いが)重要であることが分かった。位置番号46はより許容性が高いことが分かった。
いくつかのナノフィチンの分析から、最も重要であるY24およびW42の2つの変異(ならびに示されていない他の変異)またはある程度重要であると報告された他の変異を単独または組み合わせで有するC3/C3b結合バリアントの同定が可能であることが示された(図13)。
比較すると、他のアラニンバリアントは、調べた2つの濃度でELISAにおけるC3bに対する結合能を保持し、関与する位置に依って様々なレベルの影響を結合応答に与えた。この結果は、C3に対する特異性に寄与するNf1の主要な残基は位置番号24および42に位置し、位置番号9、31および44に、また位置番号46にも、いくつかの変異がある可能性を示唆している。
他の残基はアラニンへの置換に非常に許容性が高いことから、特異性に対する重要性は低いか、または副次的な寄与であることが示唆される。
主要な残基は結合部位の中心に位置し、副次的な残基は周辺に位置することは注目すべきことであった。
結合体の最適化は、親和性を向上させる位置番号7、21、22、26、29、33および40の残基を決定することによって実施された。
最も高いELISAシグナル(0D 450 nm > 4)を示したクローンのうち2つを精製し、代替経路および古典経路に基づくweislabアッセイにて親和性測定および中和力についてさらに特性評価を行った。ランダム化およびその後のオフ速度選択の結果、Nf1のこれら2つのバリアント(SEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 26)は、Nf1自体と比較して、より遅いオフ速度および全体的により高い親和性を示すことが見出された。
抗C3ナノフィチンの結合速度論パラメータは、Octet RED96システム(ForteBio)の干渉法により測定した。ストレプトアビジンバイオセンサを、まずビオチン化抗GFPナノフィチン(0.002% Tween 20および0.01% BSAを含有するTBS中10 μg/mL)により2 nmで官能化し、次に抗C3 GFPタグ付きナノフィチン(0.002% Tween 20および0.01% BSAを含有するTBS中10 μg/mL)を1.5 nmで負荷した。バイオセンサを60秒間平衡化させ、その後に、0.002% Tween 20および0.01%を含有するTBS中様々な濃度(150、50、16.6、5.55および1.85ならびに0 nM)のC3bにバイオセンサを同時に曝露することによって、結合速度を評価した。会合段階および解離段階を各々180秒間測定した。バイオセンサは、グリシン10 mM pH 2.5とTBSで交互に10秒間洗浄するサイクル3回を用いて再生した。全ての段階は30℃で1000 RPMの連続振盪速度により実行した。0 nM濃度に曝露したバイオセンサをバックグラウンド参照として用いた。センサグラムは単一の参照減算を用いて処理し、Octet Data Analysisソフトウェア11.1(ForteBio)を用いて分析した。フィッティングは1:1結合フィットモデルで実施した。
この親和性の増加(表19)が、weislabアッセイで実証されたように、Nf1と比較して高い中和能につながった。
【0218】
(表19)最適化後のC3結合体の親和性の測定。
【0219】
実施例4. バリアントは、N末端とC末端の両方で融合に許容性である
ナノフィチンのパラトープと、そのN末端およびC末端の先端とは、反対側の面に位置している。結果として、ナノフィチンは、その標的結合性を変えることなく融合構築に関与することができ、これにはペプチドまたはタンパク質との遺伝子融合またはコンジュゲーションが含まれうる。これは抗C3ナノフィチンB10で実証された。B10ナノフィチンは、そのN末端およびC末端での融合の存在に関係なく、その機能性を保持している。これは、タンパク質だけでなく、異なるペプチド組成と長さでも実証された(表20)。ここで、同様の特性が全長抗体(WO2019096797と同様)または別のナノフィチンとの融合でも観察されたことに留意されたい(実施例12も参照のこと)。さらに、ナノフィチンは、大腸菌およびCHOで例示されるように種々の発現宿主(原核生物もしくは真核生物)において組換え発現させることも、または完全な化学合成によって発現させることもできる。B10で探索した全ての場合において、バイオレイヤー干渉法実験によって実証されたように、完全に機能するナノフィチンが回収された。
【0220】
(表20)N末端またはC末端に様々なタグを有するC3結合体の親和性の測定。
【0221】
実施例5. 異なるN末端およびC末端アミノ酸を有するC3結合ナノフィチン
実施例3に記載されたC3結合体(SEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 26)であるが、N末端のM(メチオニン)を欠き、かつ/または「ERE」パターンの後のC末端にK(リジン)を含むC3結合体を作出し、C3およびC3bへの結合および補体阻害活性について特性評価する。
【0222】
実施例6. ラットにおける5日間の髄腔内注入後のC3結合ナノフィチンの脳への分布
実施例3または実施例5に記載のC3結合ナノフィチンの1つを、12匹の雄Sprague-Dawleyラット(各体重およそ270 g)に投与し、カニューレ先端がT1椎骨のレベルで頭側に配置された埋め込み型Alzetミニポンプシステムを介して投与される持続的髄腔内注入の効果を調べる研究を行った。ラットは、エンドトキシンを含まない1×PBSで調製したナノフィチン(0.00、0.01および0.1 mg/h)を、外科的に植え込んだ浸透圧ミニポンプを介して5日間持続的に髄腔内に注入された。その後、CSF、海馬および半脳ホモジネート、ならびに血漿における5日目のナノフィチンの終末濃度をLC-MS/MSにより評価した。ナノフィチンの投与は、研究中の臨床所見、または媒体で処置した比較対照との有意な体重差がないことによって証明されるように、耐容性が良好であった。半脳または海馬のホモジネートで測定されたナノフィチン濃度は同等であり、CSFで測定された濃度のおよそ3~5%であった。媒体処置動物ではナノフィチンは測定されなかった。さらに、血漿中で測定された濃度はCSF中で測定された濃度の0.5%未満であり、髄腔内注入後の全身曝露が低いことを示していた。要約すると、本研究では、ラットにおける5日間の髄腔内ポンプ注入後の良好な耐容性と高い脳内濃度が実証された。
【0223】
実施例7. C3結合ナノフィチンはラットにおける髄腔内注入後に脳内での微量透析により回収される
実施例6で使用したナノフィチン(NF)を12匹の雄Sprague-Dawleyラット(各体重およそ270 g)に投与し、カニューレ先端がT13椎骨のレベルで尾側に配置された埋め込み型Alzetミニポンプシステムを介して投与される持続的髄腔内注入の効果を調べる研究を行った。1群3匹のラットに投与量0.1 mg/hで1、4、24、または36時間、髄腔内注入により投薬した。NFは、髄腔内注入開始後1~36時間まで1時間ごとに採取した微量透析サンプルから海馬脳間質液で、および試験終了時(36時間)には同じ動物の脳ホモジネートと血漿で測定した。サテライト群の動物を用いて1、4および24時間時点のCSF、血漿および脳ホモジネート中の終末NF濃度を測定した。ナノフィチンは注入開始から1時間以内に微量透析液中に観察され、測定されたレベルは36時間の注入中一定のままであった。微量透析液中のNFの平均濃度はおよそ0.145 μg/mLであった。まとめると、これらのデータは、ラットにおける髄腔内投与後にCSFから間質液のNFの回収率が2%から4%であることを示している。脳内濃度はCSFのおよそ3%~6%であった。さらに、血漿中濃度は、髄腔内投与後のCSF濃度より少なくとも4倍低かった。
【0224】
実施例8. C3結合ナノフィチンの5日間の髄腔内注入後の脳、CSF、および血液のPK/PD
10匹のカニクイザル(およそ3 kg)の群を、カニューレ先端が腰椎-胸椎接合部のレベルで頭側に配置された外部バックパック装着型持続注入ポンプシステムを介して投与した、実施例6で使用したナノフィチン(NF)の5日間持続髄腔内注入の効果を調べる2相PK/PDおよび用量範囲探索試験において用いた。試験のフェーズAでは、媒体、ナノフィチン0.032 mg/h(0.8 mg/日)、またはナノフィチン0.34 mg/h(8 mg/日)をサルの腰椎-胸椎接合部に120時間(5日間)持続的に髄腔内注入した。PKおよびPDのための血漿およびCSFサンプルを、薬物注入期間中およびポンプ停止後36時間サンプリングした。フェーズBでは、フェーズAで用いたのと同じサルの腰椎-胸椎接合部に、媒体(フェーズAで動物が受けたのと同じ媒体)、ナノフィチン0.08 mg/h(2 mg/日)、またはナノフィチン0.8 mg/h(20 mg/日)を120時間(5日間)持続的に髄腔内注入した。ナノフィチン注入期間中に、PKおよびPDのための血漿およびCSFサンプルをサンプリングした。フェーズBでは、動物を120時間の時点で安楽死させ、生体内分布および病理学的評価のために脳、脊髄、および他の組織を採取した。血漿およびCSF中のナノフィチンの薬物動態学的評価は、LC-MS/MSにより実施した。薬力学的エンドポイントは、リガンド結合アッセイにより測定され、C3、C3分解産物C3a、およびAH50、つまりCSFおよび/または血液分画における代替補体系の機能活性の指標を含んでいた。NFの投与は、試験中に臨床所見がなかったことから証明されるように、動物において耐容性が良好であった。CSF中および血漿中の両方で達成されたNF濃度は、用量漸増後にほぼ直線的に増加し、CSF中の定常濃度は注入後8~24時間以内に達成された(図7)。CSF濃度は、20 mg/日の用量レベルの5日間注入後に、およそ500 μg/mLであった。NFの血漿中濃度はCSF中よりもおよそ10~15倍低かった。フェーズAにおけるポンプ注入の停止後、NFはCSFから排出され(t1/2 = 約3~6時間)、静脈内投与後に観察されたものと一致して、約20時間の血漿中t1/2を示した。脳組織ホモジネート中で達成されたNF濃度は用量依存性であり、CSF濃度のおよそ2~4%であった(図8)。アルツハイマー病および他のいくつかの神経変性疾患の治療の対象となる脳領域(前頭前皮質および海馬小領域を含む)では、NFの脳ホモジネート濃度が最も高かった(図8)。さらに、NFの2 mg/日または20 mg/日のいずれかの用量レベルの髄腔内注入は、前頭前皮質および海馬小領域の脳ホモジネート中のC3分解産物C3aのレベルを低下させたが(図9)、これは、神経変性疾患に関連する脳領域における薬力学的応答を支持するものである。
【0225】
実施例9. hiPSC由来脳細胞におけるC3結合ナノフィチンのプラスミドに基づく発現
N末端に融合したシグナル配列を有する実施例3または実施例5に記載のナノフィチンの1つをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドを、ある濃度範囲でhiPSC由来の脳細胞にトランスフェクションした。後の時点で上清を回収し、ナノフィチンのレベルを測定した。ナノフィチンは用量依存的に細胞によって産生および分泌された(図10)。
【0226】
実施例10. 網膜色素上皮細胞におけるC3結合ナノフィチンのプラスミドに基づく発現
N末端に融合したシグナル配列を有する実施例3または実施例5に記載のナノフィチンの1つをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドを、ある濃度範囲でARPE-19細胞(網膜色素上皮細胞株)にトランスフェクションした。後の時点で培養上清を回収し、NFのレベルを測定した。NFは用量依存的にARPE-19細胞によって産生および分泌された(図11)。
【0227】
実施例11. 脳シャトルを用いたC3結合ナノフィチンの送達
実施例3または実施例5に記載のC3阻害NFを、リンカーを用いて脳シャトル部分にコンジュゲートさせた。脳シャトル部分とC3/C3bターゲティング部分の両方がともにコンジュゲートした場合の生物学的活性の維持が確認された。ラットでの薬物動態実験では、IV送達後のコンジュゲートの脳内送達が確認され、10 mg/kg用量の脳シャトルコンジュゲートC3 NFの全身注射後、脳内(種々の異なる脳領域を含む)においておよそ1 μg/gの目標脳内濃度が達成されたことが実証された(図12)。
【0228】
実施例12. アルブミン結合ナノフィチンへの融合によりC3結合ナノフィチンの半減期が延長される
アルブミン結合ナノフィチン(ヒトおよびラットの両方の血清アルブミンに結合することができる)(SEQ ID NO: 119)に融合した実施例3または実施例5に記載のC3阻害NF(C3 NF)を含む融合ポリペプチドを、大腸菌において産生させた。この融合ポリペプチドは、C3阻害ナノフィチンのC末端とアルブミン結合ナノフィチンのN末端との間に15アミノ酸のペプチドリンカーを含んでいた。融合ポリペプチドおよびC3結合NF(Hisタグを有する)をラットに静脈内投与した。投与後60時間までの様々な時点で血液サンプルを採取した。ラット血漿中の融合ポリペプチドおよびC3 NFの濃度を測定した。測定から、融合ポリペプチドの半減期はC3 NFの半減期より少なくとも50倍大きいことが示され、C3阻害ナノフィチンの半減期がアルブミン結合ナノフィチンへの融合によって大幅に延長されうることが実証された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024513711000001.app
【国際調査報告】