(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】冠動脈プラークの状態の評価方法、装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
A61B 1/313 20060101AFI20240319BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240319BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240319BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240319BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240319BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20240319BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B1/313 510
G06T7/00 612
G06T7/00 350C
G06V10/82
A61B1/00 526
A61B1/045 614
A61B1/045 618
A61B5/0215 Z
A61B10/00 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557182
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2022089544
(87)【国際公開番号】W WO2022228463
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110466164.3
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522339547
【氏名又は名称】シャンハイ・パルス・メディカル・テクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI PULSE MEDICAL TECHNOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ゼハン
(72)【発明者】
【氏名】トゥー,ゼシュアン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,フイホン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C161
5L096
【Fターム(参考)】
4C017AA06
4C017AA08
4C017AC40
4C017BC11
4C017FF08
4C161AA22
4C161BB08
4C161MM10
4C161WW02
5L096FA32
5L096FA59
5L096FA62
5L096FA64
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
本発明は冠動脈プラークの状態の評価方法、装置、電子機器及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。冠動脈プラークの状態の評価方法は、評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を提供するステップS1と、前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を含む。本発明の実施例の冠動脈プラークの状態の評価方法によれば、光干渉断層画像形成技術により評価待ちの血管の断層映像を取得し、得られた断層映像に基づいて、その中の繊維成分及び脂質プラークを識別し、識別された繊維成分及び脂質の大きさに基づいて、冠動脈プラークの状態を総合的に評価するので、定量化評価を実現することができ、かつ、繰り返し性がより高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を含むことを特徴とする冠動脈プラークの状態の評価方法。
【請求項2】
前記ステップS3は、
それぞれ前記繊維成分のうち前記脂質プラークの表面を覆っている線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷を算出するステップS31と、
前記線維性被膜の厚み及び前記脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を確定するステップS32と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS32は、
前記脂質負荷及び前記線維性被膜の厚みに基づいて、下式によって、脂質被膜比を算出するステップS321と、
脂質被膜比=脂質負荷/線維性被膜の厚み
前記脂質被膜比に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS322と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップS1では、目標フレームの前記光干渉断層画像に対し、該フレーム画像の前、及び該フレーム画像の後の若干のフレームの連続画像をそれぞれ取得し、
前記ステップS31では、連続した複数のフレームの前記光干渉断層画像の前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び脂質負荷をそれぞれ算出して、複数のフレームの前記光干渉断層画像の線維性被膜の厚みの中央値及び脂質負荷の平均値を確定し、
前記ステップS321では、脂質負荷の平均値及び前記線維性被膜の厚みの中央値で、前記脂質被膜比を算出し、
ステップS322では、プラーク全体で算出して得られた最大脂質被膜比を該冠動脈プラークの脂質被膜比として、該冠動脈プラークの状態を評価することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップS322では、前記脂質被膜比が第1閾値以上である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップS322では、前記脂質被膜比のほかに、血流予備量比と結びつけて前記冠動脈プラークの状態を評価することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記血流予備量比は、光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比であり、
前記ステップS322では、前記脂質被膜比が第1閾値以上であり、かつ、前記血流予備量比が第2閾値以下である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プラーク識別モデルによって前記光干渉断層画像を識別し、前記プラーク識別モデルは深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて得られることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するための画像取得モジュールと、
若干の前記光干渉断層画像に基づいて、繊維成分及び脂質プラークを識別するための識別モジュールと、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するための評価モジュールと、を備えることを特徴とする冠動脈プラークの状態の評価装置。
【請求項10】
前記評価モジュールは、
前記繊維成分のうち前記脂質プラークの表面を覆っている線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷をそれぞれ算出するための算出サブモジュールと、
前記線維性被膜の厚み及び前記脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を確定するための確定サブモジュールと、を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記確定サブモジュールは、
前記脂質負荷及び前記線維性被膜の厚みに基づいて、下式によって脂質被膜比を算出し、
脂質被膜比=脂質負荷/線維性被膜の厚み
前記脂質被膜比に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するためのものであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記画像取得モジュールは、目標フレームの前記光干渉断層画像に対し、該フレーム画像の前、及び該フレーム画像の後の若干のフレームの連続画像をそれぞれ取得するためのものであり、
前記算出サブモジュールは、連続した複数のフレームの前記光干渉断層画像の前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び脂質負荷をそれぞれ算出して、複数のフレームの前記光干渉断層画像の線維性被膜の厚みの中央値及び脂質負荷の平均値を確定し、
前記確定サブモジュールは、脂質負荷の平均値及び前記線維性被膜の厚みの中央値で、前記脂質被膜比を算出し、プラーク全体で算出して得られた最大脂質被膜比を該冠動脈プラークの脂質被膜比として、該冠動脈プラークの状態を評価することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記確定サブモジュールは、前記脂質被膜比が第1閾値以上である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記確定サブモジュールは、前記脂質被膜比のほかに、さらに血流予備量比と結びつけて前記状態を評価することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記血流予備量比は、光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比であり、
前記確定サブモジュールは、前記脂質被膜比が第1閾値以上であり、かつ、前記血流予備量比が第2閾値以下である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断することを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記識別モジュールは、プラーク識別モデルによって前記光干渉断層画像を識別し、前記プラーク識別モデルは深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて得られることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項17】
プロセッサと、
コンピュータプログラム命令が記憶されているメモリと、を備え、
前記コンピュータプログラム命令が前記プロセッサに実行される場合、前記プロセッサが、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項18】
コンピュータプログラム命令が記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータプログラム命令がプロセッサに実行される場合、前記プロセッサが、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学画像形成の技術分野に関し、特に、冠動脈プラークの状態の評価方法、装置、電子機器及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
心原性死亡は、現在、人々が死亡する最も主要な原因であり、特に、冠動脈内の不安定なプラークによる急性冠症候群は、その中の主な要因である。したがって、冠動脈疾患患者のプラークの安定性状態の早期検出は、患者の治療方針の確定及び長期予後の評価にとって、極めて重要である。
【0003】
冠動脈内イメージング技術は、当面の冠動脈疾患患者の冠動脈内プラークの安定性状態を評価する主な手段である。その中で、血管内超音波(IVUS)及び近赤外線分光(NIRS)技術は、プラークの大きさを奥深く評価することができるが、イメージングのメカニズムそれ自体が依然としてプラークの各成分に対する明確な区分け及び総合的な評価の実現を制限している。
【0004】
光干渉断層走査型イメージング技術(OCT)は、その比較的高い解像度で冠動脈プラークの評価の面でユニークな優位性を有しているが、その走査の深さには限界があるので、プラーク全体への完全なイメージングには欠陥がある。また、OCTイメージング技術は、冠動脈プラークの線維性被膜の厚みをはっきり表示できるが、光学減衰の原因で、プラーク内の脂質成分の実際の大きさを表示できない。現在、臨床実践において、OCTイメージング技術に基づいて、線維性被膜の厚み<65μm、かつ、脂質角度≧180°を不安定なプラークの評価標準とすることしかできず、脂質成分の大きさという実証された重要な安定性状態の関連要素を軽視するので、上記の評価標準は十分に正確ではなくなる。
【0005】
したがって、より正確な評価方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、研究を繰り返して、病理学及び臨床研究を通じて、プラークの構成それ自体、即ちプラークの線維性被膜の厚み、脂質の大きさ等が共にプラークの安定性を決定していることを証明し、この上で本発明を成し遂げた。
【0007】
これに鑑みて、本発明は、プラークの線維性被膜及び脂質成分を総合的に考慮し、プラークの安定性状態をより正確に評価する冠動脈プラークの状態の評価方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、プラークの線維性被膜及び脂質成分を総合的に考慮し、プラークの安定性状態をより正確に評価する冠動脈プラークの状態の評価装置を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、本発明に係る冠動脈プラークの状態の評価方法を実行可能な電子機器を提供する。
【0010】
尚且つ、本発明は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体にコンピュータプログラム命令が記憶されており、前記コンピュータプログラム命令がプロセッサにより実行される時、前記プロセッサが本発明による冠動脈プラークの状態の評価方法を実行する。
【0011】
上記の技術課題を解決するために、本発明は以下の技術手段を用いる。
【0012】
本発明の第1態様の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価方法は、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を含む。
【0013】
さらに、前記ステップS3は、
前記繊維成分のうち前記脂質プラークの表面を覆っている線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷をそれぞれ算出するステップS31と、
前記線維性被膜の厚み及び前記脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を確定するステップS32と、を含む。
【0014】
よりさらに、前記ステップS32は、
前記脂質負荷及び前記線維性被膜の厚みに基づいて、下式によって、脂質被膜比を算出するステップS321と、
脂質被膜比(LCR)=脂質負荷/線維性被膜の厚み
前記脂質被膜比に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS322と、を含む。本発明の幾つかの実施例によれば、前記ステップS1では、目標フレームの前記光干渉断層画像に対し、それぞれ該フレーム画像の前、及び該フレーム画像の後の若干のフレームの連続画像を取得し、
前記ステップS31では、連続した複数のフレームの前記光干渉断層画像の前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び脂質負荷をそれぞれ算出して、複数のフレームの前記光干渉断層画像の線維性被膜の厚みの中央値及び脂質負荷の平均値を確定し、
前記ステップS321では、脂質負荷の平均値及び前記線維性被膜の厚みの中央値で、前記脂質被膜比を算出し、
ステップS322では、プラーク全体で算出して得られた最大脂質被膜比を該冠動脈プラークの脂質被膜比として、該冠動脈プラークの状態を評価する。
【0015】
さらに、前記ステップS322では、前記脂質被膜比が第1閾値以上である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断する。
【0016】
なお、脂質負荷、線維性被膜の厚みに用いられる単位が異なることによって、LCR数値も相応的に変化することになり、それに応じて、第1閾値も変化することになる。例えば、脂質負荷についてパーセント表示にし、かつ、線維性被膜の厚みについてμm単位とする場合、大量の実験結果に基づき、例えば、第1閾値を0.33に設定してもよい。さらに、前記ステップS322では、前記脂質被膜比のほかに、さらに血流予備量比と結びつけて前記冠動脈プラークの状態を評価してもよい。
【0017】
よりさらに、前記血流予備量比は、光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比であり、前記ステップS322では、前記脂質被膜比が第1閾値以上であり、かつ、前記血流予備量比が第2閾値以下である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断する。
【0018】
通常、血流予備量比と脂質成分の脂質負荷とは負の相関関係があり、つまり、血流予備量比が大きければ大きいほど、脂質プラークの負荷が小さくなることを示しており、プラークが相対的に安定になることを示している。
【0019】
したがって、脂質被膜比、及び血流予備量比を総合的に考慮して該プラークの状態を評価し、形態学と生理学的データとを結びつけることで、より正確になる。
【0020】
光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比の第2閾値としては、例えば、0.84に設定してもよい。
【0021】
なお、本願は第1閾値、第2閾値の具体的な数値について特に限定されないが、当業者は具体的な要求に応じて適切に設置することができることは言うまでもない。さらに、プラーク識別モデルにより前記光干渉断層画像を識別し、そのうち、前記プラーク識別モデルが深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて得られる。
【0022】
具体的に言えば、例えば、深層学習モデルにより内部弾性板を識別するように訓練し、深層学習モデルに基づいて補完し、補完された脂質プラーク及び前記脂質プラークに覆われた前記繊維成分を識別することができる。
【0023】
深層学習により訓練して得られたプラーク識別モデルは、上下層画像及び前の訓練されたデータからOCT画像の現在層における脂質プラークによる光学減衰による信号欠損を推測することができ、脂質プラークの脂質負荷の大きさをより正確に分析することができる。
【0024】
本発明の第2態様の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価装置は、
評価待ちの冠動脈プラークの若干の光干渉断層画像を取得するための画像取得モジュールと、
若干の前記光干渉断層画像に基づいて、繊維成分及び脂質プラークを識別するための識別モジュールと、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するための評価モジュールと、を備える。
【0025】
本発明の第3態様の実施例に係る電子機器は、
プロセッサと、
コンピュータプログラム命令が記憶されているメモリと、を備え、
前記コンピュータプログラム命令が前記プロセッサに実行される場合、前記プロセッサが、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行する。
【0026】
本発明の第4態様の実施例に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータプログラム命令が記憶されており、前記コンピュータプログラム命令がプロセッサに実行される場合、前記プロセッサが、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行する。
【0027】
本発明の上記技術手段は次のような有益な効果のうちの少なくとも1つを奏する。
【0028】
本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価方法は、光干渉断層イメージング技術により評価待ちの血管の断層映像を取得し、取得された断層映像に基づき、その中の繊維成分と脂質成分を識別し、識別された繊維成分と脂質の大きさとに基づいて、冠動脈プラークの安定性状態を総合的に評価することにより、定量化評価を実現することができ、かつ、繰り返し性がより高い。
【0029】
さらに、線維性被膜の厚み及び脂質負荷を総合的に考慮することで、該冠動脈プラークの状態を評価するので、従来技術に比べて、脂質の大きさが安定性状態に対する影響を考慮し、その評価結果の信頼性がさらに高い。
【0030】
しかも、LCRという評価指数を導入することで、連続的な定量的指標を提供し、従来の二分類の半定量評価標準に存在する診断欠陥を避けた。
【0031】
また、深層学習によりプラーク識別モデルを訓練し、冠動脈プラークの体内における全自動、全面的な形態評価を実現し、評価の再現性を高め、評価の主観性を減らし、深層学習により訓練して得られたプラーク識別モデルは、上下層画像及び前の訓練されたデータからOCT画像の現在層における脂質プラークによる光学減衰による信号欠損を推測することができ、脂質プラークの脂質負荷の大きさをより正確に分析することができる。
【0032】
また、上記のLCR指数という形態学的指数と血流予備量比という生理学的指数を合わせて総合的に考慮するので、陽性予測値を効果的に高め、より良い評価効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施例の冠動脈プラークの状態の評価方法のフローを示す図である。
【
図2】本発明の実施例の冠動脈プラークの状態の評価装置10のモジュール構成図である。
【
図3】本発明の実施例の電子機器1400のモジュール構成図である。
【
図4】4種の異なるパターンのプラークを模式的に示す概略図である。
【
図5】本発明の実施例1で得られた光干渉断層画像のオリジナルの図及びその識別図であり、(a)はオリジナルの図を表し、(b)は識別図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例の目的、技術手段及び優れた点をよりはっきりさせるために、以下、本発明の実施例の添付図面を参照して、本発明の実施例の技術手段について明確かつ完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。説明された本発明の実施例に基づき、当業者が得られたあらゆるその他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0035】
以下、まず、添付図面を参照して、本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価方法を具体的に説明する。
【0036】
図1に示すように、本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価方法は、以下のステップを含む。
【0037】
ステップS1では、評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を提供する。
【0038】
例えば、光干渉断層計に接続され、これによって血管の関心領域を取得して、その中の冠動脈プラークを識別してもよい。
【0039】
ステップS2では、光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定する。
【0040】
光干渉断層画像を取得した後、それを識別することで、繊維成分及び脂質プラークを確定する。
【0041】
例えば、プラーク識別モデルにより前記光干渉断層画像に対して上記識別を行っても良い、前記プラーク識別モデルは、例えば、深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて得られてもよい。
【0042】
具体的に言えば、例えば、深層学習モデルにより内部弾性板を識別するように訓練し、深層学習モデルに基づいてそれを補完して、補完された脂質プラーク及び前記脂質プラークを覆っている前記繊維成分を識別してもよい。
【0043】
深層学習によりプラーク識別モデルを訓練し、冠動脈プラークの体内における全自動、全面的な形態評価を実現し、評価の繰り返し性を高め、評価の主観性を減らし、深層学習により訓練して得られたプラーク識別モデルは、上下層画像及び前の訓練されたデータからOCT画像の現在層における脂質プラークによる光学減衰による信号欠損を推測することができ、脂質プラークの脂質負荷の大きさをより正確に分析することができる。
【0044】
ステップS3では、前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの安定性状態を評価する。
【0045】
その中で、脂質負荷とは、脂質プラークが血管全体の断面面積を占めるパーセンテージを指し、脂質の大きさを反映している。
【0046】
その中の繊維成分及び脂質プラークを識別した後、脂質の大きさがプラーク状態に影響を与える要素の1つを考慮し、本発明の評価方法は、前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷を総合的に考慮して、前記冠動脈プラークの状態を評価する。
【0047】
具体的に、前記ステップS3は、
前記繊維成分のうち前記脂質プラークの表面を覆っている線維性被膜の厚み及び前記脂質成分の脂質負荷をそれぞれ算出するステップS31と、
前記線維性被膜の厚み及び前記脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を確定するステップS32と、を含んでもよい。
【0048】
つまり、前記繊維成分及び前記脂質プラークを識別した後、線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷をそれぞれ算出し、この後、線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて前記冠動脈プラークの状態を確定する。
【0049】
さらに具体的に言えば、前記ステップS32は、
前記脂質負荷及び前記線維性被膜の厚みに基づいて、下式によって脂質被膜比(LCR)を算出するステップS321と、
LCR=脂質負荷/線維性被膜の厚み
前記脂質被膜比に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS322と、を含んでもよい。
【0050】
つまり、LCR指数を導入することにより、冠動脈プラークの状態を評価する。
【0051】
なお、ここで、脂質負荷、線維性被膜の厚みに用いられる単位が異なることによって、LCR数値も相応的に変化することになり、これに応じて、第1閾値も変化することになる。例えば、脂質負荷についてパーセント表示にし、かつ、線維性被膜の厚みについてμm単位とする場合、大量の実験結果に基づき、分析によって、脂質被膜比が0.33以上であると、安定性がさらに悪いと発見し、したがって、前記脂質被膜比が0.33以上である場合、冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断するように設定してもよい。
【0052】
また、前記ステップS322では、前記脂質被膜比のほか、さらに、血流予備量比と結びつけて冠動脈プラークの状態を評価してもよい。
【0053】
本発明の評価方法は光干渉断層画像に基づいて行われた分析であることを考慮し、好ましくは、前記血流予備量比は光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比であり、つまり、前記血流予備量比は、光干渉断層スキャナーに基づいて血流速度を確定し、及び光干渉断層画像に基づいて腔内構造を取得し、これらに基づいて算出して得られたものである。これにより、一回の走査で、光干渉断層画像及び血流予備量比を得ることができ、効率がさらに高い。
【0054】
脂質被膜比と血流予備量比とを合わせて冠動脈プラークの安定性状態を評価する場合、大量の実験結果から、前記脂質被膜比が第1閾値(例えば、上記の場合には、第1閾値を0.33とする)以上であり、かつ、前記血流予備量比が第2閾値(大量の実験分析から明らかに、例えば、0.84としてもよい)以下である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断することができる。
【0055】
これにより、上記LCR指数という形態学的指数と血流予備量比という生理学的指数を合わせて総合的に考慮すると、感度、陽性予測値及び陰性予測値を効果的に高め、より良い評価効果を取得することができる。
【0056】
上記のように、本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価方法によれば、評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像に基づいて、その中の繊維成分及び脂質プラークを識別して、脂質の大きさ及び繊維成分に基づいて前記冠動脈プラークの安定性状態を総合的に評価するので、その精度はさらに高くなる。
【0057】
1つの好ましい実施例として、例えば、
前記ステップS1では、目標フレームの前記光干渉断層画像に対し、それぞれ該フレーム画像の前、及び該フレーム画像の後の若干のフレームの連続画像を取得し、
前記ステップS31では、連続した複数のフレームの前記光干渉断層画像の前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び脂質負荷をそれぞれ算出して、複数のフレームの前記光干渉断層画像の線維性被膜の厚みの中央値及び脂質負荷の平均値を確定し、
前記ステップS321では、脂質負荷の平均値及び前記線維性被膜の厚みの中央値で、前記脂質被膜比を算出し、
ステップS322では、プラーク全体で算出して得られた最大脂質被膜比を該冠動脈プラークの脂質被膜比として、該冠動脈プラークの状態を評価する。
【0058】
つまり、連続した複数のフレームの光干渉断層画像を合わせてプラークの安定性状態を評価することで、シングルフレーム画像の識別誤差による影響を減らすことができる。
【0059】
図2は本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価装置10を示している。
【0060】
図2に示すように、本発明の実施例に係る冠動脈プラークの状態の評価装置10は、画像取得モジュール100と、識別モジュール200と、評価モジュール300とを備える。
【0061】
その中で、画像取得モジュール100は、評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するためのものである。例えば、画像取得モジュール100は、光干渉断層スキャナーを接続するインターフェースであって、光干渉断層スキャナーの走査によって得られた光干渉断層画像を受信するものである。
【0062】
識別モジュール200は、若干の前記光干渉断層画像に基づいて、繊維成分及び脂質プラークを識別するためのものである。識別モジュール200は、例えば、深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて形成されたプラーク識別モデルであってもよい。
【0063】
評価モジュール300は、前記繊維成分及び脂質プラークに基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するためのものである。
【0064】
その中で、評価モジュール300は、
前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び前記脂質プラークの脂質負荷をそれぞれ算出するための算出サブモジュールと、
前記線維性被膜の厚み及び前記脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を確定するための確定サブモジュールと、を備えてもよい。
【0065】
さらに、前記確定サブモジュールは、
前記脂質負荷及び前記線維性被膜の厚みに基づいて、下式によって脂質被膜比(LCR)を算出し、
LCR=脂質負荷/線維性被膜の厚み
前記脂質被膜比に基づいて、冠動脈プラークの状態を評価するのに用いられる。
【0066】
さらに、画像取得モジュール100は、目標フレームの前記光干渉断層画像に対し、該フレーム画像の前、及び該フレーム画像の後の若干のフレームの連続画像をそれぞれ取得するためのものであり、
この後、評価モジュール300中の算出サブモジュールは、連続した複数のフレームの前記光干渉断層画像の前記繊維成分の線維性被膜の厚み及び脂質プラークの脂質負荷をそれぞれ算出して、複数のフレームの前記光干渉断層画像の線維性被膜の厚みの中央値及び脂質負荷の平均値を確定し、
次に、評価モジュール300中の確定サブモジュールは、脂質負荷の平均値及び前記線維性被膜の厚みの中央値で、前記脂質被膜比を算出し、プラーク全体で算出して得られた最大脂質被膜比を該冠動脈プラークの脂質被膜比として、冠動脈プラークの状態を評価する。
【0067】
評価標準としては、例えば、確定サブモジュールは、前記脂質被膜比が第1閾値以上である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断する。
【0068】
また、確定サブモジュールは前記脂質被膜比のほか、さらに血流予備量比と結びつけて前記冠動脈プラークの状態を評価してもよい。これにより、信頼性がさらに高い評価結果を得ることができる。
【0069】
具体的に、前記血流予備量比は、例えば、光干渉断層映像に基づいて得られた血流予備量比であってもよく、前記確定サブモジュールは、前記脂質被膜比が第1閾値以上であり、かつ、前記血流予備量比が第2閾値以下である場合、前記冠動脈プラークが不安定なプラークであると判断する。
【0070】
さらに、識別モジュール200は、プラーク識別モデルにより前記光干渉断層画像を識別しても良い、その中で、前記プラーク識別モデルは、深層学習により、サンプルトレーニングに基づいて得られる。
【0071】
また、本発明は電子機器1400をさらに提供する。
【0072】
図3に示すように、本発明の実施例は、プロセッサ1401、及びコンピュータプログラム命令が記憶されたメモリ1402を備えた電子機器1400を提供し、その中で、前記コンピュータプログラム命令が前記プロセッサにより実行される場合、前記プロセッサ1401は、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行する。
【0073】
具体的に適用する際に、本発明の電子機器1400は、光干渉断層スキャナーに接続され、電子機器1400のプロセッサが光干渉断層スキャナーの走査によって得られた光干渉断層画像を受信して、光干渉断層画像を識別し、識別結果に基づいて、プラークの安定性状態を評価する。
【0074】
さらに、
図3に示すように、電子機器は、ネットワークインターフェース1403、入力装置1404、ハードディスク1405、及び表示装置1406をさらに備える。
【0075】
上記各インターフェースとデバイスとの間はバスアーキテクチャを介して相互接続してもよい。バスアーキテクチャは、任意数の相互接続したバスとブリッジを含んでもよい。具体的に、プロセッサ1401で表される1つまたは複数の中央プロセッサ(CPU)、及びメモリ1402で表される1つまたは複数のメモリの各種の回路が一緒に接続される。バスアーキテクチャは、さらに、周辺機器、レギュレータ及びパワーマネジメント回路等のような各種のその他の回路を一緒に接続してもよい。なお、バスアーキテクチャは、これらのアセンブリ間の接続通信を実現するためのものである。バスアーキテクチャは、データバスに加えて、電源バス、制御バス及び状態信号バスをさらに含み、これらのいずれも当分野に公知されているものであり、したがって、本文では、それに対して詳細に記述しない。
【0076】
前記ネットワークインターフェース1403は、ネットワーク(例えば、インターネット、ローカル・エリア・ネットワーク等)に接続されてもよい、ネットワークから関連データを取得して、ハードディスク1405に保存してもよい。
【0077】
前記入力装置1404は、操作員が入力した各種の命令を受信して、プロセッサ1401に送信して実行に供してもよい。前記入力装置1404は、キーボードまたはポインティングデバイス(例えば、マウス、トラックボール(trackball)、タッチパッドまたはタッチパネル等を含んでもよい。
【0078】
前記表示装置1406は、プロセッサ1401が命令を実行して得られた結果を表示することができる。
【0079】
前記メモリ1402は、オペレーティングシステムの実行に必要なプログラムやデータ、及びプロセッサ1401が算出する過程における中間結果等のデータを記憶するためのものである。
【0080】
なお、本発明の実施例中のメモリ1402は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよく、或いは揮発性と不揮発性メモリの両者を含んでもよい。その中で、不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)又はフラッシュメモリであってもよい。揮発性メモリは、外部高速バッファメモリとして用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)であってもよい。本文に記載の装置と方法のメモリ1402は、これら及び任意その他の適切な類型のメモリを含むが、これらに限らないことを意図する。
【0081】
幾つかの実施形態では、メモリ1402には、次のような要素として、実行可能なモジュールまたはデータ構造、或いはそれらのサブセット、若しくはそれらの拡張セット、オペレーティングシステム14021及びアプリケーションプログラム14014が記憶されている。
【0082】
その中で、オペレーティングシステム14021は、各種のベース業務を実現し、及びハードウエアに基づくタスクを処理するための各種のシステムプログラム、例えば、フレームワーク層、コアライブラリ層、ドライブ層等を含む。アプリケーションプログラム14014は、各種のアプリケーション業務を実現するための各種アプリケーションプログラム、例えば、ブラウザ(Browser)等を含む。本発明の実施例の方法を実現するプログラムは、アプリケーションプログラム14014に含まれてもよい。
【0083】
本発明の上記実施例に開示された方法は、プロセッサ1401に用いられてもよいし、またはプロセッサ1401で実現されてもよい。プロセッサ1401は、集積回路チップであって、信号を処理する能力を有し得る。実現する過程において、上記方法の各ステップは、プロセッサ1401におけるハードウエアの集積論理回路またはソフトウエア形式の命令により成し遂げられてもよい。上記のプロセッサ1401は、汎用のプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、既製のプログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはその他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲートまたはトランジスタ論理デバイス、ディスクリートハードウエアコンポーネントであってもよく、本発明の実施例に開示された各方法、ステップ及び論理ブロック図を実現または実行することができる。汎用のプロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいし、又は該プロセッサは、如何なる通常のプロセッサ等であってもよい。本発明の実施例に開示された方法に合わせたステップは、ハードウエアデコーダプロセッサで実行されるもの、またはデコーダプロセッサ中のハードウエア及びソフトウエアモジュールの組み合わせで実行されるものとして直接的かつ具体的に体現されても良い。ソフトウエアモジュールは、ランダムメモリ、フラッシュメモリ、読み出し専用メモリ、プログラマブル読み出し専用メモリまたは電気的に消去可能なプログラマブルメモリ、レジスター等の本分野で確立されている記憶媒体に存在してもよい。該記憶媒体がメモリ1402内にあり、プロセッサ1401はメモリ1402中の情報を読み取り、そのハードウエアと合わせて上記方法のステップを成し遂げる。
【0084】
なお、本文に記載のこれらの実施例は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、ミドルウエア、マイクロコードまたはその組み合わせで実現されても良い。ハードウエアの実現について、処理ユニットは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、現場プログラマブルゲートアレイ(FPGA)、汎用プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本願に記載された機能を実行するためのその他の電子ユニット又はそれらの組み合わせにおいて実現されてもよい。
【0085】
ソフトウエアの実現について、本文に記載された機能を実行するモジュール(例えば、プロセス、関数等) により本文に記載の技術を実現してもよい。ソフトウエアコードは、メモリに記憶されてプロセッサにより実行されてもよい。メモリは、プロセッサにて又はプロセッサの外部で実現されてもよい。
具体的に、プロセッサ1401は、さらに前記コンピュータプログラムを読み取り、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を取得するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行するのに用いられる。
また、本発明の実施例は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合、前記プロセッサが、
評価待ちの冠動脈プラークの光干渉断層画像を提供するステップS1と、
前記光干渉断層画像を識別し、繊維成分及び脂質プラークを確定するステップS2と、
前記繊維成分及び前記脂質プラークの脂質負荷に基づいて、前記冠動脈プラークの状態を評価するステップS3と、を実行する。
【0086】
なお、本願に提供される幾つの実施例では、開示された方法と装置は、その他の方式で実現されても良いことが理解されるべきである。例えば、上記の装置実施例はただ例示的なものだけであり、例えば、前記ユニットの区分は、ただ1つの論理機能の区分だけであり、実際に実現する際に、別の区分方式があってもよい、例えば、複数のユニット又はモジュールは、別のシステムと結びつけてもよく、又は別のシステムに集積されてもよく、或いは幾つかの特徴を無視してもよく、若しくは実行しなくてもよい。また、表示又は討論される相互間のカップリング又は直接的カップリング或いは通信接続は、幾つかのインターフェースを介して実現されても良く、装置又はユニットの間接的カップリング又は通信接続は、電気的、機械的又はその他の形式であってもよい。
【0087】
また、本発明の各実施例における各機能ユニットは、1つの処理ユニットに集積されてもよいし、各ユニットが、個別に物理的に含まれていてもよいし、2つ以上のユニットが1つのユニットに集積されてもよい。上記の集積したユニットは、ハードウエアの形式で実現されてもよく、ハードウエア+ソフトウエアの機能ユニットの形式で実現されてもよい。
【0088】
上記のソフトウエア機能ユニットの形式で実現された集積したユニットは、1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよい。上記のソフトウエア機能ユニットは、1つの記憶媒体に記憶され、1台のコンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバー、またはネットワークデバイス等であってもよい)に本発明の各実施例に記載の送受信方法の一部のステップを実行させるためのいくつかの命令を含む。前記の記憶媒体は、USBディスク、リムーバブルディスク、読み出し専用メモリ(Read Only Memory、ROMと略称)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMと略称)、磁気ディスクまたは光ディスク等の各種のプログラムコードを記憶可能な媒体を含む。
【0089】
以下、プラークの概略図を参照しながら本発明に係る冠動脈プラークの状態の評価方法についてさらに説明する。
【0090】
【0091】
その中で、aとbは、それぞれ脂質角度<180°であり、かつ、線維性被膜の厚みが65μmより大きい場合(いずれも90μmである)を示しており、つまり、従来のOCTイメージング技術によれば、この2つのパターンはいずれも安定プラークであると判断される。
【0092】
しかし、観察を経て、bに示されるプラークには、その脂質が明らかにaに示されるプラークよりも大きいことを発見した。つまり、aとbに示されるプラークの安定性には顕著な差異が存在する。
【0093】
この2つのプラークについて、本発明が提出したLCR指数によれば、a図のプラークのLCR=20/90=0.222であり、b図のプラークのLCR=35/90=0.389である。
【0094】
これで分かるように、LCR指数は、より正確で定量的に脆弱性を記述することができる。
【0095】
また、cとdは従来のOCTイメージング技術に基づいて、それぞれ不安定、安定のプラークであると判断したことを示している。
【0096】
しかし、観察を経て、d図のプラークの脂質が占める割合がさらに大きいことを発見した。計算を経て、c図のプラークのLCR=15/60=0.25であり、d図のプラークのLCR=35/90=0.389であることを発見し、つまり、d図のプラークLCRがc図のプラークのLCRよりも明らかに大きい。c図のプラークに比べて、d図のプラークがさらに不安定である。
【0097】
つまり、本発明の評価方法に提出されたLCR指数に基づいて得られた判断結果は、より直観的であるだけでなく、脂質の大きさへの軽視による判断ミスという問題を克服することもできる。
【0098】
以下、具体的な実施例を合わせて本発明に係る冠動脈プラークの状態の評価方法をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
【0099】
まず、評価待ちの冠動脈プラークの若干のフレーム光干渉断層画像を取得する。
図5における(a)は、5つのフレームの光干渉断層画像を示している。それぞれ目標フレームのオリジナルの図及び接近前1、接近前2、接近後1、接近後2のオリジナルの図である。
【0100】
次に、該5つのフレームのオリジナルの図について、識別モデルにより識別を行い、識別結果は
図5における(b)に示される。
【0101】
識別された後、その中の繊維成分、脂質プラークを確定した。
【0102】
次に、識別した図中の繊維成分、脂質プラークに基づいて、各フレーム図中の線維性被膜の厚み及び脂質負荷をそれぞれ算出する。
【0103】
該5つのフレーム画像における脂質負荷の平均値、及び線維性被膜の厚みの中央値を取り、目標フレームのLCRを算出する。
【0104】
【0105】
表1から分かるように、該5つのフレーム画像の脂質負荷のパーセント平均値は34.3であり、かつ、線維性被膜の厚みの中央値は86であり、よって、目標フレームLCR=34.3/86=0.40となる。
【0106】
さらに、2年間フォローアップを行った臨床症例の計604例について、LCR指数評価、LCRと血流予備量比を合わせた評価、及び従来のOCTイメージング技術に基づく二分法評価をそれぞれ行った結果は、表2に示される。
【0107】
【0108】
表2から分かるように、本発明が提供したLCR指数評価法によれば、より良く、定量的にプラークの安定性を評価することができ、かつ、LCR指数と血流予備量比を合せた評価の場合には、LCR指数という形態学的指数と血流予備量比という生理学的指数を総合的に考慮することにより、感度、陽性予測値及び陰性予測値を効果的に高めることができ、より良い評価の効果を奏する。
【0109】
以上は本発明の好ましい実施形態であり、なお、当業者にとって、本発明に記載の原理から逸脱しない前提下で、さらに若干の改良や潤色が行われてもよい。これらの改良や潤色も本発明の保護範囲だと見なされるべきである。
【国際調査報告】