(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】シリル化多糖類からのシリコーンエラストマー
(51)【国際特許分類】
A61K 8/895 20060101AFI20240319BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240319BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240319BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240319BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240319BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240319BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240319BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61K8/895
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/891
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/60
A61K8/31
C08G81/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557242
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022017667
(87)【国際公開番号】W WO2022203801
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトナー、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】マンゴールド、シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンズリック、ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】クルトマンシュ、マルク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ハラー、ロクサーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェリット、マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】カルドエン、グレゴワール
【テーマコード(参考)】
4C083
4J031
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD191
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD251
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE07
4J031AA03
4J031AA59
4J031AB06
4J031AC13
4J031AD01
4J031AE15
4J031AF03
(57)【要約】
組成物は、多糖類成分とポリシロキサン成分との間に2つ以上の炭素-酸素-ケイ素連結を含む架橋ポリシロキサンエラストマーを含み、多糖類成分は、セルロース又はデンプン成分以外のものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類成分とポリシロキサン成分との間に2つ以上の炭素-酸素-ケイ素連結を含む架橋ポリシロキサンエラストマーを含む組成物であって、前記多糖類成分が、セルロース又はデンプン成分以外のものである、組成物。
【請求項2】
前記多糖類成分が、フルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース又はグルコースが連結された単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結は、アルファ連結である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖類成分が、-OSiR
3基、-CH
2OSiR
3基、-OH及び-CH
2OHからなる群から選択される、前記ポリシロキサンへの連結以外のペンダント基のみを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多糖類成分が、ベータ-シクロデキストリン、マルトデキストリン、プルラン、デキストラン、トレハロース、イヌリン、及びアガロースからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各多糖類成分が、平均して2~2000の連結された単糖類単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記架橋ポリシロキサンエラストマーと溶媒とを含むゲルであり、前記溶媒が、前記架橋ポリシロキサンエラストマーを膨潤させている、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶媒が、イソドデカン、ファルネサン、ウンデカン、n-ドデカン、及びトリデカンから選択される1つ以上の溶媒である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を調製するための方法であって、
a.1分子当たり平均して少なくとも2つのSiH官能基を有するSiH官能性ポリオルガノシロキサンと、
b.アルケニル官能性多糖類であって、
i.連結されたフルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース、又はグルコース単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結は、アルファ連結であり、
ii.前記アルケニル官能性多糖類上のヒドロキシル基の平均して1~100モルパーセントが、C-O-Si結合を介して前記多糖類に連結された構造-SiR
3(式中、各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルから選択され、但し、多糖類1つ当たり平均して少なくとも2.0個のR基が、末端アルケニル基を有する)を有するシリル基でシリル化されていて、
iii.前記アルケニル官能性多糖類が、シリル化デンプン以外のものである、ことを特徴とする、アルケニル官能性多糖類と、
c.任意選択で、追加の架橋添加剤と、
を含む反応物間のヒドロシリル化付加反応によって架橋ポリシロキサンエラストマーを形成することを含み、前記反応が、
d.白金系ヒドロシリル化触媒と、
e.溶媒と、の存在下で行われる、
方法。
【請求項9】
前記アルケニル官能性多糖類が、シリル化ベータ-シクロデキストリン、シリル化マルトデキストリン、シリル化プルラン、シリル化デキストラン、シリル化トレハロース、シリル化イヌリン、及びシリル化アガロースからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒の濃度が、SiH官能性ポリシロキサン、アルケニル官能性ポリシロキサン及び有機溶媒の合計重量の30重量%以上かつ85重量%以下である、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンエラストマー、シリコーンエラストマーを含むゲル、及びシリコーンエラストマーを含むゲルから作製されるペーストに関する。
【0002】
序論
ポリシロキサンエラストマー材料は、特にエラストマーと分散媒(carrier fluid)との混合物に対する皮膚系化粧品に関して手触り及び肌触りの領域において化粧品に望ましい感覚特性を付与しながら、分散媒を増粘させるために、化粧品産業で望ましいものである。ポリシロキサンエラストマーは、多くの化粧品において望ましい滑らかで乾燥したきめ細かな感触を付与することができる一方で、分散媒を増粘することもできる架橋ゲル材料である。バイオ再生可能及び/又はバイオ由来の材料は、化粧品産業における使用を含む多くの使用に望ましい。ポリシロキサンエラストマーに関連する増粘及び感覚的な態様を依然として達成しながら、ポリシロキサン系エラストマー材料にバイオ再生可能及び/又はバイオ由来の態様を組み合わせることは、ポリシロキサンエラストマーの分野、特に化粧品における使用のためのポリシロキサンエラストマーの分野を進歩させる1つの方法である。
【0003】
更に、ポリシロキサン系エラストマーは、炭素-酸素-炭素(C-O-C)結合連結ではなく炭素-酸素-ケイ素(C-O-Si)結合連結を介してポリシロキサン成分に連結されたバイオ再生可能及び/又はバイオ由来の成分を含むことが望ましい。C-O-Si連結は、C-O-C連結よりも加水分解安定性が低く、それにより、C-O-Si連結を有する分子は、より分解性で、環境に優しいものになる。加えて、C-O-C結合連結を有するアルコキシル化材料は、微量レベルの1,4-ジオキサンを含むことがあり、これは特に化粧品材料において望ましくない夾雑物質である。
【0004】
化粧品は皮膚に適用されるが、皮膚は、水分に曝されること、更に手洗いなどの洗浄に曝されることが多い。すすぎ又は洗浄に曝されても皮膚などの表面上に残留する傾向がより大きくなるように、耐洗浄性(耐久性)である望ましい感覚特性を有するペーストに加工することができる有機溶媒を有するエラストマーゲルを特定することが望ましい。
【0005】
ポリシロキサン系エラストマーは、様々な異なる有機溶媒分散媒との配合物において増粘剤(ゲル化剤)としてエラストマーを使用することを可能にするために、様々な有機溶媒中で高度に適合性であることが望ましい。エラストマーは、溶媒単独よりも粘性が高い溶媒と共にゲルを形成することができる場合、有機溶媒と適合性である。更に、エラストマー及び溶媒のゲルは、均一な混合物を形成することによって溶媒と適合性であり、好ましくは可視光に対して半透明又は更に透明であり、相分離に対して安定であるペーストを形成することができることが望ましい。
【0006】
更に、ヒドロシリル化反応を使用するが、反応生成物の黄変又は着色なしでポリシロキサンエラストマーを調製する方法を特定することが望ましい。ヒドロシリル化反応は、典型的には、白金系触媒を使用する。白金系触媒により、多くの場合、反応生成物が黄色になる。特に化粧品用途において、その黄変色を回避することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、分散媒とエラストマーとの混合物に望ましい滑らかで乾燥したきめ細かな感触を付与しながら、分散媒を増粘するポリシロキサン系エラストマーを提供する。ポリシロキサン系エラストマーは、バイオ再生可能な成分及び/又はバイオ由来の成分である多糖類成分を含む。更に、本発明のポリシロキサン系エラストマーは、C-O-Si連結を介して多糖類成分をポリシロキサン成分に接続する。特に、多糖類成分は、少なくとも2つのC-O-Si連結を介してポリシロキサン成分に接続しており、ポリシロキサン成分は、ポリシロキサン系エラストマー中の架橋成分として機能する。なお更に、本発明は、ポリシロキサン系エラストマーであって、様々な有機溶媒をゲル化し、配合され他のポリシロキサンエラストマーよりも優れた耐洗浄性(耐久性)を有するペーストにすることができる、ポリシロキサン系エラストマーを提供する。本発明のポリシロキサン系エラストマーは、分散媒よりも粘性が高い有機溶媒分散媒との混合物を形成するという点で、また、均一で可視光に対して半透明又は透明であり、相分離に対して安定であるペーストに形成することができるという点で、様々な有機溶媒との適合性が高い傾向がある。ポリシロキサン系エラストマーは、ヒドロシリル化反応によって作製され、これは驚くべきことに、軽微な黄変(APHA着色スケールで、300未満、更には100未満)を示すことができる。
【0008】
本発明は、部分的には、C-O-Si連結を介して多糖類に結合したアルケニル官能基を有する多糖類中間体を調製する方法を発見した結果である。このアルケニル官能性多糖類は、SiH官能性ポリシロキサンと反応して、前述の所望の特性を有するポリシロキサンエラストマーゲルを提供することが見出された。
【0009】
第1の態様において、本発明は、多糖類成分とポリシロキサン成分との間に2つ以上の炭素-酸素-ケイ素連結を含む架橋ポリシロキサンエラストマーを含む組成物であって、多糖類成分が、セルロース又はデンプン成分以外のものである、組成物である。
【0010】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の組成物を調製するための方法であって、(a)SiH官能性ポリオルガノシロキサンと、(b)アルケニル官能性多糖類であって、(i)連結したフルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース、又はグルコース単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結がアルファ連結であり、(ii)アルケニル官能性多糖類上のヒドロキシル基の平均1~100モルパーセントが、C-O-Si結合を介して多糖類に連結された構造-SiR3(式中、各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルから選択され、但し、多糖類1つ当たり平均少なくとも2.0個のR基が末端アルケニル基である)を有するシリル基でシリル化されており、(iii)アルケニル官能性多糖類が、シリル化デンプン以外のものである、ことを特徴とする、アルケニル官能性多糖類と、任意選択で、(c)追加の架橋添加剤と、を含む反応物間のヒドロシリル化付加反応によって架橋ポリシロキサンエラストマーを形成することを含み、その反応は、(d)白金系ヒドロシリル化触媒と、(e)溶媒と、の存在下で行われる、方法である。
【0011】
本発明のエラストマーは、化粧品に所望の感覚特性を達成するための、特に、滑らかで、乾燥した、きめ細かな感触を達成するための化粧品用添加剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENDは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0013】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0014】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0015】
「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を指し、アルキル基及びアリール基を含む。
【0016】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導可能な炭化水素基を指す。アルキルは、直鎖状又は分岐状であり得る。
【0017】
「アリール」は、芳香族炭化水素から水素原子を除去することにより形成可能な基を指す。
【0018】
「多糖類」とは、互いに共有結合している2つ以上の単糖類単位を含む分子を指す。「多糖類」とは、「二糖類」及び「オリゴ糖類」と称されることもあるものを含む。「二糖類」とは、互いに共有結合している2つの単糖類単位を含む分子である。「オリゴ糖類」は、環状鎖であり得る鎖に共有結合した3~10個の単糖類単位を含む分子である。
【0019】
多糖類に関して、「ペンダント基」とは、多糖類骨格から、具体的には多糖類骨格のピラノース又はフラノース環上の炭素原子から延在する水素以外の基を指す。多糖類中の隣接する単糖類群は、「ペンダント基」とはみなされず、むしろ多糖類骨格の一部とみなされる。
【0020】
「デンプン」とは、アミロース及びアミロペクチンとの組み合わせを指す。
【0021】
「APHA」とは、米国公衆衛生協会(American Public Health Association)を指す。
【0022】
「末端アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合(C=C)を有するアルケンから誘導可能な一価の脂肪族炭化水素ラジカルを指し、C=Cの炭素原子は、末端炭素であり、一価の脂肪族炭化水素ラジカルは、C=Cにおける末端炭素原子以外の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導可能である。
【0023】
本発明は、多糖類成分とポリシロキサン成分との間に2つ以上の炭素-酸素-ケイ素(C-O-Si)連結を含む架橋ポリシロキサンエラストマーを含む組成物である。エラストマーは、弾性特性を有する架橋ポリマーであり、これは、エラストマーが、剛性材料であるほどに強く架橋されていないが、溶媒に不溶性であるほどに十分に架橋されていることを意味している。実際、エラストマーは、溶媒中に溶解する代わりに、溶媒で膨潤してゲルを形成する。すなわち、本発明のエラストマーの特徴のうちの1つは、摂氏25度(℃)で非流動性ゲルであるポイントまで溶媒を増粘することができ、一方で、加工して(例えば、溶媒中でゲル化させ、次いで剪断混合に供して)、得られた増粘した材料の滑らかで乾燥したきめ細かな感触などの望ましい感覚的態様を有するペーストを形成することもでき、それは、そのような望ましい感覚特性を達成するために使用される現在のポリシロキサン添加剤に匹敵するというものである。
【0024】
架橋ポリシロキサンエラストマーは、C-O-Si連結を介してポリシロキサンセグメントと相互接続する多糖類系架橋剤を含む。C-O-Si連結の炭素は、望ましくは多糖類のヘキソースの炭素である。典型的には、C-O-Si連結のケイ素原子は、二価ヒドロカルビルを介してポリシロキサンのケイ素原子に更に連結され、二価ヒドロカルビルは、2個以上を有し、3個以上、4個以上、5個以上、更には6個以上の炭素原子を有することができ、同時に典型的には12個以下、通常は10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、更には3個以下の炭素原子を有する。例えば、二価ヒドロカルビルは、一般化学式-(CH2)n-(式中、nは、二価ヒドロカルビル中の炭素原子の数である)を有する直鎖であることができる。本発明の架橋ポリシロキサンのための一般的な二価ヒドロカルビルは、2個の炭素原子を有する。C-O-Si連結、及びC-O-SiのSiとポリシロキサン成分との間の二価ヒドロカルビル連結は、本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーが作製される固有の方法の特徴的な特徴である。特に、架橋ポリシロキサンエラストマーは、SiH官能性ポリシロキサンと、2つ以上のC-O-SiR3基(式中、各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルから選択され、但し、多糖類1つ当たり平均して少なくとも1つのRは、末端不飽和炭素-炭素二重結合を有する)を有する多糖類中間物との間のヒドロシリル化反応によって作製される。好ましくは、また典型的には、C-O-SiR3基の炭素は、多糖類のヘキソースの炭素である。ヒドロシリル化反応は、C-O-SiR3基の末端不飽和炭素-炭素二重結合(C=C)と、ポリシロキサンのSiH基との間の反応を伴い、C-O-Si連結とポリシロキサンとを連結する二価炭素として機能するC=Cを含む残留R基をもたらす。特に、単糖類とシロキサンとの間の連結は、エーテル、エステル、ウレタン及び尿素から選択される2つ以上の官能基のうちの任意の1つ又は任意の組み合わせを含んでいない場合がある。
【0025】
架橋ポリシロキサンエラストマーの多糖類は、セルロース成分又はデンプン成分以外のものである。本発明のエラストマーを作製するために使用される多糖類中間物は、単糖類成分がセルロース又はデンプンである場合、非極性芳香族溶媒に可溶性ではないことが発見された。非極性芳香族溶媒中での不溶性により、多糖類中間物の汎用性は低下し、架橋ポリシロキサンエラストマーを作製するために使用できる溶媒が制限される。
【0026】
望ましくは、架橋ポリシロキサンエラストマーの多糖類成分は、フルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース、又はグルコースが連結された単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結はアルファ連結である。架橋ポリシロキサンエラストマーの多糖類成分は、望ましくは、-OSiR3基、-CH2OSiR3基、-OH及び-CH2OHからなる群から選択される、ポリシロキサンへの連結以外のペンダント基のみを有する。典型的には、多糖類成分は、平均で2~2000の連結された単糖類単位を含む。多糖類は、1分子当たり2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、40以上、60以上、80以上、更には100以上、又は200以上の単糖類単位を含むことができ、それと同時に典型的には、2000以下、1800以下、1600以下、1400以下、1200以下、1000以下、800以下、600以下、400以下、200以下、100以下、80以下、60以下、40以下、20以下、更には10以下の単糖類単位を含むことができる。架橋ポリシロキサンエラストマーを作製するために使用される多糖類出発原料からの多糖類成分中の1分子当たりの単糖類単位の平均数を決定する。架橋ポリシロキサンエラストマーを作製するために使用される多糖類中の単糖類単位の数は、供給業者から、特定の多糖類が単糖類単位を含有する数に関する当技術分野における一般的知識から、又はこれらのいずれも可能でない場合は、標準的な技法を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって、決定することができる。
【0027】
架橋ポリシロキサンエラストマーのポリシロキサン成分は、多糖類基を介して架橋されている。架橋の程度は、溶媒の存在下でゲル化を達成するのに十分である必要がある。ポリシロキサン成分は、直鎖状、分岐状、又は環状であることができる。概して、ポリシロキサン成分は、R3SiO1/2(「M」型単位)、R2SiO2/2(「D」型単位)、RSiO3/2(「T」型単位)及びSiO4/2(「Q」型単位)から選択されるポリシロキサン単位の1つ又は任意の組み合わせを含み、式中、各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル及び置換ヒドロカルビル基から選択され、単位中に列挙された酸素原子は、2つの異なるシロキサン単位のケイ素原子に結合した酸素を指し、酸素における下付き文字は、分子中の共有酸素の数を指し、分子を2で除算することによって酸素原子が別のシロキサン単位と共有されることを示す。望ましくは、ポリシロキサン成分は、M型及びD型ポリシロキサン単位を含む直鎖であり、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、75以上、100以上、更に150以上、最も望ましくは200以下の重合度を有し、150以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、更に10以下であることができ、重合度はポリシロキサン中のD型単位の数である。直鎖状ポリシロキサンが、200のDPを超える場合、得られるエラストマーは、ゲルとして弱く柔軟な傾向がある。最も望ましくは、架橋ポリシロキサンエラストマー中のバイオ再生可能な多糖類成分の濃度を最大にするために、DPは20以下、好ましくは15以下、又は更に低い。
【0028】
架橋ポリシロキサンエラストマーは、多糖類、ポリシロキサン及び追加の架橋成分の合計重量に基づいて、典型的には、多糖類成分を、1重量%以上、5重量%以上含み、また10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、更には89又は90重量%以上含有することができ、同時に、典型的には、90重量%以下、89重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、更には5重量%以下含む。
【0029】
架橋ポリシロキサンエラストマーは、多糖類成分以外の架橋成分を含むことができる。追加の架橋成分は、ポリシロキサン鎖間に単糖類単位を含まない架橋を確立する。好適な架橋成分の例としては、ビニルシロキサン、ヘキセニルシロキサン、アリルポリエーテル、メタリルポリエーテル、及び二末端オレフィン(すなわち、2つの末端に炭素-炭素二重結合を有するオレフィン)の残留物(すなわち、架橋剤のアルケニル基がポリシロキサン上のSiH基と反応して結合を形成した後に残る成分)が挙げられる。追加の架橋成分は、架橋ポリシロキサンエラストマー中の架橋結合の0モル%以上、任意選択で5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、更には85モル%以上を占めることができ、同時に、典型的には90モル%以下、85モル%以下、80モル%以上、75モル%以上、70モル%以上、65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、又は更に1モル%以下を占めることができる。
【0030】
本発明の組成物は、ゲルを形成するように架橋ポリシロキサンエラストマーを膨潤させる分散媒と呼ばれることもある溶媒を更に含むことができ、典型的には含む。「ゲル」は、均一であり、定常状態にあるときに流動を示さない希釈架橋系である。「均一」とは、組み合わせたものが互いに相分離しないことを意味する。「流動を示さない」とは、以下の実施例の項に記載されるように、バイアル中で逆さにした場合に、組み合わせたものが流れないことを意味する。架橋ポリシロキサンエラストマーは、溶媒の粘度を上昇させることによって溶媒の増粘剤として作用する。溶媒は、例えば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコール、及びシロキサン流体からなる群から選択される流体の任意の1つ又は任意の組み合わせであることができる。好適な炭化水素流体の例としては、ファルネサン、スクアラン、イソヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン及びイソドデカンが挙げられる。好適なエーテル流体の例としては、BASFからCETIOL(商標)OEの名称で販売されている材料(CETIOLはCognis IP Management GMBHの商標である)、エチル3-(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロパノエート、エチルグリセリンアセタールレブリネート、エチルフェネチルアセタール、及びイソプロピリデングリセリルココエートが挙げられる。好適なエステル流体の例としては、イソデシルネオペンタノエート、イソステアリルネオペンタノエート、イソノニルイソノナノエート、エチルアセテート、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、トリヘプタノイン、トリイソステアリン、ジイソプロピルアセテ-ト、ジイソプロピルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジエチルヘキシルアジペート、n-プロピルアセテート、イソブチルアセテ-ト、n-ブチルアセテート、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリカプレート、ジペンタエリトリチルヘキサC5-9酸エステル、C12-15アルキルベンゾエート、トリエチルヘキサノイン、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート、ジヘプチルスクシネート、ヘプチルウンデシレネート、プロピレングリコ-ルジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、エチルヘキシルパルミテート、エチルヘキシルステアレート、イソプロピルラウレート、ヘキシルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、n-ブチルステアレート、プロピレングリコ-ルジカプリレート、プロピレングリコールジカレート、ココカプリレート、ココカプレート、エチルヘキシルココエート、オレイルエルケート、プロピルブチルカプリレート、デシルオレエート、ヘキシルデシルステアレート、及びプロピレングリコールラウレ-トが挙げられる。好適なシロキサン流体の例としては、環状シロキサン、例えば、DOWSIL(商標)244 Fluid(DOWSILはThe Dow Chemical Companyの登録商標である)として入手可能なシクロテトラシロキサン、DOWSIL(商標)245 Fluidとして入手可能なシクロペンタシロキサン、又はDOWSIL(商標)246 Fluidとして入手可能なシクロヘキサシロキサン、直鎖状及び分岐状アルキル及びアリールシロキサン、例えば、DOWSIL(商標)FZ-3196として入手可能なカプリルメチコン、及び直鎖状ジメチルシロキサン、例えば、DOWSIL(商標)200 Fluidsとして入手可能な直鎖状ジメチルシロキサン、及びDOWSIL(商標)556 Fluidとして入手可能なフェニルトリメチコンが挙げられる。
【0031】
溶媒は、イソドデカン(101メガパスカルの圧力で210℃の沸点)、ファルネサン(101メガパスカルの圧力で252℃の沸点)、ウンデカン(101メガパスカルの圧力で195℃の沸点)、n-ドデカン(101メガパスカルの圧力で216℃の沸点)及びトリデカン(101メガパスカルの圧力で234℃の沸点)から選択される「高揮発性」溶媒であることができる。これらの溶媒は、典型的な純粋なシリコーンエラストマーから作製されたペーストよりも高い洗浄耐久性を有するペーストに変えることができるゲルを形成する。
【0032】
ゲル化された架橋ポリシロキサンエラストマー組成物中の溶媒の濃度は、溶媒及び架橋ポリシロキサンエラストマーの合計重量に基づいて、望ましくは25重量%以上、好ましくは30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、更に80重量%以上であり、同時に、典型的には、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下である。
【0033】
溶媒と架橋ポリシロキサンエラストマーとのゲルは、可視光に対して半透明又は透明であることが望ましいが、不透明であることができる。
【0034】
溶媒と架橋ポリシロキサンエラストマーとのゲルは、追加の成分、特に化粧品用途において有用なものを更に含むことができる。例えば、ゲルは、皮膚軟化剤、ワックス、保湿剤、植物油、合成油、ワセリン、植物抽出物、ビタミン、タンパク質、アミノ酸及びそれらの誘導体、充填剤、紫外線吸収剤、日焼け止め剤、ふけ防止剤、制汗剤、防臭剤、皮膚保護剤、毛髪染料、香料、精油、顔料及び着色剤、並びに/又は化粧品において有用な他の活性物質若しくは添加剤から選択される成分の任意の1つ又は2つ以上の成分の組み合わせを含むことができる。追加の成分は、ゲルを作製するヒドロシリル化反応の前、最中又は後に添加することができる。
【0035】
溶媒と架橋ポリシロキサンエラストマーとのゲルは、化粧品用途に望ましい特性を示す。特に、ゲルは、望ましい感覚特性、耐久性、及び溶媒適合性を示す。これらの特性を測定及び評価するための方法は、以下の実施例の項に記載する。結果として、本発明の架橋ポリシロキサンエラストマー、特に本発明の溶媒と架橋ポリシロキサンエラストマーとのゲルは、例えば、クリーム、水溶液、エマルジョン(油中水型又は水中油型)、オイル、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、ミルク、フォーム、スティック及び懸濁液の形態である化粧品用途において有用かつ望ましい。化粧品は、カラー化粧品、顔及びボディケア化粧品、リーブオンヘアケア、及び局所ケア製品などのパーソナルケア用途のためのものであることができる。
【0036】
SiH官能性ポリシロキサンと、アルケニル官能性、好ましくはビニル官能性多糖類と、任意選択で追加の架橋添加剤と、を含む反応物間のヒドロシリル化反応を使用して本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーを調製することが望ましい。SiH官能性ポリシロキサンは、直鎖状又は分岐状であることができる。トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、1分子当たり2個以上のトリアルコキシ官能基を含む。ポリシロキサンのSiH含有量は、ポリシロキサン重量に基づいて、好ましくは0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.08重量%以上、0.10重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、0.25重量%以上、0.30重量%以上、0.35重量%以上、0.40重量%以上、0.45重量%以上、0.50重量%以上、0.55重量%以上、0.60重量%以上、0.65重量%以上、0.70重量%以上、0.75重量%以上、0.85重量%以上、0.90重量%以上、更には0.95重量%以上であり、同時に、典型的には1.5重量%以下、1.25重量%以下、1.0重量%以下であり、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、更には0.3重量%以下、又は0.2重量%以下であることができる。SiHの重量%は、ケイ素結合水素の質量をポリマーの質量で除し、100%を乗じたものを指す。中国特許出願公開第103674889(A)号の方法に従って赤外分光法によってSiH含有量を決定する。
【0037】
SiH官能性ポリシロキサンは、M型、D型、T型及びQ型シロキサン単位の任意の組み合わせを含むことができる。望ましくは、SiH官能性ポリシロキサンは、M型及びD型ポリシロキサン単位を含む直鎖であり、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、75以上、100以上、更に150以上、最も望ましくは200以下の重合度を有し、150以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、更に10以下であることができ、重合度はポリシロキサン中のD型単位の数である。直鎖状ポリシロキサンが200のDPを超える場合、得られる架橋ポリシロキサンエラストマーは、ゲルとして弱く柔軟な傾向がある。最も望ましくは、架橋ポリシロキサンエラストマー中のバイオ再生可能な多糖類成分の濃度を最大にするために、DPは20以下、好ましくは15以下、又は更に低い。
【0038】
多糖類成分は、望ましくは、連結されたフルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース、又はグルコース単糖類単位を含むシリル化多糖類であり、但し、グルコースのグリコシド連結がアルファ連結であり、シリル化多糖類がシリル化デンプン以外のものであり、更に、C-O-Si結合を介して多糖類に連結した構造-SiR3[式中、各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルから独立して選択され、但し、多糖類1つ当たり平均して少なくとも2.0個のR基が末端不和炭素-炭素二重結合(例えば、ビニル基)を有する]を有するシリル基でシリル化された多糖類上に、平均して1モルパーセント(モル%)以上、好ましくは5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、33モルパーセント(モル%)以上、好ましくは35モル%以上、37モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、更には90モル%以上、同時に、100モル%以下のヒドロキシル基を有することを特徴とする。多くの場合、-SiR3基のR構成要素は、メチル基及びビニル基から選択される。望ましくは、シリル化多糖類は、シリル化アルファ-シクロデキストリン、シリル化ベータ-シクロデキストリン、シリル化ガンマ-シクロデキストリン、シリル化マルトデキストリン、シリル化プルラン、シリル化デキストラン、シリル化トレハロース、シリル化イヌリン、及びシリル化アガロースからなる群から選択される。シリル化多糖類は、望ましくは、1分子当たり2~2000個の単糖類単位を含有し、エラストマーの多糖類成分について本明細書で先に教示したように、一緒に結合した単糖類単位の数について任意選択の制限がある。
【0039】
SiH官能性ポリシロキサン及びアルケニル官能性多糖類の量は、望ましくは、多糖類中のSiH基のアルケニル基に対するモル比が、0.7より大きく、好ましくは0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、更には1.4以上であるが、同時に、典型的には1.5以下、好ましくは1.4以下、1.2以下、1.1以下、更には1.0以下であるような量である。反応に使用される成分のモル比から、及び使用される成分に関する各官能基の平均モル量からSiH対アルケニルの比を決定する。SiHのモル濃度は、SiH官能性ポリシロキサンの供給業者から決定することができ、又は供給業者から入手可能できない場合は、中国特許出願公開第103674889(A)号の方法に従って赤外分光法によって決定することができる。アルケニル基のモル濃度は、アルケニル官能性多糖類を作製するために使用される成分から決定することができ、及び/又はアルケニル官能性多糖類の1H NMR分析から決定することができる。
【0040】
ヒドロシリル化反応は、白金系ヒドロシリル化触媒を更に必要とする。白金系ヒドロシリル化触媒としては、化合物及び錯体、例えば、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(カルステット触媒)、H2PtCl6、ジ-μ.-カルボニルジ-.π.-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金アセチルアセトナート(acac)、白金黒、白金化合物、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトナート)、二塩化白金、及び白金化合物とオレフィン若しくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造でマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含む溶液の一部であり得る。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体であり得る。ヒドロシリル化における白金系ヒドロシリル化触媒の濃度は、多糖類成分、ポリシロキサン成分、溶媒及び任意の追加の架橋剤の重量に基づいて、典型的には5重量百万分率(ppm)以上、好ましくは10ppm以上であり、25ppm以上、50ppm以上、更には75ppm以上であり、同時に、典型的には500ppm以下、400ppm以下、300ppm以下、200ppm以下、好ましくは100ppm以下であり、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、更には50ppm以下である。
【0041】
エラストマーを形成するためのヒドロシリル化反応は、追加の架橋添加剤を更に含むことができる。追加の架橋添加剤は、1分子当たり複数のアルケニル官能基を含み、アルケニル官能性多糖類に加えて架橋成分として機能する。追加の架橋添加剤は、要件ではないが、架橋を補うために存在することができる。好適な追加の架橋添加剤の例としては、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ポリ(ジメチル,メチルビニル)シロキサン、ビニル末端ポリ(ジメチル,メチルビニル)シロキサン、ヘキセニル末端ポリジメチルシロキサン、1,5-ヘキサジエン、1,11-ドデカジエン、1,15-ヘキサデカジエン、ビス(メタリル)ポリ(エチレンオキシド)、ビス(アリル)ポリ(エチレンオキシド)、ビス(メタリル)ポリ(プロピレンオキシド)、及びビス(アリル)ポリ(プロピレンオキシド)が挙げられる。
【0042】
存在する場合、追加の架橋添加剤は、アルケニル官能性多糖類及び追加の架橋添加剤によって提供されるアルケニル基の合計モルに対して、0モル%以上、任意選択で5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、更には85モル%以上、同時に、典型的には90モル%以下、85モル%以下、80モル%以上、75モル%以上、70モル%以上、65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、3モル%以下、又は更には1モル%以下のアルケニル基を提供する濃度で存在する。
【0043】
反応は、典型的には、ポリシロキサン及び得られたシリル化多糖類の両方と適合性であり、エラストマーが作製されるにつれてエラストマーをゲルに膨潤させる分散媒になる、溶媒中で行われる。溶媒は、例えば、ゲル化架橋ポリシロキサンエラストマーに含まれる溶媒について先に教示したように、炭化水素、エーテル、エステル、アルコール及びシロキサン流体からなる群から選択することができる。反応混合物中の溶媒の濃度は、溶媒、SiH官能性ポリシロキサン、アルケニル官能性多糖類、及び任意の追加の架橋添加剤の合計重量に基づいて、典型的には25重量%以上、好ましくは30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、更には80重量%以上であり、同時に、典型的には85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下である。
【0044】
溶媒、SiH官能性ポリシロキサン、アルケニル官能性多糖類、任意の追加の架橋剤、及び白金系触媒を一緒に組み合わせ、概ね25℃でそれらを撹拌することによって、ヒドロシリル化反応を行い、反応混合物を形成させる。その反応混合物を、概ね70~90℃の範囲の温度で撹拌しながら加熱する。ゲルが形成されるまで撹拌を続け、撹拌を停止する。典型的には、70℃のオーブンに3時間入れることによって、ゲルを一定時間加熱し、反応を完了させる。本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーを調製するためのヒドロシリル化反応の特定の例は、以下の実施例の項にある。ヒドロシリル化反応は、ヒドロシリル化反応で使用される溶媒でゲルを形成させるために膨潤された本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーを含む架橋ポリシロキサンエラストマーゲルをもたらす。ヒドロシリル化反応により、本発明の架橋ポリシロキサンエラストマー並びに本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーゲルが調製される。架橋ポリシロキサンエラストマーゲルは、可視光に対して透明、又は半透明、又は不透明であることができるが、望ましくは透明である。
【0045】
ヒドロシリル化反応は、シリル化多糖類及び/又は不飽和シロキサン以外の不飽和有機分子の非存在下で行うことができる。
【0046】
架橋ポリシロキサンゲルは、ペーストを形成するために、追加の溶媒及び/又は後硬化クエンチャーを用いて又は用いずに、剪断下で混合することができる。好適な後硬化クエンチャーとしては、ビニル-t-ブチルジメチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、ビニルエチルジメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルテトラメチルジシラン、ビニルペンタメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシリル)シリケート、ビニルシラン、末端直鎖状ビニルシロキサン、ペンダント直鎖状ビニルシロキサン、末端分岐状ビニルシロキサン、ペンダント分岐状ビニルシロキサン、ペンダント及び末端分岐状シロキサン、並びに環状ビニルシロキサンからなる群から選択される任意の1つ又は2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。得られたペーストは、可視光に対して半透明又は透明であることができ、均一であることができ、相分離に対して安定であることができ、以下の実施例の項に記載されるような望ましい感覚特性を有する。
【実施例】
【0047】
表1に、次の項に記載される架橋ポリシロキサンエラストマーを作製するために使用される、アルケニル官能性多糖類を調製するために使用される成分を列挙する。
【表1】
MALTRINは、Grain Processing Corporationの商標である。
【0048】
アルケニル官能性多糖類の調製
表2における配合を使用して、以下の様式で試料を調製する。多糖類が乾燥されたことを示すこれらの試料については、反応の前に、真空中(1.3キロパスカル、10mmHg)、摂氏90度(℃)で24時間、多糖類を乾燥させる。特定量の多糖類、シラザン、触媒、及び溶媒を40ミリリットルのバイアルに添加する。ポリテトラフルオロエチレン撹拌バーを加え、窒素ガスを用いてパージすることによってバイアルを不活性化し、セプタムで封止する。バイアルを加熱ブロック上に置き、撹拌しながら規定の温度まで規定の時間加熱する。次いで、試料を冷却し、真空下(1.3キロパスカル、10mmHg)で24時間乾燥させて、シリル化多糖類試料を得る。
【0049】
プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR)によってヒドロキシルシリル化の程度及びアルケニル置換の程度を決定する。例えば、10ミリグラムの試料を0.6ミリリットルのd6-ベンゼンに溶解し、400MHz Varian NMR分光計において1H NMRによって分析する。5秒の取得時間及び15秒の緩和遅延時間を使用し、16スキャンを収集する。δ7.16ppmの残留ベンゼンに対する最終スペクトルを参照する。スペクトル中の特定のグループの領域は以下のとおりである。不飽和領域(「U」)は、δ5.6~6.5ppmにわたって積分され、いずれかについて記述し、ビニル基(「U」=「A」)の3個のプロトン全て、又は他の末端アルケニル基(3「U」=「A」)の1個のプロトン、単糖類領域(「S」)は、δ3.6~4.6ppmにわたって積分され、メチル領域(「M」)は、δ0.20~0.55ppmにわたって積分される。アノマー炭素水素を除いて、単糖類領域をメタンジイル及びメタントリイル水素に正規化する。
【0050】
関連する計算に従って、以下の試料の属性を決定する。
モルパーセント(%)-OH置換=[(A/3)+(M-2*A)]/[出発単糖類1つ当たりの-OH]*100=C-O-Si結合を介して多糖類に連結された-SiR3でシリル化された多糖類上のヒドロキシル基のモル%
モルパーセント末端アルケニル置換(%アルケニル)=[(A/3)]/[(A/3)+(M-2*A)]*100%
多糖類1つ当たりの末端アルケニル基=[(%アルケニル)]*[モル%-OH置換]*[出発単糖類1つ当たりの-OH]*[重合度]/104
式中、
「[モル%-出発単糖類1つ当たりのOH]」は、アガロースについては2であり、二糖類については4であり、本発明の範囲の全ての他の多糖類については3である。
「重合度」は、多糖類分子1つ当たりの多糖類単位の数を指し、多糖類の供給業者から得ることができるか、又は日常的なGPC法を使用して決定することによって得ることができる。
【0051】
d6-ベンゼンに不溶性である実験の項における試料については、中性子放射化分析(neutron activation analysis、NAA)によってモルパーセントヒドロキシル置換を決定する。1.0グラムの試料を予め洗浄した2ドラムのポリエチレンバイアルに移すことによって、二連の分析物材料を調製する。試料と同様のバイアルに適切な量を採取することによって、NISTトレーサブル標準溶液からケイ素標準アリコートを調製する。純水を使用して分析物物質と同じ体積に希釈する。また、純水のみを含有するブランクを調製する。標準的なNAA手順(100kWで2分間照射)に従って、分析物材料、標準物、及びブランクを分析する。9分間の待ち時間の後、高純度ゲルマニウム検出器を使用してγ線分光法を実行する。CANBERRAソフトウェアを用いる標準比較技術を使用して、ケイ素濃度(重量%Si)を決定する。以下の計算を使用して、モル%-OH置換を計算する。
モル%-OH置換=([出発多糖類反復単位のMW]*[重量%Si])/{(28-84*[重量%Si]/100)*[出発単糖類1つ当たりの-OH]}。
【0052】
この値は、C-O-Si結合を介して多糖類に連結された-SiR3でシリル化された多糖類上のヒドロキシル基のモル%に対応している。
【0053】
式中、
[反復多糖類反復単位のMW]は、アガロースについては154であり、二糖類については171であり、本発明の範囲の他の全ての多糖類については162である。
[出発単糖類1つ当たりの-OH]は、アガロースについては2、二糖類については4、他の全ての多糖類については3である。
【0054】
表2は、シリル化多糖類試料のための配合を表す。多糖類の量は、グラム(g)で提供される。触媒の量及びシラザンの量は、各々、多糖類の指定されたグラム(「当量」)中の単糖類単位1モル当たりのモル数で表される。溶媒濃度は、溶媒とシラザンとを組み合わせた体積中の指定された量の多糖類のモル濃度(「M」)で存在する。「DP」は、多糖類の重合度を指し、これは多糖類中で一緒に結合している単糖類単位の数である。
【表2】
【0055】
架橋ポリシロキサンエラストマーの調製
表3に、以下に記載する試料の架橋ポリシロキサンエラストマーを作製するために、表2のアルケニル官能性多糖類に加えて使用するための材料を列挙する。
【表3】
SYL-OFF及びXIAMETERは、Dow Corning Corporationの商標である。CETIOLは、Cognis IP Management GMBHの商標である。CERAPHYLは、ISP Investments LLCの商標である。NEOSSANCEは、Amyris,Inc.の商標である。
【0056】
成分の量がグラム(g)単位である表4に記載の配合を用いてヒドロシリル化によって架橋ポリシロキサンエラストマーを調製する。以下の反応手順を使用する。特定量のビニル官能化多糖類及び溶媒を、磁気撹拌棒を備えた20ミリリットルシンチレーションバイアルに添加する。撹拌を開始し、内容物を70℃に15分間加熱し、成分を溶解して、均一な溶液にする。特定量のSiH官能性ポリシロキサン及び任意の追加の架橋剤を添加する。その反応混合物を、70℃で10分間加熱し、次いで白金系触媒を添加する。70℃で更に3時間加熱する。25℃に放冷する。反応の成功(すなわち、硬化の成功)は、1分間逆さまにしたときに、シンチレーションバイアル中で1センチメートルを超えて流動しないゲルが形成されることによって明らかになる。
【0057】
表4は、全混合物の百万重量部当たりのPt金属の重量部で示してある触媒以外は、使用成分と、使用成分のグラム数による使用成分の濃度(括弧内)とを示している。表4はまた、配合物中のSiH官能基のビニル官能基に対するモル比、反応物の重量%、及び組成物がうまくエラストマーに硬化したか否かを示している。
【表4-1】
【表4-2】
【0058】
ヒドロシリル化における着色
以下に示した量に従って、シリル化多糖類、SiH官能性ポリシロキサン2及びキシレンを、40ミリリットルのバイアルに入れることによって、ヒドロシリル化における着色を試験する。ポリテトラフルオロエチレン撹拌バーを加え、混合しながら混合物を70℃に加熱する。150マイクロリットルの白金触媒を添加する。反応物を2.5時間加熱し続ける。
【0059】
ASTM D1209-05を使用して、4つの異なる反応生成物を評価して、各々のAPHA色値を決定する。4つの異なる反応生成物及びAPHA色の決定は、以下のとおりである。
(1)基準=キシレン(0.92ミリリットル)及びSiHポリマー(0.35g)を使用する。末端アルケン含有反応物を用いずに、SiH官能性ポリシロキサン2のみを反応条件に通す。得られたAPHA色=>500
(2)ビニルを含まないベータ-シクロデキストリン=キシレン(0.92ミリリットル)、SiH官能性ポリシロキサン2(0.25g)、及び80モル%がシリル化されているが完全に飽和したシリル基を有するシリル化多糖類としてアルケニル官能性多糖類20(0.20g)を使用。得られたAPHA色=>500
(3)33モル%のビニルベータ-シクロデキストリン=キシレン(0.92ミリリットル)、SiH官能性ポリシロキサン2(0.25g)、及び33モル%のビニル基を有する70モル%シリル化されているシリル化多糖類としてアルケニル官能性多糖類6(0.20g)を使用。得られたAPHA色=140。
(4)100モル%のビニルベータ-シクロデキストリン=キシレン(0.92ミリリットル)、SiH官能性ポリシロキサン2(0.36g)、及び100モル%のビニル基を有する75モル%シリル化されているシリル化多糖類としてアルケニル官能性多糖類21(0.09g)を使用。得られたAPHA色=50
【0060】
結果は、ビニル官能性シリル化β-シクロデキストリンが、驚くべきことに、白金触媒を用いるヒドロシリル化反応に含まれた後、500未満、更には300未満のAPHA色を達成することを明らかにする。
【0061】
エラストマーゲルのペースト
本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーのゲル及び一般的なポリシロキサンエラストマーのゲルのペーストを、以下に記載したように追加の溶媒を添加しながら、ゲルをブレンダーで剪断にかけることによって調製する。次いで、得られたペーストを、感覚特性、洗浄に対する耐久性、及び溶媒適合性について特性評価した。
【0062】
ペースト試料及び参照の調製
ペースト試料1(PS1)60.0gの試料54を、Waring model 7012ブレンダーで剪断し、17.8gの溶媒1で徐々に希釈する。300,000ミリパスカルの粘度(ヘリパススピンドル(S94)を備えたBrookfield DV-II Plus Pro Programmable Viscometer、25℃で毎分2.5回転(RPM))を有するペーストが得られるまで、剪断下で約5~10分間混合し続ける。
【0063】
ペースト試料2(PS2)60.0gの試料55を、Waring model 7012ブレンダーで剪断し、17.8gの溶媒2で徐々に希釈する。400,000ミリパスカルの粘度(ヘリパススピンドル(S94)を備えたBrookfield DV-II Plus Pro Programmable Viscometer、25℃で2.5RPM)を有するペーストが得られるまで、剪断下で約5~10分間混合し続ける。
【0064】
ペースト試料3(PS3)56.0gの試料56を、Waring model 7012ブレンダーで剪断し、31.1gの溶媒1で徐々に希釈する。280,000ミリパスカルの粘度(ヘリパススピンドル(S94)を備えたBrookfield DV-II Plus Pro Programmable Viscometer、25℃で2.5RPM)を有するペーストが得られるまで、剪断下で約5~10分間混合し続ける。
【0065】
ペースト試料4(PS4)1.78gの試料19を、Waring model 7012ブレンダーで剪断し、6.0gの溶媒1で徐々に希釈する。65,000ミリパスカルの粘度(ヘリパススピンドル(S94)を備えたBrookfield DV-II Plus Pro Programmable Viscometer、25℃で2.5RPM)を有するペーストが得られるまで、剪断下で約5~10分間混合し続ける。
【0066】
ペースト試料5(PS5)57.2gの試料57を、Waring model 7012ブレンダーで剪断し、13.2gの溶媒1で徐々に希釈する。300,000ミリパスカルの粘度(ヘリパススピンドル(S94)を備えたBrookfield DV-II Plus Pro Programmable Viscometer、25℃で2.5RPM)を有するペーストが得られるまで、剪断下で約5~10分間混合し続ける。
【0067】
ペースト参照1(PR1)PR1は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)9041 Silicone Elastomer Blendの名称で入手可能な市販の材料である。
【0068】
ペースト参照2(PR2)PR2は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)3901 Liquid Satin Blendの名称で入手可能な市販の材料である。
【0069】
ペースト参照3(PR3)PR3は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)EL-8040 ID Silicone Organic Blendの名称で入手可能な市販の材料である。
【0070】
ペースト参照4(PR4)PR4は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)EL-8050 ID Silicone Organic Elastomer Blendの名称で入手可能な市販の材料である。
【0071】
ペースト参照5(PR5)PR5は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)EL-7040 Hydro Elastomer Blendの名称で入手可能な市販の材料である。
【0072】
ペースト参照6(PR6)PR6は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)EL-9241 DMシリコーンエラストマーブレンドの名称で入手可能な市販の材料である。
【0073】
ペースト試料及び参照の特性評価
以下の評価でペーストを特性評価する;
感覚評価感覚評価のために訓練され、感覚評価に定期的に参加する5人のパネリストは、前腕、手及び指を、水中4.3重量%の活性ラウリルエーテル硫酸ナトリウムで洗浄し、蒸留水ですすぎ、ペーパータオルを使用して乾燥させる。50ミリグラムのペースト試料又は過去の参照を、パネリストの前腕の内側に、最大120回の摩擦のために、1秒当たり2回の摩擦で、円運動により適用する。パネリストは、以下の皮膚感覚パラメータを、1~5の尺度で評価する。
(a)滑らかさ:膜の均一性及びテクスチャーの均一性を評価する(1=砂及び5=タルク)。
(b)きめ細かさ(powderyness):乾いた、柔らかい、滑らかな、すべすべした感触を調べる(1=ワセリン及び5=タルク)。
(c)脂っぽさ:薬物に関連する粘着性の密なコーティングを感知する(1=タルク及び5=ワセリン)。
(d)粘着性:指が皮膚に付着する付着性又は程度(1=未処置皮膚及び5=ラノリン)。
(e)湿り度:10回擦った後に知覚される液体の量(1=タルク及び5=鉱油)
【0074】
評価は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて、全ての試料にわたって各感覚属性内で比較した。p値が<0.05であった場合、post-hocTukey-Kramer HSD検定を行った。p<0.05レベルで統計的に異なる試料は、異なっていると示した。
【表5】
*は、Tukey-Kramer HSD検定に従って<0.05のp値でPR2と統計的に異なる値を示している。
【0075】
表5の結果により、本発明の架橋ポリシロキサンエラストマーのペーストは、典型的なシリコーンエラストマーブレンド(PR1)に関連する感覚プロファイルを有するが、他の架橋シリコーン材料とは区別されることが分かる。PS3は、例示的なきめ細かさを有する試料である。
【0076】
耐久性試験 8グラムのペースト及び2gのSkolor Glare(商標)バイオレットviolet SG-7661E顔料(CQV Co.Ltd.製)を歯科用カップに入れ、FlackTek DAC150スピードミキサーを使用して、2300RPMで20秒間混合する。0.3グラムの得られた混合物を、4.75センチメートル×5センチメートルのコラーゲンで被覆された顕微鏡スライド上にコーティングする。コーティングされたスライドを25℃で24時間乾燥させる。0.07gの水中の0.07gのDIAL(商標)(ヘンケルの商標)食器用洗剤の溶液を、湿った指先で20秒間コーティングされたスライドに適用することにより、コーティングされたスライドを洗浄する。スライドの画像を撮影し、洗浄の前後にImage Jソフトウェアを使用して、スライドを分析し、残った材料の面積を決定する。洗浄後にコーティングされたままであるコーティング面積のパーセントが、表6における耐久性値であり、より高い値は、より高い耐久性と相関がある。
【表6】
【0077】
表6のデータから、PR1の洗浄耐久性が不十分であることが分かる。PR1は、純粋なシリコーンペーストで作製された、すなわち、ポリシロキサン溶媒でゲル化されたシリコーンエラストマーで作製されたペーストである。PR1は、感覚特性のためのベンチマークペーストであるが、洗浄耐久性が不十分である。
【0078】
表6のデータは、更に、本発明のゲル化架橋ポリシロキサンエラストマーのペーストが、同じ溶媒でゲル化された純粋なシリコーンエラストマーゲルのペーストよりも高い洗浄耐久性を有することを示している。PR3及びPR4(両方ともイソドデカンでゲル化されたシリコーンエラストマー)をPS1及びPS5(イソドデカンでゲル化された本発明のエラストマー)と比較すると、本発明のエラストマーの洗浄耐久性の顕著な改善が明らかである。
【0079】
PS4は、ペーストが作製されたときにイソドデカンで希釈されたファルネサン中のゲルとして調製された本発明のエラストマーのペーストである。ファルネサン(101メガパスカルの圧力で252℃の沸点)は、イソドデカン(101メガパスカルの圧力で210℃の沸点)よりも低揮発性の溶媒である。より低揮発性の溶媒を添加した場合であっても、PS4ペーストは、PR3及びPR4よりも高い洗浄耐久性を有する。
【0080】
PS2は、ファルネサン中でゲルとして調製され、ペーストにされるときにファルネサン中で希釈された本発明のエラストマーのペーストを提供している。ゲル及びペーストを作製する際に、揮発性がより低い溶媒(ファルネサン)のみを使用する場合であっても、ペーストは、高揮発性溶媒(イソドデカン)による最も耐久性のある参照試料に匹敵する洗浄耐久性を有する。
【0081】
これらの結果は、従来の純粋なシリコーンエラストマーと比較して、本発明の多糖類含有エラストマーを用いて作製されたペーストの本質的により大きな洗浄耐久性を実証している。
【0082】
溶媒適合性 7.5gのペースト及び2.5gの試験溶媒を歯科用カップに加え、FackTek DAC150スピードミキサーを使用して2300RPMで30秒間混合する。その試料を25℃で24時間静置し、次に以下の尺度で溶媒適合性を評価する:
1-透明:試料は、曇りがなく、文字をその後ろに置いたときに混合物を通して容易に読むことができる。
2-わずかな曇り:試料は、ほぼ透明であり、非常にわずかな曇りのみが検出可能であり、試験が試料の後ろに配置された場合、試料を通して依然として容易に読み取ることができる。
3-曇っている:試料は、透明ではなく、試料の後ろに置かれた文字は知覚できるが読むことができない。
4-不透明:白色中実、光は通過できず、試料の後ろに配置されたものを検出できない。
5-非適合性:試料相が分離した。
【表7】
【0083】
表7のデータにより、本発明の架橋ポリシロキサンエラストマー由来のゲルのペーストは、参照ポリシロキサンのペーストよりも、広範囲の溶媒にわたって溶媒適合性が高いことが明らかである。
【0084】
C-O-Si結合対C-O-C結合の加水分解不安定性
試料(15mg)を、0.6mLのd6-アセトン(試料23)又はd6-DMSO(多糖類7)のいずれか中のガラス製NMR管に入れた。次いで、5μLの水/トリフルオロ酢酸の9:1体積/体積溶液を添加し、1H NMRスペクトルを表8における時点で取得した。C-O-Si加水分解のモル%を、δ0.1~0.3ppmのTMS-シクロデキストリンピーク、及びδ0.03~0.07ppmの加水分解されたTMS基を積分することによって測定した。C-O-C加水分解のモル%を、d6-アセトン中のδ3.31及びd6-DMSO中のδ3.16に存在するMeOHの任意の共鳴の成長を評価することによって決定するように、C-O-CH
3を評価することによって決定した。試料23について5時間の時点後、白色沈殿物がNMR管中に観察された。沈殿物を、揮発性物質を蒸発させることによって単離した。沈殿物は、d6-DMSOに可溶性であり、分析すると、出発材料である多糖類7と一致した。
【表8】
【0085】
試料23は、加水分解されたC-O-Si結合の量の経時的な増加を示し、時間0での3%加水分解(合成反応からの残留副生成物に起因する)から、室温で5時間後の84%の加水分解まで増加する。しかしながら、C-O-C結合を形成するその試料からのメチル基は、そのまま残っており、加水分解のいかなる形跡も示さない。対照例として、メチル-β-シクロデキストリンの初期の試料も、上記のようにトリフルオロ酢酸を用いて処理した。この試料はまた、室温で3時間後にC-O-C基のいかなる分解も示さず、この結合の安定性を実証している。
【0086】
データから、C-O-C結合と比較してC-O-Si結合の加水分解安定性が低いことが確認される。
【0087】
試料の親水性
接触角測定を使用して、ペースト試料の親水性を評価する。50マイクロメートルのフィルムアプリケーターを使用して、ペースト試料を、3インチ×2インチのガラス顕微鏡スライドに均一な膜で適用する。次いで、マイクロピペットを用いて、膜の上に8マイクロリットルの超高純度(>18M-オームセンチメートル)水の液滴を置く。膜上の液滴の接触角を、AST Products VCA Optimaビデオ接触角システムで測定する。接触角を計算するため、VCA-2500XEソフトウェアを利用した。90度(°)未満の接触角は、親水性膜を示す。
【表9】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類成分とポリシロキサン成分との間に2つ以上の炭素-酸素-ケイ素連結を含む架橋ポリシロキサンエラストマーを含む組成物であって、前記多糖類成分が、セルロース又はデンプン成分以外のものであり、前記組成物が、溶媒で膨潤された架橋ポリシロキサンエラストマーを含むゲルである、組成物。
【請求項2】
前記多糖類成分が、フルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース又はグルコースが連結された単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結は、アルファ連結である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖類成分が、-OSiR
3基、-CH
2OSiR
3基、-OH及び-CH
2OHからなる群から選択される、前記ポリシロキサンへの連結以外のペンダント基のみを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多糖類成分が、ベータ-シクロデキストリン、マルトデキストリン、プルラン、デキストラン、トレハロース、イヌリン、及びアガロースからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各多糖類成分が、平均して2~2000の連結された単糖類単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、イソドデカン、ファルネサン、ウンデカン、n-ドデカン、及びトリデカンから選択される1つ以上の溶媒である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を調製するための方法であって、
a.1分子当たり平均して少なくとも2つのSiH官能基を有するSiH官能性ポリオルガノシロキサンと、
b.アルケニル官能性多糖類であって、
i.連結されたフルクトース、ガラクトース、アンヒドロガラクトース、又はグルコース単糖類単位を含み、但し、グルコースのグリコシド連結は、アルファ連結であり、
ii.前記アルケニル官能性多糖類上のヒドロキシル基の平均して1~100モルパーセントが、C-O-Si結合を介して前記多糖類に連結された構造-SiR
3(式中、各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルから選択され、但し、多糖類1つ当たり平均して少なくとも2.0個のR基が、末端アルケニル基を有する)を有するシリル基でシリル化されていて、
iii.前記アルケニル官能性多糖類が、シリル化デンプン以外のものである、ことを特徴とする、アルケニル官能性多糖類と、
c.任意選択で、追加の架橋添加剤と、
を含む反応物間のヒドロシリル化付加反応によって架橋ポリシロキサンエラストマーを形成することを含み、前記反応が、
d.白金系ヒドロシリル化触媒と、
e.溶媒と、の存在下で行われる、
方法。
【請求項8】
前記アルケニル官能性多糖類が、シリル化ベータ-シクロデキストリン、シリル化マルトデキストリン、シリル化プルラン、シリル化デキストラン、シリル化トレハロース、シリル化イヌリン、及びシリル化アガロースからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒の濃度が、SiH官能性ポリシロキサン、アルケニル官能性ポリシロキサン及び有機溶媒の合計重量の30重量%以上かつ85重量%以下である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、前記ゲルを剪断混合に供することで生じるペーストの形態である、請求項1に記載の組成物。
【国際調査報告】