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特表2024-513739結腸直腸癌のための揮発性バイオマーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】結腸直腸癌のための揮発性バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/98 20060101AFI20240319BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20240319BHJP
【FI】
G01N33/98
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558143
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 GB2022050701
(87)【国際公開番号】W WO2022200771
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2103951.6
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ウッドフィールド,ジョージア
(72)【発明者】
【氏名】ベルオモ,イラリア
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA06
2G041FA07
2G041FA10
2G041LA08
2G045AA26
2G045CB22
2G045DA74
2G045DA78
2G045DA80
(57)【要約】
本発明は、バイオマーカー、および結腸直腸癌を診断するための新規な生物学的マーカーに関する。特に、本発明は、結腸直腸癌を検出するためのアッセイにおける診断マーカーおよび予後マーカーとしてのこれらのバイオマーカーの使用、ならびに対応する検出方法に関する。本発明はまた、治療剤を用いて結腸直腸癌を治療することの有効性を決定する方法、ならびにアッセイおよび方法を行うための装置に関する。アッセイは、定性的および/または定量的であり、大規模スクリーニングおよび臨床試験に適合可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するため、または前記対象の状態の予後を提供するための方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、結腸直腸癌に罹患していない個体における前記シグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含み、
前記参照と比較して、(i)前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、または(ii)前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下が、前記対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有することを示唆するか、または前記対象の状態の負の予後を提供し、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである方法。
【請求項2】
結腸直腸癌に罹患している対象を治療剤または特殊食を用いて治療することの有効性を決定する方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、さらに早い時点で前記対象から採取された試料中の前記シグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含み、
(i)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは(ii)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の増加が、前記治療剤もしくは前記特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または(i)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは(ii)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下が、前記治療剤もしくは前記特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆し、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである方法。
【請求項3】
前記シグネチャー化合物が、C~C12エステル、C3~8エステルまたはC5~6エステルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エステルが、式IVのエステルである場合:
C(O)OR
(IV)
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルであるか、
またはRおよびRが、独立して、C1~4アルキル、C2~4アルケニルもしくはC2~4アルキニルであり、場合により、RおよびRが、独立して、C1~3アルキル、C2~3アルケニルもしくはC2~3アルキニルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
が、メチル、エチル、もしくは1-プロピニルであり、および/またはRが、メチル、n-プロパニル、もしくは2-プロペニルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記C~C12エステルが、プロピオン酸プロピル、酢酸アリル、またはメチル2-ブチノエートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シグネチャー化合物が、C3~20シクロアルカン、またはC3~20シクロアルケン、またはC3~15シクロアルカンもしくはC3~15シクロアルケン、またはC3~10シクロアルカンもしくはC3~10シクロアルケン、またはC5~10シクロアルケン、またはC8~10シクロアルケンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記C3~20シクロアルカンまたはC3~20シクロアルケンが、シクロプロパン、または3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シグネチャー化合物が、C1~20アルカン、C2~20アルケンまたはC2~20アルキンであり、好ましくは、前記化合物が、C4~12アルカン、C4~12アルケンもしくはC4~12アルキン、またはC6~10アルカン、C6~10アルケンもしくはC6~10アルキン、またはC7~9アルカン、C7~9アルケンもしくはC7~9アルキン、またはCアルカンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記C1~20アルカン、C2~20アルケンまたはC2~20アルキンが3-エチル-ヘキサンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記シグネチャー化合物が式Iのアルコールである場合:
-L-OH
(I)
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が、存在しないか、またはC1~3アルキレン、C2~3アルケニレンもしくはC2~3アルキニレンであり、場合により、Lが、存在しないか、またはメチレンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
が、C3~12シクロアルキルまたは3~12員複素環であり、場合により、Rが、C5~6シクロアルキルまたは5~6員複素環である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が5員複素環であり、好ましくは、Rが1,3-ジオキソラニルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
が存在せず、Rが、C3~18アルキル、C3~18アルケニルまたはC3~18アルキニルであり、場合により、Rが、C6~10アルキル、C6~12アルケニルもしくはC6~10アルキニル、またはC7~9アルキル、C6~9アルケニルもしくはC6~9アルキニルであり、好ましくは、Rが2,2,4-トリメチル-3-ペンタニルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の前記アルコールが、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、または2,2,4-トリメチル-3-ペンタノールである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記シグネチャー化合物が式IIIのアルコールである場合:
-L-L-OH
(III)
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
が、存在しないか、またはOである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
が、存在しないか、またはC1~3アルキレン、C2~3アルケニレンもしくはC2~3アルキニレンであり、場合により、Lが、存在しないか、メチレンもしくはエチレンであるか、またはLが、存在しないか、もしくはエチレンである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
が、C6~12アリールまたは5~12員ヘテロアリールであり、場合により、Rが、フェニルまたは5~6員ヘテロアリールである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
およびLが存在せず、Rが、C3~18アルキル、C3~18アルケニルもしくはC3~18アルキニルであるか、またはRが、C5~17アルキル、C5~17アルケニルもしくはC5~17アルキニルであるか、またはRが1-ウンデカニルである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(III)の前記アルコールが、2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、またはフェノール、好ましくはフェノールである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記シグネチャー化合物が式(II)のスルフィドである場合:
SR
(II)
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
およびRが、独立して、C1~3アルキル、C2~3アルケニルもしくはC2~3アルキニルであるか、またはRおよびRがいずれもメチルである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記スルフィドがジメチルスルフィドである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記シグネチャー化合物が揮発性有機化合物(VOC)である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記身体試料が、前記試験対象由来の呼気試料である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が、好ましくは経鼻吸入後に、口および/または鼻を通して呼息を行う前記対象によって収集される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記シグネチャー化合物が、プロピオン酸プロピル、酢酸アリル、メチル2-ブチノエート、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール、シクロプロパン、3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエン、ジメチルスルフィド、2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、フェノール、および3-エチル-ヘキサン、またはそれらの類似体もしくは誘導体からなる群から選択される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するため、または前記対象の状態の予後を提供するための装置であって、
(i)試験対象由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度を決定するための手段と、
(ii)結腸直腸癌に罹患していない個体由来の試料中の前記シグネチャー化合物の濃度に関する参照と、を備え、
前記装置が、前記参照と比較して、(i)前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは(ii)前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下を同定し、それによって、前記対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有することを示唆するために使用されるか、または前記対象の状態の負の予後を提供し、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである装置。
【請求項31】
治療剤または特殊食を用いて結腸直腸癌に罹患している対象を治療することの有効性を決定するための装置であって、
(a)試験対象由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度を決定するための手段と、
(b)さらに早い時点で前記対象から採取された試料中の前記シグネチャー化合物の濃度に関する参照と、を備え、
前記装置が、
(i)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の増加を同定し、それによって、前記治療剤もしくは前記特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または
(ii)前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは前記参照と比較して、前記試験対象由来の前記身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択される前記シグネチャー化合物の濃度の低下を同定し、それによって、前記治療剤もしくは前記特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆するために使用され、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである装置。
【請求項32】
前記シグネチャー化合物が、請求項3~29のいずれか一項に定義される通りである、請求項30または31に記載の装置。
【請求項33】
結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するための、または前記対象の状態の予後を提供するためのバイオマーカーとしての、C1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、C1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、および式(III)のアルコール、またはそれらの類似体もしくは誘導体からなる群から選択されるシグネチャー化合物の使用であって、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである使用。
【請求項34】
前記シグネチャー化合物が、請求項3~29のいずれか一項に定義される通りである、請求項33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマーカーに関し、特に、排他的ではないが、結腸直腸癌を診断するための新規な生物学的マーカーに関する。特に、本発明は、結腸直腸癌を検出するためのアッセイにおける診断マーカーおよび予後マーカーとしてのこれらのバイオマーカーまたはいわゆるシグネチャー化合物(signature compound)の使用、ならびに対応する検出方法に関する。本発明はまた、治療剤を用いて結腸直腸癌を治療することの有効性を決定する方法、ならびにアッセイおよび方法を行うための装置に関する。アッセイは、定性的および/または定量的であり、大規模スクリーニングおよび臨床試験に適合可能である。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌(CRC)が最も早い病期で診断された場合、最も遅い病期で診断された場合10人中1人未満であるのと比較して、CRCを有する10人中9人超が5年以上にわたってそれらの疾患を生き延びる[1]。CRCの主要な診断基準としての腸症状の利用は、極めて不良な陽性適中率を有することが示されている[2]。症候性患者では、CRCのリスクは、様々な検査によって評価され得る。大腸内視鏡検査はゴールドスタンダードの検査であるが、その大規模な適用は資金的な意味合いを有し、その費用効果は様々な症状の適中率に依存する。グアヤク便潜血検査は、CRC検出では87~98%という良好な感度を有するが、非常に変動が大きく、特異度が不十分であることが多く(13~79%)、複数の便試料に対する検査の繰返しを必要とする。今日まで、便潜血検査は、中間検査として使用するために推奨されているわけでも利用可能なわけでもない[3~6]。便免疫化学検査は、単一の便試料を必要とする。4つの系は、完全に自動化されており、ヘモグロビンの定量的尺度を提供し、特定の状況に適合する陽性の閾値の選択を可能にする。結果として、CRCに対する感度および特異度に関して利用可能な研究データは、少数の癌に基づく。このデータは、陽性について選択された閾値に応じて、CRCに対する感度が35%~86%の間で変動し、特異度が85%~95%の間で変動することを示唆している[5、6]。しかし、早期癌に対するさらに新しい定量的検査の感度に関するデータはない。マルチターゲット便DNA検査は、大規模多施設試験における便免疫化学検査と比較して、特異度は良好であったが(92対73%)、感度(90対96%)は低かった[7]。
【0003】
便に基づく検査の代替手法には、検査の性質、および様々な揮発性有機化合物(VOC)識別シグネチャーを用いて複数の疾患を検査する実現性のために、高い適合性の可能性を有する呼気検査がある[8、9]。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を使用する研究者らは、CRCに特異的な呼気VOCプロファイルの存在を示唆している[10]。GC-MSはVOC同定のための良好な技術であるが、本質的に半定量的であるため、異なる研究グループによって再現される研究結果の能力には限界がある。さらに、各試料についてかなりの分析時間があり、当然ながらハイスループット分析には適していない。選択イオンフローチューブ質量分析(SIFT-MS)は、定量的であるという利点を有し、リアルタイム分析を可能にする[11、12]。
【0004】
したがって、結腸直腸癌に罹患している患者を同定するための信頼性の高い非侵襲性マーカーが必要とされている。結腸直腸癌患者を同定するための診断方法は、患者にとって非常に有益であり、早期治療および予後改善の可能性を高める。
【発明の概要】
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
本発明者らは、ここで、(診断的および予後予測的に)結腸直腸癌を示すいくつかのバイオマーカーまたはいわゆるシグネチャー化合物を決定した。
【0006】
実施例に記載されるように、患者を登録し、2つの別個の群、CRC患者と非CRC患者(すなわち、対照群)とに分けた。対照群には、正常、良性病態、炎症性腸疾患、低リスクポリープ、中リスクポリープまたは高リスクポリープという大腸内視鏡検査診断を受けた患者を含めた。ReCIVAシステムを使用して患者から呼気を収集し、GC-MSを使用して分析を行った。同定されたシグネチャー揮発性有機化合物(VOC)のうち、ジメチルスルフィド、フェノール、ならびにエステル、アルコール、アルカンおよび非芳香族環状炭化水素化学物質クラスからの化合物を含む15個は、CRC患者と非CRC患者との間で統計学的に有意に異なっていた。本発明者らは、VOCの分析により、呼気を使用して陽性対照および陰性対照からCRCの存在を堅牢に予測することができ、受信者動作特性(ROC)曲線下面積が0.87、感度が77%、特異度が87%、陰性適中率が97%であることを実証した。ちょうど15個のVOCを使用して対照からCRCを検出することができ、ROC曲線下面積は0.83であった。
【0007】
[課題を解決するための手段]
したがって、本発明の第1の態様では、結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するため、または対象の状態の予後を提供するための方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、結腸直腸癌に罹患していない個体におけるシグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含む方法が提供され、
参照と比較して、(i)試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、または(ii)試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下は、対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有することを示唆するか、または対象の状態の負の予後(negative prognosis)を提供し、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0008】
第2の態様では、結腸直腸癌に罹患している対象を治療剤または特殊食(specialised diet)を用いて治療することの有効性を決定する方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、さらに早い時点で対象から採取された試料中のシグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含む方法が提供され、
(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加は、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下は、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆し、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0009】
第3の態様では、結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するため、または対象の状態の予後を提供するための装置であって、
(i)試験対象由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度を決定するための手段と、
(ii)結腸直腸癌に罹患していない個体由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度に関する参照と、を備える装置が提供され、
装置は、参照と比較して、(i)試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは(ii)試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下を同定し、それによって、対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有することを示唆するために使用されるか、または対象の状態の負の予後を提供し、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0010】
第4の態様では、本発明は、治療剤または特殊食を用いて結腸直腸癌に罹患している対象を治療することの有効性を決定するための装置であって、
(a)試験対象由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度を決定するための手段と、
(b)さらに早い時点で対象から採取された試料中のシグネチャー化合物の濃度に関する参照と、を備える装置を提供し、
装置は、
(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加を同定し、それによって、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または
(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下を同定し、それによって、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆するために使用され、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、結腸直腸癌に罹患している個体を治療する方法であって、
(i)試料中のシグネチャー化合物の濃度を試験対象濃度から決定する工程であって、参照と比較して、(i)試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、または(ii)試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下が、対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有するか、または負の予後を有することを示唆し、式(I)、(II)および(III)が、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rが、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRが、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
が、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
が、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
が、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
が、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである工程と、
(ii)試験対象に治療剤を投与するか、もしくは投与したことがあるか、または試験対象を特殊食に供する工程であって、治療剤または特殊食が、結腸直腸癌の進行を予防するか、減少させるか、または遅延させる工程と、を含む方法が提供される。
【0012】
第6の態様では、結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するための、または対象の状態の予後を提供するためのバイオマーカーとしての、C1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、C1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、および式(III)のアルコール、またはそれらの類似体もしくは誘導体からなる群から選択されるシグネチャー化合物の使用が提供され、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0013】
「濃度を決定する」という表現は、ピーク面積によって与えられる半定量的な、試料中のシグネチャー化合物の相対的な存在量もしくはレベルを決定すること、またはシグネチャー化合物の実際の量を決定することのいずれかを含み得る。実施例に記載されるように、本発明者らは、驚くべきことに、プロピオン酸プロピル、酢酸アリル、メチル2-ブチノエート(butynoate)、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール、シクロプロパン、3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエン、またはジメチルスルフィドの濃度の増加が結腸直腸癌を示すことを実証した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、フェノール、または3-エチル-ヘキサンの濃度の低下が結腸直腸癌を示すことを示した。本明細書に記載の方法、装置および使用はまた、本明細書に記載のシグネチャー化合物の類似体または誘導体の濃度、存在量またはレベルを分析することを含み得る。アッセイされ得る化学基の好適な類似体または誘導体の例には、アルコール、ケトン、芳香族、有機酸およびガス(CO、CO、NO、NO、HS、SOおよびCHなど)が挙げられる。
【0014】
シグネチャー化合物がC~C12エステルである実施形態では、好ましくは、化合物は、C3~8エステル、最も好ましくはC5~6エステルである。
【0015】
エステルは、式IVのエステルであり得:
C(O)OR
(IV)
式中、RおよびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルである。
【0016】
いくつかの実施形態では、RおよびRは、独立して、C1~4アルキル、C2~4アルケニルまたはC2~4アルキニルである。さらに好ましくは、RおよびRは、独立して、C1~3アルキル、C2~3アルケニルまたはC2~3アルキニルである。RおよびRは、独立して、メチル、エチル、プロピル、エテニル、プロペニル、エチニルまたはプロピニルであり得る。最も好ましくは、Rは、メチル、エチル、または1-プロピニルである。最も好ましくは、Rは、メチル、n-プロパニル、または2-プロペニルである。
【0017】
好ましい実施形態では、C~C12エステルは、プロピオン酸プロピル、酢酸アリル、またはメチル2-ブチノエートである。
【0018】
シグネチャー化合物がC3~20シクロアルカンまたはC3~20シクロアルケンである実施形態では、好ましくは、化合物は、C3~15シクロアルカンまたはC3~15シクロアルケンであり、さらに好ましくはC3~10シクロアルカンまたはC3~10シクロアルケンである。いくつかの実施形態では、化合物は、C3~6シクロアルカン、さらに好ましくはC3~4シクロアルカンであり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、C5~10シクロアルケン、さらに好ましくはC8~10シクロアルケンであり得る。
【0019】
好ましくは、C3~20シクロアルカンまたはC3~20シクロアルケンは、シクロプロパン、または3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエンである。
【0020】
シグネチャー化合物がC1~20アルカン、C2~20アルケンまたはC2~20アルキンである実施形態では、好ましくは、化合物は、C4~12アルカン、C4~12アルケンまたはC4~12アルキンであり、さらに好ましくはC6~10アルカン、C6~10アルケンまたはC6~10アルキンであり、さらになお好ましくはC7~9アルカン、C7~9アルケンまたはC7~9アルキンであり、最も好ましくはCアルカンである。アルカン、アルケンまたはアルキンは、好ましくは、分岐鎖アルカン、分岐鎖アルケンまたは分岐鎖アルキンである。
【0021】
好ましい実施形態では、C1~20アルカン、C2~20アルケンまたはC2~20アルキンは3-エチル-ヘキサンである。
【0022】
シグネチャー化合物が式Iのアルコールである実施形態では:
-L-OH
(I)
好ましくは、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンである。
【0023】
は、存在しなくてもよいか、またはC1~3アルキレン、C2~3アルケニレンもしくはC2~3アルキニレンであってよい。好ましくは、Lは、存在しないか、またはメチレンである。
【0024】
は、C3~12シクロアルキルまたは3~12員複素環であり得る。さらに好ましくは、Rは、C5~6シクロアルキルまたは5~6員複素環である。最も好ましくは、Rは5員複素環である。Rは1,3-ジオキソラニルであり得る。
【0025】
代替的な実施形態では、Lは存在せず、Rは、C3~18アルキル、C3~18アルケニルまたはC3~18アルキニルである。Rは、C4~15アルキル、C4~15アルケニルまたはC4~15アルキニルであり得る。さらに好ましくは、Rは、C6~10アルキル、C6~12アルケニルまたはC6~10アルキニルであり、最も好ましくはC7~9アルキル、C6~9アルケニルまたはC6~9アルキニルである。アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、好ましくは分岐鎖アルキル、分岐鎖アルケニルまたは分岐鎖アルキニルである。Rは2,2,4-トリメチル-3-ペンタニルであってよい。
【0026】
好ましい実施形態では、式(I)のアルコールは、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、または2,2,4-トリメチル-3-ペンタノールである。
【0027】
シグネチャー化合物が式IIIのアルコールである実施形態では:
-L-L-OH
(III)
好ましくは、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0028】
は、存在しなくてもよいか、またはOであってよい。
【0029】
は、存在しなくてもよいか、またはC1~3アルキレン、C2~3アルケニレンもしくはC2~3アルキニレンであってよい。好ましくは、Lは、存在しないか、メチレンまたはエチレンである。最も好ましくは、Lは、存在しないか、またはエチレンである。
【0030】
は、C6~12アリールまたは5~12員ヘテロアリールであり得る。さらに好ましくは、Rは、フェニルまたは5~6員ヘテロアリールである。最も好ましくは、Rはフェニルである。
【0031】
代替的な実施形態では、LおよびLは存在せず、Rは、C3~18アルキル、C3~18アルケニルまたはC3~18アルキニルである。Rは、C5~17アルキル、C5~17アルケニルまたはC5~17アルキニルであり得る。さらに好ましくは、Rは、C7~14アルキル、C7~14アルケニルまたはC7~14アルキニルであり、最も好ましくはC10~12アルキル、C10~12アルケニルまたはC10~12アルキニルである。好ましくは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖アルキル、直鎖アルケニルまたは直鎖アルキニルである。Rは1-ウンデカニルであり得る。
【0032】
好ましい実施形態では、式(III)のアルコールは、2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、またはフェノールである。最も好ましくは、式(III)のアルコールはフェノールである。
【0033】
シグネチャー化合物が式(II)のスルフィドである実施形態では:
SR
(II)
好ましくは、RおよびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルである。
【0034】
好ましくは、RおよびRは、独立して、C1~3アルキル、C2~3アルケニルまたはC2~3アルキニルである。最も好ましくは、RおよびRはいずれもメチルである。
【0035】
好ましい実施形態では、スルフィドはジメチルスルフィドである。
【0036】
代替的な実施形態では、シグネチャー化合物は、その保持時間によって定義され得る。保持時間は、化合物がクロマトグラフィーカラム内で費やす時間の尺度であり、その揮発性と、カラムに対する親和性とに依存する。揮発性化合物が多いほど保持時間が短くなり、揮発性化合物が少ないほど保持時間が長くなる。
【0037】
シグネチャー化合物がC~C12エステルである実施形態では、好ましくは、化合物は、20~26分、さらに好ましくは21~25分、さらに好ましくは22~24分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、22.02、22.24または23.53分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、30~35分、さらに好ましくは31~34分、さらに好ましくは32~33分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、32.69分の保持時間を有する。
【0038】
シグネチャー化合物がC3~20シクロアルカンまたはC3~20シクロアルケンである実施形態では、好ましくは、化合物は、2~7分、さらに好ましくは3~6分、さらに好ましくは4~5分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、4.75分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、29~34分、さらに好ましくは30~33分、さらに好ましくは31~32分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、31.14分の保持時間を有する。
【0039】
シグネチャー化合物が式(I)のアルコールである実施形態では、好ましくは、化合物は、4~9分、さらに好ましくは5~8分、さらに好ましくは6~7分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、6.68分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、29~34分、さらに好ましくは30~33分、さらに好ましくは31~32分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、31.71分の保持時間を有する。
【0040】
シグネチャー化合物が式(II)のスルフィドである実施形態では、好ましくは、化合物は、7~12分、さらに好ましくは8~11分、さらに好ましくは9~10分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、9.27分の保持時間を有する。
【0041】
シグネチャー化合物がC1~20アルカン、C2~20アルケンまたはC2~20アルキンである実施形態では、好ましくは、化合物は、19~24分、さらに好ましくは20~23分、さらに好ましくは21~22分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、21.26分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、37~42分、さらに好ましくは38~39分、または40~41分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、38.74分または40.12分の保持時間を有する。
【0042】
シグネチャー化合物が式(III)のアルコールである実施形態では、好ましくは、化合物は、16~21分、さらに好ましくは17~20分、さらに好ましくは18~19分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、18.11分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、22~27分、さらに好ましくは23~26分、さらに好ましくは24~25分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、24.65分の保持時間を有する。あるいは、化合物は、38~43分、さらに好ましくは39~42分、さらに好ましくは40~41分の保持時間を有する。最も好ましくは、化合物は、40.52分の保持時間を有する。
【0043】
したがって、最も好ましい実施形態では、第1の態様は、結腸直腸癌もしくはその素因に罹患している対象を診断するため、または対象の状態の予後を提供するための方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、結腸直腸癌に罹患していない個体におけるシグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含む方法を含み、参照と比較して、(i)試験対象由来の身体試料中のプロピオン酸プロピル、酢酸アリル、メチル2-ブチノエート、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール、シクロプロパン、3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエンもしくはジメチルスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、または(ii)試験対象由来の身体試料中の2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、フェノールもしくは3-エチル-ヘキサン、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下は、対象が結腸直腸癌に罹患しているか、もしくはその素因を有することを示唆するか、または対象の状態の負の予後を提供する。
【0044】
それらの最も好ましい実施形態では、態様は、前の段落で定義されたのと同じシグネチャー化合物の増加および/または減少を検出することを伴うことが理解される。
【0045】
疾患の診断および予後診断に使用される任意の有用なバイオマーカーの重要な特徴は、所与の疾患に対して高い感度および特異度を示すことである。実施例で説明されるように、本発明者らは、驚くべきことに、試験対象由来の呼気中に見られる多数のシグネチャー化合物が、結腸直腸癌の堅牢なバイオマーカーとして機能し、したがって、この疾患の検出および予後診断に使用することができることを実証した。さらに、本発明者らは、疾患のバイオマーカーとしてそのようなシグネチャー化合物を使用することにより、簡単で再現性があり、非侵襲的で安価であり、患者の不便が最小限であるアッセイが使用されることを示した。
【0046】
有利には、本発明の方法および装置は、結腸直腸癌を診断するための非侵襲的手段を提供する。第1の態様による方法は、結腸直腸癌に現在罹患しているか、または結腸直腸癌に罹患している可能性がある対象の治療の最良過程に関して臨床医が決定を下すことを可能にするのに有用である。第1の態様の方法は、結腸直腸癌に現在罹患している対象をどのように治療するかを臨床医が決定することを可能にするのに有用であることが好ましい。さらに、第1および第2の態様の方法は、結腸直腸癌の推定上の治療の有効性をモニタリングするのに有用である。例えば、治療は、化学療法、手術を伴うもしくは伴わない化学放射線療法、または内視鏡的切除術の施行を含み得る。
【0047】
したがって、第3および第4の態様による装置は、臨床医が第5の態様による治療を行うことができるように、対象の状態の予後を提供するのに有用である。第3の態様の装置は、結腸直腸癌の推定上の治療の有効性をモニタリングするために使用され得る。したがって、方法および装置は、臨床医のために治療レジメンを導き、そのような治療レジメンの有効性をモニタリングするために非常に有用である。臨床医は、診断の精度を向上させるために、本発明の装置を既存の診断検査と併せて使用してもよい。
【0048】
対象は、獣医学的に関心対象の任意の動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマなどであり得る。ただし、対象は、哺乳動物、例えば、男性または女性のいずれかのヒトであることが好ましい。
【0049】
好ましくは、試料が対象から採取され、次いで、身体試料中のシグネチャー化合物の濃度が測定される。
【0050】
検出されるシグネチャー化合物は、発酵プロファイルをもたらす揮発性有機化合物(VOC)として公知であり得、様々な技術によって身体試料中に検出され得る。一実施形態では、これらの化合物は、それらが溶解している液体試料または半固体試料内で検出され得る。ただし、好ましい実施形態では、化合物は、ガスまたは蒸気から検出される。例えば、シグネチャー化合物はVOCであるため、それらは試料から、または試料の一部から発出し得、したがって、気体または蒸気の形態で検出され得る。
【0051】
第3または第4の態様の装置は、試験対象から試料を得るための試料抽出手段を備えてもよい。試料抽出手段は、針またはシリンジなどを備えてもよい。装置は、抽出された試料を受容するための試料収集容器を備えてもよく、抽出された試料は、液体、気体または半固体であってよい。
【0052】
好ましくは、試料は、シグネチャー化合物が存在するかまたは分泌される任意の身体試料である。例えば、試料は、尿、糞便、毛髪、汗、唾液、血液または涙を含み得る。本発明者らは、VOCが、血液内に見られる他の化合物の分解生成物であると考えている。一実施形態では、血液試料は、シグネチャー化合物のレベルについて直ちにアッセイされ得る。あるいは、血液は、低温で、例えば、冷蔵庫内で保存されてもよいか、またはシグネチャー化合物の濃度が決定される前に凍結されてもよい。身体試料中のシグネチャー化合物の測定は、全血または処理血液に対して行われ得る。
【0053】
他の実施形態では、試料は尿試料であり得る。身体試料中のシグネチャー化合物の濃度は、対象から採取された尿試料からインビトロで測定されることが好ましい。化合物は、尿試料から発出するガスまたは蒸気から検出され得る。尿から放出された気相中の化合物の検出が好ましいことが理解される。
【0054】
「新鮮な」身体試料は、対象から採取された直後に分析され得ることも理解される。あるいは、試料は、凍結および保存されてもよい。次いで、試料は、除霜され、後日分析されてもよい。
【0055】
ただし、最も好ましくは、身体試料は、試験対象由来の呼気試料であり得る。試料は、好ましくは経鼻吸入後に、口および/または鼻を通して呼息を行う対象によって収集され得る。好ましくは、試料は、対象の肺胞気を含む。好ましくは、終末呼気(end-expiratory breath)を捕捉することによって、死腔気上に肺胞気を収集した。次いで、チューブに呼気を移すことによって熱的脱着チューブ上に呼気バッグからのVOCを好ましくは予備濃縮した。
【0056】
したがって、好ましい実施形態では、C1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、C1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、またはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度は、呼気試料に対して分析される。いくつかの実施形態では、プロピオン酸プロピル、酢酸アリル、メチル2-ブチノエート、1,3-ジオキソラン-2-メタノール、2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール、シクロプロパン、3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエン、ジメチルスルフィド、2-フェノキシ-エタノール、1-ウンデカノール、フェノール、もしくは3-エチル-ヘキサン、またはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度は、呼気試料に対して分析される。好ましくは、3-エチル-ヘキサンの濃度は、呼気試料に対して分析される。
【0057】
第1の態様の方法または第3の態様の装置におけるシグネチャー化合物の濃度の差は、参照と比較した増加または低下であり得る。実施例に記載されるように、本発明者らは、結腸直腸癌に罹患した多数の患者におけるシグネチャー化合物の濃度をモニタリングし、それらを結腸直腸癌に罹患していない個体(すなわち、参照または対照)におけるこれらの同じ化合物の濃度と比較した。本発明者らは、結腸直腸癌に罹患している患者では、これらの化合物の濃度の統計学的に有意な増加または低下があったことを実証した。
【0058】
結腸直腸癌に罹患している患者におけるシグネチャー化合物の濃度は、多数の要因、例えば、癌がどの程度進行しているか、ならびに対象の年齢および性別に大きく依存することが理解される。結腸直腸癌に罹患していない個体におけるシグネチャー化合物の参照濃度はある程度変動し得るが、所与の期間にわたって平均して、濃度は実質的に一定である傾向があることも理解される。さらに、結腸直腸癌に罹患している個体のある群におけるシグネチャー化合物の濃度は、結腸直腸癌に罹患していない個体の別の群におけるその化合物の濃度と異なり得ることを理解されたい。ただし、癌に罹患していない個体におけるシグネチャー化合物の平均濃度を決定することが可能であり、これは、シグネチャー化合物の参照または「正常な」濃度と呼ばれる。正常な濃度は、上述の参照値に相当する。
【0059】
一実施形態では、本発明の方法は、呼気試料などの試料内の化学物質の比を決定する(すなわち、その中の他の成分を参照として使用する)ことを好ましくは含み、次いで、これらのマーカーを疾患と比較して、それらが上昇しているかまたは減少しているかを示す。
【0060】
シグネチャー化合物は、好ましくは、発酵プロファイルをもたらす揮発性有機化合物(VOC)であり、様々な技術によって身体試料中に、または身体試料から検出され得る。したがって、これらの化合物は、ガス分析器を使用して検出され得る。シグネチャー化合物を検出するための好適な検出器の例には、電気化学センサ、半導電性金属酸化物センサ、水晶振動子マイクロバランスセンサ、光学色素センサ(optical dye sensor)、蛍光センサ、導電性高分子センサ、複合高分子センサまたは光学分光法が好ましくは挙げられる。
【0061】
本発明者らは、GC-MSまたはGC-TOFを使用してシグネチャー化合物を確実に検出することができることを実証した。検出工程には、専用のセンサを使用することができる。
【0062】
参照値は、統計学的に有意な数の対照試料(すなわち、結腸直腸癌に罹患していない対象由来の試料)をアッセイすることによって得られ得る。したがって、本発明の第3または第4の態様の装置による参照(ii)は、対照試料(アッセイ用)であり得る。
【0063】
装置は、シグネチャー化合物に相当する陽性対照(最も好ましくは容器に提供される)を好ましくは備える。装置は、陰性対照(好ましくは容器に提供される)を好ましくは備える。好ましい実施形態では、装置は、参照、陽性対照および陰性対照を備え得る。装置はまた、必要に応じて、濃度の参照を提供するための「スパイクイン(spike-in)」対照などのさらなる対照と、シグネチャー化合物またはそれらの類似体もしくは誘導体の各々に対するさらなる陽性対照とを備え得る。
【0064】
したがって、本発明者らは、試験対象の結腸直腸癌の存在を示唆する生理学的マーカーとして、参照正常値(すなわち、対照)と増加/低下したレベルとの間のシグネチャー化合物の濃度の差を使用することができることを認識した。対象が、参照対照値におけるその化合物の「正常な」濃度よりもかなり高い/低い、1つ以上のシグネチャー化合物の増加/低下した濃度を有する場合、その化合物の濃度が「正常な」濃度よりもわずかに高い/低い場合よりも、癌、またはさらに進行した状態を有するリスクが高いことが理解される。
【0065】
本発明者らは、試験個体における本明細書で言及されるシグネチャー化合物の濃度が、(実施例に記載される方法を使用して計算した場合に)参照濃度よりも統計学的に高かったことに注目した。これは、本明細書では、シグネチャー化合物の「増加した」濃度と呼ばれ得る。
【0066】
当業者であれば、統計学的に有意な数の対照個体におけるシグネチャー化合物の濃度と、試験対象における化合物の濃度とを測定し、次いで、これらのそれぞれの数字を使用して、試験対象が、化合物の濃度の統計学的に有意な増加/低下を有するかどうかを決定し、したがって、その対象が結腸直腸癌に罹患しているかどうかを推測する方法を理解するであろう。
【0067】
第2の態様の方法および第4の態様の装置では、参照中の対応する濃度と比較した、身体試料中のシグネチャー化合物の濃度の差は、対象の結腸直腸癌を治療剤および外科的切除を用いて治療することの有効性を示す。差は、参照値と比較した、身体試料中のシグネチャー化合物の濃度の増加または低下であり得る。この実施形態では、参照試料は、さらに早い時点で対象から採取された試料である。参照試料は、治療開始前に対象から採取されていてもよい。したがって、方法および/または装置は、治療開始後に対象に改善が生じたかどうかを示し得る。
【0068】
代替的または追加的に、参照試料は、治療開始後に対象から採取される試料を含み得る。いくつかの実施形態では、参照試料は、治療開始後の異なる時点で対象から採取された複数の試料を含み得る。例えば、複数の試料は、1日以上離れていてもよいか、1週間以上離れていてもよいか、1ヶ月以上離れていてもよいか、または1年以上離れていてもよい。例えば、試料は、毎週、毎月または毎年少なくとも1回、少なくとも2回または少なくとも3回、対象から採取され得る。試料は、等間隔またはランダム間隔で採取され得る。複数の試料はまた、治療開始前または治療が開始された後に対象から採取された試料を含み得る。したがって、第2の態様の方法および第4の態様の装置は、改善が進行中であるかどうかを決定することができる。
【0069】
身体試料中の化合物の濃度が参照中の対応する濃度よりも低い実施形態では、これは、治療剤が試験対象の癌を首尾よく治療していることを示し得る。これは、C1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、またはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物に適用され得る。
【0070】
逆に、身体試料中のシグネチャー化合物の濃度が参照中の対応する濃度よりも高い場合、これは、治療剤が癌を首尾よく治療していないことを示し得る。これは、C1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、またはその類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物に適用される。
【0071】
別の態様では、結腸直腸癌に罹患している対象を治療剤または特殊食を用いて治療することの有効性を決定する方法であって、試験対象由来の身体試料中のシグネチャー化合物の濃度を分析すること、およびこの濃度と、結腸直腸癌に罹患していない個体におけるシグネチャー化合物の濃度に関する参照とを比較することを含む方法が提供され、
(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加は、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下は、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆し、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0072】
別の態様では、本発明は、治療剤または特殊食を用いて結腸直腸癌に罹患している対象を治療することの有効性を決定するための装置であって、
(a)試験対象由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度を決定するための手段と、
(b)結腸直腸癌に罹患していない個体由来の試料中のシグネチャー化合物の濃度に関する参照と、を備える装置を提供し、
装置は、
(i)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下、もしくは参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加を同定し、それによって、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが有効であることを示唆するか、または
(ii)参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~12エステル、C3~20シクロアルカン、C3~20シクロアルケン、式(I)のアルコール、式(II)のスルフィド、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の増加、もしくは参照と比較して、試験対象由来の身体試料中のC1~20アルカン、C2~20アルケン、C2~20アルキン、および式(III)のアルコール、もしくはそれらの類似体もしくは誘導体から選択されるシグネチャー化合物の濃度の低下を同定し、それによって、治療剤もしくは特殊食による治療レジメンが無効であることを示唆するために使用され、式(I)、(II)および(III)は、以下であり:
-L-OH
(I)
SR
(II)
R4-L-L-OH
(III)
式中、Rは、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
およびRは、独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、
は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、3~12員複素環または5~12員ヘテロアリールであり、
は、存在しないか、またはO、SもしくはNRであり、
は、存在しないか、またはC1~6アルキレン、C2~6アルケニレンもしくはC2~6アルキニレンであり、
は、HまたはC1~6アルキル、C2~6アルケニルもしくはC2~6アルキニルである。
【0073】
本明細書に記載のすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで上記の態様のいずれかと組み合わされ得る。
【0074】
本発明をさらによく理解するために、および本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、ここで、例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】CRC患者(n=162)および非CRC患者(n=1270)由来の検出されたあらゆるVOCを使用した、CRCの予測のための受信者動作特性(ROC)曲線を示す。ROC下面積は0.87である。
図2】非CRC患者からCRC患者を決定する際の15個の有意なVOCの予測力を示すROC曲線を示し、曲線下面積は0.83である。
図3A】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのエステルの存在量を示す。
図3B】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのエステルの存在量を示す。
図3C】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのエステルの存在量を示す。
図3D】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのエステルの存在量を示す。全4つのエステル、プロピオン酸プロピル(VOC1、図3A)、酢酸アリル(VOC8、図3B)、酢酸アリルと重複するエステル(VOC9、図3C)、およびメチル2-ブチノエート(VOC12、図3D)は、CRCを有しない患者と比較してCRCを有する患者の呼気中の方に高い存在量を示した。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
図4】呼気中のジメチルスルフィドの存在量が、CRCを有しない患者と比較してCRCを有する患者では有意に高かったことを示す。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
図5A】非CRC患者対CRC患者の呼気中の3つのアルカンの存在量を示す。
図5B】非CRC患者対CRC患者の呼気中の3つのアルカンの存在量を示す。
図5C】非CRC患者対CRC患者の呼気中の3つのアルカンの存在量を示す。アルカン(VOC3、図5A)、アルカン(VOC11、図5B)および3-エチル-ヘキサン(VOC15、図5C)はいずれも、CRCを有しない患者と比較して、CRCを有する患者の呼気中に有意に低い存在量で存在した。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
図6A】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのアルコールの存在量を示す。
図6B】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのアルコールの存在量を示す。
図6C】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのアルコールの存在量を示す。
図6D】非CRC患者対CRC患者の呼気中の4つのアルコールの存在量を示す。1,3-ジオキソラン-2-メタノール(VOC4、図6A)および2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール(VOC10、図6C)は、CRCを有しない患者と比較して、CRCを有する患者の呼気中に有意に高い存在量で存在することが分かった。2-フェノキシ-エタノール(VOC5、図6B)および1-ウンデカノール(VOC13、図6D)は、CRC患者の方が存在量が低いことが分かった。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
図7】CRCを有しない患者と比較してCRC患者の呼気中のフェノール(VOC14)の存在量が少なかったことを示す。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
図8A】非CRC患者対CRC患者の呼気中の2つの非芳香族環状炭化水素の存在量を示す。
図8B】非CRC患者対CRC患者の呼気中の2つの非芳香族環状炭化水素の存在量を示す。シクロプロパン(VOC6、図8A)および3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエン(VOC7、図8B)はともに、CRCを有しない患者と比較して、CRCを有する患者の呼気中に有意に高い存在量で存在した。中央値は実線の水平線によって表され、ひげは最小値および最大値を表し、箱は四分位範囲を表す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
表1は、1444例の患者の大腸内視鏡検査での診断を示す。
【0077】
表2は、含めた患者の背景因子を主な病態群別に示す。
【0078】
表3は、TDチューブ保存時間(日)を示す(n=1432)。
【0079】
表4は、ランダムフォレスト(RF)およびANOVA特徴選択(ANOVA feature selection)に従ってランク付けされた、CRC患者(n=162)と陽性対照患者および陰性対照患者全例(n=1270)との区別に寄与する上位の識別特徴のリストを示す(各方法からの上位25個の特徴を列挙する)。
【0080】
表5は、統計的スコアリングとともに、CRCバイオマーカーである可能性があるものとして定義された上位15個のVOCの実施形態を示す。
【0081】
表6は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定された4つの有意なエステルの存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0082】
表7は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定されたジメチルスルフィドの存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0083】
表8は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定された3つの有意なアルカンの存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0084】
表9は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定された4つの有意なアルコールの存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0085】
表10は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定されたフェノールの存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0086】
表11は、CRCを有する患者(n=162)とCRCを有しない患者(n=1270)との間でTD-GC-MSによって測定された2つの有意な非芳香族環状炭化水素の存在量(ピーク面積カウントで測定)を示す。
【0087】
[実施例]
本発明者らは、結腸直腸癌(CRC)および腺腫性ポリープの予測のための、呼気中に存在する揮発性有機化合物(VOC)の使用を調査した。
【0088】
この試験の目的は、(i)大腸内視鏡検査を用いて診断された、CRC、腺腫性ポリープ、結腸の良性疾患を有する患者、および結腸疾患を有しない患者の大規模コホートから呼気VOCを収集および比較すること;(ii)VOCを極微量レベルで検出することを可能にする技術を使用すること;(iii)診断モデルを構築することによって、良性疾患または正常な結腸を有する対象と比較して、CRCおよび腺腫性ポリープを有する患者の群を対象とした呼気検査の診断精度を調査すること;ならびに(iv)任意の有意なイオンを同定し、生物学的に特性評価することであった。
【0089】
材料および方法
倫理的承認
Colorectal Breath Analysis(COBRA)試験は、2017年4月28日にRECによって承認され(17EE0112)、2017年5月2日にHRAによって承認された(East of England-Essex REC)。治験依頼者の承認を得て、7つの参加病院すべてで施設特異的評価も行った。
【0090】
English Bowel Cancer Screening Programme(BCSP)に登録された患者から呼気を採取するために、COBRAは、BCSP Research Advisory committeeから特定の承認を受けた(BCSP ID189、2017年1月18日に承認)。さらに、COBRAは、National Institute of Health Research(NIHR)のポートフォリオに採用された。これにより、NIHR所属のリサーチナースによる登録が可能となった。
【0091】
この試験は、第18回世界医師総会(ヘルシンキ、1964)およびその後の改訂版によって採用された被験者に関する研究に関与する医師のための勧告に従って行われた。
【0092】
方法
COBRAは、2017年6月5日から3年間にわたって、ロンドンの7つの病院での二次医療で、結腸直腸検査を受けた患者の呼気を採取するようにデザインされた前向き非無作為化コホート試験であった。
【0093】
適格基準
書面によるインフォームドコンセントを提供することができた、ルーチンの臨床ケアの一部として下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)を受けた、または組織学的に確認された結腸直腸腺癌の待機的切除を受ける予定の18歳~90歳の参加者を適格とした。
【0094】
除外基準
インフォームドコンセントを提供する能力が欠如しているか、またはインフォームドコンセントを提供することができなかった患者、および18歳未満または90歳を超える患者。
【0095】
患者選択-内視鏡検査ユニット
4つの参加しているロンドンベースのBCSP内視鏡検査センターのうちの1つの内視鏡検査ユニットで計画された大腸内視鏡検査を待っている間、患者を試験に参加するように促した。BCSP大腸内視鏡検査を待っている患者に優先的に打診し、これは、結腸ポリープを有する可能性が約40%であり[13]、CRCの可能性が一般集団よりも高いと推定されたためである(全BCSP参加者が試料採取時に定義上便潜血検査陽性であったと仮定する)。ただし、2週間待機(2WW)または監視大腸内視鏡検査に参加している患者を含む、大腸内視鏡検査に参加している他の患者も適格であった。内視鏡検査ユニットで試料採取された患者は、その日の前に事前選択されず、患者は来場時に試料採取され、試験主催者も呼気試料採取者も、試料採取前に患者の病歴または記録のいずれも見ていなかった。患者はいずれも、通常の医療従事者による臨床的な根拠に基づいて大腸内視鏡検査のために紹介されていたか、またはBCSPの一部として参加していた。患者はいずれも、絶飲食とし、通常の内視鏡検査ガイドラインに従って最低6時間絶食させた。内視鏡検査処置室に入る前に、他の患者から離れた横の部屋で、座った姿勢の患者に対して試料採取を行った。これは、内視鏡検査室自体に存在する鎮静薬または麻酔薬喉スプレーの影響を回避するために行った。
【0096】
患者の選択-手術室
腫瘍の近い将来の外科的切除が計画された、現在活動性のCRC、具体的にはインサイチュ(結腸内)の結腸直腸腺癌を有することが知られていた患者の追加のコホートに、試験について打診した。これらの患者は、ロンドンの3つの参加病院のうちの1つで特定された。含めた患者は手術時に化学療法を受けていなかった。患者に手術の朝に打診して、手術前に呼気試料が得られるかどうかを尋ねた。患者はいずれも、絶飲食とし、通常の手術室ガイドラインに従って最低6時間絶食させた。他の患者から離れて、手術室から分離された外科学教室の横の部屋で、座った姿勢の患者に対して試料採取を行った。呼気試料はいずれも、麻酔処置または外科的処置の前、麻酔室に移送する前に回収した。
【0097】
呼気試料収集
内視鏡検査または手術室から登録されたかどうかにかかわらず、同一の様式で患者に対して試料採取を行った。呼気検査は、公開された最適化された設定[14]に従って、ReCIVA(商標)CEマークの手持ち式呼気検査装置(Owlstone,Medical Ltd,Cambridge,UK)に取り付けられた滅菌ゴム製フェイスマスク(使い捨て)を着用しながら参加者が通常の呼吸を行うことを伴った。要約すると、呼息中、内蔵ポンプを使用して、200ml/分の流量で、チューブ当たり500mlの最終容量を有する4つの熱的脱着(TD)チューブ(Markes International,Llantrisant,UK)を介してマスクから呼気を同伴させた(二酸化炭素レベルの上昇によって引き起こされる)。TDチューブには、VOCを保持するように設計されたCarbograph/Tenax吸着相を充填した。呼気画分について「全呼気」設定を選択した。呼気検査(約5分間続いた)の後、呼気VOCがTDチューブ内の吸着剤に捕捉され、脱着し漏れ出ることができないことを確実にするために、特定のスパナを用いて真鍮キャップを各端部にねじ込むことによってTDチューブを密封した。研究者らはまた、臨床詳細フォームに記入し、過去の病歴、肥満度指数(BMI)、投薬、ならびに喫煙状態および最後の食事などの重要な情報を詳述した。次いで、4つのキャップ付きTDチューブのセットをプラスチック製の密封試料採取バッグに入れ、固有の試験識別子、ならびに採取の日付、時間および場所をラベル付けした。
【0098】
検体分析
2つの質量分析技術、すなわち、プロトン移動反応質量分析(PTR-MS)およびガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を使用して、呼気VOCを分析した。各患者から得られた4つのTDチューブのうちの3つをPTR-MSを使用して(3つの異なる試薬イオンH、NO、O を使用して)分析し、GC-MSを使用して1つのTDチューブを分析した。Markes TD-100(Markes Ltd,Llantrisant UK)TDユニットと組み合わせて、5977A MSDを有するGC-MS Agilent 7890B GC(Agilent Technologies,Cheshire,UK)を使用した。50ml/分の一定流量のヘリウムと、低温トラップシステムとを使用する(U-T12ME-2S、Markes International Ltd,Llantrisant,UK)二段階脱着法を用いて、GC-MS分析を行った。次いで、試料を200°Cに加熱したキャピラリーによってGCシステムに移した。化合物分離に使用したクロマトグラフィーカラムは、Zebron ZB-642キャピラリーカラム(60m×0.25mm ID×1.40μm df;Phenomenex Inc,Torrance,USA)であった。
【0099】
MassHunterソフトウェアバージョンB.07 SP1(Agilent Technologies)を使用してGC-MSデータを抽出し、カスタム設計の社内で構築されたソフトウェアMSHubを使用してさらに分析を行った[15、16]。NIST質量スペクトルライブラリ(National Institute of Standards and Technologyバージョン2.0)を使用して、VOCピーク同定を行った[17]。
【0100】
GC-MSは、呼気中のVOCを分析するためのゴールドスタンダードと考えられている。このため、本発明者らは、高い信頼性および良好なVOC同定性能を特徴とするこのプラットフォームを使用することを選択した。PTR-MSは、環境研究に使用される新規な技術である。PTR-MSは、ハイスループットと、リアルタイムの結果とを特徴とする。GC-MSとは対照的に、PTR-MSは、外部較正を必要とせずに、化合物の直接的な定量を提供する。これらの態様は、この2つの技術を相補的に使用する。GC-MSは信頼性の高い化合物同定を提供し、PTR-MSはハイスループット分析および定量的結果を提供する。このため、GC-MSを「発見」技術として使用し、PTR-MSを高速リアルタイム法を提供するために使用した。バイオマーカー同定の目的では、GC-MSデータのみを考察する。ReCIVA(登録商標)呼気試料採取器は、4つの呼気試料を同時に収集する能力を有し、患者に対して追加の呼気採取時間を追加することなく2つの質量分析プラットフォームを使用することを可能にする。
【0101】
データ分析
背景因子および臨床データ
連続変数についてはマン・ホイットニーのU検定、離散変数についてはχ検定を使用して、CRC群および対照群にわたる潜在的な交絡因子を評価した。P<0.05を使用して統計学的有意性を割り当てた。この統計分析は、統計ソフトウェアSPSS(バージョン25、IBM)を使用して行った。
【0102】
呼気VOCデータ
Imperial College Londonで作成されたカスタムメイドのスペクトル処理プログラムであるMSHubを用いて、TD-GC-MS分析からの生データを処理した[15、16]。これは、Global Natural Product Social Molecular Networking(GNPS)環境内で使用するためのデータセットベースのスペクトルデコンボリューションツールであった。MSHubが生データを処理する工程は、試料内/試料間質量ドリフト補正、ノイズフィルタリングおよびベースライン補正、試料間ピークアライメント、ピーク検出および積分、NMFデコンボリューション、次いでピークデコンボリューションであった[15、16]。これにより、番号付けされた特徴としてラベル付けされた複数のイオン(またはVOC)、それらの保持時間、および各患者の呼気試料中の各特徴のピーク面積カウントからなる出力が得られた。すべての特徴がすべての試料に存在するわけではなかった。さらに、少数の試料に存在する、所与の保持時間の総ピークのごくわずかな割合を構成するイオンであるいくつかの特徴が同定された。総ピークの20%未満を構成するイオンを統計分析に含めたが、異なる臨床患者群の比較における上位の差別化特徴のリストでは考慮しなかった。電位同定のためのオンラインNISTライブラリを使用して、得られたスペクトルからの標的イオンをマッチングした[17]。MSHubは、GCデコンボリューションのために1層ニューラルネットワークを利用し、これにより、(一度に単一のスペクトルではなく)データセット全体にわたって情報を抽出することが可能になり、したがって、データ内の全スペクトル情報が利用され、これは、大規模試験では特に成功している戦略である。
【0103】
統計分析
単変量データ分析技術および多変量データ分析技術の両方を結果に適用して、(i)群間の最良の識別能力を有するVOC成分を同定し、(ii)多変量識別分析モデルを開発した。
【0104】
マン・ホイットニーのU検定を使用して、選択された群、すなわち、CRC群と非CRC群との間で測定されたVOCレベルを比較するか、または試料採取環境、もしくは腫瘍の解剖学的部位などの潜在的な交絡因子を調査した。p値<0.05を統計学的有意性を示すレベルとした。
【0105】
ノンパラメトリック(クラスカル・ウォリス)ANOVA検定を使用して、全7つの含めた試験病態群(大腸内視鏡検査結果による診断に従ってグループ分けした)間で測定されたVOCレベル(イオンとして表されるVOC)を比較した。これは、7つの患者群のいずれかが、群間を差別化する点で統計学的に有意なVOCの存在量を含有するかどうかを決定するために行われた。p値<0.05を統計学的有意性を示すレベルとした。この基本的な統計分析は、統計ソフトウェアSPSS(バージョン25、IBM)を使用して行った[18]。
【0106】
ピアソンの相関係数(絶食時間の場合)を用いて、および腫瘍T期比較の場合、VOC存在量の傾向をプロットすることによって、VOC存在量に対する何らかの交絡影響、例えば、絶食時間および腫瘍T期を確立するためのさらなる調査を必要とする臨床パラメータを調査した。これは、SPSS(バージョン25、IBM)およびMicrosoft Excel v16.43を使用して行った。
【0107】
機械学習予測モデル
Imperial College Londonの高性能コンピュータ設備を利用して機械学習パイプラインを実行して、各患者の呼気試料中の未同定の特徴(各試料で1024個の特徴を同定した)の全存在量データと、各患者の広範囲なメタデータとを処理した。データを正規化し、分散を安定化し、機械学習パイプラインの一部として対数変換した。ランダムフォレスト、アルファネット、SVM、ラッソおよびelastic機械学習予測方法を独立して使用して、病態群のあらゆる組合せおよび順列を比較した。年齢がVOCデータを交絡させているかどうかを調査するために、40~59歳、45~65歳、50~69歳および70~89歳の患者、ならびに全年齢の患者についても同じ分析を繰り返した。予測モデルでは、群間の広範囲の臨床変数を考慮に入れた。これらには、患者因子、すなわち、年齢、絶食時間数、BMI、民族的起源、性別、喫煙状態、毎週のアルコール摂取、大腸内視鏡検査/外科的切除前に摂取した腸用調製物の種類、およびCRCの家族歴を含めた。試料採取関連因子、すなわち、試料採取前にTDチューブを洗浄した方法(標準TC20調整ユニットを使用するか、またはPTR-MS機器自体を使用する)、調整から呼気採取までのTDチューブの保存時間、MS分析までの試料採取後の保存時間、およびTDチューブを冷凍庫に保存した日数(該当する場合)も含めた。転帰に直接関連する因子、例えば、大腸内視鏡検査の理由、試料採取場所、および大腸内視鏡検査所見に関連する任意のデータを予測モデルから除外した。回答が不均一すぎることから、過去の病歴および投薬の詳細はモデルに入力しなかった。
【0108】
受信者動作特性(ROC)曲線を使用して、結腸直腸疾患を有する者と有しない者とを分類する際の診断検査の精度を決定した。25回の実行、すなわち、分割間の再シャッフリングを伴う5倍層別化K倍分割の5回の反復に基づいて、ROC曲線を生成した。これは、試料をシャッフルし、次いで、5つの群に分割したことを意味する。次いで、各群を試験セットとして順に使用したのに対して、他の4つは訓練セットであった。特徴選択およびモデル構築(機械学習)を毎回訓練セット(データの80%)に対して行い、次いで、試験セット(データの20%)に適用して統計を生成した。これを5回繰り返し、次いで、様々な実行からの結果を平均して、ROC曲線および誤差推定値を得た。この分析方法を選択したため、データを分割するたびに、有意な特徴の選択はわずかに変動した。
【0109】
予測/有意な特徴として任意の所与の特徴が選択された平均回数を特徴選択スコアとして表示した。データがどのように分割されたかにかかわらず、特徴が差別化特徴となるように独立して選択された場合、選択スコアはさらに高くなる。したがって、スコアが高くなることは、当該の特徴が、偶然の発見とは対照的に、CRCと非CRCとに関する真の特徴差別化マーカーである可能性がさらに高いことを意味した。
【0110】
さらに、ランダムフォレスト(RF)法の場合、各特徴が予測モデルに与える寄与度をRFスコアによって表した。予測モデルの生成に寄与するあらゆる特徴のスコアは、常に合計1になる(定義による)。したがって、最も高いスコアリング特徴は、比較群を差別化することに関して最も重要であることを表した。その特徴(ジニ重要度としても知られる)によってもたらされる基準の正規化された総減少を計算することによって、スコアを計算した[19]。
【0111】
結果
患者群の割当て
患者が参加日に受けた大腸内視鏡検査の所見に従って、患者をグループ分けした。良性病態群は、軽微な非炎症性所見、すなわち、痔核、良性非炎症性肛門裂傷、憩室性疾患または良性憩室狭窄を有した。炎症性腸疾患(IBD)群は、いずれかの重症度の潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、不明の大腸炎、または感染性大腸炎からなった。一部の患者は、その記録ではIBDの病歴を有したが、大腸内視鏡検査では正常であり、生検も正常であった。これらの患者を正常群に割り当てた。British Society of Gastroenterologyのポリープ監視ガイドライン2002、および2017年の無茎性鋸歯状ポリープに関するさらに近年のガイダンス[20、21]から採用された基準を使用して、ポリープをCRCの発生の高リスク、中リスクおよび低リスクに層別化した。
【0112】
低リスクポリープ患者は、低悪性度の異形成を伴う1~2個の小さい(1cm未満)管状腺腫、または異形成を伴わない1cm未満の無茎性鋸歯状ポリープ(SSP)を有する患者であった。中リスクポリープ患者は、低悪性度の異形成を伴う3~4個の小さい管状腺腫、または低悪性度の異形成を伴う1cm超の少なくとも1つの腺腫、または異形成を伴わない1cm超のSSPを有する患者であった。高リスクポリープ患者は、5個以上の腺腫、または少なくとも1つが1cm以上である3個以上の腺腫、または高悪性度の異形成を伴う何らかの腺腫、または何らかの絨毛変化を伴う何らかの腺腫(腺管繊毛腺腫を含む)、または異形成の証拠を伴う何らかのSSPを有する患者であった。
【0113】
CRC患者はいずれも結腸直腸腺癌を有し、腫瘍のサイズ、部位、グレードおよびTNM期を記録した。ポリポーシス患者は、ポリポーシスの既存の診断(結腸切除術が拒絶された家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、鋸歯状ポリポーシス、リンチ症候群、若年性ポリポーシスまたはMUYTH関連ポリポーシス)を有する患者であった。これは、一部の患者ではその日の大腸内視鏡検査で100個を超えるポリープが存在していたが、他の患者は、主に非常に頻繁な監視およびポリープ切除のために1つまたは2つのポリープしか有さず、かなりの数の患者が既に結腸の一部の切除を受けていたため、不均一な患者群であった。一部の患者は、上部消化管ポリープも有した可能性があった。この群内の大腸内視鏡検査所見のばらつき、および多くのポリープを有する患者ではCRCを確実に除外することが困難であることから、ポリポーシス群を統計分析から除外した。
【0114】
大腸内視鏡検査所見
GC-MSによって、1444例の患者の呼気試料を分析した(診断については表1を参照)。162例がCRC(11%)を有し、631例(43.7%)がポリープを有した。上記で説明したように、ポリポーシス群は小さく、非常に不均一であったため、その後の分析から除外した。したがって、1432例の患者を統計分析に含めた(特に明記しない限り)。
【0115】
最も顕著な所見に従って、大腸内視鏡診断を決定した。診断群の階層は、CRC、ポリポーシス、高リスクポリープ、中リスクポリープ、低リスクポリープ、IBD、良性病変、正常であった。これは、患者がIBDおよびポリープを有する場合、それが活動性IBDであるかどうかにかかわらず、患者が適切なポリープ群に入れられたことを意味する。同様に、高リスクポリープに分類された患者は、憩室症または痔核を有する可能性もある。活動性IBDは呼気中のVOCを変化させ得ることが知られており[22]、そのため、これは交絡因子であり得るが、実際にはポリープとIBDとの間の交差はほとんどなく、13例の患者に影響を及ぼしたのみであった。
【0116】
背景因子
対照群(n=1270)には、CRC群(n=162)との統計的比較のために組み合わせた全陽性対照および全陰性対照を含めた。この試験の登録者の57.8%は男性であり、CRC群と対照群との間で性別分布に有意差はなかった。CRC患者は、それぞれ63歳と比較して66.5歳で、対照患者よりも有意に高齢であった(p<0.001)。患者の大部分は英国またはヨーロッパ系の白人であり、大部分は非喫煙者であり、アルコールを現在消費しており、BMIの中央値は26であった。CRC群と対照群との間でこれらの変数の分布の間に統計学的に有意な差はなかった。CRC群および対照群の絶食時間の中央値は類似していたが、群間に統計学的に有意な差があり、CRC群の方が短い時間絶食した(p<0.001)。大部分の患者は、大腸内視鏡検査または手術室での処置の前に腸用調製物としてMoviprepを服用した。主に、比較的狭い範囲の腸用調製物を手術室前患者に使用したため、および37例のCRC患者が呼気検査前に腸用調製物を服用しなかったため、癌群と対照群との間で腸用調製物分布に有意差があった(p<0.001)。「大腸内視鏡検査/来院の理由」および「試料採取された場所」の結果は、有意な割合のCRC患者が手術室からの登録に由来したため、CRC群と対照群との間で統計学的に有意であった。
【0117】
内視鏡検査ユニットでは、試験は、主にBCSP患者を対象とした。BCSP大腸内視鏡検査では30個のCRCが検出され、BCSP患者からのCRC捕捉率は4.5%であり、文献よりも低かった[13]。これは、2WW患者群のCRC捕捉率よりもわずかに低かった(96の大腸内視鏡検査のうち5=5.2%)。他のCRCは、監視(n=3)、緊急症状(2WWではない)(n=4)、およびポリープ除去群の再スコープ(re-scope)(n=1)で検出され、日常的な症状群では検出されなかった。試験のために事前に特定され、強化されたコホートを表す癌症例の残り(n=119)については、手術室前に試料採取した。予測通り、BCSP群およびポリープ監視群から、最も多くのポリープ患者が得られた。ポリープ捕捉率はBCSP患者では63%であり、文献よりも高かった(この計算には、大腸内視鏡検査でポリープも認められた17例のBCSP診断CRC患者を含めた)[13]。
【0118】
過去の病歴および投薬使用も記録した。CRC群では、過去にCRCを有した患者の数に統計学的に有意な差があった。したがって、これらの13例の患者は、CRC内腔再発を示した(場合によっては腸外の再発に加えて)。CRC群に関する他の統計学的に有意に増加した併存症因子は、既知の心疾患の有病率、緩下剤の使用、最近の抗生物質の使用、およびワルファリン(または他の抗凝固薬)の使用であった。他の併存症および使用された投薬は、CRC群と対照群との間で同等であった(表2を参照)。
【0119】
結腸直腸癌患者の臨床詳細
CRC患者全例について、癌特異的詳細を記録した。大部分のCRCは左側(62%)であり、半数超(64%)が末期癌T3およびT4であり、主にNスコアが0~1であり、主に転移がなかった。腫瘍のサイズの範囲は、6mm~130mm、サイズの中央値は38.5mm(最大腫瘍直径)であった。80%が中等度に分化した腺癌であった。
【0120】
CRCの診断経路は、CRCがどの病期であったかに影響を及ぼした。BCSPでは、捕捉されたCRCはT期に関して非常に均一に分布していたが、早期癌の割合はこの群では他のどの群よりも高かった(BCSP癌の48%がT期1または2であった)。これは、手術室経路を介して登録されたCRC患者とは対照的であった。これらの患者は症候性である傾向があり、非常に高い割合(72%)がT期3または4の癌を有した。これは、BCSPが無症候性個体に対して大腸内視鏡検査を行うことを目的としていることを考慮すると、予測される所見であった。CRCと診断された患者では、その年齢は、その患者が診断されたT期と必ずしも相関していないようであった。
【0121】
試料処理時間
試料採取前の洗浄したTDチューブの保存時間、およびGC-MSによる分析前のTDチューブを用いた呼気試料の保存時間を表3に詳述する。全試料について、採取前(p=0.84)または採取後(p=0.93)のTDチューブの保存に関して、クラスカル・ウォリス比較(IBM、SPSS統計バージョン25)では7つの病態群間に有意差はなかった。採取前にTDチューブを凍結しなかったが、採取後、機器の停止時間/利用不可能のため、分析前に199個のTDチューブを1~114日間(中央値17日、標準偏差40日)凍結した。凍結チューブについても、CRC群と対照群との間で採取後保存時間に有意差はなかった(p=0.23)。患者試料に使用したチューブ(患者1例当たり4つのチューブ)はいずれも、常に同時に調整/洗浄した。
【0122】
初期単変量統計の結果
呼気中の1024個の特徴(VOC)を同定し、それらのピーク面積カウントをMSHubプログラムによって集計した[15、16]。
【0123】
まず、クラスカル・ウォリス検定を行って、7つの患者群のいずれかが、群間を差別化する点で統計学的に有意なVOCの存在量を含有するかどうかを決定した。差別化のために291個のイオンを見出した(p<0.05)。
【0124】
CRC(n=162)患者対対照(n=1270)患者について、マン・ホイットニーのU分析を行った。差別化のために336個の特徴(イオン)を見出した(p<0.05)。クラスカル・ウォリス検定によって識別的であるとして検出された特徴の95%が、マン・ホイットニーのU分析によって見出された特徴と重複しており、ほとんどの場合、癌群が有意差を構成していることが示唆された。したがって、臨床メタデータも変数として組み込んだ高度な機械学習予測モデルを使用して、各群を詳細に調べた。
【0125】
機械学習予測モデルの結果-CRC対非CRC
行われた第1の機械学習分析では、GC-MSデータを使用して、CRC患者(n=162)由来のあらゆる検出されたVOCと、非CRC(対照)患者(n=1270)由来のあらゆる検出されたVOCとを比較した。CRC対非CRCの予測のための最も強力なモデルは機械学習elastic法であり、これにより、0.77(+-0.02)の感度、0.87(+-0.01)の特異度、0.97(+-0.00)の陰性適中率、および0.86(+-0.01)の精度でCRC患者を予測することができた。受信者動作曲線下面積(ROC)は0.87(+-0.01)であった。図1を参照されたい。
【0126】
陽性対照および陰性対照の両方から非CRC患者群を構成した。陰性対照(内視鏡検査で正常な結腸を有する)には357例を含めた。内視鏡検査で良性疾患、IBDまたは低/中/高リスクポリープを有する陽性対照には913例を含めた。
【0127】
図1のこのROC曲線は、再シャッフリングを伴う5倍層別化K倍分割の5サイクルの交差検証法の結果に基づいて計算した。これは、ROC曲線が、それぞれわずかに異なる特徴選択および機械学習モデルを有する個々の実行からのROC曲線の平均(average)(平均(mean))であったことを意味する。個々のサイクルごとの曲線下面積(AUC)が要所に示されている。機械学習アルゴリズムによって決定された場合、最大99個の特徴を使用してこのROC曲線が生成され、「特徴」は、個々のイオンだけでなく、個々の臨床変数、すなわち、各群の分離に寄与した任意の成分も指す。使用された特徴の数は、RF選択スコア(任意の所与の特徴が方法のために選択された平均回数)によって実証され、1のスコアは、当該の特徴が100%の確率で選択されたことを意味する。
【0128】
上位25個の化学的特徴、およびCRC対非CRCの最も高い識別スコアを達成した2つの臨床的特徴を表4に列挙する。これらは、ROC曲線の作成に最も大きく寄与した特徴であった(図1)。RF選択およびANOVAの両方を使用して特徴をランク付けしたため、どの方法を選択したかに応じて上位25個のイオンのリストがわずかに異なっていた。これは、ANOVAは各特徴を一度に1つずつ処理し、特徴相互相関または他の情報を考慮に入れなかったが、RFは特徴の集合全体に基づいてモデルを構築し、したがって、特徴相互作用を考慮に入れることができたため、予測された。両リストの特徴を照合した。得られた質量スペクトルを、NISTデータベースによって示唆された可能な一致と比較することによって、特徴を同定した[17]。2つの質量スペクトルがイオンの同じ分布および強度を示した場合、これは一致しており、化合物を良好な信頼度で同定することができた。不完全であるが近いスペクトル一致がある場合、化合物同定は暫定的であった。
【0129】
GC-MS分析デコンボリューション中、任意の所与の保持時間で、異なる断片化パターンを有する2つ(またはそれ以上)のピークにピークを分割することができた。表4の「ピークのパーセンテージ」の列は、この新たなデコンボリューションされたピークによって元のピークがどれだけ説明されたかを示している。パーセンテージが低いほど、このピークの寄与が少なく、分解が少なかった。値が100%であれば、単一のピークが存在し、完全に分解された。元のピークの20%未満に寄与したピークは除外した。
【0130】
2つの異なる機械学習予測モデル(ANOVAおよびRF)からの25個の上位の癌差別化イオンの構成リスト(表4)から、短いリストを作成した。以下の基準により、これらの短い列挙されたイオンを手動で選択した:(i)内因性と見なすことができた(ii)CRCへの関与を説明し得る生理学的役割を有した。3-メチル-ブタンニトリルは、タバコ植物に存在するために潜在的に重要な化合物とは考えられず[23]、COBRAデータセットの照合につながった。マン・ホイットニーのU検定を使用して非喫煙者(n=781)と比較して、喫煙者(n=185)では、この化合物は有意に高い存在量で存在した(p=000009)。NISTライブラリを使用したこの化合物の同定は、本発明者らが良好なスペクトル重複を得たため、良好な信頼度を示した。したがって、3-メチル-ブタンニトリルは、潜在的なCRCマーカーとして除外された。表5は、さらなる調査のための潜在的なVOCバイオマーカーとして提示された15個のイオンをそれらの統計的スコアリングとともに詳述している。データセットにこれらの上位15個の特徴のみを分離して適用すると、0.83のAUCおよび0.79~0.86の95%信頼区間を有するROC曲線が得られた(図2を参照)。
【0131】
CRC対結腸直腸病理分析なし
CRC群(n=162)対正常/良性結腸直腸病態群のみ(n=545)について、上記で行ったのと同じ機械学習分析を繰り返した。この群は、正常な大腸内視鏡検査または良性所見、例えば、痔核、憩室性疾患または良性非IBD関連肛門裂傷のいずれかを有した。興味深いことに、RF選択を使用して得られた上位25個の特徴のうち23個は、上記のさらに大きなCRC対非CRC比較の上位25個の特徴と重複しており、発見されたマーカーが真にCRC特異的であり得、IBDおよびポリープなどの他の結腸直腸病変による影響を受けない可能性があることが示唆された。既存のリストになかった2つの新たなVOCは、CRC対非CRC比較で見られる他のフッ素化化合物と同様にペンタフルオロエタン(表4を参照)、および2-メチル-2-プロパノールであった。CRCについて上位15個の識別イオンの各々を、それらの化学基内で詳細に調べた。
【0132】
エステル
VOC1、8、9および12をプロピオン酸プロピル、酢酸アリル、酢酸アリルと同様の重複するエステル、およびメチル2-ブチノエートとして暫定的に同定した。得られたエステルの4つ全部は、CRCを有しない患者(n=1270)と比較して、CRCを有する患者(n=162)の呼気中に有意に高い存在量で存在した。両群についてイオンピーク面積カウントを表6に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図3A図3Dに示す。
【0133】
硫黄化合物
VOC2をジメチルスルフィドとして同定し、得られた質量スペクトルとNISTデータベースとは良好に一致した。これは、Cの化学式と、63のm/zとを有する。ジメチルスルフィドは、CRCを有しない患者(n=1270)と比較して、CRCを有する患者(n=162)の呼気中に有意に高い存在量で存在することが分かった。両群について2つの試験群について得られたピーク面積カウントを表7に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図4に示す。箱ひげ図は、ジメチルスルフィドの存在量はCRC患者の方が高かったが、いくらかの重複があったことを示す。
【0134】
アルカン
VOC3、11および15をそれぞれ2つの未同定のアルカンおよび3-エチル-ヘキサンとして同定した。これらのアルカンの3つ全部は、非CRC患者よりもCRC患者の方が有意に低かった。ただし、GC-MSを使用した質量スペクトルは(VOC3および11の質量スペクトルによって実証されるように)非常に類似しているため、アルカンを同定することは困難であることは有名であり、そのため、スペクトルのみでは明確な同定を与えることができるほど十分ではない。これを助けるために、C8~C20(オクタン、ノナン、デカンなど)の12個の直鎖アルカンの標準的な混合物をGC-MSによって分析して、同定目的のための特定の保持時間を得た。保持時間は、揮発性と、カラムに対する親和性とに依存し、揮発性化合物が多ければ保持時間が短くなる。アルカン標準の保持時間は、予測通り、分子の揮発性が低くなるにつれて順番にアライメントした。COBRA試験で発見された2つの未同定のアルカンの保持時間ピークは、C13アルカンおよびC14アルカンの保持時間ピークの中間に位置した。これにより、それらがC14アルカンである可能性が非常に高くなるが、分岐した炭素鎖を有し、それらの立体化学のためにわずかに保持性が低いため、それらをC14非分岐アルカンよりもわずかに早くカラムから溶出させる。したがって、結論は、両VOCがC14の分岐鎖アルカンである可能性が高いということであった。
【0135】
3つのアルカンはいずれも、CRCを有しない患者(n=1270)と比較して、CRCを有する患者(n=162)の呼気中に有意に低い存在量で存在することが分かった。2つの試験群について得られたピーク面積カウントを表8に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図5A図5Cに示す。
【0136】
アルコール
VOC4、5、10および13をそれぞれ1,3-ジオキソラン-2-メタノール、2-フェノキシ-エタノール、2,2,4-トリメチル-3-ペンタノール、および1-ウンデカノールとして同定した。これらはいずれもアルコールであり、特にVOC4、5および14の場合、いずれも対応するNISTライブラリ質量スペクトルとの良好な一致を有し、それらの暫定的な同一性をさらに確実にした。
【0137】
VOC4および10は、CRCを有しない患者(n=1270)と比較して、CRCを有する患者(n=162)の呼気中に有意に高い存在量で存在することが分かった。VOC5および13は、CRCでは存在量が低いことが分かった。2つの試験群について得られたピーク面積カウントを表9に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図6A図6Dに示す。
【0138】
フェノール
VOC14をフェノールとして同定した。フェノールは、対照と比較してCRC患者では存在量が低いことが分かった。2つの試験群について得られたピーク面積カウントを表10に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図7に示すエラー!参照元が見つかりません。
【0139】
非芳香族環状炭化水素
VOC6および7をシクロプロパンおよび3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエンとして同定した。シクロプロパンおよび3,4-ジメチル-1,5-シクロオクタジエンはともに、CRCを有しない患者(n=1270)と比較して、CRCを有する患者(n=162)の呼気中に有意に高い存在量で存在することが分かった。2つの試験群について得られたピーク面積カウントを表11に示し、各群における分布の代表的な箱ひげ図を図8Aおよび図8Bに示す。
【0140】
結論
この所見は、呼気中のVOCの数と結腸直腸癌の存在との間の明確な関連を裏付けている。特に、結果は、大腸内視鏡検査のために、または手術室でのCRC切除のために入院している1432例の患者では、陽性対照および陰性対照からあらゆる病期のCRCの存在を検出するために呼気を使用することができることを実証しており、ROC曲線下面積は0.87、感度は77%、特異度は87%、陰性適中率は97%である。
【0141】
表5では、有意なCRCバイオマーカーとして同定された15個のVOCには、ジメチルスルフィド、フェノール、ならびにエステル、アルコール、アルカンおよび非芳香族環状炭化水素化学物質クラスからの化合物が含まれていた。これらの15個のVOCはともに、呼気を使用して、陽性対照および陰性対照からCRCの存在を予測することができ、ROC曲線下面積は0.83であった。したがって、結果は、結腸直腸癌の診断ツールとしての呼気VOC検査の有望な可能性を示し、信頼性が高く非侵襲的なCRCおよびポリープ検出のためのこの革新的で極めて許容可能なツールを臨床診療に実装するのに一歩近づける、さらに大規模な多施設試験の基礎を提供する。
【0142】
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【0143】
【表1】
【0144】
【表2-1】
【0145】
【表2-2】
【0146】
【表2-3】
【0147】
【表2-4】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4-1】
【0150】
【表4-2】
【0151】
【表4-3】
【0152】
【表4-4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
【表8】
【0157】
【表9】
【0158】
【表10】
【0159】
【表11】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】