(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】炭素繊維ロックボルト
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
E21D20/00 F
E21D20/00 J
E21D20/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558253
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 AU2022050261
(87)【国際公開番号】W WO2022198269
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509351568
【氏名又は名称】シーエムティーイー ディベロップメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ホーン、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、スコット
(57)【要約】
炭素繊維ロックボルトであって、一連のトウ繊維を含む外側炭素繊維ロープと、内側コア材料と、を含み、ロックボルトにかかるテンションが所定の限界を超えて増加すると、内側コア材料は空間的に圧縮されるのに対して、カーボンストランドのねじれ角が減少することにより、炭素繊維ロックボルトが伸長し、鋼製のロックボルトに見られる延性が再現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維ロックボルトであって、
一連のトウ繊維を含む外側炭素繊維ロープと、
内側コア材料と
を含み、
前記ロックボルトにかかるテンションが所定の限界を超えて増加すると、前記内側コア材料が空間的に圧縮される、炭素繊維ロックボルト。
【請求項2】
前記炭素繊維ロープは、高伸長エポキシ樹脂が含浸されている、請求項1に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項3】
前記樹脂の伸長度は少なくとも20%である、請求項2に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項4】
前記樹脂の伸長度は約130%である、請求項3に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項5】
前記炭素繊維ロープが、前記ロープ内に軸方向に形成された少なくとも1つの感圧光ファイバを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項6】
前記内側コアは、該内側コア内に形成された一連の空洞を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項7】
前記内側コアが、一連の空洞を有するハニカム状構造を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項8】
前記内側コアが中実材料から形成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項9】
前記内側コアは、3D印刷もしくは押出成形されたポリマーブレンド、強化ポリマーが被覆されたポリマー発泡体、または液体のうちの1つから形成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項10】
前記繊維は、樹脂カプセル、ポンプ注入可能な樹脂、又は機械的アンカーのうちの1つを使用して表面に固定される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルトは、一端にテンショニング部材をさらに含む炭素繊維ロックボルト。
【請求項12】
前記テンショニング部材は、トルクテンショニング部材、油圧ランプ、リグマストもしくはケーブルドラム装置、または膨張可能な発泡体もしくはコアのうちの1つを含む、請求項11に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項13】
前記ケーブルは、封入スリーブもしくはソケット構成、くさび式ロック構成、スエージ加工スリーブもしくはシンブル構成、またはワイヤグリップ型部材のいずれかを使用して終端される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項14】
隣接する炭素繊維フィラメントの撚りの方向が交互になっている、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の炭素繊維ロックボルト。
【請求項15】
炭素繊維拘束装置であって、
一連のトウ繊維を含む外側炭素繊維ロープと、
内側コア材料と
を含み、
前記炭素繊維ロープにかかるテンションが所定の限度を超えて増加すると、前記炭素繊維ロープが軸方向に伸張するため、前記内側コア材料は半径方向に圧縮される、炭素繊維拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維ロックボルト(rock bolt)の改良された形態を提供するためのシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体にわたる背景技術のいかなる議論も、そのような技術が広く知られていること、又は当該技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものと決して見なされるべきではない。
【0003】
一般に、鉱業市場では、各種ロックボルト及び屋根支持システムが市販されており、選択可能である。最も一般的なタイプは、アンカー構成要素と面板とを有する金属ロッドからなるロックボルトである。ボルトの中には、ガラス繊維強化ポリマーから製造されたものもある。それらは、従来の金属ボルトよりも高価であるが、例えば、金属ロックボルトを使用した場合に生じるような損傷から剪断機を保護するために、長壁式炭鉱のパネル側において特別な用途を有する。
【0004】
ロックボルトは、地下採掘において屋根支持及び屋根安定性を提供する一般的な手段である。それらは、典型的には、鋼鉄筋から作られ、一定長で設計されており、異なる引張荷重限界を有し、したがって、制限された可撓性を提供する。
【0005】
これらの一定長のロックボルトに加えて、より長い穴及び他の困難な条件にはケーブルボルトを利用可能である。ケーブルボルトの欠点は、高い引張強度を有するものの、通常、シア応力に耐えるようには設計されていないことである。したがって、技術ギャップがあるため、シア荷重にも耐え、耐食性もある、長穴又は深穴支持システムに対するニーズがある。
【0006】
炭素繊維をロックボルトシステムに組み込むいくつかの提案がある。例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3は、ロックボルトに炭素繊維要素を組み込む各種システムを開示している。しかしながら、そのようなシステムは、ロックボルトにおける利用において独自の利点を提供する炭素繊維の特性を認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-131999号公報
【特許文献2】特開平2-115499号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第101482024号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yves Potvin and John Hadjigeorgiou.Ground support for underground mines.Mar.2020.isbn:978-0-9876389-5-3.
【非特許文献2】Web Page.url:http://shipman.ref.studiotibor.com/technology/carbon-epoxy.asp.
【非特許文献3】Karl T Ulrich.Product design and development.Tata McGraw-Hill Education,2003.
【非特許文献4】Yanyu Chen et al.「3D printed hierarchical honeycombs with shape integrity under large compressive deformations」.In:Materials & Design 137(2018),pp.226-234.
【非特許文献5】K.Hoehn et al.「The Design of Improved Optical Fibre Instrumented Rock bolts」.In:Geotechnical and Geological Engineering 38.4(2020),pp.4349-4359.doi:10.1007/s10706-020-01246-0.
【非特許文献6】「Deformation measurement method and apparatus」.Australian Provisional Patent 2014902497.2014.
【非特許文献7】Roland Verreet.The rotation characteristics of steel wire ropes.Casar Drahtseilwerk,1997.url:https://www.casar.de/Portals/0/Documents/Brochures/casar-rotation.pdf.
【非特許文献8】Pinazzi P.C.et al.「Mechanical performance of rock bolts under combined load conditions」.In:International
【非特許文献9】Journal of Mining Science and Technology 30.2(2020),pp.167-177.issn:2095-2686.doi:https://doi.org/10.1016/j.ijmst.2020.01.004.
【非特許文献10】U.Meir.Arab J Sci Eng(2012)37:399-411 Carbon Fibre Reinforced Polymer Cables
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、その好ましい形態において、改良された形態のロックボルトを提供することである。
本発明の第1の態様によれば、炭素繊維ロックボルトであって、一連のトウ繊維を含む外側炭素繊維ロープと、内側コア材料と、を含み、ロックボルトにかかるテンションが所定の限界を超えて増加すると、内側コア材料が空間的に圧縮されて、ロックボルトの延性伸長を提供する、炭素繊維ロックボルトが提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、炭素繊維ロープは、高伸長エポキシ樹脂が含浸されており、エポキシ樹脂の伸長度は、最大約130%である。
いくつかの実施形態では、炭素繊維ロープは、ロープ内に軸方向に形成された少なくとも1つの感圧光ファイバを含む。
【0011】
好ましくは、内側コアは、内側コア内に形成された一連の空洞を含む。内側コアは、一連の連続又は半連続空洞を有するハニカム状構造を含み得る。内側コアは、3D印刷もしくは押出成形されたポリマーブレンド、ポリマー発泡体、又は変位可能流体のうちの1つから形成され得る。
【0012】
好ましくは、繊維は、樹脂カプセル、ポンプ注入可能な樹脂、又は機械的アンカーのうちの1つを使用して表面に固定することができる。ボルトは、一端にテンショニング部材を含むことができる。テンショニング部材は、トルクテンショニング部材、油圧ランプ(hydraulic ramp)、リグマスト、又は膨張可能発泡体のうちの1つであり得る。ケーブルは、ねじ付きソケット、くさび式ロック構成、又はケーブルテンショニング部材のいずれかを使用して終端させることができる。
【0013】
実施形態は地上支持を参照して説明されるが、設計は、橋梁構造物及び物体が張力下で保持される他の構造物を含む、土木工学における多くの異なる用途を有することは明白であろう。
【0014】
ここで、本発明の実施形態について、添付図面を参照して、単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】4つの主要な挙動を示すカーボルト(Carbolt)の力と伸長との関係を示す。
【
図15】ケーブル固定用樹脂カプセル、中実コア、トルクテンショニング、及びソケット封入を用いるカーボルト概念の1つの可能な実現例を示す。
【
図16】
図15のものと類似しているが、ソケット封入の代わりにくさび型ソケットを用いるカーボルト概念の別の可能な実現例を示す。
【
図17】ケーブル固定用のポンプ注入可能な樹脂、中空コア、ケーブルを配備してテンションをかけるためのケーブルリール、及びケーブル終端のために封入スリーブを用いるカーボルト概念の別の可能な実現例を示す。
【
図18】可能性のあるカーボルトコア設計のスナップショットを示す。
【
図20】Minova Quick-Chem(商標)Lokset(登録商標)樹脂カプセル挿入アクセサリを示す。
【
図21】可能性のあるカーボルトセンタリングアクセサリとしての単純なワイヤロックを示す。
【
図22】オレンジ色のセンサ繊維がカーボルトに組み込まれているところを示す。
【
図23】(左側の)トルクナットを青色で示すねじ付きソケットの概念の図である。
【
図24】ねじ付き終端ソケットの断面図を赤色で示す。
【
図25】(左側の)くさび式ロックアセンブリを赤色で、くさびを青色で示すくさび式ロック概念の図である。
【
図29】3D印刷コア概念で用いられる単純なコア設計を示す。
【
図30】カーボルトストランドがコアの外径に沿って配置された3D印刷カーボルトコアを示す。
【
図31】異なる機械的特性を有して印刷された異なるカーボルトコアを示す。左側のコアはより可撓性であり、右側のコアはより剛性である。
【
図34】引抜成形及び撚られた構造におけるモデル化されたフィラメント経路を示す。
【
図37】3D印刷されたコアの周りに12プライのCFの9本のストランドを逆撚りすることを示す。
【
図38】試験の準備が整ったカスタム終端ソケットを有するカーボルトを示す。
【
図39】カーボルトCB9-L(ワックスコア)に関する引張試験のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態は、以後、カーボルト(Carbolt)と称される、炭素繊維ロープの形態の先進的な岩石支持システムを提供し、カーボルトは、所定の長さ又はバルクのいずれかで製造され、設置中に必要な長さに切断される前に、指定の機械によってドリル孔に配備するためにドラムに巻くことができる。
【0017】
単一のトウに関しては、製造業者により指定された最大炭素繊維強度は、高伸長(130%)エポキシ樹脂を使用した場合に達成され得る。トウの4本のストランドを手作業で組み合わせた場合、強度は低下し、これは、トウストランドのテンションが不均一であることを示すもので、手作業で形成する場合のリスクであり、市販の引抜成形物では見られない。撚られた4本のプライの強度低下は、同程度であり、撚りが全体的な引張強度に大きな影響を及ぼさないことを示している。工業的に生産される510g/m(樹脂分率60%)及び直径25mmのカーボルトは、400kN(40トン)を超える強度を有し得る。
【0018】
カーボルトは、大きな剪断力にも耐えることができた。カーボルトは、その可撓性によって変形することができ、剪断試験ボックスの移動範囲が尽きるまでに30mm変位した。更に、屋根の荷重応力を解放するために必要な延性挙動は、修正されたコアを含むカーボルトにおいて示された。
【0019】
非常に長いカーボンストランドを撚ることにより、技術的なロープ及びケーブルの製造において日常的に行われているように、撚り及びケーブル形成段階中に、全てのカーボンフィラメントにおいて均一なプレテンションが達成されることを可能にする。カーボルトはまた、ロープの炭素繊維ストランドを、これらを損傷することなくロックする独自のロック機構を含み得る。このロック機構は、新たなベアリングプレート設計及びいくつかの異なる設計の一部を形成する。
【0020】
例示的な道路寿命の期間にわたり、壁及び岩石の動きが明らかであっても監視されていないことが多い。カーボルトの炭素繊維複合材料構造に光センシングファイバを組み込むことができることで、ボルトに沿って継続的に引張応力を監視することが可能になる。
【0021】
序論
実施形態は、炭素繊維ロープの形態の炭素繊維ロックボルトを提供し、炭素繊維ロックボルトは、所定の長さ又はバルクのいずれかで製造され、設置中に必要な長さに切断される前に、指定の機械によってドリル孔に配備するためにドラムに巻くことができる。カーボルトはまた、ロープの炭素繊維ストランドを、これらを損傷することなくロックする新たなロック機構を提供する。このロック機構は、新たなベアリングプレート設計の一部を形成し得る。
【0022】
カーボルトの複合材料構造により、光ファイバセンサを炭素繊維ロープに組み込んで、引張応力をボルトに沿って継続的に監視することが可能になる。
実施形態は、「コイル状にできる」炭素繊維ベースの、計装ロックボルトのプロトタイプを提供する。これには、ケーブルボルトと同様に設置できること、軸方向支持及び剪断荷重容量を提供することによって、横方向の岩石の動きに対して支持を提供するケーブル設計、極限破壊に至る前に延性伸長できること、荷重ベアリングプレートを用いてプレテンション及びリテンションをかけることができるカーボルトロック機構の設計、及び岩石の動きを監視できるようにするために製造段階においてロープに組み込まれる光ファイバセンサが含まれる。
【0023】
炭素繊維ベースのロックボルトは、同等の直径又は重量の鋼製ロックボルトよりも高い引張荷重に耐えることができる。炭素繊維構造は、カーボルトの延性伸長が、その破断荷重に達する前に、所定の引張荷重で起こることを可能にする。炭素繊維の使用により、金属ボルトで起こる腐食の問題及びそれに伴う屋根支持システムの劣化を排除し、したがって、支持システムの寿命が延びる。繊維アセンブリが所定位置に設置された後に注入される樹脂は、繊維と岩石基盤との間の界面結合を改善し、引張性能及びシア性能を向上させる。光学ファイバセンサを組み込むことで、引張ひずみをボルトに沿って継続的に監視することが可能になり、地盤工学エンジニアが支持システムの有効性を評価し、カーボルトの有効寿命にわたって局所的な動きの早期警告を得ることを可能にする。
【0024】
カーボルトは全てのケースに対応できるため、カーボルトの設置手順は、特に岩石層に異なる長さのロックボルト及び/又はロックボルトとケーブルボルトとの組み合わせが必要とされる場合、単純であり得る。カーボルトは鋼よりも軽量であるため、オペレータは最小限の質量しか扱う必要がなく、また、ドラムに巻き付け、設置中に所定の長さに切断することができる。
【0025】
カーボルトは、改良された先進的な屋根支持及び地層制御システムとして設計されており、まさにその性質により、地下の安全性を飛躍的に向上させる可能性がある。これらの利点は、炭素繊維ベースの地層制御システムが、腐食による材料疲労を受けにくいと同時に、同等の大きさの鋼製品よりもはるかに高い荷重に耐えることが期待できるという事実から生じている。荷重容量の向上に加え、カーボルトは、鋼製支持システムよりもかなり軽量であることが期待できる。これにより、支持システムの設置中の手作業に起因する怪我及び健康上の問題の数が減ることが期待される。計装屋根支持システムは、既に市販されている。しかしながら、典型的には、これらは、支持機能を提供しないため、別途設置される必要があり、したがって、道路開発プロセスが遅延する及び/又はこれらは鉱山全体の限られた数の場所にしか設置されず、地盤工学的評価の精度が制限される。製造プロセス中にセンサシステムを標準的な屋根支持システムに組み込みこむことで、鉱山全体にわたり地層制御システムの完全性を監視する可能性を提供し、鉱山の地質工学的全体像が提供される。例えば地震又は現在の鉱山作業エリア外における他の活動によって状況が変化した場合であっても、追加で監視を設置するが必要ない。
【0026】
技術的検討
鉱業用途の屋根支持システムは、典型的には、高引張鋼から製造され、状況によっては、繊維ガラス複合材料から製造される。しかしながら、現在では、はるかに高い比引張荷重容量を有する材料が入手可能であり(
図1を参照)、この技術を鉱業に適用する機会がある。
【0027】
実施形態は、炭素繊維アンカーを含む。従来、炭素繊維構造は、
図1に示すような同等の鋼構造を上回るその高い引張荷重容量で知られているが、脆く、突如破壊することでも知られている。実施形態では、新たなアンカーは、延性相を有するように設計され、初期試験では、炭素繊維構造がテンション下で破壊する前に延性を示すことができることが示されている。
【0028】
例えば、
図2は、直径10mmの炭素繊維サンプルアンカーの伸長を示す。炭素繊維構造は、製造プロセス中に、炭素繊維複合材料において通常予想される典型的な突発的破壊ではなく延性破壊モードをもたらすように変更することができる。
【0029】
炭素繊維アンカーは、
図3に示すような撚り機を使用して最初に作成され得る。この機械は、各種サイズの炭素繊維トウから撚りケーブルを製造できることが好ましい。繊維トウは、典型的には1,000から50,000本の個別のフィラメント繊維を有する繊維の束である。延性は、壊れやすいコアを炭素繊維ケーブルアセンブリに導入することにより達成及び調整することができる。
【0030】
カーボルト概念の開発
カーボルトは、相互接続された異なる構成要素で構成された工学的システムである。これらは、炭素繊維、コア、任意の集積センサ、アセンブリ、各端部及び終端の固定を含む。
【0031】
主要な機能構成要素、リスク、不明点、技術ギャップ、及び研究課題、並びにカーボルトシステムの相互接続及び全体的な複雑さのより良い理解を得るために、システムレベルの概念探索プロセスを行った。次いで、この理解を用いて、下位構成要素の概念の開発フェーズ及び概念フェーズの実証に焦点を当てた。機能要件及び概念開発プロセスを以下の段落で説明する。
【0032】
機能要件
カーボルトは、軽量で、耐食性があり、可撓性である必要がある。表1に記載する値は、カーボルト概念解決策を開発するためのガイドとして使用されたものである。
【0033】
【0034】
カーボルトは、破壊するまでに岩盤内で約20%の伸長を可能にすることが望ましい。この伸長は、4つの主要な挙動、すなわち、1.初期引張抵抗(約200kNの力まで、5%~10%の伸長)、2.制御された伸長(コアの壊れ)、カーボルトが約200kNで5%~15%の伸長を可能にする、3.270kNまでの最終引張抵抗及び15%~20%の伸長、及び4.270kN以上での破壊からなる。これらの挙動を、
図4に示す。
【0035】
カーボルト概念のマトリックスを開発するために、技術探索プロセスに従った。この探索では、1.穴へのカーボルトの固定、2.ケーブルの設計、3.カーボルトのテンショニング、及び4.カーボルトの終端に関する各種技術並びに手法を考慮した。他の性能基準は、構成要素の設置の容易さ、構成要素の製造の容易さ、構成要素のコスト、及び構成要素を実現するリスク又は困難さを含む。
【0036】
穴固定方法
図5~
図7に示されるようないくつかの異なる固定方法が検討された。
図5では、標準的な樹脂カプセル(「ソーセージ」)を使用して、カーボルトに樹脂又はグラウトのいずれかを注入することができる。これが機能するためには、カーボルトの先端は、カプセルを貫通するほど十分な硬さである必要がある。更に、「カーボルトのストリング」は、カプセル内で2つの成分を混合するために回転させることができるほど、十分な剛性である必要がある。
【0037】
図6では、カーボルトが中空コアを備えていることを前提として、カーボルト内に注入できる、ポンプ注入可能な樹脂又はグラウトのオプションが提供される。この手法は、新たな樹脂又はグラウト配合物の開発を必要とする可能性がある。
【0038】
図7では、カーボルトの先端を所定の位置に係止するために、機械的固定具、例えば拡張ボルトが使用され得る。しかしながら、カーボルトが可撓性であるように設計されていることを考えると、これは、追加の設置ツールなしでは実現が困難であると予想される。
【0039】
ケーブル設計
図8~
図11を参照して、いくつかのケーブル設計オプションを検討した。
例えば、
図8では、カーボルトのケーブル又はロープは、中実コアに巻き付けられたドライ炭素繊維として供給され得る。しかしながら、ドライ繊維の取り扱いには、微細な繊維の破損及び皮膚刺激の可能性に関連するリスクを伴う。更に、穴の中でドライ繊維を樹脂で完全に飽和させることは、困難な工学的課題を呈する。
【0040】
図9に示すように、中実コアの周りに炭素繊維を巻き付ける代わりに、中空コアを使用して、設置中に樹脂又はグラウトの注入を可能にすることができる。カーボルトの延性伸長を可能にするためにコアが壊れやすい必要があることを考慮すると、樹脂又はグラウトプラグが中空コア内で硬化した場合、開口部又は壊れやすい中心部を維持することは困難な可能性がある。
【0041】
図10に示すように、ドライ繊維の代わりに、樹脂を予め含浸させた繊維からカーボンロープを製造することができ、これにより、ドライ繊維の取り扱いに伴うリスクを排除する。しかしながら、脆く非常に可撓性のない典型的な炭素繊維樹脂ではなく、高伸長の樹脂を使用する必要がある。
図11に示すように、ドライ中空コアと同様に、封入中空コアを用いることはできるが、実際には困難な場合がある。
【0042】
テンショニング方法
いくつかのテンショニング方法が考えられる。例えば、
図12に示すように、トルクテンショニング機構は、自由に回転するねじ付きフェルール内でケーブル又はロープを終端させることができることを前提として、カーボルトにテンション及びリテンションをかけるための単純な方法を提供する。
【0043】
図13に示すように、油圧ランプが、鋼ケーブルボルトにテンションをかけるために典型的に使用される。しかしながら、把持機構は、炭素繊維ロープの損傷を避けるために適合を必要とする。
【0044】
図14に示すように、米国で使用されることの多いテンショニング方法は、ボルトナットを締め付ける前にリグマストを用いて屋根圧縮し、次いで、屋根を再度「拡張する」ものである。しかしながら、この方法は、他国では普及していないようである。
【0045】
膨張可能な発泡体をカーボルトロープにポンプ注入することができる。発泡体が膨張するにつれてロープの直径が増加し、同時に、ポアソン比に従ってロープが短くなる。この原理は単純であるが、再現可能なテンショニング値の達成は困難であると予想される。更に、この方法では、リテンションをかけることができず、中空コアと組み合わせることは困難である。
【0046】
膨張可能な発泡体と同様に、加圧コアは、鉱山水又は同様のもので加圧することにより実現できる。圧力は、発泡体を膨張させる化学反応よりも良好に制御できると予想される。圧力損失に対してカーボルトロープを密閉することには工学的な課題があるが、カーボルトが圧力弁を備えることを前提として、ボルトにリテンションをかけることが可能になる。
【0047】
長さを変えることができるカーボルトシステムに関しては、カーボルトロープがホイールから繰り出される場合、アンカーが所定の位置に設置されるとホイールは巻き戻されて、ロープを引き、カーボルトにテンションをかける。
【0048】
カーボルト終端方法
繊維コアを押しつぶさないことを特に考慮して、多くのケーブル終端方法も考慮される。これら方法は、封入スリーブ(炭素繊維用で既知)及びソケット封入(ケーブルボルト用で既知)だけでなく、くさび型ソケット及びくさび及びカラー方法などの、より柔軟な、すなわちリテンションをかけることがより簡単な構成も含む。調査した他のオプションには、スエージスリーブ及びシンブル方法並びに各種の形態のケーブルグリップタイプが含まれる。
【0049】
異なるカーボルトの主要構成要素のいくつかの可能な実現例は、上記の段落に列挙され、説明されている。これらの異なる方法の組み合わせる多くの可能性が存在するが、ここでは、3つのカーボルト概念を例示的により詳細に説明する。
【0050】
概念1:ケーブル固定用樹脂カプセル、中実コア、トルクテンショニング、及びソケット封入を用いるカーボルト概念
図15に示すように、概念1は、カーボルトを終端させる方法としてソケット封入を使用する。ソケットには、ナットにトルクをかけることによりテンショニングを可能にする雄ねじが加工されている(現在の岩石補強の慣行に類似する)。現在の概念は、樹脂カプセルとともに使用されることが想定されている。しかしながら、他の方法をサポートするように変更することはできる。ソケット終端は、類似のシステムを終端させるために現在使用されており、したがって、他の概念と比較して低リスクの解決策であると予想される。また、この解決策は、比較的低コストで、設置が容易、かつ製造が容易な解決策である可能性が高い。この解決策は、樹脂の終端処置のため、現場での繊維構築には適さないと予想される。
【0051】
概念2:概念1に類似するがくさび型ソケットを用いるカーボルト概念
図16は、概念2を示す。くさび式ロックソケット概念は、カーボルトの切断及び終端を現場でサポートすることができることから提供される。この概念は、くさび式ロック終端方法を使用する。ケーブルは、くさび式ロックアセンブリを通して穴に挿入され得る。次いで、くさびをくさび式ロックアセンブリに挿入し、カーボルトを終端する。くさび式ロックアセンブリの各側に位置するボルトにトルクをかけることにより、テンションをかけることができる。この概念は、ねじ付きソケットの概念ほどコスト効果的、低リスク、設置が容易、及び製造が容易であるとは予想されない。しかしながら、この概念の価値は、カーボルトを現場で任意の長さに切断し、終端できることにある。
【0052】
概念3:ケーブル固定用のポンプ注入可能な樹脂、中空コア、ケーブルを配備してテンションをかけるためのケーブルリール、及びケーブル終端用の封入スリーブを用いるカーボルト概念
第3の概念を、
図17に示す。この解決策は、ドラム配備可能なカーボルト概念をサポートし、異なるタイプのポンプ注入可能な樹脂を使用する。この概念は、ケーブルリールを使用してカーボルトを穴に配備することを含む。樹脂を穴にポンプ注入して、カーボルトを保持、封入、及び終端する。終端ソケットは、その中に樹脂をポンプ注入して、カーボルトを封入及び終端することができるように設計されている。プレテンショニングは、樹脂の硬化前に岩石面に荷重を加えることにより、又は速硬化型樹脂を(カーボルトの遠位端に)使用し、ケーブルドラムもしくは別のテンショニング方法を使用してテンションを加えることにより実施され得る。この解決策は、カスタマイズされた長さのロックボルトを現場で構築する能力をサポートし、比較的低コストで、設置が容易であり、かつ製造が容易な解決策であると予想される。この解決策の主な課題は、ポンプ注入可能な樹脂に関連するリスクである。
【0053】
概念探索の概要
概念探索プロセスでは、いくつかの概念解決策がもたらされた。全てのカーボルト構成要素間の相互接続、プレテンショニング要件、樹脂/封入のタイプ、及びロックボルト長さを現場で決定することに対する要望が、最終的な概念解決策に大きな影響を及ぼすことが判明した。例えば、プレテンショニング方法又は長さを変えたカーボルトを構築できること(特定の設置手順を必要とする)は、終端手法及び樹脂の種類を限定又は制限する可能性がある。
【0054】
構成要素レベルの概念開発
以下の段落は、カーボルトの主要構成要素に関する詳細を提供する。
炭素繊維ストランド
炭素繊維複合材料中の炭素繊維は、樹脂マトリックスが構造体内の隣接する炭素繊維間で荷重を伝達するように機能する、主要な耐荷重要素である。最大引張強度は、全ての炭素繊維が構造体内で平行になることにより得られ、これはまた、充填密度、ゆえに構造体の比強度を最大にする。これは典型的には、引抜成形法によって達成される。繊維(フィラメント)巻き付け及びロール巻き付けプロセスでは、最大引張強度がより低いものの、裂けることなく、高いトルク、圧縮及びたわみに耐えることができるロッド及びチューブが作成される。引抜成形ガラス繊維複合材料ロックボルトは入手可能であるが、破壊前に延性を示さない。カーボルト構造は、これに対処するために考案されたものであり、全ての炭素繊維が機能性コアの周りに角度をなして配向される。考えられる2つの代替構造体は、多層ブレード又はマルチストランド合撚ケーブルのいずれかである。
【0055】
カーボルトコア
カーボルトコアの主な機能は、その上に撚られた炭素繊維ストランドが合撚される半剛性構造を提供すること、樹脂カプセル(使用される場合)を貫通して混合するための圧縮剛性及びねじり剛性を提供すること、樹脂、グラウト、戻り空気などの供給のためのインフラを提供すること、及び壊れて、カーボルト繊維の角度を減少させ、したがって、カーボルトの長さを所定の荷重で伸長させ、最大荷重及び極限破壊に達する前に、増加するテンションに対して延性様の応答を与えることである。
【0056】
図18に示すように、適切なコア概念を特定するために技術検討及び概念探索プロセスが実施された。合計14の可能性のあるコア概念が特定された。概念探索プロセス時には、以下の性能基準を考慮した。ねじれに対する柔軟性を提供できること、引張力に対する柔軟性を提供できること、圧縮に対する柔軟性を提供できること、及び複雑さ又は製造可能性。
【0057】
積層造形技術における最近の発展により、設計形状及び材料特性の点において多くの新たな設計能力が可能になった。したがって、多くの異なる可能性のある概念解決策が存在する。調査した多くの可能性のある内側コア構造のうち、ハニカム構造は特に魅力的であった。ハニカム構造は、比較的高い圧縮抵抗を有し、一定速度で壊れるように設計することができる。
【0058】
封入/グラウト注入
保持及び終端方法によっては、カーボルトは、グラウト、樹脂、計装、及び置換ガスなどの各種タイプの供給に必要なインフラを提供することが必要な場合がある。樹脂ベースの解決策はまた、穴内で実施される可能性のあるいくつかの形態の混合を必要とする場合がある。供給は、カーボルト構造の内部又は外部の穴に送達することができる。これらの供給に必要なインフラをサポートするために、穴及びカーボルトの直径を考慮しなければならない。
図19は、これらの概念を実現することができる各種手法を示す。
【0059】
穴の保持
カーボルトは、設置プロセスを支援するために、穴に挿入され、保持される必要がある場合がある。樹脂カプセルを穴に挿入し、保持するために利用可能な各種の異なる市販の解決策がある(
図20に示す)。これらの保持方法は、カーボルト設計に合うように適合させることができる。設置プロセス中にカーボルトを保持し、中心に置く単純なワイヤロック方法を
図21に示す。
【0060】
集積センサ
カーボルトの1つの代替実施形態は、集積センシングシステムを含み、地盤工学エンジニアが屋根支持システムの有効性を評価することを可能にする。従来、電気ひずみゲージがこの目的のために使用されてきたが、それらは、非特許文献5に記載されているような非常に多くの欠点を有する。一方、光ファイバは、ボルトを構造的に変化させることなくボルトの全長を高空間分解能で覆い、分散されたセンサを一体化する機会を提供する。したがって、光ファイバは、
図22に見られるように、カーボルト構造に一体化され、撚り込まれ得る。
【0061】
光ファイバは、巻き付けプロセスによって、カーボルトに沿って螺旋状になる。このセンサ設計は、「変形測定方法及び装置(Deformation measurement method and apparatus)」と題する豪国特許出願公開第2015283817号明細書及び対応する米国特許出願公開第20180171778号明細書に開示されているものと類似している。
【0062】
固定及び終端手法
3つの可能性のある固定及び終端方法が、システムレベル概念探索フェーズで特定された。各方法に関連する更なる詳細を以下に記載する。
【0063】
ねじ付きソケットの概念
この概念は、設置プロセス前又は設置プロセス中に、カーボルトの端部を終端ソケット内に封入することにより機能する。ソケット封入は、テーパ状のソケット内でカーボルトストランドを広げる又はフレア状にすることにより開始される。次いで、広げられたストランドを、高弾性ポッティング樹脂を使用してソケット内にセットする。カーボルトにテンションが加えられると、樹脂及び広げられた繊維は、テーパ部にくさび状に打ち込まれ、ストランドに締付力がかかり、界面での樹脂/繊維の結合が増大する。この概念は、雄ねじソケットアセンブリを使用し、ナットにトルクを加えることによってプレテンショニング及び保持を可能にする。ねじ付きソケットの概念の図は、
図23及び
図24に示されている。
【0064】
この概念のいくつかの重要な特性には、以下のものが含まれる。より単純な設計、封入/グラウト注入及びポイント固定の各種の形態をサポートすること、内部及び外部両方の送達供給の使用をサポートすること、設置前に作業現場でカーボルトを切断及び終端することを必要とする可能性があること。
【0065】
くさび式ロックの概念
この概念は、現場でくさび式ロック方法を使用してカーボルトを終端させることにより機能する。カーボルトは、ワッシャプレートを通してドリル穴に供給され、必要な長さに切断される。次いで、繊維をくさびブロックに通し、くさび式ロックシステムを使用して終端させる。カーボルトにテンションが加えられると、くさびインサートがハウジングにくさび状に打ち込まれ、カーボルト構造に締付力が加えられる。カーボルトは、くさびブロックアセンブリの各コーナのボルトにトルクを加えることによりプレテンションをかけられる。伸長可能なくさび式ロック概念の図は、
図25及び
図26に示されている。
【0066】
この概念のいくつかの重要な特性には、以下が含まれる。より複雑な設計、現場で切断できるカーボルトをサポートすること、くさびブロックの使用によって封入/グラウト注入及びポイント固定の方法を制限し得ること、及びくさびブロックの使用によってより長い設置時間が必要な場合があること。
【0067】
ケーブルテンションの概念
この概念は、
図27及び
図28に示されている。この概念は、ケーブルリールを使用してカーボルトを配備することにより機能する。リールが繰り出され、ケーブルは終端ソケット及びワッシャプレートを通って穴に供給される。次いで、樹脂が、カーボルトの中心に、又は終端ソケットを通してカーボルトと岩盤との間の空洞にポンプ注入される。樹脂は、繊維を封入し、ソケット空洞を充填する(事実上、カーボルトを終端する)。
【0068】
この概念のいくつかの重要な特性には、以下が含まれる。比較的複雑でない単純な設計、内部及び外部両方の送達供給の使用をサポートすること、現場で切断可能なカーボルト概念をサポートすること、より迅速な設置時間をもたらす可能性が高いこと、ポンプ注入可能な樹脂の開発により、追加のエンジニアリング及び研究開発要件を導入する可能性があること。
【0069】
構成要素レベルの試験
本段落は、カーボルト構成要素の概念実証バージョンの開発及び設計について説明し、検証研究の結果を含む。概念実証の目的は、カーボルトが高い引張荷重及び剪断荷重に耐えられることを実証すること、並びに延性様の力と伸長との関係を実証することであった。
【0070】
ねじ付きソケット概念のプロトタイプ単純化バージョンを構築した。この解決策は、概念実証フェーズの目的を達成するのに適した解決策であることが期待された。本段落は、概念実証設計の構成要素に関する詳細を提供する。
【0071】
カーボルト繊維及び樹脂マトリックス
5つの広範な種類の炭素繊維がある。引張強度が増加するにつれて弾性率が低下するため、必要な特性及び代替材料に対するコストに基づいて選択を行う必要がある。これには、超高弾性率タイプUHM(弾性率>450Gpa)、高弾性率タイプHM(弾性率350~450Gpa)、中間弾性率タイプIM(弾性率200~350Gpa)、低弾性率及び高引張強度タイプHT(弾性率<100Gpa、引張強度>3.0Gpa)、超高引張強度タイプSHT(引張強度>4.5Gpa)が含まれる。
【0072】
カーボルトの場合、引張強度が最も重要であり、重量は重要ではなく、商業的用途は価格に非常に敏感である。したがって、中間弾性率の炭素繊維トウを評価した。考慮された第2の基準は、トウカウント、すなわち炭素繊維トウ中の炭素繊維フィラメントの数であった。多カウント数のトウは、カーボン1キログラムあたりの価格を比較するとより費用対効果が高く、最終的なカーボルトを形成するために撚り合わせる(又は編組される)必要があるストランドの数も減少する。12K、25K及び50Kの3つの多カウント数のトウを試験した。トウカウントは、トウ中の炭素繊維フィラメントの数であり、12Kは、例えば、12,000本のフィラメントを有するトウである。まず、25Kのトウを最初のカーボルトとして選択した。
【0073】
樹脂マトリックスの選択は、炭素繊維の選択肢よりも更に幅広く、多くの商業的用途においては、特に、最終用途のために配合されたものである。カーボルト用の樹脂系は、2つの主な基準を満たす必要があった。1つ目は、それが炭素繊維との適合性がなければならないこと、すなわち、トウ製造時に炭素繊維に対して使用されるサイジングに合致しなければならないことであった。製造されるほとんどの炭素繊維はエポキシでサイジングされており、一般に、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂との適合性はない。エポキシ樹脂は一般により高価で、通常、伸長が非常に小さいため、これは不利である。カーボルトが剪断強度及び延性の点において所望の性能を達成するためには、カーボルト樹脂マトリックスも高い伸長を必要とする。他の樹脂配合物も使用することができる。
【0074】
この研究では、単一のエポキシ樹脂系を使用した。選択されたエポキシは、130%を超える伸長を有する独自のものであった(炭素繊維業界で使用されるほとんどのエポキシは3%未満の伸長を有する)。残念なことに、このエポキシは非常に遅い硬化速度を有していたが、これは、この初期の研究では許容されるものであった。
【0075】
カーボルトコア
初期設計において、2つの単純なコア概念が考慮された。
図29に示される第1の手法は、積層造形プロセス(3D印刷)に基づくものであり、第2の手法は、脆い(低伸長)エポキシの薄いコーティングを有する独立気泡ポリエチレン発泡体コアに基づくものである。両方の場合において、単純なコアは、その上に炭素繊維ストランドが撚られる半剛性構造を提供し、カーボルト構造が所定の荷重で壊れる/伸長することを可能にし、破壊前に相対的な岩盤の移動を可能にした。
【0076】
図29による3D印刷されたコアは、コアの18mmの外径に沿って延びる9つの螺旋溝(直径5mm)を有するように設計された。溝は、製造プロセス中に炭素繊維ストランドを配置することを可能にした。コアの中心部には直径5mmの空隙が含まれていた。以下の挙動が起こることが想定された。1.撚られたカーボンストランドが荷重を支持し、コア材料が、撚られたカーボンストランドにかかるテンションによって誘発される圧縮力をサポートするときの初期引張抵抗、2.コアの壁が破壊し、中心部の空隙内に圧縮されて、カーボンストランドのねじれ角が減少するときのカーボルトの伸長、3.コアが完全に壊れ、荷重が、今度はより直線的になったカーボルトストランドによって吸収され続けるときの二次的な引張抵抗、及び4.カーボルトストランドが破壊したときの構造の結果的な破壊。カーボルトコア設計は、
図30に示される。
【0077】
3D印刷されたコアは、熱溶解積層法(FDM:Fused Deposition Modelling)技術を使用して製造された。この方法は、異なる材料をブレンドして、引張強度、破断時伸度、ショア硬さ、及び引張引裂抵抗を含む異なる機械的特性を達成することを可能にした。特に興味深いのは、材料の剛性に関連し得るショア硬さである。この概念を実証するために、
図31に示すような異なる材料特性を有する9つの初期コアを印刷した。実験室ベースの概念実証試験のために、剛性材料、半剛性材料、及び可撓性材料からなる3つのコアを印刷した。
【0078】
終端
ソケット終端方法を使用して、カーボルトを各端部において終端した。なぜなら、この方法は、各種タイプの繊維ベースのロープを終端するために現在使用されており、他の方法と比較すると比較的低リスクの解決策であると想定されるからである。更に、この解決策は、限界寸法及びポッティング材の観点において柔軟性をもたらした。初期試験では、特別に設計されたソケットを使用したが、ポッティング樹脂とともに使用されたソケット内部テーパは、必要な荷重に耐えられないことが判明した。ワイヤケーブルを終端させるために使用される市販のソケットを、微細な研磨粒子(それぞれシリカ又はガーネット)を充填した高圧縮強度のポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂の両方を用いて成功裏に使用した。他の樹脂の例は、非特許文献10に記載されている。
【0079】
カーボルト製造
炭素繊維トウ、プライ、及びストランドのねじれ角は、カーボルトが剪断荷重の引張荷重下に置かれたとき、並びにカーボルトが極限破壊前に延性伸長したときに全ての炭素繊維フィラメントが同じ荷重を受けることを確実にするために重要である。引抜成形された繊維ロックボルトにおいては、構造体内の全ての繊維は、
図34の第1の概略図のように直線状であり、同じ荷重にさらされるはずである(うまく終端されている場合)。巻かれた(撚られた又は編組された)構造においては、剪断荷重又は引張荷重下にあるときに、構造体内の全ての繊維が同じ荷重を受けることを確実にするために、均一な経路長を維持することも重要である。この例は、
図34の第2の概略図及び第3の概略図に示されている。
【0080】
撚りケーブル内のフィラメント経路長のばらつきは、
図35に示されるより小さい撚られた下位ユニット(「プライ」と表される)からケーブルストランドを構築することにより低減することができる。
【0081】
本質的に非弾性のフィラメントを撚ることにより誘発されるトルクのバランスを取るために、プライに挿入される撚りの方向を交互させる必要がある。パイロット版の撚り機は、2本から最大12本の一次ストランドをS又はZ(時計回り又は反時計回り)方向のいずれかに撚り、撚られた一次ストランドを一次撚りの挿入と同時に又はこれと無関係に逆撚りする(反対方向に撚る)ように設計されている。一次撚り及び逆撚りの巻数は独立してプログラムすることができ、ストランドのテンションは撚りの最中釣り合い重りを用いて維持される。加えられる絶対引張荷重は、釣り合い重りの質量を変更することにより変えることができる。
図36は、例示的な撚り機を示す。したがって、撚り機は、中間プライストランドを積み重ね、コアのある又はコアのないケーブルを作成することにより、マルチレイケーブルを製造することができる。床長さは2メートルであった。
【0082】
カーボルトに使用される材料
カーボントウ:カーボルト試験に使用された主な炭素繊維は、SGLのSigrafil C T24-5.0/270-E100、24k(24,000本のフィラメント)連続フィラメント炭素繊維トウであった。これは、業界標準の東レ製T300に相当する中間弾性率の炭素繊維である(表2を参照)。24Kは、コアの周りに合撚して、撚られた炭素繊維ケーブルであるカーボルトを形成するのに必要なマルチプライツイストストランドを形成するために確実に撚ることができる最も重いカウントの(「最も厚い」)カーボントウを決定するための初期試験後に、12K、24K、及び50Kのオプションの中から選択された。
【0083】
【0084】
コア:前述したように、異なる圧縮強度を与えるAgilus30ポリマーブレンドの3つのバリエーションを有する3D印刷されたコアと、エポキシコーティングされた独立気泡ポリエチレン発泡体コアの、2つの異なるコアを使用した。いずれのコアにも所望の性能がないことが明らかとなった試験の終了時に、より制御可能なパラフィンワックスコアをいくつかのカーボルトに対して使用し、このコアのデータも報告した。
【0085】
注入樹脂
Sicomin SR8160/SD 815 B2樹脂/硬化剤系を、破断時伸度が130%を超え非常に高いために選択した(炭素複合材料に使用されるエポキシの典型的な伸度は3%未満)。
【0086】
カーボルトが引張荷重下で延性様の伸長を示すためには、所定の荷重でカーボルトコア材料が体積を減少させることが望ましい。圧縮強度が異なることで選択したいくつかの異なるコア材料を使用した。3D印刷されたコアについては上記で詳細に説明した。カーボルトの最大伸長を試験するために作製された、3つのコアを圧縮強度/可撓性の範囲から選択した。コア体積の減少を最大にするために、90%を超える体積減少をもたらすことのできる直径13mmの独立気泡発泡体コアを用いて少数のカーボルトを作製した。発泡体コアの初期圧縮強度を高めるために、これらのコアを脆いエポキシ樹脂でコーティングした。コアの線形メートルあたり、5mLのガラス微小球(粘度を増加させて回転コーティングを容易にするため)と混合した30gのウエストシステム社(West Systems)の105/205エポキシを用いて、0.7mmの脆いシェルを形成した。
【0087】
この研究で圧縮強度に関して最適化されなかった他のコアとして達成され得る延性能をより明確に示す目的で、ワックスコアを有する少数のカーボルトも作成した。
炭素繊維構造体の樹脂含浸は、理想的には、モールド又は他の拘束システム内で繊維に樹脂を流すことによって達成される。力は、真空又は圧力(又はこの組み合わせ)によって供給することができる。この研究では、真空注入が、空隙(構造体内の樹脂マトリックスの不連続性につながる気泡)を最小限に抑えながらも高い繊維/樹脂分率を達成する最も単純な手法を提供した。カスタムシリコーンモールド及びより伝統的な真空バギングの両方を試みたが、撚られたストランドの繊維圧縮の程度により、樹脂がゲル化し始める前にボルトの完全な注入を行うことが困難であったため、失敗した。したがって、圧力又は真空の補助のないウェットレイアップを使用した。
【0088】
カーボルト終端及び炭素繊維トウタブのポッティング
タブは、一般に、引張試験フレームの油圧ジョーに取り付けるために、カーボントウ及び小径プライを終端させるために使用される。トウ及びプライの試験は、ASTM D4018に従って、ウエストシステム社(West System)のG-Flexエポキシ樹脂及び粘度を増加させるためのガラス微小球を使用して行った。同じ樹脂(微小球なし)を使用して、カスタム終端ソケット内のカーボルトをポッティングしたが、これは加えられた荷重に耐えることができなかった。スチールケーブル用に設計されたミルフィールドエンタープライズ社(Millfield Enterprises)(英国)製の市販のポリエステルポッティング樹脂であるワイヤロック(Wirelock)を、スチールケーブルのスペルタとともに試験した。これには、現地製造のエポキシポッティング樹脂であるKinetix R246エポキシ樹脂とH160硬化剤に、ワイヤロックの製品中に見られるシリカと同じ重量分率の微細なガーネット(80メッシュのハードロックガーネット)を添加して使用することを伴った。これも成功したため、ワイヤスペルタを用いた全ての試験で使用した。
【0089】
カーボルトの性能
カーボルトは、24Kカーボントウの108本のストランドから作られたカーボンケーブルとして作成された。これは、コアの周りに撚られた9本の撚られたカーボンプライ又はストランドとして構築され、更に、9本のストランドのそれぞれは、元の24Kカーボントウから、24Kトウの4本のストランドを撚り、次いで、これら「4プライ」ストランドのうちの3本を(トルクバランスを維持するために)逆撚りし、コアの周りに撚られた9本の12プライストランドのうちの1本を作成することにより構築される。
【0090】
したがって、例示的な構造は、4x24Kトウが「4プライ」に撚られ、3x4プライが「12プライ」に撚られ、9x12プライがコアの周りに撚られて、最終的な9ストランドの合撚カーボルトが作成される。
【0091】
例示的な構造を
図37及び
図38に示す。構造は上記のように順次構築されるため、4プライ構造及び12プライ構造それぞれのサンプルの引張性能をカーボルトから独立して試験し、この結果を、同数の整列した炭素繊維トウから構築された複合材料(「トウ試験」)及び撚られた炭素繊維複合材料(「プライ試験」)と比較することが可能であった。この結果を以下の表3及び表4にまとめる。
【0092】
これらの成分試験により、以下のことが立証された。カーボルトに使用した高伸長樹脂系は、製造者が公表している性能(本研究で使用した130%超の伸長の樹脂と比較して、典型的には5%未満の伸長の低伸長樹脂で試験された)に対して悪影響を及ぼさなかった。実験室規模の構造を作成する場合、全ての繊維に均一にテンションをかけることは困難であり、組み合わされるトウの数が増加するにつれて、測定される引張性能は、繊維が整列されているか撚られているかを問わず、12本のトウを組み合わせた場合に予想される結果のほぼ50%に低下する。これは、構造自体ではなく、製造規模のアーチファクトであると考えられる。少数のプライを撚ることに起因する引張強度の低下を最小限にすることができた。
【0093】
カーボルト構成要素の引張性能
【0094】
【0095】
【0096】
カーボルト設計(12mm径の異なるコアを有する9x12プライ)の引張強度性能
上記の4本及び12本のトウ並びにプライの引張結果に見られるように、また、マルチストランド炭素繊維複合材料の手作業での製造の複雑さのために、達成される比強度は、追加されるトウが増えるにつれて実際には減少する。これは、12プライのストランドのうち9本のストランドを撚り、コアの周りに巻き付けてカーボルトを形成する場合にも起こる。その結果、カーボルトの引張強度は予想よりも大幅に低くなり、最良の結果は、この数のトウの市販の引抜成形物から得られる強度のわずか33%であった。これらの低い結果にもかかわらず、以下のシリーズ及び成分試験においては、ケーブル構築中にトウテンションを正確に管理することができる商業的な製造であれば、引抜成形複合材料強度の80~90%を達成できることを示す十分な証拠がある。これにより、400kN(40トン)を超える強度を有する、510g/m(典型的な樹脂分率60%)及び直径25mmのカーボルトが製造される。
【0097】
【0098】
剪断強度
各種の剪断を実施した。
【0099】
【0100】
延性
カーボルトコアは、カーボルトがその極限強度の70~80%に達するまで、テンション下で撚られたカーボン螺旋により誘発される横圧縮荷重に耐える必要がある。しかしながら、カーボルトの構造、すなわち、体積の変化を経ることができるコアの周りで撚られた螺旋は、荷重下で制御される伸長の原理が実証されることを可能にした。引抜成形炭素複合材料に見られるような線形繊維配列が1~1.5%の伸長を有する場合、このプロジェクトで試験された螺旋角15%を有する9ストランドのカーボルトは、剛性のコアで3.2%、半剛性のコアで5.1%、及びワックスコア(ワックスの溶融後)で6.5%の伸長を有していた。コア特性及び体積並びにストランド螺旋角を変更することにより所望の伸長を設計することができる。
【0101】
図39は、引張荷重に対する伸長のプロットを示す。既に説明したように、不均一なストランドテンションにより、トウの数に基づいて予想される極限強度は達成していないものの、プロットは、カーボルトの意図した挙動を実証しており、プロットした実証試験における所定の荷重80kNにおいて、カーボルトが既知の伸長を経る。これは、その極限強度に達するかなり前に起こるように設計することができ、その後、荷重が更に増加した場合に、最終的に破壊する。
【0102】
結論
単一のトウに関しては、製造業者により指定された最大炭素繊維強度は、高伸長(~130%)エポキシ樹脂を使用した場合に達成され得る。トウの4本のストランドを組み合わせた場合、強度は、15~30%低下し、これは、トウストランドのテンションが不均一であることを示すもので、手作業で形成する場合のリスクであり、市販の引抜成形法では見られない。撚られた4本のプライの強度低下は、同程度(19~32%)であり、撚りが全体的な引張強度に大きな影響を及ぼさないことを示している。手作業の製造プロセスにおけるばらつきに起因する異なるストランドのプレテンションの同じ変動により、カーボルト全体が所望の荷重容量を達成することが妨げられた。それにもかかわらず、工業的に生産される510g/m(樹脂分率60%)及び直径25mmのカーボルトは、400kN(40トン)を超える強度を有し得ると推定することができる。
【0103】
カーボルトは、大きな剪断力に耐えることができることが分かった。カーボルトは、試験下で、その可撓性によって変形することができ、剪断試験ボックスの移動範囲が尽きるまでに30mm変位した。更に、屋根の荷重応力を解放するために必要な延性挙動は、修正されたコアを含むカーボルトにおいて示された。
【0104】
非常に長いカーボンストランドを撚ることにより、技術的なロープ及びケーブルの商業製造において日常的に行われているように、撚り及びケーブル形成段階中に、全てのカーボンフィラメントにおいて均一なテンションの維持が達成されることを可能にする。したがって、これにより、カーボルトが良好な延性特性を保持しつつも、所望の引張強度及び剪断強度を達成することを可能にする。
【0105】
解釈
本明細書で使用される場合、「例示的」という用語は、品質を示すのとは対照的に、例を提供するという意味で使用される。すなわち、「例示的な実施形態」は、必ずしも例示的な品質の実施形態ではなく、例として提供される実施形態である。
【0106】
本発明の例示的な実施形態の上記の説明では、本開示を簡素化し、各種の発明の態様のうちの1つ以上の理解を助ける目的で、本発明の各種特徴が単一の実施形態、図、又はその説明に一緒にグループ化されることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求される発明が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、「発明を実施するための形態」に続く特許請求の範囲は、本明細書によってこの「発明を実施するための形態」に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の一実施形態として独立している。
【0107】
更に、本明細書で説明するいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含み、他の実施形態に含まれる他の特徴を含まないが、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあることが意図され、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0108】
更に、実施形態のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサによって、又は機能を実行するための他の手段によって実装することができる方法又は方法の要素の組み合わせとして本明細書で説明される。したがって、そのような方法又は方法の要素を実行するために必要な命令を有するプロセッサは、方法又は方法の要素を実行するための手段を形成する。更に、本明細書で説明される装置実施形態の要素は、本発明を実行する目的で要素によって実施される機能を実行するための手段の一例である。
【0109】
本明細書で提供される説明では、多数の具体的詳細が述べられている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的詳細なしでも実施され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、及び技法は詳細に示されていない。
【0110】
同様に、結合されるという用語は、特許請求の範囲で使用される場合、直接接続のみに限定されるものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。「結合される」及び「接続される」という用語は、それらの派生語とともに、使用され得る。これらの用語は、互いに同義語として意図されているものではないことを理解されたい。したがって、デバイスBに結合されたデバイスAという表現の範囲は、デバイスAの出力がデバイスBの入力に直接接続されるデバイス又はシステムに限定されるべきではない。それは、他のデバイス又は手段を含む経路であり得る、Aの出力とBの入力との間の経路が存在することを意味する。「結合される」は、2つ以上の要素が直接物理的又は電気的に接触している、又は2つ以上の要素が互いに直接接触してはいないが、それでも互いに協働又は相互作用することを意味し得る。
【0111】
したがって、本発明の好ましい実施形態であると考えられるものについて説明してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、実施形態に他の及び更なる修正を施すことができ、そのような変更及び修正の全てを本発明の範囲内に入るものとして特許請求することが意図されていることを認識するであろう。例えば、上記で与えられた任意の式は、使用され得る手順を代表するものに過ぎない。機能がブロック図に追加されても、又はブロック図から削除されてもよく、動作が機能ブロック間で交換されてもよい。本発明の範囲内で説明する方法にステップを追加又は削除してもよい。
【国際調査報告】