(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ニューラルネットワークを用いたペプチド免疫原性の予測
(51)【国際特許分類】
G16B 30/00 20190101AFI20240319BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240319BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240319BHJP
G16B 40/20 20190101ALI20240319BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240319BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
G16B30/00
C12N15/11 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C07K14/00
A61K39/00 Z
A61K48/00
G16B40/20
A61P35/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558379
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022022037
(87)【国際公開番号】W WO2022204566
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リウ, カイ
(72)【発明者】
【氏名】セーレム, ミラド
(72)【発明者】
【氏名】スリフト, ウィリアム ジョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA05
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA03
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA86
4H045EA31
(57)【要約】
免疫原性を示すネオ抗原候補を正確に同定するための方法、システム、組成物、及びコンピュータプログラム製品が提供される。いくつかの実施態様において、本明細書で提供する方法は、候補ペプチド配列のセットを受け取ることを含み、セット中の候補ペプチド配列の各々は、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する。方法は、セット中の候補ペプチド配列の各々に関連づけられる、対応するMHCペプチド配列を同定すること;候補ペプチド配列のセット中の各候補ペプチド配列の表現と、セット中の候補ペプチド配列の各々について対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、候補ペプチド配列のセットから免疫原性入力ベクトルを生成することをさらに含む。方法は、当該免疫原性入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、当該セット中の候補ペプチド配列が免疫原性であるどうかの予測を生成すること;並びに当該予測を含む出力を返すことをさらに含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
候補ペプチド配列のセットを受け取ることであって、セット中の候補ペプチド配列の各々が、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有し、
候補ペプチド配列のセットは、対象の疾患サンプルに関連し、
MHC提示スコアは、セット中の対応する候補ペプチド配列が疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す、候補ペプチド配列のセットを受け取ること、
セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること、
候補ペプチド配列のセット中の各候補ペプチド配列の表現と、
セット中の候補ペプチド配列の各々について対応するMHCペプチド配列の表現と
を処理することによって、候補ペプチド配列のセットから、免疫原性入力ベクトルを生成すること、
免疫原性入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、セット中の候補ペプチド配列が免疫原性であるどうかの予測、セット中の候補ペプチド配列が免疫原性である可能性の予測、あるいはそれらの組み合わせを生成すること、並びに
予測を含む出力を返すこと
を含む、方法。
【請求項2】
複数の候補ペプチド配列を含むセットについての予測を生成すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の候補ペプチド配列をランク付けするレポートを、それらが免疫原性である可能性の予測に基づいて、生成すること
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
セットの各候補ペプチド配列についてMHC提示スコアを決定すること
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
MHC提示スコアを決定することが、
候補ペプチド配列の初期セットを受け取ることであって、初期セットの各候補ペプチド配列は疾患サンプルに関連する、初期セットを受け取ること、
初期セットの各候補ペプチド配列について、対応するMHCペプチド配列を同定すること、
候補ペプチド配列の初期セットの各々について、
初期セット中の各候補ペプチド配列の表現と、
初期セット中の各候補ペプチド配列に対応するMHCペプチド配列の表現と
を処理することにより、提示入力ベクトルを生成すること、
提示入力ベクトルを提示モデルに入力して、初期セット中の各候補ペプチド配列のMHC提示スコアを決定すること;並びに
MHC提示スコアに基づいて、候補ペプチド配列の初期セットから、候補ペプチド配列のセットを選択すること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
所定の基準が、予め定義された閾値または最上位の数値である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
セットの候補ペプチド配列の対応するMHCペプチド配列が、対象のMHCペプチド配列の略記された擬似配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
セットの候補ペプチド配列が、候補ペプチド配列のN末端配列及び候補ペプチド配列のエピトープを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
セットの候補ペプチド配列が、対象の健常サンプルに関連する対応する参照配列と比較して、一又は複数の変異を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
疾患サンプルが、腫瘍サンプル又は腫瘍を有すると判定された対象からのサンプルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
免疫原性モデルが、複数の層を有するトランスフォーマーに基づくモデルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
免疫原性モデルが、タンパク質データベースからのラベル付けされていないペプチド配列を用いて最初に訓練されたものである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
免疫原性モデルが、初期訓練の後、MHC-I結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-I結合データセットでさらに訓練されたものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
免疫原性モデルが、初期訓練の後、MHC-II結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-II結合データセットでさらに訓練されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫原性モデルが、初期訓練の後、免疫原性でラベル付けされたペプチド配列を含む免疫原性データセットでさらに訓練されたものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
免疫原性モデルが、さらなる訓練中に、免疫原性モデルの複数の層の様々な層を異なるエポックで凍結解除すること、様々な層を異なる学習率で訓練すること、エポック間の上昇・下降期で学習率を変化させること、又はそれらの任意の組み合わせによって訓練されたものである、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
免疫原性モデルが、免疫原性モデルの最後の2層の凍結解除の後に、免疫原性モデルの他の層の凍結解除によって訓練されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
免疫原性モデルが、非線形の上昇・下降期で学習率を変化させることによって訓練されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
候補ペプチド配列が免疫原性であることを示す予測に基づいて、セットから選択される候補ペプチド配列を含むワクチン組成物を調製すること
をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象に治療勧告を提供することをさらに含み、治療勧告が、ワクチン組成物を対象に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
予測に基づいてセットから免疫原性ペプチドを選択すること、及び
免疫原性ペプチドを標的とする又は免疫原性ペプチドを含む治療剤を含む治療組成物を調製すること
をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象に治療勧告を提供することをさらに含み、治療勧告が、治療組成物を対象に投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列が、MHC-Iペプチド配列又はMHC-IIペプチド配列である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
方法であって、
所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する候補ペプチド配列を受け取ることであって、
候補ペプチド配列は、対象の疾患サンプルに関連し、
MHC提示スコアは、候補ペプチド配列が疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す、候補ペプチド配列を受け取ること、
候補ペプチド配列に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること、
候補ペプチド配列の表現と、
対応するMHCペプチド配列の表現と
を処理することによって、候補ペプチド配列についての入力ベクトルを生成すること、
生成された入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、候補ペプチド配列が免疫原性であるかどうかの予測、又は候補ペプチド配列が免疫原性である可能性、あるいはそれらの組み合わせを生成すること、並びに
予測を含む出力を返すこと
を含む、方法。
【請求項25】
複数の候補ペプチド配列を含むデータセットについての予測を生成すること
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数の候補ペプチド配列をランク付けするレポートを、それらが免疫原性である可能性の予測に基づいて、生成すること
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
一又は複数のペプチド、
前記一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、
前記一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、又はそれらの組合せ
を含むワクチン組成物であって、
前記一又は複数のペプチドが、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、ワクチン組成物。
【請求項28】
複数の核酸がRNAを含む、請求項27に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
ワクチンを製造する方法であって、
一又は複数のペプチド、
前記一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、
前記一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、又はそれらの組合せ
を含むワクチンを産生することを含み、
前記一又は複数のペプチドは、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、方法。
【請求項30】
遺伝子操作されたT細胞組成物であって、前記T細胞組成物が、
一又は複数のペプチド、
前記一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、
前記一又は複数のペプチドを標的とする抗体又は阻害剤、
前記一又は複数のペプチドを標的とする抗体をコードする複数の核酸、あるいはそれらの組み合わせを含み、
前記一又は複数のペプチドが、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、遺伝子操作されたT細胞組成物。
【請求項31】
一又は複数のペプチドを含む医薬組成物であって、前記一又は複数のペプチドが、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、医薬組成物。
【請求項32】
一又は複数のペプチドをコードする核酸配列を含む医薬組成物であって、前記一又は複数のペプチドが、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、医薬組成物。
【請求項33】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、免疫原性ペプチド。
【請求項34】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、核酸配列。
【請求項35】
対象を処置する方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、一又は複数のペプチド、一又は複数の医薬組成物、あるいは一又は複数の核酸配列を投与することを含む、方法。
【請求項36】
一又は複数のデータプロセッサと、
命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、前記一又は複数のデータプロセッサ上で実行されると、前記一又は複数のデータプロセッサに、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法の一部又は全部を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体と
を含む、システム。
【請求項37】
命令を含む非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、前記命令が、一又は複数のデータプロセッサに、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法の一部又は全部を実行させるように構成されている、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、目的のペプチドの免疫原性予測を生成するための方法、組成物、プログラム製品、及びシステムが提供される。より具体的には、機械学習モデルを用いて目的のペプチドの免疫原性を予測し、予測された免疫原性に基づいて、ペプチドを選択及び使用するための組成物、方法、システム、及びプログラム製品が提供される。
【背景技術】
【0002】
ネオ抗原療法(ネオ抗原ワクチンや個別化T細胞療法を含むがこれらに限定されない)は、個別化がん治療を提供するための比較的新しいアプローチである。ネオ抗原は、腫瘍における体細胞変異に由来し、対象のがん細胞及び抗原提示細胞によって提示される腫瘍特異的抗原である。
【0003】
ネオ抗原ワクチンは、一又は複数の特定の腫瘍ネオ抗原を発現するがん細胞を認識して攻撃するよう、対象のT細胞をプライミングすることができる。このアプローチは、腫瘍細胞を標的化しながら健康な細胞を温存する腫瘍特異的免疫応答をもたらす。個別化ワクチンは、対象特異的腫瘍プロファイルに基づいて操作又は選択され得る。腫瘍プロファイルは、対象の腫瘍細胞からDNA及び/又はRNA配列を決定し、これらの配列を使用して目的のネオ抗原を同定することによって定義することができる。ネオ抗原は、腫瘍細胞には存在するが正常細胞には存在せず、腫瘍細胞の表面で利用可能である(提示)ため、適切な大きさの免疫応答を引き起こす(高い免疫原性)ことができる。
【0004】
したがって、腫瘍に対する有効な治療法となるであろうネオ抗原候補の選択を支援するため、腫瘍細胞表面に存在し且つ免疫原性を示すネオ抗原候補を腫瘍組織から正確に同定するための、改良された予測方法とシステムへの需要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施態様は、免疫原性を示すネオ抗原候補を正確に同定するための様々な組成物、方法、システム、及びプログラム製品を提供する。
【0006】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供する方法は、候補ペプチド配列のセットを受け取ることを含み、セット中の候補ペプチド配列の各々は、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する。候補ペプチド配列のセットは、対象の疾患サンプルに関連する。MHC提示スコアは、当該セット中の対応する候補ペプチド配列が、当該疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す。方法は、セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること;当該候補ペプチド配列のセット中の各候補ペプチド配列の表現と、セット中の候補ペプチド配列の各々について対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、当該候補ペプチド配列のセットから免疫原性入力ベクトルを生成することをさらに含む。方法は、当該免疫原性入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、当該セット中の候補ペプチド配列が免疫原性であるどうかの予測、当該セット中の候補ペプチド配列が免疫原性である可能性の予測、あるいはそれらの組み合わせを生成すること;並びに、当該予測を含む出力を返すことをさらに含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する候補ペプチド配列を受け取ることを含む。候補ペプチド配列は、対象の疾患サンプルに関連し、MHC提示スコアは、当該候補ペプチド配列が当該疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す。方法は、候補ペプチド配列に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること、及び、当該候補ペプチド配列の表現と、当該対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することによって、当該候補ペプチド配列についての入力ベクトルを生成することをさらに含む。方法は、生成された入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、当該候補ペプチド配列が免疫原性であるかどうかの予測、候補ペプチド配列が免疫原性である可能性、又はそれらの組み合わせを生成すること;並びに当該予測を含む出力を返すことをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供するワクチン組成物又は遺伝子操作されたT細胞組成物は、一又は複数のペプチド、当該一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、当該一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、あるいはそれらの組み合わせを含む。当該一又は複数のペプチドは、本明細書に記載の一又は複数の方法の一部あるいはすべてを実施することにより生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである。
【0009】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供する、ワクチン組成物又は遺伝子操作されたT細胞の製造方法は、一又は複数のペプチド、当該一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、当該一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、あるいはそれらの組み合わせを含むワクチンを産生することを含み、当該一又は複数のペプチドは、本明細書に記載の一又は複数の方法の一部あるいはすべてを実施することにより生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである。
【0010】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供する医薬組成物は、一又は複数のペプチドを含み、当該一又は複数のペプチドは、本明細書に記載の一又は複数の方法の一部あるいはすべてを実施することにより生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである。
【0011】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供する医薬組成物は、一又は複数のペプチドをコードする核酸配列を含み、当該一又は複数のペプチドは、本明細書に記載の一又は複数の方法の一部あるいはすべてを実施することにより生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである。
【0012】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の、対象を処置する方法は、本明細書に記載の一又は複数の方法の一部あるいはすべてを実施することにより生成された予測に基づいて同定された、一又は複数のペプチド、一又は複数の医薬組成物、あるいは一又は複数の核酸配列を投与することを含む。
【0013】
いくつかの実施態様では、一又は複数のデータプロセッサと、一又は複数のデータプロセッサ上で実行されると、本明細書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部を一又は複数のデータプロセッサに実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムが提供される。
【0014】
いくつかの実施態様では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、一又は複数のデータプロセッサに、本書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部を実行させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0015】
本開示のいくつかの実施態様は、一又は複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施態様では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。命令は、一又は複数のデータプロセッサ上で実行されると、一又は複数のデータプロセッサに、本書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部及び/又は一又は複数のプロセスの一部又は全部を実行させる。本開示のいくつかの実施態様は、命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において有形に具現化された、コンピュータプログラム製品を含む。命令は、一又は複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部及び/又は一又は複数のプロセスの一部又は全部を実行させるように構成される。
【0016】
使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示されて説明された特徴のいかなる均等物又はその一部も除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施態様及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更及び変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0017】
本開示は、以下の添付の図面と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】一又は複数の実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために免疫原性モデルを訓練するワークフローを示す。
【
図1B】一又は複数の実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために免疫原性モデルを訓練するワークフローを示す。
【
図2】様々な実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するためのワークフローの概略図である。
【
図3】一又は複数の実施態様による、傾斜三角(slanted triangular)学習率のグラフを示す。
【
図4】様々な実施態様による、免疫原性予測に免疫原性モデルを使用した場合の性能を示すグラフである。
【
図5】様々な実施態様による、免疫原性予測のための異なるモデルを比較する表である。
【
図6】様々な実施態様による、候補ペプチド配列の免疫原性を予測するための方法のフロー図である。
【
図7】様々な実施態様による、ワクチン及び治療薬を製造するための方法のフロー図である。
【
図8】様々な実施態様による、本明細書で提供する方法を実行するように構成されたコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面において、同様の構成要素及び/又は特徴は、同じ参照ラベルを有することができる。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後に同様の構成要素を区別するダッシュ及び第2のラベルを続けることによって区別され得る。本明細書において第1の参照ラベルのみが使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のいずれかに適用可能である。
【0020】
I.概要
本開示は、腫瘍細胞表面に提示され且つ免疫原性を示すネオ抗原候補を疾患サンプルから正確に同定するための様々な例示的な実施態様を記載する。しかしながら、本開示は、これらの例示的な実施態様及び用途、又は例示的な実施態様及び用途が本明細書で動作する又は説明される様式に、限定されない。さらに、図は、簡略化された又は部分的な図を示すことがあり、図の要素の寸法は、誇張されているか、又は比例していないことがある。
【0021】
II.定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためのものに過ぎず、限定することを意図するものではないことを理解するべきである。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記ならびに他の技術的及び科学的用語又は語法は、特許請求される主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語は、明確性及び/又は容易な参照のために本明細書に定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されるものに対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。一般に、化学、生化学、分子生物学、薬理学及び毒物学に関連して利用される命名法及びその技術は、本明細書に記載されており、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。
【0023】
本明細書において使用される際、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈で明確に示されない限り、複数形も同様に含むことが意図されている。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの一又は複数のあらゆる可能な組み合わせを指し、それらを包含することも理解されたい。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」、「含む(including)」、「備える(comprises)」及び/又は「備える(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又は単位の存在を指定するが、一又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、単位及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されるべきである。
【0024】
本開示を通して、様々な態様が範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本開示に対する変更できない限定として解釈されるべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲の他、その範囲内の個々の数値をも具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の各介在する値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が本開示では包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、そのより小さい範囲に独立して含まれることができ、また、記載された範囲内のいずれかの特に除外された限界に従うことを条件として、本開示に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それら包含される限界のいずれか又は両方を除いた範囲もまた、本開示に含まれる。これは、範囲の幅に関わらず適用される。
【0025】
本明細書で使用される「約」という用語は、容易に知られるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を含むように指す。本明細書における「約」に続く値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施態様を含む(且つ説明する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。いくつかの実施態様では、「約」は、当業者によって理解されるように、±15%、±10%、±5%、又は±1%を指す場合がある。
【0026】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されるが、全体的な性能にそれほど影響しないような、絶対的又は完全な状態、寸法、測定値、結果などからの微細な、僅かな変動を可能にする。数値、又は数値として表され得るパラメータもしくは特性に関して使用される場合、「実質的に」とは、10パーセント以内を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「複数のもの(ones)」という用語は、2つ以上のものを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「複数」又は「グループ」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多い数とすることができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「セット」という用語は、一又は複数を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「のうちの少なくとも1つ」という語句は、項目のリストとともに使用される場合、列挙された項目のうちの一又は複数の異なる組み合わせが使用されてもよく、リスト内の項目のうちの1つのみが必要とされてもよいことを意味する。項目は、特定の物体、物、ステップ、動作、プロセス、又はカテゴリーであり得る。換言すれば、「のうちの少なくとも1つ」は、リストから項目の任意の組み合わせ又は任意の数の項目が使用されてもよいが、リスト内の項目の全てが必要とされるわけではない場合があることを意味する。例えば、限定はしないが、「項目A、項目B、又は項目Cの少なくとも1つ」又は「項目A、項目B、及び項目Cの少なくとも1つ」は、項目A;項目A及び項目B;項目B;項目A、項目B、及び項目C;項目B及び項目C;又は項目A及び項目Cを意味しうる。場合によっては、「項目A、項目B、又は項目Cのうちの少なくとも1つ」又は「項目A、項目B、及び項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目Aのうちの2つ、項目Bのうちの1つ、及び項目Cのうちの10;項目Bのうちの4及び項目Cのうちの7;又は他の適切な組み合わせを意味することがあるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、「対象」は、一又は複数の細胞、組織、又は生物を包含する。対象は、in vivo、ex vivo、又はin vitro、雄性又は雌性を問わず、ヒト又は非ヒトであり得る。対象は、ヒト等の哺乳動物であり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、「生体細胞」という用語と互換的に使用される。 生体細胞の例は、真核細胞、植物細胞、動物細胞、例えば、哺乳動物細胞、爬虫類細胞、鳥類細胞、魚類細胞等、原核細胞、細菌細胞、真菌細胞、原生動物細胞等、組織、例えば、筋肉、軟骨、脂肪、皮膚、肝臓、肺、神経組織等から解離された細胞、免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ等、胚(例えば、接合子)、卵母細胞、卵子、精子細胞、ハイブリドーマ、培養細胞、細胞株からの細胞、がん細胞、感染細胞、トランスフェクト及び/又は形質転換細胞、レポーター細胞等を含む。哺乳動物細胞は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、霊長類等からのものであってもよい。
【0033】
「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「核酸」、又は「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオシド間連結によって接合されたヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、又はそのアナログを含む)の直鎖状ポリマーを指す。ポリヌクレオチドは例えば、少なくとも3つのヌクレオシドを含む。通常、オリゴヌクレオチドは、数個のモノマー単位、例えば3~4個から数百個のモノマー単位までのサイズの範囲である。塩基には、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、及びウラシル(U)が含まれる。A、C、G、T、及びUという文字は、当技術分野において標準的であるように、塩基自体、ヌクレオシド、又は塩基を含むヌクレオチドを指すために使用され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、共有結合ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を有する全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
【0035】
本明細書で使用される場合、ペプチドの「エピトープ」は、CフランクとNフランクとの間のペプチドの領域を指し、T細胞受容体(TCR)によって認識される。ペプチドのエピトープは、T細胞上のTCR及び抗原提示細胞上の主要組織適合複合体(MHC)によって認識されるペプチドの一部である。例えば、エピトープはTCRが結合するペプチドであり得る。例えば、エピトープは、ペプチドが抗原提示細胞上のMHCに結合している際にTCRが結合するペプチドであり得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「リガンド」は、細胞表面にMHC分子によって提示されることが溶出実験から見出されるか、またはMHCに結合することがin vitroアッセイで同定されたペプチドである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「MHC」は、主要組織適合複合体を指す。ヒトMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)複合体とも呼ばれる。細胞表面の各MHC分子は、エピトープと呼ばれる小さなペプチド(タンパク質の分子分画)を表示する。病原体由来のタンパク質が提示されることにより、免疫系は感染細胞を排除する。MHCクラスI分子は、すべての有核細胞と血小板、要するに赤血球以外のすべての細胞に発現している。MHCクラスI分子は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とも呼ばれるキラーT細胞にエピトープを提示する。CTLはT細胞レセプター(TCR)に加えてCD8レセプターを発現する。MHCクラスIIは条件付きであらゆる細胞種に発現させることができるが、通常は「プロフェッショナルな」抗原提示細胞(APC):マクロファージ、B細胞、そして特に樹状細胞(DC)にのみ発現する。APCは抗原性タンパク質を取り込み、抗原処理を行い、抗原性タンパク質の分子分画(エピトープと呼ばれる分画)を戻し、エピトープをMHCクラスII分子内に結合させてAPC表面に提示する(抗原提示)。細胞表面では、エピトープはT細胞受容体(TCR)のような免疫学的構造によって認識される。エピトープに結合する抗体の分子領域がパラトープである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「変異ペプチド」は、個々の対象の正常組織の野生型アミノ酸配列に存在しないペプチドを指す。変異ペプチドは、少なくとも1つの変異アミノ酸を含み、疾患組織(例えば、特定の対象から収集される)に存在するが、正常組織(例えば、特定の対象から収集されたもの、異なる対象から収集されたもの、及び/又は正常組織に対応するものとしてデータベースで同定されたもの)には存在し得ない。変異ペプチドはエピトープを含むため、(被験者の「自己」に関連しない結果として)免疫反応を誘発する物質である。変異ペプチドは、ネオ抗原を含むことができ、且つ/或いはネオ抗原であり得る。変異ペプチドは、例えば、タンパク質中の異なるアミノ酸をもたらす非同義変異(例えば、点変異);終止コドンが改変又は欠失され、C末端に新規な腫瘍特異的配列を有するより長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異;特有の腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス部位変異;2つのタンパク質の接合部(すなわち、遺伝子融合)に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質及び/又は腫瘍特異的タンパク質配列を有する新しいオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト挿入若しくは欠失を生じさせる染色体再編成から生じ得る。変異ペプチドは、(ポリペプチド配列によって特徴付けられる)ポリペプチドを含むことができ、及び/又はヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、ペプチドの「Cフランク」は、親タンパク質からの、リガンドのC末端の上流のアミノ酸を指す。任意に、ペプチドのCフランクは、ペプチドのC末端の上流の1、2、3、4、5又はそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、ペプチドの「Nフランク」は、親タンパク質からの、リガンドのN末端の下流のアミノ酸を指す。任意に、ペプチドのCフランクは、ペプチドのN末端の下流の1、2、3、4、5又はそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、ペプチド又はペプチドの一部の「配列」は、アミノ酸識別子の順序付きセットを含むアミノ酸配列を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「参照配列」は、非変異ペプチド又は野生型ペプチド(例えば、野生型の親配列)の少なくとも一部内のアミノ酸を同定する配列をいう。非変異体又は野生型ペプチドは、バリアントを含まないか、又はバリアントコード配列によって同定される変異ペプチドに含まれるよりも少ないバリアントを含み得る。参照配列は、対応するバリアントコード配列を含む遺伝子と比較して同じ遺伝子内の遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列を含み得る。参照配列は、対応するバリアントコード配列に関連する遺伝子配列に関連する遺伝子内位置に対して、遺伝子内の同じ開始及び停止に及ぶ遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列を含み得る。参照配列は、1人以上の対象(バリアントコード配列を決定するために疾患サンプルが収集された対象を含み得るが、そうである必要はない)から非疾患及び/又は非腫瘍サンプルを収集し、そのサンプルを用いて配列決定分析を行うことによって同定され得る。
【0043】
本明細書で使用する「バリアントコード配列」とは、ペプチドの少なくとも一部内のアミノ酸を同定する配列であって、対応する参照配列では観察されないバリアントを含む配列を指す。ペプチドが変異又はバリアントを含む場合、バリアントコード配列は、変異又はバリアントのアミノ酸を同定する。しかしながら、ペプチドが変異又はバリアントを含まない場合、バリアントコード配列は変異又はバリアントのアミノ酸を同定しない(その場合、参照配列と同じである)。バリアントコード配列は、疾患及び/又は腫瘍サンプル(例えば、腫瘍細胞を含む)を収集し、配列決定分析を行ってサンプル中の疾患及び/又は腫瘍細胞に対応する一又は複数の配列を同定することによって決定することができる。場合によっては、配列決定分析はアミノ酸配列を出力する。いくつかの例では、配列決定分析は核酸配列を出力し、これはその後、コドンをアミノ酸識別子に変換し、したがってアミノ酸配列を生成するために処理され得る。バリアントコード配列は、ネオ抗原の配列を含み得る。バリアントコード配列は、ペプチドの一又は複数の末端(例えば、C末端及び/又はN末端)を含んでもよいが、含まなくてもよい。バリアントコード配列は、ペプチドのエピトープを含み得る。バリアントコード配列は、対応する参照配列と比較して一又は複数のバリアント(例えば、一又は複数のアミノ酸の区別)を有するペプチド内のアミノ酸を同定することができる。いくつかの例では、バリアントコード配列は、アミノ酸の順序付きセットを含む。いくつかの例では、バリアントコード配列は、参照ペプチド(例えば、遺伝子、開始位置及び/又は終了位置等によって遺伝子参照配列を同定することによって;又は遺伝子によって、開始位置及び/又は長さ)及び参照ペプチドに対する一又は複数の点変異を同定する。
【0044】
本明細書で使用される場合、MHC分子の「部分配列」は、ペプチドと接触するMHC分子のアミノ酸の順序付きセットを指し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、配列若しくは部分配列の「表現」は、配列若しくは部分配列中のアミノ酸を表すか同定する値のセット、及び/又は配列若しくは部分配列をコードする核酸を表すか同定する値のセットを含み得る。例えば、MHC配列の擬似配列バージョンは、そのMHC配列の表現の例示的な実施態様である。例えば、各アミノ酸は、互いのアミノ酸を表す互いのバイナリ列及び/又はベクトルとは異なる値のバイナリ列及び/又はベクトルによって表され得る。この表現は、例えば、ワン・ホット・エンコーディング(one-hot encoding)を用いて、又は、ブロック代替行列(BLOcks Substitution Matrix)(BLOSUM)の行列を用いて生成され得る。例えば、多次元(例えば、20次元又は21次元)配列が初期化され得る(例えば、ランダム又は擬似ランダムに初期化される)。初期化された配列は、次いで、各アミノ酸に対応する一意のベクトルを含み得る。その後、値は、そのような特有のベクトルの使用が対応するアミノ酸を表すと仮定され得るように固定され得る。複数のコドンの任意のものが単一のアミノ酸をコードすることを考えると、所与の配列の複数の核酸表現が存在し得ることが理解されよう。
【0046】
本明細書で使用される場合、ペプチドの「提示」は、特定の様式でMHC分子に結合することによって細胞の表面に提示されるペプチドの少なくとも一部を指す。次いで、提示されたペプチドは、近くのT細胞等の他の細胞にアクセス可能又は利用可能であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「サンプル」は、組織(例えば、生検)、単一細胞、複数の細胞、細胞の断片、又は体液のアリコートを含み得る。サンプルは、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、生検、針吸引、洗浄サンプル、掻き取り、外科的切開、または介入、または当該技術分野で公知の他の手段を含む手段によって対象から採取されたものであり得る。
【0048】
本明細書で使用される「結合親和性」とは、特異的抗原(例えば、ペプチド)とMHC分子(及び/又はMHC対立遺伝子)との間の結合の親和性を意味する。結合親和性は、特異的抗原とMHC分子との間の結合の安定性及び/又は強度を特徴付けることができる。
【0049】
本明細書で使用される「免疫原性」とは、ヒトまたは他の動物の体内で(例えば、T細胞、B細胞などを介した)免疫応答を誘発する異物、例えば抗原の能力を指す。
【0050】
III.訓練データ
候補ペプチドが免疫原性であるかどうかの予測、候補ペプチドが免疫原性である可能性、又はそれらの組み合わせを生成するために、免疫原性モデルを用いることができる。例えば、1一又は複数の訓練データセットを用いて一又は複数のモデルを訓練し、免疫原性モデルを形成する。そして、この免疫原性モデルを用いて予測を行うことができる。
【0051】
複数のサンプル(例えば、免疫原性予測を実施するためにサンプルが収集される目的の対象以外の、一又は複数の他の対象に潜在的に関連する)から収集されたデータを用いて、訓練データセットが生成され得る。これら複数のサンプルのそれぞれは、例えば、組織(例えば、生検)、単一細胞、複数の細胞、細胞の断片又は体液のアリコートを含み得る。場合によっては、これら複数のサンプルが、訓練されたモデルによって処理される入力データに関連する対象と比較して、異なる種類の対象から収集される。例えば、訓練データを用いてモデルを訓練することにより、提示モデル又は免疫原性モデル等の機械学習モデルが生成され得る。訓練データは、一又は複数の細胞株からのサンプルを処理することによって収集されるか、あるいはヒト対象からの一又は複数のサンプルを処理することによって決定される。
【0052】
訓練データセットは、複数の訓練要素を含むことができる。複数の訓練要素のそれぞれは入力データを含み得る。入力データは、野生型又はバリアントコード配列表現のセット(その各々が、対応するペプチド中の任意のバリアントをコードする及び/又は表す)、並びにMHC分子の部分配列を含む。訓練データセットは、本明細書に記載の一又は複数の技術に従って収集することができる。
【0053】
本明細書に記載の免疫原性モデルの訓練において、1種類よりも多い(例えば、それぞれが異なるタイプの機能ラベルを有する)訓練データセット又は訓練要素が用いられ得る。各訓練要素は、機能ラベル(例えば、MHC提示に関連する機能ラベル又は免疫原性に関連する機能ラベル)として用いられる一又は複数の実験に基づく結果も含み得る。実験に基づく結果は、野生型ペプチド又は変異ペプチド(訓練要素内の候補ペプチド配列に関連する)とMHC分子(訓練要素内のMHC分子部分配列に関連する)との間の一又は複数の特定の種類の相互作用のそれぞれが生じるかどうか及び/又はその程度、並びに、候補ペプチド配列が免疫原性かどうか及び/又はその程度を示すことができる。特定の種類の相互作用には、例えば、MHC分子へのペプチドの結合及び/又は細胞の表面上のMHC分子によるペプチドの提示(例えば、腫瘍細胞)が含まれ得る。
【0054】
実験に基づく結果はさらに、ペプチドとMHC分子との間の結合親和性を含み得る。実験に基づく結果は、所与のペプチドが所与のMHC分子と結合するかどうか、そのような結合の強度、及び/又はそのような結合の安定性を特徴付ける定性的データ及び/又は定量的データを含むことができ、又はそれに基づくことができる。例えば、バイナリ結合親和性指示薬又は定性的バイナリ親和性結果は、ELISA、プルダウンアッセイ、ゲルシフトアッセイ、バイオセンサベースの方法論、例えば表面プラズモン共鳴、等温滴定比色法、バイオレイヤー干渉法又はマイクロスケール熱泳動を用いて生成することができる。
【0055】
これに加えて又は代えて、実験に基づく結果は、所与のMHC分子が所与のペプチドを提示するかどうか、そのような提示の確率、あるいはそれらの両方を特徴づける。例えば、MHCリガンドがサンプルから免疫沈降され得る。その後の溶出及び質量分析を使用して、MHC分子がリガンドを提示したかどうかを決定することができる。
【0056】
追加の又は別の実施態様において、訓練データセットは、機能ラベルを有する候補ペプチド配列を含み得る。機能ラベルは、野生型ペプチド又は変異ペプチド(訓練要素内の候補ペプチド配列に関連する)が免疫原性であるかどうか、及び/又はその程度を示す。
【0057】
訓練データセットに含まれる機能ラベルは、候補ペプチド配列 (例えば、バリアントコード配列)によって同定されるアミノ酸を有する変異ペプチドが、関心対象以外の対象、又は関心対象以外の対象のin vitroサンプルもしくは細胞株において免疫原性応答を誘因したかどうかを示し得る。免疫原性は、変異ペプチドがT細胞受容体(例えば、CD8+細胞傷害性Tリンパ球又はCD4+ヘルパーT細胞の受容体)を活性化し、及び/又は免疫学的応答を誘因したことを示し得る。訓練データは、例えば、サンプル(例えば、一又は複数の樹状細胞)中に様々な変異ペプチドを発現させること、及び/又は、様々な変異ペプチドを、免疫化、ワクチン、個別化T細胞療法、又はそれらの組み合わせによって導入することによって(例えば、サンプルに対して、又はサンプルがその後に収集された対象に対して)生成されていてもよい。変異ペプチドは、個別に(例えば、それにより、各実験を単一の変異ペプチドに集中させる)又はグループで発現又は導入されていてもよい。
【0058】
例えば、機能ラベルの免疫原性は、腫瘍浸潤細胞や他のT細胞を分析することによって試験されたものでああり得る。例えば、変異ペプチドのエピトープが検出され(例えば、閾値を超える量で)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)又はT細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)の測定されたレベルが対応する閾値を超え、細胞傷害性T細胞の検出された量(例えば、変異ペプチドに対応するエピトープを提示する一般的又は細胞傷害性T細胞)が対応する閾値を超え、及び/又は少なくとも閾値程度のアポトーシスが観察される場合、変異ペプチドは免疫応答を誘因した及び/又は免疫原性であると判定され得る。別の例として、変異ペプチドは、サンプル中で発現されていてもよい(例えば、一又は複数の樹状細胞)。提示された抗原がその後T細胞によって認識されると決定される場合、変異ペプチドが免疫応答を誘因した及び/又は免疫原性であると決定されている可能性がある。いくつかの実施態様は、訓練データセット(例えば、本明細書に開示される一又は複数の実験及び/又は分析を行うことによって)の少なくとも一部を収集及び/又は決定することを含むことが理解されよう。
【0059】
IV.免疫原性モデル訓練ワークフロー
本明細書に記載の様々な方法及びシステムの実施態様は、ネオ抗原候補の免疫原性を予測する改善された方法を可能にする。
図1A~1Bは、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために免疫原性モデルを訓練する一般的なワークフローの2つの例の概略図である。
【0060】
図1Aは、一又は複数の実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために免疫原性モデルを訓練するワークフロー100を示す。
図1Aに示すワークフロー100は、事前訓練された免疫原性モデル110から開始し、その後の訓練工程130、140、150を経て免疫原性モデル160を生成する。他の実施態様において、ワークフロー100は、例えば、
図1Aに示される特徴よりも多いか少ない特徴等の特徴の様々な組み合わせを含むことができる。
【0061】
図1Bは、一又は複数の実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために免疫原性モデルを訓練するワークフロー170を示す。ワークフロー170は
図1Aのワークフロー100と類似しているが、未訓練の免疫原性モデルから開始し、その後、前訓練工程120を経たのち、訓練工程130、140、150を経て免疫原性モデル160を生成する。よって、
図1Bのワークフロー170は一般に、
図1Aのワークフロー100及び前訓練工程120を含む。他の実施態様において、ワークフロー170は、例えば
図1Bに例示される特徴よりも多いか少ない特徴等の特徴の様々な組み合わせを含み得る。
【0062】
図1Aのワークフロー100及び
図1Bのワークフロー170の両方に含まれるデータ、モデル、及び/又はプロセスへの言及は、ワークフロー100、ワークフロー170、又はその両方のデータ、モデル、及び/又はプロセスを指す場合がある。
図1A及び
図1Bにおいて生成された免疫原性モデル160は、
図2のワークフロー200に関して後述するように、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するために使用され得る。
図1Aのワークフロー100及び
図1Bのワークフロー170は、例えば、
図8に関して記載したシステム800又は同様のシステムを用いて実施することができる。
【0063】
IV.A.事前訓練された免疫原性モデルを得る
図1Aのワークフロー100に示されているように、免疫原性モデルの訓練は、事前に訓練された免疫原性モデル110を受け取るか他の方法で取得することを含む場合がある。事前訓練された免疫原性モデル110は、マスクされた配列からマスクされたアミノ酸又は不完全な配列中の次のアミノ酸のいずれかを予測するために、タンパク質配列について訓練された言語表現モデルであってもよい。事前訓練された免疫原性モデル110の使用により、免疫原性と相関するペプチド配列中の潜在情報を、非言語型モデルよりもよく同定することができる。いくつかの場合、
図1Aに示すワークフロー100のための訓練工程は、ワークフロー170の様々な特徴又は他の態様を含み得る。これらは例えば
図1Bに示す事前訓練工程についてIV.B節で詳説する。いくつかの実施態様において、教師なし事前訓練工程を用いることで、事前訓練された免疫原性モデル110は、入力タンパク質配列を下流のタスクで使えるかたちで表現する能力を得る。
【0064】
次に、事前訓練された免疫原性モデル110が後続の訓練工程(例えば、訓練工程130、140、150)で処理されて免疫原性モデル160が生成される。これら後続の訓練工程130、140、150についてはIV.C節で詳説する。
【0065】
IV.B.事前訓練
一又は複数の実施態様において、
図1Bのワークフロー170に示すように、免疫原性モデルを訓練することは、初期免疫原性モデル105で開始した後に事前訓練工程120を実施して初期免疫原性モデル105を事前に訓練し、
図1Aの事前訓練された免疫原性モデル110のような事前訓練された免疫原性モデルを作成することを含み得る。初期免疫原性モデル105は例えば、未訓練の免疫原性モデルであり得る。例えば、初期免疫原性モデル105が、マスクトークン予測を用いて、ペプチド配列データ115で事前に訓練され得る。
図1Bの事前訓練工程120で得られた事前訓練された免疫原性モデルは、後続の訓練工程(例えば、訓練工程130、140、150)により処理されて、免疫原性モデル160が生成される。
【0066】
事前訓練工程120についてはIV.B.1~IV.B.3節でさらに詳説する。事前訓練工程120の出力が、
図1Aの事前訓練された免疫原性モデル110のような事前訓練された免疫原性モデルである。上記のように、ブロック130、140、150に示す後続の訓練工程についてはIV.C節で詳説する。
【0067】
IV.B.1 事前訓練工程のための入力データ
ブロック120の事前訓練工程において用いるため、ペプチド配列データ115は、例えば機能ラベルを含まないタンパク質配列を含む、ペプチド配列の任意のデータセットを含み得る。例えば、ペプチド配列データ115がPfamデータセットを含み得る。PfamデータセットはUniProtデータベースのサブセットであり、3,100万のタンパク質配列又は特定のファミリーに属する任意の中間範囲もしくは値を有する。ペプチド配列データ115は、様々なソースからの3億個の配列を有するUniProtデータベースから選択される非Pfamデータセットであってもよい。UniProtデータベースから用いられるデータ部分は、特定のファミリーへのバイアスを緩和することや、免疫原性モデル160を特定のファミリーから学習させること(バイアス増大)や、事前訓練データセットのサイズを変更するために用いられ得る。
【0068】
IV.B.2 事前訓練工程で用いるモデル
一又は複数の実施態様において、初期免疫原性モデル105はニューラネットワークベースのモデルであり得る。ニューラルネットワークベースのモデルは、例えば、トランスフォーマーモデル、1次元畳み込みニューラルネットワークモデル、またはリカレントニューラルネットワークモデルであり得る。一又は複数の実施態様において、初期免疫原性モデル105が、Rao et al.、Roshan Rao, et al「Evaluating protein transfer learning with TAPE. Adv. in Neural Information Processing Sys. (2019)」に記載のトランスフォーマーベースのTAPE(tasks assessing protein embeddings)モデルである。当該参考文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施態様において、TAPEモデルは、Devlin et al.、Jacob Delvin et al.「BERT: Pretraining of Deep Bidirectional Transformers for Language Understanding, arXiv (Oct. 11, 2018)」https://arxiv.org/abs/1810.04805に記載されるような半教師付き学習を伴うBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)ベースのトランスフォーマーモデルを使用して構築され得る。当該参考文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0069】
初期免疫原性モデル105は、アテンションベースのメカニズムを含んでもよい。いくつかの実施態様において、初期免疫原性モデル105が、一又は複数のトランスフォーマー層、一又は複数のプーラー、一又は複数の全結合層、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、初期免疫原性モデル105がTAPEやBERT以外のモデルアーキテクチャを使用してもよい。
【0070】
IV.B.3 事前訓練工程
事前訓練工程120において、未訓練の免疫原性モデル105がペプチド配列データ115で訓練される。例えば、ペプチド配列データ115は、少なくとも又は約20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45, 50、55、60、100、200、又は3億個のタンパク質配列、又は任意の中間の範囲もしくは値を含み得る。例えば、初期免疫原性モデル105が、ペプチド配列データ115中のアミノ酸の、少なくとも、最大で、又は約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%をマスクし得る。初期免疫原性モデル105は、マスクされた各位置にどの語彙トークン(単一のアミノ酸を表す)が最も適合するかを予測するように訓練でき、免疫原性モデルの初期パラメータをさらに訓練することができる。
【0071】
IV.C. ラベル付きデータによる後続の訓練
図1Aのワークフロー100において事前訓練された免疫原性モデル110が得られた後、あるいは、
図1Bのワークフロー170において事前訓練工程120が行われた後の後続訓練には、3つの訓練工程130、140、150が含まれる。これらの訓練工程では、ラベル付きデータを使用する。ラベル付きデータは、免疫原性に関する種々の機能ラベルに関連したペプチド配列を含む。例えば、MHC-I訓練工程130は、MHC-I結合についての機能ラベルを有するMHC-Iデータ125を使用する。MHC-II訓練工程140は、MHC-II結合についての機能ラベルを有するMHC-IIデータ135を使用する。免疫原性訓練工程150は、免疫原性の機能ラベルを有する免疫原性データ145を使用する。後続の訓練工程130、140、150の各々において、ラベル付きデータ(例えば、MHC-Iデータ125、MHC-IIデータ135、免疫原性データ145)の特定の入力を、直前の工程から得られたモデルにプラグインして、モデルの一又は複数のパラメータをファインチューニング(微調整)し、免疫原性モデル160を生成する。
【0072】
IV.C.1 後続の訓練工程のためのラベル付きデータ入力
いくつかの実施態様において、例えばMHC Iデータ125、MHC IIデータ135、及び免疫原性データ145を含むラベル付きデータは、候補ペプチド配列(又はその他の表現)、MHC配列(又はその他の表現)、及び一又は複数の機能ラベルなどの複数のデータ要素を含み得る。例えば、候補ペプチド配列は、ペプチド内のアミノ酸の順序付きセット(例えば、ネオ抗原候補)を同定することができる。候補ペプチド配列は、ペプチドのエピトープ(例えば、バリアントを含む、及び/又はネオエピトープを含む、又はネオエピトープである)内のアミノ酸を同定することができる。候補ペプチド配列は、候補ペプチド配列の一又は複数の末端(例えば、C末端に対応するCフランク及び/又はN末端に対応するNフランク)内のアミノ酸を同定し得る。いくつかの実施態様では、NフランクもCフランクもMHC分子に結合しないが、各々、候補ペプチドがMHC分子によって提示されるかどうかに影響を及ぼし得る。
【0073】
(所与の訓練要素の)相互作用ラベル(一又は複数)は、(所与の訓練要素の)MHC配列に対応するMHC分子と候補ペプチド配列に対応する(所与の訓練要素の)候補ペプチドとの間の(特定のタイプの)相互作用の有無及び/又は程度を、特徴付けることができる。陰性相互作用ラベルは、候補ペプチドがMHC分子に結合しない及び/又はMHC分子によって提示されないことを示し得る。陽性相互作用ラベルは、候補ペプチドがMHC分子に結合する及び/又はMHC分子によって提示されることを示し得る。相互作用ラベル(一又は複数)は、例えば以下を示すことができる:候補ペプチドがMHC分子に結合するかどうか;候補ペプチドがMHC分子に結合する確率;候補ペプチドとMHC分子との結合親和性;候補ペプチドとMHC分子との結合強度;候補ペプチドとMHC分子との結合安定性;MHC分子が候補ペプチドを(例えば、細胞表面及び/又は腫瘍細胞表面で)提示するかどうか;及び/又はMHC分子が候補ペプチドを提示する確率。
【0074】
(所与の訓練要素の)免疫原性ラベル(一又は複数)は、実験結果または医療記録に基づいて、(所与の訓練要素の)候補ペプチド配列に対応する候補ペプチドの免疫原性の有無及びその程度を特徴付けることができる。
【0075】
ラベル付き訓練データセットは、例えば、in vitro又はin vivo実験によって、及び/又は医療記録に基づいて生成されていてもよい。ラベル付き訓練データは、III節に記載の一又は複数の技術に基づいて生成されていてもよい。
【0076】
IV.C.2 後続の訓練工程
MHC I訓練工程130について、ワークフロー100は、事前訓練された免疫原性モデル110、又は事前訓練工程120から得られた事前訓練された免疫原性モデルを、ラベル付けされたMHC-I結合データ125を用いて、さらに訓練することを含み得る。例えば、MHC I訓練工程130の入力は、連結配列のセットを含み得る。連結配列の各々は、候補ペプチド配列(そのNフランク領域を含む)とその対応するMHC-I配列を含む。MHC I訓練工程130の出力は、候補ペプチド配列についての溶出リガンド(EL)の分類などのMHC-I結合結果であり得る。これは2進数(例えば、MHC-Iに結合しないことを示す0か、又はMHC-Iに結合することを示す1)であるか、又は浮動小数点数であってもよい。
【0077】
MHC II訓練工程140について、ワークフロー100は、事前訓練された免疫原性モデル100を、ラベル付けされたMHC-II結合データ135を用いてさらに訓練することを含み得る。例えば、MHC II訓練工程140の入力は、連結配列のセットを含み得る。連結配列の各々は、候補ペプチド配列(そのNフランク領域を含む)とその対応するMHC-II配列を含む。MHC II訓練工程140の出力は、候補ペプチド配列についての結合親和性結果などのMHC-II結合結果であり得る。これは2進数(例えば、MHC-IIに結合しないことを示す0か、又はMHC-IIに結合することを示す1)であるか、又は浮動小数点数であってもよい。
【0078】
免疫原性訓練工程150について、ワークフロー100は、事前訓練された免疫原性モデル110をラベル付き免疫原性データ145でさらに訓練して免疫原性モデル160を生成することを含み得る。例えば、免疫原性訓練工程150の入力は、連結配列のセットを含み得る。連結配列の各々は、候補ペプチド配列(そのNフランク領域を含む)とその対応するMHC配列を含む。免疫原性訓練工程150の出力は、候補ペプチド配列についての免疫原性結果であり得る。候補ペプチド配列は、MHC提示データに基づく最も提示可能なネオエピトープなど、予め定義された基準を満たすMHC提示スコアに基づいて選択され得る。最も提示可能なネオエピトープはネオ抗原に由来し、ネオエピトープはネオ抗原のサブ配列である。種々のネオエピトープがMHC提示についてスコアされ、最も高いスコアが最も提示可能なネオエピトープとされる。ある例では、ラベル付き免疫原性データ145が、マルチマーアッセイ、ELISpotアッセイ、任意の利用可能な免疫原性測定法、あるいはそれらの組み合わせを使用して取得され得る。
【0079】
訓練工程130、140、150に伴って生じる後続の訓練(すなわち、ファインチューニング)の各段階において、ワークフロー100及び/又はワークフロー170は、分類損失関数、回帰損失関数、あるいはそれらの組み合わせを計算することを含み得る。例えば、損失関数は、平均二乗誤差、中央値二乗誤差、平均絶対誤差、中央値絶対誤差、エントロピーベースの誤差、クロスエントロピー誤差、バイナリクロスエントロピー誤差、もしくは別のタイプの誤差又は損失のうちの少なくとも1つに基づくことができる。
【0080】
図2及びV節でさらに説明するように、一又は複数の実施態様において、ワークフロー100及び/又はワークフロー170は、候補ペプチド配列の免疫原性予測、例えばバイナリ免疫原性予測スコア又は非バイナリ免疫原性予測スコアなどのために、免疫原性モデル160を使用することを含み得る。
【0081】
訓練工程130、140、150を介した訓練後、ワークフロー100及び/又はワークフロー170は、検証データ(例えば、訓練データセットの分離されたサブセットまたはテストセット)を使用して、訓練中または訓練後の免疫原性モデル160の性能を評価することを含み得る。モデルの性能の評価指標は、
図4及び
図5に例示するような受信者動作特性曲線下面積(すなわち、ROC-AUC)及びp値を含み得る。これについてはVI節でより詳細に説明する。所望の性能が得られた場合、及び/又は最大訓練反復回数が完了した場合、及び/又は目標性能が得られた場合、訓練を終了することができる。
【0082】
IV.C.3 後続の訓練工程における学習率の変更
ワークフロー100及び/又はワークフロー170におけるMHC I訓練工程130、MHC II訓練工程140、及び免疫原性訓練工程150中、事前訓練された免疫原性モデル110は、静的又は動的学習率を用いて訓練される。動的学習率は、例えば、学習率アニーリングを用いて生成することができる。
【0083】
事前訓練された免疫原性モデル110は、複数の層を有するモデルであり得る。ワークフロー100及び/又はワークフロー170における訓練は、モデルの種々の層もしくは事前訓練された免疫原性モデル110と最終的な免疫原性モデル160との間の中間モデルのうちの任意のものを、異なる学習率で訓練すること、エポック間の上昇期及び下降期で学習率を変化させること、あるいはそれらの組み合わせを含むことができる。識別的(discriminative)学習率は、ファインチューニング中に使用できる学習率の一例である。例えば、ファインチューニングの間、モデルの変換層の各々が異なる学習率を持つことができる。いくつかの場合、最初の層の学習率が最も低く、最後の層の学習率が最も高い。他の例では、異なる層をグループ化して、学習率が最も低い一又は複数の開始層を含む最初のグループと、学習率が最も高い一又は複数の最終層を含む最後のグループとしてもよい。
【0084】
傾斜三角学習率も、学習率の使い方の一例である。例えば、傾斜三角学習率により、ファインチューニング中に学習率は三角形のパターンで変化し、最初に増加し、次に減少(又は減衰)する。いくつかの例では、学習率は、三角形の立ち上がり部分と下がり部分の両方における学習率のコサインアニーリング変化のような、非線形な方法で変化する(
図3に示す)。このような傾斜三角学習率により、より安定した訓練工程を実現し、最終的な性能を向上させることができる。
【0085】
図3は、一又は複数の実施態様による傾斜三角学習率についてのグラフを示す。
図3において、グラフ300は、候補ペプチド配列の免疫原性を予測するための免疫原性モデル(例えば、
図1A及び
図1Bの免疫原性モデル160を生成するために実行される訓練)の後続の訓練中に生じる学習率の変化を示す。グラフ300は、訓練の反復(すなわち、経時的な訓練バッチ)(X軸)の間に免疫原性モデルの最終層の学習率(Y軸)がどのように変化するかを示す。グラフ300は、三角形の立ち上がり部分と下がり部分の両方で学習率のコサインアニーリング変化を示している。このような訓練中の学習率の非線形な変化によりファインチューニングが改善され、より安定した訓練工程が保証される。このような学習率のスケジューリングは、まず最後の2つの層が凍結解除されたときに発生し、そしてすべてが凍結解除されたときに再び発生するなど、ファインチューニング起こるたびに発生させることができる。
【0086】
IV.C.4 後続の訓練工程における凍結解除
一又は複数の実施態様において、訓練(すなわち、ファインチューニング)工程130、140、150の各々は、ウォームアップ期間を含み得る。ウォームアップ期間では、訓練(すなわち、ファインチューニング)が最後の層又は最後の2つの層から開始される例えば、最後の2つのトランスフォーマー層は、第1の期間中に最初に微調整され、次に第2の期間にモデルのすべてのトランスフォーマー層が微調整される。いくつかの例では、学習率のスケジューリングがファインチューニング起こるたびに発生し、まず最後の2つの層が凍結解除されたときに発生し、そしてすべてが凍結解除されたときに再び発生する。
【0087】
例えば、ワークフロー100及び/又はワークフロー170が、最後の2つのトランスフォーマー層、プーラー、及び全結合層(例えば、ネットワークの合計最後の4層)を凍結解除することを含み得る。その後、ウォームアップ期間の後、ネットワークの残りの部分が凍結解除される。最後の層は、通常のファインチューニングでも最も動く層であり、分類能力を持ち、下流タスクのファインチューニング中に言語モデリングのために訓練されるので、最後の層のうち一又は複数は最初に移動またはチューニングし、内側の一般層の移動またはチューニングを避けることが望ましい場合がある。
【0088】
V.免疫原性予測ワークフロー
図2は、様々な実施態様による、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するためのワークフロー200の概略図である。このワークフロー200により、個別化治療で使用するための所望の免疫原性をもつ候補ペプチドの選択が可能となる。
図2は、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するためのワークフローの実施態様の一例を示す。他の実施態様において、ワークフロー200は、
図2に例示される特徴よりも多くても少なくてもよい一又は複数の特徴または様々な特徴の組み合わせを含み得る。ワークフロー200は、例えば、
図8に関して説明したシステム800又は同様のシステムを使用して実装され得る。
【0089】
V.A.入力データ
ワークフロー200は、入力データ205を収集、取得、検索、及び/又はこれにアクセスすることを含む。入力データ205は、所望の免疫原性を有する候補ネオ抗原、又は具体的には候補ネオエピトープを同定するために使用することができる候補ペプチド配列の入力配列を含む。
【0090】
一般に、候補ペプチド配列は、一又は複数の疾患患者、例えば一又は複数の腫瘍を有する患者からの一又は複数のサンプルなどの疾患サンプルに関連する。候補ペプチド配列は、対象の疾患サンプル内のペプチド配列を同定し、それらペプチド配列のうちいずれが参照サンプル、健康サンプル、及び/又は野生型配列セット内に表現されていないか、を決定することによって得られたものであり得る。健康なサンプルが比較のために使用される場合、健康なサンプルは対象から収集されていてもよい(ただし必須ではない)。
【0091】
候補ペプチド配列は、候補ペプチド配列の対象特異的セットを含み得る。候補ペプチド配列の対象特異的セットは、変異ペプチドのセットに対応することができるので、候補ペプチド配列の対象特異的セットの各々は、変異ペプチドのセットの対応する変異ペプチド内のアミノ酸に対応し、且つ/又は、候補ペプチド配列の対象特異的セットの各々は、変異における一又は複数のアミノ酸に対応する。候補ペプチド配列の対象特異的セットの各々は、特定の対象(例えば、ヒト対象)と関連づけられ得る。特定の対象は、症候を診断されたことがあってもよく、症候を有し、且つ/又は症候を経験したことがあってもよく、又は特定の病状(例えばがん)に関する検査結果を受けたことがあってもよい。
【0092】
候補ペプチド配列は、腫瘍からの疾患サンプルを処理することによって同定され得る。腫瘍は、肺がん、黒色腫、乳がん、卵がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、脳がん、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞前リンパ球性白血病のうちの一以上であり得る。
【0093】
入力データの各候補ペプチド配列は、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアに関連し得る。各MHC提示スコアは、各候補ペプチド配列が対応するMHCペプチド配列によって提示されると判定される可能性のレベルを示す。
【0094】
MHC提示スコアは、注意ベースのモデルなどのニューラルネットワークベースのモデルを使用して予測することができる。MHC提示スコアに基づいて候補ペプチド配列を予め選択することにより、免疫原性予測の精度を向上させ、治療開発のために所望のMHC提示特性及び免疫原性を有するペプチドの選択を容易にすることができる。
【0095】
ワークフロー200の入力データ205は、ペプチド配列そのものだけでなく、候補ペプチド配列のエピトープのNフランク及び/又はCフランク領域の配列など、候補ペプチド配列の隣接部分も含み得る。
【0096】
ワークフロー200は、ローカル又はリモートのストレージから入力データ205を取得するか又はこれにアクセスすること、及び/又は候補ペプチド配列の入力データを他のデバイスから要求することを含み得る。候補ペプチド配列の入力データを取得する又はこれにアクセスすることは、入力データ収集のための候補ペプチド配列を決定することを含み、且つ/又はそれと組み合わせて実行することができる。
【0097】
候補ペプチド配列の入力データ205は、本明細書に開示する技術又は利用可能な任意の技術を用いて同定されていてもよい。候補ペプチド配列のセットは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のペプチド配列を含み得る。候補ペプチド配列は、変異ペプチドに対応するバリアントコード配列、及び、一又は複数の他の配列もしくは部分配列(例えば、MHC-I分子、MHC-II分子、又はT細胞受容体に対応する)を含み得る。
【0098】
いくつかの場合では、候補ペプチド配列のセット(変異ペプチドのセットに対応する)のうちの一又は複数について予測が生成される。候補ペプチド配列のセットは、対象から収集された疾患サンプル中に存在するが、一又は複数の非疾患サンプル(例えば、対象又は別の対象からの)中には観察されないペプチドに対応し得る。例えば、候補ペプチド配列は、ペプチド又は核酸配列決定の技術を実施して疾患サンプル中のペプチド配列又は核酸配列を同定し、同定されたペプチドを、健常サンプルで検出されたペプチド又は参照データベースと比較することによって、腫瘍特異的ペプチド又は核酸配列を同定したものであり得る。腫瘍特異的配列が核酸配列である場合、各腫瘍特異的核酸配列はアミノ酸配列に変換され得る。
【0099】
所与の対象に関連する変異ペプチドのセットを同定するための様々な方法が利用可能である。変異は、対象の疾患細胞のゲノム、転写、プロテオーム又はエクソーム中に存在し得るが、非疾患サンプル(例えば対象又は別の対象からの非疾患サンプル)中には存在し得ない。変異としては、限定されるものではないが、(1)タンパク質中の異なるアミノ酸をもたらす非同義変異;(2)終止コドンが改変又は欠失され、C末端に新規な腫瘍特異的配列を有するより長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異;(3)成熟mRNAへのイントロンの包含、したがって固有の腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス部位変異;(4)2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質を生じる染色体再編成(すなわち、遺伝子融合);(5)新規な腫瘍特異的タンパク質配列を有する新しいオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト挿入又はフレームシフト欠失が挙げられる。変異はまた、一又は複数の非フレームシフトインデル、ミスセンス若しくはナンセンス置換、スプライス部位の変化、ゲノム再編成若しくは遺伝子融合、又はneoORFを生じさせる任意のゲノム若しくは発現変化を含み得る。
【0100】
例えば、疾患細胞におけるスプライス部位、フレームシフト、リードスルー又は遺伝子融合変異から生じる変異又は変異ポリペプチドを有するペプチドは、疾患サンプル中のDNA、RNA又はタンパク質を配列決定し、得られた配列を非疾患サンプル由来の配列と比較することによって同定することができる。
【0101】
いくつかの実施態様において、疾患サンプル及び非疾患サンプルからの全ゲノム配列決定(WGS)又は全エクソーム配列決定(WES)データを取得し、比較することができる。非疾患サンプル及び疾患サンプルリードのヒト参照ゲノムへのアラインメントに続いて、単一ヌクレオチドバリアント(SNV)、遺伝子融合及び挿入又は欠失バリアント(インデル)を含む体細胞バリアント、バリアントコーリングアルゴリズムを使用して検出することができる。例えば、Xu, Chang Xu, A review of somatic single nucleotide variant calling algorithms for next-generation sequencing data, 16 Comput. Struct. Biotechnolに示されるように、 種々のソマティックバリアントタイプ(すなわち、SNV、遺伝子融合、又はインデル)を検出するために一又は複数のバリアントコーラーを使用することができる。この文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0102】
いくつかの例では、変異ペプチドは、個体由来の疾患サンプル中のトランスクリプトーム配列に基づいて同定される。例えば、全トランスクリプトーム配列又は部分的トランスクリプトーム配列(例えば、RNA-Seqにより得る)を個体の疾患組織から得て、配列決定分析に供することができる。次いで、疾患組織サンプルから得られた配列を、参照サンプルから得られた配列と比較することができる。任意に、疾患組織サンプルを全トランスクリプトームRNA-Seqに供する。任意に、トランスクリプトーム配列は、参照サンプルとの比較前の特定の配列について「濃縮」である。例えば、配列決定分析に供する前に、特定の所望の配列(例えば、疾患特異的配列)を濃縮するように特異的プローブを設計することができる。全トランスクリプトーム配列決定及び標的配列決定の方法は当技術分野で知られており、以下のような様々な論文で報告されている:Fuchau Tang et al., mRNA-Seq whole-transcriptome analysis of a single cell, 6 Nature Methods、377-382 (2009);Fatih Ozsolak, et al., RNA sequencing: advances, challenges and opportunities, 12 Nature Reviews, 87-98 (2011);Marcelo A. German et al., Global identification of microRNA-target RNA pairs by parallel analysis of RNA ends, 26 Nature Biotechnology, 941-946 (2008);及び、Zhong Wang et al., RNA-Seq: a revolutionary tool for transcriptomics,10 Nature Reviews, 57-63 (2009)。これらの参考文献の各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0103】
いくつかの実施態様において、トランスクリプトーム配列決定技術としては、限定されるものではないが、RNAポリ(A)ライブラリー、マイクロアレイ分析、並列配列決定、大規模並列配列決定、PCR及びRNA-Seqが挙げられる。RNA-Seqは、トランスクリプトームの一部又は実質的に全部を配列決定するためのハイスループット技術である。手短に言えば、トランスクリプトーム配列の単離された集団を、一方又は両方の末端に結合したアダプターを有するcDNA断片のライブラリーに変換する。次いで、増幅の有無にかかわらず、各cDNA分子を分析して、配列情報の短いストレッチ、典型的には30~400塩基対を得る。次いで、これらの配列情報の断片を参照ゲノム、参照転写物にアラインメントするか、又はde novoでアセンブルして、転写物の構造(すなわち、転写境界)及び/又は発現レベルを明らかにする。
【0104】
一旦得られると、罹患サンプル中の配列を参照サンプル中の対応する配列と比較することができる。配列比較は、疾患組織中の核酸配列を参照サンプル中の対応する配列と整列させることによって、核酸レベルで行うことができる。次いで、コードされたアミノ酸の一又は複数の変化をもたらす遺伝子配列変化を同定する。
【0105】
或いは、配列比較をアミノ酸レベルで行うことができ、すなわち、比較を行う前に核酸配列を最初にin silicoでアミノ酸配列に変換する。アミノ酸ベースのアプローチ又は核酸ベースのアプローチのいずれかを使用して、ペプチド中の一又は複数の変異(例えば、一又は複数の点変異)を同定することができる。核酸に基づくアプローチに関して、発見されたバリアントを使用して、所与の観察可能な変異タンパク質(例えば、個々のペプチド変異を複数のコドンバリアントと関連付けるルックアップテーブルを介して)を生じさせる一又は複数の核酸配列(例えば、DNA配列、RNA配列又はmRNA配列)を同定することができる。
【0106】
いくつかの実施態様において、疾患サンプルからの配列と参照サンプルの配列との比較は、手動アライメント、FAST-All(FASTA)、及びBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)等の当技術分野で公知の技術によって完了することができる。いくつかの実施態様において、疾患サンプルからの配列と参照サンプルの配列との比較は、ショートリードアライナ、例えばGSNAP、BWA、及びSTARを使用して完了することができる。
【0107】
いくつかの実施態様において、参照サンプルは一致した無病サンプルである。本明細書で使用される場合、「一致した」無病組織サンプルは、同じ又は類似のサンプル、例えば、疾患サンプルと同じ又は類似の組織型からのサンプルから選択されるものである。いくつかの実施態様において、一致した無病組織及び疾患組織は、同じ対象に由来し得る。いくつかの実施態様において本明細書に記載される参照サンプルは、同じ対象からの疾患のないサンプルである。いくつかの実施態様において、参照サンプルは、異なる対象(例えば、疾患を有しない対象)からの無病サンプルである。いくつかの実施態様において、参照サンプルは異なる対象の集団から得られる。いくつかの実施態様において、参照サンプルは、生物に関連する既知の遺伝子のデータベースである。いくつかの実施態様において、参照サンプルは、細胞株に由来し得る。いくつかの実施態様において、参照サンプルは、生物に関連する既知の遺伝子と、一致した疾患のないサンプルからのゲノム情報との組み合わせであり得る。いくつかの実施態様において、バリアントコード配列は、アミノ酸配列中に点変異を含み得る。いくつかの実施態様において、バリアントコード配列は、アミノ酸の欠失又は挿入を含み得る。
【0108】
いくつかの実施態様において、バリアントコード配列のセットは、ゲノム及び/又は核酸配列に基づいて最初に同定される。次いで、この初期セットを更にフィルタにかけて、トランスクリプトームシーケンシングデータベースにおけるバリアントコード配列の存在に基づいて(したがって、「発現している」とされる)、より狭い発現バリアントコード配列セットを得る。いくつかの実施態様において、バリアントコード配列のセットは、トランスクリプトームシーケンシングデータベースをフィルタにかけることによって、例えば、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍又はその他の数倍、低減される。
【0109】
あるいは、タンパク質質量分析法などの任意のペプチド配列決定法を用いて、腫瘍細胞などの疾患サンプルから変異ペプチドの存在を同定又は検証することもできる。ペプチドは、疾患細胞(例えば腫瘍細胞)から、又は腫瘍から免疫沈降したHLA分子から酸溶出し、次いで質量分析を使用して同定することができる。
【0110】
変異ペプチドは、例えば、5個以上、8個以上、11個以上、15個以上、20個以上、40個以上、80個以上、100個以上、110個以下、100個以下、80個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、25個以下、20個以下、18個以下、15個以下又は13個以下のアミノ酸を有し得る。
【0111】
MHC-I配列及び/又はMHC-II配列は、例えば、HLA遺伝子型決定又は質量分析によって決定することができる。これはEtienne Caron et al.,「Analysis of Major Histocompatibility Complex (MHC) Immunopeptides Using Mass Spectroscopy」 Molecular and Cellular Proteomics 14(12):31053117(2015)に記載されており、本文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0112】
V.B.入力データの処理
ワークフロー200は、候補ペプチド配列に基づいて入力データセット215を生成するために、入力データを処理すること210を含む。入力データセット215は、候補ペプチド配列の免疫原性の予測を生成するための免疫原性モデルについての入力として用いられる。例えば、予測のための入力データセット215は、少なくとも2つの配列、例えば候補ペプチド配列の表現とMHC配列の表現との組み合わせを含み得る。組み合わせの表現は、候補ネオエピトープの連結配列(例えば、そのN末端フランク領域を含む候補ペプチド配列)とMHC配列とを含み得る。
【0113】
入力データの処理210は、各候補ペプチド配列の対応するMHC配列を同定することを含み得る。候補ペプチド配列と対応するMHC配列との双方が処理され、候補ペプチド配列と対応するMHC配列との組み合わせを、入力データとして生成し得る。
【0114】
いくつかの場合では、入力データ処理210が、同じ(例えば、同じ対象からの)サンプルを用いてMHC配列と候補ペプチド配列を同定することを含む。いくつかの場合では、入力データ処理210が、複数のサンプル(例えば、同じ対象及び/又は当該対象と異なる対象)を用いて、MHC配列と候補ペプチド配列を同定することを含む。いくつかの場合では、入力データ処理210が、例えば配列決定及び/又は質量分析技術を用いてMHC配列を決定することを含む。
【0115】
MHC配列は、MHC配列は、MHC分子(例えば、MHC-I分子又はMHC-II分子)又はMHC分子の擬似配列の一部または全部内のアミノ酸を含み得る。MHC配列は、完全なMHC配列の一部に対応するMHC分子の部分配列を含み得る。当該部分は、ペプチドに結合及び/又はペプチドを提示するように構成されたMHC分子の一部をコードする。部分配列は、MHC分子がペプチドと接触する結合ポケットに対応する配列を含み得る。例えば、MHC配列は、MHC部分配列(例えば、34個のアミノ酸を含み得る)を含み得る。MHC配列は、例えば、1、2、3、4、5または6個のHLA対立遺伝子内の核酸配列によってコードされるアミノ酸を同定することができる。MHC配列は、HLA分子の一部又は全部によりコードされるアミノ酸を同定することができる。
【0116】
V.C.免疫原性モデル
図1A~1Bに記載されているように、ワークフロー200は、一又は複数の訓練データセットを用いて訓練された免疫原性モデル160を取得することを含む。一又は複数の訓練データセットは、モデルの初期訓練(すなわち、事前訓練)のためのペプチド配列データ115、及びモデルの後続の訓練(例えば、ファインチューニング)のためのラベル付きデータ(例えば、MHC Iデータ125、MHC IIデータ135、及び免疫原性データ145)を含み得る。
【0117】
V.D.予測のための免疫原性モデルの使用
ワークフロー200は、モデル予測220を含み得る。これは入力データセット215中の候補ペプチド配列の予測結果に基づいて、出力230を生成するために免疫原性モデル160を使用する工程である。結果は、実数、整数、カテゴリー、及び/又はバイナリであり得る。例えば、結果は、候補ペプチド配列によって表される変異ペプチドが免疫学的応答を誘発するかどうかについての予測に対応するものであり得る。
【0118】
いくつかの場合では、その結果に基づいて、候補ペプチド配列のセットが、フィルタリングされ、ランク付けされ、及び/又は他の方法で処理される。例えば、セットをフィルタリングして、予測された免疫原性が所定の免疫原性閾値を下回った配列を除外してもよい。いくつかの場合では、フィルタリングが、候補ペプチド配列の所定の数及び/又は画分を同定するために行われる。例えば、フィルタリングを行うことで、予測された確率が比較的(例えば、セット中の選択されていない候補ペプチド配列と比較して)高いことに関連する候補ペプチド配列であって、10、20、40、60、80、100、500、1,000、又は他の数の候補ペプチド配列を、該変異ペプチドが免疫原性であるかどうかに関して同定することができる。
【0119】
出力230は、一又は複数の候補ペプチド配列(例えば、セットから除外されなかったもの)及び/又は一又は複数の変異ペプチド(例えば、選択された候補ペプチド配列に関連するもの)を同定し得る。各変異ペプチドは、例えば、その名称、その配列によって、及び/又は対応する野生型配列とバリアントコード配列で表される変異体の両方を同定することによって同定され得る。
【0120】
出力は、各候補ペプチド配列又は変異ペプチドに関連する一又は複数の予測結果を同定してもよいが、しなくてもよい。出力は、例えば、ローカルに(例えば、ユーザ装置で)提示され、及び/又は別の装置(例えば、クラウドコンピューティングシステム及び/又は医療専門家もしくは検査専門家に関連するユーザ装置)に送信され得る。
【0121】
VI.例示的な免疫原性モデル及び結果
図1A~1Bで記載する工程に従って開発、訓練されたTAPEモデルなどの例示的な免疫原性モデルが、
図2で記載する工程に従って免疫原性を予測するために使用され得ることを示すために、TAPEモデルの性能が(
図4に示すように)評価され、他のモデルと(
図5に示すように)比較された。
図4及び
図5に示すような、例示的な免疫原性モデルの性能を訓練、評価するための例示的な手法は、セクションVI.Aで後述する。免疫原性を測定するために、当技術分野で利用可能な他の方法を使用することもできる。
図4及び
図5はセクションVI. Bで説明する。
【0122】
VI.A.免疫原性モデルの訓練及び予測のための免疫原性データセット
図1A~1Bの免疫原性訓練工程150を介した訓練、及び免疫原性訓練工程150から得られる免疫原性モデル160の性能評価には、免疫原性データセット(例えば、
図1A~1Bの免疫原性データ145の実施態様の一例)の使用が含まれる。免疫原性データセットには、DNAの塩基配列を決定した腫瘍学対象のデータが含まれる。その後、RNAワクチンを対象に投与した。RNAワクチンに導入されたネオ抗原に対するT細胞応答を、多量体アッセイ及びELISPOTアッセイを使用して、投与された対象においてモニターした。技術的アーチファクトと考えられるT細胞反応は除去された。
【0123】
VI.A.1 投与された対象の多量体アッセイ
多量体アッセイのデータを、ペプチド-MHC多量体によるCD8 T細胞の検出に関して陽性か陰性かについて評価した。陽性判定には保守的な基準が用いられた。具体的には、二重四量体陽性CD8 T細胞数が0.05%より多い場合に陽性とした。いくつかの場合、ネオエピトープ特異的CD8 T細胞数が0.05%より少ないにもかかわらず、T細胞表現型の精査によりT細胞反応が強く示唆される場合には、陽性と判定されるネオエピトープもあった。多量体アッセイデータから、1318個のネオエピトープが陰性と判定され、保守的基準に基づいて、これらのうちのごく一部が偽陰性であると予想された。27個のネオエピトープ-HLA対がワクチン接種後のみ陽性であると宣言され(デノボ応答と呼ばれる)、20個の対が既存のCD8 T細胞応答であるとされた。
【0124】
VI.A.2 投与された対象のELISpotアッセイ
ELISpotデータを収集し、データの統計的評価を行った。ペプチドの再刺激を行わない陰性対照とペプチドの再刺激を行った試験例のスポットカウントを評価し、陽性判定を行った(順列アプローチを使用)。これらの陽性判定は手作業で検証された。所与の対象の来院において、ネオ抗原の免疫原性について陽性又は陰性の結果が割り当てられた。ネオ抗原は、処置前又は処置後にかかわらず、対象の来院のいずれかで陽性結果を示した場合、ELISpotアッセイで陽性と判定された。ネオ抗原を以下の基準に基づいて更にフィルタにかけた: (1)判定者が決定したアッセイ結果の値が「NA」でない、(2)一又は複数のMHC提示及び/又は結合親和性予測法(例えば、IEDBv2.13、NetMHCpan-4.0)のいずれも、当該ネオ抗原に「NA」値を割り当てていない、(3)再刺激に使用されたプールされたネオ抗原を検討から除外した。
【0125】
上記のようにフィルタリングを行った後、ELISpotアッセイで評価した各細胞型について、陽性(免疫原性)ネオ抗原と陰性(非免疫原性)ネオ抗原の分布を評価した。免疫原性ネオ抗原はassay.value_binary=TRUEとラベル付けし、非免疫原性ネオ抗原はassay.value_binary=FALSEとラベル付けした。
【0126】
陽性アッセイを、ELISpotアッセイからのスポットカウントに基づいて2つのセットに更に分類した。各ELISpotアッセイは反復実験を行い、平均スポット数を反復実験にわたって特定した。陽性のネオ抗原については、全来院回数を通した平均スポットカウントの最大値を考慮し、陽性のネオ抗原を2つのセットに分けた。一方は平均スポットカウントの最大値が<50の陽性ネオ抗原、他方は平均スポットカウントの最大値が>=50のセットである。後者のセットは、より広範なT細胞応答を誘導したネオ抗原を表し、スポット数がより少ないセットと比較して、ELISpot結果の偽陽性解釈を含む可能性が低い。50スポットの選択は、ELISpot陽性を呼び出すために使用された元の閾値(スポット数>15)よりも合理的に高かったため、任意の決定であった。
【0127】
VI.B.免疫原性モデルの予測の評価
図4は、様々な実施態様による、免疫原性予測に免疫原性モデルを使用した場合の性能を示すグラフ400である。グラフ400は、5重クロスバリデーション法を用いて、免疫原性データセット上で免疫原性モデルがどのように機能するかの検証を示す。図示の免疫原性モデルは、ラベル付けされていないタンパク質配列で事前訓練され、その後、ラベル付けされたMHC I及びMHC II結合データならびに免疫原性データを用いて
図1A~1Bで記載する工程に従って訓練されたTAPEモデルであった。このTAPEモデルを免疫原性データセットに使用して、免疫原性データセットの免疫原性の予測に関する性能を検証した。
【0128】
検証用の免疫原性データセットには、非免疫原性データポイントのサブセットと免疫原性データポイントのサブセットが含まれ、免疫原性モデルの性能を評価するために比較が可能である。免疫原性モデルの性能を示すためにバイオリンプロットが使用される。
図4に示すバイオリンプロットにおいて、中央の点430は、非免疫原性データ410及び免疫原性データ420の免疫原性を予測するための予測スコアの中央値であり、線450は予測スコアの四分位境界を表し、線440は予測スコアの平均値である。
【0129】
免疫原性予測性能の評価において、実験の帰無仮説は、非免疫原性データ410及び免疫原性データ420(X軸)に対して免疫原性モデルによってなされた予測スコア(Y軸)が同じ分布からのものである(そしてモデルはその違いを学習していない)というものである。帰無仮説の反対を示すことにより、
図4のバイオリンプロットは、免疫原性モデルの出力分布(すなわち、Y軸に沿った予測スコアの分布)が免疫原性データ420と非免疫原性データ410との間でどのように異なるかを示し、ひいては、免疫原性を予測する免疫原性モデルの識別能力を示す。
【0130】
図5は、様々な実施形態による免疫原性予測のための様々なモデルを比較した表500であり、
図4で使用される免疫原性モデルを含む。
図5のベースラインモデル(510)及びTAPEモデル(520、530、540)は、
図1A~1Bで例示するようにペプチド配列データで事前訓練されたが、後続の訓練方法は異なるものを用いて構築された。
【0131】
ベースラインモデル510(「Zero-ShotMHCI」)は、ラベル付けされていないデータで事前訓練され、その後MHC Iデータで訓練された(ただし免疫原性データでは訓練されていない)TAPEモデルである。「TAPE+免疫原性」モデル520は、ラベル付けされていないデータで事前訓練され、その後免疫原性データで訓練されたTAPEモデルを表す。「TAPE+MHCI+免疫原性」モデル530は、ラベル付けされていないデータで事前訓練され、その後MHC Iデータと免疫原性データで訓練されたTAPEモデルを示す。「TAPE+MHCI+MHCII+免疫原性」モデル540は、ラベル付けされていないデータで事前訓練され、その後MHC I、MHC II、及び免疫原性データで訓練されたTAPEモデルを示す。「TAPE+MHC I+MHC II+免疫原性」モデル540は、
図4に示す結果を生成するために使用されたTAPEモデルである。表500に示すように、「TAPE+MHC I+MHC II+免疫原性」モデル540は、ベースラインモデル510と少なくとも匹敵する性能を示し、「TAPE+免疫原性」モデル520及び「TAPE+MHC I+免疫原性」モデル530よりも優れた性能を示した。
【0132】
したがって、
図5は、「TAPE+MHC I+MHC II+免疫原性」モデル540が、3つのTAPEモデル520、530、540のうち、免疫原性を予測するための最も安定した訓練方法であることを示している。
【0133】
VII.免疫原性予測方法
本明細書に記載の種々の方法及びシステムの実施態様により、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するための改善された予測方法が可能となる。具体的には、本明細書に記載の実施態様は、所望の免疫原性を有するネオ抗原候補を同定することを可能にする。
【0134】
ネオ抗原候補の免疫原性を予測するための方法が提供される。方法(例えば、
図6の方法)は、
図1Aのワークフロー100、
図1Bのワークフロー170、又は
図2のワークフロー200の一又は複数の特徴を組み込むことができる。本方法は、例えば、
図8に例示されるように、コンピュータソフトウェアもしくはハードウェア、又はそれらの組合せを介して実施することができる。本方法は、ネオ抗原候補の免疫原性を予測するためのエンジンの組み合わせを含み得るコンピューティン装置/システム上で実装されることもできる。様々な実施態様では、コンピューティング装置/システムが、直接接続を介して又はインターネット接続を介して、データソース、データ分析器、及び表示装置のうちの一又は複数に通信可能に接続され得る。
【0135】
ここで
図6を参照すると、様々な実施形態による候補ペプチド配列の免疫原性を予測するための例示的な方法600を示すフローチャートが開示されている。方法600は、ステップ602において、候補ペプチド配列のセットを受け取ることを含む。セット中の候補ペプチド配列の各々は、予め定義された閾値または最上位の数値などの所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する。候補ペプチド配列のセットは、対象の疾患サンプルに関連づけられる。MHC提示スコアは、当該セット中の対応する候補ペプチド配列が、当該疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す。
【0136】
様々な実施態様において、ステップ602は、セットの各候補ペプチド配列についてMHC提示スコアを決定することをさらに含む。MHC提示スコアは、候補ペプチド配列の初期セットを受け取ることであって、初期セットの各候補ペプチド配列は疾患サンプルに関連する、初期セットを受け取ること;初期セットの各候補ペプチド配列について、対応するMHCペプチド配列を同定すること;候補ペプチド配列の初期セットの各々について、初期セット中の各候補ペプチド配列の表現と、初期セット中の各候補ペプチド配列に対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、提示入力ベクトルを生成すること;提示入力ベクトルを提示モデルに入力して、初期セット中の各候補ペプチド配列のMHC提示スコアを決定すること;及び、MHC提示スコアに基づいて、候補ペプチド配列の初期セットから候補ペプチド配列のセットを選択すること、によって決定することができる。
【0137】
方法600は、ステップ604において、セット内の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定することを含む。例えば、セットの候補ペプチド配列の対応するMHCペプチド配列は、対象の対応するMHCペプチド配列の略記された擬似配列を含む。例えば、セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列は、MHC-Iペプチド配列又はMHC-IIペプチド配列である。
【0138】
例えば、セットの各候補ペプチド配列は、候補ペプチド配列のN末端配列及び候補ペプチド配列のエピトープからなる。いくつかの場合では、セットの候補ペプチド配列の一又は複数が、対象の健常サンプルに関連する対応する参照配列と比較して、一又は複数の変異を有する。例えば、候補ペプチド配列のセットは、腫瘍サンプル又は腫瘍を有すると判定された対象からのサンプルなどの疾患サンプルに関連する。
【0139】
方法600は、ステップ606において、候補ペプチド配列のセット中の各候補ペプチド配列の表現と、セット中の各候補ペプチド配列に対応するMHC配列の表現とを処理することにより、候補ペプチド配列のセットから、免疫原性入力ベクトルを生成することを含む。
【0140】
方法600は、ステップ608において、免疫原性入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、セット中の候補ペプチド配列が免疫原性であるかどうかの予測、セット中の候補ペプチド配列が免疫原性である可能性の予測、又はそれらの組み合わせを生成することを含む。例えば、免疫原性モデルは、複数の層を有するトランスフォーマーに基づくモデルなどのニューラルネットワークベースのモデルである。
【0141】
一又は複数の実施態様において、免疫原性モデルは、最初にタンパク質データベースからのラベル付けされていないペプチド配列を用いて訓練(事前訓練)された。続いて、免疫原性モデルを、MHC-I結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-I結合データセット、MHC-II結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-II結合データセット、免疫原性でラベル付けされたペプチド配列を含む免疫原性データセット、又はそれらの組み合わせで訓練した。訓練は、免疫原性モデルの様々な層を異なるエポックで凍結解除すること、様々な層を異なる学習率で訓練すること、エポック間の上昇期と下降期で学習率を変化させること、又はそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、免疫原性モデルの訓練は、免疫原性モデルの最後の2層の凍結解除に続いて、免疫原性モデルの他の層の凍結解除を含んでいてもよい。免疫原性モデルは、非線形の上昇・下降期で学習率を変化させることによって訓練された。
【0142】
方法600は、ステップ610において、予測を含む出力を返すことを含む。例えば、工程 610は、複数の候補ペプチド配列を含むセットについての予測を生成すること、当該複数の候補ペプチド配列をランク付けするレポートを、それらが免疫原性である可能性の予測に基づいて、生成すること、又はその両方を含み得る。
【0143】
一又は複数の実施態様において、方法600は、候補ペプチド配列が免疫原性であることを示す予測に基づいて、セットから選択される候補ペプチド配列を含むワクチン組成物を調製することと、対象に治療勧告を提供することであって、治療勧告が対象に該ワクチン組成物を投与することを含むことと、又はその両方とをさらに含み得る。
【0144】
方法600は、予測に基づいてセットから免疫原性ペプチドを選択することと、免疫原性ペプチドを標的とする又は免疫原性ペプチドを含む治療剤を含む治療組成物を調製することとをさらに含み得る。方法600は、対象に治療勧告を提供することをさらに含むことができ、治療勧告は、対象に当該治療組成物を投与することを含む。
【0145】
VIII.免疫原性ワクチン又はT細胞を含む薬学的に許容される組成物及びその製造
本明細書に記載の方法及びシステムは、例えば、個別化治療のための、薬学的に許容される組成物の開発や治療剤の製造に使用することができる。
図7に示されるように、方法700は、患者特異的ネオ抗原が同定され得、患者特異的ネオ抗原に基づくワクチン及びT細胞療法などの治療剤を製造するために使用され得る工程の例示的な実施態様を示す。例えば、腫瘍を有する、または腫瘍を有すると判定された特定の患者から、一又は複数の患者特異的サンプルを収集することができる。患者特異的サンプルを配列決定して、所望のMHC提示特性及び免疫原性を有するネオアンチゲンを選択するための候補ペプチド配列のセットを提供することができる。選択は、MHC提示モデル、免疫原性モデル、あるいはそれらの組み合わせなどの一又は複数のネオ抗原同定モデルの使用による予測結果に基づいて行うことができる。選択されたネオ抗原は、免疫原性ワクチン及びT細胞療法を含む、薬学的に許容される組成物又は治療剤を調製するために使用され得る。薬学的に許容される組成物又は治療剤は、後の分配(必要な場合)及び/又は特定の患者への投与のために低温で保存することができる。
【0146】
一又は複数の候補ペプチド配列は、本明細書に記載の免疫原性モデルからの結果に基づいて、候補ペプチド配列のセットから選択することができる。例えば、選択は、予測免疫原性が予め定義された免疫原性閾値を満たすか又は超える候補ペプチド配列の対象特異的セットの各々を同定することを含み得る。モデルの出力は、異なるスケールであってもよいことが理解されよう。例えば、500nMは、例えば[0,1]スケール上の別の値(例えば、0.42)に対応し得る。
【0147】
薬学的に許容される組成物は、選択された候補ペプチド配列の1つ、その部分、又は全部を使用して開発及び/又は製造され得る。組成物は、単一の選択されたバリアントコード配列に対応する変異ペプチドを含み得る。組成物が、複数の選択された候補ペプチド配列に対応する変異ペプチド及び/又は変異ペプチド前駆体を含んでもよい。ペプチド候補のサブセット(例えば、5、10、15、20、30個、又はその間の任意の数に関連する、最も高い提示予測)を更なる前駆体の開発に使用することができる。
【0148】
組成物中の変異ペプチドの1つ、その部分、又は全部のそれぞれは、例えば、約7~約40アミノ酸(例えば、約7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、22、25、30、35、40、45、50、60又は70アミノ酸長のいずれか)の長さを有することができる。いくつかの実施態様において、組成物中の変異ペプチドの1つ、その部分、又は全部のそれぞれの長さは、所定の範囲内(例えば、8~11アミノ酸、8~12アミノ酸又は8~15アミノ酸)である。いくつかの実施態様において、組成物中の変異ペプチドの1つ、複数又は全部のそれぞれは、約8~10アミノ酸長さである。組成物中の変異ペプチドの1つ、その部分、又は全てのそれぞれは、その単離された形態であり得る。組成物中の1つ、その部分、又は全ての変異ペプチドの各々は、変異ペプチドの末端(又は各末端)に一又は複数のペプチドを付加することによって産生される「長いペプチド」であり得る。組成物中の変異ペプチドの1つ、その部分、又は全てのそれぞれは、タグ付けされていてもよく、融合タンパク質であってもよく、及び/又はハイブリッド分子であってもよい。
【0149】
ワクチン組成物又は薬学的に許容される組成物は、選択された候補ペプチド配列の1つ、複数又は全てのそれぞれについて、候補ペプチド配列において同定されたアミノ酸を含むか又はそれによって構成されるペプチドをコードする一又は複数の核酸を含むか、又はそれを使用するように、開発及び/又は製造され得る。核酸(一又は複数)は、DNA、RNA及び/又はmRNAを含むことができる。複数のコドンのいずれかが所与のアミノ酸をコードすることができることを考えると、コドンは、例えば、所与のタイプの生物における発現を最適化又は促進するように選択され得る。そのような選択は、複数の潜在的コドンのそれぞれが所与の種類の生物によって使用される頻度、所与の種類の生物における複数の潜在的コドンのそれぞれの翻訳効率、及び/又は複数の潜在的コドンのそれぞれに対する所与の種類の生物の偏りの程度に基づき得る。
【0150】
いくつかの例では、組成物は、上記の変異ペプチド(一又は複数)又は変異ペプチドの前駆体(一又は複数)をコードする核酸を含み得る。核酸は、変異ペプチド(又はその前駆体)をコードする配列にフランクする配列を含み得る。いくつかの例では、核酸は、1つよりも多い選択された候補ペプチド配列に対応するエピトープを含む。いくつかの例では、核酸は、上記の変異ペプチド又は前駆体をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAである。
【0151】
いくつかの例では、核酸はRNAである。いくつかの例では、RNAは、上記の変異ペプチド又は前駆体をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNA鋳型から逆転写される。いくつかの例では、RNAはmRNAである。いくつかの例では、RNAは裸のmRNAである。いくつかの例では、RNAは修飾mRNA(例えば、プロタミンを用いて分解から保護したmRNA、修飾5’CAP構造を含むmRNA、又は修飾ヌクレオチドを含むmRNA)を含む。いくつかの実施態様において、RNAは一本鎖mRNAを含む。
【0152】
組成物は、上記の変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸(一又は複数)を含む細胞を含み得る。組成物は、変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸(一又は複数)のための一又は複数の適切なベクター及び/又は一又は複数の送達系をさらに含み得る。いくつかの例では、変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸を含む細胞は、非ヒト細胞、例えば細菌細胞、原虫細胞、真菌細胞又は非ヒト動物細胞である。いくつかの例では、変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸を含む細胞はヒト細胞である。いくつかの例では、ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの例では、免疫細胞は抗原提示細胞(APC)である。いくつかの例では、APCは、マクロファージ、単球、樹状細胞、B細胞、及びミクログリア等のプロフェッショナルAPCである。他の例では、プロフェッショナルAPCはマクロファージ又は樹状細胞である。いくつかの例では、変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸配列(一又は複数)を含むAPCを細胞ワクチンとして使用し、それによりCD4+又はCD8+免疫応答を誘導する。他の例では、細胞ワクチンとして使用される組成物は、変異ペプチド及び/又は変異ペプチドをコードする核酸配列(一又は複数)を含むAPCによってプライミングされた変異ペプチド特異的T細胞を含む。
【0153】
組成物は、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は薬学的に許容され得る賦形剤を含み得る。アジュバントは、組成物への混合が変異ペプチドに対する免疫応答を改変する任意の物質を指す。アジュバントは、例えば、免疫刺激剤を使用してコンジュゲート化され得る。賦形剤は、活性又は免疫原性を増加させ、安定性を付与し、生物学的活性を増加させ、及び/又は血清半減期を増加させるために、変異ペプチドの分子量を増加させることができる。
【0154】
薬学的に許容され得る組成物は、対象に特異的な(例えば、及びのために潜在的に開発される)個別化ワクチンを含み得るワクチンであり得る。例えば、MHC配列は、対象からのサンプルを使用して同定されていてもよく、組成物は、対象を処置するために開発され、及び/又は特定の対象を処置するために使用されてもよい。
【0155】
ワクチンは核酸ワクチンであり得る。核酸は、変異ペプチド又は変異ペプチドの前駆体をコードすることができる。核酸ワクチンは、変異ペプチド(又はその前駆体)をコードする配列にフランクする配列を含み得る。いくつかの例では、核酸ワクチンは、1つよりも多い選択された候補ペプチド配列に対応するエピトープを含む。いくつかの例では、核酸ワクチンはDNAベースのワクチンである。いくつかの例では、核酸ワクチンはRNAベースのワクチンである。いくつかの例では、RNAベースのワクチンはmRNAを含む。いくつかの例では、RNAベースのワクチンは裸のmRNAを含む。いくつかの例では、RNAベースのワクチンは修飾mRNA(例えば、プロタミンを用いて分解から保護したmRNA、修飾5’CAP構造を含むmRNA、又は修飾ヌクレオチドを含むmRNA)を含む。いくつかの実施態様において、RNAベースのワクチンは一本鎖mRNAを含む。
【0156】
核酸ワクチンは、次世代免疫療法の一部として使用される対象のために製造された個別化ネオ抗原特異的療法を含み得る。個別化ワクチンは、まず対象のサンプル中の変異ペプチドを検出し、その後、検出された各変異ペプチドについて、そのペプチドが免疫学的応答を引き起こすかどうか及び/又はその程度を予測することによって設計されていてもよい。これらの予測に基づいて、検出された変異ペプチドのサブセットを選択することができる(例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、最大40個、最大30個、最大25個、最大20個、最大18個、最大15個及び/又は最大10個の変異ペプチドを有するサブセット)。選択された各変異ペプチドについて、変異ペプチドをコードする合成mRNA配列を同定することができる。mRNAワクチンは、mRNA-リポプレックスを形成するために脂質と複合体化されたmRNA(変異ペプチドの一部又は全部をコードする)を含み得る。mRNA-リポプレックスを含むワクチンの投与は、mRNA刺激TLR7及びTLR8をもたらし、樹状細胞によるT細胞活性化を引き起こすことができる。さらに、投与は、mRNAの変異ペプチドへの翻訳をもたらし得、次いで、変異ペプチドはMHC分子に結合し、MHC分子によって提示され、T細胞応答を誘導し得る。
【0157】
組成物は、実質的に純粋な変異ペプチド、実質的に純粋な前駆体、及び/又は変異ペプチド若しくはその前駆体をコードする実質的に純粋な核酸を含み得る。組成物は、変異ペプチド、その前駆体、及び/又は変異ペプチド若しくはその前駆体をコードする核酸を含有するための一又は複数の適切なベクター及び/又は一又は複数の送達系を含み得る。適切なベクター及び送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、又は1つを超えるウイルスの要素を含むハイブリッドに基づく系等のウイルスが挙げられる。非ウイルス送達系には、カチオン性脂質及びカチオン性ポリマー(例えば、カチオン性リポソーム)が含まれる。いくつかの実施態様において、「遺伝子銃」等を用いた物理的送達を使用することができる。
【0158】
特定の実施態様において、RNAベースのワクチンは、5’から3’方向に、(1)5’キャップ;(2)5’非翻訳領域(UTR);(3)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(4)腫瘍標本に存在するがん特異的体細胞変異に起因する一又は複数の変異ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(5)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;(6)3’UTRであって、(a)Amino-Terminal Enhancer of Split(AES)mRNAの3’非翻訳領域又はその断片;及び(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNA又はその断片;並びに(7)ポリ(A)配列を含むRNA分子を含む。この例示的なRNA分子は、本明細書で論じる予測機械学習モデルの実装例の評価にも用いられた。
【0159】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列を含み、アミノ酸リンカー及び一又は複数の変異ペプチドの第1のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成し、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。
【0160】
特定の態様において、RNA分子は、5’から3’方向に、少なくとも第2のリンカー-エピトープモジュールをさら含み、少なくとも第2のリンカー-エピトープモジュールは、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列と、ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列とを含み、第2のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールのネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通及び細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にあり、第1のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープは、第2のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープとは異なる。特定の態様において、RNA分子は5のリンカー-エピトープモジュールを含み、5のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。特定の態様において、RNA分子は10のリンカー-エピトープモジュールを含み、10のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。特定の態様において、RNA分子は20のリンカー-エピトープモジュールを含み、20のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。
【0161】
ある態様において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列をさらに含み、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、3’方向において最も遠位にあるネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通及び細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。
【0162】
特定の態様において、5’キャップは、以下の構造のD1ジアステレオマーを含む:
【0163】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の変異ペプチド(例えば、本明細書に記載の機械学習技術からの結果に基づいて選択された候補ペプチド配列によって同定されるアミノ酸の順序付きセットを含むか、又はそれからなる)は、抗体治療薬等の変異ペプチド特異的治療薬を作製するために使用することができる。例えば、変異ペプチドは、変異ペプチドを特異的に認識する抗体を産生及び/又は同定するために使用することができる。これらの抗体は治療薬として使用することができる。合成短ペプチドは、タンパク質反応性抗体を生成するために使用されてきた。合成ペプチドで免疫する利点は、無制限量の純粋な安定抗原を使用できることである。このアプローチは、短いペプチド配列を合成し、それらを大きな担体分子にカップリングし、対象をペプチド担体分子で免疫することを含む。抗体の特性は、一次配列情報に依存する。所望のペプチドに対する良好な応答は、通常、配列及びカップリング方法の慎重な選択によって生じ得る。ほとんどのペプチドは、良好な応答を誘発することができる。抗ペプチド抗体の利点は、変異ペプチドのアミノ酸配列を決定した直後に調製することができ、タンパク質の特定の領域を抗体産生のために特異的に標的化することができることである。免疫原性モデルが免疫原性を予測した変異ペプチドを選択すること及び/又はそれをスクリーニングすることにより、得られた抗体が腫瘍状況において天然タンパク質を認識する可能性が高くなり得る。変異ペプチドは、例えば、15以下、18以下又は20以下、25以下、30以下、35以下、40以下、50以下、60以下、70以下、85以下、100以下、110以下の残基であり得る。変異ペプチドは、例えば、9残基以上、10残基以上、15残基以上、20残基以上、25残基以上、30残基以上、50残基以上、又は70残基以上であり得る。より短いペプチドは、抗体産生を改善することができる。
【0164】
ペプチド-担体タンパク質カップリングを使用して、高力価抗体の産生を促進することができる。カップリング方法は、例えば、部位特異的カップリング及び/又はアミノ酸中の反応性官能基、例えば-NH2、-COOH、-SH及びフェノール-OHに依存する技術を含むことができる。抗ペプチド抗体産生に使用される任意の適切な方法を、本発明の方法によって同定された変異ペプチドと共に利用することができる。2つのそのような公知の方法は、多重抗原性ペプチド系(MAP)及び脂質コアペプチド(LCP法)である。MAPの利点は、コンジュゲーション法が不要であることである。担体タンパク質又は結合は免疫化宿主に導入されない。1つの欠点は、ペプチドの純度を制御することがより困難であることである。さらに、MAPは、いくつかの宿主において免疫応答系を迂回することができる。LCP法は、他の抗ペプチドワクチン系よりも高い力価を提供することが知られており、したがって有利であり得る。
【0165】
本明細書に開示される技術を使用して同定された一又は複数の変異ペプチドを含む単離されたMHC/ペプチド複合体も本明細書で提供される。そのようなMHC/ペプチド複合体は、例えば、抗体、可溶性TCR、又はTCRアナログを同定するために使用することができる。これらの抗体の1つのタイプは、特異的HLA環境に関連して腫瘍関連抗原からのペプチドに結合する抗体であるので、TCR模倣物と呼ばれている。このタイプの抗体は、その表面上に複合体を発現する細胞の溶解を媒介し、複合体を発現する移植がん細胞株からマウスを保護することが示されている(例えば、Vaughan P. Wittman et al., Antibody targeting to a class I MHC-peptide epitope promotes tumor cell death、177 J. of Immunol.、4187-4195 (2006)を参照されたい)。IgG mAbとしてのTCR模倣物の1つの利点は、親和性成熟を行うことができ、分子が現在のFcドメインを介して免疫エフェクター機能と連関されることである。これらの抗体はまた、治療分子、例えば毒素、サイトカイン又は製剤を腫瘍に標的化するために使用することができる。
【0166】
非ハイブリドーマベースの抗体産生又はバクテリオファージ上の抗ペプチドFab分子等の結合コンピテント抗体断片の産生を用いる本発明の方法を用いて選択されるもの等の変異ペプチドを用いて開発され得る他の種類の分子。これらの断片はまた、抗ペプチドMHC Fab-免疫毒素コンジュゲート、抗ペプチドMHC Fab-サイトカインコンジュゲート及び抗ペプチドMHC Fab-薬物コンジュゲート等の腫瘍送達のための他の治療分子にコンジュゲートすることもできる。
【0167】
IX.免疫原性ワクチン又はT細胞を含む処置方法
いくつかの実施態様は、免疫原性ワクチンであり得るワクチンを含む処置方法を提供する。いくつかの実施態様において、有効量の本明細書に記載の組成物、本明細書に開示の技術を使用して同定された変異ペプチド、その前駆体、又は本明細書に記載の技術を使用して同定された変異ペプチド(又は前駆体)をコードする核酸を個体に投与することを含み得る、疾患(がん等)の処置方法が提供される。
【0168】
いくつかの実施態様において、疾患(がん等)の処置方法が提供される。この方法は、対象からサンプル(例えば、血液サンプル)を採取することを含み得る。T細胞を単離し、刺激することができる。単離は、例えば、密度勾配沈降(例えば、遠心分離)、免疫磁気選択、及び/又は抗体複合体フィルタリングを使用して行うことができる。刺激は、例えば、マイトジェン(例えば、PHA又はConA)又は抗CD3抗体(例えば、CD3に結合し、T細胞受容体複合体を活性化するため)、及び抗CD28抗体(例えば、CD28に結合し、T細胞を刺激するため)を使用し得る抗原非依存性刺激を含み得る。一又は複数の変異ペプチドは、対象の処置において使用するために選択され得る(または、選択されたものであり得る)(例えば、本明細書に記載の一又は複数の技術に従って、変異ペプチドのセットの各々が個体においてどの程度免疫原性を誘発するかどうかについての予測に対応する免疫原性モデルによって生成される結果に基づく)。一又は複数の変異ペプチドは、対象に関連する一又は複数の配列表現(例えば、MHC配列、候補ペプチド配列のセット及び/又はT細胞受容体配列の表現)を同定及び処理することを含む本明細書中に開示される技術に基づいて選択されていてもよい。一又は複数の配列は、T細胞が単離されたサンプル又は異なるサンプルを使用して検出されていてもよい。
【0169】
いくつかの例では、例えばT細胞をin vivoでプライミング、活性化及び増殖させるのに有効な量の一又は複数の変異ペプチド(又はその一又は複数の前駆体)を含む組成物を個体に投与することを含み得る、疾患(がん等)の処置方法が提供される。
【0170】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の技術を使用して選択される変異ペプチドの前駆体を含む有効量の組成物を個体に投与することを含み得る、疾患(がん等)の処置方法が提供される。いくつかの実施態様において、免疫原性ワクチンは、本明細書に記載の技術を使用して選択される薬学的に許容され得る変異ペプチドを含み得る。いくつかの実施態様において、免疫原性ワクチンは、本明細書に記載の技術(例えば、タンパク質、ペプチド、DNA及び/又はRNA等)を使用して選択される変異ペプチドの薬学的に許容され得る前駆体を含み得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の技術を使用して選択される変異ペプチドを特異的に認識する有効量の抗体を個体に投与することを含み得る、疾患(がん等)の処置方法が提供される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の技術を使用して選択される変異ペプチドを特異的に認識する有効量の可溶性TCR又はTCRアナログを個体に投与することを含み得る、疾患(がん等)の処置方法が提供される。
【0171】
いくつかの実施態様において、がんは、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、扁平上皮細胞がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)(消化管がんを含む)、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、黒色腫、子宮内膜癌腫又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん(kidney cancer)又は腎臓がん(renal cancer)、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、直腸がん、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高癌マグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、黒色腫、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連するもの等)、及びメイグス症候群と関連する異常な血管増殖が挙げられる。
【0172】
本明細書に開示される実施態様は、個別化医療戦略の一部若しくは全部を特定すること、及び/又は一部若しくは全部を実施することを含むことができる。例えば、一又は複数の変異ペプチドは、個体由来のサンプルを使用してMHC配列及び/又は候補ペプチド配列のセットを決定すること;並びに本明細書に開示される免疫原性モデル(例えば、ニューラルネットワークベースの機械学習モデル)を使用してMHC配列及び候補ペプチド配列の表現を処理することによって、ワクチンにおける使用のために選択され得る。次いで、一又は複数の変異ペプチド(及び/又はその前駆体)を同じ個体に投与することができる。
【0173】
いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)個体において一又は複数の変異ペプチドを同定することと(例えば、本明細書に開示される一又は複数の技術に従って、変異ペプチドのセットのそれぞれが免疫原性であるかどうかとその程度に関する予測に対応する免疫原性モデルによって生成された結果に基づいて);b)同定された変異ペプチド(一又は複数)、又は該変異ペプチドの一又は複数の前駆体、又は同定されたペプチド(一又は複数)若しくは該ペプチド前駆体(一又は複数)をコードする核酸(一又は複数)(例えば、DNA又はRNA等のポリヌクレオチド)を合成することと;c)該変異ペプチド(一又は複数)、変異ペプチド前駆体(一又は複数)又は核酸(一又は複数)を個体に投与することと、を含む方法が提供される。
【0174】
いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)個体において一又は複数の変異ペプチドを同定することと(例えば、本明細書に開示される一又は複数の技術に従って、変異ペプチドのセットのそれぞれが免疫原性であるかどうかとその程度に関する予測に対応する免疫原性モデルによって生成された結果に基づいて);b)同定された変異ペプチド(一又は複数)又は変異ペプチド(一又は複数)の一又は複数の前駆体をコードする核酸のセット(例えば、DNA又はRNA等のポリヌクレオチド)を同定することと;c)核酸のセットを合成することと;d)核酸のセットを個体に投与することと、を含む方法が提供される。
【0175】
いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)個体において一又は複数の変異ペプチドを同定することと(例えば、本明細書に開示される一又は複数の技術に従って、変異ペプチドのセットのそれぞれが個体において免疫原性を誘発するかどうかとその程度に関する予測に対応する免疫原性モデルによって生成された結果に基づいて);b)該変異ペプチドを特異的に認識する抗体を産生することと;c)該ペプチドを個体に投与することと、を含む方法が提供される。
【0176】
本明細書で提供される方法を、がんと診断されたか、又はがんを有すると疑われる個体(例えば、ヒト)を処置するために使用することができる。いくつかの実施態様において、個体はヒトであり得る。いくつかの実施態様において、個体は、少なくとも約18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85歳のいずれかであり得る。いくつかの実施態様において、個体は男性であり得る。いくつかの実施態様において、個体は女性であり得る。いくつかの実施態様において、個体は手術を拒否した可能性がある。いくつかの実施態様において、個体は医学的に手術不能であり得る。いくつかの実施態様において、個体は、Ta、Tis、T1、T2、T3a、T3b又はT4の臨床段階にあり得る。いくつかの実施態様において、がんは再発性であり得る。いくつかの実施態様において、個体は、がんに関連する一又は複数の症候を示すヒトであり得る。いくつかの実施態様において、個体は、遺伝的に、或いは他の様態でがんを発症しやすい(例えば、リスク因子を有する)場合がある。
【0177】
本明細書で提供される方法は、アジュバント状況で実施され得る。いくつかの実施態様において、本方法はネオアジュバント状況で実施され、すなわち、本方法は一次/根治療法の前に実施され得る。いくつかの実施態様において、本方法は、以前に処置されたことがある個体を処置するために使用される。本明細書で提供される処置方法のいずれも、以前に処置されていない個体を処置するために使用され得る。いくつかの実施態様において、本方法は第一選択療法として使用される。いくつかの実施態様において、本方法は第二選択療法として使用される。
【0178】
いくつかの実施態様において、個体における既存のがん腫瘍転移(肺転移又はリンパ節への転移等)の発生率又は負担を軽減する方法であって、有効量の本明細書に開示される組成物を個体に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様において、個体におけるがんの疾患進行までの時間を延長する方法であって、有効量の本明細書に開示される組成物を個体に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様において、がんを有する個体の生存を延長する方法であって、有効量の本明細書に開示される組成物を個体に投与することを含む方法が提供される。
【0179】
いくつかの実施態様において、少なくとも一又は複数の化学療法剤が、本明細書中に開示される組成物に加えて投与される場合がある。いくつかの実施態様において、一又は複数の化学療法剤は、(必ずしもそうとは限らないが)異なるクラスの化学療法剤に属し得る。
【0180】
いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)本明細書に開示されるワクチン(例えば、本明細書中に開示される機械学習技術に基づいて選択される変異ペプチド又はその前駆体を含む)、及びb)免疫調節剤を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)本明細書に開示されるワクチン(例えば、本明細書中に開示される機械学習技術に基づいて選択される変異ペプチド又はその前駆体を含む)、及びb)チェックポイントタンパク質のアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)本明細書に開示されるワクチン(例えば、本明細書中に開示される機械学習技術に基づいて選択される変異ペプチド又はその前駆体を含む)、及びb)抗PD-1等のプログラム細胞死1(PD-1)のアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)本明細書に開示されるワクチン(例えば、本明細書中に開示される機械学習技術に基づいて選択される変異ペプチド又はその前駆体を含む)、及びb)抗PD-L1等のプログラム死リガンド1(PD-L1)のアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、個体における疾患(がん等)を処置する方法であって、a)本明細書に開示されるワクチン(例えば、本明細書中に開示される機械学習技術に基づいて選択される変異ペプチド又はその前駆体を含む)、及びb)抗CTLA-4等の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0181】
様々な開示はアミノ酸配列の使用を指すことが理解されよう。核酸配列を追加的又は代替的に使用してもよい。例えば、疾患特異的サンプルは、対応する非疾患特異的サンプル(例えば、同じ対象又は異なる対象からのもの)中に存在しない核酸配列のセットを同定するために配列決定され得る。同様に、MHC分子及び/又はT細胞受容体の核酸配列を更に同定することができる。核酸疾患特異的核酸配列及びMHC分子(又はT細胞受容体)のそれぞれの表現は、本明細書に記載の注意ベースのモデル等の機械学習モデルによって処理され得る(例えば、核酸配列の表現を使用して潜在的に訓練されている)。
【0182】
X.コンピュータ実装システム
様々な実施態様において、候補ペプチド配列の免疫原性を予測するための任意の方法、又は
図1Aのワークフロー100、
図1Bのワークフロー170、
図2のワークフロー200、
図6の方法600、若しくは
図7の方法700に例示されるような方法は、
図8に記載されるような、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの組合せを介して実施することができる。
【0183】
図8は、本教示の実施態様が実装され得るコンピュータシステム800を示すブロック図である。本教示の様々な実施態様では、コンピュータシステム800は、情報を通信するためのバス802又は他の通信機構と、情報を処理するためのバス802に結合されたプロセッサ804とを含みうる。様々な実施態様では、コンピュータシステム800はまた、プロセッサ804によって実行される命令を決定するためにバス802に結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)806又は他の動的記憶装置とすることができるメモリを含みうる。メモリはまた、プロセッサ804によって実行される命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を記憶するために使用され得る。様々な実施態様では、コンピュータシステム800は、プロセッサ804のための静的情報及び命令を記憶するためにバス802に結合された読み出し専用メモリ(ROM)808又は他の静的記憶装置をさらに含みうる。磁気ディスク又は光ディスクなどの記憶装置810が設けられ、情報及び命令を記憶するためにバス802に結合され得る。
【0184】
様々な実施態様では、プロセッサ804は、コンピュータユーザに情報を表示するために、バス802を介して、陰極線管(CRT)又は液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ812に結合され得る。英数字及び他のキーを含む入力装置814は、プロセッサ804への情報及びコマンド選択の通信のためにバス802に結合され得る。別の種類のユーザ入力装置は、プロセッサ804に方向情報及びコマンド選択を通信し、ディスプレイ812上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのカーソル制御装置である。
【0185】
本教示の特定の実装と一致して、結果は、メモリ806に含まれる一又は複数の命令の一又は複数のシーケンスを実行するプロセッサ804に応答して、コンピュータシステム800によって提供され得る。そのような命令は、記憶装置810などの別のコンピュータ可読媒体又はコンピュータ可読記憶媒体からメモリ806に読み込まれ得る。メモリ806に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ804に本明細書に記載されるプロセスを実行させることができる。代替的には、ハードワイヤード回路は、本教示を実施するソフトウェア命令の代わりに又はこれと組み合わせて使用可能である。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路とソフトウェアとの特定の組み合わせに限定されない。
【0186】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(例えば、データストア、データストレージなど)又は「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ804に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、これに限定されないが、メモリ806などのダイナミックメモリを含みうる。伝送媒体の例は、これらに限定されないが、バス802を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含みうる。
【0187】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、又は他の任意の磁気媒体、CD-ROM、他の任意の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する他の任意の物理媒体、RAM、PROM、及びEPROM、フラッシュEPROM、他のメモリチップ又はカートリッジ、又はコンピュータが読み取ることができる他の任意の有形媒体を含む。
【0188】
コンピュータ可読媒体に加えて、命令又はデータは、実行のためにコンピュータシステム800のプロセッサ804に一又は複数の命令のシーケンスを提供するために、通信装置又はシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供され得る。例えば、通信装置は、命令及びデータを示す信号を有するトランシーバを含み得る。命令及びデータは、一又は複数のプロセッサに、本明細書の開示に概説される機能を実装させるように構成されている。データ通信伝送接続の代表的な例は、これらに限定されないが、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続などを含みうる。
【0189】
本明細書に記載されるフローチャート、図、及び付随する開示は、コンピュータシステム800をスタンドアロン装置として使用して、又はクラウドコンピューティングネットワークなどの分散ネットワークもしくは共有コンピュータ処理リソース上で実装され得ることを理解されたい。
【0190】
本明細書に記載の方法論は、用途に応じて様々な手段によって実装され得る。例えば、これらの方法は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。ハードウェア実装の場合、処理ユニットは、一又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブルロジック装置(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子装置、本明細書に記載された機能を実行するように設計された他の電子ユニット、及び/又はそれらの組み合わせ内に実装され得る。
【0191】
様々な実施態様において、本教示の方法は、C、C++、Pythonなどの従来のプログラミング言語で記述されたファームウェア及び/又はソフトウェアプログラム、及びアプリケーションとして実装することができる。ファームウェア及び/又はソフトウェアとして実施される場合、本明細書に記載される実施形態は、コンピュータに上述の方法を実行させるためのプログラムが記憶された非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体上に実装され得る。本明細書に記載の様々なエンジンは、コンピュータシステム800などのコンピュータシステム上に提供され得、それによってプロセッサは、メモリ構成要素806、808、810及び入力装置を介して提供されるユーザ入力のいずれか一方又はそれらの組み合わせによって提供される命令にしたがって、これらのエンジンによって提供される分析及び決定を実行することを理解されたい。
【0192】
本教示は、様々な実施態様に関連して説明されているが、本教示がそのような実施態様に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替、変更、及び均等物を包含する。
【0193】
様々な実施態様を説明する際に、本明細書は、特定の一連のステップとして方法及び/又はプロセスを提示している場合がある。しかしながら、方法又はプロセスが本明細書に記載される特定の順序のステップに依存していない範囲で、方法又はプロセスは、説明した特定の順序のステップに限定されるべきではなく、当業者には容易に理解できるように、順序は変えられる場合があり、かつ依然、さまざまな実施態様の趣旨及び範囲内にとどまる場合がある。
【0194】
XI.実施態様の記載
実施態様1.
候補ペプチド配列のセットを受け取ることであって、セット中の候補ペプチド配列の各々が、所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有し、当該候補ペプチド配列のセットは、対象の疾患サンプルに関連し、MHC提示スコアは、当該セット中の対応する候補ペプチド配列が疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す、候補ペプチド配列のセットを受け取ること;セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること;当該候補ペプチド配列のセット中の各候補ペプチド配列の表現と、セット中の候補ペプチド配列の各々について対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、当該候補ペプチド配列のセットから、免疫原性入力ベクトルを生成すること;当該免疫原性入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、当該セット中の候補ペプチド配列が免疫原性であるどうかの予測、当該セット中の候補ペプチド配列が免疫原性である可能性の予測、あるいはそれらの組み合わせを生成すること;並びに当該予測を含む出力を返すことを含む、方法。
【0195】
実施態様2.
複数の候補ペプチド配列を含むセットについての予測を生成することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
【0196】
実施態様3.
当該複数の候補ペプチド配列をランク付けするレポートを、それらが免疫原性である可能性の予測に基づいて、生成することをさらに含む、実施態様2に記載の方法。
【0197】
実施態様4.
セットの各候補ペプチド配列についてMHC提示スコアを決定することをさらに含む、実施態様1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施態様5.
MHC提示スコアを決定することが、候補ペプチド配列の初期セットを受け取ることであって、初期セットの各候補ペプチド配列は疾患サンプルに関連する、初期セットを受け取ること;初期セットの各候補ペプチド配列について、対応するMHCペプチド配列を同定すること;候補ペプチド配列の初期セットの各々について、初期セット中の各候補ペプチド配列の表現と、初期セット中の各候補ペプチド配列に対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、提示入力ベクトルを生成すること;提示入力ベクトルを提示モデルに入力して、初期セット中の各候補ペプチド配列のMHC提示スコアを決定すること;及び、MHC提示スコアに基づいて、候補ペプチド配列の初期セットから候補ペプチド配列のセットを選択することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0199】
実施態様6.
所定の基準が、予め定義された閾値または最上位の数値である、実施態様1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施態様7.
セットの候補ペプチド配列の対応するMHCペプチド配列は、対象のMHCペプチド配列の略記された擬似配列を含む、実施態様1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
実施態様8.
セットの候補ペプチド配列は、候補ペプチド配列のN末端配列及び候補ペプチド配列のエピトープを含む、実施態様1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施態様9.
セットの候補ペプチド配列が、対象の健常サンプルに関連する対応する参照配列と比較して、一又は複数の変異を有する、実施態様1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施態様10.
疾患サンプルが、腫瘍サンプル又は腫瘍を有すると判定された対象からのサンプルである、実施態様1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施態様11.
免疫原性モデルが、複数の層を有するトランスフォーマーに基づくモデルである、実施態様1から10のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
実施態様12.
免疫原性モデルが、タンパク質データベースからのラベル付けされていないペプチド配列を用いて最初に訓練されたものである、実施態様1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施態様13.
免疫原性モデルが、初期訓練の後、MHC-I結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-I結合データセットでさらに訓練されたものである、実施態様12に記載の方法。
【0207】
実施態様14.
免疫原性モデルが、初期訓練の後、MHC-II結合でラベル付けされたペプチド配列を含むMHC-II結合データセットでさらに訓練されたものである、実施態様13に記載の方法。
【0208】
実施態様15.
免疫原性モデルが、初期訓練の後、免疫原性でラベル付けされたペプチド配列を含む免疫原性データセットでさらに訓練されたものである、実施態様14に記載の方法。
【0209】
実施態様16.
免疫原性モデルが、さらなる訓練中に、免疫原性モデルの複数の層の様々な層を異なるエポックで凍結解除すること、様々な層を異なる学習率で訓練すること、エポック間の上昇・下降期で学習率を変化させること、又はそれらの任意の組み合わせによって訓練されたものである、実施態様13から15のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施態様17.
免疫原性モデルが、免疫原性モデルの最後の2層の凍結解除の後に、免疫原性モデルの他の層の凍結解除によって訓練されたものである、実施態様16に記載の方法。
【0211】
実施態様18.
免疫原性モデルが、非線形の上昇・下降期で学習率を変化させることによって訓練されたものである、実施態様16に記載の方法.。
【0212】
実施態様19.
候補ペプチド配列が免疫原性であることを示す予測に基づいて、セットから選択される候補ペプチド配列を含むワクチン組成物を調製することをさらに含む、実施態様1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
実施態様20.
対象に治療勧告を提供することをさらに含み、治療勧告が、該ワクチン組成物を対象に投与することを含む、実施態様19に記載の方法。
【0214】
実施態様21.
予測に基づいてセットから免疫原性ペプチドを選択することと、当該免疫原性ペプチドを標的とする又は当該免疫原性ペプチドを含む治療剤を含む治療組成物を調製することとをさらに含む、実施態様1から20のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施態様22.
対象に治療勧告を提供することをさらに含み、治療勧告が、該治療組成物を対象に投与することを含む、実施態様21に記載の方法。
【0216】
実施態様23.
セット中の候補ペプチド配列の各々に関連する、対応するMHCペプチド配列が、MHC-Iペプチド配列又はMHC-IIペプチド配列である、実施態様1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施態様24.
所定の基準を満たす主要組織適合複合体(MHC)提示スコアを有する、候補ペプチド配列を受け取ることであって、候補ペプチド配列は、対象の疾患サンプルに関連し、MHC提示スコアは、候補ペプチド配列が当該疾患サンプルの細胞表面上のMHCタンパク質によって提示される可能性を示す、候補ペプチド配列を受け取ること;
候補ペプチド配列に関連する、対応するMHCペプチド配列を同定すること;
候補ペプチド配列の表現と、対応するMHCペプチド配列の表現とを処理することにより、候補ペプチド配列についての入力ベクトルを生成すること;
生成された入力ベクトルを免疫原性モデルに入力して、候補ペプチド配列が免疫原性であるかどうかの予測、候補ペプチド配列が免疫原性である可能性、又はそれらの組み合わせを生成すること;並びに
当該予測を含む出力を返すこと
を含む、方法。
【0218】
実施態様25.
複数の候補ペプチド配列を含むデータセットについての予測を生成することをさらに含む、実施態様24に記載の方法。
【0219】
実施態様26.
複数の候補ペプチド配列をランク付けするレポートを、それらが免疫原性である可能性の予測に基づいて、生成することをさらに含む、実施態様25に記載の方法。
【0220】
実施態様27.
一又は複数のペプチド;当該一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸;当該一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、あるいはそれらの組み合わせを含む、ワクチン組成物であって、一又は複数のペプチドが、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて、当該候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、ワクチン組成物。
【0221】
実施態様28.
複数の核酸がRNAを含む、実施態様27に記載のワクチン組成物。
【0222】
実施態様29.
ワクチンを製造する方法であって、方法がワクチンを産生することを含み、ワクチンが、一又は複数のペプチド、当該一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、当該一又は複数のペプチドを発現する複数の細胞、あるいはそれらの組み合わせを含み、一又は複数のペプチドが、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて、当該候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、方法。
【0223】
実施態様30.
遺伝子操作されたT細胞組成物であって、組成物が、一又は複数のペプチド、当該一又は複数のペプチドをコードする複数の核酸、当該一又は複数のペプチドを標的とする抗体又は阻害剤、当該一又は複数のペプチドを標的とする当該抗体をコードする複数の核酸、あるいはそれらの組み合わせを含み、一又は複数のペプチドが、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、遺伝子操作されたT細胞組成物。
【0224】
実施態様31.
一又は複数のペプチドを含む医薬組成物であって、一又は複数のペプチドが、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、医薬組成物。
【0225】
実施態様32.
一又は複数のペプチドをコードする核酸配列を含む医薬組成物であって、一又は複数のペプチドが、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて候補ペプチド配列のセットから選択されたものである、医薬組成物。
【0226】
実施態様33.
実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、免疫原性ペプチド。
【0227】
実施態様34.
実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、核酸配列。
【0228】
実施態様35.
対象を処置する方法であって、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法によって生成された予測に基づいて同定された、一又は複数のペプチド、一又は複数の医薬組成物、あるいは一又は複数の核酸配列を投与することを含む、方法。
【0229】
実施態様36.
一又は複数のデータプロセッサと、命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムであって、命令が、一又は複数のデータプロセッサ上で実行されると、一又は複数のデータプロセッサに、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法の一部又は全部を実行させる、システム。
【0230】
実施態様37.
命令を含む非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、命令が、一又は複数のデータプロセッサに、実施態様1から26のいずれか1つに記載の方法の一部又は全部を実行させるように構成されている、コンピュータプログラム製品。
【0231】
XII.さらなる考察
本文献のセクション及びサブセクション間の見出し及び小見出しは、読みやすさを改善するために含まれるに過ぎず、特徴がセクション及びサブセクションをまたいで組み合わされ得ないことを示唆するものではない。したがって、セクション及びサブセクションは、別個の実施態様を説明しない。
【0232】
本開示のいくつかの実施態様は、一又は複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施態様では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。命令は、一又は複数のデータプロセッサ上で実行されると、一又は複数のデータプロセッサに、本書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部及び/又は一又は複数のプロセスの一部又は全部を実行させる。本開示のいくつかの実施態様は、命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において有形に具現化された、コンピュータプログラム製品を含む。命令は、一又は複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された一又は複数の方法の一部又は全部及び/又は一又は複数のプロセスの一部又は全部を実行させるように構成される。
【0233】
使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示されて説明された特徴のいかなる均等物又はその一部も除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施態様及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更及び変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0234】
その後の説明は、好ましい例示的な実施態様のみを提供し、本開示の範囲、適用可能性又は構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施態様のその後の説明は、様々な実施態様を実装するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置に様々な変更が加えられ得ることが理解される。
【0235】
実施態様の完全な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が与えられる。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施態様が実施され得ることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、及び他の構成要素は、実施態様を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、実施態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び技術が不必要な詳細なしに示されてもよい。
【0236】
潜在的に特許請求可能な主題の例は、以下を含むが、これらに限定されるものではない。
【国際調査報告】