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特表2024-513756農業で使用するための改良されたジアゾ栄養微生物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】農業で使用するための改良されたジアゾ栄養微生物
(51)【国際特許分類】
   A01H 17/00 20060101AFI20240319BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240319BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240319BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240319BHJP
   A01H 5/12 20180101ALI20240319BHJP
   A01H 5/06 20180101ALI20240319BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240319BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240319BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A01H17/00
C12N1/21
A01H5/10
A01H5/00 A
A01H5/12
A01H5/06
C12N1/20 E
A01G7/00 605Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558416
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022021213
(87)【国際公開番号】W WO2022204062
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,361
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523360267
【氏名又は名称】バイオコンソーシャ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ トマス ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】マリン ジョン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ホン
(72)【発明者】
【氏名】アルフォード ベッツィ
(72)【発明者】
【氏名】レムシェ コートニー ブルック
(72)【発明者】
【氏名】ダミガン クリストファー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カーティス ダミアン
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AD07
4B065AA01X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BD14
4B065CA53
(57)【要約】
本開示は、植物の表現型、例えば、非マメ科植物の窒素利用能の改善のための、パエニバシラス属の遺伝子改変された微生物に関する。これらの微生物の新規株、微生物共同体、及びそれを含む農業用組成物が含まれる。更に、本開示は、標的植物種に有益な特性を付与するための方法において、記載される微生物、微生物共同体、及びそれを含む農業用組成物を利用する方法を教示する。特定の態様では、本開示は、例えば植物における窒素固定、利用、調節、取り込み、獲得、耐性、及び/又は処理などの、農業上重要な種における望ましい植物形質を増加させる方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物要素と、
前記植物要素に異種配置されたパエニバシラス属(Paenibacillus)細菌であって、そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含む、前記パエニバシラス属細菌と
を含む合成組成物であって、前記編集が、以下のゲノム遺伝子座:nifH、glnR、GlnR結合部位I、GlnR結合部位II、cueR、Orf1のうちの1つ以上における若しくはその近くの、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、及び/若しくは少なくとも1つのヌクレオチドの置換であるか、又は前記ゲノム遺伝子座のうちのいずれか1つ若しくはそれ以上における編集の任意の組み合わせ若しくは複数であり、前記パエニバシラス属細菌が、前記編集を含まないパエニバシラス属細菌と比較して改善された表現型を呈し、前記改善された表現型が、増加したアセチレン還元能力、改善されたバイオフィルム形成、培養下の増加した濁度、酸素レベルに対するより高い窒素固定耐性、並びに前述のものの任意の複数及び/又は組み合わせからなる群から選択される、前記合成組成物。
【請求項2】
前記編集が、CueR切断、CueR切断及びGlnR結合部位II不活化、CueRノックアウト、CueRノックアウト並びにGlnR SII重複及び不活化、CueRノックアウト及びGlnR SII不活化、CueRノックアウト及びGlnR結合部位II不活化、GlnRノックアウト及びGlnR結合部位II重複、GlnRノックアウト及びGlnR結合部位II不活化、GlnRノックアウト及びNifHノックアウト、GlnRノックアウト及びOrf1ノックアウト、GlnR切断、GlnRノックアウト、GlnR結合部位I不活化、GlnR結合部位II重複、GlnR結合部位II重複及び不活化、GlnR結合部位II重複及び不活化並びにNifHノックアウト、GlnR結合部位II不活化、NifHノックアウト、Orf1ノックアウト、並びに前述のものの任意の複数及び/又は組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項3】
前記パエニバシラス属細菌が、配列番号1~23からなる群から選択される16S配列を含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項4】
前記パエニバシラス属細菌が、配列番号17~66からなる群から選択される配列を含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項5】
前記パエニバシラス属細菌が、ポリミキサ(polymyxa)、トリチシ(tritici)、アルビダス(albidus)、アナエリカヌス(anaericanus)、アゾチフィゲンス(azotifigens)、ボレアリス(borealis)、ドングハエンシス(donghaensis)、エヒメンシス(ehimensis)、グラミニス(graminis)、ジルンリイ(jilunlii)、オドリファー(odorifer)、パナシソリ(panacisoli)、ホエニシス(phoenicis)、ポチェオネンシス(pocheonensis)、リゾプラナエ(rhizoplanae)、シラゲ(silage)、タオフアシャネンセ(taohuashanense)、サーモフィルス(thermophilus)、チファエ(typhae)、及びウィニイ(wynnii)からなる群から選択される種のものである、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項6】
前記パエニバシラス属細菌が下位群Iのものである、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項7】
前記パエニバシラス属細菌が下位群IIのものである、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項8】
前記パエニバシラス属細菌が、NRRL寄託番号:B-68102、B-68103、B-68104、B-68105、B-68106、B-68107、B-68108、B-68109、及びB-68110からなる群から選択される、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項9】
製剤成分及び/又は農業用組成物を更に含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項10】
前記パエニバシラス属細菌が、液体製剤中に少なくとも約10^2CFU/mLの濃度で存在するか、又は非液体製剤中に少なくとも約10^2CFU/グラムの濃度で存在する、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の微生物を更に含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項12】
前記植物要素が種子である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項13】
前記植物要素が導入遺伝子を含む種子である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項14】
前記植物要素が葉である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項15】
前記植物要素が根である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項16】
前記植物要素が植物全体である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項17】
前記植物要素が植物生殖要素である、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項18】
前記製剤成分が、前記微生物の安定性を改善する化合物、防腐剤、担体、界面活性剤、抗複合体剤(anticomplex agent)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項19】
前記農業用組成物が、殺真菌剤、殺線虫剤、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、微量要素、多量要素、窒素、亜リン酸、カリウム、又は前述のものの任意の複数及び/若しくは組み合わせを含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項20】
チューブ、ボトル、瓶、アンプル、パッケージ、容器、袋、箱、ビン、封筒、カートン、コンテナ、サイロ、輸送用コンテナ、トラックの荷台、及びケースからなる群から選択される物体内に実質的に閉じ込められている、複数の請求項1に記載の合成組成物。
【請求項21】
摂氏0度未満の温度である、請求項20に記載の複数の合成組成物。
【請求項22】
前記植物要素が単子葉植物から取得される、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項23】
前記単子葉植物がC3単子葉植物である、請求項22に記載の合成組成物。
【請求項24】
前記単子葉植物がC4単子葉植物である、請求項22に記載の合成組成物。
【請求項25】
前記農業用組成物が成長培地を含む、請求項1に記載の合成組成物。
【請求項26】
前記成長培地が土壌を含む、請求項25に記載の合成組成物。
【請求項27】
前記合成組成物の各々の間に実質的に等しい間隔を空けた規則的なパターンで土壌中に配置される、複数の請求項1に記載の合成組成物。
【請求項28】
植物の健康、収率、及び/又は活力を改善する方法であって、
(a)そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含むパエニバシラス属細菌と、前記植物の要素を関係付けることであって、前記編集が、以下のゲノム遺伝子座:nifH、glnR、GlnR結合部位I、GlnR結合部位II、cueR、Orf1のうちの1つ以上における若しくはその近くの、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、及び/若しくは少なくとも1つのヌクレオチドの置換であるか、又は前記ゲノム遺伝子座のうちのいずれか1つ若しくはそれ以上における編集の任意の組み合わせ若しくは複数である、前記関係付けることと、
(b)作物植物の要素を、植物の成長を支持する培地中に配置することと、
(c)作物植物の要素由来の植物を成長させることと、
(d)前記植物の1つ以上の特徴を評価することであって、前記特徴のうちの少なくとも1つが、(a)のパエニバシラス属細菌と関係付けられた要素から取得されていない植物の同じ特徴と比較して改善される、前記評価することと
を含む、前記方法。
【請求項29】
(d)の1つ以上の特徴が、窒素固定の改善、バイオマスの増加、葉面積の増加、植物高さの増加、根面積の増加、シュート窒素組成の増加、緑色度の増加、NDVIの増加、NPCIの増加、PSRIの増加、CCIの増加、収率の増加、及び前述のものの任意の組み合わせを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの追加の微生物を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含むパエニバシラス属細菌と、前記作物植物の要素を関係付けることが、畝間散布、土壌灌注適用、側方施肥適用、及び前述のものの任意の組み合わせからなる群から選択される方法によって達成される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含むパエニバシラス属細菌と、前記作物植物の要素を関係付けることが、前記植物要素を前記細菌の液体製剤でコーティングすることによって達成される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含むパエニバシラス属細菌と、前記作物植物の要素を関係付けることが、前記植物要素を前記細菌の実質的に非液体の製剤でコーティングすることによって達成される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記植物要素が種子である、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記植物要素が葉である、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記植物要素が根である、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記植物要素が植物全体である、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
改変されたパエニバシラス属細菌であって、前記パエニバシラス属細菌が、前記編集を含まないパエニバシラス属細菌と比較して改善された表現型を呈し、前記改善された表現型が、増加したアセチレン還元能力、改善されたバイオフィルム形成、培養下の増加した濁度、酸素レベルに対するより高い窒素固定耐性、及び前述のものの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項39】
改変されたパエニバシラス属細菌であって、前記パエニバシラス属細菌が、そのゲノムの1つ以上の遺伝子座に編集を含み、前記編集が、以下のゲノム遺伝子座:nifH、glnR、GlnR結合部位I、GlnR結合部位II、cueR、Orf1のうちの1つ以上における若しくはその近くの、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、及び/若しくは少なくとも1つのヌクレオチドの置換であるか、又は前記ゲノム遺伝子座のうちのいずれか1つ若しくはそれ以上における編集の任意の組み合わせ若しくは複数である、前記改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項40】
前記編集が、CueR切断、CueR切断及びGlnR結合部位II不活化、CueRノックアウト、CueRノックアウト並びにGlnR SII重複及び不活化、CueRノックアウト及びGlnR SII不活化、CueRノックアウト及びGlnR結合部位II不活化、GlnRノックアウト及びGlnR結合部位II重複、GlnRノックアウト及びGlnR結合部位II不活化、GlnRノックアウト及びNifHノックアウト、GlnRノックアウト及びOrf1ノックアウト、GlnR切断、GlnRノックアウト、GlnR結合部位I不活化、GlnR結合部位II重複、GlnR結合部位II重複及び不活化、GlnR結合部位II重複及び不活化並びにNifHノックアウト、GlnR結合部位II不活化、NifHノックアウト、Orf1ノックアウト、並びに前述のものの任意の複数及び/又は組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項41】
配列番号1~23からなる群から選択される16S配列を含む、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項42】
配列番号17~66からなる群から選択される配列を含む、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項43】
ポリミキサ、トリチシ、アルビダス、アナエリカヌス、アゾチフィゲンス、ボレアリス、ドングハエンシス、エヒメンシス、グラミニス、ジルンリイ、オドリファー、パナシソリ、ホエニシス、ポチェオネンシス、リゾプラナエ、シラゲ、タオフアシャネンセ、サーモフィルス、チファエ、及びウィニイからなる群から選択される種のものである、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項44】
下位群Iのものである、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項45】
下位群IIのものである、請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌。
【請求項46】
請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌を含む、実質的に純粋な組成物。
【請求項47】
請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌を含む、細菌培養物。
【請求項48】
請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌を含む、発酵培養物。
【請求項49】
請求項38に記載の改変されたパエニバシラス属細菌と、農業的に許容される担体とを含む、農業用組成物。
【請求項50】
植物又は植物要素を更に含み、前記改変されたパエニバシラス属細菌が、前記植物に改善された表現型をもたらすのに有効な量で前記農業用組成物中に存在する、請求項41に記載の農業用組成物。
【請求項51】
前記改善された表現型が、前記植物の健康、収率、及び/又は活力の増加である、請求項49に記載の農業用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2021年3月22日に出願された米国仮特許出願第63/164361号の利益を主張する。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式なコピーは、2022年3月21日に作成され、かつ46.0KBのサイズを有する21031WOPCT_SeqListing_ST25.txtという名前のファイルとともに、ASCII形式の配列表として電子的に提出され、本明細書と同時に出願される。このASCII形式の文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、特に農業において応用される単離された生物学的に純粋な微生物に関する。開示される微生物は、それらの単離された生物学的に純粋な状態で利用することができ、農業的に許容される組成物に製剤化することもできる。農業用途において単離された微生物又は農業的に許容される組成物を使用する方法も開示される。
【背景技術】
【0004】
背景
国連世界食糧計画(United Nations World Food Program)によると、世界には9億近い栄養失調の人々がいる。栄養失調の流行は、6人に1人の子供が低体重である、世界の発展途上国で特に顕著である。利用可能な食糧の不足は、多くの社会経済的要因に起因し得る。しかしながら、最終的な原因にかかわらず、2050年までに90億人に達すると予期される、増大しつつある世界の人口を養うために利用可能な食糧の不足があるという事実に変わりはない。国連は、農業生産高が2050年に予測世界人口を養うために70~100%増加しなければならないことを推定している。
【0005】
これらの驚くべき世界の人口及び栄養失調の数字は、世界の増大する人口を扶養することにおいて農業効率及び生産性の重要性を強調している。かつて見たことのない作物収穫高につながっている近代的な条播作物農業によって達成された技術的進歩は、印象的である。しかしながら、遺伝子操作された作物並びに新しい新規殺虫及び除草化合物などの技術的革新によって成された進歩にもかかわらず、指数関数的に増加する世界人口の需要を満たすために、作物の出来高の改善の必要性がある。
【0006】
科学者らは、世界の農業の「生産高の格差」(最高の観察された生産高と頬化の場所の結果との間の差である)が埋められ得る場合、世界的な作物生産が45~70%上昇するであろうと推定している。すなわち、全ての農業従事者が、世界的な場所にかかわらず、その個別の地域に期待される最高の達成可能な生産高を達成し得る場合、世界的な食糧生産の不足の大部分が対処され得る。しかしながら、異種の世界的な地形にわたってより高い生産高をどのように達成するかという問題を解決することは、困難である。
【0007】
多くの場合、生産高の格差は、不十分な水、標準未満の農業実践、不十分な肥料、並びに除草剤及び殺虫剤の非可用性によって説明することができる。しかしながら、水、肥料、除草剤、及び殺虫剤の世界的な使用を大幅に増やすことは、世界の大部分にとって経済的に実行不可能であるだけでなく、マイナスの環境的結果を有するであろう。
【0008】
したがって、先進国の大部分で利用されている現在の高入力農業システムを単純にスケールアップすることによって、世界の農業生産高の期待を満たすことは、単純に実行不可能である。
【0009】
したがって、当該技術分野では、作物の出来高を増加させ、有益な形質を所望の植物種に付与する改善された方法の緊急の必要性がある。
【0010】
本明細書に記載される技術は、例えば、傷痕を残さない相同組換え技術を使用して遺伝子編集されて、固定された大気窒素の量を増加させる、環境窒素固定細菌である。
【0011】
これらの遺伝子編集された細菌株は、植物、例えば、非マメ科作物に改善された表現型を付与して、植物が利用可能な窒素の量を増加させ、最終収率を増加させる。
【発明の概要】
【0012】
概要
特に農業において応用される単離された生物学的に純粋な微生物が含まれる。開示される微生物は、それらの単離された生物学的に純粋な状態で利用することができ、農業的に許容される組成物に製剤化することもできる。更に、開示される微生物のうちの少なくとも2つのメンバーを含む、農業的に有益な微生物共同体、並びに農業用途で当該共同体を利用する方法が提供される。いくつかの態様では、微生物(個体、共同体、及び/又は群集)のゲノム改変が、微生物の形質の改善及び微生物関連植物の改善のために企図される。
【0013】
本明細書において、複数の異なる種にわたって、属の下位群I及び下位群IIの両方にわたって、グラム陽性胞子形成細菌パエニバシラス属(Paenibacillus)のゲノム編集株の成功が提示される。nifオペロンの上流の2つのGlnR結合部位(それぞれ、部位I及び部位II)を含むパエニバシラス属ゲノム内のいくつかの異なる遺伝子座、並びにCueR遺伝子座の欠失、切断、及びノックアウトを含むいくつかの異なる編集を評価した。
【0014】
本開示は、どのように植物の出来高を改善するかというこの重要な問題に対処し、それによって、世界的な生産高の格差を埋めるとともに、他の有益な形質を植物種に付与する方法を提供する。本明細書に記載されるパエニバシラス属の新規ゲノム編集株は、植物の窒素利用能、固定、取り込み、獲得、耐性、分布、調節、処理、並びに/又は前述のうちのいずれかの任意の複数及び/若しくは組み合わせの増加及び/又は改善を可能にすることによって、植物の出来高を改善する。
【0015】
いくつかの実施形態では、植物は、非マメ科作物植物である。
【0016】
いくつかの実施形態では、植物は、双子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、野菜、薬草、観賞用植物、又は果実植物である。いくつかの実施形態では、植物は、ケール、ホウレンソウ、レタス、ニンジン、ジャガイモ、ビート、ダイコン、トマト、ブロッコリー、カリフラワー、カボチャ、マスタード、ベリー、ペッパー、緑葉野菜、つる性マメ、マスクメロン、キュウリ、バジル、ブドウ、及びオクラからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、植物は、単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、C3単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、C4単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、コムギ、コメ、ソルガム、サトウキビ、タマネギ、タケ、パーム、ニンニク、ショウガ、ユリ、ラッパズイセン、アイリス、ラン、ブルーベル、チューリップ、アマリリス、バナナ、プランタン、ショウガ、ウコン、カルダモン、アスパラガス、パイナップル、スゲ、イグサ、ニラ、飼料草、芝草、ソバ、キノア、チア、及びキビからなる群から選択される。
【0018】
本開示によって提案される、作物の出来高を増加させ、生産高を増加させることの解決策は、水消費量の増加又は合成化学物質の体系への入力の増加に依拠しないため、地球の資源にとって有害ではない。むしろ、本開示は、微生物を利用して、生産高の増加を含む有益な特性を望ましい植物に付与する。
【0019】
したがって、本開示は、合成除草剤及び殺虫剤の利用の増加に依拠しない、農業従事者が重要な作物の生産高を増加させることを可能にする、環境的に持続可能な解決策を提供する。
【0020】
実施形態では、本開示は、1つ以上の望ましい植物特性を促進する、微生物及び微生物共同体(複数の微生物、いくつかの態様では、それが関係付けられる農学的形質などの植物の健康又は所望の表現型を改善する複数の微生物)を利用する、効率的で広く適用可能な農業プラットフォームを提供する。
【0021】
本明細書に開示される微生物は、直接的及び間接的機構の両方によって、作物植物などの植物の出来高を改善する。いくつかの態様では、微生物は、植物と共生する。いくつかの態様では、微生物は、植物に利益を与えるか、又は植物が特性の改善のために使用することができる化合物(例えば、代謝産物、毒素、タンパク質、リポペプチド、又は他の組成物)を産生する。いくつかの態様では、微生物は、栄養素などの1つ以上の組成物の溶解性を改善し、それによって、植物に利益をもたらす。いくつかの態様では、微生物は、植物に除草剤又は殺虫剤などの外因性物質に対して植物に耐性を付与する。いくつかの態様では、微生物は、昆虫などの植物害虫に有害である組成物を産生する。いくつかの態様では、微生物は、窒素を固定し、それによって、植物の栄養状態を改善する。上記に列挙された例示的な非限定的態様以外の他の態様が企図される。
【0022】
いくつかの実施形態では、単一の微生物が利用される。いくつかの態様では、単一の微生物は、単離及び精製される。いくつかの態様では、単一の微生物は、細菌の分類学的種である。いくつかの態様では、単一の微生物は、細菌の分類学的種の識別可能な株である。いくつかの態様では、単一の微生物は、細菌の分類学的種の新規の新たに発見された株である。
【0023】
いくつかの態様では、単一の微生物は、分類学的に識別可能な種又は株であろうとなかろうと、異なる種又は株の1つ以上の他の微生物と組み合わせられる。ある特定の態様では、2つ以上の微生物の組み合わせは、共同体(consortia又はconsortium)を形成する。共同体(consortia又はconsortium)という用語は、同義的に利用される。
【0024】
ある特定の態様では、本開示は、所望の表現型又は遺伝子型の植物の形質の開発及び発現を促進することに役立つ、高度に機能的な微生物共同体の開発を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の共同体は、個々の微生物が単独で生きているときに自然界では見出されない、機能的属性を保有する。すなわち、様々な実施形態では、特定の微生物種を共同体に組み合わせることは、単独で考慮すると、共同体のいずれか1つの個々のメンバーによって保有されていない機能的属性を保有する、微生物の組み合わせにつながる。
【0025】
いくつかの実施形態では、微生物共同体によって保有されるこの機能的属性は、1つ以上の有益な特性、例えば、成長の増加、生産高の増加、栄養素利用の増加(例えば、窒素、リン酸塩、及び同等物)、窒素利用効率の改善、ストレス耐性の増加、耐干ばつ性の増加、光合成速度の増加、水使用効率の増進、病原体耐性の増加、必ずしも植物の生産高に影響を及ぼさず、むしろ植物の機能性に対処する、植物構造に対する改変などを植物種に付与する能力である。線虫、昆虫、又は他の害虫に対する有害作用を含む、害虫抵抗性及び/又は耐性の有益な特性が更に企図される。
【0026】
植物にこれらの有益な特性を付与する能力は、いくつかの実施形態では、自然界で生じる際に個々の微生物によって保有されていない。むしろ、いくつかの実施形態では、これらの微生物を共同体に組み合わせる人の手によって、機能的組成物が開発され、当該機能的組成物は、自然界には存在しない属性及び機能的特性を保有する。いくつかの実施形態では、共同体は、当業者に既知の技法を介して、DNA、RNA、タンパク質、及び/又はそれらの組み合わせを含む細胞組成物の改変を通して、遺伝子編集、変更、又は改変されている微生物を含み得る。
【0027】
しかしながら、他の実施形態では、本開示は、所望の植物種に有益な特性を付与することができる、個々の単離された生物学的に純粋な微生物を提供し、当該微生物を共同体に組み合わせる必要はない。
【0028】
いくつかの実施形態では、微生物は、窒素固定能力を改善するために遺伝子改変されたパエニバシラス属の株である。
【0029】
したがって、本開示は、合成肥料、除草剤、及び/又は殺虫剤の利用の増加に依拠しない、農業従事者が重要な作物の生産高を増加させることを可能にする、環境的に持続可能な解決策を提供する。例えば、一態様では、本開示は、微生物の窒素固定能力を改善するために遺伝子改変された単離された微生物を記載する。いくつかの実施形態では、単離された微生物の内因性nif遺伝子は、微生物の窒素固定能力を改善するために遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、タンパク質GlnRをコードする内因性glnR遺伝子は、微生物の窒素固定能力を改善するために遺伝子改変される。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変、及び内因性nif遺伝子の調節配列に対する遺伝子改変から選択される1つ以上の遺伝子改変を含む単離された遺伝子改変された微生物に関する。遺伝子改変された微生物中のGlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRタンパク質バリアントを産生する変異glnR遺伝子を提供することを特徴とする。更に、内因性nif遺伝子内の調節配列に対する遺伝子改変は、遺伝子改変されていない調節配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とする。1つ以上の遺伝子改変は、遺伝子改変されていない微生物株と比較して改善された窒素固定活性を遺伝子改変された微生物に提供することを特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、微生物を取り囲む環境における局所窒素濃度にかかわらず、nif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、窒素制限条件下でnif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、窒素豊富条件下でnif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。
【0032】
本開示は、単離された遺伝子改変された微生物を調製するためのプロセスにも関し、このプロセスは、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子を遺伝子改変すること、内因性nif遺伝子内の調節配列を遺伝子改変すること、又はそれらの組み合わせと、微生物を単離することとを含む。GlnRをコードする内因性glnR遺伝子を遺伝子改変するステップは、内因性glnR遺伝子を編集して、GlnRタンパク質バリアントをコードする変異遺伝子を産生することを含む。内因性nif遺伝子内の調節配列を遺伝子改変するステップは、調節配列を、天然調節配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列で置換することを含む。加えて、微生物は、窒素固定活性を有することを特徴とし、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子を遺伝子改変すること及び/又は内因性nif遺伝子内の調節配列を遺伝子改変することにより、遺伝子改変されていない微生物株と比較して改善された窒素固定活性が提供される。
【0033】
本開示は更に、本明細書に開示される単離された遺伝子改変された微生物の1つ以上の株と、農業的に許容される担体とを含む農業用組成物に関する。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、1つ以上の追加の農業的に有益な薬剤(例えば、肥料、バイオ肥料、バイオ殺線虫剤、生物刺激物質、合成殺虫剤、及び/又は合成除草剤)を含む。
【0034】
1つ以上の有益な形質を植物に付与する方法も本明細書に開示され、この方法は、農業有効量の本明細書に開示される単離された遺伝子改変された微生物又は農業用組成物のうちの1つ以上を適用することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、表1a、表1b、又は表1cに記載されている。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、配列番号1~66のうちのいずれか1つ又はそれ以上と少なくとも90%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、ポリミキサ(polymyxa)、トリチシ(tritici)、アルビダス(albidus)、アナエリカヌス(anaericanus)、アゾチフィゲンス(azotifigens)、ボレアリス(borealis)、ドングハエンシス(donghaensis)、エヒメンシス(ehimensis)、グラミニス(graminis)、ジルンリイ(jilunlii)、オドリファー(odorifer)、パナシソリ(panacisoli)、ホエニシス(phoenicis)、ポチェオネンシス(pocheonensis)、リゾプラナエ(rhizoplanae)、シラゲ(silage)、タオフアシャネンセ(taohuashanense)、サーモフィルス(thermophilus)、チファエ(typhae)、及びウィニイ(wynnii)からなる群から選択される種である。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群Iのものである。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群IIのものである。
【0036】
本明細書に開示されるいずれの株も、微生物共同体を形成し得る1つ以上の追加の微生物と更に組み合わせられ得る。微生物共同体は、1つ以上の個々の微生物の任意の組み合わせとすることができる。ある特定の実施形態では、微生物共同体は、2匹の微生物、又は3匹の微生物、又は4匹の微生物、又は5匹の微生物、又は6匹の微生物、又は7匹の微生物、又は8匹の微生物、又は9匹の微生物、又は10匹の微生物、又は10匹より多くの微生物を含む。
【0037】
本開示の別の目的は、共通して多次元活動を実施することができる微生物共同体を設計することである。ある特定の態様では、共同体を含む微生物は、相乗的に作用する。態様では、微生物共同体がある特定の植物特性に及ぼす効果は、共同体のいずれか1つの個々の微生物メンバーが単独で利用された場合に観察されるであろう効果よりも大きい。すなわち、いくつかの態様では、共同体は、共同体の任意の個々のメンバーが単独で利用された場合に見出されるであろう効果と比較して、所望の植物特性に対する相加効果よりも大きな効果を示す。
【0038】
いくつかの態様では、共同体は、例えば、将来の微生物叢開発のための軌道を設定する一次コロニー形成種又は創設集団として作用することによって、他の植物-微生物相互作用の確立につながる。
【0039】
実施形態では、本開示は、微生物分離株の相乗的組み合わせ(又は混合物)を対象とする。
【0040】
いくつかの態様では、本明細書に教示される共同体は、穀物、果実、及び花の生産高の改善、植物部位の成長の改善、栄養素(例えば、窒素、リン酸塩、及び同等物)を利用する能力の改善、疾患に対する耐性の改善、真菌、昆虫、及び線虫に対する耐性の改善を含む、バイオ殺虫剤効果、極端な気候における生存可能性の改善、並びに他の所望の植物の表現型特性の改善を含む、広範囲の農業用途を提供する。有意には、植物に対するこれらの利益及び/又は標的とする害虫及び/又は病原体に対する有害作用は、環境にいかなる有害な副作用も引き起こすことなく得ることができる。
【0041】
いくつかの態様では、本開示の個々の微生物、又はそれを含む共同体は、農業的に許容される組成物に組み合わせられ得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物には、湿潤剤、相溶化剤、消泡剤、洗浄剤、封鎖剤、ドリフト低減剤、中和剤、緩衝剤、腐食阻害剤、染料、付臭剤、展着剤、浸透補助剤、粘着剤、結合剤、分散剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、凝固点降下剤、抗微生物剤、肥料、殺虫剤(pesticide)、殺線虫剤、殺虫剤(insecticide)、除草剤、不活性担体、ポリマー、及び同等物が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本開示の一実施形態では、微生物(単離された単一の種、若しくは株、共同体、又は代謝産物などのその組成物を含む)は、種子コーティング又は他の適用の形態で種子に供給される。実施形態では、種子コーティングは、裸で未処理の種子に適用され得る。他の実施形態では、種子コーティングは、前もって処理された種子に適用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、単離された細菌株又は微生物共同体を種子に適用することを含む、種子を処理する方法を教示する。ある特定の実施形態では、単離された細菌株又は微生物共同体は、農業的に許容される担体を含む農業用組成物として適用される。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、土壌灌注(soil drench)、葉面噴霧、浸漬処理、畝間処理、土壌改良、顆粒、広域播種処理、収穫後の疾患制御処理、又は種子処理として製剤化され得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、単独で、又は他の農産物との交代噴霧プログラムで適用され得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、タンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、他の農産物とのタンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、地上、空中、及び灌漑用途に使用される機器に適合し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、適用された微生物は、内生するようになり得、その結果として、処理された成長中の植物及びその後続の子孫に存在し得る。他の実施形態では、微生物は、種子処理との併用処理と同時に適用され得る。
【0045】
本開示の一実施形態では、微生物は、植物成長培地に適用される顆粒、又はプラグ、又は土壌灌注の形態で供給される。他の実施形態では、微生物は、葉面噴霧又は液体組成物などの葉面適用の形態で供給される。葉面噴霧又は液体適用は、成長中の植物、又は成長培地、例えば、土壌に適用され得る。
【0046】
他の実施形態では、微生物(単離された単一の種、若しくは株、若しくは共同体、又は代謝産物などのその組成物を含む)は、土壌に適用され得る肥料、殺虫剤、又は他の改良剤として供給される。いくつかの実施形態では、微生物は、植え付けの前に土壌に適用される肥料、殺虫剤、又は他の改良剤として供給される。いくつかの実施形態では、微生物は、植え付けと同時に土壌に適用される肥料、殺虫剤、又は他の改良剤として供給される。いくつかの実施形態では、微生物は、植え付け後に土壌に適用される肥料、殺虫剤、又は他の改良剤として供給される。
【0047】
本開示の他の実施形態では、微生物(単離された単一の種若しくは株、又は共同体を含む)及び/又はその組成物(例えば、代謝産物)は、収穫後の疾患制御用途の形態で供給される。
【0048】
実施形態では、本開示の農業用組成物は、とりわけ、(1)溶液、(2)湿潤性粉末、(3)散布粉末、(4)可溶性粉末、(5)エマルション又は懸濁液濃縮物、(6)種子ドレッシング、(7)錠剤、(8)水分散性顆粒、(9)水溶性顆粒(徐放又は速放)、(10)マイクロカプセル化顆粒又は懸濁液、(11)灌漑成分、並びに(12)肥料、殺虫剤、及び他の適合性改良剤の成分として、製剤化され得る。ある特定の態様では、組成物は、従来の噴霧適用の前に水性媒体中で希釈され得る。本開示の組成物は、土壌、植物、種子、根圏、根鞘、又は微生物組成物を適用することが有益であろう他の領域に適用され得る。
【0049】
本開示の更に別の目的は、高コロニー形成単位(CFU)細菌集団又は共同体を提供するために製剤化されている農業用組成物に関する。いくつかの態様では、農業用組成物は、適切な保存可能期間を提供するアジュバントを有する。実施形態では、教示される農業用組成物のCFU濃度は、開示される方法を除いて、微生物が天然に存在するであろう濃度よりも高い。別の実施形態では、農業用組成物は、1グラムの担体当たり10^2~10^12CFU又は1グラムの担体当たり10^5~10^9CFUの濃度で微生物細胞を含有する。一態様では、微生物細胞は、10^5~10^9CFUの濃度で種子コートとして種子に直接適用される。他の態様では、微生物細胞は、10^5~10^9CFUの濃度で種子オーバーコートとして別の種子コートの上に適用される。他の態様では、微生物細胞は、10^5~10^9CFUの速度で別の種子処理とともに併用処理として適用される。
【0050】
態様では、本開示は、植物の成長を促進する農業用微生物製剤を対象とする。態様では、本開示は、バイオ接種剤として製剤化される、教示される単離された微生物、及びそれを含む共同体を提供する。教示されるバイオ接種剤は、植物、種子、若しくは土壌に適用されるか、又は肥料、殺虫剤、及び他の適合性改良剤と組み合わせられることができる。単離された微生物を含むバイオ接種剤を製剤化することの好適な実施例は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,097,830号に見出され得る。
【0051】
開示される微生物製剤は、窒素含有肥料の必要性を低くし、鉱物を可溶化し、植物のバイオ殺虫保護を提供し、病原体(例えば、真菌、昆虫、及び線虫)から植物を保護し、窒素及び/又はリン酸塩などの貴重な栄養素を植物に利用可能にし、したがって、化学殺虫剤及び化学肥料を使用する必要性を低減及び排除することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された生物学的に純粋な微生物は、1つ以上の有益な特性又は形質を所望の植物種に付与する方法で利用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された生物学的に純粋な微生物を含有する農業的に許容される組成物は、1つ以上の有益な特性又は形質を所望の植物種に付与する方法で利用され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示の共同体は、1つ以上の有益な特性又は形質を所望の植物種に付与する方法で利用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示の共同体を含有する農業的に許容される組成物は、1つ以上の有益な特性又は形質を所望の植物種に付与する方法で利用され得る。
【0056】
いくつかの態様では、本開示の単離された生物学的に純粋な微生物、及び/又は本開示の共同体は、加速微生物選択プロセス(「AMS」プロセス)から誘導される。本開示のいくつかの態様で利用されるAMSプロセスは、例えば、(1)国際公開第2012125050 A1号として2012年9月20日に公開された国際特許出願第PCT/NZ2012/000041号、及び(2)国際公開第2014046553 A1号として2014年3月27日に公開された国際特許出願第PCT/NZ2013/000171号に記載されており、これらのPCT出願の各々は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる。
【0057】
しかしながら、他の実施形態では、本開示の微生物は、加速微生物選択プロセスから誘導されない。いくつかの態様では、本開示の実施形態で利用される微生物は、データベース中に存在する微生物のメンバーの中から選択される。特定の態様では、本開示の実施形態で利用される微生物は、当該微生物の特定の特性に基づいて、データベースに存在する微生物から選択される。
【0058】
本開示は、植物要素又は植物部位が、植物要素又は植物部位上で通常は見出されない量で、当該植物要素又は植物部位を単離された微生物又は微生物共同体でコーティングすることによって、効果的に増強され得ることを規定する。
【0059】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、種子の表面を、種子に対して異種であるか、又は種子上に存在することがほとんどない、少なくとも1つの単離された微生物を含む、精製微生物集団を含む製剤と接触させることを含む、農業用種子組成物又は種子コーティングを調製するための方法である。更なる実施形態は、植物の表面を、植物に対して異種である少なくとも1つの単離された微生物を含む、精製微生物群を含む製剤と接触させることを含む、農業用植物組成物を調製することを伴う。他の態様では、製剤又は微生物は、種子の内部、例えば、子葉又は胚の他の種子組織に導入される。
【0060】
いくつかの態様では、本開示の単離された微生物、微生物共同体、滲出液、代謝産物、及び/又は農業用組成物を種子又は植物に適用することは、農学的に重要な形質を調節する。農学的に重要性な形質は、例えば、耐病性、耐干ばつ性、耐熱性、耐寒性、耐塩性、金属耐性、除草剤耐性、薬剤耐性、水使用効率の改善、窒素利用の改善、窒素ストレスに対する耐性の改善、窒素固定の改善、栄養素利用の改善(例えば、リン酸塩、カリウム、及び同等物)、病虫害耐性、草食動物耐性、病原体耐性、(例えば、病原体生存を損なう代謝産物の排出を介した)病原体レベルの低減、生産高の増加、水が制限された条件下での生産高の増加、健康増進、活力の改善、成長の改善、光合成能力の改善、栄養増進、タンパク質含有量の改変、油含有量の改変、バイオマスの増加、シュートの長さの増加、根の長さの増加、根の構造の改善、種子重量の増加、より速い種子発芽、種子炭水化物組成の改変、種子油組成の改変、さやの数、老化の遅延、緑化、及び種子タンパク質組成の改変であり得る。いくつかの態様では、少なくとも2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の農学的に重要な形質が調節される。いくつかの態様では、調節は、前述の農学的形質のうちの1つに対するプラスの効果である。
【0061】
いくつかの態様では、参照植物に対して、油含有量の改変、タンパク質含有量の改変、種子炭水化物組成の改変、種子油組成の改変、種子タンパク質組成の改変、薬剤耐性、耐寒性、老化の遅延、耐病性、耐干ばつ性、穂重、成長の改善、健康増進、耐熱性、除草剤耐性、草食動物耐性、窒素固定の改善、窒素利用の改善、根の構造の改善、水使用効率の改善、バイオマスの増加、バイオマスの減少、根の長さの増加、根の長さの減少、種子重量の増加、シュートの長さの増加、シュートの長さの減少、生産高の増加、水が制限された条件下での生産高の増加、穀粒質量、穀粒含水量、金属耐性、穂の数、穂当たりの穀粒の数、さやの数、栄養増進、病原体耐性、病虫害耐性、光合成能力の改善、耐塩性、緑化、活力の改善、成熟種子の乾燥重量の増加、成熟種子の新鮮重量の増加、植物当たりの成熟種子の数の増加、クロロフィル含有量の増加、植物当たりのさやの数の増加、植物当たりのさやの長さの増加、植物当たりのしおれた葉の数の低減、植物当たりのひどくしおれた葉の数の低減、及び植物当たりのしおれていない葉の数の増加、代謝産物のレベルの検出可能な調節、転写物のレベルの検出可能な調節、並びにプロテオームの検出可能な調節などの植物特性を調節又は改変するために、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物を植物に適用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に教示される農業用製剤は、農業的適合性担体、粘着付与剤、微生物安定剤、殺真菌剤、抗菌剤、除草剤、殺線虫剤、殺虫剤、植物成長調節剤、殺鼠剤、及び栄養素からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。
【0063】
本明細書に記載される方法は、種子又は植物を、微生物の少なくとも100CFU若しくは胞子、少なくとも300CFU若しくは胞子、少なくとも1,000CFU若しくは胞子、少なくとも3,000CFU若しくは胞子、少なくとも10,000CFU若しくは胞子、少なくとも30,000CFU若しくは胞子、少なくとも100,000CFU若しくは胞子、少なくとも300,000CFU若しくは胞子、少なくとも1,000,000CFU若しくは胞子、又はそれ以上と接触させることを含むことができる。
【0064】
本明細書に記載される方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される代謝産物を含む組成物と接触させることを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも1mgの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも10mgの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも100mgの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも1gの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも10gの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも100gの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される少なくとも1kgの代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、種子又は植物を、本明細書に開示される単一の微生物又は微生物共同体によって産生される1kgを超える代謝産物を含む組成物と接触させることを含む。
【0065】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本開示の単離された微生物は、農作植物の標的組織内及び/又は上で検出可能であるために効果的な量で製剤中に存在する。例えば、微生物は、植物の標的組織内及び/又は上で、少なくとも100CFU若しくは胞子、少なくとも300CFU若しくは胞子、少なくとも1,000CFU若しくは胞子、少なくとも3,000CFU若しくは胞子、少なくとも10,000CFU若しくは胞子、少なくとも30,000CFU若しくは胞子、少なくとも100,000CFU若しくは胞子、少なくとも300,000CFU若しくは胞子、少なくとも1,000,000CFU若しくは胞子、又はそれ以上の量で検出される。代替的に、又は加えて、本開示の微生物は、本開示の製剤が適用されていない参照農作植物と比較すると、そのような製剤がそれに適用された植物のバイオマス及び/又は生産高を少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、又はそれ以上増加させるために効果的な量で、製剤中に存在し得る。代替的に、又は加えて、本開示の微生物は、本開示の製剤が適用されていない参照農作植物と比較すると、そのような製剤がそれに適用された植物の目的の農学的形質を少なくとも1%以上、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、又はそれ以上検出可能に調節するために効果的な量で、製剤中に存在し得る。
【0066】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本開示の微生物又は共同体から単離された1つ以上の代謝産物は、農作植物の標的組織内及び/又は上で検出可能であるために効果的な量で製剤中に存在する。例えば、代謝産物は、植物の標的組織内及び/又は上で、少なくとも1mg、少なくとも10mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも400mg、少なくとも600mg、少なくとも800mg、少なくとも1g、又はそれ以上の量で検出される。代替的に、又は加えて、本開示の微生物及び共同体から単離された代謝産物は、本開示の製剤が適用されていない参照農作植物と比較すると、そのような製剤がそれに適用された植物のバイオマス及び/又は生産高を少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、又はそれ以上増加させるために効果的な量で、製剤中に存在し得る。代替的に、又は加えて、本開示の微生物及び共同体から単離された代謝産物は、本開示の製剤が適用されていない参照農作植物と比較すると、そのような製剤がそれに適用された植物の目的の農学的形質を少なくとも1%以上、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、又はそれ以上検出可能に調節するために効果的な量で、製剤中に存在し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に教示される農業用組成物は、常温保存可能である。いくつかの態様では、本明細書に教示される微生物は、凍結乾燥される。いくつかの態様では、本明細書に教示される微生物は、噴霧乾燥される。いくつかの態様では、本明細書に教示される微生物は、液体製剤に入れられる。いくつかの態様では、本明細書に教示される微生物は、顆粒上に存在する。
【0068】
また、ボトル、瓶、アンプル、パッケージ、容器、袋、箱、ビン、封筒、カートン、コンテナ、サイロ、輸送用コンテナ、トラックの荷台、及びケースからなる群から選択される物体内に閉じ込められた複数の単離された微生物も本明細書に記載される。
【0069】
いくつかの態様では、選択された植物種を前述のうちのいずれかを含む開示された微生物操作的分類単位(OTU)、株、又は組成物と組み合わせることが、作物及びその生産物の世代からの出来高の改善につながる。したがって、一態様では、本開示は、微生物がコーティングされていない参照種子の表面上に存在するよりも高いレベルで種子の表面上に存在するように、第1の植物の種子及び第1の植物の種子の表面上にコーティングされる微生物の調製物の合成組み合わせを提供する。別の態様では、本開示は、微生物がコーティングされていない参照植物部位の表面上に存在するよりも高いレベルで第1の植物の部位上に存在するように、第1の植物の部位及び第1の植物の部位の表面上にコーティングされる微生物の調製物の合成組み合わせを提供する。前述の方法は、単独で、又は植物育種及びトランスジェニック技術と並行して使用され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、表1a、表1b、又は表1cに記載されている。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、配列番号1~52のうちのいずれか1つ又はそれ以上と少なくとも90%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、ポリミキサ、トリチシ、アルビダス、アナエリカヌス、アゾチフィゲンス、ボレアリス、ドングハエンシス、エヒメンシス、グラミニス、ジルンリイ、オドリファー、パナシソリ、ホエニシス、ポチェオネンシス、リゾプラナエ、シラゲ、タオフアシャネンセ、サーモフィルス、チファエ、及びウィニイからなる群から選択される種である。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群Iのものである。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群IIのものである。
【0071】
いくつかの実施形態では、単離された細菌株は、本開示の単離された細菌株と実質的に類似する形態学的及び生理学的特性を有する。いくつかの実施形態では、単離された細菌株は、本開示の単離された細菌株と実質的に類似する遺伝的特性を有する。いくつかの実施形態では、単離された細菌株は、本開示の単離された細菌株の自然発生又は人工の変異体である。いくつかの実施形態では、単離された細菌株は、遺伝子編集、変更、又は改変された細菌株である。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株は、実質的に純粋な培養物中にある。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株は、純粋な培養物中にある。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株は、細胞画分、抽出物、又は上清中にある。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株の子孫及び/又は変異体が企図される。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株の子孫、変異体、及び/又は遺伝子改変されたバージョンが企図される。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株の無細胞若しくは不活化調製物、又は当該単離された細菌株の変異体が企図される。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株の無細胞若しくは不活化調製物、又は当該単離された細菌株の変異体、又は遺伝子編集、変更、若しくは改変されたバリアントが企図される。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株によって産生される代謝産物、又は当該単離された細菌株の変異体が企図される。いくつかの実施形態では、本開示の単離された細菌株によって産生される代謝産物、又は当該単離された細菌株の変異体若しくは遺伝子改変されたバリアントが企図される。
【0074】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、単離された細菌株と、農業的に許容される担体とを含む。単離された細菌株は、1グラム当たり1×10^2~1×10^12CFUで組成物中に存在し得る。農業用組成物は、種子コーティングとして製剤化され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、植物種に少なくとも1つの有益な形質を付与する方法は、単離された細菌株を、植物又は当該植物が位置する成長培地に適用することを含む。いくつかの実施形態では、植物種に少なくとも1つの有益な形質を付与する方法は、本開示の農業用組成物を、植物又は植物が位置する成長培地に適用することを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、植物は、非マメ科作物植物である。いくつかの実施形態では、植物は、単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、C3単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、C4単子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、コムギ、コメ、ソルガム、サトウキビ、タマネギ、タケ、パーム、ニンニク、ショウガ、ユリ、ラッパズイセン、アイリス、ラン、ブルーベル、チューリップ、アマリリス、バナナ、プランタン、ショウガ、ウコン、カルダモン、アスパラガス、パイナップル、スゲ、イグサ、ニラ、飼料草、ソバ、キノア、チア、及びキビからなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの有益な形質を有する植物を栽培する方法を教示する。いくつかの実施形態では、方法は、単離された細菌株又は微生物共同体を植物の種子に適用することと、種を播種するか、又は植え付けることと、植物を栽培することとを含む。ある特定の実施形態では、単離された細菌株又は微生物共同体は、農業的に許容される担体を更に含む農業用組成物として適用される。
【0078】
いくつかの実施形態では、微生物共同体は、本開示の微生物共同体と実質的に類似する形態学的及び生理学的特性を有する。いくつかの実施形態では、微生物共同体は、本開示の微生物共同体と実質的に類似する遺伝的特性を有する。いくつかの実施形態では、微生物共同体は、実質的に純粋な培養物中にある。いくつかの実施形態では、微生物共同体の任意の微生物の後続の世代が企図される。いくつかの実施形態では、微生物共同体の任意の微生物の変異体が企図される。いくつかの実施形態では、微生物共同体の任意の微生物の遺伝子編集、変更、又は改変されたバリアントが企図される。いくつかの実施形態では、微生物共同体の無細胞若しくは不活化調製物、又は微生物共同体内の任意の微生物の変異体、又は遺伝子編集、変更、若しくは改変されたバリアントが企図される。いくつかの実施形態では、微生物共同体によって産生される代謝産物、又は微生物共同体内の任意の微生物の変異体、又は遺伝子編集、変更、若しくは改変されたバリアントが企図される。
【0079】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、微生物共同体と、農業的に許容される担体とを含む。農業用組成物の微生物共同体は、1グラム当たり1×10^3~1×10^12の細菌細胞で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、種子コーティングとして製剤化される。いくつかの実施形態では、植物種に少なくとも1つの有益な形質を付与する方法は、微生物共同体を、当該植物又は当該植物が位置する成長培地に適用することを含む。いくつかの実施形態では、植物種に少なくとも1つの有益な形質を付与する方法は、農業用組成物を、植物又は当該植物が位置する成長培地に適用することを含む。
【0080】
方法のいずれかにおいて、微生物は、表1a、表1b、及び/又は表1cに提供される生物から選択される細菌の16S rRNA核酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有する、16S rRNA核酸配列を含むことができる。
【0081】
図面及び配列表の簡単な説明
本開示は、本明細書の一部を形成する、以下の詳細な説明及び配列表からより完全に理解することができる。
【0082】
本明細書に添付される配列記述及び配列表は、米国特許法施行規則第1.821条及び同第1.825条に記載される特許出願におけるヌクレオチド及びアミノ酸配列の開示を管理する規則に準拠する。
【0083】
本明細書に開示される親株、編集株、及び配列の説明は、表1a、表1b、及び表1cに提供される。
【0084】
(表1a)パエニバシラス属親株、分類群、及び源
種指定は、16S rRNA決定、並びに全ゲノムシーケンシング(WGS)決定によって提供される。変動は、配列決定品質、参照データベース内容、バイオインフォマティクスアルゴリズム、分類学的流動などの要因に起因し得る。
*注記:表に示されるように、株識別子は、任意選択的な接頭語を更に含み得る。例えば、株54805は、任意選択的に、PM54805と同義に称され得る。
【0085】
(表1b)パエニバシラス属編集株
編集タイプ:A=NifHノックアウト、B=GlnRノックアウト、C=GlnR C25切断、D=GlnR結合部位II不活化、E=GlnR結合部位II重複(部位II領域内)、F=GlnR結合部位II重複及び不活化、G=CueR C25切断、H=CueRノックアウト、I=CueR C25切断及びGlnR結合部位II不活化、J=CueRノックアウト及びGlnR結合部位II不活化、K=CueR C25切断並びにGlnR結合部位II不活化及び重複、L=GlnR結合部位II不活化及び重複並びにNifHノックアウト。
*注記:表に示されるように、株識別子は、任意選択的な接頭語を更に含み得る。例えば、編集タイプDを有する親株(PM)53593は、それぞれ、親株及び編集株に接頭辞「PM」(表1aを参照されたい)及び「PE」を有する「(PE)53953-G3」であり、これらは任意選択的な追加の指定である。
【0086】
(表1c)配列
【0087】
本出願に記載される微生物は、1815 North University Street,Peoria,IL 61604,USAに所在する国際寄託機関である、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)に寄託される。
【0088】
寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の条件下で行われる。寄託は、米国特許法施行規則第1.801~1.809条及び米国特許審査便覧第2402~2411.05条に記載される基準に従って、かつそれらを満たすために行われる。
【0089】
株8619-G25は、2022年3月11日に寄託番号B68109としてNRRLに寄託された。
【0090】
株8619-G50は、2022年3月11日に寄託番号B68108としてNRRLに寄託された。
【0091】
株8619-G53は、2022年3月11日に寄託番号B68107としてNRRLに寄託された。
【0092】
株8619-G88は、2022年3月11日に寄託番号B68104としてNRRLに寄託された。
【0093】
株17899-G13は、2022年3月11日に寄託番号B68110としてNRRLに寄託された。
【0094】
株55083-G14は、2022年3月11日に寄託番号B68106としてNRRLに寄託された。
【0095】
株68890-G12は、2022年3月11日に寄託番号B68103としてNRRLに寄託された。
【0096】
株77155-G3は、2022年3月11日に寄託番号B68105としてNRRLに寄託された。
【0097】
株77155-G46は、2022年3月11日に寄託番号B68102としてNRRLに寄託された。
【発明を実施するための形態】
【0098】
詳細な説明
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下が、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0099】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上のその実体を指し、すなわち、複数の指示対象を指すことができる。したがって、「a」又は「an」、「1つ以上の」、及び「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では同義的に使用される。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による「an element(要素)」への言及は、要素のうちの唯一のものがあることを文脈が明確に要求しない限り、要素のうちの1つより多くが存在する可能性を排除しない。
【0100】
本明細書で使用される場合、「微生物(microorganism)」又は「微生物(microbe)」という用語は、広義に解釈されるべきである。これらの用語は、同義的に使用され、2つの原核分野、すなわち、細菌及び古細菌、並びに真核菌類及び原生生物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示は、表1Aの「微生物」、又は本開示に存在する様々な他の表若しくは段落の「微生物」を指す。この特性化は、表の識別された分類学的細菌属だけでなく、識別された分類学的種、並びに当該表の様々な新規かつ新たに識別された細菌株を指すことができる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「微生物(microbe)」又は「微生物(microorganism)」という用語は、古細菌、細菌、微細藻類、真菌(カビ及び酵母種を含む)、マイコプラズマ、小胞子、ナノ細菌、卵菌、及び原虫を含むが、これらに限定されない、任意の微生物種又は分類群を指す。いくつかの実施形態では、微生物(microbe又はmicroorganism)は、個々の細胞(例えば、単細胞微生物)又は1つより多くの細胞(例えば、多細胞微生物)を包含する。したがって、「微生物の集団」は、細胞が共通の遺伝的由来を共有する、単一の微生物の複数の細胞を指し得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「細菌(bacterium又はbacteria)」という用語は、一般的に任意の原核生物を指し、真正細菌界(細菌)、古細菌界(古細菌)、又は両方のいずれかからの生物を参照し得る。いくつかの事例では、細菌属又は他の分類学的分類は、分類学的に流動的であり得る、様々な理由(限定されるものではないが、進化しつつある全ゲノム配列決定の分野など)により再指定されている、及び/又は方法論に基づいて可変であり得、そのような命名法の再指定は、任意の主張された分類法の範囲内であることが理解される。例えば、エルウィニア(Erwinia)属のある特定の種は、パントエア(Pantoea)属に属するものとして文献に記載されている(Zhang,Y.,Qiu,S.Examining phylogenetic relationships of Erwinia and Pantoea species using whole genome sequence data.Antonie van Leeuwenhoek 108,1037-1046(2015).)。
【0103】
「16S」という用語は、細菌の16SリボソームRNA(rRNA)配列のDNA配列を指す。16S rRNA遺伝子配列決定は、細菌の系統発生及び分類法を研究するための確立された方法である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「真菌(fungus又はfungi)」という用語は、一般的に真菌界からの任意の生物を指す。真菌の歴史的な分類学的分類は、形態学的提示によるものである。1800年代半ばに始まって、いくつかの真菌は多形性生活環を有し、異なる命名指定が同一の真菌の異なる形態に使用されていることが認識された。1981年に、Sydney Congress of the International Mycological Associationは、anamorph、teleomorph、又はholomorphとして、それらの状態に従って真菌を命名するための規則を制定した(Taylor,J.W.One Fungus=One Name:DNA and fungal nomenclature twenty years after PCR.IMA Fungus 2,113-120(2011).)。ゲノム配列決定の開発に伴い、分子系統学に基づく分類学的分類は、形態学に基づく命名法に整合しないことが明白になった(Shenoy,B.D.,Jeewon,R.and Hyde,K.D.(2007).Impact of DNA sequence-data on the taxonomy of anamorphic fungi.Fungal Diversity 26:1-54.)。結果として、2011年に、International Botanical Congressは、「1つの真菌」=「1つの名称」を指定するという結果を記述した、International Code of Nomenclature for Algae,Fungi,and Plants(Melbourne Code)(2012)を承認する決議を採択した(Hawksworth,D.L.Managing and coping with names of pleomorphic fungi in a period of transition.IMA Fungus 3,15-24(2012))。
【0105】
「内部転写スペーサー」(ITS)という用語は、染色体中の小サブユニットリボソームRNA(rRNA)遺伝子と大サブユニット(LSU)rRNA遺伝子との間に位置するスペーサーDNA(非コードDNA)、又はポリシストロニックrRNA前駆体転写物中の対応する転写領域を指す。ITS遺伝子配列決定は、真菌の系統発生及び分類法を研究するための確立された方法である。いくつかの事例では、「大サブユニット」(「LSU」)配列が、真菌を識別するために使用される。LSU遺伝子配列決定は、真菌の系統発生及び分類法を研究するための確立された方法である。本発明のいくつかの真菌微生物は、ITS配列によって記述され得、いくつかは、LSU配列によって記述され得る。両方とも、分類法を決定するために等しく記述的かつ正確であると理解される。
【0106】
「微生物共同体(microbial consortia又はmicrobial consortium)という用語は、共通の機能を実行するものとして記述され得るか、又は認識可能なパラメータ若しくは植物の表現型形質に関与する、又はそれにつながる、若しくはそれと相関するものとして記述され得る、個々の微生物種又は種の株の微生物群衆を指す。群衆は、微生物の1つ以上の種又は種の株を含み得る。いくつかの事例では、微生物は、共生的に群衆内で共存する。
【0107】
「微生物群集」という用語は、2つ以上の種又は株を含む微生物の群を意味する。微生物共同体とは異なり、微生物群衆は、共通機能を実行する必要はないか、又は認識可能なパラメータ若しくは植物の表現型形質に関与する、又はそれにつながる、若しくはそれと相関する必要はない。
【0108】
「加速微生物選択」又は「AMS」という用語は、「指向性微生物選択」又は「DMS」という用語と同義的に使用され、本開示のいくつかの実施形態では、主張された微生物種又は当該種の共同体を誘導するために利用された、反復選択方法論を指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「単離する」、「単離された」、「単離された微生物」、及び同様の用語は、特定の環境(例えば、土壌、水、植物組織)において、1つ以上の微生物が、それが付随する物質のうちの少なくとも1つから分離されていることを意味することを意図している。
【0110】
したがって、「単離された微生物」は、その自然発生環境には存在しない。むしろ、本明細書に記載される様々な技法を通して、微生物はその自然環境から取り出され、非自然発生存在状態に置かれている。したがって、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又は農業用担体に付随した状態で胞子(若しくは株の他の形態)として存在し得る。
【0111】
本開示のある特定の態様では、単離された微生物は、単離された生物学的に純粋な培養物として存在する。特定の微生物の単離された生物学的に純粋な培養物は、当該培養物が(理にかなった科学的範囲内で)他の生命体を実質的に含まず、問題になっている個々の微生物のみを含有することを示すことが、当業者によって理解されるであろう。培養物は、様々な濃度の当該微生物を含有することができる。本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物が、しばしば「低純度又は不純物質とは必然的に異なる」ことを記述する。例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、In re Bergstrom,427 F.2d 1394,(CCPA 1970)(精製プロスタグランジンについて論じている)、また、In re Bergy,596 F.2d 952(CCPA 1979)(精製微生物について論じている)、また、Parke-Davis & Co.v.H.K.Mulford & Co.,189 F.95(S.D.N.Y.1911)(Learned Handが精製アドレナリンについて論じている)、部分的に肯定され、部分的に覆されている、196 F.496(2d Cir.1912)を参照されたい。更に、いくつかの態様では、本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物培養物内で見出されなければならない、濃度又は純度制限のある特定の定量的尺度を提供する。これらの純度値の存在は、ある特定の実施形態では、本開示の微生物を自然な状態で存在するそれらの微生物と区別する、更なる属性である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Merck & Co.v.Olin Mathieson Chemical Corp.,253 F.2d 156(4th Cir.1958)(微生物によって産生されるビタミンB12に対する純度制限について論じている)を参照されたい。
【0112】
本明細書で使用される場合、「個々の分離株」は、1つ以上の他の微生物からの分離後に、微生物の単一の属、種、又は株の優勢を含む、組成物又は培養物を意味すると解釈されるべきである。本語句は、微生物が単離又は精製されている程度を示すと解釈されるべきではない。しかしながら、「個々の分離株」は、微生物の実質的に1つだけの属、種、又は株を含むことができる。
【0113】
微生物に関して、「改変された」という用語は、微生物が発見された自然状態と比較して何らかの方法で変化したことを意味する。この文脈では、「改変された」は「操作された」と同義であり、改変の作成に人の手が関与したことを示す。いくつかの事例では、改変は、例えば、そのゲノムにおける、微生物内のポリヌクレオチドの変化を含む。改変には、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、挿入、置換、及び/又は化学的改変が含まれてもよく、微生物の表現型の変化(例えば、特定の経路の上方制御、特定の経路の下方制御、遺伝子若しくはタンパク質機能のノックアウト)、及び/又は微生物が関係付けられる又は関係付けられるようになる別の異種生物の表現型の変化をもたらし得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「成長培地」という用語は、植物の成長を支援するために好適である任意の培地である。一例として、培地は、土壌、園芸用混合物、樹皮、バーミキュライト、水耕溶液単独及び固体植物支持システムに適用される水耕溶液、並びに組織培養ゲルを含むが、これらに限定されない、天然又は人工のものであり得る。培地は、単独で、又は1つ以上の他の媒体と組み合わせて使用され得ることが理解されるべきである。これはまた、外因性栄養素並びに根及び葉のための物理的支持システムの追加の有無別に使用され得る。
【0115】
一実施形態では、成長培地は、土壌、砂、泥、粘土、腐植、表土、岩石、又は水などの自然発生培地である。別の実施形態では、成長培地は、人工である。そのような人工成長培地は、自然発生培地の条件を模倣するように構築され得る。しかしながら、これは必要ではない。人工成長培地は、砂、鉱物、ガラス、岩石、水、金属、塩、栄養素、水を含む、任意の数及び組み合わせの材料のうちの1つ以上から作製されることができる。一実施形態では、成長培地は、無菌である。別の実施形態では、成長培地は、無菌ではない。
【0116】
培地は、追加の化合物又は成分、例えば、植物及び相互との具体的な微生物群の相互作用及び/又は選択を支援し得る成分で、改良又は強化され得る。例えば、抗生物質(ペニシリンなど)又は滅菌剤(例えば、四級アンモニウム塩及び酸化剤)が存在し得、及び/又は物理的条件(塩分、植物栄養素(例えば、有機及び無機鉱物(リン塩、窒素塩、アンモニア、カリウム、並びにコバルト及びマグネシウムなどの微量要素など)、pH、並びに/若しくは温度)が改良され得る。
【0117】
「植物」という用語は、概して、植物全体、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、種子、及びその子孫を含む。植物細胞としては、限定されるものではないが、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉、及び小胞子由来の細胞が挙げられる。本明細書で使用される場合、「植物要素」という用語は、植物細胞、植物プロトプラスト、植物が再生され得る植物細胞組織培養物、植物カルス、植物集塊、並びに胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、穀粒、穂、穂軸、外皮、茎、根、根端、葯、及び同等物などの植物又は植物の部位において無傷である植物細胞、並びに植物自体を指す。再生植物の子孫、バリアント、及び変異体も、本発明の範囲内に含まれるが、但し、これらの部位が導入されたポリヌクレオチドを含むことを条件とする。
【0118】
「植物要素」は、分化及び/又は未分化組織、例えば、限定されるものではないが、植物組織、部位、及び細胞型を含み得る、植物全体又は植物成分のいずれかを参照することを意図している。一実施形態では、植物要素は、以下:植物全体、苗、分裂組織、基本組織、維管束組織、皮膚組織、種子、葉、根、シュート、茎、花、果実、走根、球根、塊茎、球茎、ケイキ、シュート、芽、腫瘍組織、並びに様々な形態の細胞及び培養物(例えば、単一細胞、プロトプラスト、胚、カルス組織)のうちの1つである。「植物器官」という用語は、植物の形態学的及び機能的に明確に異なる部分を構成する植物組織又は組織群を指す。本明細書で使用される場合、「植物部位」は、植物の「一部」と同義であり、植物の任意の部位を指し、明確に異なる組織及び/又は器官を含むことができ、全体を通して「組織」という用語と同義的に使用され得る。
【0119】
同様に、「植物繁殖要素」は、一般的に、植物の有性又は無性繁殖のいずれかを介して他の植物を開始することができるその植物の任意の部位、例えば、限定されるものではないが、種子、苗、根、シュート、挿し木、接ぎ穂、移植片、走根、球根、塊茎、球茎、ケイキ、又は芽を参照することを意図している。植物要素は、植物中、又は植物器官、組織培養物、若しくは細胞培養物中にあり得る。
【0120】
「子孫」は、有性又は無性繁殖を介して産出される、生物の任意の後続の世代を含む。
【0121】
「穀物」は、種の成長又は繁殖以外の目的のために、商業的栽培者によって生産される成熟種子を意味することを意図している。
【0122】
「単子葉植物の」又は「単子葉植物」という用語は、その種子が典型的には1つだけの胚葉又は子葉を含む、「単子葉類」としても知られている被子植物のサブクラスを指す。本用語は、植物全体、植物要素、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、植物細胞、及びその子孫への言及を含む。
【0123】
「双子葉植物の」又は「双子葉植物」という用語は、その種子が典型的には2つの胚葉又は子葉を含む、「双子葉類」としても知られている被子植物のサブクラスを指す。本用語は、植物全体、植物要素、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、植物細胞、及びその子孫への言及を含む。
【0124】
本明細書で使用される場合、「栽培品種」という用語は、園芸又は農学的技法によって生産されており、通常は野生の集団で見られない、植物の種類、株、又は品種を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「改善」は、対照植物と比較して、又は問題となっている特性に関連する既知の平均数量と比較して、植物の特性の改善を包含すると広義に解釈されるべきである。例えば、本開示の有益な微生物又は共同体の適用に関連する植物バイオマスの「改善」は、本明細書に教示される微生物によって処理された植物のバイオマスを、処理されていない対照植物のバイオマスと比較することによって、実証され得る。代替的に、当業者に既知の科学又は農業刊行物に表されるように、本明細書に教示される微生物によって処理された植物のバイオマスを、所与の植物によって通常達成される平均バイオマスと比較し得る。本開示では、「改善」は、データが統計的に有意であること(例えば、p<0.05)を必ずしも要求するわけではない。むしろ、ある値(例えば、平均処理値)が別の値(例えば、平均対照値)とは異なることを実証する任意の定量化可能な差は、「改善」のレベルまで上昇し得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、「阻害及び抑制すること」並びに同様の用語は、完全な阻害又は抑制を必要とすると解釈されるべきではないが、これは、いくつかの実施形態では所望され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「遺伝子型」という用語は、個々の細胞、細胞培養物、組織、生物(例えば、植物)、又は生物群の遺伝子構造を指す。
【0128】
本明細書の組成物及び方法は、改善された「農学的形質」又は「農学的に重要な特性」若しくは「農学的関心の形質」を植物に提供し得、これには、本明細書の方法又は組成物に由来する改変を含まない同質遺伝子系統植物と比較して、耐病性、耐干ばつ性、耐熱性、耐寒性、耐塩性、金属耐性、除草剤耐性、水使用効率の改善、窒素利用の改善、窒素固定の改善、病虫害耐性、草食動物耐性、病原体耐性、生産高の改善、健康増進、活力の改善、成長の改善、光合成能力の改善、栄養増進、タンパク質含有量の改変、油含有量の改変、バイオマスの増加、シュートの長さの増加、根の長さの増加、根の構造の改善、代謝産物の調節、プロテオームの調節、種子重量の増加、種子炭水化物組成の改変、種子油組成の改変、種子タンパク質組成の改変、種子栄養素組成の改変が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0129】
「農学的形質潜在性」は、その生活環中のある時点で、表現型、好ましくは改善された農学的形質を示すか、又は当該表現型を、同じ植物でそれが関係付けられる別の植物要素に伝達するための植物要素の能力を意味することを意図している。
【0130】
本明細書で使用される場合、「分子マーカー」、「マーカー」、又は「遺伝子マーカー」という用語は、核酸配列の特性の差を可視化するための方法で使用される指標を指す。そのような指標の例としては、制限断片長多型(RFLP)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、単一ヌクレオチド多型(SNP)、挿入変異、マイクロサテライトマーカー(SSR)、配列特性化増幅領域(SCAR)、切断増幅多型配列(CAPS)マーカー、若しくはアイソザイムマーカー、又は具体的な遺伝子及び染色体位置を定義する、本明細書に記載されるマーカーの組み合わせが挙げられる。対立遺伝子の近傍の分子マーカーのマッピングは、分子生物学的手法に熟達している平均的な人によって実施され得る手順である。
【0131】
本明細書で使用される場合、「形質」という用語は、特性又は表現型を指す。例えば、本開示のいくつかの実施形態との関連で、作物の生産高は、植物(例えば、果実、繊維、穀物)によって生産される市場性のあるバイオマスの量に関する。望ましい形質はまた、水使用効率、栄養素使用効率、生産、機械的収穫可能性、果実成熟、保存可能期間、耐害虫/病性、早期植物成熟、ストレス耐性などを含むが、これらに限定されない、他の植物特性を含み得る。形質は、優性若しくは劣性様式で、又は部分的若しくは不完全な様式で遺伝し得る。形質は、単一遺伝子(すなわち、単一の遺伝子座によって決定される)又は多遺伝子(すなわち、1つを超える遺伝子座によって決定される)であり得るか、又は環境との1つ以上の遺伝子の相互作用から生じ得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、「表現型」という用語は、個体の遺伝子構成(すなわち、遺伝子型)と環境との間の相互作用から生じる、個々の細胞、細胞培養物、生物(例えば、植物)、又は生物群の観察可能な特性を指す。
【0133】
本明細書で使用される場合、「合成ヌクレオチド配列」又は「合成ポリヌクレオチド配列」は、自然界で生じることが知られていないか、又は自然に存在しないヌクレオチド配列である。概して、そのような合成ヌクレオチド配列は、任意の他の自然発生ヌクレオチド配列と比較すると、少なくとも1つのヌクレオチド差を含むであろう。
【0134】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体である、任意の長さのヌクレオチドの多量体型を指す。この用語は、分子の一次構造を指し、したがって、二本鎖及び一本鎖DNA、並びに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。これはまた、メチル化及び/又はキャップされた核酸、修飾塩基を含む核酸、骨格修飾、及び同等物などの修飾核酸も含む。「核酸」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、同義的に使用される。
【0135】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、生物学的機能と関連するDNAの任意のセグメントを指す。したがって、遺伝子は、コード配列及び/又はそれらの発現のために必要とされる調節配列を含むが、これらに限定されない。遺伝子はまた、例えば、他のタンパク質のための認識配列を形成する、非発現DNAセグメントを含むことができる。遺伝子は、目的の供給源からのクローニング、又は既知若しくは予測配列情報からの合成を含む、様々な供給源から取得することができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含み得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、「相同」若しくは「相同体」、「ホモログ」、又は「オルソログ」という用語は、当該技術分野で既知であり、共通の祖先又は家族メンバーを共有し、配列同一性の程度に基づいて決定される関連配列を指す。「相同性」、「相同」、「実質的に類似する」、「実質的に対応する」という用語は、本明細書では同義的に使用される。それらは、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が、遺伝子発現を媒介するか、又はある特定の表現型をもたらす核酸断片の能力に影響を及ぼさない、核酸断片を指す。これらの用語はまた、初期未改変断片に対して結果として生じる核酸断片の機能的特性を実質的に変化させない、1つ以上のヌクレオチドの欠失又は挿入などの本開示の核酸断片の改変を指す。したがって、当業者が理解するように、本開示は具体的な例示的配列よりも多くを包含すると理解される。これらの用語は、1つの種、亜種、種類、栽培品種、又は株で見出される遺伝子と、別の種、亜種、種類、栽培品種、又は株内の対応する又は同等の遺伝子との間の関係を説明する。本開示の目的のために、相同配列が比較される。「相同配列」又は「相同体」若しくは「オルソログ」は、機能的に関連すると考えられているか、みられているか、又は知られている。機能的関係は、(a)配列同一性の程度、及び/又は(b)同一若しくは類似の生物学的機能を含むが、これらに限定されない、いくつかの方法のうちのいずれか1つで示され得る。好ましくは、(a)及び(b)の両方が示される。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.718,Table 7.71で論じられているものなどの当該技術分野で容易に利用可能なソフトウェアプログラムを使用して、決定され得る。いくつかのアラインメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd,Oxford,U.K.)、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)、及びAlignX(Vector NTI,Invitrogen,Carlsbad,CA)である。別のアラインメントプログラムは、デフォルトのパラメータを使用するSequencher(Gene Codes、Ann Arbor、Michigan)である。
【0137】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド変化」という用語は、当該技術分野でよく理解されているように、例えば、ヌクレオチド置換、欠失、挿入、化学的改変、又は前述のうちのいずれかを指す。
【0138】
本明細書で使用される場合、「タンパク質改変」という用語は、例えば、当該技術分野でよく理解されているように、アミノ酸置換、アミノ酸改変、欠失、及び/又は挿入を指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、核酸又はポリペプチドの「少なくとも一部分」又は「断片」という用語は、そのような配列の最小サイズ特性、又は全長分子までを含む全長分子の任意のより大きな断片を意味する。本開示のポリヌクレオチドの断片は、遺伝子調節因子の生物学的に活性な部分をコードし得る。遺伝子調節要素の生物学的に活性な部分は、本明細書に記載されるように、遺伝子調節要素を含む本開示のポリヌクレオチドのうちの1つの一部を単離し、活性を評価することによって調製され得る。同様に、ポリペプチドの一部は、全長ポリペプチドまでに及ぶ、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸などであり得る。使用される部分の長さは、特定の用途に依存するであろう。ハイブリダイゼーションプローブとして有用な核酸の一部は、12個のヌクレオチドと同等の短さであり得る。いくつかの実施形態では、これは、20個のヌクレオチドである。エピトープとして有用なポリペプチドの一部は、4つのアミノ酸と同等の短さであり得る。全長ポリペプチドの機能を果たすポリペプチドの一部は、概して、4つのアミノ酸より長いであろう。
【0140】
本明細書で使用される場合の「プライマー」という用語は、増幅標的にアニールし、DNAポリメラーゼが付着することを可能にし、それによって、プライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼなどの重合剤のための作用物質の存在下に、かつ適切な温度及びpHに置かれると、DNA合成の開始点としての役割を果たすことが可能である、オリゴヌクレオチドを指す。(増幅)プライマーは、好ましくは、増幅における最大効率のために一本鎖である。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合のための作用物質の存在下で伸長産物の合成をプライミングするために十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは、プライマーの温度及び組成(A/T対G/C含有量)を含む、多くの要因に依存するであろう。一対の双方向性プライマーは、PCR増幅などのDNA増幅の技術分野で一般的に使用されている1つのフォワードプライマー及び1つのリバースプライマーからなる。
【0141】
「ストリンジェンシー」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、ハイブリッドの安定性、例えば、温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度、及び同等物に影響を及ぼすハイブリダイゼーション条件を指す。これらの条件は、特異的結合を最大限化し、プライマー又はプローブのその標的核酸配列への非特異的結合を最小限化するように経験的に最適化される。使用される用語は、プローブ又はプライマーが、他の配列よりも検出可能に大きい程度まで(例えば、バックグラウンドと比べて少なくとも2倍)、その標的配列にハイブリダイズする条件への言及を含む。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況では異なるであろう。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。概して、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度及びpHにおける具体的な配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、相補的標的配列の50%が完全に一致するプローブ又はプライマーにハイブリダイズする(定義されたイオン強度及びpH下での)温度である。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、約1.0M未満のNa+イオン、典型的には、pH7.0~8.3で約0.01~1.0MのNa+イオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ又はプライマー(例えば、10~50個のヌクレオチド)については少なくとも約30℃、長いプローブ又はプライマー(例えば、50個超のヌクレオチド)については少なくとも約60℃である、条件であろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成され得る。例示的な低ストリンジェント条件又は低減ストリンジェンシー条件には、30%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液との37℃でのハイブリダイゼーション、及び40℃の2×SSCでの洗浄が含まれる。例示的な高ストリンジェンシー条件には、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中の37℃でのハイブリダイゼーション、及び60℃の0.1×SSCでの洗浄が含まれる。ハイブリダイゼーション手順は当該技術分野で周知であり、例えば、Ausubel et al.,1998及びSambrook et al.,2001に記載されている。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件は、45℃での1mMのNa2EDTA、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%などの0.5~20%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する0.25MのNa2HPO4緩衝液(pH7.2)中のハイブリダイゼーション、続いて、55℃~65℃での0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウムを含有する5×SSC中の洗浄である。
【0142】
いくつかの実施形態では、細胞又は生物は、少なくとも1つの異種形質を有する。本明細書で使用される場合、「異種形質」という用語は、外因性分子又は他の生物(例えば、微生物)、DNAセグメント、異種ポリヌクレオチド又は異種核酸によって細胞又は生物に付与される表現型を指す。
【0143】
植物中の脂肪酸組成を改変すること、植物のアミノ酸含有量を変化させること、植物の病原体防御機構を変化させること、植物の経済的に重要な形質の生産高(例えば、穀物生産高、飼料生産高など)を増加させること、及び同等物を含むが、これらに限定されない、表現型の様々な変化が、本開示の関心である。これらの結果は、本開示の方法及び組成物を使用して、異種産物の発現又は植物における内因性産物の発現の増加を提供することによって達成され得る。
【0144】
「合成組み合わせ」という用語は、植物及び本開示の微生物との組み合わせを含むことができる。組み合わせは、例えば、農作植物などの植物の種子又は宿主植物組織(根、茎、葉など)の表面を本開示の微生物でコーティングすることによって達成され得る。更に、「合成組み合わせ」は、様々な株又は種の微生物の組み合わせを含むことができる。合成組み合わせは、組み合わせを自然界で生じる任意の組み合わせと区別する、少なくとも1つの変数を有する。その変数は、とりわけ、自然には生じない種子若しくは植物組織上の微生物、又は自然には生じない微生物及び植物の組み合わせ、又はともに自然には生じない微生物若しくは株の組み合わせの濃度であり得る。これらの事例の各々では、合成組み合わせは、人の手を実証し、組み合わせの個々の要素が単独で考慮されるときに存在しない構造的及び/又は機能的属性を保有する。
【0145】
いくつかの実施形態では、微生物は、種子又は植物に対して「内因性」であり得る。本明細書で使用される場合、微生物が、それが調達される植物標本に由来する場合、微生物は、植物又は種子に対して「内因性」とみなされる。すなわち、微生物が、当該植物に付随した状態で自然に見出される場合である。内因性微生物が植物に適用される実施形態では、内因性微生物は、自然界で植物上で見出されるレベルとは異なる量で適用される。したがって、所与の植物に対して内因性である微生物は、微生物が自然には生じないレベルで当該植物上に存在する場合、依然として植物との合成組み合わせを形成することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、組成物(微生物など)は、別の組成物(種子又は植物など)に対して「異種」(「外因性」とも称される)であり得、いくつかの態様では、本明細書では「異種組成物」と称される。本明細書で使用される場合、微生物が、それが調達される植物標本から誘導されない場合、微生物は、植物又は種子に対して「異種」とみなされる。すなわち、微生物が、当該植物に付随した状態で自然に見出されない場合である。例えば、通常、トウモロコシ植物の葉組織に付随する微生物は、当該微生物を自然に欠く別のトウモロコシ植物の葉組織に対して外因性とみなされる。別の実施例では、通常、トウモロコシ植物に付随する微生物は、当該微生物を自然に欠く小麦植物に対して外因性とみなされる。
【0147】
処理の適用の前に自然界では見出されない様式で、例えば、その植物の種類では、植物発育のその段階では、その植物組織では、その存在量では、又はその成長環境(例えば、干ばつ)では自然界で見出されない組み合わせで、処理が植物要素、苗、植物、植物成長培地、又は製剤の上又は中に存在するように、植物要素、苗、植物の上若しくは中に、又は植物成長培地の上若しくは中に、又は処理製剤の上若しくは中に、機械的に若しくは手動で適用された、人工的に接種された、関係付けられた、又は配置されたときに、組成物は、「異種配置される」。いくつかの実施形態では、そのような様式は、微生物の存在、異なる数の細胞、濃度、又は量における微生物の存在、異なる植物要素、組織、細胞型、又は植物内若しくは上の他の物理的位置における微生物の存在、異なる期間、例えば、植物又は植物要素の発育相、時刻、季節における微生物の存在、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが企図される。いくつかの実施形態では、「異種配置される」とは、微生物が、微生物が自然に見出されるものとは異なる植物要素の組織又は細胞型に適用されることを意味する。いくつかの実施形態では、「異種配置される」とは、微生物が自然には関係付けられていない(しかし他の段階には関係付けられ得る)、植物要素、苗、又は植物のある発育段階に、当該微生物が適用されることを意味する。例えば、微生物が、通常、植物の開花段階で見出され、他の段階では見出されない場合、苗段階で適用された微生物は、異種配置されるとみなされ得る。いくつかの実施形態では、微生物は、異種配置され、微生物は、通常、植物要素の葉組織ではなく根組織で見出され、微生物は、葉に適用される。別の非限定的実施例では、微生物が、葉組織の葉肉層で自然に見出されるが、上皮層に適用されている場合、微生物は、異種配置されるとみなされるであろう。いくつかの実施形態では、「異種配置される」とは、天然の植物要素、苗、又は植物が、その同じ植物要素、苗、又は植物に検出可能なレベルの微生物を含まないことを意味する。いくつかの実施形態では、「異種配置される」とは、適用されている微生物が、植物要素、苗、又は植物で自然に見出される濃度、数、又は量を超える、当該植物要素、苗、又は植物の濃度、数、量であることを意味する。例えば、微生物は、当該微生物の配置前に存在していた濃度よりも少なくとも1.5倍高い、1.5~2倍高い、2倍高い、2~3倍高い、3倍高い、3~5倍高い、5倍高い、5~7倍高い、7倍高い、7~10倍高い、10倍高い濃度、又は10倍多くの数、量、若しくは濃度でさえも存在するときに異種配置される。別の非限定的実施例では、ヒノキ科の木の組織で自然に見出される微生物は、トウモロコシ、小麦、綿、大豆植物の組織に対して異種とみなされるであろう。別の実施例では、トウモロコシ、春小麦、綿、大豆植物の葉組織で自然に見出される微生物は、当該微生物を自然に欠くか、又は異なる数量で微生物を含む、別のトウモロコシ、春小麦、綿、大豆植物の葉組織に対して異種とみなされる。
【0148】
微生物はまた、所与の植物組織上に「異種配置」され得る。これは、微生物が、それが自然では見出されない植物組織上に置かれることを意味する。例えば、所与の微生物が、所与の植物の根の上でのみ自然に生じる場合、その微生物は、植物の地上組織に外因的に適用され得、それによって、当該植物組織上に「異種配置される」であろう。したがって、微生物は、自然に存在する微生物を有していないか、又は適用されている数に存在する微生物を自然に有していないときに、異種配置されるとみなされる。
【0149】
本明細書の組成物及び方法は、宿主植物に「調節された」「農学的形質」又は「農学的に重要な形質」を提供し得、これには、限定されるものではないが、以下:当該種子処理製剤なしの同質遺伝子系統植物と比較した、油含有量の改変、タンパク質含有量の改変、種子炭水化物組成の改変、種子油組成の改変、及び種子タンパク質組成の改変、薬剤耐性、耐寒性、老化の遅延、耐病性、耐干ばつ性、穂重、成長の改善、健康増進、耐熱性、除草剤耐性、草食動物耐性、窒素固定の改善、窒素利用の改善、根の構造の改善、水使用効率の改善、バイオマスの増加、根の長さの増加、種子重量の増加、シュートの長さの増加、生産高の増加、水が制限された条件下での生産高の増加、穀粒質量、穀粒含水量、金属耐性、穂の数、穂当たりの穀粒の数、さやの数、栄養増進、病原体耐性、病虫害耐性、光合成能力の改善、耐塩性、緑化、活力の改善、成熟種子の乾燥重量の増加、成熟種子の新鮮重量の増加、植物当たりの成熟種子の数の増加、クロロフィル含有量の増加、植物当たりのさやの数の増加、植物当たりのさやの長さの増加、植物当たりのしおれた葉の数の低減、植物当たりのひどくしおれた葉の数の低減、及び植物当たりのしおれていない葉の数の増加、代謝産物のレベルの検出可能な調節、転写物のレベルの検出可能な調節、並びにプロテオームの検出可能な調節が含まれ得る。「調節された」という用語によって、微生物、滲出液、ブロス、代謝産物などの存在によって変化する、農学的形質の変化を指すことが意図される。態様では、調節は、有益な形質の付与を提供する。
【0150】
微生物(microbe)及び微生物(microorganism)
本明細書で使用される場合、「微生物」という用語は、広義に解釈されるべきである。これには、原核細菌及び古細菌、並びに真核菌及び原生生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0151】
特定の実施形態では、微生物は、内生菌、又は着生菌、又は植物の根圏若しくは根鞘に生息する微生物である。すなわち、微生物は、植物の根に接着した土壌物質中、又は植物の根に直接隣接する領域中に存在して見出され得る。
【0152】
一実施形態では、微生物は、内生菌である。内生菌は、病原性生物が宿主植物にコロニー形成することを防止することによって、宿主植物に利益をもたらし得る。内生菌による植物組織の広範なコロニー形成は、局所内生菌が病原性生物を打ち負かし、病原性生物が根付くことを防止する、「障壁効果」を生じる。内生菌はまた、病原性生物を含む競合物の成長を阻害する化学物質も産生し得る。
【0153】
ある特定の実施形態では、微生物は、培養不可能である。これは、微生物が培養可能であることが知られていないか、又は当業者に既知の方法を使用して培養することが困難であることを意味すると解釈されるべきである。
【0154】
本開示の微生物は、任意の供給源から収集若しくは取得されるか、又は任意の供給源から収集された材料内に含有される及び/又はそれに付随し得る。
【0155】
一実施形態では、微生物又は微生物の組み合わせは、植物に起こり得る又は予測される利益を提供し得る。例えば、微生物は、窒素固定を改善し、土壌有機物からリン酸塩を放出し、無機形態のリン酸塩(例えば、リン鉱石)からリン酸塩を放出し、根の微小球内に「炭素を固定し」、植物の根圏に生存し、それによって、植物が周囲の土壌から栄養素を吸収することを支援し、次いで、これらを植物により容易に提供し、植物の根の上の結節の数を増加させ、それによって、植物当たりの共生窒素固定細菌(例えば、リゾビウム属(Rhizobium)の種)の数及び植物によって固定される窒素の量を増加させ、植物が病原性微生物の侵入及び拡散に抵抗することに役立つISR(誘発性全身抵抗性)又はSAR(全身獲得抵抗性)などの植物防御応答を引き起こし、拮抗作用、又は栄養素若しくは空間などの資源の競合的利用によって、植物の成長又は健康に有害な微生物と競合し、植物の1つ以上の部位の色を変化させるか、又は植物の化学的プロファイル、その匂い、味、若しくは1つ以上の他の品質を変化させると予測され得る。
【0156】
本開示の微生物は、実質的に純粋な培養物又は混合培養物中で単離され得る。それらは、濃縮されるか、希釈されるか、又は原料中で見出される天然濃度で提供され得る。例えば、塩分のある堆積物からの微生物は、淡水中に堆積物を懸濁させ、堆積物を底部に落下させることによって、本開示で使用するために単離され得る。微生物の大部分を含む水は、好適な沈降期間にデカンテーションによって除去され、植物成長培地に直接適用されるか、又は濾過若しくは遠心分離により濃縮されるかのいずれかであり、適切な濃度に希釈され、塩の大部分が除去された植物成長培地に適用され得る。更なる例として、鉱化又は毒性源からの微生物は、同様に処理され、植物成長材料への適用のために微生物を回収し、植物への損傷の可能性を最小限化し得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、微生物の混合集団が、本開示の方法で使用される。
【0158】
微生物のゲノム改変
いくつかの実施形態では、微生物は、非マメ科作物の改善された目的の形質、例えば、窒素固定の改善を提供するために何らかの方法でそのゲノムが改変されている可能性がある。
【0159】
細胞内のポリヌクレオチドの改変のための様々な方法が当該技術分野で既知である(ゲノム、染色体、及びプラスミドDNAを含む、細胞内に含まれる任意のポリヌクレオチド配列を含むが、これに限定されない)。簡潔に述べると、一本鎖切断又は二本鎖切断が標的ポリヌクレオチド(改変の対象)に導入され、その結果は、実践者の願望に従って、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、又は前述のものの任意の組み合わせであり得る。
【0160】
一本鎖切断又は二本鎖切断(SSB又はDSB)は、化学物質若しくは放射線の利用、相同組換えプロセスの結果、特異的若しくは非特異的ヌクレアーゼの導入、又は前述のものの任意の組み合わせを含む、いくつかの方法のうちのいずれかによって達成され得る。
【0161】
ポリヌクレオチド切断をもたらす酵素は、当該技術分野で既知であり、制限エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、ジンクフィンガー、又はCasエンドヌクレアーゼを含み得る(が、これらに限定されない)。
【0162】
いくつかの態様では、本開示は、同じ微生物種又は株の遺伝子改変されていないバリアントと比較して、改善された窒素固定活性を有する単離された遺伝子改変された微生物に関する。
【0163】
グルタミン(Gln)は、全ての自由生活性のジアゾ栄養生物における普遍的な窒素シグナルである(例えば、Wang et al.,PLOS Genetics,2018を参照されたい)。クレブシエラ属(Klebsiella)及びシュードモナス属(Pseudomonas)などのグラム陰性細菌は、十分に解明された窒素経路を有し、ゲノム改変株のより簡単でより予測可能な遺伝子送達及び発現を有する。グラム陰性生物であるクレブシエラ属では、NifLは、nifオペロンの陰性調節因子である。細胞内グルタミンが高い(窒素過剰である)場合、NifLはリプレッサー複合体を形成して、nifオペロン発現を不活化する。グラム陰性生物であるアゾスピリルムでは、NifAは、nifオペロンの転写を活性化する。nifAの発現は、ntrCのntrBリン酸化を介してグルタミンによって調節される。ニトロナーゼは、転写後に不活化される。
【0164】
対照的に、本明細書に記載されるパエニバシラス属などのグラム陽性細菌は、形質転換がより困難であり、かつあまり研究されていない窒素固定経路を有する。
【0165】
したがって、パエニバシラス属のようなグラム陽性細菌に対するより高い窒素固定能力をもたらす細胞改変の成功は、驚くべきものであるのみならず、農業バイオテクノロジーにおいて非常に必要である。パエニバシラス属の胞子形成能力のため、作物植物の窒素固定を改善する遺伝子編集されたパエニバシラス属株を含む生成物の商業的可能性が高まっている。
【0166】
グラム陽性細菌では、nifオペロンがGlnRを介して窒素固定経路を制御する。GlnRの部位Iへの結合がNif発現を活性化する一方で、GlnRの部位IIへの結合は、Nif発現を抑制する。したがって、パエニバシラス属における窒素固定を改善するための遺伝子標的は、Nifアクチベーター/リプレッサーGlnR及びその結合部位である。
【0167】
パエニバシラス属内では、異なるオペロン組成を各々含む、2つの異なる下位群である下位群I及び下位群IIが存在する。パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)などの下位群Iのパエニバシラス属は、nifB、nifH、nifD、nifK nifE、nifN、nifZ、hesA、nifVをこの順序で含む。パエニバシラス・グラミニス(Paenibacillus graminis)などの下位群IIのパエニバシラス属は、nifB、nifH、nifD、nifK、nifE、nifV、nifZ、orf1、hesA、nifVをこの順序で含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、パエニバシラス属微生物は、微生物による窒素固定活性に関与する酵素をコードするnif遺伝子に対する遺伝子改変を有する。他の実施形態では、単離された微生物は、局所アンモニア濃度の感知及びnif遺伝子の発現の制御に関与するタンパク質GlnRをコードする遺伝子であるglnRに対する遺伝子改変を有する。ある特定の実施形態では、単離された微生物は、nif遺伝子及びglnR遺伝子の両方に対する遺伝子改変を有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、本開示は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変、及び内因性nif遺伝子の上流(5’)調節領域又はGlnR結合領域に対する遺伝子改変から選択される1つ以上の遺伝子改変を含む単離された遺伝子改変された微生物に関し、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRタンパク質バリアントを産生する変異glnR遺伝子を提供することを特徴とし、5’調節領域配に対する遺伝子改変は、遺伝子改変されていない5’調節領域配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とし、1つ以上の遺伝子改変は、遺伝子改変されていない微生物株と比較して改善された窒素固定活性を微生物に提供することを特徴とする。
【0170】
いくつかの実施形態では、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRタンパク質バリアントを産生する変異glnR遺伝子を提供することを特徴とする。いくつかの実施形態では、glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、転写及び翻訳され得る変異遺伝子を産生して、GlnRタンパク質の改変バージョンを産生する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された微生物は、glnR遺伝子をノックアウトする又は欠失させるように、又は別様にGlnRタンパク質の産生を防止するように改変されない。ある特定の実施形態では、GlnRバリアントタンパク質は、改変されていない内因性野生型GlnRタンパク質の1つ以上の機能を保持する。例えば、いくつかの実施形態では、バリアントタンパク質は、nif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列を認識して結合することができるままである。ある特定の実施形態では、GlnRバリアントタンパク質は、特にnif遺伝子の発現の活性化又は上方制御に関して、nif遺伝子の発現を調節することができるままである。
【0171】
本開示が、例えば、glnR遺伝子をノックアウトする又は欠失させることによって、GlnRタンパク質の産生を防止するために遺伝子改変された単離された微生物を除外する一方で、本開示は、glnR遺伝子が欠失されて組換えglnR遺伝子で置換される遺伝子改変された微生物を包含する。いくつかの実施形態では、組換えglnR遺伝子は、組換え遺伝子が組み込まれる微生物とは異なる微生物種又は微生物株に由来し得る。いくつかの実施形態では、組換えglnR遺伝子は、非天然遺伝子又は合成遺伝子とすることができる。いくつかの実施形態では、組換えglnR遺伝子は、例えば、より高い親和性でnifの5’調節領域内のGlnR認識要素に結合することによって、又はより高い親和性でnifの転写に必要な追加のタンパク質に複合体を形成することによって、nifの発現をより効率的に調節するGlnRタンパク質のバリアントをコードすることができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は切断を含み、これは、その遺伝子が、天然遺伝子又は内因性遺伝子によってコードされるタンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸残基を欠くGlnRタンパク質のバリアントをコードすることを意味する。当業者であれば、GlnRをコードする切断型変異遺伝子を産生するための遺伝子改変が当該技術分野で一般に知られている複数の分子生物学方法により達成することができることを理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、GlnRタンパク質をコードする切断型変異遺伝子は、天然glnR遺伝子の内因性終止コドンの上流の遺伝子内に終止コドンを挿入することによって調製することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、切断型変異glnR遺伝子は、内因性glnR遺伝子を遺伝子編集して、GlnRタンパク質の切断型バリアント中に排除されるアミノ酸をコードするDNA配列を欠失させることによって調製することができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、glnR遺伝子に対する切断改変は、GlnRタンパク質のC末端ドメインを含む内因性glnR遺伝子の一部分の欠失を含む切断を含む。ある特定の実施形態では、GlnRタンパク質のC末端ドメインの一部分の欠失は、C末端ドメインを特異的にコードするGlnRをコードする内因性遺伝子の一部分の欠失の結果である。ある特定の実施形態では、GlnRタンパク質のC末端ドメインの一部分の欠失は、C末端ドメインを特異的にコードするGlnRをコードする内因性遺伝子の一部分のすぐ上流の終止コドンの挿入の結果である。ある特定の実施形態では、単離された微生物中で改変されるGlnRをコードする内因性glnR遺伝子の一部分は、GlnRタンパク質の最後の約25個のC末端アミノ酸をコードする一部分を含む。
【0174】
理論に拘束されるものではないが、GlnRタンパク質のC末端ドメインは、例えば、タンパク質グルタミン合成酵素との複合体の形成による、局所アンモニア濃度の感知と関連している。局所アンモニア濃度が上昇した条件下で、GlnRは、グルタミン合成酵素に結合してそれと複合体を形成し、それが最終的にnif遺伝子の転写を抑制し、それにより、微生物の窒素固定活性を低下させる。したがって、GlnRタンパク質を切断してC末端ドメインを欠失させることにより、バリアントタンパク質は、グルタミン合成酵素と複合体を形成することができなくなり、これは、このバリアントが、nif遺伝子の発現を負に調節する能力の低下を有することを意味する。結果として、GlnRタンパク質のC末端切断バリアントを有する微生物は、微生物を取り囲む環境において局所アンモニア濃度が高い条件下であっても、nif遺伝子の発現を維持することができる。
【0175】
野生型GlnRタンパク質と比較して改善された内因性nif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列に対する結合親和性を有することを特徴とするGlnRバリアントタンパク質をコードする変異glnR遺伝子を産生する内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変も本開示によって企図される。いくつかの実施形態では、GlnRタンパク質のC末端ドメインをコードするglnR遺伝子の一部分の切断を含む変異glnR遺伝子は、野生型GlnRタンパク質と比較して改善された内因性nif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列に対する結合親和性を有するGlnRバリアントタンパク質を産生する。他の実施形態では、変異glnR遺伝子は、GlnRのDNA結合ドメインをコードするglnR遺伝子の一部分に対する変異を含み得る。これらの実施形態のある特定のものでは、GlnRのDNA結合ドメインをコードするglnR遺伝子の一部分に対する変異は、例えば、DNA結合ドメインとnif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列中のヌクレオチドとの相互作用に必要な特定のアミノ酸残基を改変することによって、改善された内因性nif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列に対する結合親和性を有するGlnRタンパク質バリアントをコードする変異glnR遺伝子を産生する。
【0176】
nifをコードする内因性遺伝子は、GlnRタンパク質が認識して結合することができる少なくとも2つの5’調節領域配列を含む。第1の5’調節領域配列は、遺伝子の5’調節領域内の転写開始部位の上流に位置する。理論に拘束されるものではないが、GlnRの第1の5’調節領域配列への結合は、nif遺伝子の活性化又は上方制御された発現と関連している。したがって、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とする第1の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、同じ種又は株の遺伝子改変されていない微生物と比較して増強又は上方制御されたnif遺伝子の発現を提供し、それにより、単離された微生物の窒素固定活性を改善する。第2の5’調節領域配列は、転写開始部位の下流に位置する。理論に拘束されるものではないが、GlnRの第2の5’調節領域配列への結合は、nif遺伝子の発現の抑制又は下方制御と関連している。
【0177】
いくつかの実施形態では、単離された微生物は、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、5’調節領域配列は、nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置する。
【0178】
いくつかの実施形態では、nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置する5’調節領域配列は、以下の配列を含み、
5’--X1-N-X2-X3-X4-A-X5-X6-X3-X3-A-N-X7-T-N-A-X8-X1-X5-3’[配列番号19]
式中、X1は各々独立して、A、G、及びTから選択され、X2は、C及びGから選択され、
X3は各々独立して、A及びTから選択され、X4は、C及びTから選択され、X5は各々、G及びTから選択され、X6は、A、C、及びGから選択され、X7は、A、C、及びTから選択され、X8は、A及びCから選択され、Nは各々、A、C、G、及びTから選択される。
【0179】
いくつかの実施形態では、nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置する5’調節領域配列は、以下のうちの少なくとも1つから選択される配列を含む:
5’--ACGATATATTACTTGACGT-3’[配列番号20]、5’--GTGATATCTTACCTAACGT-3’[配列番号21]、5’--AAGTTATGTAAGTTAACAT-3’[配列番号22]、5’--AGGTTATATAAACTAACAT-3’[配列番号23]、5’--ATCATATATTAGTTGAATG-3’[配列番号24]、5’--AAGTTAGCTAAGCTAACAT-3’[配列番号25]、5’--ACGATATATTACTTGACGT-3’[配列番号26]、5’--ACGATATATTACTTGACGT-3’[配列番号27]、5’--AGGTTATATAAACTAACAT-3’[配列番号28]、5’--AGGTTATATAAACTCACAT-3’[配列番号29]、5’--AGGTTATATAAACTAACAT-3’[配列番号30]、5’--AGGTTATATAAACTAACAT-3’[配列番号31]、5’--ATGTTATCTAATATTACAT-3’[配列番号32]、5’--TGGTCAGGAAAGTTAACAT-3’[配列番号33]、5’--AAGTTATATAAGTTAACAT-3’[配列番号34]。いくつかの実施形態では、nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置する5’調節領域配列は、配列5’-CGATATATTACTTGACG-3’[配列番号35]を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変も含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変も含み、第2の5’調節領域配列は、内因性nif遺伝子内の転写開始部位の下流に位置する。
【0181】
いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の天然の第2の5’調節領域配列は、GlnRタンパク質によって認識されて結合され得る。いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、GlnRによる内因性nif遺伝子の発現の負の調節又は抑制を減少させることを特徴とする。いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、天然の第2の5’調節領域配列と比較して減少したGlnRタンパク質に対する親和性を有する5’調節領域配列を生成する遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、GlnRタンパク質によって認識又は結合されることができない5’調節領域配列を生成する遺伝子改変を含む。例えば、ある特定の実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、内因性nif遺伝子から第2の5’調節領域配列を欠失させる又はノックアウトすることを含む。ある特定の他の実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列を、GlnRによって認識不能であることを特徴とするDNA配列で置換することを含む。GlnRによって認識不能であることを特徴とするDNA配列は、特に限定されず、GlnRタンパク質に対する親和性を有しないか、又は天然の第2の5’調節領域配列と比較して減少したGlnRタンパク質に対する親和性を有することを特徴とする任意の配列を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列は、以下の配列を含み、
5’--Y1-Y1-G-T-N-A-Y¬1-N-Y1-A-A-Y2-Y3-T-Y3-A-C-Y4-Y5¬-3’[配列番号36]
式中、Y1は各々独立して、A、G、及びTから選択され、Y2は、A、C、及びTから選択され、Y3は各々独立して、A及びTから選択され、Y4は、A及びGから選択され、Y5は、C及びTから選択され、Nは各々独立して、A、C、G、及びTから選択される。
【0183】
いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列は、以下のうちの少なくとも1つから選択される配列を含む:5’--ATGTAAGGGAATATAACGT-3’[配列番号37]、5’--ATGTAAGGTAATTTAACGT-3’[配列番号38]、5’--GTGTTATGAAATATAACAT-3’[配列番号39]、5’--GTGTTAACTAAAATTACAT-3’[配列番号40]、5’--AAGTGAGGAAACATAACGT-3’[配列番号41]、5’--GGGTCAGGAAACATAACAT-3’[配列番号42]、5’--ATGTAAGGTAATATAACGT-3’[配列番号43]、5’--GTGTAAGGAAATATAACGT-3’[配列番号44]、5’--GTGTTAACTAAAATTACAT-3’[配列番号45]、5’--GTGTTAACTAAAATTACAT-3’[配列番号46]、5’--GTGTTAGATAAAATTACAT-3’[配列番号47]、5’--GTGTTAACTAAAATTACAT-3’[配列番号48]、5’--TTGTTAGTAAATATAACAC-3’[配列番号49]、5’--TTGTTAGGAAACATAACAC-3’[配列番号50]、5’--ATGTTATGAAATATAACAT-3’[配列番号51]。いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列は、配列5’-TGTAAGGGAATATAACG-3’[配列番号37]を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される単離された遺伝子改変された微生物は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変の両方を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、5’調節領域配列の、5’調節領域配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列での置換を含む。当業者であれば、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列の置換は、当該技術分野で一般に知られている様々な分子生物学方法によって達成することができることを理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列が部位特異的変異誘発又は関連プロセスを介して置換されて、5’調節領域配列内の特定のヌクレオチドを変異させて、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列を生成する。他の実施形態では、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列が遺伝子編集法を介して置換されて、天然5’調節領域配列を切除し、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とする組換えDNA配列を挿入する。
【0186】
いくつかの実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に由来する。言い換えれば、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列を、その遺伝子内の代替部位に位置する内因性nif遺伝子由来の第2の5’調節領域配列で置換することができる。例えば、いくつかの実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列から誘導され、第2の5’調節領域配列は、内因性nif遺伝子内の転写開始部位の下流に位置する。ある特定の実施形態では、本開示の分離された遺伝子改変された微生物は、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、5’調節領域配列は、内因性nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置し、5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、5’調節領域配列の、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に由来するDNA配列での置換を含む。ある特定の実施形態では、本開示の分離された遺伝子改変された微生物は、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、5’調節領域配列は、内因性nif遺伝子の転写開始部位の上流に位置し、5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、5’調節領域配列の、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に由来するDNA配列での置換を含み、内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列は、内因性nif遺伝子内の転写開始部位の下流に位置する。
【0187】
他の実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、非天然DNA配列であり、これは、DNA配列が、GlnRの結合部位として内因性nif遺伝子内で天然に存在することが知られていないことを意味する。非天然DNA配列は、GlnRと特定のDNA配列との相互作用を試験するように設計された結合アッセイなどの当該技術分野で一般に知られている技法及び方法を使用して新規に設計することができる。例えば、蛍光偏光及び表面プラズモン共鳴を含むが、これらに限定されない技法に基づく結合アッセイを使用して、特定のDNA配列に対するGlnRの親和性を決定することができる。したがって、GlnR結合親和性に関して多数の可変DNA配列をスクリーニングすることができ、最も高い親和性を示す配列が内因性nif遺伝子の5’調節領域に組み込まれて、GlnRによるnif遺伝子の調節された調節を提供することができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、GlnRと天然5’調節領域配列との複合体の解離定数よりも約2倍~約25倍低い解離定数又はKdで、GlnRによって認識されて結合される。他の実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、GlnRと天然5’調節領域配列との複合体の解離定数よりも約1.1倍~約25倍低い解離定数又はKdで、GlnRによって認識されて結合される。いくつかの実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、GlnRと天然5’調節領域配列との複合体の解離定数よりも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約21倍、約22倍、約23倍、約24倍、又は約25倍低い解離定数で、GlnRによって認識されて結合される。ある特定の実施形態では、改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列は、GlnRと天然5’調節領域配列との複合体の解離定数よりも約17倍低い解離定数で、GlnRによって認識されて結合される。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単離された遺伝子改変された微生物は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRのC末端ドメインをコードする遺伝子の一部分の切断を含み、nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の上流にある5’調節領域配列を、天然5’調節領域配列と比較してより高い結合親和性でGlnRによって認識されて結合されるDNA配列で置換することを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される分離された遺伝子改変された微生物は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRのC末端ドメインをコードする遺伝子の一部分の切断を含み、nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の下流にある5’調節領域配列をノックアウトする又は欠失させることを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される分離された遺伝子改変された微生物は、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変は、GlnRのC末端ドメインをコードする遺伝子の一部分の切断を含み、nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の上流にある5’調節領域配列を、天然5’調節領域配列と比較してより高い結合親和性でGlnRによって認識されて結合されるDNA配列で置換することを含み、nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の下流にある5’調節領域配列をノックアウトする又は欠失させることも含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される分離された遺伝子改変された微生物は、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含み、記nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の上流にある5’調節領域配列を、天然5’調節領域配列と比較してより高い結合親和性でGlnRによって認識されて結合されるDNA配列と置換することを含み、nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変は、転写開始部位の下流にある5’調節領域配列をノックアウトする又は欠失させることも含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された遺伝子改変された微生物は、nif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の単離された遺伝子改変された微生物は、局所窒素又はアンモニア濃度にかかわらず、nif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。例えば、ある特定の実施形態では、単離された遺伝子改変された微生物は、窒素制限条件下でnif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、単離された遺伝子改変された微生物は、窒素豊富条件下でnif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、単離された遺伝子改変された微生物は、窒素制限条件下又は窒素豊富条件下でnif遺伝子の構成的発現を有することを特徴とする。
【0194】
微生物が内因性nif及び/又はglnR遺伝子を欠いており、かつ微生物が外因性nif及び/又はglnR遺伝子を組み込むように遺伝子編集されている単離された遺伝子改変された微生物も本開示に包含される。単離された微生物に組み込まれた外因性nif及び/又はglnR遺伝子は、本明細書に記載されるnif及び/又はglnR遺伝子に対する遺伝子改変のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、微生物に組み込まれた外因性glnR遺伝子は、タンパク質のC末端ドメインの切断を含むGlnRバリアントタンパク質をコードすることができる、及び/又は増強された親和性でnif遺伝子内の認識要素又は5’調節領域配列に結合することができることを特徴とする。単離された微生物に組み込まれた外因性nif遺伝子は、増強又は減弱された親和性でGlnRによって認識されて結合され得る1つ以上の認識要素又は5’調節領域配列を含むことができる。外因性nif及び/又はglnR遺伝子に加えて、窒素固定能力を改善することが当該技術分野で一般に知られているアクセサリー遺伝子も、内因性nif及び/又はglnR遺伝子を欠く微生物に組み込むことができる。これらのアクセサリー遺伝子の更なる組み込みは、微生物の窒素固定能力を、外因性nif遺伝子及びglnR遺伝子のみの組み込みよりも大幅に改善することができる。
【0195】
内因性cueR遺伝子に対する遺伝子改変も本開示によって企図される。CueRは、GlnRと同様に、ヘリックス-ターン-ヘリックス転写調節因子のファミリー(MerファミリーHTH調節因子)に属する。CueRとGlnRは同じpfamドメインを有する。
【0196】
いくつかの実施形態では、単離された遺伝子改変された微生物は、グラム陽性細菌種又は株であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、単離された遺伝子改変された微生物は、芽胞形成グラム陽性細菌種又は株であることを特徴とする。
【0197】
微生物共同体
態様では、本開示は、少なくともいずれか2つの微生物の組み合わせを含む微生物共同体を提供し、そのうちの1つは、表1a、表1b、又は表1cに記載されるパエニバシラス属株である。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、配列番号1~52のうちのいずれか1つ又はそれ以上と少なくとも90%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、ポリミキサ、トリチシ、アルビダス、アナエリカヌス、アゾチフィゲンス、ボレアリス、ドングハエンシス、エヒメンシス、グラミニス、ジルンリイ、オドリファー、パナシソリ、ホエニシス、ポチェオネンシス、リゾプラナエ、シラゲ、タオフアシャネンセ、サーモフィルス、チファエ、及びウィニイからなる群から選択される種である。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群Iのものである。いくつかの実施形態では、パエニバシラス属株は、下位群IIのものである。
【0198】
ある特定の実施形態では、本開示の共同体は、2匹の微生物、又は3匹の微生物、又は4匹の微生物、又は5匹の微生物、又は6匹の微生物、又は7匹の微生物、又は8匹の微生物、又は9匹の微生物、又は10匹の微生物、又は10匹より多くの微生物を含む。共同体の当該微生物は、異なる微生物種、又は微生物種の異なる株である。
【0199】
微生物産生組成物
いくつかの事例では、本開示の微生物は、1つ以上の化合物を産生し得る、及び/又は1つ以上の活性、例えば、代謝産物の産生、オーキシンなどの植物ホルモンの産生、アセトインの産生、抗微生物化合物の産生、シデロフォアの産生、ポリケチドの産生、フェナジンの産生、セルラーゼの産生、ペクチナーゼの産生、キチナーゼの産生、グルカナーゼの産生、キシラナーゼ若しくはプロテアーゼ若しくは有機酸若しくはリポペプチド若しくはポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの産生、窒素固定、リン酸塩鉱物可溶化、又は前述のものの任意の組み合わせ及び/若しくは複数のうちの1つ以上を有し得る。
【0200】
例えば、本開示の微生物は、オーキシン、サイトキニン、ジベレリン、エチレン、ブラシノステロイド、及びアブシシン酸からなる群から選択される植物ホルモンを産生し得る。
【0201】
したがって、本開示の微生物「によって産生される代謝産物」は、微生物によって産生される任意の分子(小分子、ビタミン、ミネラル、タンパク質、核酸、脂質、脂肪、炭水化物など)を捕捉することを意図している。しばしば、本開示の微生物が所与の植物種に有益な形質を付与する、正確な作用機序は知られていない。いくつかの事例では、微生物は、植物に有益である代謝産物を産生していると仮定される。したがって、いくつかの態様では、微生物の無細胞又は不活化調製物は、調製物が当該微生物によって産生され、かつ植物に有益である代謝産物を含む限り、微生物が所与の植物種に有益な形質を付与するために生きている必要がないため、植物に有益である。
【0202】
一実施形態では、本開示の微生物は、オーキシン(例えば、インドール-3-酢酸(IAA))を産生し得る。オーキシンの産生をアッセイすることができる。本明細書に記載される微生物の多くは、培養下で成長させたときに、植物ホルモンであるオーキシンインドール-3-酢酸(IAA)を産生することが可能であり得る。オーキシンは、根の成長の程度を含む、植物の生理機能を改変することおいて重要な役割を果たす。
【0203】
したがって、一実施形態では、本開示の微生物は、所与の植物種の表面上又は組織内に配置された集団として存在する。微生物は、本開示の微生物又は無細胞若しくは不活性調製物で処理されていない参照植物と比較すると、植物上又は植物内に見出される組成物の量の検出可能な増加を引き起こすために有効な量で、代謝産物などの組成物を産生し得る。当該微生物集団によって産生される組成物は、植物種に有益であり得る。
【0204】
そのような微生物生産組成物は、微生物が成長させられる細胞培養ブロス若しくは培地中に存在し得るか、又は微生物によって産生される滲出液を包含し得る。本明細書で使用される場合、「滲出液」は、1つ以上の微生物細胞によって排出されるか、又はそこから抽出される、1つ以上の組成物を指す。本明細書で使用される場合、「ブロス」は、微生物細胞が培地中に置かれた後の細胞培養培地の集合組成物を指す。ブロスの組成は、微生物の成長及び/又は発育の異なる段階の間に経時的に変化し得る。ブロス及び/又は滲出液は、それらが関係付けられるようになる植物の形質を改善し得る。
【0205】
植物における微生物誘発型形質
本開示は、微生物を利用して、有益な特性(又は有益な形質)を目的の農学種などの望ましい植物種に付与する。本開示では、「有益な特性」、「有益な形質」、又は「目的の形質」という用語は、同義的に使用され、望ましい目的の植物の表現型又は遺伝的特性が、本明細書に記載される微生物又は微生物共同体の適用によって調節されることを示す。前述のように、いくつかの態様では、所与の微生物によって産生される代謝産物が、有益な形質を調節するか、又は所与の植物に付与することに最終的に関与することは、十分にあり得る。
【0206】
本開示の微生物の適用によって調節され得る、膨大な数の有益な形質がある。例えば、微生物は、植物種に1つ以上の有益な特性、例えば、成長の増加、生産高の増加、窒素利用効率の向上、ストレス耐性の増加、耐干ばつ性の増加、光合成速度の増加、水使用効率の増進、病原体耐性の増加、必ずしも植物の生産高に影響を及ぼさず、むしろ植物の機能性に対処し、植物に目的の代謝産物の産生を増加させる、植物構造に対する改変などを植物種に付与する能力を有し得る。
【0207】
態様では、本明細書に教示される微生物は、穀物、果実、及び花の生産高の改善、植物部位の成長の改善、栄養素(例えば、窒素、リン酸塩、及び同等物)を利用する能力の改善、疾患に対する耐性の改善、真菌、昆虫、及び/又は線虫に対する耐性の改善を含むバイオ殺虫効果、極端な気候における生存可能性の改善、並びに他の所望の植物の表現型特性の改善を含む、広範囲の農業用途を提供する。
【0208】
いくつかの態様では、参照植物に対して、油含有量の改変、タンパク質含有量の改変、種子炭水化物組成の改変、種子油組成の改変、種子タンパク質組成の改変、薬剤耐性、耐寒性、老化の遅延、耐病性、耐干ばつ性、穂重、成長の改善、健康増進、耐熱性、除草剤耐性、草食動物耐性、窒素固定の改善、窒素利用の改善、栄養素利用の改善(例えば、リン酸塩、カリウム、及び同等物)、根の構造の改善、水使用効率の改善、バイオマスの増加、根の長さの増加、種子重量の増加、シュートの長さの増加、生産高の増加、水が制限された条件下での生産高の増加、穀粒質量、穀粒含水量、金属耐性、穂の数、穂当たりの穀粒の数、さやの数、栄養増進、病原体耐性、(例えば、病原体生存を損なう代謝産物の排出を介した)病原体レベルの低減、病虫害耐性、光合成能力の改善、耐塩性、緑化、活力の改善、成熟種子の乾燥重量の増加、成熟種子の新鮮重量の増加、植物当たりの成熟種子の数の増加、クロロフィル含有量の増加、植物当たりのさやの数の増加、植物当たりのさやの長さの増加、植物当たりのしおれた葉の数の低減、植物当たりのひどくしおれた葉の数の低減、及び植物当たりのしおれていない葉の数の増加、代謝産物のレベルの検出可能な調節、転写物のレベルの検出可能な調節、並びにプロテオームの検出可能な調節などの植物特性を調節又は改変するために、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物を植物に適用することができる。
【0209】
いくつかの態様では、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物は、特定の植物特性をマイナス様式で調節するために、植物に適用され得る。例えば、いくつかの態様では、本開示の微生物は、この機能性がいくつかの用途で望ましくあり得るため、目的の表現型形質を減少させることができる。例えば、本開示の微生物は、根の成長を減少させるか、又は根の長さを減少させる能力を保有し得る。又は、植物形質のこれらの調節がある特定の用途で望ましくあり得るため、微生物は、シュートの成長を減少させるか、又は植物が成長する速度を減少させる能力を保有し得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物は、植物に線虫ストレスに対する耐性を付与するために、植物に適用され得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物は、植物に生物刺激(生物刺激効果)を提供するために、植物に適用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の単離された微生物、共同体、及び/又は農業用組成物は、植物に耐病性を提供するために、植物に適用され得る。
【0212】
農業用組成物
いくつかの実施形態では、本開示の微生物は、農業用組成物と組み合わせられる。農業用組成物は、概して、微生物及び/又は植物要素の栽培を促進する組成物を含み得る有機化合物及び無機化合物、植物要素への適用のための微生物の製剤化に関与する組成物(例えば、限定されるものではないが、湿潤剤、相溶化剤(「相溶性剤」とも称される)、消泡剤、洗浄剤、隔離剤、ドリフト低減剤、中和剤及び緩衝剤、腐食防止剤、染料、付臭剤、拡散剤(「散布剤」とも称される)、浸透補助剤(浸透剤とも称される)、粘着剤(「固着剤」又は「結合剤」とも称される)、分散剤、増粘剤(「濃厚剤」とも称される)、安定剤、乳化剤、凝固点降下剤、抗微生物剤、並びに同等物)、保護を植物要素又は植物に付与することに関与する組成物(例えば、限定されるものではないが、殺虫剤、殺線虫剤、殺真菌剤、殺菌剤、除草剤、及び同等物)、並びに特定の用途に関心が示され得る他の組成物を指す。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、固体である。固体組成物が使用される場合、活性単離微生物又は共同体とともに1つ以上の担体材料を含むことが望ましくあり得る。いくつかの実施形態では、本開示は、シリカ、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、アタクレイ(attaclay)、石灰岩、チョーク、黄土、粘土、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕合成材料などの鉱物土類、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、チオ尿素及び尿素などの肥料、食事用の穀草類、食事用の樹皮、食事用の木材、食事用の堅果の殻などの野菜由来の製品、セルロース粉末、アタパルジャット、モンモリロナイト、雲母、バーミキュライト、合成シリカ及び合成ケイ酸カルシウム、又はこれらの組成物を含むが、これらに限定されない、担体の使用を教示する。
【0214】
成長組成物
いくつかの実施形態では、成長及び発達を促進する組成物が、微生物及び/又は植物要素に提供される。例示的な組成物には、液体(ブロス、培地など)及び/又は固体(土壌、栄養素など)が含まれる。様々な有機化合物又は無機化合物が、単独で、又は植物要素、例えば、限定されるものではないが、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、炭水化物、単糖、脂質と組み合わせて、微生物の健康を促進するために成長組成物に添加され得る。
【0215】
製剤組成物
1つ以上の組成物が、微生物又は微生物から生産された組成物に加えて、様々な用途、安定性、活性、及び/又は保存の理由のために組み合わせられ得る。追加の組成物は、「製剤成分」と称され得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される農業用組成物は、液体、固体、ガス、又はゲルとして製剤化され得る。
【0217】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される農業用組成物が、モノエタノールアミン塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、二リン酸アンモニウム水素、一リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、又はカルバミン酸アンモニウムなどの化合物又は塩を含み得ることを教示する。
【0218】
いくつかの実施形態では、本開示は、農業用組成物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体及びポリ酢酸ビニル、又はこれらの組成物などの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、タルク若しくはポリエチレングリコール、又はこれらの組成物などの潤滑剤、シリコーンエマルション、長鎖アルコール、リン酸エステル、アセチレンジオール、脂肪酸若しくは有機フルオリン化合物などの消泡剤、並びにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、トリニトリロ三酢酸の塩若しくはポリリン酸の塩、又はこれらの組成物などの複合体化剤を含み得ることを教示する。
【0219】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、表面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、表面活性剤は、液体農業用組成物に添加される。他の実施形態では、表面活性剤は、固体製剤、特に、適用前に担体で希釈されるように設計されたものに添加される。したがって、いくつかの実施形態では、農業用組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、標的上の微生物の生物学的性能を改善するために、単独で、又は噴霧タンク混合物へのアジュバントとしての鉱油若しくは植物油などの他の添加剤とともに、使用されることもある。生物増進に使用される界面活性剤の種類は、概して、微生物の性質及び作用機序に依存する。表面活性剤は、性質がアニオン性、カチオン性、又は非イオン性であり得、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として、又は他の目的のために採用され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、アルキエトキシレート、直鎖脂肪族アルコールエトキシレート、及び脂肪族アミンエトキシレートなどの非イオン性物質である。製剤の技術分野で従来的に使用され、本製剤でも使用され得る界面活性剤は、McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual,MC Publishing Corp.,Ridgewood,N.J.,1998,and in Encyclopedia of Surfactants,Vol.I-III,Chemical Publishing Co.,New York,1980-81に記載されている。いくつかの実施形態では、本開示は、芳香族スルホン酸、例えば、リグノ、フェノール、ナフタレン、及びジブチルナフタレンスルホン酸、並びにアリールスルホン酸塩、アルキルエーテル、ラウリルエーテル、脂肪アルコール硫酸酸塩、及び脂肪アルコールグリコールエーテル硫酸塩の脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウム塩、スルホン化ナフタレン及びホルムアルデヒドを含むその誘導体の凝縮物、ナフタレン又はフェノール及びホルムアルデヒドを含むナフタレンスルホン酸の凝縮物、ホルムアルデヒドを含むフェノール又はフェノールスルホン酸のとの凝縮物、ホルムアルデヒド及び亜硫酸ナトリウムを含むフェノールの凝縮物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシ化イソオクチル-、オクチル-又はノニルフェノール、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、エトキシ化ヒマシ油、エトキシ化トリアリールフェノール、リン酸化トリアリールフェノールエトキシレートの塩、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン-亜硫酸塩廃液、若しくはメチルセルロース、又はこれらの組成物を含む、界面活性剤の使用を教示する。
【0220】
いくつかの実施形態では、本開示は、ラウリル硫酸ジエタノールアンモニウムなどのアルキル硫酸塩の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、ノニルフェノール-C18エトキシレートなどのアルキルフェノール-アルキレン酸化物付加生成物、トリデシルアルコール-C16エトキシレートなどのアルコール-アルキレン酸化物付加生成物、ステアリン酸ナトリウムなどの石鹸、ジブチル-ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレン-スルホン酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩のジアルキルエステル、オレイン酸ソルビトールなどのソルビトールエステル、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどの四級アミン、ステアリン酸ポリエチレングリコールなどの脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロック共重合体、モノ及びジアルキルリン酸エステルの塩、大豆油、菜種/キャノーラ油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ種油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、ヤシ油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、キリ油、及び同等物などの植物油、並びに上記の植物油のエステル、特に、メチルエステルを含む、他の好適な表面活性剤を教示する。
【0221】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、湿潤剤を含む。湿潤剤は、液体に添加されると、液体とそれが拡散している表面との間の界面張力を低減することによって、液体の拡散又は浸透力を増加させる物質である。湿潤剤は、農薬製剤における2つの主な機能のため、すなわち、加工及び製造中に、水中の粉末の湿潤速度を増加させて、可溶性液体又は懸濁液濃縮物のための濃縮物を作製するため、噴霧タンク又は他の容器内の水との製品の混合中に、湿潤性粉末の湿潤時間を削減し、かつ水分散性顆粒への水の浸透を改善するために、使用される。いくつかの実施形態では、湿性粉末、懸濁液濃縮物、及び水分散性顆粒製剤を含む、本開示の農業用組成物で使用される湿潤剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホハク酸ジオクチルナトリウム、アルキルフェノールエトキシレート、及び脂肪族アルコールエトキシレートである。
【0222】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、分散剤を含む。分散剤は、粒子の表面上に吸着し、粒子の分散状態を保持し、粒子が再凝集することを防止するのに役立つ物質である。いくつかの実施形態では、分散剤が、本開示の農業用組成物に添加され、製造中の分散及び懸濁を促進し、かつ粒子が噴霧タンク内の水に再分散することを確実にする。いくつかの実施形態では、分散剤は、湿潤性粉末、懸濁液濃縮物、及び水分散性顆粒で使用される。分散剤として使用される界面活性剤は、粒子表面に強く吸着し、粒子の再凝集に対する荷電又は立体障壁を提供する能力を有する。いくつかの実施形態では、最も一般的に使用されている界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、又は2つのタイプの混合物である。
【0223】
いくつかの実施形態では、湿潤性粉末製剤については、最も一般的な分散剤は、リグノスルホン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、懸濁液濃縮物は、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド凝縮物などのポリ電解質を使用して、非常に良好な吸着及び安定化を提供する。いくつかの実施形態では、トリスチリルフェノールエトキシレートリン酸エステルも使用される。いくつかの実施形態では、例えば、アルキルアリールエチレン酸化物濃縮物及びEO-POブロック共重合体などは、懸濁液濃縮物用の分散剤としてアニオン性物質と組み合わせられることもある。
【0224】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、ポリマー界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー界面活性剤は、非常に長い疎水性「骨格」及び多数のエチレンオキシド鎖を有し、「くし形」界面活性剤の「歯」を形成する。いくつかの実施形態では、疎水性骨格が粒子表面上に多くのアンカー点を有するため、これらの高分子量ポリマーは、懸濁液濃縮物に非常に良好な長期安定性を付与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物で使用される分散剤の例は、リグノスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド凝縮物、トリスチリルフェノールエトキシレートリン酸エステル、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルエトキシレート、EO-POブロック共重合体、及びグラフト共重合体を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、乳化剤を含む。乳化剤は、別の液相において1つの液相の液滴の懸濁液を安定させる物質である。乳化剤がないと、2つの液体は、2つの不混和性液相に分離するであろう。いくつかの実施形態では、最も一般的に使用されている乳化剤ブレンドは、12個以上のエチレンオキシド単位を有するアルキルフェノール又は脂肪族アルコール、及びドデシルベンゼンスルホン酸の油溶性カルシウム塩を含む。8~18の親水性・親油性バランス(HLB)値の範囲が、通常、良好な安定エマルションを提供するであろう。いくつかの実施形態では、エマルション安定性は、少量のEO-POブロック共重合体界面活性剤の添加によって改善され得ることもある。
【0226】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、可溶化剤を含む。可溶化剤は、臨界ミセル濃度を超える濃度で水中にミセルを形成するであろう、界面活性剤である。次いで、ミセルは、ミセルの疎水性部分の内側の非水溶性物質を溶解させるか、又は可溶化することができる。可溶化に通常使用される界面活性剤のタイプは、非イオン性物質:ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノオレエートエトキシレート、及びオレイン酸メチルエステルである。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、有機溶媒を含む。有機溶媒は、主に乳化性濃縮物の製剤、ULV製剤、及びより少ない程度で顆粒製剤に使用される。溶媒の混合物が使用されることもある。いくつかの実施形態では、本開示は、灯油又は精製パラフィンなどの脂肪族パラフィン油を含む溶媒の使用を教示する。他の実施形態では、本開示は、キシレンなどの芳香族溶媒、並びにC9及びC10芳香族溶媒の高分子量画分の使用を教示する。いくつかの実施形態では、塩素化炭化水素は、製剤が水中に乳化されるときに、殺虫剤の結晶化を防止するために共溶媒として有用である。アルコールは、溶解力を増加させるために共溶媒として使用されることもある。
【0228】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、ゲル化剤を含む。増粘剤又はゲル化剤は、液体のレオロジー又は流動特性を改変するために、かつ分散粒子又は液滴の分離及び沈降を防止するために、主に懸濁液濃縮物、エマルション、及びサスポエマルションの製剤に使用される。増粘剤、ゲル化剤、及び沈降防止剤は、概して、2つのカテゴリー、すなわち、非水溶性粒子及び水溶性ポリマーに分類される。粘土及びシリカを使用して懸濁液濃縮製剤を生産することが可能である。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、モンモリロナイト、例えば、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びアタパルジャイトを含むが、これらに限定されない、1つ以上の増粘剤を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、増粘剤としての多糖類の使用を教示する。最も一般的に使用されている多糖類のタイプは、種子及び海草の天然抽出物、又はセルロースの合成誘導体である。いくつかの実施形態は、キサンタンを利用し、いくつかの実施形態は、セルロースを利用する。いくつかの実施形態では、本開示は、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸塩、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含むが、これらに限定されない、増粘剤の使用を教示する。いくつかの実施形態では、本開示は、加工デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキシドなどの他のタイプの沈降防止剤の使用を教示する。別の良好な沈降防止剤は、キサンタンガムである。
【0229】
いくつかの実施形態では、界面張力を低下させる界面活性剤の存在は、生産における、及び噴霧タンクを通した適用における混合動作中に、水性製剤を発泡させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、発泡する傾向を低減するために、消泡剤が、生産段階の間又はボトル/噴霧タンク内への充填の前のいずれかで、しばしば添加される。概して、2つのタイプの消泡剤、すなわち、シリコーン及び非シリコーンがある。シリコーンが通常、ジメチルポリシロキサンの水性エマルションである一方で、非シリコーン消泡剤は、オクタノール及びノナノールなどの非水溶性油、又はシリカである。両方の場合に、消泡剤の機能は、界面活性剤を空気-水界面から変位させることである。
【0230】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、防腐剤を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、土壌灌注、葉面噴霧、浸漬処理、畝間処理、土壌改良、顆粒、広域播種処理、収穫後の疾患制御処理、又は種子処理として製剤化され得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、単独で、又は他の農産物との交代噴霧プログラムで適用され得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、タンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、他の農産物とのタンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、地上、空中、及び灌漑用途に使用される機器に適合し得る。
【0233】
いくつかの実施形態では、農業用組成物は、遺伝子改変された種子又は植物に適用され得る。
【0234】
保護組成物
更に、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、殺虫剤(pesticide)、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤(insecticide)、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、植物成長調節剤、殺鼠剤、防藻剤、生物制御剤、又は有益な薬剤などの農業空間で利用可能な既知の活性物質と組み合わせられ得る。更に、開示される方法に従って開発された微生物、微生物共同体、又は微生物群衆は、既知の肥料と組み合わせられ得る。そのような組み合わせは、相乗的特性を示し得る。更に、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、不活性成分と組み合わせられ得る。また、いくつかの態様では、開示される微生物は、生物活性剤と組み合わせられ得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、殺鼠剤、及び/又は防藻剤として機能するバイオ殺虫剤と組み合わせられ得る。そのようなバイオ殺虫剤は、マクロ生物(例えば、有益な線虫及び同等物)、微生物(例えば、Serenade、Bt、及び同等物)、植物抽出物(例えば、Timorex Gold及び同等物)、生化学物質(例えば、昆虫フェロモン及び同等物)、並びに/又は鉱物及び油(例えば、キャノーラ油)であり得るが、これらに限定されない。
【0236】
殺虫剤及びバイオ殺虫剤
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、教示される微生物と組み合わせて使用される、殺虫剤を含む。いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、教示される微生物と組み合わせて使用される、バイオ殺虫剤を含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、殺鼠剤、及び/又は防藻剤などの農業空間内の既知の殺虫剤と組み合わせられ得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、殺鼠剤、及び/又は防藻剤として機能するバイオ殺虫剤などの農業空間内の既知の殺虫剤と組み合わせられ得る。
【0239】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、以下の活性成分:マクロ生物(例えば、有益な線虫及び同等物)、微生物(例えば、Serenade、Bt、及び同等物)、植物抽出物(例えば、Timorex Gold及び同等物)、生化学物質(例えば、昆虫フェロモン及び同等物)、並びに/又は鉱物及び油(例えば、キャノーラ油)を含む、活性成分のうちの1つ以上を含む、農業用組成物を教示する。
【0240】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、又は微生物コミュニティは、アセトクロール、アラクロール、ブタクロール、ジメタクロール、ジメテナミド、フルフェナセト、メフェナセト、メタラクロール、メタザクロール、ナプロパミド、ナプロアニリド、ペトキサミド、プレチラクロール、プロパクロール、及びテニルクロールからなる群から選択されるアセトアミド、ビラナホス、グルホシネート、及びスルホサートからなる群から選択されるアミノ酸誘導体、クロジナフォプ、シハロフォプ-ブチル、フェノキサプロプ、フルアジフォプ、ハロキシフォプ、メタミフォプ、プロパキザフォプ、キザロフォプ、及びキザロフォプ-P-テフリルからなる群から選択されるアリールオキシフェノキシプロピオン酸塩、ジクワット及びパラコート、アスラム、ブチレート、カルベタミド、デスメジファム、ジメピレート、エプタム(EPTC)、エスプロカルブ、モリネート、オルベンカルブ、フェンメジファム、プロスルホカルブ、ピリブチカルブ、チオベンカルブ、及びトリアレートからなる群から選択される(チオ)カルバメート、ブトロキシジム、クレトジム、シクロキシジム、プロホキシジム、セトキシジム、テプラロキシジム、及びトラルコキシジムからなる群から選択されるシクロヘキサンジオン、ベンフルラリン、エトフルラリン、オリザリン、ペンジメタリン、プロジアミン、及びトリフルラリンからなる群から選択されるジニトロアニリン、アシフルオルフェン、アクロニフェン、ビフェノックス、ジクロフォプ、エトキシフェン、フォメサフェン、ラクトフェン、及びオキシフルオルフェンからなる群から選択されるジフェニルエーテル、ボモキシニル、ジクロベニル、及びイオキシニルからなる群から選択されるヒドロキシベンゾニトリル、イマザメタベンズ、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、及びイマゼタピルからなる群から選択されるイミダゾリノン、クロメプロップ、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4-DB、ジクロルプロップ、MCPA、MCPA-チオエチル、MCPB、及びメコプロップからなる群から選択されるフェノキシ酢酸、クロリダゾン、フルフェンピル-エチル、フルチアセト、ノルフルラゾン、及びピリデートからなる群から選択されるピラジン、アミノピラリド、クロピラリド、ジフルフェニカン、ジチオピル、フルリドン、フルロキシピル、ピクロラム、ピコリナフェン、及びチアゾピルからなる群から選択されるピリジン、アジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン-エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロン、フルピルスルフロン、フォラムスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メツルフロン-メチル、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメトロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン、トリトスルフロン、及び14(2-クロロ-6-プロピル-イミダゾール[1,2]-blピリダジン-3-イル)スルホニル)-3-(4,6-ジメトキシ-ピリミジン-2-イル)尿素からなる群から選択されるスルホニル尿素、アメトリエン、アトラジン、シアナジン、ジメタメトリン、エチオジン、ヘキサジノン、メタミトロン、メトリブジン、プロメトリン、シマジン、テルブチラジン、テルブトリン、及びトリアジフラムからなる群から選択されるトリアジン、クロロトルロン、ダイムロン、ジウロン、フルオメツロン、イソプロトロンツロン、リヌロン、メサベンチアズロン、及びテブチウロンからなる群から選択される尿素化合物、ビスピリバック-ナトリウム、クロランスラム-メチル、ジクロスラム、フロラスラム、フルカルバゾン、フルメトスラム、メトスラム、オルト-スルファムロン、ペノクスラム、プロポキシカルバゾン、ピリバムベンズ-プロピル、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリミノバック-メチル、ピリミスルファン、ピリチオバック、ピロキサスルホン、及びピロクスラムからなる群から選択されるアセト乳酸合成酵素阻害剤、並びにアミカルバゾン、アミノトリアゾール、アニロホス、ベフルブタミド、ベナゾリン、ベンカルバゾン、ベンフレセート、ベンゾフェナップ、ベンタゾン、ベンゾビシクロン、ブロマシル、ブロモブチド、ブタフェナシル、ブタミフォス、カフェンストロール、カルフェントラゾン、シニドン-エチル、クロルタール、シンメチリン、クロマゾン、クミルロン、シプロスルファミド、ジカンバ、ジフェンゾコート、ジフルフェンゾピル、Drechslera monoceras、エンドタール、エトフメセート、エトベンザニド、フェントラザミド、フルオロラック-ペンチル、フルミオキサジン、フルポキサム、フルオロクロリドン、フルタモン、インダノファン、イソキサベン、イソキサフルトール、レナシル、プロパニル、プロピザミド、キンクロラック、キンメラック、メソトリオン、メチルアルソン酸、ナプタラム、オキサジアルジル、オキサジアゾン、オキサジクロメフォン、ペントキサゾン、ピノキサデン、ピラクロニル、ピラフルフェン-エチル、ピラスルホトール、ピラゾキシフェン、ピラゾリネート、キノクラミン、サフルフェナシル、スルコトリオン、スルフェントラゾン、テルバシル、テフリルトリオン、テンボトリオン、チエンカルバゾン、トプラメゾン、4-ヒドロキシ-3-[2-(2-メトキシ-エトキシメチル)-6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-カルボニル]-ビシクロル[3.2.1]オクタ-3-エン-2-オン、(3-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(3-メチル-2,6-ジオキソ-4-トリフルオロメチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリミジン-1-イル)-フェノキシル]-ピリジン-2-イルオキシ)-酢酸エチルエステル、6-アミノ-5-クロロ-2-シクロプロピル-ピリミジン-4-カルボン酸メチルエステル、6-クロロ-3-(2-シクロプロピル-6-メチル-フェノキシ)-ピリダジン-4-オール、4-アミノ-3-クロロ-6-(4-クロロ-フェニル)-5-フルオロ-ピリジン-2-カルボン酸、4-アミノ-3-クロロ-6-(4-クロロ-2-フルオロ-3-メトキシ-フェニル)-ピリジン-2-カルボン酸メチルエステル、及び4-アミノ-3-クロロ-6-(4-クロロ-3-ジメチルアミノ-2-フルオロ-フェニル)-ピリジン-2-カルボン酸メチルエステルからなる群から選択される化合物、から選択される除草剤と組み合わせられ得る。
【0241】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群集は、アセフェート、アザメチホス、アジンホス-メチル、クロルピリホス、クロルピリホス-メチル、クロルフェンビンホス、ジアジノン、ジクロルボス、ジクロトホス、ジメトエート、ジスルホトン、エチオン、フェニトロチオン、フェンチオン、イソキサチオン、マラチオン、メタミドホス、メチダチオン、メチル-パラチオン、メビンホス、モノクロトホス、オキシデメトン-メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントエート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホレート、ホキシム、ピリミホス-メチル、プロフェノホス、プロチオホス、スルプロホス、テトラクロルビンホス、テルブフォス、トリアゾホス、及びトリクロルフォンからなる群から選択される有機(チオ)リン酸塩、アラニカルブ、アルジカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、メチオカルブ、メソミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロポキスル、チオジカルブ、及びトリアザメートからなる群から選択されるカルバメート、アレスリン、ビフェントリン、シフルトリン、シファロトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、ラムダ-シハロトリン、ペルメトリン、プラレスリン、ピレトリンI及びII、レスメトリン、シラフルオフェン、タウフルバリネート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、並びにジメフルトリンからなる群から選択されるピレスロイド、a)キチン合成阻害剤であって、当該キチン合成阻害剤が、クロルフルアズロン、シラマジン、ジフルベンズロン、フルシクロオキサロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ブプロフェジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾックス、エトキサゾール、及びクロフェンタジンからなる群から選択されるベンゾイル尿素である、キチン合成阻害剤、b)ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、及びアザジラクチンからなる群から選択されるエクジソンアンタゴニスト、c)ピリプロキシフェン、メトプレン、及びフェノキシカルブからなる群から選択される幼若ホルモン様物質、又はd)スピロジクロフェン、スピロメシフェン、及びスピロテトラマトからなる群から選択される脂質生合成阻害剤、からなる群から選択される昆虫成長調節剤、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、及び1-(2-クロロ-チアゾール-5-イルメチル)-2-ニトリミノ-3,5-ジメチル-[1,3,5]トリアジナンからなる群から選択されるニコチン性受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物、エンドスルファン、エチプロール、フィプロニル、バニリプロル、ピラフルプロル、ピリプロール、及び5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-メチル-フェニル)-4-スルフィナモイル-1H-ピラゾール-3-cアルボチオ酸アミドからなる群から選択されるGABAアンタゴニスト化合物、アバメクチン、エマメクチン、ミルベメクチン、レピメクチン、スピノサド、及びスパイントラムからなる群から選択される大環状ラクトン殺虫剤、フェナザキン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド、及びフルフェネリムからなる群から選択されるミトコンドリア電子輸送阻害剤(METI)Iダニ駆除剤、アセキノシル、フルアシプリム、及びヒドラメチルノンからなる群から選択されるMETI II及びIII化合物、クロルフェナピル、シヘキサチン、ジアフェンチウロン、フェンブタチン酸化物、及びプロパルギットからなる群から選択される酸化的リン酸化阻害剤、クリオマジン、ピペロニルブトキシド、インドキサカルブ及びメタフルミゾンからなる群から選択されるナトリウムチャネルブロッカー、並びにベンクロチアズ、ビフェナゼート、カルタップ、フロニカミド、ピリダリル、ピメトロジン、硫黄、チオシクラム、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、サイアジピル(HGW86)、シエノピラフェン、フルピラゾホス、シフルメトフェン、アミドフルメト、イミシアホス、ビストリフルロン、及びピリフルキナゾンからなる群から選択される化合物、からなる群から選択される殺虫剤と組み合わせられ得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、本発明は、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、殺鼠剤、及び/又は防藻剤などの農業空間内の既知の殺虫剤との本開示の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆の相乗的使用を教示する。
【0243】
いくつかの実施形態では、本発明は、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、殺鼠剤、及び/又は防藻剤として機能するバイオ殺虫剤などの農業空間内の既知の殺虫剤との本開示の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆の相乗的使用を教示する。
【0244】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が殺虫剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。他の実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が殺虫剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相乗効果が目撃される。
【0245】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体がバイオ殺虫剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。他の実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体がバイオ殺虫剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相乗効果が目撃される。
【0246】
教示される方法によって得られる相乗効果は、Colbyの式(すなわち、(E)=X+Y-(X*Y/100))に従って定量化され得る。参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Colby,R.S.,“Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations,”1967 Weeds,vol.15,pp.20-22を参照されたい。したがって、「相乗効果」によって、その存在により、相加量を超えて所望の効果を増加させる成分が意図される。
【0247】
本開示の単離された微生物及び共同体は、農学的に活性な殺虫剤化合物、また、農業用補助殺虫剤化合物の有効性を相乗的に増加させることができる。
【0248】
本開示の単離された微生物及び共同体は、農学的に活性なバイオ殺虫剤化合物、また、農業用補助バイオ殺虫剤化合物の有効性を相乗的に増加させることができる。
【0249】
植物成長調節因子及び生物刺激物質
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、教示される微生物と組み合わせて使用される植物成長調節因子及び/又は生物刺激物質を含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、オーキシン、ギベレリン、サイトカイニン、エチレン発生物質、成長阻害剤、及び成長遅延剤などの農業空間内の既知の植物成長調節因子と組み合わせられ得る。
【0251】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、以下の活性成分:とりわけ、アンシミドール、ブトラリン、アルコール、クロルメコートクロリド、サイトカイニン、ダミノジド、エテポホン、フルルプリミドール、ジベレリン酸、ジベレリン混合物、インドール-3-酪酸(IBA)、マレイン酸ヒドラジド、メフルジド、メピコートクロリド、メピコートペンタボレート、ナフタレン-酢酸(NAA)、1-ナフタレンアセテミド(NAD)、n-デカノール、プラクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム、トリネキサパック-エチル、ユニコナゾール、サリチル酸、アブシシン酸、エチレン、ブラシノステロイド、ジャスモネート、ポリアミン、一酸化窒素、ストリゴラクトン、又はカリキンを含む、活性成分のうちの1つ以上を含む、農業用組成物を教示する。
【0252】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、とりわけ、QUICKROOTS(登録商標)、VAULT(登録商標)、RHIZO-STICK(登録商標)、NODULATOR(登録商標)、DORMAL(登録商標)、SABREX(登録商標)などの農業空間内の既知の種子接種剤と組み合わせられ得る。いくつかの実施形態では、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)接種剤が、本明細書に開示される任意の単一の微生物又は微生物共同体と組み合わせて利用される。特定の態様では、前述の接種剤のうちの1つ、例えば、QUICKROOTS(登録商標)又はブラディリゾビウム属が、本明細書で教示される微生物又は微生物共同体と組み合わせられると、相乗効果が観察される。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示の農業用組成物は、銅、マンガン、及び亜鉛とともに、キネチン、ジベレリン酸、及びインドール酪酸を含有する、植物成長調節剤を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、本開示は、Abide(登録商標)、A-Rest(登録商標)、Butralin(登録商標)、Fair(登録商標)、Royaltac M(登録商標)、Sucker-Plucker(登録商標)、Off-Shoot(登録商標)、Contact-85(登録商標)、Citadel(登録商標)、Cycocel(登録商標)、E-Pro(登録商標)、Conklin(登録商標)、Culbac(登録商標)、Cytoplex(登録商標)、Early Harvest(登録商標)、Foli-Zyme(登録商標)、Goldengro(登録商標)、Happygro(登録商標)、Incite(登録商標)、Megagro(登録商標)、Ascend(登録商標)、Radiate(登録商標)、Stimulate(登録商標)、Suppress(登録商標)、Validate(登録商標)、X-Cyte(登録商標)、B-Nine(登録商標)、Compress(登録商標)、Dazide(登録商標)、Boll Buster(登録商標)、BollD(登録商標)、Cerone(登録商標)、Cotton Quik(登録商標)、Ethrel(登録商標)、Finish(登録商標)、Flash(登録商標)、Florel(登録商標)、Mature(登録商標)、MFX(登録商標)、Prep(登録商標)、Proxy(登録商標)、Quali-Pro(登録商標)、SA-50(登録商標)、Setup(登録商標)、Super Boll(登録商標)、Whiteout(登録商標)、Cutless(登録商標)、Legacy(登録商標)、Mastiff(登録商標)、Topflor(登録商標)、Ascend(登録商標)、Cytoplex(登録商標)、Ascend(登録商標)、Early Harvest(登録商標)、Falgro(登録商標)、Florgib(登録商標)、Foli-Zyme(登録商標)、GA3(登録商標)、GibGro(登録商標)、Green Sol(登録商標)、Incite(登録商標)、N-Large(登録商標)、PGR IV(登録商標)、Pro-Gibb(登録商標)、Release(登録商標)、Rouse(登録商標)、Ryzup(登録商標)、Stimulate(登録商標)、BVB(登録商標)、Chrysal(登録商標)、Fascination(登録商標)、Procone(登録商標)、Fair(登録商標)、Rite-Hite(登録商標)、Royal(登録商標)、Sucker Stuff(登録商標)、Embark(登録商標)、Sta-Lo(登録商標)、Pix(登録商標)、Pentia(登録商標)、DipN Grow(登録商標)、Goldengro(登録商標)、Hi-Yield(登録商標)、Rootone(登録商標)、Antac(登録商標)、FST-7(登録商標)、Royaltac(登録商標)、Bonzi(登録商標)、Cambistat(登録商標)、Cutdown(登録商標)、Downsize(登録商標)、Florazol(登録商標)、Paclo(登録商標)、Paczol(登録商標)、Piccolo(登録商標)、Profile(登録商標)、Shortstop(登録商標)、Trimmit(登録商標)、Turf Enhancer(登録商標)、Apogee(登録商標)、Armor Tech(登録商標)、Goldwing(登録商標)、Governor(登録商標)、Groom(登録商標)、Legacy(登録商標)、Primeraone(登録商標)、Primo(登録商標)、Provair(登録商標)、Solace(登録商標)、T-Nex(登録商標)、T-Pac(登録商標)、Concise(登録商標)、及びSumagic(登録商標)を含むが、これらに限定されない、1つ以上の市販の植物成長調節因子を含む、農業用組成物を教示する。
【0255】
いくつかの実施形態では、本発明は、植物成長調節因子及び/又は植物成長調節因子の産生若しくは破壊に影響を及ぼす植物ホルモン若しくは化学物質などの刺激物質との本開示の微生物又は微生物共同体の相乗的使用を教示する。
【0256】
いくつかの実施形態では、本発明は、植物ホルモンが、オーキシン(例えば、インドール酢酸IAA)、ジベレリン、サイトカイニン(例えば、キネチン)、アブシジン酸、エチレン(及びACCシンターゼによって調節され、ACCデアミナーゼによって破壊されるその産生)を含み得ることを教示している。
【0257】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、生物刺激物質と組み合わせられ得る。そのような生物刺激物質は、微生物、植物抽出物、植物抽出物、海藻、酸、バイオ炭、及び同等物であり得るが、これらに限定されない。
【0258】
いくつかの実施形態では、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆は、有機(例えば、堆肥、血液、魚類、及び同等物)、窒素系(例えば、硝酸塩、アンモニウム、尿素、及び同等物)、リン酸塩、及びカリウムであり得る、肥料と組み合わせられ得る。そのような肥料はまた、硫黄、鉄、亜鉛、及び同等物を含むが、これらに限定されない、微量要素を含有し得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、本発明は、フミン酸、フルビン酸、アミノ酸、ポリフェノール、及びタンパク質加水分解物などの本明細書に開示される微生物及び微生物共同体との相乗効果で作用し得る追加の植物成長促進化学物質を教示する。
【0260】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、任意の作物へのAscend(登録商標)と組み合わせた教示される微生物の適用を提供する。更に、本開示は、任意の方法又は適用率を利用した、任意の作物へのAscend(登録商標)と組み合わせた教示される微生物の適用を提供する。
【0261】
いくつかの実施形態では、本開示は、生物刺激物質を含む農業用組成物を教示する。
【0262】
本明細書で使用される場合、「生物刺激物質」という用語は、土壌又は他の植物成長培地に存在し得る微生物の成長を刺激するように作用する任意の物質を指す。
【0263】
土壌又は成長培地中の微生物のレベルは、植物の健康に直接相関する。微生物は、生分解性炭素源を常食とし、したがって、植物の健康は、土壌中の有機物の量とも相関する。肥料は、植物に栄養を供給し、成長させるが、いくつかの実施形態では、生物刺激物質が、生分解性炭素、例えば、糖蜜、炭水化物、例えば、糖を提供し、例えば、微生物に栄養を供給し、成長させる。別途明確に記述されない限り、生物刺激物質は、独立して作用するか、又は組み合わせて作用するかのいずれかである、成分のうちの1つ以上に起因して、微生物活動又は植物の成長及び発達を増進することが可能である、単一の成分、又はいくつかの異なる成分の組み合わせを含み得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、生物刺激物質は、非栄養植物成長応答を生じる化合物である。いくつかの実施形態では、生物刺激物質の多くの重要な利益は、ホルモン活性に影響を及ぼすそれらの能力に基づく。植物中のホルモン(植物ホルモン)は、通常の植物の発達並びに環境への応答を調節する化学伝達物質である。根及びシュートの成長、並びに他の成長応答は、植物ホルモンによって調節される。いくつかの実施形態では、生物刺激物質の化合物は、植物のホルモン状態を変化させ、その成長及び健康に対して大きな影響を及ぼすことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、生物刺激物質の一般的な成分としてコンブ、フミン酸、フルビン酸、及びBビタミンを教示する。いくつかの実施形態では、本開示の生物刺激物質は、抗酸化活性を増進し、植物の防御系を増加させる。いくつかの実施形態では、ビタミンC、ビタミンE、及びグリシンなどのアミノ酸は、生物刺激物質に含まれる抗酸化物質である。
【0265】
他の実施形態では、生物刺激物質は、土壌又は他の植物成長培地に存在する微生物の成長を刺激するように作用し得る。以前の研究は、具体的な有機種子抽出物(例えば、大豆)を含むある特定の生物刺激物質が微生物接種剤と組み合わせて使用されたときに、生物刺激物質は、微生物接種剤に含まれる微生物の成長を刺激することが可能であったことを示している。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、微生物接種剤とともに使用されると、天然微生物及び接種微生物の両方の集団を増進することが可能である、1つ以上の生物刺激物質を教示する。生物刺激物質のいくつかの好評な使用の精査については、Calvo et al.,2014,Plant Soil 383:3-41を参照されたい。
【0266】
植物要素、微生物、及び農業用組成物の組み合わせ
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、本明細書に記載されるゲノム編集パエニバシラス属株を含むいずれか1つ又は複数の微生物を含む、個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群集、又は前述のものの任意の組み合わせが、植物表現型の改善のために、任意選択的に任意の農業用組成物と組み合わせて、植物要素に適用され得ることを教示する。
【0267】
単離された微生物又は群衆若しくは共同体(概して、同義的に「微生物(microbes又はmicrobe)」は、異種植物要素に適用され、合成組み合わせを作成し得る。微生物は、自然界では通常植物要素に付随していないか、又は見出された場合、自然界で見出される量とは異なる量で適用される場合に、その植物要素に対して異種とみなされる。いくつかの実施形態では、微生物は植物のある部位で自然に見出されるが別の部位では見出され得ず、この植物の別の部分への微生物の導入は、異種性の関係付けとみなされる。
【0268】
単離されたか、又は植物若しくは植物要素と組み合わせたかのいずれかである、微生物は、上記のものなどの1つ以上の農業用組成物と更に関係付けられ得ることが更に企図される。
【0269】
微生物及び植物要素、微生物及び農業用組成物、並びに微生物及び植物要素及び農業用組成物の合成組み合わせが企図される(概して、自然界では典型的には見出されない成分を含む組成物である、「合成組成物」)。
【0270】
植物要素処理
いくつかの実施形態では、本開示はまた、本開示の微生物又は農業用組成物のうちの1つ以上の組み合わせとともに播種されるか、又は植え付けられる前に、植物要素を処理することが、所望の植物の形質、例えば、植物の成長、植物の健康、及び/又は害虫に対する植物の耐性を増進し得るという発見に関する。
【0271】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、植物要素処理としての微生物又は微生物共同体のうちの1つ以上の使用を教示する。植物要素処理は、未処理及び「裸の」植物要素に直接適用される植物要素コーティングであり得る。しかしながら、植物要素処理は、1つ以上の以前の植物要素コーティング又は植物要素処理ですでにコーティングされている植物要素に適用される、植物要素オーバーコートであり得る。以前の植物要素処理は、化学的又は生物学的のいずれかである、1つ以上の活性化合物と、1つ以上の不活性成分とを含み得る。
【0272】
「植物要素処理」という用語は、概して、土壌に植え付けられる時間の前又はその間の植物要素への物質の適用を指す。微生物及び本開示の他の農業用組成物を用いた植物要素処理は、植物要素の発芽及び植物要素の発生の直前に植物要素が植え付けられる地点に処理を送達するという利点を有する。
【0273】
他の実施形態では、本開示はまた、植物要素処理の使用が、植物の処理に成功するために必要とされる微生物又は農業用組成物の量を最小限化し、土壌上又は新たに発生した植物要素上に噴霧することなどの適用技法と比較して、微生物及び組成物との労働者の接触の量を更に制限することも教示する。
【0274】
更に、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される微生物が、植物生命の初期段階(例えば、植物要素の発生後の最初の30日以内)を増進するために重要であることを教示する。したがって、いくつかの実施形態では、植物要素処理としての本開示の微生物及び/又は組成物の送達は、その活性のための臨界時間において微生物を作用地点に置く。
【0275】
いくつかの実施形態では、本開示の微生物組成物は、植物要素処理として製剤化される。いくつかの実施形態では、植物要素は、正確に、安全に、かつ効率的に植物要素処理製品を植物要素に適用するように具体的に設計及び製造されている処理適用機器の使用を通して、混合、噴霧、又はそれらの組み合わせの従来の方法を使用して、本明細書に開示される微生物及び/又は農学的組成物の1つ以上の層で実質的に均一に被覆され得ることが企図される。そのような機器は、回転式コーター、ドラムコーター、流動床技法、噴流床、回転式ミスト、又はそれらの組み合わせなどの様々なタイプのコーティング技術を使用する。本開示のものなどの液体植物要素処理は、噴霧パターンを通して移動するにつれて、植物要素処理を植物要素上に均等に分配する、回転「アトマイザー」ディスク又は噴霧ノズルのいずれかを介して適用され得る。態様では、次いで、植物要素は、追加の期間にわたって混合又はタンブルされて、追加の処理分配及び乾燥を達成する。
【0276】
植物要素は、微生物組成物でコーティングする前にプライミング又はプライミング解除されて、発芽及び発生の均一性を増加させることができる。代替的な実施形態では、乾燥粉末製剤を、移動する植物要素上で計量し、完全に分配されるまで混合させることができる。
【0277】
いくつかの実施形態では、植物要素は、本開示による微生物学的組成物でコーティングされた表面積の少なくとも一部を有する。いくつかの実施形態では、微生物組成物を含む植物要素コートが、裸の植物要素に直接適用される。いくつかの実施形態では、微生物組成物を含む植物要素オーバーコートが、その上に適用された植物要素コートをすでに有している植物要素にて適用される。いくつかの態様では、植物要素は、本組成物が植物要素オーバーコートとしてその上に適用されるであろう、例えば、クロチアニジン及び/又はバシラス・フィルムス(Bacillus firmus)-I-1582を含む植物要素コートを有し得る。いくつかの態様では、教示される微生物組成物は、PONCHO(商標)VOTiVO(商標)ですでに処理されている植物要素に植物要素オーバーコートとして適用される。いくつかの態様では、植物要素は、本組成物が植物要素オーバーコートとしてその上に適用されるであろう、例えば、メタラキシル、及び/又はクロチアニジン、並びに/若しくはバシラス・フィルムス-I-1582を含む、植物要素コートを有し得る。いくつかの態様では、教示される微生物組成物は、ACCELERON(商標)ですでに処理されている植物要素に植物要素オーバーコートとして適用される。
【0278】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり約10^2~10^12、10^2~10^11、10^2~10^10、10^2~10^9、1^02~10^8、10^2~10^7、10^2~10^6、10^2~10^5、10^2~10^4、又は10^2~10^3の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0279】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり約10^3~10^12、10^3~10^11、10^3~10^10、10^3~10^9、10^3~10^8、10^3~10^7、10^3~10^6、10^3~10^5、又は10^3~10^4の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0280】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり約10^4~10^12、10^4~10^11、10^4~10^10、10^4~10^9、10^4~10^8、10^4~10^7、10^4~10^6、又は10^4~10^5の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0281】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり約10^5~10^12、10^5~10^11、10^5~10^10、10^5~10^9、10^5~10^8、10^5~10^7、又は10^5~10^6の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0282】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり約10^5~10^9の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0283】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素は、植物要素当たり少なくとも約1×10^3、又は1×10^4、又は1×10^5、又は1×10^6、又は1×10^7、又は1×10^8、又は1×10^9の微生物胞子濃度又は微生物細胞濃度を有する。
【0284】
いくつかの実施形態では、植物要素に適用される微生物及び/又は農業用組成物のうちの1つ以上の量は、最終製剤、並びに利用される植物又は植物要素のサイズ又はタイプに依存する。いくつかの実施形態では、微生物のうちの1つ以上は、製剤全体の約2%w/w~約80%w/wで存在する。いくつかの実施形態では、組成物に採用される微生物のうちの1つ以上は、製剤全体の重量で約5%w/w~約65%w/w又は10%w/w~約60%w/wである。
【0285】
いくつかの実施形態では、植物要素はまた、例えば、植物要素当たり約10^2、10^3、10^4、10^5、10^6、10^7、10^8、10^9、10^10、10^11、10^12、10^13、10^14、10^15、10^16、又は10^17の胞子又は細胞などの植物要素当たりより多くの胞子又は微生物細胞を有し得る。
【0286】
いくつかの実施形態では、本開示の植物要素コートは、最大10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μm、810μm、820μm、830μm、840μm、850μm、860μm、870μm、880μm、890μm、900μm、910μm、920μm、930μm、940μm、950μm、960μm、970μm、980μm、990μm、1000μm、1010μm、1020μm、1030μm、1040μm、1050μm、1060μm、1070μm、1080μm、1090μm、1100μm、1110μm、1120μm、1130μm、1140μm、1150μm、1160μm、1170μm、1180μm、1190μm、1200μm、1210μm、1220μm、1230μm、1240μm、1250μm、1260μm、1270μm、1280μm、1290μm、1300μm、1310μm、1320μm、1330μm、1340μm、1350μm、1360μm、1370μm、1380μm、1390μm、1400μm、1410μm、1420μm、1430μm、1440μm、1450μm、1460μm、1470μm、1480μm、1490μm、1500μm、1510μm、1520μm、1530μm、1540μm、1550μm、1560μm、1570μm、1580μm、1590μm、1600μm、1610μm、1620μm、1630μm、1640μm、1650μm、1660μm、1670μm、1680μm、1690μm、1700μm、1710μm、1720μm、1730μm、1740μm、1750μm、1760μm、1770μm、1780μm、1790μm、1800μm、1810μm、1820μm、1830μm、1840μm、1850μm、1860μm、1870μm、1880μm、1890μm、1900μm、1910μm、1920μm、1930μm、1940μm、1950μm、1960μm、1970μm、1980μm、1990μm、2000μm、2010μm、2020μm、2030μm、2040μm、2050μm、2060μm、2070μm、2080μm、2090μm、2100μm、2110μm、2120μm、2130μm、2140μm、2150μm、2160μm、2170μm、2180μm、2190μm、2200μm、2210μm、2220μm、2230μm、2240μm、2250μm、2260μm、2270μm、2280μm、2290μm、2300μm、2310μm、2320μm、2330μm、2340μm、2350μm、2360μm、2370μm、2380μm、2390μm、2400μm、2410μm、2420μm、2430μm、2440μm、2450μm、2460μm、2470μm、2480μm、2490μm、2500μm、2510μm、2520μm、2530μm、2540μm、2550μm、2560μm、2570μm、2580μm、2590μm、2600μm、2610μm、2620μm、2630μm、2640μm、2650μm、2660μm、2670μm、2680μm、2690μm、2700μm、2710μm、2720μm、2730μm、2740μm、2750μm、2760μm、2770μm、2780μm、2790μm、2800μm、2810μm、2820μm、2830μm、2840μm、2850μm、2860μm、2870μm、2880μm、2890μm、2900μm、2910μm、2920μm、2930μm、2940μm、2950μm、2960μm、2970μm、2980μm、2990μm、又は3000μmの厚さであり得る。
【0287】
いくつかの実施形態では、本開示の植物要素コートは、0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、又は5mmの厚さであり得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、本開示の植物要素コーティングは、コーティングされていない植物要素重量の少なくとも0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、20.5%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、24%、24.5%、25%、25.5%、26%、26.5%、27%、27.5%、28%、28.5%、29%、29.5%、30%、30.5%、31%、31.5%、32%、32.5%、33%、33.5%、34%、34.5%、35%、35.5%、36%、36.5%、37%、37.5%、38%、38.5%、39%、39.5%、40%、40.5%、41%、41.5%、42%、42.5%、43%、43.5%、44%、44.5%、45%、45.5%、46%、46.5%、47%、47.5%、48%、48.5%、49%、49.5%、又は50%であり得る。
【0289】
いくつかの実施形態では、微生物胞子及び/又は細胞は、植物要素上に自由にコーティングされ得るか、又は植物要素上にコーティングされる前に液体若しくは固体組成物中で製剤化され得る。例えば、固体担体が胞子又は細胞懸濁液で含浸されるまで、固体担体を胞子の懸濁液と混合することによって、微生物を含む固体組成物を調製することができる。次いで、この混合物を乾燥させて、所望の粒子を得ることができる。
【0290】
いくつかの他の実施形態では、本開示の固体又は液体微生物組成物は、機能的作用物質、例えば、活性炭、栄養素(肥料)、並びに生産物の発芽及び品質を改善することが可能な他の作用物質、又はそれらの組み合わせを更に含有することが企図される。
【0291】
当該技術分野で既知の植物要素コーティング方法及び組成物は、本開示の実施形態のうちの1つの追加によってそれらが改変されるときに特に有用であり得る。それらの適用のためのそのようなコーティング方法及び装置は、例えば、米国特許第5,916,029号、同第5,918,413号、同第5,554,445号、同第5,389,399号、同第4,759,945号、同第4,465,017号、及び米国特許出願第13/260,310号に開示されており、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0292】
植物要素コーティング組成物は、例えば、米国特許第5,939,356号、同第5,876,739号、同第5,849,320号、同第5,791,084号、同第5,661,103号、同第5,580,544号、同第5,328,942号、同第4,735,015号、同第4,634,587号、同第4,372,080号、同第4,339,456号、及び同第4,245,432号に開示されており、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0293】
いくつかの実施形態では、様々な添加剤を、本発明の組成物を含む植物要素処理製剤に添加することができる。結合剤を添加することができ、コーティングされる植物要素に対する植物毒性効果がない、天然又は合成であり得る接着ポリマーから構成されるものを含む。結合剤は、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースを含む、セルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプン、デキストリン、マルトデキストリン、アルギン酸塩、及びキトサンを含む、多糖類、脂肪、油、ゼラチン及びゼインを含む、タンパク質、アラビアゴム、シェラック、塩化ビニリデン及び塩化ビニリデン共重合体、リグノスルホン酸カルシウム、アクリル共重合体、ポリビニルアクリレート、ポリエチレンオキシド、アクリルアミドポリマー及び共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリルアミドモノマー、並びにポリクロロプレンから選択され得る。
【0294】
ニトロソ、ニトロ、モノアゾ、ビサゾ、及びポリアゾを含む、アゾ、アクリジン、アントラキノン、アジン、ジフェニルメタン、インダミン、インドフェノール、メチン、オキサジン、フタロシアニン、チアジン、チアゾール、トリアリルメタン、キサンテンとして分類される有機発色団を含む、様々な着色剤のいずれかが採用され得る。添加され得る他の添加剤には、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデン、及び亜鉛の塩などの微量の栄養素が含まれる。
【0295】
ポリマー又は他の防塵剤を適用して、植物要素表面上で処理を保持することができる。
【0296】
いくつかの特定の実施形態では、微生物細胞又は胞子に加えて、コーティングは、接着剤の層を更に含むことができる。接着剤は、非毒性、生分解性、及び接着性であるべきである。そのような材料の例としては、限定されるものではないが、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びヒドロキシメチルプロピルセルロースなどのセルロース、デキストリン、アルギン酸塩、糖、糖蜜、ポリビニルピロリドン、多糖類、タンパク質、脂肪、油、アラビアゴム、ゼラチン、シロップ、並びにデンプンが挙げられる。更なる例が、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,213,367号で見出され得る。
【0297】
接着剤、分散剤、界面活性剤、並びに栄養及び緩衝成分などの様々な添加剤も、植物要素処理製剤に含むことができる。他の従来の植物要素処理添加剤には、限定されるものではないが、コーティング剤、湿潤剤、緩衝剤、及び多糖類が含まれる。少なくとも1つの農業的に許容される担体を、水、固体、又は乾燥粉末などの植物要素処理製剤に添加することができる。乾燥粉末は、炭酸カルシウム、石膏、バーミキュライト、タルク、腐植、活性炭、及び様々なリン化合物などの様々な材料に由来し得る。
【0298】
いくつかの実施形態では、植物要素コーティング組成物は、植物要素へのその適用を促進するために活性成分が組み合わせられる、有機又は無機、天然又は合成成分である、少なくとも1つの充填剤を含むことができる。態様では、充填剤は、粘土、天然若しくは合成ケイ酸塩、シリカ、樹脂、ワックス、固体肥料(例えば、アンモニウム塩)、カオリン、粘土、タルク、石灰、石英、アタパルジャト、モンモリロナイト、ベントナイト、若しくはケイ素土などの天然土壌鉱物、又はシリカ、アルミナ、若しくはケイ酸塩、特に、ケイ酸アルミニウム若しくはケイ酸マグネシウムなどの合成鉱物などの不活性固体である。
【0299】
いくつかの実施形態では、植物要素処理製剤は、以下の成分:地下にのみ作用する化合物を含む他の殺虫剤、カプタン、チラム、メタラキシル、フルジオキソニル、オキサジキシル、及びそれらの材料の各々の異性体などの殺真菌剤、グリホサート、カルバメート、チオカルバメート、アセトアミド、トリアジン、ジニトロアニリン、グリセロールエーテル、ピリダジノン、ウラシル、フェノキシ、尿素、及び安息香酸から選択される化合物を含む、除草剤、ベンゾキサジン、ベンズヒドリル誘導体、N,N-ジアリルジクロロアセトアミド、様々なジハロアシル、オキサゾリジニル及びチアゾリニル化合物、エタノン、ナフタル酸無水物化合物、並びにオキシム誘導体などの除草剤解毒剤、化学肥料、生物学的肥料、並びにリゾビウム属、バシラス属(Bacillus)、シュードモナス属、セラチア属(Serratia)、トリコデルマ属(Trichoderma)、グロムス属(Glomus)、グリオクラディウム属(Gliocladium)、及び菌根菌由来の他の自然発生若しくは組換え細菌及び真菌などの生物防除剤のうちの1つ以上を更に含み得る。これらの成分は、植物要素上に別個の層として添加され得るか、又は代替的に、本開示の植物要素コーティング組成物の一部として添加され得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、本開示の植物要素を処理するために使用される製剤は、懸濁液、エマルション、水性媒体(例えば、水)中の粒子のスラリー、湿潤性粉末、湿潤性顆粒(乾燥流動性)、及び乾燥顆粒の形態であり得る。懸濁液又はスラリーとして製剤化された場合、製剤中の活性成分の濃度は、約0.5重量%~約99重量%(w/w)若しくは5~40%であるか、又は別様に当業者によって別段に製剤化されるとおりであり得る。
【0301】
上述のように、他の従来の非活性又は不活性成分を製剤に組み込むことができる。そのような不活性成分としては、限定されるものではないが、従来の粘着剤、例えば、植物要素処理で使用するための複合分散剤/粘着剤としての役割を果たす、メチルセルロースなどの分散剤、ポリビニルアルコール、レシチン、ポリマー分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル)、増粘剤(例えば、粘度を改善し、粒子懸濁液の沈降を低減するための粘土増粘剤)、エマルション安定剤、界面活性剤、不凍化合物(例えば、尿素)、染料、着色剤、及び同等物が含まれる。本開示で有用な更なる不活性成分は、参照により本明細書に組み込まれる、McCutcheon’s,vol.1,“Emulsifiers and Detergents,”MC Publishing Company,Glen Rock,N.J.,U.S.A.,1996で見出され得る。
【0302】
本開示の植物要素コーティング製剤は、コンテナ(例えば、ボトル又は袋)内の混合、機械的適用、タンブリング、噴霧、及び浸漬を含むが、これらに限定されない、様々な方法によって植物要素に適用され得る。植物要素を本開示による微生物組成物と接触させるために、様々な活性又は不活性材料を使用することができる。
【0303】
いくつかの実施形態では、植物要素の処理に使用される微生物又は農業用組成物の量は、植物要素のタイプ及び活性成分のタイプに応じて変化するであろうが、処理は、植物要素を農業的有効量の本発明の組成物と接触させることを含むであろう。
【0304】
上記で論じられるように、有効量は、有益な結果又は所望の結果に影響を及ぼすために十分である本発明の組成物の量を意味する。有効量を1回以上の投与で投与することができる。
【0305】
いくつかの実施形態では、コーティング層に加えて、植物要素は、以下の成分:殺真菌剤及び除草剤を含む他の殺虫剤、除草剤解毒剤、肥料及び/又は生物防除剤のうちの1つ以上で処理され得る。これらの成分は、別個の層として添加され得るか、又は代替的にコーティング層内に添加され得る。
【0306】
いくつかの実施形態では、本開示の植物要素コーティング製剤は、流動床技法、ローラーミル法、回転式静的植物要素処理機、及びドラムコーターなどの様々な技法及び機械を使用して、植物要素に適用され得る。噴流床などの他の方法も有用であり得る。植物要素は、コーティング前に予めサイズ決定され得る。コーティング後に、植物要素は、典型的には乾燥され、次いで、サイズ決定のためにサイジング機に移される。そのような手順は、当該技術分野で既知である。
【0307】
いくつかの実施形態では、微生物で処理された植物要素はまた、コーティングを保護するためにフィルムオーバーコーティングで包まれ得る。そのようなオーバーコーティングは、当該技術分野で既知であり、流動床及びドラムフィルムコーティング技法を使用して適用され得る。
【0308】
本開示の他の実施形態では、本開示による組成物は、固体マトリクスプライミングの使用によって植物要素上に導入され得る。例えば、ある数量の発明の組成物を、固体マトリクス材料と混合することができ、次いで、組成物が植物要素に導入されることを可能にするために、植物要素を、ある期間にわたって固体マトリクス材料と接触させることができる。次いで、植物要素を、任意選択的に、固体マトリクス材料から分離して、保存若しくは使用することができるか、又は植物要素を加えた固体マトリクス材料の混合物を、保存するか、若しくは直接植え付けることができる。本開示に有用である固体マトリクス材料としては、ポリアクリルアミド、デンプン、粘土、シリカ、アルミナ、土壌、砂、ポリ尿素、ポリアクリレート、又は本発明の組成物を一時的に吸収又は吸着し、その組成物を植物要素内又は上に放出することが可能な任意の他の材料が含まれる。本発明の組成物及び固体マトリクス材料が相互に適合することを確認することが有用である。例えば、固体マトリクス材料は、例えば、数分、数時間、又は数日の期間にわたって、合理的な速度で組成物を放出することができるように選択されるべきである。
【0309】
いくつかの実施形態では、本開示は、開示される方法に従って開発された個々の微生物、又は微生物共同体、若しくは微生物群衆を、任意の植物生物刺激物質と組み合わせることができることを教示する。
【0310】
いくつかの実施形態では、本開示は、とりわけ、Vitazyme(登録商標)、Diehard(商標)Biorush(登録商標)、Diehard(商標)Biorush(登録商標)Fe、Diehard(商標)Soluble Kelp、Diehard(商標)Humate SP、Phocon(登録商標)、Foliar Plus(商標)、Plant Plus(商標)、Accomplish LM(登録商標)、Titan(登録商標)、Soil Builder(商標)、Nutri Life、Soil Solution(商標)、Seed Coat(商標)、PercPlus(商標)、Plant Power(登録商標)、CropKarb(登録商標)、Thrust(商標)、Fast2Grow(登録商標)、Baccarat(登録商標)、及びPotente(登録商標)を含むが、これらに限定されない、1つ以上の市販の生物刺激物質を含む、農業用組成物を教示する。
【0311】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が活性化学剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。他の実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が活性化学剤と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相乗効果が目撃される。
【0312】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が肥料と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。他の実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が肥料と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相乗効果が目撃される。
【0313】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が植物成長調節因子と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が植物成長調節因子と組み合わせられると、相乗効果が目撃される。いくつかの態様では、本開示の微生物は、Ascend(登録商標)と組み合わせられ、相乗効果が1つ以上の目的の表現型形質について観察される。
【0314】
いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が生物刺激物質と組み合わせられると、目的の植物表現型形質に対する相加効果が目撃される。いくつかの実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が植物刺激物質と組み合わせられると、相乗効果が目撃される。
【0315】
教示される方法によって得られる相乗効果は、Colbyの式(すなわち、(E)=X+Y-(X*Y/100))に従って定量化され得る。参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Colby,R.S.,“Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations,”1967 Weeds,vol.15,pp.20-22を参照されたい。したがって、「相乗効果」によって、その存在により、相加量を超えて所望の効果を増加させる成分が意図される。
【0316】
本開示の単離された微生物及び共同体は、農業用活性化合物、また、農業用補助化合物の有効性を相乗的に増加させることができる。
【0317】
他の実施形態では、教示される方法に従って識別された微生物又は微生物共同体が肥料と組み合わせられると、相乗効果が目撃される。
【0318】
更に、ある特定の実施形態では、本開示は、微生物共同体を定義するために相乗的相互作用を利用する。すなわち、ある特定の態様では、本開示は、相乗的に作用する特定の単離された微生物種を、植物に有益な形質を付与するか、又は有益な植物形質の増加と相関する共同体に、ともに組み合わせる。
【0319】
本開示に従って開発された農業用組成物は、既知の活性農業用化合物の活性を改善するために、ある特定の補助物質を用いて製剤化され得る。これは、活性化合物の有効性を維持しながら、製剤中の活性成分の量が低減され、したがって、コストを可能な限り低く保ち、任意の公的規制に従うことを可能にし得るという利点を有する。個々の場合において、添加を伴わない特定の活性成分を用いた処理が不十分に成功した植物が、開示された微生物分離株及び共同体とともにある特定の補助物質を添加することによって、実際に成功裏に処理され得るため、活性化合物の作用の範囲を広げることも可能であり得る。更に、活性物質の性能は、個々の場合において、環境条件が好ましくないときに好適な製剤によって増加され得る。
【0320】
農業用組成物に使用され得るそのような補助物質は、アジュバントであり得る。多くの場合、アジュバントは、表面活性化合物又は塩様化合物の形態をとる。それらの作用機序に応じて、それらは、調整剤、活性化剤、肥料、pH緩衝剤、及び同等物として大まかに分類され得る。調整剤は、製剤の湿潤、粘着、及び拡散特性に影響を及ぼす。活性化剤は、植物のろう様表皮を分解し、短期(数分にわたる)及び長期(数時間にわたる)の両方で、表皮内への活性成分の浸透を改善する。硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、又は尿素などの肥料は、活性成分の吸収及び溶解性を改善し、活性成分の拮抗挙動を低減し得る。pH緩衝剤が、製剤を最適なpHにするために従来的に使用される。
【0321】
いくつかの実施形態では、植物要素は、植物繁殖要素(例えば、種子、塊茎、球根、及び/又はシュート)である。いくつかの実施形態では、植物要素は、植物繁殖要素(例えば、葉、茎、及び/又は根)以外である。いくつかの実施形態では、複数の植物要素が本明細書に記載される微生物と関係付けられる。
【0322】
いくつかの実施形態では、植物又は植物要素は、植物又は植物要素が配置される成長培地の処理などであるが、これに限定されない、間接的な方法を介して、本明細書に記載される1つ以上の微生物と関係付けられるようになる。
【0323】
本開示の農業用組成物の更なる実施形態については、参照により本明細書に組み込まれる、“Chemistry and Technology of Agrochemical Formulations,”edited by D.A.Knowles,copyright 1998 by Kluwer Academic Publishersを参照されたい。
【0324】
植物及び農学的利益
農業で栽培されるものを含む多種多様な植物は、単一微生物、共同体、及び/又はそれらから生産されるか、又は前述のうちのいずれかを含む組成物を含む、本明細書に記載されるものなどの微生物の適用から利益を受けることが可能であり得る。蘚類及び地衣類並びに藻類を含む、任意の数の様々な異なる植物が、本開示の方法で使用され得る。実施形態では、植物は、経済的、社会的、又は環境的価値を有する。例えば、植物は、食用作物、繊維作物、油料作物として、林業、パルプ及び製紙産業で、バイオ燃料生産のための原料として、並びに観賞植物として使用されるものを含み得る。
【0325】
本明細書に開示される遺伝子改変された微生物は、植物における窒素固定の改善に用途を有する。いくつかの実施形態では、そのような植物には、小麦、トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))、米、及び野菜などであるが、これらに限定されない、天然窒素固定共生生物(例えば、非マメ科作物)を欠くものが含まれる。いくつかの実施形態では、そのような植物には、追加の窒素固定から利益を得るであろうものが含まれる。
【0326】
適用の方法
微生物は、当該技術分野で既知の任意の適切な技法を使用して、植物、苗、挿し木、珠芽、若しくは同等物、及び/又は当該植物を含む成長培地に適用され得る。
【0327】
しかしながら、一例として、微生物、共同体、若しくはそれらを含む組成物、及び/又はそれらから生産される組成物が、噴霧、コーティング、散布、又は当該技術分野で既知の任意の他の方法によって、植物、苗、挿し木、珠芽、又は同等物に適用され得る。
【0328】
別の実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、播種する前に植物種子に直接適用され得る。
【0329】
別の実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、種子コーティングとして、植物種子に直接適用され得る。
【0330】
本開示の一実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、植物成長培地に適用される顆粒、又はプラグ、又は土壌灌注の形態で供給される。
【0331】
他の実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、葉面噴霧又は液体組成物などの葉面適用の形態で供給される。葉面噴霧又は液体適用は、成長中の植物、又は成長培地、例えば、土壌に適用され得る。
【0332】
いくつかの実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、土壌灌注、葉面噴霧、浸漬処理、畝間処理、土壌改良、顆粒、広域播種処理、収穫後の疾患制御処理、又は種子処理としから選択される形態で供給される。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、単独で、又は交代噴霧プログラムで適用され得る。
【0333】
いくつかの実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、タンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、他の農産物とのタンク混合に適合し得る。いくつかの実施形態では、農業用組成物は、地上、空中、及び灌漑用途に使用される機器に適合し得る。
【0334】
別の実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、顆粒に製剤化され、植え付け中に種子とともに適用され得る。又は、顆粒は、植え付け後に適用され得る。又は、顆粒は、植え付け前に適用され得る。
【0335】
いくつかの実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、作物の成長、生産高、及び品質を改善するために、局所適用及び/又は灌注適用として植物又は成長培地に投与される。局所適用は、乾燥混合物若しくは粉末若しくは散布組成物の利用を介したものであり得るか、又は液体系製剤であり得る。
【0336】
実施形態では、単離された微生物、共同体、又はそれらを含む組成物は、とりわけ、(1)溶液、(2)湿潤性粉末、(3)散布粉末、(4)可溶性粉末、(5)エマルション又は懸濁液濃縮物、(6)種子ドレッシング又はコーティング、(7)錠剤、(8)水分散性顆粒、(9)水溶性顆粒(徐放又は速放)、(10)マイクロカプセル化顆粒又は懸濁液、(11)灌漑成分、並びに(12)肥料、殺虫剤、及び他の適合性改良剤の成分として、製剤化され得る。ある特定の態様では、組成物は、従来の噴霧適用の前に水性媒体中で希釈され得る。本開示の組成物は、土壌、植物、種子、根圏、根鞘、又は微生物組成物を適用することが有益であろう他の領域に適用され得る。更に、弾道方法を、内生微生物を導入するための手段として利用することができる。
【0337】
態様では、組成物は、植物の葉に適用される。組成物は、エマルション若しくは懸濁液濃縮物、液体溶液、又は葉面噴霧の形態で植物の葉に適用され得る。組成物の適用は、実験室、生育箱、温室、又は現場において生じ得る。
【0338】
別の実施形態では、微生物は、根又は茎を切断し、液体微生物懸濁液、又はゲル、若しくは粉末を噴霧、浸漬、又は別様に適用することにより、植物表面を微生物に曝露することによって、植物に接種され得る。
【0339】
別の実施形態では、微生物は、葉若しくは根組織に直接注入されるか、又は別様に、葉若しくは根の切断部の中若しくは上に直接、さもなければ切除された胚、又は幼根、若しくは子葉鞘の中に接種され得る。次いで、これらの接種された植物は、更なる微生物を含む成長培地に曝露され得る。しかしながら、これは必要ではない。
【0340】
特に、微生物が培養不可能である、他の実施形態では、微生物は、移植、外植片の挿入、吸引、エレクトロポレーション、創傷、剪根、気孔開口部の誘導、又は微生物が植物細胞若しくは細胞間空間に入るための機会を提供する任意の物理的、化学的、若しくは生物学的処理のうちのいずれか1つ又は組み合わせによって、植物に移され得る。当業者であれば、使用され得るいくつかの代替的技法を容易に理解し得る。
【0341】
一実施形態では、微生物は、根、茎、葉及び/若しくは繁殖植物部位などの植物の部位に浸潤し(内生し)、並びに/又は根、茎、葉及び/若しくは繁殖植物部位の表面上で成長し(着生し)、並びに/又は植物根圏内で成長する。一実施形態では、微生物は、植物と共生関係を形成する。
【0342】
限定されるものではないが、ある特定の態様は、以下のように提供される。
態様1:GlnRをコードする内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変、及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変から選択される1つ以上の遺伝子改変を含む、単離された遺伝子改変された微生物であって、GlnRをコードする当該内因性glnR遺伝子に対する当該遺伝子改変が、GlnRタンパク質バリアントを産生する変異glnR遺伝子を提供することを特徴とし、当該5’調節領域配に対する当該遺伝子改変が、遺伝子改変されていない5’調節領域配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とし、当該1つ以上の遺伝子改変が、遺伝子改変されていない微生物株と比較して改善された窒素固定活性を微生物に提供することを特徴とする、前記単離された遺伝子改変された微生物。
態様2:GlnRをコードする当該内因性glnR遺伝子に対する当該遺伝子改変が、切断を含む、態様1に記載の単離された微生物。
態様3:当該切断が、GlnRタンパク質のC末端ドメインをコードする配列を含む当該内因性glnR遺伝子の一部分の欠失を含む、態様2に記載の単離された微生物。
態様4:当該内因性glnR遺伝子の当該一部分が、当該GlnRタンパク質の最後の25個のC末端アミノ酸をコードする配列を含む、態様3に記載の単離された微生物。
態様5:当該5’調節領域配列が、当該内因性nif遺伝子内の転写開始部位の上流に位置する、態様1~4のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様6:内因性nif遺伝子内の当該5’調節領域配列が、配列5’--X1-N-X2-X3-X4-A-X5-X6-X3-X3-A-N-X7-T-N-A-X8-X1-X5-3’(配列番号34)を含み、式中、X1が各々独立して、A、G、及びTから選択され、X2が、C及びGから選択され、X3が各々独立して、A及びTから選択され、X4が、C及びTから選択され、X5が各々、G及びTから選択され、X6が、A、C、及びGから選択され、X7が、A、C、及びTから選択され、X8が、A及びCから選択され、Nが各々、A、C、G、及びTから選択される、態様1~5のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様7:内因性nif遺伝子内の当該5’調節領域配列が、配列番号35~49からなる群から選択される配列を含む、態様1~6のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様8:内因性nif遺伝子内の当該5’調節領域配列が、配列番号34を含む、態様1~5のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様9:当該5’調節領域配列に対する当該遺伝子改変が、当該5’調節領域配列の、天然5’調節領域配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列での置換を含む、態様1~8のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様10:当該DNA配列が、配列5’--Y1-Y1-G-T-N-A-Y1-N-Y1-A-A-Y2-Y3-T-Y3-A-C-Y4-Y5-3’(配列番号50)を含み、式中、Y1が各々独立して、A、G、及びTから選択され、Y2が、A、C、及びTから選択され、Y3が各々独立して、A及びTから選択され、Y4が、A及びGから選択され、Y5が、C及びTから選択され、Nが各々独立して、A、C、G、及びTから選択される、態様9に記載の単離された微生物。
態様11:当該DNA配列が、配列番号51~66からなる群から選択される配列を含む、態様9又は10に記載の単離された微生物。
態様12:当該DNA配列が、配列番号50を含む、態様9に記載の単離された微生物。
態様13:当該微生物が、内因性glnR遺伝子に対する遺伝子改変及び内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を含む、態様1~12のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様14:当該内因性nif遺伝子内の第2の5’調節領域配列に対する遺伝子改変を更に含み、当該第2の5’調節領域配列が、当該内因性nif遺伝子内の転写開始部位の下流に位置する、態様1~13のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様15:当該第2の5’調節領域配列が、配列5’--Y1-Y1-G-T-N-A-Y1-N-Y1-A-A-Y2-Y3-T-Y3-A-C-Y4-Y5-3’を含み、式中、Y1が各々独立して、A、G、及びTから選択され、Y2が、A、C、及びTから選択され、Y3が各々独立して、A及びTから選択され、Y4が、A及びGから選択され、
Y5が、C及びTから選択され、Nが各々独立して、A、C、G、及びTから選択される、態様14に記載の単離された微生物。
態様16:当該第2の5’調節領域配列が、配列番号51~66からなる群から選択される、態様14又は15に記載の単離された微生物。
態様17:当該第2の5’調節領域配列が、配列番号50を含む、態様14に記載の単離された微生物。
態様18:当該第2の5’調節領域配列に対する当該遺伝子改変が、当該内因性nif遺伝子からの当該第2の5’調節領域配列の欠失を含む、態様14~17のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様19:当該第2の5’調節領域配列に対する当該遺伝子改変が、当該第2の5’調節領域配列の、GlnRによって認識不能であることを特徴とするDNA配列での置換を含む、態様14~17のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様20:当該微生物が、窒素制限条件下又は窒素豊富条件下でnifの構成的発現を有することを特徴とする、態様1~19のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様21:当該微生物が、グラム陽性細菌株である、態様1~20のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様22:当該微生物が、胞子形成グラム陽性細菌株である、態様1~21のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様23:当該微生物が、パエニバシラス属、バシラス属、ブレビバチルス属(Brevibacillus)、リシニバチルス属(Lysinibacillus)、コーネラ属(Cohnella)、フォンティバシラス属(Fontibacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、及び/又はミクロバクテリウム属(Microbacterium)の胞子形成グラム陽性細菌株である、態様1~22のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様24:前記微生物が、パエニバシラス・ボレアリス(Paenibacillus borealis)、パエニバシラス・アルビダス(Paenibacillus albidus)、パエニバシラス・エヒメンシス(Paenibacillus ehimensis)、パエニバシラス・グラミニス、パエニバシラス・ジルンリイ(Paenibacillus jilunlii)、パエニバシラス・オドリファー(Paenibacillus odorifer)、パエニバシラス・ホエニシス(Paenibacillus phoenicis)、パエニバシラス・ポチェオネンシス(Paenibacillus pocheonensis)、パエニバシラス・ポリミキサ、パエニバシラス属の種、パエニバシラス・タオフアシャネンセ(Paenibacillus taohuashanense)、パエニバシラス・サーモフィルス(Paenibacillus thermophilus)、パエニバシラス・トリチシ(Paenibacillus tritici)、パエニバシラス・チファエ(Paenibacillus typhae)、パエニバシラス・ウィニイ(Paenibacillus wynnii)、パエニバシラス・アゾトフィゲンス(Paenibacillus azotofigens)、及びパエニバシラス・シラゲイ(Paenibacillus silagei)からなる群から選択される種の胞子形成グラム陽性細菌株である、態様1~23のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様25:当該微生物が、パエニバシラス・ポリミキサ株8619、パエニバシラス・ポリミキサ株8619-G20、パエニバシラス・ポリミキサ株8619-G21、パエニバシラス・ポリミキサ株8619-G29、パエニバシラス・ポリミキサ株8619-G25、パエニバシラス・ポリミキサ株8619-G50、パエニバシラス・オドリファー株17899、パエニバシラス・オドリファー株17899-G13、及びパエニバシラス・ポリミキサ株WLY78からなる群から選択される胞子形成グラム陽性細菌株であるか、又はそれから調製される、態様1~24のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様26:当該微生物が、グラム陰性細菌株である、態様1~20のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様27:当該微生物が、エンテロバクター属(Enterobacter)、シュードモナス属、ラーネラ属(Rahnella)、コサコニア属(Kosakonia)、ヘルバスピリルム属(Herbaspirillum)、アゾトバクター属(Azotobacter)、アゾスピリルム属(Azospirillum)、リゾビウム属、及びクレブシエラ属からなる群から選択される属のグラム陰性細菌株である、態様1~20又は26のいずれか1つに記載の単離された微生物。
態様28:当該微生物が、クレブシエラ・バリイコーラ(Klebsiella variicola)、アゾスピリルム・ブラジレンス(Azospirillum brasilense)、エンテロバクター・ソリ(Enterobacter soli)、コサコニア・オリザエ(Kosakonia oryzae)、コサコニア・オリゼンドフィチカ(Kosakonia oryzendophytica)、コサコニア・シュードサッカリ(Kosakonia pseudosacchari)、コサコニア・ラディシンシタンス(Kosakonia radicincitans)、コサコニア・ラディシニタンス(Kosakonia radicinitans)、シュードモナス・リニ(Pseudomonas lini)、シュードモナス・マリンコラ(Pseudomonas marincola)、シュードモナス・プレコグロシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)、シュードモナス・レシノボランス(Pseudomonas resinovorans)、シュードモナス・ウムソンゲンシス(Pseudomonas umsongensis)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、アゾトバクター・クロオコッカム(Azotobacter chroococcum)、アゾトバクター・ニグリカンス(Azotobacter nigricans)、ヘルバスピリルム・クロロフェノリカム(Herbaspirillum chlorophenolicum)、ヘルバスピリルム・フリシンゲンス(Herbaspirillum frisingense)、ヘルバスピリルム・フッティエンス(Herbaspirillm huttiense)、ヘルバスピリルム・セロペディカエ(Herbaspirillum seropedicae)、ヘルバスピリルム・ヒルトネリ(Herbaspirillum hiltneri)、ヘルバスピリルム・セロペディカエ、リゾビウム・アゾオキシディフェクス(Rhizobium azooxidifex)、リゾビウム・カウエンス(Rhizobium cauense)、リゾビウム・ネポトゥム(Rhizobium nepotum)、及びリゾビウム・オリジラディシス(Rhizobium oryziradicis)からなる群から選択される種のグラム陰性細菌株である、態様1~20、26、又は27のいずれか1つに記載の単離された細菌株。
態様29:態様1~28のいずれか1つに記載の単離された遺伝子改変された微生物と、農業的に許容される担体と、を含む、農業用組成物。
態様32:当該組成物が、植物成長促進農業用組成物であることを特徴とする、態様29に記載の農業用組成物。
態様31:殺虫剤(pesticide)、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤(insecticide)、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、植物成長調節因子、殺鼠剤、防藻剤、生物防除剤、肥料、バイオ殺虫剤、及び生物刺激物質からなる群から選択される1つ以上の追加の薬剤を更に含む、態様29又は30に記載の農業用組成物。
態様32:1つ以上の肥料を更に含む、態様29又は30に記載の農業用組成物。
態様33:当該1つ以上の肥料が、リン系肥料、カリウム系肥料、リン-カリウム系肥料、窒素系肥料、窒素-リン-カリウム系肥料、及びそれらの組み合わせから選択される、態様32に記載の農業用組成物。
態様34:当該1つ以上の肥料が、リン系肥料を含む、態様32又は33に記載の農業用組成物。
態様35:当該1つ以上の肥料が、カリウム系肥料を含む、態様32又は33に記載の農業用組成物。
態様36:当該1つ以上の肥料が、リン-カリウム系肥料を含む、態様32又は33に記載の農業用組成物。
態様37:当該1つ以上の肥料が、窒素系肥料を含む、態様32又は33に記載の農業用組成物。
態様38:当該1つ以上の肥料が、窒素-リン-カリウム系肥料を含む、態様32又は33に記載の農業用組成物。
態様39:当該1つ以上の肥料が、顆粒肥料を含む、態様32~38のいずれか1つに記載の農業用組成物。
態様40:当該1つ以上の肥料が、液体肥料を含む、態様32~38のいずれか1つに記載の農業用組成物。
態様41:生物農薬を更に含む、態様29又は30に記載の農業用組成物。
態様42:当該生物農薬が、微生物系バイオ肥料、非微生物系バイオ肥料、生物刺激物質、バイオ殺虫剤、及びそれらの組み合わせから選択される、態様41に記載の農業用組成物。
態様43:当該生物農薬が、微生物系バイオ肥料を含む、態様41又は42に記載の農業用組成物。
態様44:当該微生物系バイオ肥料が、栄養素可溶化微生物を含み、当該栄養素可溶化微生物が、リン、カリウム、ケイ素、硫黄、及びそれらの組み合わせから選択される栄養素を可溶化する、態様43に記載の農業用組成物。
態様45:当該微生物系バイオ肥料が、微量要素除去微生物を含み、当該微量要素除去微生物が、鉄及びモリブデンから選択される微量要素を除去する、態様43に記載の農業用組成物。
態様46:当該微生物系バイオ肥料が、炭素隔離微生物を含む、態様43に記載の農業用組成物。
態様47:当該微生物系バイオ肥料が、窒素変換微生物を含む、態様43に記載の農業用組成物。
態様48:当該生物農薬が、生物刺激物質を含む、態様41又は42に記載の農業用組成物。
態様49:当該生物刺激物質が、植物成長促進剤を含む、態様48に記載の農業用組成物。
態様50:当該生物刺激物質が、非生物的ストレス耐性剤を含む、態様48に記載の農業用組成物。
態様51:当該生物刺激物質が、収率向上剤を含む、態様48に記載の農業用組成物。
態様52:化学農薬を更に含む、態様29又は30に記載の農業用組成物。
態様53:当該化学農薬が、合成殺虫剤を含む、態様52に記載の農業用組成物。
態様54:当該化学農薬が、合成除草剤を含む、態様52に記載の農業用組成物。
態様55:当該農業用組成物が、種子コーティング、葉面噴霧、土壌灌注、浸漬処理、畝間処理、土壌改良、顆粒、又は広域播種処理として製剤化される、態様29~54のいずれか1つに記載の農業用組成物。
態様56:1つ以上の有益な形質を植物に付与する方法であって、農業有効量の態様1~28のいずれか1つに記載の単離された微生物又は態様29~55のいずれか1つに記載の農業用組成物を、種子、当該植物、又は当該植物が成長している培地に適用することを含む、方法。
態様57:当該1つ以上の有益な形質が、成長の増加、バイオマスの増加、収率の増加、窒素固定能力の増加、窒素利用効率の増加、ストレス耐性の増加、干ばつ耐性の増加、クロロフィル含有量の増加、光合成速度の増加、リン酸可溶化の改善、植物の健康の改善、及び水使用効率の増進から選択される、態様56に記載の方法。
態様58:当該1つ以上の有益な形質が、成長の増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様59:当該1つ以上の有益な形質が、バイオマスの増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様60:当該1つ以上の有益な形質が、収率の増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様61:当該1つ以上の有益な形質が、窒素固定能力の増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様62:当該1つ以上の有益な形質が、クロロフィル含有量の増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様63:当該1つ以上の有益な形質が、リン酸可溶化の改善を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様64:当該1つ以上の有益な形質が、植物の健康の増加を含む、態様56又は57に記載の方法。
態様65:1つ以上の追加の薬剤を種子に、当該植物に、又は当該植物が成長している培地に適用することを更に含み、当該1つ以上の追加の薬剤が、殺虫剤(pesticide)、除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤(insecticide)、殺ウイルス剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、ダニ駆除剤、植物成長調節因子、殺鼠剤、防藻剤、生物防除剤、肥料、バイオ殺虫剤、及び生物刺激物質からなる群から選択される、態様56~64のいずれか1つに記載の方法。
態様66:当該1つ以上の追加の薬剤が、1つ以上の肥料を含む、態様65に記載の方法。
態様67:当該1つ以上の肥料が、リン系肥料、カリウム系肥料、リン-カリウム系肥料、窒素系肥料、窒素-リン-カリウム系肥料、及びそれらの組み合わせから選択される、態様66に記載の方法。
態様68:当該1つ以上の肥料が、リン系肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様69:当該1つ以上の肥料が、カリウム系肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様70:当該1つ以上の肥料が、リン-カリウム系肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様71:当該1つ以上の肥料が、窒素系肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様72:当該1つ以上の肥料が、窒素-リン-カリウム系肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様73:当該1つ以上の肥料が、顆粒肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様74:当該1つ以上の肥料が、液体肥料を含む、態様66又は67に記載の方法。
態様75:当該1つ以上の追加の薬剤が、生物農薬を含む、態様65に記載の方法。
態様76:当該生物農薬が、微生物系バイオ肥料を含む、態様75に記載の方法。
態様77:当該微生物系バイオ肥料が、栄養素可溶化微生物を含み、当該栄養素可溶化微生物が、リン、カリウム、ケイ素、硫黄、及びそれらの組み合わせから選択される栄養素を可溶化する、態様76に記載の方法。
態様78:当該微生物系バイオ肥料が、微量要素除去微生物を含み、当該微量要素除去微生物が、鉄及びモリブデンから選択される微量要素を除去する、態様76に記載の方法。
態様79:当該微生物系バイオ肥料が、炭素隔離微生物を含む、態様76に記載の方法。
態様80:当該微生物系バイオ肥料が、窒素変換微生物を含む、態様76に記載の方法。
態様81:当該生物農薬が、生物刺激物質を含む、態様75に記載の方法。
態様82:当該生物刺激物質が、植物成長促進剤を含む、態様81に記載の方法。
態様83:当該生物刺激物質が、非生物的ストレス耐性剤を含む、態様81に記載の方法。
態様84:当該生物刺激物質が、収率向上剤を含む、態様81に記載の方法。
態様85:当該1つ以上の追加の薬剤が、化学農薬を含む、態様65に記載の方法。
態様86:当該化学農薬が、合成殺虫剤を含む、態様85に記載の方法。
態様87:当該化学農薬が、合成除草剤を含む、態様85に記載の方法。
態様88:当該1つ以上の追加の薬剤が、単離された微生物又は農業用組成物の適用前に、適用と同時に、又は適用後に適用される、態様65~79のいずれか1つに記載の方法。
態様89:単離された遺伝子改変された微生物を調製するためのプロセスであって、GlnRをコードする内因性glnR遺伝子を遺伝子改変すること、内因性nif遺伝子内の5’調節領域配列を遺伝子改変すること、又はそれらの組み合わせと、当該微生物を単離することと、を含み、GlnRをコードする当該内因性glnR遺伝子を遺伝子改変することが、当該内因性glnR遺伝子を編集して、GlnRタンパク質バリアントをコードする変異遺伝子を産生することを含み、内因性nif遺伝子内の当該5’調節領域配列を遺伝子改変することが、当該5’調節領域配列を、前記5’調節領域配列と比較して改善されたGlnRに対する結合親和性を提供することを特徴とするDNA配列で置換することを含み、当該微生物が、窒素固定活性を有することを特徴とし、
当該5’調節領域配列のGlnRをコードする当該内因性遺伝子を遺伝子改変することが、当該微生物の遺伝子改変されていない株と比較して改善された窒素固定活性を提供する、前記プロセス。
【0343】
本発明は、特に、好ましい実施形態及び様々な代替的実施形態を参照して示され、説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更がそれに行われ得ることが、当業者によって理解されるであろう。ある特定の変更、修正、置換、及び改善を含む、当業者に容易に想起される本開示の様々な変更、修正、及び改善も、本開示の一部である。例えば、以下の特定の実施例は、具体的な植物を使用して本明細書に記載される方法及び実施形態を例証し得るが、これらの実施例の原理は、任意の植物に適用され得る。したがって、本発明の範囲は、以下に例示される具体的な実施例によってのみではなく、本明細書に列挙される実施形態によって包含されることが理解されるであろう。
【0344】
本出願で参照される全ての引用された特許及び刊行物は、各々が参照により個々かつ具体的に組み込まれた場合と同じ程度に、あらゆる目的のために、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0345】
本明細書に提示される方法及び組成物は、微生物又は共同体若しくは群衆を含む、及び/又はそれらによって産生される、開示される単離された微生物、群衆、共同体、及び/又は組成物を利用することに基づいて、植物の1つ以上の特徴、例えば、農作物における窒素固定を改善する。
【0346】
略語「uL」は、「マイクロリットル」を意味し、「ug」は、「マイクログラム」を意味する。
【0347】
実施例1:微生物培養、配列決定、及び標的選択
パエニバシラス属株8619、17899、17911、53953、54805、55083、55136、55146、55470、68890、70995、77155、77357、及び77359、並びに前述の遺伝子改変された株を培養培地中で増殖させて、十分な細胞増殖を得た。
【0348】
その後、これらの株の各々の副次試料を、窒素を含まない成長培地に無菌的に移し、微好気性条件下で72時間インキュベートした。
【0349】
目的の分離株を、R2A培地中で中間対数期まで増殖させた。DNAをQiagen Powersoil DNA抽出キットで抽出し、配列決定ライブラリを製造業者の指示に従ってiGenomix RipTideキットで構築した。配列決定を、PE150を用いてIllumina HiSeq上で行った。未加工Illuminaリードを、Trimmomatic v38(Bolger AM,Lohse M,and Usadel B.(2014).Trimmomatic:A flexible trimmer for Illumina Sequence Data.Bioinformatics,btu170)でQ15にトリミングし、デフォルトパラメータを使用してSPAdes(Prjibelski A,Antipov D,Meleshko D,Lapidus A,and Korobeynikov A.(2020)Using SPAdes de novo assembler.Curr.Protoc.Bioinform.70,e102)でアセンブルした。アセンブルしたコンティグを、5%未満の汚染カットオフで純度についてBinSantity 0.5.4(Graham ED,Heidelberg JF,and Tully BJ.(2017)BinSanity:unsupervised clustering of environmental microbial assemblies using coverage and affinity propagation.PeerJ 5:e3035)で分析した。最も大きいビンを抽出し、Prokka 1.8で注釈付けした(Seemann T.(2014)Prokka:rapid prokaryotic genome annotation.Bioinformatics 30(14):2068-9)。16S rDNAの配列をProkka 1.8によって特定し、配列を.ffnファイルから直接抽出した。分類学を、2021年4月データベースでデフォルトパラメータを使用してGTDB-tkによって割り当てた(Pierre-Alain Chaumeil,Aaron J Mussig,Philip Hugenholtz,Donovan H Parks,GTDB-Tk:a toolkit to classify genomes with the Genome Taxonomy Database,Bioinformatics,Volume 36,Issue 6,15 March 2020,Pages 1925-1927)。
【0350】
パエニバシラス属株の選択を、Xie et al.(2014)(Comparative Genomic Analysis of N 2-Fixing and Non-N 2-Fixing Paenibacillus spp.:Organization,Evolution and Expression of the Nitrogen Fixation Genes.10(3))の方法に従って、下位群I又は下位群IIと特徴付けた。nifB、nifH、nifD、nifK、nifE、nifN、nifX、hesA、及びnifVから構成されるnif遺伝子クラスターが15個のN固定パエニバシラス属株の間で高度に保存されるが、nifクラスターのDNA配列にはいくらかの変動があり、これを、下位群I及び下位群IIの2つの下位群に分けることができる。下位群I内のnif遺伝子クラスターの9つの遺伝子nifBHDKENXhesAnifVが連続している一方で、予測産物が不明な261~561bpのORFが下位群II内のnifXとhesAとの間にある。パエニバシラス属の種であるP.ポリミキサ及びP.トリチシが、下位群Iの例である。パエニバシラス属の種であるP.アルビダス、P.アナエリカヌス、P.アゾチフィゲンス、P.ボレアリス、P.ドングハエンシス、P.エヒメンシス、P.グラミニス、P.ジルンリイ、P.オドリファー、P.パナシソリ、P.ホエニシス、P.ポチェオネンシス、P.リゾプラナエ、P.シラゲ、P.タオフアシャネンセ、P.サーモフィルス、P.チファエ、及びP.ウィニイが、下位群IIの例である。
【0351】
パエニバシラス属のゲノム中の様々なポリヌクレオチドの編集標的を選択して、外因的に適用された窒素の不在下、最小追加窒素(例えば、アンモニウム)の存在下、及び追加の窒素の存在下で窒素固定を増加させた。環境窒素の存在下でのnifオペロンの負の調節をオフにすること、並びに全ての条件中に転写を促進することを含む、いくつかのアプローチを開発した。
【0352】
NifH
ニトロゲナーゼ酵素複合体は、以下の2つの保存されたタンパク質:nifD遺伝子及びnifK遺伝子によってコードされるサブユニットからなるMoFeタンパク質、及びNifH遺伝子によってコードされるFeタンパク質からなる。ニトロゲナーゼ鉄タンパク質遺伝子nifHは、遺伝子進化の歴史上最も古い既存の機能遺伝子のうちの1つである。全ての窒素固定生物の中でnifHDK遺伝子のコード領域に対するヌクレオチド配列が高度に保存される。しかしながら、nifH、nifD、及びnifKのコピー数及び配置は、様々なジアゾ栄養細菌間で異なる。NifHの本質的な性質のため、相同組換えによる全コード領域(ATGから終止コドンまで)の除去によって、ノックアウトを作製して、機能性を試験した。結果として得られた編集は、除去した配列を差し引いて染色体を一緒につなぎ合わせ、ヌクレオチドは挿入されていない。
【0353】
GlnR
パエニバシラス属細菌では、nifオペロンがGlnRを介して窒素固定経路を制御し、nifオペロン遺伝子転写は、アンモニウム及び酸素によって調節される。GlnRのノックアウト(相同組換えにより、全コード領域ATGからM156までを除去し、結果として得られた配列に終止コドンを残す)及びC25切断(glnRの最後の25個のアミノ酸をコードするDNAを除去する)を作製して、窒素固定に対する影響を評価した。
【0354】
GlnR結合部位I及びII
GlnRの部位Iへの結合がNif発現を活性化する一方で、GlnRの部位IIへの結合は、Nif発現を抑制する。更に、GlnRは、部位IIへの結合に対して高い親和性を有する。nifオペロンの発現を増加させて窒素固定を増加させるためのいくつかのアプローチ:部位Iの不活化(天然GlnR結合部位I配列の最後の6つの核酸の置換)、部位IIの欠失、部位IIの不活化(天然GlnR結合部位II配列の最後の6つの核酸の置換)、部位II配列の重複及び部位Iへの挿入(例えば、部位Iの置換)、及び前述のうちのいずれか1つ又はそれ以上を含む編集の組み合わせを探索した。
【0355】
CueR
この遺伝子は、8619においてGlnRと誤認され、驚くべきことに、有望な活性の増加をもたらした。この誤認は、編集カセットを設計するために使用した8619の最初のIlluminaゲノム配列におけるGlnR ORFの欠如によるものであった。GlnRと構造的に類似しているため、CueRを、GlnRのタンパク質配列に最も近い一致として選択した。GlnRと同様に、これは、HTH型転写調節因子である。これは、nrgA(アンモニウムトランスポーター)遺伝子のすぐ上流にも位置し、同じ双方向性トランスポーターを共有する。これが新規の転写制御因子である可能性がある。
【0356】
多くの細菌種において、CueRは一般にCue銅流出系の調節因子として認識されており、高レベルの細胞内銅に応答して遺伝子発現を活性化する。我々のパエニバシラス・ポリミキサでは、CueR ORFは、アンモニウムトランスポーターNrgAと双方向性プロモーターを共有している。CueRは、GlnRと同様にHTH型転写調節因子であり、パエニバシラス・ポリミキサにおいてNrgAに近接していることから、アンモニウムトランスポーターの転写にも関与している可能性があることを示している。この場合、CueRの除去により、窒素レベルに対するNrgAの発現が誤調節され、細胞へのアンモニウムの輸送を減少させる。アンモニウムレベルの減少により、細胞に、ニトロゲナーゼの発現により大気窒素を利用させる。
【0357】
遺伝子座CM8619_ハイブリッド_04839をCM8619_ハイブリッド_CEアセンブリから抽出し、MerRファミリーHTH調節遺伝子の同一性について分析した。全てのオルソロガスパエニバシラス属の種Y412MC10 MerRファミリーHTH調節遺伝子を、KEGGオルソロジー(KO)データベースから取り出した。MerRオルソロガス遺伝子を用いてBLASTデータベースを構築し、blastpを用いて推定MerR遺伝子glnaRntに対して双方向BLAST検索を行った。トップヒットは、CueRとの62%同一性ヒットであった。パエニバシラス属の種Y412MC10アセンブリをNCBIから取り出し、CueR領域の遺伝子ランドスケープを、nrgAをすぐ上流に有し、かつ亜鉛メタロプロテアーゼを下流に有するCM8619の遺伝子ランドスケープと一致させた。
【0358】
実施例2:パエニバシラス属株の編集
パエニバシラス属微生物が関係付けられる植物に改善された特徴を付与する操作された株を生産するための、パエニバシラス属微生物の編集は、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド置換、及び/又は前述のものの任意の組み合わせ若しくは複数によって達成され得る。正味の影響は、上方制御、下方制御、ノックアウト(標的ポリヌクレオチド及び/又はそのコードされたRNA若しくはタンパク質の機能)、及び/又は前述のものの任意の組み合わせ若しくは複数のうちの1つであり得る。本明細書では、特に、cueR、nifオペロンの上流のGlnR結合部位I、nifオペロンの上流のGlnR結合部位II、Orf1、及びglnRを含むパエニバシラス属におけるゲノム標的が企図される。
【0359】
クレブシエラ属などのより従順なグラム陰性細菌と比較した、パエニバシラス属などのグラム陽性細菌と協働する上での既知の課題のため、植物に改善された利益を付与する編集の成功及び植物との関係付けの成功は、驚くべきものであり、予想外である。
【0360】
グラム陽性遺伝子編集ベクターpMiniMad2をBacillus Genetic Stock Centerから入手し、SalI制限部位とBamHI制限部位との間への元はベクターpKVM4由来のTraJ移送起源の挿入により改変し、動員可能なグラム陽性遺伝子編集ベクターpMMmobを得た。
【0361】
編集ベクターのアセンブリ
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、Q5高忠実度ポリメラーゼを用いた適切なプライマーを使用して実行して、標的株由来の精製されたゲノムDNAからの適切なGibsonアセンブリオーバーハングを有する上流及び下流の相同アームを増幅した。PCR産物をアガロースゲル上で泳動させて、適切なサイズを確認した。バンドを切除し、ゲルから精製した。
【0362】
骨格ベクターpMMmobを、制限酵素EcoRI及びBamHIを用いて、Cutsmart緩衝液中37℃で少なくとも30分間消化した。消化物をアガロースゲル上で泳動させ、適切なサイズを確認した。消化した骨格をゲルから精製した。
【0363】
Gibsonアセンブリを、およそ100ngの消化pMMmobを10ulの体積で挿入断片と1:3:3の骨格:挿入:挿入モル比で組み合わせ、その後、10ulの2×Gibson試薬を添加することによって行った。反応物を50℃で60分間インキュベートし、その後、大腸菌(E.coli)DH5αへの形質転換に使用した。
【0364】
1~5ulのGibsonアセンブリ混合物を50ulの新たに解凍した化学的に有能な大腸菌DH5α細胞に添加し、指でボルテックスした。細胞-プラスミド混合物を氷上で30分間インキュベートし、42℃で30秒間熱ショックを与え、その後、更に5分間氷上に戻した。1mLのSOC(超最適異化)培地を添加し、細胞を200RPMで振盪しながら37℃で60~90分間インキュベートし、回収した。回収培養物の希釈物を、100ng/uLのアンピシリンを補充したLB寒天プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。
【0365】
アセンブリした挿入物を含むプラスミド領域を、GoTaqポリメラーゼを使用してコロニーPCRによりいくつかの回収したコロニーから増幅し、PCR産物をアガロースゲル上で泳動させて、予想したサイズの産物を確認した。適切なサイズのPCR産物をサンガーシーケンシングのために送り、編集カセットにおける適切なアセンブリ及びオフターゲット変異の欠乏を確認した。
【0366】
正しいプラスミドを保有することが確認されたコロニーを100ng/uLのアンピシリンを補充したLBブロスに接種し、37℃及び200RPMの振盪で一晩増殖させた。プラスミドを一晩培養物から精製し、エレクトロポレーションにより接合ドナー株大腸菌BW29472に形質転換した。
【0367】
1ulの精製したプラスミドを、50ulの新たに解凍した大腸菌BW29472エレクトロコンピテント細胞と組み合わせ、氷上で5分間インキュベートした。細胞-プラスミド混合物を、氷上で予め冷却した1mmのエレクトロポレーションキュベットに移した。キュベットに適用する際にエレクトロポレーター、1800V、25uF、20Ω電荷を使用し、試料を、0.3mMの2,6-ジアミノピメリン酸(DAP)を補充した1mLのSOC培地に直ちに再懸濁した。再懸濁した細胞を200RPMで振盪しながら37℃で60~90分間インキュベートし、回収した。回収培養物の希釈物を、100ng/uLのアンピシリン及び0.3mMの2,6-ジアミノピメリン酸を補充したLB寒天プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。回収した形質転換体を、接合用のドナー株として使用した。
【0368】
接合
レシピエント株を50mLのコニカルチューブ中の5mLのトリプシン大豆ブロス(TSB)培地に接種し、30℃及び200RPMの振盪で一晩増殖させた。動員されるプラスミドを保持するドナー大腸菌BW29427を、100ug/uLのアンピシリン及び0.3mMの2,6-ジアミノピメリン酸(DAP)を補充した5mLのLB培地に接種し、37℃及び200RPMの振盪で一晩増殖させた。
【0369】
一晩ドナー培養物及びレシピエント培養物の1mlアリコートをスピンダウンし、滅菌水で洗浄し、合わせ、接合交配のために0.3mM DAPを補充したLB寒天プレートの表面上にスポットした。交配プレートを、25℃(グラム陽性レシピエント株におけるpMMmobの複製に許容される温度)で一晩インキュベートした。
【0370】
スポットの上部にわたって1mlの滅菌水を添加することによって交配混合物を再懸濁し、滅菌L-スプレッダーで撹拌した。再懸濁液を微量遠心分離管に収集し、洗浄し、100ulの滅菌水に再懸濁した。濃縮した細胞を、DAPを添加していないMLS(25ug/mlのリンコマイシン、1ug/mlのエリスロマイシン)を補充したTSAプレート上に広げ、トランス接合体コロニーが出現するまで25℃で48~72時間インキュベートした。
【0371】
プラスミド組み込み
回収したトランス接合体を、MLSを補充した5mLのTSB培地に接種し、200RMP振盪しながら又は濁るまで25℃で48時間増殖させた。培養物の希釈物をTSA+MLSプレート上にプレーティングし、組み込んだコロニーが出現するまで37℃(プラスミド複製の制限温度)で一晩インキュベートした。
【0372】
プラスミド切除
組み込んだコロニーを、MLSを補充した5mLのTSB培地に接種し、200RPMで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。5ulの一晩培養物を、抗生物質を含まない5mLの新鮮なTSB培地に希釈し、200RPMで振盪しながら25℃で一晩増殖させた。5ulの一晩培養物の5mLの新鮮なTSBでの継代培養を200RPMで振盪しながら25℃で2回繰り返し、合計3ラウンドの継代培養を行った。第3ラウンドの一晩培養物の希釈物を、抗生物質を欠くR2Aプレート上にプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。
【0373】
R2Aプレートから個々のコロニーを採取し、かつそれらをグリッド形式でMLSを含む寒天プレート及びMLSを含まない寒天プレートに再びプレーティングすることによって、プラスミドの切除を確認した。両方のプレートを、コロニーが出現するまで、30℃で24~48時間インキュベートした。MLSを含まないプレート上にプレーティングした際に増殖したが、MLSを含むプレート上では増殖しなかったコロニーは、プラスミドが切除されて失われたことを確認した。
【0374】
編集の確認
編集領域をコロニーPCRにより推定上の編集株から増幅し、適切な編集の存在を、アガロースゲル上で泳動させた際のバンドのサイズによって(可能な場合)、及び/又はサンガーシーケンシングによって確認した。MLS耐性カセットのPCRアッセイにより、プラスミド骨格の不在を確認した。MLSカセットのバンドをもたらしたコロニーが適切な編集ではないことを確認した。
【0375】
配列結果を分析して、切除して野生型になったコロニーを適切に編集されたコロニーと区別し、配列をオフターゲット変異について調べた。
【0376】
オフターゲット変異なしの適切な編集として配列決定されたコロニーに改変株指定を与え、改変株ライブラリに追加し、バイオアッセイ分析のためにプロジェクトチームが利用できるようにした。
【0377】
以下の編集を1つ以上の親株に送達し、インビトロ及び植物評価に利用できるようにした。
【0378】
GlnR結合部位II不活化
Nif発現の抑制中にGlnRが結合するヌクレオチドの、GlnRに結合しないヌクレオチドでの置換により、ニトロゲナーゼ活性の増加がもたらされる。この編集は、過剰な窒素レベルに応答してnif経路が抑制されることを防止し、オフスイッチを除去するのと類似している。
【0379】
配列「ATCGAT」を、GlnR結合部位IIの7番目のヌクレオチドから最終ヌクレオチドであってそれらを含む上流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列と、GlnR結合部位IIの最終塩基対であってそれを含まない下流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列との間に挿入した。
【0380】
GlnR結合部位II重複
この天然部位I配列の天然部位II配列での置換は、nif発現を増加させ、活性化配列に対するGlnRの結合親和性を増加させるよう意図されている。全ての条件下で、GlnRは、部位II配列に対してより高い結合親和性を有する。GlnRの活性化対抑制活性が結合の位置に依存するようであるため、活性化に関与する位置に対する結合親和性を増加させることにより、nif発現の増加がもたらされた。
【0381】
編集カセットを、天然GlnR結合部位II配列を、GlnR結合部位Iの第1のヌクレオチドであってそれを含まない上流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列と、GlnR結合部位Iの最終塩基対であってそれを含まない下流のおよそ1000塩基対との間に挿入することによって構築した。
【0382】
GlnRノックアウト
この編集は、限定された条件下又は過剰な条件下の両方で基礎レベルのnif発現をもたらすことが予想された。この編集により、株における予想外の活性が見られ始めたが、後にこの株が誤って改変され、実際にはCueR KOであったと決定した。活性が適切なGlnRノックアウト株に見られた場合、それは、以下の理由のためであり得る。
【0383】
GlnRは、パエニバシラス属におけるnif発現の主要な既知の調節因子であり、そのグルタミンシンターゼとの相互作用は、環境中の窒素レベルに基づいて細胞がどのようにNif発現を調節するかである。この調節因子を除去することにより、Nif発現が環境窒素レベルに対して調節されなくなり、代わりに、窒素レベルによって調節されない未知の転写因子によって駆動され得る。これは、特に窒素過剰条件下で、nif発現の増加をもたらし得る。
【0384】
編集カセットを、glnRオープンリーディングフレームの開始コドンであってそれを含まない上流のおよそ700塩基対の天然ゲノム配列を挿入することによって構築し、glnRオープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含む下流の700塩基対の天然ゲノム配列でアセンブリした。
【0385】
GlnR C25切断
アルファヘリックスC25領域は、GlnRが二量体化部位上で折り畳まれた場合、GlnRを主に単量体として細胞中に存在させる。フィードバック阻害グルタミンシンターゼ(FBI-GS)が窒素過剰条件下でGlnRモノマーと相互作用するまで、C末端領域が折り畳まれて二量体化を促進することはない。次いで、GlnR二量体は、nif発現の厳格な抑制のために結合部位IIに堅固に結合することができる。C末端25アミノ酸を除去することにより、この調節相互作用が破壊され、GlnR二量体化及び結合が窒素レベルによって支配されることを防止する。これにより、過剰な窒素条件下でのnif発現の増加が可能になるであろう。
【0386】
編集カセットを、glnRオープンリーディングフレームのC末端から25位置のコドンであってそれを含まない上流のおよそ500~1300(株による)塩基対の天然ゲノム配列を挿入することによって構築し、glnRオープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含む下流の500~900(株による)塩基対の天然ゲノム配列でアセンブリした。
【0387】
CueRノックアウト
編集カセットを、cueRオープンリーディングフレームの開始コドンであってそれを含まない上流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列を挿入することによって構築し、cueRオープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含む下流の1000塩基対の天然ゲノム配列でアセンブリした。
【0388】
CueR C25切断
編集カセットを、cueRオープンリーディングフレームのC末端から25位置のコドンであってそれを含まない上流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列を挿入することによって構築し、cueRオープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含む下流の1000塩基対の天然ゲノム配列でアセンブリした。
【0389】
Orf1ノックアウト
これは、酸素耐性の低下によりnif活性の低下を示すと予想された。我々は、この編集により、この遺伝子を欠く株にこの遺伝子を挿入することの潜在的な価値が実証されると推測する。しかしながら、この編集がnif発現の増加を示す場合、それは、以下の理由のためであり得る。
【0390】
Orf1は、いくつかのパエニバシラス属株(サブカテゴリーIIと称する)のnifクラスターに見られるが、他のパエニバシラス属株(サブカテゴリーIと称する)には見られないオープンリーディングフレームである。これは、高酸素レベルの存在下で機能すると予測される。多くの高性能株にそれが不在することは、それが過剰であることを示す可能性があり、ほとんどの場合、窒素同化は、その不在によりより効率的である。これは、このORFの発現の代謝負担を除去すること、又は発現産物自体の冗長活性を介してもよい。
【0391】
編集カセットを、nifXオープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含む上流のおよそ1000塩基対の天然ゲノム配列を挿入することによって構築し、Orf1オープンリーディングフレームの終止コドンであってそれを含まない下流の1000塩基対の天然ゲノム配列でアセンブリした。
【0392】
GlnR結合部位II不活化及び重複
これらの編集は、GlnR二量体が部位II「オフスイッチ」に結合することを防止し、かつその結合効率を増加させることで「オンスイッチ」を増強することによって相乗的に協働することが予想される。これらの編集は、一緒になって、GlnRが、nifオペロン遺伝子転写の強い肯定的な影響としてのみ作用することができることを確実にする。
【0393】
編集カセットを、天然GlnR結合部位II配列を、GlnR結合部位Iの第1のヌクレオチドであってそれを含まない上流のおよそ1000塩基対のGlnR結合部位II不活化で事前に編集した株のゲノム配列と、GlnR結合部位Iの最終塩基対であってそれを含まない下流のおよそ1000塩基対のGlnR結合部位II不活化で事前に編集した株のゲノム配列との間に挿入することによって構築した。
【0394】
GlnR結合部位II不活化、CueR C25切断
これらの編集は、glnRの部位IIへの結合による転写抑制を防止し、かつ潜在的にNrgA発現を下方制御し、それ故に、アンモニウムの蓄積を防止して下方制御をトリガすることによって、nif発現の下方制御を防止するために異なるアプローチを取る。
【0395】
GlnR結合部位II不活化、GlnR C25切断
これらの2つの編集は、GlnRモノマーの自己阻害領域を除去することによってGlnR二量体の形成を増加させ、かつこれらの二量体が部位IIに堅固に結合することを防止するために相乗的に協働する。より多量の二量体が部位Iに結合することのみが可能になり、全ての条件下でnif発現の増加が引き起こされる。
【0396】
GlnR結合部位II重複、GlnR C25切断
これらの2つの編集は、GlnRモノマーの自己阻害領域を除去し、かつ活性化部位に対するこれらの二量体の結合親和性を増加させることによって、GlnR二量体の形成を増加させるために相乗的に協働する。より多量の二量体が増加した活性化部位に対する結合親和性を有し、少なくとも窒素制限条件下でnif発現の増加が引き起こされる。
【0397】
Orf1ノックアウト、GlnR C25切断
これらの編集は、窒素固定の改善に対して異なるアプローチを取る。orf1ノックアウトがこのプロセスから冗長酵素を除去して効率を増加させる一方で、C25切断は、利用可能なGlnR二量体の能力を向上させると同時に、それらの二量体化レベルを細胞内窒素レベルから切り離すことができる。
【0398】
GlnR結合部位II不活化、CueRノックアウト
これらの編集は、glnRの部位IIへの結合による転写抑制を防止し、かつ潜在的にNrgA発現を下方制御し、それ故に、アンモニウムの蓄積を防止して下方制御をトリガすることによって、nif発現の下方制御を防止するために異なるアプローチを取る。
【0399】
GlnR結合部位II重複、CueRノックアウト
これらの編集は、活性化部位に対するGlnR二量体の結合親和性を増加させ、かつ潜在的にNrgA発現を下方制御し、それ故に、アンモニウムの蓄積を防止して下方制御をトリガすることによって、nif発現の下方制御を防止するために異なるアプローチを取る。
【0400】
実施例3:クローニング
クローニングベクターを、編集カセット(上述)をpMMmob骨格に導入することによってアセンブリした。pMMmob[oriBsTs traJ ecol1 mls amp]は、Bacillus genetic stock centerから入手したプラスミドpMiniMAD2の誘導体である。pMMmobを制限酵素BamH1及びEcoR1で消化し、10%アガロースゲル上で泳動させ、精製する。
【0401】
上流及び下流相同領域を、プルーフリーディングポリメラーゼを使用してPCRによりゲノムDNA抽出物から増幅し、プライマーを、後続のGibsonアセンブリのために隣接配列を付加するように設計した。隣接相同アーム間に配列を付加した構築物の場合、配列導入を、プライマー隣接配列中に包含することによって達成した。PCR産物を10%アガロースゲル上で泳動させ、精製した。
【0402】
骨格及び挿入物を1:3の骨格:挿入物モル比で組み合わせ、Gibsonアセンブリ試薬と組み合わせ、プラスミドアセンブリのために50℃で60分間インキュベートした。その後、Gibsonアセンブリ混合物を、化学的にコンピテントなDH5α大腸菌に形質転換した。形質転換体をLB+100ug/uLのアンピシリンプレート上で回収した。
【0403】
プラスミドの適切なアセンブリを、挿入領域の制限消化分析及びPCRによって確認した。サンガーシーケンシングを使用して編集カセットを配列決定し、オフターゲット変異が存在しないことを確認した。
【0404】
確認したプラスミドを一晩DH5α培養物から抽出し、エレクトロポレーションによりエレクトロコンピテントBW29472大腸菌に形質転換し、LB+100ug/uLのアンピシリン+300uMのジアミノピメリン酸プレート上で回収して、宿主株に接合した。
【0405】
実施例4:パエニバシラス属の種の遺伝子編集
傷痕を残さない相同組換え
これは、温度感受性の傷痕を残さない相同組換えプラスミドを使用したパエニバシラス属における遺伝子編集のための一般的なプロトコルであり、本明細書に記載される編集に使用した。このプロトコルをCM8619の編集のために開発し、改変を伴う他のパエニバシラス属分離株に広く適用され得る。このプロトコルは、大腸菌ドナー株及び関連する抗生物質耐性マーカーに対する感受性が確認された1つ以上のパエニバシラス属レシピエント株にホストされたpMMmob骨格を使用して、所望の編集のために設計された1つ以上の編集ベクターの事前アセンブリを必要とする。
【0406】
接合
所望のレシピエント株を、適切な増殖培地中で一晩増殖させた。ドナー株を、関連する抗生物質マーカーを補充した適切な増殖培地中で一晩増殖させて、動員可能なプラスミドを維持した。一晩培養物のアリコートを洗浄し、合わせ、適切な寒天培地上にプレーティングして、両方の株を増殖させた。これらのプレートを、レシピエント株におけるプラスミド複製に許容される温度で一晩インキュベートした。
【0407】
交配混合物を回収し、洗浄し、トランス接合体レシピエント株を選択するのに適切な抗生物質マーカーを補充した寒天プレート上に再びプレーティングした。プレートを、トランス接合体コロニーが出現するまで、プラスミド複製に許容される温度で一晩インキュベートした。
【0408】
組み込み
トランス接合体コロニーを、選択マーカーの存在下で、プラスミド複製に許容される温度で一晩、液体培養で増殖させた。液体培養物の希釈物を、選択的抗生物質を補充した寒天プレート上にプレーティングし、プラスミド複製の制限温度で一晩インキュベートした。これらの条件下で回収したコロニーは、相同組換えによって編集プラスミドを組み込んだと推定した。
【0409】
切除
組み込んだコロニーを液体培養物に接種し、プラスミド複製に許容される温度で濁るまで増殖させ、その後、抗生物質を欠く新鮮な培地に継代培養し、許容される温度で一晩再び増殖させた。この連続継代培養を2~3回繰り返し、最終継代培養の希釈物を、抗生物質を欠く寒天プレート上にプレーティングした。
【0410】
回収したコロニーを、抗生物質を含む培地及び抗生物質を欠く培地に再びプレーティングすることによって、プラスミドの喪失についてアッセイした。抗生物質の不在下で増殖したが、抗生物質の存在下では増殖しなかったコロニーは、プラスミドが切除されて失われたことを確認し、推定上の編集株と特定した。
【0411】
確認
推定上の編集株をスクリーニングして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により編集領域を増幅することによって、編集の送達に成功したか、又は編集株が野生型に戻ったかを決定した。PCR産物をゲル電気泳動及びサンガーシーケンシングによって分析し、編集に適切な産物サイズ及び配列を確認した。編集の送達に成功したことが確認されたコロニーを、サンガーシーケンシングにより調べ、いずれのオフターゲット変異も編集領域に付加されていないことを確認し、抗生物質を含む培地での増殖の欠如について、プラスミド骨格が存在しないことを確認した。
【0412】
全ての確認ステップを通過した株に改変株指定を割り当て、改変分離株ライブラリに追加し、試験のためにバイオアッセイチームに提供した。
【0413】
他の方法
あるいは、当該技術分野で既知の任意の他の方法を用いて、例えば、標的化及び/又はホーミングヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、Casエンドヌクレアーゼ、TALエフェクターヌクレアーゼ、ガイドヌクレアーゼ、ランダム部位変異、ブラインド編集、化学的変異誘発、又は放射線変異誘発であるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるポリヌクレオチド編集のうちのいずれか1つ又はそれ以上をもたらすことができる。一般に、二本鎖切断は、編集される標的部位に又はその近くに作製され、これは、非相同末端結合、相同組換え、又は相同性指向性修復などの細胞内プロセスによって修復される。正味の影響は、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、少なくとも1つのヌクレオチドの化学的改変のうちのいずれか1つ又はそれ以上とすることができる。本明細書に記載されるパエニバシラス属株の編集の目的のために、実践者に望ましい任意の技術を使用して、最終結果を達成することができる。
【0414】
実施例5:微生物の識別及び保管
微生物識別のための配列決定調製及び長期保管を、以下の方法によって行った。
【0415】
1日目:
10uLの滅菌先端を使用して、コロニーをプレートから適切な液体成長培地を含むフラスコに移す。分離株を室温で振盪器上に置き、2日間インキュベートする。
【0416】
3日目:
チューブは、振盪器上に2日間存在した後に濁っている場合がある。全ての試料は、PCRによって分析される。各チューブをボルテックスし、各ボルテックスされたチューブから50uLの試料を収集し、96ウェルプレートに分注する。マルチチャネルピペットを使用して、50uLの試料のうちの15uLを新しい96ウェルプレートの中に分注する。35uLの各試料を含む96ウェルプレートは、表現型解析に使用され、15uLの各試料を含む96ウェルプレートは、PCR分析に使用されるであろう。27F/1492Rプライマーは、概して、PB36/38よりも良好な結果をもたらすため、16S PCR分析に使用される。適切な陰性対照が、プレートに含まれ、PCRによって分析されるべきである。プレートは、エッペンドルフサーモサイクラーを使用してPCRによって分析されるであろう。PCRが終了すると、標準的なゲル電気泳動技法を使用してゲルを泳動させる。これは、大部分の分離株が理想的には3日目に長期保存されるべきである場所で十分に成長させられるため、重要である。PCR及びゲル電気泳動分析は、単離物が他の微生物ではなく細菌を含むことを確認するために使用される。PCRに合格しないか、又は透明なブロスを有する分離株については、チューブをボルテックスし、ループを使用してペトリ皿上に筋状にする。数日後、何かが成長しているかどうか、又はチューブが汚染されていないかどうかをチェックする。PCRを通過させる分離株については、600uLの50%グリセロールを2mlのスクリューキャップチューブに分注し、ブロスが20%グリセロール中で保存されるように、1200uLの細菌培養物を添加する。グリセロールストックを-80℃で保存し、PCR試料のゲルの画像を記録する。
【0417】
4日目:
成長についてPCRに不合格であった筋状の分離株のペトリ皿をチェックする。(この時間の間に、2mlブロスチューブは振盪器上に留まるであろう。)皿上に成長があり、コロニーが単離に成功しているように見えると、600uLのブロス-グリセロール混合物を小さいチューブに分注し、両方のチューブをそれぞれの-80ボックスに入れる。以下の理由:プライマーが全ての細菌に作用しない場合がある、分離株が実際に真菌である、分離株が非常に接着性であり、したがってブロス中で均質化しない、分離株が過剰なEPSを産生し、したがって、PCR設定の前に希釈を必要とする、又は分離株の成長が遅いという理由のうちのいずれかにより、分離株がPCRチェックに不合格となる可能性がある。次の数日にわたって、皿をチェックし続け、単一の細菌種のみが単離されたことを確認する。汚染が観察された場合、新しい分離株を調製する。調製されたグリセロールストックの生存率が検証されるべきである。
【0418】
実施例6:微生物の製剤化
前の実施例に従って識別された微生物は、限定されるものではないが、種子処理、根灌注、根洗浄、苗浸漬、葉面散布、土壌接種、畝間散布、側方施肥散布、土壌前処理、創傷接種、ドリップテープ灌漑、花粉媒介者を介したベクター媒介、注入、浸透圧プライミング、水耕法、アクアポニクス、エアロポニックスなどの方法を介した適用のための追加の成分を用いて製剤化され得る。微生物を含む製剤は、液体、固体、又はガス製剤として農業用途のために調製される。植物への適用は、例えば、植物の葉上への表面堆積のための粉末として、植物全体若しくは選択された植物要素への噴霧として、土壌若しくは根への液滴の一部として、又は植え付け前の植物要素上へのコーティングとして、達成される。そのような実施例は、例証的であり、本発明の範囲に限定的ではないように意図されている。
【0419】
例示的な微生物調製物のための培地成分が、以下の表2に示される。必要とされる水の最終体積の50%とともに全ての内容物を添加し、溶解するまで高温で溶液を攪拌する。全ての内容物が溶解した後、滅菌RO水を使用して、溶液を最終的な所望の体積にする。実地試験調製は、典型的には、4回の製剤化を使用して実施される。
【0420】
(表2a)微生物製剤の例示的な培地成分及び濃度
【0421】
(表2b)微生物製剤の例示的な培地成分
【0422】
(表2c)微生物製剤の例示的な培地成分
【0423】
(表2d)微生物製剤の例示的な培地成分
【0424】
TIX製剤を混合する手順は、以下のとおりである。全ての乾燥成分を50mLチューブの中に測定する。成分をよくボルテックスして、キサンタンガムが他の炭素源を通して「分離されている」ことを確実にする。総滅菌RO水の約半分を混合物に添加し、ボルテックスする。L字型スプレッダーの長い端部を使用して、可能な限り塊を分解する。マイクロ波において若干の滅菌RO水を温水浴温度(45~50℃)まで加熱する。残りの滅菌RO水を混合物に添加し、ボルテックスする。塊のない透明な溶液が得られるまで、必要に応じてステップ4を繰り返し、ボルテックスする。「高速スピン」で遠心分離器を5~10秒間使用することによって、混合のプロセスで生成された気泡を沈降させる。製剤(TIX)チューブに対抗するバランスを忘れずに取る。製剤を室温まで冷却させる。1.微生物共同体内で混合する。ボルテックスして均質性を確保する。10^9CFU/mlの濃度における微生物を製剤に添加することが理想的である。
【0425】
実地試験における試験のために、製剤を植物又は植物要素に適用する。
【0426】
実施例7:植物要素への微生物の適用及びその栽培
微生物組成物(単一株、共同体、群衆、組み合わせ、又は前述のものの任意の組み合わせの1つ以上の単離された微生物を含む)は、前の実施例に従って調製される。微生物組成物は、本明細書に開示される1つ以上の追加の微生物と任意選択的に組み合わせて、1つ以上の微生物を含む。
【0427】
適用のための微生物組成物
いくつかの方法では、微生物組成物は、乾燥させられ、植物要素に直接適用される。
【0428】
いくつかの方法では、微生物組成物は、植物要素への適用のために液体製剤中に懸濁される。
【0429】
いくつかの方法では、微生物組成物は、限定されるものではないが、担体、湿潤剤、安定剤、塩などの別の組成物と組み合わせられる。いくつかの方法では、他の組成物は、微生物組成物が適用される植物に追加の農業的に有益な結果を導入する分子を含む。他の組成物は、例えば、除草剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺虫剤(pesticide)、殺虫剤(insecticide)、殺線虫剤、生物刺激物質を含むが、これらに限定されない。
【0430】
適用タイプ
微生物組成物は、所望の結果にとって適切な発育中の時間に、例えば、植え付け前の土壌灌注/畝間散布の製剤において、種子又は他の繁殖要素処理として、植え付け後の繁殖要素適用として、植え付け後の畝間、液滴、又は灌注適用として、植物要素(例えば、根、葉、茎)への直接適用として、収穫された植物要素(例えば、果実又は穀物)への適用として、植物要素に適用される。適用タイプの組み合わせも試験される。
【0431】
適用方法
微生物組成物は、植物又は植物要素若しくは植物生産物に(植え付け前、植え付け後、収穫前、又は収穫後に)適用(接種)される。これは、例えば、農業用組成物を、微生物組成物を含み、それを広く播種するように構成される、ホッパー又はスプレッダー又はタンクに適用することによって、達成され得る。
【0432】
微生物組成物の種子コーティングが、作物植物の1つ以上の種子に適用される。単離された微生物を種子コーティングとして適用すると、種子は、その作物について確立された慣行に従って植え付けられ、栽培される。
【0433】
代替的に、微生物組成物は、その土壌に存在する植物の利益のために土壌に適用される。土壌適用の方法には、畝間処理、灌注、及び液滴適用が含まれる。
【0434】
代替的に、微生物組成物は、発芽後の植物又は植物部位の表面に適用される。
【0435】
代替的に、微生物組成物は、収穫後に植物から取得された材料に適用される。
【0436】
単離された微生物が適用されなかった植物の制御プロットも植え付けられる。微生物組成物と関係付けられた植物は、目的の特性の改善を示す。
【0437】
適用方法は、当該技術分野で既知の任意のプロトコルに従って実施され得る。
【0438】
植物要素、植物、又は成長培地(例えば、土壌)は、試験の目的に従って、疾患又は害虫を更に接種され得る。
【0439】
トマト植物に灌注するための例示的な非限定的プロトコルが、以下に挙げられる。
1.植え付けてから10日後に、各処理のために植物を6つの横畝に慎重に分離する。植物は繊細であり、葉は容易に裂け得る。植物のサイズ及び全体的な外観が可能な限り均一であることを確実にする(間引きの目的は、均質な植物集団を継続することである)。横畝当たり十分な植物がない場合、移植する。移植のガイドラインについては、ステップ3を参照されたい。
2.ポット当たり1つの植物まで、ポットを間引きし始める。より小さい植物、不健康であるもの、又は何らかの方法で変形したものを除去する。ポット当たり2つ以上の健康な植物が存在場合、余剰分を別のポットに移植することができる。最初の植え付けから、又は種子が発芽しなかったポットから準備された残りの土壌を使用する。
3.移植するために:いくつかのポットが発芽しなかった場合、それらを別のコンテナからの植物で充填することができる。これを行うために、薬匙を用いて余分な植物を単純にすくい出し(他の植物を妨害することなく、可能な限り多くの根塊をすくい出そうとする)、空のポットに作製された穴に入れる。わずかな指圧で、植物の周囲の土を固める。
4.ポットを6つのポットライン(処理当たり1つのポットライン)に並べ、4つのRL98トレイを取る。終了すると、全ての処理を見て、数回のポット入れ替えを行うことを考慮し、いくつかの処理に全ての大きな植物がなく、他の処理に全ての大きな植物があることを確実にする。
5.必要であれば手袋を交換する。事前準備したAveryラベルで各ポットをラベル付けする。処理は、6つの複製、すなわち、1-1、1-2、1-3~1-6などの列にラベル付けされるべきである。各処理のための全ての複製を見つけることをより容易にする。
6.植え付けから2週間後(間引き及びラベル付けからおよそ4日後)に、微生物学チームから処理を取得する。準備された植物のトレイをテーブルに並べる。コンビチップ、リピーター、及びRO水を集める。(注:植物は処理日に軽く給水されるべきである)
7.チューブ/コンテナ(微生物処理)を2~3回反転させることによって微生物溶液を混合するか、又は軽く振る。コンビチップを設定して、2mlを分注する。処理流体をコンビチップの中に収集し、最初のステップをチューブの中に戻して分注する。有している処理が処理される植物の列に対応することを確実にする。確認されると、2mlの処理を各ポットの表土上に茎の近くで穏やかに分注するが、茎及び葉との直接接触を回避する。
8.コンビチップを廃棄し、全ての処理についてステップ6を繰り返す。接種された対照(IC又はInoCon)及び未処理対照(UTC)については、RO水を処理の代わりに適用する。
全ての処理が適用されると、(任意選択的な接種)、成長、評価のために植物を生育箱の中に戻して入れる。
【0440】
植物要素に付随する微生物の可視化
個々の微生物を、当該技術分野で既知の方法に従って蛍光タンパク質でタグ付けすることができる。顕微鏡画像分析は、本明細書に開示される微生物が様々な植物組織に付随して見出されることを実証した。
【0441】
実施例8:インビトロ試験
野生型株及びゲノム編集株を、根コロニー形成、アセチレン還元活性、バイオフィルム形成、濁度(600nmでのOD)、酸素耐性、及び遺伝子発現について評価した。株IDを<ParentStrain#-Edit#>として与える。別段の指定がない限り、プロトコルを、当該技術分野で既知の方法を使用して行った。結果を表3a~3kに示す。
【0442】
グラム陽性株に対するGC-FIDによるARA
全ての機器及び材料が滅菌されていることを確実にする。密封装置容器は、嫌気性チャンバーパスボックス内で包装を解いて嫌気性チャンバーに滅菌で入ることができるように、オートクレーブ処理前にホイルで包装する。滅菌前に、バイアル開口部をホイルで密封する。パスボックス内でのガス交換を許容するために緩い「密封」が必要である。
1.分離株を-80℃からストリークし、コロニーが観察されるまで30℃又は25℃でインキュベートする。
2.1分離株当たり1つのプレートを拡散し、菌叢が観察されるまで25℃又は30℃でインキュベートする。
3.プレートを採取し、各分離株のOD600をおよそ0.3にバランス調整して、接種材料を正規化する。
4.表面を浄化し、かつ密封装置を通すことによって嫌気性チャンバーを調製し、容器がガス交換を許容することを確実にする。
5.30mLのNF11/バイアルを添加する(1分離株当たり3回)。
6.滅菌水を使用して0.3のOD600にバランス調整した150uLの接種材料/バイアルを添加する。
7.バイアルを嫌気性チャンバーに通し、嫌気性条件下で密封し、QC目的のために嫌気性インジケータを追加するための空のバイアル(ホイル「キャップ」付き)を含める。
8.バイアルを30℃、200rpmで5時間置く。
9.5時間後、ヒュームフード内で作業し、各バイアルのヘッドスペースから10%(4mL)を取り除き、同体積のアセチレンガスと交換する。注記:アセチレンガスは反応性が高く爆発性であるため、作業中は袋をヒュームフードに保持すべきである。
10.30℃、200rpmで48時間インキュベートする。
11.48時間時点(又は他の既知の時点)で、1mLのヘッドスペース試料を採取し、GC収集チューブに入れる。
12.アセチレンピーク及びエチレンピープルを測定するエチレン分析用の機器方法「スプリット4」を使用して、試料をGCでランする。
13.ガスの量をピーク面積によって定量する。
14.200ulの培養液のOD600測定値及び培養液のTVCを得る。
15.エチレンガスを、アセチレンからエチレンへの変換パーセンテージとして分析する。これにより、総変換の推定値を得る。
【0443】
生成されたガス(エチレン)の体積を、Chromeleonにおける較正点を使用して、又はピーク面積%から計算することによってのいずれかにより定量することができる。この場合、アセチレン+エチレンピーク面積%は100%でなければならない。添加されるアセチレンの既知の量から、生成されたエチレンをmLで決定することができる。1Mのガスは、24dm3又は24,000mlである。したがって、1mMのガスは、24mlである。
【0444】
どのくらいのmMのエチレンが生成されたかを計算するために、量を24で割る:mM ET=ml/24。
【0445】
RATE:mM/時間/CFUを計算するために、上述のようにmMを計算し、試料採取したヘッドスペースの量を知る必要がある(較正計算を使用する場合、例えば、試料採取した1mLのヘッドスペースが×mMのガスを有するが、ヘッドスペースの合計が6mLであるため、生成された総エチレンは6×mMである)。ピーク面積%のみを使用して計算する場合、上記のステップは必要ではないが、どのくらいのアセチレンを添加したかを知る必要がある。アセチレンとのインキュベーション時間を知る必要がある。CFU/mLを計算するためにTVCを行う必要があり、次いで、CFU値に、培養したmLの数値、例えば、4mL(gneg)又は30mL(gpos)を乗じる。
【0446】
速度=総エチレンmM/(時間(時)×総CFU)
【0447】
酸素耐性試験プロトコルによるARA
全ての機器及び材料が滅菌されていることを確実にする。密封装置容器は、嫌気性チャンバーパスボックス内で包装を解いて嫌気性チャンバーに滅菌で入ることができるように、オートクレーブ処理前にホイルで包装する。滅菌前に、バイアル開口部をホイルで密封する。パスボックス内でのガス交換を許容するために緩い「密封」が必要である。
1.分離株を-80℃からストリークし、コロニーが観察されるまで30℃又は25℃でインキュベートする。
2.1分離株当たり1つのプレートを拡散し、菌叢が観察されるまで25℃又は30℃でインキュベートする。
3.プレートを採取し、各分離株のOD600をおよそ0.3にバランス調整して、接種材料を正規化する。
4.表面を浄化し、かつ密封装置を通すことによって嫌気性チャンバーを調製し、容器がガス交換を許容することを確実にする。
5.浄化後、NF11培地を嫌気性チャンバーに取り込む。20g/Lの寒天をNF11に添加し、ホットプレート上に置く。短時間煮沸して寒天を溶解する。寒天を溶解した後、30mLの加温した寒天を70mLに側面上で注ぎ、表面積を最大化して傾斜させる。
6.滅菌水を使用して0.3のOD600にバランス調整した150uLの接種材料/バイアルを添加する。接種材料に曝露した表面積を最大化するよう試みる。
7.バイアルを嫌気性チャンバーに通し、嫌気性条件下で密封し、QC目的のために嫌気性インジケータを追加するための空のバイアル(ホイル「キャップ」付き)を含める。
8.酸素レベルを調整するために、バイアルを密封した後、細い針のシリンジを取り出し、嫌気性空気の一部をビアから取り除き、100%純粋な医療用酸素で置き換える。
9.このアッセイを、0%酸素から22%酸素までの様々な酸素条件で実行しており、手動で酸素を添加することによってはるかに高い酸素条件まで増加させることができる。例えば、5%酸素を達成するために、2.2mLの嫌気性ガスを手動で取り除き、この状態で2mLの100%純粋な酸素を戻す。
10.バイアルを30℃のインキュベーター内に5時間置く。
11.5時間後、ヒュームフード内で作業し、各バイアルのヘッドスペースから10%(4mL)を取り除き、同体積のアセチレンガスと交換する。注記:アセチレンガスは反応性が高く爆発性であるため、作業中は袋をヒュームフードに保持すべきである。
12.30℃、200rpmで48時間インキュベートする。
13.48時間時点(又は他の既知の時点)で、1mLのヘッドスペース試料を採取し、GC収集チューブに入れる。
14.アセチレンピーク及びエチレンピープルを測定するエチレン分析用の機器方法「スプリット4」を使用して、試料をGCでランする。
15.ガスの量をピーク面積によって定量する。
16.エチレンガスを、アセチレンからエチレンへの変換パーセンテージとして分析する。これにより、総変換の推定値を得る。
【0448】
生成されたガス(エチレン)の体積を、Chromeleonにおける較正点を使用して、又はピーク面積%から計算することによってのいずれかにより定量することができる。この場合、アセチレン+エチレンピーク面積%は100%でなければならない。添加されるアセチレンの既知の量から、生成されたエチレンをmLで決定することができる。1Mのガスは、24dm3又は24,000mlである。したがって、1mMのガスは、24mlである。どのくらいのmMのエチレンが生成されたかを計算するために、量を24で割る:mM ET=ml/24。
【0449】
RATE:mM/時間/CFUを計算するために、上述のようにmMを計算する必要がある。試料採取したヘッドスペースの量を知る必要がある(較正計算を使用する場合、例えば、試料採取した1mLのヘッドスペースが×mMのガスを有するが、ヘッドスペースの合計が6mLであるため、生成された総エチレンは6×mMである)。ピーク面積%のみを使用して計算する場合、上記のステップは必要ではないが、どのくらいのアセチレンを添加したかを知る必要がある。アセチレンとのインキュベーション時間を知る必要がある。CFU/mLを計算するためにTVCを行う必要があり、次いで、CFU値に、培養したmLの数値、例えば、4mL(gneg)又は30mL(gpos)を乗じる。
【0450】
速度=総エチレンmM/(時間(時)×総CFU)
【0451】
根コロニー形成
細菌株を、当該技術分野で既知の技術を使用して、そのゲノム内に組み込まれたGFP遺伝子を用いて調製した。種子を株で処理し、滅菌技法を使用して、接種した種子をphytagelチューブに滴加した。チューブを適切な成長室に置き、5日間被覆して発芽させた。根組織を、EtOH並びに火炎滅菌したピンセット及び小刀を使用して、種子及びシュートから分離した。根組織を全て同じ焦点面で切断し、正方形プレート内で0.8%水寒天に同じレベルで押し付けて撮像した。シュート組織に同じことを行った。蛍光顕微鏡を使用して、植物組織を細菌コロニー形成について撮像した。
【0452】
バイオフィルムアッセイプロトコル
このプロトコルは、文献「Effects of an EPS Biosynthesis Gene Cluster of Paenibacillus polymyxa WLY78 on Biofilm Formation and Nitrogen Fixation under Aerobic Conditions”(Chen 2021)に基づいたものである。材料:滅菌3mLガラスチューブ、「バイオフィルムブロス(BFB)」培地、0.1%クリスタルバイオレット(水)溶液、40%酢酸。7日目に全体的に最良のバイオフィルム結果を得た。いくつかの分離株は、5日間にわたってより良好な結果をもたらし、この時点から分解し始める。滅菌技術を用いて調製する。
【0453】
BFBのレシピには、5g/LのKH2PO4、5g/LのK2HPO4、0.86g/Lのグルタミン酸モノナトリウム、0.1g/Lの酵母抽出物、1g/LのNH4Cl(pH7)が含まれる。オートクレーブ後の濾過滅菌:36g/Lのグルコース、0.03g/LのMgSO4.7H2O、0.02g/LのCaCl2.2H2O、1ml/Lの微量元素溶液。
【0454】
方法ステップは、以下のとおりである。
1.分離株を-80℃からストリークする。
2.各分離株の拡散プレートを作製する。
3.3mLのガラスチューブをチューブラック内でオートクレーブし(1分離株当たり3回)、ホイルをカバーとして使用する。
4.拡散プレートを採取し、OD600を約0.3にバランス調整する。
5.各チューブに1mLのBFBを充填する。
6.10uL/チューブの拡散プレート採取物を接種する。
7.ホイルカバーをチューブの上に戻し、静置状態で30℃で7日間インキュベートする。
8.7日後、最初に長い(1250uL)ピペットチップを使用してチューブから培養物を除去し、培養物を2mLのスナップキャップチューブに収集する。
9.水を培養液に添加して、最終体積1mLに到達させる。OD600測定値を取る。
10.RO水を使用してガラスチューブを洗浄し、およそ半分充填し、チューブを保持し、上部を密封し、振盪して、過剰な細胞材料を除去する。数回すすぐ。
11.長いピペットチップを使用して過剰な水を除去する。
12.1mL/チューブの0.1%クリスタルバイオレット溶液を添加し、室温で10分間インキュベートする。
13.廃棄物容器(例えば、50mLのファルコンチューブ)にピペットでクリスタルバイオレット溶液を除去し、焼却廃棄物ビンに廃棄する。
14.水が透明になるまでガラスチューブをすすぐ。
15.乾燥ガラスチューブ(通常は一晩)。
16.1mLの40%酢酸溶液を添加して、染色されたバイオフィルムリングを溶解する。
17.OD570測定値を取る。
18.OD570をOD600で正規化する(該当する場合)。
【0455】
結果
注記:表中の空白は、未試験を示す。
【0456】
(表3a)野生型(未編集)パエニバシラス属株
【0457】
(表3b)CueR C25切断
【0458】
(表3c)CueR C25切断、GlnR結合部位II不活化
【0459】
(表3d)CueRノックアウト
【0460】
(表3e)CueR KO、GlnR結合部位II不活化
【0461】
(表3f)CueR KO、GlnR結合部位II重複及び不活化
【0462】
(表3g)GlnR C25切断
【0463】
(表3h)GlnRノックアウト
【0464】
(表3i)GlnR結合部位II重複
【0465】
(表3j)GlnR結合部位II重複及び不活化
【0466】
(表3k)GlnR結合部位II不活化
【0467】
(表3l)NifHノックアウト
【0468】
これらのデータは、達成するのは困難であるが、GlnR結合部位I、GlnR結合部位II、Orf1、及び/又はCueR遺伝子座を含む微生物ゲノム内の様々な部位を改変することによって、改善された窒素固定能力をパエニバシラス属株に付与することができることを示す。
【0469】
実施例9:植物内試験
上述の編集微生物を、2つの異なるタイプの単子葉作物植物、C3単子葉植物(小麦)及びC4単子葉植物(トウモロコシ)で試験した。
【0470】
トウモロコシ植物及び小麦植物を上述の野生型微生物及び/又は編集微生物と関係付けし、温室及び大規模な実地試験で試験した。関係付けを、種子処理、葉処理、畝間散布、灌注、側方施肥のうちのいずれか1つ又はそれ以上によって達成することができる。
【0471】
トウモロコシ(corn)(トウモロコシ(maize)、トウモロコシ(Zea mays))植物の複数の複製物を本明細書に記載される微生物で処理し、少なくとも19日間(範囲19~34日間)成長させた。収集したデータには、バイオマス、葉面積、植物の高さ、根面積、シュート窒素、緑度、NDVI(可視赤色光と比較してどれだけ多くの近赤外光が反射されているかを捕捉する;ある特定の周波数で植物がどのように光を反射するかに基づく植物の健康状態の尺度)、NPCI(正規化色素クロロフィル比指数)、PSRI(植物老化反射率指数)、及びCCI(クロロフィル含有量指数)が含まれ、未処理対照と比較する。データを表4に示す。
【0472】
(表4)トウモロコシ温室データ
IOC=(未処理)対照に対する改善 デルタ=(未処理)対照に対する変化
【0473】
冬小麦(Triticum aestivum)の複数の複製物を本明細書に記載される微生物で処理し、少なくとも31日間(範囲31~47日間)成長させた。収集したデータには、バイオマス、葉面積、植物の高さ、根面積、シュート窒素、緑度、NDVI(可視赤色光と比較してどれだけ多くの近赤外光が反射されているかを捕捉する;ある特定の周波数で植物がどのように光を反射するかに基づく植物の健康状態の尺度)、NPCI(正規化色素クロロフィル比指数)、PSRI(植物老化反射率指数)、及びCCI(クロロフィル含有量指数)が含まれ、未処理対照と比較する。データを表5に示す。
【0474】
(表5)小麦温室データ
IOC=(未処理)対照に対する改善 デルタ=(未処理)対照に対する変化
【0475】
種子処理したトウモロコシの4つの別個の実地試験を植え、各々の試験が異なる窒素肥料レジームを有した。試験1は、正常な窒素入力を有し、試験2、3、及び4は、減少した窒素入力を有した(-50ポンド/面積)。試験パラメータ:処理:18(4~6×6のラテン方格試験)、複製物:6つ、設計:ラテン方格(4)、プロットサイズ:幅4列(10フィート)、長さ40~50フィート。
【0476】
畝間処理したトウモロコシの4つの別個の実地試験を植え、各々の試験が異なる肥料レジームを有した。試験1は、正常な窒素入力を有し、試験2、3、及び4は、減少した窒素入力を有した(-50ポンド/面積)。処理:12(2~6×6のラテン方格試験)、複製物:6つ、設計:ラテン方格、プロットサイズ:幅4列(10フィート)、長さ40~50フィート。データを表6に示す。
【0477】
(表6)トウモロコシの実地試験データ
【0478】
種子処理した冬小麦(10の試験場所)及び種子処理した春小麦(22の試験場所)の実地試験を植え、各々の試験は異なる肥料レジームを有した。試験1(処理ID正常窒素)を、標準の農業慣行を使用して施肥し、試験2及び試験3(処理ID低窒素)には試験1に適用した窒素の50%を与えた。データを、表7(冬小麦)及び表8(春小麦)に示す。
【0479】
(表7)冬小麦の実地試験データ
【0480】
(表8)春小麦の実地試験データ
【0481】
これらのデータは、達成するのは困難であるが、植物の改善のために、GlnR結合部位I、GlnR結合部位II、Orf1、及び/又はCueR遺伝子座を含む微生物ゲノム内の様々な部位を改変することによって、改善された窒素固定能力をパエニバシラス属株に付与することができることを示す。
【配列表】
2024513756000001.app
【国際調査報告】