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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】グリカン媒介タンパク質分解
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240319BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C07K16/46
A61P37/06
A61P35/00
A61P1/16
A61P29/00
A61P7/04
A61P5/14
A61P43/00 111
A61P21/04
A61P17/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P13/12
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558417
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022057556
(87)【国際公開番号】W WO2022200390
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,963
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523360197
【氏名又は名称】グリコエラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アミレザ ファリドモアヤー
(72)【発明者】
【氏名】レイナー フォラドール
(72)【発明者】
【氏名】マニュエラ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アルバート バック
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA50
4H045FA70
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、グリカン媒介分解のための糖鎖改変二機能性結合タンパク質を提供する。そのようなグリカン修飾は、現在の治療を改善し、患者にとってより良好な生活の質を可能にするであろう。したがって、そのような糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、さまざまな疾患を治療及び予防するために有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患に関連する標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に特異的に結合する第2の部分であって、グリカン構造を含む前記第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項2】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GlcNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項3】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GalNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項4】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端Galを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項5】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、
【化1】
四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項6】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、
【化2】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、Xは前記二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項7】
標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、
【化3】
白い丸はガラクトース(Gal)残基を表し、四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)残基を表し、Xは前記二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項8】
糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、前記二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化4】
前記N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項9】
近位GlcNAcの前記N-グリカンの任意の分岐構造も含み得る、請求項8に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項10】
GlcNAc残基がフコシル化されている、請求項8に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項11】
前記末端N-グリカンがGlcNAcからなる、請求項8に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項12】
糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、前記二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化5】
前記N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項13】
近位GlcNAcの前記N-グリカンの任意の分岐構造も含み得る、請求項12に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項14】
GlcNAc残基がフコシル化されている、請求項12に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項15】
前記末端N-グリカンがGalNAcからなる、請求項12に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項16】
糖鎖改変二機能性結合タンパク質であって、前記二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化6】
前記N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項17】
近位GlcNAcの前記N-グリカンの任意の分岐構造も含み得る、請求項16に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項18】
GlcNAc残基がフコシル化されている、請求項16に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項19】
前記末端N-グリカンがGalからなる、請求項16に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項20】
前記アミノ酸残基がAsnである、請求項5~9のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項21】
前記タンパク質は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のN-グリカン構造を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項22】
前記グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項23】
前記グリカン構造がGlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項22に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項24】
前記グリカン構造がGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項22に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項25】
前記グリカン構造がGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項22に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項26】
前記二機能性タンパク質は、抗体またはその断片であり、かつ重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項27】
前記二機能性タンパク質は、抗体またはその断片であり、かつFab断片を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項28】
前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質が抗体である、請求項1~25のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項29】
前記抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項28に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項30】
前記抗体が組換え体である、請求項28に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項31】
前記抗体がヒト化抗体、キメラ抗体、または完全ヒト抗体である、請求項28に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項32】
前記抗体が、2対1、4対1、6対1、8対1、または10対1のグリカン対タンパク質の比を有する、請求項28に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項33】
前記抗体が、所定の特定の残基でグリコシル化されている、請求項28に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項34】
前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、自己抗体に結合し、自己抗原またはその免疫原性断片を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項35】
与えられた糖鎖部位のグリカンの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同じである、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団。
【請求項36】
前記標的タンパク質が細胞表面分子または非細胞表面分子である、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項37】
前記細胞表面分子が受容体である、請求項36に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項38】
前記非細胞表面分子が細胞外タンパク質である、請求項36に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項39】
前記細胞外タンパク質が、自己抗体、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、血液タンパク質、または中枢神経系(CNS)タンパク質である、請求項38に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項40】
前記標的タンパク質が前記第1の部分によって結合される、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項41】
疾患に関連する前記標的タンパク質が、非疾患状態と比較して前記疾患においてアップレギュレートされている、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項42】
疾患に関連する前記標的タンパク質が、非疾患状態と比較して前記疾患において発現されている、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項43】
疾患に関連する前記標的タンパク質が、がんの進行に関与している、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項44】
前記疾患に関連する前記標的タンパク質は、TNFα、HER2、EGFR、HER3、VEGFR、CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2、Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、CD38、CD73、またはTGF-β、ボンベシンR、CAIX、CD13、CD44、v6、エンプリン、エンドグリン、EpCAM、EphA2、FAP-α、葉酸R、GRP78、IGF-1R、マトリプターゼ、メソテリン、sMET/HGFR、MT1-MMP、MT6-MMP、PSCA、PSMA、Tn抗原、及びuPAR、TSHRα、MOG、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、またはGPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン及びガングリオシドGM1、GD3、GQ1B、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CXCL12、CSF-1、CD47、凝集軽鎖または凝集トランスサイレチンを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項45】
前記自己免疫疾患に関連する前記標的タンパク質は、TSHRα、MOG、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、またはGPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、またはガングリオシドGM1、GD3またはGQ1Bに結合する抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項46】
前記エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質及び受容体は、DC-SIGN、L-SIGN、LSECTin、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)、マンノース-6-リン酸受容体、ミンクル、デクチン-1、デクチン-2、ランゲリン、カチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CI-MPR)、マクロファージマンノース受容体2、BDCA-2、MGL、MDL、MICL、CLEC2、DNGR1、またはCLEC12Bを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項47】
前記疾患ががんを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項48】
前記疾患が自己免疫疾患を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質。
【請求項49】
標的タンパク質を肝細胞エンドソームに送達する方法であって、前記標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で、前記標的タンパク質を請求項1~48のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質と接触させることを含む、前記方法。
【請求項50】
前記タンパク質上のグリカン構造の数を増加させると、送達速度が増加する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
グリカン構造の数は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記グリカン構造がGlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記グリカン構造がGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記グリカン構造がGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
標的タンパク質を分解する方法であって、宿主細胞による前記標的タンパク質のリソソーム分解を媒介する条件下で、前記標的タンパク質を請求項1~48のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質と接触させることを含む、前記方法。
【請求項57】
前記タンパク質上のグリカン構造の数を増加させると、リソソーム分解の速度が増加する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
グリカン構造の数は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記グリカン構造がGlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記グリカン構造がGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記グリカン構造がGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記標的タンパク質は、がんにおいてアップレギュレートされるか、またはがんの進行に関与する、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
がんにおいてアップレギュレートされる、またはがんの進行に関与する前記標的タンパク質は、TNFα、HER2、EGFR、HER3、VEGFR CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2、Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、LILRB1、LILRB2、CD38、CD73、またはTGF-βを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記標的タンパク質が自己免疫疾患における自己抗体である、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記標的タンパク質が自己免疫疾患における自己抗原である、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
前記自己免疫疾患における前記自己抗体は、TSHRα、MOG、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、GPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、またはガングリオシドGM1、GD3またはGQ1Bに結合する抗体である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記標的タンパク質が神経変性疾患においてアップレギュレートまたは発現される、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
神経変性疾患においてアップレギュレートまたは発現される前記標的タンパク質は、α-シヌクレイン、アミロイドβ、または補体カスケード成分である、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
前記宿主細胞は、肝臓細胞、骨髄細胞、免疫細胞、内皮細胞、実質細胞、または上皮細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項71】
前記免疫細胞は、樹状細胞、マクロファージ、単球、ミクログリア細胞、顆粒球またはBリンパ球である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記宿主細胞が任意の細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項73】
前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、異なる第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質の存在下での前記標的タンパク質の分解と比較して、前記標的タンパク質の分解を増強する、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
前記分解が、エンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスによって媒介される、請求項56に記載の方法。
【請求項75】
請求項1~48のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項76】
患者において疾患を治療または予防する方法であって、前記患者に、請求項1~48のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性タンパク質、または請求項75に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項77】
前記疾患は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液凝固障害である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記自己免疫疾患は、バセドウ病、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、自己免疫性脳炎、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記がんは、肺癌(小細胞または非小細胞)、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、悪性黒色腫、脳癌(例えば、星状細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫など)、骨癌(骨肉腫など)、子宮頸癌、胆管癌、消化管癌(例えば、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌など)、頭頸部癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌(肝細胞癌など)、中皮腫、上咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、紡錘細胞癌、精巣癌、甲状腺癌、または子宮癌(子宮内膜癌など)から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
治療は、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で前記二機能性結合タンパク質を投与することによって腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラミングすることを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記標的タンパク質がTAMにおいてアップレギュレートまたは発現される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される前記標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CCL2、CXCL12、CSF-1またはCD47を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記投与ステップが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項84】
請求項1~48のいずれか1項に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質、または請求項75に記載の医薬組成物、及び前記糖鎖改変二機能性分子または医薬組成物をそれを必要とする個体に投与するための説明書を含む、キット。
【請求項85】
前記糖鎖改変二機能性結合タンパク質または医薬組成物は、1つ以上の単位用量で存在する、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に特異的に結合することができる二重特異性結合タンパク質であって、前記タンパク質は、(i)下記の構造のN-グリカンであって、
【化7】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはタンパク質中のアミノ酸残基を表す、前記N-グリカンを含み、(ii)標的タンパク質に特異的に結合する、前記二重特異性結合タンパク質。
【請求項87】
二機能性結合タンパク質を投与することを含む、対象において標的タンパク質を分解する方法であって、前記二機能性結合タンパク質は、前記標的タンパク質に特異的に結合し、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合可能な二分岐GalNAcを含む、前記方法。
【請求項88】
前記二機能性結合タンパク質が二分岐GalNAcを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記二分岐GalNAcが下記の構造を有し、
【化8】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはアミノ酸残基を表す、請求項87または88に記載の方法。
【請求項90】
標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、前記二機能性結合タンパク質は、(i)前記標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、前記N-グリカンは、前記患者における前記標的タンパク質の半減期が最大15分、30分、45分、60分、90分、または最大2時間であるように、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記方法。
【請求項91】
標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、前記二機能性結合タンパク質は、(i)前記標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、前記N-グリカンは、半減期が、前記二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、前記患者における前記標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記方法。
【請求項92】
標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、前記方法は、二機能性結合タンパク質を投与することを含み、前記二機能性結合タンパク質は、(i)前記標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造を有するN-グリカンを含み、
【化9】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはタンパク質中のアミノ酸残基を表し、かつ前記投与ステップ後の前記患者における前記標的タンパク質の半減期が、最大15分、30分、45分、60分、90分、または最大2時間である、前記方法。
【請求項93】
前記二機能性結合タンパク質は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、前記方法は、二機能性結合タンパク質を投与することを含み、前記二機能性結合タンパク質は、(i)前記標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、前記N-グリカンは、前記患者における前記二重特異性タンパク質の半減期が少なくとも12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日であるように、最大で1つまたは2つの糖鎖部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記方法。
【請求項95】
標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に先行請求項のいずれか1項に記載の二機能性結合タンパク質を投与することを含み、前記二機能性結合タンパク質は、(i)前記標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、前記N-グリカンは、半減期が、前記二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、前記患者における前記標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、最大で1つまたは2つの糖鎖部位で前記二機能性結合タンパク質に連結される、前記方法。
【請求項96】
前記二機能性結合タンパク質は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記慢性症状は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液凝固障害である、請求項90~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記自己免疫疾患は、バセドウ病、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、自己免疫性脳炎、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記がんが、肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、及びホジキンリンパ腫から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
治療は、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で前記二機能性結合タンパク質を投与することによって腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラミングすることを含む、請求項86~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記標的タンパク質がTAMにおいてアップレギュレートまたは発現される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される前記標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CCL2、CXCL12、CSF-1またはCD47を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記投与ステップが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む、請求項86~102のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年3月23日に出願された米国仮特許出願第63/164,963号の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、さまざまなグリコシル化プロファイルを有する糖鎖改変二機能性結合タンパク質及びそのリソソーム標的化に関する。
【背景技術】
【0003】
エンドサイトーシスレクチンは、特定のグリカン構造を介してグリコシル化タンパク質を捕捉して分解を媒介することにより、受容体媒介エンドサイトーシスに関与している(Cummings et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(2017)。エンドサイトーシスレクチンは人間の体内に遍在しており、さまざまなグリカン構造を認識できる。
【0004】
炭水化物結合受容体は非常に多様であり、糖鎖工学によって利用して、炎症、血液疾患、自己免疫、がんなどを含むがこれらに限定されないさまざまな疾患に対して前例のない有効性をもつ新規治療薬を開発することができる。これにより、グリカン媒介タンパク質分解の概念に基づく新規治療薬の開発が可能になる。モノクローナル抗体のグリコシル化による自然なタンパク質分解を利用することで、新規治療法が得られる可能性がある。N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、またはガラクトース(Gal)を含むグリカン(例えば、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc1Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc1Man3GlcNAc2、またはGal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2)のタンパク質上の結合が、レクチンによる効率的な結合を引き起こし、リソソーム分解を媒介できるか否か、またはその程度はこれまで記載されていない。本発明は、特定のグリカン媒介タンパク質分解に関する新規な発見を示す。
【0005】
本明細書で提供される組成物及び方法は、モノクローナル抗体などのグリコシル化タンパク質で治療される、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、及び感染症などのさまざまな難治性疾患に苦しむ患者の満たされていない医療ニーズに対処し、関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、疾患に関連する標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質及び受容体に特異的に結合する第2の部分であって、グリカン構造を含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0007】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GlcNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0008】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GalNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0009】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端Galを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0010】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化1】
【0011】
四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化2】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。
【0012】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化3】
白い丸はガラクトース(Gal)残基を表し、四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。
【0013】
一態様では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化4】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGlcNAc2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGlcNAc2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0014】
一態様では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化5】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGalNAc2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGalNAc2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0015】
一態様では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化6】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGal2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGal2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0016】
特定の実施形態では、近位GlcNAc(糖鎖改変二機能性結合タンパク質に融合したGlcNAc)のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。特定の実施形態では、近位GlcNAcはフコシル化され得る。特定の実施形態では、N-グリカンは、上記に示した構造のいずれか1つからなる。
【0017】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のグリカン構造を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0020】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc1Man3GlcNAc2である。
【0021】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0022】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc1GlcNAc1Man3GlcNAc2である。
【0023】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal1 GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0024】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal1GlcNAc1Man3GlcNAc2である。
【0025】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0026】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の部分は、分化クラスター206(CD206)受容体、DC-SIGN(分化クラスター209またはCD209)受容体、C型レクチンドメインファミリー4メンバーG(LSECTin)受容体、またはマクロファージ誘導性Ca2+依存性レクチン受容体(Mincle)に特異的に結合する。
【0028】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の第2の部分は、Man3GlcNAc2構造を認識する任意のエンドサイトーシス炭水化物結合受容体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、二機能性結合タンパク質の第2の部分は、ランゲリン、マクロファージマンノース2受容体、デクチン-1、デクチン-2、BDCA-2、DCIR、MBL、MDL、MICL、CLEC2、DNGR1、CLEC12B、DEC-205、アシアロ糖タンパク質受容体(ASPGR)、及びマンノース6リン酸受容体に特異的に結合する。
【0029】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の第1の部分は、重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の第1の部分は、モノクローナル抗体のFab領域を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は組換え体である。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、または完全ヒト抗体である。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗体は、2対1、4対1、6対1、8対1、または10対1のグリカン対タンパク質の比を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、所定の特定の残基でグリコシル化される。
【0033】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、自己抗原である。
【0034】
いくつかの実施形態では、二機能性結合タンパク質のグリカンの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が同じグリカン構造を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、細胞表面分子または非細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、細胞表面分子は受容体である。いくつかの実施形態では、非細胞表面分子は細胞外タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞外タンパク質は、自己抗体、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、血液タンパク質、または中枢神経系(CNS)タンパク質である。
【0036】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、第1の部分によって結合される。
【0037】
いくつかの実施形態では、グリカン構造は、Man3GlcNAc、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質及び受容体は、マンノース3受容体、マンノース結合受容体(CD206)、DC-SIGN、L-SIGN、LSECTin、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)、スカベンジャー受容体C型レクチン(SRCL)、マンノース-6-リン酸受容体、ミンクル、デクチン-1、デクチン-2、ランゲリン、カチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CI-M6PR)、マクロファージマンノース受容体2、BDCA-2、ヒトマクロファージガラクトースレクチン(MGL)、c型レクチンドメインファミリー5、メンバーA(CLEC5AまたはMDL)、骨髄抑制性c型レクチン様受容体(MICL)、c型レクチン様受容体2(CLEC2)、樹状細胞ナチュラルキラーレクチングループ受容体1(DNGR1)、またはc型レクチンドメインファミリー12、メンバーB(CLEC12B)を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、疾患はがんを含むか、またはがんの進行に関与する。いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患を含む。いくつかの実施形態では、疾患はアミロイドーシスを含む。いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスであり得る。いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは局所性アミロイドーシスであり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、非疾患状態と比較して疾患においてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、非疾患状態と比較して疾患において発現される。
【0041】
いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、TNFα、HER2、EGFR、HER3、VEGFR、CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2、Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、CD38、CD73、TGF-β、ボンベシンR、CAIX、CD13、CD44v6、エンプリン、エンドグリン、EpCAM、FAP-α、葉酸R、GRP78、IGF-1R、マトリプターゼ、メソテリン、sMET/HGFR、MT1-MMP、MT6-MMP、PSCA、PSMA、Tn抗原、及びuPAR、TSHRα、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、またはGPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン及びガングリオシドGM1、GD3、GQ1B、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CXCL12、CSF-1、CD47、凝集軽鎖または凝集トランスサイレチンを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患に関連する標的タンパク質は、TSHRα、MOG、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、またはGPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、またはガングリオシドGM1、GD3またはGQ1Bに結合する抗体である。
【0043】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)においてアップレギュレートまたは発現される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍微小環境におけるTAMの動員に関連している。他の実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍微小環境におけるTAMの枯渇に関連している。さらなる実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍微小環境におけるTAMの再プログラミングに関連している。
【0044】
いくつかの実施形態では、TAMに関連する標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、またはCXCR4を含む。他の実施形態では、TAMに関連する標的タンパク質は、CCL2、CXCL12、CSF-1、またはCD47を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質及び受容体は、DC-SIGN、L-SIGN、LSECTin、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)、マンノース-6-リン酸受容体、ミンクル、デクチン-1、デクチン-2、ランゲリン、カチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CI-MPR)、マクロファージマンノース受容体2、BDCA-2、MGL、MDL、MICL、CLEC2、DNGR1、またはCLEC12Bを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、疾患はがんを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患を含む。
【0048】
一態様では、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で、標的タンパク質を本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質と接触させることを含む、標的タンパク質を肝細胞エンドソームに送達する方法が本明細書で提供される。
【0049】
いくつかの実施形態では、タンパク質上のグリカン構造の数により、送達速度を増加させる。
【0050】
いくつかの実施形態では、グリカン構造の数は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0053】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0054】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0055】
一態様では、宿主細胞による標的タンパク質のリソソーム分解を媒介する条件下で、標的タンパク質を本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質と接触させることを含む、標的タンパク質を分解する方法が本明細書で提供される。
【0056】
いくつかの実施形態では、タンパク質上のグリカン構造の数により、リソソーム分解の速度を増加させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、グリカン構造の数は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0060】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0061】
いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0062】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、がんにおいてアップレギュレートされるか、またはがんの進行に関与する。いくつかの実施形態では、がんにおいてアップレギュレートされる、またはがんの進行に関与する標的タンパク質は、HER2、EGFR、HER3、VEGFR CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2、Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、CD38、CD73、またはTGF-βを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は自己免疫疾患の自己抗体である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は自己免疫疾患の自己抗原である。
【0064】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患における自己抗体は、TSHRα、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、GPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、またはガングリオシドGM1、GD3またはGQ1Bに結合する抗体である。
【0065】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、神経変性疾患においてアップレギュレートまたは発現される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患においてアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質は、α-シヌクレイン、アミロイドβ、または補体カスケード成分である。
【0066】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、アミロイドーシスにおいてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスであり得る。他の実施形態では、アミロイドーシスは局所性アミロイドーシスであり得る。いくつかの実施形態では、全身性アミロイドーシスにおいてアップレギュレートされるタンパク質は、トランスサイレチンであり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、肝臓細胞、骨髄細胞、免疫細胞、内皮細胞、実質細胞、または上皮細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞、マクロファージ、単球、ミクログリア細胞、顆粒球またはBリンパ球である。
【0068】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、任意の細胞である。
【0069】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、異なる第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質の存在下での標的タンパク質の分解と比較して、標的タンパク質の分解を増強する。
【0070】
いくつかの実施形態では、分解は、エンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスによって媒介される。
【0071】
一態様では、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0072】
一態様では、患者の疾患を治療または予防する方法であって、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質、または本明細書に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、疾患は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液凝固障害である。
【0074】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、バセドウ病、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患(MOGAD)、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、自己免疫性脳炎、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、血液由来のがんまたは腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは癌腫または肉腫であり得る。いくつかの実施形態では、がんは、肺癌(小細胞または非小細胞)、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、悪性黒色腫、脳癌(例えば、星状細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫など)、骨癌(骨肉腫など)、子宮頸癌、胆管癌、消化管癌(例えば、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌など)、頭頸部癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌(肝細胞癌など)、中皮腫、上咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、紡錘細胞癌、精巣癌、甲状腺癌、または子宮癌(子宮内膜癌など)から選択される。特定の実施形態では、がんは、以前の治療後に再発したもの、または従来の治療に抵抗性のものであり得る。特定の実施形態では、がんは播種性または転移性であり得る。いくつかの実施形態では、血液由来のがんまたは腫瘍は、白血病、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)から選択される。特定の実施形態では、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病及び急性骨髄芽球性白血病である。
【0076】
いくつかの実施形態では、治療は、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で二機能性結合タンパク質を投与することによって腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラミングすることを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される。
【0078】
いくつかの実施形態では、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CCL2、CXCL12、CSF-1またはCD47を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、投与ステップは、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む。
【0080】
一態様では、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質、または本明細書に記載の医薬組成物、及び糖鎖改変二機能性分子または医薬組成物をそれを必要とする個体に投与するための説明書を含む、キットが本明細書で提供される。
【0081】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質または医薬組成物は、1つ以上の単位用量で存在する。
【0082】
一態様では、本明細書で提供されるのは、二機能性結合タンパク質を投与することを含む、対象において標的タンパク質を分解する方法であって、二機能性結合タンパク質は、標的タンパク質に特異的に結合し、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合可能な二分岐GalNAcを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、二機能性結合タンパク質は二分岐GalNAcを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、二分岐GalNAcは下記の構造を有し、
【化7】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはアミノ酸残基を表す。
【0085】
一態様では、本明細書に提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、患者における標的タンパク質の半減期が最大15分、30分、45分、60分、90分、または最大2時間であるように、1つ、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0086】
一態様では、本明細書で提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、半減期が、二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、患者における標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、1つ、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0087】
いくつかの実施形態では、N-グリカンはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合し、N-グリカンは下記の構造を有し、
【化8】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはアミノ酸残基を表す。
【0088】
いくつかの実施形態では、二機能性結合タンパク質は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0089】
一態様では、本明細書に提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、患者における標的タンパク質の半減期が少なくとも12時間、1日、2日、または3日であるように、最大で1つ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0090】
一態様では、本明細書で提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、半減期が、二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、患者における標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、1つ、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0091】
いくつかの実施形態では、N-グリカンはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合し、N-グリカンは、下記の構造を有する二分岐GalNAcであり、
【化9】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)を表し、Xはアミノ酸残基を表す。
【0092】
いくつかの実施形態では、二機能性結合タンパク質は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、慢性症状は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液凝固障害である。
【0094】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、バセドウ病、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、自己免疫性脳炎、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、血液由来のがんまたは腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは癌腫または肉腫であり得る。いくつかの実施形態では、がんは、肺癌(小細胞または非小細胞)、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、悪性黒色腫、脳癌(例えば、星状細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫など)、骨癌(骨肉腫など)、子宮頸癌、胆管癌、消化管癌(例えば、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌など)、頭頸部癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌(肝細胞癌など)、中皮腫、上咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、紡錘細胞癌、精巣癌、甲状腺癌、または子宮癌(子宮内膜癌など)から選択される。特定の実施形態では、がんは、以前の治療後に再発したもの、または従来の治療に抵抗性のものであり得る。特定の実施形態では、がんは播種性または転移性であり得る。いくつかの実施形態では、血液由来のがんまたは腫瘍は、白血病、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)から選択される。特定の実施形態では、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病及び急性骨髄芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、治療は、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で二機能性結合タンパク質を投与することによって腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラミングすることを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される。
【0097】
いくつかの実施形態では、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CCL2、CXCL12、CSF-1またはCD47を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、投与ステップは、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】グリカン媒介分解を含む、治療に使用できるグリカン媒介作用様式の例を示す。
【0100】
図2】肝細胞におけるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介した細胞外タンパク質の分解を示す。
【0101】
図3】アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介したグリカン媒介タンパク質分解を示す。
【0102】
図4】Fab上にA2GalNAc2グリカンを表示する抗体がHepG2細胞に高度に内部移行されることを示す。HepG2細胞をpHrodo標識抗体とともに4時間インキュベートした。グラフは、三重値のpHrodoの平均調整平均蛍光強度(MFI)±平均の標準誤差(SEM)を示す。グラフは、3つの代表的な実験のうち1つからのデータを示す。
【0103】
図5】HepG2細胞によるFab上のA2GalNAc2グリカンを表示する抗体の内部移行がASGPRによって媒介されることを示す。HepG2細胞を、pHrodo標識抗体(3μg/ml)及び指定の阻害剤とともに3時間インキュベートした。グラフは、2つの独立した実験の平均及び個別に調整されたpHrodo MFIを示す。黒い丸:阻害剤なし。黒い三角:フェツイン。白抜きの四角:アシアロフェツイン。黒い菱形:EGTA。白抜きの丸:クロロキン。白抜きの三角:バフィロマイシン。
【0104】
図6】A2グリカン構造を表示する抗体が、そのFabグリカンの表示数に応じて、ラットの血液循環から標的抗原を強力に除去することを示す。ラットにHCA202(0.5mg/kg)及び抗体10mg/kgを静脈(i.v.)注射した。グラフは、1群あたり3匹または4匹の動物のHCA202血清濃度の平均±標準偏差(SD)をng/mlで示す。黒い丸は、H-A2F(アダリムマブ、Humira)治療群を示す。白抜きの四角は、A-84-A2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2治療群を示す。黒い四角は、A-8486-A2G2S2治療群を示す。白抜きの丸は、PBS治療群(HCA202のみ)を示す。白抜きの菱形と点線は、A-M3治療群を示す。グラフ表示では、HCA202レベルが、必要最小限の10倍希釈(MRD10)でアッセイ定量下限(LLOQ)(点線のLLOQ/MRD10線=20ng/ml)を下回った場合、19ng/mlとした。
【0105】
図7】A2G2グリカン構造を表示する抗体が、そのFabグリカンの表示数に応じて、ラットの血液循環から標的抗原を強力に除去することを示す。ラットにHCA202(0.5mg/kg)及び抗体10mg/kgを静脈注射した。グラフは、1群あたり3匹または4匹の動物のHCA202血清濃度の平均±SDをng/mlで示す。黒い丸は、H-A2F(アダリムマブ、Humira)治療群を示す。白抜きの四角は、A-84-A2G2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2G2治療群を示す。黒い四角は、A-8486-A2G2S2治療群を示す。白抜きの丸は、PBS治療群(HCA202のみ)を示す。白抜きの菱形と点線は、A-M3治療群を示す。グラフ表示では、HCA202レベルがアッセイLLOQ(点線のLLOQ/MRD10線=20ng/ml)を下回った場合、19ng/mlとした。
【0106】
図8】A2GalNAc2グリカン構造を表示する抗体が、ラットの血液循環から標的抗原を強力に除去することを示す。ラットにHCA202(0.5mg/kg)及び抗体10mg/kgを静脈注射した。グラフは、1群あたり3匹または4匹の動物のHCA202血清濃度の平均±SDをng/mlで示す。黒い丸は、H-A2F(アダリムマブ、Humira)治療群を示す。白抜きの四角は、A-84-A2GalNAc2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2GalNAc2治療群を示す。黒い四角は、A-8486-A2G2S2治療群を示す。白抜きの丸は、PBS治療群(HCA202のみ)を示す。白抜きの菱形と点線は、A-M3治療群を示す。グラフ表示では、HCA202レベルがアッセイLLOQ(点線のLLOQ/MRD10線=20ng/ml)を下回った場合、19ng/mlとした。
【0107】
図9】Fab上にA2G2グリカン構造を表示する抗体が、対照抗体と比較して肝臓領域に分布していることを示す。マウスに5mg/kgのCF750標識抗体を静脈注射し、蛍光断層撮影法を用いて画像化した。グラフは、ゲートされた関心のある肝臓領域における3匹の動物/時点の平均蛍光をpmol±SDで示す。白抜きの四角と点線は、Ptz-A2F治療群を示す。黒い丸は、H-A2F治療群を示す。白抜きの菱形は、A-84865-A2G2S2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2G2治療群を示す。
【0108】
図10】A2GalNAc2グリカン構造を表示する抗体が、対照抗体と比較して速い速度で肝臓領域に分布することを示す。マウスに5mg/kgのCF750標識抗体を静脈注射し、蛍光断層撮影法を用いて画像化した。グラフは、ゲートされた関心のある肝臓領域における3匹の動物/時点の平均蛍光をpmol±SDで示す。白抜きの四角と点線は、Ptz-A2F治療群を示す。黒い丸は、H-A2F治療群を示す。白抜きの菱形は、A-84865-A2G2S2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2G2治療群を示す。
【0109】
図11】A2グリカン構造を表示する抗体が、対照抗体と比較して速い速度で肝臓領域に部分的に分布することを示す。マウスに5mg/kgのCF750標識抗体を静脈注射し、蛍光断層撮影法を用いて画像化した。グラフは、ゲートされた関心のある肝臓領域における3匹の動物/時点の平均蛍光をpmol±SDで示す。白抜きの四角と点線は、Ptz-A2F治療群を示す。黒い丸は、H-A2F治療群を示す。白抜きの菱形は、A-84865-A2G2S2治療群を示す。黒い三角は、A-8486-A2治療群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本明細書には、対照抗体と比較して改善された機能性を有する糖鎖改変二機能性結合タンパク質(例えば、GlcNAcグリコシル化二機能性結合タンパク質)が記載される。本明細書に例示されるように、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上にグリコシル化部位を導入することによって操作され、その結果、糖鎖改変二機能性結合タンパク質及びそれが結合する標的のエンドサイトーシス受容体分解を媒介する、操作されたグリコシル化プロファイルが得られる。N-グリコシル化をカスタマイズすることにより、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1)均一なグリコシル化を有する、2)免疫複合体などの大きな標的を分解できる、3)定義されたリガンド対抗体比を有する、4)定義されたグリコシル化部位を有する、6)より多様で強力な分解受容体を活性化できる、及び/または6)高度に最適化された方法でタンパク質の分解に関与できる。
【0111】
理論に束縛されるものではないが、エンドサイトーシスの炭水化物結合タンパク質及び受容体とグリカンの結合により、さまざまな生物学的経路を可能にする。これらの重要な生物学的経路は、免疫応答の調節、タンパク質クリアランスの媒介、タンパク質代謝回転、可溶性糖タンパク質、糖脂質、及びグリカン部分を含む天然分子の輸送の制御に関与している。グリカンと受容体の相互作用は、グリカンの構造によって決定される。グリカン結合受容体は非常に多様であり、糖鎖工学によって、炎症性疾患、血液疾患、自己免疫疾患、感染症、がんなどを含むがこれらに限定されないさまざまな疾患を治療するために、グリカン媒介タンパク質分解の概念に基づく新規治療薬を開発するために利用することができる。
【0112】
レクチン受容体は、グリカン媒介エンドサイトーシスに関与する。具体的には、レクチンは特定のグリカン構造を介して糖タンパク質を捕捉し、リソソーム分解を媒介する。これらのエンドサイトーシスレクチンはヒトの体内に遍在しており、さまざまな細胞上で見出される。
【0113】
本明細書で使用される場合、「グリカン」という用語は、N-グリカンを指し得る。特定の構造に基づいて、当業者は、特定のグリカンがN-結合型グリカンであるかどうかを知ることができる。
【0114】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、自然の分解経路を活性化すると予想される。したがって、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、ヒトの疾患に関連する標的タンパク質を減少させることが期待される。さらに、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、本明細書に記載されるように、GlcNAcグリコシル化抗体であり得る。
【0115】
「約」という用語は、数値と併せて使用される場合、参照される数値の±1、±5、または±10%以内の任意の数値を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、動物(例えば、鳥類、爬虫類、及び哺乳動物)を指す。別の実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)及び霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含む哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒト以外の動物である。いくつかの実施形態では、対象は、家畜またはペット(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ロバ、またはニワトリ)である。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において交換可能に使用され得る。
【0117】
「α[数字]」、「α[数字],[数字]」、「β[数字]」、または「β[数字],[数字]」という略語は、炭水化物残基を別の基に結合する共有結合であるグリコシド結合またはグリコシド連結を指す。α-グリコシド結合は、両方の炭素が同じ立体化学を有する場合に形成されるが、β-グリコシド結合は、2つの炭素が異なる立体化学を有する場合生じる。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「糖鎖工学」、「糖鎖改変(された)」、またはそれらの等価物は、標的タンパク質をグリコシル化するプロセス、またはそのようなプロセスによって作製された標的タンパク質(例えば、二機能性結合タンパク質)をグリコシル化するプロセスを意味し、このプロセスは、標的タンパク質のグリコシル化を提供する1つ以上の酵素(例えば、経路)を有するin vivo宿主細胞系を使用する。このような宿主細胞系は、特定のグリカン構造を有する標的タンパク質を選択的にグリコシル化するグリコシル化経路を導入するように遺伝子操作することができる。糖鎖改変標的タンパク質を生成するために使用される宿主細胞には、例えば、標的タンパク質をコードする組換え核酸、及び異種糖転移酵素をコードする組換え核酸が含まれ得る。糖鎖工学(例えば、糖鎖改変タンパク質の生成)に使用される宿主細胞系は、N-結合型グリコシル化を導入することができる。糖鎖工学または糖鎖改変標的タンパク質の生成に使用される宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、微細藻類、または原生動物であり得る。糖鎖工学に使用される原生動物は、Leishmaniaの一種であり得る。糖鎖改変標的タンパク質には、宿主細胞系で生成されたときに1つ以上の特定の部位で選択的にグリコシル化されるように操作された標的タンパク質も含まれる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「糖鎖部位」または「グリコシル化部位」という用語は、タンパク質におけるグリコシル化の部位を指す。このような糖鎖部位は、タンパク質のアミノ酸配列中に天然に存在してもよく、アミノ酸の付加、または置換、または欠失によってタンパク質に組換え操作してもよい。特定の実施形態では、糖鎖部位は、本明細書に記載の二機能性タンパク質に融合した、いわゆるグリコタグ内に存在する。特定の実施形態では、グリコタグをタンパク質に融合させて、二重特異性結合タンパク質を作製する。本明細書で使用される場合、グリコタグは、タンパク質またはポリペプチドのN末端もしくはC末端、あるいは両方の末端に融合したコンセンサスN-グリコシル化部位配列を含むペプチドを指す。いくつかの実施形態では、グリコタグは、ペプチドリンカーを介して二機能性タンパク質のC末端に融合する。いくつかの実施形態では、グリコタグは、ペプチドリンカーを介して二機能性タンパク質のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーはコンセンサスペプチド配列である。いくつかの実施形態では、コンセンサスペプチド配列は、長さが1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される二機能性タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のグリコタグを含む。
【0120】
本明細書で使用される場合、「炎症性障害」という用語には、炎症を特徴とする障害、疾患、または症状が含まれる。炎症性障害の例としては、とりわけ、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患、再灌流傷害、及び移植拒絶反応が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「血液障害」という用語には、血液に影響を与える障害、疾患、または症状が含まれる。血液障害の例としては、とりわけ、貧血、血友病などの出血疾患、血栓、白血病、リンパ腫、骨髄腫などの血液癌が含まれる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物における、及びより具体的にはヒトにおける使用について連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方において列挙されていることを意味する。
【0123】
薬学的に許容される担体の文脈において本明細書で使用される「担体」という用語は、医薬組成物がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。生理食塩水ならびに水性デキストロース及びグリセロール溶液はまた、液体担体として、特に注射可能な溶液に使用することができる。好適な賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。好適な薬学的担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0124】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GlcNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0125】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端GalNAcを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0126】
一態様では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、末端Galを含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、(i)1つ以上の標的タンパク質に対する結合特異性、及び(ii)1つ以上のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する1つ以上のN-グリカンを含み得る。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1つの標的タンパク質に対して1つの結合特異性を有する。より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1つの標的タンパク質に対して1つの結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有する。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、2つの異なる標的タンパク質に対して2つの結合特異性を有する。より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、(i)1つの標的タンパク質に対する1つの結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有し、(ii)別の標的タンパク質に対して別の結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の他の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有する。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、3つの標的タンパク質に対して3つの結合特異性を有する。より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、(i)第1の標的タンパク質に対して第1の結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の第1の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有し、(ii)第2の標的タンパク質にして第2の結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の第2の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有し、(iii)第3の標的タンパク質に対して第3の結合特異性を有し、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の第3の標的タンパク質分子に結合できるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の原子価を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1種類のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する1種類のN-グリカンを含む。より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のN-グリコシル化部位(またはN-グリコシル化コンセンサス配列などの糖鎖部位)を含む。これらのN-グリコシル化部位は、N-グリカンによってグリコシル化され得、結果として得られる糖鎖改変二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質分子または受容体分子に関与または結合できる。
【0129】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、2つの異なるエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する2種類のN-グリカンを含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のポリペプチド鎖を含み得る。各鎖は異なる細胞株で生成できる。特定の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は抗体であり得、N-グリカンの1種類は抗体のFcドメイン上にあり、N-グリカンの別の種類は抗体のFabドメイン(例えば、可変領域)上にある。
【0130】
より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、(i)第1のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する第1のタイプのN-グリカンであって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位で存在し、したがって、第1のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分子に係合または結合する第1のタイプのN-グリカンと、(ii)第2のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する第2のタイプのN-グリカンであって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位で存在し、したがって、単一の二機能性結合タンパク質が、第2のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質(複数可)または受容体(複数可)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分子に係合または結合できる第2のタイプのN-グリカンと、を含む。
【0131】
より具体的な実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、(i)第1のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する第1のタイプのN-グリカンであって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位で存在し、したがって、第1のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分子に係合または結合する第1のタイプのN-グリカンと、(ii)第2のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する第2のタイプのN-グリカンであって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位で存在し、したがって、単一の二機能性結合タンパク質が、第2のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質(複数可)または受容体(複数可)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分子に係合または結合できる第2のタイプのN-グリカンと、(iii)第3のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質または受容体に対する結合特異性を有する第3のタイプのN-グリカンであって、単一の二機能性結合タンパク質が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位で存在し、したがって、第3のエンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質(複数可)または受容体(複数可)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分子に係合または結合できる第3のタイプのN-グリカンと、を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位を有する。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団において、集団中の糖鎖部位の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%が1つの特定の位置でグリコシル化される。特定の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団において、集団中の糖鎖部位の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%がグリコシル化される。本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の糖鎖部位に存在し得るN-グリカンを以下に記載する。
【0133】
特定の実施形態では、糖鎖部位はN-グリコシル化コンセンサス配列である。コンセンサス配列はN-X-S/TまたはN-X-Cとすることができ、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。
【0134】
いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質に特異的に結合する、第1の部分及び第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、エンドサイトーシス炭水化物結合タンパク質及び受容体に特異的に結合する第2の部分であって、グリカン構造を含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0135】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンからなる群から選択されるN-グリカンを含む第2の部分とを含む、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0136】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化10】
四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。この構造の名称については、表1を参照する。
【0137】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化11】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。この構造の名称については、表1を参照する。
【0138】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質に特異的に結合する第1の部分と、下記の構造を含むグリカンを含む第2の部分と、を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、
【化12】
白い丸はガラクトース(Gal)残基を表し、四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース(Man)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。この構造の名称については、表1を参照する。
【0139】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化13】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。この構造の名称については、表1を参照する。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGlcNAc2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGlcNAc2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化14】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。この構造の名称については、表1を参照する。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGalNAc2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGalNAc2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供され、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造のN-グリカンを含み、
【化15】
N-グリカンは、1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に連結される。この構造の名称については、表1を参照する。特定の実施形態では、本明細書で提供される二機能性タンパク質は、末端グリカンとしてGal2を有するN-グリカンを含む。具体的には、N-グリカンのGal2部分のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、抗体またはその断片である。いくつかの実施形態では、抗体のFab領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位を有する。他の実施形態では、Fab領域内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位は、N-グリカン構造、例えば、表11に示されるグリカン構造のいずれかに連結される。特定の実施形態では、グリカンは以下の構造のうちの1つを有し、
【化16】
N-グリカンは1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に結合しており、黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、白丸はガラクトース(Gal)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。これらの構造の名称については、表1を参照する。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体のFc領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位を有する。特定の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のこれらの糖鎖部位は、N-グリカン構造、例えば、表11に示されるグリカン構造のいずれかを含む。特定の実施形態では、グリカンは以下の構造のうちの1つを有し、
【化17】
【0144】
N-グリカンは1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に結合しており、黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、白丸はガラクトース(Gal)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。これらの構造の名称については、表1を参照する。
【0145】
いくつかの実施形態では、Fab領域及びFc領域はそれぞれ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の糖鎖部位を有し、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のこれらの糖鎖部位は、N-グリカン、例えば、表11に示されるグリカン構造のいずれかでグリコシル化される。特定の実施形態では、グリカンは以下の構造のうちの1つを有し、
【化18】
【0146】
N-グリカンは1、2、3、4または5個のN-グリコシル化部位で二機能性結合タンパク質に結合しており、黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース(Man)残基を表し、白丸はガラクトース(Gal)残基を表し、Xは二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。これらの構造の名称については、表1を参照する。
【0147】
特定の実施形態では、近位GlcNAc(糖鎖改変二機能性結合タンパク質に融合したGlcNAc)のN-グリカンの任意の分岐構造も含まれ得る。特定の実施形態では、近位GlcNAcはフコシル化され得る。特定の実施形態では、N-グリカンは、上記に示した構造のいずれか1つからなる。
【0148】
いくつかの実施形態では、Fab領域は、Fc領域よりも多くのグリカンを含む。いくつかの実施形態では、Fab領域は、Fc領域と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のグリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリカンの10%がFc領域にあり、グリカンの90%がFab領域にある。いくつかの実施形態では、グリカンの20%がFc領域にあり、グリカンの80%がFab領域にある。いくつかの実施形態では、グリカンの30%がFc領域にあり、グリカンの70%がFab領域にある。いくつかの実施形態では、グリカンの40%がFc領域にあり、グリカンの60%がFab領域にある。いくつかの実施形態では、グリカンの50%がFc領域にあり、グリカンの50%がFab領域にある。いくつかの実施形態では、Fab領域及びFc領域のグリカン構造は同一である(すなわち、同じである)。いくつかの実施形態では、Fab領域及びFc領域のグリカン構造は非同一である(すなわち、同じではない)。
【0149】
いくつかの実施形態では、第1の部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、またはそれらの機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分は、モノクローナル抗体のFab領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分は、本明細書に開示される標的タンパク質のいずれかと特異的に結合する。
【0150】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、TNFαモノクローナル抗体である。他の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、TNFαモノクローナル抗体ではない。
【0151】
いくつかの実施形態では、第2の部分はグリカン構造を含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、表1に示されるグリカン構造のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、本明細書に開示されるGlcNAc2Man3GlcNAc2構造である。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、本明細書に開示されるGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造である。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、本明細書に開示されるGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造である。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、本明細書に開示されるマンノース3グリカン構造である。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、本明細書に開示されるグリカンのいずれかである。
【0152】
いくつかの実施形態では、第2の部分はエンドサイトーシスレクチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスレクチンはマンノース結合受容体である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスレクチンは、分化クラスター206(CD206)受容体である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスレクチンは、DC-SIGN(分化クラスター209またはCD209)受容体である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスレクチンは、C型レクチンドメインファミリー4メンバーG(LSECTin)受容体である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシスレクチンは、マクロファージ誘導性Ca2+依存性レクチン受容体(Mincle)である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス受容体はL-SIGN CD 209Lである)。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス受容体はアシアロ糖タンパク質(ASGPR)である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス受容体はデクチン-1である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス受容体はデクチン-2である。いくつかの実施形態では、エンドサイトーシス受容体はランゲリンである。いくつかの実施形態では、第2の部分は、マクロファージマンノース2受容体、BDCA-2、DCIR、MBL、MDL、MICL、CLEC2、DNGR1、CLEC12B、DEC-205、及びマンノース6リン酸受容体(M6PR)からなる群から選択される受容体に特異的に結合する。
【0153】
CD206はC型レクチンであり、ファゴサイトーシス/エンドサイトーシスのリサイクル及びシグナル伝達受容体である。CD206は、主にM2抗炎症性マクロファージ、樹状細胞、及び生きた類洞内皮細胞によって発現される。DC-SIGNは非リサイクルのシグナル伝達受容体であり、リガンドと受容体の両方をリソソームに標的にして分解する。LSECTinは肝臓類洞内皮細胞に発現している。
【0154】
肝細胞におけるASGPR媒介分解には、多くの用途が可能である。本明細書に開示されるグリカン構造へのASPGRの結合は、可溶性タンパク質または細胞表面タンパク質の選択的分解をもたらし得る。ASGPR媒介分解により、サイトカイン、ケモカイン、ホルモンが除去され得る。さらに、ASGPR媒介分解は、肝細胞エンドソームへの活性分子の送達に使用できる。したがって、ASGPR媒介分解は、全身毒性を制限しながら、さまざまな肝疾患に応用できる。
【0155】
理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるグリカン構造は、表1に提供される受容体によって結合される。いくつかの実施形態では、GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカンに結合する任意の受容体が、本明細書に開示される組成物及び方法の説明に含まれる。いくつかの実施形態では、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカンに結合する任意の受容体が、本明細書に開示される組成物及び方法の説明に含まれる。いくつかの実施形態では、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造に結合する任意の受容体が、本明細書に開示される組成物及び方法の説明に含まれる。いくつかの実施形態では、マンノース3グリカンに結合する任意の受容体が、本明細書に開示される組成物及び方法の説明に含まれる。他の実施形態では、第2の部分は、Man3GlcNAc2構造を認識する任意のエンドサイトーシス炭水化物結合受容体に結合する。
【表1】
【0156】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはそれらの機能的断片である。いくつかの実施形態では、抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト対象から単離される。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、または完全ヒト抗体である。他の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、自己抗原である。他の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、自己抗体である。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗体は、2対1、4対1、6対1、8対1、または10対1のグリカン対抗体比を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、所定の特定の残基でグリコシル化される。他の実施形態では、抗体はランダムな残基でグリコシル化される。
【0158】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有する第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書に提供される:
【化19】
四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース残基を表し、Xは糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。このようなN結合型グリコシル化コンセンサス配列は、いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の可変ドメインに存在し得る。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団は、
【化20】
の構造を有するグリカンの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%を含み、Xはそれぞれの糖部位における糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す(記号は上で紹介した意味を有する)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。
【0159】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有する第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書に提供される:
【化21】
黒い四角はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を表し、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の円はマンノース残基を表し、Xは糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。このようなN結合型グリコシル化コンセンサス配列は、いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の可変ドメインに存在し得る。特定の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団は、
【化22】
の構造を有するグリカンの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%を含み、Xは特定の糖部位における糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す(記号は上で紹介した意味を有する)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。
【0160】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有する第2の部分を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書に提供される:
【化23】
白い丸はガラクトースを表し、四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を表し、黒い縞模様の丸はマンノース残基を表し、Xは糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。このようなN結合型グリコシル化コンセンサス配列は、いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の可変ドメインに存在し得る。特定の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質の集団は、
【化24】
の構造を有するグリカンの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%を含み、Xは特定の糖部位における糖鎖改変二機能性結合タンパク質のアミノ酸残基を表す(記号は上で紹介した通り)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のXアミノ酸残基は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質に操作されたN結合型グリコシル化コンセンサス配列のAsnである。
【0161】
いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、マンノトリオース-ジ-(N-アセチル-D-グルコサミン)(Man3GlcNAc2)で糖鎖改変された抗TGF-βモノクローナル抗体または抗Notchモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、GlcNAc2Man3GlcNAc2GalNAc2で糖鎖改変された抗TNFαモノクローナル抗体である。
【0162】
他の実施形態では、特定の標的タンパク質に結合でき、以下の構造のうちの1つ以上を含む、糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書に提供される。
【表2】
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される二重特異性タンパク質に存在するN-グリカンは、Man3GlcNAc2、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、細胞表面分子または非細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、細胞表面分子は受容体である。いくつかの実施形態では、非細胞表面受容体は細胞外タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞外タンパク質は、自己抗体、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、血液タンパク質、または中枢神経系(CNS)で発現するタンパク質である。
【0165】
いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、非疾患状態と比較して疾患においてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、非疾患状態と比較して疾患において発現される。いくつかの実施形態では、疾患に関連する標的タンパク質は、疾患の進行に関与する。いくつかの実施形態では、疾患はがんまたは腫瘍である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質はがんの進行に関与する。いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、神経変性疾患である。
【0166】
いくつかの実施形態では、疾患は、バセドウ病である。バセドウ病は甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因である。米国での有病率は1.2%(1)で、女性の生涯リスクは3%にもなる。アゴニスト抗TSH受容体(TSHR)抗体(TRAb)の産生により、チロキシンホルモンの過剰産生が引き起こされる(90%を超える患者がTRAb+)(2)。現在の治療法は50年間も進歩しておらず、高い再発リスクや甲状腺機能低下症などの重篤な副作用によって制限されている。いくつかの実施形態では、バセドウ病に関連する標的タンパク質は、自己抗体結合TSHRである。他の実施形態では、バセドウ病に関連する標的タンパク質はTSHRである。
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、TNFα、HER2、EGFR、HER3、VEGFR、CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2 Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、CD38、CD73、TGF-β、TSHRα、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、GPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、ガングリオシドGM1、GD3、及びGQ1Bからなる群から選択されるタンパク質を含む。他の実施形態では、標的タンパク質は、TSHRα、MOG、AChR-α1、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、GPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン、ガングリオシドGM1、GD3、及びGQ1Bに結合する抗体を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を肝細胞エンドソームに送達する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を肝細胞に送達する方法は、本明細書に開示される任意の標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で、標的タンパク質を、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を肝細胞エンドソームに送達する方法は、in vivoで行われる。いくつかの実施形態では、標的タンパク質をin vivoで肝細胞エンドソームに送達する様式は、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射または筋肉内注射を含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を肝細胞エンドソームに送達する方法は、エクスビボで行われる。
【0168】
いくつかの実施形態では、送達速度は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上に存在するグリカン構造の数に基づいて増加させることができる。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上のグリカン構造の数を増加させることにより、送達速度を増加させる。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のグリカン構造を含み得る。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、またはGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc2Man3GlcNAc2である。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。
【0169】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法は、宿主細胞による本明細書に開示される標的タンパク質のいずれかの分解を媒介する条件下で、標的タンパク質を、本明細書に開示される糖鎖改変二機能性結合タンパク質のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、分解はリソソーム分解である。いくつかの実施形態では、分解は、エンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスによって媒介される。いくつかの実施形態では、分解は、本明細書に開示されるあらゆる第2の部分を除くグリカンを含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質によって媒介される分解よりも、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、18倍、20倍、25倍、または30倍高い。他の実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、本明細書に開示されるあらゆる第2の部分を除くグリカンを含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質の存在下での標的タンパク質の分解と比較して、開示された標的タンパク質のいずれかの分解を増強する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、骨髄細胞、免疫細胞、内皮細胞、実質細胞または上皮細胞を含むがこれらに限定されない任意の宿主細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞、マクロファージ、単球、ミクログリア細胞、顆粒球またはBリンパ球であり得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、リソソーム分解の速度は、糖鎖工学を通じて調節することができる。いくつかの実施形態では、リソソーム分解の速度は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上に存在するグリカン構造の数に基づいて調節することができる。いくつかの実施形態では、リソソーム分解の速度は、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上に存在するグリカン構造の数に基づいて増加させることができる。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上のグリカン構造の数を増加させることにより、リソソーム分解の速度を増加させる。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のグリカン構造を含み得る。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Man3GlcNAc、GlcNAc1Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc1GlcNAc2Man3GlcNAc2、GlcNAc3Man3GlcNAc2、GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc3GlcNAc3Man3GlcNAc2、GalNAc4GlcNAc4Man3GlcNAc2、Gal4GlcNAc4Man3GlcNAc2、またはMan-6-P-N-グリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造は、GlcNAc2Man3GlcNAc2、GalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2、またはGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を含む。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGlcNAc2Man3GlcNAc2である。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGalNAc2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。いくつかの実施形態では、グリカン構造はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2である。いくつかの実施形態では、糖鎖改変二機能性結合タンパク質上の2つ以上のGlcNAc2Man3GlcNAc2構造の存在は、1つのGlcNAc2Man3GlcNAc2構造を含む糖鎖改変二機能性結合タンパク質と比較して、リソソーム分解の速度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、リソソーム分解の速度を微調整することができる。つまり、存在するグリカン構造の数を増やすことによって、リソソーム分解の速度を高めることができる。治療される症状に応じて、異なる内部移行速度が望まれる。急性症状の治療には、本明細書で提供される二機能性タンパク質とその標的タンパク質(複数可)との複合体の迅速な内部移行が望まれる。これを達成するには、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の糖鎖部位を導入してN-グリカンに結合させることができ、その結果、急速な内部移行と、10分未満、15分未満、30分未満、45分未満、60分未満、90分未満、2時間未満、3時間未満、または4時間未満の標的タンパク質の短い半減期を引き起こす。標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状の治療のために、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、半減期が、二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、患者における標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、1つ、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0171】
慢性症状の治療には、本明細書で提供される二機能性タンパク質のより長い半減期が望まれる。これを達成するには、多くても1、2、または多くても3個の糖鎖部位が存在してN-グリカンに結合し、その結果、半減期は、12時間超、24時間超、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間超、または3週間超、または4週間超となる。標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状の治療のために、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、半減期が、二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、患者における標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、1つ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0172】
【0173】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法は、GlcNAc媒介分解を含む。いくつかの実施形態では、GlcNAc分解は、エンドサイトーシス受容体の関与により最適である。いくつかの実施形態では、GlcNAc媒介分解を介して標的タンパク質を分解する方法は選択的である。いくつかの実施形態では、GlcNAc分解は、循環から炎症性サイトカインを除去し、不要な血液因子を除去し、自己抗体を除去し、細胞表面受容体を除去する。
【0174】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法は、GalNAc媒介分解を含む。いくつかの実施形態では、GalNAc分解は、エンドサイトーシス受容体の関与により最適である。いくつかの実施形態では、GalNAc媒介分解を介して標的タンパク質を分解する方法は選択的である。いくつかの実施形態では、GalNAc分解は、循環から炎症性サイトカインを除去し、不要な血液因子を除去し、自己抗体を除去し、細胞表面受容体を除去し、細胞外可溶性タンパク質を除去する。
【0175】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法は、Gal媒介分解を含む。いくつかの実施形態では、Gal分解は、エンドサイトーシス受容体の関与により最適である。いくつかの実施形態では、Gal媒介分解を介して標的タンパク質を分解する方法は選択的である。いくつかの実施形態では、Gal分解は、循環から炎症性サイトカインを除去し、不要な血液因子を除去し、自己抗体を除去し、細胞表面受容体を除去する。
【0176】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質を分解する方法は、マンノース3媒介分解を含む。いくつかの実施形態では、マンノース3分解は、エンドサイトーシス受容体の関与により最適である。いくつかの実施形態では、マンノース3媒介分解を介して標的タンパク質を分解する方法は選択的である。いくつかの実施形態では、マンノース3分解は、循環から炎症性サイトカインを除去し、不要な血液因子を除去し、自己抗体を除去し、細胞表面受容体を除去する。
【0177】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質の分解を媒介する糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、本明細書に開示されるエンドサイトーシス受容体のいずれかによるMan3GlcNAc2の認識を介して、TGF-βを捕捉し、リソソーム中でTGF-βを分解するMan3GlcNAc2を含む抗TGF-βモノクローナル抗体である。このアプローチは、がん治療のために細胞表面のNotchなどの受容体を枯渇させるのに応用できる。
【0178】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、がんにおいてアップレギュレートされるタンパク質である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、がんの進行に関与するタンパク質である。本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質によって結合され得る、がんにおいてアップレギュレートされる、またはがんの進行に関与する標的タンパク質の例としては、TNFα、HER2、EGFR、HER3、VEGFR、CD20、CD19、CD22、αvβ3インテグリン、CEA、CXCR4、MUC1、LCAM1、EphA2、PD-1、PD-L1、TIGIT、TIM3、CTLA4、VISTA、Notch受容体、EGF、c-MET、CCL2、CCR2 Frizzled受容体、Wnt、LRP5/6、CSF-1R、SIRPα、CD38、CD73、TGF-β、ボンベシンR、CAIX、CD13、CD44v6、エムプリン、エンドグリン、EpCAM、EphA2、FAP-α、葉酸R、GRP78、IGF-1R、マトリプターゼ、メソテリン、sMET/HGFR、MT1-MMP、MT6-MMP、PSCA、PSMA、Tn抗原、及びuPARが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、自己免疫疾患に関連するような自己抗体である。本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質によって結合され得る自己抗体の例としては、TSHRα、MOG、AChR-α1に対する自己抗体、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲンドメイン1(α3NC1)、ADAMTS13、デスモグレイン-1/3、またはGPIb/IX、GPIIb/IIIa、GPIa/IIa、NMDA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、アンフィフィシン及びガングリオシドGM1、GD3、GQ1Bが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)においてアップレギュレートまたは発現されるタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、腫瘍促進性TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される。TAMでアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質の例としては、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、またはCXCR4(9)が挙げられる。他の実施形態では、標的タンパク質は、CCL2、CXCL12、CSF-1、またはCD47(9)を含む。参考文献(9)に記載されているように、これらの標的は、特にTAMの動員とプログラミングを促進することにより、腫瘍促進性TAMの促進に役割を果たす。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二機能性結合タンパク質のいずれかを使用してTAMを再プログラミングする方法が本明細書で提供される。参考文献(7)に記載されているように、TAMの再プログラミングは、マクロファージ受容体を標的にして阻害し、腫瘍形成促進性TAMを抗腫瘍形成性TAMに再プログラミングすることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二機能性結合タンパク質のいずれかを使用してTAMを枯渇させる方法が本明細書で提供される。TAMの枯渇は、増殖に重要な受容体を標的とすることによって発生し得る。これらの受容体を標的にすると、腫瘍形成促進性TAMのアポトーシスを促進することができる。さらなる実施形態では、本明細書に開示される二機能性結合タンパク質のいずれかを使用して、腫瘍微小環境へのTAMの動員を阻害する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、TAMを再プログラミングし、枯渇させ、または動員を阻害する方法は、開示された二機能性結合タンパク質のいずれかを使用して、TAMによってアップレギュレートまたは発現される標的を分解することを含む。いくつかの実施形態では、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-RまたはCXCR4を含む。他の実施形態では、TAMに関連する標的タンパク質は、CCL2、CXCL12、CSF-1、またはCD47を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0183】
いくつかの実施形態では、患者の疾患を治療または予防する方法であって、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質または本明細書に記載される医薬組成物を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、疾患は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液障害である。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、バセドウ病、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される。いくつかの実施形態では、がんまたは腫瘍は、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、ならびに血液T細胞及びB細胞悪性腫瘍から選択される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される疾患を治療または予防する方法は、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質または本明細書に記載される医薬組成物の静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む投与ステップを含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される疾患を治療または予防する方法は、異なるグリコシル化プロファイルを有する同じ抗体と比較して同じ効果を達成するために、より低い用量及び/またはより低い投与頻度を必要とし、及び/または長期間(少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは少なくとも12ヶ月、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは少なくとも10年)にわたって投与することができ、及び/または患者において糖鎖改変二機能性結合タンパク質に対する免疫応答を誘発しない。
【0186】
いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質を含むキットが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、キットは、二機能性分子または医薬組成物を、それを必要とする個体に投与するための説明書をさらに提供する。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、単一剤形、例えば、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の単一剤形で投与することができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の好適な用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量に対応する量である。例えば、抗TSH受容体抗体の有効量は、バセドウ病に罹患している対象のTSH活性を阻害する量とすることができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、患者に投与される本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質とは異なるグリコシル化プロファイルを有する同じ糖鎖改変二機能性結合タンパク質の医薬品のラベルに記載されている量よりも少ない。
【0190】
いくつかの実施形態では、一定期間にわたって患者に投与される本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の蓄積量は、本明細書に記載の糖鎖改変二機能性結合タンパク質とは異なるグリコシル化プロファイルを有する同じ糖鎖改変二機能性結合タンパク質の医薬品のラベルに示される蓄積量よりも少ない。いくつかの実施形態では、低減した蓄積量は、低減した頻度で低減した用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、低減した蓄積量は、低減した頻度で標識中の用量と同じまたはそれよりも高い1つ以上の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、低減した蓄積量は、ラベル中の頻度と同じまたはそれよりも高い頻度で1つ以上の低減した用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、低減した蓄積量は、医薬製品が治療または予防において同じレベルの効果を達成する期間よりも短い期間にわたって投与され得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、約1~150mg、約5~145mg、約10~140mg、約15~135mg、約20~130mg、約25~125mg、約30~120mg、約35~115mg、約40~110mg、約45~105mg、約50~100mg、約55~95mg、約60~90mg、約65~5mg、約70~80mg、または約75mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、約5~約80mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、約25~約50mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、約15~約35mgであり得る。
【0192】
いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、40mg以下、例えば、40mg、35mg、30mg、25mg、20mg、18mg、15mg、12mg、10mg、7mg、5mg、及び2mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、80mg以下、例えば、80mg、75mg、70mg、65mg、60mg、55mg、50mg、45mg、40mg、35mg、30mg、20mg、15mg、10mg、5mg、及び2mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、160mg以下、例えば150mg、140mg、130mg、120mg、110mg、100mg、90mg、80mg、75mg、70mg、65mg、60mg、55mg、50mg、45mg、40mg、35mg、30mg、20mg、15mg、10mg、5mg、及び2mgであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される単回用量中の本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質の量は、160mg以上、例えば、170mg、180mg、200mg、250mg、及び300mgであり得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、1週間おき、すなわち、14日毎である頻度で投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、14日毎よりも低い頻度、例えば、半月毎、21日毎、毎月、8週間毎、隔月、12週間毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、または6ヶ月毎に投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質は、14日毎と同じまたはそれよりも高い頻度、例えば、14日毎、10日毎、7日毎、5日毎、1日おき、または毎日投与することができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の投与は、以下の用量、例えば、以下の維持用量よりも高い誘導用量を含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の投与は、誘導用量よりも低くかつ以下の維持用量よりも高い第2の用量を含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示の糖鎖改変二機能性結合タンパク質の投与は、治療期間全体を通してすべての用量で同じ量の糖鎖改変二機能性結合タンパク質を含むことができる。
【0195】
本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質を生成する方法は、当技術分野でよく知られている。本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質を生成する例示的な方法は、国際特許出願公開WO2019/002512、WO2021/140143、WO2021/140144、及びWO2022/053673に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書において例示され、そのうちのいずれか1つが、本明細書で提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質を生成するために使用され得る。例えば、当業者は、既知のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)、及び新たに特定されたタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)の核酸配列が、当該技術分野で既知の方法を使用して容易に推論され得ることを容易に理解し、よって、任意の糖鎖改変二機能性結合タンパク質をコードする核酸を本明細書で提供される宿主細胞に(例えば、発現ベクター、例えば、プラスミド、例えば、相同組換えによる部位特異的組み込みを介して)導入することは、十分に当業者の能力の範囲内であろう。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書において、本明細書に記載される糖鎖改変二機能性結合タンパク質を含むLeishmania宿主細胞である。そのような宿主細胞は、いくつかの実施形態では、Leishmania tarentolaeである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania aethiopica細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania aethiopica種複合体の一部である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania aristidesi細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania deanei細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania donovani種複合体の一部である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania donovani細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania chagasi細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania infantum細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania hertigi細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania major種複合体の一部である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania major細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania martiniquensis細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania mexicana種複合体の一部である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania mexicana細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania pifanoi細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania tropica種複合体の一部である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Leishmania tropica細胞である。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLeishmania宿主細胞を培養することと、糖鎖改変二機能性結合タンパク質を単離することとを含む、糖鎖改変二機能性結合タンパク質を作製する方法が本明細書で提供される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって産生される糖鎖改変二機能性結合タンパク質が本明細書で提供される。
【0199】
Leishmania宿主細胞を産生する方法、及びそのような宿主細胞を使用して糖鎖改変二機能性結合タンパク質を産生する方法は、当技術分野でよく知られている。例示的な方法は、国際特許出願公開WO2019/002512、WO2021/140143、WO2021/140144及びWO2022/053673に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書において例示され、そのうちのいずれかが、Leishmania宿主細胞を生成し、ここで提供される糖鎖改変二機能性結合タンパク質を産生するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞は、すべて5μg/mlのヘミンを含有する、ブレインハートインフュージョン、トリプチケースソイブロス、または酵母エキスのような富栄養培地中での増殖が挙げられるが、これに限定されない、当該技術分野で既知の標準的な培養技法のいずれかを使用して培養される。追加的に、インキュベーションは、2~3日にわたって静置または振盪培養物として暗所において26℃で行うことができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞の培養物は、適切な選択的薬剤を含有する。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び混合モードクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている標準的な精製技術のいずれかを使用して宿主細胞培養上清から精製される。
【0200】
本明細書で提供される二機能性タンパク質を生成する他の方法を使用することもできる。例えば、化学的結合または化学酵素的修飾を使用して、本明細書で提供される二機能性タンパク質を生成することができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う急性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造を有するN-グリカンを含み、
【化25】
N-グリカンは、少なくとも1、2、3、4、または5つのN-グリコシル化部位(記号は上で紹介した意味を有する)で二機能性結合タンパク質に連結され、その結果、半減期は、グリコシル化されていない二機能性結合タンパク質の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または99%となる。いくつかの実施形態では、患者における本明細書で提供される二機能性タンパク質の存在下での標的タンパク質の半減期は、5分、10分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間である。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)下記の構造を有するN-グリカンを含み、
【化26】
N-グリカンは、多くとも1、2、3、4、または5つのN-グリコシル化部位(記号は上で紹介した意味を有する)で二機能性結合タンパク質に連結され、その結果、半減期は、患者においてグリコシル化されていない二機能性結合タンパク質の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または99%となる。いくつかの実施形態では、標的タンパク質の半減期は、少なくとも6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日である。
【0203】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、標的タンパク質のレベル上昇を伴う慢性症状を治療する方法であって、この方法は、それを必要とする患者に二機能性結合タンパク質を投与することを含み、二機能性結合タンパク質は、(i)標的タンパク質に特異的に結合し、(ii)N-グリカンを含み、N-グリカンは、半減期が、二機能性結合タンパク質の非存在下または任意の治療の非存在下において、患者における標的タンパク質の半減期の最大20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%であるように、1つ、2つまたはそれ以上の糖鎖部位で二機能性結合タンパク質に連結される。
【0204】
いくつかの実施形態では、慢性症状は、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、肝疾患、炎症性障害、または血液凝固障害である。
【0205】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、バセドウ病、重症筋無力症、抗GBM疾患、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、尋常性後天性天疱瘡、免疫性血小板減少症、自己免疫性脳炎、ギランバレー症候群、及び膜性腎症から選択される。
【0206】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、血液由来のがんまたは腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは癌腫または肉腫であり得る。いくつかの実施形態では、がんは、肺癌(小細胞または非小細胞)、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、悪性黒色腫、脳癌(例えば、星状細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫など)、骨癌(骨肉腫など)、子宮頸癌、胆管癌、消化管癌(例えば、口腔癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌など)、頭頸部癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌(肝細胞癌など)、中皮腫、上咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、紡錘細胞癌、精巣癌、甲状腺癌、または子宮癌(子宮内膜癌など)から選択される。特定の実施形態では、がんは、以前の治療後に再発したもの、または従来の治療に抵抗性のものであり得る。特定の実施形態では、がんは播種性または転移性であり得る。いくつかの実施形態では、血液由来のがんまたは腫瘍は、白血病、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)から選択される。特定の実施形態では、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、及び急性骨髄芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、治療は、標的タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する条件下で二機能性結合タンパク質を投与することにより、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラミングすることを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される。
【0208】
いくつかの実施形態では、TAMにおいてアップレギュレートまたは発現される標的タンパク質は、SIRPα、CCR2、CSF-1R、LILRB1、LILRB2、VEGF-R、CXCR4、CCL2、CXCL12、CSF-1またはCD47を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、投与ステップは、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経皮注射、または筋肉内注射を含む。
【0210】
本発明のさまざまな実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない修飾はまた、本明細書で提供される本発明の定義内で提供されることが理解される。したがって、以下の例は、本発明を例示することを意図しているが、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0211】
実施例I
グリコシル化された二機能性抗体の生成。
抗体は以下のように調製した。モノクローナル抗TNFα抗体、HUMIRA(登録商標)(AbbVie)またはLeishmania tarentolae CGP由来のアダリムマブ変異体(A-S、A-M)、またはMabtheraを、ZebaSpinカラム(ThermoFischer、US)を使用して30mM MES緩衝液pH6.5に再緩衝した。ガラクトシル化及びアルファ2,6-シアル化(H-S及びA-S変異体を生成するため)は、アプリケーションノートに従って、in vitroグリコシル化(IVGE、Roche Diagnostics)を使用し、37℃で穏やかに回転させながら1ポット反応で実行した。FPLC(Bio-Rad NGC、ドイツ)を使用し、メーカーの推奨に従って、プロテインAセファロース(MabSelectSuReまたはHiTrap MabSelect PrismAカラムGE Healthcare)を用いて反応混合物からグリコシル化mAbを精製した。その後、PD-10(Sephadex 25、Sigma、スイス)を使用した脱塩手順を実行し、PBS pH 6(137mM NaCl、2.7 mM KCl、8.6 mM NaH2PO4、1.4mM Na2HPO4、Sigma、スイス)への緩衝液交換を行った後、0.2μmPESフィルター(ThermoFisher、米国)を使用して滅菌濾過を行った。抗体の品質とグリコシル化(表2)は、GlycoWorks RapiFluor-MS N-Glycan Kit(Waters、米国)を用いてメーカーの指示に従って分析し、またはPNGaseF放出グリカンのプロカインアミド(PC)標識によって分析した。さらなるN-グリカン分析のために、モノクローナル抗体を、IdeZでF(ab’)2及びFc/2に切断するか(IgG1の場合)、または重鎖と軽鎖にし(IgG4の場合)、SDS PAGE上で分離してバンドを切除し、モノクローナル抗体からのN-グリカンの酵素放出を、PNGase Fを使用して行った。放出後、グリカンをプロカインアミド(PC)で直接標識した。PC標識されたN-グリカンを、質量分析計に結合した蛍光検出でHILIC-UPLC-MSによって分析した。グリカンを、Acquity BEH Amideカラムを使用して分離した。データ処理及び分析は、Unifiを使用して行った。グルコース単位を、プロカインアミド標識デキストランラダーの保持時間に割り当てた。グリカン構造を、そのm/z値及びその保持時間に基づいて割り当てた。グリカン形態及び相対パーセンテージを、ピーク面積に基づいて計算した。SE-HPLC分析は、MabPac(ThermoFischer、米国)カラムで1μg/μLの濃度で行い、メーカーの指示に従って実行した。エンドトキシンレベルは0.2EU/mg(Endosafe(登録商標))未満であった。表2は、使用した抗体によって表示される主なN-グリカン構造を示す。
【表3】
表2は、示された抗体によって表示される主なN-グリコフォーム(カノニカルN-297位)を示す。短いIgG命名法は通常、IgG関連の命名システムで使用される。これは、コアフコースの存在、ガラクトースの数、及び二分岐グリカンの存在を示す。記述できる構造と結合の数は限られているが、簡潔にするためによく使用される。黒い縞模様の円はマンノース(Man)、白い四角はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、白い丸はガラクトース(Gal)、白い菱形はシアル酸、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、白い三角形はフコース(Fuc)を表す。
【0212】
抗体は、pHrodo色素(pHrodo iFL Red STP Ester[アミン反応性]、ThermoFisher、ref.P36011)でメーカーの指示に従って標識した。pHrodoの蛍光は低pHで活性化されるため、タンパク質の内部移行とリソソーム経路へのターゲティングを可視化することができる。
【0213】
各抗体のpHrodo標識度(DOL)は次のように決定された。抗体を変性緩衝液で1:2に希釈し、Nanodropを使用して280nm及び560nmの波長(A280及びA560)で分析した。タンパク質濃度とpHrodo DOLは次のように計算された。
【0214】
【数1】
【0215】
【数2】
【0216】
MWは使用した抗体の分子量:144000g/Molである。λmaxは560nmで測定された吸光度である。ε色素は吸光係数:65000M-1cm-1である。希釈倍率は2である。
【0217】
これらの実験で使用した抗体を、FcまたはFab部分上の主なN-グリカン構造とともに表3に示す。
【表4】
【0218】
実施例II
GalNAc2グリコシル化Fab抗体は、肝細胞においてASGPRを介して効率的な内部移行をもたらす
HepG2肝癌細胞(ATCC #HB-8065)はASGPRを発現し、10%FBSを添加した低グルコースDMEM培地(Sigma,Ref.D5546)で維持した。アダリムマブ抗体(A-8486-A2、-A2G2、及び-A2GalNAc2)は、Protein A HiTrap Mabselect PrismA、(Cytiva)及びCapto(商標)adhere ImpRes(Cytiva)を使用してCGP細胞培養上清から精製して、第1の濃縮器PES、30000 MWCO、5~20mL(15451025、Thermo Fisher)、及びPD-10脱塩カラム(使い捨てPD-10脱塩カラム、17085101;Cytiva)を使用して、pH6.4のPBS緩衝液で製剤化した。実施例Iに記載したように抗体をpHrodoで標識した。表4は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。すべての抗体は、サイズ排除HPLC法による評価で凝集レベルが5%未満、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析による評価で90%超の純度を示し、エンドトキシンレベルが1.5EU/mg(LALアッセイ)未満であった。
【表5】
【0219】
HepG2細胞単層を、pHrodo抗体(3μg/ml)+IVIg(1mg/ml)(Hizentra、薬局から入手)とともに37℃で3~4時間または24時間インキュベートした。いくつかの条件では、細胞は次の試薬でも処理された:2μMのフェチュイン(Sigma、Ref.F3385)、2μMのアシアロフェツイン(Sigma、Ref.A4781)、50μMのクロロキン(Sigma、Ref.C6628)、10nMのバフィロマイシン(Millipore、Ref.19148)、50μMのサイトカラシンD(Sigma、Ref.C2618)。次いで、細胞培養物を洗浄し、Accutase(Sigma/Merck、Ref.SCR005)を用いて細胞を回収し、すぐにフローサイトメーターで取得した。標準的なフローサイトメトリーソフトウェアを使用して、ゲートされた単一細胞及び生細胞(DAPI+細胞を除く)の集団に対するpHrodoの平均蛍光強度(MFI)を分析した。MFI値はpHrodo DOLに調整された。
【0220】
図4は、H-A2F(アダリムマブ;Humira、薬局から入手)、A-8486-A2、A-8486-A2G2、A-8486-A2GalNAc2、及びA-8486-M3抗体を比較して得られたデータを示す。4時間のインキュベーション後、GalNAc2表示抗体のみがHepG2細胞に内部移行したことから、GalNAc2は、肝細胞による認識と内部移行に強力なグリカンであることが示された。
【0221】
GalNAc2抗体の取り込みがASGPRによって媒介されるかどうかを評価する別の実験は、さまざまな阻害剤を使用して実行された。図5は、この阻害実験で得られたデータを示す。A-84.86-A2GalNAc2の内部移行は、カルシウムイオンキレート剤であるEGTAによって阻害されたことから、抗体の取り込みがカルシウム依存性のC型レクチン受容体によって媒介される可能性が高いことが示された。さらに、内部移行はアシアロフェチュイン(ASGPRのリガンド)によって選択的に阻害されたが、フェチュイン(ASGPRのリガンドではない)によっては阻害されなかったことから、GalNAc2抗体の認識と内部移行がASGPRによって媒介されることが示された(Braun et al.J Biol Chem,271(35):21160-6(1996)。A-84.86-A2GalNAc2によって生成されたpHrodoシグナルは、エンドソームの酸性化をブロッキングすることによってクラスリン媒介エンドサイトーシスを破壊するクロロキン及びバフィロマイシンによって完全に鈍化された(Ippoliti et al.Cell Mol Life Sci,56:866-875(1998)。エンドソームの酸性化は、リソソームタンパク質の分解を達成するための重要なステップである。
【0222】
これらの実験で観察された阻害パターンは、ASGPRによって媒介され、他のエンドサイトーシス経路ではなくクラスリンに依存し、エンドサイトーシスされた物質をリソソーム区画に導くエンドサイトーシス機構と一致している。したがって、これらのデータは、ASGPR媒介内部移行と分解に化合物を標的化するために、CGP産生GalNAc2表示タンパク質を使用することを支持するものである。
【0223】
実施例III
A2グリコシル化Fab抗体が血中循環抗原をin vivoで強力に枯渇させる
CGPで産生され、かつGlcNAc末端グリカン(A2構造)を提示する抗体の循環抗原枯渇能力を評価するために、ラットを用いた実験が計画された。ラットに抗原と、Fab上にA2グリカン構造を示す抗体、または抗原に特異的な対照抗体を注射した。末梢血コンパートメントからの抗原の枯渇の程度を測定するために、処置動物の血清中の循環抗原のレベルを経時的に定量した。表5は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。すべての抗体は、サイズ排除HPLC法による評価で凝集レベルが5%未満、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析による評価で94%超の純度を示し、エンドトキシンレベルが1EU/mg(LALアッセイ)未満であった。すべての糖鎖改変抗体は、HCA202と高い結合性を保った。
【表6】
【0224】
実験開始時に180~220gのWistar雌ラット(Janvier Labs,St Berthevin,フランス,ref.RjHan:WI)に、抗アダリムマブFab断片HCA202(Biorad、ref.HCA202)(抗原)を0.5mg/kg用量、0.5ml/ラットで静脈内ボーラス注射した。HCA202化合物は、注入前にPierce(商標)High Capacity Endotoxin Removal Spin Columns(Thermofisher、ref.88274)を使用したエンドトキシン除去ステップに供された。15分後、ラットに抗体(表4及び表5)またはPBSを注射した。血液サンプルは、抗体注射後15~30分、1時間、6時間及び24時間の時点で穿刺により頚静脈から採取した。48時間後に終末血液サンプルを腹部大動脈から採取した。血液サンプルを室温で30分間凝固させた後、遠心分離して血清を採取した。
【0225】
総HCA202レベル(結合抗体+遊離HCA202)をELISA法により測定した。抗Penta-His抗体(Qiagen、Ref.34660)を、コーティング緩衝液(PBS pH 7.4、最終組成:8mM Na-Phosphate、8mM K-Phosphate、0.15M NaCl、10mM KCl)中で、5μg/mlで96ウェルELISAプレート上に4℃で一晩コーティングした。HCA202は重鎖のC末端にヒスチジンタグを持っているため、この抗体は抗体結合及び遊離HCA202の捕捉を可能にする。プレートを洗浄緩衝液(PBST=0.05%v/v Tween-20を含むPBS)で3回洗浄した。ブロッキング緩衝液(PBST中2%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA))を各ウェルに添加し、プレートを室温で1~3時間インキュベートした。1:3希釈で500ng/mlから0.7ng/mlまでの7点検量線を別の希釈プレート上で作成した。そのために、希釈していない正常なラットのウィスター血清に5μg/mlのHCA202と3倍モル過剰のアダリムマブ(Humira)をスパイクした。スパイクした血清を室温で10分間インキュベートして、アダリムマブ/HCA202免疫複合体を形成した。スパイクされた血清を、希釈剤B(PBST中の2%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA))を添加することによって10倍(MRD10)に希釈した。免疫複合体標準曲線の1:3連続希釈は、希釈剤Bを使用して実行された。試験サンプルも同様に処理された。希釈剤Bを使用して、試験血清サンプルを希釈プレートで(MRD10サンプルを得るために)10倍に希釈した。標準検量線の線形範囲内にシグナルが収まるように、必要に応じてMRD10サンプルを希釈剤A(2%BSA+0.05%PBSTで希釈した1/10ウィスターラットのプール血清)でさらに希釈した。ブロッキング後、ELISAプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。検量物質及び希釈した検体をELISAプレートに二重に添加し、室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、1000ng/mlのHumira溶液を各サンプルに添加した。ELISAプレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。検出抗体溶液は、ヤギ抗ヒトカッパLC-HRP(Thermofisher、ref.A18853)を希釈液Bで1:5000に希釈して調製した。検出抗体溶液をELISAプレートに添加し、遮光して室温で1時間インキュベートした。次いで、ELISAプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、TMB基質を添加して、続いてHSOでクエンチすることによって明らかにした。ELISAプレートは、BioTek Synergy H1などのプレートリーダーで450及び650nMで読み取った。データ分析は、Gen5(Biotek)などの標準ソフトウェアを使用して行った。
【0226】
血清サンプル中の抗体レベルはELISA法により定量できる。このアッセイは、サンプル中に存在するアダリムマブ及びアダリムマブ変異体を捕捉するために、ヒトTNFαでコーティングするステップから構成される。検出は、抗ヒトガンマHC特異的HRPタグ付き検出抗体を介して実行できる。したがって、このアッセイでは遊離抗体(HCA202に結合していない少なくとも1つのFabアームを有する抗体)のみが定量される。簡単に言えば、組換えヒトTNF-α(Peprotech、ref.AF-300-01A)を96ウェルELISAプレート上に、通常1μg/mlでpH7.4のPBS中で4℃で一晩コーティングする。ブロッキング緩衝液、希釈緩衝液A及びB、及び洗浄緩衝液は、HCA202 ELISAで使用したものと同じである。プレートを3回洗浄し、HCA202 ELISAに記載されているようにブロッキング緩衝液でブロックする。通常、1:3希釈で333.3ng/mlから0.5ng/mlまでの7点検量線は、希釈緩衝液Bで10倍希釈(最小必要な10倍希釈、MRD10)したプールしたウィスターラット血清に1μg/mlのアダリムマブをスパイクすることによって作成される。試験血清サンプルも希釈緩衝液Bで希釈する(最低MRD10サンプル)。希釈した検体と標準検量線サンプルをELISA プレートに移し、ブロッキングステップ後、室温で1時間インキュベートする。その後、プレートを3回洗浄し、検出抗体の溶液を添加する。検出抗体の溶液は、例えばヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)-HRP(Sigma、ref.A6029)抗体(通常希釈率1:10,000)を希釈緩衝液Bで希釈して調製することができる。ELISAプレートは検出抗体とともに遮光され、室温で通常1時間インキュベートする。次いで、プレートを3回洗浄し、HCA202 ELISAに記載されているようにTMB基質を添加することによって明らかにする。
図6は、HCA202レベルについて得られたデータを示す。抗体を注射しない場合(PBS条件)、HCA202は、Fab断片で予想されるように、48時間かけてゆっくりと減衰する。H-A2F(非改変アダリムマブ)の治療により、24時間及び48時間の時点でHCA202レベルが増加した。同様に、A-M3、A-84-A2、及びA-8486-A2G2S2で治療した場合、PBS治療と比較してHCA202レベルが増加した(PBSではCゼロから72%枯渇したのに対し、H-A2F、A-M3及びA-8486-A2G2S2では6時間で52~63%枯渇した)。Cゼロは、即時均一な全血分布を考慮した場合、注射直後に達成されるはずの血清中の(HCAの)理論的濃度である。対照的に、A-8486-A2を注射すると、早い時点で既にHCA202レベルが劇的的に減少した(1時間で97%枯渇)。表6は、HCA202の枯渇数を示す
【表7】
【0227】
これらのデータは、Fab断片上にA2グリカンを表示する抗体が、非常に短時間で血液循環から循環抗原を除去する高い効力を持つことを強調する。これらのデータはまた、Fabあたり2つの改変糖鎖部位を持つA-8486-A2抗体のみが枯渇を示したのに対し、Fabあたり1つの糖鎖部位を持つA-84-A2抗体が非枯渇性であったことから、分子あたり表示されるグリカンの負荷が枯渇効力を可能にするために重要であることを示している。
【0228】
実施例IV
A2G2グリコシル化Fab抗体が血中循環抗原をin vivoで強力に枯渇させる
CGPで産生され、かつガラクトース末端グリカン(A2G2構造)を提示する抗体の循環抗原枯渇能力を評価するために、ラットを用いた実験が計画された。ラットに抗原と、Fab上にA2G2グリカン構造を示す抗体、または抗原に特異的な対照抗体を注射した。末梢血コンパートメントからの抗原の枯渇の程度を測定するために、処置動物の血清中の循環抗原のレベルを経時的に定量した。表7は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。すべての抗体は、サイズ排除HPLC法による評価で凝集レベルが5%未満、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析による評価で94%超の純度を示し、エンドトキシンレベルが1EU/mg(LALアッセイ)未満であった。すべての糖鎖改変抗体は、HCA202と高い結合性を保った。
【表8】
【0229】
実験方法は実施例IIIに記載されている。
【0230】
図7は、HCA202レベルについて得られたデータを示す。抗体を注射しない場合(PBS条件)、HCA202は、Fab断片で予想されるように、48時間かけてゆっくりと減衰する。H-A2F(非改変アダリムマブ)の治療により、24時間及び48時間の時点でHCA202レベルが増加した。同様に、A-M3、及びA-8486-A2G2S2で治療した場合、PBS治療と比較してHCA202レベルが増加した(PBSではCゼロから72%枯渇したのに対し、H-A2F、A-M3及びA-8486-A2G2S2では6時間で52~63%枯渇した)。Cゼロは、即時均一な全血分布を考慮した場合、注射直後に達成されるはずの血清中の(HCAの)理論的濃度である。対照的に、A-8486-A2G2を注射すると、6時間後にH-A2F及びPBSと比較してHCA202レベルが有意に減少した(90%枯渇)。表8は、HCA202の枯渇数を示す。
【表9】
【0231】
これらのデータは、Fab断片上にA2G2グリカンを表示する抗体が、非常に短時間で血液循環から循環抗原を除去する高い効力を持つことを強調する。これらのデータはまた、Fabあたり2つの改変糖鎖部位を持つA-8486-A2G2抗体のみが枯渇を示したのに対し、Fabあたり1つの糖鎖部位を持つA-84-A2G2抗体が非枯渇性であったことから、分子あたり表示されるグリカンの負荷が枯渇効力を可能にするために重要であることを示している。
【0232】
実施例V
A2GalNAc2グリコシル化Fab抗体が血中循環抗原をin vivoで強力に枯渇させる
CGPで産生され、かつGalNAc末端グリカン(A2GalNAc2構造)を提示する抗体の循環抗原枯渇能力を評価するために、ラットを用いた実験が計画された。ラットに抗原と、Fab上にA2GalNAc2グリカン構造を示す抗体、または抗原に特異的な対照抗体を注射した。末梢血コンパートメントからの抗原の枯渇の程度を測定するために、処置動物の血清中の循環抗原のレベルを経時的に定量した。表9は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。すべての抗体は、サイズ排除HPLC法による評価で凝集レベルが5%未満、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析による評価で94%超の純度を示し、エンドトキシンレベルが1EU/mg(LALアッセイ)未満であった。すべての糖鎖改変抗体は、HCA202と高い結合性を保った。
【表10】
【0233】
実験方法は実施例IIIに記載されている。
【0234】
図8は、HCA202レベルについて得られたデータを示す。抗体を注射しない場合(PBS条件)、HCA202は、Fab断片で予想されるように、48時間かけてゆっくりと減衰する。H-A2F(非改変アダリムマブ)の治療により、24時間及び48時間の時点でHCA202レベルが増加した。A-M3、及びA-8486-A2G2S2で治療した場合、PBS治療と比較してHCAレベルが増加し(PBSではCゼロから72%枯渇したのに対し、H-A2F、A-M3及びA-8486-A2G2S2では6時間で52~63%枯渇した)、これらの抗体には枯渇作用がないことが示された。Cゼロは、即時均一な全血分布を考慮した場合、注射直後に達成されるはずの血清中の(HCAの)理論的濃度である。対照的に、A-84-A2GalNAc2を注射すると、非枯渇抗体及びPBSと比較して、1時間(74%枯渇)及び6時間(93%枯渇)でHCA202が有意に枯渇した。A-8486-A2GalNAc2の治療により、HCA202はより広範かつ迅速に枯渇した(1時間で97%の枯渇、6時間で100%の枯渇)。表10は、HCA202の枯渇数を示す。
【表11】
【0235】
これらのデータは、Fab断片上にA2GalNAc2グリカンを表示する抗体が、非常に短時間で血液循環から循環抗原を除去する高い効力を持つことを強調する。これらのデータはまた、Fabあたり2つの改変糖鎖部位を持つA-8486-A2GalNAc2抗体は、Fabあたり1つの糖鎖部位を持つA-84-A2GalNAc2抗体と比較して高い枯渇効力を示したことから、分子あたりに表示されるグリカンの負荷が抗原除去の効力を調節することを示している。
【0236】
実施例VI
A2G2グリコシル化Fab抗体は、in vivoで肝臓を標的とする。
ガラクトース末端グリカン(A2G2構造)を表示する抗体のin vivo分布を研究するために、A2G2または対照グリカンを表示する蛍光標識抗体を使用し、in vivo及びex vivoの断層撮影イメージングを用いた、マウスによる試験が設計された。
【0237】
抗体は、メーカーの指示に従って、CF750標識キット(Biotium、ref.92221)を使用して、1mg/mLで少なくとも1mLの体積で標識した。標識後、標識度(DOL)を測定した。DOLは2.7~5.2の範囲であったため、抗体は同様に標識されていると考えられた。表11は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。実験開始の5~6週間目のSKH1免疫応答性ヘアレスマウス(Charles River Laboratories、ref.Crl:SKH1-hr)に、CF750標識抗体を5mg/kgの用量で(静脈内ボーラス)注射した。マウスは、FMT2500(商標)蛍光断層撮影in vivoイメージングをシステム(PerkinElmer)で使用して撮像し、当該システムは、2D表面蛍光反射率画像(FRI)と3D蛍光断層撮影(FMT)画像データセットの両方を収集した。FMT(NIR励起レーザー745nm/発光770~800nm)を用いて、各動物について背臥位で2回のスキャン(胸部領域+腹部領域)を0.25時間、1時間、3時間、6時間、24時間、48時間の時点で実行した。収集した蛍光データは、動物全身の3次元蛍光シグナルを定量化するために、FMT2500システムソフトウェア(TrueQuant V2.0、PerkinElmer)によって再構成された。胸部、腹部、肝臓領域に関連する生物学的領域を含む3次元の関心領域(ROI)が描出された。各ROIにおける標識抗体の量と用量のパーセンテージを各時点で決定した。6時間後及び48時間後に、甲状腺(気管を含む)、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓を摘出し、FMTイメージングに供した。
【表12】
【0238】
図9は、各抗体の胸部及び肝臓ROIのFMT画像データを経時的に示す。表12は、採取された臓器の6時間後のFMT画像データを示す。2つの非改変対照抗体(H-A2F=アダリムマブ、Ptz-A2F=ペルツズマブ)は、よく類似した分布プロファイルを示し、胸部または肝臓領域には全体的によく類似した低レベルのシグナルが分布した。肝臓領域ではシグナルは時間の経過とともに増加しなかった(図9)。6時間の時点で、Ptz-A2F及びH-A2Fの注射用量の8%未満が肝臓に存在したが(表12)、これら2つの抗体は、低レベルではあるが、他のほとんどの臓器で検出できた。この分布パターンは、正常なヒトIgG及び広く分布し、依然として主に血液中に存在する抗体の特徴と一致している。抗体A-8486-A2G2S2及びA-M3は、H-A2F及びPtz-A2F対照抗体と同様の分布プロファイルを示し、広い臓器に分布し、肝臓への分布は比較的少なかった。6時間の時点で、A-8486-A2G2S2及びA-M3の注射用量の約20%が肝臓に存在した。対照的に、A-8486-A2G2抗体は肝臓領域への迅速かつ非常に優先的な分布を示し(図9)、6時間の時点でピークを示し、その後6時間後に減少した。6時間後に観察された減少は、肝細胞による抗体のペプチドへの分解と、分解生成物(蛍光団結合ペプチドを含む)の肝細胞外への排出によるものと考えられる。6時間の時点で、A-8486-A2G2の注射用量の75%が肝臓に存在した(表12)。A-8486-A2G2抗体は甲状腺、肺、心臓、脾臓には存在しなかったが、腎臓では低レベルで検出された。この分布パターンは、本質的に肝臓のみに分布するため、血液から枯渇する抗体の特徴である。これらのデータは、Fab断片にA2G2構造を表示する抗体がほぼ独占的に肝臓に向けられている一方で、ガラクトース残基をシアル酸でキャップする(A-8486-A2G2S2)とこの効果がなくなることを示している。これらのデータは、A-8486-A2G2抗体が数時間で循環抗原を有意に枯渇させるという観察結果(実施例IV)と一致している。これらのデータは、A2G2グリカンが肝細胞上のASGPRによって認識され、肝細胞の内部移行とリソソーム分解経路へのルーティングを媒介するという仮定を支持している。
【表13】
【0239】
実施例VII
A2GalNAc2グリコシル化Fab抗体は、in vivoで肝臓を標的とする。
GalNAc末端グリカン(A2GalNAc2構造)を表示する抗体のin vivo分布を研究するために、A2GalNAc2または対照グリカンを表示する蛍光標識抗体を使用し、in vivo及びex vivoの断層撮影イメージングを用いた、マウスによる試験が設計された。プロトコル及び研究概要は実施例VIに記載されている。表13は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。
【表14】
【0240】
図10は、各抗体の胸部及び肝臓ROIのFMT画像データを経時的に示す。表14は、採取された臓器の6時間後のFMT画像データを示す。2つの非改変対照抗体(H-A2F=アダリムマブ、Ptz-A2F=ペルツズマブ)は、よく類似した分布プロファイルを示し、胸部または肝臓領域には全体的によく類似した低レベルのシグナルが分布した。肝臓領域ではシグナルは時間の経過とともに増加しなかった(図10)。6時間の時点で、Ptz-A2F及びH-A2Fの注射用量の8%未満が肝臓に存在したが(表14)、これら2つの抗体は、他のほとんどの臓器で検出できた。この分布パターンは、正常なヒトIgG及び広く分布し、依然として主に血液中に存在する抗体の特徴と一致している。抗体A-8486-A2G2S2及びA-M3は、H-A2F及びPtz-A2F対照抗体と同様の分布プロファイルを示し、広い臓器に分布し、肝臓への分布は比較的少なかった。6時間の時点で、A-8486-A2G2S2及びA-M3の注射用量の20%が肝臓に存在した(表14)。対照的に、A-8486-A2GalNAc2抗体は、肝臓領域への迅速かつ本質的に排他的な分布を示し、その後6時間後に減少した(図10)。6時間後に観察された減少は、リソソーム機構による抗体のペプチドへの分解と、肝細胞からの分解生成物(蛍光団結合ペプチドを含む)の排出によるものと考えられる。6時間の時点で、A-8486-A2GalNAc2の注射用量の85%が肝臓に存在した(表14)。A-8486-A2GalNAc2抗体は甲状腺、肺、心臓、脾臓には存在しなかったが、腎臓では低レベルで検出された。この分布パターンは、本質的に肝臓のみに分布するため、血液や他の臓器には存在しない抗体の特徴である。
【0241】
これらのデータは、Fab断片にA2GalNAc2構造を表示する抗体がほぼ独占的に肝臓に向けられていることを示す。これらのデータは、GalNAc2 Fab抗体がHepG2肝細胞によってASGPRを介して特異的に内部移行されるという観察結果(実施例II)、及びGalNAc2 Fab抗体が末梢血からの循環抗原の強力かつ迅速な枯渇を媒介するという観察結果(実施例VII)と一致している。まとめると、これらのデータは、抗体のFab断片上に表示されるA2GalNAc2グリカンが肝細胞上のASGPRによって効率的に認識され、肝細胞の内部移行とリソソーム分解経路へのルーティングを媒介することを示している。
【表15】
【0242】
実施例VIII
A2グリコシル化Fab抗体は、in vivoで肝臓を標的とする。
GlcNAc末端グリカン(A2構造)を表示する抗体のin vivo分布を研究するために、A2または対照グリカンを表示する蛍光標識抗体を使用し、in vivo及びex vivoの断層撮影イメージングを用いた、マウスによる試験が設計された。プロトコル及び研究概要は実施例VIに記載されている。表15は、本試験の対象となった抗体の特性を示す。
【表16】
【0243】
図11は、各抗体の胸部及び肝臓ROIのFMT画像データを経時的に示す。表16は、採取された臓器の6時間後のFMT画像データを示す。2つの非改変対照抗体(H-A2F=アダリムマブ、Ptz-A2F=ペルツズマブ)は、よく類似した分布プロファイルを示し、胸部または肝臓領域には全体的によく類似した低レベルのシグナルが分布した。肝臓領域ではシグナルは時間の経過とともに増加しなかった(図11)。6時間の時点で、Ptz-A2F及びH-A2Fの注射用量の8%未満が肝臓に存在したが(表16)、これら2つの抗体は、他のほとんどの臓器で検出できた。この分布パターンは、正常なヒトIgG及び広く分布し、依然として主に血液中に存在する抗体の特徴と一致している。抗体A-8486-A2G2S2及びA-M3は、H-A2F及びPtz-A2F対照抗体と同様の分布プロファイルを示し、広い臓器に分布し、肝臓への分布は比較的少なかった。A-8486-A2抗体は、肝臓領域への迅速かつ優先的な分布を示し(1時間でピーク)、その後6時間で急速に減少し、6時間と48時間の間でゆっくりと減少した(図11)。6時間の時点で、A-8486-A2の注射用量の20%が肝臓に存在した(表16)。A-8486-A2抗体は甲状腺、肺、心臓、腎臓には存在しなかったが、脾臓では低レベルで検出された。この分布パターンは、血液中に存在しない抗体の特徴である。これは、A-8486-A2が迅速かつ強力に循環抗原を枯渇させたというデータ(実施例III)と一致する。これらのデータは、Fab断片にA2構造を示す抗体が特異的なグリカン受容体によって認識され、それが内部移行とリソソーム分解経路へのルーティングを引き起こすという仮定を支持している。
【表17】
【0244】
実施例IX
A2GalNAc2グリコシル化抗体は、ASGPR発現細胞の表面で標的受容体の分解を引き起こす。
標的受容体に特異的で、GalNAc2末端グリカン(A2GalNAC2構造)を表示する抗体が、ASGPRを発現する細胞表面の標的表面受容体の分解を引き起こすかどうかを評価するために、ペルツズマブ(Ptz)抗HER2抗体のCGP産生糖鎖変異体を用いた実験が行われた。HepG2細胞はHER2とASGPRを共発現する。検証された仮説は、Ptz CGP産生変異体を表示するA2GalNAc2がHepG2細胞の表面でHER2とASGPRに共結合し、形成された複合体の内部移行と分解を引き起こし、HepG2細胞上のHER2レベルの低下につながる可能性があるというものである。ペルツズマブ抗体(Ptz-A2、Ptz-86-A2GalNAc2、Ptz-gt1-A2GalNAc2、Ptz-hgt-A2GalNAc2)を細胞培養上清からProtein A HiTrap Mabselect PrismA,(Cytiva)で精製し、Amiconコンセントレーター(4ml、30000 MWCO)を使用してPBS緩衝液pH7で製剤化した。精製された抗体ではA2GalNAc2のレベルが低い(<70%)ため、Ptz上のA2GalNAc2グリカンの量を増加させるために、in vitro糖鎖工学によって材料をさらに磨き上げた。10mMのUDP-GalNAc、2%(w/w)のGalT1(Y285L)、25mM Tris,pH 8中100mM MnCl2を用いた反応で、30℃で穏やかに回転させながらin vitroグリコシル化(IVGE)を用いてGalNAc付加を行った。FPLC(Bio-Rad NGC、ドイツ)を使用し、メーカーの推奨に従って、プロテインAセファロース(HiTrap MabSelect PrismAカラムGE Healthcare)を用いて反応混合物からグリコシル化mAbを精製した。その後、PD-10(Sephadex 25、Sigma、スイス)を使用した脱塩手順を実行し、緩衝液をPBS pH7に交換した。次に、サンプルをPierce High-Capacity Endotoxin Removal Spin Column, 0.25mL(カタログ:88273 Thermo)で処理し、滅菌濾過し、PBS pH7で0.05mg/mlに希釈した。この実験で使用した、生じた抗体及びそのグリカン構造を表17に記載する。Ptz-gt1抗体は、重鎖のC末端部分にグリコタグが挿入されている(グリコタグ配列のC末端リジンがアラニンに置換されたANSTMMS付加)。Ptz-hgt抗体は、上部ヒンジ領域に糖鎖部位が挿入されている(T223位置の後のLNLSS挿入)。
【表18】
【0245】
肝癌細胞(ATCC #HB-8065)は、10%FBS及び2mMグルタミンを添加した低グルコースDMEM培地(Sigma,Ref.D5546)で維持した。HepG2細胞をAccutase(Sigma/Merck、SCR005)を使用して収集し、平底24ウェルプレートに1ウェルあたり10万細胞でプレーティングした。細胞を細胞培養インキュベーター内で37℃で72時間静置し、回復させた。次に細胞を、非改変ペルツズマブ(Ptz-A2F;Perjeta、薬局から入手)またはCGP産生ペルツズマブ糖鎖変異抗体1μg/ml + IVIg(Hizentra、薬局から入手)1mg/mlとともに、細胞培養培地中、37℃の細胞培養インキュベーターで24時間インキュベートした。次いで、細胞を回収し、標準的なフローサイトメトリー染色プロトコルに従って、抗HER2抗体(ヒトErbB2/HER2抗体、R&D、Ref.MAB1129)を1μg/mlで使用し、抗マウスIgG蛍光色素二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)交差吸着二次抗体(PE)、ThermoFisher、P-852)を2μg/mlで使用して染色した。抗体MAB1129は、HER2への結合に関してペルツズマブと競合しないことが示されており、ペルツズマブが結合している場合でもMAB1129がHER2に結合できることが保証される。細胞は直ちにフローサイトメーターで取得され、FlowJo(TriStar)ソフトウェアを使用して分析された。HER2の幾何平均蛍光強度(MFI)を条件毎に抽出した。HER2 MFIはpHrodo DOLに調整した(調整したMFI)。調整したMFI値は、Ptz-A2F(正規化されたMFI)の%として表した。
【0246】
表18は、調整及び正規化されたHER2 MFIを示す。改変糖鎖部位を持たず、N297 Fc部位にA2構造を示す対照抗体Ptz-A2による治療は、Ptz-A2Fと比較してHER2レベルを低下させなかった(治療後の正規化HER2 MFIの107%)。対照的に、Ptz-gt1-A2GalNAc2による治療は正規化HER2 MFIを64%に減少させ、Ptz-hgt-A2GalNAc2による治療は正規化HER2 MFIを72%に減少させた。Ptz-gt1-A2GalNAc2及びPtz-hgt-A2GalNAc2によるHER2の減少は、Ptz-A2F群と比較して統計的に有意であった(調整したMFIデータに対する、比の対応のあるt検定)(表18)。興味深いことに、Ptz-86-A2GalNAc2による治療は、Ptz-A2Fと比較してHER2分解を引き起こさなかった(95%正規化 HER2 MFI)。すべての抗体は同様のHER2結合能力を示し(表17)、HER2分解能力の違いがHER2結合能力の低下に関連していることは除外された。さらに、Fab断片中の同等の改変糖鎖部位86を含むA2GalNAc2抗体は、HepG2細胞による効率的な取り込み(実施例II)、動物に注射した場合の効率的なASGPR結合を示す循環抗原の高い枯渇効力(実施例V)を示し、部位86にはアクセス可能な活性グリカンが表示されることを示す。これは、抗体がHER2に結合するときにASGPRと効率的に結合するために、抗体上に表示されるグリカンの位置が重要であることを示している。以上のことから、A2GalNAc2表示抗体は、ASGPRエンドサイトーシス及びリソソーム分解経路を利用して細胞表面から標的分子を除去することに使用できることが本試験で示される。
【表19】
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【国際調査報告】