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特表2024-513759歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド
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  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図1
  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図2A
  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図2B
  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図3A
  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図3B
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  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図11
  • 特表-歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】歯科用補綴物の製造方法及びこの製造方法を実施するように構成されたシェルモールド
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/34 20060101AFI20240319BHJP
   A61C 13/10 20060101ALI20240319BHJP
   A61C 13/20 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61C13/34 A
A61C13/34 Z
A61C13/10
A61C13/20 Z
A61C13/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558421
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 FR2022050551
(87)【国際公開番号】W WO2022200741
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2103049
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523360407
【氏名又は名称】サークル アナトスコープ インチューイティブ デザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シレクス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル フォレスト
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ルノアール
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159HH03
4C159HH55
4C159HH56
4C159HH57
(57)【要約】
本発明は、歯科用補綴物の製造方法に関し、患者の歯レプリカモデルから歯科用補綴物モデルをデジタル技術的に設計する工程と、歯レプリカモデルと歯科用補綴物モデルとからなる顎部分モデルを作成する工程とを含む、前記顎部分モデルに基づいて、位置決め部材からなる顎部分(20)を製造する工程と、前記顎部分(20)の位置決め部材と前記シェル(32)内に配置された相補的な位置決め部材(36)との相互作用によって、前記顎部分(20)をシェルモールド(30)のシェル(32)上に位置決めする工程と、を含む。本発明はまた、このような製造方法で使用されるシェルモールド(30)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用補綴物の製造方法であって、
該製造方法は以下の連続する工程、すなわち、
患者の歯レプリカモデル(1)から作製される歯科用補綴物モデル(4)をデジタル技術的に設計する工程と、
前記歯レプリカモデル(1)と、該歯レプリカモデル(1)に組み付けられた前記歯科用補綴物モデル(4)とを含む顎部分モデル(2)を作成する工程と、
前記歯レプリカモデル(1)内において位置決め部材モデル(8)をデジタル技術的に設計する工程と、
位置決め部材モデル(8)を含む前記顎部分モデル(2)に基づいて、位置決め部材(28)を含む顎部分(20)を製造する工程と、
前記位置決め部材モデル(8)を含む前記歯レプリカモデル(1)に基づいて、位置決め部材(18)を含む歯レプリカ(10)を製造する工程と、
シェルモールド(30)のシェル(32)上に、前記顎部分(20)の前記位置決め部材(28)と前記シェル(32)内に配置された相補的な位置決め部材(36)との相互作用によって、前記顎部分(20)を位置決めする工程と、
前記シェルモールド(30)を閉じる工程と、
前記シェルモールド(30)への材料の注入によって、前記顎部分(20)のインプリント(39)を作製する工程と、
前記顎部分(20)の前記インプリント(39)内に少なくとも1つの人工歯(42)を位置決めする工程と、
前記シェルモールド(30)の前記シェル(32)上に、前記歯レプリカ(10)の前記位置決め部材(18)と前記シェル(32)の前記相補的な位置決め部材(36)との相互作用によって、前記歯レプリカ(10)を位置決めする工程と、
前記少なくとも1つの人工歯(42)が配置される前記インプリント(39)内に前記歯レプリカ(10)を配置する工程と、
前記インプリント(39)、前記少なくとも1つの人工歯(42)及び前記歯レプリカ(10)によって規定される残存容積内に充填材料(46)を流し込む工程と、
を備える製造方法。
【請求項2】
前記位置決め部材(18、28)は、前記シェル(32)上に配置された前記相補的な位置決め部材(36)とスライドリンクに従って相互作用する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記歯レプリカ(10)を製造する工程は、前記歯レプリカモデル(1)を平行移動する工程に先行し、アンダーカットゾーンがデジタル技術的に充填される、請求項1又は2の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記インプリント(39)内に前記歯レプリカ(10)を位置決めする工程は、前記歯レプリカ(10)上にステライトシャーシ(44)を位置決めする工程に先行する、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記インプリント(39)に開口する供給流路(37a)を穿孔する工程をさらに含む、請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記顎部分(20)及び/又は前記歯レプリカ(10)を製造する工程が、付加製造によって実施される、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記顎部分(20)及び/又は前記歯レプリカ(10)を製造する工程が、連続する層において、プリント支持体上でジェットによる材料の連続した付加を含む方法に従って行われ、前記材料が各ジェットの後に光重合によって固化される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
シェル(32)は、シェルモールド(30)内に配置されるインサート(10、20)の位置決め部材(18、28)と相互作用するように構成された相補的な位置決め部材(36)を含む、ことを特徴とする歯科用補綴物を製造するためのシェルモールド。
【請求項9】
前記相補的な位置決め部材(36)は、前記インサート(10、20)の前記位置決め部材(18、28)とスライドリンクを形成するように構成される、ことを特徴とする請求項8に記載のシェルモールド。
【請求項10】
前記相補的な位置決め部材(36)は、前記位置決め部材(18、28)と共にダブテールアセンブリを形成するように構成されることを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載のシェルモールド。
【請求項11】
前記相補的な位置決め部材(36)は、前記ダブテールアセンブリの雄部分を形成するように構成されることを特徴とする、請求項11に記載のシェルモールド。
【請求項12】
前記相補的な位置決め部材(36)は、前記位置決め部材(18、28)と相互作用するように構成されたタブ(36a)を含むことを特徴とする、請求項8~12の何れか一項に記載のシェルモールド。
【請求項13】
前記相補的な位置決め部材(36)は軸方向止め具(36b)を含むことを特徴とする、請求項8~12の何れか一項に記載のシェルモールド。
【請求項14】
前記軸方向止め具(36b)は、前記タブ(36a)の両側に垂直に延びる突出面によって形成され、前記相補的な位置決め部材(36)がT字形状を有することを特徴とする、請求項12及び13に記載のシェルモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全又は部分的な(より一般的には「ステライト」と呼ばれる)歯科用補綴物、例えば取り外し可能な歯科用補綴物の製造方法に関する。
本発明はまた、そのような製造方法を実行するように構成されたシェルモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科補綴物とは、生まれ持った歯の少なくとも一部を補うための器具を指す。
取り外し可能な歯科用補綴物は、例えば日々のメンテナンスや就寝時に口から取り外すことができる補綴物である。
「完全である」歯科用補綴物は、義歯とも呼ばれ、上顎の義歯又は下顎の義歯に関わらず、全ての歯を置換する補綴物を示す。
「部分的である」歯科用補綴物は、1本の歯だけ、または全体ではなく一部の歯だけを補う必要がある場合に使用される。
【0003】
このように、部分補綴物は、従来、欠損した歯の位置に配置される人工歯を支持するために使用される金属製シャーシ(ステライト)から構成されている。この金属シャーシ(通常、クロム-コバルト-モリブデンを含む)は剛性が高く、残存歯と粘膜(主に歯肉)の両方に負担をかける。
【0004】
歯科用補綴物はまた、少なくとも1つのインプラントによって口腔内の適所に保持され得る。インプラントは歯の歯根を置換するために、場合によってはねじを介して骨に固定される金属要素である。
【0005】
歯科補綴物の製造には、高精度の一連の工程からなるプロトコールの実施が必要であり、そのうちのひとつにフラスコ成形と呼ばれる工程がある。この工程では、フラスコと呼ばれる2つの分離可能なパーツからなるモールドに、蝋製の補綴物モデルをインプリントすることを有する。このモデルは補綴専門医によって手作業で作られ、モデル上に人工歯が次々と配置される。
【0006】
フラスコの中に石膏を流し込んでインプリントを作る場合もある。石膏が固まったところでフラスコを炙り、蝋を溶かし、石膏の中にインプリントを残す。石膏で作られたモールドは、あらかじめ人工歯が配置されたモールドに材料(一般的には樹脂)を鋳込む前に冷却する必要がある。
【0007】
他の場合には、インプリントの作ることがフラスコ内にゲルを注ぐことによって行われる。ゲルが固化されると、蝋製のモデルは、次いで、熱分解段階なしに手動で除去することができる。しかしながら、人工歯はゲルによって形成されるインプリント内に配置される前に、蝋製のモデルから分離されなければならない。さらに、人工歯は一般に、蝋残渣を除去するために炙られる。
このフラスコ作製工程、特に石膏の凝固、フラスコを炙る、冷却、蝋製のモデルからの人工歯の分離は、時間がかかり、補綴物の効果的な作製を大幅に遅らせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は少なくとも部分的にこれらの欠点を克服することを目的とする。
本発明は特に、時間を節約し、歯科用補綴物の製造の容易さを増加させることを可能にする製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は第1の態様によれば、以下を含む歯科用補綴物の製造方法に関する。
患者の歯レプリカモデルから作られる歯科用補綴物モデルをデジタル技術的に設計する工程と、
歯レプリカモデル及び歯レプリカモデルに組み立てられた歯科用補綴物モデルを含む顎部分モデルを作成する工程と、
歯レプリカモデルにおける位置決め部材モデルをデジタル技術的に設計する工程と、
歯位置決め部材モデルを含む顎部分モデルに基づいて、位置決め部材を含む顎部分を製造する工程と、
位置決め部材モデルを含む歯レプリカモデルに基づいて、位置決め部材を含む歯レプリカを製造する工程と、
顎部分の位置決め部材とシェル内に配置された相補的な位置決め部材との相互作用によって、シェルモールドのシェル上に顎部分を位置決めする工程と、
シェルモールドを閉じる工程と、
シェルモールドへの材料の注入によって顎部分のインプリントを作製する工程と、
顎部分のインプリント内に少なくとも1つの人工歯を位置決めする工程と、
歯レプリカの位置決め部材とシェルの相補的な位置決め部材との相互作用によって、シェルモールドのシェル上に歯レプリカを位置決めする工程と、
少なくとも1つの人工歯が配置されるインプリント内に歯レプリカを配置する工程と、
インプリント、少なくとも1つの人工歯、及び歯レプリカによって規定される残存容積内に充填材料を鋳込む工程と、を含む、製造方法。
【0010】
したがって、本発明による歯科用補綴物を製造するためのこのような製造方法は、フラスコの炙り及び冷却などの工程を回避することによって、時間の節約を可能にする。
【0011】
実際、蝋製の補綴物モデルは、ここではデジタル技術的に設計されたモデルから製造された顎部分によって置き換えられる。
実際には、顎部分が単一部品で製造される。
【0012】
従って、顎部分は一体であり、残りの製造方法において必ずしも再使用されないため、人工歯を取り外したり、炙る必要はなく、インプリントを取った後に直接人工歯を配置することができ、炙ったり、人工歯を回収したりする通常の手順を省くことができる。
【0013】
さらに、顎部分を形成する材料は、その後、他の歯科用補綴物又は他の製品の製造を可能にするためにリサイクルされ得る。歯レプリカを形成する材料についても同様であり、顎部分と同様に製造することができる。
【0014】
例示的な実施形態では顎部分を製造する工程と、歯レプリカを製造する工程とは同時に行われる。
これにより、補綴物の製造時間を短縮することができる。
【0015】
したがって、本発明による製造方法は、ケースバイケースで作られた、すなわち注文された歯科用補綴物を容易かつ迅速に得ることを可能にする。
【0016】
さらに、補綴物の製造のために、より正確には充填材料を流し込む工程中に、患者の歯レプリカを使用することにより、補綴物と、それが挿入されることが意図される環境との間で、通常の製造方法よりも正確な一致を得ることが可能になる。
【0017】
歯レプリカ上、それによって顎部分上の位置決め部材の存在は、相補的な位置決め部材を介してシェルモールドのシェル上のこれらの2つの要素のより正確な位置決めを可能にする。したがって、これは、歯レプリカを顎部分のインプリントの内側により正確に位置決めすることを可能にする。
【0018】
位置決め部材はまた、特に、それが相補的な位置決め部材と相互作用するとき、顎部分又は歯レプリカをシェルモールドのシェル上の適所に保持するために使用される。このような位置決め部材は例えば、歯レプリカの下部に形成される。
【0019】
好ましい例によれば、位置決め部材は、シェル上に配置された相補的な位置決め部材とスライドリンクに従って相互作用する。
【0020】
例えば、位置決め部材と相補的な位置決め部材との間の相互作用は、ダブテール(アリ継ぎ)アセンブリを形成することができる。
【0021】
このようにして、シェルに対する顎部分又は歯レプリカの移動は、スライドリンクによって規定される単一軸に従う並進運動に制限される。したがって、顎部分又は歯レプリカのうちの少なくとも1つのスライドリンクによって規定される軸に従って、並進運動における位置を調整することが可能である。
【0022】
別の好ましい例によれば、位置決め部材は、相補的な位置決め部材と相互作用するように構成された溝を含む。
【0023】
別の好ましい例によれば、相補的な位置決め部材は、位置決め部材と相互作用するように構成されたタブを含む。
【0024】
溝は多角形の断面を有することができ、相補的な位置決め部材との相互作用によってダブテールアセンブリの雌部分を形成するように構成することができる。
【0025】
同様に、タブは、位置決め部材との相互作用によってダブテールアセンブリの雄部分を形成するように構成された断面を有することができる。タブは、例えば多角形の断面を有する。
【0026】
関心のある選択肢によれば、相補的な位置決め部材は、軸方向止め具をさらに含む。
例えば、この軸方向止め具は位置決め部材がスライドリンクに従って相補的な位置決め部材と相互作用するときに、顎部分又は歯レプリカの並進運動の停止を可能にすることができる。したがって、軸方向止め具は、顎部分及び/又は歯レプリカをシェルに対して位置決めするための基準を形成する。実際、スライドリンクによって規定される軸に沿って軸方向止め具までスライドさせることによって、顎部分及び/又は歯レプリカを所定の位置に固定することが可能である。
【0027】
したがって、シェル上の顎部分の位置決めは、顎部分を停止するまで並進運動させることによって、補綴物専門医又は任意の他の施術者によって容易かつ迅速に実行される。さらに、このようにすることによって、シェル上に歯レプリカを同じ様に位置することが可能である。
【0028】
例示的な実施形態では、歯レプリカを製造する工程の前に、歯レプリカモデルを平行移動する工程があり、この工程では、歯レプリカモデルのアンダーカットゾーンがデジタル技術的に充填される。
これらのアンダーカットゾーンは、典型的には歯と歯肉との間の接合部に位置する。
従来技術の方法では、これらのアンダーカットゾーンに蝋を手動で充填する必要があった。
【0029】
その結果、作製工程は、歯レプリカモデルのアンダーカットゾーンを最小限に抑えるか、又は排除するように構成される。
【0030】
したがって、この工程は、デジタル技術的に実行され、次いで、「平行化された」ゾーンが歯レプリカと一体に形成される歯レプリカを製造することを可能にする。
【0031】
これは、インプリントを損傷することなく、モールドから顎部分を除去するために、インプリントを作製する工程中に特に有利である。
【0032】
さらに、アンダーカット領域は、場合によってはデジタル技術的に決定された挿入軸に従って充填される。挿入軸は、補綴物が患者の口内に挿入される方向に対応する。挿入の軸は一般に、医師によって、又はソフトウェアの一部によって決定される。
【0033】
特定の例示的な実施形態によれば、インプリントを歯レプリカ上に位置決めする工程の前に、ステライトシャーシを歯レプリカ上に位置決めする工程がある。
ステライトシャーシは部分補綴物の場合に特に有用であり、典型的には、補綴物の2つの別個の部分を一緒に保持する。
有利には、ステライトシャーシが充填材料の鋳造後に歯科用補綴物に堅固に接続される。
【0034】
したがって、ステライトシャーシを所定の位置に配置することは、施術者にとって容易かつ迅速であり、配置されることが意図される環境への最適な適応を保証する。
【0035】
別の例示的な実施形態によれば、この方法は、供給流路開口部をインプリントに穿孔する工程をさらに含む。
この供給流路は、その後、充填材料を鋳造して歯科用補綴物を作製するために使用される。関心のある例では、充填材料の鋳造とインプリント内に存在する空気の排出とを同時に可能にするために、少なくとも2つの流路が穿孔される。
【0036】
例示的な実施形態によれば、顎部分及び/又は歯レプリカを製造する工程は、付加製造によって実行される。
【0037】
本発明によれば、「付加製造」は材料を付加する製造方法を指し、ほとんどの場合、コンピュータによって支援され、より一般的には「3D印刷」と呼ばれる。付加製造の技術は例えば、顎部分のより正確な製造を可能にする。
したがって、蝋製のモデルの手作業で製造する必要が無い。
【0038】
さらに、付加製造の精度によって、しばしば時間がかかり、コストがかかり、部品を損傷する可能性がある研磨工程の必要性を排除することが可能であり得る。
【0039】
したがって、少なくとも特定の場合には、作製される歯科補綴物は、このような方法の使用に直接対応できる状態になるか、あるいは、例えば歯科補綴物の一部の表面に研磨鏡のような外観を得るための最小限の後処理工程のみで終了することができる。
【0040】
例示的な実施形態によれば、顎部分及び/又は歯レプリカを製造する工程は連続する層において、プリント支持体上のジェットによる材料の連続した付加を含む方法に従って実施され、材料は各ジェットの後に光重合によって固化される。
【0041】
例えば、顎部分は、単量体、ポリマー又は光重合性樹脂から製造することができる。好ましくは、顎部分がPA12(ポリアミド12の場合、ナイロン12とも呼ばれる)から製造される。
【0042】
実際、PA12は本明細書に記載されるような付加製造方法の実施後に、非溶融粉末をリサイクルする関心のある能力を有し、したがって、他の補綴物又はさらに他の製品を作製するために、この粉末を再使用することを可能にする。
【0043】
別の態様によれば、歯科用補綴物を製造するためのシェルモールドも提案される。
本発明によれば、シェルモールドは、シェルモールド内に位置決めされるインサートの位置決め部材と相互作用するように構成された相補的な位置決め部材を含む。
したがって、そのようなモールドは特に、上述のような方法を実施するように構成される。
【0044】
本発明の文脈において、「シェルモールド」は互いに相互作用する少なくとも2つの部分によって形成されるモールドを指し、したがって、各部分は「シェル」と呼ばれる。
【0045】
インサートは、ここでは歯科用補綴物を作製するためにインプリント、成形、又はオーバーモールドする工程の少なくともいくつかを実施することを可能にする任意の部分に対応する。例えば、本発明によれば、インサートは、患者の歯又は顎部分のレプリカであり得る。
【0046】
したがって、そのようなシェルモールドは、方法に関して上述したものと類似の利点を有する。
【0047】
一実施形態によれば、相補的な位置決め部材は、インサートの位置決め部材とスライドリンクを形成するように構成される。
【0048】
特に、相補的な位置決め部材は例えば、ダブテールアセンブリの雄部分を形成するように構成される。
【0049】
一実施形態によれば、相補的な位置決め部材は、位置決め部材と相互作用するように構成されたタブを含む。
【0050】
相補的な実施形態によれば、相補的な位置決め部材はそれが相補的な位置決め部材と相互作用するとき、位置決め部材の並進運動を阻止する軸方向止め具を含む。
特に、軸方向止め具はタブの長手方向に対して横方向に突出し、並進運動のガイドとして作用する突出面によって、例えばタブの両側に垂直に形成することができ、その結果、相補的な位置決め部材はT字形を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明は例示的な実施形態によれば、添付の図面を参照して、情報提供のために与えられ、決して限定する目的ではない、以下の詳細な説明を読むと、十分に理解され、その利点がより明確になるのであろう。
図1図1は本発明の実施形態による患者の歯レプリカモデルの例を示す図である。
図2A図2Aは、位置決め部材を備えた、図1の患者の歯レプリカモデルの例の正面高角度で示す図である。
図2B図2Bは、図2Aの歯レプリカモデルの背面図、実質的に低角度で示す図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態による、図2A及び2Bの歯レプリカの例から得られるような、高角度からの顎部分モデルの例を示す図である。
図3B図3Bは、図3Aの顎部のモデル例の背面図、実質的に低角度で示す図である。
図4図4は、本発明の例示的な実施形態による、図3A及び3Bの顎部分モデルを使用して実施される、シェルモールドのシェル上の顎部分の位置決めを示す図である。
図5図5は、図4に示されるように、シェルのうちの1つの上に位置決めされた顎部分でシェルモールドを閉じる工程を斜視図によって示す図である。
図6図6は、シェルモールド内に作られた顎部分のインプリントと、供給流路を形成する工程とを示す図である。
図7図7図6のインプリントにおいて人工歯を位置決めする工程を示す図である。
図8図8は、図2A及び2Bの歯レプリカモデルから作製された歯レプリカを、図4のシェルモールドのシェル上に配置する工程を示す図である。
図9図9は。図8に示されるように、シェルの1つの上に配置された歯レプリカでシェルモールドを閉じる工程を斜視図によって示す図である。
図10図10は、図8及び図9に示されるような歯レプリカを含む、閉じたシェルモールドの内部に充填材料を流し込む工程を示す図である。
図11図11は、本発明の例示的な実施形態に従って得られた歯科用補綴物を示す図である。
図12図12は、本発明の例示的な実施形態による歯科用補綴物の製造方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
前述の図面に示される同一の要素は、同一の参照符号によって識別される。
図1は、患者の歯レプリカモデル(1)を示す。
このようなモデルは例えば、石膏製のモデルに対してテーブルスキャナを介して、又は好ましくは患者の口腔内の口腔内スキャナを介して直接実行されるデジタル技術インプリント(図示せず)を取る工程を介して得られる。
【0053】
したがって、歯レプリカモデル1は、患者の顎の一部分、この場合、歯科用補綴物が作製されなければならない下顎部分のデジタル表現に対応する。
【0054】
この歯レプリカモデル1は一般に、STL形式のファイルに格納され、コンピュータ支援設計ソフトウェアを使用して表示される。
【0055】
歯レプリカモデル1は例えば、主に歯部を形成する「上側」部分と、主に歯肉部を形成する「下側」部分とを含む。
歯レプリカモデル1は、凹状の内面を表す後部又は舌側部分をさらに含む。
図示の例では、歯レプリカモデル1が上部に、少なくとも1つの欠損歯3を含む。
【0056】
さらに、図示の例では、歯レプリカモデル1が少なくとも1つの残りの歯5を含む。作製される歯科用補綴物は、この場合、部分的な歯科用補綴物である。
【0057】
もちろん、本発明はこのタイプの歯科用補綴物に限定されず、他のタイプの補綴物、例えば、完全な歯科用補綴物、すなわち、歯レプリカモデルが歯5を含まないものにも適用される。
【0058】
図2A及び2Bに示されるように、歯レプリカモデル1はまた、凸状外面を表す前部を含む。したがって、前方部分は後方部分とは反対であり、それらを隔てる距離は、歯レプリカモデル1の厚さを形成する。
歯レプリカモデル1は、下側部分に下面7をさらに含む。
この表面は、一旦歯レプリカモデル1が製造されると、支持体上に安定して配置されるように構成される。
歯レプリカモデル1の下部の下面7は、例えば平面を規定する。
【0059】
図2A及び図2Bはまた、歯レプリカモデル1に配置された位置決め部材モデル8をその下部に示す。特に、位置決め部材モデル8は、歯レプリカモデル1の下面7から開始して配置される。
図示の例では、位置決め部材モデル8が溝8aを含む。溝8aは、相補的な部材とスライドリンクを形成するように構成される。
【0060】
実際には、溝8aが歯レプリカモデル1の後部と前部との間の長手方向軸線に従って延びる。溝8aは、ここでは相補的な部材との相互作用によって、溝8aの長手方向軸に従う移動のみを可能にする台形断面を有する。
【0061】
図2A及び図2Bに示す例では、溝8aが歯レプリカモデル1の下面7を起点として、くり抜かれている。溝8aは、歯レプリカモデル1の厚さの少なくとも一部にわたって、下面7によって規定される平面に平行に延在する。例えば、図2Bにおいて、溝8aは歯レプリカモデル1の後部から前部まで、すなわち、歯レプリカモデル1の厚さの全体にわたって延在する。言い換えると、溝8aは完全に貫通している。本例示的な実施形態では、位置決め部材モデル8はまた、歯レプリカモデル1の並進運動を止めるように構成された留め具要素又は留め具8bを含む。関心のある選択肢によれば、留め具は、歯レプリカモデル1の前部によって形成される。本実施形態では、留め具8bが歯レプリカモデル1の前部から延びる突出部を含む。止め具8bの突出部は、溝8aの長手方向軸に垂直な平坦面を含む。
【0062】
図3A及び図3Bは、図2A及び2Bに示される歯レプリカモデル1と、ハッチングで示され、デジタル技術的な設計によって歯レプリカモデル1に組み立てられた歯科用補綴物モデル4とを含む顎部分モデル2を示す。
【0063】
歯科用補綴物モデル4は、歯レプリカモデル1に基づいてデジタル技術的に設計される。最良に適応させるために、歯レプリカモデル1に従って、義歯モデルのプロフィールと形状を決定する。歯科用補綴物モデル4のプロファイルはまた、挿入軸、すなわち、シミュレーションによって患者の口内に歯科用補綴物モデルを挿入するための軌跡に従って決定される。この挿入軸は例えば、義歯装着者又はソフトウェアによって決定される。
【0064】
したがって、歯科用補綴物モデル4は典型的には補正された完全な歯を有する顎部分モデル2を形成するように、少なくとも1つの歯、及び任意選択で歯レプリカモデル1による歯肉部分を含む。
【0065】
部分的な歯科用補綴物の場合、歯科用補綴物モデル4は少なくとも1つの残りの歯5及び/又は粘膜、特に歯肉に当接するように、及び/又は歯科用補綴物モデルの少なくとも2つの別個の部分を一緒に保持するように構成されたステライトシャーシモデル(図示せず)を含むことができる。
【0066】
顎部分モデル2の下側部分、歯レプリカモデル1の下側部分に完全に対応することが理解される。実際、顎部分モデル2上に示されるハッチング部分のみが、歯レプリカモデル1とは異なる。したがって、顎部分モデル2は、その下部に下面7も含む。したがって、顎部分モデル2はまた、歯レプリカモデル1の位置決め部材と同一の、ここでは溝8a及び留め具8bを含む位置決め部材モデル8を有する。
【0067】
図4は、シェルモールド30のシェル32上に顎部分20を位置決めする工程を示す。シェルモールド30は、ここではシェル32と、シェルモールド30を閉じるためにシェル32と相互作用するように構成された相補的シェル34との2つのシェルを含む。
【0068】
このために、シェル32及び相補的シェル34は、それぞれ切欠き33a及びフック33bを含む。フック33bは、切欠き33aと相互作用してシェルモールド30を閉じた状態に保持するように構成される。もちろん、シェルモールド30を閉じるための任意の他の手段、例えばラバーバンドが考えられる。
【0069】
シェル32は底部35を有する。底部35は、ここでは平坦な表面を規定する。底部35によって形成された平坦面は、その下面7側で顎部分20を受け入れるように意図されている。
【0070】
図示の例によれば、鋳込み孔38はインサートのインプリントを形成するための材料でシェルモールド30を充填するために、相補的シェル34内に配置される。
インプリントを形成するための材料は、親水コロイドゲルである。
このようなシェルモールド30は、例えば歯科用フラスコを形成する。
【0071】
図4はまた、図3A及び3Bに示される顎部分モデル2から作製される顎部分20の例示的な実施形態を示す。
【0072】
顎部分20は例えば、付加製造によって作製される。例えば、顎部分20は、PA12、又は光重合性樹脂から作製される。ここで説明する例示的な実施形態では、顎部分20が単一の部品で製造される。
【0073】
顎部分20を製造する工程は例えば、仕上げサブ工程をさらに含むことができる。しかしながら、付加製造によって製造された部品は一般に、非常にわずかな仕上げタッチしか必要としないか、又は仕上げタッチを必要としない。したがって、そのような仕上げ工程は任意である。
【0074】
本発明の目的の一態様によれば、シェル32は、相補的な位置決め部材36を含む。
シェル32の相補的な位置決め部材36は挿入内に配置された位置決め部材と相互作用するように構成され、そのオーバーモールドは特にスライドリンクを形成するために実行される。図示の例示的な実施形態では、相補的な位置決め部材36がダブテールアセンブリの雄部分を形成する。
【0075】
この例示的な実施形態では、相補的な位置決め部材36が相補的な位置決め部材36と位置決め部材28との相互作用中に顎部分20の並進運動を止めるための軸方向止め具36bを備える。一般に、本明細書では、「インサート」がしたがって、オーバーモールドされる金型に挿入されることが意図される物体を指す。
したがって、本実施例の文脈では、インサートが顎部分20である。
【0076】
図5に示すように、顎部分20は、位置決め部材28を含む。位置決め部材28は、位置決め部材モデル8から作られる。この場合、位置決め部材28は、ここでは溝28aを含む。図示の例によれば、位置決め部材28はまた、顎部分20の前部に形成された留め具28bを含む。
【0077】
したがって、シェル32の相補的な位置決め部材36は、顎部分20の位置決め部材28と相互作用するように構成される。
【0078】
相補的な位置決め部材36は、シェル32の底部35に配置される。特に、相補的な位置決め部材36は、シェル32の底部35から突出する。
【0079】
図示の例によれば、相補的な位置決め部材36は、ここでは溝28aの形状と相補的な形状を有するタブ36aを備える。タブ36aは例えば、溝28aの断面と相補的な断面を有する。
【0080】
タブ36aは、シェル32の底部35から突出している。タブは、図5に示される軸Gに従って長手方向に延在する。タブ36aの長手方向軸Gがタブ36aと溝28aとの間の相互作用中に得られる並進運動がシェル32の底部35によって形成される平坦面と平行に行われるように、シェル32の底部35によって形成される平坦面と平行である。
【0081】
したがって、位置決め部材28と相補的な位置決め部材36との間の相互作用の間、顎部分20は、シェル32の底部35の平坦面に平行に移動される。
【0082】
図示の例示的な実施形態では、溝28aがダブテールアセンブリの雌部分を形成する。溝28aは、例えば多角形、より正確には台形の断面を含む。図示の例示的な実施形態では、タブ36aがダブテールアセンブリの雄部分を形成する。
【0083】
ダブテールアセンブリはここでは面外方向、例えばシェル32の底部35の平坦面に直交する方向への顎部分20の移動を防止し、また、例えば、以下でより詳細に説明されるインプリントを作製する工程の後、相補的シェル34とシェル32との分離の間、顎部分20を所定の位置に保持するために使用される。
【0084】
もちろん、本発明による位置決め部材28の溝28a及び/又は相補的な位置決め部材36のタブ36aはスライドリンクによる相互作用を可能にする限り、任意の他の形状を有することができる。したがって、図示しない実施形態では位置決め部材28が顎部分の下面に対して突出するタブを含み、相補的な位置決め部材は位置決め部材のタブと相補的な断面を有する溝を含む。図示の例によれば、軸方向止め具36bは、位置決め部材28と、より具体的には顎部分20の前部と、任意選択的に位置決め部材28の留め具28bと相互作用するように構成される。この軸方向止め具36bはまた、シェル32上の顎部分20の位置決めのための基準を形成する。
【0085】
軸方向止め具36bはタブ36aの両側に垂直に延びる突出面によって形成され、その結果、相補的な位置決め部材36はTの形状を有する。軸方向止め具36bが例えば、顎部分20などのインサートと、この場合には位置決め部材28の留め具28bと当接する軸受を視覚化することができるように、タブ36aの端部に位置する。
【0086】
もちろん、相補的な位置決め部材36の軸方向止め具36bは、図示の例示に限定されず、インサートの並進運動を止めることを可能にする任意の他の手段によって形成することができる。図示しない実施形態では、位置決め部材28によって形成された溝28aが完全には通過せず、タブ36aの長手方向端部によって停止される。
【0087】
図6は、相補的シェル34と、顎部分20を担持するシェル32との分離後、すなわちシェルモールド30が開いているときに得られるインプリント39を示す。
【0088】
図示の例によれば、インプリント39は、鋳込み孔38によって導入された原料から形成される。したがって、本実施例では、インプリント39がシェルモールド30の相補的シェル34に一体的に含まれる。
【0089】
図6にも示されるように、本方法は相補的シェル34の鋳込み孔38の少なくとも1つから始まり、インプリント39に開口する供給流路37aを穿孔する工程を含む。そのような供給流路37aは例えば、鋳込み孔38のうちの1つによって挿入されるカニューレ37b、例えば中空カニューレを使用して作製される。非限定的に、供給流路37aは、好ましくはインプリント39の歯茎部分で開口する。
【0090】
したがって、そのような方法は、成形によってカスタム歯科用補綴物を作製することを目的としてインプリントを作製することを可能にする。
【0091】
図7は、インプリント39内に少なくとも1つの人工歯42を配置する工程を示す。
例えば、ここでは、いくつかの人工歯42がインプリント39内に配置されている。これらの歯は、歯レプリカモデル1に示される欠損歯を埋めることが意図される。その結果、このような人工歯42は例えば図3A及び3Bにハッチングで示されるように、ソフトウェアによって以前に設計された歯に対応する位置で、インプリント39内に位置決めされる。
【0092】
図8は、シェル32上に顎部分20を位置決めする工程と同様の方法で、シェルモールド30のシェル32上に歯レプリカ10を位置決めする工程を示す。
例えば、歯レプリカ10は顎部分20の形成と同様に、歯レプリカモデル1に基づいて、付加製造によって作製される。
【0093】
したがって、歯レプリカ10は、顎部分20の位置決め部材28と同一の位置決め部材18を含む。
【0094】
この場合、位置決め部材18は、ここでは溝18aを含む。図示の例によれば、位置決め部材18はまた、顎部分20の前面によって形成された止め具18bを含む。
【0095】
したがって、シェル32の相補的位置決め部材36は、歯レプリカ10の位置決め部材18と相互作用するように構成される。このようにして、歯レプリカ10は顎部分20と同様に、又は同一の方法で、シェル32上に配置される。特に、相補的な位置決め部材36は、位置決め部材18とスライドリンク、より具体的にはダブテールアセンブリを形成するように構成される。
【0096】
スライドリンクはここではタブ36aの長手方向軸Gに従って、すなわち、シェル32の底部35の平坦面に平行に、歯レプリカ10の並進運動を可能にする。
【0097】
ダブテールアセンブリはシェル32の底部35の平坦面に垂直な方向への歯レプリカ10の移動を防止するために、及び、例えば、以下でより詳細に説明される充填材料の鋳造工程の後、相補的シェル34及びシェル32の分離の間、歯レプリカ10を所定の位置に保持するために使用される。
【0098】
図9は、インプリント39内に歯レプリカ10を配置する工程を示す。例えば、この工程はシェル32と相補的シェル34との相互作用によってシェルモールド30を閉じる工程を含み、歯レプリカ10はシェル32上に配置され、インプリント39は相補的シェル34内にある。
【0099】
歯レプリカ10は、インプリント39とシールされたリンクを形成する。これは、特に、顎下側部分が歯レプリカ10の下側部分と同一であるという事実によって説明される。
【0100】
しかしながら、歯レプリカ10はその側部分が異なるので、インプリント39を部分的に充填するだけであり、インプリント39内に残留体積を形成する。この残留体積は、インプリント39、人工歯42、及び歯レプリカ10によって規定され、境界が定められる。
【0101】
部分的な歯科用補綴物の場合、この容積は、シェルモールド30を閉じる前に歯レプリカ10上に予め配置されたステライトシャーシ44(図11)によってさらに規定される。
【0102】
図10は、充填材料46が少なくとも1つの鋳込み孔38を介して、少なくとも歯レプリカ10とインプリント39との間に規定された残留容積内に導入される鋳造工程を示す。この場合、図示の例では、充填材料46が供給流路37aを介して導入される。
【0103】
この工程の間、充填材料46は、例えばオーバーモールドによって、人工歯42の少なくとも一部と接触してそこに結合する。同様のことが、部分的な補綴物の場合にはステライトシャーシ44にも当てはまる。
【0104】
充填材料46は残留体積の壁に最もよく適合するように、圧力下で、又は自然の重力充填によって注入することができる。充填材料46は、例えばアクリル樹脂などの、歯科用補綴物の製造のために知られている任意のタイプの材料を含むことができる。
【0105】
この方法はさらに、歯レプリカ10とインプリント39とを分離する工程、又は例えばシェルモールド30を開く工程、次いで歯科用補綴物を形成するように構成された非表面ブランクを抽出する工程(図示せず)を含む。
【0106】
この方法はまた、例えば、供給流路の成形に対応する射出スプルーを除去する工程、及び/又は例えば研磨及び/又は非表面ブランクのバリ取り及び/又はバフ研磨を含む仕上げ工程を含むことができる仕上げ工程を含むことができる。
【0107】
図11は、例示的な実施形態による、この方法の後に得られる補綴物40の一例を示す。図示の例によれば、補綴物40は、ガムを形成する固化充填材料46に結合された人工歯42及びステライトシャーシ44を含む。
【0108】
本例示的な実施形態では、歯科用補綴物40が部分的な歯科用補綴物である。実際、ステライトシャーシ44は、固化充填材料46に結合された少なくとも1つの人工歯42をそれぞれが含む2つの部分を接続する。
【0109】
調整工程は患者の口内に挿入される前に、歯レプリカ10上に歯科用補綴物40を配置することによって実行され得る。
【0110】
図12は、本発明による歯科用補綴物の製造方法の例示的な実施形態を概略的に示す。
この例による製造方法は、
図1に例示されるように、患者の歯1のレプリカモデルに基づいて作製される歯科補綴モデルをデジタル技術的に設計する工程S1と、
位置決め部材モデル8が歯レプリカモデル1においてデジタル技術的に設計する工程S2と、
アンダーカットゾーンがデジタル技術的に充填される、歯レプリカモデル1を平行にする工程S3と、
図3A及び3Bに示されるように、歯レプリカモデル1と、前記歯レプリカモデル1に組み立てられた歯科用補綴物のモデルとを含む、顎部分モデル2を作成する工程S4と、
位置決め部材28を含む顎部分モデル2に基づいて、例えば付加製造によって顎部分20を製造することを有する工程S5と、
位置決め部材18を含む歯レプリカモデル1に基づいて、例えば付加製造によって歯レプリカ10を製造することを有する工程S6と、
図4に示すように、顎部分20の位置決め部材28と前記シェル32内に配置された相補的な位置決め部材36との相互作用によって、顎部分20をシェルモールド30のシェル32上に位置決めする工程S7と、
工程S8の間、顎部分20がシェル32上に位置決めされると、シェルモールド30が閉じられる図5に示す工程と、
顎部分のインプリント39を作製する工程S9であって、この工程はシェルモールド30内への材料の注射によって実行される(20)、顎部のインプリント39を形成する工程と、
インプリント39に開口する供給流路を穿孔する工程S10と、
図7に示すように、顎部分20のインプリント内に少なくとも1つの人工歯を位置決めする工程S11と、
歯レプリカ10の位置決め部材18とシェル32の相補的な位置決め部材36との相互作用によって、シェルモールド30のシェル32上に歯レプリカ10を位置決めする工程S12(例えば、図8によって示される)と、
部分的な歯科用補綴物が関与するとき、ステライトシャーシ44を歯レプリカ10上に配置する工程S13と、
少なくとも1つの人工歯42が位置決めされるインプリント39内に歯レプリカ10を位置決めする工程S14(例えば、図9によって示される)と、
インプリント39、少なくとも1つの人工歯42、及び歯レプリカ10によって規定される残存容積内に充填材料46を流し込む工程S15(例えば、図10に示す)と、を備える。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】