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特表2024-513767フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒
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  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図1
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図2A
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図2B
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図2C
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図2D
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図3A
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図3B
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図3C
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図4A
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図4B
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図5
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図6
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図7
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図8
  • 特表-フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フェロセンに基づく新たな非対称のリガンドであって、嵩高いジ(アダマンチル)ホスフィノのモチーフを有するリガンドならびにその金属触媒
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/50 20060101AFI20240319BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20240319BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20240319BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20240319BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20240319BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C07F9/50
C07F15/02 CSP
C07F19/00
C07F15/00 C
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558554
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022021906
(87)【国際公開番号】W WO2022204490
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/166,094
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016949
【氏名又は名称】シグマ-アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Sigma-Aldrich Co. LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】シュー,グオリン
(72)【発明者】
【氏名】コラコット、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ペン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC74A
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD14A
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169BE27A
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE41A
4G169BE45A
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB25
4G169CB62
4G169DA02
4H039CD20
4H050AA01
4H050AB40
4H050WB11
4H050WB21
(57)【要約】
フェロセニルに基づく非対称のリガンドは、一般式:Fc(AdP)(RP)を有し、ジ(1-アダマンチル)ホスフィノ基を含む。そして、触媒として有用な対応する金属錯体は、金属ハライド錯体、N-ビフェニル金属カチオン錯体およびR-アリル金属カチオン錯体を含む。このようなリガンドおよび錯体によって、従来の触媒に関する問題を解決し、従来では困難であったクロスカップリング反応への新たな経路を提供し、C-Pカップリング、Csp2-Csp3カップリングおよび他の従来のクロスカップリングの用途が挙げられる。その一方で、スケールを調整することができる。そうすることで、これらによって、産業上の利用において、十分な品質および純度を提供することができるようになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I
【化1】

[式中、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択され、
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができ、前記環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含み、
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される]
を有する化合物。
【請求項2】
およびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRは、それぞれ、置換されたフェニルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
-PRは、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
以下の式I
【化3】

[式中、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択され、
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができ、前記環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含み、
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される]
を有するリガンド。
【請求項6】
およびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される、請求項5に記載のリガンド。
【請求項7】
およびRは、それぞれ、置換されたフェニルである、請求項5または6に記載のリガンド。
【請求項8】
前記リガンドが、
【化4】
からなる群から選択される、請求項5または6に記載のリガンド。
【請求項9】
以下の式II
【化5】
II
[式中、
Adは、アダマンチルであり、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択され、
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができ、前記環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含み、
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択され、
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属であり、
Yは、ハロである]
を有するプレ触媒。
【請求項10】
およびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される、請求項9に記載のプレ触媒。
【請求項11】
およびRは、それぞれ、置換されたフェニルである、請求項9または10に記載のプレ触媒。
【請求項12】
Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項13】
Mは、Pdである、請求項9~12のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項14】
Yは、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される、請求項9~13のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項15】
以下の
【化6】
からなる群から選択される、請求項9、10または12~14のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項16】
以下の式III
【化7】
III
[式中、
Adは、アダマンチルであり、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択され、
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができ、前記環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含み、
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択され、
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属であり、
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンである]
を有するプレ触媒。
【請求項17】
およびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される、請求項16に記載のプレ触媒。
【請求項18】
Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される、請求項16または17に記載のプレ触媒。
【請求項19】
Mは、Pdである、請求項16~18のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項20】
Xは、H、メチルおよびフェニルからなる群から選択される、請求項16~19のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項21】
は、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFからなる群から選択される、請求項16~20のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項22】
以下の
【化8】
からなる群から選択される、請求項16~21のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項23】
以下の式IV
【化9】
IV
[式中、
Adは、アダマンチルであり、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択され、
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができ、前記環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含み、
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択され、
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属であり、
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンである]
を有するプレ触媒。
【請求項24】
およびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される、請求項23に記載のプレ触媒。
【請求項25】
Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される、請求項23または24に記載のプレ触媒。
【請求項26】
Mは、Pdである、請求項23~25のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項27】
Xは、H、メチルおよびフェニルからなる群から選択される、請求項23~26のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項28】
は、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFからなる群から選択される、請求項23~27のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項29】
以下の
【化10】
からなる群から選択される、請求項23~28のいずれか1項に記載のプレ触媒。
【請求項30】
金属が触媒するP-Cのクロスカップリング反応を行うための方法であって、当該方法は、以下の工程:
反応容器において、芳香族の溶媒および塩基の存在下、請求項5~8のいずれか1項に記載のリガンドを金属触媒と接触させる工程と、
前記反応容器に、第1の基質および第2の基質を添加する工程であって、
前記第1の基質は、式:Ar-X’を有し、式中、Arは、アリールであり、X’は、ハロであり、
前記第2の基質は、式:R’PHを有し、式中、R’は、C-C10 アルキルおよびC-C10シクロアルキルからなる群から選択される、
工程と、
炭素-リンの結合を形成するのに十分な期間にわたって、100℃~200℃の範囲の温度まで、前記反応容器を加熱する工程と
を含む、方法。
【請求項31】
前記リガンドは、請求項8に記載のリガンドであり、前記触媒は、Pd触媒である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
金属が触媒するCsp2-Csp3のクロスカップリング反応を行うための方法であって、当該方法は、以下の工程:
反応容器において、溶媒の存在下、請求項9~15のいずれか1項に記載の式IIのプレ触媒を第1の基質および第2の基質と接触させる工程
を含み、
前記第1の基質は、式:Ar-X’を有し、
Arは、必要に応じて置換されたアリール、または必要に応じて置換されたヘテロアリールであり、
X’は、クロロまたはブロモまたはヨードであり、
前記第2の基質は、式:R’[M]を有し、
R’は、C-C10アルキル、C-C10フルオロアルキルおよびC-C10シクロアルキルからなる群から選択され、
[M]は、Li、MgX’、ZnX’およびB(OH)ならびに関連するボロン試薬からなる群から選択され、X’は、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択され、
当該方法は、
必要に応じて、前記反応容器を加熱する工程と、
sp2-Csp3のクロスカップリングが生じるのに十分な期間にわたって、前記プレ触媒の存在下で第1の基質および第2の基質を反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項33】
前記第1の基質は、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換されたピリジル、必要に応じて置換されたチエニル、および必要に応じて置換されたフリルからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
[M]はLiであり、前記溶媒はトルエンであり、前記反応容器を加熱しない、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
[M]は、MgX’およびZnX’から選択され、前記溶媒はテトラヒドロフランであり、前記反応容器を50℃まで加熱する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
[M]は、B(OH)であり、前記溶媒はトルエンであり、前記反応容器を100℃まで加熱する、請求項32または33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第63/166,094号(出願日:2021年3月25日)の優先権の利益を主張するものであり、その内容の全体は、その全体が本開示に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
(背景)
フェロセニル(又はフェロセン)に基づく非対称のリガンド(又はフェロセニル系(又はフェロセン系)又はフェロセニルベース(又はフェロセンベース)の非対称のリガンド)の新しいクラスならびに対応する金属錯体を提供する。このようなリガンドは、ジ(1-アダマンチル)ホスフィノ基を含み、一般式:Fc(AdP)(RP)を有するものである。金属錯体としては、図1に示す通り、金属ハライド錯体、N-ビフェニル金属カチオン錯体およびR-アリル金属カチオン錯体が挙げられ、これらは触媒において有用である。
【0003】
フェロセニル(又はフェロセン)に基づく二座(又はバイデンテート(bidentate))のリガンドならびにその対応する金属触媒は、その柔軟(又はフレキシブル)なバイト角(又はバイト・アングル)、立体的(又はステリック)および電子的(又はエレクトロニック)な特徴(又は特性又はキャラクテリスティクス)の調節可能性(又は変動性又は同調性又はチューナビリティ)の長所によって、優れており、金属が触媒する有機の変換(又は変形又はトランスフォーメーション)(又はオーガニック・トランスフォーメーション)において、最も注目されている二座の系(又はシステム)(又はバイデンテート・システム)である(1)。1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)(2)およびその対応する(dppf)PdCl(HayashiおよびKumada(1972年))(3)のイントロダクション(又は導入)によって、そのプロセス化学(又はプロセス・ケミストリ)および創薬(又はディスカバリ)における商業化およびより新しい適用(又は応用又は用途)のために多くの努力が払われている(4)。Colacotのグループによるさらなる研究によって、最初に、Fc(PRPdCl(R=Pr,Cy,Bu)の錯体が、難しいC-Cのカップリング反応およびα-アリール化(又はアリーレーション)の反応(又は挑戦的又はチャレンジングなC-Cのカップリング反応およびα-アリール化(又はアリーレーション)の反応)に関して、大気中で安定であり、さらに活性の高い触媒であることが確認(又は同定)されている(5)。現在、このような「権利が付与された(privileged)」ビス(ホスフィン)リガンドおよび触媒は、様々な有機プロセスにおいて、数Kgの量で市販品として入手可能である(6)。
【0004】
新しい世代のリガンドのなかでも、アダマンチルに基づくホスフィンのリガンドは、特別なクラスのリガンドである。それにより、とてもユニークな特徴(又は特性又はキャラクテリスティクス)が提供されている(例えば、「電子放出特性(又はエレクトロン・リリース・プロパティ)は、有機ホスフィン(又はオルガノホスフィン)の境界(又はバウンダリ)を超え、何十年も続いている」)(8)(9)。例として、AdPのユニークなクロスカップリングの適用(又は応用又は用途)(Carrowのグループ)(10)、アダマンチル・ブレットホス(Adamantyl Brettphos)(Buchwaldら)(11)、ダルフォス(Dalphos)のクラスのリガンド(Stradiottoのグループ)(12)およびAd(n-Bu)P(カタキシウム(Cataxium))(Bellerら)(13)が挙げられる(図2)。
しかし、このようなリガンドの合成は、普通の合成ではなく、単離および精製を考慮するものであり、それ故、産業上の利用(又は適用又は応用又は用途)では、バルク量でのリガンドの提供に制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの利点に関わらず、以下の(1)および(2)の新たなリガンドが依然として必要とされている。
(1)クロスカップリングにおいて存在するいくつかの難しい問題を解決することができるリガンド
(2)産業上の利用(又は適用又は応用又は用途)に適合することができる純度で十分な量を製造(又は調製)するのに十分な製品(又は製造)でスケールアップに対応することができる合成によるリガンド
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
ジアダマンチルホスフィノ含有化合物(diadamantylphosphino-containing compounds)を提供する。かかる化合物は、リガンドとして、そしてカップリング反応のプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalysts))において有用である。
第1の実施形態では、以下の式Iを有する化合物を提供する。
【化1】

[式中、
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。]
【0007】
また、以下の式IIを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化2】
II
[式中、
Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属である。
Yは、ハロである。]
【0008】
また、以下の式IIIを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化3】
III
[式中、
Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属を表す。
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される。
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート
BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)から選択されるアニオンである。]
【0009】
さらに、以下の式IVを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化4】
IV
[式中、
Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属を表す。
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される。
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)から選択されるアニオンである。]
【0010】
さらに、金属が触媒するP-Cのクロスカップリング反応を行うための方法を提供する。
当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、芳香族の溶媒および塩基の存在下、式Iを有するリガンド(上記で説明した通りである)を金属触媒と接触させる工程(又はステップ)、
式:Ar-X’[式中、Arは、アリールであり、X’は、ハロ(halo)である]の第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および式:R’PH[式中、R’は、C-C10アルキルおよびC-C10シクロアルキルから選択される]の第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を反応容器に添加する工程(又はステップ)、
炭素(C)-リン(P)の結合(又はボンド)を形成(又は生成)するのに十分な期間(又は時間)にわたって、100℃~200℃の範囲の温度まで、反応容器を加熱する工程(又はステップ)。
【0011】
さらに、金属が触媒するCsp2-Csp3のクロスカップリング反応を行うための方法を提供する。当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、溶媒の存在下、式IIのプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))(上記で説明した通りである)を第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)と接触させる工程(又はステップ)、必要に応じて、反応容器を加熱する工程(又はステップ)、および
sp2-Csp3のクロスカップリングが生じるのに十分な期間(又は時間)にわたって、上記のプレ触媒の存在下、第1の基質および第2の基質を反応させる工程(又はステップ)。
この方法の様々な実施形態において、第1の基質は、式:Ar-X’を有するものである。式中、Arは、必要に応じて置換されたアリール、または必要に応じて置換されたヘテロアリールである。X’は、クロロまたはブロモまたはヨードである。
第2の基質は、式:R’[M]を有するものである。式中、R’は、C-C10アルキルおよびC-C10シクロアルキルから選択される。[M]は、Li、MgX’、ZnX’およびB(OH)および関連するボロン試薬(又はホウ素試薬(boron reagent))から選択され、X’は、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、フェロセニルに基づく非対称のホスフィン類およびそのPdCl、G3-パラダサイクル(Palladacycles)および(R-アリル)PdCl錯体の例示である(本開示にて説明する)。
図2A図2Aは、AdPを示す(ジ-1-アダマンチルホスフィノ(AdP)部位を有する従来のホスフィン類である)。
図2B図2Bは、ダルフォス(Dalphos)を示す(ジ-1-アダマンチルホスフィノ(AdP)部位を有する従来のホスフィン類である)。
図2C図2Cは、アダマンチル・ブレットホス(Adamantyl Brettphos)を示す(ジ-1-アダマンチルホスフィノ(AdP)部位を有する従来のホスフィン類である)。
図2D図2Dは、Ad(n-Bu)P(カタキシウム(Cataxium))を示す(ジ-1-アダマンチルホスフィノ(AdP)部位を有する従来のホスフィン類である)。
図3A図3Aは、反応スキーム1(Cullenの方法を用いたフェロセニルに基づく非対称の二座(又はバイデンテート)のホスフィンリガンドの合成)を示す。
図3B図3Bは、ステプニカ(Stepnicka)の方法を用いた反応スキーム1を示す(図3Cとの比較)。
図3C図3Cは、本開示で説明する方法を用いる反応スキーム1を示す。
図4A図4Aは、フェロセニルに基づく非対称の二座(又はバイデンテート)のリガンド(L1-4)の合成を示す。
図4B図4Bは、その対応するPd錯体(Pd(1-4)-a~Pd(1-4)-c))を示す。
図5図5は、(L1)PdCl,Pd1-aの分子構造のX線プロットである。
図6図6は、(L3)PdCl,Pd3-aの分子構造のX線プロットである。
図7図7は、(L4)PdCl,Pd4-aの分子構造のX線プロットである。
図8図8は、(L1)Pd G3,Pd1-bの分子構造のX線プロットである。
図9図9は、(L2)Pd G3,Pd2-bの分子構造のX線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本開示では新たなリガンドおよびプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalysts))を説明する。例えば、図1に示すものが挙げられる。新たなリガンドおよびプレ触媒は、従来の触媒の問題を解決するものであり、従来では困難であったクロスカップリング反応の新たな強力な経路(又はルート)を提供する。その一方で、新たなリガンドおよびプレ触媒は、規模(又はスケール)を調節することができ、そうすることにより、産業上の利用(又は適用又は応用又は用途)において、十分な品質および純度を提供することができる。このような新たなリガンドおよびプレ触媒は、フェロセニル(又はフェロセン)の骨格(又はバックボーン)およびジ(アダマンチル)ホスフィノ部位を利用するものである。本開示にて説明する通り、このような骨格および部位は、既存のリガンドおよびプレ触媒に対して、顕著な利点(又は効果)を提供する。
【0014】
フェロセニル(又はフェロセン)に基づく非対称のリガンドを製造するための従来の方法(図3Aおよび図3Bに示す通りである)は、Fc(AdP)(RP)リガンドを製造するためにAdP部位を組み入れることには適していない(14)。
【0015】
本開示では、新たなクラスのフェロセニル(又はフェロセン)に基づく非対称のホスフィン類(AdP部位を含む(図3C))と、その対応する金属錯体の合成とを説明する。また、このようなリガンドを製造するための便利な合成プロトコルについても説明する。また、新たなリガンドおよびプレ触媒を用いる方法についても提供する。これらは、Csp2-Csp3のカップリング(例えば、Kumada, Negishi, Suzuki および Murahashi)ならびに広範な基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を用いるC-Pカップリングの利用(又は適用又は応用又は用途)において、本開示にて説明されているものである。なぜなら、これらのクラスのカップリング反応は、困難なものであり、文献においても過小評価されているからである。このようなリガンドおよびプレ触媒が市販品として入手可能になることがさらに望ましい。
【0016】
第1に、ジアダマンチルホスフィノを含有する化合物(又はジアダマンチルホスフィノ含有化合物(diadamantylphosphino-containing compounds))を提供する。このような化合物は、カップリング反応のリガンドおよびプレ触媒として有用である。
第1の実施形態において、以下の式Iを有する化合物を提供する。
【化5】

式中、RおよびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成し、このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
いくつかの代表的な-NRの環構造として、ピロロ、ピロリジノ、ピラゾロ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N-メチルピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。
化合物Iのいくつかの実施形態において、RおよびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert-ブチルから選択される。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ、置換されたフェニルである。
【0017】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、置換されたフェニルである。置換されたフェニルは、1~5個の置換基を有することができる。置換基は、同一であっても、異なっていてもよい。
一実施形態において、置換されたフェニルは、パラの位置に1つの置換基を含む。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、オルトの位置に1つの置換基を含む。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、メタの位置に1つの置換基を含む。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、両方のオルトの位置に2つの置換基を含む。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、両方のメタの位置に2つの置換基を含む。
他の実施形態において、2個の置換基が、オルトの位置およびパラの位置にある。
さらに他の実施形態では、2個の置換基が、メタの位置およびパラの位置にある。
さらに他の実施形態では、置換されたフェニルは、3個の置換基を含む。置換基は、同一であっても、異なっていてもよい。
いくつかの実施形態において、3個の置換基が、パラの位置および2つのオルトの位置にある。
他の実施形態において、3個の置換基が、パラの位置および2つのメタの位置にある。
さらに他の実施形態において、置換基が、1つのオルトの位置、1つのメタの位置およびパラの位置(複数)にある。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、4個の置換基を含む。それぞれの置換基は、同一であっても、異なっていてもよい。置換基は、オルトの位置およびメタの位置にあってもよい。あるいは、置換基は、オルトの位置、メタの位置およびパラの位置の組み合わせ(又はコンビネーション)にあってもよい。
さらに他の実施形態において、置換されたフェニルは、5個の置換基を含んでよい。それぞれの置換基は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、-PRは、以下から選択される。
【0019】
【化6】
【0020】
いくつかの好ましい実施形態において、式Iを有する化合物は、以下から選択されるリガンドである。
【0021】
【化7】
【0022】
また、本開示では、以下の式IIを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化8】
II
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成する。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子を含み、さらに、必要に応じて、1以上の置換基を含んでいてよい。
いくつかの代表的な-NRの環構造として、ピロロ、ピロリジノ、ピラゾロ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N-メチルピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシから選択される。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、独立して、フェニル、置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert-ブチルから選択される。
好ましい実施形態において、RおよびRは、それぞれ、置換されたフェニル(上記で説明した通りである)である。
【0023】
式IIにおいて、Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属である。
いくつかの実施形態において、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtから選択される。
好ましい実施形態において、Mは、Pdである。
【0024】
式IIにおいて、Yは、ハロ(halo)である。すなわち、様々な実施形態において、Yは、クロロ、ブロモまたはヨードであってよい。
好ましい実施形態において、Yは、クロロである。
【0025】
式IIを有するプレ触媒のいくつかの好ましい実施形態として、以下のものが挙げられる。
【0026】
【化9】
【0027】
また、式IIIを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化10】
III
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成する。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子を含み、さらに1以上の任意の置換基を含んでよい。
いくつかの代表的な-NRの環構造として、ピロロ、ピロリジノ、ピラゾロ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N-メチルピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシから選択される。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert-ブチルから選択される。
【0028】
式IIIにおいて、Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属を表す。
いくつかの実施形態において、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtから選択される。
好ましい実施形態において、Mは、Pdである。
【0029】
式IIIのXは、H、C-Cアルキルおよびフェニルから選択されてよい。
いくつかの実施形態において、Xは、H、メチルおよびフェニルから選択される。
【0030】
式IIIを有するプレ触媒において、Yは、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)から選択されるアニオンである。
様々な実施形態において、Yは、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFから選択される。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIIを有するプレ触媒は、以下のものである。
【0032】
【化11】
【0033】
さらに、式IVを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))を提供する。
【化12】
IV
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルから選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルから選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成する。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
いくつかの代表的な-NRの環構造として、ピロロ、ピロリジノ、ピラゾロ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N-メチルピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、独立して、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される。
いくつかの好ましい実施形態において、RおよびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert-ブチルから選択される。
【0034】
式IVにおいて、Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属を表す。
いくつかの実施形態において、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtから選択される。
式IVの好ましい実施形態において、Mは、Pdである。
【0035】
式IVのXは、H、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される。
いくつかの好ましい実施形態において、Xは、H、メチルおよびフェニルから選択される。
【0036】
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)から選択されるアニオンである。
いくつかの好ましい実施形態において、Yは、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFから選択される。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、式IVを有するプレ触媒は、以下のものから選択される。
【0038】
【化13】
【0039】
さらに、金属が触媒するP-Cのクロスカップリング反応(metal-catalyzed P-C cross-coupling reaction)を行うための方法を提供する。
当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、芳香族の溶媒および塩基の存在下、式Iを有するリガンド(上記で説明した通りである)を金属触媒と接触させる工程(又はステップ)、
式:Ar-X’ [式中、Arは、アリールであり、X’はハロ(halo)である]の第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および式:R’PH[式中、R’は、C-C10アルキルおよびC-C10シクロアルキルから選択される]の第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を反応容器に添加する工程(又はステップ)、
炭素(C)-リン(P)の結合を形成するのに十分な期間(又は時間)にわたって、100℃~200℃の範囲の温度まで反応容器を加熱する工程(又はステップ)。
【0040】
この金属が触媒するP-Cのクロスカップリング反応(metal-catalyzed P-C cross-coupling reaction)の方法の好ましい実施形態において、リガンドは、以下のものから選択される。
【0041】
【化14】
【0042】
そして、触媒は、Pd触媒である。
【0043】
さらに、金属が触媒するCsp2-Csp3のクロスカップリング反応(metal-catalyzed Csp2-Csp3 cross-coupling reaction)を行うための方法を提供する。
当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、溶媒の存在下、式IIを有するプレ触媒(上記で説明した通りである)を第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)と接触させる工程(又はステップ)、必要に応じて、反応容器を加熱する工程(又はステップ)と、
sp2-Csp3のクロスカップリングが生じるのに十分な期間(又は時間)にわたって、プレ触媒の存在下で第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を反応させる工程(又はステップ)。
【0044】
この方法の様々な実施形態において、第1の基質は、式:Ar-X’を有する。式中、Arは、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアリールであり、X’は、クロロまたはブロモまたはヨードである。
この方法のいくつかの実施形態において、第1の基質は、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換されたピリジル、必要に応じて置換されたチオフェン、および必要に応じて置換されたフランから選択される。
【0045】
様々な実施形態において、第2の基質は、式:R’[M]を有する。式中、R’は、C-C10アルキルおよびC-C10シクロアルキルから選択される。[M]は、Li、MgX’、ZnX’およびB(OH)から選択され、X’は、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される。
【0046】
この方法に従う特定の実施形態において、[M]は、Liであり、溶媒は、トルエンであり、反応容器は加熱されていない。
【0047】
この方法に従う特定の実施形態において、[M]は、MgX’およびZnX’から選択され、溶媒は、テトラヒドロフランであり、反応容器は、50℃まで加熱される。
【0048】
この方法に従うさらなる他の実施形態において、[M]は、B(OH)であり、溶媒は、トルエンであり、反応容器は、100℃まで加熱される。
【0049】
本開示で説明するリガンドおよびプレ触媒の合成および使用(又は使用方法)をより詳細に説明する。
表1は、フェロセニル(又はフェロセン)に基づく非対称のホスフィン類と、そのPdCl、G3-パラダサイクル(Palladacycles)および(R-アリル)PdCl錯体を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
リガンドL1-4の合成は、簡単に入手することができる1,1’-ジブロモフェロセンから、2工程(ツー・ステップ)で達成した(図3)。報告された手順に従って(14b)、1当量のn-BuLiを用いて、ジブロモフェロセンの選択的なリチウム化によって、中間体(I)を合成した。続いて、ジアルキルクロロホスフィン(例えば、PhPCl)でクエンチして、モノブロモフェロセニルホスフィン(I)を得た。ステプニカ(Stepnicka)によって、別のリチウム化を行うことができた。続いて、RPClによってクエンチして、混合リガンドのいくつかの例を作製した(図3Bに示す通りである)。同一のプロトコルを適用することによって、AdP部位を中間体(I)に組み入れたが、設計した生成物(L1-4)は得られなかった。また、触媒量(または化学量論量)の銅(I)塩(例えば、CuCl)を添加したが(15)、これも役立たなかった。そうではなく、むしろ、Pdが触媒するP-Cのカップリング(Pd-catalyzed P-C coupling)を代替のアプローチとして使用した(図4A)(16)。リガンドL1-4のすべてを2工程(又はツー・ステップ)で合成した。このとき、収率は、約70%であった(最適化されていない収率)。H-NMR、13C-NMR、31P-NMRおよび元素分析によって特徴付けた(キャラクタライゼーションを行った)。
【0052】
対応する3つのクラスのパラジウムのプレ触媒を高収率で合成し、NMRおよび元素分析によって特徴付けた(キャラクタライゼーションを行った)(図4)。そのいくつか((L1)PdCl,Pd1-a;(L3)PdCl,Pd3-a;(L4)PdCl,Pd4-a;(L1)Pd G3,Pd1-b;(L2)Pd G3,Pd2-b)は、単結晶X線研究(又はシングル・クリスタルX線スタディ)によって明確に特徴付けた(キャラクタライゼーションを行った)(図5図9を参照のこと)。また、5つのパラジウム錯体のX線結晶構造を本開示において報告する。単結晶(又はシングル・クリスタル)を得た(ジクロロメタン溶液へのペンタンの緩やかな拡散(又はスロー・ディフュージョン)による)。
【0053】
図5は、(L1)PdCl,Pd1-aの分子構造のX線プロット(X-Ray plot)を示す(選択された結合長(又はボンド・レングス)(Å(オングストローム))および結合角(又はボンド・アングル)(°)):
Pd-P1 2.3370(5),Pd-P2 2.2964(5),Pd-Cl1 2.3484(4),Pd-Cl2 2.3541(4);P1-Pd-P2 100.973(16),Cl1-Pd-Cl2 84.988(15),P1-Pd-Cl1 91.834(16),P1-Pd-Cl2 174.508(16),P2-Pd-Cl1 166.954(17),P2-Pd-Cl2 82.048(16).
【0054】
図6は、(L3)PdCl,Pd3-aの分子構造のX線プロット(X-Ray plot)を示す(選択された結合長(又はボンド・レングス)(Å(オングストローム))および結合角(又はボンド・アングル)(°)):
Pd-P1 2.3365(4),Pd-P2 2.3127(4),Pd-Cl1 2.3519(4),Pd-Cl2 2.3673(4);P1-Pd-P2 103.587(15),Cl1-Pd-Cl2 84.089(14),P1-Pd-Cl1 90.173(14),P1-Pd-Cl2 174.226(15),P2-Pd-Cl1 166.239(15),P2-Pd-Cl2 82.153(15).
【0055】
図7は、(L4)PdCl,Pd4-aの分子構造のX線プロット(X-Ray plot)を示す(選択された結合長(又はボンド・レングス)(Å(オングストローム))および結合角(又はボンド・アングル)(°)):
Pd-P1 2.3679(5),Pd-P2 2.3736(6),Pd-Cl1 2.3370(6),Pd-Cl2 2.3290(6);P1-Pd-P2 106.72(2),Cl1-Pd-Cl2 82.56(2),P1-Pd-Cl1 87.18(2),P1-Pd-Cl2 166.82(2),P2-Pd-Cl1 164.89(2),P2-Pd-Cl2 84.45(2).
【0056】
図8は、(L1)Pd G3,Pd1-bの分子構造のX線プロット(X-Ray plot)を示す(選択された結合長(又はボンド・レングス)(Å(オングストローム))および結合角(又はボンド・アングル)(°)):
Pd-P1 2.2791(8),Pd-P2 2.4635(7),Pd-N1 2.147(2),Pd-C43 2.033(3);P1-Pd-P2 102.68(3),N1-Pd-C43 80.64(11),P1-Pd-N1 152.16(7),P1-Pd-C43 86.39(8),P2-Pd-N1 97.22(7),P2-Pd-C43 161.22(9).
【0057】
図9は、(L2)Pd G3,Pd2-bの分子構造のX線プロット(X-Ray plot)を示す。選択された結合長(又はボンド・レングス)(Å(オングストローム))および結合角(又はボンド・アングル)(°):
Pd-P1 2.3094(4),Pd-P2 2.4626(4),Pd-N1 2.1657(14),Pd-C43 2.0454(17);P1-Pd-P2 103.304(17),N1-Pd-C43 80.40(6),P1-Pd-N1 153.33(4),P1-Pd-C43 87.65(5),P2-Pd-N1 95.50(4),P2-Pd-C43 160.31(5).
【0058】
表2において、選択されたP-Pd-Pのバイト角ならびに他のアナログ(又は類似体)(比較を目的として文献データから採用したもの)のバイト角(又はバイト・アングル)(°)(又は度)を示す。Pdセンター(又はPd中心)は、すべて、歪んだ正方形の平面幾何学(又はディストーテッド・スクエア・プラナー・ジオメトリ)を有する(2つのリン原子がシスの配置(又はシス・コンフィギュレーション)にある)。とりわけ、(L4)PdCl,Pd4-aは、非常に大きなP-Pd-Pのバイト角(又はバイト・アングル)を有する(106.72°、エントリ3)。我々の最良の知識によると、これは、フェロセニル(又はフェロセン)に基づく二座(又はバイデンテート)のリガンド(ferrocenyl based bidentate ligand)をともなうPdCl錯体のなかでも、文献で報告されている最も大きなP-Pd-Pのバイト角(又はバイト・アングル)である。「最新の触媒」(又はステート・オブ・ザ・アートの触媒(state of the art catalyst))である(dtbpf)PdClのバイト角(又はバイト・アングル)(104.22°、エントリ6)と比較すると、(L4)PdClのP-Pd-Pのバイト角(又はバイト・アングル)は、顕著に大きい。
【0059】
【表2】
【0060】
フェロセニル・リガンド(又はフェロセンのリガンド)は、二座(又はバイデンテート)の性質(又はネイチャー)および立体的な嵩高さ(又はステリック・バルキネス)を有することから、(L)Pd G3錯体は、すべて、カチオンの形態である((L1)Pd G3(Pd1-b)および(L2)Pd G3(Pd2-b)の構造で示す通りである)。各構造におけるMsO基は、フェロセニル・リガンドの第2のリンによって置き換えられていて、メシレートアニオンを形成する。その一方で、NH基は、Pdセンター(又はPd中心)に配位した状態のままである。また、Buchwaldによって、同様の現象が報告されている(17)。(BINAP)Pd G3、tBuXPhos Pd G3、およびBrettPhos Pd G3は、カチオン形態であり、配位領域(又はコーディネーション・スフェア)から、メシレート(MsO)が出されている。その一方で、XPhos Pd G3では、MsOであっても、共有の形態にある。Pd1-bおよびPd2-bに由来する構造は、両方とも、Pdセンター(又はPd中心)において、顕著な四面体の歪み(又はディストーション)(又はテトラヘドラル・ディストーション)を有している(Pd1-bでは、28.6°、Pd2-bでは、28.2°)。
【0061】
また、触媒への本開示において説明するリガンドおよびプレ触媒の適用(又は応用又は用途)(特に、困難かつ過小評価された2つのクラスの反応、すなわち、Csp2-Csp3のカップリング反応およびP-Cのカップリング反応への適用(又は応用又は用途))も行った。以下の実施例において詳細に説明する通りである。
【0062】
本開示で使用する通り、用語「Ad」は、アダマンチル官能基(又はアダマンチル・ファンクショナル・グループ)を意味する。すなわち、式:-C1015の三環式の架橋した炭化水素を意味する。また、-C(CH)(CHとも記載することができる。
【0063】
用語「アルキル」は、長さが1~10個の炭素原子の飽和の炭化水素鎖を意味する。例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。例えば、本開示で使用する通り、プロピルは、n-プロピルおよびiso-プロピルの両方を含む。例えば、ブチルは、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルを含む。
【0064】
用語「アリール」は、芳香族の炭化水素基を意味する。アリールとして、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられ、ならびに、それぞれの置換された形態が挙げられる。ヘテロアリールとは、芳香族の炭化水素であって、1以上の芳香族の炭素原子が、窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)などの別の原子で置き換えられているものを意味する。ヘテロアリール基のいくつかの例として、ピリジル(ピリジニル)((CN)-)、フリル(フラニル)(OC-)、チエニル((CS)-)、ならびに、その置換された形態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
「置換(又は置換された)」とは、本開示で使用する通り、上記で説明した化合物または官能基の1以上の水素原子が、別の官能基(すなわち、置換基)で置き換えられていることを意味する。例えば、置換されたフェニルは、フェニル環(又はフェニル・リング)の任意の水素原子の場所に1以上の置換基を含んでよい。
いくつかの実施形態において、オルトの位置、メタの位置またはパラの位置に置換基が1つ存在してよい。
他の実施形態において、両方(2つ)のオルトの位置または両方(2つ)のメタの位置に置換基が存在してよい。
さらに他の実施形態において、必要に応じて置換されたフェニルは、例えば、オルトの位置およびパラの位置の両方、あるいは、メタの位置およびパラの位置の両方に置換基を含んでよい。
複数の置換基を有するいくつかの実施形態において、置換基は、すべて、同一である。
複数の置換基を有する他の実施形態において、置換基は、互いに異なる。
典型的な置換基として、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
官能基が「必要に応じて置換されている」と記載されている場合、官能基には、1以上の置換基が存在していても、置換基が全く存在していなくてもよい。
【0066】
本開示において説明するプレ触媒錯体(又は前触媒錯体又は前駆触媒錯体又は予備触媒錯体又はプレキャタリスト・コンプレックス(precatalyst complexes))は、遷移金属(「M」)を含む金属センター(又は金属中心)を少なくとも1つ有する。遷移金属の例として、周期表の第9族および第10族の遷移金属が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第9族の金属として、Co、RhおよびIrが挙げられる。
第10族の元素として、Ni、PdおよびPtが挙げられる。
【0067】
本開示は、以下の{1}~{36}の項に記載の以下の実施形態をさらに提供する。
【0068】
{1}
以下の式Iを有する化合物
【化15】

式中、RおよびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される。
【0069】
{2}
上記{1}の項に記載の化合物であって、RおよびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、同一である。
他の実施形態において、RおよびRは、異なっている。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがアリール基である。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがアルキル基である。
いくつかの実施形態において、Rは、アリール部位であり、Rは、アルキル部位である。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがフェニルである。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともが置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがシクロヘキシルである。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがイソプロピルである。
いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともがtert-ブチルである。
いくつかの実施形態において、Rは、フェニルであり、Rは、置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態において、Rは、フェニルであり、Rは、シクロヘキシルである。
いくつかの実施形態において、Rは、フェニルであり、Rは、イソプロピルである。
いくつかの実施形態において、Rは、フェニルであり、Rは、tert-ブチルである。
いくつかの実施形態において、Rは、置換されたフェニルであり、Rは、シクロヘキシルである。
いくつかの実施形態において、Rは、置換されたフェニルであり、Rは、イソプロピルである。
いくつかの実施形態において、Rは、置換されたフェニルであり、Rは、tert-ブチルである。
いくつかの実施形態において、Rは、シクロヘキシルであり、Rは、イソプロピルである。
いくつかの実施形態において、Rは、シクロヘキシルであり、Rは、tert-ブチルである。
いくつかの実施形態において、Rは、tert-ブチルであり、Rは、イソプロピルである。
【0070】
{3}
上記の{1}または{2}の項に記載の化合物であって、RおよびRは、それぞれ、置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、メチルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルコキシである。
特定の実施形態において、置換基は、メトキシである。
特定の実施形態において、置換基は、イソプロポキシである。
いくつかの実施形態において、置換基は、ハロアルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、トリフルオロメチルである。
特定の実施形態において、複数の置換基が存在する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2つのアルキル置換基を有する。
このような実施形態において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、3個の置換基を有する。
このような実施形態において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
さらに他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のアルキル置換基と、1以上のアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のC-Cのアルキルまたはハロアルキルの置換基と、1以上のC-Cのアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2個のC-Cアルキル置換基と、1個のC-Cアルコキシ置換基とを有する。
【0071】
{4}
上記の{1}、{2}または{3}のいずれか1項に記載の化合物であって、-PRは、以下から選択される。
【0072】
【化16】
【0073】
{5}
以下の式Iを有するリガンド
【化17】

式中、RおよびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される。
【0074】
{6}
上記の{5}の項に記載のリガンドであって、RおよびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0075】
{7}
上記の{5}または{6}の項に記載のリガンドであって、RおよびRは、それぞれ、置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、メチルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルコキシである。
特定の実施形態において、置換基は、メトキシである。
特定の実施形態において、置換基は、イソプロポキシである。
いくつかの実施形態において、置換基は、ハロアルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、トリフルオロメチルである。
特定の実施形態において、複数の置換基が存在する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2つのアルキル置換基を有する。
このような実施形態において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、3個の置換基を有する。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
さらに他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のアルキル置換基と、1以上のアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のC-Cのアルキルまたはハロアルキルの置換基と、1以上のC-Cアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2個のC-Cアルキル置換基と、1個のC-Cアルコキシ置換基とを有する。
【0076】
{8}
上記の{5}または{6}の項に記載のリガンドであって、以下のものから選択されるリガンド。
【0077】
【化18】
【0078】
{9}
以下の式IIを有するプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalyst))
【化19】
II
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属である。
Yは、ハロ(halo)である。
【0079】
{10}
上記の{9}の項に記載のプレ触媒であって、RおよびRは、独立して、フェニル、必要に応じて置換されたフェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0080】
{11}
上記の{9}または{10}の項に記載のプレ触媒であって、RおよびRは、それぞれ、置換されたフェニルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、メチルである。
いくつかの実施形態において、置換基は、アルコキシである。
特定の実施形態において、置換基は、メトキシである。
特定の実施形態において、置換基は、イソプロポキシである。
いくつかの実施形態において、置換基は、ハロアルキルである。
特定の実施形態において、置換基は、トリフルオロメチルである。
特定の実施形態において、複数の置換基が存在する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2個のアルキル置換基を有する。
このような実施形態において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、3個の置換基を有する。
このような置換基において、アルキル置換基は、C-Cのアルキルまたはハロアルキルである。
いくつかの実施形態において、アルキル置換基は、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはトリフルオロメチル基である。
さらに他の実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のアルキル置換基と、1以上のアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、1以上のC-Cのアルキルまたはハロアルキルの置換基と、1以上のC-Cアルコキシ置換基とを有する。
いくつかの実施形態において、置換されたフェニルは、それぞれ、2個のC-Cアルキル置換基と、1個のC-Cアルコキシ置換基とを有する。
【0081】
{12}
上記の{9}~{11}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される。
【0082】
{13}
上記の{9}~{12}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pdである。
【0083】
{14}
上記の{9}~{13}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Yは、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される。
【0084】
{15}
上記の{9}、{10}または{12}~{14}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、以下から選択されるプレ触媒。
【0085】
【化20】
【0086】
{16}
以下の式IIIを有するプレ触媒。
【化21】
III
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属である。
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択される。
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス{3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)からなる群から選択されるアニオンである。
【0087】
{17}
上記の{16}の項に記載のプレ触媒であって、RおよびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0088】
{18}
上記の{16}または{17}の項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される。
【0089】
{19}
上記の{16}~{18}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pdである。
【0090】
{20}
上記の{16}~{19}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Xは、H、メチルおよびフェニルからなる群から選択される。
【0091】
{21}
上記の{16}~{20}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Yは、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFからなる群から選択される。
【0092】
{22}
上記の{16}~{21}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、以下からなる群から選択されるプレ触媒。
【0093】
【化22】
【0094】
{23}
以下の式IVを有するプレ触媒。
【化23】
IV
式中、Adは、アダマンチルである。
およびRは、独立して、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、-NR、および必要に応じて置換されたフェニルからなる群から選択される。
およびRは、それぞれ、HおよびC-C12アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、RおよびRは、一緒になって、飽和または不飽和の5員または6員の環を形成することができる。このような環は、必要に応じて、O、SおよびNから選択される1以上の追加のヘテロ原子と、1以上の任意の置換基とを含む。
任意の置換基は、それぞれ、存在する場合、C-Cアルキル、C-CハロアルキルおよびC-Cアルコキシからなる群から選択される。
Mは、第9族または第10族から選択される遷移金属である。
Xは、H、C-Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択される。
は、ハライド、トリフラート(OTf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メシレート(OMs)、トシレート(OTs)、テトラキス{3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート(BArF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)およびそれらの組み合わせ(又はコンビネーション)からなる群から選択されるアニオンである。
【0095】
{24}
上記の{23}の項に記載のプレ触媒であって、RおよびRは、独立して、フェニル、シクロヘキシル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0096】
{25}
上記の{23}または{24}の項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pd、Ni、Rh、Co、IrおよびPtからなる群から選択される。
【0097】
{26}
上記の{23}~{25}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Mは、Pdである。
【0098】
{27}
上記の{23}~{26}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Xは、H、メチルおよびフェニルからなる群から選択される。
【0099】
{28}
上記の{23}~{27}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、Yは、Cl、Br、IOTf、BFOMs、OTs、PFBArFおよびSbFからなる群から選択される。
【0100】
{29}
上記の{23}~{28}のいずれか1項に記載のプレ触媒であって、以下からなる群から選択されるプレ触媒。
【0101】
【化24】
【0102】
{30}
金属が触媒するP-Cのクロスカップリング反応(metal-catalyzed P-C cross-coupling reaction)を行うための方法であって、当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、芳香族の溶媒および塩基の存在下、上記の{5}~{8}のいずれか1項に記載のリガンドを金属触媒と接触させる工程(又はステップ)、
式:Ar-X’[式中、Arは、アリールであり、X’は、ハロ(halo)である]を有する第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および式:R’PH[式中、R’は、C-C10アルキルおよびC-C10シクロアルキルからなる群から選択される]を有する第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)を反応容器に添加する工程(又はステップ)、
炭素(C)-リン(P)の結合を形成するのに十分な期間(又は時間)にわたって、100℃~200℃の範囲の温度まで、反応容器を加熱する工程(又はステップ)。
【0103】
{31}
上記の{30}の項に記載の方法であって、上記のリガンドが、上記の{8}の項に記載のリガンドであり、上記の触媒がPd触媒である。
【0104】
{32}
金属が触媒するCsp2-Csp3のクロスカップリング反応(metal-catalyzed Csp2-Csp3 cross-coupling reaction)を行うための方法であって、当該方法は、以下の工程(又はステップ)を含む。
反応容器において、溶媒の存在下、上記の{9}~{15}のいずれか1項に記載の式IIを有するプレ触媒を第1の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)および第2の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)と接触させる工程(又はステップ)であって、
第1の基質は、式:Ar-X’を有し、
Arは、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアリールであり、
X’は、クロロまたはブロモまたはヨードであり、
第2の基質は、式:R’{M}を有し、
R’は、C-C10アルキル、C-C10フルオロアルキルおよびC-C10シクロアルキルからなる群から選択され、
{M}は、Li、MgX’,ZnX’およびB(OH)および関連するボロン試薬(又はホウ素試薬(boron reagent))からなる群から選択され、
X’は、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択される、
工程(又はステップ)と、必要に応じて、
反応容器を加熱する工程(又はステップ)、および
sp2-Csp3のクロスカップリングが生じるのに十分な期間(又は時間)にわたって、プレ触媒の存在下、第1の基質および第2の基質を反応させる工程(又はステップ)と
を含む。
【0105】
{33}
上記の{32}の項に記載の方法であって、第1の基質が、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換されたピリジル、必要に応じて置換されたチエニル、および必要に応じて置換されたフリルからなる群から選択される。
【0106】
{34}
上記の{32}または{33}の項に記載の方法であって、{M}は、Liであり、溶媒は、トルエンであり、反応容器は、加熱されない。
【0107】
{35}
上記の{32}または{33}の項に記載の方法であって、{M}は、MgX’およびZnX’から選択され、溶媒は、テトラヒドロフランであり、反応容器は、50℃まで加熱される。
【0108】
{36}
上記の{32}または{33}の項に記載の方法であって、{M}は、B(OH)であり、溶媒は、トルエンであり、反応容器は、100℃まで加熱される。
【実施例
【0109】
(実施例)
【0110】
式Iを有するリガンドの合成
【0111】
実施例1
(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(I-c)の合成
【0112】
【化25】
【0113】
窒素下、1,1’-ジブロモフェロセン(5g,0.015mol)を250mlのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水THFに溶解させた。次いで、ドライアイス/アセトンのバス(又は浴)を用いて、この溶液を-78℃まで冷却した。n-BuLi(2.5M(ヘキサン中),6mL,0.015mol)を-78℃で反応溶液にゆっくりと滴下して添加した。生成したオレンジ色の反応溶液を-78℃で約1時間にわたって撹拌した。クロロジイソプロピルホスフィン(ClPPr,2.5mL,0.016mol)を-78℃でシリンジを用いてゆっくりと滴下して添加した。反応混合物を室温までゆっくりと温めて、約3時間にわたって、室温で撹拌した。反応混合物にメタノール(2mL)を添加して、反応をクエンチした。ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、残渣を20mLのヘキサンに溶解させて、シリカのプラグを通して、濾過した。第1の薄いオレンジ色をしたバンド(不純物のバンド)が完全に溶出するまで、ヘキサンでプラグを洗浄した。次いで、TBMEを用いて、後続の濃いオレンジ色をしたバンド(生成物のバンド(又はプロダクト・バンド))を回収した(色が付いた濾過物が溶出しなくなるまで)。まず、ロータリーエバポレータを用いて、濃いオレンジ色をした濾過物を濃縮した(溶媒の大半が蒸発するまで)。次いで、高い減圧下で、オレンジ色のオイル(又は油状物)(5g)を得た。このオイル(又は油状物)を31P-NMRで確認した(純度>95%,0.37ppm)。この段階の物質(又は材料又はマテリアル)をそのまま次の工程(又はステップ)で使用した。
【0114】
Pd(OAc)(100mg,0.4mmol)、DPPF(1,1’-ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン(180mg,0.4mmol)、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-1’-ブロモフェロセン(5.0g,0.013mol)、ジアダマンチルホスフィン(AdPH,4.20g,0.014mol)およびNaOBu(1.4g,0.015mol)を250mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れ、続いて、100mLの無水トルエンを添加した。反応混合物を室温で10分間にわたって撹拌した。次いで、加熱して、20時間にわたって還流した。この時点で、反応は、完了したものとみなす(取り出したアリコートから得られた31P NMRのデータに基づく)。次いで、反応混合物を冷却させて、シリカのプラグを通過させて、次いで、オレンジ色の溶液がすべて回収されるまで、CHClを用いてプラグを洗浄した。合わせた溶出液を回収し、溶媒を減圧下で除去して、オレンジ色の固体を得た。50mLのEtOを用いて、この固体をスラリーとして洗浄して、オレンジ色の固体を得た。この固体を濾過して、EtOで洗浄し(2×10mL)、減圧下で乾燥させて、6.3g(収率80%)のオレンジ色の固体を得た。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.35 (m, 2H; Fc-H), 4.32 (m, 2H; Fc-H), 4.23 (m, 2H; Fc-H), 4.15 (m, 2H; Fc-H), 2.09 (m, 6H), 1.96 - 1.85 (m, 14H; 1-Ad), 1.72 (s, 12H; 1-Ad), 1.12 - 1.07 (m, 12 H, CH3);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 25.39 (PAd2), -0.03 (P iPr2).
【0115】
同様にして、本開示で説明する他のリガンドも合成した。
【0116】
実施例2
(1-ジフェニルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(I-a)
化合物I-cのための一般的な手順を使用した。ただし、クロロジイソプロピルホスフィンの代わりに、クロロジフェニルホスフィン(3.53g,0.016mol)を使用した。得られた化合物は、オレンジ色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 7.50 - 7.33 (m, 10H, Ar-H), 4.42 (m, 2H; Fc-H), 4.29 (m, 2H; Fc-H), 4.15 (m, 2H; Fc-H), 4.08 (m, 2H; Fc-H), 2.01 - 1.97 (m, 6H, 1-Ad), 1.91 - 1.87 (m, 6H; 1-Ad), 1.84 - 1.80 (m, 6H; 1-Ad), 1.68 (s, 12 H, 1-Ad); 31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 25.66 (PAd2), 17.05 (PPh2).
【0117】
実施例3
(1-ジシクロヘキシルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(1-b)
化合物I-cのための一般的な手順を使用した。ただし、クロロジイソプロピルホスフィンの代わりに、クロロジシクロヘキシルホスフィン(3.72g,0.016mol)を使用した。得られた化合物は、オレンジ色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.33 (m, 2H; Fc-H), 4.30 (m, 2H; Fc-H), 4.21 (m, 2H; Fc-H), 4.13 (m, 2H; Fc-H), 2.10 - 2.06 (m, 6H), 1.95 - 1.70 (m, 37H), 1.35 - 1.20 (m, 9H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 25.18 (PAd2), -8.15 (PCy2).
【0118】
実施例4
(1-ジ-t-ブチルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(I-d)
化合物I-cについての一般的な手順を使用した。ただし、クロロジイソプロピルホスフィンの代わりに、クロロジ-t-ブチルホスフィン(2.89g,0.016mol)を使用した。得られた化合物は、オレンジ色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.38 - 4.35 (m, 4H; Fc-H), 4.20 - 4.18 (m, 4H; Fc-H), 2.09 - 2.05 (m, 6H, 1-Ad), 1.95 - 1.84 (m, 12H; 1-Ad), 1.70 (s, 12H; 1-Ad), 1.18 (d, 18 H, tBu-H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 27.07 (P tBu2), 25.31 (PAd2).
【0119】
実施例5
(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン(I-e)
窒素下、1,1’-ジブロモフェロセン(5g,0.013mol)を250mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水THFに溶解させた。次いで、ドライアイス/アセトンのバス(又は浴)を用いて、この溶液を-78℃まで冷却した。この反応溶液に-78℃でn-BuLi(2.5M(ヘキサン中),6mL,0.015mol)をゆっくりと滴下して添加した。生成したオレンジ色の反応溶液を-78℃で約1時間にわたって撹拌した。-78℃でシリンジを用いてクロロジイソプロピルホスフィン(ClPPr,2.5mL,0.016mol)をゆっくりと滴下して添加した。反応混合物を室温までゆっくりと温めて、約3時間にわたって、室温で撹拌した。反応混合物にメタノール(2mL)を添加して、反応をクエンチした。ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、残渣を20mLのヘキサンに溶解して、シリカのプラグを通して、濾過した。第1の薄いオレンジ色をしたバンド(不純物のバンド)が完全に溶出するまで、プラグをヘキサンで洗浄した。次いで、TBMEを用いて、後続の濃いオレンジ色をしたバンド(生成物バンド(又はプロダクト・バンド))を回収した(着色した濾過物が溶出しなくなるまで)。まず、ロータリーエバポレータを用いて、濃いオレンジ色をした濾過物を濃縮した(溶媒の大半が蒸発するまで)。次いで、高い減圧下で、オレンジ色のオイル(又は油状物)(5g)を得た。このオイル(又は油状物)を31P-NMRで確認した(純度>95%,0.37ppm)。この段階の物質(又は材料又はマテリアル)をそのまま次の工程(又はステップ)に使用した。
【0120】
窒素下、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-1’-ブロモフェロセン(5g,0.013mol)を250mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水THFに溶解させた。次いで、ドライアイス/アセトンのバス(又は浴)を用いて、この溶液を-78℃に冷却した。この反応溶液に-78℃でn-BuLi(2.5M(ヘキサン中),6mL,0.015mol)をゆっくりと滴下して添加した。生成したオレンジ色の反応溶液を-78℃で約1時間にわたって撹拌した。シリンジを用いて-78℃でクロロジ-t-ブチルホスフィン(ClPBu,2.89g,0.016mol)をゆっくりと滴下して添加した。反応混合物を室温までゆっくりと温めて、室温で約3時間にわたって撹拌した。反応混合物にメタノール(2mL)を添加して、反応をクエンチした。ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、残渣を20mLのジクロロメタンに溶解させて、シリカのプラグを通して濾過した。次いで、プラグをジクロロメタンで洗浄した(オレンジ色のバンドが完全に溶出して回収されるまで)。ロータリーエバポレータを用いて、濾過物を濃縮した。残渣を20mLのヘキサンに溶解させた。この濃いオレンジ色の溶液をフリーザーにおいて-20℃まで一晩にわたって冷却して、固体の沈殿物を得た。この固体を回収し、冷たいヘキサンで洗浄して(5mL×2)、オレンジ色の固体を得た(4.4g、75%)。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.35 (m, 2H; Fc-H), 4.32 (m, 2H; Fc-H), 4.27 (m, 2H; Fc-H), 4.19 (m, 2H; Fc-H), 2.00 - 1.92 (m, 2H, CH(CH3)2), 1.22 (d, 18H; tBu), 1.15 - 1.05 (m, 12H; CH(CH 3)2);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 27.06 (P tBu2), -0.22 (P iPr2).
【0121】
式IIを有するプレ触媒の合成
【0122】
実施例6
[(1-ジイソプロピルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ パラジウム(II-c)の合成
【0123】
【化26】
【0124】
窒素下、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(603mg,1.0mmol)およびPd(CHCN)Cl(259mg,1.0mmol)を100mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌した。続いて、溶媒を除去して、褐色の固体を得た。50mLのヘキサンを用いて、30分間にわたって、この固体をスラリー化して、赤褐色の固体を得た。この固体を濾過して、減圧下で乾燥して、純粋な生成物(750mg,96%)を得た。生成物のジクロロメタンの溶液にペンタンをゆっくりと拡散させることによって(又はスロー・ディフュージョン)、X線回折の研究(又はスタディ)に適した単結晶(又はシングル・クリスタル)を得た。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.77 (m, 2H; Fc-H), 4.59 (s, 2H; Fc-H), 4.52 (s, 2H; Fc-H), 4.50 (m, 2H; Fc-H), 3.31 - 3.23 (m, 2H; CH(CH3)2), 2.75 (br, 6H), 2.38 (br, 6H), 2.06 (s, br, 6H), 1.84 - 1.60 (m, 18H), 1.35 - 1.22 (m, 6H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 68.50 (d), 58.10 (d).
【0125】
同様にして、本開示で説明する他の金属錯体も合成した。
【0126】
実施例7
[(1-ジフェニルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ パラジウム(II-a)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジフェニルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(671mg,1.0mmol)を使用した。得られた生成物は、褐色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 8.10 (br, 4H, Ph-H), 7.60 - 7.50 (m, 6H, Ph-H), 4.96 (m, 2H, Fc-H), 4.57 (m, 2H, Fc-H), 4.33 (m, 2H, Fc-H), 3.91 (m, 2H, Fc-H), 3.20 - 2.05 (br, 12H, Ad-H), 2.02 (m, 6H, Ad-H), 1.90 - 1.75 (m, 12H, Ad-H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 75.10 (d), 38.25 (d).
【0127】
実施例8
[(1-ジシクロヘキシルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ パラジウム(II-b)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジシクロヘキシルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(683mg,1.0mmol)を使用した。得られた生成物は、褐色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 4.72 (m, 2H, Fc-H), 4.57 (m, 2H, Fc-H), 4.55 - 4.45 (m, 4H, Fc-H), 3.10 - 2.20 (br, 18H), 2.20 - 1.60 (m, 18H), 1.55 - 1.20 (m, 16H); 31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 75.10 (d), 38.25 (d).
【0128】
実施例9
[(1-ジ-t-ブチルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ パラジウム(II-d)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジ-t-ブチルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(631mg,1.0mmol)を使用した。得られた生成物は、褐色の固体であった。
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 66.66 (d), 60.00 (d).
【0129】
実施例10
[(1-ジイソプロピルホスフィノ)(1’-ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ パラジウム(II-e)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン(446mg,1.0mmol)を使用した。得られた生成物は、褐色の固体であった。
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 74.37 (d), 58.80 (d).
【0130】
式IIIを有するプレ触媒の合成
実施例11
[(1-ジイソプロピルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン][2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(III-c)の合成
窒素下、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(603mg,1.0mmol)およびジ-μ-メシルビス[2’-(アミノ-N)[1,1’-ビフェニル]-2-イル-C]ジパラジウム(II)(370mg,0.5mmol)を100mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌した。続いて、溶媒を除去して、褐色の固体を得た。50mLのヘキサンを用いて、30分間にわたって、この固体をスラリー化して、赤褐色の固体を得た。この固体を濾過して、減圧下で乾燥させて、純粋な生成物を得た(875mg,90%)。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 7.65 - 7.55 (m, 2H, Ar-H), 7.35 - 7.25 (m, 6H, Ar-H), 4.65 - 4.55 (m, 3H, Fc-H), 4.51 (m, 1H, Fc-H), 4.48 (m, 1H, Fc-H), 4.39 (m, 1H, Fc-H), 4.37 (m, 1H, Fc-H), 4.34 (m, 1H, Fc-H) 2.97 (br, 3H), 2.77 (br, 3H), 2.40 (br, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.20 - 1.70 (m, 26H), 1.35 - 1.20 (m, 6H), 0.65 - 0.50 (m, 6H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 38.94 (d), 38.65 (d).
【0131】
同様にして、本開示で説明する他の金属錯体IIIも合成した。
【0132】
実施例12
[(1-ジフェニルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン][2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(III-a)(褐色の固体)
化合物II-cのための一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジフェニルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(671mg,1.0mmol)を用いた。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 7.80 - 7.65 (m, 3H, Ar-H), 7.48 - 7.40 (m, 2H, Ar-H), 7.38 - 7.30 (m, 3H, Ar-H), 7.25 - 7.00 (m, 4H, Ar-H), 6.90 - 6.75 (m, 3H, Ar-H), 6.60 - 6.50 (m, 1H, Ar-H), 6.45 - 6.30 (m, 2H, Ar-H), 6.20 (d, 2H), 4.85 (m, 1H, Fc-H), 4.77 (m, 1H, Fc-H), 4.59 (m, 1H, Fc-H), 4.48 (m, 1H, Fc-H), 4.42 (m, 1H, Fc-H), 4.23 (m, 1H, Fc-H), 4.19 (m, 1H, Fc-H), 3.89 (m, 1H, Fc-H), 2.79 (s, 3H), 2.38 (s, 3H), 2.25 (m, 2H), 2.20 - 1.55 (m, 25H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 34.89 (d), 25.78 (d).
【0133】
[(1-ジシクロヘキシルホスフィノ)(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン][2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(III-b)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジシクロヘキシルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(683mg,1.0mmol)を用いた。得られた生成物は、褐色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 7.70 - 7.65 (m, 1H, Ar-H), 7.60 - 7.50 (m, 1H, Ar-H), 7.45 - 7.40 (m, 1H, Ar-H), 7.38 - 7.30 (m, 3H, Ar-H), 7.30 - 7.25 (m, 2H, Ar-H), 4.62 (m, 2H, Fc-H), 4.58 (m, 1H, Fc-H), 4.50 (m, 2H, Fc-H), 4.36 (m, 2H, Fc-H), 4.28 (m, 1H, Fc-H), 2.95 (br, 3H), 2.78 (br, 3H), 2.36 (s, 3H), 2.25 (s, 2H), 2.20 - 0.75 (m, 46H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 38.93 (d), 25.97 (d).
【0134】
実施例13
[(1-ジイソプロピルホスフィノ)(1’-ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン][2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(III-e)
化合物II-cについての一般的な手順を使用した。ただし、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセンの代わりに、(1-ジイソプロピルホスフィノ)-(1’-ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン(446mg,1.0mmol)を用いた。得られた生成物は、褐色の固体であった。
1H NMR (CD2Cl2): δ = 7.65 - 7.60 (m, 1H, Ar-H), 7.58 - 7.50 (m, 1H, Ar-H), 7.40 - 7.25 (m, 6H, Ar-H), 4.59 (m, 2H, Fc-H), 4.55 (m, 2H, Fc-H), 4.51 (m, 1H, Fc-H), 4.38 (m, 3H, Fc-H), 2.35 (s, 3H), 2.25 - 2.15 (br, 3H,), 1.94 (d, 9H), 1.40 - 1.22 (m, 16H), 0.70 - 0.50 (m, 6H);
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 47.08 (d), 39.07 (d).
【0135】
式IVを有するプレ触媒の合成
【0136】
実施例14
Pd(クロチル)[Fc(PAd)(PPh)]Cl(IV-c)の合成
窒素下、(1-ジフェニルホスフィノ)-(1’-ジアダマンチルホスフィノ)フェロセン(671mg,1.0mmol)および(2-ブテニル)クロロパラジウム ダイマー(又は二量体)(197mg,0.5mmol)を100mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに入れて、50mLの無水THFに溶解させた。反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌し、続いて、溶媒を除去して、褐色の固体を得た。50mLのヘキサンを用いて、30分間にわたって、この固体をスラリー化して、赤褐色の固体を得た。この固体を濾過して、減圧下で乾燥させて、純粋な生成物を得た(747mg,86%)。
31P{1H} NMR (CD2Cl2): δ = 75.70 (d), 38.90 (d).
【0137】
同様にして、本開示で説明する他の金属錯体IVも合成した。
【0138】
適用(又は応用又は用途)の研究(又はアプリケーション・スタディ)
2つの困難かつ過小評価されたクラスの反応、すなわち、Csp2-Csp3カップリングおよびP-Cカップリングにおいて、本開示で説明するリガンドおよび結晶を使用した。P-Cカップリングを選択することなく、概念(又はコンセプト)の証明だけでなく、いくつかのリガンド(例えば、アダマンチルに基づくホスフィン類(例えば、S-Phos,Ru-Phos,X-Phos,Amphosなど))をさらに生成させることも実証した。
【0139】
実施例15
sp2-Csp3のクロスカップリング
【0140】
有機合成において、sp2-sp3のカップリングを含むクロスカップリングの化学(又はケミストリ)は、最も困難な反応のうちの1つである(19)。過去30年間にわたって、遷移金属が触媒するクロスカップリング反応(transition metal catalyzed cross-coupling reaction)(sp2ハイブリッド炭素求核試薬(sp2-hybridized carbon nucleophile)と、アリールハライドもしくはビニルハライドとの反応を含む)が鋭意研究されてきた(18)。その一方で、Csp2-Csp3のカップリングに関する化学(又はケミストリ)の研究は、非常に限定的である(19)。そのかなでも、パラジウムおよびニッケルが触媒するクロスカップリング反応は、最も鋭意研究が行われた触媒系(又は触媒システム)のうちの2つである。モデル基質(又はモデル基体又はモデル基材又はモデル・サブストレート)を用いて、文献において、時折いくつか報告されている。しかし、主要な課題(とりわけ、クロスカップリングの様々な人名反応(又はネーム・リアクション(name reaction))に関する反応の範囲について、および、とりわけ、より複雑な薬物様の分子の使用について)は、依然として不十分なままである(19)~(23)。複雑な分子の後段(又はレート・ステージ)での官能化(又はファンクショナリゼーション)(又ははレート・ステージ・ファンクショナリゼーション)は、このような技術(又はテクノロジー)を現実世界での適用(又は応用又は用途)で実行可能にするための熱い研究分野の1つであり続けている。
【0141】
このような研究は、一連のフェロセニルに基づくプレ触媒(又は前触媒又は前駆触媒又は予備触媒又はプレキャタリスト(precatalysts))を評価することよって開始された(ブロモベンゼン(PhBr)を用いて、メチルマグネシウムブロミド(MeMgBr)を用いて、1モル%の触媒の充填量(又はロード又はローディング)を用いる(THF中、周囲温度)(表3))。Pd(dppf)Cl(Csp2-Csp3カップリングのための非常に強力な触媒であることが報告されている(3))は、メチルマグネシウムブロミドを用いると、非常に低いコンバージョン(又は変換率又は転化率)が得られた。他の市販で入手可能なフェロセニル(又はフェロセン)に基づく二座(又はバイデンテート(bidentate))のリガンドの次世代のプレ触媒(すなわち、Pd(dcypf)Cl,Pd(dppf)Cl,Pd(dbpf)Cl)のさらなるスクリーニングでは、いずれも、満足のいくコンバージョン(又は変換率又は転化率)は得られなかった。
しかし、Pd(dbpf)Clは、中程度のコンバージョンを与えた(66%)。それとは対照的に、フェロセニルのリガンドにAdP部位を組み込むこと(又は導入すること)によって、すなわち、Pd(L1-4)Clは、Csp2-Csp3のカップリングを介したメチル化に対する反応性を顕著に増加させた。Pd(L4)Cl(Pd4-a)は、ほとんど定量的なコンバージョン(又は変換率又は転化率)を与えた(室温、2時間)。興味深いことに、ステプニカ(Stepnicka)らのリガンドである[Fc(PBu)(PPh)]PdClは、いずれも、満足のいくコンバージョン(又は変換率又は転化率)を与えなかった(8%、エントリ10)。このことは、AdP部位の重要性を示唆している。ベースライン(又は基準線)の比較として、触媒を添加しない場合は、反応は全く進行しなかった(エントリ1、表3)。
【0142】
【化27】
【0143】
【表3】
【0144】
手中の好ましい触媒を用いて、クロスカップリング反応をメチルマグネシウムブロミドと様々な(ヘテロ)アリールハライドとの間で試験した。相対的(又は比較的)に低い触媒の充填(又はロード又はローディング)(1モル%のPd(L4)Cl)(Pd4-a)を用いた場合、多くの基質(又は基体又は基材又はサブストレート)に対して、非常に良好な収率が得られた(表3)。電子供与性のアリールブロミドおよび電子求引性のアリールブロミドは、ともに、コンバージョン(又は変換率又は転化率)/収率に関して、有意差を全く示さなかった(コンバージョン>95%)。立体的に嵩高いアリールブロミドの反応(1eおよび1f)は、わずかに高い温度が必要であった(約50℃)。>85%の単離収率が得られた。また、窒素を含むヘテロ環(又はヘテロサイクル)(すなわち、ピリジン(1gおよび1h)およびピリミジン(1i))を有する基質も非常に良好な結果をもたらした。最後に、Ar-Clのカップリングにも成功した。このとき、温度をわずかに上昇させた(1b、75%のGCコンバージョン、50℃)。
【0145】
この技術の普遍性をさらに調査するために、様々なアルキル・グリニヤール試薬(Grignard reagents)を調査した(表5)。β-水素を有していない試薬(例えば、CD-、TMSCH-、p-TolCH-)は、すべて十分に作用し、高度から優良までの単離収率を示した(1l~1p)。また、環状アルキルの試薬(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル)も効果的に作用した(2a~2s)。しかし、容易にアクセス可能なβ水素を含む試薬(例えば、Et-、Pr-、Bu-、Bu-など)は、Pd(L4)Cl(Pd4-a)を使用するこのような条件下では、十分にうまく作用しなかった。顕著な量の脱ハロゲン化された副生成物が観察された。それにより、かなり低い収率をもたらした(例えば、30%のGCコンバージョン、3a)。この問題を解決すすために、4-ブロモアニソールとBuMgClの反応において(表4)、触媒のスクリーニングを行った。触媒として、[Fc(AdP)(RP)]PdCl(R=Ph(Pd1-a),Cy(Pd2-a),Pr(Pd3-a)およびBu(Pd4-a))ならびに(dppf)PdClを用いた。Pd4-aは、わずかに30%のGC収率を与えた。すべての他の触媒の試験によって、優良なコンバージョン(又は変換率又は転化率)が得られた。驚くべきことに、上記の収率にもかかわらず、すべての触媒において、異性化の生成物(すなわち、4-sec-ブチルアニソール)は、ほとんど生成しなかった。Pd4-aおよび(dppf)PdClを用いた反応は、Pd2-a,Pd3-aを用いた他の反応と比べて、より遅いものであった。室温で20時間後であっても、両方の反応で顕著な量の未反応の開始材料(又はスターティング・マテリアル)である4-ブロモアニソールが得られた。
【0146】
【表4】
【0147】
合成の簡略化を目的として、Csp2-Csp3のカップリングにおける適用(又は応用又は用途)を研究するためのモデル触媒(又はモデル・キャタリスト)として、(L1)PdCl(Pd1-a)を選択した(様々なアルキル・グリニヤール試薬を用いて、容易にアクセス可能なβ-水素を用いた(表5))。第1のアルキル・グリニヤール試薬(又はプライマリ・アルキル・グリニヤール試薬)(例えば、EtMgBr,BuMgBr)と、第2のアルキル・グリニヤール試薬(又はセカンダリ・アルキル・グリニヤール試薬)(例えば、BuMgBr,PrMgBr)は、ともに、良好に作用して、中程度から優良までの収率を示した。また、N含有ヘテロアリールの基質(又は基体又は基材又はサブストレート)もうまく作用した。
【0148】
【表5】
【0149】
(a)
条件:Ar-X(0.8mmol),RMgX(2.0当量),触媒(1モル%),THF,室温または50℃
(b)
反応温度:50℃
(c)
HCl塩として単離した
(d)
触媒として(L4)PdClを用いた反応からのGCのコンバージョン
Negishi(Zn)またはSuzuki-Miyaura(B)の条件において、生成物2j,2k,2qおよび2sは、より高い収率を示した(表5を参照のこと)。
【0150】
また、困難なクラスの求核試薬(又は求核剤又はヌクレオフィル)の1つ(つまり、グリニヤール試薬(Kumada-Corriuカップリング))を用いて、Csp2-Csp3のカップリングについて、首尾よく実証するために、他の市販の入手可能なCsp3ハイブリッド化有機金属試薬(求核試薬(又は求核剤又はヌクレオフィル))(例えば、アルキルリチウム(Murahashi-Feringa)、アルキルジンク(Negishi)およびアルキルボロン酸(Suzuki-Miyaura))を用いたカップリング反応の普遍性を、ランダムに選択した実施例で調べた(表6を参照のこと)。アルキル・グリニヤール反応で採用した同様の戦略(又はストラテジ)(すなわち、リガンドのステリック(又は立体)およびエレクトロニクス(又は電子工学)と、基質(又は基体又は基材又はサブストレート)のステリック(又は立体)およびエレクトロニクス(又は電子工学)とをバランスさせること(又は釣り合わせること))を用いると、本開示で調べた全ての人名反応(又はネーム・リアクション(name reactions))において、良好から優良までの収率が得られた(表6の実施例を参照のこと)。より低いアルキルジンク/ボロン試薬の求核性(又はヌクレオフィリシティ)に起因して、Csp2-Csp3のカップリングは、典型的には、アルキル・グリニヤール試薬と比較して、より良好な結果をもたらした。例えば、生成物(又はプロダクト)2jがシクロプロピルジンクブロミドまたはシクロプロピルボロン酸を含む反応から顕著により高い収率で単離された(対応するシクロプロピルマグネシムブロミドからの収率との比較)[(95%(B),95%(Zn),42%(Mg)]。また、生成物(又はプロダクト)2kにおいて、同様の傾向を観察した(95%(B),86%(Zn),53%(Mg))。
【0151】
また、同じ方法論を様々な官能基を有する有機亜鉛試薬に適用(又は応用)することが提供され、とても成功している。末端アルケン(4b,94%;4c,83%;4d,81%;および4e,79%)、エステル(4g,89%、および4h,75%),シアノ(4f,86%、および4i,80%)などの官能基は、すべて、十分に耐えることができた(又は耐性であった)。興味深いことに、求核性の炭素中心(又はヌクレオフィリック・カーボン・センター)に近い強い電子求引基を含む有機亜鉛試薬を用いた反応は、より過酷な反応条件を必要としなかった。例えば、EtOC(=O)CHCHZnBrを用いる反応は、より長い反応時間(>20時間)とともに、室温での反応(GCコンバージョン<10%)に対して、より高い反応温度(例えば、50℃)が必要であった。有機亜鉛試薬への電子的な影響は、求核性の炭素中心からの鎖長の増加とともに減少するようである。なぜなら、生成物4fおよび4lは、室温であっても、優良な収率で単離されているからである。
【0152】
LiおよびMgに基づく求核試薬(又は求核剤又はヌクレオフィル)とのCsp2-Csp3のカップリングに関して、報告された異性化(又はアイソメリゼーション)および脱ハロゲン化(又はデハロゲネーション)の副反応(又はサイドリアクション)だけでなく、アルキルボロン酸を用いたSuzuki-Miyauraの条件下でのカップリングも報告されていて、対応するアルキルボロン酸から、プロトデボリル化(又はプロトデボリレーション)を受ける(特に昇温時)。プロトデボリル化(又はプロトデボリレーション)の副反応を最小にするために、Molandar,HazariおよびBurkは、BFKおよびMIDAのボロネートを使用している(23)。Csp2-Csp3のカップリングにおいて、アルキルボロン酸の直接的な使用(又は使用方法)は、Goosenらによる文献において、いくつかの例とともに、つい最近、実証されているだけである(23a)。
【0153】
Kumada-Corriu(Mg),Negishi(Zn),Suzuki-Miyaura(B)の条件下でのCsp2-Csp3のカップリングにおける成功について、最終的には、少なくとも開拓されたカップリング反応(すなわち、Murahashi-Feringa(Li)カップリング、とりわけ、Csp3に基づくLi求核試薬(又はLi求核剤)に関するもの(ここでは、ハロゲン交換の厳しい競争反応ならびに異性化に由来する副反応が報告されている))のうちの1つを研究した。このような欠点のために、Murahashi-Feringaカップリングは、概して、30~40年間にわたって、かなり軽視されてきた。なぜなら、その最初の発見は、1970年代であったからである。最近まで、FeringaのグループおよびGessnerのグループは、独立して、Murahashi-Feringaのカップリングのいくつかの顕著な開発を報告した。基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の範囲(又はスコープ)、官能基の耐性(又はトーレランス)および反応条件がかなり向上(又は改善)した。しかし、本開示で説明する触媒系(又は触媒システム)(すなわち、Murahashi-FeringaのカップリングのためのPd(L1-4)Cl(表6))は、報告された方法と比較して、低い触媒の充填(又はロード又はローディング)において、とても効果的であった。これは、触媒を活性化するために、Oとともに、最大で5%のPdの充填(又はロード又はローディング)を採用するものである。このような最近のリガンドのいくつかは、研究開発(R&D)を超えて、実用的な適用(又は応用又は用途)において、スケールを合わせることができない(又はスケールを調節することができない)。シンプルな芳香族の基質(又は基材又は材料又はサブストレート)(3fおよび3g)ならびに窒素含有ヘテロ環(又はヘテロサイクル)(3i)では、ともに、アルキルリチウムで良好から優良までの収率が得られた。興味深いことに、MeLiを用いた反応は、遅い添加(又はスロー・アディション)も希釈(又はダイリューション)も必要としなかった。このことは、おそらく、そのエーテル溶媒での安定性に関連して、このような条件下でのLi/ハロゲン交換の遅い反応速度に起因するものと考えられる(1i,73%)。
【0154】
上記で言及した通り、Ar-Clに関して、Kumada-CorriuおよびNegishiの反応は、加熱を必要とした(約50℃)。その一方で、Ar-Brに関するものは、典型的には、室温で進行した。これは、Cl基およびBr基の両方を含む基質(又は基体又は基材又はサブストレート)の連続的なCsp2-Csp3のカップリングに利用されている。それにより、所望の生成物を優良な選択性および収率で単離している(例えば、3p,87%、および3p’(3pから),91%)。室温で2-ブロモ-3-クロロピリジンをBuZnBrとカップリングさせることによって、モノカップリングの生成物3pを高収率で単離した。その一方で、クロロは無傷(又はインタクト)のまま維持された。続いて、Suzuki-Miyauraの条件下、100℃で、3p(Ar-Cl)をシクロプロピルボロン酸とカップリングさせて、生成物3p’を91%の単離収率で得た。
【0155】
【表6】
【0156】
(a)
Negishiの条件(Zn):Ar-X(0.8mmol),RZnX(2.0当量),触媒(1モル%),THF,室温または50℃
Suzuki-Miyauraの条件(B):Ar-X(0.8mmol),RB(OH)(2.0当量),触媒(1モル%),KPO(3当量),トルエン/HO(10/1),100℃
Murahashi-Feringaの条件(Li):Ar-X(0.8mmol),RLi(1.2当量,0.2Mまでトルエンで希釈した),触媒(1モル%),トルエン,室温
2時間かけて、シリンジ・ポンプを用いてゆっくりと添加した。
(b)
反応温度:50℃
【0157】
重水素で標識(又はラベリング)した薬物(表7.1)(24)、特にCDに基づく分子は、「マジック・メチル・エフェクト(magic methyl effect)」(医薬にメチル基を導入することによって、生物学的な活性に積極的に影響を与えることができた)に起因して卓越している。そして、これは、H原子(単数又は複数)を重水素(D)で置換する際、生物における吸収、分布および代謝に関連して、薬物の候補への顕著な改善(又は向上)に起因して卓越している。さらに、重水素原子は、追跡原子(又はトレーサー原子又はトレーサー・アトム)として使用することができ、それにより、医薬品化学(又はメディシナル・ケミストリ)における代謝経路を明瞭にすることができる。また、シクロプロパンのモチーフ(又は主旨又は主題(motif))は、薬物の合成において、大いに顕著である。なぜなら、これは、小さな分子の薬物(又はスモール・モレキュラー・ドラッグ)において、最も頻繁に発見された環系(又はリング・システム)(10番目)であるからである(表7.1)(25)。モデル基質(又はモデル基体又はモデル基材又はモデル・サブストレート)の成功に関して、「薬物様(drug-like)」の分子(又はドラッグ・ライク・モレキュラー)に様々な「アルキル・フラグメント」をグラフトさせること(すなわち、疑似的な「後段での官能化」(又はミミック・レート・ステージ・ファンクショナリゼーション)(特に様々なクロスカップリングの化学(又はケミストリ)に連動しているもの)に関する鋭意研究によって、Merck & Coで開発された「ケミストリ・インフォーマー・ライブラリ(Chemistry Informer Libraries)」(26))が試されている。9つの例で優良な単離収率が得られている(表7.2)。
化合物X3a,X4a,X6bおよびX14aは、シクロプロパン環が組み込まれた薬物様の分子を表す。
また、Cl/Brにおける後続のNegishiおよびSuzukiのCsp2-Csp3のカップリングの戦略(又はストラテジ)を首尾よく達成させた(X6a、収率79%、およびX6b、収率90%)。
驚くべきことに、BuB(OH)を用いた同じく「インフォーマー(Informer)」の基質(又は基体又は基材又はサブストレート)(又はインフォーマー・サブストレート)の反応(昇温(100℃))によって、ダブル・カップリングの生成物X6cが優良な収率(88%)でもたらされた。
また、最後に、CD基を「インフォーマー(Informer)」の分子(又はインフォーマー・モレキュラー)(X15a)の1つに中程度の収率(43%)で首尾よく組み込んだ。
より低い収率のX15aは、官能基に対するグリニヤール試薬の強い求核性(又はヌクレオフィリシティ)に起因するようである。
しかし、NegishiまたはSuzuki-Miyauraの様々な求核試薬(又は求核剤又はヌクレオフィル)は、モデル基質の結果に類似する方法(又はアナロジー)において、より良好な結果をもたらし得ることが予測されている(現在、かかる試薬は、市販品として入手することができない)。
【0158】
【表7】
【0159】
(a)
Kumada-Corriuの条件(Mg):Ar-X(100mg),RMgX(2.0当量),触媒(2モル%),THF,室温または50℃
Negishiの条件(Zn):Ar-X(100mg),RZnX(2.0当量),触媒(2モル%),THF,室温または50℃
Suzuki-Miyauraの条件(B):Ar-X(100mg),RB(OH)(2.0当量),触媒(2mol%),KPO(3当量),トルエン/HO(10/1),100℃
【0160】
実施例16
新しいリガンドを製造するためのP-Cのカップリング
【0161】
本開示で説明したリガンド/触媒系の他のクロスカップリングの化学(又はケミストリ)における有用性をさらに理解するために、いくつかの新しいリガンドを合成するという観点、ならびにP-Cのカップリングの実用性を実証するという観点から、P-Cのカップリングを調べた。Buchwald(27)およびStradiotto(12)のグループによって報告された同様のプロトコルに従って、本開示で説明するリガンドおよび市販品として入手可能な様々な一座(又はモノデンテート(monodentate))および二座(又はバイデンテート(bidentate))のリガンドを用いた反応のスクリーニングを試験した(表8)。この研究においてスクリーニングした一座(又はモノデンテート(monodentate))のリガンドは、すべて、5%未満のH NMRコンバージョンを示した。その一方で、二座(又はバイデンテート(bidentate))のリガンドは、H NMRコンバージョンに関して、より良好に作用し、そのほとんどが、20%を超えるH NMRコンバージョンを示した。ただし、以下のものについては、10%未満のH NMRコンバージョンを示した。dppe(<5%,エントリ5)およびFc(PAd)(PPh)(8%,エントリ9)。
驚くべきことに、P-Cのカップリングに耐えることができるリガンドとして報告されているFc(PPr)(PPr)(dippf)は、モデル反応において、とてもうまく作用せず、わずかに24%の収率を示した(エントリ7)。
より電子がリッチ(又は豊富)でバルキー(又は嵩高)なFc(PBu)(PBu)(dtbpf)は、いずれも、良好なコンバージョンを示さなかった(収率21%,エントリ8)。
リガンドを本開示で説明するPAdに基づくリガンド(L1-4)に交換すると、収率は顕著に改善(又は向上)した。すべて、良好な収率を示した。ただし、Fc(PAd)(PPh)(L1,8%)は除く。その一方で、Fc(PAd)(PPr)(L3)は、最も高い収率(87%)を示した。
また、注目すべきは、キサントフォス(XantPhos)は、許容可能なH NMRのコンバージョンを示した(45%,エントリ6)。
ホスフィンリガンドを用いない反応は、全く進行しなかった(エントリ1)。
【0162】
【表8】
【0163】
最適化された反応条件および手中にあるホスフィンリガンドを用いて、様々なホスフィンリガンドを合成するために、このような技術をさらに適用(又は応用)した。
いくつかの例を以下に示す。
また、ことのほか、いくつかのバルキー(又は嵩高)なBuchwaldのリガンドを合成した(このP-Cのカップリングを用いた)。単離収率は、良好から優良であった。
従来では、かかるバルキー(又は嵩高)なBuchwaldのリガンドを製造(又は調製)することは困難である。とりわけ、産業上の大規模(又はラージスケール)での製造(又は調製)は困難である。
【0164】
【表9】
【0165】
本開示において提供される実施例は、本発明の範囲(特許請求の範囲に示す通りである)を制限することを意味するものではない。
【0166】
文献
【0167】
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【0185】
(19)
sp2-Csp3 カップリングについての最近の文献については、以下を参照のこと:(a) Hazra, S.; Jo-hansson Seechurn, C. C. C.; Handa, S.; Colacot, T. J. The Resurrection of Murahashi Coupling after Four Decades. ACS Catalysis, 2021, 11, 13188; (b) Janwa, E. M.; Tharwat Mohy, E. D.; Lu, C. S.; Iyad, K.; Ali, K.; Kyriaki, P.; Janah, S. Recent Advances in Metal-Catalyzed Alkyl-Boron (C(sp3)-C(sp2)) Suzuki-Miyaura Cross-Couplings. Catalysts, 2020, 10, 296; (c) Campeau, L.; Hazari, N. Cross-Coupling and Related Reactions: Connecting Past Success to the Development of New Reactions for the Future. Organometallics, 2019, 38, 3; (d) Wang, C.; Derosa, J.; Biscoe, M. R. Configurational-ly stable, enantioenriched organometallic nucleophiles in stereo-specific Pd-catalyzed cross-coupling reactions: an alternative ap-proach to asymmetric synthesis. Chem. Sci., 2015, 6, 5105; (e) Jana, R.; Pathak, T. P.; Sigman, M. S. Advances in Transition Metal (Pd,Ni,Fe)-Catalyzed Cross-Coupling Reactions Using Alkyl-organometallics as Reaction Partners. Chem. Rev., 2011, 111, 1417; (f) Kambe, N.; Iwasaki, T.; Terao, J. Pd-catalyzed cross-coupling reactions of alkyl halides. Chem. Soc. Rev., 2011, 40, 4937.
【0186】
(20)
Murahashi-Feringa カップリング(Li)については、以下を参照のこと:(a) Helbert, H.; An-tunes, I. F.; Luurtsema, G.; Szymanski, W.; Feringa, B. L.; Elsinga, P. H. Cross-coupling of [11C]methyllithium for 11C-labelled PET trac-er synthesis. Chem. Commun., 2021, 57, 203; (b) Zhao, Q.; Meng, G.; Li, G.; Flach, C.; Mendelsohn, R.; Lalancette, R.; Szostak, R.; Szostak, M. IPr# - highly hindered, broadly applicable N-heterocyclic carbenes Chem. Sci., 2021, 12, 10583; (c) Freure, G. P. R.; Skrotzki, E. A.; Lavertu, J. E.; Newman, S. G. Palladium-Catalyzed Cross-Coupling of Superbase-Generated C(sp3) Nucleophiles. ACS Catal., 2021, 11, 12258; (d) Scherpf, T.; Steinert, H.; Groβjohann, A.; Dilchert, K.; Tappen, J.; Rodstein, I.; Gessner, V. H. Efficient Pd-Catalyzed Direct Coupling of Aryl Chlorides with Alkyllithium Reagents. Angew. Chem. Int. Ed., 2020, 59, 20596; (e) Heijnen, D.; Hornillos, V.; Corbet, B. P.; Giannerini, M.; Feringa, B. L. Palladium-Catalyzed C(sp3)-C(sp2) Cross-Coupling of (Trimethylsilyl)methyllithium with (Hetero)Aryl Halides. Org. Lett., 2015, 17, 2262; (f) Vila, C.; Hornillos, V.; Giannerini, M.; Fananas-Mastral, M.; Feringa, B. L. Palladium-Catalysed Direct Cross-Coupling of Organolithium Reagents with Aryl and Vinyl Triflates. Chem. Eur. J., 2014, 20, 13078; (g) Vila, C.; Giannerini, M.; Hornil-los, V.; Fana'as-Mastral, M.; Feringa, B. L. Palladium-catalysed direct cross-coupling of secondary alkyllithium reagents. Chem. Sci., 2014, 5, 1361; (h) Giannerini, M.; Fananas-Mastral, M.; Feringa, B. L. Direct catalytic cross-coupling of organolithium compounds. Nat. Chem. 2013, 5, 667; (i) Murahashi, S.; Yamamura, M.; Yanagisawa, K.; Mita, N.; Kondo, K. Stereoselective synthesis of alkenes and alkenyl sulfides from alkenyl halides using palladium and ruthenium catalysts. J. Org. Chem., 1979, 44, 2408; (j) Yamamura, M.; Moritani, I.; Murahashi, S. The reaction of σ-vinylpalladium complexes with alkyllithiums. Stereospecific syn-theses of olefins from vinyl halides and alkyllithiums. J. Organomet. Chem., 1975, 91, C39.
【0187】
(21)
Kumada-Corriu カップリング(Mg)については、以下を参照のこと:(a) Limmert, M. E.; Roy, A. H.; Hartwig, J. F. Kumada Coupling of Aryl and Vinyl Tosylates under Mild Conditions. J. Org. Chem. 2005, 70, 9364; (b) Hayashi, T.; Konishi, M.; Kobori, Y.; Kumada, M.; Higuchi, T.; Hirotsu, K. Dichloro[1,1'-bis(diphenylphosphino)ferrocene]palladium(II): an effective catalyst for cross-coupling of secondary and primary alkyl Grignard and alkylzinc reagents with organic halides. J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 158; (c) Tamao, K.; Kiso, Y.; Sumitani, K.; Kumada, M. Alkyl Group Isomerization in the Cross-Coupling Re-action of Secondary Alkyl Grignard Reagents with Organic Halides in the Presence of Nickel-Phosphine Complexes as Catalysts. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 9268.
【0188】
(22)
Negishi カップリング(Zn)については、以下を参照のこと:(a) Dilauro, G.; Azzollini, C. S.; Vitale, P.; Salomone, A.; Perna, F. M.; Capriati, V. Scalable Negishi Coupling between Organozinc Compounds and (Hetero)Aryl Bro-mides under Aerobic Conditions when using Bulk Water or Deep Eutectic Solvents with no Additional Ligands. Angew. Chem. 2021, 133, 10726; (b) Bhonde, V. R.; O'Neill, B. T.; Buchwald, S. L. An Improved System for the Aqueous Lipshutz-Negishi Cross-Coupling of Alkyl Halides with Aryl Electrophiles. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 1849; (c) Atwater, B.; Chandrasoma, N.; Mitchell, D.; Rodriguez, M. J.; Pompeo, M.; Froese, R. D. J.; Organ, M. G. The Selective Cross-Coupling of Secondary Alkyl Zinc Reagents to Five-Membered-Ring Heterocycles Using Pd-PEPPSI-IHeptCl. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 9502; (d) Alonso, N.; Miller, L. Z.; Munoz, J. de M.; Alcazar, J.; McQuade, D. T. Continuous Synthesis of Organozinc Halides Coupled to Negishi Reactions. Adv. Synth. Catal. 2014, 356, 3737; (e) Pompeo, M.; Froese, R. D. J.; Hadei, N.; Organ, M. G. Pd-PEPPSI-IPentCl: A Highly Effective Catalyst for the Selective Cross-Coupling of Secondary Organozinc Reagents. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 11354; (f) Duplais, C.; Krasovskiy, A.; Lipshutz, B. H. Organozinc Chemistry Enabled by Micellar Catalysis. Palladium-Catalyzed Cross-Couplings between Alkyl and Aryl Bromides in Water at Room Temperature. Organometallics 2011, 30, 6090; (g) Krasovskiy, A.; Thome', I.; Graff, J.; Kra-sovskaya, V.; Konopelski, P.; Duplais, C.; Lipshutz, B. H. Cross-couplings of alkyl halides with heteroaromatic halides, in water at room temperature. Tetrahedron Letters 2011, 52, 2203; (h) Valente, C.; Belowich, M. E.; Hadei, N.; Organ, M. G. Pd-PEPPSI Complexes and the Negishi Reaction. Eur. J. Org. Chem. 2010, 4343; (i) Duplais, C.; Krasovskiy, A.; Wattenberg, A.; Lipshutz, B. H. Cross-couplings between benzylic and aryl halides "on water": synthesis of diarylmethanes. Chem. Commun., 2010, 46, 562; (j) Krasovskiy, A.; Duplais, C.; Lipshutz, B. H. Zn-Mediated, Pd-Catalyzed Cross-Couplings in Water at Room Temperature Without Prior Formation of Organozinc Reagents. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 15592; (k) Han, C.; Buchwald, S. L. Negishi Coupling of Secondary Alkylzinc Halides with Aryl Bromides and Chlorides. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 7532; (l) Luo, X.; Zhang, H.; Duan, H.; Liu, Q.; Zhu, L.; Zhang, T.; Lei, A. Superior Effect of a π-Acceptor Ligand (Phosphine-Electron-Deficient Olefin Ligand) in the Negishi Coupling Involving Alkylzinc Reagents. Org. Lett. 2007, 9, 4571; (m) Melzig, L.; Gavryushin, A.; Knochel, P. Direct Aminoalkylation of Arenes and Hetarenes via Ni-Catalyzed Negishi Cross-Coupling Reactions. Org. Lett. 2007, 9, 5529; (n) Kondolff, I.; Doucet, H.; Santelli, M. Palladium-Tetraphosphine as Catalyst Precursor for High-Turnover-Number Negishi Cross-Coupling of Alkyl- or Phenylzinc Derivatives with Aryl Bromides. Organometallics 2006, 25, 5219; (o) Corley, E. G.; Conrad, K.; Murry, J. A.; Savarin, C.; Holko, J.; Boice, G. Direct Synthesis of 4-Arylpiperidines via Palladi-um/Copper(I)-Cocatalyzed Negishi Coupling of a 4-Piperidylzinc Iodide with Aromatic Halides and Triflates. J. Org. Chem. 2004, 69, 5120; (p) Dai, C.; Fu, G. C. The First General Method for Palladium-Catalyzed Negishi Cross-Coupling of Aryl and Vinyl Chlorides: Use of Commercially Available Pd(P(t-Bu)3)2 as a Catalyst. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 2719; (q) Boudier, A.; Knochel, P. Palladium catalyzed stereoselective cross-couplings and acylations of chiral secondary diorganozincs. Tetrahedron Lett. 1999, 40, 687.
【0189】
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Suzuki-Miyaura カップリング(B)については、以下を参照のこと:(a) Sivendran, N.; Pirk, N.; Hu, Z.; Doppiu, A.; Gooβen, L. J. Halogen-Bridged Methylnaphthyl Palladium Dimers as Versatile Catalyst Precursors in Coupling Reactions. Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 25151. (b) Espinosa, M. R.; Doppiu, A.; Hazari, N. Differences in the Performance of Allyl Based Palladium Precatalysts for Suzuki-Miyaura Reactions. Adv. Synth. Catal. 2020, 362, 5062; c) Chen, L.; Ren, P.; Carrow, B. P. Tri(1-adamantyl)phosphine: Expanding the Boundary of Electron-Releasing Character Available to Organophosphorus Compounds. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 6392; d) Li, L.; Zhao, S.; Joshi-Pangu, A.; Diane, M.; Biscoe, M. R. Stereospecific Pd-Catalyzed Cross-Coupling Reactions of Secondary Alkylboron Nucleophiles and Aryl Chlorides. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 14027; (e) Sandrock, D. L.; Jean-Gerard, L.; Chen, C.; Dreher, S. D.; Molander, G. A. Stereospecific Cross-Coupling of Secondary Alkyl β-Trifluoroboratoamides. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 17108; (f) Molander, G. A.; Canturk, B. Organotrifluoroborates and Monocoordinated Palladium Complexes as Catalysts-A Perfect Combina-tion for Suzuki-Miyaura Coupling. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 9240; (g) Dreher, S. D.; Dormer, P. G.; Sandrock, D. L.; Molander, G. A. Efficient Cross-Coupling of Secondary Alkyltrifluoroborates with Aryl Chlorides-Reaction Discovery Using Parallel Microscale Experimentation. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 9257; (h) Molander, G. A.; Gormisky, P. E. Cross-Coupling of Cyclopropyl- and Cyclobutyltrifluoroborates with Aryl and Heteroaryl Chlorides. J. Org. Chem. 2008, 73, 7481; (i) Dreher, S. D.; Dormer, P. G.; Sandrock, D. L.; Molander, G. A. Efficient Cross-Coupling of Secondary Alkyltrifluoroborates with Aryl Chlorides-Reaction Discovery Using Parallel Microscale Experimentation. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 9257; (j) Knapp, D. M.; Gillis, E. P.; Burke, M. D. A General Solution for Unstable Boronic Acids: Slow-Release Cross-Coupling from Air-Stable MIDA Boronates. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6961.
【0190】
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図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】