(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】エアテクスチャ加工糸
(51)【国際特許分類】
D02G 3/04 20060101AFI20240319BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20240319BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240319BHJP
D03D 15/292 20210101ALI20240319BHJP
D03D 15/44 20210101ALI20240319BHJP
D02G 1/16 20060101ALI20240319BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240319BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
D02G3/04
D03D15/47
D03D15/283
D03D15/292
D03D15/44
D02G1/16
A41D31/00 503G
A41D31/00 503F
A41D31/00 503H
D02G3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558561
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022021454
(87)【国際公開番号】W WO2022204222
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519355758
【氏名又は名称】ザ ライクラ カンパニー ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】マルティーノ,マルコス ロゲリオ
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,ジョジマール
【テーマコード(参考)】
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L036MA05
4L036MA06
4L036MA15
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA41
4L036RA04
4L036UA01
4L048AA13
4L048AA15
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA22
4L048AA24
4L048AA27
4L048AA28
4L048AA34
4L048AB08
4L048AB09
4L048AB11
4L048AB17
4L048AB18
4L048AB19
4L048AC00
4L048AC10
4L048AC12
4L048BA01
4L048CA04
4L048DA01
(57)【要約】
コア繊維及びポリアミドまたはポリエステル繊維を有するエアテクスチャ加工糸、エアテクスチャ加工糸の布地及び衣類、ならびにエアテクスチャ加工糸及びその布地及び衣類の製造方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェットテクスチャ加工によって製造された、ポリエステルまたは二成分コア繊維と、第2のポリアミドまたはポリエステル繊維と、
を含む、糸。
【請求項2】
前記二成分コア繊維が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、またはビスコースポリマーを含む、請求項1に記載の糸。
【請求項3】
前記二成分コア繊維がポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む、請求項1に記載の糸。
【請求項4】
前記二成分コア繊維が二成分フィラメントである、請求項1に記載の糸。
【請求項5】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維が、その二成分コア繊維の周囲に緩く巻き付けられている、請求項1に記載の糸。
【請求項6】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維は、ポリヘキサメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン66)、ポリカプロアミドホモポリマー(ナイロン6)、ポリエナンタミドホモポリマー(ナイロン7)、ナイロン10、ポリドデカノラクタムホモポリマー(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミドホモポリマー(ナイロン610)、n-ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンホモポリマーのポリアミド(ナイロン612)、及びドデカメチレンジアミン及びn-ドデカン二酸ホモポリマーのポリアミド(ナイロン1212)からなる群から選択されるポリアミドである、請求項1に記載の糸。
【請求項7】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリエステルである、請求項1に記載の糸。
【請求項8】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維がナイロン6またはナイロン6,6を含む、請求項1に記載の糸。
【請求項9】
布地及び衣類に組み込まれたときに、冷感及びドライの効果及び柔らかな手触りをもたらすのと同時に、100%ポリアミドの糸と比較して、高い伸縮性及び回復性及び形状の長期間の維持をももたらす、請求項1~8のいずれかに記載の糸。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の糸を含む布地。
【請求項11】
請求項10に記載の布地を含む衣類。
【請求項12】
100%ポリアミドの糸の布地と比較して、冷感及びドライの効果、柔らかな手触り、高い伸縮性及び回復性、及び/または長期間の形状の維持を有する、布地及び衣類に使用するための糸を製造するための方法であって、ポリエステルまたは二成分コア繊維と第2のポリアミドまたはポリエステル繊維を共にエアテクスチャ加工することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記二成分コア繊維が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、またはビスコースポリマーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二成分コア繊維がポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記二成分コア繊維が二成分フィラメントである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維が、その二成分コア繊維の周囲に緩く巻き付けられている、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維は、ポリヘキサメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン66)、ポリカプロアミドホモポリマー(ナイロン6)、ポリエナンタミドホモポリマー(ナイロン7)、ナイロン10、ポリドデカノラクタムホモポリマー(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミドホモポリマー(ナイロン610)、n-ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンのホモポリマーのポリアミド(ナイロン612)、及びドデカメチレンジアミン及びn-ドデカン二酸ホモポリマーのポリアミド(ナイロン1212)からなる群から選択されるポリアミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリエステルである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のポリアミドまたはポリエステル繊維がナイロン6またはナイロン6,6を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年3月25日に出願された米国仮特許出願第63/165,987号の優先権の利益を主張するものであり、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、コア繊維及びポリアミドまたはポリエステル繊維を含むエアテクスチャ加工糸、エアテクスチャ加工糸を含む布地、及びエアテクスチャ加工糸及びその布地及び衣類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナイロン糸は、その耐久性、多用途性、および能力特性を損なうことなく何度も着用できることから、さまざまな編物や織布に使用されている。しかし、ナイロンは強度、耐摩耗性、光沢、及び弾力性に優れながらも軽量であるという点で注目に値する一方で、この合成ポリマーは肌触りが柔らかくなく、アパレル用途には好ましくない。
【0004】
したがって、柔らかな手触り、伸縮性、及び回復効果を備えた視覚的に美しい布地を得るために、継続的な努力がなされてきた。
【0005】
SUPPLEX(登録商標)ナイロンは、見た目も感触も綿に似ているが、ナイロン繊維の耐久性を依然備えていると発表されているナイロンの一種である。SUPPLEX(登録商標)を製造するには、ナイロンを可能な限り小さな穴から押し出し、極薄、軽量、柔軟な繊維を作成する。これらの極細の繊維を何千本も共に巻き付けることで、綿と同じくらい快適でありながら、縮まず、しわにならず、または色褪せないと開示されているSUPPLEX(登録商標)の布地を形成することができる。
【0006】
一部の用途では、撚りまたはエアジェットテクスチャ加工によってエラストマースパンデックスをカバーするために、ナイロン糸が使用されてきた。その結果、これらの糸から作られた一部の布地は、優れた伸縮性と回復性を備えているが、多くの場合、望ましい視覚的な美観を備えていない。さらに、スパンデックスはゴム状の繊維であるため、染料をあまり吸収しない。また、スパンデックスはゴム状の繊維であるため、これでは望ましい柔らかな感触や「手触り」が得られない。
【0007】
他の努力により、二成分糸の生産が行われてきた。例えば、米国特許第4,601,949号及び第4,740,339号は、ポリアミド複合フィラメントまたは二成分糸、及びインライン紡糸及び延伸方法を使用してそれらを製造する方法を教示している。同様に、米国特許第3,671,379号は、溶融紡糸、引抜き、及びアニーリングによって製造されたポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(トリメチレンテレフタレート)の二成分繊維を開示している。
【0008】
これらの特許に記載されている二成分糸の利点は、伸縮性衣類の構築に役立つ嵩高効果またはクリンプ効果を生み出すことである。例えば、これらの特許は、二成分糸に異なる収縮率を有するポリマーを使用することによって、所望の嵩高効果またはクリンプ効果を達成できることを教示している。この収縮の差は、異なるポリマーを使用するか、異なる相対的な粘度を持つ同様のポリマーを使用することによって得ることができる。しかし、二成分糸だけで作られた布地は、多くの場合、望ましい視覚効果、柔らかな手触り、及び伸縮性と回復性を備えていない。
【0009】
米国特許第6,548,429号は、所望の視覚的なインパクト、手触り、及び伸縮性と回復性を有する布地に編むまたは織ることができる、二成分糸及び第2の糸を含む二成分効果の糸を開示している。さらに、これらの織物はナイロン糸からなることが好ましいため、これらはまた染色可能であり、耐久性に優れている。これらの糸から作られた布地の質感は、既知の他の布地と比較して、滑らかでビロードのような手触りを有することが開示されている。
【0010】
冷感及びドライの効果をもたらすのと同時に、高い伸縮性と回復性、及び長期間にわたる形状の維持をももたらす糸、そのような糸から製造される衣類が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様は、エアジェットテクスチャ加工によって製造されたコア繊維とポリアミドまたはポリエステル繊維とを含む糸に関し、これはまた、布地及び衣類に使用して、冷感及びドライの効果をもたらすと同時に、高い伸縮性と回復性及び長期間にわたる形状の維持をもたらすことができる。
【0012】
本発明の別の態様は、冷感及びドライの効果、高い伸縮性と回復力、及び長期間にわたる形状の維持を備えた布地及び衣類に使用するための糸を製造する方法であって、コア繊維とポリアミドまたはポリエステル繊維を一緒にエアテクスチャ加工することを含む方法に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、冷感及びドライの効果、高い伸縮性と回復力、及び長期間にわたる形状の維持を備えた布地及び衣類であって、エアジェットテクスチャ加工により製造される、コア繊維とポリアミドまたはポリエステル繊維を含む糸を含む布地及び衣類に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示により、冷感及びドライの効果、高い伸縮性及び回復性、及び長期間の形状の維持を示す、エアテクスチャ加工糸、その糸を含む布地及び衣類が提供される。
【0015】
本開示の糸はコア繊維を含む。
【0016】
1つの非限定的な実施形態では、コア繊維はポリエステル繊維である。
【0017】
1つの非限定的な実施形態では、コア繊維は二成分繊維である。
【0018】
本明細書において「二成分糸」と互換的に使用される「二成分繊維」という用語は、少なくとも2つの溶融紡糸可能な繊維成分の複合生成物を指し、その場合複合生成物は、少なくとも2つの異なる長手方向に同一の広がりを有するポリマーセグメントを有する。繊維成分は、当技術分野で知られている任意の適切な溶融紡糸可能な繊維形成ポリマーから構成される。二成分の第1及び/または第2の成分に適した繊維形成ポリマーには、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、レーヨンなどのビスコースポリマー、及びアセテートの任意のホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーが含まれる。「二成分」という用語は、2つの成分のみに限定されることを意図するものではなく、少なくとも3つ以上の異なる長手方向に同一の広がりを有するポリマーセグメントを有する複合生成物を生成する3つ以上の成分を含むことを意図する。このような二成分は、多成分繊維と呼ぶことができる。
【0019】
好ましい二成分繊維は、繊維の長さに沿って互いに緊密に接着し、そのため、繊維の断面は、例えば、並列した偏心のシースコアまたは他の適切な断面となり、それから有用なクリンプを発生させることができる一対のポリマーを含む繊維である。また、繊維はかなりの嵩を有することが好ましい。
【0020】
本明細書で使用される「収縮」という用語は、湿熱にさらされたときの二成分繊維の各成分の長手方向の寸法の減少を指す。二成分繊維の成分間におけるこの収縮の差は、ポリマーの種類、相対的な粘度、結晶化の特性、断面、各ポリマーセグメントに存在する添加剤の量、またはこれらの特性の組み合わせなどのポリマーの特性のうちの1つ以上において異なる繊維形成ポリマーを選択することによって、達成され得る。二成分繊維の成分におけるこれらの違いにより、収縮の差が生じて嵩高効果、または長手方向に同一の広がりを有する異なるポリマーセグメントがもたらされる。二成分繊維の成分は、例えば並列の配置またはシースコアの配置など、所望されているように配置することができる。最良の美的効果をもたらすために、好ましくは、シースコアは偏心または非対称なシースコアの配置を有するべきである。
【0021】
二成分繊維コアに適したホモポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン66)、ポリカプロアミドホモポリマー(ナイロン6)、ポリエナンタミドホモポリマー(ナイロン7)、ナイロン10、ポリドデカノラクタムホモポリマー(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミドホモポリマー(ナイロン610)、n-ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンのホモポリマーのポリアミド(ナイロン612)、及びドデカメチレンジアミン及びn-ドデカン二酸ホモポリマーのポリアミド(ナイロン1212)を含むが、これらに限定されない。上述のホモポリマーを形成するために使用されるモノマーのコポリマー及びターポリマーも本発明に適している。
【0022】
二成分繊維コアに適したコポリアミドは、上記のホモポリアミドを形成するために使用されるモノマーのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、他の適切なコポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン10、及び/またはナイロン12と接触させて緊密に混合したナイロン66を含む。例示的なポリアミドはまた、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、またはセバシン酸などのジカルボン酸成分、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミド、ポリ-2-エチルテトラメチレンアジパミド、またはポリヘキサメチレンイソフタルアミドなどのアミド成分、ヘキサメチレンジアミン、及び2-メチルペンタメチレンジアミンなどのジアミン成分、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから作られたコポリマーも含む。好ましくは、二成分糸の1つの成分は、ポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミド(MPMD)と共重合されたナイロン66のコポリアミドである。このコポリアミドは、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、及びMPMDを一緒に重合することによって製造され得る。最も好ましくは、二成分糸の1つの成分は、ポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミドと共重合されたナイロン66のコポリアミドであり、第2の成分はナイロン66である。
【0023】
上記のコポリアミドは、当技術分野で知られている方法によって製造することができる。例えば、適切なコポリアミドは、各ポリアミド成分を一定の割合でフレークまたはポリマー顆粒の形態で混合し、均質なフィラメントとして押し出すことによって、製造することができる。あるいは、コポリアミドは、オートクレーブにおいて適切なモノマーを混合し、当技術分野で知られているポリアミド化プロセスを実行することによって、製造することもできる。いずれの方法も、本発明で使用されるコポリアミドを製造するのに適している。
【0024】
上述のホモポリマーを形成するために使用されるモノマーのターポリアミドも本発明に適していることがあり、当技術分野で知られているプロセスによって製造することができる。
【0025】
二成分糸の繊維形成ポリマーはまた、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートを含む任意の既知のポリエステルであってもよい。ポリ(プロピレンテレフタレート)はポリ(トリメチレンテレフタレート)として、ポリ(ブチレンテレフタレート)はポリ(テトラメチレンテレフタレート)としてまた知られている。ポリエステルは、これらのポリエステルのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。ポリエステルは、当技術分野で知られているプロセスによって製造することができる。
【0026】
次に、好ましいポリエステルについて説明する。「//」という表記は、二成分繊維の製造に使用される2つのポリマーを区別するために使用される。「2G」はエチレングリコールを意味し、「3G」は1,3-プロパンジオールを意味し、「4G」は1,4-ブタンジオールを意味し、「T」はテレフタル酸を意味する。したがって、例えば、「2G-T//3G-T」は、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む二成分繊維を示す。
【0027】
本発明の二成分効果糸に使用される、ポリエステル二成分の2つのポリエステルは、異なる組成、例えば2G-Tと3-GT(好ましい)、または2G-Tと4G-Tを有することができ、好ましくは異なる固有の粘度を有する。あるいは、組成が、たとえば2G-Tで同じであり得るが、固有の粘度は異なり得る。他の有用なポリエステルは、ポリ(エチレン2,6-ジナフタレート、ポリ(トリメチレン2,6-ジナフタレート)、ポリ(トリメチレンビベンゾエート)、ポリ(シクロヘキシル1,4-ジメチレンテレフタレート)、ポリ(1,3-シクロブタンジメチレンテレフタレート)、及びポリ(1,3-シクロブタンジメチレン二安息香酸)を含む。ヒートセット後に高いクリンプ収縮の値を実現するために、ポリマーが固有の粘度(「IV」)及び組成の両方に関して異なることが有利であり、例えば、2G-Tは約.045~0.80dl/gのIVを有し、3G-Tは約0.85~1.50dl/gのIVを有する。
【0028】
ポリエステル二成分繊維のポリエステルの一方または両方が、コポリエステルであってもよい。例えば、コポリエステルを製造するために使用されるコモノマーがイソフタル酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、1,3-プロパンジオール、または1,4-ブタンジオールであるコポリ(エチレンテレフタレート)を使用することができる。コモノマーは、約0.5~15モルパーセントのレベルでコポリエステルに存在することができる。コポリエステルの使用は、両方のポリエステルが他の点では同じである場合、例えば、2G-T//2G-T/Iである場合に、特に有用であり得る。コポリエステル(複数可)はまた、かようのコポリマーが本発明の有益な効果に悪影響を及ぼさない限り、少量の他のコモノマー、例えば約0.2~5モルパーセントのレベルの5-ナトリウムスルホイソフタレートを含有することもできる。
【0029】
二成分繊維を構成するために使用されるポリマーは、任意の断面の形状を有し得る。断面の形状には、例えば、円形、楕円形、三葉形、より多くの対称的な葉を有する形状、及びドッグボーンの形状が含まれ得る。
【0030】
1つの非限定的な実施形態では、二成分コア繊維は二成分フィラメントである。
【0031】
「二成分フィラメント」とは、フィラメントの断面が例えば並列、偏心シースコア、または有用なクリンプを発展できる他の適切な断面となるように、フィラメントの長さに沿って互いに密着したポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(トリメチレンテレフタレート)を含むフィラメントを意味する。このようなフィラメントは、いずれのクリンプとも無関係に、100%を超える破断伸びを有さないという点で、非エラストマーである。むしろ、フィラメントの熱処理によって自発的に発現するスパイラルのクリンプにその弾性を依存している。本発明のプロセスに供される並列のフィラメントは、「雪だるま」、楕円形、または実質的に円形の断面の形状を有することができる。偏心シースコア繊維は、楕円形または実質的に円形の断面の形状を有することができる。「実質的に円形」とは、繊維の断面の中心において90°で互いに交差する2つの軸の長さの比が約1.2:1以下であることを意味する。「楕円形」とは、繊維の断面の中心で90°で互いに交差する2つの軸の長さの比が約1.2:1より大きいことを意味する。「雪だるま」の断面の形状は、長軸、長軸に実質的に垂直な短軸、及び長軸に対してプロットされる短軸の長さの少なくとも2つの最大値を有する並列の断面として説明できる。
【0032】
二成分繊維の各成分は、嵩高効果を得るのに必要な収縮の差を得るのに十分な量で存在し、既知の方法によって得ることができる。例えば、収縮の差は、異なるタイプのポリマー、相対的な粘度及び結晶化特性などの異なる特性を有する成分を利用すること、または成分の異なる比率を使用することによって、得ることができる。例えば、二成分糸の一方の成分は、急速に結晶化する繊維形成ポリアミドから形成され得るが、一方で、二成分糸の他方の成分は、それほど急速に結晶化しない繊維形成ポリアミドから形成される。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,740,339号で教示されているように、結晶化性の違いは、異なる終端速度距離を有するポリアミドを選択することによって達成され得、順次、高負荷クリンプ試験の値によって示されるように、より大きな嵩高性が生じる。
【0033】
一方、二成分繊維の成分は、相対的な粘度の違いに基づいて選択することができる。二成分繊維の一方の成分が二成分糸の他方の成分と同じ化学式の反復的な構造単位から構成される場合、異なる相対的な粘度を有するポリマーを選択すると、所望の嵩高効果が得られる。二成分糸の成分の相対的な粘度の差は、嵩高効果を達成するのに十分な収縮の差を得るのに十分なものであるべきである。例えば、異なる相対的な粘度(RV)のナイロン66のポリアミドを使用してポリマーセグメントを形成する場合、2つのナイロン66間のRVの差は少なくとも5、好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも30で、低RVナイロン66のRVは少なくとも20、例えば少なくとも50、または少なくとも65であるべきである。好ましくは、二成分糸の成分は同じ反復する構造単位から構成されるが、異なるRVを有する。
【0034】
あるいは、収縮の差は、二成分糸の各成分の比率を変えるか、各成分に異なる種類のポリマーを使用することによって達成することもできる。やはり、糸の各成分の量は、嵩高効果を達成するのに十分な収縮の差を得るのに十分な量であるべきである。
【0035】
本明細書で使用する「嵩高効果」とは、二成分糸のクリンプする固有の能力を指し、二成分糸の成分の間に収縮の差があることによって実現され得る。二成分糸に固有のクリンプ能力があることは、これらの種類の繊維を嵩高にする際に機械的な延伸撚り加工またはテクスチャ加工のプロセスを必要としないため、二成分糸を有利に「自己嵩高」にする。このタイプの繊維だけで作られた布地の中には、伸縮性と回復特性があり、機械的に加工された繊維と同様の取り扱いができるものもある。2G-T//3G-Tの二成分材料を使用するとき、テクスチャ加工された繊維よりもはるかに高い伸縮性と回復性が得られることがよくある。
【0036】
二成分繊維の製造方法は当技術分野で知られており、本明細書で使用される繊維は、任意の既知の方法に従って形成することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,740,339号は、紡糸延伸プロセスによって異なる相対的な粘度を有する二成分糸を製造し、フィラメントの長さに沿って並列構成を形成するプロセスを記載している。別の既知の方法は、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,244,907号及び第4,202,854号に記載され、単一ポリマーを押出して単成分溶融流を形成することによって二成分糸を製造するプロセスは、完全に固化する前の片側冷却、または完全に固化してからフィラメントを引き伸ばした直後の片側加熱によって処理され得る。二成分糸の延伸は、糸を加熱または蒸気処理し、次いで二成分糸を嵩高にすることなどの既知の手段に従って行うことができる。さらに、二成分糸は、本発明の合成ポリマー糸の製造と連続して、連続的に製造することができる。あるいは、二成分糸をオフラインで製造し、次に第2の糸と組み合わせてもよい。
【0037】
本開示の糸は、第2のポリアミドまたはポリエステル繊維をさらに含む。
【0038】
第2のポリアミドまたはポリエステル繊維がコア繊維の周囲に緩く巻き付けられることが好ましい。
【0039】
第2の繊維に使用するのに適したホモポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン66)、ポリカプロアミドホモポリマー(ナイロン6)、ポリエナンタミドホモポリマー(ナイロン7)、ナイロン10、ポリドデカノラクタムホモポリマー(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミドホモポリマー(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミドホモポリマー(ナイロン610)、n-ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンのホモポリマーのポリアミド(ナイロン612)、及びドデカメチレンジアミン及びn-ドデカン二酸ホモポリマーのポリアミド(ナイロン1212)を含むが、これらに限定されない。上述のホモポリマーを形成するために使用されるモノマーのコポリマー及びターポリマーも本発明に適している。
【0040】
この第2の繊維に有用な適切なコポリアミドとしては、上記のホモポリアミドを形成するために使用されるモノマーのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、他の適切なコポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン10、及び/またはナイロン12と接触させて緊密に混合したナイロン66が挙げられる。例示的なポリアミドはまた、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、またはセバシン酸などのジカルボン酸成分、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミド、ポリ-2-エチルテトラメチレンアジパミド、またはポリヘキサメチレンイソフタルアミドなどのアミド成分、ヘキサメチレンジアミン、及び2-メチルペンタメチレンジアミンなどのジアミン成分、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから作られたコポリマーも含む。好ましくは、二成分糸の1つの成分は、ポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミド(MPMD)と共重合されたナイロン66のコポリアミドである。このコポリアミドは、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、及びMPMDを一緒に重合することによって製造され得る。最も好ましくは、二成分糸の一方の成分はポリ-2-メチルペンタメチレンアジパミドと共重合されたナイロン66のコポリアミドであり、第2の成分はナイロン66である。
【0041】
上記のコポリアミドは、当技術分野で知られている方法によって製造することができる。例えば、適切なコポリアミドは、各ポリアミド成分を一定の割合でフレークまたはポリマー顆粒の形態で混合し、均質なフィラメントとして押し出すことによって、製造することができる。あるいは、コポリアミドは、オートクレーブ内で適切なモノマーを混合し、当技術分野で知られているポリアミド化プロセスを実行することによって製造することもできる。いずれのプロセスも、本発明で使用されるコポリアミドを製造するのに適している。
【0042】
上述のホモポリマーを形成するために使用されるモノマーのターポリアミドも本発明に適することがあり、当技術分野で知られているプロセスによって製造することができる。
【0043】
第2の繊維に有用なポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートを含むが、これらに限定されない。ポリ(プロピレンテレフタレート)はポリ(トリメチレンテレフタレート)として、ポリ(ブチレンテレフタレート)はポリ(テトラメチレンテレフタレート)としてまた知られている。ポリエステルは、これらのポリエステルのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。ポリエステルは、当技術分野で知られているプロセスによって製造することができる。
【0044】
1つの非限定的な実施形態では、第2の繊維はナイロン6またはナイロン6,6を含む。
【0045】
1つの非限定的な実施形態では、本開示の糸は、芯にLYCRA(登録商標)T400(登録商標)繊維を、効果にポリアミドPOY6.6を使用するエアテクスチャ加工プロセスから得られる。
【0046】
当業者により理解され、本明細書で実証されるように、コア繊維とポリアミドまたはポリエステル繊維との異なる糸の組成により、いくつかの最終的なカウント(Dtex)が得られる。
【0047】
本発明によるコア繊維または第2の繊維に使用されるポリマーは、さらなる構成成分として、ポリマーの特性の改善に寄与し得る従来の添加剤を含むことができる。これらの添加剤の例は、帯電防止剤、酸化防止剤、抗菌剤、難燃剤、潤滑剤、染料、光安定剤、重合触媒及び助剤、接着促進剤、酸化チタンなどの艶消し剤、マット剤、及び/または有機亜リン酸塩を含む。
【0048】
組み合わされたコア繊維と第2のポリアミドまたはポリエステル繊維は、意図される用途に応じて様々な比率で最終的な製造物に存在し得る。最終的な製造物の各成分の割合は、例えば、その総デニール及びフィラメント当たりのデニールに従って測定され得る。総デニールまたはフィラメントあたりのデニールが大きいほど、最終的な製造物に含まれる成分の量が多くなる。これらの要因に基づいて成分を変更すると、最終的な製造物の異なる機能が実現される可能性がある。例えば、最終的な製造物のポリエステルまたは二成分繊維の割合を増やすことによって、より高い伸縮性を得ることができる。逆に、特に第2の繊維が単一成分糸である場合には、より多くの割合の第2のポリアミドまたはポリエステル繊維を有することによって、伸縮性がより低い布地を得ることができる。
【0049】
本開示では、コア繊維は第2のポリアミドまたはポリエステル糸と組み合わされて、エアジェットテクスチャ加工によって単一の糸を形成する。ポリエステルまたは二成分コア繊維及び第2のポリアミドまたはポリエステル繊維のそれぞれをオフラインで個別に作成し、次にエアジェットテクスチャ加工を介して組み合わせて、コアにポリエステルまたは二成分繊維を、外側に第2のポリアミドまたはポリエステル繊維を同時に供給しながら、二重糸を介して最終合成ポリマーを形成することができる。
【0050】
このコア繊維と、好ましくはコア繊維の外側に緩く巻き付けた第2のポリアミドまたはポリエステル繊維を、エアジェットテクスチャ加工によって製造すると、綿糸のような外観、高いクリンプ収縮、高い弾性、及び糸の約20~約33%の高い潜在伸び率を備えた合成糸が得られることがわかっている。さらに、このエアテクスチャ加工糸を含む布地は、予期せぬことに、優れた手触りだけでなく、冷感及びドライの効果を示す。本開示のエアテクスチャ加工糸を使用すると、100%ポリアミドテクスチャ加工糸で作られた元のSUPPLEX(登録商標)布地よりも高い伸縮性と回復性を有する布地を製造することが可能であることが判明した。さらに、エアテクスチャ加工糸を含む布地から製造された衣類は、その形状を長期間維持することができる。
【0051】
布地の「冷感効果」とは、そのような布地から製造された衣類の快適さを高める、触れたときの布地の冷感を意味する。
【0052】
布地の「ドライの効果」とは、そのような布地から製造された衣類の快適性を高める吸湿発散性または湿気管理能力を意味する。
【0053】
布地の「手触り」または「手の感触」は、布地の感触または触知できる美観を指す。本発明のエアテクスチャ加工糸から作られた布地は、柔らかい綿のような手触りを有する。特に、本発明の糸で作られたとき、ニット布地の手触りは予想外に柔らかかった。例えば、本発明の糸で作られた丸編みニットは、ニットが完全に二成分繊維で作られた場合に観察される多くの場合の「ざらざらした」手触りとは著しく対照的な、優れた柔らかい手触り、ならびに非常に良好な伸縮性及び回復性を有する。
【0054】
さらに、本明細書に記載されるコア繊維及びポリアミドまたはポリエステル繊維のエアテクスチャ加工プロセスは、環境配慮型で持続可能なプロセスを通じて、グレージュ(ベージュと混合されたグレー)及び黒色成分の混合物及び100%黒色バージョンの製造を可能にする。
【0055】
本開示のエアテクスチャ加工糸は、単独で布地に織り込むことも、様々な布地で使用するための当業者に周知の1つ以上のコンパニオン糸とともによこ糸またはたて糸として使用することもできる。このような布地は、トップス、デニムのジーンズを含むボトムス、靴下、シームレス衣類、帽子、下着、手袋、及び制服などの衣類を含むが、決してこれらに限定されない様々な製品に、作製することができる。
【0056】
以下の実施例は、本開示と、布地及び衣類の製造に使用するためのその能力を実証する。本発明は、他の及び異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の明らかな点において変更が可能である。したがって、実施例は、実例と見なされるべきであり、制限として見なされるべきではない。
【実施例】
【0057】
実施例1:試験糸の例示的な範囲
コアに二成分2G-T//3G-T繊維、及びポリアミドPOY6.6を含むエアテクスチャ加工糸の試験サンプル1~6を調製し、表1に示すように評価した。
【表1】
【0058】
比較として、伸びが著しく低い100%ポリアミド糸の比較分析を示す表2を参照されたい。
【表2】
【0059】
実施例2:布地の試験サンプル
試験1:ジーンズ(ボトム)用デニム布地
【0060】
布地構造:デニム-ツイル
3x1たて糸:コットン16/1Ne-6300エンド
【0061】
よこ糸:エアテクスチャ加工糸465/204 Dtex(23%PA66+77%2G-T//3G-T-17ピック/cm)
【0062】
織機での布地の幅:208cm、BO後の布地の幅:151cm、市販の布地の幅:150cm
【0063】
洗濯後の布地の伸び率:24%
【0064】
【0065】
試験2:トップスのデニム布地(薄手)
【0066】
布地の構造:デニム-ツイル2x1たて糸:コットン20/1Ne-5664エンド
【0067】
よこ糸:エアテクスチャ加工糸285/136 Dtex(37%PA66+63 2G-T//3G-T)-18ピック/cm織機での布地の幅:170cm
【0068】
BO後の布地幅:140cm
【0069】
市販の布地幅:136cm、洗濯後の布地伸び率:24%
【0070】
【国際調査報告】