(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】入力装置付き変調動力注入器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20240319BHJP
A61M 5/142 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M5/142 530
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558861
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022011825
(87)【国際公開番号】W WO2022203745
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517343298
【氏名又は名称】オスプリー メディカル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エム.バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー エル.ハウフバーグ
(72)【発明者】
【氏名】デール ブレイディ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC02
4C066CC03
4C066DD12
4C066FF01
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ54
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
患者に媒体を注入するためのシステムが、タンクを備える自動注入器と、タンクから一定量の流体媒体を放出するためのエジェクタと、エジェクタに結合されたアクチュエータと、を備える。入力装置が、注射器ハウジングと、プランジャと、入力装置の第1の構成要素に結合された回路基板と、プランジャ位置センサと、バッテリと、入力装置動作信号を自動注入器に送信するための送信機と、を備える。入力装置動作信号は、プランジャ位置センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づくものである。分流装置が、タンクの下流に配置され、タンクから放出される一定量の流体媒体の少なくとも第1の部分を受容するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に媒体を注入するためのシステムであって、前記システムは、
自動注入器であって、
媒体タンクと、
前記媒体タンクから一定量の流体媒体を排出するためのエジェクタと、
前記エジェクタに結合されたアクチュエータと、
を具備する自動注入器と、
前記アクチュエータから離れており、前記アクチュエータに通信可能に結合された入力装置であって、
注射器ハウジングと、
前記注射器ハウジング内に摺動可能に受容されたプランジャと、
前記入力装置の第1の構成要素に結合された回路基板と、
プランジャ位置センサと、
前記回路基板に結合され、前記プランジャ位置センサに電力を供給するように構成されたバッテリと、
入力装置動作信号を前記自動注入器に送信するために前記回路基板に結合された送信機であって、前記入力装置動作信号は、プランジャ位置センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づくものである、送信機と、
を具備する入力装置と、
前記タンクの下流に配置された分流装置であって、前記分流装置は、前記媒体タンクから放出される前記一定量の流体媒体の少なくとも第1の部分を受容するように構成される、分流装置と、
を具備する、システム。
【請求項2】
前記送信機は無線送信機を具備し、前記自動注入器は、前記入力装置動作信号を受信するための無線受信機を具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記入力装置は、前記注射器ハウジングに対して前記プランジャを付勢するためのバネをさらに具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記媒体タンクは注射器胴部を具備し、
前記エジェクタは、前記注射器胴部内に摺動可能に配置されたプランジャを具備し、
前記アクチュエータは、親ネジと、前記親ネジに結合されたモータとを具備し、前記親ネジの回転により、前記注射器胴部内で前記エジェクタが前進する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記自動注入器は、前記エジェクタ及び前記親ネジの少なくとも1つの位置を検出するための位置センサをさらに具備する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記媒体タンクから放出された前記一定量の流体媒体の少なくとも第2の部分を受容するための前記分流装置の下流に患者接続要素をさらに具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記一定量の流体媒体の前記第1の部分及び前記一定量の流体媒体の前記第2の部分は、前記媒体タンクから放出された前記一定量の流体媒体から構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記分流装置は、前記一定量の流体媒体の前記第1の部分の少なくとも一部を受容するための廃棄容器を具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プランジャ位置センサは、前記第1の構成要素に結合された少なくとも1つのホール効果センサと、前記入力装置の第2の構成要素に結合された磁石とを具備し、前記第1の構成要素は、前記第2の構成要素に対して移動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プランジャ位置センサは、発光器、受光器、電位差計及び磁石の少なくとも1つを具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
患者に媒体を注入するためのシステムであって、前記システムは、
自動注入器であって、
媒体タンクと、
前記媒体タンクから一定量の流体媒体を放出するためのエジェクタと、
前記エジェクタに結合されたアクチュエータと、
を具備する自動注入器と、
前記媒体タンクの出口の近くに配置された注入センサと、
前記アクチュエータから離れており、前記アクチュエータに通信可能に結合された入力装置であって、
注射器ハウジングと、
前記注射器ハウジング内に摺動可能に受容されたプランジャと、
前記入力装置の第1の構成要素に結合された回路基板と、
プランジャ位置センサと、
前記回路基板に結合され、前記プランジャ位置センサに電力を供給するように構成されたバッテリと、
入力装置動作信号を前記自動注入器に送信するために前記回路基板に結合された送信機であって、前記入力装置動作信号は、プランジャ位置センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づくものである、送信機と、
を具備する入力装置と、
プロセッサと、
命令を保存するメモリであって、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記自動注入器に動作を実施させ、前記動作は、
前記入力装置動作信号に少なくとも部分的に基づいてエジェクタを第1の速度で前進させるようにアクチュエータを制御するステップと、
前注入センサから受信した注入圧力信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の速度とは異なる第2の速度で前記エジェクタを前進させるように前記アクチュエータを制御するステップと、を含む、メモリと、
を具備するシステム。
【請求項12】
前記プロセッサ及び前記メモリは、前記自動注入器上に配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記位置センサは、ホール効果センサ、発光器、受光器、電位差計及び磁石のうちの少なくとも1つを具備する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記エジェクタを第2の速度で前進させるように前記アクチュエータを制御するステップは、
前記注入センサの近くの前記流体媒体の目標流量を判定するステップと、
前記目標流量を、所定の時間維持するステップであって、前記所定の時間は、前記目標流量を判定した時間又は入力装置の関数としての可変時間から測定される、ステップと、を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記目標流量は、前記注入センサから送信された前記注入圧力信号に少なくとも部分的に基づいて判定される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記目標流量は、流量センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づいて判定される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
自動注入器を用いて患者への媒体の注入を制御する方法であって、前記方法は、
前記自動注入器から離れた位置にある入力装置から入力装置動作信号を受信するステップと、
前記入力装置動作信号を処理して第1の作動信号を取得するステップと、
前記第1の作動信号を送信するステップであって、前記第1の作動信号は、アクチュエータを作動させて前記自動注入器から前記媒体を第1の速度で放出する、ステップと、
前記入力装置及びセンサの少なくとも一方から変更信号を受信するステップと、
前記変更信号を処理して第2の作動信号を取得するステップと、
前記変更信号に少なくとも部分的に基づいて前記第2の作動信号を送信するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
前記センサは前記自動注入器から離れて配置される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記センサは、前記自動注入器と前記患者とに流体的に結合された媒体送達システム内の圧力を感知する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記センサは、前記自動注入器内に配置され、前記自動注入器の媒体タンク内の媒体の圧力を感知する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、PCT特許国際出願として2022年1月10日に出願されており、2021年3月26日に出願の「MODULATED POWER INJECTOR WITH INPUT SYRINGE(入力装置付き変調動力注入器)」と題された米国仮特許出願第63/166,679号の優先権及び利益を主張するものである。この米国仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願はこのほか、2020年7月17日に出願の「SYSTEMS AND METHODS FOR MEASURING INJECTED FLUIDS(注入された流体を測定するためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第16/931,664号の一部継続出願であり、この米国特許出願公開は、2019年7月18日に出願の米国仮特許第62/875,859号に対する優先権の利益を主張するものである。この米国仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
動力注入器を使用して、医療処置を受けている患者に、薬剤、生理食塩水、造影剤、あるいは他の薬物又は流体を注入する場合がある。典型的には、自動注入器を、自動注入器に装備された制御ボタンを押すことによって、制御する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本技術は、患者に媒体を注入するためのシステムに関する。このシステムは、自動注入器であって、媒体タンクと、媒体タンクから一定量の流体媒体を放出するためのエジェクタと、エジェクタに結合されたアクチュエータと、を備える、自動注入器と、アクチュエータから離れており、アクチュエータに通信可能に結合された入力装置であって、入力装置は、注射器ハウジングと、注射器ハウジング内に摺動可能に受容されたプランジャと、入力装置の第1の構成要素に結合された回路基板と、プランジャ位置センサと、回路基板に結合され、プランジャ位置センサに電力を供給するように構成されたバッテリと、入力装置動作信号を自動注入器に送信するために回路基板に結合された送信機であって、入力装置動作信号は、プランジャ位置センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づくものである、送信機と、を備える、入力装置と、タンクの下流に配置された分流装置であって、分流装置は、媒体タンクから放出される一定量の流体媒体の少なくとも第1の部分を受容するように構成される、分流装置と、を備える。一例では、送信機は無線送信機を備え、自動注入器は、入力装置動作信号を受信するための無線受信機を備える。別の例では、入力装置は、注射器ハウジングに対してプランジャを付勢するためのバネをさらに備える。さらに別の例では、媒体タンクは注射器胴部を備え、エジェクタは、注射器胴部内に摺動可能に配置されたプランジャを備え、アクチュエータは、親ネジと、親ネジに結合されたモータとを備え、親ネジの回転により、注射器胴部内でエジェクタが前進する。さらに別の例では、自動注入器は、エジェクタ及び親ネジの少なくとも一方の位置を検出するための位置センサをさらに備える。
【0004】
上記の態様の別の例では、媒体タンクから放出された一定量の流体媒体の少なくとも第2の部分を受容するための分流装置の下流に患者接続要素をさらに備える。一例では、一定量の流体媒体の第1の部分及び一定量の流体媒体の第2の部分は、媒体タンクから放出された一定量の流体媒体から構成される。別の例では、分流装置は、一定量の流体媒体の第1の部分の少なくとも一部を受容するための廃棄容器を備える。さらに別の例では、プランジャ位置センサは、第1の構成要素に結合された少なくとも1つのホール効果センサと、入力装置の第2の構成要素に結合された磁石とを備え、第1の構成要素は、第2の構成要素に対して移動可能である。さらに別の例では、プランジャ位置センサは、発光器、受光器、電位差計及び磁石の少なくとも1つを備える。
【0005】
別の態様では、本技術は、患者に媒体を注入するためのシステムに関する。このシステムは、自動注入器であって、媒体タンクと、媒体タンクから一定量の流体媒体を放出するためのエジェクタと、エジェクタに結合されたアクチュエータと、を備える、自動注入器と、媒体タンクの出口の近くに配置された注入センサと、アクチュエータから離れており、アクチュエータに通信可能に結合された入力装置であって、入力装置は、注射器ハウジングと、注射器ハウジング内に摺動可能に受容されたプランジャと、入力装置の第1の構成要素に結合された回路基板と、プランジャ位置センサと、回路基板に結合され、プランジャ位置センサに電力を供給するように構成されたバッテリと、入力装置動作信号を自動注入器に送信するために回路基板に結合された送信機であって、入力装置動作信号は、プランジャ位置センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づくものである、送信機と、を備える、入力装置と、命令を保存するメモリであって、命令は、プロセッサによって実行されると、自動注入器に動作を実施させ、動作は、入力装置動作信号に少なくとも部分的に基づいてエジェクタを第1の速度で前進させるようにアクチュエータを制御するステップと、注入センサから受信した注入圧力信号に少なくとも部分的に基づいて、第1の速度とは異なる第2の速度でエジェクタを前進させるようにアクチュエータを制御するステップと、を含む、メモリと、を備える。一例では、プロセッサ及びメモリは、自動注入器上に配置される。別の例では、位置センサは、ホール効果センサ、発光器、受光器、電位差計及び磁石のうちの少なくとも1つを備える。さらに別の例では、エジェクタを第2の速度で前進させるようにアクチュエータを制御するステップは、注入センサの近くの流体媒体の目標流量を判定するステップと、目標流量を、所定の時間維持するステップであって、所定の時間は、目標流量を判定した時間又は入力装置の関数としての可変時間から測定される、ステップと、を含む。さらに別の例では、目標流量は、注入センサから送信された注入圧力信号に少なくとも部分的に基づいて判定される。
【0006】
上記の態様の別の例では、目標流量は、流量センサから送信された信号に少なくとも部分的に基づいて判定される。
【0007】
別の態様では、本技術は、自動注入器を用いて患者への媒体の注入を制御する方法に関する。この方法は、自動注入器から離れた位置にある入力装置から入力装置動作信号を受信するステップと、入力装置動作信号を処理して第1の作動信号を取得するステップと、第1の作動信号を送信するステップであって、第1の作動信号は、アクチュエータを作動させて自動注入器から媒体を第1の速度で放出する、ステップと、入力装置及びセンサの少なくとも一方から変更信号を受信するステップと、変更信号を処理して第2の作動信号を取得するステップと、変更信号に少なくとも部分的に基づいて第2の作動信号を送信するステップと、を含む。一例では、センサは自動注入器から離れて配置される。別の例では、センサは、自動注入器及び患者に流体的に結合された媒体送達システム内の圧力を感知する。さらに別の例では、センサは、自動注入器内に配置され、自動注入器の媒体タンク内の媒体の圧力を感知する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、手持ち式入力装置によって作動され得る自動動力注入器を含む動力注入器システムを示す。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、測定センサモジュールを利用する手持ち式入力装置の一実施形態の斜視図を示す。
【0010】
【
図2B】
図2Bは、ホール効果センサモジュールを含む測定センサモジュールを示す、
図2Aの入力装置の部分斜視断面図を示す。
【0011】
【0012】
【
図3】
図3は、ホール効果センサモジュールを利用する入力装置の別の例の斜視図を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、手持ち式入力装置による入力に従って、ピストンとプランジャを駆動するモータを受容し、処理し、作動させるネジ駆動モータ機構を有する自動動力注入器を利用するシステムを示す。
【0014】
【
図5】
図5は、自動動力注入器と、分流装置と、収集タンクと、注入器から注入された媒体及び収集タンクに分流された媒体を測定するためのセンサと、を有するシステムを示す。
【0015】
【
図6】
図6は、「Comparison of Contrast Injection Pressure Contours with Different Methods for Coronary Angiography(造影剤注入圧力曲線と冠動脈造影のさまざまな方法との比較)」と題する、SCAI 2020科学セッション、2020年5月14~16日のアブストラクトからのいくつかの図的な結果を示す。アブストラクトの開示は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0016】
【
図7】
図7は、患者に送達される媒体の注入プロファイルをグラフで示しており、不透明化を目的とした媒体の「注入不足」及び「注入過剰」の容積領域を特定している。
【
図7A】
図7Aは、患者への媒体の拍動性媒体注入プロファイルをグラフで示す。
【0017】
【
図8A】
図8Aは、患者に送達されるときの例示的な注入プロファイルを示す。
【
図8B】
図8Bは、患者に送達されるときの例示的な注入プロファイルを示す。
【
図9A】
図9Aは、患者に送達されるときの例示的な注入プロファイルを示す。
【
図9B】
図9Bは、患者に送達されるときの例示的な注入プロファイルを示す。
【
図10】
図10は、患者に送達されるときの例示的な注入プロファイルを示す。
【0018】
【
図11】
図11は、本例のうちの1つ又は複数が実装され得る適切な動作環境の一例を示す。
【0019】
【
図12】
図12は、自動注入器からの媒体の排出を制御する方法を示す。
【0020】
【
図13】
図13は、自動注入器からの媒体の排出を制御する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、放射線不透過性造影剤などの物質の送達部位への送達を制御するか、変換するか、調整するために使用されるシステム、装置及び方法及び/又は送達部位に送達された媒体を測定するか、他の方法で定量的に評価するために使用され得るシステム、装置及び方法に関する。さらに具体的には、以下のシステム、装置及び方法の目的は、血管、血管床、器官及び/又は他の身体構造への媒体の送達を調整したり、及び/又は評価したりして、全身導入を含め、他の血管、血管床、器官及び/又は他の構造への媒体の不注意又は過剰な導入を減らしながら、媒体の意図した部位への送達を最適化することである。
【0022】
媒体(複数の媒体)、薬剤、物質、材料、薬物などの用語は、診断、治療及び/又は予防的医療処置の実施に使用される物質を少なくとも部分的に含み得るさまざまな流体材料を記載するために本明細書では概ね使用され、そのような使用は限定を意図したものではない。
【0023】
本明細書に記載のシステム、装置及び方法のいくつかは、意図した部位への媒体の送達を最適化すると同時に、媒体の不注意及び/又は過剰な導入を低減するための装置及び方法を含む、入力に関して自動化され得る注入システムと併せて使用されてもよい。
【0024】
本明細書に記載の技術は、米国特許出願公開第2021/0018348号(「注入された流体を測定するためのシステム及び方法」)に提示された技術に関連している。この米国特許出願公開の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許出願公開第2021/0018348号では、自動注入器からの注入を調整したり、及び/又は変更したりするためのシステム、装置及び方法が開示されている。ここでは、注入器によって注入された媒体が、患者の体内の注入部位に媒体を送達するために利用される注入器及びカテーテルとの流体結合部に設置された分流経路を通過する。分流経路は、患者への注入の一部を分流させるように機能し、視覚化(即ち、血管造影)のための注入を最適化するが、身体に注入される不必要な造影剤を減らす。
【0025】
医療の診断、予防及び治療の実践では、薬剤、薬物又は媒体を体内の特定の部位に送達するのが好ましい機会が、さらに一般的な全身導入とは対照的に、数多く存在する。そのような例示的な機会の1つには、冠血管疾患の診断(即ち、血管造影)及び治療(例えば、バルーン血管形成術及びステント留置術)での冠血管系への造影剤の送達が挙げられる。本明細書に記載の説明のほか、装置及び方法は、そのような薬剤の有毒な全身作用の予防にて、冠血管系への媒体送達を調整(あるいは他の方法で変更するか、調節)したり、及び/又は監視/測定したりする際に使用される場合がある。しかし、当業者であれば、身体の特定の血管、構造、器官又は部位への媒体の制御された送達及び/又は定量的評価にも、本明細書に開示した装置及び方法が利益をもたらし得る多くの他の用途があることを認識するであろう。簡潔にするために、このような装置及び方法を、造影剤送達の調整及び/又は測定に関連するものとして説明する場合がある。このため、このような装置及び方法は、造影剤誘発性腎症の予防に使用される可能性があるが、使用をこの唯一の目的に限定することを意図したものではなく、またそのように解釈されるべきでもない。例示的な他の用途としては、いくつか例を挙げると、腫瘍への癌治療剤、閉塞動脈への血栓溶解剤、血管奇形又は病変組織への閉塞剤又は硬化剤、筋肉床、神経腔又は器官への遺伝物質、眼への乳剤、筋肉組織及び/又は括約筋への増量剤、リンパ系への造影剤、感染組織への抗生物質、腎臓の透析のサプリメントなどの送達、注入、調整又は測定が挙げられる。
【0026】
患者に媒体を注入するための自動動力装置又は自動動力注入器(API)には、さまざまなタイプがある。このような装置は、手持ち式注射器による媒体の注入の代わりに使用される場合がある。APIは、MRI用、CT用又は血管造影用の注入器など、その用途と自動的に注入し得る媒体の種類と、によって定義される場合がある。各タイプのAPIには異なる使用要件があり、装置によって異なる媒体を送達する場合がある。注入される薬剤の種類及び媒体薬剤が送達される部位は、アクセスの種類(カテーテル又は針が挿入される体内の場所)、媒体が送達される部位、要求される可能性がある送達装置の条件(即ち、導管のサイズ、送達の圧力、など)に関して大きく異なる場合がある。ここに挙げたことは、さまざまな動力注入器を使用する際の考慮事項のほんの一部にすぎない。薬剤/媒体及び送達の要件を考慮すると、自動動力注入器には、流体媒体を駆動するためのさまざまな機構があってもよい。いくつか例を挙げると、ピストン又はプランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、遠心ポンプ、油圧ポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプなどがある。
【0027】
図1は、手持ち式入力装置104によって作動され得る自動動力注入器(API)102を備える動力注入器システム100を示す。API102は、例えば、血管造影中に媒体を注入するために使用され得る媒体の動力注入のためのものとして示している。図から分かるように、注入器104は、患者への媒体の前進/注入を制御する手持ち式注射器本体106の形態である。図示した要素内に配置された多くの構成要素を示していないが、本出願の他の図に示しているか、あるいは当業者には明らかであろう。
【0028】
図1のAPI102は、(図示しない)内部駆動モータ及び(API102の状態/動作パラメータを示す)データディスプレイ110を収容するハウジング108を備えてもよい。API胴部114及びプランジャ116を備えるAPI注射器112を、(図示しない)内部駆動機構/モータと相互作用するように、API102に取り付けてもよい。プランジャ116は、例えば、(図示しない)モータ駆動ネジにさらに結合されたピストンに接続されてもよく、それにより、モータによってAPIプランジャ116がAPI胴部114に沿って移動して、注射器112の内容物を胴部出口118を通して排出しても(あるいは流体を内部に引き込んでも)よい。
【0029】
図1は、手持ち式注射器106として構成された入力装置104と、手持ち式注射器106の出口122をAPI102に、典型的には、ハウジング108上のポート124に接続する導管120と、を示す。注射器106から受信した入力信号を、(図示しない)プロセッサ/回路基板に配信してもよく、プロセッサ/基板は、次いで、API102内の(図示しない)アクチュエータを指示/制御して、ピストン/プランジャ116をAPI胴部114内に駆動するように、(図示しない)モータ駆動ネジの動きを制御してもよい。
【0030】
図1の入力装置104では、入力胴部128に対するプランジャ126の位置を検出してもよい。この検出に利用される構造には、(いくつかの例を挙げると)1つ又は複数の磁石と電位差計、光センサ及びホール効果センサを備え得る感知システムが含まれるが、ここに挙げたものに限定されない。検出機能を備えたそのような装置は、API102に入力を提供するために、
図1に示す入力装置104として有利に使用されてもよい。入力装置104は、造影剤の直接注入に使用されることの多い手持ち式注入注射器を(感触及び性能に関して)模倣するように構成されてもよい。この場合、(本明細書でさらに説明する)入力装置104は、API102で得られる性能上の利点の方を好むが、手持ち式注入装置の見た目と感触についてはさらに多くの経験を積んでいる可能性のある外科医をはじめとする提供者によって容易に受け入れられる可能性がある。繋がれていない(即ち、無線の)手持ち式入力装置(例えば、
図4の402など)の別の利点には、Bluetooth(登録商標)、IR、RF、Wi-Fi又は他の無線通信プロトコル及び装置を介して(例えば、
図1に示すように導管120によって繋がれる代わりに)API102と通信することができるため、API102に繋がれることなく、滅菌野で使用され得る点が挙げられる。このような手持ち式入力装置104は使い捨てであってもよいほか、異なる患者に対して再滅菌する必要がなくなる。ここに挙げた点は、手持ち式入力装置104をAPI102への入力として使用する利点のほんの一部にすぎない。
【0031】
図2Aは、ホール効果センサモジュールを利用する手持ち式注射器型入力装置200の一実施形態の斜視図を示しており、これについては以下でさらに詳細に説明する。入力装置200は、既知の注射器とほぼ同じような外観を呈し、ほぼ同じように機能するように構成されており、使用中の見た目及び感触もほぼ同じである。装置200は、内孔204を形成する注射器ハウジング202を備える。以下でさらに詳細に説明するプランジャ又はピストンを、孔204内に摺動可能に受容する。さらに具体的には、ピストンは孔204の内面と摺動可能に係合し、孔204内のプランジャシャフトの直線運動Mによってピストンが移動する。運動Mは注射器軸Asに沿って実施される。以下でさらに詳細に説明するように、親指リング(又は手掌プランジャ又は類似する取り付け要素)212を利用して、軸Asに沿ってプランジャを押したり引いたりしてもよい。排出端214aは、実際に流体媒体を排出端214aから送出するのではなく、仮想入力として注射器が機能するように閉塞されたり、及び/又は封止されたりしてもよい。これとは別に、バネ又は類似する弾性要素をプランジャ210(
図2B)と排出端214aとの間の孔内に位置決めして、医師に触覚フィードバックを提供してもよい。プランジャが注射器ハウジング202の排出端214に向かう方向Mに移動すると、無線/有線信号が(例えば、
図4に示すように)受信機に送信されてもよく、受信機は情報をプロセッサ/回路基板に入力してもよい(
図4)。プロセッサはAPIと一体化している場合もあれば、独立型装置である場合もあり得る。一態様では、データ信号は無線(Bluetooth Low Energy、IR、RFなど)で送信されてもよい。さらに、プロセッサは、受信したデータを解釈/処理し、アクチュエータに信号を送信して、スクリュードライブを駆動するモータを制御/駆動/作動させ、例えば、APIのピストン/プランジャを駆動してもよい。手持ち式入力装置によって受信されたデータは、仮想手持ち式装置による実際の注入量及び注入速度を表してもよい。別の態様では、データは単に「オフ/オン」スイッチであってもよく、信号が受信されるとAPIの排出が開始され、手持ち式注射器が動きを停止するか、胴部から引き戻されると排出が停止される。いずれの場合も、入力注射器によってAPIに送信されたデータ又はAPI胴部/プランジャからの排出に関連する内部データ収集を利用して、APIから排出される流体の量を確保することができる。
【0032】
さらに
図2Aの説明では、2つの指リング又はタブ232が使用中にユーザの指を受け入れてもよい。説明全体を通じて、円筒型ハウジング202及び内孔204について説明することに留意されたい。しかし、本明細書で予想される機能及び(長方形、楕円形、三角形の断面などをはじめとする)形状を提供し得るハウジング/孔202/204及びピストン/プランジャ206/210のさまざまな構成があってもよく、それ自体が限定的なものである必要はない。入力注射器200はこのほか、以下でさらに詳細に説明するホール効果センサモジュール250を備える。ホール効果センサモジュール250の1つの構成要素が、注射器ハウジング202の外面又は外側面に配置される磁石保持リング252であってもよい。図示の実施形態では、磁気保持リング252は、ハウジング202の近位端214bに近接して配置されているが、ハウジング202に沿った他の場所に配置されてもよい。
【0033】
図2Bは、
図2Aの入力装置200の部分斜視断面図を示し、(一例として、250a及び250bを含む)ホール効果センサモジュール250を示す。ホール効果センサモジュール250の特定の構成要素250aを、プランジャ206の中空シャフト208の内部チャンバ内に配置してもよく、特定の構成要素250bを、注射器ハウジングの外面に配置してもよい。このようなさまざまな構成要素250a、250bについて、以下でさらに詳細に説明する。いわゆる内部構成要素250a(即ち、プランジャ206の内部)は、保持インサート254a、254b、ベース又は回路基板256及びその上に配置された単一又は複数のホール効果センサ258を備えてもよい。このほか、1つ又は複数のバッテリ260及び制御スイッチ262を回路基板256に固定してもよい。ホール効果センサ258からの信号をまず、回路基板256によって処理してもよく、プランジャ206の位置、注射器内の媒体の量などを判定し、次にこの情報をAPI受信機(又は他の関連処理システム)に送信機280を介して送信してもよい。別の実施形態では、例えば、非処理ベース256が使用される場合、各ホール効果センサ258からの信号は、データ/信号を処理するための代替の関連システムに、送信機280を介して、直接送信されてもよい。
【0034】
遠位保持インサート254aは、ピストン210の近くになるようにシャフト208に挿入されてもよい。遠位保持インサート254aは空隙264を形成してもよい。空隙264は、Bluetooth送信機などの無線送信機280を包含してもよい。送信機280は、ホール効果センサ258からの信号を、本明細書に記載しているような関連する信号処理装置に送信してもよい。代替実施形態では、上述のようなケーブル接続を利用してもよい。近位保持インサート254bは、親指リング212の近くの中空シャフト208内に配置される。遠位保持インサート254aと近位保持インサート254bは共に、中空シャフト208内で回路基板256を支持し、保護し、保持する。このような2つの構成要素は、シャフト208内で緊密に嵌合するように構成されても、シャフト208内でのボード256の回転を防止するために、シャフト208の開口部又はスロットと係合するキー又は他の突起を備えてもよい。保持インサート254a、254bは、シャフト208内に永久的に固定されてもよいが、インサート254a、254bを取り外し可能に構成することは、回路基板256、バッテリ260などの交換又は修理を可能にするために有利である場合がある。一実施形態では、親指リング212は、シャフト208の嵌合スロット268と係合可能であり得る複数の突起266を備える弾性ベース264を備えてもよい。このような突起266の係合を解除すると、保持インサート254a、254bをはじめとする内部構成要素を取り外すことができる。複数のホール効果センサ258を示す。さまざまな実施形態では、これより多いか、これより少ない数のセンサ258を利用することができるが、これより多くの数のセンサ258を用いると、プランジャ206の位置(ひいては、感知された入力注射器の速度及び体積)に関して、さらに正確な判定を提供する可能性がある。ホール効果センサ258は、軸ASと実質的に一直線になるか、平行となるようにチャンバ内に直線的に配置される。前述の説明には、入力注射器のさまざまな構成要素とその相互の近接が含まれているが、このような関連付けは単なる例示であり、ホール効果センサがハウジングに取り付けられ、磁石部品がプランジャに固定されている構造を含む他の構成を利用して、同じ結果を得ることができることは明らかである。
【0035】
シャフトに取り付けられたホール効果センサ及びハウジングに取り付けられた磁石の実施形態をさらに説明すると、外部構成要素250bは、図示の実施形態では、アーク磁石などの複数の磁石270を保持し得る磁石保持リング252を備えてもよい。他の実施形態では、立方体磁石、円筒形磁石又は他の磁石を利用してもよい。磁石270の位置は、入力注射器ハウジングに対して、入力注射器ハウジング周りで固定される。アーク磁石270は、シャフト208が注射器の内孔から引き抜かれるか、注入器の内孔に挿入されるときに、シャフト208(及びホール効果センサ258)が通過する実質的に円形の磁場を形成する。円形磁場により、軸ASを中心としたプランジャ206の回転位置に関係なく、ホール効果センサ258が磁場を検出できるようになる。他の実施形態では、磁石270は、磁石保持リングなしで注射器ハウジングに直接固定されてもよい。
【0036】
図2Cは、
図2Bに見られるような手持ち式入力注射器200の一部の部分分解斜視図を示す。さらに具体的には、プランジャ206、ホール効果センサモジュールの内部構成要素250a及びホール効果センサモジュールの外部構成要素250bを図示している。
図2A~
図2Cにて、このような構成要素の一部を概ね説明しており、必ずしもこれ以上説明する必要はない。しかし、図示の実施形態では、遠位保持インサート254aと近位保持インサート254bの両方が、回路基板256を受容して所定の位置に保持するように構成され得る成形凹部272を備える。凹部272は、プランジャ206の中空シャフト208内の空間を保存するために、インサート254a、254b内に配置されてもよい。回路基板256のホール効果センサ258とは反対の側には(基板がホール効果センサ信号の何らかの処理を必要とする場合)、1つ又は複数のバッテリ260を配置してもよい。さらに、スイッチ262を、電池260に近接して配置しても、中空シャフト208内の他の場所に配置してもよい。スイッチ262は、特定の実施形態では、プランジャの動きを検出し、係合位置又は作動位置に移動するリードスイッチであってもよい。スイッチ262は必須ではないが、注射器200が使用されていないときに電力を節約するのに役立つ場合がある。スイッチ262は、作動すると、1つ又は複数のバッテリ260からの電力を、複数のホール効果センサ258のほか、無線送信機280のいずれか又は両方に選択的に接続してもよい。他の実施形態では、プルタブ、ボタン又はロッカースイッチなどの手動スイッチをユーザが作動させてもよい。他の例では、複数のセンサの代わりに単一のホール効果センサを利用してもよい。
【0037】
図3は、ホール効果センサモジュールを利用する手持ち式入力注射器300の別の実施形態の斜視図を示す。入力注射器300は、中空の内孔を形成する注射器ハウジング302を備えてもよい。シャフト308とピストン310とを含むプランジャ306を、孔内に摺動可能に受容してもよい。たとえ流体が入力注射器300から排出されていなくても、ピストン310は、注射器ハウジング302内で前進するときにシャフト308の安定性を維持することが望ましい。さらに具体的には、ピストン310は、孔の内面と摺動可能に係合してもよく、孔内でのシャフト308の直線運動Mがピストン310を移動させる。運動Mは注射器軸Asに沿って実施される。プランジャ306は、親指パッド、親指リング312、あるいはプランジャの動きを提供する代替構造の動きによって、孔304内で前後に移動する。プランジャ306が注射器ハウジング302の排出端(親指リング312の反対側)に向かう方向Mに移動するにつれて、送信機によって、APIの移動及び/又は制御に関連するプロセッサと通信する受信機へ、無線(例えば、Bluetooth、Wi-Fi、IR、RFなど)信号を送信してもよい。
【0038】
図2A~
図2Cに示した実施形態の代替実施形態として、ホール効果センサモジュール318を、プランジャに固定するのではなく、注射器ハウジング302の外面に固定してもよい。ホール効果センサモジュール318は、複数のホール効果センサ320を囲むホール効果センサハウジング319を備える。
図2A~
図2Cに関して上述したように、個別のホール効果センサ素子の数を増やすと、センサの精度を向上させる可能性がある。1つ又は複数のリード線又はワイヤ324が、ホール効果センサモジュール318の端部から延びてもよい。ケーブル316を、
図1に示すように、端部328にてAPIに接続してもよい。他の実施形態では、本明細書で説明するように、無線、Bluetooth又は他の無線接続を介して通信を実施してもよい。情報には、ハウジング302内のプランジャ306の移動速度が含まれ得るため、プランジャ306の移動に応答してAPIによって注入される総量に関する情報を提供する場合がある。上記で説明したように、ホール効果センサからの信号がまず、関連する回路基板によって処理されてからAPIに送信されても、個別の信号自体が処理のためにAPIに送信されてもよい。
【0039】
図3に示した実施形態では、プランジャ306のシャフト308は、シャフト308上に配置されるか、シャフト308内に配置された1つ又は複数の磁石330を有する。この場合、磁石330は、シャフト308周りに配置された複数のアーク磁石を含んでもよい。プランジャ306が軸Asに沿って方向Mに移動すると、磁石330はホール効果センサモジュール318のホール効果センサ320の前を通過する。磁石330によって生成された磁場は、ホール効果センサ320によって検出される。ホール効果センサ320は、個々のホール効果センサ320によって検出された磁石330の位置に基づいて、注射器ハウジング302内のプランジャ306の位置を判定するインターフェースユニットに信号を送信する。このため、プランジャ306の位置を判定することができる。インターフェースはこのほか、上記に列挙したさまざまな種類の情報(及びプランジャの移動速度)を判定してもよい。使用中にユーザの指を受容するために、2つの指リング又はタブ332が存在してもよい。ストッパを用いて、プランジャ306が注射器ハウジング302から引き抜かれるのを防止してもよい。
【0040】
図2A~
図3に示す実施形態が複数のホール効果センサを示しているが、手持ち式入力装置の他の実施形態では、さまざまなタイプの1つ又は複数のセンサを利用してもよい。例えば、単一のセンサ又は複数のセンサを使用して、磁場、材料抵抗、静電容量、光透過性などを測定してもよい。そのようなセンサからの測定値は、注射器内のプランジャの直線位置及び移動速度を判定するために利用されてもよい。そのようなセンサの例には、(本明細書でさらに詳細に説明する)ホール効果センサ、誘導センサ、容量性タッチセンサなどが挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない。
【0041】
図4は、手持ち式入力装置/注射器402を利用してAPI404を駆動/制御するシステム400を示す。この例では、親ネジ406が可動ネジ駆動素子408とネジ係合してもよい。図示のように、ネジ駆動素子408は、プランジャドライバ414を用いてAPI注射器胴部412のプランジャ410に取り付けられてもよい。この場合、プランジャ410、胴部412及びプランジャピストン416は、単なる一例として、親ネジ406及び可動ネジ駆動素子408からオフセットされてもよい。さらに、これまでに考察したように、自動動力注入器による媒体の注入に使用され得る多数のモード/モータが存在し得るが、これは一例にすぎない。
【0042】
図4にさらに示すように、モータ418及びモータコントローラ/アクチュエータ420が、親ネジ406を回転させるために存在してもよく、これにより、可動駆動素子408の直線運動に変換される。モータ418及びアクチュエータ/コントローラ420はいずれの方向に回転してもよく、これにより、プランジャ410を胴部412内に駆動する(流体を胴部チャンバ422から排出する)か、引き込む(媒体を胴部チャンバ422に引き込む)。
【0043】
このほか、
図4に示すように、API404から排出される流体を測定するための機構があってもよい。図示のように、可動ネジ駆動素子408に取り付けられた可動ワイパーブレード426を備えた固定電位差計424が、胴部チャンバ422から放出される流体の量を判定するのを支援してもよい。
【0044】
別の態様では、手持ち式入力装置402は、API404に関連付けられた受信機428に信号Sを(図示のように、無線で)送信するために使用されてもよい。信号受信機428は、データを処理するために信号情報をプロセッサ430に送信してもよい。次に、プロセッサ430は、手持ち式入力装置402によって信号が伝えられるように、モータコントローラ/アクチュエータ420に信号を送信してモータ418を駆動してもよい。最終的に、プランジャ410は、流体を胴部チャンバ422から(例えば、(図示しない)針、カテーテルなどを介して)患者への導管に放出するために展開されてもよい。
【0045】
図4は、信号受信機428及びプロセッサ430がAPIハウジング432内に収容され得る構成を示す。しかし、信号受信機428とプロセッサ430は別個の実体であってもよく、処理されたデータ/情報は、プロセッサ430とモータコントローラ420との間の第2の送信機/受信機(又はそれ以上)によってモータコントローラ/アクチュエータ420に転送されることがあり得ることが考えられる。
【0046】
さらに、
図4は、API404によって放出される媒体の量(及び、例えば、注入速度)を測定するために使用され得る測定装置(例えば、電位差計424)を示す。このほか、手持ち式入力装置402も放出測定情報/データを提供可能な場合があるため、この装置が必要でない可能性がある。
【0047】
図5のシステム500の例では、API操作者(外科医又は他の医療提供者など)が、API502のさまざまなベースラインパラメータ(流量、注入量、上昇時間、最大注入圧力など)を選択してもよい。このようなベースラインパラメータは、分流装置(電気機械式圧力補償弁、電気機械式分流タンクなど)によって修正されるか、別の方法で変更されて、さらに交流最適な注入プロファイル(即ち、不透明化を達成するための最小限の造影剤)を模倣するように注入プロファイルを変更してもよい。例えば、
図10から、ベースラインパラメータは、「典型的なAPI#1」注入のように見え得るプロファイルを提供する場合がある。しかし、分流装置を利用すると、図示のように、(例えば、処理中又はリアルタイムに)注入が変更されて、「分流装置付きAPI#1」とほぼ同じプロファイルが生成される場合がある。
【0048】
図5は、手持ち式入力装置の形態の入力装置503を利用して、上述したAPI502を使用し得るシステム500を示す。このため、図示のシステム500は、チャンバ504から放出されるか、チャンバ504内に導入される媒体に関連する情報/データをもともと取り込んでいてもよい。別の態様では、注入器502は、
図4に示すような測定装置を備えてもよい。
図5のシステム500は、カテーテル512を介し、分流弁510を通した患者Pへの流体媒体を調整/変更する際に利用される分流導管514を備える分流回路515を備える。
図5は、2つの迂回経路522を特定しており、そのいずれも、(いくつかの考慮事項を挙げると)媒体と、患者部位への注入位置と、媒体を送達するために使用される導管と、に基づいて選択されてもよい。各経路522には、異なる流量を可能にするバルブ518、520が供給されてもよい。
図5はこのほか、収集タンク530及び圧力計532などの測定装置を示す。患者Pへの注入から分流された媒体は、タンク530に収集されてもよい。図示のように、圧力計532は、収集タンク530内の流体の「ヘッド圧力」の結果として、タンク530内に収集された流体媒体の量を判定可能であってもよい。圧力計532及び収集タンク530は、(図示しない)バッグホルダ(IVバッグポールなど)から吊り下げられてもよい。別の態様では、収集タンク530及び測定/感知装置(即ち、圧力計532)は、単一の装置として一体的に構成されてもよい。さらに、一体的に構成されているか、別個に構成されているかにかかわらず、圧力計532からの情報を、有線接続又は無線接続のいずれかによって出力ディスプレイ534に送ってもよい。別の例では、分流された媒体の量は、API502上に位置するディスプレイに表示されてもよい。
【0049】
患者Pに注入される媒体の量を判定する際に、分流された媒体の量又は体積は、注入器502によって注入された媒体の総量又は総体積から差し引かれてもよい。この目的を達成するために、医師又はシステムユーザが、収集タンク530上の出力/データ表示534及び(
図1に示すような)API上の表示から2つの値を単に読み取り、患者Pに注入された量を判定してもよい。逆に、処理される情報を遠隔装置に(有線接続又は無線接続などを介して)送信するさまざまな方法が存在する可能性がある。プロセッサは、別個の構成要素(例えば、iPad(登録商標))内に配置されてもよく、あるいは注入器502及び/又は測定センサ装置と組み合わされることもあり得る。
【0050】
一実施形態では、手持ち式入力装置及び収集タンクセンサ(
図5)からのデータは、無線で(あるいは有線接続を介して)受信機に配信され、次にプロセッサに配信されてもよい(
図4)。この2つのデータ測定値からのデータは、患者に注入される媒体の体積(例えば、API502によって注入された総体積から収集タンク530によって収集された体積を差し引いたもの)を計算するために使用されてもよい。
【0051】
分流弁510を通した注入からの媒体の分流は、手動による注入のほか、API502などの自動動力注入器による注入によって患者Pに実際に送達される媒体の有利なモジュレータ/コントローラであることを示している。分流弁510は、注入される媒体の圧力が増大するにつれて、分流導管514への媒体の流れに対する抵抗を増大させてもよい。即ち、注入器(手持ち式又はAPI502)からの注入に対する抵抗がほとんどない場合、患者Pに注入される流れから(分流装置を通して)除去される媒体の流れが大きくなることになる。逆に、注入器502から患者Pまでの導管506/514/512内での圧力がきわめて高くなる場合、分流導管514を通って流れる量は少なくなるであろう。一般に、このタイプの調整により、患者に送達される薬剤のスパイクを緩衝しながら(例えば、流量曲線を平坦化しながら)、患者Pへの実際の注入が、(例えば)血管又は臓器を評価するのに有益な患者への流量に迅速に達することを可能にしてもよい。さらに、分流調整は、視覚化(即ち、血管造影)評価でも有益となり得る注入の「持続時間」を維持してもよい。例えば、冠動脈造影では、(最小流量での)冠動脈への注入が約3心拍以上持続しない場合、注入時間は実際に動脈を充分に視覚化するのに充分なものではない可能性がある。このため、一例として、毎分80拍動(0.75秒/拍)の人には、冠動脈を充分に評価するのに最低2.25秒(又はそれ以上)が必要になる可能性がある。
【0052】
図6は、SCAI 2020科学セッション、2020年5月14~16日の「Comparison of Contrast Injection Pressure Contours with Different Methods for Coronary Angiography(冠動脈造影のためのさまざまな方法による造影剤注入圧力曲線の比較)」と題する要約からのいくつかのグラフ状の結果を提示する。要約の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、http://scai.confex.com/scai/2020/meetingapp.cgi/Paper/10225で閲覧可能である。図示のように、造影剤の注入には、手持ち式注射器のほか、3つの自動動力注入器、API#1、API#2及びAPI#3を使用した。性能テストには、4F血管造影カテーテルのハブにある三方活栓に取り付けられたデジタル圧力モニタが含まれていた。この手動注入は、心臓専門医による冠動脈造影中に実施された。API設定はいずれも、流量3ml/秒、総量6ml、上昇0.5秒で標準化された。
【0053】
図6の収集されたデータは、圧力と時間の関係として提示している。ただし、P=Q*Rであるため、実際の圧力は流量(Q)に直接関係している。Rは抵抗であり、この場合、同じカテーテル抵抗Rを各状況で検査した。Rが同等であったため、圧力対時間の曲線はいずれも、(同じ波形の)流れ対時間プロファイルに直接関係するであろう。さらに、各プロファイルのカテーテルに注入された総量(V=Q*T)は、図示のように各曲線の下の面積を直接示している。
図6で注目すべきは、自動動力注入器はいずれも、何らかの種類の曲線/流量プロファイルを有していることである。実際、各APIの曲線は、それぞれの異なるAPIが急速に上昇し、急速に後退し、急速に停止する能力から生じている(例えば、フロープロファイルは真っ直ぐ上向きではなく、平坦なQであり、真っ直ぐ下降している)。さらに、性能にも影響を及ぼす可能性があるチューブキット/マニホールドなどに適合性がある。構造上、モータにより、設定流量/圧力まで上昇させ、設定値で圧力/流量を解放し、速やかに注入を停止する必要がある。このため、そのような注入プロファイル(
図7など)を実際に患者に直接提供するには、システムの体系的な構造上の課題が存在する可能性がある。図に示すように、さまざまなAPIはそれぞれ、例えば、そのピストン、プランジャ、注射器胴部の構造をはじめ、その注入器の構造に少なくとも部分的に基づいた独自の注入プロファイルを有する。
【0054】
例示的な注入プロファイル(Q対T)を
図7に示す。この場合、冠動脈左主幹部への注入が予想される場合がある。図示のように、動脈内の造影剤を観察するには最小流量Qが必要である(Vi)。この量Viは、
図7では約1.5ml/秒で示しているが、1ml/秒から3ml/秒、好ましくは0.5ml/秒から6.0ml/秒の間であることがあり得る。さらに、患者に注入するのに必要な流量は、血管又は注入部位によって異なる場合がある。
図7を参照すると、血管を適切に不透明化するには不充分な注入流量(Q)(領域A及びB)又は不透明化に必要な量を上回り、ひいては、造影剤の過剰送達に至る注入流量(Q)を有し得るさまざまな領域(領域C)を示している。即ち、(
図7の注入速度プロファイルQAgent内の長方形で特定された)Viを得るために造影剤の送達にて注入が制御されていた場合、同じ結果を達成するため(例えば、同じ期間にわたって動脈を充分に視覚化するため)に使用された造影剤が少なくなる(25%~30%)可能性も否定できない。別の例では、血管を適切に視覚化する(即ち、不透明化する)ために、患者に送達しようとする造影剤の50%~60%だけが必要とされるであろう。他の例、例えば、約10%~約70%、約20%~約60%又は他の範囲も考えられる。注入及び部位によっては、不透明化の最小Qが重要であるだけでなく、注入の継続時間も重要である場合がある。期間(Viでの秒数)が短かすぎる場合、操作者は何を評価しようとしているのかを理解できない可能性がある。継続時間(Viでの秒数)が長すぎる場合、必要以上に造影剤が使用される可能性がある。
【0055】
実際問題として、冠動脈の動的な環境に造影剤を効率的に送達する際の複雑さをさらに説明すると、注入器(例えば、注射器)の操作者のなかには、注入による圧力(及びそれに見合った体積流量)の急速な増大により、
図7のAの領域を最小限に抑えるために急速注入を模倣しようとする人もいる。X線写真上で充分な不透明化が「認められる」場合、操作者は注入の圧力(及び体積流量)を下げる場合がある。この手法は、Aの面積を縮小する(Viにすばやく到達する)のに役立つ可能性がある。しかし、操作者は不透明化に必要な送達速度(即ち、Vi)を「超過」する可能性があり、ひいては
図7の領域Cに認められる過剰注入量が増大する可能性がある。10cc(ml)の注射器を用いて100psi以上で注入可能である場合があることに留意されたい。注射器からのこの注入圧力は、例えば4.0ml/秒もの高い流量を生成することがあり得る。これは、血管を視覚化するために必要とされ得る流量を超えることがあり得る。
【0056】
図6に戻って参照すると、本発明者らは、患者への注入を調整/変更するための分流装置の使用を通じて、血管の視覚化を危うくすることなく、手持ち式注射器を用いて平均して最大40%以上の注入量の減少を経験した。しかし、特定の例では、注入当たりの減少が、例えば、注入の速度及び圧力に応じて、約15%から約60%まで変化することがある。達成された結果は、
図7で説明したとおりのものである場合がある。自動動力注入器製造業者が掲げる利点の1つには、患者に注入される造影剤の送達をさらに良好に制御し、ひいては造影剤の注入量を減少させる能力が挙げられる。これは部分的には正しい場合がある。しかし、
図6から明らかなように、検査した3つのAPIでは、
図7に示す最適化された曲線に近い注入プロファイルではなかったことが明らかになった。
【0057】
図7Aは、やはり典型的な3.5秒間の患者への媒体注入にわたる例示的な拍動性媒体注入プロファイルP
PulsatileIを示す。
図7Aの中間の注入プロファイルP
PulsatileIは、典型的な注入の全圧の達成を実現することを可能にする場合があるが、達成は間隔をあけた中間の加圧にて実現される。
図7Aに示す例では、拍動性圧力プロファイルP
PulsatileIの「デューティサイクル」(波間の時間)は、約0.25秒であってもよい。
【0058】
図8Aを参照すると、典型的な注入器設定(Q=3、総注入量=6ml)でのAPI#1から導出された、流量Q対時間の注入プロファイルを示している。使用される総量は、曲線の下の面積である。これは、実際に患者に直接送達される注入プロファイルである。
【0059】
図8Bは、API#1(
図8A)が分流装置(
図5で説明)を利用して、
図8Aと同じ注入器設定(Q=3、総量=6ml)で注入器からの注入を調整/変更した場合に、患者に直接送達される注入プロファイル(Q対T)を示している。
【0060】
図9Aでは、
図8Aに示すAPI#1からの典型的な注入プロファイル出力(Q対t)を示し、注入プロファイルに重ねられた「不透明化ウィンドウ」が含まれる。用途に応じて、血管を視覚化するには特定の流量が必要であるか、望ましい場合がある。約0.5~約3.0ml/秒、約1.0~約2.0ml/秒及び約1.25~約1.75ml/秒の流量が考えられ、例えば、約1.3、約1.5及び約1.6ml/秒の流量である。患者に対して血管を視覚化するには、特定の最小流量のほか、選択した流量以上での少なくとも2秒の持続時間(
図7に関して前述したViと持続時間)が必要な場合がある。このウィンドウは
図9Aにて影付きで示しており、前述したように、閾値を下回る流量(Vi)がストリーミング(即ち、かすかな、不充分な不透明化)を引き起こす可能性がある一方、この閾値を超える流量が目標(この例では、左主幹動脈)から大動脈根元への造影剤の逆流を引き起こす可能性がある。
【0061】
図9Bを参照すると、
図8A(API#1)及び
図8B(分流装置付きAPI#1)の注入プロファイルが互いに重ね合わされている。この例でさらに強調表示されているのは、API注入プロファイル曲線が分流装置付きAPI#1曲線を上回る領域(灰色)である。本質的に、API#1(単独)は過剰な造影剤(即ち、還流)を送達するが、充分な画質を達成するために必要な(即ち、Viより大きい)流量、量、持続時間を維持する。この過剰な還流は、放射線撮像には必要ない可能性があり、患者の腎臓に追加の望ましくない不必要な造影剤負荷を引き起こす可能性がある。図示のように、例えば、持続時間が2秒の所望の不透明化ウィンドウを示している。
図9Bでさらに注目すべきことは、組み合わせ(
図5の分流装置付きAPI#1)には、約2.5秒から4.5秒の注入の後続の低くなった注入流量段階中に注入される造影剤の量を減少させるという追加の利点がある場合があることである。この造影剤量には、追加の撮像上の利点はない。
【0062】
自動動力注入器と組み合わせた分流装置の使用に関連する他の利点がある可能性がある。このような利点には、例えば、ピーク圧力(又は流量)が小さくなり、持続時間全体にわたってプロファイルがさらに一定する(あるいは平坦化する)場合がある。
【0063】
図10は、APIでの注入入力の変更と、その結果としての患者に対する注入プロファイルと、を示している。1つの曲線を、API#1の典型的な注入(Q=3ml/秒、V=6ml)で示している。次に、重ね合わされているのは、(
図8Bとほぼ同じ)分流装置付きAPI#1である。この2つの曲線に加えて、1つのプロファイルが、流量を同じ(Q=3ml/秒)に保ち、API#1注入の総量を減らした場合の流量プロファイル(Q対t)を示している。図に示すように、患者には依然として過剰な造影剤が注入されており、血管を不透明にする持続時間が不充分である。さらに、総量4mlで流量をさらに下げると(Q=2ml/秒)、患者に注入される過剰な造影剤の一部が減少する可能性があるが、注入時間のために充分な媒体が提供されない可能性がある。これまで考察したように、左主幹動脈の視覚化には2~4拍又はそれ以上の心臓の拍動が必要な場合がある。
【0064】
分流タンクと併せてAPIを利用する本明細書に記載のシステムに加えて、提案された技術では、システムから分流タンクを排除しながら、タンクによって機械的に生成される効果を模倣するアルゴリズムをプログラムすることによって注入プロファイルを複製することを検討している。そのような例では、分流タンクの効果を模倣するために、APIの動作を制御する特定のアルゴリズムを含めることを検討している。そのようなシステムには、本明細書で説明する装置と、装置に関連する通信手段及びプロセッサ/コントローラと、が含まれてもよい。APIが
図8Bに示すプロファイルとさらに類似したプロファイルを含むように、アルゴリズムの機能をプログラムしてもよい。一例として、そのようなアルゴリズムには、注射器胴部出口を開く前に増大圧力を生成することが含まれてもよい。胴部出口を開いた後、所望の流量を迅速又は瞬時に確立してもよい。そのような流量を、設定された流量持続時間が確立されるまで維持してもよい。このアルゴリズムは、(流量を逆転させることによって)圧力を急速に下げるために、例えば、(わずかな逆流を生成するために)モータの動作を逆転させるために、モータの動作をさらに制御してもよい。分流タンクを含むシステムの機能を模倣し得るアルゴリズムの他の例を検討する。例えば、アルゴリズム及び適切な構成要素を使用して、APIからの流体の流れに影響を及ぼす1つ又は複数のバルブを作動させ、例えば、圧力を解放したり、流れを分流したりしてもよい。
【0065】
追加の例では、
図4のシステム400及び
図5のシステム500は、APIの手動で選択されたベースラインパラメータ(例えば、流量、注入量、上昇時間、最大注入圧力など)を修正するか、他の方法で増強するためのフィードバックループを含んでもよい。このような例では、このような選択されたベースラインパラメータは、事前定義された最適な注入プロファイル(即ち、不透明化を達成するための最小限の造影剤)に一致するように注入プロファイルを変更するために、さまざまなセンサ(電位差計424、API胴部504/422に関連付けられた流量/圧力トランスデューサ、患者への注入に関連付けられた圧力/流量センサなど)のほか、任意の入力装置(手持ち式装置402など)からのリアルタイムフィードバックによって修正されるか、変更されるか、他の方法で増強されてもよい。例えば、
図10から、ベースラインパラメータが、「典型的なAPI#1」注入のように見え得るプロファイルを提供する場合がある。しかし、センサ及び入力装置のフィードバックにより、進行中の注入がリアルタイムで変更され、「分流装置付きAPI#1」によって達成されるプロファイルとさらに類似した注入プロファイルが患者に送達される可能性がある。
【0066】
前述したように、APIを利用して最適な画像の不透明度を取得するという目的は、特定のAPI変数(例えば、造影剤注入流量、体積、上昇時間及び/又は注入圧力など)の組み合わせを事前設定することによって達成しようとしてもよい。このほか、これまでに考察したように、API操作者がこのほか、患者への造影剤の負荷/投与量を最小限に抑えようとしてもよい。操作者が、API上で事前に選択した設定に依存する場合も、ユーザが注入前にこのような設定を調整したり、及び/又は可変速度手動コントローラを使用してAPIからの流量をリアルタイムで滴定したりする必要がある場合もある。その結果、操作者による透視/X線画像の解釈に依存して、API設定をさらに案内したり、及び/又は手動コントローラや入力装置を用いて流量を滴定したりする場合がある。この場合、API操作者は、そのリアルタイムの画像/不透明化評価に依存するほか、最小限の造影剤量で最適化された不透明化を達成する能力に関連する反応時間に陥る可能性がある。
【0067】
患者に注入される造影剤の量を減らしながら、最適な画像の不透明化を可能にし得る他の例を検討する。例えば、各API注入では、透視/X線画像から得られた信号(データ/情報)からのフィードバックを利用して、操作者入力のみに依存することなく、API駆動機構(例えば、モータコントローラ/アクチュエータ420)への入力を直接(又は間接的に)制御するか、調整するか、他の方法で提供してもよい。このほか、注入が、例えば、冠動脈の充填に合わせて調整され得るEKG(心拍のペーシング)、ガイドカテーテルに関連付けられた圧力計、フローワイヤなどの他の入力を検討する。他の入力はこのほか、注入器への入力を制御するか、変更するか、他の方法で提供するためのフィードバックを提供するために使用されてもよい。この場合、例として、透視画像について説明するが、他の入力を使用してもよく、透視画像は一例にすぎない。
【0068】
さらに、透視/X線画像の不透明化をソフトウェアを介して評価して、画像上の不透明度をこれより上げるか下げる必要があるかをリアルタイムで判定するのを支援してもよい。処理されたデータ/情報を、例えば、モータコントローラ/アクチュエータ420に転送してもよい。処理されたデータは、プロセッサ430とモータコントローラ420との間の1つ又は複数の送信機/受信機を介して実施されてもよい。このデータを利用して、API注入流量プロファイルを自動的に調整して、設定された時間にわたって所望の不透明化に到達し、それを維持してもよい。前述したように、不透明化にかかる時間の長さは、患者の1秒あたりの心拍数で定量化されることがあり得る。さらに、所望の不透明化が達成され、所望の「不透明化ウィンドウ」の間保持された後にAPI注入を終了してもよい。さらに、操作者/ユーザには、部位の不透明化に関して個別の好みがある可能性があることを検討する。この場合、操作者/ユーザ(又は別の個人)は、「不透明化」を評価してもよい(例えば、不透明度の増減及び/又は不透明化持続時間の長短)。この評価は、注入後に実施することも、APIからの今後の注入を調整するために利用することもあり得る。さらに、この情報は、API(又は他の関連データ処理システム)が、将来の注入を実施する際の操作者の好みのほか、特定の不透明化要件(いくつか例を挙げると、部位の場所、患者の大きさ、心拍など)を学習(即ち、人工知能)するのを支援してもよい。例として、注入前に、ユーザが、治療対象の場所(即ち、いくつか例を挙げると、左主冠動脈、膝血管の下、血管又は臓器内の特定の場所、左冠動脈冠動脈枝全体、右冠状動脈、PAD流出など)をデジタル化することがあり得る。さらに、さらに良好な(例えば、効率的な)注入プロファイルを提供するAPIを用いて患者に注入される過剰な媒体を減少/軽減するために、画像にて大動脈逆流を評価する際にデータ及び/又は評価を使用する可能性も否定できない。
【0069】
APIにはさまざまな用途があり、患者の体内の複数の注入部位に注入し得るさまざまな薬剤が存在する。このため、さまざまな流量、圧力、システム動作時間などを含む上記の例は、例示のみを目的としており、実際の値がさまざまな注入器と用途との間で(大幅に)変化する可能性がある。アルゴリズムで動作するシステムの例を
図12及び
図13に示す。
【0070】
図11は、本実施形態のうちの1つ又は複数が実装され得る適切な動作環境1100の一例を示す。これは、適切な動作環境の一例にすぎず、使用範囲や機能に関して何らかの制限を示唆するものではない。使用に適している可能性のある他の周知の計算システム、環境及び/又は構成には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、手持ち式装置又はラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、スマートフォンなどのプログラム可能な家電製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、スマートフォン、タブレット、上記のシステム又は装置のいずれかを含む分散計算環境などが含まれるが、ここに挙げたものに限定されない。
【0071】
動作環境1100は、その最も基本的な構成では、典型的には、例えば、API、手持ち式注射器又は両方から離れた別の装置に包含され得る少なくとも1つの処理ユニット1102及びメモリ1104を含む。計算装置の正確な構成及び種類に応じて、(とりわけ、本明細書に記載の方法を実施するための命令を記憶する)メモリ1104は、(RAMなどの)揮発性メモリ、(ROM、フラッシュメモリなどの)不揮発性メモリ又はその2つの何らかの組み合わせであってもよい。この最も基本的な構成を、
図11の線1106で示している。さらに、環境1100はこのほか、磁気ディスク又は光ディスク又はテープを含むが、ここに挙げたものに限定されない記憶装置(取り外し可能記憶装置1108及び/又は取り外し不可能記憶装置1110)を含んでもよい。同じように、環境1100はこのほか、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ペン、音声入力などの入力装置1114及び/又はディスプレイ、スピーカ、プリンタなどの出力装置1116を有してもよい。このほか、環境は、LAN、WAN、ポイントツーポイント、Bluetooth、RFなどの1つ又は複数の通信接続1112を含んでもよい。
【0072】
動作環境1100は、典型的には、少なくとも何らかの形式のコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、処理ユニット1102又は動作環境を構成する他の装置によってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であることがある。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどの情報の記憶のためのあらゆる方法又は技術で実装された揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び取り外し不可能の媒体が含まれる。コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、ソリッドステート記憶装置、あるいは所望の情報を保存するために使用することができる任意の他の有形媒体が含まれる。通信媒体が、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータを、搬送波又は他の伝送機構などの変調データ信号で実現し、あらゆる情報配信媒体を含む。「変調データ信号」という用語は、信号内の情報を符号化するように設定されるか変更されたその特性のうちの1つ又は複数を有する信号を意味する。限定ではなく例として、通信媒体には、有線ネットワーク又は直接有線接続などの有線媒体と、音響媒体、RF媒体、赤外線媒体をはじめとする無線媒体などの無線媒体と、が含まれる。このほか、上記のいずれかの組み合わせが、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれる必要がある。
【0073】
動作環境1100は、1つ又は複数のリモートコンピュータへの論理接続を使用するネットワーク環境で動作する単一のコンピュータであってもよい。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピア装置又は他の一般的なネットワークノードであってもよく、典型的には、上記の要素の多く又は全部のほか、言及されていない他の要素を含む。論理接続は、利用可能な通信媒体によって支持される任意の方法を含む。そのようなネットワーキング環境は、オフィス、企業全体のコンピュータネットワーク、イントラネット及びインターネットでは一般的なものである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の構成要素は、コンピュータ記憶媒体及び他の有形媒体に記憶され、通信媒体で送信され得る、コンピュータシステム1100によって実行可能なモジュール又は命令を含む。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装された揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び取り外し不可能の媒体が含まれる。このほか、上記のいずれかの組み合わせが、読み取り可能な媒体の範囲内に含まれる必要がある。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム1100は、コンピュータシステム1100によって使用されるリモート記憶媒体にデータを保存するネットワークの一部である。
【0074】
図12は、自動注入器からの媒体の排出を制御する方法1200を示す。自動注入器は、本明細書の他の箇所に記載の手持ち式装置などの入力装置と併せて利用されてもよい。プロセッサが、入力装置のハウジング内の入力装置のプランジャの位置のほか、入力装置のトリガの他の態様(例えば、トリガ/プランジャが展開/後退するときの速度、トリガ装置にかかる圧力など)を示す入力装置上の1つ又は複数のセンサからの信号を受信してもよい。このような信号はプロセッサによってさらに処理され、それに応じて自動注入器を作動させてもよい。プロセッサは、自動注入器、入力装置上に位置しても、複数の装置にわたる複数のプロセッサであってもよい。例では、自動注入器は典型的には使い捨てではないため、自動注入器上にプロセッサを位置づけることが有利である可能性がある。特定の位置センサについては、本明細書の他の箇所で説明する。方法1200は、入力装置動作信号に少なくとも部分的に基づいて第1の速度でエジェクタを前進させるようにアクチュエータを制御する動作1202で始まる。フローは、動作1204に進み、注入センサから受信した注入信号に少なくとも部分的に基づいて、第1の速度とは異なる第2の速度でエジェクタを前進させるようにアクチュエータを制御する。例では、注入センサ(及び関連信号)は、圧力、体積流量、流量などのためのものであってもよい。例では、動作1206は、注入センサ付近の流体媒体の目標流量を判定するステップを含む。この目標流量は、注入信号に基づいて判定されてもよい。その後、動作1208では、目標流量を所定の時間維持してもよい。ここで、所定の時間は、目標流量が判定されたか、確立された時間から測定されてもよい。他の例では、時間は、ヒトの心拍数に関連付けられた時間に部分的に基づくものであってもよい。さらに他の例では、操作者が心臓及び/又はその血管内の診断及び/又は治療用機器を位置づける際に造影剤の短い「一吹き」を注入したいときなどに、時間が入力装置の関数としての可変時間であってもよい。さらに、事前設定された時間間隔及び/又は可変間隔の組み合わせもあり得ることが予想される。一例として、入力装置が、設定された時間未満(例えば、1秒又は2秒)で作動する場合、注入間隔に短い「一吹き」が許可される場合がある。しかし、この時間を超えて入力装置を作動させると、事前設定された注入間隔が始動する場合がある。さらに、注入間隔が事前設定量よりも長いという信号が送られた場合、注入器は、可変入力信号として、APIによる注入の継続を可能にする場合がある。これまでに挙げた例は、注入が事前に判定されたり、及び/又は可変であったりする場合があるほんの数例である。
【0075】
図13は、自動注入器からの媒体の排出を制御する例示的な方法1300を示す。方法1300は、自動注入器から遠隔に(有線又は無線で)配置された入力装置から入力装置動作信号を受信する動作1302で始まる。その後、入力装置動作信号を処理して第1の作動信号を取得する動作1304を実施してもよい。第1の作動信号は動作1306にて送信される。この信号はアクチュエータを作動させ、自動注入器から媒体を第一の速度で排出する。その後、入力装置のユーザが、特定の手順の要件、経験など、さまざまな理由により、プランジャの前進速度又は方向を(前進から後退へ)変更してもよい。そのような行動により、入力装置及びセンサのうちの少なくとも1つから変更信号が受信される(動作1308)。次いで、この変更信号は処理されて、第2の作動信号が取得される(動作1310)。次に、この第2の作動信号が動作1312にて送信される。
【0076】
本開示では、添付の図面を参照して本技術のいくつかの例を説明したが、図面には可能な例の一部のみを示している。しかし、他の態様を、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の例に限定されるものとして解釈するべきではない。むしろ、このような例は、本開示が徹底的かつ完全なものであり、可能な例の範囲を当業者に充分に伝えたものになるように、提供されたものである。
【0077】
本明細書で具体例を説明したが、本技術の範囲はこのような具体例に限定されるものではない。当業者であれば、本技術の範囲内にある他の例又は改良点を認識するであろう。このため、特定の構造、行動又は媒体を、例示としてのみ開示している。本技術による例ではこのほか、本明細書に別段の記載がない限り、一般に開示されているが明示的に組み合わせて例示されていない要素又は構成要素を組み合わせる場合がある。この技術の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【国際調査報告】