(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法および分析装置
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240319BHJP
G16B 30/00 20190101ALI20240319BHJP
G16B 40/20 20190101ALI20240319BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240319BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240319BHJP
C07K 14/82 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C12N5/0783
G16B30/00 ZNA
G16B40/20
C12Q1/02
C12M1/00 A
C07K14/82
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560163
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2021019182
(87)【国際公開番号】W WO2022211219
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0040869
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(71)【出願人】
【識別番号】522110164
【氏名又は名称】ペンタメディックス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PENTAMEDIX CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】517HO, 516, 42, CHANGEOP‐RO, SUJEONG‐GU, SEONGNAM‐SI GYEONGGI‐DO 13449, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, デ ヨン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
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4B063QX10
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4B065AC20
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
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4H045BA10
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
(57)【要約】
MHC-ペプチドに対するT細胞活性の予測方法は、分析装置が患者の遺伝子データを入力される段階と、前記分析装置が前記遺伝子データを基準としてMHC(major histocompatibility complex)の第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別する段階と、前記分析装置が1つのアミノ酸単位で前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の相互関係を示すマトリクスを生成する段階と、前記分析装置が前記マトリクスを学習された神経網モデルに入力し、前記MHCおよび前記抗原の結合によってT細胞がサイトカイン(cytokine)を臨界値以上分泌するか否かを判断する段階と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置が患者の遺伝子データを入力される段階と、
前記分析装置が前記遺伝子データを基準としてMHC(major histocompatibility complex)の第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別する段階と、
前記分析装置が1つのアミノ酸単位で前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の相互関係を示すマトリクスを生成する段階と、
前記分析装置が前記マトリクスを学習された神経網モデルに入力し、前記MHCおよび前記抗原の結合によってT細胞がサイトカイン(cytokine)を臨界値以上分泌するか否かを判断する段階と、を含むペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項2】
前記マトリクスは、前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の各アミノ酸ペアに対して事前に知られたタンパク質の構造情報を基準として実際タンパク質構造で前記アミノ酸ペアの近接情報を含む、請求項1に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項3】
前記神経網モデルは、事前に学習データを利用して学習され、
前記学習データは、入力値であるMHC-新生抗原のアミノ酸配列ペアおよびラベル値である前記ペアそれぞれに対するT細胞のサイトカイン分泌量を含む、請求項1に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項4】
前記サイトカインは、インターフェロンガンマ(interferon-γ)である、請求項1に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項5】
前記分析装置は、前記神経網モデルが出力する結果が前記臨界値以上のサイトカイン分泌である場合、前記抗原を抗がんワクチンのための標的候補として決定する、請求項1に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項6】
前記神経網モデルは、CNN(Convolutional Neural Network)であり、前記CNNは、入力される前記MHCと前記抗原のペアに対するT細胞のサイトカイン分泌程度を出力する、請求項1に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法。
【請求項7】
患者の遺伝子データを入力される入力装置と、
MHC(major histocompatibility complex)のアミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原のアミノ酸配列の相互関係を示すマトリクスを基準としてT細胞のサイトカイン(cytokine)分泌量を予測する神経網モデルを保存する保存装置と、
前記遺伝子データからMHCの第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別し、1つのアミノ酸単位で前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の相互関係を示すマトリクスを生成し、前記生成したマトリクスを前記神経網モデルに入力し、前記患者のMHC-抗原がT細胞のインターフェロンガンマ(interferon-γ)の分泌を誘導するか否かを判断する演算装置と、を含むペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置。
【請求項8】
前記マトリクスは、前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の各アミノ酸ペアに対して事前に知られたタンパク質の構造情報を基準として実際タンパク質構造で前記アミノ酸ペアの近接情報を含む、請求項7に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置。
【請求項9】
前記神経網モデルは、事前に学習データを利用して学習され、
前記学習データは、入力値であるMHC-新生抗原のアミノ酸配列ペアおよびラベル値である前記ペアそれぞれに対するT細胞のインターフェロンガンマ分泌量を含む、請求項7に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置。
【請求項10】
前記演算装置は、前記神経網モデルが出力する結果が臨界値以上のインターフェロンガンマ分泌である場合、前記抗原を抗がんワクチンのための標的候補として決定する、請求項7に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置。
【請求項11】
前記神経網モデルは、CNN(Convolutional Neural Network)であり、前記CNNは、入力される前記MHCと前記抗原のペアに対するT細胞のインターフェロンガンマ分泌情報を出力する、請求項7に記載のペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する技術は、抗原ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する技法に関する。
【背景技術】
【0002】
新生抗原(neoantigen)は、腫瘍細胞特異的タンパク質である。新生抗原は、腫瘍細胞特異的突然変異によって発現する。新生抗原のエピトープは、腫瘍細胞の表面に位置するMHC(major histocompatibility complexes)に発現し、T細胞は、MHC-エピトープを認識して免疫反応を起こす。
【0003】
免疫抗がん療法(cancer immunotherapy)は、人体の免疫体系を活性化させて、腫瘍細胞を死滅させる治療法である。免疫抗がん療法分野において有効な新生抗原を発掘するための研究が進行されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下に説明する技術は、T細胞の反応性が高い新生抗原を発掘するin silico技法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ペプチド-MHCに対するT細胞活性の予測方法は、分析装置が患者の遺伝子データを入力される段階と、前記分析装置が前記遺伝子データを基準としてMHC(major histocompatibility complex)の第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別する段階と、前記分析装置が1つのアミノ酸単位で前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の相互関係を示すマトリクスを生成する段階と、前記分析装置が前記マトリクスを学習された神経網モデルに入力し、前記MHCおよび前記抗原の結合によってT細胞がサイトカイン(cytokine)を臨界値以上分泌するか否かを判断する段階と、を含む。
【0006】
ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置は、患者の遺伝子データを入力される入力装置と、MHC(major histocompatibility complex)のアミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原のアミノ酸配列の相互関係を示すマトリクスを基準としてT細胞のサイトカイン(cytokine)分泌量を予測する神経網モデルを保存する保存装置と、前記遺伝子データからMHCの第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別し、1つのアミノ酸単位で前記第1アミノ酸配列と前記第2アミノ酸配列の間の相互関係を示すマトリクスを生成し、前記生成したマトリクスを前記神経網モデルに入力し、前記患者のMHC-抗原がT細胞のインターフェロンガンマ(interferon-γ)の分泌を誘導するか否かを判断する演算装置と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する技術は、ディップランニングモデルを利用して患者の候補ペプチドのうちT細胞の活性度が高い新生抗原を迅速に選別する。以下に説明する技術は、インターフェロンガンマ(interferon-γ)の分泌量を基準として使用して抗原ペプチド-MHCに対するT細胞の活性を正確度高く予測する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測するシステムの例である。
【
図2】オーダーメイド抗がんワクチンを開発する過程の例である。
【
図4】ペプチド-MHCの相互作用を示すマトリクスを生成する過程の例である。
【
図5】ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する過程の例である。
【
図6】ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置の例である。
【
図7】神経網モデルを検証した実験結果の例である。
【
図8】神経網モデルを検証した実験結果の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する技術は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、以下に説明する技術を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、以下に説明する技術の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物や代替物を含むものと理解すべきである。
【0010】
第1、第2、A、Bなどの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用できるが、当該構成要素は、前記用語により限定されず、単に1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけで使われる。例えば、以下に説明する技術の権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は、第2構成要素と命名することができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。および/またはという用語は、複数の関連した記載された項目の組み合わせまたは複数の関連した記載された項目のいずれかの項目を含む。
【0011】
本明細書において使用される用語において単数の表現は、門脈上明白に相異に解釈されない限り、複数の表現を含むものと理解すべきであり、「含む」などの用語は、説明された特徴、個数、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味し、1つまたはそれ以上の他の特徴や個数、段階動作構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を排除しないものと理解すべきである。
【0012】
図面に関する詳細な説明をするに先立って、本明細書における構成部に対する区分は、各構成部が担当する主機能別に区分したものに過ぎないことを明確にしようとする。すなわち、以下に説明する2つ以上の構成部が1つの構成部で合わせられたりまたは1つの構成部がより細分化された機能別に2つ以上に分化して備えられてもよい。また、以下に説明する構成部それぞれは、自分が担当する主機能以外にも、他の構成部が担当する機能の一部または全部の機能をさらに行うこともでき、構成部それぞれが担当する主機能のうち一部の機能が他の構成部により担当されて行われてもよいことはもちろんである。
【0013】
また、方法または動作方法を行うに際して、前記方法を成す各過程は、門脈上明白に特定順序を記載しない以上、明記された順序と相違に行われてもよい。すなわち、各過程は、明記された順序と同一に行ってもよく、実質的に同時に行われてもよく、反対の順に行われてもよい。
【0014】
以下の説明において使用される用語について説明する。
【0015】
抗原は、免疫反応を誘導する物質である。
【0016】
新生抗原は、腫瘍細胞の突然変異または翻訳後修飾に起因する腫瘍細胞特異的抗原である。新生抗原は、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列を含んでもよい。ここで、突然変異は、フレームシフト(frameshift)、挿入、欠失、置換、スプライス部位変更、ゲノム再配列、遺伝子融合または新生ORF(Open Reading Frame)を引き起こす任意のゲノムまたは発現変更を含んでもよい。また、突然変異は、スプライス変異(splice variant)も含んでもよい。腫瘍細胞に特異的翻訳後修飾は、異常なリン酸化を含んでもよい。腫瘍細胞に特異的翻訳後修飾は、また、プロテアソーム生成のスプライスされた抗原を含んでもよい。
【0017】
エピトープ(epitope)は、抗体またはT-細胞受容体が通常結合する抗原の特異的部分を称することができる。
【0018】
MHCは、免疫反応の対象物質を抗原として認識するメディエータとして機能するペプチド構造である。ヒトのMHCは、HLA(human leukocyte antigen)ともいう。以下、MHCは、ヒトのHLAを含む意味で使用する。
【0019】
ペプチドは、アミノ酸の重合体を意味する。以下に説明する技術は、新生抗原を発掘する技法に該当する。以下の説明において使用するペプチドは、腫瘍細胞に発現するアミノ酸重合体やアミノ酸配列を意味する。したがって、以下では、ペプチドは、腫瘍細胞の表面に発現する腫瘍特異的アミノ酸重合体やアミノ酸配列を意味する。
【0020】
ペプチド-MHC(peptide-MHC,pMHC)またはペプチド-MHC複合体は、腫瘍細胞の表面に発現するペプチドとMHCの構造体である。T細胞は、ペプチド-MHC複合体を認識して免疫反応を行う。
【0021】
結合度は、MHCとペプチドの間の結合程度を意味する。結合選好度や結合親和度は、MHC分子とペプチドの間の結合親和程度を意味する。
【0022】
サンプル(sample)は、分析対象となる個体において単一細胞または多重細胞、細胞断片、体液などを意味する。
【0023】
個体(subject)は、細胞、組織または有機体を含む。一般的に、個体は、特定の腫瘍を有する患者から取得する。個体は、基本的に、ヒトを対象にするが、これに限定されない。
【0024】
エキソーム(exome)は、タンパク質をコード化するゲノムのサブセットである。エキソーム(exome)は、細胞、細胞グループまたは個体に存在するエクソン(exon)の集合を称することができる。
【0025】
遺伝子データは、サンプルを分析して算出される遺伝情報を意味する。例えば、遺伝子データは、細胞、組織などからデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはタンパク質(Protein)などから得られた塩基配列、遺伝子発現データ、標準遺伝子データとの遺伝変異、DNAメチル化(methylation)などを含んでもよい。遺伝子データは、伝統的なシーケンシング方法、NGS(next-generation sequencing)などを用いて獲得することができる。遺伝子データは、一般的に、デジタルデータであり、特定フォーマットのファイル形態(例えば、FATSQ)で算出することができる。
【0026】
機械学習(machine learning)は、人工知能の一分野であり、コンピュータが学習できるようにアルゴリズムを開発する分野を意味する。学習モデルは、決定木、ランダムフォレスト(random forest)、KNN(K-nearest neighbor)、単純ベイズ(Naive Bayes)、SVM(support vector machine)、人工神経網(artificial neural network)などがある。以下に説明する技術は、人工神経網を利用することができる。以下の説明は、人工神経網や神経網モデルを中心に説明する。
【0027】
人工神経網は、生物の神経網を模倣した統計学的学習アルゴリズムである。様々な神経網モデルが研究されている。最近、ディップランニング神経網(deep learning network,DNN)が注目されている。DNNは、入力層(input layer)と出力層(output layer)の間に複数個の隠れ層(hidden layer)からなる人工神経網モデルである。DNNは、一般的な人工神経網と同様に、複雑な非線形関係(non-linear relationship)をモデリングすることができる。DNNは、様々な類型のモデルが研究された。例えば、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、RBM(Restricted Boltzmann Machine)、DBN(Deep Belief Network)、GAN(Generative Adversarial Network)、RL(Relation Networks)などがある。
【0028】
分析装置は、患者のサンプルから特定腫瘍の新生抗原を発掘する装置である。分析装置は、特定ペプチド-MHCに対するT細胞の活性度を予測する。分析装置は、設置されたプログラムまたはコードを利用してデータを処理し、分析することができる。
【0029】
図1は、ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測するシステム100の例である。
図1で、分析装置130、140、150がT細胞活性を予測する。
図1で、分析装置は、サーバー130およびコンピュータ端末130、140の形態で示した。なお、分析装置130、140、150は、様々な形態で具現されてもよい。
【0030】
遺伝子分析装置110は、患者のサンプルを分析し、遺伝子データを生成する。例えば、遺伝子分析装置110は、NGS分析装置であってもよい。腫瘍細胞が発現するペプチドが分析対象であるから、遺伝子分析装置110は、エキソーム(exome)を対象とするシーケンシングを行うことができる。エキソーム配列検査(whole exome sequencing)に関する詳しい説明を省略する。遺伝子分析装置110は、生成した遺伝子データを別途のDB120に保存することもできる。
【0031】
サーバー130は、遺伝子分析装置110またはDB120から遺伝子データを受信する。サーバー130は、遺伝子データを分析し、T細胞活性を予測するサービスを提供する。
【0032】
コンピュータ端末140は、遺伝子分析装置110またはDB120から遺伝子データを受信する。コンピュータ端末140は、遺伝子データを分析し、T細胞活性を予測する。
【0033】
コンピュータ端末150は、遺伝子分析装置110が生成した遺伝子データが保存された媒体(例えば、USB、SDカードなど)を介して遺伝子データを入力される。コンピュータ端末150は、遺伝子データを分析し、T細胞活性を予測する。
【0034】
分析装置130、140、150は、現在分析対象であるペプチド-MHCに対するT細胞活性程度を予測し、T細胞活性度が臨界値以上の場合、現在ペプチドを新生抗原候補として発掘することができる。分析装置130、140、150は、ペプチド-MHCに関する情報を事前に構築した神経網モデルに入力し、T細胞活性程度を予測することができる。分析装置130、140、150が神経網モデルを利用して特定ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する過程は後述する。
【0035】
ユーザ10、20、30は、新生抗原およびワクチンを開発する研究者または医療スタッフであってもよい。ユーザ10、20、30は、サンプルの特定ペプチド-MHCに対するT細胞活性程度を確認することができる。また、ユーザ10、20、30は、サンプルに対して有効な新生抗原を把握することもできる。ユーザ10は、ユーザ端末(PC、スマートフォンなど)を介してサーバー130に接続し、サーバー130が行った分析結果を確認することができる。ユーザ20は、自分が使用するコンピュータ端末140を介してM分析結果を確認することができる。ユーザ30は、自分が使用するコンピュータ端末150を介して分析結果を確認することができる。
【0036】
図2は、オーダーメイド抗がんワクチンを開発する過程(200)の例である。
図2は、分析装置が神経網モデルを利用してT細胞活性を予測し、予測結果によって新生抗原を発掘する過程を含む。
【0037】
分析装置は、学習データで神経網モデルを学習し、神経網モデルを構築する(210)。神経網モデルの学習過程は後述する。神経網モデルの学習過程は、分析装置でなく、別途のコンピュータ装置が行うこともできる。すなわち、神経網モデルを学習する主体と神経網モデルを利用して分析する主体とが互いに異なっていてもよい。
【0038】
分析装置は、患者のサンプル(例えば、腫瘍組織)に対する遺伝子配列分析結果(遺伝子データ)を入力される。分析装置は、遺伝子データから腫瘍特異的突然変異配列を識別することができる。分析装置は、正常組織の配列や参照配列を基準として腫瘍組織の配列から変異配列を識別することができる。分析装置は、腫瘍特異的突然変異配列を腫瘍特異的抗原として識別することができる(220)。すなわち、分析装置は、腫瘍特異的突然変異配列を新生抗原候補として選択することができる。分析装置は、複数の新生抗原候補を選択することができる。複数の新生抗原候補が識別されたと仮定して説明する。
【0039】
分析装置は、新生抗原候補のうち特定候補を選択し、T細胞の活性を予測する。分析装置は、遺伝子データを利用して特定候補に対する遺伝子配列を識別することができる。分析装置は、特定候補に対する遺伝子配列を基準として候補抗原のアミノ酸配列を決定することができる。また、分析装置は、遺伝子データを利用して当該患者のMHC配列を識別することもできる。分析装置は、MHC配列を基準としてMHCのアミノ酸配列を決定することができる。
【0040】
分析装置は、候補抗原に対して事前に構築した神経網モデルを利用してT細胞活性度を予測する(230)。分析装置は、候補抗原に関する情報を神経網モデルに入力し、T細胞活性度を予測する。分析装置は、候補抗原のアミノ酸配列およびMHCのアミノ酸配列を神経網モデルに入力し、T細胞活性度を予測することができる。分析装置は、候補抗原のアミノ酸配列およびMHCのアミノ酸配列を基準として候補抗原とMHCの相互作用や親和度を示すマトリクスを生成することができる。分析装置は、生成したマトリクスを神経網モデルに入力し、候補抗原に対するT細胞活性度を予測することができる。神経網モデルの動作については後述する。
【0041】
神経網モデルは、入力された候補抗原のT細胞活性の有無に関する情報を出力する。例えば、神経網モデルは、分析対象である候補抗原に対してT細胞が活性または不活性であるかを出力することができる。T細胞活性の有無は、活性度が特定の臨界値以上であるか否かによって判断することができる。
【0042】
分析装置は、T細胞の活性度が臨界値以上であるか否かを判断する(240)。なお、T細胞活性の有無は、T細胞が分泌するサイトカイン(cytokine)の量を基準として判断することができる。分析装置は、現在候補抗原に対するT細胞の活性度が臨界値以上の場合(240のYES)、現在候補抗原(ペプチド)を標的候補グループに追加する(250)。標的候補グループは、免疫抗がん治療の標的となりうる腫瘍特異的新生抗原候補から構成される。
【0043】
分析装置は、サンプルの特異的抗原に対するT細胞活性度の予測が終了したかを確認することができる(260)。サンプルの候補抗原に対するT細胞活性度の予測が完了していない場合(260のNO)、分析装置は、候補抗原のうちT細胞活性度を予測しない次の特異的抗原を選択し(270)、当該抗原に対するT細胞活性度を判断する過程を繰り返す。分析装置は、標的候補グループを抽出する過程まで行う。
【0044】
すべての候補抗原に対するT細胞活性度の予測が完了すると、研究者は、現在標的候補グループに対するさらなる検証実験をすることもできる(280)。さらには、研究者は、現在患者に対してT細胞の活性度が高い新生抗原を標的として有するワクチンを設計することができる(290)。このような過程を経て生産される抗がんワクチンは、患者オーダーメイドで腫瘍細胞のみを標的とすることになる。
【0045】
前述した神経網モデルを構築する過程を説明する。研究者が実際神経網モデルを構築する過程を基準として説明する。
【0046】
研究者は、公開DBからペプチド-MHC(pMHC)に関する情報を収集した。公開DBは、IEDBなどを含んでもよい。研究者は、IEDB、IMMA2、MHCBNおよび別途のソースからヒトとマウスに対するpMHCデータを収集した。また、研究者は、pMHCと関連してT細胞の活性度に関する情報を収集した。T細胞の活性度は、T細胞が分泌するサイトカインの量を基準として判断した。より具体的には、研究者は、T細胞が分泌するインターフェロンガンマ(IFNγ)の分泌量を基準として特定pMHCに対するT細胞の活性度を評価した。このために、研究者は、公開DBにあるpMHCデータのうち当該pMHCに対するT細胞のIFNγ分泌量データがあるデータを選別した。
【0047】
研究者が収集したデータは、HLA類型およびペプチド長さを含む。ペプチド長さは、MHCクラスIの場合、9merであり、MHCクラスIIの場合、15merである。また、各pMHCに対する免疫原性(Immunogenicity)ラベル値も使用した。
【0048】
MHCIIは、MHCIとは異なって、HLA-DPおよびHLA-DQがヘテロダイマー(heterodimers)であるから、実験データは、HLA-DQA/HLA-DQBペアで与えられる。後述するが、抗原とMHCの間の分子距離を学習データとして使用したので、研究者は、抗原に直接作用するβ鎖のみを使用した。学習データは、抗原性と非抗原性のデータがバランスよく調節された。最終的に、研究者は、13,128個のMHCIデータおよび6,650個のMHCIIデータを用意した。研究者が収集したデータは、下記の表1に示された通りである。表1で、「individual research」は、個別研究を通じて獲得したデータを意味する。免疫原性ペプチド(immunogenic peptides)は、腫瘍特異的新生抗原を意味する。
【0049】
【0050】
図3は、神経網モデルを学習する過程(300)の例である。
【0051】
ペプチドDB-Aは、ペプチド-MHCに関連した情報を保存することができる。
図3は、IEBDのような公開DBのみを示した。ただし、学習データは、公開DBだけでなく、研究者(開発者)が別途の実験で獲得したデータも含まれてもよい。ペプチドDB-Aは、ネットワーク上に存在する装置であってもよい。または、ペプチドDB-Aは、コンピュータ装置Bに連結されたり内蔵された装置であってもよい。
【0052】
コンピュータ装置Bが学習データを利用して神経網モデルを学習することができる。コンピュータ装置Bは、T細胞活性を予測する分析装置であってもよく、学習のための専用装置であってもよい。
【0053】
コンピュータ装置Bは、ペプチドDB-Aから学習データを抽出する(310)。学習データは、
図3のように、MHCクラス、抗原候補のアミノ酸配列および当該ペプチド-MHCに対するT細胞のIFNγ分泌量を含んでもよい。IFNγ分泌量は、T細胞活性を判断する基準である臨界値以上の場合(high,H)と臨界値未満の場合(low,L)とに区分することができる。
【0054】
コンピュータ装置Bは、分析対象である特定抗原に対するペプチド-MHCペアに対してペプチドとMHCの間の相互関係を示すマトリクスを生成する(320)。相互関係は、ペプチドとMHCの間の親和度を意味する。マトリクス生成過程は後述する。
【0055】
コンピュータ装置Bは、生成したマトリクスを神経網モデルに入力し、現在のペプチド-MHCに対するT細胞活性の有無を予測する。神経網モデルは、ペプチド-MHCに対してT細胞活性(IFNγ分泌量が高い)または不活性(IFNγ分泌量が低い)のような情報を出力する。コンピュータ装置Bは、現在入力されたペプチド-MHCに対するラベル値(IFNγ分泌量)を基準として神経網モデルの重みをアップデートする(330)。神経網モデルは、逆伝播過程を通じて学習することができる。
【0056】
研究者は、CNNモデルを利用してペプチド-MHCに対するT細胞活性度を予測した。もちろん、CNNでなく、他の神経網モデルを利用してT細胞活性度を予測することもできる。CNNを中心に神経網モデルについて簡略に説明する。
【0057】
CNNは、畳み込み層(convolution layer,Conv)、プーリング層(pooling layer)および全結合層(fully connected layer,FC)を含んでもよい。畳み込み層およびプーリング層は、繰り返し多数個が配置されてもよい。
【0058】
CNNモデル400は、入力データ(相互作用マップ)を基準としてペプチド-MHC結合度を予測する。CNNモデル400は、複数の畳み込み層410、420、全結合層430および出力層440を含む。
図5のように畳み込み層は、2つの層から構成されてもよい。
【0059】
畳み込み層は、入力されるデータに対する畳み込み演算を行い、畳み込み値に対してReLU(rectified linear unit)関数を適用した値を出力する。畳み込み演算は、入力値に対する重みマトリクスを乗算する演算である。重みは、学習過程を通じてアップデートすることができる。畳み込み層は、ペプチド-MHCに対する相互作用特徴を抽出することになる。なお、入力データは、アミノ酸ペアの相互作用程度を示すパラメーターを含んでもよい。
【0060】
全結合層は、入力される情報を統合する。全結合層は、畳み込み層から出力する値を入力される。全結合層は、ReLU演算を行うことができる。
【0061】
出力層は、シグモイド(sigmoid)関数を利用して与えられたペプチド-MHCに対するT細胞活性程度や活性の有無に関する情報を出力する。
【0062】
神経網モデルが最終出力する値は、0から1の間の値となりうる。分析装置は、神経網モデルが出力する値と臨界値とを比較し、T細胞の活性または不活性を決定することができる。
【0063】
【0064】
畳み込み層は、特定個数のカーネルまたは重みマトリクスを利用して畳み込みを行う。畳み込みは、1次元または2次元演算などであってもよい。すべての畳み込み結果は、ReLUによって変換される。ReLUは、負の値を0に変換する。
図3は、2つの畳み込み層を示す。
【0065】
一番目の畳み込み層は、入力データから結合パターンを検出する。一番目の畳み込み層は、移動する距離が1のウィンドウを使用することができる。畳み込み層の演算は、下記の数式1の通りである。二番目の畳み込み層は、一番目の畳み込み層と同じ構造であってもよい。または、二番目の畳み込み層は、ウィンドウのサイズまたはストライド(stride)の幅が一番目の畳み込み層と異なっていてもよい。
【0066】
【0067】
Xは、入力データであり、iは、出力の位置を示すインデックスであり、kは、カーネルのインデックスである。各畳み込みカーネルWkは、M×Nサイズの重みマトリクスに該当する。Mは、ウィンドウのサイズであり、Nは、入力チャネルの個数である。
【0068】
プーリング層は使用されなくてもよい。プーリングは、データの次元を縮小する過程である。互いに比較的遠い距離にあるアミノ酸も、ペプチド-MHC複合体とT細胞の受容体の相互作用に影響を与えることができる。したがって、CNNは、プーリング層を利用せずに、入力データのサイズを維持しつつ特徴を抽出することができる。
【0069】
全結合層FCは、二番目の畳み込み層から出力されるすべての出力を入力とする。全結合層は、以前の層から出力される入力値を統合する。全結合層は、ReLU(WX)関数を行う。Xは、入力値であり、Wは、全結合層のための重みマトリクスである。
【0070】
出力層は、シグモイド関数によって0~1の間の値を出力することができる。出力層が出力する値は、T細胞の活性Hまたは不活性Lである。出力層は、シグモイド関数Sigmoid(WX)を行う。Xは、入力値であり、Wは、シグモイド出力層のための重みマトリクスである。なお、出力層は、シグモイドでなく、ソフトマックスまたはReLUのような活性化関数を使用することもできる。
【0071】
CNNモデルは、目的関数を最小化する方向に学習される。学習過程は、CNNモデルで使用する重みを最適化する過程に該当する。例えば、重みの最適化は、勾配降下法(gradient descent method)を利用することができる。
【0072】
目的関数は、NLL(negative log likelihood)の総和および正規化項(regularization term)と定義される。CNNモデルに対する目的関数は、下記の数式2のように表される。
【0073】
【0074】
sは、学習データのインデックスである。tは、相互作用特徴のインデックスである。Yt
sは、学習データsに対するT細胞活性度に対するラベル値(0または1)である。ft(Xs)は、神経網モデルが入力データXsのT細胞活性度に対して予測した結果である。
【0075】
なお、MHCIとMHCIIは、機能的特徴が異なっており、タンパク質の長さも異なっている。したがって、MHCIとMHCIIに対してそれぞれ神経網モデルを設けることが好ましい。研究者も、MHCIとMHCIIに対して個別的に学習データを利用して神経網モデルを別に構築した。
【0076】
神経網モデルは、ペプチド-MHCに対するマトリクスを入力される。コンピュータ装置は、学習過程でペプチド-MHCに対するマトリクスを生成する。分析装置は、分析過程でそれぞれペプチド-MHCに対するマトリクスを生成する。
図4は、ペプチド-MHCの相互作用を示すマトリクスを生成する過程(400)の例である。説明の便宜のために、
図4で、コンピュータ装置Bがマトリクスを生成すると仮定する。なお、コンピュータ装置は、PC、サーバーなどであってもよい。
【0077】
コンピュータ装置Bは、ペプチド-MHCに対するアミノ酸配列を入力される(410)。コンピュータ装置は、入力装置、保存媒体または通信を介してアミノ酸配列を入力されてもよい。アミノ酸配列は、MHCのアミノ酸配列と抗原のアミノ酸配列である。または、コンピュータ装置が特定MHCアミノ酸配列を事前に保存し、抗原のアミノ酸配列のみを入力されてもよい。
【0078】
コンピュータ装置Bは、MHCのアミノ酸配列と抗原のアミノ酸配列ペアに対するマトリクスを生成する。MHCのアミノ酸配列において個別アミノ酸を順序によって1~nで識別することができる。また、抗原のアミノ酸配列において個別アミノ酸を順序によってa~zで識別することができる。
【0079】
コンピュータ装置Bは、MHCのアミノ酸配列(第1アミノ酸配列と命名する)と抗原のアミノ酸配列(第2アミノ酸配列と命名する)に対して各アミノ酸ペア別に相互作用値を決定する。例えば、コンピュータ装置は、第1アミノ酸配列のアミノ酸1課第2アミノ酸配列のアミノ酸aに対して相互作用値を決定する。このような方式でコンピュータ装置は、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列で構成できるすべてのアミノ酸ペアに対する相互作用値を決定する。
【0080】
コンピュータ装置Bは、従来知られたタンパク質の構造を参照して特定アミノ酸上の相互作用値を決定することができる。タンパク質構造DB-Aは、すでに知られたタンパク質の構造に関する情報を保存する。タンパク質構造DB-Aは、タンパク質構造体を構成するアミノ酸とアミノ酸の距離に関する情報を保有することができる。タンパク質構造DB-Aは、多数のタンパク質構造体に関する情報を保有することができる。
【0081】
コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aを参照して第1アミノ酸配列の特定の第1アミノ酸と第2アミノ酸配列の特定の第2アミノ酸の距離(近接度)を決定することができる。タンパク質構造DB-Aは、多数の同じアミノ酸ペアに対する距離情報を保有することができる。様々な基準としてコンピュータ装置Bは、第1アミノ酸-第2アミノ酸ペアの相互作用値を決定することができる。例えば、(i)コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸ペアの距離の平均を第1アミノ酸-第2アミノ酸ペアの相互作用値と決定することができる。(ii)コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸の近接頻度を基準として第1アミノ酸-第2アミノ酸ペアの相互作用値を決定することができる。コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸が2次空間または3次空間で一定の基準距離内に位置すると、当該アミノ酸ペアは、近接であると判断することができる。次に、コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸が近接した頻度を基準として第1アミノ酸-第2アミノ酸ペアの相互作用値を決定することができる。コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸が近接した回数を相互作用値と決定することができる。または、コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aにおいて第1アミノ酸-第2アミノ酸が近接した頻度を加工して、相互作用値を決定することもできる。
【0082】
アミノ酸ペア間の相互作用値は、タンパク質構造を一定に区分する領域単位で決定することができる。アミノ酸間の相互作用値は、タンパク質構造に存在するCα(アルファ炭素)原子の間の距離を基準として決定することができる。
【0083】
コンピュータ装置Bは、タンパク質構造DB-Aを参照して特定アミノ酸ペアの近接情報(距離または近接頻度など)を抽出する(420)。コンピュータ装置Bは、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列が構成する各アミノ酸ペアに対する相互作用値を決定して、マトリクスを生成する(430)。マトリクスは、アミノ酸配列の相互作用を示すので、相互作用マトリクスと命名することもできる。第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列に対するマトリクスは、各アミノ酸ペアに対する相互作用程度(親和度や近接度)を示す情報から構成される。
【0084】
図4の下段に相互作用マップの例を示す。相互作用マップは、横軸と縦軸を有する2次元マトリクスである。横軸は、1~nでラベリングされるMHCのアミノ酸配列に該当し、縦軸は、a~zでラベリングされる抗原のアミノ酸配列に該当する。
【0085】
マトリクスは、各アミノ酸ペアに対する相互作用値を含む。相互作用値は、数値であってもよい。さらには、マトリクスは、相互作用程度を一定の色で示すマップ(map)形態であってもよい。
【0086】
なお、ソースデータやMHCクラスによって抗原のアミノ酸配列長さが異なっていてもよい。したがって、コンピュータ装置は、最も大きい入力データを基準としてマトリクスをパッディング(padding)することができる。
【0087】
図5は、ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する過程(500)の例である。
【0088】
分析装置は、サンプルの遺伝子データを入力される(510)。サンプルの特定腫瘍患者の組織であってもよい。遺伝子データは、複数の抗原に関する情報を含んでもよい。説明の便宜のために、1つのペプチド-MHCを基準として説明する。
【0089】
なお、分析装置は、MHCクラスによって事前に構築した神経網モデルを選択することができる。前述したように、MHCクラスによって互いに異なる神経網モデルを準備することができる。したがって、分析装置は、現在分析対象のMHCクラスによって符合する神経網モデルを選択し、その後、分析過程を進めることができる。
【0090】
分析装置は、遺伝子データからMHCアミノ酸配列および抗原アミノ酸配列を抽出する。分析装置は、MHC構造を予測するプログラムやモデルを使用することができる。例えば、分析装置は、HLAminerを使用してHLA(Human Leukocyte Antigen)構造を予測することができる。また、分析装置は、一定のプログラムを使用して遺伝子データから抗原のアミノ酸配列を識別することができる。例えば、分析装置は、idfetchプログラムを使用して遺伝子データから非同義突然変異(nonsynonymous mutations)側面アミノ酸配列を検索して、抗原のアミノ酸配列を検出することができる。
【0091】
図4を参照して説明したように、分析装置は、MHCのアミノ酸配列と抗原のアミノ酸配列に対するマトリクスを生成することができる(520)。
【0092】
分析装置は、生成したマトリクスを神経網モデルに入力し、分析を行う(530)。分析装置は、神経網モデルが入力されるマトリクスに対して出力する情報(T細胞活性または不活性)を基準として現在分析対象のペプチド-MHCに対するT細胞活性の有無を決定することができる(540)。
【0093】
分析装置は、神経網モデルが出力する値と臨界値とを比較し、T細胞活性の有無を決定することができる。研究者は、MHCIとMHCIIに対して個別神経網モデルを構築した。表1で説明した学習データを利用して構築した神経網モデル場合、MHCIの神経網モデルは、0.5より大きい値を出力すると、T細胞活性と判断し、MHCIIの神経網モデルは、0.7より大きい値を出力すると、T細胞活性と判断した。
【0094】
さらには、分析装置は、現在ペプチド-MHCに対してT細胞が活性化すると、当該抗原を抗がんワクチンの標的候補と決定することができる。
【0095】
図6は、ペプチド-MHCに対するT細胞活性を予測する分析装置600の例である。分析装置600は、
図1の分析装置130、140または150に該当する装置である。
【0096】
分析装置600は、前述した神経網モデルを利用してペプチド-MHC結合度を予測することができる。分析装置600は、物理的に様々な形態で具現されてもよい。例えば、分析装置600は、PC、スマート機器、ネットワーク上のサーバー、データ処理専用チップセットなどの形態を有していてもよい。
【0097】
分析装置600は、保存装置610、メモリ620、演算装置630、インターフェース装置640、通信装置650および出力装置660を含んでもよい。
【0098】
保存装置610は、T細胞の活性程度を予測する神経網モデルを保存する。神経網モデルは、前述した通りである。神経網モデルは、事前に学習されなければならない。神経網モデルは、T細胞活性の尺度に該当するサイトカイン分泌量を出力することができる。例えば、神経網モデルは、T細胞が分泌するIFNγの量を出力することができる。神経網モデルは、T細胞の活性(IFNγを多量分泌)または不活性(IFNγを少量分泌または分泌せず)を示す情報を出力することができる。
【0099】
さらには、保存装置610は、データ処理に必要なプログラムやソースコードなどを保存することができる。
【0100】
保存装置610は、入力される遺伝子データを保存することができる。保存装置610は、分析対象である抗原のアミノ酸配列を保存することができる。保存装置610は、分析対象であるMHCアミノ酸配列を保存することができる。
【0101】
保存装置610は、遺伝子データからMHCおよび/または抗原配列を識別するプログラムを保存することもできる。
【0102】
保存装置610は、分析結果である特定ペプチド-MHCに対するT細胞の活性程度を保存することができる。保存装置610は、前述した新生抗原候補を保存することができる。
【0103】
メモリ620は、分析装置600がT細胞の活性度を分析する過程で生成されるデータおよび情報などを保存することができる。
【0104】
インターフェース装置640は、外部から一定の命令およびデータを入力される装置である。インターフェース装置640は、物理的に連結された入力装置または外部保存装置から患者の遺伝子データを入力されることができる。
【0105】
または、インターフェース装置640は、分析対象であるMHCアミノ酸配列および/または抗原のアミノ酸配列を入力されることができる。
【0106】
インターフェース装置640は、データ分析のための学習モデルを入力されることができる。インターフェース装置640は、学習モデル訓練のための学習データ、情報およびパラメーター値を入力されることもできる。
【0107】
インターフェース装置640は、タンパク質構造DBからタンパク質構造体で特定アミノ酸ペアの距離や近接頻度を入力されることができる。
【0108】
通信装置650は、有線または無線ネットワークを介して一定の情報を受信し、伝送する構成を意味する。通信装置650は、外部オブジェクトから遺伝子データを受信することができる。通信装置650は、モデル学習のためのデータをも受信することができる。通信装置650は、分析対象であるMHCアミノ酸配列および/または抗原のアミノ酸配列を入力されることができる。
【0109】
通信装置650は、入力されたサンプルに対する分析結果を外部オブジェクトに送信することができる。分析結果は、特定ペプチド-MHCに対するT細胞活性度であってもよい。または、分析結果は、特定ペプチド-MHCにおいて当該ペプチドが新生抗原候補であるか否かであってもよい。
【0110】
通信装置650は、タンパク質構造DBからタンパク質構造体で特定アミノ酸ペアの距離や近接頻度を入力されることができる。
【0111】
通信装置650やインターフェース装置640は、外部から一定のデータや命令を伝達される装置である。通信装置650やインターフェース装置640を入力装置と命名することができる。
【0112】
出力装置660は、一定の情報を出力する装置である。出力装置660は、データ処理過程に必要なインターフェース、分析結果などを出力することができる。
【0113】
演算装置630は、遺伝子データからMHCの第1アミノ酸配列および腫瘍細胞が生成する抗原の第2アミノ酸配列を識別することができる。演算装置630は、特定プログラムを利用して遺伝子データから第1アミノ酸配列および/または第2アミノ酸配列を識別することができる。
【0114】
演算装置630は、前述したように知られたタンパク質構造情報を参照して、第1アミノ酸配列および第2アミノ酸配列に対するマトリクスを生成することができる。演算装置630は、タンパク質構造DBからすでに知られたタンパク質構造を参照して、評価対象である特定アミノ酸ペアの距離や近接頻度を算出することができる。演算装置630は、特定アミノ酸ペアの距離や近接頻度を基準として相互作用値を決定することができる。
【0115】
演算装置630は、神経網モデルに相互作用マトリクスを入力し、特定ペプチド-MHCに対するT細胞活性の有無を予測することができる。演算装置630は、特定ペプチド-MHCに対するT細胞のIFNγ分泌量または分泌の有無を予測することができる。また、演算装置630は、特定ペプチド-MHCに対してT細胞活性が高い場合、当該ペプチドを新生抗原候補と決定することができる。
【0116】
演算装置630は、データを処理し、一定の演算を処理するプロセッサ、AP、プログラムが埋め込まれたチップのような装置であってもよい。
【0117】
以下、前述したT細胞活性方法の効果を検証した実験結果を説明する。
【0118】
研究者は、神経網モデルを検証するために、EMT6に対するELISPOT分析を行った。研究者は、サンプルの遺伝子のうちVAF(variant allele frequency)が0.3より高い突然変異を選択した。研究者は、神経網の予測点数を基準として点数が最も高い25個のペプチド(新生抗原候補)と最も点数が低い5個のペプチド(対照群)を選択した。
【0119】
研究者は、前記25個と5個のペプチドそれぞれに対してELISPOT分析を行った。研究者は、H2-Dd/H2-Ld(class1 alleles)とH2-IAd、H2-IEd(class2 alleles)に対してELISPOT分析を行った。研究者は、全体30個のペプチドに対するELISPOT分析結果(ELISPOT.count)を算出した。また、ペプチド-MHCの結合度を測定するin silicoモデルを参照モデルとして使用した。参照モデルは、NetMHCIIpanを使用した。
【0120】
図7は、神経網モデルを検証した実験結果の例である。
図7は、前述した30個のペプチドに対するELISPOT分析結果を示す。
図7は、ELISPOT.count値が増加する順にペプチドを配列した。すなわち、
図7のグラフにおいて右側に行くほどT細胞の活性度が高いペプチドである。
図7の下段は、前述した神経網モデル(Targetで表示)と参照モデル(Referenceで表示)の予測結果を示す。白色ブロックは、非免疫原性(nonimmunogenic)ペプチドを示し、陰影ブロックは、抗原性(immunogenic)ペプチドを示す。
図7の結果を見ると、従来多くの研究で利用されている参照モデルは、実際T細胞の活性を正確に予測しないことが分かる。これに対し、前述した神経網モデルは、対照群(nonimmunogenic)のうち2つのペプチドを除いて全体的に高い正確度を示した。したがって、研究者が開発した神経網モデルが従来広く使用されているin silicoモデルに比べて非常に優れた性能を示したことが分かる。
【0121】
以前に研究者が収集したデータを表1で説明した。研究者は、収集したデータのうち一部を学習データとして選別して、MHCIとMHCIIに対して個別的にモデルを学習した。また、研究者は、データのうち一部は、検証データとして活用した。研究者は、MHCIに対して13,128個を選択し、MHCIIに対して6,650個を選択した。研究者は、選択したデータに対して7:3の割合で学習データと検証データを区分した。
【0122】
ヒトまたはマウスのペプチド-MHCペアに対して学習した神経網が算出する結果と実験的に知られた値とを比較し、神経網モデルの正確度を検証した。
【0123】
図8は、神経網モデルを検証した実験結果の他の例である。神経網モデルは、MHCIとMHCIIに対してそれぞれ個別モデルを学習した。
図8(A)は、MHCIに対する実験結果である。検証結果、MHCIの神経網モデルは、AUC(area under the curve)が0.7787であった。
図8(B)は、MHCIIに対する実験結果である。MHCIIの神経網モデルは、AUCが0.8083であった。したがって、開発した神経網モデルの予測正確度が非常に高いと言える。
【0124】
また、上述したようなT細胞活性予測方法または新生抗原発掘方法は、コンピュータで実行され得る実行可能なアルゴリズムを含むプログラム(またはアプリケーション)で具現されてもよい。前記プログラムは、一時的または非一時的読み取り可能な媒体(non-transitory computer readable medium)に保存されて提供されてもよい。
【0125】
非一時的読み取り可能媒体とは、レジスター、キャッシュ、メモリなどのように短い瞬間の間データを保存する媒体でなく、半永久的にデータを保存し、機器により読み取り(reading)が可能な媒体を意味する。具体的には、前述した様々なアプリケーションまたはプログラムは、CD、DVD、ハードディスク、ブルーレイディスク、USB、メモリカード、ROM(read-only memory)、PROM(programmable read only memory)、EPROM(Erasable PROM,EPROM)またはEEPROM(Electrically EPROM)またはフラッシュメモリなどのような非一時的読み取り可能媒体に保存されて提供されてもよい。
【0126】
一時的読み取り可能媒体は、スタティックRAM(Static RAM,SRAM)、ダイナミックRAM(Dynamic RAM,DRAM)、シンクロナスDRAM(Synchronous DRAM,SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(Double Data Rate SDRAM,DDR SDRAM)、エンハンスドSDRAM(Enhanced SDRAM,ESDRAM)、シンクリンクDRAM(Synclink DRAM,SLDRAM)およびダイナミックラムバスRAM(Direct Rambus RAM,DRRAM)のような様々なRAMを意味する。
【0127】
本実施形態および本明細書に添付された図面は、前述した技術に含まれる技術的思想の一部を明確に示しているものに過ぎず、前述した技術の明細書および図面に含まれた技術的思想の範囲内で当業者が容易に類推できる変形例と具体的な実施形態は、いずれも、前述した技術の権利範囲に含まれることが自明であるといえる。
【国際調査報告】