(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/80 20060101AFI20240319BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240319BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C07D311/80
A61P1/18
A61P3/10
A61P43/00 105
A61K31/352
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560311
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2022084449
(87)【国際公開番号】W WO2022213880
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110372479.1
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082193
【氏名又は名称】上海同田生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Tauto Biotech Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100135194
【氏名又は名称】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】余▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼力
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BA08
4C086GA16
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA66
4C086ZB21
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製方法に関する。溶媒系を十分に振とうし、静置し、上、下2相を分けて収集するステップと、産業用大麻フルスペクトル系の精製油を上相に溶解し、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、テトラヒドロカンナビバリンと移動相との混合液を得、移動相を除去し、テトラヒドロカンナビバリンを得るステップと、を含む。本発明は初めて高速向流クロマトグラフィー技術により産業用大麻フルスペクトル系の精製油から分離精製して純度が95%超であるテトラヒドロカンナビバリン(THCV)を得た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製において、
溶媒系を十分に振とうし、静置し、上、下2相を分けて収集するステップと、産業用大麻フルスペクトル系の精制油を上相に溶解し、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、テトラヒドロカンナビバリンと移動相との混合液を得、移動相を除去して、テトラヒドロカンナビバリンを得たステップと、を含み、
ここで、溶媒系はn-ヘキサン又はn-ヘプタン、酢酸エチル、メタノール又はエタノール、水を、体積比が4~8:0~2:3~7:1~3で混合して得たことを特徴とする高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製。
【請求項2】
前記分離収集で得られた上、下2相に対して超音波脱ガス処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高速向流クロマトグラフィーの条件は、回転方向を正回転であり、回転速度が800rpmであり、カラム温度が25℃であり、移動相の流速が5mL/minであり、検出器の検出波長が214nmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移動相を除去する工程条件は、55℃、-0.085MPaの条件で回転蒸発し真空乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノール類加工分野に属し、特に、高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロカンナビバリン(THCV)分子式は、C19H26O2である。産業用大麻に存在する。通常の調製方法は、産業用大麻がアルコール浸出等を経て、テトラヒドロカンナビバリンを含むエキス剤を得ることができる。テトラヒドロカンナビバリン(THCV)は、現在膵島細胞等の保護に用いることができる。
高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)技術は、新たな液-液分配の原理に基づく分離精製技術であり、如何なる固体支持又はキャリアを必要とせず、固定相と移動相のどちらも液体であり、逆吸着ができないことはない。現在、高速向流クロマトグラフィーによりテトラヒドロカンナビバリンを分離する関連技術がまだ開示されていない。
【発明の概要】
【0003】
本発明が解決しようとする技術課題は、高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製方法を提供し、溶媒系によりワンステップ分離精製して純度が95%超であるテトラヒドロカンナビバリンを得る。
本発明は高速向流クロマトグラフィーによるテトラヒドロカンナビバリンの分離精製方法を提供する。
溶媒系を十分に振とうし、静置し、上、下2相を分けて収集するステップと、産業用大麻フルスペクトル系の精制油を上相に溶解し、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、テトラヒドロカンナビバリンと移動相との混合液を得、移動相を除去して、テトラヒドロカンナビバリンを得たステップと、を含み、
ここで、溶媒系は、n-ヘキサン又はn-ヘプタン、酢酸エチル、メタノール又はエタノール、水を、体積比が4~8:0~2:3~7:1~3で混合して得た。
前記分離収集で得られた上、下2相を超音波脱ガス処理する。
前記高速向流クロマトグラフィーの条件は、回転方向が正回転であり、回転速度が800rpmであり、カラム温度が25℃であり、移動相の流速が5mL/minであり、検出器の検出波長が214nmである。
前記移動相を除去する工程条件は、55℃、-0.085MPaの条件で回転蒸発し真空乾燥させる。
【有益な効果】
【0004】
(1)本発明は、初めて高速向流クロマトグラフィー技術により産業用大麻フルスペクトル系の精製油から分離精製して純度が95%超であるテトラヒドロカンナビバリン(THCV)を得、その他のカンナビノール類成分との分離の相違点は、異なる溶媒系を用い、酢酸エチル等を増加したことで、テトラヒドロカンナビバリンとその他のカンナビノール類成分がより良い分離効果を奏することにある。
(2)本発明の高速向流クロマトグラフィー技術は、試料のロスがなく、汚染がなく、効率が高い等の優れた点を有し、良好の市場応用の見通しがある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、具体的な実施例を合わせて、本発明についてさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するのみに用いられ、本発明の範囲を限定するものではない。なおまた、本発明に記載の内容を読んだ後、当業者は本発明について種々の変更や修正を行うことができ、これらの等価形式も同様に本願に添付された特許請求の範囲に限定された範囲に入る。
実施例において用いた試薬と計測器は次の通りである。
試薬:n-ヘキサン、n-ヘプタン、メタノール、エタノール、酢酸エチルのいずれも国薬グループ化学試薬社が製造した分析試薬であり、水は脱イオン水であり、産業用大麻フルスペクトルの精製油は市販製品である。
計測器:高速向流クロマトグラフィーは、上海同田生物技術社製の型番:TBE-300Cの高速向流クロマトグラフである。
【実施例1】
【0006】
n-ヘキサン、メタノール、水を、体積比が5:5:2.5で混合して溶媒系を得、分液漏斗に入れ、十分に振とうし、静置し相分離させ、2相の混合液を得、上相と下相を分けて収集し、それぞれ超音波発振器に置かれて超音波脱ガス処理を行った。産業用大麻フルスペクトルの精製油を上相に溶解し、それから、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、ここで、スペクトル条件としては、正回転で、回転速度が800rpmであり、カラム温度が25℃であり、移動相の流速が5mL/minであり、検出器の検出波長が214nmであるように設置し、試料が完全に入ったことを0minとし、80~90minにおいてテトラヒドロカンナビバリン(THCV)と移動相との混合液を得、回転蒸発器に置かれ、水浴温度55℃、真空圧力-0.085MPaの条件で回転蒸発し、真空乾燥させ、下相を除去し、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の製品を得た。
HPLCにより本実施例で得られた製品の純度を分析した結果、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の純度が89.04%であったことを示している。
【実施例2】
【0007】
n-ヘキサン、酢酸エチル、メタノール、水を、体積比が5:1:5:1.5で混合して溶媒系を得、分液漏斗に入れ、十分に振とうし、静置し相分離させ、2相の混合液を得、上相と下相を分けて収集し、それぞれ超音波発振器に置かれて超音波脱ガス処理を行った。産業用大麻フルスペクトルの精製油を上相に溶解し、それから、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、ここで、スペクトル条件としては、正回転で、回転速度が800rpmであり、カラム温度が25℃であり、移動相の流速が5mL/minであり、検出器の検出波長が214nmであるように設置し、試料が完全に入ったことを0minとし、110~120minにおいてテトラヒドロカンナビバリン(THCV)と移動相との混合液を得、回転蒸発器に置かれ、水浴温度55℃、真空圧力-0.085MPaの条件で回転蒸発し、真空乾燥させ、下相を除去し、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の製品を得た。
HPLCにより本実施例で得られた製品の純度を分析した結果、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の純度が95.82%であったことを示している。
【実施例3】
【0008】
n-ヘプタン、酢酸エチル、エタノール、水を、体積比が6:0.5:6:2で混合して溶媒系を得、分液漏斗に入れ、十分に振とうし、静置し相分離させ、2相の混合液を得、上相と下相を分けて収集し、それぞれ超音波発振器に置かれて超音波脱ガス処理を行った。産業用大麻フルスペクトルの精製油を上相に溶解し、それから、上相を固定相とし、下相を移動相として、高速向流クロマトグラフィーを用いて分離を行い、ここで、スペクトル条件としては、正回転で、回転速度が800rpmであり、カラム温度が25℃であり、移動相の流速が5mL/minであり、検出器の検出波長が214nmであるように設置し、試料が完全に入ったことを0minとし、90~100minにおいてテトラヒドロカンナビバリン(THCV)と下相との混合液を得、回転蒸発器に置かれ、水浴温度55℃、真空圧力-0.085MPaの条件で回転蒸発し、真空乾燥させ、下相を除去し、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の製品を得た。
HPLCにより本実施例で得られた製品の純度を分析した結果、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)の純度が95.37%であったことを示している。
【国際調査報告】