(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】酵素処理を用いた2’-フコシルラクトースの生産性増大方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/12 20060101AFI20240319BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C12P19/12
C12N1/21 ZNA
C12N1/00 F
C12N15/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560396
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2022016912
(87)【国際公開番号】W WO2023096197
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163686
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517399125
【氏名又は名称】アドヴァンスド プロテイン テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Advanced Protein Technologies Corp.
【住所又は居所原語表記】#515,105 Gwanggyo-ro, Yeongtong-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do, 16229, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】シン,チョル ス
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン ギル
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヨン ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホン ハク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF03
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC24
4B064CC30
4B064CD20
4B064DA10
4B065AA24X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB21
4B065BC01
4B065BD36
4B065BD44
4B065CA20
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、酵素処理を用いた2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose,2’-FL)の生産性増大方法に関し、培養静止期の後半部において基質として用いられる乳糖に少量の酵素を処理してこれを分解し、これより得られたブドウ糖を消費して2’-フコシルラクトースの前駆体であるグアノシン二リン酸-L-フコースを生産し、培養後期に残存する乳糖を2’-フコシルラクトースの生産に最大限に活用できる。これにより、副産物を最小化しながらも追加のブドウ糖を必要としないため経済的に2’-フコシルラクトースの生産性を増大可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)が発現するように形質転換され、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)が発現するように形質転換され、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase)が発現するように形質転換され、ラクトースパーミアーゼ(lactose permease)が発現するように形質転換され、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)及びGTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTPmannose-1-phosphate guanylyltransferase)を保有していることを特徴とする組換えコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を、ラクトースを添加した培地で培養して2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)を生産する方法であって、
培養静止期(stationary phase)又は死滅期(death phase)にベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)を培地に投入することを特徴とする2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法。
【請求項2】
前記組換えコリネバクテリウム・グルタミクムは、
ホスホマンノムターゼ(Phosphomannomutase)が過発現するように形質転換され、GTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)が過発現するように形質転換されたことを特徴とする、請求項1に記載の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法。
【請求項3】
前記培地は、
グルコースを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法。
【請求項4】
前記2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法は、
ブドウ糖又はラクトースを培養中に追加で供給する流加式培養で行うことを特徴とする、請求項3に記載の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法。
【請求項5】
前記ベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)は、
培養静止期(stationary phase)から死滅期(death phase)に転換される時点に培地に投入することを特徴とする、請求項1に記載の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素処理を用いた2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose,2’-FL)の生産性増大方法に関し、より詳細には、基質である乳糖(lactose)に基づいて酵素処理をし、追加培地無しで2’-フコシルラクトースの生産性を増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
母乳オリゴ糖(Human milk oligosaccharides,HMOs)は母乳に含有されているオリゴ糖で、乳糖及び脂肪に続いて三番目に多い母乳成分である。母乳オリゴ糖の種類は約200種で多様であり、免疫機能を強化させたり、子供の発達や行動に良い影響を与えたりするなどの様々な利点を有する。
【0003】
主要HMOのうち、最も多い量で存在する2’-フコシルラクトースは、様々な生物学的活性に関与する。既存の研究において、2’-フコシルラクトースを生産する方法は、母乳から直接抽出する方法と、化学的又は酵素的方法で抽出する方法がある。しかし、母乳から直接抽出する方法は、非倫理的である他、母乳の供給が制限的であり、生産性が低いという問題もある。また、化学的合成法は、高価な基質、低い異性体選択性及び生産収率、並びに毒性試薬の使用などの問題があり、酵素的合成法は、前駆体となるGDP-L-フコースが非常に高価である他にも、フコース転移酵素の精製費用が多くかかるという問題点がある。
【0004】
このような問題を解決するための解決策として、微生物を用いる2’-フコシルラクトースの生産があるが、従来の技術は、組換え大腸菌を用いた生産技術が殆どであった。しかし、これは、消費者たちにとって有害な菌であるとの認識があり、大腸菌細胞の場合、乳糖透過酵素(Lactose permease)の作用によって乳糖制限培養状態で「ラクトースキリング(Lactose killing)」という、大腸菌細胞が死滅する現象(Daniel dykhuizen and daniel hartl,1987,“Transport by the lactose permease of Escherichia coli as the basis of lactose killing”,10.1128/JB.135.3.876-882,1978,Journal of bacteiology)があるため、その使用は多少制限的である。そこで、既存の方法を克服しながら安全で経済的に2’-フコシルラクトースの生産性を増大させる新しい生産方法が必要な現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基質である乳糖(lactose)を酵素処理で分解することによって追加培地無しで経済的に2’-フコシルラクトースの生産性を増大させる方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、α-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)が発現するように形質転換され、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)が発現するように形質転換され、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase)が発現するように形質転換され、ラクトースパーミアーゼ(lactose permease)が発現するように形質転換され、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)及びGTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTPmannose-1-phosphate guanylyltransferase)を保有していることを特徴とする組換えコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を、ラクトースを添加した培地で培養して2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)を生産する方法であって、培養静止期(stationary phase)又は死滅期(death phase)に乳糖分解酵素を培地に投入することを特徴とする2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法を提供する。
【0007】
一方、本発明の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記組換えコリネバクテリウム・グルタミクムは、好ましくは、ホスホマンノムターゼ(Phosphomannomutase)が過発現するように形質転換され、GTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)が過発現するように形質転換されることがよい。
【0008】
一方、本発明の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記培地は、好ましくは、グルコースを含むものであってよい。
【0009】
一方、本発明の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法は、好ましくは、ブドウ糖又はラクトースを培養中に追加で供給する流加式培養で行うものであってよい。
【0010】
一方、本発明の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記乳糖分解酵素は、好ましくは、培養静止期(stationary phase)から死滅期(death phase)に転換される時点に培地に投入するものであってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、培養静止期の後半部に、基質として用いられる乳糖に少量の酵素を処理してそれを分解し、これより得られたブドウ糖を消費して2’-フコシルラクトースの前駆体であるグアノシン二リン酸-L-フコースを生産し、培養後期に残存する乳糖を2’-フコシルラクトースの生産に最大限に活用することができる。これにより、副産物を最小化しながらも追加のブドウ糖を必要としないため経済的に2’-フコシルラクトースの生産性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】組換えコリネバクテリウム菌株に対する2’-フコシルラクトースの生産経路を示す模式図である。
【
図2】ベータ-ガラクトシダーゼによる乳糖分解を示す模式図である。
【
図3】乳糖分解による2’-フコシルラクトースの生産性を示す結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
主要母乳オリゴ糖の一つである2’-フコシルラクトースは、様々な生物学的活性に関与するなどの健康機能的な利点を有するため、これを生産する方法に関する様々な試みがなされている。しかし、既存の母乳から直接抽出する方法や、化学的、酵素的な合成法は、低い生産性、高価の費用、低い生産収率、毒性などの問題があり、これらの方法を代替するための方法が必要である。
【0014】
そのために微生物を用いる生産技術が提案されているが、組換え大腸菌を用いた技術が大部分であり、大腸菌細胞は、乳糖透過酵素(Lactose permease)の作用によって大腸菌細胞が死滅する現象(「ラクトースキリング」)が発生するため、使用するのに多少制限がある。
【0015】
本発明者らは、登録特許第10-1731263号(登録日:2017.04.24)及び第10-2014925号(登録日:2019.08.21)において組換えコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を用いて2’-FLを生産する技術について提案している。
【0016】
ただし、本発明者らは、追加の培地の供給無しで経済的に2’-フコシルラクトースの生産性を増やすための方法を見出すために様々な実験的な試みを行い、培養静止期又は死滅期(好ましくは、培養静止期から死滅期に転換される期間)に乳糖分解酵素を処理することにより、最終的な2’-フコシルラクトースの生産性をさらに増やす方法を本発明によって開発するに至った。
【0017】
そこで、本発明は、α-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)が発現するように形質転換され、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)が発現するように形質転換され、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase)が発現するように形質転換され、ラクトースパーミアーゼ(lactose permease)が発現するように形質転換され、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)及びGTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTPmannose-1-phosphate guanylyltransferase)を保有していることを特徴とする組換えコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を、ラクトースを添加した培地で培養して2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)を生産する方法であって、培養静止期(stationary phase)又は死滅期(death phase)に乳糖分解酵素を培地に投入することを特徴とする2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法を提供する。本発明の菌株を用いて2’-フコシルラクトースを生産する経路は、
図1に示す。
【0018】
一方、本発明において、前記乳糖分解酵素は、好ましくは、ベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)であるとよく、より好ましくは、培養液中に残留する乳糖(lactose)のg当たりに酵素60~100unitで処理することがよい。乳糖分解酵素の処理によって乳糖が分解され、ガラクトース及びブドウ糖が生成される。生成されたブドウ糖から、2’-フコシルラクトース合成反応の最終基質であるグアノシン二リン酸-L-フコース(GDP-L-fucose)が生産され、分解されていない乳糖と反応して2’-フコシルラクトースが追加で生産される。このような過程により、発酵後期に副産物(By-product)となる乳糖を最大限に活用し、2’-フコシルラクトースの生産量を増加させることが可能になる。また、2’-フコシルラクトースの分離精製過程で乳糖を分離しなければならない負担を軽減できる付加的な効果も発揮される。
【0019】
一方、本発明の2’-フコシルラクトースの生産方法において、前記組換えコリネバクテリウム・グルタミクムは、好ましくは、ホスホマンノムターゼ(Phosphomannomutase)が過発現するように形質転換され、GTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)が過発現するように形質転換されたものがよい。コリネバクテリウム・グルタミクムは、ホスホマンノムターゼ(Phosphomannomutase,ManB)、GTP-マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase,ManC)をコードする遺伝子を独自で保有して発現させることができるので、この酵素をコードする遺伝子を敢えて導入させる必要はないが、大量生産のためにはこの酵素を過発現させる必要がある。したがって、本発明では、好ましくは、これら2つの酵素を過発現させ得るようにコリネバクテリウム・グルタミクムを形質転換させる必要がある。
【0020】
一方、本発明で使われる「発現」という用語は、本発明のコリネバクテリウム・グルタミクム菌株が独自で発現できない酵素を人為的に発現させるために外部由来の遺伝子を菌株内に導入して発現させることを意味し、「過発現」という用語は、本発明のコリネバクテリウム・グルタミクム菌株が独自で当該酵素をコードする遺伝子を有しており、自ら発現させることができるが、大量生産の目的でその発現量を増大させるために人為的に当該酵素の発現量を増大させて過発現させることを意味する。
【0021】
一方、2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記培地は、好ましくは、グルコースを含むものであってよい。このように追加培地成分を加えることによって菌株の生育が活発になり、より高い生産性で2’-フコシルラクトースを生産することができる。また、そのためには、流加式培養によってグルコース又はラクトースを持続的に供給することにより、細胞の成長をより増大させ、高純度、高収率、高生産性で2’-フコシルラクトースを生産することができる。流加式培養に関する細部枝葉的な技術は当業界の公知技術を用いればよく、それについては記載を省くものとする。
【0022】
一方、本発明の2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の生産方法において、前記乳糖分解酵素は、好ましくは、培養静止期(stationary phase)から死滅期(death phase)に転換される時点に培地に投入することができる。
【0023】
一方、下記の実験によれば、本発明は、培養静止期区間の後半部に、乳糖分解酵素であるベータガラクトシダーゼを処理することによって、酵素処理前後と比較するとき、最終的に2’-フコシルラクトースを126%確保するレベルに生産性を大きく増大させることができることを確認した。これは、追加培地の投入がないため、ブドウ糖からグアノシン二リン酸-L-フコースを生産できないにもかかわらず、乳糖分解によって得られたブドウ糖(Glucose)から2’-フコシルラクトース合成反応の最終基質であるグアノシン二リン酸-L-フコース(GDP-L-Fucose)が生産され、これが、分解されていない乳糖と反応して2’-フコシルラクトースが生産されたものと解釈できる。これにより、最終生産された2’-フコシルラクトースは追加のブドウ糖を必要としないため経済的に役立ち、残存する乳糖のみを用いて2’-フコシルラクトースの生産性を高めながら、副産物として存在する乳糖の量を最小化させることができる。このように安全ながらも経済的な2’-フコシルラクトースの生産性増大方法を提供することができる。
【0024】
以下、本発明の内容を、下記実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明の権利範囲は下記実施例に限定されず、それと等価の技術的思想の変形も含む。
【0025】
[製造例1:組換えプラスミドの製造]
プラスミド製作及び2’-フコシルラクトース(fucosyllactose,2’-FL)の生産のために、それぞれ、大腸菌(Escherichia coli)K-12 MG1655とコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13032を利用した。
【0026】
pFGW(Ps)プラスミドを構築するために、大腸菌であるK-12 MG1655の遺伝体(genomic)DNAから2つのDNAプライマー(primer)GW-FとGW-Rを用いたPCR反応によってgmd-wcaG遺伝子クラスター(cluster)を増幅させ、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13032の遺伝体DNAから2つのDNAプライマーSod-FとSod-Rを用いたPCR反応によってSod遺伝子のプロモーターを増幅させた後、2つのDNAプライマーSod-FとGW-Rを用いてオーバーラップ(overlap)PCR反応によってpSod-Gmd-WcaG DNA切片を合成した。
【0027】
また、pXMJ19プラスミド(plasmid)から2つのDNAプライマーTer-FとTer-Rを用いたPCR反応によって転写終結配列を増幅させた後、前記合成したpSod-Gmd-WcaGと転写終結配列を鋳型として2つのDNAプライマーSod-FとTer-Rを用いたPCR反応によってpSod-Gmd-WcaG-ter配列を合成した後、これを、制限酵素BamHIで切断されたpCES208プラスミドに挿入し、pGWプラスミドを構築した。
【0028】
また、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13032の遺伝体DNAから2つのDNAプライマーTuf-F1とTuf-R1を用いたPCR反応によってTuf遺伝子プロモーターを増幅し、合成されたシュードペドバクター・サルタンス(Pseudopedobacter saltans)DSM 12145由来α-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)から2つのDNAプライマーFT(Ps)-FとFT(Ps)-Rを用いたPCR反応によってα-1,2-フコース転移酵素を増幅した後、2つのプライマーTuf-FとFT(Ps)-Rを用いてオーバーラップ(overlap)PCR反応によってpTuf-FT(Ps)DNA切片を合成した。前記構築されたpGWプラスミドに制限酵素NotIを処理してpTuf-FT(Ps)を挿入することによってpFGW(Ps)プラスミドを構築した。
【0029】
一方、pXILプラスミドを構築するために、大腸菌K-12 MG1655の遺伝体DNAから2つのDNAプライマーilvC-lacY-FとlacY pX-Rを用いたPCR反応によってlacY遺伝子を増幅し、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC 13032の遺伝体DNAから2つのDNAプライマーpX-ilvC-FとilvC-lacY-Rを用いたPCR反応によってilvC遺伝子のプロモーターを増幅した後、2つのDNAプライマーpX-ilvC-FとlacY pX-Rを用いてオーバーラップ(overlap)PCR反応によってpilvC-lacY DNA切片を合成した後、これを、制限酵素NotIとEcoRIが処理されたpXプラスミド(pXMJ19)に挿入し、pXILプラスミドを構築した。
【0030】
本製造例において用いた菌株(strain)、プライマー(primer)、プラスミド(plasmid)、核酸及びアミノ酸配列は、下記表1~4に記載する。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
[実施例1:乳糖分解酵素処理による2’-フコシルラクトース生産性]
本実施例では、基質である乳糖(lactose)を酵素ベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)処理で分解し、追加培地無しで2’-フコシルラクトースを生産する方法に関する実験である。
【0036】
培養のための条件は次の通りである。
- 種培地組成:10g/L酵母エキス、20g/Lカゼインペプトン、10g/L塩化ナトリウム、5g/Lグルコース
- メイン培地組成:30g/L酵母エキス、5g/L硫酸アンモニウム、1g/Lリン酸カリウム、1g/Lリン酸カリウム、40g/Lグルコース、20g/Lラクトース
- 追加培地組成:15g/L硫酸アンモニウム、600g/Lグルコース、100g/Lラクトース
- 酵素:ベータ-ガラクトシダーゼ
- 培養条件:pH 7.0、800rpm、25℃、Air 2VVM
【0037】
培養静止期(stationary phase)期間の後半部に追加培地の投入を終了し、残存する乳糖を測定し、g当たり酵素ベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)を80unitで処理した。
図2のように、酵素ベータ-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)によって乳糖が分解されるとブドウ糖とガラクトースが生成される。
【0038】
その結果、
図3のように、追加培地の投入無しで酵素処理前30.1g/Lの2’-フコシルラクトースが生産され、追加培地の投入がないためブドウ糖からグアノシン二リン酸-L-フコースを生産できないにもかかわらず、最終的に38.1g/Lの2’-フコシルラクトースが酵素による乳糖分解によって生産されることを確認した。最終生産された2’-フコシルラクトースが追加のブドウ糖を必要としないため経済的に役立ち、残存する乳糖のみを用いて2’-フコシルラクトースを126%取得できる。
【0039】
このような結果は、乳糖分解によって得られたブドウ糖(Glucose)から2’-フコシルラクトース合成反応の最終基質であるグアノシン二リン酸-L-フコース(GDP-L-Fucose)が生産され、これが、分解されていない乳糖と反応して2’-フコシルラクトースが生産されたものと解釈できる。また、乳糖を乳糖分解酵素処理によって最大限に活用して2’-フコシルラクトースを追加でさらに生産することによって、最終的に副産物として存在する乳糖の量を最小化しながら培養を終了することができた。
【配列表】
【国際調査報告】