IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トゥルー・ノース・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-513837寒冷凝集素症患者における手術関連溶血の低減
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】寒冷凝集素症患者における手術関連溶血の低減
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240319BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P7/04
A61P7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560408
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022022745
(87)【国際公開番号】W WO2022212645
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,986
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】515110373
【氏名又は名称】バイオベラティブ・ユーエスエイ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・ホッブス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・シュトレク
(72)【発明者】
【氏名】トーア・ヘンリック・アンダーソン・トヴェット
(72)【発明者】
【氏名】マレク・ワルデツキ
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー・ウォン
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
(57)【要約】
寒冷凝集素症(CAD)を有する(例えば、CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有している)対象において手術関連溶血を低減または予防するための方法が、本明細書で提供される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、溶血を低減または予防するのに有効である、近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を、寒冷凝集素症(CAD)を有する前記対象において維持することを含む方法。
【請求項2】
前記維持することは、前記対象が前記大手術を受ける前に、前記大手術中に前記治療的血清濃度を維持するのに有効である維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記維持することは、前記対象が前記大手術を受ける7日以内に前記維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記維持することは、前記対象が前記大手術を受ける3日以内、2日以内または1日以内に前記維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を前記対象において評価することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記維持することは、前記対象が前記大手術を受ける前、間および/または後に少なくとも1つの追加用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、寒冷凝集素症(CAD)を有し、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている前記対象が、溶血を低減または予防するのに有効な近位古典的補体経路阻害剤血清濃度を有する場合、前記対象に対して前記大手術を行うことを含む方法。
【請求項8】
前記処置は、少なくとも1つの負荷用量および少なくとも1つの維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤の投与を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することと、(b)少なくとも1つの前記維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤の投与の7日以内に前記対象に対して前記大手術を行うこととを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
(a)の前に、少なくとも1つの負荷用量の近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(b)は、少なくとも1つの前記維持用量の前記近位古典的補体経路阻害剤の投与の3日以内、2日以内または1日以内に前記対象に対して前記大手術を行うことを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって:
寒冷凝集素症(CAD)を有し、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている対象において近位古典的補体経路阻害剤の血清濃度を評価することと;
評価の7日以内に前記対象に対して前記大手術を行うことと
を含む方法。
【請求項13】
前記評価の3日以内、2日以内または1日以内に前記対象に対して前記大手術を行うことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記大手術の前、間および/または後に前記近位古典的補体経路阻害剤の前記血清濃度を評価することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象に対して前記大手術を行う前、間および/または後に少なくとも1つの用量の前記近位古典的補体経路阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記大手術は、心臓大手術である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記心臓大手術は、冠状動脈バイパス(CABG)術である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記大手術は、体温の低下および/または低酸素症に関連する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記大手術は、血液希釈および/または体外循環を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記近位古典的補体経路阻害剤は、C1s阻害剤、C1r阻害剤、C1q阻害剤、C2阻害剤またはC4阻害剤である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記近位古典的補体経路阻害剤は、C1s阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記阻害剤は、抗体である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、スチムリマブである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
スチムリマブは、約5グラム~約8グラムの量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
スチムリマブは、約6.5グラム~約7.5グラムの量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は体重75キログラム未満であり、前記量は6.5グラムであるか、または前記対象は体重75キログラムまたはそれ以上であり、前記量は7.5グラムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記阻害剤の前記治療的血清濃度は、少なくとも90μg/mLである、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記阻害剤の前記治療的血清濃度は、少なくとも100μg/mLである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記阻害剤の前記治療的血清濃度は、少なくとも192μg/mLである、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月31日付けで出願された米国仮出願第63/168,986号の優先権を主張し、その全体の内容は、参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本出願は、手術関連溶血を低減するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
寒冷凝集素症(CAD)は、溶血が古典的補体経路活性化によって駆動される、慢性型の稀な自己免疫性溶血性貧血である。補体活性化は、初期免疫応答の部分としての補体カスケードの迅速な開始を確実に起こす。CADは主に高齢者の疾患であり、診断時の平均年齢は67歳であり、CADの治療を探索する研究においては、さらにより高い中央値の年齢が観察されている。最近の後ろ向き研究から、CAD患者の高い割合が処置を必要とすること、およびおよそ40%が溶血性悪化を経験することが観察された。CADの慢性の性質およびこれらの患者の年齢のために、医療処置を必要とする併存症のリスクは顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大手術は、補体活性化を通して媒介される、溶血の増加およびヘモグロビンレベルの顕著な低下のために、CADを有する患者が危篤状態になる恐れをもたらす。例えば、体外循環を使用して心臓手術を受ける患者は、心臓および他の重要な臓器に影響を及ぼす補体誘発性溶血および/または寒冷凝集素関連閉塞にかかりやすい。臨床的に明らかなCADを有する患者のみがリスクを有するわけではなく、軽度の徴候および症状により表されるCADを有する患者でもリスクを有する。手術中に合併症のより大きなリスクを有することに加えて、CAD患者は、手術関連溶血を防ぐための安全かつ有効な手段がないので、選択的な手技には不適格とされるリスクも有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で説明される研究のデータは、心臓手術は、体外循環が付随するものでさえも、患者のスチムリマブの血清レベルが、手術中に起こると予想される循環スチムリマブの希釈を考慮して溶血を十分に抑制するために必要とされると本分野において理解されているレベルよりも高い(例えば4倍高い)と予想されるようなタイミングで、その手術が行われる場合、溶血を悪化させることなくCAD患者に対して行うことができることを実証する。
【0006】
したがって、本開示の一部の態様は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、溶血を低減または予防するのに有効である、近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤、例えばスチムリマブ)の治療的血清濃度を、CADを有する(例えば、CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有している)対象において維持することを含む方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態において、維持することは、対象が大手術を受ける前に、大手術中に治療的血清濃度を維持するのに有効である維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することを含む。
【0008】
一部の実施形態において、維持することは、対象が大手術を受ける7日以内に維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することを含む。一部の実施形態において、維持することは、対象が大手術を受ける3日以内、2日以内または1日以内に維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することを含む。
【0009】
一部の実施形態において、方法は、近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を対象において評価することをさらに含む。
【0010】
一部の実施形態において、維持することは、対象が大手術を受ける前、間および/または後に少なくとも1つの追加用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することを含む。
【0011】
本開示の他の態様は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、CADを有し(例えば、寒冷凝集素症CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有しており)、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている対象が、溶血を低減または予防するのに有効な近位古典的補体経路阻害剤血清濃度を有する場合、対象に対して大手術を行うことを含む方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態において、処置は、少なくとも1つの負荷用量および少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤の投与を含む。
【0013】
一部の実施形態において、方法は、(a)少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することと、(b)少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤の投与の7日以内に対象に対して大手術を行うこととを含む。
【0014】
一部の実施形態において、方法は、(a)の前に、少なくとも1つの負荷用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することをさらに含む。
【0015】
一部の実施形態において、(b)は、少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤の投与の3日以内、2日以内または1日以内に対象に対して大手術を行うことを含む。
【0016】
本開示のまた他の態様は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、CADを有し(例えば、CADと診断されており)、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている対象において近位古典的補体経路阻害剤の血清濃度を評価することと、評価の7日以内に対象に対して大手術を行うこととを含む方法を提供する。
【0017】
一部の実施形態において、方法は、評価の3日以内、2日以内または1日以内に対象に対して大手術を行うことを含む。
【0018】
一部の実施形態において、方法は、大手術の前、間および/または後に近位古典的補体経路阻害剤の血清濃度を評価することを含む。
【0019】
一部の実施形態において、方法は、対象に対して大手術を行う前、間および/または後に少なくとも1つの用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することをさらに含む。
【0020】
一部の実施形態において、対象は、CADと診断されている。
【0021】
一部の実施形態において、大手術は、心臓大手術である。例えば、心臓大手術は、冠状動脈バイパス(CABG)術であり得る。
【0022】
一部の実施形態において、大手術は、体温の低下および/または低酸素症に関連する。
【0023】
一部の実施形態において、大手術は、血液希釈および/または体外循環を含む。
【0024】
一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、C1s阻害剤、C1r阻害剤、C1q阻害剤、C2阻害剤またはC4阻害剤である。一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、C1s阻害剤である。
【0025】
一部の実施形態において、阻害剤は、抗体である。
【0026】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域2(CDR2)、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域3(CDR3)、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0027】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0028】
一部の実施形態において、抗体は、スチムリマブである。スチムリマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含むHC、および配列番号2のアミノ酸配列を含むLCを含む。
【0029】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0030】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVHを含み、配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0031】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号12のアミノ酸配列を含むLCを含む。
【0032】
一部の実施形態において、抗C1s抗体は、IgG4定常領域を含む。
【0033】
一部の実施形態において、スチムリマブは、約5グラム~約8グラムの量で投与される。一部の実施形態において、スチムリマブは、約6.5グラム~約7.5グラムの量で投与される。一部の実施形態において、対象は体重75キログラム未満であり、量は6.5グラムであるか、または対象は体重75キログラムまたはそれ以上であり、量は7.5グラムである。
【0034】
一部の実施形態において、阻害剤の治療的血清濃度は、少なくとも100μg/mLである。
【0035】
「Anti-Complement C1s Antibodies and Uses Thereof」と題された2012年11月2日付けで出願された国際公開公報WO第2014/071206号、「Humanized Anti-C1s Antibodies and Methods of Use Thereof」と題された2015年4月6日付けで出願されたWO第2016/164358号、および「Methods for Treating Complement-Mediated Diseases and Disorders」と題された2017年3月14日付けで出願されたWO第2018/170145号の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1-1】図1A~1Dは、スチムリマブのフェーズ3中枢試験非盲検シングルアーム研究に登録されたCAD患者におけるスチムリマブのPKシミュレーションデータを示す。図1Aは、研究期間中のスチムリマブの予測されたピークおよび観察されたピークならびにトラフレベルを実証する。図1Bは、手術を伴わない場合の予測されたスチムリマブレベルを示し、一方、図1Cおよび1Dは、それぞれ、患者が、スチムリマブ輸注後2日または7日以内に、標準的な体外循環(ECC)を伴う冠状動脈バイパス(CABG)術を受けた場合のスチムリマブレベルの予測される低下を示す。
図1-2】図1-1の続き。
図2】手術および体外循環(ECC)の前、間および後の、最も重要な血液サンプルおよび作用を示す時系列である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
補体系は、病原体や他の有害物質からの保護だけでなく傷害からの回復ももたらす、免疫応答の周知のエフェクターメカニズムである。古典的補体経路は、C1q、C1r、およびC1sタンパク質を含むC1複合体と称される補体第一成分の活性化によって引き起こされる。C1が免疫複合体に結合すると、C1s成分であるフルオロリン酸ジイソプロピル(DFP)感受性セリンプロテアーゼは、補体成分C4およびC2を切断して、古典的補体経路の活性化を開始させる。古典的補体経路は、例えば、寒冷凝集素症において役割を果たす。
【0038】
寒冷凝集素(CA)は、赤血球(RBC)上に発現される表面タンパク質に対して方向付けられた自己抗体、通常はIgMクラスの自己抗体である。ほとんどのCAは、それらの熱性振幅(例えば、RBC抗原との反応性の最適温度)が生理学的に関連のない温度であるので、臨床的意義の低いものである。しかしながら、28~30℃を超える熱性振幅を有するCAは、多くの場合、臨床的に関連する効果と関連付けられる。CAは、2つの独立した機構を通して合併症を引き起こすことが可能である。第1に、身体の肢端部分におけるRBCの凝集は、微小循環の低減、血管攣縮および先端チアノーゼをもたらし得る。第2に、一旦RBC表面上の抗原に結合すると、CA-抗原複合体は、C1複合体を結合することにより古典的補体経路の旺盛なアクチベーターとなり、その結果、主に血管外RBC破壊による溶血性貧血、および終末補体経路活性化を通した中程度の血管内溶血が起こる。原発性寒冷凝集素症(CAD)は、慢性溶血、CAの存在、および補体媒介性RBC破壊の証拠(RBC上に存在するC3d)によって特徴付けられる。
【0039】
定常状態条件下では使用可能な補体タンパク質のレベルが低いので、RBC破壊の速度を制限する。それゆえ、CADを有する患者の多くは、軽度な貧血を有するのみであるが、CADを有するすべての患者のおよそ半分がある時点で輸血を必要とする。しかしながら、感染、外傷または手術後、急性相反応中に見られる補体活性の100~1000倍の増加は、溶血を悪化させ、ヘモグロビンレベルの顕著な低下をもたらす。冠状動脈心臓手術は、体外心肺バイパス中の低体温症がRBC抗原へのCA結合の増加をもたらし、これが心臓または他の生命維持臓器における重度の凝集を引き起こすことと、補体活性化の増加によって引き起こされる溶血の増加との両方を通して、CADを有する患者に特に困難をもたらす。
【0040】
溶血を低減または予防する方法
本開示は、部分的には、CADを有する対象における大手術関連溶血は、近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)を手術前に投与することによって、手術中も手術後も、低減するか、または予防することさえできるということを実証する証拠に基づく。手術の前、間および/または後に近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)の治療的濃度を維持することによって、手術関連溶血は、CADを有する(例えば、CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有している)対象において安全かつ有効に低減または予防することができる。手術関連溶血は、手術それ自体の作用によって直接的に誘発される溶血、ならびに非限定的に、体外循環、血液希釈、静脈内投与される流体の温度、および手術室の温度を含む、手術と関連付けられる外部条件によって間接的に誘発される溶血の両方を含む。
【0041】
したがって、一態様において、本開示は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、溶血を低減または予防するのに有効である、近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を、CADを有する(例えば、CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有している)対象において維持することを含む方法を提供する。
【0042】
一部の実施形態において、方法は、大手術の前、間および/または後に近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を対象において維持することを含む。治療的血清濃度は、少なくとも部分的には、C1s阻害剤に依存する。C1s阻害剤の治療的血清濃度の「維持」は、血清濃度が補体経路活性を阻害する(例えば、補体経路活性の少なくとも50%阻害、少なくとも60%阻害、少なくとも70%阻害、少なくとも80%阻害、または少なくとも90%阻害)と知られるレベルの濃度である場合に達成される。例えば、スチムリマブについて、治療的濃度の維持は、スチムリマブの血清濃度が20μg/mL未満に落ちない場合、達成される。20μg/mLのスチムリマブ濃度は、補体経路活性の90%低減と関連付けられている。したがって、一部の実施形態において、スチムリマブ濃度の維持は、20μg/ml~200μg/ml、30μg/ml~200μg/ml、40μg/ml~200μg/ml、50μg/ml~200μg/ml、60μg/ml~200μg/ml、70μg/ml~200μg/ml、80μg/ml~200μg/ml、90μg/ml~200μg/ml、100μg/ml~200μg/ml、110μg/ml~200μg/ml、120μg/ml~200μg/ml、120μg/ml~200μg/ml、140μg/ml~200μg/ml、または150μg/ml~200μg/mlの濃度での維持を含む。一部の実施形態において、スチムリマブ濃度の維持は、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、100μg/ml、110μg/ml、120μg/ml、130μg/ml、140μg/ml、150μg/ml、160μg/ml、170μg/ml、180μg/ml、190μg/mlまたは200μg/mlの濃度での維持を含む。
【0043】
一部の実施形態において、治療的血清濃度を維持することは、対象が大手術を受ける前に、大手術中に治療的血清濃度を維持するのに有効である維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を対象に投与することを含む。維持用量とは、近位古典的補体経路阻害剤の治療的血清濃度を維持するために規則的な投薬間隔で投与される近位古典的補体経路阻害剤の用量である。
【0044】
一部の実施形態において、維持用量の近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)は、対象が手術を受ける直前に、対象が手術を受ける前1~24時間以内に、または対象が手術を受ける前2~14日以内に対象に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術直前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術前1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以内に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術前2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日以内に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術1日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術2日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術3日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術7日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術1~2日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術1~3日前に投与される。一部の実施形態において、維持用量の阻害剤は、手術1~7日前に投与される。
【0045】
一部の実施形態において、維持することは、対象が大手術を受ける前、間および/または後に少なくとも1つの追加用量(例えば、1、2または3用量)の近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)を対象に投与することを含む。
【0046】
別の態様において、本開示は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって、CADを有し(例えば、CADと診断されているか、またはCADの少なくとも1つの症状を有しており)、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている対象が、溶血を低減または予防するのに有効な近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)血清濃度を有する場合、対象に対して大手術を行うことを含む方法を提供する。一部の実施形態において、大手術は、対象の阻害剤の血清レベルが、溶血を十分に低減または予防するのに必要とされるレベルより2倍、3倍または4倍高いと予測される場合に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の阻害剤の血清レベルが、溶血を十分に低減または予防するのに必要とされるレベルより4倍高い場合に行われる。
【0047】
また別の態様において、本開示は、大手術を受けるそれを必要とする対象において溶血を低減または予防する方法であって:CADを有し(例えば、CADと診断されており)、近位古典的補体経路阻害剤による処置を受けている対象において近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)の血清濃度を評価することと;近位古典的補体経路阻害剤の血清濃度を評価した後に大手術を行うこととを含む方法を提供する。
【0048】
一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤による処置は、少なくとも1つの負荷用量および少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)の投与を含む。一部の実施形態において、阻害剤は、1つまたはそれ以上の負荷用量、および続く、投薬間隔での1つまたはそれ以上の維持用量として投与される。
【0049】
負荷用量は、近位古典的補体経路阻害剤による処置の過程の始めに投与される初期用量である。2つ以上の負荷用量が投与される場合、負荷用量は、7日空けて、14日空けて、21日空けて、28日空けて、2ヶ月空けて、3ヶ月空けて、または4ヶ月空けて投与することができる。一部の実施形態において、負荷用量は、7日空けて投与される。一部の実施形態において、負荷用量は、投薬間隔で投与される維持とは異なる投与量である。一部の実施形態において、負荷用量は、投薬間隔で投与される維持用量と同じ投与量である。
【0050】
2つ以上の維持用量が投与される場合、維持用量は、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日または31日の投薬間隔で投与することができる。一部の実施形態において、維持用量は、14日の投薬間隔で投与される。
【0051】
一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤による処置は、1つの負荷用量、および続く、1つまたはそれ以上の維持用量の投与を含む。一部の実施形態において、阻害剤による処置は、2つの負荷用量、および続く、1つまたはそれ以上の維持用量の投与を含む。一部の実施形態において、阻害剤による処置は、毎週2つの負荷用量を2週間、および続いて、隔週1つまたはそれ以上の維持用量を投与することを含む。
【0052】
一部の実施形態において、方法は、少なくとも1つの維持用量(例えば、1、2、3、4、5つまたはそれ以上)の近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)を対象に投与することと、少なくとも1つの維持用量の近位古典的補体経路阻害剤を投与した後に大手術を行うこととを含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの負荷用量(例えば、1、2、3、4、5つまたはそれ以上)の近位古典的補体経路阻害剤は、少なくとも1つの維持用量を投与する前に投与される。
【0053】
一部の実施形態において、対象が大手術を受ける前、間および/または後の、少なくとも1つの追加用量の近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)。
【0054】
一部の実施形態において、少なくとも1つの追加用量の阻害剤は、手術前に対象に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、対象が手術を受ける直前に、対象が手術を受ける前1~24時間以内に、または対象が手術を受ける前2~14日以内に対象に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術直前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術前1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以内に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術前2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日以内に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術2日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術3日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術7日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~2日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~3日前に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~7日前に投与される。
【0055】
一部の実施形態において、少なくとも1つの追加用量の阻害剤は、大手術中に対象に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術の開始時に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術開始の1時間以内に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術開始の2時間以内に投与される。一部の実施形態において、阻害剤は、手術中に2回またはそれ以上投与される。
【0056】
一部の実施形態において、少なくとも1つの追加用量の阻害剤は、手術後に対象に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術直後に、手術1~24時間後に、または手術1~14日後に対象に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術直後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術2日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術7日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~2日後に投与される。一部の実施形態において、追加用量の阻害剤は、手術1~7日後に投与される。一部の実施形態において、阻害剤は、手術後2回またはそれ以上投与される。
【0057】
一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された直後に、維持用量が投与された後1~24時間以内に、または維持用量が投与された後2~14日以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された直後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された1日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された2日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された3日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された7日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された1~2日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された1~3日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、維持用量が投与された1~7日後に行われる。
【0058】
一部の実施形態において、本開示の方法は、対象において近位古典的補体経路阻害剤(例えばC1s阻害剤)の血清濃度を評価することを含む。阻害剤の血清濃度は、大手術の前、間および/または後に評価してもよい。
【0059】
一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、対象が手術を受ける直前に、対象が手術を受ける前1~24時間以内に、または対象が手術を受ける前2~14日以内に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術直前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術前1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以内に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術前2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日以内に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術2日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術3日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術7日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~2日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~3日前に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~7日前に評価される。
【0060】
一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、大手術中に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術の開始時に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術開始の1時間以内に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術開始の2時間以内に評価される。
【0061】
一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術直後に、手術1~24時間後に、または手術1~14日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術直後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術2日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術7日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~2日後に評価される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度は、手術1~7日後に評価される。
【0062】
一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した直後に、阻害剤の血清濃度を評価した後1~24時間以内に、または阻害剤の血清濃度を評価した後2~14日以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した直後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日以内に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した1日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した2日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した3日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した7日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、3~4、3~5、3~6、3~7、3~10、4~7、5~7、5~10、5~14、6~14、7~14、8~14、9~14、または10~14日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した1~2日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した1~3日後に行われる。一部の実施形態において、手術は、阻害剤の血清濃度を評価した1~7日後に行われる。
【0063】
対象における阻害剤の血清濃度は、当該技術分野において公知の技術を使用して測定することができる。一部の実施形態において、阻害剤は、直接結合酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して測定される。一部の実施形態において、阻害剤は、間接ELISAを使用して測定される。一部の実施形態において、阻害剤は、サンドイッチELISAを使用して測定される。一部の実施形態において、阻害剤は、競合ELISAを使用して測定される。一部の実施形態において、阻害剤の血清濃度を評価することは、血清濃度を予測することを含む。一部の実施形態において、血清濃度を予測することは、PKシミュレーションを行うことを含む。
【0064】
一部の実施形態において、対象は、CADと診断されている。CADは、原発性CADおよび続発性CADの両方を含む。一部の実施形態において、診断は:慢性溶血、多特異性直接抗グロブリン試験(DAT)陽性、C3dについて強い陽性を示す単一特異性DAT、4℃で64以上の寒冷凝集素タイター、および1+以下の免疫グロブリンG(IgG)DATのうちの1つまたはそれ以上に基づく。一部の実施形態において、CAD診断は、ICD-10(国際疾病分類第10回修正版)コードに基づく(例えば、2021 ICD-10-CM診断コードD59.12)。一部の実施形態において、対象は、CADの少なくとも1つの症状を有している。CADの症状は、慢性溶血、貧血および関連する症状(例えば呼吸困難)、ヘモグロビン尿、黄疸、循環症状、レイノー現象、ならびに疲労を含むが、これらに限定されない(例えば、NIH National Center for Advancing Translation SciencesのGenetic and Rare Diseases Information Centerを参照されたい)。
【0065】
溶血とは、赤血球の補体媒介性溶解(例えば、C3b沈着による細胞の溶解)を指す。溶血は、本明細書で使用される場合、溶血性悪化、または基礎レベルの溶血からの急性の溶血増加を含む。溶血を低減することとは、対照と比較した、対象における溶血の規模の低減を指す。一部の実施形態において、溶血を低減することとは、対照と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の溶血の抑制を指す。一部の実施形態において、溶血を低減することとは、対照と比較して10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、または90%~95%の溶血の抑制を指す。本明細書の対照は、有効量の近位古典的補体経路阻害剤(例えば抗C1s抗体)を投与されていない、大手術を受ける、適合したCAD患者(または適合したCAD患者の群)の溶血のレベルであってもよい。CAD患者が性別、年齢、体重、身長、人種、CADの重症度または上記の任意の組合せなどのある特定の特徴を共有する場合、CAD患者は適合していると考えられる。
【0066】
一部の実施形態において、溶血のレベルの低減は、対照の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内である。一部の実施形態において、溶血のレベルの低減は、対照の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。この文脈における対照とは、適合した健康な対象(または適合した健康な対象の群)における溶血のレベルであってもよい。健康な対象が性別、年齢、体重、身長、人種または上記の任意の組合せなどのある特定の特徴を共有する場合、健康な対象は適合していると考えられる。
【0067】
溶血の程度における変化は、例えば、赤血球から血漿を分離すること、および分光計を使用して無細胞ヘモグロビンの量を分析することによって測定してもよい(Han, V.ら Vox Sang. 98、116~123(2010))。別の例として、溶血の程度は、赤血球から血漿を能動的に濾過するナノフィルターと、エバネッセント吸収検出のための流体光学センサーとを組み合わせることによって能動的に測定することができる(Zhou, C.ら ACS Sens. 3、784~791(2018))。あるいは、溶血の程度における変化は、血液の電気抵抗を測定することによって、大手術中にリアルタイムでモニターしてもよい(例えば、Van Buren T.ら Scientific Reports 10:5101(2020)を参照されたい)。溶血の程度は、手術中に収集される血清の色に基づいて測定してもよい。一部の実施形態において、溶血の程度は、溶血の程度を示す1つまたはそれ以上のマーカーのレベルを評価することによって測定される。一部の実施形態において、溶血の程度は、ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、ヘモグロビンおよびハプトグロビンのうちの1つまたはそれ以上のレベルを評価することによって測定される。溶血における変化を測定する他の方法は、本明細書において企図される。
【0068】
一部の実施形態において、本開示の方法は、手術関連溶血性貧血を低減または予防する。溶血性貧血とは、赤血球の破壊による貧血を指す。溶血性貧血を低減することとは、対照と比較した、対象における溶血性貧血の規模の低減を指す。一部の実施形態において、溶血性貧血を低減することとは、対照と比較した少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の溶血性貧血の抑制を指す。一部の実施形態において、溶血性貧血を低減することとは、対照と比較した10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、または90%~95%の溶血性貧血の抑制を指す。本明細書の対照は、有効量の近位古典的補体経路阻害剤(例えば抗C1s抗体)を投与されていない、大手術を受ける、適合したCAD患者(または適合したCAD患者の群)の溶血のレベルであってもよい。CAD患者が性別、年齢、体重、身長、人種、CADの重症度または上記の任意の組合せなどのある特定の特徴を共有する場合、CAD患者は適合していると考えられる。
【0069】
一部の実施形態において、溶血性貧血のレベルの低減は、対照の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内である。一部の実施形態において、溶血性貧血のレベルの低減は、対照の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。この文脈における対照は、適合した健康な対象(または適合した健康な対象の群)における溶血のレベルであってもよい。健康な対象が性別、年齢、体重、身長、人種または上記の任意の組合せなどのある特定の特徴を共有する場合、健康な対象は適合していると考えられる。
【0070】
処置の結果として、阻害剤は、手術関連溶血、溶血性貧血、および/または血清ヘモグロビンレベルの低減を低減(例えば、対照の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%)または予防することができる。一部の実施形態において、阻害剤は、手術関連溶血、溶血性貧血、および/または血清ヘモグロビンレベルの低減を手術後少なくとも1、2、3、4または5週間低減または予防することができる。一部の実施形態において、対象におけるヘモグロビンのレベル、ハプトグロビンのレベル、乳酸デヒドロゲナーゼのレベル、ビリルビンのレベル、および/または総補体活性(CH50)は、処置の結果として安定化される。一部の実施形態において、対象におけるヘモグロビンのレベル、乳酸デヒドロゲナーゼのレベル、ビリルビンのレベル、および/または総補体活性(CH50)は、手術後少なくとも1、2、3、4または5週間安定化される。
【0071】
一部の実施形態において、本開示の方法は、血清ヘモグロビンレベルを、ヘモグロビンレベルの正常範囲(男性13.5~17.5g/dL;女性12.0~15.5g/dL)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内に維持する。一部の実施形態において、血清ヘモグロビンレベルは、ヘモグロビンレベルの正常範囲の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。一部の実施形態において、本開示の方法は、血清ヘモグロビンレベルを、少なくとも10.0g/dL、少なくとも10.1g/dL、少なくとも10.2g/dL、少なくとも10.3g/dL、少なくとも10.4g/dL、少なくとも10.5g/dL、少なくとも10.6g/dL、少なくとも10.7g/dL、少なくとも10.8g/dL、少なくとも10.9g/dL、少なくとも11.0g/dL、少なくとも11.1g/dL、少なくとも11.2g/dL、少なくとも11.3g/dL、少なくとも11.4g/dL、少なくとも11.5g/dL、少なくとも11.6g/dL、少なくとも11.7g/dL、少なくとも11.8g/dL、少なくとも11.9g/dL、少なくとも12.0g/dL、少なくとも12.1g/dL、少なくとも12.2g/dL、少なくとも12.3g/dL、少なくとも12.4g/dL、少なくとも12.5g/dL、少なくとも12.6g/dL、少なくとも12.7g/dL、少なくとも12.8g/dL、少なくとも12.9g/dL、少なくとも13.0g/dL、少なくとも13.1g/dL、少なくとも13.2g/dL、少なくとも13.3g/dL、少なくとも13.4g/dL、少なくとも13.5g/dL、少なくとも13.6g/dL、少なくとも13.7g/dL、少なくとも13.8g/dL、少なくとも13.9g/dL、少なくとも14.0g/dL、少なくとも14.1g/dL、少なくとも14.2g/dL、少なくとも14.3g/dL、少なくとも14.4g/dL、少なくとも14.5g/dL、少なくとも14.6g/dL、少なくとも14.7g/dL、少なくとも14.8g/dL、少なくとも14.9g/dL、少なくとも15.0g/dL、少なくとも15.1g/dL、少なくとも15.2g/dL、少なくとも15.3g/dL、少なくとも15.4g/dL、少なくとも15.5g/dL、少なくとも15.6g/dL、少なくとも15.7g/dL、少なくとも15.8g/dL、少なくとも15.9g/dL、少なくとも16.0g/dL、少なくとも16.1g/dL、少なくとも16.2g/dL、少なくとも16.3g/dL、少なくとも16.4g/dL、少なくとも16.5g/dL、少なくとも16.6g/dL、少なくとも16.7g/dL、少なくとも16.8g/dL、少なくとも16.9g/dL、少なくとも17.0g/dL、少なくとも17.1g/dL、少なくとも17.2g/dL、少なくとも17.3g/dL、少なくとも17.4g/dL、少なくとも17.5g/dL、少なくとも17.6g/dL、少なくとも17.7g/dL、少なくとも17.8g/dL、少なくとも17.9g/dLまたは少なくとも18.0g/dLに維持する。
【0072】
一部の実施形態において、本開示の方法は、ビリルビンレベルを、ビリルビンレベルの正常範囲(総ビリルビン1.2mg/dLまたは直接型ビリルビン0.3mg/dL)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内に維持する。一部の実施形態において、ビリルビンレベルは、ビリルビンレベルの正常範囲の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。
【0073】
一部の実施形態において、本開示の方法は、LDHレベルを、LDHレベルの正常範囲(140U/L(1リットル当たりのユニット数)~280U/L)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内に維持する。一部の実施形態において、LDHレベルは、LDHレベルの正常範囲の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。
【0074】
一部の実施形態において、本開示の方法は、ハプトグロビンレベルを、ハプトグロビンレベルの正常範囲(41~165mg/dL)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内に維持する。一部の実施形態において、ハプトグロビンレベルは、ハプトグロビンレベルの正常範囲の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。
【0075】
一部の実施形態において、本開示の方法は、CH50レベルを、CH50レベルの正常範囲(42~95U/mL)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以内に維持する。一部の実施形態において、CH50レベルは、CH50レベルの正常範囲の10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、または75%~80%以内である。
【0076】
一部の実施形態において、本発明の方法は、貧血の重症度、輸血歴、またはこれまでの処置の経験に関連する使用に限定されない。一部の実施形態において、対象は、手術誘発性溶血のリスクを有する。一部の実施形態において、対象は、大手術には不適格とされるリスクを有する。
【0077】
大手術
大手術とは、本明細書で使用される場合、体腔を貫通および暴露し;臓器の除去もしくは正常な解剖学的構造の変更を含み;間充織障壁(例えば、胸膜腔、腹膜、髄膜など)の開放を含み;関連する広範な組織切開もしくは切除であり;かつ/または永久的な解剖学的(物理的)もしくは生理的な機能障害を誘発する潜在性を有する任意の外科的介入を指す。
【0078】
一部の実施形態において、大手術は、心臓手術である。一部の実施形態において、大手術は、胃腸管手術である。一部の実施形態において、大手術は、整形外科手術である。一部の実施形態において、大手術は、口腔外科手術である。一部の実施形態において、大手術は、頭部手術である。一部の実施形態において、大手術は、泌尿器科手術である。一部の実施形態において、大手術は、臓器置換術である。一部の実施形態において、手術は、外傷の緊急手術である。
【0079】
一部の実施形態において、大手術は、低酸素症に関連する。
【0080】
一部の実施形態において、大手術は、体温の低下に関連する。一部の実施形態において、大手術は、約1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃またはそれより大きな体温の低下に関連する。一部の実施形態において、大手術は、約1℃~3℃、約3℃~5℃、約5℃~7℃、または約7℃~10℃の体温の低下に関連する。
【0081】
一部の実施形態において、大手術は、血液希釈に関連する。
【0082】
一部の実施形態において、大手術は、体外循環に関連する。例えば、体外循環は、心臓手術の過程において心肺バイパスのために必要とされることがある。一部の実施形態において、体外循環は、心肺装置の使用を含む。
【0083】
一部の実施形態において、大手術は、心臓大手術である。一部の実施形態において、心臓大手術は、大動脈手術、大動脈弁手術、不整脈手術、心房細動手術、頸動脈内膜剥離術、冠状動脈バイパス(CABG)術、心臓弁修復もしくは置換術、心臓移植、僧帽弁修復、筋切除術もしくは筋切開術、または補助人工心臓留置もしくは経心筋血行再建である。
【0084】
一部の実施形態において、心臓大手術は、CABG術である。一部の実施形態において、患者の冷却を避けるために、1つまたはそれ以上の予防措置がとられる。一部の実施形態において、CABG術は、心肺装置の使用を含み、心肺装置内の流体は、37℃に保たれる。一部の実施形態において、例えばC1qの置換を避けるために、手術中に血漿分画製剤または凝固因子は投与されない。
【0085】
近位古典的補体経路阻害剤
本明細書で使用される場合、近位古典的補体経路は、成分C1(C1q、C1rおよびC1sタンパク質を含む)、C2ならびにC4を含む。これらの成分は、補体活性化カスケードにおいてC3の上流で作用する。したがって、近位古典的補体経路阻害剤とは、C1q、C1r、C1s、C2またはC4のうちのいずれか1つを阻害する(例えば、活性および/または発現を直接的または間接的に阻害する)阻害剤を指す。一部の実施形態において、近位古典的補体経路は、C1q阻害剤である。一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、C1r阻害剤である。一部の実施形態において、近位古典的補体経路は、C1s阻害剤である。一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、C2阻害剤である。一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、C4阻害剤である。
【0086】
様々な異なる補体阻害剤を、本開示の様々な実施形態において使用することができる。阻害剤は、ポリペプチド(融合タンパク質(例えば、C1qに対して方向付けられたGL-0719(Gliknik))、環状ポリペプチド、ペプチド模倣薬および環状ペプチド模倣薬を含む)、低分子薬物、ならびに核酸(例えば、アプタマー、および低分子干渉RNAなどのRNAi剤)などのいくつかの化合物クラスのいずれかに属していてもよい。一部の実施形態において、阻害剤は、抗体である。
【0087】
一部の実施形態において、阻害剤は、近位古典的補体経路成分に特異的に結合する。一部の実施形態において、阻害剤は、近位古典的補体経路成分の酵素活性を阻害する(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも90%阻害するか、または完全に阻害する)。酵素活性は、別の補体タンパク質を切断する能力などの、タンパク質分解活性であってもよい。
【0088】
一部の実施形態において、阻害剤は、抗C1q抗体(例えば、ANX005(Annexon)、ANX007(Annexon)など)である。ヒト化された抗C1q抗体の例は、それが開示する抗体および関連する組成物についての参照によってこれにより本明細書に組み入れる米国特許第10,316,081号において開示されている。一部の実施形態において、阻害剤は、抗C1r抗体である。一部の実施形態において、阻害剤は、抗C1s抗体である。一部の実施形態において、阻害剤は、抗C2抗体(例えば、PRO-02(Prothix))である。一部の実施形態において、阻害剤は、抗C4抗体である。
【0089】
「抗体」とは、非限定的に、ヒト化された抗体およびキメラ抗体を含む、任意のアイソタイプの抗体または免疫グロブリンを包含する。抗体は、単鎖抗体(scAb)または単一ドメイン抗体(dAb)(例えば、単一ドメイン重鎖抗体または単一ドメイン軽鎖抗体;Holtら(2003)Trends Biotechnol. 21:484を参照)であり得る。また、用語「抗体」は、抗原への特異的結合を保持する抗体のフラグメント(抗体フラグメント)を包含する。「抗体」は、抗体の重鎖の可変領域(V)および軽鎖の可変領域(V)が短いリンカーペプチドにより接続された融合タンパク質である単鎖可変フラグメント(scFv)、および小分子ペプチドリンカーによって接続されたVおよびVを含むscFvフラグメントの非共有結合ダイマーであるディアボディをさらに含む(Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062頁(1995))。抗体の抗原結合性部分および非抗体タンパク質を含む他の融合タンパク質もまた、用語「抗体」に包含される。
【0090】
「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の部分、例えば、無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、抗原結合性フラグメント(Fab)、Fab’、F(ab’)、可変ドメインFvフラグメント(Fv)、Fdフラグメント、およびキメラ抗原受容体の抗原結合性フラグメントが含まれる。
【0091】
抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、その残りの、容易に結晶化する能力を反映した名称である「Fc」フラグメントとを生産する。ペプシン処理により、2つの抗原との連結部位を有し、それでもなお抗原との架橋が可能なF(ab’)フラグメントが生じる。
【0092】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、きつく非共有結合で会合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体を含む。この配置のために、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V-V二量体表面上に抗原結合部位が定義される。6つのCDRは、集合的に、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でも、結合部位全体より低い親和性ではあるが抗原を認識して結合する能力を有する。
【0093】
「Fab」フラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH)を含む。Fabフラグメントは、重鎖CHドメインのカルボキシル末端に抗体のヒンジ領域からの少なくとも1つのシステインを含む数個の残基が付加されている点でFab’フラグメントとは異なる。本明細書において、Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab’の名称である。F(ab’)抗体フラグメントは本来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として生産された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも公知である。
【0094】
「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVを含み、これらの領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する。一部の実施形態において、Fvポリペプチドは、V領域とV領域との間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによりscFvが抗原結合にとって所望の構造を形成することができる。scFvの総論に関して、Pluckthunの、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、New York、269~315頁(1994)を参照されたい。
【0095】
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントであって、そのフラグメントが同じポリペプチド鎖(V-V)中でVに連結されたVを含むものを指す。同じ鎖上で2つのドメイン間に対を形成するには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対を形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が作り出される。ダイアボディは、例えば、HollingerらProc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448頁(1993)でより詳細に説明されている。
【0096】
抗体は、1価または2価であり得る。抗体は、4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖および2つの軽鎖からなる「Y型」の分子であるIgモノマーであり得る。
【0097】
抗体は、例えば、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、および/または蛍光タンパク質で検出可能に標識することができる。抗体はさらに、他の部分、例えば特異的結合対のメンバー、例えばビオチン-アビジン特異的結合対のビオチンメンバーなどにコンジュゲートさせることができる。また抗体は、これらに限定されないが、ポリスチレンプレートおよび/またはビーズなどの固体支持体に結合させることもできる。
【0098】
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から同定され分離された、および/または回収された抗体である(すなわち、天然に存在しない)。その天然の環境の汚染成分は、抗体の使用(例えば、診断または治療的使用)に干渉し得る物質であり、そのようなものとして、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク性の溶質を挙げることができる。一部の実施形態において、抗体は、(1)ローリー法によって決定される場合、抗体の90重量%より多く、95重量%より多く、または98重量%より多く、例えば99重量%を超えて、(2)スピニングカップシークエネーターの使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルーまたは銀染色を使用した還元または非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって均一になるように精製される。単離された抗体としては、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しなくなれば、組換え細胞内の元の位置にある抗体も包含される。一部の実施形態において、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって製造される。
【0099】
「モノクローナル抗体」は、そのすべてが単一の細胞から繰り返しの細胞複製によって生産された同一の細胞のグループによって生産された抗体である。すなわち、その細胞のクローンは、単一の抗体種のみを生産する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ生産技術を使用して生産できるが、当業者に公知の他の生産方法も使用することができる(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー由来の抗体)。
【0100】
「相補性決定領域(CDR)」は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される隣接しない抗原連結部位である。CDRは、Lefrancら(2003)Developmental and Comparative Immunology 27:55;Kabatら、J.Biol.Chem.252:6609~6616頁(1977);Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of proteins of immunological interest」(1991);Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901~917頁(1987);およびMacCallumら、J.Mol.Biol.262:732~745頁(1996)によって説明されており、それにおいて定義は、互いに比較した場合、アミノ酸残基のオーバーラップまたはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体もしくはグラフト化抗体またはそれらのバリアントのCDRに言及するためのいずれかの定義の適用は、本明細書において定義および使用される用語の範囲内であることが意図される。
【0101】
用語「LC CDR1」、「LC CDR2」、および「LC CDR3」は、それぞれ軽鎖可変領域における第1、第2および第3のCDRを指す。本明細書において使用される場合、用語「HC CDR1」、「HC CDR2」、および「HC CDR3」は、それぞれ重鎖可変領域における第1、第2および第3のCDRを指す。本明細書において使用される場合、用語「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」は、それぞれいずれかの鎖の可変領域の第1、第2および第3のCDRを指す。
【0102】
「フレームワーク」は、抗体の可変領域に関して使用される場合、抗体の可変領域内におけるCDR領域の外側のすべてのアミノ酸残基を含む。可変領域のフレームワークは、一般的に、CDRの外側のアミノ酸のみを含む不連続のアミノ酸配列である。「フレームワーク領域」は、CDRによって隔てられたフレームワークの各ドメインを含む。
【0103】
「ヒト化された抗体」は、異なる起源の抗体の部分を含む抗体であって、少なくとも1つの部分がヒト起源のアミノ酸配列を含むものである。例えば、ヒト化された抗体は、従来の技術(例えば、合成)によって化学的に一体化した、または遺伝子工学技術(例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコードするDNAを発現させて、隣接するポリペプチド鎖を生産することができる)を使用して隣接するポリペプチドとして製造された、マウスなどの必要な特異性を有する非ヒト起源の抗体由来の部分と、ヒト起源の抗体配列由来の部分とを含んでいてもよい(例えば、キメラ免疫グロブリン)。ヒト化された抗体の別の例は、非ヒト起源の抗体由来のCDRと、ヒト起源の軽鎖および/または重鎖由来のフレームワーク領域とを含む少なくとも1つの鎖を含有する抗体(例えば、フレームワークが変更されたまたは変更されていないCDRグラフト化抗体)である。キメラまたはCDRグラフト化単鎖抗体も、ヒト化免疫グロブリンという用語に包含される。例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許第0,125,023号B1;Bossら、米国特許第4,816,397号;Bossら、欧州特許第0,120,694号B1;Neuberger,M.S.ら、WO86/01533;Neuberger,M.S.ら、欧州特許第0,194,276号B1;Winter、米国特許第5,225,539号;Winter、欧州特許第0,239,400号B1;Padlan,E.A.ら、欧州特許出願第0,519,596号A1を参照されたい。また単鎖抗体に関して、Ladnerら、米国特許第4,946,778号;Huston、米国特許第5,476,786号;およびBird,R.E.ら、Science、242:423~426頁(1988))も参照されたい。
【0104】
一部の実施形態において、ヒト化された抗体は、合成および/または組換え核酸を使用して所望のヒト化鎖をコードする遺伝子(例えば、cDNA)を製造することにより生産される。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸(例えば、DNA)配列は、PCR変異誘発方法を使用して、ヒトまたはヒト化鎖をコードするDNA配列、例えば予めヒト化された可変領域由来のDNAテンプレートを変更することにより構築することができる(例えば、Kamman,M.ら、Nucl.Acids Res.、17:5404頁(1989));Sato,K.ら、Cancer Research、53:851~856頁(1993);Daugherty,B.L.ら、Nucleic Acids Res.、19(9):2471~2476頁(1991);およびLewis,A.P.およびJ.S.Crowe、Gene、101:297~302頁(1991)を参照)。これらまたは他の好適な方法を使用して、バリアントも容易に生産することができる。例えば、クローニングした可変領域を変異誘発させて、所望の特異性を有するバリアントをコードする配列を選択することができる(例えば、ファージライブラリーから;例えば、Krebberら、米国特許第5,514,548号;Hoogenboomら、WO93/06213、1993年4月1日公開を参照)。
【0105】
一部の実施形態において、本明細書で記載されるヒト化された抗体(例えば抗C1s抗体)は、全長IgG、Igモノマー、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、scFv、scAbまたはFvである。一部の実施形態において、本明細書において説明されるヒト化された抗C1s抗体は、全長IgGである。一部の実施形態において、本明細書において説明されるヒト化された抗C1s抗体のいずれかの重鎖は、重鎖定常領域(CH)またはその部分(例えば、CH1、CH2、CH3もしくはそれらの組合せ)を含む。重鎖定常領域は、任意の好適な起源、例えば、ヒト、マウス、ラットまたはウサギの定常領域であってもよい。一部の実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG(ガンマ重鎖)、例えば、IgG1、IgG2またはIgG4に由来する。
【0106】
一部の実施形態において、本明細書において説明されるヒト化された抗体(例えば、抗C1s抗体)のうちのいずれかの重鎖定常領域へ突然変異を導入してもよい。一部の実施形態において、エフェクター細胞の表面上のFc受容体(例えば、活性化されたFc受容体)についての抗体の親和性を増大または減少させるために、重鎖定常領域(ナンバリングはKabatのナンバリングシステム(例えば、KabatのEUインデックス)に従う、例えば、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)および/もしくはCH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)ならびに/またはヒンジ領域)へ、1、2つまたはそれ以上の突然変異(例えば、アミノ酸置換)が導入される。Fc受容体についての抗体の親和性を減少または増大させる、抗体のFc領域における突然変異、およびそのような突然変異をFc受容体またはそのフラグメントへ導入するための技術は、当業者に公知である。Fc受容体についての抗体の親和性を変更するために行うことができる、抗体のFc受容体における突然変異の例は、例えば、Smith Pら、(2012)PNAS 109:6181~6186頁、米国特許第6,737,056号ならびに国際公開公報WO第02/060919号;同WO第98/23289号;および同WO第97/34631号において説明されており、当該文献、特許および公開公報は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0107】
一部の実施形態において、例えば、米国特許第5,677,425号において説明される通り、重鎖定常領域(CH1ドメイン)のヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変更される(例えば、増大または減少される)ように、ヒンジ領域へ、1、2つまたはそれ以上の突然変異(例えば、アミノ酸置換)が導入される。CH1ドメインのヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するために、または抗体の安定性を変更する(例えば、増大または減少させる)ために、またはリンカーコンジュゲーションを促進するために、変更してもよい。
【0108】
一部の実施形態において、インビボにおける抗体の半減期を変更する(例えば、減少または増大させる)ために、1、2つまたはそれ以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入または欠失)がIgG定常ドメインまたはそのFcRn結合フラグメントへ導入される。一部の実施形態において、1つまたはそれ以上の突然変異が、FcまたはヒンジFcドメインフラグメントへ導入される。インビボにおける抗体の半減期を変更する(例えば、減少または増大させる)突然変異の例について、例えば、国際公開公報WO第02/060919号;同WO第98/23289号;および同WO第97/34631号;ならびに米国特許第5,869,046号;同第6,121,022号;同第6,277,375号;および同第6,165,745号を参照されたい。
【0109】
一部の実施形態において、本明細書において説明される抗体の定常領域は、IgG1定常領域であり、252位におけるメチオニン(M)のチロシン(Y)への置換、254位におけるセリン(S)のトレオニン(T)への置換、および256位におけるトレオニン(T)のグルタミン酸(E)への置換を含み、ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う。参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第7,658,921号を参照されたい。「YTE突然変異体」と称されるこのタイプの突然変異体IgGは、同じ抗体の野生型バージョンと比較して、半減期の4倍の増大を呈することが示されている(Dall’Acqua W Fら、(2006)J Biol Chem 281:23514~24頁を参照)。一部の実施形態において、抗体は、251~257位、285~290位、308~314位、385~389位および428~436位におけるアミノ酸残基の1、2、3つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むIgG定常ドメインを含み、ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う。抗体の半減期を増大させ得る、重鎖定常領域へ導入することができる追加の突然変異、例えば、Zalevskyら、Nat Biotechnol. 2010 2月;28(2):157~159頁において説明されているM428L/N434S(EUナンバリング;M459L/N466S Kabatナンバリング)突然変異は、当該技術分野において公知である。
【0110】
一部の実施形態において、抗体のエフェクター機能を変更するために、1、2つまたはそれ以上のアミノ酸置換がIgG定常ドメインFc領域へ導入される。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。この手法は、米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号においてさらに詳細に説明されている。一部の実施形態において、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点突然変異または他の手段による)は、循環抗体のFc受容体結合を低減し、これによって、腫瘍での局在化を増大させることができる。定常ドメインを欠失または不活性化し、これによって腫瘍での局在化を増大させる突然変異の説明について、例えば、米国特許第5,585,097号および同第8,591,886号を参照されたい。一部の実施形態において、Fc受容体結合を低減し得る、Fc領域上の潜在的グリコシル化部位を除去するために、少なくとも1つのアミノ酸置換を、本明細書において説明される抗体のFc領域へ導入してもよい(例えば、Shields R Lら、(2001)J Biol Chem 276:6591~604頁を参照)。
【0111】
一部の実施形態において、抗体がC1q結合の変更および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の低減もしくは廃止を有するように、定常領域における少なくとも1つのアミノ酸を異なるアミノ酸残基により置換してもよい。この手法は、米国特許第6,194,551号(Idusogieら)においてさらに詳細に説明されている。一部の実施形態において、本明細書において説明される抗体のCH2ドメインのN末端領域における少なくとも1つのアミノ酸残基を変更し、これによって、補体を固定する抗体の能力を変更する。この手法は、さらに国際公開公報WO第94/29351号において説明されている。一部の実施形態において、本明細書において説明される抗体のFc領域は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させるために、かつ/またはFcγ受容体についての抗体の親和性を増大させるために改変される。この手法は、さらに国際公開公報WO第00/42072号において説明されている。
【0112】
一部の実施形態において、ネイティブIgG4 mAbで起こることが公知であるFabアーム交換のための潜在的な合併症を避けるために、本明細書において提供される抗体は、安定化させる「Adair」突然変異(Angal S.ら、「A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human (IgG4) antibody」、Mol Immunol 30、105~108頁;1993)を含んでもよく、この突然変異では、セリン228(EUナンバリング;Kabatナンバリング残基241)がプロリンに変換され、IgG1様ヒンジ配列をもたらす。一部の実施形態において、例えば、Benhniaら、JOURNAL OF VIROLOGY、2009年12月、12355~12367頁において説明されるように、残留の抗体依存性細胞傷害性を低減するために、L235E(EUナンバリング、KabatナンバリングのL248Eに対応する)突然変異が、重鎖定常領域へ導入される。
【0113】
抗C1s抗体
一部の実施形態において、近位古典的補体経路阻害剤は、ヒト化された抗C1s抗体である。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、スチムリマブである。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、COS0098pHv1、COS0098pHv1-SG1077R、COS0098pHv1-SG1、IPN009VH2VK3-SG4GK、C1_IPN92H0033-SG4GK/IPN93L0024-SK1、C1_IPN92H0288-SG4GK/IPN93L0211-SK1、C1_IPN92H0288-SG4GK/IPN93L0058-SK1またはC1_IPN92H0307-SG4GK/IPN93L0058-SK1である。ヒト化された抗C1s抗体は、その内容をそれが開示する抗体および関連する組成物についての参照によって本明細書に組み入れる国際公開公報WO第2020/230834号で開示されている。
【0114】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、NYAMS(配列番号5)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、TISSGGSHTYYLDSVKG(配列番号6)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、LFTGYAMDY(配列番号7)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、および配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含む。
【0115】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、TASSSVSSSYLH(配列番号8)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、STSNLAS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、HQYYRLPPIT(配列番号10)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0116】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0117】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVATISSGGSHTYYLDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTALYYCARLFTGYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号3)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0118】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
QIVLTQSPATLSLSPGERATMSCTASSSVSSSYLHWYQQKPGKAPKLWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCHQYYRLPPITFGQGTKLEIK(配列番号4)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0119】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号4のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0120】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVATISSGGSHTYYLDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTALYYCARLFTGYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)
のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。
【0121】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
QIVLTQSPATLSLSPGERATMSCTASSSVSSSYLHWYQQKPGKAPKLWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCHQYYRLPPITFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)
のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。
【0122】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号2のアミノ酸配列を含むLCを含む。
【0123】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号5のHC CDR1アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR1を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号6のHC CDR2アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR2を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号7のHC CDR3アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR3を含む。一部の実施形態において、親和性成熟は、結合特異性を保存するCDR変動を確認するために使用することができる。
【0124】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号8のLC CDR1アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR1を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号9のLC CDR2アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR2を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号10のLC CDR3アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0125】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号3のVHアミノ酸配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0126】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号4のVLアミノ酸配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0127】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号3のVH配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVHを含む。
【0128】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号4のVL配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0129】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号3のVH配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVH、および(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号4のVL配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0130】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号3のVHアミノ酸配列への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0131】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号4のVLアミノ酸配列への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0132】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号3のVH配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVHを含む。
【0133】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含むVLを含み、配列番号4のVL配列のフレームワーク領域との少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含む。
【0134】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号7のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号3のVH配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVH、および(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号4のVL配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0135】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、DDYIH(配列番号15)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、RIDPADGHTKYAPKFQV(配列番号16)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、YGYGREVFDY(配列番号17)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、および配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含む。
【0136】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、KASQSVDYDGDSYMN(配列番号18)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、DASNLES(配列番号19)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、QQSNEDPWT(配列番号20)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0137】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0138】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCTASGFNIKDDYIHWVKQAPGQGLEWIGRIDPADGHTKYAPKFQVKVTITADTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCARYGYGREVFDYWGQGTTVTVSS(配列番号13)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0139】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
DIVLTQSPDSLAVSLGERATISCKASQSVDYDGDSYMNWYQQKPGQPPKILIYDASNLESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAIYYCQQSNEDPWTFGGGTKVEIK(配列番号14)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0140】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0141】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCTASGFNIKDDYIHWVKQAPGQGLEWIGRIDPADGHTKYAPKFQVKVTITADTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCARYGYGREVFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVLHEALHSHYTQKSLSLSLGK(配列番号11)
のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。
【0142】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、
DIVLTQSPDSLAVSLGERATISCKASQSVDYDGDSYMNWYQQKPGQPPKILIYDASNLESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAIYYCQQSNEDPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)
のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。
【0143】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号12のアミノ酸配列を含むLCを含む。
【0144】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号15のHC CDR1アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR1を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号16のHC CDR2アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR2を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号7のHC CDR3アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むHC CDR3を含む。
【0145】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号18のLC CDR1アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR1を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号19のLC CDR2アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR2を含む。一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号20のLC CDR3アミノ酸配列と比較して、3個以下のアミノ酸変動(例えば、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0146】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号13のVHアミノ酸配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0147】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号14のVLアミノ酸配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0148】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号13のVH配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVHを含む。
【0149】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号14のVL配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0150】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号13のVH配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVH、および(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号14のVL配列と比較して、20個以下のアミノ酸変動(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下のアミノ酸変動)を含有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0151】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号13のVHアミノ酸配列への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0152】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号14のVLアミノ酸配列への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0153】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号13のVH配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVHを含む。
【0154】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含むVLを含み、配列番号14のVL配列のフレームワーク領域との少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含む。
【0155】
一部の実施形態において、ヒト化された抗C1s抗体は、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むHC CDR3を含み、配列番号13のVH配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVH、および(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むLC CDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含み、配列番号14のVL配列のフレームワーク領域への少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するフレームワーク領域を含むVLを含む。
【0156】
一部の実施形態において、本明細書において説明されるヒト化された抗C1s抗体のうちのいずれかの重鎖定常領域は、IgG4定常領域またはそのバリアントである。IgG4定常領域およびバリアントの例を、表1に提供する。
【0157】
【表1】
【0158】
一部の実施形態において、本明細書において説明されるヒト化された抗C1s抗体のうちのいずれかの軽鎖は、軽鎖定常領域(C)をさらに含み得る。一部の例において、Cはカッパ軽鎖である。他の例において、Cはラムダ軽鎖である。一部の実施形態において、Cはカッパ軽鎖であり、その配列を以下に提供する:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号24)
【0159】
他の抗体重鎖および軽鎖定常領域、例えば、IMGTデータベース(imgt.org)またはvbase2.org/vbstat.phpにおいて提供される定常領域は、当該技術分野において周知であり、上記データベースおよびサイトの両方とも参照によって本明細書に組み入れられる。
【0160】
組成物
【0161】
近位古典的補体経路阻害剤(例えば抗C1s抗体)は、一般的に、組成物、例えば医薬組成物で存在する。
【0162】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)を含む組成物は、一部の実施形態では、塩、例えば、NaCl、MgCl、KCl、MgSOなど;緩衝剤、例えば、トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など;可溶化剤;洗浄剤、例えば、非イオン性洗浄剤、例えばTween-20など;プロテアーゼ阻害剤;および/またはグリセロールなどの1種またはそれ以上を含む。
【0163】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、所望の治療作用をもたらすことが可能なあらゆる便利な手段を使用して対象に投与することができる。したがって、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、治療的な投与のための様々な製剤に取り込むことができる。例えば、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、適切な薬学的に許容される担体、医薬的に許容される希釈剤、または他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤化することができ、固体、半固体、液体またはガス状の形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルに製剤化してもよい。一部の実施形態において、医薬組成物は、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0164】
医薬剤形において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、その薬学的に許容される塩の形態で投与してもよいし、または阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、単独で、または他の医薬活性を有する化合物と適切に会合させて、同様にそれらと組み合わせて使用することもできる。
【0165】
経口調製物の場合、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、単独で使用してもよいし、または錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を作製するための適切な添加剤、例えば、従来の添加剤、例えばラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン;結合剤、例えば結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン;崩壊薬、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム;潤滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム;および必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤および矯味矯臭剤と組み合わせて使用してもよい。
【0166】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、注射のための調製物に製剤化することができ、これは、水性または非水性溶媒、例えば、植物性油または他の類似の油、プロピレングリコール、合成脂肪酸グリセリド、注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、より高次の脂肪酸またはプロピレングリコールのエステル中で;必要に応じて、従来の添加剤、例えば可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤と共に、抗体を溶解させる、懸濁させる、または乳化することによってなすことができる。非経口のビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充液、電解質補充液(例えばリンゲルデキストロースをベースとするもの)などが挙げられる。さらに、本発明の開示の医薬組成物は、医薬組成物の意図した使用に応じて、ドーパミンまたは精神薬理学的な薬物などのさらなる薬剤を含んでいてもよい。
【0167】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)を含む医薬組成物は、所望の純度を有する対象の阻害剤を、任意選択の生理学的に許容される担体、他の賦形剤、安定剤、界面活性剤、緩衝液および/または等張化剤と混合することによって製造される。許容できる担体、他の賦形剤および/または安定剤は、採用される投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、そのようなものとしては、緩衝液、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸緩衝液;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニンおよびクエン酸;保存剤(例えばエタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロロ-m-クレゾール、メチルもしくはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、またはそれらの組合せ);アミノ酸、例えばアルギニン、グリシン、オルニチン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリンおよびそれらの組合せ;単糖、二糖および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えばゼラチンもしくは血清アルブミン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばトレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸;ならびに/または非イオン界面活性剤、例えばTween、Brij、Pluronic、Triton-X、もしくはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0168】
医薬組成物は、液体の形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体の形態であってもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液で再構成されることになる。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的手順は、所定体積(典型的には凍結乾燥中に除去された体積に等しい体積)の純水を添加して戻すことである;しかしながら、非経口投与のための医薬組成物を生産するために、抗菌剤を含む溶液を使用することができる;Chen(1992)Drug Dev Ind Pharm 18、1311~54頁も参照されたい。
【0169】
本発明の開示の方法での使用に好適な医薬組成物中の例示的な阻害剤(例えば、抗C1s抗体)濃度は、約1mg/mLから約200mg/mL、または約50mg/mLから約200mg/mL、または約150mg/mLから約200mg/mLの範囲であってもよい。一部の態様において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)濃度は、約10mg/mLから約60mg/mL、約12mg/mLから約58mg/mL、約14mg/mLから約56mg/mL、約16mg/mLから約54mg/mL、約17mg/mLから約52mg/mL、または約18mg/mLから約50mg/mLである。一部の態様において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)濃度は、18mg/mLである。一部の態様において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)濃度は、50mg/mLである。
【0170】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)の水性製剤は、pH緩衝液中で、例えば、約4.0から約7.0、または約5.0から約6.0の範囲、または代替として約5.5のpHで製造することができる。この範囲内のpHに好適な緩衝液の例としては、リン酸、ヒスチジン、クエン酸、コハク酸、酢酸緩衝液および他の有機酸緩衝液が挙げられる。緩衝液の濃度は、例えば緩衝液や製剤の所望の張度に応じて、約1mMから約100mM、または約5mMから約50mMであってもよい。
【0171】
製剤の張度をモジュレートするために、等張化剤を阻害剤(例えば、抗C1s抗体)製剤中に含めることができる。例示的な等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、およびアミノ酸、糖の群からのあらゆる要素、加えてそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態において、水性製剤は等張であるが、高張または低張溶液も好適な場合がある。用語「等張」は、生理食塩水または血清などの、比較される何らかの他の溶液と同じ張度を有する溶液を意味する。等張化剤は、約5mMから約350mMの量で、例えば100mMから350nMの量で使用することができる。
【0172】
界面活性剤も、製剤化された阻害剤の凝集を低減するために、および/または製剤中の微粒子の形成を最小化するために、および/または吸着を低減するために阻害剤(例えば、抗C1s抗体)製剤に添加することができる。例示的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。好適なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの例は、ポリソルベート20(商標Tween20(商標)で販売)およびポリソルベート80(商標TWEEN80(商標)で販売)である。好適なポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーの例は、名称PLURONIC(登録商標)F68またはPOLOXAMER188(商標)で販売されるものである。好適なポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、商標BRIJ(商標)で販売されるものである。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001%から約1%w/vの範囲であってもよい。
【0173】
凍結乾燥プロセス中の不安定化条件から不安定な活性成分(例えばタンパク質)を保護するために、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)を添加することもできる。例えば、公知の凍結乾燥保護剤としては、糖(グルコースおよびスクロースなど);ポリオール(マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールなど);およびアミノ酸(アラニン、グリシンおよびグルタミン酸など)が挙げられる。凍結乾燥保護剤は、約10mMから500nMの量で含まれる。
【0174】
一部の実施形態において、好適な製剤は、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)、および上記で特定された薬剤(例えば、界面活性剤、緩衝液、安定剤、等張化剤)の1つまたはそれ以上を含み、本質的に、1種またはそれ以上の保存剤、例えばエタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロロ-m-クレゾール、メチルまたはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、およびそれらの組合せを含まない。他の実施形態において、保存剤は、製剤中に、例えば約0.001から約2%(w/v)の範囲の濃度で含まれる。
【0175】
例えば、好適な製剤は、非経口投与に好適な液体または凍結乾燥製剤であってもよく:約1mg/mLから約200mg/mLの対象の抗体(例えば、抗C1s抗体);約0.001%から約1%の少なくとも1種の界面活性剤;約1mMから約100mMの緩衝液;場合により約10mMから約500mMの安定剤;および約5mMから約305mMの等張化剤を含んでいてもよく;約4.0から約7.0のpHを有する。
【0176】
別の例として、好適な非経口製剤は、約1mg/mLから約200mg/mLの抗C1s抗体;0.04%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロースを含む液体または凍結乾燥製剤であり:5.5のpHを有する。
【0177】
別の例として、対象の非経口製剤は、1)15mg/mLの抗C1s抗体;0.04%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する凍結乾燥製剤;または2)75mg/mLの対象の抗体;0.04%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する凍結乾燥製剤;または3)75mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する凍結乾燥製剤;または4)75mg/mLの抗C1s抗体;0.04%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する凍結乾燥製剤;または5)75mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する凍結乾燥製剤を含む。
【0178】
別の例として、好適な非経口製剤は、1)7.5mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;120mMのL-ヒスチジン;および125mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または2)37.5mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;10mMのL-ヒスチジン;および125mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または3)37.5mg/mLの抗C1s抗体;0.01%のTween20w/v;10mMのL-ヒスチジン;および125mMのスクロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または4)37.5mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;10mMのL-ヒスチジン;125mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または5)37.5mg/mLの抗C1s抗体;0.01%のTween20w/v;10mMのL-ヒスチジン;および125mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または6)5mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または7)75mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMマンニトールを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または8)75mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのLヒスチジン;および140mMの塩化ナトリウムを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または9)150mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロースを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または10)150mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および250mMのマンニトールを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または11)150mg/mLの抗C1s抗体;0.02%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および140mMの塩化ナトリウムを含み;5.5のpHを有する液体製剤;または12)10mg/mLの抗C1s抗体;0.01%のTween20w/v;20mMのL-ヒスチジン;および40mMの塩化ナトリウムを含み;5.5のpHを有する液体製剤である。
【0179】
好適な賦形剤であるビヒクルは、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。加えて、必要に応じて、ビヒクルは、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤のような少量の補助剤を含んでいてもよい。このような剤形を製造する実際の方法は公知であるか、または当業者にとって明らかであると予想される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第17版、1985を参照されたい。投与される組成物または製剤は、いずれの場合においても、処置されている対象において所望の状況を達成するのに適当な量の対象の抗体を含むと予想される。
【0180】
薬学的に許容される賦形剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、一般に容易に利用可能である。さらに、薬学的に許容される補助剤、例えばpH調整剤および緩衝剤、張度調節剤、安定剤、湿潤剤などは、一般に容易に利用可能である。
【0181】
投薬量
近位古典的補体経路阻害剤は、治療有効量で投与される。阻害剤は、所望の治療効果(例えば溶血の低減または予防)を達成するためにある特定の頻度である期間の間対象へ投与してもよい。また、投与頻度は、非限定的に、臨床応答、阻害剤の血漿半減期、および血液、血漿、血清または滑液などの体液中の阻害剤のレベルを含む、様々なパラメーターに従って調節してもよい。投与頻度の調節をガイドするために、体液中の阻害剤のレベルを、処置の過程中にモニターしてもよい。
【0182】
抗C1s抗体
一態様において、方法は、対象へ、少なくとも4g、少なくとも4.5g、少なくとも5g、少なくとも5.5g、少なくとも6g、少なくとも6.5g、少なくとも7g、少なくとも7.5g、少なくとも8g、少なくとも8.5g、少なくとも9g、少なくとも9.5gまたは少なくとも10gの有効量で投与される抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)を投与することを含む。
【0183】
一部の実施形態において、抗C1s抗体(例えば、スチムリマブ)は、約5.5gから約10gの間、約5.5gから約9.5gの間、約5.5gから約9gの間、約5.5gから約8.5gの間、約5.5gから約8gの間、約5.5gから約7.5gの間、約5.5gから約7gの間、約5.5gから約6.5gの間、または約5.5gから約6gの間の有効量で投与される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、約4.5gから約8.5gの間、約4.5gから約8gの間、約4.5gから約7.5gの間、約4.5gから約7gの間、約4.5gから約6.5gの間、約4.5gから約6gの間、約4.5gから約5.5gの間、または約4.5gから約5gの間の量で投与される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、約7.5gから約12gの間、約7.5gから約11.5gの間、約7.5gから約11gの間、約7.5gから約10.5gの間、約7.5gから約10gの間、約7.5gから約9.5gの間、約7.5gから約9gの間、約7.5gから約8.5gの間、または約7.5gから約8gの間の量で投与される。
【0184】
一部の実施形態において、本方法についての対象は、体重が75kgまたはそれ以上であり、抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)は、約7.5gの有効量で投与される。他の態様において、本方法についての対象は、体重が75kg未満であり、抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)は、約6.5gの有効量で投与される。
【0185】
一部の実施形態において、抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)は、約6.5g~約7.5gの有効量で投与される。
【0186】
一部の態様において、投与後の抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)の血清濃度は、少なくとも20μg/mL、少なくとも25μg/mL、少なくとも30μg/mL、少なくとも35μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも45μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも55μg/mL、少なくとも60μg/mL、少なくとも65μg/mL、少なくとも70μg/mL、少なくとも75μg/mL、少なくとも80μg/mL、少なくとも85μg/mL、少なくとも90μg/mL、少なくとも95μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも120μg/mL、少なくとも130μg/mL、少なくとも140μg/mL、少なくとも150μg/mL、少なくとも160μg/mL、少なくとも170μg/mL、少なくとも180μg/mL、少なくとも190μg/mL、少なくとも191μg/mL、少なくとも192μg/mL、少なくとも193μg/mL、少なくとも194μg/mL、少なくとも195μg/mL、少なくとも196μg/mL、少なくとも197μg/mL、少なくとも198μg/mL、少なくとも199μg/mL、少なくとも200μg/mL、少なくとも192μg/mL、少なくとも384μg/mL、少なくとも576μg/mL、少なくとも768μg/mLまたは少なくとも800μg/mLである。本開示の一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、約800μg/mL~約200μg/mL、約768μg/mL~約192μg/mL、約768μg/mL~約384μg/mL、約768μg/mL~約576μg/mL、約576μg/mL~約192μg/mL、約576μg/mL~約384μg/mL、約384μg/mL~約192μg/mL、約20μg/mL~約100μg/mL、約20μg/mL~約90μg/mL、約20μg/mL~約80μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約60μg/mL、約20μg/mL~約50μg/mL、約20μg/mL~約40μg/mL、または約20μg/mL~約30μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも20μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも100μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも192μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも384μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも576μg/mLである。一部の実施形態において、投与後の抗C1s抗体の血清濃度は、少なくとも768μg/mLである。
【0187】
一部の態様において、抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも20μg/mL、少なくとも25μg/mL、少なくとも30μg/mL、少なくとも35μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも45μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも55μg/mL、少なくとも60μg/mL、少なくとも65μg/mL、少なくとも70μg/mL、少なくとも75μg/mL、少なくとも80μg/mL、少なくとも85μg/mL、少なくとも90μg/mL、少なくとも95μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも120μg/mL、少なくとも130μg/mL、少なくとも140μg/mL、少なくとも150μg/mL、少なくとも160μg/mL、少なくとも170μg/mL、少なくとも180μg/mL、少なくとも190μg/mL、少なくとも191μg/mL、少なくとも192μg/mL、少なくとも193μg/mL、少なくとも194μg/mL、少なくとも195μg/mL、少なくとも196μg/mL、少なくとも197μg/mL、少なくとも198μg/mL、少なくとも199μg/mL、少なくとも200μg/mL、少なくとも384μg/mL、少なくとも576μg/mL、少なくとも768μg/mLまたは少なくとも800μg/mLの抗C1s抗体の血清濃度を維持することを含む。本開示の一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、約800μg/mL~約200μg/mL、約768μg/mL~約192μg/mL、約768μg/mL~約384μg/mL、約768μg/mL~約576μg/mL、約576μg/mL~約192μg/mL、約576μg/mL~約384μg/mL、約384μg/mL~約192μg/mL、約20μg/mL~約100μg/mL、約20μg/mL~約90μg/mL、約20μg/mL~約80μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約60μg/mL、約20μg/mL~約50μg/mL、約20μg/mL~約40μg/mL、または約20μg/mL~約30μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも20μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも100μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも192μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも384μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも576μg/mLの血清濃度を維持することを含む。一部の実施形態において、抗C1s抗体の治療的血清濃度を維持することは、少なくとも768μg/mLの血清濃度を維持することを含む。
【0188】
一部の態様において、大手術は、対象の抗C1s抗体(例えばスチムリマブ)の血清濃度が、溶血を低減または予防するのに有効である(または有効であると予測される)場合に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも20μg/mL、少なくとも25μg/mL、少なくとも30μg/mL、少なくとも35μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも45μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも55μg/mL、少なくとも60μg/mL、少なくとも65μg/mL、少なくとも70μg/mL、少なくとも75μg/mL、少なくとも80μg/mL、少なくとも85μg/mL、少なくとも90μg/mL、少なくとも95μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも120μg/mL、少なくとも130μg/mL、少なくとも140μg/mL、少なくとも150μg/mL、少なくとも160μg/mL、少なくとも170μg/mL、少なくとも180μg/mL、少なくとも190μg/mL、少なくとも191μg/mL、少なくとも192μg/mL、少なくとも193μg/mL、少なくとも194μg/mL、少なくとも195μg/mL、少なくとも196μg/mL、少なくとも197μg/mL、少なくとも198μg/mL、少なくとも199μg/mL、少なくとも200μg/mL、少なくとも384μg/mL、少なくとも576μg/mL、少なくとも768μg/mLまたは少なくとも800μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、約800μg/mL~約200μg/mL、約768μg/mL~約192μg/mL、約768μg/mL~約384μg/mL、約768μg/mL~約576μg/mL、約576μg/mL~約192μg/mL、約576μg/mL~約384μg/mL、約384μg/mL~約192μg/mL、約20μg/mL~約100μg/mL、約20μg/mL~約90μg/mL、約20μg/mL~約80μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約70μg/mL、約20μg/mL~約60μg/mL、約20μg/mL~約50μg/mL、約20μg/mL~約40μg/mL、または約20μg/mL~約30μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも20μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも100μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも192μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも384μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも576μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。一部の実施形態において、大手術は、対象の抗C1s抗体の血清濃度が、少なくとも768μg/mLである(またはそうであると予測される)日に行われる。
【0189】
対象における抗C1s抗体(例えば、スチムリマブ)の血清中濃度は、当分野において公知の技術を使用して測定することができる。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、直接結合酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して測定される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、間接ELISAを使用して測定される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、サンドイッチELISAを使用して測定される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、競合ELISAを使用して測定される。
【0190】
一部の態様において、抗C1s抗体(例えば、スチムリマブ)の有効量は、少なくとも45mg/kg、少なくとも50mg/kg、少なくとも55mg/kg、少なくとも60mg/kg、少なくとも65mg/kg、少なくとも70mg/kg、少なくとも75mg/kg、少なくとも80mg/kg、少なくとも85mg/kg、少なくとも90mg/kg、少なくとも95mg/kg、または少なくとも100mg/kgである、方法を提供する。一部の実施形態において、抗C1s抗体の有効量は、少なくとも60mg/kgである。
【0191】
一部の実施形態において、抗C1s抗体(例えば、スチムリマブ)の有効量は、約60mg/kgから約100mg/kgの間、約60mg/kgから約95mg/kgの間、約60mg/kgから約90mg/kgの間、約60mg/kgから約85mg/kgの間、約60mg/kgから約80mg/kgの間、約60mg/kgから約75mg/kgの間、約60mg/kgから約70mg/kgの間、または約60mg/kgから約65mg/kgの間である。一部の実施形態において、抗C1s抗体の有効量は、約45mg/kgから約85mg/kgの間、約45mg/kgから約80mg/kgの間、約45mg/kgから約75mg/kgの間、約45mg/kgから約70mg/kgの間、約45mg/kgから約65mg/kgの間、約45mg/kgから約60mg/kgの間、または約45mg/kgから約50mg/kgの間である。一部の実施形態において、抗C1s抗体の有効量は、約85mg/kgから約150mg/kgの間、約85mg/kgから約145mg/kgの間、約85mg/kgから約140mg/kgの間、約85mg/kgから約135mg/kgの間、約85mg/kgから約130mg/kgの間、約85mg/kgから約125mg/kgの間、約85mg/kgから約125mg/kgの間、約85mg/kgから約120mg/kgの間、約85mg/kgから約115mg/kgの間、約85mg/kgから約110mg/kgの間、約85mg/kgから約105mg/kgの間、約85mg/kgから約100mg/kgの間、約85mg/kgから約95mg/kgの間、または約85mg/kgから約90mg/kgの間である。
【0192】
一部の実施形態において、本発明の方法に関する有効量は、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、約105mg/kg、約110mg/kg、約115mg/kg、約120mg/kg、約125mg/kg、約130mg/kg、約135mg/kg、約140mg/kg、約145mg/kg、または約150mg/kgである。
【0193】
投与経路
近位古典的補体経路阻害剤は、インビボおよびエクスビボの方法、加えて全身および局所投与経路などの、薬物送達に好適なあらゆる利用可能な方法および経路を使用して対象に投与される。
【0194】
従来のおよび薬学的に許容される投与経路としては、鼻腔内、筋肉内、気管内、髄腔内、頭蓋内、皮下、皮内、外用、静脈内、腹膜内、動脈内(例えば、頸動脈を介した)、脊髄または脳への送達、直腸、鼻、経口、および他の経腸および非経口の投与経路が挙げられる。投与経路は、必要に応じて組み合わせてもよいし、または抗体および/または所望の作用に応じて調整してもよい。阻害剤(例えば、抗C1s抗体)組成物は、単回用量で、または複数回用量で投与することができる。一部の実施形態において、阻害剤は、経口投与される。一部の実施形態において、阻害剤は、皮下投与される。一部の実施形態において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、筋肉内投与される。一部の実施形態において、抗C1s抗体は、静脈内投与される。
【0195】
阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、全身または局所経路などの従来の薬物の送達に好適なあらゆる利用可能な従来の方法および経路を使用して宿主に投与することができる。一般的に、本開示によって予期される投与経路としては、必ずしもこれらに限定されないが、経腸、非経口、または吸入による経路が挙げられる。
【0196】
吸入投与以外の非経口投与経路としては、必ずしもこれらに限定されないが、外用、経皮、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、および静脈内経路、すなわち消化管を介する経路以外のあらゆる投与経路が挙げられる。非経口投与は、対象の抗体の全身または局所送達が達成されるように行うことができる。全身送達が望ましい場合、投与は、典型的には医薬調製物の、侵襲性または全身吸収性の外用または粘膜投与を含む。一部の実施形態において、用量は、静脈内注入として1時間かけて投与される。静脈内注入は、診療施設または自宅の環境内で行うことができる。
【0197】
一部の実施形態において、阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、注射および/または送達によって、例えば脳動脈中の部位に投与されるか、または脳組織に直接投与される。阻害剤(例えば、抗C1s抗体)は、標的部位に直接投与することもでき、例えば遺伝子銃送達によって標的部位に投与することもできる。
【0198】
様々な対象(ここで用語「対象」は、本明細書では用語「個体」、および「患者」と互換的に使用される)が、本発明に従って処置可能である。一般的に、このような対象は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり、この場合、これらの用語は、一般的に、哺乳綱に含まれる生物、例えば、肉食目(例えば、ネコ)、草食動物(例えば、ウシ、ウマ、およびヒツジ)、雑食動物(例えば、イヌ、ヤギ、およびブタ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)などを記載するのに使用される。一部の実施形態において、対象は、補体系を有する個体、例えば哺乳動物、魚類、または無脊椎動物である。一部の実施形態において、対象は、補体系を含む哺乳動物、魚類、または無脊椎動物のコンパニオンアニマル、農耕動物、働く動物、動物園の動物、または実験動物である。一部の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0199】
一部の実施形態において、本発明の方法は、貧血の重症度、輸血歴、またはこれまでの処置の経験に関連する使用に限定されない。
【実施例
【0200】
この実施例は、大手術を受ける、CADと診断された患者におけるスチムリマブの有効性を評価する症例研究を説明する。CADと診断された60代後半のコーカサス人男性は、冠状動脈心疾患(CHD)の病歴があることが分かっており、10年前に心筋梗塞を発症し、右冠状動脈(RCA)内の3本のステントで処置されていた。症状の再発により、新規の血管造影検査を行い、1年後に左前下行動脈(LAD)内に1本のステント、8年後にさらに追加の2本のLADステントを設置した。最後の心臓手術から1年後のCAD診断時に、彼は重度の貧血であり、定期的なRBC輸血が必要であった。彼は、最近の輸血歴を有するCADを有する患者における、補体C1sの選択的阻害剤であるスチムリマブのフェーズ3中枢試験非盲検シングルアーム研究に登録した。彼のヘモグロビンレベルは、定期的なRBC輸血を伴っての10未満から、輸血の必要性のない12.0g/dl超まで増加したが、9ヶ月後、彼は進行性の呼吸困難を発症したため、血管造影検査を行ったところ、LADおよび回旋動脈(CX)における近位および遠位狭窄を有する肝動脈三枝病変が実証され、開放型心臓手術の必要性が示された。
【0201】
現在、CADの処置は、2つの選択肢:IgMを除去するための血漿交換、または抗体産生を低減するための化学免疫療法剤のうちの1つを含む。血漿交換はCAの除去において非常に有効であるが、IgM産生が継続するので、効果は一時的である。化学免疫療法は、長期寛解をもたらし得るが、応答までの時間は、最長で数ヶ月まで遅延し、重度の好中球減少症および感染性合併症が患者の少なくとも20%において見られる。患者は即時の処置を必要としており、研究への包含前のtは急性相エピソード中にヘモグロビンレベルの低下を経験したので、術後相中に溶血が悪化するリスクは、顕著であると考えられた。したがって、使用可能な選択肢のいずれも、この患者に好適であるとは考えられなかった。
【0202】
スチムリマブは、補体C1sの選択的阻害剤であり、古典的補体活性化を選択的に阻止するが、補体カスケードの代替経路およびレクチン経路はインタクトなまま残す。スチムリマブは、補体媒介性溶血の阻止において非常に有効であり、フェーズIおよびフェーズ3試験からのデータは、CADにおける溶血の迅速かつ完全な阻止を実証している。しかしながら、RBC凝集の非補体媒介性症状は、緩和されない場合がある。寒冷誘発性IgM媒介性凝集は、手術全体を通して、体温を保ち、37℃のCA熱振幅を超える温かい流体を循環させることによって、予防することができる。本発明者らは、スチムリマブを継続することにより、手術中および手術後期間に古典的補体経路を介した溶血の悪化を十分に阻止し得ることを見出した。
【0203】
開放型心臓手術中、患者を体外循環、例えば心肺装置に接続しなければならず、これは1300mLの溶液(マンニトール、電解および緩衝溶液)を含むであろうから、循環スチムリマブの顕著な希釈が予測された。およそ500mLの血液損失および100~2000mLの流体の輸注が、さらに予想された。これらのデータを患者の以前のPK/PDプロファイル(図1)と合わせて使用し、手術がルーチンのスチムリマブ投与の2日後に行われる場合、手術中のスチムリマブの濃度(図1B)は溶血を十分に抑制するために必要とされる量より4倍高いであろうことが予測された。
【0204】
患者は、0日目に心臓手術を許可され、ルーチンのスチムリマブ輸注を、患者の体重に適切な6.5gの用量として受けた。その後、彼は、2日目に冠状動脈バイパス術(CABG)を受けた。患者の冷却を避けるために手術室温度を高く保つ予防策をとった。心肺装置中の流体は、37℃に保った。胸骨正中切開を通してCABGを行い、標準のカニュレーションを通した体外循環を伴った(37℃)。順行性の温かい(37℃)血液心筋保護液により心筋保護を送達した。患者は、2つの冠状動脈移植:左前乳動脈(LIMA)~LAD、およびCXへの伏在静脈移植を受けた。C1qの置換を避けるため、手術中、血漿分画製剤または凝集因子は与えなかった。血液サンプルを、入院時、手術前、体外循環の直前および直後、ならびに手術24時間後に収集した。
【0205】
予測された通り、心肺装置中の流体が患者の血液を希釈したとき、ヘモグロビンレベルのわずかな減少が観察された。ヘモグロビンレベルは手術全体を通して安定なままであり、溶血の徴候はなく、例えば、安定した乳酸デヒドロゲナーゼレベルを示し、血尿または血漿の変色はなかった(図2)。手術後初期過程は平穏であり、患者は5日後に地元の病院へ移り、十分に動け、良い状態であった。大手術後に予測される通り、顕著な炎症性応答が観察され、C反応性タンパク質(CRP)レベルの増大があり、これは手術2日後にピークに達した(CRP225mg/L)が、明らかな感染の徴候はなかった。この炎症性応答にもかかわらず、破綻的な溶血は観察されず、LDH、ビリルビンおよびヘモグロビンのレベルは安定なままであった。14日目のルーチンの経過観察において、彼は完全に動け、安定なヘモグロビンレベルを有し、溶血の徴候はなかった(図2)。スチムリマブによる古典的補体経路の抑制を評価するためにモニターした総補体活性(CH50)は、手術前スチムリマブ輸注後に完全に抑制された。CH50は、手術中および手術後初期期間の間、抑制されたままであり、2週間後の経過観察通院時もまだ抑制されており、古典的補体経路の連続的かつ完全な阻害を示した。
【0206】
本症例は、顕著な急性相反応および循環血液量における同時シフトを伴う状況でさえも、スチムリマブは、溶血をより長い期間有効に阻止することができることを実証する。溶血性悪化を予防することに加えて、また、予防的C1s阻害は、大手術後の著しい急性相反応にもかかわらず、補体系の活性化を有効に予防するように見えた。患者は、単回のみの輸注と比較して、52週間を超えるスチムリマブ輸注後、より高いスチムリマブレベル、および古典的補体カスケードの抑制を達成した(図1A)。スチムリマブナイーブ患者は、この患者において使用された用量よりも、より高い用量を大手術前に必要とする可能性があり得る。スチムリマブは、代替経路および末端経路には影響しないので、感染性合併症の増加は起こりにくい。それゆえ、スチムリマブは、潜在的に、大手術を受ける、CADを有する患者のための新規の安全なツールである。
【0207】
本明細書において開示されるすべての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用されている主題について参照によって本明細書に組み入れ、一部の場合、文書の全体が包含される。
【0208】
不定詞「a」および「an」は、本明細書の明細書および特許請求の範囲で使用される場合、明らかにこれに反すると示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0209】
また、明らかにこれに反すると示されない限り、2つ以上の工程または作用を含む本明細書において請求される任意の方法において、方法の工程または作用の順序は、方法の工程または作用が列挙されている順序に必ずしも限定されないことを理解すべきである。
【0210】
特許請求の範囲および上記明細書において、「を含む(comprising)」、「を含む(including)」、「を有する(carrying)」、「を有する(having)」、「を含有する(containing)」、「を含む(involving)」、「を有する(holding)」、「からなる(composed of)」などのすべての移行句は、開放型である、すなわち、非限定的に含むことを意味すると理解すべきである。米国特許審査基準(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)第2111.03節において示される通り、移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」のみは、それぞれ、閉鎖型または半閉鎖型移行句である。
【0211】
数値の前の「約」および「実質的に」という用語は、列挙される数値の±10%を意味する。
【0212】
ある範囲の値が提供される場合、範囲の上端および下端の間およびそれらを含む各値は、具体的に企図され、本明細書で説明されている。
図1-1】
図1-2】
図2
【配列表】
2024513837000001.app
【国際調査報告】