(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】炭素回収効率を改善するための統合された発酵及び電気分解プロセス
(51)【国際特許分類】
C12P 7/06 20060101AFI20240319BHJP
C12P 7/18 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12P7/06
C12P7/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560422
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022071632
(87)【国際公開番号】W WO2022217275
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】コンラド,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,シーン デニス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,マイケル エマーソン
(72)【発明者】
【氏名】ブロムリー,ジェイソン カール
(72)【発明者】
【氏名】ロジン,リチャード ラッセル
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AC05
4B064CA01
4B064CA02
4B064CB16
4B064CC01
4B064CC15
4B064CD01
4B064DA16
(57)【要約】
本開示は、発酵プロセスと、少なくとも一つの電気分解プロセス、CO
2からCOへの変換ユニット、及びC1生成工業プロセスとの統合を提供する。特に、本開示は、例えば、CO
2からCOへの変換ユニット中のH
2及び/又はO
2などの電気分解生成物を利用して、発酵プロセス又はC1生成工業プロセスのうちの少なくとも一つのプロセス効率を改善するためのプロセス及びシステムを提供する。より具体的には、本開示は、電気分解によって生成されるH
2が、CO
2からCOへの変換ユニットに渡されて、発酵プロセスの基質効率を改善し、また電気分解プロセスによって生成されるO
2を使用して、C1生成工業プロセスによって生成されるC1含有テールガスの組成を改善するプロセスを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の回収効率を改善するための、統合された発酵及び工業プロセスであって、
a)H
2O電気分解ユニット中の水を変換し、H
2を含む水素流を生成することと、
b)工業プロセスからのCO
2を含むテールガス流の少なくとも一部分を、CO
2からCOへの変換システムに渡して、COを含むガス状供給材料流を生成することと、
c)前記ガス状供給材料流を、少なくとも一つのC1固定微生物の培養物を含むガス発酵バイオリアクターユニットに渡すことと、
d)前記水素流の少なくとも一部分を、前記CO
2からCOへの変換システムに、前記ガス発酵バイオリアクターユニットに、又は両方に渡すことと、
e)前記培養物を発酵させて、一つ以上の発酵生成物と、CO
2を含む流出ガス流とを生成することと、
f)前記流出ガス流を前記CO
2からCOへの変換ユニットに再循環させることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
CO
2を含む供給原料をCO
2電気分解ユニットに渡し、O
2を含む酸素流とCOを含むCO流とを生成して、前記酸素流を前記工業プロセスに渡し、前記CO流をガス発酵バイオリアクターユニットに渡すことをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記CO
2電気分解ユニット及び/又はH
2O電気分解ユニットが、エネルギー入力を必要とし、前記エネルギー入力が、再生可能エネルギー源に由来する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工業プロセスが、部分酸化プロセス、ガス化プロセス、完全酸化プロセス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記テールガス流の少なくとも一部分を処理ユニットに渡して、処理済みテールガス流を生成し、前記処理済みテールガス流を前記CO
2電気分解ユニットに再循環させることをさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記CO
2からCOへの変換システムが、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、プラズマ変換システム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記C1固定微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
a)第一のガス流出口及び第二のガス流出口を有するCO
2電気分解ユニットと、
b)入口及びテールガス出口を備える工業プロセスゾーンであって、前記入口が、前記CO
2電気分解ユニットの前記第一のガス流出口と流体連通している、工業プロセスゾーンと、
c)供給材料流出口を備えるCO
2からCOへの変換システムであって、前記テールガス出口と流体連通している、CO
2からCOへの変換システムと、
d)生成物流出口を備えるガス発酵バイオリアクターユニットであって、前記供給材料流出口及び前記第二のガス流出口と流体連通しているガス発酵バイオリアクターユニットと、
e)第三のガス流出口を有するH
2O電気分解ユニットと、を備え、前記第三のガス流出口が、前記CO
2からCOへの変換システム、前記ガス発酵バイオリアクターユニット、又はその両方と流体連通している、統合システム。
【請求項9】
前記CO2電気分解ユニット及び/又はH2O電気分解ユニットが、再生可能エネルギー生成ユニットとさらに電気通信している、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記工業プロセスゾーンが、部分酸化プロセスゾーン、ガス化プロセスゾーン、完全酸化プロセスゾーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ガス発酵バイオリアクターユニットが、前記CO
2電気分解ユニットと流体連通している流出ガス流出口をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記CO
2からCOへの変換システムが、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、プラズマ変換システム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記テールガス出口及び前記CO
2電気分解ユニットと流体連通している処理ユニットをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
a)CO及びH
2を含む第一のガス流、CO
2を含む第二のガス流、及びH
2を含む第三のガス流を、一つ以上の工業プロセスから得ることと、
b)H
2O電気分解ユニットにエネルギー入力を渡して、H
2を含む第四のガス流、及びO
2を含む第五のガス流を得ることと、
c)前記第一のガス流の第一の部分、及び前記第二のガス流の第一の部分を第一のガス処理ユニットに、また前記第三のガス流の第一の部分を第二のガス処理ユニットに渡して、処理済み第一のガス流、処理済み第二のガス流、及び処理済み第三のガス流を得ることと、
d)前記第二のガス流の第二の部分、前記処理済み第二のガス流、前記第三のガス流の第二の部分、前記処理済み第三のガス流、前記第四のガス流の第一の部分、及び随意に前記処理済み第一のガス流の第一の部分を、CO
2からCOへの変換システムに渡して、COを含むガス状供給材料流と、H
2Oを含む出力流とを生成することと、
e)前記出力流を前記H
2O電気分解ユニットに渡すことと、
f)随意に、前記ガス状供給材料流を第三のガス処理ユニットに渡して、処理済みガス状供給材料流を得ることと、
g)前記処理済みガス状供給材料流、前記第一のガス流の第二の部分、前記処理済み第一のガス流の第二の部分、随意に前記第三のガス流の第二の部分、及び随意に前記第四のガス流の第二の部分を、ガス発酵バイオリアクターユニットに渡して、ガス発酵流と、H
2を含むテールガス流とを生成することと、
h)前記ガス発酵流を脱気ユニットに渡して、少なくとも一つの発酵生成物及びCO
2を含む生成物流を得ることと、
i)前記生成物流の第一の部分を真空蒸留ユニットに渡して、少なくとも一つの発酵生成物と、CO
2を含む流出ガス流とに分離することと、
j)前記生成物流の第二の部分を、前記第一のガス処理ユニットに渡し、随意に、前記生成物流の第三の部分を、前記CO
2からCOへの変換システムに渡すことと、
k)前記流出ガス流を、前記ガス発酵バイオリアクターユニットに渡すことと、
l)前記テールガス流の第一の部分を前記第二のガス処理ユニットに渡し、随意に前記テールガス流の第二の部分を前記CO
2からCOへの変換システムに渡すことと、
m)前記テールガス流の第三の部分及び前記第五のガス流を酸化装置ユニットに渡すことと、を含む、統合された発酵及び工業プロセス。
【請求項15】
一つ以上の工業プロセスが、合成ガス排出工業プロセス、CO
2排出工業プロセス、H2排出工業プロセス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記工業プロセスが、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプ・製紙、製鋼、石油精製、石油化学生産、コークス生産、嫌気性消化、好気性消化、天然ガス抽出、オイル抽出、地質学的貯蔵地、治金プロセス、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の生産のための、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の精製、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、又は合成ガスプロセスは、石炭のガス化のガス化、精製所残基のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース物質のガス化、黒液ガス化、公共固形廃棄物のガス化、産業固形廃棄物のガス化、下水のガス化、廃水処理からの汚泥のガス化、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガス又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記エネルギー入力が、再生可能エネルギー源に由来する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第一のガス処理ユニット、前記第二のガス処理ユニット、及び前記第三のガス処理ユニットが硫黄除去モジュールを備える、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
前記CO
2からCOへの変換システムが、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、又はプラズマ変換システムから選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
前記酸化装置ユニットが、熱酸化装置ユニット、熱改質器ユニット、熱電気複合利用ユニット、又は合成ガス生成ユニットから選択される、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮特許出願第63/173,262号の利益を主張し、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、炭素回収効率を改善するための統合された発酵及び工業プロセス並びに装置に関する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO2)は人間の活動による世界の温室効果ガス排出の約76%を占め、メタン(16%)、亜酸化窒素(6%)、及びフッ素化ガス(2%)が残りを占めている(United States Environmental Protection Agency)。工業及び林業の施業も大気中にCO2を放出するが、CO2の大部分は化石燃料を燃焼させてエネルギーを生成することに由来する。温室効果ガス排出、特にCO2の削減は、地球温暖化の進行並びにそれに伴う気候及び天候の変動を止めるのに重要である。
【0004】
フィッシャー・トロプシュプロセスなどの触媒プロセスを使用して、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、及び/又は水素(H2)を含有するガスを様々な燃料及び化学物質に変換することができることが長い間認識されている。しかしながら、最近、ガス発酵がそのようなガスの生物学的固定のための代替プラットフォームとして浮上している。具体的には、嫌気性C1固定微生物は、CO2、CO、及び/又はH2を含有するガスをエタノール及び2,3-ブタンジオールなどの生成物に変換することが示されている。
【0005】
こうしたガスは、例えば、炭水化物発酵からのガス、セメント製造からのガス、パルプ製紙、鉄又は非鉄金属製品製造、製鋼、石油精製及び関連プロセス、石油化学生産、電力生産、カーボンブラック生産、アンモニア生産、メタノール生産、コークス生産、嫌気性又は好気性消化、合成ガス(バイオマス、廃液流、固形廃棄物流、都市廃棄物流、天然ガス、石炭及び石油を含む化石資源を含むがこれらに限定されない供給源に由来する)、天然ガスの抽出、石油の抽出、アルミニウム、銅及び/又は合金鉄の生産及び/又は精製のための冶金プロセス、地質学的貯留池、並びに触媒プロセス(水蒸気メタン改質、水蒸気ナフサ改質、石油コークスガス化、触媒再生-流動触媒分解、触媒再生-ナフサ改質、及び乾式メタン改質を含むがこれらに限定されない水蒸気源から誘導される)を含む、工業プロセスに由来し得る。
【0006】
しかしながら、発酵生成物の効率的な生産は、例えば、緩徐な微生物増殖、限定されたガス吸収、毒素に対する感受性、又は炭素基質の望ましくない副生成物への転換によって制限される場合がある。したがって、これらの工業ガスは、ガス発酵システムでの使用に対して最適化するために処理又は再構成を必要とし得る。特に、工業ガスは、ガス発酵によるCO2の正味の固定を駆動し、大気へのCO2排出を低減するのに十分な量のH2を欠く場合がある。例えば、工業における水素の需要の大部分は、メタン水蒸気改質によって満たされている。従来、この反応は、副生成物としてCO2をほとんど含まずに、CO及びH2の生成をもたらす。次いで、一酸化炭素を、一つ、又は一連の二つの水性ガスシフト反応器で反応させて、H2及びCO2をさらに生成する。その後、水素を、圧力スイング吸着(PSA)ユニットで精製する。精製された水素流、並びに一部の水素及び未反応CO2及びCOを含むPSAテールガスが、PSAユニットによって生成される。PSAテールガスは、しばしば、ガス発酵への供給材料として直接的に使用されるにはCOが少なすぎる。PSAテールガス中のCO濃度を増加させる一つの技術は、高温の水性ガスシフト反応器のみを利用することを伴う。しかしながら、追加の低温水性ガスシフト反応器がない場合、生成される精製水素の量はより少ない。一部の精製所は、精製された水素流中の、精製された水素のこの損失には耐えられない。
【0007】
高水素流は、エネルギー需要が低く、CO2が反応物として、例えばエタノール生成などに使用され得る発酵生成物に有益である。精製された水素の高収率を維持し、それでも適切な濃度のCOを有するガス発酵に供給材料を提供するプロセス及びシステムの必要性が存在する。それゆえに、工業プロセスと、ガス発酵システムに送達される工業ガスのH2含有量を濃縮するためのプロセスを含む、ガス発酵システムとの統合の改善に対するニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、統合された発酵及び工業プロセスにおける二酸化炭素の回収を改善するためのプロセスを提供する。プロセスは、O2を含む第一のガス流及びCOを含む第二のガス流を、CO2電気分解ユニットから取得することを含む。H2を含む第三のガス流は、H2O電気分解から取得される。第一のガス流の少なくとも一部分が、工業プロセスに送られ、ここでCO2を含むテールガス流が生成される。テールガス流の少なくとも一部分及び第三のガス流の少なくとも一部分は、CO2からCOへの変換システムに渡されて、COを含むガス状供給材料流を生成する。ガス状供給材料流、第二のガス流、随意に第三のガス流の少なくとも一部分、及び随意にテールガス流の少なくとも一部分が、少なくとも一つのC1固定微生物の培養物を含むガス発酵バイオリアクターに渡される。培養物は発酵されて、少なくとも一つの発酵生成物、及びCO2電気分解プロセスに再循環されるCO2を含む流出ガス流を生成する。
【0009】
工業プロセスは、部分酸化プロセス、ガス化プロセス、及び完全酸化プロセスから成る群から選択される。CO2電気分解及び/又はH2O電気分解プロセスは、エネルギー入力を必要とし、エネルギー入力は、再生可能エネルギー源に由来してもよい。テールガス流の少なくとも一部分は、処理ユニットに渡されて処理済みテールガス流を生成してもよい。処理済みテールガス流は、CO2電気分解ユニットに再循環されてもよい。CO2からCOへの変換システムは、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、又はプラズマ変換システムから選択される少なくとも一つである。少なくとも一つのC1固定細菌は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiから選択される。発酵生成物は、エタノール、酢酸塩、ブタノール、酪酸塩、2,3-ブタンジオール、乳酸塩、ブテン、ブタジエン、メチルエチルケトン、エチレン、アセトン、イソプロパノール、脂質、3-ヒドロキシプロピオナート、イソプレン、脂肪酸、2-ブタノール、1,2-プロパンジオール、及び1-プロパノールから成る群から選択される。
【0010】
本開示は、一つ以上の発酵生成物を生成するための統合システムをさらに提供し、システムは、第一のガス流導管及び第二のガス流導管を有するCO2電気分解ユニットと、第一のガス導管と流体連通し、テールガス導管を有する工業プロセスゾーンと、第三のガス流導管を有するH2O電気分解ユニットと、テールガス導管及び第三のガス流導管と流体連通し、供給材料流導管を有するCO2からCOへの変換システムと、供給材料流導管、第二のガス流導管及び第三のガス流導管と流体連通し、生成物流導管を有するガス発酵バイオリアクターユニットとを備える。
【0011】
一実施形態では、CO2電気分解ユニット及び/又はH2O電気分解ユニットは、再生可能エネルギー生成ユニットとさらに連通している。CO2からCOへの変換システムは、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、又はプラズマ変換システムから選択される。
【0012】
一実施形態では、システムは、テールガス導管及びCO2電気分解ユニットと流体連通する処理ユニットをさらに備える。ガス発酵バイオリアクターユニットはさらに、第三のガス流導管、テールガス導管と流体連通し、流出ガス流導管を有する。流出ガス流導管は、CO2電気分解ユニットと流体連通している。
【0013】
統合システムは、C1廃ガスから貴重な炭素含有生成物を生成し、CO2排出を低減する利点を有する。水又は二酸化炭素の電気分解のための電解槽の提供はまた、電気分解プロセスによって生成されるO2が、工業プロセスのO2必要条件を置き換えるか、又は補足することができるため、代替的な手段による空気分離の要件を減少させる。工業プロセスゾーンは、部分酸化プロセスゾーン、ガス化プロセスゾーン、及び完全酸化プロセスゾーンから選択される。
【0014】
本開示はさらに、統合された発酵及び工業プロセスを提供する。プロセスは、CO及びH2を含む第一のガス流、CO2を含む第二のガス流、及びH2を含む第三のガス流を、一つ以上の工業プロセスから取得することを含む。エネルギー入力は、H2O電気分解ユニットに渡されて、H2を含む第四のガス流と、O2を含む第五のガス流とを得る。第一のガス流の第一の部分、及び第二のガス流の第一の部分が第一のガス処理ユニットに渡され、第三のガス流の第一の部分が第二のガス処理ユニットに渡されて、処理済み第一のガス流、処理済み第二のガス流、及び処理済み第三のガス流を得る。第二のガス流の第二の部分、処理済み第二のガス流、第三のガス流の第二の部分、処理済み第三のガス流、第四のガス流の第一の部分、及び随意に処理済み第一のガス流の第一の部分が、CO2からCOへの変換システムに渡されて、COを含むガス状供給材料流及びH2Oを含む出力流を生成する。出力流は、H2O電気分解ユニットに渡される。随意に、ガス状供給材料流は、第三のガス処理ユニットに渡されて、処理済みガス状供給材料流を得る。処理済みガス状供給材料流、第一のガス流の第二の部分、処理済み第一のガス流の第二の部分、随意に第三のガス流の第二の部分、及び随意に第四のガス流の第二の部分が、ガス発酵バイオリアクターユニットに渡されて、ガス発酵流と、H2を含むテールガス流とを生成する。ガス発酵流は、脱ガス装置ユニットに渡され、少なくとも一つの発酵生成物及びCO2を含む生成物流を得る。生成物流の第一の部分は、真空蒸留ユニットに渡されて、少なくとも一つの発酵生成物及びCO2を含む流出ガス流に分離される。生成物流の第二の部分は、第一のガス処理ユニットに渡され、随意に、生成物流の第三の部分は、CO2からCOへの変換システムに渡される。流出流は、ガス発酵バイオリアクターユニットに渡される。テールガス流の第一の部分は、第二のガス処理ユニットに渡され、随意に、テールガス流の第二の部分は、CO2からCOへの変換システムに渡される。テールガス流の第三の部分及び第五のガス流は、酸化装置ユニットに渡される。
【0015】
一実施形態では、工業プロセスは、合成ガス排出工業プロセス、CO2排出工業プロセス、及びH2排出工業プロセスから選択される。一実施形態では、工業プロセスは、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプ・製紙、製鋼、石油精製、石油化学生産、コークス生産、嫌気性消化、好気性消化、天然ガス抽出、オイル抽出、地質学的貯蔵地、治金プロセス、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の生産のための、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の精製、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、又は合成ガスプロセスは、石炭のガス化のガス化、精製所残基のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース物質のガス化、黒液ガス化、公共固形廃棄物のガス化、産業固形廃棄物のガス化、下水のガス化、廃水処理からの汚泥のガス化、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガス又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0016】
一実施形態において、電解槽に対するエネルギー入力は、再生可能エネルギー生成ゾーンによって提供される。第一のガス処理ユニット、第二のガス処理ユニット及び第三のガス処理ユニットは、硫黄除去モジュールを備える。CO2からCOへの変換システムは、逆水性ガス反応システム、CO2電気分解システム、熱触媒変換システム、電気触媒変換システム、部分燃焼システム、及びプラズマ変換システムから選択される少なくとも一つのユニットである。酸化装置ユニットは、熱酸化装置ユニット、熱改質器ユニット、熱電気複合利用ユニット、又は合成ガス生成ユニットから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態による、工業プロセスと、発酵プロセス、二酸化炭素及び水電気分解プロセス、並びにCO
2からCOへの変換システムとの統合を示す、プロセス統合スキームを示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による、セメント生産プロセスと、電気分解プロセス及びガス発酵プロセスとの統合の概略的プロセスを示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、一つ以上の工業プロセスと、CO
2からCOへの変換システム、電気分解ユニット、及びガス発酵プロセスとの統合を示す、プロセス統合スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
統合された発酵及び工業プロセスにおける、炭素回収効率を改善するためのプロセスが開示されている。C1生成工業プロセス、H2排出工業プロセスと、C1固定発酵プロセス、CO2からCOへの変換システム、及び電気分解プロセスとの統合は、C1生成工業プロセス及びC1固定発酵プロセスの両方にかなりの利益をもたらす。「C1」は、一炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、又はCH3OHを指す。
【0019】
「C1生成工業プロセス」は、その作業プロセス中に少なくとも一つのC1含有ガスを生成する工業プロセスである。C1生成工業プロセスは、C1含有ガスを所望の最終生成物として、又は一つ以上の所望の最終生成物の生成における副生成物として生成する任意の工業プロセスを含むことが意図される。例示的なC1生成工業プロセスには、限定されるものではないが、塩基性酸素転炉(BOF)プロセス、製鋼プロセス、高炉(BF)プロセス及びコークス炉ガスプロセスを含む製鋼プロセス、公共固形廃棄物のガス化、バイオマスガス化、石油コークスガス化及び石炭ガス化を含むガス化プロセス、二酸化チタン生産プロセス、セメント生産プロセス、天然ガス発電プロセス、並びに石炭火力発電プロセスが含まれる。C1生成工業プロセスには、バイオマス原料に由来する糖のエタノールへの変換を伴う、従来のバイオマスからエタノールへの発酵プロセスがさらに含まれ得る。従来のエタノール発酵プロセスに適したバイオマス原料には、トウモロコシ繊維、トウモロコシ茎葉、バガス、及び稲わらが含まれる。
【0020】
「所望の最終生成物」は、工業プロセスの主要又は標的生成物を包含することを意図する。例えば、製鋼プロセスの所望の最終生成物は鋼製品であり、C1含有ガスは副生成物として生成されるが、MSWガス化プロセスでは、合成ガスのC1含有ガスが、ガス化プロセスの所望の最終生成物である。
【0021】
本開示は、工業プロセスによって生成されるC1含有ガスの組成を改善するために、H2O及び/又はCO2電気分解プロセス、並びにCO2からCOへの変換プロセスと結合された、統合されたC1生成工業プロセス及びC1固定発酵プロセスを提供する。C1固定発酵プロセスは、C1固定微生物を使用した、C1含有ガスの生物学的固定のためのプラットフォームを提供する。具体的には、C1固定微生物は、C1含有ガス及び/又はH2をエタノール及び2,3-ブタンジオールなどの生成物に変換する。本開示は、統合施設から排出されるCO2の総量を大いに低減するためのプロセス及びシステムを提供する。
【0022】
水素は、発酵プロセスに適したエネルギー源である。水素は、発酵基質組成を改善するために使用され得る。水素は、炭素含有ガスを有用な生成物に変換するために微生物が必要とするエネルギーを提供する。最適な濃度の水素が提供される場合、微生物培養物は、ほとんど二酸化炭素の同時生成なしに、所望の発酵生成物(すなわちエタノール)を生成することができる。
【0023】
水素は、次の化学量論的反応によって定義されるH2O電気分解プロセスによって生成され得る:2H2O+電気a2H2+O2+熱。水電解技術は公知であり、例示的なプロセスには、アルカリ水電解、タンパク質交換膜(PEM)電気分解、及び固体酸化物電気分解が含まれる。好適な電解槽には、アルカリ電解槽、PEM電解槽、及び固体酸化物電解槽を含む。電気分解によって生成される水素は、好適な炭素源を含有する産業廃棄物ガス、例えば、一酸化炭素(CO)及び/又は二酸化炭素(CO2)などの少なくとも一つのC1含有ガスと組み合わせて供給される時に、ガス発酵のための供給原料として使用され得る。
【0024】
CO2低減のための電気分解プロセス及び電解槽が知られている。CO2低減のために様々な触媒を使用すると、最終生成物に影響を与える。Au、Ag、Zn、Pd、及びGa触媒を含む触媒は、CO2からCOを生成するのに効果的であることが示されている。水電気分解のために上述したものなどの標準的な電解槽を使用してもよい。CO2電気分解によって生成される一酸化炭素は、ガス発酵のための供給原料として使用され得る。加えて、生成されたCOは、追加の原料供給として、工業ガス流と混合されてもよい。CO2及びエネルギー入力は、次の化学量論的反応によって定義される、CO2電気分解プロセスによって、一酸化炭素及びO2を生成し得る:2CO2+電気a2CO+O2+熱。
【0025】
H2O電気分解ユニット又はCO2電気分解ユニットに対するエネルギー入力は、再生可能エネルギー源に由来してもよい。再生可能エネルギーの例示的な供給源としては、風力発電、水力発電、ソーラーエネルギー、地熱発電、原子力、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
CO2電気分解ユニットのCO2の電気分解によって生成される一酸化炭素は、発酵基質組成を改善するために使用されてもよく、発酵基質として利用される産業廃棄物ガスのCO含有量を濃縮することができる。加えて、発酵プロセスによって生成されるCO2は、CO2電解槽の供給原料として再循環されてもよく、それによってCO2排出をさらに低減し、液体発酵生成物中に捕捉される炭素の量を増加させる。
【0027】
多くの工業プロセスにおいて、酸素は空気供給材料から供給される。塩基性酸素転炉(BOF)プロセス、製鋼プロセス、高炉(BF)プロセス、二酸化チタン生産プロセス、合金鉄生産プロセス及びガス化プロセスなどの部分酸化プロセスでは、O2は典型的には、低温蒸留又はPSA分離などの空気分離プロセスを使用して空気から生成される。本開示によると、電気分解プロセスによって生成されるO2は、空気分離の要件を低減するか、又は置き換えることができる。
【0028】
電気分解プロセスの副生成物として生成されるO2は、発酵のための工業ガスの使用にさらなる利益をもたらす。本開示の発酵プロセスは嫌気性プロセスであるが、H2O電気分解及びCO2電気分解プロセスの両方のO2副生成物は、C1含有テールガスが得られるC1生成工業プロセスに使用され得る。電解プロセスの高純度O2副生成物は、工業プロセスと統合されてもよく、コストを有益に相殺し、一部の場合、工業プロセス並びにその後のガス発酵の両方のコストをさらに低減する相乗効果を有する。典型的には、工業プロセスは、必要な酸素を空気分離によって導出する。空気分離による酸素の生成は、エネルギー集約的なプロセスであり、N2からO2を極低温で分離して、最高の純度を達成することを伴う。電気分解によるO2の同時生成、及び空気分離によって生成されたO2の置換は、工業プロセスの電力コストの最大5%を相殺し得る。
【0029】
水素、一酸化炭素、及び酸素などの電気分解生成物は、C1含有テールガスが発酵基質としての使用に適している工業プロセスにおいてなど、工業生産プロセス及びガス発酵プロセスの統合の全体的な効率を改善するためにも利用することができ、水素又は一酸化炭素と混合することによるさらなる基質最適化は、発酵の全体的炭素利用を改善することができる。効率は、(i)水素を使用して発酵基質組成を改善すること、(ii)一酸化炭素を使用して発酵基質組成を改善すること、(iii)電気分解プロセスに由来する酸素を使用して、工業プロセスの酸素要件を相殺すること、(iv)CO2を発酵プロセス流出ガス流からCO2電解槽に再循環させて、追加のCOを生成し、CO2排出をさらに低減すること、又は(v)上記の任意の組み合わせによって改善され得る。
【0030】
本開示の統合プロセスは、O2を含む第一のガス流及びCOを含む第二のガス流を、CO2電気分解ユニットから取得することを含む。H2を含む第三のガス流は、H2O電気分解ユニットから取得される。第一のガス流の少なくとも一部分が、工業プロセスゾーンにおいて、CO2を含むテールガス流に変換される。テールガス流の少なくとも一部分及び随意に第三のガス流の少なくとも一部分は、CO2からCOへの変換システムに渡されて、COを含むガス状供給材料流を生成する。
【0031】
CO2からCOへの変換システムは、逆水性ガス反応システム、CO2電気分解システム、熱触媒変換システム、電気触媒変換システム、部分燃焼システム、プラズマ変換システム、又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも一つのユニットである。逆水性ガス反応ユニット(rWGR)は、二酸化炭素及び水素から水を生成し、一酸化炭素を副生成物とする。逆水性ガス反応ユニットは、単一の段階又は複数の段階を含み得る。異なる段階は、異なる温度で行われてもよく、異なる触媒を使用してもよい。熱触媒変換は、熱エネルギーを反応の駆動力として使用してCOを生成することにより、触媒上でCO2及び他の反応物の安定した原子結合及び分子結合を破壊する。CO2分子は熱力学的及び化学的に安定しているため、CO2が単一の反応物として使用される場合、大量のエネルギーが必要となる。したがって、熱力学的プロセスを容易にするために、水素などの他の物質が共反応物として使用されることが多い。金属及び金属酸化物、並びにナノサイズの触媒金属-有機フレームワークなどのプロセスに対して、多くの触媒が知られている。様々な炭素材料が、触媒の担体として用いられてきた。電気触媒変換は、水及び二酸化炭素から合成ガスを生成するための、二酸化炭素の電気触媒還元である。二酸化炭素の電気化学変換とも呼ばれる、こうした電気触媒変換は、典型的には、それを通して二酸化炭素が気泡状になる電解質を支持する溶液を有する電気化学セルの電極を必要とする(例えば、US 10,119,196を参照のこと)。生成された合成ガスは、合成ガスとしても知られ、COを含み、電気化学セルの溶液から分離され、除去される。例えば、太陽光照射を使用する光電気触媒における光触媒及び電気触媒の組み合わせも、適切な変形である。
【0032】
ガス状供給材料流、第二のガス流、及び随意に第三のガス流の少なくとも一部分が、少なくとも一つのC1固定微生物の培養物を含むガス発酵バイオリアクターに渡される。培養物は発酵されて、少なくとも一つの発酵生成物、及びCO2電気分解プロセスに再循環されるCO2を含む流出ガス流を生成する。本明細書で再循環について論じるとき、ユニットに流れを再循環させる又は渡すという記載は、ユニットへの流れの直接の独立した導入、又はユニット別の入力と流れの組み合わせを含むことを意味する。
【0033】
ガス発酵バイオリアクターは、一つ以上の容器及び/又は塔又は配管配置から成る発酵システムであってもよい。ガス発酵バイオリアクターの例は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、循環ループ反応器、中空糸膜バイオリアクター(HFM BR)などの膜反応器、又は気液接触に適した他のデバイスを含む。ガス発酵は、並列又は直列のいずれかで、複数の反応器又は段階を備えてもよい。ガス発酵バイオリアクターは、発酵生成物の大部分が生成される生産反応器であってもよい。
【0034】
ガス発酵バイオリアクターは、C1炭素源から一つ以上の生成物を生成する能力を有する一つ以上のC1固定微生物の培養物を含む。「C1」は、一炭素分子、例えばCO又はCO
2を指す。「C1炭素源」とは、微生物のための部分的又は唯一の炭素源として機能する一炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO
2、又はCH
2O
2のうちの一つ以上を含み得る。一部の実施形態では、C1炭素源は、CO及びCO
2の一方又は両方を含み得る。典型的には、C1固定微生物はC1固定細菌である。一実施形態では、微生物は、表1で特定されるC1固定微生物に由来する。微生物は、機能的特性に基づいて分類されてもよい。例えば、微生物は、C1固定微生物、嫌気性生物、アセトゲン、エタノロゲン、及び/又はカルボキシド栄養生物に由来し得る。表1は、微生物の代表的なリストを提供し、微生物の機能的特性を特定する。
【表1】
【0035】
「嫌気性生物」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性生物は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を示し得るか、又は死滅し得る。典型的には、微生物は、嫌気性生物である。一実施形態では、微生物は、表1で特定される嫌気性生物であるか、又はそれに由来する。
【0036】
「アセトゲン」は、嫌気呼吸の生成物としてアセテート若しくは酢酸を生成する、又は生成することが可能である微生物である。典型的には、アセトゲンは、エネルギー節約のため、並びにアセチル-CoA及びアセテートなどのアセチル-CoA誘導生成物の合成のためのそれらの主要機構として、ウッド・ユングダール経路を使用する、偏性嫌気性細菌である。全ての自然発生アセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。
【0037】
微生物はClostridium属の一員であってもよい。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiの種を含むClostridiaのクラスターに由来する。
【0038】
本開示の微生物は、一つ以上の生成物を生成するように培養され得る。例えば、Clostridium autoethanogenumは、エタノール(WO 2007/117157)、酢酸塩(WO 2007/117157)、ブタノール(WO 2008/115080及びWO 2012/053905)、酪酸塩(WO 2008/115080)、2,3-ブタンジオール(WO 2009/151342)、乳酸塩(WO 2011/112103)、ブテン(WO 2012/024522)、ブタジエン(WO 2012/024522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO 2012/024522及びWO 2013/185123)、エチレン(WO 2012/026833)、アセトン(WO 2012/115527)、イソプロパノール(WO 2012/115527)、脂質(WO 2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオナート(3-HP)(WO 2013/180581)、イソプレン(WO 2013/180584)、脂肪酸(WO 2013/191567)、2-ブタノール(WO 2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO 2014/0369152)、1-プロパノール(WO 2014/0369152)、エチレングリコール(WO 2019/125400)、及び2-フェニルエタノール(WO 2021/188190)を生成するか、又は生成するように遺伝子操作され得る。一つ以上の標的生成物に加えて、本開示の微生物はまた、エタノール、アセテート、及び/又は2,3-ブタンジオールも生成し得る。ある特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物とみなされ得る。
【0039】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/又は無機物を含む水性培地中で維持される。水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知である。
【0040】
培養及び/又は発酵は、望ましくは、標的生成物の生成に適切な条件下で実施されてもよい。培養/発酵は、嫌気性条件下で実施されてもよい。考慮すべき反応条件は、圧力又は分圧、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、連続撹拌槽反応器を使用する場合は撹拌速度、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。具体的には、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0041】
上昇した圧力でガス発酵バイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。それゆえに、培養発酵は、大気圧よりも高い圧力で実施されてもよい。また、所与のガス変換速度は、部分的に基質保持時間の関数であるため、変換速度は、必要とするガス発酵バイオリアクターの体積を規定する。加圧システムの使用は、必要とするガス発酵バイオリアクターの体積、及び結果として、培養/発酵設備の資本コストを大幅に減少させることができる。それゆえに、ガス発酵バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される保持時間は、ガス発酵バイオリアクターが大気圧ではなく上昇した圧力に維持されたときに低減され得る。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、発酵は大気圧より高い圧力で操作され得る。
【0042】
標的生成物は、例えば、分別蒸留、蒸発、浸透蒸発、ガスストリッピング、相分離、例えば、液-液抽出を含む抽出分離を含む、当該技術分野で既知の任意の方法又は方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離してもよい。特定の実施形態では、標的生成物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから分離し、標的生成物を水性残余から分離することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール、アセトン及び/又はその他の副生成物は、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物バイオマスは、ガス発酵バイオリアクターに再循環されてもよい。標的生成物が除去された後に残された溶液も、ガス発酵バイオリアクターに再循環されてもよい。追加の栄養素を、再循環された溶液に添加して、培地がガス発酵バイオリアクターに戻される前に、培地を補充してもよい。
【0043】
一部の場合、C1含有ガスのガス組成は、典型的な発酵プロセスには理想的ではない。地質学的な制限、利用可能な水素源の不足、又はコストの考慮により、発酵プロセスのための水素の使用は困難であった。再生可能な水素(例えば、電気分解によって生成される水素)を利用することによって、これらの制限の多くを低減又は除去し得る。さらに、C1含有ガスを再生可能水素流と混合することにより、エネルギー的に改善された混合基質流が提供される。
【0044】
本開示の一部の実施形態は、本開示を実施するための装置及び方法の両方に関する、
図1~3に示すプロセス構成を参照することによって説明され得る。方法の「工程」への任意の言及は、装置の「ユニット」又は工程を実施するのに適した設備への言及を含み、その逆も同様である。図は、本開示の性能を示すために特に必要とされない、容器内部、温度及び圧力制御システム、流量制御弁、再循環ポンプなど、この種のプロセスにおいて慣習的に用いられる多数の装置を削除することによって簡略化されている。
【0045】
図1は、本開示の一実施形態による、発酵プロセス、CO
2からCOへの変換システムを用いた二酸化炭素及び水の電気分解プロセス、及びガス流から少なくとも一つの発酵生成物を生成するためのプロセスを有する統合システムを示す。CO
2電気分解ユニット120は、再生可能エネルギー入力100を受容する。再生可能エネルギー入力の例示的な供給源としては、風力発電、水力発電、ソーラーエネルギー、地熱発電、原子力、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。O
2を含む第一のガス流及びCOを含む第二のガス流は、CO
2電気分解ユニット120から取得され得る。第一のガス流121は、工業プロセスユニット140に渡されて、工業プロセスユニット140の空気要件を置き換え、工業プロセスは、CO
2を含むテールガス流141を生成する。少なくとも一部分のテールガス流141が、ガス処理ユニット160に渡されてもよい。ガス処理ユニット160は、テールガス流141から一つ以上の汚染物質を除去するための少なくとも一つのガス処理モジュールを備えて、処理済みテールガス流161を生成し、これをCO
2電気分解ユニット120に渡してもよい。COを含む第二のガス流122は、少なくとも一つのC1固定微生物の培養物を含むガス発酵バイオリアクターユニット170に渡される。H
2電気分解ユニット130は、再生可能エネルギー入力110を受容して、H
2を含む第三のガス流131を生成する。テールガス流141の少なくとも一部分142及び第三のガス流131の少なくとも一部分は、CO
2からCOへの変換システム150に渡されて、COを含むガス状供給材料流151を生成する。ガス状供給材料流151は、ガス発酵バイオリアクターユニット170に渡される。随意に、テールガス流143の少なくとも一部分、及び随意に第三のガス流131の少なくとも一部分132が、ガス発酵バイオリアクターユニット170に渡されてもよい。培養物は、発酵されて、一つ以上の発酵生成物171及びCO
2を含む流出ガス流172を生成する。流出ガス流172は、CO
2電気分解ユニット120に再循環されてもよい。
【0046】
一実施形態では、工業プロセスユニット140は、部分酸化プロセスユニット、ガス化プロセスユニット、完全酸化プロセスユニット、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。部分酸化プロセスは、部分酸化反応を含む工業プロセスである。部分酸化プロセスは、塩基性酸素転炉(BOF)反応、COREX又はFINEX製鋼プロセス、高炉(BF)プロセス、合金鉄プロセス、二酸化チタン生産プロセス、ガス化プロセス、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。ガス化プロセスは、公共固形廃棄物ガス化プロセス、バイオマスガス化プロセス、石油コークスガス化プロセス、石炭ガス化プロセス、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。流れ171中の発酵生成物のうちの少なくとも一つは、エタノール、酪酸塩、2,3-ブタンジオール、乳酸塩、ブテン、ブタジエン、メチルエチルケトン、エチレン、アセトン、イソプロパノール、脂質、3-ヒドロイプロピオネート(hydroypropionate)、テルペン、脂肪酸、2-ブタノール、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、エチレングリコール、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0047】
工業プロセスからのテールガス流は、少なくとも一つのC1成分を含む。C1含有テールガス中のC1成分は、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、又はそれらの組み合わせから選択される。C1含有テールガスは、窒素及び水素など、一つ以上の非C1成分をさらに含んでもよい。C1含有テールガスは、工業プロセスからの汚染成分をさらに含んでもよい。一実施形態では、C1含有テールガスは、少なくとも一つの汚染物質又は非C1成分を除去するためにガス処理ユニットに渡されて、精製されたC1含有テールガスを提供してから、ガス発酵バイオリアクターに渡される。
【0048】
多くの工業プロセスは、C1含有ガスを生成するが、これは典型的なC1発酵プロセスには理想的ではない場合があり、こうした工業プロセスには、セメント生産プロセス、天然ガス発電プラント、精製所プロセス、エタノール生産発酵プロセス、又はそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。セメント生産プロセスは、典型的に、CO2を豊富に含む流出ガス流を生成する。CO2は、C1固定微生物によって利用され得るが、水素もまた、典型的に、CO2を生成物に固定するのに必要なエネルギーを提供するために用いられる。
【0049】
セメント生産プロセスなどの完全な酸化プロセスと、CO2及び/又はH2Oの電解槽ユニット、CO2からCOへの変換システム及びC1固定発酵プロセスとの統合は、(i)CO2からCOへの変換機構を提供すること、(ii)電気分解プロセスによって提供されるO2が、セメント生産プロセスへの空気供給材料を置き換え、セメント生産プロセスの流出ガス中のCO2の組成を増加させること、(iii)発酵プロセスによって生成されるCO2は、CO2電解槽に再循環されて、発酵のためにCO基質に変換され、それによって、複合プロセスによるCO2排出をさらに低減し得ることを含む、多くの相乗利益を提供する。
【0050】
図2は、セメント生産プロセスと、電気分解プロセス及びガス発酵プロセスとの統合の概略的プロセスを示す。H
2を含む第一のガス流132及びO
2を含む第二のガス流134は、水電気分解ユニット130中、再生可能エネルギー入力を使用して水流200の電気分解によって生成される。第二のガス流134は、セメント生産ユニット140に渡されて、セメント生産プロセスの典型的な空気要件の少なくとも一部を置き換える。セメント生産プロセス140は、CO
2を豊富に含むテールガス流141を生成する。CO
2濃縮テールガス流141の第一の部分、及び随意に第一のガス流131の第一の部分が、CO
2からCOへの変換システム150に渡されて、COを含む流出ガス流を生成する。随意に、CO
2濃縮テールガス流143の第二の部分及び第一のガス流132の第二の部分が、流出ガス流と組み合わされて、C1含有供給材料流151を提供してもよい。C1含有供給材料流151は、C1固定細菌の培養物を含有するガス発酵バイオリアクター170に渡される。C1含有供給材料流151は、発酵されて、少なくとも一つの発酵生成物流171を生成する。
【0051】
一実施形態では、セメント生産プロセスと水電気分解プロセスとの統合は、エネルギー的に改善されたガス状基質を可能にする。統合は、(i)セメント生産プロセスへの空気供給材料を電気分解プロセスからのO2で置き換えることは、セメント生産プロセスの流出ガス中のCO2の組成を増加させる、及び(ii)電気分解プロセスによって生成される水素と、生成されるCO2の豊富なガスとの混合は、発酵プロセスに適したCO2及びH2ガス流を提供する、という二つの利点を有する。
【0052】
一実施形態では、セメント生産プロセスからのCO
2の少なくとも第一の部分及び電気分解プロセスからの水素の第一の部分は、CO
2からCOへの変換システムに提供されて、以下の化学量論的反応によってCOを生成し得る。
【化1】
【0053】
CO
2からCOへの変換システムによって生成されるCOは、工業ガス流に由来するCO
2の第二の部分及び生成された水素の第二の部分と混合されて、所望の組成を有する発酵基質を提供し得る。発酵基質の所望の組成は、発酵反応の所望の発酵生成物に応じて変化するであろう。エタノール生産については、例えば、所望の組成は、次の式によって決定され得る:
、式中、CO
2消費量については
。特定の実施形態では、発酵基質は、H
2:CO比が20:1未満、又は15:1未満、又は10:1未満、又は8:1未満、又は5:1未満、又は3:1未満であってもよく、CO
2は、代数式による少なくとも化学量論量で入手可能である。
【0054】
図3は、一つ以上の工業プロセスと、CO
2からCOへの変換システム、電気分解ユニット、及びガス発酵プロセスとの統合を示す、本開示の一実施形態のプロセス統合スキームを示す。
図3では、CO及びH
2を含む第一のガス流が、工業プロセス310から取得される。CO
2を含む第二のガス流は、工業プロセス320から取得される。H
2を含む第三のガス流は、工業プロセス340から取得される。H
2O電気分解ユニット130は、エネルギー入力300を受容して、H
2を含む第四のガス流と、O
2を含む第五のガス流とを生成する。エネルギー入力は、再生可能エネルギー源に由来してもよい。再生可能エネルギーの例示的な供給源としては、風力発電、水力発電、ソーラーエネルギー、地熱発電、原子力、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
第一のガス流の第一の部分、及び第二のガス流の第一の部分が第一のガス処理ユニット330に渡されて、処理済み第一のガス流及び処理済み第二のガス流を得る。第三のガス流の第一の部分は、第二のガス処理ユニット350に渡されて、処理済み第三のガス流を得る。処理済み第二のガス流332、第二のガス流の第二の部分321、処理済み第三のガス流351、第三のガス流の第二の部分341、及び随意に処理済み第一のガス流の第一の部分331、第四のガス流の第一の部分131が、CO2からCOへの変換システム150に渡されて、COを含むガス状供給材料流及びH2Oを含む出力流を生成する。出力流153は、H2O電気分解ユニット130に再循環される。随意に、ガス状供給材料流152は、第三のガス処理ユニット360に渡されて、処理済みガス状供給材料流と、未反応H2又はCO2を含む未反応ガス流とを得る。随意に、未反応のガス流362はCO2からCOへの変換システム150に渡される。処理済みガス状供給材料流361、第一のガス流の第二の部分、処理済み第一のガス流の第二の部分311、処理済み第一のガス流333、随意に第三のガス流の第二の部分342、及び随意に第四のガス流の第二の部分132が、ガス発酵バイオリアクターユニット170に渡されて、ガス発酵流と、H2を含むテールガス流とを生成する。ガス発酵流173は、脱気装置ユニット370に渡されて、少なくとも一つの発酵生成物及びCO2を含む生成物流を得る。生成物流371の第一の部分は、真空蒸留ユニット380に渡されて、少なくとも一つの発酵生成物381と流出ガス流とに分離される。真空蒸留ユニット380は、発酵ブロスから生成物流を効果的に除去するように設計されている。第一のガス処理ユニット、第二のガス処理ユニット及び第三のガス処理ユニットは、硫黄除去モジュールを備えてもよい。CO2からCOへの変換システムは、逆水性ガス反応システム、熱触媒変換システム、部分燃焼システム、又はプラズマ変換システムから選択される。
【0056】
生成物流の第二の部分372は、第一のガス処理ユニット330に渡される。随意に、生成物流の第二の部分373は、CO2からCOへの変換システム150に渡される。テールガス流の第一の部分175は、第二のガス処理ユニット350に渡される。随意に、テールガス流の第二の部分176は、CO2からCOへの変換システム150に渡される。テールガス流の第三の部分174及び第五のガス流133は、酸化装置ユニット390に渡される。
【0057】
一実施形態では、酸化装置ユニットは、熱酸化装置ユニット、熱改質器ユニット、熱電気複合利用ユニット、及び合成ガス生成ユニットから選択される。一つ以上の工業プロセスは、合成ガス排出工業プロセス、CO2排出工業プロセス、及びH2排出工業プロセスから選択される。一つ以上の工業プロセスは、炭水化物発酵、ガス発酵、セメント製造、パルプ・製紙、製鋼、石油精製、石油化学生産、コークス生産、嫌気性消化、好気性消化、天然ガス抽出、オイル抽出、地質学的貯蔵地、治金プロセス、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の生産のための、アルミニウム、銅及び又は鉄合金の精製、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、又は合成ガスプロセスは、石炭のガス化のガス化、精製所残基のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース物質のガス化、黒液ガス化、公共固形廃棄物のガス化、産業固形廃棄物のガス化、下水のガス化、廃水処理からの汚泥のガス化、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガス又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0058】
特定の実施形態では、一つ以上の工業プロセスは、塩基性酸素転炉、高炉、及びコークス炉プロセスから選択される製鋼プロセスであってもよい。コークス炉ガス(COG)は、5~10%のCO、55%のH2、3~5%のCO2、10%のN2、及び25%のCH4の典型的な組成を有する。高炉(BF)ガスの典型的な組成は、20~35%のCO、2~4%のH2、20~30%のCO2、及び50~60%のN2である。典型的な塩基性酸素転炉(BOF)ガスは、50~70%のCO、15~25%のCO2、15~25%のN2、及び1~5%のH2を含む。
【0059】
基質及び/又はC1炭素源は、石炭若しくは精製所残渣のガス化、バイオマス若しくはリグノセルロース物質のガス化、又は天然ガスの改質によって得られる合成ガスなど、合成ガスであってもよい。別の実施形態では、合成ガスは、公共固形廃棄物又は産業固形廃棄物のガス化から得てもよい。
【0060】
基質の組成は、反応の効率及び/又は費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、O2の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減し得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない成分、又はちり粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0061】
C1含有ガス状基質の組成は、使用される工業プロセスのタイプ、及び工業プロセスに提供される供給原料を含む要因に応じて変化し得る。生成されたC1含有ガス状基質のすべてが、発酵プロセスに理想的なガス組成を有するわけではない。C1含有ガスを、再生可能水素流、追加のCO流と組み合わせるか、又はC1基質中のCO2をCOに変換して、エネルギー的に改善された混合ガス流を提供する。
【0062】
水素の存在下で発酵プロセスを動作すると、発酵プロセスによって生成されるCO
2の量を低減するという追加の利点がある。例えば、最小限のH
2を含むガス状基質は、典型的には、次の化学量論:[6CO+3H
2OaC
2H
5OH+4CO
2]により、エタノール及びCO
2を生成する。C1固定細菌によって利用される水素の量が増加すると、生成されるCO
2の量は減少する[例えば、2CO+4H
2aC
2H
5OH+H
2O]。方程式の一般的な形態は、
であり、CO
2消費量を達成するためには
。
【0063】
COがエタノール生成の唯一の炭素及びエネルギー源である場合、次のように炭素の一部分がCO
2に失われる。
【化2】
【0064】
これらの場合、相当量の炭素がCO2に転換される場合、CO2をガス化プロセスなどの工業プロセスに戻すか、又は代替的にCO2をCO2からCOへの変換システムに送ることが望ましい。本開示によれば、CO2電解槽が存在する場合、CO2テールガスは、CO及びO2への還元のために、電解槽に再循環されてもよい。
【0065】
基質で利用可能なH
2の量が増加すると、生成されるCO
2の量は減少する。化学量論比が1:2(CO/H
2)の場合、CO
2の生成は、完全に回避される。
【化3】
【化4】
【化5】
【0066】
発酵において、CO
2が炭素源であり、H
2が電子源であるとき、化学量論は以下の通りである。
【化6】
【0067】
電気分解生成プロセスのO2副生成物は、CO2ガスの生成のための工業プロセスで使用され得る。完全酸化プロセスの場合、電気分解のO2副生成物は、典型的には必要とされる空気供給材料を置き換えるであろう。空気ではなく酸素を加えると、プロセスの流出ガス中のCO2の組成が増加する。例えば、100%の酸素供給:CH4+2O2aCO2+2H2Oは、流出ガス中に100%のCO2濃度を提供するが、空気供給:CH4+2O2+7.5N2aCO2+2H2O+7.5N2は、流出ガス流中に12%のCO2を提供する。
【0068】
CO2供給原料は、電気分解によって生成される水素と組み合わせられて、CO2及びH2発酵プロセス用に最適化された供給原料を提供し得る。例えば、6H2+2CO2aC2H5OH+3H2O。
【0069】
C1固定細菌は、典型的には、一酸化炭素資化菌、独立栄養生物、アセトゲン、及びエタノロゲンから選択される嫌気性細菌である。より具体的には、C1固定細菌は、クロストリジウム属から選択される。特定の実施形態において、C1固定細菌は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiから成る群から選択される。
【0070】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、あたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の参考文献の言及は、その参考文献が任意の国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという承認ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0071】
本開示において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段の断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」ことを意味する)と解釈されるものとする。選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢の1つ、両方、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、示される範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0072】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値を個々に言及する簡略法としての機能を果たすことを単に意図し、各別個の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1、及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0073】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施されてもよい。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実践に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0074】
複数の実施形態が本明細書に記載される。それらの実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。当業者は、必要に応じてこうした変化形を採用してもよく、本開示が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実践されることが意図されている。したがって、本開示は、適用法によって許可されたとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物及び同等物を含む。更に、その全ての考えられる変化形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
【国際調査報告】