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特表2024-513840試料の付着及び染色のための卓上機器及び消耗品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】試料の付着及び染色のための卓上機器及び消耗品
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/31 20060101AFI20240319BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20240319BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240319BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N35/04 E
G01N35/10 A
G01N1/00 101F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560426
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022022957
(87)【国際公開番号】W WO2022212791
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,522
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441939
【氏名又は名称】エーエスピー ヘルス インク.
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】523371333
【氏名又は名称】プラネット イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ダブリュー. ハート
(72)【発明者】
【氏名】タマラ エス. スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エル. ブルーストーン
(72)【発明者】
【氏名】マルゴー ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】デレク ガーバン
(72)【発明者】
【氏名】ニック ブッカー
(72)【発明者】
【氏名】ニック ムスコス
(72)【発明者】
【氏名】チェスター ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ バーテル
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ターナー
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052CA03
2G052CA18
2G052CA39
2G052DA07
2G052FA05
2G052FA10
2G052GA32
2G058CC09
2G058CD11
(57)【要約】
細胞試料を付着させ染色するための装置は、スライド処理モジュールであって、検体投入ポート(SIP)ドックであって、細胞試料を含むSIP消耗品を受容し、SIP消耗品の噴霧ノズルとスライド処理モジュールの空気ノズルとが付着操作に先立って位置合わせされるようにSIP消耗品を位置決めするように構成された、SIPドックと、付着操作及び染色操作を設定するユーザからの入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースと、を備える、スライド処理モジュールと、スライド処理モジュールに結合された補助システムモジュールであって、試薬、緩衝液又はエタノールベースの固定剤のうちの1つ以上を含む複数のボトルを保持するように構成された、取り外し可能な収納容器を含む、筐体と、ユーザからの入力に基づいて、付着操作及び染色操作のための予めプログラムされたプロトコルを実行するように構成された、電子回路サブシステムと、を備える、補助システムモジュールと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞試料を付着させ染色するための装置であって、
前記装置の上方前部位置に位置決めされたスライド処理モジュールであって、
検体投入ポート(SIP)ドックであって、前記細胞試料を含むSIP消耗品を受容し、前記SIP消耗品の噴霧ノズルと前記スライド処理モジュールの空気ノズルとが付着操作に先立って位置合わせされるように前記SIP消耗品を位置決めするように構成された、SIPドックと、
前記付着操作及び染色操作を設定するユーザからの入力を受け取るように構成された、ユーザインタフェースと、を備える、スライド処理モジュールと、
前記装置の下方前部に位置決めされたクランプモジュールであって、
スライドベッド上の少なくとも1枚のスライドが前記スライドベッドに対してしっかりと封止するフード消耗品によってカバーされるように、前記スライドベッドを直線レールに沿って上昇させるように下向きに押されるように構成された、ハンドルと、
前記付着操作が完了するまで前記スライドベッドをロックするように構成された、ソレノイドラッチと、を備える、クランプモジュールと、
前記装置の後部に位置決めされた補助システムモジュールであって、
複数の試薬ボトル、緩衝液ボトル、及びエタノールベースの固定剤ボトルを保持するように構成された、取り外し可能な収納容器を含む、筐体と、
前記ユーザからの前記入力に基づいて、前記付着操作及び染色操作のための予めプログラムされたプロトコルを実行するように構成された、電子回路サブシステムと、を備える、補助システムモジュールと、を備える、装置。
【請求項2】
前記筐体は、
複数のコネクタのうちの少なくとも1つのコネクタを保持するように構成された管保持部であって、前記複数のコネクタの各々が、前記取り外し可能な収納容器の中の対応するボトルに結合され、前記少なくとも1つのコネクタは、前記対応するボトルから切り離される、管保持部を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
滴下トレイであって、前記筐体が、前記スライド処理モジュール及び前記取り外し可能な収納容器のオーバーフローポートからの液体が、前記滴下トレイに導かれるように構成されている、滴下トレイを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スライド処理モジュールは、加熱要素を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記空気ノズルは、約1psi~約30psiの第1の圧力で気体物質を分注する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スライド処理モジュールは、前記空気ノズルの外側にインサートを更に備え、前記インサートは、空気が前記第1の圧力よりも大きい第2の圧力で押されて通る複数の丸い穴を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
流体試料を分注するための装置であって、
試料物質を受容するように構成された、入口ポートと、
前記入口ポートを取り囲み、いかなるオーバーフロー試料物質も受容するように構成された、堀と、
前記試料物質を放出するために前記入口ポートに流体結合された第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルであって、管状接合部が、前記入口ポートを、前記第1の試料ノズルにおいて終端する第1の管状流体経路及び前記第2の試料ノズルにおいて終端する第2の管状流体経路に流体結合し、前記管状接合部の断面積は、前記第1の管状流体経路及び前記第2の管状流体経路の平均断面積よりも小さく、前記管状接合部の前記断面積は、毛細管現象を介して前記入口ポートから前記管状接合部の中へと前記試料物質を引き込むように選択されている、第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルと、を備える、装置。
【請求項8】
前記堀は、前記試料物質が、前記入口ポートにおける付着に先立って緩衝液と混合されることを可能とするように更に構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記緩衝液は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)溶液を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記緩衝液は、少なくとも1つのタンパク質を更に含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記タンパク質は、アルブミン又はヘパリンである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の試料ノズルは、第1の気体ノズルと第1の標的との間に配置され、前記第1の気体ノズルが作動させられ前記第1の試料ノズルに向かって気体を放出すると、前記第1の試料ノズルは前記第1の標的に向かって前記試料物質を放出する、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の管状流体経路の断面積は、その長さにわたって均一である、請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の管状流体経路の断面積は、前記管状接合部から前記第1の管状経路の中間点まで増大し、前記中間点から前記第1の試料ノズルまで減少する、請求項7に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の試料ノズル及び前記第2の試料ノズルとは反対側の端部において、前記入口ポートに隣接するグリップ部分を更に備える、請求項7に記載の装置。
【請求項17】
前記グリップ部分は、窪みを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
付着操作の完了に後続して、前記グリップ部分が前記装置から取り外されることを可能とする、前記グリップ部分に隣接するスナップ特徴を更に備える、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記入口ポートの深さ及び形状は、前記管状接合部の中への前記試料物質の引き込みを増大させるように選択されている、請求項7に記載の装置。
【請求項20】
流体試料を装填するための装置であって、
検体投入ポート(SIP)消耗品を保持するように構成された、SIPスタンドと、
前記SIP消耗品の中へと前記流体試料を装填する際にオーバーフロー流体試料物質を捕捉するように構成された、前記SIPスタンドに隣接して位置決めされた、ジャーと、
前記流体試料の前記装填を容易化するように構成された、前記SIPスタンドに近接して位置決めされた、アームレストと、を備える、装置。
【請求項21】
前記アームレストは、収納構成において、前記SIPスタンドを適所に保持する磁石を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
試料分析システムにおける標的上への試料物質の付着を改善するための装置であって、前記装置は、
上部パネル、前面パネル、左側パネル、右側パネル、及び背面パネルを含む本体であって、前記上部パネルは、前記試料物質を受容するように構成された第1の開口部を含む、本体と、
前記背面パネルに隣接して位置決めされ、前記上部パネルに平行であり、前記背面パネルに垂直である、下部パネルであって、前記下部パネルは、前記標的上への前記試料物質の前記付着に後続して、染色剤又は色素を受容するための第2の開口部を含む、下部パネルと、
前記本体及び前記下部パネルを支持する底部リムであって、前記底部リムは、前記付着に先立って前記標的に固着するように構成されている、底部リムと、
を備え、前記底部リムと前記上部パネルとの間の距離は、様々な厚さを有する標的に対応するように構成されている、装置。
【請求項23】
前記第1の開口部は、前記上部パネルの上方に隆起しており、前記上部パネルは、前記前面パネルを越えて延在する、請求項22記載の装置。
【請求項24】
前記背面パネルは、前記装置を試料分析システムにしっかりと固定するように構成された切り欠きを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記底部リムは、前記底部リムと前記標的との間の封止を改善するように構成されたクランプを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記底部リムと前記クランプとの間の距離は、前記染色剤又は前記色素の排出の有効性を改善するように構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
請求項1~26のうちの1つ以上における装置を使用して細胞試料を付着させ染色するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/168,522号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本文書は、一般的に、研究室での処置に関し、より具体的には、研究室での細胞学的処置のための試料付着及び染色に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞学的手法は、低侵襲となるように開発され、医学の実務に革命をもたらした。不快感をほとんど伴わずに高品質の試料を迅速に得る能力が、一般的にかかる処置をより受け入れられやすいものとした。より最近においては、試料採取手法は、最終的に患者により良いケアを提供しつつ、研究室での実務を改善するように設計された、消耗品コンポーネントの使用を採用している。消耗品コンポーネントを使用することは、交差汚染を減少させ、信頼性を向上させる。
【発明の概要】
【0004】
開示される技術の実施形態は、細胞病理研究室において採取された(例えば微細針吸引を使用して)生物学的組織試料の迅速なオンサイトでの評価のための移動式専用システムを提供し、このシステムが、医療提供者が一貫した適時的な態様でこれらのサービスを実行することを可能とし、良好な患者の転帰に帰着する。いくつかの実施形態は、有利にも、複数の細胞学的スライドが実質的に同じ態様で調製されることを可能とする。
【0005】
一例においては、一貫した態様で2枚のスライドを調製することは、ユーザが、結果の信頼性を向上させるために分析又は試験を繰り返すこと、スライドのうちの一方を対照スライドとして使用すること、同じプロセス若しくは異なるプロセスを経た後に2枚のスライドを異なる時間に処理すること、スライドの一方を従来の組織学的染色を使用して処理し、他方を分子染色プロセスを使用して処理すること、又は一方のスライドをオンサイトで分析し、2枚目のスライドを検体の詳細な細胞学的分析のために研究室に送ることを可能にする。
【0006】
例示的な実施形態においては、細胞試料を付着させ染色するための装置は、装置の上方前部位置に位置決めされたスライド処理モジュールであって、検体投入ポート(SIP)ドックであって、細胞試料を含むSIP消耗品を受容し、SIP消耗品の噴霧ノズルとスライド処理モジュールの空気ノズルとが付着操作に先立って位置合わせされるようにSIP消耗品を位置決めするように構成された、SIPドックと、付着操作及び染色操作を設定するユーザからの入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースと、を含む、スライド処理モジュールと、装置の下方前部に位置決めされたクランプモジュールであって、スライドベッド上の少なくとも1枚のスライドがスライドベッドに対してしっかりと封止するフード消耗品によってカバーされるように、スライドベッドを直線レールに沿って上昇させるように下向きに押されるように構成された、ハンドルと、付着操作が完了するまでスライドベッドをロックするように構成された、ソレノイドラッチと、を含む、クランプモジュールと、装置の後部に位置決めされた補助システムモジュールであって、複数の試薬ボトル、緩衝液ボトル、及びエタノールベースの固定剤ボトルを保持するように構成された、取り外し可能な収納容器を含む、筐体と、ユーザからの入力に基づいて、付着操作及び染色操作のための予めプログラムされたプロトコルを実行するように構成された、電子回路サブシステムと、を含む、補助システムモジュールと、を含む。
【0007】
別の例示的な実施形態においては、流体試料を分注するための装置であって、試料物質を受容するように構成された、入口ポートと、入口ポートを取り囲み、いかなるオーバーフロー試料物質も受容するように構成された、堀と、試料物質を放出するために入口ポートに流体結合された第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルであって、管状接合部が、入口ポートを、第1の試料ノズルにおいて終端する第1の管状流体経路及び第2の試料ノズルにおいて終端する第2の管状流体経路に流体結合し、管状接合部の断面積は、第1の管状流体経路及び第2の管状流体経路の平均断面積よりも小さく、管状接合部の断面積は、毛細管現象を介して入口ポートから管状接合部の中へと試料物質を引き込むように選択されている、第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルと、を含む、装置。
【0008】
更に別の例示的実施形態においては、流体試料を装填するための装置であって、検体投入ポート(SIP)消耗品を保持するように構成された、SIPスタンドと、SIP消耗品の中へと流体試料を装填する際にオーバーフロー流体試料物質を捕捉するように構成された、SIPスタンドに隣接して位置決めされた、ジャーと、流体試料の装填を容易化するように構成された、SIPスタンドに近接して位置決めされた、アームレストと、を含む、装置。
【0009】
更に別の例示的な実施形態においては、試料分析システムにおける標的上への試料物質の付着を改善するための装置であって、上部パネル、前面パネル、左側パネル、右側パネル、及び背面パネルを含む本体であって、上部パネルは、試料物質を受容するように構成された第1の開口部を含む、本体と、背面パネルに隣接して位置決めされ、上部パネルに平行であり、背面パネルに垂直である、下部パネルであって、下部パネルは、標的への試料物質の付着に後続して、染色剤又は色素を受容するための第2の開口部を含む、下部パネルと、本体及び下部パネルを支持する底部リムであって、底部リムは、付着に先立って標的に固着するように構成されている、底部リムと、を含み、底部リムと上部パネルとの間の距離は、様々な厚さを有する標的を収めるように構成されている、装置。
【0010】
更に別の例示的な実施形態においては、以上に説明された1つ以上の装置を使用する、細胞試料を付着させ染色する方法が提供される。
【0011】
以上の及びその他の態様並びにそれらの実装は、図面、明細書及び特許請求の範囲において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-B】例示的な検体入口ポート(SIP)消耗品の種々の図及び特徴を示す。
【0013】
図1C】SIP消耗品の試料ウェルの断面を示す。
【0014】
図1D】SIP消耗品の噴霧ノズルを示す。
【0015】
図2】SIP消耗品の別の図を示す。
【0016】
図3】例示的なSIPスタンドの種々の図を示す。
【0017】
図4】例示的なフード消耗品の種々の図及び特徴を示す。
【0018】
図5】例示的な卓上機器の外観図を示す。
【0019】
図6】卓上機器の側面開放図を示す。
【0020】
図7】卓上機器の例示的な補助システムの両側面の開放図を示す。
【0021】
図8】補助システムの筐体の例を示す。
【0022】
図9】卓上機器の「流体」側を「乾燥」側から分離する筐体背板の例を示す。
【0023】
図10】卓上機器におけるボトルキャビティに整った外観をもたらす偽壁の例を示す。
【0024】
図11】噴霧付着のために卓上機器において使用される空気圧システムの例を示す。
【0025】
図12】卓上機器における滴下トレイの例を示す。
【0026】
図13図14図31において更に詳細に説明される、スライド処理機構の例を示す。
【0027】
図14】SIPドックの例を示す。
【0028】
図15】空気ノズルの幾何形状の例を示す。
【0029】
図16A】SIP側方ばねの例示的な動作を示す。
【0030】
図16B-C】SIPスイッチの例示的な動作を示す。
【0031】
図17】SIPマニホールドの例を示す。
【0032】
図18】取り外し可能なカセットの例を示す。
【0033】
図19】スライドベッドの例を示す。
【0034】
図20A】スライドベッドの例を示す。
【0035】
図20B】スライドスイッチの例を示す。
【0036】
図21】スライドばねベッドの例を示す。
【0037】
図22】エタノール固定システムの例を示す。
【0038】
図23】入口接続具の例を示す。
【0039】
図24】エタノール噴霧インサートの例を示す。
【0040】
図25】緩衝システムの例を示す。
【0041】
図26】SIPウェルの上方に位置する緩衝液ノズルの例を示す。
【0042】
図27】空気カーテンの例示的な動作を示す。
【0043】
図28】試薬マニホールドアセンブリの例を示す。
【0044】
図29】フードスイッチの例を示す。
【0045】
図30】清掃ポートの例を示す。
【0046】
図31】試薬経路の例を示す。
【0047】
図32A】クランプ機構の例を示す。
【0048】
図32B】クランプ機構の例示的なハンドルを示す。
【0049】
図33】クランプ機構の例示的なソレノイドラッチを示す。
【0050】
図34】卓上機器のカバー及び扉の例を示す。
【0051】
図35】卓上機器の内部コンポーネント及び回路へのアクセスを提供する扉の例を示す。
【0052】
図36】卓上機器の前部ハンドル及び読み取りハンドルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
この開示の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、図面を参照しながら、様々な実施形態が以下に詳細に説明される。別段の言及がない限り、本明細書の実施形態及び実施形態における特徴は、互いに組み合わせられ得る。
【0054】
本明細書において、節見出しは、説明の可読性を向上させるために使用されるものであり、いかなる意味においても、議論又は実施形態をそれぞれの節にのみ限定するものではない。
【0055】
生物学的組織試料は、臨床、診断及び研究用途のための顕微鏡及び分子診断分析のために、患者から採取される。これらの試料は、様々な研究室、診療所、及びその他のヘルスケア又は医療研究の場で採取される。例えば、細胞/組織は、生検用のブラシ、綿棒、又は切断具等の採取デバイスを使用して、患者から採取され得る。しかしながら、より好適な患者ケアを最終的に提供しつつ、例えば交差汚染を低減させることによって、研究室での実践を改善する必要性が依然としてある。
【0056】
これらの細胞試料の後続する組織学的又は細胞学的分析は、調製された検体の質に大きく依存する。検体の不十分な調製は、不正確なデータに帰着し、結果の解釈における誤り及び誤診を引き起こし得る。これに加えて、複雑で自動化されていないシステムは、バックログ、遅延した診断、処置の複雑さによる意図しないタイプのアーチファクト、及び容認し難い都度の変動につながる。これらの意図しないアーチファクトを低減及び/又は除去し、高品質の結果を提供するために、低コストのシステムを使用して、迅速で正確な結果を得るための、簡略化された信頼性の高いシステムを開発する必要性が依然としてある。
【0057】
開示される技術の実施形態は、前述した問題に対処する試料付着及び染色のための卓上機器及び消耗品を説明する。いくつかの実施形態においては、採取された細胞試料を調製し、試料を検体スライド上に均一に分散させ、エアロゾル化された試料の意図しない分散及び交差汚染を防止するための、消耗品コンポーネントが、1節~3節において説明され、4節は、病理学的なアセスメントのための基材を調製及び染色するために、(前述した消耗品を使用した)試料噴霧付着及び基板染色、並びにオンボードの廃液管理を実行するように構成された、自己完結型機器である卓上機器を説明する。
【0058】
1 例示的な検体入口ポート(SIP)消耗品
【0059】
いくつかの実施形態においては、検体入口ポート(SIP)消耗品は、3つの射出成形されたポリカーボネート部品、すなわち本体及び2つのノズルで構成されている。SIP消耗品は入口を有し、この入口へと、ユーザが針から直接に試料を注入するか又はピペット若しくはカスタムバイアルから試料と緩衝液との混合物を注入することができる。SIP消耗品の2つの噴霧ノズルは、2枚のスライド(例えば細胞診スライド)への付着のために試料が消耗品から出ることを可能にする。SIP消耗品は有利にも、試料が2枚のスライドに実質的に同様の態様で付着させられることを可能とする。例えば、試料は細胞物質であってもよく、重なり合う細胞のない単層としてスライド(又は基材)上に付着させられる。
【0060】
図1A及び図1Bは、例示的なSIP消耗品の種々の図及び特徴を示す。図1Aに示されるように、SIP消耗品は、試料ウェル(101A)、噴霧ノズル(102A)、堀(103A)、ソーティングスパイク(104A)、親指ガード(105A)、及びグリップタブ(106A)を含む。スナップ特徴(107B)が、図1Bに示されている。
【0061】
1.1 試料ウェル
【0062】
図1Cは、図1A及び図1Bに示された例示的なSIP消耗品の試料ウェルの断面を示す。試料ウェル(101C)は、試料を中央に留めて、ノズル先端(103C)上の空気のツインバーストがベンチュリ効果をもたらすときに試料が均等に分けるように設計されている。このことは、最も小さい空間に移動する液体の性質を利用することによって実現されている。ウェル内の試料の不均一な分布は、スライド上への不均一な付着に帰着し得るため、試料ウェル(101C)の設計は、ウェル内の試料の均一な分布を確実にする。一対の毛細管ノズルが、ウェル本体から流体を誘引するが、外端における「毛細管ストップ」(102C)が、流体が更に移動することを防止する(104C)。
【0063】
図1Cの右上部における詳細は、毛細管ストップの例を示す。一例においては、毛細管ノズルは0.7mmとなるように設計され、毛細管ストップは直径を0.9mmに増大させたものである。これらの特定の値は、試験を通して最適化されたものであり、SIP消耗品の性能、ひいては試料付着操作にとって重要であることが見出された。
【0064】
いくつかの実施形態においては、試料ウェル(101A)のサイズは、スライド(又は基材)上に単層のサイズのものが付着させられることを可能とするよう選択される。これに加えて、このサイズは、細胞病理処置における試料付着及び染色方法に必要な試料の量に関して標準化が達成されることを可能とするように、試験を通して最適化された。一例においては、SIP消耗品の試料ウェルは、20μL~30μLの液体を保持するように設計される。
【0065】
1.2 噴霧ノズル
【0066】
SIP消耗品の試料ウェルが、種々の図で図1Dに示されている。いくつかの実施形態においては、図1Dに示されるように、噴霧ノズルは、ノズル先端を空気ノズルに対して正確に位置させるための基準面(103D、104D、105D)、組み立て時にSIP本体上の部品を留めるためのクリップ(102D)、及び組み立ての間の過回転を防止するためのハードストップ(101D)を特徴とする。
【0067】
いくつかの実施形態においては、図1Dに示される噴霧ノズルは、SIP消耗品の両側において同じ部品が使用され得るように設計されている。
【0068】
いくつかの実施形態においては、噴霧ノズルの内部チャネルは、工具を収めるために先細とされている。先細とされたノズル先端は有利にも、噴霧ノズルのすぐ近傍における空気パルスからの乱流を最小化する。このことは、製造のための単純な開閉具を可能にし、他の設計と比較した場合に、スライド上の細胞の均一な分布をもたらすことが、試験の間に見出された。
【0069】
1.3 堀
【0070】
図1Aに戻ると、SIP消耗品の試料ウェル(101A)は、より大きな空洞、すなわち堀(103A)に取り囲まれている。いくつかの実施形態においては、堀は以下の目的を果たす。
【0071】
-試料ウェルが収容できる量よりも多くの試料がユーザによって針から分注された場合に、いかなるオーバーフローも受け止めること。
【0072】
-分注の間の針からのあらゆる飛散を受け止めること。
【0073】
-ウェル中で試料を付着させる前に、ユーザがピペットを使用して試料を緩衝液と事前混合すること(例えば試料の粘度を低減させるため)を可能にする、混合容器として機能すること。
【0074】
1.4 ソーティングスパイク
【0075】
SIP消耗品は、試料ウェル(101A)の上方に位置するソーティングスパイク(104A)を含み、これらは、試料ウェル中での付着に先立って、試料中の血栓又は破片を受け止めるために使用され得る。試料ウェル中のいずれかのタイプの破片の存在は、典型的には、スライド上の細胞の不均一な分布に帰着し、かくして、内蔵されたソーティングスパイクが有利にも、破片を除去するための独立した前処理ステップ(従来の処置においてはことによると他の成分を使用する)が回避されることを可能とする。ソーティングスパイクは、図1Aに示した例とは、数が異なってもよく、異なった配置であってもよい。例えば、試料ウェル中で付着させられる試料から血栓及び破片が排除されることを可能にし、それによって噴霧ノズルの詰まりを防止するために、直線状、円形、又は多角形のいずれかの構成でSIP消耗品に固定された、2個~6個のスパイクがあってもよい。
【0076】
1.5 親指ガード
【0077】
親指ガード(105A)は、ユーザがSIPを保持しながらSIPへと分注を行うことを選択した場合に、ユーザの親指と針との間に障壁を提供する。更に、卓上機器のカセット(4.2節参照)と協働して、卓上機器の前面からのエアロゾル化された試料の漏れを防止するための苦しい経路を生成する。
【0078】
1.6 グリップタブ
【0079】
グリップタブ(106A)は、卓上機器に挿入するために及び卓上機器から取り外すためにSIP消耗品を保持するために使用される。更に、グリップタブは、患者及び処置情報を有するラベルがそこに貼付されることを可能にする。
【0080】
1.7 スナップ特徴
【0081】
図1Bに示されるスナップ特徴(107A)は、グリップタブ(106A)がSIP消耗品の本体から取り外されることを可能にする。このことは、コンポーネントの汚染される部分のサイズを小さくし、残りの試料の保存のために検体容器(例えばCytoLytジャー)中で付着させられることを可能にし、これが次いで研究室に輸送されてもよい。図2は、スナップ特徴を使用してグリップタブが折り取られた後の、SIP消耗品の本体の残りの部分を示す。
【0082】
2 例示的なSIPスタンド
【0083】
いくつかの実施形態においては、図3A及び図3Bに示されるSIPスタンド(301)は、試料ウェル中への試料の装填のためにSIP消耗品(304)を保持する。検体容器(303)上でのその位置は、いずれのオーバーフローもが受け止められることを可能とし、また針から検体容器中への過剰な生物学的物質の容易な移送を可能とする。SIP消耗品を安定に保持することによって、ユーザが試料を正しい場所において付着させることを容易にし、針を刺してしまう可能性を低減させる。別個のアームレスト(302)は、操作者が自身にとって最も好適に動作する構成を見出すことを可能にする。SIPスタンドの2つの部分(SIPスタンド301及びアームレスト302)は、図3Cに示されるように、収納構成(305)において2つの部品を一緒に保持する磁石を含んでもよい。
【0084】
3 例示的なフード消耗品
【0085】
図4A及び図4Bにその例が示されているフード消耗品は、エアロゾル化された試料を収容し、染色プロトコルの間にスライド上に試薬を保持するための障壁を提供する。説明された卓上機器の実施形態は、「付着及び染色」のプロトコルが実行されているときは2つのフード消耗品を使用し、「染色のみ」のプロトコルが使用されているときは1つのフード消耗品を使用するように構成されている。
【0086】
図4A及び図4Bに示されるように、フード消耗品は、フードグリップタブ(401)、カラー(402)、クランプ面(403)、挿入ハードストップ(404)、試薬ポート(405)、封止部(406)、及び戻り止めスロット(407)を含み、クランプ高さ(408)及び排出ポート高さ(409)によって特徴付けられる。
【0087】
3.1 フード消耗品グリップタブ
【0088】
フードグリップタブ(401)は、卓上機器に挿入するために及び卓上機器から取り外すためにフードを保持するためのものである。
【0089】
3.2 カラー
【0090】
いくつかの実施形態においては、カラー(402)は以下の目的を果たす。
【0091】
-噴霧及び空気ノズルのすぐ近傍における卓上機器の部分を、試料によって汚染されないように遮蔽すること。
【0092】
-フードの上部のまわりからのエアロゾル化された試料の漏れを防止するための苦しい経路を生成すること。
【0093】
カラーのサイズは、空気噴霧に悪影響を及ぼすほど小さすぎず、卓上機器においてフードの位置決めが困難になるほど大きすぎないことを確実にするように、試験を通して最適化される。
【0094】
3.3 クランプ面
【0095】
卓上機器のカセット(4.2節参照)によってクランプ面(403)に加えられる、均等に分散させられた下向きの力は、フード本体を通して伝達され、封止(406)面をスライドにしっかりと押し付ける。
【0096】
3.4 挿入ハードストップ
【0097】
挿入ハードストップ(404)は、試薬ポート(405)が卓上機器の試薬ノズル及び排出ポートと位置合わせされることを確実にするように、フードを長手方向に位置させる。
【0098】
3.5 試薬ポート
【0099】
試薬ポート(405)は、卓上機器の試薬ノズル及び排出ポートと係合し、試薬及び洗浄液が染色のための右側スライドに添加されること、及びかかるスライドから除去されることを可能とする。
【0100】
3.6 封止部
【0101】
封止部(406)は、薄い平坦な面であり、卓上機器によってスライドに対してクランプされたときに、いずれのスライドからのエアロゾル化された試料の漏れも防止し、更には左側スライドからの試薬及び洗浄液並びに右側スライドからのエアロゾル化されたエタノールの漏れを防止する。
【0102】
3.7 戻り止めスロット
【0103】
戻り止めスロット(407)は、フードが正しい位置に挿入されたという触覚的なフィードバックをユーザに提供するために、卓上機器上のボール戻り止めと係合する。いくつかの実施形態においては、左側戻り止めスロットのみが左側及び右側の両方のフードに対して使用される。他の実施形態においては、フードが正しく位置決めされたことを確実にするために、両方の戻り止めスロットが使用される。
【0104】
3.8 クランプ高さ
【0105】
クランプ高さ(408)は、重要な設計寸法である。スライドベッドはばね付勢されるため(一定のクランプ力を達成しつつ様々な厚さのスライドを収めるために)、スライドの上面の高さがクランプ高さによって設定される。
【0106】
3.9 排出ポート高さ
【0107】
排出ポート高さ(409)は、重要な設計寸法である。排出ポートの有効性は、スライドからの距離に依存する。一例においては、排出ポートは、試薬ポート(405)を通して試薬を加えるものと同じ針である。排出ポートとスライドとの間の距離が大きすぎると、過剰な試薬が完全には除去されないこととなり、最適なスライド試料が得られないこととなり得る。
【0108】
4 例示的な卓上機器
【0109】
図5は、例示的な卓上機器の外観図を示し、図6は、卓上機器の側面開放図を示す。図6に示されるように、卓上機器は、機器の前部にスライド処理モジュール及びクランプモジュール、後部にデバイスの本体を構成する補助システムモジュールを含む。スライド処理モジュールは、消耗品(フード及びスライド)とSIP消耗品とをユーザから受容するものであり、ユーザインタフェースも含む。補助システムモジュールは、電子回路、空気圧システム、並びに試薬ポンプ及びボトルを含む。
【0110】
4.1 補助システム
【0111】
図7A及び図7Bに示される補助システムは、筐体(701)、空気圧システム(702)、蠕動ポンプ(703)、ボトル(704)、滴下トレイ(705)、電子回路(706)、及び電源インレット(707)を含む。
【0112】
4.1.1 筐体
【0113】
筐体(701)は、卓上機器の構造的枠組を提供するものであり、図8に示されている。そこに示されているように、筐体は以下のコンポーネントを含む。
【0114】
-6mmのアルミニウムプレートから機械加工され、筐体に剛性を与える、ベースプレート(801)。
【0115】
-試薬ボトル、配管及びポンプを電子回路及び空気圧システムから分離し、システムの様々なコンポーネントに装着点を提供する、筐体背板(802)。図9に示されるように、筐体背板は、流体側(液体システム及びボトル)を乾燥側(電子回路及び空気圧サブアセンブリ)から分離する。
【0116】
-試薬、緩衝液及び/又は固定剤のための、取り外し可能な保持部である、枠箱(803)。一例においては、枠箱は、染色プロトコルにおいて使用される3つの試薬のための250mlボトルと、左側用の緩衝液及びエタノール固定剤の2つの15mlバイアルと、を保持するように設計されている。
【0117】
-1.6mmの鋼から機械加工された、背面プレート(804)。
【0118】
-試薬ボトルとそのポンプ及び配管との間に障壁を提供する、偽壁(805)。図10A及び図10Bは、偽壁(1001)の一例を示しており、この偽壁は、配管の大部分をカバーしているため、ボトルキャビティに整った外観を与え、簡単に拭かれることを可能にする。
【0119】
-様々なサイズのボトルの上端が同一面上となるようにスタガード配置され、その下にある滴下トレイに漏れを導くように構成された、ボトル棚(806)。
【0120】
-切り離されたときにボトルコネクタを保持するためのフックを提供する、管保持部(807)。いくつかの実施形態においては、管保持部の位置は、使用中に扉が閉じられることを防止し、ボトルを再接続するよう促すユーザに対するリマインダとして機能する。
【0121】
4.1.2 空気圧システム
【0122】
図11A図11Cに示される空気圧システム(702)は、噴霧付着のために卓上機器において使用される。図11Aは、卓上機器における例示的な空気圧システムの構成及び位置を示す。いくつかの実施形態においては、空気圧システムは、噴霧付着の直前にのみ加圧され、直後に排気される。一例においては、全ての接続具及び配管の定格は1MPa(145.0psi)とされ、空気ポンプは0.55MPa(79.8psi)の最大圧力を達成することができる。更に、アキュムレータの上流における全ての配管及び接続具は、空気ポンプ出口と適合するように6mmにサイズ決めされ、下流のものは全て4mmにサイズ決めされる。
【0123】
図11Bは、空気圧システムのコンポーネントの描画を示し、図11Cはそこで使用される実際のコンポーネントを示す。図11Bに示されるように、空気圧システムは、以下を含む。
【0124】
-550kPa(79.8psi)の最大圧力及び2.7L/minの流量(大気圧下)を有するブラシレス空気ポンプ(1101)である、空気ポンプ(1101)。
【0125】
-空気がアキュムレータからポンプに向かって逆流することを防止する、逆止弁(1102)。いくつかの実施形態においては、逆止弁は、6mmの外径及び1MPa(145.0psi)の最大圧力を有する配管を有する。
【0126】
-圧縮気体で満たされたゴム製の袋を含むステンレス鋼タンクである、アキュムレータ(1103)。いくつかの実施形態においては、アキュムレータは、6立方インチであり、1/8NPTポート及びSMC接続具(例えば1x6mmODの管、1x4mmODの管)のものである。アキュムレータの容積は、フットプリントを最小化しつつ、空気パルスの間に一貫した圧力を提供するように最適化された。
【0127】
-0~1MPa(145.0psi)を測定し、0~5Vのアナログ出力、及び4mmODの管接続インタフェースを有する、圧力センサ(1104)。
【0128】
-システムが電源供給されていないときにアキュムレータが排気することを確実にし、加圧システムの保守及び輸送を不要にする、通常開弁(1105)。
【0129】
-騒音レベルを低減させ、空気圧機器からの汚染物質の望ましくない排出を低減させる、消音器(1106)(又は空気圧マフラ)。
【0130】
4.1.3 蠕動ポンプ
【0131】
蠕動ポンプ(703)は、染色プロトコルのための試薬及び水を卓上機器の右側に送達し、廃液を除去する。いくつかの実施形態においては、ロマノフスキー染色プロトコルのための試薬及び水を送達し、廃液を除去するため、5台の蠕動ポンプが使用される。いくつかの実施形態においては、蠕動ポンプはブラシ付きDCモータによって駆動され、ソフトウェアによって制御され、いずれの方向にも動作するように構成されている。
【0132】
4.1.4 ボトル
【0133】
ボトルは、試薬、固定剤、水等を収容するために使用される。いくつかの実施形態においては、ボトルの容量は、細胞病理部門において1日に予想されるスライドの処理量に基づいて構成される。
【0134】
一例においては、卓上機器において120対のスライドが想定され、ボトル容量は、水及び廃液ボトルが1日の途中で1度交換される必要があり、試薬(メタノール、エタノール固定剤、及び染色剤)並びに緩衝液は1日中持続するように指定される。この例においては、使用されるボトルの容積は、以下の通りである。
【0135】
-メタノール、染色剤1、染色剤2:各250ml;
【0136】
-水、500ml;
【0137】
-廃液、1000ml;
【0138】
-緩衝液(例えばPBS)、15ml;及び
【0139】
-固定剤(例えばCytoFix)、15ml。
【0140】
いくつかの実施形態においては、250ml、500ml及び1000mlのボトルは、試薬との適合性のためにHDPEであり、こぼれを防止するために滴下防止接続具を使用する。
【0141】
いくつかの実施形態においては、緩衝液及びエタノール固定剤は、15mlの円錐形ポリプロピレン管に収容される。
【0142】
4.1.5 滴下トレイ
【0143】
滴下トレイ(705)は、図12に示されている。そこに示されているように、滴下トレイは、ボトル棚(1202)及びスライド処理オーバーフローポート(1203)からの液体を、必要に応じてユーザによって取り外され空にされることができる滴下トレイ(1201)に導く。一例として、滴下トレイは、1.6mmのステンレス鋼から作成される。
【0144】
4.1.6 電子回路
【0145】
いくつかの実施形態においては、電子回路(706)は、24VのDC電源で動作し、(i)静電容量式タッチパッド及び発光ダイオード(LED)を含むユーザインタフェース(4.8節参照)のための、第1のプリント基板回路アセンブリ(PCBA)と、(ii)ソフトウェアがポンプ、弁、ヒータを制御し、システムのセンサから入力を受信するために必要な、他の全ての回路を含む、第2のPCBAと、を含む。
【0146】
4.1.7 電源インレット
【0147】
いくつかの実施形態においては、卓上機器は、24VのDC電源によって電力供給される。いくつかの実施形態においては、卓上機器は、背面における電源インレット(707)の隣に、卓上機器の前面におけるユーザインタフェース上の電源LEDに接続されるように構成されたハード電源スイッチを有するよう構成されてもよい。
【0148】
4.2 スライド処理
【0149】
図13A及び図13Bは、卓上機器のスライド処理機構の一例を示している。そこに示されているように、スライド処理機構は、SIP消耗品ドック(1301)、SIP消耗品(1302)、カセット(1303)、フード消耗品(1304)、スライドベッド(1305)、エタノール固定剤システム(1306)、隔壁(1307)、空気噴霧弁(1308)、緩衝システム(1309)、スライド(1310)、空気カーテン(1311)、及び試薬マニホールドアセンブリ(1312)を含む。
【0150】
4.2.1 SIPドック
【0151】
図14A図14Cに示されるSIPドックは(向きの詳細に加えて)、空気ノズル(1402)と噴霧ノズル(1403)とが位置合わせされるように、卓上機器の中でSIPを位置させる(又は設置する)。空気ノズルと噴霧ノズルとの間の位置合わせは、各噴霧ノズルにおけるベンチュリ効果の強さに影響を与え、その結果、噴霧される試料の全体の体積と、2つのスライド間の試料の分布の均一性(例えば細胞の単層を達成すること)を決定するため、重要である。そこに示されているように、SIPドックは、SIPマニホールド(1401)、空気ノズル(1402)、SIPノズル(1403)、SIP側方ばね(1404)、SIP基準部(1405)、及びSIPベッド(1406)を含む。
【0152】
-空気ノズル(1402)は、図15に示されている。そこに見られるように、空気ノズルの先端は、SIPノズルの先端の中心から1.7mmの位置にあり、垂直に対して9.5°の角度をなしている。この軌跡をたどるように引かれた線はスライド(1501)の中心から外れたところに着地することとなるが、噴霧は噴霧ノズルの先端のまわりに「カーブ」して、この幾何形状からは中心を保った噴霧に帰着することを、試験が示している。
【0153】
図16Aに示されるSIP側方ばね(1404)は、(i)SIP本体に対してSIPノズルをクランプして図16Aにおける点「A」における漏れを最小化し、(ii)左側のSIP側方基準部をそのハードストップに押し付けて、SIPノズルの先端を空気ノズルの下に正確に位置させるための、力(図16Aにおいて「F」と示される)を提供する。
【0154】
-SIPスイッチの動作が、図16B及び図16Cに示されている。そこに示されているように、SIPの挿入が、スイッチロッド(1601)を動かして、SIPスイッチ(1602)を作動させる。このスイッチは、ソフトウェアがSIPが存在するか否かを決定し、必要であればユーザにフィードバックを提供することを可能とする。
【0155】
図17に示されるSIPマニホールド(1401)は、いくつかの機能を実行する。以上に説明された基準特徴及びばねを使用して空気ノズルに対してSIPを正確に位置させるだけでなく、噴霧弁(1701)からの空気の供給を、主空気ノズル(1702)及び空気カーテンキャビティ(1703)へと導く。空気供給T字セクション(1704)のいずれかの端部においてプラグが使用されて、単一部品の物質から機械加工されるものでありながら、空気経路が分割されることを可能とする。
【0156】
4.2.2 カセット
【0157】
図18A図18Dに示されている取り外し可能なカセット(1303)は、洗浄のために機器の重要な部分へのアクセスを可能にする(1801)。また、SIP及びフード消耗品を機器の中に位置させるためのいくつかの特徴を含む。
【0158】
いくつかの実施形態においては、カセットは、プライミングプロトコルが実行されているときは、過剰な液体を受け止めるプライミングトレイ(図示されていない)と交換される。図18A図18Dに示されるように、カセットは以下のコンポーネントを含む。
【0159】
-SIPポート(1802)は、SIPが挿入される穴であり、親指ガードよりも小さく、その結果、SIPは逆向きに又は上下反対に挿入されることができない。SIPの汚染された部分(堀及びウェルの領域)は、挿入又は動作の間にカセット又はSIPマニホールドと接触しない。SIPが挿入されると、ポートを取り囲む湾曲した面がSIPの親指ガードと組み合わせられて、エアロゾル化された試料が漏れ出ることを防止する苦しい経路を生成する。
【0160】
-SIPベッド(1803)は、(i)SIPを十分に挿入したことをユーザに示すために、触覚的なクリックを提供することと、(ii)SIPノズルの下側に力を提供して、その前部及び上部の位置付け特徴をSIPマニホールド上のそれらの相互的な表面にしっかりと押し込むことと、の2つの機能を果たすものである。
【0161】
-ユーザによってカセットが機器の中へと押し込まれることを可能にし、動作の間にカセットを適所に保持する、カセットレール(1804)。
【0162】
-カセットを機器の中で適所にしっかりと位置させ保持する、カセット磁石(1805)。
【0163】
-SIP消耗品がSIPポートに挿入されると、フードが取り外されることを防止する、フードボール戻り止め(1806)。
【0164】
4.2.3 スライドベッド
【0165】
卓上機器は、「付着及び染色」処理のためには2枚のスライドを保持し、「染色のみ」のプロトコルのためには単一のスライド(右側において)を保持する、2つのスライドベッドを有する。ベッドは、噴霧ノズル及び試薬ノズルの下にスライドを正確に位置させ、スライドの上面におけるフード消耗品の封止を確実にするために上向きのばね力を提供し、右側のベッドは、スライドの乾燥時間を短縮するためのヒータを有する。
【0166】
いくつかの実施形態においては、スライドは手で挿入され、容易に位置させられる。
【0167】
試料が分割され、2枚のスライドに均等に噴霧された後、右側のスライドは乾燥、固定、染色及び水洗され、左側のスライドは湿固定される。図19A及び図19Bに示されるスライドベッドは、以下のコンポーネントを含む。
【0168】
-機械加工されたアルミニウムで作られたスライドベッド(1901)が、図20Aに示される。各スライドベッドは、ハウジングプレート(2001A)によって捕捉され保持されることを可能にするように、2つの部品で作られている。
【0169】
-スライドスイッチ(1902)は、空気噴霧弁と試薬ポンプとの電子インターロックを提供して、スライドが存在しないことが引き起こすエアロゾル化された試料の漏れ出し及び試薬のこぼれを防止する。スイッチはまた、ソフトウェアに信号を送り、ソフトウェアがチェックを実行すること、及びユーザにフィードバックを提供することを可能とする。
【0170】
図20Bに示されるように、スライドスイッチ(2002B)は、ばねプランジャ(2001B)を含むレバー(2003B)によって作動させられる。プランジャは、スライドスイッチが作動させられる移動範囲を拡大し、様々なスライド長さが検出されることを可能にする。レバーの幾何形状は、スライドが誤って挿入される可能性を低減させ、クランプの間の破損の見込みを制限する。
【0171】
-スライド(1903)は、ISO8037/1-1986仕様に適合する。
【数1】
【0172】
-オーバーフロー排出部(1904)は、スライド処理領域における漏れの場合に、試薬ボトルの下にあるこぼれトレイに液体を誘導する。
【0173】
-スライドベッドばね(1905)が、図21に示される。そこに示されているように、各スライドベッド(2101)の下にある2つのばね(2102、2103)は、(i)エアロゾル化された試料及び試薬の漏れ出しを防止するために、フード消耗品の封止部とスライド面との間に均等なクランプ力を提供することと、(ii)機器が様々なスライドの厚さを収めることを可能にすることと、の2つの機能を実現させる。
【0174】
いくつかの実施形態においては、左側のスライドベッドは、エアロゾル化された試料に対して封止する必要があるだけなので、より軽いばね力を有する。このことは、中央に位置する前後2つのばねプランジャによって提供される。右側のスライドベッドは、染色の間にスライド上へとポンピングされる試薬に対して封止するための、より強い力を必要とし、対角線上に互いに対向して位置する2つのボール戻り止めを有する。それらの位置は、同様にスライドベッドの下側に位置するヒータマットによって制約を受ける。
【0175】
-ヒータ(1906)は、右側のスライドベッドに隣接しており、このスライドベッドは、固定及び染色の前にスライドを乾燥させるために加熱される。ヒータは、カスタムのヒータマットアセンブリであり、(i)20W(@24VDC)のヒータマットと、(ii)温度制御システムにフィードバックを提供するツインサーミスタと、(iii)ポット付き配線と、を含む。アセンブリは、エポキシ樹脂を用いてスライドベッドの底部に固定される。
【0176】
4.2.4 エタノール固定システム
【0177】
いくつかの実施形態においては、図22に示されるように、固定剤噴霧システムは、エタノールベースの固定剤(例えばCytoFix)の15mlのリザーバ、高周波分給ポンプ(2201)、及び、SIPマニホールドに取り付けられその中の経路によって供給される(右側の図に示される)、エアロゾル化特徴を有するカスタムの真鍮製インサート(2203)で構成される。エタノール固定剤システムは、エタノールポンプ(2201)、入口接続具(2202、図23に示される)、及びエタノール噴霧インサート(2203)を含む。
【0178】
-エタノール噴霧インサート(2203)は、SIPマニホールドを通して供給される少量(約400μL)のエタノールをエアロゾル化する特徴を含む真鍮製接続具を含む。いくつかの実施形態においては、皿頭ねじ穴によってSIPマニホールドにおけるエタノール供給穴に接して位置する。
【0179】
図24A及び図24Bに示されるように、エタノールは(2401)において流入し、0.5mm幅の通路に沿って通過して渦特徴(2402)に至り、0.3mmのノズルから流出する。カットアウト特徴(2404)が、出口のまわりに空隙を伴ってノズルの長さが短く(0.24mm)保たれることを可能にし、噴霧が外向きに扇状に広がることを可能にする。
【0180】
4.2.5 隔壁
【0181】
いくつかの実施形態においては、強度及び剛性のために、6mmのアルミニウムプレートから隔壁(1307)が機械加工される。一例においては、右側の清掃ポートへの試薬及び水の排出を容易化するため、垂直に対して4°の角度でベースプレートに装着ブラケットによって固定される。
【0182】
4.2.6 空気噴霧弁
【0183】
いくつかの実施形態においては、空気噴霧弁(1308)は、ソフトウェア制御された電子回路から24VのDC信号を受け取るまで閉じている。卓上機器は、30ms~100msの長さの噴霧バーストを収めるように設計されている。
【0184】
4.2.7 緩衝システム
【0185】
いくつかの実施形態においては、図25に示されるように、緩衝システムは、PBS緩衝液の15mlのリザーバ、微量分給ポンプ(2501)及び緩衝液ノズル(2502)で構成される。SIPマニホールドにおける穴は、ポンプに緩衝液を供給し、その出口からノズルに液体を移動させる。ポンプからノズルへの流体経路は、単一部品からの機械加工を可能とするためにプラグを使用する。緩衝システムは、以下を含む。
【0186】
-スライド上への試料の噴霧に先立って、緩衝液ノズルを介して、10μLの試料をSIPウェルの中へと付着させる、緩衝液ポンプ(2501)。一例として、緩衝液ポンプは、製造の間に10μLに較正される。
【0187】
-緩衝液ノズル(2502)は、図26における試料ウィル(sample will)の上方に位置する。
【0188】
4.2.8 空気カーテン
【0189】
いくつかの実施形態においては、図27A及び図27Bに示されるように、空気ノズル(2701)の外側における真鍮製インサートは、試料噴霧(2704)がフード消耗品のカラーに着地することを防止する空気の「カーテン」を生成し(1311)、スライド上の試料の収量を増大させる。一例においては、各インサートは、直径0.6mm、長さ2.2mmの穴を5つ含む(2702)。これらの直径は、35psiの供給圧力で7kPaの公称SIP真空を達成するように設定された。空気カーテン穴は、インサート(2703)の封止側におけるチャンバ、及びSIPマニホールド上の同一面から供給される。
【0190】
4.2.9 試薬マニホールドアセンブリ
【0191】
いくつかの実施形態においては、図28A及び図28Bに示されるように、試薬マニホールドアセンブリ(1312)は、試薬を右側スライドに供給し、右側スライドから排出する、試薬マニホールド自体、更にはプライミングトレイスイッチ、フードスイッチロッド及びスイッチ、並びにSIPスイッチを含む。
【0192】
-プライミングトレイスイッチ(2801)は、プライミングトレイがないときにプライミングプロトコルが実行されることを回避するために、プライミングトレイが適所にあるか否かをソフトウェアに通知する。
【0193】
図29A及び図29Bに示される、フードスイッチ(2802)は、フードが機器に挿入されたときにスイッチを係合させる、フード毎に1本のロッド(2901)と、所与のフードのためのマイクロスイッチの対を押し下げる、フードスイッチアクチュエータ(2902)と、フードがないことが引き起こすエアロゾル化された試料の漏れ出し及び試薬のこぼれを防止するために、空気噴霧弁と試薬ポンプとの電子インターロックを提供する、冗長性のための2つのマイクロスイッチ(2903)と、を含む。スイッチはまた、ソフトウェアに信号を送り、ソフトウェアがチェックを実行すること、及びユーザにフィードバックを提供することを可能とする。
【0194】
図30A図30Cに示される清掃ポート(2803)は、右側のスライドから試薬及び水を排出する。隔壁、したがって更にスライドは、水平に対して4°の角度をなしており、このことは、流体が清掃ポートに向かって流れることを意味する。
【0195】
フード消耗品(3001)は、機器がクランプされていない状態にあるときに挿入され、その位置付け特徴(3002)が試薬マニホールド(3003)のハードストップ面に当たると(戻り止め特徴によって補助されて)停止する。
【0196】
機器がユーザによってクランプされると、清掃特徴(3004)及び試薬ノズル(3007)が、フードにおける穴に嵌合する。清掃ポート(3005)の円形面は、スライドの表面よりも0.5mm上に位置している。排出穴(3006)を介して排出蠕動ポンプによってこの間隙の液体が空にされると、毛細管効果によって隣接する液体が流入し、その場を占有する。この平坦な表面は円形であるため、全ての側面から均等に排出が行われ、スライドから除去される液体を最大化する。
【0197】
-試薬経路(2804)が、図31A及び図31Bに示されている。試薬は、蠕動ポンプから配管を介してマニホールドに入る。マニホールド内のメタノールと赤色染色剤との経路は、限られた空間と、4種の液体の最も適合性の高い組み合わせであることとのため、共有される。メタノール及び2種の染色剤は、ノズルを介してマニホールドから出るが、水の出口ポートは、染色剤の飛散を除去し、スライドの最終的な清浄度を高めるために、分注の間に清掃特徴に水を流すように設計される。
【0198】
4.3 クランプ
【0199】
図32Aは、卓上機器において使用される例示的なクランプ機構のコンポーネントを示しており、ハンドル(3201)、スライドベッド(3202)、ソレノイドラッチ(3203)、2つのマイクロスイッチを有するクランプインターロック(3204)、及び緩衝器(3205)を含む。クランプ機構の動作がまず説明され、次いで特定のコンポーネントの詳細が議論される。
【0200】
いくつかの実施形態においては、ソレノイドラッチ(3203)連結部を介して、ユーザがスライドベッド(3202)をその直線レールに沿って上方に移動させることによって、スライドベッド(3202)において接続されたハンドル(3201)が下方に押される。スライドが上昇すると、フードをカセットの下側に接するまで押し上げ、クランプ面に到達すると、次いでスライドベッドばねを圧縮し、スライドに対して封止する。ソレノイドラッチ(3203)は、ソレノイドがソフトウェア制御された電子回路によって作動させられるまで、機構を適所に締結させロックし、その時、スライドベッドは、垂直ラックの歯と係合する回転緩衝器によって減速されながら、緩やかに下降する。
【0201】
機構がクランプ位置にあるとき、クランプインターロック(3204)の2つのマイクロスイッチが作動させられる。これらは、空気噴霧弁と試薬ポンプとの電子インターロックを提供して、機器をクランプされていない状態で作動させることが引き起こすエアロゾル化された試料の漏れ出し及び試薬のこぼれを防止する。スイッチはまた、ソフトウェアに信号を送り、ソフトウェアがチェックを実行すること、及びユーザにフィードバックを提供することを可能とする。冗長性のため、2つのスイッチが使用される。
【0202】
4.3.1 ハンドル
【0203】
ハンドル(3201)の一例が、図32Bにおいて、卓上機器の表面上に示されている。これは陽極酸化アルミニウムから作られてもよく、直線レール上で垂直に動作するように構成されてもよい。
【0204】
4.3.2 ソレノイドラッチ
【0205】
いくつかの実施形態においては、図33に詳細に示されるソレノイドラッチ(3203)は、ソレノイド(3302)がソフトウェアによって作動させられるまで、クランプアセンブリを閉じた状態に保持する。ラッチ(3301)の高さは、スライドに対するフード消耗品のクランプ力を固定するために、製造プロセスの間に較正される。
【0206】
4.3.3 緩衝器
【0207】
いくつかの実施形態においては、緩衝器(3205)は、ラッチがクランプ機構を解放するときに、重力下でクランプ機構の開放を減速する。
【0208】
4.3.4 クランプインターロック
【0209】
いくつかの実施形態においては、クランプインターロック(3204)は、試薬のこぼれ及びエアロゾル化された試料の漏れ出しを防止するために、クランプ機構が係合されない限り噴霧及び染色弁並びにポンプが動作しないことを確実にするための、2つのマイクロスイッチ(冗長性のため)を含む。
【0210】
4.4 カバー
【0211】
図34は、卓上機器のためのカバーの例を示している。そこに示されているように、内部コンポーネント及び回路をカバーする部分は、卓上機器の一方の側における側面パネル(3401)及び扉(3402)、卓上機器の他方の側における別の側面パネル(3403)、並びに前面カバー(3404)を含む。
【0212】
いくつかの実施形態においては、前面カバーは、真空鋳造プラスチックから作られ、側面カバー及び扉は、金属薄板(例えば1.6mmの鋼材)を使用して作製される。他の実施形態においては、卓上機器のカバー及び扉を設計するために、プラスチックと金属薄板との異なる組み合わせが使用されてもよい。
【0213】
4.5 扉
【0214】
卓上機器は、操作者及び/又は技術者が機器の内部コンポーネント及び回路にアクセスすることを可能とする扉を含む。いくつかの実施形態においては、図35Aに示されるように、扉が落ちて閉じてしまう危険性なく任意の位置まで開けられることができることを確実にするために、摩擦ヒンジ(3501)が使用されてもよい。
【0215】
いくつかの実施形態においては、図35Bに示されるように、扉が閉位置にあるときに、二重のマイクロスイッチ(3502)が作動させられる。これらは、試薬ポンプのための電子インターロックを提供して、扉が閉じた状態の圧力下でのみ試薬の配管が破断することを確実にし、ユーザ及び操作環境を試薬から保護する。スイッチはまた、ソフトウェアに信号を送り、ソフトウェアがチェックを実行すること、及びユーザにフィードバックを提供することを可能とする。冗長性のため、2つのスイッチが使用される。
【0216】
4.6 ハンドル
【0217】
卓上機器は、前部ハンドル及び後部ハンドルを含む。いくつかの実施形態においては、図36A及び図36Bに示されるように、後部ハンドル(3601)は、卓上機器を持ち上げる際の安定性を最大化させるために後面プレートにおいて高い位置に設置され、前部ハンドル(3602)は、前面板に組み込まれる。一例においては、後部ハンドルは相手先商標製品の製造会社(OEM)の部品であってもよく、前部ハンドルはカスタムの設計部品であってもよい。他の例においては、前部ハンドル及び後部ハンドルの両方がOEM部品であってもよいし、又は両方がカスタム設計のものであってもよい。
【0218】
4.7 足部
【0219】
いくつかの実施形態においては、卓上機器は、使用される試薬に化学的に適合する、4本の滑り止め付きの足部を有する。
【0220】
4.8 ユーザインタフェース
【0221】
いくつかの実施形態においては、ユーザインタフェースは前面板に組み込まれ、4つの静電容量式タッチボタン及びいくつかのステータスLEDを含む。
【0222】
5 開示される技術の例示的な実施形態
【0223】
説明される実施形態は、生物学的試料の迅速なオンサイトでの評価を実行するための移動式専用システムを提供する。その利点は、特に、細針吸引(FNA)生検の妥当性、検体をトリアージする能力、処置の長さの短縮、リアルタイムでの生検のガイド及び指示の支援、並びにケアの現場での実行臨床医による患者の処置の管理の全体的な支援を含む。特に、開示される技術によって解決される問題は、ケアの現場で適時的な態様で基材上に細胞の単層を一貫して生成することができないことである。
【0224】
開示される技術の実施形態は、いくつかの態様において、以下の技術的解決手段を提供する。
1.細胞試料を付着させ染色するための装置であって、
装置の上方前部位置に位置決めされたスライド処理モジュールであって、
検体投入ポート(SIP)ドック(例えば4.2.1節参照)であって、細胞試料を含むSIP消耗品(例えば1節参照)を受容し、SIP消耗品の噴霧ノズルとスライド処理モジュールの空気ノズルとが付着操作に先立って位置合わせされるようにSIP消耗品を位置決めするように構成された、SIPドックと、
付着操作及び染色操作を設定するユーザからの入力を受け取るように構成された、ユーザインタフェース(例えば4.8節参照)と、を備える、スライド処理モジュールと、
装置の下方前部に位置決めされたクランプモジュール(例えば4.3節参照)であって、
スライドベッド上の少なくとも1枚のスライドがスライドベッドに対してしっかりと封止するフード消耗品によってカバーされるように、スライドベッドを直線レールに沿って上昇させるように下向きに押されるように構成された、ハンドル(例えば4.3.1節参照)と、
付着操作が完了するまでスライドベッドをロックするように構成された、ソレノイドラッチ(例えば4.3.2節参照)と、を備える、クランプモジュールと、
装置の後部に位置決めされた補助システムモジュール(例えば4.1節参照)であって、
複数の試薬ボトル、緩衝液ボトル、及びエタノールベースの固定剤ボトルを保持するように構成された、取り外し可能な収納容器を含む、筐体(例えば4.1.1節参照)と、
ユーザからの入力に基づいて、付着操作及び染色操作のための予めプログラムされたプロトコルを実行するように構成された、電子回路サブシステム(例えば4.1.6節参照)と、を備える、補助システムモジュールと、を備える、装置。
2.筐体は、
複数のコネクタのうちの少なくとも1つのコネクタを保持するように構成された管保持部であって、複数のコネクタの各々が、取り外し可能な収納容器の中の対応するボトルに結合され、少なくとも1つのコネクタは、対応するボトルから切り離される、管保持部を更に備える、解決手段1の装置。
3.滴下トレイ(例えば4.1.5節参照)であって、筐体が、スライド処理モジュール及び取り外し可能な収納容器のオーバーフローポートからの液体が、滴下トレイに導かれるように構成されている、滴下トレイを更に備える、解決手段1の装置。
4.スライド処理モジュールは、加熱要素を更に備える、解決手段1の装置。
5.空気ノズルは、約1psi~約30psiの第1の圧力で気体物質を分注する、解決手段1の装置。
6.スライド処理モジュールは、空気ノズルの外側にインサートを更に備え、インサートは、空気が第1の圧力よりも大きい第2の圧力で押されて通る複数の丸い穴を含む、解決手段5の装置。
7.流体試料(例えば1節参照)を分注するための装置であって、
試料物質を受容するように構成された、入口ポート(例えば1.1節参照)と、
入口ポートを取り囲み、いかなるオーバーフロー試料物質も受容するように構成された、堀(例えば1.3節)と、
試料物質を放出するために入口ポートに流体結合された第1の試料ノズル及び第2の試料ノズル(例えば1.2節)であって、管状接合部が、入口ポートを、第1の試料ノズルにおいて終端する第1の管状流体経路及び第2の試料ノズルにおいて終端する第2の管状流体経路に流体結合し、管状接合部の断面積は、第1の管状流体経路及び第2の管状流体経路の平均断面積よりも小さく、管状接合部の断面積は、毛細管現象を介して入口ポートから管状接合部の中へと試料物質を引き込むように選択されている、第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルと、を備える、装置。
8.堀は、試料物質が、入口ポートにおける付着に先立って緩衝液と混合されることを可能とするように更に構成されている、解決手段7の装置。
9.緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を含む、解決手段2の装置。いくつかの実施形態においては、PBS溶液は、タンパク質(例えばアルブミン又はヘパリン)を含む。他の実施形態においては、PBS溶液は、ダルベッコPBS溶液である。更に他の実施形態においては、ダルベッコPBS溶液は、他のタンパク質(例えばアルブミン、ヘパリン等)を含む。
10.第1の試料ノズルは、第1の気体ノズルと第1の標的との間に配置され、第1の気体ノズルが作動させられ第1の試料ノズルに向かって気体を放出すると、第1の試料ノズルは第1の標的に向かって試料物質を放出する、解決手段7の装置。
11.第1の管状流体経路の断面積は、その長さにわたって均一である、解決手段7の装置。
12.第1の管状流体経路の断面積は、管状接合部から第1の管状経路の中間点まで増大し、中間点から第1の試料ノズルまで減少する、解決手段7の装置。
13.第1の試料ノズル及び第2の試料ノズルとは反対側の端部において、入口ポートに隣接するグリップ部分(例えば1.5節参照)を更に備える、解決手段7の装置。
14.グリップ部分は、窪みを含む、解決手段13の装置。
15.付着操作の完了に後続して、グリップ部分が装置から取り外されることを可能とする、グリップ部分に隣接するスナップ特徴(例えば1.6節参照)を更に備える、解決手段13の装置。
16.入口ポートの深さ及び形状は、管状接合部の中への試料物質の引き込みを増大させるように選択されている、解決手段7の装置。
17.流体試料(例えば2節参照)を装填するための装置であって、
検体投入ポート(SIP)消耗品を保持するように構成された、SIPスタンドと、
SIP消耗品の中へと流体試料を装填する際にオーバーフロー流体試料物質を捕捉するように構成された、SIPスタンドに隣接して位置決めされた、ジャーと、
流体試料の装填を容易化するように構成された、SIPスタンドに近接して位置決めされた、アームレストと、を備える、装置。
18.アームレストは、収納構成において、SIPスタンドを適所に保持する磁石を備える、解決手段17の装置。
19.試料分析システム(例えば3節参照)における標的上への試料物質の付着を改善するための装置であって、フードは、
上部パネル、前面パネル、左側パネル、右側パネル、及び背面パネルを含む本体であって、上部パネルは、試料物質を受容するように構成された第1の開口部を含む、本体と、
背面パネルに隣接して位置決めされ、上部パネルに平行であり、背面パネルに垂直である、下部パネルであって、下部パネルは、標的上への試料物質の付着に後続して、染色剤又は色素を受容するための第2の開口部を含む、下部パネルと、
本体及び下部パネルを支持する底部リムであって、底部リムは、付着に先立って標的に固着するように構成されている、底部リムと、
を備え、底部リムと上部パネルとの間の距離は、様々な厚さを有する標的を収めるように構成されている、装置。
20.第1の開口部は、上部パネルの上方に隆起しており、上部パネルは、前面パネルを越えて延在する、解決手段19の装置。
21.背面パネルは、フードを試料分析システムにしっかりと固定するように構成された切り欠きを含む、解決手段19の装置。
22.底部リムは、底部リムと標的との間の封止を改善するように構成されたクランプを含む、解決手段19の装置。
23.底部リムとクランプとの間の距離は、染色剤又は色素の排出の有効性を改善するように構成されている、解決手段22の装置。
【0225】
「細胞試料」という用語は、細胞を含むあらゆる生物学的試料を指す。細胞試料は、対象から取り出された組織試料(例えば細胞の任意の集合)であり得る。組織試料は、生体内で同様の機能を実行する、相互接続された細胞の集合であり得る。細胞試料はまた、限定するものではないが、細菌、酵母、原生動物、及びアメーバ等の単細胞生物、多細胞生物(植物又は動物等であり、健康な又は健康であると考えられるヒトの対象、又はがん等の診断又は調査されるべき状態又は疾患に罹患しているヒト患者からの試料を含む)を含む、任意の生物から得られた、かかる生物によって排泄された又は分泌された、任意の固体又は流体の試料であり得る。いくつかの実施形態においては、細胞試料は、顕微鏡スライド上に装着可能であり、限定するものではないが、組織の切片、臓器、腫瘍切片、塗抹標本、凍結切片、細胞学的前処置物、又は細胞株を含む。試料を取得するため、切開生検、コア生検、摘出生検、針吸引生検(例えば細針吸引(FNA))、コア針生検、定位生検、開腹生検、又は外科的生検が使用され得る。
【0226】
本技術の実施形態の詳細な説明は、網羅的であること、又は本技術を以上に開示された通りの形態に限定することを意図されたものではない。本技術の特定の実施形態及び例は、例示の目的のために以上に説明されたが、関連技術の当業者であれば認識するように、本技術の範囲内で様々な等価な変更が可能である。また、本明細書で説明された様々な実施形態が組み合わせられて、更なる実施形態を提供してもよい。
【0227】
以上から、本技術の特定の実施形態は、説明の目的のために本明細書で説明されたが、良く知られた構造及び機能は、本技術の実施形態の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細には図示又は説明されていないことは、理解されるであろう。
【0228】
また、特定の実施形態が、説明の目的のために本明細書で説明されたが、本技術から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることも、理解されるであろう。更に、本技術の特定の実施形態に関連する利点がそれらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もまたかかる利点を呈し得るものであり、全ての実施形態が本技術の範囲内に入るかかる利点を必ずしも呈する必要はない。したがって、本開示及び関連する技術は、本明細書において明示的に示されていない又は説明されていない他の実施形態を包含し得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図30C
図31A
図31B
図32A
図32B
図33
図34
図35A
図35B
図36A
図36B
【国際調査報告】