(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】白金電解質
(51)【国際特許分類】
C25D 3/50 20060101AFI20240319BHJP
C25D 3/56 20060101ALI20240319BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C25D3/50 101
C25D3/56 F
C25D7/00 P
C25D7/00 H
C25D7/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560677
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058075
(87)【国際公開番号】W WO2022207539
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021107826.1
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513151152
【氏名又は名称】ウミコレ・ガルファノテフニック・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・マンツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ワイミュラー
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA27
4K023AB01
4K023AB45
4K023BA15
4K023CA09
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA12
4K024AA24
4K024BA01
4K024BB20
4K024BC10
4K024GA02
(57)【要約】
本発明は、ある特定の添加剤を含有する白金電解質、及び本発明による電解質を用いて白金層を電解析出する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材上に白金又は白金合金を析出させるための水性のシアン化物不含電解質であって、
前記電解質が、Ir、Bi、Sb、Se、及びTeからなる群からの1つ以上のイオンを有し、塩酸を含有せず、Bi、Sb、Se、及びTeが、電解質の最大100mg/lの濃度で存在し、Irが、電解質の最大1000mg/lの濃度で存在し、前記電解質が、白金スルファメート錯体を有し、
前記電解質が、<2のpHを有することを特徴とする、電解質。
【請求項2】
前記電解質が、クエン酸を有していないことを特徴とする、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
導電性基材上に白金又は白金合金層を析出する方法であって、
前記電解質が、請求項1又は2に記載されるように使用され、アノード、及びカソードとしてコーティングされる前記基材が前記電解質と接触させられ、電流がアノードとカソードとの間に確立されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
析出中の前記電解質の温度が、20~90℃であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
析出が、連続システムで行われることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
析出中の電流密度が0.5~50A/dm
2であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、ある特定の添加剤を含有する白金電解質に関し、また本発明による電解質を用いて白金層を電解析出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金による電気めっき及び電鋳は、白金の明るい光沢及び美的魅力の理由だけでなく、その高い化学的及び機械的不活性の理由で、装飾品及び宝石の製造において広く使用されている。したがって、白金は、プラグ接続部及び接触材料のためのコーティングとしても機能することができる。
【0003】
ガルバニック浴は、電気化学的金属沈殿物(コーティング)が基材(対象物)上に析出可能な金属塩を含有する溶液である。この種類のガルバニック浴は多くの場合、「電解質」とも称される。したがって、水性ガルバニック浴は、以下、「電解質」と称される。
【0004】
白金(II)及び白金(IV)化合物に基づく酸性及びアルカリ性浴又は電解質が、白金の電着に使用される。最も重要な浴タイプは、ジアミノジニトリト白金(II)(P-塩)、スルファトジニトリト白金酸(DNS)、若しくはヘキサヒドロキソ白金酸、又はそれらのアルカリ塩を含有する。
【0005】
国際公開第2013104877(A1)号では、より長い期間にわたって安定であるものとなり、白金イオン源及びホウ酸イオン源を含有する白金電解質が提案されている。浴は、概して良好な熱安定性を有する。浴は、広範囲のpH値にわたって使用することもできる。ある特定の実施形態では、浴は、明るく光沢のある析出物をもたらす。
【0006】
欧州特許公開第737760(A1)号は、最大で5g/lの遊離アミド硫酸(ASS、スルファミド酸、スルファミン酸、アミドスルホン酸)及び20~400g/lの1未満のpH値を有する強酸を含有するPt電解質を記載している。ここで使用された白金アミンスルファメート錯体は、遊離アミド硫酸なしで、強酸性浴中で驚くほど安定であることが証明された。浴は、長い電解時間を考慮した場合であっても沈殿物の形成を示さなかった。白金の析出中に放出されるアミドスルホン酸は加水分解され、したがって電解質中に蓄積しないものになる。しかしながら、あまり強くない酸性浴及び通常の電気分解温度では、加水分解は比較的遅い。
【0007】
ドイツ特許第1256504(B)号では、強固に付着する白金層を製造することができる酸性白金電解質が提案されている。このようにして製造されたアノードの特定の過電圧特性を実現することができるように、電解質中に20mg/lを超えるビスマスが存在すべきである。電解質は、塩酸を含む。社内実験により、電解質中のより高いビスマス濃度が析出結果に悪影響を及ぼすことが分かった。例えば、100mg/lでは、暗色の白金析出物が得られる。
【0008】
米国特許出願公開第20100176001(A1)号は、とりわけ、ビスマスに加えてクエン酸も含むべきである白金電解質について言及している。その目的は、触媒として機能することができる白金又は白金合金のナノメートル粒子を得ることである。0.1マイクロモル/l~100モル/lの濃度で電解質に遷移金属を添加することが有利である理由は言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2013104877(A1)号
【特許文献2】欧州特許公開第737760(A1)号
【特許文献3】ドイツ特許第1256504(B)号
【特許文献4】米国特許出願公開第20100176001(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
接触材料の製造にとって、部品当たりの可能な限り低い製造コストを実現することができるように、電解コーティングにおいて高いスループット率を達成することが特に重要である。これらのスループット率は、とりわけ、白金の迅速な析出を提供するために、コーティング中の電流密度が非常に高くなるように選択されることで達成される。しかしながら、特に白金アミンスルファメート錯体(欧州特許第737760(A1)号に類似)を用いた酸性電解質からの白金の析出中に、高電流密度の使用によると、電解質中に蓄積するか、白金層に組み込まれるか、又は析出された白金表面に付着する雲状の黒色白金粒子を生成する。これは、成長とともに不均一な析出をもたらす。これらは、光沢、耐食性、及び耐摩耗性に関して不利な特性を有する。したがって、これらの白金電解質から欠陥のない層を得るためには、低電流密度で析出させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
提示された目的の達成は、Ir、Bi、Sb、Se、及びTeからなる群からの1つ以上のイオンを含み、塩酸も含有せず、Bi、Sb、Se、及びTeが電解質の最大100mg/lの濃度で存在し、Irが電解質の最大1000mg/lの濃度で存在する(それぞれ、金属に対して)、導電性基材上への白金又は白金合金の析出のための水性のシアン化物不含電解質が提供されるという点で、全く驚くべきことであるが、それにも関わらず有利に達成される。高い電流密度下であっても、白金又は白金合金の析出は、析出を妨害する白金粒子の黒い雲が電解質中に形成されることなく、非常に迅速に起こり得る。これは、改善された生産性、したがってより低い製造コスト、並びに欠陥のない層をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当業者に既知の白金電解質を、本目的のための電解質として使用することができる。有利には、白金スルファメート錯体を有するそのようなPt電解質が使用される。後者は、H2[Pt(NH2SO3)2SO4]、H2[Pt(NH2SO3)2SO3]、H2[Pt(NH2SO3)2Cl2]、[Pt(NH3)2(NH2SO3)4]、及び[Pt(NH3)2(NH2SO3)2]からなる群から選択され得る。H2[Pt(NH2SO3)4]及び[Pt(NH3)2(NH2SO3)2]も特に有利に使用することができる。配位子対白金のモル比は、それによって変化し得る。そのような電解質は、先行技術から当業者に知られている。1つは、例えば、欧州特許第737760(A1)号に引用されている。そのような電解質は、市販もされている(Umicore Galvanotechnik GmbH製のPLATUNA(登録商標)H1;PLATUNA(登録商標)S1;PLATUNA(登録商標)N1 Platinum Electrolyte Electroplating(umicore.com))。
【0013】
本発明による電解質からの白金の析出において、Bi、Sb、Se、Ir、及びTeからなる群からの1つ以上のイオンは、ある特定の程度まで共析出され得る。次いで、得られた析出物は、1ppm~5000ppm、好ましくは100~2000ppmの対応して使用された金属を有する。このことは、白金合金の析出にも同様に当てはまる。更なる合金金属として、当業者の観点から本発明の目的に好適である全てのものが考慮される。合金金属は、好ましくはPGM貴金属Rh、Pd、Ru、Re、及び更に例えば、Ni、Co、In、Cu、Feなどの非貴金属であり、Rhがこの観点から特に好ましい。Pt錯体を有するPtRh合金電解質の場合であっても、高いアンペア数での電解析出において黒色雲が生じ、これは、Ir、Bi、Sb、Se、及びTeからなる群からの1つ以上のイオンの本発明による使用によって回避することができる。
【0014】
好適な導電性基材として考慮されるものは、酸性pH範囲において本発明による電解質でコーティングすることができるものである。これらは、好ましくは、貴金属含有基材、又は卑金属基材上の対応するコーティングである。これは、例えば、ニッケルめっき又は銅めっきされ、続いて任意選択で金めっきされた、パラジウム前処理された、白金前処理された、又は銀前処理でコーティングされた鉄材料に関する。そこで、ニッケルめっき又は銅めっきのための中間層はまた、対応する合金電解質(例えば、NiP、NiW、NiMo、NiCo、NiB、Cu、CuSn、CuSnZn、CuZnなど)から作製されてもよい。更なる基材材料は、導電性銀ラッカーで予めコーティング(電鋳)されたワックスコアであってもよい。
【0015】
Bi、Sb、Se、Ir及びTe原子をイオン形態で有する水溶性化合物は、析出中に電解質中に遊離白金が形成されるのを防止するのに役立つ好適な添加剤として考慮される。これらは、電解質中で、個々に又は任意選択で組み合わせて使用することができる。添加剤Bi、Sb、Se、及びTeの量は、電解質の濃度が100mg/lを超えないような大きさにするべきである。50mg/l未満の濃度が有利であり、電解質中のこれらの添加剤の濃度は、特に好ましくは5~20mg/lである。この場合、濃度は金属に関連する。ここでの例外はイリジウムであり、これは最大1000mg/lの濃度、すなわち例えば、100~1000mg/l、好ましくは200~700mg/l、非常に特に好ましくは300~600mg/lの濃度で添加される。
【0016】
ビスマスも同様に、当業者に知られている化合物によって電解質に添加することができる。ビスマスは、好ましくは(III)酸化状態で存在する。これに関連して有利な化合物は、酸化ビスマス(III)、水酸化ビスマス(III)、フッ化ビスマス(III)、塩化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、ヨウ化ビスマス(III)、メタンスルホン酸ビスマス(III)、硝酸ビスマス(III)、酒石酸ビスマス(III)、クエン酸ビスマス(III)、特にクエン酸ビスマスアンモニウムから選択されるものである。
【0017】
電解質に使用するセレン又はテルル化合物は、上述の濃度の枠組みの中で、当業者により適切に選択されることができる。好適なセレン及びテルル化合物は、セレン又はテルルが+4又は+6の酸化状態で存在するものである。セレン及びテルル化合物は、+4の酸化状態のセレン又はテルルが存在する電解質で有利に用いられる。セレン及びテルル化合物は、好ましくは、特に亜テルル酸塩、亜セレン酸塩、亜テルル酸、亜セレン酸、テルル酸、セレン酸、セレノシアネート、テルロシアネート、及びセレン酸塩並びにテルル酸塩から選択される。セレン化合物よりもテルル化合物を用いるのが、ここでは概して好ましい。亜テルル酸の塩の形態、例えば、亜テルル酸カリウムの形態で電解質にテルルを添加することが、特に好ましい。
【0018】
電解質に添加することができる好適なイリジウム化合物として考慮されるものは、様々な酸化状態の化合物である。以下のイリジウム化合物、例えば、塩化イリジウム(III)、塩化イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸、[Na,K,アンモニウム]ヘキサクロロイリデート(III)、[Na,K,アンモニウム]ヘキサクロロイリデート(IV)、臭化イリジウム(III)、臭化イリジウム(IV)、ヘキサブロモイリジウム(III)酸、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸、[Na,K,アンモニウム]ヘキサブロモイリデート(III)、[Na,K,アンモニウム]ヘキサブロモイリデート(IV)、硫酸イリジウム(III)、硫酸イリジウム(IV)がある。加えて、対応するヨウ化物がある。イリジウムクロロ化合物、より好ましくは硫酸イリジウムが好ましくは使用される。
【0019】
電解質に添加することができるアンチモン化合物は、当業者に知られている。これらは、フッ化アンチモン(III)、塩化アンチモン(III)、酸化アンチモン(III)、酒石酸酸化アンチモン(III)ナトリウム、アンチモン(III)化合物からなるアンチモン(III)化合物の群から、糖アルコール(例えば、グリセロール、ソルビトール、マンニトールなど)とともに選択することができる。酸化アンチモン(III)及び酒石酸酸化アンチモン(III)ナトリウムが好ましくは使用される。酸化アンチモン(III)は、本発明の目的のために非常に特に好ましく使用される。
【0020】
本電解質では、用途に応じて、湿潤剤としてアニオン性及び非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール付加物、脂肪アルコール硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ヘテロアリール硫酸塩、ベタイン、フッ素系界面活性剤、並びにこれらの塩及び誘導体を典型的には使用することが可能である(また、Kanani,N:Galvanotechnik;Hanser Verlag,Munich Vienna,2000;pp.84 ffも参照されたい)。湿潤剤はまた、例えば、Hamposyl(登録商標)として市販されている置換グリシン誘導体である。Hamposyl(登録商標)は、N-アシルサルコシン酸塩、すなわち、脂肪酸アシル残基とN-メチルグリシン(サルコシン)との縮合生成物からなる。これらの浴で析出される銀コーティングは、白色で光沢性乃至高光沢である。湿潤剤は、非多孔質層をもたらす。更に有利な湿潤剤は、以下の群から選択されるものである。
【0021】
アニオン性湿潤剤、例えば、n-ドデカノイル-n-メチルグリシン、(N-ラウロイルサルコシン)Na塩、アルキルコラーゲン加水分解物、2-エチルヘキシル硫酸Na塩、ラウリルエーテル硫酸Na塩、1-ナフタレンスルホン酸Na塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸Na塩、モノアルキル硫酸ナトリウム、例えば、テトラデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、エチルヘキシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物が特に有利である;
非イオン性湿潤剤、例えば、β-ナフトールエトキシレートカリウム塩、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物など。2,000g/mol未満の分子量を有する湿潤剤;
カチオン性湿潤剤、例えば、1H-イミダゾリウム-1-エテニル(又は3-メチル)-、メチル硫酸塩ホモポリマー。
【0022】
本発明による電解質は、酸性pH範囲で使用されるが、異なるpH範囲、例えば最大pH9で操作することもできる。最適な結果は、電解質のpH値が4~0.1で得ることができる。当業者は、電解質のpH値を調整する方法を知っている。これは、好ましくは強酸性範囲にあり、より好ましくは<2である。pH値が2未満であり、場合によっては更に1未満、又は境界例において更に0.5に到達し得る、強い酸性の析出条件を選択することが非常に有利である。
【0023】
原則的に、pH値は、当業者によって必要に応じて調整され得る。しかしながら、当業者は、問題の合金の析出に悪影響を及ぼし得る追加の物質を、電解質中に可能な限り少なく導入するという考えに従うであろう。特に好ましい実施形態では、pH値は、酸を添加することによってのみ調整される。したがって、当業者の観点から、対応する用途に好適である全ての化合物を使用することができる。当業者は、好ましくはこの目的のために強酸、特にメタンスルホン酸又は鉱酸、例えば、硫酸又はオルトリン酸を使用する。
【0024】
上述の物質に加えて、本発明による白金電解質は、可能な限り少ない他の物質を含有し、それは、析出物の劣化のリスクが、各追加の添加剤により増加するからである。上記成分に加えて、硫酸Na、硫酸K、又は対応するリン酸塩などの導電性塩のみを電解質に添加することが可能である。好ましい実施形態では、本発明による電解質は、特にクエン酸を全く含まない。
【0025】
本発明の電解質は、銀色の印象を与える光沢のある析出物を提供する。析出された白金層は、有利には+82を超えるL*値を有する。Cielab表色系(EN ISO 11664-4、出願日の最新版)によれば、a*値は、好ましくは-1~1であり、b*値は、+2~+9である。Konica Minolta CM-700dを用いて値を決定した。
【0026】
本発明の主題は、同様に、導電性基材上に白金又は白金合金層を析出させる方法であって、本発明による電解質を使用し、アノード、及びカソードとしてコーティングされる基材を電解質と接触させ、アノードとカソードとの間に電流を確立する、方法である。
【0027】
白金の析出中に優位的となる温度は、当業者により所望であるとおりに選択されることができる。そこで、当業者は、一方では、十分な析出速度及び適用可能な電流密度範囲に、また他方では、経済的な側面又は電解質の安定性に従うであろう。電解質の温度を20℃~90℃、好ましくは40℃~70℃、特に好ましくは45℃~65℃に設定することが有利である。
【0028】
既に示されているように、本発明による電解質は酸性型である。電解中に電解質のpH値に関して変動が生じることがある。したがって、本方法の好ましい一実施形態では、当業者は電解中にpH値を監視し、必要であれば、pH値を設定値に調整するように進める。ここで進める方法は、当業者に既知である。
【0029】
0.1~10μmの範囲の層厚さは、典型的には、技術的及び装飾的用途のためのラック操作で、1~5A/dm2の範囲の電流密度を用いて析出される。技術的用途のために、最大25μmの層厚さが析出される場合もある。本発明による電解質のために優先的に使用される連続システムでは、約0.5~約5μmの比較的広い範囲にわたる層厚さが、可能な限り高い析出速度、したがって、例えば、0.5~10A/dm2の可能な限り高い電流密度で析出される。加えて、例えば電鋳の場合、数十μmから最大数ミリメートルの比較的高い層厚さを析出させる特別な用途もある。
【0030】
直流電流の代わりに、パルス直流電流を印加することもできる。それにより、電流が、ある特定の時間中断される(パルスめっき)。単純なパルス条件、例えば、平均電流密度で1秒間の電流(ton)及び0.5秒間のパルス休止(toff)などの適用により、均質な、光沢のある、白色コーティングが得られた。
【0031】
析出プロセス中の、カソードとアノードとの間にある電解質で確立される電流密度は、析出の効率及び質に基づいて、当業者により選択されることができる。用途及びコーティングシステムの種類に応じて、電解質中の電流密度が、有利には0.2~50A/dm2に設定される。必要に応じて、例えば、コーティングセルの設計、流速、アノード又はカソードの関係などのシステムパラメータを調整することによって、電流密度を増加又は減少させることができる。0.5~50A/dm2の電流密度が有利であり、1~25A/dm2が好ましく、5~20A/dm2が特に好ましい。
【0032】
本発明の文脈において、低、中、及び高電流密度範囲は、以下のように定義される。
低電流密度範囲:0.1~0.75A/dm2、
中電流密度範囲:0.75A/dm2超~2A/dm2、
高電流密度範囲:2A/dm2超。
【0033】
本発明による電解質及び本発明による方法は、技術的用途、例えば、電気プラグ接続部及びプリント回路基板、並びに宝飾及び時計などの装飾的用途のために、白金コーティングの電解析出用に使用することができる。技術的用途のためには、連続システムを使用することが好ましい。
【0034】
電解質の使用時には、様々なアノードを用いることができる。従って、不溶性アノードのみが使用可能である。不溶性アノードとして好ましいものは、白金めっきチタン、黒鉛、混合金属酸化物、ガラス状炭素アノード、及び特殊炭素材料(「ダイヤモンド状炭素」、DLC)からなる群から選択される材料から作製されたアノード、又はこれらのアノードの組み合わせである。白金めっきチタン、又は混合金属酸化物でコーティングされたチタンの不溶性アノードが有利であり、混合金属酸化物は、好ましくは、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、及びこれらの混合物から選択される。イリジウム-ルテニウム混合酸化物、イリジウム-ルテニウム-チタン混合酸化物、又はイリジウム-タンタル混合酸化物から構成されるイリジウム-遷移金属混合酸化物アノードも、本発明の実施のために有利に使用される。更なる情報は、Cobley,A.J et al.(The use of insoluble anodes in acid sulfate copper electrodeposition solutions,Trans IMF,2001,79(3),pp.113 and 114)で見出すことができる。
【0035】
「電解質浴」という用語は、本発明によれば、対応する容器に入れられ、電気分解のために電流フロー下でアノード及びカソードと共に使用される水性電解質を意味すると理解される。
【0036】
本発明による電解質は水性である。この化合物は、電解質に可溶性の塩又は錯体であることが好ましい。したがって、用語「可溶性塩」及び「可溶性錯体」は、作業温度にて電解質に溶解する、塩及び錯体を指す。この場合、作業温度は、電解析出が行われる温度である。本発明の文脈では、少なくとも1mg/lの物質が作業温度にて電解質に溶解する場合に、この物質は可溶性とみなされる。
【実施例】
【0037】
析出のための電解質調製を、以下のように実施した。まず、1lのビーカーに400mlの脱イオン水を入れた。次いで、激しく撹拌しながら、対応する量の酸、白金、湿潤剤の量、及び最後に対応する添加剤を添加した。次いで、この溶液に脱イオン水を加えて最終容量を1lとした。ニッケル及び金で予めコーティングされた0.2dm2の寸法の黄銅シートを、電解質及び生成物の移動下でコーティングした。析出は、1~20A/dm2の電流密度範囲にわたって行った。電解質中の粒子形成を評価した。結果を以下の表に記録した。
【0038】
【0039】
実験1(添加剤なし)と比較して、電解質中の添加剤による粒子形成は、析出中に有意に最小化されたことが示された。
【国際調査報告】