(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】4D化学的フィンガープリント油井監視
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G01N21/17 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560708
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022588
(87)【国際公開番号】W WO2022212535
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・セサル・カバソス・セプルベダ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・パブロ・サン・ロマン・アレリギ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059EE12
2G059GG02
2G059GG08
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ17
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM09
(57)【要約】
油井(12)内のダウンホール流体(15)の組成を監視するための検知システム(16)であって、検知システム(16)は、光源(41)と、導波路(21)と、ダウンホール流体(15)と間接的に接触するエバネッセント場検知素子(22)と、検出器(25、43、53、63)とを含む、検知システム。光源(41)は、ビームを放射するように動作可能であり、ビームの少なくとも一部を検知コムビームに改質するように構成された周波数コム発生器(42)を含む。エバネッセント場検知素子(22)は、エバネッセント場検知素子(22)とダウンホール流体(15)との間の界面で検知コムビームの減衰された内部反射を提供し、検知コムビームの一部は、ダウンホール流体(15)と相互作用して相互作用ビームの少なくとも一部を形成する。検出器(25、43、53、63)は、相互作用ビームのスペクトル分布を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油井(12)内のダウンホール流体(15)の組成を監視するための検知システム(16)であって、前記検知システム(16)は、
-ビームを放射する少なくとも1つの周波数コム発生器(42)を有する少なくとも1つの光源(41)と、
-導波路(21)と、
-前記ダウンホール流体(15)と直接接触するエバネッセント場検知素子(22)であって、
前記周波数コム発生器(42)は、前記ビームの少なくとも一部を、検知コムビーム、参照コムビーム、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つに改質するように構成され、
前記エバネッセント場検知素子(22)は、前記エバネッセント場検知素子(22)と前記ダウンホール流体(15)との間の界面で前記検知コムビームの減衰された内部反射を提供するように構成され、
前記検知コムビームの少なくとも一部は、前記ダウンホール流体(15)と相互作用して、相互作用ビームの少なくとも一部を形成する、エバネッセント場検知素子(22)と、
-前記ビーム、前記検知コムビーム、前記参照コムビーム、前記相互作用ビーム、またはその組合せのうちの少なくとも1つのスペクトル分布を得るように構成された検出器(25、43、53、63)と
を備える、検知システム。
【請求項2】
前記検出器が、フーリエ変換分光計(53)である、請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記導波路(21)が、中空光ファイバである、請求項1または2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記光源(41)が、赤外、可視、または紫外波長の光を放射することができるレーザのアレイまたは広帯域光源である、請求項1から3のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項5】
前記ビームを参照ビームと検知ビームとに分割するように構成された第1の光スイッチ(24、62)をさらに備え、
前記参照ビームは、前記周波数コム発生器(42)によって前記参照コムビームに改質され、前記検知ビームは、前記周波数コム発生器(42)によって前記参照コムビームに改質される、請求項1から4のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項6】
前記ダウンホール流体(15)と相互作用した後の前記検知ビームを前記参照コムビームと組み合わせてインターフェログラムを有する前記相互作用ビームを形成する第2の光スイッチ(24、64)をさらに備える、請求項5に記載の検知システム。
【請求項7】
前記検出器(25、63)が、前記相互作用ビームを電気信号に変換するように構成された光電気検出器である、請求項1に記載の検知システム。
【請求項8】
記憶または伝送のために前記検出器(63)からの信号をデジタル化するように構成されたデジタイザ(55)をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項9】
データまたは電力を光学的または電気的に伝送するように構成された伝送線(26)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項10】
前記エバネッセント場検知素子(22)が、全内部反射もしくは部分内部反射を有する結晶、光ファイバ、導波路、メタサーフェス、メタマテリアル、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項1から9のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項11】
前記エバネッセント場検知素子(22)の表面が、保護層、感度向上層、自己洗浄層、またはその組合せのうちの少なくとも1つで改質される、請求項1から10のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項12】
前記エバネッセント場検知素子(22)の表面が、全内部反射もしくは部分内部反射を有する結晶、光ファイバ、導波路、メタサーフェス、メタマテリアル、またはその組合せのうちの少なくとも1つで改質される、請求項1から11のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の複数の検知システムを備えるケーブル。
【請求項14】
油井監視のための方法であって、前記方法は、
検知システム(16)をダウンホールに所望の深さまで挿入するステップであって、前記検知システム(16)は、エバネッセント場検知素子(22)であって、ダウンホール流体(15)と直接接触し、前記エバネッセント場検知素子(22)と前記ダウンホール流体(15)との間の界面で前記ダウンホール流体(15)と相互作用するビームの部分内部反射または全内部反射を提供する、エバネッセント場検知素子(22)を備える、ステップと、
前記ダウンホール流体(15)の組成をリアルタイムで監視するために相互作用ビームのスペクトル分布を検出するステップと、
前記ダウンホール流体(15)の前記組成に基づいて流入及び注入制御デバイス(ICD)でアクチュエータ(27)を制御するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
フーリエ変換を用いて相互作用ビームのスペクトル分布を分析するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石油及びガス産業は、第4次産業革命(4IR)からの要素を運用、特に所与のプロセスを監視及び制御するための包括的なデータ取得に組み込んでいる。4次元(4D)化学的フィンガープリント油井監視は、油井の特定の深さでのダウンホール流体組成のリアルタイム監視を可能にする。
【背景技術】
【0002】
ダウンホール流体の組成を監視することにより、油の種類、ウォーターカット、及びH2SまたはCO2などの腐食性または毒性の要素の予測が可能になる。ロギング作業における追加のメンテナンスも回避され得る。さらに、これは、ウォーターカット並びに腐食性または毒性要素を軽減することによって、流入及び注入制御デバイス(ICD)と同時に展開された場合にダウンホール流体の最適化を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることも意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、油井内のダウンホール流体の組成を監視するための検知システムに関し、検知システムは、光源と、導波路と、ダウンホール流体と間接的に接触するエバネッセント場検知素子と、検出器とを備える。光源は、ビームを放射するように動作可能であり、ビームの少なくとも一部を検知コムビームに改質するように構成された周波数コム発生器を備える。エバネッセント場検知素子は、エバネッセント場検知素子とダウンホール流体との間の界面で検知コムビームの減衰された内部反射を提供し、検知コムビームの一部は、流体と相互作用してフィンガープリントビームの少なくとも一部を形成する。検出器は、フィンガープリントビームのスペクトル分布を取得するように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、検知システムの検出器は、フーリエ変換分光計であってもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、導波路は、中空光ファイバである。
【0007】
いくつかの実施形態では、検知システムの光源は、赤外、可視、または紫外波長の光を放射することができるレーザのアレイまたは広帯域光源であってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、検知システムは、第1の光スイッチをさらに備えてもよく、光スイッチは、ビームを参照ビームと検知ビームとに分割する。
【0009】
いくつかの実施形態では、参照ビーム及び検知ビームの各々は、周波数コム発生器によって改質されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、検知システムは、ダウンホール流体と相互作用した後の検知ビームを参照ビームと組み合わせてインターフェログラムを有する相互作用ビームを形成する第2の光スイッチをさらに備えてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、検知システムの検出器は、フィンガープリントビームを電気信号に変換するように構成された光電気検出器であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、検知システムは、記憶または伝送のために検出器からの信号をデジタル化するように構成されたデジタイザをさらに備えてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、検知システムは、データまたは電力を光学的または電気的に伝送するように構成された伝送線をさらに備えてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子は、全内部反射もしくは部分内部反射を有する結晶、または光ファイバ、または他の導波路構成であってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子は、メタサーフェスまたはメタマテリアルであってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子の表面は、保護層、感度向上層または自己洗浄層で改質されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子の表面は、メタサーフェスまたはメタマテリアルで改質されてもよい。
【0018】
1つの態様では、本明細書に開示される実施形態は、化学的フィンガープリント油井監視の方法に関する。本方法は、検知システムをダウンホールに所望の深さまで挿入するステップであって、検知システムは、エバネッセント場検知素子であって、ダウンホール流体と直接接触し、エバネッセント場検知素子とダウンホール流体との間の界面でダウンホール流体と相互作用するビームの部分内部反射または全内部反射を提供する、エバネッセント場検知素子を備える、ステップと、ダウンホール流体の組成をリアルタイムで監視するために相互作用ビームのスペクトル分布を検出するステップと、ダウンホール流体の組成に基づいて、流入及び注入制御デバイス(ICD)でアクチュエータを制御するステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、フーリエ変換を使用して相互作用ビームのスペクトル分布を分析するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
特許請求される主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の実施形態による検知システムを備える油井を示す図である。
【
図2A】本開示の実施形態による検知システムのスキームを示す図である。
【
図2B】本開示の実施形態による検知システムの別のスキームを示す図である。
【
図2C】本開示の実施形態による検知システムの別のスキームを示す図である。
【
図3A】本開示の実施形態によるエバネッセント場検知素子の配置を示す図である。
【
図3B】本開示の実施形態によるエバネッセント場検知素子の配置を示す別の図である。
【
図4】少なくとも1つの周波数コムと共に使用される本開示の実施形態による検知システムを示す図である。
【
図5】少なくとも1つの周波数コム及びフーリエ変換分光計(FTS)と共に使用される本開示の実施形態による検知システムを示す図である。
【
図6】デュアルコーム構成で使用される本開示の実施形態による検知システムを示す図である。
【
図7】本開示の実施形態による化学的フィンガープリント油井監視の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面を参照して、本開示の特定の実施形態を詳細に説明する。様々な図の同様の要素は、一貫性のために同様の参照番号で示されている。
【0023】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、本開示のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで本開示を実施できることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明が不必要に複雑になるのを避けるために、周知の特徴は詳細に説明されていない。
【0024】
本出願を通して、序数(例えば、第1、第2、第3など)は、要素(すなわち、本出願における任意の名詞)の形容詞として使用され得る。序数の使用は、「前(before)」、「後(after)」、「単一(single)」という用語及び他のそのような用語を使用するなど、明示的に開示されていない限り、要素の特定の順序を暗示または作成するものではなく、任意の要素を単一の要素のみに限定するものでもない。むしろ、序数の使用は、要素を区別するためのものである。一例として、第1の要素は第2の要素とは異なり、第1の要素は2つ以上の要素を包含し、要素の順序で第2の要素に続いて(または先行して)もよい。
【0025】
本明細書に開示される実施形態は、一般に、周波数コム、フーリエ変換分光計及びエバネッセント場センサを使用する4次元(4D)化学的フィンガープリント油井監視システム及び方法に関する。例えば、監視システムは、ダウンホール流体のリアルタイムの深さ方向監視のために、デュアルコーム分光法(DCS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、減衰全反射率(ATR)、またはそれらの任意の組合せを利用してもよい。生成される油、ウォーターカット、及び腐食に影響を及ぼす化合物(例えば、H2S及びCO2)の存在を含むダウンホール流体組成のリアルタイムでの深さ方向の監視により、最大生産及び最小メンテナンスのための掘削パラメータの最適化が可能になる。
【0026】
本明細書で開示される実施形態は、リアルタイムでダウンホール流体の化学的フィンガープリントを分析するためのエバネッセント場検知素子のダウンホール展開に基づくシステム及び方法に関する。エバネッセント場検知素子は、ダウンホール流体と直接接触している。光学信号(すなわち、ビーム)は、エバネッセント場検知素子の内部で部分的にまたは全体的に反射され得る。エバネッセント場検知素子とダウンホール流体との界面では、エバネッセント場がダウンホール流体と直接相互作用し、電磁場(すなわち、検知ビーム)のエネルギー分布(すなわち、強度)に変化を引き起こし、吸収スペクトルを生成する。ダウンホール流体の化学的特性評価は、スペクトルに存在する吸収フィンガープリントにフーリエ変換分光計(FTS)を適用することによって実行される。
【0027】
本明細書に開示される実施形態は、一般に、熱的及び機械的安定性を確保しながら選択性及び感度を改善するために光周波数コム(OFC)を利用することに関する。OFCは、同時に記録された良好に分解された吸収及び分散スペクトルを提供し、広いスペクトルウィンドウにわたって複数の化学種の高感度検出を提供する。OFCは、テラヘルツからUV領域に及ぶ広範囲の周波数で利用され得る。その高い空間コヒーレンスは、より長い質問経路、より高い感度、高い周波数分解能、及び高い精度を可能にする。前述の利点は、高速のスペクトル及びデータ取得による動的かつリアルタイムの検知、並びに石油生産の最適化のための制御装置への即時フィードバックを可能にすることができる。
【0028】
図1は、デリック11及び油井12のスキームを示す。少なくとも1つの検知システム16を有する油井の内部に部分的にある少なくとも1つの配管13がある。デリックは、検知及び通信のための電力を供給する電力モジュールを含む。油井は、少なくとも1つのパッカ14を含んでもよい。パッカは、油井を個々のゾーンに分離し、選択的なアクセス及び制御を可能にする。少なくとも1つの検知システムが配管の内部に埋め込まれ、油井に沿って分配されて、ダウンホール流体15の化学的フィンガープリントをリアルタイムで取得する。
【0029】
いくつかの実施形態では、複数の検知システムが1つの配管の内部に埋め込まれて、異なる位置でのリアルタイム監視を可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、複数の配管が、油井の内部に配置されてもよい。そのような構成では、配管の数は、油井の直径によって制限される。
【0030】
本開示の実施形態による配管は、流れを制限する流入及び注入制御デバイス(ICD)によって制御されるアクチュエータを含んでもよい。ICDは、電気アクチュエータ、流体アクチュエータ、機械的アクチュエータなどであってもよい。ICDは、配管に沿って配置されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、配管の少なくとも一部は、デリックの内側で地上にある。配管内の検知システムは、単一または複数の周波数の光信号を生成するように構成された光源、または検出器(例えば、分光計)、または通信デバイス、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。光源、検出器、通信デバイスは、地上または地下に配置されてもよい。通信デバイスは、分光計からリアルタイムの化学的フィンガープリント監視結果を受信し、油井内の生成された油の組成に基づいて即時の動作決定のためにフィードバック情報をICDに提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、検知システムは、デリック内の電力モジュールに接続されたデータ及び/または送電線を含む。データ及び/または送電線は、検知システムに光及び/または電気信号を伝送し、及び/または電力を供給する。データ及び/または送電線、光学的(例えば、導波路、光ファイバなど)、電気的、またはその両方であることができる。
【0033】
図1の検知システムは、光信号を伝送するように構成された少なくとも1つの導波路21と、少なくとも1つのエバネッセント場検知素子22と、クラッド23とを含む。クラッドによって囲まれたエバネッセント場検知素子は、両側で導波路に接続される。
【0034】
導波路は、光ファイバ、または光信号を案内するための屈折率が増加した任意の他の材料であってもよい。例えば、導波路は、気体(例えば、空気、窒素、またはヘリウム)で満たされた中空光ファイバ(例えば、中空シリカまたはサファイア管)またはフューモードファイバであってもよい。あるいは、導波路は、ガラスファイバ(例えば、カルコゲナイド、フッ化物)、(ポリ)結晶ファイバ(例えば、ハロゲン化銀、サファイア)、または固体導波路(例えば、薄膜平面GaAs/AlGaAs)であってもよい。いくつかの実施形態では、検知システムは、導波路に沿って分布した複数のエバネッセント場検知素子をそれぞれ有する複数の導波路21を含んでもよい。そのような構成では、導波路の数は、油井の外径によって制限される。
【0035】
エバネッセント場検知素子は、ビームの全内部反射を提供し、ダウンホール流体と直接接触している。ビームのエバネッセント場とダウンホール流体との間の相互作用は、ダウンホール流体のスペクトルフィンガープリントをもたらす。言い換えれば、相互作用は、ビームの強度及びスペクトル分布を変更する。
【0036】
本出願の1以上の実施形態によれば、
図2A、
図2B、及び
図2Cは、エバネッセント場検知素子の配置を示す検知システムの一部のスキームを示す。いくつかの実施形態では、ビームは、界面での反応のために光源からエバネッセント場検知素子に直接導かれる。あるいは、ビームは、光スイッチ24またはビームスプリッタを通過し、反応のためにエバネッセント場検知素子22に導かれる検知ビームと参照ビームとに分割されてもよい。エバネッセント場検知素子の長さ(または露出領域)、言い換えれば、エバネッセント場検知素子とダウンホール流体との間の接触領域は、検知システムの感度に影響を及ぼし得る。相互作用ビームは、検出器25によってその場で監視されてもよく、監視結果はICDに伝送されてもよい。あるいは、相互作用ビームは反射され、分析のために検出器に光学的に伝送されてもよい。いくつかの実施形態では、別の光スイッチが、反応ビームと参照ビームを再結合するために使用されてもよい。データ及び/または送電線26が、相互作用の前または後に電力及び/またはビームの伝送に使用されてもよい。より具体的には、中空光ファイバ28が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアクチュエータ27が、ICDによって制御されて、流れを制限するために使用されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子に導かれるビームは、NIR光源から生成される近赤外(NIR)光学信号である。あるいは、ビームは、紫外線(UV)または可視光であってもよい。あるいは、ビームの周波数は、X線から無線周波数(RF)までの電磁スペクトル全体に及んでもよい。本開示の実施形態による光源は、単一帯域または広帯域光源であってもよい。広帯域光源は、レーザ、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード(SLED)、黒体放射器、プラズマ源を含むがこれらに限定されないパルス式または連続式であってもよい。光源は、単一または複数の周波数を選択するために、分散、ダイクロイック、またはバンドパス光学または電気光学素子などの電磁波長選択器と結合されてもよい。
【0038】
コヒーレントレーザ光源が使用される場合、周波数コム発生器(例えば、共振空洞を有する共振器)が、周波数コムを有するビームを生成するために組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、周波数コムビームを有するビームは、エバネッセント場検知素子に導かれ、検知ビームとして機能する。いくつかの実施形態では、検知システムは、光源から生成されたビームを分割し、ビームの一部のみを検知ビームとしてエバネッセント場検知素子に結合するために、光スイッチ、デジタルマイクロミラー、フィルタ、偏光子、またはビームスプリッタを含んでもよい。エバネッセント場検知素子に誘導されないビームの他の部分は、参照ビームとして機能する。いくつかの実施形態では、検知ビームと参照ビームの両方が、共振器に結合して周波数コムを生成してもよい。
【0039】
本開示の実施形態による検知システムは、一般に、全内部反射及び結果として生じるエバネッセント波を利用するATRに関する。ビーム(例えば、IRビーム)が高屈折率の媒体(すなわち、エバネッセント場検知素子)から低屈折率の媒体(例えば、試料及び周囲媒体)に入射角で進行すると、光の少なくとも一部が反射されて低屈折率媒体に戻る。入射角が特定の角度よりも大きい場合、ほとんどすべての光が反射されて戻る。ビームがエバネッセント場検知素子を通過すると、ビームは、試料との界面で内部表面から少なくとも1回反射される。内部反射の結果として、表面に沿って伝播するビームからの電磁放射の一部が試料に浸透する。試料への浸透深さは、典型的にはマイクロメートル以内であり、正確な値は、光の波長、入射角、エバネッセント場検知素子の屈折率、及びプローブされる媒体によって決定される。反射の数は、入射角またはエバネッセント場検知素子のサイズを変えることによって変えられてもよい。内部反射が起こる各位置で、エバネッセント波は、減衰する振幅で隣接する環境に浸透し、界面で試料と相互作用する。次いで、ビームは、エバネッセント場検知素子を出て、検出器によって収集されてもよい。相互作用ビームは、その場分析のために調整またはフィルタリングされてもよく、または地面に導かれてもよい。例えば、相互作用ビームは、2×1カプラまたは別の光スイッチを使用して伝送ファイバまたはテレメトリファイバに結合されて戻されてもよい。あるいは、相互作用後の検知ビームは、検知システムの地下部分に埋め込まれた検出器によって捕捉されてもよい。
【0040】
本開示の実施形態のエバネッセント場検知素子は、フューモードまたはマルチモード光ファイバ、またはSiO2、F:SiO2、サファイア、または用途に必要な他の材料で作られた全内部反射または部分内部反射を有する結晶であってもよい。エバネッセント場検知素子として使用される結晶はまた、ゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、臭化タリウム(例えば、KRS-5)、またはシリコン(Si)であってもよい。ダイヤモンドの優れた機械的特性により、ダイヤモンドはエバネッセント場検知素子として理想的な材料となり、2600~1900cm-1の広いダイヤモンドフォノンバンドにより、この領域の信号対雑音比が大幅に低下する。エバネッセント場検知素子の形状は、分光計の種類及び試料の性質に依存する。例えば、分散型分光計と共に使用される場合、エバネッセント場検知素子は、面取りされた縁部を有する矩形スラブの形状を有してもよい。他の幾何学的形状は、プリズム、台形、ロッド、半球、または薄膜であってもよい。ガラス繊維(例えば、カルコゲナイド、フッ化物)、(ポリ)結晶繊維(例えば、ハロゲン化銀、サファイア)、中空導波路(例えば、中空シリカまたはサファイア管)、及び固体導波路(例えば、薄膜平面GaAs/AlGaAs)を含むがこれらに限定されない他の導波路構成が、使用されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、メタマテリアルまたはメタサーフェスは、エバネッセント場検知素子材料として使用されてもよい。本明細書に開示されるメタマテリアルまたはメタサーフェスは、ゼロまたはほぼゼロの屈折率、負の屈折率、プラズモン特性、Fano共振、フォトニックバンドギャップ、またはフォノニックバンドギャップを有する材料を含んでもよい。メタマテリアルまたはメタサーフェスはまた、光ダイオード、フォトニック結晶、同調メタマテリアルであってもよい。メタマテリアルまたはメタサーフェスは、モアレ双曲線、双異方性、双等方性、2Dキラル、3Dキラルまたは超格子であってもよい。メタマテリアルまたはメタサーフェスは、金属(例えば、金、銀、白金、ロジウム)、2D材料(例えば、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、金属二カルコゲナイド、ホスホレン、マキシン)または金属有機フレームワークを使用してパターン化または製造されてもよい。いくつかの実施形態では、メタマテリアル及びメタサーフェスは、エバネッセント場検知素子または導波路上にコーティングされてもよい。あるいは、周波数コム発生器はまた、その光学性能を向上及び/または調整するためにメタマテリアル及びメタサーフェスでコーティングされてもよい。メタマテリアル及びメタサーフェスは、レーザアブレーション、プラズマエッチング、化学的エッチング、及びリソグラフィを含むがこれらに限定されない様々な方法によってパターン化されてもよい。あるいは、スパッタリング、パルスレーザ堆積法、パルスプラズマ堆積法、原子層堆積法、原子層エッチング法、電気めっき法、電子ビーム蒸着法、化学気相堆積法、表面溶液法、またはスラリー塗布法によって、堆積法が実行されてもよい。
【0042】
メタマテリアル及びメタサーフェスがエバネッセント場検知素子として使用される場合、それらは点分布の代わりに線形または平面分布エバネッセント波を生成し得る。例えば、
図3A及び
図3Bは、本開示の実施形態によるエバネッセント場検知素子の配置を示す。他のタイプのエバネッセント場検知素子が、全内部反射が発生する各位置に離散エバネッセント場31を生成してもよく、一方、メタマテリアル及びメタサーフェスからの連続エバネッセント場32は、エバネッセント場検知素子22とダウンホール流体15との間の界面に均一に分布する。したがって、メタマテリアル及びメタサーフェスは、電磁波のエバネッセント波への変換の向上、並びにダウンホール流体とエバネッセント場検知素子との間の相互作用の感度及び応答性の改善を可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態では、エバネッセント場検知素子または導波路の表面を変更するために、改質層がコーティング、追加、またはパターン化されてもよい。改質層は、保護層、感度向上層、自己洗浄層、またはそれらの組合せであってもよい。改質層は、ポリマー、セラミック、酸化物、ダイヤモンド、金属、メタマテリアル、またはそれらの機能によって必要とされる他の材料で作られてもよい。感度向上層は、エバネッセント波の伝播を改質し、導波路表面に沿って連続的なエバネッセント波を提供することによって検知能力を向上させる薄膜であってもよく、離散エバネッセント波の生成を回避してもよい。改質層の厚さは、必要に応じて調整されてもよい。自己洗浄層は、エバネッセント場検知素子または導波路の安定性及び耐久性を改善するためにコーティングされてもよい。極端な条件下、例えば石油生産油井内の測定では、サンプリング及び分析のために堅牢な検知システムが必要とされる。自己洗浄材料で処理された表面は、水及び油をはじくように、または疎水性と疎油性との間で切り替え可能であり、危険で極端な環境からの損傷を最小限に抑えるように、オムニフォビックまたはスーパーオムニフォビックであるように構成される。
【0044】
本開示の実施形態は、検出器を含んでもよい。検出器は、異なる波長での検出を可能にする分散型分光計であってもよい。分散型分光計は、仮想撮像位相アレイ(VIPA)と結合してマイクロ秒での時間分解能を達成し、化学的フィンガープリントの動的及びリアルタイムの監視を可能にし得る。あるいは、レーザが使用される場合、分散素子のない単一の検出器で十分であり得る。検出器はまた、冷却(固体状態)または非冷却フォトダイオードまたは光電センサであってもよい。検出器の種類は、主に測定される波長の範囲に依存する。例えば、シリコンベースの電荷結合素子(CCD)は、UV、可視、及びIR範囲の短い方の端部に適している。より長い波長での検出のために、IR検出器が使用されてもよい。IR検出器は、比較的長い波長領域に感度を有する光検出器(光子検出器)と、IR光の吸収によって生じる小さな温度変化を検知することに基づく熱検出器とを含む。より長い波長では、より低いバンドギャップエネルギーを有する半導体材料が必要とされ、その結果、より低いエネルギーを有する光子は、いくらかの光電流に寄与するキャリアを生成するのに十分である。ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)検出器は、約1.7μmまでの波長に適している。同様に、ゲルマニウム(Ge)フォトダイオードは、約0.9μm~1.6μmで使用することができる。5μmを超えるより長い波長には、アンチモン化インジウム(InSb)フォトダイオードが適している。IR検出器は、テルル化カドミウム水銀(MCT)検出器、量子ドット赤外線光検出器(QDIP)、またはGaAs/AlGaAsに基づく量子油井赤外線光検出器(QWIP)であってもよい。熱IR検出器は、タンタル酸リチウムなどの強誘電材料に基づく焦電検出器、またはアモルファスシリコンもしくは酸化バナジウムで作られた薄いIR吸収プレートを含むボロメータを含んでもよい。あるいは、ニオブ酸リチウムなどの結晶またはナノ粒子をアップコンバージョンする検出器を、より低い温度ノイズ感度を有するセンサとして使用することができる。
【0045】
上述したように、パルスレーザ光源は、周波数コムを有するビームを得るために周波数コム発生器を組み込んでもよい。周波数コムは、生成された油組成、並びにウォーターカット及び腐食性または毒性要素のリアルタイム監視を高速かつ高感度で可能にする。
図4は、少なくとも1つの周波数コムと共に使用される本開示の実施形態による検知システムを示す図である。
【0046】
周波数コムなどのコヒーレント光源は、より高い輝度、信号対雑音比の増加、及び測定時間の短縮を可能にする。いくつかの実施形態では、光源41から生成されたビームは、少なくとも1つの周波数コム発生器42(例えば、共振器)に結合して周波数コムを生成してもよい。周波数コムビームのスペクトルは、一連の離散した等間隔の周波数線を有し、コム線の強度は実質的に変化し得る。周波数コムビームは、連続波レーザの周期的変調(振幅及び/または位相)、非線形媒体における四波混合、またはモードロックレーザによって生成されたパルス列の安定化によって生成され得る。例えば、共振空洞を有する非線形光共振器をパルスレーザ源と共に使用して、周波数コムを生成することができる。非線形光共振器は、単一の周波数を有する連続レーザからの光を複数の周波数を有するコム光に非線形に変換することができる。
【0047】
周波数コムビームは、ダウンホール流体との相互作用のためにエバネッセント場検知素子22に向けられる。次いで、相互作用ビームは、異なる波長での検出を可能にする分散型分光計43によって捕捉される。分散型分光計は、仮想撮像位相アレイ(VIPA)と結合してマイクロ秒での時間分解能を達成し、化学的フィンガープリントの動的及びリアルタイムの監視を可能にし得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、フーリエ変換分光計(FTS)が、検出器として利用されてもよい。化学的フィンガープリントを有する光学スペクトルは、時間領域干渉波形におけるインターフェログラムのフーリエ変換である。異なる長さのファイバを介して迅速に切り替えることができるレーザアレイまたは広帯域光源が、FTSの時間領域インターフェログラムを捕捉するのに必要な時間遅延を提供し得る。例えば、
図5は、フーリエ変換分光計と組み合わせた周波数コムに基づく検知システムを示す。光源41から生成されたビームは、少なくとも1つの周波数コム発生器(例えば、共振器)42に結合して周波数コムを生成し得る。一度に多くの周波数の光を含む周波数コムビームは、界面でダウンホール流体と相互作用するためにエバネッセント場検知素子22に向けられる。ビームは、ダウンホール流体の吸収による界面での相互作用によって改質され、リアルタイム監視のための化学的フィンガープリントを示す。このプロセスは、短い時間スパンにわたって何度も急速に繰り返される。その後、相互作用ビームは、分析のために可動アーム54上の複数のミラーを有するFTS53に向けられる。
【0049】
FTSは、電磁放射または他のタイプの放射の時間領域または空間領域測定値を使用して、放射源のコヒーレンスの測定値に基づいてスペクトル(透過率、反射率、または吸光度)を取得する測定技術である。フーリエ変換は、生データを実際のスペクトルに変換するために適用され、多くの場合、干渉計を含む光学系に適用される。例えば、FTSは、干渉計を使用して、そのフーリエ変換が光スペクトルである時間領域内の広帯域インターフェログラムを生成し得る。FTSは、光学分光法、赤外分光法(FTIR)、核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴分光イメージング(MRSI)、質量分析及び電子スピン共鳴分光法を含む様々な分光技術に適用されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、FTSは、光路差の関数として2つのアームからの2つの時間遅延信号間の干渉を単一の光検出器上で測定する走査マイケルソン干渉計を含む。本明細書で使用されるビームは、測定される波長の全スペクトルを含む広帯域光源から開始することによって生成され得る。時間領域インターフェログラムは、可動アーム上にミラーを有する走査マイケルソン干渉計によって得られ得る。相互作用ビームは、ミラーの特定の構成を含むマイケルソン干渉計に入射し、ミラーの少なくとも1つはモータによって移動される。このミラーが移動すると、ビーム内の光の各波長は、干渉計によって、波干渉に起因して周期的にブロックされ、伝送され、ブロックされ、伝送される。異なる波長は異なる速度で変調され、その結果、各瞬間またはミラー位置において、干渉計から出てくるビームは、異なるスペクトルを有する。
【0051】
本開示の実施形態によれば、FTIRは、従来のIR分光法を超える利点を伴って、IRスペクトル領域における検出及び分析のためにATRと組み合わされる。FTSは、他のスペクトル範囲でATRと組み合わされてもよい。例えば、紫外線(UV)または可視光が使用される場合、エバネッセント光経路は、エバネッセント波と試料との間の相互作用が波長とともに減少するように十分に短い。光学的に高密度の試料の場合、これは、UV範囲での測定を可能にし得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、デジタイザ55は、検出器から得られた信号をデジタル化することに加えて、データ及び/または送電線を介して記憶または表面に伝送するために使用されてもよい。データ及び/または送電線は、電気的、光学的、またはそれらの組合せであってもよい。任意選択的に、データ処理は、電子的または光学的にダウンホールで行われ、記憶ユニットを使用してその場で記憶されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、検知システムは、測定用の2つ以上の周波数コム、すなわちデュアルコーム分光法(DCS)を含んでもよい。DCSは、アームを動かす必要のない2コム手法である。例えば、
図6に示されるように、光源41から生成されたビームは、光スイッチ62(あるいはビームスプリッタ)によって参照ビームと検知ビームとに分割される。参照ビーム及び検知ビームの各々は、共振器42(例えば、カー周波数コム微小共振器)によって改質されて、参照コムビーム及び検知コムビームを生成する。検知コムビームは、ダウンホール流体との相互作用のためにエバネッセント場検知素子22に導かれる。相互作用は、検知コムビームの強度及びスペクトル分布を改質し、わずかに異なる繰り返し周波数を引き起こす。参照コムビーム及び相互作用された検知コムビームは、続いて再結合器64(例えば、別の光スイッチ)を使用して再結合され、検知コムビーム及び参照コムビームの両方と干渉するインターフェログラムスペクトルを有する再結合ビームを生成する。再結合ビームは時間の関数として記録され、スペクトルを明らかにするためにフーリエ変換される。これは、検出器63によってその場で分析されてもよく、または地上での分析のためにテレメトリファイバまたは給電ファイバに結合して戻されてもよい。両方の場合において、インターフェログラムスペクトルのライン間隔は、ダウンホール流体の化学的フィンガープリントを反映するシグネチャを有する無線周波数(RF)信号に変換される。次いで、フィンガープリントを含む情報は、制御及び最適化のためにICDにフィードバックされる。
【0054】
いくつかの実施形態では、相互作用後、検出コムビームは、光電気検出器またはそのアレイ(例えば、サーモパイル、光検出器、焦電検出器、電気熱量検出器、マイクロボロメータ、ダイオード、高温計、または放射計)を介して分析用の電気信号に変換されてもよい。デジタイザ55は、検出器から得られた信号をデジタル化するのに加えて、データ及び/または送電線を介して記憶または表面に伝送するために使用されてもよい。データ及び/または送電線は、電気的、光学的、またはそれらの組合せであってもよい。任意選択的に、データ処理は、電子的または光学的にダウンホールで行われ、記憶ユニットを使用してその場で記憶されてもよい。
【0055】
本開示の実施形態による検知システムは、検出器からリアルタイムの化学的フィンガープリント監視結果を受信する通信デバイスを含んでもよく、油井内の生成された油の組成に基づいて即時の動作決定のためにフィードバック情報をICDに提供してもよい。本開示の実施形態によれば、化学的フィンガープリント油井監視の方法が
図7に示されている。ステップ701において、検知システムは、ダウンホールに所望の深さまで挿入される。少なくとも1つのビームが、導波路を使用してエバネッセント場検知素子に導かれる。ビームは、地上または地下に配置された光源から生成され、任意選択的に光スイッチ、周波数コム発生器、またはその両方を通過してもよい。参照または検知のいずれかに使用される複数のビームが、使用されてもよい。ビームは、エバネッセント場検知素子とダウンホール流体との界面に生成されたエバネッセント場でダウンホール流体と相互作用する。ステップ702は、ダウンホール流体のスペクトルを検出するステップを含む。相互作用ビームは、化学的フィンガープリントをリアルタイムで捕捉するために、現場または地上のいずれかの検出器に向けられる。ステップ703において、得られたデータ(例えば、スペクトル)が分析されて、油の種類、ウォーターカット、ガス、及び腐食性及び毒性の化学物質を含むダウンホール流体の組成を決定する。ステップ704において、通信装置が監視結果をICDに送信し、ICDは、生成されたダウンホール流体を最適化するように作動を制御する。ステップ705において、生成されたダウンホール流体の組成または組成変化が、リアルタイムで監視される。予想される組成が達成されるかどうかの決定が、ステップ706において、監視結果に基づいて達成される。生成されたダウンホール流体の組成に関して予想通りである場合、作動セグメントの化学組成の報告が作成され得る。そうでなければ、リアルタイム監視は、ステップ702に戻る循環によって継続し得る。
【0056】
本開示を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本明細書に開示される本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
【符号の説明】
【0057】
11 デリック
12 油井
13 配管
14 パッカ
15 ダウンホール流体
16 検知システム
21 導波路
22 エバネッセント場検知素子
23 クラッド
24 光スイッチ
25 検出器
26 データ及び/または送電線
27 アクチュエータ
28 中空光ファイバ
31 離散エバネッセント場
32 連続エバネッセント場
41 光源
42 周波数コム発生器
43 分散型分光計
53 フーリエ変換分光計
54 可動アーム上のミラー
55 デジタイザ
62 光スイッチ
63 検出器
64 再結合器
【国際調査報告】