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特表2024-513861分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/04 20060101AFI20240319BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61L29/04
A61L29/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560816
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2022006131
(87)【国際公開番号】W WO2022231360
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0055086
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521236313
【氏名又は名称】ネクストバイオメディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヒェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】イ・シアン・イ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デ・スン・イ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081CA171
4C081CD031
4C081CD041
4C081CD061
4C081CD081
4C081CD091
4C081CD111
4C081CD121
4C081CD151
4C081CD31
4C081CD33
4C081CE01
4C081CE02
4C081CE11
4C081DA12
(57)【要約】
本願発明は、血管内で分解時間を精密に調節可能な無定形又は球形の塞栓用水和ゲル及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤を使用しないで製造された水和ゲル微粒子を含む塞栓用組成物。
【請求項2】
前記水和ゲル微粒子は、熱変性によって粒子の生成が可能である、請求項1に記載の塞栓用組成物。
【請求項3】
前記水和ゲル微粒子は、ゼラチン、コラーゲン、ガム(gum)、松脂、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ヘパリン、デキストラン、アルギン酸、アルブミン、キトサン、ポリグリコリド、ポリラクチド、及びポリヒドロオキシバレレート、及びシルクフィブロインを含む生体適合性高分子群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の塞栓用組成物。
【請求項4】
前記水和ゲル微粒子は、熱処理及び/又は洗浄によって生体内分解時間が調節される、請求項1に記載の塞栓用組成物。
【請求項5】
前記洗浄は、δP Polar値が14以上である溶媒を使用する、請求項4に記載の塞栓用組成物。
【請求項6】
前記水和ゲル微粒子は、有機溶媒を含むエマルジョン形態である、請求項1に記載の塞栓用組成物。
【請求項7】
前記有機溶媒は、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、プロピルアセテート(propyl acetate)、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート(butyl acetate)、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート(hexyl acetate)、エチルフォルメート(ethyl formate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、1,3-ジオキソリジン-2-オン、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCT(Medium Chain Triglyceride,重鎖中性脂肪)オイル、植物性オイル、ワックス、及びインフューズド(Infused)オイルを含む群から選ばれる少なくとも一つである、請求項6に記載の塞栓用組成物。
【請求項8】
前記エマルジョンは別途の乳化剤を含まない、請求項6に記載の塞栓用組成物。
【請求項9】
局所麻酔剤、抗生剤、造影剤のうち少なくとも一つが付加された、請求項1に記載の塞栓用組成物。
【請求項10】
下記(a)又は(b)段階によって製造される水和ゲル微粒子の製造方法:
(a)
1)生体適合性高分子水溶液を製造する段階;
2)前記段階1)の生体適合性高分子水溶液に有機溶媒を付加してエマルジョン(emulsion)化してマイクロサイズの粒子を形成する段階;
3)前記段階2)で製造されたマイクロサイズの粒子を洗浄及び乾燥させてマイクロサイズの微粒子を得る段階;
4)前記段階3)のマイクロサイズの微粒子を熱硬化させる段階;
5)段階4)で得たマイクロサイズの微粒子を洗浄、脱水及び乾燥させる段階;
(b)
1)生体適合性高分子水溶液を製造する段階;
2)前記段階1)の生体適合性高分子水溶液を撹拌及び/又は低温硬化させて泡を形成後に凍結乾燥させる段階;
3)前記段階2)の泡形態の物質を熱硬化させてマイクロサイズの微粒子を得る段階;
4)前記段階3)で得たマイクロサイズの微粒子を洗浄後に凍結乾燥させる段階;
5)前記段階4)で得た泡形態の物質を粉砕してマイクロサイズの微粒子を得る段階。
【請求項11】
前記生体適合性高分子は、ゼラチン、コラーゲン、ガム(gum)、松脂、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ヘパリン、デキストラン、アルギン酸、アルブミン、キトサン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロオキシバレレート、及びシルクフィブロインを含む群から選ばれる少なくとも一つである、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、プロピルアセテート(propyl acetate)、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート(butyl acetate)、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート(hexyl acetate)、エチルフォルメート(ethyl formate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、1,3-ジオキソリジン-2-オン、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCT(Medium Chain Triglyceride,重鎖中性脂肪)オイル、植物性オイル、ワックス、及びインフューズド(Infused)オイルを含む群から選ばれる少なくとも一つである、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記(a)段階の2)と前記(a)段階の3)との間に、前記段階2)で製造されたマイクロサイズの粒子を常温以下で低温硬化させる段階が付加される、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記(a)段階の4)と前記(a)段階の5)との間に又は前記(a)段階の5)の後に、前記マイクロサイズの微粒子を粉砕後に篩を用いて粒子のサイズ別に分ける段階がさらに付加されるか、
前記(b)段階5)の後に、前記マイクロサイズの微粒子を篩を用いて粒子のサイズ別に分ける段階がさらに付加される、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記熱硬化は、100℃~200℃で10分~24時間行われる、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記洗浄は、0℃超過~40℃以下で行われる、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記洗浄は、δP Polar値が14以上である溶媒を使用して行う、請求項10に記載の水和ゲル微粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項10~17のいずれか一項に記載された製造方法によって製造された水和ゲル微粒子。
【請求項19】
請求項18に記載された水和ゲル微粒子を含む塞栓用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、2021年4月28日付大韓民国特許出願第2021-0055086号に基づく優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に掲示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本願発明は、分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル及びその製造方法に関する。具体的には、血管内で分解時間を精密に調節可能な無定形又は球形の塞栓用水和ゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
映像診断技術の飛躍的な発展により、癌の位置、及び癌に血液を供給する血管を正確に探すことが可能になっている。これにより、放射線照射、外科的除去、及び塞栓術などの様々な抗癌治療を精密に行うことができる。
【0004】
塞栓術(Embolization)は、腫瘍に血液を供給する血管を閉塞させることによって腫瘍の壊死を誘発する治療法である。肝動脈化学塞栓術(Transcatheter arterial chemoembolization,TACE)は、肝癌の治療方法のうち最も多く行われている方法である。TACEは、腫瘍に血液を供給する動脈への物理的塞栓と、動脈を通じて注入する抗癌剤による化学的治療とを同時に行う治療法である。
【0005】
塞栓術は、その他にも、子宮筋腫、前立腺癌、肺癌、腎臓癌などの様々な適応症の治療に用いられている。最近では、関節炎、五十肩の治療にも使用可能であることが報告されている。
【0006】
血管を永久的に塞栓すると、元の血管は再施術が不可能であり、むしろ新生血管が生成されるため、効果が半減してしまう。関節炎や五十肩などを治療するためには、疼痛を誘発する神経に営養分を供給する血管に対して短い時間の塞栓を行うことが好ましい。炎症部位の神経細胞のみを壊死させ、その他の筋肉などへの影響は最小化しなければならないわけである。
【0007】
従来の抗癌に用いられる塞栓は、分解時間が日(day)又は週(week)単位と長すぎ、その上、時間調節が正確でない。関節炎や五十肩などを治療するためには、より精密に時間を調節できる塞栓剤が必要である。従来の塞栓製品には、無定形であるジェルパート(gelpart(登録商標))、カリゲル(cali-gel(登録商標))、エンボキューブ(embocube(登録商標))などがあり、球形であるエンボスフィア(embosphere(登録商標))、エンボジェン(embozene(登録商標))、ビーズブロック(bead block(登録商標))などがある。従来の塞栓製品は、分解時間が長いだけでなく、精密に調整することができない。一方、生分解性である塞栓剤もあるが、無定形であり、分解時間は2週以上であって、関節炎や五十肩などへの適用には向いていない。
【0008】
特許文献1は、本願発明の出願人による特許であり、薬物搭載型塞栓用水和ゲル微粒子として使用可能なマイクロ粒子及びその製造方法に関する。特許文献1は、抗癌用塞栓剤であり、生体内への投与時に分解される時間は調節可能であるが、従来の塞栓剤と同様に分解時間が日(day)単位であるため、関節炎や五十肩などのための短い時間の調節に対する技術は提示できずにいる。
【0009】
特許文献2は、多孔質ではなく中実球の形態で特定の体積膨潤率を有するゼラチン粒子及び該ゼラチン粒子に生理活性物質を溶解し保持させてなるゼラチン粒子並びに注射器内に生理食塩水と共に生理活性物質を溶解含浸して保持させたゼラチン粒子を分散させて使用するデバイスに関する。特許文献2も特許文献1と同様に、分解時間が日(day)単位であり、関節炎や五十肩などのための短い時間の調節に対する技術は提示できずにいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2020-0066574号公報
【特許文献2】特開2014-58466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、本願発明は、従来の塞栓剤が提供できずにいる、分解時間を精密に調節できる塞栓剤に使用可能な、分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。本願発明は、また、分解時間を精密に調節できる他にも、関節炎や五十肩などのための非常に短い分解時間を有する塞栓剤に使用可能な、分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本願発明は、架橋剤を使用しなくとも、治療に必要な適切な分解時間を有する塞栓用水和ゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記のような問題点を解決するために、架橋剤を使用しないで製造された水和ゲル微粒子を含む塞栓用組成物を提供する。本願発明に係る前記水和ゲル微粒子は、熱処理及び/又は洗浄によって生体内分解時間が調節される。前記洗浄は、δP Polar値が14以上である溶媒を使用することができる。
【0014】
特に、本願発明に係る塞栓用組成物は、関節部位の塞栓に適用できる。
【0015】
本願発明に係る水和ゲル微粒子は、熱変性によって粒子の生成が可能であり、その非制限的な例として、ゼラチン、コラーゲン、ガム(gum)、松脂、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ヘパリン、デキストラン、アルギン酸、アルブミン、キトサン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロオキシバレレート、及びシルクフィブロインを含む生体適合性高分子群から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
【0016】
前記水和ゲル微粒子は、有機溶媒を含むエマルジョン形態であってよく、前記有機溶媒は、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、プロピルアセテート(propyl acetate)、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート(butyl acetate)、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート(hexyl acetate)、エチルフォルメート(ethyl formate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、1,3-ジオキソリジン-2-オン、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCT(Medium Chain Triglyceride,重鎖中性脂肪)オイル、植物性オイル、ワックス、及びインフューズド(Infused)オイルを含む群から選ばれる少なくとも一つであってよい。また、前記エマルジョンは別途の乳化剤を含まなくてよい。
【0017】
本願発明に係る塞栓用組成物は、付加的な薬物をさらに含んでよく、非制限的に例示としては、局所麻酔剤、抗生剤、造影剤のうち少なくとも一つが付加されてよい。
【0018】
本願発明のさらに他の態様は、下記(a)又は(b)段階によって製造される水和ゲル微粒子の製造方法を提供する。
【0019】
(a)
1)生体適合性高分子水溶液を製造する段階、
2)前記段階1)の生体適合性高分子水溶液に有機溶媒を付加してエマルジョン(emulsion)化してマイクロサイズの粒子を形成する段階、
3)前記段階2)で製造されたマイクロサイズの粒子を洗浄及び乾燥させてマイクロサイズの微粒子を得る段階、
4)前記段階3)のマイクロサイズの微粒子を熱硬化させる段階、及び
5)段階4)で得たマイクロサイズの微粒子を洗浄、脱水及び乾燥させる段階、
【0020】
(b)
1)生体適合性高分子水溶液を製造する段階、
2)前記段階1)の生体適合性高分子水溶液を撹拌及び/又は低温硬化させて泡を形成後に凍結乾燥させる段階、
3)前記段階2)の泡形態の物質を熱硬化させてマイクロサイズの微粒子を得る段階、
4)前記段階3)で得たマイクロサイズの微粒子を洗浄後に凍結乾燥させる段階、及び
5)前記段階4)で得た泡形態の物質を粉砕してマイクロサイズの微粒子を得る段階
【0021】
前記生体適合性高分子は、ゼラチン、コラーゲン、ガム(gum)、松脂、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ヘパリン、デキストラン、アルギン酸、アルブミン、キトサン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロオキシバレレート、及びシルクフィブロインを含む群から選ばれる少なくとも一つであってよく、前記有機溶媒は、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、プロピルアセテート(propyl acetate)、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート(butyl acetate)、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート(hexyl acetate)、エチルフォルメート(ethyl formate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、1,3-ジオキソリジン-2-オン、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCT(Medium Chain Triglyceride,重鎖中性脂肪)オイル、植物性オイル、ワックス、及びインフューズド(Infused)オイルを含む群から選ばれる少なくとも一つであってよい。
【0022】
また、前記(a)段階の2)と前記(a)段階の3)との間に、前記段階2)で製造されたマイクロサイズの粒子を常温以下で低温硬化させる段階が付加されてよい。
【0023】
また、前記(a)段階の4)と前記(a)段階の5)との間に又は前記(a)段階の5)の後に、前記マイクロサイズの微粒子を粉砕後に篩を用いて粒子のサイズ別に分ける段階がさらに付加されるか、
【0024】
前記(b)段階5)の後に、前記マイクロサイズの微粒子を、篩を用いて粒子のサイズ別に分ける段階がさらに付加されてよい。
【0025】
このとき、粒子のサイズは、非制限的な例として、75μm以上150μm未満、150μm以上350μm未満、350μm以上560μm未満、560μm以上710μm未満、710μm以上1000μm未満、1000μm以上1400μm未満、1400μm以上2000μm未満に分けることができる。
【0026】
前記熱硬化は、100℃~200℃で10分~24時間行われてよく、前記洗浄は、0℃超過~40℃以下で行われてよい。前記洗浄は、δP Polar値が14以上である溶媒で行われてよい。
【0027】
本願発明に係る水和ゲル微粒子は、前記熱処理及び/又は洗浄によって生体内分解速度を時間単位及び分単位で調節することができる。
【0028】
本願発明は、また、前記製造方法によって製造された水和ゲル微粒子及び前記微粒子を含む塞栓用組成物を提供する。
【0029】
本願発明は、また、上記の課題の解決手段を任意に組み合わせて提供することも可能である。
【発明の効果】
【0030】
このように、本願発明は、従来の塞栓剤が提供できずにいる、分解時間を精密に調節できる塞栓剤に使用可能な、分解時間調節が可能な塞栓用水和ゲル微粒子及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
(1)本願発明に係る水和ゲル微粒子は、生分解時間を、短くは30分、長くは30日及びそれ以上に調節できる。
【0032】
(2)本願発明に係る水和ゲル微粒子は、生分解時間を約10分単位で調節できる。
【0033】
(3)本願発明に係る水和ゲル微粒子は、生体適合性高分子で製造され、生物学的安全性に優れる。
【0034】
(4)本願発明に係る水和ゲル微粒子を含む塞栓剤は、生体適合性高分子のみでできており、いかなる化学的架橋剤や添加剤も使用しないので、非常に安全である。
【0035】
(5)本願発明に係る水和ゲル微粒子を含む塞栓剤は、関節炎や五十肩などのための非常に短い分解時間を有する塞栓剤として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子の顕微鏡写真である。写真の下には縮尺を示しており、目盛りの全長は500μmである。
図2】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子を水に膨潤させた160倍顕微鏡写真である。写真の右下には縮尺を示しており、白色棒の全長は250μmである。
図3】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子の粒子サイズ分布測定結果である。
図4】実施例1と比較例1の溶出試験結果である。
図5】実施例1と比較例1の細胞毒性試験結果である。
図6】実施例2~実施例5を用いて分解時間を調節した結果である。
図7】本願発明の実施例13による無定形水和ゲル微粒子の顕微鏡写真である。写真の下には縮尺を示しており、目盛りの全長が300μmである。
図8】本願発明の実施例13による無定形水和ゲル微粒子を水に膨潤させた160倍顕微鏡写真である。写真の右下には縮尺を示しており、白色棒の全長は250μmである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本出願において、「含む」、「有する」又は「備える」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、構成要素、部分品又はそれらを組み合わせた物が存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はそれらを組み合わせた物の存在又は付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0038】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる或いは「接続されて」いると言及されたときには、ある構成要素が他の構成要素に直接に連結されている又は接続されていてもよいが、中間にさらに他の構成要素が存在してもよいと理解されるべきであろう。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる又は「直接接続されて」いると言及されたときには、中間にさらに他の構成要素が存在しないと理解されるべきであろう。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「~間に」と「直接~間に」、又は「~に隣接する」と「~に直接隣接する」なども同様に解釈されるべきである。
【0039】
また、特に断りのない限り、技術的又は科学的な用語を含めてここで使われる全ての用語は、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願に特に定義しない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0040】
<実施例1:球形の水和ゲル微粒子の製造>
【0041】
1)ゼラチン20gを50℃の蒸留水100mlで完全に溶解させる。
2)前記段階1)のゼラチン溶液を、MCT(Medium-Chain Triglyceride)オイル400mlに、450rpmの撹拌条件で徐々に注入してエマルジョンを製造する。
3)前記段階2)で製造されたエマルジョンを、4℃で30分間硬化させた後、上澄液を捨て、アセトン(Acetone)で洗浄後に真空乾燥を行う。
4)前記段階3)で得られた球形の微粒子(マイクロ粒子)を150℃で4時間熱処理する。
5)前記段階4)の微粒子を蒸留水で洗浄した後、再びアセトン(Acetone)で洗浄後に真空乾燥させ、最終球形の水和ゲル微粒子(マイクロ粒子)を得る。
【0042】
実施例1の洗浄方法
【0043】
洗浄方法は、微粒球と洗浄液との比率、洗浄強度及び洗浄時間の影響を受ける。
【0044】
前記実施例1による微粒球50gと15℃蒸留水1.5Lを混合後に、200rpmで30分間撹拌して洗浄を行った。30分後に、膨潤した微粒球を完全に沈殿させ、上澄液を全て捨てた後、15℃蒸留水1.5Lを付加して200rpmで再び30分間撹拌して洗浄を行った。前記洗浄工程を上澄液が完全に透明になるまで行った。実施例1では合計3回行った。
【0045】
以下、他の実施例又は比較例で行われる洗浄は、前記と同じ方法で行った。
【0046】
洗浄溶液を確認した結果、δP Polar値が14以上である溶媒において微粒球が膨潤することを確認した。
【0047】
【表1】
【0048】
<比較例1> 実施例1の製造段階において最後の段階5)を行わない以外は、実施例1と同一である。
【0049】
<実施例2~5:球形の水和ゲル微粒子の製造>
【0050】
実施例1において段階4)の熱処理温度及び時間を120℃、3時間に変更した。前記熱処理が終わった後、当該微粒子を4等分し、それぞれ4℃(実施例2)、10℃(実施例3)、20℃(実施例4)、27℃(実施例5)の蒸留水で洗浄を行った。前記蒸留水洗浄の終わった微粒子を、アセトン(Acetone)を用いて洗浄後に真空乾燥させ、最終の球形の水和ゲル微粒子(マイクロ粒子)を得た。
【0051】
<実施例6~12:球形の水和ゲル微粒子の製造>
【0052】
実施例1において段階4)の熱処理温度及び時間を下表4のように変更した。
【0053】
<実施例13:無定形の水和ゲル微粒子の製造>
【0054】
1)ゼラチン10gを50℃の蒸留水100mlで完全に溶解させる。
2)前記段階1)のゼラチン溶液を14000rpmで30分間撹拌して泡を十分に形成した後、-50℃環境で2時間硬化後に凍結乾燥を行う。
3)前記段階2)の凍結乾燥の終わったスポンジ形態のゼラチンを、150℃で5時間熱処理する。
4)前記段階3)のスポンジ形態のゼラチンを蒸留水で洗浄した後、-50℃環境で2時間硬化後に再び凍結乾燥を行う。
5)前記段階4)の凍結乾燥が終わった後、得られたスポンジを粉砕して最終の無定形スポンジ粒子を得る。
【0055】
<実験1:顕微鏡観測>
【0056】
実施例1で製造した球形の水和ゲル微粒子及び実施例13で製造した無定形水和ゲル微粒子を顕微鏡で観測した(それぞれ、図1図7を参照)。
【0057】
なお、実施例1で製造した球形の水和ゲル微粒子及び実施例13で製造した無定形水和ゲル微粒子を蒸留水に20分間浸漬して膨潤させた後、それを顕微鏡で観測した(それぞれ、図2図8を参照)
【0058】
図1及び図2から分かるように、実施例1で製造した水和ゲル微粒子は、膨潤前後のいずれにおいても球形を帯びている。
【0059】
図7及び図8から分かるように、実施例13で製造した無定形水和ゲル微粒子は膨潤前後のいずれにおいても無定形である。
【0060】
<実験2:粒子サイズ分布測定>
【0061】
実施例1で製造した球形の水和ゲル微粒子に対する粒子サイズ分布は、粒子サイズ分析機(Particle size analyzer)装置を用いて測定した。
【0062】
図3は、本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子の粒子サイズ分布測定結果である。x軸は粒子サイズであり、単位はμmであり、y軸は、当該粒子サイズが占める体積(%)である。
【0063】
本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子は、平均サイズが約300μmと、非常に狭い粒子分布度を有することが分かる。また、前記粒子サイズ分布は、塞栓用に好ましいサイズである。
【0064】
<実験3:溶出試験>
【0065】
実施例1及び比較例1に対して溶出物を観測した。
【0066】
溶出試験は、微粒子2gに1x PBS溶液30mlを入れて十分に膨潤させた後、37℃振盪恒温水槽(shaking water bath)で24時間溶出を行った。
【0067】
図4は、実施例1と比較例1の溶出試験結果である。図4で、左側は比較例1の結果であり、右側は実施例1の結果である。比較例1は、実施例1に比べて溶出物が多いことが確認できる。
【0068】
<実験4:毒性試験>
【0069】
実施例1及び比較例1に対してそれぞれ細胞毒性試験(ISO10993-5)、エンドトキシン試験(ISO10993-11)、及び発熱試験(ISO10993-11)を行った。
【0070】
表1、図5は細胞毒性試験結果、表2はエンドトキシン試験結果、表3は発熱試験結果である。下記の陰性対照(Negative Control)、陽性対照(Positive Control)、ブランク(Blank)はいずれも、前記ISO基準に従ったものである。
【0071】
下表1で、細胞生存率は80%以上が適合であり、表2で、適合になるには20EU/device以上にならなければならず、表3で、0.5℃以上発熱する場合に不適合である。
【0072】
3個の毒性試験において、比較例1はいずれも不適合(Fail)であり、実施例1はいずれも適合(Pass)であった。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
<実験5:洗浄温度による分解時間観察>
【0077】
実施例2~実施例5の微粒子をそれぞれ、篩を用いて100~300μmサイズのみを収集した後、1x PBS(Phosphate-buffered saline,リン酸塩緩衝溶液)に入れ、人体の体温と類似する37℃の恒温水槽で分解時間を観察した。分解時間に対する結果を図6に示した。実施例2~実施例5から分かるように、本願発明に係る製造方法において最後の蒸留水洗浄段階の温度のみを変化させることにより、約10分間隔で分解時間を調節できることが分かる。また、本願発明に係る微粒子は、相対的に非常に短い1時間内で全て分解させることができることが分かる。
【0078】
<実験6:熱処理温度による分解時間観察>
【0079】
実施例6~実施例12の微粒子をそれぞれ、篩を用いて100~300μmサイズのみを収集した後、1x PBS(Phosphate-buffered saline,リン酸塩緩衝溶液)に入れ、人体の体温と類似する37℃の恒温水槽で分解時間を観察した。分解時間に対する結果を表4に示した。実験5は、同一の熱処理を行った後に洗浄温度を変化させ、分解時間を微細に調節できることが分かった。実験6から、熱処理温度及び熱処理時間を変化させることにより、微粒子の大きい単位の分解時間を調節できるという点が明確に分かる。
【0080】
【表5】
【0081】
実験5及び実験6から、微粒子の分解時間を設計する際に、まず、熱処理温度及び時間を調節することで大きい単位(日又は時間)の分解時間を設定し、洗浄温度を調節することで分単位の時間を調節できることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
図1】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子の顕微鏡写真である。写真の下には縮尺を示しており、目盛りの全長は500μmである。
図2】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子を水に膨潤させた160倍顕微鏡写真である。写真の右下には縮尺を示しており、白色棒の全長は250μmである。
図3】本願発明の実施例1による球形の水和ゲル微粒子の粒子サイズ分布測定結果である。
図4】実施例1と比較例1の溶出試験結果である。
図5】実施例1と比較例1の細胞毒性試験結果である。
図6】実施例2~実施例5を用いて分解時間を調節した結果である。
図7】本願発明の実施例13による無定形水和ゲル微粒子の顕微鏡写真である。写真の下には縮尺を示しており、目盛りの全長が300μmである。
図8】本願発明の実施例13による無定形水和ゲル微粒子を水に膨潤させた160倍顕微鏡写真である。写真の左上には縮尺を示しており、白色棒の全長は250μmである。
【国際調査報告】