IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-513867閉塞後破壊サージを軽減するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】閉塞後破壊サージを軽減するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61F9/007 130G
A61F9/007 130B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560994
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 IB2022053423
(87)【国際公開番号】W WO2022219527
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/175,592
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント エー.バクスター
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド デュク
(72)【発明者】
【氏名】サティシュ ヤラマンチリ
(72)【発明者】
【氏名】コアンヤオ チア
(72)【発明者】
【氏名】イェン-チョン チェン
(57)【要約】
眼科手術システムのための手術カセットは、灌流システムと、吸引システムとを含む。灌流システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位に向かって流体を搬送する。吸引システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位から離れて流体を搬送する。吸引システムは、吸引ポンプと、吸引導管のチューブとを含む。吸引ポンプは、吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に手術部位から離れて流体を搬送する。チューブは、通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する。チューブは、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小し、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持して閉塞後破壊サージを軽減し、且つ閉塞後破壊サージ後、より大きい断面積に戻る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術システムのための手術カセットであって、
ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位に向かって流体を搬送するように構成された灌流システムと、
前記ハンドピースと流体連通する吸引システムであって、前記手術部位から離れて流体を搬送するように構成された吸引システムと、
を含み、前記吸引システムは、
吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に前記手術部位から離れて流体を搬送するように構成された吸引ポンプと、
前記通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する、前記吸引導管のチューブであって、
閉塞に応じて、前記より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、
閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持して前記閉塞後破壊サージを軽減することと、
前記閉塞後破壊サージ後、前記より大きい断面積に戻ることと、
を行うように構成されたチューブと、
を含む、手術カセット。
【請求項2】
前記チューブは、前記チューブが、
前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に縮小することと、
前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
を行うことを可能にする軽減粘弾性材料を含む、請求項1に記載の手術カセット。
【請求項3】
前記チューブは、前記チューブが、
前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に縮小することと、
前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
を行うことを可能にする軽減断面を有する、請求項1に記載の手術カセット。
【請求項4】
前記チューブは、1つ以上の軽減セクションを有し、各軽減セクションは、前記チューブが、
前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に縮小することと、
前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
を行うことを可能にする、請求項1に記載の手術カセット。
【請求項5】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含む、請求項4に記載の手術カセット。
【請求項6】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減断面を含む、請求項4に記載の手術カセット。
【請求項7】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減粘弾性材料及び軽減断面を含む、請求項4に記載の手術カセット。
【請求項8】
少なくとも第1の軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含み、及び
少なくとも第2の軽減セクションは、軽減断面を含む、請求項4に記載の手術カセット。
【請求項9】
少なくとも1つの軽減セクションは、0.1~10センチメートル(cm)の長さを有する、請求項4に記載の手術カセット。
【請求項10】
閉塞後破壊サージを軽減する方法であって、
ハンドピースと流体連通する灌流システムにより、手術部位に向かって流体を搬送することと、
前記ハンドピースと流体連通する吸引システムにより、前記手術部位から離れて流体を搬送することと、
前記吸引システムの吸引ポンプにより、吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に前記手術部位から離れて流体を搬送することと、
前記吸引導管のチューブにより、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することであって、前記チューブは、前記通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する、縮小することと、
前記チューブにより、閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持して前記閉塞後破壊サージを軽減することと、
前記チューブにより、前記閉塞後破壊サージ後、前記より大きい断面積に戻ることと、
を含む方法。
【請求項11】
前記チューブにより、前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に前記縮小することは、前記チューブの軽減粘弾性材料からもたらされ、及び
前記チューブにより、前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を前記維持することは、前記軽減粘弾性材料からもたらされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記チューブにより、前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に前記縮小することは、前記チューブの軽減断面からもたらされ、及び
前記チューブにより、前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を前記維持することは、前記軽減断面からもたらされる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記チューブにより、前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に前記縮小することは、前記チューブの1つ以上の軽減セクションのうちの1つの軽減セクションからもたらされ、及び
前記チューブにより、前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を前記維持することは、前記1つの軽減セクションからもたらされる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減断面を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの軽減セクションは、軽減粘弾性材料及び軽減断面を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも第1の軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含み、及び
少なくとも第2の軽減セクションは、軽減断面を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの軽減セクションは、0.1~10センチメートル(cm)の長さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
眼科手術システムのための手術カセットであって、
ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位に向かって流体を搬送するように構成された灌流システムと、
前記ハンドピースと流体連通する吸引システムであって、前記手術部位から離れて流体を搬送するように構成された吸引システムと、
を含み、前記吸引システムは、
吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に前記手術部位から離れて流体を搬送するように構成された吸引ポンプと、
前記通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する、前記吸引導管のチューブであって、複数の軽減セクションを含み、各軽減セクションは、前記チューブが、
閉塞に応じて、前記より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、
閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
前記閉塞後破壊サージ後、前記より大きい断面積に戻ることと、
を行うことを可能にする、チューブと
を含み、
少なくとも第1の軽減セクションは、前記チューブが、
前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に縮小することと、
前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
を行うことを可能にする軽減粘弾性材料を含み、
少なくとも第2の軽減セクションは、前記チューブが、
前記閉塞に応じて、前記より大きい断面積から前記より小さい断面積に縮小することと、
前記閉塞後破壊サージ中、前記より小さい断面積を維持することと、
を行うことを可能にする軽減断面を含む、手術カセット。
【請求項20】
少なくとも第3の軽減セクションは、前記軽減粘弾性材料及び前記軽減断面を含む、請求項19に記載の手術カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術システム及び方法に関し、より具体的には、眼科手術中の閉塞後破壊サージを軽減するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術では、白内障の水晶体を取り除き、その水晶体を人工の眼内レンズ(IOL)に置換する。白内障の水晶体は、通常、水晶体を断片化し、水晶体の断片を眼から外に吸引することによって取り除かれる。水晶体は、例えば、超音波乳化吸引術ハンドピース、レーザハンドピース又は他の適切なハンドピースを使用して断片化され得る。処置中、ハンドピースは、水晶体を断片化し、断片は、例えば、中空針を通して眼から外に吸引される。処置全体を通して、灌流液が眼内にポンプ圧送されて眼内圧力(IOP)を維持し、眼球の虚脱を防止する。
【0003】
合併症は、針の詰まり又は閉塞が存在する場合に生じる。灌流液及び乳化した組織が中空針を通して吸引される際、組織の一片がチップを詰まらせ、チップ内に真空圧が蓄積する場合がある。閉塞破壊は、組織が自由に壊れて針を通して移動するときに発生する。これが起こると、前房内の真空圧が突然低下し、閉塞後破壊サージがもたらされる。場合により、閉塞後破壊サージによって比較的大量の流体及び組織が眼から外に急速に吸引されて、眼が潰れ、且つ/又は水晶体嚢が裂ける可能性がある。このサージを軽減するための既知の技術は、特定の状況では満足のいくように効果的でない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の実施形態によれば、眼科手術システムのための手術カセットは、灌流システムと、吸引システムとを含む。灌流システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位に向かって流体を搬送する。吸引システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位から離れて流体を搬送する。吸引システムは、吸引ポンプと、吸引導管のチューブとを含む。吸引ポンプは、吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に手術部位から離れて流体を搬送する。チューブは、通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する。チューブは、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小し、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持して閉塞後破壊サージを軽減し、且つ閉塞後破壊サージ後、より大きい断面積に戻る。
【0005】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてよいか、1つ、いくつか又は全てを含み得る:請求項1に記載の手術カセットであって、チューブは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することとを行うことを可能にする軽減粘弾性材料を含む、手術カセット。請求項1に記載の手術カセットであって、チューブは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することとを行うことを可能にする軽減断面を含む、手術カセット。請求項1に記載の手術カセットであって、チューブは、1つ以上の軽減セクションを有する、手術カセット。各軽減セクションは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することとを行うことを可能にする。軽減セクションは、軽減粘弾性材料及び/又は軽減断面を含み得る。第1の軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含み得、及び第2の軽減セクションは、軽減断面を含み得る。軽減セクションは、0.1~10センチメートル(cm)の長さを有し得る。
【0006】
特定の実施形態によれば、閉塞後破壊サージを軽減する方法は、ハンドピースと流体連通する灌流システムにより、手術部位に向かって流体を搬送することと、ハンドピースと流体連通する吸引システムにより、手術部位から離れて流体を搬送することと、吸引システムの吸引ポンプにより、吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に手術部位から離れて流体を搬送することと、吸引導管のチューブにより、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することであって、チューブは、通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する、縮小することと、チューブにより、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持して閉塞後破壊サージを軽減することと、チューブにより、閉塞後破壊サージ後、より大きい断面積に戻ることとを含む。
【0007】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてよいか、1つ、いくつか又は全てを含み得る:チューブにより、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することは、チューブの軽減粘弾性材料からもたらされる。チューブにより、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することは、軽減粘弾性材料からもたらされる。チューブにより、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することは、チューブの軽減断面からもたらされる。チューブにより、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することは、軽減断面からもたらされる。チューブにより、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することは、チューブの1つ以上の軽減セクションのうちの軽減セクションからもたらされる。チューブにより、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することは、軽減セクションからもたらされる。軽減セクションは、軽減粘弾性材料及び/又は軽減断面を含み得る。第1の軽減セクションは、軽減粘弾性材料を含み得、及び第2の軽減セクションは、軽減断面を含み得る。軽減セクションは、0.1~10センチメートル(cm)の長さを有し得る。
【0008】
特定の実施形態によれば、眼科手術システムのための手術カセットは、灌流システムと、吸引システムとを含む。灌流システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位に向かって流体を搬送する。吸引システムは、ハンドピースと流体連通し、且つ手術部位から離れて流体を搬送する。吸引システムは、吸引ポンプと、吸引導管のチューブとを含む。吸引ポンプは、吸引導管内に通常真空圧を生成して、通常動作中に手術部位から離れて流体を搬送する。チューブは、通常真空圧に応じてより大きい断面積を有する。チューブは、軽減セクションを含む。各軽減セクションは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することと、閉塞後破壊サージ後、より大きい断面積に戻ることとを行うことを可能にする。少なくとも第1の軽減セクションは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することとを行うことを可能にする軽減粘弾性材料を含む。少なくとも第2の軽減セクションは、チューブが、閉塞に応じて、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小することと、閉塞後破壊サージ中、より小さい断面積を維持することとを行うことを可能にする軽減断面を含む。
【0009】
実施形態は、以下の特徴を含み得る:少なくとも第3の軽減セクションは、軽減粘弾性材料及び軽減断面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、特定の実施形態による、眼に対する眼科処置を実行するために使用され得る眼科手術システムの一例を示す。
図2図2は、特定の実施形態による、図1の眼科手術システムのコンソールのサブシステムの一例である。
図3図3は、特定の実施形態による、図1及び図2の眼科手術システムの手術コンソールと共に使用され得る流体サブシステムの一例を示す。
図4図4は、閉塞後破壊サージを軽減し得る可変容積チャンバの一例を含む、図3の流体サブシステムの一例を示す。
図5図5は、閉塞後破壊サージを軽減し得る可変容積チャンバを含む、図3のハンドピースの一例を示す。
図6図6は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステムによって使用され得る方法の一例を示す。
図7図7は、閉塞後破壊サージを軽減し得るチャンバシステムの一例を含む、図3の流体サブシステムの一例を示す。
図8図8は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステムによって使用され得る方法の一例を示す。
図9図9は、閉塞後破壊サージの軽減を改善し得るプライミング処置を実行する、図3の流体サブシステムの一例を示す。
図10図10は、閉塞後破壊サージを軽減し得る灌流システムの一例を含む、図3の流体サブシステムの一例を示す。
図11図11は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステムによって使用され得る方法の一例を示す。
図12図12は、軽減粘弾性材料を含むチューブの一例を示す。
図13A図13Aは、軽減断面を有するチューブの一例を示す。
図13B図13Bは、軽減断面を有するチューブの一例を示す。
図14A図14Aは、軽減断面を有する軽減セクションを有するチューブの一例を示す。
図14B図14Bは、軽減断面を有する軽減セクションを有するチューブの一例を示す。
図14C図14Cは、軽減断面を有する軽減セクションを有するチューブの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の原理の理解を促すために、ここで、図面に示す実施形態を参照し、且つそれを説明するために特定の言語を使用する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。説明するデバイス、機器、方法に対する任意の代替形態及び更なる修正形態並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示が関連する技術分野の当業者が通常想到し得るように完全に想定される。特に、1つの実施形態に関して説明される特徴、コンポーネント及び/又はステップは、本開示の他の実施形態に関して説明される特徴、コンポーネント及び/又はステップと組み合わされ得ることが完全に想定される。しかしながら、簡潔にするために、これらの組み合わせの多数の反復は、別々に説明されるわけではない。簡略化のために、場合により、図面全体を通して同じ参照番号を用いて同じ又は類似の部分を参照する。
【0012】
本開示は、一般に、水晶体断片化処置を実行するためのデバイス、システム及び方法に関する。断片化中、閉塞後破壊サージを軽減することは、処置の成功に対して重要であり得る。本明細書で開示される装置、システム及び方法は、閉塞後破壊サージを軽減するための特徴を含む。
【0013】
図1は、特定の実施形態による、眼に対する眼科処置を実行するために使用され得る眼科手術システム10の一例を示す。図示の例では、システム10は、図2を参照してより詳細に示されて説明されるように結合された、コンソール100と、ハウジング102と、表示スクリーン104と、インターフェース装置107(例えば、フットペダル)と、流体サブシステム110と、ハンドピース112とを含む。
【0014】
図2は、特定の実施形態による、図1の眼科手術システム10のコンソール100のサブシステムの一例である。コンソール100は、(関連する表示スクリーン104を有する)コンピュータ103並びにインターフェース装置107及びハンドピース112(112a~c)をサポートする、サブシステム106、110及び116を収容するハウジング102を含む。インターフェース装置107は、手術システム10への入力を受信し、システム10からの出力を送信し、且つ/又は入力及び/若しくは出力を処理する。インターフェース装置107の例には、フットペダル、手動入力装置(例えば、キーボード)及びディスプレイが含まれる。インターフェースサブシステム106は、インターフェース装置107からの入力を受信し、且つ/又はインターフェース装置107への出力を送信する。
【0015】
ハンドピース112は、任意の適切な眼科手術器具、例えば、超音波駆動式超音波乳化吸引術(フェイコ)ハンドピース、レーザハンドピース、灌流カニューレ、硝子体手術ハンドピース又は他の適切な手術ハンドピースであり得る。流体サブシステム110は、1つ以上のハンドピース112(112a~c)の流体制御を提供する。例えば、流体サブシステム110は、灌流カニューレのための流体を管理することができる。ハンドピースサブシステム116は、1つ以上のハンドピース112をサポートする。例えば、ハンドピースサブシステム116は、フェイコハンドピースのための超音波振動を管理し、レーザハンドピースにレーザエネルギーを供給し、灌流カニューレの動作を制御し、且つ/又は硝子体手術ハンドピースの機能を管理することができる。
【0016】
コンピュータ103は、眼科手術システム10の動作を制御する。特定の実施形態では、コンピュータ103は、システム10を制御するためにシステム10の構成要素に命令を送信するコントローラを含む。表示スクリーン104は、コンピュータ103によって提供されるデータを示す。
【0017】
図3は、特定の実施形態による、図1及び図2の眼科手術システム10の手術コンソール100と共に使用され得る流体サブシステム110の一例を示す。一般に、(コンピュータ103などの)コントローラ360は、ハンドピース112を用いて実行される手術処置中、眼の目標眼内圧力(IOP)(例えば、0~110ミリメートル水銀(mmHg)の範囲内の値)を維持するように流体サブシステム110の部分を制御する。IOPが目標範囲外であるとコントローラ360が判定した場合、コントローラ360は、圧力を目標範囲に戻すように流体サブシステム110を制御する。例えば、閉塞後破壊は、眼からの容積要求の許容できないサージを生成する場合がある。サージを軽減するために、流体サブシステムは、眼からその容積が要求される前に流体要求を満たすことができる。
【0018】
図示の例では、流体サブシステム110は、手術カセットとして手術コンソール100によって収容され得るカセット本体301を有する。流体サブシステム110は、コントローラ360によって制御される、灌流システム300及び吸引システム305を含む。灌流システム300及び吸引システム305は、ハンドピース112と流体連通する。通常動作中、灌流システム300は、手術部位に向かって流体を搬送し、吸引システム305は、手術部位から離れて流体を搬送する。灌流導管302は、灌流システム300とハンドピース112との間の流体連通を提供し、吸引導管303は、吸引システム305とハンドピース112との間の流体連通を提供する。互いに流体連通する部分は、流体が部分間を(部分に及び/又は部分から)流れることができる部分である。
【0019】
吸引システム305は、吸引導管303の真空経路に真空圧(又は負圧)を生成して維持することにより、手術部位から離れて流体を搬送する。真空圧は、負圧と記述することができる。したがって、真空圧を増加させることは、負圧を増加させること又は圧力を減少させることと記述することができ、真空圧を減少させることは、負圧を減少させること又は圧力を増加させることと記述することができる。特定の実施形態では、吸引システム305の吸引ポンプは、閉塞後破壊サージを軽減するために、吸引導管303に流体を供給するために逆にされ得る。
【0020】
ハンドピース112は、灌流チャネル320と、吸引チャネル355と、ハンドピース圧力センサ(HPS)365とを含む。灌流チャネル320は、手術部位に流体を提供し、吸引チャネル355を取り囲む灌流チップ又は灌流スリーブであり得る。吸引チャネル355は、一定の周波数で振動して組織を破壊する中空針であり得る。流体及び組織は、針を通して吸引され得る。特定の実施形態では、ハンドピース112は、超音波駆動式フェイコハンドピースであり得るか、又は乳化吸引プロセスを容易にするために水晶体を断片化するレーザエネルギーを使用するレーザハンドピースであり得る。
【0021】
HPS365は、灌流導管302内の灌流圧力を検出する灌流圧力センサである。図示の例では、HPS365は、手術部位に近いハンドピース112上において、例えば手術部位から12インチ未満に配置される。手術部位に近接することにより、(閉塞破壊中に発生し得る)圧力の変化の迅速な検出が可能になり、リアルタイムのサージ抑制を可能にする。いくつかの例では、HPS365は、IOPが過度に悪影響を受ける前にコントローラ360が圧力偏差に応答することを可能にし得る、閉塞破壊の50ミリ秒以内に圧力変化を検出する。一般に、灌流圧力センサは、ハンドピース112の任意の適切な場所(例えば、近位端部、遠位端部又は灌流チャネル320の近傍)、灌流導管に沿った任意の適切な場所又は手術部位と流体連通する任意の適切な構成要素(例えば、別個のチューブ若しくはプローブ内)に配置され得る。
【0022】
コントローラ360は、手術部位の目標圧力を維持するために、圧力変化に応じて、バルブ又はポンプなどの流体サブシステム110の部分を制御するコンピュータである。コントローラ360は、眼の手術部位に関連する圧力、すなわち「手術部位圧力」からIOPを判定することができ、この圧力は、手術部位又は他の場所において測定され得る。手術システム10は、手術部位圧力を測定する異なる位置において1つ以上のセンサを有することができる。例えば、センサは、眼のIOPを直接測定するために、眼の位置又はその内部に配置され得る。別の例として、灌流導管において測定された灌流圧力及び/又は吸引導管において測定された吸引圧力は、IOPを示すことができる。手術部位圧力はIOPと同じでない場合があり、より高い手術部位圧力がより高いIOPを示し、より低い手術部位圧力がより低いIOPを示すという点でIOPに対応し得る。手術部位圧力は、眼の目標IOPに対応する目標範囲、例えば、0~110mmHgの範囲内の値(例えば、10~30、30~55、55~80及び/又は80~100mmHgの範囲内の値、例えば30~80mmHg)を有し得る。例えば、灌流圧力は、0~110mmHgの目標範囲(例えば、0~30、30~70又は70~110mmHgの範囲内の値)を有し得るか、又は吸引圧力は、-760~110mmHgの目標範囲(例えば、-760~-300、-300~-100又は-100~110mmHgの範囲内の値)を有し得る。
【0023】
コントローラ360は、メモリから1つ以上の圧力閾値を取得することができる。圧力が圧力閾値に到達したことを検出したことに応じて、コントローラ360は、圧力を目標範囲に戻すように指示を提供する。例えば、閉塞後破壊容積サージを軽減するために、第1の圧力閾値は、閉塞破壊に応じて手術部位圧力が許容できない閾値まで減少されたとき、例えば、望ましくない容積要求が生成されたときを示すことができる。これに応じて、コントローラ360は、吸引導管303及び/又は灌流導管302内の真空圧を減少させて、手術部位圧力の急速な減少を軽減する。例えば、コントローラ360は、手術部位圧力を望ましいレベルにより近づけるために、望ましくない容積要求を満たす流体を供給することができる。第1の圧力閾値は、任意の適切な値、例えば、0~207mmHgの範囲内の値(例えば、0~35、35~100又は100~207mmHgの範囲内の値)を有し得る。
【0024】
第2の圧力閾値は、手術部位圧力が回復したことを示す、手術部位圧力が許容可能な閾値にあるときを示すことができる。これに応じて、コントローラ360は、吸引導管303及び/又は灌流導管302内の真空圧を減少させることを停止する。第2の圧力閾値は、任意の適切な値、例えば-760~207mmHgの範囲内の値(例えば、-760~-600、-600~-400、-400~-200、-200~0又は0~207mmHgの範囲内の値)を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の圧力閾値は、コントローラ360が減少させることを停止するように動作した後、真空圧が通常は、わずかな間、減少し続けるため、目標IOP範囲に到達する前にコントローラ360が真空圧を減少させることを停止するように選択することができる。
【0025】
上記の例では、灌流圧力の観点から定義された第1の圧力閾値と、吸引圧力の観点から定義された第2の圧力閾値とを使用しているが、第1及び第2の閾値は、手術部位における圧力を示す任意の適切なセンサからの適切なタイプの圧力(例えば、吸引圧力、灌流圧力又は眼内圧力)の使用の観点から定義され得る。加えて、第1及び/又は第2の閾値は、同じ又は異なるタイプの圧力に関して定義され得、例えば、両方の閾値は、吸引圧力に関して定義され得る。
【0026】
可変容積チャンバ
図4は、閉塞後破壊サージを軽減し得る可変容積チャンバ36の一例を含む、図3の流体サブシステム110の一例を示す。
【0027】
図示された実施形態では、流体サブシステム110は、ハンドピース112のための流体を管理する灌流システム300及び吸引システム305を含む。吸引システム305は、示されるように吸引経路に沿って流体連通する、吸引導管303と、チャンバ36と、吸引圧力センサ(APS)330と、吸引ポンプ335と、ドレインリザーバ340とを含む。APS330は、吸引導管303内の吸引圧力を検出する。吸引ポンプ335は、ポンプ335と眼との間の吸引導管303内に真空圧を生成し、手術部位からドレインリザーバ340内に流体を引き込む。特定の実施形態では、吸引ポンプ335は、閉塞後破壊サージを軽減するために、吸引導管303に流体を供給するために逆にされ得る。ドレインリザーバ340は、手術部位から流体を受容する。
【0028】
チャンバ36は、流体を貯蔵するために拡張し、吸引導管303内の容積要求を満たすように流体を移動させるために縮小して、閉塞後破壊サージを軽減する可変容積(又は縮小可能)チャンバである。「拡張すること」とは、容積が大きくなることを指し、「縮小すること」とは、容積が小さくなることを指す。チャンバ36は、任意の適切な方法で拡張及び縮小することができる。特定の実施形態では、チャンバ36は、流体を貯蔵するためにチャンバ36を拡張させる第1の方向に移動させ、流体を移動させるためにチャンバ36を縮小させる第2の方向に移動するピストンを含む。ピストンは、流体密シールを形成するために、チャンバ36の少なくとも一部内に密接に適合するように任意の適切なサイズ及び形状を有し得る。例えば、ピストンは、チャンバ36の円筒形チューブ(又は他の対応する形状のチューブ)内に適合する円筒形状(又は他の形状)を有し得る。ピストンが第1の方向に移動すると、チャンバ36の容積が増加する。ピストンが第2の方向(典型的には、第1の方向とは反対の方向)に移動すると、チャンバ36の容積が減少する。
【0029】
特定の実施形態では、チャンバ36は、流体を貯蔵するためにチャンバ36を拡張させる第1の形状に変化し、流体を移動させるためにチャンバ36を縮小させる第2の形状に変化する膜を含む。膜は、チャンバ36の少なくとも一部を形成する可撓性、任意選択的に伸縮可能なシート材料であり得、チャンバ36内に流体を貯蔵するために任意の適切なサイズ及び形状を有し得る。膜の第1の形状は、膜がより大きい(又は更に最大)容積の流体を保持する形状(例えば、球形状)であり得、膜の第2の形状は、膜がより小さい(又は更に最小)容積の流体を保持する形状であり得る。
【0030】
特定の実施形態では、チャンバ36は、流体を貯蔵するためにチャンバ36を展開し、流体を移動させるためにチャンバ36を縮小させるように折り畳む、折り畳み可能な部分を含む。折り畳み可能な部分は、チャンバ36の少なくとも一部を形成する1つ以上の折り目を有する半剛性シート材料であり得、チャンバ36内に流体を貯蔵するために任意の適切なサイズ及び形状を有し得る。少なくとも1つの折り目は、チャンバ36の容積を増加させるために展開することができ、少なくとも1つの折り目は、チャンバ36の容積を減少させるために折り畳むことができる。一例として、折り畳み可能な部分は、アコーディオンのような形状であり得る。
【0031】
チャンバ36は、チャンバ36の拡張及び/又は縮小を容易にする任意の適切な構成要素を有し得る。例えば、チャンバ36は、流体を貯蔵するためにチャンバ36を拡張させ、流体を移動させるためにチャンバ36を縮小させるバルブ(例えば、ソレノイドバルブ)を有し得る。
【0032】
チャンバ36は、(例えば、コントローラ36からの指示に応じて)能動的又は受動的に拡張及び/又は縮小することができる。能動的な実施形態では、コントローラ360は、1つ以上の圧力センサによって検出された圧力に応じて、チャンバ36に、縮小するように指示することができる。受動的な実施形態では、チャンバ36は、コントローラ360からの指示がなくても、吸引導管内の容積要求を満たすように流体を移動させるために縮小するように構成され得る。例えば、チャンバ36は、閉塞後破壊サージからの圧力変化に応じてチャンバ36を縮小させる感圧アクチュエータを有し得る。
【0033】
図5は、閉塞後破壊サージを軽減し得る可変容積チャンバ36を含む、図3のハンドピース112の一例を示す。チャンバ36は、流体を貯蔵するために拡張し、吸引導管303内の容積要求を満たすように流体を移動させるために縮小して、閉塞後破壊サージを軽減する可変容積チャンバである。チャンバ36は、図4に関して説明したようなものであり得る。
【0034】
図6は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステム110によって使用され得る方法400の一例を示す。方法は、ステップ410において開始し、そこで、灌流システムは、手術部位に向かって流体を搬送し、吸引システムは、手術部位から離れて流体を搬送する。
【0035】
吸引システムのチャンバは、ステップ414において流体を貯蔵するために拡張する。特定の実施形態では、チャンバは、チャンバを拡張するように第1の方向に移動するピストンを含む。他の実施形態では、チャンバは、チャンバを拡張するように第1の形状に変化する膜を含む。更に他の実施形態では、チャンバは、チャンバを拡張するように展開する折り畳み可能な部分を含む。
【0036】
ステップ416において、閉塞後破壊サージが発生する場合がある。閉塞後破壊サージが発生した場合、方法は、軽減プロセスが能動的又は受動的であり得る、ステップ420に進む。プロセスが能動的である場合、方法は、ステップ422に進み、そこで、コントローラは、チャンバに流体を移動させるように指示する。次いで、方法は、ステップ424に進む。プロセスが受動的である場合、方法は、ステップ424に直接進む。閉塞後破壊サージが発生しない場合、方法は、ステップ428に進む。
【0037】
チャンバは、ステップ424において容積要求を満たすように流体を移動させて縮小し、閉塞後破壊サージを軽減する。特定の実施形態では、チャンバは、チャンバを縮小させるために第2の方向(例えば、ステップ414の第1の方向とは反対の方向)に移動するピストンを含む。他の実施形態では、チャンバは、チャンバを縮小させるように第2の形状に変化する膜を含む。更に他の実施形態では、チャンバは、チャンバを縮小させるように折り畳む、折り畳み可能な部分を含む。
【0038】
チャンバは、ステップ426において流体を貯蔵するために拡張し、別の閉塞後破壊サージに備える。チャンバは、ステップ414で説明したような方法で拡張し得、能動的又は受動的に拡張し得る。処置は、ステップ428で終了し得る。処置が終了していない場合、方法は、ステップ416に戻る。処置が終了している場合、方法は、終了する。
【0039】
チャンバシステム
図7は、閉塞後破壊サージを軽減し得るチャンバシステム35の一例を含む、図3の流体サブシステム110の一例を示す。図示された実施形態では、流体サブシステム110は、ハンドピース112のための流体を管理する灌流システム300及び吸引システム305を含む。吸引システム305は、示されるように吸引経路に沿って流体連通する、吸引導管303と、チャンバシステム37(37a~c)と、吸引圧力センサ(APS)330と、吸引ポンプ335と、ドレインリザーバ340と、リザーバ333とを含む。APS330は、吸引導管303内の吸引圧力を検出する。吸引ポンプ335は、ポンプ335と眼との間の吸引導管303内に真空圧を生成し、手術部位からドレインリザーバ340内に流体を引き込む。特定の実施形態では、吸引ポンプ335は、閉塞後破壊サージを軽減するために、吸引導管303に流体を供給するために逆にされ得る。ドレインリザーバ340は、手術部位から流体を受容する。リザーバ333は、サージ軽減のために使用され得る流体を貯蔵し、1つ以上のリザーバとして実装され得る。リザーバ333の例には、ベンチュリ、ドレイン、ベント、灌流及び他の適切なリザーバが含まれる。
【0040】
チャンバシステム35は、複数のチャンバ37(37a~c)を含む。チャンバシステム35は、チャンバ37内に流体を貯蔵し、閉塞後破壊サージを軽減するためにチャンバ37の1つ以上から流体を移動させることによって吸引導管内の容積要求を満たす。チャンバ37は、任意の適切な位置にあり得る。例えば、チャンバ37aは、ドレインリザーバ340に通じるドレイン経路に沿って配置され得る。別の例として、チャンバ37bは、リザーバ333に通じるリザーバ経路に沿って配置され得る。別の例として、チャンバ37cは、灌流システム300の灌流導管302に沿って配置され得る。
【0041】
特定の実施形態では、チャンバシステム35は、流体を移動させることによって容積要求を満たすことができる。チャンバシステム35は、閉塞後破壊サージの特性に基づいて流体を移動させることができる。そのような移動の例には、以下が含まれる:(1)チャンバシステム35は、より大きい閉塞後破壊サージに対して、より多くのチャンバ37から流体を移動させ、より小さい閉塞後破壊サージに対して、より少ないチャンバ37から流体を移動させることができる。(2)チャンバシステム35は、より大きい閉塞後破壊サージに対して、1つ以上のより大きいチャンバ37から流体を移動させ、より小さい閉塞後破壊サージに対して、1つ以上のより小さいチャンバ37から流体を移動させることができる。(3)サージに関連する圧力の増加により近いチャンバ37は、圧力の増加からより遠いチャンバ37の前に又は代わりに、流体を移動させることができる。
【0042】
特定の実施形態では、チャンバシステム35は、流体を能動的又は受動的に移動させることにより、容積要求を能動的又は受動的に満たすことができる。チャンバシステム35は、(例えば、コントローラ36からの指示に応じて)能動的又は受動的に流体を移動させることができる。特定の能動的実施形態では、コントローラ36は、閉塞後破壊サージのサイズ及び/又は位置を判定し、次いで、チャンバシステム35に上述のように応答するように指示することができる。特定の受動的実施形態では、チャンバ37は、チャンバ37が上述のように流体を移動させるような感圧部材を有し得る。例えば、サージ関連圧力の増加により近いチャンバ37は、より遠く離れたチャンバ37より前に流体を移動させることができる。別の例として、より多くのチャンバ37は、より小さい増加よりも、サージ関連圧力のより大きい増加に対して流体を移動させることができる。
【0043】
図8は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステム110によって使用され得る方法440の一例を示す。方法は、ステップ450において開始し、そこで、灌流システムは、手術部位に向かって流体を搬送し、吸引システムは、手術部位から離れて流体を搬送する。
【0044】
吸引システムのチャンバシステムのチャンバは、ステップ454において流体を貯蔵する。特定の実施形態では、チャンバは、流体源によって提供される流体を受容することができ、且つ/又は流体を貯蔵するために拡張することができる。
【0045】
ステップ456において、閉塞後破壊サージが発生する場合がある。閉塞後破壊サージが発生した場合、方法は、軽減プロセスが能動的又は受動的であり得る、ステップ460に進む。プロセスが能動的である場合、方法は、ステップ462に進み、そこで、コントローラは、チャンバシステムに流体を移動させるように指示する。コントローラはサージの特性を判定し、次いで、その特性に従って流体を移動させることができる。次に、方法は、ステップ464に進む。プロセスが受動的である場合、方法は、ステップ464に直接進む。ステップ456において閉塞後破壊サージが発生しない場合、方法は、ステップ468に進む。
【0046】
チャンバシステムは、ステップ464において流体を移動させて、閉塞後破壊サージを軽減する。流体が移動される方法は、サージの特性に基づき得る。処置は、ステップ468で終了し得る。処置が終了していない場合、方法は、ステップ454に戻り、そこで、チャンバは、次のサージを軽減する準備のために流体を貯蔵する。処置が終了している場合、方法は、終了する。
【0047】
プライミング処置
図9は、閉塞後破壊サージの軽減を改善し得るプライミング処置を実行する、図3の流体サブシステム110の一例を示す。一般に、真空経路において捕捉された気泡は、サージ軽減中に縮小し、軽減の有効性及び予測可能性を損なう場合がある。プライミング処置では、吸引流を前後に振動させて真空経路において捕捉された気泡を減少させ、サージ軽減を改善することができる。特定の実施形態では、コントローラ360は、プライミング処置を実行するように指示を送信する。この指示は、自動的に(例えば、処置前に)送信され得るか、又はユーザ入力に応じて送信され得る。
【0048】
図示された実施形態では、流体サブシステム110は、ハンドピース112のための流体を管理する灌流システム300及び吸引システム305を含む。吸引システム305は、示されるように吸引経路に沿って流体連通する、吸引導管303と、吸引圧力センサ(APS)330と、吸引ポンプ335と、ドレインリザーバ340と、リザーバ333と、バルブ377とを含む。APS330は、吸引導管303内の吸引圧力を検出する。吸引ポンプ335は、ポンプ335と眼との間の吸引導管303内に真空圧を生成し、手術部位からドレインリザーバ340内に流体を引き込む。ドレインリザーバ340は、手術部位から流体を受容する。
【0049】
リザーバ333は、サージ軽減のために使用され得る流体を貯蔵し、1つ以上のリザーバとして実装され得る。リザーバ333の例には、ベンチュリ、ドレイン、ベント、灌流及び他の適切なリザーバが含まれる。バルブ337は、プライミング処置を実行するために吸引導管303の流体を管理する。バルブ377は、1つ以上のバルブとして実装され得る。バルブを「開放すること」とは、複数のバルブのうちのあるバルブを開放することを指すことができ、バルブを「閉鎖すること」とは、複数のバルブのうちの同じバルブ又は別のバルブを閉鎖することを指すことができる。特定の実施形態では、コントローラ360は、バルブ337に、プライミング処置を実行するように指示を送信する。
【0050】
プライミング処置は、吸引導管303内の空気(例えば、気泡)を減少させるために、吸引導管303内の流体を前後に移動させ、例えば、振動させる。この手順は、任意の適切な周波数、例えば毎秒1回の振動~70kHzなど、低周波数~超音波周波数の範囲内で流体を振動させ得る。移動は、任意の適切な方法で生成され得る。移動を生成する技術の例には、以下が含まれる:(1)バルブ337は、吸引導管303内に流体を移動させるために開放することと、流体の移動を停止するために閉鎖することとを急速に切り替えて、流体を振動させることができる。(2)吸引ポンプ335は、吸引導管303内の真空圧を急速に変化させて、流体を振動させることができる。(3)吸引ポンプ335は、真空圧を変化させ、バルブ337が協調して流体を移動させるために流体を振動させることができる。(4)カセット本体301を、コンソール100に配置された流体機構を使用して、機械的に振動させることができる。(5)チューブ302又は303自体を機械的に振動させることができる。(6)プライミング中、フェイコハンドピース112を作動させることができる。特定の実施形態では、コントローラ360は、関連する構成要素にプライミング処置を実行するように指示を送信する。
【0051】
特定の実施形態では、吸引導管303は、気泡の除去を容易にするチューブを含み得る。実施形態では、チューブは、気泡が付着しにくい内面を有し得る。例えば、表面は、親水性又は超親水性(例えば、10°未満の非常に低い水接触角)であり得、これにより水滴を数秒で分散させることを可能にする。そのようなチューブの例は、超親水性ポリジメチルシロキサン(PDMS)チューブである。
【0052】
灌流システム軽減
図10は、閉塞後破壊サージを軽減し得る灌流システム300の一例を含む、図3の流体サブシステム110の一例を示す。この実施形態では、灌流システム300は、灌流導管を介して手術部位に向かって流体を搬送する。閉塞後破壊サージに応じて、灌流システム300は、閉塞後破壊サージを軽減するために、灌流導管内の容積要求を満たすように追加の流体を移動させる。
【0053】
図示された実施形態では、流体サブシステム110は、ハンドピース112のための流体を管理する灌流システム300及び吸引システム305を含む。灌流システム300は、示されるように灌流経路に沿って流体連通する、灌流導管302と、灌流流体源(IFS)310と、灌流ポンプ317と、灌流圧力センサ(IPS)316と、チャンバ36とを含む。IPS316は、灌流導管302内の圧力を測定する。IFS310は、灌流液、例えば、無菌生理食塩水を供給する。灌流ポンプ317は、圧力を生成して、IFS310から灌流導管302に流体を供給する。
【0054】
チャンバ36は、流体を貯蔵し、灌流導管302の容積要求を満たすように流体を移動させる。特定の実施形態では、チャンバ36は、流体を貯蔵するために拡張し、流体を移動させるために縮小する(図4図6に関して説明されたような)可変容積チャンバである。他の実施形態では、チャンバ36は、流体を貯蔵し、チャンバシステムの1つ以上のチャンバから流体を移動させる、(図7及び図8に関して説明されたような)灌流システム300のチャンバシステムを表す。特定の実施形態では、コントローラ360は、灌流システム300に、閉塞後破壊サージを軽減するように指示を送信する。
【0055】
特定の実施形態では、閉塞又はサージを示す真空圧の変化に応じて、灌流システム300は、閉塞後破壊サージを軽減するために、灌流導管302内に追加の流体(加圧流体など)を移動させる。灌流システム300は、以下の例の1つ以上を含む、任意の適切な方法で追加の流体を移動させることができる:(1)灌流ポンプ317は、圧力を増加させて、IFS310から灌流導管302に追加の流体を供給する。(2)チャンバ36は、追加の流体を貯蔵するために拡張し、灌流導管302内に追加の流体を移動させるために縮小する可変容積チャンバである。(2)チャンバ36は、チャンバシステムの1つ以上のチャンバから灌流導管302に追加の流体を移動させるチャンバシステムである。(3)バルブ又は他の流体スイッチは、灌流経路の任意の適切な位置において任意の適切な流体源に貯蔵された追加の流体を移動させることができる。貯蔵された追加の流体は、空気圧供給源、灌流バッグチャンバ、蠕動ポンプ及び/又は灌流経路内の適合チャンバからの加圧流体であり得る。
【0056】
流体の移動は、能動的又は受動的であり得る。能動的実施形態では、コントローラ360は、圧力が閾値に到達したことを検出し、灌流システム300の構成要素(例えば、灌流ポンプ317、チャンバ36又はバルブ)に、灌流導管302内に追加の流体を移動させるように指示する。受動的実施形態では、圧力が閾値に到達したことに応じて、灌流システム300の構成要素は、灌流導管302内に流体を移動させる。
【0057】
図11は、特定の実施形態による、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減するために図3の流体サブシステム110によって使用され得る方法478の一例を示す。方法は、ステップ480において開始し、そこで、灌流システムは、手術部位に向かって流体を搬送し、吸引システムは、手術部位から離れて流体を搬送する。
【0058】
灌流システムは、ステップ484において追加の流体を貯蔵する。追加の流体は、例えば、チャンバ(例えば、可変容積チャンバ又はチャンバシステム)、灌流液源(IFS)又は他の適切な流体源に貯蔵することができる。特定の実施形態では、流体は、加圧され得る。ステップ486において、閉塞後破壊サージが発生する場合がある。閉塞後破壊サージが発生した場合、方法は、軽減プロセスが能動的又は受動的であり得る、ステップ490に進む。プロセスが能動的である場合、方法は、ステップ492に進み、そこで、コントローラは、灌流システムに貯蔵された追加の流体を移動させるように指示する。次に、方法は、ステップ494に進む。プロセスが受動的である場合、方法は、ステップ494に直接進む。ステップ486において閉塞後破壊サージが発生しない場合、方法は、ステップ498に進む。
【0059】
灌流システムは、ステップ494において追加の流体を移動させて、閉塞後破壊サージを軽減する。処置は、ステップ498で終了し得る。処置が終了していない場合、方法は、ステップ484に戻り、そこで、灌流システムは、次のサージを軽減する準備のために流体を貯蔵する。処置が終了している場合、方法は、終了する。
【0060】
サージ軽減チューブ
図12図14Cは、手術処置中の閉塞後破壊サージを軽減し得る、図3の流体サブシステム110の吸引システム305のチューブ40の例を示す。特定の実施形態では、吸引ポンプは、手術部位から離れて流体を搬送するために、通常動作中に吸引導管内に通常真空を生成する。吸引圧力は、図3を参照して説明したように、-760~0mmHgの目標範囲を有し得る。チューブ40は、閉塞下よりも、通常の吸引フロー及び真空中に大きい断面積を有する。
【0061】
閉塞は、吸引導管内の真空を閉塞真空限界まで増加させる。閉塞真空限界は、0~760mmHgの範囲であり得る。特定の持続時間(例えば、10ミリ秒(ms)超)の閉塞真空に応じて、チューブ40は、より大きい断面積からより小さい断面積に縮小する。閉塞が破壊すると、閉塞後破壊サージを生成する。チューブ40は、サージに抵抗するため、サージの持続時間中(おそらくはそれよりも長く)より小さい断面積を維持する。通常、サージは、500ミリ秒まで続くが、1秒(s)まで続く場合がある。チューブ40は、サージ持続時間後、より大きい断面積に戻る。
【0062】
チューブ40は、軽減粘弾性材料及び/又は断面を有し、これにより、チューブ40が縮小してより小さい断面積を維持し、サージを軽減することを可能にする。軽減粘弾性材料及び/又は断面は、チューブ40全体又はチューブ40の1つ以上の軽減セクション内に存在し得る。軽減セクションは、0.1~10センチメートル(cm)(例えば、0.1~1、1~2、2~5、7及び/又は7~10cmの範囲内の値)など、任意の適切な長さを有し得る。チューブ40は、1つ以上の軽減セクションを有することができ、各セクションは、軽減粘弾性材料又は軽減断面又はその両方を有する。このようなチューブの例を、図12図14Bを参照して説明する。
【0063】
図12は、軽減粘弾性材料を含むチューブ40の一例を示す。この例では、チューブ40は、粘弾性材料43を含む軽減セクション42を有する。そのような材料の例には、低デュロメータポリ塩化ビニル、シリコーンエラストマー、ポリウレタン又は高密度ポリエチレンが含まれる。
【0064】
図13A及び図13Bは、軽減断面44を有するチューブ40の一例を示す。断面44は、楕円形(円形を含む)、マーキス、多角形、X字形状又は他の任意の適切な形状を有し得る。例では、断面44は、楕円形である。
【0065】
図14A図14Cは、軽減断面44を有する軽減セクション42を備えたチューブ40の一例を示す。この例では、軽減セクション42の軽減断面44は、楕円形であり、チューブ40の残りの部分の断面45は、円形である。
【0066】
本明細書で開示されるシステム及び装置の(コンピュータ103又はコントローラ360などの)構成要素は、インターフェース、ロジック及び/又はメモリを含み得、これらの任意のものは、ハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。インターフェースは、構成要素への入力を受信し、構成要素から出力を送信し、且つ/又は入力及び/若しくは出力を処理し得る。ロジックは、構成要素の動作を実行することができる。ロジックは、データを処理する、例えば命令を実行して入力から出力を生成する1つ以上の電子装置を含み得る。そのような電子デバイスの例には、コンピュータ、プロセッサ又はマイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))及びコンピュータチップが含まれる。ロジックは、動作を実行するために電子デバイスによって実行できる命令をエンコードするコンピュータソフトウェアを含み得る。コンピュータソフトウェアの例には、コンピュータプログラム、アプリケーション及びオペレーティングシステムが含まれる。
【0067】
メモリは、情報を記憶することができ、有形のコンピュータ可読及び/又はコンピュータ実行可能な記憶媒体を含み得る。メモリの例には、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、マスストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオ若しくは多用途ディスク(DVD))、データベース及び/若しくはネットワークストレージ(例えば、サーバ)並びに/又は他のコンピュータ可読媒体が含まれる。特定の実施形態は、コンピュータソフトウェアを用いてエンコードされたメモリを対象とすることができる。
【0068】
特定の実施形態に関して本開示を説明してきたが、実施形態の修正形態(例えば、変更形態、置換形態、追加形態、省略形態及び/又は他の修正形態)が当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対する修正形態がなされ得る。例えば、本明細書で開示されたシステム及び装置に対する修正形態がなされ得る。システム及び装置のコンポーネントは、統合若しくは分離され得るか、又はシステム及び装置の動作は、より多い、より少ない若しくは他のコンポーネントによって実行され得る。別の例として、本明細書で開示された方法に対する修正形態がなされ得る。方法は、より多い、より少ない又は他のステップを含み得、ステップは、任意の好適な順序で実行され得る。
【0069】
例示的な実施形態に関して、構成要素に対して内部として説明された部分は、構成要素に対して外部に分配され得る。特定の実施形態では、吸引システム及び/又は灌流システムの部分は、カセット本体に対して外部にあり得る。特定の実施形態では、カセット本体内の吸引システムのポンプの部分は、カセット本体に対して外部にあり得る。例えば、ポンプを駆動するモータは、コンソールに配置され得る。特定の実施形態では、カセット本体内の吸引システムのセンサの部分は、カセット本体に対して外部にあり得る。例えば、センサ読み取り値を受信するプロセッサは、コンソールに配置され得る。
【0070】
特許庁及び読者が請求項を解釈することを支援するために、本出願人は、特定の請求項において「~のための手段」又は「~のためのステップ」という単語が明示的に使用されない限り、請求項又は請求項要素のいずれも米国特許法第112条(f)を行使することを意図されないことに言及しておきたい。請求項における他のいかなる用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」又は「コントローラ」)の使用も、関連する技術分野の当業者に知られている構造を指すことが本出願人により理解され、米国特許法第112条(f)を行使することを意図されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
【国際調査報告】