(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】免疫組織化学法およびKIR3DL2特異的薬剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240319BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240319BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20240319BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K7/00
C12Q1/00 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561222
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022058885
(87)【国際公開番号】W WO2022214432
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】シャントゥー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ルマルク,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ボナフー,セシル
(72)【発明者】
【氏名】デフォー,クラランス
(72)【発明者】
【氏名】ペラ,ティボー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
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4B063QR80
4B063QS33
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4B065CA44
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、パラフィン包埋組織試料におけるKIR3DL2発現を検出するための抗体および方法に関する。また、パラフィン包埋組織試料において標的抗原に特異的に結合する抗体、抗体断片、およびそれらの誘導体を作製する方法も提供される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体またはその抗体断片、ここで抗体または抗体断片は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体または抗体断片。
【請求項2】
パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されている細胞の生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合することができる抗体またはその抗体断片であって、ここで該抗体または抗体断片は、(i)配列番号03(HCDR1)、配列番号06(HCDR2)および配列番号09(HCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含む重鎖、および(ii)配列番号12(LCDR1)、配列番号15(LCDR2)、および配列番号18(LCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(LCDR1、LDR2、LCDR3)を含む軽鎖を有し、ここで各CDRは、所望により、1、2または3個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む、抗体または抗体断片。
【請求項3】
抗体またはその抗体断片が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料においてKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる、請求項1または2に記載の抗体またはその抗体断片。
【請求項4】
配列番号24のアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載の単離されたポリペプチドに結合する、抗体またはその抗体断片。
【請求項6】
請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチドへの結合が、抗体またはその抗体断片を配列番号24のアミノ酸配列を含むペプチドと接触させるELISA試験によって決定され、該ペプチドが、好ましくは固体支持体上に結合される、請求項5に記載の抗体またはその抗体断片。
【請求項7】
生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体またはその抗体断片であって、該抗体またはその抗体断片は、KIR3DL2ポリペプチドの細胞内エピトープに結合することができ、該生物学的試料は、ホルマリン中で固定され、次いで該抗体またはその抗体断片と接触させる前に切片に切断される、抗体またはその抗体断片。
【請求項8】
TPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号31)のアミノ酸配列に対応するKIR3DL2ポリペプチドの一部に結合する、請求項7に記載の抗体またはその抗体断片。
【請求項9】
パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されているKIR3DL2発現細胞の生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合することができる抗体またはその抗体断片であって、該抗体またはその抗体断片は、パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されているKIR3DL2を発現しないKIR3DL1発現細胞の生物学的試料においてKIR3DL1に結合しない、抗体またはその抗体断片。
【請求項10】
生物学的試料においてKIR3DL2発現細胞の存在を検出することにおける使用のための、請求項1~3、5~9に記載の抗体またはその抗体断片。
【請求項11】
生物学的試料が、組織試料である、請求項10に記載の使用のための抗体または抗体断片。
【請求項12】
生物学的試料が、固定組織試料である、請求項11に記載の使用のための抗体または抗体断片。
【請求項13】
試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項12に記載の使用のための抗体または抗体断片。
【請求項14】
検出が、免疫組織化学(IHC)によって行われる、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用のための抗体または抗体断片。
【請求項15】
試料においてKIR3DL2発現細胞を検出するインビトロ方法であって、該方法は、(i)細胞を含む個体からの生物学的試料を提供すること、および(ii)請求項1~3、5~9に定義される通りの抗体またはその抗体断片によりKIR3DL2発現細胞を検出することを含む、インビトロ方法。
【請求項16】
生物学的試料が、組織試料である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
生物学的試料が、固定組織試料である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
KIR3DL2発現細胞を検出する工程が、試料を請求項1~3、5~9に定義される通りの抗体または抗体断片と接触させること、および該抗体またはその抗体断片と該試料との間の免疫学的反応から生じる免疫学的複合体の形成を検出することを含む、請求項15~18に記載の方法。
【請求項20】
免疫学的複合体の形成を検出することが、免疫化学(IHC)によって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫学的複合体の形成を検出することが、請求項1~3、5~8に記載の抗体または抗体断片に結合する二次抗体を使用することによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
パラフィン包埋組織試料が、固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、およびスライドに移されている、請求項18~21に記載の方法。
【請求項23】
免疫療法剤による処置について癌を有する個体の適合性を評価するインビトロ方法であって、該方法は、(i)個体からの生物学的試料を提供すること、および(ii)請求項1~6に記載の抗体またはその抗体断片を使用して、該試料においてKIR3DL2発現細胞を検出することを含み、KIR3DL2発現細胞の検出は、該個体が免疫療法剤による処置に適していることを示す、インビトロ方法。
【請求項24】
生物学的試料が、組織試料である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
生物学的試料が、固定組織試料である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
免疫療法剤が、KIR3DL2ポリペプチドに結合する薬剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
免疫療法剤が、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、およびKIR3DL2発現細胞に対するADCCを介して細胞傷害性を増強する抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、LACUTAMABである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
パラフィン包埋組織試料が、固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、およびスライドに移されている、請求項23~29に記載の方法。
【請求項31】
個体において疾患を処置する方法であって、該方法は、(i)請求項15~22のいずれか一項に記載の方法に従って、個体からの生物学的試料を提供すること、請求項1~3、5~9に記載の抗体またはその抗体断片を使用して、該試料においてKIR3DL2発現細胞を検出すること、および、(ii)KIR3DL2発現細胞が検出されると、該個体に免疫療法剤を投与することを含む、方法。
【請求項32】
生物学的試料が、組織試料である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
生物学的試料が、固定組織試料である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
疾患が、癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
癌が、リンパ腫である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
リンパ腫が、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
CTCLが、菌状息肉症またはセザリー症候群である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
CTCLが、形質転換Tリンパ腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
リンパ腫が、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
パラフィン包埋生物学的試料が、固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、およびスライドに移されている、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~3、5~9のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片、および請求項1~3、5~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗体断片を特異的に認識する標識二次抗体を含む、キット。
【請求項43】
請求項1~3、5~9に記載の抗体または抗体断片をコードする単離された核酸または核酸のセット。
【請求項44】
請求項1~3、5~9に記載の抗体または抗体断片を産生するか、または請求項43に記載の核酸を含む、ハイブリドーマまたは組換え宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、任意の図面も含めてその全体が参照により本明細書に組み込まれる2021年4月5日に提出された米国仮出願第63/170,603号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表への参照
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。該配列表は、2022年3月30日に作成された「KIR-12 PCT Sequences_ST25」というタイトルのファイルとして提供され、サイズは25.7KBである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、生物学的試料(例えば、パラフィン包埋組織試料)においてKIR3DL2を検出するための研究および診断ツールに関する。本発明はまた、KIR3DL2発現細胞を検出するために該ツールを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
背景
キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)は、C型レクチン受容体(CD94-NKG2)とともに、ヒトNK細胞およびTリンパ球サブセットによってMHCクラスI分子を特異的に認識するために使用される受容体ファミリーである。
【0005】
キラー細胞免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)ファミリーのメンバーのうち、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3つのIgドメインおよび長い細胞質尾部2(KIR3DL2)は、KIR3DL2受容体を発現するCD4+T細胞、特にCD4+T細胞が関与する悪性腫瘍の治療の標的として研究されており、これは菌状息肉症およびセザリー症候群などの皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を含む(例えば、WO2010/081890およびWO02/50122を参照)。KIR3DL2受容体は、他の末梢T細胞リンパ腫(PTCL)の腫瘍細胞によっても頻繁に発現され、正常なリンパ球にも低頻度で発現する。
【0006】
KIR3DL2受容体を標的とし、およびKIR3DL2発現細胞悪性腫瘍、特にCD4+T細胞悪性腫瘍の治療において増加した活性を示すモノクローナル抗体が、開発されている(例えば、WO2014/044686を参照)。
【0007】
腫瘍環境をよりよく理解するために、腫瘍組織に存在するKIR3DL2受容体を検出することがしばしば望ましい。これは、例えば凍結組織試料を使用して行うことができる。これは研究に役立つだけでなく、組織(例えば腫瘍環境)が処置(例えば免疫療法)の標的であるタンパク質の存在を特徴とするかどうかを検出することにより、どのようなタイプの処置を使用するかの決定にも役立つ。該情報は、タンパク質および/またはそれを発現する細胞の活性を調節できる処置を選択するのに役立つ。
【0008】
細胞培養物または凍結組織試料におけるKIR3DL2ポリペプチドの検出に適したいくつかの抗体はすでに既知である。抗体12B11および19H12は、両方とも検出アッセイでKIR3DL2陽性細胞を検出できるため、腫瘍細胞の表面でのKIR3DL2発現の検出(例えばインビトロアッセイ)における使用に実際に適している。12B11は凍結組織切片を使用する免疫組織化学アッセイに有利であり、19H12はフローサイトメトリー検出に有利である。
【0009】
凍結組織試料へのアクセスが制限要因となっているため、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料として保存されている組織試料など、他の試料においてKIR3DL2を検出するための新しい検査を開発する必要がある。残念ながら、FFPE切片において効果的かつ特異的に機能するKIR3DL2特異的モノクローナル抗体を見つけることはしばしば不可能である。これは、タンパク質の構造に対するホルマリン固定の影響によるものと考えられている。組換えタンパク質または細胞に特異的であると記載される抗体が結合するエピトープは、FFPEにおいて使用される場合には他のタンパク質にも存在することが多く、このことは抗体を非特異的にする。他の場合において、天然の細胞タンパク質上の多くのエピトープがホルムアルデヒド(例えばホルマリン)固定によって破壊され、このことは組換えタンパク質または細胞を使用して同定される抗体をFFPE切片の染色について非効果的にする。
【0010】
したがって、生物学的試料(例えば、パラフィン包埋組織切片)の染色における使用のための、KIR3DL2を特異的に標的とする改良された抗体が必要とされる。
【0011】
発明の概要
本発明は、とりわけ、生物学的試料、好ましくはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料におけるKIR3DL2ポリペプチドの研究、検出および/またはモニタリングに関する。本開示は、生物学的試料においてKIR3DL2を検出するのに適した抗体の特徴付けから生じる。該抗体は、FFPEプロトコルにおいてかかる所定の標的抗原についての特異性を保持しており、特に、それらはホルマリン固定後も存在し特異的なままであるKIR3DL2ポリペプチド上のエピトープに結合する。該抗体は、KIR3DL1および/または他のKIRポリペプチド(例えば、KIR3DS1)を検出することなく、IHCプロトコルにおけるKIR3DL2の高い特異性の検出を可能にした。得られた診断用抗体は、個人からのFFPE試料中を一貫して検出するための試薬として機能することができる。
【0012】
本明細書に記載されるKIR3DL2特異的抗体は、KIR3DL2タンパク質において生じ得る潜在的なホルマリン修飾エピトープを模倣するように設計される合成ペプチドの設計および試験を通じて見出された。特定の合成ペプチドに結合する抗体は、FFPE試料においてKIR3DL1よりもKIR3DL2に対して選択的であることが判明した。それにより、該研究は、ホルマリン処置されたKIR3DL2において存在または生じる新しいエピトープまたは結合部位、ならびに野生型KIR3DL2アミノ酸配列におけるそれらの対応する部位または配列を同定した。
【0013】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は、他の免疫学的方法に比べて2つの主な利点を提供する:(1)該組織は特別な取り扱いを必要としない;および(2)細胞学的および構造的特徴がよく認識され、このことは向上した組織病理学的解釈を可能にする。しかしながら、FFPE切片において効果的かつ特異的に機能するKIR3DL2特異的モノクローナル抗体を見出すことはしばしば不可能であった。以前に開発された抗体は、FFPE試料においてテストされる場合、KIR3DL1ポリペプチドにも結合するため、確かにKIR3DL2特異的ではなかった。本発明者らは、KIR3DL2ポリペプチドを特異的に検出するのに、またFFPE生物学的試料の染色における使用のために適した抗体を開発した。得られた抗体は、さまざまなKIR3DL2発現細胞(例えばトランスフェクト細胞、ヒトドナーからのヒト組織、または患者からの腫瘍組織)においてテストされ、FFPE組織切片における標的抗原の検出において優れた性能を維持することが見出された。
【0014】
したがって、本開示は、生物学的試料中のKIR3DL2ポリペプチドに結合することができる抗体またはその抗体断片を提供し、ここで抗体または抗体断片は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0015】
本開示の別の目的は、KIR3DL2ポリペプチドに結合することができる抗体またはその抗体断片であり、ここで抗体または抗体断片は、配列番号21に示される重鎖可変領域の重鎖CDR1、2および3、および配列番号22に示される軽鎖可変領域の軽鎖CDR1、2および3を含む。
【0016】
一実施形態において、以下を含む抗体または抗体断片が提供され:(i)配列番号3(HCDR1)、配列番号6(HCDR2)および配列番号9(HCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含む重鎖、および(ii)配列番号12(LCDR1)、配列番号15(LCDR2)、および配列番号18(LCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(LCDR1、LDR2、LCDR3)を含む軽鎖、ここで各CDRは、所望により、1、2または3個のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、抗体P3-R4D-H5の機能保存的変異体であるモノクローナル抗体または抗体断片が提供される。一実施形態において、配列番号21の重鎖可変領域、および配列番号22の軽鎖可変領域の軽鎖CDR1、2および3を有する抗体の機能保存的変異体である抗体または抗体断片が提供される。
【0018】
一実施形態において、単離されたポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞のホルマリン処理後に存在するKIR3DL2上のエピトープを含むかまたはそれに対応する単離されたポリペプチド)が提供され、ここで単離されたポリペプチドは配列番号24のアミノ酸配列からなる。別の実施形態において、本開示による単離ポリペプチドは、1つ以上の異種ポリペプチドに修飾または融合され得るか、または別のポリペプチド(例えば、1つ以上の非KIR3DL2アミノ酸配列を含むポリペプチド)に含まれ得る。
【0019】
一実施形態において、かかる単離されたポリペプチドに結合する抗体またはその抗体断片が提供される。一実施形態において、前記抗体またはその抗体断片の前記単離ポリペプチドへの結合は、前記抗体またはその抗体断片を配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させるELISA試験によって決定される。 特定の実施形態において、配列番号24のアミノ酸配列の前記ポリペプチドが固体支持体上に結合されており、例えば、したがって、かかるポリペプチドは、固体支持体に結合したリンカーペプチドに融合することができる。
【0020】
一実施形態において、CEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体または抗体断片が提供される。一実施形態において、前記抗体またはその抗体断片の前記ポリペプチドへの結合は、該抗体またはその抗体断片は、配列番号23、または配列番号24、または配列番号25のアミノ酸配列を含む前記ポリペプチドと接触されるELISA試験によって決定される。特定の実施形態において、配列番号23、配列番号24、または配列番号25のアミノ酸配列の前記ポリペプチドは、固体支持体上に結合される。
【0021】
一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体または抗体断片が提供され、ここで、抗体または抗体断片は、CEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるポリペプチドに結合する。
【0022】
一実施形態において、配列番号21の重鎖可変領域、ならびに配列番号22の軽鎖可変領域の軽鎖CDR1、2および3を有する抗体と同じKIR3DL2上のエピトープに結合するモノクローナル抗体または抗体断片が提供される。所望により、抗体または抗体断片は、CEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるポリペプチドに結合する。本明細書の任意の実施形態において、本開示による抗体またはその抗体断片は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料においてKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる。
【0023】
別の実施形態において、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドの細胞内部分またはエピトープに結合する抗体または抗体断片が提供される。 例えば、抗体または抗体断片は、KIR3DL2ポリペプチドの細胞質ドメイン(またはそのようなドメインのエピトープ)に結合するものとして特定することができ、所望により、細胞質ドメインは配列番号1の残基340~434に対応する。一実施形態において、抗体または抗体断片は、配列番号1の残基399~417に対応するKIR3DL2ポリペプチドの部分またはエピトープに結合する。一実施形態において、抗体または抗体断片は、ホルマリン中で固定されている生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドの細胞内部分またはエピトープに結合し、次いで、前記抗体または抗体断片と接触させる前に切片に切断される。一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドの前記細胞内部分またはエピトープは、アミノ酸配列TPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号31)を有する。一実施形態において、抗体または抗体断片は、アミノ酸配列CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)を含むかまたはそれからなるポリペプチドに結合する。
【0024】
さらなる実施形態において、生物学的試料中のKIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体または抗体断片が提供され、該抗体またはその抗体断片は、KIR3DL1ポリペプチド(例えば、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むKIR3DL1対立遺伝子*00101)に実質的に結合しない。好ましくは、前記生物学的試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料である。
【0025】
本明細書の任意の実施形態において、抗体または抗体断片は、パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されている細胞の生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合できるものとして特定されることができる。
【0026】
一実施形態において、抗体または抗体断片は、パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されているKIR3DL2発現細胞に結合する(または、例えば染色する)ことができ、ここで該抗体またはその抗体断片は、KIR3DL2を発現せず、パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されているKIR3DL1発現細胞に結合せず(または、例えば染色せず)、所望によりさらに、該細胞はホルマリン中で固定され、次いで該抗体またはその抗体断片と接触させる前に切片に切断される。
【0027】
本開示はまた、生物学的試料においてKIR3DL2発現細胞の存在を検出する際に使用するための抗体またはその抗体断片を提供する。一実施形態において、生物学的試料は組織試料である。一実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。さらに別の一実施形態において、生物学的試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。一実施形態において、本開示による抗体またはその抗体断片によるKIR3DL2発現細胞の存在の検出は、免疫組織化学(IHC)によって行われる。有利には、パラフィン包埋組織切片の免疫染色によるKIR3DL2発現細胞の検出における使用のための抗体またはその抗体断片は、FFPEにおいて特異的であり、有利な親和性を有し、このことはKIR3DL2の正確な検出を可能にする。
【0028】
別の態様において、試料中のKIR3DL2発現細胞を検出するインビトロ方法が提供され、該方法は、(i)細胞を含む個体から生物学的試料を提供すること、および(ii)本開示による抗体またはその抗体断片によりKIR3DL2発現細胞を検出することを含む。一実施形態において、生物学的試料は組織試料である。一実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。さらに別の一実施形態において、生物学的試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。一実施形態において、本開示による抗体またはその抗体断片によりKIR3DL2発現細胞を検出する工程(ii)は、試料を開示の抗体または抗体断片と接触させること、および前記抗体またはその抗体断片と試料との間の免疫学的反応から生じる免疫学的複合体の形成を検出することを含む。一実施形態において、本開示による抗体またはその抗体断片と試料との間のかかる免疫学的複合体の形成の検出は、免疫組織化学(IHC)によって行われる。一実施形態において、本開示による抗体またはその抗体断片と試料との間のかかる免疫学的複合体の形成の検出は、本開示の抗体または抗体断片に特異的に結合する二次抗体を使用することによって行われる。一実施形態において、パラフィン包埋組織試料は固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、スライドに移されている。
【0029】
本開示の別の態様は、免疫療法剤による治療に対する癌を有する個体の適合性を評価するインビトロ方法であり、該方法は、(i)患者から生物学的試料を提供すること、および(ii)本開示による抗体または抗体断片を使用して、該試料においてKIR3DL2発現細胞を検出することを含み、ここで、KIR3DL2発現細胞の検出は、個体が免疫療法剤による処置に適していることを示す。一実施形態において、生物学的試料は組織試料である。一実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。さらに別の一実施形態において、生物学的試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。一実施形態において、癌を有する個体を治療するための免疫療法剤は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する薬剤である。一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドに結合する免疫治療薬は、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、KIR3DL2発現細胞に対するADCCを介して細胞毒性を増強する抗体である。好ましい実施形態において、抗体はLACUTAMABである。さらなる実施形態において、パラフィン包埋組織試料は固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、スライドに移されている。
【0030】
本開示はまた、個体における疾患を治療する方法を提供し、該方法は、(i)個人からの生物学的試料を提供すること、(ii)本開示による抗体またはその抗体断片を使用して、前記試料中のKIR3DL2発現細胞を検出すること、および(iii)KIR3DL2発現細胞が検出されると、個体に免疫療法剤を投与することを含む。一実施形態において、生物学的試料は組織試料である。一実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。さらに別の一実施形態において、生物学的試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。一実施形態において、治療される疾患は癌である。一実施形態において、癌はリンパ腫、例えばリンパ腫、例えばCD4+T細胞リンパ腫である。一実施形態において、CD4+リンパ腫は皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である。一実施形態において、CTCLは菌状息肉症またはセザリー症候群である。さらなる実施形態において、CTCLは形質転換されたTリンパ腫である。別の実施形態において、CD4+リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)である。一実施形態において、パラフィン包埋生物学的試料は、固定され、パラフィンに包埋され、切断され、脱パラフィンされ、スライドに移されている。
【0031】
本開示の別の態様は、本開示による抗体または抗体断片、および本開示による前記抗体またはその抗体断片を特異的に認識する標識二次抗体を含むキットに関する。本開示はまた、本開示による抗体または抗体断片をコードする単離された核酸を提供する。
【0032】
また、本開示による抗体または抗体断片を産生するハイブリドーマまたは組換え宿主細胞も提供される。
【0033】
本発明のこれらおよび追加の有利な態様および特徴は、本明細書の他の箇所でさらに説明されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、scFvライブラリーから選択されたクローンP3ーR4DーH5可溶性scFvのいくつかの希釈物について、BSAと結合したペプチド3もしくは遊離ペプチド3に対して、またはBSAに対して、Elisaアッセイにおいて測定される光学密度(450nm)を表す。
【0035】
【
図2】
図2は、KIR3DL2およびKIR3DL1発現細胞ペレット上で、抗KIR3DL2可溶性scFvクローンP3-R4D-H5、P3-R4D-F4、P3-R4D-C10、P3-R4D-C1、P3-R4D-B9、P3-R4D-B5により得られるIHC染色の写真を示す。染色は、Leica Bond RX上で5μg/mLで実行された。
【0036】
【
図3】
図3は、異なるCHO/CHOーmbーHuKIR3DL2混合FFPE細胞ペレット上で抗KIR3DL2クローンP3ーR4DーH5またはアイソタイプ対照抗体により得られるIHC染色の写真を表す。染色は、Leica Bond RX上で5μg/mLで実行された。スケールバーは25μmを表す。CHOはKIR3DL2を発現しておらず、一方CHO-mb-HuKIR3DL2はKIR3DL2発現細胞である。図に記載されているように、Abは抗体を意味し;FFPEはホルマリン固定パラフィン包埋を意味し;ICはアイソタイプ対照を意味し、IHCは免疫組織化学を意味する。
【0037】
【
図4】
図4は、異なるRaji/HuT混合FFPE細胞ペレット上で抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5またはアイソタイプ対照抗体により得られたIHC染色の写真を表す。染色は、Leica Bond RXで5μg/mLで実行された。スケールバーは25μmを表す。矢印はKIR3DL2+細胞を表す。図に記載されているように、Abは抗体を意味し;FFPEはホルマリン固定パラフィン包埋を意味し;ICはアイソタイプ対照を意味し、IHCは免疫組織化学を意味する。
【0038】
【
図5A】
図5A、5Bおよび5Cは、KIR3DL2発現RAJI細胞(および陰性対照としての非発現KIR3DL2 RAJI細胞)上の抗KIR3DL2クローン12B11により得られるIHC染色の写真を表す。いくつかの染色条件をテストした:クエン酸緩衝液pH7、キット想定+DAB;クエン酸緩衝液pH7、キット想定+チラミド-ビオチン+ストレプトアビジン-HRP+DAB;クエン酸緩衝液pH6、キット想定+DAB;EDTApH7キット想定+DAB;Tris-EDTA pH9キット想定+DAB。
【
図5B】
図5A、5Bおよび5Cは、KIR3DL2発現RAJI細胞(および陰性対照としての非発現KIR3DL2 RAJI細胞)上の抗KIR3DL2クローン12B11により得られるIHC染色の写真を表す。いくつかの染色条件をテストした:クエン酸緩衝液pH7、キット想定+DAB;クエン酸緩衝液pH7、キット想定+チラミド-ビオチン+ストレプトアビジン-HRP+DAB;クエン酸緩衝液pH6、キット想定+DAB;EDTApH7キット想定+DAB;Tris-EDTA pH9キット想定+DAB。
【
図5C】
図5A、5Bおよび5Cは、KIR3DL2発現RAJI細胞(および陰性対照としての非発現KIR3DL2 RAJI細胞)上の抗KIR3DL2クローン12B11により得られるIHC染色の写真を表す。いくつかの染色条件をテストした:クエン酸緩衝液pH7、キット想定+DAB;クエン酸緩衝液pH7、キット想定+チラミド-ビオチン+ストレプトアビジン-HRP+DAB;クエン酸緩衝液pH6、キット想定+DAB;EDTApH7キット想定+DAB;Tris-EDTA pH9キット想定+DAB。
【0039】
【
図6】
図6は、IHC中のいくつかの濃度の抗KIR3DL2クローンP3ーR4DーH5によって染色されるFFPE試料上で測定される光学密度を表すグラフである。いくつかのFFPE試料に対して染色を実行した:CHO-K1SV細胞(CHO)、CHO-K1SV-mb-HuKIR3DL1細胞(CHO-KIR3DL1)、およびCHO-K1SV-mb-HuKIR3DL2細胞(CHO-KIR3DL2)。
【0040】
【
図7】
図7は、CTCL(例えば菌状息肉症またはセザリー症候群)を患う個人からの異なるCTCL生検材料上のKIR3DL2発色性IHC染色の画像を表す。FFPE切片はLeica Bond RX上で5μg/mLのクローンP3-R4D-H5Abで染色し(左パネル)、凍結切片はVentana Benchmark XTで10μg/mLの抗KIR3DL2クローン12B11を使用して染色した(右パネル)。それぞれの場合について、低倍率および高倍率が示され、単核細胞中のKIR3DL2+細胞の割合が示される。スケールバーは、低倍率画像では1または2.5mm(それぞれ左中、左下、右下パネルまたは右中、左上、右上パネルの場合)、高倍率画像では50μmに対応する。図に記載されているように、Bは生検を意味し;CTCLは皮膚T細胞リンパ腫を意味し;FFPEはホルマリン固定パラフィン包埋を意味し;およびIHCは免疫組織化学を意味する。
【0041】
【
図8】
図8は、PTCLを患っている個人からのPTCL生検材料上のKIR3DL2発色性IHC染色の画像を表す。FFPE切片は、Leica Bond RX上で5μg/mLのクローンP3-R4D-H5Abで染色し(左パネル)、凍結切片はVentana Benchmark XTで10μg/mLの抗KIR3DL2クローン12B11を使用して染色した(右パネル)。2つの場合について、低倍率および高倍率が示されており、病理学者によって決定される単核細胞中のKIR3DL2+細胞の割合が示される。スケールバーは、低倍率画像では2.5mm、高倍率画像では50μmに対応する。図に記載されているように、PTCLは末梢性T細胞リンパ腫を意味し;FFPEはホルマリン固定パラフィン包埋を意味し;IHCは免疫組織化学を意味し;およびLNはリンパ節を意味する。
【0042】
【
図9】
図9は、CTCL(菌状息肉症)に罹患している個体からのFFPE試料におけるKIR3DL2発色性IHC染色の画像を表す。FFPE切片を、Leica Bond RXで5μg/mLのクローンP3-R4D-H5Abで染色した。
図9Aおよび9Cは、強いKIR3DL2シグナルを有する高陽性CTCLのIHC画像である。
図9Bは、弱陽性CTCLのIHC画像である。
図9Dは、KIR3DL2の強い陽性領域とほぼ陰性の領域を有する再発性CTCL(菌状息肉腫)試料のIHC画像である。
【0043】
【
図10】
図10は、PTCLを患っている個体からのFFPE試料上のKIR3DL2発色性IHC染色の画像を表す。FFPE切片を、Leica Bond RX上で5μg/mLのクローンP3-R4D-H5Abで染色した。
図10Aは、高陽性PTCL(特に特定なし)のIHC画像である。
図10Bは、かすかな間質細胞陽性を背景に陽性腫瘍細胞が散在している、PTCL(特に特定なし)のIHC画像である。
図10Cおよび10Dは、中等度のKIR3DL2陽性PTCL(特に特定なし)のIHC画像であり、
図10Dの試料内に局所的なばらつきがある。
【0044】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味してもよい。特許請求の範囲で使用される場合、「含む」という単語と組み合わせて使用される場合、「a」または「an」という単語は、1つまたは複数を意味してもよい。
【0045】
「含む」が使用される場合、これは所望により「本質的にからなる」に置き換えることができ、より所望により「からなる」に置き換えることができる。
【0046】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生物学的活性を示す限り、全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片および誘導体を含む。抗体の産生に関連する種々の技術は、例えば、Harlowら、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)に提供されている。
【0047】
「抗体断片」は、全長抗体の一部、例えば抗原結合領域またはその可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fv(通常、抗体の単一アームのVLおよびVHドメイン)、単鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(通常はVHおよびCH1ドメイン)、およびdAb(通常はVHドメイン)断片;VH、VL、VhH、およびV-NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびカッパボディ(例えば、Illら, Protein Eng 1997;10:949-57を参照);ラクダIgG;IgNAR;および抗体断片と1つ以上の単離されたCDRまたは機能的パラトープから形成された多重特異性抗体断片を含み、ここで、単離されたCDRまたは抗原結合残基またはポリペプチドは、機能的な抗体断片を形成するように結合または連結することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」という用語は、エピトープに免疫特異的に結合することができる三次元構造を含むドメインを指す。したがって、一実施形態において、前記ドメインは、超可変領域、所望により抗体鎖のVHおよび/またはVLドメイン、所望により少なくともVHドメインを含むことができる。別の実施形態において、結合ドメインは、抗体鎖の1つ、2つ、または3つすべての相補性決定領域(CDR)を含んでもよい。別の実施形態において、結合ドメインは、非免疫グロブリン足場からのポリペプチドドメインを含んでもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗体誘導体」という用語は、全長抗体または抗体の断片を含み、これは例えば少なくとも抗原結合領域またはその可変領域を含み、ここで、1つまたは複数のアミノ酸は、例えば、アルキル化、PEG化、アシル化、エステル形成またはアミド形成などによって化学的に修飾される。これは、PEG化抗体、システインPEG化抗体、およびそれらの変異体を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変ドメインの残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)、および重鎖可変ドメインの31~35(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3);Kabatら1991)、および/または「超変数ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)、および重鎖可変ドメインの26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3);ChothiaおよびLesk, J. Mol. Biol 1987; 196: 901-917)を含む。典型的には、この領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、前出に記載されている方法によって行われる。本明細書における「Kabatの位置」、「Kabatにおける可変ドメイン残基の番号付け」、および「Kabatによる」などの語句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのこの番号付けシステムを指す。Kabat番号付けシステムを使用すると、ペプチドの実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮または挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有してもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、CDRH2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82b、および82cなど)を含んでもよい。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付けされた配列との抗体の配列の相同性領域でのアラインメントによって、所与の抗体について決定されてもよい。抗体またはその変異体のCDRを指すいずれかの定義の適用は、本明細書で定義され使用される用語の範囲内にあることが意図される。一般に使用される番号付けスキームによって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表1に示す。特定のCDRを含む正確な残基数は、CDRの配列およびサイズによって異なる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられると、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【表1】
【0051】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク」または「FR」残基とは、CDRとして定義される領域を除く抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDR(FR1、FR2、FR3、およびFR4)によって分離された連続領域にさらに細分できる。
【0052】
本明細書で定義される場合、「定常領域」とは、軽鎖または重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによってコードされる抗体由来の定常領域を意味する。本明細書で使用される場合、「定常軽鎖」または「軽鎖定常領域」とは、カッパ(Ckappa)またはラムダ(Clambda)軽鎖によってコードされる抗体の領域を意味する。定常軽鎖は典型的には単一のドメインを含み、本明細書で定義される場合、Cカッパまたはクラムダの位置108~214を指し、ここで番号付けはEUインデックスに従う(Kabat ら、1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., United States Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda)。本明細書で使用される場合、「定常重鎖」または「重鎖定常領域」とは、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEとして定義するためのミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン遺伝子によってコードされる抗体の領域を意味する。全長IgG抗体の場合、本明細書で定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までを指し、したがって位置118~447を含み、ここで番号付けはEUインデックスに従う。
【0053】
本明細書で使用される場合、「Fab」または「Fab領域」とは、VH、CH1、VL、およびCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、この領域を単独で指してもよく、ポリペプチド、多重特異性ポリペプチドもしくは抗体、あるいは本明細書に概説される通りの任意の他の実施形態との関連でこの領域を指してもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「単鎖Fv」または「scFv」とは、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体断片を意味し、ここでこれらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるようにするVHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvを生成する方法は当技術分野で周知である。scFvを生成するための方法の概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0055】
本明細書で使用される場合、「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」とは、単一の抗体のVLおよびVHドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「Fc」または「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、およびこれらのドメインの柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMの場合、FcはJ鎖を含んでもよい。IgGの場合、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2(CH2)およびCγ3(CH3)および、Cγ1とCγ2の間のヒンジを含む。Fc領域の境界は異なってもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、残基C226、P230、またはA231からそのカルボキシル末端までを含むように定義され、ここで番号付けはEUインデックスに従う。Fcは、以下に記載されるように、この領域を単独で指すことも、Fcポリペプチドとの関連でこの領域を指してもよい。本明細書で使用される場合、「Fcポリペプチド」または「Fc由来ポリペプチド」とは、Fc領域の全部または一部を含むポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体、Fc融合体およびFc断片を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される場合、「可変領域」とは、軽鎖(カッパおよびラムダを含む)および重鎖免疫グロブリン遺伝子座をそれぞれ含む。軽鎖または重鎖の可変領域(VLまたはVH)は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」または「FR」領域で構成される。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、たとえばKabatのように(「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」 E. Kabat ら, U.S. Department of Health and Human Services, (1983)を参照のこと)、およびChothiaのように正確に定義される。抗体のフレームワーク領域、つまり構成要素である軽鎖および重鎖のフレームワーク領域を組み合わせたものは、主に抗原への結合に関与するCDRを位置決めして整列させる働きをする。
【0058】
「~に特異的に結合する」という用語は、抗体またはポリペプチドが、好ましくは競合結合アッセイにおいて結合パートナー、例えば結合パートナーに結合できることを意味する。KIR3DL2は、タンパク質の組換え型、その中のエピトープ、または単離された標的細胞の表面に存在する天然タンパク質のいずれかを使用して評価される。競合的結合アッセイおよび特異的結合を測定するための他の方法は以下にさらに記載されており、当技術分野で周知である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、エピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]x[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数KDによって与えられ、ここで[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度、[Ab]は非結合抗体のモル濃度、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和性定数KAは1/KDで定義される。mAbの親和性を決定するための好ましい方法は、これらの参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、 Coligan ら, eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)において見出すことができる。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知の好ましい標準的な方法の1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(BIAcore(登録商標)SPR分析装置による分析など)の使用である。
【0060】
本発明の文脈内において、「決定基」とは、ポリペプチド上の相互作用または結合の部位を指す。
【0061】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基を指し、抗体またはポリペプチドが結合する抗原上の領域または領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、ならびに特異的抗原結合抗体またはペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基、すなわち、抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含んでもよい。これは、抗体や受容体などと結合できる複雑な抗原分子上の最も単純な形状または最小の構造領域である。エピトープは、直鎖状または立体構造的であることができる。「線状エピトープ」という用語は、アミノ酸の線状配列(一次構造)上で連続するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。「立体配座または構造エピトープ」という用語は、すべてが連続しているわけではなく、分子の折り畳みによって互いに近接するアミノ酸の線状配列の分離された部分を表すアミノ酸残基で構成されるエピトープとして定義される(二次、三次、および/または四次構造)。立体構造エピトープは三次元構造に依存する。したがって、「構造的」という用語は「構造的」と同じ意味でしばしば使用される。立体構造エピトープは三次元構造に依存する。したがって、「構造的」という用語は「構造的」と同じ意味でしばしば使用される。
【0062】
本明細書において「アミノ酸修飾」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を意味する。本明細書でのアミノ酸修飾の例は、置換である。本明細書において「アミノ酸修飾」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を意味する。本明細書における「アミノ酸置換」または「置換」とは、タンパク質配列中の所定の位置にあるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを意味する。例えば、置換Y50Wは、50位のチロシンがトリプトファンに置換された親ポリペプチドの変異体を指す。ポリペプチドの「変異体」とは、参照ポリペプチド、典型的には天然または「親」ポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異体は、天然アミノ酸配列内の特定の位置に1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有してもよい。
【0063】
「保存的」アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で既知であり、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0064】
「同一性」または「同一」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基の文字列間の一致の数によって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって対処されるギャップアライメント(存在する場合)を有する2つ以上の配列のうち小さい方の間の同一一致のパーセントを測定する。関連するポリペプチドの同一性は、既知の方法によって容易に計算することができる。かかる方法は、これらに限定されないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., および Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. および Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991; および Carillo ら, SIAM J. Applied Math. 48, 1073 (1988)に記載されるものを含む。
【0065】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験した配列間で最大の一致が得られるように設計される。身元を判定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに記載される。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法は、GAP(Devereux ら, Nucl. Acid. Res. 12, 387 (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul ら, J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990))を含む、GCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)および他の情報源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul ら, NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul ら, 前出)。周知のSmith Watermanアルゴリズムも、同一性を判断するために使用されてもよい。
【0066】
「単離された」分子とは、組成物中で主要な種である分子であり、ここでそれは、それが属する分子のクラスに関して見出される(すなわち、それは、組成物中の分子の種類の少なくとも約50%を構成し、典型的には、組成物中の分子種(例えば、ペプチド)の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を構成する)。一般に、ポリペプチドの組成物は、組成物中に存在するすべてのペプチド種の文脈において、または少なくとも、提案された使用の文脈において実質的に活性なペプチド種に関して、ポリペプチドについて98%、98%、または99%の均一性を示す。
【0067】
「組換え」という用語は、例えば細胞、核酸、タンパク質、ベクターなどに関して使用される場合、該細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸またはタンパク質の導入または天然の核酸またはタンパク質の改変によって修飾されているか、または該細胞がそのように修飾される細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)型内には見出されない遺伝子を発現するか、さもなければ異常発現、発現不足、または全く発現しない天然遺伝子を発現する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「パラフィン包埋試料」(またはパラフィン包埋「細胞」、「細胞ペレット」、「スライド」、または「組織」)は、生物またはインビトロ細胞培養から採取され、固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、脱パラフィンされ、スライドに移されている生物またはインビトロ細胞培養から採取された細胞または組織を指す。固定およびパラフィン包埋は、多くの側面、例えば、使用される固定および包埋方法、従うプロトコルなどに関して変化することができ、本発明の目的のためには、組織の固定(ホルマリン処理など)、パラフィンまたは同等の材料への包埋、切片化、およびスライドへ移すことを含む限りかかる任意の変形方法が包含される、一般的な慣行であることを理解されたい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「生物学的試料」または「試料」という用語は、体液(例えば血清、リンパ、血液)、細胞試料、または組織試料(例えば、骨髄、または腸、腸固有層、肺などの粘膜組織を含む組織生検)を含むが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書の文脈において、「処置」または「処置すること」とは、文脈と矛盾しない限り、疾患または障害の1つまたは複数の症状または臨床的に関連する症状を予防、緩和、管理、治癒または軽減することを指す。例えば、疾患または障害の症状または臨床的に関連する症状が同定されていない個人の「処置」は、予防的または予防的療法であり、一方、疾患または障害の症状または臨床的に関連する症状が同定されている個人の「処置」は、一般に予防または予防療法を構成しない。
【0071】
「KIR3DL2」(CD158k)という用語は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれるPende ら(1996) J. Exp. Med. 184: 505-518に記載される約140kDの3つのIgドメイン分子のジスルフィド結合ホモ二量体を指す。KIR3DL2ポリペプチドについてはいくつかの対立遺伝子変異体が報告されており、これらのそれぞれはKIR3DL2という用語に包含される。成熟ヒトKIR3DL2(対立遺伝子*002)のアミノ酸配列を以下の配列番号1に示し、これは21アミノ酸残基のリーダー配列が省略されているGenbank受託番号AAB52520に対応する。
【表2】
【0072】
KIR3DL2(対立遺伝子*002)のcDNAは、Genbank受託番号U30272に示されている。ヒトKIR3DL2対立遺伝子*003のアミノ酸配列は以下に示されており、これはGen-bank受託番号AAB36593に対応している。
【表3】
【0073】
また、1つ以上の生物学的特性または機能を野生型、全長KIR3DL2とそれぞれ共有し、および少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のヌクレオチドまたはアミノ酸の同一性を共有するあらゆる核酸配列またはタンパク質配列も、包含される。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語KIR3DL1は、KIR3DL2と比較的高いアミノ酸同一性を共有する別のKIR3D受容体を指し、KIR3DL2に結合する様々なHLAリガンドもKIR3DL1によって認識される。かかるKIR3DL1ポリペプチドは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むKIR3DL1対立遺伝子*00101であることができる。
【0075】
本明細書全体の中で、抗KIR3DL2結合剤(例えば、抗体)に関して「処置」または「癌の処置」などに言及する場合は常に、以下を意味する:(a)癌の処置方法、該方法は、癌の処置を可能にする用量(治療有効量)、好ましくは本明細書に特定される用量(量)で、(好ましくは薬学的に許容される担体材料において)かかる処置を必要とする個体、哺乳動物、特にヒトに、抗KIR3DL2結合剤を(少なくとも1回の処置のために)投与する工程;(b)該処置(特にヒトにおいて)における使用のための、癌の処置のための抗KIR3DL2結合剤、または抗KIR3DL2結合剤の使用;(c)癌の処置のための医薬調製物の製造のための抗KIR3DL2結合剤の使用、抗KIR3DL2結合剤を薬学的に許容される担体と混合することを含む、癌の処置のための医薬調製物の製造のために抗KIR3DL2結合剤を使用する方法、または癌の処置のために適切な有効量の抗KIR3DL2結合剤を含む医薬調製物;または(d)この出願が出願される国において特許が認められる主題に従うa)、b)、およびc)の任意の組み合わせ。
【0076】
ヒトKIR3DL2に結合する抗体の例は、抗体AZ158、抗体19H12、抗体2B12および抗体12B11を含むが、これらに限定されない。さらにかかる抗体は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2013/069302およびPCT/EP2013/069293(両方とも2013年9月17日に出願)において提供される。AZ158は、ヒトKIR3DL2ならびにヒトKIR3DL1およびKIR3DS1ポリペプチド2B12に結合し、KIR3DL2に選択的に結合し、KIR3DL1(またはKIR3DS1)には結合しない。抗体AZ158は、例えば、KIR3DL2を発現する標的、例えば、例えばADCCおよび/またはCDCの誘導によって、KIR3DL2を発現する標的を除去するために個体に投与される治療薬として使用することができる。 抗体2B12、19H12、および12B11は、KIR3DL2発現標的細胞を除去するために個体に投与される治療薬としての使用にも適している。19H12および12B11、ならびにPCT/EP2013/069293に開示される他の抗体は、KIR3DL2を介して細胞内に取り込まれることができ、抗体ー薬物複合体として有利に使用することができる。PCT/EP2013/069302に開示される2B12および他の抗体は、腫瘍細胞へのKIR3DL2内部移行を全く誘導せず、それにより、例えばADCCを誘導する抗体を枯渇させるために、エフェクター細胞媒介活性が求められる場合に有利な使用を提供する。PCT/EP2015/055224は、ヒト化抗体を開示している。ヒトKIR3DL2に結合し、KIR3DL2発現標的細胞を排除するために個体に投与される治療薬として使用するのに適したかかる抗体の1つは、商品名LACUTAMABで既知である(WHO Drug Information, Vol. 32, No. 4, 2018を参照のこと)。
【0077】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」または「ADCC」という用語は、当技術分野でよく理解されている用語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介する非特異的細胞傷害性細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球、および好酸球を含む。
【0078】
本明細書で使用される場合、「T細胞」とは、胸腺内で成熟し、その表面上にとりわけT細胞受容体を提示するリンパ球の亜集団を指す。T細胞は、TCR、CD4またはCD8、所望によりCD4およびIL-23Rを含む特定の表面抗原の発現、腫瘍または感染細胞を殺す特定のT細胞の能力、特定のT細胞が免疫系の他の細胞を活性化する能力、および免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力など、特定の特徴および生物学的特性によって同定することができる。
【0079】
診断用抗体の生成
抗体またはその抗体断片は、特にホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片などの固定試料において、KIR3DL2に特異的に結合する。抗体は、パラフィン包埋細胞ペレットとして調製されているKIR3DL2発現細胞を含む生物学的試料(例えば、FFPE切片)中の標的抗原に特異的に結合することができる。パラフィン包埋組織切片内のKIR3DL2に特異的に結合する抗体の能力により、抗体は多くの用途、特に、本明細書に記載されるように、診断または治療目的でKIR3DL2またはKIR3DL2発現細胞(例えば癌細胞)およびKIR3DL2またはKIR3DL2発現細胞のレベルまたは分布を検出するために有用となる。特定の実施形態において、抗体またはその抗体断片は、個体、例えば癌を有する個体から採取される試料(例えば、生検)において癌組織内またはその近傍のKIR3DL2発現細胞の存在またはレベルを決定するために使用される。所望によりさらに、一実施形態において、組織試料においてKIR3DL2が検出されると、KIR3DL2発現細胞が存在すると判定される。所望により、別の実施形態において、組織試料においてKIR3DL2が検出されると(所望により所定レベルのKIR3DL2が検出されると)、個体は、KIR3DL2に結合する治療用抗体による処置に適していると判定される。
【0080】
標的抗原への抗体の結合の検出は、多くの方法のいずれかで実行できる。例えば、抗体は、検出可能な部分、例えば、蛍光部分などの発光化合物、または放射性化合物、金、ビオチン(これにより、その後の増幅されたアビジン、例えばアビジン-APへの結合が可能になる)、またはアルカリホスファターゼ(AP)または西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素により直接標識することができる。別の好ましい実施形態において、試料中の標的抗原に対する抗体の結合は、例えば、一次抗標的抗原抗体に結合し、それ自体が好ましくは酵素で標識される二次抗体を使用することによって、好ましくは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素により、間接的に評価され;しかしながら、二次抗体は、任意の適切な方法を使用して標識または検出できることが理解される。好ましい実施形態において、二次抗体によって提供されるシグナルを増強するために、例えば二次抗体がHRPまたはAPなどの検出可能な化合物または酵素の多数のコピーに結合するポリマー(例えばデキストラン)に結合するEnVisionシステムなどの増幅システムが使用される(例えば、その全開示が参照により本明細書に組み込まれるWiedorn ら (2001) The Journal of Histochemistry & Cytochemistry, Volume 49(9): 1067-1071; Kammerer ら, (2001) Journal of Histochemistry and Cytochemistry, Vol. 49, 623-630を参照のこと)。
【0081】
KIR3DL2ポリペプチドまたはその1つ以上の免疫原性断片は、抗体を産生するための免疫原として使用することができ、抗体は、本明細書に記載されるように、パラフィン包埋試料上のKIR3DL2ポリペプチド内のエピトープを認識することができる。本開示による抗体は、KIR3DL2ポリペプチドの細胞外ドメイン(すなわち、細胞外に存在する抗体にアクセス可能)または細胞内ドメインに存在するエピトープを認識することができる。好ましくは、認識されたエピトープは、KIR3DL2ポリペプチドの細胞内ドメイン上に存在する。KIR3DL2ポリペプチドの細胞内ドメイン上に存在するかかるエピトープは、組織が前記抗体と接触する前に切片に切断されるため、FFPE試料中の抗体にアクセス可能である。一態様において、エピトープは、パラフィン包埋細胞ペレット試料において抗体によって特異的に認識されるエピトープである。
【0082】
本発明の抗体は、当技術分野で知られている様々な技術によって産生されてもよい。典型的には、それらは、KIR3DL2ポリペプチド、好ましくはヒトKIR3DL2ポリペプチドを含む免疫原による非ヒト動物、好ましくはウサギの免疫化によって産生される。ポリペプチドは、ヒトポリペプチドの全長配列、またはその断片もしくは誘導体、典型的には免疫原性断片、すなわち、KIR3DL2ポリペプチドを発現する細胞の表面に露出したエピトープを含むポリペプチドの一部を含んでもよい。かかる断片は、典型的には、成熟ポリペプチド配列の少なくとも約7個の連続したアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも約10個の連続したアミノ酸を含有する。断片は通常、本質的にKIR3DL2受容体の細胞外ドメインに由来する。かかる断片は、典型的に、IHC Peptide Profiler(登録商標)技術(BIOTEM Corp.)などのツールを使用して設計できる。好ましい実施形態において、免疫化は、KIR3DL2ポリペプチドに由来し、前述のツールによって得られる少なくとも2つの免疫原性断片のプール、好ましくは少なくとも3つの免疫原性断片のプールの注射によって実現される。一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドに由来する免疫原性断片は、以下の表に開示される配列によって定義される。
【表4】
【0083】
非ヒト哺乳動物をKIR3DL2ポリペプチドまたはその免疫原性断片で免疫化するステップは、マウスにおける抗体の産生を刺激するための当技術分野で周知の任意の方法で実施されてもよい(例えば、その全開示が参照により本明細書に組み込まれるE. Harlow および D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照のこと)。免疫原は、所望により完全または不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに緩衝液中に懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液の種類、およびアジュバントの量を決定するための方法は当業者に周知であり、本発明を決して限定するものではない。これらのパラメーターは免疫原によって異なってもよいが、簡単に解明される。
【0084】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫付与の場所および頻度も当技術分野で周知である。典型的な免疫化プロトコルにおいて、非ヒト動物に抗原を1日目に腹腔内注射し、約1週間後に再度注射する。続いて、21日目あたりに抗原のリコール注射が行われ、所望により不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントも併用される。リコール注射は静脈内に行われ、数日間連続して繰り返されてもよい。この後、通常はアジュバントを使用せずに、35日目に静脈内または腹腔内のいずれかでブースター注射が行われる。このプロトコルにより、約45日後に抗原特異的抗体産生B細胞が産生される。免疫化に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、他のプロトコルも使用されてもよい。
【0085】
別の実施形態において、免疫されていない非ヒト哺乳動物からのリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで細胞培養中で免疫原に曝露される。 次いでリンパ球が採取され、以下に説明する融合工程が実行される。
【0086】
脾細胞からのB細胞は、免疫化された非ヒト哺乳動物から単離することができ、scFvライブラリーを構築するために全RNAを抽出および定量することができる。かかるライブラリーの構築は当業者にとって一般的である(例えば、Lennard S ら (2002) Standard Protocols for the Construction of scFv Libraries. In Antibody Phage Display. Methods in Molecular Biology(登録商標), vol 178.)。詳細には、γ鎖およびκ/λ軽鎖の可変ドメインをコードするRNAは、それぞれ特異的なプライマーセットを用いて逆増幅することができる。増幅のVHおよびVLPCR産物を別々にプールし、バックアップベクターにクローニングして、2つの異なるサブライブラリ(重鎖用および軽鎖用)を生成できる。VL断片はファージミドベクターにクローン化され、次にVH断片がVLレパートリーを含むベクターに挿入される。通常、かかる構成には、ベクトル形式VH/VL-6His(HHHHHH)-FLAG(DYKDDDDK)が適している。典型的には、かかる開示においてscFvライブラリーを構築するのに適したベクターは、M13K07ファージである。scFvライブラリーは、構築されたら、ファージディスプレイなどの一般的な方法でスクリーニングできる。この目的のために、ファージディスプレイされたscFvライブラリーは、KIR3DL2ポリペプチドまたはその断片に対して、異なる戦略を使用するいくつかのパニングに供されることができる。抗KIR3DL2ペプチドにより単離されたクローンDNAを抽出し、その後配列決定することができる。かかる配列を適切なベクターに挿入して、対応するscFvを生成することができる。適切な発現ベクターまたは発現系は、周知の部分である。例えば、大腸菌株を形質転換し、かかるscFvを産生するために使用することができる。KIR3DL2ポリペプチドに対するかかるscFvの反応性を評価して、最良のクローンを選択することができる。
【0087】
任意の実施形態によれば、scFvライブラリーから単離されたKIR3DL2ポリペプチド上に存在するエピトープに結合する抗体をコードするDNAは、適切な宿主細胞へのトランスフェクションのために適切な発現ベクターに配置される。次いで、宿主細胞は、抗体、またはそのモノクローナル抗体のヒト化バージョン、抗体の活性断片、抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体、または検出可能な部分を含むバージョンなどのその変異体の組換え生産のために使用される。
【0088】
本発明のKIR3DL2特異的抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定することができる。単離されたDNAは、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成するため、発現ベクターに配置され、それは次いで大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされる。本明細書の他の箇所に記載されているように、かかるDNA配列は、抗体の結合特異性を最適化するために、多数の目的のいずれか、例えば、抗体のヒト化、断片もしくは誘導体の生成、または例えば抗原結合部位における抗体の配列の修飾のために修飾することができる。
【0089】
一実施形態によれば、配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号24のアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチドが提供される。あるいは、本開示による単離ポリペプチドは、修飾されることができるか、1つ以上の異種ポリペプチドに融合されることができるか、または別のポリペプチド(例えば、1つ以上の非KIR3DL2アミノ酸配列を含むポリペプチド)に含まれることができる。配列番号24のアミノ酸配列を含む、または配列番号24のアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドに結合する抗体またはその抗体断片も、提供される。配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる該ポリペプチドに対する本開示による抗体またはその抗体断片の結合は、当業者に既知の任意の方法(例えば、ELISA、ビアコア)により評価されることができる。好ましい実施形態において、かかる結合はELISA試験によって評価される。ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)テストは、抗体と別の抗原(ペプチドなど)の間の結合を検出できる簡単な方法である。一例として、配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる該ポリペプチドに対する本発明による抗体またはその抗体断片の結合のELISA試験による検出は、(i)配列番号24のアミノ酸配列を含む、または配列番号24のアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドでマイクロタイタープレートのウェルをコーティングする工程、(ii)偽陽性結果を避けるために、(例えばBSAを使用することにより)プレートのすべての非結合部位をブロックする工程、(iii)抗体またはその抗体断片(例えば、可溶性scFv)をウェルに提供する工程、(iv)一次抗体またはその抗体断片に特異的な二次抗体を提供する工程であって、該抗体は酵素に結合される工程、(v)酵素と反応して着色生成物を生成するのに適した基質を提供する工程であって、このことはポリペプチドへの抗体またはその抗体断片の結合を示す工程を含むことができる。所望により、配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチドを固体支持体上に結合させて、ELISA試験に進むことができる。かかるポリペプチドは、例えば固体支持体に結合したリンカーポリペプチドに融合させることができる。
【0090】
本開示は、ホルムアルデヒドまたはホルマリン処置後に存在するKIR3DL2エピトープを明らかにする、ホルマリン固定パラフィン包埋試料(FFPE細胞ペレット)に基づく検出またはスクリーニング方法を提供する。したがって、一態様において、本開示は、パラフィン包埋細胞ペレットとして保存され、分析前に脱パラフィンされる試料においてKIR3DL2ポリペプチド発現細胞(例えば、KIR3DL2を発現するように作製された細胞)に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。所望により、抗体は、パラフィン包埋細胞ペレットにおいてKIR3DL2陰性細胞(KIR3DL2を発現しない細胞)に結合しないかまたは結合がわずかであることをさらに特徴とする。所望により、抗体は、パラフィン包埋組織切片中のKIR3DL2ポリペプチド発現細胞に結合することによってさらに特徴付けられる。
【0091】
一態様において、本開示は、ヒトKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片を提供し、ここで、該抗体は、ホルムアルデヒド(例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド)を使用して固定されている生物学的試料において該KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合する。ホルマリン固定は、特にパラフィン包埋組織切片の調製に使用でき、これは次いで脱パラフィンされ、目的のマーカー、例えばKIR3DL2ポリペプチドの存在について分析されることができる。
【0092】
一態様において、パラフィンにおいて保存されている細胞、例えばパラフィン包埋細胞ペレットとして保存されている細胞によって発現されるヒトKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体が提供される。所望により、細胞は、ペレット化し、ホルムアルデヒド処理(例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド)し、次いでパラフィン包埋される。所望により、ヒトKIR3DL2ポリペプチドを発現する細胞は、分析前に脱パラフィンされている生物学的試料において存在する。
【0093】
一態様において、抗体は、FFPE細胞ペレット試料においてKIR3DL2上に存在する抗原決定基に結合する。抗体によって結合される残基は、KIR3DL2ポリペプチドの表面上に、所望によりさらに細胞によって発現されるKIR3DL2ポリペプチド中に存在するものとして特定されることができる。
【0094】
一実施形態において、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合できる抗体またはその抗体断片を作製または試験する方法が提供され、これは抗体または抗体断片がCEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列に結合するかどうかを決定することを含む。
【0095】
一実施形態において、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合できる抗体またはその抗体断片を作製または試験する方法が提供され、これは抗体または抗体断片が配列番号21のVHおよび配列番号22のVLを有する抗体と同じKIR3DL2上のエピトープに結合するかどうかを決定することを含む。
【0096】
一実施形態において、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合できる抗体またはその抗体断片を作製する方法が提供され、これはCEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列で非ヒト哺乳動物を免疫化すること、KIR3DL2に結合する抗体を哺乳動物から単離すること、および所望により生物学的試料(例えば、FFPE試料)においてKIR3DL2ポリペプチドに結合する能力について、そこからの抗体をさらに評価および/または選択することを含む。一実施形態において、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドに結合できる抗体またはその抗体断片を作製する方法が提供され、これは複数の抗体を提供することおよびCEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびCPRAPQSGLEGVF(配列番号25)からなる群から選択されるアミノ酸配列に結合する能力について抗体を評価および/または選択すること、および所望により、抗体またはその抗体断片が生物学的試料(例えば、FFPE試料)においてKIR3DL2ポリペプチドに結合できるかどうかをさらに評価することを含む。一実施形態において、本開示の抗体または抗体断片を作製する方法によって得られる抗体または抗体断片が提供される。
【0097】
一態様において、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号22の酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体またはその抗体断片が提供される(以下の表5を参照のこと)。
【表5】
【0098】
一態様において、KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合できる抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する重鎖を含む。
【0099】
一態様において、KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、または少なくとも約80%)を有する軽鎖を含む。
【0100】
いずれの態様においても、KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合できる抗体は、ヒト起源のVHおよびVLフレームワーク(例えば、FR1、FR2、FR3およびFR4)を含むものとして特定されることができる。
【0101】
本発明による抗体は、IgGタイプの免疫グロブリン定常領域、所望により定常領域、所望によりIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプに融合される、本明細書に定義される通りの抗原結合領域(例えば、軽鎖VH/VL)を含むことができ、所望により、エフェクター機能(Fcγ受容体への結合)を低下させるためのアミノ酸置換をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、配列番号21のVHアミノ酸配列の重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、および配列番号22のVLアミノ酸配列の軽鎖CDR1、2、および3(LCDR1、LDR2、LCDR3)を含む抗体が提供される。所望により、CDRは、Kabat、Chothia、Abm、またはIMGTの番号付けスキームに従って決定される。
【0103】
一態様において、(i)配列番号03(HCDR1)、配列番号06(HCDR2)および配列番号09(HCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含む重鎖、および(ii)配列番号12(LCDR1)、配列番号15(LCDR2)、および配列番号18(LCDR3)の配列を有するCDR1、2および3(LCDR1、LDR2、LCDR3)を含む軽鎖を含む抗体が提供される(以下の表6および7を参照のこと)。
【表6】
【表7】
【0104】
所望により、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つまたは複数は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸修飾(例えば、置換、挿入または欠失)を含んでもよい。
【0105】
一態様において、KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合できる抗体は、以下を含む:アミノ酸配列:TYAMS(配列番号3)、またはその少なくとも4つの連続するアミノ酸の配列を含むHCDR1、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸;アミノ酸配列:IIGASGNTWYASWAKG(配列番号6)、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15個の連続するアミノ酸の配列を含むHCDR2で置換されてもよく、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸;アミノ酸配列:FWAGYPSNAAATVSGMDP(配列番号9)を含むHCDR3、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17もしくは18個の連続するアミノ酸の配列で置換されてもよく、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸;アミノ酸配列:TLSTGYSVGSYGIG(配列番号12)を含むLCDR1、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12もしくは13個の連続したアミノ酸の配列で置換されてもよく、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸;アミノ酸配列:YHTEEIKHQGS(配列番号15)、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10個の連続するアミノ酸の配列を含むLCDR2領域で置換されてもよく、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸;および/またはアミノ酸配列:ATAHGSGSSFHVV(配列番号18)を含むLCDR3領域、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個の連続したアミノ酸の配列で置換されてもよく、ここで所望により、これらのアミノ酸の1つ以上が、欠失されるかまたは異なるアミノ酸で置換されてもよい。
【0106】
本発明のさらなる目的は、本開示のKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体の機能保存的変異体も包含する。「機能保存的変異体」とは、タンパク質(例えば、抗体または抗体断片)内の所定のアミノ酸残基が、タンパク質の全体的な立体構造および機能を変えることなく変更されている変異体であり、アミノ酸の、同様の特性(例えば、極性、水素結合電位、酸性、塩基性、疎水性、芳香性など)を有するものとの置換を含むがこれらに限定されない。保存されていると示されたアミノ酸以外のアミノ酸は、タンパク質内で異なってもよく、そのため、同様の機能を持つ任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似性パーセントは、変動してもよく、たとえばクラスター法などのアライメントスキームに従って決定される通り70%から99%であってもよく、ここで類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づいている。「機能保存的変異体」は、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定されるように、上で定義した通りKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体と少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、およびさらに好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、および上で定義した通りのKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体と同じまたは実質的に同様の特性または機能を有するポリペプチドを含む。
【0107】
特定の重鎖、軽鎖、可変領域、およびCDR配列は、配列の修飾、例えば置換(1、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の配列修飾)を含んでもよい。一実施形態において、アミノ酸配列は、1、2、3またはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで置換される残基は、ヒト由来の配列に存在する残基である。一実施形態において、置換は保存的修飾である。保存的配列修飾とは、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に大きな影響を与えたり、変化させたりしないアミノ酸修飾を指す。かかる保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加および欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当技術分野で既知の標準的な技術によって本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、アミノ酸残基が、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。特定のアミノ酸配列は、1、2、3、4、またはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含んでもよい。置換が行われる場合、好ましい置換は保存的修飾である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変された抗体は、本明細書に記載のアッセイを使用して、保持された機能(すなわち、本明細書に記載の特性)について試験することができる。
【0108】
一実施形態において、本発明の抗体は、その結合特性および/または機能特性を保持する抗体断片である。(別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本出願で使用される「抗体」という用語に包含される)本発明の抗体の断片および誘導体、好ましくは抗KIR3DL2抗体は、当技術分野で知られている技術によって産生することができる。「断片」は、無傷の抗体の一部、一般的には抗原結合部位または可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;これに限定されないが(1)単鎖Fv分子(2)軽鎖可変ドメインを1つだけ含有する単鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、関連する重鎖部分を有さないその断片、および(3)重鎖可変領域を1つだけ含有する単鎖ポリペプチド、または重鎖可変領域の3つのCDRを含有し、関連する軽鎖部分を有さないその断片を含む、(本明細書では「単鎖抗体断片」または「単鎖ポリペプチド」と呼ばれる)連続したアミノ酸残基の連続した1つの配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片;および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0109】
FFPE試料の調製および染色
本抗体は、固定組織または細胞試料において存在するポリペプチド(例えば、KIR3DL2ポリペプチド)に効率的かつ特異的に結合できるという特別な特性を有する。かかる組織調製物を調製および使用する様々な方法は当技術分野で周知であり、任意の適切な方法または調製物のタイプを使用することができる。さらに、抗体は、固定時または固定前に治療用(機能中和など)抗体が存在する試料において標的抗原に結合することができる。
【0110】
個人からの生物学的試料におけるFFPE材料は、通常、組織である。FFPE組織は、解剖または生検によって動物標本(ヒト個体など)から最初に分離される組織片である。
次いで、この組織は腐敗または変性を防ぎ、組織学的、病理学的または細胞学的研究のために顕微鏡ではっきりと検査できるように固定される。固定は、染色して顕微鏡で観察する目的で、組織を固定し、死滅させ、保存するプロセスである。固定後の処理により、組織が染色試薬に対して透過性になり、高分子が架橋されるため、組織は安定化され、所定の位置に固定される。次いで、この固定された組織をワックスに埋め込み、薄い切片に切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン染色で染色できるようにする。その後、顕微鏡下で抗体による染色を研究するために、微細切片を切断することによってミクロトーミングが行われる。
【0111】
例えば、本発明の抗体は、異なる適切な固定細胞または組織調製物、および使用される異なる特定の固定または包埋方法とともに使用できることが理解される。たとえば、最も一般的なホルムアルデヒドベースの固定手順は、ホルマリン(例えば、10%)を含むが、パラホルムアルデヒド(PFA)、ブアン溶液(ホルマリン/ピクリン酸)、アルコール、亜鉛ベースの溶液(一例として、例えば、その開示内容全体が本明細書に組み込まれるLykidis ら, (2007) Nucleic Acids Research, 2007, 1-10を参照のこと)および他のもの(例えば、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる、HOPE法、Pathology Research and Practice, Volume 197, Number 12, December 2001, pp. 823-826(4)を参照のこと)などの代替方法もある。同様に、パラフィンが好ましいが、他の材料、例えば、ポリエステルワックス、ポリエチレングリコールベースの配合物、グリコールメタクリレート、JB-4プラスチックなども埋め込みに使用することができる。組織標本を調製および使用するための方法の概説については、例えば、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる、Gillespie ら, (2002) Am J Pathol. 2002 February; 160(2): 449-457; Fischer ら CSH Protocols; 2008; Renshaw (2007), Immunohistochemistry: Methods Express Series; Bancroft (2007) Theory and Practice of Histological Techniques;およびPCT特許公報第WO06074392を参照のこと。
【0112】
本発明の一実施形態において、FFPE組織はヒト組織(例えば、腫瘍組織、腫瘍隣接組織、正常組織)であり、そこでKIR3DL2の発現が調査される。例えば、FFPE組織は、KIR3DL2の発現が調査される任意のヒト腫瘍組織であることができる。腫瘍は、例えば、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、皮膚、乳房、消化管、結腸、食道、卵巣、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、膵臓、前立腺、泌尿生殖管、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍であってもよい。FFPE組織は、例えば、血液試料に由来してもよい。一実施形態において、KIR3DL2が検出される場合、FFPE組織は、抗KIR3DL2抗体による治療を受けている、例えば、かかる抗体による一連の治療を受けたことがあるかまたは受けている個体から得られる腫瘍または腫瘍隣接組織であってもよい。
【0113】
抗体(例えば、抗KIR3DL2抗体)は、KIR3DL2ポリペプチドの検出のためにFFPE材料とインキュベートされる。インキュベーション工程という用語は、材料、抗体および/または抗原の種類に応じて、異なる期間にわたってFFPE材料を本発明の抗体と接触させることを含む。インキュベーションプロセスは、他の種々のパラメーター、例えば、この最適化は、当業者に既知の日常的な手順に従う検出感度にも依存する。化学溶液の追加および/または物理的手順の適用、例えば熱の影響は、試料における標的構造へのアクセス可能性を向上させることができる。インキュベーションの結果として、特定のインキュベーション生成物が形成される。
【0114】
形成された抗体/抗原複合体を検出するための適切な試験は、当業者に既知であるかまたは日常的に容易に設計されることができる。多くの異なるタイプのアッセイが既知であり、その例を以下に示す。アッセイは、KIR3DL2発現を検出および/または定量するために抗KIR3DL2mAb結合を使用するのに適した任意のアッセイであってもよいが、好ましくは、後者は、抗KIR3DL2一次抗体と特異的に相互作用する物質によって決定される。
【0115】
したがって、例えば、検査される試料(組織または細胞)は、体液、腫瘍組織、または健康な組織、および切片(例えば、厚さ3mm以下)から生検によって取得され、ホルマリンまたは同等の固定方法(上記を参照)を使用して固定される。固定時間は用途によって異なるが、数時間から24時間以上であることができる。固定後、組織はパラフィン(または同等の材料)に埋め込まれ、非常に薄い切片(たとえば、5ミクロン)がミクロトームで切断され、次いで、好ましくはコーティングされたスライドに取り付けられる。次いで、スライドを乾燥、例えば風乾する。
【0116】
スライド上に固定および包埋された組織切片は、乾燥させて無期限に保存できる。免疫組織化学の場合、スライドは脱パラフィンされ、次いで再水和される。例えば、それらは、最初にキシレン、次いでエタノールを含むキシレン、そして次いで水中のエタノールの割合を減少させながら一連の洗浄にさらされる。
【0117】
抗体染色の前に、固定中に形成され、エピトープを隠すことができるメタンブリッジを破壊するために、組織は、酵素的または熱ベースの抗原賦活化工程にかけることができる。好ましい実施形態において、沸騰した10mMクエン酸緩衝液(pH6)中での処置が使用される。
【0118】
スライドが再水和され、抗原賦活化が理想的に実行されたら、一次抗体とともにインキュベートできる。まず、スライドを例えばTBSで洗浄し、そして次いで、例えば血清/BSAによるブロッキング工程に続いて、抗体を適用することができる。抗体の濃度は、その形態(例えば、精製される)、その親和性、使用される組織試料に依存するが、適切な濃度は、例えば、1~10μg/mlである。一実施形態において、使用される濃度は10μg/mlである。インキュベーション時間も同様に変化することができるが、通常は一晩のインキュベーションが適している。例えばTBSにおける抗体後の洗浄工程に続いて、スライドは、次いで抗体結合の検出のために処理される。
【0119】
使用される検出方法は、使用される抗体、組織などに依存し、例えば、一次抗体に結合した発光部分またはその他の可視部分または検出可能な部分の検出を含む、または検出可能な二次抗体の使用を伴うことができる。抗体検出の方法は当技術分野で周知であり、例えば、それぞれの開示全体は、その全体が本明細書に組み込まれる、Harlow ら, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1st edition (December 1, 1988); Fischer ら CSH Protocols; 2008; Renshaw (2007), Immunohistochemistry: Methods Express Series; Bancroft (2007) Theory and Practice of Histological Techniques; PCT特許公開番号WO06074392において教示される。
【0120】
多くの直接的または間接的な検出方法が、既知であり、使用に適合させてもよい。直接標識は、抗体に結合された蛍光または発光タグ、金属、色素、放射性核種などを含む。ヨウ素125(125I)で標識される抗体は、使用できる。タンパク質に特異的な化学発光抗体を使用する化学発光アッセイは、タンパク質レベルの高感度で非放射性の検出に適している。蛍光色素で標識される抗体も、適している。蛍光色素の例は、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R-フィコシアニン、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド、およびリサミンを含むが、これらに限定されない。
【0121】
間接標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどの当技術分野で周知の種々の酵素を含む。抗3DL2抗体の酵素への共有結合は、グルタルアルデヒドとのカップリングなどの異なる方法によって行ってもよい。酵素および抗体は、両方とも遊離アミノ基を介してグルタルアルデヒドと結合しており、ネットワーク化された酵素および抗体の副産物は除去される。別の方法では、酵素がペルオキシダーゼなどの糖タンパク質である場合、酵素は糖残基を介して抗体に結合する。該酵素は過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化され、抗体のアミノ基と直接結合する。炭水化物を含有する他の酵素も、この方法で抗体に結合させることができる。酵素カップリングは、スクシンイミジル6-(N-マレイミド)ヘキサノエートなどのヘテロ二官能性リンカーを使用して、抗体のアミノ基をβ-ガラクトシダーゼなどの酵素の遊離チオール基と連結することによって行われてもよい。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出システムは、たとえば、過酸化水素の存在下で450nmで検出可能な可溶性生成物を生成する発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)とともに使用できる。アルカリホスファターゼ検出システムは、発色基質であるp-ニトロフェニルリン酸などとともに使用でき、405nmで容易に検出可能な可溶性生成物が得られる。同様に、β-ガラクトシダーゼ検出システムは、発色基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノキシド(ONPG)とともに使用でき、410nmで検出可能な可溶性生成物が得られる。ウレアーゼ検出システムは、尿素ブロモクレゾールパープルなどの基質とともに使用できる。
【0122】
一実施形態において、一次抗体の結合は、標識二次抗体、好ましくはHRPまたはAPなどの酵素に共有結合した二次抗体を結合することによって検出される。特に好ましい実施形態において、二次抗体の結合によって生成されるシグナルは、抗体検出の増幅のための多くの方法のいずれかを使用して増幅される。たとえば、EnVision方法が使用され(例えば、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許番号5,543,332 および欧州特許番号594,772; Kammerer ら, (2001) Journal of Histochemistry and Cytochemistry, Vol. 49, 623-630; Wiedorn ら (2001) The Journal of Histochemistry & Cytochemistry, Volume 49(9): 1067-1071を参照のこと)、そこでは二次抗体がそれ自体APまたはHRPの多くのコピーに結合しているポリマー(例えばデキストラン)に結合している。
【0123】
診断、予後診断および治療における抗体の使用とその方法
本発明の抗体は、生物学的試料においてKIR3DL2ポリペプチドの検出に特に有効である。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、組織試料内のKIR3DL2ポリペプチドを検出するのに特に有効である。さらなる実施形態において、本発明の抗体は、固定組織試料においてKIR3DL2ポリペプチドを検出するのに特に有効である。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、標的抗原ポリペプチドを発現しない組織または細胞を非特異的に染色することなく、ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料(FFPE)内のKIR3DL2ポリペプチドを検出するのに特に有効である。したがって、抗体は、KIR3DL2ポリペプチドおよび/またはKIR3DL2発現細胞の検出および/または局在化が目的である疾患の研究、評価、診断、予後および/またはモニタリングにおける使用に有利である。
【0124】
したがって、個体における癌を検出、診断、またはモニタリングする方法が提供され、該方法は、(例えば、インビトロで)癌性細胞を本開示の抗KIR3DL2抗体またはその抗体断片と接触させる工程および癌細胞関連KIR3DL2ポリペプチドを検出する工程を含む。関連する実施形態において、診断方法は免疫組織化学(IHC)を含む。特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。当業者はさらに、かかるKIR3DL2検出剤をエフェクター、マーカーまたはレポーターとして標識または結合させ、多くの標準的な画像化技術のいずれかを使用して検出してもよいことを理解する。他の実施形態において、抗KIR3DL2抗体は直接標識されず、検出可能な二次薬剤(例えば、標識抗ウサギ抗体)を使用して検出される。特定の実施形態において、本開示は、本発明の抗KIR3DL2組成物および検出方法のいずれかを使用して個体を診断する工程、およびその結果に基づいて一連の治療を調整することを含む、治療(例えば、化学療法、免疫療法)を投与する個体を特定または選択するための方法を提供する。本開示はさらに、がんの予防または処置のための、抗腫瘍応答レジメン(例えば、化学療法剤、抗KIR3DL2モノクローナル抗体などの免疫療法剤)を増強する薬剤を投与するためにKIR3DL2発現癌を有する個体を選択するための方法を提供する。特定の実施形態において、本開示は、癌を予防または治療するための、療法(例えば、治療用抗KIR3DL2抗体)をモニタリング(例えば、その有効性)するための方法を提供する。
【0125】
本明細書に記載の抗体は、KIR3DL2発現細胞、例えば癌性細胞(例えば癌性CD4T細胞、癌性CD8T細胞)の存在を、好ましくはインビトロで検出するために使用することができる。かかる方法は、典型的には、個体からの生物学的試料を本開示による抗体と接触させ、抗体と生物学的試料の間の免疫反応から生じる免疫複合体の形成を検出することを含む。特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。複合体は、本開示に従って抗体を標識することによって直接、または本発明による抗体の存在を明らかにする分子(二次抗体など)を添加することによって間接的に検出することができる。例えば、標識は、抗体を放射性タグまたは蛍光タグと結合させることによって達成することができる。これらの方法は当業者に周知である。したがって、本発明はまた、KIR3DL2発現細胞(例えば、癌性細胞、癌性CD4T細胞、癌性CD8T細胞)の存在を検出するため、所望によりKIR3DL2発現細胞が存在する病状の存在を検出するため、所望によりインビボまたはインビトロで癌または他の病状を特徴付けるために使用可能な診断組成物を調製するための本開示による抗体の使用にも関する。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、癌の進行を予測するのに有用である。癌の予後、癌または癌の進行の予後は、以下のいずれか1つまたは複数の見通しまたは予測(予後)を提供することを含む:癌に罹りやすいかまたは癌と診断される対象の生存期間、癌に罹患しやすいかまたは癌と診断される対象の無増悪生存期間、癌に罹患しやすいかまたは癌と診断される対象または対象群の処置に対する反応率、および/または対象における処置後の反応期間、反応の程度、または生存。例示的な生存エンドポイントは、例えば、TTP(増悪までの時間)、PFS(無増悪生存)、DOR(反応期間)、およびOS(全生存)を含む。一般に、疾患の進行および反応は、標準的な腫瘍反応基準の慣例に従って、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Eisenhauer, EA, らによって詳述される「Response Evaluation Criteria in Solid Tumors」 (RECIST) v1.1 、New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline (version 1.1), Eur J Cancer 2009:45:228-247に従って決定することができる。
【0127】
いくつかの態様において、癌を有する個体からの生物学的試料は、生物学的試料中のKIR3DL2ポリペプチドおよび/またはKIR3DL2発現細胞を評価するために、本明細書に開示される抗体を使用して特徴付けまたは評価することができる。特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。一実施形態において、個体は、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、KIR3DL2発現細胞に対する細胞毒性を増強する薬剤(例えば、治療抗体)で(例えば、ADCCを介して)治療されていない。あるいは、個体は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する治療用抗体、例えばラキュタマブなどの抗KIR3DL2モノクローナル抗体による一連の治療を受けているかまたは受けているところである。
【0128】
本開示の方法は、個体がKIR3DL2発現細胞を特徴とする癌を有するかどうかを判定するのに有用であることができる。かかる方法は、個体に最適な一連の治療を決定および/または提供するだけでなく、個体の疾患をモニタリングするのにも有用であることができる。
【0129】
一実施形態において、本開示は、癌を有する個体におけるKIR3DL2発現細胞を検出するための方法を提供し、該方法は、個人から生物学的試料を提供すること、ここで所望により試料は腫瘍組織または癌性細胞を含み、および本開示のモノクローナル抗体を使用して、該試料においてKIR3DL2ポリペプチドを検出することを含む。特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドの検出は、組織におけるKIR3DL2発現細胞の存在を示し、所望によりKIR3DL2発現細胞は癌性細胞である。
【0130】
一実施形態において、個体は、化学療法剤による一連の治療を受けているかまたは受けているところである。
【0131】
一実施形態において、個体は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する薬剤(例えば、治療用抗体)による一連の治療に適格である(例えば、該個体は候補者または潜在的候補者である)。
【0132】
一実施形態において、個体は、KIR3DL2ポリペプチドおよび/またはKIR3DL2発現細胞に特異的に結合する治療抗体による一連の治療を受けているかまたは受けているところである。
【0133】
一実施形態において、KIR3DL2および/またはKIR3DL2発現細胞を特徴とする癌または腫瘍(またはそのような癌または腫瘍を有する個体)は、化学療法剤または免疫療法剤による治療に適している(例えば、それらから利益を得ている)として同定することができる。 例えば、免疫療法剤は、細胞毒性を誘導することによって(例えば、ADCCを介して)KIR3DL2発現細胞に直接的または間接的に作用する薬剤であってもよい。かかる薬剤は、検出可能なレベルおよび/または上昇したレベルのKIR3DL2発現を特徴とする癌または腫瘍組織を有する個体を治療するのに有用であってもよい。
【0134】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における癌の診断、予後、モニタリングおよび/または特徴付けのためのインビトロ方法を提供し、該方法は、個体から生物学的試料を提供すること、およびヒトKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を使用する試料において、好ましくは固定組織試料、所望によりパラフィン包埋組織試料において、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2)を検出することを含み、ここでKIR3DL2ポリペプチドの検出は、個体が化学療法剤または免疫療法剤による治療を受けやすい(例えば、恩恵を受けている)ことを示す。免疫療法剤は、細胞毒性を誘導することによって(例えば、ADCCを介して)KIR3DL2発現細胞に直接的または間接的に作用する薬剤であってもよい。かかる薬剤は、検出可能なレベルおよび/または上昇したレベルのKIR3DL2発現を特徴とする癌または腫瘍組織を有する個体を治療するのに有用であってもよい。一実施形態において、生物学的試料は組織試料である。一実施形態において、生物学的試料は固定組織試料、好ましくは化学的に固定された組織試料である。一実施形態において、生物学的試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。
【0135】
一実施形態において、個体は、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞)に結合し、(例えば、ADCCを介して)細胞傷害性を誘導するラキュタマブなどの治療用抗体による一連の治療を受けている、または受けている。個体からの生物学的試料は、KIR3DL2の発現および/またはレベルについて評価することができる。KIR3DL2が検出できれば、次いで個体は、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞)に結合し、細胞傷害性(例えば、ADCCを介して)を誘導する治療抗体による継続的またはさらなる治療、および/または追加のもしくは異なる治療薬による治療に適しているとみなされてもよい。したがって、一実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における癌の診断、予後、モニタリングおよび/または特徴付けのためのインビトロ方法を提供し、該方法は、KIR3DL2ポリペプチド(例えばKIR3DL2発現細胞)に結合し、(例えばADCCを介して)細胞毒性を誘導するラキュタマブなどの治療用抗体で治療された個体からのパラフィン包埋生物学的試料を提供すること、および固定組織試料、所望によりパラフィン包埋組織試料においてヒトKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を使用して、該試料においてKIR3DL2ポリペプチド(例えばKIR3DL2発現細胞)を検出することを含み、ここでKIR3DL2ポリペプチドの検出は、個体が化学療法剤または免疫療法剤による治療に適している(例えば、その恩恵を受けている)ことを示す。
【0136】
一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドを発現することを特徴とする癌性細胞または腫瘍組織を有する個体は、抗癌剤、例えば化学療法剤、免疫療法剤、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞)に結合し、ラキュタマブなどのKIR3DL2発現細胞に対する細胞毒性を(例えばADCCを介して)増強する薬剤により処置されることができる。かかる薬剤は、検出可能なレベルおよび/またはレベルの上昇したKIR3DL2発現を特徴とする腫瘍または腫瘍組織を有する個体を処置するのに有用であってもよい。
【0137】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における癌の治療または予防のための方法を提供し、該方法は、以下を含む:
(i)個体からの生物学的試料を提供すること、該試料中のKIR3DL2発現細胞を検出すること、
(ii)生物学的試料のKIR3DL2発現細胞が、所望により参照レベルと比較して増加したレベルであるとの決定に基づいて、個体に免疫療法剤を投与すること。
【0138】
特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。
【0139】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における癌の治療または予防のための方法を提供し、該方法は、以下を含む:
(i)個体からの生物学的試料を提供すること、本開示の抗体を使用して該試料においてKIR3DL2発現細胞を検出すること、および
(ii)生物学的試料のKIR3DL2発現細胞が、所望により参照レベルと比較して増加したレベルであるとの決定に基づいて、個体に免疫療法剤を投与すること。
【0140】
特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。
【0141】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における癌の治療または予防のための方法を提供し、該方法は、以下を含む:
(i)個体からの生物学的試料を提供すること、本開示の抗体を使用して該試料においてKIR3DL2発現細胞を検出すること、および
(ii)生物学的試料KIR3DL2発現細胞が、所望により参照レベルと比較して増加したレベルであるとの決定に基づいて、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞)に結合し、KIR3DL2発現細胞に対する(例えば、ADCCを介して)細胞毒性を増強する、ラキュタマブなどの免疫療法剤を個体に投与すること。
【0142】
特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。
【0143】
いずれの態様においても、抗体を使用して試料中のKIR3DL2ポリペプチドを検出することは、個体からの生物学的試料を抗体と接触させる工程および抗体と生物学的試料との間の免疫学的反応から生じる免疫学的複合体の形成を検出する工程を含むことができる。特定の実施形態において、生物学的試料は組織試料である。さらなる実施形態において、生物学的試料は固定組織試料である。好ましい実施形態において、生物学的試料は、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋組織試料である。
【0144】
KIR3DL2に結合する薬剤(例えば、腫瘍細胞の表面のKIR3DL2)は、KIR3DL2に結合する、枯渇性抗KIR3DL2抗体(例えば、所望により毒素などの細胞傷害性薬剤と融合されるKIR3DL2結合抗体または抗体断片)、KIR3DL2結合抗体断片を含むキメラ抗原受容体(例えばCAR-T細胞受容体)、表面にキメラ抗原受容体を発現するエフェクター細胞(例えば、NK細胞またはT細胞))、Fcドメインに融合されたポリペプチド、イムノアドヘシンなどであってもよい。抗体剤(治療用抗体)の例は、PCT公開WO2014/044686に開示されている。
【0145】
所望により、抗体は、100ng/ml未満、所望により1~100ng/ml、所望により1~50ng/ml、所望により25~75ng/ml、所望により約50ng/mlの、健康なボランティアからのPBMCによるHuT78腫瘍溶解に対する51Cr放出アッセイにおけるEC50を特徴とする。抗体は、所望により、本明細書に開示される抗KIR3DL2抗体のEC50に匹敵する、健康なボランティアからのPBMCによるHuT78腫瘍溶解に対する51Cr放出アッセイにおけるEC50によって特徴付けられる(例えば、配列番号3のVHおよび配列番号4のVLを有する抗体のEC50よりも低いかまたはその1対数もしくは0.5対数以内のEC50を有し、野生型または改変ヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含み、そしてADCCを媒介する)。
【0146】
一実施形態において、本開示に従って使用される治療用抗KIR3DL2抗体は、ラキュタマブの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む(WHODrugInformation,Vol.32,No.4,2018を参照のこと)。ラキュタマブは、配列番号26の重鎖可変領域のKabat重鎖CDR1、2および3と、配列番号27の軽鎖可変領域のKabat軽鎖CDR1、2および3を有するヒト化抗体である(以下の表8を参照のこと)。CDRは、適切な番号付けスキーム、例えばKabat番号付けによって決定できる。一実施形態において、ラキュタマブは、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むものとして特徴付けられることができる。
【表8】
【0147】
一実施形態において、ラキュタマブは、配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むものとして特徴付けられることができる(以下の表9を参照のこと)。
【表9】
【0148】
一実施形態において、抗KIR3DL2治療抗体は、PCT公開公報WO2014/044681またはWO2014/044686に開示される抗体11E1、8C7、3C12および/または6E1の重鎖および軽鎖CDRを含む。
【0149】
また、本開示による抗体またはその抗体断片を含む、例えば癌の診断キットまたは予後キットも提供される。 所望により、キットは、本発明の抗体またはその抗体断片、および本開示の前記抗体またはその抗体断片を特異的に認識する標識二次抗体を含む。所望により、キットは、診断または予後診断として使用するための本発明の抗体、および免疫療法剤を含む。一実施形態において、免疫療法剤は、KIR3DL2ポリペプチド(例えば、KIR3DL2発現細胞)に結合し、KIR3DL2発現細胞に対する細胞毒性を(例えば、ADCCを介して)増強する薬剤、例えばラキュタマブである。該キットは、生物学的試料と抗体との間の免疫学的反応から生じる免疫学的複合体を検出するための手段、特に前記標識抗体の検出を可能にする試薬をさらに含むことができる。
【0150】
本発明の方法は、一連の癌の研究、評価、診断、予後、および/またはモニタリングに有用であってもよい。
【0151】
かかる方法は、TCLを有する個体、TCLに罹患しやすい個体、またはTCLを経験した個体を検出し、治療への適合性を評価し、および/または治療するのに適している。一実施形態において、TCLは、進行性または進行したTCL(例えば、ステージIV、またはより一般的にはステージIIを超える)である。一実施形態において、個体は再発性または難治性の疾患を患っている。一実施形態において、個体は、疾患進行の予後不良(例えば、生存予後不良)、治療に対する反応の予後不良、または以前の治療法による以前の処置後に疾患が進行もしくは再発している。
【0152】
一実施形態において、TCLは悪性度の高いT細胞新生物である。 一実施形態において、TCLは侵襲性の非皮膚TCLである。別の実施形態において、TCLは進行性皮膚TCLであり、所望により原発性皮膚CD4+小/中T細胞リンパ腫または原発性CD8+小/中T細胞リンパ腫である。一実施形態において、TCLは皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である。一実施形態において、TCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)であり、所望により非皮膚PTCLである。PTCLおよびPTCL-NOSは、所望により、皮膚T細胞リンパ腫以外の疾患として特定されてもよい。
【0153】
皮膚 T 細胞リンパ腫(CTCL)(下の画像を参照のこと)は、皮膚への腫瘍性Tリンパ球の局在を特徴とするリンパ増殖性疾患の群である。総称して、CTCLは非ホジキンリンパ腫(NHL)の一種として分類される。世界保健機関-欧州がん研究治療機構(WHO-EORTC)によるCTCLの分類は、Willemze ら(2005) Blood 105:3768-3785 で報告されている。WHO-EORTCは、CTCLを緩徐な臨床行動を持つ患者と攻撃的なサブタイプを有する患者に分類している。3番目のカテゴリーは、T細胞リンパ腫ではない前駆血液腫瘍(CD4+/CD56+血皮腫瘍、芽球性ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫、またはB細胞由来の原発性皮膚腫瘍)のカテゴリーである。緩徐進行性の臨床症状を示す可能性のあるCTCLは、菌状息肉症(MF)およびその変異型、原発性皮膚CD30+リンパ増殖性疾患(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症など)、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(暫定)および原発性皮膚CD4+中小型多形性T細胞リンパ腫(暫定)を含む。攻撃的な臨床行動を示すCTCLは、セザリー症候群(SS)、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外NK/T細胞リンパ腫、鼻型、原発性皮膚末梢性T細胞リンパ腫、詳細不明、原発性皮膚侵襲性表皮向性CD8+T細胞リンパ腫(仮)、および皮膚ガンマ/デルタ陽性T細胞リンパ腫(暫定)を含む。本明細書に開示される方法は、これらの状態のそれぞれを処置するために使用することができる。
【0154】
最も一般的な CTLC は MF および SS である。 それらの機能は、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれるWillemze ら (2005) Blood 105:3768-3785においてレビューされる。MFのほとんどの場合、診断はその臨床的特徴、病歴、組織形態学的および細胞形態学的所見によって下される。CTCLと炎症性皮膚疾患を区別するための追加の診断基準は、分子アッセイ(サザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)による皮膚生検標本中の優勢なT細胞クローンの証明である。遺伝子検査も考慮されてもよい。古典的な菌状息肉症は3つの段階に分けられる:(1)斑点(萎縮性または非萎縮性):非特異的皮膚炎、胴体下部および臀部の斑点;かゆみは最小限/全くない;(2)プラーク:重度のかゆみを伴うプラーク、リンパ節腫脹、および(3)腫瘍:潰瘍化しやすい。セザリー症候群は、紅皮症および白血病によって定義される。徴候および症状は、浮腫性皮膚、リンパ節腫脹、手掌および/または足底の角化症、脱毛症、爪ジストロフィー、外反症および肝脾腫を含む。セザリー症候群の診断の基準は通常、分子遺伝学的または細胞遺伝学的な方法によって示されるセザリー細胞の絶対数、免疫表現型の異常、末梢血中の T 細胞抗原および/または T 細胞クローンの喪失を含む。
【0155】
CTCLステージは、TNM分類によるI、II、III、IVを含み、必要に応じて末梢血の関与も含む。末梢血菌状息肉症またはセザリー症候群(MF/SS)細胞の関与は、より進行した皮膚病期、リンパ節および内臓の関与、および生存期間の短縮と相関している。MFおよびSSは、国際皮膚リンパ腫学会(ISCL)および欧州がん研究治療機構(EORTC)によって提案された正式な病期分類システムを有する。その開示内容は参照により本明細書に組み込まれるOlsen ら, (2007) Blood. 110(6):1713-1722; および Agar ら (2010) J. Clin. Oncol. 28(31):4730-4739を参照のこと。
【0156】
一実施形態において、TCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)であり、所望により非皮膚PTCLである。PTCLおよびPTCL-NOSは、別個の病態と考えられる皮膚T細胞リンパ腫、セザリー症候群および菌状息肉症以外の疾患であると所望により特定されてもよい。一実施形態において、PTCLは、結節性(例えば、主に、または主に結節性)PTCLである。主に結節性PTCLは、とりわけ、PTCL-NOS(末梢性T細胞リンパ腫、特に指定なし)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、および血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)を含み、たとえば、PTCLは侵襲性が高く、皮膚以外の、主に結節性のPCTLであってもよい(この疾患はさらに、節外の症状を呈してもよい)。
【0157】
一実施形態において、PTCLは節外(例えば、主に節外)PTCLである。例えば、PTCLは、侵襲性の非皮膚の節外PCTLであってもよい。
【0158】
一実施形態において、PTCLは成人T細胞白血病またはリンパ腫(ATL)、例えばHTLV+ATLである。
【0159】
一実施形態において、PTCLは、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型である。 一実施形態において、PTCLは腸疾患関連T細胞リンパ腫である。
【0160】
一実施形態において、PTCLは、肝脾T細胞リンパ腫、所望により肝脾αβT細胞リンパ腫、場合により肝脾γδT細胞リンパ腫である。
【0161】
一実施形態において、PTCLは、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、所望によりALK+ALCL、所望によりALK-ALCLである。ALK+ALCLは通常、従来の治療法を使用すると予後が良好である(5年生存率93%)が、ALK-ALCLの予後は不良である(37%)。一実施形態において、PTCLは、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、所望により皮膚AITL、所望により原発性皮膚CD4+小/中型T細胞リンパ腫または原発性CD8+小/中型T細胞リンパ腫、所望により非皮膚AITLである。
【0162】
一実施形態において、PTCLは腸リンパ腫、例えば 腸ALCLである。
【0163】
一実施形態において、PTCLはT細胞前リンパ球性白血病である。
【0164】
一実施形態において、PTCLはPTCLーNOS(末梢性T細胞リンパ腫、特に特定されない)である。PTCL-NOS(PCTL-UまたはPTCL-unspecifiedとも呼ばれる)は悪性度の高いリンパ腫であり、主にリンパ節型であるが、節外への転移が一般的である。リンパ節症例の大部分はCD4+およびCD8-である。PTCL-NOS患者のほとんどは、リンパ節転移を示す;しかしながら、多くの節外部位(肝臓、骨髄、胃腸、皮膚など)も関与してもよい。研究では一般に、標準的な化学療法を使用した場合の5年全生存率は約30%~35%であると報告されている。過去には、レナートリンパ腫、Tゾーンリンパ腫、多形性T細胞リンパ腫およびT免疫芽球性リンパ腫など、認識可能なT細胞新生物のサブタイプに対応する明確な実体が多数報告されているが、これらが特有の臨床病理学的実体に対応するという証拠はまだ不足している。このため、最近の世界保健機関(WHO)の造血系腫瘍およびリンパ系腫瘍の分類では、これらをPTCL-NOS/Uという単一の広いカテゴリーにまとめている。したがって、PTCL-NOSは、T細胞前リンパ球性白血病、ATL/成人T細胞白血病、節外性NK/T細胞白血病、鼻型、EATL/腸疾患型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、ALCL/未分化大細胞リンパ腫、および/またはAITL/血管免疫芽球性T細胞リンパ腫などの特定の特有の臨床病理学的実体を除外するように特定されてもよい。
【0165】
PTCLの診断基準は、例えば、世界保健機関(WHO)分類システムに従った標準的な医療ガイドラインのものであり得る(例えば、World Health Organization. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed. Lyon, France: IARC Press, 2008を参照のこと)。 例えば、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれるFoss ら (2011) Blood 117:6756-6767も参照のこと。
【0166】
一実施形態において、TCLは、その表面で有意なおよび/または検出可能なKIR3DL2ポリペプチドを発現する腫瘍または腫瘍細胞を特徴とする。有利には、KIR3DL2発現は、本開示による方法によって決定される。
【0167】
また、本開示の抗体または抗体断片をコードする核酸も提供される。 一実施形態において、核酸は、本開示の抗体または抗体断片をコードする配列を含む単離および/または組換え(例えば、本質的に純粋な核酸を含む)核酸である。
【0168】
本開示の抗体断片を産生するハイブリドーマまたは組換え宿主細胞が提供される。 したがって、本開示のハイブリドーマまたは組換え宿主細胞は、本開示の抗体または抗体断片をコードする核酸を含むことができる。
【0169】
実施例
実施例1:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料におけるKIR3DL2免疫組織化学(IHC)染色用のモノクローナル抗体の生成
ウサギの予防接種
抗 KIR3DL2 抗体を生成するためのウサギの免疫化を、4つの異なる戦略を使用して実行した:
(1)天然組換えKIR3DL2タンパク質による2匹のウサギ(ウサギ#121および122)の免疫化
(2)第1のIHC様プロトコール(IHC-A)に従って処理されたKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインによる2匹のウサギ(ウサギ#278および372)の免疫化
(3)第2のIHC様プロトコール(IHC-B)に従って処置されるKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインによる2匹のウサギ(ウサギ#373および374)の免疫化
(4)3つのペプチド(ペプチド1:CEHFFLHREGISEDPSRLVG(配列番号23)、ペプチド3:CTPLTDTSVYTELPNAEPRS(配列番号24)およびペプチド4:CPRAPQSGLEGVF(配列番号25))を、IHCPeptideProfiler(登録商標)技術(BiotemCorp.,France)を用いて設計した。ペプチド1はKIR3DL2受容体の細胞外ドメインに由来するエピトープであるのに対し、ペプチド3および4はKIR3DL2受容体の細胞内ドメインに由来するエピトープである。
【0170】
かかるペプチドを生成し、キャリアタンパク質(免疫原ペプチドはKLHに、スクリーニングペプチドはBSAにおよび/または遊離)に結合させた。
【0171】
1、21、35日目にウサギに抗原を注射(皮下経路)した。45日目に採血を行った。血清をタンパク質およびペプチドのELISA、およびFFPE組織マイクロアレイでのIHCによってスクリーニングした。
【0172】
ウサギ121および122は同様のプロファイルを示すが、到達した力価によれば、ウサギ121がライブラリー構築のより良い候補であるようである。IHCにおいて、KIR3DL2に対する明確な特異性はないが、良好な反応性が観察される。ウサギ278および372は同様のプロファイルを示すが、到達した力価によれば、ウサギ278がライブラリー構築のより良い候補であるようである。IHCにおいて、KIR3DL2に対する明確な特異性はないが、良好な反応性が観察される。ウサギ373および374は同様のプロファイルを示すが、到達した力価によれば、ウサギ374がライブラリー構築のより良い候補であるようである。IHCにおいて、KIR3DL2に対する明確な特異性はないが、良好な反応性が観察されます。ウサギ375および376は同様のプロファイルを示すが、到達した力価によれば、ウサギ376がライブラリー構築のより良い候補であるようである。IHCにおいて、KIR3DL2に対して良好な反応性/特異性が観察される。
【0173】
まとめると、これらのデータは、ペプチドのプールで免疫化された1匹の動物(ウサギ#376)と、IHCのような手順Bで処置されたKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインで免疫化された1匹の動物(ウサギ#374)の選択につながり、これらはELISAおよびより強力なIHC染色により強いAb力価を示した。ペプチドのプールによる免疫後に得られた血清が、KIR3DL2トランスフェクトCHO細胞で染色を示し、トランスフェクトされていないCHO細胞では染色を示さなかった場合、IHCに似た手順Bで処置したKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインで免疫した後に得られた血清は、KIR3DL2およびKIR3DL1でトランスフェクトされた細胞の両方を染色した。KIR3DL1 に対する潜在的な交差反応性のため、後者を第 2 選択肢として選択した。
【0174】
scFVライブラリーの構築
選択したウサギに対して脾臓摘出術を実施した。脾臓を、分子生物学研究室でRNA抽出のために処置した。次いで、総RNAを定量した。γ鎖およびκ/λ軽鎖の可変ドメインをコードするRNAを、それぞれ特異的なプライマーセットを用いて逆増幅した。増幅の品質を、1%TBE/0.8%アガロースゲルを使用した電気泳動によって制御した。SmartLadderSFMW-1800-04(Eurogentec)を電気泳動中のリファレンスとして使用した。増幅のVHおよびVLPCR産物を別々にプールし、バックアップベクターにクローン化して、2つの異なるサブライブラリー(重鎖用と軽鎖用)を生成した。ライブラリー構築の最初の工程は、ファージミドベクターにVL断片をクローニングすることで構成され、次いでVH断片をVLレパートリーを含むベクターに挿入した。ベクトル形式VH/VL-6His(HHHHHH)-FLAG(DYKDDDDK)を、構築用に選択している。
【0175】
IHCのような手順Bで処置したKIR3DL2タンパク質で免疫したウサギから構築された最終的なscFvライブラリーは、フルサイズ挿入率87%(コロニーPCRによる)の2.4×108個の独立したクローンで構成され、そして最終的にはM13K07ファージにパッケージ化された。3つのペプチドのプールで免疫化されたウサギから構築された最終的なscFvライブラリーは、フルサイズ挿入率94%(コロニーPCRによる)の1.7×108個の独立したクローンで構成され、そして最終的にはM13K07ファージにパッケージ化された。反応性クローンの選択および候補の配列分析の後、24個のクローンを可溶性scFVとして大腸菌内で生成し、精製した。これらの候補のうち、16個をIHC様手順Bで処理したKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインによるウサギの免疫化から得(ウサギ#374)、8個をペプチドのプールによるウサギの免疫化から得た(ウサギ #376)。
【0176】
これらの候補について、scFVの反応性をELISAによって評価した。IHC様手順Bで処置したKIR3DL2タンパク質の組換え細胞外ドメインによるウサギの免疫化から回収した16scFvの3つのペプチド1、3、および4に対しては、KIR3DL2タンパク質に対して強い反応性が観察されたが、強い反応性は観察されなかった。ペプチドのプールによるウサギの免疫化から回収された8つのscFvのうち、2つの抗ペプチド1scFv(P1-R7A-C11およびP1-R7A-G1)は、BSAに結合または遊離した標的ペプチド1に対して高い反応性を示した。KIR3DL2の細胞外ドメインに対しても反応性が観察された。6つの抗ペプチド3scFvは、ペプチド3に対して反応性を示し(遊離のものと比較してBSAに結合したペプチドの方が強い)、BSAに対しては反応性は観察されなかった。ELISAによって評価した、遊離またはBSAに結合したペプチド3に対するクローンP3-R4D-H5の反応性を
図1に示す。クローンP3-R4D-H5は、BSAと結合したペプチド3に対して、ペプチド3を含まないものよりも強い反応性を有するようである。
【0177】
次いで、KIR3DL2およびKIR3DL1をトランスフェクトしたCHO細胞を使用して、これら24個の候補の反応性をIHCによって評価した。IHC様手順Bで処置したKIR3DL2タンパク質による免疫化から同定された16個のクローン(ウサギ#374)は、KIR3DL2およびKIR3DL1トランスフェクトCHO細胞の両方で強いシグナルを示した。
【0178】
ペプチドのプール(ウサギ#376)によるウサギの免疫化から選択された8つの候補のうち、2つはペプチド1に特異的であった(P1-R7A-G1およびP1-R7A-C11)、6つはペプチド3に特異的であった(P3-R4D-F4、P3-R4D-C1、P3-R4D-H5、P3-R4D-C10、P3-R4D-B5、およびP3-R4D-B9)。両方の抗ペプチド1クローンは、KIR3DL2トランスフェクト細胞では強い染色を示し、KIR3DL1トランスフェクト細胞ではより低いシグナルを示した。ELISAデータによれば、クローンP1-R7A-C11がクローンP1-R7A-G1よりも優れた候補であると考えられ、前者の候補が選択された。
図2に示すように、すべての抗ペプチド3候補は、KIR3DL2トランスフェクト細胞に対して強い反応性を示し、KIR3DL1トランスフェクト細胞に対してはより低い反応性を示した。KIR3DL2トランスフェクト細胞とKIR3DL1トランスフェクト細胞の最も強い示差染色がクローンP3-R4D-H5で得られ、KIR3DL2ポリペプチドに対するその特異性が実証された。クローンP3-R4D-C10、P3-R4D-B5、およびP3-R4D-B9でも示差的染色が得られた。KIR3DL2トランスフェクト細胞およびKIR3DL1トランスフェクト細胞で最も強い差異染色が得られたため、次のクローンを選択した:P3-R4D-H5、P3-R4D-C10、P3-R4D-B5、およびP3-R4D-B9。
【0179】
結論として、ELISAおよびIHCデータに基づいて、P1-R7A-C11、P3-R4D-H5、P3-R4D-C10、P3-R4D-B5、およびP3-R4D-B9が選択され、ウサギIgG形式で生成された。
【0180】
再フォーマットおよび IgG 産生
選択した scFvを、完全ウサギIgG抗体:P1-R7A-C11(ウサギIgG/K)、P3-R4D-H5(ウサギIgG/λ)、P3-R4D-C10(ウサギIgG/λ)、P3-R4D-B5(ウサギIgG/λ)およびP3-R4D-B9(ウサギIgG/λ)において再フォーマットした。重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)をコードする配列(以下の表に示す)を哺乳動物細胞での発現用に最適化し、合成した。対応する合成遺伝子を、IgG重鎖およびラムダまたはカッパ軽鎖のウサギ定常領域を含むベクターシステムにおいてクローン化した。配列決定によって検証された後、低エンドトキシンプラスミドDNAを調製するためにベクターを増幅させた。
【表10】
【0181】
一過性トランスフェクションを、チャイニーズハムスター卵巣細胞を使用してBiotemで実施した。培養最終日(精製前)に上清を回収し、ForteBioプロテインAバイオセンサーを使用して抗体力価を測定した。上清を、最終的にプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0182】
FFPE 試料のIHCのための抗KIR3DL2抗体候補の選択
IHC テストを、VentanaBenchmarkUltra自動スライド染色装置で実行した。この染色装置は病理学者によって広く使用されており、コンパニオン診断の開発と互換性がある。
【0183】
まず、ウサギIgG形式で選択したクローンP1-R7A-C11、P3-R4D-H5、P3-R4D-C10、P3-R4D-B5、およびP3-R4D-B9をテストして、組織マイクロアレイ形式でFFPE細胞ペレットと正常皮膚に対する特異性を評価した。2つのクローン(P3-R4D-H5およびP1-R7A-C11)を、IHC評価後にKIR3DL2に対するより特異的なAbとして選択され、追加のテストのために保管した。これら2つのクローンを、正常皮膚およびFFPEヒト組織(2つのリンパ節、結腸、肝臓およびCTCL)も含む組織マイクロアレイ形式のFFPE細胞ペレット上でいくつかの濃度(10、7.5、5、および2.5μg/mL)でテストした。クローンP1-R7A-C11と比較して、クローンP3-R4D-H5は、KIR3DL2陰性細胞およびFFPE組織での非特異的染色が低かった。また、CHO-mb-HuKIR3DL1またはCHO細胞で得られたものと比較して、内因性KIR3DL2発現を有するHuT78細胞でより強い膜染色強度が得られた。クローンP3-R4D-H5は、FFPE試料で最良の結果をもたらした。
【0184】
実施例2:細胞ペレットのIHC染色におけるKIR3DL2特異的抗体の使用。
クローン P3-R4D-H5によるFFPE細胞ペレット上のKIR3DL2染色
CHO-mb-HuKIR3DL2細胞およびHuT78ATCCTIB-161細胞はKIR3DL2を過剰発現するため、これらの細胞での試験を実施した。7日間の培養(3継代)後、CHO(KIR3DL2陰性細胞)をCHO-mb-HuKIR3DL2細胞と混合して、異なる比率でKIR3DL2陰性細胞および陽性細胞の8つの混合物を生成した。17日間の培養(7継代)後、Raji細胞およびHuT細胞を段階希釈によって混合し、異なる比率でKIR3DL2陰性細胞および陽性細胞の8つの混合物を生成した。FFPE細胞ペレットを、ペレットあたり2,000万個の細胞で調製した。細胞株をホルマリン中で1時間固定した。次いで、細胞を1XPBSで洗浄し、融解したヒストゲルに再懸濁した。+5±3℃でヒストゲルが固化した後、細胞ペレットを標準カセットに置き、組織プロセッサーで脱水した。次に、細胞ペレットをパラフィンに包埋した。パラフィン固化後、FFPE細胞ペレットブロックを室温(RT)で保管した。切片を72℃で30分間脱脂し、エピトープ回復ステップをエピトープ回復バッファーを用いて+100℃で20分間実施した。切片を一次抗体(クローンP3-R4D-H5またはアイソタイプ対照)とともに20分間インキュベートした。次いで、切片をすすぎ、ポスト一次抗体(ウサギ抗マウス)とともに8分間インキュベートし、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ポリマー(抗ウサギHRP)とともに8分間インキュベートした。染色の確認を、3,3'-ジアミノベンジジン (DAB) を使用して 10 分間実行した。
【0185】
IHC 染色を、5μg/mLの抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5を使用して、8CHO/CHO-mb-HuKIR3DL2混合FFPE細胞ペレットの5セクション/ブロックと1セクション/ブロックでLEICABONDRXを使用して実行した。同じ濃度のIC(アイソタイプ対照)を使用して、同じFFPE細胞ペレットを分析する。
図3に示すように、非常に少数のKIR3DL2+細胞(フローサイトメトリーで決定される2.75%まで)の存在が検出可能であった。予想通り、抗KIR3DL2抗体クローンP3-R4D-H5で染色された細胞の数は、ペレット中のKIR3DL2トランスフェクト細胞の割合とともに増加した。 アイソタイプ対照では染色は観察されなかった。
【0186】
さらに、8個のRaji(ヒトKIR3DL2陰性細胞)/HuT(HuT78、ATCC参照TIB-161、ヒトKIR3DL2陽性細胞)混合FFPE細胞ペレットの5セクション/ブロックで、抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5は、同じ濃度のアイソタイプ対照を使用し、同じペレットの1セクション/ブロック上で5μg/mLで作成した。
図4に示すように、ここでも、非常に少数のKIR3DL2+細胞(フローサイトメトリーにより測定された2.42%)の存在が検出可能であった。予想通り、抗KIR3DL2抗体クローンP3-R4D-H5で染色された細胞の数は、ペレット中のHuT細胞の割合とともに増加した。アイソタイプ対照では染色は見られなかった。まとめると、トランスフェクト細胞(CHO-mb-HuKIR3DL2)と内因性発現細胞(HuT)のいずれかを含む混合ペレットに関するこれらのデータは、クローンP3-R4D-H5がFFPE試料上のIHCに対する特異的な抗KIR3DL2抗体であることを示唆している。この抗体により、内因性KIR3DL2発現のある細胞とKIR3DL2発現のない細胞を、予想されるパーセンテージ値で、また陽性細胞が非常に低い頻度で存在する場合でも識別することができる。
【0187】
クローンP3-R4D-H5と12B11KIR3DL2染色の比較
上述の同じタイプの実験を、最もよく知られた組織染色抗KIR3DL2抗体であるクローン12B11を用いて、混合凍結ペレットおよびFFPE細胞ペレットに対して実施した。FFPE細胞ペレットの調製は上記と同じであった。異なるアンマスキングおよび増幅条件を実行した(例えば、緩衝液、緩衝液のpH、チラミド-ビオチンの添加)。凍結試料の場合、切片を再水和し、0.3%H2O2で10分間インキュベートし、PBS1Xスクイーズボトルで3回洗浄し、タンパク質ブロックとともに30分間インキュベートした。次いで、タンパク質ブロックを除去し、切片を一次抗体(抗KIR3DL212B11抗体またはマウスIgG1アイソタイプコントロール)とともに室温で1時間インキュベートした。切片をPBS1X中で5分間3回リンスし、次いでHRP結合二次Abとともに室温で30分間インキュベートした(DakoのEnVisionキット)。次いで、切片をPBS1X中で5分間3回洗浄した。最後に、DABを5分間使用して染色を確認した。LEICABONDRXを使用した凍結試料のIHC染色では、プロトコルは、脱蝋およびエピトープ回復ステップを行わないFFPE試料に使用したプロトコルと同じであった。
【0188】
クローンP3-R4D-H5により、FFPEペレット切片上で内因性KIR3DL2発現細胞株(HuT細胞)の染色が可能になった。クローン12B11(KIR3DL2組織染色用の参照抗体)は、プロトコルの最適化後、凍結試料中のHuT細胞株を染色することができた。しかしながら、デジタルパソロジーによるさらなる分析により、クローン12B11で染色した凍結試料では染色の精度が低く、FFPE細胞ペレット試料で観察された染色と比較して染色の品質が劣ることが示された。結論として、FFPEおよび凍結試料のIHC用の抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5および12B11は、それぞれKIR3DL2特異的抗体であり、少数のKIR3DL2発現細胞の検出を可能にする。しかしながら、FFPE試料の染色の品質は、凍結試料の染色の品質よりも優れている。
【0189】
図5A、BおよびCに示すように、いくつかの条件下でクローン12B11Ab(凍結試料上のKIR3DL2組織染色のための参照抗体)を用いたIHCは、KIR3DL2陽性細胞を含むFFPE細胞ペレット上でKIR3DL2の発現を可能にしない。 したがって、クローン 12B11 は、FFPE 試料の KIR3DL2 IHC 染色には使用できない。
【0190】
IHCにおけるKIR3DL2とKIR3DL1に対するクローンP3-R4D-H5の特異性
上記と同じ種類の実験(クローンP3-R4D-H5を使用したFFPE細胞ペレットのR3DL2染色を参照)を、ヒトKIR3DL2およびKIR3DL1陰性細胞;ヒトKIR3DL1陽性かつKIR3DL2陰性細胞であるCHO-mb-HuKIR3DL1細胞(CHO-KIR3DL1);およびヒトKIR3DL2陽性かつKIR3DL1陰性細胞であるCHO-mb-HuKIR3DL2細胞(CHO-KIR3DL2)であるCHO細胞(CHO)からなるFFPE細胞ペレットに対して実行した。いくつかの濃度の抗KIR3DL2抗体クローンP3-R4D-H5を使用してIHC染色を行った後、FFPE切片の光学密度をHistoQuantifによって測定した。
図6に示すように、抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5はKIR3DL2発現細胞に結合するが、KIR3DL1発現細胞には実質的な結合は観察されなかった。したがって、クローンP3-R4D-H5は、FFPE試料中のKIR3DL2ポリペプチドに特異的である。
【0191】
実施例3:生検から調製される細胞ペレットのIHC染色におけるKIR3DL2特異的抗体の使用
CTCL個々の生検の染色
クローンP3-R4D-H5および12B11をそれぞれFFPEおよび対応する凍結CTCL生検の染色に使用した。FFPEおよび菌状菌症またはセザリー症候群を患っている個人の生検の凍結切片の染色評価を、スキャンされたスライド上で病理学者によって行った。各FFPEブロックについて、厚さ3μmの切片を調製し、スーパーフロストガラススライド上に置き、換気オーブン内で+45+/-3°Cで少なくとも1時間乾燥させた。FFPEおよび凍結切片上のKIR3DL2染色の代表的な画像を
図7に示す。単核細胞中のKIR3DL2+細胞の割合を、病理学者によって半定量的な方法で推定した。単核細胞中のKIR3DL2+細胞の割合を、抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5で染色したFFPECTCL試料と、抗KIR3DL2クローン12B11で染色した対応する凍結試料について病理学者によって推定した。
【0192】
対応するCTCL生検でクローン12B11とクローンP3-R4D-H5で推定されたKIR3DL2+細胞の割合を比較することにより、通常、クローンP3-R4D-H5の方が染色された細胞の割合が高いことが観察された。これは、凍結試料の染色評価がより困難であり、これらの生検では凍結試料の品質が低いという精度が低かったという事実を反映している(凍結試料はFFPE試料と比較して温度変化に敏感である)。
【0193】
さらに、上記の方法による抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5を用いた菌状息肉腫腫瘍試料(CTCL)のさらなるIHC染色を
図9A、9B、9Cおよび9Dに示す。
図9Aおよび9Cは、KIR3DL2の高発現(強いシグナル)を有する腫瘍試料を示し、一方、
図9Bは、弱い陽性の腫瘍試料を示す。
図9Dは、強いKIR3DL2陽性領域およびほぼKIR3DL2陰性領域を包含する再発性菌状息肉腫腫瘍試料を示す。
【0194】
PTCL個々の生検の染色
クローンP3-R4D-H5および12B11を使用して、FFPEを染色し、それぞれ凍結PTCL生検と一致させた。FFPEおよびPTCLを患っている個人の生検の凍結切片の染色評価を、スキャンされたスライド上で病理学者によって行った。FFPEおよび凍結切片上のKIR3DL2染色の代表的な画像を
図8に示す。単核細胞中のKIR3DL2+細胞の割合を、抗KIR3DL2クローン12B11で染色した凍結PTCL試料と、抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5またはアイソタイプコントロールで染色した対応するFFPE試料について、病理学者によって推定した。
【0195】
結果は、クローン12B11およびクローンP3-R4D-H5が、それぞれ凍結試料およびFFPEPTCL試料上のKIR3DL2+細胞の染色を可能にすることを示す。
【0196】
さらに、上記の方法による抗KIR3DL2クローンP3-R4D-H5を用いたPTCL腫瘍試料のさらなるIHC染色を
図10A、10B、10Cおよび10Dに示す。
図10Aは、高度にKIR3DL2陽性のPTCL-NOS腫瘍試料を示し、一方、
図10Cおよび10Dは、中等度のKIR3DL2陽性を有するPTCL-NOS腫瘍試料を示す(
図10Dの試料内には局所的なばらつきがある。
図10Bは、かすかな間質細胞KIR3DL2陽性を背景に、KIR3DL2陽性腫瘍細胞が散在しているPTCLーNOS腫瘍試料を示す。
【0197】
本明細書で引用される出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、本明細書の他の場所で作成された特定の文書の組み込みを個別に提供するかどうかに関係なく、あたかも各参考文献が参照により組み込まれることが個別かつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されるのと同じ程度に(法律で認められる最大限の範囲で)参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0198】
特に明記しない限り、本明細書で提供されるすべての正確な値は、対応する近似値を表すものである(例えば、特定の因子または測定値に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、必要に応じて「約」で修飾された、対応する近似測定値も提供すると考えることができる)。「約」が数値に関連して使用される場合、これは、指定された数値の+/-10%に対応する値を含むものとして特定できる。
【0199】
1つまたは複数の要素を参照して「含む」、「有する」、「含む」、または「含有する」などの用語を使用する本明細書における本発明の任意の態様または実施形態の説明は、特に明記されていない限り、または文脈と明らかに矛盾している場合を除き、その特定の要素から「からなる」、「本質的にからなる」、または「実質的に含む」本発明の同様の態様または実施形態に対する支持を提供することを目的としている(例えば、特定の元素を含むとして本明細書に記載される組成物は、別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、その元素からなる組成物も記載すると理解されるべきである)。
【0200】
本明細書で提供されるあらゆる例、または例示的な表現(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを目的としており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【配列表】
【国際調査報告】