(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】熱除去管群、反応温度の制御方法、および不飽和ニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/24 20060101AFI20240319BHJP
C07C 255/08 20060101ALI20240319BHJP
C07C 253/26 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B01J8/24
C07C255/08
C07C253/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561320
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 CN2022085770
(87)【国際公開番号】W WO2022214069
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110384148.X
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210111952.5
(32)【優先日】2022-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】趙楽
(72)【発明者】
【氏名】呉糧華
【テーマコード(参考)】
4G070
4H006
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB32
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070CC01
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC54
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BD81
4H006BE14
4H006BE30
4H006QN24
(57)【要約】
本発明は、熱除去管セット、該熱除去管セットを用いた反応温度の制御方法、および不飽和ニトリルの製造方法に関する。熱除去管セットは、少なくとも1つの第1熱除去管と少なくとも1つの第2熱除去管とを備え、第1熱除去管の全ての直管aの数は第2熱除去管の全ての直管bの数と同じであり、断面上の第1熱除去管の全ての直管aの外輪郭の総外周Laに対する、断面上の第2熱除去管の全ての直管bの外輪郭の総外周Lbの比率は1.25~2である。本出願によれば、第1熱除去管と第2熱除去管とを一対に連動して切り替える際に、反応温度の微調整を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱除去管セット(特に熱除去水管セット)であって、
流動床反応器の熱除去部に配置されるように構成され、
前記熱除去部は前記流動床反応器の流動床層に配置されており、
前記熱除去管セットは、
前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn1個(2<n1<30、好ましくは2<n1<20、より好ましくは2<n1<10)の直管aと、2つの隣り合う直管aを直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn1-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第1熱除去管と、
前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn2個(2<n2<30、好ましくは2<n2<20、より好ましくは2<n2<10)の直管bと、2つの隣り合う直管bを直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn2-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第2熱除去管と、
を含み、
断面は、前記熱除去部の任意の位置において(前記流動床反応器の前記中心軸の向きにおける前記熱除去部の長さをL(m単位)としたとき、好ましくは前記熱除去部の長さLの全域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の中心点より49%L上から49%L下までの領域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の前記中心点より45%L上から38%L下までの領域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の前記中心点より40%L上から8%L下までの領域内において)、前記流動床反応器の前記中心軸に垂直な方向に沿って横に切断することによって得られ、
前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)の全ての前記直管aの数は、前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)の全ての前記直管bの数と同じであり、且つ前記断面上の前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)の全ての前記直管aの外輪郭の総外周Laに対する、前記断面上の前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)の全ての前記直管bの外輪郭の総外周Lbの比率は、1.25~2(好ましくは1.3~2または1.5~2)である、
ことを特徴とする熱除去管セット(特に熱除去水管セット)。
【請求項2】
|n1-n2|<5(好ましくは|n1-n2|<3)が満たされることを特徴とする、請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項3】
前記第1熱除去管の前記全ての直管aの50%超(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)が、前記流動床反応器の前記熱除去部の断面の中心部内にあり、前記第2熱除去管の前記全ての直管bの50%未満(好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下)が、前記断面の前記中心部内にあり、および/または、
前記断面の半径をR(m単位)としたとき、前記中心部は、前記断面の中心までの3/4R(好ましくは2/3R、より好ましくは1/2R、さらにより好ましくは1/3R)の領域である、
請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項4】
前記直管bの外径(mm単位)に対する前記直管aの外径(mm単位)の比率が1~1.8、好ましくは1~1.5であり;あるいは、
前記直管aの外径(mm単位)に対する前記直管bの外径(mm単位)の比率が1~1.8、好ましくは1~1.5である、
請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項5】
複数個の前記直管aの外径が、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の前記直管aの長さが、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管aの間の距離が100~700mm、好ましくは150~500mmであり、および/または
複数個の前記直管bの外径が、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の前記直管bの長さが、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管bの間の距離が100~700mm、好ましくは150~500mmであり、および/または
1つの第1熱除去管の外輪郭の総外周が、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mであり、および/または
1つの第2熱除去管の外輪郭の総外周が、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mである
ことを特徴とする、請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項6】
前記熱除去部の前記長さLが、4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mであり、および/または
半径Rが、5~29m、好ましくは7~20mであり、および/または
前記第1熱除去管の数が、1~4個または1個であり、および/または
前記第2熱除去管の数が、1~4個または1個であり、および/または
前記熱除去管セットが、少なくとも1対(好ましくは1~20対、より好ましくは2~10対または2~5対)の熱除去管を含み、前記熱除去管の各対が、前記少なくとも1つの第1熱除去管および前記少なくとも1つの第2熱除去管から構成される、
請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項7】
前記流動床反応器の同一の運転条件下において、前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)による前記流動床反応器の反応温度の調節の大きさと、前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、それらは共に組み合わせられる)による前記流動床反応器の反応温度の調節の大きさとの差(絶対値)は、0.5~3℃(好ましくは1~2℃)であり、および/または
複数の第1熱除去管がある場合、前記第1熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水入口は、前記熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第1熱除去管がある場合、前記第1熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水出口は、前記熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第2熱除去管がある場合、前記第2熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水入口は、前記熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第2熱除去管がある場合、前記第2熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水出口は、前記熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合される、
請求項1に記載の熱除去管セット。
【請求項8】
ヘッド、希釈相区域、熱除去部、予備反応部およびコーン部を、頂部から底部に順に備え、
請求項1に記載の熱除去管セットが、前記熱除去部に配置されていることを特徴とする、流動床反応器。
【請求項9】
請求項8に記載の流動床反応器の温度を制御する方法であって、
反応プロセス中に、前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)を前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)に切り替えて、前記流動床反応器の反応温度を0.5~3℃(好ましくは1~2℃)まで上昇または低下させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項11】
流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含み、
前記流動床反応器の温度が、請求項9に記載の温度を制御する方法に従って制御される、不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項12】
プロピレン/アンモニア/大気(分子酸素として計算される)のモル比が1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、
反応温度が420~440℃であり、
反応圧力(ゲージ圧)が0.03~0.14MPaであり、および
触媒の1時間当たりの重量空間速度が0.04~0.15h
-1である、
請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本出願は、流動床反応器における使用に特に適した熱除去管セットに関する。本出願はさらに、反応温度を制御するための方法、および熱除去管セットを使用して不飽和ニトリルを製造するための方法に関する。
【0002】
(背景技術)
アクリロニトリルは、石油化学産業にとって重要な化学原料である。プロピレンアンモ酸化によるアクリロニトリルの一工程製造方法は、世界中の各国において一般的に採用されており、すなわち、流動床アンモ酸化触媒の作用下で、且つ一定の反応温度および圧力下で、プロピレンをアンモ酸化に供してアクリロニトリルを生成すると同時に、アセトニトリル、シアン化水素酸等の副生成物を生成し、CO、CO2等の完全酸化生成物も生成される。この反応は強い発熱性であり、大量の熱の生成を伴う。
【0003】
アクリロニトリル流動床反応器の典型的な内部は、プロピレン-アンモニア分配器、空気分配板、熱除去管(冷却コイルとしても知られる)およびサイクロンセパレータを含み、熱除去管とサイクロンセパレータのディップレッグとは、流動床の垂直部材として触媒床内に配置される。熱除去管は、反応系から発生する大量の反応熱を時間的に除去し、且つ反応温度を安定した状態に維持することができ、サイクロンセパレータは、上方に移動するガスによって運ばれた触媒を捕捉し、且つディップレッグを介して触媒床に触媒を戻して、触媒の損失を低減する。
【0004】
図1は、アクリロニトリル流動床反応器を示すが、その内部は主に、酸素含有ガス用分配板、プロピレン-アンモニア分配器、熱除去管およびサイクロンセパレータを含む。
図1に示す既存のアクリロニトリル反応器において、全熱除去管の85%以上が稼働しており、すなわち、これらの熱除去管には、反応温度に対して低温の熱除去媒体が充填されており、反応温度は、当該熱除去媒体との熱交換によって安定に維持されている。さらに、反応器の温度を微調整する目的は、典型的には、反応プロセス中に熱除去管を切り替えることによって達成される。
【0005】
(発明の開示)
本願発明者らは、流動床反応器において、反応温度を変化させるために、異なる熱除去量を有する熱除去管を切り替えることが必要であることを見出した。熱除去量の差が最小の異なる熱除去管の間で切り替えを行っても、反応温度の変動の振幅は3℃を超えており、反応温度の制御精度が低いという問題がある。放出される反応熱は、供給ガスの供給速度を上昇または低下させること、すなわち反応熱を増加または減少させることによって、作動中の熱除去管の熱除去能力と等しくなるように制御され得るが、供給ガスの供給速度の約±1%以上の変化が引き起こされ得て、その結果、装置の運転負荷の変化によって不安定要因が増大する;または蒸気ドラム圧力を調整することができるが、ドラム圧力の変動は、空気圧縮機、製氷機等の、蒸気タービンを必要とする機器の動作困難性を増大させる可能性がある。
【0006】
また、本願発明者らは、流動床反応器において、前記装置が全負荷運転時に、供給ガスの供給速度、反応温度、反応圧力、ドラム圧力等のパラメータは既知であり、流動床反応器内の熱除去管の熱除去能力を推定できることを見出した。したがって、異なる熱除去管の熱除去量の差の微調整は、異なる熱除去管の熱伝達面積の差を慎重に調整することによって達成することができる。本出願は、この知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
具体的には、本出願は、以下の態様の技術的解決策に関する:
1.熱除去管セット(特に熱除去水管セット)であって、
流動床反応器の熱除去部に配置されるように構成され、
前記熱除去部は前記流動床反応器の流動床層に配置されており、
前記熱除去管セットは、
前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn1個(2<n1<30、好ましくは2<n1<20、より好ましくは2<n1<10)の直管aと、2つの隣り合う直管aを直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn1-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第1熱除去管と、
前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn2個(2<n2<30、好ましくは2<n2<20、より好ましくは2<n2<10)の直管bと、2つの隣り合う直管bを直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn2-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第2熱除去管と、
を含み、
断面は、前記熱除去部の任意の位置において(前記流動床反応器の前記中心軸の向きにおける前記熱除去部の長さをL(m単位)としたとき、好ましくは前記熱除去部の長さLの全域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の中心点より49%L上から49%L下までの領域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の前記中心点より45%L上から38%L下までの領域内において、より好ましくは前記反応熱除去部の前記中心点より40%L上から8%L下までの領域内において)、前記流動床反応器の前記中心軸に垂直な方向に沿って横に切断することによって得られ、
前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)の全ての前記直管aの数は、前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)の全ての前記直管bの数と同じであり、且つ前記断面上の前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)の全ての前記直管aの外輪郭の総外周Laに対する、前記断面上の前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)の全ての前記直管bの外輪郭の総外周Lbの比率は、1.25~2(好ましくは1.3~2または1.5~2)である、
ことを特徴とする熱除去管セット(特に熱除去水管セット)。
【0008】
2.|n1-n2|<5(好ましくは|n1-n2|<3)が満たされることを特徴とする、先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の熱除去管セット。
【0009】
3.前記第1熱除去管の前記全ての直管aの50%超(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)が、前記流動床反応器の前記熱除去部の断面の中心部内にあり、前記第2熱除去管の前記全ての直管bの50%未満(好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下)が、前記断面の前記中心部内にあり、および/または、
前記断面の半径をR(m単位)としたとき、前記中心部は、前記断面の中心までの3/4R(好ましくは2/3R、より好ましくは1/2R、さらにより好ましくは1/3R)の領域である、
先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の熱除去管セット。
【0010】
4.前記直管bの外径(mm単位)に対する前記直管aの外径(mm単位)の比率が1~1.8、好ましくは1~1.5であり;あるいは、
前記直管aの外径(mm単位)に対する前記直管bの外径(mm単位)の比率が1~1.8、好ましくは1~1.5である、
先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の熱除去管セット。
【0011】
5.複数個の前記直管aの外径が、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の前記直管aの長さが、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管aの間の距離が100~700mm、好ましくは150~500mmであり、および/または
複数個の前記直管bの外径が、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の前記直管bの長さが、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管bの間の距離が100~700mm、好ましくは150~500mmであり、および/または
1つの第1熱除去管の外輪郭の総外周が、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mであり、および/または
1つの第2熱除去管の外輪郭の総外周が、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mである
ことを特徴とする、先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の熱除去管セット。
【0012】
6.前記熱除去部の前記長さLが、4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mであり、および/または
半径Rが、5~29m、好ましくは7~20mであり、および/または
前記第1熱除去管の数が、1~4個または1個であり、および/または
前記第2熱除去管の数が、1~4個または1個であり、および/または
前記熱除去管セットが、少なくとも1対(好ましくは1~20対、より好ましくは2~10対または2~5対)の熱除去管を含み、前記熱除去管の各対が、前記少なくとも1つの第1熱除去管および前記少なくとも1つの第2熱除去管から構成される、
請求項1に記載の熱除去管セット。
【0013】
7.前記流動床反応器の同一の運転条件下において、前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)による前記流動床反応器の反応温度の調節の大きさと、前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、それらは共に組み合わせられる)による前記流動床反応器の反応温度の調節の大きさとの差(絶対値)は、0.5~3℃(好ましくは1~2℃)であり、および/または
複数の第1熱除去管がある場合、前記第1熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水入口は、前記熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第1熱除去管がある場合、前記第1熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水出口は、前記熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第2熱除去管がある場合、前記第2熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水入口は、前記熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合され、および/または
複数の第2熱除去管がある場合、前記第2熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水出口は、前記熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合される、
先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の熱除去管セット。
【0014】
8.ヘッド、希釈相区域、熱除去部、予備反応部およびコーン部を、頂部から底部に順に備え、
先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の前記熱除去管セットが、前記熱除去部に配置されていることを特徴とする、流動床反応器。
【0015】
9.先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の前記流動床反応器の温度を制御する方法であって、
反応プロセス中に、前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての前記第1熱除去管)を前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)に切り替えて、前記流動床反応器の反応温度を0.5~3℃(好ましくは1~2℃)まで上昇または低下させることを含むことを特徴とする方法。
【0016】
10.先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の前記流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法。
【0017】
11.流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含み、
前記流動床反応器の温度が、先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の温度を制御する方法に従って制御される、不飽和ニトリルの製造方法。
【0018】
12.プロピレン/アンモニア/大気(分子酸素として計算される)のモル比が1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、
反応温度が420~440℃であり、
反応圧力(ゲージ圧)が0.03~0.14MPaであり、および
触媒の1時間当たりの重量空間速度が0.04~0.15h-1である、
先行するまたは後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
(図面の簡単な説明)
図1は、既存の流動床反応器の概略正面図である。
【0020】
図2は、流動床用の既存の反応熱除去管セットの概略上面図である。
【0021】
図3は、本出願に係る熱除去管セットの概略図である。
【0022】
図4および
図5は、本出願の熱除去管ヘッダーの概略図である。
【0023】
符号の説明:
1:流動床反応器の壁
2:流動床反応器の熱除去管
3:熱除去管の冷却水入口
4:熱除去管の冷却水出口
5:熱除去管の直管
6:熱除去管の接続金具
7:酸素含有ガス用分配板
8:プロピレン-アンモニア分配器
9:高効率サイクロンセパレータ
10:第1熱除去管
20:第2熱除去管
【0024】
(技術的効果)
本出願によれば、異なる熱除去管の熱除去量の差を慎重に調整することによって、第1熱除去管と第2熱除去管とを一対に連動して切り替える際に反応温度の微調整を行うことができる。
【0025】
(発明を実施するための形態)
本出願は、その実施形態を参照して、以下に詳細に説明される。しかしながら、本出願の範囲は、それらの実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されることに留意すべきである。
【0026】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書に記載の内容が優先されるべきである。
【0027】
材料、物質、方法、工程、装置、構成要素等が、本明細書において、「当業者に一般的に知られている」、「従来技術」等と記載されている場合、当該材料、物質、方法、工程、装置および構成要素は、本出願の出願時に当該技術分野で従来使用されていたものだけでなく、現在は一般的に使用されていないが、同様の目的に適していることが当該技術分野において一般的に知られるようなるであろうものもカバーすることが理解されるべきである。
【0028】
本出願の文脈において、「実質的に」という語は、当業者によって許容されるかまたは合理的であると考えられる偏差、例えば、±10%以内、±5%以内、±1%以内、±0.5%以内または±0.1%以内の偏差が存在し得ることを意味する。
【0029】
本出願の文脈において、特に明記しない限り、全ての百分率、部、比率などは重量で表され、与えられる全ての圧力はゲージ圧である。
【0030】
本出願の文脈において、本出願の任意の2つ以上の実施形態を任意に組み合わせることができ、得られる技術的解決策は本出願の最初の開示の一部を形成し、本出願の範囲内に入る。
【0031】
一実施形態によれば、本出願は、熱除去管セット、特に、熱除去水管セットに関する。本出願によれば、「熱除去管セット」および「熱除去管」は、発熱反応(または反応のいくつかの発熱段階)が行われる反応器から過剰な熱を除去して、特定の温度範囲内に反応を維持するために、使用され得る。反応器の例は、流動床反応器、特に、アクリロニトリルを製造するための流動床反応器を含む。
【0032】
本出願の一実施形態によれば、熱除去管セットは、流動床反応器の熱除去部に配置されるように構成される。明らかに、熱除去管はまた、流動床反応器の熱除去部に配置されるように構成される。具体的には、熱除去管の直管は、流動床反応器の高密度相領域に実質的に配置され、前記系から反応熱を適時に除去し、且つ前記系の安定動作を維持するために使用される。このため、本明細書の文脈において、「熱除去部」とは、熱除去管が配置される流動床反応器の領域、より具体的には熱除去管の直管が配置される流動床反応器の領域、より具体的には熱除去管の直管が配置される流動床反応器の高密度相領域における領域を指す。
【0033】
従来技術において、熱除去部内の熱除去管セットは、典型的には
図2に示されるように配置され、すなわち、熱除去管は、直線状に配置される。一方、
図1に示すように、サイクロン9のディップレッグ等の他の内部の構成要素も、流動床反応器の熱除去部に含まれる。典型的には、熱除去管は、冷却水入口と、直管と、冷却水出口と、これらの管を流体連通方式で接続するための接続金具とを備える。
図1または
図4に示すように、各熱除去管は、冷却水入口3と、冷却水出口4と、複数の直管と、隣り合う2本の直管を直列に接続し、それらの間に流体連通を提供するための接続金具とを備える。
【0034】
本出願の一実施形態によれば、熱除去管セットは、少なくとも1つの第1熱除去管を備える。ここで、第1熱除去管は、流動床反応器の中心軸に平行に延びるn1個(2<n1<30、好ましくは2<n1<20、より好ましくは2<n1<10)の直管aと、2つの隣り合う直管aを直列に接続し、それらの間に流体連通を提供するためのn1-1個の接続金具とを備える。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、第1熱除去管の数は、1~4個または1個である。
【0036】
本出願の一実施形態によれば、熱除去管セットは、少なくとも1つの第2熱除去管を備える。ここで、第2熱除去管は、流動床反応器の中心軸に平行に延びるn2個(2<n2<30、好ましくは2<n2<20、より好ましくは2<n2<10)の直管bと、2つの隣り合う直管bを直列に接続し、それらの間に流体連通を提供するためのn2-1個の接続金具とを備える。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、第2熱除去管の数は、1~4個または1個である。
【0038】
本出願の一実施形態によれば、熱除去部の流動床反応器の中心軸に沿った長さをL(m単位)としたとき、熱除去部の断面は、熱除去部の長さLの全域内の位置において、流動床反応器の中心軸に垂直な方向に沿って横に切断することによって得られる。ここで、熱除去部の断面とは、熱除去部における流動床反応器の内輪郭の断面を指す。前記領域としては、反応熱除去部の中心点より49%L上から49%L下までの領域内であることが好ましく、反応熱除去部の中心点より45%L上から38%L下までの領域内であることがより好ましく、反応熱除去部の中心点より40%L上から8%L下までの領域内であることがさらに好ましい。例えば、熱除去部の長さLは、4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mである。
【0039】
本出願の一実施形態によれば、第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての第1熱除去管)の全ての直管aの数は、第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての第2熱除去管)の全ての直管bの数と同じである。
【0040】
本出願の一実施形態によれば、前記断面上の第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての第1熱除去管)の全ての直管aの外輪郭の総外周Laに対する、前記断面上の第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての第2熱除去管)の全ての直管bの外輪郭の総外周Lbの比率は、1.25~2(好ましくは1.3~2または1.5~2)である。第1熱除去管と第2熱除去管の切り替え処理では、熱除去面積においてLbがLaよりも大きいが、熱除去管aが配置される中央領域における熱伝導率は、熱除去管bが配置される周辺領域における熱伝導率よりも高いため、Lb/Laが1.25よりも小さいと、切り替え動作時の熱除去能力の振幅が等しくなり、熱除去管セットが温度を微調整する効果が得られない。Lb/Laが2よりも大きい場合、熱除去面積の増加に起因する熱除去能力の増加は、異なる熱除去管の熱伝導能力の差に起因する熱除去能力の変化よりも大きく、このことも要件を満たすことができない。
【0041】
本出願の一実施形態によれば、|n1-n2|<5(好ましくは|n1-n2|<3)が満たされる。1つの熱除去管の外輪郭の外周は、n個のその熱除去直管の外輪郭の外周の和であるか、または外輪郭の外周は、n*3.14*D(Dは、熱除去直管の平均外径である)によって直接的に表すことができ、典型的には、直管の数が多いほど、外輪郭の外周が長くなり、装置の運転工程において熱除去能力が高くなる。したがって、熱除去管セットについては、|n1-n2|が大きすぎると、第1熱除去管と第2熱除去管との外輪郭の外周の差がより大きくなり、熱除去管対の切り替え時に反応温度のシフトが生じやすくなることを意味する、あるいは異なる外径の管が用いられてもよく、|n1-n2|が大きすぎると、第1熱除去管と第2熱除去管との外径の差も大きく、明らかに不合理且つ不経済である。
【0042】
本出願の一実施形態によれば、直管bの外径(mm単位)に対する直管aの外径(mm単位)の比率は、1~1.8、好ましくは1~1.5である。
【0043】
本出願の一実施形態によれば、直管aの外径(mm単位)に対する直管bの外径(mm単位)の比率は、1~1.8、好ましくは1~1.5である。
【0044】
本出願の一実施形態によれば、複数個の直管aの外径は、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の直管aの長さは、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管aの間の間隔は、100~700mm、好ましくは150~500mmである。
【0045】
本出願の一実施形態によれば、複数個の直管bの外径は、それぞれ独立して、80~180mm、好ましくは90~170mmであり、複数個の直管bの長さは、それぞれ独立して、4~13m、好ましくは5~12.0mであり、2つの隣り合う直管bの間の間隔は、100~700mm、好ましくは150~500mmである。
【0046】
本出願の一実施形態によれば、1つの第1熱除去管の外輪郭の総外周は、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mである。
【0047】
本出願の一実施形態によれば、1つの第2熱除去管の外輪郭の総外周は、0.5~17m、好ましくは2.5~11.3mである。
【0048】
本出願の一実施形態によれば、熱除去管セットは、少なくとも1対(好ましくは1対~20対、より好ましくは2対~10対または2対~5対)の熱除去管を備え、当該熱除去管の各対は、少なくとも1つの第1熱除去管と、少なくとも1つの第2熱除去管とから構成される。言い換えると、本出願の実施形態によれば、熱除去管セットは、少なくとも1つ(好ましくは1~20個、より好ましくは2~10個または2~5個)の熱除去管対を備え、当該熱除去管対の各々は、少なくとも1つの第1熱除去管と、少なくとも1つの第2熱除去管とから構成される。本明細書の以下の文脈において、別段の指定がない限り、第1熱除去管および第2熱除去管対は両方とも、同一熱除去管対内の第1熱除去管および第2熱除去管を指す。本出願は、異なる熱除去管対において、ある熱除去管対における第1熱除去管と別の熱除去管対における第2熱除去管との間の関係、または、ある熱除去管対における第1熱除去管と別の熱除去管対における第1熱除去管との間の関係、または、ある熱除去管対における第2熱除去管と別の熱除去管対における第1熱除去管との間の関係、または、ある熱除去管対における第2熱除去管と別の熱除去管対における第2熱除去管との間の関係に何らかの制限を課すことを意図していない。
【0049】
本出願によれば、少なくとも1つの第1熱除去管と、少なくとも1つの第2熱除去管とは、同時には作動せず、生産運転の必要性に応じて切り替え可能に作動する。すなわち、少なくとも1つの第1熱除去管が熱除去運転状態にあるとき、少なくとも1つの第2熱除去管はアイドル状態にあり、第1熱除去管と第2熱除去管とについて、反応器の外部冷却コイルと第1熱除去管との間の弁が閉じられると、第1熱除去管内の冷却材の循環が遮断される。これにより、熱除去運転における第1熱除去管がアイドル状態に変更される。一方、反応器の外部冷却コイルと第2熱除去管との間の弁が開けられると、その結果、第2熱除去管内の冷却材の循環が開始され、アイドル状態の第2熱除去管が熱除去運転状態に変更される。逆に、第1熱除去管と第2熱除去管とを逆に切り替えることもでき、反応器の外部冷却コイルと第1熱除去管との間の弁が開かれると、第1熱除去管内の冷却材の循環が開始され、アイドル状態の第1熱除去管が熱除去運転状態に変更される。一方、反応器の外部冷却コイルと第2熱除去管との間の弁が閉じられ、第2熱除去管内の冷却材の循環が遮断される。これにより、熱除去運転における第2熱除去管がアイドル状態に変更される。明らかに、上述のように、少なくとも1つの第1熱除去管および少なくとも1つの第2熱除去管は、同じ熱除去管対内の熱除去管である。
【0050】
本出願によれば、流動床反応器の同一の運転条件下で、第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、全ての第1熱除去管)による流動床反応器の反応温度の調節の大きさと、第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての第2熱除去管)による流動床反応器の反応温度の調節の大きさとの差(絶対値)は、0.5~3℃(好ましくは1~2℃)である。このような構成により、本出願は、同一の熱除去管内で熱除去管を切り替える際に、反応温度の正確な制御を実現することができる。
【0051】
本出願の好ましい実施形態によれば、熱除去部の断面において、第1熱除去管の全ての直管aの50%超(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)が、流動床反応器の熱除去部の断面の中心部内にあり、第2熱除去管の全ての直管bの50%未満(好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下)が、断面の中心部内にある。例えば、第1熱除去管10が8本の直管を有する場合、5本以上の直管が断面の中心部内にある、または、第1熱除去管10が7本の直管を有する場合、4本以上の直管が断面の中心部内にある。一方、例えば、第2熱除去管20が6本の直管を有する場合、2本以下の直管が断面の中心部内にあり、または、第2熱除去管20が5本の直管を有する場合、2本以下の直管が断面の中心部内にある。
【0052】
本出願の好ましい実施形態によれば、
図3に示す流動床反応器の熱除去部の円形断面の半径をR(m単位)としたとき、当該断面の中心部は、前記円形断面の中心から一定距離以内の領域(すなわち、
図3における点線内の領域)を指し、前記断面の周辺領域は、前記中心部の外側の領域(すなわち、
図3における点線から反応器壁1までの領域)を指す。本出願の一実施形態によれば、前記断面の中心部は、前記断面の中心から3/4Rの距離内、好ましくは前記断面の中心から2/3Rの距離内、より好ましくは前記断面の中心から1/2Rの距離内、さらにより好ましくは前記断面の中心から1/3Rの距離内の円形領域を指す。例えば、半径Rは、5~29m、好ましくは7~20mである。
【0053】
本出願の一実施形態によれば、複数の第1熱除去管が存在する場合、第1熱除去管の少なくとも2つ(好ましくは全て)の冷却水入口は、熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合される。換言すれば、複数の熱除去管(枝管と称する)は、1つの冷却水入口を共有している。本出願によれば、冷却水入口ヘッダーは、流動床反応器の壁を通って外部冷却水供給源と流体連通しており、それによって、冷却水は、冷却水入口ヘッダーを通ってそれぞれの枝管に供給される。
【0054】
本出願の一実施形態によれば、複数の第1熱除去管が存在する場合、少なくとも2つ(好ましくは全て)の第1熱除去管の冷却水出口は、熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合される。換言すれば、複数の熱除去管(枝管と称する)は、1つの冷却水出口を共有している。本出願によれば、冷却水出口ヘッダーは、流動床反応器の壁を通って外部冷却水受容手段と流体連通しており、それによって、熱除去後の冷却水(典型的には水蒸気も含む)が、それぞれの枝管から冷却水出口ヘッダーを通って外部環境に送達される。
【0055】
本出願の一実施形態によれば、複数の第2熱除去管が存在する場合、少なくとも2つ(好ましくは全て)の第2熱除去管の冷却水入口は、熱除去部における冷却水入口ヘッダーに統合される。換言すれば、複数の熱除去管(枝管と称する)は、1つの冷却水入口を共有している。本出願によれば、冷却水入口ヘッダーは、流動床反応器の壁を通って外部冷却水供給源と流体連通しており、それによって、冷却水は、冷却水入口ヘッダーを通ってそれぞれの枝管に供給される。
【0056】
本出願の一実施形態によれば、複数の第2熱除去管が存在する場合、少なくとも2つ(好ましくは全て)の第2熱除去管の冷却水出口は、熱除去部における冷却水出口ヘッダーに統合される。換言すれば、複数の熱除去管(枝管と称する)は、1つの冷却水出口を共有している。本出願によれば、冷却水出口ヘッダーは、流動床反応器の壁を通って外部冷却水受容手段と流体連通しており、それによって、熱除去後の冷却水(典型的には水蒸気も含む)が、それぞれの枝管から冷却水出口ヘッダーを通って外部環境に送達される。
【0057】
図4および
図5は、本出願の熱除去管ヘッダーの配置の概略図である。図から分かるように、複数の熱除去管の冷却水入口/出口は、ヘッダーに統合される。
【0058】
本出願の一実施形態によれば、ヘッダー(冷却水入口ヘッダーまたは冷却水出口ヘッダーなど)の断面積の、それに対応する複数の枝管の断面積の合計(一般に、複数の枝管の冷却水入口または冷却水出口に基づく)に対する比率は、0.5~1であり、好ましくは0.55~0.95であり、より好ましくは0.6~0.9である。
【0059】
一実施形態によれば、本願はまた熱除去管セットに関し、当該熱除去管セットは流動床反応器の熱除去部に配置され、前記熱除去部は前記流動床反応器の流動床層に配置されており、前記熱除去管セットは、前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn1個(2<n1<30、好ましくは2<n1<20、より好ましくは2<n1<10)の直管aと、n1個の直管を直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn1-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第1熱除去管と;前記流動床反応器の中心軸に平行に延びるn2個(2<n1<30、好ましくは2<n1<20、より好ましくは2<n1<10)の直管bと、n2個の直管を直列に接続し且つそれらの間に流体連通を提供するためのn2-1個の接続金具とを含む、少なくとも1つの第2熱除去管と、を含み、前記熱除去部の任意の位置にて、前記流動床反応器の前記中心軸に垂直な方向に沿って横に切断することによって得られる断面において、前記第1熱除去管の前記全ての直管aの50%超(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)が、前記流動床反応器の前記熱除去部の前記断面の中心部内にあり、前記第2熱除去管の前記全ての直管bの50%未満(好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下)が、前記断面の前記中心部内にあり、および前記第1熱除去管の全ての前記直管aの外輪郭の総外周Laに対する、前記第2熱除去管の全ての前記直管bの外輪郭の総外周Lbの比率は、1.5~2である。
【0060】
一実施形態によれば、本出願はまた、ヘッド、希釈相区域、熱除去部、予備反応部、およびコーン部を、頂部から底部へと備える流動床反応器に関する。ここで、上述した熱除去管セットは、前記熱除去部に配置されている。
【0061】
一実施形態によれば、本出願は、流動床反応器の温度を制御するための方法にも関する。ここで、流動床反応器は、好ましくは上述の流動床反応器である。
【0062】
本出願の一実施形態によれば、前記制御方法は、反応プロセス中に、前記第1熱除去管(複数の第1熱除去管がある場合、それらは共に組み合わせられる)を前記第2熱除去管(複数の第2熱除去管がある場合、全ての前記第2熱除去管)に切り替えて、前記流動床反応器の反応温度を0.5~3℃(好ましくは1~2℃)まで上昇または低下させることを含む。
【0063】
一実施形態によれば、本出願はまた、流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法に関する。ここで、流動床反応器の温度は、反応温度の微調整を達成するために、流動床反応器の反応温度を実質的に一定に維持するために、上述のように温度を制御する方法に従って制御されてもよい。
【0064】
一実施形態によれば、本出願はまた、流動床反応器においてオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供して、不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を得る工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法に関する。ここで、流動床反応器は、好ましくは上述の流動床反応器である。
【0065】
本出願の一実施形態によれば、アンモ酸化反応は、当技術分野において従来公知のあらゆる様式およびあらゆる方法によって実施することができ、そのような情報は当業者に公知であり、本明細書において詳細に説明しない。それにもかかわらず、プロピレンとアンモニアと大気(分子酸素として計算される)とのモル比は典型的には1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、反応温度は典型的には420~440℃であり、反応圧力(ゲージ圧)は典型的には0.03~0.14MPaであり、触媒の1時間当たりの重量空間速度は典型的には0.04~0.15h-1である。
【0066】
(実施例)
本出願は、以下の実施例および比較例を参照してさらに詳細に説明される。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
以下の実施例および比較例において、アクリロニトリル収率およびプロピレン転化率は、以下の式に従って算出することができる:
アクリロニトリルの収率:AN%=CAN/ΣC*100
プロピレン転化率:Cc3%=(1-Cc3out/Cc3in)*100
式中、
CAN:反応器の出口におけるガス中のANに含まれる炭素のモル数(モル)
ΣC:反応器の出口におけるガス中の炭素の総モル数(mol)
Cc3out:反応器出口におけるガス中のC3に含まれる炭素のモル数(モル)
Cc3in:反応器の入口におけるガス中のC3に含まれる炭素のモル数(モル)。
【0068】
(実施例1)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの584本の直管を反応器内に配置し、これらを62本の熱除去管に分割した。熱除去管を4群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、4本の直管aを直列に接続することによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、4本の直管bを直列に接続することによって形成された第2熱除去管であった。枝管bの外径に対する枝管aの外径の比率は0.53であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.89であった。
【0069】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、2.0℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0070】
(実施例2)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの584本の直管を反応器内に配置し、これらを62本の熱除去管に分割した。熱除去管を4群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、6本の直管aを直列に接続することによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、6本の直管bを直列に接続することによって形成された第2熱除去管であった。枝管bの外径に対する枝管aの外径の比率は0.66であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.52であった。
【0071】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、1.3℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0072】
(実施例3)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの584本の直管を反応器内に配置し、これらを62本の熱除去管に分割した。熱除去管を2群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、8本の直管aを直列に接続することによって形成された第1熱除去管であり、且つ当該第1熱除去管の5本の直管aは、反応器の熱除去部の断面の2/3Rから中心までの領域内に位置し;他方の熱除去管は、8本の直管bを直列に接続することによって形成された第2熱除去管であり、且つ当該第2熱除去管の6本の直管bは、反応器の熱除去部の断面の2/3Rから中心までの領域の外側に位置していた。枝管aの外径に対する枝管bの外径の比率は1.54であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.54であった。
【0073】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、1.4℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0074】
(実施例4)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの732本の直管を反応器内に配置し、これらを70本の熱除去管に分割した。熱除去管を4群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、直列に接続された12本の直管aと直列に接続された10本の直管aとによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、直列に接続された12本の直管bと直列に接続された10本の直管bとによって形成された第2熱除去管であり;枝管aの外径に対する枝管bの外径の比率は1.35であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.35であった。
【0075】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、このときの完全プロピレン処理能力は349kgプロピレン/m2/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、1.6℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0076】
(実施例5)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの732本の直管を反応器内に配置し、これらを70本の熱除去管に分割した。熱除去管を5群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、直列に接続された12本の直管aと直列に接続された8本の直管aとによって形成された第1熱除去管であり、且つ当該第1熱除去管の14本の直管aは、反応器の熱除去部の断面の2/3Rから中心までの領域内に位置し;他方の熱除去管は、直列に接続された10本の直管bと直列に接続された10本の直管bとによって形成された第2熱除去管であり、且つ当該第2熱除去管の15本の直管bは、反応器の熱除去部の断面の2/3Rから中心までの領域の外側に位置していた。枝管aの外径に対する枝管bの外径の比率は1.69であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.69であった。
【0077】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、1.8℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0078】
(実施例6)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの732本の直管を反応器内に配置し、これらを70本の熱除去管に分割した。2つの熱除去管セットを並列に接続することによって4群を形成し、熱除去管を2群の熱除去管対に形成し、一方の熱除去管は、直列に接続された8本の直管aと直列に接続された8本の直管aとによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、直列に接続された8本の直管bと直列に接続された8本の直管bとによって形成された第2熱除去管であり;熱除去管bの外径が120mmであり、枝管bの外径に対する枝管aの外径の比率は0.74であり、第1熱除去管を構成する直管の外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管の外輪郭の総外周の比率は1.35であった。熱除去管bの入口ヘッダーの外径は140mmであり、熱除去管bの出口ヘッダーの外径は150mmであり、熱除去枝管の断面積の総和に対する前記入口ヘッダーの断面積の比率は0.68であり、熱除去枝管の断面積の総和に対する前記出口ヘッダーの断面積の比率は0.78であり、熱除去管aの入口ヘッダーの外径は120mmであり、熱除去管aの出口ヘッダーの外径は120mmであり、熱除去枝管の断面積の総和に対する前記入口ヘッダーの断面積の比率は0.90であり、熱除去枝管の断面積の総和に対する前記出口ヘッダーの断面積の比率は0.90であった。
【0079】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、このときの完全プロピレン処理能力は349kgプロピレン/m2/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることにより、1.3℃の昇温または降温の幅で、反応器の温度を微調整することができる。
【0080】
(比較例1)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの584本の直管を反応器内に配置し、これらを60本の熱除去管に分割した。熱除去管を4群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、8本の直管aを直列に接続することによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、8本の直管bを直列に接続することによって形成された第2熱除去管であった。枝管aの外径に対する枝管bの外径の比率は1.2であり、第1熱除去管を構成する直管aの外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管bの外輪郭の総外周の比率は1.20であった。
【0081】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることによる反応器温度の変動幅は0.7℃であり、明らかな昇温または降温プロセスは観察されなかった。
【0082】
(比較例2)
流動床反応器の直径は9mであり、Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンをその中に充填し、同じ高さの584本の直管を反応器内に配置し、これらを60本の熱除去管に分割した。熱除去管を2群の熱除去管対に形成し、各熱除去管対において、一方の熱除去管は、11本の直管aを直列に接続することによって形成された第1熱除去管であり、他方の熱除去管は、11本の直管bを直列に接続することによって形成された第2熱除去管であった。枝管aの外径に対する枝管bの外径の比率は2.2であり、第1熱除去管を構成する直管aの外輪郭の総外周に対する第2熱除去管を構成する全ての直管bの外輪郭の総外周の比率は2.20であった。
【0083】
プロピレンの供給速度は11800NM3/hであり、反応温度は430℃であり、反応圧力は0.04MPaであり、プロピレン:アンモニア:大気の比率は1:1.2:9.6であった。反応器の温度は、熱除去管セットの第1熱除去管と第2熱除去管とを切り替えることによって、3.3℃の昇温または降温でのみ大まかに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図2】流動床用の既存の反応熱除去管セットの概略上面図である。
【
図3】本出願に係る熱除去管セットの概略図である。
【国際調査報告】