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特表2024-513886除熱管セット、反応負荷を増大させるための方法、および不飽和ニトリルの製造方法
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  • 特表-除熱管セット、反応負荷を増大させるための方法、および不飽和ニトリルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】除熱管セット、反応負荷を増大させるための方法、および不飽和ニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20240319BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B01J8/24
C07C255/08
C07C253/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561321
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2022085766
(87)【国際公開番号】W WO2022214067
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110382764.1
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210111952.5
(32)【優先日】2022-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】趙楽
(72)【発明者】
【氏名】呉糧華
【テーマコード(参考)】
4G070
4H006
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB32
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070CC01
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC54
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006QN24
(57)【要約】
本出願は、除熱管セット、当該除熱管セットを使用することによって反応負荷を増大させるための方法、および不飽和ニトリルの製造におけるその応用に関する。前記除熱管セットは、少なくとも10個の除熱管を含み、前記除熱管セットの複数の除熱管のうちの少なくとも1個の除熱管において、かつ、前記除熱管セットの複数の除熱管の総数の多くとも88%の除熱管において、少なくとも1個の接続継手の中心軸線の延長線と他の接続継手の中心軸線の延長線とのなす角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい。かかる除熱管セットを配置することによって、前記流動床反応器の除熱能力および流動化効率が向上し、その結果、前記反応負荷を増大させる要求に十分に応じることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除熱管セット(特に、除熱水管セット)であって、
流動床反応器の除熱セクションに配置されるように構成されており、
少なくとも10個(好ましくは、10~100個、より好ましくは、20~80個)の除熱管を含み、
前記除熱管は、
N(Nは、3以上、好ましくは、Nは、3~30、より好ましくは、Nは、3~20)個の直管と、
任意の隣り合う2個の直管を直列に接続し、かつそれらの間に流体連通を提供するためのN-1個の接続継手と、
を含み、
前記流動床反応器の中心軸線に沿った前記除熱セクションの長さをH(単位:m)とすると、(横断面Aと称される)前記除熱セクションの横断面は、前記除熱セクションの長さHの領域全体内(好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、49%H上のところから49%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、45%H上のところから38%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、40%H上のところから8%H下のところまでの領域内)の位置において、前記流動床反応器の中心軸線に垂直な方向に沿って横断することによって得られ、
(異形除熱管と称される、)前記除熱管セットの複数の前記除熱管のうちの少なくとも1個の除熱管(好ましくは、1個、2個もしくは3個の除熱管、または、前記除熱管の総数の少なくとも20%、少なくとも50%もしくは少なくとも65%の除熱管)について、かつ、前記除熱管セットの前記除熱管の総数の多くとも88%(好ましくは、75%または70%)の除熱管について、(好ましくは、前記異形除熱管の第1接続継手を除く)前記異形除熱管の複数の接続継手のうちの少なくとも1個の接続継手(好ましくは、前記異形除熱管の複数の接続継手のうちの少なくとも2個、3個または4個の接続継手、かつ、前記接続継手の総数の多くとも80%、90%または100%の接続継手)の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、(好ましくは、当該接続継手のすぐ上流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置における、前記異形除熱管上の他の接続継手である)少なくとも1個の他の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい(好ましくは、30°~150°、より好ましくは、60°~120°、さらに好ましくは、約90°)、除熱管セット。
【請求項2】
前記横断面Aの面積をS1(単位:m)とし、前記横断面A上における前記除熱管セットの全ての直管の横断面の外側輪郭周の総和をL1(単位:m)とすると、
L1/S1は、1.0~6.0m-1(好ましくは、2.4~5.6m-1、より好ましくは、2.9~5.3m-1)であり、
かつ/または、
面積S1は、20~700m(好ましくは、35~350m)であり、
かつ/または、
L1は、20~4200mであり、好ましくは、87.5~1225mである、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項3】
前記横断面Aにおける前記除熱管セットにおける前記直管の総数をNtとすると、前記横断面Aの単位面積当たりの直管の個数、すなわちNt/S1は、4~16個/m(好ましくは、5~14個/m、より好ましくは、7~13個/m)であり、
かつ/または、
前記横断面Aの輪郭は、円形、楕円形もしくは卵形であり、好ましくは、円形もしくは実質的に円形であり、
かつ/または、
前記直管の横断面の内側輪郭および外側輪郭は、円形、楕円形もしくは卵形であり、好ましくは、円形もしくは実質的に円形である、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項4】
1~10MPaの飽和蒸気(好ましくは、2~8MPaの飽和蒸気、より好ましくは、3~5MPaの飽和蒸気)を回収することができ、かつ/または、
4.5MPaの飽和蒸気を回収すると評価される場合、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり0.5~3.0tの飽和蒸気の除熱能力を有し、好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.0~2.8tの飽和蒸気の除熱能力を有し、より好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.2~2.4tの飽和蒸気の除熱能力を有し、
前記単位横断面積は、前記横断面Aの単位面積を指す、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項5】
前記除熱管セットの前記異形除熱管以外の(複数の)除熱管について、任意の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、当該接続継手のすぐ上流もしくはすぐ下流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置における、当該除熱管上の他の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、180°であり、
かつ/または、
前記除熱管は、冷却水入口を含み、複数(好ましくは、2~8個、2~6個もしくは2~4個)の前記除熱管の前記冷却水入口は、前記除熱セクションにおける冷却水入口ヘッダに併合されており、
かつ/または、
前記除熱管は、冷却水出口を含み、複数(好ましくは、2~8個、2~6個または2~4個)の前記除熱管の前記冷却水出口は、前記除熱セクションにおける冷却水出口ヘッダに併合されている、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項6】
複数の前記直管の外径は、それぞれ、80~180mm、好ましくは、90~170mmであり、
かつ/または、
複数の前記直管の内径は、それぞれ、60~150mm、好ましくは、70~140mmであり、
かつ/または、
複数の前記直管の長さは、それぞれ、4~13m、好ましくは、5~12.0mであり、
かつ/または、
各除熱管上の隣り合う2個の直管の間の間隔は、100~700mm、好ましくは、150~300mmであり、
かつ/または、
前記除熱セクションの長さHは、4~13m(好ましくは、5~12m)である、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項7】
(1)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)である場合、L1/S1は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)であり、好ましくは、1.4~2.2m-1であり、
または、
(2)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで200~370kgプロピレンである場合、L1/S1は、1.8~4.6m-1であり、好ましくは、2.0~4.1m-1であり、
または、
(3)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで290~445kgプロピレンである場合、L1/S1は、2.5~6.0m-1であり、好ましくは、2.9~5.3m-1である、請求項1に記載の除熱管セット。
【請求項8】
流動床反応器であって、
ヘッドと、希薄相ゾーンと、除熱セクションと、予備反応セクションと、コーンと、を上から下へ順に含み、
請求項1に記載の除熱管セットは、前記除熱セクションに配置されている、流動床反応器。
【請求項9】
不飽和ニトリルの製造方法であって、
不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、請求項8に記載の流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含む、製造方法。
【請求項10】
流動床反応器の負荷を増大させるための方法であって、
前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力は、前記横断面Aの単位面積当たりで140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)であり、L1/S1は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)であり、
L1/S1を2.5~6.0m-1に、好ましくは、2.9~5.3m-1に増大させて、前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力を前記横断面Aの単位面積当たりで290~445kgプロピレンに増大させる工程を含む、方法。
【請求項11】
不飽和ニトリルの製造方法であって、
不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含み、
前記流動床反応器の前記負荷は、請求項10に記載の負荷を増大させるための方法に従って増大させられる、製造方法。
【請求項12】
プロピレン/アンモニア/空気(酸素分子として計算)のモル比は、1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、
反応温度は、420~440℃であり、
反応圧力(ゲージ圧)は、0.03~0.14MPaであり、
触媒の重量毎時空間速度は、0.06~0.15-1である、請求項9または11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、流動床反応器における使用に特に適した除熱管セットに関する。本出願はさらに、当該除熱管セットを使用することによって反応負荷(reaction load)を増大させるための方法、および不飽和ニトリルの製造におけるその応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
アクリロニトリルは、石油化学工業にとって重要な化学原料である。プロピレンのアンモ酸化によってアクリロニトリルを一段階で製造するための方法は、世界中のさまざまな国において、一般的に採用されている。すなわち、流動床アンモ酸化触媒の作用下において、かつ、特定の反応温度および圧力下において、プロピレンがアンモ酸化に供されてアクリロニトリルが生成され、同時に、副生成物(例えば、アセトニトリル、シアン化水素酸等)が生成される。また、CO、CO等の深度酸化(deep oxidation)生成物も生成される。この反応には、強い発熱性があり、大量の熱の発生が伴う。
【0003】
アクリロニトリル流動床反応器の内部には、典型的には、プロピレン-アンモニア分配器、空気分散板、除熱管(冷却コイルとしても知られる)およびサイクロンセパレータが含まれる。除熱管、およびサイクロンセパレータのディップレッグ(dipleg)は、流動床の垂直部材として、触媒床内に配置される。除熱管によって、反応系から発生する大量の反応熱を適時に除去し、反応温度を安定状態に維持することができる。また、サイクロンセパレータによって、上方に移動する気体によって運ばれる触媒が捕捉され、ディップレッグを通じて触媒床へ当該触媒が戻されて、触媒の損失が低減される。
【0004】
図1は、アクリロニトリル流動床反応器を示す。その内部には主に、酸素含有気体のための分散板、プロピレン‐アンモニア分配器、除熱管およびサイクロンセパレータが含まれる。図1に示す既存のアクリロニトリル反応器では、全除熱管の85%以上が動作している。すなわち、これらの除熱管には、反応温度と比較して低温の除熱媒体が充填されており、反応温度は、当該除熱媒体との熱交換によって、安定的に維持されている。
【0005】
アンモ酸化触媒の性能の改善によって、流動床反応器が同じサイズにおいてより大きな(例えば、50%高い)反応負荷で運転することができる。すなわち、プロピレン、アンモニアおよび酸素含有気体の原料の供給量が、50%増大する。その結果、放出される反応熱も、50%増大する。既存の流動床反応器内の除熱管の一部は休止状態にあるが、増大した反応熱を十分に除去することができない。結果として、反応温度の暴走が招来されてしまう;あるいは、代用となる除熱管が十分には無いため、装置が運転する初期段階においては反応温度を安定的に維持できるものの、モリブデンのスケール(被膜)が除熱管の表面上において増加し、熱伝導効率が減少してゆき、装置の運転期間が増大するに伴って、より多くの除熱管が運転状態にあることが求められるようになる。最終的には、切替えに利用できる休止状態の除熱管が無くなり、反応温度の安定的な制御が維持できなくなってしまう。そのため、装置が長期間、安定的に運転するという要件に応じることはできない。他方、気体原料が分散板/分配器を出るときに生じる一次気泡(primary bubbles)がより大きなものになるため、既存の流動床反応器の場合には、気泡も床全体で相対的に大きなものとなる。結果的に、アクリロニトリルの収率およびプロピレンの転化率が低下して、装置の経済性に悪影響が及ぶ。既存の流動床反応器では、除熱能力および流動化効率(fluidization efficiency)が限られているため、反応負荷の増大に関わる要求を満たすことができない。
【0006】
〔発明の開示〕
本出願のアクリロニトリル流動床反応器では、除熱管は、同じ間隔で互いに平行に配置され、または互いに垂直となるように配置されており、隣り合う2個の除熱管の直管の間の間隔内に供給通路が保たれている。従来の除熱管は、除熱管の上部接続継手、下部接続継手および直管が、反応器の横断面上の同じ直線上に投影(射影)され、上部接続継手および下部接続継手が、180度の角度を形成していることを特徴とする;一方、異形除熱管(profiled heat removal tubes)は、少なくとも1個の上部接続継手が、下部接続継手と一定の角度を形成しており、流体の主要部分の流れ方向に沿った反応器の横断面に対する、流体連通する複数の直管の投影が、近接して隣り合う2つの直線であることを特徴とする;異形除熱管は従来の除熱管と比較して接続がより密接であるため、異形除熱管によって置き換えられた従来の除熱管の個数の増大とともに、除熱能力が連続的に改善される。このことは、大きな気泡の破壊に関しても、より有利である。一方、除熱管の間には、装置の保守および修理のための十分な空間が依然として確保されている。本出願は、この発見に基づいてなされるものであり、流動床反応器の除熱能力および流動化効率が向上するように、流動床反応器内の除熱管の構成および個数を変更することによって達成される。従来の除熱管と異形除熱管とは、高効率性および装置の長期安定運転が実現できるように、アンモ酸化触媒の性能および反応負荷に応じて所定の割合で構成される。
【0007】
具体的には、本出願は、以下の態様の技術的解決手段に関する。
【0008】
1.
除熱管セット(特に、除熱水管セット)であって、
流動床反応器の除熱セクションに配置されるように構成されており、
少なくとも10個(好ましくは、10~100個、より好ましくは、20~80個)の除熱管を含み、
前記除熱管は、
N(Nは、3以上、好ましくは、Nは、3~30、より好ましくは、Nは、3~20)個の直管と、
それらの直管のうちの任意の隣り合う2個の直管を直列に接続し、かつそれらの間に流体連通を提供するためのN-1個の接続継手と、
を含み、
前記流動床反応器の中心軸線に沿った前記除熱セクションの長さをH(単位:m)とすると、(横断面Aと称される)前記除熱セクションの横断面は、前記除熱セクションの前記長さHの領域全体内(好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、49%H上のところから49%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、45%H上のところから38%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、40%H上のところから8%H下のところまでの領域内)の位置において、前記流動床反応器の中心軸線に垂直な方向に沿って横断することによって得られ、
(異形除熱管と称される、)前記除熱管セットの複数の前記除熱管のうちの少なくとも1個の除熱管(好ましくは、1個、2個もしくは3個の除熱管、または、前記除熱管の総数の少なくとも20%、少なくとも50%もしくは少なくとも65%の除熱管)について、かつ、前記除熱管セットの前記除熱管の総数の多くとも88%(好ましくは、75%または70%)の除熱管について、(好ましくは、前記異形除熱管の第1接続継手を除く)前記異形除熱管の複数の接続継手のうちの少なくとも1個の接続継手(好ましくは、前記異形除熱管の複数の接続継手のうちの少なくとも2個、3個または4個の接続継手、かつ、前記接続継手の総数の多くとも80%、90%または100%の接続継手)の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、(好ましくは、当該接続継手のすぐ上流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置における、前記異形除熱管上の他の接続継手である)少なくとも1個の他の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい(好ましくは、30°~150°、より好ましくは、60°~120°、さらに好ましくは、約90°)、除熱管セット。
【0009】
2.
前記横断面Aの面積をS1(単位:m)とし、前記横断面A上における前記除熱管セットの全ての直管の横断面の外側輪郭周の総和をL1(単位:m)とすると、
L1/S1は、1.0~6.0m-1(好ましくは、2.4~5.6m-1、より好ましくは、2.9~5.3m-1)であり、
かつ/または、
面積S1は、20~700m(好ましくは、35~350m)であり、
かつ/または、
L1は、20~4200mであり、好ましくは、87.5~1225mである、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0010】
3.
前記除熱管セットにおける前記直管の総数をNtとすると、前記横断面Aの単位面積当たりの直管の個数、すなわちNt/S1は、4~16個/m(好ましくは、5~14個/m、より好ましくは、7~13個/m)であり、
かつ/または、
前記横断面Aの輪郭は、円形、楕円形もしくは卵形であり、好ましくは、円形もしくは実質的に円形であり、
かつ/または、
前記直管の横断面の内側輪郭および外側輪郭は、円形、楕円形もしくは卵形であり、好ましくは、円形もしくは実質的に円形である、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0011】
4.
1~10MPaの飽和蒸気(好ましくは、2~8MPaの飽和蒸気、より好ましくは、3~5MPaの飽和蒸気)を回収することができ、かつ/または、
4.5MPaの飽和蒸気を回収すると評価される場合、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり0.5~3.0tの飽和蒸気の除熱能力を有し、好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.0~2.8tの飽和蒸気の除熱能力を有し、より好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.2~2.4tの飽和蒸気の除熱能力を有し、
前記単位横断面積は、前記横断面Aの単位面積を指す、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0012】
5.
前記除熱管セットの前記異形除熱管以外の(複数の)除熱管について、任意の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、当該接続継手のすぐ上流もしくはすぐ下流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置における、当該除熱管上の他の接続継手の前記横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、180°であり、
かつ/または、
前記除熱管は、冷却水入口を含み、複数(好ましくは、2~8個、2~6個もしくは2~4個)の前記除熱管の前記冷却水入口は、前記除熱セクションにおける冷却水入口ヘッダに併合されており、
かつ/または、
前記除熱管は、冷却水出口を含み、複数(好ましくは、2~8個、2~6個または2~4個)の前記除熱管の前記冷却水出口は、前記除熱セクションにおける冷却水出口ヘッダに併合されている、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0013】
6.
複数の前記直管の外径は、それぞれ、80~180mm、好ましくは、90~170mmであり、
かつ/または、
複数の前記直管の内径は、それぞれ、60~150mm、好ましくは、70~140mmであり、
かつ/または、
複数の前記直管の長さは、それぞれ、4~13m、好ましくは、5~12.0mであり、
かつ/または、
各除熱管上の隣り合う2個の直管の間の間隔は、100~700mm、好ましくは、150~300mmであり、
かつ/または、
前記除熱セクションの長さHは、4~13m(好ましくは、5~12m)である、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0014】
7.
(1)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)である場合、L1/S1は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)であり、好ましくは、1.4~2.2m-1であり、
または、
(2)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで200~370kgプロピレンである場合、L1/S1は、1.8~4.6m-1であり、好ましくは、2.0~4.1m-1であり、
または、
(3)前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が前記横断面Aの単位面積当たりで290~445kgプロピレンである場合、L1/S1は、2.5~6.0m-1であり、好ましくは、2.9~5.3m-1である、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セット。
【0015】
8.
流動床反応器であって、
ヘッドと、希薄相ゾーンと、除熱セクションと、予備反応セクションと、コーンと、を上から下へ順に含み、
前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の除熱管セットは、前記除熱セクションに配置されている、流動床反応器。
【0016】
9.
不飽和ニトリルの製造方法であって、
不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含む、製造方法。
【0017】
10.
流動床反応器の負荷を増大させるための方法であって、
前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力は、前記横断面Aの単位面積当たりで140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)であり、L1/S1は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)であり、
L1/S1を2.5~6.0m-1に、好ましくは、2.9~5.3m-1に増大させる一方、前記流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力を前記横断面Aの単位面積当たりで290~445kgプロピレンに増大させる工程を含む、方法。
【0018】
11.
不飽和ニトリルの製造方法であって、
不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含み、
前記流動床反応器の前記負荷は、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の負荷を増大させるための方法に従って増大させられる、製造方法。
【0019】
12.
プロピレン/アンモニア/空気(酸素分子として計算)のモル比は、1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、
反応温度は、420~440℃であり、
反応圧力(ゲージ圧)は、0.03~0.14MPaであり、
触媒の重量毎時空間速度は、0.06~0.15-1である、前述または後述の態様のうちのいずれかの態様に記載の方法。
【0020】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、既存の流動床反応器の概略正面図である。
【0021】
図2は、既存の流動床用反応熱除去管セットの概略上面図である。
【0022】
図3は、本出願に係る流動床用反応熱除去管セットの概略上面図である。
【0023】
図4A図4Dは、本出願に係る除熱管セットの除熱管の構成の概略図である。
【0024】
図5は、圧力脈動強度の図である。
【0025】
図6および図7は、本出願の除熱管ヘッダの構成の概略図である。
【0026】
(参照符号の説明)
1:流動床反応器の壁
2:除熱管
3:除熱管の冷却水入口
4:除熱管の冷却水出口
5:除熱管の下部接続継手
6:除熱管の上部接続継手
7:酸素含有気体のための分散板
8:プロピレン-アンモニア分配(分散)器
9:高効率サイクロンセパレータ
【0027】
〔技術的効果〕
本出願に係る除熱管セットおよび流動床反応器を用いることによって、装置の目的生成物の製造能力を向上させることができ、反応負荷を向上させるための要件を十分に満たすことができ、装置の運転コストを低減することができる。
【0028】
本出願に係る除熱管セットでは、より密接した配置を実現することができ、すなわち、反応器の単位横断面積当たり、より多くの直管を配置することができる。その結果、除熱能力を向上させることができる。
【0029】
本出願に係る除熱管セットおよび流動床反応器を用いることによって、流動床におけるフローパターンの変化を促すことができ、物質移動効率を向上させることができる。
【0030】
本出願に係る除熱管セットおよび流動床反応器を用いることによって、気泡の成長を効果的に抑制することができるため、供給気体の転化率を向上させることができ、目的反応生成物の収率を向上させることができる。
【0031】
本出願に係る除熱管セットおよび流動床反応器を用いることによって、気相および固相の逆混合(back mixing)の程度を低減することができ、深度酸化生成物の発生を低減することができる。
【0032】
本出願に係る除熱管セットおよび流動床反応器を用いることによって、熱伝達効率を向上させることができ、装置の運転期間を延長することができる。
【0033】
〔発明の詳細な説明〕
本出願をその実施形態に言及しつつ以下に詳細に説明するが、本出願の範囲はそれらの実施形態によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって画定されるものであることに留意されたい。
【0034】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照によって援用される。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含めて、本明細書に記載された内容が優先されるべきである。
【0035】
材料、方法、コンポーネント、デバイスまたは装置が「当業者に知られている」、「当技術分野で従来知られている」等と本明細書に記載されている場合、当該材料、方法、コンポーネント、デバイスまたは装置には、本出願の出願時において当技術分野で従来使用されているものだけでなく、現在一般的に使用されてはいないが同様の目的に適していることが当技術分野で一般的に知られるようになるであろうものも含まれるものと解されたい。
【0036】
本出願の文脈において、「実質的に」という語は、当業者によって許容され、または合理的であるとみなされる偏差(例えば、±10%以内の偏差、±5%以内の偏差、±1%以内の偏差、±0.5%以内の偏差または±0.1%以内の偏差)が存在し得ることを意味する。
【0037】
本出願の文脈において、別段に具体的な定めのない限り、百分率、割合、比率等は全て、重量に基づいて表されており、所与の圧力は全て、ゲージ圧である。
【0038】
本出願の文脈において、本出願の2個以上の任意の実施形態が任意に組み合わせられてもよい。その結果として得られる技術的解決手段は、本出願の当初の開示の一部を成しており、本出願の範囲内に含まれている。
【0039】
一実施形態によれば、本出願は、除熱管セット、特に、除熱水管セットに関する。本出願によれば、「除熱管セット」および「除熱管」は、反応が特定の温度範囲内に維持されるように、発熱反応(または、反応のいくつかの発熱段階)が行われる反応器から過剰な熱を除去するために使用され得る。反応器の例には、流動床反応器、より詳細には、アクリロニトリルを製造するための流動床反応器が含まれる。
【0040】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットは、少なくとも10個(好ましくは、10~100個、より好ましくは、20~80個)の除熱管を含む。典型的には、複数の除熱管は、冷却水入口と、複数の直管と、冷却水出口と、これらの管を流体連通するように接続するための複数の接続継手と、を含む。好ましくは、除熱管は、N(Nは、3以上、好ましくは、Nは、3~30、より好ましくは、Nは、3~20)個の直管と、それらの直管のうちの任意の隣り合う2個の直管を直列に接続し、かつそれらの間に流体連通を提供するためのN-1個の接続継手と、を含む。図3に示すように、各除熱管2は、冷却水入口3と、冷却水出口4と、少なくとも3個の隣り合う直管と、それらの直管のうちの任意の隣り合う2個の直管を直列に接続し、かつそれらの間に流体連通を提供するための接続継手と、を含む。図4に示すように、任意の2個の直管を接続するための接続継手が直管の下方に位置する場合(以下、単に「下部接続継手5」と称することがある)、それに隣り合う他の接続継手は、直管の上方に位置する(以下、単に「下部接続継手6」と称することがある)。
【0041】
本出願の文脈において、除熱管の冷却水入口に最も近い直管は、第1接続継手と称される。さらに、除熱管において、各直管は、冷却水が流れる方向に沿って、上流‐下流の位置関係を示す。本出願では、隣接する上流の位置をすぐ上流の位置と称し、隣接する下流の位置をすぐ下流の位置と称する。
【0042】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットは、流動床反応器の除熱セクションに配置されるように構成されている。明らかに、除熱管もまた、流動床反応器の除熱セクションに配置されるように構成されている。具体的には、除熱管の直管は、基本的に、流動床反応器の濃厚相領域(dense-phase area)内に配置され、反応熱をシステムから適時に除去して当該システムの安定的な運転を維持するために使用される。このため、本明細書の文脈において、「除熱セクション」とは、除熱管が配置されている流動床反応器の領域、より詳細には、除熱管の直管が配置されている流動床反応器の領域、より詳細には、除熱管の直管が配置されている流動床反応器の濃厚相領域内の領域を指す。
【0043】
従来技術では、除熱セクション内の除熱管セットは、典型的には、図2に示すように配置される、すなわち、除熱管は、直線状に配置される。他方、図1に示すように、サイクロン9のディップレッグ等のその他の内部コンポーネントも、流動床反応器の除熱セクション内に含まれている。このため、装置の流動化条件および高能力要件をさらに向上させるためには、既存の除熱管セットは、装置の正常な機能を可能にするのに十分ではない可能性がある。
【0044】
本出願の一実施形態によれば、流動床反応器の中心軸線に沿った除熱セクションの長さをH(単位:m)とすると、(横断面Aと称される)除熱セクションの横断面は、除熱セクションの長さHの領域全体内の位置において、流動床反応器の中心軸線に垂直な方向に沿って横断することによって得られる。ここで、除熱セクションの横断面とは、除熱セクションにおける流動床反応器の内部輪郭(inner contour)の横断面を指す。領域としては、当該横断面は、反応熱除去セクションの中心点よりも、好ましくは、49%H上のところから49%H下のところまでの領域内、より好ましくは、45%H上のところから38%H下のところまでの領域内、さらに好ましくは、40%H上のところから8%H下のところまでの領域内にある。
【0045】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットは、異形除熱管を含む。ここで、除熱管セット内の異形除熱管の個数は、少なくとも1個であり、好ましくは、1個、2個もしくは3個であり、または、除熱管セットの除熱管の総数の少なくとも20%、少なくとも50%もしくは少なくとも65%である。さらに、本出願の技術的効果を最適に達成する観点から、異形除熱管の個数は、除熱管セット内の除熱管の総数の多くとも88%であり、好ましくは、75%または70%である。理論的には、半径方向の反応温度の一貫性が維持されるように、作動中の除熱直管は、反応器の横断面上に均一に分布していることが望ましい。しかしながら、実際には、供給気体の供給量の変化とともに反応熱が変化し、反応器の床層内に固定された除熱直管については、作動中の除熱直管を完全に均一に分布させることはできないが、半径方向の反応温度差ができるだけ小さくなる(例えば、3℃以内となる)ように、それらの除熱直管をできる限り均一に分布させることが好ましい。化学反応によって放出される熱を推定することができ、必要となる除熱直管もまた、事前に算出することができる。異形除熱管が配置された領域の除熱能力が大幅に増大するので、隣り合う作動中の異形除熱管の間の距離が増大する。流動床の熱伝達効率は高いものの、2個の異形除熱管の間の領域から反応熱を適時に除去できないリスクがある。除熱管セット内の除熱管の全て(100%)が異形除熱管である場合、本出願の所望の技術的効果を効果的に達成することができないだろう。
【0046】
本出願の一実施形態によれば、異形除熱管は、少なくとも1個の(特殊接続継手と称される)接続継手の横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、少なくとも1個の他の接続継手の横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度(すなわち、角度A)が、0°よりも大きく、180°よりも小さい除熱管を指す。角度Aは、好ましくは、30°~150°であり、より好ましくは、60°~120°である。本出願の最適な技術的効果を実現する観点から、角度Aは、除熱直管の密接した配置が実現できるように、約90°であることが最も好ましい。さらに、異形除熱管における特殊接続継手の個数は、好ましくは、少なくとも2個、3個または4個であり、かつ、異形除熱管における接続継手の総数の多くとも80%、90%または100%である。最適な技術的効果を実現する観点から、十分な供給通路が装置内に維持されつつ、異形除熱管が同じ間隔で互いに平行に配置されるように、特殊接続継手の個数は、異形除熱管における接続継手の総数の100%であることが好ましい。
【0047】
本出願の一実施形態によれば、前記少なくとも1個の他の接続継手として、前記異形除熱管上の他の接続継手は、接続継手のすぐ上流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置にあることが好ましい。加えて、異形除熱管の第1接続継手は、当該第1接続継手のすぐ上流の位置がないという状況を考慮して、通常は除外される。第1接続継手の横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、冷却水入口の横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度(すなわち、角度A1)は、任意の値であってもよく、例えば、30°~180°、60°~180°、90°または180°であってもよい。上述した理由と同じ理由から、角度A1も、90°であることが好ましい。
【0048】
具体的には、横断面上の投影において、同じ除熱管2の接続継手および直管を、例えば、図4A図4Dに示すように配置してもよい。
【0049】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セット内の除熱管2の直管は、3.14×Dの外側輪郭周を有する実質的に円形の横断面外側輪郭を有する。ここで、Dは、直管の外側輪郭の直径である。したがって、図3に示す除熱セクションの横断面において、除熱管セットの全ての直管の横断面の外側輪郭周の総和L1は、除熱セクションの横断面における全ての直管の外側輪郭周の総和である。
【0050】
本出願の一実施形態によれば、横断面Aの面積をS1(単位:m)とし、横断面A上における除熱管セットの全ての直管の横断面の外側輪郭周の総和をL1(単位:m)とすると、L1/S1は、1.0~6.0m-1(好ましくは、2.4~5.6m-1であり、より好ましくは、2.9~5.3m-1)である。ここで、L1/S1は、横断面A上における全ての除熱管(または、直管)の分布密度を表し、本出願の技術的効果を達成するに際してその最適な範囲が存在する。L1/S1の分布密度が1.0よりも小さい場合には、装置の運転反応負荷が小さくなり、その結果、製造コストが高くなり、事業の経済性に乏しくなる。L1/S1の分布密度が6.0よりも大きい場合には、高い反応負荷で装置が運転でき、その結果、より多くの反応熱を除去する要件に応じることができ、反応器内の異形除熱管の個数を増やすことができる。反応温度の安定性が運転プロセスにおいて損なわれることがあり、または、保守のための空間が縮小されることがある。
【0051】
一実施形態によれば、本出願は、除熱管セットに関する。当該除熱管セットは、流動床反応器の除熱セクションに配置されており、少なくとも1個(好ましくは、10~100個、より好ましくは、20~80個)の除熱管を含む。除熱管は、N(Nは、3以上、好ましくは、Nは、3~30、より好ましくは、Nは、3~20)個の直管と、それらの直管のうちの任意の隣り合う2個の直管を直列に接続し、かつそれらの間に流体連通を提供するためのN-1個の接続継手と、を含む。流動床反応器の中心軸線に沿った除熱セクションの長さをH(単位:m)とし、除熱セクションの長さHの領域全体内(好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、49%H上のところから49%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、45%H上のところから38%H下のところまでの領域内、より好ましくは、反応熱除去セクションの中心点よりも、40%H上のところから8%H下のところまでの領域内)の位置において、流動床反応器の中心軸線に垂直な方向に沿って横断することによって得られる除熱セクションの横断面の面積をS1(単位:m)とすると、除熱管において、少なくとも1個の接続継手の横断面上の投影の中心軸線の延長線と、少なくとも1個の他の接続継手の横断面上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、0°よりも大きく180°よりも小さく(好ましくは、30°~150°、より好ましくは、60°~120°、より好ましくは、90°)、横断面において、除熱管セットの全ての直管の横断面の外側輪郭周の総和をL1(単位:m)とすると、L1/S1は、1.0~6.0m-1(好ましくは、2.0~4.0m-1、より好ましくは、2.5~3.5m-1)である。
【0052】
本出願の一実施形態によれば、前記面積S1は、20~700m(好ましくは、35~350m)である。
【0053】
本出願の一実施形態によれば、L1は、20~4200mであり、好ましくは、87.5~1225mである。
【0054】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットにおける直管の総数をNtとすると、横断面Aの単位面積当たりの直管の個数、すなわちNt/S1は、4~16個/m(好ましくは、5~14個/m、より好ましくは、7~13個/m)である。ここで、Nt/S1は、横断面A上における除熱管(または、直管)の分布密度を表し、本出願の技術的効果を達成するに際してその最適な範囲が存在する。Nt/S1の分布密度が4よりも小さい場合には、流動床の気泡の破壊に有利ではないため、より多くの供給気体が反応に関与しない気体と共に反応器から外へ運ばれ、反応結果に影響が及んでしまう。また、Nt/S1の分布密度が16よりも大きい場合には、反応の高負荷運転に応じることができる。しかしながら、運転プロセス中の反応温度が不安定になり、異形除熱管の増加によって保守のための空間が縮小されるリスクがある。
【0055】
本出願の一実施形態によれば、横断面Aの輪郭は、円形、楕円形または卵形であり、好ましくは、円形または実質的に円形である。
【0056】
本出願の一実施形態によれば、直管の横断面の内側輪郭および外側輪郭は、円形、楕円形または卵形であり、好ましくは、円形または実質的に円形である。
【0057】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットは、1~10MPaの飽和蒸気を回収することができ、好ましくは、2~8MPaの飽和蒸気を回収することができ、より好ましくは、3~5MPaの飽和蒸気を回収することができる。具体的には、除熱管セットの除熱能力は、4.5MPaの飽和蒸気を回収すると評価される場合、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり0.5~3.0tの飽和蒸気であり、好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.0~2.8tの飽和蒸気であり、より好ましくは、一時間当たりで単位横断面積(m)当たり1.2~2.4tの飽和蒸気である。ここで、単位横断面積は、横断面Aの単位面積を指す。従来技術と比較して、除熱管セットは、より多くの飽和蒸気を回収することができ、それによって、より強い除熱能力を示し、高反応負荷の要件を満たす。
【0058】
本出願の一実施形態によれば、除熱管セットは、従来の除熱管をさらに含み、従来の除熱管および異形除熱管は共に、除熱管セットを形成する。ここで、従来の除熱管では、複数の接続継手のうちのいずれか1つの接続継手の横断面A上の投影の中心軸線の延長線と、当該接続継手のすぐ上流またはすぐ下流の位置であって当該接続継手と流体連通する位置における、除熱管上の他の接続継手の横断面A上の投影の中心軸線の延長線とのなす角度は、180°である。要するに、従来の除熱管については、全ての直管が同じ平面内に配置されている。
【0059】
本出願の文脈において、除熱管は、特に明記しない限り、異形除熱管と従来の除熱管との両方を包含する。
【0060】
本出願の一実施形態によれば、複数(好ましくは、2~8個、2~6個または2~4個)の除熱管の冷却水入口は、除熱セクションにおける冷却水入口ヘッダに併合されている。言い換えれば、複数の除熱管は、1個の冷却水入口を共有する。本出願によれば、冷却水入口ヘッダは、流動床反応器の壁を通じて、外部の冷却水供給源と流体連通しており、それによって、冷却水が、冷却水入口ヘッダを通じて各除熱管へ供給される。この場合の除熱管(除熱分岐管と称される)は、従来の除熱管、異形除熱管、またはこれらの任意の組み合わせであってもよく、特に限定されていない。
【0061】
本出願の一実施形態によれば、複数(好ましくは、2~8個、2~6個または2~4個)の除熱管の冷却水出口は、除熱セクションにおける冷却水出口ヘッダに併合されている。言い換えれば、複数の除熱管は、1個の冷却水出口を共有する。本出願によれば、冷却水出口ヘッダは、流動床反応器の壁を通じて、外部の冷却水受容手段と流体連通しており、それによって、除熱後の冷却水(通常、さらに蒸気を含む)が、冷却水出口ヘッダを通じて除熱管から外部環境へ送出される。この場合の除熱管(除熱分岐管と称される)は、従来の除熱管、異形除熱管、またはこれらの任意の組み合わせであってもよく、特に限定されていない。
【0062】
図6および図7は、本出願の除熱管ヘッダの構成の概略図である。図から分かるように、複数の除熱管の複数の冷却水入口/冷却水出口は、ヘッダに併合されている。
【0063】
本出願の一実施形態によれば、ヘッダ(例えば、冷却水入口ヘッダまたは冷却水出口ヘッダ)の横断面積の、それに対応する(一般に、複数の除熱分岐管の冷却水入口または冷却水出口に基づいて算出される)複数の除熱分岐管の横断面積の総和に対する比率は、0.5~1であり、好ましくは、0.55~0.95であり、より好ましくは、0.6~0.9である。除熱管全体に占める除熱分岐管の割合は、通常、66%以下であり、好ましくは、50%以下であり、より好ましくは、33%以下である。
【0064】
本出願の一実施形態によれば、複数の直管の外径は、各々独立に、80~180mm、好ましくは、90~170mmである。
【0065】
本出願の一実施形態によれば、直複数の管の内径は、各々独立に、60~150mm、好ましくは、70~140mmである。
【0066】
本出願の一実施形態によれば、複数の直管の長さは、各々独立に、4~13m、好ましくは、5~12.0mである。
【0067】
本出願の一実施形態によれば、各除熱管上の隣り合う2個の直管の間の距離は、100~700mm、好ましくは、150~300mmである。
【0068】
本出願の一実施形態によれば、除熱セクションの長さHは、4~13m(好ましくは、5~12m)である。
【0069】
本出願の一実施形態によれば、流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力(full propylene treatment capacity)が横断面Aの単位面積当たり140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)である場合、L1/S1は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)であり、好ましくは、1.4~2.2m-1である。これは、より低い運転負荷での流動床反応器の運転条件を表す。
【0070】
本出願の一実施形態によれば、流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が横断面Aの単位面積当たり200~370kgプロピレンである場合、L1/S1は、1.8~4.6m-1であり、好ましくは、2.0~4.1m-1である。これは、中間的な運転負荷での流動床反応器の運転条件を表す。
【0071】
本出願の一実施形態によれば、流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力が横断面Aの単位面積当たり290~445kgプロピレンである場合、L1/S1は、2.5~6.0m-1であり、好ましくは、2.9~5.3m-1である。これは、より高い運転負荷での流動床反応器の運転条件を表し、本出願の最も好ましい運転条件である。
【0072】
一実施形態によれば、本出願はさらに、流動床反応器に関する。当該反応器は順に、ヘッドと、希薄相ゾーンと、除熱セクションと、予備反応セクションと、コーンと、を上から下へ含み、本出願における前述した実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に記載された除熱管セットが、除熱セクションに配置されている。
【0073】
一実施形態によれば、本出願はさらに、不飽和ニトリルの製造方法に関し、特に、アクリロニトリルの製造方法に関する。当該方法は、不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、前述した実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に記載された流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含む。
【0074】
一実施形態によれば、本出願はさらに、流動床反応器の反応負荷を増大させるための方法に関する。輸送流動床反応器(conveying fluidized bed reactor)の初期反応負荷として、輸送流動床反応器の一時間当たりの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり140~290kgプロピレン(ただし、終点290を除く)であり、当該流動床反応器のL1/S1の初期値は、1.0~2.5m-1(ただし、終点2.5を除く)である。反応負荷の増大を達成するために、当該方法は、流動床反応器の最大プロピレン処理能力を初期反応負荷から前記横断面Aの単位面積当たりで一時間当たり290~445kgプロピレンに増大させる工程を含み、反応が円滑に行われ得ることが保証されるようにこの増大した反応負荷に対応するよう、L1/S1を、初期値から2.5~6.0m-1に、好ましくは、2.9~5.3m-1に増大させる必要がある。
【0075】
一実施形態によれば、本出願はさらに、不飽和ニトリルの製造方法であって、不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル)が得られるように、流動床反応器内でオレフィン(例えば、プロピレン)をアンモ酸化反応に供する工程を含み、当該流動床反応器の負荷は、本明細書に記載された前述した実施形態のうちのいずれかの実施形態に記載された負荷を増大させるための方法に従って増大させられる、製造方法に関する。
【0076】
本出願の一実施形態によれば、アンモ酸化反応は、当技術分野で従来知られている任意の態様および任意の方法で実施されてもよく、かかる情報は当業者に知られているため、本明細書中に詳細に記載することはしないが、アンモ酸化反応に関する条件として、その具体例には、プロピレン/アンモニア/空気(酸素分子として計算)のモル比は、1:1.1~1.3:1.8~2.0であり、反応温度は、420~440℃であり、反応圧力(ゲージ圧)は、0.03~0.14MPaであり、触媒の重量毎時空間速度(weight hourly space velocity)は、0.06~0.15h-1であるものが含まれる。
【0077】
(実施例)
以下、実施例および比較例を参照して本出願を詳細にさらに説明するが、本出願は、これらの例に限定されるものではない。
【0078】
以下の実施例および比較例において、アクリロニトリルの収率およびプロピレンの転化率は、以下の式に従って算出することができる:
アクリロニトリル(acrylonitrile)の収率:AN%=CAN/ΣC*100
プロピレンの転化率:Cc%=(1-Cc3out/Cc3in)*100
ここで、
AN:反応器の出口における気体中のANに含まれる炭素のモル量(mol)
ΣC:反応器の出口における気体中の炭素の総モル量(mol)
Cc3out:反応器の出口における気体中のCに含まれる炭素のモル量(mol)
Cc3in:反応器の入口における気体中のCに含まれる炭素のモル量(mol)。
【0079】
図5に示すように、流動床の圧力脈動強度(pressure pulsation intensity)が「高周波低振幅」特性を示す場合に流動化質が良好であると評価できることが、当技術分野で知られている。以下の全ての実施例において、流動床の圧力脈動強度は、図5のものと同様であった。
【0080】
以下の実施例および比較例において、具体的に配置されていない除熱管は、従来の除熱管である。
【0081】
(実施例1)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管480個を44個の除熱管に分けて反応器内に配置した。12個の除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、7.6個/mであった。除熱管の外径は、89mmであった。L1/S1は、2.1/mであった。
【0082】
プロピレンの供給速度は、7700NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり227kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの飽和蒸気1.24tであった。
【0083】
(実施例2)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管572個を56個の除熱管に分けて反応器内に配置した。36個の除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.0個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、4.0であった。
【0084】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.98tであった。
【0085】
(実施例3)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管732個を70個の除熱管に分けて反応器内に配置した。42個の除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、11.5個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、114mmであった。L1/S1は、4.1であった。
【0086】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気2.01tであった。
【0087】
(実施例4)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管584個を58個の除熱管に分けて反応器内に配置した。36個の除熱管を図4Bに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.18個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、114mmであった。L1/S1は、3.3であった。
【0088】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.98tであった。
【0089】
(実施例5)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管732個を72個の除熱管に分けて反応器内に配置した。52個の除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、11.5個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、5.1であった。
【0090】
プロピレンの供給速度は、14400NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり425kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気2.40tであった。
【0091】
(実施例6)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管584個を56個の除熱管に分けて反応器内に配置した。32個の除熱管を図4Cに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.18個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、4.04/mであった。
【0092】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.93tであった。
【0093】
(実施例7)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管584個を56個の除熱管に分けて反応器内に配置した。32個の除熱管を図4Dに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.18個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、4.04/mであった。
【0094】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.94tであった。
【0095】
(実施例8)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管584個を56個の除熱管に分けて反応器内に配置した。48個の除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.18個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、4.04であった。
【0096】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.98tであった。
【0097】
(比較例1)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管380個を36グループに分けて反応器内に配置した。除熱管セットを図2に示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、6.0個/mであった。各除熱管の外径は、89mmであった。L1/S1は、1.67/mであった。
【0098】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。装置の運転プロセス中、除熱管セットを用いて反応温度を安定的に制御することができなかっただろう。除熱管の量が不十分であるため、装置の長期安定運転を達成することができなかっただろう。
【0099】
(比較例2)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管584個を56個の除熱管に分けて反応器内に配置した。除熱管セットを図2に示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、9.18個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、4.04/mであった。
【0100】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。除去熱量は、単位面積当たり蒸気1.98tであった。
【0101】
装置の正常運転を達成することができただろうが、装置が停止されたとき、内部コンポーネントの保守および修理を果たすことができなかっただろう。
【0102】
(比較例3)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管532個を46個の除熱管に分けて反応器内に配置した。全ての除熱管を図4Aに示すように配置した。中心点における除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、8.37個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、89mmであった。L1/S1は、2.34であった。
【0103】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.88tであった。実施例2と比較すると、流動化の質が悪化し、結果として、プロピレンの転化率の低下および反応生成物の収率の低下が生じ、それゆえに反応における発熱の低下が生じた。
【0104】
(実施例8)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管732個を70個の除熱管に分けて反応器内に配置した。3個の除熱管セットを並列に接続して、4グループを形成した。各除熱管の入口ヘッダの外径は、140mmであり、各除熱管の出口ヘッダの外径は、150mmであった。中心点における各除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、11.5個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各除熱管を形成した。各除熱管の外径は、89mmであった。L1/S1は、3.2であった。入口ヘッダの横断面積の、複数の除熱分岐管の横断面積の総和に対する比率は、0.82であった。出口ヘッダの横断面積の、複数の除熱分岐管の横断面積の総和に対する比率は、0.95であった。
【0105】
プロピレンの供給速度は、11800NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり349kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気1.98tであった。
【0106】
(実施例9)
流動床反応器は、直径9mであった。Sinopec Shanghai Research Institute of Petrochemical Technology Co., Ltd.のSANCシリーズのアクリロニトリル触媒180トンを反応器内に充填した。同じ高さの直管732個を70個の除熱管に分けて反応器内に配置した。2個の除熱管セットを並列に接続して、10グループを形成した。各除熱管の入口ヘッダの外径は、180mmであり、各除熱管の出口ヘッダの外径は、180mmであった。中心点における各除熱セクションの横断面の単位面積当たりの直管の個数は、11.5個/mであった。直管接続継手を通じ、6個、10個および12個の除熱管直管を直列に接続して、各グループを形成した。各除熱管の外径は、140mmであった。L1/S1は、5.1であった。入口ヘッダの横断面積の、複数の除熱分岐管の横断面積の総和に対する比率は、0.83であった。出口ヘッダの横断面積の、複数の除熱分岐管の横断面積の総和に対する比率は、0.83であった。
【0107】
プロピレンの供給速度は、14400NM/hであった。このときの最大プロピレン処理能力は、横断面Aの単位面積当たり425kgプロピレン/hであった。反応温度は、430℃であった。反応圧力は、0.04MPaであった。プロピレン:アンモニア:空気は、1:1.2:9.6であった。反応は、長時間(例えば、10000h)安定的に運転できただろう。一時間当たりの除去熱量は、単位面積当たり4.5MPaの蒸気2.40tであった。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】既存の流動床反応器の概略正面図である。
図2】既存の流動床用反応熱除去管セットの概略上面図である。
図3】本出願に係る流動床用反応熱除去管セットの概略上面図である。
図4A】本出願に係る除熱管セットの除熱管の構成の概略図である。
図4B】本出願に係る除熱管セットの除熱管の構成の概略図である。
図4C】本出願に係る除熱管セットの除熱管の構成の概略図である。
図4D】本出願に係る除熱管セットの除熱管の構成の概略図である。
図5】圧力脈動強度の図である。
図6】本出願の除熱管ヘッダの構成の概略図である。
図7】本出願の除熱管ヘッダの構成の概略図である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
【国際調査報告】