IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥングの特許一覧

特表2024-513916スキッドを有するエナジーチェーン及びそのための後付け可能なスキッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】スキッドを有するエナジーチェーン及びそのための後付け可能なスキッド
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/16 20060101AFI20240319BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20240319BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F16G13/16
H02G11/00 060
H02G3/04 075
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561677
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022059283
(87)【国際公開番号】W WO2022214601
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202021101925.5
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ストラック
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルマイ
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DD16
5G371BA01
5G371CA02
(57)【要約】
本発明によると、クロスバー(104;・・・504)は、その端部の両方において、いずれもサイドプレート(103)に向かう張出部(318;418;518)を有する。保持デバイス(205;・・・505)は、長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって保持デバイスは張出部(318;418;518)の間でクロスバー(104;・・・504)に嵌合可能であり、側方外向きにずらされて張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、その係合において、対向する保持要素(209;409;509)は当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合して動作位置でスキッド(101;・・・501)を締結する。
【選択図】図3G
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が他方に対して可動な2つの接続点(6、7)の間で、例えば、ケーブル、ホースなどのようなラインをガイドするためのエナジーチェーン(10)であって、
長手方向(L)に沿って接続された複数のリンク(102)であって、相互に対して回動可能であり、各々が2枚のサイドプレート(103)及びそれらを相互に接続するクロスバー(104;・・・504)を有し、前記接続点(6、7)の相対移動の場合、前記エナジーチェーン(10)は可動であり、偏向領域(3)を介して一体となる2本のラン(4、5)を構成する、複数のリンク(102)を備え、
一方のラン(4)は他方のラン(5)上を摺動可能であり、該摺動のために、いずれも一対のスキッド(101;・・・501)が前記偏向領域(3)において内側面(16)及び少なくとも1つの長手部分のリンク(102)に配置され、一対の両スキッド(101;・・・501)は、いずれも、保持デバイス(205;・・・505)によってクロスバー(104;・・・504)に締結され、いずれも、動作位置において前記2枚のサイドプレート(103)の一方のサイドプレートの狭面(107)上に達し、
少なくともスキッド(101;・・・501)が設けられた前記クロスバー(104;・・・504)は、その端部の両方において、いずれも前記サイドプレート(103)に向かう張出部(318;418;518)を有し、
前記保持デバイス(205;・・・505)は、前記長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって前記保持デバイス(205;・・・505)は前記張出部(318;418;518)の間で前記クロスバー(104;・・・504)に嵌合可能であり、側方外向きにずらされて前記張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、該係合において、前記対向する保持要素(209;409;509)は当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合して前記動作位置において前記スキッド(101;・・・501)を締結する、エナジーチェーン(10)。
【請求項2】
エナジーチェーン(10)のための後付け可能なスキッド(101;・・・501)であって、少なくとも、上側面の摺動面(206;406;506)と、前記スキッド(101;・・・501)を前記エナジーチェーン(10)のリンク(102)に締結するための下側面の保持デバイス(205;・・・505)と、を備え、
前記保持デバイス(205;・・・505)は、クロスバー(104;・・・504)の2つの端部側張出部(318;418;518)の一方と協働するために設計され、これのために、前記長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって前記保持デバイス(205;・・・505)は前記張出部(318;418;518)の間で前記クロスバー(104;・・・504)に嵌合可能となり、側方外向きにずらされて前記張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、前記対向する保持要素(209;409;509)が、当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合するように設計された、後付け可能なスキッド(101;・・・501)。
【請求項3】
前記保持デバイス(205;405;505)は、前記スキッド(101;・・・501)の前記動作位置において側方への変位に対して前記スキッド(101;・・・501)を固定するために、又は各前記張出部(318;418;518)への前記保持要素(209;409;509)の係合の場合に、前記クロスバー(104;・・・504)の凸部(311)及び/又は凹部(411;511)と係止する少なくとも1つの係止要素(210;413;513)を有する、請求項1に記載のエナジーチェーン(10)又は請求項2に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項4】
前記保持デバイス(205;405;505)は、前記長手方向(L)に離間した2つの係止要素(210;413;513)を有し、該2つの係止要素は、
いずれも、前記クロスバー(304)の前記張出部(318)の2つの前面係止ラグ(311)の一方と係止態様で協働し、かつ/又は
前記クロスバー(404;504)を取り外すために設けられた上側面の工具開口部(411;511)と係止態様で協働する、請求項3に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項5】
前記保持要素(209;409;509)は、相互に向き合う保持顎(209)、保持爪(509)として、又は相互に向き合う保持溝(409)を有する突出部として設計され、前記摺動面(206;406;506)とは逆を向く前記スキッド(101;・・・501)の下側面(203;403;503)上に又はそこから突出している、請求項1から4のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項6】
前記保持要素(209;409;509)は、前記張出部(318;418;518)の協働領域の前記長手方向(L)を向く前記前面(310;410;510)の周囲に係合し、前記張出部(318;518)の背部に係合し、かつ/又は前記張出部(318;418;518)の対応する領域の前記長手方向(L)を向く前記前面(310;410;510)の凹部若しくは凸部(422)と積極的ロックの態様で協働する、請求項1から5のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項7】
前記保持デバイス(505)は相互に前記長手方向(L)に離間した一対のガイド要素(532)を有し、該一対のガイド要素は前記動作位置への前記スキッド(501)の変位の場合に前記クロスバー(504)の前面(510)上を摺動する、請求項1から6のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(501)。
【請求項8】
前記スキッド(101;・・・501)は、前記動作位置において各前記サイドプレート(103)の狭面(107)上に達する側方外側の摺動領域(202b;402b;502b)、及びその下方に前記保持デバイス(205;405;505)が配置される前記長手方向(L)にオフセットされた内側摺動領域(202a;402a;502a)を有する上側面の摺動面(206;406;506)を有し、
好ましくは、各前記サイドプレート(103)の前記狭面(107)への載置のための下側面の対抗面(203b;403b;503b)が、前記外側摺動領域(202b;402;502b)の下方に設けられた、請求項1から7のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項9】
前記スキッド(101;・・・501)は、特に各摺動領域(202a;202b;・・・502a;502b)上で前記長手方向(L)に向く前面傾斜部(208;408;508)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項10】
前記保持要素(209;409;509)の各々は、前記クロスバー(104;・・・504)の端部において連続して拡大する前面(310;410;510)に相補的に形成された接触面(214;414;514)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項11】
前記スキッド(101;・・・501)は、独立した一体のプラスチック部品、特に、射出成形部品として生産され、かつ/又は
前記スキッド(101;・・・501)は、少なくとも前記摺動面上に、前記サイドプレートの材料に対して最適化された摩損挙動、摩耗挙動及び/若しくは摩擦挙動を有するプラスチックを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項12】
前記クロスバー(104;・・・504)は、その張出部(318;418;518)の側方支持面(320;420;520)によって各前記サイドプレート(103)の内面(109a)に当接し、かつ
梃機構(331)によって前記サイドプレート(103)の締結突出部(330)に好ましくは締結され、前記スキッド(201)はその上側面(202)に前記クロスバー(304)の操作レバー(331)のための切欠き(230)を有し、又は
各前記サイドプレート(103)の前記内面(109a)において係止ホーン(430)に係止態様で締結される、請求項1から11のいずれか一項に記載のエナジーチェーン(10)。
【請求項13】
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)のためのチェーンリンク(102)であって、2枚のサイドプレート(103)及びそれらを接続する2本のクロスバー(104;・・・504)を備え、
請求項1から12のいずれか一項に記載のクロスバー(104;・・・504)及び2つのスキッド(101;・・・501)を備えるチェーンリンク(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略として、少なくとも一方が他方に対して可動な2接続点間に、例えば、ケーブル、ホースなどのようなラインを動的にガイドするためのエナジーチェーン(energy chains)、及びそのようなエナジーチェーンのための後付け可能なスキッドに関する。
【0002】
そのようなエナジーチェーンは、長手方向に接続された複数のリンクを備え、それらは相互に対して回動可能(pivotable)であり、各々が、2枚のサイドプレート、及びそれらを相互に接続するとともにガイド対象のラインに対して長手方向を横切る受容空間を画定するクロスバーを有する。接続点の相対移動の場合、エナジーチェーンは可動であり、偏向領域を介して一体となる2本のランを構成する。
【0003】
本発明は、特に、長距離移動を目的とするエナジーチェーンに関する。長距離移動の場合、移動ランは、部分的に、静止ラン上に接触して移動することができる。長距離移動の場合、エナジーチェーンは通常、ガイドチャネル内でもガイドされる。静止ラン上に支持されない領域では、移動ランは、摺動レール上を移動することができる。
【0004】
ラン及び摺動レール上の可動ランの相互摩擦は、摩耗の原因となる。この摩耗を軽減するために、相互に摺動するスキッド又は摺動シューをエナジーチェーンに装着することが知られている。あるいは、エナジーチェーンにローラが設けられると、摩擦は完全に防止され得る。
【0005】
本発明は、摺動的に又は摺動可能に存在して配置されるエナジーチェーン及び下側ラン上に摺動可能なその上側ランに関する。本発明は、特に、摺動のために、偏向領域内の内側面の少なくとも1つの長手部分にスキッドが装着された、いわゆる摺動エナジーチェーンに関する。通常、一対のスキッドが、チェーンリンクの各々に配置される。
【背景技術】
【0006】
当技術では摺動シューともいわれるエナジーチェーンのためのスキッドは、例えば、特許文献1及び特許文献2により、知られている。特許文献1又は特許文献2に係るスキッドは、取外し可能であり、ロッキングによってサイドプレートに締結される。これは、スキッドの引っ掛け手段と協働する引っ掛け手段が装着された特殊なサイドプレートを必要とする。
【0007】
取外し可能なクロスバーに設けられるスキッドは既に開発されており、それらは既存のエナジーチェーンを後付けするのに適している。特許文献3による実施形態例では、いずれも一対のスキッドがクロスバーと一体として生産されることが規定される。ここで、動作位置において、スキッドはサイドプレートの狭面の上方においてチェーンリンク上に存在し、又はそれら狭面を覆う。
【0008】
しかし、この特許文献3による実施形態例では、既存のエナジーチェーンを後付けするためには、既存のクロスバーは、取り外され、スキッドを有するクロスバーに交換されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0415029号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102006019966号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/121716号
【発明の概要】
【0010】
したがって、スキッドを有するエナジーチェーンの一層容易な後付け手段であって、特にチェーンリンクが開放されることを要さずに、それでもなおスキッドのための充分な保持を与える後付け手段を開発することが本発明の課題である。
【0011】
摺動用途のための包括的エナジーチェーンはいずれも、偏向領域において内側面及び少なくとも1つの長手部分においてリンク上に一対のスキッドを有し、一対の両スキッドは、いずれも保持デバイスによってクロスバーに締結され、いずれも動作位置において2枚のサイドプレートの一方のサイドプレートの狭面上に達する。
【0012】
包括的エナジーチェーンの場合、上記課題は、それぞれのサイドプレートに接続されるその2つの端部において、少なくとも、スキッドが設けられたクロスバーが、いずれもサイドプレートに向かう張出部を有する。保持デバイスは、長手方向に離間した2つの対向する保持要素であって、それにより、保持デバイスが張出部間でクロスバーに嵌合可能でありかつ側方外側にずらされて張出部の一方と係合を可能とする保持要素を有する。その係合では、対向する保持要素は、積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で当該張出部の領域の内部又は背部に係合してスキッドを動作位置に締結する。これにより、サイドプレートでの係合は不要となる。
【0013】
本発明はまた、エナジーチェーンのための後付け可能なスキッドに関する。包括的スキッドは、スキッドをエナジーチェーンのリンクに締結するために、少なくとも上側面の摺動面及び下側面の保持デバイスを備える。
【0014】
本発明によると、保持デバイスがクロスバーの2つの端部側張出部の一方と協働するために設計され、これのために、2つの相互に対向する保持要素を有することが提案され、当該対向する保持要素は、長手方向に離間し、それにより、保持デバイスは張出部間でクロスバーに嵌合可能となり、側方外向き、特に、クロスバーの端部に向けて又はサイドプレートの一方に向けてずらされて張出部の一方と係合可能となる。対向する保持要素は、当該張出部の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は摩擦ロックの態様で係合するように設計される。
【0015】
特に、スキッドは、その動作位置において、2枚のサイドプレートの一方のサイドプレートの狭面上に達するように形成される。
【0016】
本発明に係る解決手段は、スキッドが容易にかつ特殊工具なしに、すなわち、クロスバーへの嵌合及び係合位置への押込みによって設置可能であるという有利な効果を有する。スキッドは、逆の順序で複雑でない態様でクロスバーから再度取外し可能であり、結果として、必要に応じて容易に交換可能となる。嵌合されたスキッドは、特に、エナジーチェーンをガイドチャネルから取り外すことなく容易にアクセス可能である。
【0017】
本発明に係るスキッドは容易に後付け可能であり、結果として、既存のエナジーチェーンにはガイドチャネルにおいてスキッドが直接装着可能となる。
【0018】
またさらに、サイドプレートの既に摩耗した狭面によって当初からスキッドなしに摺動するエナジーチェーンにも、スキッドが後に装着可能となる。したがって、それ以外の重度に摩耗したチェーンは、その摩耗が致命的となる前に摺動シューによって修理可能となる。したがって、既存の既に設置されたエナジーチェーンの寿命が、省コストな態様で延長可能となる。
【0019】
クロスバーへのスキッドの締結は、容易な設置及び取外しにもかかわらず特に強固である。一方では、2つの保持要素間の距離が長くなるほど、クロスバーからのスキッドの取外しに対して作用する反力のための梃手段が長くなり、それは摩擦力によって有利となる。他方では、エナジーチェーンの長手方向を横断する方向への意図された分解時に、スキッドを、クロスバー上で、すなわち、通常の負荷の作用の方向に横断する方向に、例えば、摩擦力によってずらすことができる。
【0020】
本発明に係る解決手段のさらなる有利な効果はスキッドの小型かつ省スペースな締結であり、結果として、分離バーを取り付けるための充分な空間がクロスバー上に残る。分離バーは、クロスバー間にサイドプレートに平行に取り付けられてチェーンリンクの受容空間を小分けすることができる。
【0021】
長手方向という用語は、一般に、エナジーチェーン又はチェーンにおいてガイドされた又はガイドされるラインの長手伸張の方向のことをいう。エナジーチェーンのプレートストランドの相互に回動可能に接続されたサイドプレートは、例えば、長手方向において相互に接続される。エナジーチェーンの2本のプレートストランドは、クロスバーによって、横断方向に、特に長手方向に対して垂直に相互に接続される。エナジーチェーンのリンク、すなわち、チェーンリンクの2枚の対向するサイドプレートは、相互に横断方向に離間している。プレート高さの方向、すなわち、高さ方向は、長手及び横断方向に対して垂直に延びる。チェーンリンクは、高さ方向に相互に離間した2本のクロスバーを有し得る。エナジーチェーンが移動可能な動作平面は、長手及び高さ方向が存在する平面である。動作時に、動作平面に対して垂直に延び得るエナジーチェーンは、偏向軸周りに屈曲又は偏向される。
【0022】
サイドプレート及びクロスバーは、プレート状に形成される。サイドプレートは、2つの主面であって、チェーンリンクの受容空間を向く内面を形成する主面、及びチェーンリンクの受容空間とは逆を向く外面を形成する主面を有する。サイドプレートは、長手方向に延在する2つの長い狭面、及び長手方向を向く2つの短い狭面をさらに有する。クロスバーも、2つの主面であって、チェーンリンクの受容空間に向く下側面、及びチェーンリンクの受容空間とは逆を向く上側面を有する。上側面及び下側面という用語は、鉛直に対する上側ランでの構成は下側ランと比較して反転されるので、特に鉛直との関連では使用されない。クロスバーは、横断方向に延在して長手方向を向く2つの狭面、すなわち、前面、及び長手方向に延在してサイドプレートの内面との当接のための支持面を形成する2つの短い狭面をさらに有する。
【0023】
クロスバーの主面は、クロスバーの端部に向かって拡がる。クロスバーのこれらの端部側張出部は、クロスバーの中央断面よりも長手方向に大きな寸法を有する端部側支持面となる。2つのスキッドはいずれも、端部側張出部の間で横断方向に関して、1本のクロスバーに嵌合され、それぞれのスキッドの保持デバイスが対応の張出部に係合し又は張出部に嵌合されるまで、側方外側に、すなわち、張出部に向けて又はサイドプレートに向けてクロスバーに沿ってずらされる。相互に長手方向に離間した各スキッドの相互に対向する保持要素は、当該張出部の内部若しくは背部に又は張出部の領域内でクロスバーの前面の内部若しくは背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合する。
【0024】
スキッドの保持要素は、特に、エナジーチェーンの長手方向のずれに対抗して及びチェーンリンクの高さ方向へのスキッドの離脱に対抗してスキッドを固定するために、係合位置においてクロスバーのそれぞれの端部側張出部と協働する。言い換えると、保持要素は、長手方向及び高さ方向が存在するエナジーチェーンの動作平面内の変位に対抗してスキッドを固定する。
【0025】
スキッドの保持デバイスは、好ましくは、スキッドの動作位置において又は各張出部を有する保持要素の係合位置において、側方への変位、すなわち、クロスバーに沿う変位に対抗してスキッドを固定するために、クロスバーの凸部及び/又は凹部とロックする少なくとも1つの係止要素を有する。言い換えると、係止要素は、エナジーチェーンの動作平面に垂直な変位に対抗してスキッドを固定する。
【0026】
一実施形態では、クロスバーは、その張出部の各々において、いずれもスキッドにロックするための2つの前面係止突出部又は係止ラグを有し得る。スキッドの保持デバイスは、2つの係止要素であって、特に、長手方向、すなわち、摺動方向において相互に離間され、各々がクロスバーの張出部において2つの前面係止ラグの一方と係止態様で協働する2つの係止要素を有し得る。係止要素は、例えば、スキッドが係止位置又は意図された動作位置に押し込まれた後に積極的ロックの態様で係止ラグの背部に係合する係止エッジとして設計され得る。
【0027】
代替的又は追加的に、スキッドの係止要素は、クロスバーをサイドプレートから取り外すためのクロスバーに設けられ得る上側面の工具開口部と係止態様で協働可能である。この場合、係止要素は、特に、スキッドの動作位置における工具開口部に係合する係止カムとして形成され得る。
【0028】
スキッドは、特に、プレート状に設計可能であり、2つの主面であって、摺動面を形成する上側面ともいわれる主面、及び摺動面とは逆を向く下側面又は締結面ともいわれる主面を有し得る。下側面及び上側面という用語は、特定の鉛直構成をいうものではない。またさらに、スキッドは、長手方向に延在する2つの狭面、及び長手方向を向く2つの前面を有し得る。
【0029】
スキッドの保持要素は、例えば、相互に向き合う保持顎、保持爪として又は相互に向き合う保持溝を有する突出部として設計可能である。保持要素は、摺動面とは逆を向くスキッドの下側面、すなわち、締結面上に又はそこから突出し得る。
【0030】
一実施形態では、保持要素は、張出部の協働領域の長手方向を向く前面の周囲に係合し、張出部又は張出部の領域におけるクロスバーの背部に係合する。
【0031】
代替的又は追加的に、保持要素は、張出部の対応する領域の長手方向を向く前面の凹部又は凸部、特に締結リブと積極的ロックの態様で協働可能である。
【0032】
保持デバイスは、特に、長手方向において相互から離間するとともに横断方向において保持要素から離間し、動作位置へのスキッドの変位の場合には、クロスバーの前面上を摺動して動作位置でそこに当接する一対のガイド要素を有し得る。ガイド要素は、スキッドの更なる安定化を与える。
【0033】
一実施形態では、スキッドは、2つの摺動領域であって、動作位置で各サイドプレートの狭面にわたって係合するための1つの側方外側摺動領域、及びその下部に保持デバイスが配置される長手方向にオフセットした1つの内側摺動領域を備える上側面の摺動面を有し得る。外側摺動領域は、好ましくは、自己支持可能である。外側摺動領域は、内側摺動領域よりも、横断方向に関して、チェーンリンクの受容空間から又はクロスバーの中央から遠位にある。
【0034】
各サイドプレートの狭面に接触するための下側面の対抗面が、好ましくは、外側摺動領域の下方に設けられ得る。スキッドが摺動レール上でサイドプレートの狭面上で又は他の箇所で他のスキッドに載置される場合、スキッドの対抗面は、好ましくは、スキッドをクロスバー上に保持するスキッドの保持デバイスが積載される前に、まず、スキッドによって保護される各サイドプレートの狭面に接触又は当接することになる。これは、スキッドの保持デバイス上の剪断力の作用を最小限に維持するために有利なものとなる。
【0035】
摺動領域の相互に対する長手方向でのオフセットは、特に、サイドプレートが相互に対して完全屈曲位置にある場合に、連続するサイドプレートに締結されたスキッドが相互に突き当たり又は衝突することを防止するように作用し得る。
【0036】
スキッドは、好ましくは、長手方向に向く前面傾斜部を有し得る。傾斜部は、エッジの干渉を防止し、特に、動作時に連続するチェーンリンクのスキッドの望ましくない傾き又は引っ掛かりを防止するように作用し得る。傾斜部は、特に好ましくは、各摺動領域に設けられる。
【0037】
スキッドの保持要素は、好ましくは、クロスバーの端部において又はその端部側張出部において、連続的に拡張し又は長手方向に連続的に発散する前面又は前面の表面に対して相補的に又はそれと一致して形成され得る接触面を有し得る。それにより、スキッドがそれを介してクロスバーと係合する有効係合面は、クロスバーに対するスキッドの特に強固な締結を達成するように拡大され得る。
【0038】
サイドプレート及びクロスバーは、好ましくはプラスチック、特に強化プラスチックから生産され得る。サイドプレート及び/又はクロスバーは、金属から製造されてもよい。
【0039】
スキッドは、好ましくは、独立した一体プラスチック部品、特に射出成形部品として生産され得る。
【0040】
スキッドは、好ましくは、特殊な摩擦学的に最適化されたプラスチックから生産され、又はそのようなプラスチックを少なくとも摺動面上に有し得る。プラスチックは、好ましくは、同じプラスチックと対合する摩擦の場合には、サイドプレート材料の摩擦に関して相互に対して最適化された摩損挙動、摩耗挙動及び/又は摩擦挙動を有するように選択される。摩擦学的に最適化されたプラスチックは、特に、より好適な摩擦係数を有し及び/又は取り込まれた潤滑剤、例えば、固体粒子又は液体若しくはワックス状潤滑剤も有するトライボポリマーを含有し得る。
【0041】
クロスバーは、その張出部の側方支持面と各サイドプレートの内面で当接し、好ましくは、その端部で次のプレートを越えて突出し得る。したがって、クロスバーの張出部の各々は、横断方向において2枚のサイドプレートを支持し得る。
【0042】
クロスバーは、好ましくは、梃機構によってサイドプレートの締結突出部に取外し可能に締結される。ここで、スキッドは、その上側面、すなわち、摺動面を有するその主面上でクロスバーの操作レバーのための切欠きを有する。好適な締結及び梃機構は、本出願人の国際公開第2020/152263号公報に記載され、締結及び梃機構のそこでの説明は、参照によりここに取り込まれる。
【0043】
更なる実施形態では、クロスバーは、各サイドプレートの内面に設けられ得る係止ホーンに係止態様で締結される。
【0044】
クロスバーは、クロスバーの2つの端部間に延在して分離バーを締結するために作用する2つの歯状ストリップを有し得る。歯状ストリップは、特に、チェーンリンクにおけるクロスバーの意図する位置で受容空間を向くクロスバーの下側面に形成され得る。代替的又は追加的に、歯状ストリップは、クロスバーの前面溝内に配置されてもよい。
【0045】
またさらに、本発明は、請求項1の前段部に係るエナジーチェーンのためのチェーンリンクに関し、2枚のサイドプレート及びそれらを接続する2本のクロスバーを備え、少なくとも一方のクロスバーは前述の実施形態の1つに係る2つのスキッドを備える。
【0046】
本発明の更なる詳細、特徴及び有利な効果は、上記教示の一般性を限定することなく、添付図面の補助により、好適な実施形態例の以下の詳細な説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】長距離移動のためのエナジーガイド構成の模式側面図である。
図1B】下側ランに接触する上側ランによる中間位置における、図1Aに係るエナジーチェーンの一部の側面図である。
図1C図1Aに係るエナジーチェーンの一部の斜視図である。
図2A】スキッドの第1の実施形態例の斜視図である。
図2B】スキッドの第1の実施形態例の斜視図である。
図3A図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、図3Cに係る線A-Aに沿うクロスバーを通る断面図である。
図3B図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、受容空間の部分側面図である。
図3C図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、エナジーチェーンの一部の上面図である。
図3D図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、図2A図2Bに係るスキッドを有するクロスバーの正面図である。
図3E図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、図3Dに係る線E-Eに沿う縦断面における2つのスキッドを有するクロスバーである。
図3F図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、図3Dに係る線F-Fに沿う縦断面におけるクロスバーの端部領域である。
図3G図2A図2Bに係るスキッドを有するエナジーチェーンの実施形態例であり、図3Eに係るクロスバーの端部領域の斜視図である。
図4A】その保持デバイス上にスキッドを有する更なる実施形態例の斜視図である。
図4B】摺動面上のスキッドの斜視図である。
図4C図4Aに係るスキッドを有するエナジーチェーンの一部の断面図である。
図4D】クロスバーの端部領域の斜視図である。
図5A】保持デバイス上にスキッドを有する更なる実施形態例の斜視図である。
図5B】摺動面上のスキッドの斜視図である。
図5C図5Aに係るスキッドを有するエナジーチェーンの一部の断面図である。
図5D】スキッドが搭載されていないクロスバーの端部領域の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に単に例示として示す長距離移動のための摺動エナジーガイド構成(energy guiding arrangement)は、移動の2端部点8、9間でガイドチャネル1内を移動するエナジーチェーン10を備え、すなわち、ここでは可動接続点6に接続された移動ランである上側ラン4、及び固定接続点7に接続された静止ラン、すなわち、下側ラン5の偏向領域、すなわち、偏向カーブ3を形成する。エナジーチェーン10は、図1Aの平面に対応するとともに長手方向L及びその長手方向Lに垂直な高さ方向Hが存在する動作平面内を移動する。偏向軸Uは、動作平面に垂直である。エナジーチェーン10は、供給ラインをエネルギー源から給電対象の機械部品まで長手方向Lにガイドし、ここでは2つの端部位置で表される。図1Aの右側では、可動接続点6は、第1の端部点8まで右側に完全に延ばされ、結果として、上側ラン4は短い自己支持部分として存在することになる。接続点6が左に移動する場合、上側ラン4は、まず、下側ラン5に対抗してその上を摺動することになる。このエナジーチェーン10の暫定位置は、図1B及び図1Cに大きく拡大された部分図として表される。可動接続点6が固定接続点7を通過した場合、それは摺動レール2上をさらに摺動する。図1Aの左側では、可動接続点6は、第2の端部点9まで左側に完全に延ばされ、結果として、上側ラン4は完全に摺動レール2に載置されることになる。
【0049】
図1Cは、下側ラン5の6個のチェーンリンク102及び下側ラン5上を摺動する上側ラン4の2個のチェーンリンク102を有するエナジーチェーン10の一部を示す。エナジーチェーン10のチェーンリンク102は、2枚のサイドプレート103及びそれらのサイドプレート103を横断方向Qに接続する2本のクロスバー104から構成される。クロスバー104とともにサイドプレート103は、長手方向Lの周囲において、ガイドされる供給ラインのための受容空間105を囲む。チェーンリンク102のクロスバー104は、相互に高さ方向Hに離間している。各サイドプレート103は、2つの長い狭面107及び2つの主面、すなわち、受容空間105を向く内面109aを有する主面、及び受容空間105とは逆を向く外面109bを有する主面を有する。狭面107の一方は、偏向領域3の内部に存在するエナジーチェーン10の面16上に存在する。各クロスバー104は、2つの主面、受容空間105を向く下側面108a及び受容空間105とは逆を向く上側面108b、並びに横断方向Qに延在する2つの長い前面110及び長手方向Lに延在する2つの短い狭面を有し、この2つの短い狭面はサイドプレート103の内面109aに対する当接のための支持面111を形成する。
【0050】
偏向軸Uを向く偏向領域の内部に存在する面16上では、エナジーチェーン10には、サイドプレート103の狭面107を覆うスキッド101が装着され、結果として、図1Bに示す暫定位置において、上側ラン4のサイドプレート103の狭面107に取り付けられたスキッド101が、下側ラン5のサイドプレート103の狭面107に取り付けられたスキッド101上を摺動する。それにより、サイドプレート103のそれぞれの狭面107は、摩耗から保護される。スキッド101は、サイドプレートとは異なるプラスチックから生産され、それは適切な場合には金属製であってもよい。スキッド101のプラスチックは、サイドプレート103の材料に関して、それが同じ材料の摺動に関して相互に対して最適化された摩損挙動、摩耗挙動及び/又は摩擦挙動を有するように選択される。プラスチックは、より好適な摩擦値、特に向上した摩擦係数μを有し、例えば、潤滑剤、例えば、埋め込まれた固体潤滑剤を備えるトライボポリマーからなり得る。
【0051】
スキッド101は、エナジーチェーン10のチェーンリンク102のクロスバー104に取外し可能に取り付けられ、エナジーチェーン10がガイドチャネル1から取り外される必要なしに、必要に応じて交換可能である。
【0052】
図2図5は、工具なしでのクロスバーへのスキッドの設置及び取外しのための本発明に係る原理を用いるが設計の詳細は異なるエナジーチェーン又はスキッドの3個の実施形態例を示す。
【0053】
図2A、2Bは、第1の実施形態例に係るスキッド201を示す。スキッド201は、2つの主面、すなわち、摺動面206を形成する上側面202、及び摺動面206とは逆を向き、クロスバー304に対する保持のための保持デバイス205が設けられる下側面203を有してプレート状に設計される。またさらに、スキッド201は、傾斜部208が設けられた長手方向Lを向く2つの前面207を有する。
【0054】
保持デバイス205は、クロスバー304の端部において前面310の周囲に係合するために形成された相互に向き合う保持顎209の形態で長手方向Lに相互に離間した2つの保持要素、及び長手方向Lに相互に離間し、スキッド201の動作位置においてクロスバー304(図3B)に、係止突出部、すなわち、係止ラグ311の背部で係合するための各保持顎209に対する逃げ溝、すなわち、係止エッジ210としていずれも形成された2つの係止要素を備える。保持顎209は、スキッド201の2つの前面207に予め形成され、スキッド201の下側面203に向かって傾けられる。したがって、保持デバイス205は、横断方向Qに沿う側面図においてクリップ状形状を有する。保持顎209はいずれも、クロスバー304の好ましくは凸状端面の前面に対して相補的に又はそれと一致して形成されて動作位置でそれらと当接する、好ましくはいずれも凹状の接触面214を有する。
【0055】
スキッド201は、下側面203上の2つの面領域203a、203b、及びその面領域203a、203bの間で高さ方向H、すなわち、スキッド201の厚さ又は大きさの方向にオフセット、すなわち、突出部203cを有してクランク状に形成される。したがって、面領域203aは、スキッド201の意図した動作位置において、クロスバー304の上側面308bに載置されることになる。上記保持顎209は、この面領域203aに配置される。スキッド201の意図する動作位置では、面領域203bは、狭面107に対抗面と同様に載置される。
【0056】
スキッド201の上側面202又は摺動面206も、2つの面領域202a、202bを備えるが、それらの間にオフセットはない。したがって、摺動面206は、平坦である。面領域202bは、側方外側摺動領域であり、動作位置において、各サイドプレートの狭面上に達する。保持顎209は、面領域202a、すなわち、内側摺動領域の下方に配置される。面領域202aは、面領域202bに対して長手方向Lにオフセットしている。ただし、摺動面206は連続し、面領域202a、202bは相互に継ぎ目なく一体となっている。
【0057】
図3Cは、スキッド201を、上側面、すなわち、摺動面206に対する上面図で示す。スキッド201を、動作位置で、すなわち、第1の実施形態例に係るエナジーチェーン10のクロスバー304に嵌合した状態で示す。ここで、摺動面206の面領域202a、202bは、相互に対して長手方向Lにオフセットしていることが明確に視認可能である。そうでなければ、連続するスキッドがエナジーチェーン10の曲げと立体的に干渉してしまうことから、そのオフセットにより、エナジーチェーン10の偏向領域3における半径を小さくすることが可能となる。
【0058】
図3Dは、動作位置におけるスキッド201を有するクロスバー304の前面310に対する正面図を示し、保持顎209はクロスバー304の一端において前面310の周囲に係合する。受容空間105を向くクロスバー304の下側面308aに設けられて分離バーを締結するように作用する2つの歯状ストリップ316の一方が視認可能である。
【0059】
図3B及び図3Gはいずれも、その下側面308aからのクロスバー304の端部を、クロスバー304の前面310に沿って延在する締結リブ322に横付けされた2つの歯状ストリップ316が視認可能な部分図で示す。クロスバー304の図示する端部において、スキッド201が動作位置にあり、すなわち、スキッド201の保持顎209はクロスバー304の前面に対して締結リブ322の端面にわたって係合する。係止エッジ210は、側方へのずれに対してクロスバー304上にスキッド201をロックするための係止ラグ311の背部に係合する。保持顎209は長手方向L及び高さ方向Hへのスキッドの離脱を防止し、係止ラグ311はクロスバー304に沿う横断方向Qへの滑りを防止する。
【0060】
その2つの端部(一方のみを図示する)において、クロスバー304はいずれも張出部318を有し、結果として、クロスバー304の端部はより大きな寸法を長手方向Lに有し、すなわち、クロスバー304の中央領域よりも広い。張出部318は、クロスバー304の図示する端部側領域において、連続して拡大し、又は長手方向Lに関して連続して拡がる前面、すなわち、前面310の表面によって図示される。スキッド201の接触面214は、拡大前面310の好ましくは連続して湾曲した形状に対して相補的に形成され、それらと当接する。
【0061】
サイドプレート103の対応する内面109aに、すなわち、2枚のサイドプレート103の重なり領域で当接する支持面320は、図3Bで分かるように、クロスバー304の各張出端部に設けられる。張出部318により、支持面320は、端部側張出部318間でクロスバー304の断面よりも長手方向Lに長い範囲を有する。
【0062】
既存のエナジーチェーン10の場合、スキッド201は、クロスバー304の中央の狭い領域、すなわち、張出部318間の領域においてクロスバー304に嵌合可能であり、それが張出部318に積極的ロックの態様で嵌合して係止エッジ210を用いて係止ラグ311とロックするまで、クロスバー304の一端に、すなわち、チェーンリンク102の一方のサイドプレート103に向けて手動でずらされ得る。
【0063】
スキッド201をクロスバー304から取り外すためには、スキッド201は、クロスバー304の中央に向けて側方に、すなわち、横断方向Qに引っ張ることによって手動でロック解除されてずらされるだけでよい。その後、スキッド201は、その狭い点において、クロスバー304から容易に取り外され得る。
【0064】
スキッド201の保持デバイス205の上記設計により、スキッド201は容易にクロスバー304に設置可能であり、手動でかつ工具なしでそこから再度取外し可能となり、それでもなお動作位置においてクロスバー304に強固に接続される。
【0065】
図示する例では、クロスバー304は、本出願人の国際公開第2020/152263号公報に記載される原理に係る梃機構によってその締結突出部330によってサイドプレート103に締結され、これに関して、簡明化のためにここで参照がなされる。
【0066】
スキッド201は、好ましくは、その上側面202に、国際公開第2020/152263号公報によるクロスバー304の対応する操作レバー331のための切欠き230を有し、その結果、それでも比較的広範な摺動面が可能となる。
【0067】
図4A図5Dに係る更なる実施形態例の以下の説明では、図2A図3Gに示した実施形態例との重要な相違のみを述べる。
【0068】
図4A図4Dは、後付け可能なスキッドの更なる実施形態例を示す。その端部の各々において、図4C、4Dにおけるクロスバー404はいずれも、張出部418に、狭面410から突出する2つの短い締結リブ422を有する。その下側面403において、図4A、4Bに示すスキッド401は、クロスバー404の締結リブ422と一致するように設計された保持デバイス405を有する。この実施形態例では、締結リブ422に対して相補的に形成された相互に保持溝409を向く一対の突出部が、保持要素として作用する。したがって、スキッド401が摺動されてその動作位置となると、締結リブ422は保持溝409と積極的ロックの係合状態となる。
【0069】
またさらに、スキッド401の保持デバイス405は、2つの係止カム413の形態の2つの係止要素を有し、それらは動作位置においてクロスバー404の工具開口部411に係合する。クロスバーのモデル範囲について、工具開口部411は、サイドプレートの係止ホーン430からクロスバーを取り外すために標準として設けられ得る。係止ホーン430は、クロスバー404を係止態様で締結するために各サイドプレート103の内面109aに設けられる。
【0070】
図5A図5Dは、後付け可能なスキッドの第3の実施形態例を示す。図5C、5Dにおけるクロスバー504も、上述したような工具開口部511を有する。スキッド401と同様に、スキッド501は、動作位置においてクロスバー504の工具開口部511に係止する係止カム513の形態の2つの係止要素を有する。またさらに、スキッド501の保持デバイス505は、相互に長手方向Lに離間した2つの保持爪509の形態の保持要素を有する。保持爪509は、スキッド501の下側面503から突出し、その各端部側張出部518においてクロスバー504の周囲に係合し又はそれを把持するC字形断面を有するクリップを形成する。保持爪509がその張出部においてクロスバー504の前面510を把持するので、それらは、クロスバー504の前面510よりも、その中央の(横断方向Qに関して)領域において、相互に長手方向Lにさらに離間している。スキッド501の動作位置へのクロスバー504に沿う変位時のガイドの目的のため、保持デバイス505は2つのガイド要素532をさらに有し、その相互に対する長手方向Lの間隔は、クロスバーの幅又は張出部間のその中央領域における長手方向Lに沿うその寸法に対応する。スキッド501の動作位置への変位時に、ガイド要素532は、クロスバー504の前面510上を摺動し、動作位置においてそれらに当接し、すなわち、クロスバー504の中央領域に向けて内向きに横断方向Qに保持爪に対してオフセットする。
【符号の説明】
【0071】
1 ガイドチャネル
2 摺動レール
3 偏向領域
4 上側ラン
5 下側ラン
6 可動接続点
7 固定接続点
8 移動の第1の端部点
9 移動の第2の端部点
10 エナジーチェーン
16 偏向領域におけるエナジーチェーンの内側面
101;201;401;501 スキッド
102 エナジーチェーンのリンク、すなわち、チェーンリンク
103 サイドプレート
104;304;404;504 クロスバー
105 受容空間
107a、107b サイドプレートの狭面
108a;308a;408a クロスバーの下側面
108b;308b;408b クロスバーの上側面
109a サイドプレートの内面
109b サイドプレートの外面
110;310;410;510 クロスバーの前面
111;320;420;520 サイドプレートへの当接のためのクロスバーの支持面
202;402;502 スキッドの上側面
202a;402a;502a 内側摺動領域
202b;402b;502b 外側摺動領域
203;403;503 スキッドの下側面
203a;403a;503a スキッドの下側面の面領域
203b;403b;503b スキッドの下側面の対抗面
205;405;505 スキッドの保持デバイス
206;406;506 スキッドの摺動面
207;407;507 スキッドの前面
208;408;508 スキッドの傾斜部
保持デバイスの保持要素:
209 保持顎
409 保持溝
509 保持爪
保持デバイスの係止要素:
210 係止エッジ
413;513 係止カム
214;414;514 保持要素の接触面
230 操作レバーのための切欠き
311 クロスバー上の突出部、すなわち、係止ラグ
316;516 クロスバー上の歯状ストリップ
318;418;518 クロスバーの張出部
322;422 締結リブ
330 サイドプレートの締結突出部
331 操作レバー
411 クロスバーの上側面の工具開口部
430;530 サイドプレートの内面上の係止ホーン
532 保持デバイスのガイド要素
H 高さ方向
L 長手方向
Q 横断方向
U 偏向軸
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が他方に対して可動な2つの接続点(6、7)の間で、例えば、ケーブル、ホースなどのようなラインをガイドするためのエナジーチェーン(10)であって、
長手方向(L)に沿って接続された複数のリンク(102)であって、相互に対して旋回可能であり、各々が2枚のサイドプレート(103)及びそれらを相互に接続するクロスバー(104;・・・504)を有し、前記接続点(6、7)の相対移動の場合、前記エナジーチェーン(10)は可動であり、偏向領域(3)を介して一体となる2本のラン(4、5)を構成する、複数のリンク(102)を備え、
一方のラン(4)は他方のラン(5)上を摺動可能であり、摺動のために、いずれも一対のスキッド(101;・・・501)が前記偏向領域(3)において内側面(16)及び少なくとも1つの長手部分のリンク(102)に配置され、前記一対のスキッド(101;・・・501)は、いずれも、保持デバイス(205;・・・505)によって前記クロスバー(104;・・・504)に締結され、いずれも、動作位置において前記2枚のサイドプレート(103)の一方のサイドプレートの狭面(107)上に達し、
少なくとも前記スキッド(101;・・・501)が設けられた前記クロスバー(104;・・・504)は、端部の両方において、いずれも前記サイドプレート(103)に向かう張出部(318;418;518)を有し、
前記保持デバイス(205;・・・505)は、前記長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって前記保持デバイス(205;・・・505)は前記張出部(318;418;518)の間で前記クロスバー(104;・・・504)に嵌合可能であり、側方外向きにずらされて前記張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、該係合において、前記対向する保持要素(209;409;509)は当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合して前記動作位置において前記スキッド(101;・・・501)を締結する、
エナジーチェーン(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)のためのチェーンリンク(102)であって、
2枚のサイドプレート(103)及びそれらを接続する2本のクロスバー(104;・・・504)を備え、2つのスキッド(101;・・・501)が各々保持デバイス(205;・・・505)によって前記クロスバー(104;・・・504)の一方に締結され、いずれも、前記動作位置において前記2枚のサイドプレート(103)の一方の狭面(107)上に達し、
少なくとも前記スキッド(101;・・・501)が設けられた前記クロスバー(104:・・・504)は、両端において、いずれも前記サイドプレート(103)に向かう張出部(318;418;518)を有し、
前記保持デバイス(205;・・・505)は、前記長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって前記保持デバイス(205;・・・505)は前記張出部(318;418;518)の間で前記クロスバー(104;・・・504)に嵌合可能であり、側方外向きにずらされて前記張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、該係合において、前記対向する保持要素(209;409;509)は当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合して前記動作位置において前記スキッド(101;・・・501)を締結する、
チェーンリンク(102)。
【請求項3】
エナジーチェーン(10)のための後付け可能なスキッド(101;・・・501)であって、
少なくとも、上側面の摺動面(206;406;506)と、前記スキッド(101;・・・501)を前記エナジーチェーン(10)のリンク(102)に締結するための下側面の保持デバイス(205;・・・505)と、を備え、
前記保持デバイス(205;・・・505)は、クロスバー(104;・・・504)の2つの端部側張出部(318;418;518)の一方と協働するために設計され、これのために、長手方向(L)に離間した2つの対向する保持要素(209;409;509)を有し、それによって前記保持デバイス(205;・・・505)は前記張出部(318;418;518)の間で前記クロスバー(104;・・・504)に嵌合可能となり、側方外向きにずらされて前記張出部(318;418;518)の一方と係合可能であり、前記対向する保持要素(209;409;509)が、当該張出部(318;418;518)の領域の内部又は背部に積極的ロック及び/又は強制的ロックの態様で係合するように設計され
前記保持要素(209;409;509)が、前記摺動面(206;406;506)とは逆を向く前記スキッド(101;・・・501)の下側面(203;403;503)上に又はそこから突出し、相互に向き合う保持顎(209)、保持爪(509)として、又は相互に向き合う保持溝(409)を有する突出部として設計された、
後付け可能なスキッド(101;・・・501)。
【請求項4】
前記保持デバイス(205;405;505)は、前記スキッド(101;・・・501)の前記動作位置において側方への変位に対して前記スキッド(101;・・・501)を固定するために、又は各前記張出部(318;418;518)への前記保持要素(209;409;509)の係合の場合に、前記クロスバー(104;・・・504)の凸部(311)及び/又は凹部(411;511)と係止する少なくとも1つの係止要素(210;413;513)を有する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又は請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項5】
前記保持デバイス(205;405;505)は、前記長手方向(L)に離間した2つの係止要素(210;413;513)を有し、
該2つの係止要素は、
いずれも、前記クロスバー(304)の前記張出部(318)の2つの前面係止ラグ(311)の一方と係止態様で協働し、かつ/又は
前記クロスバー(404;504)を取り外すために設けられた上側面の工具開口部(411;511)と係止態様で協働する、
請求項4に記載のエナジーチェーン(10)、チェーンリンク(102)又はスキッド(101;・・・501)。
【請求項6】
前記保持要素(209;409;509)は、相互に向き合う保持顎(209)、保持爪(509)として、又は相互に向き合う保持溝(409)を有する突出部として設計され、摺動面(206;406;506)とは逆を向く前記スキッド(101;・・・501)の下側面(203;403;503)上に又はそこから突出している、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)又は請求項2に記載のチェーンリンク(102)
【請求項7】
前記保持要素(209;409;509)は、前記張出部(318;418;518)の協働領域の前記長手方向(L)を向く前面(310;410;510)の周囲に係合し、前記張出部(318;518)の背部に係合し、かつ/又は前記張出部(318;418;518)の対応する領域の前記長手方向(L)を向く前記前面(310;410;510)の凹部若しくは凸部(422)と積極的ロックの態様で協働する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項8】
前記保持デバイス(505)は相互に前記長手方向(L)に離間した一対のガイド要素(532)を有し、該一対のガイド要素は前記動作位置への前記スキッド(501)の変位の場合に前記クロスバー(504)の前面(510)上を摺動する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(501)。
【請求項9】
前記スキッド(101;・・・501)は、前記動作位置において各前記サイドプレート(103)の狭面(107)上に達する側方外側の摺動領域(202b;402b;502b)、及びその下方に前記保持デバイス(205;405;505)が配置される前記長手方向(L)にオフセットされた内側摺動領域(202a;402a;502a)を有する上側面の摺動面(206;406;506)を有し、
好ましくは、各前記サイドプレート(103)の前記狭面(107)への載置のための下側面の対抗面(203b;403b;503b)が、前記外側摺動領域(202b;402;502b)の下方に設けられた、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項10】
前記スキッド(101;・・・501)は、特に各摺動領域(202a;202b;・・・502a;502b)上で前記長手方向(L)に向く前面傾斜部(208;408;508)を有する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項11】
前記保持要素(209;409;509)の各々は、前記クロスバー(104;・・・504)の端部において連続して拡大する前面(310;410;510)に相補的に形成された接触面(214;414;514)を有する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項12】
前記スキッド(101;・・・501)は、独立した一体のプラスチック部品、特に、射出成形部品として生産され、かつ/又は
前記スキッド(101;・・・501)は、少なくとも前記摺動面上に、前記サイドプレートの材料に対して最適化された摩損挙動、摩耗挙動及び/若しくは摩擦挙動を有するプラスチックを有する、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)、請求項2に記載のチェーンリンク(102)又請求項3に記載のスキッド(101;・・・501)。
【請求項13】
前記クロスバー(104;・・・504)は、その張出部(318;418;518)の側方支持面(320;420;520)によって各前記サイドプレート(103)の内面(109a)に当接し、かつ
梃機構(331)によって前記サイドプレート(103)の締結突出部(330)に好ましくは締結され、前記スキッド(201)はその上側面(202)に前記クロスバー(304)の操作レバー(331)のための切欠き(230)を有し、又は
各前記サイドプレート(103)の前記内面(109a)において係止ホーン(430)に係止態様で締結される、
請求項1に記載のエナジーチェーン(10)又は請求項2に記載のチェーンリンク(102)
【国際調査報告】