(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】抗CD122抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240319BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240319BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240319BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240319BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240319BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240319BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240319BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240319BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K45/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P17/00
A61P3/10
A61P25/00
A61P37/02
A61P17/06
A61P37/08
A61P17/14
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561755
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022024620
(87)【国際公開番号】W WO2022221409
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523379937
【氏名又は名称】ヴィラリス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Villaris Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】フィンレイ,ウィリアム ジェームズ ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジョン イー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
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4H045AA11
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4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
CD122及びその抗原結合部に特異的に結合する抗体分子、ならびに、関連する組成物、核酸分子、ベクター、及び宿主細胞を、本明細書で提供する。そのような抗体分子の医学的使用もまた、本明細書で開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD122抗体、またはその抗原結合部であって、前記抗体または抗原結合部が、重鎖可変(VH)領域、及び軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または
(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、
前記抗体または抗原結合部。
【請求項2】
(a)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、または
(b)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、
請求項1に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項3】
前記抗体または抗原結合部がヒト化されている、またはキメラである、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項4】
前記VH領域、前記VL領域、または前記VH及びVL領域の両方が、1つ以上の、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項5】
前記VH領域、前記VL領域、または前記VH及びVL領域の両方が、CDRアミノ酸配列が挿入されている、ヒト可変領域フレームワークのスキャフォールドアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項6】
前記VH領域が、前記HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項7】
前記VL領域が、前記LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む、請求項1及び3~6のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項8】
前記抗体が、免疫グロブリンの定常領域を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項9】
前記免疫グロブリンの定常領域が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgYである、請求項8に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項10】
前記免疫グロブリンの定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2である、請求項9に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項11】
前記免疫グロブリンの定常領域が、免疫学的に不活性である、請求項8に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項12】
前記免疫グロブリンの定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域、または野生型ヒトIgG2定常領域であり、番号付けは、KabatにおけるEUインデックスに従う、請求項8に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項13】
前記免疫グロブリンの定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、請求項8に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項14】
前記抗体または抗原結合部が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはビスscFvである、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナルである、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項16】
前記抗体が、四量体抗体、四価抗体、または多重特異性抗体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項17】
前記抗体が、第1の抗原及び第2の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体であり、前記第1の抗原はCD122であり、前記第2の抗原はCD122ではない、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部。
【請求項18】
治療剤に結合した、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部を含む免疫複合体。
【請求項19】
前記治療剤が、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、またはプロアポトーシス剤である、請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合部、または請求項18もしくは19に記載の免疫複合体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合部の、
(a)前記VH領域のアミノ酸配列、
(b)前記VL領域のアミノ酸配列、または
(c)前記VH及びVL領域のアミノ酸配列の両方
をコードする核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項23】
請求項21に記載の核酸分子、または請求項22に記載の発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項24】
抗CD122抗体またはその抗原結合部の産生方法であって、
請求項22に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞を、前記核酸分子が発現する条件下で培養することにより、前記抗体または抗原結合部を産生することと、
前記宿主細胞または培養液から、前記抗体または抗原結合部を単離することと、
を含む、前記方法。
【請求項25】
対象における免疫応答の抑制方法であって、前記対象に、治療に有効な量の、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合部、請求項18もしくは19に記載の免疫複合体、または請求項20に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記免疫応答がCD122により媒介される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
対象における疾患の治療または予防方法であって、前記対象に、治療に有効な量の、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合部、請求項18もしくは19に記載の免疫複合体、または請求項20に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記疾患が、炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、白斑、セリアック病、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、または関節リウマチである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
IL-15が誘導するT細胞の皮膚からの移動の抑制方法であって、前記皮膚を、治療に有効な量の、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合部、請求項18もしくは19に記載の免疫複合体、または請求項20に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項31】
薬剤として使用するための、請求項1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、請求項18もしくは19に記載の免疫複合体、または請求項20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月16日に出願された米国特許仮出願番号第63/279,762号、及び2021年4月14日に出願された同第63/174,772号に対する優先権を主張し、これらはそれぞれ、あらゆる目的のため、本明細書中にそれら全体が参照により組み込まれている。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されるテキストファイルの内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピューター可読形式のコピー(ファイル名:VLRS_001_02WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2022年4月13日、ファイルサイズ:約87,964バイト)。
【0003】
本開示は、治療用抗体分子、及びその医学的使用に関する。
【背景技術】
【0004】
CD122は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである細胞表面受容体であり、ナチュラルキラー(NK)及びT細胞で主に発現する。CD122は、1型糖尿病(T1D)、セリアック病、白血病、白斑などを含む、これらの免疫細胞型のいずれかによりもたらされる、様々な状態に対する標的として提唱されている。このような、免疫媒介性疾患を標的にする治療薬が必要とされている。特に、白斑には、全身治療オプションがなく、疾患を改善する、米国食品医薬品局により認可された内科治療も存在しない。
【発明の概要】
【0005】
抗CD122抗体、またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、重鎖可変(VH)領域、及び軽鎖可変(VL)領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体または抗原結合部を、本明細書において提供する。
【0006】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、VH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、上記抗体または抗原結合部を、本明細書において提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、ヒト化されている、またはキメラである。
【0008】
いくつかの実施形態では、VH領域、VL領域、またはVH及びVL領域の両方は、1つ以上の、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH領域、VL領域、またはVH及びVL領域の両方は、CDRアミノ酸配列が挿入されている、ヒト可変領域フレームワークのスキャフォールドアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VL領域は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、免疫グロブリンの定常領域を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgYである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、免疫学的に不活性である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域、または野生型ヒトIgG2定常領域であり、番号付けは、KabatにおけるEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、配列番号32~38のいずれか1つを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはビスscFvである。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、四量体抗体、四価抗体、または多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、第1の抗原及び第2の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体であり、第1の抗原はCD122であり、第2の抗原はCD122ではない。
【0011】
治療剤に結合する、本明細書で開示する抗体または抗原結合部を含む免疫複合体を、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、またはプロアポトーシス剤である。
【0012】
本明細書で開示する抗体、抗原結合部、または免疫複合体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0013】
本明細書で開示する抗体または抗原結合部の、(a)VH領域のアミノ酸配列、(b)VL領域のアミノ酸配列、または(c)VH及びVL領域のアミノ酸配列の両方をコードする核酸分子を、本明細書において提供する。本明細書で開示する核酸分子を含む発現ベクターを、本明細書において提供する。本明細書で開示する核酸分子または発現ベクターを含む組換え宿主細胞を、本明細書において提供する。
【0014】
抗CD122抗体またはその抗原結合部の産生方法であって、本明細書で開示する発現ベクターを含む組換え宿主細胞を、核酸分子が発現する条件下で培養することにより、抗体または抗原結合部を産生することと、宿主細胞または培養液から、抗体または抗原結合部を単離することと、を含む、上記方法を、本明細書において提供する。
【0015】
対象における免疫応答の抑制方法であって、上記対象に、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を投与することを含む、上記方法を、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、免疫応答はCD122により媒介される。
【0016】
対象における疾患の治療または予防方法であって、上記対象に、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を投与することを含む、上記方法を、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、疾患は、炎症性疾患または自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、白斑、セリアック病、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、または関節リウマチである。
【0017】
IL-15が誘導するT細胞の皮膚からの移動の抑制方法であって、上記皮膚を、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を接触させることを含む、上記方法を、本明細書において提供する。
【0018】
薬剤として使用するための、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を、本明細書において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】抗CD122 IgGの、インビボ薬理学分析のための図を示す。
【
図2】A~Dは、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122 IgGの特異性分析からのデータを示す。Retrogenix技術を用いる、Villmab-1のプロテオミクス特異性プロファイリング。(A)ZS対照発現。(B)Villmab-1プローブ。(C)リツキシマブプローブ。(D)一次抗体なし。
【
図3A】標的のトランスフェクト細胞における、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122 IgGのフローサイトメトリー分析からのデータを示す。Villmab-1の結合。
【
図3B】標的のトランスフェクト細胞における、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122 IgGのフローサイトメトリー分析からのデータを示す。一次抗体なし。
【
図3C】標的のトランスフェクト細胞における、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122 IgGのフローサイトメトリー分析からのデータを示す。リツキシマブの結合。
【
図4】抗CD122 IgG Alphascreenエピトープ競合からのデータを示す。Alphascreenアッセイで新規のクローンをスクリーニングし、ヒトCD122における、Villmab-1結合エピトープとの競合を調査した。
【
図5】新規の抗CD122 IgGに対する多反応性スコアを示す棒グラフを示す。抗体が、DNA及びインスリンに非特異的に結合する能力を調査した。
【
図6A】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。06F11。
【
図6B】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。07C07。
【
図6C】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。07D06。
【
図6D】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。07E09。
【
図6E】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。07D07。
【
図6F】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。06D12。
【
図6G】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。アイソタイプコントロールIgG。
【
図7A】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。06F11。
【
図7B】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。07C07。
【
図7C】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。07D06。
【
図7D】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。07E09。
【
図7E】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。07D07。
【
図7F】M07e細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。06D12。
【
図8A】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。分析前のヒトCD8+ T細胞。
【
図8B】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。分析前のヒトNK細胞。
【
図8C】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。1週間後のヒトCD8+ T細胞。
【
図8D】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。1週間後のヒトNK細胞。
【
図8E】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。3週間後のヒトCD8+ T細胞。
【
図8F】hIL-15 NSGマウスモデルにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のインビボ分析からのデータを示す。3週間後のヒトNK細胞。
【
図9A】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。06F11。
【
図9B】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。07C07。
【
図9C】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。アイソタイプコントロールIgG。
【
図9D】標的のトランスフェクト細胞における、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1のフローサイトメトリー分析からのデータを示す。リツキシマブ。
【
図10A】Fab及びIgGフォーマットでの、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122の新規クローンの特異性分析からのデータを示す。BIACORE(登録商標)技術を用いて、ヒトニューデシンタンパク質に対するFabの特異性プロファイリングを、Rmax(最大特異的結合応答値)として測定した。
【
図10B】Fab及びIgGフォーマットでの、Villmab-1(MIKβ1)抗CD122の新規クローンの特異性分析からのデータを示す。BIACORE(登録商標)技術を用いて、CILP2タンパク質に対するFabの特異性プロファイリングを、Rmax(最大特異的結合応答値)として測定した。
【
図10C】ELISAを用いて、ヒトBCAMタンパク質に対するIgGの特異性プロファイリングを、OD450nmとして測定した。
【
図11A】Villmab-1(MIKβ1)抗CD122の新規のクローン可変ドメイン配列の、配列分析からのデータを示す。VH配列。配列は以下のとおりである:VillMAB-1:配列番号22、MAB05:配列番号1、MAB06:配列番号1、MAB14:配列番号52、MAB15:配列番号52、MAB17:配列番号53、MAB18:配列番号53。CDRは太字とし、かつ下線を引いている。VillMab-1配列とは異なる残基は、灰色の四角形で強調している。BCAM、CILP2、またはニューデシンに結合しない、本分析のクローンのみにおいて発見された固有の残基は、黒色で四角に囲む。
【
図11B】Villmab-1(MIKβ1)抗CD122の新規のクローン可変ドメイン配列の、配列分析からのデータを示す。VL配列。配列は以下のとおりである:VillMAB-1:配列番号28、MAB05:配列番号9、MAB06:配列番号17、MAB14:配列番号9、MAB15:配列番号17、MAB17:配列番号9、MAB18:配列番号17。CDRは太字とし、かつ下線を引いている。VillMab-1配列とは異なる残基は、灰色の四角形で強調している。BCAM、CILP2、またはニューデシンに結合しない、本分析のクローンのみにおいて発見された固有の残基は、黒色で四角に囲む。
【
図12A】一次NK細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。MAB05。
【
図12B】一次NK細胞IL-15増殖アッセイにおける、新規の抗CD122 IgG及びVillmab-1の分析からのデータを示す。MAB06。
【
図13】A~Bは、ヒト皮膚生検培養アッセイにおいて、IL15が誘導する、皮膚生検から移動するT細胞の蓄積における、MAB05及びMAB06の影響の分析からのデータを示す。Aは、CD8+ T細胞の数への影響を示す。Bは、CD4+ T細胞の数への影響を示す。
【
図14A】ヒト皮膚生検培養アッセイにおいて、IL15が誘導する、皮膚生検から移動するT細胞の蓄積における、MAB05及びMAB06濃度依存性拮抗の分析からのデータを示す。CD8+ T細胞、及び関連するIC50への影響を示す。
【
図14B】ヒト皮膚生検培養アッセイにおいて、IL15が誘導する、皮膚生検から移動するT細胞の蓄積における、MAB05及びMAB06濃度依存性拮抗の分析からのデータを示す。CD4+ T細胞、及び関連するIC50への影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
抗CD122抗体、及びそのような抗体の治療上の使用を、本明細書で提供する。本明細書で開示する抗体は拮抗性であり、十分発現し、生物物理学的に安定しており、非常に可溶性で、好ましいヒト生殖細胞系に対して最大源の同一性を有する。
【0021】
CD122(IL2RB、IL-2Rβ、IL15RB、P70-75、インターロイキン2受容体サブユニットβ、及びIMD63としても知られている)は、I型膜貫通糖タンパク質であり、Igスーパーファミリーのメンバーである。CD122は、インターロイキン-15(IL-15)受容体と、インターロイキン-2(IL-2)受容体との共有サブユニットである。CD122は、NK細胞、及びT細胞のサブセットにより発現する。IL-15シグナル伝達は、ヒト白斑の病因で示唆されている。CD122を標的にすること、またはIL-15シグナル伝達を遮断することは、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、及び円形脱毛症などの、他の免疫媒介性疾患のマウスモデル、加えて、関節リウマチ及びセリアック病の症状の改善において有益のようである。効果的な拮抗性抗CD122抗体を開発することは、免疫媒介性疾患の治療において価値がある。
【0022】
全体が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第5,585,089号は、「MIKβ1」と呼ばれる、拮抗性マウス抗CD122 IgG分子、加えて、ヒト化形態のMIKβ1の調製について記載している。これらのヒト化形態のMIKβ1は、古典的なヒト化技術を用いて、即ち、Kabatにより定義されるマウスCDRを、ヒトの重鎖及び軽鎖フレームワーク配列にグラフトする(ヒトフレームワーク残基のいくつかは、場合により、対応して位置するMIKβ1マウス残基に復帰突然変異している)ことにより産生した。部分的にヒト化したバージョンのMIKβ1(表20を参照されたい。)は、T細胞大顆粒リンパ球性(T-LGL)白血病、及びヒトT細胞リンパ好性ウイルス1(HTLV-1)関連脊髄症/熱帯性痙性麻痺(HAM/TSP)に対する第二a相臨床試験において、有効性を示さなかった。本抗体は、部分的にヒト化されており、薬物動態及び生体内分布に影響を及ぼし得るオフターゲット結合を有し、IgG1アイソタイプを用いることで、疾患を媒介しない細胞における、望ましくない抗体依存性細胞毒性/抗体依存性細胞ファゴサイトーシスのリスクに繋がるという事実を含む、多数の不都合な事実を有する。これらの特徴によって、本抗体は、ヒト免疫媒介性疾患における標的治療薬として、さらなる試験の次善の候補となる。
【0023】
対照的に、本明細書で提供する抗CD122抗体は、ヒト免疫媒介性疾患及び障害の治療薬としてこれらが有用となる、本明細書に記載する利点を示す。
【0024】
抗体
CD122に特異的に結合する抗体、及びその抗原結合部を、本明細書で提供する。本明細書で提供する抗CD122抗体は、US 5,585,089に開示されている、マウス抗CD122抗体MIKβ1、及びそのヒト化バージョンよりも、いくつかの利点を有する。本明細書で提供する抗CD122抗体は、CD122によるIL-15のシグナル伝達の遮断において、改善された効能を有するように選択されている。重要なことに、これらの抗体は、ヒト受容体BCAM(AU、CD239、LU、MSK19、基底接着分子(Lutheran血液型)、ニューデシン(NENFとしても知られている)、及びCILP2(軟骨中間層タンパク質2としても知られている)への、オフターゲット結合をなくすことにより、MIKβ1と比較して、CD122結合の特異性が劇的に改善されている。
【0025】
本明細書で開示する抗体及び抗原結合部は、ヒトCD122に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体及び抗原結合部は、ヒト以外の種に由来するCD122、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)CD122、及び/またはアカゲザル(Macaca mulatta)CD122と交差反応し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトCD122のみに特異的であり得、非ヒト交差反応性を示し得ない。例示的なヒト、カニクイザル、及びアカゲザルCD122のアミノ酸配列を表16に示す。
【0026】
「抗体」という用語は幅広く、一般に、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む、免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的な標的結合特徴を保持する、その任意の機能的断片、変異体、バリアント、もしくは誘導体を意味する。このような変異体、バリアント、または誘導体抗体フォーマットは、当該技術分野において既知である。
【0027】
完全長抗体においては、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では「VH領域」と略す)、及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では「VL領域」と略される)、及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、即ちCLを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に、さらに細分することができる。各VHドメイン及びVLドメインは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本出願で用いるCDRの定義は、Kabatの定義である(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Bethesda,MD: Public Health Service,National Institutes of Health(1991))。
【0028】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域、またはバリアントFc領域であってよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにおけるEUインデックスに従っている。免疫グロブリン遺伝子のFc領域は、2つの定常ドメインのCH2及びCH3を含む。Fc領域は、二量体または単量体形態で存在することができる。Fc領域は、Fc受容体などの様々な細胞受容体、及び補体タンパク質などの他の免疫分子に結合する。
【0029】
免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY)、及びクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、もしくはIgA2)またはサブクラスであることができる。IgG、IgD、及びIgE抗体は一般に、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖、ならびに、それぞれがVH及びVLで構成される、2つの抗原組み合わせドメインを含有する。一般的に、IgA抗体は、各モノマーが2つの重鎖及び2つの軽鎖(IgG、IgD、及びIgE抗体に対するとおり)で構成される、2つのモノマーで構成され、このようにして、IgA分子は、それぞれがここでも、VH及びVLで構成される、4つの抗原結合ドメインを有する。特定のIgA抗体は、それらが2つの重鎖及び2つの軽鎖で構成されるという点で、単量体である。分泌されるIgM抗体は一般的に、各モノマーが、2つの重鎖及び2つの軽鎖(IgG及びIgE抗体に対するとおり)で構成される、5つのモノマーで構成される。したがって、IgM分子は、それぞれがここでも、VH及びVLで構成される、10個の抗原結合ドメインを有する。細胞表面形態のIgMは、IgG、IgD、及びIgE抗体と同様に、2つの重鎖/2つの軽鎖構造を有する。
【0030】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合部」または「抗原結合断片」(または「抗体部」または「抗体断片」)という用語は、ある抗原(例えば、CD122)に特異的に結合する能力を保持する抗体の、1つ以上の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の一部または断片によって行われ得ることが示されてきた。抗体の「抗原結合部」という用語に包含される結合部の例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片の、Fab断片、(ii)ヒンジ領域にてジスルフィド架橋により結合された2つのFab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一の可変ドメインを含む、dAb(ドメイン抗体)断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546、WO 90/05144 A1、それぞれの全体が本明細書に参照により組み込まれている。)、ならびに、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。本開示は、Fab’断片もまた包含する。Fab’断片は、F(ab’)2断片の還元により形成される。Fab’は、F(ab’)2に由来する、故に、Fab’は、Fcの小さな一部分を含有し得る。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別個の遺伝子によりコードされるものの、これらは、VL及びVHドメインのペアが一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv))を作製することを可能にする合成リンカーにより、組換え法を用いて結合することができる。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。いくつかの実施形態では、scFv分子は、融合タンパク質に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、一本鎖ラクダ抗体を本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、サメ重鎖抗体(V-NAR)を本明細書で提供する。English et al.(2020)Antibody Therapeutics,3(1):1-9を参照されたい。抗原結合部の例は、当該技術分野において既知である(Kontermann and Dubel eds.,Antibody Engineering(2001)Springer-Verlag.New York.790 pp.)。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体を本明細書で提供する。一般的に、本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、「抗体部」を包含する。抗体部は一般に、完全長抗体の抗原結合特性を保持する。
【0031】
本明細書で提供する抗体及び抗体部は、多重特異的(例えば、二重特異的または三重特異的)フォーマットであってよい。このような多重特異的分子は、2つ以上の異なる分子標的またはエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、第1の抗原及び第2の抗原に特異的に結合する二重特異的分子であり、第1の抗原はCD122であり、第2の抗原はCD122ではない。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部はダイアボディである。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖で発現するが、同じ鎖の2つのドメイン間で対形成をするにはあまりにも短いリンカーを使用することにより、このドメインを、別の鎖の相補性領域と対形成させることにより、2つの抗原結合部位を作製する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448、Poljak et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、トリアボディ、テトラボディ、ビスscFv、またはタンデムscFvである。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、二重親和性再標的化タンパク質である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する抗CD122抗原結合部は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはビスscFvである。
【0033】
本明細書で使用する場合、「免疫学的結合」及び「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはその抗原結合部)と、その免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じる、その種の非共有結合的相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)の観点から表すことができ、より小さなKdはより大きな親和性を表す。選択されるポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を用いて定量することができる。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成及び解離の速度の測定を伴い、それらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向において速度に等しく影響する幾何的パラメータに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)及び「オフ速度定数」(Koff)の両方とも、濃度ならびに会合及び解離の実際の速度を計算することによって決定され得る(Malmqvist,Nature 361:186-187(1993)を参照されたい)。Koff/Konの比率は、親和性に関連しない全てのパラメータの解除を可能にし、解離定数Kdに等しい(Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。本明細書で提供する抗体または抗原結合部は、放射性リガンド結合アッセイ、または当業者に知られている同様のアッセイなどのアッセイにより測定すると、平衡結合定数(Kd)が≦10μM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦10nM、及び最も好ましくは≦100pM~約1pMであるときに、CD122に特異的に結合する、と言われる。抗体のKdの測定方法の1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いる、通常、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによるものである。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、一価または二価であり、一本鎖または二本鎖を含む。機能上、抗体または抗原結合部の結合親和性は、10-5M~10-12Mの範囲内であり得る。例えば、抗体または抗原結合部の結合親和性は、10-6M~10-12M、10-7M~10-12M、10-8M~10-12M、10-9M~10-12M、10-5M~10-11M、10-6M~10-11M、10-7M~10-11M、10-8M~10-11M、10-9M~10-11M、10-10M~10-11M、10-5M~10-10M、10-6M~10-10M、10-7M~10-10M、10-8M~10-10M、10-9M~10-10M、10-5M~10-9M、10-6M~10-9M、10-7M~10-9M、10-8M~10-9M、10-5M~10-8M、10-6M~10-8M、10-7M~10-8M、10-5M~10-7M、10-6M~10-7M、または10-5M~10-6Mである。
【0035】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、当該抗体または抗原結合部が、CD122への結合に関して、抗体MAB05もしくはMAB06と、または抗体MAB05もしくはMAB06の1つ以上のアミノ酸配列を含む抗体と交差競合する、上記抗CD122抗体もしくは抗原結合部を、本明細書において提供する(表18及び19を参照されたい)。
【0036】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断された」、及び「交差遮断」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、抗体またはその抗原結合部が、標的CD122(例えば、ヒトCD122)への直接的な結合、または本開示の抗CD122抗体のアロステリック調節による間接的な結合に干渉する能力を意味する。抗体またはその一部が、標的への別の抗体またはその一部の結合に干渉することができる度合い、及びそれ故、当該抗体またはその一部が交差遮断または交差競合することができると言えるか否かは、競合結合アッセイを用いて測定することができる。結合競合アッセイの一例は、均一時間分解蛍光測定(HTRF)である。特に好適な、ある定量的交差競合アッセイは、標的への結合という観点で、標識した(例えば、Hisタグ化した、ビオチン化した、または放射能標識した)抗体またはその一部とその他の抗体またはその一部との間の競合を測定するためにFACSまたはAlphascreenベースのアプローチを用いる。一般的に、交差競合抗体またはその一部は、例えば、アッセイ中、及び第2の抗体またはその一部の存在下において、本発明に従った免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの、記録される置換が、所与の量で存在する、潜在的な交差遮断抗体またはその断片により、理論上の最大置換(例えば、交差遮断される必要がある、冷式(例えば、未標識)抗体またはその断片による置換)の、(例えば、FACSベースの競合アッセイにおいて)最大100%となるように、交差競合アッセイで標的に結合するものである。いくつかの実施形態では、交差競合抗体またはその一部は、10%~100%、または50%~100%の、記録される置換を有する。
【0037】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、当該抗体または抗原結合部が、CD122への結合に関して、VH領域及びVL領域を含む抗体と交差競合し、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0038】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、当該抗体または抗原結合部が、CD122への結合に関して、本明細書で開示するCDRのセットを含む、抗体または抗原結合部と交差競合し、(a)(i)ヒトCD122、ならびに(ii)カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122に特異的に結合し、(b)ヒトIL-15により刺激されたときに、初代NK細胞などのヒトCD122+細胞の増殖を、14nM未満のEC50でアンタゴナイズし、(c)10nMを下回るKDでアカゲザルCD122に結合し、(d)カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122、ならびにヒトCD122の、機能的に同一なエピトープに結合し、及び/または(e)抗体MIKβ1の可変ドメイン配列を含む抗CD122抗体と比較して、BCAMへの結合の低下、もしくはBCAMに結合しないことを示す、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部のKd値は、BIACORE(登録商標)分析により測定することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部のEC50値は、CD122を発現する細胞(例えば、CHO細胞、HEK細胞、M07e細胞、NK細胞、T細胞)のフローサイトメトリー染色により測定することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、低い免疫原性を有する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合部は、SYGVH(配列番号24)のHCDR1、VIWSGGSTDYNAAFIS(配列番号5)のHCDR2、AGDYNYDGFAY(配列番号27)のHCDR3、SGSSSVSFMY(配列番号30)のLCDR1、DTSNLAS(配列番号13)のLCDR2、及びQQWSTYPLT(配列番号15)のLCDR3を含む抗CD122抗体と比較して、低い免疫原性を示す。いくつかの実施例では、抗体または抗原結合部の免疫原性リスクは、抗体または一部における(例えば、抗体の可変領域または一部における)、T細胞エピトープの位置を同定することにより、インシリコで測定することができる。
【0040】
例えば、抗体または抗原結合部中のT細胞エピトープは、iTope(商標)を用いることで同定することができる。iTope(商標)を用いて、ヒトMHCクラスIIに対して無差別に高い親和性を伴って結合するペプチドの、VL及びVH領域配列を分析することができる。無差別に高い親和性のMHCクラスII結合ペプチドは、薬剤タンパク質の臨床上の免疫原性に対する高リスクインジケーターである、T細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(商標)ソフトウェアは、34個のヒトMHCクラスIIアレルの解放末端結合溝の中の、ペプチドのアミノ酸側鎖と特異的結合ポケット(特に、ポケット位置、p1、p4、p6、p7、及びp9)との好ましい相互作用を予測する。これらのアレルは、任意の特定の民族集団において最も一般的に発見されるものに対して重み付けをすることなく、世界的に発見される最も一般的なHLA-DRアレルを示す。アレルのうちの20個は、「オープン」p1構成を含有し、14個は、「クローズド」構成を含有し、83位のグリシンはバリンにより置き換えられている。鍵となる結合残基の位置は、試験タンパク質配列にまたがる8個のアミノ酸と重なり合う、九量体ペプチドのインシリコ生成により達成される。本プロセスは、MHCクラスII分子に結合するペプチドと、結合しないペプチドとを、非常に正確に、上手く区別する。
【0041】
抗体または抗原結合部中のT細胞エピトープは、他のタンパク質配列の、インビトロでのヒトT細胞エピトープマッピング分析により以前に同定されたT細胞エピトープへの一致を調査する、TCED(商標)(T Cell Epitope Database(商標))を用いるVL及びVH領域配列を分析することにより同定することができる。TCED(商標)を用いて、無関係のタンパク質及び抗体配列に由来するペプチドの、大型(10,000個のペプチドを超える)データベースに対して、任意の試験配列を調査する。
【0042】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体または抗原結合部は、抗体または一部が、その配列中に小数の、以下のペプチドの1つ以上:高親和性外来(「HAF」-高免疫原性リスク)、低親和性外来(「LAF」-低免疫原性リスク)、及び/またはTCED+(TCED(商標)データベースで、以前に同定されたエピトープ)を有するため、低い免疫原性を示し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体または抗原結合部は、その配列中に、高い生殖細胞系エピトープ(GE)含有量を有し得る。いくつかの実施例では、抗CD122抗体または抗原結合部は、その配列中(例えば、VL及び/またはVH領域配列中)に、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個(または21個以上)の生殖細胞系エピトープを有する。生殖細胞系エピトープは、高いMHCクラスII結合親和性を有する、ヒト生殖細胞系ペプチド配列と定義することができる。生殖細胞系エピトープの九量体ペプチドは、広範囲の生殖細胞系ペプチドを用いる以前の研究により立証されているとおり、T細胞耐性が原因で、免疫原性能を有しない可能性が高い。重要なことに、このような生殖細胞系vドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の、同様の配列によりさらに補助される)は、抗原提示細胞の膜においてMHCクラスII占有について競合し、T細胞刺激に必要な「活性化閾値」を実現するのに十分な外来ペプチド提示のリスクを低下させる。それ故、高いGE含有量は、抗体治療薬の臨床開発において有益な質となり、低い免疫原性をもたらすことができる。いくつかの実施例では、抗CD122抗体または抗原結合部は、LCDR2中で高いMHCクラスII結合親和性を有する、ヒト生殖細胞系ペプチド配列(例えば、生殖細胞系エピトープ)を含む。
【0044】
特定の実施形態では、抗CD122抗体または抗原結合部は、抗体MIKβ1の可変ドメイン配列を含む抗CD122抗体と比較して、重鎖及び軽鎖可変領域の両方のフレームワークで見出される、HAF、LAF、及び/またはTCED+エピトープの数が減少している場合がある。いくつかの実施形態では、HAF、LAF、及び/またはTCED+エピトープは、抗CD122抗体または抗原結合部のVL及び/またはVH領域配列中に存在しない。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、表20に示すMIKβ1マウス/ヒト化抗体アミノ酸配列のうちの1つ以上を含まない。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、配列番号24を含むHCDR1、配列番号27を含むHCDR3、及び/または配列番号30を含むLCDR1を含まない。表1は、本明細書で定義する(「Kabat」スキーム)、CDRが強調されたMIKβ1マウス抗CD122抗体可変領域のアミノ酸配列を示す。「MIKβ1-IgG1(ヒト化)」という用語は、表2で、「CD122-VH1」と標識された可変重鎖領域配列、及び「CD122-VL1」と標識された可変軽鎖領域配列、ならびに、ヒトIgG1定常領域を含む、抗CD122抗体を意味する。
【0046】
本明細書で開示する抗体は、抗CD122アンタゴニスト抗体である。本明細書で使用する場合、「アンタゴニスト」、または「抗CD122アンタゴニスト抗体」(同じ意味で、「抗CD122抗体」とも呼ばれる)とは、CD122に結合可能であり、CD122シグナル伝達により媒介されるCD122生物活性及び/または下流経路(複数可)を阻害することができる抗体を意味する。抗CD122アンタゴニスト抗体は、CD122シグナル伝達、例えば、CD122への受容体結合、及び/またはCD122への細胞応答の誘発により媒介される下流通路を含む、CD122生物活性を(著しくを含み)遮断、アンタゴナイズ、抑制、または低下させることができる抗体を包含する。本開示の目的のために、「抗CD122アンタゴニスト抗体」という用語は、CD122自体、及びCD122生物活性(T細胞の抗腫瘍細胞活性の活性化を抑制する能力を含むがこれらに限定されない)、または活性もしくは生物活性の結果が、有意な程度に実質的に無効化される、低下する、または中和される、用語、表題、ならびに機能的状態及び特徴全てを包含することが明示的に理解されよう。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部は、CD122に特異的に結合し、膜タンパク質BCAMには結合しない(または特異的に結合しない)。いくつかの実施形態では、BCAMはヒトタンパク質である。いくつかの実施形態では、BCAMはアカゲザルタンパク質である。いくつかの実施形態では、ヒトBCAMタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列、または配列番号21と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。一実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部は、BCAMに結合しない。いくつかの実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部は、抗体MIKβ1またはIgG1-MIKβ1(ヒト化)により示される、上記膜受容体への結合と比較して、BCAMへの結合の低下を示す。場合によっては、抗体またはその抗原結合部の、BCAMへの結合は、ELISAにより、またはフローサイトメトリー分析により測定することができる。
【0048】
抗体MAB06またはMAB05の1つ以上のアミノ酸配列を含む、抗CD122抗体またはその抗原結合部をさらに、本明細書で提供する。これらの抗体を形成する、VH領域、VL領域、及びCDR配列の組み合わせを、表18及び19に示す。いくつかの実施形態では、VH領域配列及び/またはVL領域配列は、アミノ末端に、シグナル配列(シグナルペプチドとしても知られている。)を含む。
【0049】
抗CD122抗体、またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、重鎖可変(VH)領域、及び軽鎖可変(VL)領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体または抗原結合部を、本明細書において提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、当該抗体が、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVH領域と、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVL領域と、を含み、(a)HCDR1が、アミノ酸配列G-F-T-F-S-S-Y-X1-M-S[式中、X1はL、または任意の他のアミノ酸である。](配列番号39)を含み、(b)HCDR2が、アミノ酸配列X1-A-X2-I-S-G-G-G-X3-X4-X5-Y-Y-X6-D-S-V-K-G[式中、X1はV、またはVの保存的置換であり、X2はTまたはNであり、X3はAまたはSであり、X4はEまたはNであり、X5はTまたはKであり、X6はPまたはVである。](配列番号40)を含み、(c)HCDR3が、アミノ酸配列X1-X2-X3-X4-X5-D-Y[式中、X1はQ、または任意の他のアミノ酸(例えば、T、L、M、もしくはN)であり、X2はL、または任意の他のアミノ酸(例えば、G、K、M、Q、S、もしくはV)であり、X3はY、またはYの保存的置換(例えば、H)であり、X4はY、または任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、F、G、M、E、I、K、S、もしくはW)であり、X5はF、または任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、E、I、K、M、S、もしくはW)である。](配列番号160)を含み、(d)LCDR1が、アミノ酸配列R-A-S-Q-S-I-X1-X2-X3-X4-X5[式中、X1はS、またはSの保存的置換であり、X2はS、またはSの保存的置換であり、X3はY、またはYの保存的置換であり、X4はL、またはLの保存的置換であり、X5はNもしくはT、またはNもしくはTの保存的置換である。](配列番号161)を含み、(e)LCDR2が、アミノ酸配列X1-A-X2-S-L-X3-X4[式中、X1はAもしくはT、またはAもしくはTの保存的置換であり、X2はS、またはSの保存的置換であり、X3はQ、または任意の他のアミノ酸であり、X4はS、または任意の他のアミノ酸である。](配列番号162)を含み、(f)LCDR3が、アミノ酸配列Q-Q-X1-Y-S-X2-P-X3-T[式中、X1はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はT、または任意の他のアミノ酸であり、X3はW、または任意の他のアミノ酸である。](配列番号163)を含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で開示する。
【0051】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、VH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記抗体または抗原結合部を、本明細書において提供する。
【0052】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、VH領域のアミノ酸配列が配列番号1、または配列番号1のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0053】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、VL領域のアミノ酸配列が、(a)配列番号17、もしくは、配列番号9のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列または(b)配列番号17、もしくは、配列番号9のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0054】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1、もしくは、配列番号1のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17、もしくは、配列番号9のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1、もしくは、配列番号1のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9、もしくは、配列番号17のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、上記抗体またはその抗原結合部もまた、本明細書で提供する。
【0055】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含み、VH領域配列、VL領域配列、もしくは、VH領域とVL領域配列の両方に1、2、もしくは3個の保存的アミノ酸置換が存在する、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含み、VH領域配列、VL領域配列、もしくは、VH領域とVL領域配列の両方に1、2、もしくは3個の保存的アミノ酸置換が存在する、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換はFR配列においてのみ行われ、抗体または抗原結合部のCDR配列では行われない。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部はモノクローナルである。「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、例えば、任意の真核性、原核性、またはファージクローンを含む、単独のコピーまたはクローンに由来する、抗体またはその抗原結合部を意味し、当該抗体またはその抗原結合部が産生される方法を意味するものではない。好ましくは、モノクローナル抗体は、均質な、または実質的に均質な集団に存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗体または抗原結合部は、単離することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、キメラである。「キメラ」という用語は、可変ドメイン配列が1つの種に由来し、少なくとも1つの定常領域配列が別の種に由来する、抗体分子、またはその抗原結合部を意味することを意図する。例えば、マウス抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)の、軽鎖(複数可)の可変ドメインの1つもしくは全て、及び/または重鎖(複数可)の可変ドメインの1つもしくは全てはそれぞれ、例えば、IgG1またはIgG4ヒト定常領域に限定されるものではない、ヒト定常領域に結合することができる。キメラ抗体、及び当該抗体を生成するための好適な技術の例は、米国特許第4,816,567号、同第4,975,369号、及び同第4,816,397号に記載されており、それらそれぞれの全体が本明細書に参照により組み込まれている。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、(a)配列番号1を含むVH領域のアミノ酸配列、配列番号17及びヒト定常領域を含むVL領域のアミノ酸配列、または(b)配列番号1を含むVH領域のアミノ酸配列、配列番号9及びヒト定常領域を含むVL領域のアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、ヒト化されている。「ヒト化」という用語は、重鎖及び/または軽鎖の非ヒト(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)CDRと共に、可変ドメインに1つ以上のヒトフレームワーク領域を含むように組換えされている、抗体またはその抗原結合部を意味することが意図される。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、CDRを除いて完全にヒトである配列を含む。抗CD122抗体分子またはその抗原結合部は、CDRが挿入されている、1つ以上のヒト可変領域フレームワークスキャフォールドを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部の、VH領域、VL領域、またはVH領域とVL領域の両方は、1つ以上の、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、抗体MAB06またはMAB05のCDRであるCDRを除いて、完全にヒトである配列を含む。ヒト化抗体、及びその生成に好適な技術の例は、Hwang et al.,Methods 36:35,2005、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033,1989、Jones et al.,Nature,321:522-25,1986、Riechmann et al.,Nature,332:323-27,1988、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-36,1988、Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833-37,1989、U.S.5,225,539、U.S.5,530,101、U.S.5,585,089、U.S.5,693,761、U.S.5,693,762、U.S.6,180,370、及びWO90/07861に提供されており、これらそれぞれの全体が、本明細書に参照により組み込まれている。FRを選択してCDRに隣接させる場合、例えば、抗体をヒト化または最適化する場合、同じ標準クラスにCDR配列を含有する抗体に由来するFRが好ましい。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合断片は、必ずしも、対応するマウスCDR、または他の(フレームワークなどの)アミノ酸位置において、最大数のヒト生殖細胞系置換を有する必要はない。以下の実験の章で詳述するとおり、「最大限ヒト化した」抗体分子とは、抗CD122結合特性、及び/または他の望ましい特徴の観点から、必ずしも「最大限最適化された」ものではない。
【0061】
本開示は、本明細書で定義する抗体分子またはその抗原結合部のアミノ酸配列への修飾を包含する。例えば、本開示は、性質に著しい影響を及ぼさない、機能的に等価な可変領域及びCDR、加えて、活性及び/または親和性が向上した、または低下したバリアントを含む抗体分子、及び対応するその抗原結合部を含む。例えば、アミノ酸配列を変異させて、CD122に対する所望の結合親和性を有する抗体を得ることができる。1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さである、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一のまたは多数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む挿入が、想到される。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体分子、またはエピトープタグに融合した抗体分子が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、血液循環中で抗体の半減期を増加させる、酵素またはポリペプチドの抗体のNまたはC末端への融合が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、グリコシル化及び非グリコシル化ポリペプチド、加えて、他の翻訳後修飾、例えば、異なる糖類によるグリコシル化、アセチル化、及びリン酸化が行われたポリペプチドを含むことができる。抗体または抗原結合部を、例えば、1つ以上のアミノ酸残基を付加する、除去する、または置き換えて、グリコシル化部位を形成する、または除去することにより変異させて、そのような翻訳後修飾を変化させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗CD122抗体または抗原結合部は、例えば、アミノ酸置換により修飾し、抗体または一部における、潜在的なタンパク質分解部位を除去することができる。
【0064】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部が、VH領域、VL領域、及び全ヒトフレームワーク領域配列を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体またはその抗原結合部もまた、本明細書で提供する。
【0065】
抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部が、VH領域、VL領域、及び1つ以上のヒトフレームワーク領域配列を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体またはその抗原結合部もまた、本明細書で提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するHCDR配列が挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系スキャフォールドを含むことができる。抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列のセットが挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系スキャフォールドアミノ酸配列を含む、VH領域を含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するLCDR配列が挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系スキャフォールドを含むことができる。抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列のセットが挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系スキャフォールドアミノ酸配列を含む、VL領域を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するHCDR配列が挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系スキャフォールド、及び対応するLCDR配列が挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系スキャフォールドを含むことができる。抗CD122抗体またはその抗原結合部は、対応するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列のセットが挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系スキャフォールドアミノ酸配列を含む、VH領域、ならびに、対応するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列のセットが挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系スキャフォールドアミノ酸配列を含む、VL領域を含むことができる。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列は、表18または19におけるクローンのいずれか1つの、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列(6つ全てのCDR配列が、同じクローンに由来する)であってよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、免疫グロブリンの定常領域を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgYである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、免疫学的に不活性である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、FcγR結合、抗体依存性細胞傷害活性、及び/または補体依存性細胞傷害活性を低下させる、または防止する、1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、野生型ヒトIgG1定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域、アミノ酸置換L234A、L235A、G237A、及びP331Sを含むヒトIgG1定常領域、またはアミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域であり、番号付けは、KabatにおけるEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン分子の定常領域中でのアミノ酸残基の位置は、Kabat(Ward et al.,1995 Therap.Immunol.2:77-94)におけるEUインデックスに従って番号付けされる。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、カッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域である、免疫グロブリン軽鎖定常領域を含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、表15のアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリンの定常領域を含むことができる。表15のFc領域配列は、CH1ドメインから始まる。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、ヒトIgG4、ヒトIgG4(S228P)、ヒトIgG2、ヒトIgG1、ヒトIgG1エフェクターヌルのFc領域のアミノ酸配列を含む、免疫グロブリンの定常領域を含むことができる。例えば、ヒトIgG4(S228P)Fc領域は、野生型ヒトIgG4 Fc領域と比較して、以下の置換:S228Pを含む。例えば、ヒトIgG1エフェクターヌルFc領域は、野生型ヒトIgG1 Fc領域と比較して、以下の置換:L234A、L235A、及びG237Aを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域は、RDELT(配列番号39)モチーフ、またはREEM(配列番号40)モチーフ(表15で下線を引いている)を含むことができる。REEM(配列番号40)アロタイプは、RDELT(配列番号39)アロタイプよりも小規模のヒト集団で発見される。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、配列番号32~38のいずれか1つを含む、免疫グロブリンの定常領域を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、表18または19のクローンのいずれか1つにおける、6つのCDRアミノ酸配列、及び表15のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、表15のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含む免疫グロブリン重鎖定常領域、及びカッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域である、免疫グロブリン軽鎖定常領域を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体がVH領域、VL領域、及び重鎖定常領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含み、重鎖定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含み、重鎖定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体がVH領域、VL領域、及び重鎖定常領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含み、重鎖定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、もしくは、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含み、重鎖定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含み、重鎖定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、もしくは、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域を含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含み、もしくはこれからなり、重鎖定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含み、もしくはこれからなり、重鎖定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、上記抗体またはその抗原結合部を、本明細書で提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、免疫エフェクターヌルであってよい。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、免疫エフェクター機能を誘導せず、任意選択で、免疫エフェクター機能を抑制する。いくつかの実施形態では、抗CD122抗体は、ヒトFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、及びFcγRIIIb受容体への、測定可能な結合を欠いている場合があるが、ヒトFcγRIIb受容体への結合を維持し得、任意選択で、ヒトFcRn受容体への結合を維持し得る。FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbは、活性化受容体の例である。FcγRIIbは、阻害性受容体の例である。FcRnは、リサイクリング受容体の例である。いくつかの実施形態では、ヒトFc受容体に対する抗CD122抗体またはその抗原結合部の結合親和性は、BIACORE(登録商標)分析により測定することができる。いくつかの実施形態では、均一時間分解蛍光測定(HTRF)を用いて、抗CD122抗体の、ヒトFc受容体への結合を調査することができる。HTRFの一例では、ヒトIgG1(野生型)が、完全に揃ったFcγ受容体であるため標識され、その後、組換えFc断片を含む抗体を、滴定競合において使用する。いくつかの実施形態では、CD122陽性細胞を、ヒト白血球細胞及び抗CD122抗体と混合することができ、CDC、ADCC、及び/またはADCPによる細胞殺傷を測定することができる。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列(表15を参照されたい。)を含む抗CD122抗体は、エフェクターヌルである。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列(表15を参照されたい。)を含む抗CD122抗体は、エフェクターヌルではない。
【0076】
治療剤に結合した、抗CD122抗体またはその抗原結合部を含む免疫複合体をさらに、本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、またはプロアポトーシス剤である。
【0077】
好適な治療剤の例としては、免疫調節剤、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、プロアポトーシス剤、ならびに、細胞増殖抑制酵素及び細胞溶解酵素(例えば、RNAse)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる治療剤としては、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、またはプロアポトーシス剤をコードする遺伝子などの治療用核酸が挙げられる。これらの薬剤についての語句は、相互に排他的ではないが故に、治療剤は、上記用語の1つ以上を用いて説明される場合がある。
【0078】
免疫複合体で用いるための好適な治療剤の例としては、JAKキナーゼ阻害剤、タキサン、メイタンシン、CC-1065及びデュオカルマイシン、カリケアマイシン及び他のエンジイン、ならびにオーリスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、抗葉酸剤、ビンカアルカロイド、及びアントラサイクリンが挙げられる。植物性毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(即ち、ADEPT)、放射性同位体、光増感剤もまた、免疫複合体で使用することができる。加えて、複合体は、リポソームまたはポリマーなどの二次担体を細胞毒性剤として用いて作製することができる。好適な細胞毒素としては、細胞の機能を阻害もしくは防止する剤、及び/または細胞の破壊をもたらす剤が挙げられる。例示的な細胞毒素としては、抗生物質、チューブリン重合の阻害剤、DNAに結合してDNAを破壊するアルキル化剤、ならびに、タンパク質合成を破壊する、または不可欠な細胞タンパク質の機能を破壊する剤(プロテインキナーゼ、ホスファターゼ、トポイソメラーゼ、酵素、及びサイクリンなど)が挙げられる。
【0079】
例示的な細胞毒素としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ゾルビシン、マイトキサントロン、エピルビシン、カルビシン、ノガラマイシン、メノガリル、ピタルビシン、バルルビシン、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン、エノシタビン、アザシチジン、ドキシフルフジン(doxifluhdine)、ペントスタチン、ブロクスフジン(broxuhdine)、カペシタビン、クラドフビン(cladhbine)、デシタビン、フロクスフジン(floxuhdine)、フルダラビン、グーゲロチン、ピューロマイシン、テガフール、チアゾフーン(tiazofuhn)、アドハマイシン(adhamycin)、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、マイトキサントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、エトポシド、タキソール、タキソール類似体、cis-プラチン及びカルボプラチンなどのプラチン、マイトマイシン、チオテパ、タキサン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、タモキシフェン、イダルビシン、ドラスタチン/オーリスタチン、へミアステルリン、エスペラミシン、ならびにメイタンシノイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
好適な免疫調節剤としては、腫瘍でのホルモン作用を遮断する抗ホルモン剤、及びサイトカイン産生を抑制する、自己抗原発現を下方制御する、またはMHC抗原をマスクする免疫抑制剤が挙げられる。
【0081】
医薬組成物
本明細書で提供する抗CD122抗体及び抗原結合部(本明細書では、「活性化合物」とも呼ばれる)を、投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は通常、抗CD122抗体もしくは抗原結合部(または上記抗体もしくは部分を含む免疫複合体)と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む。このような材料は無毒性でなければならず、抗CD122抗体またはその抗原結合断片の有効性と干渉してはならない。担体または他の材料の厳密な性質は、注射、ボーラス、輸液、または以下で論じる任意の他の好適な経路であり得る、投与経路に左右されるであろう。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、当該技術分野において周知の経路を用いて投与される際、アレルギーの、または他の深刻な拒絶反応を一般的に生み出さない、分子要素または組成物を意味する。米国の連邦もしくは州政府の監督機関により認可されている、または動物、及びより具体的にはヒトで使用するために、米国薬局方もしくは他の一般に認可された薬局方で列挙されている、分子要素または組成物は、「薬学的に許容される」と考えられる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与において適合性がある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗カビ剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。好適な担体は、本分野での標準的な参考文献である、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれている。このような担体または希釈剤のいくつかの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム、及び不揮発性油などの非水性ビヒクルもまた使用可能である。薬剤的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である限りを除いて、組成物におけるその使用が企図される。補足的活性成分を組成物に組み込むこともできる。薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤は、二次反応を引き起こさず、例えば、抗CD122抗体もしくはその抗原結合部の投与を促進させる、その寿命、及び/または体内での有効性を増加させる、または溶液中での溶解度を増加させる、化合物、または化合物の組み合わせであってよい。
【0083】
(i)抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、VH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記抗体または抗原結合部と、(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤と、を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、医薬組成物を、本明細書で提供する。
【0084】
(i)抗CD122抗体またはその抗原結合部であって、上記抗体または抗原結合部が、VH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記抗体または抗原結合部と、(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む医薬組成物を、本明細書で提供する。
【0085】
本明細書で開示する医薬組成物を、目的の投与経路に適合するように製剤化してよい。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(即ち、局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下用途に使用される溶液または懸濁液としては、以下の構成成分を挙げることができる:注射用水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤、アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝液、及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの、張度調節剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基により調節可能である。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数投与用バイアルに封入することができる。
【0086】
注射での使用に好適な医薬組成物としては、無菌の水溶液(水溶性の場合。)または分散液、及び無菌の注射剤または分散液を即時調製するための無菌の粉末が含まれる。静脈内投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合も、組成物は滅菌されていなければならず、注射可能性が容易である流体でなければならない。組成物は製造及び保存の条件で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウム等)を組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることにより、注射可能な組成物の吸収を遅らせることができる。
【0087】
必要に応じて、上に挙げた成分の1つまたは組み合わせと共に、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を入れてから濾過滅菌することにより、無菌注射可能な溶液を調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、活性成分に、その事前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加的な所望の成分を添加した粉末をもたらす、真空乾燥及びフリーズドライである。
【0088】
経口組成物は通常、不活性希釈剤または食用担体を含む。不活性希釈剤または食用担体は、ゼラチンカプセルに封入することができる、または圧縮して錠剤にすることができる。経口治療用投与の目的のために、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセルの形態で使用することが可能である。マウスウォッシュとして使用するための流体担体を使用しても、経口組成物を調製することができ、流体担体中の化合物は経口適用され、ブクブクしてから吐き出されるか、嚥下される。薬学的に適合性のある結合剤、及び/またはアジュバント材を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤などは、以下の成分、または類似の性質を持つ化合物のいずれか:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primojel(登録商標)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバリングなどの香味剤を含有することができる。
【0089】
吸入による投与に関して、化合物は、好適な噴射剤(例えば二酸化炭素などの気体)を含有する圧縮容器もしくは散布器、またはネブライザからのエアゾールスプレーの形態で送達され得る。
【0090】
全身投与は経粘膜または経皮的方法とすることもできる。経粘膜または経皮投与のために、浸透すべき障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は当該技術分野において一般に既知であり、例えば、経粘膜投与に関しては界面活性剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧または座薬を使用することにより達成することができる。経皮投与のために、活性化合物は当該技術分野において一般に既知の軟膏、蝋膏、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0091】
医薬品は、座薬(例えば、カカオバターもしくは他のグリセリドなどの、従来の座薬基剤を用いる)、または直腸送達用の停留浣腸の形態でもまた調製することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、活性化合物は、化合物が体から急速に取り除かれることを防ぐ担体、例えばインプラント及びマイクロカプセル化デリバリーシステムなどの制御放出製剤により調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明白であろう。材料は商業的に入手することもまた、可能である。リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として使用可能である。
【0093】
投与しやすく均一な用量の投薬単位形態で経口または非経口組成物を調製することが、特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、対象を治療するための単位の投薬として適した、物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすように算出された、既定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体における治療のためにそのような活性化合物を調合する技術分野の本質的な制限によって決定付けられ、またそれに直接依存する。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部は、投与前に、再構築のための凍結乾燥形態で提供することができる。例えば、凍結乾燥された抗体分子は、滅菌水中で再構築することができ、個体に投与する前に生理食塩水と混合することができる。
【0095】
本明細書で提供する医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサーに、投与用の取扱説明書と共に含めることができる。
【0096】
核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び抗体の産生方法
本明細書に記載する抗CD122抗体もしくは抗CD122抗原結合部のアミノ酸配列(または抗体または抗原結合部の(i)VH領域、(ii)VL領域、もしくは(iii)VH領域及びVL領域の両方のアミノ酸配列)をコードする、核酸分子(例えば、単離核酸分子)を、本明細書において提供する。本明細書に記載する抗CD122抗体または抗CD122抗原結合部の(i)重鎖、(ii)軽鎖、または(iii)重鎖及び軽鎖の両方をコードする核酸分子(例えば、単離核酸分子)をさらに、本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、VH領域、VL領域、重鎖、または軽鎖をコードする核酸分子は、シグナル配列を含む。いくつかの実施形態では、VH領域、VL領域、重鎖、または軽鎖をコードする核酸分子は、シグナル配列を含まない。
【0097】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、抗CD122抗体またはその抗原結合部のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列であって、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記アミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列をさらにコードする。
【0098】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、抗CD122抗体またはその抗原結合部のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列であって、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記アミノ酸配列をコードする。
【0099】
本明細書に記載する核酸分子を含む発現ベクターもまた、本明細書において提供する。特定のベクターでは、核酸分子は、宿主細胞内での核酸セグメントの発現に好適な、1つ以上の調節配列に作動可能に連結している。場合によっては、発現ベクターは、複製を媒介する配列を含み、1つ以上の選択可能なマーカーを含む。本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、宿主細胞にて、対象となる1つ以上の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達可能な、そして好ましくは、これを発現可能なコンストラクトを意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネークドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連するDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されるDNAまたはRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書で開示する発現ベクターまたは核酸分子を含む組換え宿主細胞を、本明細書において提供する。「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドインサートを組み込むためのベクター(複数可)に対するレシピエントであることができる、またはレシピエントとなっている、個別の細胞、細胞株、または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の後代を含む。後代は、自然変異、偶然変異、または意図的な変異によって、必ずしも、元の親細胞と(モルホロジー、またはゲノムDNA補体が)完全に同一である必要はなくてよい。発現ベクターを、標準的な技術により宿主細胞にトランスフェクトすることができる。非限定例としては、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞は、抗CD122抗体またはその抗原結合部のVH領域及びVL領域の両方をコードする、単一ベクターまたは単一の核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞は、(i)抗CD122抗体またはその抗原結合部のVH領域をコードする、第1のベクターまたは第1の核酸分子、及び(ii)抗CD122抗体またはその抗原結合部のVL領域をコードする、第2のベクターまたは第2の核酸分子を含む。
【0101】
本発明の抗体分子、またはその抗原結合部は、当該技術分野において周知の技術、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、計算技術、またはそのような技術、もしくは当該技術分野において速やかに知られる他の技術の組み合わせを用いて産生することができる。
【0102】
抗CD122抗体またはその抗原結合部の産生方法であって、本明細書に記載する発現ベクターを含む組換え宿主細胞を、核酸セグメントが発現する条件下で培養して、抗CD122抗体または抗原結合部を産生することを含む、上記方法をさらに、本明細書で提供する。次いで、抗体または抗原結合部は、宿主細胞または培養液から単離することができる。抗CD122抗体またはその抗原結合部は、当業者に既知の様々な方法のいずれかにより産生することができる。特定の実施形態では、抗CD122抗体及びその抗原結合部は、組換えにより産生することができる。例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、もしくは配列番号18の1つ以上をコードする核酸配列、またはその一部を、細菌細胞(例えば、E.coli、B.subtilis)、もしくは真核細胞(例えば、S.cerevisiaeなどの酵母菌、もしくは、CHO細胞株、様々なCos細胞株、ヒーラー細胞、HEK293細胞、様々な骨髄腫細胞株、もしくは形質転換したB細胞もしくはハイブリドーマなどの哺乳類細胞)、またはインビトロ翻訳システムに導入することができ、翻訳されたポリペプチドを単離することができる。いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖タンパク質及び重鎖タンパク質は、成熟した抗CD122抗体またはその抗原結合部の産生の際に取り除かれるシグナル配列を有する細胞内で産生される。
【0103】
当業者は、標準的な方法論、例えば、ウエスタンブロット、ELISAなどを用いて、過度な実験をすることなく、所与のポリペプチド配列を含む抗体または抗原結合部がCD122タンパク質に結合するか否かを測定することができる。
【0104】
ヒトCD122に、ならびに、任意選択で、カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122にもまた特異的に結合する抗体、またはその抗原結合部の産生方法であって、
(1)非ヒト源由来の抗CD122 CDRをヒトvドメインフレームワークにグラフトして、ヒト化抗CD122抗体分子またはその抗原結合部を産生する工程と、
(2)CDRに1つ以上の変異を含む、ヒト化抗CD122抗体分子またはその抗原結合部のクローンのライブラリーを生成する工程と、
(3)ライブラリーの、ヒトCD122、ならびに、任意選択でまた、カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122への結合をスクリーニングする工程と、
(4)スクリーニング工程(3)から、ヒトCD122に、ならびに、任意選択で、カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122にも結合特異性を有するが、ヒトBCAM、ヒトCILP2、またはヒトニューデシンへの結合が低下している、または結合しないクローンを選択する工程と、
(5)工程(4)で選択したクローンから、ヒトCD122に、ならびに、任意選択で、カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122にもまた特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部を産生する工程と、を含む、上記方法を、本明細書において提供する。
【0105】
方法は、工程(4)で選択したクローンに基づき、例えば、工程(4)で選択したクローンのCDRの特定の位置における、さらなる調査用変異導入に基づき、追加のクローンを産生し、工程(5)で産生した抗体分子またはその抗原結合部において、ヒト化を向上させる、及び/またはヒトT細胞エピトープの含有量を最小限に抑える、及び/または製造特性を改善する、さらなる工程を含むことができる。
【0106】
抗体の使用
本明細書に記載する抗CD122抗体、抗CD122抗原結合部、免疫複合体、及び医薬組成物の、免疫媒介性疾患または障害を有する対象に治療的効果をもたらすための方法及び使用を、本明細書で提供する。
【0107】
対象における免疫応答の抑制方法であって、上記対象に、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を投与することを含む、上記方法を、本明細書において提供する。対象における免疫応答(例えば、CD122陽性細胞により媒介される免疫応答)の抑制方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記方法を、本明細書において提供する。対象における免疫応答の抑制方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記方法を、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、免疫応答はCD122により媒介される。
【0108】
IL-15が誘導するT細胞の皮膚(例えば、ヒトの皮膚)からの移動の抑制方法であって、上記皮膚を、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を接触させることを含む、上記方法を、本明細書において提供する。IL-15が誘導するT細胞の皮膚(例えば、ヒトの皮膚)からの移動の抑制方法であって、皮膚を、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部と接触させることを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記方法を、本明細書において提供する。IL-15が誘導するT細胞の皮膚(例えば、ヒトの皮膚)からの移動の抑制方法であって、皮膚を、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部と接触させることを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記方法を、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8+ T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+ T細胞である。いくつかの実施形態では、皮膚は、CD122の過剰発現、または通常はCD122を発現しない細胞でのCD122の発現と関連する疾患または障害を有する、対象の皮膚である。
【0109】
本明細書に記載する抗CD122抗体またはその抗原結合部は、予防的(prophylactic)または予防的(preventative)治療(例えば、対象において病状が開始する前に、対象で病状が生じるリスクを軽減する、開始を遅らせる、または開始後にその重症度を軽減するための治療)を含む、ヒトまたは動物の体の治療方法で使用することができる。治療方法は、必要とする対象に抗CD122抗体または抗原結合部を投与することを含むことができる。対象における疾患の治療または予防方法であって、上記対象に、治療に有効な量の、本明細書で開示する抗体、抗原結合部、免疫複合体、または医薬組成物を投与することを含む、上記方法を、本明細書において提供する。
【0110】
対象における疾患の治療または予防方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記方法を、本明細書において提供する。対象における疾患の治療または予防方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記方法を、本明細書において提供する。
【0111】
対象における疾患の症状の重症度の緩和、治療、または軽減方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、上記方法を、本明細書において提供する。対象における疾患の症状の重症度の緩和、治療、または軽減方法であって、対象に、治療に有効な量の抗CD122抗体またはその抗原結合部を投与することを含み、抗体または抗原結合部がVH領域及びVL領域を含み、(a)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、もしくはこれからなる、または(b)VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、もしくはこれからなり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、もしくはこれからなる、上記方法を、本明細書において提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、CD122の過剰発現、または通常CD122を発現しない細胞におけるCD122の発現と関連する。いくつかの実施形態では、疾患または障害はCD122により媒介される。
【0113】
いくつかの実施形態では、疾患は、炎症性疾患または自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、白斑、セリアック病、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、または関節リウマチである。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法で用いる抗CD122抗体または抗原結合部の、VH領域、VL領域、またはVH領域とVL領域の両方は、1つ以上の、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む。
【0115】
本明細書で使用する場合、「有効量」、または「治療に有効な量」という用語は、疾患、例えば、白斑、セリアック病、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、もしくは関節リウマチ、もしくはこれらの1つ以上の症状の、重症度及び/または期間を小さくする、もしくは緩和する、疾患の進行を予防する、疾患の後退を引き起こす、疾患と関連する1つ以上の症状の再発、発症、開始、もしくは進行を予防する、疾患を検出する、またはCD122媒介性疾患用の、別の関連する治療法(例えば、予防もしくは治療剤)の予防もしくは治療効果(複数可)を向上させる、もしくは改善するのに十分な、医薬品、例えば、抗CD122抗体またはその抗原結合部の量を意味する。
【0116】
投与される実際の量、ならびに、投与速度及び時間経過は、治療されているものの性質及び重症度、治療されている具体的な哺乳類、個別の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、ならびに、医師に知られている他の因子に左右されるであろう。治療の処方、例えば、用量の決定などは、一般医または他の医師の責任の範囲内であり、治療されている疾患の症状及び/または進行の深刻度に左右され得る。抗体分子の適切な用量は、当該技術分野において周知である(Ledermann J.A.et al.,1991,Int.J.Cancer 47:659-664、Bagshawe K.D.et al.,1991,Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922)。本明細書で、またはPhysician’s Desk Reference(2003)において、投与されている薬剤の種類に対して適切と示され得る具体的な用量を使用してよい。治療に有効な量、または好適な用量の抗体分子は、動物モデルにおいてインビトロ活性とインビボ活性を比較することで測定することができる。マウス及び他の試験動物における有効用量をヒトに当てはめる方法は既知である。正確な用量は、抗体が予防用のものであるのか治療用のものであるのか、治療される領域のサイズ及び位置、抗体(例えば、全抗体、断片)の正確な性質、ならびに、抗体に結合した任意の検出可能な標識または他の分子の性質を含む多数の因子に左右されるであろう。
【0117】
典型的な抗体の用量は、全身投与に対しては100μg~1g、皮内注射に対しては1μg~1mgの範囲であろう。初回に多めの投与量、その後、1回以上の量の少ない用量を投与してよい。いくつかの実施形態では、抗体は全抗体、例えば、IgG1またはIgG4アイソタイプである。これは、成人対象の1回治療用の用量であり、子ども及び乳児にも相応に調整することができ、また、分子量に比例して他の抗体フォーマットにも調整することができる。治療は、毎日、週に2回、毎週または毎月の間隔で、医師の自由裁量で繰り返すことができる。対象の治療スケジュールは、抗体組成物の薬物動態及び薬力学特性、投与経路、ならびに、治療されている病状の性質に左右され得る。
【0118】
治療は周期的であることができ、投与間の周期は、約2週間以上、例えば、約3週間以上、約4週間以上、およそ月に1回以上、約5週間以上、または約6週間以上であることができる。例えば、治療は、2~4週毎、または4~8週毎であることができる。治療は、術前及び/または術後に行うことができ、及び/または外科治療もしくは侵襲的手順の解剖部位に直接投与もしくは適用することができる。好適な製剤及び投与経路は、上述している。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗CD122抗体及び抗原結合部は、皮下注射として投与することができる。皮下注射は、例えば、長期予防/治療用の自動注射器を用いて投与することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗CD122抗体またはその抗原結合部の治療効果は、用量に応じて、数半減期の間持続し得る。例えば、単回用量の抗CD122抗体またはその抗原結合部の治療効果は、対象において1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、4ヶ月以上、5ヶ月以上、または6ヶ月以上持続し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載する抗CD122抗体または抗CD122抗原結合部、免疫複合体または医薬組成物、及びCD122媒介性疾患もしくは障害を、またはCD122媒介性疾患もしくは障害の症状もしくは合併症を治療するために使用される追加の治療剤または治療法で治療することができる。抗CD122抗体または抗CD122抗原結合部、及び追加の治療剤または治療法は、同時にまたは連続して投与することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、対象はヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、マウス、またはラットである。いくつかの実施形態では、対象は成人のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は小児のヒトである。
【0123】
疾患または障害の治療で使用するための、本明細書に記載する抗CD122抗体または抗CD122抗原結合部、免疫複合体または医薬組成物をさらに、本明細書で提供する。
【0124】
薬剤として使用するための、本明細書に記載する抗CD122抗体または抗CD122抗原結合部、免疫複合体または医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0125】
定義
別途記載がない限り、本明細書で使用する用語は、当該技術分野において通常用いられるとおりの定義を有する。いくつかの用語を以下に定義し、追加の定義は、発明を実施するための形態の残りの箇所に見出すことができる。
【0126】
「a」または「an」という用語は、当該要素の1つ以上を意味する、即ち、複数の指示対象を意味することができる。したがって、「a」、「an」、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。加えて、不定冠詞「a」または「an」による「要素」への言及は、文脈上明白に薬剤のうちの1つ及び1つのみが存在することを必要としない限り、薬剤のうちの2つ以上が存在する可能性を排除しない。
【0127】
本明細書の全体を通して、用語「約」は、値が、この値を決定するために使用されるデバイス、または方法についての誤差の固有の変動、または測定される試料間で存在する変動を含むことを示すために使用される。別途明記されない限り、または文脈から明らかでない場合を除いて、「約」という用語は、報告される数値の上下10%以内(そのような数が、可能な値の100%を超える、または0%を下回る場合を除く。)を意味する。値の範囲、または一連の値と組み合わせて用いる場合、「約」という用語は、別途記載のない限り、一連で列挙される値の範囲の両端点、またはそれらのそれぞれに適用される。本出願にて使用する場合、「約」及び「およそ」という用語は、等価なものとして用いられる。
【0128】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」という用語は、最適にアラインされた2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、残基、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸のアラインメントウィンドウを通して不変である程度を意味する。試験配列及び参照配列の、アラインされたセグメントに関する「同一性部分」とは、アラインされた2つの配列により分かち合われている同一残基の数を参照配列セグメント中の残基の総数、即ち、参照配列全体、またはより細かく画定される参照配列の一部により除したものである。「同一性パーセント」とは、同一性部分を100倍したものである。同一性パーセントは、デフォルトパラメータを用いて、ebi.ac.uk/Tools/msa/clustaloで入手可能なアラインメントプログラムのClustal Omegaを用いて計算することができる。Sievers et al.,“Fast,scalable generation of high-quality protein multiple sequence alignments using Clustal Omega”(2011 October 11)Molecular systems biology 7:539を参照されたい。配列に対する同一性を計算する目的のため、タグなどの伸長は含めない。
【0129】
本明細書で使用する場合、「HCDR」という用語は、重鎖相補性決定領域を意味する。本明細書で使用する場合、「LCDR」という用語は、軽鎖相補性決定領域を意味する。
【0130】
本明細書で使用する場合、「保存的置換」という用語は、あるアミノ酸を、その機能活性を著しく有害に変化させない別のアミノ酸で置き換えることを意味する。「保存的置換」の好ましい例は、あるアミノ酸を、以下のBLOSUM62置換マトリックスにおいて≧0の値を有する別のアミノ酸で置き換えることである(Henikoff & Henikoff,1992,PNAS 89:10915-10919を参照されたい)。
【0131】
「抗体薬物複合体」及び「免疫複合体」とは、CD122に結合し、細胞毒性、細胞増殖抑制、及び/または治療剤と複合体化した抗体誘導体を含む、抗体分子またはその抗原結合部を意味する。
【0132】
「単離分子」(分子は、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である。)という用語は、起源、または由来源によって、(1)天然状態で付随する、自然に関連する構成要素と関連しない、(2)同一種の他の分子を実質的に含まない、(3)異なる種の細胞により発現される、または(4)自然で発生しない分子である。したがって、自然に由来する細胞とは異なる細胞系で化学的に合成される、または発現する分子は、その自然に関連する構成要素から「単離」されるであろう。分子は、当該技術分野において周知の精製技術を用いる単離により、自然に関連する構成要素を実質的に含まないようにすることができる。分子の純度または均質性は、当該技術分野において周知の多数の手段により分析することができる。例えば、ポリペプチド試料の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用い、当該技術分野において周知の技術を用いてゲルを染色し、ポリペプチドを可視化することでアッセイすることができる。特定の目的のために、HPLC、または精製のための当該技術分野において周知の他の手段を用いて、より高い解像を行うことができる。
【0133】
「エピトープ」という用語は、抗体分子の抗原結合領域の1箇所以上において、抗体分子またはその抗原結合部により認識され結合されることが可能な、分子の部分を意味する。エピトープは、一次、二次、または三次タンパク質構造の、画定される領域で構成されることができ、抗体またはその抗原結合部の抗原結合領域により認識される標的の、二次構造ユニットまたは構造ドメインの組み合わせを含む。エピトープも同様に、アミノ酸または糖側鎖などの、画定される化学的に活性な表面のグルーピングした分子からなることができ、特定の3次元構造特性、加えて、特定の電荷特性を有することができる。本明細書で使用する場合、「抗原性エピトープ」という用語は、当該技術分野において周知の任意の方法によって、例えば、従来のイムノアッセイ、抗体競合結合アッセイによって、またはx線結晶学、もしくは関連する構造測定法(例えば、核磁気共鳴分光法)によって定義されるように、抗体分子が特異的に結合することができるポリペプチドの部分と定義される。
【0134】
「効力」という用語は、生物活性の測定値であり、IC50、EC50、または本明細書に記載するCD122活性アッセイにおいて測定する活性の50%を阻害する、抗体または抗体薬物複合体の、抗原CD122に対する有効濃度として示すことができる。
【0135】
本明細書で開示する抗体の生物活性に関して本明細書で使用する、「阻害する」、または「中和する」という用語は、抗体が、例えば、抗体分子の、CD122に対する生物活性または結合相互作用を含むがこれらに限定されない、阻害されているものの進行または深刻度を実質的にアンタゴナイズする、阻害する、予防する、制限する、遅くする、妨害する、排除する、停止する、軽減する、または逆転させる能力を意味する。
【0136】
本明細書において、いかなる濃度範囲、百分率範囲、比範囲、または整数範囲も、特に明記しない限り、記載された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合には、その分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)を含むと理解されるべきである。代替手段(例えば、「または」)の使用は、代替手段の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」及び「含む(comprise)」という用語は同義語として使用される。
【0137】
本明細書において使用される見出しは、単に編成のためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0138】
特許、特許出願、記事、書籍及び論文を含むが、これらに限定されない、本明細書で引用される全ての文書または文書の一部は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に明確に援用される。援用される文書または文書の一部のうちの1つ以上が、本出願における用語の定義と矛盾する用語の定義をしている場合、本出願に示される定義が優先される。しかしながら、本明細書で引用された任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成するか、または世界の任意の国における一般的知識の一部を形成するという認識、または示唆の任意の形態ではなく、そのように受け取られるべきではない。
【0139】
本明細書に記載する態様及び実施形態のいずれかを、要約、図面、及び/または発明を実施するための形態(以下の、本開示の具体的な非限定例/実施形態を含む。)において、本明細書で開示した任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。
【0140】
番号付けされた実施形態
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の番号付けされた本開示の実施形態を記載する。
【0141】
1.抗CD122抗体、またはその抗原結合部であって、前記抗体または抗原結合部が、重鎖可変(VH)領域、及び軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号18を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、または
(b)VH領域のアミノ酸配列が、配列番号3を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、及び配列番号7を含むHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、配列番号11を含むLCDR1、配列番号13を含むLCDR2、及び配列番号15を含むLCDR3を含む、前記抗体または抗原結合部。
【0142】
2.
(a)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号17を含む、または
(b)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号9を含む、実施形態1に記載の抗体または抗原結合部。
【0143】
3.前記抗体または抗原結合部がヒト化されている、またはキメラである、実施形態1または2に記載の抗体または抗原結合部。
【0144】
4.前記VH領域、前記VL領域、または前記VH及びVL領域の両方が、1つ以上の、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0145】
5.前記VH領域、前記VL領域、または前記VH及びVL領域の両方が、CDRアミノ酸配列が挿入されている、ヒト可変領域フレームワークのスキャフォールドアミノ酸配列を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0146】
6.前記VH領域が、前記HCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGHV3-23ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む、実施形態1及び3~5のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0147】
7.前記VL領域が、前記LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列が挿入されている、IGKV1-33ヒト生殖細胞系のスキャフォールドアミノ酸配列を含む、実施形態1及び3~6のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0148】
8.前記抗体が、免疫グロブリンの定常領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0149】
9.前記免疫グロブリンの定常領域が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgYである、実施形態8に記載の抗体または抗原結合部。
【0150】
10.前記免疫グロブリンの定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2である、実施形態9に記載の抗体または抗原結合部。
【0151】
11.前記免疫グロブリンの定常領域が、免疫学的に不活性である、実施形態8に記載の抗体または抗原結合部。
【0152】
12.前記免疫グロブリンの定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、アミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、アミノ酸置換L234A、L235A、及びG237Aを含むヒトIgG1定常領域、または野生型ヒトIgG2定常領域であり、番号付けは、KabatにおけるEUインデックスに従う、実施形態8に記載の抗体または抗原結合部。
【0153】
13.前記免疫グロブリンの定常領域が、配列番号32~38のいずれか1つを含む、実施形態8に記載の抗体または抗原結合部。
【0154】
14.前記抗体または抗原結合部が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはビスscFvである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0155】
15.前記抗体がモノクローナルである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0156】
16.前記抗体が、四量体抗体、四価抗体、または多重特異性抗体である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0157】
17.前記抗体が、第1の抗原及び第2の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体であり、前記第1の抗原はCD122であり、前記第2の抗原はCD122ではない、実施形態1~16のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部。
【0158】
18.治療剤に結合した、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合部を含む免疫複合体。
【0159】
19.前記治療剤が、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、またはプロアポトーシス剤である、実施形態18に記載の免疫複合体。
【0160】
20.実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、または実施形態18もしくは19に記載の免疫複合体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【0161】
21.実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体または抗体結合部の
(a)前記VH領域のアミノ酸配列、
(b)前記VL領域のアミノ酸配列、または
(c)前記VH及びVL領域のアミノ酸配列の両方
をコードする核酸分子。
【0162】
22.実施形態21に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【0163】
23.実施形態21に記載の核酸分子、または実施形態22に記載の発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【0164】
24.抗CD122抗体またはその抗原結合部の産生方法であって、実施形態22に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞を、前記核酸分子が発現する条件下で培養することにより、前記抗体または抗原結合部を産生することと、前記宿主細胞または培養液から、前記抗体または抗原結合部を単離することと、を含む、前記方法。
【0165】
25.対象における免疫応答の抑制方法であって、前記対象に、治療に有効な量の、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、実施形態18もしくは19に記載の免疫複合体、または実施形態20に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0166】
26.前記免疫応答がCD122により媒介される、実施形態25に記載の方法。
【0167】
27.対象における疾患の治療または予防方法であって、前記対象に、治療に有効な量の、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、実施形態18もしくは19に記載の免疫複合体、または実施形態20に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0168】
28.前記疾患が、炎症性疾患または自己免疫疾患である、実施形態27に記載の方法。
【0169】
29.前記疾患が、白斑、セリアック病、1型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、または関節リウマチである、実施形態27に記載の方法。
【0170】
30.IL-15が誘導するT細胞の皮膚からの移動の抑制方法であって、前記皮膚を、治療に有効な量の、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、実施形態18もしくは19に記載の免疫複合体、または実施形態20に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【0171】
31.薬剤として使用するための、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体もしくは抗原結合部、実施形態18もしくは19に記載の免疫複合体、または実施形態20に記載の医薬組成物。
【0172】
本開示は、以下の実施例によりさらに明確となり、これらは単に、本開示を例示するものであることが意図され、本開示をいかなる方法でも限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0173】
実施例1。最適化された抗CD122治療用抗体の生成
緒言
本実施例では、我々は、拮抗性の最適化された抗CD122抗体のパネルの生成に成功する。これらの抗CD122抗体は十分発現し、生物物理学的に安定しており、非常に可溶性で、好ましいヒト生殖細胞系に対して最大源の同一性を有する。
【0174】
材料及び方法
抗体vドメイン特異性検査:ヒト受容体アレイ分析
ヒト細胞膜受容体プロテオームアレイを、Retrogenix Ltd.にて行った。一次スクリーニング:5μg/mLのIgG1-MIKβ1(ヒト化、VillMab-1とも呼ばれる)抗体の、4975個のヒト原形質膜タンパク質を個別に発現する、固定されたHEK293細胞/スライド(14個のスライドセット、スライドセット1個当たりn=2個のスライド)に対する結合をスクリーニングした。全てのトランスフェクション効率が、最低閾値を超過した。AF647蛍光二次抗ヒトIgG1抗体を用いて、抗体結合を検出した。一次ヒット(重複スポット)は、ImageQuantにて蛍光(AF647及びZsGreen1)を分析することで同定した。全てのヒットをコードするベクターを配列決定し、その正確な同一性を確認した。
【0175】
確認/特異性スクリーン:全てのヒットをコードするベクター、加えて、MS4A1(CD20)及びEGFRをコードする対照ベクターを、新たなスライドで2通りにスポットし、これを用いて、前述のとおりヒトHEK293細胞を逆トランスフェクトした。全てのトランスフェクション効率が、最低閾値を超過した。同一の固定スライドを、5μg/mLの各試験抗体、5μg/mLの陰性対照抗体、1μg/mLのリツキシマブバイオシミラー(陽性対照)、アイソタイプIgG1(Ab00102ヒトIgG1抗フルオレセイン)、または試験分子なし(二次のみ、陰性対照)で処理した(処理当たりn=2個のスライド)。スライドを、上述のとおり分析した。
【0176】
フローサイトメトリー確認スクリーン:ZsGreen1のみ、またはZsGreen1及びCD122、BCAMをコードする発現ベクターを、ヒトHEK293細胞にトランスフェクトした。生きた各トランスフェクタントを、1及び5mg/mLの、試験抗体及びアイソタイプコントロール抗体のそれぞれでインキュベートした。細胞を洗浄し、細胞マイクロアレイスクリーンで使用したのと同じAF647抗ヒトIgG Fc検出抗体でインキュベートした。細胞を再び洗浄し、Accuriフローサイトメーター(BD)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。7AAD生/死染料を用いて死細胞を除外し、ZsGreen1陽性細胞(即ち、トランスフェクト細胞)を分析のために選択した。
【0177】
CD122ライブラリーの生成及び選択
CD122 Fabレパートリーを、マスオリゴ合成及びPCRにより構築した。次に、増幅したFabレパートリーを、制限ライゲーションによりファージミドベクターにクローニングし、E.Coli TG-1細胞に形質転換し、ファージレパートリーを、以前に詳述したとおり基本的にレスキューした(Finlay et al.,2011,Methods Mol Biol 681:383-401)。ストレプトアビジン磁気マイクロビーズを、ビオチン化CD122標的タンパク質(ヒトまたはカニクイザルのいずれか)でコーティングし、ビーズを3回PBSで洗浄し、PBS(pH7.4+5%スキム乳タンパク質)に再懸濁することにより、ファージ選択を行った。これらのビーズを、1ラウンド目の選択において100nMの標的タンパク質で、続けて、3回の連続ラウンドで、抗原濃度を低下させてコーティングした。各ラウンドにおいて、ファージを、トリプシンを用いて溶出した後、TG1細胞に再感染させた。
【0178】
Fab及びIgG発現及び精製
リードパネル抗CD122抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインをコードする、哺乳類コドン最適化合成遺伝子、加えてMIKβ1バリアントを、エフェクター機能ヌルヒトIgG1(「IgG1-3M」:通常の免疫グロブリンADCC、ADCP、及びCDC機能をなくす、低ヒンジにL234A、L235A、G237A変異を含有するヒトIgG1)、ならびに、ヒトCκドメインをそれぞれを含む哺乳類発現ベクターにクローニングした。哺乳類発現系において、重鎖及び軽鎖含有ベクターのコトランスフェクションを行った後、プロテインAベースのIgG精製を行い、定量し、変性及び非変性SDS-PAGEにてQCを行った。
【0179】
Fab及びIgGに対する直接結合ELISA
リードパネルの、組換えタンパク質への結合及び交差反応性をまず、結合ELISAにより評価した。ヒトCD122ヒトFcタグ組換えタンパク質、ならびに、カニクイザル及び/またはアカゲザルCD122ヒトFcタグ組換えタンパク質を、MaxiSorp(商標)平底96ウェルプレートの表面に、1μg/mLでコーティングした。精製したFabまたはIgG試料を、500nMから始まって0.98nMまで、2倍連続希釈で滴定し、コーティングした抗原に結合させた。マウス抗c-myc抗体、続けて、ホースラディッシュペルオキシダーゼと複合体化した、ロバ抗マウスIgGを用いてFabを検出した。ホースラディッシュペルオキシダーゼと複合体化したマウス抗ヒトIgGを用いて、IgGを検出した。3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン基質溶液(TMB)で結合シグナルを可視化し、450nmで吸光度を測定した。
【0180】
ヒト及びアカゲザルCD122に対するFab親和性のBIACORE(商標)分析
BIACORE(登録商標)3000(GE)にて、溶液中抗原を用いるSPRにより、精製IgGの親和性(KD)を測定した。2つのチャンネルに対するWizard取扱説明書に従い、マウス抗ヒト抗体(CH1特異的)をCM5センサーチップに、アミンカップリングを用いてpH4.5にて、酢酸緩衝液中で2000RUのレベルまで不動化した。片方のチャンネルは、バックグラウンドシグナル補正に用いた。標準的なランニング緩衝液であるHBS-EP(pH7.4)を用いた。pH1.5で、20μL/分にて、10μLの10mMグリシンを単回注射することで、再生成を行った。50nMで、30μL/分で2分間、続いて、60秒の乖離速度で、IgG試料を注射した。モノマー抗原(ヒトCD122 Hisタグ、またはカニクイザル及び/またはアカゲザルCD122 Hisタグ)を、100nMから3.1nMまで下げる2倍連続希釈で、30μL/分で2分間、続けて300秒の乖離速度で注射した。BIACORE(登録商標)3000評価(BIAevaluation)ソフトウェアを用いて、得られたセンサーグラムを分析した。会合及び乖離段階を、1:1のラングミュア結合モデルに同時適合させることで、KDを計算した。
【0181】
IgGのフローサイトメトリー
CHO-K1安定細胞株及びCHO-K1野生型細胞で発現するヒト及びアカゲザルCD122への結合について、精製IgGをFACsで試験した。IgG試料を、500nMから開始して0.98nMまで、3倍連続希釈で滴定した。IgGの結合を、FITCと複合体化したマウス抗ヒトIgGを用いて検出した。フローサイトメーター(Attune(商標) NxT Acoustic Focusing Cytometer,Invitrogen/ThermoFisher Scientific)のBL-1チャネル検出器にて、試料当たり10000細胞の平均蛍光強度(MFI)を調査することにより、結果を分析した。
【0182】
M07e細胞系アッセイ
M07e細胞を、微生物及び細胞培養液のDSMZ-Germanコレクションから入手し、販売業者により提供されるガイドラインに従い、10% FBS、10ng/mLのGM-CSF(Peprotech)、及びL-グルタミン(Corning)を補充したRPMIに維持した。1日目に、細胞をRPMI中で洗浄し、10% FBS及びL-グルタミン(Corning)を補充したRPMI中で、2.5×105細胞/mLの密度で再懸濁した。200μLの最終体積で、合計5.0×104個の細胞を、50ng/mL組換えヒトIL15(rhIL15)(R&D)、またはrhIL15と抗体の存在下で37℃で72時間、96ウェル平底プレートのウェルで培養した。72時間後、細胞を3時間、37℃で、20μLのWST-1細胞増殖試薬(Miltenyi)によりインキュベートした。走査型マルチウェル光分析装置により、細胞増殖の定量化を行い、450nMで測定した吸光度を、生残細胞の数に対して補正した。
【0183】
ヒトNK細胞系アッセイ
Ficoll Histopaqueによる密度勾配遠心分離を用いて、ドナーの全血からヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を単離し、メーカーの指示に従い、Miltenyi Biotec(Bergisch Gladbach,Germany)ヒトNK細胞単離キットを用いて、単離PBMCからNK細胞を濃縮した。メーカーの指示に従い、CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キットによりNK細胞を染色し、10% FBS及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充したRPMI中で再懸濁した。合計105個のNK細胞を、20ng/mL組換えヒトIL15(rhIL15)(R&D)、またはrhIL15と抗体の存在下で37℃で120時間、96ウェル丸底プレートのウェルで培養した。120時間後、NK細胞を洗浄し、抗ヒトCD3(UCHT1)、CD56(5.1H11)、CD16(3G8)(1:20希釈、Biolegend)で染色して、BD LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)及びFlowJo(Tree Star Inc.)でCFSE希釈を分析した。
【0184】
NSG-IL15マウスモデル
ヒトIL15(NSG-Tg)を発現するNODスキッドガンママウスに、ヒト造血幹細胞(HSC)を移植することにより、ヒト化マウスを生成した。6~8週齢のNSG-Tgマウスはまず、200cGyの照射を受けた後、臍帯血由来の105 CD34+HSCを注射した。HSC移植NSG-Tgマウスを、12及び16週でスクリーニングして、血液中でのベースライン移植を測定した。CD56+が2%を超える、20%超のヒトCD45+細胞を有するNSG-Tgマウスを、抗体治療に選択した。マウスを、腹腔内(i.p.)注射で週に2回(月/木のスケジュール)、3週間治療した。治療開始後1及び3週の時点で、次いで、治療後1、3、及び5週の時点で、フローサイトメトリーを用いて、血液中でのヒト免疫細胞の量を定量した。治療後5週の時点で、マウスを安楽死させ、脾臓及び血液中でのヒト免疫細胞の量をフローサイトメトリーにより測定した。全組織からの細胞を、抗ヒトCD45、CD3、CD4、CD8、CD7、CD56、CD16、Mik-b2、及びMik-b3(1:20希釈、Biolegend)で染色し、BD LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)及びFlowJo(Tree Star Inc.)で分析した。
【0185】
結果及び考察
薬理学的モデリング:皮膚での疾患治療用IL15Rβアンタゴニスト抗体の実現可能性の評価
インシリコモデリングを実施して、皮膚などの特定の組織において有効性を最大化するように設計された、抗CD122 IgG1抗体に治療上の成功をもたらし得る薬理学的パラメータ及び特性を画定した。これらの分析は、CD122標的生物学に対する、確立された値(表1)、ならびに、二価のIgG抗体に対する、既知の潜在的な薬剤特性及び投与パラメータ(表2)に基づいた。
【0186】
次に、上で概略を述べたパラメータを分析して、
図1に概要を示すとおり、薬剤効力及び分布における影響をサンプリングした。ヒト化抗CD122 IgG1抗体「MIKβ1」を以前に投与したt細胞白血病患者から報告されるPKデータを用いて、ボトムアップ推定アプローチを確証した。これらの分析は、平均体重のヒト対象における、IV及び/またはSC投与、ならびに、抗体CD122結合親和性に関する一連の知見をもたらした。
【0187】
1.10nM KDの見かけの薬剤親和性において、皮膚におけるIL15Rβの持続性阻害(>90%)は、700mg IV Q4W、または100mg SC Q1W(表3、表4)で実現可能であると予想された。
【0188】
2.10nM KDを超える機能的親和性は、IV及びSCにおける投与要件を下げることが可能であり、KD値が1nMに近いほど、最大投与量において皮膚で99%の標的占有が可能となる。このパターンは、IV及びSC投与経路に対しても質的に同様である(表3、表4)。
【0189】
3.10nMの見かけの薬剤結合親和性において、100mgのSC Q1Wは、皮膚において90%の受容体占有率を維持するのに十分であるが、100mgのSC Q1Wは、95%を超える受容体占有率を維持するのに十分ではない。より高い親和性が、100mgのSC Q1W投与スケジュールにおいて、95%を超える受容体占有率を実現するのに必要であろう(表4)。
【0190】
4.全身標的の沈み込みを取り除くことは、皮膚における高い(>90%)標的占有を達成するのに必要な用量に、最小限の影響を有するのみである。既知の濃度で全身性CD122が存在する中での、及びCD122が存在しない中での、IV Q4W投与のシミュレーションを行うことは、皮膚及び薬剤分布効果において最適な活性を有するためには、合計用量が全身標的負荷を克服しなければならないことを示唆している(表5)。
【0191】
まとめると、最適な抗CD122拮抗性治療用抗体は、CD122に対して10nMを上回る機能的親和性を有し、700mgのIV Q4W、または100mgのSC Q1Wでの投与を可能にすることを、これらの分析は示唆した。親和性が増加することで、より低用量でより大きな標的カバー率が可能となる。
【0192】
抗体の結合特異性分析
初期の臨床試験において、ヒト化抗CD122 IgG1抗体「MIKβ1」は、クリアランスを加速させる証拠を示すことが報告されている。クリアランスの加速は、標的が媒介する薬剤分布(TMDD)効果が、効力に負の影響を及ぼす可能性があるために、上で概要を述べた、理想的な薬剤特性を達成することが不可能になるリスク因子である。MIKβ1は、CD122のみに結合することができない可能性があるが、同定されておらず予測不可能なヒトタンパク質に結合する可能性があると、我々は仮説を立てた。この可能性を調査するため、5500個を超える固有のヒト膜受容体及び膜テザー分泌タンパク質を発現する細胞の高密度アレイの使用に基づく、インビトロ技術(Retrogenix,Ltd.)を用いて、ヒト化IgG1-MIKβ1(VillMab-1)におけるオフターゲット結合特異性をスクリーニングした。VillMab-1は、膜発現CD122に強力な結合を示したが、BCAM(AU、CD239、LU、MSK19、基底接着分子(Lutheran血液群)としても知られている)に対する、潜在的なオフターゲット結合特異性もまた有することを、本受容体アレイ結合スクリーンは同定した。BCAMは、PKの低下を引き起こし得、治療用量の抗CD122抗体の「沈み込み」効果を強め得る、広く発現する膜接着タンパク質である。
【0193】
このオフターゲット結合事象を確認するために、BCAM及び対照タンパク質をコードするプラスミドを、DNA配列決定に供した。コードされたタンパク質は実際に正しい配列であったことが、これらの分析により確認された。次に、対照及び潜在的な標的受容体に対するプラスミド試料を、2通りでの反復分析用の新しいチップに再配置した。内部対照マーカーとして、発現プラスミド全てにおいて同時にコードされるZSグリーン用チップをスキャンすることにより、再配置したプラスミド全てから効果的な発現が誘発されたことが確認された。この分析は、プラスミドがスポットされた全ての位置において、はっきりと検出可能なZS発現を示した(
図2A)。さらに、次には、同じようにスポットしたスライドを用いて、VillMab-1(
図2B)、リツキシマブ(IgG1陽性対照、
図2C)、及び一次抗体プローブが適用されないチップ(
図2D)をトランスフェクトした細胞を再プローブした。VillMab-1は再び、BCAMをトランスフェクトした細胞において、(両方のチップにおいて)バックグラウンドを超える、測定可能な結合を示すことを、これらの分析は示した(
図2B)。リツキシマブは、予想通りCD20への結合を示し、任意の他のタンパク質には、観察可能な結合を示さなかった(
図2C)。一次抗体をプローブしなかったチップにおいては(
図2D)、予想される対照タンパク質のみが何らかのシグナルを示した。対照チップのこの明確な状態により、CD122及びBCAMでのVillMab-1結合シグナルが特異的であることが確認された。これらのオフターゲット結合についての結果をさらに確認するため、配列が確認されたプラスミドを再び、HEK-293細胞にトランスフェクトし、フローサイトメトリーにより結合を調べた(
図3)。本実験では、VillMab-1は、CD122及びBCAMトランスフェクト細胞の両方への明らかな結合を示したが、ZSをトランスフェクトした細胞には、バックグラウンド結合を示さなかった(「ZSのみ」、
図3A)。同じ細胞を用いるが、一次抗体を用いない(
図3B)対照実験は、BCAMシグナルが抗体に関連していることを示し、リツキシマブ IgG1抗CD20での染色(
図3C)は、CD20トランスフェクト細胞のみで結合シグナルを示し、これらは、BCAMでのシグナルが、VillMab-1の結合ドメインにより特異的に媒介されていることを証明している。
【0194】
オフターゲット結合が、IgGのPK、生体内分布、及び毒性プロファイルに負の影響を有する可能性があることを示しているため、治療用抗体は、理想的には、所望の標的に対して優れた特異性を有する必要がある。VillMab-1におけるこの問題に取り組むため、VillMab-1結合界面を実験的に調節することを、以下のとおりに実施した。
【0195】
VillMab-1の変異導入及びパラトープ調節
我々の組換えの試みを、最適な薬剤様特性を備えた最終的なリード治療用IgG化合物に偏らせるために、VillMab-1抗体の変異導入由来バリアントを調査することを選択した。元のヒト化プロセスは、良好な溶解度及び薬剤開発品質を有することが知られており、発現したヒト抗体レパートリーにおいて高頻度で用いられている、ヒト生殖細胞系フレームワークのIGHV3-23及びIGKV1-33に関係するスキャフォールドを用いていたことが、VillMab-1のvドメインの配列分析により示された(表6)。周知のスキャフォールドをこのように用いているにもかかわらず、可変ドメインのフレームワークは両方、著しい数の、生殖細胞系配列からの逸脱を含んでいた。加えて、CDR配列は、ヒト生殖細胞系とは異なる多くの残基もまた含んでいた(表6)。
【0196】
VillMab-1のvドメイン配列を、Fabファージディスプレイフォーマットと組み合わせ、別個の変異導入ライブラリーカセットを、オリゴ合成及びアセンブリにより、VH及びVLドメイン用に生成した。各変異導入カセットは、表6で下線を引いた各位置において、VillMab-1残基、ヒト生殖細胞系残基、または相同アミノ酸をコードした。VL用の変異カセットをVillMab-1のVHと、またはVillMab-1のVLをVH用の変異導入カセットと組み合わせることで、別個のFabライブラリーを生成した。各最終Fabライブラリーをファージディスプレイベクターにライゲーションし、電気穿孔法によりE.coliに形質転換して、107個を超える独立したクローンを生成した。ライブラリー構築の質を、ライブラリー当たり96個のクローンを配列決定することで検証した。変異した位置が、設計した多様性を効率的にサンプリングしたことを、この配列決定データは示した。ヘルパーファージM13を用いてライブラリーをレスキューし、複数の個別のブランチで、ビオチン化ヒトならびにカニクイザル及び/またはアカゲザルCD122-Fcタンパク質における選択を実施した。1ラウンドの選択を行った後、予め選択した変異VH及びVLの組み合わせを用いて、第3の、両方のVドメインで選択された変動性を同時にサンプリングするコンビナトリアルライブラリーを作製した。
【0197】
選択後の血漿周辺調製スクリーニング及びDNA配列決定により、ELISAにおいてヒト及びアカゲザルCD122に強力な結合を示し、Alphascreenアッセイにおいてヒト及びアカゲザルCD122に、50%を超えるVillMab-1結合の阻害を示す、64個の固有の、ヒト及びアカゲザルCD122結合Fabクローンが存在することが明らかとなった。これらの固有の、ライブラリーに由来するリードから、アッセイシグナルの強度、ヒト生殖細胞系に対する変異度、及び主たる発達不全/化学分解モチーフが存在しないことに基づき、上位15個のクローンを同定した(表7)。この分析により、各CDRにおける一連の固有の配列も同定された(表8)。これらの固有のCDR配列プロファイルを用いて、(表9)に概略を示すような、上位15個のライブラリー由来のクローンの中で発見されない、潜在的なCDRの組み合わせを有する、さらなる15個のクローン(MAB01~MAB15)を設計した。これらの合計30個の固有のクローンを、CHO一過性培養液中でヒトIgG1フォーマットにて発現させ、プロテインAにより精製して、95%を超える単量体性をサイズ排除クロマトグラフィーによって確認した。
【0198】
リードIgGの特異性、及び効力特性
次に、上述した精製IgGの、ヒトCD122-FcでのVillMab-1結合エピトープに対する競合を、Alphascreenフォーマットで試験した。30個のクローンのうち24個で、濃度に依存して、VillMab-1のCD122への結合が低下したことを、この分析は示し、このことは、これらが親抗体の機能性エピトープを保持したことを証明している(
図4)。次の、これら24個のクローンを多反応性アッセイで調査し、最初の組換えからの最終リードクローンが、短いPKと強力に関係するDNAまたはインスリン結合プロファイルを有しないことを確認した(
図5)。24個のクローンは全て、陽性対照であるボコシズマブよりも著しく低いシグナルを示したものの、サブセットは、陰性対照抗体であるベバシズマブ、ウステキヌマブ、及びペムブロリズマブに等しい、またはこれよりも改善された、特に低いシグナルを生成したことを、この分析は示した(
図5)。これらの知見により、6つの鍵となるリードを、さらなる分析のために優先順位を付けることができた。
【0199】
フローサイトメトリーにより、細胞表面にて、優先順位を付けた6つの、ライブラリー由来のリードクローンの、ヒト及びアカゲザルCD122への濃度依存性結合を分析した(
図6)。クローン06F11(
図6A)、07C07(
図6B)、07D06(
図6C)、07E09(
図6D)、07D07(
図6E)、及び06D12(
図6F)のそれぞれは、VillMab-1に対して観察されたものと非常に似た結合曲線を有する、CD122特異的結合プロファイルを示した一方で、アイソタイプコントロールのIgG1は、あらゆる細胞型に結合を示さなかった(
図6G)。
【0200】
CD122-IL-15遮断アッセイにおけるリードIgGの分析
M07e細胞ベースのCD122/IL-15遮断レポーターアッセイにおいて、クローン06F11(
図7A)、07C07(
図7B)、07D06(
図7C)、07E09(
図7D)、07D07(
図7E)、及び06D12(
図7F)は、CD122の濃度依存性拮抗を示した。VillMAB-1に対するIC50は、9.792μg/mLであった。6F11及び7C07に対するIC50は、それぞれ14.8μg/mL及び20.8μg/mLであり、リードクローンの中で最低であった。06D12、07D06、07D07、及び07E09に対するIC50は、それぞれ38.610μg/mL、27.820μg/mL、34.170μg/mL、及び23.610μg/mLであった。この分析では、さらなる評価の理想的な候補として、06F11及び07C07が際立った。
【0201】
1:1結合親和性に関する、CD122結合BIACORE(登録商標)におけるリードFabの分析
クローンの06F11及び07C07、加えて、FW1における変異を正した06F11のバリアント(06F11-V)に対する1:1親和性値を特性決定するために、これら、及び陽性対照であるVillmab-1クローンを、ヒトFabフォーマット(即ち、一価であり、ヒンジとFc領域の両方を欠いている)でクローニングし、発現させて精製した。完全に精製したFabタンパク質の、ヒトCD122(表10)及びアカゲザルCD122(表11)の両方に対する結合を調査した。クローンFAB06F11-V、FAB06F11、及びFAB07C07は、ヒト及びアカゲザルCD122の両方に対して、VillFab-1と比較して、全体的に穏やかに低下したKD値を示し、重要なことに、オン(ka)及びオフ(kd)速度の両方の増加もまた示したことを、これらの分析は示した。
【0202】
hIL-15 NSGマウスモデルにおけるリードIgGの分析
ヒト化hIL-15 NSGマウスモデルを使用して、VillMAB-1、7C07、及び6F11-v(全て、IgG1-3Mエフェクターヌルフォーマット)の、インビボでの、ヒトNK及びCD8 T細胞のCD122/IL15シグナル伝達により支持される移植を阻害する能力を比較した。細胞による完全な移植を確立した後、マウスをビヒクル、低用量(1mg/kg)、または高用量(10mg/kg)抗体で処理した。
【0203】
抗体処理の前では、血中のヒトCD8+ T細胞(
図8A)及びNK(
図8B)細胞の数は、マウスの群の間で類似していた。1週間の処理後、10mg/kgのVillMAB-1で処理したマウスのみが、アイソタイプで処理したマウスと比較して、CD8+ T細胞の数の統計的に有意な減少を示した(
図8C)。アイソタイプで処理したマウスと比較した際に、抗体処理群の全てにおいて、CD8+ T細胞の減少が観察された。血中でのNK細胞の数は、群全てにおいて類似していた(
図8D)。
【0204】
3週間の処理の後、アイソタイプ処理マウスと比較して、抗体処理群全ての血中で、CD8+ T細胞の数が減少した(
図8E)。これらの変化は、統計的に有意ではなかった。NK細胞の数は、抗体処理マウスの群全てで減少し、この減少は、1mg/kgの07C07で処理したマウスを除き、全ての群で統計的に有意であった(
図8F)。高用量及び低用量のVillMAB-1処理によって、いずれの用量においても、06F11-Vまたは07C07処理を超えて、NK細胞の数が減少した。
【0205】
重要なことに、ADCCまたはADCPエフェクター機能が存在しない中で、クローンVillmab-1、06F11-V、または07C07によりCD122-IL15シグナル伝達を慢性的に遮断することは、NK及びCD8+ t細胞集団の両方の枯渇をもたらす能力があることが、これらの知見により確認された。
【0206】
クローン06F11-V及び07C07の、抗体結合特異性の分析
クローン06F11-V及び07C07が、vドメインのフレームワーク領域及びCDRの両方において、高レベルのヒト化、加えて、インビトロ及びインビボにおいて効果的なCD122の遮断を上記で示したため、これらを、Retrogenixプロテオミクスプラットフォームにおける特異性分析のために再度スクリーニングした。予想外なことに、Villmab-1に対して観察されたBCAM結合が完全に消失しており、06F11-V及び07C07 IgGのいずれにも観察されなかったことを、この分析は示した。しかしながら、加えて、Villmab-1に対しては観察されなかった2つの新しい相互作用が観察された(
図9)。標的及び対照の発現を駆動するプラスミドをトランスフェクトした細胞への結合についてのフローサイトメトリー分析において、CD122結合に加えて、クローン06F11-Vが、ニューデシン(ノイロトロピン)及びCILP2(軟骨構造タンパク質)の両方に結合することが分かった一方で、07C07はCILP2のみに結合することが分かった(
図9A、
図9B)。対照的に、「二次抗体のみ」(
図9C)、及びリツキシマブ一次抗体(
図9D)対照実験は、それぞれ、バックグラウンドを超える結合を示さないか、またはCD20トランスフェクト細胞のみに結合するかのいずれかを示した。06F11-V及び07C07 IgGに対して観察されたオフターゲット結合は本物であり、特異的であることが、これらの発見により確認された。
【0207】
クローン06F11-Vの最適化
有益な特性を最大化し、オフターゲット結合を最小限にするためのさらなる最適化のために、クローン06F11-Vを選択した。06F-11Vの重鎖及び軽鎖配列の両方の、CDR1、及び/または2、及び/または3におけるマウス配列に戻る変異の組み合わせを実験で分析することにより、この最適化を行った。本プロセスにより、それぞれが、3個のVL配列のうちの1つと組み合わさった、6個のVH配列のうちの1つを有する、18個の新規のクローンが作製された(表12)。これら18個の新規のバリアント、Villmab-1、及び06F11Vを、ヒトの一価Fab断片フォーマットでクローニングし、CHO細胞で発現させて、プロテインAカラム、続いてSECにより、モノマー状態に精製した。
【0208】
次に、BIACORE(登録商標)により、精製したFabの、ヒト及びアカゲザルCD122への結合親和性を調査した(表13)。一連のクローンが、06F11-Vよりも、及びさらに、VillMab-1よりも、CD122に対して改善された親和性を示すことを、この分析は示した。このコホートからは、クローンMAB05、MAB06、MAB14、MAB15、MAB17、及びMAB18をさらなる分析のために優先順位を付け、効力及び特異性分析のために、ヒトIgG1-3Mフォーマットでさらに発現させ、精製した。優先順位を付けたクローン全てのFabバージョンを、ヒトニューデシン及びCILP2タンパク質において、BIACORE(登録商標)結合で試験した際(
図10A、
図10B)、クローン06F11-Vのみが、いずれかのタンパク質に対して測定可能な結合を示すことが分かった。このことは、新規のリードクローンが、これら2つのオフターゲット結合リスクをなくしたことを示唆している。ヒトBCAMタンパク質におけるクローン全てに対する、IgGのELISA分析において、クローンは全て、MAB05及びMAB06以外のオフターゲット結合を保持しており、CD122に対して完全な特異性を示した(
図10C、表14)。
【0209】
このように密接に関連した抗体配列が、特異性プロファイルにおいてこのような根本的な違いを有するのはどのようにして可能であるかを調査するために、VillMab-1と、クローン05、06、14、15、17、及び18に対する、VH及びVLドメインの両方の配列アラインメントを行った(
図11A、11B)。注目すべきは、(完全なCD122特異的)クローンMAB05及びMAB06に対して固有のVillMab-1配列との、唯一の変化は、VHドメインのCDR1の中で、及びCDR1の近くの、3つの(非常に相同な)変異が見つかったことであった。この発見は、抗体結合が入り乱れているという予測不可能な性質を示している。
【0210】
クローンMAB05、MAB06、MAB14、MAB15、MAB17、及びMAB18における生物学的効力の確認は、IL-15刺激M07eアッセイにおいて行った(表14)。クローンMAB05及びMAB06の親和性がVillMab-1よりも改善しているだけでなく、IL-15シグナル伝達を遮断する効力もまた、約2倍改善していることを、本分析は示した(表14)。次に、クローンMAB05及びMAB06の、機能的に関連する最終的な効力を、IL-15刺激の下でヒト初代NK細胞の増殖を測定するアッセイで確認した(
図12A、
図12B)。本アッセイは、M07eアッセイでの発見を再現しており、MAB05及びMAB06がVillMab-1よりも、実際に改善されていることを示している。
【0211】
ヒト及びマウスFc受容体への結合に関する、IgG1-3M BIACORE(登録商標)分析
クローン06F11-V IgG1-3M、及び陽性対照IgGの親和性を特性決定するために、完全に精製したタンパク質の、ヒト及びマウスFcγR及びFcRn両方への結合を調査した(表17)。陽性対照は全て、ヒト及びマウス受容体の両方との、予想された強力な相互作用を示す一方で、クローン06F11-V IgG1-3Mは、pH7.4において、ヒトまたはマウスFcγR及びFcRnのいずれにも、非常に低い親和性を示すこと、または測定可能な親和性がないことを示すことを、これらの分析は示した。しかし、重要なことに、06F11-V IgG1-3Mは、pH6.0において、ヒト及びマウスFcRnに対して、完全な親和性を保持した。IgGエフェクター機能が存在しない中での、CD122シグナル伝達の遮断は、CD122+細胞を枯渇させるのに十分であるという、NSG/IL-15マウスモデルにおいてインビボで観察された上記のことが、これらの発見により確認された。
【0212】
実施例2。ヒトの皮膚T細胞のクロールアウトアッセイにおける、抗CD122治療用抗体の機能
ヒト皮膚生検培養アッセイを用いて、MAB05及びMAB06の、皮膚常在T細胞におけるCD122/IL-15シグナル伝達を阻害する能力を調査した。
【0213】
4mmのIntegra使い捨て生検パンチ(Integra)を用いて、外科標本からヒト皮膚生検(直径4mm×厚さ2mm)を回収した(皮下脂肪組織切除)。皮膚生検を、PBSに希釈したAntibiotic-Antimycotic(Gibco)で30分間、4℃でインキュベートした後、PBSで3回すすいだ。3つの皮膚生検を、24ウェルプレート(Corning)のうちのウェル1個に入れ、短時間乾燥させ、ウェル表面への生検の接着を促進した。次に、20%の加熱不活性化ウシ胎児血清、ペニシリン及びストレプトマイシン(Corning)、ならびに、3.5μL/Lのβ-メルカプトエタノール(Sigma)を含む、2mLのイスコフ改変培地(Sigma)で生検を培養し、37℃で21日間インキュベートした。各ウェルから1mLの培地を吸引し、1mLの新鮮な培地を加え直すことにより、培養液に、週に3回栄養を与えた。IL-15または抗CD122抗体で処理した培養液に関しては、培養開始時から、21日目のT細胞の回収時まで、20ng/mLの組換えヒトIL15(rhIL15)(R&D)、及び抗CD122抗体(MAB05またはMAB06)を加えた。21日後、ウェルから培養培地を回収し、5mLのポリスチレン丸底チューブで10分間、330×gで遠心沈殿させた。上清を吸引し、残りのT細胞を洗浄し、抗ヒトCD3、CD4、及びCD8(1:20希釈、Biolegend)で染色して、BD LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)及びFlowJo(Tree Star Inc.)で定量した。
【0214】
本アッセイでは、MAB05及びMAB06は、IL15が誘導する、皮膚生検から移動するCD8+ T細胞の蓄積を阻害する。生検をIL-15で培養する場合、生検をIL-15なしで培養する場合よりも多くのCD8+ T細胞が蓄積する:11,101±6011対438.3±66.05(平均±SD)(
図13A)。生検をIL-15及びMAB05で培養する場合、蓄積するCD8+ T細胞の数は、IL-15のみでの培養液と比較して少ない:2096±1100対11,101±6011(平均±SD)(
図13A)。同様に、生検をIL-15及びMAB06で培養する場合、IL-15のみでの培養液と比較して、CD8+ T細胞の蓄積は少ない:2436±501.6対11,101±6011(平均±SD)(
図13A)。
【0215】
MAB05及びMAB06は、IL15が誘導する、皮膚生検から移動するCD4+ T細胞の蓄積もまた阻害する。生検をIL-15で培養する場合、生検をIL-15なしで培養する場合よりも多くのCD4+ T細胞が蓄積する:40,523±15,391対1261±473.6(平均±SD)(
図13B)。生検をIL-15及びMAB05で培養する場合、蓄積するCD4+ T細胞の数は、IL-15のみでの培養液と比較して少ない:3471±1627対40,523±15,391(平均±SD)(
図13B)。同様に、生検をIL-15及びMAB06で培養する場合、IL-15のみでの培養液と比較して、CD4+ T細胞の蓄積は少ない:4308±2111対40,523±15,391(平均±SD)(
図13B)。
【0216】
皮膚生検培養アッセイにおいて、MAB05は、1.9μg/mLのIC50で、IL-15が誘導する皮膚常在CD8+ T細胞の蓄積に対する、濃度依存性拮抗を示した(
図14A)。MAB06は、1.8μg/mLのIC50で、CD8+ T細胞の蓄積に対する、相当の濃度依存性拮抗を示した(
図14A)。さらに、MAB05及びMAB06は、それぞれ2.1μg/mL及び1.8μg/mLのIC50で、IL-15が誘導するCD4+ T細胞の蓄積に対する、相当の濃度依存性拮抗を示した(
図14B)。
【0217】
実施例3。カニクイザルにおける、抗CD122治療用抗体の薬物動態/薬力学(PK/PD)研究
カニクイザルに、1~20mg/kgの範囲の用量レベルで、抗CD122抗体(MAB05またはMAB06)を単回静脈内注射で投与した。投与前、及び投与後1時間~投与後16日の範囲の様々な時点で、血液試料を採取した。ELISA法による、抗CD122抗体血漿濃度の定量化に従い、薬物動態パラメータを測定した。フローサイトメトリー法を用いて、血液試料の、NK細胞におけるCD122受容体占有率を分析し、全T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、及びNK細胞の定量化を行った。
【0218】
1mg/kg~20mg/kgの範囲の用量レベルでの単回静脈内投与の後、カニクイザルにおいて、MAB05及びMAB06は臨床上の異常を示さず、線形性の薬物動態を示した。MAB05及びMAB06の、1mg/kgでの単回投与は、サンプリング期間(投与後16日間)を通して、NK細胞での90%を超えるCD122受容体占有率を維持するのに十分であった。MAB05及びMAB06の1mg/kg、5mg/kg、または20mg/kgの単回用量での投与は、循環NK細胞数の減少を誘発した。循環NK細胞は、投与のおよそ7日後に最低に達し、残りのサンプリング期間(投与後16日間)を通して、1mg/kgまたは5mg/kgの投与後に、安定した回復を示した。循環NK細胞の数の調節は、機能活性のマーカーであると考えられており、抗CD122抗体がインビボで効果的である(Waldmann et al.(2020)J Exp Med 217:e20191062を参照されたい。)ことを示すのに重要であり、故に、患者での最適用量を定めるのに有利に用いることができる。ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞では、効果は観察されなかった。
【0219】
実施例4。抗CD122治療用抗体の、製剤化前開発及び安定性研究
安定性研究のパネルを用いて、抗CD122抗体の製造開発可能性を評価した。5mg/mLの濃度での、安定性及び凝集可能性に関して、緩衝液と賦形剤の組み合わせから、抗CD122抗体の10種類の製剤を調査した。低pHストレス、熱ストレス、凍結解凍条件、及び強制酸化の条件下にて、抗体を調査した。抗体の、>100mg/mLの濃度における自己会合及び粘度についてもまた、調査した。
【0220】
MAB05及びMAB06は、25mMのL-ヒスチジン、9%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80の組成を有する緩衝液(pH6.0)において、高い熱的安定性、低pH(pH3.0)に対する高い耐性、低凝集能、低酸化及びアミド分解感度、ならびに優れた凍結/解凍安定性を示した。MAB05及びMAB06を、90~120mg/mLの範囲の濃度で、これと同じ緩衝溶液に可溶化した。115mg/mLの濃度におけるMAB05及びMAB06の粘度は低かった(およそ、4~6センチポアズ)。このことは、抗CD122抗体の皮下送達用臨床製剤を実現することが可能であることを示している。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12-1】
【表12-2】
【表13】
【表14】
【表15-1】
【表15-2】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【配列表】
【国際調査報告】