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特表2024-513948高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法
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  • 特表-高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240319BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240319BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240319BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562477
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2022113432
(87)【国際公開番号】W WO2023098147
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111458529.4
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149663
【氏名又は名称】▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ ▲開▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 坤
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼ 冬▲鳴▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲聡▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 幸
(72)【発明者】
【氏名】薛 ▲曉▼斐
(72)【発明者】
【氏名】范 ▲亮▼▲コウ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 小▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 雪▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 小▲帥▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 豪
(72)【発明者】
【氏名】袁 文芳
(72)【発明者】
【氏名】王 鼎
(72)【発明者】
【氏名】岳 先▲錦▼
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA08
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA14
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
リチウム電池用高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法を提供する。前記前駆体の化学構造式が、zNi(C47222-Nix-zM1yM21-x-y(OH)2(ここで、M1、M2は、コバルト、アルミニウム、マンガンのうちの2種である。)である。調製された金属塩溶液、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液、アンモニア水溶液を反応釜に圧送し、反応系のpHを維持して、反応時間を制御し、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得て、金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、水酸化ナトリウム溶液を圧送して、略球状のコアシェル前駆体を得て、前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、リチウム源と混合して焼成し、正極材料を製造する。該材料は、容量を高く維持しつつ、優れたサイクル特性を持つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造式がzNi(C47222-Nix-zM1yM21-x-y(OH)2(ここで、0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2、0<z≦0.24であり、M1、M2は、コバルト、アルミニウム、マンガンのうちの2種である。)である、ことを特徴とする高ニッケル三元コアシェル前駆体。
【請求項2】
(1)可溶性ニッケル塩、可溶性金属M1塩、可溶性金属M2塩をNi:M1:M2=x:y:(1-x-y)(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2)のモル比で2~4mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液、水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水溶液をそれぞれ調製するステップと、
(2)反応釜に基質液を加えて、N2を導入し、40℃~60℃に昇温させ、ステップ(1)で調製された金属塩溶液、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液、アンモニア水溶液を反応釜に圧送し、反応系のpHを8.0~10.0に維持して、4~20h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状の前駆体コアを得るステップと、
(3)金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜にステップ(1)で調製された水酸化ナトリウム溶液を圧送し、反応系のpHを9.0~12.0に維持して、反応を30~80h持続し、構造式がzNi(C47222-Nix-zM1yM21-x-y(OH)2、(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2、0<z≦0.24)の略球状のコアシェル前駆体を得るステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)では、可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルのうちの1種又は複数種であり、前記可溶性金属M1塩、可溶性金属M2塩は、可溶性コバルト塩、可溶性アルミニウム塩、可溶性マンガン塩のうちの2種である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記可溶性コバルト塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルトのうちの1種であり、前記可溶性アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、メタアルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウムのうちの1種であり、前記可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガンのうちの1種である、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液は、ジメチルグリオキシム(C4822)を濃アンモニア水に溶解して調製したものであり、ジメチルグリオキシムと濃アンモニア水との比が1g:(10~200ml)であり、前記濃アンモニア水の濃度が25%~28%であり、前記水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水溶液の濃度がすべて2mol/Lである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(2)の基質液は、反応釜に反応釜の体積の2/3の水を加えた後、濃度10%~28%のアンモニア水を加えてpHを8.0~10.0に調整したものであり、N2流量が0.5~2m3/hである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)の反応において、金属塩溶液の流量が1~50L/hであり、前記ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の流量が3~10L/hであり、前記アンモニア水溶液の流量が0~3L/hであり、撹拌の回転数が200~400r/minである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)の反応において、水酸化ナトリウム溶液の流量が1~17L/hであり、撹拌の回転数が300~400r/minである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の前駆体を用いて製造された正極材料であって、
構造式がLiNixM1yM21-x-y2(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2)である、ことを特徴とする正極材料。
【請求項10】
前記コアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、リチウム源と混合してから300~500℃で3~5h保温し、その後、700~900℃に昇温させて10~20h保温するステップを含み、
前記リチウム源は水酸化リチウム又は炭酸リチウムであり、前記リチウム源とコアシェル前駆体とのモル比が(1~1.2):1である、ことを特徴とする請求項9に記載の正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池材料の技術分野に関し、具体的には、リチウム電池用高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー危機の到来と炭素排出量削減のニーズに伴い、新エネルギー車が注目されるようになっており、市場でますます多くのシェアを占めていた。しかし、新エネルギー車がさらに発展し、従来のガソリン車に完全に代わることを実現するためには、「走行距離不安」の問題を解決する必要がある。そのためには、新エネルギー車の中核部品である動力リチウム電池がより高いエネルギー密度を持つことが求められる。この要求を満たすために、エネルギー密度が高く、安定して動作できる正極材料を選択する必要がある。
【0003】
現在、主流となるいくつかの正極材料の中で、リチウムリッチマンガン系正極は、コストが比較的に低く、しかも高い容量を持っているが、その初回サイクル中の不可逆容量が大きく、サイクル中の電圧と容量の減衰が大きく、レートが高くなるとその容量も急速に低下してしまい、これは、それを商業的に応用することが困難である。現在、動力電池分野では、リン酸鉄リチウムと三元層状酸化物材料の2種類の市販材料が主に正極として利用されている。その中で、リン酸鉄リチウムは、コストが低く、サイクル特性が良く、安全性が良いという長所を持っているが、その容量が低く、しかもプロセスの改良に従って、比容量がますますその理論の限界に近づいており、将来の向上の余裕が限られており、しかも、低温特性によってもその適用範囲が制限されている。三元層状酸化物材料は、容量密度やサイクル特性に優れ、圧縮密度が高く、Ni含有量が高いほど、その実際比容量が高くなり、「走行距離不安」の問題を解決する上で三元層状酸化物材料がより優位である。そのため、今後、三元層状酸化物材料も動力電池分野の主流となりつつある。
【0004】
高ニッケル三元層状酸化物材料は、比容量が高い一方で、Ni含有量が多いと安定性が低下するため、高ニッケル材料のサイクル性や安全性が低下し、動力電池分野への応用に大きな影響を与える。そのため、高ニッケル三元層状酸化物材料の安定性をどのように向上させるかは科学者の研究の焦点となり、現在、コアシェル構造は安定性を向上させるのに有効な手段であると考えられている。しかし、通常の共沈法でコアシェル前駆体を調製するには三元液の割合を変える必要があり、操作に不利であり、異なる割合の三元液を調製するには貯蔵タンクの数を増やす必要もあり、設備コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する上記の欠陥に対して、本発明は、リチウム電池用高ニッケル三元コアシェル前駆体、正極材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術的解決手段によって達成される。
【0007】
高ニッケル三元コアシェル前駆体であって、化学構造式がzNi(C47222-Nix-zM1yM21-x-y(OH)2(ここで、0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2、0<z≦0.24であり、M1、M2は、コバルト、アルミニウム、マンガンのうちの2種である。)であることを特徴とする。
【0008】
上記の前駆体の製造方法であって、
(1)可溶性ニッケル塩、可溶性金属M1塩、可溶性金属M2塩をNi:M1:M2=x:y:(1-x-y)(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2)のモル比で、2~4mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液、水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水溶液をそれぞれ調製するステップと、
(2)反応釜に基質液を加えて、N2を導入し、40℃~60℃に昇温させ、ステップ(1)で調製された金属塩溶液、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液、アンモニア水溶液を反応釜に圧送し、反応系のpHを8.0~10.0に維持して、4~20h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得るステップと、
(3)金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜にステップ(1)で調製された水酸化ナトリウム溶液を圧送し、反応系のpHを9.0~12.0に維持して、反応を30~80h持続し、構造式がzNi(C47222-Nix-zM1yM21-x-y(OH)2、(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2、0<z≦0.24)の略球状のコアシェル前駆体を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
さらに、前記ステップ(1)では、可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルのうちの1種又は複数種であり、前記可溶性金属M1塩、可溶性金属M2塩は、可溶性コバルト塩、可溶性アルミニウム塩、可溶性マンガン塩のうちの2種である。
【0010】
さらに、前記可溶性コバルト塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルトのうちの1種であり、前記可溶性アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、メタアルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウムのうちの1種であり、前記可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガンのうちの1種である。
【0011】
さらに、前記ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液は、ジメチルグリオキシム(C4822)を濃アンモニア水に溶解して調製したものであり、ジメチルグリオキシムと濃アンモニア水との比が1g:(10~200ml)であり、前記濃アンモニア水の濃度が25%~28%であり、前記水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水溶液の濃度がすべて2mol/Lである。
【0012】
さらに、前記ステップ(2)の基質液は、反応釜に反応釜の体積の2/3の水を加えた後、濃度10%~28%のアンモニア水を加えてpHを8.0~10.0に調整したものであり、N2流量が0.5~2m3/hである。
【0013】
さらに、前記ステップ(2)の反応において、金属塩溶液の流量が1~50L/hであり、前記ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の流量が3~10L/hであり、前記アンモニア水溶液の流量が0~3L/hであり、撹拌の回転数が200~400r/minである。
【0014】
さらに、前記ステップ(3)の反応において、水酸化ナトリウム溶液の流量が1~17L/hであり、撹拌の回転数が300~400r/minである。
【0015】
上記の前駆体を用いて製造された正極材料であって、
構造式がLiNixM1yM21-x-y2(0.6≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2)であることを特徴とする。
【0016】
前記コアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、リチウム源と混合してから300~500℃で3~5h保温し、その後、700~900℃に昇温させて10~20h保温するステップを含み、
前記リチウム源は水酸化リチウム又は炭酸リチウムであり、前記リチウム源とコアシェル前駆体とのモル比が(1~1.2):1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な技術的効果は以下の通りである。本発明は、共沈法によりコアシェル構造の三元前駆体を製造し、ジメチルグリオキシムとNiイオンの特徴的な反応を利用することにより、三元液の化学配合比を変えることなく、コアのニッケル含有量が100%、シェルのニッケル含有量が低いコアシェル構造の前駆体を形成することができる。リチウムと混合して焼成して得られるコアシェル構造の正極材料は、化学配合比が同じ通常の材料と比較して、容量を高く維持しつつ、サイクル特性に優れている。また、作業フローを簡素化し、タンクの数を減らした。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例3の三元前駆体のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照して本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明のジメチルグリオキシムはNiイオンと特徴的に反応することができ、この反応を利用すると、コアのニッケル含有量が100%であり、シェルのニッケル含有量が低いコアシェル構造が得られる。これによって、化学配合比が同じである場合、通常の材料と比較して、コアシェル材料は、容量を高く維持しつつ、優れたサイクル特性を有する。
【実施例
【0021】
実施例1
ステップ1:硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガンをNi:Co:Mn=0.6:0.2:0.2のモル比で、2mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水(すなわち、反応釜の体積の2/3)を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量0.6m3/hで導入し、50℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液8L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液10L/h、アンモニア水溶液0~3L/hを圧送し、反応中のpHを8.0~9.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、10h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を1.4~1.6L/hで圧送し、反応中のpHを9.4~10.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、反応を60h持続し、構造式が0.1Ni(C47222-Ni0.5Co0.2Mn0.2(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、炭酸リチウムと混合して400℃で5h保温後、800℃に昇温させて12h保温し、構造式がLiNi0.6Co0.2Mn0.22のコアシェル構造の三元材料を得た。炭酸リチウムと前駆体とのモル比は1.2:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は182.1mA/gであり、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は92.9%であった。
【0022】
実施例2
ステップ1:塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化マンガンをNi:Co:Mn=0.8:0.1:0.1のモル比で、2mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量0.6m3/hで導入し、50℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液8L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液10L/h、アンモニア水溶液0~3L/hを圧送し、反応中のpHを8.0~9.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、10h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を1.4~1.6L/hで圧送し、反応中のpHを9.6~11.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、反応を55h持続し、構造式が0.1Ni(C47222-Ni0.7Co0.1Mn0.1(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、水酸化リチウムと混合して400℃で5h保温後、800℃に昇温させて12h保温し、構造式がLiNi0.8Co0.1Mn0.12のコアシェル構造の三元材料を得た。水酸化リチウムと前駆体とのモル比は1.2:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は191.4mA/g、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は92.3%である。
【0023】
実施例3
ステップ1:硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンをNi:Co:Mn=0.9:0.05:0.05のモル比で、2mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量0.6m3/hで導入し、50℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液8L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液10L/h、アンモニア水溶液0~3L/hを圧送し、反応中のpHを8.0~9.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、10h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を1.4~1.6L/hで圧送し、反応中のpHを11.0~12.0、撹拌の回転数を340~380r/minに維持して、反応を50h持続し、構造式が0.1Ni(C47222-Ni0.8Co0.05Mn0.05(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、水酸化リチウムと混合して400℃で5h保温後、800℃に昇温させて12h保温し、構造式がLiNi0.9Co0.05Mn0.05O2のコアシェル構造の三元材料を得た。水酸化リチウムと前駆体とのモル比は1.2:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は217.1mA/g、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は90.3%である。
【0024】
実施例4
ステップ1:硫酸ニッケル、硫酸コバルト、メタアルミン酸ナトリウムをNi:Co:Al=0.8:0.15:0.05のモル比で、3mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量0.6m3/hで導入し、58℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液30L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液5L/h、アンモニア水溶液0~3L/hを圧送し、反応中のpHを9.0~10.0、撹拌の回転数を340~360r/minに維持して、20h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液8~10L/hを圧送し、反応中のpHを9.2~9.8、撹拌の回転数を380~400r/minに維持して、反応を70h持続し、構造式が0.2Ni(C47222-Ni0.6Co0.15Al0.05(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、炭酸リチウムと混合して500℃で3h保温後、900℃に昇温させて11h保温し、構造式がLiNi0.8Co0.15Al0.052のコアシェル構造の三元材料を得た。炭酸リチウムと前駆体とのモル比は1.1:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は190.3mA/g、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は90.2%である。
【0025】
実施例5
ステップ1:硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸アルミニウムをNi:Co:Al=0.89:0.1:0.01のモル比で、4mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量1.5m3/hで導入し、58℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液45L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液5L/h、アンモニア水溶液0~2L/hを圧送し、反応中のpHを8.0~9.0、撹拌の回転数を340~360r/minに維持して、20h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液15~17L/hを圧送し、反応中のpHを10.0~11.4、撹拌の回転数を300~320r/minに維持して、反応を65h持続し、構造式が0.24Ni(C47222-Ni0.65Co0.1Al0.01(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、水酸化リチウムと混合して300℃で4h保温後、850℃に昇温させて10h保温し、構造式がLiNi0.89Co0.1Al0.012のコアシェル構造の三元材料を得た。水酸化リチウムと前駆体とのモル比は1.2:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は210.4mA/g、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は91.4%である。
【0026】
実施例6
ステップ1:硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸アルミニウムをNi:Mn:Al=0.9:0.05:0.05のモル比で、2mol/Lの金属塩溶液を調製し、ジメチルグリオキシム(C4822)を25%~28%の濃アンモニア水に溶解し、10g/Lのジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液を調製し、水酸化ナトリウム、アンモニア水をそれぞれ濃度2mol/Lの溶液に調製した。
ステップ2:反応釜に水を130L加えて、14%~16%のアンモニア水を用いてpHを8.0~9.0に調整し、反応釜にN2を流量0.6m3/hで導入し、58℃に昇温させ、反応釜に上記の金属塩溶液40L/h、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液8L/h、アンモニア水溶液2~3L/hを圧送し、反応中のpHを8.0~9.0、撹拌の回転数を340~360r/minに維持して、10h反応させ、構造式がNi(C47222の略球状前駆体コアを得た。
ステップ3:金属塩溶液、アンモニア水溶液を圧送し続けながら、ジメチルグリオキシム-アンモニア水複合溶液の圧送を停止し、反応釜に2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液13~15L/hを圧送し、反応中のpHを11.0~12.0、撹拌の回転数を360~380r/minに維持して、反応を50h持続し、構造式が0.1Ni(C47222-Ni0.8Mn0.05Al0.05(OH)2の略球状のコアシェル前駆体を得た。
ステップ4:上記のコアシェル前駆体を洗浄して、乾燥し、篩に掛けて、鉄を除去した後、水酸化リチウムと混合して400℃で5h保温後、800℃に昇温させて12h保温し、構造式がLiNi0.9Mn0.05Al0.052のコアシェル構造の三元材料を得た。水酸化リチウムと前駆体とのモル比は1.2:1である。正極材料をCR2025ボタン電池に組み立て、その電池について電気化学的特性を検出した結果、0.1Cのレート、2.8~4.3Vの電圧範囲では、放電容量は209.7mA/g、0.5Cで100サイクル後の容量維持率は90.1%である。
【0027】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、発明に限定されるものではない。当業者にとって、本発明によって提供される技術的示唆の下で、他の同等の改良も行うことができ、これらの改良は、いずれも本発明の目的を達成することができ、本発明の保護範囲とみなすことができる。
図1
【国際調査報告】