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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】脳内発現レベルが高いAAV組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20240319BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240319BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240319BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240319BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/35 ZNA
C07K14/015
C12N7/01
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z
C07K7/06
A61K35/76
A61P25/00
A61P43/00 105
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562535
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022024603
(87)【国際公開番号】W WO2022221400
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/174,434
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523059866
【氏名又は名称】カプシダ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリトザニス, ニコラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーデン, ニコラス エス.
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ, トロイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー, ブランドン ジー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB06
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZB211
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA09
4H045BA14
4H045BA16
4H045BA41
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書中に記載されるのは、CNS内でのウイルス形質導入が増大する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を含む組成物およびキットである。本明細書中に記載されるrAAV組成物は、導入遺伝子、例えば治療用核酸をカプシド化する。rAAVを用いた遺伝子治療を記載する。また、記載されるのは、CNS関連疾患および症状を処置する方法である。上記rAAVは、非ヒト霊長類(NHP)における反復ラウンドの選択により、操作された形質導入がカプシド構造中に入ることで、CNS内で測定した場合に形質導入が増大するバリアントをもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1または図1~3に記載される配列を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項2】
式Iの挿入配列:
-X-X-N-T-T-X-X-X-X-X(I)(配列番号72)
(式中、Xは、A、E、Q、T、およびVから選択されるアミノ酸であり;Xは、Q、I、M、A、P、およびVから選択されるアミノ酸であり;Xは、L、S、Q、M、およびTから選択されるアミノ酸であり;Xは、KおよびRから選択されるアミノ酸であり;Xは、P、I、N、A、Q、H、I、V、S、およびLから選択されるアミノ酸であり;Xは、T、I、V、A、Q、S、L、M、G、H、およびRから選択されるアミノ酸であり;Xは、A、D、N、S、T、M、P、Q、E、G、V、I、およびWから選択されるアミノ酸であり;Xは、Q、G、F、A、S、D、E、M、P、R、T、およびYから選択されるアミノ酸である)を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項3】
はAであり;XはQである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項4】
はLである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項5】
はNである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項6】
はKである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項7】
はSである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項8】
はVである、請求項2に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項9】
前記配列は、AQLNTTKSVMQ(配列番号2)、AQLNTTKPTDR(配列番号3)、AQLNTTKPTVG(配列番号4)、AQLNTTKPSPG(配列番号5)、AQLNTTKPTGP(配列番号6)、AQLNTTKPTAG(配列番号7)、AQLNTTKPVAG(配列番号8)、AQLNTTKNITQ(配列番号9)、AQLNTTKPTSF(配列番号10)、AQLNTTKPTPS(配列番号11)、MANNTTKPIAQ(配列番号12)、AQLNTTKPIAQ(配列番号13)、AQLNTTKPTSY(配列番号14)、AQLNTTKNMTQ(配列番号15)、AQLNTTKPRDE(配列番号16)、AQLNTTKPTAQ(配列番号17)、AQLNTTKNVTQ(配列番号18)、QTNNTTKPIAQ(配列番号)、AQLNTTKQMNQ(配列番号19)、AQLNTTKHVDQ(配列番号20)、AQLNTTKQIDQ(配列番号21)、VALNTTKPIAQ(配列番号22)、AMTNTTKPIAQ(配列番号23)、AQLNTTKPANQ(配列番号24)、AQLNTTKNVNQ(配列番号25)、AQLNTTKPVVA(配列番号26)、AQLNTTKPQNQ(配列番号27)、AQLNTTKPQLQ(配列番号28)、AQLNTTKITDQ(配列番号29)、AQLNTTKLHDQ(配列番号30)、AQLNTTKNGYQ(配列番号31)、ANVNTTKPIAQ(配列番号32)、EQMNTTKPIAQ(配列番号33)、AQLNTTKPLQF(配列番号34)、AQLNTTKPSSG(配列番号35)、AQLNTTKPVMQ(配列番号36)、AQLNTTKPLAQ(配列番号37)、TITNTTKPIAQ(配列番号38)、AQLNTTKSFGQ(配列番号39)、AQLNTTKPTAQ(配列番号116)、およびAQLNTTKPTTS(配列番号117)から選択される、請求項1に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項10】
LNTTKSV(配列番号41)、LNTTKPT(配列番号42)、LNTTKPS(配列番号43)、LNTTKPV(配列番号44)、LNTTKNI(配列番号45)、LNTTKPI(配列番号46)、NNTTKPI(配列番号47)、LNTTKNM(配列番号48)、LNTTKPR(配列番号49)、LNTTKNV(配列番号50)、LNTTKQM(配列番号51)、LNTTKPQ(配列番号52)、LNTTKIT(配列番号53)、LNTTKLH(配列番号54)、LNTTKNG(配列番号55)、VNTTKPI(配列番号56)、MNTTKPI(配列番号57)、LNTTKPL(配列番号58)、TNTTKPI(配列番号59)、およびLNTTKSF(配列番号60)から選択される挿入配列を含むAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項11】
前記AAVはAAV9である、請求項1~10のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項12】
前記AAVは配列番号1で示される、請求項1~11のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項13】
挿入はアミノ酸588とアミノ酸589との間にある、請求項1~12のいずれかに記載のAAVカプシド。
【請求項14】
60コピーの前記AAVカプシドタンパク質が、AAVカプシドにアセンブルされる、請求項1~13のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項15】
前記AAVカプシドタンパク質は、AAVカプシドのVP1、VP2、およびVP3内に存在する、請求項1~14のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項16】
前記AAVカプシドタンパク質は、対象に全身送達された場合に前記対象においてCNS内で測定した場合の形質導入効率の増大の少なくとも1つを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項17】
前記AAVカプシドタンパク質はさらに、A589Nおよび/またはQ590Pを含むアミノ酸置換を含む、請求項10~16のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシド。
【請求項19】
前記AAVカプシドはキメラである、請求項18のいずれか一項に記載のAAVカプシド。
【請求項20】
単離かつ精製されている、請求項18~19のいずれかに記載のAAVカプシド。
【請求項21】
CNSの疾患または症状を処置するための全身投与用の医薬製剤として製剤化されており、前記医薬製剤はさらに、薬学的に許容され得る担体を含む、請求項18~20のいずれかに記載のAAVカプシド。
【請求項22】
前記カプシドタンパク質はCNS内で発現される、請求項1~17のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項23】
前記CNSは、ニューロン、乏突起膠細胞、星状膠細胞、および脳血管細胞から選択される細胞型を含む、請求項22に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項24】
前記CNSは、脳、視床、皮質、硬膜、側脳室、延髄、橋、扁桃体、運動皮質、尾状体、視床下部、線条体、腹側中脳、新皮質、基底核、海馬、視床、大脳、小脳、脳幹、および脊髄から選択される組織を含む、請求項22~23のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項25】
配列番号75~113からなる群から選択される、請求項1~17のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸配列。
【請求項26】
表4に記載されるペプチド配列をコードする核酸配列。
【請求項27】
請求項1~17のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む組換えベクター。
【請求項28】
a)請求項27に記載の組換えベクターを含む第1のベクターと、
b)ヘルパーウイルスタンパク質をコードする第2のベクターと、
c)治療用遺伝子発現産物をコードする治療用核酸を含む第3のベクターと
を含むキット。
【請求項29】
請求項1~17のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質を含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含む、対象における疾患または症状を処置する方法。
【請求項30】
前記疾患または前記症状は、前記対象のCNSの疾患または症状である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項18~21のいずれか一項に記載のAAVカプシドから組換えAAV粒子を製造する方法であって、
a.
i.治療用遺伝子発現産物をコードする第1の核酸配列、
ii.請求項1~70のいずれか一項に記載のAAVカプシドを発現するように修飾されたカプシド(Cap)遺伝子を含む組換えウイルスゲノムをコードする第2の核酸配列、および
iii.AAVヘルパーウイルスゲノムをコードする第3の核酸配列、
を含む核酸を細胞中に導入する工程と、
b.前記組換えAAV粒子をアセンブルする工程であって、前記組換えAAV粒子は、前記第1の核酸をカプシド化する前記AAVカプシドを含む、工程と
を含む方法。
【請求項32】
前記AAVカプシドタンパク質は、対象に全身送達された場合に前記対象において組織内で測定した場合の形質導入の増大を特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項33】
前記組織は脳組織である、請求項1~17のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項34】
請求項1~17のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質、およびウイルスゲノムを含むAAV粒子。
【請求項35】
LNTTKSV(配列番号41)、LNTTKPT(配列番号42)、LNTTKPS(配列番号43)、LNTTKPV(配列番号44)、LNTTKNI(配列番号45)、LNTTKPI(配列番号46)、NNTTKPI(配列番号47)、LNTTKNM(配列番号48)、LNTTKPR(配列番号49)、LNTTKNV(配列番号50)、LNTTKQM(配列番号51)、LNTTKPQ(配列番号52)、LNTTKIT(配列番号53)、LNTTKLH(配列番号54)、LNTTKNG(配列番号55)、VNTTKPI(配列番号56)、MNTTKPI(配列番号57)、LNTTKPL(配列番号58)、TNTTKPI(配列番号59)、LNTTKSF(配列番号60)、およびLALPKPI(配列番号114)から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項36】
LNTTKSV(配列番号41)、LNTTKPT(配列番号42)、LNTTKPS(配列番号43)、LNTTKPV(配列番号44)、LNTTKNI(配列番号45)、LNTTKPI(配列番号46)、NNTTKPI(配列番号47)、LNTTKNM(配列番号48)、LNTTKPR(配列番号49)、LNTTKNV(配列番号50)、LNTTKQM(配列番号51)、LNTTKPQ(配列番号52)、LNTTKIT(配列番号53)、LNTTKLH(配列番号54)、LNTTKNG(配列番号55)、VNTTKPI(配列番号56)、MNTTKPI(配列番号57)、LNTTKPL(配列番号58)、TNTTKPI(配列番号59)、LNTTKSF(配列番号60)、およびLALPKPI(配列番号114)のいずれか1つを含むカプシドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項37】
AQLNTTKSVMQ(配列番号2)、AQLNTTKPTDR(配列番号3)、AQLNTTKPTVG(配列番号4)、AQLNTTKPSPG(配列番号5)、AQLNTTKPTGP(配列番号6)、AQLNTTKPTAG(配列番号7)、AQLNTTKPVAG(配列番号8)、AQLNTTKNITQ(配列番号9)、AQLNTTKPTSF(配列番号10)、AQLNTTKPTPS(配列番号11)、MANNTTKPIAQ(配列番号12)、AQLNTTKPIAQ(配列番号13)、AQLNTTKPTSY(配列番号14)、AQLNTTKNMTQ(配列番号15)、AQLNTTKPRDE(配列番号16)、AQLNTTKPTAQ(配列番号17)、AQLNTTKNVTQ(配列番号18)、QTNNTTKPIAQ(配列番号)、AQLNTTKQMNQ(配列番号19)、AQLNTTKHVDQ(配列番号20)、AQLNTTKQIDQ(配列番号21)、VALNTTKPIAQ(配列番号22)、AMTNTTKPIAQ(配列番号23)、AQLNTTKPANQ(配列番号24)、AQLNTTKNVNQ(配列番号25)、AQLNTTKPVVA(配列番号26)、AQLNTTKPQNQ(配列番号27)、AQLNTTKPQLQ(配列番号28)、AQLNTTKITDQ(配列番号29)、AQLNTTKLHDQ(配列番号30)、AQLNTTKNGYQ(配列番号31)、ANVNTTKPIAQ(配列番号32)、EQMNTTKPIAQ(配列番号33)、AQLNTTKPLQF(配列番号34)、AQLNTTKPSSG(配列番号35)、AQLNTTKPVMQ(配列番号36)、AQLNTTKPLAQ(配列番号37)、TITNTTKPIAQ(配列番号38)、AQLNTTKSFGQ(配列番号39)、AQLNTTKPTAQ(配列番号116)、およびAQLNTTKPTTS(配列番号117)のいずれか1つを含むカプシドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、分裂細胞および非分裂細胞の双方を形質導入する能力、感染細胞におけるエピソームDNAとしての長期持続性、ならびに低い免疫原性のため、治療用途における遺伝子送達用のベクターとして広く使用されている。これらの特徴は、遺伝子治療等の治療用途での用途に魅力的である。しかしながら、対象への全身送達直後に、異なる細胞型において選択的かつ効率的に発現するように、既存のAAV血清型の性能を大きく向上させる必要がある。この必要性は、とりわけ、AAVを中枢神経系(CNS)内で発現させなければならない場合に、緊急である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
発明の要旨
本明細書中で開示されるのは、非ヒト霊長類(NHP)における反復ラウンドの選択により、操作された形質導入がカプシド構造中に入ることで、CNS内で測定した場合に形質導入が増大するバリアントをもたらすrAAVである。
【0003】
本発明は、CNSへの形質導入が広範なrAAVを提供する。
【0004】
本発明は、一態様において、表1、図1図3、および/または式Iのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるペプチド挿入配列を提供する。
【0005】
本発明の別の態様は、表1、図1図3、および/または式Iのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるペプチド挿入物を有するAAVカプシドタンパク質が、対象におけるCNS形質導入の増大によって特徴付けられる、修飾カプシドタンパク質である。
【0006】
本開示はさらに、表1、図1~3、および/または式Iのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるペプチド挿入物を有するrAAV、ならびに薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0007】
本明細書中で開示される態様は、本開示のAAVカプシドタンパク質またはAAVカプシドを含む治療有効量の医薬製剤を投与することを含む、対象における疾患または症状を処置する方法を提供する。一部の実施形態において、疾患または症状は、対象のCNSおよび脳の疾患または症状である。関連して、本発明は、疾患または内科的症状を処置または予防するための医薬品の製造におけるrAAVの使用を含む。
【0008】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
図面の簡単な説明
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良好な理解が、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】AAVカプシドタンパク質挿入物、および操作されたAAVライブラリーの2ラウンドの評価の後に非ヒト霊長類CNS内で見出されたアミノ酸配列をコードする置換アミノ酸配列を示す。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図1-6】同上。
図1-7】同上。
図1-8】同上。
図1-9】同上。
図1-10】同上。
図1-11】同上。
図1-12】同上。
図1-13】同上。
図1-14】同上。
【0011】
図2-1】AAVカプシドタンパク質挿入物および置換アミノ酸配列、ならびにある非ヒト霊長類CNS内で見出されたアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
【0012】
図3-1】AAVカプシドタンパク質挿入物および置換アミノ酸配列、ならびに別の非ヒト霊長類CNS内で見出されたアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の詳細な説明
一態様において、本開示は、CNS内での発現レベルが高いrAAVを提供する。
【0014】
一態様において、本開示は、表1、図1~3、および/または式Iのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるペプチド挿入物および/または置換を有するrAAVを提供する。
【0015】
本明細書中で開示される態様は、式Iのアミノ酸配列
-X-X-N-T-T-X-X-X-X-X(I)(配列番号72)
(式中、Xは、A、E、Q、T、およびVから選択されるアミノ酸であり;Xは、Q、I、M、A、P、およびVから選択されるアミノ酸であり;Xは、L、S、Q、M、およびTから選択されるアミノ酸であり;Xは、KおよびRから選択されるアミノ酸であり;Xは、P、I、N、A、Q、H、I、V、S、およびLから選択されるアミノ酸であり;Xは、T、I、V、A、Q、S、L、M、G、H、およびRから選択されるアミノ酸であり;Xは、A、D、N、S、T、M、P、Q、E、G、V、I、およびWから選択されるアミノ酸であり;Xは、Q、G、F、A、S、D、E、M、P、R、T、およびYから選択されるアミノ酸である)を含むAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドを提供する。
【0016】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがAであり、かつXがQである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがLである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがNである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがKである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0020】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがPまたはSである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、XがVまたはTである式Iのアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態において、表1に記載される配列は、LNTTKSV(配列番号41)、LNTTKPT(配列番号42)、LNTTKPS(配列番号43)、LNTTKPV(配列番号44)、LNTTKNI(配列番号45)、LNTTKPI(配列番号46)、NNTTKPI(配列番号47)、LNTTKNM(配列番号48)、LNTTKPR(配列番号49)、LNTTKNV(配列番号50)、LNTTKQM(配列番号51)、LNTTKPQ(配列番号52)、LNTTKIT(配列番号53)、LNTTKLH(配列番号54)、LNTTKNG(配列番号55)、VNTTKPI(配列番号56)、MNTTKPI(配列番号57)、LNTTKPL(配列番号58)、TNTTKPI(配列番号59)、LNTTKSF(配列番号60)、およびLALPKPI(配列番号114)から選択される。
【0023】
一部の実施形態において、表1に記載される配列は、AQLNTTKSVMQ(配列番号2)、AQLNTTKPTDR(配列番号3)、AQLNTTKPTVG(配列番号4)、AQLNTTKPSPG(配列番号5)、AQLNTTKPTGP(配列番号6)、AQLNTTKPTAG(配列番号7)、AQLNTTKPVAG(配列番号8)、AQLNTTKNITQ(配列番号9)、AQLNTTKPTSF(配列番号10)、AQLNTTKPTPS(配列番号11)、MANNTTKPIAQ(配列番号12)、AQLNTTKPIAQ(配列番号13)、AQLNTTKPTSY(配列番号14)、AQLNTTKNMTQ(配列番号15)、AQLNTTKPRDE(配列番号16)、AQLNTTKPTAQ(配列番号17)、AQLNTTKNVTQ(配列番号18)、QTNNTTKPIAQ(配列番号)、AQLNTTKQMNQ(配列番号19)、AQLNTTKHVDQ(配列番号20)、AQLNTTKQIDQ(配列番号21)、VALNTTKPIAQ(配列番号22)、AMTNTTKPIAQ(配列番号23)、AQLNTTKPANQ(配列番号24)、AQLNTTKNVNQ(配列番号25)、AQLNTTKPVVA(配列番号26)、AQLNTTKPQNQ(配列番号27)、AQLNTTKPQLQ(配列番号28)、AQLNTTKITDQ(配列番号29)、AQLNTTKLHDQ(配列番号30)、AQLNTTKNGYQ(配列番号31)、ANVNTTKPIAQ(配列番号32)、EQMNTTKPIAQ(配列番号33)、AQLNTTKPLQF(配列番号34)、AQLNTTKPSSG(配列番号35)、AQLNTTKPVMQ(配列番号36)、AQLNTTKPLAQ(配列番号37)、TITNTTKPIAQ(配列番号38)、AQLNTTKSFGQ(配列番号39)、AQLNTTKPTAQ(配列番号116)、およびAQLNTTKPTTS(配列番号117)から選択される。
【0024】
一部の実施形態において、挿入配列は、表1に列挙されるペプチド配列によって表される。
【表1-1】
【表1-2】
【0025】
一部の態様において、挿入アミノ酸配列は、表1、図1~3、および/または式Iに記載されるアミノ酸配列と少なくとも71.4%同一である。一部の態様において、挿入アミノ酸配列は、表1、図1~3、および/または式Iに記載されるアミノ酸配列と少なくとも86.7%同一である。
【0026】
また、本明細書中で開示されるのは、CNSを襲う疾患または症状を処置するための、治療用組換えAAV(rAAV)粒子を生成するための方法およびキット、ならびにrAAV粒子を含む方法および医薬組成物または製剤である。
【0027】
本明細書中で開示されるのは、CNS内でのウイルス形質導入が増大する操作されたAAVカプシドである。AAVカプシドは、ウイルスベクターを、例えば治療用遺伝子発現産物をコードする異種核酸と共にカプシド化することができる。CNS内での異種核酸の形質導入は、異種核酸をカプシド化する本開示のAAVカプシドの、対象への全身送達直後に達成することができる。本明細書中で開示されるAAVカプシドは、中枢神経系の障害が挙げられるがこれ限定されないヒト疾患を処置するための遺伝子治療の多くの用途に有益である。
【0028】
本開示のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列を含む組換えAAVベクターもまた、本明細書中で提供される。例えば、本開示のウイルスベクターは、VP1、VP2、およびVP3をコードするAAVウイルスCap(カプシド)を含む核酸配列を含み、それらの少なくとも1つが、本開示のAAVカプシドタンパク質を生成するように修飾されている。提供される組換えAAVベクターは、AAV血清型(例えばAAV9)、または本発明の挿入物を含むバリアントAAV血清型に由来し得る。
AAVカプシド
【0029】
本明細書中で提供されるのは、(対象に全身投与された場合の対象における)標的細胞または標的環境中に導入遺伝子を組み込むのに有用な修飾アデノ随伴(AAV)ウイルスカプシド組成物である。
【0030】
rAAVは、異種核酸(例えば、治療用核酸、遺伝子編集機構)をカプシド化するように操作することができるAAVカプシドを含む。AAVカプシドは、3つのAAVカプシドタンパク質単量体、VP1、VP2、およびVP3で構成される。60コピーのこれらの3つのVPタンパク質が、1:1:10の比率で相互作用して、ウイルスカプシドを形成する。VP1は、約137アミノ酸のN末端領域(VP1u)に加えて、VP2タンパク質の全体をカバーし、VP2は、約65アミノ酸のN末端領域(VP1/2共通領域)に加えて、VP3の全体をカバーする。これらの3つのカプシドタンパク質は、VP3の保存アミノ酸配列を共有しており、これは、場合によっては、アミノ酸位置138で始まる領域(例えば、AA139~736)である。
【0031】
理論に拘束されることを望むものではないが、親AAVカプシド配列は、VP1領域を含むと理解される。特定の実施形態において、親AAVカプシド配列は、VP1、VP2、および/もしくはVP3領域、またはそれらのあらゆる組合せを含む。親VP1配列は、親AAVカプシド配列と同義であると見なされ得る。
【0032】
AAV VP3構造は、全ての血清型に共通する高度に保存された領域、コア8本鎖βバレルモチーフ(βB-βI)、および小さなαヘリックス(αA)を含有する。β鎖間に挿入されたループ領域は、β鎖HとIとの間の特有のHIループ、β鎖DとEとの間のDEループ、およびループの上部を形成する9つの可変領域(VR)からなる。AA588ループ等のこれらのVRは、カプシド表面上に見出され、そして受容体結合、形質導入、および抗原特異性が挙げられる、AAVライフサイクルにおける特定の機能的役割と関連し得る。
【0033】
一部の態様において、本発明のrAAVバリアントは、配列番号1のAAV9ネイティブ配列のアミノ酸588~589に対応する残基にてペプチド挿入物を有するAAVカプシドタンパク質を含む。
【0034】
AAVカプシドは、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、およびVP3)を含み、それぞれ、親AAVカプシドタンパク質構造の588ループ内等に挿入物を有する(AAV9 VP1ナンバリング)。588ループは、AAV2のヘパラン硫酸結合部位を含有し、ペプチドディスプレイに適している。AAV9の唯一知られている受容体は、N結合末端ガラクトースおよびAAV受容体(AAVR)であるが、多くの指摘が、他のものがあることを示している。標的インビボ環境において導入遺伝子形質導入の増大を付与するようなAAV9 588ループへの修飾が、本明細書に示されている。
【0035】
本発明は、一態様において、表1、図1図3、および/または式Iのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるペプチド挿入物をAAV 588ループに提供する。
【0036】
本明細書中で開示されるのは、CNS細胞型(例えば、脳内皮細胞、ニューロン、星状膠細胞)内でより高い形質導入を付与する、588ループにて挿入物を有するAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドである。特に、本明細書中で開示されるAAVカプシドタンパク質は、対象のCNS内での異種核酸(例えば導入遺伝子)のrAAV媒介形質導入を可能にする。本開示のAAVカプシドは、医薬組成物として製剤化され得る。加えて、AAVカプシドは、種々の用途に使用されるように単離かつ精製され得る。
【0037】
一部の実施形態において、本開示のrAAVカプシドは、本明細書中で開示される方法を使用して生成される。場合によっては、rAAVカプシドはキメラである。場合によっては、rAAVまたはバリアントAAVタンパク質は、rAAVカプシド内に含まれ、親AAVカプシドまたはカプシドタンパク質と比較して、標的組織内でのrAAVの局在化の増大を付与する。
AAVカプシドタンパク質
【0038】
本明細書中で開示されるのは、修飾カプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)を有する操作されたAAVカプシドタンパク質を含む組換えAAV(rAAV)カプシドである。一部の実施形態において、本開示のrAAVカプシドタンパク質は、本明細書中で開示される方法を使用して生成される。一部の実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、治療用核酸(例えば導入遺伝子)を対象に送達する方法に使用される。場合によっては、rAAVカプシドタンパク質は、所望のAAV発現を有し、特定の治療用途、例えば、本明細書中で開示されるもの等の、対象における疾患または障害の処置に特に適したものとなる。
【0039】
rAAVカプシドタンパク質は、対象へのrAAVの全身投与直後に対象のCNS、例えば脳内での最適化された発現のために操作されている。rAAVカプシドタンパク質は、表1および図1に記載される挿入物を含むように操作されている。表1および図1内に記載される挿入物を含むrAAVカプシドタンパク質は、カプシド化導入遺伝子の効率的な形質導入を達成するように操作されている。特に、rAAVカプシドタンパク質は、対象の脳内での発現が増大する。
【0040】
本明細書中に記載される操作されたAAVカプシドタンパク質は、場合によっては、588ループ内のアミノ酸位置にて、親AAVカプシドタンパク質と異種であるアミノ酸の挿入物を有する。一部の実施形態において、アミノ酸は、挿入物のアミノ酸位置にて、親AAVカプシドタンパク質に対して内在性でない。アミノ酸は、異なるAAVカプシドタンパク質内での置換の挿入物と同じであるか、または同等のアミノ酸位置において、天然に存在するアミノ酸であり得る。
【0041】
一般に、挿入物は、親AAVカプシドタンパク質内の588ループにて挿入または置換されている5、6、または7アミノ酸配列(それぞれ5量体、6量体、または7量体)を含む。本明細書中で提供される態様は、AA588~589にて挿入される7アミノ酸ポリマー(7量体)を含むアミノ酸挿入物を提供し、そして加えて、7量体配列の側面に位置するアミノ酸位置(例えば、AA587~588および/またはAA589~590)での1つまたは2つのアミノ酸の置換を含んで、親AAVカプシドタンパク質の588ループにて11アミノ酸ポリマー(11量体)を生成し得る。本明細書中に記載される7量体は、有利には、縮重プライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して生成され、7アミノ酸はそれぞれ、デオキシリボース核酸(DNA)配列N-N-Kによってコードされている。「N」は4つのDNAヌクレオチドのいずれかであり、Kはグアニン(G)またはチミン(T)である。ランダムな7量体アミノ酸配列を生成するこの方法は、タンパク質レベルにて12億8000万通りの考えられる組合せを可能にする。
【0042】
本開示のrAAVカプシドタンパク質は、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列内に、アミノ酸の挿入物を含む。本開示の操作されたAAVカプシドタンパク質が生成されるAAVカプシドは、「親」AAVカプシドと称される。AAV-1の完全ゲノムは、GenBank受託番号NC_002077で提供される;AAV-2の完全ゲノムは、GenBank受託番号NC_001401およびSrivastavaら、J.Virol.,45:555-564(1983)で提供される;AAV-3の完全ゲノムは、GenBank受託番号NC_1829で提供される;AAV-4の完全ゲノムは、GenBank受託番号NC_001829で提供される;AAV-5ゲノムは、GenBank受託番号AF085716で提供される;AAV-6の完全ゲノムは、GenBank受託番号NC_001862で提供される;AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも一部が、それぞれGenBank登録番号AX753246およびAX753249で提供される;AAV-9ゲノムは、Gaoら、J.Virol.,78:6381-6388(2004)で提供される;AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)で提供される;AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)で提供される;AAV-12ゲノムの一部が、Genbank寄託番号DQ813647で提供される;AAV-13ゲノムの一部が、Genbank受託番号EU285562で提供される。
【0043】
場合によっては、親AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12から選択される血清型を有するAAVに由来する。別のAAVカプシドタンパク質に「由来する」AAVカプシドタンパク質は、バリアントAAVカプシドタンパク質であり得る。バリアントは、例えば、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列内に異種アミノ酸を含み得る。異種アミノ酸は、AAVカプシドタンパク質内に天然に存在しないものであり得る。異種アミノ酸は、異なるAAVカプシドタンパク質内に天然に存在するものであり得る。場合によっては、親AAVカプシドは、米国特許出願公開第2020/0165576号および米国特許出願第62/832,826号および国際出願PCT/US20/20778号に記載されている;それらの各々の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0044】
場合によっては、親AAVはAAV9である。場合によっては、AAV9カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1を含む。AAV9 VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列(>tr|Q6JC40|Q6JC40_9VIRUカプシドタンパク質VP1 OS=アデノ随伴ウイルス9 OX=235455 GN=cap PE=1 SV=1)を、配列番号1
【化1-1】
【化1-2】
で示す。場合によっては、親AAVカプシドタンパク質配列は、配列番号1と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相同である。
【0045】
肝臓を含む向性を有するAAV9等の天然のAAV血清型由来のAAVカプシドタンパク質は、自然免疫応答を活性化し、これは場合によっては、対象において重度の炎症応答を引き起こし、これが多臓器不全をもたらす虞がある。標的インビボ組織(例えば脳)に対する天然のAAV血清型の形質導入を向上させることによって、本開示のrAAV粒子は、AAV媒介導入遺伝子送達の免疫原性を引き下げ、かつ自然免疫応答の活性化を妨げる。
【0046】
場合によっては、親AAVカプシドタンパク質は、配列番号1(例えば、アミノ酸1~736)で示されるVP1領域全体を含む。場合によっては、親AAVカプシドタンパク質は、VP1、VP2、およびVP3 AAV9カプシドタンパク質内に見出される共通の領域である、配列番号1内のアミノ酸217~736を含む。場合によっては、AAVカプシドタンパク質は、VP1およびVP2内に見出される共通の領域である、配列番号1におけるアミノ酸64~736を含む。親AAVカプシドタンパク質配列は、配列番号1の1~736、10~736、20~736、30~736、40~736、50~736、60~736、70~736、80~736、90~736、100~736、110~736、120~736、130~736、140~736、150~736、160~736、170~736、180~736、190~736、200~736、210~736、220~736、230~736、240~736、250~736、260~736、270~736、280~736、290~736、300~736、310~736、320~736、330~736、340~736、350~736、360~736、370~736、380~736、390~736、400~736、410~736、420~736、430~736、440~736、および450~736から選択されるアミノ酸を含み得る。一部の態様において、rAAVバリアントは、配列番号1のアミノ酸217~アミノ酸736と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を含む。場合によっては、アミノ酸挿入物は、対応する親AAVカプシドタンパク質の3回対称軸にある。
【0047】
本明細書中で開示されるのは、AAVカプシドタンパク質内のアミノ酸配列の挿入物である。配列ナンバリング表示「588~589」がAAV9、例えばAAV VP1について記されている場合、本発明はまた、他のAAV血清型において、同様の位置内に挿入物を含む。本明細書中で使用される「AA588~589」は、アミノ酸(またはアミノ酸配列)の挿入物が、親AAV VPカプシドタンパク質のアミノ酸配列内の位置588のアミノ酸(AA)の直後および位置589のAAの直前にあることを示す(VP1ナンバリング)。アミノ酸587~591は、配列番号1に示される「AQAQA」を含むモチーフを含む。例示的なAAVカプシドタンパク質配列を、表2に示す。例えば、LNTTKPT(配列番号42)は、AAV9カプシドアミノ酸配列内のAA588~589にて挿入されて、バリアントA(配列番号66)を提供する。本明細書中で開示される配列(表1、図1~3、および/または式I)は、親AAV9カプシドタンパク質のアミノ酸配列内のAA588~589またはAA587~590(アミノ酸AA587~590を置き換えている)、そのバリアント、または異なる血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3等)の親AAVの等価アミノ酸位置にて挿入され得ることが想定される。本明細書中で開示されるあらゆるAAVカプシドタンパク質配列において、位置449のアミノ酸は、RまたはKであり得る。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【0048】
本明細書中に記載される挿入物は、場合によっては、AA588~589での7量体挿入物を含み得る。本明細書中で開示されるあらゆる7量体挿入物が、アミノ酸位置587~590[AQAQ]でのあらゆるアミノ酸による置換に加えて、11量体を含み得ることが想定される。
【0049】
本明細書中で開示されるのは、全身送達された場合であっても、対象においてCNS内での形質導入の増大を付与する、親AAVカプシドタンパク質内に上記の挿入物を有するAAVカプシドタンパク質である。本明細書中に記載されるAAVカプシドタンパク質の多くの利点の1つが、CNS内の組織および細胞を標的とする能力である。組織は脳であり得る。CNS細胞の非限定的な例として、ニューロンおよびグリア細胞が挙げられる。グリア細胞は、乏突起膠細胞、上衣細胞、星状膠細胞、およびミクログリアから選択され得る。
【0050】
場合によっては、AAVカプシドタンパク質は、親AAV9カプシドタンパク質(配列番号1)内のアミノ酸位置588~589または587~590にて、表1、図1図3、および式Iのアミノ酸配列の少なくともまたは約5、6、もしくは7つのアミノ酸の挿入物を含む。場合によっては、AAVカプシドタンパク質は、脳内でのウイルス形質導入効率が高い。
【0051】
また、本開示のrAAVカプシドタンパク質は、国際公開第2020/068990号に記載されるように、親AAV9カプシドタンパク質またはそのバリアント内のアミノ酸位置452~458にてアミノ酸配列の置換を有し得る。一部の実施形態において、アミノ酸配列の置換は、親AAV9カプシドタンパク質内のアミノ酸位置452~458にてKDNTPGR(配列番号73)を含む。一部の実施形態において、アミノ酸配列の置換は、親AAV9カプシドタンパク質内のアミノ酸位置452~458にてDGAATKN(配列番号74)を含む。
【0052】
本明細書中に記載されるrAAVカプシドタンパク質は、単離かつ精製され得る。AAVは、カラムクロマトグラフィー、イオジキサノール勾配、または塩化セシウム勾配等の当該技術における標準的な方法によって単離かつ精製され得る。ヘルパーウイルスからAAVを精製する方法が、当該技術において知られており、例えば、Clarkら、Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999);SchenppおよびClark,Methods Mol.Med.,69:427-443(2002);米国特許第6,566,118号、ならびに国際公開第98/09657号において開示されている方法が挙げられ得る。
【0053】
加えて、本明細書中で開示されるAAVカプシドタンパク質は、単離かつ精製されているかされていないかに拘わらず、場合によっては薬学的に許容され得る担体をさらに含む医薬製剤に製剤化され得る。
【0054】
rAAVカプシドタンパク質は、ナノ粒子、第2の分子、またはウイルスカプシドタンパク質にコンジュゲートすることができる。場合によっては、ナノ粒子またはウイルスカプシドタンパク質は、本明細書中に記載される治療用核酸をカプシド化する。場合によっては、第2の分子は、治療剤、例えば、小分子、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、またはタンパク質、例えば本明細書中に記載されるものである。
【0055】
「同一性パーセント」は、実際にマッチする符号のパーセントである。類似性パーセントは、類似する符号のパーセントである。ギャップの向かいにある符号は、無視される。類似性は、一対の符号についてのスコア行列値が、類似性閾値である0.50以上である場合に、スコア化される。Wisconsin Genetics Software Packageのバージョン10に使用されるスコア行列は、BLOSUM62(HenikoffおよびHenikoff、(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915)である。
【0056】
本明細書中で提供される配列同一性/類似性値は、デフォルト設定を使用するプログラムのBLAST+2.5.0スイート(blast.ncbi.nlm.nih.gov)を使用して得られる値を指し得る(Camacho,C.ら(2009)BLAST+:architecture and applications.BMC Bioinformatics 10:421)。
【0057】
当業者であれば理解するように、BLAST検索は、タンパク質がランダム配列としてモデル化され得ると仮定する。しかしながら、多くの実際のタンパク質は、非ランダム配列の領域を含み、これは、ホモポリマーの束(tract)、短周期反復、または1つもしくはそれを超えるアミノ酸が富化された領域であり得る。そのような低複雑性領域は、たとえタンパク質の他の領域が完全に異なるとしても、関連のないタンパク質間でアラインされ得る。いくつかの低複雑性フィルタプログラムを用いて、そのような低複雑性アライメントを引き下げることができる。例えば、SEG(WootenおよびFederhen(1993)Comput.Chem.17:149-63)およびXNU(Ci-ayerieおよびStates(1993)Comput.Chem.17:191-201)低複雑性フィルタが単独で、または組み合わせて用いられ得る。
【0058】
用語「実質的同一性」および「実質的に同一」は、ポリペプチドまたは核酸が、参照配列に対して55~100%の配列同一性、少なくとも55%の配列同一性、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性、または参照配列に対して55~100%の配列同一性の範囲内のあらゆるパーセンテージの値を有する配列を含むことを示す。配列同一性パーセントは、指定された比較ウィンドウにわたって生じ得る。最適なアライメントは、前掲のNeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズムを使用して確認または実施され得る。
【0059】
例えば、挿入配列として、本明細書中で開示される配列と全く同じではないが、本明細書中に列挙される種々の配列について明示的に記載される置換に加えて、本明細書中に記載される配列の活性または特性、例えば相同性ソフトウェア、例えばBLOSUM62マトリックスによって予測されるものを実質的に損なわないアミノ酸残基の追加の置換を有する配列が挙げられ得るが、これに限定されない。
AAV粒子
【0060】
本明細書中に記載される挿入配列を有するrAAV粒子は、CNS内での形質導入が増大する。場合によっては、形質導入の増大は、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、もしくは100倍、またはそれを超える増大を含む。場合によっては、形質導入の増大は、少なくとも2倍である。場合によっては、形質導入の増大は、少なくとも4倍である。場合によっては、形質導入の増大は、少なくとも8倍である。
【0061】
本明細書中に記載される挿入配列を有するrAAV粒子は、CNS内での発現が増大する。rAAVに多かれ少なかれ発現があるかの検出は、対象から得られる組織試料中のrAAVによってカプシド化されている異種核酸から発現される遺伝子発現産物(例えば、RNAまたはタンパク質)のレベルを測定することを含む。遺伝子発現産物の発現を測定するのに適した方法として、次世代シーケンシング(NGS)および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)が挙げられる。
【0062】
CNS内での発現の増大は、図1に示すcpm値によって表される。
異種核酸
【0063】
本明細書中で開示されるのは、疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候の処置または予防に有用な治療用核酸である。一部の実施形態において、治療用核酸は、治療用遺伝子発現産物をコードする。遺伝子発現産物の非限定的な例として、疾患もしくは障害または疾患もしくは障害の徴候の処置、予防、および/または改善に使用されるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、酵素、抗体、抗原結合フラグメント、核酸(RNA、DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA等)、および遺伝子編集構成要素が挙げられる。場合によっては、治療用核酸は、本明細書中で開示されるもの等のrAAVによって、対象の生物、細胞、組織、または器官内に配置される。
【0064】
本明細書中で開示されるのは、各々がウイルスベクター(例えば一本鎖DNA分子(ssDNA))を含むrAAVである。場合によっては、ウイルスベクターは、導入遺伝子の側面に位置する、それぞれ約145塩基の2つの逆位末端反復(ITR)配列を含む。一部の実施形態において、導入遺伝子は、治療用核酸、場合によっては、オープンリーディングフレーム(ORF)内の治療用核酸とシスのプロモーターを含む。プロモーターは、標的細胞の核内で治療用核酸の転写を開始することができる。ITR配列は、あらゆるAAV血清型に由来し得る。AAV血清型の非限定的な例として、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12が挙げられる。場合によっては、ITRはAAV2に由来する。場合によっては、ITRはAAV9に由来する。
【0065】
本明細書中で開示されるのは、あらゆる数のヌクレオチドを含み得る導入遺伝子である。場合によっては、導入遺伝子は、約100未満のヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約100ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約200ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約300ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約400ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約500ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約1000ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、少なくとも約5000ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、5,000を超えるヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、約500~約5000ヌクレオチドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は、約5000ヌクレオチドを含む。本明細書中で開示される場合のいずれにおいても、導入遺伝子は、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAのハイブリッドを含み得る。場合によっては、導入遺伝子は一本鎖であり得る。場合によっては、導入遺伝子は二本鎖であり得る。
【0066】
本明細書中で開示されるのは、標的遺伝子またはその遺伝子発現産物の発現または活性を調節するのに有用な導入遺伝子である。場合によっては、導入遺伝子は、本明細書中に記載されるrAAV粒子のrAAVカプシドタンパク質によってカプシド化されている。場合によっては、rAAV粒子は、対象に送達されて、対象において、本明細書中で開示される疾患または症状を処置する。場合によっては、送達は全身性のものである。
【0067】
本明細書中で開示される導入遺伝子は、健康または正常な個体のレベルと類似のレベルにて内在性遺伝子を発現するのに有用である。これは、遺伝子発現産物の過小発現または発現の欠如に関連する疾患または症状の処置に特に有用である。一部の実施形態において、本明細書中で開示される導入遺伝子は、内在性遺伝子の発現レベルが、健康または正常な個体の発現レベルを超えるように、内在性遺伝子を過剰発現するのに有用である。加えて、導入遺伝子を使用して、外因性遺伝子(例えば、抗体、ペプチド、核酸、または遺伝子編集構成要素等の活性剤)を発現させることができる。一部の実施形態において、治療用遺伝子発現産物は、細胞内の1つまたはそれを超える内在性生物学的プロセスの活性を改変するか、増強するか、増大させるか、または誘導することができる。一部の実施形態において、本明細書中で開示される導入遺伝子は、内在性遺伝子、例えばドミナントネガティブ遺伝子の発現を引き下げるのに有用である。一部の実施形態において、治療用遺伝子発現産物は、細胞内での1つまたはそれを超える内在性生物学的プロセスの活性を改変するか、阻害するか、引き下げるか、妨げるか、排除するか、または損なうことができる。一部の態様において、遺伝子発現の増大は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および100%の増大を指す。一態様において、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、そして100%増大し得る。一部の態様において、遺伝子発現の低下は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および100%の増大を指す。一態様において、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、そして100%低下し得る。
【0068】
内在性配列(内在性、または導入遺伝子の一部)が導入遺伝子により発現される場合、内在性配列は、全長配列(野生型またはミュータント)または部分配列であり得る。内在性配列は機能的であり得る。これらの完全長配列または部分配列の機能の非限定的な例として、導入遺伝子(例えば治療用遺伝子)によって発現されるポリペプチドの血清半減期を延長させること、かつ/または担体として作用することが挙げられる。
【0069】
導入遺伝子は、内在性遺伝子の全てもしくは一部が発現されるか、またはいずれも発現されないように、内在性遺伝子中に挿入され得る。例えば、本明細書に記載される導入遺伝子は、例えば導入遺伝子との融合体として、内在性配列の一部(導入遺伝子のN末端および/またはC末端)が発現されるか、またはいずれも発現されないように、内在性遺伝子座中に挿入され得る。他の場合では、導入遺伝子(例えば、内在性遺伝子の追加のコード配列あり、または無し)は、あらゆる内在性遺伝子座、例えばセーフハーバー遺伝子座中に組み込まれる。例えば、フラタキシン(FXN)導入遺伝子を、内在性FXN遺伝子中に挿入することができる。導入遺伝子を、あらゆる遺伝子、例えば本明細書中に記載される遺伝子中に挿入することができる。
【0070】
本開示の少なくとも1つの利点は、実質的にあらゆる治療用核酸を使用して、あらゆる治療用遺伝子発現産物を発現させることができることである。場合によっては、治療用遺伝子発現産物は、治療用タンパク質またはペプチド(例えば、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、またはタンパク質)である。一実施形態において、治療用核酸によってコードされるタンパク質は、50~5000アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~2000アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~1000アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~1500アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~800アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~600アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~400アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~200アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、50~100アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるペプチドは、4~50アミノ酸長である。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、またはデカペプチドである。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、2~30アミノ酸、例えば、5~30、10~30、2~25、5~25、10~25、または10~20アミノ酸のペプチドを含む。一部の実施形態において、コードされるタンパク質は、少なくとも11、12、13、14、15、17、20、25、もしくは30アミノ酸のペプチド、または50アミノ酸以下、例えば、35、30、25、20、17、15、14、13、12、11、もしくは10アミノ酸以下のペプチドを含む。
【0071】
治療用タンパク質またはペプチドの非限定的な例として、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、細胞毒素、赤血球造血剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパラギン酸アンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質脱炭酸酵素、プロテインキナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリング、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、および腫瘍サプレッサが挙げられる。特定の実施形態において、治療用タンパク質またはペプチドは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、マクロファージコロニー刺激因子(CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、ゴナドトロピン、インターフェロン-ガンマ(IFN)、インスリン様成長因子1(IFG-1)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、色素上皮由来因子(PEDF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、トランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-B)、腫瘍壊死因子(TNF)、血管内皮成長因子(VEGF)、プロラクチン、ソマトトロピン、アポトーシスタンパク質1のX結合阻害剤(XIAP1)、インターロイキン1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10、ウイルス性IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、およびIL-18から選択される。
【0072】
治療用遺伝子発現産物は、遺伝子編集構成要素を含み得る。遺伝子編集構成要素の非限定的な例として、CRISPR/Cas、人工部位特異的RNAエンドヌクレアーゼ(ASRE)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、および転写因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)に必要とされるものが挙げられる。非限定的な例において、ハンチントン舞踏病を患う対象が特定される。次いで、対象に、ハンチンチン(HTT)遺伝子の転写を抑制するように操作されたZFNをコードするウイルスベクターをカプシド化する第1の量のrAAVが全身投与される。rAAVは、肝臓等の標的外器官内での発現を引き下げながら、神経系に対するZFNの適切な標的化を可能にするために、表1、図1図3、および式Iのいずれか1つに提供されるアミノ酸配列を含む修飾AAVカプシドタンパク質を含むこととなる。必要に応じて、対象に第2または第3の用量のrAAVが、治療有効量のZFNが対象の神経系内で発現されるまで投与される。
【0073】
治療用核酸は、非タンパク質コード遺伝子、例えば、アンチセンスRNA、RNAi、shRNA、およびマイクロRNA(miRNA)、miRNAスポンジまたはデコイ、条件付き遺伝子欠失のためのリコンビナーゼ送達、条件付き(リコンビナーゼ依存性)発現をコードする配列を含み得、本明細書中に記載される遺伝子編集構成要素に必要とされるものが挙げられる。また、非タンパク質コード遺伝子は、tRNA、rRNA、tmRNA、piRNA、二本鎖RNA、snRNA、snoRNA、および/または長い非コードRNA(IncRNA)をコードし得る。場合によっては、非タンパク質コード遺伝子は、標的遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性を調節することができる。例えば、本明細書中に記載されるRNAは、CNS内での遺伝子発現を阻害するのに使用され得る。場合によっては、遺伝子発現の阻害は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および100%の阻害を指す。場合によっては、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、そして100%阻害され得る。遺伝子は、野生型遺伝子、または少なくとも1つの変異を有する遺伝子のいずれかであり得る。標的タンパク質は、野生型タンパク質、または少なくとも1つの変異を有するタンパク質のいずれかであり得る。
【0074】
治療用核酸は、CNSの疾患または障害に関与する遺伝子の発現もしくは活性または遺伝子から発現される遺伝子発現産物を調節することができる。例えば、治療用核酸は、場合によっては、本明細書中に記載される遺伝子または遺伝子の修飾バージョンである。場合によっては、遺伝子または遺伝子発現産物は、阻害される。場合によっては、遺伝子または遺伝子発現産物は、増強される。
【0075】
別の例において、治療用核酸は、エフェクター遺伝子発現産物、例えば、その中の遺伝子を標的とするのに特異的な遺伝子編集構成要素を含む。遺伝子の非限定的な例として、ATP1A2、CACNAIA、SETD5、SHANK3、NF2、DNMT1、TCF4、RAI1、PEXl、ARSA、EIF2B5、EIF2B1、EIF2B2、NPCl、ADAR、MFSD8、STXBP1、PRICKLE2、PRRT2、IDUA、STX1B、サルコグリカンアルファ(SGCA)、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、グルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)、CLN2、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、運動ニューロン生存1、STXBP1、テロメア(SMN1)、第X因子(FIX)、レチノイドイソメロヒドロラーゼ(RPE65)、サルコ/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA2a)、グルコセレブロシダーゼ(GCase)、ガラクトセレブロシダーゼ(GALC)、CDKL5、フラタキシン(FXN)、ハンチンチン(HTT)、メチル-CpG結合タンパク質2(MECP2)、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)、プログラニュリン(GRN)、抗チューブリン剤、銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、イズロン酸2スルファターゼ(hIDS)、グルコシルセラミダーゼベータ(GBA)、脆弱X精神遅滞1(FMR1)、NPC細胞内コレステロール輸送体1(NPCl)、SCN1A、C9orf72、NPS3、およびNLRP3インフラマソームから選択される標的遺伝子または遺伝子発現産物が挙げられる。一部の実施形態において、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)は、PEX1、PEX2、PEX3、PEX4、PEX5、PEX6、PEX7、PEX10、PEX11β、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、およびPEX26から選択される。場合によっては、遺伝子または遺伝子発現産物は、阻害される。場合によっては、遺伝子または遺伝子発現産物は、増強される。
AAVベクター
【0076】
本明細書中で開示される態様は、AAVカプシドをコードする核酸配列を含むプラスミドベクター、および本明細書中に記載されるAAVカプシドタンパク質を含む。本明細書中に記載されるAAVベクターは、rAAVのアセンブリおよび異種核酸のウイルスパッケージングに有用である。加えて、AAVベクターは、異種核酸を含む導入遺伝子をコードし得る。
【0077】
AAVベクターは、場合によっては異種遺伝子発現産物(例えば、治療用遺伝子発現産物、組換えカプシドタンパク質等)をコードする、導入遺伝子を含み得る。導入遺伝子は、導入遺伝子の側面に位置する2つの逆方向末端反復配列(ITR)とシスである。導入遺伝子は、治療用遺伝子発現産物をコードする治療用核酸を含み得る。rAAV(約5kB)のパッケージング容量が限られているため、場合によっては、より長い導入遺伝子が、2つのAAVベクター(第1のものは3’スプライスドナーを有し、第2のものは5’スプライスアクセプターを有する)に分割され得る。細胞の共感染の直後に、コンカテマーが形成され、これらは一緒にスプライシングされて、完全長導入遺伝子を発現する。
【0078】
導入遺伝子は、一般に、その発現が組込み部位にて内在性プロモーター、すなわち導入遺伝子が挿入されている内在性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入される。場合によっては、導入遺伝子は、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば構成的プロモーターまたは誘導性もしくは組織/細胞特異的プロモーターを含む。非限定的な例として、プロモーターは、CMVプロモーター、CMV-β-アクチン-イントロン-β-グロビンハイブリッドプロモーター(CAG)、CBAプロモーター、FRDAまたはFXNプロモーター、UBCプロモーター、GUSBプロモーター、NSEプロモーター、シナプシンプロモーター、MeCP2プロモーター、GFAPプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター、NFLプロモーター、NFHプロモーター、SCN8Aプロモーター、またはPGKプロモーターであり得る。非限定的な例として、プロモーターは、以下に限定されないが、ヒト伸長因子1α-サブユニット(EF1α)、即初期サイトメガロウイルス(CMV)、ニワトリβ-アクチン(CBA)およびその誘導体CAG、βグルクロニダーゼ(GUSB)、ならびにユビキチンC(UBC)が挙げられる組織特異的発現要素であり得る。導入遺伝子は、以下に限定されないが、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来成長因子B鎖(PDGF-β)、シナプシン(Syn)、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)、代謝型グルタミン酸受容体2(mGluR2)、NFL、NFH、np32、PPE、Enk、およびEAAT2プロモーター等の、ニューロン用の組織特異的発現要素を含み得る。導入遺伝子は、以下に限定されないが、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)およびEAAT2プロモーター等の、星状膠細胞用の組織特異的発現要素を含み得る。導入遺伝子は、以下に限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター等の、乏突起膠細胞用の組織特異的発現要素を含み得る。
【0079】
一部の実施形態において、プロモーターは1kb未満である。プロモーターは、長さが200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、または800超であり得る。プロモーターは、長さが200~300、200~400、200~500、200~600、200~700、200~800、300~400、300~500、300~600、300~700、300~800、400~500、400~600、400~700、400~800、500~600、500~700、500~800、600~700、600~800、または700~800であり得る。プロモーターは、限定されないが、CNS等の標的組織内で、治療用遺伝子発現産物の発現を一定期間実現し得る。治療用遺伝子発現産物の発現は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、55年、60年、65年、または65年超の期間であり得る。ペイロードの発現は、1~5時間、1~12時間、1~2日、1~5日、1~2週、1~3週、1~4週、1~2ヶ月、1~4ヶ月、1~6ヶ月、2~6ヶ月、3~6ヶ月、3~9ヶ月、4~8ヶ月、6~12ヶ月、1~2年、1~5年、2~5年、3~6年、3~8年、4~8年、5~10年、10~15年、15~20年、20~25年、25~30年、30~35年、35~40年、40~45年、45~50年、50~55年、55~60年、または60~65年間であり得る。
【0080】
AAVベクターは、ヘルパーウイルスのゲノムを含み得る。ヘルパーウイルスタンパク質は、組換えAAV(rAAV)のアセンブリ、および異種核酸を含有する導入遺伝子の、rAAV中へのパッケージングに必要とされる。ヘルパーウイルス遺伝子は、細胞内で発現されたときにAAV複製を支援するアデノウイルス遺伝子E4、E2a、およびVAである。一部の実施形態において、AAVベクターは、E2を含む。一部の実施形態において、AAVベクターは、E4を含む。一部の実施形態において、AAVベクターは、VAを含む。場合によっては、AAVベクターは、ヘルパーウイルスタンパク質の1つ、またはあらゆる組合せを含む。
【0081】
導入遺伝子に使用される標的遺伝子または遺伝子発現産物は、ATP1A2、CACNAIA、SETD5、SHANK3、NF2、DNMT1、TCF4、RAI1、PEXl、ARSA、EIF2B5、EIF2B1、EIF2B2、NPCl、ADAR、MFSD8、STXBP1、PRICKLE2、PRRT2、IDUA、STX1B、サルコグリカンアルファ(SGCA)、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、グルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)、CLN2、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、運動ニューロン生存1、STXBP1、テロメア(SMN1)、第X因子(FIX)、レチノイドイソメロヒドロラーゼ(RPE65)、サルコ/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA2a)、グルコセレブロシダーゼ(GCase)、ガラクトセレブロシダーゼ(GALC)、CDKL5、フラタキシン(FXN)、ハンチンチン(HTT)、メチル-CpG結合タンパク質2(MECP2)、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)、プログラニュリン(GRN)、抗チューブリン剤、銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、イズロン酸2スルファターゼ(hIDS)、グルコシルセラミダーゼベータ(GBA)、脆弱X精神遅滞1(FMR1)、NPC細胞内コレステロール輸送体1(NPCl)、SCN1A、C9orf72、NPS3、およびNLRP3インフラマソームから選択され得る。一部の実施形態において、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)は、PEX1、PEX2、PEX3、PEX4、PEX5、PEX6、PEX7、PEX10、PEX11β、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、およびPEX26から選択される。
【0082】
AAVベクターは、本明細書中に記載される組換えAAV(rAAV)カプシドタンパク質をコードする核酸を含むウイルスゲノムを含み得る。ウイルスゲノムは、Repタンパク質をコードする複製(Rep)遺伝子、および第1のオープンリーディングフレーム(ORF1)内のAAPタンパク質または第2のオープンリーディングフレーム(ORF2)内のCapタンパク質をコードするカプシド(Cap)遺伝子を含み得る。Repタンパク質は、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40から選択される。場合によっては、Cap遺伝子は、本明細書中に記載される修飾AAVカプシドタンパク質をコードするように修飾されている。野生型Cap遺伝子は、VP1、VP2、およびVP3の3つのタンパク質をコードする。場合によっては、VP1が修飾されている。場合によっては、VP2が修飾されている。場合によっては、VP3が修飾されている。場合によっては、3つ全てのVP1~VP3が修飾されている。AAVベクターは、野生型Rep78、Rep68、Rep52、Rep40、およびAAPタンパク質をコードする核酸を含み得る。
【0083】
場合によっては、表3に示される配列番号71で示されるAAV9 VP1遺伝子は、表4における配列番号75~113のいずれか1つを含むように修飾されている。本明細書中に記載されるAAVベクターは、本明細書中に記載される方法によってバリアントAAVカプシドを生成するのに使用され得る。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表4-1】
【表4-2】
rAAVの生成方法
【0084】
本明細書中で開示されるのは、AAVカプシドタンパク質、および治療用核酸をコードするウイルスベクターを含むAAVカプシドを生成する方法である。AAVカプシドタンパク質は、親AAVウイルス由来の逆方向末端反復(ITR)配列が側面に位置する導入遺伝子カセット(導入遺伝子カセットは、標的細胞の核内での異種核酸の転写を駆動するプロモーター配列を有する)を含有する第1のベクター、AAVカプシドタンパク質を有するAAVゲノムをコードする第2のベクター(AAV Rep遺伝子、および生成されることとなるバリアント用の修飾Cap遺伝子をコードする)、ならびにAAVカプシド構造のアセンブリおよび修飾AAVカプシド構造内での導入遺伝子のパッケージングに必要とされるヘルパーウイルスタンパク質をコードする第3のベクターを細胞(例えば、不死化幹細胞)中に導入することによって生成される。アセンブルされたAAVカプシドは、当該技術において知られている適切な方法を使用して、細胞から単離かつ精製することができる。表1は、本明細書中に記載される方法において使用するためのDNA配列を提供する。
【0085】
組換えAAV(rAAV)ベクター内に含有され、かつ本開示のAAVカプシドタンパク質によってカプシド化された導入遺伝子もまた、本明細書中で提供される。本明細書中で開示される導入遺伝子は、対象における疾患または症状を処置するため等の種々の目的のために、対象に送達される。導入遺伝子は、標的遺伝子または遺伝子発現産物の活性または発現を調節する遺伝子編集構成要素であり得る。これ以外にも、導入遺伝子は、それ自体、または別の標的遺伝子もしくは遺伝子発現産物の活性または発現を調節するのに有効な治療用遺伝子発現産物をコードする遺伝子である。
【0086】
本明細書中で開示される態様は、rAAVウイルスまたはウイルス粒子を製造する方法であって:(a)(i)親AAVウイルス由来の逆方向末端反復(ITR)配列が側面に位置する導入遺伝子カセット(導入遺伝子カセットは、標的細胞の核内での異種核酸の転写を駆動するプロモーター配列を有する)を含有する第1のベクター;(ii)本発明のAAVカプシドタンパク質を有するAAVゲノムをコードする第2のベクター;ならびに(iii)AAVカプシド構造のアセンブリ、および修飾AAVカプシド構造内での導入遺伝子のパッケージングに必要とされるヘルパーウイルスタンパク質をコードするベクター;を含む核酸を細胞中に導入することと;(b)本明細書中に記載されるAAVカプシドタンパク質を細胞内で発現させることと;(c)本明細書中で開示されるAAVカプシドタンパク質を含むAAV粒子をアセンブルすることと;(d)AAV粒子をパッケージングすることとを含む方法を提供する。場合によっては、細胞は哺乳動物細胞である。場合によっては、細胞は不死化されている。場合によっては、不死化細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、胚性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。場合によっては、ヒト胚性幹細胞は、ヒト胚性腎293(HEK-293)細胞である。場合によっては、Cap遺伝子は、配列番号71で示されるデオキシリボース核酸(DNA)に由来する。場合によっては、5’ITRおよび3’ITRは、AAV2血清型に由来する。場合によっては、5’ITRおよび3’ITRは、AAV5血清型に由来する。場合によっては、5’ITRおよび3’ITRは、AAV9血清型に由来する。場合によっては、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、トランスである。場合によっては、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、シスである。場合によっては、第1の核酸配列、第2の核酸配列、および第3の核酸配列は、トランスである。
【0087】
本明細書中で開示されるCap遺伝子は、本開示の修飾AAVカプシドタンパク質部分をコードするDNA配列である、表4の配列番号75~113のいずれか1つを含む。
【0088】
場合によっては、本方法は、治療用遺伝子発現産物をコードする第1の核酸配列を、修飾AAVカプシドタンパク質によってカプシド化されるようにパッキングすることを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、本明細書中に記載されるもの等の適切なウイルス精製方法を使用して、単離、濃縮、かつ精製される。
【0089】
場合によっては、本開示のrAAVは、Challis,R.C.ら、Nat.Protoc.14,379(2019)に記載される方法を使用して生成される。簡潔には、ポリエチレンイミン(PEI)を使用したHEK293T細胞(ATCC)の三重形質移入が実行されて、ウイルスが、120時間後に細胞溶解物および培地の双方から収集されて、イオジキサノールで精製される。非限定的な例において、rAAVは、標準的な形質移入プロトコル(例えばPEI)を使用する前駆細胞(例えばHEK293T)の三重形質移入によって生成される。ウイルス粒子が、一定期間後(例えば、形質移入の72時間後)に培地から、そして後の時点(例えば、形質移入の120時間後)にて細胞および培地から収集される。培地中に存在するウイルスが、8%ポリエチレングリコール(PEG)および500mM塩化ナトリウムによる沈殿によって濃縮されて、沈殿したウイルスが、収集された細胞から調製された溶解物に加えられる。ウイルスは、イオジキサノール(Optiprep,Sigma)段階勾配(15%、25%、40%、および60%)により精製する。ウイルスが濃縮されて、PBS中に製剤化される。ウイルス力価が、qPCR、および対照としての線状化ゲノムプラスミドを使用して、DNaseI耐性ベクターゲノムコピー(VG)の数を測定することによって求められる。
【0090】
細胞は、ヒト、霊長類、マウス、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、エピン(epine)、ヤギ、およびオオカミ宿主細胞から選択することができる。場合によっては、細胞は、幹細胞等の前駆細胞(progenitor or precursor cell)である。場合によっては、幹細胞は、間葉系細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、線維芽細胞、または他の組織特異的幹細胞である。細胞は不死化され得る。場合によっては、不死化細胞はHEK293細胞である。場合によっては、細胞は分化細胞である。提供される開示に基づいて、この系は、目的の標的細胞型においてリコンビナーゼを発現するあらゆる遺伝子導入株と組み合わせて使用されて、その標的細胞集団をより効率的に形質導入するAAVカプシドを開発することができると予想される。
処置方法
【0091】
本明細書中で開示されるのは、対象における疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候を処置する方法であって、治療有効量の、本明細書中で開示される1つまたはそれを超える組成物(例えば、rAAV粒子、AAVベクター、医薬組成物)を対象に投与することを含む方法である。一部の実施形態において、組成物は、本明細書中に記載されるrAAVカプシドタンパク質である。一部の実施形態において、組成物は、本明細書中に記載される単離かつ精製されたrAAVカプシドタンパク質である。一部の実施形態において、rAAV粒子は、導入遺伝子(例えば、治療用核酸)を含むAAVベクターをカプシド化する。一部の実施形態において、組成物は、本明細書中で開示される治療薬とコンジュゲートされた、本明細書に記載されるrAAVカプシドタンパク質である。一部の実施形態において、組成物は、rAAV粒子および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物である。一部の実施形態において、1つまたはそれを超える組成物は、対象に単独で投与される(例えば、単独の(stand-alone)治療)。一部の実施形態において、組成物は、疾患または症状のための第一選択治療である。一部の実施形態において、組成物は、疾患または症状のための第二選択、第三選択、または第四選択治療である。
【0092】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)媒介遺伝子送達は、エピソーム異種核酸(例えば、導入遺伝子、治療用核酸)の核発現用のウイルス形質導入のAAV機構を導入している。宿主インビボ環境への送達直後に、rAAVは、(1)標的細胞上の細胞表面受容体に結合または付着して、(2)エンドサイトーシスにより取り込まれて、(3)核に輸送されて、(4)ウイルスを脱コートして、カプシド化された異種核酸を放出して、(5)核内での転写用の鋳型として異種核酸を一本鎖DNAから二本鎖DNAに変換して、(6)宿主細胞の核内でエピソーム異種核酸を転写する(「形質導入」)こととなる。形質導入(宿主細胞におけるエピソーム異種核酸の転写)を増大させるように操作されたrAAVが、遺伝子治療用途に望ましい。
【0093】
本明細書中で開示される態様は、対象における疾患または症状を処置する方法であって、治療有効量の本開示のrAAV、または本開示の医薬製剤を対象に投与することを含み、遺伝子産物は治療用遺伝子産物である、方法を提供する。一部の実施形態において、投与は、頭蓋内、脳室内、側脳室内、静脈内、動脈内、鼻腔内、髄腔内、大槽内(intracisternae magna)、または皮下によるものである。
【0094】
本明細書中で提供されるは、標的遺伝子またはその遺伝子発現産物の異常な発現または活性と関連する疾患または症状を処置する方法であって、本開示の異種核酸をカプシド化するrAAVを投与することによって、対象における標的遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性を調節することを含む方法である。場合によっては、標的遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性は、正常な(罹患していない)個体におけるものと比較して、低下する;rAAVを対象に投与することは、標的遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性を増大させるのに十分である。場合によっては、遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性は、正常な個体におけるものと比較して、増大する;rAAVを対象に投与することは、標的遺伝子または遺伝子発現産物の発現または活性を低下させるのに十分である。非限定的な例において、場合によってはプレセニリン1および/またはプレセニリン2(それぞれ遺伝子PSEN1およびPSEN2によってコードされる)の機能獲得によって引き起こされる、アルツハイマー病と診断された対象に、PSEN1 mRNAに及ぼす機能喪失効果を有するサイレンシングRNA(siRNA)または他のRNAiである治療用核酸をカプシド化した、本明細書中で開示されるrAAVが投与される。
【0095】
また、提供されるのは、本明細書中で開示される疾患または症状を対象において予防する方法であって、本明細書中に記載される、治療用遺伝子発現産物をコードする核酸配列を含む治療有効量のrAAVベクターを対象に投与することを含む方法である。rAAVベクターは、本明細書中に記載される修飾カプシドタンパク質またはrAAVウイルス粒子内にカプシド化され得る。場合によっては、治療用遺伝子発現産物は、標的遺伝子または遺伝子発現産物の活性または発現を調節するのに有効である。
【0096】
本明細書中で開示されるのは、本明細書中で開示されるrAAVを含む組成物を投与することによって、対象における疾患または症状を処置する方法である。本明細書中で開示されるrAAVの利点は、rAAVを使用して、以下に限定されないが、脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ポンペ病、ムコ多糖症II型、脆弱X症候群、STXBP1脳症、クラッベ病、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病、バテン病、リソソーム蓄積障害、多形性神経膠芽腫、レット症候群、レーバー先天性黒内障、乳児期後期神経セロイドリポフスチン沈着症(LINCL)、慢性疼痛、脳卒中、脊髄損傷、外傷性脳損傷、およびリソソーム蓄積障害が挙げられる、導入遺伝子治療から利益を得る実質的にあらゆる疾患または症状を処置することができることである。
【0097】
場合によっては、疾患または症状は、対象における特定のインビボ環境、例えばCNSに局在化されている。本開示の組成物は、インビボ環境を特異的に、またはより効率的に標的として、疾患または症状の病因または病態と関与する標的遺伝子発現産物の活性または発現を調節するように操作された治療用核酸を送達するので、本明細書中に記載される疾患または症状の処置に特に有用である。
【0098】
本明細書中で提供されるのは、対象における疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候を処置する方法であって:(a)標的インビボ環境を襲う疾患または状態を患う対象を診断することと;(b)治療有効量の本明細書中で開示される組成物(例えば、rAAV粒子、AAVベクター、医薬組成物)を対象に投与することによって、疾患または症状を処置することとを含み、組成物は、発現が増大するように操作されている、方法である。
【0099】
本明細書中で開示されるのは、対象において、疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候を処置して、標的を苦しませる方法であって:(a)組成物(例えば、rAAV粒子、AAVベクター、医薬組成物)を対象に投与することと;(b)治療用核酸を、対象における標的インビボ環境中で、形質導入を増大させて発現させることとを含む方法である。
【0100】
一部の実施形態において、方法はさらに、肝臓等のオフターゲットインビボ環境における異種核酸の送達を引き下げるか、または除去することを含む。一部の実施形態において、送達は、CNS内での形質導入の(例えば異種核酸の)増大を特徴とする。
【0101】
一部の実施形態において、CNSを襲う疾患または症状を処置する方法は、対象においてCNSにrAAV粒子を投与することを含み、rAAV粒子は、親AAVカプシドタンパク質内のアミノ酸位置588~589にて、表1、図1図3、および式Iに記載されるアミノ酸配列の約5、6、または7アミノ酸の挿入を含むrAAVカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、CNSを襲う疾患または症状を処置する方法は、対象においてCNSにrAAV粒子を投与することを含み、rAAV粒子は、例えば表1、図1~3、および式Iに記載される、アミノ酸配列の約、5、6、または7アミノ酸の挿入、およびアミノ酸位置587~590[AQAQ]にて見出されるアミノ酸での1つまたはそれを超える置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、親AAVカプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質(例えば、配列番号1で示される)である。
【0102】
また、提供されるのは、標的遺伝子発現産物を調節する方法であって、これを必要とする対象に、本明細書中で開示される組成物(例えば、rAAV粒子、AAVベクター、医薬組成物)を投与することを含む方法である。例えば、本明細書中で提供される方法は、標的遺伝子発現産物の発現または活性を調節する異種核酸を含むウイルスベクターをカプシド化するrAAVカプシドタンパク質を有するrAAVを対象に投与することを含む。
【0103】
用語「正常な個体」は、遺伝子またはその遺伝子発現産物の発現または活性の変動によって特徴付けられる疾患または症状に罹患していない個体を指す。
【0104】
一部の実施形態において、CNSの疾患または症状は、透明中隔の欠如、酸性リパーゼ疾患、酸性マルターゼ欠損症、後天性てんかん型失語症、急性散在性脳脊髄炎、注意欠如多動性障害(ADHD)、Adie瞳孔、Adie症候群、副腎脳白質ジストロフィー、脳梁形成不全、失認、アイカルディ症候群、アイカルディ・グティエレス症候群障害、AIDS-神経学的合併症、アレキサンダー病、アルパース病、交互性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質症候群、失語症、失行症、クモ膜嚢胞、クモ膜炎、アーノルド・キアリ奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群運動失調症、毛細血管拡張性運動失調、運動失調および小脳変性症または脊髄小脳変性症、心房細動および脳卒中、注意欠如多動性障害、自閉症スペクトラム障害、自律神経機能不全、背痛、バース症候群、バッテン病、ベッカー型筋緊張症、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼痙攣、良性限局性筋萎縮症、良性頭蓋内圧亢進、ベルンハルト・ロス症候群、ビンスワンガー病、眼瞼痙攣、ブロッホ・サルツバーガー症候群、腕神経叢出生時損傷、腕神経叢損傷、ブラッドバリー・エグルストン症候群、脳腫瘍および脊椎腫瘍、脳動脈瘤、脳損傷、ブラウン・セカール症候群、延髄脊髄筋萎縮症、皮質下梗塞および白質脳症を伴う脳常染色体優性動脈症(CADASIL)、カナバン病、手根管症候群、灼熱痛、海綿腫、海綿状血管腫、海綿状奇形、中心性頚髄症候群、中心性脊髄症候群、中心性疼痛症候群、橋中心脱髄症候群、頭蓋障害、セラミダーゼ欠損症、小脳変性症、小脳形成不全、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、脳萎縮、脳性脚気、脳海綿状血管腫、脳性巨人症、脳低酸素症、脳性麻痺、脳眼顔骨格症候群(COFS)、シャルコー・マリー・トゥース病、シャルコー・マリー・トゥース症候群、古典的肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)、キアリ奇形、コレステロールエステル蓄積症、舞踏病、有棘赤血球舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性起立耐性失調、慢性疼痛、コケイン症候群、コケイン症候群II型、コフィンローリー症候群、側脳室後角拡大(Colpocephaly)、昏睡、複合性局所疼痛症候群、先天性顔面筋麻痺、先天性筋無力症、先天性筋疾患、先天性海綿状血管奇形、皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋骨癒合症、クリー脳炎、クロイツフェルトヤコブ病、累積外傷性障害、クッシング症候群、巨大細胞性封入体症、サイトメガロウイルス感染症、
ダンシングアイズ・ダンシングフィート症候群、ダンディ・ウォーカー症候群、ドーソン病、難聴、ドモルシア症候群、ドゥジェリーヌ・クルンプケ麻痺、認知症、多発梗塞性認知症、意味性認知症、皮質下認知症、レビー小体を伴う認知症、歯状小脳性運動失調症(Dentate Cerebellar Ataxia)、歯状核赤核萎縮症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、デビック症候群、糖尿病性神経障害、びまん性硬化症、ドラベ症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、自律神経障害、書字障害、失読症、嚥下障害、協調障害、小脳萎縮症、進行性小脳性共同運動障害、ジストニア、早期乳児てんかん性脳症、エンプティセラ症候群、脳炎、嗜眠性脳炎、脳ヘルニア、脳症、脳症(家族性乳児)、脳三叉神経領域血管腫症、てんかん、てんかん性片麻痺、エルブ麻痺、Erb-デュシェンヌおよびドゥジェリーヌ・クルンプケ麻痺、本態性振戦、橋外性髄鞘崩壊症、ファブリー病、ファール症候群、失神、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性特発性基底核石灰化症、家族性周期性麻痺、家族性痙攣性麻痺、ファーバー病、熱性けいれん、繊維筋性異形成症、フィッシャー症候群、フロッピーインファント症候群、下垂足、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症(FTD)、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、巨大軸索ニューロパシー、巨大細胞性動脈炎、巨大細胞性封入体病、神経膠芽腫、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽頭神経痛、糖原病、ギラン・バレー症候群、ハラーフォルデン・シュパッツ病、頭部外傷、頭痛、持続性片側頭痛、半側顔面痙攣、交代性片麻痺、遺伝性神経障害、遺伝性強直性対麻痺、遺伝性多発神経炎性失調、帯状疱疹、耳帯状疱疹、平山症候群、ホームズ・アディー症候群、全前脳症、HTLV-1関連骨髄症、ヒューズ症候群、ハンチントン舞踏病、水頭無脳症、水頭症、正常圧水頭症、水髄症、副腎皮質機能亢進症、過眠症、緊張亢進、緊張低下、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児緊張低下症、乳児神経軸索ジストロフィー、乳児フィタン酸蓄積症、乳児レフサム病(IRD)、乳児痙攣、炎症性筋疾患、後頭孔脳脱出症、腸性脂肪異栄養症、頭蓋内嚢胞、頭蓋内圧亢進、アイザック症候群、ジュベール症候群、
カーンズ・セイヤー症候群、ケネディ病、キンスボーン症候群、クライン・レヴィン症候群、クリッペル・フェイユ症候群、クリッペル・トレノネー症候群(KTS)、クリューヴァー・ビュシー症候群、コルサコフ健忘症候群、クラッベ病、クーゲルベルグ・ウェランダー病、クールー、ランバート・イートン筋無力症症候群、ランドー・クレフナー症候群、外側大腿皮神経絞扼、外側髄様症候群、学習障害、リー病、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、白質ジストロフィー、レヴァイン・クリチュリー症候群、レビー小体性認知症、脂質蓄積症、脂質タンパク質症、滑脳症、ロックイン症候群、ルー・ゲーリック病、狼瘡-神経学的後遺症、ライム病-神経学的合併症、マシャド・ジェセフ病、巨大脳症、メープルシロップ尿症、大脳症、メルカーソン・ローゼンタール症候群、髄膜炎、髄膜炎および脳症、メンケス病、メンケス症候群、大腿外側皮神経痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、片頭痛、ミラー・フィッシャー症候群、軽度の脳卒中、ミトコンドリア筋症、メビウス症候群、単肢筋萎縮症、運動ニューロン疾患、モヤモヤ病、ムコ脂質症、ムコ多糖症、ムコ多糖症II型、多重梗塞性痴呆症、多巣性運動神経障害、多発性硬化症、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、先天性筋無力症、重症筋無力症、髄鞘破壊性びまん性硬化症、乳児ミオクローヌス性脳症、ミオクローヌス、筋疾患、先天性筋疾患、筋疾患甲状腺毒性、筋緊張症、先天性筋緊張症、筋強直性ジストロフィー、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、脳鉄蓄積を伴う神経変性、神経線維腫症、神経遮断性悪性症候群、AIDSの神経学的合併症、ライム病の神経学的合併症、サイトメガロウイルス感染の神経学的結果、ポンペ病の神経症状、狼瘡の神経学的後遺症、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、神経セロイドリポフスチン症、神経遊走障害、遺伝性神経障害、神経サルコイドーシス、脳梅毒、神経毒性、海綿状母斑、ニーマン・ピック病、オサリヴァン・マクラウド症候群、後頭神経痛、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、オプソクローヌスミオクローヌス、起立性低血圧、過用症候群、
慢性疼痛、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、腫瘍随伴症候群、知覚異常、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーシス、発作性片頭痛、パリー・ロンベルク、ペリツェウス・メルツバッハ病、ペナ・ショケイア症候群II型、神経周囲嚢胞、周期性麻痺、末梢神経障害、脳室周囲白質軟化症、遷延性植物状態、広汎性発達障害、フェニルケトン尿症、フィタン酸蓄積症、ピック病、神経圧迫、梨状筋症候群、下垂体腫瘍、多発性筋炎、ポンペ病、孔脳症、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛、感染後脳脊髄炎、体位性低血圧、体位性起立性頻脈症候群、体位性頻脈症候群、プラダー・ウィリー症候群、原発性歯状萎縮症、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮、進行性歩行運動失調、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上性麻痺、相貌失認、偽トーチ症候群、偽トキソプラズマ症候群、偽脳腫瘍、心因性運動、ラムゼイ・ハント症候群I型、ラムゼイ・ハント症候群II型、ラスムッセン脳炎、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、レフサム病、乳児レフサム病、反復性運動障害、反復性ストレス傷害、レストレスレッグス症候群、レトロウイルス関連脊髄症、レット症候群、レイ症候群、リウマチ性脳炎、ライリー・デイ症候群、仙骨神経根嚢胞、舞踏病、唾液腺病、サンドホフ病、シルダー病、裂脳症、ザイテルベルガー病、発作性疾患、意味性認知症、中隔視神経形成異常、乳児重症ミオクローヌス癲癇(SMEI)、揺さぶられっこ症候群、帯状疱疹、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸、睡眠病、ソトス症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄梗塞、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール・レチャードソン・オルシェウスキィ症候群、全身強直性症候群、線条体黒質変性症、脳卒中、スタージ・ウェーバー症候群、STXBP1脳症、亜急性硬化性汎脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)、嚥下障害、シデナム舞踏病、失神、梅毒性脊髄硬化症、脊髄水空洞症、脊髄空洞症、全身性エリテマトーデス、脊髄癆、タンジール病、遅行性顔面麻痺、ターロヴ嚢胞、テイ・サックス病、側頭動脈炎、繋留性脊髄症候群、トムゼン筋緊張症、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性筋疾患、三叉神経痛性チック、トッド麻痺、トゥレット症候群、一過性虚血発作、伝染性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺、トロイヤー症候群、結節性硬化症、血管勃起性腫瘍、中枢神経系の血管炎症候群、フォンエコーノモ病、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、フォンヒッペル・リンダウ症候群、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ヴェルニッケ・コルサコフ症候群、ウェスト症候群、鞭打ち症、ウイップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X連鎖性球脊髄性筋萎縮症、ならびにゼルウェルガー症候群から選択される。
【0105】
一部の実施形態において、医薬製剤は、治療用遺伝子発現産物をコードする治療用核酸を含む。場合によっては、治療用遺伝子発現産物は、ATP1A2、CACNAIA、SETD5、SHANK3、NF2、DNMT1、TCF4、RAI1、PEXl、ARSA、EIF2B5、EIF2B1、EIF2B2、NPCl、ADAR、MFSD8、STXBP1、PRICKLE2、PRRT2、IDUA、STX1B、サルコグリカンアルファ(SGCA)、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、グルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)、CLN2、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、運動ニューロン生存1、STXBP1、テロメア(SMN1)、第X因子(FIX)、レチノイドイソメロヒドロラーゼ(RPE65)、サルコ/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA2a)、グルコセレブロシダーゼ(GCase)、ガラクトセレブロシダーゼ(GALC)、CDKL5、フラタキシン(FXN)、ハンチンチン(HTT)、メチル-CpG結合タンパク質2(MECP2)、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)、プログラニュリン(GRN)、抗チューブリン剤、銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、イズロン酸2スルファターゼ(hIDS)、グルコシルセラミダーゼベータ(GBA)、脆弱X精神遅滞1(FMR1)、NPC細胞内コレステロール輸送体1(NPCl)、SCN1A、C9orf72、NPS3、およびNLRP3インフラマソームから選択される標的遺伝子または遺伝子発現産物の活性または発現を調節するのに有効である。一部の実施形態において、ペルオキシソーム生合成因子(PEX)は、PEX1、PEX2、PEX3、PEX4、PEX5、PEX6、PEX7、PEX10、PEX11β、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、およびPEX26から選択される。
【0106】
一部の態様において、CNSの疾患または障害に関与する遺伝子の他の例として、MAPT、IDUA、SNCA、ATXN2、Ube3a、GNS、HGSNAT、NAGLU、SGSH、CLN1、CLN3、CLN4、CLN5、CLN6、CLN7、CLN8、CTSD、ABCD1、HEXA、HEXB、ASM、ASPA、GLB1、AADC、MFN2、GNAO1、SYNGAP1、GRIN2A、GRIN2B、KCNQ2、EPM2A、NHLRC1、SLC6A1、SLC13A5、SURF1、GBE1、ATXN1、ATXN3、およびATXN7が挙げられる。
【0107】
場合によっては、治療用遺伝子発現産物は、遺伝子編集構成要素を含む。場合によっては、遺伝子編集構成要素は、人工部位特異的RNAエンドヌクレアーゼ(ASRE)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、転写因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター形成して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRlSPR)/Cas酵素、およびCRlSPR)/CasガイドRNAから選択される。
【0108】
場合によっては、遺伝子の発現または遺伝子発現産物の発現もしくは活性は、対象への組成物の投与によって阻害される。場合によっては、遺伝子の発現または遺伝子発現産物の発現もしくは活性は、対象への組成物の投与によって増強される。
製剤、投薬量、および投与経路
【0109】
本明細書中で開示されるのは、対象において異種核酸をカプシド化するrAAV粒子をCNSに送達することを含む方法であり、rAAV粒子は、(i)CNS内での異種核酸の形質導入の増大を含み、rAAV粒子は、親AAVカプシドタンパク質内のアミノ酸位置588~589にて、表1、図1~3、および式Iに記載されるアミノ酸配列の5、6、または7アミノ酸の挿入、ならびに、例えば表1、図1~3、および式Iに記載される、アミノ酸位置587~590[AQAQ]にて見出されるアミノ酸にて1つまたはそれを超える置換を含むrAAVカプシドタンパク質を有する。
【0110】
一般に、本明細書中で開示される方法は、全身投与によって治療用rAAV組成物を投与することを含む。場合によっては、方法は、静脈内(「i.v.」)投与によって治療用rAAV組成物を投与することを含む。治療用rAAV組成物は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、経皮(transdermal)注射、経皮(percutaneous)投与、鼻腔内投与、リンパ内注射、直腸投与、胃内投与、眼内投与、脳室内投与、クモ膜下腔内、大槽内、または他の適切なあらゆる非経口投与等の追加の経路によって投与することができる。治療薬を投与する経路、投薬量、時点、および期間を調整することができる。一部の実施形態において、治療薬の投与は、疾患または症状の急性徴候および慢性徴候のいずれかまたは双方の発症前または発症後である。CNSへの他の送達経路として、頭蓋内投与、側方脳室投与、および血管内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書中で開示される疾患または症状を予防または処置するための医薬組成物の有効な用量および投薬量は、疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候に関連する、観察される有益な応答によって定義される。有益な応答は、疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候を予防、緩和、停止、または治癒することを含む。一部の実施形態において、有益な応答は、対象におけるバイオマーカー、トランスクリプトームリスクプロファイル、または腸内微生物叢の存在、レベル、または活性の測定可能な向上を検出することによって測定され得る。本明細書中で使用される「向上」は、正常な個体(例えば、疾患または症状に罹患していない個体)において観察される存在、レベル、または活性に対する存在、レベル、または活性のシフトを指す。治療用rAAV組成物が治療的に有効でない場合、あるいは疾患もしくは症状、または疾患もしくは症状の徴候の十分な緩和を実現していない場合、投薬量および/または投与経路は変えられてもよいし、追加の薬剤が対象に、治療用rAAV組成物と共に投与されてもよい。一部の実施形態において、患者が治療用rAAV組成物のレジメンで開始されると、患者はまた、第2の処置レジメンを放棄する(例えば、用量の漸次低下)。
【0112】
場合によっては、医薬組成物の用量は、少なくとも、または約10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、または1017個の感染性粒子の濃度を含み得る。場合によっては、感染性粒子の濃度は、2×10、2×10、2×10、2×1010、2×1011、2×1012、2×1013、2×1014、2×1015、2×1016、または2×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、3×10、3×10、3×10、3×1010、3×1011、3×1012、3×1013、3×1014、3×1015、3×1016、または3×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、4×10、4×10、4×10、4×1010、4×1011、4×1012、4×1013、4×1014、4×1015、4×1016、または4×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、5×10、5×10、5×10、5×1010、5×1011、5×1012、5×1013、5×1014、5×1015、5×1016、または5×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、6×10、6×10、6×10、6×1010、6×1011、6×1012、6×1013、6×1014、6×1015、6×1016、または6×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、7×10、7×10、7×10、7×1010、7×1011、7×1012、7×1013、7×1014、7×1015、7×1016、または7×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、8×10、8×10、8×10、8×1010、8×1011、8×1012、8×1013、8×1014、8×1015、8×1016、または8×1017個である。場合によっては、感染性粒子の濃度は、9×10、9×10、9×10、9×1010、9×1011、9×1012、9×1013、9×1014、9×1015、9×1016、または9×1017個である。
【0113】
本明細書中で開示されるのは、一部の実施形態において、本明細書中に記載されるrAAV組成物の送達に適した薬学的に許容され得る賦形剤および担体溶液の製剤、ならびに本明細書中に記載される特定の組成物を種々の処置レジメンに使用するのに適した投与および処置レジメンである。一部の実施形態において、治療的に有用な各組成物中の治療用遺伝子発現産物の量は、適切な投薬量が化合物の所与のあらゆる単位用量で得られるように調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命、および他の薬理学的考慮事項等の要因が、そのような医薬製剤を調製する技術の当業者によって考慮されるので、種々の投薬量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0114】
一部の実施形態において、注射用途に適したrAAVベースのウイルス組成物の医薬形態として、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合液、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0115】
場合によっては、注射可能な水溶液の投与のために、溶液は、必要に応じて、適切に緩衝化され得、液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、とりわけ、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に適している。処置されることとなる対象の症状に応じて、投薬量の若干の変動が必然的に生じることとなる。投与の責任者は、いずれにせよ、個々の対象にとって適切な用量を決定することとなる。さらに、ヒトへの投与のために、製剤は、FDA Office of Biologics規格によって要求される滅菌状態、発熱性、ならびに一般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0116】
本明細書中で開示されるのは、本明細書中で開示されるrAAV組成物を含む滅菌注射液であって、本明細書中で開示されるrAAV組成物を必要量で、必要に応じて先で列挙したいくつかの他の成分を有する適切な溶媒中に組み込んでから濾過滅菌することによって調製される滅菌注射液である。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本の分散媒体および先で列挙したもの由来の必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+追加の所望のあらゆる成分の粉末を、その以前に滅菌濾過された溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。注射可能な溶液は、例えば静脈内または髄腔内投与による、全身投与に有益であり得る。
【0117】
対象に投与されるのに適した用量および投薬量は、以下に限定されないが、特定の治療用rAAV組成物、疾患状態、およびその重症度、処置を必要とする対象の同一性(例えば、体重、性別、年齢)が挙げられる因子によって決定され、例えば、投与されることとなる特定の剤、投与経路、処置されることとなる症状、および処置されることとなる対象または宿主が挙げられる、症例を取り巻く特定の状況に従って決定することができる。
【0118】
rAAV組成物の量およびそのような組成物の投与時間は、本教示の利益を受ける当業者の範囲内となろう。しかしながら、治療有効量の開示される組成物の投与は、そのような処置を受けている患者に治療上の利益を提供するのに十分な数の感染性粒子の単回投与、例えば単回注射によって達成され得る可能性が高い。これは、少なくとも部分的に、特定の標的細胞(例えばニューロン)が分裂せずに、複数回投与または慢性投与の必要性がなくなるという事実によって可能になる。
【0119】
特定の実施形態において、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトが挙げられる哺乳動物に使用される治療有効1日投薬量範囲および/または治療有効単位投薬量を処方する際に使用される。特定の実施形態において、投薬量範囲および/または単位投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
併用療法
【0120】
治療用rAAVは、単独で、または追加の治療剤と組み合わせて(「治療剤」と一緒に)使用され得る。場合によっては、本明細書中で使用される治療用rAAVは、単独で投与される。治療剤は、併用療法において一緒に、または連続的に投与され得る。併用治療は、同日内に投与されてもよいし、1日もしくは複数日、数週、数ヶ月、または数年離れて投与されてもよい。
【0121】
追加の治療剤は、小分子を含み得る。追加の治療剤は、抗体または抗原結合フラグメントを含み得る。追加の治療剤として、脂質ナノ粒子に基づく治療、アンチセンスオリゴヌクレオチド治療、および他のウイルス治療が挙げられ得る。
【0122】
追加の治療剤は、細胞ベースの治療を含み得る。例示的な細胞ベースの治療として、限定されないが、免疫エフェクター細胞治療、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)治療、ナチュラルキラー細胞治療、およびキメラ抗原受容体ナチュラルキラー(NK)細胞治療が挙げられる。NK細胞、またはCAR-NK細胞、またはNK細胞およびCAR-NK細胞の双方の組合せが、本明細書中で開示される方法と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態において、NK細胞およびCAR-NK細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)、臍帯血、または細胞株に由来する。NK細胞およびCAR-NK細胞は、サイトカイン受容体および自殺遺伝子を含み得る。細胞ベースの治療は、幹細胞療法を含み得る。幹細胞治療は、胚性または体性幹細胞であり得る。幹細胞は、ドナーから単離され得る(同種異系)か、または対象から単離され得る(自己由来)。幹細胞は、対象の細胞に由来する増殖脂肪由来幹細胞(eASC)、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹(間質)細胞(MSC)、または人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。
キット
【0123】
本明細書中で開示されるのは、本明細書中で開示される組成物を含むキットである。また、本明細書中で開示されるのは、CNSの疾患または症状を処置または予防するためのキットである。場合によっては、疾患または症状として、癌、病原体感染、肺疾患もしくは症状、神経疾患、筋疾患、または免疫障害、例えば本明細書中に記載されるものがある。
【0124】
一実施形態において、キットは、治療用核酸をコードする組換えAAVベクター(例えば治療用核酸)をカプシド化するrAAV粒子および本開示の組換えAAV(rAAV)カプシドタンパク質の有効量の組成物を含有する治療用または予防用組成物を含み得る。別の実施形態において、キットは、治療用核酸を発現する単位剤形で、本明細書中に記載されるrAAVによって修飾された有効量の細胞(「修飾細胞」)を含有する治療用または予防用組成物を含み得る。一部の実施形態において、キットは、治療用組成物を含有し得る滅菌容器を含む。そのような容器として、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当該技術において知られている他の適切な容器形態があり得る。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、または薬剤を保持するのに適した他の材料で作ることができる。
【0125】
場合によっては、キットはさらに、細胞を含む。場合によっては、細胞は哺乳動物細胞である。場合によっては、細胞は不死化されている。場合によっては、不死化細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、胚性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。場合によっては、ヒト胚性幹細胞は、ヒト胚性腎293(HEK-293)細胞である。場合によっては、キットはさらに、治療用遺伝子発現産物をコードする異種核酸を含むAAVベクターを含む。場合によっては、AAVベクターはエピソームである。
【0126】
場合によっては、rAAVは、疾患または症状(例えばCNSの疾患)を患っているか、または発症するリスクがある対象にrAAVを投与するための説明書と共に提供される。説明書は、一般に、疾患または症状の処置または予防のための組成物の使用に関する情報を含み得る。
【0127】
場合によっては、説明書は、以下のうちの少なくとも1つを含む:治療用rAAV組成物の説明;本明細書中で開示される疾患または症状の処置または予防のための投薬スケジュールおよび投与;注意;警告;指示;禁忌;過剰投薬情報;有害反応;動物薬理学;臨床研究;ならびに/または参考文献。説明書は、容器上に直接(存在する場合)、または容器に貼付されるラベルとして、または容器内もしくは容器と共に供給される別個のシート、パンフレット、カード、もしくはフォルダとして印刷され得る。場合によっては、説明書は、rAAVを対象に単独で投与するための手順を提供する。場合によっては、説明書は、rAAVが全身送達用に製剤化されていることを記載している。
定義
【0128】
本明細書中で使用される専門用語は、特定の事例のみを説明するためのものであり、限定することは意図されない。本明細書中で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0129】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値についての許容され得る誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定系の制限に部分的によって決まることとなる。例えば、「約」は、所与の値における慣例に従って、1標準偏差以内または1標準偏差を超えることを意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、用語「約」は、特定の値についての許容され得る誤差範囲を意味するとみなされるべきである。
【0130】
本明細書中で使用される、組成物および方法を定義するのに使用される場合の「から本質的になる」は、記載される目的のための組合せにとって本質的に重要なあらゆるものとは異なる要素を除外することを意味するものとする。ゆえに、本明細書中で定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求される開示の基本的かつ新規な特徴に物質的に影響を及ぼさない他の材料または工程、例えば座瘡、湿疹、乾癬、および酒さのような皮膚障害を処置するための組成物を排除しない。
【0131】
用語「相同」、「相同性」、または「相同性パーセント」は、一般に、参照配列と同じまたは類似の配列を有するアミノ酸配列または核酸配列を意味するために本明細書中で使用される。配列の相同性パーセントは、本出願の出願日現在の最新バージョンのBLASTを使用して求めることができる。
【0132】
用語「増大した」または「増大する」は、本明細書中で、一般に、統計学的に有意な量の増大を意味するのに使用される。一部の実施形態において、用語「増大した」または「増大する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増大、例えば、参照レベル、標準、または対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、または最大100%の増大、あるいは10~100%の間のあらゆる増大を意味する。「増大」の他の例として、参照レベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれを超える増大が挙げられる。
【0133】
用語「低下した」または「低下する」は、本明細書中で、一般に、統計学的に有意な量の低下を意味するのに使用される。一部の実施形態において、「低下した」または「低下する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の引下げ、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、または最大100%の低下(例えば、基準レベルと比較して、存在しないレベルまたは検出不能なレベル)、あるいは10~100%の間のあらゆる低下を意味する。マーカーまたは徴候の文脈において、当該用語は、そのようなレベルでの統計学的に有意な低下を意味する。低下は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、またはそれを超え得、好ましくは、所与の疾患を患っていない個体にとって正常の範囲内として受け入れられるレベルにまで低下する。
【0134】
用語「対象」は、あらゆる生物である。場合によっては、生物は哺乳動物である。哺乳動物の非限定的な例として、哺乳動物クラスのあらゆるメンバー:ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、ならびに他の類人猿およびサル種:家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家畜、例えば、ウサギ、イヌ、およびネコ;ラット、マウス、およびモルモット等のげっ歯類が挙げられる実験動物が挙げられる。一態様において、哺乳動物はヒトである。本明細書中で使用される用語「動物」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。一実施形態において、「非ヒト動物」は、哺乳動物、例えばラットまたはマウス等のげっ歯類である。一実施形態において、「非ヒト霊長類」は、哺乳動物、例えばサルである。一部の例において、対象は患者であり、本明細書中で使用される場合、特定の疾患または障害を患っていると診断された対象を指し得る。
【0135】
本明細書中で使用される用語「遺伝子」は、個々のタンパク質またはRNA(「コード配列」または「コード領域」とも称される)を、必要に応じてコード配列の上流または下流に位置し得るプロモーター、オペレーター、ターミネーター等の関連する調節領域と共にコードする核酸のセグメントを指す。
【0136】
本明細書中で使用される用語「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」は、アデノ随伴ウイルスまたはその誘導体を指す。AAVの非限定的な例として、AAV1型(AAV1)、AAV2型(AAV2)、AAV3型(AAV3)、AAV4型(AAV4)、AAV5型(AAV5)、AAV6型(AAV6)、AAV7型(AAV7)、AAV8型(AAV8)、AAV9型(AAV9)、AAV10型(AAV10)、AAV11型(AAV11)、AAV12型(AAV12)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAVが挙げられる。場合によっては、AAVは、霊長類に感染するAAVを指す「霊長類AAV」として記載される。同様に、AAVは、ウシ動物に感染し得る(例えば「ウシAAV」等)。場合によっては、AAVは、野生型であるか、または天然に存在する。場合によっては、AAVは組換え型である。
【0137】
本明細書中で使用される用語「AAVカプシド」は、アデノ随伴ウイルスのカプシドタンパク質またはペプチドを指す。場合によっては、AAVカプシドタンパク質は、遺伝情報(例えば、導入遺伝子、治療用核酸、ウイルスゲノム)をカプシド化するように構成されている。場合によっては、本開示のAAVカプシドは、対応する親AAVカプシドタンパク質と比較して、修飾AAVカプシドである。
【0138】
本明細書中で使用される用語「向性」は、第2のインビボ環境と比較して、カプシド化された遺伝情報をインビボ環境中に発現する特異性および/またはそうする効率の増大もしくは低下を含み得るAAVカプシドの品質または特徴を指す。インビボ環境は、場合によっては、細胞型である。インビボ環境は、場合によっては、器官または器官系である。
【0139】
本明細書中で使用される用語「AAVベクター」は、ウイルスに関連する遺伝情報をコードする核酸ポリマーを指す。AAVベクターは、組換えAAVベクター(rAAV)であり得、これは、組換え遺伝学法を使用して生成されたAAVベクターを指す。場合によっては、rAAVベクターは、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチド(例えば、野生型AAVゲノムまたは天然に存在するAAVゲノム以外のポリヌクレオチド、例えば導入遺伝子)を含む。
【0140】
本明細書中で使用される用語「AAV粒子」は、AAVウイルス、ビリオン、AAVカプシドタンパク質、またはそれらの構成要素を指す。場合によっては、AAV粒子は、親AAV粒子に対して修飾されている。
【0141】
「遺伝子発現産物」の用語「遺伝子産物」は、例えば、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、またはRNA(干渉RNA(例えば、siRNA、miRNA、shRNA)およびメッセンジャーRNA(mRNA)が挙げられる)等についてのポリヌクレオチド配列の発現産物を指す。
【0142】
本明細書中で使用される用語「異種」は、比較されている実体の残りのものと遺伝子型的に異なる実体に由来する遺伝要素(例えばコード領域)または遺伝子発現産物(例えば、RNA、タンパク質)を指す。
【0143】
本明細書中で使用される用語「内在性」は、生物または生物内の特定の細胞内に天然に存在するか、またはそれと関連する遺伝要素(例えばコード領域)または遺伝子発現産物(例えば、RNA、タンパク質)を指す。
【0144】
本明細書中で使用される用語「処置する」、「処置すること」、および「処置」は、障害、疾患、もしくは症状;または障害、疾患、もしくは症状と関連する1もしくはそれを超える徴候を軽減または排除すること;あるいは障害、疾患、または症状それ自体の原因を軽減または根絶することを指す。処置の望ましい効果として、以下に限定されないが、疾患の発生または再発の予防、徴候の緩和、疾患の直接的または間接的なあらゆる病理学的結果の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の向上が挙げられ得る。
【0145】
用語「治療有効量」は、投与された場合に、障害、疾患、または疾患の症状の1つもしくはそれを超える徴候の発症を予防するか、または1つもしくはそれを超える徴候をある程度緩和するのに十分な化合物または治療の量、あるいは研究者、獣医師、医師、または臨床医によって求められている細胞、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するのに十分な化合物の量を指す。
【0146】
用語「薬学的に許容され得る担体」、「薬学的に許容され得る賦形剤」、「生理学的に許容され得る担体」、または「生理学的に許容され得る賦形剤」は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料等の薬学的に許容され得る材料、組成物、またはビヒクルを指す。構成要素は、医薬製剤の他の成分と適合性であるという意味で「薬学的に許容され得る」ものであり得る。これはまた、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー反応も、免疫原性も、他の問題も合併症もなしに、ヒトおよび動物の組織または器官と接触して使用するのに適し得、合理的な損益比に釣り合う。Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版;Lippincott WilliamsおよびWilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients、第5版;Roweら編、The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005;ならびにHandbook of Pharmaceutical Additives、第3版;AshおよびAsh編、Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation、Gibson編、CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2004)参照。
【0147】
用語「医薬組成物」は、本明細書中で開示される化合物の、希釈剤または担体等の他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にすることができる。全身投与が挙げられるがこれに限定されない、化合物を投与する複数の技術が、当該技術において存在する。
【0148】
「試料」の非限定的な例として、核酸および/またはタンパク質を得ることができるあらゆる材料が挙げられる。非限定的な例として、全血、末梢血、血漿、血清、唾液、粘液、尿、精液、リンパ液、糞便抽出物、頬スワブ、細胞、または他の体液もしくは組織(以下に限定されないが、外科的生検または外科的切除によって得られる組織が挙げられる)が挙げられる。これ以外にも、サンプルを、一次患者由来細胞株、または保存サンプルの形態で保管された患者サンプル、またはフレッシュな凍結サンプルを介して得ることができる。
【0149】
用語「インビボ」は、対象の体内で起こる事象を説明するのに使用される。
【0150】
用語「インビトロ」は、材料が得られる生物源から分離されるように、実験用試薬を保持するための容器内で起こる事象を説明するのに使用される。インビトロアッセイは、生細胞または死細胞が使用される細胞ベースのアッセイを包含し得る。また、インビトロアッセイは、無傷細胞が使用されない無細胞アッセイを包含し得る。
【0151】
用語「CNS」または「中枢神経系」は、脳、視床、皮質、硬膜、側脳室、延髄、橋、扁桃体、運動皮質、尾状体、視床下部、線条体、腹側中脳、新皮質、基底核、海馬、大脳、小脳、脳幹、および脊髄から選択される組織を意味する。脳は、前頭葉、側頭葉、後頭葉、および頭頂葉が挙げられる種々の皮質および皮質下領域を含む。
【0152】
用語「全身送達」は、全身が影響を受けるような循環系中への薬剤または他の物質の投与経路として定義される。投与は、経腸投与(消化管を通じた薬物の吸収)または非経口投与(一般に、注射、注入、または移植)を介して行うことができる。「循環系」は、血液系および脳脊髄液循環系の双方を含む。CNSへの全身投与の例として、動脈内、静脈内、または髄腔内注射が挙げられる。他の例として、脊椎(すなわち、これに限定されないが、腰椎)または脳(すなわち、これに限定されないが、大槽)内のあらゆる位置での脳脊髄液への投与が挙げられる。用語「全身投与」および「全身送達」は、互換的に使用される。
【0153】
本明細書中で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけのものであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0154】
実施例1
アフリカミドリザルにおいて修飾カプシドタンパク質を特定する方法
操作されたアデノ随伴ウイルス(AAV)の治療応用性についての主な関心事は、それらの形質導入プロファイルがどの程度ヒト用途に変換されるかである。以前の工学的取組みは、使用の容易さおよびフレキシビリティに起因して、インビトロまたはインビボの齧歯類スクリーニングプラットフォームに集中してきたが、直接的な非ヒト霊長類(NHP)におけるスクリーニング取組みは、変換されるウイルスを特定する可能性がはるかに高い。本発明の開発を支援した工学的取組みのために、旧世界NHPであるアフリカミドリザルを選択した。工学的取組みは主に、アミノ酸位置588に位置するAAV9カプシド表面の領域(天然AAV血清型間の可変領域であり、かつ受容体結合における役割を有するカプシド表面上の最も露出したループのうちの1つ)に向けられた。位置588と589との間へのペプチドの挿入は、本発明者ら等によって過去に研究されており、新規の受容体結合(血液脳関門横断および脳の高形質導入を促進するような齧歯類脳内皮上のLy6aのAAV-PHP.B/AAV-PHP.eB結合)および劇的に改変されたカプシド向性をもたらした。NHP CNSへの新規な向性を達成することを期待して、AAV9内の当該部位にランダムな7アミノ酸挿入を行うことによって、ウイルスカプシドのライブラリーを作成した。
【0155】
プラスミド.7ランダムアミノ酸をアミノ酸588~589間に挿入するのにNNK縮重プライマー(Integrated DNA Technologies,Inc.,IDT)を使用して、アミノ酸450~599間のAAV9カプシドゲノムの部分を増幅することによって、全ての考えられる変異を有する第1ラウンドのウイルスDNAライブラリーを作成した。次いで、結果として生じたライブラリー挿入物を、前述のように、Gibsonアセンブリを介してrAAV-ΔCap-in-rev-RNAプラスミド中に導入した。結果として生じたカプシドDNAライブラリーrAAV-Cap-Cag-GFP11は、アミノ酸レベルで約12億8000万個のバリアントの多様性を含有した。第2ラウンドのウイルスDNAライブラリーを、第1ラウンドと同様に作成したが、588に挿入したNNK縮重プライマーの代わりに、合成オリゴプール(Twist Biosicence)を使用して、CAPを有するUBC-Cap-DNAおよびCAG-Cap-DNA構築物において選択されたバリアントのみを生成した。この第2ラウンドのDNAライブラリーは、アミノ酸レベルで3000~15000個のバリアントの多様性を含有し、バリアント毎に2~6個のバーコード化複製物を有していた。
【0156】
HEK293T細胞中に形質移入されてライブラリーウイルス生成用のRep遺伝子を提供するAAV2/9 REP-AAP-ΔCAPプラスミドは、ライブラリー挿入物を含有する各段階にてライブラリープラスミドと同時形質移入される当該プラスミド間での妥当と思われる組換え事象後に、ウイルスライブラリー生成中の野生型AAV9カプシドの生成を妨げる。
【0157】
ウイルス生成.組換えAAVを、確立されたプロトコルに従って生成した。簡潔には、不死化HEK293T細胞(ATCC)を、ポリエチレンイミン(PEI)を使用して4つのベクターにより4回形質移入した。第1のベクターは、親AAVウイルス由来の逆方向末端反復(ITR)配列が側面に位置するrAAV-Cap-Cap-in-cis-Loxライブラリーであった。第2のベクターは、AAV2/9 REP-AAP-ΔCAPプラスミドであった。第3のベクターは、ウイルスアセンブリ、および修飾カプシド構造中への異種核酸のパッケージングに必要なヘルパーウイルスタンパク質をコードする核酸を含有する。第4は、最適な形質移入効率について適切なPEI/DNA比を達成するように含まれるpUC-18プラスミドである。10ngのrAAV-Cap-in-cis-LoxライブラリーDNAのみを形質移入して(150mmプレートあたり)、複数のライブラリーDNAが同じ細胞に入る可能性を低下させた。形質移入の60時間後に、ウイルス粒子を細胞および培地から収集する。培地中に存在するウイルスを、8%ポリエチレングリコールおよび500mM塩化ナトリウムによる沈殿によって濃縮して、沈殿したウイルスを、収集した細胞から調製した溶解物に加える。ウイルスを、イオジキサノール(Optiprep,Sigma)段階勾配(15%、25%、40%、および60%)により精製する。ウイルスが濃縮されて、PBS中に製剤化される。ウイルス力価が、qPCR、および対照としての線状化ゲノムプラスミドを使用して、DNaseI耐性ベクターゲノムコピー(VG)の数を測定することによって求められる。
【0158】
動物.アフリカミドリザル手順は、Virscio,Inc.のIACUC委員会によって承認された。アフリカミドリザルはVirscio,Inc.コロニーで生まれて飼育されて、標準条件下で飼育された。これに不断給餌して、Virscio,Inc.でのNHP用の霊長類富化プログラムの一部として富化を受けさせた。AAV注入のために、内在性中和抗体(nAb)の有無に関して動物をスクリーニングした。スクリーニングした動物のいずれも、血清の1:5希釈にて検出可能なブロッキング反応を示さなかった。注入の前日に、動物の食物を取り除いた。試験物を、静注または腰椎髄腔内投与を介して投与した。活動および挙動を、生涯にわたって毎日モニタリングした。
【0159】
DNA/RNAの回収および配列決定.ラウンド1およびラウンド2ウイルスライブラリーをアフリカミドリザルに5×1012~1×1013vg/動物kgの用量にて注射して、注射の4週間後にrAAVゲノムを回収した。動物を安楽死させて、脳(ラウンド1およびラウンド2の双方)、脊髄(ラウンド1およびラウンド2)、および肝臓(ラウンド1およびラウンド2)を回収して、急速凍結して、-80℃にて長期保存した(心臓、脾臓、副腎、腎臓、および腹部(quad)等の他の末梢組織も同様)。ラウンド1について、脳をそれぞれ20mgの11個の脳領域に、そしてラウンド2について、11個の脳領域に分離した。20~300mgの各脳切片、脊髄、および肝臓を、MagMAX DNA ULTRA(A25597)およびBead Ruptor 96(OMNI,INC.)を使用してバッファ中でホモジナイズして、ウイルスDNAを、製造者の推奨プロトコルに従って単離した。回収したウイルスDNAをRNaseで処理して、Zymo DNA Clean and Concentratorキット(D4033)で精製した。抽出した50%の全ウイルスDNAを鋳型として使用して、カプシドゲノム内の588~589挿入部位の側面に位置するプライマーにより25サイクルのPCR増幅によってウイルスゲノムを富化した。Zymo DNA精製後、試料を、組織型に応じて1:10~1:1000に希釈して、各希釈物を、10サイクルのPCRによりライブラリー可変領域の周りでさらに増幅した。その後、サンプルをさらに、Illumina Indicesを有するカスタムプライマーを使用して、10サイクルを超えて増幅した。増幅産物を、210bpバンドのより良好な分離および回収のために、2%低融点アガロースゲル(ThermoFisher Scientific,16520050)上で泳動した。
【0160】
第2ラウンドのライブラリーについてのみ、ウイルスカプシドの消化および含有されるssDNAの精製によって、パッケージングされたウイルスライブラリーDNAを、注入したウイルスライブラリーから単離した。これらのウイルスゲノムを、組織から抽出したウイルスDNAのように、Illumina次世代シーケンシングのためのアダプターおよびインデックスを加えるように、2つのPCR増幅工程によって増幅して、ゲル電気泳動後に精製した。このウイルスライブラリーDNAを、組織から抽出したウイルスDNAと共に、Illumina NextSeq 2000システムを使用するディープシーケンシング用に送った。
【0161】
NGSデータのアライメントおよびプロセシング.NGSラン由来の生のfastqファイルを、特注のスクリプト(Capsida CapSeq Tools)によりプロセシングした。第1ラウンドライブラリーについて、これらのデータセットをプロセシングするためのパイプラインは、低品質のリードを除去するためのフィルタリング、配列毎の品質スコアの利用、およびPCR誘導変異または高GC含量からのバイアスの排除を伴った。次いで、フィルタリングしたデータセットを、完全ストリングマッチアルゴリズムによってアラインして、アラインメント品質を向上させるようにトリミングした。配列毎のリードカウントを組織単位で引き出して表示して、その時点で、脳内で見出される全ての配列を、第2ラウンドライブラリーの形成のために編集した。
【0162】
第2ラウンドライブラリーについて、組織単位のリードカウントを同様に表にした。次いで、各配列に1のリードカウントを加えて0の値を除去して、配列毎の全ての脳領域を一緒に合計し、そして所与の7量体アミノ酸配列のコドン複製物毎のリード配列を一緒に合計して、ペプチド挿入物毎の単一の値を得た。最後に、データをlog 10カウント/100万(Cpm)で正規化した。ウイルスのcpmに対する脳の正規化cpmにより富化値を算出して、log 10に変換した。
【0163】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中で示して説明してきたが、そのような実施形態は、例としてのみ提供されていることが当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に思い浮かぶであろう。本明細書中に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替形態が、本発明を実施するのに使用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、そして当該特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0164】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の各刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているが如く、参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
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【配列表】
2024513949000001.app
【国際調査報告】