(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】神経保護のための遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240319BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/0793 20100101ALI20240319BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20240319BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20240319BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240319BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N9/12
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/0793
C07K16/40
A61K38/45
A61K48/00
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P27/02
A61P27/06
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562543
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022024310
(87)【国際公開番号】W WO2022221218
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127440
【氏名又は名称】ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイー・オブ・カリフオルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルスビー,デレク・エス
(72)【発明者】
【氏名】ブー,マイ・ティー
(72)【発明者】
【氏名】リー,キャシディー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,アミット・ケイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB04
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
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4C084ZA33
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4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA33
4C087ZC19
4H045AA10
4H045BA01
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
とりわけ、神経細胞死、例えば、網膜神経節細胞死を治療及び予防するための方法及び化合物が、本明細書に提供される。とりわけ、神経変性を治療及び予防するための方法及び化合物も、本明細書に提供される。本明細書で提供される方法及び化合物は、緑内障を治療又は予防し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の領域1~520に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を有するアミノ酸セグメントを含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパーキナーゼ(dnDLK)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記dnDLKポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、前記変異が、302位の置換であり、前記置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、核酸。
【請求項2】
前記302位の置換が、S302Aである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記dnDLKポリペプチドが、550アミノ酸長未満である、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
前記dnDLKポリペプチドが、43位に置換を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記43位の置換が、E又はDである、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記43位の置換が、Eである、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
前記dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
前記185位の置換が、K185Aである、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
前記dnDLKポリペプチドが、424位又は426位に置換を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
前記dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
前記dnDLKポリペプチドが、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項12】
配列番号11に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項13】
(LZK)によりホモ二量体化及びDLKヘテロ二量体化を阻害するロイシンジッパーポリペプチドをコードする単離された核酸であって、前記ポリペプチドが、配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号8を含む、核酸。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、150アミノ酸長未満である、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
配列番号1の領域158~520に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパー(dnDLK)ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、前記ポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、前記少なくとも1つの変異が、302位にある、核酸。
【請求項16】
前記dnDLKポリペプチドが、S302位に置換を含み、前記置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
前記置換が、S302Aである、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
前記dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項19】
前記185位の置換が、K185Aである、請求項18に記載の核酸。
【請求項20】
前記dnDLKポリペプチドが、424位及び/又は426位に置換を含む、請求項15に記載の核酸。
【請求項21】
前記dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、請求項20に記載の核酸。
【請求項22】
請求項1に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項23】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11由来又は偽型AAV由来のベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
前記ベクターが、AAV2.7m8である、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を更に含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項28】
請求項1に記載の核酸又は請求項22に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項29】
前記宿主細胞が、ニューロンである、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記ニューロンが、網膜神経節である、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞である、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項32】
前記宿主細胞が、ヒト細胞である、請求項31に記載の宿主細胞。
【請求項33】
神経細胞死を阻害する方法であって、請求項1に記載の核酸又は請求項22に記載のベクターを神経細胞に導入することを含む、方法。
【請求項34】
前記神経細胞が、エクスビボである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経細胞が、インビボである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記神経細胞が、眼ニューロンである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記眼ニューロンが、網膜神経節である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記神経細胞が、光受容体細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記神経細胞が、哺乳動物である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記ニューロンが、ヒト神経細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
神経細胞死の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項1に記載の核酸又は請求項22に記載のベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記対象が、緑内障、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管(CNV)、近視性CNV、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞症を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、遺伝性網膜疾患を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記遺伝性網膜疾患が、網膜色素変性症である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の核酸によってコードされる、ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月18日に出願された米国仮出願第63/190,132号及び2021年4月12日に出願された米国仮出願第63/173,904号の優先権を主張し、これらの各々は、全ての目的のために参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デュアルロイシンジッパーキナーゼ(DLK)及びロイシンジッパーキナーゼ(LZK)は、神経細胞(網膜神経節細胞(RGC)等の神経節細胞を含む)における軸索変性及び細胞死シグナル伝達を含む、神経キナーゼのシグナル伝達経路において役割を果たす(Welsbie et.al.,Neuron 94:1142-54,2017)。DLKの阻害及びノックダウンは、アルツハイマー病、緑内障、パーキンソン病及び他の神経変性状態の細胞及び動物モデルにおいて神経保護効果を有することが示されている。(Ferratis et al.,2013,Dual leucine zipper kinase as a therapeutic target for neurodegenerative conditions Future Medicinal Chemistry 5:16)。ドミナントネガティブDLK(dnDLK)活性を有するDLK変異体が記載されている(例えば、Chen et al.,J Neurosci 28:672-80,2008)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Welsbie et.al.,Neuron 94:1142-54,2017
【非特許文献2】Ferratis et al.,2013,Dual leucine zipper kinase as a therapeutic target for neurodegenerative conditions Future Medicinal Chemistry 5:16
【非特許文献3】Chen et al.,J Neurosci 28:672-80,2008
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本明細書において、配列番号1の領域1~520に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有するアミノ酸セグメントを含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパーキナーゼ(dnDLK)ポリペプチドをコードする核酸であって、ポリペプチドは、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、変異は、43位の置換、302位の置換、及び516位の置換から選択される、核酸が提供される。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位に置換を含み、置換は、スレオニン以外の任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、302位の置換は、S302Aである。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位に置換を含む。いくつかの実施形態では、43位の置換は、E又はDである。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、置換T43E及びS302Aを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、185位に、K185A等の置換を更に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、516位に置換を含む。いくつかの実施形態では、516位の置換は、G516Vである。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、424位又は426位に置換を更に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパーキナーゼ(dnDLK)ポリペプチドをコードする。
【0005】
別の態様では、本開示は、配列番号1の領域158~520に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパー(dnDLK)ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドは、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、変異は、302位の置換及び516位の置換から選択される、核酸を提供する。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、S302位に置換を含み、置換は、スレオニン以外の任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、置換は、S302Aである。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、516位に置換、例えば、G516Vを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、185位に置換、例えば、K185Aを更に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、424位及び/又は426位に置換を含み、更なる実施形態では、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を含む。
【0006】
更なる態様では、本開示は、(LZK)によりホモ二量体化及びDLKヘテロ二量体化を阻害するロイシンジッパーポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドは、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、核酸を提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、150アミノ酸長未満である。
【0007】
別の態様では、本開示は、本明細書、例えば、本セクションの先行する段落に記載されるような核酸を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11由来又は偽型AAV由来のベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、AAV2.7m8である。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を更に含む。
【0008】
更なる態様では、本開示は、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸、又は核酸を含むベクターを含む、宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、網膜神経節である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞である。
【0009】
追加の態様では、本開示は、神経細胞死を阻害する方法であって、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸、又は核酸を含むベクターを神経細胞に導入することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、神経細胞は、エクスビボである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、インビボである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、眼ニューロンである。いくつかの実施形態では、眼ニューロンは、網膜神経節である。いくつかの実施形態では、神経細胞は、光受容体細胞である。いくつかの実施形態では、神経細胞は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、神経細胞は、ヒト神経細胞である。
【0010】
別の態様では、本開示は、神経細胞死の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸、又は核酸を含むベクターを対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、緑内障、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管(CNV)、近視性CNV、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、又は網膜静脈閉塞症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、遺伝性網膜疾患を有する。いくつかの実施形態では、遺伝性網膜疾患は、網膜色素変性症である。
【0011】
別の態様では、本発明は、本明細書、例えば、本セクションの先行する段落に記載されるような、ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸によってコードされるポリペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】新規のDLK/LZKベースの導入遺伝子は、既存のアプローチと比較して、網膜神経節細胞の生存率を確実に改善する。(A)イムノパンニングしたRGCを、様々な導入遺伝子を発現するレンチウイルスで形質導入し、DLK/LZK阻害剤の存在下で培養し、時間をかけてウイルス生活環及び導入遺伝子発現を完了させた。3~4日後、阻害剤を除去し、新規の導入遺伝子(S302A、Delta C末端DLK)又は既知のドミナントネガティブ(K185A)全長DLKの存在下で、3日後に生存量を測定した。(B)生存率は、LZKロイシンジッパー(LZ)又は既知のドミナントネガティブDLK LZの存在下で測定した。両方の場合において、新規の導入遺伝子は、より効果的であり(阻害剤の存在下で残った対照細胞の生存率に近づいた)、より強力であった。
【
図1B】新規のDLK/LZKベースの導入遺伝子は、既存のアプローチと比較して、網膜神経節細胞の生存率を確実に改善する。(A)イムノパンニングしたRGCを、様々な導入遺伝子を発現するレンチウイルスで形質導入し、DLK/LZK阻害剤の存在下で培養し、時間をかけてウイルス生活環及び導入遺伝子発現を完了させた。3~4日後、阻害剤を除去し、新規の導入遺伝子(S302A、Delta C末端DLK)又は既知のドミナントネガティブ(K185A)全長DLKの存在下で、3日後に生存量を測定した。(B)生存率は、LZKロイシンジッパー(LZ)又は既知のドミナントネガティブDLK LZの存在下で測定した。両方の場合において、新規の導入遺伝子は、より効果的であり(阻害剤の存在下で残った対照細胞の生存率に近づいた)、より強力であった。
【
図2】様々な変異体DLKポリペプチドの活性を示すデータを提供する。
【
図3】dnDLK AAV又は対照AAVの投与後の緑内障のラットモデルにおける軸索の平均軸索健康スコア(左パネル)、及び軸索変性を評価することによって評価される視神経乳頭変性の平均パーセンテージを示すデータ(右パネル)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の様々な実施形態及び態様が本明細書に示され、説明されているが、そのような実施形態及び態様が単なる例として提供されていることは、当業者には理解されよう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換がここで当業者に想起されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明の実施において用いられ得ることは理解されるべきである。
【0014】
本発明の実施は、当技術分野で既知の一般的な分子生物学技術を伴う。そのような技術は、例えば、Sambrook&Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(4th Ed,2012)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,et al.,John Wiley and Sons,New York,1987-Volume 133,December 2020)等の多数のマニュアルに記載されている。
【0015】
以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提示され、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0016】
1.用語
「デュアルロイシンジッパーキナーゼ」(「DLK」)は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K)混合系統キナーゼファミリーのメンバーであり、ser/thrキナーゼスーパーファミリーのメンバーである。神経細胞死シグナル伝達を含む、神経キナーゼシグナル伝達経路において役割を果たす。DLKは、N末端ドメイン、触媒ドメイン、2つのロイシンジッパーを含むロイシンジッパードメイン、及びC末端ドメインを含む。例示的なヒトDLKポリペプチド配列は、UniProtKBエントリーQ12852下で入手可能である。ヒトDLKは、染色体領域12q13.13に細胞遺伝学的に局在するマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ12遺伝子(MAP3K12)によってコードされる。「ヒトDLK」は、ヒトMAP3K12遺伝子によってコードされる任意の対立遺伝子形態を指す。2つのタンパク質アイソフォーム、すなわち、UniProtKBエントリーQ12852に示されるアイソフォーム1(配列番号13に提供される配列)及びUniProtKBエントリーQ12852に示されるアイソフォーム2(配列番号1に提供される配列;GenBank受託番号XM_011538725、タンパク質配列受託番号XP_011537027も参照のこと)が同定されている。本明細書で使用される場合、「DLK」は、ヒト及び非ヒトDLKポリペプチド及びポリヌクレオチド、例えば、マウス又はラットのDLK配列等の哺乳動物のDLK配列を指す。以下の概略図は、N末端ドメイン、キナーゼドメイン、ロイシンジッパー、及びC末端ドメインを含む例示的な断片を示す。ヒトDLK配列番号1のロイシンジッパードメインは、約アミノ酸420~500に対応し、7残基の繰り返しの4番目の位置にロイシンを有するロイシンジッパーモチーフに基づいて、アミノ酸7個分多く伸長していると定義することもできる。Nihalani et al.,J.Biol.Chem.275:7273-7279,2000も参照されたい)
【表1】
【0017】
ロイシンジッパーキナーゼ(LZK)は、DLKに構造的に関連するMAP3Kファミリーメンバーであり、神経細胞死を含む神経シグナル伝達経路においても役割を果たす。LZKは、N末端ドメイン、触媒ドメイン(「キナーゼドメイン」)、2つのロイシンジッパーを含むロイシンジッパードメイン、及びC末端ドメインを含む。例示的なヒトLZKポリペプチド配列は、UniProtKBエントリーO43283下で入手可能である。ヒトLZKは、染色体領域3q27.2に細胞遺伝学的に局在するマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ13遺伝子(MAP3K13)によってコードされる。「ヒトLZK」は、ヒトMAP3K13遺伝子によってコードされる任意の対立遺伝子形態を指す。LZKの5つのアイソフォームが同定されている。アイソフォーム1(O42283-1)は、古典的アイソフォームとしてUniProtエントリーに示されている。アイソフォーム1のロイシンジッパードメインのアミノ酸配列は、配列番号8に提供される。本明細書で使用される場合、「LZK」は、ヒト及び非ヒトLZKポリペプチド及びポリヌクレオチド、例えば、マウス及びラットのDLK配列等の哺乳動物のLZK配列を指す。
【0018】
「ドミナントネガティブ」という用語は、内因性野生型DLKが発現するニューロンで発現したときに神経保護的である、ドミナントネガティブDLKタンパク質バリアント(dnDLK)又はLZKロイシンジッパードメインポリペプチド(dnLZ)若しくはそのバリアントを指す。特定の機構に拘束されることを意図するものではないが、dnDLKは、DLKホモ二量体化を阻害し得る。
【0019】
ポリペプチド配列の文脈における「バリアント」又は「変異体」は、典型的には、参照アミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性、又は少なくとも85%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性、又は少なくとも91%、92%、93%、若しくは94%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性、又は少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有する。「バリアント」という用語は、例えば、参照配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、若しくは少なくとも95%、又はそれよりも高い同一性を有し得るヌクレオチド配列にも適用される。
【0020】
ポリペプチドを発現するように細胞を遺伝子改変する文脈において、細胞に「導入される」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞に入り、発現してタンパク質を生成する条件下で、細胞を、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させることを指す。dnDLK等のタンパク質に関連して、「細胞に導入される」という用語は、限定ではなく、例えば、dnDLKをコードする核酸を含むウイルスベクターの細胞の形質導入、及びコードされたタンパク質の発現を含む。
【0021】
2つ以上のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列の文脈において、「同一性」又は「パーセント同一性」という用語は、手動アライメント及び目視検査によって、あるいはAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402にそれぞれ記載されるBLAST若しくはBLAST 2.0の比較アルゴリズム(ヌクレオチド配列の場合)をデフォルトパラメータで使用して、又はアミノ酸配列の場合はBLASTPをデフォルトパラメータで使用して測定される場合、比較ウィンドウ又は特定の領域にわたって最大の対応について比較し、整列させたときに、同じであるか、又は特定のパーセンテージの同じ(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも高い)同一性であるアミノ酸若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。BLAST分析のためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、クエリ配列中の長さWの短いワードを識別することによって高スコアの配列ペア(HSP)を識別することを伴い、これは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させたときに、何らかの正の値の閾値スコアTと一致するか、又はそれを満たすかのいずれかである。Tは、近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。次いで、ワードヒットを、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に拡張する。ヌクレオチド配列の場合、累積スコアはパラメータM(一対の一致する残基に対する報酬スコア、常に>0)及びN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ現象した場合、1つ以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積に起因して累積スコアがゼロ以下になった場合、又はいずれかの配列の末端に到達した場合は、各方向へのワードヒットの拡張を停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、単語長(W)11、期待閾値0.05、M=2、N=-3、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ配列の場合、BLASTPプログラムは、単語長(W)6、期待閾値0.05、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)をデフォルトとして用いる。
【0022】
目的のポリペプチド配列中の所与のアミノ酸残基の同定の文脈において使用される場合、「~に対応する」、「~を基準として決定される」、又は「~を基準として番号付けされる」という用語は、目的のポリペプチド配列を参照配列と最大限に整列させて比較した場合の、特定の参照アミノ酸配列における残基の位置を指す。したがって、例えば、DLKポリペプチドバリアント中のアミノ酸残基は、バリアントポリペプチド配列を配列番号1と最適に整列させたときに、バリアント中の残基が配列番号1のアミノ酸と整列する場合、DLK配列の配列番号1のアミノ酸に「対応する」。参照配列と整列させたポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。同様に、目的の核酸配列中の所与のヌクレオチドの同定の文脈において使用される場合、「~に対応する」、「~を基準として決定される」、又は「~を基準として番号付けされる」は、目的の核酸配列を参照配列と最大限に整列させて比較した場合の、特定のポリヌクレオチド参照配列におけるヌクレオチドの位置を指す。
【0023】
「置換」は、本明細書で使用される場合、1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドの、それぞれ、異なるアミノ酸又はヌクレオチドによる置き換えを意味する。
【0024】
本明細書で使用される「保存的」置換は、側基鎖の電荷、極性、ヒドロパシー(疎水性、中性、若しくは親水性)、及び/又はサイズが維持されるようなアミノ酸の置換を指す。互いに置換され得るアミノ酸の例示的なセットは、(i)正荷電アミノ酸Lys及びArg、並びに約6のpHでのHis、(ii)負荷電アミノ酸Glu及びAsp、(iii)芳香族アミノ酸Phe、Tyr、及びTrp、(iv)脂肪族疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu及びIle、並びに疎水性アミノ酸Met、(v)非極性アミノ酸Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、及びMet、(vi)小極性非荷電アミノ酸、Ser、Thr、及びAsn等、(vii)中性親水性アミノ酸Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(viii)小疎水性又は中性アミノ酸Gly、Ala、及びPro、(ix)アミド含有アミノ酸Asn及びGln、並びに(x)分岐アミノ酸Thr、Val、及びIleを含む。いくつかの実施形態では、保存的置換は、サイズに基づいてもよく、例えば、小アミノ酸は、Gly又はAla等の別の小アミノ酸で置換されてもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル含有アミノ酸(Ser、Thr、又はTyr)は、代替のヒドロキシル含有アミノ酸で置換されてもよい。本段落におけるアミノ酸の電荷への言及は、pH6~7での電荷を指す。
【0025】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、本明細書で使用される場合、RNA、cDNA、ゲノムDNA、並びに上記の合成形態及び混合ポリマーのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を指す。特定の実施形態では、ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態、及びそれらの組み合わせを指す。この用語はまた、一本鎖及び二本鎖の形態のDNAを含むが、これらに限定されない。加えて、ポリヌクレオチド、例えば、cDNA又はmRNAは、天然に存在するヌクレオチド、並びに天然に存在する及び/又は天然には存在しないヌクレオチド結合によって一緒に結合された修飾ヌクレオチドのいずれか又は両方を含み得る。当業者には容易に理解されるように、核酸分子は、化学的若しくは生化学的に修飾され得るか、又は非天然若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含有し得る。上記の用語はまた、一本鎖又は二本鎖の形態を含む、任意のトポロジーの立体構造を含むことも意図される。核酸配列への言及は、別途指定されない限り、その相補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸分子への言及は、その相補配列を有する、その相補鎖を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、同じポリペプチド配列をコードするコドン最適化核酸も含む。
【0026】
「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、別途指定されない限り、互換的に使用される。
【0027】
「単離」という用語は、核酸又はタンパク質に適用される場合、核酸又はタンパク質が、それが自然の状態で会合している他の細胞構成要素を本質的に含まないことを示す。これは、例えば、均質な状態であり得、乾式溶液又は水溶液のいずれかであり得る。純度及び均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィー等の分析化学技術を使用して判定される。調製物に存在する優勢な種であるタンパク質が、実質的に精製される。
【0028】
ドミナントネガティブタンパク質又はLZドメインポリペプチドの発現に関して本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞で発現されるdnDLK又はLZポリペプチドをコードする導入遺伝子を含む組換え核酸構築物を指すと理解されたい。
【0029】
「ウイルスベクター」という用語は、宿主細胞内に導入遺伝子を送達するために使用される修飾ウイルスを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、1つ以上のタンパク質の細胞で発現をもたらすように、遺伝子治療ベクターを用いて細胞内に導入することができる組換えポリヌクレオチド構築物を指す。本開示の文脈において、導入遺伝子は、コードされたタンパク質の発現を制御する調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等のうちの1つ以上)、mRNA安定化配列(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント、WPRE)、バイシストロン性mRNAの配列内リボソーム進入部位(IRES)を可能にする配列、エピソームの維持に必要な配列(例えば、ITR及びLTRs)、Toll様若しくはRIG様受容体によるウイルス認識を回避若しくは阻害する配列(例えば、TLR-7、-8、-9、M DA-5、RIG-1及び/又はDAI)、及び/又は細胞への形質導入に必要な配列を含み得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」及び「エンハンサープロモーター」という用語は、コード配列又は機能性RNAの発現を制御する(例えば、増加させる)ことが可能なDNA配列を指す。プロモーターは、最小プロモーター(TATAボックス、及び転写開始部位を特定する役割を果たす他の配列からなる短いDNA配列)を含み得る。エンハンサー配列(例えば、上流エンハンサー配列)は、コード配列又は機能性RNAの発現を制御する(例えば、増加させる)ようにプロモーターと相互作用することができる調節エレメントである。本明細書で使用される場合、「プロモーター」への言及は、エンハンサー配列を含み得る。エンハンサーは、それが相互作用するプロモーター又はコード配列と近接している必要はない。
【0032】
プロモーター、エンハンサー、及び他の調節配列は、コードされたmRNA又はタンパク質の発現又は安定性にそれらが影響を与える場合、タンパク質又はRNAをコードするポリヌクレオチド配列と「動作可能に連結されている」。
【0033】
「対象」、「患者」、又は「個体」という用語は、ヒトを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指すために本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー)、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、又は任意の他の哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態では、「対象」、「患者」、又は「個体」は、ヒトである。
【0034】
2.神経保護活性を有するドミナントネガティブポリペプチド。
2.1 ドミナントネガティブDLK配列
一態様では、本開示は、ドミナントネガティブDLK(dnDLK)ポリペプチド、及びdnDLKポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。dnDLKは、神経節細胞、例えば、網膜神経節細胞等の神経細胞に導入されたときに神経保護的である。この文脈における「神経保護的」という用語は、dnDLKポリペプチドを発現するように本明細書に記載されるように操作された神経細胞の集団において、dnDLKポリペプチドを発現しない対照神経細胞集団と比較して、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%、又はそれ以上、神経細胞死を阻害するdnDLKの能力を指す。限定ではなく、例示として、神経保護活性は、後述のセクション5に記載される方法を用いて測定することができる。神経保護に関する他のアッセイは、画像ベースの生細胞/死細胞の計数、又はリン酸化JUN等のレポーター免疫蛍光法を含む。
【0035】
ヒトDLKは、2つのアイソフォームで存在する。配列番号1は、Uniprotエントリー12852に「アイソフォーム2」として示されるアイソフォームの配列であり、残基位置の説明のための参照配列として本明細書において使用される。配列番号1に関連して本明細書に記載される変異は、配列番号1及び/又は配列番号13に導入され得ることが理解されるであろう。アイソフォームは、参照配列の残基46で互いに異なる。Uniprot Q12852エントリーのアイソフォーム1(配列番号13)は、46位にヒスチジンを含む。このH残基は、Q12852アイソフォーム2(配列番号1)において、配列QCVLRDVVPLGGQGGGGPSPSPGGEPPPEPFANSによって置き換えられ、これにより、配列番号13に示されるポリペプチド配列よりも33アミノ酸長いが、その他の点では配列が同一であるポリペプチドが得られる。
【表2】
【0036】
いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも80%、又は少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するDLK触媒領域、及び配列番号3に対して少なくとも80%、又は少なくとも85%の同一性を有するロイシンジッパードメインを含み、dnDLKは、配列番号1を基準として決定される場合、302及び/又は516位に変異を含み、残基が、配列番号1のその位置に存在する残基に対して置換されている。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、890アミノ酸長以下、850アミノ酸長以下、750アミノ酸長以下、650アミノ酸長以下、550アミノ酸長以下、450アミノ酸長以下、又は400、390、380、370、若しくは360アミノ酸長以下である。例えば、配列番号1の全長配列に関して、いくつかの実施形態では、300超のアミノ酸、又は350超のアミノ酸、又は370超のアミノ酸を、配列番号1のC末端から欠失させることができる。いくつかの実施形態では、10、20、30、40、50、60、又はそれより多くのアミノ酸を配列番号1のN末端から欠失させることができる。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有するDLK触媒領域、及び配列番号3に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有するロイシンジッパードメインを含み、302及び/又は516位に変異を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するDLK触媒領域、及び配列番号3に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するロイシンジッパードメインを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位に置換を含み、302位の残基は、スレオニン以外の任意のアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは302位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKは、302位に残基G、V、L、又はIを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位のSに対して、スレオニン以外の保存的置換、例えば、N又はQを含む。いくつかの実施形態では、DLKポリペプチドは、516位に置換を含み、例えば、dnDLKポリペプチドは、G以外の任意のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、516位にVを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKは、516位にI又はLを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、本明細書、例えば、本段落に記載されるような302位の置換及び516位の置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1を基準として決定される場合、185位に置換を更に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、185位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、185位にG、V、L、又はIを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位及び/又は516位に置換を含み、配列番号1を基準として決定される場合、424位及び/又は426位に置換を更に含み、任意選択的に、ポリペプチドが424位及び/又は426位に置換を含む場合、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、D又はEを424位に、及び/又はD又はEを426位に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、以下のうちの1つ以上を更に含む:位置431のR、位置438のD又はE、位置440のD又はE、位置445のD又はE、位置447のD又はE、位置486のR、位置491のD又はE、及び位置493のD又はE。
【0037】
いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有するDLK触媒領域、及び配列番号3に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有するロイシンジッパードメイン、又は2つのロイシンジッパーを含む少なくとも95個の連続アミノ酸のロイシンジッパードメインの断片を含み、dnDLKは、302位にS又はT以外の任意のアミノ酸を含み、その位置は、配列番号1を基準として決定される。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する領域と、配列番号3に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するロイシンジッパードメインと、2つのロイシンジッパーを含む少なくとも95個の連続したアミノ酸のロイシンジッパードメインの断片とを含み、dnDLKは、302位にS又はT以外の任意のアミノ酸を含み、その位置は、配列番号1を基準として決定される。いくつかの実施形態では、ロイシンジッパードメインの断片は、2つのロイシンジッパー配列を含むが、ロイシンジッパードメインのC末端領域から1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸、又は最大10個のアミノ酸、又は最大20個のアミノ酸を欠いており、しかしながら、ロイシンジッパー1又はロイシンジッパー2のアミノ酸は欠失していない。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にG、V、L、又はI等の残基を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にQ又はNを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、N末端ドメイン(配列番号1の2位から配列番号1の触媒ドメインの第1の残基までの配列番号1の領域)、又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKは、43位にD又はEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、Eを43位に含む。
【0038】
以下のセクション5.2.1で論じられるように、残基302に置換変異(例えば、S302A)を導入すると、DLK K185Aバリアントよりも高い神経保護活性を有するdnDNKが得られる。以下のセクション5.2.6で論じられるように、残基516に置換変異(例えば、G516V)を導入すると、dnDNKが得られる。以下のセクション5.2.2で論じられるように、dnDLKのC末端からの362残基の欠失によってセクション5.2.2に示される>350残基の欠失は、dnDLKの保護活性に悪影響を及ぼさない。例えば、セクション5.2.3で論じられるように、S302A dnDLKからのC末端領域の欠失は、変異体の保護活性を低下させず、いくつかの実施形態では、保護活性を増強する。
【0039】
いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸2~520に対して少なくとも80%、又は少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する領域を含み、dnDLKポリペプチドは、配列番号1を基準として決定される場合、43位、302位、又は516位に1つ以上の変異を含み、残基が、配列番号1のその位置の残基に対して置換されている。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~520に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有する領域を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~520に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する領域を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~520の300アミノ酸領域に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、又は少なくとも94%の同一性を有する領域を含み、配列番号1を基準として決定される場合、また以下に更に提供されるように、43位、302位、又は516位に1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~520の300アミノ酸領域に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する領域を含み、配列番号1を基準として決定される場合、また以下に更に提供されるように、43位、302位、又は516位に1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKは、43位及び302位に置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位及び516位に置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位及び516位に置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位、302位、及び516位の各々に変異を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位に置換を含み、302位の残基は、スレオニン以外の任意のアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKは、302位に残基G、V、L、又はIを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位のSに対して、スレオニン以外の保存的置換、例えば、N又はQを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位にD又はEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位にEを含む。いくつかの実施形態では、DLKポリペプチドは、516位に置換を含み、例えば、dnDLKポリペプチドは、G以外の任意のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、516位にVを含むか、又は516位にI若しくはLを含む。いくつかの実施形態では、dnDLkポリペプチドは、302位にAを含み、43位にEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、850アミノ酸長以下、750アミノ酸長以下、650アミノ酸長以下、又は550アミノ酸長以下である。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位、302位及び/又は516位に置換を含み、配列番号1を基準として決定される場合、185位に置換を更に含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位及び185位の置換、302位及び516位の置換、又は302位、516位、及び185位の置換を含む。いくつかの実施形態では、そのようなdnDLKポリペプチドは、43位に置換を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、185位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位、302位及び/又は516位の置換(及び任意選択的に、185位の置換)を含み、配列番号1を基準として決定される場合、424位及び/又は426位の置換を更に含み、任意選択的に、ポリペプチドが424位及び/又は426位の置換を含む場合、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位の置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、424位にD若しくはEを含み、かつ/又は426位にD若しくはEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、以下のうちの1つ以上を更に含む:431位のR、438位のD又はE、440位のD又はE、445位のD又はE、447位のD又はE、486位のR、491位のD又はE、及び493位のD又はE。
【0040】
いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、若しくは少なくとも94%の同一性、又は配列番号6に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、dnDLKは、配列番号1を基準として番号付けされる場合、302位にS又はT以外の任意のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にG、V、L、又はI等の残基を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にQ又はNを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号6を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、若しくは少なくとも94%の同一性、又は配列番号7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、dnDLKは、配列番号1を基準として番号付けされる場合、302位にS又はT以外の任意のアミノ酸を含み、配列番号1を基準として決定される場合、43位に置換を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にAを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にG、V、L、又はI等の残基を含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にQ又はNを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位にD又はEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、43位にEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、302位にAを含み、43位にEを含む。いくつかの実施形態では、dnDLKポリペプチドは、配列番号7を含む。
【0042】
2.2 DLKのドミナントネガティブ阻害剤であるLZK配列
セクション5.2.4で論じられるように、我々は、驚くべきことに、LZKロイシンジッパードメイン(LZポリペプチド)が強力な神経保護活性を有することを発見した。LZドメインを神経細胞、例えば、網膜神経節細胞に導入することにより、治療上の利益を得ることができる。
【0043】
一態様では、本開示は、DLKホモ二量体化を阻害するLZKロイシンジッパードメインを含むポリペプチドを更に提供し、ポリペプチドは、神経節細胞、例えば、網膜神経節細胞等の神経細胞に導入されたときに神経保護的である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性、又は少なくとも96%、97%、98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、LZKポリペプチドは、配列番号8を含む。いくつかの実施形態では、LZKポリペプチドは、150アミノ酸長未満、又は120アミノ酸長未満である。便宜上、DLKを阻害するそのようなLZKポリペプチド、及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書において「dnDLK/LZK」配列と称される。
【0044】
2.3 バリアントの活性
神経細胞死を阻害する本明細書に記載のバリアントは、様々なアッセイを用いて特定することができる。いくつかの実施形態では、バリアントは、神経細胞死を阻害する能力について評価される。
【0045】
神経細胞死の阻害を評価するための例示的なアッセイが、実施例に提供される。このアッセイは、網膜神経節細胞の文脈において説明される。簡潔に述べると、例えば、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドを発現するレンチウイルスベクターを使用して、バリアント及び対照、例えば空のベクター対照等を、各々、初代網膜神経節細胞の集団に導入する。レンチウイルスdnDLK又はdnDLK/LZKタンパク質が発現している間に細胞死を防止するために、DLK/LZK阻害剤、例えば、GNE 3511を使用して細胞を維持する。形質導入後3~5日目に、dnDLK又はdnDLK/LZKタンパク質が発現してから(例えば、mScarletレポーター発現によって示される)、初代RGCからGNE 3511を除去し、細胞死を開始させる。50%体積のCellTiter-Glo(Promega G8462)を添加することによって、GNE除去後3日目の生存[相対光単位(RLU)]について細胞をアッセイした。発光は、プレートリーダー(Molecular Devices)で測定することができる。細胞死のレベルは、アッセイの期間を通してGNE3511(陽性対照)で処理した対照細胞のレベルと比較することができるか、又はGNE3511を除去した対照細胞(陰性対照)と比較して決定することができる。本明細書に記載のバリアントdn DLK又はバリアントdnDLK/LZKポリペプチドは、典型的には、化学的DLK/LZK阻害剤、例えば、GNE3511を使用して得られる細胞生存レベルと比較して、少なくとも20%、しばしば少なくとも30%、若しくは少なくとも40%、50%、60%、70%、又はそれ以上の保護を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のバリアントdnDLK又はバリアントdnDLK/LZKポリペプチドは、対照と比較して、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上の保護を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、バリアントの活性を評価するために代替のアッセイが用いられる。フローサイトメトリー、カスパーゼ活性化、及び細胞内ATPの測定に基づくものを含む、多くのそのようなアッセイが既知である。例えば、好適なアッセイは、示された生細胞に対するカルセインAM等の細胞封入色素、又は死細胞若しくは瀕死の細胞を示すためのReddot1等の細胞除外ベースの色素を使用した、画像ベースの生細胞/死細胞の計数を含む。代替的に、リン酸化JUN又は他の下流DLK経路メンバーの免疫蛍光は、DLK経路を阻害する際のdnDLK又はdnDLK/LZK構築物の有効性のマーカーとして用いることができる。
【0047】
3.ポリヌクレオチド/発現ベクター
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする単離された核酸、核酸を含む発現ベクター、及び発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。ドミナントネガティブポリペプチドを産生するための発現系は、例えば、酵母、昆虫、鳥類、及び哺乳動物の発現系を含む、原核生物系及び真核生物系を含む。例示的な発現系は、Sambrook(上記)及びAusbel(上記)に記載されている。
【0048】
ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸の発現のための好適な真核生物プロモーター(すなわち、真核細胞内で機能するプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)即時初期遺伝子プロモーター;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター;早期及び後期SV40プロモーター;レトロウイルス由来の長い末端反復;ヒト伸長因子-1プロモーター;ニワトリβアクチンプロモーター;ウシ成長ホルモンプロモーター;ニワトリβアクチンプロモーターに融合されたCMVエンハンサー、ニワトリβアクチン遺伝子の第1のエクソン及び第1のイントロン、並びにβグロビンスプライスアクセプターを含むハイブリッド構築物;マウス幹細胞ウイルスプロモーター、ホスホグリセラートキナーゼ1遺伝子座プロモーター、及びユビキチン遺伝子プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、神経細胞において活性である。
【0049】
発現ベクターはまた、他の要素、例えば、リボソーム結合部位、転写ターミネーター等を含み得る。
【0050】
本開示のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸は、細胞への送達のための送達ビヒクル中に又は送達ビヒクルの表面に充填することを含む、様々な送達方法を用いて宿主細胞に導入することができる。送達ビヒクルとしては、ナノスフィア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、及びミセルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標的化部分を使用して、そのようなビヒクルと所望の細胞型又は位置との選択的な相互作用を強化することができる。いくつかの実施形態では、核酸は、ウイルス感染、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション核酸切除、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達等によって宿主細胞に導入される。
【0051】
3.1 遺伝子治療ベクター
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドを発現させるように、エクスビボ又はインビボのいずれかで、細胞、例えば、神経細胞を遺伝子改変するための遺伝子治療ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子治療ベクターは、例えば、裸のDNAとして送達することができるか、又は脂質、リポソーム、ナノ粒子若しくはポロキサマー等の送達製剤と複合体を形成することができるプラスミドベクターである。
【0052】
他の実施形態では、遺伝子治療ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、パポバウイルス、ポリオウイルス、並びに他の陽性及び陰性の鎖状RNAウイルス、ウイロイド、及びウイルソイド、又はそれらの一部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
導入遺伝子は、RNAプロセシング若しくは安定性、翻訳効率、又はドミナントネガティブポリペプチドの効率的かつ安定な発現に影響を及ぼす他の態様に影響を与える、上流、下流、又はコード配列内に位置する調節配列を含み得る。このような調節配列の例としては、プロモーター、エンハンス、ポリアデニル化配列等が挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルスベクターを使用して送達される導入遺伝子の発現を増強するように、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)等の転写後調節エレメントを更に含む。
【0055】
3.1.1 AAVベクター
いくつかの実施形態では、遺伝子治療ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV113、AAVrh.74、AAV2.7m8、AAV.ANC80、Anc80L65及び誘導体、AAVDJ、並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない任意のAAV血清型を、神経細胞にドミナントネガティブポリペプチドを導入するための組換えAAVを生成するために使用することができる。天然に存在するAAV血清型のバリアントを含む、例示的なAAV血清型の広範なリストは、米国特許第10,662,425号に提供される。
【0056】
ウイルス配列は、DNAの複製及びビリオンへのパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV WT遺伝子のうちの1つ以上が全体的に又は部分的に欠失しているが、機能的な隣接ITR配列を保持する。AAVビリオン又はAAV粒子は、AAVキャプシドタンパク質及びAAVベクターを含む。ある場合には、AAVは、ハイブリッド又はキメラAAVであり、例えば、AAV粒子は、キャプシド血清型と比較して異種血清型のものであるITR(例えば、AAV5、AAV6、又はAAV8キャプシドを有するAAV2 ITR)を含むことができる。AAV ITRは、特定の用途に好適な任意の血清型であり得る。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、又はAAVrh8R等のAAV血清型がベクターとして用いられる。いくつかの実施形態では、ベクターは、AAV2血清型、例えば、AAV2.7m8の誘導体である。
【0057】
AAVベクターを使用するための方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279(2000)、及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24(2000)に記載されており、これらの各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関するものとして、参照により本明細書に組み込まれる。導入遺伝子をビリオンにパッケージングするために、ITRは、導入遺伝子と同じ構築物中でシスに必要とされる唯一のAAV成分である。cap及びrep遺伝子は、トランスで供給され得る。組換えAAVビリオンの構築は、例えば、米国特許第5,173,414号、同第5,139,941号、同第5,863,541号、同第5,869,305号、同第6,057,152号、及び同第6,376,237号、並びにRabinowitz et al.,J.Virol76:791(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423(2003)にも記載されており、これらの各々開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関するものとして、参照により本明細書に組み込まれる。また、Zolotukin et al.,2002,PRODUCTION AND PURIFICATION OF SEROTYPE 1,2,AND 5 RECOMBINANT ADENO-ASSOCIATED VIRAL VECTORS”Methods 28:158-167も参照されたい。
【0058】
いくつかの実施形態では、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子は、神経保護特性を有する別のタンパク質をコードする導入遺伝子と組み合わせて投与される。上述したように、dnDLKのC末端部分の欠失は、タンパク質の保護活性を低下させない。切断されたdnDLKをコードする導入遺伝子のより小さいサイズは、1つより多くのポリペプチド、例えば、1つより多くの神経保護ポリペプチドをコードする構築物の設計において有利である。いくつかの実施形態では、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする構築物は、例えば、緑内障治療のために眼内圧を低下させるポリペプチドをコードする導入遺伝子、又は疾患の病態に関連するタンパク質をコードする導入遺伝子を更に含んでもよい。限定ではなく、例えば、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子及びドミナントネガティブSARM1が使用されてもよい(WO2019/079572,“Dominant Negative Sarm1 Molecules As A Therapeutic Strategy For Neurodegenerative Diseases Or Disorders”、Geisler et al.,2019,“Gene therapy targeting SARM1 blocks pathological axon degeneration in mice”J Exp Med 216:294-303)を参照されたい)。別の例として、組換えAAVベクターは、dnDLKポリペプチド又はdnDLK/LZKポリペプチド、及びインスリン様成長因子等のポリペプチドを発現し得る(例えば、Hung et al.,2007,“Gene transfer of insulin-like growth factor-I providing neuroprotection after spinal cord injury in rats.”J.Neurosurgery:Spine 6(1)、Nishida et al.,2011,“Restorative effect of intracerebroventricular insulin-like growth factor-I gene therapy on motor performance in aging rats.”Neuroscience 177:195-206、Schwerdt et al.,2018,“Rejuvenating Effect of Long-Term Insulin-Like Growth Factor-I Gene Therapy in the Hypothalamus of Aged Rats with Dopaminergic Dysfunction.”Rejuv.Res.21(2):102-108を参照されたい)。別の例として、NMNAT1(EC2.7.7.1)タンパク質等のニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)ポリペプチドを、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドとともに発現させてもよい(Babetto et al.,2010,“Targeting NMNAT1 to axons and synapses transforms its neuroprotective potency in vivo”J Neurosci 30(40):13291-304)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、NMNATポリペプチドは、細胞質に主に見られるNMNATポリペプチド、例えば、核局在化シグナルで変異したCytNMNAT1(Sasaki et al,J.Neurosci 26:8484-8491,2006)、NMNAT2ポリペプチド若しくは細胞内標的化ドメインに欠失を有するNMNAT2ポリペプチド(Milde et al,Sci Rep.3:2567,2013)、又はNMNAT3ポリペプチド(Berger,et al,J Biol Chem 280(43),36334-36341,2005)である。更なる例として、オステオポンチンを発現させてもよい(例えば、Chen et al.,2011,“Osteopontin reduced hypoxia-ischemia neonatal brain injury by suppression of apoptosis in a rat pup model.”Stroke 42(3):764-769を参照されたい)。別の例として、グルカゴン様ペプチド1を発現させてもよい(Holscher,2012,“Potential Role of Glucagon-Like Peptide-1(GLP-1)in Neuroprotection.”CNS Drugs 26:871-882、Velmurugan et al.,2012,“Neuroprotective actions of Glucagon-like peptide-1 in differentiated human neuroprogenitor cells.”J.Neurochem.123(6):919-931、WO2009/039964A2(“Use of glucagon-like peptide as a therapeutic agent”)。別の例として、脳由来神経栄養因子を発現させてもよい(Osborne et al.,2018,“Neuroprotection of retinal ganglion cells by a novel gene therapy construct that achieves sustained enhancement of brain-derived neurotrophic factor/tropomyosin-related kinase receptor-B signaling.”Cell Death&Disease 9:1007を参照されたい)。dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドとともに発現させることができるタンパク質の更なる例としては、緩徐なウォーラー変性ポリペプチド(Wlds)(例えば、Conforti et al,Proc Natl Acad Sci USA 97:11377-82,2000)、ドミナントネガティブRhoキナーゼ(例えば、Amano et al,J.Biol.Chem 274:32418-24,1999)、又はMMP-3等のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)(例えば、O’Callaghan et al,Hum.Mol.Genet.26:1230-246,2017)、又はMMP-1(Borras et al,Gene ther.23:438-49,2016)が挙げられる。あるアプローチでは、2つ以上の遺伝子が、同じRNA転写産物によって(ウイルスベクター、例えば、AAV中のバイシストロン発現カセットを使用して)コードされ得る。例えば、あるアプローチでは、2つの遺伝子の発現が双方向プロモーターによって制御される(Vogl et al.,2018,“Engineered bidirectional promoters enable rapid multi-gene co-expression optimization”Nat Commun 9,3589、Trinklein et al.,2004,“An Abundance of Bidirectional Promoters in the Human Genome”Genome Res.14:62-66、Wang et al.,2006,“Suppression of experimental osteoarthritis by adenovirus-mediated double gene transfer”Chin Med J(Engl)119:1365-1373)。いくつかの実施形態では、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子は、神経保護特性を有するポリペプチドをコードする内因性遺伝子のプロモーターを活性化するために、ガイドRNAと組み合わせて投与される。
【0059】
いくつかの実施形態では、dnDLk又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子は、神経保護に関与するポリペプチド、例えば、SCG10/STMN2、BCL-XL、又はTRKBポリペプチドをコードする核酸と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、アクアポリン、CNTFポリペプチド(シグナル配列を有する)、BDNF、GDNF、又はNGFポリペプチドである。いくつかの実施形態では、補体阻害剤ポリペプチドが発現される。いくつかの実施形態では、GLP-1R若しくはGLP-1ポリペプチド、又はCDKN2B-AS1ポリペプチドが発現される。いくつかの実施形態では、GLDN、CHL1、QPCT、TBX20、DGKG、TIMP2、EGR1、EOMES、JUNB、IGFBP2、OSTF1、FGF1、SEMA5A、ESRRG、KBTBD11、RAMP1、ETL4、PRKCQ、CTXN3、NDNF、MAN1A、SDK2、PRPH、SDK1、又はIFI27ポリペプチドが発現される。代替的な実施形態では、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子は、内因性神経保護遺伝子のプロモーターを活性化するために、CRISPRタンパク質/ガイドRNAと組み合わせて投与される。本段落の目的のために、遺伝子命名法は、ポリペプチドを指定するためにも使用される。
【0060】
いくつかの実施形態では、dnDLK又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする導入遺伝子は、神経保護を強化するために、遺伝子の発現又は遺伝子によってコードされる生成物の活性を阻害する阻害剤とともに投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、核酸、例えば、阻害される遺伝子を標的とするアンチセンスRNA又はshRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は、阻害される遺伝子又は遺伝子のプロモーターを標的とするCRISPRタンパク質/gRNAタンパク質である。いくつかの実施形態では、阻害タンパク質、例えば、抗体(本明細書で使用される場合、ナノボディ、一本鎖免疫グロブリン、又は標的タンパク質に結合する他の抗体断片を含む)、ドミナントネガティブポリペプチド、及び/又はプロテアソーム分解のために阻害されるタンパク質に結合し、標的とするタンパク質が、投与される。いくつかの実施形態では、阻害のために標的とされる遺伝子又は遺伝子産物(例えば、MEKK4、MLK2/MAP3K10、PUMA/BBC3、SARM1、ROCK1、ROCK2、TAOK1、TAOK2、TAOK3、TNIK、MAP4K4、MINK1、GSK-3β、GSK-3α、MAP2K7/MKK7、MAP2K4/MKK4、PERK、CHOP、HSP90、SNRK、JNK1(MAPK8)、JNK2(MAPK9)、JNK3(MAPK10)、JUN、ATF2、MEF2A、SOX11、MST1/STK4、MST2/STK3、END1、又はEND2)は、軸索また細胞体の保護に関与する。いくつかの実施形態では、阻害のために標的とされる遺伝子又は遺伝子産物は、グリア相互作用に関与するか(例えば、C1q、TNFα、若しくはIL-1α)、又は緑内障関連遺伝子である(例えば、MYOC、TBK1、若しくはCDKN2B-AS1)。本段落の目的のために、遺伝子命名法は、ポリペプチドを指定するためにも使用される。
【0061】
3.2 神経細胞を遺伝子改変するための代替方法
いくつかの実施形態では、ドミナントネガティブポリペプチドをコードする導入遺伝子を神経細胞に導入するための遺伝子改変は、遺伝子組み込みのためのトランスポザーゼ系、例えば、CRISPR/Cas媒介性遺伝子組み込み、TALENS又はジンクフィンガーを使用して行われる。例えば、CRISPR/Cas媒介性遺伝子組み込みは、ドミナントネガティブポリペプチドをインビボで神経細胞に、又はエクスビボで神経細胞に導入するために用いることができ、これは次いで患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のドミナントネガティブ変異を内因性遺伝子に導入するために、遺伝子改変系、例えば、CRISPR/Cas、TALENS、又はジンクフィンガーヌクレアーゼ系が用いられる。そのようなシステムは、ウイルスベクター系を含む任意の系を使用して、神経細胞に送達され得る。
【0062】
3.3 遺伝子改変された神経細胞は、ドミナントネガティブ変異を発現する
DLKがキナーゼシグナル伝達に関与する任意の神経細胞は、本開示に記載されるようなドミナントネガティブポリペプチドを発現するように修飾することができる。本明細書で使用される「神経細胞」は、ニューロンに関連する任意の種類の細胞だけでなく、神経経路で役割を果たす膠細胞等の非神経細胞も含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は、眼ニューロンである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、網膜色素上皮(RPE)細胞、光受容体細胞、網膜神経節、ミュラー細胞を含む神経グリア細胞、双極細胞等の他の内部網膜ニューロン、及びアマクリン細胞、角膜内皮細胞等である。いくつかの実施形態では、神経細胞は、眼ニューロン、網膜色素上皮(RPE)細胞、光受容体細胞、又は網膜神経節である。いくつかの実施形態では、神経細胞は、内有毛細胞及び外有毛細胞を含む、耳科ニューロンである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、らせん神経節ニューロンである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、三叉神経ニューロン又は顔面神経ニューロンである。いくつかの実施形態では、神経細胞は、末梢神経系(PNS)又はCNSニューロン等の中枢神経系(CNS)細胞である。
【0063】
4.神経保護/神経細胞死の阻害
本開示は更に、本明細書に記載のdnDLKポリペプチド又はdnDLK/LZKポリペプチドを発現するようにニューロンの集団を遺伝子改変することによって、神経細胞死を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはタンパク質として投与され得るが、典型的な実施形態では、dnDLKポリペプチド又はdnDLK/LZKポリペプチドをコードする核酸が、神経細胞の集団に導入される。以下のセクションは、ポリペプチドをコードする核酸の投与に焦点を当てている。当業者は、dnDLKポリペプチド又はdnDLK/LZKポリペプチドが、例えば、ポリペプチドの持続的な存在を必要としない、特定の治療用途においても用いられ得ることを理解するであろう。ポリペプチドのための医薬製剤は、対象にポリペプチドを送達するための既知のパラメータに基づいて容易に調製することができる。
【0064】
組成物は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、鳥類、又は非ヒト霊長類(例えば、マカク)等の非ヒト対象を含む任意の対象に投与され得る。典型的な実施形態では、対象はヒトである。
【0065】
4.1 医薬組成物及び投与
一態様では、本開示は、神経細胞死を阻害するための、ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸を含む医薬組成物を提供する。核酸は、神経変性疾患の治療に好適な投与計画を用いて、治療有効量で投与される。「治療有効量」とは、神経変性疾患等の神経疾患の1つ以上の症状の軽減、遅延、寛解又は任意の改善を含む、所望の結果を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を指す。いくつかの実施形態では、ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸は、神経疾患の1つ以上の系統を防止するために予防的に投与される。そのような組成物の治療有効量は、病態の程度、個体の年齢、性別、及び体重、又は個体において所望される応答を誘発する遺伝子治療ベクターの能力等の要因に応じて変動し得る。投与計画は、最適な応答を提供するように調整することができる。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が、ウイルスベクターのあらゆる毒性又は有害作用を上回る量である。
【0066】
組成物は、様々な薬物送達システムで使用するために製剤化することができる。適切な製剤化のために、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤又は担体もまた、組成物中に含まれ得る。例えば、ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸は、患者への投与に好適な溶液、例えば、注射用の滅菌等張溶液中に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、担体は、水性、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等である。組成物は、生理学的条件に近づくように、必要に応じて補助的な医薬物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、張度調整剤を含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与を容易にするために、リポソーム、ナノカプセル、ナノ粒子、ミクロスフィア、脂質粒子、小胞等の送達ビヒクルが使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする導入遺伝子を含むウイルスベクターは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子等に封入された送達のために製剤化することができる。
【0068】
典型的な実施形態では、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードするウイルスベクターは、対象に投与される。投与量値は、状態の重症度によって異なり得る。任意の特定の対象のために、特定の投与計画は、個々のニーズ、及び組成物を投与する又は組成物の投与を監督する人物の専門的判断に従って経時的に調整することができ、本明細書に記載される投与量範囲は例示目的に過ぎず、特許請求される組成物の範囲又は実施を制限することを意図するものではないことを更に理解されたい。
【0069】
いくつかの実施形態では、対象に投与されるウイルスベクターは、AAV粒子調製物である。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、単一のボーラス剤が投与されてもよいか、いくつかに分割した用量が経時的に投与されてもよいか、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少若しくは増加させてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ヒトへの投与では、AAVの投与量は、1回の注射、例えば、眼内注射当たり109~1013のAAV粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、注射当たり、109~1010、1010~1011、1011~1012、又は1012~1013のウイルス粒子が投与され得る。投与量に関して本明細書で使用される場合、AAV粒子の数は、ウイルスゲノムの数と同等である。
【0070】
他の遺伝子治療ベクターとの組み合わせを含む複数の治療が、例えば、対象の生涯にわたって、任意の対象に対して施され得る。
【0071】
ドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸は、任意の投与経路を用いて導入され得る。例えば、遺伝子治療ベクターは、全身的に、例えば、静脈内注射若しくは注入によって、あるいは局所的に、例えば、網膜注射、又は眼内投与若しくは注入によって投与されてもよい。本発明は、特定の投与部位又は投与方法に限定されない。
【0072】
4.2 神経障害
ポリペプチドをコードする導入遺伝子を投与するための遺伝子治療ベクター等の、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸を使用して、限定されないが以下を含む神経障害を治療することができる:緑内障(開放角及び狭隅角/閉塞隅角緑内障、原発性及び続発性緑内障、正常眼圧緑内障及び高眼圧緑内障を含む)、乾燥(非滲出性)及び湿潤(滲出性、新生血管)AMDを含む加齢性黄斑変性症(AMD)、脈絡膜新生血管(CNV)、脈絡膜新生血管膜(CNVM)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、網膜上膜(ERM)及び黄斑円孔、近視関連脈絡膜新生血管、網膜色素線条及び血管線条、網膜剥離、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、網膜色素上皮の萎縮性及び肥大性病変、網膜静脈閉塞、脈絡膜網膜静脈閉塞、黄斑浮腫、腎静脈閉塞に関連する黄斑浮腫、網膜色素変性症及び他の遺伝性網膜変性(例えば、シュタルガルト病)、未熟児網膜症、中毒性視神経症を含む他の視神経症(例えば、メタノール、エタンブトール)、非動脈性虚血性視神経症、動脈性虚血性視神経症/巨大細胞動脈炎、外傷性視神経症(外傷性脳損傷を含む)、特発性頭蓋内高血圧症/偽脳腫瘍、炎症性視神経症(例えば、視神経炎)、圧縮視神経症(例えば、下垂体腺腫)、浸潤性視神経症(例えば、サルコイドーシス、リンパ腫)、自己免疫性視神経症、脂質貯蔵疾患(例えば、テイ・サックス病)、栄養性視神経症、レーベル遺伝性視神経症、優性視神経萎縮症、フリードライヒ運動失調症、放射線誘発性視神経症、医原性視神経症、宇宙飛行関連神経眼症候群(SANS)、眼の炎症性障害、例えば、ブドウ膜炎、強膜炎、白内障、屈折異常、例えば、近視、遠視、乱視又は円錐角膜、神経障害性角膜症、角膜除神経、並びに助長する角膜の神経再支配及び糖尿病性角膜症。
【0073】
眼科以外の神経変性障害もまた、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸を使用して治療され得る。そのような障害としては、限定されないが、以下が挙げられる:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷性脳損傷、パーキンソンプラス病、ハンチントン病、末梢神経障害、虚血、脳卒中、頭蓋内出血、脳出血、重金属、工業用溶媒、薬物及び化学療法剤からなる群から選択される有毒化合物への曝露によって引き起こされる神経損傷、物理的、機械的又は化学的な外傷によって引き起こされる神経系への損傷、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、原発性側索硬化症(PLS)、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、無脊椎動物ディスク症候群、頸椎症、神経叢障害、胸郭出口破壊症候群、ポルフィリン症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脱髄疾患、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、ウシ海綿状脳症、ピック病、てんかん、エイズ認知症複合。いくつかの実施形態では、ヘルペスウイルスの再活性化を防止するために、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドが用いられる。いくつかの実施形態では、異常な神経細胞再生を防止するために、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドが用いられる。いくつかの実施形態では、障害は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)、例えば、化学療法剤への曝露によって引き起こされる神経損傷である。いくつかの実施形態では、疾患は、聴力損失障害、例えば、加齢性聴力損失、化学療法誘発性聴力損失、遺伝性聴力損失、アミノグリコシド誘発性聴力損失、外傷誘発性聴力損失、及び騒音誘発性聴力損失である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸は、緑内障、加齢性黄斑変性症、脈絡膜新生血管(CNV)、近視関連脈絡膜新生血管、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞を治療又は予防するために、対象に投与される。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸は、遺伝性網膜疾患、例えば、網膜色素変性症等の網膜疾患を治療するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、網膜疾患は、ロドプシンの誤った輸送及び/又は誤った折り畳みを伴う。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のドミナントネガティブポリペプチドをコードする核酸は、緑内障、遺伝性網膜変性、非滲出性AMD/地図状萎縮、虚血をもたらす網膜血管疾患(糖尿病、静脈閉塞)、網膜剥離及び浮腫をもたらす疾患(滲出性AMDを含む)を含む視神経症を治療及び/又は予防するために使用することができる。
【0077】
本開示の別の態様は、眼及び他の形態の神経変性の治療のための細胞移植に基づく再生アプローチである。これらには、黄斑変性及び光受容体変性の形態の治療のための光受容体及び/又はRPE移植、並びに緑内障及び他の形態の視神経疾患の治療のためのRGC移植が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸は、眼変性疾患及び他の形態の神経変性のための神経細胞の移植の前又は後のいずれかに、移植のために細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸を、幹細胞等の前駆細胞に導入することができる。
【0078】
ヒトにおける上述の十分に特徴付けられた疾患はまた、他の哺乳動物において同等の病因で発生する場合があり、それらにおいても同様に本開示の化合物を用いて治療することができる。
【0079】
P1実施形態
実施形態P1-1.配列番号1の領域1~520に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有するアミノ酸セグメントを含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパーキナーゼ(dnDLK)ポリペプチドをコードする核酸であって、
ポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、変異が、43位の置換、302位の置換、及び516位の置換から選択される、核酸。
実施形態P1-2.dnDLKポリペプチドが、302位に置換を含み、置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、実施形態P1-1に記載の核酸。
実施形態P1-3.302位の置換が、S302Aである、実施形態P1-2に記載の核酸。
実施形態P1-4.dnDLKポリペプチドが、43位に置換を含む、実施形態P1-1、P1-2、又はP1-3のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-5.43位の置換が、E又はDである、実施形態P1-4に記載の核酸。
実施形態P1-6.43位の置換が、Eである、実施形態P1-5に記載の核酸。
実施形態P1-7.dnDLKポリペプチドが、置換T43E及びS302Aを含む、実施形態P1-1に記載の核酸。
実施形態P1-8.dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、実施形態P1-1~P1-7のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-9.185位の置換が、K185Aである、実施形態P1-8に記載の核酸。
実施形態P1-10.dnDLKポリペプチドが、516位に置換を含む、実施形態P1-1~P1-9のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-11.516位の置換が、G516Vである、実施形態P1-10に記載の核酸。
実施形態P1-12.dnDLKポリペプチドが、424位又は426位に置換を含む、実施形態P1-1~P1-11のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-13.dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、実施形態P1-12に記載の核酸。
実施形態P1-14.配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含む、実施形態P1-1に記載の核酸。
実施形態P1-15.配列番号1の領域158~520に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパー(dnDLK)ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、変異が、302位の置換及び516位の置換から選択される、核酸。
実施形態P1-16.dnDLKポリペプチドが、S302位に置換を含み、置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、実施形態P1-15に記載の核酸。
実施形態P1-17.置換が、S302Aである、実施形態P1-16に記載の核酸。
実施形態P1-18.dnDLKポリペプチドが、516位に置換を含む、実施形態P1-15、P1-16、又はP1-17に記載の核酸。
実施形態P1-19.516位の置換が、G516Vである、実施形態P1-18に記載の核酸。
実施形態P1-20.dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、実施形態P1-15~P1-19のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-21.185位の置換が、K185Aである、実施形態P1-20に記載の核酸。
実施形態P1-22.dnDLKポリペプチドが、424位及び/又は426位に置換を含む、実施形態P1-15~P1-21のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態P1-23.dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、実施形態P1~22に記載の核酸。
実施形態P1-24.(LZK)によりホモ二量体化及びDLKヘテロ二量体化を阻害するロイシンジッパーポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドが、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、核酸。
実施形態P1-25.ポリペプチドが、150アミノ酸長未満である、実施形態P1-24に記載の核酸。
実施形態P1-26.実施形態P1-1~P1-25のいずれか1つに記載の核酸を含む、ベクター。
実施形態P1-27.ベクターが、ウイルスベクターである、実施形態P1-26に記載のベクター。
実施形態P1-28.ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態P1-27に記載のベクター。
実施形態P1-29.AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11由来又は偽型AAV由来のベクターである、実施形態P1-28に記載のベクター。
実施形態P1-30.ベクターが、AAV2.7m8である、実施形態P1-29に記載のベクター。
実施形態P1-31.ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を更に含む、実施形態P1-26~P1-31のいずれか1つに記載のベクター。
実施形態P1-32.実施形態P1-1~P1-25のいずれか1つに記載の核酸、又は実施形態P1-26~P1-31のいずれか1つに記載のベクターを含む、宿主細胞。
実施形態P1-33.宿主細胞が、ニューロンである、実施形態P1-32に記載の宿主細胞。
実施形態P1-34.ニューロンが、網膜神経節である、実施形態P1-33に記載の宿主細胞。
実施形態P1-35.宿主細胞が、哺乳動物細胞である、実施形態P1-33又はP1-34に記載の宿主細胞。
実施形態P1-36.宿主細胞が、ヒト細胞である、実施形態P1-35に記載の宿主細胞。
実施形態P1-37.神経細胞死を阻害する方法であって、実施形態P1-1~P1-25のいずれか1つに記載の核酸、又は実施形態P1~26~P1-31のいずれか1つに記載のベクターを、神経細胞に導入することを含む、方法。
実施形態P1-38.神経細胞が、エクスビボである、実施形態P1-37に記載の方法。
実施形態P1-39.神経細胞が、インビボである、実施形態P1-37に記載の方法。
実施形態P1-40.神経細胞が、眼ニューロンである、実施形態P1-37~P1-39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態P1-41.眼ニューロンが、網膜神経節である、実施形態P1-40に記載の方法。
実施形態P1-42.神経細胞が、光受容体細胞である、実施形態P1-37~P1-39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態P1-43.神経細胞が、哺乳動物である、実施形態態P1-37~P1-42に記載の方法。
実施形態P1-44.ニューロンが、ヒト神経細胞である、実施形態P1-43に記載の方法。
実施形態P1-45.神経細胞死の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、実施形態P1-1~P1-25のいずれか1つの核酸、又は実施形態P1-26~P1-31のいずれか1つのベクターを、対象に投与することを含む、方法。
実施形態P1-46.対象が、緑内障、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管(CNV)、近視性CNV、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞症を有する、実施形態P1-45に記載の方法。
実施形態P1-47.対象が、遺伝性網膜疾患を有する、実施形態P1-45に記載の方法。
実施形態P1-48.遺伝性網膜疾患が、網膜色素変性症である、実施形態P1-47に記載の方法。
実施形態P1-49.実施形態P1-1~P1-25のいずれか1つに記載の核酸によってコードされる、ポリペプチド。
【0080】
実施形態
実施形態1.配列番号1の領域1~520に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を有するアミノ酸セグメントを含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパーキナーゼ(dnDLK)ポリペプチドをコードする核酸であって、
dnDLKポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、変異が、302位の置換であり、置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、核酸。
実施形態2.302位の置換が、S302Aである、実施形態1に記載の核酸。
実施形態3.dnDLKポリペプチドが、550アミノ酸長未満である、実施形態1又は2に記載の核酸。
実施形態4.dnDLKポリペプチドが、43位に置換を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態5.43位の置換が、E又はDである、実施形態3に記載の核酸。
実施形態6.43位の置換が、Eである、実施形態5に記載の核酸。
実施形態7.dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態8.185位の置換が、K185Aである、実施形態7に記載の核酸。
実施形態9.dnDLKポリペプチドが、424位又は426位に置換を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態10.dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、実施形態9に記載の核酸。
実施形態11.dnDLKポリペプチドが、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の核酸。
実施形態12.配列番号11に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態13.(LZK)によりホモ二量体化及びDLKヘテロ二量体化を阻害するロイシンジッパーポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドが、配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号8を含む、核酸。
実施形態14.ポリペプチドが、150アミノ酸長未満である、実施形態13に記載の核酸。
実施形態15.配列番号1の領域158~520に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むドミナントネガティブデュアルロイシンジッパー(dnDLK)ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドが、配列番号1を基準として決定される場合、少なくとも1つの変異を含み、少なくとも1つの変異が、302位にある、核酸。
実施形態16.dnDLKポリペプチドが、S302位に置換を含み、置換が、スレオニン以外の任意のアミノ酸である、実施形態15に記載の核酸。
実施形態17.置換が、S302Aである、実施形態16に記載の核酸。
実施形態18.dnDLKポリペプチドが、185位に置換を含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態19.185位の置換が、K185Aである、実施形態18に記載の核酸。
実施形態20.dnDLKポリペプチドが、424位及び/又は426位に置換を含む、実施形態15~19のいずれか1つに記載の核酸。
実施形態21.dnDLKポリペプチドが、431位、438位、440位、445位、447位、486位、491位、又は493位に置換を更に含む、実施形態20に記載の核酸。
実施形態22.実施形態1~14のいずれか1つに記載の核酸を含む、ベクター。
実施形態23.ベクターが、ウイルスベクターである、実施形態22に記載のベクター。
実施形態24.ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態23に記載のベクター。
実施形態25.AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11由来又は偽型AAV由来のベクターである、実施形態24に記載のベクター。
実施形態26.ベクターが、AAV2.7m8である、実施形態25に記載のベクター。
実施形態27.ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を更に含む、実施形態22~26のいずれか1つに記載のベクター。
実施形態28.実施形態1~21のいずれか1つに記載の核酸、又は実施形態22~27のいずれか1つに記載のベクターを含む、宿主細胞。
実施形態29.宿主細胞が、ニューロンである、実施形態28に記載の宿主細胞。
実施形態30.ニューロンが、網膜神経節である、実施形態29に記載の宿主細胞。
実施形態31.宿主細胞が、哺乳動物細胞である、実施形態29又は30に記載の宿主細胞。
実施形態32.宿主細胞が、ヒト細胞である、実施形態31に記載の宿主細胞。
実施形態33.神経細胞死を阻害する方法であって、実施形態1~21のいずれか1つに記載の核酸、又は実施形態22~27のいずれか1つに記載のベクターを、神経細胞に導入することを含む、方法。
実施形態34.神経細胞が、エクスビボである、実施形態33に記載の方法。
実施形態35.神経細胞が、インビボである、実施形態33に記載の方法。
実施形態36.神経細胞が、眼ニューロンである、実施形態33~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.眼ニューロンが、網膜神経節である、実施形態36に記載の方法。
実施形態38.神経細胞が、光受容体細胞である、実施形態33~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39.神経細胞が、哺乳動物である、実施形態33~38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40.ニューロンが、ヒト神経細胞である、実施形態39に記載の方法。
実施形態41.神経細胞死の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、実施形態1~21のいずれか1つの核酸、実施形態22~27のいずれか1つのベクターを、対象に投与することを含む、方法。
実施形態42.対象が、緑内障、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管(CNV)、近視性CNV、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞症を有する、実施形態41に記載の方法。
実施形態43.対象が、遺伝性網膜疾患を有する、実施形態41に記載の方法。
実施形態44.遺伝性網膜疾患が、網膜色素変性症である、実施形態43に記載の方法。
実施形態45.実施形態1~21のいずれか1つに記載の核酸によってコードされる、ポリペプチド。
【0081】
5.アッセイ、方法及び実験結果
5.1 方法論
5.1.1 レンチウイルスの産生
DN DLK及びLZKを発現するレンチウイルスは、Gibson Assembly(Kpn2Iで消化)を使用して、合成DNA断片をpLenti-EF1-mScarlet骨格にサブクローニングすることによって作製した。その結果、DLKが小さなリンカーペプチドによってmScarletに融合した。ロイシンジッパーについては、翻訳中にリボソームスキッピングを誘導するP2A配列を、mScarletと断片との間に挿入した。Lipofectamine 2000(Thermo Scientific番号11668019)を使用して、293-HEK細胞を様々なレンチウイルス構築物でトランスフェクトした。1Mの酪酸ナトリウム(Sigma Aldrich番号B5887)を、トランスフェクション後24時間に添加した。ウイルス上清をトランスフェクション後48時間に回収し、Lenti-X Concentrator(Takara)で濃縮した。
【0082】
5.1.2 初代RGC
出生後0~3日目のマウスから網膜を単離し、パパインで解離した。抗CD11b(BD Pharmingen、554859)とコンジュゲートしたCELLection Dynabeads(Invitrogen)でミクログリアを免疫枯渇させた。網膜細胞の懸濁液を、室温(RT)で、抗Thy1.2抗体(BioRad、MCA02R)及びヤギ抗マウスIgM(Jackson Immunoresearch、115-001-020)と事前にコンジュゲートしたプレート上でイムノパンニングした。洗浄後、網膜神経節細胞(RGC)をトリプシン(SigmaT9201)でプレートから剥離し、計数し、96ウェルプレート(Nunclonプレート及びPoly-D-リジンでコーティング)にウェル当たり5,000~10,000の密度で播種した。増殖培地は、NS21、Sato、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、N-アセチル-システイン、インスリン、ピルビン酸ナトリウム、トリヨードチロニン(T3)、フォルスコリン(Chen et al.,2008)、及びRGCの死滅を予防するための1μMのGNE 3511(Genentech)を補充したNeurobasal(Life Technologies)で構成されていた。レンチウイルスDN DLK及びLZKの形質導入を、単離時に行った。
【0083】
5.1.3 生存率アッセイ
形質導入後3~5日目に、GNE 3511(DLK/LZK阻害剤)を初代RGCから除去して細胞死を開始させた。50%体積のCellTiter-Glo(CTG)(Promega G8462)を添加することによって、GNE除去後3日目の生存[相対光単位(RLU)]について細胞をアッセイした。プレートリーダー(Molecular Devices)で発光を測定した。これにより、生存細胞の数の計算が可能になった。レンチウイルス構築物の「効力」は、CTGによって測定された生存効果をもたらしたレンチウイルスの最低力価(ウイルスゲノム(vg)のレベルとして表される)を決定することによって評価した。構築物の「有効性」は、同じレンチウイルス濃度の異なる構築物の生存を比較することによって評価した。
【0084】
5.1.4 レンチウイルスゲノムコピー数を定量するための定量的逆転写酵素PCR
293-HEK細胞を、セクション5.1.1に記載されているように、DN DLK及びLZKを発現するレンチウイルスで形質導入した。細胞を回収し、QuickExtract RNA抽出キット(Lucigen番号QE09050)を使用してDNAを抽出した。CFX Connect Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad 1855200)を使用してPCR分析を実施した。フォワード(CCTTTCCGGGACTTTCGCTTT)及びリバース(GCAGAATCCAGGTGGCAACA)プライマーを使用するSsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-Rad 1725270)を用いてqPCRを行い、レンチウイルスmRNAレベル(すなわち、ゲノムコピー数)を検出した。Sox11を内部対照として増幅した(Sox11、フォワードプライマー:CACCGATGAACGGGATCTTCTCGC、リバースプライマー:AAACGCGAGAAGATCCCGTTCATC)。
【0085】
5.1.5 ランダム変異誘発スクリーニング
DLKの約1kb切片(ヌクレオチド772~1830)を、全長DLKcDNAから増幅した。GeneMorph II Error-Prone PCR Kit(Agilent)を使用し、1変異/kbのおよその変異頻度を維持しながら、エラープローンPCRを用いて、増幅産物をランダムに変異誘発した。次いで、変異誘発したインサート及び骨格をAarI及びBstXIで消化し、Quick Ligase(NEB)を使用してライゲーションした。初代RGCへのレンチウイルスDN DLKライブラリーの形質導入は、0.3の感染多重度で単離したときに行った。形質導入後3~5日目にGNE 3511を除去することにより選択圧を誘発した。GNE 3511除去後5~7日後の生存細胞を回収し、次世代シーケンシングによって分析した。
【0086】
5.2 神経保護DLKバリアントの作製
一連の構築物を調製して、特定の位置での野生型ヒトDLK(配列番号1)の変異の影響を評価し、C末端でのDLKの切断の影響を試験した。
【0087】
5.2.1 S302 dnDLK
DLKリン酸化部位である302位に置換を有するDLK変異体を作製した。302位(S302A)でアラニンをSに置換し、上記のようにマウス網膜神経節ニューロンの生存への影響を評価した。いくつかの実験では、保護活性をdnDLKのK185Aと比較した。K185A変異は、DLK自己リン酸化をブロックする。我々は、DNKのS302Aバリアントが神経保護的であることを見出した。実際、S302 DLKは、DLK K185Aバリアントよりも高い神経保護活性を有していた。
図2(K185A対S302A)を参照されたい。特定の機構に拘束されることを意図するものではないが、S302A変異は、ホスホキナーゼA(PKA)によるDLK活性化をブロックすると考えられる。
【0088】
図2はまた、より短いヒトDLKアイソフォーム配列番号13(
図2の構築物K185A(iso2))に導入されたK185A変異も、この実験で評価した他の変異体構築物で得られた神経保護と比較して低いレベルではあるが、神経保護的であったことを示すデータを提供する。
【0089】
5.2.2 C末端切断(ΔC-dnDLK)
我々は、K185A DLKのC末端アミノ酸521~892の除去が、K185A DLKの保護活性を有意に低下させなかったことを見出した。
図2(K185A対K185A/ΔC)を参照されたい。我々は、C末端を欠失させることによって、dnDLK活性を保持しながら、DLKのサイズを減少させることができると結論付けた。ΔC-dnDLKのより小さいサイズは、はるかに短い導入遺伝子を使用して、活性dnDLKを細胞に送達できることを意味する。
【0090】
5.2.3 S302/ΔC dnDLK
我々は、S302A置換を残基521~892のC末端欠失と組み合わせたバリアントを調製した。
図1Aに示されるように、S302/ΔC dnDLKは、K185Aバリアントよりも保護性が高かった。導入遺伝子の効力は10倍増加し、一方で最大有効性は2.5倍増加した。
【0091】
5.2.4 LZK LZは神経保護的である
DLKは、DLKロイシンジッパーを介してホモ二量体化することが知られている。DLKロイシンジッパー自体が、おそらくDLKに結合してホモ二量体化を防止する能力によって、dnDLKとして機能し得ることも示されている(Nihalani et al.,J.Biol.Chem.275:7273-7279,2000)。
【0092】
LZKロイシンジッパードメイン(配列番号8)を発現させるための構築物を調製した。驚くべきことに、LZKロイシンジッパードメイン(
図1BにおいてP2A LZK LZとして示される構築物)は、神経保護活性を有していた。この構築物は、効力を10倍、有効性を約8.5倍増加させた(
図1Bを参照されたい)。DLKロイシンジッパードメイン(
図2においてP2A DLK LZとして示される)を発現する構築物は、保護活性を示さなかった。また、DLK LZ及びLZK LZ P2A融合構築物も作製したが、RGCの生存には影響を及ぼさなかった(データは示さず)。同様に、DLK LZ及びLZK LZをコードする構築物の同時トランスフェクションは、生存率の改善をもたらさなかった(データは示さず)。特定の機構に拘束されることを意図するものではないが、LZK LZポリペプチドは、DLK-LZKヘテロ二量体化を阻害すると考えられる。
【0093】
5.2.5 T43E dnDLK
本実施例では、一連のリン酸化模倣変異体(T9E、S11E、T43E、S272E及びS533E)を作製した。これらのうち、T43Eバリアントは、神経保護的であった(
図2を参照されたい(K185A対K185A/T43E)。
【0094】
Huntwork-Rodriguez(J.Cell Biol202:747-763,2013)は、神経損傷後、DLKの長さにわたる特定の部位がc-JunN末端キナーゼによるリン酸化を受けたことを実証した。これらのリン酸化事象は、DLKユビキチン化の低減を介してDLK存在量の増加をもたらした。我々は、これらの部位にリン酸化模倣変異を導入して、より安定なドミナントネガティブDLKポリペプチドを作製できるという仮説を立てた。部位T9、S11、T43、S272、及びS533を前述のように変異誘発した。リン酸化模倣変異をK185A変異体のバックグラウンドに導入した。
【0095】
様々なリン酸化模倣DN DLK変異体をコードするレンチウイルスを、セクション5.1.1に記載されているように作製し、等しい力価でRGCに形質導入した。DLK/LZK阻害剤GNE 3511は、細胞死を防止するために培地中に存在していた。形質導入後3~5日目に、GNE 3511を初代RGCから除去して細胞死を開始させた。細胞を、GNE除去後3日目の生存についてアッセイした。発光(相対光単位(RLU)を測定して、生存細胞の数を決定した。
【0096】
この分析では、T43E K185Aのみが、K185Aと比較して強化された神経保護を示した。全ての構築物の神経保護活性を以下に要約する。
-T9E S11E K185A:K185A変異単独と比較して有意差なし
-S533E K185A:K185A変異単独と比較して有意差なし
-T9E S11E S272E S533E K185A:K185A変異単独と比較して有意差なし
-T43E S272E S533E K185A:陰性対照(GNE除去)と比較して生存率の改善なし
-T43E K185A:K185A単独と比較して約3倍の生存率改善
【0097】
5.2.6 G516 dnDLK
dnDLK変異を発見するための代替的なアプローチとして、ヒトDLKをランダムに変異誘発し、RGCを形質導入し、生存細胞に残存する配列を回収した(すなわち、指向性進化)。
【0098】
DLKをランダムに変異誘発したレンチウイルスライブラリーを作製した。RGCは、各細胞が平均して1つのウイルスを受け取るように、1の感染多重度(MOI)で感染させた。LK/LZK阻害剤GNE 3511は、当初、細胞死を防止するために培地中に存在していた。次いで、生存細胞のみが活性DLKドミナントネガティブを含むように、GN 3511を除去することにより選択圧を適用した。選択圧を適用する前に、次世代シーケンシングによって変異のベースライン分布を示した。選択圧後、生存細胞の次世代シーケンシングにより、G516Vがベースライン分布を超えて最も濃縮されていることが確認された。このようにして、本スクリーニングにより、dnDLKも生成する新しい変異体G516Vが同定された。
【0099】
5.3 dnDLKのインビボ投与
5.3.1 緑内障のラットモデル
S302A置換を残基521~892のC末端欠失と組み合わせたdnDLKバリアント(配列番号6)をコードするAAVの投与の効果を、緑内障のラットモデルにおいて評価した。
【0100】
動物(1群当たり8匹)をイソフルランで麻酔し、dnDLKを発現するAAV、又は対照としてGFPを発現するAAVを、5×109ウイルスゲノムの用量で1回硝子体内注射した。
【0101】
4週間後、動物をケタミン/キシラジンカクテルで麻酔し、プロパラカイン点眼薬で眼に局所麻酔した。麻酔後、低温の焼灼ペン(700~1000F)で、眼の辺縁神経叢の周囲を穏やかにタッピングした。適切な焼灼は、結膜のわずかな褐変及び上強膜血管の白化によって確認した。次いで、感染及び角膜の乾燥を防止するために、眼を抗生物質軟膏でコーティングした。損傷の6週間後、動物を麻酔し、次いで4%のPFAで灌流し、網膜をRBPMS及びSNCGで免疫蛍光標識した。
【0102】
緑内障モデルにおけるRGC生存率を定量するために、中心領域及び末梢領域が等しく表示されるように、網膜当たりのRBPMS標識したRGCの合計16枚の画像を10倍の倍率で撮影した。RGCの数は、画像ごとに自動画像解析ソフトウェアを使用して定量し、次いで網膜ごとに平均化した。
【0103】
軸索変性を評価するために、SNCGを標識した視神経乳頭を10倍の倍率で撮像し、モンタージュして軸索の健康を評価した。モンタージュした画像は、1から5までスコア化した(5は健康な軸索、1は完全に変性した状態)治癒レベルについて治験責任医師のパネルによって評価された。健康を評価するための基準には、軸索束の厚さ、軸索形状の均一性又は直線性、及び軸索喪失を伴う網膜のパーセンテージが含まれた。
【0104】
図3は、左パネルに、dnDLKを投与した動物と対照を投与した動物における軸索の平均軸索健康スコアを示し、右パネルに、軸索変性を評価することによって評価した視神経乳頭変性の平均パーセンテージを示す。dnDLKを発現するAAVを注射した眼からの網膜は、平均スコア4(5点満点中)で緑内障から保護されたのに対し、GFPを発現するAAVを注射した眼からの網膜は、平均スコア2で変性軸索を有していた。更に、緑内障損傷は、GFP網膜において平均65%の軸索変性を引き起こしたが、dnDLKを含む網膜では軸索完全性の損失はわずか20%であった。緑内障後のRGC生存率は、dnDLKによって改善され、損傷のないdnDLKを含む網膜と比較するとRGCにおける損失は平均8%であった。GFPを含む網膜は、損傷のないGFP網膜と比較して、損傷がある場合のRGC損失は平均37.5%であった。
【0105】
したがって、この結果は、dnDLKがインビボラットモデルにおいて緑内障損傷からRGCを保護したことを実証するものである。
***
【0106】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示的な目的のためだけのものであり、それを考慮して様々な修正又は変更が当業者に提案され、本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。
【0107】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それらが明示的に引用される資料に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【表3】
【0108】
配列番号1 ヒトDLKキナーゼドメインポリペプチド配列、UniProt Q12852-2;UniProt Q12852-1の46位にあるヒスチジンの代わりに、アミノ酸配列QCVLRDVVPLGGQGGGGPSPSPGGEPPPEPFANSを含む;配列番号13を参照のこと)。実施例で言及されるC末端欠失配列を下線で示す。
【表4】
配列番号2 UniProt Q12852に定義される触媒(キナーゼ)ドメインアミノ酸配列
【表5】
配列番号3 ヒトDLKロイシンジッパードメイン配列
【表6】
配列番号4 ヒトDLKのロイシンジッパー1配列(Uniprot Q12852に定義されるとおり)
VKLHFEKIKSEGTCLHRLEEEL
配列番号5 ヒトDLKのロイシンジッパー2配列(Uniprot Q12852に定義されるとおり)
LNALMLQLELKERELLRREQAL
配列番号6 302に変異を有するC末端欠失dnDLK
【表7】
配列番号7 302及び43に変異を有するC末端欠失dnDLK
【表8】
配列番号8 ヒトMAP3K13(ロイシンジッパーキナーゼ)ロイシンジッパードメインアミノ酸配列
LATPQETYFKSQAEWREEVKKHFEKIKSEGTCIHRLDEELIRRRREELRHALDIREHYERKLERANNLYMELSAIMLQLEMREKELIKREQAVEKKYPGTYKRHPVRPIIHPNAME
配列番号9 配列番号1をコードするDLK全長cDNA配列
ATGGCTTGCCTCCATGAGACCCGAACACCCTCTCCTTCCTTTGGGGGCTTTGTGTCTACCCTAAGTGAGGCATCCATGCGCAAGCTGGACCCAGACACTTCTGACTGCACTCCCGAGAAGGACCTGACGCCTACCCAGTGTGTACTTCGAGATGTGGTACCCCTTGGTGGGCAGGGTGGGGGAGGGCCCAGCCCCTCCCCAGGTGGAGAGCCGCCCCCTGAGCCTTTTGCCAACAGTGTCCTGCAGCTACATGAGCAGGATGCAGGGGGCCCAGGGGGAGCAGCTGGGTCACCTGAGAGTCGGGCATCCAGAGTTCGAGCTGACGAGGTGCGACTGCAGTGCCAGAGTGGCAGTGGCTTCCTTGAGGGCCTCTTTGGCTGCCTGCGCCCTGTCTGGACCATGATTGGCAAAGCCTACTCCACTGAGCACAAGCAGCAGCAGGAAGACCTTTGGGAGGTCCCCTTTGAGGAAATCCTGGACCTGCAGTGGGTGGGCTCAGGGGCCCAGGGTGCTGTCTTCCTGGGGCGCTTCCACGGGGAGGAGGTGGCTGTGAAGAAGGTGCGAGACCTCAAAGAAwACCGACATCAAGCACTTGCGAAAGCTGAAGCACCCCAACATCATCACTTTCAAGGGTGTGTGCACCCAGGCTCCCTGCTACTGCATCCTCATGGAGTTCTGCGCCCAGGGCCAGCTGTATGAGGTACTGCGGGCTGGCCGCCCTGTCACCCCCTCCTTACTGGTTGACTGGTCCATGGGCATCGCTGGTGGCATGAACTACCTGCACCTGCACAAGATTATCCACAGGGATCTCAAGTCACCCAACATGCTAATCACCTACGACGATGTGGTGAAGATCTCAGATTTTGGCACTTCCAAGGAGCTGAGTGACAAGAGCACCAAGATGTCCTTTGCAGGGACAGTAGCCTGGATGGCCCCTGAGGTGATCCGCAATGAACCTGTGTCTGAGAAGGTCGACATCTGGTCCTTTGGCGTGGTGCTATGGGAACTGCTGACTGGTGAGATCCCCTACAAAGACGTAGATTCCTCAGCCATTATCTGGGGTGTGGGAAGCAACAGTCTCCATCTGCCCGTGCCCTCCAGTTGCCCAGATGGTTTCAAGATCCTGCTTCGCCAGTGCTGGAATAGCAAACCACGAAATCGCCCATCATTCCGACAGATCCTGCTGCATCTGGACATTGCCTCAGCTGATGTACTCTCCACACCCCAGGAGACTTACTTTAAGTCCCAGGCAGAGTGGCGGGAAGAAGTAAAACTGCACTTTGAAAAGATTAAGTCAGAAGGGACCTGTCTGCACCGCCTAGAAGAGGAACTGGTGATGAGGAGGAGGGAGGAGCTCAGACACGCCCTGGACATCAGGGAGCACTATGAAAGGAAGCTGGAGAGAGCCAACAACCTGTATATGGAACTTAATGCCCTCATGTTGCAGCTGGAACTCAAGGAGAGGGAGCTGCTCAGGCGAGAGCAAGCTTTAGAGCGGAGGTGCCCAGGCCTGCTGAAGCCACACCCTTCCCGGGGCCTCCTGCATGGAAACACAATGGAGAAGCTTATCAAGAAGAGGAATGTGCCACAGAAGCTGTCACCCCATAGCAAAAGGCCAGATATCCTCAAGACGGAGTCTTTGCTCCCTAAACTAGATGCAGCCCTGAGTGGGGTGGGGCTTCCTGGGTGTCCTAAGGGCCCCCCCTCACCAGGACGGAGTCGCCGTGGCAAGACCCGTCACCGCAAGGCCAGCGCCAAGGGGAGCTGTGGGGACCTGCCTGGGCTTCGTACAGCTGTGCCACCCCATGAACCTGGAGGACCAGGAAGCCCAGGGGGCCTAGGAGGGGGACCCTCAGCCTGGGAGGCCTGCCCTCCCGCCCTCCGTGGGCTTCATCATGACCTCCTGCTCCGCAAAATGTCTTCATCGTCCCCAGACCTGCTGTCAGCAGCACTAGGGTCCCGGGGCCGGGGGGCCACAGGCGGAGCTGGGGATCCTGGCTCACCACCTCCGGCCCGGGGTGACACCCCACCAAGTGAGGGCTCAGCCCCTGGCTCCACCAGCCCAGATTCACCTGGGGGAGCCAAAGGGGAACCACCTCCTCCAGTAGGGCCTGGTGAAGGTGTGGGGCTTCTGGGAACTGGAAGGGAAGGGACCTCAGGCCGGGGAGGAAGCCGGGCTGGGTCCCAGCACTTGACCCCAGCTGCACTGCTGTACAGGGCTGCCGTCACCCGAAGTCAGAAACGTGGCATCTCATCGGAAGAGGAGGAAGGAGAGGTAGACAGTGAAGTAGAGCTGACATCAAGCCAGAGGTGGCCTCAGAGCCTGAACATGCGCCAGTCACTATCTACCTTCAGCTCAGAGAATCCATCAGATGGGGAGGAAGGCACAGCTAGTGAACCTTCCCCCAGTGGCACACCTGAAGTTGGCAGCACCAACACTGATGAGCGGCCAGATGAGCGGTCTGATGACATGTGCTCCCAGGGCTCAGAAATCCCACTGGACCCACCTCCTTCAGAGGTCATCCCTGGCCCTGAACCCAGCTCCCTGCCCATTCCACACCAGGAACTTCTCAGAGAGCGGGGCCCTCCCAATTCTGAGGACTCAGACTGTGACAGCACTGAATTGGACAACTCCAACAGCGTTGATGCCTTGCGGCCCCCAGCTTCCCTCCCTCCATGA
配列番号10 dnDLK S302A ΔC末端含有WPREポリヌクレオチド配列
ATGGCTTGCCTCCATGAGACCCGAACACCCTCTCCTTCCTTTGGGGGCTTTGTGTCTACCCTAAGTGAGGCATCCATGCGCAAGCTGGACCCAGACACTTCTGACTGCACTCCCGAGAAGGACCTGACGCCTACCCAGTGTGTACTTCGAGATGTGGTACCCCTTGGTGGGCAGGGTGGGGGAGGGCCCAGCCCCTCCCCAGGTGGAGAGCCGCCCCCTGAGCCTTTTGCCAACAGTGTCCTGCAGCTACATGAGCAGGATGCAGGGGGCCCAGGGGGAGCAGCTGGGTCACCTGAGAGTCGGGCATCCAGAGTTCGAGCTGACGAGGTGCGACTGCAGTGCCAGAGTGGCAGTGGCTTCCTTGAGGGCCTCTTTGGCTGCCTGCGCCCTGTCTGGACCATGATTGGCAAAGCCTACTCCACTGAGCACAAGCAGCAGCAGGAAGACCTTTGGGAGGTCCCCTTTGAGGAAATCCTGGACCTGCAGTGGGTGGGCTCAGGGGCCCAGGGTGCTGTCTTCCTGGGGCGCTTCCACGGGGAGGAGGTGGCTGTGAAGAAGGTGCGAGACCTCAAAGAAACCGACATCAAGCACTTGCGAAAGCTGAAGCACCCCAACATCATCACTTTCAAGGGTGTGTGCACCCAGGCTCCCTGCTACTGCATCCTCATGGAGTTCTGCGCCCAGGGCCAGCTGTATGAGGTACTGCGGGCTGGCCGCCCTGTCACCCCCTCCTTACTGGTTGACTGGTCCATGGGCATCGCTGGTGGCATGAACTACCTGCACCTGCACAAGATTATCCACAGGGATCTCAAGTCACCCAACATGCTAATCACCTACGACGATGTGGTGAAGATCTCAGATTTTGGCACTTCCAAGGAGCTGAGTGACAAGAGCACCAAGATGGCCTTTGCAGGGACAGTAGCCTGGATGGCCCCTGAGGTGATCCGCAATGAACCTGTGTCTGAGAAGGTCGACATCTGGTCCTTTGGCGTGGTGCTATGGGAACTGCTGACTGGTGAGATCCCCTACAAAGACGTAGATTCCTCAGCCATTATCTGGGGTGTGGGAAGCAACAGTCTCCATCTGCCCGTGCCCTCCAGTTGCCCAGATGGTTTCAAGATCCTGCTTCGCCAGTGCTGGAATAGCAAACCACGAAATCGCCCATCATTCCGACAGATCCTGCTGCATCTGGACATTGCCTCAGCTGATGTACTCTCCACACCCCAGGAGACTTACTTTAAGTCCCAGGCAGAGTGGCGGGAAGAAGTAAAACTGCACTTTGAAAAGATTAAGTCAGAAGGGACCTGTCTGCACCGCCTAGAAGAGGAACTGGTGATGAGGAGGAGGGAGGAGCTCAGACACGCCCTGGACATCAGGGAGCACTATGAAAGGAAGCTGGAGAGAGCCAACAACCTGTATATGGAACTTAATGCCCTCATGTTGCAGCTGGAACTCAAGGAGAGGGAGCTGCTCAGGCGAGAGCAAGCTTTAGAGCGGAGGTGCCCAGGCCTGCTGAAGCCACACCCTTCCCGGGGCCTCCTGCATGGAAACACAATGGAGTAG
配列番号11 dnDLK T43E S302A ΔC末端含有WPREポリヌクレオチド配列
ATGGCTTGCCTCCATGAGACCCGAACACCCTCTCCTTCCTTTGGGGGCTTTGTGTCTACCCTAAGTGAGGCATCCATGCGCAAGCTGGACCCAGACACTTCTGACTGCACTCCCGAGAAGGACCTGGAGCCTACCCAGTGTGTACTTCGAGATGTGGTACCCCTTGGTGGGCAGGGTGGGGGAGGGCCCAGCCCCTCCCCAGGTGGAGAGCCGCCCCCTGAGCCTTTTGCCAACAGTGTCCTGCAGCTACATGAGCAGGATGCAGGGGGCCCAGGGGGAGCAGCTGGGTCACCTGAGAGTCGGGCATCCAGAGTTCGAGCTGACGAGGTGCGACTGCAGTGCCAGAGTGGCAGTGGCTTCCTTGAGGGCCTCTTTGGCTGCCTGCGCCCTGTCTGGACCATGATTGGCAAAGCCTACTCCACTGAGCACAAGCAGCAGCAGGAAGACCTTTGGGAGGTCCCCTTTGAGGAAATCCTGGACCTGCAGTGGGTGGGCTCAGGGGCCCAGGGTGCTGTCTTCCTGGGGCGCTTCCACGGGGAGGAGGTGGCTGTGAAGAAGGTGCGAGACCTCAAAGAAACCGACATCAAGCACTTGCGAAAGCTGAAGCACCCCAACATCATCACTTTCAAGGGTGTGTGCACCCAGGCTCCCTGCTACTGCATCCTCATGGAGTTCTGCGCCCAGGGCCAGCTGTATGAGGTACTGCGGGCTGGCCGCCCTGTCACCCCCTCCTTACTGGTTGACTGGTCCATGGGCATCGCTGGTGGCATGAACTACCTGCACCTGCACAAGATTATCCACAGGGATCTCAAGTCACCCAACATGCTAATCACCTACGACGATGTGGTGAAGATCTCAGATTTTGGCACTTCCAAGGAGCTGAGTGACAAGAGCACCAAGATGGCCTTTGCAGGGACAGTAGCCTGGATGGCCCCTGAGGTGATCCGCAATGAACCTGTGTCTGAGAAGGTCGACATCTGGTCCTTTGGCGTGGTGCTATGGGAACTGCTGACTGGTGAGATCCCCTACAAAGACGTAGATTCCTCAGCCATTATCTGGGGTGTGGGAAGCAACAGTCTCCATCTGCCCGTGCCCTCCAGTTGCCCAGATGGTTTCAAGATCCTGCTTCGCCAGTGCTGGAATAGCAAACCACGAAATCGCCCATCATTCCGACAGATCCTGCTGCATCTGGACATTGCCTCAGCTGATGTACTCTCCACACCCCAGGAGACTTACTTTAAGTCCCAGGCAGAGTGGCGGGAAGAAGTAAAACTGCACTTTGAAAAGATTAAGTCAGAAGGGACCTGTCTGCACCGCCTAGAAGAGGAACTGGTGATGAGGAGGAGGGAGGAGCTCAGACACGCCCTGGACATCAGGGAGCACTATGAAAGGAAGCTGGAGAGAGCCAACAACCTGTATATGGAACTTAATGCCCTCATGTTGCAGCTGGAACTCAAGGAGAGGGAGCTGCTCAGGCGAGAGCAAGCTTTAGAGCGGAGGTGCCCAGGCCTGCTGAAGCCACACCCTTCCCGGGGCCTCCTGCATGGAAACACAATGGAGTAG
配列番号12 WPREを含有するドミナントネガティブLZKロイシンジッパードメインポリヌクレオチド配列
ATGCTTGCCACCCCACAAGAAACTTACTTCAAGTCTCAGGCTGAATGGAGAGAAGAAGTGAAAAAACATTTTGAGAAGATCAAAAGTGAAGGAACTTGTATACACCGGTTAGATGAAGAACTGATTCGAAGGCGCAGAGAAGAGCTCAGGCATGCGCTGGATATTCGTGAACACTATGAGCGGAAGCTTGAGCGGGCGAATAATTTATACATGGAATTGAGTGCCATCATGCTGCAGCTAGAAATGCGGGAGAAGGAGCTCATTAAGCGTGAGCAAGCAGTGGAAAAGAAGTATCCTGGGACCTACAAACGACACCCTGTTCGTCCTATCATCCATCCCAATGCCATGGAGTGA
配列番号13 ヒトDLKポリペプチド配列、アイソフォーム1、UniProt Q12852-1
【表9】
配列番号14 WPRE核酸配列
ATCAACCTCTGGATTACAAAATTTGTGAAAGATTGACTGATATTCTTAACTATGTTGCTCCTTTTACGCTGTGTGGATATGCTGCTTTAATGCCTCTGTATCATGCTATTGCTTCCCGTACGGCTTTCGTTTTCTCCTCCTTGTATAAATCCTGGTTGCTGTCTCTTTATGAGGAGTTGTGGCCCGTTGTCCGTCAACGTGGCGTGGTGTGCTCTGTGTTTGCTGACGCAACCCCCACTGGCTGGGGCATTGCCACCACCTGTCAACTCCTTTCTGGGACTTTCGCTTTCCCCCTCCCGATCGCCACGGCAGAACTCATCGCCGCCTGCCTTGCCCGCTGCTGGACAGGGGCTAGGTTGCTGGGCACTGATAATTCCGTGGTGTTGTCGGGGAAATCATCGTCCTTTCCTTGGCTGCTCGCCTGTGTTGCCAACTGGATCCTGCGCGGGACGTCCTTCTGCTACGTCCCTTCGGCTCTCAATCCAGCGGACCTCCCTTCCCGAGGCCTTCTGCCGGTTCTGCGGCCTCTCCCGCGTCTTCGCTTTCGGCCTCCGACGAGTCGGATCTCCCTTTGGGCCGCCTCCCCGCCTG
【配列表】
【国際調査報告】