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特表2024-513965ミトキサントロン塩酸塩リポソームの応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ミトキサントロン塩酸塩リポソームの応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61K31/136
A61P35/00
A61P35/04
A61K9/127
A61K47/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562628
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2022086959
(87)【国際公開番号】W WO2022218393
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202110410490.2
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506417359
【氏名又は名称】石薬集団中奇制薬技術(石家庄)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSPC ZHONGQI PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY(SHIJIAZHUANG)CO.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.896,Zhongshan East Road,High-Tech Zone,Shijiazhuang,Hebei,050035,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李春雷
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼延平
(72)【発明者】
【氏名】梁敏
(72)【発明者】
【氏名】李萌萌
(72)【発明者】
【氏名】李▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】王世霞
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼森森
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD15F
4C076DD63F
4C076EE23
4C076FF16
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA05
4C206KA14
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA44
4C206MA85
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用を提供する。本発明は、さらに、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療する方法を提供し、前記方法は、治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを所望の患者に投与することである。ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療に有効であり、通常のミトキサントロン塩酸塩注射よりも優れた有効性と少ない副作用を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用。
【請求項2】
尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造における唯一の有効成分としてのミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用。
【請求項3】
前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療は拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含み、
好ましくは、前記骨軟部肉腫は、進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記薬物が、液体注射剤、注射用粉末、注射用錠剤などを含む注射剤形であり、
好ましくは、前記薬物が、液体注射剤であり、
好ましくは、前記薬物が、ミトキサントロン換算で0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/mlを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
尿路上皮癌を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療は拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌である、方法。
【請求項6】
乳癌を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含む、方法。
【請求項7】
骨軟部肉腫を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記骨軟部肉腫は、進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である、方法。
【請求項8】
前記投与方式が、静脈内投与であり、
好ましくは、前記リポソーム医薬製剤の点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分であり、
好ましくは、前記投与サイクルが、4週間毎又は3週間毎であり、好ましくは3週間毎であり、
好ましくは、前記治療有効量が、ミトキサントロン換算で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2であり、さらに好ましくは、20mg/m2である、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療するためのミトキサントロン塩酸塩リポソームであって、
治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与し、前記治療有効量が、ミトキサントロン換算で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2であり、さらに好ましくは、20mg/m2であり、
好ましくは、前記投与方式が、静脈内投与であり、好ましくは、前記リポソーム医薬製剤の点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分であり、
好ましくは、前記投与サイクルが、4週間毎又は3週間毎であり、好ましくは3週間毎である、
ことを特徴とするミトキサントロン塩酸塩リポソーム。
【請求項10】
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが以下の特性の1つまたは複数を有し、
(i)ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、約30~80nm、例えば約35~75nm、約40~70nm、約40~60nmまたは約60nmの粒子径を有し、
(ii)ミトキサントロン塩酸塩は、リポソーム内の多価の対イオン(例えば、硫酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)と不溶性の沈殿を形成し、
(iii)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、リポソームが体温よりも高い相転移温度(Tm)を有するように、体温よりも高い相転移温度を有するリン脂質を含み、例えば、前記リン脂質は、水素添加大豆レシチン、ホスファチジルコリン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはこれらの任意の組み合わせから選ばれ、
(iv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、水素添加大豆レシチン、コレステロール、ポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG2000)で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含み、
(iiv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重膜は、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノラミンを約3:1:1の質量比で含み、ミトキサントロン塩酸塩はリポソーム内の多価酸イオンと不溶性の沈殿を形成し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームが前記薬物における粒子径は、約60nmであり、
好ましくは、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが、約30~80nmの粒径を有し、1)リポソーム内の多価対イオンと不溶性の沈殿物を形成する有効成分ミトキサントロンと、2)リポソームが体温より高い相転移温度(Tm)を有するように、体温より高い相転移温度を有するリン脂質を含むリン脂質二重層を含み、前記体温より高いTmを有するリン脂質が、ホスファチジルコリン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはそれらの任意の組み合わせであり、
好ましくは、前記粒子径が、約35~75nm、好ましくは40~70nm、さらに好ましくは40~60nm、特に好ましくは60nmであり、
あるいは、好ましくは、前記リン脂質二重層に、水素添加大豆レシチンとコレステロールとポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンとを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径が約60nmであり、前記対イオンが硫酸イオンであり、
あるいは、好ましくは、前記リポソームのリン脂質二重層が、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径は約40~60nmであり、前記カウンターイオンは硫酸イオンであり、リポソーム中のHSPC:Chol:DSPE-PEG2000:ミトキサントロンの重量比率は9.58:3.19:3.19:1である、
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか記載の使用、方法またはリポソーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍の分野に属し、特に、例えば、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿路上皮癌は、尿路上皮に由来する多発性の悪性腫瘍であり、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、および尿道癌を含み、泌尿器科腫瘍の中で最も多い腫瘍である。世界的に見ると、膀胱由来腫瘍は2018年の全固形腫瘍の中で発生率が12位であり、全腫瘍死の2.1%を占めている(非特許文献1)。中国では、膀胱由来腫瘍は2015年の全腫瘍の発生率でトップ10外であり、男性では10万人当たり6.2人で7位であり、女性ではトップ10外、全腫瘍のうち標準化死亡率では10万人当たり1.96人で14位であった(非特許文献2)。膀胱癌における男女比は約3:1である(非特許文献1)。
【0003】
切除不能な局所進行性または転移性の尿路上皮癌の第一選択治療には、シスプラチンに耐える場合、GC(ゲムシタビン+シスプラチン)およびMVAC(メトトレキサート+ビンクリスチン+アドリアマイシン+シスプラチン)などのシスプラチン含有化学療法レジメンが好ましいレジメンである。シスプラチンに耐えられない患者は、ゲムシタビン+カルボプラチンレジメンなど、カルボプラチンを含むレジメンを検討することができる。その他の患者には、パブリズマブやアテゾリズマブなどのPD-1阻害剤、ゲムシタビン+パクリタキセルやゲムシタビン単独などの化学療法剤を使用できる。PD-1阻害剤は、PD-L1発現患者には優先的に推奨される。第二選択治療では、現在、免疫療法、標的治療、ADC薬物療法、化学療法が治療選択肢となる。第三選択治療以降は、現在のところ標準的な治療法がなく、フロントラインの薬剤の使用状況に応じて、適切な化学療法、標的治療、生物学的製剤による治療が必要となる。
【0004】
以上をまとめると、プラチナ製剤を含む化学療法レジメンやPD-1阻害薬が無効となった患者に対して、その後の有効な治療法がなく、新薬の探索が必要である。
【0005】
乳癌は中国の女性悪性腫瘍の中で発生率1位、死亡率5位であり、中国人女性の健康を深刻に脅かしている(非特許文献2)。2015年は中国で女性乳癌の新規患者が約30.4万人、発生率は45.29/10万、死亡者は7万人以上であった。乳癌新規症例の約3%~10%は診断時に遠隔転移があり、早期症例の30%は進行乳癌に発展すると言われている。進行乳癌の5年生存率はわずか20%である(非特許文献3)。
【0006】
手術不能な局所進行・再発・転移性乳癌において、ホルモン受容体陰性、HER-2陽性、術後無病生存期間が短い(2年未満)、腫瘍の進行が速い、症状が重い、内臓転移が広い、ホルモン受容体陽性、内分泌療法が無効な患者に対して、化学療法は不可欠な治療である。化学療法(アジュバント化学療法を含む)の経験がない場合、第一選択化学療法としてアントラサイクリンおよび/またはパクリタキセルに基づくレジメンが望ましい。アントラサイクリン療法が無効であるか、または累積投与量限界に近づいており、パクリタキセルによる治療歴がない転移性乳癌に対しては、パクリタキセルベースのレジメンまたはパクリタキセル単剤レジメンが第一選択の化学療法として好ましい。アジュバント化学療法にパクリタキセルを使用したことがあり、再発から1年以上経過しているものは、再度パクリタキセルを使用することができ、他の薬剤選択の中でも、アジュバント化学療法と治療段階で使用しなかった薬剤を優先する。アントラサイクリン系薬剤とパクリタキセルの両方が術前・術後療法に失敗した再発転移性乳癌では、標準的な化学療法レジメンがなく、考慮される薬物はカペシタビン、ビンクリスチン、ゲムシタビン、プラチナ系、エリブリン、ウチデロン、別のクラスのパクリタキセル(例:アルブミンパクリタキセル)とドキソルビシンリポソームであり、単一または組み合わせレジメンとして考えられるため、バックライン治療用新規薬剤の開発・探索を継続していくのは依然として必要となる。
【0007】
古典的な骨肉腫は、骨の最も一般的な原発性悪性腫瘍であり、年間発生率は100万人あたり約2-3人で、ヒトの悪性腫瘍の0.2%しか占めていない。骨肉腫はどの年齢でも発生し、青年期に発生することが多く、患者の約75%が15-25歳、中央値は20歳で、6歳未満または60歳以上の患者には比較的稀である。本疾患は、約1.4:1の割合で女性よりも男性に多く、この差は20歳以前で特に顕著である。初診時に肺転移が確定している患者さんは約20%、さらに30%程度の患者さんが骨肉腫と診断されてから1年以内に肺転移を認める。1970年代以前は、骨肉腫の治療は手術のみであり、切断が主体となり、5年生存率は平均19.7%に過ぎなかった。1970年代後半にネオアジュバント化学療法+手術+アジュバント化学療法のレジメンが開発され、5年生存率は60~80%と大幅に向上し(非特許文献4)、現在に至っている。一方、転移・再発骨肉腫患者の生存率は過去30年間ほとんど変化しておらず、全体の5年生存率は約20%である(非特許文献5)。
【0008】
骨肉腫に対する化学療法レジメンは国際的に多数存在し、特に統一されたレジメンはないが、使用する薬剤の種類とその投与強度により、有効性は類似している。骨肉腫の第一選択化学療法として、ドキソルビシン、シスプラチン、イソシクロホスファミド、高用量メトトレキサートが挙げられ、ネオアジュバント化学療法にも同じような薬剤が使用される。患者ごとに2種類以上の薬剤を十分な投与強度で使用する。2剤併用療法に比べ、3剤併用療法では5年EFS(無時間生存)率が58%、48%、5年OS率が70%、62%であった。骨肉腫の患者において第一選択化学療法が無効となった後、全生存期間に利益をもたらす第二選択治療がまだ利用できないため、治験への参加は、より良い治療成績や新しい治療法を得る機会となる。
【0009】
以上をまとめて、現在、臨床管理においては、手術に加え、化学療法が重要な手段となっている。第一選択化学療法が無効な進行性または切除不能の患者は予後不良であり、骨肉腫における標的療法および免疫療法の医学的根拠はまだ十分ではなく、新しい細胞毒性または標的薬療法の探索または採用は、第二選択治療の機会を与えることになる。
【0010】
軟部肉腫とは、非上皮性の骨外組織から発生する悪性腫瘍群を指し、ヒトの悪性腫瘍全体の約0.8%を占め、年間発生率は米国で約3.4/10万、欧州で約4~5/10万、中国で約2.38/10万とされている(非特許文献6)。患者は年齢に関係なく発症し、中国では男女比が1:1に近い。発症率は年齢とともに著しく増加し、年齢に校正すると80歳では30歳の約8倍となる(非特許文献7)。軟部肉腫は主に中胚葉から、一部は神経外胚葉から発生し、主に筋肉、脂肪、繊維組織、血管、末梢神経組織などを含む。発生部位は四肢が最も多く(約53%)、次いで後腹膜(19%)、体幹(12%)、頭頸部(11%)である。組織由来に基づく12の主要なカテゴリーがあり、さらに異なる形態と生物学的挙動に基づく50以上のサブタイプがある。一般的なサブタイプは、未分化多形肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫である。青少年や小児に最も多い軟部肉腫は横紋筋肉腫である。
【0011】
軟部肉腫は、主に痛みを伴わない腫瘤で、徐々に大きくなり、難治性で、数ヶ月から数年続くことがあり、腫瘍が徐々に大きくなり、神経や血管を圧迫すると、手足の痛みやしびれ、さらには浮腫が生じることがある。場合によっては、短期間に腫瘤が急激に大きくなり、皮膚温の上昇や周辺のリンパ節の腫大を伴うこともある。腫瘍の悪性度が上昇する可能性があるため、注意が必要である。軟部肉腫は悪性度が高く、経過が非常に短いこと、血行性転移の発現が早いこと、及び治療後に再発しやすいことなどが特徴である。四肢肉腫の転移部位は肺が最も多く、後腹膜肉腫と消化管肉腫は肝臓への転移が最も多い。軟部肉腫の全5年生存率は約60~80%である。
【0012】
軟部肉腫は、外科手術を中心とした包括的な治療戦略で治療される。放射線治療、化学療法、または放射線同時照射は、最も効果的な治療法のひとつと考えられている。腫瘍学的治療法の複合化の進展に伴い、術前治療+手術+化学療法が徐々に導入され、腫瘍の縮小、四肢温存の可能性の増大、局所制御率の向上、遠隔転移・再発のリスクの低減、患者生存率の向上などのメリットがある。軟部肉腫に対する化学療法の選択には、化学療法感受性が重要な基礎となる。ネオアジュバント化学療法およびアジュバント化学療法では、アントラサイクリン系レジメンが好まれる。一方、病理学的悪性度の高い軟部肉腫の患者では、手術後も40~50%の患者で局所再発を、50%以上の患者で遠隔転移を経験することになる。転移・再発した不完全切除腫瘍の患者に対する化学療法は緩和化学療法で、腫瘍を縮小・安定化させることで症状の軽減、生存期間の延長、QOLの向上を目指す。
【0013】
転移・再発した切除不能な腫瘍に対しては、個人に合わせた緩和化学療法を開発する必要がある。転移性の非多芽球性横紋筋肉腫の患者では、化学療法レジメンは選択する高リスク群に応じてVAC/VI/VCD/IEを交互に行う必要がある。一方、非特異的軟部肉腫では、ドキソルビシンとイソシクロホスファミドが基幹薬となる。非特異的軟部肉腫に対する第二選択化学療法レジメンは認められていない。
【0014】
以上をまとめて、軟部肉腫は、悪性度が高く、第一選択治療に失敗し、第二選択治療の薬物種類や有効性で選択肢も限られている軟部肉腫の患者にとって、治験への参加が推奨される選択肢の1つである。軟部肉腫の患者の治療法の改善と新薬の探索は、緊急の臨床ニーズとなっている。
【0015】
ミトキサントロン塩酸塩は、多発性硬化症、前立腺癌、急性骨髄性白血病を適応症としてFDAに承認されたアントラキノン系化学療法剤であり、中国ではリンパ腫、白血病、乳癌などの患者に承認されている。推奨用量は、単剤で成人3~4週間に1回12~14mg/m2、または2~3週間ごとに1日1回3~5日間4~8mg/m2とし、併用する場合は、5-10mg/m2を1回投与する。ミトキサントロンは、アントラサイクリン系薬剤として、主な副作用が、心毒性、骨髄抑制、消化器反応である。このうち、骨髄抑制と消化器反応は、適切な薬剤の投与により解消されるが、心毒性はしばしば重篤であり、アントラサイクリン系薬剤の最も重大な副作用である。臨床研究および実際の観察から、アントラサイクリン系薬剤による心毒性のほとんどは、特にアントラサイクリン系薬剤を初めて投与した場合、進行性で不可逆的であることが分かっている。慢性的な用量制限性累積毒性-心毒性は、臨床医にとって共通の懸念事項である。したがって、乳癌のこの適応で承認されているが、ミトキサントロンは、権威ある臨床投与ガイドラインでは乳癌の治療として推奨されていない。尿路上皮癌および骨軟部肉腫に関しては、ミトキサントロンはこれら2つの適応症で承認されたことはない。
【0016】
薬剤感受性は腫瘍によって異なる。既存の研究によれば、同じ薬剤でも適応症が異なると投与方法が異なる可能性があることが示されている。例えば、Doxil(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)は、FDAにより3つの適応症で承認されている:(1)卵巣癌、推奨用量50mg/m2、4週間ごとに静脈内投与、(2)カポジ肉腫、推奨用量20mg/m2、3週間ごとに静脈内投与、(3)多発性骨髄腫、推奨用量30mg/m2、ボルテゾミブの投与から4日目に静脈内投与。また、例えば、Abraxane(注射用パクリタキセル[アルブミン結合])は、次の3つの適応症でもFDAから承認されている:(1)転移性乳癌:推奨用量260mg/m2、3週間ごとに30分かけて静脈内投与;(2)非小細胞肺癌:推奨用量100mg/m2、21日ごとに1、8、15日目にそれぞれ30分かけて静脈内投与;カルボプラチンは、1日目のパクリタキセル(アルブミン結合型)投与直後に投与し、21日ごとに投与する;(3)膵臓癌:推奨用量125mg/m2、28日間サイクルで1日、8日及び15日目に1回、30~40分かけて静脈内投与し、ゲムシタビンはパクリタキセル(アルブミン結合)注射液を投与後すぐに投与する。さらに、例えば、AmBisome(注射用リポソーム型アムホテリシンB)は、以下の適応症に対する開始用量は、(1)経験的治療:推奨用量3mg/kg/日、(2)全身性真菌感染症(アスペルギルス、カンジダ、クリプトコックス):推奨用量3-5mg/kg/日、(3)HIV感染者におけるクリプトコックス髄膜炎:推奨用量6mg/kg/日(1日目-5日目)、3mg/kg/日(4日目、21日目)、(4)内臓リーシュマニア症の免疫不全患者:4mg/kg/日(1日目-5日目)、4mg/kg/日(10、17、24、31、38日目)、用量および投与データは、最大有効性と最小毒性または有害作用を得るために患者の実情に応じて個別に決定される。同じ薬剤でも適応症によって安全で有効な投与量に違いがあることがわかる。最大限の有効性と最小限の毒性または副作用を達成し、安全で効果的な治療を実現するためには、特定の疾患と患者の状況に合わせて用法・用量データを調整する必要がある。通常の注射剤とは異なる特殊な剤形であるミトキサントロンリポソームについては、体内に入った後の吸収、分布、代謝が非常に複雑であり、異なる適応症、特に異なる腫瘍の治療において、単純に外挿することは困難であるとも考えられる。
【0017】
したがって、ミトキサントロンリポソームが尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療に適しているかどうかを系統的に検討し、その安全性と有効量を明らかにし、臨床治療の参考に提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Freddie,Bray,Jacques,Ferlay,Isabelle,&Soerjomataram,etal.(2018). Global cancer statistics 2018:globocan estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries.CA:a cancer journal for clinicians.
【非特許文献2】Zheng Rongshou,Sun Kexin,Zhang S.et al.2015年の中国における悪性腫瘍の有病率の分析。Chinese Journal of Oncology Vol.41,No.1,January 2019
【非特許文献3】中国国立癌研究センター乳癌専門委員会、中国における進行乳癌の標準治療ガイドライン(2020年版)
【非特許文献4】Niu Xiaohui.中国における骨肉腫の包括的治療の現状と展望[J].Chinese Journal of Anatomy and Clinics,2019(01):1-5.
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【非特許文献7】Burningham Z,Hashibe M,Spector L,et al. The epidemiology of sarcoma[J].Clin Sarcoma Res,2012,2(1):14
【発明の概要】
【0019】
本発明は、尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用を提供する。
【0020】
好ましくは、前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療が拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌である。
【0021】
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含む。
【0022】
好ましくは、前記骨軟部肉腫は進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である。
【0023】
好ましくは、ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造に唯一の有効成分として使用される。
【0024】
好ましくは、前記薬物は、液体注射剤、注射用粉末、注射用錠剤などを含む注射剤形である。
好ましくは、前記薬物は、液体注射剤である。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記薬剤が液状注射剤である場合、前記薬物は、ミトキサントロン換算で0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/mlを含む。
【0026】
本発明は、また、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することである、方法を提供する。
【0027】
本発明は、さらに、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームを提供する。
【0028】
好ましくは、前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療が拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌である。
【0029】
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含む。
【0030】
好ましくは、前記骨軟部肉腫は進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である。
【0031】
好ましくは、前記治療有効量は、ミトキサントロン用量で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2を指す。具体的には、例えば、12mg/m2、14mg/m2、16mg/m2、18mg/m2、20mg/m2である。
【0032】
好ましくは、本発明による投与方式は、静脈内投与である。好ましくは、投与サイクルは3週間ごとである。好ましくは、患者に与えられる治療は、6~8サイクルである。好ましくは、前記リポソーム医薬製剤の点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分である。
【0033】
本発明は、さらに、患者の尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療するためのミトキサントロン塩酸塩リポソームを提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記リポソームは、液体注射剤、注射用粉末、注射用錠剤などを含む注射剤の形態である。前記薬剤が液状注射剤である場合、前記薬物は、ミトキサントロン換算で0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/mlを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記リポソームは、患者の尿路上皮癌、乳癌、骨及び軟組織肉腫を治療するために単独で使用される。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記リポソームの治療有効量は、ミトキサントロン換算で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2である。具体的には、例えば、12mg/m2、14mg/m2、16mg/m2、18mg/m2、20mg/m2である。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記リポソームの投与方式は、静脈内投与である。好ましくは、投与サイクルは3週間ごとである。好ましくは、患者に与えられる治療は、6~8サイクルである。好ましくは、前記リポソームの点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分である。
【0038】
本発明の文脈において、記載された用量は、特に指定がない場合、ミトキサントロン換算で記載されている。
【0039】
本発明の文脈において、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、当該技術分野で公知の方法によって製造されてよく、先行技術に開示された方法のいずれか、例えばWO2008/080367A1に開示された方法によって製造されたミトキサントロン塩酸塩リポソームであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、薬剤またはミトキサントロン塩酸塩リポソームは、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する:
【0041】
(i)ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、約30~80nm、例えば約35~75nm、約40~70nm、約40~60nmまたは約60nmの粒子径を有する;
【0042】
(ii)ミトキサントロン塩酸塩は、リポソーム内の多価の対イオン(例えば、硫酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)と不溶性の沈殿を形成する;
【0043】
(iii)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、リポソームが体温よりも高い相転移温度(Tm)を有するように、体温よりも高い相転移温度を有するリン脂質を含み、例えば、前記リン脂質は、水素添加大豆レシチン、ホスファチジルコリン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはこれらの任意の組み合わせから選ばれる;
【0044】
(iv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、水素添加大豆レシチン、コレステロール、ポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG2000)で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含む。
【0045】
(iiv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重膜は、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノラミンを約3:1:1の質量比で含み、ミトキサントロン塩酸塩はリポソーム内の多価酸イオンと不溶性の沈殿を形成し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームが前記薬物における粒子径は、約60nmである。
【0046】
(iiiv)ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、中国国家医薬品登録H20220001のミトキサントロン塩酸塩リポソームである。
【0047】
本発明の文脈において、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、約30~80nmの粒径を有し、1)リポソーム内の多価対イオンと不溶性の沈殿物を形成する有効成分ミトキサントロンと、2)リポソームが体温より高い相転移温度(Tm)を有するように、体温より高い相転移温度を有するリン脂質を含むリン脂質二重層を含む。前記体温より高いTmを有するリン脂質は、ホスファチジルコリン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはそれらの任意の組み合わせであり、前記粒子径は約35~75nm、好ましくは40~70nm、さらに好ましくは40~60nm、特に好ましくは60nmである。好ましくは、前記リン脂質二重層には水素添加大豆レシチンとコレステロールとポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンとを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径が約60nmであり、前記対イオンが硫酸イオンである。好ましくは、前記リポソームのリン脂質二重層は、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径は約40~60nmであり、前記カウンターイオンは硫酸イオンであり、リポソーム中のHSPC:Chol:DSPE-PEG2000:ミトキサントロンの重量比率は9.58:3.19:3.19:1である。
【0048】
本発明の文脈において、ミトキサントロンリポソームは、以下のように製造される:HSPC(水素添加大豆レシチン)、Chol(コレステロール)およびDSPE-PEG2000(ポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)を(3:1:1)の質量比で秤量し、95%エタノールに溶解して透明溶液を得る。このリン脂質のエタノール溶液に300mMの硫酸アンモニウム溶液を加えて、60~65℃で振とうし1時間水和して不均一なマルチコンパートメントリポソームを得る。その後、マイクロジェット装置を用いてリポソームの粒子径を小さくする。得られたサンプルを濃度0.9%のNaCl溶液で200倍に希釈し、NanoZSで測定したところ、平均粒子径は約60nmで、主ピークは40~60nmの間に集中する。次に、ブランクリポソームの外相を限外濾過装置を用いて硫酸アンモニウムを除去し、膜貫通硫酸アンモニウム勾配を形成するために290mMスクロースおよび10mMグリシンに置換する。ミトキサントロン塩酸塩(10mg/mL)の溶液を、脂質-薬物比16:1でブランクリポソームに添加し、60~65℃で負荷する。約1時間インキュベートした後、ゲル排除クロマトグラフィーを用いてカプセル化効率が約100%であることを実証する。HSPC:Chol:DSPE-PEG2000:ミトキサントロンの重量比は9.58:3.19:3.19:1で、スクロース-グリシン溶液の浸透圧は生理値に近い。
【0049】
上述の例示的な製造方法における複数の技術的詳細およびパラメータは、当業者によって合理的な範囲内で調整および決定され得ることが理解されるべきである。例えば、膜貫通硫酸アンモニウム勾配を形成するために使用される外相のグリシンに置換され得るアミノ酸の種類は、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、ロイシン、プロリン、アラニンを含むが、これらに限定されるものではない。ここでも、例えば、HSPC、Chol、DSPE-PEG2000の質量比を好適に調整することができる。また例えば、特定のリポソーム医薬製剤における脂質-薬物比パラメータの製造について、当業者は、薬物漏出を最小限に抑えながら薬物送達を最大化するための適切な脂質-薬物比を設計、試験、最終的に到達することができ、本願のミトキサントロン塩酸塩リポソーム製剤について、広範囲の脂質-薬物比を使用でき、例えば2:1と低いか、30:1、40:1または50:1と高く、より好適な脂質-薬物比は、約(15~20):1、例えば約15:1、16:1、17:1、18:1、19:1または20:1であってもよい。したがって、上記のミトキサントロン塩酸塩リポソーム製剤のいくつかの好ましい特性がより重要であり、これらの特性を達成するための方法論は多様である。
【0050】
本発明による尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療のための第一選択薬、第二選択薬またはそれ以上の薬は、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療のために中国または海外(例えば、米国、EU、日本、韓国など)の医薬品規制当局によって承認された第一選択薬、第二選択薬またはそれ以上を指し、FDAで承認されたパクリタキセル薬、PD-1阻害剤、イソシクロホスファミドなどを含むが、これらに限定しない。
【0051】
有益な効果
本発明の出願人の研究において、ミトキサントロン塩酸塩リポソームが、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫に対してより優れた治療効果を有することが予想外に判明し、関連医薬の製造に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の技術的解決策は、特定の実施形態に関連して以下にさらに詳細に説明される。以下の実施形態は、本発明を例示的にのみ説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解される。本発明の上記要素に基づいて実施されるいかなる技術も、本発明が意図する保護範囲に包含される。
【0053】
特に断らない限り、以下の実施形態で使用される成分および試薬は、市販の商品であるか、または公知の方法によって製造することができる。
【0054】
本発明では、以下の略号を使用する:
CR:国際的に認められているRECIST 1.1(Research Evaluation Criteria for the Outcome of Solid Tumours)で定義される完全寛解。
PR:国際的に認められているRECIST 1.1(Research Evaluation Criteria for the Outcome of Solid Tumours)で定義される部分寛解。
SD:国際的に認められているRECIST 1.1(Research Evaluation Criteria for the Outcome of Solid Tumours)で定義される安定疾患。
PD:国際的に認められているRECIST 1.1(Research Evaluation Criteria for the Outcome of Solid Tumours)で定義される病勢進行。
客観寛解率(ORR)=(CR+PR)/評価可能な総症例数×100%。
疾患制御率(DCR)=(CR+PR+SD)/評価可能な総症例数×100%。
【0055】
尿路上皮癌、乳癌および骨軟部肉腫の治療におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの有効性を検討するため、本発明者らは治験を実施した。ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、通常のミトキサントロン塩酸塩注射剤と比較して、尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫の治療に有効であり、副作用が少なかった。以下の実施例で使用したミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射剤は、CSPC Group Zhongnuo Pharmaceutical(Shijiazhuang) Co Ltd (国薬準字H20220001)から提供された。
【実施例
【0056】
[実施例1 切除不能な局所進行または転移性の尿路上皮癌に対するミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液の有効性および安全性を評価する第II相治験]
本治験は、登録された被験者にミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液を投与し、切除不能な局所進行または転移性の尿路上皮癌に対する有効性および安全性を評価するオープンな多施設共同第II相治験である。
【0057】
一、治験デザイン
1.治験方法
切除不能な局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有する40名の被験者が登録された。治験被験者は、主にプラチナ製剤を含む化学療法レジメンおよびPD-1阻害剤による治療が無効であった被験者(PD-1阻害剤の投与を受けていない被験者を含む)、シスプラチンに耐えられなく全身療法を受ける被験者であった。本治験は、スクリーニング期間、治療期間、フォローアップ期間から構成される。スクリーニング期間は28日間で、適格な被験者は治療期間へ移行するようにスクリーニングされた。治療期間は、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液20mg/m2、3週間ごと(q3w)に単剤投与し、各サイクルの初日に投与し、6サイクル投与した。治療終了後、フォローアップ期間を設けた。フォローアップ期間では、最終投与後の安全性フォローアップ(最終投与から28日後)と生存率フォローアップ(最終投与から6週間ごと)を行った。安全性評価は、初回投与から最終投与後の28日目までと各サイクル前に実施し、次のサイクルを投与するかどうかを決定した。腫瘍評価は、RECIST 1.1基準に基づき、試験期間中2サイクルごとに、病勢進行、死亡または新たな抗腫瘍療法を受けるまで実施された。
【0058】
2.研究期間
本治験は、スクリーニング期間4週間(28日)、治療期間6サイクル(18週間)、最終安全性フォローアップ、投与終了後4週間(28日)、その後の6週間ごとの生存フォローアップを含み、1患者あたり約12ヶ月の期間を予定した。
本治験には40名の被験者が登録され、本治験の全期間は18ヶ月から24ヶ月に及んだ。
【0059】
二、治験群:
以下の包含基準のすべてを満たし、除外基準のいずれにも該当しない被験者が、この治験に登録された。
(一)入選基準
1)被験者は自発的に研究に参加し、インフォームドコンセントに署名する;
2)年齢≧18歳、男性または女性である;
3)組織学的に確認された尿路上皮癌である;
【0060】
4)プラチナ製剤を含む化学療法レジメンおよびPD-1阻害剤による治療が無効な被験者(PD-1阻害剤を投与していない被験者も含む)、シスプラチンに耐えられなく全身療法が対象となる被験者である;
5)ベースライン時にRECIST1.1の基準を満たす評価可能な病変が少なくとも1つ存在する;
6)ECOGスコアは0~1点である;
【0061】
7)被験者の臨床検査値が以下の要件を満たしていた:
・好中球絶対値(ANC)≧1.5x109/L(検査前1週間以内、G-CSFによる白血球増加治療を受けていない);
・ヘモグロビン(Hb)>9.0g/dL(検査前1週間以内に赤血球輸血を受けていない);
・血小板≧75x109/L(検査前1週間以内に血小板輸血を受けていない)
・クレアチニン≦1.5xULNである;
・総ビリルビン≦1.5xULN(肝転移を有する被験者の場合は≦3xULN)である;
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3xULN(肝転移を有する被験者の場合は≦5xULN)である;
・凝固機能:プロトロンビン時間(PT)、国際標準化比(INR)≦1.5xULN(ワルファリンなどの抗凝固療法の薬剤を受けている場合、INR≦3が許容される);
8)被験者とパートナーは、治験期間中、最終投与終了後6ヶ月まで有効な避妊(例:排卵抑制を伴うホルモン併用(エストロゲンとプロゲスチンを含む)、排卵抑制を伴うプロゲスチン避妊、子宮内避妊装置、子宮内ホルモン放出システム、両側パイプカット、両側結紮、性的活動の回避など)を行っており;女性被験者は尿または血液中のHCG陰性(ただし閉経および子宮の切除は除く)である。
【0062】
(二)除外基準
1)ミトキサントロンまたはリポソーム薬に対する重篤な過敏症である;
2)脳または髄膜に転移がある被験者である;
3)同種臓器移植または同種骨髄移植の既往がある;
4)生存期間<12週間である;
5)活動性B型肝炎(HbsAgまたはHBcAb陽性、HBV DNA≧2000 IU/mL)、活動性C型肝炎(HCV抗体陽性、HCVRNAが試験センター検査下限以上)、HIV抗体陽性の被験者である;
【0063】
6)本剤初回投与前1週間以内に、活動性のある細菌・真菌感染症、または点滴を必要とするウイルス感染症がある;
7)初回投与前4週間以内(漢方薬、漢方複合薬は投与前2週間以内)に抗悪性腫瘍剤治療を受けた者である;
8)初回投与前4週間以内に他の治験薬で治療を受けている;
9)初回投与前3ヶ月以内に大手術を受け、または試験期間中に大手術を受ける予定がある;
10)グレード1以上の抗悪性腫瘍剤治療前毒性が存在する(ただし、脱毛症、色素沈着、または被験者に安全性のリスクがないと試験でみなされたその他の毒性は除く);
【0064】
11)過去6ヶ月以内に、脳血管障害(一過性虚血発作を含む)、肺塞栓症など、重篤な血栓・塞栓事象がある;
12)過去3年以内の他の悪性活動性腫瘍がある;ただし、基底細胞や扁平上皮の皮膚癌、原発性前立腺癌、子宮頸癌、乳癌など、治癒可能な局所癌は除く;
【0065】
13)以下のような心機能の異常がある:
・QTc長症候群またはQTc間隔>480msである;
・完全左束枝ブロック、第2度または第3度房室ブロックである(ペースメーカー植え込みによる治療後を除く);
・薬物治療を必要とする重篤で制御不能な心不全がある;
・慢性うっ血性心不全の既往歴があり、NYHAクラス≧3である;
・6ヶ月以内に心駆出率が50%未満である;
・CTCAE>グレード2の心臓弁膜症である;
・制御不能な高血圧である(薬理学的制御下にある状態で複数回の測定で収縮期血圧>150mmHgまたは拡張期血圧>100mmHgと定義される);
・スクリーニング前6ヶ月以内に心筋梗塞、不安定狭心症、重症心膜疾患、急性虚血、重症伝導路異常の心電図所見がある。
【0066】
14)アドリアマイシンまたは他のアントラサイクリン系薬剤による治療歴があり、アドリアマイシンの累積投与量が350mg/m2超える場合(アントラサイクリン換算用量計算:アドリアマイシン1mg=エピルビシン2mg=ピラルビシン2mg=デソソルビシン0.5mg=ミトコキサントン0.45mg、アドリアマイシンリポソームを除く);
15)妊娠中または授乳中の女性である;
【0067】
16)治験責任医師の判断により、患者の本治験への参加に影響を及ぼす可能性のある重篤かつ/または制御不能な疾患を有する(効果的に制御できない糖尿病、透析を要する腎臓病、重度の肝臓病、生命を脅かす自己免疫疾患および出血性疾患、物質依存、神経疾患等を含むが、これに限定しない);
17)その他、治験責任医師が参加に不適切と判断した状態である。
【0068】
(三)治療からの離脱と試験終了基準
被験者は、試験期間中に以下のいずれかに該当する場合、実験薬による治療を中止する必要がある:
1)被験者が耐えられない毒性を示し、治験責任医師が実験薬による治療を継続することのリスクが利益を上回ると判断した;
2)治療中に発症した併発症は、その後の投与継続を認めない;
3)画像診断で評価される病状の進行がある;
【0069】
4)臨床的に評価される疾患の進行、レジメンからの重大な逸脱、または被験者のコンプライアンス不良により、治験責任医師が実験薬による治療の継続が有益でないと判断した;
5)被験者は妊娠である
6)死亡になる;
7)本治験の終了基準のいずれかに該当する。
【0070】
治療を中止した被験者は、治療中止の理由が死亡になる場合、または以下に示す中止基準に該当する場合を除き、試験計画に従ってフォローアップを継続することが要求される。
被験者は、いつでも、いかなる理由でも、試験から脱退する権利を有する。以下のいずれかに該当する場合、被験者は研究過程から離脱する:
1)フォローアップを逃す;
2)被験者または家族(被験者自身が判断できない場合)から、治験の中止を求める;
3)本治験を終了する;
4)その他
【0071】
三、研究の成果
プラチナ含有化学療法レジメンおよびPD-1阻害剤による治療が無効であった被験者(PD-1阻害剤を投与しない被験者も含む)、ならびにシスプラチンに耐えられなく全身療法を受けた被験者は、より有効な後続治療がなく、新規薬剤の探索が急務である。本発明の発明者らは、薬剤が静脈注射で体内に入った際に、徐放性、標的性、毒性の低減、有効性の向上を有するミトキサントロンリポソームを用いることにより、ミトキサントロンの通常の注射に比べ、リポソーム製剤は高用量で使用でき、副作用の可能性を低減しながら効果を高め、単独療法で所期の治療効果を発揮することができることを見出した。
【0072】
本発明の試験では、少なくとも4人の被験者(2サイクルで治療した被験者と1サイクルで治療した被験者)において、SD2(1サイクルで治療した被験者と2サイクルで治療した被験者)があり、DCRが50%(2/4)であることを示した。ミトキサントロンリポソームは、尿路上皮癌患者、特にプラチナ製剤を含む化学療法レジメンおよびPD-1阻害剤が無効となった患者において良好な有効性を示した。SDと評価された2名の被験者では、継続投与により、より優れた有効性が得られた。
【0073】
このレジメンは、尿路上皮癌の治療レジメンを完成させ、第一選択治療および第二選択治療に影響を与える薬剤の組み合わせの基礎を築き、尿路上皮癌の従来の治療モードを変え、進行固形腫瘍の分野で同様の高い有効性と毒性の低い化学療法剤の適用を期待するものである。
【0074】
[実施例2 HER-2陰性進行乳癌に対するミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液の第II相治験]
本治験は、登録された被験者にミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液を投与し、HER-2陰性進行乳癌に対する有効性および安全性を評価するオープンな多施設共同第II相治験である。
【0075】
一、治験デザイン
1.治験方法
この研究は、スクリーニング期間、治療期間、フォローアップ期間に分かれている。スクリーニング期間は28日間で、スクリーニングに合格した被験者は治療期間に入った。治療期間中、被験者はミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液20mg/m2、3週間サイクルで6回投与された。6サイクルの治療が終了した時点で、治験責任医師と治験依頼者は被験者に対する利益とリスクに基づいて投与を継続するかどうかを決定する。フォローアップには、治療終了時(最終投与から28日後)および生存期間中のフォローアップ(治療終了時以降6週間ごと)が含まれ、被験者全員が死亡するまで電話または訪問による生存期間のフォローアップを受ける必要がある。
【0076】
腫瘍評価:RECIST 1.1基準に基づき、治療期間中は2サイクルごとに、経過観察期間中は病勢進行または新たな抗腫瘍療法の開始まで6週間ごとに腫瘍評価を実施した。
安全性評価:バイタルサイン、身体検査、体重、ECOG体力スコア、12誘導心電図、心エコー図、臨床検査は各サイクルの訪問前と訪問終了時に実施された。定期的な血液検査は、各サイクルのD8とD15に実施された。
【0077】
2.研究期間
本治験は、スクリーニング期間4週間(28日)、治療期間6サイクル(18週間)、治療終了時(最終投与から28日後)、その後患者がフォローアップできなくなるか死亡するまで、6週間ごとに生存フォローアップを行い、1患者あたり約12ヶ月の期間実施される。
本治験には73名の被験者が登録され、本治験の全期間は約36ヵ月間でした。
【0078】
二、治験群:
以下の包含基準のすべてを満たし、除外基準のいずれにも該当しない被験者が、この治験に登録された。
【0079】
(一)入選基準
被験者は、以下の条件をすべて満たす必要がある:
1)被験者は自発的に研究に参加し、インフォームドコンセントに署名する;
2)年齢18歳以上75歳未満である(18歳以上75歳未満を含む);
3)病理組織学的に確認されたHER-2陰性乳癌である(免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含む);
4)手術不能な局所進行性または再発・転移性乳癌であって、第一選択化学療法後に病勢が進行し、それ以降も継続している乳癌である;
【0080】
5)ホルモン受容体陰性、またはホルモン受容体陽性だが内分泌療法に適さない、または内分泌療法抵抗性乳癌である;
6)少なくとも1種類のアントラサイクリンと1種類のパクリタキセルによる治療歴があり(心毒性の危険因子が高いためアントラサイクリンによる治療歴がない被験者でもよい)、最大4種類の化学療法レジメンで治療した;
7)ベースライン時に少なくとも1つの測定可能な病変がある(RECIST 1.1基準);
8)ECOGスコアが0~2点である;
【0081】
9)良好な臓器機能があり、(試験薬初回適用前2週間以内に輸血や成長因子支持療法を行っていない)、以下を含む:
・好中球絶対値(ANC)≧1.5×109/Lである;
・ヘモグロビン(Hb)≧90g/Lである;
・血小板≧90×109/Lである;
・クレアチニン≦正常値上限の1.5倍である;
・総ビリルビン≦正常値上限の1.5倍である;
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)≦正常値上限の3倍である(肝転移のある患者では正常値上限の5倍以下);
【0082】
10)妊娠検査結果が陰性であり、妊娠可能な年齢の被験者が、試験開始から最終投与後6ヶ月間、効果的な避妊を行うか禁欲することを約束する;
11)コンプライアンスが良く、フォローアップ訪問に協力的である。
【0083】
(二)除外基準
以下のいずれかに該当する被験者は、本治験から除外される:
1)ミトキサントロンまたはリポソーム薬に対する重篤な過敏症がある;
2)過去3年以内の他の悪性腫瘍(子宮頸原発癌、皮膚基底細胞癌、扁平上皮細胞癌を除く)の既往がある;
3)脳または髄膜に転移がある被験者である;
4)活動性B型肝炎(HbsAgまたはHBcAb陽性、HBV DNA≧2000 IU/mL)、活動性C型肝炎(HCV抗体陽性、HCVRNAが試験センター検査下限以上)、HIV抗体陽性の被験者である;
【0084】
5)予想生存期間<3ヶ月である;
6)以前に投与されたアントラサイクリン系薬剤の累積投与量をドキソルビシンに換算して350mg/m2よりも多い(アントラサイクリン系薬剤換算量の計算:ドキソルビシン1mg=エピルビシン2mg=ピリズビシン2mg=エリスロマイシン2mg=デソソルビシン0.5mg=ミトコキサントロン0.45mg、ただしアドリアマイシンリポソームを除く);
7)以前の抗悪性腫瘍剤治療による毒性がグレード1以下に回復していない(脱毛、色素沈着、その他被験者に安全性のリスクがないと試験で判断された毒性は除く);
【0085】
8)以下のような心機能の異常がある:
・QTc長症候群またはQTc間隔>480msである;
・完全左束枝ブロック、第2度または第3度房室ブロックである;
・薬物治療を必要とする重篤で制御不能な心不全がある;
・慢性うっ血性心不全の既往歴があり、且つNYHAクラス≧3である;
・スクリーニング前6ヶ月以内に心駆出率が50%未満である;
・CTCAE≧グレード3の心臓弁膜症がある;
・スクリーニング前6ヶ月以内に心筋梗塞、不安定狭心症、重度の心室性不整脈、重症心膜疾患、急性虚血、重症伝導路異常の心電図所見がある。
【0086】
9)制御不能な高血圧(薬理学的制御下での複数回の測定で収縮期血圧≧160mmHgまたは拡張期血圧≧100mmHg)である;
10)初回投与前1週間以内に点滴治療を必要とする活動性の細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症がある;
11)初回投与前4週間以内に抗腫瘍治療(化学療法、放射線療法、分子標的治療、免疫療法、内分泌療法を含む)を受けている、初回投与前2週間以内に悪性腫瘍の補助療法として免疫調整剤を投与されている、または初回投与前2週間以内に抗腫瘍の独自漢方(症状のサポート・緩和のカテゴリーのものを除く)を投与されている。
12)初回投与前4週間以内に他の治験薬が投与される;
13)初回投与前12週間以内に大手術を受けた者、または試験期間中に大手術を受ける予定の者である;
【0087】
14)過去6ヶ月以内の深部静脈血栓症または動脈塞栓症がある(上・下大静脈血栓症、下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症を含むがこれに限定されない);
15)授乳中の女性である;
16)治験責任医師の判断により、本治験への参加に影響を及ぼす可能性のある重篤かつ/または制御不能な疾患に罹患している(効果的に制御できない糖尿病、透析を要する腎臓病、重度の肝臓病、生命を脅かす自己免疫疾患および出血性疾患、物質依存、神経障害等を含むが、これに限定しない);
17)その他、治験責任医師が参加に不適切と判断した状態である。
【0088】
(三)治療からの離脱と試験終了基準
被験者は、試験期間中に以下のいずれかに該当する場合、実験薬による治療を中止する必要がある。
1)被験者が耐えられない毒性を示し、治験責任医師が実験薬による治療を継続することのリスクが利益を上回ると判断した;
2)画像診断で評価される病状の進行がある;
3)臨床的に評価される疾患の進行、レジメンからの重大な逸脱、または被験者のコンプライアンス不良により、治験責任医師が実験薬による治療の継続が有益でないと判断した;
4)被験者は妊娠である
5)死亡になる;
6)本治験の終了基準のいずれかに該当する。
【0089】
治療を中止した被験者は、治療中止の理由が死亡である場合、または以下に示す中止基準に該当する場合を除き、試験計画に従ってフォローアップを継続することが要求される。被験者は、いつでも、いかなる理由でも、試験から脱退する権利を有する。以下のいずれかに該当する場合、被験者は研究過程から離脱する:
1)フォローアップを逃す;
2)被験者によるインフォームドコンセントの撤回、または被験者や家族からの治験の中止の要請があった;
3)本治験を終了する;
4)その他。
【0090】
三、研究の成果
これまでのアントラサイクリンやパクリタキセルによる治療が無効または再発した進行性乳癌に対する新しい治療法の模索が急務となっている。
本発明の検討により、評価可能な20例のうち、少なくともPR 6例(治療7サイクル後1例、治療6サイクル後3例、治療5サイクル後1例、治療4サイクル後1例)、SD 8例(治療6サイクル後2例、治療5サイクル後2例、治療4サイクル後1例、治療3サイクル後1例、治療2サイクル後2例であった。ORR 30%(6/20)、DCR 70%(14/20)。
【0091】
ミトキサントロンリポソームは、乳癌患者、特にこれまでのアントラサイクリンおよびパクリタキセル療法が無効または再発した進行乳癌患者において良好な効果を示している。PRおよびSDと評価された14名の被験者に本剤を継続投与したところ、より良好な効果が得られた。
【0092】
本発明者の過去の治験では、再発・転移性乳癌に対するミトキサントロン塩酸塩単剤療法を試験群、対照群各30例、試験群にはミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液20mg/m2、4週毎に1サイクル投与した。対照群にはミトキサントロン塩酸塩注射液14mg/m2、4週間ごとに投与した。結果として、試験群ではPR4例、SD11例、ORR13.3%(4/30)、DCR50%(15/30)、対照群ではPR2例、SD7例、ORR6.7%(2/30)、DCR30%(9/30)であった。
【0093】
本発明の発明者らは、薬物が静脈注射で体内に入ったときに、徐放性、標的性、毒性軽減、増強効果を有するミトキサントロンリポソームを、通常の注射よりも高用量で使用するだけでなく、単剤療法としても使用し、効果を高めるとともに副作用の可能性を低くする。
【0094】
[実施例3 少なくとも第一選択治療が無効な進行性骨軟部肉腫に対するミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液の第Ib相治験]
本治験は、少なくとも第一選択治療が無効な転移性または切除不能な骨軟部肉腫を対象に、登録された被験者にミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液を投与し、安全性と有効性を評価するオープンな多施設共同第Ib試験である。
【0095】
一、治験デザイン
1.治験方法
本治験は、スクリーニング期間、治療期間、及びフォローアップ期間を含む。
スクリーニング期間は28日間で、スクリーニングに合格した被験者は治療期間に入った。治療期間の被験者は、3週間の治療サイクル(q3w)において、1日目にミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液20mg/m2、合計6サイクルの投与を受けた。6サイクルの治療を終えた被験者については、治験責任医師が治験依頼者と協議の上、被験者のリスクとベネフィットを考慮して薬剤の継続を決定した。フォローアップ期間として、最終投与後の安全性フォローアップ(最終投与後28±7日)および生存率フォローアップ(最終投与後の6週間ごとに)が必要となった。
【0096】
安全性評価は、初回投与から最終投与28日後までと、次のサイクルを投与するかどうかを決定する各サイクル前に実施し、腫瘍評価は、試験期間中、治療期間中は2サイクルごと、追跡期間中は6週間ごとに、病勢進行、死亡または新たな抗腫瘍療法が行われるまでRESIST1.1 基準に基づき実施した。
【0097】
2.研究期間
本治験は、スクリーニング期間4週間(28日)、治療期間6サイクル(18週間)、投与終了後4週間(28日)に安全性最終フォローアップ、その後6週間ごとに生存フォローアップを行い、1患者あたり約12ヶ月の期間を予定している。
この研究には50人以上の被験者が登録され、この研究の全期間は24ヶ月~36ヶ月に及んだ。
【0098】
二、治験群:
以下の包含基準のすべてを満たし、除外基準のいずれにも該当しない被験者が、この治験に登録された。
(一)入選基準
被験者は、以下の条件をすべて満たす必要がある:
1)被験者は自発的に研究に参加し、インフォームドコンセントに署名する;
2)年齢≧18歳、男性または女性である;
3)組織学的に確認された、骨肉腫または非特異的軟部肉腫がある(軟部肉腫の種類から、胚性/歯槽骨横紋筋肉腫、ユーイング肉腫などの化学療法感受性が高い肉腫、アデノイド軟部肉腫、骨外粘液性軟骨肉腫などの化学療法感受性が極めて低い肉腫、消化管間葉系腫瘍、進行性線維腫症などの特別な管理を要する肉腫などを除く);
【0099】
4)転移性または切除不能の、少なくとも第一選択治療が無効であった骨肉腫または軟部肉腫である;
5)ベースライン時にRECIST1.1の基準を満たす評価可能な病変が少なくとも1つ存在する;
6)ECOGスコアが0~1点である;
【0100】
7)被験者の臨床検査値が以下の要件を満たしていた:
・好中球絶対値(ANC)≧1.5x109/Lである(検査前1週間以内、G-CSFによる白血球増加治療を受けていない);
・ヘモグロビン(Hb)≧110g/Lである(検査前1週間以内に赤血球輸血を受けていない);
・血小板≧100x109/Lである(検査前1週間以内に血小板輸血を受けていない)
・クレアチニン≦1.5xULNである;
・総ビリルビン≦1.5xULN(肝転移を有する被験者の場合は≦3.0xULN)である;
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3.0xULN(肝転移を有する被験者の場合は≦5.0xULN)である;
・凝固機能:プロトロンビン時間(PT)、国際標準化比(INR)≦1.5xULN(ワルファリンなどの抗凝固療法の薬剤を受けている場合、INR≦3が許容される)である;
【0101】
8)女性被験者の尿または血中HCGが陰性である(閉経および子宮摘出手術を除く);
9)被験者とそのパートナーは、試験中および最終投与終了後6ヶ月間、有効な避妊(排卵抑制を併用したホルモン剤(エストロゲンとプロゲスチンを含む)、排卵抑制を併用したプロゲスチン避妊、子宮内装置、子宮内ホルモン放出システム、両側結紮、パイプカット、性的活動の回避等)を行うことに同意する;
【0102】
(二)除外基準
以下のいずれかに該当する被験者は、本治験から除外される:
1)ミトキサントロンまたはリポソーム薬に対する重篤な過敏症がある;
2)脳または髄膜に転移がある被験者である;
3)同種臓器移植または同種骨髄移植の既往がある;
【0103】
4)予想生存期間<12週間である;
5)B型慢性肝炎(HbsAgまたはHBcAb陽性、HBV DNA≧1000IU/mL)、C型肝炎(HCV抗体陽性、HCV RNA定量が試験センターの検査値下限以上)、HIV抗体陽性である;
6)グレード1以上の抗悪性腫瘍剤治療前毒性が存在する(脱毛症、色素沈着、または被験者に安全性のリスクがないと試験でみなされた他の毒性を除く);
【0104】
7)初回投与前1週間以内に全身治療を必要とする活動性の細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症がある;
8)初回投与前4週間以内(漢方薬、漢方複合薬は投与前2週間以内)に抗悪性腫瘍剤治療を受けた者である;
9)初回投与前4週間以内に治験用の他の薬剤で治療していた;
【0105】
10)過去6ヶ月以内に肺塞栓症、内臓塞栓症、深部静脈血栓症などの重度の血栓症がある;
11)過去3年以内の他の悪性活動性腫瘍がある;ただし、基底細胞や扁平上皮の皮膚癌、原発性前立腺癌、子宮頸癌、乳癌など、治癒可能な局所癌は除く;
【0106】
12)以下のような心機能の異常がある:
・QTc長症候群またはQTc間隔>480msである;
・完全左束枝ブロック、第2度または第3度房室ブロックがある(ペースメーカー植え込みによる治療後を除く);
・薬物治療を必要とする重篤で制御不能な心不全がある;
・慢性うっ血性心不全の既往歴があり、NYHAクラス≧3である;
・6ヶ月以内に心駆出率が50%未満である;
・CTCAE≧グレード3の心臓弁膜症がある;
・制御不能な高血圧がある(薬理学的制御下にある状態で複数回の測定で収縮期血圧>160mmHgまたは拡張期血圧>100mmHgと定義される);
・スクリーニング前6ヶ月以内に心筋梗塞、不安定狭心症、重症心膜疾患、急性虚血、重症伝導路異常の心電図所見がある。
【0107】
13)アドリアマイシンまたは他のアントラサイクリン系薬剤による治療歴があり、アドリアマイシンの累積投与量が350mg/m2を超える場合(アントラサイクリン換算用量計算:アドリアマイシン1mg=エピルビシン2mg=ピラルビシン2mg=デソソルビシン0.5mg=ミトコキサントン0.45mg)、アドリアマイシンリポソーム累積投与量が900mg/m2を超える場合である
14)妊娠中または授乳中の女性である;
15)治験責任医師の判断により、本治験への参加に影響を及ぼす可能性のある重篤かつ/または制御不能な病状を有する(効果的に制御できない糖尿病、透析を必要とする腎臓病、重度の肝臓病、生命を脅かす自己免疫疾患および出血性疾患、物質依存、神経疾患等を含むが、これに限定しない);
16)その他、治験責任医師が参加に不適切と判断した状態である。
【0108】
(三)治療からの離脱と試験終了基準
被験者は、試験期間中に以下のいずれかに該当する場合、実験薬による治療を中止する必要がある:
1)被験者が耐えられない毒性を示し、治験責任医師が実験薬による治療を継続することのリスクが利益を上回ると判断した;
2)治療中に発症した併発症は、その後の投与継続を認めない;
3)画像診断で評価される病状の進行がある;
【0109】
4)臨床的に評価される疾患の進行、レジメンからの重大な逸脱、または被験者のコンプライアンス不良により、治験責任医師が実験薬による治療の継続が有益でないと判断した;
5)被験者は妊娠である
6)死亡になる;
7)本治験の終了基準のいずれかに該当する。
【0110】
治療を中止したすべての被験者は、治療中止の理由が死亡である場合、または以下に示す中止基準に該当する場合を除き、試験計画に従ってフォローアップを継続することが要求される。
被験者は、いつでも、いかなる理由でも、試験から脱退する権利を有する。以下のいずれかに該当する場合、被験者は研究過程から離脱する:
1)フォローアップを逃す;
2)被験者または家族(被験者自身が判断できない場合)から、治験の中止を求める;
3)本治験を終了する;
4)その他。
【0111】
三、研究の成果
外科的治癒の見込みがない被験者や転移性の骨軟部肉腫では、標準的な第一選択治療後の第二選択治療薬の有効性が低いため、治療の改善が臨床上の課題となっており、新しい治療法の検討が必要となっている。ミトキサントロンリポソームは、Hill Climbing Study(HE071-01)において、進行軟部肉腫の被験者の12mg/m2および14mg/m2群で一定の効果を示している。本発明の発明者らは、通常の注射よりも高用量であるだけでなく、単剤療法としても使用することで、効果の向上と副作用の可能性を低減することができる、徐放性、標的性、毒性の低減、静脈内注射で体内に入った場合の効果の向上を有するミトキサントロンリポソームを使用している。
【0112】
本発明の試験によれば、評価被験者のうち、骨肉腫の3名(治療2サイクル、治療1サイクル)のうち、1名がSD(治療1サイクル)と評価され、DCRは33.3%(1/3)であったことが示された。
【0113】
軟部肉腫では、12例(6サイクル治療1例、5サイクル治療2例、4サイクル治療2例、3サイクル治療1例、2サイクル治療6例)中、8例がSD(6サイクル治療1例、5サイクル治療2例、4サイクル治療2例、3サイクル治療1例、2サイクル治療2例、このうち3例が腫瘍量減少)と評価され、DCR66.7%(8/12)であった。
【0114】
ミトキサントロンリポソームは、骨肉腫および軟部肉腫の患者に対して良好な効果を示している。SDと評価された9名の被験者は、本剤の投与を継続し、より良好な結果が得られた。
【0115】
以上は、本発明の技術的解決策の実施形態の例示的な説明である。本発明の保護範囲は、上述した実施形態に限定されないことを理解されるべきである。本発明の精神及び原理の範囲内で当業者によってなされる修正、等価置換、改良等は、本願の請求項の保護範囲に含まれるものとする。
【0116】
関連出願の相互参照
本発明は、2021年4月16日に中国国家知識産権局に特許出願番号202110410490.2で出願された「ミトキサントロン塩酸塩リポソームの応用」と題する先行出願の優先権を主張する。この先行出願の全体は、参照により本発明に組み込まれる。
本特許出願は、2007年12月29日に出願されたPCT出願WO2008/080367A1を引用しており、その開示内容の全体は参照により本願に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用。
【請求項2】
尿路上皮癌、乳癌、および骨軟部肉腫を治療するための医薬の製造における唯一の有効成分としてのミトキサントロン塩酸塩リポソームの使用。
【請求項3】
前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療は拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含み、
好ましくは、前記骨軟部肉腫は、進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記薬物が、液体注射剤、注射用粉末、注射用錠剤などを含む注射剤形であり、
好ましくは、前記薬物が、液体注射剤であり、
好ましくは、前記薬物が、ミトキサントロン換算で0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/mlを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
尿路上皮癌を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記尿路上皮癌は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌であり、より好ましくは、前記尿路上皮癌は、プラチナ含有化学療法レジメンおよび/またはPD-1阻害剤による治療に失敗した局所進行性または転移性の尿路上皮癌;または、プラチナ含有化学療法レジメンによる治療に失敗したがPD-1阻害剤の治療は拒否した局所進行性および転移性の尿路上皮癌;またはシスプラチンに耐えられない局所進行性または転移性の尿路上皮癌である、方法。
【請求項6】
乳癌を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記乳癌は、HER-2陰性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌は、局所進行性または再発/転移性のHER-2陰性乳癌;または、ホルモン受容体陰性HER-2陰性乳癌、または、内分泌療法に適応しないか、内分泌療法に抵抗性のホルモン受容体陽性HER-2陰性乳癌;または、アントラサイクリンおよび/またはパクリタキセル薬剤による治療に失敗したHER-2陰性乳癌であり;好ましくは、前記HER-2陰性乳癌は、免疫組織化学的HER-2 0又は1+、免疫組織化学的HER-2 2+がインサイチュハイブリダイゼーション法により陰性と確認された乳癌を含む、方法。
【請求項7】
骨軟部肉腫を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与することであり、
好ましくは、前記骨軟部肉腫は、進行した骨軟部肉腫であり、さらに好ましくは、少なくとも第一選択治療に失敗した転移性または局所的に進行した骨軟部肉腫である、方法。
【請求項8】
前記投与方式が、静脈内投与であり、
好ましくは、前記リポソーム医薬製剤の点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分であり、
好ましくは、前記投与サイクルが、4週間毎又は3週間毎であり、好ましくは3週間毎であり、
好ましくは、前記治療有効量が、ミトキサントロン換算で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2であり、さらに好ましくは、20mg/m2である、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
尿路上皮癌、乳癌、骨軟部肉腫を治療するためのミトキサントロン塩酸塩リポソームであって、
治療を必要とする患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームを投与し、前記治療有効量が、ミトキサントロン換算で、8~30mg/m2、より好ましくは12~20mg/m2又は16~30mg/m2であり、さらに好ましくは、20mg/m2であり、
好ましくは、前記投与方式が、静脈内投与であり、好ましくは、前記リポソーム医薬製剤の点滴投与時間は、静脈内投与あたり、30分~120分、好ましくは60分~120分、更に好ましくは60±15分であり、
好ましくは、前記投与サイクルが、4週間毎又は3週間毎であり、好ましくは3週間毎である、
ことを特徴とするミトキサントロン塩酸塩リポソーム。
【請求項10】
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが以下の特性の1つまたは複数を有し、
(i)ミトキサントロン塩酸塩リポソームは、約30~80nm、例えば約35~75nm、約40~70nm、約40~60nmまたは約60nmの粒子径を有し、
(ii)ミトキサントロン塩酸塩は、リポソーム内の多価の対イオン(例えば、硫酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)と不溶性の沈殿を形成し、
(iii)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、リポソームが体温よりも高い相転移温度(Tm)を有するように、体温よりも高い相転移温度を有するリン脂質を含み、例えば、前記リン脂質は、水素添加大豆レシチン、ホスファチジルコリン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはこれらの任意の組み合わせから選ばれ、
(iv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重層は、水素添加大豆レシチン、コレステロール、ポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG2000)で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含み、
(iiv)ミトキサントロン塩酸塩リポソーム中のリン脂質二重膜は、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノラミンを約3:1:1の質量比で含み、ミトキサントロン塩酸塩はリポソーム内の多価酸イオンと不溶性の沈殿を形成し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームが前記薬物における粒子径は、約60nmであり、
好ましくは、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが、約30~80nmの粒径を有し、1)リポソーム内の多価対イオンと不溶性の沈殿物を形成する有効成分ミトキサントロンと、2)リポソームが体温より高い相転移温度(Tm)を有するように、体温より高い相転移温度を有するリン脂質を含むリン脂質二重層を含み、前記体温より高いTmを有するリン脂質が、ホスファチジルコリン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、ジホスファチジン酸レシチン、ジステアリン酸レシチンまたはそれらの任意の組み合わせであり、
好ましくは、前記粒子径が、約35~75nm、好ましくは40~70nm、さらに好ましくは40~60nm、特に好ましくは60nmであり、
あるいは、好ましくは、前記リン脂質二重層に、水素添加大豆レシチンとコレステロールとポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンとを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径が約60nmであり、前記対イオンが硫酸イオンであり、
あるいは、好ましくは、前記リポソームのリン脂質二重層が、水素添加大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000で修飾したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを3:1:1の質量比で含み、前記粒子径は約40~60nmであり、前記カウンターイオンは硫酸イオンであり、リポソーム中のHSPC:Chol:DSPE-PEG2000:ミトキサントロンの重量比率は9.58:3.19:3.19:1である、
ことを特徴とする、請求項9に記載のミトキサントロン塩酸塩リポソーム。

【国際調査報告】