(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】RNAサイレンシング剤および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240319BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240319BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
C07H 21/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 105
C07H21/00
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562698
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022024692
(87)【国際公開番号】W WO2022221457
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523033006
【氏名又は名称】エーダーエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, ジーチン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057MM01
4C057MM09
4C076AA95
4C076CC41
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4C076DD66
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB21
(57)【要約】
本開示の局面は、標的RNAの発現を減少させるための核酸を提供する。一部の局面において、本開示は、RNA干渉のための核酸の設計において有用な、核酸改変および塩基対合構成を提供する。本開示は、RNAサイレンシング剤の設計において有用であり得る核酸設計戦略を提供し、標的RNAレベルの有効な減少が、その14位ヌクレオチドとその標的RNAとの間にゆらぎ塩基対合を媒介するように構成されたアンチセンス鎖を使用して達成され得るという発見に関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的mRNAの発現を減少させるための核酸であって、
該標的mRNAの連続する配列と少なくとも90%相補的である配列を有する15ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長のアンチセンス鎖
を含み、該アンチセンス鎖の配列はその5’末端から14位に脱塩基部位を含むか、または該アンチセンス鎖の配列は、その5’末端から14位に、該標的mRNAの連続する配列上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的塩基対を形成しないヌクレオチドを含む、核酸。
【請求項2】
前記標的ヌクレオチドがシチジンまたはグアノシンのいずれかを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドと前記標的ヌクレオチドとがミスマッチ塩基対を含む、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記ミスマッチ塩基対がゆらぎ塩基対である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドが前記標的ヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成する、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項6】
前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがイノシンまたはウリジンのいずれかを含む、請求項4または5に記載の核酸。
【請求項7】
前記ゆらぎ塩基対がI:CまたはU:Gである、請求項4~6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
前記標的ヌクレオチドがシチジンを含む場合に、前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがイノシンを含むか、または
前記標的ヌクレオチドがグアノシンを含む場合に、前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがウリジンを含む、
請求項4~7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
前記アンチセンス鎖が少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項10】
前記アンチセンス鎖が、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項11】
前記アンチセンス鎖が少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記アンチセンス鎖が15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長である、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項13】
前記アンチセンス鎖が19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長である、請求項1~12のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記アンチセンス鎖が21ヌクレオチド長である、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項15】
前記アンチセンス鎖の配列が表1のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一である、請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
15ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長のセンス鎖をさらに含み、該センス鎖は前記アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項17】
前記二重鎖領域が、前記センス鎖上のヌクレオチドと前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドとの間に標準的塩基対合または非標準的塩基対合を含む、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがイノシンを含む場合に、前記センス鎖上のヌクレオチドがシチジン、アデノシン、もしくはウリジンを含むか、または
前記アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがウリジンを含む場合に、前記センス鎖上のヌクレオチドがアデノシンを含む、
請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
前記センス鎖が少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項20】
前記センス鎖が、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項21】
前記センス鎖が少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項22】
前記センス鎖が少なくとも1個のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に結合されている、請求項16~21のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項23】
前記アンチセンス鎖の配列が、前記ゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドを除いて、前記標的mRNAの連続する配列と100%相補的である、請求項1~22のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項24】
標的mRNAの発現を減少させるための核酸であって、
式(I):
5’-X
01X
02X
03X
04X
05X
06X
07X
08X
09X
10X
11X
12X
13X
14(X
Y)
bN
a-3’(I)
のアンチセンス鎖
を含み、
NおよびX
Yのそれぞれは独立して任意の型のヌクレオチドであり;
aは、0~2の整数であり;
bは、1~17の整数であり;
X
01~X
13は各々が独立して任意の型のヌクレオチドであり、ただし、X
01~(X
Y)
bは該標的mRNAの連続するヌクレオチド配列と少なくとも90%相補的であり;
X
14は脱塩基部位であるか、またはX
14は、該標的mRNAの連続するヌクレオチド配列上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的塩基対を形成しないヌクレオチドである、
核酸。
【請求項25】
前記標的ヌクレオチドがシチジンまたはグアノシンのいずれかを含む、請求項24に記載の核酸。
【請求項26】
X
14と前記標的ヌクレオチドとがミスマッチ塩基対を含む、請求項24または25に記載の核酸。
【請求項27】
前記ミスマッチ塩基対がゆらぎ塩基対である、請求項26に記載の核酸。
【請求項28】
X
14が、前記標的ヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドである、請求項24または25に記載の核酸。
【請求項29】
X
14がイノシンまたはウリジンのいずれかを含む、請求項27または28に記載の核酸。
【請求項30】
前記ゆらぎ塩基対がI:CまたはU:Gである、請求項27~29のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項31】
前記標的ヌクレオチドがシチジンを含む場合にX
14がイノシンを含むか、または
前記標的ヌクレオチドがグアノシンを含む場合にX
14がウリジンを含む、
請求項27~30のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項32】
前記アンチセンス鎖が少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項33】
前記アンチセンス鎖が、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む、請求項24~32のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項34】
前記アンチセンス鎖が少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項24~33のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項35】
aが0である、請求項24~34のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項36】
bが、1~11の整数である、請求項24~35のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項37】
bが、5~11の整数である、請求項24~36のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項38】
bが7である、請求項24~37のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項39】
X
01~(X
Y)
bの配列が表1のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一である、請求項24~38のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項40】
15ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長のセンス鎖をさらに含み、該センス鎖は前記アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成する、請求項24~39のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項41】
前記二重鎖領域が、前記センス鎖上のヌクレオチドとX
14との間に標準的塩基対合または非標準的塩基対合を含む、請求項40に記載の核酸
【請求項42】
X
14がイノシンを含む場合に前記センス鎖上のヌクレオチドがシチジン、アデノシン、もしくはウリジンを含むか、または
X
14がウリジンを含む場合に前記センス鎖上のヌクレオチドがアデノシンを含む、
請求項41に記載の核酸。
【請求項43】
前記二重鎖領域がどのNの場合も除く、請求項40~42のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項44】
前記センス鎖が少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項45】
前記センス鎖が、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む、請求項40~44のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項46】
前記センス鎖が少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項40~45のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項47】
前記センス鎖が少なくとも1個のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に結合されている、請求項40~46のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項48】
前記アンチセンス鎖が式(II):
5’-X
01X
02X
03X
04X
05X
06X
07X
08X
09X
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19X
20X
21-3’(II)、
のアンチセンス鎖であり、
X
01~X
13およびX
15~X
21は各々が独立して任意の型のヌクレオチドであり、ただし、X
01~X
21は、前記標的mRNAの連続するヌクレオチド配列と少なくとも90%相補的であり;
X
14が、イノシンまたはウリジンを含むヌクレオチドである、
請求項24~47のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項49】
先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸と対イオンとを含む、組成物。
【請求項50】
先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸と薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物。
【請求項51】
細胞における標的mRNAの発現を減少させる方法であって、
該細胞を請求項1~50のいずれか一項に記載の核酸または組成物と接触させる工程
を含む、方法。
【請求項52】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞がインビボにある、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞がインビトロにある、請求項51または52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月13日に出願された米国特許仮出願第63/174,507号に基づく米国特許法第119条(e)の下での優先権を主張する。この米国特許仮出願は、参照によってその全体が本明細書によって援用される。
【0002】
(テキストファイルとして提出された配列表に対する参照)
本出願は、ASCIIフォーマットで提出され参照によってその全体が本明細書によって援用される、配列表を含む。2022年4月12日に作成された当該ASCIIコピーは、A127870007WO00-SEQ-JIBという名前であり、サイズは10,192バイトである。
【背景技術】
【0003】
(背景)
RNA干渉 (RNAi)の分野は、近年かなりの関心を受けている。その理由は、RNAサイレンシング剤が、高い程度の配列特異性を有する特定のタンパク質の発現をノックダウンする能力を提供するからである。RNAiは、科学研究において、例えば、遺伝的経路および生化学的経路を研究するため、個々の遺伝子および遺伝子産物の機能を解明するため、および製薬産業における標的確認のための道具として、有用であってきた。さらに、かなりの努力が、治療戦略としてRNAを媒介可能なRNAサイレンシング剤を開発することを目標として行われている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
数ある局面の中で、本開示は、RNAサイレンシング剤の設計において有用であり得る核酸設計戦略を提供する。一部の局面において、本開示は、標的RNAレベルの有効な減少が、その14位ヌクレオチドとその標的RNAとの間にゆらぎ塩基対合を媒介するように構成されたアンチセンス鎖を使用して達成され得るという、発見に関連する。したがって、一部の局面において、本開示は、その5’末端から14位に、その標的mRNA上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドを有する、アンチセンス鎖を含む核酸を提供する。
【0005】
一部の局面において、本開示は、標的mRNAの発現を減少させるための核酸を提供し、その核酸は、その標的mRNAの連続する配列と少なくとも90%相補的である配列を有する15ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長のアンチセンス鎖を含み、そのアンチセンス鎖の配列はその5’末端から14位に脱塩基部位を含むか、またはそのアンチセンス鎖の配列は、その5’末端から14位に、その標的mRNAの連続する配列上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的(canonical)(例えば、ワトソン-クリック)塩基対を形成しないヌクレオチドを含む。
【0006】
一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドと、標的mRNA上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは、ミスマッチしている(例えば、そのヌクレオチドは、ミスマッチ塩基対(例えば、ゆらぎ塩基対)を形成する)。一部の実施形態において、そのミスマッチ塩基対はゆらぎ塩基対である。例えば、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドは、標的ヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成する。一部の実施形態において、標的ヌクレオチドはシチジンまたはグアノシンのいずれかを含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドはイノシンまたはウリジンのいずれかを含む。一部の実施形態において、ゆらぎ塩基対はI:CまたはU:Gである。一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがシチジンを含む場合に、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドはイノシンを含む。一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがグアノシンを含む場合に、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドはウリジンを含む。
【0007】
一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(arabinonucleic acid)から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む。ヌクレオシド改変のさらなる例が本明細書中の他の箇所に記載され、ヌクレオシド改変のさらなる例としては、改変型糖(例えば、糖(例えば、リボース)に対する2’-O置換(2’-O-メトキシエチル糖が挙げられる)、2’-フルオロ糖改変(2’-フルオロ)、2’-O-メチル糖(2’-O-メチル)、2’-O-エチル糖、2’-Cl、2’-SH、およびそれらの置換(例えば、2’-SCH3)、二環式糖部分)、あるいは置換(例えば、低級アルキルもしくはその置換(例えば、-CH3、-CF3)による2’-O部分の置換、2’-アミノもしくはその置換による2’-O部分の置換、2’,3’-セコヌクレオチド模倣物、2’-F-アラビノヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド、逆方向(inverted)2’-O-メチルヌクレオチド、2’-O-デオキシヌクレオチド、アルケニルによる2’-O部分の置換、アルキニルによる2’-O部分の置換、メトキシエチルによる2’-O部分の置換(2’-O-MOE)、(DNA中のような)-Hによる2’-O部分の置換、または他の置換基による2’-O部分の置換が挙げられるが、それらに限定はされない。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖の配列は、ゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドを除いて、標的mRNAの連続する配列と100%相補的である。
【0008】
一部の実施形態において、アンチセンス鎖は15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長(例えば、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、または25ヌクレオチド長)である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は21ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖の配列は表1のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖の配列は表1のヌクレオチド配列と少なくとも85%同一(例えば、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または100%同一)である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖の配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、および50のいずれか一つと少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖の配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、および50のいずれか一つと少なくとも85%同一(例えば、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または100%同一)である。
【0009】
一部の実施形態において、核酸は、15ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長(例えば、15ヌクレオチド長~35ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、または25ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長)のセンス鎖をさらに含む。一部の実施形態において、センス鎖は、アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成する。一部の実施形態において、二重鎖領域は、センス鎖上のヌクレオチドとアンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドとの間に標準的(canonical)塩基対合または非標準的(non-canonical)塩基対合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがイノシンを含む場合に、センス鎖上のヌクレオチドはシチジン、アデノシン、またはウリジンを含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位にあるヌクレオチドがウリジンを含む場合に、センス鎖上のヌクレオチドはアデノシンを含む。一部の実施形態において、センス鎖の配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、および49のいずれか一つと少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、センス鎖の配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、および49のいずれか一つと少なくとも85%同一(例えば、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または100%同一)である。
【0010】
一部の実施形態において、センス鎖は少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、センス鎖は、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(arabinonucleic acid)から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む。ヌクレオシド改変および改変型ヌクレオチドのさらなる例が、本明細書中の他の箇所に記載される。一部の実施形態において、センス鎖は少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、センス鎖は少なくとも1個のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に結合されている。
【0011】
一部の局面において、本開示は、標的mRNAの発現を減少させるための核酸を提供し、その核酸は、式(I):
5’-X01X02X03X04X05X06X07X08X09X10X11X12X13X14(XY)bNa-3’(I)
のアンチセンス鎖を含み、NおよびXYのそれぞれは独立して任意の型のヌクレオチドであり;aは、0~2の整数であり;bは、1~17の整数であり;
X01~X13は各々が独立して任意の型のヌクレオチドであり、ただし、X01~(XY)bは標的mRNAの連続するヌクレオチド配列と少なくとも90%相補的であり;X14は脱塩基部位であるか、またはX14は、標的mRNAの連続するヌクレオチド配列上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的(canonical)(例えば、ワトソン-クリック)塩基対を形成しないヌクレオチドである。
【0012】
一部の実施形態において、式(I)の「X」ヌクレオチドとは、本明細書中の他の箇所に記載される、標的mRNAと相補性の領域を形成するヌクレオチドを示す。一部の実施形態において、式(I)の「N」ヌクレオチドとは、その相補性の領域の外側にある任意選択ヌクレオチドを示す。一部の実施形態において、核酸が、式(I)のアンチセンス鎖との二重鎖の状態にあるセンス鎖をさらに含む場合に、「N」ヌクレオチドとは、本明細書中の他の箇所に記載される、オーバーハングを形成する任意選択ヌクレオチドを示す。
【0013】
一部の実施形態において、aは、1~2の整数である。一部の実施形態において、aは0である。一部の実施形態において、bは、1~11の整数である。一部の実施形態において、bは、5~11の整数である。一部の実施形態において、bは7である。一部の実施形態において、X01~(XY)bの配列は、表1のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、X01~(XY)bの配列は、表1のヌクレオチド配列と少なくとも85%同一(例えば、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または100%同一)である。
【0014】
一部の実施形態において、X01~(XY)bの配列は、標的mRNAの連続するヌクレオチド配列と少なくとも95%相補的である。一部の実施形態において、X01~(XY)bの配列は、X14を除いて、標的mRNAの天然に存在する連続するヌクレオチド配列と100%相補的であり、(i)X14はイノシンを含み、標的mRNA上の対応する位置にある標的ヌクレオチドはシチジンを含むか;または(ii)X14はウリジンを含み、標的ヌクレオチドはグアノシンを含む。一部の実施形態において、bは7であり、X01~X21の配列は、X14を除いて、標的mRNAの天然に存在する連続するヌクレオチド配列と100%相補的であり、(i)X14はイノシンを含み、標的ヌクレオチドはシチジンを含むか;または(ii)X14はウリジンを含み、標的ヌクレオチドはグアノシンを含む。一部の実施形態において、X01~(XY)bの配列は、上記のX14を除きX01を除いて、標的mRNAの天然に存在する連続するヌクレオチド配列と100%相補的であり、X01と標的mRNA上の対応する位置にあるヌクレオチドとはミスマッチ塩基対を含む。
【0015】
一部の実施形態において、標的ヌクレオチドはシチジンまたはグアノシンのいずれかを含む。一部の実施形態において、X14と標的ヌクレオチドとはミスマッチ塩基対を含む。一部の実施形態において、ミスマッチ塩基対はゆらぎ塩基対である。一部の実施形態において、X14は、標的ヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドである。一部の実施形態において、X14は、イノシンまたはウリジンのいずれかを含む。一部の実施形態において、ゆらぎ塩基対はI:CまたはU:Gである。一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがシチジンを含む場合にX14はイノシンを含む。一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがグアノシンを含む場合にX14はウリジンを含む。
【0016】
一部の実施形態において、X01と標的mRNA上の対応する位置にあるヌクレオチドとはミスマッチ塩基対を含む。一部の実施形態において、ミスマッチ塩基対はA:GまたはU:Cである。一部の実施形態において、X01はアデノシンまたはウリジンのいずれかを含む。一部の実施形態において、標的mRNA上の対応する位置にあるヌクレオチドがグアノシンを含む場合にX01はアデノシンを含む。一部の実施形態において、標的mRNA上の対応する位置にあるヌクレオチドがシチジンを含む場合にX01はウリジンを含む。
【0017】
一部の実施形態において、式(I)のアンチセンス鎖は少なくとも1個の改変型ヌクレオチドおよび/または少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(arabinonucleic acid)から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、核酸は、式(I)のアンチセンス鎖に結合されている少なくとも1個の標的指向性部分(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))をさらに含む。一部の実施形態において、少なくとも1個の標的指向性部分は、切断可能なリンカーによってアンチセンス鎖に結合されている。
【0018】
一部の実施形態において、核酸は、15ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長のセンス鎖をさらに含み、そのセンス鎖は、アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成する。一部の実施形態において、二重鎖領域は、センス鎖上のヌクレオチドとX14との間に標準的(canonical)塩基対合または非標準的(non-canonical)塩基対合を含む。一部の実施形態において、X14がイノシンを含む場合に、センス鎖上のヌクレオチドはシチジン、アデノシン、もしくはウリジンを含む。一部の実施形態において、X14がウリジンを含む場合に、センス鎖上のヌクレオチドはアデノシンを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、どのNの場合も除く。
【0019】
一部の実施形態において、アンチセンス鎖は式(II):
5’-X01X02X03X04X05X06X07X08X09X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21-3’(II)
のアンチセンス鎖であり、X01~X13およびX15~X21は各々が独立して任意の型のヌクレオチドであり、ただし、X01~X21は、標的mRNAの連続するヌクレオチド配列と少なくとも90%相補的であり;X14は、イノシンまたはウリジンを含むヌクレオチドである。
【0020】
一部の実施形態において、本開示の核酸は低分子干渉RNA(siRNA)である。一部の実施形態において、核酸は短ヘアピンRNA(shRNA)である。
【0021】
一部の局面において、本開示は、本明細書において記載される核酸と対イオンとを含む組成物を提供する。一部の局面において、本開示は、本明細書において記載される核酸と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を提供する。
【0022】
一部の局面において、本開示は、細胞における標的mRNAの発現を減少させる方法を提供する。一部の実施形態において、その方法は、細胞を本開示の核酸または組成物と接触させる工程を含む。一部の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態において、哺乳動物細胞はヒト細胞または非ヒト霊長類細胞である。一部の実施形態において、細胞は、核酸または組成物とインビボで接触される。一部の実施形態において、細胞は、核酸または組成物とインビトロで接触される。一部の実施形態において、標的mRNAは変異タンパク質をコードする。一部の実施形態において、変異タンパク質は、野生型バリアントと比較して1個または複数個の変異を含む。一部の実施形態において、標的mRNAは、その細胞において過剰発現されるタンパク質をコードする。一部の実施形態において、そのタンパク質は、参照発現レベルと比較して(例えば、野生型バリアントと比較して、正常健常細胞と比較して)過剰発現される。一部の実施形態において、標的mRNAは、アンジオテンシノーゲン(AGT)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン型(9PCSK9)、補体B因子、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)、および微小管結合タンパク質タウ(MAPT)から選択される遺伝子の転写物である。一部の実施形態において、その遺伝子は、対応する野生型配列と比較して変異タンパク質をコードする。一部の実施形態において、その遺伝子は野生型タンパク質をコードする。
【0023】
一部の局面において、本開示は、対象を処置する方法を提供する。一部の実施形態において、その方法は、対象に本開示の核酸を投与する工程を含む。一部の実施形態において、対象は、その核酸の標的mRNAと関連する疾患または状態を有することが既知であるか、あるいはその疾患または状態を有する疑いがある。一部の実施形態において、対象は、その標的mRNAを有することが既知であるか、あるいはその標的mRNAを有する疑いがある。一部の実施形態において、対象はヒトである。一部の実施形態において、対象は非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、または非ヒト霊長類、例えば、サルもしくはチンパンジー)である。一部の実施形態において、標的mRNAは変異タンパク質をコードする。一部の実施形態において、変異タンパク質は、野生型バリアントと比較して1個または複数個の変異を含む。一部の実施形態において、標的mRNAは、その細胞において過剰発現されるタンパク質をコードする。一部の実施形態において、そのタンパク質は、参照発現レベルと比較して(例えば、野生型バリアントと比較して、正常健常細胞と比較して)過剰発現される。一部の実施形態において、対象は、アンジオテンシノーゲン(AGT)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン型(9PCSK9)、補体B因子、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)、および微小管結合タンパク質タウ(MAPT)から選択される遺伝子と関連する疾患または状態を有することが既知であるか、あるいはその疾患または状態を有する疑いがある。一部の実施形態において、標的mRNAは、その遺伝子の転写物である。一部の実施形態において、その遺伝子は、対応する野生型配列と比較して変異タンパク質をコードする。一部の実施形態において、その遺伝子は野生型タンパク質をコードする。
【0024】
本発明の特定の実施形態の詳細が、下記のとおり詳細な説明において示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、実施例、図面、および特許請求の範囲から明らかとなる。
【0025】
(図面の簡単な説明)
本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの非限定的実施形態を示し、本記載とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、アンチセンス鎖がセンス鎖または標的RNA鎖との二重鎖の状態にある、例示的な核酸構造を示す。
【0027】
【
図2】
図2は、センス鎖(5’から3’へ示される)とアンチセンス鎖(3’から5’へ示される)とを有する核酸についての例示的な式を示す。
【0028】
【
図3A-3B】
図3A~
図3Bは、カニクイザルにおけるsiRNA(RD1354)のインビボ試験からの結果を示す。個々のサルについての結果を
図3Aに示し、群についての平均した結果を
図3Bに示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
本開示の局面は、標的RNAレベルの有効な減少が、その14位ヌクレオチドとその標的RNAとの間に非標準的(non-canonical)相互作用(例えば、ミスマッチ相互作用、例えば、ゆらぎ塩基対合)を媒介するように構成されたアンチセンス鎖を使用して達成され得るという、発見に関連する。一部の局面において、本開示は、有効なアンチセンス分子の設計のための新しい戦略を提供して、これまでよりも多数で多くの種類の可能性のある標的mRNA部位を効率を犠牲にすることなく可能にするように従来の指針を補う。
【0030】
低分子干渉RNA(siRNA)分子の効率は、種々の要因に依存し、その種々の要因としては、標的の利用性、mRNAの二次構造、siRNAとmRNAとのマッチングの位置ならびにsiRNAおよびmRNAの固有の特徴が挙げられる。siRNAの正確な設計は、その配列内にあるヌクレオチドのほんの少数の変化がその機能を変更し得るという事実に起因する重要な工程である。
【0031】
本発明者らは、従来のsiRNA設計戦略が、可能性のあるRNA標的部位の数および種類を限定し得る特定の規則にしたがうことを認識し理解した。一部の局面において、本開示は、その5’末端から14位に、脱塩基部位を有するか、または標的RNAの対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的(canonical)塩基対を形成しないヌクレオチドを有する、アンチセンス鎖を含む核酸を提供することによって、これらの限界の一部を克服する。一部の実施形態において、非標準的(non-canonical)相互作用(例えば、ゆらぎ塩基対)が、14位ヌクレオチドと標的RNA上のGヌクレオチドまたはCヌクレオチドとの間に形成される。したがって、一部の実施形態において、本開示のゆらぎ塩基対および他の非標準的(non-canonical)相互作用は、標的分子上のこの位置にあるAヌクレオチドまたはUヌクレオチドへの従来の選好性に代わる代替的設計戦略を提供する。一部の局面において、本開示は、標的RNAとそのようなゆらぎ塩基対を形成する核酸が標的RNAレベルの非常に有効な減少をもたらしたという、驚くべき発見に関連する。
【0032】
図1は、アンチセンス鎖(点々が付された形)がセンス鎖または標的鎖(無地の形)との二重鎖の状態にある、例示的な核酸構造を示す。一部の実施形態において、センス鎖との二重鎖の状態にあるアンチセンス鎖を含む核酸は、一般的に本明細書においてRNAサイレンシング剤と呼ばれ得る。RNAサイレンシング剤の例が本明細書中の他の箇所で提供され、RNAサイレンシング剤の例としては、siRNAおよびshRNAが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0033】
RNAサイレンシング剤100が、センス鎖(無地の形)との二重鎖の状態にあるアンチセンス鎖(点々が付された形)を有して示されている。本明細書において使用される場合、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖とは、標的鎖(例えば、標的RNA、例えば、mRNA)と相補性の領域を有する鎖を指す。一部の実施形態において、その相補性の領域は、標的特異的サイレンシングを導くのに十分にその望ましい標的鎖と相補的(例えば、RNAi機構もしくはRNAiプロセス(RNAi干渉)によって望ましい標的鎖の破壊を誘発するのに十分な相補性、または望ましい標的mRNAの翻訳抑制を誘発するのに十分な相補性)であるヌクレオチド配列を有する。
【0034】
示されるとおり、RNAサイレンシング剤100は、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドにあるイノシンを含む。本明細書において使用される場合、一部の実施形態において、14位ヌクレオチドとは、標的鎖上の対応する位置にあるGヌクレオチドまたはCヌクレオチドと非標準的(non-canonical)相互作用(例えば、ゆらぎ塩基対)を形成可能である、アンチセンス鎖上のヌクレオチドを指す。一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドはその5’末端と比較して番号付けされ、アンチセンス鎖上の最も5’側のヌクレオチドが1位ヌクレオチドと名付けられ得る。一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドはその標的鎖と相補性の領域と比較して番号付けされ、その相補性の領域の最も5’側のヌクレオチドが1位ヌクレオチドと名付けられ得る。例えば、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、センス鎖と比較した5’オーバーハング領域において1個または複数個のヌクレオチドを有するアンチセンス鎖を含む。この状況において、14位ヌクレオチドは、このオーバーハング領域には存在しない最も5’側のヌクレオチドと比較して番号付けされ、この後者である最も5’側のヌクレオチドが1位ヌクレオチドと名付けられ得る。
【0035】
一般的に示されるとおり、RNAサイレンシング剤100のアンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドにあるイノシンは、センス鎖上の対応する位置にあるシチジンとゆらぎ塩基対を形成する。例として、RNAサイレンシング剤100は、センス鎖上の対応する位置にあるシチジンを示すが、他のヌクレオシドがこの位置で利用され得る。例えば、イノシンはシチジン、アデノシン、またはウリジンとゆらぎ塩基対を形成し得るので、センス鎖上の対応する位置にあるヌクレオチドは、これらのヌクレオシドのいずれか一つを含み得る。しかし、本明細書において記載されるとおり、14位ヌクレオチドは、標的RNA上の対応する位置と非標準的(non-canonical)相互作用(例えば、ゆらぎ塩基対)を有利に形成し得る。したがって、RNAサイレンシング剤100の文脈において、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドは、センス鎖上の対応する位置にあるヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成する必要はないことが、理解されるべきである。例えば、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤のセンス鎖上の対応する位置にあるヌクレオチドは、14位ヌクレオチドのイノシンとは塩基対合しないヌクレオシドを含む。したがって、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤100のセンス鎖上の対応する位置は、14位ヌクレオチドのイノシンと塩基対合してもしなくても良い、あらゆるヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジン、イノシン、またはそれらのアナログ)を含み得る。
【0036】
標的二重鎖102は、標的鎖(無地の形)との二重鎖の状態にあるRNAサイレンシング剤100のアンチセンス鎖(点々が付された形)を示す。一部の実施形態において、標的鎖は標的RNA(例えば、mRNA)である。一般的に示されるとおり、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドにあるイノシンは、標的鎖上の対応する位置にあるシチジンとゆらぎ塩基対を形成する。本開示にしたがって、I:Cのゆらぎ塩基対は、この位置における別の不都合なG:C塩基対に代わる有利な代替案を提供する。本明細書において記載されるとおり、一部の実施形態において、アンチセンス鎖は相補性の領域を含み、この相補性の領域とは、標的鎖のヌクレオチドと塩基対を形成する、アンチセンス鎖のヌクレオチドを指す。
【0037】
一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位は脱塩基部位を含むか、またはアンチセンス鎖上の14位は、標的鎖上の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的(canonical)塩基対を形成しないヌクレオチドを含み得る。標的二重鎖102は、センス鎖上の14位にあるイノシンが、標的鎖上の対応する位置にあるシチジンとゆらぎ塩基対を形成する例を示す。一部の実施形態において、ゆらぎ塩基対は、本開示にしたがうミスマッチ塩基対の一例であることが、理解されるべきである。したがって、一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがシチジンを含む場合に、14位ヌクレオチドはグアノシン以外のヌクレオシドを含む。例えば、一部の実施形態において、標的ヌクレオチドはシチジンを含み、14位ヌクレオチドはアデノシン、ウリジン、またはシチジンを含む。しかし、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位は、核酸塩基がこの位置に存在しないように脱塩基部位を含む。
【0038】
RNAサイレンシング剤110が、センス鎖(無地の形)との二重鎖の状態にあるアンチセンス鎖(点々が付された形)を有して示され、14位ヌクレオチドはウリジンを含む。この例において、RNAサイレンシング剤110のセンス鎖は、14位ヌクレオチドのウリジンに対応する位置にあるアデノシンを含む。RNAサイレンシング剤100に関して記載されたとおり、この位置でのヌクレオチド相補性はRNAサイレンシング剤110にとっての必要条件ではない。その理由は、本明細書において記載される利点は、標的二重鎖の状況においてこの位置で形成される非標準的(non-canonical)相互作用(例えば、ゆらぎ塩基対)に関連するからである。したがって、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤110のセンス鎖上の対応する位置は、14位ヌクレオチドのウリジンと塩基対合してもしなくても良い、あらゆるヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジン、イノシン、またはそれらのアナログ)を含み得る。
【0039】
標的二重鎖112は、標的鎖(無地の形)との二重鎖の状態にあるRNAサイレンシング剤110のアンチセンス鎖(点々が付された形)を示す。一部の実施形態において、標的鎖は標的RNA(例えば、mRNA)である。一般的に示されるとおり、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドにあるウリジンは、標的鎖上の対応する位置にあるグアノシンとゆらぎ塩基対を形成する。本開示にしたがって、U:Gのゆらぎ塩基対は、この位置における別の不都合なC:G塩基対に代わる有利な代替案を提供する。
【0040】
標的二重鎖112は、センス鎖上の14位にあるウリジンが、標的鎖上の対応する位置にあるグアノシンとゆらぎ塩基対を形成する例を示す。一部の実施形態において、ゆらぎ塩基対は、本開示にしたがうミスマッチ塩基対の一例であることが、理解されるべきである。したがって、一部の実施形態において、標的ヌクレオチドがグアノシンを含む場合に、14位ヌクレオチドは、シチジン以外のヌクレオシドを含む。例えば、一部の実施形態において、標的ヌクレオチドはグアノシンを含み、14位ヌクレオチドはアデノシン、グアノシン、またはウリジンを含む。しかし、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位は、核酸塩基がこの位置に存在しないように脱塩基部位を含む。
【0041】
図1の核酸構造は一般的に示されており、
図1の核酸構造は本開示に対する限定として解釈されるべきではない。例えば、RNAサイレンシング剤100および110は、センス鎖と完全に相補的である21ヌクレオチド長のアンチセンス鎖を有するとして各々示されている。同様に、標的二重鎖102および112は、標的鎖と完全に相補的である21ヌクレオチド長のアンチセンス鎖を有するとして各々示されている。これらの例は例示目的のために提供されていること、および本明細書中の他の箇所に記載されるとおり、アンチセンス鎖またはセンス鎖は21ヌクレオチド長よりも長くても短くても良く、RNAサイレンシング剤または標的二重鎖の相補性の程度は100%未満であり得ることが、理解されるべきである。
【0042】
図2は、センス鎖(5’から3’へ示される)とアンチセンス鎖(3’から5’へ示される)とを有するRNAサイレンシング剤についての例示的な式を示す。N、X、およびZという変数は個々のヌクレオチドを示し、aおよびbという変数は本明細書において定義されている。一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、(Z
Y)
b~Z
14におけるセンス鎖と(X
Y)
b~X
01におけるアンチセンス鎖との間に塩基対相互作用によって形成される二重鎖領域を含む。一部の実施形態において、bは、1~17の整数である。例として、21ヌクレオチド長の二重鎖領域(例えば、RNAサイレンシング剤100および110について示される二重鎖領域)について、bは7である。
【0043】
一部の実施形態において、(XY)bおよびX13~X01は各々が独立して任意の型のヌクレオチドであり、ただし、(XY)b~X01は(ZY)b~Z14と少なくとも80%相補的である。したがって、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤の二重鎖領域とは、少なくとも80%相補的(例えば、少なくとも85%相補的、少なくとも90%相補的、少なくとも95%相補的、または100%相補的)である、センス鎖の配列およびアンチセンス鎖の配列を指す。
【0044】
一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、
図2においてN
aによって示される少なくとも1個のオーバーハング領域を含む。一部の実施形態において、aは、独立して0~2の整数であり、RNAサイレンシング剤は、2ヌクレオチドまでの少なくとも1個のオーバーハングを必要に応じて含み得るようになる。本明細書において使用される場合、一部の実施形態において、オーバーハングとは、ある1本の鎖または領域から生じ、その1本の鎖または領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を越えて延びる、末端の非塩基対合ヌクレオチドを指す。一部の実施形態において、オーバーハングは、RNAサイレンシング剤の5’末端または3’末端にある二重鎖領域から延びる、1個もしくは複数個の不対クレオチドを含む。一部の実施形態において、オーバーハングは、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖またはセンス鎖上の、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングである。一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、センス鎖上の5’オーバーハングおよび3’オーバーハングを含む。一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、センス鎖上の3’オーバーハングおよびアンチセンス鎖上の3’オーバーハングを含む。一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、センス鎖上の3’オーバーハングおよびアンチセンス鎖上の3’オーバーハングを含み、センス鎖上の5’オーバーハングもアンチセンス鎖上の5’オーバーハングもいずれも含まない。示されてはいないが、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の3’オーバーハングを有するRNAサイレンシング剤は、その3’オーバーハングがそのRNAサイレンシング剤から除去可能(例えば、切断可能)であるように構成され得ることが、理解されるべきである。
【0045】
一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、少なくとも1個のステムループを含む。一部の実施形態において、aは、独立して0~30の整数であり、RNAサイレンシング剤は、30ヌクレオチドまでの少なくとも1個のステムループを必要に応じて含み得るようになる。したがって、一部の実施形態において、「N」ヌクレオチドとは、その核酸のいずれかの末端または両方の末端にある、ステムループを形成する任意選択ヌクレオチドを示す。例えば、一部の実施形態において、一方の鎖の5’末端にあるNヌクレオチドともう一方の鎖の3’末端にあるNヌクレオチドとは、ステム領域とループ領域とを有するステムループを介して共有結合される。一部の実施形態において、ステム領域は、約1塩基長~約26塩基長までの間の二重鎖を含む。一部の実施形態において、ループ領域は、約4ヌクレオチド長~10ヌクレオチド長までの間の一本鎖部分を含む。
【0046】
一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤は、
図2においてX
14によって示される脱塩基部位を含むか、またはRNAサイレンシング剤は、
図2においてX
14によって示される、標的鎖(例えば、標的RNA、例えば、mRNA)の対応する位置にある標的ヌクレオチドとは標準的(canonical)塩基対を形成しないヌクレオチドを含む。示されるとおり、Z
01は、アンチセンス鎖上のX
14に対応する位置にあるセンス鎖上のヌクレオチドである。一部の実施形態において、X
14は脱塩基部位である。一部の実施形態において、X
14はアデノシン、イノシン、またはウリジンである。一部の実施形態において、Z
01は任意の型のヌクレオチドである。一部の実施形態において、Z
01はグアノシン、シチジン、アデノシン、またはウリジンである。一部の実施形態において、X
14はイノシンであり、Z
01はシチジン、アデノシン、またはウリジンである。一部の実施形態において、X
14はウリジンであり、Z
01はアデノシンまたはグアノシンである。
【0047】
一部の実施形態において、
図2におけるRNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖は、本明細書中の他の箇所に記載される式(I)のアンチセンス鎖である。
【0048】
本明細書において記載される場合、一部の実施形態において、RNAサイレンシング剤とは、RNA媒介性サイレンシング機構(例えば、RNAi)を媒介するのに十分な標的鎖(例えば、標的RNA配列)との相補性を有するアンチセンス鎖を含む核酸を指す。一部の実施形態において、その核酸は、センス鎖と相補的アンチセンス鎖(またはその部分)とを含む二重鎖分子(または二重鎖様構造を有する分子)である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、その5’末端から14位に、標的鎖上の対応する位置にあるヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成するヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、14位ヌクレオチドは、イノシンおよびウリジンから選択されるヌクレオシドを含む。
【0049】
一部の実施形態において、ヌクレオシドという用語は、リボース糖またはデオキシリボース糖に共有結合された、プリン塩基またはピリミジン塩基を有する分子を指す。ヌクレオシドは、核酸塩基(例えば、窒素塩基(例えば、核酸塩基))と五炭糖(例えば、リボース)とからなる。その五炭糖は、リボースまたはデオキシリボースのいずれかであり得る。ヌクレオシドはヌクレオチドの生化学的前駆体であり、ヌクレオチドはRNAおよびDNAの構成成分である。用語「ヌクレオチド」とは、本明細書において使用され得る場合、核酸塩基および五炭糖(すなわち、ヌクレオシド)ならびに1個または複数個のリン酸基を指す。ヌクレオシドにおいて、そのアノマー炭素は、プリンのN9またはピリミジンのN1にグリコシド結合を介して結合されている。ヌクレオシドおよび核酸塩基の例としては、シチジン(C)、ウリジン (U)、アデノシン(A)、グアノシン (G)、チミジン(T)、およびイノシン(I)が挙げられるが、それらに限定はされないが、ヌクレオシドが核酸塩基および五炭糖を含むので、その用語は(このような用語が本明細書において定義されるとおり)改変から生じるヌクレオシドを記載することもまた、理解されるべきである。例えば、ヌクレオシドとしては、天然ヌクレオシド(例えば、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C5ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニルウリジン、C5-プロピニルシチジン、C5-メチルシチジン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、ジヒドロウリジン、メチルシュードウリジン、1-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、N6-メチルアデノシン、および2-チオシチジン)、化学改変型塩基、生化学改変型塩基(例えば、メチル化塩基)、インターカレート化(intercalated)塩基、改変型糖(例えば、2’フルオロリボース、リボース、2’デオキシリボース、2’-O-メチルシチジン、アラビノース、および六炭糖)、または改変型リン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホロアミダイト結合)、キサンチン、ヒポキサンチン、ネブラリン(nubularine)、イソグアノシン(isoguanisine)、ツベルシジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、3-デアザアデノシン、7-デアザアデノシン、7-メチルアデノシン、8-アジドアデノシン、8-メチルアデノシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシチジン、ピロロシチジン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-デアザグアノシン、7-メチルグアノシン、8-アザ-7-デアザグアノシン、チエノグアノシン、イノシン、4-チオ-ウリジン、5-メトキシウリジン、ジヒドロウリジン、ならびにシュードウリジンが挙げられる。一部の実施形態において、ヌクレオチドという用語は、その糖部分にエステル結合で結合された1個または複数個のリン酸基を有するヌクレオシドを指す。ヌクレオチドの例としては、ヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド二リン酸、およびヌクレオシド三リン酸が挙げられる。一部の実施形態において、核酸という用語は、5’炭素原子と3’炭素原子との間でホスホジエステル結合またはホスホロチオエート結合によって一緒に結合された、ヌクレオチドのポリマーを指す。本明細書において使用される場合、一部の実施形態において、核酸とは一本鎖分子を指し得、または核酸とは二本鎖分子(例えば、アンチセンス鎖との二重鎖の状態にあるセンス鎖)を指し得る。
【0050】
一部の実施形態において、本開示の核酸は、少なくとも19ヌクレオチド長のアンチセンス鎖を含む。例えば、一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、19ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長(例えば、19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~21ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、または25ヌクレオチド長)である。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、標的鎖(例えば、標的mRNA)と相補性の領域を含む。一部の実施形態において、その相補性の領域とは、標的mRNAの連続する配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%)相補的である、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列を指す。一部の実施形態において、その相補性の領域は、19ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長(例えば、19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~21ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長~31ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、または25ヌクレオチド長)である。
【0051】
一部の実施形態において、本開示の核酸は、アンチセンス鎖と二重鎖領域を形成するセンス鎖を含む。一部の実施形態において、センス鎖は少なくとも19ヌクレオチド長である。例えば、一部の実施形態において、センス鎖は19ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長(例えば、19ヌクレオチド長~35ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長~21ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、または30ヌクレオチド長~40ヌクレオチド長)である。一部の実施形態において、二重鎖領域とは、2本の逆平行ヌクレオチド配列の相補的塩基対合を介して形成される構造を指す。一部の実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖領域は少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%)相補的である。
【0052】
一部の実施形態において、二重鎖領域は、その二重鎖の少なくとも1個のミスマッチ塩基対(例えば、従来のワトソン-クリック塩基対合規則にしたがって塩基対合しないヌクレオチド)を含む。一部の実施形態において、その少なくとも1個のミスマッチ塩基対のミスマッチは、本明細書において記載されるとおり、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドを含む。例えば、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドは、(例えば、二重鎖領域にある)アンチセンス鎖上の対応するヌクレオチドおよび/または標的鎖上の対応する位置にある標的ヌクレオチドと、ミスマッチ塩基対を形成し得る。一部の実施形態において、二重鎖領域は、1個よりも多いミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、30個よりも少ないミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、1個よりも多いが30個よりも少ないミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、少なくとも1個だが11個よりも少ないミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、少なくとも1個だが6個よりも少ないミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域は、少なくとも1個だが4個よりも少ないミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖領域が1個よりも多いミスマッチを含む場合、そのミスマッチはその核酸において連続する(例えば、隣接する)。一部の実施形態において、二重鎖領域が1個よりも多いミスマッチを含む場合、そのミスマッチはその核酸において連続しない(例えば、隣接しない)。一部の実施形態において、二重鎖領域が2個よりも多いミスマッチを含む場合、互いと隣接する2個以上のミスマッチからなる少なくとも1個のグループが存在する。一部の実施形態において、二重鎖領域が2個よりも多いミスマッチを含む場合、互いと隣接する2個以上のミスマッチは存在しない。一部の実施形態において、二重鎖領域はミスマッチを含まない。一部の実施形態において、二重鎖領域のミスマッチはゆらぎ塩基対を含む。
【0053】
一部の実施形態において、二重鎖領域は1個または複数個のゆらぎ塩基対を含む。一部の実施形態において、その1個または複数個のゆらぎ塩基対のゆらぎ塩基対は、本明細書において記載されるとおり、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオドを含む。例えば、一部の実施形態において、アンチセンス鎖上の14位ヌクレオチドは、(例えば、二重鎖領域にある)アンチセンス鎖上の対応するヌクレオチドおよび/または標的鎖上の対応する位置にある標的ヌクレオチドと、ゆらぎ塩基対を形成し得る。一部の実施形態において、ゆらぎ塩基対とは、特定のヌクレオチドの塩基対合(例えば、ゆらぎ塩基対)を指すことが当該分野において一般的に公知である用語であり、それらの特定のヌクレオチドはワトソン-クリック塩基対ではない(例えば、ミスマッチ塩基対またはミスマッチ塩基対の部分集合の形態である)という点で非標準的(non-canonical)である。詳細には、ゆらぎという用語は、ヒポキサンチンの塩基対合(イノシン(I))およびウラシル(U)(I:U塩基対);グアニン(G)およびU(G:U塩基対);Iおよびアデニン(A)(I:A塩基対);ならびにIおよびシトシン(C)(I:C塩基対)を記載するための用語として使用される。
【0054】
一部の実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は少なくとも1個の改変型ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、改変型ヌクレオチドは、1個または複数個の化学改変をその糖、核酸塩基および/またはリン酸基において有する。一部の実施形態において、改変型ヌクレオチドは、対応する参照ヌクレオチドに結合された1個または複数個の化学的部分を有する。典型的には、改変型ヌクレオチドは、1個または複数個の望ましい特性を、その改変型ヌクレオチドが存在する核酸に付与する。例えば、改変型ヌクレオチドは、熱安定性、分解に対する抵抗性、ヌクレアーゼ抵抗性、溶解度、バイオアベイラビリティ、生理活性、免疫原性の減少などを改善し得る。改変型ヌクレオチドの例としては、2-アミノ-グアノシン、2-アミノ-アデノシン、2,6-ジアミノ-グアノシン、および2,6-ジアミノ-アデノシンが挙げられるが、それらに限定はされない。誘導体化され得るヌクレオチドの位置の例としては、5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン(propyne uridine)、5-プロペニルウリジンなど;6位、例えば、6-(2-アミノ)プロピルウリジン;アデノシンおよび/またはグアノシンの8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンなどが挙げられる。ヌクレオチドアナログとしてはまた、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O改変型およびN改変型(例えば、アルキル化、例えば、N6-メチルアデノシン、または当該分野において別に知られているような)ヌクレオチド;および当該分野において公知である他の複素環改変型ヌクレオチドアナログが挙げられる。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、2’-アミノエチル、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、および2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(arabinonucleic acid)から選択される1個または複数個のヌクレオシド改変を含む。
【0055】
本開示にしたがう改変型ヌクレオチドのさらなる例としては、改変型プリン核酸塩基または改変型ピリミジン核酸塩基を有する、ヌクレオチドが挙げられる。プリン核酸塩基および/またはピリミジン核酸塩基は、例えば、その複素環式のアミド化または脱アミノ化によって改変され得る。さらに、改変型糖(例えば、糖(例えば、リボース)に対する2’-O置換(2’-O-メトキシエチル糖が挙げられるが、それに限定はされない)、2’-フルオロ糖改変(2’-フルオロ)、2’-O-メチル糖(2’-O-メチル)、2’-O-エチル糖、2’-Cl、2’-SH、およびそれらの置換(例えば、2’-SCH3)、二環式糖部分)、あるいは置換(例えば、低級アルキルもしくはその置換(例えば、-CH3、-CF3)による2’-O部分の置換、2’-アミノもしくはその置換による2’-O部分の置換、2’,3’-セコヌクレオチド模倣物、2’-F-アラビノヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド、逆方向(inverted)2’-O-メチルヌクレオチド、2’-O-デオキシヌクレオチド、アルケニルによる2’-O部分の置換、アルキニルによる2’-O部分の置換、メトキシエチルによる2’-O部分の置換(2’-O-MOE)、(DNA中のような)-Hによる2’-O部分の置換、または他の置換基による2’-O部分の置換)が、導入され得る。リボース模倣物もまた企図され、例えば、モルホリノ、グリコール核酸(GNA)、UNA、シクロヘキセニル核酸(CeNA)であるが、それらに限定はされない。
【0056】
他の例としては、2’-4’糖架橋バリアント、例えば、ロックド核酸(LNA)、および2’-O、4’-C-エチレン架橋型核酸(ENA)が挙げられる。ロックド核酸とは、そのリボース糖が、2’酸素と4’炭素とを結合する架橋(2’酸素と4’炭素との間のメチレン架橋としてしばしば観察される)によって改変されている、改変型RNAヌクレオチドである。この架橋は、3’-endo立体構造でそのリボースを作動可能に「ロックする」。ロックドリボース糖の立体構造は、塩基スタッキングおよび骨格の事前組織化を増強し得、このことはそのハイブリダイゼーション特性(例えば、熱安定性およびハイブリダイゼーション特異性)に影響を与え(例えば、増加し)得る。ロックド核酸は、RNAオリゴヌクレオチドおよびDNAオリゴヌクレオチドの両方に挿入されて、典型的なワトソン-クリック塩基対合規則(すなわち、相補性)にしたがってDNAまたはRNAとハイブリダイズし得る。
【0057】
他の化学反応および改変が、本開示にしたがって容易に使用され得るオリゴヌクレオチドの分野において公知であり、核酸改変の定義内に含まれる。例えば、改変という用語は、天然のヌクレオシド以外のあらゆるヌクレオシドの形成をもたらすあらゆる変化、変更、または操作をさらに含む。
【0058】
一部の実施形態において、核酸は、1個よりも多いヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸は、2個よりも多いヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸中のヌクレオシドのうちの25%よりも多いが100%またはそれ以下は、ヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸中のヌクレオシドのうちの50%よりも多くは、ヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸中のヌクレオシドのうちの75%よりも多いが100%またはそれ以下は、ヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸中のヌクレオシドのうちの少なくとも75%(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)は、ヌクレオシド改変を含む。一部の実施形態において、核酸中のヌクレオシドのうちの少なくとも95%だが100%またはそれ以下は、ヌクレオシド改変を含む。
【0059】
一部の実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、少なくとも1個の改変型ヌクレオチド間結合を含む。本明細書において使用される場合、一部の実施形態において、改変型ヌクレオチド間結合とは、ホスホジエステル結合を含む参照ヌクレオチド間結合と比較して1個または複数個の化学的改変を有する、ヌクレオチド間結合を指す。一部の実施形態において、改変型ヌクレオチド間結合は、天然には存在しない結合である。典型的には、改変型ヌクレオチド間結合は、1個または複数個の望ましい特性を、その改変型ヌクレオチド間結合が存在する核酸に付与する。例えば、改変型ヌクレオチドは、熱安定性、分解に対する抵抗性、ヌクレアーゼ抵抗性、溶解度、バイオアベイラビリティ、生理活性、免疫原性の減少などなどを改善し得る。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。その結合に対するさらなる改変としては、アミド化およびペプチドリンカーが挙げられる。他の例としては、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホロ(ジ)チオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミダートリンカー、ホスホネート、3’-メチレンホスホネート、5’-メチレンホスホネート、ボラノリン酸などが挙げられる。さらに、異性体のキラリティーが改変され得る(例えば、RpおよびSp)。
【0060】
一部の実施形態において、核酸は、2個よりも多い改変型ヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、核酸は、3個よりも多い改変型ヌクレオチド間結合を含む。一部の実施形態において、核酸のヌクレオチド間結合のうちの25%よりも多くは、改変を含む。一部の実施形態において、核酸のヌクレオチド間結合のうちの50%よりも多くは、改変を含む。一部の実施形態において、核酸のヌクレオチド間結合のうちの75%よりも多くは、改変を含む。一部の実施形態において、核酸のヌクレオチド間結合のうちの少なくとも75%(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)は、改変を含む。一部の実施形態において、核酸のヌクレオチド間結合のうちの少なくとも95%は、改変を含む。
【0061】
一部の実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖が少なくとも1個のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に結合されている。
【0062】
一部の実施形態において、本開示は、標的mRNAの発現を減少させるための核酸を提供する。一部の実施形態において、標的mRNAの発現を減少させることは、標的特異的サイレンシングを導くことによって(例えば、RNAi機構もしくはRNAiプロセス(RNAi干渉)により標的mRNAの破壊を誘発することによって、および/または望ましい標的mRNAの翻訳抑制を誘発することによって)達成され得る。
【実施例】
【0063】
(実施例1.siRNAノックダウンについてのAGT遺伝子発現アッセイ)
トランスフェクション前日に、HepG2細胞を、96ウェルプレートにおいて抗生物質を含まない培地に10,000細胞/ウェルで播種した。AGT siRNAを、10mMのストック溶液から1mMおよび0.10mMの作業ストックへと希釈した。混合物を、下記に示すとおり(三連について示す量)に別個に調製し、穏やかに混合し、室温にて5分間インキュベートした。
【表3】
【0064】
それらの混合物を組み合わせて室温にて20分間インキュベートした。このインキュベーション中に、96ウェルプレート中の培地を、80μLの抗生物質を含まない培地で置換した。容積20μLのその混合物を各ウェルに添加し、プレートを穏やかに軽く叩いて、そのウェルの中身を混合した。細胞を5% CO2中で37℃にて24時間(mRNA分析のために)インキュベートした。
【0065】
24時間後、溶解溶液(Lysis Solution)を、1反応当たり49.5μLのRT溶解溶液(Lysis Solution)と1反応当たり0.5μLのDNaseIとを組み合わせることによって調製し、総反応数の分だけ増やした。その細胞培養培地を吸引し、50μLの冷たいPBSでリンスした。1ウェル当たり容積50μLの溶解溶液(Lysis Solution)を添加し、ピペット操作によって混合し、その後、室温にて5分間インキュベーションした。容積5μLの停止溶液(Stop Solution)(室温)を添加し、ピペット操作によって混合し、その後、室温にて2分間インキュベーションした。マスターミックス(Master Mix)を、下記に示すとおり氷上で調製した。
【表4】
【0066】
氷上で、容積18μLのマスターミックス(Master Mix)を、光学96ウェルPCRプレートの各ウェルに添加した。容積2μLの溶解物(またはNTC用の水)を各ウェルに添加した。そのプレートを光学接着カバーで密封し、5秒間~10秒間ボルテックス処理し、短時間遠心分離して気泡を除去した。反応を、下記に示すとおりQuantStudio3 qPCR機器において実行するように設定した。
【表5】
【0067】
プレートをqPCR機器に取り付け、反応を実行した。その実行が完了した後、結果をダウンロードし、(Ctと同様に)そのCq値を使用して、以下にしたがってデータを分析した:(i)各サンプルについてAGTおよびGAPDHについてのCt値を記録する;(ii)ΔΔCt=AGT Ct値-GAPDH Ct値;(iii)ΔΔCtRQ=ΔΔCt試験サンプル-ΔΔCtトランスフェクトしていない試験サンプル;(iv)RQ(発現の倍数変化)=2-ΔΔCt;(v)残存AGT%=2-ΔΔCt×100;(vi)AGTノックダウン%=100-残存AGT%。
【0068】
これらの実験において評価したsiRNAについての配列情報を、以下に表1に提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0069】
siRNA分子を用いたAGTノックダウン実験からのインビトロでの結果を、以下に表2に示す。
【表2】
【0070】
この実施例において使用する物質のリストは、以下のとおりである:HepG2細胞(ATCCカタログ番号HB-8065);AGT siRNA SMARTpool(Dharmaconカタログ番号L-010988-00-0005);Dharmafect 4(Dharmaconカタログ番号T-2004-01);Cells-To-CT 1Step TaqManキット(Fisherカタログ番号 A25603);AGT TaqMan遺伝子発現アッセイ250rxns-Hs01586213_m1(Fisherカタログ番号4331182);GAPDH TaqMan遺伝子発現アッセイ250rxns-Hs02786624_g1(Fisherカタログ番号4331182);ヌクレアーゼを含まない水;MicroAmp光学96ウェルプレート、0.2mL(10プレート)(Fisherカタログ番号N8010560);MicroAmp光学接着カバー(100枚)(Fisherカタログ番号4311971)。
【0071】
(実施例2.RD1354 siRNAのインビボ試験)
siRNA「RD1354」をカニクイザルにおいて評価した。この研究の前に、それらのサルを隔離した状態で維持し、その間に、それらの動物を健康全般について毎日観察した。2匹のカニクイザルに、研究1日目に、3mg/kgのオリゴヌクレオチドを単回皮下投与で注入した。この研究期間中、これらのサルを病気または苦痛の徴候について毎日観察した。動物を、-6日目ならびに1日目(投与前)、4日目、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目、および43日目に血清分析のために採血した。循環AGTレベルを、ヒトアンジオテンシノーゲン特異的(およびカニクイザルと交差反応性)であるELISAを製造業者のプロトコル(IBL America番号27412)にしたがって使用して、定量化した。データをベースライン値(投与前の1日目)のパーセントとして表し、平均±標準偏差として示した。個々のサルについての結果を
図3Aに示し、群についての平均した結果を
図3Bに示す。
【0072】
(等価物および範囲)
特許請求の範囲において、「ある(1つの)(a)」、「ある(1つの)(an)」、および「その(the)」などの冠詞は、反対に示されておらず文脈からそうではないことが明らかでもない限りは、1つまたは1つよりも多くを意味し得る。1つの群のうちの1つまたは複数の要素の間に「または」を含む請求項または記載は、反対に示されておらず文脈からそうではないことが明らかでもない限りは、その群の要素のうちの1つ、1つよりも多く、またはすべてが所定の生成物またはプロセスにおいて存在するか、使用されるか、または他の様式で関連する場合に、満足されると考えられる。本発明は、その群の要素のうちの正確に1つの要素が、所定の生成物またはプロセスにおいて存在するか、使用されるか、または他の様式で関連する、実施形態を含む。本発明は、その群の要素のうちの1よりも多くまたはすべてが、所定の生成物またはプロセスにおいて存在するか、使用されるか、または他の様式で関連する、実施形態を含む。
【0073】
さらに、本発明は、列挙された請求項のうちの1つまたは複数に由来する1つまたは複数の限定、要素、節、および記述用語が別の請求項中に導入される、すべての変化形、組合せ、および置換を含む。例えば、別の請求項に従属するどの請求項も、同じ基本請求項に従属する他のなんらかの請求項において見出される1つまたは複数の限定を含むように改変され得る。要素が例えばマーカッシュ群形式で列挙として示される場合は、その要素の各部分群もまた開示されており、任意の要素がその群から除去され得る。一般に、本発明または本発明の局面が特定の要素および/または特徴を含むと言われる場合には、本発明または本発明の局面の特定の実施形態はそのような要素および/または特徴からなるか、あるいはそのような要素および/または特徴から本質的になることが、理解されるべきである。簡潔さを目的として、それらの実施形態は、本明細書においてこのとおりの言葉では具体的には示されていない。
【0074】
本明細書および特許請求の範囲において本出願で使用される句「および/または(および/もしくは)」は、そのように結合されている要素(すなわち、一部の場合では接続的に存在し別の場合では離接的に存在する要素)のうちの「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じ様式(すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つまたは複数」)で解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に同定されている要素以外の他の要素が、具体的に同定されている要素と関連があろうと関連がなかろうと、必要に応じて存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/または(および/もしくは)B」への言及は、「含む(comprising)」などの非限定型(open-ended)の語と組み合わせて使用される場合には、ある実施形態では、Aのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を指し得;別の実施形態では、Bのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を指し得;さらなる別の実施形態では、AおよびBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を指し得る;などである。
【0075】
明細書および特許請求の範囲において本出願で使用される場合、「または(もしくは)(あるいは)(or)」は、上記で定義された「および/または(および/もしくは)」と同じ意味を有すると理解されるべきできある。例えば、列挙における項目を区切る場合、「または(もしくは)(あるいは)(or)」または「および/または(および/もしくは)」は、包括的である(すなわち、多くの要素または列挙された要素のうちの少なくとも1つを含むが、1つよりも多くもまた含み、列挙されていないさらなる項目もまた必要に応じて含む)と解釈される。反対に明示される用語(例えば、「の1つのみ」もしくは「の正確に1つ」))、または特許請求の範囲において使用される場合の「からなる(consisting of)」のみは、多くの要素または列挙された要素のうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書において使用される用語「または(もしくは)(あるいは)(or)」は、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「の一方」、「の1つのみ」、または「の正確に1つ」が続く場合に、排他的な選択肢(すなわち、「一方またはもう一方であるが、両方ではない」)を示すとのみ解釈される。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用される場合に、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有する。
【0076】
明細書および特許請求の範囲において本出願で使用される場合、1つまたは複数の要素の列挙に関する句「少なくとも1つ」は、その要素の列挙中にある要素のうちの任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素が、その要素の列挙内で具体的に列挙されているどの要素も皆少なくとも1つを含む必要は必ずしもなく、その要素の列挙中の要素のいかなる組合せも排除しないことを意味すると、理解されるべきである。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が指す要素の列挙内で具体的に同定されている要素以外の要素が、具体的に同定されている要素と関連があろうと関連がなかろうと、必要に応じて存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(あるいは、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、あるいは、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つのA(1つよりも多くのAを必要に応じて含む)でありBは存在しない(B以外の要素を必要に応じて含む)ことを指し得;別の実施形態では、少なくとも1つのB((1つよりも多くのBを必要に応じて含む)でありAは存在しない(A以外の要素を必要に応じて含む)ことを指し得;さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA(1つよりも多くのAを必要に応じて含む)および少なくとも1つのB(1つよりも多くのBを必要に応じて含む)(他の要素を必要に応じて含む)を指し得る;などである。
【0077】
反対に明示されない限りは、1つよりも多い工程または動作を含む本出願において特許請求されるあらゆる方法において、その方法の工程または動作の順序は、その方法の工程または動作が記載されている順序に必ずしも限定されないこともまた、理解されるべきである。
【0078】
特許請求の範囲および上記の明細書において、すべての移行句、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「有する(holding)」、「から構成される(composed of)」などは、非限定型(open-ended)である、すなわち、含むがそれらに限定はされないことを意味すると、理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consisting essentially of)」のみは、アメリカ合衆国特許審査便覧(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)セクション2111.03において示されるとおり、それぞれ限定型(closed)または半限定型(semi-closed)の移行句である。非限定型(open-ended)の移行句(例えば、「含む(comprising)」)を使用して本明細書において記載されている実施形態は、別の実施形態では、その非限定型の移行句によって記載されている特徴「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」としてもまた企図されることが、理解されるべきである。例えば、本出願が「AおよびBを含む組成物」を記載している場合、本出願はまた、別の実施形態である「AおよびBからなる組成物」ならびに「AおよびBから本質的になる組成物」も企図する。
【0079】
範囲が与えられる場合、終点は含まれる。さらに、そうではないと示されることもなく、文脈および当業者の理解からそうではないことが明らかでもない限りは、範囲として表されている値は、文脈がそうではないと明示しない限りは、本発明の種々の実施形態において、記載されている範囲内にある任意の特定の値または部分範囲をその範囲の下限の単位の10分の1までとり得る。
【0080】
本出願は、種々の登録特許、公開特許出願、雑誌論文、および他の公開物を参照し、それらはすべて、参照により本明細書において援用される。援用された参照物のいずれかと本明細書との間に矛盾が存在する場合は、本明細書が統制する。さらに、本発明のうちの先行技術の範囲内にあるいかなる特定の実施形態も、その請求項のうちのいずれか1つまたは複数から明示的に排除され得る。そのような実施形態は当業者に公知であると考えられるので、本明細書において排除が明示されていない場合でさえ、そのような実施形態は排除され得る。本発明のいかなる特定の実施形態も、先行技術の存在に関連があろうと関連がなかろうと、なんらかの理由で、いずれかの請求項から排除され得る。
【0081】
当業者は、本明細書において記載されている具体的な実施形態の多くの等価物を、認識するか、または慣用的実験のみを使用して確認可能である。本明細書において記載されているその実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されず、むしろ、添付の特許請求の範囲において示されているとおりである。当業者は、本記載に対する種々の変更および改変が、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の趣旨からも範囲からも逸脱することなくなされ得ることを、理解する。
【0082】
本明細書における変数のなんらかの定義における化学基の列挙の記載は、その変数の定義を、列挙された基のうちのいずれか一つの基または組合せとして含む。本明細書における変数についての実施形態の記載は、その実施形態を、いずれか一つの実施形態または他の任意の実施形態もしくはその一部との組合せとして含む。本明細書における実施形態の記載は、その実施形態を、いずれか一つの実施形態または他の任意の実施形態もしくはその一部との組合せとして含む。
【配列表】
【国際調査報告】