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▶ ウェアオプティモ ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】体液状態モニタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0531 20210101AFI20240319BHJP
   A61B 5/262 20210101ALI20240319BHJP
   A61B 5/0537 20210101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B5/0531
A61B5/262
A61B5/0537 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562786
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 AU2022050322
(87)【国際公開番号】W WO2022217304
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】2021901075
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521140526
【氏名又は名称】ウェアオプティモ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WEAROPTIMO PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーア,マーク アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】マティーン,ファールク
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,スティーブン ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA07
4C127DD03
4C127LL07
4C127LL22
(57)【要約】
生体対象の体液状態をモニターするためのシステムであって、生体対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と、別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と、別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと、生体対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために測定された電気応答信号を用いてバイオインピーダンスの変化を決定し、バイオインピーダンスの変化を分析するように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、を含むシステム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体対象の体液状態をモニターするためのシステムであって、
a)前記対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;
b)別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;
c)別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと;
d)
i)前記測定された電気応答信号を用いてバイオインピーダンスの変化を決定し;
ii)前記生体対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するためにバイオインピーダンスの変化を分析する、
ように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記バイオインピーダンスは、
a)単一周波数において測定されたもの;
b)複数の異なる周波数において測定されたもの;および
c)複数の異なる周波数において行われたインピーダンス測定から導かれたもの、
の少なくとも一つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バイオインピーダンスは、
a)細胞内体液レベル;
b)細胞外体液レベル;および
c)血液体液レベル、
の少なくとも一つを示す、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記バイオインピーダンスの変化は、
a)バイオインピーダンスの大きさの変化;
b)バイオインピーダンス位相角の変化;
c)細胞内体液レベルの変化;
d)細胞外体液レベルの変化;および、
e)血液体液レベルの変化、
の少なくとも一つを含む、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)体液コンパートメントの間の体液の動きを決定するために前記バイオインピーダンスの変化を分析し;かつ、
b)前記決定された体液の動きに基づいて前記示標を生成する
ように構成される、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)ベースラインバイオインピーダンスを決定し;かつ、
b)前記ベースラインバイオインピーダンスに対する前記バイオインピーダンスの変化を分析する、
ように構成される、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)前記生体対象中の体液レベルを撹乱する撹乱事象を決定し;かつ、
b)少なくとも部分的に前記撹乱事象に従って前記バイオインピーダンスの変化を分析する、
ように構成される、請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記撹乱事象は、
a)身体活動状態の変化;
b)姿勢の変化;
c)加温;
d)冷却;
e)体液の摂取;
f)医薬品の投与;
g)薬理学的薬剤の投与;
h)医療手順;
i)透析;
j)静脈内補液の投与;
k)静脈内血液の投与;
l)病気または疾患の発症;および、
m)生理撹乱、
の少なくとも一つを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)前記撹乱事象の前および後に測定された前記バイオインピーダンスの変化の決定;
b)前記撹乱事象時に測定されたバイオインピーダンスの変化の決定;
c)前記撹乱事象後の期間のバイオインピーダンスの変化の決定;および、
d)前記撹乱事象後の期間のバイオインピーダンスの変化速度の決定、
の少なくとも一つを行うように構成される、請求項7または請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)前記バイオインピーダンスの複数の変化であって、前記バイオインピーダンスの各変化は、それぞれの撹乱事象と関連している変化を比較し;かつ、
b)前記バイオインピーダンスの前記いくつかの変化に基づいて前記示標を決定する、
ように構成される、請求項7~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)複数の撹乱事象のそれぞれの後の前記バイオインピーダンスの変化の速度の勾配を決定し;および、
b)前記勾配の変化に基づいて前記示標を決定する、
ように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記一つ以上の電子処理デバイスは、
a)使用者入力命令;
b)少なくとも一つのセンサからの信号;
c)前記生体対象の動きの変化;
d)前記生体対象の姿勢の変化;
e)前記生体対象の体温の変化;
f)前記生体対象の心拍数の変化;
g)前記生体対象の呼吸速度の変化;および、
h)前記生体対象の血中酸素レベルの変化、
の少なくとも一つに基づいて前記撹乱事象を決定するように構成される、請求項7~11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、
a)前記基材上に装着されている;および、
b)前記基材に取り付けられた筐体内に設けられ、前記一つ以上の処理デバイスが、
i)前記少なくとも一つのセンサからのセンサ信号をモニターし;および、
ii)前記センサ信号に従って前記撹乱事象を決定する、
ように構成されている、の少なくとも1つがなされているセンサを含む、請求項7~12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記示標は、
a)水分過多;
b)水分過少;
c)正常水分;
d)回復;
e)脱水に傾いている;および、
f)コンパートメント間の体液の不均等分布、
の少なくとも一つを示す、請求項1~13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
a)前記微細構造体は、対として配置され、前記バイオインピーダンスは、
i)電極の複数の対;および、
ii)異なる間隔を有する電極の対、
の少なくとも一つを用いて測定される;および、
b)前記微細構造体は、列として配置され、前記バイオインピーダンスは、
i)微細構造体の別々の列上の電極;および、
ii)異なる間隔を有する微細構造体の別々の列上の電極、
の少なくとも一つの間で測定される、
の少なくとも一つである、請求項1~14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記微細構造体の少なくともいくつかは、ブレード微細構造体である、請求項1~15の何れか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記微細構造体の間の間隔が、
a)約2mm;
b)約1mm;
c)約0.5mm;
d)約0.2mm;および、
e)約0.1mm、
の少なくとも一つである、請求項1~16の何れか一項に記載の電極構成。
【請求項18】
前記微細構造体の少なくともいくつかは、
a)少なくとも部分的に先細りであり、実質的に丸められた矩形の断面形状を有するもの;
b)
i)300μmより小さい;
ii)約150μm;
iii)100μmより大きい;および、
iv)50μmより大きい、
の少なくとも一つである長さを有するもの;
c)
i)前記長さと似た程度の大きさの;
ii)前記長さより大きい;
iii)前記長さとほぼ同じ;
iv)300μmより小さい;
v)約150μm;
vi)50μmより大きい、
の少なくとも一つである最大幅を有するもの;および、
d)
i)前記幅より小さい;
ii)前記幅より顕著に小さい;
iii)前記長さより小さい程度の大きさの;
iv)100μmより小さい;
v)約25μm;および、
vi)10μmより大きい、
の少なくとも一つである厚さを有するもの、
の少なくとも一つである、請求項1~17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記微細構造体のいくつかは、
a)
i)前記微細構造体の長さの50%より小さい;
ii)前記微細構造体の長さの少なくとも10%;および、
iii)前記微細構造体の長さの約30%、
の少なくとも一つである長さ;および、
b)
i)少なくとも0.1μm;
ii)5μmより小さい;および、
iii)約1μm、
の少なくとも一つの鋭さ、
の少なくとも一つを有する先端部を有する、請求項1~18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記微細構造体のいくつかは、
a)侵入の深さを制御するために前記角質層に当接するように構成された肩部;
b)前記肩部から前記先端部に延在する軸部であって、前記生体対象中の前記先端部の位置を制御するように構成される軸部;および、
c)前記生体対象に前記基材を固定するために用いられるアンカー微細構造体、
の少なくとも一つを含む、請求項1~19の何れか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記微細構造体は、
a)cmあたり5000より小さい;
b)cmあたり100より大きい;および、
c)cmあたり約600、
の少なくとも一つである密度を有する、請求項1~20の何れか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記基材は、電気信号が前記微細構造体のそれぞれに印加され、および/または電気信号が前記微細構造体のそれぞれから受け取られることを可能にするために電気接続部を含む、請求項1~21の何れか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは、前記少なくとも一つのセンサおよび少なくとも一つの前記信号発生器の少なくとも一つを前記微細構造体の一つ以上に選択的に接続するための一つ以上のスイッチを含み、前記一つ以上の電子処理デバイスは、少なくとも一つの測定が行われることを可能にするために前記スイッチおよび前記信号発生器を制御するように構成される、請求項1~22の何れか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記システムは、
a)前記基材上に配置され、一つ以上の微細構造体電極に動作可能に結合された基材コイル;および、
b)励起および受信コイルであって、前記励起および受信コイルに印加された駆動信号の変化が応答信号として作用するよう、前記基材コイルに近接して配置された励起および受信コイル、
を含む、請求項1~23の何れか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記微細構造体は、
a)前記微細構造体の表面の一部;
b)前記微細構造体の近位端;
c)前記微細構造体の長さの少なくとも半分;
d)前記微細構造体の近位端の約90μm;および、
e)前記微細構造体の先端部分の少なくとも一部、
の少なくとも一つの上に延在する絶縁層を含む、請求項1~24の何れか一項に記載のシステム。
【請求項26】
少なくとも一つの電極は、
a)
i)200,000μmより小さい;
ii)約22,500μm;および、
iii)少なく2,000μm
の少なくとも一つの表面積を有するもの、
b)前記微細構造体の遠位部分の長さにわたって延在するもの;
c)前記先端部から間隔をおいて配置された前記微細構造体の一部分の長さにわたって延在するもの;
d)前記微細構造体の遠位端に近接して配置されるもの;
e)前記微細構造体の先端部に近接して配置されるもの;
f)前記微細構造体の長さの少なくとも25%にわたって延在するもの;
g)前記微細構造体の長さの50%未満にわたって延在するもの;
h)前記微細構造体の約60μmにわたって延在するもの;および、
i)使用時、前記生体対象の生きた表皮の中に配置されるように構成されるもの、
の少なくとも一つである、請求項1~25の何れか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記微細構造体は、
a)バイオファウリングを減少させる材料;
b)少なくとも一種類の物質を前記微細構造体に引き寄せる材料;および、
c)少なくとも一種類の物質を微細構造体から遠ざける材料、
の少なくとも一つを含む材料を含む、請求項1~26の何れか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記微細構造体の少なくともいくつかは、コーティングで被覆され、前記コーティングは、
a)表面特性を
i)親水性を増大させる;
ii)疎水性を増大させる;および、
iii)バイオファウリングを最小にする、
の少なくとも一つとなるように改変するもの;
b)少なくとも1種類の物質を前記微細構造体に引き寄せるもの;
c)少なくとも1種類の物質を前記微細構造体から遠ざけるもの;
d)少なくとも1種類の物質を前記微細構造体から排除するためにバリアーとして作用するもの;および、
e)
i)透過膜;
ii)ポリエチレン;
iii)ポリエチレングリコール;
iv)ポリエチレンオキシド;
v)双性イオン;
vi)ペプチド;
vii)ヒドロゲル;および、
viii)自己集合単分子膜、
の少なくとも一つを含むもの、
の少なくとも一つである、請求項1~27の何れか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、
a)前記基材および微細構造体を含むパッチ;および、
b)
i)前記測定を行い;
ii)
(1)前記示標を示す出力の提供;および、
(2)前記示標に基づく推奨の提供、
の少なくとも一つを行うように構成されたモニタリングデバイス、
を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記モニタリングデバイスは、
a)前記パッチに誘導結合される;
b)前記パッチに取り付けられる;および、
c)読み出しが行われるとき前記パッチと接触させられる、
の少なくとも一つである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムは、
a)
i)前記測定された応答信号から導かれる対象データ;および、
ii)測定された応答信号
の少なくとも一つを送信する送信器;および、
b)
i)前記測定された応答信号から導かれた対象データを受け;および、
ii)少なくとも一つの示標であって、前記生体対象と関連する健康状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を生成させるために前記対象データを分析する、
処理システム、
を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記システムは、
a)前記生体対象の水分;
b)間質液レベル;
c)間質液レベルの変化;
d)間質液中のイオン濃度;
e)間質液中のイオン濃度の変化;
f)イオン濃度;
g)イオン濃度の変化;
h)体内総水分量;
i)細胞内液レベル;
j)細胞外液レベル;
k)血漿水レベル;
l)体液容量;および、
m)水分レベル、
の少なくとも一つを示す示標を決定するために、生きた表皮の中でインピーダンス測定を行うように構成された、請求項1~31の何れか一項に記載のシステム。
【請求項33】
生体対象の体液状態をモニターするための方法であって、
a)
i)前記生体対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;
ii)別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;
iii)別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと、
を提供するステップと;
b)
i)前記測定された電気応答信号を用いてバイオインピーダンスの変化を決定し;かつ
ii)前記生体対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するためにバイオインピーダンスの前記変化を分析する、
ために、一つ以上の電子処理デバイスを用いるステップと、
を含む方法。
【請求項34】
生体対象の体液状態をモニターするためのシステムであって、
a)前記生体対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;
b)別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;
c)別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと;
d)
i)前記測定された電気応答信号を用いて一つ以上のバイオインピーダンス値を決定し;かつ
ii)前記生体対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために、一つ以上のバイオインピーダンス値を分析する、
ように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、
を含むシステム。
【請求項35】
生体対象の体液状態をモニターするための方法であって、
a)
i)前記生体対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つ基材と;
ii)別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;
iii)別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと、
を提供するステップと;
b)
i)前記測定された電気応答信号を用いて一つ以上のバイオインピーダンス値を決定し;かつ
ii)前記生体対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために一つ以上のバイオインピーダンス値を分析する、
ために一つ以上の電子処理デバイスを用いるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体対象に対して測定を行うためのシステムおよび方法に関し、特定の一例においては微細構造体を用いて対象の角質層を突破し、それによって体液状態モニタリングを行うことにより生体対象に対して体液レベルの測定を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の記載
本明細書における何れの先行刊行物(もしくはそれから導かれる情報)または公知である何れの事項への参照も、該先行刊行物(もしくはそれから導かれる情報)または公知事項が、本明細書が関連する努力分野における技術常識の一部を形成するという承認もしくは容認またはいかなる形の示唆でもなく、いかなる形の示唆ともみなされるべきでない。
【0003】
水は、すべての形の生命に不可欠である。水なしには人はほんの何日間かしか生き残ることができない。水は体の75重量%(年齢に依存する)を構成し、体の恒常性においてさまざまな役割を演じる。汗による体温調節および血管拡張による伝導熱損失は、水の蒸発冷却特性および比熱にそれぞれ依拠する。
【0004】
水の調節は、ヒトにおいて鍵となる恒常性要件である。緊密に調節される血漿容積モル浸透圧濃度および血液容積の制御によって経口摂取、不感損失(尿、糞便)および汗損失が釣り合っている。渇きの感覚は、得られるときは経口水摂取を推し進めるが、熱ストレスを受ける環境において、特に極度の身体運動が求められ、かつ水入手可能性がないかまたは限られる活発な軍事行動において、体内水分損失が水摂取を上回ることがある。
【0005】
水分摂取対水分損失の不均衡により適切な体内水分の維持に失敗すると、脱水および付随する血漿容積モル浸透圧濃度増加を招く。身体的な働き、認知機能および永続的な末端器官損耗または死にわたる脱水の有害な影響が見られる。これらのリスクに対処するために、正常なヒト生理は、血漿容積モル浸透圧濃度の増加が、中枢系で媒介される渇き感を始動させるフィードバック制御システムを提供するが、渇きは、運動中の体液状態を素早く追跡する際には比較的鈍感である。体液の入手可能性および腸の相対的な潅流不足に起因して身体運動時の水分補給の維持がさらに悪化し、そのことが血漿への水分取り込みの速度を低下させる。したがって、身体運動時の体重の2~3%の点までの非自発的脱水は、日常的であり、一部の個人に、自発的に水分を過剰に摂取するという予防的な行動を引き起こし、電解質希釈(低ナトリウム血症)に起因する健康リスクをもたらすことがあり、死に至る結果となり得る。体内水分アセスメントは、最良の試験室試験または示標に関する明確なコンセンサスのない臨床測定問題にとどまる。野外において、体内水分損失評価は、さらに不十分であり、体重測定、尿比重皮膚弾力および汗検出は、不十分な解決策を提供する。
【0006】
表面に基づく汗検出および分析ならびに全身バイオインピーダンス手法が水分をモニターするための比較的最近の候補技術であった。汗に基づく指標は、汗内容物の特有の性質およびエクリン腺の不均一な分布によって損なわれる。インピーダンス測定は、典型的には組織を通して電流を流すために表面型の電極を利用し、組織を横切って電位が測定され、インピーダンス測定値を導くために用いられる。次に、対象中の体液レベルに関する情報、たとえば細胞内および/または細胞外レベルを導くためにインピーダンス測定値の分析が用いられることができる。全身バイオインピーダンス分析は、体の組織(筋肉、皮膚、骨、血液、空気)の多重周波数電気探測に依拠する。ある範囲の周波数にわたるインピーダンス測定によって脂肪、筋肉、骨、空気および血液などの組織タイプのさまざまな電気的性質が探測される。それは、非侵襲的である一方で年齢、性別、体の大きさおよび手足の長さなどの母集団に由来するパラメーターに強く依存し、また汗によって悪影響を受ける。
【0007】
特許文献1は、一つ以上のマイクロニードル電極を用いて対象の皮膚を通る電気信号の伝導率を増強するための方法、システムおよび/またはデバイスを記載している提供される。マイクロニードル電極は、該マイクロニードル電極を対象の皮膚と直接接触させて配置することによって対象の皮膚に施用されることがある。マイクロニードル電極のマイクロニードルは、マイクロニードルが皮膚の真皮までもしくは皮膚の真皮を通って皮膚の角質層を突き刺すように皮膚に挿通されることがある。マイクロニードル電極と対象の皮膚とを通り、または横切って電気信号が通り、または伝導され、マイクロニードル電極のインピーダンスは、最小限であり、既存技術と比較して大幅に低下する。
【0008】
特許文献2は、複数のバイオマーカー測定区域と複数の電極とを含む基部を含む生体情報測定センサが設けられる、を記載している。複数の電極のそれぞれは、複数のバイオマーカー測定区域のそれぞれの一つに配置され、複数の電極のそれぞれは、作用電極と、作用電極から離間した対向電極と、を含む。生体情報測定センサは、複数のニードルも含む。ニードルのそれぞれは、複数の電極のそれぞれの一つに配置される。複数のニードルの2つ以上は、異なる長さを有する。
【0009】
特許文献3は、経皮マイクロニードル連続モニタリングシステムを記載している。連続システムモニタリングは、基材、マイクロニードルユニット、信号処理ユニットおよび電源ユニットを含む。マイクロニードルユニットは、少なくとも、作用電極として用いられる第1のマイクロニードルの組と参照電極として用いられる第2のマイクロニードルの組とを含み、第1および第2のマイクロニードルの組は、基材上に配置される。各マイクロニードルの組は、少なくともマイクロニードルを含む。第1のマイクロニードルの組は、縁にひげ(barbules)が生成するスルーホールを有するシートを少なくとも含む。シートの一つは、他のシートの縁のひげが通過するスルーホールを提供し、ひげ同士は離れて配置される。
【0010】
特許文献4は、一つ以上のマイクロニードル電極を用いて対象の皮膚を通る電気信号の伝導率を増強するためのデバイスを記載している、提供される。マイクロニードル電極は、該マイクロニードル電極を対象の皮膚と直接接触させて配置することにより対象の皮膚に施用されることがある。マイクロニードル電極のマイクロニードルは、マイクロニードルが皮膚の角質層を突き刺して皮膚の真皮までまたは皮膚の真皮を通るように皮膚に挿入されることがある。マイクロニードル電極と対象の皮膚とを通ってまたは横切って電気信号が通り、または伝導され、マイクロニードル電極のインピーダンスは最小限であり、既存技術と比較して大幅に低下する。
【0011】
特許文献5は、生体対象に対して測定を行うためのシステムであって、対象の角質層を突破するように構成された複数のプレート微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;少なくとも一つの微細構造体に動作可能に接続された少なくとも一つのセンサであって、少なくとも一つの微細構造体からの応答信号を測定するように構成された少なくとも一つのセンサと;測定された応答信号を判定し;測定された応答信号に基づいて出力を提供する;測定された応答信号を少なくとも部分的に使用して分析を行う;および測定された応答信号を少なくとも部分的に示すデータを記憶する、のうちの少なくとも一つを行うように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、を含むシステムを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0295100号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0013425号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0208984号明細書
【特許文献4】米国特許第8,588,884号明細書
【特許文献5】国際公開第2020/069565号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの広い形態において、本発明の側面は、生体対象の体液状態をモニターするためのシステムを提供することを目的とし、このシステムは、対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと;測定された電気応答信号を用いてバイオインピーダンスの変化を決定し;対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するためにバイオインピーダンスの変化を分析するように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、を含む。
【0014】
一実施形態において、バイオインピーダンスは、単一周波数で測定される;いくつかの異なる周波数で測定される;およびいくつかの異なる周波数で行われたインピーダンス測定値から導かれる、のうちの少なくとも一つである。
【0015】
一実施形態において、バイオインピーダンスは、細胞内体液レベル;細胞外体液レベル;および血液体液レベルのうちの少なくとも一つを示す。
【0016】
一実施形態において、バイオインピーダンスの変化は、バイオインピーダンスの大きさの変化;バイオインピーダンス位相角の変化;細胞内体液レベルの変化;細胞外体液レベルの変化;および血液体液レベルの変化のうちの少なくとも一つを含む。
【0017】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、体液コンパートメント間の体液の動きを決定するためにバイオインピーダンスの変化を分析し;決定された体液の動きに基づいて示標を生成するように構成される。
【0018】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、ベースラインバイオインピーダンスを決定し;ベースラインバイオインピーダンスに対するバイオインピーダンスの変化を分析するように構成される。
【0019】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、対象中の体液レベルを撹乱する撹乱事象を決定し;撹乱事象によるバイオインピーダンスの変化を少なくとも部分的に分析するように構成される。
【0020】
一実施形態において、撹乱事象は、身体活動状態の変化;姿勢の変化;加温;冷却;体液の摂取;医薬品の投与;薬理学的薬剤の投与;医療技法;透析;静脈内補液の投与;静脈内血液の投与;病気または疾患の発生;および生理的撹乱のうちの少なくとも一つを含む。
【0021】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、撹乱事象の前後に測定されたバイオインピーダンスの変化を決定する;撹乱事象時に測定されたバイオインピーダンスの変化を決定する;撹乱事象の後の期間のバイオインピーダンスの変化を決定する;および、撹乱事象後の期間のバイオインピーダンスの変化の速度を決定する、のうちの少なくとも一つを行うように構成される。
【0022】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、バイオインピーダンスの複数の変化であって、バイオインピーダンスのそれぞれの変化はそれぞれの撹乱事象と関連付けられる変化を比較し;バイオインピーダンスの複数の変化に基づいて示標を決定するように構成される。
【0023】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、複数の撹乱事象のそれぞれの後のバイオインピーダンスの変化の速度の勾配を決定し;勾配の変化に基づいて示標を決定するように構成される。
【0024】
一実施形態において、一つ以上の電子処理デバイスは、使用者入力命令;少なくとも一つのセンサからの信号;対象の動きの変化;対象の姿勢の変化;対象体温の変化;対象の心拍数の変化;対象の呼吸速度の変化;および対象の血中酸素レベルの変化のうちの少なくとも一つに基づいて撹乱事象を判定するように構成される。
【0025】
一実施形態において、システムは、基材に装着された;および基材に取り付けられた筐体内に提供された、のうちの少なくとも一つであるセンサであって、一つ以上の処理デバイスは、少なくとも一つのセンサからのセンサ信号をモニターし;センサ信号と一致する撹乱事象を判定するように構成されたセンサを含む。
【0026】
一実施形態において、示標は、水分過剰;水分過少;正常水分補給;回復;脱水に向かう傾向;およびコンパートメント間の体液の分布不良のうちの少なくとも一つを示す。
【0027】
一実施形態において、微細構造体は、対として配置され、バイオインピーダンスは、電極のいくつかの対;および異なる間隔を有する電極の対、のうちの少なくとも一つを用いて測定される;および、微細構造体は、列として配置され、バイオインピーダンスは、微細構造体の別々の列にある電極;および異なる間隔を有する微細構造体の別々の列にある電極、のうちの少なくとも一方の間で測定される、のうちの少なくとも一つである。
【0028】
一実施形態において、微細構造体の少なくともいくつかは、ブレード微細構造体である。
【0029】
一実施形態において、微細構造体の間の間隔は、約2mm;約1mm;約0.5mm;約0.2mm;および約0.1mmのうちの少なくとも一つである。
【0030】
一実施形態において、微細構造体の少なくともいくつかは、少なくとも部分的に先細りであり、実質的に丸い長方形の断面形を有する;300μmより小さい;約150μm;100μmより大きい;および50μmより大きいのうちの少なくとも一つである長さを有する;長さと類似の大きさの程度の;長さより大きい;長さとほぼ同じ;300μmより小さい;約150μm;50μmより大きいのうちの少なくとも一つである最大幅を有する;および幅より小さい;幅より顕著に小さい;長さより小さな程度の;100μmより小さい;約25μm;および10μmより大きいのうちの少なくとも一つである厚さを有する、のうちの少なくとも一つである。
【0031】
一実施形態において、微細構造体の少なくともいくつかは、微細構造体の長さの50%より小さい;微細構造体の長さの少なくとも10%;および微細構造体の長さの約30%のうちの少なくとも一つである長さを有する;少なくとも0.1μm;5μmより小さい;および約1μmのうちの少なくとも一つの鋭さを有する、のうちの少なくとも一つである先端部を有する。
【0032】
一実施形態において、微細構造体の少なくともいくつかは、侵入の深さを制御するために角質層に対して当接するように構成された肩部;肩部から先端部に延在する軸部であって、対象中の先端部の位置を制御するように構成された軸部;および基材を対象に固定するために用いられるアンカー微細構造体のうちの少なくとも一つを含む。
【0033】
一実施形態において、微細構造体は、cmあたり5000より小さい;cmあたり100より大きい;およびcmあたり約600のうちの少なくとも一つである密度を有する。
【0034】
一実施形態において、基材は、電気信号がそれぞれの微細構造体に印加され、および/またはそれぞれの微細構造体から受け取られることを可能にするために電気接続部を含む。
【0035】
一実施形態において、システムは、少なくとも一つのセンサと少なくとも一つの信号発生器との少なくとも一つを微細構造体の一つ以上に選択的に接続するための一つ以上のスイッチを含み、一つ以上の処理デバイスは、少なくとも一つの測定が行われることを可能にするためにスイッチおよび信号発生器を制御するように構成される。
【0036】
一実施形態において、システムは、基材上に配置され、一つ以上の微細構造体電極に動作可能に結合された基材コイル;および基材コイルに近接して配置された励起および受信コイルであって、励起および受信コイルに印加された駆動信号の変化が応答信号として作用するような励起および受信コイルを含む。
【0037】
一実施形態において、微細構造体は、微細構造体の表面の一部;微細構造体の近位端;微細構造体の長さの少なくとも2分の1;微細構造体の近位端の約90μm;および微細構造体の先端部分の少なくとも一部のうちの少なくとも一つの上に延在する絶縁層を含む。
【0038】
一実施形態において、少なくとも一つの電極は、200,000μmより小さい;約22,500μm;および少なくとも2,000μmの少なくとも一つの表面積を有する;微細構造体の遠位部の長さにわたって延在する;微細構造体の先端部から離間した部分の長さにわたって延在する;微細構造体の遠位端に近接して配置される;微細構造体の先端部に近接して配置される;微細構造体の長さの少なくとも25%にわたって延在する;微細構造体の長さの50%未満にわたって延在する;微細構造体の約60μmにわたって延在する;および使用時に対象の生きた表皮中に配置されるように構成される、のうちの少なくとも一つである。
【0039】
一実施形態において、微細構造体は、バイオファウリングを低減する材料;微細構造体に少なくとも1種類の物質を引き寄せる材料;および微細構造体から少なくとも1種類の物質を遠ざける材料のうちの少なくとも一つを含む材料を含む。
【0040】
一実施形態において、微細構造体の少なくともいくつかは、コーティングで被覆され、コーティングは、表面特性を改変して、親水性を増大させる;疎水性を増大させる;およびバイオファウリングを最小限にする、のうちの少なくとも一つを行う;微細構造体に少なくとも1種類の物質を引き寄せる;微細構造体から少なくとも1種類の物質を遠ざける;微細構造体から少なくとも1種類の物質を排除するバリアーとして作用する;および、透過膜;ポリエチレン;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;双性イオン;ペプチド;ヒドロゲル;および自己集合単分子膜の少なくとも一つを含む、の少なくとも一つである。
【0041】
一実施形態において、システムは、基材および微細構造体を含むパッチ;測定を行い、示標を示す出力を提供する;および示標に基づいて推奨を提供する、のうちの少なくとも一つを行うように構成されたモニタリングデバイスを含む。
【0042】
一実施形態において、モニタリングデバイスは、パッチに誘導結合される;パッチに取り付けられる;および読み出しが行われるときパッチと接触させられる、のうちの少なくとも一つである。
【0043】
一実施形態において、システムは、測定された応答信号から導かれる対象データ;および測定された応答信号のうちの少なくとも一つを送信する送信器;および、測定された応答信号から導かれる対象データを受け;少なくとも一つの示標であって、対象と関連付けられる健康状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を生成するために対象データを分析する処理システムを含む。
【0044】
一実施形態において、システムは、対象の水分量;間質液レベル;間質液レベルの変化;間質液中のイオン濃度;間質液中のイオン濃度の変化;イオン濃度;イオン濃度の変化;体内全水分量;細胞内体液レベル;細胞外体液レベル;血漿水分レベル;体液容積;および水分レベルのうちの少なくとも一つを示す示標を決定するために生きた表皮中でインピーダンス測定を行うように構成される。
【0045】
一つの広い形態において、本発明の側面は、生体対象の体液状態をモニターするための方法であって、対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つのセンサと、を提供するステップと;測定された電気応答信号を用いてバイオインピーダンスの変化を判定し;バイオインピーダンスの変化を分析して対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために一つ以上の電子処理デバイスを用いるステップと、を含む方法を提供することを目的とする。
【0046】
一つの広い形態において、本発明の側面は、生体対象の体液状態をモニターするためのシステムであって、対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと;測定された電気応答信号を用いて一つ以上のバイオインピーダンス値を決定し;一つ以上のバイオインピーダンス値を分析して対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、を含むシステムを提供することを目的とする。
【0047】
一つの広い形態において、本発明の側面は、生体対象の体液状態をモニターするための方法であって、対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と;別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と;別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと、を提供するステップと;測定された電気応答信号を用いて一つ以上のバイオインピーダンス値を決定し;一つ以上のバイオインピーダンス値を分析して対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために、一つ以上の電子処理デバイスを用いるステップと、を含む方法を提供することを目的とする。
【0048】
本発明のこれらの広い形ならびにそれらのそれぞれの特徴は、一緒におよび/または独立に用いられてよく、個別の広い形への参照は、限定するものではないことは言うまでもない。さらに、本方法の特徴は、このシステムまたは装置を用いて行われてよいこと、およびこのシステムまたは装置の特徴は、この方法を用いて実体化されてよいことは言うまでもない。
【0049】
次に、添付の図面を参照して本発明のさまざまな例および実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】生体対象に対して測定を行うためのシステムの例の概略図である。
図2】生体対象に対して測定を行うためのプロセスの例の流れ図である。
図3A】生体対象に対して測定を行うためのシステムのさらなる例の概略側面図である。
図3B図3Aのシステムのためのパッチの例の概略下面図である。
図3C図3Bのパッチの概略平面図である。
図3D】電流路の侵入の深さを例示する図3Bのパッチの概略側面図である。
図3E】さまざまな間隔のブレード微細構造体について1kHzにおける電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図3F】さまざまな間隔のブレード微細構造体について1MHzにおける電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図3G】さまざまな間隔のブレード微細構造体について汗のある条件における電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図3H】さまざまな間隔のブレード微細構造体について汗のない条件における電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図3I】さまざまな表面電極間隔について汗のある条件における電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図3J】さまざまな表面電極間隔について汗のない条件における電流密度の変化のモデルの例を例示するグラフである。
図4A】プレート微細構造体の例の概略側面図である。
図4B図4Aの微細構造体の概略正面図である。
図4C図4Aの微細構造体を含むパッチの例の概略下面図である。
図4D図4Aおよび4Bのブレード微細構造体の対を含む基材の例の概略上面斜視図である。
図4E】六角格子微細構造体アレイの例の概略平面図である。
図4F】微細構造体の対の格子の代替例の概略平面図である。
図4G】微細構造体の対の格子の例の概略斜視図である。
図4H】接続部例を示す図4Iのグリッドの概略平面図である。
図4I】角度をずらしたプレート微細構造体の対のアレイを含むパッチの例の画像である。
図4J】プレート微細構造体の特定の例の概略側面図である。
図4K図4Jのプレート微細構造体の概略斜視図である。
図4L】表皮測定のために対象に挿入された微細構造体の対の例の概略側面図である。
図4M】真皮測定のために対象に挿入された微細構造体の対の例の概略側面図である。
図4N】メサ上に装着されたプレート微細構造体の対の列を含むパッチの例の画像である。
図4O図4Nのパッチの例の第2の画像である。
図4P図4Nのパッチの概略斜視図である。
図4Q図4Nのパッチの微細構造体の対の列の概略端面図である。
図4R図4Nのパッチを用いる侵入実験の結果の画像である。
図5】水分をモニターするためのプロセスの例のフローチャートである。
図6A】角質層に侵入する微細構造体電極を用いて測定されたバイオインピーダンスの変化を例示するグラフである。
図6B】皮膚表面電極を用いて測定されたバイオインピーダンスの変化を例示するグラフである。
図7図7A~7Sは、角質層に侵入する微細構造体電極を用いていくつかの異なる周波数で測定されたバイオインピーダンスの変化を例示するグラフである。
図8A】角質層に侵入する微細構造体電極を用いて一連の身体運動の実施後に測定されたバイオインピーダンス勾配の変化を例示するグラフである。
図8B】一連の身体運動の実施後に角質層に侵入する微細構造体電極を用いて測定されたさまざまなインピーダンス勾配を例示するグラフである。
図9A】安静と運動との繰り返しシーケンス時に行われた10Hzにおけるインピーダンス測定例のグラフである。
図9B】安静と運動との繰り返しシーケンス時に行われた100,000Hzにおけるインピーダンス測定例のグラフである。
図10】基本生物物理モデルの例の回路図である。
図11A】デバイス応答の主要部分を抑制する大きな電極分極寄与の例のグラフである。
図11B】インビボ影響の観察のためのより大きな周波数スペクトル入手可能性を高くする、より低い電極分極寄与の例のグラフである。
図12A】さまざまな生理食塩水濃度に対する検出デバイス応答例のグラフである。
図12B】高周波数膝形特徴に適合しない、測定全体に至る初期モデル適合の例のグラフである。
図12C】より良好な適合を測定全体で提供する改訂モデルの例のグラフである。
図13A】コーティングされていない微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデルインピーダンス応答の例のグラフである。
図13B】パリレンでコーティングされた微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデルインピーダンス応答の例のグラフである。
図13C】部分的にコーティングされた微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデルインピーダンス応答の例のグラフである。
図13D】コーティングされていない微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデル位相応答の例のグラフであり、α分散を示す。
図13E】パリレンコーティングされた微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデル位相応答の例のグラフであり、α分散が見られない。
図13F】エッチングされた微細構造体デバイスについてのインビトロでのモデル位相応答の例のグラフであり、遅延α分散を示す。
図14A】コーティングされていない微細構造体デバイスのインビトロ温度応答例のグラフである。
図14B】コーティングされていない微細構造体デバイスのインビトロ温度応答のモデルの例のグラフである。
図14C】抽出された、温度の変化によって生じる溶液抵抗の例のグラフと、計算された温度係数とである。
図15A】予測されたインピーダンスの大きさを示す微細構造体デバイスのインビトロ応答の例のグラフである。
図15B】予測されたインピーダンスの大きさを示す微細構造体デバイスのインビボ応答の例のグラフである。
図15C】予測された位相応答を示す微細構造体デバイスのインビトロ応答の例のグラフである。
図15D】予測された位相応答を示す微細構造体デバイスのインビボ応答の例のグラフである。
図15E】細胞内-細胞外応答を探測するために分散を利用する、提案されるモデルの回路図である。
図15F】細胞内-細胞外応答を探測するために分散を利用する、提案されるモデルの回路図である。
図16A】乾いた皮膚、軽度の発汗および重度の発汗についての皮膚上の表面電極のインピーダンス周波数掃引のグラフである。
図16B】乾いた皮膚、軽度の発汗および重度の発汗についての皮膚内の表面電極のインピーダンス周波数掃引のグラフである。
図17】脱水実験時の個人についての生のインピーダンス測定値のグラフである。
図18A】加温時および冷却時に行われた大きさ測定値の例のグラフである。
図18B】加温時および冷却時に行われた位相インピーダンス測定値の例のグラフである。
図19A】コーティングされていない微細構造体デバイスを用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
図19B】コーティングされていない微細構造体デバイスを用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
図19C】パリレンエッチングされた微細構造体デバイスを用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
図19D】パリレンエッチングされた微細構造体デバイスを用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
図19E】表面インピーダンス測定を用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
図19F】表面インピーダンス測定を用いて行われた大きさおよび位相インピーダンス測定の例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
定義
特に断らない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野において通常の知識を有する者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書において記載されるものと類似のまたは同等なあらゆる方法および材料が用いられ得るが、好ましい方法および材料が記載される。本発明を目的として、次の用語が下記で定義される。
【0052】
冠詞「a」および「an」は、本明細書においてその冠詞の文法的対象の一つまたは2つ以上(すなわち少なくとも一つ)を参照するために用いられる。例として、「an element」は、一つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0053】
用語「約(about)」および「大体(approximately)」は、本明細書において、指定される条件に対して20%(すなわち±20%)の大きさで、特に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の大きさで変動する条件(たとえば量、レベル、濃度、時間等)を指すために用いられる。
【0054】
本明細書において用いられる用語「および/または(and/or)」は、関連して挙げられる項目の一つ以上のいずれかのまたはすべての可能な組み合わせ、ならびに代替形(または(or))で解釈されるときは、組み合わせの欠如を指し、かつ包含する。
【0055】
本明細書および添付の請求項を通して、特に文脈によって必要とされない限り、語「を含む(comprise)」ならびに「を含む(comprises)」および「を含んでいる(comprising」のような変化形は、明示された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの包含を暗に示すが、いかなる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの排除も暗に示すものではないと理解される。従って、用語「を含んでいる(comprising)」などの使用は、挙げられた整数は、必要または不可欠であるが、他の整数は、任意選択であり、存在することも存在しないこともあることを示す。「からなる(consisting of)」は、何であっても句「からなる」の後に続くものを含み、かつそれに限定されることを意味する。従って、句「からなる(consisting of)」は、挙げられた要素が必要または不可欠であること、およびその他の要素が存在してはならないことを示す。「基本的にからなる(consisting essentially of)」は、この句の後に挙げられたあらゆる要素を含み、かつ挙げられた要素についての開示において特定される活動または行動を妨げるかまたは寄与することがない他の要素に限られることを意味する。従って、句「基本的にからなる(consisting essentially of)」は、挙げられた要素が必要または不可欠であるが、その他の要素は、任意選択であり、挙げられた要素の行動または作用にそれらが影響を及ぼすかどうかに依存して存在することがあるかまたは存在してはならないことを示す。
【0056】
本明細書において、用語「複数(plurality)」は、2以上、たとえば2から1×1015(またはそれらの間の何れかの整数)および2、10、100、1000、10000、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、等を含むそれらを超えるもの(およびそれらの間のすべての整数)を指すために用いられる。
【0057】
本明細書において用いられる用語「対象」は、疾患、障害または状態のモニタリングおよび/または診断が望まれる脊椎動物対象、特に哺乳類対象を指す。適当な対象は、霊長類;鳥類(鳥);ヒツジ、ウシ、ウマ、シカ、ロバおよびブタなどの家畜動物;ウサギ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどの試験室用試験動物;ネコおよびイヌなどの伴侶動物;ならびにキツネ、シカおよびディンゴなどの捕獲野生動物を含むがこれに限定されるものではない。特に、対象は、ヒトである。
【0058】
測定を行うためのシステム
次に、図1を参照して、生体対象に対して体液レベル測定を行うためのシステムの例が記載される。
【0059】
この例において、システム120は、複数の微細構造体112を有する少なくとも一つの基材111を含む。使用時、微細構造体は、対象と関連する機能バリアーを突破するように構成されている。この例において、機能バリアーは、角質層SCであり、微細構造体は、角質層SCに侵入し、少なくとも生きた表皮VEに入ることによって角質層SCを突破するように構成される。一つの特定の例において、微細構造体は、生きた表皮VEと真皮Dとの間の境界に侵入しないように構成されるが、このことは、不可欠ではなく、より詳細に下記に記載されるように真皮に侵入する構造体が用いられてもよい。
【0060】
微細構造体の性質は、好ましい実体化に応じて変化するが、典型的には、より詳細に下記に記載されるように構造体、たとえばプレート、ブレードまたは類似物などが用いられる。ただし、このことは不可欠ではなく、他の構成、たとえばマイクロニードルが用いられてもよい。
【0061】
基材および微細構造体は、あらゆる適当な材料から製造されてよく、使用される材料は、意図される用途に依存することがあり、たとえば構造体が光伝導性および/または電気伝導性であることが求められるかどうか、などに依存する。基材は、対象に施用され得るパッチ110の一部を形成することができるが、たとえば他の構成要素を含む筐体の一部を基材に形成させる他の構成が用いられてもよい。
【0062】
微細構造体の少なくともいくつかは電極を含み、これらの電極は、微細構造体の本体によって形成され、そのため微細構造体が電極であってもよく、あるいはこれらの電極は、微細構造体上に設けられた表面電極であってもよい。少なくとも一つの微細構造体112上の電極に動作可能に接続され、それによって応答信号、および特に電気応答信号がそれぞれの微細構造体112から測定されることを可能にする少なくとも一つのセンサ121が提供される。さらに、少なくとも一つの微細構造体112上の電極に動作可能に接続され、それによって刺激信号、および特に電気刺激信号がそれぞれの微細構造体112に印加されることを可能にする、少なくとも一つの信号発生器123が提供される。
【0063】
なお、応答信号という用語は、対象内において固有である信号、たとえばECG(心電計)信号などを包含すると理解されるが、本例において、応答信号は、典型的には電流が流れた結果と推論される信号、たとえばバイオインピーダンス信号などである。
【0064】
センサの性質は、好ましい実体化と行われる実施される検出の性質とに応じて変化するが、典型的には、センサは、電気信号を検知し、その場合、センサは、電圧センサまたは電流センサなどであってよい。同様に、信号発生器は、典型的には電流源もしくは電圧源などである。
【0065】
センサ121および信号発生器123が微細構造体112に接続される方法も、好ましい実体化に応じて変化する。一例において、これは、微細構造体112とセンサ121および/または信号発生器123との間の電気的接続を用いて実現される。接続は、無線接続も含んでよく、センサおよび/または信号発生器が遠隔配置されることを可能にし、たとえばNFC(近接場コミュニケーション)手段を有するスマートフォンまたは他のデバイスがパッチを探測し、測定を行うために用いられることを可能にする。さらに、離散的な要素として結合が提供されてもよいが、他の例において、たとえば、基材が導電プレートから製作され、導電プレートが次に微細構造体のいくつかまたはすべてに電気的に接続される場合、基材が接続を提供する。さらなる代替法として、センサは、微細構造体内に埋め込まれるかまたは微細構造体の一部から形成されてもよく、この場合、接続は必要ないことがある。
【0066】
センサ121および/または信号発生器123は、微細構造体112のすべてに動作可能に接続されることができ、接続は、集合型および/または独立型である。たとえば、測定された別々の応答信号が微細構造体112の別々のグループから測定されることを可能にするために、一つ以上のセンサおよび/または信号発生器が別々の微細構造体に接続されてもよい。しかし、これは、不可欠ではなく、適当なあらゆる構成が用いられてよい。
【0067】
これらの選択肢は、ある範囲の異なるタイプの検知法が行われることを可能にするが、典型的には、たとえばバイオインピーダンス、バイオコンダクタンスまたはバイオキャパシタンスを測定するために、印加された電気信号への身体の応答を検出することを含み、バイオインピーダンスという用語は、全体として複雑な数学的な形であり、それによって、インピーダンス測定値の実成分および無効成分を含む、これらのタイプのすべての測定を包含すると理解される。
【0068】
本システムは、さらに、一つ以上の電子処理デバイス122を含み、これが測定デバイスの一部を形成してもよく、および/または一つ以上の処理システム、たとえば下記でより詳細に記載されるコンピューターシステム、サーバー、クライアントデバイスなどの一部を形成する電子処理デバイスを含んでもよい。使用時、処理デバイス122は、センサ121から信号を受け、信号を記憶するかまたは処理するかのいずれかに適合している。例示を容易にするために、残りの記載は、全体として処理デバイスを参照するが、複数の処理デバイスが用いられてよく、必要に応じてデバイスの間で処理が分配されること、および単数の物への参照は、複数の構成を包含し、その逆も成立することは言うまでもない。
【0069】
次に、これが行われる方法の例が図2を参照して記載される。
【0070】
詳しくは、この例で、ステップ200において、基材は、一つ以上の微細構造体が機能バリアーを突破し、一例においは侵入するように対象に施用される。この例で、基材は、皮膚に施用され、そのため微細構造体は、角質層に侵入し、図1に示されるように生きた表皮に入る。これは、手動により、および/または侵入の成功を確実にすることを助けるためにアクチュエーターの使用により実現されてもよい。
【0071】
ステップ210において、信号発生器は、電極に電気刺激を印加するために用いられ、対象内の応答信号がステップ220において測定され、測定された応答信号を示す信号が電子処理デバイス122に提供されることを可能にする。
【0072】
一つ以上の処理デバイスは、次に、バイオインピーダンスの変化を判定するために時間の経過とともに測定された複数の応答信号をステップ230において分析し、バイオインピーダンスの変化は、典型的には対象の体液状態を少なくとも部分的に示す示標を生成するためにステップ240において分析される。たとえば、示標は、体液レベルを示し、体液レベルが今度は対象の水分状態を示してもよく、あるいは対象が過剰に、過小に、適切に水分補給されているか、もしくは回復する(異なるコンパートメント間の体液レベルを回復する)途上にあるかを示してもよい。さらに、および/またはあるいは、処理デバイスは、介入のための推奨を発生し、たとえば、水分補給を助けるために体液が摂取されるよう推奨するか、あるいは措置、たとえば臨床医、トレーナーまたは付き添い者などへの警告を始動してもよい。
【0073】
分析は、あらゆる適切な方法で行われてよく、これは、行われる測定の性質に応じて変化する。一つの特定の例において、体液レベル、たとえば細胞内または細胞外液レベルと、特に変化、たとえば細胞内および/または細胞外液レベルの変化の速度と、を計算するためにバイオインピーダンス信号が用いられ、これらは、対象が水分過多、水分過少、脱水途上または回復途上(正常な水和状態に戻りつつある)などであるかどうかを示す示標を計算するために用いられる。この場合、細胞内または細胞外液レベルを示す特定の周波数において測定が行われてもよく、あるいは代替として細胞内または細胞外液レベルを示すパラメーターを導くためにいくつかの周波数における測定が用いられてもよい。
【0074】
いずれにしても、上記記載のシステムは、角質層を突破するように構成されている微細構造体を提供し、これらが刺激信号を印加し、対象内、および特に表皮および/または真皮内の応答信号を測定するために用いられることを可能にすることによって動作することは言うまでもない。これらの応答信号は、次に処理され、続いて分析されてよく、特定の測定値、水分補給傾向、または一般水分レベルなどを示すことができる体液レベルが導かれることを可能にする。特に、一つの好ましい例において、システムは、表皮内だけで体液レベル測定が行われるように構成されてよく、そのことが今度は身体水分量の測定が改善された正確さで行われ、体内水分のより正確な示標のためのより高品質のデータを提供することを可能にする。さらに、測定が行われる場所を限定することは、これらが反復可能であることを確実にし、より正確な長期的モニタリングを可能にする。
【0075】
従来の手法とは対照的に、角質層を突破することおよび/または少なくとも部分的に侵入することは、測定が表皮および/または真皮内から行われることを可能にし、そのことは、検出される応答信号の品質および大きさの顕著な改善を生む結果となる。特に、これは、応答信号が、バリアー特性、またはバリアーの外側の環境、たとえば皮膚表面の物理的特性、たとえば皮膚物質特性、毛髪、汗、施用されるセンサの機械的な動きの有無によって不当に影響を受ける従来の体外測定と対比して、表皮内の状態、たとえば細胞、組織、間質液などのインピーダンスを正確に反映することを確実にする。さらに、角質層に侵入するが真皮に侵入しないことによって、これは、測定が表皮だけに限定され、それによって、真皮中の体液レベル変化からの干渉を避けることを可能にする。
【0076】
たとえば、このことは、他の方法では皮膚因子によって過度に影響を受ける体内の液レベルの正確な測定を可能にする。たとえば、インピーダンス測定の場合、微細構造体電極は、標準的な表面電極との対比でヒト皮膚インピーダンスの等価回路の別々の部分を測定する傾向があり、そのことは、微細構造体電極が皮膚層のインピーダンスを選択的に測定することができ、皮膚または組織の全インピーダンスを測定しないという事実を示し、測定されたインピーダンスが体内の動的な変化をより多く示すことを意味する。皮膚表面および真皮インピーダンスの寄与は、大きさが顕著なので、このことは、組織内のインピーダンスの変化がマスクされる結果となることがあり、皮膚表面に基づく測定が意味のある変化を検出し得る可能性は低いことを意味する。
【0077】
皮膚に基づくインピーダンス測定に伴うさらなる問題は、生成した電場が角質層および真皮を通過する傾向があり、表皮に束縛されないことである。逆に、上記に記載の最小限に侵襲的なパッチは、多重周波数バイオインピーダンス手法を用いる正確な、浅い皮膚層における電気探測を可能にする。浅く探測すると、骨、空気および筋肉などの未知の組織タイプの混乱影響を取り除く。周波数に基づいて細胞内液(ICF)と細胞外液(ECF)とのインピーダンス寄与分の差別化が可能である。対照的に、現行の方法には、ICFとECFとの間を区別する能力がなく、このことは、体液シフトの時間動態を測定することと、低張性、高張性または等張性水分損失などの脱水の別々のクラスを区別することと、の両方の能力を低下させる。しかし、最小限に侵襲的なこの手法は、インピーダンス測定が表皮に限定されることを可能にするがこれは不可欠ではなく、この手法は、追加的におよび/または代替的に真皮または身体の他の部分においてインピーダンス測定が行われることを可能にするためにも用いられてよいことは言うまでもない。
【0078】
さらに、いくつかの例において、微細構造体は、測定が行われることを可能にするのに十分な距離バリアーに侵入するだけである。たとえば、皮膚の場合、微細構造体は、典型的には、生きた表皮に入り、皮層に入らないように構成される。これは、他の侵襲性技法に対して真皮の侵入に関連する問題、たとえば神経の露出によって生じる疼痛、紅斑、点状出血などを避けることを含む複数の改善を生む結果となる。真皮境界に侵入することを避けることは、感染のリスクも顕著に低減し、微細構造体が長期間、たとえば数日埋め込まれたままであることを可能にし、そのことは、今度は、長期間にわたって縦方向モニタリングを行うために用いることができる。
【0079】
インサイチュのままでいる微細構造体の能力は、これが対象内の同じ部位で測定が行われることを確実にし、そのことが従来の技法を用いて生じ得る測定機器の再配置の不正確さから生じる固有の変動性を低減する一方、実質的に連続的なモニタリングを可能にするので、特に有益であることは言うまでもない。このことは、バイオインピーダンスの変化がより正確に追跡され、一つの特定の例においては、体液レベルを撹乱する事象、たとえば肉体的な運動を開始することおよび/または停止すること、医薬品を服用することなどの行動に関してより正確に追跡されることを可能にする。このこともかかわらず、本システムは、他の方法で、たとえば単一時点モニタリングなどを行うために用いられ得ることは言うまでもない。
【0080】
従って、上記構成は、ウェアラブルデバイスの一部として提供され、たとえば、他の方法では角質層を通って測定することができない皮膚内の動的な信号へのアクセスを提供することによって、既存の表面に基づく測定技法より顕著に良好である測定が行われることを可能にすることができるが、その一方で対象が通常の活動を行っている間および/または長期間にわたって測定が行われることを可能にする。これは、今度は、対象の健康状態または他の状態をより正確に反映する測定値が取り込まれることを可能にする。たとえば、これは、一日の経過の間に、身体活動の間に対象の状態の変化が測定されることを可能にし、対象の現実の条件を典型的には示さない人工的な条件下で、たとえば診療所内で測定が行われることを避ける。このことは、モニタリングが実質的に連続的に行われることも可能にし、そのことは、病状が発生したときに、たとえば、心筋梗塞、循環器疾患、嘔吐、下痢または類似症状などの場合に検出されることを可能にすることができ、そのことは、より迅速な介入が追求されることを可能にすることができる。
【0081】
以下の記載からさらなる変化形が明らかになる。
【0082】
一例において、バイオインピーダンスは、単一周波数で測定され、いくつかの異なる周波数で測定され、および/またはいくつかの異なる周波数で行われたインピーダンス測定から導かれる。たとえば、本システムは、単一の低周波信号が対象Sに注入され、測定されたインピーダンスが生体パラメーターの決定においてそのまま用いられるバイオインピーダンス分析(Bioimpedance Analysis)(BIA)を用いることができる。一例において、印加される信号は、比較的低い周波数、たとえば100kHz未満、より典型的には50kHz未満、より好ましくは10kHz未満を有する。この場合、そのような低周波信号は、より良好に細胞外液の電気的性質の特性を示す、ゼロ印加周波数におけるインピーダンスの推定値として用いることができる。
【0083】
あるいは、印加される信号は、比較的高い周波数、たとえば100kHz超、200kHz超、より典型的には500kHzまたは1000kHz超を有してよい。この場合、そのような高い周波数の信号は、今度は細胞外液レベルと細胞内液レベルとの組み合わせを示す無限印加周波数におけるインピーダンスの推定値として用いることができる。
【0084】
あるいは、および/またはさらに、本システムは、いくつかの周波数でインピーダンス測定が行われ、次に、たとえば測定されたインピーダンス値をコール-コール(Cole-Cole)モデルと適合させることによって細胞内液レベルと細胞外液レベルとの両方に関する情報を導くためにそれらを用いることができる、バイオインピーダンス分光法(BIS)を用いることができる。
【0085】
一例において、バイオインピーダンスは、細胞内液レベル、細胞外液レベルおよび血液/血漿液レベルの一つ以上を示す。したがって、一例において、本システムは、細胞内液および細胞外液ならびに血漿を含む三コンパートメントモデルを用い、本システムは、対象の体液状態を評価し、それによって示標を生成するためにこれらの別々のコンパートメントの間の体液の動きの結果生じるインピーダンスの変化を調べる。
【0086】
バイオインピーダンスの変化は、バイオインピーダンスの大きさの変化、バイオインピーダンス位相角の変化、細胞内液レベルの変化、細胞外液レベルの変化および血液体液レベルの変化の何れか一つ以上を含んでもよい。
【0087】
一例において、変化は、ベースラインと比較してモニターされるので、システムは、一つ以上のベースラインバイオインピーダンスを決定し、次にベースラインバイオインピーダンスと比較してバイオインピーダンスの変化を分析するように構成される。したがって、ベースライン細胞外液および/または細胞内液レベルを確定するためにベースラインバイオインピーダンスが用いられてもよく、続いて測定されたバイオインピーダンスがベースラインと比較して変化細胞外および/または細胞内液レベルを確定するために用いられてもよい。
【0088】
一例において、処理デバイスは、撹乱事象、たとえば対象の身体活動状態の変化を決定し、次に少なくとも部分的に撹乱事象によるバイオインピーダンスの変化を分析する、たとえば人物が身体活動を行う前にインピーダンスを測定し、活動の前後に測定されたインピーダンスの差異が体液状態をモニターするために用いられるように構成されてよい。
【0089】
一つの特定の例において、処理デバイスは、撹乱事象の前後に測定されたバイオインピーダンスの変化を判定し、撹乱事象の間に測定されたバイオインピーダンスの変化を判定、撹乱事象後の期間のバイオインピーダンスの変化を判定し、次に撹乱事象後の期間のバイオインピーダンスの変化の速度を決定するように構成されてよい。したがって、この手法は、たとえば、撹乱事象後に、たとえば対象が身体運動後に休息しているとき、別々のコンパートメントの間の体液のシフトを調べる。さらなる例において、処理デバイスは、バイオインピーダンスのいくつかの変化を比較し、バイオインピーダンスの各変化がそれぞれの撹乱事象と関連付けられ、次に、バイオインピーダンスのいくつかの変化に基づいて示標を決定してよい。たとえば、これは、何回かの身体運動の間に生じる何回かの休息期間にわたるインピーダンスの変化を調べてもよい。この手法の一つの特定の実体化において、処理デバイスは、いくつかの撹乱事象のそれぞれの後のバイオインピーダンスの変化の速度の勾配を決定し、勾配の変化に基づいて、たとえば勾配が増加しているかまたは減少しているかに基づいて示標を決定してよい。
【0090】
上記に記載の手法は、身体活動を開始することまたは終了すること、進行中の身体活動を行うこと、加温すること、冷却すること、姿勢を変えること、体液を摂取すること、医薬品の投与、薬理学的薬剤の投与、医療手順、たとえば透析を受けること、生理的撹乱を受けること、静脈内補液の投与、静脈内血液の投与、病気または疾患の発生などを含む対象の体液レベルに影響を及ぼすあらゆる撹乱事象について行われてもよいことは言うまでもない。これらの例において、処理デバイスは、使用者入力命令、少なくとも一つのセンサからの信号、対象の動きの変化、対象の姿勢の変化、対象の体温の変化、対象の心拍数の変化、および/または対象の呼吸速度の変化の一つ以上に基づいて撹乱事象を判定してもよい。
【0091】
したがって、一例において、本システムは、基材に装着され、および/または基材に取り付けられた筐体内に設けられ、撹乱事象が検出されることを可能にするセンサを含むが、このことは、不可欠ではなく、代りに、別個のデバイス、たとえば身体運動トラッカーもしくは類似物から取得される信号を分析することによって検知が行われてもよい。
【0092】
微細構造体の性質およびこれらが配置される方法は、好ましい実体化に応じて変る。たとえば、微細構造体は、対として配置され、バイオインピーダンスは、任意選択として異なる間隔を有する電極の対を用いて、電極の複数の対の間で測定され、それによって異なる測定が行われることを可能にしてもよい。たとえば、異なる間隔で測定を行うと体内の異なる深さにおける体液を標的とすることができ、そのことが、今度は、体液が存在するコンパートメントを特定する際に有用になり得る。たとえば、生きた表皮に束縛される測定は、典型的には、血漿中の体液レベルを取り込まず、その代りに細胞内および細胞外液からの体液レベルを含むだけである。
【0093】
同様に、微細構造体は、列として配置され、バイオインピーダンスは、別々の列の上の電極、および任意選択として異なる間隔を有する微細構造体の別々の列の上の電極の間で測定されてよい。
【0094】
一例において、信号発生器の動作は、処理デバイスによって制御され、たとえば、インピーダンス測定が行われることを可能にするために電気信号を印加することによって、処理デバイスが信号発生器を制御し、それによって測定が行われるようにすることを可能にする。
【0095】
信号発生器および/またはセンサは、導電接続、たとえばワイヤー、または基材上の導電トラックを含む接続によって微細構造体に接続されてよく、あるいは導電性基材によって形成されてもよい。接続は、無線接続、たとえば短範囲高周波無線接続、誘導接続なども含んでよい。一例において、信号および電力を伝達するために誘導接続が用いられてよく、そのため、たとえば、基材上に装着された電子回路に電力を供給するために誘導結合が用いられてもよい。これは、基材上の組み込み電源を必要とすることなく簡単な集積回路などを用いて、基材上で基礎的な処理、たとえばインピーダンス変化を増幅し処理することが行われることを可能にするために用いられてもよい。
【0096】
一例において、本システムは、応答信号を測定するために用いられる応答微細構造体および/または対象に刺激信号を印加するために用いられる刺激微細構造体を含んでよい。したがって、種々の微細構造体を介して刺激および応答が測定されてよく、その場合、基材は、典型的には、応答信号が測定されることを可能にするための応答接続と刺激信号が印加されることを可能にするための刺激接続とを組み込む。いくつかの例において、複数の刺激接続および応答接続が提供され、別々の接続を介して別々の測定が行われることを可能にする。たとえば、多重モードの検知を可能にするために、別々の微細構造体または所定の微細構造体の別々の部分を介して別々のタイプの測定が行われてもよい。さらに、および/またはあるいは、たとえば局所的な問題を特定するために、別々の位置および/または深さにおいて同じタイプの測定が行われてもよい。他の場合に、たとえば二極性インピーダンス測定を行うとき、同じ接続を介して刺激と測定とが行われてもよい。
【0097】
個々の微細構造体および/または微細構造体の別々の部分にまたは個々の微細構造体から信号が印加または測定されてもよく、そのことは、身体内のさまざまな位置および/または深さにおける特徴を識別するために、たとえばさまざまなコンパートメント内の体液レベルを測定するために有用になり得る。さらに、および/またはあるいは、信号がまとめていくつかの微細構造体に印加されるかまたはいくつかの微細構造体から測定されてもよく、そのことは、信号品質を改善するために、または測定、たとえば複数の微細構造体を用いて二極性、四極性またはその他の多極性インピーダンス測定を行うために用いられてよい。
【0098】
一つの特定の例において、センサおよび/または信号発生器が一つ以上のスイッチングデバイス、たとえばマルチプレクサを介して微細構造体に接続され、センサまたは信号発生器とさまざまな微細構造体との間で信号が選択的に通信されることを可能にしてよい。処理デバイスは、典型的には、スイッチを制御し、処理デバイスの制御にしたがってさまざまな異なる検知および刺激が実現されることを可能にするように構成される。一例において、このことは、少なくともいくつかの電極が少なくともいくつかの他の電極とは独立に用いられることを可能にする。さまざまな電極を選択的に探測するこの能力は、利点を提供することができる。
【0099】
たとえば、このことは、空間差別化、ひいてはマッピングが行われることを可能にするために、さまざまな電極を介して測定が行われることを可能にする。たとえば、パッチ上の異なる位置において電極を探測すると、組織内のさまざまな深さにおける測定値のマップが構築されることが可能になる。
【0100】
一例において、下記にさらに詳細に記載されるように電極が対として提供されるとき、このことは、電極のいくつかの対が他の対とは独立に用いられることを可能にする。一つの特定の例において、電極および/または電極の対は、列として配置されてよく、このことは、測定が列別の形で行われることを可能にしてよいが、これは不可欠ではなく、他のグループ分けが用いられてもよい。
【0101】
基材および/または微細構造体の性質は、好ましい実体化に応じて変る。基材および微細構造体は、類似のおよび/または類似していない材料から製作されてよく、一体として形成されるか、または別々に製作され一緒に結合されてもよい。好ましい例において、基材および微細構造体は、ポリマーまたは類似物から形成される。微細構造体は、一つ以上の基材上にも提供されてよいので、たとえば、別々の基材上の微細構造体の間で信号が測定されるかまたは印加されてもよい。
【0102】
用いられる特定の材料は、意図される用途に依存するので、たとえば、微細構造体が絶縁性であることと対比して導電性であることが必要な場合、別々の材料が用いられることは言うまでもない。絶縁材料、たとえばポリマーおよびプラスチックに必要な導電性を提供するために、たとえばミクロまたはナノサイズの金属粒子または導電性複合ポリマーをドーピングすることによって、ドーピングしてもよい。ドーピングが用いられる場合、これは、グラフェンおよびカーボンナノチューブなどの2D材料を含むグラファイトまたはグラファイト誘導体を用いることを含んでもよく、これらの材料は、スタンドアロン材料として、またはポリマーまたはプラスチックとブレンドされるドーパントとしても使用可能である。
【0103】
基材および微細構造体は、あらゆる適切な技法を用いて製造されてよい。たとえば、ケイ素系構造体の場合、このことは、エッチング技法を用いて行われてもよい。ポリマーまたプラスチック構造体は、加成性製造法、たとえば3Dプリンティング、成形、インプリンティング、インプリントリソグラフィー、スタンピング、ホットエンボシングなどを用いて製造されてもよい。
【0104】
一例において、基材は、基材が対象の形と合致し、それによって生きた表皮、またはその他の機能性バリアーへの微細構造体の侵入を確実にすることを可能にするために、少なくとも部分的に柔軟であってもよい。この例において、基材は、潜在的には電極および回路が織り込まれたPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリマー、繊維または布地であってよいか、あるいは、セグメント化された基材構成を提供するために複数の基材が柔軟な支持体上に装着されてもよい。あるいは、基材は、対象の形と合致するような形にされ、そのため、基材は、剛直であるがそれでも微細構造体の侵入を確実にすることができる。
【0105】
微細構造体は、ある範囲のさまざまな形状を有してもよく、稜または針を含むことができるが、プレートまたはブレードなどが典型的には好ましい。この点について、プレートおよびブレードという用語は、サイズが長さと似た程度(または以上)の大きさである幅を有するが、顕著に(たとえば大きさが1桁)薄い微細構造体を指すために区別なく用いられる。そのような構成は、これらがより大きな表面積の電極を支持し、それによって所定の数の微細構造体のための有効電極表面積を最大にすることができるので、特に有利である。
【0106】
微細構造体は、対象への挿入を容易にするために先細りであってよく、たとえば意図される使用に応じて異なる形状を有してよい。微細構造体は、典型的には、微細構造体を通り、基材に平行ではあるが基材からずらされて側方に延在する面を通る断面において見ると、丸められた矩形を有する。微細構造体は、微細構造体の長さに沿って形状変化を含むことがある。たとえば、微細構造体は、侵入の深さを制御するために角質層に当接するように構成された肩部および/または先端部に延在する軸部を含み、軸部は、対象中の先端部の位置を制御し、および/または電極のための表面を提供するように構成されてもよい。
【0107】
微細構造体は、粗い表面または滑らかな表面を有してよく、あるいは表面特徴物、たとえば細孔、高くなった部分、鋸歯などを含むことがあり、そのことが、表面積を増大させ、および/または組織に侵入するかまたは係合する際に補助となり、それによって対象内に微細構造体を固定してよい。このことは、たとえばバイオフィルムの付着およびひいては構築を妨げることによって、バイオファウリングを低減する上で助けとなってもよい。微細構造体は、中空または多孔性である可能性もあり、内部構造体、たとえば孔などを含んでよく、その場合、断面形状は、少なくとも部分的に中空であってもよい。特定の実施形態において、微細構造体は、多孔性であり、そのことが微細構造体の有効表面積を増大させることがある。細孔は、対象となる分析物が細孔に入ることを可能にするが1種類以上の他の分析物または物質を排除し、したがって、対象となる分析物のサイズに依存するあらゆる適当なサイズのことがある。いくつかの実施形態において、細孔は、直径が約10μm未満、好ましくは直径が約1μm未満のことがある。
【0108】
共通の基材上に別々の微細構造体が設けられ、たとえば別々の機能を実現するために別々の微細構造体の形状を提供してもよい。一例において、このことは、別々のタイプの測定を行うことを含んでもよい。他の例において、別々の基材上に微細構造体が提供され、たとえば、別々のパッチ上の微細構造体により検知が行われ、たとえば対象の別々の位置に提供されたパッチの間で全身インピーダンス測定を行うことを可能にしてもよい。
【0109】
さらなる例において、基材、ひいてはパッチが対象に接着することを可能にするために、基材の少なくとも一部が接着コーティングで被覆されてもよい。
【0110】
前述のように、皮膚に施用されたとき、微細構造体は、典型的には、生きた表皮に入り、好ましくは真皮に入らない。しかし、これは、不可欠ではなく、いくつかの用途では、主に、行われる検知の性質に依存して、微細構造体が真皮に入り、たとえば生きた表皮/真皮境界を通って短く突き出るかまたは真皮に顕著な距離入ることが必要なことがある。一例において、皮膚の場合、微細構造体は、2500μm未満、1000μm未満、750μm未満、600μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、250μm未満、100μm超、50μm超および10μm超、の少なくとも一つである長さを有するが、他の長さが用いられてもよいことは言うまでもない。より一般に、機能性バリアーに施用されるとき、微細構造体は、典型的に、機能性バリアーの厚さより大きな長さを有する、機能性バリアーの厚さより少なくとも10%大きい、機能性バリアーの厚さより少なくとも20%大きい、機能性バリアーの厚さより少なくとも50%大きい、機能性バリアーの厚さより少なくとも75%大きい、および機能性バリアーの厚さより少なくとも100%大きい長さを有する。
【0111】
別の例において、微細構造体は、機能性バリアーの厚さより2000%を超えて大きくはない、機能性バリアーの厚さより1000%を超えて大きくはない、機能性バリアーの厚さより500%を超えて大きくはない、機能性バリアーの厚さより100%を超えて大きくはない、機能性バリアーの厚さより75%を超えて大きくはない、または機能性バリアーの厚さより50%を超えて大きくはない長さを有する。これによって、それ自体として好ましくないことがあり得る、体内の下にある層の深い侵入を避けることができ、用いられる微細構造体の長さは、意図される使用、および特に突破されるバリアーの性質、および/または印加または測定される信号に応じて変ることは言うまでもない。微細構造体の長さは、不均一であってもよく、たとえば、ブレードが一端において別の端より高いことを可能にし、そのことは、対象または機能性バリアーに対する侵入を容易にする。
【0112】
同様に、微細構造体は、好ましい実体化に応じてさまざまな幅を有してよい。典型的に、幅は、長さの25%より小さい、長さの20%より小さい、長さの15%より小さい、長さの10%より小さい、または長さの5%より小さい、の少なくとも一つである。したがって、たとえば、皮膚に施用されたとき、微細構造体は、50μmより小さい、40μmより小さい、30μmより小さい、20μmより小さい、または10μmより小さい幅を有してよい。しかし、あるいは、微細構造体は、ブレードを含んでよく、微細構造体の長さより広くなってもよい。いくつかの例において、微細構造体は、2500μmより小さい、1000μmより小さい、500μmより小さい、または100μmより小さい幅を有してよい。ブレード微細構造体の例において、実質的に基材の幅までの幅を有する微細構造体を用いることも可能である。
【0113】
一般に、微細構造体の厚さは、侵入を容易にするために顕著に小さくなり、典型的には、1000μmより小さい、500μmより小さい、200μmより小さい、100μmより小さい、50μmより小さい、20μmより小さい、10μmより小さい、少なくとも1μm、少なくとも0.5μmまたは少なくとも0.1μmである。一般に、微細構造体の厚さは、機械的要件、特に微細構造体が侵入後に破損するか、破断するかまたは変形することがないことを確実にする必要によって支配される。しかし、この問題は、微細構造体に追加の機械的強さを加えるコーティングの使用によって軽減されてもよい。
【0114】
一つの特定の例において、表皮検知のために、微細構造体は、300μmより小さい、50μmより大きい、100μmより大きい、および約200μmである長さと、微細構造体の長さより大きいかまたはほぼ等しく、典型的に300μmより小さく、50μmより大きく、約150μmである幅と、を有する。別の例において、真皮検知のために、微細構造体は、450μmより小さく、100μmより大きく、約250μmである長さと、微細構造体の長さより大きいかまたはほぼ等しく、少なくとも長さと似た程度の大きさであり、典型的に450μmより小さく、100μmより大きく、約250μmである幅と、を有する。他の例において、さらに長い微細構造体が用いられてもよく、そのため、たとえば、上皮検知のために、微細構造体は、さらに大きな長さにされる。微細構造体は、典型的に、幅より小さく、幅より顕著に小さく、幅より1桁小さい厚さを有する。一例において、厚さは、50μmより小さく、10μmより大きく、約25μmである一方で、微細構造体は、典型的に、強度追加のためのフレアー型基部を含み、したがって厚さの約3倍であり、典型的に150μmより小さく、30μmより大きく、約75μmである基部厚さを基材に近接して含む。微細構造体は、典型的に、微細構造体の長さの50%より小さく、微細構造体の長さの少なくとも10%、より典型的に、微細構造体の長さの約30%の長さを有する先端部を有する。先端部は、さらに、少なくとも0.1μm、5μmより小さく、典型的には約1μmである尖り部を有する。
【0115】
一例において、微細構造体は、たとえばcmあたり10,000より小さい、たとえばcmあたり1000より小さい、cmあたり500より小さい、cmあたり100より小さい、cmあたり10より小さい、またはcmあたり5より小さくさえある、比較的低い密度を有する。比較的低い密度の使用は、角質層を通る微細構造体の侵入を容易にし、特に、高密度アレイによる皮膚の侵入に関連する問題を回避し、そのことが、今度は、アレイが正しく施用されるために、高動力アクチュエーターの必要をもたらしてもよい。しかし、これは不可欠ではなく、cmあたり50,000微細構造体より小さい、cmあたり30,000微細構造体より小さい、などを含むさらに高い密度の微細構造体構成が用いられてもよい。その結果、微細構造体は、典型的に、20mmより小さい、10mmより小さい、1mmより小さい、0.1mmより小さい、または10μmより小さい間隔を有する。
【0116】
一つの特定の例において、微細構造体は、cmあたり100より小さく、cmあたり10より大きく、cmあたり約30である密度を有し、2mmより小さい、10μmを超え、約1.0mm、0.5mm、0.2mmまたは0.1mmの間隔を生じる。
【0117】
いくつかの状況において、微細構造体は、対として配置され、各対の中の微細構造体は、たとえば10μm未満の小さな間隔を有する一方で、低い全体密度が維持されることを確実にするために、対同士は、たとえば1mmを超える大きな間隔を有することが留意されるべきである。しかし、これが不可欠でないことは言うまでもなく、いくつかの状況においてはさらに高い密度が用いられてもよい。
【0118】
上述のように、微細構造体の少なくともいくつかは、対象に電気信号を印加し、内因性または外因性の応答電気信号を測定する、たとえばECGまたはインピーダンスを測定するために用いることができる電極を含む。微細構造体は、金属または他の導電性材料から製作されてよく、そのため、微細構造体全体が電極を構成するか、または代替として、電極は、たとえば電極を形成するために金の層を堆積させることによって微細構造体上に被覆されるかまたは堆積されてもよい。電極材料は、金、銀、コロイド銀、コロイド金、コロイドカーボン、カーボンナノ材料、白金、チタン、ステンレス鋼、または他の金属の何れか一種類以上、あるいは何れかのその他の生体適合性導電材料を含んでよい。
【0119】
さらなる例において、微細構造体は、非導電性層(絶縁)によって被覆された電気伝導性コアまたは層を含んでもよく、コアへのアクセスを提供する開口部が開口部を通る電気信号の伝導を可能にし、それによって電極を画定する。一例において、絶縁層は、基材に隣接する微細構造体の近位端を含む微細構造体の表面の一部の上に延在する。絶縁層は、微細構造体の長さの少なくとも半分および/または微細構造体の近位端の約90μm、任意選択として微細構造体の先端部部分の少なくとも一部の上に延在してもよい。一つの特定の例において、このことが行われるので、表皮中に非絶縁性部分が提供される、そのため表皮に刺激性信号が印加され、および/または表皮から応答信号が受け取られる。
【0120】
絶縁層は、基材の表面の一部または全部の上にも延在してよい。この点について、いくつかの例において、基材の表面において接続が形成され、その場合、これらを対象から分離するためにコーティング、特にパリレンなどの誘電体コーティングが用いられてもよい。たとえば、電極への電気接続を提供するために基材の表面にある電気トラックが用いられてよく、接続が対象の皮膚と電気接触しないことを確実にするために、接続の上に絶縁層が設けられ、そのことが、今度は、測定された応答信号に悪影響を及ぼし得る。たとえば、これは、皮膚表面との電気接触を防ぎ、今度は、表面水分、たとえば汗が測定に影響を及ぼすことを防ぐ。
【0121】
一例において、微細構造体は、上に電極を有する実質的に平らな面を有するプレートを含む。プレート形の使用は、電極の表面積を最大にする一方で、微細構造体の断面積を最小にし、それによって対象への微細構造体の侵入を助ける。このことは、電極が容量型プレートとして働くことも可能にし、容量型検知が行われることを可能にする。一例において、電極は、少なくとも少なくとも10mm、少なくとも1mm、少なくとも100,000μm、10,000μm、少なくとも7,500μm、少なくとも5,000μm、少なくとも2,000μm、少なくとも1,000μm、少なくとも500μm、少なくとも100μmまたは少なくとも10μmの表面積を有する。一例において、電極は、最大2500μm、少なくとも500μm、少なくとも200μm、少なくとも100μm、少なくとも75μm、少なくとも50μm、少なくとも20μm、少なくとも10μmまたは少なくとも1μmである幅または高さを有する。ブレード上に設けられた電極の場合、電極幅は、50000μmより小さく、40000μmより小さく、30000μmより小さく、20000μmをより小さく、10000μmより小さく、または1000μmより小さくなることができだけでなく、先に概略が示された幅を含む。この点について、これらの寸法は、個々の電極に適用され、いくつかの例において、各微細構造体は複数の電極を含むかもしれない点が留意される。
【0122】
一つの特定の例において、電極は、200,000μm未満より小さい、少なくとも2,000μm、約22,500μmの表面積を有し、電極は、微細構造体の遠位部分の長さの上に延在し、任意選択として先端部分から離間して、および任意選択として微細構造体の遠位端に近接し、再び微細構造体の先端部分に近接して配置される。電極は、微細構造体の長さの少なくとも25%および50%未満の上に延在してよく、そのため電極は、典型的に、微細構造体の約60μmの上に延在し、したがって使用時に対象の生きた表皮中に配置される。真皮検知のために他の長さ、たとえば90μmまたは150μmが用いられてもよい。
【0123】
一例において、微細構造体の少なくともいくつかがグループ、たとえば対および/列として配置され、応答信号または刺激がグループ内の微細構造体から測定されるかまたはグループ内の微細構造体に印加される。グループ内の微細構造体は、特定の測定が行われることを可能にするために特定の構成を有してよい。たとえば、対または列として配置されるとき、対または異なる列の中の微細構造体の間の間隔が行われる測定の性質に影響を及ぼすために用いられてよい。たとえば、バイオインピーダンス測定を行うとき、微細構造体の間の間隔が数ミリメートルより大きい場合、これは、電極間に配置された間質液の特性を測定する傾向があるが、微細構造体の間の距離が短くなった場合、測定は、微細構造体表面特性、たとえば微細構造体の表面に結合された材料の存在による影響の方を大きく受ける。測定は、印加された刺激の性質によっても影響を受け、そのため、たとえば、低い周波数における電流は、細胞外液であるが流れる傾向があるが、より高い周波数における電流は、細胞内液の影響をより強く受ける。
【0124】
一つの特定の例において、プレート微細構造体は、対として提供され、各対は、向かい合った実質的に平面の電極を有する離間したプレート微細構造体を含む。これは、対象において電極の間の領域の中で高度に均一な電場を発生させるために、および/または電極の間で物質の容量型または導電律型検知を行うために用いられてよい。しかし、これは、不可欠ではなく、他の構成、たとえば中心電極の周りに複数の電極を円周方向に間隔を置いて配置することが用いられてよい。典型的に、各グループの中の電極の間の間隔は、典型的に50mm未満、20mm未満、10mm未満、1mm未満、0.1mm未満または10μm未満であるが、微細構造体が複数の基材上に分配される場合、基材の寸法および/またはさらに大きな寸法までの間隔を含む、より大きな間隔が用いられてよいことは言うまでもない。
【0125】
したがって、一つの特定の例において、微細構造体の少なくともいくつかが、対または列として配置され、応答信号は、対または別々の列の中の微細構造体の間で測定され、および/または刺激は、対または別々の列の中の微細構造体の間で印加される。微細構造体の各対は、典型的に、向かい合った実質的に平面の電極を有する離間したプレート微細構造体および/または離間した実質的に平行なプレート微細構造体を含み、類似の構成が微細構造体の列の場合に用いられてよく、別々の列にある微細構造体は、向かい合った実質的に平面の電極および/または離間した実質的に平行なプレート微細構造体を有する。
【0126】
一例において、少なくともいくつかの微細構造体は、角度的にずらされ、一つの特定の例において、直交して配置される。したがって、プレート微細構造体の場合、微細構造体の少なくともいくつかの対は、別々の、任意選択として直交する方向に延在する。このことは、別々の方向におけるパッチの挿入と関連して応力を分配し、またプレートが少なくとも部分的にあらゆる側方の力に面することを確実にすることによって、パッチの横ずれを低減するように作用する。挿入時または挿入後のいずれかの滑りを低減することは、不快感、紅斑などを低減する助けとなり、パッチを長時間着用するのに快適にすることを助けることができる。さらに、これは、組織内のあらゆる電気異方性を、たとえば皮膚、細胞異方性などの中のフィブリン構造の結果として説明することも助けることができる。
【0127】
一つの特定の例において、隣接する微細構造体の対が角度的にずらされ、および/または直交して配置され、さらに、および/またはあるいは、微細構造体の対が列として配置され、一つの列の中の微細構造体の対は、他の列の中の微細構造体の対に対して直交して配置されるかまたは角度的にずらされてよい。
【0128】
一つの特定の例において、微細構造体の対が用いられるとき、各対の中の微細構造体の間の間隔は、典型的に、0.25mmより小さく、10μmを上まわり、約0.1mmである一方で、微細構造体のグループの間の間隔は、典型的に、1mmより小さく、0.2mmより大きく、約0.5mmである。そのような構成は、電気信号が主に対の中で印加され、測定されることを確実にすることを助け、対の間のクロストークを低減し、微細構造体/電極の対ごとに独立した測定値が記録されることを可能にする。
【0129】
さらに、微細構造体は、一種類以上の材料または他の添加剤を、微細構造体の本体内にまたは添加剤を含有するコーティングの添加によっての何れかで組み込んでよい。添加剤の性質は、好ましい実体化に応じて変り、バイオファウリングを低減する材料、少なくとも1種類の物質を微細構造体に引き寄せる材料、または微細構造体から少なくとも1種類の物質を遠ざける材料を含んでよい。材料の例は、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、双性イオン、ペプチド、ヒドロゲルおよびSAMを含む。
【0130】
材料は、たとえば製造時に微細構造体に含浸させることによって微細構造体自体内に含有されてよく、またはコーティングの中に提供されてもよい。たとえば、ポリマー材料を用いて製造される成形パッチの場合、材料は、構造体全体に材料が分布するようにポリマー材料と共に型の中に導入されてよい。この例において、ポリマーは、硬化プロセス時に構造体内に空隙が生成するように構成されてよい。
【0131】
たとえばさまざまな微細構造体をさまざまなコーティングで被覆することによって、および/または微細構造体の別々の部分を別々のコーティングで被覆することによって、微細構造体が差別的に被覆されてよいことは言うまでもない。
【0132】
コーティングの性質およびこれが施用される方法は、好ましい実体化に応じて変り、ディップコーティング、スプレーコーティング、ジェットコーティングなどの技法が上述のように用いられてよい。コーティングの厚さも状況とコーティングによって提供される、意図される機能とに応じて変る。たとえば、コーティングが機械的強さを提供するために用いられるか、または対象に供給される積載材料を含有する場合、厚めのコーティングが用いられてよいが、コーティングが他の施用物を検知するために用いられる場合、薄めのコーティングが求められる可能性がある。一つの特定の例において、微細構造体の表面の一部を選択的に絶縁するためにコーティングが用いられ、それによって、導電性微細構造体が身体の外側で絶縁され、インピーダンス測定が表面水分、たとえば汗によって悪影響を受けることを防いでよい。
【0133】
一例において、本システムは、少なくともセンサ、信号発生器および一つ以上の電子処理デバイスを含み、任意選択として、他の構成部品、たとえばアクチュエーター、電源、無線トランシーバなどを含む筐体を含む。一つの特定の例において、筐体は、微細構造体を探測するために用いられてよく、集積化されたデバイスの中に設けられてよく、または基材に対して遠隔に提供され、読み出しが行われるとき基材と係合されるかもしくは近接して提供されてもよい読み出し器機能を提供する。
【0134】
集積化された構成において、読み出し器は、典型的に、通常の使用時にパッチと機械的に接続/集積化され、測定が自動的に行われることを可能にする。たとえば、継続的なモニタリングが行われ、1秒毎~毎日または毎週、典型的に2~60分毎に、より典型的に5~10分毎に読み出しが行われてよい。読み出しの時機は、行われる測定および特定の状況の性質に応じて変化してよい。そのため、たとえば、アスリートが、競技会において競技するときはより頻繁なモニタリング、次に、競技会後の回復時には頻度を下げたモニタリングを受けたいと願う可能性がある。同様に、医療モニタリングを受けている人にとって、モニタリングの頻度は、病態の性質および/または重さに応じて変ることがある。一例において、モニタリングの頻度は、使用者入力に基づいて選ばれてよく、および/または定められた使用者プロファイルなどに基づいてもよい。
【0135】
集積化された構成において、読み出し器は、従来の抵抗ブリッジ回路を用いてパッチに接続されてよく、測定を行うためにアナログからデジタルへの変換が用いられる。
【0136】
あるいは、読み出し器は、別個であってよく、そのことは、不使用時に読み出し器が取り外されることを可能にし、電子デバイスがまったく組み込まれていないパッチを使用者が着用することが可能になり、侵襲性が低くなる。このことは、かさばるデバイスの存在が行動に影響を及ぼし得る用途、たとえばスポーツ、老年医学および小児医学などにとって特に有用である。この状況において、読み出し器は、典型的に、パッチと接触させられるかまたは接近させられ、オンデマンドで読み出しが行われることを可能にする。このことは、使用者/人が探測を推進することを必要とすることは言うまでもない。しかし、読み出し器は、探測を奨励するために通知機能を含んでもよい。
【0137】
読み出しは、任意選択として、下記により詳細に記載されるようにパッチに電力を供給することと読み出しを行うこととの両方のために誘導結合を用いて無線で行われてよいが、あるいは、代わりに直接の物理的接触が用いられてもよい。この例において、微細構造体と組織とは、離散的なインダクタンスまたはキャパシタンスを有する共振回路の一部を形成し、インピーダンス、ひいては体液レベルを決定するためにこの周波数が用いられることを可能にする。さらに、および/またはあるいは、読み出し器がパッチ上のコネクターと電気接触するオーム接触が用いられてもよい。
【0138】
いずれにせよ、読み出し器中で水分量信号のある程度の分析および解釈が行われ、任意選択として出力、たとえばLEDインジケータ、LEDスクリーンなどを用いて読み出し器上に示標が表示されることを可能にすることがある。さらに、および/またはあるいは、警報音が提供され、たとえば対象が水分過少または水分過多である事象において示標を提供することがある。読み出し器は、無線接続、たとえばブルートゥース(登録商標)、Wi-Fiなども組み込んでよく、読み出し事象が遠隔操作で始動されることを可能にし、および/またはデータ、たとえばインピーダンス値、水分示標などが遠隔デバイス、たとえばクライアントデバイス、コンピューターシステムまたはクラウド型コンピューティング構成に送信されることを可能にする。
【0139】
一例において、筐体は、選択的に基材と結合され、筐体と基材とが必要に応じて繋がり、切り離されることを可能にする。一例において、これは、あらゆる適切な機構、たとえば電磁結合、機械結合、接着結合、磁気結合などを利用して実現されてもよい。このことは、筐体、および特に検知機器が必要なときだけ基材に接続されることを可能にする。したがって、対象に基材が施用され、固定され、検知システムは測定が行われるときに基材に取り付けられるだけであってもよい。しかし、これが不可欠ではないことは言うまでもなく、代わりに、筐体および基材は、たとえばパッチ/基材、ストラップ、アンカー微細構造体などの上の接着パッチ、接着コーティングを用いてまとめて対象に固定されてもよい。さらなる例において、基材は、筐体の一部を形成し、その結果、基材と微細構造体とが筐体中に集積化されてもよい。
【0140】
筐体が基材に取り付けられるように構成されたとき、筐体は、典型的に、基材上の基材コネクターに動作可能に接続し、それによって信号発生器および/またはセンサと微細構造体との間で信号を通信するコネクターを含む。コネクターおよび接続の性質は、好ましい実体化と信号の性質とに応じて変り、基材上の対応する表面と係合する導電性の接触表面を含んでもよく、または無線接続、たとえば同調された誘導コイル、無線通信アンテナなどを含んでもよい。
【0141】
一例において、システムは、ある期間、たとえば数時間、数日、数週などにわたって繰り返される測定を行うように構成される。これを実現するために、微細構造体は、その期間、対象の中にとどまるように構成されてよく、または測定が行われないとき取り外されてもよい。一例において、アクチュエーターは、皮膚への微細構造体の挿入を始動するように、また、測定が行われたら微細構造体の取り外しを可能にするように構成されてよい。微細構造体は、その場合、継続的な皮膚への侵入なしで長期間にわたって測定が行われることを可能にするために必要に応じて挿入され、引っ込められてよい。しかし、これは、不可欠ではなく、代りに短期間の測定が行われてよく、その場合、時間は、0.01秒より短く、0.1秒より短く、1秒より短くまたは10秒より短くされてよい。その他の中間時間枠も用いられてよいことは言うまでもない。
【0142】
一例において、測定が行われたら、一つ以上の電子処理デバイスが、示標を決定するために測定された応答信号を分析する。
【0143】
一例において、これは、少なくとも一種類の計量値を導くことによって実現され、この計量値は、次に、示標を決定するために用いられてよい。たとえば、システムは、インピーダンス測定を行うように構成されてよく、計量値は、インピーダンスパラメーター、たとえば特定の周波数におけるインピーダンス、位相角、経時変化などに対応する。計量値は、次に、体液レベル、たとえば示標を生成する際に用いられてよい細胞外または細胞内液レベル、の指示値を導くために用いられてよい。
【0144】
一例において、システムは、測定された対象データ、応答信号もしくは測定された応答信号から導かれた値などの計測量または測定データを送信し、これらが遠隔で分析されることを可能にする送信器を含んでよい。
【0145】
一つの特定の例において、システムは、基材および微細構造体を含むウェアラブルパッチと、測定を行うモニタリングデバイス(「読み出し器」とも称される)とを含む。
モニタリングデバイスは、パッチに取り付けられるかまたはパッチとともに集積化され、たとえば基材の背面にあらゆる必要な電子機器を装着してもよい。あるいは、読み出し器は、読み出しが行われるときパッチと接触させられてもよい。いずれにせよ、モニタリングデバイスの間の接続は、導電性接続であってもよいが、あるいは、指示結合であり、パッチが読み出し器によって無線で探測され、および/または電力を供給されることを可能にされてもよい。
【0146】
モニタリングデバイスは、測定が行われ、および/または測定値を少なくとも部分的に分析するように構成されてよい。モニタリングデバイスは、たとえば信号発生器および/またはスイッチを必要に応じて制御することによって、少なくとも一つの微細構造体に印加される刺激を制御してよい。このことは、モニタリングデバイスがさまざまな微細構造体を選択的に探測することを可能にし、さまざまな測定が行われることを可能にし、および/または測定がさまざまな位置で行われることを可能にする。
【0147】
モニタリングデバイスは、出力、たとえば示標を示す出力または示標に基づく推奨を生成し、および/または行動を行わせるために用いられてもよい。したがって、モニタリングデバイスは、通知または警告を含む出力を発生するように構成されてもよい。これは、たとえば、行動が求められていることを使用者に示す介入を始動させるために用いられてよい。これは、単に、問題の提示、たとえば使用者にかれらが脱水状態であると告げることであってもよく、および/または推奨、たとえば使用者に水分補給するかまたは看護を求めるように告げることを含んでもよい。出力は、さらに、および/またはあるいは、示標、たとえば測定された値、または示標から導かれた情報の提示を含む。したがって、使用者に水分レベルが示されてもよい。
【0148】
出力は、介護者に介入が求められていることを告知する、たとえば介護者のクライアントデバイスおよび/またはコンピューターに通知を転送するために用いられてもよい。別 の例において、これは、遠隔機器を制御するためにも用いられてもよい。たとえば、これは、ドラッグデリバリーシステム、たとえば電子的に制御される注射器注入ポンプを始動するために用いられ、介入が自動的に始動されることを可能にしてもよい。さらなる例において、半自動システムが用いられて、たとえば示標、および推奨される介入を含む通知を臨床医に提供し、臨床医が介入を承認し、次に介入が自動的に行われてもよい。
【0149】
一例において、モニタリングデバイスは、別個の処理システム、たとえばクライアントデバイスおよび/またはコンピューターシステムとインターフェースを形成するように構成される。この例において、これは、モニタリングデバイスとクライアントデバイスおよび/またはコンピューターシステムとの間で処理タスクと分析タスクとが分配されることを可能にする。たとえば、モニタリングデバイスは、測定された応答信号の部分処理、たとえばこれらをフィルタリングすることおよび/またはデジタル化すること、処理された信号の表示を分析のために遠隔プロセスシステムに提供することを行ってもよい。一例において、これは、処理された応答信号を含む対象データを生成し、これを分析のためにクライアントデバイスおよび/またはコンピューターシステムに転送することによって実現される。したがって、これは、モニタリングデバイスが、測定データから導かれる対象データを生成し、分析し、または記憶するコンピューターシステムと通信することを可能にする。これは、次に、対象と関連する健康状態を少なくとも部分的に示す示標を生成するために用いられてよい。
【0150】
これが、臨床医、またはその他の介護者に通知を転送すること、およびデータおよび/または示標の遠隔保存も可能にすることを含む追加の機能が実体化されることを可能にすることは言うまでもない。一例において、これは、記録された測定および他の情報、たとえば導かれた示標、適用された刺激または治療の詳細および/または結果として生じた他の措置の詳細が電子レコード、たとえば電子診療記録に直接取り込まれることを可能にする。
【0151】
一例において、これは、遠隔地の臨床医が自分たちの必要とする情報を取得することを可能にするために、テレヘルスシステムに高忠実度および正確な臨床データを付与する成長中の遠隔健康セクターを下支えするデータをシステムが提供することを可能にし、それらは、中心病院と、集中化された検査室および地域病院から離れた農村地帯との両方において高く評価される。心臓発作患者に関する臨床結果改善の強い予測因子である処置までの時間という点で、地方に分散している住民は、従来の大規模病院へのアクセスだけに頼ることができない。よって、本システムは、たとえば心臓発作を診断することができ、なおかつあらゆる地元医療施設において提供され、パッチデバイスを施用するだけという簡単さである低コスト、堅実かつ正確な監視システムを提供することができる。この例において、トロポニンIに陽性反応を示す患者のために供給源が迅速に送達されることができ、心臓トロポニン試験室血液検査に関して遅延がない。同様に、リスクが低いと判定された患者は、もっと早くかつ侵襲性検査を少なくして解放されるか、またはかれらのGPにより他の流れに振り分けられ得る等である。
【0152】
さらなる例において、ウェアラブルモニタリングデバイスから測定データを受け取り、対象のデータを生成し、次にこれを処理システムに転送するためにスマートフォン、タブレットなどのクライアントデバイスが用いられ、処理システムは、示標を返し、次にそれが、好ましい実体化に応じてクライアントデバイスおよび/またはモニタリングデバイス上に表示されてよい。
【0153】
しかし、これは、不可欠ではなく、測定値を分析し、指標を生成し、および/または示標の代表値を表示するステップのいくつかまたはすべてがモニタリングデバイス上で行われてもよいことは言うまでもない。ここでも、同様な出力が遠隔処理システムもしくはクライアントデバイスに、または遠隔処理システムもしくはクライアントデバイスによって提供され、たとえば、対象またはアスリートに注意が必要であると臨床医またはトレーナーに伝えてもよいことは言うまでもない。
【0154】
読み出し器は、パッチに集積されるかまたは恒久的に/半恒久的に取り付けられたとき自動的に測定を行うように構成されてもよく、あるいは読み出し器が別個である場合はパッチと接触させられたとき測定を行ってもよい。この後者の例において、読み出し器は、パッチに誘導結合されてよい。
【0155】
したがって、たとえば測定された応答信号を処理し、結果を分析し、出力を生成し、測定手順および/または治療薬送達を制御する機能が搭載モニタリングデバイスによって行われてもよく、および/または遠隔コンピューターシステムによって行われてもよいこと、および作業とその結果得られる機能との特定の配分が好ましい実体化に応じて変り得ることは言うまでもない。
【0156】
一例において、システムは、基材上に配置された基材コイルおよび動作可能に結合された電子機器を含み、電子機器は、次に、一つ以上の微細構造体電極に接続され、微細構造体電極は、電極である微細構造体、または電極を上に含む微細構造体を含んでもよい。典型的には測定デバイス、たとえばNFC対応携帯電話または他の類似デバイスの筐体の中に励起および受信コイルが提供され、励起および受信コイルは、使用時、基材コイルに近接して配置される。これは、励起および受信コイルを基材コイルと誘導結合させ、それによって駆動コイルに励起信号が印加されると、これが基材上の電子機器に給電し、測定が行われることと、受信コイルを介して結果が測定デバイスに返信されることと、を可能にする。
【0157】
よって、これは、ウェアラブルセンサが外部源からエネルギーを取り入れる場合は受動的であり、あるいは電子機器に供給するエネルギーがバッテリーから得られる場合は能動的であることを可能にすることは言うまでもない。エネルギーを取り集める手段の包含は、低いコストまたはバッテリー限界を超えて延びた寿命を有する受動センサを可能にする。
【0158】
NFCチップへのエネルギー取り込みの包含は、バッテリーのないNFCセンサ技術を可能にし、エネルギーは、読み出しデバイスからの高周波(RF)探測信号から取り込まれる。これは、NFC手段を備えた既存の装置が読み出し器として用いられることを可能にするので、これは、特に有利である。しかし、低周波(LF)、高周波(HF)、超高周波(UHF)またはマイクロ波帯を含むいくつかの周波数帯が利用のためにあることは言うまでもなく、そのためNFCへの参照が限定するとみなされるべきではない。
【0159】
LFまたはHFにおいて、読み範囲は、波長より小さいため、近接場通信(NFC)によってリストが確立される点も留意される。したがって、読み出し器のループアンテナとセンサのループアンテナとの間で誘導結合によって通信が生み出される。限られた読み範囲は、デバイス上の情報への望ましくないアクセスの下でのプライバシーおよびデバイスセキュリティーを向上させる利点を提供する。しかし、読み出しが行われ得る距離は、限定される。より大きな通信範囲が求められる場合、UHF読み出し器が用いられてよく、これらは、典型的にはNFC用のものより高価である一方で、読み範囲は、数メートル以上に達するように増大させることができる。UHF通信は、遠方場の変調に基づき、読み範囲は、近傍場通信に基づくものより高い。
【0160】
次に、図3A~3Cを参照して生体対象における測定を行うためのシステムのさらなる例が記載される。
【0161】
この例において、システムは、センサ321と一つ以上の電子処理デバイス322とを含むモニタリングデバイス320を含む。システムは、さらに、信号発生器323、メモリー324、外部インターフェース325、たとえば無線トランシーバ、アクチュエーター326および入力/出力デバイス327、たとえば電子処理デバイス322に接続されたタッチスクリーンまたはディスプレイおよび入力ボタンを含む。これらの構成要素は、典型的に筐体の中に提供される。
【0162】
信号発生器323およびセンサ321の性質は、行われようとする測定に依存し、電流源および電圧センサ、レーザーまたは他の電磁放射源、たとえばLEDおよびフォトダイオードまたはCCDセンサなどを含んでもよい。アクチュエーター326は、典型的に、筐体の下面に対して基材を付勢し、振動させ、それによって微細構造体を皮膚に入るよう強いるために筐体と結合された圧電アクチュエーターまたは振動モーターと組み合わされたバネ式または電磁式のアクチュエーターであるが、トランシーバは、典型的に、短範囲無線トランシーバ、たとえばブルートゥース(登録商標)システムオンアチップ(SoC)である。
【0163】
処理デバイス322は、信号発生器323を制御し、センサ321から信号を受信し解釈し、測定データを生成し、トランシーバ325を介してこれをクライアントデバイスまたは他の処理システムに伝えることを含む、さまざまなプロセスが行われることを可能にするためにメモリー324中に記憶されたソフトウェア命令を実行する。よって、電子処理デバイスは、典型的には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロチッププロセッサ、ロジックゲート構成、任意選択としてFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などの実体化ロジックと関連付けられたファームウェア、またはあらゆるその他の電子デバイス、システムまたは構成である。
【0164】
使用時、モニタリングデバイス320は、基材311と、接続部313を介してセンサ321および/または信号発生器323に結合されている微細構造体312と、を含むパッチ310と結合される。接続部は、物理的な導電性接続部、たとえば導電性トラックを含んでもよいが、これは、不可欠ではなく、あるいは無線接続、たとえば誘導結合または高周波無線接続が提供されてもよい。この例において、パッチは、さらに、真皮に侵入し、それによってパッチを対象に固定することを支援するように構成されているアンカー微細構造体314を含む。
【0165】
パッチ310の例がより詳細に図3Bおよび3Cに示される。詳しくは、この例において、基材311は、一般に、基材が対象の皮膚に施用されたとき不快感を避けるために丸い隅を有する長方形である。基材311は、アンカー微細構造体314を含む、は、基材を固定することを助けるために基材311の隅に近接して提供される一方で、測定微細構造体312がアレイまたは列として基材上に配置される。この例において、アレイは、規則的なグリッド編成を有し、微細構造体312は、等間隔の行および列として提供されるが、これは、不可欠ではなく、下記でさらに詳細に記載されるように代替間隔構成が用いられてもよい。
【0166】
図3Bおよび3Cの例において、刺激信号および応答信号が2組のそれぞれの微細構造体に印加され、および2組のそれぞれの微細構造体から測定されることを可能にするために、接続部313を介してそれぞれの微細構造体312に接続されている4つのコネクター315が提供される。これは、典型的には接地基準に対して行われ、今度は一般にノイズの多い非対称またはシングルエンドの印加または検出との対比で信号の対称または異なる印加および検出を可能にするために用いられてよい。しかし、いくつかの検出様式、たとえば二極インピーダンス測定などの場合、これは、適切ではなく、単一の接続部313が提供されることがあることは言うまでもない。
【0167】
図3Bおよび3Cの例において、微細構造体の列が提供され、別々の列、たとえばより近い間隔を有する隣接する列または比較的大きな間隔を有する隣接していない列の間で測定が行われ、このことは、別々の特性が検出されるかまたは、別々の形の刺激が行われることを可能にするために用いられてよい。たとえば、典型的には、電極間隔が大きくなるほど電気信号が深く侵入し、測定が真皮の中まで行われることを可能にし、このことは、測定された応答信号が図3Dに示すように血漿ならびに細胞内および細胞外液中の体液レベルを示し得ることを意味する。
【0168】
これをテストするために、さまざまな深さにおける電流密度を調べるべく50、150、250、500、1000、1500および2000μmの間隔を有するそれぞれの電極を有する2つのブレード微細構造体と、50、150、250、500、1000、1500および2000μmの間隔を有すると2つの表面電極と、を含むさまざまなブレードおよび微細構造体の構成を用いるモデリングが用いられた。
【0169】
図3Eおよび3Fは、それぞれの電極を有する2つのブレード微細構造体の場合、微細構造体の間隔は、電界の侵入の深さに強く影響を及ぼし、電界は、間隔が短いほど表皮に束縛され、間隔が大きいほど真皮中に延びることを示す。さらに、この影響は、周波数が低いほど明白であり、そのため、間隔が小さくなったときに表皮中の体液レベルを測定する能力は、周波数が低いほど周波数が高い場合より低下する。
【0170】
図3Gおよび3Hは、汗がある場合とない場合とでそれぞれの電極を有する2つのブレード微細構造体についての結果を示し、一方、図3Iおよび3Jには表面電極についての同等な測定がそれぞれ示される。これらは、ブレード微細構造体電極測定が大体において汗レベルに依存しない一方、表面に基づくインピーダンス測定は、汗が表皮中の体液レベルの測定を大幅に水浸しにする程度まで汗レベルに強く依存し、真皮ではその程度は低くなることを鮮明にする。
【0171】
図4A~4Cにプレート微細構造体の特定の例が示される。
【0172】
この例において、微細構造体は、本体412と、角質層への微細構造体412の侵入を容易にするように先細りである先端部412.2と、を有するプレートである。この例において、微細構造体は、ポリマー基材411から延在するポリマー本体412を含む。微細構造体および基材の上表面は、典型的に、導電性コーティング(図示せず)で被覆され、そのため微細構造体は、導電性であり、導電性コーティングによって形成された、基材の表面にある接続部413と電気的接触している。基材411、接続部413および本体412の下部は、絶縁層412.1、たとえばポリマー、パリレンまたはその他の材料によって被覆される。この事例において、絶縁層412.1は、微細構造体412の基部および基材411および接続部413を覆い、そのため電気信号は生きた表皮中の組織と通信するだけであり、それによって表面水分、たとえば汗が行われる測定を妨げないようにする。
【0173】
図4Cおよび4Dに示されるように、さまざまな構成が用いられてもよいが、一般に、微細構造体の対が形成され、微細構造体は、互いに向き合い、信号が微細構造体の間に印加されるかまたは微細構造体の間で測定されることを可能にする。再び、さまざまな測定が行われ、および/または電極の間の組織の刺激のプロファイルを変えることを可能にするために、電極の対の中の電極の間のさまざまな間隔が用いられてよい。
【0174】
図示された例において、ブレード先端部は、基材に平行であるが、これは不可欠ではなく、たとえば傾斜した先端部を有し、そのためブレードは、挿入されるにつれてブレードの長さ方向に次第に侵入し、そのことが今度は侵入を容易にすることができる、他の構成が用いられてもよい。先端部は、侵入をさらに促進するように鋸歯なども含むことがある。
【0175】
上述のように、一例において、規則格子構成で微細構造体が提供される。しかし、別の例において、微細構造体は、図4Eに示されるように六角格子構成で提供される。矢印で示されるように各微細構造体が最も近い隣接微細構造体のすべてと等しい間隔であり、別々の間隔を考慮するために応答信号または刺激信号が改変されることを必要とせずにあらゆる隣接微細構造体に対して測定が行われ得ることを意味するので、これは、特に有利である。
【0176】
微細構造体412が対412.3として配置され、ずらされた列412.4、412.5として配置されている対があるさらなる構成例が図4F~4Iに示される。この例において、別々の列の中の対は、直交配置され、そのため微細構造体は、別々の方向に延在する。これは、すべての微細構造体が整列することを避ける。整列すると、パッチが微細構造体と揃った方向への側方滑りを起しやすくなり得る。さらに、対を直交配置すると、特に複数の微細構造体対を介して測定が同時に行われるとき、別々の電極対の間の妨害、たとえばクロストークを低下させ、測定精度を改善し、組織異方性の原因となる。
【0177】
一例において、それぞれの列の中の微細構造体の対にそれぞれの接続部413.41、413.42;413.51、413.52を提供され、微細構造体対の列全体が同時に探測され、および/または刺激されることを可能にする一方で別々の列が独立に探測され、および/または刺激されることを可能にされてよい。
【0178】
ずらされたプレート微細構造体の対の配列を示す走査電子顕微鏡法(SEM)画像が図4Iに示される。
【0179】
表皮中の測定を行うための微細構造体の特定の例が図4Jおよび4Kに示される。
【0180】
この例において、微細構造体は、広がる基部412.11を有する本体412.1を有し、本体は、微細構造体の強度を高めるために基材と接合するプレートまたはブレードである。本体は、肩部412.13を画定するために腰部412.12において狭くなり、この例においては次いで先細りではない軸部412.14を経て先細りの先端部412.2に延在する。下表1に典型的な寸法が示される。
【0181】
【表1】
【0182】
対象に挿入された微細構造体の対の例が図4Lおよび4Mに示される。
【0183】
この例において、微細構造体は、先端部412.2が角質層SCに侵入し、生きた表皮VEに入るように構成される。腰部412.12、および特に、肩部412.13は、微細構造体が対象にさらに侵入しないように、かつ先端部が真皮に入ることを防ぐように角質層SCに当接する。こうすれば疼痛につながり得る、神経との接触を避ける助けとなる。
【0184】
この構成において、微細構造体の本体412.1は、先端部だけを露出させて絶縁材料の層(図示せず)で被覆されてよい。その結果、微細構造体の間に印加された電流信号が対象内、および特に生きた表皮VE内に電界Eを発生させ、そのため測定値は、生きた表皮VE中の体液レベルを反映する。
【0185】
しかし、他の構成が用いられてよいことは言うまでもない。たとえば、図4Mの配置において、軸部412.14が長くなるので先端部412.2が真皮に入り、真皮(および任意選択として表皮)測定が行われることを可能にする。
【0186】
この例において、典型的な寸法が下表2に示される。
【0187】
【表2】
【0188】
これらの構成についての対間および対内間隔の例が下表3に示される。
【0189】
【表3】
【0190】
特定の微細突起構成例が図4N~4Qに示される。この例において、表皮への微細構造体の侵入の制御を促進するために、微細構造体の対がメサに装着される。図4Pおよび4Qに寸法がmmで示される。
【0191】
上記の微細構造体を用いる侵入実験の結果が図4Rに示される。詳しくは、この例において、10Nの一定力を測定するためにハンドヘルド力ゲージが用いられ、パッチの背に押し当てられ、10秒間保持された。施用部位に0.1mLのクリスタルバイオレット溶液が投与され、10分後に余分な溶液が除去され、卓上顕微鏡を用いて施用部位が画像化された。これは、角質層の侵入の成功を鮮明にする。
【0192】
次に、図5を参照して水分をモニターするためのプロセスの例がさらに詳細に記載される。
【0193】
この例において、上記で概略が示されたものと同様な微細構造体を含むパッチがステップ500で対象に施用され、ステップ510で微細構造体の列の間に電気信号を印加し、結果として生じる応答を同じ微細構造体を介して測定することによってバイオインピーダンス測定が行われる。これは、典型的には、ベースラインを確定するために最初に行われ、したがって、対象内の体液レベルのあらゆる撹乱、たとえばこの予備身体運動を行う前に、行われるが、このことは、不可欠ではない。バイオインピーダンス測定は、典型的には、50Hz以下で行われる少なくとも一つの「低周波」測定、典型的には10kHz以上で行われる少なくとも一つの「高周波」測定および典型的には約100Hzで行われる少なくとも一つの「中間周波数」測定を含めて、典型的に複数の周波数で行われる。さらに、バイオインピーダンス測定が生きた表皮および/または真皮内のさまざまな深さにおける体液レベルのインピーダンスを反映することを確実にするために、さまざまな間隔を有する微細構造体の列を用いて測定が行われることがある。
【0194】
ステップ520において、対象内の体液レベルおよびそれらの相対コンパートメント分布が撹乱され、これは、あらゆる適切な方法で行われる。たとえば、これは、対象に体液を摂取してもらうかまたは差し控えてもらうこと、自身で身体運動をしてもらうこと、姿勢を変えること(別々のコンパートメントの間の体液の移動を誘起することができる)、医薬品を服用するなどを含んでよい。
【0195】
これに続いて、ステップ530においてさらなるバイオインピーダンス測定値が記録される。これは、ステップ510と比較して別個の離散的なステップとして示される一方で、パッチがウェアラブルなので、これは必ずしもそうではなく、実際には、バイオインピーダンスが連続的にまたは実質的に連続的に(たとえば数秒毎に)モニターされてよい。ステップ540において、撹乱事象の詳細が記録され、バイオインピーダンス測定を分析するときこれが考慮されることを可能にする。これは、あらゆる適切な方法で、たとえば使用者(対象または監督する個人)に撹乱事象の詳細を入力してもらうことによって、または一つ以上のセンサからの信号をモニターすることによって行われてもよい。たとえば、使用者が身体運動を開始したかまたは停止したかを判定するために呼吸、心拍数および/または体温の変化が用いられてもよい一方で、対象が、姿勢変化、たとえば、座る、立つなどを行ったか判定するために方位/動きセンサが用いられてもよい。
【0196】
次に、必要に応じてこれらのプロセスが繰り返されてもよく、たとえば一連の撹乱にわたってモニタリングし、その結果、対象内の体液レベルが撹乱されるとシステムがバイオインピーダンス変化を連続的に取り込む。
【0197】
ステップ550において、測定されたバイオインピーダンスは、バイオインピーダンスの変化をモニターするために分析され、これらの変化は、ステップ560においてたとえば対象が水分過多であるかまたは水分過少であるか、かれらの体液レベルは回復途上か、かれらは給水されているが脱水症状の傾向があるか、かれらはコンパートメントの間の体液の分配不足を有するか、などを示す示標を生成し、表示するために、用いられる。
【0198】
次に、対象に対して行われる測定の例が記載される。この点について、プロトタイプウェアラブル水分摂取センサの予備的な評価が内部で健常ボランティアを用い、静止クロストレーナー装置に基づく軽い運動-脱水プロトコルで行われ、探測周波数(10Hz~200kHz)にわたって応答が観測された。体内水分低下のアセスメントは、正確な体重と屈折計を用いる尿比重指標によった。すべての計測値が体内水分低下を1.5%体質量の平均と確認し、経口水分補給後の尿比重低下および後に続く回復によって生理的抗利尿応答が確認された。微細構造体の列を含む、上記記載のものと類似のセンサパッチが利き腕でない側の肩に施用され、運動行動は、トレッドミル様であり、主要な胴および脚の筋肉だけが関わった。
【0199】
16名の健常者によってセンサの施用、鎮静時間、亜最大運動、休息およびその後の水分補給からなるプロトコルが行われた。3名の対象者が経口水分補給なしで複数の運動-回復サイクルを行った。このプロトコルからの典型的なデータセットが図6Aに示され、同等な表面に基づくインピーダンス測定値が図6Bに示される。図7A~7Sは、運動-回復-水分補給インピーダンスプロファイルの例を1Hz~1MHzのスペクトルで示す。これらの図全体を通じて、運動、休息および水分補給の期間は、図6Aおよび6Bに標示される通りである。
【0200】
結果は、運動段階と休息段階とにおける体液シフトに対して明確な動的応答があることを鮮明にした。微細構造体パッチを用いて行われた測定の場合、すべての試行にわたって類似のパターンが観測され、結果に矛盾がないことを意味する。さらに、このことは、水分の安定な指標は一つもなく、体液(血液を含む)は、運動とともに動的にシフトすることと、信号変化は大きくなり得る(>50%)ことを示している。
【0201】
対照的に、図6Bに示される表面に基づく測定の場合、データは、皮膚表面における汗蓄積の結果としての急速なインピーダンスの初期低下を示し、運動が停止されてから3時間を超えた後に電極が乾き始めるまで、回復および水分補給段階にわたり高い均一な導電率が残る。
【0202】
これは、身体運動へのおよび身体運動の間の人体の水分応答のような動的システムにおいて、特に水が制限される環境において、体内水分の単一の推定値を引き出すことが複雑さを伴うことを鮮明にする。しかし、本ウェアラブル微細構造体パッチを用いて集められたインピーダンス測定値の独自の利点高い時間分解能によって、鍵となるコンパートメントの間の水分輸送の速度の特性が把握され得る。この点について、身体運動後の休息期間におけるECF支配応答(10Hz-図7P)とICF支配応答(100kHz-図7D)との間に明らかな体液シフトの差別化がある。センサが身体運動を行っている領域とは離れたところで測定するとすべての対象者において影響が明らかに見られる。胴および下半身が身体運動しているとき肩部において信号変化が観測される。したがって、撹乱後にECFとICFとがどのように変化するかの差異をモニターすることは、コンパートメント間の体液の動きの特性を把握し、たとえば身体運動時に水が用いられている場合に体液がICFから抜き出されるのか、または身体運動後にICFに戻されるのかを評価するために用いられ得る。
【0203】
集積されたデータについて、水分欠乏(身体運動)期D1、D2、D3および水分回復(休憩)期に線形近似を適合させることによって初期特性の把握が行われた。この方法で、実際のインピーダンスを測定する際のパッチ施用変動性および対象者間の導電率変動性に起因するバイアスを避けることができる。これらの応答の勾配が図8Aにプロットされ、この図は、対象者が水分を失うにつれて体液欠乏特性の有意差を示す。さらに、身体運動後、ICFの回復は、優先してECFに起こるように見える。ICF曲線が落ち着くと血漿から細胞内コンパートメントへの『導路』とみなされ得るECFの回復が見える。これらの結果は、対象者がますます水分を失うことに対応して、継続する欠乏事象後に勾配がどのように低下するかを示す図8Bによってさらに裏付けられる。
【0204】
したがって、これらの結果は、水分が運動に応答して細胞内コンパートメントから移されたことと、応答は、仕事を行っている領域から離れたところで観測され、身体運動への全身的な応答が見られることを意味することと、を鮮明にする。この体液シフト応答は、ICFにおよびICFからECFを経て血液に、およびその逆に移動する体液を含むことがある。さらに、この応答の成分は、栄養分と体温との両方の管理のためのその局部血流変化であろう。回復すると、体液が血漿から細胞外環境を経て細胞内コンパートメントに戻され、そのためICFが最初に復旧し、次にこの体液拡散を推進する浸透抗力が低下するとECFが補充され、速度は、利用可能な体内水分に部分的に依存する。
【0205】
したがって、体が水分補給されているか、脱水状態にあるか、脱水の過程にあるかまたは復旧途上にあるかを理解するために、ICFとECFとにおける相対的な変化を観測することが用いられ得る。たとえば、増大するICF/ECF比は、水がICF中に移動し、したがって対象者は、復旧しつつあることを示唆するが、減少するICFは、水が、補充されるより速く体によって用いられているので対象者は体液を用いていることを示唆する。さらに、低下する勾配は、体液の流れの速度が減少しつつあることを示し、そのことが今度は、対象者が脱水状態になりつつあることを示すことができる。
【0206】
よって、上記に記載の構成は、皮膚に侵入し、表皮および真皮の生きた組織を探測する、詳しくは細胞外および細胞内体液コンパートメントを探測することができ、コンパートメント間の体液シフトがモニターされることを可能にする。
【0207】
等価な電気要素を用いて生物物理挙動をモデル化すると、血圧動揺、生理的変化、体温変化、汗またはそれらの組み合わせなどの撹乱要素から水分関連信号に関して測定されたインピーダンスデータを解きほぐす助けとすることができる。
【0208】
一例において、これは、ヒトの生物物理過程を表すために用いられる等価回路モデルを考慮して実現され、モデルからの出力がマシンラーニングおよび推理データ科学モデルへの入力としての水分示標を導くために用いられる。
【0209】
脱水モニタリングのために用いられる信号伝達は、細胞外コンパートメント(間質液―ISFおよび血管液)と細胞内コンパートメントとの間の体液シフトは、イオン環境の張性をシフトさせ、測定可能なインピーダンス変化という結果を生むことができるという仮説に依拠する。皮膚表面にあるデバイスは、角質層(皮膚のより外側の層)によって提供される大きなインピーダンスを軽減するという追加の複雑さを有する。皮膚内にあるという理由で、本発明の構成は、容易かつ連続的にこれらの動的信号にアクセスすることができる。
【0210】
図9Aおよび9Bは、活動と休憩との繰り返し期間時の10Hzおよび100kHz取り込みの場合の多重周波数バイオインピーダンス応答曲線を示す。多重周波数バイオインピーダンス技法は、10Hzと100kHzとの間の周波数のスペクトル全体を記録するが、本図においては説明を目的として2つだけが示される。休憩と運動との場合の変化の大きさが異なる周波数において異なることが明らかである。同様に、運動または休憩への応答における大きさの変化の勾配すなわち速度は、異なる周波数において異なる。結果として、信号分析、信号変化の一次または二次微分などから水分指数が導かれることがある。したがって、少なくともいくつかの例において、水分示標は、たとえば水分を示すためにさまざまな周波数におけるインピーダンスの変化の速度を用いて、時間の経過に伴う信号に基づいてよいことが明らかである。
【0211】
この点について、別々の周波数における測定が細胞外液(ECF)および細胞内液(ICF)の特性を区別して検出することができることが一般に理解されている。この点について、低周波数側におけるインピーダンス測定は、大部分がECF、および特に間質液の測定である一方、高周波数側における測定は、ECFコンパートメントとICFコンパートメントとの両方を示す。よって、別々の周波数におけるインピーダンス測定の差異、または別々の周波数におけるインピーダンス測定の時間経過に伴う変化は、ヒトの体の水分状態を知らせることができる。
【0212】
一例において、図10に示すように、一方は低周波数細胞外体液応答を表し、他方は高周波数細胞内体液応答を表す2本の平行な腕を考慮することによって組織の高周波数インピーダンス応答と低周波数インピーダンス応答との間を差別化するバイオインピーダンスモデルが用いられる。このモデルは、撹乱パラメーターを切り離すためにさらなる回路要素、たとえば図10に示される界面キャパシタンスも含んでよく、界面キャパシタンスは、バイオインピーダンススペクトルの低周波数側を支配する多くの場合に大きなインピーダンスを表す。
【0213】
この点について、界面インピーダンスまたはもっと知られている呼び方で電極分極(EP)は、金属-電解質相互作用につきものの定めであり、1世紀超にわたって盛んに研究され、イオン環境のインピーダンス応答を測定するために使用される二電極システムにおいて存在する物理現象である。EPは、電極の表面に吸着された対イオンと、電源AC信号によって駆動されてそれらを囲むイオンの拡散層とで構成される二重層キャパシターとして顕れる。それは、イオン環境のより大きな応答が低周波数において測定されないように遮蔽する。特定の周波数より上でこのキャパシタンスの影響は低下する。しかし、小型の電子機器パッケージング中で利用可能な周波数の限られた帯域幅でそれは目立ち得る。EPは、位相対周波数のボーデプロットにおけるキャパシタンスなので、この効果は、位相が-90°と-45°との間にある周波数において表れる。
【0214】
好ましくは、EP効果は、本明細書に記載される構成によって発生される周波数スペクトルの最大値がイオン環境における変化を検知するために利用可能であることを確実にするために、できるだけ低い周波数領域に閉じ込められる。たとえば、より良好な信号発生および測定システムを使用することによって、図11Aの1101に示される大きなEP効果は、図11Bに示されるように顕著に低減され、改善された効果的な測定領域1102が得られる結果とされ得る。
【0215】
測定デバイスのインビトロ特性把握は、センサのベースライン応答を提供するので重要である。このベースライン応答は、純粋にイオン的な環境の存在下およびあらゆる生体媒質の非存在下でデバイスがどのように応答するかを記述する。水道水から0.9%生理食塩水の範囲の溶液中でインビトロ特性把握が行われる。生理的に適切な生理食塩水濃度は、血漿のイオン当量に対応する0.9%であるが、血管によって直ちに供給を受けない組織は、0.09%までの低さのもっと希薄なイオン条件に直面することがある。張性検討の最下端においては、水道水が脱イオン水(DI)の代りに使用される。後者の一貫性は、専用の装置なしで維持するのが難しいからである。
【0216】
図12Aは、種々の生理食塩水濃度の溶液における被覆されていない測定デバイスのインビトロ応答を示す。図12Bに示されるように、このデータと適合させるために、高周波数側においては溶液抵抗、低周波数側においてはEP(二重層キャパシタンス)の寄与と解釈される直列の抵抗器-キャパシターで構成される簡単なモデルが使用である。しかし、高周波数側において、選ばれたモデルによっては説明されないままである屈曲点の特徴が存在する。この屈曲点は、完全にイオンキャパシタンスであり、電解質自体の高周波充電および放電に関連し、したがって、小さな並列キャパシタンスの追加は、図12Cに示されるように、この特徴をモデル化する上で助けとなる。モデルに追加されるすべての回路要素は、特定の物理的な意味を有する必要があり、同における変化を実行することによって検証されなければならない。小さな並列キャパシタンスは、濃度が高いほど減少することが見られ、したがってこの効果がそこにあることを確実にする。この事実は、文献からも確かめられる。
【0217】
センサデバイスのあらゆる繰り返しは、確かめられる生理食塩水中で分析され、検証され、そのモデルが確認される必要がある。図13A、13D;13B、13Eおよび13C、13Fは、被覆なし(13A、13D)、完全パリレン被覆(13B、13E)および微細構造体は、それらの基部においてパリレンコーティングを含むが先端部はコーティングを含まず、剥き出しの金属が露出されているパリレンエッチング(13C、13F)微細構造体のための3つの異なるモデルを示す。これらのモデルのそれぞれは、デバイスの物理特性を表し、結果として得られるプロットを解釈しようと試みる。完全パリレン被覆デバイスの場合の応答は、この点で興味深い。パリレンコーティングの低い誘電率を考慮すると大部分容量型応答であると予測されるが、データを十分に記述するために、並列の電荷移動抵抗の必要が依然として存在する。それでも、この電荷移動抵抗は、予想通り静か高い(メガオーム)。モデル中の直列抵抗は、前と同じく高周波における溶液抵抗を表す。実際、文献においてイオン溶液中の完全被覆電極を記述するためにそのようなモデルが使用されている。
【0218】
図13Fは、その基部においてパリレンコーティングを有する一方で、先端部は、コーティングを含まず、剥き出しの金属が露出されているデバイスの応答を示す。低周波数における応答は、大部分が容量型であり、モデルの直列R-Cユニットによって表される一方で、状況は、被覆されていないデバイスのものを表す高周波数、図13Aのものと類似の腕が用いられる。一緒に、このモデルは、デバイスデータの良好な代表として使用される。
【0219】
インピーダンス測定にとって温度は公知の混乱要素であり、バイオインピーダンス測定は同から逃れられない。イオン溶液中の温度の上昇は、溶液密度の減少と結合した熱擾乱効果に起因して内部抵抗を低下させる傾向がある。同様に、温度の増大も溶液の誘電率(permittivity)(誘電定数(dielectric constant))を生じさせることによって静電容量を増大させる。
【0220】
ついでながら、この因子の結果として応答における大きな振れが観測された。したがって、応答のどれだけの百分率が温度とともに直接変化したかを特定するために本アーキテクチャのためのインビトロ設定を評価することが有用である。被覆されていないデバイスがこの検討のために選ばれ、水道水と0.09%の生理食塩水とに別々に導入された。両方の溶液が約24Cの室温から40Cに加熱され、次いで室温に冷却された。図14Aに示される水道水の結果から、温度が変化するにつれてシステムのインピーダンスに変化があることが分かる。図14Bに示され、抵抗および容量回路要素が抽出される前に導入された被覆されていないデバイスのためのモデルを用いて、図14Cに示されるように抵抗の温度係数(αによって示される)が計算されることを可能にした。所定のデバイスタイプの場合、度あたりの抵抗値の変化は、2%未満であることが分かる。
【0221】
これは、さまざまなデバイスアーキテクチャについて上記に提示されたベースラインのものより上にあるモデルを構築するために、受動および能動脱水の領域が用いられることを可能にする。
【0222】
図9Aおよび9Bに関して上記で記載されたものと同様なインビトロ実験から、本デバイスによってイオン環境の変化がさまざまな周波数で拾い上げられることが明らかである。生物物理モデルを使用することによって、これは、水分示標ともっとも相関するデータを抽出するために用いられ得る。
【0223】
この点について、金属電極-生体組織システムは、その応答において2つのインピーダンス分散領域を有する。第1のものはα-分散として示され、低周波数における二重層の静電容量に関連する。駆動周波数が増大するにつれて細胞膜の静電容量の特性である第2のものであるβ-分散が観測される。この周波数閾値より上でインピーダンス応答は、細胞内成分と細胞外成分との両方を含む。種々の測定アーキテクチャについての文献において、さまざまな周波数がβ-分散のために特定されているが、大部分が50KHzより大きい。逆に、デバイスが生理食塩水に導入されるインビトロ実験と遭遇したもののような金属電極-電解液システムは、細胞培地が存在しないことが原因でβ-分散を有しない。これは、インピーダンスの初期低下(低周波数)の後に応答が高周波数において平らになる図15Aおよび15Cにおいて分かる。他方、図15Bおよび15Dにおいてインピーダンスは、低周波数域のわずかな変動とともに、次に再び高周波数域において低下することが分かり、さらに評価すれば図15Eおよび15Fに示される体液コンパートメントの細胞内および細胞外成分が皮膚内で分析されることを可能にするモデルを実現することが可能になり得ることを示す。
【0224】
さらなる検討は、微細構造体によって侵入されたかまたは、そのようなデバイス中に存在するフリンジング場効果に起因して受け取られるデータの一部を形成するかのいずれかである皮膚のさまざまな層の評価も含み、ありふれた関係式によってデバイス寸法に特有の抵抗値に変る別々の層の公知の導電率が与えられれば、そのような層ごとの検討が実行されることができるより複雑なモデルを可能にする。
【0225】
ヒト試行
生理データにアクセスするために皮膚に侵入する微細突起部を有するウェアラブルセンサがインビトロ、エクスビボ動物モデルおよびヒトインターフェース実験において広範に検証された。さらに、前臨床研究および有限要素法シミュレーションは、適切なサイズおよび構造のブレード微細電極は、作動電界を標的皮膚層中に集中させることを助け、測定の正確さおよび再現性を改善し得ることを示す。
【0226】
水分量関連特性把握のための本商業的実施形態および学術的実施形態の大部分のものの基礎である表面電極は、環境条件とともに顕著に変化する角質層の水分量によって顕著に影響を受け、体汗によってさらに影響を受ける。
【0227】
表面型の電極(皮膚上測定)および表皮中ブレード微細構造体電極(皮膚中)の場合に測定されたインピーダンスの比較が図16Aおよび16Bに示される。ここで、1mm間隔で配置された電極が、乾いた皮膚、軽度から中度の発汗を有する皮膚および重度の発汗を有する皮膚の上に配置される。発汗は、食塩水エアロゾルでシミュレーションされる。皮膚上の表面電極のインピーダンス周波数掃引は、角質層上の汗の関数として500倍のインピーダンスの差異を示す。表皮内だけを調べ、角質層を迂回する、腕部に施用された微細構造体電極デバイスのインピーダンス周波数掃引は、はるかに小さなインピーダンス変化を示す。
【0228】
体内の水の機能位置は、概念的にコンパートメントという用語で説明される。水は、細胞内または細胞外(それぞれ細胞の内部または外部)としてカテゴリー分けされてよく、細胞外体液コンパートメントは、さらに間質液(ISF)と血漿体液コンパートメントとに分けられる。このISFコンパートメント中の水は、体が水ホメオスタシスを維持するにつれて体積が動的に増減する体液溜めである。目標は、心臓、脳、肺および腎臓などの不可欠器官の潅流を確実にするために血漿容積モル浸透圧濃度および容積を維持することであり、第一にISFからシフトして出る水によって実現される。この現象が、体内水状態の早期かつ感度の高い標示を可能にするために本検知手法によって利用される。
【0229】
ISFは、熱誘起脱水条件における体液損失を補償する上で鍵となる役割を演じているので、皮膚含水量のこの生理応答は、水分量全体を測定する効果的な方法として利用される。
【0230】
本構成は、皮膚の電気的性質における微小な変化を測定するために、内部コンパートメントにおける体液のシフトに関連することがあり、ついには体内水分を知らせることがある、多重周波数バイオインピーダンス技法を使用する。
【0231】
より長い休憩インターバルによって挟まれたプロットにおける平行な線の間に行われた短いインターバルの高強度ワークアウトセッション(各5分)を受けているヒトの対象者に施用された微細構造体検知パッチを用いて水分量信号を特定する試行が使用された。多数の実験にわたって、本水分量プロトタイプから、運動と休憩とのインターバルを反映するように見える繰り返し可能かつ信頼性ある応答が実現され得ることが示された。
【0232】
皮膚内からの小さな変化が測定されることを可能にする、制御された環境におけるプレパイロットヒト実験を含む例示的なデバイスの広範な前臨床試験が行われた。検出可能な信号変化を誘導するために、対象者は、環境チャンバー中で、センサプラットホームの有用性を実証する皮膚中の検出可能な体液シフトを伴って脱水が誘導されるまで運動した。このプレパイロット研究は、プロトタイプ水分センサの機能テストを可能にした。
【0233】
試行研究は、数時間にわたる環境チャンバー中の運動(3.3%の体重減少)によって能動的に脱水症状になる対象者を含んだ。皮膚インピーダンスを測定するために6個のデバイスが用いられた。本研究において用いられたセンサは、テープで体に固定された30本の300μmの長さのステンレス鋼マイクロニードルを含む。デバイスニードルは、痛みを伴わずに約150μmの深さまで皮膚に侵入する。30本の尖っていないステンレス鋼マイクロニードル(鍼療法ニードル)を有する表面センサが皮膚に侵入しないように設計された、もテープで体に固定される。すべてのセンサは、3.7V、400mAh、LiPoバッテリーによって駆動された。センサの2つの間隔(1.0mmおよび2.0mm)で10Hz~100kHzの間の24の離散周波数において45秒毎にインピーダンススペクトルが記録され、45秒毎に384のインピーダンス測定値を生じた。この実験の間に記録された追加のパラメーターは、環境湿気および温度、深部体温および皮膚温度、心拍数および体重であった。デバイスおよび対応する記録用ハードウェアは、対象者の両腕と肩に施用された。
【0234】
実験プロトコルは、簡単に言えば、以下の通りであった。デバイス施用→対象者が環境チャンバーに入る→5分ベースライン測定→45分運動→チャンバーを出、採血、タオルで水分をふき取った後に裸で計量→チャンバーにまた入る→45分運動→チャンバーを出、採血、タオルで水分をふき取った後に裸で計量→チャンバーにまた入る→45分運動→チャンバーを出、採血、タオルで水分をふき取った後に裸で計量→75分間水分補給する→デバイス取り外し。
【0235】
生のインピーダンス測定値の例が図17に示され、運動中および運動後のインピーダンスの変化を鮮明にする。
【0236】
これらの結果の予備的な目視分析は、以下のことを明らかにする。
・インピーダンスは、運動開始10分後に顕著に下がる
・インピーダンスは、両回復期開始後約6分に増大する
・インピーダンスは、休憩後環境チャンバーに入った数分後に低下する
・低周波数において、規格化された大きさの変化は、デバイス間で矛盾がない。高い周波数になるほどデバイス間の大きさ変化の変動が大きくなる。
【0237】
これに続いて、変動する温度および変動する血圧の存在を含む撹乱効果および生理作用から水分量関連信号を分離するために、さらなる検討が行われた。この点について、本発明者らの信号全体のより良好な理解を得るために、水分補給事象時に発生することがある混乱要因をできるだけ接近して個別に評価することが重要である。
【0238】
これを実現するために、身体活動時に付されると個人が予測する自然な体温変化を、身体活動によって生じる可能な動きの人為結果および変化を導入する必要なくシミュレーションするために、検出デバイスの周りの皮膚を温め、および冷やすべく、デバイス自体の温度を変えることなく温かいパックおよび冷たいパックが用いられた。温かいパックおよび冷たいパックがそれぞれ10分間施用されているときと、それに続いて加温または冷却がそれぞれ適用されていない10分間の回復期に手背(部)においてさまざまな周波数で測定されたインピーダンスが図18Aおよび18Bに示される。初期データは、温度がインピーダンス測定値に影響を及ぼさないことがあると示唆する。
【0239】
温度および血圧を混乱させる因子の介入を含む、活動なし/汗なし(エアコン環境で着席)、活動なし/汗あり(熱せられた温室中で着席)、活動あり/汗あり(熱せられた温室中でエリプティカル)条件時を含む、さまざまな条件において、被覆されていない微細構造体およびエッチングされた微細構造体と表面電極とを評価するために、さらなる試行が用いられた。比較のために各センサタイプの一つが4つの身体部位に施用された(近位上腕、向こうずね、手および胸甲)。混乱させる因子を調べるために、温パックおよび冷パックを施用部位に当てることによって活動なし/汗なし段階時に温度が操作された。血圧は、参加者の姿勢を着席から横たわり、立ち上がりに変えることによって変えられ、血圧アームカフを用いて2分間隔で測定された。
【0240】
図19Aから19Fの結果は、表面電極を用いて行われた皮膚上インピーダンス測定(図19Eおよび19F)と比較した微細構造体型センサからの信頼性のより高い信号と、熱い温室および活動への曝露の開始後のパリレンコーティング(図19Cと19D)に起因する汗絶縁を示す。エッチングされたデバイスは、この特定のバッチにおける不良な金の接着に起因する主要部の変形を有した。
【0241】
よって、上記記載の構成は、水分量をモニターし、撹乱事象に続くバイオインピーダンスの変化が対象者内の体液シフトを分析し、それによって水分状態に関するフィードバックを提供するために用いられることができるマイクロウェアラブルパッチの使用を記載している。
【0242】
しかし、インピーダンスの変化をモニターすることは不可欠ではなく、代りに、単一時点からのインピーダンスの静止値が用いられてもよいことは、言うまでもない。
【0243】
よって、別の例において、生体対象の体液状態をモニターするためのシステムであって、システムは、対象の角質層を突破するように構成された電極を含む複数の微細構造体を含む少なくとも一つの基材と、別々の微細構造体上の電極の間に電気刺激信号を印加するように構成された信号発生器と、別々の微細構造体上の電極の間の電気応答信号を測定するように構成された少なくとも一つの信号センサと、測定された電気応答信号を用いて一つ以上のバイオインピーダンス値を分析し、対象の体液状態を少なくとも部分的に示す少なくとも一つの示標を決定するために一つ以上のバイオインピーダンス値を決定するように構成された一つ以上の電子処理デバイスと、を含むシステム。
【0244】
そのような構成において、一つ以上のバイオインピーダンス値は、単一の周波数において測定されてもよいが、より典型的には、体液状態を確かめるためにさまざまな周波数における測定値を用いる。したがって、たとえば、細胞内体液レベルと細胞外体液レベルとの相対量を決定するために低い周波数における測定値と高い周波数における測定値とが用いられてもよく、相対量が今度は体液状態示標を導くために用いられてもよい。
【0245】
一例において、そのようなパッチは、接着パッチとして胴に施用された1cmデバイスである。侵入している電極の電気的なやり取りは、搭載電子機器と、ディスプレイへの無線送信と、タブレットまたはパーソナルコンピューターなどのアーカイブツールと、を用いて実現される。
【0246】
デバイスの試行は、身体運動期間、回復期間および水分補給期間の特性を明らかにする応答を示す。パッチはウェアラブルなので、高い時間分解能が可能であり、そのことが今度は血漿、ECFおよびICFコンパートメントからのおよびへの体内水分のシフトの動力学のモニタリングを可能にする(少なくとも)。
【0247】
このプラットホームは、ウェアラブル水分評価ツールのための基礎とすることができ、a)水分ストレス環境における運動の生理学をよりよく理解し、かつb)活動を行っている個人、たとえば準備行動、任務の成果における、および使命の回復段階における兵士の個人別成果管理を提供するために、体内水分動力学のリアルタイム分析を可能にすることもできる。一例において、パッチと関連読み出し器とは、IoT(もののインターネット)接続デバイスとして使用可能にされ、データの共有は、所有者および使用者の裁量に任されてよい。このデータの価値は、個人の専用水分管理と大きな集団から集積され匿名化されたデータの利点とにおいて実現される。
【0248】
この点について、軍人はかれらの仕事の非常に大きな身体的要求に起因して脱水、および関連して熱中症の危険により多くさらされる。これらの回避可能な症状は、使命を安全にかつ効果的に完了する能力にひどく影響を及ぼす。脱水は、その有害な影響を身体的に、認知的におよび心理的に媒介する。
【0249】
脱水は、身体的な働きにひどく影響を及ぼす。たとえば、熱と水分喪失とは本質的に関連しているので、熱い気候の中で働いている兵士は、急速に脱水症状になる可能性がより高く、そのことが今度はかれらが熱中症に屈するリスクを増大する。体心温度は、脱水による体質量低下1%毎に0.1~0.2℃増大する。これは、水が発汗の冷却効果により温度調整において重要な役割を演じるからである。しかし、発汗は水分損失なので、不足分は、脱水を防止するために水分摂取により十分にかつ迅速に対処されなければならない。身体症状は、重篤さの滑り定規上で初期段階における頭痛、無気力、乾いた粘膜および眼ならびに息切れから筋痙攣および血液量減少失神を示す。影響は、急速なことがあり、1~2%の体内全水分損失は、心血管および温度調節メカニズムに余分な努力の必要、減少する身体の働きを知覚させるのに十分なほど影響を及ぼし得る。対処されない場合、脱水は、身体的または精神的な能力の低下により直接的または間接的に死につながる。脱水(熱および運動ありおよびなしで)による身体能力低下の影響は、主として健常アスリートおよび軍において良好に特性が把握されている。身体能力に対するその影響に関するメタ分析は、筋力(水分補給された状態に対して-5.5%)、持久力(-8.3%)、無酸素出力(-5.8%)と能力(-3.5%)に対して際立った脱水の影響を実証した。能動的な、すなわち運動を特徴とする水分補給手順は、熱ストレス/体液制約だけを使用する受動的なものより2.8倍高い、働きに対する影響と関連していた。一つの研究は、持久力および強さが顕著に低下する、脱水による2%体重低下の閾値を提案した。このレベルの脱水は、熱い気候における身体要求によりわずか数分で起こることがあるので、使命をほとんどその最初から危うくすることがある。
【0250】
さらに、軽度の脱水でも認知能力を顕著に低下させる。たとえば、脱水の第一の結果の一つは、脳を潅流し、その構造および機能の変化を生む結果となる、組織液の入手しやすさにおける制約である。体液潅流が低下すると、脳の体積は、認知過程を担う鍵となる皮質性構造のものと同じように顕著に収縮する。頭痛は、脱水の共通の神経病学的病訴であるが、潜在的には、わずか1~2%の体内全水分損失と一致する行動および認知影響の形のより深刻な影響は、検知するにはそれほど明らかでないことがある。あまり重篤でない場合、認知影響は、短期記憶損失、注意力欠如、感覚作業困難および空間視覚認識の低下として現れるが、脱水が修正されない場合は急速に重度の混乱および見当識障害に進むことがある。認知影響は、熱さにおいて顕著に明白である。野外において、機敏さのそのようなあらゆる低下は、反応時間の重大な遅れおよび個人とチームとの両方を危険にさらす迂闊なリスクテイキングの原因となり得る。多くの試行は、脱水を認知への悪影響と正式に関連付けた。シミュレーションされた一つの作業実験において、軽度に脱水状態になった運転手は、睡眠不足の運転者、または運転のための法定限度と同等のアルコールを摂取した運転者と同じく多くの誤りを犯すことが見いだされた。軍人においては、飛行士の11%が規則的な摂取にもかかわらず1%を超える体液不足でかれらの飛行計画を完了し、例外的に高いレベルの集中を必要とする軍事行動時にはこのレベルの脱水が普通な場合があることを実証した。
【0251】
脱水は、心理的ストレスにも寄与する。この点について、水分欠乏は、おそらく体の中のストレスのもっとも基本的な原因である。水分欠乏が検知されると体液摂取を促して体へのさらなる損耗を防ぐために強力なニューラルホルモンメカニズムが起動される。体液状態の生体示標を特定しようとする検討は、水分補給によって正常に戻る、水分欠乏に伴う血清コルチゾールレベルの増加を示した。コルチゾールは、ストレスへの急性応答に関与する神経伝達物質であり、不安および恐慌の状態において共通に増大する。脱水誘導高コルチゾール血症は、一部の者によって能動学習、短期記憶の低下および上記記載のその他の認知影響の一原因であると提案されている。試行は、共通して、脱水を不安や気分の落ち込みといった報告される心理的影響と関連付けている。わずか90分の体液抑制プロトコルの後でも、一つの水分欠乏研究における志願者は、渇きの感覚およびエネルギーの衰えとともに、後に水分補給すると元に戻る気分の落ち込みおよび不安を報告している。脳の健康の維持のために必要なものなどの神経伝達物質は、合成ならびにそれらの産生部位から作用部位までの輸送のために適切な水分を必要とする。動物試験において、脱水とセロトニンの低いレベル(うつ病の公知の原因)との間のつながりが、その前駆体トリプトファンを脳全体にわたってそれが求められるところに輸送する能力不足によりできた。一つの大規模試験が体液状態とうつ病評点との間の関連を見いだしたが、脱水と長期疾患との間の強い関連は、正式にはまだ受け容れられていない。要約すると、戦闘環境において経験されるような高いレベルの急性ストレスに直面すると、適切な水分補給は、最適な心理的柔軟性への不可欠な寄与要素である。
【0252】
軍人の場合、重度の脱水は、予定外の使命IV時水分補給用停止、兵士の速度低下、使命の遅延を生む結果となるか、または極端な場合、野戦医療センターへの配置転換が必要になることがある。これらの行動において費やされるリソースの一覧は、使命目的からそらされる時間および努力だけでなく、輸送IV水分補給装置へのロジスティックス支援のための要件、または後者の場合は病院本国送還コストも含む。
【0253】
個人の生理に合わせて調整された『個人別水分補給プラン』は、使命時に水分量の未知数に対して初期の、より改善された制御を可能にすることによってこれらの状況のどちらも起こらないようにすることができる。一人の米国陸軍看護兵が書いたように、「おそらく[水分補給されたままでいることの]もっとも重要な部分は、かれらがそもそも任務に足を踏み入れる前に開始される。事前水分補給または前の日(日々)にたくさんの体液を飲み、十分に食べる。あなたは、身体事象時に脱水になることはできず、巻き返しをすることはできない。不幸にして、最後の瞬間の呼び出しおよび応答の場合、これは常に準備するのが容易なわけではない」。渇きに応えて適宜飲むことは、多くの場合、完全に水分補給するために求められる量に達せず、その後何日も働きに影響を及ぼす欠乏持ち越しを生む結果となるので、そのような前を見た計画は、十分な回復のための正しい行動を保証することができる。計画および回復に加えて、環境の変化による偏移を可能にするために、リアルタイムモニタリングが成功にとって不可欠である。体液状態を正確にかつリアルタイムでモニターするより良い方法への切迫した求めにもかかわらず、そのような解決策は存在しない。
【0254】
上記記載の構成は、野外におけるリアルタイム個人水和モニタリングのためのウェアラブル水和モニターを提供する。最近の総説が野外使用に適した水分補給モニタリング技術の必要を例示した。上記で考察されたように軍事作戦など、多くの熱ストレスを受ける労作性の職業が利益を得ることができる。候補指標の中で、多重周波数バイオインピーダンスは、有望であるが、主に皮膚の表面上で表面電極を用いるバルクの体組織の探測に起因して、所望の感度および特異性を欠いている。外部角質層および標的細胞成分およびECFの絶縁特性を最小限に侵襲的な方法で克服するために、電気的にやり取り可能であり、手によって施用され得る微細構造体のアレイが製作される。浅い侵入に起因して、デバイスは疼痛がなく、出血の原因とならず局所紅斑も誘導しない。
【0255】
センサパッチおよび電子機器の実用的な実体化物が開発され、長時間(約24時間)着用されることができる。探測は、スマートフォンにおいて用いることができ、多数の既存の読み出し解決策が利用可能である近接場通信(NFC)プロトコルを介してよい。NFCシステムは、高周波数誘導コイルを介してカスタムプログラム化集積回路を起動させることができる。次に、読み出し器が、インピーダンスの瞬間的な指標を提供するために用いられてよく、クラウド遠隔測定法の任意選択肢によって基礎的な信号処理および貯蔵装置を可能にする。この方法において、本システムは、もののインターネット(IoT)解決策を提供し、データアクセスは、通常の許可およびセキュリティ実体化の対象となる。
【0256】
体内水分は、概念としての、主に血液および血漿を含む細胞外、および細胞内のコンパートメントに存在するとして十分に認識されている。これらの組織タイプの電気的性質は、測定可能であり、集中定数モデル-典型的にはコール-コールモデルを用いてモデル化され得る。基本的に、複素インピーダンス中の容量成分は、細胞内水分に起因し、イオン性ECFは、主として並列抵抗成分である。次に、多重周波数手法を用いてさまざまな組織タイプ(コンパートメント)の中の含水量の差別化が行われることができる-最初の事例において簡単な低周波数-高周波数差別化が概念の証明を示す。
【0257】
一例において、上記に記載のシステムは、体液測定、たとえばイオン濃度および/または水分測定が行われることを可能にする。構造体の長さは、標的組織中の特定の層の標的化を可能にするために製造時に制御されてよい。一例において、これは、表皮および/または真皮ISF中の体液レベルを標的とするように行われる。
【0258】
したがって、パッチは、表面に基づく測定を行う必要を避ける測定デバイスを提供し、より正確および/または感度の高い測定が行われることを可能にする。
【0259】
本システムは、簡単な半連続または連続モニタリングを提供することができる。低コストデバイスマイクロウェアラブルは、皮膚に施用され、潜在的には何日も(またはより長く)着用され、次に単に別のマイクロウェアラブルコンポーネントによって交換される。したがって、マイクロウェアラブルは、体液レベルが速く変化する状況において特に重要になり得るオーバタイムをモニターするためのルートを提供する。
【0260】
一例において、上記に記載の手法は、皮膚上に配置される現行デバイスによっては分析され得ない多数の健康状態のための広範な低コスト保健モニタリングをウェアラブルが提供することを可能にすることができる。
【0261】
上記の例は、軍事用途において体液レベルをモニターする重要性を例示しているが、体液レベルをモニターすることがさまざまなシナリオの範囲において、たとえば高齢者、アスリート、極端な熱ストレスおよび特定の熱ストレスを受ける環境中の作業者、医療状況における患者などをモニターする際に等しく利用可能であることは言うまでもない。同様に、上記は、水分を評価する際のデバイスの使用に焦点を合わせたが、たとえば、透析を制御するために体液レベルをモニターすること、手術後手順における体液レベルをモニターすること、対象が嘔吐/下痢状態にあるとき体液レベルをモニターすること、IV体液または利尿薬を投与すること、および腎不全、心不全などが進行しているかまたはそのリスクがある患者をモニターすることを含む、広い範囲のさまざまな目的のために体液状態をより広範にモニターするために本デバイスおよび関連する分析が用いられてよいことは言うまでもない。
【0262】
よって、対象という用語は、生きている対象、たとえばヒト、動物、または植物、ならびに生きていない材料、たとえば食品、包装などを含んでよいことは言うまでもない。
【0263】
よって、上記に記載の構成は、対象に対して測定を行うためにバリアーを突破する、たとえば角質層の中に侵入する微細構造体を用いるウェアラブルモニタリングデバイスを提供する。測定は、あらゆる適切な形であってもよく、対象内の体液レベルを測定すること、対象内の電気信号を測定することなどを含んでよい。次に、測定値が分析され、対象の健康状態を示す示標を発生させるために用いられてよい。
【0264】
当業者は、多数の変化形および変更形が自明になると理解する。当業者に自明になるすべてのそのような変化形および変更形は、記載される前に本発明が広義に現れている精神および範囲に属するとみなされるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4O
図4P
図4Q
図4R
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
【国際調査報告】