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特表2024-513982宇宙用途用の電気ワイヤおよびケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】宇宙用途用の電気ワイヤおよびケーブル
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20240319BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240319BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20240319BHJP
   H01B 5/08 20060101ALI20240319BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240319BHJP
   C25D 5/18 20060101ALI20240319BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C25D7/06 U
H01B13/00 501E
H01B7/02 Z
H01B5/08
H01B7/18 D
C25D5/18
C25D7/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562799
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 FR2022050678
(87)【国際公開番号】W WO2022219276
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】2103805
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514002710
【氏名又は名称】アクソン カーブル
【氏名又は名称原語表記】AXON CABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100211203
【弁理士】
【氏名又は名称】中城 伸介
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ニン
(72)【発明者】
【氏名】デ ゼズス,オーレリー エム
【テーマコード(参考)】
4K024
5G307
5G309
5G313
【Fターム(参考)】
4K024AA10
4K024AB01
4K024BA09
4K024BB09
4K024BB28
4K024BC03
4K024CA01
4K024CA06
4K024CA08
4K024CB05
4K024EA11
4K024GA04
4K024GA16
5G307EA01
5G307EB06
5G309RA09
5G313AA10
5G313AB10
5G313AC03
5G313AD06
5G313AD07
5G313AE08
(57)【要約】
本発明は、1.5μm~15μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを製造するためのプロセスに関し、銅または銅合金の素材ワイヤの上に、銀を電解析出させるステップを含み、電解析出が、特定の電解条件の下で、銀めっき浴において、反転を伴うパルス電流で行われる。本発明はまた、当該プロセスによって取得可能な銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤ、銀めっきされた銅または銅合金のストランドを製造するためのプロセス、当該プロセスによって取得可能なストランド、銀めっきされたストランドを備える銀めっきされた導体および電磁シールド層、銀めっきされた導体を備える電気ワイヤ、ならびに電気ワイヤを備える電気ケーブル、ならびに、それらの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5μm~15μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを製造するためのプロセスであって、
銅または銅合金の素材ワイヤの上に、銀を電解析出させるステップを含み、
電解析出が、40g/l~70g/lのシアン化銀および90g/l~150g/lのシアン化カリウムを含む銀めっき浴において、反転を伴うパルス電流で行われ、電解条件が、以下のとおりである、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを製造するためのプロセス。
平均電流密度Jmが、1.5A/dm2と15A/dm2との間、有利には、1.78 A/dm2と5A/dm2との間に含まれ、
パルス周波数fが、0.8Hzと1.6Hzとの間、有利には、0.8Hzと1.4 Hzとの間に含まれ、特に、1Hzであり、
デューティサイクルQが、50%と80%との間、有利には、55%と65%との間に含まれ、
カソードの電流密度のピークJcが、3A/dm2と11A/dm2との間、有利には、5A/dm2と10A/dm2との間に含まれ、
アノードの電流密度のピークJaが、1A/dm2と5A/dm2との間、有利には、1.28A/dm2と4.2A/dm2との間に含まれ、
カソードパルスを維持する時間Tcが、0.2sと0.8sとの間、有利には、0.55sと0.65sとの間に含まれ、かつ、
アノードパルスを維持する時間Taが、0.06sと0.5sとの間、有利には、0.35sと0.45sとの間に含まれる。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスによって取得可能な、1.5μm~15μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤ。
【請求項3】
1μm~1.5μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金のストランドを製造するためのプロセスであって、
請求項2に記載の銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを引張るステップを含む、銀めっきされた銅または銅合金のストランドを製造するためのプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスによって取得可能な、1μm~1.5μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金のストランド。
【請求項5】
少なくとも1本の請求項4に記載の銀めっきされたストランドを備え、有利には、そのすべてのストランドが請求項4に記載のものである、銀めっきされた導体。
【請求項6】
少なくとも1本の請求項4に記載の銀めっきされたストランドを備え、有利には、そのすべてのストランドが請求項4に記載のものである、電磁シールド層。
【請求項7】
請求項5に記載の銀めっきされた導体を備える電気ワイヤ。
【請求項8】
その絶縁層が、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、および/またはポリイミドを含み、前記絶縁層が、有利には、押出成形によってか、またはテーピングによって生成されることを特徴とする、請求項7に記載の電気ワイヤ。
【請求項9】
少なくとも1本の請求項7または8に記載の電気ワイヤを備え、有利には、そのすべての電気ワイヤが請求項7または8に記載のものである、電気ケーブル。
【請求項10】
そのシールド層が、請求項6に記載のものであることを特徴とする、請求項9に記載の電気ケーブル。
【請求項11】
そのシースが、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、および/またはポリイミドを含み、前記シースが、有利には、押出成形によってか、またはテーピングによって生成されることを特徴とする、請求項9または10に記載の電気ケーブル。
【請求項12】
航空宇宙の分野における、請求項7または8に記載の電気ワイヤの使用。
【請求項13】
航空宇宙の分野における、請求項9~11のいずれか1項に記載の電気ケーブルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀層でコーティングされ、かつ、強化された酸化および腐食への耐性を有する、銅または銅合金の導体を含む電気ワイヤおよびケーブルに関する。特に、これらのワイヤおよびケーブルは、宇宙用途用に用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
ESCC(欧州宇宙標準協会(European Space Components Coordination))規格のN3901(2013年5月)は、宇宙用途用の電気ワイヤおよびケーブルの種類を規定している。
【0003】
これらのワイヤおよびケーブルは、中心コアまたは電磁シールドのいずれかが、以下において、SPC(Silver-plated Copper:銀メッキされた銅)導体と称される、銀層でコーティングされた銅または銅合金の導体から構成されているので、以下では、SPCワイヤおよびSPCケーブルと称される。
【0004】
それらの区分(section)に応じて電気導体を分類するために、AWG(American Wire Gauge:米国ワイヤゲージ)の標準化実施要領が、ASTM B258規格(2002年4月)に制定されている。この規格は、ストランドの数に関して、どのように導体を構成するかについて、明確に規定している。本発明のSPC導体もまた、当該規格に応じている。
【0005】
ASTM B298規格(2017年12月)に応じた、SPC導体が最小1μmの銀でコーティングされる主要な用途とは異なり、ESCC-3901規格はまた、すべてのSPC導体に対して、最小2μmの銀のコーティングの厚さを規定している。この銀厚の2倍の理由は、腐食に対する電気電子システムの保護が極めて重要である宇宙用途の要求に関連する。
【0006】
そのような理由で、ESCC-3901規格は、銀コーティングの品質を保証するために、SPCワイヤおよびケーブルに含まれるSPC導体に対する、以下ではエー・アンド・ビー試験(test A&B)と称されるアントニー・アンド・ブラウン対照試験(test de controle dit Antony & Brown)を課している。ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)の対象であるので、このエー・アンド・ビー試験は、基本的に、所謂、「赤疹」腐食、英語表記では、“red plague"へのSPC導体の耐性のレベルを判定するための腐食試験であり、これは、銅の酸化として解釈され得る。当該規格に詳細に説明されているように、この試験では、絶縁体が除去されたSPC導体の20mmのサンプルが、連続的な酸素流を用いて高酸素雰囲気が行き渡る容器中に配置される。アセンブリは、240時間すなわち丸10日の間、58℃の温度で暴露される。この試験の後に、顕微鏡検査が、20倍の倍率で実行され、サンプルの酸化状態が、以下の表1に説明されるように、6つのレベルを設定するコードに割り振ることによって判定される。
【0007】
【表1】
【0008】
当該規格は、コード4および5のいずれのサンプル、換言すれば、銅または銅合金の酸化による腐食の重度の欠陥を有することを厳しい制裁を課している。
【0009】
エー・アンド・ビー試験の期間を考慮して、実際には、SPC導体の製造中に、対照試験を実行することができるように、時間がより短い多流化と称される別の試験が使用される。ISO 10308規格(2006年1月)の対象である、多硫化試験は、SPC導体を多硫化ナトリウム溶液に30秒間浸漬させ、その後に、それを洗浄および乾燥させることから構成される。双眼顕微鏡による検査(un examen binoculaire)が、その後に、10倍の倍率で実行される。導体上に腐食点が観察されない際には、試験は良好であると見做される(酸化への耐性)。
【0010】
SPCワイヤおよびケーブルの製造は、典型的には、数ステップを伴う。
【0011】
第1のステップは、銅または銅合金素材と称される丸形ワイヤ上に、より頻繁には銀化と称される銀の電解めっき(または電解析出)を行う。処理は、連続的であり、時として、「リール・トゥ・リール」と称される。より正確には、カソードとしての複数本のワイヤ(plusieurs fils)が、純銀のアノードが取り付けられる電解銀めっき浴を通過する。処理中に、発電機は、アノードとカソードとの間に直流電流を送る。この電流は、電解を発生させ、一方では、銀のアノードを溶解させ、同時に、他方では、通過するワイヤに銀のコーティングを析出させることを可能にする。
【0012】
第2のステップは、伸線(引張(trefilage))と称され、これは、機械力によって、冷間で、銀素材ワイヤの直径を縮小させることから構成される。必要に応じて、1セットの5つ~30つのダイスを含む伸線機と称される機械が使用され、これらの直径は、徐々に縮小する。伸線後の銀ワイヤは、SPCストランドと称され、これらは、SPC導電性ストランドか、または(網状または螺旋状である)SPC電磁シールドかのいずれかを作製するために用いられる。
【0013】
第3のステップは、撚線(toronnage)と称され、SPC導体自体の実装である。「撚線機」と称される機械を用い、ASTM B258規格に規定される構成モードのうちの1つに応じて、正確なSPCストランド数がアセンブリされる。
【0014】
第4のステップは、絶縁(isolation)と称され、SPC電気ワイヤを得るために、SPC導体コアの周囲に誘電体の層を配置することから構成される。ここで用いられる誘電体材料は、一般的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、およびポリイミドを基にしており、すべてがESCC3901規格に認定されている。処理は、PTFEおよびETFEについては押出成形(extrusion)によるか、または、テープの形状のPTFEおよびポリイミドについてはテーピングによるかのいずれかで実行される。いくつかの場合には、これらのSPCワイヤは、たとえば、着色など、それらに付加的な機能を与えるために、ポリイミドを基にして、時として、被覆(coating)と称される、薄い仕上げ層でコーティングされる。一般的に、中実な仕上げ層の実装は、必要に応じて、250℃~500℃の炉内での1回または複数回の通過を用いて、ポリイミド液体により実行される。
【0015】
第5のステップは、組立(assemblage)と称され、SPC電気ワイヤのサブセットを得るために、撚線によって、数本(plusieurs:2~4本)の電気ワイヤを捩られた束にする。
【0016】
第6のステップは、編組(tressage)または巻付(guipage)と称され、電気ワイヤのサブセットの周囲にSPCストランドの層を実装することから構成される。この編組層または巻付層は、シールド層と称されることが多く、電磁妨害に対する保護スクリーンを形成する。
【0017】
第7のステップは、外装(シース(gainage))と称され、シールドされたワイヤのサブセットの周囲に保護シースを配置することで、SPCケーブルの製造を完了させることを可能とする。シース材料は、PTFE、ETFE、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、およびポリイミドであり、すべてがESCC3901規格に認定されている。処理は、PTFE、PFA、およびETFEについては押出成形によってか、または、テープの形状のPTFEおよびポリイミドについてはテーピングによってのいずれかで実行される。
【0018】
すべての製造ステップは、以下にように要約され得る。
E1:銅または銅合金の素材ワイヤ上に銀めっきする => 銀めっきされた素材ワイヤ
E2:銀めっきされたワイヤを引張る => SPCストランド
E3:SPCストランドをアセンブリする => SPC導体
E4:SPC導体上に誘電体(ETFE、PTFE、ポリイミド、 ...)をテーピングまたは押出成形する => SPC電気ワイヤ
E5:数本(plusieurs)の電気ワイヤをアセンブリする => サブセット
E6:サブセット上にSPCストランドを編組または巻付する => シールドされたサブセット
E7:シールドされたサブセットを外装する => SPCケーブル
【0019】
熱的および機械的応力を伴うこれらの製造ステップは、特に、これらの製造ステップが摩擦(traction)、捩り、加熱、その他の動作を伴う際には、エー・アンド・ビー試験において、銀コーティングの性能に影響を与え得ることが知られている。これらの処理パラメータ(時間、力、圧力、温度、 ...)の大きさが大きくなると、SPC導体上の銀コーティングの性能の劣化がより進行する。
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、このプロセスのステップE1を修正することによって、換言すれば、直流電流(DC)に代えて、反転を伴うパルス電流(courant pulse avec inversion:PCR)による銀の電解析出を用いることで、これらの劣化を緩和することが可能であることを発見した。実際、一定の電解電流が、発電機によって銀めっき全体を通して送られるDCでの電解析出とは異なり、PCRの元でのそれは、ある所与の周波数での一連のカソードパルスの形状であって、それぞれのカソードパルスの後に、アノードパルスが続く、一連のカソードパルスの形状で、不連続かつ変調された電解電流を用いる。したがって、本発明者らは、PCRの下での電解めっきが、十分に制御され、それによって、正確な条件の下で行われる際には、核生成および電解析出の成長を最善に最適化し、結果として、エー・アンド・ビー試験において、SPC導体の性能を向上させることができることを見出した。したがって、本発明によるプロセスによって、当該SPC導体がエー・アンド・ビー試験において、2μmの析出された銀層の厚さを有する、(その銀層がDC電解析出によって得られる)従来のSPC導体よりも良好な耐性を有することを可能にしつつ、SPC導体上に析出する銀層の厚さをたった1μmにまで減らすことでさえ可能である。実際、本発明者らは、PCRで生成された銀コーティングが、より均一かつより緻密である、より良好な結晶化状態を有することを見出した。
【発明の概要】
【0021】
そのため、本発明は、1.5μm~15μm、有利には、2μm~10μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを製造するためのプロセスに関し、銅または銅合金の素材ワイヤの上に、銀(電解めっき)を電解析出させるステップを含み、当該電解析出が、40g/l~70g/l、具体的には、40g/l~65g/l、より具体的には、45g/l~60g/lのシアン化銀(AgCN)、および、90g/l~150g/l、具体的には、90g/l~140g/l、より具体的には、100g/l~130g/lのシアン化カリウム(KCN)を含む銀めっき浴において、反転を伴うパルス電流(PCR)で行われ、電解条件が、以下のとおりである。
平均電流密度Jmが、1.5A/dm2と15A/dm2との間、有利には、1.78 A/dm2と10A/dm2との間、具体的には、1.78 A/dm2と5A/dm2との間に含まれ、
パルス周波数fが、0.8Hzと1.6Hzとの間、有利には、0.8Hzと1.4 Hzとの間に含まれ、具体的には、1Hzであり、
デューティサイクルQが、50%と80%との間、有利には、55%と65%との間に含まれ、
カソードの電流密度のピークJcが、3A/dm2と11A/dm2との間、有利には、5A/dm2と10A/dm2との間、より具体的には、3A/dm2と8A/dm2との間、有利には、5A/dm2と7A/dm2との間に含まれ、
アノードの電流密度のピークJaが、1A/dm2と5A/dm2との間、有利には、1.28A/dm2と4.2A/dm2との間、より具体的には、1.28A/dm2と3.1A/dm2との間、よりさらに具体的には、1.28A/dm2と2.16A/dm2との間に含まれ、
カソードパルスを維持する時間Tcが、0.2sと0.8sとの間、有利には、0.55sと0.65sとの間に含まれ、かつ、
アノードパルスを維持する時間Taが、0.06sと0.5sとの間、有利には、0.35sと0.45sとの間に含まれる。
【0022】
本発明の趣旨の範囲内において、「...と...との間に含まれる」または「...~...を含む」との用語は、限界値を含む。
【0023】
本発明の趣旨の範囲内において、「銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤ」との用語は、導体において直接的に使用可能でなく、銅または銅合金から作製され、銀層でコーティングされた、任意の円形ワイヤを意味する。特に、素材ワイヤの直径は、0.1mmと1.5mmとの間、具体的には、1mmと0.2mmとの間に含まれる。本発明による素材ワイヤの銅合金は、Cu-Be-Ni合金などの素材ワイヤにおける任意の使用可能な銅合金であり、その成分が、質量%で、たとえば、Be:0.2%~0.6%、Ni:1.4~2.2%、Cu:残部、またはCu-Cr-Zr合金であり、その成分が、質量%で、たとえば、Cr:0.10~1.05%、Zr:0.01~0.105%、Cu:残部であり得る。
【0024】
本発明の趣旨の範囲内において、「反転を伴うパルス電流で銀を電解析出させる」または「PCRで銀を電解析出させる」との用語は、任意の銀の電解析出、または銀の電解めっき、または銀めっきを意味し、ここでは、ある所与の周波数での一連のカソードパルスの形状であって、それぞれのカソードパルスの後に、アノードパルスが続き、休止周期が先行および/または後行するかを問わず、有利には、休止期間を有さない、一連のカソードパルスの形状で、不連続かつ変調された電解電流が用いられる。このPCRモードは、図1(秒単位の時間に応じたA/dm2単位の電流密度J)に模式的に示されており、ここでは、Tは、周期(秒単位)を表し、Tcは、カソードパルスの維持の時間(秒単位)を表し、Taはアノードパルスの維持の時間(秒単位)を表し、Trは、休止時間(秒単位)を表し、Jcは、カソードの電流密度のピーク(A/dm2単位)を表し、Jaは、アノードの電流密度のピーク(A/dm2単位)を表し、Jmは、周期Tに亘る平均電流密度(A/dm2単位)を表している。
【0025】
これらの別個のパラメータ間の関係は、以下の数式に対応する。
【数1】
【0026】
また、(%単位の)デューティサイクルQは、周期Tに対するカソードパルスTcの時間割当の比率として規定され、以下の数式による。
【数2】
Hz単位のパルスの周波数fは、以下の数式による。
【数3】
【0027】
本発明によるプロセスは、結果として、1.5μm~15μm、有利には、2μm~10μmの厚さを有する連続的な銀層によって、素材ワイヤを被覆することを可能にする。
【0028】
有利な実施形態では、プロセスは、連続的なプロセスである。したがって、カソードとして、複数本(plusieurs)の素材ワイヤ、具体的には、少なくとも3本の素材ワイヤ、より優位には、5本の素材ワイヤが、電解銀めっき浴を走行し、ここでは、純銀のアノードが取り付けられている。処理中に、発電機、例えば、Harlor PE86CB-20-10-50S型が、カソードとアノードとの間における、ある所与の周波数での一連のカソードパルスの形状であって、それぞれのカソードパルスの後に、アノードパルスが続く、一連のカソードパルスの形状で、不連続で変調された電流を送る。この電流は、電解を発生させ、一方では、銀のアノードを溶解させ、同時に、他方では、走行する素材ワイヤ上に銀のコーティングを析出させることを可能にする。
【0029】
有利には、電解銀めっき浴は、シアン化銀およびシアン化カリウムを含む水性電解浴である。それは、有利には、10ml/lと50ml/lとの間、具体的には、19ml/lの濃度で、ブライトナー添加剤などの添加剤をも含み得る。電解浴は、高速浴であり、有利には、3A/dm2で処理され得る。
【0030】
ワイヤの走行速度は、4.0m/minであり得る。
【0031】
本発明は、さらに、本発明のプロセスによって取得可能な、1.5μm~15μm、有利には、2μm~10μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤに関する。この銀素材ワイヤを(直流電流で銀を電解析出させることで得られた)従来の銀素材ワイヤと識別することは、斜入射X線回折と組み合わせた透過型電子顕微鏡TEMなどの、非常に高度な分析手段を用いることで可能である。実際、PCRで生成された銀コーティングは、より良好な結晶化状態を有し、より均一で緻密である。素材ワイヤは、具体的には、上述のとおりである。
【0032】
有利には、本発明による、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤは、ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)によるエー・アンド・ビー試験において、何らの欠陥も有していないか、または、あったとしても、軽度な欠陥のみを有しており、具体的には、それは、ECSS-Q-ST-70-20C規格によるエー・アンド・ビー試験において、コード0、1、2、または3、より具体的には、コード0、1、または2、よりさらに具体的には、コード0または1、よりさらに具体的には、コード0を有している。
【0033】
有利には、本発明による、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤは、ISO 10308規格(2006年1月)による多硫化試験において、具体的には、多硫化ナトリウム溶液中でのワイヤの焼入時間(le temps de trempe)が20分に延長された、より厳しい多硫化試験において、何らの欠陥も有していない。
【0034】
有利には、本発明による、銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤは、ワイヤをそれ自体の周囲に5~6回巻付け、その後に、それを10倍の倍率での双眼顕微鏡による観察の下で検査することから構成される密着性試験で、良好な密着性を有している。銀コーティング上にクラックまたは剥離が検出されない場合にのみ、密着性は良好であると見做される。
【0035】
具体的には、本発明による銀素材ワイヤの直径は、0.1mmと1.5mmとの間に含まれる。
【0036】
本発明は、さらに、1μm~1.5μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金のストランドを製造するためのプロセスに関し、本発明による銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを引張るステップを含んでいる。
【0037】
本発明による引張ステップは、本発明による銀素材ワイヤの直径を縮小させることを可能にする。有利には、このステップは、冷間で、有利には、室温で、具体的には、機械力によって、たとえば、必要に応じて、1セットの5つ~30つのダイスを含み得る伸線機と称される機械を用いて、有利には、素材ワイヤの直径を(ストランドの最終直径と素材ワイヤの直径との比で)少なくとも6.6%縮小させることによって実行され、その結果、有利には、0.063mmと0.254mmとの間に含まれる直径を有するストランドを得る。
【0038】
本発明は、さらに、1μm~1.5μm、具体的には、1μm~1.4μm、より具体的には、1.1μm~1.3μmの銀層の厚さを有する、銀めっきされた銅または銅合金のストランドに関する。有利には、本発明による銀めっきされたストランドは、0.063mmと0.254mmとの間、具体的には、0.079mmと0.2mmとの間、より具体的には、0.1mmと0.2mmとの間に含まれる直径を有している。
【0039】
この銀めっきされたストランド(またはSPCストランド)を(その銀層が直流電流で銀を電解析出させることで得られた)従来の銀めっきされたストランドと識別することは、斜入射X線回折と組み合わせた透過型電子顕微鏡TEM(transmission electron microscopy)などの、非常に高度な分析手段を用いることで可能である。実際に、PCRで生成された銀コーティングは、より良好な結晶化状態を有し、より均一で緻密である。
【0040】
有利には、本発明による銀めっきされたストランドは、ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)によるエー・アンド・ビー試験において、何らの欠陥も有していないか、または、あったとしても、軽度な欠陥のみを有しており、具体的には、それは、ECSS-Q-ST-70-20C規格によるエー・アンド・ビー試験において、コード0、1、2、または3、より具体的には、コード0、1、または2、よりさらに具体的には、コード0または1、よりさらに具体的には、コード0を有している。
【0041】
有利には、本発明による、銀めっきされたストランドは、ISO 10308規格(2006年1月)による多硫化試験において、具体的には、多硫化ナトリウム溶液中でのストランドの焼入時間が20分に延長された、より厳しい多硫化試験において、何らの欠陥も有していない。
【0042】
有利には、本発明による銀めっきされたストランドは、ストランドをそれ自体の周囲に5~6回巻付け、その後に、それを10倍の倍率での双眼顕微鏡による観察の下で検査することから構成される密着性試験で、良好な密着性を有している。銀コーティング上にクラックまたは剥離が検出されない場合にのみ、密着性は良好であると見做される。
【0043】
本発明は、さらに、本発明による少なくとも1本の銀めっきされたストランドを備える銀めっきされた導体(またはSPC導体)に関し、有利には、そのすべてのストランドが、本発明によるものである。それは、具体的には、電気導体である。
【0044】
有利には、本発明による導体は、単一のストランドまたは複数本のストランドの導体であり、有利には、複数本のストランドの導体である。
【0045】
特定の実施形態において、導体は、複数本で撚られている。それは、たとえば、7本、19本、27本、37本、45本、および61本の本発明による銀めっきされたストランドと、7本×7本の本発明による銀めっきされたストランドとを含み得る。有利には、本発明による導体は、19本または37本の本発明による銀めっきされたストランドを、よりさらに有利には、19本の本発明による銀めっきされたストランドを、含んでいる。本発明による銀めっきされたストランドの数に応じて、ASTM B258規格(2002年4月)に応じたアセンブリが、たとえば、捩り撚り(tordons)、同心撚り(concentriques 具体的には、19本、61本、または37本の本発明による銀めっきされたストランド)、イクイレイ撚り(Equilay)、準同心撚り(semi-concentriques)、ユニレイ撚り(Unilay 具体的には、19本の本発明による銀めっきされたストランド)、またはロープレイ撚り(Ropelay 具体的には、7本×7本の本発明による銀めっきされたストランド)に用いられ得る。有利には、電気導体は、同心状にアセンブリされた19本の本発明による銀めっきされたストランドを含んでいる。
【0046】
有利には、本発明による導体は、本発明による銀めっきされたストランドを撚る(または、アセンブリする)ことで得られる。
【0047】
有利には、本発明による銀めっきされた導体(または、SPC導体)は、ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)によるエー・アンド・ビー試験において、何らの欠陥も有していないか、または、あったとしても、軽度な欠陥のみを有しており、具体的には、それは、ECSS-Q-ST-70-20C規格によるエー・アンド・ビー試験において、コード0、1、2、または3、より具体的には、コード1または2、よりさらに具体的には、コード1を有している。
【0048】
有利には、本発明による銀めっきされた導体は、ISO 10308規格(2006年1月)による多硫化試験において、具体的には、多硫化ナトリウム溶液中での導体の焼入時間が20分に延長された、より厳しい多硫化試験において、何らの欠陥も有していない。
【0049】
有利には、本発明による銀めっきされた導体は、導体をそれ自体の周囲に5~6回巻付け、その後に、それを10倍の倍率での双眼顕微鏡による観察の下で検査することから構成される密着性試験で、良好な密着性を有している。銀コーティング上にクラックまたは剥離が検出されない場合にのみ、密着性は良好であると見做される。
【0050】
本発明は、加えて、少なくとも1本の本発明による銀めっきされたストランドを備える(網状または螺旋状である)電磁シールド層に関し、有利には、そのすべてのストランドが、本発明によるものであり、具体的には、電気ケーブル用であることが意図されている。
【0051】
有利には、本発明によるシールド層は、本発明による銀めっきされたストランドの螺旋状のアセンブリ(または、巻付)によって得られる。
【0052】
本発明は、加えて、本発明による銀めっきされた導体を備える電気ワイヤ(または、SPC電気ワイヤ)に関する。電気ワイヤは、さらに、絶縁層を備えている。絶縁層を製造するために用いられる絶縁材料は、誘電体材料、換言すれば、それは、電気を伝導しない。誘電体の主要な機能は、所定の時間の周期の間で、かつ、所定の環境において、ケーブルの主要な導体と(アース電位での)導電性要素との間の電気的絶縁性能を維持することである。
【0053】
有利には、絶縁層の材料は、すべて、ESCC3901規格(2013年5月)に認定されている。有利には、本発明による電気ワイヤの絶縁層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、および/またはポリイミド、特に、ポリイミドおよび/またはPTFEを含み、当該層は、有利には、PTFEおよびETFEについては押出成形によるか、または、テープの形状のPTFEおよびポリイミドについてはテーピングによるなど、押出成形またはテーピングによって生成される。PTFEはまた、それに最適化された機械的、熱的、および誘電的な特性を与えるために、たとえば、380℃と475℃の間に含まれる温度の炉内での通過によって、焼結(fritte)され得る。
【0054】
絶縁層は、有利には、テーピングによって得られ、たとえば、1つまたは複数のテープ、特に、
1 たとえば150℃で生成されたポリイミドテープ、または、
2 51%の最小重複部分を有し、たとえば150℃で生成された複数のポリイミドテープ、または、
3 複数のテープであって、具体的には、56μm厚の第1のPTFEテープ、続いて、具体的には、25μm厚の第2のポリイミドテープ、その後に、具体的には、50μm厚の第3のPTFEテープが続き、例えば、すべてが50%の重複部分を有する、複数のテープ
から構成されてもよい。
【0055】
有利には、本発明による電気ワイヤは、さらに、具体的には、たとえば着色などの補完的な機能をワイヤに与えるために、ポリイミドを基にした、絶縁層上の仕上げ層を備えている。一般的に、仕上げ層の実装は、必要に応じて、250℃~500℃の炉内での1回または複数回の通過、特に3回の通過を用いて、ポリイミド液体により実行される。
【0056】
本発明による電気ワイヤは、たとえば、図2、3、および4に図示されている。
【0057】
例として、図2では、SPC26-19x0.102C型の、本発明による導体(1)が、150℃の温度で生成され、51%の最小重複部分を有する、2つの連続的なポリイミドテープ(2,3)によって被覆されており、ここで、26は、AWG26を示し、19x0.102Cは、0.102mmの直径を有する、19本の本発明による同心状のSPCストランドの構造を示している。仕上げのポリイミド層(4,5,6)は、ポリイミド系液体において、テーピングされたワイヤを3回通過させ、その後に、250℃で炉に入れることで加えられる。こうして生成されたワイヤは、平均で、0.80mmの直径、および、2.00g/mの線形質量(masse lineaire:線密度)を有している。
【0058】
図3では、SPC22-19x0.160C型の、本発明による導体(1)が、150℃の温度で生成されたポリイミドテープ(2)で被覆されており、ここで、22は、AWG22を示し、19x0.160Cは、0.160mmの直径を有する、19本の本発明による同心状のSPCストランドの構造を示している。仕上げポリイミド層(3,4,5)は、ポリイミド系液体において、テーピングされたワイヤを3回通過させ、その後に、250℃で炉に入れることで加えられる。こうして生成されたワイヤは、平均で、1mmの直径、および、4.15g/mの線形質量を有している。
【0059】
図4では、SPC22-19x0.160C型の、本発明による導体(1)が、3つのテープ(2,3,4)、すなわち、56μm厚のPTFEの第1のテープ(2)、続いて、25μm厚の第2のポリイミドテープ(3)、その後に、50μm厚の第3のPTFEテープ(4)によって連続的に被覆され、すべてが、50%の重複部分を有し、ここで、22は、AWG22を示し、19x0.160Cは、0.160mmの直径を有する、19本の本発明による同心状のSPCストランドの構造を示している。実際には、PTFEを適切に焼結(fritter)させるために、2つの別個のテーピング処理が実行され、それぞれに、475℃の炉内での通過が続く。こうして生成されたワイヤは、平均で、1.21mmの直径、および、5.45g/mの線形質量を有している。
【0060】
有利には、本発明による電気ワイヤ(または、SPC電気ワイヤ)の導体は、ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)によるエー・アンド・ビー試験において、何らの欠陥も有していないか、または、あったとしても、軽度な欠陥のみを有しており、具体的には、それは、ECSS-Q-ST-70-20C規格によるエー・アンド・ビー試験において、コード0、1、2、または3、より具体的には、コード1または2、よりさらに具体的には、コード1を有している。
【0061】
有利には、本発明による電気ワイヤの導体は、ISO 10308規格(2006年1月)による多硫化試験において、具体的には、多硫化ナトリウム溶液中での、絶縁体が剥離された導体の焼入時間が20分に延長された、より厳しい多硫化試験において、何らの欠陥も有していない。
【0062】
本発明による電気ワイヤは、0.4mmと3.0mmとの間に含まれる直径、有利には、0.5mmと1.5mmとの間に含まれる直径を有し得る。
【0063】
本発明による電気ワイヤは、結果として、有利には、本発明による銀めっきされた導体上に誘電体をテーピングまたは押出成形し、続いて、任意で、仕上げ層を加えることで得られる。
【0064】
例として、本発明による電気ワイヤを製造するためのプロセスは、以下の連続的なステップを含んでいてもよい。
a- 銅または銅合金の素材ワイヤの上に、銀を電解析出させることであって、電解析出が、40g/l~70g/lのシアン化銀、および90g/l~150g/lのシアン化カリウムを含む銀めっき浴において、反転を伴うパルス電流で行われ、電解条件は、上述の通りである、銀を電解析出させることと、
b- ステップa)で得られた銀めっきされた銅または銅合金を引張ることと、
c- ステップb)で得られた銀めっきされたストランドを撚る(または、アセンブリする)ことと、
d- ステップc)で得られた導体の上に、誘電体をテーピングまたは押出成形し、続いて、任意で、仕上げ層を加えること。
【0065】
本発明は、さらに、少なくとも1本の本発明による電気ワイヤを備える電気ケーブル(または、SPC電気ケーブル)に関し、有利には、そのすべての電気ワイヤが、本発明によるものである。
【0066】
具体的には、本発明による電気ケーブルは、シールド層、具体的には、金属シールド層、およびシースを備える。
【0067】
シールド層は、電磁干渉により生じる問題に対処するのに役立つ。広範で様々なシールド層の設計および構成が存在する。この層は、具体的には、編まれるか、複数のシートの形状か、複数のシートと網組との組合せの形状か、または螺旋状の形状で巻かれる(Cette couche peut en particulier etre tressee, enroulee sous forme de feuilles, une combinaison de feuilles et de tressage ou sous forme helicoidale)。
【0068】
有利には、本発明による電気ケーブルのシールド層は、本発明によるシールドストランドのアセンブリによって、具体的には、螺旋状または編組状の形状で構成されている。それは、有利には、結果として、本発明によるシールド層である。
【0069】
有利には、シースは、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、および/またはポリイミド、具体的には、ペルフルオロアルコキシ、ポリイミド、および/またはPTFEを含み、当該シースは、有利には、ペルフルオロアルコキシ、PTFE、およびETFEについては押出成形によるか、または、テープ形状のPTFEおよびポリイミドについてはテーピングによるなど、押出成形またはテーピングによって生成される。PTFEは、それに最適化された機械的、熱的、および誘電的な特性を与えるために、たとえば、380℃と475℃の間に含まれる温度の炉内での通過によって、焼結(fritte)され得る。シースは、有利には、テーピングによって得られ、たとえば、1つまたは複数のテープ、具体的には、第1のポリイミドテープ、その後に、第2のPTFEテープが続くなどの、2つのテープから構成することができ、たとえば、すべてが25%の重複部分を有している。それはまた、有利には、PFAの押出成形によって得られ得る。
【0070】
本発明による電気ケーブルは、たとえば、図5および6に図示されている。
【0071】
例として、図5では、本発明による4本の電気ワイヤのそれぞれが、SPC22-19x0.160C型の本発明による導体(1)およびポリイミドテープ(2,3)から構成されている。本発明による4本の電気ワイヤのサブセットは、SPC36-01x0.127型の本発明による銀めっきされたストランドの螺旋状のシールド層(5)、次に、25%の重複部分を有するポリイミドテープ(6)と、同様に25%の重複部分を有するPTFEテープ(7)とによって被覆され、PTFEテープを焼結(fritter)させるために、380℃の炉内での通過が続く。こうして製造されたケーブルは、平均で、3.10mmの直径、および、26.0g/mの線形質量を有している。
【0072】
例として、図6では、本発明による2本の電気ワイヤのそれぞれが、3つのテープ、すなわち、56μm厚の第1のPTFEテープ、続いて、25μm厚の第2のポリイミドテープ、その後に、50μm厚の第3のPTFEテープが続き、すべてが50%の重複部分を有する、3つのテープによって連続的に絶縁されたSPC22-19x0.160C型の本発明による導体から構成されている。本発明による2本の電気ワイヤのサブセット(1)は、SPC40-01x0.079型の本発明による銀めっきされたストランドを編むことで得られた電磁シールド層(2)によって被覆され、続いて、押出成形によって得られたPFAシース(3)によって被覆されている。こうして製造されたケーブルは、平均で、3.27mmの直径、および、21.1g/mの線形質量を有している。
【0073】
有利には、本発明による電気ケーブル(または、SPC電気ケーブル)の導体は、ECSS-Q-ST-70-20C規格(2008年7月)によるエー・アンド・ビー試験において、何らの欠陥も有していないか、または、あったとしても、軽度な欠陥のみを有しており、具体的には、それは、ECSS-Q-ST-70-20C規格によるエー・アンド・ビー試験において、コード0、1、2、または3、より具体的には、コード2または3を有している。
【0074】
有利には、本発明による電気ケーブルの導体は、ISO 10308規格(2006年1月)による多硫化試験において、具体的には、多硫化ナトリウム溶液中での、絶縁体が剥離された導体の焼入時間が20分に延長された、より厳しい多硫化試験において、何らの欠陥も有していない。
【0075】
本発明による電気ケーブルは、1.00mmと10.0mmとの間、有利には、2.0mmと5.0mmとの間、より有利には、0.5mmと4mmとの間、具体的には、0.5mmと1.5mmとの間に含まれる直径を有し得る。
【0076】
本発明による電気ケーブル(または、SPC電気ケーブル)は、結果として、有利には、以下の連続的なステップを含むプロセスによって得られる。
サブセット得るために、本発明による複数本(plusieurs)の電気ワイヤをアセンブリすることと、
シールドされたサブセット(具体的には、サブセットの上のシールド層)を得るために、サブセットの上に、本発明による銀めっきされたストランドをアセンブリすることと、
シールドされたサブセットを外装すること。
【0077】
例として、本発明による電気ケーブルを製造するためのプロセスは、以下の連続的なステップを含んでいてもよい。
a- 銅または銅合金の素材ワイヤの上に、銀を電解析出させることであって、電解析出が、40g/l~70g/lのシアン化銀、および90g/l~150g/lのシアン化カリウムを含む銀めっき浴において、反転を伴うパルス電流で行われ、電解条件は、上述の通りである、銀を電解析出させることと、
b- ステップa)で得られた銀めっきされた銅または銅合金の素材ワイヤを引張ることと、
c- ステップb)で得られた銀めっきされたストランドを撚る(または、アセンブリする)ことと、
d- ステップc)で得られた導体の上に、誘電体をテーピングまたは押出成形し、続いて、任意で、仕上げ層を加えることと、
e- ステップd)で得られた複数本(plusieurs)の電気ワイヤをアセンブリすることと、
f- ステップe)で得られたサブセットの上に、ステップb)で得られた銀めっきされたストランドをアセンブリすることと、
g- ステップf)で得られたシールドされたサブセットを外装すること。
【0078】
最後に、本発明は、航空宇宙の分野における、本発明による電気ワイヤ、または、本発明による電気ケーブルの使用に関する。
【0079】
本発明は、非限定的な指標として与えられる、以下の図面および実施例の説明を読解すると、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、本発明によるPCRモード(PCRでの電解めっき)を模式的に示している。
図2図2は、SPC26-19x0.102C型の本発明による導体(1)、2つのポリイミドテープ(2,3)、および仕上げ層(4,5,6)を備える、ESCC3901-001-24規格(2013年5月)に応じた、本発明による電気ワイヤの構造図の一例である。
図3図3は、SPC22-19x0.160C型の本発明による導体(1)、ポリイミドテープ(2)、および仕上げ層(3,4,5)を備える、ESCC3901-001-24規格(2013年5月)に応じた、本発明による電気ワイヤの構造図の一例である。
図4図4は、SPC22-19x0.16C型の本発明による導体(1)、2つのPTFEテープ(2,4)、およびポリイミドテープ(3)を備える、ESCC3901-018-06規格(2013年5月)に応じた、本発明による電気ワイヤの構造図の一例である。
図5図5は、本発明による4本の電気ワイヤのサブセットを備える、ESCC3901-002-70規格(2013年5月)に応じた、本発明による電気ケーブルの構造図の一例である。本発明による4本の電気ワイヤのそれぞれは、SPC22-19x0.160C型の本発明による導体(1)およびポリイミドテープ(2,3)から構成され、サブセットは、SPC36-01x0.127型の本発明による銀めっきされたストランドの螺旋状のシールド層(5)によって被覆され、続いて、ポリイミドテープ(6)およびPTFEテープ(7)で被覆されている。
図6図6は、本発明による2本の電気ワイヤのサブセット(1)を備える、ESCC3901-018-53規格(2013年5月)に応じた、本発明による電気ケーブルの構造図の一例である。本発明による2本の電気ワイヤのそれぞれは、3つのテープ、すなわち、56μm厚の第1のPTFEテープ、これに続く25μm厚の第2のポリイミドテープ、その後の50μm厚の第3のPTFEテープから構成され、すべてが50%の重複部分を有する、3つのテープによって連続的に絶縁された、SPC22-19x0.160C型の本発明による導体から構成され、サブセットは、SPC40-01x0.079型の本発明による銀めっきされたストランドを編むことで得られた電磁シールド層(2)によって被覆され、続いて、押出成形によって得られたPFAシース(3)によって被覆されている。
【発明を実施するための形態】
【0081】
実施例
実施例1および2:本発明によるSPC導体
PCRでの銀めっきは、その成分が、100g/lのシアン化カリウムKCN、45g/lのシアン化銀AgCN、および10ml/l~30ml/lのブライトナー添加剤である水性電解浴において、広範な処理パラメータの範囲において、電気パルスを変調することが可能なHarlor PE86CB-20-10-50S発電機を用いて実行された。1.2mmの直径を有する銅ワイヤが、試験において、基材として使用されている(素材ワイヤ)。
【0082】
ISO 10308規格のものより厳しい多硫化試験が、得られたSPC導体に対して実施された。その表面が金属層でコーティングされた導体が、多硫化ナトリウム溶液において、20分間浸漬され、その後に、それは、洗浄および乾燥された。双眼顕微鏡による検査が、その後に、10倍の倍率で実行されている。導体上に腐食点が観察されない際には、試験はOKであると見做される。
【0083】
評価基準としての密着性試験もまた、得られた銀素材ワイヤに対して実施された。当該試験は、銀めっきされた銅ワイヤをそれ自体の周囲に5~6回巻付け、その後に、それを10倍の倍率での双眼顕微鏡による観察の下で検査することから構成されている。コーティング上にクラックまたは剥離が検出されない場合にのみ、密着性は良好であると見做される。
【0084】
ESCC3901規格によるエー・アンド・ビー試験において得られたSPC導体の性能もまた評価された。
【0085】
光学検査もまた実行されている。例として、50倍の倍率での双眼顕微鏡(Motic SMZ-171)の下で、導体の外観が観察されている。輝度、均一性、粗大粒の非存在。この場合、OKと表示される。
【0086】
得られたSPC導体上の銀の厚さは、Fischerscope(登録商標)のXULM(登録商標)型の装置において、X線蛍光プロセスによって測定されている。
【0087】
電解析出条件および試験結果が、以下の表2に纏められている。
【0088】
【表2】
【0089】
ここで得られた結果は、銀めっき浴および上述されるようなPCRパラメータの範囲については、多硫化試験およびエー・アンド・ビー試験において、比較的に満足な銀析出性能が得られていると評価することができる。
【0090】
実施例3および4:高速銀めっき浴を用いた本発明によるSPC導体
先の2つの実施例の研究に基づいて、かつ、工業的規模における銀めっきプロセスに採用するために、その成分が、130g/lのシアン化カリウムKCN、60g/lのシアン化銀AgCN、および少量の添加剤(10ml/l~30ml/lのブライトナー添加剤)である、高速銀めっき浴と称される銀めっき浴において、1.78A/dm2の平均密度Jmを使用して、銀めっき試験が、PCRで実行された。
【0091】
先の実施例におけるものと同じ試験が、同じ条件下で実行され、実施された。電解析出条件および試験結果が、以下の表3に纏められている。
【0092】
【表3】
【0093】
結果は、より速い銀めっき浴におけるPCRでの銀めっきの実現可能性を明確に裏付けている。
【0094】
実施例5:本発明による電気ワイヤ
リール・トゥ・リール型の銀めっきラインを用いて、工業的規模におけるPCRでの銀めっき試験が実施された。このケースにおいて、上記実施例3および4のものと同様の高速銀めっき浴において、以下の表4で与えられるPCRにおける処理パラメータによって、0.254mmの直径を有する5本の銅ワイヤが、同時に銀メッキされている。
【0095】
【表4】
【0096】
ここでの実際の銀めっき条件は、上記実施例3および4の実験室でのものと完全には一致しないことに留意すべきである。というのは、工業的設備として用いられた銀めっきラインは、多くの利点を有し、具体的には、より大きな電解密度を許容し、かつ、一般的に、より均一なコーティングをもたらすためである。
【0097】
これらの銀めっきされた銅ワイヤは、その後に、SPC22-19x0.16C導体を作製するために用いられる。より具体的には、それらは、まず、本発明によるステップb)の引張り(7つの引張りダイスを用いた、0.254mmから0.16mmまでの引張りであり、換言すれば、63%の縮小率)によって、直径が縮小され、その後に、本発明によるステップc)の撚りによって、アセンブリされている(AWG22の0.16mmの19本の同心状のストランド)。各ステップで、密着性試験、外観検査、および多硫化試験が、最終的な結果を伴って実行されている。
【0098】
この導体から、ESCC3901-018-06規格(2013年5月)によるSPC電気ワイヤが製造され、その構造が、以下の図4に概略的に示されている。
【0099】
ESCC3901-018-06規格によれば、導体は、3つのテープ、すなわち、56μm厚の第1のPTFEテープ、続いて、25μm厚の第2のポリイミドテープ、その後に、50μm厚の第3のPTFEテープが続き、すべてが50%の重複部分を有する、3つのテープによって連続的に絶縁されなければならない。実際には、PTFEを適切に焼結(fritter)させるために、2つの別個のテーピング処理(第1のPTFEテープについてのテーピングI、および、ポリイミドテープに引き続き第2のPTFEテープについてのテーピングII)が実行され、それぞれに続いて、475℃の炉内での通過が実行されている。PTFEの焼結(frittage)が、ここでは、重要であり、当該規格に従う電気ワイヤについての最適化された機械的、熱的、および誘電体的な特性をPTFEに与えることが可能である。
【0100】
前述したように、熱衝撃は、一般的に、SPC電気ワイヤのエー・アンド・ビー試験において、性能を劣化させる主要因であると考えられている。ESCC3901-018-06ワイヤの選択は、このワイヤの製造が、焼結(frittage)の最高温度のうちの1つを伴い、ESCC3901規格のすべてのSPC電気ワイヤの中で最も重要であるため、PCRでの銀めっきによってもたらされ得る改善を評価するために、適切であると思われる。
【0101】
SPC22-19x0.160C導体およびESCC3901-018-06ワイヤについての一組の製造データが、各製造ステップで測定される銀の厚さおよびエー・アンド・ビー試験コードとともに、以下の表5で与えられている。得られた電気ワイヤは、1.21mmの直径、および、5.45g/mの線形質量を有している。
【0102】
【表5】
【0103】
その銀メッキがPCRで作製されるSPC導体から作製される、この本発明による電気ワイヤについて、エー・アンド・ビー試験で得られた結果は、特に良好であるのに対して、銀の厚さは、従来のDCで作製されるワイヤのもののたったの半分である。
【0104】
実施例6:本発明による電気ケーブル
この実施例では、最も精巧な電気ケーブルのうちの1つが選択され、電磁干渉に対するより良好な保護を可能にしている。それは、関係する製造工程の数を考慮すると、エー・アンド・ビー試験に対して、最も厳しいケースでもある。
【0105】
実際、電気ケーブルは、ここでは、以下の比較例4に示されるように、1本または複数本の捩られた電気ワイヤを備え、その後に、電磁シールドの層で被覆され、その後にさらに、絶縁シースで被覆された伝送線を意味する。当該シールド層は、多数のSPCストランドを撚ることで作製され、当該シースは、PFA(ペルフルオロアルコキシ)の押出成形によって作製される。より具体的には、ケーブルは、ESCC3901-018-53規格(2013年5月)に応じて作製され、以下の製造ステップが実行される。
【0106】
A.素材ワイヤ上への銀めっき
まず、直径が0.254mmのSPCワイヤが、TS4と称される、実施例5において用いられたものとは異なる銀めっきライン上で生成され、その銀めっき浴は、実施例3および4のものの成分を有している。生成は、以下の表6に示されるPCRでの銀めっき条件の下で、4.0m/minの走行速度で実行されている。
【0107】
【表6】
【0108】
ワイヤ上の銀層の厚さは、平均で、3.66μmである。
【0109】
B.銀ワイヤの引張り
得られたSPCワイヤは、0.254mmの直径から0.079mmの直径にまで変形する引張り、換言すれば、31%の縮小率で縮小され、銀の厚さは、平均で1.14μmにまで縮小される。こうして得られたSPCストランドは、電磁シールドを構成するように意図されている。
【0110】
C.2本の電気ワイヤのアセンブリ
ESCC3901-018-06規格(2013年5月)に対応する実施例5において生成された2本の電気ワイヤは、ESCC3901-018-15規格(2013年5月)に対応する対を形成するように、それらを捩ることでアセンブリされる。
【0111】
D.網組によるシールド
形成された対は、その後、網組による電磁シールドを受ける。
【0112】
E.シールドされた対の押出成形による外装
PFA外装が、シールドされた対の上への押出成形によって実行され、SPC電気ケーブルが、図6に模式的に示されるように、ESCC3901-018-53規格(2013年5月)に応じて得られる。
【0113】
エー・アンド・ビー試験が、電気ワイヤの中心導体上および電気ケーブルの網組されたシールド上への両方の処理の各ステップで実行されている。得られた結果が、以下の表7および8に纏められている。
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
この実施例は、ESCC3901規格による最も精巧な電気ケーブルのうちの1つであり、このケースでは、特に、本発明によるPCR銀めっき技術を用いて、本明細書で説明されるプロセスによって製造されたESCC3901-018-53が、最小銀厚として、2.0μmに代えて、1.0μmを有することで、特に、エー・アンド・ビー試験において、ESCC3901規格の技術的要求を満たすことを明確に表している。
【0117】
比較例1:その銀めっきが直流電流(DC)で実行され、銀の厚さ<2μmを有する電気ワイヤ
通常、宇宙ケーブル配線に用いられる、ESCC3901-001-24規格により作製された電気ワイヤが、比較の基準として選択されている。対応するSPC導体は、そのため、SPC26-19x0.102C型のものであり、ここで、26は、AWG26を示し、19x0.102Cは、0.102mmの直径を有する19本の同心状のSPCストランドの構造を示しており、各ストランドは、1.35μmの平均厚さの銀でコーティングされており、当該平均厚さは、Fischerscope(登録商標)のXULM(登録商標)型の装置において、X線蛍光プロセスによって測定されている。
【0118】
DCでの銀めっきは、その成分が、100g/lのシアン化カリウムKCN、10ml/l~30ml/lのブライトナー添加剤、および45g/lのシアン化銀AgCNである水性電解浴において、1A/dm2の電解電流密度の下で実行された。
【0119】
そのような導体は、製造ステップE4によるテーピングによって、ESCC3901-001-24規格によるSPC電気ワイヤを生成するために用いられる。
【0120】
より具体的には、ここでの製造ステップE4は、2つのサブステップを含んでいる。第1は、150℃の温度で実行され、51%の最小重複部分を有する、2つの連続するポリイミドテープのテーピングである。第2は、ポリイミド系液体において、テーピングされたワイヤを3回通過させ、その後に、250℃で炉に入れることで、ポリイミド仕上げ層を付着させることから構成されている。こうして生成されたワイヤは、平均で、0.80mmの直径、および、2.00g/mの線形質量を有している。
【0121】
SPCワイヤの構造が、図2に模式的に示され得る。SPC導体およびSPC電気ワイヤは、ステップE3(撚線)およびステップE4(テーピング)の最後に、それぞれ、エー・アンド・ビー試験で試験されており、以下の表9に示されるように、結果として、1および4のコードをそれぞれ受けている。
【0122】
【表9】
【0123】
得られたSPC導体は、エー・アンド・ビー試験において、良好な性能を有しているが、SPC電気ワイヤは、ESCC3901規格によって許容可能であるとは見做され得ないと結論付けることができる。エー・アンド・ビー試験への耐性の劣化は、テーピング処理に由来する機械的応力と、炉内での連続的な通過による熱応力との組合せを伴う製造ステップE4に確実に関連している。
【0124】
比較例2~4:その銀めっきが、直流電流(DC)で実行され、2μmの銀の最小厚さを有する電気ワイヤおよびケーブル
SPC22-19x0.160導体およびSPC36-01x0.127ストランドは、比較例1のものと同じDCでの銀めっきを用いて製造されているが、ESCC3901規格による2μmの最小厚さを有する銀コーティングを有している。DCでの銀めっきは、銀厚の測定と同じく、比較例1のものと同じ条件の下で実行されている。SPC22-19x0.160C導体、すなわち、AWG22であり、かつ、直径が0.16mmの19本のSPCストランドから作製される、SPC22-19x0.160C導体は、ESCC3901-001-26規格(比較例2)に応じた電気ワイヤ、ESCC3901-002-58規格(比較例3)に応じた電気ワイヤ、およびESCC3901-002-70規格(比較例4)のケーブルを作製するために用いられ、一方、AWG36であり、かつ、直径が0.127mmのSPC36-01x0.127ストランドは、以下のESCC3901-002-70ケーブル用の螺旋状のシールドを形成することが可能である。
【0125】
図2に図示されるようなESCC3901-001-26ワイヤ(比較例2)の生成は、ポリイミドテープをテーピングし、続いて、ポリイミド仕上げ層の付着によって得られる。こうして製造されたSPC電気ワイヤは、平均で、1.10mmの直径、および、4.20g/mの線形質量を有している。
【0126】
図3に図示されるようなESCC3901-002-58のSPC電気ワイヤ(比較例3)の生成は、150℃で単一のポリイミドテープをテーピングし、続いて、ポリイミド仕上げ層の付着、その後に、2回または3回の250℃の炉内での通過によって得られる。こうして得られたワイヤは、平均で、1.00mmの直径、および、4.15g/mの線形質量を有している。
【0127】
図5に図示されるようなESCC3901-002-70のSPC電気ケーブル(比較例4)の生成は、3つの処理を含んでいる。第1は、4本のESCC9301-002-58電気ワイヤのサブセットを撚ることで形成することから構成され、第2は、SPC36-01x0.127ストランドの螺旋状シールド層でサブセットを被覆することから構成され、第3は、シールドされたサブセットの上に、25%の重複部分を有するポリイミドテープと、同様に25%の重複部分を有する別のPTFEテープとをテーピングし、続いて、PTFEテープを焼結(fritter)させるために、380℃の炉内に通過させることから構成される。こうして製造されたケーブルは、平均で、3.10mmの直径、および、26.0g/mの線形質量を有している。
【0128】
エー・アンド・ビー試験が、その後に、比較例2のワイヤの導体に対しては、撚線の最後およびテーピングの最後に、比較例3のワイヤの導体に対しては、伸線、撚線、およびテーピングの最後に、比較例4のケーブルに対しては、伸線E2の最後および外装E7の最後に実行されている。試験コードが、導体の銀厚と同じく、以下の表10に纏められている。
【0129】
【表10】
【0130】
実際、2μmよりも大きい銀の厚さによって、導体の製造の最後と、電気ワイヤの製造の最後との両方で、エー・アンド・ビー試験への耐性を向上させることが可能であることが分かり得る。
【0131】
結果はまた、SPC36-01x0.127ストランド上の2μmを超える銀の厚さにもかかわらず、一度、巻付が行われると、エー・アンド・ビー試験への耐性は、大幅に劣化することを示しているように思われる。換言すれば、巻付、テーピング、および焼結(frittage)の処理は、銀コーティングのエー・アンド・ビー試験の耐性に強い影響を有し、したがって、ESCC3901規格によって課される2μmの最小銀厚を正当化している。
【0132】
比較例5~11:その銀めっきがPCRで作製されるが、別個の電解条件による導体
導体が、電解条件を除いて、実施例1および2のものと同じ条件の下で製造され、以下の表8に纏められている。
【0133】
実施例1および2に示されるものと同じ試験が、得られた銀めっきされた導体に対して実行され、結果が、以下の表11に示されている。
【0134】
【表11】
【0135】
得られた結果は、規格に準拠する銀めっきされた導体を得るためには、電解条件が重要であることを実証している。
【0136】
比較例12~13:その銀めっきが高速銀めっき浴によるPCRで作製されるが、別個の電解条件による導体
導体が、電解条件を除いて、実施例3および4のものと同じ条件の下で製造され、以下の表9に纏められている。
【0137】
実施例3および4に示されるものと同じ試験が、得られた銀めっきされた導体に対して実行され、結果が、以下の表12に示されている。
【0138】
【表12】
【0139】
得られた結果は、規格に準拠する銀めっきされた導体を得るためには、電解条件が重要であることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】