(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】FLASH放射線療法システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61N5/10 N
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562988
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022024623
(87)【国際公開番号】W WO2022221412
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523387150
【氏名又は名称】ザ ニューヨーク プロトン センター
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ショウイ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジェイ イザベル
(72)【発明者】
【氏名】リン、ハイボ
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ、チャールズ ビー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG42
4C082AN02
(57)【要約】
電離放射線の照射野を標的組織に供給する方法であって、電離放射線を供給するステップと、電離放射線のブラッグピークが標的組織と一致するように、調整可能なレンジシフタに電離放射線を通すことにより、電離放射線の飛程をシフトさせ、電離放射線のブラッグピークが標的組織と一致するように、調整可能なレンジコンペンセータに電離放射線を通すことにより、電離放射線の飛程を補償する、ことによって、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を形成するステップと、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を標的組織に指向させて、標的体積にわたって均一な線量分布を提供するステップと、を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線の照射野を標的組織に供給する方法であって、
電離放射線を供給するステップと、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジシフタに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の飛程をシフトさせ、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジコンペンセータに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の前記飛程を補償する、
ことによって、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を形成するステップと、
前記シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を前記標的組織に指向させて、標的体積にわたって均一な線量分布を提供するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で指向される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記標的部位の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子を含む、
請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的部位は、癌組織を含む、
請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記逆方向治療計画最適化は、前記電離放射線の前記分布パラメータを決定する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記逆方向治療計画最適化は、前記電離放射線の前記重み付けパラメータを決定する、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の3つの照射野を含む、
請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の4つの照射野を含む、
請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の5つの照射野を含む、
請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を標的組織に投与するシステムであって、
荷電粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記荷電粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織と一致するように前記荷電粒子線の飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、
前記電離放射線の前記ブラッグピークが前記標的組織の前記輪郭と一致するように前記荷電粒子線の前記飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【請求項15】
前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも2つの照射野は、前記標的組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
前記標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む、
請求項14から16の何れか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
請求項14から17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
請求項14から18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、3つの照射野を含む、
請求項14から19の何れか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、4つの照射野を含む、
請求項14から29の何れか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、5つの照射野を含む、
請求項14から21の何れか一項に記載のシステム。
【請求項23】
少なくとも2つのシフトされ補償された粒子線の照射野を、少なくとも40Gy/sの線量率で生成するシステムであって、
粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記粒子線の飛程を調整可能にシフトさせるように構成されたユニバーサルレンジシフタと、
前記粒子線の前記飛程を調整可能に補償するように構成されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【請求項24】
前記粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
標的組織を治療する方法であって、
標的組織を診断するステップと、
前記標的組織をマッピングするステップと、
有効量のシフトされ補償された電離放射線を前記標的組織に投与するための放射線療法治療計画を策定するステップと、
粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織と一致するように前記陽子線/粒子線の前記飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、
前記粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織の前記輪郭と一致するように前記粒子線の前記飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、
を備えるシステムを用いて電離放射線をシフトさせ補償するステップと、
前記粒子線を前記標的組織に投与するステップと、
を含む、
方法。
【請求項26】
前記粒子線は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記粒子線は、前記新生物又は良性腫瘍の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタプレートの配置は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて計算されたパラメータを適用することによって決定され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
請求項25から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記レンジコンペンセータの前記形状は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
請求項25から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、3つの照射野を含む、
請求項25から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、4つの照射野を含む、
請求項25から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、5つの照射野を含む、
請求項25から32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項25から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
陽子線治療装置を調整する方法であって、
FLASH-RTを標的部位に適用するように設計された治療計画を受信するステップであって、前記治療計画は、標的部位と、3次元標的形状と、治療照射野の数と、少なくとも40Gy/sの目標線量率と、を含むステップと、
レンジシフタとレンジコンペンセータとを用いて前記陽子線治療装置の前記エネルギー又は飛程を変更するステップであって、前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備える、ステップと、
を含み、
前記変更するステップは、逆方向治療計画プロトコルを使用して、前記陽子線治療装置の前記エネルギー出力の前記ブラッグピークが標的組織と一致するようにレンジシフタ及びレンジコンペンセータのパラメータを決定することを含み、前記パラメータは、前記陽子線治療装置の前記エネルギー又は飛程が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
方法。
【請求項36】
前記陽子線治療装置の前記エネルギー出力は、前記癌組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備え、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
ユニバーサルレンジシフタ。
【請求項38】
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項37に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項39】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項38に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項40】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WET(水等価厚)で1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項37に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項41】
ユニバーサルレンジシフタを備え、前記ユニバーサルレンジシフタは、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えると共に、電離放射線の前記飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
放射線療法治療装置。
【請求項42】
前記電離放射線は、陽子又はその他のイオンを含む、
請求項41に記載の放射線療法治療装置。
【請求項43】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項42に記載の放射線療法治療装置。
【請求項44】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項43に記載の放射線療法治療装置。
【請求項45】
電離放射線の飛程を、1cmから34cmの間で、1cm刻みで短くする方法であって、前記電離放射線を、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えるユニバーサルレンジシフタに通すステップを含む、
方法。
【請求項46】
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
癌組織を治療する方法であって、
少なくとも40Gy/sの線量率を有する電離放射線透過ビームを供給するステップと、
前記ビームの前記ブラッグピークが、3mmから5mmの間で、前記癌組織の端から離れた点と一致するように前記電離放射線透過ビームのエネルギー又は飛程を調整するステップと、
前記電離放射線透過ビームを前記癌組織に照射するステップと、
を含む、
方法。
【請求項50】
前記電離放射線透過ビームは、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、放射線療法を提供するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、癌の治癒治療と緩和治療との両方にとって重要な治療法である。しかし、放射線療法は、放射線誘発毒性によって制限されている。前臨床試験によって、現在臨床で使用されている線量率をはるかに超える線量率での照射が、同等の腫瘍反応を維持しつつ放射線誘発毒性を軽減することが示されている。これは、FLASH効果として知られている。FLASH放射線療法(FLASH-RT(FLASH radiotherapy))後の組織毒性の減少をもたらすメカニズムは未だ不明であり、高線量率を急速な酸素減少、免疫反応、ペルオキシルラジカル寿命の短縮、正常組織幹細胞の保存などに結びつけることによって、複数の仮説が提案されている。
【0003】
近年、陽子線療法を用いてFLASH-RTトランスレーショナルリサーチを行うことに対する関心が高まっている。透過/シュートスルービームが、FLASH陽子線治療計画について提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の実施形態では、電離放射線の照射野を標的組織に供給する方法が提供され、この方法は、電離放射線を供給するステップと、電離放射線のブラッグピークが標的組織と一致するように、調整可能なレンジシフタに電離放射線を通すことにより、電離放射線の飛程をシフトさせ、電離放射線のブラッグピークが標的組織と一致するように、調整可能なレンジコンペンセータに電離放射線を通すことにより、電離放射線の飛程を補償する、ことによって、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を形成するステップと、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を標的組織に指向させて、標的体積にわたって均一な線量分布を提供するステップと、を含む。
【0005】
第1の実施形態は、少なくとも40Gy/sの線量率での投与を含み得る。第1の実施形態は、標的部位の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、シフトされ補償された電離放射線の投与を含み得る。この実施形態は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンから構成された、補償された電離放射線を含み得る。この実施形態は、陽子から構成された、補償された電離放射線を含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、標的部位は、癌組織である。いくつかの実施形態において、レンジシフタは、電離放射線の飛程を短くする複数のプレートを含み、レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、パラメータは、電離放射線が透過するプレートの数及び位置を含む。いくつかの実施形態では、レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される。いくつかの実施形態において、逆方向治療計画最適化は、電離放射線の分布パラメータを決定し、及び/又は、電離放射線の重み付けパラメータを決定する。いくつかの実施形態において、シフトされ補償された電離放射線は、シフトされ補償された電離放射線の3つ、4つ、又は5つの照射野を含む。
【0007】
さらなる実施形態は、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を標的組織に投与するシステムを含み得、このシステムは、荷電粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、荷電粒子線のブラッグピークが標的組織と一致するように荷電粒子線の飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、電離放射線のブラッグピークが標的組織の輪郭と一致するように荷電粒子線の飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、を含む。この実施形態は、少なくとも40Gy/sの線量率での照射野の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、照射野は、標的組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない。実施形態において、標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、レンジシフタは、電離放射線の飛程を短くする複数のプレートを含み、レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、パラメータは、電離放射線が透過するプレートの数及び位置を含む。いくつかの実施形態において、レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される。いくつかの実施形態において、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野は、3つの照射野、4つの照射野、又は5つの照射野を含む。
【0008】
さらなる実施形態は、少なくとも2つのシフトされ補償された粒子線の照射野を、少なくとも40Gy/sの線量率で生成するシステムを含み、このシステムは、粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、粒子線の飛程を調整可能にシフトさせるように構成されたユニバーサルレンジシフタと、粒子線の飛程を調整可能に補償するように構成されたレンジコンペンセータと、を含む。いくつかの実施形態において、粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む。
【0009】
別の実施形態は、標的組織を治療する方法であって、標的組織を診断するステップと、標的組織をマッピングするステップと、有効量のシフトされ補償された電離放射線を標的組織に投与するための放射線療法治療計画を策定するステップと、粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、粒子線のブラッグピークが標的組織と一致するように陽子線/粒子線の飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、粒子線のブラッグピークが標的組織の輪郭と一致するように粒子線の飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、を含むシステムを用いて電離放射線をシフトさせ補償するステップと、次に、粒子線を標的組織に投与するステップと、を含む、方法を含む。いくつかの実施形態において、粒子線は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される。いくつかの実施形態において、標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、粒子線は、新生物又は良性腫瘍の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない。レンジシフタが、電離放射線の飛程を短くする複数のプレートを含む実施形態において、レンジシフタプレートの配置は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって決定され、パラメータは、電離放射線が透過するプレートの数及び位置を含む。いくつかの実施形態では、レンジコンペンセータの形状は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される。いくつかの実施形態において、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野は、3つの照射野、4つの照射野、又は5つの照射野を含む。いくつかの実施形態において、粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む。
【0010】
別の実施形態は、陽子線治療装置を調整する方法であって、FLASH-RTを標的部位に適用するように設計された治療計画を受信するステップであって、治療計画は、標的部位と、3次元標的形状と、治療照射野の数と、少なくとも40Gy/sの目標線量率と、を含むステップと、レンジシフタとレンジコンペンセータとを用いて陽子線治療装置のエネルギー又は飛程を変更するステップであって、レンジシフタは、電離放射線の飛程を短くする複数のプレートを備える、ステップと、を含み、変更するステップは、逆方向治療計画プロトコルを使用して、陽子線治療装置のエネルギー出力のブラッグピークが標的組織と一致するようにレンジシフタ及びレンジコンペンセータのパラメータを決定することを含み、パラメータは、陽子線治療装置のエネルギー又は飛程が透過するプレートの数及び位置を含む、方法を含む。いくつかの実施形態において、陽子線治療装置のエネルギー出力は、癌組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない。
【0011】
さらなる実施形態は、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを含み、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、ユニバーサルレンジシフタを含む。いくつかの実施形態において、電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む。いくつかの実施形態において、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである。
【0012】
さらなる実施形態は、放射線療法治療装置であって、ユニバーサルレンジシフタを含み、ユニバーサルレンジシフタは、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを含むと共に、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、放射線療法治療装置を含む。いくつかの実施形態において、電離放射線は、陽子又はその他のイオンを含む。一実施形態において、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである。
【0013】
さらなる実施形態は、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くする方法を含み、この方法は、電離放射線を、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えるユニバーサルレンジシフタに通すステップを含む。いくつかの実施形態において、電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む。いくつかの実施形態において、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである。
【0014】
別の実施形態は、癌組織を治療する方法であって、少なくとも40Gy/sの線量率を有する電離放射線透過ビームを供給するステップと、ビームのブラッグピークが、3mmから5mmの間で、癌組織の端から離れた点と一致するように電離放射線透過ビームのエネルギー又は飛程を調整するステップと、電離放射線透過ビームを癌組織に照射するステップと、を含む、方法を含む。一実施形態では、電離放射線透過ビームは、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ユニバーサルレンジシフタ(URS(universal range shifters))及びレンジコンペンセータ(RC(range compensators))を使用した不透過FLASH強度変調粒子線療法(IMPT(intensity-modulated particle therapy))計画の概略図を示す。URS及びRCは、説明のみを目的としてビーム経路に配置されており、これらは、治療目標に応じて様々な順序で配置され得る。
【
図2】
図2は、スポット分布及び重み最適化の例が、計画品質及びFLASH-RT線量率分布を効果的に改善できることを示す。
【
図3A】
図3Aは、水ファントム中のC字型標的に対して250MeV陽子線を使用した透過率計画((a)及び(d))と対比してブラッグピーク計画((b)及び(e))を示す。
【
図3B】
図3Bは、水ファントム中のC字型標的に対して250MeV陽子線を使用した透過率計画((a)及び(d))と対比してブラッグピーク計画((b)及び(e))を示す。
【
図4A】
図4Aは、同一のビーム配置を使用した、3人の選ばれた肺患者についての透過率計画とブラッグピーク計画との間の線量の比較を示す。右の列と中央の列とは、それぞれ、透過率計画とブラッグピーク計画とを表す。
【
図4B】
図4Bは、同一のビーム配置を使用した、3人の選ばれた肺患者についての透過率計画とブラッグピーク計画との間の線量の比較を示す。右の列と中央の列とは、それぞれ、透過率計画とブラッグピーク計画とを表す。
【
図5A】
図5Aは、同一のビーム配置を使用した、透過率計画(左側の画像)とブラッグピーク計画(中央の画像)との間の線量率の比較を示す。
【
図5B】
図5Bは、同一のビーム配置を使用した、透過率計画(左側の画像)とブラッグピーク計画(中央の画像)との間の線量率の比較を示す。
【
図6】
図6の上図:中心軸面における250MeV陽子線の単一スポット(1000MU/スポット)の2次元線量率分布が、それぞれ5、15、及び25cmの空隙を有する水ファントム中で展開する;下図:中心軸におけるスポット線量率(3つの区間は、水、空隙、及び水中の残りの飛程における20cmの移動を表す)。
【
図7】
図7は、ビーム角度の最適化を説明する例を示す。(a)及び(b)は、異なる照射野及び照射野角度を使用した2次元線量分布であり、(c)及び(d)は、DVH及び線量率体積ヒストグラム(DRVH(dose rate volume histogram))の比較であり、(e)は、低線量領域から高線量領域までの、OAR線量と対比したV
40Gy/s線量率カバレッジである。左側の肺と心臓の大部分とは、(b)によって示されたビーム配置を使用することにより完全にスペアされる(spared)。
【
図8】
図8は、例示的なレンジコンペンセータ(RC)を示す。
【
図9】
図9は、10人の肝臓癌患者についてのブラッグピーク計画と従来のIMPT計画との間の線量測定比較を示す。(a)肝臓-GTV D
mean、(b)心臓 D
0.5cc、(c)胸壁 D
2cc、及び(d)SBRT、Bragg-400MU、並びにBragg-800MUについてのCTV D
max。「n.s.」は、結果が統計的に有意ではない(p≧0.05)ことを表す。四分位数範囲(25パーセンタイル~75パーセンタイル)は箱の端によって示され、中央値は箱の内側の横線によって表され、最高値及び最低値は箱の外側の2本の線によって示される。ひし形目印は、25パーセンタイル~75パーセンタイルを超えるデータポイントを示す。肝臓治療計画の試験によって、新規の単一エネルギーPBS送達方法が、従来の複数エネルギー陽子PBS計画と比較して同様又は同等の計画品質を実現できることが実証された。
【
図10】
図10に示すテーブル1は、6つの肺症例全てに関する透過率IMPT計画及びブラッグピークIMPT計画についてのV
40Gy/sの線量測定及び線量率カバレッジの比較を示す。線量測定の比較には、RTOG 0915メトリクスを使用した。線量及び線量率の統計は、両方とも、6つの症例全てについての平均値を使用した。テーブルの最後の行は、標的とOARとの両方について平均されたV
40Gy/sを表す。
【
図11】
図11に示すテーブル2は、例示的なURSの6枚のレンジシフタプレートが、陽子飛程を、0cmから34cmの間で、1cmのステップで「引き戻す(pull back)」すなわち短くするための34の異なる組み合わせをどのようにして生成できるかを示す。ここで、「1」は、陽子線の飛程を引き戻すためにプレートがビーム経路内に移動されることを表し、「0」は、飛程を引き戻すためにプレートが使用されないことを意味する。
【
図12】
図12に示すテーブル3は、10人の肺癌患者についてのブラッグピーク計画と従来のIMPT計画との間の計画品質の比較を示す。肺治療計画の試験によって、新規の単一エネルギーPBS送達方法が、従来の複数エネルギー陽子PBS計画と比較して同様又は同等の計画品質を実現できることが実証された。p1、BP-1200MU-2msとIMPT-SBRT計画との間の両側スチューデントt検定のp値;p2、BP-300MU-0.5msとIMPT-SBRT計画との間の両側スチューデントt検定のp値。
【発明を実施するための形態】
【0016】
FLASH-RTは、患者の転帰を改善するが、専用のハードウェアと専門知識とを必要とする。さらに、現在の透過率/シュートスルー計画は、線量送達のためにブラッグピークを利用しておらず、その結果、標的体積から遠位にある正常組織に対する不必要な放射線被曝が起こる。本開示において、「遠位」とは、「解剖学的に」遠位であることではなく、ビーム経路に沿ってより先であることを指す。
【0017】
本明細書で開示された単一エネルギーペンシルビームスキャニング(PBS(pencil beam scanning))送達方法は、従来の複数エネルギー陽子PBS計画と比較して同様又は同等の計画品質を実現できる。高価なエネルギー選択システムとビーム集束システムとを省くことによって、陽子線治療コストが大幅に削減され、PBS FLASH-RTが一般の人々にとってより手頃な価格になる。サイクロトロンからの単一エネルギー層陽子線を原体照射的な従来の線量率/FLASH-RTのために使用することは、将来の陽子システム設計にとって有望な解決手段となり得る。
【0018】
従来の方法とは対照的に、開示された実施形態は、ブラッグピーク(電離放射線が物質内を進む過程における当該電離放射線のエネルギー損失をプロットするブラッグ曲線上の顕著なピーク)を利用するために追加の構成要素によって改造された市販の装置を含む。陽子、α線、及びその他のイオン線の場合、このピークは、粒子が静止する直前に生じる。この種の粒子のブラッグ曲線は、X線又はその他の種類の電磁放射線のブラッグ曲線と定性的に異なることが理解されるであろう。
【0019】
開示された方法及びシステムは、現在利用可能な陽子及びその他の荷電重粒子(例えば、ヘリウム、炭素、アルゴン及びネオン)システムを改造し、腫瘍を治療するために陽子線のブラッグピーク領域を利用するために最小限のハードウェアの改造しか必要としない逆方向最適化アルゴリズムに基づく方法を利用するFLASH-RT腫瘍治療モダリティを含む。ブラッグピークは、電離放射線が物質内を進む過程における当該電離放射線のエネルギー損失をプロットするブラッグ曲線上の顕著なピークである。
【0020】
ブラッグピークは、陽子などの特定の荷電粒子のエネルギーのグラフィック表現を使用することによって特定され得、特定の荷電粒子が失ったエネルギーは、この荷電粒子の速度の二乗に反比例し、そのため、グラフ化されたピークは、粒子が完全に停止する直前に生じる。ブラッグピークを標的組織と相関させることによって、開示された方法及びシステムは、標的組織をはるかに越えて伝達される「出口線量」を回避し、従って、標的領域に隣接する組織をスペアする(に被害を加えない)。ブラッグピークは、市販のソフトウェアを使用して計算され得る。
【0021】
開示されたシステムは、電離放射線ビームのエネルギーを「引き戻し(pull back)」すなわち減少させ、それによりこのビームの飛程を短くするプラスチックプレートなどの部材を備える調整可能なユニバーサルレンジシフタ(URS)を含む。様々な厚さの複数の「プレート」をビーム経路内の離散的な距離に設けることにより、開示されたシステムは、ユーザが、さもなければ電離放射線を構成する粒子のブラッグピークを利用するFLASH-RTに適さないであろう電離放射線源を使用して、ビームの飛程を、正確に、且つ、再現性よく組織内の目標深さまで短くすることを可能にする。
【0022】
開示されたシステムは、電離放射線ビームの飛程をさらに変更し、それによりこのビームの侵入深さを調整し、原体照射を標的組織に送達する部材を備えるレンジコンペンセータ(RC)を含む。例えば、開示されたRCは、飛程がシフトされた電離放射線の飛程を微調整するための三次元輪郭を有する(例示的なRCを
図8に示す)。様々な厚さのレンジコンペンセータをビーム方向に設け、最適な3次元形状の決定のために走査された離散的な陽子スポットを使用して標的組織を横方向にカバーすることにより、開示されたシステムは、ユーザが、さもなければ電離放射線を構成する粒子のブラッグピークを使用するFLASH-RTに適さないであろう電離放射線源を使用して、ビームを、正確に、且つ、再現性よく遠位の標的形状に適合させることを可能にする。RCは、電離放射線を、この電離放射線の飛程がシフトされる前、シフトされている最中、又はシフトされた後に微調整することができる。
【0023】
開示された方法は、エネルギービーム、例えば陽子線の飛程を調整するステップと、陽子飛程を補償し、ビームのブラッグピークが標的組織と一致するように標的組織の領域、例えば標的組織の遠位領域、又は、場合によっては、標的組織の遠位端のすぐ向こう側(immediately beyond)を標的とし、それにより、FLASH-RTの有効性を維持しつつ、標的を越えて延在する陽子線の「出口」線量を低減又は除去するステップと、を含む。ブラッグピークによって反映されている、侵入飛程における粒子エネルギーの急速な低下の結果、粒子エネルギーの大部分を、標的組織に限定することができる。
【0024】
強度変調粒子線療法(IMPT)などの強度変調放射線療法(IMRT(intensity-modulated radiation therapy))では、ビーム強度が、患者の各治療領域(標的)にわたって変化する。治療モダリティに応じて、強度変調に利用できるパラメータは、ビーム整形(コリメーション)、ビーム重み付け(スポットスキャニング)、及び入射角(ビームジオメトリ)を含む。これらの自由度により、実質的に無数の潜在的な治療計画が生じる。従って、高品質な治療計画の一貫した、且つ、効率的な作成及び評価は、コンピューティングシステムの使用に依存する。
【0025】
逆方向治療計画ツールは、FLASH-RT計画のために単一エネルギー層を使用するIMPTを最適化するために開発された。逆方向治療計画は、工程であって、治療計画において使用される各ビームの強度分布が、結果として得られる線量分布が計画者によって指定された基準を最もよく満たすことができるように当該工程によって決定される工程である。逆方向治療計画では、放射線腫瘍医が、患者の重要な臓器と腫瘍体積とを定義し、その後、目標線量及びそれぞれの重要度係数も決定する。次に、計画者が、最適化プログラムを実行し、全ての入力基準に最もよく一致する治療計画を求める。このように、逆方向治療計画は、オプティマイザを使用し、計画者によって設定された逆問題を解く。飛程引き戻し値及び物理的なコンペンセータの輪郭は、単一エネルギー陽子線を標的の遠位端で停止させるように計算され得る。
【0026】
各照射野のスポットマップ及び重みは、陽子線のブラッグピークを使用して十分な線量率を実現するように最適化された。「ファントム」(モデル)と患者との両方の治療は、線量測定及び線量率特性を評価するために、開示された方法及び伝送技術を使用して計画された。
【0027】
(定義)
【0028】
「投与」又は「投与すること」は、対象に治療を与える(すなわち、投与する)ステップを意味する。
【0029】
「ブラッグ曲線」は、停止媒体中の移動距離の関数としての、粒子のエネルギー損失率、すなわち線エネルギー付与(LET(Linear Energy Transfer))のグラフを意味する。エネルギー損失は、主に核電荷の二乗Zと発射体速度の逆二乗βとによって特徴付けられる。これにより、ブラッグ曲線に、発射体が停止する直前に「ピークに達する」(それにより、粒子がそのエネルギーの大部分を放出する飛程を示す)形状が与えられる。
【0030】
「ブラッグピーク」は、電離放射線が物質内を進む過程における電離放射線のエネルギー損失をプロットするブラッグ曲線上の顕著なピークである。ブラッグピークは、粒子がそのエネルギーの大部分を放出する飛程を特定する。
【0031】
「計算する」とは、所望の飛程の電離放射線を生成するためのプレートの配置及び組み合わせを決定するためのレンジシフタ、及び/又は、レンジコンペンセータの選択及び調整を指す。
【0032】
「癌組織」は、あらゆる新生物又は良性腫瘍を意味する。
【0033】
「照射野」は、特定の角度で電離放射線ビームによって治療される領域を意味する。放射線療法治療は、単一の照射野、又は、異なる角度における複数の照射野を使用することによって行われ得る。
【0034】
「FLASH放射線療法」又は「FLASH-RT」は、超高線量率により少分割且つ高線量の放射線量を照射する放射線療法治療法である。
【0035】
「粒子線」は、陽子、又はその他の重粒子、例えばヘリウム、炭素、アルゴン並びにネオンを含む電離放射線を指す。
【0036】
「患者」は、医療又は獣医医療を受けている人間の、又は、人間以外の対象を意味する。
【0037】
本明細書において、「プレート」は、電離放射線のエネルギーを低下させるため、又は、侵入飛程を短くするため、又は、電離放射線のビーム侵入飛程を微調整するために電離放射線を透過させるURS又はRCの構成要素(例えばポリカーボネートプラスチック)を指す。
【0038】
「レンジコンペンセータ」又は「RC」は、本明細書に記載されたブラッグピークベースのFLASH-RTの投与に適したビーム形態に電離放射線の飛程を微調整するか、又は短くするように構成されたハードウェアを意味する。レンジコンペンセータは、標的組織の三次元形状を考慮して、シフトされた電離放射線の飛程を微調整する。
【0039】
「標的組織」は、治療対象の組織、例えば、新生物及び良性腫瘍を含む癌組織などの癌組織を指す。
【0040】
本明細書において、「調整された」とは、最適な計画に到達するためのスポットマップを決定するための逆最適化の過程においてスポットの数、スポットの重み付け、及びスポットの位置を最適化することを意味する。
【0041】
「ユニバーサルレンジシフタ」又は「URS」は、本明細書に記載されたブラッグピークベースのFLASH-RTの投与に適した形態に電離放射線の飛程を調整する/短くするように構成されたハードウェアを意味する。
【0042】
(投与システム)
【0043】
本明細書に開示された、いくつかの実施形態は、FLASH-RT治療を投与するための投与システムなどの投与システムを含む。実施形態において、開示されたシステムは、電離放射線の線源、例えばサイクロトロン又はシンクロトロンを含む。実施形態において、電離放射線源は、電離放射線、例えば陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、ネオン、又はその他の重粒子を放射する。
【0044】
いくつかの開示された実施形態は、レンジシフタをさらに備える。例えば、開示された実施形態において、レンジシフタは、電離放射線を離散的な飛程の照射野に変換できるユニバーサルレンジシフタ(URS)を備え得る。開示された実施形態において、URSは、様々な厚さを有する複数のプラスチックプレート、例えば、ポリカーボネートプラスチックプレートなどの透明な非晶質熱可塑性プレートを備え得る。実施形態では、別個の照射野の飛程が、異なる量だけシフトされ得る。例えば、治療のために5つの照射野を使用する実施形態では、5つの照射野が、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの異なる飛程シフトを含み得、従って、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの異なるURSプレートの組み合わせを含み得る。
【0045】
いくつかの開示されたシステムの実施形態は、レンジコンペンセータ(RC)をさらに備える。例えば、開示された実施形態において、RCは、様々な厚さの輪郭を有する少なくとも1枚のプラスチックプレート、例えば、ポリカーボネートプラスチックプレートなどの固体であり透明な非晶質熱可塑性プレートを備え得る。実施形態において、プレートは、例えば、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、0.8g/cm3、0.9g/cm3、1.0g/cm3、1.1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3などの密度を有し得る。実施形態において、RCは、URSによって飛程シフトされた電離放射線の飛程をさらに精密化することができる。
【0046】
実施形態では、別個の照射野の飛程が、異なるRCによって変更され得る。例えば、治療のために5つの照射野を使用する実施形態では、5つの照射野が、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの異なるRCを含み得る。例示的なRCが
図8に示されており、RCの3次元「トポグラフィー」が明瞭に見てとれる。
【0047】
開示されたURS、RC、及び逆方向治療計画の実施形態と組み合わせると、これは、例えばビーム飛程を変更することによって従来の陽子RT装置を使用する、ブラッグピークを利用するFLASH-RT治療の提供を可能にする。
【0048】
いくつかの開示された実施形態は、電離放射線を対象とする逆方向治療計画を含む。例えば、実施形態では、飛程補償を計算するためにレイトレーシングが使用される。実施形態では、エネルギービームが、逆方向治療計画プラットフォームを介して強度変調スポットマップを生成するようにカスタマイズされる。例えば、
図1(a)に示すように、深さ方向のスポット分布を包含するために、例えばCTV上の6mmの均一なマージンが使用され得る。90%の線量減衰がスポットマップ生成のための陽子飛程として使用され得る。(WET
i(x,y,z)で示される)各ペンシルビーム陽子線撮影トラックの水等価厚さ(WET(water equivalent thickness))は、式1によって計算され得、rsp(x,y,z)は、3次元CT画像の各ボクセルの相対阻止能(rsp(relative stopping power))を表す。
【0049】
式1中の積分ステップは、レイトレーシングアルゴリズム(Siddon RL,Prism representation:A 3D ray-tracing algorithm for radiotherapy applications,Phys. Med. Biol.,1985,10.1088/0031-9155/30/8/005 30(8),817-824)により正確に計算され得る。各ペンシルビームの飛程の引き戻しすなわち短縮は、Riによって計算され得、ここで、RE0は、水中における最高エネルギーの飛程である。開示されたFLASH-RTブラッグピーク治療計画は、複数照射野配置、例えば5照射野ビーム配置を使用し得、スポットマップを生成するためにマルチフィールド最適化(MFO(multi-field-optimization))法が使用され得る。
【0050】
【0051】
実施形態において、照射野ごとの所望の合計飛程補償は、URS及びRCを使用することによって実現され得る。URSの厚さは、例えば0cmから34cmまで変化し得、これが、RCの助けによって、あらゆる深さにおける腫瘍の治療を可能にする。
【0052】
実施形態において、URSは、例えば、少なくとも1枚のプレート、少なくとも2枚のプレート、少なくとも3枚のプレート、少なくとも4枚のプレート、少なくとも5枚のプレート、少なくとも6枚のプレート、少なくとも7枚のプレート、少なくとも8枚のプレート、少なくとも9枚のプレート、少なくとも10枚のプレート、少なくとも11枚のプレート、少なくとも12枚のプレート、少なくとも13枚のプレート、少なくとも14枚のプレート、少なくとも15枚のプレート、少なくとも16枚のプレート、少なくとも17枚のプレート、少なくとも18枚のプレート、少なくとも19枚のプレート、少なくとも20枚のプレート、又は20枚超のプレートを備え得る。システムの一例では、多くの目的に適した所望の深さ(0cm~34cm)の飛程を生成するために6枚のプレートが使用され得る。
【0053】
実施形態において、個々のURSプレートの厚さは、例えば、水等価厚(WET)で1cm、WETで2cm、WETで3cm、WETで4cm、WETで5cm、WETで6cm、WETで7cm、WETで8cm、WETで9cm、WETで10cm、WETで11cm、WETで12cm、WETで13cm、WETで14cm、WETで15cm、WETで16cm、WETで17cm、WETで18cm、WETで19cm、WETで20cm、WETで21cm、WETで22cm、WETで23cm、WETで24cm、WETで25cm、WETで26cm、WETで27cm、WETで28cm、WETで29cm、WETで30cm、又はWETで30cm超であり得る。
【0054】
一実施形態において、URSは、厚さが水等価厚で1、2、3、7、7、及び14cmの6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備え、1cmの深さ分解能で、35の離散的な飛程短縮インクリメントを生成する。実施例1で述べた試験において使用された35の離散的な飛程引き戻しのためのレンジプレートの組み合わせを
図11のテーブル2に示す。
【0055】
図1(e)は、実施例1で使用された、1cmの深さ分解能で35の離散的な飛程引き戻しを生成する、厚さがWETで1、2、3、7、7、及び14cmの6枚のポリカーボネートプラスチックプレートのURSシステムの概略図を示す。各レンジシフタプレートは、スタンドアロンのステップモータによって駆動され、ビーム経路に「入ったり」「出たり」し、6枚のプレートの「入り」及び「出」の組み合わせは、正しい飛程引き戻しを生成できる2進法システムに相当する。35の離散的な飛程引き戻しのためのレンジプレートの組み合わせを
図11のテーブル2に示す。
【0056】
実施形態では、より厚いレンジシフタほどより下流に配置され得、より薄いレンジシフタほどより上流に配置され、これは、散乱陽子線の移動距離を最小化し、スポットサイズを縮小し、高いスポットピーク線量率(SPDR(spot peak dose rate))を維持するための設計上の考慮事項である。所望の陽子飛程は、レンジシフタプレートをビーム経路に「入れたり」「出したり」することによって実現される。各ビーム経路で使用されるURSの厚さは、式2中のRURSを使用して計算され得る。RCの最大厚さは、式2中のRcによって決定され得る。従って、実施形態において、合計飛程引き戻し容量は、0cmとRE0cmとの間であり得、これにより深部の標的と表層の標的とに対応できる。
【0057】
各照射野下の各陽子トレースの飛程補償R
iは、例えば3次元データ行列によって計算され記憶され得る。データセットを使用し、3Dプリントされたコンペンセータを簡単に構築することができる。
図1(e)に示すように、RCは、右上隅と右下隅に示されている。
【0058】
【0059】
散乱陽子系のためのコンペンセータの設計と同様に、飛程の不確実性を管理するRCを設計するためにスメアリング法(Moyers MF、Miller DW、Bush DA、Slater JD,Methodologies and tools for proton beam design for lung tumors,Int J Radiat Oncol Biol Phys,2001,49(5),1429-38)を用い得る。
【0060】
実施形態では、治療のために必要な最小MU/スポット又はナノアンペア(nA)単位の最小治療室ビーム電流が、各エネルギー層の線量率を決定し得、最小MU/スポット及び線量率が、FLASH線量率閾値に達するようにさらに最適化される。最適なスポットマップを2つのステップで生成するためにアルゴリズムが使用され得る。
a. 第1に、初期最小MU/スポット閾値(w0)が逆最適化のために使用され得、定義されたスポット間隔を有する高密度スポットマップが生成され得る。
b. 第2に、距離閾値rtと重み係数wtとの両方を適用することによって、低重み付けスポットが新しいスポットにマージされ得、ここで、rtは、スポット間隔の比である。wtは、FLASH線量率についての係数ベースの最小MU/スポット要件である。式3に示すように、重みは、wmとして統合され得、スポット座標は、式4を使用して、それらの元の座標と重み付け分数とに基づいて計算され得る。最終的なスポット位置は、式5を用いて記述される座標閾値rtを適用することによって決定され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、最終スポットマップを生成するための第2のステップの適用について少なくとも2つの考慮事項がある。
a. 第1に、最小MU/スポットが層のSPDRを決定するため、低重み付けスポットをマージすることによって高いSPDRが実現され得る。
b. 第2に、従来のIMPT計画最適化と同様に、低重み付けスポットは、良好な計画品質を維持するために重要である。重み付けのより低いスポットを近傍のスポットにマージすることによって、スポット分布パターンの変更は最小限であるにもかかわらず、より良好な計画線量測定分布が実現可能である。
【0062】
他の計画ステップ及びアルゴリズムも使用され得ることが理解されるであろう。
【0063】
いくつかの開示された実施形態では、スポット重みを微調整し、標的の均一性及びOARのスペアリングをさらに改善するために継続的な最適化が実行され得る。スポットマップ最適化の第2のステップ(重み付けの低いスポットを近傍のスポットにマージするステップ)を繰り返し適用することによって、線量率が継続的に改善され得る。
【0064】
実施形態において、スポットマップ最適化の有効性は、中央の回避コア構造を囲むC字型標的を使用して検証され得る。
図2に示すように、(a)は、初期400MU/スポット閾値を使用した1つの照射野のスポットマップであり、(d)は、スポットマップ最適化工程を適用した後のスポットマップであり、(b)及び(e)は、選ばれたスライスについての2次元線量分布の比較であり、(c)及び(f)は、DVH及びDRVHの比較である。そうすることにより、2次元線量分布から分かるように、低線量領域が減少し、適合性が向上し、コア構造のDVHが低線量端に向かって結果的に実質的にシフトした。(f)に示すように、体、標的、及びコア構造への線量率を増加させ得る。
【0065】
【0066】
図2は、計画品質及びFLASH-RT線量率分布を効果的に改善できるスポット分布及び重み最適化の例を示す。(a)及び(d)は、スポットマップ最適化工程の前後のスポットマップであり、(b)及び(e)は、2次元線量分布の比較であり、(c)及び(f)は、スポットマップ最適化の前後のDVH及びDRVHの比較である。DRVHからの破線は、40Gy/s閾値を示す。
【0067】
いくつかの実施形態では、陽子とUSR及びRCとの間の多重クーロン散乱(MCS(multiple Coulomb scattering))が、スポット発散を大幅に拡大し得る。同様に、散乱効果も、ビームの実効SSDの漸進的な短縮をもたらし得る。実効SSDが短くなると、逆二乗効果が大きくなるため陽子フルエンスがより迅速に減少し、スポットサイズがより急速に増加する。
【0068】
図6は、水ファントム中で1000モニターユニット(放射線療法用の臨床加速器からの機械出力の尺度;[MU](Monitor Units))を有する250MeV単一スポットの線量率分布を示す。実施例1では、空隙に伴って変化する水中での中心軸におけるスポット線量率を計算するために、RCとファントム表面との間の5、15、及び25cmの空隙が「模倣」された。空隙が増加したときにスポット線量率が減少し、ブラッグピークにおける中心軸線量率が、5cmの空隙と25cmの空隙との間で、約2分の1に減少することが明らかであった。FLASH計画最適化の過程で、空隙を最小化することが、陽子フルエンス強度とより小さい半影とを維持する上で重要な役割を果たすことが多く、これは、OARのスペアリングにとって重要であり得る。一方、MCSと大きな空隙とによってもたらされた大きなスポットサイズは、スポット線量率と治療野の平均線量率とを大幅に低下させるであろう。より高いスポット線量率を実現するためには、比較的小さな空隙がブラッグピーク治療計画にとって重要である。
【0069】
図6の上図:中心軸面における250MeV陽子線の単一スポット(1000MU/スポット)の2次元線量率分布が、それぞれ5、15、及び25cmの空隙を有する水ファントム中で展開する;下図:中心軸におけるスポット線量率(3つの区間は、水、空隙、及び水中の残りの飛程における20cmの移動を表す)。
【0070】
開示された実施形態は、電離放射線を指向することを含む。実施形態において、電離放射線は、標的組織に拡張マージンを加えた範囲内の点又は領域、例えば、標的組織の中心と、標的組織の端を5cm以内の距離だけ越えた(中心から外側に延在する)点と、の間の点又は領域に指向される。例えば、実施形態では、電離放射線のブラッグピークが、標的組織の(電離放射線の輸送方向に関して)遠位端、近位端、又は側縁などの標的組織の周囲又は縁の内部又は近傍の点と一致するように電離放射線が指向される。
【0071】
例えば、実施形態において、電離放射線は、腫瘍の縁などの標的組織の周囲/縁から、ある距離に指向される。例えば、実施形態において、電離放射線は、標的組織の端から1mm、標的組織の端から2mm、標的組織の端から3mm、標的組織の端から4mm、標的組織の端から5mm、標的組織の端から6mm、標的組織の端から7mm、標的組織の端から8mm、標的組織の端から9mm、標的組織の端から10mm、標的組織の端から11mm、標的組織の端から12mm、標的組織の端から13mm、標的組織の端から14mm、標的組織の端から15mm、標的組織の端から16mm、標的組織の端から17mm、標的組織の端から18mm、標的組織の端から19mm、標的組織の端から20mm、又は標的組織の端から20mm超の距離に指向される。
【0072】
例えば、実施形態において、電離放射線は、腫瘍の縁などの標的組織の周囲/縁又はその周囲に指向される。例えば、実施形態において、電離放射線は、標的組織の縁から1mm以内、標的組織の縁から2mm以内、標的組織の縁から3mm以内、標的組織の縁から4mm以内、標的組織の縁から5mm以内、標的組織の縁から6mm以内、標的組織の縁から7mm以内、標的組織の縁から8mm以内、標的組織の縁から9mm以内、標的組織の縁から10mm以内、標的組織の縁から11mm以内、標的組織の縁から12mm以内、標的組織の縁から13mm以内、標的組織の縁から14mm以内、標的組織の縁から15mm以内、標的組織の縁から16mm以内、標的組織の縁から17mm以内、標的組織の縁から18mm以内、標的組織の縁から19mm以内、標的組織の縁から20mm以内、又は標的組織の縁から20mm超の距離以内に指向される。
【0073】
実施形態において、電離放射線は、腫瘍の中心に向けて、又は中心から何れかの側の、ある距離以内に指向される。例えば、実施形態において、電離放射線は、標的組織の中心から1mm以内、標的組織の中心から2mm以内、標的組織の中心から3mm以内、標的組織の中心から4mm以内、標的組織の中心から5mm以内、標的組織の中心から6mm以内、標的組織の中心から7mm以内、標的組織の中心から8mm以内、標的組織の中心から9mm以内、標的組織の中心から10mm以内、標的組織の中心から11mm以内、標的組織の中心から12mm以内、標的組織の中心から13mm以内、標的組織の中心から14mm以内、標的組織の中心から15mm以内、標的組織の中心から16mm以内、標的組織の中心から17mm以内、標的組織の中心から18mm以内、標的組織の中心から19mm以内、標的組織の中心から20mm以内、又は標的組織の中心から20mm超の距離以内に指向される。
【0074】
さらなる実施形態において、電離放射線は、標的組織の端と標的組織の三次元中心との間の点に指向される。
【0075】
開示された実施形態は、例えば少なくとも40Gy/s以上の照射野線量率を生成し得る。例えば、実施形態において、線量率は、少なくとも40Gy/s、少なくとも42Gy/s、少なくとも44Gy/s、少なくとも46Gy/s、少なくとも48Gy/s、少なくとも50Gy/s、少なくとも52Gy/s、少なくとも56Gy/s、少なくとも58Gy/s、少なくとも60Gy/s、少なくとも62Gy/s、少なくとも64Gy/s、少なくとも66Gy/s、少なくとも68Gy/s、少なくとも70Gy/s、少なくとも72Gy/s、少なくとも74Gy/s、少なくとも76Gy/s、少なくとも78Gy/s、少なくとも80Gy/s、少なくとも82Gy/s、少なくとも84Gy/s、少なくとも86Gy/s、少なくとも88Gy/s、少なくとも90Gy/s、少なくとも92Gy/s、少なくとも94Gy/s、少なくとも96Gy/s、少なくとも98Gy/s、少なくとも100Gy/s、少なくとも102Gy/s、少なくとも104Gy/s、少なくとも106Gy/s、少なくとも108Gy/s、少なくとも110Gy/s、少なくとも112Gy/s、少なくとも114Gy/s、少なくとも116Gy/s、少なくとも118Gy/s、少なくとも120Gy/s、少なくとも122Gy/s、少なくとも124Gy/s、少なくとも126Gy/s、少なくとも128Gy/s、少なくとも130Gy/s、少なくとも132Gy/s、又はそれ以上である。
【0076】
開示された実施形態は、レンジシフタ及びレンジコンペンセータの使用を決定するためのコンピュータ可読命令をさらに含む。例えば、開示された実施形態において、コンピュータ可読命令は、URS及びRCの数、厚さ、及び配置を、シフトされておらず補償されていない電離放射線の特性、目標治療深さ、及び標的の3次元形状に基づいて計算するための命令を含み得る。
【0077】
(使用方法)
【0078】
本明細書に開示された方法は、初期電離放射線源からシフトされ補償された電離放射線を生成するステップを含み得る。例えば、実施形態において、初期電離放射線源は、陽子、α線、炭素イオン、その他のイオン線、及びそれらの組み合わせを含み得る。実施形態において、方法は、電離放射線を生成するためのサイクロトロン又はシンクロトロンの使用を含み、この電離放射線は、その後、レンジシフタ及び飛程補償の対象となる。
【0079】
実施形態において、飛程のシフトは、初期電離放射線の飛程を所望の飛程まで短くするための、厚さが異なる複数のプラスチックプレート、例えばポリカーボネートプラスチックプレートなどの透明な非晶質熱可塑性プラスチックプレートの使用を含む。例えば、実施形態では、逆方向治療計画ツールが、初期電離放射線の飛程を所望の飛程まで低下させるために必要な個々のURSプレートの数、位置、及び厚さを決定するために使用される。
【0080】
実施形態において、飛程補償は、初期電離放射線の飛程を所望の深さに調整するための、ポリカーボネートプラスチック輪郭などの少なくとも1つの非晶質熱可塑性輪郭の使用を含む。例えば、実施形態では、逆方向治療計画ツールが、初期電離放射線の飛程を所望の深さに調整し、標的の遠位端に適合させるために必要なRCプレートの輪郭厚さを決定するために使用される。実施形態では、標的組織、例えば癌組織を治療するために、飛程がシフトされ補償された電離放射線照射野がさらに使用され得る。例えば、開示された使用方法は、
a. 癌組織を診断するステップと、
b. 癌組織をマッピングするステップと、
c. 有効量の電離放射線を癌組織に投与するための放射線療法治療計画を策定するステップと、
d. 飛程がシフトされ補償された電離放射線を癌組織に投与するステップと、
を含み得る。
【0081】
実施形態において、開示された方法は、例えば臨床検査、画像検査、生体組織検査などの使用による癌組織の診断を含み得る。例えば、体内における特定の物質のレベルが高いこと又は低いことは、癌の兆候であり得る。従って、血液、尿、又はその他の体液若しくは細胞の臨床検査は、これらの物質を測定し、医師が診断を行うことを補助し得る。実施形態において、臨床検査は、血液又は組織サンプルを腫瘍マーカについて検査することを含む。腫瘍マーカは、癌細胞によって、又は、癌に反応して体の他の細胞によって産生される物質である。ほとんどの腫瘍マーカは、正常細胞及び癌細胞によって産生されるものの、これらは、一般的に、はるかに高いレベルで癌細胞によって産生される。
【0082】
開示された方法は、癌組織を特定するための画像検査の使用をさらに含み得る。例えば、画像検査は、癌組織の特定を補助する体内の領域を可視化する。画像検査を含む開示された方法は、例えば、コンピュータに接続されたX線装置が内臓の一連の画像を異なる角度から撮像するCTスキャンを含み得る。これらの画像は、体内の詳細な3次元画像を作成するために使用される。
【0083】
さらなる方法は、磁気共鳴画像法(MRI(magnetic resonance imaging))の使用を含む。MRIは、強力な磁石及び電波を使用して体の断面図を撮像し、これは、健康な組織と不健康な組織との違いを示し得る。
【0084】
さらなる開示された方法は、放射性物質を使用して体内を撮像する核スキャンを含み得る。このタイプのスキャンは、放射性核種スキャンと呼ばれることもある。
【0085】
さらなる開示された治療方法は、骨の異常を特定するために使用される核スキャンの一種である骨スキャンを含み得る。
【0086】
さらなる開示された方法は、陽電子放出断層撮影法(PET(positron emission tomography))スキャンを含み得る。PETスキャンは、医師が体内の病気を検査することを可能にする画像検査である。このスキャンは、放射性トレーサを含む特別な染料を使用する。これらのトレーサは、体のどの部分が検査されるかに応じて、飲み込まれるか、吸入されるか、又は患者の腕の静脈に注射される。
【0087】
開示された実施形態における使用に適したさらなる診断方法は、超音波を含み得る。超音波検査は、体内の組織に「反響」する高エネルギー音波を使用する。コンピュータが、これらの反響を使用し、体内の領域の画像を作成する。
【0088】
実施形態では、治療領域候補を特定するために複数の診断方法が使用され得る。実施形態において、治療領域は、腫瘍、例えば悪性腫瘍を含む。
【0089】
診断が完了すると、治療領域がマッピングされ得、治療計画が策定され得る。例えば、標的組織が3次元的にマッピングされた後、適切なURS、RC、線量、及びビーム角度が決定される。
【0090】
次に、治療計画が、飛程がシフトされ補償された電離放射線の適切な線量での投与として適用され得る。例えば、開示された方法は、例えば少なくとも1.8Gy/フラクション以上の治療線量を含み得る。例えば、実施形態において、線量は、少なくとも1.8Gy/フラクション、少なくとも2Gy/フラクション、少なくとも3Gy/フラクション、少なくとも4Gy/フラクション、少なくとも5Gy/フラクション、少なくとも6Gy/フラクション、少なくとも8Gy/フラクション、少なくとも10Gy/フラクション、少なくとも12Gy/フラクション、少なくとも14Gy/フラクション、少なくとも16Gy/フラクション、少なくとも18Gy/フラクション、少なくとも20Gy/フラクション、少なくとも22Gy/フラクション、少なくとも24Gy/フラクション、少なくとも26Gy/フラクション、少なくとも28Gy/フラクション、少なくとも30Gy/フラクション、少なくとも32Gy/フラクション、少なくとも34Gy/フラクション、少なくとも36Gy/フラクション、少なくとも38Gy/フラクション、少なくとも40Gy/フラクション、少なくとも42Gy/フラクション、少なくとも44Gy/フラクション、少なくとも46Gy/フラクション、少なくとも48Gy/フラクション、少なくとも50Gy/フラクション、少なくとも52Gy/フラクション、少なくとも54Gy/フラクション、少なくとも56Gy/フラクション、少なくとも58Gy/フラクション、少なくとも60Gy/フラクション、少なくとも62Gy/フラクション、少なくとも64Gy/フラクション、少なくとも66Gy/フラクション、少なくとも68Gy/フラクション、少なくとも70Gy/フラクション、又は70Gy/フラクション超の線量である。
【0091】
実施形態において、フラクション線量は、例えば1.8Gy/フラクション以上である。例えば、実施形態において、線量は、1.8Gy/フラクション、2Gy/フラクション、3Gy/フラクション、4Gy/フラクション、5Gy/フラクション、6Gy/フラクション、8Gy/フラクション、10Gy/フラクション、12Gy/フラクション、14Gy/フラクション、16Gy/フラクション、18Gy/フラクション、20Gy/フラクション、22Gy/フラクション、24Gy/フラクション、26Gy/フラクション、28Gy/フラクション、30Gy/フラクション、32Gy/フラクション、34Gy/フラクション、36Gy/フラクション、38Gy/フラクション、40Gy/フラクション、42Gy/フラクション、44Gy/フラクション、46Gy/フラクション、48Gy/フラクション、50Gy/フラクション、52Gy/フラクション、54Gy/フラクション、56Gy/フラクション、58Gy/フラクション、60Gy/フラクション、62Gy/フラクション、64Gy/フラクション、66Gy/フラクション、68Gy/フラクション、70Gy/フラクションなどである。
【0092】
実施形態において、フラクション線量は、1.8Gy/フラクション以下、2Gy/フラクション以下、3Gy/フラクション以下、4Gy/フラクション以下、5Gy/フラクション以下、6Gy/フラクション以下、8Gy/フラクション以下、10Gy/フラクション以下、12Gy/フラクション以下、14Gy/フラクション以下、16Gy/フラクション以下、18Gy/フラクション以下、20Gy/フラクション以下、22Gy/フラクション以下、24Gy/フラクション以下、26Gy/フラクション以下、28Gy/フラクション以下、30Gy/フラクション以下、32Gy/フラクション以下、34Gy/フラクション以下、36Gy/フラクション以下、38Gy/フラクション以下、40Gy/フラクション以下、42Gy/フラクション以下、44Gy/フラクション以下、46Gy/フラクション以下、48Gy/フラクション以下、50Gy/フラクション以下、52Gy/フラクション以下、54Gy/フラクション以下、56Gy/フラクション以下、58Gy/フラクション以下、60Gy/フラクション以下、62Gy/フラクション以下、64Gy/フラクション以下、66Gy/フラクション以下、68Gy/フラクション以下、70Gy/フラクション以下などである。
【0093】
実施形態において、飛程がシフトされ補償された電離放射線が、複数の照射野で投与される。例えば、実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つなどの照射野が投与される。実施形態では、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9などの照射野が投与される。実施形態では、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下、6つ以下、7つ以下、8つ以下、9つ以下、10以下、11以下、12以下、13以下、14以下、15以下などの照射野が投与される。
【0094】
実施形態において、飛程がシフトされ補償された電離放射線の照射野が標的組織に投与される角度は、照射野間で等しい。例えば、5つの照射野が投与される実施形態において、照射野が投与される角度は、72度間隔で異なり得る。照射野間の角度は、臨床要件を満たすように適宜決定され得る。
【0095】
開示された方法の使用頻度は、治療対象となる特定の領域の性質及び位置に基づいて決定され得る。但し、場合によっては、将来的に治療を繰り返し行うことが最適な結果を実現するために望ましい可能性がある。
【0096】
本開示に記載された、全ての開示された方法及び手順は、1つ以上のコンピュータプログラム又は構成要素を使用して実現され得る。これらの構成要素は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、磁気ディスク若しくは光ディスク、光メモリ、又はその他の記憶媒体などの揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む、任意の従来のコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体上の一連のコンピュータ命令として提供され得る。この命令は、ソフトウェア又はファームウェアとして提供され得、ASIC、FPGA、DSP、又は任意の他の同様のデバイスなどのハードウェア構成要素に、全体的に又は部分的に実装され得る。この命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され得、このプロセッサは、一連のコンピュータ命令を実行するときに、開示された方法及び手順の全部又は一部を実行し、又は実行を促進する。
【0097】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は、代表的な実施形態のより完全な理解を促進するために、例示のみを目的として提供される。この実施例は、本明細書に記載された実施形態の何れかを限定するものと解釈されるべきではない。
【0098】
(実施例1)
(肺腫瘍の治療)
サイクロトロン装置又はシンクロトロン装置の最高単一エネルギービームを使用することにより、ブラッグピーク計画は、FLASH線量率に十分なビーム電流を実現し、一方、ビーム経路内の飛程引き戻しデバイス(URS)を用いたマルチフィールド逆最適化治療計画が、標的を超える出口線量を除去する治療計画を可能にした。MFOによって均一な線量分布を実現する逆アルゴリズムが、matRadプラットフォームに基づいて開発されており(Wieser HP、Cisternas E、Wahl Nら,Development of the opensource dose calculation and optimization toolkit matRad,Med Phys,2017,44,2556-2568)、治療計画が標的カバレッジ及びOAR制約を満たすと、レイトレーシング法が、照射野ごとのレンジコンペンセータを作成した。
図1(e)に示すように、5照射野IMPT計画は、肺癌FLASH-RTのためにユニバーサルレンジシフタ(URS)及びレンジコンペンセータ(RC)を使用し、陽子飛程は、標的の遠位端に適合するように調整された。
【0099】
3次元線量率は、線量平均線量率(DADR(dose averaged dose rate))によって定量化された(Water S、Safai S、Schippers JMら,Towards FLASH proton therapy: the impact of treatment planning and machine characteristics on achievable dose rates,Acta Oncologica,2019,58:10,1463-1469,https://doi:10.1080/0284186X.2019.1627416)。他のアプローチも使用され得ることが理解されるであろう。PBSスポットの中心が最大の線量率を有し、線量率は、スポットの中心から側面に向かって径方向に低下した。ここで、中心軸の最大線量率を定義するFLASH計画試験のために、van Marlenらによって最初に提唱されたスポットピーク線量率(SPDR(spot peak dose rate))の定義を採用した(van Marlen P、Dahele M、Folkerts Mら,Bringing FLASH to the Clinic: Treatment Planning Considerations for Ultrahigh Dose-Rate Proton Beams,Int J Radiation Oncol Biol Pys,2020,106(3),621-629,https://doi.org/10.1016/j.ijrobp.2019.11.011)。不均一性補正、ガウススポットプロファイル(σ=3.5mm)、及びモデル化されたスポット送達時間構造を含むペンシルビーム畳み込み重ね合わせアルゴリズムを使用し、線量率を計算するインハウス3次元PBS線量率計算ツールが、MATLABで開発された。線量率体積ヒストグラム(DRVH(dose rate volume histogram))法も、標的及びOARの線量カバレッジを定量化するために使用された。同時に、FLASH線量率を定量的に評価するために、標的及びOARについて40Gy/s以上の線量率を受ける体積の割合を表す線量率カバレッジ指標V40Gy/sが定義された。
【0100】
図1。ユニバーサルレンジシフタ(URS)及びレンジコンペンセータ(RC)を使用した不透過FLASH IMPT計画の概略図。URS及びRCは、例示のみを目的としてビーム経路に配置されている。(a)陽子の停止位置を決定するために6mmの遠位マージンを使用したファントムの例。点は、プロトンが停止する位置を表し、飛程引き戻し及びコンペンセータの輪郭を決定するために、体の輪郭からの積分された水等価厚さ(WET(water equivalent thickness))距離が計算された。(b)(a)のスポットマップに基づく単一エネルギー層を使用した線量分布。(c)レイトレーシング法によって計算された2次元飛程補償のビームアイビュー。(d)中心軸における1次元飛程補償。(e)肺治療計画のための5照射野ビーム配置であり、上隅及び下隅は、5-RCのうち1つを2つの異なるビューで示す。
【0101】
2.1 IMPT治療計画を実現するための逆方向治療計画
【0102】
2.1.1 飛程補償を計算するためのレイトレーシング
【0103】
単一エネルギービームは、逆方向治療計画プラットフォームを介して強度変調スポットマップを生成するようにカスタマイズされた。
図1(a)に示すように、深さ方向のスポット分布を包含するために、CTV上の6mmの均一なマージンが使用された。線量減衰の90%が、スポットマップ生成のための陽子飛程として使用された。(WET
i(x,y,z)で示される)各ペンシルビーム陽子線撮影トラックの水等価厚さ(WET(water equivalent thickness))は、式1によって計算され、rsp(x,y,z)は、3次元CT画像の各ボクセルの相対阻止能(rsp(relative stopping power))を表す。式1の積分ステップは、レイトレーシングアルゴリズムにより正確に計算された。各ペンシルビームの飛程の引き戻しは、R
iによって計算され、ここで、R
E0は、水中における最高エネルギーの飛程である。全てのFLASH-RTブラッグピーク計画は、5照射野ビーム配置を使用し、スポットマップを生成するためにMFO法が使用された。
【0104】
【0105】
2.1.2 ユニバーサルレンジシフタ(URS)及びレンジコンペンセータ(RC)
【0106】
照射野ごとの合計飛程補償は、URS及びRCを使用することによって実現された。URSの厚さは、0cmから34cmまで変化し、これが、RCの助けによって、あらゆる深さにおける腫瘍の治療を可能にする。
【0107】
URSは、厚さがWETで1、2、3、7、7、及び14cmの6枚のポリカーボネートプラスチックプレートで構成され、1cmの深さ分解能で35の離散的な飛程引き戻しを生成する。各レンジシフタプレートは、スタンドアロンのステップモータによって駆動され、ビーム経路に「入ったり」「出たり」し、6枚のプレートの「入り」及び「出」の組み合わせは、正しい飛程引き戻しを生成できる2進法システムに相当する。35の離散的な飛程引き戻しのためのレンジプレートの組み合わせが、
図11のテーブル2に示されている。
【0108】
図1(e)は、URSシステムの概略図を示し、より厚いレンジシフタほどより下流に配置されている。より薄いレンジシフタほどより上流にあり、これは、散乱陽子線の移動距離を最小化し、スポットサイズを縮小し、高いSPDRを維持するための設計上の考慮事項である。所望の陽子飛程は、レンジシフタプレートをビーム経路に「入れたり」「出したり」することによって実現される。各ビーム経路で使用されるURSの厚さは、式2 のR
URSを使用して計算された。RCの最大厚さは、式2中のR
cによって決定される。従って、合計飛程引き戻し容量は、0cmとR
E0cmとの間であり、最も深い位置にある標的から表層の標的まで対応できる。各照射野下の各陽子トレースの飛程補償R
iは、3次元データ行列によって計算され、記憶される。データセットを使用し、3Dプリントされたコンペンセータを好適に構築することができる。
図1(e)に示すように、RCは、右上隅と右下隅に示されている。
【0109】
【0110】
散乱陽子系のためのコンペンセータの設計と同様に、飛程の不確実性を管理するRCを設計するためにスメアリング法(Moyers MF、Miller DW、Bush DA、Slater JD,Methodologies and tools for proton beam design for lung tumors,Int J Radiat Oncol Biol Phys,2001,49(5),1429-38)が使用された。標的及びOARについての臨床意図を実現するためには、ロバストな計画が重要である。セットアップ及び動作に起因する大きな不確実性は、広範囲にわたる不確実性を引き起こし得る。スメアリング法を適用する際、相対阻止変換不確実性に対する3.5%CTハンスフィールド単位(HU(Hounsfield unit))と3mmのセットアップ誤差とが使用された。
【0111】
2.2 計画品質及び線量率を改善するためのスポットマップ最適化
【0112】
次に、最小MU/スポット又はナノアンペア(nA)単位の最小治療室ビーム電流が、各エネルギー層の線量率を決定し、最小MU/スポット及び線量率が、FLASH線量率閾値に達するようにさらに最適化される必要がある。2つのステップを介して最適なスポットマップを生成するためにインハウスアルゴリズムが開発された:第1に、初期最小MU/スポット閾値(w0)が逆最適化のために使用され、定義されたスポット間隔を有する高密度スポットマップが生成され;第2に、距離閾値rtと重み係数wtとの両方を適用することによって、低重み付けスポットが新しいスポットにマージされ、ここで、rtは、スポット間隔の比である。wtは、FLASH線量率についての係数ベースの最小MU/スポット要件である。式3に示すように、重みは、wmとして結合され、スポット座標は、式4を使用して、それらの元の座標と重み付け分数とに基づいて計算される。最終的なスポット位置は、式5を用いて記述される座標閾値rtを適用することによって決定される。一般に、最終スポットマップを生成するための第2のステップの適用について2つの考慮事項がある。第1に、最小MU/スポットが層のSPDRを決定するため、低重み付けスポットをマージすることによって高いSPDRが実現され得る。第2に、従来のIMPT計画最適化と同様に、低重み付けスポットは、良好な計画品質の維持に大きく寄与する。重み付けのより低いスポットを近傍のスポットにマージすることによって、スポット分布パターンの変更は最小限であるにもかかわらず、より良好な計画線量測定分布が実現可能である。
【0113】
スポットの重みを微調整し、標的の均一性及びOARのスペアリングをさらに改善するために継続的な最適化が実行された。スポットマップ最適化の第2のステップを繰り返し適用することによって、線量率が継続的に改善された。スポットマップ最適化の有効性は、中央の回避コア構造を囲むC字型標的を使用して検証された。
図2に示すように、(a)は、初期400MU/スポット閾値を使用した1つの照射野のスポットマップであり、(d)は、スポットマップ最適化工程を適用した後のスポットマップであり、(b)及び(e)は、選ばれたスライスについての2次元線量分布の比較であり、(c)及び(f)は、DVH及びDRVHの比較である。2次元線量分布から分かるように、低線量領域が減少し、適合性が向上し、コア構造のDVHが低線量端に向かって結果的に実質的にシフトしたことは明らかであった。(f)に示すように、体、標的、及びコア構造への線量率が増加された。
【0114】
【0115】
図2は、計画品質及びFLASH-RT線量率分布を効果的に改善できるスポット分布及び重み最適化の例を示す。(a)及び(d)は、スポットマップ最適化工程の前後のスポットマップであり、(b)及び(e)は、2次元線量分布の比較であり、(c)及び(f)は、スポットマップ最適化の前後のDVH及びDRVHの比較である。DRVHからの破線は、40Gy/s閾値を示す。
【0116】
2.3 レンジシフタ、空気、及びファントム中におけるスポット線量率の展開
【0117】
陽子とUSR及びRCとの間のMCSが、スポット発散を大幅に拡大し得る。同様に、散乱効果も、ビームの実効SSDの漸進的な短縮をもたらし得る。実効SSDが短くなると、逆二乗効果が大きくなるため陽子フルエンスはより迅速に減少し、スポットサイズがより急速に増加する。
図6は、水ファントム中で1000MUを有する250MeV単一スポットの線量率分布を示す。空隙に伴って変化する水中での中心軸におけるスポット線量率を計算するために、RCとファントム表面との間の5、15、及び25cmの空隙が模倣された。空隙が増加したときにスポット線量率が減少し、ブラッグピークにおける中心軸線量率が、5cmの空隙と25cmの空隙との間で、約2分の1に減少することが明らかであった。FLASH計画最適化の過程で、空隙を最小化することが、陽子フルエンス強度とより小さい半影とを維持する上で重要な役割を果たし、これは、OARのスペアリングにとって重要である。一方、MCSと大きな空隙とによってもたらされた大きなスポットサイズは、スポット線量率と治療野の平均線量率とを大幅に低下させるであろう。より高いスポット線量率を実現するためには、比較的小さな空隙がブラッグピーク治療計画にとって重要である。
【0118】
図6。上図:中心軸面における250MeV陽子線の単一スポット(1000MU/スポット)の2次元線量率分布が、それぞれ5、15、及び25cmの空隙を有する水ファントム中で展開する;下図:中心軸におけるスポット線量率(3つの区間は、水、空隙、及び水中の残りの飛程における20cmの移動を表す)。
【0119】
3.3 ファントム画像と患者画像との両方を使用したフィージビリティ試験
【0120】
C字型標的を備えた矩形水「ファントム」が、透過率計画とブラッグピーク計画との両方について線量測定品質及び線量率分布を調査するための計画に使用された。同時に、我々の施設において以前に陽子SBRTにより治療された連続6人の肺癌患者が再計画され、線量及び線量率分布を評価するために透過率計画とブラッグピークFLASH計画との両方を受けた。ブラッグピークFLASH-RTを使用することの計画目標は、重要なOARについて同等のV40Gy/s線量率カバレッジを実現するにもかかわらず、元の臨床治療パラメータからのOAR線量制約を使用しつつOARのスペアリングを大幅に改善することであった。Marlenらは、肺癌計画のために8~12の非共面ビームを使用したFLASH透過率試験を報告した。より多くの照射野を使用する理由は、通常の肺線量を減らし、標的適合性を向上させることである。「公平な」線量測定比較を行うために、この試験は、透過率計画とブラッグピーク計画との両方について角度間隔(72度)が均等な5照射野計画を使用した。ファントム計画は、1フラクションに50Gyの処方を使用し、患者計画は、1フラクションに34Gyの標準治療処方が使用された。透過率計画及びブラッグピーク計画についてのFLASH線量率を維持するための最小MUは、それぞれ400MU/スポット及び1200MU/スポットであった。3次元線量率定量化にはDADR法が使用され、ファントム計画と患者計画との両方についてDRVHが調査される。
【0121】
3. 結果
【0122】
3.1 ファントムを使用したブラッグピークFLASH-RT計画
【0123】
ファントム計画は、角度間隔が均等に72度である5つの照射野を使用し、コアとC字型標的との間の距離は、約1.5cmであった。
図3A(a)及び
図3A(b)は、選ばれたスライスについての2次元線量分布である。ブラッグピーク法では出口線量が存在しないため、ブラッグピーク計画は、透過率計画よりも低い線量散乱曇り及び積分線量をもたらした。標的カバレッジ及び均一性は、ほぼ同じであったが、体及びコア構造への線量漏れは、はるかに少なかった。
図3A(c)に示すように、体及びコアのDVHには2つのFLASH送達方法の間で大きな隔たりがあり、ブラッグピーク計画が線量漏れを低レベルから中レベルに大幅に低減することを示している。
図3B(d)及び
図3B(e)は、同じ画像スライスについてのDADR線量率分布であり、
図3B(f)は、DRVHの比較である。透過率計画は、ブラッグピーク計画に比べてより高い線量率分布を生成する傾向があることは明らかであった。但し、ブラッグピークは、最小MU/スポット(1200MU/スポット)を増加させることによって、且つ、線量率最適化を介してFLASH-RT閾値40Gy/sに達することもできる。
図3B(f)に示すように、スポットマップ最適化を適用した後、体及び代理OARコア構造のV
40Gy/sカバレッジは、95%にもなった。ファントムの線量測定及び線量率の比較は、ブラッグピーク計画が、透過率計画と比較して、同様の標的カバレッジを実現できるにもかかわらず、はるかに優れたOARのスペアリングを実現できることを示していた。同時に、FLASH-RT線量率は、ブラッグピーク計画によって成功裡に維持され得る。
【0124】
図3A及び
図3B。水ファントム中のC字型標的に対して250MeV陽子線を使用した透過率計画((a)及び(d))と対比したブラッグピーク計画((b)及び(e)):(a)及び(b)は、選ばれたスライスについての2次元線量分布であり、(c)は、それらの間のDVH比較であり、(d)及び(e)は、2次元線量率分布であり、(f)は、DRVH比較である。DRVHからの破線は、40Gy/s閾値を示す。
【0125】
3.2 肺少分割照射計画の試験
【0126】
選ばれた3つの症例についての2次元線量分布を
図4A(a)及び
図4A(b)に示す。線量カラーウォッシュから分かるように、ブラッグピーク計画は、低線量領域及び中線量領域において優れていた。散乱線量曇り及び積分線量は、3つの症例全てのブラッグピーク計画の線量分布において大幅に少なかった。3つのDVH(
図4B(c))も、FLASH計画にブラッグピーク法を使用した場合の肺-GTV、食道、脊髄、及び心臓についての大幅な線量-体積減少を示した。
図10のテーブル1は、6人の肺患者全員についての透過率IMPT計画とブラッグピークIMPT計画との両方についてのRTOG0915プロトコルに基づく線量測定パラメータをまとめている(RTOG0915。https://www.nrgoncology.org/Clinical-Trials/Protocol/rtog-0915?filter=rtog-0915)。D2%は、標的の高線量領域及び線量均一性を表す。ブラッグピーク計画は、最小MU/スポットの増加により、透過率計画よりわずかに悪い均一性(処方線量の110.6%対112.2%)をもたらした。但し、ほとんどのOAR線量メトリクスは、ブラッグピーク計画の方が優れている。例えば、肺-GTVの場合、V7Gyの平均体積は724.9ccから492.6ccまで減少し、これは最大32%の体積減少に相当する(p=0.001);V7.4Gyの平均体積は672.8ccから468.7ccまで減少し、照射体積は30%減少した(p=0.002)。さらに、食道、心臓、及び脊髄への線量は、標的位置及びビーム配置に敏感であるが、これらのOARの一部は、それらを透過する、又はそれらに向かうビームが存在しなければ、ブラッグピーク計画では完全にスペアされ得る。この初期コホートでは統計的誤差が大きく、腫瘍部位が不均一であることを考慮すると、これらの差は、統計的に有意ではなかった(p>0.05)。
【0127】
図5A及び
図5Bは、3人の選ばれた肺癌患者についての2次元線量率分布及びDRVHの比較である。左の列は、透過率計画の線量率分布を示し、陽子の線量率が、組織を透過するときに深さとともに減衰し、各単一照射野について、出口線量率が、入口線量率よりもはるかに低いことを示す。中央の列は、各照射野で観測された高線量率の帯と低線量率の谷とを含むブラッグピーク計画についての線量率分布である。公知のとおり、計画最適化の自由度は、スポットマップ、スポットの重み、スポット及び照射野の数、最小MU/スポットなどを含む。透過率計画及びブラッグピーク計画のために400MU/スポット及び1200MU/スポットを使用すると、最小MU/スポットの増加が、ブラッグピーク計画について良好な均一性及びOARのスペアリングを実現することをより困難にするであろう。エネルギーと照射野の数とを除く全てのパラメータが、逆最適化を介して必要な線量測定目標を満たすように最適化される。ここで、高度に変調されたフルエンスは、より高い3次元線量率を維持する際のMU/スポットの増加に伴う柔軟性の低下に対する補償として機能する。逆アルゴリズムが、MFO法による不均一な線量フルエンスを介して均一な線量分布を実現する上で重要な役割を果たす。V
40Gy/s線量率カバレッジを
図10のテーブル1にまとめた。全ての標的は、ほぼ100%、V
40Gy/sに達し得、透過率計画とブラッグピーク計画との両方について、全てのOARの平均V
40Gy/sカバレッジは、少なくとも>91.0±3.8%(ブラッグピーク計画の脊髄)。全体として、線量分布、DVH、及び線量メトリクスの比較は、ブラッグピーク計画により肺、脊髄、心臓、及び食道のスペアリングが大幅に改善され、対照的に、これらの計画が、FLASH線量率を維持したことを示す。
【0128】
図10のテーブル1。6つの肺症例全てに関する透過率IMPT計画及びブラッグピークIMPT計画についてのV
40Gy/sの線量測定及び線量率カバレッジの比較。線量測定の比較には、RTOG 0915メトリクスを使用した。線量及び線量率の統計は、両方とも、6つの症例全てについての平均値を使用した。テーブルの最後の行は、標的とOARとの両方についての平均されたV
40Gy/sを表す。
【0129】
図4A及び
図4B。同一のビーム配置を使用した、3人の選ばれた肺患者についての透過率計画とブラッグピーク計画との間の線量の比較。右の列と中央の列とは、それぞれ、透過率計画とブラッグピーク計画とを表す。
図4A(a)及び
図4(b)は、選ばれたスライスの2次元線量分布であり、
図4B(c)は、2種類の計画の間のDVHの比較である。
【0130】
図5A及び
図5B。同一のビーム配置を使用した、透過率計画(左側の画像)とブラッグピーク計画(中央の画像)との線量率の比較。
図5A(a)及び
図5A(b)は、選ばれたスライスの2次元線量率分布であり、
図5B(c)は、2種類の計画間のDRVHの比較である。破線は、40Gy/sの閾値を示す。
【0131】
4. 考察
【0132】
MUの定義は、陽子ベンダーによって異なるが、線量率の普遍的な定量化は、治療室においてビーム電流を使用することである。但し、治療計画では、MUが、計画線量を計算するための基本単位として使用される。線量率を正確に記述するためには、ビーム電流とMUあたりの陽子の数との間の相関関係を、例えばモンテカルロシミュレーション又は実験的手法によって決定する必要がある。治療計画システム(TPS(treatment planning system))のスポット重みを最適化する能力は、TPSによって異なり得る。異なるオプティマイザ及び線量計算エンジンは、異なる計画品質及び線量率分布をもたらし得る。従って、これらの市販のTPSは臨床用途に利用できるため、治療計画戦略、DVH、及びDRVHの分布を広範に研究する必要がある。PBSスポットがURS、RC、空隙、及び患者組織を透過する際の線量率減衰の固有の性質により、OARの3次元線量率分布は、陽子飛程の引き戻しと最小MU/スポットとの関数である。浅い標的を治療するためには、より大きな陽子飛程の引き戻しが必要であり、これに対応して、OARへの照射についてFLASH線量率を維持する計画最適化のためには、より大きな最小MU/スポットが望ましい。
【0133】
より多い自由度を含む、複数のパラメータを含む計画最適化は、柔軟性と、より良好な計画品質を実現する可能性と、を確実に高めるであろう。可変な最小MU/スポット、ビームの数、及びビーム角度は、治療計画最適化の過程で一般に考慮すべき重要なパラメータである。
図7に示すように、(a)は、(b)のビーム配置と比較して従来のビーム角度に近い4つの後方斜めビーム配置を使用する。反対側の肺は、完全にスペアされ、線量がほぼゼロであり、食道及び心臓への線量も大幅に低減される(
図7(c)のDVH)。CTVとOARとについてのV
40Gy/s(
図7(d))カバレッジは、同様である。この症例比較は、ブラッグピーク計画には、照射野の数とビーム角度とを最適化することによってOAR線量をさらに低減できる可能性が大いにあることを示している。計画のロバストネスは、標的及びOARに対する臨床的に意図された線量を実現するために非常に重要である。セットアップと、阻止能変換不確実性に対するCT HUと、からの飛程の不確実性を考慮するためにスメアリング法が使用される。動作の不確実性も、標的の治療に影響を与え得る。各照射野は1秒未満で送達されるため、各照射野に関しては線量の相互作用効果は問題とならないかもしれないが、照射野間及びフラクション間では、依然として、標的の動作に対処する必要がある。動作の振幅と動作の領域とを考慮して、動く標的の輪郭を描くためには4次元CTが必要になる。一方、平均画像は、治療計画をよりロバストにするために役立ち得る。標的マージンを減らし、ロバストな治療を実現するためには、動作を軽減する戦略(DIBH、ゲーティングなど)も必要となり得る。
【0134】
ブラッグピーク計画では、最小MU/スポットが1200MU/スポットに増加された場合ですらも、V
40Gy/sカバレッジが、わずかに悪かった。低線量率領域がどこにあるのかを解析した。OAR線量と対比した線量率統計分布を定量的に評価するために、0Gyから40Gyまでの5Gy線量間隔の8つの線量領域を定義する。
図7(e)に示すように、0~5Gyから35~40Gyまでの8つの線量領域がある。96%未満のFLASH線量率カバレッジを受ける体積の大部分は、15Gy未満の線量を有していた。OAR線量が高くなると、それに応じて線量率が増加する。試験によって、FLASHスペアリング効果が、線量、線量率、及び合計送達時間の組み合わせと相関している可能性があることが示されている。FLASH効果が線量依存性である可能性があることが試験によって示されているため、V
40Gy/sカバレッジがわずかに失われている、この低線量領域は、重要ではなく、臨床的にも重要ではない可能性があると仮定する。
【0135】
図7。(a)~(d)ビーム角度の最適化を説明する例。(a)及び(b)は、異なる照射野及び照射野角度を使用した2次元線量分布であり、(c)及び(d)は、DVH及びDRVHの比較であり、(e)は、低線量領域から高線量領域までの、OAR線量と対比したV
40Gy/s線量率カバレッジである。左側の肺と心臓の大部分とは、(b)によって示されたビーム配置を使用することにより完全にスペアされる。
【0136】
5. 結論
【0137】
専用の設計されたURS及びRSは、陽子飛程を、標的から、遠位方向から近位方向に引き戻すというミッションを達成した。この新規の方法は、ブラッグピークを使用してFLASH-RT線量率閾値を満たすためにサイクロトロン/シンクロトロン又はビームラインの大幅な更新を必要としない。URSは、陽子飛程を引き戻すための効果的なツールである。RCの助けによって、陽子飛程が、遠位標的の輪郭に適合し、原体照射的な線量分布を実現するようにさらに調整され得る。出口線量は、ブラッグピークFLASH計画により除去され得、これにより、透過率FLASH計画よりもはるかに優れたOARスペアリングが可能になる。例えばビーム、角度、スポットマップ、スポット重み付けなどの計画の自由度を最大限に活用することによる効果的な逆オプティマイザは、FLASH-RTについての十分な3次元線量率を含む高品質なIMPT計画を実現するためのもう1つの重要な要素である。ブラッグピークFLASH-RTを臨床で実現可能とするためには、効率的な線量率最適化アルゴリズムと正確な線量計算エンジンとが不可欠である。我々は、ブラッグピークを使用すると、透過率計画と比較して、同様の標的カバレッジ及び均一性が維持され得るが、OARスペアリングが大幅に向上することを示す初期コホート計画分析を示した。この最初のプルーフ・オブ・コンセプト試験は、飛程の引き戻しと強力な逆最適化とを組み合わせ、現在利用可能なマシンパラメータを使用してFLASH線量率を実現する新規の方法を示した。
【0138】
(実施例2)
(肺腫瘍の治療)
26歳の男性が肺腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線の飛程を標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0139】
【0140】
次に、FLASH-RT治療が、72°の角度で間隔をあけた5つの照射野において癌組織に施された。
【0141】
(実施例3)
(肝腫瘍の治療)
46歳の女性が肝腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線のブラッグピークを標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0142】
【0143】
次に、FLASH-RT治療が、60°の角度で間隔をあけた6つの照射野において癌組織に施された。
【0144】
(実施例4)
(脳腫瘍の治療)
41歳の男性が脳腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線のブラッグピークを標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0145】
【0146】
次に、FLASH-RT治療が、90°の角度で間隔をあけた4つの照射野において癌組織に施された。
【0147】
(実施例5)
(脳腫瘍の治療)
21歳の男性が脳腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線のブラッグピークを標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0148】
【0149】
次に、FLASH-RT治療が、45°の角度で間隔をあけた8つの照射野において癌組織に施された。
【0150】
(実施例6)
(肝腫瘍の治療)
56歳の女性が肝腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線のブラッグピークを標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0151】
【0152】
次に、FLASH-RT治療が、120°の角度で間隔をあけた3つの照射野において癌組織に施された。
【0153】
(実施例7)
(食道腫瘍の治療)
51歳の男性が食道腫瘍と診断された。癌組織が撮像され、マッピングされ、治療計画が立案された。逆方向治療計画最適化プロトコルを使用して、以下のパラメータを備える、シフトされ補償された電離放射線のブラッグピークを標的組織の遠位端に一致させるための最適なURSプレートの組み合わせが確立された。
【0154】
【0155】
次に、FLASH-RT治療が、72°の角度で間隔をあけた5つの照射野において癌組織に施された。
【0156】
最後に、本明細書の態様は、特定の実施形態を参照することによって強調されているが、これらの開示された実施形態が、本明細書に開示された主題の原理の例示にすぎないことを当業者は容易に理解するであろうことを理解されたい。それゆえに、開示された主題は、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコル、及び/又は試薬などに全く限定されないことを理解されたい。このため、開示された主題に対する様々な修正若しくは変更、又は、開示された主題の代替構成が、本明細書における教示に従って、本明細書の精神から逸脱することなく行われ得る。最後に、本明細書で使用された用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本開示の範囲を限定することを意図したものではない。従って、本開示の実施形態は、図示され説明されたとおりの実施形態に限定されない。
【0157】
本明細書には、本明細書に記載された方法及び装置を実施するための発明者が知る最良の形態を含む特定の実施形態が記載されている。もちろん、上述の説明を読めば、当業者にとっては、これらの記載された実施形態の変形が明らかになるであろう。従って、本開示は、適用法より認められる範囲で、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題のあらゆる修正及び均等物を含む。さらに、上述の実施形態のあらゆる可能な変形における上述の実施形態の任意の組み合わせが、本明細書に別段の記載があったり、文脈と明らかに矛盾したりしない限り、本開示によって包含される。
【0158】
本開示の代替実施形態、構成要素、又はステップのグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループ構成要素は、個別に、又は、本明細書で開示された他のグループ構成要素と任意に組み合わせて、参照され、特許請求の範囲に記載され得る。グループの1つ以上の構成要素が、便宜、及び/又は、特許性の理由のために、グループに含められるか、又は、グループから削除され得ることが想定されている。そのような包含又は削除が行われた場合、明細書が修正後のグループを含み、従って、添付された特許請求の範囲で使用された全てのマーカッシュグループの記述要件(written description)を満たすものとみなされる。
【0159】
別段の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用された、特徴、品目、数量、パラメータ、性質、期間などを表す全ての数字は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように修飾された特徴、品目、数量、パラメータ、性質、又は期間が、記載された特徴、品目、数量、パラメータ、性質、又は期間の値の上下プラスマイナス10パーセントの範囲を包含することを意味する。従って、別段の記載がない限り、本明細書及び添付された特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、変動し得る近似値である。少なくとも、且つ、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数値表示は、少なくとも報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め手法を適用して解釈されるべきである。本開示の広い範囲を示す数値範囲及び数値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値範囲及び数値は、可能な限り正確に報告されている。但し、いかなる数値範囲又は数値も、これらの数値範囲又は数値それぞれのテスト測定における標準偏差から必然的に生じる、ある程度の誤差を本来的に含んでいる。本明細書における値の数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる、それぞれの別個の数値に個別に言及する簡略表記法として機能することのみを意図している。本明細書に別段の記載がない限り、数値範囲の各個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0160】
本開示を説明する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用されている「a」、「an」、「the」といった用語及び類似の指示物は、本明細書に別段の記載があったり、文脈と明らかに矛盾したりしない限り、単数と複数との両方を包含するものと解釈されるべきである。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書に別段の記載があったり、文脈と明らかに矛盾したりしない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供された、あらゆる例又は例示的な文言(例えば「など」)の使用は、本開示をより良く明らかにすることのみを意図しており、別途記載される特許請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、本明細書に開示された実施形態の実施にとって必須な、特許請求の範囲に記載されていない構成要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0161】
本明細書に開示された具体的な実施形態は、「からなる」又は「本質的に・・・からなる」という文言を使用することにより、特許請求の範囲においてさらに限定され得る。出願当初のままであるか、補正によって追加されたかにかかわらず、特許請求の範囲において使用される場合、「からなる」という移行用語(transition term)は、請求項に記載されていない、あらゆる構成要素、ステップ、又は成分を除外する。「本質的に・・・からなる」という移行用語は、記載された材料又はステップと、基本的且つ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップと、に請求項の範囲を限定する。このように特許請求の範囲に記載された本開示の実施形態は、本明細書に本来的に又は明示的に記載されており、実施可能である。
【0162】
(開示された実施形態)
(実施形態1)
電離放射線の照射野を標的組織に供給する方法であって、
電離放射線を供給するステップと、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジシフタに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の飛程をシフトさせ、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジコンペンセータに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の前記飛程を補償する、
ことによって、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を形成するステップと、
前記シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を前記標的組織に指向させて、標的体積にわたって均一な線量分布を提供するステップと、
を含む、
方法。
【0163】
(実施形態2)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で指向される、
実施形態1に記載の方法。
【0164】
(実施形態3)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記標的部位の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
実施形態1又は2に記載の方法。
【0165】
(実施形態4)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態1から3の何れか一つに記載の方法。
【0166】
(実施形態5)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子を含む、
実施形態1から4の何れか一つに記載の方法。
【0167】
(実施形態6)
前記標的部位は、癌組織を含む、
実施形態1から5の何れか一つに記載の方法。
【0168】
(実施形態7)
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
実施形態1から6の何れか一つに記載の方法。
【0169】
(実施形態8)
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
実施形態1から7の何れか一つに記載の方法。
【0170】
(実施形態9)
前記逆方向治療計画最適化は、前記電離放射線の前記分布パラメータを決定する、
実施形態8に記載の方法。
【0171】
(実施形態10)
前記逆方向治療計画最適化は、前記電離放射線の前記重み付けパラメータを決定する、
実施形態8又は9に記載の方法。
【0172】
(実施形態11)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の3つの照射野を含む、
実施形態1から10の何れか一つに記載の方法。
【0173】
(実施形態12)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の4つの照射野を含む、
実施形態1から11の何れか一つに記載の方法。
【0174】
(実施形態13)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の5つの照射野を含む、
実施形態1から12の何れか一つに記載の方法。
【0175】
(実施形態14)
シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を標的組織に投与するシステムであって、
荷電粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記荷電粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織と一致するように前記荷電粒子線の飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、
前記電離放射線の前記ブラッグピークが前記標的組織の前記輪郭と一致するように前記荷電粒子線の前記飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【0176】
(実施形態15)
前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される、
実施形態14に記載のシステム。
【0177】
(実施形態16)
前記少なくとも2つの照射野は、前記標的組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
実施形態14又は15に記載のシステム。
【0178】
(実施形態17)
前記標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む、
実施形態14から16の何れか一つに記載のシステム。
【0179】
(実施形態18)
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
実施形態14から17の何れか一つに記載のシステム。
【0180】
(実施形態19)
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
実施形態14から18の何れか一つに記載のシステム。
【0181】
(実施形態20)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、3つの照射野を含む、
実施形態14から19の何れか一つに記載のシステム。
【0182】
(実施形態21)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、4つの照射野を含む、
実施形態14から29の何れか一つに記載のシステム。
【0183】
(実施形態22)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、5つの照射野を含む、
実施形態14から21の何れか一つに記載のシステム。
【0184】
(実施形態23)
少なくとも2つのシフトされ補償された粒子線の照射野を、少なくとも40Gy/sの線量率で生成するシステムであって、
粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記粒子線の飛程を調整可能にシフトさせるように構成されたユニバーサルレンジシフタと、
前記粒子線の前記飛程を調整可能に補償するように構成されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【0185】
(実施形態24)
前記粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態23に記載のシステム。
【0186】
(実施形態25)
標的組織を治療する方法であって、
標的組織を診断するステップと、
前記標的組織をマッピングするステップと、
有効量のシフトされ補償された電離放射線を前記標的組織に投与するための放射線療法治療計画を策定するステップと、
粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織と一致するように前記陽子線/粒子線の前記飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、
前記粒子線の前記ブラッグピークが前記標的組織の前記輪郭と一致するように前記粒子線の前記飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、
を備えるシステムを用いて電離放射線をシフトさせ補償するステップと、
前記粒子線を前記標的組織に投与するステップと、
を含む、
方法。
【0187】
(実施形態26)
前記粒子線は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される、
実施形態25に記載の方法。
【0188】
(実施形態27)
前記標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む、
実施形態25に記載の方法。
【0189】
(実施形態28)
前記粒子線は、前記新生物又は良性腫瘍の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
実施形態26に記載の方法。
【0190】
(実施形態29)
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタプレートの配置は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて計算されたパラメータを適用することによって決定され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
実施形態25から28の何れか一つに記載の方法。
【0191】
(実施形態30)
前記レンジコンペンセータの前記形状は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
実施形態25から29の何れか一つに記載の方法。
【0192】
(実施形態31)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、3つの照射野を含む、
実施形態25から30の何れか一つに記載の方法。
【0193】
(実施形態32)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、4つの照射野を含む、
実施形態25から31の何れか一つに記載の方法。
【0194】
(実施形態33)
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、5つの照射野を含む、
実施形態25から32の何れか一つに記載の方法。
【0195】
(実施形態34)
前記粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態25から33の何れか一つに記載の方法。
【0196】
(実施形態35)
陽子線治療装置を調整する方法であって、
FLASH-RTを標的部位に適用するように設計された治療計画を受信するステップであって、前記治療計画は、標的部位と、3次元標的形状と、治療照射野の数と、少なくとも40Gy/sの目標線量率と、を含むステップと、
レンジシフタとレンジコンペンセータとを用いて前記陽子線治療装置の前記エネルギー又は飛程を変更するステップであって、前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備える、ステップと、
を含み、
前記変更するステップは、逆方向治療計画プロトコルを使用して、前記陽子線治療装置の前記エネルギー出力の前記ブラッグピークが標的組織と一致するようにレンジシフタ及びレンジコンペンセータのパラメータを決定することを含み、前記パラメータは、前記陽子線治療装置の前記エネルギー又は飛程が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
方法。
【0197】
(実施形態36)
前記陽子線治療装置の前記エネルギー出力は、前記癌組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
実施形態35に記載の方法。
【0198】
(実施形態37)
6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備え、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
ユニバーサルレンジシフタ。
【0199】
(実施形態38)
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態37に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【0200】
(実施形態39)
前記電離放射線は、陽子を含む、
実施形態38に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【0201】
(実施形態40)
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WET(水等価厚)で1、2、3、7、7、及び14cmである、
実施形態37に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【0202】
(実施形態41)
ユニバーサルレンジシフタを備え、前記ユニバーサルレンジシフタは、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えると共に、電離放射線の前記飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
放射線療法治療装置。
【0203】
(実施形態42)
前記電離放射線は、陽子又はその他のイオンを含む、
実施形態41に記載の放射線療法治療装置。
【0204】
(実施形態43)
前記電離放射線は、陽子を含む、
実施形態42に記載の放射線療法治療装置。
【0205】
(実施形態44)
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
実施形態43に記載の放射線療法治療装置。
【0206】
(実施形態45)
電離放射線の飛程を、1cmから34cmの間で、1cm刻みで短くする方法であって、前記電離放射線を、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えるユニバーサルレンジシフタに通すステップを含む、
方法。
【0207】
(実施形態46)
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態45に記載の方法。
【0208】
(実施形態47)
前記電離放射線は、陽子を含む、
実施形態45に記載の方法。
【0209】
(実施形態48)
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
実施形態47に記載の方法。
【0210】
(実施形態49)
癌組織を治療する方法であって、
少なくとも40Gy/sの線量率を有する電離放射線透過ビームを供給するステップと、
前記ビームの前記ブラッグピークが、3mmから5mmの間で、前記癌組織の端から離れた点と一致するように前記電離放射線透過ビームのエネルギー又は飛程を調整するステップと、
前記電離放射線透過ビームを前記癌組織に照射するステップと、
を含む、
方法。
【0211】
(実施形態50)
前記電離放射線透過ビームは、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
実施形態49に記載の方法。
【0212】
(実施形態51)
前記電離放射線は、陽子を含む、
実施形態50に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線の照射野を標的組織に供給する
システムであって、
電離放射線を供給する
電離放射線供給部と、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジシフタに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の飛程をシフトさせ、
前記電離放射線のブラッグピークが前記標的組織と一致するように、調整可能なレンジコンペンセータに前記電離放射線を通すことにより、前記電離放射線の前記飛程を補償する、
ことによって、シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を形成する
照射野形成部と、
前記シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野を前記標的組織に指向させて、標的体積にわたって均一な線量分布を提供する
照射野指向部と、
を
備える、
システム。
【請求項2】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で指向される、
請求項1に記載の
システム。
【請求項3】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記標的
組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項1又は2に記載の
システム。
【請求項4】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項5】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、陽子を含む、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項6】
前記標的
組織は、癌組織を含む、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項7】
前記レンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記レンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項8】
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項9】
前記逆方向治療計画最適化
プロトコルは、前記電離放射線
の分布パラメータを決定する、
請求項8に記載の
システム。
【請求項10】
前記逆方向治療計画最適化
プロトコルは、前記電離放射線
の重み付けパラメータを決定する、
請求項
8に記載の
システム。
【請求項11】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、前記シフトされ補償された電離放射線の3つ
、4つ、又は5つの照射野を含む、
請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項12】
シフトされ補償された電離放射線の少なくとも2つの照射野
の標的組織
への投与
のためのシステムであって、
荷電粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記荷電粒子線
のブラッグピークが前記標的組織と一致するように前記荷電粒子線の飛程をシフトさせるように調整されたユニバーサルレンジシフタと、
前記電離放射線の前記ブラッグピークが前記標的組織
の輪郭と一致するように前記荷電粒子線の前記飛程を補償するように調整されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【請求項13】
前記少なくとも2つの照射野は、少なくとも40Gy/sの線量率で照射される、
請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも2つの照射野は、前記標的組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項
12又は
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記標的組織は、新生物又は良性腫瘍を含む、
請求項
12又は13に記載のシステム。
【請求項16】
前記
ユニバーサルレンジシフタは、前記電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備え、前記
ユニバーサルレンジシフタの組み合わせは、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算され、前記パラメータは、前記電離放射線が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
請求項
12又は13に記載のシステム。
【請求項17】
前記レンジコンペンセータの輪郭は、逆方向治療計画最適化プロトコルを用いて決定されたパラメータを適用することによって計算される、
請求項
12又は13に記載のシステム。
【請求項18】
前記シフトされ補償された電離放射線の前記少なくとも2つの照射野は、3つ
、4つ、又は5つの照射野を含む、
請求項
12又は13に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも2つのシフトされ補償された粒子線の照射野を、少なくとも40Gy/sの線量率で生成するシステムであって、
粒子線を生成するように構成された電離放射線源と、
前記粒子線の飛程を調整可能にシフトさせるように構成されたユニバーサルレンジシフタと、
前記粒子線の前記飛程を調整可能に補償するように構成されたレンジコンペンセータと、
を備える、
システム。
【請求項20】
前記粒子線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項
19に記載のシステム。
【請求項21】
陽子線治療装置を調整する方法であって、
FLASH-RTを標的部位に適用するように設計された治療計画を受信するステップであって、前記治療計画は、標的部位と、3次元標的形状と、治療照射野の数と、少なくとも40Gy/sの目標線量率と、を含むステップと、
レンジシフタとレンジコンペンセータとを用いて前記陽子線治療装置
のエネルギー又は飛程を変更するステップであって、前記レンジシフタは
、電離放射線の前記飛程を短くする複数のプレートを備える、ステップと、
を含み、
前記変更するステップは、逆方向治療計画プロトコルを使用して、前記陽子線治療装置
のエネルギー出力
のブラッグピークが標的組織と一致するようにレンジシフタ及びレンジコンペンセータのパラメータを決定することを含み、前記パラメータは、前記陽子線治療装置の前記エネルギー又は飛程が透過する前記プレートの数及び位置を含む、
方法。
【請求項22】
前記陽子線治療装置の前記エネルギー出力は、前記
標的組織の遠位端を越えて近位方向に実質的に延在しない、
請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備え、電離放射線の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
ユニバーサルレンジシフタ。
【請求項24】
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項
23に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項25】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項
24に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項26】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WET(水等価厚)で1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項
23に記載のユニバーサルレンジシフタ。
【請求項27】
ユニバーサルレンジシフタを備え、前記ユニバーサルレンジシフタは、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えると共に、電離放射線
の飛程を、0cmから34cmの間で、1cm刻みで短くすることによって、飛程がシフトされた電離放射線を生成することができる、
放射線療法治療装置。
【請求項28】
前記電離放射線は、陽子又はその他のイオンを含む、
請求項
27に記載の放射線療法治療装置。
【請求項29】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項
28に記載の放射線療法治療装置。
【請求項30】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項
29に記載の放射線療法治療装置。
【請求項31】
電離放射線の飛程を、1cmから34cmの間で、1cm刻みで短くする方法であって、前記電離放射線を、6枚のポリカーボネートプラスチックプレートを備えるユニバーサルレンジシフタに通すステップを含む、
方法。
【請求項32】
前記電離放射線は、陽子、ヘリウム、炭素、アルゴン、又はネオンを含む、
請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
前記電離放射線は、陽子を含む、
請求項
31に記載の方法。
【請求項34】
前記6枚のポリカーボネートプラスチックプレートの厚さは、WETで1、2、3、7、7、及び14cmである、
請求項
33に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】