(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】トラバース軸用のピニオン・ラック駆動装置の状態検出方法及び加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20240319BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240319BHJP
G01M 13/02 20190101ALI20240319BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
G05B19/18 W
G01M13/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564022
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2022059870
(87)【国際公開番号】W WO2022223392
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021109812.2
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ハーゲンロッハー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キーヴェラー
【テーマコード(参考)】
2G024
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
2G024AB01
2G024BA03
2G024CA18
2G024DA09
2G024FA15
3C029EE02
3C269AB09
3C269AB11
3C269AB26
3C269BB12
3C269CC01
3C269EF02
3C269MN24
3C269MN29
(57)【要約】
本発明は、加工機(2)内のトラバース軸(14)用のピニオン・ラック駆動装置(21)の状態を検出する方法に関し、その方法においては、トラバース軸(14)の少なくとも1回の測定走行を、リニア軸(15)の全作業範囲にわたって実行し、測定走行を、リニア軸(15)の少なくとも一方の動作方向において、一定の送り速度によるトラバース軸(14)のトラバース動作によって制御し、測定走行の間において、信号を、トラバース軸(14)の軸位置に応じて捕捉し、捕捉された信号を、データ処理装置(9)において、トラバース軸(14)の軸位置に応じて評価し、且つ数学的方法によって分析する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(2)内のトラバース軸(14)用のピニオン・ラック駆動装置(21)の状態を検出する方法であって、
前記トラバース軸(14)の少なくとも1回の測定走行を、リニア軸(15)の全作業範囲にわたって実行し、
前記測定走行を、前記リニア軸(15)の少なくとも一方の動作方向において、一定の送り速度による前記トラバース軸(14)のトラバース動作によって制御し、
前記測定走行の間において、信号を、前記リニア軸(15)に対する前記トラバース軸(14)の軸位置に応じて捕捉し、
捕捉された前記信号を、データ処理装置(9)において、前記軸位置に応じて評価し、且つ数学的方法によって分析する、方法。
【請求項2】
1回の前記測定走行の間において、前記トラバース軸(14)のトラバース動作を、前記リニア軸(15)の全作業範囲にわたって、両方の動作方向においてそれぞれ制御し、好ましくは、前記両方の動作方向の比較を実行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の測定走行を連続して制御し、
各測定走行を、固有の、且つ先行する測定走行とは異なる送り速度によって制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の測定走行の間において、前記ピニオン・ラック駆動装置(21)のモータ(22)のトルク形成駆動電流を、前記リニア軸(15)の前記軸位置に応じた信号として捕捉することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モータ(22)の回転数を、及び/又は、少なくとも1つのさらなる測定信号を、特に加速度センサ又は直接経路測定システムによって、前記リニア軸(15)に沿った前記軸位置に応じて捕捉することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一定の送り速度による前記測定走行の間において、作業範囲の最初における加速段階の信号と、最後における制動段階の信号をと捕捉しないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定走行の間において、モータ(22)の駆動電流の一時的な測定値を捕捉し、且つ前記リニア軸(15)の前記軸位置に応じて表示することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ピニオン(24)の歯のラック(23)への係合を、前記ピニオンの円周にわたる周期的な割り当てによって、好ましくは前記軸位置に対応する振幅の表示において捕捉し、且つ記録することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピニオン(24)の各完全な1回転に対する前記周期的な割り当てを、事前のものとは異なる色によって出力することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記数学的方法によって、捕捉された駆動電流の振幅の上側及び下側の測定値から包絡線をそれぞれ形成し、且つディスプレイに出力することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記振幅の上側測定値と前記振幅の下側測定値とから上側平均値と下側平均値とをそれぞれ形成し、並びに、
前記包絡線と、平均値によって形成される直線とを表示し、且つ解析のために相関させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
最初の測定走行と少なくとも1回のさらなる測定走行とを、時間的な間隔において、特に、毎日、毎週、及び/又は毎月、実行し、
前記全作業範囲にわたって捕捉された振幅全体の比較によって、少なくとも1つの状態変化を捕捉し、且つ、好ましくは先見的に検出することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
状態として、歯の摩耗、歯の破損、同心度エラー、バックラッシュ、並んだ2つのラックの移行部における組立量、ラックの局所的な欠陥、前記トラバース軸(14)の、特に、リニアガイドシステムの、及び/又は前記リニア軸(15)の、さらなる部品における組立エラー又は欠陥、を捕捉し、評価することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
リニア軸(15)に沿ったトラバース軸(14)用のピニオン・ラック駆動装置(21)の状態を検出するための加工機(2)であって、
少なくとも1つのデータ捕捉装置を備え、
そのデータ捕捉装置は、少なくとも1回の測定走行の間に捕捉される信号を、全作業範囲にわたる軸位置に応じて捕捉し、且つ評価し、並びに数学的方法によって分析する、加工機(2)。
【請求項15】
正確な値、特に、前記ピニオン・ラック駆動装置(21)のバックラッシュの正確な値を局所的な測定方法によって決定するための測定位置を、前記データ処理装置(9)による測定信号の分析の結果として出力することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機におけるトラバース軸用のピニオン・ラック駆動装置の状態を検出するための方法及び加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機は、ワークピースを加工するために使用され、この加工機には少なくとも1つのトラバース軸が設けられている。ワークピースを加工するために、例えば、パンチング工具又はレーザビームのような加工工具をワークピースに向けるために、そのトラバース軸に沿って、加工ヘッドはトラバース可能である。加工機における軸は、片側又は両側に取り付けて駆動することができる。このような軸の駆動には、ピニオン・ラック駆動装置が使用される。ワークピースの精密な加工のためには、ピニオン・ラック駆動装置のピニオンとラック間のバックラッシュ調整と、その状態の監視とが必要である。それは、ワークピースを製造するための少なくとも1つの軸によって作業位置に正確に近づくためである。ピニオン・ラック駆動装置の調整、及びその他の影響要因の捕捉は、別の測定手段を用いて個々の測定点において手動によって行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ワークピースの精密加工のためのピニオン・ラック駆動装置の状態の自動的な検出を可能にする方法及び加工機を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、加工機内のトラバース軸のピニオン・ラック駆動装置の状態を検出する方法によって解決され、その方法においては、トラバース軸の少なくとも1回の測定走行を、リニア軸の全作業範囲にわたって実行し、測定走行を、リニア軸の少なくとも一方の動作方向における一定の送り速度によるトラバース軸のトラバース動作によって制御し、測定走行の間において、信号を、軸位置に応じて捕捉し、捕捉された信号を、データ処理装置において、軸位置に応じて評価し、且つ、例えば、画像処理アルゴリズムのような数学的方法によって、分析する。これは画像処理によっても可能である。この方法によって、リニア軸に沿ったトラバース軸の作業範囲内において無作為に選択された個々の位置での測定が提供されるだけでなく、リニア軸に関するトラバース軸の全作業範囲にわたってピニオン・ラック駆動装置の状態が捕捉される。さらに、一定の送り速度による少なくとも1回の測定走行によって、この測定走行の間において、全作業範囲にわたってトラバース速度に関して同じ状況が存在するという利点がある。そのため、実際の状態又は理想的な状態からの個々のずれを、対応する信号の変化によって認識し、それぞれの軸位置に関してディスプレイに出力することができる。これによって、全作業範囲におけるピニオン・ラック駆動装置の状態についての提示によって、標準化された高速測定方法が可能になる。さらに、捕捉された信号とその結果の提示は、全作業範囲において再現可能である。特に、加工機内に既に存在する部品とデータとを、状態の検出のために使用及び処理することができる。
【0005】
好ましくは、1回の測定走行の間において、リニア軸の両方の動作方向におけるトラバース軸のトラバース動作を、全作業範囲にわたってそれぞれ制御する。それによって、トラバース軸は、一方の動作方向に、及びその逆方向の動作方向に、リニア軸の全長にわたって完全にトラバースされる。その際、信号を、軸位置と同期して捕捉する。好ましくは、両方の動作方向から捕捉された測定信号の比較を行う。この測定走行は、例えば、一方向にのみ発生し、その逆方向には発生しない状態又はエラーのさらなる分析を可能にする。これは、例えば、一方の動作方向においては引っ掛かりが生じるが、他方の動作方向においては引っ掛かりが生じないような、ベローズが不正確に取り付けられている場合である。さらに、このような測定走行の際に、ピニオン・ラック駆動装置のピニオンとラックとの間のバックラッシュ、特にその質的な変化も、両方のトラバース方向からの記録された測定データの比較が可能であるため、よりよく評価することができる。
【0006】
さらに、好ましくは、複数の測定走行を連続して制御し、各測定走行を、固有の、且つ先行する測定走行とは異なる送り速度によって制御する。これは、例えば、ワークピースの加工中又は2つの加工ステップの間にも発生し得る、異なる軸速度の際に発生する振動又は固有振動数のようなピニオン・ラック駆動装置の状態について、さらなる提示を可能にする。
【0007】
少なくとも1回の測定走行の間において、ピニオン・ラック駆動装置のピニオンを駆動するモータのトルク形成駆動電流を、好ましくは、軸位置に応じた信号として捕捉する。モータとピニオンとの間において使用されるギアも考慮することができる。この駆動電流によって、ピニオン・ラック対の状態に直接のフィードバックをすることができる。
【0008】
特に、駆動電流に加えて、モータの回転数を、軸位置に応じて、同期して捕捉する。この回転数は、状態捕捉のための更なる評価パラメータとなり得る。さらに、少なくとも1つの更なる測定信号を、例えば加速度センサ又は直接経路測定システム又はそれに類するものを用いて、捕捉することができる。
【0009】
本方法のさらに有利な一実施形態によれば、一定の送り速度による測定走行の信号の評価の際には、作業範囲の最初における加速段階の信号と、最後における制動段階の信号とを捕捉しない。過渡的な加速段階又は制動段階によって、再現性のない信号が発生する可能性があり、その信号は状態捕捉に不利な影響を及ぼす、又は、状態捕捉を少なくとも著しく困難にする。
【0010】
測定走行の間において、好ましくは、ピニオン・ラック駆動装置のモータの駆動電流の一時的な測定値を捕捉し、軸位置に応じて記録する。個別に捕捉された区分を組み合わせて、全体的な測定値とすることができる。分析は、個々の区分に対してのみ、又は複数の区分からなる全体的な測定値に対して行うことができる。リニア軸に沿った信号の詳細な分解能を実現できる。好ましくは、ピニオンの歯のラックへの係合を、軸位置に対応する局所的な周期性によって捕捉し、且つ記録する。これは、個々の歯の状態の捕捉を可能にするとともに、駆動ピニオンの円周にわたる周期的な(periodisch)割り当てによって、駆動ピニオンの同心度の捕捉を可能にする。
【0011】
特に、駆動ピニオンの円周にわたる周期的な割り当てを、好ましくは、ピニオンの1回転から生じる振幅の形態において、事前のものとは異なる色によって出力する。それによって、測定走行によって、複数の色パターンがディスプレイに表示可能になり、これによって、それぞれの軸位置に割り当てられたピニオンの1回転が、隣のピニオンの1回転又はピニオンのそれ以上の回転からずれているかどうか、またどの程度ずれているかを視覚的に容易に認識することができる。例えば、ピニオンの1回転に対して記録された振幅のシーケンスにおいて、増加した振幅、例えば3番目の振幅によって、3番目の歯が摩耗していること、或いは損傷していること、又は、場合によっては歯が破損していることを突き止めることができる。これは、駆動ピニオンの円周にわたる測定値の空間的配置に対応する。
【0012】
さらに、例えば、リニア軸の全作業範囲にわたって見たときに、個々の区分又は作業範囲に並んだラックセグメントの摩耗又は損傷又は位置ずれが増加しているかどうかを、一列に並んだいくつかの振幅が隣接する値とは異なる値を有する場合においては、認識することができる。このような特定の箇所又は特定の領域における摩耗の増加は、例えば、連続生産又は大量生産における場合のように、ワークピースの加工がより長期間にわたって、常に同じトラバース区間において、従って同じ反転箇所において、制御される場合に生じ得る。
【0013】
本方法のさらに好ましい一実施形態においては、数学的方法によって、捕捉された駆動電流の振幅の上側及び下側の測定値から包絡線を算出し、且つ、例えばディスプレイに出力することを提供する。好ましくは、上側と下側の直線を、振幅の上側と下側の測定値の極値の統計上のパラメータから形成し、これらを包絡線と比較するために、同様に表示する。それによって、全作業範囲に沿った個々の事象が即座に認識可能であり、及び/又は数学的に算出可能である。これらの事象は、例えば、ピニオンとラックとの間に局所的なエラー箇所があり、そのエラー箇所は所定の許容範囲外であり、機械の加工に必要な精度を保証できなくなることを指摘可能である。それによって、検査すべきピニオン・ラック対の位置が直ちに指摘され、修理のための更なる適切な措置を講じることができる。
【0014】
摩耗の検出のために、又は、摩耗が許容範囲を超えることが見込まれる時期の予測を立てるために、最初の測定走行と、少なくとも1回のさらなる測定走行とを、時間的な間隔において、特に毎日、毎週、毎月、及び/又は毎年、実行することができる。全作業範囲にわたる振幅の比較によって、状態変化を捕捉し、予測することができる。それによって、生産段階中における不具合を回避するために、例えば、先見的にメンテナンスを指示し、メンテナンスを実行することができる。
【0015】
好ましくは、上記方法において、状態又は状態変化として、歯の破損、同心度エラー、バックラッシュ、並んだ2つのラックの移行部における組立てエラー、及び/又は、更なる部品における組立てエラーを、捕捉し、評価する。この状態又は状態変化の捕捉は、好ましくは、加工機のデータ処理装置において実行することができる。好ましくは、データ分析のために、測定データの所定の経路ラスタ(Wegraster)への補間を実行することができる。これによって、状態の検出のための測定走行は、加工機の停止時間中にも実行することができる。さらに、このような状態監視は、オペレータのためのデジタル・サービス/スマート・サービスとして使用することができる。それによって、遠隔診断も可能である。
【0016】
以下、図面に示す実施例を参照しながら、本発明及びそのさらに有利な実施形態及びさらなる形態についてより詳細に説明する。本明細書及び図面から認識される特徴は、本発明に従って、個々において又は任意の組み合わせにおいて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】板状ワークピースを加工するための加工機の斜視図である、
【
図2】駆動装置によってトラバース可能な軸の概略的な拡大図である、
【
図3】トラバース軸が沿って制御されるリニア軸の全作業範囲にわたるモータ電流を示すグラフである、
【
図4】
図3による図の高解像度における部分図である、
【
図5】加工機の使用開始における、作業範囲の1つの区分にわたるモータ電流を示すグラフである、
【
図6】加工機の長時間運転後の、作業範囲の1つの区分にわたるモータ電流を示すグラフである、
【
図7】局所的なエラーを伴う、全作業範囲にわたるモータ電流を概略的に示す図である、
【
図8】別のエラーを示す、全作業範囲にわたるモータ電流の別のグラフである。
【
図9】バックラッシュにエラーがある場合の、全作業範囲にわたるモータ電流の別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、例えば金属製の板状ワークピース8を分離加工する設備1の斜視図が示される。この設備1は、加工機2を含む。この加工機2は筐体4に囲まれている。筐体4の内部には加工ステーション5が設けられ、この加工ステーション5には、水平な動作面内においてトラバース可能に制御される少なくとも1つの加工ヘッド7を収容するリニア軸配置部6が設けられている。筐体4の外側には、例えば、積み込み・積み降ろしステーション10が設けられている。これは、板状ワークピース8を加工ステーション5に供給するために、板状ワークピース8が加工用に置かれる少なくとも1つの可動パレット11を含む。加工後、加工された板状ワークピース8は、パレット11から積み降ろすために、パレット11によって積み込み・積み降ろしステーション10に戻される。
【0019】
加工機2は、例えば、レーザ切断機として形成され得る。代替的には、加工機2は、プラズマ切断機、パンチングレーザ機、レーザ溶接機、又はパンチング機として形成され得る。
【0020】
図2には、
図1の細部Xの概略的な拡大図が示される。リニア軸配置部6は、機械部品としてのトラバース軸14を含み、このトラバース軸14は、機械基体16上において、リニア軸15に沿って、X方向に及びX方向の逆方向にトラバース可能に制御される。加工ヘッド7は、軸14に沿ってY方向にトラバース可能に制御される。駆動装置21、特にピニオン・ラック駆動装置は、機械基体16に沿ったトラバース動作の制御のために設けられている。このピニオン・ラック駆動装置21によって、軸14は、機械基体16上に配置されたリニア軸15のガイド17に沿って、X方向に及びX方向の逆方向にトラバース可能である。このガイド17は機械基体16に取り付けられている。ガイド17に隣接してラック23が配置されている。ラック23は、同様に機械基体16に取り付けられている。モータ22、及びモータ軸に配置された、ピニオン・ラック駆動装置21のピニオン24は、軸14とともにガイド17に沿ってトラバースする。ピニオン・ラック駆動装置21の左右に隣接して、ラック23及びガイド17を汚れから保護するためのベローズ18が型どおりに設けられている。
【0021】
このピニオン・ラック駆動装置21は、トラバース軸14の制御に代えて、機械基体16に対してトラバース可能な他の機械部品を駆動することもできる。
【0022】
代替的には、リニア軸配置部6は、より詳細には図示されていない加工機内において、片側に取り付けられ加工ヘッド7が設けられるトラバース軸14によって形成することができる。このトラバース軸14は、既に上記したように、ガイド17に沿って、X方向に及びX方向の逆方向にトラバース可能である。
【0023】
設備1を制御するために、データ処理装置9が設けられており、このデータ処理装置9は、加工機2の状態捕捉のための信号を分析し、好ましくはディスプレイ12に出力するための数学的方法又は数学的演算を含む。このディスプレイ12は、筐体4に設けてもよい。また、ディスプレイ12は、筐体4とは別に制御柱に設けてもよい。同様に、データ処理装置9と特に無線によって通信し、ディスプレイ12を含む、携帯電話、タブレットなどのモバイル表示機器をさらに設けることもできる。データ処理装置9は、例えばクラウド運用の形において、実際の機械制御の外部に配置することもできる。
【0024】
ピニオン・ラック駆動装置21の状態検出のために、データ又は複数の信号が加工機2から捕捉され、データ処理装置9において処理及び評価される。これらの信号は、例えば、ピニオン・ラック駆動装置21のモータ22の駆動電流又はモータ電流、特にトルク形成駆動電流とすることができる。さらに、モータ22の回転数もさらなる信号として捕捉することができ、あるいは分析に適した他の各信号(例えば、外部センサ、例えば加速度センサの、同期して記録される値)も捕捉することができる。この記録は、信号を後にそれぞれの軸位置に割り当てる、又は任意に補間することによって、別個のデータ捕捉ユニットによって行うこともできる。これらの信号は、リニア軸15の全作業範囲又は全トラバース範囲にわたって捕捉される。全作業範囲は、リニア軸15の長さを有し、そのリニア軸15に沿って、ピニオン・ラック駆動装置21は筐体4内、特に加工機2内においてトラバース可能である。1つ又は複数のラックが、リニア軸15の長さに沿って並べて設けられている。データ処理装置9によって受容された信号は、各信号がリニア軸15に沿って規定された位置に割り当てられるように、同期して、且つ位置に結びつけて捕捉及び処理される。
【0025】
図3には、リニア軸15の全作業範囲のトラバース経路をX軸に沿って描いた概略的なグラフが示される。Y軸に沿って、モータ22の駆動電流がアンペア単位において描かれている。そこに示され、並べられた振幅は、全作業範囲に沿った均質な画像を示している。このブラフには多数の振幅が並んでおり、それら振幅は例えば個々のシーケンス27,28,29に細分化されている。これらは、例えば、互いに色が異なる表示を含むことができる。各シーケンス27,28,29は、ラック23に沿ってトラバースされるピニオン24の完全な1回転を示している。
【0026】
図4には、例えばシーケンス27が拡大して示される。シーケンス27内の各振幅はピニオン24の1つの歯を表し、その際、各振幅は作業範囲に沿って規定された軸位置に割り当てられている。これによって、それぞれの位置におけるラック23に関係するピニオン24の個々の歯の状態を評価することができる。
【0027】
全作業範囲にわたる
図3による振幅の記録は、作業範囲の最初においては加速段階31を、また、最後においては制動段階32を捕捉しないことを示している。それらの間においては、トラバース軸のトラバース動作は一定の送り速度に制御されている。全作業範囲にわたって振幅に関して一定の状況にある限り、ピニオン・ラック駆動装置21には摩耗がないか、又は均一の摩耗であると推論される。
【0028】
信号、特に振幅を捕捉するために、リニア軸15に沿って全作業範囲にわたるトラバース軸14の測定走行が、プラスX方向に制御され、又は、逆のマイナスX方向に反対向きに制御される。
図3の表示においては、測定走行の信号は、リニア軸15の動作方向に及び逆の動作方向において、全作業範囲にわたって互いに入り混じって示されている。
【0029】
図5は、
図4のシーケンス27を概略的に拡大して示している。振幅の上側及び下側の測定値は、非常に均質に推移し、非常に狭い帯域幅範囲にある。捕捉された信号のこの評価は、例えば、ピニオンの1回転の間に、ラック23に対するピニオン24の識別可能な同心度エラーが存在しないことを示している。加工機2のこの状態は、特に最初の使用開始の際に直ちに捕捉することができる。
【0030】
比較として、
図6によれば、
図5と同じ作業範囲における同じ軸位置に関するグラフが示されている。同様に、捕捉された信号からのアナログのシーケンス27が示されている。上下の捕捉された振幅の測定値に基づいて、これらは
図5のものと比較してより大きなばらつきを有していることがわかる。
図6に示す測定は、加工機2の長い運転の後に行われた。
図5の振幅との相違、例えば振幅のバラツキによって、ラック23に対するピニオン24の同心度のエラーが捕捉される。この状態は、例えば、
図5のシーケンス27と
図6のシーケンス27との比較によって捕捉することができる。それは、例えば、振幅の上側及び下側の測定値によってそれぞれの平均値を形成し、この上側及び下側の平均値について、それぞれ分散幅を確定することによってである。適切な同心度のためには、その分散幅内に振幅の上側及び下側の測定値がなければならない。
図6によるシーケンス27においては、それぞれの振幅の個々の上側及び下側の測定値は、このような分散幅の外側にある。これによって、同心度が許容範囲外であると検出することができる。
【0031】
図7は、ピニオン・ラック駆動装置21の状態検出のための、捕捉された信号のさらなる評価を示す。このグラフにおいては、測定走行が、リニア軸15の動作方向に及び逆の動作方向において、Y方向のゼロ軸に沿った共通の特性曲線に描かれている。個々の振幅は、全作業範囲にわたってX軸に対して位置的に正確に描かれている。このグラフにおいては、例えば、隣接する範囲の数倍の振幅を有する2つの局所的なエラー35,36が示されている。この場合、これは、例えば、1つのラックから隣のラックへの移行部における局所的で幾何学的なズレである。エラー35,36の正確な位置の指定に基づいて、第1及び第2のエラー35,36の間の距離は、ピニオン・ラック駆動装置21の形成のためにこの加工機2に設置されるラック23の長さに対応することがわかる。そのため、これら2つのエラー35,36に基づいて、2つのラック23間の移行部領域にエラーがあり、許容範囲外のバックラッシュがあると検出することができる。
【0032】
このグラフから、さらに、エラー35,36と比べて小さい振幅37,38,39によって、大きい振幅の際のこれらの振れが、規則的な間隔において、すなわちピニオン24の各回転の際に、繰り返されることがわかる。そのことから、このエラーが駆動ピニオンの円周によって定期的に繰り返されるため、ピニオン24にエラーがあるに違いないと検出することができる。ピニオン24の完全な回転のためのそれぞれのシーケンスを拡大させると、それに基づいて、振幅37,38,39がシーケンス内の同じ箇所、例えば3番目の振幅において常に発生することを突き止めることができる。それに基づいて、この状態変化は常にピニオン24の同じ歯によって引き起こされることを突き止めることができる。
【0033】
図8には、加工機2のトラバース軸14用のピニオン・ラック駆動装置21の状態を検出するための別の概略的な表示が示されている。この表示においては、軸に沿った第1のトラバース方向に対する駆動電流が、逆方向のトラバース方向とは別に示されている。下側の特性曲線34は、例えばX方向のトラバース方向を示している。上側の特性曲線33は、例えばX方向と逆のトラバース方向を示している。下側の特性曲線34は、1つの事象41を除いて、全作業範囲にわたって均質な推移を含む。上側の特性曲線33は、事象42を除いて、同様に均質な推移を示している。事象41,42は、作業範囲内において同じ位置にあるが、振幅の大きさが互いに異なる。この表示によって、ピニオン・ラック駆動装置21の摩耗又は障害は、互いに異なる個々の事象のために、起こり得る損傷に関して影響を受けない、という評価が可能になる。本実施形態の場合において、例えば、特にベローズ18に組立エラーがあり、このベローズは、駆動キャリッジ25の周りのベローズへの接続、又はリニア軸15に沿って隣接するベローズ18への接続に起因して、逆方向に異なる挙動を示すと検出することができる。
【0034】
図9には、全作業範囲に沿った測定走行の別の概略的な表示が示されている。この表示においては、軸に沿った往路と復路が、同様に、下側と上側の特性曲線33,34に別々に示されている。上下の特性曲線33,34は、作業範囲内の同じ位置に2つのエラー45,46を示している。これらは、2つのエラーの間の距離にも起因して、隣接するラック23が互いにオフセットしており、バックラッシュにエラーがあることを意味している。バックラッシュのエラーは、加工機2において、例えば衝撃又は振動などのノイズを増加させる作用がある。これは不正確な加工につながり、その結果、ワークピースの輪郭が損傷したり丸くなったりする。このようにバックラッシュのエラーは精度を低下させる。ピニオン・ラック駆動装置21は、バックラッシュに対して所定の許容範囲に設定されている。
図9に示すエラー45,46のズレはこの許容範囲外である。これはデータ処理装置9によって検出される。ディスプレイ12には、それに応じてエラー45,46を視覚的に強調することができる。
【0035】
ピニオン・ラック駆動装置21は、許容範囲内においてのバックラッシュ補正が可能である。エラー45,46の範囲内において、これらの突き止められたズレを補正するために、作業者によって調整を行うことができる。その後、1回以上の測定走行が新たに行われ、上下の特性曲線33,34が新たに評価される。エラー45,46が引き続き許容範囲外である場合、これは部品の交換が必要であることを意味している。
【0036】
さらに、好ましくは、全作業範囲に沿った測定走行の後において、好ましくは往路及び復路に沿った測定走行の後において、ピニオン・ラック駆動装置21のバックラッシュの正確な値を決定するために、トラバースによって、結果として、局所的な測定トラバースを実行する測定位置を出力することが、提供され得る。これは、例えば、作業空間における最良及び最悪の位置となる可能性がある。
【符号の説明】
【0037】
2 加工機
9 データ処理装置
14 トラバース軸
15 リニア軸
21 ピニオン・ラック駆動装置
22 モータ
23 ラック
24 ピニオン
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(2)内のトラバース軸(14)用のピニオン・ラック駆動装置(21)の状態を検出する方法であって、
前記トラバース軸(14)の少なくとも1回の測定走行を、リニア軸(15)の全作業範囲にわたって実行し、
前記測定走行を、前記リニア軸(15)の少なくとも一方の動作方向において、一定の送り速度による前記トラバース軸(14)のトラバース動作によって制御し、
前記測定走行の間において、信号を、前記リニア軸(15)に対する前記トラバース軸(14)の軸位置に応じて捕捉し、
捕捉された前記信号を、データ処理装置(9)において、前記軸位置に応じて評価し、且つ数学的方法によって分析する、方法。
【請求項2】
1回の前記測定走行の間において、前記トラバース軸(14)のトラバース動作を、前記リニア軸(15)の全作業範囲にわたって、両方の動作方向においてそれぞれ制御し、好ましくは、前記両方の動作方向の比較を実行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の測定走行を連続して制御し、
各測定走行を、固有の、且つ先行する測定走行とは異なる送り速度によって制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の測定走行の間において、前記ピニオン・ラック駆動装置(21)のモータ(22)のトルク形成駆動電流を、前記リニア軸(15)の前記軸位置に応じた信号として捕捉することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記モータ(22)の回転数を、及び/又は、少なくとも1つのさらなる測定信号を、特に加速度センサ又は直接経路測定システムによって、前記リニア軸(15)に沿った前記軸位置に応じて捕捉することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一定の送り速度による前記測定走行の間において、作業範囲の最初における加速段階の信号と、最後における制動段階の信号をと捕捉しないことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記測定走行の間において、モータ(22)の駆動電流の一時的な測定値を捕捉し、且つ前記リニア軸(15)の前記軸位置に応じて表示することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項8】
ピニオン(24)の歯のラック(23)への係合を、前記ピニオンの円周にわたる周期的な割り当てによって、好ましくは前記軸位置に対応する振幅の表示において捕捉し、且つ記録することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピニオン(24)の各完全な1回転に対する前記周期的な割り当てを、事前のものとは異なる色によって出力することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記数学的方法によって、捕捉された駆動電流の振幅の上側及び下側の測定値から包絡線をそれぞれ形成し、且つディスプレイに出力することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記振幅の上側測定値と前記振幅の下側測定値とから上側平均値と下側平均値とをそれぞれ形成し、並びに、
前記包絡線と、平均値によって形成される直線とを表示し、且つ解析のために相関させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
最初の測定走行と少なくとも1回のさらなる測定走行とを、時間的な間隔において、特に、毎日、毎週、及び/又は毎月、実行し、
前記全作業範囲にわたって捕捉された振幅全体の比較によって、少なくとも1つの状態変化を捕捉し、且つ、好ましくは先見的に検出することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項13】
状態として、歯の摩耗、歯の破損、同心度エラー、バックラッシュ、並んだ2つのラックの移行部における組立量、ラックの局所的な欠陥、前記トラバース軸(14)の、特に、リニアガイドシステムの、及び/又は前記リニア軸(15)の、さらなる部品における組立エラー又は欠陥、を捕捉し、評価することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項14】
リニア軸(15)に沿ったトラバース軸(14)用のピニオン・ラック駆動装置(21)の状態を検出するための加工機(2)であって、
少なくとも1つのデータ捕捉装置を備え、
そのデータ捕捉装置は、少なくとも1回の測定走行の間に捕捉される信号を、全作業範囲にわたる軸位置に応じて捕捉し、且つ評価し、並びに数学的方法によって分析する、加工機(2)。
【請求項15】
正確な値、特に、前記ピニオン・ラック駆動装置(21)のバックラッシュの正確な値を局所的な測定方法によって決定するための測定位置を、前記データ処理装置(9)による測定信号の分析の結果として出力することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【国際調査報告】