(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】哺乳類の樹状細胞の過剰活性化因子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240319BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240319BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240319BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240319BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61K39/39
A61K35/17
A61K47/34
A61K9/14
A61P37/04
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506588
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022071664
(87)【国際公開番号】W WO2022221827
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523385846
【氏名又は名称】コーナー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フィン, ケルシー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】チャウ, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ゴセリン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ジヴァキ, ダニア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD09F
4C076EE23F
4C076GG05
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA01
4C085FF02
4C085FF12
4C085FF14
4C085FF18
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、リゾホスファチジルコリン(LPC)化合物、および哺乳類の樹状細胞、例えばヒト樹状細胞またはイヌ樹状細胞の過剰活性化におけるその使用に関する。本開示はまた、LPCと、病原体認識受容体アゴニスト、抗原、および哺乳類の樹状細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物、ならびに組成物の製造および使用のための方法にも関する。特に、本開示は、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含み、該アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含む組成物であって、前記アシル鎖がC13~C24アシル鎖である組成物。
【請求項2】
前記アシル鎖が、C18~C22アシル鎖またはC21~C24アシル鎖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗原をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
樹状細胞をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、抗原とを含む組成物であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物。
【請求項6】
樹状細胞をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
TLR7/8アゴニストをさらに含む、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と樹状細胞とを含む組成物であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物。
【請求項9】
TLR7/8アゴニストをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
抗原をさらに含む、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記アシル鎖がC22アシル鎖である、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アシル鎖が完全に飽和している、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記LPCが1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記TLR7/8アゴニストが、NLRファミリーパイリンドメイン含有3(NLRP3)を阻害しない、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記LPCがLPC(22:0)を含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗原が、個体から得られた生体試料中に存在する、請求項1から18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記生体試料が生検組織を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記生体試料が細胞を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記生体試料が細胞を含まない、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記生体試料が、膿瘍からの膿を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記抗原がタンパク質性抗原を含む、請求項1から23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗原が腫瘍抗原を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記腫瘍抗原が、合成または組換えネオ抗原を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞溶解物を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記腫瘍抗原が、微生物抗原を含み、前記微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、原虫抗原、および真菌抗原のうちの1つまたは複数を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記微生物抗原が精製または組換え表面タンパク質を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記微生物抗原が不活化されたウイルス全体を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物がリポソームを含まない、請求項1から30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物がLPSまたはMPLAを含まない、請求項1から31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、oxPAPCまたはoxPAPCの種を含まない、請求項1から32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、HOdiA-PC、KOdiA-PC、HOOA-PC、KOOA-PC、および/またはPGPCを含まない、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
アジュバントをさらに含み、前記アジュバントが、アルミニウム塩アジュバント、水中スクアレン-エマルジョン、サポニン、またはそれらの組合せを含む、請求項1から34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか1項に記載の組成物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬製剤。
【請求項37】
過剰活性化樹状細胞を産生するための方法であって、前記方法が、過剰活性化樹状細胞の産生のために、単一のC13~C24アシル鎖を有する有効量の単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含む組成物に前記樹状細胞を接触させることを含み、前記過剰活性化樹状細胞はパイロトーシスを起こさずにIL-1ベータを分泌する、方法。
【請求項38】
前記樹状細胞を、エクスビボで、請求項1から35のいずれか1項に記載の組成物または請求項36に記載の製剤と接触させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記樹状細胞を、請求項36に記載の製剤とインビボで接触させる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法によって産生された少なくとも10
3、10
4、10
5個または10
6個の前記過剰活性化樹状細胞と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤。
【請求項41】
抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、有効量の請求項36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与して、前記抗原に対する前記免疫応答を刺激することを含む、方法。
【請求項42】
有効量の請求項36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与して前記がんを処置することを含む、がんを処置する方法。
【請求項43】
異常な細胞増殖を阻害する方法であって、異常な細胞増殖を阻害するために有効量の請求項36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与することを含む方法。
【請求項44】
感染性疾患を処置する方法であって、有効量の請求項36に記載の製剤を、前記感染性疾患を処置するために、投与することを必要とする個体に投与することを含む方法。
【請求項45】
前記抗原に対する免疫応答を、誘導することを必要とする個体において誘導するための、請求項36に記載の製剤の使用。
【請求項46】
抗腫瘍免疫応答を、誘導することを必要とする個体において誘導するための請求項36に記載の製剤の使用であって、前記個体が腫瘍を担持しているか、または腫瘍を担持していた、使用。
【請求項47】
抗微生物免疫応答を誘導することを必要とする個体において誘導するための請求項36に記載の製剤の使用であって、前記個体が前記微生物に感染しているか、または前記微生物に曝露されていない、使用。
【請求項48】
前記個体が哺乳動物対象である、請求項19から47のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項49】
前記個体がヒト対象である、請求項19から47のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項50】
免疫原性組成物の調製方法であって、該方法は、
a)腫瘍から調製した細胞の懸濁液から白血球を枯渇させて、腫瘍細胞富化懸濁液を得るステップと;
b)前記腫瘍細胞富化懸濁液から細胞を溶解し、腫瘍細胞溶解物を得るステップと;
c)前記腫瘍細胞溶解物を、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)およびtoll様受容体7/8(TLR7/8)アゴニストと接触させて、前記免疫原性組成物を得るステップであって、前記アシル鎖がC13~C24アシル鎖であるステップと
を含む方法。
【請求項51】
ステップa)において、抗CD45抗体を使用するネガティブ選択によって前記白血球を枯渇させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、ステップb)において、1またはそれを超える凍結融解サイクルによって溶解される、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記アシル鎖が、完全飽和C18~C22アシル鎖または完全飽和C18~C24アシル鎖である、請求項50から52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記LPCが、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、請求項50から54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記TLR7/8アゴニストが、NLRファミリーパイリンドメイン含有3(NLRP3)を阻害しない、請求項55または請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記LPCがLPC(22:0)を含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
ステップa)の前に、がんを有する哺乳動物対象からの前記腫瘍から試料を得て、前記試料から細胞の前記懸濁液を調製するステップをさらに含む、請求項50から59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
請求項50から60のいずれか1項に記載の方法によって調製された免疫原性組成物。
【請求項62】
抗がん免疫応答を誘発する方法であって、前記方法が、
がんを有する哺乳動物対象に、有効量の請求項61に記載の免疫原性組成物を投与するステップ
を含む、方法。
【請求項63】
前記抗がん免疫応答が細胞性免疫応答を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記抗がん免疫応答が、がん抗原誘導性IL-1ベータ分泌および/またはCD8+Tリンパ球の活性化を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記がんが非血液がんである、請求項62から64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記非血液がんが、癌、肉腫または黒色腫である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記がんがリンパ腫である、請求項62から64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
がんを処置する方法であって、前記方法は、
a)腫瘍細胞溶解物、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)、およびtoll様受容体7/8(TLR7/8)アゴニストを含む免疫原性組成物を調製するステップであって、前記腫瘍細胞溶解物は、がんを有する哺乳動物対象から得た腫瘍の試料であるかまたはそれから調製されており、前記アシル鎖はC13~C24アシル鎖であるステップと、
b)前記被験体に有効量の前記免疫原性組成物を投与するステップと
を含む、方法。
【請求項69】
前記アシル鎖が、完全飽和C18~C22アシル鎖または完全飽和C18~C24アシル鎖である、請求項62から68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記LPCが、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、請求項62から70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記LPCが22:0 LPCを含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
有効量の追加の治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項68から74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤、抗新生物剤、および放射線治療からなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)および病原体認識受容体(PRR)アゴニストを含む組成物であって、前記アシル鎖がC13~C24アシル鎖である、組成物。
【請求項78】
前記PRRアゴニストが、toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)またはC型レクチン受容体(CLR)のアゴニストである、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記PRRアゴニストが、細胞質DNAセンサー(CDS)のアゴニストまたはIFN遺伝子の刺激因子(STING)である、請求項77に記載の組成物。
【請求項80】
前記PRRアゴニストが、R848、TL8-506、LPS、Pam2CSK4およびODN2336のうちの1つまたは複数を含む、請求項77に記載の組成物。
【請求項81】
抗原をさらに含む、請求項77~80のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項82】
樹状細胞をさらに含む、請求項77から81のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項83】
請求項77から82のいずれか1項に記載の組成物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬製剤。
【請求項84】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である、医薬製剤。
【請求項85】
前記アシル鎖が完全飽和C22アシル鎖である、請求項83または請求項84に記載の医薬製剤。
【請求項86】
前記LPCが1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、請求項85に記載の医薬製剤。
【請求項87】
単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、病原体認識受容体(PRR)アゴニストとを含む、ヒト樹状細胞を過剰活性化するための組成物であって、前記アシル鎖がC22アシル鎖であり、前記組成物が、前記LPCの代わりにPGPCを含む比較対照組成物よりも高いレベルの樹状細胞の過剰活性化を達成するのに有効である組成物。
【請求項88】
前記高いレベルの樹状細胞の過剰活性化が、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記組成物に接触させた場合に、前記PGPCと前記PRRアゴニストとを含む前記比較対照組成物に接触させた場合よりも少なくとも2、3または4倍高いレベルの、インビトロでの前記ヒト樹状細胞からのIL-1ベータ分泌の誘導を含み、前記PRRアゴニストがLPSである、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
前記LPCの前記濃度および前記PGPCの前記濃度が、約10μM~約80μMの範囲内の同じ濃度であり、前記LPSが、前記組成物と前記比較対照組成物の両方で1μg/mlの濃度で存在する、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
前記高いレベルの樹状細胞の過剰活性化が、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記組成物について、ヒト樹状細胞からのIL-1ベータ分泌に対する脂質活性指数を含み、これは、活性単位において、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記比較対照組成物の脂質活性指数よりも少なくとも4、5または6倍高い、、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
前記個体がイヌ対象である、請求項19から47のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項92】
前記哺乳動物対象がヒト患者である、請求項60から90のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項93】
前記哺乳動物対象が非ヒト患者である、請求項60から90のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項94】
前記哺乳動物対象がイヌ患者である、請求項60から90のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項95】
前記樹状細胞がヒト樹状細胞である、請求項1から90または92のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項96】
前記樹状細胞がイヌ樹状細胞である、請求項1から91または94のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項97】
前記樹状細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)を含む組成物中に存在する、請求項95または請求項96に記載の組成物、方法または使用。
【請求項98】
前記過剰活性化樹状細胞が、IFNγおよびTNFαの一方または両方を分泌する、請求項37~49または請求項91のいずれか1項に記載の組成物、方法または使用。
【請求項99】
界面活性剤を含む、請求項1~98のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項100】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項99に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項101】
前記非イオン性界面活性剤が、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーを含む、請求項100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項102】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー407、ポロキサマー188およびP123のうちの1つまたは複数を含む、請求項100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項103】
前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー407を含む、請求項100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項104】
i)前記LPCをアルコールに溶解してLPCアルコール溶液を形成し;ii)前記LPCアルコール溶液を前記非イオン性界面活性剤と混合して混合物を形成し;iii)前記アルコールを前記混合物から蒸発させて前記LPCと前記非イオン性界面活性剤を含む粒子を形成する、請求項100から103のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項105】
前記非イオン性界面活性剤が、約2.5%~25%(w/w)、必要に応じて約5%~20%(w/w)、必要に応じて約15%(w/w)の量で存在する、請求項100から104のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【請求項106】
前記LPCおよび非イオン性界面活性剤が、約1000から2000ナノメートルの直径を有し、必要に応じて約1500ナノメートルの直径を有する粒子中に存在する、請求項100から105のいずれか1項に記載の組成物、製剤、方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月21日に出願された米国特許仮出願第63/246,740号および2021年4月12日に出願された米国特許仮出願第63/173,958号の利益を主張し、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルとしての配列表の提出
なし。
【0003】
分野
本開示は、リゾホスファチジルコリン(LPC)化合物、および哺乳類の樹状細胞、例えばヒト樹状細胞またはイヌ樹状細胞の過剰活性化におけるその使用に関する。本開示はまた、LPCと、病原体認識受容体アゴニスト、抗原、およびヒトもしくはイヌ樹状細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物、ならびに組成物の製造および使用のための方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
背景
通常、Toll様受容体アゴニストなどのワクチンアジュバントによる樹状細胞(DC)の成熟は、IL-1ベータ分泌につながらない。インフラマソーム活性化などの状況では、IL-1ベータ分泌が起こるが、その代償として、パイロトーシスと呼ばれる細胞死の溶解プロセスによるDC死が起こる(Evavoldら、J Mol Biol,430(2):217-237,2018)。しかし、病原体関連分子パターン(PAMP)含有分子であるリポ多糖(LPS)およびダメージ関連分子パターン(DAMP)含有分子、例えばPGPC(1-パルミトイル-2-グルタリル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)を使用してDCを成熟させると、パイロトーシスを伴わずにIL-1ベータを産生および分泌し、これらの生存可能なDCは過剰活性として特徴付けられる(Zanoniら、Science,352(6290):1232-1236,2016)。実際、マウスモデルでは、過剰活性化したDCは、LPSのみを使用して活性化した細胞と比較して、免疫応答を誘導する能力が向上していることが示された(Zhivakiら、Cell Rep,33(7):108381,2020)。しかし、ヒトDCの過剰活性化に有効な刺激についてはほとんど知られていない。
したがって、ヒトDCの過剰活性化に適したPAMPおよびDAMPの同定が当技術分野で必要とされている。さらに、哺乳類DCの過剰活性化のためのLPSおよびPGPCの使用に代わるものの同定が望ましい。特に、LPS(エンドトキシン)は強力なPAMPであるが、敗血症性ショックを引き起こす可能性があるため、ヒトへの使用は禁忌である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Evavoldら、J Mol Biol,430(2):217-237,2018
【非特許文献2】Zanoniら、Science,352(6290):1232-1236,2016
【非特許文献3】Zhivakiら、Cell Rep,33(7):108381,2020
【発明の概要】
【0006】
簡単な概要
本開示は、リゾホスファチジルコリン(LPC)化合物、および哺乳類の樹状細胞、例えばヒト樹状細胞またはイヌ樹状細胞の過剰活性化におけるその使用に関する。本開示はまた、LPCと、病原体認識受容体アゴニスト、抗原、およびヒトもしくはイヌ樹状細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物、ならびに組成物の製造および使用のための方法にも関する。
【0007】
特に、本開示は、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含み、該アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である組成物を提供する。いくつかの実施形態では、アシル鎖は、C18~C22アシル鎖、C21~C24アシル鎖、またはC22アシル鎖である。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原および/または樹状細胞をさらに含む。
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、抗原とを含み、該アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、樹状細胞および/またはTLR7/8アゴニストをさらに含む。
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、樹状細胞とを含み、該アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、TLR7/8アゴニストおよび/または抗原をさらに含む。
【0010】
前述の態様のいくつかの実施形態では、抗原は、個体から得られた生体試料中に存在する。いくつかの実施形態では、生体試料は生検組織を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は細胞を含む。他の実施形態では、生体試料は細胞を含まない。いくつかの実施形態では、生体試料は、膿瘍からの膿を含む。いくつかの実施形態では、抗原はタンパク質性抗原を含む。いくつかの実施形態では、抗原は腫瘍抗原を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は合成または組換えネオ抗原を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は腫瘍細胞溶解物を含む。いくつかの実施形態では、抗原は微生物抗原を含み、微生物抗原はウイルス抗原、細菌抗原、原虫抗原、および真菌抗原のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、微生物抗原は、精製または組換え表面タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、微生物抗原は、不活化されたウイルス全体を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物はリポソームを含まない。いくつかの実施形態では、組成物はLPSまたはMPLAを含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、oxPAPCまたはoxPAPCの種を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、HOdiA-PC、KOdiA-PC、HOOA-PC、KOOA-PC、および/またはPGPCを含まない。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物は、アジュバントをさらに含み、アジュバントは、アルミニウム塩アジュバント、水中スクアレンエマルジョン、サポニン、またはそれらの組合せを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、前述の態様のいずれかの組成物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0014】
他の態様では、本開示は、過剰活性化樹状細胞を産生するための方法を提供し、この方法は、過剰活性化樹状細胞の産生のために、単一のC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖を有する有効量の単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含む組成物に樹状細胞を接触させることを含み、この過剰活性化樹状細胞はパイロトーシスを起こさずにIL-1ベータを分泌する。いくつかの実施形態では、樹状細胞に、前述の実施形態のいずれか1つの組成物または医薬製剤をエクスビボで接触させる。他の実施形態では、樹状細胞には、前述の実施形態のいずれか1つの組成物を含む医薬製剤をインビボで接触させる。いくつかの態様では、本開示は、前述の実施形態によって産生された複数の過剰活性化樹状細胞と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態では、複数は、少なくとも103、104、105、106、107個または108個の過剰活性化DCを含む。
【0015】
他の態様では、本開示は、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、病原体認識受容体(PRR)アゴニストとを含み、該アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である組成物を提供する。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)またはC型レクチン受容体(CLR)のアゴニストである。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、細胞質DNAセンサー(CDS)のアゴニストまたはIFN遺伝子の刺激因子(STING)である。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、TLR7/8アゴニストを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原および/または樹状細胞をさらに含む。
【0016】
前述の態様のいくつかの実施形態では、アシル鎖はC21~C24アシル鎖である。いくつかの実施形態では、アシル鎖はC22アシル鎖である。いくつかの実施形態では、アシル鎖は完全に飽和している。いくつかの実施形態では、LPCは、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む。
【0017】
前述の態様のいくつかの実施形態では、TLR7/8アゴニストは、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である。いくつかの実施形態では、TLR7/8アゴニストはイミダゾキノリン化合物を含む。いくつかの実施形態では、TLR7/8アゴニストは、レシキモド(R848)を含む。いくつかの実施形態では、LPCはLPC(22:0)を含み、TLR7/8アゴニストはレシキモド(R848)を含む。
【0018】
本開示はさらに、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)化合物と、病原体認識受容体(PRR)アゴニストとを含み、アシル鎖がC22アシル鎖である、ヒト樹状細胞の過剰活性化のための組成物であって、該組成物が、LPCの代わりにPGPCを含む比較対照組成物よりも、高いレベルの樹状細胞の過剰活性化を達成するのに有効である、組成物を提供する。いくつかの態様では、過剰活性化はインビトロまたはエクスビボで起こる。他の実施形態では、過剰活性化はインビボで起こる。いくつかの実施形態では、より高いレベルの樹状細胞の過剰活性化は、インビトロでのヒト樹状細胞からのIL-1ベータの分泌を、LPCとPRRアゴニストとを含む組成物に接触させた場合に、PGPCとPRRアゴニストを含む比較対照組成物に接触させた場合よりも少なくとも2、3または4倍高いレベルで誘導することを含み、ここで、PRRアゴニストはLPSである。いくつかの実施形態では、LPCの濃度とPGPCの濃度は同じ濃度であり、必要に応じて約10μM~約80μMの範囲であり、LPSは組成物と比較対照組成物の両方に1μg/mlの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、より高いレベルの樹状細胞の過剰活性化は、LPCとPRRアゴニストとを含む組成物について、ヒト樹状細胞からのIL-1ベータ分泌に対する脂質活性指数(lipid activity index)を含み、これは、活性単位において、LPCとPRRアゴニストとを含む比較対照組成物の脂質活性指数よりも少なくとも4、5または6倍高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、樹状細胞機能に対する様々な刺激の効果を示す模式図である。刺激に応じて、樹状細胞は静止状態を維持するか、または活性化、パイロトーシス、もしくは過剰活性化される。
【0020】
【
図2】
図2は、82.5μMの様々なリゾホスファチジルコリン化合物(LPC)の存在下、1μg/mLのLPSで活性化したヒト単球由来樹状細胞によるIL-1β分泌を示す。結果は、DCによるIL-1β分泌を促進するLPCの能力に、アシル鎖長が影響を及ぼすことを実証している。
【0021】
【
図3】
図3は、82.5μMの様々な脂質の存在下、1μg/mLのLPSで活性化したヒト単球由来樹状細胞によるIL-1β分泌を示す。結果は、少なくとも炭素数12のアシル鎖長を有するリゾホスファチジルコリン化合物(LPC)(12:0 Lyso PC、No.29)が、ヒトDCを刺激して、マウスDCをスクリーニングすることによって同定されたPGPCなどのDAMPと同等またはそれを上回るレベルで(22:0 Lyso PC、No.42)IL-1βを分泌させることができることを実証している。
【0022】
【
図4】
図4は、様々な化合物の脂質活性指数を示す。この指数は、ヒト単球由来樹状細胞によるIL-1β分泌が、LPSのみの対照よりも2倍高い最低濃度の逆数に、任意の濃度で観察された最大IL-1βシグナルを乗算することによって計算した。
【0023】
【
図5】
図5は、22:0 Lyso PCの存在下または非存在下で様々なPRRアゴニストと接触させたヒト単球由来樹状細胞によるIL-1β分泌を示す。
【0024】
【
図6A-6C】
図6A~
図6Bは、示された刺激による活性化の2日後のイヌ末梢血単核細胞(PBMC)によるIL-1β分泌を示し、それぞれ、R848単独と比較した総濃度(
図6A)およびドナーあたりの倍数変化(
図6B)として示される。結果は、22:0 LYSO PCをR848と組み合わせると、イヌPBMCを刺激して、PGPCまたはLPSおよびミョウバンなどのDAMPと同等またはそれより高いレベルでIL-1βを分泌させることができることを実証している。
図6Cは、示された刺激による活性化の2日後のイヌPBMCの相対生存率を示す。結果は、イヌPBMCが22:0のLYSO PCによる処理後も生存可能なままであることを実証している。
【0025】
【
図7A-7C】
図7A~7Bは、示された刺激による活性化の2日後のヒトPBMCによるIL-1β分泌を示し、総濃度(
図7A)およびR848単独と比較したドナーあたりの倍数変化(
図7B)として示される。結果は、22:0 LYSO PCをR848と組み合わせると、ヒトPBMCを刺激して、PGPCまたはLPSおよびミョウバンなどのDAMPと同等またはそれより高いレベルでIL-1βを分泌させることができることを実証している。
図7Cは、示された刺激による活性化の2日後のヒトPBMCの相対生存率を示す。結果は、ヒトPBMCが22:0 LYSO PCによる処理後も生存可能なままであることを実証している。
【0026】
【
図8A-8B】
図8A~8Bは、示された刺激による活性化の2日後のヒトPBMCによるIFNγ(
図8A)およびTNFα(
図8B)分泌を示し、R848単独と比較したドナーあたりの倍数変化として示される。結果は、22:0 LYSO PCをR848と組み合わせると、ヒトPBMCを刺激して、PGPCまたはLPSおよびミョウバンなどのDAMPと同等またはそれより高いレベルで他の免疫刺激性サイトカインを分泌することができることを実証している。
【0027】
【
図9A-9B】
図9A~9Bは、種々の活性化条件下(非刺激、または22:0 Lyso PCもしくはPGPCの存在下もしくは非存在下でR848と接触)での非ヒト霊長類の単球由来樹状細胞(moDC)による生存率(
図9A)およびIL-1β分泌(
図9B)を示す。
【0028】
【
図10A-10B】
図10A~10Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIL-1β分泌を示し、総濃度(
図10A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図10B)として示される。
【0029】
【
図11A-11B】
図11A~11Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIFN-γ分泌を示し、総濃度(
図11A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図11B)として示される。
【0030】
【
図12A-12B】
図12A~12Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIL-17a分泌を示し、総濃度(
図12A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図12B)として示される。
【0031】
【
図13A-13B】
図13A~13Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIL-23分泌を示し、総濃度(
図13A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図13B)として示される。
【0032】
【
図14A-14B】
図14A~14Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIFN-β分泌を示し、総濃度(
図14A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図14B)として示される。
【0033】
【
図15A-15B】
図15A~15Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIL-8分泌を示し、総濃度(
図15A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図15B)として示される。
【0034】
【
図16A-16B】
図16A~16Bは、示された刺激による活性化の2日後の非ヒト霊長類PBMCによるIL-6分泌を示し、総濃度(
図16A)およびR848単独と比較した倍数変化(
図16B)として示される。
【0035】
【
図17】
図17は、ヒトメモリーCD4+T細胞によるIFN-γ分泌を示す。
【0036】
【0037】
【0038】
【
図20】
図20は、R848単独で処理したmoDCとの共培養と比較した、R848および22:0 LYSO PCで処理したmoDCとの共培養の結果としてのヒトナイーブCD4+T細胞のTh1分極を示す。
【0039】
【
図21】
図21は、PBSまたは様々な濾過済みまたは無濾過の脂質製剤の存在下で培養したヒトmoDCの生存率を示す。
【0040】
【
図22】
図22は、PBSまたは様々な濾過済みまたは無濾過の脂質製剤の存在下で培養したヒトmoDCによるIL-1β分泌を示す。
【0041】
【
図23A-23B】
図23A~23Bは、PBSまたは様々な濾過製剤の存在下で培養したヒトmoDCによるIL-1β分泌(
図23A)および該ヒトmoDCの生存率(
図23B)を示す。
【0042】
【
図24】
図24は、動的光散乱によって求められる22:0 LYSOPC含有粒子サイズの特性評価を示す。
【0043】
【0044】
【0045】
【
図27】
図27は、示された条件下で培養されたマウスFLT3L分化cDC1およびcDC2細胞による共刺激分子(CD40)発現を示す。少なくとも2回の反復からの平均値およびSDが示され、データは少なくとも2つの独立した実験を表す。<0.05(
*)、<0.01(
**)または<0.001(
***)、%0.0001(
****)のP値は群間の有意差を示した。二元配置分散分析検定を使用した。
【0046】
【
図28A-28B】
図28A~28Bは、示された条件下で培養されたマウスFLT3L分化cDC1およびcDC2細胞によるCCR7(
図28A)およびCXCL16(
図28B)発現を示す。
【0047】
【
図29】
図29は、示された条件下で培養されたマウスFLT3L分化cDC1およびcDC2細胞によるMHCクラスI発現を示す。少なくとも2回の反復からの平均値およびSDが示され、データは少なくとも2つの独立した実験を表す。<0.05(
*)、<0.01(
**)または<0.001(
***)、%0.0001(
****)のP値は群間の有意差を示した。二元配置分散分析検定を使用した。
【0048】
【
図30A-30B】
図30A~30Bは、示された条件下で培養されたマウスFLT3L分化DCによる抗原取り込み(
図30A)および抗原提示(
図30B)を示す。抗原取り込みは、Red pHrodoデキストランのエンドサイトーシスを測定することによって評価した。MHCクラスI、H-2Kbに結合したオボアルブミンペプチドを測定することによって抗原提示を評価した。
【0049】
【
図31】
図31は、R848、22:0 LYSO PCおよび界面活性剤、KP407を含む、示された製剤の皮下注射後のマウスの皮膚の排出リンパ節(dLN)のDC浸潤を示す。
【0050】
【
図32】
図32は、PBSまたは治療用がんワクチン(例えば、全腫瘍溶解物製剤)で処置した腫瘍担持マウスの生存を示す。
【0051】
【
図33】
図33は、PBSまたは治療用がんワクチン(例えば、全腫瘍溶解物製剤)で処置したマウスの腫瘍成長の動態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
本開示は、リゾホスファチジルコリン(LPC)化合物およびヒト樹状細胞の過剰活性化におけるその使用に関する。本開示はまた、LPCと、病原体認識受容体アゴニスト、抗原、およびヒト樹状細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物、ならびに組成物の製造および使用のための方法にも関する。さらなる実施形態では、樹状細胞は非ヒト樹状細胞であるが、但し、樹状細胞はげっ歯類樹状細胞ではない。
【0053】
一般的な技術および定義
本開示の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、特に指示されない限り、複数形の言及を含む。例えば、「1つの」賦形剤は、1またはそれを超える賦形剤を含む。
【0055】
本明細書で使用される「含む(comprising)」というフレーズはオープンエンドであり、そのような実施形態が追加の要素を含み得ることを示している。対照的に、「からなる」というフレーズはクローズドであり、そのような実施形態が追加の要素を含まないこと(微量不純物を除く)を示している。「から本質的になる」というフレーズは部分的にクローズドであり、そのような実施形態の基本的な特性を実質的に変化させない要素をそのような実施形態がさらに含み得ることを示している。
【0056】
値に関して本明細書で使用される「約」という用語は、その値の90%~110%を包含する(例えば、約900ダルトンの分子量は、910ダルトン~990ダルトンの分子量を指す)。
【0057】
物質の「有効量」または「十分な量」は、臨床結果をはじめとする、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用されている文脈に依存する。例えば、免疫原性組成物の投与に関連して、有効量は、十分な抗原と、抗原に対する免疫応答(例えば、抗原反応性抗体および/または細胞性免疫応答)を刺激するためのリゾホスファチジルコリン(LPC)化合物およびPRRアゴニストの一方または両方とを含む。
【0058】
「個体」および「対象」という用語は哺乳動物を指す。「哺乳動物」には、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、農場動物、スポーツ動物、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、およびペット(例えば、イヌおよびネコ)が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、がんおよび/または感染性疾患に罹患しているヒト患者などのヒト患者である。
【0059】
免疫原性組成物に関して本明細書で使用される「用量」という用語は、任意の時点で対象によって摂取された(投与されたまたは受けられた)免疫原性組成物の測定された部分を指す。
【0060】
本明細書で使用される「単離された」および「精製された」という用語は、天然に関連する少なくとも1つの成分から取り出された(例えば、その元の環境から取り出された)材料を指す。一例として、LPCに関して使用される場合、単離されたLPCは、薄層クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーによって測定される場合、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純粋である。さらなる例として、組換えタンパク質に関して使用される場合、単離されたタンパク質は、タンパク質を産生した宿主細胞の培養培地から取り出されたタンパク質を指す。
【0061】
「医薬製剤」および「医薬組成物」という用語は、有効成分の生物活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤または組成物が投与される個体に対して許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤または組成物は、無菌であることが意図されている。
【0062】
本明細書で使用される「賦形剤」は、用いる投与量および濃度では、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容され得る賦形剤、担体、ビヒクルまたは安定剤を含む。多くの場合、生理学的に許容され得る賦形剤は、pH緩衝水溶液である。
【0063】
「抗原」という用語は、抗体またはT細胞抗原受容体によって特異的に認識および結合される物質を指す。抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖類、複合糖質、糖、ガングリオシド、脂質およびリン脂質;それらの一部およびそれらの組合せを含み得る。抗原は、本開示の組成物中に存在する場合、合成されたものであってもよいし、自然から単離されたものであってもよい。本開示の方法における投与に適した抗原には、抗原特異的なB細胞またはT細胞応答を誘発することができる任意の分子が含まれる。ハプテンは「抗原」の範囲内に含まれる。「ハプテン」は、それ自体は免疫原性ではないが、一般的により大きな免疫原性分子(担体)と結合すると免疫原性になる低分子量化合物である。
【0064】
「ポリペプチド抗原」には、精製された天然ペプチド、合成ペプチド、組換えペプチド、粗ペプチド抽出物、または部分的に精製されたもしくは未精製の活性状態のペプチド(例えば、弱毒化もしくは不活化されたウイルス、微生物もしくは細胞の一部であるペプチド)、またはそのようなペプチドの断片が含まれ得る。ポリペプチド抗原は、好ましくは少なくとも8アミノ酸残基長である。
【0065】
「アゴニスト」という用語は最も広い意味で使用され、受容体を介してシグナル伝達を活性化するあらゆる分子を含む。いくつかの実施形態では、アゴニストは受容体に結合する。例えば、TLR8アゴニストは、TLR8受容体に結合してTLR8シグナル伝達経路を活性化する。
【0066】
「アルキル」とは、一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。Cxアルキルとは、x個の炭素原子を有するアルキル基を指す。Cx-CyアルキルまたはCx-yアルキルとは、x個とy個の間(両端を含む)の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0067】
「アルキレン」とは、二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。
【0068】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合(>C=C<)を有する一価のヒドロカルビル基を指す。Cxアルケニルは、x個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。Cx-CyアルケニルまたはCx-yアルケニルとは、x個とy個の間(両端を含む)の炭素原子を有するアルケニル基を指す。
【0069】
応答またはパラメータの「刺激」には、目的のパラメータを除く他の点で同じ条件と比較した場合、あるいは別の条件と比較した場合(例えば、TLRアゴニストの非存在下と比較した場合に、TLRアゴニストの存在下でのTLRシグナル伝達の増加)に、その応答またはパラメータを誘発および/または増強することが含まれる。例えば、免疫応答の「刺激」は、応答の増加を意味する。測定されたパラメータに応じて、この増加は、2倍~2,000倍、または5倍~500倍もしくはそれより大きい、または2、5、10、50、または100倍から、500、1,000、2,000、5,000、または10,000倍であり得る。
【0070】
逆に、応答またはパラメータの「阻害」には、目的のパラメータを除く他の点で同じ条件と比較した場合、あるいは別の条件と比較した場合(例えば、プラセボ組成物の投与または無処理と比較した場合に、LPC化合物と、病原体認識受容体アゴニスト、抗原、およびヒト樹状細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物の投与後の異常な細胞増殖の減少)に、その応答またはパラメータを低減および/または抑制することが含まれる。例えば、免疫応答の「阻害」は、応答の減少を意味する。測定されたパラメータに応じて、この減少は、2倍~2,000倍、または5倍~500倍もしくはそれより大きい、または2、5、10、50、または100倍から、500、1,000、2,000、5,000、または10,000倍であり得る。
【0071】
相対的な用語「より高い」および「より低い」とは、目的のパラメータを除く他の点で同じ条件と比較した場合、あるいは別の条件と比較した場合の応答またはパラメータの測定可能な増加または減少をそれぞれ指す。例えば、「より高いレベルのDC過剰活性化」は、対照条件(例えば、LPC、PGPC、oxPAPCなどを含まず)の結果としてのDC過剰活性化のレベルよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍高い処理条件(本開示のLPC化合物を含む)の結果としてのDC過剰活性化のレベルを指す。同様に、「より低いレベルのDC過剰活性化」とは、対照条件(例えば、LPC、PGPC、oxPAPCなどを含まず)の結果としてのDC過剰活性化のレベルよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍低い処理条件(本開示のLPC化合物を含む)の結果としてのDC過剰活性化のレベルを指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「免疫化」という用語は、抗原に対する哺乳動物対象の反応を増加させ、したがって感染に抵抗するか克服する能力および/または疾患に抵抗する能力を改善するプロセスを指す。
【0073】
本明細書で使用される「ワクチン接種」という用語は、哺乳動物対象の体内へのワクチンの導入を指す。
【0074】
「アジュバント」は、抗原を含む組成物に添加されると、曝露の際に哺乳動物レシピエントにおいて抗原に対する免疫応答を増強するかまたは高める物質を指す。
【0075】
疾患を「処置する」または「処置」という用語は、臨床結果を含む個体において有益なまたは所望の結果を得るために、個体(ヒトまたはその他)に1またはそれを超える治療剤を投与することを含み得るプロトコルを実行することを指す。有益なまたは所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、疾患の1またはそれを超える徴候または症状の軽減または改善、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患の拡大の防止、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるか全体的であるかに関わらず)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けていない個体の予想される生存と比較して、生存を延長することを意味し得る。さらに、「処置する」および「処置」は、1または複数の治療剤の1回用量の投与によって行われてもよく、または1または複数の治療剤の一連の用量の投与によって行われてもよい。加えて、「処置する」または「処置」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には患者に緩和効果のみを与えるプロトコルが含まれる。疾患または障害を「緩和する」とは、予測される未処置の転帰と比較して、疾患または障害の程度および/または望ましくない臨床症状が軽減されること、および/または疾患または障害の進行の時間経過が遅くなることを意味する。
【0076】
I.リゾホスファチジルコリン化合物
「リゾホスファチジルコリン」(LPC)または「リゾホスファチジルコリン分子」とは、グリセロールのヒドロキシル基に1つのホスホコリン基を有し、グリセロールの他の2つのヒドロキシル基のうちの1つに1つのアシル基を有するグリセロール分子を指す。残りのヒドロキシル基は非置換である。
【0077】
いくつかの実施形態では、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)は、以下の形態:
【化1】
である。
【0078】
いくつかの実施形態では、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)は、以下の形態:
【化2】
である。
【0079】
アルキル鎖またはアルケニル鎖は、カルボニル炭素と一緒に、アルキル鎖またはアルケニル鎖よりも炭素原子1個分長いアシル鎖を形成する。例えば、(C23アルキル)-C(=O)-基は、C24アシル鎖を形成する。したがって、基「(アルキルまたはアルキレン)」がC12~C23アルキル基(例えばC12~C19アルキル基またはC20~C23アルキル基)である場合、(C12~C23アルキル-C(=O)-基はC13~C24アシル鎖(例えばC13~C20アシル鎖またはC21~C24アシル鎖)を形成する。基「(アルキルまたはアルキレン)」がC12~C23アルケニル基(例えばC12~C19アルケニル基またはC20~C23アルケニル基)である場合、(C12~C23アルケニル-C(=O)-基はC13~C24アシル鎖(例えばC13~C20アシル鎖またはC21~C24アシル鎖)を形成する。アシル鎖は、アルキル含有アシル基とアルケニル含有アシル基とを区別するために、飽和アシルまたは不飽和アシルと呼ぶことができる。標準的なデルタ表記またはオメガ表記を使用して、不飽和アシル鎖中の1またはそれを超える二重結合の位置を示すことができる。
【0080】
本開示のリゾホスファチジルコリン(LPC)化合物は、アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である単一アシル鎖を有する。いくつかの実施形態では、アシル鎖は、C18~C22アシル鎖またはC21~C24アシル鎖である。いくつかの実施形態では、アシル鎖は、C21アシル鎖またはC22アシル鎖である。いくつかの好ましい実施形態では、アシル鎖はC22アシル鎖である。本開示の例示的なLPC化合物の名称および構造、ならびにそれらのChemical Abstract Service(CAS)登録番号を、表Iに#30~43、必要に応じて#30~42として示す。
【表I-1】
【表I-2】
【表I-3】
【表I-4】
【0081】
II.病原体認識受容体アゴニスト
本開示の組成物および方法は、病原体認識受容体(PRR)アゴニストをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)またはC型レクチン受容体(CLR)のアゴニストを含む。他の実施形態では、PRRアゴニストは、細胞質DNAセンサー(CDS)のアゴニストまたはIFN遺伝子の刺激因子(STING)を含む。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、TLR7/8アゴニストを含む。
【0082】
A.TLR7/8アゴニスト
本明細書で使用される「TLR7/8アゴニスト」という用語は、TLR7および/またはTLR8のアゴニストを指す。一態様では、TLR7/8アゴニストは、TLR7アゴニストである。別の態様では、TLR7/8アゴニストは、TLR8アゴニストである。さらなる態様では、TLR7/8アゴニストは、TLR7およびTLR8の両方のアゴニストである。本開示のTLR7/8アゴニストは、LPCの存在下でヒト樹状細胞を過剰活性化するのに適している。
【0083】
いくつかの態様では、TLR7/8アゴニストは小分子である。いくつかの実施形態では、TLR7/8アゴニストは、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子、またはその塩である。すなわち、小分子TLR7/8アゴニストは、米国FDAの生物製剤評価研究センターによって規制可能な組換えタンパク質または合成オリゴヌクレオチドのような大きな分子ではない。むしろ、小分子TLR7/8アゴニストは、FDAの医薬品評価研究センターによって規制可能である。いくつかの実施形態では、この小分子の分子量は、約90~約900ダルトンである。いくつかの実施形態では、TLR7/8アゴニストはイミダゾキノリン化合物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、TLR7/8アゴニストは、レシキモド(R848)を含む。
【0084】
B.他のPRRアゴニスト
いくつかの態様では、病原体認識受容体(PRR)アゴニストは、Toll様受容体(TLR)アゴニストを含む、ただし、TLRアゴニストはTLR7/8アゴニストを含まない。いくつかの実施形態では、TLRアゴニストは、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR9およびTLR13のうちの1つまたは複数のアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、TLR2/6アゴニスト、例えばPam2CSK4である。他の実施形態では、TLRアゴニストは、モノホスホリルリピドA(MPLA)などのTLR4アゴニストである。しかし、好ましい実施形態では、TLRアゴニストは、TLR2、TLR4および/またはTLR9のアゴニストではない。例えば、好ましい実施形態では、TLR9アゴニストは、LPS(エンドトキシン)などのTLR4リガンドではない。
【0085】
他の態様では、PRRアゴニストは、NOD様受容体(NLR)アゴニストを含む。さらなる態様では、PRRアゴニストは、RIG-I様受容体(RLR)アゴニストを含む。さらなる態様では、PRRアゴニストは、C型レクチン受容体(CLR)アゴニストを含む。なおさらなる態様では、PRRアゴニストは、CDSアゴニストまたはSTINGアゴニストを含む。
【0086】
III.抗原
本開示の組成物および方法は、抗原をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、抗原はタンパク質性抗原を含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、少なくとも8アミノ酸長のペプチド鎖を含むタンパク質性抗原を指すために本明細書で互換的に使用される。いくつかの実施形態では、タンパク質性抗原は、8~1800アミノ酸、9~1000アミノ酸、または10~100アミノ酸長である。いくつかの態様では、抗原は合成タンパク質または組換えタンパク質を含む。他の実施形態では、抗原は、生体試料から精製されたタンパク質を含む。ポリペプチドは、リン酸化、ヒドロキシル化、スルホン化、パルミトイル化、および/またはグリコシル化などによって翻訳後修飾され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗原は、少なくとも1つの全長タンパク質またはそのフラグメントのアミノ酸配列を含む腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、がんタンパク質由来のアミノ酸配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、哺乳類抗原はネオ抗原であるか、または哺乳類対象由来の正常細胞に存在する遺伝子と比較して変異を含む遺伝子によってコードされる。ネオ抗原は、T細胞ががん細胞と非がん細胞とを区別することができるようにする際に特に有用であると考えられている(例えば、Schumacher and Schreiber,Science,348:69-74,2015を参照)。他の実施形態では、腫瘍抗原は、がんを引き起こすウイルスの抗原などのウイルス抗原を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、2またはそれを超えるポリペプチドを含む融合タンパク質であり、ここで、各ポリペプチドは、異なる腫瘍抗原由来のアミノ酸配列または同じ腫瘍抗原由来の不連続アミノ酸配列を含む。これらの実施形態のいくつかでは、融合タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、同じ腫瘍抗原由来の不連続アミノ酸配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗原は微生物抗原である。いくつかの実施形態では、微生物抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、原虫抗原、真菌抗原、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、微生物抗原は、微生物の表面タンパク質または他の抗原性サブユニットを含む。他の実施形態では、微生物抗原は、不活化または弱毒化微生物を含む。例えば、微生物抗原は、化学的または遺伝的に不活化されたウイルスなどの不活化ウイルスを含み得る。あるいは、微生物抗原は、ウイルス様粒子を含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗原は、ヒト患者などの個体から得られた生体試料中に存在し得る。例えば、抗原はがん細胞を含み得る。別の態様では、抗原は、ウイルス感染細胞などの微生物感染細胞を含み得る。
【0091】
IV.樹状細胞
本開示の組成物および方法は、哺乳動物の自然免疫系と適応免疫系の橋渡しをすると考えられている抗原提示細胞である樹状細胞(DC)をさらに含み得る。好ましい実施形態では、DCは、形質細胞様DC(pDC)とは対照的に、サブセット1の従来のDC(以前は骨髄DC1と呼ばれていた、cDC1)である。
【0092】
いくつかの実施形態では、DCは、高いレベルのCD40およびIL-12p70を発現する過剰活性DCである。本明細書で使用される場合、「過剰活性樹状細胞」という用語は、DCが細胞生存率を維持しながら(例えば、パイロトーシスを受けずに)IL-1βを分泌することができる細胞状態を指す。このようにして、過剰活性化樹状細胞は堅牢なT細胞免疫を刺激することができ(
図1)、明らかに活性化樹状細胞とパイロトーシス樹状細胞の利点を兼ね備える(Zhivakiら、Cell Reports,33(7),2020,108381)。
【0093】
V.医薬製剤
本開示のいくつかの組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤と、LPC化合物、PRRアゴニスト、樹状細胞、抗原、アジュバント、またはそれらの任意の組合せとを含む医薬製剤である。本開示の医薬製剤は、溶液または懸濁液の形態であり得る。あるいは、医薬製剤は、脱水された固体(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥固体)であってよい。本開示の医薬製剤は、好ましくは無菌であり、好ましくは本質的にエンドトキシンを含まない。「医薬製剤」という用語は、本明細書では「医薬品」および「医薬」という用語と互換的に使用される。いくつかの実施形態では、医薬製剤(pharmaceutical formation)は、製剤の意図された目的に基づく様々な成分の特定の比率を含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、LPC化合物および非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー-407(CAS登録番号977057-91-2)などのエチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーを含む。
【0094】
A.賦形剤
本開示の薬学的に許容され得る賦形剤には、例えば、溶媒、緩衝剤、張度調整剤、増量剤および保存剤(例えば、Pramanickら、Pharma Times,45:65-77,2013を参照)が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、溶媒、緩衝剤、張度調整剤、および増量剤として機能する賦形剤(例えば、食塩水中の塩化ナトリウムは、水性ビヒクルおよび張度調整剤の両方として機能することができる)のうちの1つまたは複数を含んでよい。本開示の薬学的に許容され得る賦形剤には、洗浄剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤および分散剤、ならびに界面活性剤も含まれる。
【0095】
本明細書に開示される脂質の多くは、水に難溶性である。界面活性剤を使用して、脂質を水性製剤に可溶化することができる。幅広い種類の界面活性剤が利用可能であり、これらはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および双性イオン性界面活性剤として分類することができる。
【0096】
非イオン性界面活性剤のいくつかの例としては、ポロキサマーが挙げられる。ポロキサマーは、一般式:
HO-[CH2CH2-O-]a-[CH2CH(CH3)-O-]b-[CH2-CH2-O-]a-H
のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのトリブロックコポリマーである。一部のポロキサマーは、商品名Pluronic(登録商標)(PLURONICは、ドイツLudwigshafenのBASF SEの登録商標である。)で販売されている。ポロキサマーの例は、ポロキサマー407(KP407;a=101、b=56)である。ポロキサマー188(KP188;a=80、b=27);Pluronic(登録商標)P84(P-84;a=19、b=39);およびPluronic(登録商標)P123(P-123;a=20、b=70)(上記のaおよびbの値は、若干異なる場合がある)。
【0097】
他の非イオン性界面活性剤としては、Cremophor(登録商標)シリーズ(CREMAPHORは、ドイツLudwigshafenのBASF SEの登録商標である)が挙げられる。Cremophor(登録商標)界面活性剤としては、ヒマシ油とエチレンオキシドとを約1:35のモル比で反応させることにより製造されるポリオキシエチル化トリグリセリドの混合物である、Cremophor(登録商標)EL(K EL)、および、40モルのエチレンオキシドと1モルの水素化ヒマシ油とを反応させることにより得られる、Cremophor(登録商標)RH40(Kolliphor(登録商標)RH40としても公知;KOLLIPHORは、BASF社の登録商標である)が挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、溶媒として水性ビヒクルを含む。適切なビヒクルとしては、例えば、滅菌水、食塩液、リン酸緩衝食塩水、およびリンゲル液が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は等張性である。
【0099】
医薬製剤は緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、処理、貯蔵および必要に応じて再構成中の活性剤の分解を阻害するようにpHを制御する。適切なバッファーとしては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩または硫酸塩を含む塩が挙げられる。他の適切なバッファーとしては、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジンおよびリジンなどのアミノ酸が挙げられる。緩衝剤は、塩酸または水酸化ナトリウムをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、組成物のpHを6~9の範囲内に維持する。いくつかの実施形態では、pHは、(下限)6、7または8より大きい。いくつかの実施形態では、pHは、(上限)9、8または7未満である。すなわち、pHは約6~9の範囲であり、下限は上限よりも小さい。
【0100】
医薬組成物は、張度調整剤を含み得る。適切な張度調整剤としては、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリンおよびマンニトールが挙げられる。
【0101】
医薬製剤は増量剤を含み得る。増量剤は、医薬組成物を投与前に凍結乾燥する場合に特に有用である。いくつかの実施形態では、増量剤は、凍結または噴霧乾燥中および/または貯蔵中の活性剤の安定化および分解の防止に役立つ保護剤である。適切な増量剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール(sorbital)、グルコースおよびラフィノースなどの糖類(単糖類、二糖類および多糖類)である。
【0102】
医薬製剤は、保存剤を含み得る。適切な保存剤としては、例えば、酸化防止剤および抗微生物剤が挙げられる。しかし、好ましい実施形態では、医薬製剤は無菌条件下で調製され、単回使用容器に入っているので、保存剤を含める必要はない。
【0103】
本開示の医薬製剤は、非経口投与に適している。すなわち、本開示の医薬製剤は、経腸投与を意図していない(例えば、経口、胃、または直腸による投与ではない)。
【0104】
B.アジュバント
本開示の薬学的に許容され得るアジュバントとしては、例えば、アルミニウム塩アジュバント、水中スクアレンエマルジョン、サポニン、またはそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、非晶質ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアルミニウム塩アジュバントである。他の実施形態では、アジュバントは、水中スクアレンエマルジョン、例えばMF59またはAS03である。他の実施形態では、アジュバントは、AS01またはAS02と同様に、Quil AまたはQS-21などのサポニンである。
【0105】
VI.製造方法
本開示は、いくつかの態様では、過剰活性化樹状細胞を調製するための方法、および免疫原性組成物を調製するための方法に関する。免疫原性組成物は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボでの樹状細胞の過剰活性化に適している。
【0106】
一態様では、本開示は、過剰活性化樹状細胞(DC)を産生するための方法を提供し、この方法は、過剰活性化樹状細胞を産生するために、樹状細胞に、単一アシル鎖を有する有効量の単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)およびPRRアゴニストを接触させることを含み、この過剰活性化樹状細胞はパイロトーシスを起こさずにIL-1ベータを分泌する。いくつかの態様では、DCは単離されており、他の態様では、DCはヒト患者などの哺乳動物対象から得られた生体試料内に存在する。いくつかの態様では、DCは単球由来DC、好ましくはcDC1である。
【0107】
別の態様では、本開示は、免疫原性組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、免疫原性組成物を製造するために、抗原を、単一アシル鎖を有する有効量の単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)、およびPRRアゴニストと組合せるステップを含む。いくつかの態様では、抗原は、哺乳動物対象から得られた生体試料中に存在するかまたはそれから精製されたタンパク質性抗原を含む。いくつかの態様では、タンパク質性抗原は合成または組換えタンパク質である。好ましい実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。好ましい実施形態では、抗原は微生物抗原である。
【0108】
特定の実施形態では、本開示は、免疫原性組成物の製造方法を提供し、該方法は、
a)腫瘍から調製した細胞の懸濁液から白血球を枯渇させて、腫瘍細胞富化懸濁液を得る工程;
b)腫瘍細胞富化懸濁液から細胞を溶解し、腫瘍細胞溶解物を得る工程;および
c)腫瘍細胞溶解物を、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)およびPRRアゴニストと接触させて、前記免疫原性組成物を得る工程
を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞富化懸濁液を白血球に特異的な抗体と接触させることによって、腫瘍細胞濃縮細胞懸濁液から白血球を枯渇させる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞富化懸濁液を抗CD45抗体と接触させることによって、白血球を枯渇させる。いくつかの態様では、細胞は、限定されるものではないが、機械的溶解、液体均質化、超音波処理、凍結解凍、または手動粉砕などの物理的破壊に基づく細胞溶解法によって溶解される。いくつかの好ましい実施形態では、細胞は、1回またはそれを超える凍結融解サイクルによって溶解される。
【0109】
前述の方法のいくつかの実施形態では、LPCのアシル鎖は、C13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である。いくつかの実施形態では、LPCのアシル鎖は、C18~C22アシル鎖またはC18~C24アシル鎖である。いくつかの好ましい実施形態では、アシル鎖は完全に飽和している。いくつかの好ましい実施形態では、LPCのアシル鎖はC22アシル鎖である。いくつかの好ましい実施形態では、LPCは、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]である。いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、TLR7/8アゴニストである。いくつかの好ましい実施形態では、TLR7/8アゴニストはイミダゾキノリン化合物であり、特に好ましい実施形態では、これはレシキモド(R848)である。
【0110】
VII.使用方法
いくつかの態様では、本開示は、LPC化合物、PRRアゴニスト、樹状細胞、抗原、アジュバント、またはそれらの任意の組合せを含む、本明細書に記載の組成物または製剤のいずれか1つの使用方法に関する。使用方法は、免疫応答の刺激を伴う複数の使用に適している。いくつかの実施形態では、使用方法は、がんを処置する方法を含む。いくつかの実施形態では、使用方法は、異常な細胞増殖を阻害する方法を含む。いくつかの実施形態では、使用方法は、感染性疾患を処置する方法を含む。本方法は、特定の結果を達成するために、有効量の本明細書に記載の製剤または組成物を、投与することを必要とする個体に投与することを含む。個体は、ヒト患者などの哺乳動物対象である。他の実施形態では、個体は、非ヒト患者である。いくつかの実施態様では、個体は、イヌ患者である。すなわち、いくつかの実施形態では、使用方法は臨床的使用を含むが、他の実施形態では、使用方法は前臨床および/または獣医学での使用を含む。前臨床使用のために、哺乳動物対象は、非ヒト霊長類(例えば、サルまたは類人猿)またはげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)であり得る。獣医学での使用の場合、哺乳動物対象は、農場動物(例えば、ウシ)、スポーツ動物(例えば、ウマ)、またはペット(例えば、イヌまたはネコなどのコンパニオンアニマル)であり得る。
【0111】
A.免疫応答の刺激
手短に言えば、本開示は、個体において免疫応答を刺激するのに十分な量の本明細書に記載の組成物または製剤を個体に投与することを含む、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。免疫応答を「刺激する」(免疫応答を「誘発する」と互換的に使用される)とは、デノボ免疫応答を誘発すること(例えば、初期ワクチン接種レジメンの結果として)または既存の免疫応答を増強すること(例えば、ブースターワクチン接種レジメンの結果として)から生じ得る免疫応答を増加させることを意味する。いくつかの実施形態では、免疫応答を刺激することは、サイトカイン産生を刺激すること;Bリンパ球増殖を刺激すること;インターフェロン経路関連遺伝子発現を刺激すること;化学誘引物質関連遺伝子発現を刺激すること;樹状細胞DCの成熟を刺激すること、からなる群の1つまたは複数を含む。免疫応答の刺激を測定するための方法は、当技術分野で公知である。
【0112】
例えば、本開示は、個体において抗原特異的免疫応答を誘導するのに十分な量の本明細書に記載の組成物または製剤を個体に投与することによって、個体において抗原特異的免疫応答を誘導する方法を提供する。好ましい実施形態では、組成物または製剤は抗原を含む。いくつかの実施形態では、組成物または製剤は、抗原を含む個体の組織に投与される。免疫応答は、抗原特異的抗体応答および抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の一方または両方を含み得る。抗原特異的抗体応答を「誘導する」とは、抗原特異的抗体の力価を、投与前のベースライン力価または血清防御レベルなどの閾値レベルを超えて増加させることを意味する。抗原特異的CTL応答を「誘導する」とは、末梢血中に見出される抗原特異的CTLの頻度を投与前のベースライン頻度よりも増加させることを意味する。
【0113】
免疫応答の分析(定性的および定量的の両方)は、当技術分野で公知の任意の方法によるものであってよく、それには、限定されるものではないが、抗原特異的抗体産生の測定(特異的抗体サブクラスの測定を含む)、B細胞およびヘルパーT細胞などのリンパ球の特定の集団の活性化、IFN-アルファ、IFN-ガンマ、IL-6、IL-12などのサイトカインの産生および/またはヒスタミンの放出が含まれる。抗原特異的抗体応答を測定するための方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれる。リンパ球の特定の集団の活性化は、増殖アッセイおよび蛍光活性化細胞選別(FACS)によって測定することができる。サイトカインの産生は、ELISAによっても測定することができる。いくつかの実施形態では、免疫応答を刺激する方法は、単球由来樹状細胞または末梢血単核細胞による、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)分泌、インターフェロンガンマ(IFN-γ)分泌、および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)分泌の刺激を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答を刺激する方法は、メモリーCD4+T細胞による、IFN-γ、IL-17a、IL-17f、およびIL-22のうちの1つまたは複数の分泌の刺激を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答を刺激する方法は、ナイーブCD4+T細胞のTh1分化を増加させることを含む。いくつかの好ましい実施形態では、本開示の組成物と接触させた細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%または75%が、接触後40~56時間(または約48時間)に生存可能なままである。
【0114】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗腫瘍免疫応答を刺激するのに適している。他の実施形態では、本方法は、抗微生物免疫応答を刺激するのに適している。いくつかの実施形態では、抗微生物応答は、抗細菌免疫応答である。いくつかの実施形態では、抗微生物応答は、抗真菌免疫応答である。いくつかの実施形態では、抗微生物応答は、抗ウイルス免疫応答である。いくつかの実施形態では、抗微生物応答は、抗原虫免疫応答である。
【0115】
B.疾患の処置または予防
本開示はさらに、個体において疾患を処置または予防するのに十分な量の本明細書に記載の組成物または製剤を個体に投与することを含む、個体において疾患を処置または予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患はがんである。いくつかの実施形態では、疾患は異常な細胞増殖である。他の実施形態では、疾患は感染性疾患である。
【0116】
一態様では、本方法は、LPC化合物、PRRアゴニスト、抗原、アジュバント、またはそれらの任意の組合せを含む組成物を、投与することを必要とする対象に投与することを含み得る。別の態様では、本方法は、養子細胞療法を含み、過剰活性化樹状細胞などの樹状細胞と、LPC化合物、PRRアゴニスト、抗原、アジュバント、またはそれらの任意の組合せとを含む組成物を、投与することを必要とする対象に投与することを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体においてがんを処置すること、またはそうでなければがんを有する哺乳動物対象を処置することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、a)腫瘍細胞溶解物、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)、およびtoll様受容体7/8(TLR7/8)アゴニストを含む免疫原性組成物を調製する工程であって、腫瘍細胞溶解物は、がんを有する対象から得た腫瘍の試料であるかまたはそれから調製されており、アシル鎖はC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である工程;およびb)被験体に有効量の免疫原性組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、がんは、血液がん、例えばリンパ腫、白血病、または骨髄腫である。他の実施形態では、がんは、非血液がん、例えば肉腫、癌または黒色腫である。一部の実施形態では、がんは悪性である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体において異常な細胞増殖を阻害することを含む。「異常な細胞増殖」とは、良性腫瘍または悪性腫瘍の増殖を指す。悪性腫瘍は転移性腫瘍であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体において感染性疾患を処置または予防することを含む。いくつかの実施形態では、感染性疾患はウイルス感染によって引き起こされる。他の実施形態では、感染性疾患は細菌感染によって引き起こされる。さらなる実施形態では、感染性疾患は真菌感染によって引き起こされる。なおさらなる実施形態では、感染性疾患は原虫感染によって引き起こされる。特に重要なのは、ヒトならびに哺乳動物または鳥類などの他の動物に感染する人畜共通感染症病原体によって引き起こされる感染症である。いくつかの実施形態では、人畜共通感染症病原体は、中間種(ベクター)を介してヒトに伝染する。
列挙された実施形態
実施形態1. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含む組成物であって、前記アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である組成物。
実施形態2. 前記アシル鎖が、C18~C22アシル鎖またはC21~C24アシル鎖である、実施形態1に記載の組成物。
実施形態3. 抗原をさらに含む、実施形態1または実施形態2に記載の組成物。
実施形態4. 樹状細胞をさらに含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態5. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、抗原とを含む組成物であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物。
実施形態6. 樹状細胞をさらに含む、実施形態5に記載の組成物。
実施形態7. TLR7/8アゴニストをさらに含む、実施形態5または実施形態6に記載の組成物。
実施形態8. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と樹状細胞とを含む組成物であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である組成物。
実施形態9. TLR7/8アゴニストをさらに含む、実施形態8に記載の組成物。
実施形態10. 抗原をさらに含む、実施形態8または実施形態9に記載の組成物。
実施形態11. 前記アシル鎖がC22アシル鎖である、実施形態1から10のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態12. 前記アシル鎖が完全に飽和している、実施形態1から11のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態13. 前記LPCが1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態14. 前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態15. 前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、実施形態14に記載の組成物。
実施形態16. 前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態15に記載の組成物。
実施形態17. 前記TLR7/8アゴニストが、NLRファミリーパイリンドメイン含有3(NLRP3)を阻害しない、実施形態14または実施形態15に記載の組成物。
実施形態18. 前記LPCがLPC(22:0)を含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態13に記載の組成物。
実施形態19. 前記抗原が、個体から得られた生体試料中に存在する、実施形態1から18のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態20. 前記生体試料が生検組織を含む、実施形態19に記載の組成物。
実施形態21. 前記生体試料が細胞を含む、実施形態19に記載の組成物。
実施形態22. 前記生体試料が細胞を含まない、実施形態19に記載の組成物。
実施形態23. 前記生体試料が、膿瘍からの膿を含む、実施形態19に記載の組成物。
実施形態24. 前記抗原がタンパク質性抗原を含む、実施形態1から23のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態25. 前記抗原が腫瘍抗原を含む、実施形態24に記載の組成物。
実施形態26. 前記腫瘍抗原が、合成または組換えネオ抗原を含む、実施形態25に記載の化合物。
実施形態27. 前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞溶解物を含む、実施形態26に記載の組成物。
実施形態28. 前記腫瘍抗原が、微生物抗原を含み、前記微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、原虫抗原、および真菌抗原のうちの1つまたは複数を含む、実施形態24に記載の組成物。
実施形態29. 前記微生物抗原が精製または組換え表面タンパク質を含む、実施形態28に記載の組成物。
実施形態30. 前記微生物抗原が不活化されたウイルス全体を含む、実施形態28に記載の組成物。
実施形態31. 前記組成物がリポソームを含まない、実施形態1から30のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態32. 前記組成物がLPSまたはMPLAを含まない、実施形態1から31のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態33. 前記組成物が、oxPAPCまたはoxPAPCの種を含まない、実施形態1から32のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態34. 前記組成物が、HOdiA-PC、KOdiA-PC、HOOA-PC、KOOA-PC、および/またはPGPCを含まない、実施形態33に記載の組成物。
実施形態35. アジュバントをさらに含み、前記アジュバントが、アルミニウム塩アジュバント、水中スクアレン-エマルジョン、サポニン、またはそれらの組合せを含む、実施形態1から34のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態36. 実施形態1から35のいずれか1つに記載の組成物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬製剤。
実施形態37. 過剰活性化樹状細胞を産生するための方法であって、前記方法が、過剰活性化樹状細胞の産生のために、単一のC13~C22アシル鎖または単一のC13~C24アシル鎖を有する有効量の単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、TLR7/8アゴニストとを含む組成物に前記樹状細胞を接触させることを含み、前記過剰活性化樹状細胞はパイロトーシスを起こさずにIL-1ベータを分泌する、方法。
実施形態38. 前記樹状細胞を、エクスビボで、実施形態1から35のいずれか1つに記載の組成物または実施形態36に記載の製剤と接触させる、実施形態37に記載の方法。
実施形態39. 前記樹状細胞を、実施形態36に記載の製剤とインビボで接触させる、実施形態37に記載の方法。
実施形態40. 実施形態38に記載の方法によって産生された少なくとも103、104、105個または106個の前記過剰活性化樹状細胞と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤。
実施形態41. 抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、有効量の実施形態36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与して、前記抗原に対する前記免疫応答を刺激することを含む、方法。
実施形態42. 有効量の実施形態36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与して前記がんを処置することを含む、がんを処置する方法。
実施形態43. 異常な細胞増殖を阻害する方法であって、異常な細胞増殖を阻害するために有効量の実施形態36に記載の製剤を、投与することを必要とする個体に投与することを含む方法。
実施形態44. 感染性疾患を処置する方法であって、有効量の実施形態36に記載の製剤を、前記感染性疾患を処置するために、投与することを必要とする個体に投与することを含む方法。
実施形態45. 前記抗原に対する免疫応答を、誘導することを必要とする個体において誘導するための、実施形態36に記載の製剤の使用。
実施形態46. 抗腫瘍免疫応答を、誘導することを必要とする個体において誘導するための実施形態36に記載の製剤の使用であって、前記個体が腫瘍を担持しているか、または腫瘍を担持していた、使用。
実施形態47. 抗微生物免疫応答を誘導することを必要とする個体において誘導するための実施形態36に記載の製剤の使用であって、前記個体が前記微生物に感染しているか、または前記微生物に曝露されていない、使用。
実施形態48. 前記個体が哺乳動物対象である、実施形態19から47のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態49. 前記個体がヒト対象である、実施形態19から47のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態50. 免疫原性組成物の調製方法であって、該方法は、
a)腫瘍から調製した細胞の懸濁液から白血球を枯渇させて、腫瘍細胞富化懸濁液を得るステップと;
b)前記腫瘍細胞富化懸濁液から細胞を溶解し、腫瘍細胞溶解物を得るステップと;
c)前記腫瘍細胞溶解物を、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)およびtoll様受容体7/8(TLR7/8)アゴニストと接触させて、前記免疫原性組成物を得るステップであって、前記アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖であるステップと
を含む方法。
実施形態51. ステップa)において、抗CD45抗体を使用するネガティブ選択によって前記白血球を枯渇させる、実施形態50に記載の方法。
実施形態52. 前記細胞が、ステップb)において、1またはそれを超える凍結融解サイクルによって溶解される、実施形態50または実施形態51に記載の方法。
実施形態53. 前記アシル鎖が、完全飽和C18~C22アシル鎖または完全飽和C18~C24アシル鎖である、実施形態50から52のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54. 前記LPCが、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、実施形態53に記載の方法。
実施形態55. 前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、実施形態50から54のいずれか1つに記載の方法。
実施形態56. 前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、実施形態55に記載の方法。
実施形態57. 前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態56に記載の方法。
実施形態58. 前記TLR7/8アゴニストが、NLRファミリーパイリンドメイン含有3(NLRP3)を阻害しない、実施形態55または実施形態56に記載の方法。
実施形態59. 前記LPCがLPC(22:0)を含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態54に記載の方法。
実施形態60. ステップa)の前に、がんを有する哺乳動物対象からの前記腫瘍から試料を得て、前記試料から細胞の前記懸濁液を調製するステップをさらに含む、実施形態50から59のいずれか1つに記載の方法。
実施形態61. 実施形態50から60のいずれか1つに記載の方法によって調製された免疫原性組成物。
実施形態62. 抗がん免疫応答を誘発する方法であって、前記方法が、
がんを有する哺乳動物対象に、有効量の実施形態61に記載の免疫原性組成物を投与するステップ
を含む、方法。
実施形態63. 前記抗がん免疫応答が細胞性免疫応答を含む、実施形態62に記載の方法。
実施形態64. 前記抗がん免疫応答が、がん抗原誘導性IL-1ベータ分泌および/またはCD8+Tリンパ球の活性化を含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態65. 前記がんが非血液がんである、実施形態62から64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態66. 前記非血液がんが、癌、肉腫または黒色腫である、実施形態65に記載の方法。
実施形態67. 前記がんがリンパ腫である、実施形態62から64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態68. がんを処置する方法であって、前記方法は、
a)腫瘍細胞溶解物、単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)、およびtoll様受容体7/8(TLR7/8)アゴニストを含む免疫原性組成物を調製するステップであって、前記腫瘍細胞溶解物は、がんを有する哺乳動物対象から得た腫瘍の試料であるかまたはそれから調製されており、前記アシル鎖はC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖であるステップと、
b)前記被験体に有効量の前記免疫原性組成物を投与するステップと
を含む、方法。
実施形態69. 前記アシル鎖が、完全飽和C18~C22アシル鎖または完全飽和C18~C24アシル鎖である、実施形態62から68のいずれか1つに記載の方法。
実施形態70. 前記LPCが、1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、実施形態68に記載の方法。
実施形態71. 前記TLR7/8アゴニストが、900ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する小分子である、実施形態62から70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72. 前記TLR7/8アゴニストがイミダゾキノリン化合物を含む、実施形態71に記載の方法。
実施形態73. 前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態72に記載の方法。
実施形態74. 前記LPCが22:0 LPCを含み、前記TLR7/8アゴニストがレシキモド(R848)を含む、実施形態70に記載の方法。
実施形態75. 有効量の追加の治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、実施形態68から74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76. 前記追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤、抗新生物剤、および放射線治療からなる群のうちの1つまたは複数を含む、実施形態75に記載の方法。
実施形態77. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)および病原体認識受容体(PRR)アゴニストを含む組成物であって、前記アシル鎖がC13~C22アシル鎖またはC13~C24アシル鎖である、組成物。
実施形態78. 前記PRRアゴニストが、toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)またはC型レクチン受容体(CLR)のアゴニストである、実施形態77に記載の組成物。
実施形態79. 前記PRRアゴニストが、細胞質DNAセンサー(CDS)のアゴニストまたはIFN遺伝子の刺激因子(STING)である、実施形態77に記載の組成物。
実施形態80. 前記PRRアゴニストが、R848、TL8-506、LPS、Pam2CSK4およびODN2336のうちの1つまたは複数を含む、実施形態77に記載の組成物。
実施形態81. 抗原をさらに含む、実施形態77~80のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態82. 樹状細胞をさらに含む、実施形態77から81のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態83. 実施形態77から82のいずれか1つに記載の組成物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬製剤。
実施形態84. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬製剤であって、前記アシル鎖がC21~C24アシル鎖である、医薬製剤。
実施形態85. 前記アシル鎖が完全飽和C22アシル鎖である、実施形態83または実施形態84に記載の医薬製剤。
実施形態86. 前記LPCが1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン[LPC(22:0)]を含む、実施形態85に記載の医薬製剤。
実施形態87. 単一アシル鎖を有する単離されたリゾホスファチジルコリン(LPC)と、病原体認識受容体(PRR)アゴニストとを含む、ヒト樹状細胞を過剰活性化するための組成物であって、前記アシル鎖がC22アシル鎖であり、前記組成物が、前記LPCの代わりにPGPCを含む比較対照組成物よりも高いレベルの樹状細胞の過剰活性化を達成するのに有効である組成物。
実施形態88. 前記高いレベルの樹状細胞の過剰活性化が、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記組成物に接触させた場合に、前記PGPCと前記PRRアゴニストとを含む前記比較対照組成物に接触させた場合よりも少なくとも2、3または4倍高いレベルの、インビトロでの前記ヒト樹状細胞からのIL-1ベータ分泌の誘導を含み、前記PRRアゴニストがLPSである、実施形態87に記載の組成物。
実施形態89. 前記LPCの前記濃度および前記PGPCの前記濃度が、約10μM~約80μMの範囲内の同じ濃度であり、前記LPSが、前記組成物と前記比較対照組成物の両方で1μg/mlの濃度で存在する、実施形態88に記載の組成物。
実施形態90. 前記高いレベルの樹状細胞の過剰活性化が、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記組成物について、ヒト樹状細胞からのIL-1ベータ分泌に対する脂質活性指数を含み、これは、活性単位において、前記LPCと前記PRRアゴニストとを含む前記比較対照組成物の脂質活性指数よりも少なくとも4、5または6倍高い、、実施形態88に記載の組成物。
実施形態91. 前記個体がイヌ対象である、実施形態19から47のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態92. 前記哺乳動物対象がヒト患者である、実施形態60から90のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態93. 前記哺乳動物対象が非ヒト患者である、実施形態60から90のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態94. 前記哺乳動物対象がイヌ患者である、実施形態60から90のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態95. 前記樹状細胞がヒト樹状細胞である、実施形態1から90または92のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態96. 前記樹状細胞がイヌ樹状細胞である、実施形態1から91または94のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態97. 前記樹状細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)を含む組成物中に存在する、実施形態95または実施形態96に記載の組成物、方法または使用。
実施形態98. 前記過剰活性化樹状細胞が、IFNγおよびTNFαの一方または両方を分泌する、実施形態37~49または実施形態91のいずれか1つに記載の組成物、方法または使用。
実施形態99. 界面活性剤を含む、実施形態1~98のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態100. 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、実施形態99に記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態101. 前記非イオン性界面活性剤が、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーを含む、実施形態100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態102. 前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー407、ポロキサマー188およびP123のうちの1つまたは複数を含む、実施形態100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態103. 前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー407を含む、実施形態100に記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態104. i)前記LPCをアルコールに溶解してLPCアルコール溶液を形成し;ii)前記LPCアルコール溶液を前記非イオン性界面活性剤と混合して混合物を形成し;iii)前記アルコールを前記混合物から蒸発させて前記LPCと前記非イオン性界面活性剤を含む粒子を形成する、実施形態100から103のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態105. 前記非イオン性界面活性剤が、約2.5%~25%(w/w)、必要に応じて約5%~20%(w/w)、必要に応じて約15%(w/w)の量で存在する、実施形態100から104のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
実施形態106. 前記LPCおよび非イオン性界面活性剤が、約1000から2000ナノメートルの直径を有し、必要に応じて約1500ナノメートルの直径を有する粒子中に存在する、実施形態100から105のいずれか1つに記載の組成物、製剤、方法または使用。
【実施例】
【0120】
略語:BM(骨髄);BMDC(骨髄由来樹状細胞);CDS(細胞質DNAセンサー);CLR(C型レクチン受容体);DAMP(ダメージ関連分子パターン);DC(樹状細胞);dLN(排出リンパ節);HOdiA-PC(1-パルミトイル-2-(5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテンジオイル)-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン);HOOA-PC(1-パルミトイル-2-(5-ヒドロキシ-8-オキソオクタ-6-エノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);IFNγ(インターフェロンガンマ);IL-1b/IL1-ベータ/IL-1β(インターロイキン-1ベータ);KOdiA-PC(1-(パルミトイル)-2-(5-ケト-6-オクテン-ジオイル)ホスファチジルコリン);KOOA-PC(1-パルミトイル-(5-ケト-8-オキソ-6-オクテノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);KP407(ポロキサマー407);LPC/Lyso PC(リゾホスファチジルコリン);Lyso PC(22:0)(1-ベヘノイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);LPS(リポ多糖);MFI(平均蛍光強度);moDC(単球由来樹状細胞);MPLA(モノホスホリルリピドA);NLR(NOD様受容体);oxPAPC(酸化1-パルミトイル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン);PAMP(病原体関連分子パターン);PBMC(末梢血単核細胞);PGPC(1-パルミトイル-2-グルタリル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);POVPC(1-パルミトイル-2-(5’-オキソ-バレロイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);PRR(病原体認識受容体);RLR(RIG-I様受容体);R848(レシキモド);STING(IFN遺伝子の刺激因子);TNFα(腫瘍壊死因子-アルファ);TLR(toll様受容体);およびWTL(全腫瘍溶解物)。
【0121】
本開示は、明確さおよび理解のために例示および例としてある程度詳細に記載されているが、特定の変更および修正が実施され得ることは当業者には明らかである。したがって、以下の実施例は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0122】
実施例1:樹状細胞の過剰活性化のためのDAMPおよびPAMPの同定
この実施例は、組み合わせてヒト樹状細胞を過剰活性化することができる脂質DAMPおよび小分子PAMPの同定について説明する。
【0123】
材料および方法
ヒト単球由来樹状細胞(moDC)の分化。ヒト単球をStraightFrom Leukopak CD14マイクロビーズキット(Miltenyi)を製造業者の指示に従って使用して、Leukopaks(Miltenyiより購入)から単離した。次いで、単球を等分し、10%ジメチルスルホキシドを含有するウシ胎児血清中で凍結させた。moDC培養物を使用した過剰活性化脂質の研究には、単球を解凍し、10%FBS、50単位/mLペニシリン、50mg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、および50mMベータ-メルカプトエタノールを含有するRPMI培地(R10培地)で培養した。ヒト単球を、組換えヒトGM-CSF(50ng/mL)およびIL-4(25ng/mL)を使用して分化させ、R10培地に添加した。細胞をGM-CSFおよびIL-4と共に6日間培養し、3日目にGM-CSFおよびIL-4を含有するR10をさらに細胞に供給した。
【0124】
危険関連分子パターン(DAMP)スクリーニング。moDCへの分化の6日後、細胞を収集し、計数した。細胞を、96ウェル平底組織培養処理プレート中のR10培地に100,000細胞/ウェルでプレーティングした。LPS、血清型O55:B5(Enzo Life Sciences)を、各ウェルにおいて最終濃度1μg/mLになるように添加した。LPSの添加後、脂質を調製し、82.5μMまたは41.3μMの最終濃度で添加した。細胞を37℃、5%CO2で2日間インキュベートした。次いで、細胞培養物をエンドポイント分析に使用した。
【0125】
脂質滴定。moDCへの分化の6日後、細胞を収集し、計数した。細胞を、96ウェル平底組織培養処理プレート中のR10培地に100,000細胞/ウェルで再プレーティングした。LPS、血清型O55:B5(Enzo Life Sciences)を、各ウェルにおいて最終濃度1μg/mLになるように添加した。LPSの添加後、脂質を調製した。試験した最高の脂質濃度(82.5μM)の作業ストックをR10で作製し、その後、試験した最終濃度の1.3μMまで連続2倍希釈を行った。2日間の培養後、細胞培養物をエンドポイント分析に使用した。
【0126】
病原体関連分子パターン(PAMP)スクリーニング。自然免疫シグナル伝達経路アゴニストはInvivogenから購入した。凍結乾燥ストックを再構成し、製造業者の指示に従って推奨濃度で保存した。moDCへの分化の6日後、細胞を収集し、計数した。細胞を、96ウェル平底組織培養処理プレート中のR10培地に100,000細胞/ウェルで再プレーティングした。自然免疫シグナル伝達アゴニストをR10培地で製造業者の推奨作業濃度に希釈し、その後、細胞に添加した。次いで、22:0 Lyso PCをR10中の凍結乾燥ストックから再構成し、その後さらに希釈した。脂質を最終濃度20μMで細胞に添加した。細胞を2日間インキュベートした後、エンドポイント分析のために培養物を収集した。
【0127】
エンドポイント分析。moDCをPAMPおよびDAMPとともに2日間培養した後、上清および細胞試料を分析のために収集した。培養中の細胞を、400×gで5分間遠心分離することにより、ペレット化した。ウェル中の培地体積の半分を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるサイトカイン定量のために収集し、残りの培地および細胞は、代謝活性を評価することによって細胞生存率を定量するために使用した。
【0128】
IL-1ベータ分泌の定量。IL-1ベータ分泌は、ELISA MAX Deluxe Set Human IL-1ベータキット(Biolegend)を使用して評価した。ELISAは、以下の修正を加えて製造業者の指示に従って実施した:i)インキュベーションのための総試料体積を100mLから50mLに減少させた(25mL/ウェルの試料または標準物質を含む25mL/ウェルのアッセイ緩衝液D);ii)上位の標準物質を500pg/mLに調製し、7.8pg/mLに2倍希釈した;iii)試料のインキュベーションをオービタルシェーカーで4℃で一晩で完了させた。吸光度は、Spectramax iD3プレートリーダー(Molecular Devices)を使用して、570nm補正で450nmで測定した。上清中のIL-1ベータ濃度を決定するために、試料のIL-1ベータ濃度を、GraphPad Prism 9(GraphPad Software)での4PL分析による標準曲線を用いて補間した。次に、試料の補間された結果を、上清に行ったあらゆる希釈について調整した。
【0129】
細胞生存率の定量。細胞生存率は、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて、代謝的に活性な細胞の指標としてATPの存在を定量することによって評価した。代謝活性は、製造業者の指示に従って評価した。CellTiter-Glo試薬を、細胞ペレットおよび残りの上清と混合し、白色の不透明な96ウェルプレートに移した。発光は、Spectramax iD3プレートリーダー(Molecular Devices)で、500msの積分時間を使用してすべての波長で測定した。生存率を、LPSで処理したmoDCの対照条件と比較して計算した。
【0130】
統計解析。各データセットについて、複数のドナーを試験し、試験ごとの数を各試験に対応する表に示した。各試験条件について、各ドナー由来の細胞をプレーティングし、3連で試験した。各ドナーの三重測定値を平均し、IL-1ベータを定量するかまたは生存率を測定する場合には、その平均を1つのドナー測定値として含めた。グラフ上で、各データポイントはドナーの平均値を表す。試験条件の違いを試験するために、試験結果を各表に示す対照条件と比較した。P値は、ダネット検定を使用した多重比較の補正を伴う反復測定一元配置分散分析を使用して計算した。
【0131】
結果-定義された構造の脂質は過剰刺激能力を有する
通常、Toll様受容体アゴニスト(TLR)などのワクチンアジュバントによる樹状細胞(DC)の成熟は、IL-1β分泌をもたらさない。インフラマソームの活性化中、IL-1β分泌は起こるが、パイロトーシスと呼ばれる溶解性プログラム細胞死プロセスを伴う可能性がある(Evavoldら、J Mol Biol.,430(2):217~237,2019)。しかし、PAMP LPSおよびDAMP PGPCを使用してDCを成熟させると、それらは、パイロトーシスを伴わずにIL-1βを産生および分泌することができ(
図1参照)、これらの生存可能なDCを過剰活性DCとして特徴付けることができる(Zhivakiら、Cell Rep.,33(7):108381,2020)。マウスモデルでは、過剰活性化されたDCは、LPSのみを使用して活性化された細胞と比較して、免疫応答を誘導する能力が改善されていることが観察されている(Zhivakiら、Cell Rep.,33(7):108381,2020)。
【0132】
DCを過剰活性化することができるさらなる脂質(例えば、過剰活性化脂質)を同定するために、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)(PC)脂質のライブラリーをスクリーニング用に選択した。PC脂質のライブラリーには、混合アシルPC脂質、Lyso PC脂質、および酸化PC脂質が含まれていた。3種類のPC脂質はすべて、ホスホコリン頭部基が存在するためにPGPCと構造的に類似しているが、各種類は、アシル鎖の数および長さ、脂肪酸飽和度、ならびに酸化状態が異なる。脂質スクリーニング戦略を設計する場合、ヒトDCは言うまでもなく、DCを過剰活性化させるこれらの脂質の使用は報告されていなかったので、これらの特性の重要性は不明であった。
【0133】
臨床使用に最も関連する脂質種を同定するために、ヒトDCを用いてPC脂質をスクリーニングした。MoDCはLPSによって活性化され、IL-1βの前駆体(例えば、未成熟IL-1β)を産生するが、LPSのみに応答してIL-1βを分泌しない。LPSと組み合わせてPGPCに曝露すると、moDCは切断された活性型のIL-1βを分泌するが、moDCは生存可能なままである。分泌されたIL-1βは、DC過剰活性化の1日後に細胞培養上清中で検出され得るが、IL-1β分泌後の長いこと未解決なままの生存率を確実にするために、過剰活性化の2日後に細胞生存率を評価した。パイロトーシスまたは脂質の毒性のために死んだ細胞は他の免疫細胞と相互作用することができず、したがって適応T細胞応答を刺激することができないので、moDC生存率は不可欠である。
【0134】
各データセットについて、複数のドナー由来のヒト単球を試験した。簡単に記載すると、GM-CSFおよびIL-4を使用して、ヒト単球試料をmoDCに分化させた。細胞をプレーティングした後、LPSで活性化した。次いで、ライブラリー中の脂質を82.5μMで細胞培養物に添加し、細胞を2日間過剰活性化した。多くの脂質種は、主にLyso PC脂質群でIL-1ベータの産生を誘導した(表1-1)。脂質は細胞生存率にも様々な影響を及ぼし、IL-1ベータ分泌を誘導する脂質は細胞生存率を低下させることがあった(表1-1)。
【0135】
脂質構造と過剰活性化能との間の関係を識別するために、IL-1ベータ分泌を刺激する脂質の最大群(Lyso PC)をさらに分析した。試験したLyso PC脂質はすべて、6~26炭素長に及ぶ単一アシル鎖を有する。試験した全てのドナーについて、IL-1ベータ分泌は、脂質が12炭素長よりも長い単一アシル鎖を有する場合に、LPS処理対照条件を超えると検出可能であった(
図2)。このことは、12~22炭素長の単一アシル鎖を有するPC脂質がIL-1ベータ分泌を刺激し得ることを示している。驚くべきことに、12~22炭素長の不飽和アシル鎖は、脂質36および37を含む試験で見られたように、IL-1ベータ分泌を誘導しなかった(表1-1および
図2)。対照的に、同様に長い飽和アシル鎖を有する脂質(脂質試験35および38)は、IL-1ベータ分泌を誘導することができた(表1-1および
図2)。脂質種36および37に見られる二重結合は、おそらくそれらの構造の変化のために、これらの脂質を不活性にする。
【0136】
さらに、脂質試験38および39(表1-1および
図2)によって示されるように、単一アシル鎖の位置は重要ではないようである。代わりに、アシル鎖の数がより大きな役割を果たすと思われる。混合アシルPCサブセット内の脂質は、様々な長さの2つのアシル鎖を有する。12~22炭素長の範囲内のアシル鎖を有するにもかかわらず、これらの脂質はほとんど不活性であった。
【表1-1-1】
【表1-1-2】
【表1-1-3】
【0137】
結果-22:0 Lyso PCは強力な過剰刺激能力を有する
過剰活性化脂質の最初のスクリーニングは、5人のヒトドナーから得たmoDCを用いて82.5μMの脂質濃度を用いて行った。しかし、異なる脂質種は、様々な濃度にわたって過剰活性化作用を有し得る。具体的には、82.5μMで試験した脂質のいくつかは、細胞生存率の低下を引き起こし、IL-1β分泌を促進しながら細胞生存率を維持するには、より低い脂質濃度が最適であり得ることを示している。3人のヒトドナーから得られたmoDCを使用して、脂質ライブラリーを41.3μMで再スクリーニングした。結果を表1-2に示す。
【表1-2-1】
【表1-2-2】
【表1-2-3】
【0138】
41.3μMで、IL-1β分泌を誘導した脂質は、82.5μMで観察された結果をほぼ確認した(表1-2、表1と比較)。仮定されるように、IL-1β分泌を誘導した脂質で処理したmoDCの生存率は、82.5μMと比較して41.3μMで改善された(表1-2)。
【0139】
次に、追加の研究で使用するために、いくつかの脂質を選択した(表1-3および
図3)。LYSO PCサブセットから、22:0 LYSO PCおよび19:0 LYSO PCを、IL-1β分泌のロバストな誘導に基づいて、追加の研究のために選択した。さらに、IL-1β分泌を刺激するための最小アシル鎖脂質であったために、12:0 LYSO PCを選択した。アシル鎖長がIL-1β分泌活性の範囲外であったため、10:0 LYSO PCおよび24:0 Lyso PCを陰性対照脂質として選択した。酸化脂質群から、PGPC、POVPCおよびoxPAPCは、スクリーニングがこれらの脂質を含む研究に基づいていたため、さらなる研究のために保管された。PAzePCは、IL-1β分泌を促進し、他の酸化脂質と構造的に類似しており、活性を保持しながら試験した中で最長の第2アシル鎖を有していたため、さらなる研究のために選択された。これらの活性および不活性脂質種で観察される違いをより明確に実証するために、選択した脂質の結果を表1~3および
図3に示す。
【表1-3】
【0140】
過剰活性化脂質の効力をさらに理解するために、より広い範囲の脂質濃度でIL-1β分泌および細胞生存率を研究した。4人のヒトドナーから得たmoDCをLPSで活性化させた。目的の脂質を82.5μMで細胞に添加し、濃度を1.3μMの最終試験濃度まで2倍希釈した。LPSで処理した細胞よりも2倍高いレベルでIL-1β分泌を誘導した最低濃度の逆数に、任意の濃度で観察された最大IL-1βシグナルを乗算することによって脂質活性指数を計算し、各脂質の効力を比較した。選択した脂質の結果を表1ー4および
図4に示す。要約すると、22:0 Lyso PCがこれまでで最も強力な活性を有し、19:0 Lyso PCがそれに続く。PGPCおよびPAzePCは同様の活性指数を有していた。
【表1-4】
【0141】
脂質の滴定により、選択された脂質の活性に関する本発明者らの知識も広がった。10.3μMでは、22:0 Lyso PCはIL-1ベータ分泌を誘導する能力を保持していたが、試験した他のすべての脂質は誘導できなかった(表1-5)。10.3μMでは、22:0 Lyso PCで処理したmoDCは高い生存率を保持し(表1-5)、したがって、過剰活性化樹状細胞の両方の特性を示した。20.6μMでは、22:0のLyso PCはIL-1ベータ分泌を増加させたのに対し、試験した他の脂質は増加させなかった(表1-6)が、これは細胞生存率を若干低下させた。
【表1-5】
【表1-6】
【0142】
10.3μMでは、22:0 Lyso PCは、82.5μMのPGPCに匹敵する濃度でIL-1ベータ分泌を刺激する(表1-5および表1-1)。したがって、22:0 Lyso PCは、PGPCよりもほぼ8倍低い濃度で使用することができ、22:0 Lyso PCはこれまでに確認された最も強力な過剰活性化脂質になる。
【0143】
結果-自然免疫シグナル伝達経路アゴニストは樹状細胞を過剰活性化することができる
以前の実験から、樹状細胞を過剰活性化するために2つのシグナルが必要であることが示された、すなわち、未熟型のIL-1βを産生する自然免疫アゴニスト(例えば、LPSなどのPAMP)と、IL-1β分泌を可能にする脂質(例えば、PGPCなどのDAMP)である。上記のDAMPスクリーニングは自然免疫アゴニストとしてLPSを使用したが、毒性の懸念のためにLPSは臨床アゴニストとして使用されていない。したがって、臨床的に関連する自然免疫シグナル伝達経路アゴニストの選択を、ヒトmoDCを過剰活性化する能力について22:0 Lyso PCと組み合わせて試験した。
【0144】
試験したPRRアゴニストは、主にTLRシグナル伝達経路アゴニストに焦点を当てたが、いくつかのcGAS/STINGシグナル伝達経路アゴニストおよびC型レクチンファミリー受容体アゴニストも試験した。10人の異なるヒトドナー由来のmoDCを使用して、アゴニストを最初に試験した(表1-7)。10人のヒトドナーのうちの5人からのmoDCも、より低濃度でアゴニストを試験するために使用した(表1-8)。分化後のmoDC培養物に、DAMP、22:0 Lyso PCとともにPAMPを添加した。細胞を2日間刺激した後、細胞生存率およびIL-1β分泌を測定した。
【表1-7-1】
【表1-7-2】
【0145】
表7および
図5は、4つのアゴニスト:R848、TL8-506、Pam2CSK4およびODN2336がIL-1β分泌を可能にしたことを示す。これらのアゴニストは、細胞生存率にほとんどまたは全く影響を及ぼさなかった(表7)。表8は、低用量PAMP処理の結果を示す。
【表1-8-1】
【表1-8-2】
【表1-8-3】
【0146】
表1-7および
図5に示すように、4つのアゴニスト(R848、TL8-506、Pam2CSK4、およびODN2336)は、22:0 Lyso PCの存在下でヒトDCによるIL-1β分泌を誘導した。これらのPRRアゴニストは、細胞生存率にほとんどまたは全く影響を及ぼさなかった(表1-7)。試験した低アゴニスト濃度では、IL-1β分泌は、R848またはPam2CSK4を22:0 Lyso PCと組み合わせて使用した場合にのみ観察された(表1-8)。R848もPam2CSK4も、試験したより低濃度では細胞生存率に影響を及ぼさなかった(表1-8)。臨床的に関連する自然免疫シグナル伝達経路アゴニストのこの小さなスクリーニングから、ほんの一握りが、22:0 Lyso PCと組み合わせた場合にヒトmoDCを過剰活性化することができることが見出された。IL-1β分泌に基づくと、R848は、ヒトDCの過剰活性化を促進する(例えば、IL-1βを分泌し、細胞生存率を維持する)アゴニストとして最も強力な臨床的に関連する候補である。
【0147】
実施例2:単一アシル鎖およびTLR7/8アゴニストを有するリゾホスファチジルコリン(LPC)と哺乳動物末梢血単核細胞の過剰活性化の組合せ
この実施例は、小分子PAMPと組み合わせた脂質DAMPによるイヌおよびヒト末梢血単核細胞(PBMC)の過剰活性化について説明する。
【0148】
材料および方法
全血からのPBMCの単離。Ficoll-Paque PLUS(Cytivia)を用いた密度勾配遠心分離を使用して、全血からPBMCを単離した。全血をPBSで1:1に希釈し、Ficoll-Paque PLUSの上に重層し、室温で30分間、1000×gで遠心分離した。PBMCを収集し、PBSで2回洗浄し、Ack溶解緩衝液(Lonza)とともにインキュベートして、残っている赤血球を除去した。
【0149】
細胞培養および刺激。単離直後に、10%FBS、50単位/mLペニシリン、50mg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび50mMベータ-メルカプトエタノールを含有するRPMI培地(R10培地)に、PBMCをプレーティングした。細胞を、96ウェル平底組織培養プレートに1ウェルあたり1×105(イヌ細胞)または1×106(ヒト細胞)でプレーティングした。凍結乾燥Vaccigrade R848(Invivogen)を再構成し、製造業者の推奨に従って希釈し、1μg/mLの最終濃度で細胞に添加した。直後に、22:0 LYSO PCを82.5μMの最終濃度で細胞に添加した。追加の自然アゴニストを製造業者の推奨に従ってR10培地に希釈し、以下のように細胞に添加した:ヒトGM-CSF(Peprotech)を10ng/mLの最終濃度で添加した;2’3’cGAMP(Invivogen)を15μg/mLの最終濃度で添加した;LPS、血清型O55:B5(Enzo Life Sciences)を1μg/mLの最終濃度で添加した;水酸化ミョウバン(Invivogen)を30μg/mLの最終濃度で添加した。細胞を37℃、5%CO2で2日間インキュベートした。次いで、細胞培養物をエンドポイント分析に使用した。
【0150】
エンドポイント分析。PBMCをPAMPおよびDAMPとともに2日間培養した後、上清および細胞試料を分析のために収集した。培養中の細胞を400xgで5分間の遠心分離によってペレット化した。ウェル中の培地体積の半分を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはLumit(商標)生物発光アッセイによるサイトカイン定量のために収集し、残りの培地および細胞を使用して、代謝活性を評価することによって細胞生存率を定量した。
【0151】
サイトカイン分泌の定量。ヒトPBMCからのIL-1β分泌を、以下のキット:ELISA MAX Deluxe Set Human IL-1βキット(Biolegend)、Invitrogen Human IL-1βキット、またはLumit(商標)Human IL-1β Immunoassay(Promega)のうちの1つを使用して評価した。ヒトPBMCからのIFNγ分泌は、ELISA MAX Deluxe Set Human IFNγ(Biolegend)を使用して評価し、ヒトPBMCからのTNFα分泌は、Human TNFα Uncoated ELISAキット(Invitrogen)を使用して評価した。ELISAを以下の修正を加えて製造業者の指示に従って実施した:i)インキュベーションのための総試料+緩衝液体積を100μLから50μLに減少させた;ii)上位の標準物質を500pg/mLに調製し、7.8pg/mLに2倍希釈した;iii)試料のインキュベーションをオービタルシェーカーで4℃で一晩で完了させた。Lumit(商標)アッセイを製造業者の指示に従って実施した。イヌPBMCからのIL-1β分泌を、以下の修正を加えたイヌIL-1β/IL-1F2 DuoSet ELISA(R&D)を製造業者の指示に従って使用して評価した:i)インキュベーションのための総試料+緩衝液体積を100μLから50μLに減少させた;ii)試料のインキュベーションをオービタルシェーカーで4℃で一晩で完了させた。全てのELISAについて、吸光度は、Spectramax M5eプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して、570nm補正で450nmで測定した。Lumit(商標)アッセイでは、発光は、Spectramax M5eプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して、500msの積分時間を使用してすべての波長で測定した。上清中のサイトカイン濃度を決定するために、試料濃度を、GraphPad Prism 9(GraphPad Software)での4PL分析による標準曲線を使用して補間した。次に、試料の補間された結果を、上清に行ったあらゆる希釈について調整した。
【0152】
細胞生存率の定量。細胞生存率は、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて、代謝的に活性な細胞の指標としてATPの存在を定量することによって評価した。代謝活性は、製造業者の指示に従って評価した。CellTiter-Glo試薬を、細胞ペレットおよび新鮮な培地と混合し、次いで白色の不透明な96ウェルプレートに移した。発光は、Spectramax M5eプレートリーダー(Molecular Devices)で、500msの積分時間を使用してすべての波長で測定した。生存率を、R848で処理したPBMCの対照条件と比較して計算した。
【0153】
統計解析。各条件について、各ドナー由来の細胞を試験のために3連でプレーティングした。サイトカイン定量のために、3連の値を補間に使用し、データをR848単独の対照条件と比較したドナーごとの総濃度(pg/mL)または倍数変化としてプロットした。生存率の定量のために、各ドナーの3連の値を平均し、平均値を1つのドナー測定値として使用した。複数のドナーが試験され、棒グラフの各データポイントはドナーの値を表す。試験条件の違いを試験するために、試験結果をR848単独の対照条件と比較した。P値は、ダネット検定を使用した多重比較の補正を伴う混合効果一元配置分散分析を使用して計算した。
【0154】
結果-22:0 LYSO PCおよびR848過剰活性化イヌPBMCによる処理
実施例1に記載されるように、22:0 LYSO PC(DAMP)とTLR7/8アゴニストR848(PAMP)との組合せは、ヒトmoDCにおいて強力な過剰刺激活性を有することが見出された。この過剰刺激活性が他の臨床的に関連する種にもあてはまるかどうかを評価するために、22:0 LYSO PC+R848がイヌ全血から単離したPBMCを過剰活性化する能力を評価した。各データセットについて、本物の(bone fide)イヌmoDCを誘導するために利用可能なイヌ特異的試薬がないため、複数のドナー由来のPBMCをmoDCの代わりに使用した。簡単に記載すると、密度勾配遠心分離を使用して全血からPBMCを単離し、次に、目的の過剰活性化刺激とともに2日間培養した。
【0155】
培養2日後、細胞培養上清中のIL-1βの定量および細胞生存率の測定によって、過剰活性化を評価した。22:0 LYSO PCおよびR848を一緒に用いて処理した場合、イヌPBMCは、試験した他のすべての刺激と比較して、mLあたりの濃度、ならびにR848単独と比較したドナーあたりの倍数変化の両方で、同等またはより高いレベルのIL-1βを分泌した(
図6A~6B)。PBMCの5~10%を構成する単球が、R848による活性化に応答してIL-1βを放出することができることを示す以前の研究と一致して、イヌPBMCは、未処理細胞と比較して、R848単独でIL-1β分泌のレベルが上昇した。LPS+ミョウバンのパイロトーシスの組合せは、予想通り高いレベルのIL-1βを惹起した。特に、PGPC+R848は、R848単独と比較して同様のレベルのIL-1βを惹起したが、GM-CSFも2’3’cGAMPも未処理細胞と比較してイヌPBMCからの有意なIL-1β分泌を誘導しなかった。
【0156】
IL-1βは、細胞培養上清中のイヌPBMCの過剰活性化の1日後に検出され得るが、IL-1β分泌後の長いこと未解決なままの生存率を確実にするために、過剰活性化の2日後に細胞生存率を評価した。22:0 LYSO+R848は、相対細胞生存率を有意に低下させなかった(
図6C)。興味深いことに、R848と組み合わせたPGPCは、イヌPBMCに対していくらか毒性であることが証明されたが、ヒトmoDC(実施例1)またはヒトPBMC(
図7C)に対して毒性であることは観察されなかった。まとめると、これらのデータは、22:0 LYSO+R848がイヌPBMCから高いレベルのIL-1β分泌を惹起することを実証しており、これは過剰活性化を示している。
【0157】
結果-22:0 LYSO PCおよびR848過剰活性化ヒトPBMCによる処理
22:0 LYSO PCおよびR848が強力な過剰活性化の潜在性を有するものとして特定された最初のスクリーニングは、実施例1に記載されるようにヒトmoDCを用いて実施された。イヌPBMCおよびヒトmoDCを用いて行われた観察がヒトPBMCにおいて再現され得ることを確認するために、ヒトドナーから得られた全血から単離されたPBMCを用いて過剰活性化実験も行った。簡単に記載すると、複数のヒトドナーからの密度勾配遠心分離によってPBMCを全血から単離し、目的の過剰活性化刺激と共に2日間培養した。
【0158】
ヒトPBMCは、ヒトmoDCおよびイヌPBMCと同様に、試験した全ての他の刺激よりも高いかまたは同等のレベルでIL-1βを分泌した(
図7A~7B)。イヌPBMCと同様に、ヒトPBMCは、単球活性化により、R848単独に応答してIL-1βを分泌し、これは22:0 LYSO PCの添加によって上昇した。LPS+ミョウバンのパイロトーシスの組合せは、予想通り高いレベルのIL-1βを惹起した。イヌPBMCにおける観察結果と一致して、PGPC+R848は、R848単独よりも実質的に高いレベルのIL-1βを誘導しなかった。GM-CSFは、未処理細胞によって産生されるバックグラウンドレベルを大幅に上回るヒトPBMCからのIL-1β分泌レベルを誘導しなかった。
【0159】
IL-1β分泌後のヒトPBMCの長いこと未解決なままの生存率を確実にするために、過剰活性化の2日後にヒトPBMCの生存率も評価した。いずれの刺激による処理の後も、ヒトPBMC生存率の有意な低下は観察されなかった(
図7C)。まとめると、これらのデータは、ヒトおよびイヌの両方のPBMCが22:0 LYSO PC+R848によって過剰活性化されることを実証している。興味深いことに、イヌPBMCは、PGPC+R848よりも22:0 LYSO PC+R848によってより高度に過剰活性化される。
【0160】
活性化ヒトPBMCはIL-1βに加えて他のサイトカインを分泌することができるので、細胞培養上清中の炎症促進性サイトカインIFNγおよびTNFαの分泌は、過剰活性化の2日後に測定した。22:0 LYSO PC+R848の組合せは、試験した全ての他の刺激と比較して、R848単独と比較して、IFNγ分泌およびTNFα分泌の両方においてドナーあたりの最大倍数変化を誘導した(
図8A~8B)。特に、LPS+ミョウバンはヒトPBMCからの高いレベルのIL-1β分泌を誘導したが(
図7B)、この刺激の組合せはIFNγまたはTNFα分泌の倍数増加を誘導しなかった。さらに、GM-CSFも2’3’cGAMPも、R848単独よりもIFNγ分泌の実質的な倍数変化を惹起しなかった。これらのデータは、22:0 LYSO PC+R848の組合せが、ヒトPBMCからの炎症促進性サイトカインIFNγおよびTNFαの分泌の誘導において優れていることを示している。
【0161】
実施例3:22:0 LYSO PCは非ヒト霊長類樹状細胞および末梢血単核細胞を過剰活性化する
この実施例は、小分子PAMP(R848)と組み合わせた脂質DAMPによる非ヒト霊長類moDCおよび末梢血単核細胞(PBMC)の過剰活性化について説明する。
【0162】
材料および方法
非ヒト霊長類moDCの分化および過剰活性化。アカゲザル由来の全血を等体積のPBSで希釈し、Ficoll-Paque PLUS溶液に重層した。細胞を、室温で1000rcfで30分間、中断せずに回転させた。バフィーコート層を収集し、PBSを用いて2回洗浄し、計数した。PBMCから単球を単離するために、MiltenyiのヒトCD14マイクロビーズを製造業者の推奨に従って使用した。次いで、単離された単球を、組換えヒトGM-CSF(50ng/mL)および組換えヒトIL-4(25ng/mL)を使用して6日間にわたってmoDCに分化させた。細胞を、RPMI、10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよびベータ-メルカプトエタノールからなるR10培地中で成長させた。
【0163】
分化したmoDCを収集し、計数し、96ウェルプレートに1×105細胞/ウェルでプレーティングした。細胞を過剰活性化刺激ありまたはなしで処理した。過剰活性化培養物を2日間インキュベートした後、細胞生存率およびIL-1ベータ分泌を評価した。Promega Cell Titer-Gloを製造業者の指示に従って使用して、細胞生存率の尺度としてATPを定量した。非ヒト霊長類IL-1ベータに特異的なELISAキットをInvitrogenから購入し、製造業者の指示に従ってアッセイを完了した。
【0164】
非ヒト霊長類PBMCの過剰活性化。カニクイザル由来の全血を等体積のPBSで希釈した。90%Ficoll-Paque PLUSおよび10%RPMIの溶液を作製し、希釈した全血を、希釈Ficollの上に重層した。細胞を、室温で1000rcfで30分間、中断せずに遠心分離した。バフィーコート層を収集し、PBSで2回洗浄した。赤血球汚染が存在する場合、細胞をACK溶解緩衝液中で2分間インキュベートした後、PBSで洗浄して溶解赤血球を除去した。
【0165】
単離したPBMCを1×106細胞/ウェルでプレーティングし、過剰活性化刺激ありまたはなしで培養した。2日間のインキュベーションの後、細胞を生存率について評価し、細胞培養上清を使用してサイトカイン産生量を測定した。Biolegend LegendPlexキットなどの市販のキットを製造業者のプロトコルによって指示されるように使用して、目的のサイトカインを定量した。
【0166】
統計解析。アカゲザルmoDCを4匹の動物から作製した。各活性化条件は3連で試験され、報告されたデータ点は動物ドナー試料の3連の平均である。細胞数が限られているため、R848+41.3uM PGPCを使用した過剰活性化は、2つの試料のみで試験されたことに留意されたい。データは、通常の一元配置分散分析を使用して統計学的有意性について試験された。
【0167】
PBMCを13匹のカニクイザルから得た。各活性化条件は3連で試験され、動物試料の3連の平均値がグラフ化されている。反復測定一元配置分散分析を使用して統計的有意性を試験し、続いてダネットの多重比較試験を行った。
【0168】
結果
過剰活性化が自然免疫系の重要な生物学的機能である場合、それが複数の種にわたって進化的に保存されていることが分かると予想される。さらに,治療薬としての22:0 LPCのさらなる開発には,関連する疾患動物モデルでの試験が必要になる可能性があるであろう。本発明者らは、非ヒト霊長類などの近縁種も22:0 LPC媒介性の過剰活性化に応答すると仮定した。
【0169】
本発明者らの仮説を試験するために、本発明者らはアカゲザル全血から単球を単離した。ヒト細胞と同じ分化プロトコルを使用して、組換えヒトGM-CSFおよびIL-4を使用して単球をmoDCに分化させた。細胞をプレーティングし、R848を含めてまたは含めずに、および過剰活性化脂質を含めてまたは含めずに刺激した。2日間のインキュベーションの後、IL-1ベータが細胞培養上清中に検出された。興味深いことに、22:0 LPCは、82.5uMおよび41.3uMで検出可能なIL-1ベータを誘導したが、IL-1ベータは、PGPCを使用して82.5uMでのみ検出可能であった(
図9B)。これらの結果は、ヒトmoDCを使用して生成されたデータと一致し、22:0 Lyso PCがPGPCよりも強力であることを実証している。さらに、細胞は、試験した条件にわたって生存し続けた(
図9A)。
【0170】
ヒトおよびイヌのPBMCを使用した研究は、集団内の細胞が過剰活性化に応答することを実証した。非ヒト霊長類のmoDCは過剰活性化される可能性があるため、本発明者らは、NHP由来PBMCも過剰活性化され得るかどうかを試験しようとした。カニクイザル由来の全血を処理してPBMCを単離した。細胞を1×10
6細胞/ウェルでプレーティングし、82.5および41.3μMの濃度の22:0 Lyso PCまたはPGPCで過剰活性化した。過剰活性化の陰性対照として、PBMCを未処理のままにするか、または1μg/mLのR848でのみ刺激した。細胞生存率は、全ての試験条件で維持された。イヌおよびヒトのPBMCと同様に、R848刺激はIL-1ベータ分泌を誘導した。過剰活性化を誘導するために82.5uMの22:0 Lyso PCまたはPGPCのいずれかを添加すると、IL-1ベータ産生が増加した(
図10A)。この効果は、R848刺激単独と比較して、過剰活性化状態のIL-1ベータ出力の倍数変化を定量した場合に特に明白であった(
図10B)。
【0171】
ヒトPBMCと同様に、カニクイザルPBMCも、82.5uM 22:0 Lyso PCまたはPGPCで2日間過剰活性化すると、IFN-ガンマ産生が有意に増加した。これらの観察を拡張し、過剰活性化によって増加する可能性がある他のサイトカインを同定するために、多重ビーズに基づくアッセイを使用して炎症性サイトカインを定量した。BiolegendのLegendPlexキットはELISAと同様に機能するが、一次抗体はプレート表面ではなくビーズに結合している。異なるビーズ集団により、1つの反応内で複数のサイトカインを同時に定量することが可能になる。ビーズアッセイを使用して、複数のサイトカインが過剰活性化と共に増加することを特定した。IFN-ガンマ、IL-17a、IL-23、IFN-ベータおよびIL-8は、R848単独による処理と比較して、82.5uM 22:0 Lyso PCまたはPGPCを用いてPBMCを過剰活性化した場合に増加した(
図11A~15A)。これらの増加は、過剰活性化とR848活性化とを比較するために各動物試料について倍数変化を計算した場合に特に明白であった(
図11B~15B)。サイトカインレベルの増加は、使用した脂質の量に依存していた。41.3uMで22:0 Lyso PCまたはPGPCを使用した場合、倍数変化はそれほど顕著に増加せず、この濃度では、サイトカイン分泌の増加は必ずしも統計学的に有意ではなかった。興味深いことに、すべてのサイトカインが過剰活性化の影響を受けたわけではなかった。例えば、IL-6分泌は、過剰活性化脂質の添加で比較的変化しないままであった(
図16A)。倍数変化としてグラフ化されたデータは、過剰活性化依存性サイトカインで観察された傾向とは非常に異なっているように見える(
図16B)。
【0172】
まとめると、これらのデータは、22:0のLyso PCがアカゲザルとカニクイザルの両方において過剰活性化脂質であることを示している。さらに、非ヒト霊長類細胞は、他の種で観察されたものと同様に、過剰活性化され得る。これらのデータは、IFN-ガンマおよびIL-17aなどのサイトカインが、食細胞によって産生される可能性が低く、この食細胞は、使用する過剰活性化刺激に対する主な反応細胞であると本発明者らが考えるものであるため、特に興味深い。これが本当であれば、過剰活性化細胞は、IFN-ガンマおよびIL-17aを発現することができるT細胞などの隣接細胞に対する二次的な影響を誘導している可能性がある。
【0173】
実施例4:過剰活性化樹状細胞は強力なCD4+Th1細胞応答を刺激する
この実施例は、ヒトメモリーCD4+T細胞およびナイーブCD4+T細胞に対する過剰活性化ヒトmoDCの効果について説明する。
【0174】
材料および方法
ヒトmoDCとメモリーCD4T細胞の共培養。ヒト単球は、Miltenyi StraightFrom LeukoPak CD14マイクロビーズを製造業者の指示に従って使用して、白血球除去産物から単離した。Miltenyi製のカスタムPBMC単離マイクロビーズキットを使用して、同じ血液産物から赤血球を、顆粒球からPBMCを分離した。PBMC精製後、MiltenyiヒトメモリーCD4+T細胞単離キットを使用してCD45RO+画分を負に選択した。実験で使用する準備ができるまで、細胞を冷凍保存した。
【0175】
ヒト単球を、組換えヒトGM-CSFおよびIL-4を前述のように6日間使用して、樹状細胞に分化させた。過剰活性化のために、moDCをR10培地中で5E4細胞/ウェルで96ウェルU底マイクロプレートにプレーティングした。R848および脂質を細胞培養物に添加し、過剰活性化を一晩インキュベートした。T細胞刺激抗CD3抗体を、T細胞を添加する前に培養物に添加した(抗IL-1ベータ抗体は遮断してもしなくてもよい)。自己凍結メモリーCD4 T細胞を解凍し、R10培地に再懸濁し、2.5×105細胞/ウェルで添加した(比率は1:5、DC:T細胞)。2日間のインキュベーションの後、細胞培養上清を収集し、サイトカイン分泌を測定するために使用した。Biolegend LegendPlexキットなどの市販のキットを製造業者のプロトコルによって指示されるように使用して、目的のサイトカインを定量した。
【0176】
4人のドナーを試験し、各実験条件を3連で試験した。各データポイントは、ドナー3連の平均値を表す。データを、二元配置分散分析、続いてテューキーの多重比較検定を用いて統計学的有意性について試験した。
【0177】
混合リンパ球反応。ヒト単球は、Miltenyi StraightFrom LeukoPak CD14マイクロビーズを製造業者の指示に従って使用して、白血球除去産物から単離した。ナイーブCD4 T細胞を単離するために、全血を等体積のPBSで希釈した。希釈した血液を、Ficoll-Paque PLUS溶液の上に重層し、室温で20分間、1000rcfで中断せずに回転させた。バフィーコート層を収集し、洗浄し、計数した。MiltenyiヒトナイーブCD4 T細胞マイクロビーズ単離キットを使用して、製造業者の指示に従ってPBMCから目的の細胞を単離した。回収した細胞を90%FBSおよび10%DMSO中で凍結保存した。
【0178】
単球はmoDCに分化した。moDCを計数し、U底プレートに2×104細胞/ウェルでプレーティングし、過剰活性化刺激または対照条件で処理した。培養の1日後、異なる(同種)ヒトドナー由来の1×105細胞/ウェルのナイーブCD4 T細胞を解凍し、100ng/mLのIL-2を含む培養物に添加した。細胞を5日間共培養し、共培養の3日目にIL-2を与えた。5日後、細胞を、BD GolgiPlugを含む白血球活性化カクテル(BD Biosciences)を使用して4時間再活性化した。細胞を染色して、フローサイトメトリーによって得られた活性化T細胞の極性形成を決定した。細胞内染色標的は、細胞内染色工程の前に細胞を固定および透過処理するためにBD BiosciencesのTranscription Factor Bufferセットの使用を必要とした。
【0179】
10のmoDCドナー試料をMLRアッセイで試験した。FlowJoソフトウェアを使用して染色結果を分析し、一貫したゲーティング戦略をすべての試料に適用した。活性化細胞の頻度を、各試料中のCD4 T細胞のパーセンテージとしてグラフ化した。対応のあるt検定を使用して、統計学的有意性を決定した。
【0180】
結果-過剰活性樹状細胞はTh1メモリーCD4 T細胞を強力に再活性化する
過剰活性樹状細胞の1つの重要な特徴は、それらが生存可能なまま成熟IL-1ベータを分泌することである。対照的に、非過剰活性細胞は、IL-1bを分泌するとパイロトーシスを受ける。継続的に細胞が生存することにより、樹状細胞がT細胞などの他の細胞と相互作用する機会を得ることができるため、これらの2つの特徴は特に興味深い。これらの細胞間相互作用は、DCが抗原を提示し、共刺激シグナルおよび炎症シグナルをT細胞に提供する機会をもたらす。他の例で上述したように、PBMCの過剰活性化は、他の細胞型を潜在的に活性化し得る。興味深いことに、プレート結合抗CD3および抗CD28アゴニスト抗体を使用するなどの非細胞ベースの方法と比較して、DCはメモリーCD4 T細胞をより強力に再活性化することが報告されている(Jainら、Nat Commun,9(1):3185,2018)。発表された研究におけるT細胞再活性化の増強の機構は、DCからT細胞へのIL-1ベータシグナル伝達に依存していた。しかし、T細胞応答に対する異なるDC活性化状態の影響は調査されなかった。過剰活性化DCがIL-1ベータを強力に産生し、それらの生存能力が継続的な細胞間相互作用を可能にすることを考え、本発明者らは、過剰活性化がメモリーCD4 T細胞を再活性化する樹状細胞の最も強力な細胞状態であると仮定した。
【0181】
本発明者らの仮説を試験するために、ヒト単球をmoDCに分化させた。moDCは、刺激せずに放置するか、またはR848で活性化するか、またはR848および22:0 LPCで過剰活性化するか、または非過剰活性化脂質(R848および10:0 LPC)で偽処理した。1日のインキュベーションの後、自己T細胞を培養物に添加した。ペプチド-MHC認識をシミュレートするために、TCR刺激抗CD3抗体を極めて限定的な濃度(Jainら、上掲、2018で使用されたものより300倍低く、非常に希薄な濃度であることが既に指摘されている)で添加した。T細胞応答がIL-1bによって媒介されるかどうかを試験するために、IL-1ベータシグナル伝達を阻害するために抗IL-1ベータ遮断抗体を培養物に添加するさらなる実験条件を設定した。追加の対照として、測定されたサイトカイン応答がmoDCから直接来たものではないことを確実にするために、一部のmoDC刺激物にはT細胞を添加しなかった。刺激物は、空のウェルにもプレーティングされ、その後にT細胞を加えて、刺激物がmoDCを必要とせずにT細胞に直接影響を及ぼさないことを確かめた。
【0182】
T細胞応答サイトカインを、T細胞の添加の2日後に培養上清から測定した。IFN-ガンマは、moDCまたはT細胞を単独で培養した場合には最小限にしか検出されなかった。共培養すると、IFN-ガンマが産生され、T細胞からのTh1応答を示した。抗CD3抗体によるTCR刺激が限られているとすると、R848処理moDCは、非刺激moDCと比較して有意に強いTh1応答を生成しなかった。しかし、R848を過剰活性化脂質22:0 LPCと組み合わせると、有意により強いTh1応答が生じた(
図17)。10:0 LPCなどの非過剰活性化脂質を使用すると、これらのIFN-ガンマレベルの上昇は検出されなかった。さらに、抗IL-1ベータを共培養物に添加すると、過剰活性化共培養物はIFN-ガンマ産生が有意に減少し、Th1応答の増強がIL-1ベータシグナル伝達に依存することが示唆された。
【0183】
対照的に、Th2サイトカインIL-4およびIL-13は、moDC過剰活性化によって増強されなかった。様々な刺激物で処理したmoDCは、共培養したT細胞から同様のIL-4およびIL-13応答をもたらしたが、統計学的に有意ではなかった(
図18A~18B)。Th17サイトカインIL-17a、IL-17fおよびIL-22も測定した。Th17サイトカインは、IFN-ガンマで観察されたものと同様の傾向をたどった(
図19A~
図19C)。過剰活性化moDCはTh17サイトカイン産生の統計学的に有意な増加を誘導したが、非過剰活性化moDCは誘導しなかった。抗IL-1ベータ抗体はサイトカインレベルを有意に低下させたため、Th17サイトカイン産生の増強はIL-1ベータシグナル伝達に依存していた。これらの結果は、過剰活性化されたmoDCがTh1およびTh17応答を優先的に増強する一方で、Th2応答は影響を受けないままであることを示唆した。抗腫瘍応答の文脈では、過剰活性化DCは、抗原提示中に適切な状況でIL-1ベータを提供することができるので、腫瘍応答性メモリーCD4 T細胞を再活性化するのにより適していると考えられる。本発明者らの実験系で使用した抗CD3刺激が低いことを考えると、過剰活性DCは、がんに見られるようなペプチド-MHCとのTCR相互作用が弱いにもかかわらず、再活性化を刺激する能力に優れていると考えられる。
【0184】
結果-過剰活性moDCはナイーブCD4 T細胞をTh1応答に偏向させる
過剰活性化は、Th1およびTh17メモリーCD4 T細胞応答を再活性化するmoDCの能力を改善する。いくつかの疾患状況では、CD4 T細胞は以前に活性化されていない可能性があり、したがってナイーブであり得る。ナイーブCD4 T細胞に対する過剰活性化moDCの効果を調べるために、広く使用されている免疫学的アッセイである、混合リンパ球反応(MLR)を用いた。moDCを、R848で活性化するか、またはR848および22:0 LPCで過剰活性化した。1日のインキュベーションの後、同種ドナー由来のナイーブCD4 T細胞を培養物に添加した。TCRとペプチド-MHCとの間のミスマッチは、一部のT細胞にTCR刺激を与える。IL-2を添加して、基底T細胞成長シグナルを提供する。細胞を5日間共培養した後、染色およびフローサイトメトリー分析を行った。フローサイトメトリーが選択されたのは、この技術が単一細胞レベルで特異性をもつデータを収集するためである。CD4 T細胞の分極を決定するために、活性化細胞をエフェクターサイトカインおよび関連する分極転写因子について染色した。
【0185】
Th1分極を分析するために、細胞を転写因子TbetならびにサイトカインIFN-ガンマおよびTNF-アルファについて染色した。R848活性化と比較して、22:0 LPCを用いた過剰活性化はTh1細胞の頻度を増加させた(
図20)。さらに、多機能性Th1分極細胞(IFN-ガンマおよびTNF-アルファのそれらの二重発現によって示される通り)は、過剰活性化moDC(
図20)と共に培養した場合に頻度が増加した。Th2分極をGata3およびIL-4について染色することによって研究した。Th1応答と比較して、最小のTh2分極が生じた(
図20)。興味深いことに、細胞は、RORgおよびIL-17についても染色されたが、これらの細胞は検出されなかった。ナイーブCD4 T細胞からのTh17細胞分化の欠如は、メモリーCD4 T細胞をmoDCと共培養した場合に観察された結果と対照的である。まとめると、これらの研究の結果は、22:0 LPCを使用した過剰活性化が、活性化の際にTh1応答へのナイーブCD4 T細胞の分極を増強することを示している。
【0186】
実施例5:22:0 LYSO PCのミセルへの配合
この実施例は、22:0 Lyso PCの界面活性剤含有製剤の調製および試験について説明する。
【0187】
材料および方法
ポロキサマーを用いた22:0 Lyso PCの製剤化。以下の界面活性剤を1%、2%、または5.5%で水に溶解した:ポロキサマー407(KP407)、ポロキサマー188(KP188)、Cremophor EL(K EL)、Cremophor RH40(K RH)、Pluronic(登録商標)P84(P-84)およびPluronic(登録商標)P123(P-123)。22:0 Lyso PCを界面活性剤溶液に再懸濁し、4℃で1時間撹拌した。次いで、溶液を室温にしてミセルを形成した。10倍濃縮PBSを使用して、塩を溶液に添加して分子相互作用を安定化させ、生理学的に適切な容量オスモル濃度を得た。脂質溶液は、濾過せずに放置するか、または0.45umの孔径で濾過して不溶性の脂質フレークを除去した。脂質をさらに希釈し、1ug/mLのR848とともにヒトmoDC細胞培養物に添加した。目標脂質濃度は、脂質が濾過前に完全に生物学的に利用可能であるというシナリオに基づいている。しかし、不溶性脂質の濾過は、生物学的に利用可能な脂質の供給を減少させる。したがって、過剰活性の尺度としてのIL-1ベータは、ミセルへの、したがって溶液への22:0 Lyso PC取り込みの指標として使用することができる。過剰活性化の1日後、細胞培養上清を収集してサイトカイン分泌を測定し、細胞を使用してCell Titer-Gloによる生存率を測定する。
【0188】
溶媒蒸発法は、KP407と混合する前にメタノールまたはエタノールを利用して、22:0 Lyso PCを完全に溶解する。溶解した脂質溶液を室温で90分間撹拌しながら5.5%KP407と混合してアルコール溶媒を蒸発させ、ポロキサマーおよび脂質で粒子形成を誘導する。塩を溶液に添加して分子相互作用を安定化し、溶液を生理学的に適切な容量オスモル濃度にする。次いで、溶液を濾過せずに放置するか、または0.45umの孔径で濾過して不溶性脂質フレークまたは粒子凝集体を除去する。次いで、脂質を1ug/mLのR848とともにヒトmoDC培養物に添加する。過剰活性化の1日後、細胞培養上清を収集してサイトカイン分泌を測定し、細胞を使用して細胞生存率を測定した。
【0189】
粒子サイズは、動的光散乱(DLS)によって定量した。粒子サイズは、KP407への再懸濁または溶媒蒸発粒子合成を使用して作製されたミセルの0.45um濾過後の溶液中の粒子について評価された。
【0190】
ポロキサマー製剤におけるこれらの研究からのデータは、1つのヒトmoDCドナー試料から示されている。個々のデータポイントは、三連の平均を表す。
【0191】
結果-22:0 LYSO PCのミセルへの組み込み
22:0 Lyso PCは、水溶液にほとんど不溶性の脂質である。細胞培養物に22:0 Lyso PCを添加する本発明者らの最初の方法は、培養培地に脂質を単に再懸濁することであった。しかし、脂質材料は、溶液中でフレークとしてはっきりと視認可能であった。一貫した用量を投与するためには、脂質を可溶化させることが理想的であろう。これは、動物研究において、またヒト使用のための開発された治療としても最も重要であろう。過剰活性化分子が脂質であることを考えて、本発明者らは、22:0 Lyso PCがミセルに組み込まれる可能性があると仮定した。
【0192】
本発明者らの仮定を試験するために、本発明者らは、22:0 Lyso PCのミセル化を助けることができる界面活性剤のセットをスクリーニングした。凍結乾燥脂質を、1または2%の界面活性剤を含有する水溶液と混合した。混合中に溶液を冷蔵して、界面活性剤をモノマー化し、脂質と相互作用させた。次いで、溶液を室温に加温してミセル化させた。10倍濃縮PBSを使用して、塩を溶液に添加して分子相互作用を安定化させ、溶液を生理学的に適切な容量オスモル濃度にした。次いで、22:0 Lyso PCミセルを濾過せずに放置するか、または0.45umフィルターに通して不溶性脂質を除去した。次いで、これらの脂質ストックをさらに希釈し、ヒトmoDC培養物に添加して細胞を過剰活性化した。K EL、K RHおよびP-84などのいくつかの界面活性剤は、細胞生存率の低下を引き起こし、使用には理想的ではなかった(
図21)。比較すると、KP407、KP188、およびP-123は、細胞生存率を損なわなかった。次いで、本発明者らは、細胞生存率が維持されたこれらの様々な刺激条件からIL-1ベータ分泌を定量した。脂質を濾過せずに放置すると、22:0のLyso PCをPBSに再懸濁して細胞に添加する本発明者らの標準的な方法と同様に、高いIL-1ベータ分泌が観察された(
図22)。脂質の濾過は、moDCによって分泌されたIL-1ベータを有意に減少させ、不溶性脂質も過剰活性化に寄与することを示唆した(
図22)。22:0 Lyso PCをKP407またはP-123と共に製剤化して濾過すると、PBS中の濾過22:0 Lyso PCと比較して、IL-1ベータ分泌が改善された(
図22)。これらのデータは、ミセルとして可溶化された22:0 Lyso PCがDC過剰活性化を誘導する能力を維持し、溶解度の改善がDC過剰活性化を増加させることを実証している。この最初の研究は、ポロキサマーおよびPluronic(登録商標)を使用して脂質をミセルに組み込むことによって、22:0のLyso PCの一貫した溶液を達成できることを実証した。
【0193】
さらなる研究および最適化のために、KP407をポロキサマーとして選択した。22:0 Lyso PCは水溶液にほとんど不溶性であるため、本発明者らは、完全に可溶化された脂質はKP407とより容易に会合すると仮定した。22:0 Lyso PCはエタノールまたはメタノールに可溶性であり、これらのアルコールは両方とも水と混和性である。22:0 Lyso PCの粒子への組み込みを最適化するために、脂質を最初にメタノールまたはエタノールに溶解した。溶解した脂質溶液を撹拌しながら5.5%KP407と混合し、室温で90分間150rpmで撹拌してアルコール溶媒を蒸発させ、ポロキサマーおよび脂質で粒子形成を誘導した。蒸発後に水を添加して、KP407濃度を5.5%に戻した。10倍濃縮PBSを使用して、粒子形成を安定化させ、生理学的に適切な容量オスモル濃度に達するように塩を添加し、PBS中のKP407の最終濃度を5%にした。0.45umの孔径で濾過した後、脂質溶液を希釈し、82.5uMの理論目標濃度で細胞を過剰活性化するために使用した。KP407ミセルに組み込まれていない22:0 Lyso PCは、材料の大部分が濾別されたため、最小量のIL-1ベータを誘導した(
図23A)。しかし、KP407を混合すると、IL-1ベータ分泌が増加した(
図23A)。最初に脂質を可溶化するためにメタノールまたはエタノールを使用すると、IL-1ベータ分泌はさらに増加し、この溶媒蒸発戦略を使用してより多くの脂質が粒子に組み込まれたことが示唆された。細胞の大部分はそれぞれの条件で生存可能なままであったが、溶媒蒸発法では細胞生存率は約25%低下した(
図23B)。興味深いことに、ビヒクル溶媒蒸発法を使用して処理した試料の生存率は、それほど低下しなかった。このことは、22:0 Lyso PCのバイオアベイラビリティを増加させることにより、22:0 Lyso PCをより低用量で使用できることを示唆している。
【0194】
粒子サイズを特徴付けるために、動的光散乱が用いられた。PBS中の22:0 Lyso PCおよび5% KP407中の22:0 Lyso PCで行われた読み取りは、粒子サイズが一貫していないため、試料の読み取りに大きなばらつきがあり、低品質のサイジングデータをもたらした。対照的に、溶媒蒸発を使用して生成された粒子は一貫して直径が約1500nmであった(
図24)が、22:0 Lyso PCを欠くミセルの調製物はこのサイズの粒子がなかった。したがって、22:0 Lyso PCとKP407との間の相互作用により、直径約1500nmの安定な粒子の形成が可能になった。これらの粒子は固体ではなく、測定された粒子サイズを考慮すると、変形する可能性があり、より小さいフィルター孔を通過することが可能となる。
【0195】
実施例6:インビトロおよびインビボでのマウス樹状細胞の過剰活性化
この実施例は、インビトロおよびインビボのマウス腫瘍モデルにおけるマウス細胞に対する22:0 Lyso PCおよび/またはR848のKP407含有製剤の試験について説明する。
【0196】
材料および方法
マウスFLT3L分化骨髄由来DC(BMDC)の生成。脚大腿骨および脛骨をマウスから取り出し、ハサミで切断し、滅菌チューブに流した。骨髄懸濁液をACKで1分間処理した後、40umのセルストレーナーに通した。細胞を計数し、10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシン、ならびにL-グルタミンおよびピルビン酸ナトリウム(I10)のサプリメントを含有する完全IMDMからなる培地に再懸濁した。次いで、細胞をウェルあたり5E6骨髄細胞でP12プレートにプレーティングした。組換えマウスFLT3L(Miltenyi)を200ng/mLで培養物に添加した。分化した細胞を9日目のその後のアッセイに使用した。分化の効率は、BD Symphony A3を使用するフローサイトメトリーによってモニターされ、CD11c+MHC-II+細胞は、生細胞の80%を常に上回っていた。各実験について、5匹のマウスを使用してBMを収集し、DCを作製した。
【0197】
マウスFLT3L分化BMDC(FLT3L-BMDC)過剰活性化。BMDCをPBSで洗浄し、1.5×105細胞/ウェルの濃度でFLT3L含有I10に再プレーティングした。最終体積200μL/ウェルとなるように、指示濃度で刺激物を培養物に添加した。刺激の24時間後、細胞培養上清を遠心分離後に収集し、サイトカイン分泌を測定するために-20℃で保存した。IL-1b、IL-6、IL-12p40およびTNF-アルファELISAは、eBioscience Ready-SET-Go!(現在はThermoFisher)ELISAキットを製造業者のプロトコルに従って使用して実施された。細胞生存率は、PromegaのCell Titer-Glo試薬キットを用いて測定した。
【0198】
フローサイトメトリー。FcR遮断後、処理したFLT3L-BMDCを洗浄し、Live Dead Fixable色素(ThermoFisher)を用いてPBS中で4℃で20分間染色した。次いで、細胞を再び洗浄し、BioLegendから購入した以下の蛍光コンジュゲート抗体:抗CD11c、抗I-A/I-E、抗H-2Kb、抗SIRPa、抗CD24、抗CD40、抗CD45R、抗CXCL16および抗CCR7を含有するMACS緩衝液(1%FCSおよび2mM EDTAを含むPBS)中で4℃で20分間染色した。データは、BD FACS Symphony(Becton-Dickenson)で取得した。FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。実験条件は3連で試験され、条件は2つまたは3つの独立した実験で試験された。
【0199】
皮膚dLNにおけるDC浸潤。皮膚排出リンパ節(dLN)におけるDCの浸潤を評価するために、マウスに、10%または15%または20%でKP407に再懸濁した22:0 Lyso PCと組み合わせたR848を皮下注射した。注射の24時間後、皮膚排出リンパ節(dLN)を切り離した。単一細胞懸濁液を調製し、Live Dead Fixable色素(ThermoFisher)を用いてPBS中で4℃で20分間、細胞を染色した。次いで、細胞を再度洗浄し、以下の蛍光コンジュゲート抗体:抗CD11cおよび抗I-A/I-E(MHC-II)、を含有するMACS緩衝液(1%FCSおよび2mM EDTAを含むPBS)中、4℃で20分間染色した。生細胞中のCD11c+MHC-IIhighの絶対数を決定するために、製造業者のプロトコルに従って、countBright計数ビーズ(ThermoFisher)を使用した。データは、BD FACS Symphony(Becton-Dickenson)で取得した。FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。各実験群に5匹のマウスを使用した。
【0200】
抗原取り込みおよび提示アッセイ。BMDCの抗原取り込みおよびエンドサイトーシス能力を調べるために、pHrodo(商標)Redデキストラン10,000MWを使用した(ThermoFisher)。手短に言えば、事前に培地のみで培養したか、またはR848単独でもしくは22:0 Lyso PCと組み合わせて24時間処理したFLT3L由来BMDCを、pHrodo(商標)Redデキストラン(40ug/ml)とともに37℃または(抗原の表面結合の対照として)4℃で45分間インキュベートした。次いで、BMDCを洗浄し、Live/Dead Fixable Violet色素(ThermoFisher)で染色して、生細胞と死細胞を区別した。次いで、細胞をBD固定液で固定し、MACS緩衝液に再懸濁した。生細胞の赤色(APC)蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。37℃でインキュベートしたBMDCの蛍光値を、4℃でインキュベートしたpHrodo(商標)Redデキストラン関連細胞のMFIに対して正規化した、pHrodo(商標)Redデキストラン関連細胞の平均蛍光強度(MFI)として報告した。MHC-I上のOVAペプチド提示の効率を測定するために、FLT3L-BMDCを上記のように処理し、Endofit-OVAタンパク質(0.5mg/ml)とともに37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をMACS緩衝液で洗浄し、APCコンジュゲート抗マウスH-2Kb抗体(BioLegend)およびOVAペプチド「SIINFEKL」に結合したH-2Kbに結合するPEコンジュゲート抗体(BioLegend)で4℃で20~30分間染色した。非OVA処理DCは陰性対照として機能し、アイソタイプ対照は染色対照として使用された。MHC-I上のOVAペプチドに関連する細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって計算した。Symphony A3フローサイトメーター(Becton-Dickenson)でデータを取得し、FlowJoソフトウェア(Becton-Dickenson)で解析した。実験条件は3連で試験された。
【0201】
エクスビボ全腫瘍溶解物の調製。同系の全腫瘍溶解物(WTL)は、免疫されていない腫瘍担持マウスの腫瘍外植片から調製した。手短に言えば、10~12mmのサイズの腫瘍を有する未免疫マウス由来の腫瘍を、穏やかなMACS解離剤(Miltenyi Biotec)を使用して機械的に脱凝集させ、腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)を使用して製造業者のプロトコルに従って酵素的に消化した。消化後、腫瘍細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70um、次いで30umフィルターに通した。抗CD45 TILマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して、単一細胞懸濁液からCD45+細胞を除去した。次いで、腫瘍細胞を計数し、1×107細胞/mlで再懸濁した後、3~4サイクルの凍結融解によって溶解した。溶解した細胞を、18G、次いで21G、最後に25Gの針に材料を繰り返し通すことによってさらに破壊した。溶解物を70umおよび30umのセルストレーナーで再び濾過し、使用するまで一定分量で-80℃で保存した。WTLは、マウスあたり5.75E5個の腫瘍細胞に相当する濃度で、免疫療法に使用された。
【0202】
免疫療法による免疫化および腫瘍チャレンジ。免疫療法アプローチとの関連での免疫化のために、C57BL/6Jを5×104個のB16F10細胞を左側腹部に注射した。腫瘍が触知可能であった場合、マウスを未免疫のままにしておくか、WTL単独で免疫するか、R848とWTLを組み合わせて免疫するか、またはPBSもしくはKP407中で調製した、R848および22:0 LPCとWTLを組み合わせて免疫するかのいずれかにした。マウスは、7日間隔で2回のブースト注射を受けた。
【0203】
定量および統計解析。インビボ研究では、nは、1つまたは2つの独立した実験からの条件ごとの動物の数を指す。統計的差異は、対応のない両側スチューデントt検定、またはテューキー事後検定を用いた一元配置分散分析を用いて計算した。従属試料は、対応のあるt検定で分析した。2つを超える群を用いた実験の統計的有意性は、テューキー多重比較検定補正を用いた二元配置分散分析で検定した。すべての実験は、Prism 7(GraphPad Software)を使用して解析した。グラフデータは平均値として示され、エラーバーはSDまたはSEMを示した。<0.05(*)、<0.01(**)または<0.001(***)、%0.0001(****)のP値は群間の有意差を示した。
【0204】
結果
マウスは、特にがん治療を試験するための重要な実験モデルである。マウス腫瘍担持モデルにおける22:0 Lyso PCの治療効果を評価するために、本発明者らはまず、22:0 LPCがマウス樹状細胞を過剰活性化するかどうかを判定しようとした。樹状細胞を、マウスFLT3L組換えタンパク質を使用してマウス骨髄から分化させた。マウスDCを過剰活性化するために、2つの方法を用いて22:0 Lyso PCを調製した。22:0 Lyso PCをPBSに再懸濁して細胞に添加するか、または脂質を5%Kolliphor P407(KP407)に再懸濁した。R848(1ug/mL)と組み合わせた場合、PBSに再懸濁したさまざまな濃度の22:0 Lyso PCは、IL-1ベータ分泌を誘導することができなかった。対照的に、KP407に製剤化された22:0 Lyso PCは用量依存的にIL-1ベータ分泌を誘導し、マウス細胞が22:0 Lyso PCによって過剰活性化され得ることを実証した(
図25A)。予想通り、未処理のDC、またはR848単独、またはR848を含まない22:0 Lyso PCで処理したDCは、IL-1ベータ分泌を誘導することができなかった。試験した脂質濃度のうち、KP407に製剤化された41uM 22:0 Lyso PCは、細胞生存率を維持しながらIL-1ベータ分泌を支援することにおいて優れていた(
図25B)。これらのデータは、22:0 Lyso PCをミセルに組み込むことにより、マウス樹状細胞が脂質を生物学的に利用できるようになることを示唆している。高活性DCは、生存可能なままIL-1ベータを放出する能力を獲得するが、PAMP単独で処理した活性DCと同様の特性を共有するはずである。R848および22:0 Lyso PCで処理した過剰活性DCがそれらの古典的なDC機能(炎症促進性サイトカイン分泌、抗原取り込み、抗原提示、共刺激分子発現およびケモカイン受容体)を保持しているかどうかを試験するために、DCを培地またはR848単独で上記のように処理するか、またはR848と41uM 22:0 Lyso PCの組合せでDCを24時間処理した。予想されるように、R848刺激は、培地のみで処理したナイーブDCと比較して、TNF-アルファ分泌またはIL-6などの炎症促進性サイトカインの分泌を高いレベルで誘導した。同様に、PBSまたはKP407中で再懸濁された22:0 LPCとR848を組み合わせて処理した過剰活性DCは、高いTNF-アルファおよびIL-6分泌を誘導し、KP407中のR848および22:0 Lyso PCによるDC刺激後のTNF-アルファ分泌がわずかに増加した(
図26A~26B)。特に、Th1応答の重要な推進因子であるIL-12p40サイトカインは、22:0 LPCの存在下または非存在下でR848刺激によって誘導された(
図26C)。全体として、これらのデータは、22:0 Lyso PCがDCにおけるNF-kB媒介性応答を妨げないことを強調している。結果として、過剰活性DCは、PAMP R848単独で処理した活性DCと同様の特性を共有するが、そのサイトカイン分泌レパートリーにIL-1ベータを追加する。
【0205】
FLT3L-DCは、2つの主要なサブセット:cDC1およびcDC2に分けられる。これらのサブセットのうち、cDC1は特有の抗原交差提示が可能であり、ナイーブCD8+T細胞だけでなくCD4+T細胞も刺激することができる。対照的に、cDC2はTh2およびTh17免疫を活性化する。cDC1およびcDC2サブセットにおける22:0 Lyso PCの挙動を決定するために、本発明者らは、フローサイトメトリーによってFLT3L分化DCのcDC1およびcDC2を分析した。cDC1およびcDC2を同定するために、FLT3L DCをCD11c、SIRPa、CD24、MHC-IIおよびCD45Rで染色した。cDC1はCD11c+MHC-II+CD45R-CD24+SIRPa-として定義され、cDC2はCD11c+MHC-II+CD45R-CD24lowSIRPa+として定義される。本発明者らは、DCとT細胞の相互作用に重要なCD40などの共刺激分子の発現を分析した。予想通り、刺激の24時間後、R848は、ナイーブcDC1およびcDC2細胞と比較して、CD40発現の上方調節を誘導した。興味深いことに、本発明者らは、5%KP407に再懸濁した41uMの22:0 LPCと組み合わせたR848で処理した過剰活性cDC1およびcDC2においてCD40発現が強く増強されることを見出した(
図27)。
【0206】
DC遊走は、適応免疫応答を活性化する重要なステップである。CCR7は、リンパ節へのDC遊走に必要なケモカイン受容体である。KP407製剤中の22:0 Lyso PCを使用して細胞を過剰活性化した場合、cDC1細胞は、R848単独と比較してCCR7発現を有意に増加させた(
図28A)。同様の傾向が、腫瘍微小環境における抗腫瘍T細胞とDCの相互作用に重要な役割を果たすT細胞の化学誘引物質であるCXCL16についても観察された(
図28B)。さらに、過剰活性化は、R848刺激単独と比較して、cDC1サブセットとcDC2サブセットの両方でMHCクラスI発現を増強した(
図29)。
【0207】
DC上のMHCクラスI(MHC-I)発現は、CD8+T細胞への抗原交差提示に重要である。したがって、本発明者らは、抗原特異的T細胞の刺激に必要なDCの機能であるMHC-I上の抗原を取り込み、交差提示するDCの能力を分析した。最初にDCのエンドサイトーシス能力を試験するために、FLT3L-DCを上記のように24時間刺激し、次いでRed pHrodoデキストランとともにインキュベートした。デキストランがエンドサイトーシスされると、フローサイトメトリーによって赤色蛍光を検出することができる。デキストランを投与しなかったDCを陰性対照とした。本発明者らは、DCを22:0 Lyso PCの存在下または非存在下でR848で処理すると、DCが同様に抗原を取り込み、22:0 Lyso PCがDCの抗原取り込み能力を損なわないことを示すことを見出した(
図30A)。抗原プロセシングおよび抗原交差提示を試験するために、DCを上記のように24時間刺激し、次いでオボアルブミン全タンパク質で4℃または37℃で45分間処理した。次に、本発明者らは、SIINFEKLに結合したH-2Kbに特異的な抗体を使用することによって、MHC-I分子上のオボアルブミンペプチドの発現を測定した。本発明者らは、R848で処理したDCがOVA抗原をプロセシングし交差提示する能力を強く増強することを見出した。特に、22:0 Lyso PCは、過剰活性DCが依然として抗原をプロセシングし、MHC-I分子上のOVAペプチドを交差提示することができたため、これらの機能を妨げなかった(
図30B)。まとめると、これらのデータは、過剰活性DCが適応T細胞免疫応答の誘導に強力であることを示している。
【0208】
本発明者らは、22:0 Lyso PCとR848と組合せることで、内因性DCを利用して抗腫瘍免疫応答を開始することができると想定している。インビトロで観察されるように、KP407を使用した22:0 Lyso PCのミセル化は、DCを過剰活性化するために必要である。マウスのインビボワクチン接種に必要なKP407の量を最適化するために、様々な割合を皮下注射に使用した。マウスを、10%、15%または20%でKP407に再懸濁した22:0 Lyso PCと組み合わせたR848で皮下免疫した。15%のKP407を使用した場合、本発明者らは、dLN中のCD11c+MHChighとして定義されるDCの最も多い流入を観察し、15%のKP407がリンパ節へのDC輸送を誘導するための最適濃度であることを示した(
図31)。この最初の概念実証研究は、その後の研究のためにワクチン接種プロトコルを最適化するのに役立った。
【0209】
次いで、22:0 Lyso PCを治療用腫瘍ワクチンとして試験した。マウスに、マウス黒色腫腫瘍細胞株であるB16-F10を左側腹部の皮下に接種した。ワクチン抗原の供給源として、B16-F10細胞由来の全腫瘍溶解物(WTL)を3~4回の凍結/解凍サイクルの後に使用して、腫瘍細胞から抗原を放出させた。腫瘍担持マウスを処置するために、腫瘍注射の7日後に、80ugのWTLと、マウスあたり100ugのR848および65ugのKP407中22:0 Lyso PC(15%)と組み合わせて、マウスを右側腹部で免疫した。その後、マウスは7日ごとに2回のブーストを受けた。未免疫マウスは、腫瘍接種の3週間以内に腫瘍成長により死亡した。PBS中のR848と組み合わせた腫瘍溶解物、またはR848および22:0 Lyso PCと組み合わせた腫瘍溶解物をマウスにワクチン接種した場合、有意な利益は観察されなかった。対照的に、15%KP407を配合した22:0 Lyso PCと組み合わせたWTLおよびR848で免疫したマウスは、より長く生存し(
図32)、腫瘍成長動態が遅延した(
図33)。この最初の研究は、22:0 Lyso PCがマウスDCに対して過剰活性化作用を有し、腫瘍チャレンジに対する防御免疫応答を開始することができることを示している。
【国際調査報告】