IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特表2024-514027可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク
<>
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図1a
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図1b
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図2a
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図2b
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図2c
  • 特表-可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インク
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240321BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240321BHJP
【FI】
B32B27/30 A
C09D11/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533924
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 IB2021061857
(87)【国際公開番号】W WO2022130278
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020210641
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】ブルース エー.ネラッド
【テーマコード(参考)】
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100AR00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA04A
4F100CA13B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ52B
4F100EJ54
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK08
4F100JK09
4F100JK10
4F100JK12
4F100JL10
4F100JL10B
4F100JL11
4F100YY00B
4J039AD21
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA05
4J039EA36
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】可塑剤含有層とインク層との接着性に優れ、低温耐衝撃性にも優れる、可塑剤含有層及びインク層を含む積層体並びに放射線硬化型インクの提供。
【解決手段】本開示の一実施態様の積層体は、可塑剤含有層及び放射線硬化型インクの硬化物を含有するインク層を含み、放射線硬化型インクが、(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種を含み、(A)及び(B)成分の含有量が各々、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、10質量部超及び15質量部超である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤含有層、及び
放射線硬化型インクの硬化物を含有するインク層を含む、積層体であって、
前記放射線硬化型インクが、(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、並びに(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、を含み、
前記(A)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、10質量部超であり、
前記(B)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、15質量部超である、
積層体。
【請求項2】
前記(B)成分として、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記(B)成分として、3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、1質量部以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記直鎖型アルキル基の炭素原子数が、6以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記(A)成分が、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、5-メチル-3-ビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、及び1-ビニルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記可塑剤含有層中の可塑剤が、アジピン酸系可塑剤及びフタル酸系可塑剤からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、
(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、並びに
(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、を含み、
前記(A)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、10質量部超であり、
前記(B)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、15質量部超である、
放射線硬化型インク。
【請求項9】
前記(B)成分として、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項8に記載のインク。
【請求項10】
前記(B)成分として、3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項8又は9に記載のインク。
【請求項11】
前記(C)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、1質量部以上である、請求項8~10のいずれか一項に記載のインク。
【請求項12】
前記直鎖型アルキル基の炭素原子数が、6以上である、請求項8~11のいずれか一項に記載のインク。
【請求項13】
前記(A)成分が、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、5-メチル-3-ビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、及び1-ビニルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項8~12のいずれか一項に記載のインク。
【請求項14】
60℃における粘度が、14mPa・s以下である、請求項8~13のいずれか一項に記載のインク。
【請求項15】
可塑剤含有層用として使用される、請求項8~14のいずれか一項に記載のインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インクに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化型インクは、近年、例えば、成形体の表面を覆って使用される装飾フィルムなど、幅広い用途で使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2015-038202号公報)には、環状単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも2つの単官能性(メタ)アクリレートモノマーおよび2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;N-ビニルアミド、N-アクリロイルアミンまたはそれらの混合物から選択される単官能性モノマー;多官能性(メタ)アクリレートモノマー;重合性(メタ)アクリレートオリゴマー;ラジカル光開始剤;および着色剤を含む、25℃で30mPas以下の粘度を有する、放射線硬化性インクジェットインクが記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2015-067656号公報)には、反応性モノマー、反応性オリゴマー、および光重合開始剤からなる紫外線硬化型インクジェットインクであって、反応性モノマーが分子中に芳香環およびラクタム環を含まない環状構造含有重合性単官能モノマーであり、光重合開始剤がヒドロキシケトン系光重合開始剤である、インサート成型に使用可能な紫外線硬化型インクジェットインクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-038202号公報
【特許文献2】特開2015-067656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線硬化型インクをフィルム基材に適用して調製した積層体を、例えば、装飾用途に使用するとき、屋外において、スキージなどを用いて被着体に貼り合わせる作業が実施される場合がある。典型的には、このような積層体は、適用したインク層に対し、基材に対する良好な接着性能が求められているが、寒冷地などの低温環境下において、このような作業を実施した場合、良好な接着性を呈する積層体であっても、スキージの擦れ等の衝撃により、基材に適用したインク層が剥がれるおそれがあった。
【0007】
インク層と基材との接着性が優れるからといって、インク層が低温環境下において耐衝撃性(「低温耐衝撃性」と称する場合がある。)にも優れるというものでは必ずしもない。ましてや、例えば、可塑剤を含む基材は、その表面に可塑剤が経時的にブリードしてくるため、インク層と基材との接着性は、可塑剤のブリード量の増加に伴って低下しやすく(図2)、低温耐衝撃性も同時に悪化しやすかった。
【0008】
本開示は、可塑剤含有層とインク層との接着性に優れ、かつ、低温耐衝撃性にも優れる、可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施態様によれば、可塑剤含有層、及び放射線硬化型インクの硬化物を含有するインク層を含む、積層体であって、この放射線硬化型インクが、(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、並びに(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、を含み、かつ、(A)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、10質量部超であり、(B)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、15質量部超である、積層体が提供される。
【0010】
本開示の別の実施態様によれば、(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、並びに(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、を含み、かつ、(A)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、10質量部超であり、(B)成分の含有量が、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、15質量部超である、放射線硬化型インクが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、可塑剤含有層とインク層との接着性に優れ、かつ、低温耐衝撃性にも優れる、可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インクを提供することができる。
【0012】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、表面に可塑剤がブリードした塩化ビニルフィルム上に、本開示の一実施態様による放射線硬化型インクを適用して調製した積層体の接着性試験後の状態を示す写真であり、(b)は、表面に可塑剤がブリードした塩化ビニルフィルム上に、従来の放射線硬化型インクを適用して調製した積層体の接着性試験後の状態を示す写真である。
図2】(a)は、表面に可塑剤が高度にブリードした塩化ビニルフィルム上に、従来の放射線硬化型インクを適用して調製した積層体の接着性試験後の状態を示す写真であり、(b)は、表面に可塑剤が中度にブリードした塩化ビニルフィルム上に、従来の放射線硬化型インクを適用して調製した積層体の接着性試験後の状態を示す写真であり、(c)は、表面に可塑剤が低度にブリードした塩化ビニルフィルム上に、従来の放射線硬化型インクを適用して調製した積層体の接着性試験後の状態を示す写真である。
図3】左側が、表面に可塑剤がブリードした塩化ビニルフィルム上に、本開示の一実施態様による放射線硬化型インクを適用して調製した実施例1の積層体を、70℃で130%伸長した後の写真であり、右側が、表面に可塑剤がブリードした塩化ビニルフィルム上に、従来の放射線硬化型インクを適用して調製した比較例1の積層体を、70℃で80%伸長した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0015】
本開示において「可塑剤含有層」とは、積層体を構成する層の中の可塑剤を含む層を意味し、例えば、可塑剤を含む基材(「可塑剤含有基材」と称する場合がある。)、可塑剤を含まない基材上に適用された可塑剤を含むコーティング層などを包含する。
【0016】
本開示において「放射線硬化型」とは、紫外線、電子線、X線などの放射線によって硬化する性能を意味する。
【0017】
本開示において「単官能」とは、反応性の官能基を1つのみ有する化合物を意味する。
【0018】
本開示において「多官能」とは、反応性の官能基を2つ以上有する化合物を意味する。
【0019】
本開示において「オリゴマー」とは、モノマーに由来する単位を複数有する化合物を意味する。一般的には、オリゴマーの重量平均分子量は、約500以上、又は約1,000以上とすることができる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン結合を有する単位を複数含み、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0020】
本開示において「放射線硬化型樹脂成分」とは、後述する、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、並びに存在する場合には、その他の放射線硬化型重合性モノマーなどを意味する。
【0021】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0022】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0023】
本開示において、例えば、「インク層が基材の上に配置される」における「上」とは、インク層が基材の上側に直接的に配置されること、又は、インク層が他の層を介して基材の上側に間接的に配置されることを意図している。
【0024】
本開示において、例えば、「接着層が基材の下に配置される」における「下」とは、接着層が基材の下側に直接的に配置されること、又は、接着層が他の層を介して基材の下側に間接的に配置されることを意図している。
【0025】
本開示において「低温環境」とは、例えば、冬場の環境、飛行機が移動するような高高度の環境などを意図することができる。具体的には、例えば、約10℃以下、約5℃以下、約0℃以下、又は約-5℃以下の環境を意図することができる。低温環境における温度の下限値については特に制限はないが、例えば、約-50℃以上、約-30℃以上、又は約-10℃以上とすることができる。
【0026】
本開示において「略」とは、製造誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±約20%程度の変動が許容されることを意図する。
【0027】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上をいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0028】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%未満をいい、望ましくは約75%以下であってよく、下地を完全に隠蔽しないことを意図する。
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照し、本開示の可塑剤含有層及びインク層を含む積層体、並びに放射線硬化型インクについて説明する。
【0030】
本開示の積層体は、放射線硬化型インク(単に「インク」と称する場合がある。)の硬化物を含有するインク層を含んでいる。インク層は、単層構成であってもよく、或いは、2層以上の積層構成であってもよい。例えば、可塑剤含有基材からブリードした可塑剤は、基材に適用したインク層を越えてインク層表面にさらにブリードしてくる場合があるが、本開示のインクは、インク層が積層構成であっても、インク層間の接着性等の性能を向上させることができる。
【0031】
放射線硬化型インクは、(A)窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマー、(B)i)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種、並びに(C)i)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも一種を含んでいる。
【0032】
(A)成分の窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマーは、可塑剤含有基材などの可塑剤が表面にブリードしている層とインク層との間の接着性(単に「接着性」と称する場合がある。)の向上に寄与することができる。
【0033】
放射線硬化型インク中における(A)成分の含有量としては、接着性の観点から、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約10質量部超、約11質量部以上、約13質量部以上、又は約15質量部以上とすることができる。(A)成分の含有量の上限値としては特に制限はないが、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性等の性能の良好なバランスを得る観点から、約60質量部以下、約55質量部以下、約50質量部以下、約45質量部以下、又は約40質量部以下とすることができる。
【0034】
窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。かかるモノマーは、単官能モノマー又は多官能モノマーであってもよいが、低温耐衝撃性、加熱延伸性等の観点から、単官能モノマーが好ましい。
【0035】
窒素含有複素環構造を有する放射線硬化型重合性モノマーとしては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基と、窒素含有複素環構造とを有する放射線硬化型重合性モノマーを使用することができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、5-メチル-3-ビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、及び1-ビニルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性等の観点から、(メタ)アクリロイルモルフォリンが好ましい。
【0036】
(B)成分のi)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及びii)放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーは、接着性及び低温耐衝撃性の向上に寄与することができる。放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの使用はさらに、加熱延伸性などの伸び特性及び耐傷付き性の向上にも寄与することができる。かかるオリゴマー及びモノマーはそれぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
放射線硬化型インク中における(B)成分の含有量としては、接着性及び低温耐衝撃性の観点から、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約15質量部超、約16質量部以上、約18質量部以上、又は約20質量部以上とすることができる。(B)成分の含有量の上限値としては特に制限はないが、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性及び耐傷付き性等の性能の良好なバランスを得る観点から、約50質量部以下、約45質量部以下、約40質量部以下、約35質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
【0038】
放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては特に制限はなく、例えば、2~6官能、好ましくは2~5官能、より好ましくは2~4官能、さらに好ましくは2~3官能を使用することができる。6官能よりも少ない官能数のオリゴマーは、硬化収縮に伴う接着不良を低減し得ることに加え、伸び特性及び耐傷付き性などの性能を向上させることができる。
【0039】
このような(メタ)アクリレートオリゴマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。なかでも、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性、及び耐傷付き性等の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0040】
一実施態様では、放射線硬化型インクは、例えば、インクジェット印刷法におけるインクとして使用され得る。インクジェット印刷法は、装置の構成上、窒素パージすることが難しく、一般には、空気雰囲気下でインクを放射線硬化させている。3官能以上の多官能モノマーに比べ、2官能又は単官能のモノマー又はオリゴマーは、一般に、酸素阻害を受けやすく、空気雰囲気中では硬化させづらい傾向を呈する。しかしながら、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むインクは、空気雰囲気中であっても硬化させやすく、また、硬化させた樹脂成分は、伸び特性等にも優れるため、例えば、積層体を装飾フィルムとして用いる場合に有利である。
【0041】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ジオール等のポリオールとジイソシアネート等のポリイソシアネートの反応生成物であるウレタンオリゴマーの末端又は側鎖のいずれかにおいて(メタ)アクリロイル基が2~3個導入されたものである。この(メタ)アクリロイル基が、他の2官能性及び/又は3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(A)成分、(C)成分などと反応して硬化物が形成される。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは各々、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。かかるオリゴマーを構成するポリオール及びポリイソシアネートはいずれも、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0042】
ポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0043】
ポリオールは低分子量ジオールを含んでもよい。低分子量ジオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、1,2-シクロペンタンジオール、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールが挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネートとして、脂肪族イソシアネート及び芳香族イソシアネートが挙げられる。脂肪族イソシアネートとして、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。芳香族イソシアネートとして、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニル4,4’-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及び2-メチル-1,5-ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0045】
ポリオール及びポリイソシアネートの両方を脂肪族化合物とすることで、放射線硬化型インクの硬化物を含むインク層の耐候性を高めることができる。
【0046】
(メタ)アクリロイル基の導入は、例えば、ウレタンオリゴマーのイソシアナト末端に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより行うことができる。水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、及びジプロピレングリコールモノメタクリレートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。この実施態様では、ウレタンオリゴマーの合成の際に、ポリイソシアネートをポリオールに対して過剰に使用する、即ち、NCO基/OH基のモル比を1より大きくすることが望ましい。
【0047】
(メタ)アクリロイル基の導入は、ウレタンオリゴマーの水酸基末端にイソシアナト基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより行うこともできる。イソシアナト基含有(メタ)アクリレートとして、2-イソシアナトエチルアクリレート、及び2-イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。この実施態様では、ウレタンオリゴマーの合成の際に、ポリオールをポリイソシアネートに対して過剰に使用する、即ち、NCO基/OH基のモル比を1未満とすることが望ましい。
【0048】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、例えば、ポリエステルウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネートウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエーテルウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0049】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、空気雰囲気中での硬化性、伸び特性等の観点から、2官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが有利である。2官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、耐候性に優れた硬化物を含むインク層を提供することができる。
【0050】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量Mnは、約500以上、約1,000以上、又は約1,200以上とすることができ、約5,000以下、約4,000以下、又は約3,000以下とすることができる。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwは、約500以上、約1,000以上、又は約1,200以上とすることができ、約5,000以下、約4,000以下、又は約3,000以下とすることができる。数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0051】
3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、インク層の耐傷付き性を向上させることができる。
【0052】
3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、例えば、ポリエステルウレタントリ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネートウレタントリ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエーテルウレタントリ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0053】
耐傷付き性等の観点から、3官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが有利である。
【0054】
3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量Mnは、約500以上、約1,000以上、又は約1,200以上とすることができ、約5,000以下、約4,000以下、又は約3,000以下とすることができる。3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwは、約500以上、約1,000以上、又は約1,200以上とすることができ、約5,000以下、約4,000以下、又は約3,000以下とすることができる。
【0055】
放射線硬化型インク中における3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、接着性、低温耐衝撃性、及び耐傷付き性の観点から、全(B)成分100質量部を基準として、約10質量部以上、約20質量部以上、約30質量部以上、約40質量部以上、又は約50質量部以上であることが好ましい。3官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量の上限値については特に制限はなく、例えば、約100質量部以下、約100質量部未満、約95質量部以下、約90質量部以下とすることができる。
【0056】
放射線硬化型重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては特に制限はなく、例えば、2~6官能、好ましくは2~5官能、より好ましくは2~4官能、さらに好ましくは2~3官能、特に好ましくは2官能の(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。
【0057】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、架橋剤としても機能し、硬化物の強度及び耐久性を高めることができる。かかるモノマーを用いて架橋することにより、硬化物を含むインク層と、基材又はインク層上の他の層との接着性を高めることができる場合もある。伸び特性を求める場合には、かかるモノマーは、使用しない、又は上述したオリゴマーと併用することが好ましい。併用する場合、多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約0.5質量部以上又は約1質量部以上、約15質量部以下、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下が好ましい。
【0058】
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート;グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも、接着性、低温耐衝撃性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0059】
(C)成分のi)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー、及びii)直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能ビニルモノマーは、低温耐衝撃性の向上に寄与することができる。かかるモノマーはそれぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
放射線硬化型インク中における(C)成分の含有量としては、低温耐衝撃性の観点から、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約1質量部以上、約3質量部以上、約5質量部以上、約7質量部以上、約10質量部以上、約10質量部超、約11質量部以上、約12質量部以上、約13質量部以上、約14質量部以上、又は約15質量部以上とすることができる。(C)成分の含有量の上限値としては特に制限はないが、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性等の性能の良好なバランスを得る観点から、約60質量部以下、約55質量部以下、約50質量部以下、約45質量部以下、約40質量部以下、約35質量部以下、約30質量部以下、約25質量部以下、又は約20質量部以下とすることができる。
【0061】
(C)成分として使用する直鎖型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー及びビニルモノマーとしては特に制限はなく、例えば、直鎖型アルキル基の炭素原子数が、6以上、7以上、又は8以上のモノマーを使用することができる。直鎖型アルキル基の炭素原子数の上限値としては特に制限はないが、例えば、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、13以下、又は12以下とすることができる。このようなモノマーは、低温耐衝撃性を向上させ得ることに加え、かかるモノマーを含むインクを、例えば、インクジェットインクとして使用した場合に、良好な吐出性能を発現させることもできる。
【0062】
このような単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性、インク吐出性等の観点から、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
このような単官能ビニルモノマーとして、例えば、n-ヘキシルビニルエーテル、n-ヘプチルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、n-デシルビニルエーテル、n-ウンデシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、n-トリデシルビニルエーテル、n-テトラデシルビニルエーテル、n-ペンタデシルビニルエーテル、n-オクタデシルビニルエーテルを挙げることができる。なかでも、接着性、低温耐衝撃性、加熱延伸性、インク吐出性等の観点から、n-オクチルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、n-デシルビニルエーテル、n-ウンデシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテルが好ましい。
【0064】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクは、上述した(A)~(C)成分以外に、その他の放射線硬化型重合性モノマー(「(D)成分」と称する場合がある。)を含んでもよい。その他の放射線硬化型重合性モノマーとして、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有(メタ)アクリロイル化合物;(メタ)アクリル酸などの単官能モノマーが挙げられる。その他、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸などの単官能モノマーも挙げられる。なかでも、インクの低粘度化、保存安定性等の観点から、脂環式(メタ)アクリレート、環状エーテル含有(メタ)アクリレートが好ましく、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがより好ましく、さらに低温耐衝撃性の観点から、環状エーテル含有(メタ)アクリレートが好ましく、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがより好ましい。その他の放射線硬化型重合性モノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
放射線硬化型インク中における(D)成分の含有量としては、インクの低粘度化、保存安定性等の観点から、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約5質量部以上、約7質量部以上、約10質量部以上、約13質量部以上、約15質量部以上、又は約20質量部以上とすることができ、約50質量部以下、約45質量部以下、約40質量部以下、約35質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
【0066】
その他の放射線硬化型重合性モノマーとして、分岐型アルキル基を有する放射線硬化型重合性単官能(メタ)アクリレートモノマー(例えば、イソデシル(メタ)アクリレートモノマー、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート)を放射線硬化型インク中に配合してもよい。かかるモノマーを、(C)成分に代えてインク中に配合した場合には、低温耐衝撃性は悪化するが、(C)成分と併用した場合には、(C)成分が低量(例えば、上記(C)成分の配合量において、約1質量部以上又は約3質量部以上)でも低温耐衝撃性を向上させることができる。低温耐衝撃性の観点から、かかるモノマーの配合量としては、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約30質量部以下、約25質量部以下、約20質量部以下、約15質量部以下、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約1質量部以下が好ましい。かかるモノマーの配合量の下限値としては特に制限はなく、例えば、約0.5質量部以上、約1質量部以上、約3質量部以上、約5質量部以上とすることができる。
【0067】
いくつかの実施態様では、本開示の放射線硬化型インクは光重合開始剤を含有することができる。光重合開始剤として、例えば、ラジカル重合反応を誘起する公知の化合物を使用することができる。光重合開始剤としては、分子内開裂型及び水素引き抜き型のいずれも使用することができ、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オンのオリゴマー、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾインアルキルエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、n-ブチルベンゾインエーテルなど)、メチルベンゾイルホルメート、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジル、アセトフェノン、チオキサントン化合物(2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン)、カンファーキノン、3-ケトクマリン、アントラキノン化合物(例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、α-クロロアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノンなど)、アセナフセン、4,4’-ジメトキシベンジル、及び4,4’-ジクロロベンジルが挙げられる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
放射線硬化型インク中における光重合開始剤の含有量としては特に制限はなく、例えば、放射線硬化型樹脂成分100質量部を基準として、約1質量部以上、又は約2質量部以上とすることができ、約20質量部以下、又は約15質量部以下とすることができる。
【0069】
放射線硬化型インクは、任意成分として、例えば、光安定剤、重合禁止剤、UV吸収剤、消泡剤、防汚剤、表面調整剤、フィラー、分散剤、顔料、染料などの添加剤、或いは、有機系又は水系の溶媒を含んでもよい。
【0070】
インクの粘度を低減させる場合、一般には、有機系又は水系の溶媒を配合して希釈することが多いが、例えば、有機溶媒の使用は、作業環境を悪化させ、また、いずれの溶媒も印刷後に乾燥工程が必須となり、生産性等を悪化させやすい。溶媒を多く含むインクを、例えば、インクジェット印刷法によって基材に印刷した場合、着弾したインクは、基材表面に濡れ広がりやすいため、目的とする印刷性能を十分に発揮できない場合がある。一方、溶媒の少ない又は溶媒フリーのインクであれば、着弾したインクは基材表面に対して濡れ広がりにくいため、良好な印刷性能を発揮することができ、例えば、本物の質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルム等のデザインに合わせた立体的な凹凸を基材表面に付与することができる。いくつかの実施態様において、本開示の放射線硬化型インクは、上述した(A)~(C)成分、及び任意に(D)成分を用いてインクの低粘度化を達成することができるため、溶媒の含有量を、インクの全量に対し、約5質量%以下、約3質量%以下、又は約1質量%以下にすることができ、或いは、溶媒を含有させなくてもよい。
【0071】
本開示の放射線硬化型インクの粘度としては特に制限はないが、例えば、コーティング性、インクジェットノズルからの吐出性等の観点から、60℃において、約14mPa・s以下、約13mPa・s以下、又は約12mPa・s以下とすることができる。粘度の下限値については特に制限はないが、印刷適正等の観点から、例えば、約1mPa・s以上、約3mPa・s以上、又は約5mPa・s以上とすることができる。ここで、インクの粘度は、60mmコーンプレート(TA Instruments社製)を使用し、剪断速度5,000/秒の条件でDiscovery HR-2(DHR-2)レオメーター(TA Instruments社製)によって測定した値である。
【0072】
本開示のインク層は、例えば、基材の上に直接又は他の層を介して、放射線硬化型インクを公知の印刷法又はコーティング法によって適用し、紫外線、電子線などの放射線を照射して硬化させることによって形成することができる。本開示の放射線硬化型インクを用いて調製したインク層は、可塑剤を含む層との接着性に優れるため、可塑剤含有基材などの可塑剤含有層に対しては直接適用することが有利である。
【0073】
放射線硬化型インクの印刷法又はコーティング法としては、例えば、インクジェット印刷法、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、光造形による立体印刷法(「積層造形法」と称する場合がある。)を挙げることができる。なかでも、本開示の放射線硬化型インクは、インクジェット印刷法に対して好適に使用することができる。このような方法で調製されたインク層は、例えば、インクジェット印刷インク層、グラビアコーティングインク層などと表記して各々区別することができる。
【0074】
放射線硬化型インクは、例えば、基材上に、部分的に又は全面に適用されてもよい。インク層は、略平滑な表面を有してもよく、エンボスパターンなどの凹凸形状を表面に有してもよい。
【0075】
インク層は、目的とする外観を提供するために、全体又は部分的に可視域において、透明、半透明、又は不透明であってもよい。インク層は、無色であってもよく、或いは、全体又は部分的に着色されていてもよい。
【0076】
インク層の厚みは特に制限はなく、要する性能(例えば意匠性、表面保護性能)に応じて適宜調整することができる。例えば、インク層の厚みとしては、少なくとも部分的に、約1マイクロメートル以上、約3マイクロメートル以上、約5マイクロメートル以上、約7マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、約20マイクロメートル以上、又は約30マイクロメートル以上とすることができる。例えば、インク層が約7マイクロメートル以上の厚みを有する部分を備えることで、凹凸を有するインク層を備える積層体を装飾フィルムとして使用した場合において、本物の質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸を、装飾フィルムの表面に付与することができる。
【0077】
いくつかの実施態様では、インク層の最大厚みは、例えば、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、又は約15マイクロメートル以下とすることができる。インク層の最大厚みを約500マイクロメートル以下とすることで、インク層の可撓性、例えば伸び特性及び曲げ特性を好適なものとすることができる。
【0078】
インク層の厚みは、例えば、放射線硬化型インクを局所的に又は全面に複数回繰り返し印刷又はコーティングして適宜調整することができる。ここで、本開示の積層体における各層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して積層構成の厚さ方向断面を測定し、積層構成のうちの目的とする層、例えば、インク層における任意の少なくとも5箇所の厚さの平均値である。
【0079】
いくつかの実施態様では、インク層の最大高さ粗さRzは、約0.5マイクロメートル以上、約1マイクロメートル以上、又は約1.5マイクロメートル以上、約20マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、又は約10マイクロメートル以下とすることができる。インク層の最大高さ粗さRzを上記範囲とすることで、凹凸を有するインク層を備える積層体を装飾フィルムとして使用した場合において、本物の質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸を装飾フィルムの表面に付与することができる。ここで、インク層の最大高さ粗さRzは、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997に対応)に準拠して決定される。
【0080】
本開示の積層体に採用し得る基材は、例えば、インク層の支持体として使用することができる。基材は、その表面に対し、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0081】
基材の材料としては特に制限はなく、様々な樹脂材料、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの共重合体を挙げることができる。低温環境下でのスキージ等の衝撃による積層体の破れを低減又は防止する観点から、このような樹脂材料の中でも、ポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。基材として、ガラスなどの無機系基材、アルミニウム、スチールなどの金属系基材を使用することもできる。
【0082】
本開示の放射線硬化型インクを用いて調製したインク層は、可塑剤含有層に対して良好な接着性及び低温耐衝撃性が得られることから、基材として、可塑剤含有基材を好適に使用することができる。可塑剤含有基材は、例えば、上述した樹脂材料と可塑剤とを含む混合材料を用いて調製することができ、その樹脂材料として、ポリ塩化ビニル樹脂を好適に使用することができる。可塑剤含有基材としては、このような混合材料のみから調製された基材を採用してもよく、或いは、無機系基材又は金属系基材に対し、上述した混合材料を被覆して調製した基材を採用してもよい。
【0083】
可塑剤としては特に制限はなく、例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP))等のフタル酸系可塑剤;アジピン酸エステル(例えばアジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル)等のアジピン酸系可塑剤;リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル等のリン酸系可塑剤;トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸系可塑剤;アジピン酸系ポリエステルなど公知の各種ポリエステル系可塑剤;アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート等のクエン酸エステル類;等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アジピン酸系可塑剤及びフタル酸系可塑剤からなる群から選択される少なくとも一種を好適に使用することができる。
【0084】
可塑剤含有層中の可塑剤の含有量としては特に制限はなく、例えば、柔軟性等の観点から、可塑剤含有層を構成する樹脂材料100質量部に対し、約10質量部以上、約20質量部以上、又は約30質量部以上とすることができ、約100質量部以下、約70質量部以下、又は約50質量部以下とすることができる。本開示の放射線硬化型インクを用いて調製したインク層は、可塑剤が表面にブリードし得る可塑剤含有層に対しても良好な接着性及び低温耐衝撃性が得られることから(図1(a))、本開示の放射線硬化型インクは、可塑剤含有層に直接適用することが可能な可塑剤含有層用のインクとして好適に使用することができる。ここで、可塑剤含有層表面における可塑剤の有無は、例えば、二次イオン質量分析法を用いて確認することができる。
【0085】
基材の形状又は構成としては特に制限はなく、例えば、フィルム形状、板形状、曲面形状、異形状、又は3次元形状であってもよく、単層構成、積層構成、又は形状の相違する複数の基材が組み合わさったような複合構成であってもよい。
【0086】
基材は有色であってもよく無色であってもよい。基材は、不透明、半透明又は透明であってよい。基材は、略平滑な表面を有してもよく、エンボスなどの表面加工により形成することのできる構造化表面を有してもよい。
【0087】
基材の厚さとしては特に制限はなく、例えば、少なくとも部分的に、約50マイクロメートル以上、約80マイクロメートル以上、又は約100マイクロメートル以上とすることができる。このような厚さであると、例えば、低温環境下でのスキージ等の衝撃による積層体の破れをより低減又は防止することができる。厚さの上限値については特に制限はないが、追従性、製造コスト等の観点から、例えば、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、又は約200マイクロメートル以下とすることができる。
【0088】
いくつかの実施態様では、本開示の積層体は、使用用途等に応じて、任意の構成要素として、保護層、装飾層、光輝層、接合層、接着層、剥離ライナーなどの追加の層をさらに含んでもよい。これらの追加の層は、単独で又は二種以上組み合わせて採用することができる。本開示では、装飾性が施された積層体、例えば、着色された基材及び/又は着色されたインク層を備える積層体、或いは、装飾層及び/又は光輝層を備える積層体を、装飾フィルムと称する場合がある。
【0089】
追加の層、例えば、保護層及び装飾層は、上述した放射線硬化型インクを用いて調製してもよいが、以下に示すような一般的な材料を用いて調製してもよい。
【0090】
いくつかの実施態様では、積層体の表面に保護層を配置することができる。保護層は、積層体を構成する上述したインク層、装飾層などの他の層を外部からの穿刺、衝撃などから保護する機能を有してもよい。
【0091】
保護層は、多層積層体、例えば多層押出積層体であってもよい。保護層は、その表面にレセプター層をさらに有してもよく、保護層自体がレセプター性能を有していてもよい。レセプター層を有する又はレセプター性能を有する保護層を用いることで、インクジェット印刷などを用いてグラフィック画像等の装飾層を保護層上に直接形成することができる。保護層は、略平滑な表面を有してもよく、艶消し(マット)パターン又はエンボスパターンなどの凹凸形状を表面に有してもよい。保護層は、その表面に対し、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0092】
保護層の材料として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メチルメタクリレート-フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素樹脂、シリコーン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの共重合体、又はこれらの混合物が使用できる。透明性、強度、耐衝撃性などの観点から、保護層の材料として、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、及びポリカーボネートが有利に使用できる。さらに、耐候性の観点から、(メタ)アクリル樹脂が有利である。
【0093】
保護層は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール、Tinuvin(商標)400(BASF社製)などの紫外線吸収剤、Tinuvin(商標)292(BASF社製)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などを含んでもよい。紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定化剤などを用いることによって、保護層の下層に位置する層の劣化、例えば、装飾層の、変色、退色、劣化などを効果的に防止することができる。保護層は、ハードコート材、光沢付与剤などを含んでもよく、追加のハードコート層を有してもよい。
【0094】
保護層は、目的とする外観(例えば艶消し外観)を提供するために、全体又は部分的に可視域において、透明、半透明、又は不透明であってもよい。保護層は、無色であってもよく、或いは、全体又は部分的に着色されていてもよい。
【0095】
保護層の厚みは、例えば、少なくとも部分的に、約1マイクロメートル以上、約5マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、約25マイクロメートル以上、又は約40マイクロメートル以上とすることができ、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、又は約30マイクロメートル以下とすることができる。
【0096】
本開示の積層体は、例えば、基材の上又は下に装飾層を配置することができる。装飾層は、例えば、基材に対して全面に又は一部に適用することができる。
【0097】
装飾層としては、次のものに限定されないが、塗装色、例えば、白、黄等の淡色、赤、茶、緑、青、グレー、黒などの濃色を呈するカラー層;木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを物品に付与するパターン層;表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層;及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0098】
カラー層の材料としては、次のものに限定されないが、例えば、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダー樹脂に分散された材料を使用することができる。
【0099】
カラー層は、このような材料を用い、例えば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング法により形成することができ、或いはインクジェット印刷などの印刷法により形成することもできる。
【0100】
パターン層としては、次のものに限定されないが、例えば、模様、ロゴ、絵柄などのパターンを、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷法を用いて、基材等に直接適用したものを採用してもよく、或いは、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シートなどを使用することもできる。パターン層の材料としては、例えば、カラー層で使用した材料と同様の材料を使用することができる。
【0101】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えば、エンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する剥離ライナー上に硬化性(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化型樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化させて、剥離ライナーを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。
【0102】
レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化型樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂、PET、PENなどのポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂などを使用することができる。レリーフ層は、カラー層で使用される顔料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0103】
装飾層の厚さとしては、要する装飾性、隠蔽性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、少なくとも部分的に、約1マイクロメートル以上、約3マイクロメートル以上、又は約5マイクロメートル以上とすることができ、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、又は約15マイクロメートル以下とすることができる。
【0104】
光輝層は、次のものに限定されないが、例えば、基材又は装飾層の全面若しくは一部に、真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成された、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、白金、クロム、鉄、スズ、インジウム、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む層であってよい。光輝層は、箔又はシートの形態で適用してもよい。
【0105】
光輝層の厚さについては特に制限はなく、要する性能(例えば装飾性、輝度、不燃性)及びコスト等に応じて適宜選択することができる。例えば、装飾性に加えて不燃性も要する場合には、光輝層の厚さとしては、約8マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、又は約15マイクロメートル以上とすることができ、約200マイクロメートル以下、約150マイクロメートル以下、又は約100マイクロメートル以下とすることができる。例えば、光輝層がアルミニウムを含む場合、光輝層の厚みは、約12マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約30マイクロメートル以上、約40マイクロメートル以上、又は約50マイクロメートル以上とすることで、より優れた不燃性を得ることができる。不燃性まで要しない場合には、光輝層の厚さは、約8マイクロメートル未満又は約5マイクロメートル以下とすることができ、約0.1マイクロメートル以上、約0.5マイクロメートル以上、約1マイクロメートル以上とすることができる。
【0106】
積層体を構成する各層を接合するために接合層(「プライマー層」などと呼ばれる場合もある。)を用いてもよい。接合層として、例えば、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型、又は放射線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層は、公知のコーティング法などによって適用することができる。
【0107】
接合層の厚さは、例えば、約0.05マイクロメートル以上、約0.5マイクロメートル以上、又は約5マイクロメートル以上とすることができ、約100マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、又は約10マイクロメートル以下とすることができる。
【0108】
積層体は、被着体に積層体を貼り付けるための接着層をさらに含んでもよい。接着層の材料としては、接合層の材料と同様のものを使用することができる。接着層は、積層体ではなく被着体に対して適用してもよい。
【0109】
接着層の厚さは、次のものに限定されないが、例えば、約5マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、又は約20マイクロメートル以上とすることができ、約200マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、又は約80マイクロメートル以下とすることができる。
【0110】
本開示の基材、及び保護層、装飾層、接合層、接着層等の追加の層は、使用用途等に応じ、任意成分として、例えば、充填剤、補強材、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、消臭剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、粘着付与剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料、増粘剤などを含むことができる。これらの任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0111】
追加の層、例えば保護層、装飾層が可塑剤を含み、可塑剤含有層を構成する場合には、かかる可塑剤含有層は、上述した放射線硬化型インクによるインク層を介して他の層に適用することが好ましい。可塑剤含有層に対して接合層及び/又は接着層を適用する場合には、接合層、接着層は、可塑剤を含まないか、或いは、接合層又は接着層を構成する樹脂材料100質量部に対し、約20質量部以下、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約1質量部以下の範囲で、可塑剤が含まれることが好ましい。
【0112】
接着層を保護するために、任意の好適な剥離ライナーを使用することができる。代表的な剥離ライナーとして、紙(例えば、クラフト紙)、ポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど)などから調製されるものが挙げられる。剥離ライナーは、必要に応じてシリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層が適用されていてもよい。
【0113】
剥離ライナーの厚さは、例えば、約5マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約300マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、又は約150マイクロメートル以下とすることができる。剥離ライナーの厚さは、接着層から剥離ライナーを除去した後、高精度デジマチックマイクロメータ(MDH-25MB、株式会社ミツトヨ製)を使用し、かかる剥離ライナーの任意の部分の厚さを少なくとも5回測定して算出した平均値である。
【0114】
本開示の積層体が、例えば、基材及びインク層から構成される場合には、インク層は上述したように、インクジェット印刷法等の公知の印刷法又はコーティング法を用いて調製することができるが、積層体が他の任意の追加の層を含む場合には、このような印刷法又はコーティング法以外に、公知の方法、例えば、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷法、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート、押出しコート法などのコーティング法、ラミネート法、転写法などを複数組み合わせて適宜調製することができる。
【0115】
本開示の積層体の製品形態としては特に制限はなく、例えば、シートなどの枚葉品、複数のシートが積み重なった積層品、シートがロール状に巻かれたロール体であってもよい。
【0116】
本開示の可塑剤含有層及びインク層を備える積層体は、優れた接着性及び低温耐衝撃性を呈することができる。
【0117】
接着性に関しては、JIS K 5600に準拠したクロスカット試験によって評価することができる。本開示の積層体を構成するインク層は、かかる試験における残存マス目数で、90/100以上、95/100以上、又は97/100以上、99/100以下又は100/100以下を達成することができる。
【0118】
低温耐衝撃性に関しては、5℃の環境下、ASTM D 2794に準拠したガードナー衝撃試験によって評価することができる。本開示の積層体を構成するインク層は、かかる試験において、約30インチ・ポンド以上、約35インチ・ポンド以上、約40インチ・ポンド以上、又は約45インチ・ポンド以上を達成することができる。かかる試験での上限値については特に制限はないが、例えば、約100インチ・ポンド以下又は約90インチ・ポンド以下とすることができる。
【0119】
いくつかの実施態様では、本開示のインク層は伸長可能であり、このインク層を備える積層体は、優れた伸び特性を呈することができる。かかる伸び特性は、例えば、後述する破断時伸び試験によって評価することができる。いくつかの実施態様の積層体のインク層は、20℃で、約80%以上、約100%以上、約120%以上、又は約140%以上の破断時伸びを呈することができる。破断時伸びの上限値については特に制限はないが、例えば、約240%以下、約220%以下、約200%以下、又は約190%以下とすることができる。ここでの「破断」とは、インク層の表面に目視で視認可能なクラック等の外観変化が生じたとき、又はインク層の外観変化が生じる前にフィルムが破断したときを指す。このような伸び特性を有する積層体は、例えば、装飾フィルムとして好適に使用することができる。
【0120】
いくつかの実施態様では、本開示のインク層を備える積層体は、優れた加熱延伸特性を呈することができる(図3)。かかる加熱延伸特性は、例えば、後述する加熱延伸試験によって評価することができる。いくつかの実施態様の積層体のインク層は、70℃で、約80%以上、約90%以上、又は約100%以上の破断時伸びを呈することができる。破断時伸びの上限値については特に制限はないが、例えば、約200%以下、約180%以下、約160%以下、又は約150%以下とすることができる。ここでの「破断」とは、インク層の表面に目視で視認可能なクラック等の外観変化が生じたときを指す。このような伸び特性を有する積層体は、例えば、熱成型法を用いて加工処理され得る装飾フィルムとして好適に使用することができる。
【0121】
上記各試験で使用する積層体のインク層を適用する可塑剤含有基材は、例えば、約25℃の環境下で6か月以上保管し、可塑剤が基材表面に十分にブリードした状態のものを使用する。このような条件で保管した基材がない場合には、代替手段として、可塑剤含有基材を、80℃の恒温槽中に24時間静置した後、常温下で24時間静置した基材を採用することができる。可塑剤が基材表面に十分にブリードした状態であることは、後述する比較例1と同様にして積層体を調製し、その積層体のインク層に対してクロスカット試験を実施して確認することができ、残存マス目数が、49/100以下である場合、その基材は、可塑剤が基材表面に十分にブリードしているといえる。残存マス目数が、49/100以下にならない場合には、残存マス目数が、49/100以下になるまで上記代替手段を繰り返し実施する。
【0122】
本開示の積層体の用途は特に限定されない。例えば、本開示の積層体は、装飾用途に使用することができる。例えば、本開示の積層体は、ビル、マンション、住宅等の建造物の内壁、階段、窓、扉、床、天井、柱、仕切り等の内装材、又は外壁等の外装材として使用することができ、各種の内装又は外装品、例えば、自動車、鉄道、航空機、船などの乗物の内装又は外装品として使用することができる。この他、パソコン、スマートフォン、携帯電話、冷蔵庫、エアコンなどの電化製品、文具、家具、机、缶等の各種容器、道路標識、看板などに対して使用することができる。
【実施例
【0123】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0124】
本実施例で使用した材料を以下の表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
(実施例1)
ACMOを30.0質量部、CN991NSを20.0質量部、NOAAを26.8質量部、Chivacure(商標)TPOを5質量部、SB-PI711を5質量部含む混合液を、ミキサーで20分間混合して調製した。次いで、この混合液に、23.2質量部のTMCHAにP.R.122を4質量部配合して調製した顔料分散液を添加し、20分間混合して放射線硬化型インクを調製した。
【0127】
放射線硬化型インクを、#7のワイヤーバーを用いて基材フィルム(3M(商標)スコッチカル(商標)グラフィックフィルムER500)上にバーコートしてインク層を形成した。インク層を適用した基材フィルムを、大気(空気)雰囲気下で紫外線照射器(Fusion UV System Inc.のH-バルブ(DRSモデル))に通して、インク層を硬化させた。このとき、照度1,000mW/cm、積算光量600mJ/cmの条件で、紫外線(UV-A)をインク層に対して照射した。このようにして、厚さ約10マイクロメートルのインク層を有する積層体を作製した。
【0128】
(実施例2~29)
表2の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~29の積層体を各々調製した。
【0129】
(比較例1~8)
表3の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1~8の積層体を各々調製した。
【0130】
〈物性評価試験1〉
積層体の特性を、以下の方法を用いて評価した。その結果を、表2~6に示す。
【0131】
(接着性試験)
基材フィルムとインク層との間の接着性能を、JIS K 5600に従ってクロスカット法により、以下の基準で評価した。ここでは、グリッド間隔が1mmの10×10グリッドと、セロテープ(商標)CT-24(ニチバン株式会社製)を採用した。また、テープ剥離後のインク層の残存マス数は目視で確認した。A~C評価が合格レベルであり、D及びE評価が不合格レベルである:
A 100/100
B 95/100~99/100
C 90/100~94/100
D 50/100~89/100
E 0/100~49/100
【0132】
(低温耐衝撃性試験)
ASTM D2794に準拠したガードナー衝撃試験により、以下のようにして低温耐衝撃性の評価を実施した。
【0133】
各積層体を長さ約150mm、幅約70mmのサイズに切断し、室温下で、長さ約150mm、幅約70mm、厚さ約1mmのアルミニウム板上に、切断した積層体を貼り付けて試験サンプルを調製した。試験サンプルを5℃の雰囲気下で24時間静置した後、この試験サンプルを、積層体側が上面になるように、耐衝撃性試験装置(IG-1120、BYK-Gardner社製)に取り付けた。試験サンプルの積層体表面の上方、5~40インチの高さから、重量2ポンドの鉄球を落とした。積層体の外観を目視で観察し、積層体にクラック等の不具合が生じてない最大高さに鉄球の重量2ポンドを乗じて、衝撃力(インチ・ポンド)を算出した。ここで、衝撃力が30インチ・ポンド以上であれば、合格レベルであるといえる。
【0134】
(破断時伸び試験)
各積層体を長さ約100mm(約4インチ)、幅約25mm(約1インチ)に切断して試験サンプルを調製した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ製)に試験サンプルをセットし、挟み間隔50mm、引張速度300mm/分、20℃の条件で、試験サンプルのインク層が破断する時点、又はインク層が破断する前に試験サンプルが破断する時点での伸びを測定した。そして、以下の式1から20℃での伸び率を決定した:
(インク層又は試験サンプルの破断時の長さ-試験サンプルの伸長前の長さ)/(試験サンプルの伸長前の長さ)×100(%) …式1
【0135】
(加熱延伸試験)
各積層体を長さ約100mm(約4インチ)、幅約25mm(約1インチ)に切断して試験サンプルを調製した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ製)に試験サンプルをセットし、挟み間隔50mm、引張速度50mm/分、70℃の条件で、試験サンプルのインク層が破断する時点での伸びを測定した。そして、以下の式2から70℃での伸び率を決定した:
(インク層破断時の試験サンプルの長さ-試験サンプルの伸長前の長さ)/(試験サンプルの伸長前の長さ)×100(%) …式2
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
(実施例30)
基材フィルムを3M(商標)ダイノック(商標)フィルムPA389に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例30の積層体を調製した。
【0141】
(比較例9)
基材フィルムを3M(商標)ダイノック(商標)フィルムPA389に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例9の積層体を調製した。
【0142】
(実施例31)
基材フィルムを3M(商標)スコッチカル(商標)グラフィックフィルムIJ1220-10に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例31の積層体を調製した。
【0143】
(比較例10)
基材フィルムを3M(商標)スコッチカル(商標)グラフィックフィルムIJ1220-10に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例10の積層体を調製した。
【0144】
【表6】
【0145】
(実施例32)
ACMOを20.0質量部、CN991NSを25.0質量部、NOAAを20.0質量部、TMCHAを35.0質量部、BZPを5質量部、及びESACURE(商標)ONEを5質量部含む混合液をミキサーで30分間混合して、放射線硬化型インクを調製した。
【0146】
放射線硬化型インクを、#2のワイヤーバーを用いて基材フィルム(3M(商標)スコッチカル(商標)グラフィックフィルムER500)上にバーコートしてインク層を形成した。インク層を適用した基材フィルムを、大気(空気)雰囲気下で紫外線照射器(Fusion UV System Inc.のH-バルブ(DRSモデル))に通して、インク層を硬化させた。このとき、照度1,000mW/cm、積算光量600mJ/cmの条件で、紫外線(UV-A)をインク層に対して照射した。このようにして、厚さ約3マイクロメートルのインク層を有する、爪スクラッチ試験及び鉛筆硬度試験用の積層体を作製した。
【0147】
ワイヤーバーを#20に変更したこと以外は同様にして、厚さ約30マイクロメートルのインク層を有する、接着性試験、低温耐衝撃性試験、及び破断時伸び試験用の積層体を作製した。
【0148】
(実施例33~37及び比較例11)
表7の組成に変更したこと以外は、実施例32と同様にして、実施例33~37及び比較例11の積層体を各々作製した。
【0149】
〈物性評価試験2〉
積層体の特性を、物性評価試験1に記載される、接着性試験、低温耐衝撃性試験、及び破断時伸び試験に加え、以下に示す、粘度評価試験、爪スクラッチ試験、及び鉛筆硬度試験を実施して評価した。その結果を、表7に示す。
【0150】
(粘度評価試験)
60℃のペルチェプレート上、60mmコーンプレート(TA Instruments社製)を使用し、剪断速度5,000/秒の条件でDiscovery HR-2(DHR-2)レオメーター(TA Instruments社製)によってインクの粘度を測定した。
【0151】
(爪スクラッチ試験)
インク層側を上にして試験サンプルをアルミ板上に配置した後、人差し指の爪を、約90°の角度になるように試験サンプル上にセットし、すばやく爪を移動させ、インク層を引っかくことによって試験を実施した。試験後の試験サンプル表面を目視で観察し、傷等の外観変化が生じていなかった場合を「良」、外観変化が生じていた場合を「不良」と評価した。
【0152】
(鉛筆硬度試験)
インク層側を上にして試験サンプルをアルミ板上に固定した後、JIS K5600-5-4に準拠し、鉛筆の芯の先端に750gの荷重がかかった状態で600mm/分の速度でインク層の表面を引っかいて試験を実施した。試験サンプルを60℃の環境下で5分間養生したのち判定を行った。鉛筆硬度が2B以上であれば合格レベルといえる。
【0153】
【表7】
【0154】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3
【国際調査報告】