(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】部分的な負荷での混合動作のための反応器システム
(51)【国際特許分類】
B01J 8/04 20060101AFI20240321BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
B01J8/04 311Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547469
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2022054698
(87)【国際公開番号】W WO2022194513
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518320199
【氏名又は名称】カサーレ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッツィ、マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
4G070
4H039
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB06
4G070CA06
4G070CA21
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070CB18
4G070CC06
4G070DA22
4H039CA60
(57)【要約】
触媒床の上流に混合領域(50、20)を含む多床式の触媒コンバータ(1)を備える反応器システム(100)であって、前記混合領域は、触媒床の供給ガスを混合ガスと混合するように配置され、前記混合ガスは、複数の混合ガス供給ラインを介して前記混合領域に導入され、前記ラインのそれぞれは、混合ガス供給ラインのそれぞれによって前記混合領域に受け入れられる混合ガスの量が独立して制御されるように、少なくとも1つの流量調整装置を含む、反応器システムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器システム(100)であって、
触媒コンバータ(1)と、
前記コンバータ(1)に接続された試剤供給ライン(35)と、を備え、
前記コンバータ(1)が、1つ以上の触媒床(2、4)を含み、
前記コンバータが、前記触媒床(2、4)の上流に配置され、前記触媒床のインレット供給物を混合ガスと混合する混合領域(20、50)をさらに含み、
前記反応器システム(100)は、前記混合ガスを前記混合領域(20、50)に供給するように配置された複数の混合ガス供給ライン(8~10、11~13)をさらに備え、
前記混合ガス供給ラインの各々は、少なくとも1つの流量調整装置(14~16、17~19)を備え、前記供給ラインの各々によって前記混合領域に受け入れられる混合ガスの量を個々に制御することが可能である、反応器システム(100)。
【請求項2】
前記混合ガス供給ラインが、メインヘッダ(7)から分岐し、好ましくは、前記試剤供給ライン(35)も、前記メインヘッダ(7)から分岐している、請求項1に記載の反応器システム(100)。
【請求項3】
前記混合領域(20、50)が、各々の前記混合ガス供給ライン(8~10、11~13)に接続された混合装置(3、30)を含む、請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
前記混合装置(3)が複数の流量分配器(60、61、62)を備え、各々の前記流量分配器が各々の前記混合ガス供給ライン(8、9、10)と流体連通して接続されている、請求項3に記載の反応器システム(100)。
【請求項5】
前記流量分配器(60、61、62)が同心円状に配置され、好ましくは、環状又はトロイダル状の形状を有する、請求項4に記載の反応器システム(100)。
【請求項6】
前記混合装置(3)が同軸に配置された複数のパイプを介して前記混合ガス供給ラインに接続され、同軸の前記パイプの各々が一つのガス供給ラインを前記混合装置の各々の前記流量分配器に個々に接続されている、請求項4または5に記載の反応器システム(100)。
【請求項7】
前記流量調整装置(14~19)がバルブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項8】
コンバータ(1)の負荷の関数に応じて流量調整装置を通る流量を調整するように構成された、プログラムで制御可能なコントローラまたは分散制御システムをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項9】
前記制御システムは、前記バルブの開度を調整するよう構成される、請求項7または8に記載の反応器システム。
【請求項10】
混合ガス供給ライン(8~13)は、前記触媒床の供給流の温度より低い温度を有する混合ガスを運ぶように構成された冷却ラインであり、前記混合ガスは冷却ガスとして使用することが可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項11】
前記触媒コンバータ(1)がアンモニアの合成に適合するか、または、前記触媒コンバータ(1)がメタノールの合成に適合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項12】
前記触媒床の排出物から熱を除去するために前記触媒床(2)の下流に配置された熱交換器をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項13】
各々の前記混合領域が各々の前記触媒床の上流に配置され、各々の前記混合領域が1以上の各々の前記混合ガス供給ラインに接続されている複数の前記混合領域(20、50)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項14】
請求項1~15のいずれか一項に記載の反応器システム(100)で循環の流量を調整する方法において、前記コンバータ(1)の前記混合領域に供給される前記混合ガスの前記流量は、前記コンバータ(1)の負荷の関数に応じて前記流量調整装置(14~19)によって調整されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアおよびメタノールの合成などの工業的用途のための反応器システムの分野に関する。特に、本発明は、部分的な負荷での改良された混合動作のための反応器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用合成反応器は、プラントの経済的な利益率が減少した容量で低下すると予想されるため、一般に、全容量または最大容量に近い容量で稼働すると考えられている。
【0003】
より詳細には、部分的な負荷で、化学コンバータの製造速度は低下し、化学反応の収率は予想よりも低くなる可能性がある。なぜならば、例えば、触媒床中の反応物質間の不適切な混合の結果として、物質移動および熱移動の制限が重要になる可能性があるからである。
【0004】
均一な温度と組成プロファイルを保証するためには、化学コンバータ内部での良好な混合が不可欠である。良好な混合がない場合、反応は起こらないか、ほとんど起こらない。さらに、均一な温度および組成プロファイルは、最良の触媒体積を利用する最適化されたプロファイルにできるだけ近い形でコンバータが動作することを保証する。
【0005】
さらに、均一な温度および組成のプロファイルは、潜在的な副産物の形成を妨げ、これは、プロセスの収率に悪影響を及ぼし、下流のプロセスユニットに浄化の問題を生じさせる可能性がある。最後に、ほとんどのコンバータは自動制御ループを介して動作するため、コンバータの効率低下や不要なシャットダウンを防ぐために、信頼性の高い温度信号を得ることが不可欠である。残念ながら、容量の減少または低回転では、流体力学的な理由により、コンバータに配置された混合装置は、その有効性を多大に失う。
【0006】
典型的には、触媒コンバータにおける2つ以上のガス反応物質間の適切な混合は、コンバータに供給される試剤の適切な流速を課すことによって達成される。コンバータの動作条件が全負荷から部分的な負荷に切り替わるとき、コンバータに提供される試剤の流速は、満足な混合条件が確立されない閾値より下で低下し、その結果、質量輸送および熱輸送の制限が生じ、達成可能な最大変換、触媒の選択性、またはコンバータの信頼性さえ制限され得る。
【0007】
残念ながら、コンバータをフル容量で動作させることは常に不可能である。典型的には、部分的な負荷での条件下で動作を強いられることがある反応器は、一方の試剤(例えば、水素)が再生エネルギー源によって動力供給される装置を用いて製造されるとき、アンモニアとメタノールのコンバータである。例えば、水素は、太陽エネルギーまたは風力エネルギーによって電力を供給される水電解装置で製造することができる。再生エネルギー源を利用して試剤の1つを合成するこのようなプラントは、グリーンプラントとして知られている。
【0008】
グリーンプラントは、低操業費と低公害のために大きな関心が寄せられており、例えば、それらは、従来の石炭ベースまたは天然ガスベースのプラントとは反対に、CO2を生産しない。しかし、太陽光や風力のような再生可能なエネルギー源は、本質的に変動を受けやすい。例えば、太陽エネルギーは夜間に利用できない。したがって、生産サイクル中に発生する負荷変動を予測し、対処しなければならない。
【0009】
コンバータの触媒床のみならず、通常二つの後続の触媒床の間に介在する反応器の床間の冷却セクションにおいても、不満足な混合条件が確立される可能性がある。典型的には、コンバータの層間の冷却セクションにおいて、触媒床の排出物は、第2の床におけるさらなる変換工程に供給される前に冷却される。通常、冷却媒体は、短時間に触媒床を出る排出物との完全な混合を促進するのに十分な高い流速を有する「フレッシュな」試剤である。
【0010】
従って、上記の考察に照らして、適切な混合条件が、適用された負荷に独立に、または、システムを循環する流れに独立に、他の世界で、反応器内部で確立され得る工業的用途のための反応器システムを見出すことが非常に望ましい。また、部分的な負荷においても、反応器内部の十分な混合条件を与えながら、反応器システムを循環するガスの流量を制御する方法を見出すことが非常に望ましい。
【0011】
国際公開第2013/097958号明細書は、層間の冷却を伴う多層触媒コンバータおよび試剤の製品への変換の関連するプロセスを開示している。US 5,648,051は炭化水素の供給流のハイドロプロセシングにおける急冷のための装置および方法を開示している。WO 99741329は、液体急冷法による水素化処理反応器およびプロセスを開示している。US 7,275,565は、マルチ管マルチノズル流体分配器を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術の上記の欠点を克服することを目的とする。特に、本発明は、触媒コンバータ内部の満足な混合条件を確立するように構成された新規な反応器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、請求項1に記載の反応器システムで達成される。
【0014】
反応器システムは、触媒コンバータと、該コンバータに接続された試剤供給ラインとを備える。触媒コンバータは、1つ以上の触媒床と、触媒床の上流に配置された混合領域とを含み、前記触媒床のインレット供給物を混合ガスと混合する。反応器システムは、更に、前記混合ガスをコンバータの混合領域に供給するように配置された混合ガス供給ラインを備える。
【0015】
前記混合ガス供給ラインの各々は、少なくとも1つの流量調整装置を備えており、これにより、前記供給ラインの各々によって前記混合領域に受け入れられる混合ガスの量を独立して制御することができる。
【0016】
有利には、流量調整装置は、混合セクションに入る混合ガスの流速が目標流速範囲に維持されるように、各ラインで循環する混合ガスの流量を独立して調整することを可能にする。目標流速範囲は、コンバータの触媒床に保持された触媒に到達する前に、得られる混合物中で均一な温度および組成プロファイルが確立されるように、触媒床のインレット供給物と混合ガスとの間で完全かつタイムリーな混合を確立することを目的とする。
【0017】
加えて、混合セクションに入る混合ガスの流速を目標範囲に維持することによって、触媒表面にわたる反応物質の均一な分布を確立して、質量および熱輸送制限を最小化することができる。
【0018】
本発明のさらなる目的は、反応器システムを循環する混合ガスの流量を調整するための方法を提供することであり、ここでは、コンバータの混合領域に供給される混合ガスの流量は、コンバータの負荷の関数として、流量調整装置によって調整される。
【0019】
有利には、反応器システムに供給される循環ガスの流量が(たとえ急激にであっても)減少するように、反応器システムが部分的な負荷の事象にさらされるとき、コンバータに入るメイクアップガスの流速は、流量調整装置に作用するだけで、目標流速範囲に維持することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、触媒コンバータは、複数の触媒床と複数の混合領域とを含む多床式コンバータであり、混合領域の数は触媒床の数に等しい。
【0021】
好ましくは、触媒コンバータの各混合領域は、それぞれの触媒床の上流に配置され、各混合領域は、それぞれの混合ガス供給ラインに接続される。
【0022】
一実施形態によると、触媒床の一部に混合領域を閉じ込め、触媒床の上流に配置して、触媒床のインレット供給物と混合ガスとの間の混合が触媒に到達する前に起こるようにしてもよい。
【0023】
反応器システムは、混合ガスをコンバータの混合領域に供給するように構成された混合ガス供給ラインを備える。好ましくは、前記混合ガス供給ラインは、メインヘッダを横断する混合ガスが混合ガス供給ラインを横断して分割されるようにメインヘッダから分岐される。各混合ラインを循環する流量は、それぞれの流量調整装置によって制御することができる。
【0024】
好ましい実施形態によれば、各混合領域は、それぞれの混合ガス供給ラインに接続された混合装置を含む。
【0025】
前記混合装置は、触媒床のインレット供給物と混合ガスとの間に満足な混合条件を確立するように混合領域に混合ガスを分配するように構成される。混合領域に入る混合ガスの流速を目標値に、または目標流速範囲に維持することにより、満足な混合条件が達成される。最適流速範囲はコンバータの動作パラメータと混合ガスの性質を考慮して動作中に選定される。
【0026】
好ましい実施態様によれば、混合装置は複数の流量分配器を備え、各流量分配器はそれぞれの混合ガスラインと流体連通しており、混合ガスは分離された混合ラインから混合領域に入り、各分配器は個々に供給されるようになっている。各流量分配器を介して混合セクションに入る混合ガスの流量、従って流速は、流量調整装置によって調整又は調節することができる。
【0027】
好ましくは、流量分配器は、混合セクションの内側の混合装置が占める容積を減少させるように、互いに同心円状に配置された環又はトロイドである。この配置により、触媒床に利用可能な部屋、すなわち使用可能な触媒の量が最大になる。
【0028】
好ましくは、流量分配器は、同軸に配置された管を介して混合装置に接続され、混合ガスを独立した流れとして流量分配器に供給する。同軸に配置された管は、混合装置が占める容積を最小限にすることを可能にし、流量分配器のセクションがインレットガスの混合領域への排出を引き起こす流体力学的擾乱を減少させる。
【0029】
好ましくは、同軸に配置された管の断面のおよび長さは、ガスの等しい流量によって横断されたときに、同等の圧力降下(流動抵抗)を達成するように設計される。
【0030】
好ましくは、流量調整装置は、流量の正確な調整を可能にするバルブ(例えば、高品質制御バルブ)であり、好ましくは、バルブ容量とプラグの変位(すなわち、バルブ特性)との間に同じ関係を有する。
【0031】
好ましくは、各バルブには、プログラム可能な制御ユニットまたは分散制御システムから受信された信号を受け取り、変換して、プラグの変位量に変換して、前記バルブを閉じるか、または部分的に閉じることができる独自のアクチュエータが設けられる。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、混合ラインに配置された流量調整装置の総数は、混合装置の流量分配器の数に等しい。少なくとも1つの流量調整装置が各混合ラインに配置されている。
【0033】
流量分配器は、混合ガスの混合セクションへの排出に利用可能な同じ断面積を有する円形又は実質的に円形の開口部を備えることができる。
【0034】
本発明の好ましい一実施態様によれば、反応器システムは、部分的な負荷事象の間に混合セクションに入る混合ガスの流量(流速)を調整するために、バルブのプラグの変位を決定するプログラムで制御可能なインターフェースコントローラまたは分散制御システムを備える。
【0035】
好ましくは、メインヘッダを循環する混合ガスが減少するとき、プログラムで制御可能なコントローラ又は分散制御システムは、混合ガス供給ラインに配置されたバルブの少なくとも1つを閉じるか又は部分的に閉じるように、流量調整装置のアクチュエータに信号を送る。後者の動作により、混合セクションに入る混合ガスの流速は、最適値に、または最適範囲に再確立される。
【0036】
本発明の別の特に好ましい実施態様によれば、触媒コンバータは、複数の触媒床及び複数の混合セクションを備えたアンモニア又はメタノールの合成のために利用される多床式コンバータであり、各混合セクションは冷却ゾーンとして作用し、低温流を利用して試剤混合物又は部分的に変換された試剤混合物を冷却する。
【0037】
好ましくは、各混合ゾーンに接続された混合ラインの数は、触媒コンバータの動作条件の関数として、また混合ゾーンの流体力学的条件に応じて選択される。原則として、混合ゾーンに接続された混合ラインの数を増やすことは、より正確な流速の制御をもたらし、その結果、流速偏差が生じないか、または、設定値からの流速の最小のオフセットに過ぎなくなる。
【0038】
さらに、混合ゾーンで連通する混合ラインの数を増加させることは、反応器システムを循環する混合ガスの流量の低い減少に対応するシステムの能力を増加させる。
【0039】
好ましくは、触媒コンバータに入る混合ガスの流速の最も正確な制御は、第一触媒床の上流に配置された混合セクションにおいて必要とされるかもしれず、ここでは、動作パラメータの目標値からの僅かな変動さえも、反応収率に劇的かつネガティブに影響し得る。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、混合セクションに供給された混合ガスは、触媒床に入るインレットガスを冷却するための急冷媒体として使用することができ、前記急冷媒体の温度は前記インレットガスの温度よりも低い。この実施形態によると、流量分配器は冷却環である。
【0041】
好ましくは、触媒コンバータは、反応セクション(すなわち、触媒床)にわたって擬似等温温度プロファイルを維持するように、触媒床の後に配置されるか、またはその周りに封入される熱交換器を備え得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、触媒合成が発熱反応を介して実施される場合、フレッシュな試剤を運ぶ試剤供給ラインは、触媒コンバータを横切るように配置されてもよく、これにより、触媒床から試剤ガスへの間接的な熱伝達による反応熱を除去して、コンバータのインレットに加熱されたフレッシュな試剤ガスを提供する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、試剤供給ラインはメインヘッダから分岐され、混合ガス供給ラインと共にパイプのネットワークを形成する。
【0044】
本発明の別の態様は、部分的な負荷事象を受ける反応器システムを循環する混合ガスの流量を制御するための方法を提供することである。本発明の方法は、混合ガス供給ラインを横切って測定された圧力降下よりも混合セクションを横切る圧力降下が支配的であるコンバータを含む任意の反応器システムに拡張することができる。
【0045】
本発明の方法は、各バルブにわたる局所的な圧力低下が反応器の絶対圧力よりも無視できるように、高圧で動作される触媒コンバータを含む反応器システムに特に適している。
【0046】
特に好ましくは、本発明の実施形態は、反応器システムであって、触媒コンバータと、コンバータに接続された試剤供給ラインであって、1以上の触媒床を含み、触媒床の上流に配置され、触媒床のインレット供給物を混合ガスと混合する混合領域をさらに含む、試剤供給ラインとを備え、前記混合ガスを前記混合領域に供給するように配置された複数の混合ガス供給ラインをさらに備え、前記混合ガス供給ラインの各々は、前記供給ラインの各々によって前記混合領域に受け入れられる混合ガスの量を独立して制御することができるようにバルブを含み、前記混合ガス供給ラインの各々は、メインヘッダから分岐され、好ましくは、試剤供給ラインは、前記メインヘッダから分岐され、前記混合領域が、混合装置を含み、前記混合装置は、並列に配置された分配器を含み、前記分配器の各々は、混合ガス供給ラインの1つによって個別に且つ別個に供給され、システムは、コンバータの負荷に応じて各バルブの開口又は閉鎖を調整するように構成されたプログラムで制御可能なコントローラ又は分散制御システムを更に含み、各分配器に供給された混合ガスの流量は個々に制御される反応器システムである。
【0047】
特に好ましくは、前記流量分配器は、環状分配器又は同心円状に配置されたトロイダル分配器である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、反応器システムの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、反応器システムの別の実施形態を示す。
【
図3】
図3は、反応器システムのさらなる実施例を示す。
【
図4】
図4は、混合装置の流量分配器の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、アンモニア合成プロセスの反応器システム100の略図である。反応器システム100は、アンモニアコンバータ1と、該コンバータ1に接続された試剤供給ライン35と、複数の混合ガス供給ライン8、9、10、11とを備える。
【0050】
試剤供給ライン35及び混合ガス供給ライン8、9、10、11は、水素及び窒素(フレッシュな試剤)を含むアンモニアメイクアップガスを担持する。
【0051】
コンバータ1は、例えば第1の触媒床2及び第2の触媒床4を含む多床コンバータである。実際の場合、コンバータ1は、より多数の触媒床、例えば3つまたは4つを含むことができる。
【0052】
混合ガス供給ライン8、9、10、11は、メインヘッダ7から分岐されている。また、試剤供給ライン35は、同じヘッダ7から分岐してもよい。混合ガスライン11は、コンバータの混合セクション50を介して第1の触媒床2と流体連通している。この実施形態では、表現を簡単にするために、混合セクション50が触媒床2の外側に示されている。しかし、いくつかの構成では、混合領域50を触媒の上に配置し、触媒バスケットの内側の触媒床2と一緒に収容することができる。
【0053】
第一の混合ガスライン11の流量は、バルブ17によって調整することができ、一方、残りの混合ガスライン8、9、10の流量は、それぞれのバルブ14、15、16によって調整することができる。
【0054】
混合ガスライン8、9、10は、混合ガスの一部をメインヘッダ7から第1の触媒床2の下流および第2の触媒床4の上流の層間混合領域20に供給するように配置されている。
【0055】
バルブ14、15、16および17は、プログラムで制御可能なコントローラによって、または分散制御システム(図には示されていない)によって作動され、これらのシステムを介して、混合ガスライン8、9、10、11の間でライン7によって運ばれるメイクアップガスのブレークダウンが調整される。
【0056】
層間混合領域20は、第1の触媒床から出た部分的に変換された排出物31と、混合ライン8、9及び10によって運ばれる混合ガスの1以上の流れとを受け取るように構成される。混合ライン8、9、10によって運ばれた混合ガスは、マニホルド32を横切った後、流量分配器3を介して層間の冷却セクション20に供給される。
【0057】
複数の流量センサ装置(例えば、流量計装置)および圧力センサ装置(例えば、圧力コンバータおよび差圧セル)が、混合ガス供給ラインを横切って分配され、プログラム可能なインターフェース制御ユニットへの入力信号、または分散制御システムへの入力信号を生成する。圧力は、好ましくは、少なくとも混合ライン11で、バルブ17の上流および下流で検出されるべきであり、流量は、少なくともメインヘッダ7で測定されるべきである。
【0058】
プログラムで制御可能なインターフェース制御ユニットまたは分散制御システムは、センサ装置から受信した入力信号を精緻化し、バルブ14、15、16、17のアクチュエータに出力信号を供給して、プラグの変位を調整することによって、前記バルブの開度を調整する。
【0059】
各バルブにはそれ自体のアクチュエータが設けられているので、各バルブを通過する流量は、プログラム可能な制御ユニットによって、または分散制御システムによって与えられる出力信号に応じて、独立して調整することができる。
【0060】
反応器システム100が全容量で作動するとき、混合ガスライン8、9、10、11に位置するバルブ14、15、16、17は、適切な流量制御を保証するためにほとんど開いた位置にあると仮定される。ライン7により運ばれる流量が低下すると、混合ガスライン14~17を循環する流量および流速も同様に減少する。しかしながら、流量に対する抵抗(圧力降下)は従来のサイズのパイプにおける流速の二乗に比例するので、このような減少は必ずしも線形ではない。
【0061】
コンバータ1の混合セクション20に入るガスの流速を目標流速範囲に復元するためには、メインヘッダ7に入る流量に応じて2つの状況が想定される。
【0062】
具体的には、ライン7を循環する流量の減少が実質的である場合、ライン8、9、10に配置されたバルブ14、15、16のうちの少なくとも1つが閉じて、バルブが閉じられているラインで混合ガスが循環しないようにする。
【0063】
加えて、第一の混合ライン11に位置するバルブ17は部分的に閉じて、前記第一のラインに更なる圧力降下を生じさせ、かくして、流速と圧力との間の線形ではない依存性を補償し、かくして、混合セクション20に入る混合ガスの各部分の流速が目標流速範囲に維持されるようにする。
【0064】
これに代えて、ヘッダ7を循環する流量の減少がわずかである場合には、混合ガスが前記混合ライン8、9、10の間の等しい部分に分配されるように、混合ライン8、9、10に位置するバルブ14、15、16は部分的に同時に閉じる。
【0065】
同様に、第一の混合ライン11に配置されたバルブ17は、第一のラインに追加の圧力降下を作り出すために部分的に閉じ、従って、混合セクション20に入るガスの流速を、良好な混合条件を確立するために理想的な一定の流速範囲に維持する。
【0066】
図2は、本発明の別の実施形態を示しており、第1の触媒床2の上方に配置された混合セクション50に入る混合ガスの流速は、目標流速範囲に維持される。この実施形態では、試剤供給ライン35に入る試剤ガスと混合ライン11、12、13によって運ばれる混合ガスとの間に良好な混合を確立することができる。
【0067】
部分的な負荷事象の間、混合ライン11、12、13に配置されたバルブ17、18、19は、メインヘッダ7に入る混合ガスの量に応じて、部分的に同時に閉じるか、少なくともその一つが完全に閉じる。その代わりに、混合ライン8に配置されたバルブ14は部分的にのみ閉じて、ライン8に更なる圧力降下を生じさせ、圧力降下と流速との間の非線形関係を補償する。
【0068】
混合ライン11、12、13によって運ばれた混合ガスは、3つの流量分配器を備える混合装置30(
図4)を介してコンバータの混合セクション50に分配することができる。3つの流量分配器は、3つの同心的に配置された管からなるマンホール37を介して、それぞれの混合ライン11、12、13と流体連通しており、その結果、各流量分配器は、ライン11、12または13のうちの1つによって別々に供給される。
【0069】
図3は、本発明の他の実施形態を示しており、混合ガス供給ラインは、2つの混合セクション20及び50と連通する複数のライン8~13を備えている。ライン8~10は混合セクション20に、ライン11~13は混合セクション50にそれぞれ接続されている。
【0070】
この実施形態において、流量調整装置14~19は、2つの混合セクション20、50に入る混合ガスの流速を、メインヘッダ7に入る混合ガスの流速とは独立に、目標流速範囲に維持することを可能にする。
【0071】
図4は、混合装置3が環状流の流量分配器60、61、62を備える実施形態を示す。前記流量分配器の各々は、供給ライン8、9、10の1つによって個々に、個別に供給される。
図3のライン32は、ライン8、ライン9及びライン10の各ストリームを、分配装置60、61及び62にそれぞれ別々に供給できるように、3つの同軸パイプのアセンブリを示すことに留意されたい。例えばライン8は同軸アッセンブリ32の第1のパイプを介して流量分配器60に接続され、ライン9はアッセンブリの第2のパイプを介して流量分配器61に接続され、ライン10はアッセンブリの第3のパイプを介して流量分配器62に接続される。
【0072】
前記流量分配器60、61、62は、混合ライン8、9、10を循環する混合ガスの各部分を混合領域に排出するために円形の開口部を備えて同心的に配置されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器システム(100)であって、
触媒コンバータ(1)と、
前記コンバータ(1)に接続された試剤供給ライン(35)と、を備え、
前記コンバータ(1)が、
複数の触媒床(2、4)を含
む多床コンバータであり、
前記コンバータが、
複数の混合領域(20、50)をさらに含み、前記混合領域の数は前記触媒床の数と等しく、各々の前記混合領域は各々の前記触媒床(2、4)の上流に配置され、前記触媒床のインレット供給物を混合ガスと混合
し、
前記反応器システム(100)は、前記混合ガスを前記混合領域(20、50)に供給するように配置された
、混合ガス供給ライン(11)または複数の混合ガス供給ライン(8~10、11~13)をさらに備え、
各々の前記混合領域(20、50)は1つ以上の各々の前記混合ガス供給ラインに接続され、
前記混合ガス供給ラインの各々は、少なくとも1つの流量調整装置(14~16、17~19)を備え、前記供給ラインの各々によって前記混合領域に受け入れられる混合ガスの量を個々に制御することが可能である、反応器システム(100)。
【請求項2】
前記混合ガス供給ラインが、メインヘッダ(7)から分岐し、好ましくは、前記試剤供給ライン(35)も、前記メインヘッダ(7)から分岐している、請求項1に記載の反応器システム(100)。
【請求項3】
前記混合領域(20、50)が、各々の前記混合ガス供給ライン(8~10、11~13)に接続された混合装置(3、30)を含む、請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
前記混合装置(3)が複数の流量分配器(60、61、62)を備え、各々の前記流量分配器が各々の前記混合ガス供給ライン(8、9、10)と流体連通して接続されている、請求項3に記載の反応器システム(100)。
【請求項5】
前記流量分配器(60、61、62)が同心円状に配置され、好ましくは、環状又はトロイダル状の形状を有する、請求項4に記載の反応器システム(100)。
【請求項6】
前記混合装置(3)が同軸に配置された複数のパイプを介して前記混合ガス供給ラインに接続され、同軸の前記パイプの各々が一つのガス供給ラインを前記混合装置の各々の前記流量分配器に個々に接続されている、請求項4または5に記載の反応器システム(100)。
【請求項7】
前記流量調整装置(14~19)がバルブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項8】
コンバータ(1)の負荷の関数に応じて流量調整装置を通る流量を調整するように構成された、プログラムで制御可能なコントローラまたは分散制御システムをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項9】
前記制御システムは、前記バルブの開度を調整するよう構成される、請求項7または8に記載の反応器システム。
【請求項10】
混合ガス供給ライン(8~13)は、前記触媒床の供給流の温度より低い温度を有する混合ガスを運ぶように構成された冷却ラインであり、前記混合ガスは冷却ガスとして使用することが可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項11】
前記触媒コンバータ(1)がアンモニアの合成に適合するか、または、前記触媒コンバータ(1)がメタノールの合成に適合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の反応器システム(100)。
【請求項12】
前記触媒床の排出物から熱を除去するために前記触媒床(2)の下流に配置された熱交換器をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器システム(100)
。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の反応器システム(100)で循環の流量を調整する方法において、前記コンバータ(1)の前記混合領域に供給される前記混合ガスの前記流量は、前記コンバータ(1)の負荷の関数に応じて前記流量調整装置(14~19)によって調整されることを特徴とする方法。
【国際調査報告】