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特表2024-514032エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1514 20190101AFI20240321BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G02F1/1514
G02F1/155
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547913
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2022073609
(87)【国際公開番号】W WO2022166670
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110164716.5
(32)【優先日】2021-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523298889
【氏名又は名称】光▲ゲイ▼智能科技(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】曹 超月
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB06
2K101DC13
2K101DC43
2K101DC45
2K101DC53
2K101DC54
2K101EC02
2K101EC12
2K101EC13
2K101EC54
2K101EG52
2K101EK04
2K101EK05
(57)【要約】
エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末を提供する。エレクトロクロミックデバイスは、引き出し電極(6)、および順次積層された第1ベース層(1)、第1導電層(2)、エレクトロクロミック層(3)、第2導電層(4)、第2ベース層(5)を備え、ここで、第1導電層(2)は、少なくとも1つの第1領域(21)および少なくとも1つの第2領域(22)を有し、第1領域(21)は引き出し電極(6)に電気的に連通され、第1領域(21)と第2領域(22)との間には第1切り込み(24)が設けられ、第1切り込み(24)が第1導電層(2)を垂直方向に貫通し、第1領域(21)と第2領域(22)との間には、導電パス(23)が更に設けられ、第1切り込みは導電パスで途切れ、第2領域(22)は、導電パス(23)を介して第1領域(21)、引き出し電極(6)に電気的に連通される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し電極、および順次積層された第1ベース層、第1導電層、エレクトロクロミック層、第2導電層、第2ベース層を備え、
前記第1導電層は、少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を有し、
前記第1領域は前記引き出し電極に電気的に連通され、
前記第1領域と前記第2領域との間には第1切り込みが設けられ、前記第1切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、
前記第1領域と前記第2領域との間には、導電パスが更に設けられ、前記第1切り込みは前記導電パスで途切れ、
前記第2領域は、前記導電パスを介して前記第1領域、前記引き出し電極に電気的に連通される、
エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記導電パスのシート抵抗は前記第1領域のシート抵抗よりも大きい、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記導電パスの幅は前記第2領域の周長の20%よりも小さいかまたは等しい、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記第2領域の内部は少なくとも1本の第2切り込みを有し、前記第2切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、
前記第2切り込みは、前記第2領域の内部を少なくとも2つの部分に区画し、前記第2領域の内部の前記少なくとも2つの部分の間は互いに電気的に連通される、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記第1導電層は、前記第1導電層の周辺部分に設けられたバスバーを更に備え、前記引き出し電極は前記バスバーに設けられ、前記第1切り込みは前記バスバーに接触しない、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記第1導電層は第3切り込みを更に備え、前記第3切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、前記第3切り込みは、少なくとも一部の前記バスバーの前記第1導電層の辺縁から遠い側に位置し、前記第1切り込みにも前記バスバーにも接触しない、
請求項5に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記バスバーは、少なくとも1本のバスバー主部と少なくとも1本のバスバー連通部とを備え、前記バスバー連通部の第1端点が前記引き出し電極に接続され、前記バスバー連通部の第2端点が前記バスバー主部に接続され、且つ、前記バスバー主部の前記引き出し電極に近い端点と重ならず、
前記第3切り込みは、少なくとも一部が前記バスバー主部と前記バスバー連通部との間に位置する、
請求項6に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記バスバー連通部の第2端点は前記バスバー主部の中点と重なる、
請求項7に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック層は、順次積層された変色材料層、固体電解質層およびイオン貯蔵層を備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記イオン貯蔵層は前記第1導電層に接触する、
請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料と、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料とは架橋度が異なる、
請求項9または10に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項12】
前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度は、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度よりも小さい、
請求項11に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える、
電子端末。
【請求項14】
前記変色材料層は、人間の目の視線に近い側に位置する、
請求項13に記載の電子端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年2月6日に中国専利局に提出された出願番号が202110164716.5である中国特許出願の優先権を主張し、上記出願の全ての内容は引用により本願に援用される。
本願は、エレクトロクロミックの技術分野に関し、例えば、エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミックとは、材料の光学特性に印加電界の作用で安定して可逆的な色変化が発生する現象を意味し、外観上では色および透明度の可逆的な変化として表現される。エレクトロクロミック性能を持つ材料は、エレクトロクロミック材料と呼ばれ、エレクトロクロミック材料は、無機エレクトロクロミック材料と有機エレクトロクロミック材料とに分けることができる。無機エレクトロクロミック材料は、安定し、応答が速いという利点を有し、例えば、三酸化タングステン、五酸化バナジウム、酸化ニッケル、二酸化チタン等であり、有機エレクトロクロミック材料は、種類が多く、色が豊富で、設計しやすく、例えば、ビオロゲン、ポリチオフェン類である。
【0003】
エレクトロクロミック材料で作製されたデバイスは、エレクトロクロミックデバイスと呼ばれる。異なるエレクトロクロミック材料の選択により、異なる色、異なる変色範囲のエレクトロクロミックデバイスを得ることができる。エレクトロクロミックデバイスは、変色メガネ、電子表示、軍事迷彩、建築省エネ等の分野で非常に重要な応用の見通しを有する。
【0004】
よくあるエレクトロクロミックデバイスは、一般的に順次積層された透明基材層、透明導電層、エレクトロクロミック層、電解質層、イオン貯蔵層、透明導電層および透明基材層で構成される。電圧が印加された後、イオンは、イオン貯蔵層から電解質層を介して伝導されてエレクトロクロミック層に入り、変色を実現し、逆電圧が印加された後、イオンは、エレクトロクロミック層から電解質層を介して伝導されてイオン貯蔵層に入り、退色を実現する。
【0005】
いくつかの適用シーンにおいて、情報の表示または外観の意匠感の強化という効果を実現するために、エレクトロクロミックデバイスが全体として均一に変色するのではなく、変色過程でパターンを示すことができることが望まれる。
【0006】
関連技術において通常採用されている処理方法は、そのうちの1層の透明導電層をエッチングし、異なる領域の導電層を完全に仕切り、また、異なる領域の導電層をそれぞれ引き出し、複数の引き出し電極により複数の領域の変色をそれぞれ制御するものである。しかし、このような処理方法はデバイスの引き出し電極の数を増やすため、デバイス構造がより複雑となり、プロセス難易度が大きくなり、コストが増加する。
【発明の概要】
【0007】
本願は、エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末を提供する。本願に係るエレクトロクロミックデバイスは、引き出し電極の数を増やせずに変色過程でパターンが示されることを実現できる。
【0008】
本願は、以下の技術案を採用する。
【0009】
第1態様において、本願は、引き出し電極、および順次積層された第1ベース層、第1導電層、エレクトロクロミック層、第2導電層、第2ベース層を備え、ここで、
前記第1導電層は、少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を有し、
前記第1領域は前記引き出し電極に電気的に連通され、
前記第1領域と前記第2領域との間には第1切り込みが設けられ、前記第1切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、
前記第1領域と第2領域との間には、導電パスが更に設けられ、前記第1切り込みは前記導電パスで途切れ、
前記第2領域は、前記導電パスを介して前記第1領域、前記引き出し電極に電気的に連通される、
エレクトロクロミックデバイスを提供する。
【0010】
第2態様において、本願は、第1態様に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える電子端末を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願の実施例1に係るエレクトロクロミックデバイスの断面構造模式図である。
図2】本願の実施例1に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図3】本願の実施例2に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図4図3におけるA-Aに沿って断面したエレクトロクロミックデバイスの断面構造模式図である。
図5】本願の実施例3に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図6】本願の実施例4に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図7】本願の実施例5に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図8】本願の実施例6に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
図9】本願の実施例7に係るエレクトロクロミックデバイスの第1透明導電層の構造模式図である。
【符号の説明】
【0012】
1・・・第1ベース層、2・・・第1導電層、3・・・エレクトロクロミック層、4・・・第2導電層、5・・・第2ベース層、6・・・引き出し電極、21・・・第1領域、22・・・第2領域、23・・・導電パス、24・・・第1切り込み、25・・・第2切り込み、26・・・第3切り込み、27・・・バスバー、271・・・第1バスバー主部、272・・・第1バスバー連通部、273・・・第2バスバー主部、274・・・第2バスバー連通部、31・・・変色材料層、32・・・固体電解質層、33・・・イオン貯蔵層、211・・・第1領域の第1部分、212・・・第1領域の第2部分、2721・・・第1バスバー連通部の第1端点、2722・・・第1バスバー連通部の第2端点、2741・・・第2バスバー連通部の第1端点、2742・・・第2バスバー連通部の第2端点。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、本願の説明において、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等によって指示された方位または位置関係は、図面に示す方位または位置関係に基づくものであり、本願の説明を容易にして説明を簡略化するためのものに過ぎず、係る装置または素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成されて操作されなければならないことを指示または暗示するものではないため、本願を限定するものとしては理解できない。また、用語「第1」、「第2」等は、説明の目的のためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示または暗示するものまたは指示された技術的特徴の数を暗黙的に示すものとしては理解できない。これにより、「第1」、「第2」等が限定された特徴は、1つまたはより多くの該特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本願の説明において、別途釈明がない限り、「複数」の意味は、2つまたは2つ以上である。
【0014】
なお、本願の説明において、別途明確な規定および限定がない限り、用語「設置」「繋がる」、「接続」は広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよし、取り外し可能な接続であってもよいし、もしくは一体的に接続されてもよく、機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよく、直接繋がってもよいし、中間媒体を介して間接的に繋がってもよく、2つの素子の内部の連通であってもよい。当業者であれば、本願における上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解できる。
【0015】
実施例1
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図1に示すように、順次積層された第1ベース層1、第1導電層2、エレクトロクロミック層3、第2導電層4、第2ベース層5を備える。
【0016】
ここで、前記エレクトロクロミック層3は、順次積層された変色材料層31、固体電解質層32、およびイオン貯蔵層33を備える。
【0017】
前記第1導電層2には第1切り込み24があり、前記第1切り込み24が第1導電層2を垂直方向に貫通する。
【0018】
図2において、外辺縁の内部の全ての細い実線は第1切り込み24を表す。
【0019】
図2に示すように、前記第1導電層2は、1つの第1領域21および1つの第2領域22を有し、前記第1領域21は引き出し電極6に電気的に連通される。
【0020】
前記第1領域21と第2領域22との間には第1切り込み24が設けられ、前記第1切り込み24は、レーザーエッチングにより形成されて前記第1導電層2を垂直方向に貫通する溝である。
【0021】
前記第1領域21と第2領域22との間には、導電パス23が更に設けられ、前記第1切り込み24は前記導電パス23で途切れる。
【0022】
前記第2領域22は、前記導電パス23を介して前記第1領域21、前記引き出し電極6に電気的に連通される。
【0023】
前記導電パス23の幅は前記第2領域22の周長の0.05%である。
【0024】
本実施例において、前記第1切り込み24は、イオン貯蔵層33の塗布前に形成されたものであり、このようにすることで、デバイス構造の全体性の保証が容易になる。
【0025】
本実施例において、導電パス23の幅を前記第2領域22の周長の0.05%に設定することにより、第2領域22の内部の点と引き出し電極との間の最も短い導通経路の長さを増加させ、最も小さい導通線路抵抗を大きくし、変色速度を遅くして、第2領域22の変色速度を第1領域21の変色速度よりも小さくし、更に、変色過程で特定の規則を持つパターンが表示されることを実現する。同時に、1つの引き出し電極6があれば、第1導電層2に対する引き出しを実現することができ、構造プロセスが簡単でコストが低いという利点を有する。
【0026】
第2導電層4は、もう1つの引き出し電極(図示せず)に電気的に接続され、2つの引き出し電極6と外部電源、制御回路との接続により、エレクトロクロミックデバイスの変色制御を実現することが理解できる。もう1つの引き出し電極についての設定は、当業者によく知られている技術であり、本願は、ここでおよび以下の実施例でこれについて繰り返し詳細に説明する必要はない。
【0027】
実施例2
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図3および図4に示すように、実施例1と、前記第1導電層2が4つの第1領域21および4つの第2領域22を有することで区別される。
【0028】
図3に示すように、第1導電層2は4つの導電パス23を有する。単一の導電パス23の幅は単一の第2領域22の対応する一辺の長さであり、例えば、図3の右上隅の単一の第2領域22は、それに対応する導電パス23の幅が該第2領域22の左側の辺の長さに等しく、該導電パス23の幅が該第2領域22の周長の20%である。
【0029】
前記第1導電層2は、第1導電層2の周辺部分に設けられたバスバー27を更に備え、図3において、周辺部分は、第1および第2領域と導電層の辺縁との間の領域に位置する。
【0030】
前記引き出し電極6は、前記バスバー27に設けられ、前記第1切り込み24は前記バスバー27に接触しない。
【0031】
図3において、外辺縁の内部の全ての細い実線は第1切り込み24を表す。
【0032】
本実施例において、前記第1切り込み24は、イオン貯蔵層33の塗布後に形成されたものであり、このようにすることで、導電層の表面エネルギーの一致性が保証可能であり、イオン貯蔵層33の塗布効果の保証がより容易になる。
【0033】
本実施例において、バスバー27を設けることにより異なる第1領域の間の変色速度の差異を低減し、異なる第2領域の間の変色速度の差異を低減する。
【0034】
本実施例において、レーザーエッチングにより前記導電パス23箇所の導電層の厚さを薄くすることで、導電パス23箇所の導電層のシート抵抗を前記第1領域21の導電層のシート抵抗よりも大きくするとともに、導電パス23の幅を前記第2領域22の周長の20%に制御することで、第2領域22の内部の点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗を大きくし、変色速度を遅くして、第2領域22の変色速度を第1領域21の変色速度よりも小さくし、更に、変色過程で特定の規則を持つパターンが表示されることを実現する。同時に、1つの引き出し電極6があれば、第1導電層2に対する引き出しを実現でき、構造プロセスが簡単でコストが低いという利点を有する。
【0035】
実施例3
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図5に示すように、実施例2と、各第2領域22の内部に1本の第2切り込み25が更に含まれることで区別される。
【0036】
各第2切り込み25は、各第2領域22の内部を2つの部分に区画し、同じ第2領域22の内部の2つの部分の間は互いに電気的に連通される。
【0037】
図5において、ハッチング領域の内部の細い実線は第2切り込み25であり、外辺縁の内部の第2切り込み25以外の他の細い実線は第1切り込み24である。
【0038】
本実施例において、実施例2に基づいて、第2領域22内に第2切り込み25を設けて、第2領域22の内部を2つの部分(第2領域22の導電パス23に近い部分および第2領域22の導電パス23から遠い部分)に区画することにより、導電パス23から遠い部分における点の最も短い導通経路(「点の最も短い導通経路」とは、該点と引き出し電極との間の最も短い導通経路を意味する)を大きくし、導電パス23から遠い部分の変色速度を小さくし、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。
【0039】
実施例4
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図6に示すように、実施例1と、前記導電パス23の幅が前記第2領域22の周長の0.1%であることで区別される。
【0040】
前記第2領域22の内部は、11本の第2切り込み25を更に含む。
【0041】
図6において、ハッチング領域の内部の細い実線は第2切り込み25であり、第1導電層2内の第2切り込み25以外の他の細い実線は第1切り込み24である。
【0042】
前記第2切り込み25は、前記第2領域22の内部を8つの部分に区画し、前記第2領域22の内部の複数の部分の間は互いに電気的に連通される。
【0043】
前記第1導電層2は、第1導電層2の周辺部分に設けられたバスバー27を更に備える。
【0044】
前記引き出し電極6は前記バスバー27に設けられ、前記第1切り込み24は前記バスバー27に接触しない。
【0045】
本実施例において、実施例1に基づいて、第2領域22内に第2切り込み25を設けて、第2領域22の内部を8つの部分に区画し、複数の部分の間を第2切り込み25の途切れ箇所のパスを介して電気的に接続することにより、各部分における点と引き出し電極6との間の最も短い導通経路の長さが異なり、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。同時に、バスバー27を設けることにより導電層の周辺部分の電圧降下を低減し、変色速度を向上させる。
【0046】
実施例5
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図7に示すように、実施例1と、前記第1領域21および前記第2領域22の形状が実施例1と異なり、前記導電パス23の幅が前記第2領域22の周長の0.01%であることで区別され、図7に示すように、導電パス23の幅の数値は、中央の長尺形状の対応する狭辺の幅に等しい。
【0047】
図7において、第1導電層内の全ての細い実線はいずれも第1切り込み24である。
【0048】
前記固体電解質層は、質量パーセントが20wt%である過塩素酸リチウムと、質量パーセントが59.9wt%であるメタクリル酸メチルと、20%であるプロピレンカーボネートと、質量パーセントが0.1wt%であるアゾビスイソブチロニトリルとを混合して前記イオン貯蔵層に塗布してから、紫外線で硬化させることにより形成される。
【0049】
エレクトロクロミックデバイスの電解質層の紫外線硬化前に、第2領域22に対応するエレクトロクロミックデバイスの外側に10%紫外線透過率の表面にめっき被膜されたPETフィルムを被覆し、第1領域21の第1部分211に対応するエレクトロクロミックデバイスの外側に50%紫外線透過率の表面にめっき被膜されたPETフィルムを被覆し、第1領域21の第2部分212に対応するエレクトロクロミックデバイスの外側に被覆するフィルムがない。
【0050】
従って、前記第2領域22の前記固体電解質層32における投影領域の電解質材料の架橋度<前記第1領域21の第1部分211の前記固体電解質層32における投影領域の電解質材料の架橋度<前記第1領域21の第2部分212の前記固体電解質層32における投影領域の電解質材料の架橋度である。
【0051】
本実施例において、実施例1に基づいて、固体電解質層32における異なる領域の間の架橋度を制御し、更に異なる領域の変色速度を一致しないようにすることにより、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。
【0052】
実施例6
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図8に示すように、実施例2と、前記導電パス23の幅が前記第2領域22の周長の5%であることで区別される。
【0053】
前記導電パス23における導電層のシート抵抗は前記第1領域21の導電層のシート抵抗に等しい。
【0054】
前記第1導電層2は第3切り込み26を更に備え、前記第3切り込み26が第1導電層2を垂直方向に貫通し、前記第3切り込み26は、一部の前記バスバー27の前記第1導電層2の辺縁から遠い側に位置し、前記第1切り込み24にも前記バスバー27にも接触しない。
【0055】
本実施例において、第3切り込み26が設けられなければ、バスバー27における電流は、図8における左上隅に位置する第1領域の上側および左側の辺の長さに直接伝達され、即ち、図8における左上隅に位置する第1領域は、上側および左側の辺の長さから下側および右側の辺の長さへ変色する効果を示し、同様に、右下隅に位置する第1領域は、下側および右側の辺の長さから上側および左側の辺の長さへ変色する効果を示す。
【0056】
第3切り込み26が設けられた後、バスバー27における電流は、図8における左右両側のバスバーだけで第1領域21に伝達可能であり、即ち、4つの第1領域は、いずれも外側から内側へ変色する効果を示す。
【0057】
図8において、ハッチング領域の周長の細い実線は第1切り込み24であり、第1導電層2内の第1切り込み24以外の他の細い実線は第3切り込み26である。
【0058】
本実施例において、実施例2に基づいて、第3切り込み26を設けて、引き出し構造6の位置を変えることなく、バスバー27における電流の第1領域21への伝導の開始の位置を、元のバスバー領域全体から左右両側のバスバーに変換することにより、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。
【0059】
実施例7
本実施例は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、その構造は図9に示すように、実施例6と、前記バスバーが、第1バスバー主部271、第1バスバー連通部272、第2バスバー主部273、および第2バスバー連通部274を備えることで区別される。
【0060】
ここで、前記第1バスバー連通部の第1端点2721は前記引き出し電極6に接続され、前記第1バスバー連通部の第2端点2722は前記第1バスバー主部271の中点に接続される。
【0061】
前記第2バスバー連通部の第1端点2741は前記引き出し電極6に接続され、前記第2バスバー連通部の第2端点2742は前記第2バスバー主部273の中点に接続される。
【0062】
図9を参照し、前記第3切り込み26の一部は前記第1バスバー主部271と前記第1バスバー連通部272との間に位置し、前記第3切り込み26の一部は前記第2バスバー主部273と前記第2バスバー連通部274との間に位置し、前記第3切り込み26は、更に、一部(図9の水平部分)が前記第1バスバー27の第1導電層2の辺縁から遠い側に位置する。
【0063】
図9において、ハッチング領域の周長の細い実線は第1切り込み24であり、第1導電層2内の第1切り込み24以外の他の細い実線は第3切り込み26である。
【0064】
実施例6において、左右両側のバスバーの長さが大きすぎる場合、バスバー27自体の線路抵抗の影響により、バスバー27に印加された電圧が引き出し電極6から遠い一端に達した時にも、一定の電圧損失が発生し、これにより、引き出し電極6に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しなくなる。
【0065】
本実施例において、実施例6に基づいて、バスバーを複数のバスバー主部および複数のバスバー連通部として設定して、引き出し構造6の位置を変えることなく、引き出し電極6における電流のバスバー27への伝導の開始の位置を、バスバー連通部とバスバー主部との交点位置、即ち点2722および2742に変換することにより、引き出し電極6に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しない現象を弱めるとともに、変色過程で表示されるパターンの多様性も高める。
【0066】
本願は、エレクトロクロミックデバイスを提供し、前記エレクトロクロミックデバイスは、引き出し電極、および順次積層された第1ベース層、第1導電層、エレクトロクロミック層、第2導電層、第2ベース層を備え、ここで、前記第1導電層は、少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を有し、前記第1領域は前記引き出し電極に電気的に連通され、前記第1領域と前記第2領域との間には第1切り込みが設けられ、前記第1切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、前記第1領域と第2領域との間には、導電パスが更に設けられ、前記第1切り込みは前記導電パスで途切れ、前記第2領域は、前記導電パスを介して前記第1領域、前記引き出し電極に電気的に連通される。
【0067】
エレクトロクロミックデバイスにおける任意の点の変色状況は、該点に対応する導電層の間の電位差(即ち、実効電圧)に直接関連しているため、外部のエレクトロクロミックデバイスの引き出し電極に印加した電圧が同じである場合、任意の点の実効電圧は、該点と引き出し電極との間の電圧降下に関連し、電圧降下が小さいほど、該点の実効電圧は大きく、変色速度も速くなる。一方、任意の点の電圧降下は、該点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗(該点と引き出し電極との間に複数の導通経路が存在し、各経路がいずれも1つの線路抵抗値に対応し、そのうちの最も小さい値を最も小さい導通線路抵抗として取り、その数値が導通経路の長さおよび導通経路における各点の線路抵抗値に関連し、ここで、導通経路における各点の線路抵抗値が該点での導電層のシート抵抗および導通経路の幅に関連する)に依存する。
【0068】
関連技術において、変色時に、エレクトロクロミックデバイスにおける複数の点の電圧降下は一般的に、いずれも連続して徐々に変化しているが、エレクトロクロミックデバイスが全体として均一に変色するのではなく、変色過程でパターンを示すことができることが望まれる場合、第1切り込みを境界線としての第2領域および第1領域の変色速度に大きな差異、即ち、第1領域の電圧降下と第2領域の電圧降下との差値が大きいことが必要とされるため、第1切り込みを設けて第2領域と第1領域とを仕切るとともに、第1切り込みに切り欠きを設けて導電パスを形成し、第2領域の各点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗を変え、最終的に第2領域の電圧降下を第1領域の電圧降下よりも顕著に大きくすることにより、変色過程において、第1領域および第2領域は異なる変色速度で変色し、パターンが示される効果を達成する。
【0069】
同時に、導電パスの存在により、エレクトロクロミックデバイス全体の複数の部分がいずれも電気的に連通されるため、新しい引き出し電極を更に設ける必要がなく、且つ、変色を完了させた後、第2領域および第1領域の透過率は徐々に一致し、デバイス全体に、透過率が均一で一致する視覚的効果が現れる。
【0070】
本願は、変色過程でパターンが示されることを実現し、情報の表示または外観の意匠感の強化を達成するとともに、デバイス構造の簡素化を保証し、更にプロセス難易度および生産コストを低減することができる。
【0071】
例えば、前記導電パスのシート抵抗は前記第1領域のシート抵抗よりも大きい。
【0072】
外部回路の引き出し電極に印加された電圧による電流は、第1領域を介して先に導電パスに伝導されてから第2領域に伝導され、即ち、第2領域の内部の全ての点と引き出し電極との間の最も小さい導通経路は、必ず該導電パスを含む。従って、導電パス箇所のシート抵抗を第1領域のシート抵抗よりも大きくすることで、第2領域の内部の全ての点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗を大きくして、電圧降下を大きくし、更に第2領域の変色速度を第1領域の変色速度よりも小さくして、パターン表示という効果を実現することができる。
【0073】
例えば、レーザーエッチングにより導電パス箇所の導電層の厚さを薄くする等の方式で該箇所のシート抵抗を大きくすることができる。
【0074】
例えば、前記導電パスの幅は前記第2領域の周長の20%よりも小さいかまたは等しく、例えば、20%、15%、10%、5%、3%、1%、0.5%、0.1%または0.05%等であり、ここで、導電パスの幅とは、導電パスの境界の2つの第1切り込みの端点の間の距離を意味する。
【0075】
導電パスの幅を調節することは、第2領域の内部の何らかの点と引き出し電極との間の最も短い導通経路の長さを変えることができ、他の条件が一致している場合、導通経路の長さが長いほど、該点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗は大きくなり、電圧降下は大きくなり、変色速度は遅くなるとともに、第2領域の内部の全ての点の導通経路が必ず導電パスを通過するため、導電パスの幅を調節することは、導電パス箇所の線路抵抗値を調節し、更に第2領域の内部の全ての点の導通経路における線路抵抗値を調節することもでき、従って、導電パスの幅を限定することにより、第2領域の内部の点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗を大きくすることができ、即ち、第2領域の変色速度を第1領域の変色速度よりも小さくし、パターン表示という効果を実現することができる。
【0076】
例えば、前記第2領域の内部は少なくとも1本の第2切り込みを有し、前記第2切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、前記第2切り込みは、前記第2領域の内部を少なくとも2つの部分に区画し、前記第2領域の内部の少なくとも2つの部分の間は互いに電気的に連通される。
【0077】
第2領域内に第2切り込みを設け、第2領域の内部を少なくとも2つの部分に区画することにより、第2領域の内部の一部の領域における点と引き出し電極との間の最も短い導通経路の長さを大きくし、該部分領域の変色速度を小さくし、変色過程で表示されるパターンの多様性を高めることができる。
【0078】
例えば、前記第1切り込みおよび第2切り込みの幅はいずれも0.1mmよりも小さいかまたは等しく、例えば、0.1mm、0.08mm、0.06mm、0.04mm、0.02mm、0.01mm、50μm、10μm、5μm、または1μm等であり、例えば、第1切り込みおよび第2切り込みは、それぞれ0.02mmよりも小さいかまたは等しい。
【0079】
切り込みの幅が小さいほど、切り込みは人間の目には見えなくなり、エレクトロクロミックデバイスの視覚上の一体性も高くなる。
【0080】
例えば、前記第1導電層は、前記第1導電層の周辺部分に設けられたバスバーを更に備え、ここで、前記引き出し電極は前記バスバーに設けられ、前記第1切り込みは前記バスバーに接触しない。
【0081】
バスバーを設けることにより、導電層の電圧降下を低減し、変色速度を向上させることができ、また、第1領域および第2領域の数が多い場合、引き出し電極から遠い第1領域および引き出し電極に近い第1領域の変色速度は、導電層の電圧降下の違いによって一致しない可能性があるが、該不一致は、適用シーンによっては受け入れらないため、バスバーを設けることで導電層による同種の領域の間の電圧降下の差異を低減することができる。
【0082】
例えば、更に、前記周辺部分の幅を調節することにより電圧降下の差異を低減することができる。
【0083】
例えば、前記第1導電層は第3切り込みを更に備え、前記第3切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、前記第3切り込みは、少なくとも一部の前記バスバーの前記第1導電層の辺縁から遠い側に位置し、前記第1切り込みにも前記バスバーにも接触しない。
【0084】
2つの引き出し電極は、外部制御構造との接続を容易にするために、一般的にエレクトロクロミックデバイスの同じ側に位置する。この時、エレクトロクロミックデバイスの変色効果は、一般的に、先に引き出し電極付近における領域から変色してから、引き出し電極から遠い他端に徐々に拡散するものとして表現されるが、他の変色効果は、例えば、引き出し電極に近い一端と引き出し電極から遠い他端とが同時に、先に変色してから、両端の間の領域に徐々に拡散することを実現できない。
【0085】
第3切り込みが、少なくとも一部のバスバーの第1導電層の辺縁から遠い側に位置するため、第3切り込みは、第3切り込みに隣接するバスバーのセグメントにおける電流が第3切り込みに隣接する第1領域に直接伝導されることを遮断でき、即ち、第3切り込みを設けることにより、引き出し構造の位置を変えることなく、バスバーにおける電流の第1領域への伝導の開始位置を変え、変色過程で表示されるパターンの多様性を高めることができる。
【0086】
例えば、前記バスバーは、少なくとも1本のバスバー主部と少なくとも1本のバスバー連通部とを備え、ここで、前記バスバー連通部の第1端点が前記引き出し電極に接続され、前記バスバー連通部の第2端点が前記バスバー主部に接続され、且つ、前記バスバー主部の前記引き出し電極に近い端点と重ならず、前記第3切り込みは、少なくとも一部が前記バスバー主部と前記バスバー連通部との間に位置する。
【0087】
バスバーの長さが長すぎる場合、バスバー自体の線路抵抗の影響により、バスバーに印加された電圧が引き出し電極から遠い一端に達した時にも、大きな電圧損失が発生し、これにより、引き出し電極に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しなくなる。
【0088】
バスバーをバスバー主部およびバスバー連通部として設定することにより、引き出し構造の位置を変えることなく、バスバー連通部とバスバー主部との交点位置を調整することにより、引き出し電極における電流のバスバー主部への伝導の開始位置を調整し、引き出し電極に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しない現象を弱めるとともに、変色過程で表示されるパターンの多様性も高まる。
【0089】
例えば、前記バスバー連通部の第2端点は前記バスバー主部の中点と重なる。
【0090】
例えば、前記エレクトロクロミック層は、順次積層された変色材料層、固体電解質層およびイオン貯蔵層を備え、例えば、前記イオン貯蔵層は前記第1導電層に接触する。
【0091】
本願において、前記した「切り込みが第1導電層を垂直方向に貫通する」こととは、前記切り込み箇所に第1導電層材料がないことを意味し、該箇所は、第1導電層を貫通する溝であってもよいし、エレクトロクロミック層材料(例えば、変色材料層材料やイオン貯蔵層材料や電解質層材料)で充填されてもよいし、他の透明な絶縁材料(例えば、透明なポリアクリレートゴム)で充填されてもよい。
【0092】
なお、本願に記載の「切り込み」は、第1導電層に予め設定されたものであってもよいし、第1導電層に変色材料層(または、イオン貯蔵層)を形成した後、変色材料層(または、イオン貯蔵層)の第1導電層から遠い側からレーザーまたは機械的エッチング等の方式により形成されたものであってもよいし、エレクトロクロミックデバイスを形成した後、第1ベース層の第1導電層から遠い側からレーザーまたは機械的エッチング等の方式により形成されたものであってもよい。
【0093】
第1導電層に変色材料層(または、イオン貯蔵層)を形成した後、変色材料層(または、イオン貯蔵層)の第1導電層から遠い側からレーザーエッチング等の方式により切り込みを形成することを採用する場合、切り込みの変色材料層(または、イオン貯蔵層)における投影領域の変色材料層材料(または、イオン貯蔵層材料)もレーザーによって除去される。変色材料層に色がついているため、一旦切り込み箇所の対応する変色材料層材料が除去されると、切り込みは視覚上非常に目立っているが、イオン貯蔵層材料の色は相対的に目立っていないため、本願において、例示的には、イオン貯蔵層と第1導電基材とを接触させることを選択する。
【0094】
本願において、エレクトロクロミックデバイスは、関連技術における調製方法により調製され、例えば、例示的に以下の調製方法により調製される。
【0095】
(1)ベースに導電層を形成する。マグネトロンスパッタリング法(または真空蒸着法、ゾルゲルおよび化学気相成長法等)によりベースに導電層を形成する。
【0096】
(2)第1導電層に切り込みを形成する。レーザーエッチングにより第1導電層に第1切り込みを形成する。
【0097】
(3)第2導電層に変色材料層を塗布する。500mgのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を10mLのオルソキシレンに溶かし、磁力で10h撹拌した後、得た溶液を、第2ベースにメッキされたITO層(第2導電層)に滴下し、スピンコートし、変色材料層を形成する。
【0098】
(4)第1導電層にイオン貯蔵層を塗布する。500mgの三酸化タングステンを20mLの脱イオン水に溶かし、撹拌および濾過を経た後、得た溶液を、第1ベースにメッキされたITO層(第1導電層)に滴下し、スピンコートし、三酸化タングステンコーティング層を形成し、イオン貯蔵層を取得する。
【0099】
(5)エレクトロクロミックデバイス全体を調製する。質量パーセントが20wt%である過塩素酸リチウム、質量パーセントが59.9wt%であるメタクリル酸メチル、20%のプロピレンカーボネート、および質量パーセントが0.1wt%であるアゾビスイソブチロニトリルを混合し、イオン貯蔵層に塗布し、電解質コーティング層を形成し、その後、上記変色材料層(第2ベース層とともに)を電解質コーティング層に被覆し、紫外線で硬化させて電解質コーティング層を固体電解質層に形成させる。
【0100】
例えば、ステップ(2)の前には、第1導電層にバスバーを形成し、第1導電層の周辺部分にスクリーン印刷によりバスバーを形成するステップが更に含まれてもよい。
【0101】
例えば、前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料と、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料とは架橋度が異なる。
【0102】
例えば、前記固体電解質層の材料は、硬化する前に液状またはゲル状であり、紫外線照射または加熱等の方法でその架橋度を大きくし、液状またはゲル状の電解質を硬化させて前記固体電解質層を形成することができる。例示的には、電解質層の材料は、過塩素酸リチウム、メタクリル酸メチル、プロピレンカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルを含んでもよい。以上に示された例示的な材料は、本願の固体電解質材料を限定するものではなく、関連技術または将来開発する前述した性能記述を満たすことができる固体電解質材料はいずれも適用できることが理解できる。
【0103】
本願において、異なる領域の電解質材料の架橋度が異なることを実現する方法については特に限定されず、例示的には、紫外線遮蔽の方法を採用してもよく、即ち、電解質層の紫外線硬化前に、紫外線透過率が異なる物質で異なる領域を遮蔽することにより、異なる領域の電解質材料の架橋度を異ならせる。
【0104】
電解質層材料の架橋度が大きいほど、イオンの移動速度は遅くなり、変色速度は遅くなる。従って、第1領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域の電解質材料と第2領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域の電解質材料とは架橋度が異なる場合、第1領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域と、第2領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域とは変色速度も異なり、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。
【0105】
例えば、前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度は、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度よりも小さい。
【0106】
多くの場合、第2領域の変色速度が第1領域の変色速度よりも小さいことが望まれるため、第1領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度が第2領域の少なくとも一部の領域の固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度よりも小さい場合、この視覚的効果(即ち、第2領域の変色速度が第1領域の変色速度よりも小さい)を向上させることができる。
【0107】
第2態様において、本願は、第1態様に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える電子端末を提供する。
【0108】
例えば、前記変色材料層は、人間の目の視線に近い側に位置する。
【0109】
エレクトロクロミックデバイスは多層構造を有するため、変色材料層が人間の目の視線に近い側に位置すると、人間の目によって感知されたデバイスの色はより明るくなり、視覚的効果はより良好である。
【0110】
本願は、第1切り込みを設けて第1領域と第2領域とを仕切るとともに、第1切り込みに切り欠きを設けて導電パスを形成し、第2領域の各点と引き出し電極との間の最も小さい導通線路抵抗を変え、第2領域の電圧降下を第1領域の電圧降下よりも顕著に大きくすることにより、変色過程において、第1領域および第2領域は異なる変色速度で変色し、パターンが示される効果を達成する。同時に、導電パスの存在により、エレクトロクロミックデバイス全体の複数の部分がいずれも電気的に連通されるため、新しい引き出し電極を更に設ける必要がなく、且つ、変色を完了させた後、デバイス全体に、透過率が均一で一致する視覚的効果が現れる。本願は、変色過程でパターンを示し、情報の表示または外観の意匠感の強化という効果を達成するとともに、デバイス構造の簡素化を保証し、プロセス難易度および生産コストを低減することができる。
【0111】
本願のエレクトロクロミックデバイスは、変色過程でパターンが表示されることを実現し、情報の表示または外観の意匠感の強化という効果を達成することができ、且つ、新しい引き出し電極を更に設ける必要がなく、デバイス構造が簡単で、プロセス難易度および生産コストが低下する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し電極、および順次積層された第1ベース層、第1導電層、エレクトロクロミック層、第2導電層、第2ベース層を備え、
前記第1導電層は、少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を有し、
前記第1領域は前記引き出し電極に電気的に連通され、
前記第1領域と前記第2領域との間には第1切り込みが設けられ、前記第1切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、
前記第1領域と前記第2領域との間には、導電パスが更に設けられ、前記第1切り込みは前記導電パスで途切れ、
前記第2領域は、前記導電パスを介して前記第1領域、前記引き出し電極に電気的に連通される、
エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記導電パスのシート抵抗は前記第1領域のシート抵抗よりも大きい、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記導電パスの幅は前記第2領域の周長の20%よりも小さいかまたは等しい、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記第2領域の内部は少なくとも1本の第2切り込みを有し、前記第2切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、
前記第2切り込みは、前記第2領域の内部を少なくとも2つの部分に区画し、前記第2領域の内部の前記少なくとも2つの部分の間は互いに電気的に連通される、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記第1導電層は、前記第1導電層の周辺部分に設けられたバスバーを更に備え、前記引き出し電極は前記バスバーに設けられ、前記第1切り込みは前記バスバーに接触しない、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記第1導電層は第3切り込みを更に備え、前記第3切り込みが前記第1導電層を垂直方向に貫通し、前記第3切り込みは、少なくとも一部の前記バスバーの前記第1導電層の辺縁から遠い側に位置し、前記第1切り込みにも前記バスバーにも接触しない、
請求項5に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記バスバーは、少なくとも1本のバスバー主部と少なくとも1本のバスバー連通部とを備え、前記バスバー連通部の第1端点が前記引き出し電極に接続され、前記バスバー連通部の第2端点が前記バスバー主部に接続され、且つ、前記バスバー主部の前記引き出し電極に近い端点と重ならず、
前記第3切り込みは、少なくとも一部が前記バスバー主部と前記バスバー連通部との間に位置する、
請求項6に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記バスバー連通部の第2端点は前記バスバー主部の中点と重なる、
請求項7に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック層は、順次積層された変色材料層、固体電解質層およびイオン貯蔵層を備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記イオン貯蔵層は前記第1導電層に接触する、
請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料と、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料とは架橋度が異なる、
請求項9または10に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項12】
前記第1領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度は、前記第2領域の少なくとも一部の領域の前記固体電解質層における投影領域の電解質材料の架橋度よりも小さい、
請求項11に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項13】
前記第1切り込みは、第1導電層を貫通する溝であり、エレクトロクロミック層材料で充填され、又は、前記エレクトロクロミック層材料以外の透明な絶縁材料で充填される、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える、
電子端末。
【請求項15】
前記変色材料層は、人間の目の視線に近い側に位置する、
請求項14に記載の電子端末。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
願は、エレクトロクロミックの技術分野に関し、例えば、エレクトロクロミックデバイスおよび電子端末に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
本実施例において、第3切り込み26が設けられなければ、バスバー27における電流は、図8における左上隅に位置する第1領域の上側および左側の辺に直接伝達され、即ち、図8における左上隅に位置する第1領域は、上側および左側の辺から下側および右側の辺へ変色する効果を示し、同様に、右下隅に位置する第1領域は、下側および右側の辺から上側および左側の辺へ変色する効果を示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本実施例において、実施例2に基づいて、第3切り込み26を設けて、引き出し電極6の位置を変えることなく、バスバー27における電流の第1領域21への伝導の開始の位置を、元のバスバー領域全体から左右両側のバスバーに変換することにより、変色過程で表示されるパターンの多様性を高める。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
本実施例において、実施例6に基づいて、バスバーを複数のバスバー主部および複数のバスバー連通部として設定して、引き出し電極6の位置を変えることなく、引き出し電極6における電流のバスバー27への伝導の開始の位置を、バスバー連通部とバスバー主部との交点位置、即ち点2722および2742に変換することにより、引き出し電極6に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しない現象を弱めるとともに、変色過程で表示されるパターンの多様性も高める。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
第3切り込みが、少なくとも一部のバスバーの第1導電層の辺縁から遠い側に位置するため、第3切り込みは、第3切り込みに隣接するバスバーのセグメントにおける電流が第3切り込みに隣接する第1領域に直接伝導されることを遮断でき、即ち、第3切り込みを設けることにより、引き出し電極の位置を変えることなく、バスバーにおける電流の第1領域への伝導の開始位置を変え、変色過程で表示されるパターンの多様性を高めることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
バスバーをバスバー主部およびバスバー連通部として設定することにより、引き出し電極の位置を変えることなく、バスバー連通部とバスバー主部との交点位置を調整することにより、引き出し電極における電流のバスバー主部への伝導の開始位置を調整し、引き出し電極に近い端および遠い端である両端の変色速度が一致しない現象を弱めるとともに、変色過程で表示されるパターンの多様性も高まる。
【国際調査報告】