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特表2024-514035基準ガスをMEMSセル内に封入する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】基準ガスをMEMSセル内に封入する方法
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20240321BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B81C1/00
B81B3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023552212
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022055582
(87)【国際公開番号】W WO2022184906
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160684.3
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519224074
【氏名又は名称】ハーン - シッカート - ゲゼルシャフト フュア アンゲバンテ フォルシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビトナー、アチム
(72)【発明者】
【氏名】デヘ、アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】シュリーヴァスタヴァ、アナンヤ
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA15
3C081AA17
3C081BA22
3C081BA30
3C081BA74
3C081CA28
3C081CA32
3C081DA27
3C081EA05
(57)【要約】
第1の態様において、本発明は、密封されたガス充填基準チャンバを製造するための方法に関する。このことにより、基準チャンバを形成するウェーハを接合した後にのみ、基準チャンバを充填するガスは、開口を介して別のコーティング・チャンバ内に導入される。基準チャンバは、好ましくはMEMSデバイスを含む。
他の態様において、本発明は、MEMSセンサが存在するこの種の基準チャンバを備える光音響ガス・センサに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイス及び/又は電子回路が存在するガス充填基準チャンバを製造する方法であって、
a)第1のウェーハ(1)及び第2のウェーハ(2)を提供するステップであって、少なくとも前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)は、キャビティ(6)を有し、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)上に存在する、ステップと、
b)接合チャンバ内で前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合し、基準ガス(11)で充填可能なボリューム(7)を形成するステップであって、開口(9)は、接合後、前記2つのウェーハのコンタクト面(3)上に残り、又は、開口(9)は、接合の前若しくは後に、前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)内に作られる、ステップと、
c)コーティング・システム内で前記開口(9)を介して前記基準チャンバ内に基準ガス(11)を満たすステップと、
d)前記コーティング・システム内で前記基準チャンバの前記開口(9)を封止するステップと、
を含む、製造する方法。
【請求項2】
前記基準ガス(11)は、腐食性及び/又は爆発性のガス、好ましくは、メタン、プロパン、プロピレン、シラン、クロロシラン、水素及び/又は酸素、特に好ましくはアンモニアを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記基準チャンバ内で前記基準ガス(11)の分圧を設定するために、不活性ガス、好ましくは、窒素は、前記開口(9)を介して前記基準チャンバ内に追加で導入されることを特徴とする、
請求項1から2までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1のウェーハ(1)及び前記第2のウェーハ(2)は、前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合するために用いられるコンタクト面(3)を有し、前記開口(9)を形成するために、前記コンタクト面(3)上の領域は、接合されない、及び/又は
開口(9)は、接合後、前記2つのウェーハのコンタクト面(3)上に残り、前記開口(9)は、1μmから1000μm、好ましくは1μmから100μmの断面と、1μmから1000μm、好ましくは10μmから500μmの長さとを有することを特徴とする、
請求項1から3までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合する前又は後に、前記開口(9)は、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の外側から開始して内側に、好ましくはエッチング・プロセスによって形成されることを特徴とする、
請求項1から4までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項6】
弁(14)は、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の前記開口(9)の端に存在し、前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合した後、前記弁(14)は、好ましくは、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の外側から開始する前記開口(9)の前記端に、且つ、前記基準チャンバの前記ボリューム(7)内に位置する、及び/又は、
前記弁(14)は、好ましくは、軟質金属であり、好ましくは、鉛、金、インジウム、銅、白金、銀、亜鉛、スズ及び/又はその化合物、特に好ましくはアルミニウム及び/又はその化合物を含む群から選択される非鉄金属であることを特徴とする、
請求項1から5までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合した後、前記コーティング・システム内の前記基準チャンバは、前記基準ガス(11)で満たされ、前記ガスは、前記開口(9)及び前記弁(14)を介して前記基準チャンバの前記ボリューム(7)内に入ることを特徴とする、
請求項1から6までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項8】
前記基準チャンバ内に前記基準ガス(11)を満たした後、前記開口(9)を封止するために、はんだ(15)が溶解され、
前記はんだ(15)は、好ましくは、鉛、スズ、亜鉛、銀、銅、その合金及び/又はその化合物を含む群から選択される可溶性材料を含むことを特徴とする、
請求項1から7までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項9】
前記開口(9)は、前記コーティング・システム内でコーティング・プロセスによって、好ましくは、スプレー・コーティング、ミスト・コーティング及び/又は蒸気コーティングによって、封止されることを特徴とする、
請求項1から8までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング・システムは、物理コーティング・システム、好ましくはプラズマ支援物理コーティング・システム又は化学コーティング・システム、好ましくはプラズマ支援化学コーティング・システム、低圧の化学コーティング・システム及び/又はエピタキシャル・コーティング・システムであることを特徴とする、
請求項1から9までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング・システム内で前記開口(9)を封止するために、カバー層(12)は、少なくとも前記開口(9)の領域の上に、好ましくは前記基準チャンバ全体の周りに適用され、
窒化物、好ましくは、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン及び/若しくは窒化タンタル、酸化物、好ましくは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン若しくは酸化タンタル、又は、金属、好ましくは、アルミニウム及び/若しくは貴金属、好ましくは、金、白金、イリジウム、パラジウム、オスミウム、銀、ロジウム及び/若しくはルテニウムは、好ましくは、前記カバー層(12)のための材料として用いられることを特徴とする、
請求項1から10までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項12】
前記開口(9)を封止するため、及び、カバー層(12)を形成するために、プロセス・ガスは、前記コーティング・システム内に導入され、
前記プロセス・ガスは、基準ガスで満たした後、前記基準チャンバ内に導入され、又は、
前記カバー層(12)を形成するための材料は、前記基準ガスが前記プロセス・ガスとして同時に機能することができるように選択されることを特徴とする、
請求項1から11までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項13】
前記MEMSデバイスは、MEMSセンサ又はMEMSアクチュエータを備え、及び/若しくは、前記電子回路は、プロセッサ、スイッチ、トランジスタ及び/又はトランスデューサを備え、並びに/又は、
前記MEMSデバイスは、音圧検出器であり、前記音圧検出器は、好ましくは、容量的若しくは光学的に可読な、ピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは磁気バー、及び/若しくは容量性、ピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは光マイクロフォンを備えることを特徴とする、
請求項1から12までの1つ又は複数に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の製造方法によって製造可能な基準チャンバ。
【請求項15】
光音響ガス・センサであって、
- 変調可能なエミッタと、
- 基準ガス(11)で充填される基準チャンバであって、MEMSセンサが、前記基準チャンバ内に存在する、基準チャンバと
を備え、
前記基準チャンバは、前記エミッタのビーム経路内に存在し、その結果、前記エミッタは、変調可能に放出可能な放射線によって前記基準チャンバ内の前記基準ガス(11)を励起して、前記MEMSセンサによって検出可能である音圧波を形成することができる、光音響ガス・センサにおいて、
前記基準ガス(11)で充填される前記基準チャンバは、請求項1から13までに記載の方法によって製造可能であることを特徴とする、光音響ガス・センサ。
【請求項16】
前記基準チャンバは、前記基準ガス(11)で充填される封止されたシステムを形成し、分析されるガス、好ましくは、周囲空気は、前記エミッタと前記基準チャンバとの間の前記ビーム経路内に存在し、その結果、分析される前記ガス内の前記基準ガス(11)の比率は、前記基準チャンバ内の音圧波の形成によって測定可能であることを特徴とする、
請求項15に記載の光音響ガス・センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様において、本発明は、密封されたガス充填基準チャンバを製造するための方法に関する。このことにより、基準チャンバを形成するウェーハを接合した後、基準チャンバを充填するガスは、別のコーティング・チャンバの開口を介して導入される。MEMS(microelectromechanical system)デバイスは、好ましくは、基準チャンバ内に取り付けられる。
【0002】
他の態様において、本発明は、MEMSセンサが存在するこの種の基準チャンバを備える光音響ガス・センサに関する。
【背景技術】
【0003】
光音響分光法(PAS:Photoacoustic spectroscopy)は、光音響効果に基づく物理的試験手順であり、広範囲の用途を有する。
【0004】
PASの1つの用途は、ガスの非常に微細な濃度の検出である。ここで、強度変調された赤外線が、ガス内で検出される分子の吸収スペクトルの周波数によって用いられる。この分子がビーム経路内に存在する場合、変調吸収が起こり、時間スケールが放射線の変調周波数を反映する加熱及び冷却プロセスに至る。加熱及び冷却プロセスは、ガスの膨張及び収縮に至り、変調周波数で音波を引き起こす。次に、これらは、音検出器、例えばマイクロフォン又は流量センサによって測定可能である。
【0005】
1つの例は、研究及び空気調節技術において役割を果たすCOの検出である。しかしながら、有毒なだけではなく、爆発性又は腐食性のガス、例えばアンモニアNHを検出しなければならない用途にも関連する。
【0006】
特にアンモニア(NH)のために、工業及び自然においてすでに多数の用途が存在する。
【0007】
例えば、アンモニアが、冷凍倉庫、醸造所及び食肉処理場における冷媒として用いられる。それはまた、大型の冷凍プラントにおいても用いられうる。20世紀の中ごろに、アンモニアは、しばしば、今日では禁止されているクロロフルオロカーボン(CFC:chlorofluorocarbon)によって置換された。それにもかかわらず、アンモニアは、常に、その良好な熱力学的特性のため、工業用冷凍においてその重要な役割を維持することができた。
【0008】
アンモニアは、しばしば冷凍プロセス用に合成的に製造されるという事実にもかかわらず、天然冷媒と称される。NHは、大部分は、有機の窒素材料の分解の間製造される。今日では、それは、冷凍倉庫のための大型の冷凍システムにおいて、及び、空港、オフィスビル、製造ホール又はスポーツ施設の空気調節の冷媒として用いられる。
【0009】
しかしながら、アンモニアは、特に銅材料に対して腐食性である。それゆえ、冷媒としてアンモニアを用いたシステムの配管は、鋼でできていなければならない。アンモニアはまた、有毒であり、ある程度可燃性でもあるので、これらのシステムの構造、運用及び整備のために特別な安全規制が必要とされる。
【0010】
アンモニア蒸気は、高濃度では、目及び呼吸器に刺激を引き起こすことがありえ、より高濃度では、粘膜及び肺は、損傷を受けることがあり、最悪の場合、死につながることがありえる。さらに、アンモニアは、水に有毒であると分類される。それは、水に容易に溶解するので、土壌への浸透及び地下水への関連付けられた損傷は、何としても回避しなければならない。
【0011】
加えて、アンモニアは、爆発性である(約630℃の発火温度)。
【0012】
上記の理由で、アンモニアの考えられる漏出を初期段階で検出することは重要である。その高感度に起因して、PASは、アンモニア濃度を継続的に監視するという優れた可能性を提供する。いくつかのデバイスは、この目的のために従来技術から公知である。
【0013】
2016年のPengらには、高温環境においてアンモニアを検出することができるセンサが開示される。約1.8mの長さを有する円筒状測定チャンバを照射する量子カスケード・レーザーが用いられる。さらに、測定チャンバ自体は、加熱され、フローは、環境から空気を供給することによってそれ内部で生成される。加えて、CH(メタン)及び1%のNH/Ar(アンモニア/アルゴン)のような他の化合物は、チャンバ内のフローを制御するために導入される。量子カスケード・レーザーの信号強度を測定する検出器は、共振器の端に存在する。測定チャンバ内に導入される空気中により高いパーセンテージのアンモニアが存在する場合、これは、量子カスケード・レーザーからのビームを吸収する。したがって、より弱い信号もまた、検出器で登録される。長さ約1.8mの測定チャンバを有するので、装置は、工業的用途のために設計され、柔軟に用いることができない。加えて、他の構成要素、例えば、温度分布を測定する熱電対、共振器の端に位置するBaF(フッ化バリウム)でコーティングされたウィンドウ又は共振器用の熱ジャケットが追加される。これは、装置の構造を高価にし、設計を複雑にする。
【0014】
2004年のSchiltらでは、COレーザー(二酸化炭素レーザー)は、光音響測定セルを照射する。これは、円筒状共振器及び2つのバッファ・ボリュームを備え、2つのバッファ・ボリュームは、音響フィルタとして作用する。マイクロフォンは、共振器の端に位置する。さらに、レーザー・ビームの強度を測定する半導体検出器が存在する。測定原則は、2016年のPengらと同一である。アンモニアの部分又は分子がCOレーザーのビーム経路に存在する場合、レーザー放射の一部は吸収される。共振器内にアンモニアがない場合、測定された圧力信号は最大である。不利な点は、2つのバッファ・ボリュームに位置する開口から生じる。これらの開口を通して、他のガスは、原則として共振器内に拡散しうるので、測定信号は歪められうる。
【0015】
2019年のBonilla-Manriqueらには、また、2つのバッファ及び円筒状共振器を含む共振ガスセルが記載され、円筒状共振器は、2つのバッファを接続する。共振器は、88mmの長さを有し、2つのバッファは、各々44mmの長さを有するので、全体として、デバイスは、176mmの寸法を有する。マイクロフォン及び薄いダイヤフラムは、共振器上に配置され、音響検出器として作用する。これらは、共振器の中央に配置され、マイクロフォンは、共振器を通して持ち込まれ、ダイヤフラムは、外側から反対側に取り付けられる。光音響効果はまた、ダイヤフラムを振動させる。実験的なセットアップにおいて、2つのバッファのうちの1つによって具体化されるガス入口及びダイヤフラムの両方は、レーザー・ビームによって照射される。このプロセスにおいて、測定セルは、5000ppmのNHですでに充填されている。したがって、2019年のBonilla-Manriqueらの装置はまた、肉眼で見える寸法を有する。加えて、測定信号が、レーザー・ビームを吸収しうる他の分子、例えば、CO(二酸化炭素)及びHO(水)の入力によって歪められていないままであることは保証されない。
【0016】
したがって、従来技術を考慮して、潜在的に有毒な腐食性及び/又は爆発性のガスをチャンバ又は測定セル内に確実に密封する代替の装置及び/又は方法に対する関心が存在し、これは、小型化に起因してより広範囲な用途を有する。
【0017】
米国特許第6,124,145号は、ガス、特にCOを2つ以上のウェーハ内で充填することができる方法を開示する。このプロセスにおいて、キャビティが導入される第1のウェーハは、接合チャンバ内に配置され、接合チャンバは、ウェーハ内にも位置することになっているガスで充填される。次に、第2のウェーハは、接合チャンバ内で第1のウェーハに接合され、ガスを含む2つのウェーハからなるチャンバ又はセルを作成する。しかしながら、この方法は、腐食性又は爆発性のガス、例えばアンモニアの封入に直ちには適していない。
【0018】
一方では、接合のために高温が必要とされる。これは、可燃性であるか又は対応する接合温度で爆発性でさえあるガス、例えばアンモニアをチャンバ内に封入できないことを意味する。さもなければ、それらは、ウェーハ又は接合チャンバ自体にさえ損傷を与え、最悪の場合破壊する。加えて、この方法では、電子回路又はMEMSデバイス、例えばセンサを有するウェーハからチャンバを形成し、次にチャンバを腐食性ガス、例えばアンモニアで充填することは容易に可能ではない。これは、アンモニアの腐食性が対応する電子回路又はMEMSデバイスに損傷を与えるからである。加えて、接合プロセス自体に一定の時間がかかり、条件(温度など)は、腐食性ガスの反応性に都合がよい。
【0019】
ガスを小型のシステム内に移すという目的を追及するさらなる方法及び装置は、従来技術において公知である。
【0020】
例えば、米国特許出願公開第2018/0339900(A1)号は、少なくとも2つのセンサが位置するMEMSデバイスを製造する方法を開示する。第1のセンサは、好ましくは回転速度センサであり、第2のセンサは、好ましくは加速度センサである。2つのセンサは、ウェーハ・スタック内ではあるが、別々の領域に形成される。米国特許出願公開第2018/0339900(A1)号は、H(水素)のようなガス又はヘリウム及びネオンのような軽い希ガスが発生温度で酸化物層及び他の層を通して拡散するのを防止することを意図する。例えば、Hは、加速度計から回転速度センサに拡散しうる。問題を解決するために、製造プロセスは、最初に、MEMSウェーハ及びキャップウェーハを提供し、2つのセンサのためのMEMS構造をMEMSウェーハ内に形成し、次に、キャップウェーハでMEMSウェーハを密封する。2つのウェーハを封止した後、第1のアクセス・ホールが形成され、次に、第1の圧力が第1のセンサのキャビティに移され、最後に、アクセス・ホールが封止される。類似した方法が、第2のセンサのために用いられる。これは、2つの異なる内圧がキャビティ内に存在できることを意図する。特に、接合後、Hは、第2のセンサ(加速度計)のキャビティから除去され、例えば、酸素、オゾン及び/又は定義されたプラズマを導入することもまた想定される。アクセス・ホールの形成は、レーザーによって実行される。アクセス・ホールを封止することもまた、レーザーを用いて実行される。
【0021】
米国特許出願公開第2014/0038364(A1)号は、マイクロエレクトロニクス装置をカプセル化するための方法を開示する。マイクロエレクトロニクス装置は、第1の基板上に位置し、接合チャンバ内で第2の基板に接合される。第2の基板は、キャビティを有するので、接合後、マイクロエレクトロニクス装置は、ウェーハ・スタック内に位置する。キャビティ内に噴射されるガスは、希ガスである。第2の基板は、希ガスが透過する領域を有する。ここで、キャビティ内に導入される希ガスが透過しない層が、第2の基板上にコーティングされて、次に、開口がその上に形成される。希ガスを密封するために、噴射されたヘリウムを透過させない他の層が適用される。記載されている希ガスより反応性のガスを導入する方法は開示されていない。
【0022】
米国特許出願公開第2020/0057031(A1)号は、光音響ガス・センサのための検出器モジュールを開示する。第1の基板及び第2の基板がともに接合可能であり、凹部が気密状態で、基準ガスで充填可能であるように、検出器モジュールは構築される。基準ガスは、接合の間又は接合の後、その後封止される貫通孔を第1又は第2の基板内に形成することによって、基準ガス環境内の凹部内に導入可能である。基準ガスは、CO、NOx、HO、O、N、CH又はアルコールを備える群から選択される。コーティング・チャンバ内で凹部をガスで充填することは記載されていない。
【0023】
米国特許出願公開第2021/0055207(A1)号には、光音響ガス・センサのための検知セルも開示される。ここで、封入されるガスのガス雰囲気は、製造され、接合の間、キャビティ内に封入可能である。
【0024】
米国特許出願公開第2019/0353157(A1)号は、流体制御として及び/又は加圧を実行するために用いることができるミニチュア輸送装置を開示する。ミニチュア輸送装置及びミニチュア弁装置は、組み立て可能であり、ガスは、入口を通して導入可能である。ピエゾ電気アクチュエータを通して、ガスは、複数の圧力チャンバを通り流れることができ、輸送方向に継続的に流れることができる。ガスは、ガスの量を決めているユーザによって、又は、周囲圧力が増加するとき、放出可能である。
【0025】
米国特許出願公開第2007/0295456(A1)号は、ウェーハを接合するための材料を記載する。接合材料は、絶縁接着能力に加えて導電性粒子を含むことによって特徴付けられる。空気は、特にMEMSデバイスの運用のために、接合チャンバ内でカプセル化されるガスと交換可能であることがさらに開示される。本願明細書で開示されるガスは、爆発性ではなく、不活性である。
【0026】
米国特許出願公開第2003/0183916(A1)号は、MEMSデバイスをパッケージする方法を開示する。一実施例において、封止プロセスは、キャビティが所望の圧力で所望の周囲ガスを含むような制御環境において実行されてもよい。この目的で、開口がMEMSデバイスに損傷を与えないように、MEMSデバイスから十分に離れて位置することが記載されている。開口を封止するためのカバー又はシーリング剤(パッチ)も開示される。
【0027】
米国特許出願公開第2020/0198964(A1)号は、ウェーハ・スタック内でMEMSデバイスを取り付けるためのカプセル化プロセスを論じる。ここで、開口は、ホール封止層によって封止可能であり、それによって、これは、それ自体をコーティングすることによって可能になる。
【0028】
MEMSデバイス又はMEMSセル内の電子回路に損傷を与えることなく、腐食性及び/又は爆発性のガスをMEMSセル内に導入し、密封する安全で確実な製造方法は、知られていない。特に、光音響ガス・センサの製造の間、腐食性及び/又は爆発性のガスの確実且つ安全な導入は、従来技術から明らかではない。したがって、MEMSセル内へのガスの導入を、より効率的且つユーザにとってより安全にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第6,124,145号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0339900(A1)号
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0038364(A1)号
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0057031(A1)号
【特許文献5】米国特許出願公開第2021/0055207(A1)号
【特許文献6】米国特許出願公開第2019/0353157(A1)号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0295456(A1)号
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0183916(A1)号
【特許文献9】米国特許出願公開第2020/0198964(A1)号
【特許文献10】米国特許出願公開第2014/0028264(A1)号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Bonilla-Manrique Oscar E.ら「Sub-ppm-Level Ammonia Detection Using Photoacoustic Spectroscopy with an Optical Microphone Based on a Phase Interferometer」Sensors 19.13(2019):2890
【非特許文献2】Peng W.Y.ら「High-sensitivity in situ QCLAS-based ammonia concentration sensor for high-temperature applications」Applied Physics B 122.7(2016):188
【非特許文献3】Schilt Stephaneら「Ammonia monitoring at trace level using photoacoustic spectroscopy in industrial and environmental applications」Spectrochimica Acta Part A:Molecular and Biomolecular Spectroscopy 60.14(2004):3259-3268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的
本発明の目的は、従来技術の不利な点を解消する装置及びその製造方法を提供することである。特に、本発明の1つの目的は、確実且つ安全に製造可能な装置によって腐食性及び/又は爆発性のガスのPAS(光音響分光法)を可能にすることであり、当該装置は、コンパクトな設計並びに腐食性及び/又は爆発性のガスの密封により特徴付けられる。製造方法はまた、単純で、安価で、大量生産に適しており、広範囲の分野における用途に使用可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好適実施例は、従属請求項に記載されている。
【0033】
第1の態様において、本発明は、MEMSデバイス及び/又は電子回路が存在するガス充填基準チャンバを製造するための方法に関し、方法は、以下のステップ、すなわち、
a)第1及び第2のウェーハを提供するステップであって、第1のウェーハ及び第2のウェーハの少なくとも1つは、キャビティを有し、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、第1及び/又は第2のウェーハ上に存在する、ステップと、
b)接合チャンバ内で第1のウェーハを第2のウェーハに接合し、基準ガスで充填可能なボリュームを形成するステップであって、接合後、開口は、2つのウェーハが接触している領域内に残り、又は、開口は、接合の前若しくは後に、第1及び/又は第2のウェーハ内に作られる、ステップと、
c)コーティング・システム内で開口を介して基準チャンバ内に基準ガスを満たすステップと、
d)コーティング・システム内で基準チャンバの開口を封止するステップと、
を含む。
【0034】
本発明による方法は、基準チャンバ内に導入されるガスが、接合プロセスの間、接合チャンバ内にないという点で、米国特許第6,124,145号と異なる。この従来の方法は、基準チャンバ内に含まれるガスの選択を著しく制限する。これは、接合プロセスの間、高温が発生するからである。どの接合方法が用いられるかに依存して、250℃から1000℃までの温度範囲が可能である。可燃性であるか又はこれらの温度及び対応する圧力条件において爆発性でさえあるガスは、米国特許第6,124,145号の方法を用いて導入することができない。これが行われる場合、実験装置全体(特に接合チャンバ)は損傷を受けうるか又は破壊されることさえありうる。特に、本発明による方法は、基準チャンバ内に、発火温度が630℃であるアンモニアを導入することができる。
【0035】
本発明による方法はまた、腐食作用を有するガスが、基準チャンバ内に導入及び封入されるのを可能にする。MEMSデバイス及び/又は電子回路が基準チャンバに存在する場合、これは特に重要である。米国特許第6,124,145号から知られる方法を用いると、存在しうる任意のMEMSデバイス及び/又は電子回路に損傷を与えることなく、基準チャンバ内に腐食作用を有するガスを封入することができない。米国特許第6,124,145号から公知の方法を用いる場合、腐食性ガスが接合チャンバ全体内に満たされてから、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、大量の腐食性ガスによって包囲される。
【0036】
特に、米国特許第6,124,145号では、接合チャンバが封入されるガスで充填された後、接合プロセスが起こる。接合プロセスに特定の時間がかかるので、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、接合に必要な時間の間、腐食性ガスによって包囲され、同じ時間の間、接合チャンバ内に存在する酸素はまた、反応を促進しうる。したがって、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、大量の腐食性ガスによって、及び、腐食性ガスにさらされ、接合が必要とする滞留時間によって損傷を受けうる。
【0037】
本発明による方法はまた、特に、基準ガスがコーティング・チャンバの内側で導入されるという点で、米国特許出願公開第2014/0038364号と異なる。対照的に、米国特許出願公開第2014/0028264号では、ガスは、接合チャンバにおいてキャビティ内に導入される。しかしながら、接合の間、爆発性及び/又は反応性のガスにより、好ましくない反応、例えば爆発が起こりうる温度が存在するので、これは、導入されるガスの選択をかなり制限する。米国特許出願公開第2014/0028264号では、このために、不活発である希ガスのみが、MEMSセルのキャビティ内への導入のためのガスとして用いられる。しかしながら、本発明によれば、基準ガスの導入は、コーティング・チャンバにおいて実行される。有利には、これによってまた、例えば、ヘリウムと異なり、可燃性であるか又は対応する接合温度では爆発性でさえあるガス、例えばアンモニアを接合チャンバ内に導入することもできる。したがって、爆発性及び/又は腐食性のガスを基準チャンバ内に安全に導入し、密封して封止することができるので、本発明による方法は、従来技術に勝る大きな改善を達成する。
【0038】
さらに、本発明による方法では、基準ガスは、好ましくは、基準チャンバのボリューム内に直接充填可能であり、それによって、基準ガスは、コーティング・チャンバ内に満たされ、次に、基準ガスは、コーティング・チャンバ内に直ちに封入される。したがって、基準ガスは、好ましくは、ブラウン分子運動に起因して、自然に生じる物理プロセスとして、拡散によって基準チャンバのボリューム内に入ることができる。対照的に、米国特許出願公開第2018/0339900号では、本願明細書において記載されている2つのセンサのうちの1つが位置するボリュームを充填するための交換プロセスが起こる。米国特許出願公開第2018/033990号は、例えば、Hが第2のセンサのキャビティから除去され、その後、酸素、オゾン及び/又は定義されたプラズマで充填され、結果としてガスの交換が生ずることを開示する。特に、米国特許出願公開第2018/033990号に記載のガスは、少なくとも部分的にMEMS素子の表面に浸透し、水素と反応しうるか、又は、表面によって吸収される場合、固体内に溶解する水素の放出エネルギーを減少させうる。この種の接合反応又は交換は、本発明による方法で回避される。
【0039】
さらに、米国特許出願公開第2018/033990号では、センサキャビティの充填は、コーティング・システム内で起こらないので、コーティング・システムを用いて、基準チャンバの開口を封止することができない。その代わりに、開口は、レーザーによって封止される。
【0040】
従来技術の不利な点は、本発明による方法によって回避又は解消される。本発明による方法では、開口を有するMEMSセルが提供され、MEMSセルは、次に、封入されるガスで充填される。この方法では、基準チャンバは、2つのウェーハを用いて最初に形成される。これは、接合チャンバ内の接合プロセスによって実行される。基準チャンバのボリューム内への開口は、接合後、残ることができる。しかしながら、開口はまた、接合の前又は後に2つのウェーハの1つ内に作ることもできる。接合プロセスの後、それによってMEMSセルは形成され、それは、コーティング・システムに移される。
【0041】
次に、コーティング・システムは、MEMSセル内に封入されるガスで満たされるので、ガスは、開口を通して、MEMSセルのボリューム内に拡散する。次のステップにおいて、開口は、封止され、密封される。特に、爆発及び腐食作用を有するアンモニアは、本発明による方法によって、MEMSセル内に封入可能である。しかしながら、この種の悪化特性を有する他のガスもまた、この方法によって、MEMSセル内で封入可能である。
【0042】
有利には、本発明による方法を用いて、特に、MEMSデバイス及び/又はその中に存在する電子回路に損傷を与えるか又は破壊することなく、腐食性及び/又は爆発性のガスをMEMSセル内に封入することができる。これは、MEMSセル内へのガスの導入がより制御されるという事実に起因する。なぜなら、一方では、コーティング・システム内を満たすことが、接合プロセスの下流で起こり、他方では、開口がより小さい寸法によって設計可能である、又は、追加の封止機構を設けることができるからである。したがって、タイミング、濃度及び期間に関して極めて制御された方法で、MEMSセル内にガスを導入することができる。
【0043】
加えて、封入されるガスで満たされるコーティング・システムの内側は、接合チャンバの内側より反応性が低い条件、特に、より低い温度が存在する。
【0044】
本発明のために、MEMSセルとは、好ましくは、2つ以上のウェーハを備え、MEMSデバイスが存在するデバイスを意味する。この文脈において、MEMSセルという用語は、総称として解釈されてもよい。MEMSセルは、封止されてもよい1つ又は複数の開口を含んでもよい。MEMSセルはまた、基準チャンバとして用いられてもよい。MEMSセルという用語は、MEMSベースの技術に関連して頻繁に出現し、当業者になじみがある。
【0045】
本発明のために、基準チャンバとは、2つ以上のウェーハによって形成され、2つ以上のウェーハによって形成されるボリュームを備えるキャビティを意味する。換言すれば、2つ以上のウェーハは、ボリュームを形成し、ウェーハの全部及び結果として生じるボリュームは、好ましくは基準チャンバによって備えられる。好ましくは、基準チャンバは、ガスで充填可能である。好ましくは、これは、基準チャンバが、基準チャンバのボリュームを充填するために存在する1つ又は複数の開口を有することを意味してもよい。好ましくは、基準チャンバ内にガスを保つか又は封入するために、開口は、再封可能に構成される。有利には、環境とのガス交換は、このことにより可能ではない。基準チャンバ内に導入されるか又はすでに導入されているガスは、基準ガスとも称される。
【0046】
好ましくは、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、基準チャンバ内に位置する。本発明のために、MEMSデバイスは、MEMS技術に基づく部品又は構成要素である。MEMSは、英語の用語の微小電気機械システム、すなわちマイクロシステムを表し、それによって、コンパクトな(マイクロメートル範囲の)設計は、ますます低い製造費用で同時に優れた機能によって達成される。MEMSデバイスは、例えば、MEMSセンサとすることができるか、又は、MEMSアクチュエータとさえすることができる。多くのMEMSデバイスは、従来技術において公知である。有利には、本発明による方法によって、多種多様なMEMSデバイスを基準チャンバ内に配置し、それらに損傷を与えることなく、腐食性及び/又は爆発性のガスで充填することができる。
【0047】
本発明の意味の範囲内で、電子回路とは、機能的な構成を形成するための個々の電気又は電気機械要素の組み合わせを意味する。好ましくは、電子回路は、データ又は電気信号が送信、受信及び/又は処理されるのを可能にする。
【0048】
MEMSデバイスは、しばしば、制御及び/又は評価のために、電子回路とともに基板上に配置され、例えば、ワイヤー接合及び/又は基板に配置される導体路によって提供される電気接続を介して電子回路に接触する。基板は、特に担体として作用し、電気的な機能を実現することもでき、例えば、個々の部品のための電気接続を提供する。
【0049】
好適な電子回路は、限定されるものではないが、集積回路(IC:Integrated Circuit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラム可能論理回路(PLD:Programmable Logic Device)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プログラム可能論理制御装置及び/又は好ましくはプログラム可能なその他の電子回路を備える。
【0050】
好適実施例において、最初に、2つのウェーハが提供され、少なくとも第1のウェーハ及び/又は第2のウェーハは、キャビティを有し、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、第1及び/又は第2のウェーハ上に存在する。
【0051】
本発明のために、キャビティとは、好ましくはウェーハのへこみ又はくぼみを意味する。有利には、第1及び/又は第2のウェーハ上の1つ又は複数のキャビティの存在は、結果として、2つのウェーハを接合することによって、基準チャンバ内の適切なボリュームを生じてもよい。好ましくは、第1及び/又は第2のウェーハのキャビティは、両方のウェーハを接合した後、基準チャンバを形成する。
【0052】
ウェーハは、例えば、ミリメートル又はミリメートル未満の範囲の厚さを有する円形又は方形のディスクを意味することができる。ウェーハは、典型的には、インゴットとして知られる単結晶又は多結晶(半導体)ブランクから作られ、通常、例えばコーティング又は構成要素、特にMEMSデバイス及び/又は電子回路のための基板として機能する。ウェーハのための基板という用語の使用はまた、従来技術において公知であり、基板は、好ましくは処理される材料を意味する。本発明のために、ウェーハ及び基板という用語は、同義に用いられてもよい。
【0053】
好適実施例において、2つのウェーハは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、シリコン・ゲルマニウム、窒化ケイ素、窒化物、ゲルマニウム、炭素、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム及び/又はガラスからなる群から選択される材料を含む。
【0054】
これらの材料は、半導体及び/又はマイクロシステム技術において処理するのが特に容易且つ安価であり、大量生産にも非常に適している。同様に、これらの材料は、特にドーピング及び/又はコーティングに適し、特定の分野の所望の電気、熱及び/又は光学特性を達成する。上述した材料は、標準化された製造技術の有用性に起因して、さまざまな利点を提供し、これは、特にさらなる構成要素、例えば電子回路の集積にも適している。
【0055】
好ましくは、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、2つのウェーハのうちの1つのキャビティ内に見られる。
【0056】
好適実施例において、2つのウェーハは、接合によって基準チャンバ内に形成される。好ましくは、接合は、接合チャンバ内で起こる。本発明の文脈において、接合チャンバとは、ウェーハがともに接合されるために配置されるデバイスを意味する。
【0057】
ウェーハの接合は、好ましくは、例えば、シリコン、クォーツ、ガラス及び/又は上述した好適な基板材料から作られる2つのウェーハ又はスライスがともに接合される、半導体及びマイクロシステム技術におけるプロセス・ステップを記載する。
【0058】
好ましくは、さまざまなプロセスを接合のために用いることができる。好ましくは、これらは、本発明の意味の範囲内では、接合プロセス又は接合方法とも称される。好適な接合プロセスは、直接接合、陽極結合、中間層を有する接合、ガラスフリット接合、接着接合及び/又は選択的接合を含む。
【0059】
特にシリコン・ウェーハの直接接合において、ウェーハの親水性及び疎水性の表面は、好ましくは、高温下で接触する。好ましくは、一方のウェーハは、他方に対して中央で押圧され、有利には第1のコンタクト点を作成する。コンタクト・エリアのこの機械的接続は、好ましくは、水素結合及び/又はファン・デル・ワールス相互作用に基づくものである。したがって、接続されるコンタクト・エリアは、好ましくは、最初にこれらの表面の間に存在するスペーサを連続的に除去することによって、残りのウェーハ表面まで延在される。このことにより、プロセス温度は、好ましくは、1000℃と1200℃との間にあり、圧力は、例えば、10メガパスカル(MPa)から25MPaのオーダでウェーハに加えられる。直接接合は、好ましくは、2つのシリコン・ウェーハ及び/又は二酸化ケイ素ウェーハを接合するために用いることができる。
【0060】
陽極結合において、増加したNa+イオン濃度(好ましくは正に帯電するナトリウムイオン)を有するガラスが用いられ、ガラスは、好ましくはシリコン・ウェーハに接触する。このプロセスにおいて、特に、ガラスに負の極性を生成するように構成される電気電圧が印加される。したがって、好ましくは、そして、特に、高いプロセス温度を用いて、ナトリウムイオン(Na)は、電極に拡散し、それによって、空間電荷ゾーンは、好ましくはインタフェースで形成され、電場の増加を引き起こし、Si-O-Si結合を生成する。これらの結合は、好ましくは、ガラスとシリコンとの間の相互接続面全体に連続して延在する。このようにして、ガラス及びシリコン・ウェーハは、特にともに接合可能である。プロセスの適切な適合を用いて、2つのシリコン層及び/又はシリコン金属層をガラスに接合することもできる。陽極結合は、好ましくは、約400℃の温度で起こることができ、等しく好ましくは、約180℃の「低温」で起こることができ、好ましくは、接合される材料を保存する。好ましくは、さまざまな上述した材料もまた接合することができる。
【0061】
好ましくは、接合されるウェーハの間にいわゆる中間層を有する接合プロセス、例えばいわゆる共晶接合を用いることもでき、それは、好ましくは中間層、例えばSi-Au(シリコン金)又はGe-Al(ゲルマニウムアルミニウム)として共晶合金を通した接合に基づくものである。共晶合金は、好ましくは、構成要素が特定の温度で全部の合金が液体又は固体になるように互いに対する比率で混合される合金である。共晶接合を用いて、例えば、2つのシリコン・ウェーハを接合することができる。しかしながら、好ましくは、他の上述した材料を接合することもできる。
【0062】
ガラスフリット接合もまた、好ましくは、接合されるウェーハの間の中間層の使用に基づくものであり、結合形成は、ガラスはんだ/ガラスフリットを溶解させることによって特に実行される。ガラスはんだは、好ましくは、低い軟化温度、例えば約400℃を有するガラスを備える。ガラスフリットは、好ましくは、表面的に溶解するガラス粉末を備え、それのガラス粒子は、好ましくはベークされるか又は少なくとも部分的にともに焼結する。この種の接合は、好ましくは、シリコン及び/又は二酸化ケイ素ウェーハをともに接合することができるが、好ましくは他の上述した材料も接合することができる。
【0063】
接着接合は、好ましくは、接着剤を備える中間層による結合構造を記載する。接着接合によって、好ましくは、さまざまな上述した材料がともに接合可能である。
【0064】
好ましくは、選択的接合は、フォトリソグラフィ、エッチング及び/又はリフトオフ・プロセスによって実行可能である。
【0065】
好ましくは、キャビティを有するように前処理される2つのウェーハを接合することによって、基準チャンバは、容易に製造可能である。
【0066】
前処理済ウェーハからの構造の接合は、単一のウェーハから大きな出費でしか製造できない複雑な構造の単純な製造を可能にする。これによって、基準チャンバ内にボリュームを作成するために、苦労してウェーハの原料を切り開く必要なく、基準チャンバを製造することができる。
【0067】
好適実施例において、ウェーハは、2つのウェーハを接合する際に用いられるコンタクト面を有する。コンタクト面は、好ましくは、接合に必要な材料が設けられているか又はコーティングされているウェーハの領域を備える。2つのウェーハのコンタクト面上の材料は、好ましくは、接合又は接続され、基準チャンバを作成する。この種の材料は、本発明の文脈において接合材料とも称されてもよい。
【0068】
好適実施例において、両方のウェーハは、開口が、接合後、2つのウェーハのコンタクト面上に残るように接合される。開口は、好ましくは、対応するコンタクト面上の接合が起こらないという事実から生じる。好ましくは、開口は、基準チャンバの側方領域に位置する。有利には、基準ガスは、基準チャンバの側方領域の好適な開口を通して、基準チャンバ内に効率的に導入可能である。
【0069】
本発明の意味の範囲内で、開口は、基準チャンバのボリューム内への入口を意味する。有利には、基準ガスは、開口を通して又は開口を介して基準チャンバのボリューム内に導入可能であり、好ましくは、中で密封可能である。特に、導入される基準ガスは、開口を通して基準チャンバのボリューム内に直接拡散可能である。拡散は、この場合、基準ガスをコーティング・チャンバ内に満たすステップの始めに、コーティング・チャンバと基準チャンバのボリュームとの間に存在する濃度勾配に沿って導入される基準ガスの粒子の受動運動として公知である。拡散は、ブラウン分子運動に基づく濃度の同等化につながる。有利には、拡散は、受動輸送プロセスであるので、追加のエネルギーは必要とされない。特に、米国特許出願公開第2018/0339900号とは対照的に、化学反応又は交換は、基準チャンバ内にガスを導入するために必要ではない。したがって、有利には、コーティング・システム内で基準チャンバ内への基準ガスの特にプロセス効果的な導入が可能になる。
【0070】
他の好適実施例では、開口は、接合前にすでに存在する。好ましくは、これは、第1又は第2のウェーハの外側から開始して、エッチング・プロセスによって達成される。有利には、これによって、すべてのコンタクト面を接合のために用いることができるので、接合プロセスの前に配置された開口は、第1又は第2のウェーハ上に残り、基準チャンバのボリューム内につながる。
【0071】
他の好適実施例では、開口は、第1又は第2のウェーハの外側から開始して、2つのウェーハを接合した後形成される。本実施例においても、有利には、すべてのコンタクト面を接合のために用いることができる。好ましくは、開口は、結果として、エッチング・プロセスを介した接合後生ずる。
【0072】
好適実施例において、接合プロセスの後結果として生ずる基準チャンバは、接合チャンバから除去され、コーティング・システム内に配置される。
【0073】
本発明の意味の範囲内で、コーティング・システムは、好ましくは、異なる材料の薄層の製造及び処理を実行するデバイスを意味する。本発明の意味の範囲内で、薄層又は薄膜は、好ましくはマイクロメートル又はナノメートル範囲の固体材料の層を意味する。
【0074】
好適実施例において、コーティング・システムを用いて、基準チャンバを基準ガスで充填する。本発明のために、基準ガスは、好ましくは、基準チャンバのボリューム内に導入されるガスを意味し、好ましくは、密封されるか又は中に封入される。
【0075】
好ましくは、コーティング・システムは、最初、基準ガスで満たされる。基準ガスは、開口を通して基準チャンバのボリューム内に入る。有利には、コーティング・システムは、接合のために接合チャンバ内で絶対的に必要な温度範囲を有していない。それゆえ、さもなければ接合チャンバ内に存在する高温で可燃性又は爆発性であるガスとなりうる基準ガスは、基準チャンバのボリューム内に導入される。これは、基準チャンバ内に導入可能なガスの可能性を拡大する。
【0076】
有利には、基準チャンバはまた、特に腐食性ガスで満たすことができる。基準チャンバ内でMEMSデバイス及び/又は電子回路は、開口を介して制御された方法で腐食性ガスに接触する。密封する次のステップがコーティング・システム内で直後に起こることができるので、腐食性ガスによるMEMSデバイス及び/又は電子回路への損傷は回避される。
【0077】
好適実施例において、基準チャンバ内にガスを導入するプロセス・ステップの後、基準チャンバは、コーティング・システム内で封止される。有利には、封止プロセスの後、基準チャンバの環境とのいかなる交換ももはや存在しない。したがって、導入された基準ガスは、チャンバ内に存在し、もはやそこから出ることはできないか、又は、環境に入ることができない。
【0078】
本発明のために、環境とは、好ましくは、基準チャンバの外側にある全体を意味する。好ましくは、これは、コーティング・システム及びその中に導入される基準ガスを含み、コーティング・システムは、前のプロセス・ステップにおいて、基準ガスで満たされた。
【0079】
有利には、基準チャンバが封止された後、基準ガスは、もはや基準チャンバから漏出することはできないし、環境からの基準ガスは、基準チャンバに入ることもできない。したがって、方法を用いて、基準ガスの正確な量が基準チャンバのボリューム内に存在することを確実にすることができる。
【0080】
好ましくは、基準チャンバは、コーティング・チャンバ内でコーティング・プロセスを介して封止され、特に、開口は、コーティング・プロセスを介して封止される。好ましくは、少なくとも、開口は、この目的のために薄膜でコーティング可能である。少なくとも開口に沿って、好ましくは実質的に開口に沿って延在するコーティングは、特に正確な封止が適用されるという点で、有利であると判明した。さらに、開口を封止するためのコーティング材料は節約されるので、材料の効率的利用によって高度な経済を確実にすることができる。
【0081】
しかしながら、密封を確実にするために、実質的に基準チャンバ全体を薄膜でコーティングすることが好ましい場合がある。有利には、実質的に基準チャンバ全体に沿って又は基準チャンバ全体の周りに延在するコーティングは、特に確実な密封を提供する。したがって、一方では、基準チャンバ全体の周りのコーティングは、特別な密封を確実にし、他方では、外側からの考えられる損傷からの特に強い保護を提供する。これは、ガスが爆発性及び/又は腐食性であり、それゆえ、最も高い安全要件を満たさなければならない用途に特に関連する。また、導入されたガスが漏出しうるという危険を最小化することによって、特に正確な、したがって確実な測定は、例えば光音響分光法の文脈で可能になる。
【0082】
本発明のために、密封は、好ましくは、基準チャンバの環境との物質の交換を防止する厳重な封止を意味する。基準チャンバのボリュームの最もわずかな汚染を防止するために、密封が好ましい。基準チャンバのような装置は、好ましくは、密封によって物質又は物質交換に対して絶対的に封止される。
【0083】
本発明の意味の範囲内で、汚染とは、基準チャンバのボリューム内に入りうる望ましくない量の物質又は混合物を意味する。好ましくは、汚染は、基準チャンバを封止することによって防止される。
【0084】
好適実施例において、基準ガスは、腐食性及び/又は爆発性のガス、好ましくはメタン、プロパン、プロピレン、シラン、クロロシラン、アルミニウム・トリイソプロパノラート(aluminum triisopropanolate)、水素及び/又は酸素、特に好ましくはアンモニアを含む。
【0085】
有利には、有毒なだけではなく爆発性及び/又は腐食性のガスは、本発明による方法によって、基準チャンバのボリューム内に導入可能である。したがって、有利には、基準ガスの可能性が拡大される。これによって、ガスの選択肢が制限されないか又は不活性ガス(例えば米国特許出願公開第2014/0038364号のような希ガス)に固定されないので、従来技術と比較して、かなりの改善が達成される。
【0086】
米国特許第6,124,145号から公知の方法では、ガスは、接合チャンバ内に導入され、MEMSセル内部に封入される。しかしながら、さまざまな接合プロセスにおいて高温が発生する。それゆえ、可燃性であるか又はそれらの温度で爆発性であるガスは、周知の方法を用いて基準チャンバ内に封入することができない。さもなければ、接合チャンバの爆発のような危険が、結果として生ずることがありうる。これはまた、爆発が生じた場合、危害を受けうるユーザにとっても不利である。有利には、本発明による方法によって、可燃性及び/又は爆発性のガスはまた、基準チャンバ内に封入可能である。また、米国特許出願公開第2014/0038364号では、ガス(希ガス)は、接合チャンバ内でキャビティ内に導入される。しかしながら、従来技術から離れ、本発明によれば、ガスは、好ましくは、特に、例えば受動拡散によってコーティング・チャンバを基準ガスで満たすことによって、コーティング・チャンバ内でMEMSセル内に導入される。
【0087】
加えて、さまざまな用途のために、基準チャンバ内にMEMSデバイス及び/又は電子回路を含み、例えば、PAS(光音響分光法)のために、基準ガスで基準チャンバを充填することは望ましい。しかしながら、米国特許第6,124,145号から周知の方法では、この場合、腐食性ガスを基準チャンバ内に封入することができない。これは、接合チャンバが、封入されるガスで満たされるからである。それゆえ、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、最初に、結果として損傷につながりうる大量の腐食性ガスにさらされる。MEMSデバイス及び/又は電子回路が腐食性ガスにさらされる時間はまた、この点に関して役割を果たす。ウェーハの接合プロセス自体にも時間がかかる。接合プロセスが完了する時間まで、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、腐食性ガスにさらされる。それゆえ、接合プロセスの時間の間、腐食性ガスは、MEMSデバイス及び/又は電子回路に損傷を与えうるか又は破壊することさえありうる。
【0088】
本発明による方法を用いて、従来技術の不利な点は、回避又は解消される。したがって、有利には、本発明による方法によって、爆発性及び/又は腐食性のガスは、基準チャンバ内に導入可能であり、密封可能である。
【0089】
本発明のために、可燃性又は発火性とは、好ましくは、低い発火点を有する物質又は混合物の特性を意味する。好ましくは、物質の発火点は、発火性の混合物が物質の上で生ずることができる最も低い温度を意味する。好ましくは、ガス又はガス混合物は、20℃及び101.3kPa(キロパスカル)の標準圧力で空気の爆発範囲を有する場合、可燃性であると考えられる。
【0090】
本発明のために、爆発性のガスとは、例えば高温によって十分にエネルギーを与えられるとき、高い割合の熱エネルギーを生じうる特定の化学反応を受けるガス又は混合物を意味する。これは、結果として、相当な破壊を引き起こしうる激しく拡大する影響を生ずる。爆発性の物質又はガスが不適切に扱われる場合、生命に対する危険が存在する。
【0091】
本発明のために、腐食性ガスは、好ましくは、基準チャンバ及び/又はその構成要素、例えば、MEMSデバイス及び/又は電子回路による化学反応を受け、結果としてかなりの変化を引き起こすガスを意味する。このプロセスは、好ましくは、本発明のために腐食と称される。腐食は、結果として、基準チャンバ又は基準チャンバの構成要素の機能の低下を生じうる。
【0092】
有利には、爆発性及び/又は腐食性の基準ガスは、好ましくは、本発明による方法によって、基準チャンバ内に導入可能である。しかしながら、他の任意の基準ガスも、本発明による方法によって導入可能である。
【0093】
好適実施例において、不活性ガス、好ましくは、窒素は、開口を介して基準チャンバ内に追加で導入され、基準チャンバ内で基準ガスの分圧を設定する。
【0094】
本発明のために、分圧は、ガス混合物の単一の成分の分圧である。分圧は、個々のガス成分が、単独で関係するボリューム内に存在する場合、与えるであろう圧力に対応する。全圧は、加算的に分圧からなる、すなわち、すべての分圧の合計は、全圧に等しい。
【0095】
有利には、特に基準チャンバ内の基準ガスの量又は濃度は、基準ガスの分圧を調整することによって、正確に特定可能である。これは、例えばPASのためのセンサのような基準チャンバの特定の用途のために有利である。用途において、所望の基準濃度又は感度は、基準ガスの濃度又は量を調整することによって予め決定可能である。したがって、導入されるガスの量は、ターゲットとする正確な方法で最適化可能である。
【0096】
本発明のために、不活性ガスは、好ましくは、反応に不活性なガスである。ガスは、化学反応に関与しないか又はわずかに関与するだけである。PAS用途に関して、不活性ガスはまた、関連した励起領域において異なる吸収特性を有さなければならない。不活性ガスの例は、ガス、例えば、窒素、又は、希ガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン又はガス状の分子化合物、例えば6フッ化硫黄を含む。
【0097】
本発明の上述した利点は、開口が、接合後、2つのウェーハのコンタクト面上に残り、又は、開口が、接合の前若しくは後に、第1及び/又は第2のウェーハ内に作られるという事実に基づく。
【0098】
好適実施例において、第1のウェーハ及び第2のウェーハは、第1のウェーハを第2のウェーハに接合するためのコンタクト・エリアを有し、コンタクト・エリアの領域は、開口を形成するために、接合されない。
【0099】
好ましくは、これは、基準チャンバの側方領域に開口を形成する。これは、有利には、コーティング・システム内で基準チャンバ内への基準ガスの良好な浸透を可能にする。
【0100】
有利には、この実施例に関して、開口を基準チャンバ内に形成するためのさらなるプロセス・ステップは必要ない。開口は、好ましくは、接合プロセスの間、すでに製造されている。また、さらなるプロセス・ステップが必要ないという事実は、さらなる材料及び構造化の必要性を除去する。製造コスト及び時間は減少する。有利には、これは、結果として、より高いプロセス効率になる。
【0101】
好適実施例において、開口は、接合後、2つのウェーハのコンタクト面上に残り、開口は、1μmから1000μm、好ましくは1μmから100μmの断面と、1μmから1000μm、好ましくは10μmから500μmの長さとを有する。
【0102】
有利には、この好適実施例において、開口の寸法は、結果として拡散阻害効果を生ずる。この文脈において、本発明の意味の範囲内の拡散は、濃度差の同等化が外部の影響なしで発生する現象を意味する。最初、コーティング・システムが基準ガスで満たされるとき、基準チャンバのボリューム内にはガスはまったくないかほとんどない。時間とともに、基準ガスは、開口を通して基準チャンバのボリューム内に拡散する。これは、ブラウン分子運動に起因する受動的な物理プロセスである。満たすプロセスは、高い圧力及び/又は濃度でコーティング・システム内に基準ガスを導入することによって強化可能である。
【0103】
実質的に細長い開口として好適な寸法設定は、結果として、基準ガスが、開口を通してボリューム内に拡散した後、そこから出ないか又はより長い時定数にわたってのみそこから出る実質的に一次元の拡散力学を生ずる。
【0104】
拡散阻害効果を用いて、例えば、処理の中間の時間を克服することができる。例えば、最初、コーティング・システム内で基準チャンバを基準ガスで満たし、次に、チャンバ内で基準ガスをプロセス・ガスと交換し、コーティング・プロセスによって開口を封止することが好ましい場合がある。拡散阻害効果に起因して、基準ガスは、ガスの交換又はコーティング・プロセスの実行の間、漏出しない。
【0105】
それに応じて開口を寸法設定することによって、有利には、基準ガスが基準チャンバ内に拡散することができる期間及び外への拡散が確実に防止される期間を設定することができる。上述した好適な寸法は、この点で良好な妥協案を表現する。
【0106】
好適実施例において、第1のウェーハを第2のウェーハに接合する前又は後に、開口は、第1のウェーハ又は第2のウェーハの外側から開始して内側に、好ましくはエッチング・プロセスによって形成される。
【0107】
有利には、開口の位置及び/又は寸法設定は、前又は後ろに開口を挿入することによって正確に選択可能である。例えば、位置決めは、基準チャンバの内のMEMSデバイス及び/又は電気回路に依存して選択され、干渉を回避することができる。例えば、開口は、基準チャンバの外側から開始して内側に、第1又は第2のウェーハの外側の中央に配置されることが好ましい場合がある。
【0108】
本発明に関して、エッチング・プロセスは、好ましくは、ドライ・エッチング、ウェット化学エッチング及び/又はプラズマ・エッチング、特に、反応性イオン・エッチング、ディープ反応性イオン・エッチング(ボッシュ・プロセス)を備える。
【0109】
エッチング・プロセスとは、好ましくは、表面からの材料の除去を意味する。除去は、ウェーハ上にキャビティを残すくぼみという形をとることができる。
【0110】
半導体技術及びマイクロシステム工学において、ドライ・エッチングは、湿式の化学反応(例えばウェット化学エッチング、化学機械研磨)に基づかない浸食性の微細構造プロセスの群である。材料は、加速粒子によって、又は、プラズマ励起によるガスを用いて除去される。化学的及び物理的影響は、プロセスに応じて利用される。
【0111】
ドライ・エッチング・プロセスは、3つのグループに分類可能である。第1は、粒子を用いた衝撃による材料除去に基づく物理的ドライ・エッチング・プロセスであり、第2は、大部分プラズマ励起ガスの化学反応に基づく化学的ドライ・エッチング・プロセスである。第3のグループの物理化学ドライ・エッチング・プロセスは、両方の作用機構を用いるプロセスを結合し、したがって、最初の2つのグループの不利な点を最小化することが可能である。
【0112】
ウェット化学エッチングでは、エッチング抵抗マスクは、化学アブレーション・プロセスを通してウェーハに転写される。
【0113】
プラズマ・エッチングは、材料除去、プラズマ支援ドライ・エッチング・プロセスである。プラズマ・エッチングでは、化学反応に起因したエッチング除去とイオン衝撃に起因した表面の物理的除去とが区別される。
【0114】
化学プラズマ・エッチングでは、材料除去は、化学反応を通して発生する。それゆえ、それは、一般的に、化学的性質に起因して等方性であり、且つ、非常に材料選択的でもある。プラズマ支援イオン・エッチングとも呼ばれる物理的プラズマ・エッチングは、物理プロセスである。このプロセスにおいて、エッチング攻撃の特定の優先方向が発生しうるので、プロセスは、材料除去において異方性を呈してもよい。物理的プラズマ・エッチングでは、非反応性イオンは、プラズマにおいて生成される。印可される電場は、表面上へこれらのイオンを加速させ、表面の部分を除去する。このプロセスは、典型的には、シリコン・ウェーハ上の自然酸化物を除去するために用いられる。
【0115】
反応性イオン・エッチング(RIE:Reactive Ion Etching)は、イオン支援の反応性エッチング・プロセスである。エッチング挙動の良好な制御性に起因して、RIEは、マイクロシステム及びナノシステム技術のための局所構造の製作のためのプロセスである。このプロセスは、化学物理的なアブレーションによって、等方性及び(方向から独立した)異方性のエッチングを可能にする。エッチングは、ガス・プラズマ内で生成される荷電粒子(イオン)によって実行される。(例えばフォトリソグラフィによって製造される)表面の適切なマスキングは、構造の形状を与える。
【0116】
ディープ反応性イオン・エッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)は、反応性イオン・エッチング(RIE)のさらなる発展であり、最高50:1のアスペクト比(深さと幅の比)を有するウェーハ内の微細構造の製作のための非常に異方性のドライ・エッチング・プロセスであり、それによって、数百マイクロメートルの構造深さが達成可能である。DRIEプロセスは、ツー・ステップであり、エッチング及びパッシベーション・ステップが交互に生ずるドライ・エッチング・プロセスが交互に生ずる。目的は、できるだけ異方的に、すなわち、方向的にウェーハ表面に対して垂直にエッチングすることである。このようにして、例えば、非常に狭いトレンチは、エッチング可能である。
【0117】
上述したエッチング・プロセスは、当業者に知られている。設けられている所望の開口及び/又はウェーハに応じて、有利なプロセスは、効果的な性能を確実にするように選択可能である。
【0118】
好適実施例において、弁は、第1又は第2のウェーハの開口の端に存在し、弁は、好ましくは、第1のウェーハを第2のウェーハに接合した後、第1のウェーハ又は第2のウェーハの外側から開始する開口の端で基準チャンバのボリューム内に位置している。開口の端は、好ましくは、第1又は第2のウェーハの開口から基準チャンバの(基準)ボリュームまでの移行を示す。
【0119】
この位置の弁を用いて、基準ガスの基準チャンバのボリューム内への拡散を制御することができ、コーティング・チャンバは、基準ガスで満たされる。
【0120】
弁を取り付けることにより、有利には、基準ガスを自動的に封止することができる。特に、満たすことの力学を制限することなく、ボリューム内にすでに拡散された基準ガスの漏出を防止することができる。
【0121】
拡散阻害効果とは対照的に、例えば、実質的に一次元の拡散力学を有する細長い開口を通して、弁は、よりターゲットとする方法で基準チャンバからの拡散を妨害するために用いることができ、同時に、基準チャンバ内への拡散は、支障なく急速に起こることができる。
【0122】
したがって、弁によって、効果的に満たすことができ、これによって、例えば、基準ガスは、チャンバ内でプロセス・ガスと交換可能であり、開口は、コーティング・プロセスによって封止可能である。弁の提供に起因して、基準ガスは、この間に漏出することができない。
【0123】
加えて、弁の提供によって、有利には、基準チャンバ内に導入される基準ガスの量及び/又は濃度をより正確に調整することができる。
【0124】
好ましくは、弁は、流体の流れの方向制御又は遮断のために用いられる構成要素を意味する。好ましくは、弁は、例えば、(例えば薄膜構造に基づく)柔軟なシャッタによって形成可能であり、満たしている間、反応チャンバ内への基準ガスの拡散を一方向に可能にするとともに、満たした後、拡散チャンバからの拡散を防止する。
【0125】
好ましくは、接合の前に、且つ、第1又は第2のウェーハの開口を形成する前に、材料層は、(好ましくは柔軟な封止を形成するために)開口が導入される(例えばエッチングされる)ウェーハの反対側に適用可能である。好ましくは、材料層は、さらなるプロセスにおいて、弁として構造化可能である。この場合、第1又は第2のウェーハの開口は、最初に形成可能であり、次に、材料層は、構造化され、弁を形成することができる。反対の順番も可能である。
【0126】
好適実施例において、弁を形成することになる材料層は、接合の前に構造化される。このプロセスにおいて形成される構造は、コンタクトパッド、導電性経路、アライメント、コーナー、エッジ、くぼみ、沈下及び/又はホールを含むことができる。
【0127】
好ましくは、材料層は、最初にウェーハの片側の全面に適用可能である。特に、構造化は、材料層を開口の周りのエリアに制限することができるので、材料層の既存のエリアは、開口の端で弁として作用することができる。
【0128】
好ましくは、ウェーハの開口は、エッチング・プロセスにより、弁として構造化される材料層の反対側の上に形成される。当業者は、この目的のための適切なエッチング・プロセスを選択し、弁がそのプロセスにおいて損傷を受けないことを確実にすることができる。
【0129】
好ましくは、次に、弁を有する開口を備える第1のウェーハは、第2のウェーハに接合される。弁が開口の端且つ基準チャンバのボリューム内に位置するように、接合が起こるので、記載されている機能が達成される。
【0130】
好適実施例では、第1のウェーハが第2のウェーハに接合された後、コーティング・システム内の基準チャンバは、基準ガスで満たされ、ガスは、開口を通して及び弁を介して基準チャンバのボリューム内に入る。
【0131】
好適実施例において、弁(又は構造化される材料層)は、軟質金属を備える。好ましくは、本発明のために、軟質金属は、(例えば、DIN EN ISO6506-1から4に従うブリネル硬度試験において)鉄より低い硬度を有する金属として定義可能である。好適な軟質金属は、鉛、金、インジウム、銅、白金、銀、亜鉛、スズ又はその化合物、特に好ましくはアルミニウム又はその化合物からなる群から選択される非鉄金属である。
【0132】
有利には、軟質金属は、一方では、単純な手段によって正確に構造化可能であるので、プロセスは、時間節約及び費用効果的な方法で構成可能である。他方では、軟質金属は、その柔軟性に起因して、本発明による使用のための弁として適切である。
【0133】
材料の選択に加えて、材料層の寸法設定もまた、この点で役割を果たす。
【0134】
好ましくは、弁として構造化される材料層又は弁は、薄膜構造として設計される。好ましくは、薄膜構造は、100μm未満、好ましくは10μm未満の層厚さを意味する。
【0135】
特に、好ましくは軟質金属を含む薄膜構造を用いて、弁の良好な柔軟性は、確実に、それに応じて拡散プロセスを調整することができる。
【0136】
基準ガスは、第1又は第2のウェーハの開口を通って弁に入り、弁に対して圧力を与える。弁の柔軟性に応じて、ある点で、与えられる圧力は、基準チャンバのボリュームの方向に弁を開き、ガスが通過することができるのに十分高い。
【0137】
好適実施例では、基準チャンバ内に基準ガスを満たした後、はんだが溶解され、開口を封止する。
【0138】
このため、はんだは、好ましくは、基準チャンバの開口の近くに、好ましくは接合の前に配置される。
【0139】
マイクロシステム技術におけるはんだの適用は、周知の手順であり、当業者にとっていかなる困難も含まない。
【0140】
好ましくは、基準ガスがコーティング・システム内に満たされる前、はんだは、基準チャンバの開口の近くに配置され、基準ガスは、開口を介して基準チャンバのボリューム内に拡散する。
【0141】
有利には、本実施例において、基準ガスは、はんだの溶解前に、基準チャンバのボリューム内に、特に効率的に拡散することができる。本実施例では、拡散に対する残りの(小さいが)抵抗を有しうる細長い開口の拡散制限効果も弁も設ける必要はない。
【0142】
好ましくは、はんだの溶解は、基準チャンバの開口を封止する。はんだの溶解は、当業者にとって周知のプロセス・ステップであり、それによって、溶解温度は、溶解する材料に応じて選択される。
【0143】
好ましくは、はんだが溶解するにつれて、はんだを備える材料の一部は、開口内に入り、その断面を封止する。断面が厳重に封止される限り、はんだ又は溶解材料は、開口全体又はその部分のみを充填することができる。はんだのサイズは、封止される開口に適応する。溶解材料全体を用いて、開口又はその部分のみを封止することが好ましい場合がある。
【0144】
開口の近くにはんだを配置することは、好ましくは、溶解ハンダが開口内に流れ込むこともできることを確実にするように空間的に近接して開口を位置決めすることを意味する。近接とは、例えば、100μm未満、好ましくは10μm未満の距離を意味することができる。
【0145】
好適実施例において、はんだは、鉛、スズ、亜鉛、銀、銅、その合金及び/又はその化合物を含む群から選択される可溶性材料を含む。
【0146】
好ましくは、はんだは、溶解する間、その溶解温度に至る。溶解温度は、はんだが固体から液体状態に変換される温度である。好ましくは、はんだは、基準ガスが可燃性及び/又は爆発的に反応しない溶解温度を有し、その結果、発生しうるいかなるスパークも危険につながらない。
【0147】
有利には、はんだのための上記の好適な材料は、好適な基準ガスが可燃性及び/又は爆発的に反応する温度未満の溶解温度を有する。
【0148】
好適実施例において、開口は、コーティング・システム内でコーティング・プロセスによって、好ましくは、スプレー・コーティング、ミスト・コーティング及び/又は蒸気コーティングによって、封止される。
【0149】
コーティング・プロセスは、好ましくは、基準チャンバを良好に封止する。有利には、これは、基準ガスがもはや基準チャンバから出ることができず、永続的な封止が確実にされることを意味する。
【0150】
弁が開口の端にある場合、はんだの溶解は、すでに開口の第1の封止を引き起こす。カバー層の追加の適用は、長期にわたり封止を安定させ、基準チャンバの寿命にわたり基準チャンバの密封を確実にする。
【0151】
さまざまなコーティング・プロセスを用いて、カバー・コーティングを適用することができる。
【0152】
スプレー・コーティングは、特にカバー層の二次元の適用を意味し、それによって、カバー層は、好ましくは、スプレーの前に加圧されるので(例えば支配的な周囲圧力より高い)、カバー層の微粒子/エアゾール及び/又はフォームが形成される。このようにして、例えば、スプレー方向に好適でない角度にある表面を有する場合であっても、すべてのスプレーエリアをカバーする特に微細なコーティングを達成することができる。したがって、互いにある角度にある表面/エリアさえ、好ましくは直接カバーすることができる。
【0153】
好ましくは、液体カバー層は、霧状にされ、周囲圧力より高い圧力の下で、表面に適用される。
【0154】
スプレー・コーティングは、好ましくはスプレーラッカーである。スプレー・コーティングはまた、気相堆積とすることもできる。
【0155】
ミスト・コーティングは、好ましくは、環境(好ましくはガス)内で微細に分散する、マスク層の微細液滴によるコーティングを備える。蒸気コーティングは、好ましくは、蒸気の状態又はガスの状態で適用されるカバー層によるコーティングを含む。
【0156】
好適実施例において、コーティング・システムは、物理コーティング・システム又は化学コーティング・システム、好ましくはプラズマ強化化学コーティング・システム、低圧の化学及び/又はエピタキシャル・コーティング・システムを備える。
【0157】
物理コーティング・システムは、好ましくは、物理気相堆積法(PVD:Physical Vapor Deposition)によってコーティングを実行するコーティング・システムを意味する。物理気相堆積又はたまに物理蒸気堆積とも称されるものは、真空ベースのコーティング・プロセス又は薄膜技術の群を意味する。化学気相堆積プロセスとは異なり、物理気相堆積法は、出発原料を気相に変換するために用いられる。次に、気体物質は、コーティングされるウェーハに適用され、凝縮し、ターゲット層を形成する。
【0158】
アーク蒸発又はアークPVDは、物理気相堆積法の群からのコーティング・プロセスである。このプロセスにおいて、アークは、プロセスが起こるチャンバと、負電位であるターゲットと、の間で燃焼する。このアークは、ターゲット材料を溶解し、蒸発させ、ターゲット材料は、後に、例えばワークピース(ウェーハ)上に堆積する。ターゲットは、カソード、真空チャンバのチャンバ壁又はアノードとしての所定の電極として作用する。そのプロセスでは、蒸発する材料の大部分(最高90%)は、イオン化される。材料蒸気(ターゲット材料)は、熱蒸発と同様に、ターゲットから放射状に広がる。負電位はまた、ウェーハに印加されるので、イオン化された材料蒸気は、基板の方にさらに加速される。材料蒸気は、ウェーハ表面上で凝縮する。
【0159】
エピタキシャル・コーティング・システムは、好ましくは、エピタキシャル・プロセス、好ましくは分子線エピタキシーが用いられるシステムである。分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)は、結晶薄膜(又はフィルム・システム)を製造するための物理気相堆積(PVD)プロセスである。エピタキシーは、2つの物質の物理的特性があまり大きく異ならない限り、成長する層の結晶構造が基板の構造に適応することを意味する。
【0160】
MBEは、超高真空が残留するガス原子による汚染を回避することを必要とする。しかしながら、成長プロセスの間、圧力は、流出に起因して、高い真空範囲に上昇する。層が形成されるべき材料は、蒸発るつぼ内で加熱され、(背景ガスと衝突することなく)誘導された分子線として、ウェーハに到達する。これも加熱され、したがって、層は、規則的な方法で成長することができる。
【0161】
カソード・スパッタリングとしても知られているスパッタリングは、高エネルギーのイオン(主に希ガスイオン)との衝撃によって、原子が固体(ターゲット)から放出され、気相に移る物理プロセスである。
【0162】
化学コーティング・システムは、好ましくは、化学気相堆積法(CVD:Chemical Vapor Deposition)を介してコーティングを実行するコーティング・システムを意味する。化学気相堆積法において、固体成分は、気相からの化学反応の結果として、ウェーハの加熱表面上に堆積する。これのための必要条件は、層の構成要素の揮発性の合成物が存在するということであり、それは、特定の反応温度で固体層を堆積させる。化学気相堆積プロセスは、コーティングされるべきワークピースの表面における少なくとも1つの反応によって特徴付けられる。この反応は、少なくとも1つのガス状の出発化合物(反応物)及び少なくとも2つの反応生成物を含まなければならず、そのうちの少なくとも1つは、固相でなければならない。競争する気相反応より表面でのそれらの反応を促進し、したがって固体粒子の形成を回避するために、化学気相堆積プロセスは、通常、減少した圧力で(典型的には:1から1000Pa)動作する。プロセスの特別な特徴は、コンフォーマルコーティング堆積であり、それによって、例えば、ウェーハ内の最も微細な凹部さえ均一にコーティングされる。
【0163】
化学気相堆積法はまた、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)を含む。原子層堆積は、2つ以上の周期的に実行された自己制御表面反応による非常に変更された化学気相堆積法(CVD)プロセスである。堆積される材料は、1つ又は複数の搬送ガスに化学的に結合され、前駆体と呼ばれている。これらの前駆体は、交互に、ウェーハと反応させられる反応チャンバ内に供給され、ガス内で結合した材料は、基板材料上に堆積する。結果として生じた層は、通常、多結晶又は非結晶構造を有する。
【0164】
プラズマ化学気相堆積法(PECVD:Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)は、好ましくは、プラズマ強化又はプラズマ支援化学気相堆積プロセスを用いるシステムを意味する。プラズマ化学気相堆積法は、化学堆積がプラズマにより支援される化学気相堆積法(CVD)の特別な形である。プラズマは、コーティングされるウェーハで直接燃焼することができる(直接プラズマ法)か又は別個のチャンバ内で燃焼することができる(遠隔プラズマ法)。
【0165】
CVDでは、ガスの分子の解離は、熱の外部供給及び次の化学反応の放出されるエネルギーの結果として発生するが、一方、PECVDでは、このタスクは、プラズマ内の加速電子によって実行される。このようにして形成されるラジカルに加えて、イオンはまた、プラズマにおいて生成され、ラジカルとともにウェーハ上の層堆積を生じさせる。プラズマ内のガス温度は、通常、摂氏わずか数百度増加し、それは、CVDとは対照的に、より温度に高感度な材料もまたコーティング可能であることを意味する。直接プラズマ法において、強電場は、コーティングされるウェーハとプラズマに点火するカウンター電極との間に適用される。遠隔プラズマ法において、プラズマは、基板と直接コンタクトしないように配置される。これは、プロセス・ガス混合物の個々の成分の選択励起に関する利点を提供し、イオンによってウェーハ表面に与えるプラズマの損傷の可能性を減少する。
【0166】
低圧化学気相堆積法(LPCVD:Low Pressure Chemical Vapor Deposition)は、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び多結晶シリコン並びに金属の堆積のために半導体技術で通常用いられるプロセスである。
【0167】
好適実施例において、カバー層は、コーティング・システム内で、少なくとも開口の領域の上に、好ましくは基準チャンバ全体の周りに適用され、カバー層のための材料は、好ましくは、窒化物、好ましくは窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン及び/若しくは窒化タンタル、酸化物、好ましくは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン又は酸化タンタル、又は、金属、好ましくはアルミニウム及び/若しくは貴金属、好ましくは金、白金、イリジウム、パラジウム、オスミウム、銀、ロジウム及び/若しくはルテニウムである。
【0168】
基準チャンバ全体の上のカバー層は、有利には、基準チャンバの特に良好な密封を提供する。これは、基準ガスが、基準チャンバのボリューム内に特に良好に封入されたままであることを意味する。これは、特に、カバー層が基準チャンバに沿って、又は、それの周りで実質的にコーティングされた場合、基準チャンバのボリュームからのガスが封止後そこから出ることができないことを特に高い信頼度で確実にする。
【0169】
有利には、基準チャンバはまた、外側から、すなわちその環境から、特に製造方法によれば、カバー層によって追加で保護されている。これは、例えば流体の汚染を通して、及び、機械的影響を通して、外部損傷の危険も最小化する。
【0170】
一方、上述した材料は、容易に処理可能であり、したがってカバー層を適用するために用いることができる。加えて、それらの妨害特性に起因して、材料は、基準ガスの漏出及び/又は外部ガスの入力に対する確実且つ長期的に安定したバリアを表現する。
【0171】
好適実施例において、開口を封止し、及び、カバー層を形成するために、プロセス・ガスは、コーティング・システム内に導入され、プロセス・ガスは、基準ガスを満たした後、基準チャンバ内に導入されるか、又は、カバー層を形成するための材料は、基準ガスがプロセス・ガスとして同時に機能することができるように選択される。
【0172】
本発明の意味の範囲内で、プロセス・ガスは、好ましくは、コーティングが次のプロセス・ステップにおいてカバー層によって達成されることを確実にするために用いられるガスを意味する。カバー層を基準チャンバに適用又は接着することは、物理及び/又は化学反応を介して発生する。好ましくは、この物理及び/又は化学反応では、プロセス・ガスは、カバー層が基準チャンバ上にコーティングされることを支援又は可能にする。
【0173】
特に、追加のプロセス・ガスを基準ガスとともに満たす場合、拡散制限又は拡散妨害開口が望ましい。有利には、これは、拡散妨害はんだ又は弁又は拡散制限開口を、接合プロセスの間、基準チャンバの側方領域に対応する寸法で取り付ける本発明による方法によって達成される。有利には、基準ガスは、最初、好ましくは、これらの開口を介して基準チャンバのボリューム内に入ることができる。その後、プロセス・ガスの導入の後、コーティング・プロセスが起こるように、コーティング・システム内のガス交換が続くことができる。基準ガスからプロセス・ガスへの(少なくとも部分的な)ガス交換の間の両方とも、拡散制限又は拡散妨害開口は、基準ガスが漏出しないことを確実にする。特定の用途のために、追加のプロセス・ガスがコーティング・システム内に満たされないが、基準ガスがプロセス・ガスに対応することも好ましい場合がある。好ましくは、これは、基準ガスとしてのアンモニアの場合であり、アンモニアは、特に窒化物化合物を含むカバー層のためのプロセス・ガスとして機能することができる。
【0174】
有利には、この場合、コーティング・システム内のガス交換の必要はない。むしろ、コーティングステップは、基準チャンバが基準ガスで満たされた後、シームレスに続くことができる。好適実施例では、アンモニアは、また、基準ガスとして、すなわち基準チャンバを充填するためのガスとして機能するプロセス・ガスである。有利には、プロセス・ガスとしてアンモニアを用いることにより、カバー層と基準チャンバとの間の接合のためのプロセス・ガスとしてコーティング・チャンバ内に他のガスを導入する必要がないので、窒化物化合物を含むカバー層は、特に効率的に基準ガスの密封のために機能することができる。コーティング・システム内の基準ガスの保持に関して、チャンバ内の基準ガスの望ましい濃度は、特に正確に設定可能である。基準ガスと異なるプロセス・ガスのチャンバ内への望ましくない拡散は、プロセス・パラメータのターゲットを絞った選択によって、本質的に防止される。
【0175】
他の実施例では、MEMSデバイスは、MEMSセンサ及び/又はMEMSアクチュエータであり、及び/又は、電子回路は、プロセッサ、スイッチ、トランジスタ及び/又はトランスデューサを備える。
【0176】
MEMSセンサ又はMEMSアクチュエータとは、マイクロシステム(マイクロ電子機械システム、省略してMEMS)の形で、特にセンサ又はアクチュエータを意味する。マイクロシステムは、特に、小型のデバイス、アセンブリ及び/又は構成要素であり、構成要素は、マイクロメートル範囲(1μmから1000μm)かそれ未満の寸法を有し、システムとして相互作用する。MEMSセンサは、例えば、音検出器である。
【0177】
他の実施例では、MEMSデバイスは、音圧検出器を備え、音圧検出器は、好ましくは、容量的若しくは光学的に可なピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは磁気バー、並びに/又は容量性、ピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは光マイクロフォンを備える。
【0178】
実施例は、PAS内の基準チャンバの使用に特に適しており、音圧波は、音圧検出器によって基準チャンバ内で直接検出可能である。
【0179】
ピエゾ電気ビームは、好ましくは、特に曲げビームの形の振動構造であり、例えば、アクチュエータの形のピエゾ電気材料を含む。
【0180】
曲げビームが受動的であることが好ましい場合があり、好ましくは、それは、音圧波によって振動させられることを意味する。これらは、ひいては、圧電効果に基づくピエゾ電気材料の変形を通して電圧を生成する。(直接の)圧電効果は、好ましくは、対応する材料でできている固体が弾性変形するときの電気電圧及び/又はインピーダンスの変化の発生を記載する。電圧は、例えば、適切な接触によってタップ可能であり、対応する電子回路によって読み出し可能である。
【0181】
曲げビームが能動的であることも好ましい場合があり、それは、特に、逆圧電効果に起因して振動させられることを意味する。電気電圧及び/又は電場が適用され、それによって、特に材料によって力が作用することができるとき、圧電効果は、好ましくは、材料の変形を記載する。音圧波によって、好ましくは、例えば振動ビームの共振周波数の変化によって測定可能である、振動ビームを減衰させる際の変動が生じることがありうる。
【0182】
音圧波に起因して受動的に振動するバーはまた、好ましくは、例えば容量性、磁気及び/又はピエゾ抵抗の方法によって読み出し可能である。着想は、好ましくは、電気的に可読の変化が、振動によって、例えば、共振磁石を通り変化する磁束に基づいて、振動極と固定電極との間の変化する静電容量によって、及び/又は、ピエゾ抵抗材料の変化する電気抵抗によって生成されるということでもある。
【0183】
マイクロフォンは、好ましくは、音圧波によって振動するように刺激される振動的に取り付けられたダイヤフラムを備え、ダイヤフラムは、次に、上記のビームと同様に、電気的に読み出し可能である。振動設計の容量性、ピエゾ電気及び/又はピエゾ抵抗の測定方法を用いることもできる。
【0184】
好ましくは、光マイクロフォンを用いることもでき、それによって、これらの振動は、好ましくは、例えば膜上のレーザー・ビームの反射によって光信号に変換可能であり、光信号は、例えば干渉計装置において読み出される。
【0185】
さらなる態様において、本発明は、本発明による方法によって製造可能な基準チャンバに関する。
【0186】
したがって、本発明は、好ましくは、方法によって製造可能な基準チャンバに関し、方法は、
a)第1及び第2のウェーハを提供するステップであって、第1のウェーハ及び第2のウェーハの少なくとも1つは、キャビティを含み、MEMSデバイス及び/又は電子回路は、第1のウェーハ及び第2のウェーハの少なくとも1つの上に存在する、ステップと、
b)接合チャンバ内で第1のウェーハを第2のウェーハに接合し、基準ガスで充填可能なボリュームを形成するステップであって、開口は、接合後、2つのウェーハのコンタクト面上に残り、又は、開口は、接合の前若しくは後に、第1及び/又は第2のウェーハ内に作られる、ステップと、
c)コーティング・システム内で開口を介して基準ガスを基準チャンバに満たすステップと、
d)コーティング・システム内で基準チャンバの開口を閉じるステップと、
を含む。
【0187】
平均的な当業者は、本発明による基準チャンバを製造するための方法に適用する好適実施例の技術的特徴、定義及び利点が、製造可能な基準チャンバに等しく適用し、逆もまた同じであることを認識する。
【0188】
本発明の好適実施例では、基準チャンバは、10μmから2mm、好ましくは50μmから1mm、より好ましくは100μmから500μmの高さを有する。
【0189】
このようにして、平坦且つコンパクトな設計、特に基準チャンバの低い全体の高さを有利に達成することができる。
【0190】
他の好適実施例では、基準チャンバは、100μmから5mm、好ましくは200μmから3mm、より好ましくは500μmから2mmの長さ及び/又は幅を有する。
【0191】
これらの寸法により、有利には、基準チャンバのボリューム内に十分な量の基準ガスを導入することができる。同時に、これらの寸法によってまた、有利にはMEMSデバイス、好ましくはMEMSセンサ、特に好ましくは音圧検出器が、好ましくはPASの使用のために取り付けられる。
【0192】
他の態様において、本発明は、光音響ガス・センサのための製造方法であって、次のステップ、すなわち、
-本発明又はその好適実施例に従う製造方法によって基準ガスで充填される基準チャンバを製造するステップであって、MEMSセンサは、MEMSデバイスとして基準チャンバ内に存在する、ステップと、
-変調可能なエミッタを提供するステップと、
-基準ガスで充填される基準チャンバ及び変調可能なエミッタを配置するステップと、
を含み、
基準チャンバは、エミッタのビーム経路内に存在し、その結果、エミッタは、変調可能且つ放出可能な放射線によって基準チャンバの基準ガスを励起して、MEMSセンサによって検出可能である音圧波を形成する、製造方法に関する。
【0193】
他の態様においては、本発明は、光音響ガス・センサであって、
-変調可能なエミッタと、
-基準ガスで充填される基準チャンバであって、MEMSセンサが、基準チャンバ内に存在する、基準チャンバと、
を備え、基準チャンバは、エミッタのビーム経路内に存在し、その結果、エミッタは、変調可能且つ放出可能な放射線によって基準チャンバの基準ガスを励起して、MEMSセンサによって検出可能である音圧波を形成することができ、基準ガスで充填される基準チャンバは、上述した方法に従って製造可能である、光音響ガス・センサに関する。
【0194】
平均的な当業者は、本発明による基準チャンバを製造するための方法又はそれにより製造可能な基準チャンバのために開示される好適実施例の技術的特徴、定義及び利点が、この種の基準チャンバを備える光音響ガス・センサ又はガス・センサ製造方法に等しく適用し、逆もまた同じであることを認識する。
【0195】
特に、本発明は、基準ガスとして腐食性又は爆発性のガス(例えばアンモニア)も安全に密封し、したがって周囲空気における有毒ガスの発生の監視を可能にする小型の光音響ガス・センサの提供を可能にする。本発明による方法により、確実に、(MEMSセンサのような)光音響ガス・センサの感度が高い構成要素は、基準ガスの封入の間、攻撃されなくなる。また、基準チャンバからの潜在的に有毒ガスの漏出は、密封によって防止され、また、コンパクトな構成に起因して、潜在的損傷からの高度の安全を確実にする。
【0196】
好適実施例において、光音響ガス・センサの基準チャンバは、基準ガスで充填される封止されたシステムを形成し、分析されるガス、好ましくは周囲空気は、エミッタと基準チャンバとの間の光路内に存在し、その結果、分析されるガスにおける基準ガスの比率は、基準チャンバ内の音圧波の形成に基づいて測定可能である。
【0197】
光音響ガス・センサの基本的な特徴及び必須の構成要素は、当業者に知られている。変調可能なエミッタは、電磁放射を生成し、好ましくは、赤外線エミッタによって放出される放射線が、基準チャンバ内のガスに実質的に又は少なくとも部分的に影響を与えるように配置及び構成される。
【0198】
変調された照射が、ガス混合物内に存在するガス成分の分子の吸収スペクトルに対応する波長で起こる場合、変調吸収が起こり、時間スケールが放射線の変調周波数を反映する加熱及び冷却プロセスに至る。光音響効果によれば、加熱及び冷却プロセスは、ガス成分の膨張及び収縮に至り、実質的に変調周波数を有する音圧波を形成させる。音圧波はまた、PAS信号とも称され、センサ、例えば音検出器によって測定可能である。音波の出力は、好ましくは、吸収ガス成分の濃度に正比例する。
【0199】
ガス成分という用語は、好ましくは、化学的に(及び分光的に)同一の、ガス混合物内のガス分子(例えばアンモニア)の比率を意味すると理解され、ガス混合物とは、複数の(好ましくは異なる)ガス成分(例えば空気)の全体又は混合物を意味する。
【0200】
さまざまなエミッタは、好ましくは、上記の用途のための放射線源とみなされる。例えば、狭帯域レーザー源を用いることができる。これらは、有利には、高い放射強度を使用可能にし、光音響分光法のための標準的な構成要素によって好ましくは高周波で変調可能である。
【0201】
好ましくは、ブロードバンド・エミッタを用いることもできる。有利には、これらは、例えば、(同調)フィルタを用いてさらに選択可能な幅広いスペクトルを有する。
【0202】
本発明の好適実施例において、変調可能なエミッタは、サーマル・エミッタであり、加熱素子を備え、加熱素子は、電流源及び/又は電圧源のためのコンタクトが存在する導電材料の加熱可能な層が少なくとも部分的に堆積する基板を備える。
【0203】
この文脈において、加熱素子は、電流がそれを通り流れるときジュール熱を生成する導電材料でできている加熱可能な層を備える。特に、加熱素子は、加熱可能な層が存在する基板を備える。基板は、好ましくは、加熱素子のベースを形成する。この文脈において、基板はまた、IRエミッタの他の要素、例えばベース要素及び/又はハウジング要素を少なくとも部分的に備えてもよい。有利には、基板は、特に半導体及び/又はマイクロシステム製造から確立されたプロセス・ステップによって最適に形成可能である。上述した材料は、半導体及び/又はマイクロシステム製造において処理するのが特に容易且つ安価であり、大量生産にも非常に適している。同様に、これらの材料は、特定の分野において所望の電気、熱及び/又は放射特性を達成するために、特にドーピング及び/又はコーティングに適している。
【0204】
基板は、好ましくは、シリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、シリコン・ゲルマニウム、窒化ケイ素、窒化物、ゲルマニウム、炭素、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム及び/又はリン化インジウムを備える群から選択されてもよい。
【0205】
加熱可能層を形成するために用いられる導電材料は、好ましくは、白金、タングステン、(ドーピングした)酸化スズ、単結晶シリコン、多結晶シリコン、モリブデン、チタン、タンタル、チタン・タングステン合金、金属シリサイド、アルミニウム、黒鉛及び/又は銅を含む群から選択可能である。一方では、これらの材料は、所望の熱、電気、機械及び/又は放射特性を呈して、他方では、処理するのが特に容易且つ安価である。
【0206】
(ミクロ)加熱素子は、好ましくは、少なくとも部分的に自立し、例えばIRエミッタ内で、強い温度変化及び並進運動の結果として、熱膨張を可能にする。部分的に自立するとは、それが、インタフェースでエミッタの他の要素に少なくとも部分的に確実に及び/又は摩擦によって結合されず、それゆえ、インタフェースに実質的に垂直な方向の動きの自由度を有することを意味する。
【0207】
エミッタは、変調可能であり、これは、放出される放射線の強度、好ましくは、ビームの強度を、時間とともに制御可能な方法で変えることができることを意味する。変調は、好ましくは、測定可能な変数として強度の時間的変化を引き起こす。これは、例えば、測定期間内に測定される最弱の強度と、同じ期間内に測定される最強の強度と、の間の強度の差が時間とともに存在することを意味し、この差は、典型的には放射線スペクトル及びアプリケーションのための強度を測定又は決定するのに用いられる機器の感度より大きい。好ましくは、差は、最強と最弱の調節可能な可調強度の間で、2の倍数より著しく大きく、より好ましくは、4、6又は8の倍数より著しく大きい。特に好ましくは、変調ビームの強度は、1つ又は複数の所定の共振波長のために変調される。
【0208】
好ましくは、直接変調は、電流源を変化させることによって実行可能である。サーマル・エミッタの場合、この種の変調は、通常、熱時定数に起因して、例えば最高100Hzの大きさのオーダの範囲で、変調スペクトルの特定の範囲に限定される。レーザー又はLEDの場合、例えば、はるかに高い変調速度は、例えばkHz範囲及びそれ以上において好ましくは可能である。
【0209】
赤外線エミッタの変調は、好ましくは同様に外部変調によって、例えば回転チョッパホイール及び/又は電気光学変調器を用いて達成可能である。
【0210】
変調可能なエミッタは、好ましくは、特定のスペクトル内の波長範囲の電磁放射を放出するデバイスを意味する。特に、スペクトルは、エミッタの好適な適用分野、すなわち、光音響分光法に対応するように選択される。特に、分光法で調べられる及び/又は検出されるガス分子の振動の励起が好ましく、それは、ガス分子に応じて、好適なスペクトル範囲に対応する。
【0211】
IRエミッタの放出は、好ましくは、線形に好適な方向に向いているビームの形である。ビームという用語は、エミッタによって放出される、エミッタの好適なビーム方向に沿った放射線の好ましくは集束した部分を記載することを意図し、特にビームを定義するこの方向に沿って最大強度のエリアを有する。強度は、好ましくはエリア出力密度として定義され、好ましくは、W/mと略記される平方メートル当たりワットの単位を有する。
【0212】
追加の構成要素、例えばレンズは、ビーム集束又はコリメーションを提供するために、エミッタ内に組み込まれてもよいか又は外部に取り付けられてもよい。当業者は、所望のビーム・プロファイル並びに所望のビーム方向が結果として生ずるように、エミッタを設計するとともに、追加の構成要素を用いることによって、放射線源の放出プロファイルを形づくる方法を知っている。好ましくは、変調可能なエミッタは、追加レンズなしで済ますことができるか、又は、放射線源及びビームをコリメートするための少なくとも1つのレンズを備えるシステムとすることができる。
【0213】
好ましくは、基準チャンバは、エミッタのビーム経路内に位置する。好ましくは、これは、ビームの強度が、実質的に又は少なくとも部分的に、エミッタに面する基準チャンバの側に入射することを意味する。部分的にとは、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、60%又はそれ以上を意味する。特に、それは、ビームの最大強度の領域が検出チャンバに影響を与えることを意味する。好ましくは、それは、強度の実質部分がエミッタに面する側に影響を与えるように、ビームが焦束する及び/又はコリメートされることを意味する。好適な例は、特にガウス曲線に従って断面プロファイルを有するガウス・ビームである。ビームに沿って、z軸は、好ましくは、最大強度を有する距離によって定義される。ビームの「高さ」zでのビーム半径wは、このことにより、好ましくは、強度が1/eに減少したz軸までの距離として定義される(好ましくは約13.5%)。この定義に続き、「基準チャンバが、エミッタの経路内にあること」が、ビーム半径の実質的にすべてが、エミッタに面する基準チャンバ側に入射することを意味することが好ましい。
【0214】
好ましくは、エミッタに面する基準チャンバの側は、放出される放射線を透過し、その結果、放射線は、ガスで充填可能なチャンバの内部に実質的に到達する。好ましくは、特にエミッタに面する基準チャンバの側は、照射面とも称される。
【0215】
基準チャンバが赤外線エミッタのビーム経路内に存在するという事実は、特に、エミッタは、変調可能且つ放出可能な放射線によって検出チャンバ内のガスを励起し、音圧波を形成することができることを意味する。なぜなら、これは、少なくとも部分的に(好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも60%)照射され、特に、放射線の実質的な部分は、検出チャンバ内部で、ガスで充填可能なボリュームに到達するからである。実質的な部分とは、特に少なくとも80%、より好ましくは90%、特に95%を意味する。
【0216】
実質的に、ほぼ、約、などのような用語は、好ましくは、±20%未満の、好ましくは±10%未満の、より好ましくは±5%未満の、特に±1%未満の許容範囲を記載する。実質的に、ほぼ、約、など、常にという指示はまた、記載の正確な値を開示し、含む。基準チャンバは、基準チャンバを透過する変調された赤外線放射が、そこの基準ガスのガス分子を用いて、PASを可能にするというように、IRエミッタに整合する基準ガスを含む。赤外線エミッタと基準チャンバとの間の測定経路が、分析される空気(特に周囲空気)内の基準ガスの一部も含み、基準ガスが赤外線放射を吸収する場合、PASは起こる。これは、基準チャンバ内の吸収の強さを減少する。
【0217】
減少の大きさによって、測定経路内の基準ガスの濃度についての結論を引き出すことができる。好ましくは、より多くの基準ガスが、検出チャンバの外側のビーム経路内に存在すればするほど、基準チャンバ内の音圧波の形成はより小さい。なぜなら、吸収及び励起は、次にすでにそこで起こるからである。好ましくは、ここでは、狭帯域IRエミッタが用いられるので、可能ならば、基準ガスのみを励起状態とすることができる。
【0218】
この測定原則によって、基準ガスの分子の最も少ない濃度を周囲空気内で検出することができる。それゆえ、有毒で腐食性又は爆発性のガス、例えばアンモニアの監視は、特に安全且つ確実である。
【0219】
有利には、測定原則はまた、誤り制御又は誤警報を本質的に確実にする。ガス・センサが正しく動く場合にのみ、周囲空気内に顕著なアンモニア濃度がない場合に予想される最大振幅を示すPAS信号は、確実に検出される。制限値は、監視範囲のために定義可能であり、アンモニアの許容濃度に対応する。
【0220】
音検出器、エミッタ又は任意の他の構成要素が不完全である場合、これは、予想されるPAS信号の変化として検出される。警告を自動的に発することができる。PAS信号からの偏差に応じて、警告メッセージは、ガス・センサのおそらく不完全な機能及び/又は許容できない制限値を意味しうる。
【0221】
警告は、監視機能又は類似のものによって発する必要はなく、測定原則に固有である。警告がないこと及び潜在的に危険な濃度の増加が検出されないことは、効果的に回避される。
【0222】
好ましくは、ガス・センサは、変調可能なエミッタ及び/又はMEMSセンサを制御し、変調可能なエミッタ及び/又はMEMSセンサからデータを受信し、必要に応じて、データを評価するように構成される制御ユニットをさらに備える。
【0223】
制御ユニットは、好ましくは上述した電子回路を備えてもよく、電子回路は、基準チャンバ内に位置し、MEMSセンサに接続されている。さらに、制御ユニットは、少なくとも1つの(外部の)データ処理ユニット(例えば、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能論理回路(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プログラム可能論理コントローラ及び/又は他の電子部品、好ましくはプログラム可能回路)を備えることが好ましく、これは、基準チャンバの外側に位置し、基準チャンバ内で電子回路に接続されている。
【0224】
例えば、制御ユニットは、一方では、外部データ処理ユニットによって電気制御信号を出力し、電気制御信号が変調可能なエミッタ及びMEMSセンサを制御することが好ましい場合がある。他方では、好ましくは外部データ処理ユニットによって、MEMSセンサ(特にPAS信号上の測定データ)によって記録される測定データの評価を行うことができる。内部の電子回路はまた、MEMSセンサの測定データの(事前の)評価をすでに実行することができる。しかしながら、内部の電子回路は、さらなる処理及び/又は評価のために、未処理の測定データを外部データ処理ユニットに実質的に転送することも好ましい場合がある。
【0225】
以下に、本発明は、例によってさらに詳細に説明されるが、それらに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0226】
図1A】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第1の好適実施例の概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図1B】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第1の好適実施例の概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2A】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2B】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2C】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2D】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2E】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2F】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2G】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2H】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2I】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2J】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図2K】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための方法の第1の好適実施例の好適なプロセス・ステップの概略図であり、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面上に残る。
図3A】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第2の好適実施例の概略図であり、弁を示す。
図3B】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第2の好適実施例の概略図であり、弁を示す。
図4A】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第2の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、弁を示す。
図4B】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第2の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、弁を示す。
図5A】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第3の好適実施例の概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図5B】基準ガスで充填される基準チャンバを形成するための本発明による方法の第3の好適実施例の概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6A】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6B】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6C】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6D】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6E】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6F】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6G】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
図6H】基準ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の好適実施例の好適な方法ステップの概略図であり、その開口は、熱はんだによって封止される。
【発明を実施するための形態】
【0227】
図1Aから図1Bは、本発明による製造方法の第1の変形の概略図を示す。
【0228】
第1のウェーハ1及び第2のウェーハ2が提供され、それによって、第1の(上の)ウェーハ1及び第2の(下の)ウェーハ2は、各々キャビティ6を有する。MEMSデバイス及び/又は電子回路は、第1のウェーハ1及び/又は第2のウェーハ2上に存在する(例えば、キャビティ内であるが、図示せず)。
【0229】
第1のウェーハ1を第2のウェーハ2に接合することは、接合チャンバ内で起こり、基準ガス11で充填可能なボリューム7を形成する。開口9は、接合後、2つのウェーハのコンタクト面3上に残る。第1のウェーハ1及び第2のウェーハ2はまた、好ましくは、この目的のためにコンタクト面3を有し、コンタクト面3を用いて、第1のウェーハ1を第2のウェーハ2に接合し、コンタクト面3上の領域は、開口9を形成するために接合されない。
【0230】
図1Aは、右側に、基準チャンバの接合されない側方領域を示し、これによって、開口9を提供することができる。開口9を介して基準チャンバ内に基準ガス11を満たすことは、記載されているように、コーティング・システム内で実行可能である。図1Aにおいて、満たすステップは、矢印として示される。
【0231】
好適実施例において、基準チャンバの開口9をコーティング・システム内で封止することは、コーティング・プロセスによって実行され、コーティング・プロセスは、図1Bに示すように、少なくとも開口の領域の上に、好ましくは基準チャンバ全体の周りにカバー層12を適用する。カバー層12は、好ましくは、基準チャンバ全体を確実に密封する窒化物でもよい。
【0232】
図2Aから図2Kは、基準ガス11で充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第1の変形の好適な方法ステップを示し、基準チャンバでは、開口は、接合後、ウェーハのコンタクト面3上に残る。
【0233】
図2Aに示すように、第1のプロセス・ステップでは、第1のウェーハ1は、後面上が第1の接合材料4でスパッタリング可能である。第1の接合材料4は、好ましくは金とすることができる。ここで、接合材料は、接合するのに好ましく適している材料を意味する。
【0234】
図2Bは、第1の接合材料4の好適な構造化を示す。左側は、形成される基準チャンバを通る中心断面を示す。右側は、加えて、平面図を示す。構造化された第1の接合材料4は、ほぼ閉境界を形成するが、左側に中断を有する。中断は、接合されず、基準チャンバ内への開口を形成するように機能する。
【0235】
図2Cから図2Fに示すように、第1のウェーハ1の構造化は、フォトレジスト8及びエッチング・プロセスによって実行される。
【0236】
図2Cにおいて、フォトレジスト8は、第1のウェーハ1の前面に適用され、ある領域をさらなる処理のために残す。図2Dに示すように、第1のウェーハ1の前記領域は、エッチング・プロセスを介して、好ましくはディープ反応性イオン・エッチング(DRIE)を介してエッチングされる。次に、第1のウェーハ1の領域は、エッチング・プロセスにおいてエッチングされる。しかしながら、第1のウェーハは、好ましくは、全体的にエッチングされるわけではない。図2Eにおいて、フォトレジスト8は、第1のウェーハ1の後面に適用される。それは、以前のステップと同じフォトレジスト8とすることもできるし、又は、異なるものとすることもできる。後面から開始して、エッチング・プロセス(好ましくはDRIE)は、関連した位置(図2F参照)で再び実行され、前面上で以前エッチングされた領域で、第1のウェーハ1を切断する。加えて、後面エッチング・プロセスは、第1のウェーハ1内にキャビティ6を作成し、キャビティ6を用いて、反応チャンバ内にボリューム7を形成することができる。
【0237】
図2Gにおいて、第1のウェーハ1は、第2のウェーハ2に接合され、第2のウェーハ2上に、第2の接合材料5は位置する。第2のウェーハ2もまた、第1のウェーハ1のキャビティ6と相補的であるキャビティ6を有する。第2のウェーハ2は、類似したエッチング・プロセスによって提供可能である。
【0238】
第2の接合材料5は、好ましくは、アルミニウム、銅及び/又は金とすることができる。第2の接合材料5は、必須ではないが、構造化形式で存在してもよい。形成される開口9で接合することを回避するために、第1のウェーハ1の第1の接合材料4が左側の中断を有すれば十分である。好ましくは、第1のウェーハ1及び第2のウェーハ2は、熱圧着接合(TC:thermo-compression、略して接合)を介してともに接合される。しかしながら、左側の領域は、コンタクト面3において接合されない。
【0239】
プロセスのこの好適実施例において、結合されていないコンタクト面の領域が、基準チャンバを基準ガス11、例えばアンモニアで充填するための開口9として用いられる。したがって、ボリューム7を含み、開口9を有する基準チャンバが製造される。このことにより、開口9は、基準チャンバの側方領域に位置し、結合プロセスがこの領域において起こらないという事実によって提供される。図2Gの左において、開口9は、基準チャンバの側方領域に見られる。基準チャンバの右の図示例において、好ましくは金の第1の接合材料4の平面図が示される。接合プロセスは、接合チャンバ内で起こるが、これは図示されない。
【0240】
図2Hにおいて、基準チャンバは、もはや接合チャンバ内には位置せず、コーティング・システム内、好ましくは、PECVD(プラズマ化学気相堆積法)システム内に位置する。この場合、室内圧力を有する任意のガスは、最初に基準チャンバのボリューム7内に位置することができ、図2Iにおいて、コーティング・システム内に送り出され、次に、基準チャンバのボリューム7内は真空になる。当業者は、実際には、真空が決して絶対でなく、通常の大気圧と比較してかなり低い圧力によって特徴付けられるということを知っている。
【0241】
図2Jにおいて、コーティング・システムは、基準ガス11で満たされるので、基準ガス11、例えばアンモニアは、開口9を介して基準チャンバのボリューム7内に入る。図2Kにおいて、基準チャンバは、カバー層12を介してコーティング・システム内で密封され、特に、窒化物を堆積させることによって、開口9は、確実に封止され、それゆえ、基準ガス11はもはや基準チャンバから漏出することはできない。
【0242】
図3Aから図3Bは、基準ガス11で充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第2の変形の概略図を示す。第1のウェーハ1及び第2のウェーハ2が提供され、両方のウェーハ1及び2もまたキャビティ6を示す。第1のウェーハ1及び/又は第2のウェーハ2上のMEMSデバイス及び/又は電子回路が、例えば、キャビティ6内に存在する。しかしながら、これらは図示されない。
【0243】
2つのウェーハ1及び2を接合した後、開口9は、第1のウェーハ1又は第2のウェーハ2内にエッチングされる。弁14は、開口9の端に位置する。弁14が基準チャンバのボリューム7内の開口9の端に位置するように、2つのウェーハ1及び2はともに接合される。好ましくは、弁14は、接合プロセスの前に、第1のウェーハ1又は第2のウェーハ2に取り付けられる。対照的に、接合プロセス自体の間、コンタクト面3を用いて、全体に、第1のウェーハ1を第2のウェーハ2に接合する。第1のウェーハ1を第2のウェーハ2に接合した後、基準チャンバを接合チャンバから取り出し、コーティング・システム内に入れ、コーティング・システムは、基準ガス11で満たされ、基準ガス11は、開口9及び弁14を介して基準チャンバのボリューム7内に入る。
【0244】
最後に、好ましくは窒化物堆積を有するカバー層12を用いて、基準チャンバを、好ましくは基準チャンバの全領域にわたり密封する。
【0245】
基準ガス11と異なるプロセス・ガスがカバー層12を適用するために用いられる場合、この製造プロセスは、特に好ましい。有利には、いかなるガス交換(基準ガスからプロセス・ガスまで)も汚染につながりえないように、カバー層12でコーティングする前に、弁14は、すでに基準ガス11を基準チャンバ内に封止する。
【0246】
図4Aから図4Iは、基準ガス11で充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第2の変形の好適な方法ステップを示す。
【0247】
図4Aにおいて、第1のウェーハ1は、後面上が第1の接合材料4でコーティングされる。好ましくは、第1の接合材料4は、金であり、スパッタリング・プロセスを介して第1のウェーハ1の後面上にコーティングされる。
【0248】
図4Bにおいて、第1の接合材料4は、第1のウェーハ1の後面上にパターニングされる。第1の接合材料4の平面図は、右に示される。図4Cにおいて、フォトレジスト8は、第1のウェーハ1の前面に適用される。図4Dにおいて、材料層13は、第1のウェーハ1の後面に適用される。好ましくは、軟質金属、特に好ましくは、アルミニウムは、スパッタリング・プロセスを介して、第1のウェーハ1の背面に対して、材料層13として薄膜として適用される。図4Eにおいて、第1のウェーハ1の前面から開始して、開口9は、エッチング・プロセスを介して、好ましくはドライ・エッチング・プロセスを介して形成される。このプロセスにおいて、開口9は、材料層13までエッチングされる。その後、図4Fにおいて、材料層13は、構造化され、柔軟な弁14を形成する。
【0249】
図4Gにおいて、第1のウェーハ1は、好ましくはTC接合(上記参照)を介して、第2のウェーハ2に接合される。第2のウェーハ2のコンタクト面3上の第2の接合材料5は、好ましくは、金、銅及び/又はアルミニウムとすることができる。図4Hにおいて、コーティング・システム内、好ましくはPECVDシステム内の基準チャンバは、開口9を介して基準ガス11で満たされ、ガスが導入されるとき、弁14は開く。図4Iにおいて、基準チャンバは、カバー層12を介して、好ましくは、窒化物を介して密封される。
【0250】
図5Aから図5Bは、本発明による製造方法の第3の変形の概略を示す。この第3の変形でも、2つのウェーハ1及び2は、キャビティ6を有し、キャビティ6内にMEMSデバイス及び/又は電子回路が挿入可能である。MEMSデバイス及び/又は電子回路は図示されない。2つのウェーハ1及び2は、好ましくは、接合チャンバ内ですべてのコンタクト面3で互いに接合される。
【0251】
好ましくは、開口9は、接合の前に、エッチング・プロセス、好ましくはドライ・エッチングを介して形成される。両方のウェーハ1と2を接合した後、はんだ15は、開口9の近くに配置される。基準ガス11、例えばアンモニアを、コーティング・システム内の基準チャンバのボリューム7内に導入した後、はんだ15は、開口9内に流れ込むように溶解する。はんだが溶解し、開口9内に流入した結果として、開口9は封止される。基準チャンバは、カバー層12を介して、好ましくは、窒化物を介して密封される。
【0252】
図6Aから図6Hは、ガスで充填される基準チャンバを製造するための本発明による方法の第3の変形の好適な方法ステップを示す。図6Aにおいて、第1のウェーハ1が提供され、その後面上で第1の接合材料4でコーティングされる。好ましくは、第1の接合材料4は、金であり、スパッタリング・プロセスを介して第1のウェーハ1の後面に適用される。図6Bにおいて、第1の接合材料4は、第1のウェーハ1の後面上で構造化される。
【0253】
第1の接合材料4の構造化の平面図は、右に示される。図6Cにおいて、フォトレジスト8は、第1のウェーハ1の前面に適用される。図6Dにおいて、前面から開始して、開口9は、エッチング・プロセスを介して、好ましくはドライ・エッチング・プロセスを介して、特に好ましくはディープ反応性イオン・エッチングを介して第1のウェーハ1に形成される。図6Eにおいて、第2のウェーハ2は、コンタクト・エリア3で第1のウェーハ1に接合される。第2のウェーハは、コンタクト面3において、好ましくは金、銅及び/又はアルミニウムである第2の接合材料5を備える。好ましくは、2つのウェーハ1及び2は、TC接合を介してともに接合される。接合プロセスの後、図6Fにおいて、熱はんだ15は、開口9の近くで適用される。次に、図6Gにおいて、コーティング・システム内の基準チャンバは、基準ガス11、例えば、アンモニアで満たされる。最後に、図6Hにおいて、熱はんだ15は、溶解し、開口9内に流れ込み、開口9を封止する。
【0254】
さらに、基準チャンバは、カバー層12で、好ましくは窒化物でコーティングされるので、基準チャンバは、特に良好に密封される。
【符号の説明】
【0255】
1 第1のウェーハ
2 第2のウェーハ
3 コンタクト面
4 第1の接合材料
5 第2の接合材料
6 キャビティ
7 ボリューム
8 フォトレジスト
9 開口
11 基準ガス
12 カバー層
13 弁として構造化するための材料層
14 弁
15 はんだ
【0256】
文献目録
Bonilla-Manrique Oscar E.ら「Sub-ppm-Level Ammonia Detection Using Photoacoustic Spectroscopy with an Optical Microphone Based on a Phase Interferometer」Sensors 19.13(2019):2890
Peng W.Y.ら「High-sensitivity in situ QCLAS-based ammonia concentration sensor for high-temperature applications」Applied Physics B 122.7(2016):188
Schilt Stephaneら「Ammonia monitoring at trace level using photoacoustic spectroscopy in industrial and environmental applications」Spectrochimica Acta Part A:Molecular and Biomolecular Spectroscopy 60.14(2004):3259-3268
Stemme Goran及びEdvard Kalvesten「Micromachined gas-filled chambers and method of microfabrication」米国特許第6,124,145号、2000年9月26日
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
【手続補正書】
【提出日】2023-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイス及び付加的に電子回路が存在するガス充填基準チャンバを含む光音響ガス・センサを製造する方法であって、
a)第1のウェーハ(1)及び第2のウェーハ(2)を提供するステップであって、少なくとも前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)は、キャビティ(6)を有し、前記MEMSデバイスは、前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)上に存在し、前記MEMSデバイスはMEMSセンサである、ステップと、
b)接合チャンバ内で前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合し、基準ガス(11)で充填可能なボリューム(7)を形成するステップであって、開口(9)は、接合後、前記2つのウェーハのコンタクト面(3)上に残り、又は、開口(9)は、接合の前若しくは後に、前記第1のウェーハ(1)及び/又は前記第2のウェーハ(2)内に作られる、ステップと、
c)コーティング・システム内で前記開口(9)を介して前記基準チャンバ内に基準ガス(11)を満たすステップと、
d)前記コーティング・システム内で前記基準チャンバの前記開口(9)を封止するステップと、
e)変調可能なエミッタを提供するステップと、
f)前記基準ガスで充填された前記基準チャンバと前記変調可能なエミッタとを配置するステップであって、前記基準チャンバが前記エミッタのビーム経路内に存在し、前記エミッタが変調可能な放射線によって前記基準チャンバ内の前記基準ガス(11)を励起し、前記MEMSセンサによって検出可能な音圧波を形成する、ステップと、
を含む、製造する方法。
【請求項2】
前記基準ガス(11)は、腐食性及び/又は爆発性のガス、好ましくは、メタン、プロパン、プロピレン、シラン、クロロシラン、水素及び/又は酸素、特に好ましくはアンモニアを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準チャンバ内で前記基準ガス(11)の分圧を設定するために、不活性ガス、好ましくは、窒素は、前記開口(9)を介して前記基準チャンバ内に追加で導入されることを特徴とする、請求項1から2までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のウェーハ(1)及び前記第2のウェーハ(2)は、前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合するために用いられるコンタクト面(3)を有し、前記開口(9)を形成するために、前記コンタクト面(3)上の領域は、接合されない、及び/又は
開口(9)は、接合後、前記2つのウェーハのコンタクト面(3)上に残り、前記開口(9)は、1μmから1000μm、好ましくは1μmから100μmの断面と、1μmから1000μm、好ましくは10μmから500μmの長さとを有することを特徴とする、請求項1から3までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合する前又は後に、前記開口(9)は、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の外側から開始して内側に、好ましくはエッチング・プロセスによって形成されることを特徴とする、請求項1から4までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項6】
弁(14)は、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の前記開口(9)の端に存在し、前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合した後、前記弁(14)は、好ましくは、前記第1のウェーハ(1)又は前記第2のウェーハ(2)の外側から開始する前記開口(9)の前記端に、且つ、前記基準チャンバの前記ボリューム(7)内に位置する、及び/又は、
前記弁(14)は、好ましくは、軟質金属であり、好ましくは、鉛、金、インジウム、銅、白金、銀、亜鉛、スズ及び/又はその化合物、特に好ましくはアルミニウム及び/又はその化合物を含む群から選択される非鉄金属であることを特徴とする、請求項1から5までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のウェーハ(1)を前記第2のウェーハ(2)に接合した後、前記コーティング・システム内の前記基準チャンバは、前記基準ガス(11)で満たされ、前記ガスは、前記開口(9)及び前記弁(14)を介して前記基準チャンバの前記ボリューム(7)内に入ることを特徴とする、請求項1から6までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項8】
前記基準チャンバ内に前記基準ガス(11)を満たした後、前記開口(9)を封止するために、はんだ(15)が溶解されることを特徴とする、請求項1から7までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項9】
前記はんだ(15)は、鉛、スズ、亜鉛、銀、銅、その合金及び/又はその化合物を含む群から選択される可溶性材料を含むことを特徴とする、請求項1から8までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項10】
前記開口(9)は、前記コーティング・システム内でコーティング・プロセスによって、好ましくは、スプレー・コーティング、ミスト・コーティング及び/又は蒸気コーティングによって、封止されることを特徴とする、請求項1から9までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング・システムは、物理コーティング・システム又は化学コーティング・システム、低圧の化学コーティング・システム及び/又はエピタキシャル・コーティング・システムであることを特徴とする、請求項1から10までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング・システム内で前記開口(9)を封止するために、カバー層(12)は、少なくとも前記開口(9)の領域の上に適用され、
窒化物は、好ましくは、前記カバー層(12)のための材料として用いられることを特徴とする、請求項1から11までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項13】
前記開口(9)を封止するため、及び、カバー層(12)を形成するために、プロセス・ガスは、前記コーティング・システム内に導入され、
前記プロセス・ガスは、基準ガスで満たした後、前記基準チャンバ内に導入され、又は、
前記カバー層(12)を形成するための材料は、前記基準ガスが前記プロセス・ガスとして同時に機能することができるように選択されることを特徴とする、
請求項1から12までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項14】
前記電子回路は、プロセッサ、スイッチ、トランジスタ及び/又はトランスデューサを備えることを特徴とする、請求項1から13までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項15】
前記MEMSデバイスは、音圧検出器であり、前記音圧検出器は、好ましくは、容量的若しくは光学的に可読な、ピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは磁気バー、及び/若しくは容量性、ピエゾ電気、ピエゾ抵抗及び/若しくは光マイクロフォンを備えることを特徴とする、請求項1から14までの1つ又は複数に記載の方法。
【請求項16】
光音響ガス・センサであって、
- 変調可能なエミッタと、
- 基準ガス(11)で充填される基準チャンバであって、MEMSセンサが、前記基準チャンバ内に存在する、基準チャンバと
を備え、
前記基準チャンバは、前記エミッタのビーム経路内に存在し、その結果、前記エミッタは、変調可能に放出可能な放射線によって前記基準チャンバ内の前記基準ガス(11)を励起して、前記MEMSセンサによって検出可能である音圧波を形成することができる、光音響ガス・センサにおいて、
前記光音響ガス・センサは、請求項1から15までに記載の方法によって製造されることを特徴とする、光音響ガス・センサ。
【請求項17】
前記基準チャンバは、前記基準ガス(11)で充填される封止されたシステムを形成し、分析されるガス、好ましくは、周囲空気は、前記エミッタと前記基準チャンバとの間の前記ビーム経路内に存在し、その結果、分析される前記ガス内の前記基準ガス(11)の比率は、前記基準チャンバ内の音圧波の形成によって測定可能であることを特徴とする、請求項16に記載の光音響ガス・センサ。
【国際調査報告】