(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】β-ラクタマーゼ阻害剤としてのホウ酸誘導体
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20240321BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20240321BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
A61K31/69
A61P31/04
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557782
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022086545
(87)【国際公開番号】W WO2022218328
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202110392189.3
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110866339.X
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210201742.5
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521218294
【氏名又は名称】上海拓界生物医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TUOJIE BIOTECH(SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 103, No.14 Building, No.3728 Jinke Road, Free Trade Pilot Zone, Pudong New Area, Shanghai 201203, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 浩▲ミアオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ ▲紅▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 文明
(72)【発明者】
【氏名】余 健
(72)【発明者】
【氏名】祝 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲ハオ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 正涛
【テーマコード(参考)】
4C086
4H048
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA43
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC20
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB29
4H048VA22
4H048VA75
(57)【要約】
式Iで示されるβ-ラクタマーゼ阻害剤のホウ酸誘導体又はその薬学的に許容される塩及びそれらの立体異性体、回転異性体若しくは互変異性体若しくは重水素化合物である。当該ホウ酸誘導体は、細菌感染の治療に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体若しくは互変異性体若しくは重水素化合物であって、
【化1】
そのうち、
環Aは、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環又は複素芳香環という環系から選ばれ、
Y
1は、-O-又は-S-から選ばれ、
Y
2はCR
5又はNから選ばれ、Y
3はCR
5’又はNから選ばれ、且つY
2とY
3は同時にNではなく、
R
1とR
2は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、
R
3は、独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基及びカルボン酸アイソスターという基から選ばれ、
R
4は、独立的に、任意選択的に置換される-NR
iR
j、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲンという基から選ばれ、
R
5は、水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、又はR
5、R
6は、その隣接する炭素原子と共に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系を形成し、
R
5’は、水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、又はR
5’、R
6は、その隣接する炭素原子と共に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系を形成し、
条件としては、R
6は、R
5とR
5’のうちの少なくとも1つ及び隣接する炭素原子と共に環系を形成し、
R
i、R
jは、それぞれ独立的に水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、
R
kは、独立的に水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、-NR
iR
jから選ばれ、そのうち、前記アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基は、任意選択的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、オキシ基、チオ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される、
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体若しくは互変異性体若しくは重水素化合物。
【請求項2】
前記式Iで示される化合物は、式I-1又はI-2で示される化合物であり、
【化2】
そのうち、環A、R
1、R
2、R
3、R
4、Y
1は、請求項1に記載された通りであり、
環Bと環Cは、それぞれ独立的に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系から選ばれ、
Y
2’は、CR
5又はNから選ばれ、
Y
3’は、CR
5’又はNから選ばれ、
R
5、R
5’は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれる、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
6がR
5とR
5’のうちの少なくとも1つ及び隣接する炭素原子と共に形成された環系は、
【化3】
という環系から選ばれ、そのうち、
Yは、独立的にCH
2、NH、O、Sから選ばれ、
R
a、R
bは、それぞれ独立的に、任意選択的に置換されるC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、オキシ基、チオ基、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6アルキルチオエーテル基、C
2~C
6アルケニル基、C
2~C
6アルキニル基、3員~6員シクロアルキル基、3員~6員ヘテロシクリル基、7員~10員縮合シクロアルキル基、7員~10員縮合ヘテロシクリル基、6員~10員アリール基、5員~10員ヘテロアリール基、8員~12員縮合環アリール基、5員~12員縮合ヘテロアリール基という基から選ばれ、
nは1、2、3、4、5又は6から選ばれ、
m、pは、それぞれ独立的に0、1、2、3、4、5又は6から選ばれる、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
環B、環Cは、それぞれ独立的に、
【化4】
という環系から選ばれ、そのうち、
Yは、独立的にCH
2、NH、O、Sから選ばれ、
R
a、R
bは、それぞれ独立的に、任意選択的に置換されるC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、オキシ基、チオ基、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6アルキルチオエーテル基、C
2~C
6アルケニル基、C
2~C
6アルキニル基、3員~6員シクロアルキル基、3員~6員ヘテロシクリル基、7員~10員縮合シクロアルキル基、7員~10員縮合ヘテロシクリル基、6員~10員アリール基、5員~10員ヘテロアリール基、8員~12員縮合環アリール基、5員~12員縮合ヘテロアリール基という基から選ばれ、
nは1、2、3、4、5又は6から選ばれ、
m、pは、それぞれ独立的に0、1、2、3、4、5又は6から選ばれる、
請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
R
1とR
2は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるC
1~C
6アルキル基、C
2~C
6アルケニル基、C
2~C
6アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、-NR
iR
j、C
1~C
6アルコキシ基という基から選ばれる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
環Aは、任意選択的に置換される3員~12員、好ましくは3員~6員の炭素環又は複素環から選ばれる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
3は、独立的に、任意選択的に置換される-C(O)OR
k及び任意選択的に置換されるカルボン酸アイソスターから選ばれる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれ、そのうち、
Yは独立的にCH
2、NH、O、Sから選ばれ、nは独立的に1、2、3、4、5又は6から選ばれ、X
1は独立的にF、Cl、Brから選ばれる、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれる、
請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれ、好ましくは
【化8】
又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
少なくとも1種の請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物、及び薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む、
医薬組成物。
【請求項12】
細菌感染を治療するための薬剤の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物の、
用途。
【請求項13】
前記感染は、シュードモナスアシドボランス(Pseudomonas acidovorans)、シュードモナスアルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)、バークホルデリアセパシア(Burkholderia cepacia)、エロモナスハイドロフィラ(Aeromonas hydrophilia)、フランシセラツラレンシス(Francisella tularensis)、モーガネラモーガニイ(Morganella morganii)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウスブルガリス(Proteus vulgaris)、プロビデンシアアルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、プロビデンシアレットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシアスチュアルティ(Providencia stuartii)、アシネトバクターバウマニー(Acinetobacter baumannii)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(Bordetella para pertussis)、ボルデテラブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、ヘモフィルスデュクレイ(Haemophilus ducreyi)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラヘモリチカ(Pasteurella hae molytica)、ブランハメラカタラーリス(Branhamella catarrhalis)、ボレリアブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、キンゲラ(Kingella)、ガードネレラバジナリス(Gardnerella vaginalis)、バクテロイデスディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス属3452Aホモ群(Bacteroides 3452A ho mology group)、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)、マイコバクテリウムチュバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウムアビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウムイントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウムレプラエ(Mycobacterium leprae)、コリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウムウルセランス(Corynebacteriumulcerans)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカスアガラクチ(Streptococcusagalactiae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcusfaecalis)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカスインターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカスヒイクス豚亜種(Staphylococcus hyicus subsp.hyicus)、スタフィロコッカスヘモリチカス(Staphylococcus hae molyticus)、スタフィロコッカスホミニス(Staphylococcus hominis)又はスタヒロコッカスサッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)から選ばれる細菌を含む、
請求項12に記載の用途。
【請求項14】
前記感染は、シュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ステノトロフォモナスマルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクターフルンディ(Citrobacter freundii)、サルモネラティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラパラティフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラエンテリティディス(Salmonella enteritidis)、シゲラディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラフレクスネリ(Shigellaflexneri)、シゲラソンネイ(Shigella sonnei)、エンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクターエアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラオキシトカ(Klebsiella oxytoca)、セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)、アシネトバクターカルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクターヘモリチカス(Acinetobacter hae molyticus)、エルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニアペスティス(Yersinia pestis)、エルシニアシュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis)、エルシニアインターメディア(Yersinia intermedia)、ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルスパラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルスヘモリチカス(Haemophilus hae molyticus)、ヘモフィルスパラヘモリチカス(Haemophilusparahae molyticus)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクターフェタス(Campylobacterfetus)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクターコリ(Campylobacter coli)、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオパラヘモリチカス(Vibrio parahae molyticus)、レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ナイセリアゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリアメニンギティディス(Neisseria meningitidis)、モラクセラ(Moraxella)、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデスブルガタス(Bacteroidesvulgatus)、バクテロイデスオバツス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデステタイオタオミクロン(Bacteroidesthetaiotaomicron)、バクテロイデスユニフォーミス(Bacteroides uniformis)、バクテロイデスエガーシー(Bacteroideseggerthii)又はバクテロイデススプランクニカス(Bacteroides splanchnicus)から選ばれる細菌を含む、
請求項12に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬分野に属し、具体的に、β-ラクタマーゼ阻害剤としてのホウ酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
β-ラクタム系抗生物質は、臨床的に最も広く適用され、抗感染効果が最も良い抗菌薬の一種である。現在取得可能な最も重要な抗生物質は、数種類のβ-ラクタム環を含む化合物であり、ペニシリン系、ペネム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、単環式ラクタム系及びスルバクタム(sulfactam)系を含む。これらのβ-ラクタム抗生物質は、ペニシリン結合タンパク質(PBP)と呼ばれるタンパク質と結合することにより細胞壁生合成を阻害し、上記タンパク質はペプチドグリカンの合成に必要なもので、上記ペプチドグリカンは、グラム陰性とグラム陽性細菌の細胞壁の主成分である。
【0003】
β-ラクタム系抗生物質は、全世界で依然として非常に重要なものであるとはいえ、種々の感染病原菌においてβ-ラクタマーゼ系抗生物質に耐性が生じることで、細菌感染症への治療効果が低減される。最も顕著な薬剤耐性機構は、活性中心にセリン残基を有するA、CとDタイプのβ-ラクタマーゼを産生することである。これらの酵素はβ-ラクタム系抗生物質を分解させ、抗菌力を不活性化することができる。Aタイプのβ-ラクタマーゼは、主にペニシリン系薬剤に対する基質特異性を有し、Cタイプのβ-ラクタマーゼは、主にセファロスポリン系薬剤に対する基質特異性を有する。市販で入手可能なβ-ラクタマーゼ阻害剤として、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムが知られており、これらの阻害剤は、主にAタイプのβ-ラクタマーゼ産生菌に有効であり、ペニシリン系抗菌薬と混合して使用される。ところが、現在まで250種以上のβ-ラクタマーゼが報告されており、そのうち、Cタイプのβ-ラクタマーゼ及びAとDタイプに属する基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の拡散以外、Aタイプに属し、且つ更にβ-ラクタム系抗菌薬の最後の障壁であるカルバペネムを分解するKPC-2の薬剤耐性菌を産生することも、問題視されている。
【0004】
近年、QPX-7728、VNRX-5133などの新規のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、開発のホットスポットとなってきた。WO2014107536、WO2014089365、WO2018005662、WO2019226931には、β-ラクタマーゼ阻害剤の薬剤耐性を改善するために、一連のβ-ラクタマーゼ阻害剤が開発されている。
【化1】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、細菌感染の治療に適用可能なβ-ラクタマーゼ阻害剤としてのホウ酸誘導体を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体若しくは互変異性体若しくは重水素化合物を提供し、
【化2】
そのうち、
環Aは、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環又は複素芳香環という環系から選ばれ、
Y
1は、-O-又は-S-から選ばれ、
Y
2はCR
5又はNから選ばれ、Y
3はCR
5’又はNから選ばれ、且つY
2とY
3は同時にNではなく、
R
1とR
2は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、
R
3は、独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基及びカルボン酸アイソスターという基から選ばれ、
R
4は、独立的に、任意選択的に置換される-NR
iR
j、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲンという基から選ばれ、
R
5は、水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、又はR
5、R
6は、その隣接する炭素原子と共に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系を形成し、
R
5’は、水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれ、又はR
5’、R
6は、その隣接する炭素原子と共に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系を形成し、
条件としては、R
6は、R
5とR
5’のうちの少なくとも1つ及び隣接する炭素原子と共に環系を形成し、
R
i、R
jは、それぞれ独立的に水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、
R
kは、独立的に水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、-NR
iR
jから選ばれ、そのうち、前記アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基は、任意選択的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、オキシ基、チオ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0007】
Bはホウ素原子である。
【0008】
ある実施形態において、Rkは、独立的に水素原子、C1~C6アルキル基、C1~C6ハロアルキル基、C1~C6アルコキシ基、ヒドロキシ基、-NRiRjから選ばれ、そのうち、上記アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基は、任意選択的にC1~C6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NRiRj、オキシ基、チオ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルコキシ基、C1~C6アルキルチオエーテル基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、3員~6員シクロアルキル基、3員~6員ヘテロシクリル基、6員~10員アリール基及び5員~10員ヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0009】
ある実施形態において、上記式Iで示される化合物は、式I-1又はI-2で示される化合物であり、
【化3】
。
【0010】
そのうち、環Bと環Cは、それぞれ独立的に、任意選択的に置換される炭素環、複素環、芳香環、複素芳香環、スピロ炭素環、スピロ複素環、縮合炭素環、縮合複素環、縮合芳香環、縮合複素芳香環という環系から選ばれ、
Y2’は、CR5又はNから選ばれ、
Y3’は、CR5’又はNから選ばれ、
R5、R5’は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NRiRj、-C(O)Rk、-C(O)ORk、-S(O)Rk、-S(O)ORk、-S(O)(O)Rk、-S(O)(O)ORk、-C(S)Rk、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基という基から選ばれる。
【0011】
ある実施形態において、R
6がR
5とR
5’のうちの少なくとも1つ及び隣接する炭素原子と共に形成された環系又は環B、環Cは、独立的に、
【化4】
という環系から選ばれ、そのうち、
Yは、独立的にCH
2、NH、O、Sから選ばれ、
R
a、R
bは、それぞれ独立的に、任意選択的に置換されるC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NR
iR
j、オキシ基、チオ基、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-S(O)R
k、-S(O)OR
k、-S(O)(O)R
k、-S(O)(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6アルキルチオエーテル基、C
2~C
6アルケニル基、C
2~C
6アルキニル基、3員~6員シクロアルキル基、3員~6員ヘテロシクリル基、7員~10員縮合シクロアルキル基、7員~10員縮合ヘテロシクリル基、6員~10員アリール基、5員~10員ヘテロアリール基、8員~12員縮合環アリール基、5員~12員縮合ヘテロアリール基という基から選ばれ、
nは1、2、3、4、5又は6から選ばれ、
m、pは、それぞれ独立的に0、1、2、3、4、5又は6から選ばれる。
【0012】
ある実施形態において、R1とR2は、それぞれ独立的に水素又は任意選択的に置換されるC1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、-NRiRj、C1~C6アルコキシ基という基から選ばれる。
【0013】
ある実施形態において、環Aは、任意選択的に置換される3員~12員、より好ましくは3員~6員の炭素環又は複素環から選ばれる。
【0014】
ある実施形態において、R3は、独立的に、任意選択的に置換される-C(O)ORk及び任意選択的に置換されるカルボン酸アイソスターから選ばれる。
【0015】
ある実施形態において、カルボン酸アイソスターは、テトラゾール、-SO3H、-SO2HNR、-PO2(R)2、-PO3(R)2、-CONHNHSO2R、-COHNSO2R及び-CONRCNから選ばれてもよく、そのうち、Rは、水素、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、3員~6員シクロアルキル基、6員~10員アリール基、5員~10員ヘテロアリール基及び3員~6員ヘテロシクリル基から選ばれる。
【0016】
ある実施形態において、上記化合物は
【化5】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれ、
そのうち、Yは独立的にCH
2、NH、O、Sから選ばれ、nは独立的に1、2、3、4、5又は6から選ばれ、X
1は独立的にF、Cl、Brから選ばれる。
【0017】
ある実施形態において、上記化合物は
【化6】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれる。
【0018】
ある実施形態において、上記化合物は
【化7】
又はその薬学的に許容される塩、又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれる。
【0019】
ある実施形態において、上記薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選ばれる。ある実施形態において、上記薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩であり、二ナトリウム塩を含む。
【0020】
ある実施形態において、上記化合物は、
【化8】
又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれる。
【0021】
ある実施形態において、上記化合物は、
【化9】
又はその立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物から選ばれる。
【0022】
本開示に記載の「アルキル基」は、C1~C6アルキル基が好ましい。
【0023】
本開示に記載の「アルケニル基」は、C2~C6アルケニル基が好ましい。
【0024】
本開示に記載の「アルキニル基」は、C2~C6アルキニル基が好ましい。
【0025】
本開示に記載の「アルキレン基」は、C1~C6アルキレン基が好ましい。
【0026】
本開示に記載の「アルケニレン基」は、C2~C6アルケニレン基が好ましい。
【0027】
本開示に記載の「アルキニレン基」は、C2~C6アルキニレン基が好ましい。
【0028】
本開示に記載の「アルコキシ基」は、C1~C6アルコキシ基が好ましい。
【0029】
本開示に記載の「アルキルチオエーテル基」は、C1~C6アルキルチオエーテル基が好ましい。
【0030】
本開示に記載の「シクロアルキル基」は、好ましくは3員~12員、より好ましくは3員~6員のシクロアルキル基である。
【0031】
本開示に記載の「縮合シクロアルキル基」は、好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員の縮合シクロアルキル基である。
【0032】
本開示に記載の「ヘテロシクリル基」は、好ましくは3員~12員、より好ましくは3員~6員のヘテロシクリル基である。
【0033】
本開示に記載の「縮合ヘテロシクリル基」は、好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員の縮合ヘテロシクリル基である。
【0034】
本開示に記載の「アリール基」は、好ましくは6員~14員、より好ましくは6員~10員のアリール基である。
【0035】
本開示に記載の「縮合環アリール基」は、好ましくは8員~14員、より好ましくは8員~12員の縮合環アリール基である。
【0036】
本開示に記載の「ヘテロアリール基」は、好ましくは5員~12員、より好ましくは5員~10員のヘテロアリール基である。
【0037】
本開示に記載の「縮合へテロアリール基」は、好ましくは5員~14員、より好ましくは5員~12員の縮合へテロアリール基である。
【0038】
本開示に記載の「任意選択的に置換される」基は、当該基が任意選択的にアルキル基(好ましくはC1~C6アルキル基)、ハロゲン、重水素、ヒドロキシ基、メルカプト基、-NRiRj、オキシ基、チオ基、-C(O)Rk、-C(O)ORk、-S(O)Rk、-S(O)ORk、-S(O)(O)Rk、-S(O)(O)ORk、-C(S)Rk、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくはC1~C6アルコキシ基)、アルキルチオエーテル基(好ましくはC1~C6アルキルチオエーテル基)、アルケニル基(好ましくはC2~C6アルケニル基)、アルキニル基(好ましくはC2~C6アルキニル基)、シクロアルキル基(好ましくは3員~6員シクロアルキル基)、ヘテロシクリル基(好ましくは3員~6員ヘテロシクリル基)、縮合シクロアルキル基(好ましくは7員~10員縮合シクロアルキル基)、縮合ヘテロシクリル基(好ましくは7員~10員縮合ヘテロシクリル基)、アリール基(好ましくは6員~10員アリール基)、ヘテロアリール基(好ましくは5員~10員ヘテロアリール基)、縮合環アリール基(好ましくは8員~12員縮合環アリール基)、縮合ヘテロアリール基(好ましくは5員~12員縮合ヘテロアリール基)から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されるものであってもよい。Ri、Rj及びRkは上記の通りである。それぞれの「任意選択的に置換される」基の選択可能な置換基の群は、相同又は相異であってもよい。
【0039】
本開示は、少なくとも1つの上記化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物、及び薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を更に提供する。
【0040】
ある実施形態において、上記医薬組成物の単位用量は0.001 mg~1000 mgである。
【0041】
ある実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は0.01%~99.99%の上記化合物を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は0.1%~99.9%の上記化合物を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は0.5%~99.5%の上記化合物を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は1%~99%の上記化合物を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は2%~98%の上記化合物を含む。
【0042】
ある実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は、0.01%~99.99%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.1%~99.9%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.5%~99.5%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は、1%~99%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。ある実施形態において、上記医薬組成物は、2%~98%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0043】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物の、細菌感染を治療するための用途を更に提供する。細菌生物の例は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性細菌及び嫌気性細菌を含み、例えば、ブドウ球菌(Staphylococcus)、乳酸菌(Lactobacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、八連球菌(Sarcina)、エシェリキア(Escherichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、アシネトバクター(Acinetobacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、プロテウス(Proteus)、カンピロバクター(Campylobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、ナイセリア(Nisseria)、バチルス(Baccillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ペプトコッカス(Peptococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、セラシア(Serratia)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ブルセラ(Brucella)と他の生物を含む。
【0044】
細菌感染の更なる例は、シュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナスアシドボランス(Pseudomonas acidovorans)、シュードモナスアルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)、ステノトロフォモナスマルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、バークホルデリアセパシア(Burkholderia cepacia)、エロモナスハイドロフィラ(Aeromonas hydrophilia)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクターフルンディ(Citrobacter freundii)、サルモネラティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラパラティフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラエンテリティディス(Salmonellaenteritidis)、シゲラディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラフレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラソンネイ(Shigella sonnei)、エンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクターエアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラオキシトカ(Klebsiella oxytoca)、セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)、フランシセラツラレンシス(Francisella tularensis)、モーガネラモーガニイ(Morganella morganii)、プロテウスミラビリス(Proteusmirabilis)、プロテウスブルガリス(Proteus vulgaris)、プロビデンシアアルカリファシエンス(Providenciaalcalifaciens)、プロビデンシアレットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシアスチュアルティ(Providencia stuartii)、アシネトバクターバウマニー(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクターカルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクターヘモリチカス(Acinetobacter hae molyticus)、エルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニアペスティス(Yersinia pestis)、エルシニアシュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis)、エルシニアインターメディア(Yersinia intermedia)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、ボルデテラブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilusinfluenzae)、ヘモフィルスパラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルスヘモリチカス(Haemophilus hae molyticus)、ヘモフィルスパラヘモリチカス(Haemophilus parahae molyticus)、ヘモフィルスデュクレイ(Haemophilus ducreyi)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラヘモリチカ(Pasteurella hae molytica)、ブランハメラカタラーリス(Branhamella catarrhalis)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクターフェタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクターコリ(Campylobacter coli)、ボレリアブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオパラヘモリチカス(Vibrioparahae molyticus)、レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ナイセリアゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリアメニンギティディス(Neisseria meningitidis)、キンゲラ(Kingella)、モラクセラ(Moraxella)、ガードネレラバジナリス(Gardnerella vaginalis)、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデスディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス属3452Aホモ群(Bacteroides3452A ho mology group)、バクテロイデスブルガタス(Bacteroides vulgatus)、バクテロイデスオバツス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデステタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、バクテロイデスユニフォーミス(Bacteroides uniformis)、バクテロイデスエガーシー(Bacteroides eggerthii)、バクテロイデススプランクニカス(Bacteroides splanchnicus)、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)、マイコバクテリウムチュバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウムアビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウムイントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウムレプラエ(Mycobacterium leprae)、コリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウムウルセランス(Corynebacterium ulcerans)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカスアガラクチア(Streptococcus agalactiae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカスサプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカスインターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカスヒイクス豚亜種(Staphylococcus hyicus subsp.hyicus)、スタフィロコッカスヘモリチカス(Staphylococcus hae molyticus)、スタフィロコッカスホミニス(Staphylococcus hominis)又はスタヒロコッカスサッカロリティカス(Staphylococcus saccharolyticus)を含む。
【0045】
本開示に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物は、細菌感染の治療のために1種又は複数種の他の抗生物質と併用することができる。上記他の抗生物質は、例えば、β-ラクタム抗生物質などである。
【0046】
本開示は、哺乳動物における細菌感染を治療する方法を更に提供し、上記哺乳動物はヒトであってもよく、又は非ヒト哺乳動物であってもよく、治療目的のために、哺乳動物に本開示に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物、又は医薬組成物を投与することを含む。
【0047】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、又はそれらの立体異性体、回転異性体、互変異性体若しくは重水素化合物、又は医薬組成物を含む試薬キットを更に提供する。
【0048】
用語の説明:
特に逆の説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される用語は、下記の意味を有する。
【0049】
「アルキル基」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基を指し、1個~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1個~12個の炭素原子を含むアルキル基である。非限定的な実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその種々の分岐鎖異性体などを含む。より好ましくは1個~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、非限定的な実施例はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な接続点で置換されてもよく、上記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0050】
「アルキレン基」という用語は、親アルカンの同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して誘導した2つの残基を有する飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、1個~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1個~12個の炭素原子を含み、より好ましくは1個~6個の炭素原子を含むアルキレン基である。アルキレン基の非限定的な実例は、メチレン(-CH2-)、1,1-エチレン(-CH(CH3)-)、1,2-エチレン(-CH2CH2)-、1,1-プロピレン(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)などを含むが、これらに限定されない。アルキレン基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な接続点で置換されてもよい。
【0051】
「アルケニレン基」という用語は、2個~8個の炭素原子を有し、好ましくは2個~6個の炭素原子を有し、より好ましくは2個~4個の炭素原子を有すると共に、任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する直鎖アルケニル基を含み、例えば、ビニリデン基、アリーリデン基(allylene)、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基(prenylene)、ブタジエニレン基(butadienylene)、ペンテニレン基、ペンタジエニルデン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基などを含む。
【0052】
「アルキニレン基」という用語は、2個~8個の炭素原子を有し、好ましくは2個~6個の炭素原子を有し、より好ましくは2個~4個の炭素原子を有すると共に、任意の位置に少なくとも1つの三重結合を有する直鎖アルキニレン基を含み、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基などを含む。
【0053】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、シクロアルキル環は3個~20個の炭素原子を含み、好ましくは3個~12個の炭素原子を含み、より好ましくは3個~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の非限定的な実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のシクロアルキル基を含む。「炭素環」は、シクロアルキル基中の環系を指す。
【0054】
「スピロシクロアルキル基」という用語は、5員~20員で、単環同士が1つの炭素原子(スピロ原子と称する)を共有する多環式基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。スピロシクロアルキル基は、環同士の共有するスピロ原子の数によって、モノスピロシクロアルキル基、ビススピロシクロアルキル基又はポリスピロシクロアルキル基に分けられ、好ましくはモノスピロシクロアルキル基及びビススピロシクロアルキル基である。より好ましくは、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員のモノスピロシクロアルキル基である。「スピロ炭素環」は、スピロシクロアルキル基中の環系を指す。スピロシクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化10】
を含む。
【0055】
「縮合シクロアルキル基」という用語は、5員~20員で、系内の各環が系内の他の環と、隣接する1対の炭素原子を共有する全炭素多環式基を指し、そのうち、1つ又は複数の環は1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の縮合シクロアルキル基に分けることができ、好ましくは二環式又は三環式であり、より好ましくは5員/5員又は5員/6員の二環式アルキル基である。「縮合炭素環」は、縮合シクロアルキル基中の環系を指す。縮合シクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化11】
を含む。
【0056】
「架橋シクロアルキル基」という用語は、5員~20員で、何れか2つの環が直接連結されていない2つの炭素原子を共有する全炭素多環式基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の架橋シクロアルキル基に分けることができ、好ましくは二環式、三環式又は四環式であり、より好ましくは二環式又は三環式である。架橋シクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化12】
を含む。
【0057】
上記シクロアルキル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はヘテロシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はシクロアルキル基であり、非限定的な実例は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、ベンゾシクロヘプタニル基などを含む。シクロアルキル基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0058】
「ヘテロシクリル基」という用語は、3個~20個の環原子を含む飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式の環状炭化水素置換基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である。好ましくは3個~12個の環原子を含み、そのうち、1個~4個はヘテロ原子であり、より好ましくは3個~6個の環原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、ジヒドロイミダゾリル基、ジヒドロフラニル基、ジヒドロピラゾリル基、ジヒドロピロリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペラジニル基などを含み、好ましくはピペリジニル基、ピロリジニル基である。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のヘテロシクリル基を含む。「複素環」は、ヘテロシクリル基中の環系を指す。
【0059】
「スピロヘテロシクリル基」という用語は、5員~20員で、単環同士が1つの原子(スピロ原子と称する)を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。それは、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。スピロヘテロシクリル基は、環同士の共有するスピロ原子の数によって、モノスピロヘテロシクリル基、ビススピロヘテロシクリル基又はポリスピロヘテロシクリル基に分けられ、好ましくはモノスピロヘテロシクリル基及びビススピロヘテロシクリル基である。より好ましくは、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員のモノスピロヘテロシクリル基である。「スピロ複素環」は、スピロヘテロシクリル基中の環系を指す。スピロヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化13】
を含む。
【0060】
「縮合ヘテロシクリル基」という用語は、5員~20員で、系内の各環が系内の他の環と、隣接する1対の原子を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、1つ又は複数の環は、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって、二環式、三環式、四環式又は多環式の縮合ヘテロシクリル基に分けることができ、好ましくは二環式又は三環式であり、より好ましくは5員/5員又は5員/6員の二環式縮合ヘテロシクリル基である。「縮合複素環」は、縮合ヘテロシクリル基中の環系を指す。縮合ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化14】
を含む。
【0061】
「架橋ヘテロシクリル基」という用語は、5員~14員で、何れか2つの環が2つの直接的に連結されていない原子を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。好ましくは6員~14員、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の架橋ヘテロシクリル基に分けることができ、好ましくは二環式、三環式又は四環式であり、より好ましくは二環式又は三環式である。架橋ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化15】
を含む。
【0062】
上記ヘテロシクリル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はヘテロシクリル基であり、その非限定的な実例は、
【化16】
などを含む。
【0063】
ヘテロシクリル基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0064】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する6員~14員の全炭素単環式又は縮合多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を指し、好ましくは6員~10員であり、例えば、フェニル基及びナフチル基である。上記アリール環は、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はアリール環である。「芳香環」は、アリール基中の環系を指す。アリール基の非限定的な実例は、
【化17】
を含み、
アリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましく、フェニル基が好ましい。
【0065】
「縮合環アリール基」という用語は、8個~14個の環原子を含み、2つ以上の環状構造同士が2つの隣接する原子を共有して連結して形成される、芳香族性を有する不飽和の縮合環構造であってもよく、環原子は、8個~12個が好ましい。例えば、ナフタレン、フェナントレンなどの完全不飽和の縮合環アリール基を含み、更に、ベンゾ3員~8員飽和単環式シクロアルキル基、ベンゾ3員~8員部分飽和単環式シクロアルキル基などの部分飽和の縮合環アリール基を含む。「縮合芳香環」は、縮合環アリール基中の環系を指す。縮合環アリール基の具体的な実例は、例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、1H-インデニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチルなどである。
【0066】
「ヘテロアリール基」という用語は、1個~4個のヘテロ原子、5個~14個の環原子を含む複素芳香族系を指し、そのうち、ヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロアリール基は、好ましくは5員~12員で、例えば、イミダゾリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基などであり、好ましくはイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジニル基又はチアゾリル基であり、より好ましくはピラゾリル基又はチアゾリル基である。上記ヘテロアリール環は、アリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はへテロアリール環である。「複素芳香環」は、ヘテロアリール基中の環系を指す。ヘテロアリール基の非限定的な実例は、
【化18】
を含む。
【0067】
ヘテロアリール基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0068】
「縮合へテロアリール基」という用語は、5個~14個の環原子(そのうち、少なくとも1つのヘテロ原子を含む)を含み、2つ以上の環状構造同士が2つの隣接する原子を共有して連結して形成される、芳香族性を有する不飽和の縮合環構造であってもよく、同時に、オキソで置換可能な炭素原子、窒素原子及び硫黄原子を含み、好ましくは「5員~12員の縮合へテロアリール基」、「7員~12員の縮合へテロアリール基」、「9員~12員の縮合へテロアリール基」などであり、例えば、ベンゾフラニル基、ベンゾイソフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、2-キノリノン、4-キノリノン、1-イソキノリノン、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンゾピリダジニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェナジニル基、プテリジニル基、プリニル基、ナフチリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基などである。「縮合複素芳香環」は、縮合ヘテロアリール基中の環系を指す。
【0069】
縮合へテロアリール基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0070】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基の定義は上記の通りである。アルコキシ基の非限定的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0071】
「アルキルチオ基」という用語は、-S-(アルキル基)及び-S-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基の定義は上記の通りである。アルキルチオ基の非限定的な実例は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基を含む。アルキルチオ基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0072】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0073】
「ハロアルキル基」という用語は、ハロゲンで置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0074】
「重水素化アルキル基」という用語は、重水素原子で置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0075】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OH基を指す。
【0076】
「オキシ基」という用語は、=O基を指す。例えば、炭素原子と酸素原子は、二重結合によって連結され、ここで、ケトン又はアルデヒド基が形成される。
【0077】
「チオ基」という用語は、=S基を指す。例えば、炭素原子と硫黄原子は、二重結合によって連結され、チオカルボニル-C(S)-が形成される。
【0078】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0079】
「アミノ基」という用語は、-NH2を指す。
【0080】
「シアノ基」という用語は、-CNを指す。
【0081】
「ニトロ基」という用語は、-NO2を指す。
【0082】
「カルボキシ基」という用語は、-C(O)OHを指す。
【0083】
「アルデヒド基」という用語は、-CHOを指す。
【0084】
「カルボン酸エステル基」という用語は、-C(O)O(アルキル基)又は-C(O)O(シクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基、シクロアルキル基は上記のように定義される。
【0085】
「ハロゲン化アシル」という用語は、-C(O)-ハロゲンという基を含む化合物を指す。
【0086】
「スルホニル基」という用語は、-S(O)(O)-を指す。
【0087】
「スルフィニル基」という用語は、-S(O)-を指す。
【0088】
化学基である「アイソスター」は、同様又は類似の特性を示す他の化学基である。例えば、テトラゾールはカルボン酸のアイソスターであり、その原因として、この両者がかなり異なる分子式を有しても、テトラゾールはカルボン酸の特性をシミュレーションしているからである。テトラゾールは、カルボン酸の多くの可能なアイソスター置換体のうちの1つである。他の予期可能なカルボン酸アイソスターは、-SO3H、-SO2HNR、-PO2(R)2、-PO3(R)2、-CONHNHSO2R、-COHNSO2R及び-CONRCNを含み、そのうち、Rは、例えば、本明細書に定義された水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びヘテロシクリル基から選ばれる。また、カルボン酸アイソスターは、5員~7員炭素環又は複素環を含んでもよく、上記複素環は、任意の化学的安定酸化状態でのCH2、O、S又はNの任意の組み合わせを含み、そのうち、上記環構造のいずれか1つの原子は、1つ又は複数の位置で任意選択的に置換される。予期可能なことに、化学置換基がカルボキシアイソスターに加えられる場合、化合物はカルボキシアイソスターの特性を保持すると予期すべきである。予想されることに、カルボキシアイソスターが上記のように定義されたRから選ばれる1つ又は複数の部分で任意選択的に置換される場合、化合物のカルボン酸アイソスター特性が取り除かれないように、置換度(substitution)及び置換位置を選択する。同様に、また、1つ又は複数のR置換基が化合物のカルボン酸アイソスター特性を損なう場合、このような置換基の炭素環又は複素環カルボン酸アイソスターにおける位置は、化合物のカルボン酸アイソスター特性を完全にする箇所又は完全な1つ又は複数の原子に位置する置換ではないと予期すべきである。
【0089】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その次に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、当該表現には、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合が含まれる。例えば、「任意選択的にアルキル基で置換されるヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在してもよいが、存在しなくてもよいことを意味し、この説明は、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換される場合と、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されない場合とを含む。
【0090】
「置換される」とは、基の中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは5個以下、より好ましくは1個~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。無論、置換基は、それらの化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者はそれほど努力せずに(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。
【0091】
本開示に記載される化合物の化学構造において、「
【化19】
」という結合は配置が指定されておらず、即ち、「
【化20】
」という結合は「
【化21】
」又は「
【化22】
」であってもよく、或いは「
【化23】
」及び「
【化24】
」という2つの配置を同時に含んでもよい。本開示に記載される化合物の化学構造において、「
【化25】
」という結合は、配置が指定されておらず、即ち、Z配置又はE配置であってもよく、或いは2つの配置を同時に含んでもよい。
【0092】
本開示は、本明細書に記載されるものと同じであるが、1つ又は複数の原子が、自然界で通常見られる原子量又は質量数と異なる原子量又は質量数を有する原子で置換された同位体標識の本願の化合物を更に含む。本願の化合物に結合可能な同位体の実例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素及び塩素の同位体を含み、例えば、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I及び36Clなどである。
【0093】
本開示の化合物は、当該化合物を構成する1つ又は複数の原子に、非自然比率の原子同位体を含むことができる。例えば、三重水素(3H)、ヨウ素125(125I)又はC-14(14C)などの放射性同位体で化合物を標識してもよい。また例えば、重水素で水素を置換して重水素化薬剤を形成してもよく、重水素と炭素からなる結合は、一般的な水素と炭素からなる結合よりも堅固であり、重水素化されていない薬剤と比べて、重水素化薬剤は、毒性と副作用を減らし、薬剤の安定性を高め、治療効果を向上させ、薬剤の生物学的半減期を延長するといった利点を有する。本願に係る化合物の全ての同位体組成の変換は、放射性の有無を問わず、本願の範囲内に含まれる。
【0094】
なお、比較的重い同位体(例えば、重水素(即ち2H))による置換は、より高い代謝安定性により発生される幾つかの治療上の利点(例えば、増加されたインビボ半減期又は低減された用量の需要)を提供することができ、且つこれにより、場合によっては好適である可能性があり、ここで、重水素置換は、部分的又は完全であってもよく、部分的重水素置換は、少なくとも1つの水素が少なくとも1つの重水素で置換されることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、実施例と合わせて本開示に記載の化合物、薬学的に許容される塩の調製を更に説明するが、これらの実施例は、本開示中の範囲を制限するものではない。
【0096】
本開示中の実施例において具体的な条件が明示されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品メーカに勧められた条件に従った。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0097】
NMRシフト(δ)は、10-6(ppm)の単位で示される。NMRの測定にはBruker AVANCE-400核磁気共鳴装置が使用され、測定溶剤は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)、重水素化メタノール(CD3OD)、重水素化アセトニトリル(CD3CN)であり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)である。
【0098】
MSの測定には、Shimadzu 2010 Mass Spectrometer又はAgilent 6110A MSD質量分析装置が使用された。
【0099】
HPLCの測定には、Shimadzu LC-20A systems、Shimadzu LC-2010HT series又はアジレントAgilent 1200 LC高速液体クロマトグラフ(Ultimate XB-C18 3.0×150 mmカラム又はXtimate C18 2.1×30 mmカラム)が使用された。
【0100】
キラルHPLC分析及び測定には、Chiralpak IC-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AD-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AD-3 50×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AS-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AS-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、ChiralCel OD-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralcel OD-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、ChiralCel OJ-H 150×4.6 mm I.D.、5 μm、Chiralcel OJ-3 150×4.6 mm I.D.、3 μmカラムが使用され、薄層クロマトグラフィー用シリカゲル板としては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲル板が使用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されたシリカゲル板用の仕様は、0.15 mm~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離精製用の仕様は0.4 mm~0.5 mmであった。
【0101】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に、煙台黄海シリカゲル100メッシュ~200メッシュ、200メッシュ~300メッシュ又は300メッシュ~400メッシュのシリカゲルがベクターとして使用された。
【0102】
キラル分取カラムには、DAICEL CHIRALPAK IC(250×30 mm, 10 μm)又はPhenomenex-Amylose-1(250×30 mm, 5 μm)が使用された。
【0103】
CombiFlash高速分取クロマトグラフには、Combiflash Rf150(TELEDYNE ISCO)が使用された。
【0104】
キナーゼ平均阻害率及びIC50値の測定には、プレートリーダーNovoStar(独BMG社)が使用された。
【0105】
本開示に係る既知の出発原料は、この分野における既知の方法により、又はそれに従って合成されてもよく、或いはABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社から購入されてもよい。
【0106】
実施例において、特に説明のない限り、反応は何れもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気において行うことができる。
【0107】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0108】
水素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lの水素バルーンが接続されていることを指す。
【0109】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用された。
【0110】
水素化反応は、一般的に、真空引きして水素を充填する操作を3回繰り返した。
【0111】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用された。
【0112】
実施例において特に説明のない限り、溶液は水溶液を指す。
【0113】
実施例において特に説明のない限り、反応温度は室温で、20℃~30℃である。
【0114】
実施例における反応進行の監視には、薄層クロマトグラフィー(TLC)が使用され、反応に使用された展開溶媒、化合物を精製するためのカラムクロマトグラフィーの溶離液系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、A:ジクロロメタン/メタノール系、B:n-ヘキサン/酢酸エチル系、C:石油エーテル/酢酸エチル系、D:石油エーテル/酢酸エチル/メタノールを含み、溶剤の体積比は化合物の極性によって調整したが、少量のトリエチルアミン及び酢酸などの塩基性又は酸性試薬を加えて調整してもよい。
【0115】
以下の実験で使用される略語の意味は、下記の通りである。
【0116】
DCM:ジクロロメタン、DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン、CH3CN:アセトニトリル、MeOH:メタノール、THF:テトラヒドロフラン、NaOH:水酸化ナトリウム、TsOH:p-トルエンスルホン酸。
実施例1
【0117】
【化26】
【化27】
ステップ1
窒素ガスの保護で化合物1a(5 g, 32.86 mmol)をテトラヒドロフラン(40 mL)に溶けて0℃に降温し、水素化ナトリウム(2.1 g, 52.50 mmol)を数回に分けて加え、撹拌しながら反応させ、そしてブロモメチルメチルエーテル(6.15 g, 49.22 mmol)を反応系に滴下した。反応終了後、水(100 mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=2/1)、濃縮して表題化合物1b(4.39 g, 収率68%)を得た。
【0118】
ステップ2
化合物1c(5.0 g, 25.48 mmol)及びテトラメチルエチレンジアミン(3.6 g, 31.25 mmol)を50 mLのテトラヒドロフランに溶け、窒素ガスで置換した後に-78℃に降温した。n-ブチルリチウム(15 mL, 37.5 mmol)を反応に滴下して撹拌しながら反応させた。砕いたドライアイス(11 g, 250 mmol)を反応に加え、撹拌しながら反応させ、室温に徐々に昇温し、1 mol/Lの塩酸溶液(100 mL)で反応をクエンチし、トリフルオロ酢酸(3 mL)を加えて室温で撹拌した後、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物1c(6.3 g, 収率100%)を得た。
MS (ESI) m/z 195.2 [M-H]-
【0119】
ステップ3
室温で化合物1c(3.9 g, 19.88 mmol)を40 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶け、N-ブロモスクシンイミド(3.18 g, 17.89 mmol)を数回に分けて反応に加え、室温で撹拌した。水(50 mL)を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物1d(3.9 g, 収率71.3%)を得た。
MS (ESI) m/z 275.2,277.2 [M+H]+
【0120】
ステップ4
化合物1d(3.0 g, 10.90 mmol)とトリフルオロ酢酸(8 mL)を反応フラスコに加えて70℃に昇温し、2つの注射ポンプにより同時にアセトン(3.8 g, 65.44 mmol)とトリフルオロ酢酸無水物(4.6 g, 21.71 mmol)を反応に徐々に加え、70℃で撹拌し、反応終了後に室温に冷却し、濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(150 mL)を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=1/1)、濃縮して表題化合物1e(1.97 g, 収率57.6%)を得た。MS (ESI) m/z 315.2,317.2 [M+H]+
【0121】
ステップ5
化合物1e(1.97 g, 6.25 mmol)、アクリル酸(0.68 g, 9.38 mmol)、酢酸パラジウム(210 mg, 0.94 mmol)、トリエチルアミン(1.9 g, 18.75 mmol)、トリス(2-トリル)ホスフィン(571 mg, 1.89 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(8 mL)に溶け、窒素ガスで置換した後、100℃で5時間マイクロ波反応させ、室温に冷却し、ろ過し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物1f(1.4 g, 収率73.1%)を得た。MS (ESI) m/z 307.4 [M+H]+
【0122】
ステップ6
室温で化合物1f(1.5 g, 4.90 mmol)を20 mLのクロロホルムに溶け、窒素ガスで置換した後に0℃に降温した。0℃で液体臭素(2.0 mL, 5.36 mmol)を5分間以内で反応に滴下し、そして0℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮してからN,N-ジメチルホルムアミド(20 mL)に溶け、0℃に降温した。0℃でトリエチルアミン(1.19 mL, 8.58 mmol)を2分間以内で反応に滴下し、室温に徐々に昇温し、そして12時間撹拌し、水(50 mL)を加え、有機相を酢酸エチル(50 mL)で3回抽出し、飽和食塩水(100 mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=7/3)、濃縮して表題化合物1g(310 mg, 収率18.6%)を得た。MS (ESI) m/z 340.9,342.9 [M+H]+
【0123】
ステップ7
化合物1g(310 mg, 1.03 mmol)、ビス[(+)-ピナンジオラート]ジボロン(553 mg, 1.54 mmol)、酢酸カリウム(202 mg, 2.06 mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(115 mg, 0.15 mmol)を1,4-ジオキサン(8 mL)に溶け、窒素ガスで置換した後に60℃で2時間反応させ、室温に冷却し、ろ過し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=1/1で溶離してきた)濃縮して表題化合物1h(210 mg, 収率51%)を得た。MS (ESI) m/z 441.5 [M+H]+
【0124】
ステップ8
25 mLの反応フラスコにジクロロメタン(3 mL)を加え、窒素ガスで置換した後に-78℃に降温した。-78℃で反応フラスコにジエチル亜鉛n-ヘキサン溶液(2.2 mL, 2.2 mmol)及びジヨードメタン(876 mg, 3.26 mmol)を滴下し、そして-78℃で20分間撹拌した。化合物1i(120 mg, 0.27 mmol)をジクロロメタン(3 mL)に溶けて5分間以内で反応に滴下し、滴下完了後に-78℃で1時間撹拌し、徐々に室温に昇温して室温で18時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム溶液(10 mL)で反応をクエンチし、酢酸エチルで(10 mL)で3回抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物1i(52 mg, 収率42%)を得た。MS (ESI) m/z 455.5 [M+H]+
【0125】
ステップ9
室温で化合物1i(100 mg, 0.22 mmol)を0.5 mLの1,4-ジオキサンに溶け、水酸化ナトリウム溶液(3 mol/L, 0.5 mL)を加え、撹拌しながら反応させた。そして0℃に降温し、トリエチルシラン(30.4 mg, 0.26 mmol)、イソブチルホウ酸(33.7 mg, 0.33 mmol)とトリフルオロ酢酸(0.8 mL)を順に加えた。室温に徐々に昇温して反応させ、反応終了後に減圧濃縮し、得られた粗生成物をC18逆相カラムにより精製し[水(0.1%のトリフルオロ酢酸)/アセトニトリル=1/1]、凍結乾燥した後、1対のエナンチオマーである表題化合物1(12.3 mg, 収率21.3%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.85 (s, 1H), 4.19 (dq, J = 8.9, 3.1 Hz, 4H), 4.12 (d, J = 9.7 Hz, 1H), 2.16 (td, J = 7.9, 4.0 Hz, 1H), 1.24 (ddd, J = 10.8, 7.9, 3.3 Hz, 1H), 0.44 (ddd, J = 10.4, 8.1, 6.0 Hz, 1H), 0.22 (dt, J = 6.5, 3.7 Hz, 1H); MS (ESI) m/z 263.3 [M+H]+
実施例2
【0126】
【化28】
【化29】
ステップ1
窒素ガスの保護で化合物2a(5 g, 28.7 mmol)をテトラヒドロフラン(40 mL)に溶けて0℃に降温し、水素化ナトリウム(1.7 g, 43.0 mmol)を数回に分けて加えて0℃で撹拌しながら反応させた。その後、ブロモメチルメチルエーテル(2.8 mL, 34.5 mmol)を反応系に滴下して反応させ続けた。反応終了後、水(100 mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1)、濃縮して表題化合物2b(4.5 g, 収率72%)を得た。MS (ESI) m/z 219.3 [M+H]
+
【0127】
ステップ2
化合物2b(4.5 g, 20.6 mmol)とテトラメチルエチレンジアミン(4.6 mL, 30.9 mmol)を50 mLのテトラヒドロフランに溶け、窒素ガスで置換した後に-78℃に降温した。n-ブチルリチウム(13.2 mL, 33.0 mmol)を反応に滴下して撹拌しながら反応させ続けた。砕いたドライアイス(11 g, 250 mmol)を反応に加え、-78℃で撹拌しながら反応させた後、室温に徐々に昇温し、1 mol/Lの塩酸溶液(100 mL)で反応をクエンチし、トリフルオロ酢酸(3 mL)を加えて室温で撹拌した。酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物2c(2.5 g, 収率55%)を得た。MS (ESI) m/z 217.2 [M-H]-
【0128】
ステップ3
室温で化合物2c(2.5 g, 11.5 mmol)を40 mLのDCMに溶け、N-ブロモスクシンイミド(2.2 g, 12.6 mmol)を反応に数回に分けて加え、室温で撹拌しながら反応させた。反応終了後、水(50 mL)を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物2d(2.8 g, 収率82%)を得た。
MS (ESI) m/z 296.2,297.2 [M+H]+
【0129】
ステップ4
中間体2d(2.8 g, 9.4mmol)を20 mLのTHFに溶け、氷水浴で、水素化ナトリウム(0.56 mL, 28.3 mmol)を加え、撹拌しながら反応させた。BnBr(3.4 mL, 28.3 mmol)を反応液に徐々に加え、撹拌し続け、反応完了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶液を除去し、カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=7/1)により化合物2e(2.0 g, 収率44%)を得た。MS (ESI) m/z 477.2,479.2 [M+H]+
【0130】
ステップ5
化合物2e(2 g, 4.2 mmol)、アクリル酸(0.9 mL, 13.8mmol)、酢酸パラジウム(0.1 g, 0.46 mmol)、トリエチルアミン(3.8 mL, 27.7mmol)、トリス(2-トリル)ホスフィン(0.28 g, 0.92 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(8 mL)に溶け、窒素ガスで置換した後、100℃でマイクロ波反応させ、室温に冷却し、ろ過し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=10/1)、濃縮して表題化合物2f(2.1 g, 収率54%)を得た。MS (ESI) m/z 469.4 [M+H]+
【0131】
ステップ6
室温で化合物2f(1.1 g, 2.4 mmol)を20 mLのクロロホルムに溶け、窒素ガスで置換した後に0℃に降温した。0℃で液体臭素(1.0 mL, 2.6 mmol)を反応に滴下し、そして0℃で撹拌した。反応混合物を減圧濃縮してからN,N-ジメチルホルムアミド(20 mL)に溶け、0℃に降温し、トリエチルアミン(0.6 mL, 4.3 mmol)を反応に滴下し、室温に徐々に昇温し、撹拌した。反応終了後、水(50 mL)を加え、有機相を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1)、濃縮して表題化合物2g(400 mg, 収率32%)を得た。MS (ESI) m/z 503.2,505.2 [M+H]+
【0132】
ステップ7
化合物2g(400 mg, 0.79 mmol)、ビス[(+)-ピナンジオラート]ジボロン(427 mg, 1.19 mmol)、酢酸カリウム(156 mg, 1.59 mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(117.9 mg, 0.16 mmol)を1,4-ジオキサン(8 mL)に溶け、窒素ガスで置換した後に60℃で反応させた。反応終了後に室温に冷却し、ろ過し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(n-ヘキサン/酢酸エチル=2/1)、濃縮して表題化合物2h(300 mg, 収率62%)を得た。MS (ESI) m/z 603.4 [M+H]+
【0133】
ステップ8
25 mLの反応フラスコにジクロロメタン(6 mL)を加え、窒素ガスで置換した後に-78℃に降温した。-78℃で反応フラスコにジエチル亜鉛n-ヘキサン溶液(19.9 mL, 19.9 mmol)及びジヨードメタン(2.68 mL, 33.2 mmol)を滴下し、そして-78℃で撹拌しながら反応させた。化合物2h(400 mg, 0.66 mmol)をジクロロメタン(6 mL)に溶けて反応に滴下し、-78℃で撹拌しながら反応させた後、室温に徐々に昇温して反応させ、反応終了後に飽和塩化アンモニウム溶液(10 mL)で反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン/メタノール=9/1)、濃縮して表題混合物2i(40 mg, 収率9.7%)を得た。MS (ESI) m/z 617.3 [M+H]+
【0134】
ステップ9
室温で化合物2i(10 mg, 0.016 mmol)を2 mLのジクロロメタンに溶け、三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(0.2 mL, 1 M)を加え、-78℃で撹拌した。そして室温に徐々に昇温し、反応完了後、メタノールを加えて反応をクエンチし、減圧濃縮し、得られた粗生成物をC18逆相カラムにより精製し(水(0.1%のトリフルオロ酢酸)/アセトニトリル=1/1)、凍結乾燥した後、1対のエナンチオマーである表題化合物2(2 mg, 収率43%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.83 (s, 1H), 2.20-2.24 (m, 1H), 1.21-1.15 (m, 1H), 0.75-0.96(m, 2H); MS (ESI) m/z 285.5 [M+H]+
実施例3
【0135】
【化30】
【化31】
ステップ1
【化32】
250 mLのDMFを反応フラスコに加え、N
2保護でNaH(15.6 g, 3900 mmol, 1.8 eq, 60% wt)を数回に分けて加え、氷浴で3-1(29.5 g, 216.9 mmol, 1.0 eq)(文献J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 3619を参照して調製)のDMF溶液(50 mL)を徐々に滴下し、滴下完了後に氷浴のままにして10 min撹拌した。MOMBr(43.4 g, 347 mmol, 1.6 eq)を徐々に滴下し、滴下完了後に自然に室温に昇温して反応が終了するまで撹拌した。水を徐々に加えて反応をクエンチし、250 mLの酢酸エチルと250 mLの水を加えて希釈し、分液し、水相を酢酸エチルで抽出し、飽和NaCl溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより約25.8 gの3-2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.07-7.05 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.53-6.51 (m, 2H), 5.13 (s, 2H), 4.59-4.55 (t, J = 8.8 Hz, 2H ), 3.47 (s, 3H), 3.16-3.12 (t, J = 8.8 Hz, 2H).
【0136】
ステップ2
【化33】
反応フラスコに3-2(25.8 g, 143 mmol, 1.0 eq)、TMDPA(20.0 g, 172 mmol, 1.2 eq)を加え、窒素ガスで置換し、無水THF(258 mL, 10 V)を加え、系を-65℃以下に降温した。N
2保護で1.6 Mのn-BuLi(143 mL, 229 mmol, 1.6 eq)を滴下し、温度を-65℃以下に制御し、滴下完了後に-65℃で1 h撹拌した。ドライアイス(20 eq)を無水THFで洗浄してから数回に分けて反応液に加え、反応温度を-30℃以下に制御した。氷浴で200 mLの飽和クエン酸溶液を加えて反応をクエンチし、分液し、水相をEA/THF(1:1)で抽出し(150 mL×3)、有機相を合わせ、飽和NaCl溶液で洗浄し(150 mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を400 mLのPE/EA(3:1)で1 hスラリー化し、ろ過し、約24.4 gの3-3を得て、収率は76.0%であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.82 (br, 1H), 7.19-7.16 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.60-6.58 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 5.14 (s, 2H), 4.59-4.55 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.37 (s, 3H), 3.14-3.09 (t, J = 8.8 Hz, 2H).
【0137】
ステップ3
【化34】
3-3(22.2 g, 98.8 mmol, 1.0 eq)を秤量して反応フラスコに加え、EtOH(330 mL, 15 V)を加え、氷浴でTfOH(23.7 g, 158 mmol, 1.6 eq)を加え、氷浴のままにして20 min撹拌した。300 mLの酢酸エチル及び300 mLの飽和NaCl溶液を加えて反応液を希釈し、分液し、水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して乾燥させた後に粗生成物3-4を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.48 (br, 2H), 7.28-7.26 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 6.36-6.34 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 4.63-4.58 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.09-3.05 (t, J = 8.8 Hz, 2H).
【0138】
ステップ4
【化35】
3-4(26.0 g, 144 mmol, 1.0 eq)を秤量して反応フラスコに加え、EtOH(260 mL, 10 V)を加え、TfOH(26.0 g, 173 mmol, 1.2 eq)を加え、一晩還流させた。260 mLのEtOHを補充し、一晩還流させ続けた。EtOAc(300 mL)及び飽和NaCl溶液(300 mL)を加えて反応液を希釈し、分液し、水相をEtOAcで抽出し(200 mL×2)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して約13.2gの3-5を得て、2ステップの収率は64%であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.60 (br, 1H), 7.25-7.23 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 6.38-6.36 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 4.63-4.59 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.34-4.29 (q, J = 7.2 Hz,2H), 3.10-3.05 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 1.31-1.27 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0139】
ステップ5
【化36】
化合物3-5(13.2 g, 63.5 mmol, 1.0 eq)を秤量して反応フラスコに入れ、DMF(132 mL, 10 V)及びt-BuOK(9.26 g, 82.5 mmol, 1.3 eq)を加え、氷浴で2-ブロモ-1,1-ジエトキシエタン(15.0 g, 76.2 mmol, 1.2 eq)を滴下し、滴下完了後に140℃に昇温して一晩撹拌した。EtOAc(200 mL)及びH
2O(200 mL)を加えて反応液を希釈し、分液し、水相をEtOAcで抽出し(100 mL×2)、有機相を合わせ、有機相を順にH
2O(200 mL×2)、飽和NaCl溶液(200 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して粗生成物を得て、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、約9.00 gの3-6を得て、収率は43.8%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.12-7.09 (m, 1H), 6.39-6.37 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.81-4.78 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 4.67-4.62 (t,J = 8.8 Hz, 2H), 4.39-4.33 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.00-3.99 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 3.79-3.71 (m, 2H), 3.66-3.58 (m, 2H), 3.16-3.11 (m, 2H), 1.39-1.35 (t, J = 14.0 Hz, 3H), 1.25-1.21 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0140】
ステップ6
【化37】
反応フラスコに3-6(9.80 g, 30.2 mmol, 1.0 eq)、98 mLのDCE(10 V)及び2.38 gのAmberlyst 15(25% wt)を加え、反応が終了するまで還流反応させた。吸引ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して約4.51 gの生成物3-7を得て、収率は64.3%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.62-7.61 (d, J = 2.0Hz, 1H), 7.47-7.46 (m, 1H), 6.67-6.66 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.80-4.76 (t, J = 8.4 Hz, 2H), 4.50-4.51 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.30-3.25 (m, 2H), 1.46-1.42 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0141】
ステップ7
【化38】
塩化ニッケル(0.505 g, 3.88 mmol, 0.2 eq)を秤量して反応フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(22.5 mL, 5 V)を加え、更にトリ-n-オクチルホスフィン(3.20 g, 7.78 mmol, 0.4 eq)を加え、窒素ガスで置換し、1 h還流反応させ後に室温に降温した。3-7(4.51 g, 19.4 mmol, 1.0 eq)を秤量して別の反応フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(67.5 mL, 15 V)を加え、更にビス(ピナコラート)ジボロン(7.41 g, 29.2 mmol, 1.5 eq)、炭酸カリウム(7.24 g, 54.5 mmol, 2.7 eq)、炭酸セシウム(1.90 g, 5.83 mmol, 0.3 eq)を加え、最後に塩化ニッケル/トリ-n-オクチルホスフィンで調製された触媒系を加え、窒素ガスで置換し、2 h還流反応させた。反応系を0℃~5℃に降温し、MTBE(199 mL, 15 V)と脱イオン水(199 mL, 15 V)を加え、更に6 Nの塩酸でpHを1に調整し、0℃~5℃に保温して30 min撹拌した。分層し、水相をMTBE(132 mL, 10 V)で1回抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引ろ過し、真空下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をC18逆相分取カラムにより精製し、正成分を収集し、濃縮し、6 Nの塩酸を加えてpH=1~2に調整し、更にメチルtert-ブチルエーテルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮乾燥させて4.14 gの3-8を得て、収率は82.1%であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.99 (br, 1H), 7.78-7.75 (d, J = 12.0 Hz, 1 H ), 7.48 (s, 1H), 6.00-5.97 (d, J = 12.0 Hz, 1 H), 4.73-4.69 (t, J = 17.2 Hz, 2 H), 4.39-4.33 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 3.28-3.24 (t, J = 8.8 Hz, 2 H), 1.37-1.33 (t, J = 7.2 Hz, 3 H).
【0142】
ステップ8
【化39】
反応フラスコにおいてアルゴンで置換し、1 Mのジエチル亜鉛のn-ヘキサン溶液55.7 mL(4.0 eq)を加え、反応系を-40℃に降温した。ジヨードメタン(29.8 g, 111 mmol, 8.0 eq)を9 mLのジクロロメタンに溶け、注射器で徐々にジエチル亜鉛のn-ヘキサン溶液を滴下し、-40℃で30 min撹拌し続けた。トリフルオロ酢酸(6.35 g, 55.7 mmol, 4.0 eq)を9 mLのジクロロメタンに溶け、注射器で上記溶液を徐々に滴下し、-40℃で30 min撹拌し続けた。3-8(3.62 g, 13.9 mmol, 1.0 eq)を12.5 mLのジクロロメタンに溶け、注射器で徐々に上記系を滴下し、滴下完了後、徐々に昇温して3 h反応させ続けた。1 Mの塩酸で反応をクエンチし、25 mLのジクロロメタンを加えて系を希釈し、有機相を分離し、水相を更に25 mLのジクロロメタンで抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した後にHPLCにより分取して1.42 gの3-9を得て、収率は37.3%であった。ラセミ体3-9をキラル分割した後に約320 mgの3-9-1、約300 mgの3-9-2を得た。
単一配置の化合物3-9-1:
キラルHPLC分析:保持時間2.832分間、キラル純度>99%(カラム:ChiralPak IG, 250×30 mm I.D., 10 μm、移動相:A:CO
2、B:Methanol(0.1%のNH
3H
2O))
単一配置の化合物3-9-2:
キラルHPLC分析:保持時間2.968分間、キラル純度>99%(カラム:ChiralPak IG, 250×30 mm I.D., 10 μm、移動相:A:CO
2、B:Methanol(0.1%のNH
3H
2O))
ラセミ体3-9
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.16 (s, 1H), 5.97 (br, 1H), 4.66-4.57 (m, 2H), 4.40-4.34 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.16-3.11 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 2.18-2.13 (m, 1H), 1.38-1.35(t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.31-1.25 (m, 1H). 0.61-0.51 (m, 1H), 0.42-0.39 (m, 1H).
【0143】
ステップ9
【化40】
反応フラスコに0.25 mLのメタノール及び0.25 mLの1,4-ジオキサンを加え、3-9-1(54.8 mg, 0.200 mmol, 1.0 eq)を加え、0.25 mLの25% wtの水酸化ナトリウム水溶液を加え、50℃で一晩反応させた。真空下で濃縮してメタノールと1,4-ジオキサンを除去し、1 mLの脱イオン水を補充した。6 Mの塩酸で系をpH=8に調整し、MTBEで抽出した。水相を更に6 Mの塩酸で系をpH=1~2に調整した。水相に生成物がないように水相を5 mLの酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引ろ過し、真空下で濃縮し、遊離酸3合計40.8 mgを得た。遊離酸を4 mLのアセトニトリルに溶け、2.0 eqの水酸化ナトリウムを正確に秤量し、4 mLの水溶液に調製し、上記反応系に加え、室温で30 min撹拌した。真空下で濃縮してアセトニトリルを除去し、水相を直接的に凍結乾燥して生成物3-Na合計39.5 mgを得た。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 6.83 (s, 1H), 4.48-4.36 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.02-2.98 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 1.88 (br, 1H), 1.69-1.64 (m, 1H), 1.29 (br, 1H), 0.72-0.67 (m, 1H), 0.28-0.22 (m, 1H), 0.20-0.16 (m, 1H).
実施例4
【0144】
ステップ1
化合物1iを逆相分取により分離し、(カラム:Waters Atlantis T3 19×150 mm、5 μm、移動相1:0.05%のFA/H2O、移動相2:ACN)異性体1i-1(17 mg, 収率14%)及び異性体1i-2(52 mg, 収率42%)を得た。
化合物1i-1:
MS (ESI) m/z 455.5 [M+H]+
HPLC分析:保持時間4.16分間、(カラム:Waters Acquity BEH C18 2.1×50 mm、1.8 μm、移動相1:0.05%のFA/H2O、移動相2:0.05%のFA/ACN)。
化合物1i-2:
MS (ESI) m/z 455.5 [M+H]+
HPLC分析:保持時間4.22分間、(カラム:Waters Acquity BEH C18 2.1×50 mm、1.8 μm、移動相1:0.05%のFA/H2O、移動相2:0.05%のFA/ACN)。
【0145】
ステップ2
実施例1のステップ9の方法によって、化合物1i-2を反応物として化合物1-1を調製した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.85 (s, 1H), 4.18 (tq, J = 6.2, 3.6 Hz, 4H), 4.12 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 2.16 (td, J = 7.9, 4.0 Hz, 1H), 1.24 (ddd, J = 10.8, 7.9, 3.3 Hz, 1H), 0.44 (ddd, J = 10.5, 8.1, 6.0 Hz, 1H), 0.22 (dt, J = 6.4, 3.7 Hz, 1H);
MS (ESI) m/z 263.3 [M+H]+
【0146】
ステップ3
【化41】
化合物1-1を反応フラスコに加え、2.05 eqのNaOH水溶液を加え、1 h撹拌した後、溶液をそのまま凍結乾燥し、化合物1-1-Naを得た。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 6.51 (s, 1H), 4.18-4.09 (m, 4H), 1.67-1.62 (m, 1H), 1.30 (br, 1H), 0.77-0.72 (m, 1H), 0.33-0.30 (m, 1H), 0.26-0.20 (m, 1H).
生物学的評価
【0147】
以下、試験例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。
試験例1
【0148】
1.実験の目的
3株の薬物耐性菌に対する化合物/化合物の組み合わせの最小発育阻止濃度(MIC)を試験した。
【0149】
2.実験の材料
1)抗生物質であるセフェピム及びビアペネム(MCE社から購入)であり、2つの抗生物質を対応する溶剤で12.8 mg/mLの溶液に希釈した。
2)QPX-7728(合成はWO2018005662A1を参照)、VNRX-5133(合成はWO2014089365A1を参照)、化合物1及び化合物2を3.2 mg/mLのDMSO溶液に調製した。
3)試験待ちの菌株Escherichia coli ARLG-2829(Urine)であって、当該菌株はβ-ラクタマーゼ阻害剤のBタイプとDタイプのβ-ラクタマーゼに対するセフェピムを増強させる能力を試験するために適用可能であり、Klebsiella pneumoniae ATCC BAA-1705であって、当該菌株はβ-ラクタマーゼ阻害剤のAタイプのβ-ラクタマーゼに対するセフェピムとビアペネムを増強させる能力を試験するために適用可能であり、Klebsiella pneumoniae ATCC BAA-2472であって、当該菌株はβ-ラクタマーゼ阻害剤のBタイプのβ-ラクタマーゼに対するセフェピムとビアペネムを増強させる能力を試験するために適用可能である。
【0150】
3.実験の手順
生物学的安全キャビネットを紫外線で30分間殺菌した。-80℃の冷蔵庫からグリセロール管を取り出し、接種用ループでグリセロール管の中を軽く数回掻き回し、菌をMHIIA固体プレートに接種した。プレートを37℃のインキュベーターに置いて一晩培養した。
【0151】
30 μLの化合物母液を取って96-vウェルプレートの1列目に加え、2列目~10列目にDMSOを加えた。その後、ピペットガンで1列目から15 μLを取り出して2列目に加え、軽く均一に混合し、更に2列目から15 μLの溶液を取り出して3列目に加え、順に10列目まで勾配希釈した。(200 xのβラクタマーゼ阻害剤作動液に調製した)。2つの抗生物質を対応する溶剤で1.6 mg/mLの溶液に希釈した。
【0152】
200 xのβラクタマーゼ阻害剤溶液1 μLと1.6 mg/mLの抗生物質1 μLをそれぞれ取って新たな96ウェル円底プレートに入れた。一晩培養したプレートをインキュベーターから取り出し、接種用ループで幾つかの単クローンを選び取って生理食塩水に入れ、菌液濃度を約1.0×108 CFU/mLに調整し、培地で200倍希釈し、198 μLの調整済みの菌液を取って試験プレートに入れた。試験プレートを37℃のインキュベーターに置いて18 h~24 h培養した。20 h培養した96ウェルプレートをインキュベーターから取り出し、見られる細菌の成長が認められない濃度を最小発育阻止濃度と定義した。
【0153】
化合物1及び化合物2のそれぞれのセフェピムとビアペネムの存在での3つの異なる菌株に対する最小発育阻止濃度は、下記の表に示されている。
【0154】
【0155】
1.実験の目的
化合物1-1-Na及びQPX-7728とセフェピムとの併用による薬物耐性菌への最小発育阻止濃度(MIC)を試験した。
【0156】
2.実験の材料
1)抗生物質セフェピムを対応する溶剤で12.8 mg/mLの溶液に希釈した。
2)QPX-7728、化合物1-1-Naを3.2 mg/mLのDMSO溶液に調製した。
3)試験待ちの菌株であるセフェピム耐性アシネトバクターバウマニー(FDA-CDC AR-BANK#0033、FDA-CDC AR-BANK#0035、FDA-CDC AR-BANK#0078)、セフェピム耐性大腸菌(FDA-CDC AR-BANK#0055、FDA-CDC AR-BANK#0114、FDA-CDC AR-BANK#0371、FDA-CDC AR-BANK#0370)、セフェピム耐性クレブシエラニューモニエ(FDA-CDC AR-BANK#0003、FDA-CDC AR-BANK#0126、FDA-CDC AR-BANK#0080、FDA-CDC AR-BANK#0076、FDA-CDC AR-BANK#0158)、セフェピム耐性シュードモナスエルギノーザ(FDA-CDC AR-BANK#0439、FDA-CDC AR-BANK#0444、FDA-CDC AR-BANK#0246、FDA-CDC AR-BANK#0441)は、Eurofins社から入手した。
【0157】
3.実験の手順
生物学的安全キャビネットを紫外線で30分間殺菌した。-80℃の冷蔵庫からグリセロール管を取り出し、接種用ループでグリセロール管の中を軽く数回掻き回し、菌をMHIIA固体プレートに接種した。プレートを37℃のインキュベーターに置いて一晩培養した。
【0158】
30 μLの化合物母液を取って96-vウェルプレートの1列目に加え、2列目~10列目にDMSOを加えた。その後、ピペットガンで1列目から15 μLを取り出して2列目に加え、軽く均一に混合し、更に2列目から15 μLの溶液を取り出して3列目に加え、順に10列目まで勾配希釈した。(200 xのβラクタマーゼ阻害剤作動液に調製した)。抗生物質を対応する溶剤で1.6 mg/mLの溶液に希釈した。
【0159】
QPX-7728及び化合物1-1-Naのそれぞれのセフェピムの存在での3つの異なる菌株に対する最小発育阻止濃度は、下記の表に示されている。
【0160】
【0161】
その結果、セフェピム耐性の大腸菌、クレブシエラニューモニエに対して、化合物1-1-NaとQPX-7728は、何れもセフェピムの抗菌活性を明らかに回復させることができることが分かった。
試験例3
【0162】
1.実験の目的
CPMの殺菌活性を回復させる化合物1-1-NaとQPX7728の能力を比較した。
【0163】
2.実験の材料
1)抗生物質セフェピムを対応する溶剤で12.8 mg/mLの溶液に希釈した。
2)QPX-7728、化合物1-1-Naを3.2 mg/mLのDMSO溶液に調製した。
3)様々なβ-ラクタマーゼを発現した試験待ちの菌株であるセフェピム耐性クレブシエラニューモニエ(ARLG-1127(Urine)、ARLG-1195、ARLG-1196、ATCC BAA-1705、ATCC BAA-1898、ATCC BAA-1899、ATCC BAA-2343、ATCC BAA-2470)は、Eurofins社から入手した。
【0164】
3.実験の手順
生物学的安全キャビネットを紫外線で30分間殺菌した。-80℃の冷蔵庫からグリセロール管を取り出し、接種用ループでグリセロール管の中を軽く数回掻き回し、菌をMHIIA固体プレートに接種した。プレートを37℃のインキュベーターに置いて一晩培養した。
【0165】
30 μLの化合物母液を取って96-vウェルプレートの1列目に加え、2列目~10列目にDMSOを加えた。その後、ピペットガンで1列目から15 μLを取り出して2列目に加え、軽く均一に混合し、更に2列目から15 μLの溶液を取り出して3列目に加え、順に10列目まで勾配希釈した。(200 xのβラクタマーゼ阻害剤作動液に調製した)。抗生物質を対応する溶剤で1.6 mg/mLの溶液に希釈した。
【0166】
QPX-7728及び化合物1-1-Naのそれぞれのセフェピムの存在での3つの異なる菌株に対する最小発育阻止濃度は、下記の表に示されている。
【0167】
【0168】
その結果、セフェピム耐性のクレブシエラニューモニエに対して、化合物1-1-NaとQPX-7728は、何れもセフェピムの抗菌活性を明らかに回復させることができることが分かった。
試験例4
【0169】
1.実験の目的
ICRマウスに単回静脈内投与した化合物1-1-NaとQPX7728二ナトリウム塩の暴露量を比較した。
【0170】
2.実験の材料
化合物QPX-7728二ナトリウム塩(CN109415386を参照して合成して得た)と化合物1-1-Na(遊離型薬物理論量=秤量量×補正因子)を正確に秤量し、まず滅菌注射用水で40 mg/mLに溶解し、次に生理食塩水で投与濃度に希釈した。投与当日に調製し、4℃の条件で保存した。
【0171】
3.実験の手順
下記の群分け方に従ってICRマウスに単回静脈内注射で投与し、そして投与後の0.083 h、0.25 h、0.5 h、1 h、2 h、4 h、6 h、12 hに、伏在静脈又は眼底静脈叢から約0.1 mL/時点採血し、生物分析方法を確立して様々な時点での血中薬物濃度を測定し、薬物動態に関連するパラメーターを算出した。
【0172】
【0173】
【0174】
その結果、マウスに単回静脈内投与した化合物1-1-Naの暴露量は、QPX7728二ナトリウム塩の5倍に近く、類似の薬効を得る場合に投与量を低減し、薬剤の毒性や副作用を減少させることに有利であることが分かった。
【国際調査報告】