(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】VEGF及びアンジオポエチンを標的とする融合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240321BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240321BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240321BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240321BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240321BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240321BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240321BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240321BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240321BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240321BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240321BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240321BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240321BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61P27/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/76
C07K14/705
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559688
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2022084074
(87)【国際公開番号】W WO2022206838
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/084559
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039075
【氏名又は名称】ハングズホウ エクセジェネシス バイオ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】グオジエ イエ
(72)【発明者】
【氏名】ズヘンフア ウー
(72)【発明者】
【氏名】リジュン ワング
(72)【発明者】
【氏名】リ ダイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084BA41
4C084CA53
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB18
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA06
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
2つ又は3つのVEGF結合ドメイン;及びアンジオポエチンに結合するドメインを含むポリペプチド、並びにそのようなポリペプチドを送達するための遺伝子療法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)VEGFに結合する第一のドメイン;
(ii)VEGFに結合する第二のドメイン;及び
(iii)アンジオポエチンに結合する第三のドメイン
:を含み、
ここで任意に、該第三のドメインが該第一のドメイン及び該第二のドメインのN-末端にある、ポリペプチド。
【請求項2】
前記第一のドメインがVEGF受容体-1(VEGFR-1又はFLT-1)に由来する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記第一のドメインがVEGFR-1又はそのバリアントのドメイン2を含む、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記第一のドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記第一のドメインが、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記第二のドメインがVEGF受容体-2(VEGFR-2又はFlk-1)に由来する、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記第二のドメインがVEGFR-2又はそのバリアントのドメイン3を含む、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記第二のドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる、請求項7記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記第二のドメインが、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる、請求項7記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記第三のドメインが、配列番号3のアミノ酸配列の1つもしくは2つの反復;及び/又は配列番号51のアミノ酸配列の1つもしくは2つの反復を含み、ここで任意に、(i)該第三のドメインが配列番号3のアミノ酸配列の2つの反復を含むか、(ii)該第三のドメインが配列番号51のアミノ酸配列の2つの反復を含むか;又は(iii)該第三のドメインが配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号51のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
(i)前記第三のドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は該第三のドメインが、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;(ii)該第三のドメインが配列番号52のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は該第三のドメインが、配列番号52と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;(iii)該第三のドメインが、配列番号53のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は該第三のドメインが配列番号53と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;或いは(iv)該第三のドメインが配列番号54のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は該第三のドメインが、配列番号54と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記第三のドメインが前記第一のドメイン及び前記第二のドメインのN-末端にある、請求項1~11のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項13】
(i)VEGFに結合する第一のドメインであって、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第一のドメイン;
(ii)VEGFに結合する第二のドメインであって、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第二のドメイン;及び
(iii)アンジオポエチンに結合する第三のドメインであって、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を各々含む2つのアミノ酸配列;配列番号51と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を各々含む2つのアミノ酸配列;又は配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有する1つのアミノ酸配列及び配列番号51と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有する1つのアミノ酸配列を含む第三のドメイン
:を含む、ポリペプチド。
【請求項14】
抗体又はそのバリアントのFc領域をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記Fc領域が配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項14記載のポリペプチド。
【請求項16】
シグナルペプチドをさらに含み、ここで任意に、該シグナルペプチドが配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項17】
1以上のリンカーをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項18】
配列番号7、配列番号8、配列番号9、もしくは配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号7、配列番号8、配列番号9、もしくは配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドがVEGFC結合ドメインをさらに含む、請求項1~18のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記VEGFC結合ドメインがVEGFR-2に由来する、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記VEGFC結合ドメインがVEGF受容体-3(VEGFR-3)に由来する、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記VEGFC結合ドメインが、配列番号55と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記VEGFC結合ドメインが、配列番号56と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか;又は該VEGFC結合ドメインが、配列番号57と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項24】
配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、もしくは配列番号66のアミノ酸配列、又は配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、もしくは配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドが薬剤に遺伝的に融合されているか又化学的にコンジュゲートされている、請求項1~24のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項27】
請求項26記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項28】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項27記載のベクター。
【請求項29】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらの組合せもしくはバリアントに由来する、請求項29記載のベクター。
【請求項31】
前記ベクターが、組換えAAV2(rAAV2)ベクター、組換えAAV8(rAAV8)ベクター、又はこれらのバリアントである、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
ポリペプチドをコードする核酸を含む、組換えAAV(rAAV)ベクターであって、ここで、該ポリペプチドが、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメインを含み、ここで、該rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、又はAAV44-9由来の逆方向末端反復(ITR)を含む、前記組換えAAV(rAAV)ベクター。
【請求項33】
ポリペプチドをコードする核酸を含む、組換えAAV(rAAV)ベクターであって、ここで、該ポリペプチドが、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン;及び(iv)VEGFCに結合することができる第四のドメインを含み、ここで、該rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、又はAAV44-9由来の逆方向末端反復(ITR)を含む、前記組換えAAV(rAAV)ベクター。
【請求項34】
前記ITRがAAV2由来のものである、請求項32又は請求項33記載のrAAVベクター。
【請求項35】
前記ITRがAAV8由来のものである、請求項32又は請求項33記載のrAAVベクター。
【請求項36】
前記第三のドメインが前記第一のドメイン及び前記第二のドメインのN-末端にある、請求項32~35のいずれか一項記載のrAAVベクター。
【請求項37】
配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、もしくは配列番号23の核酸配列、又は配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、もしくは配列番号23と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含む、ベクター。
【請求項38】
配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、もしくは配列番号75の核酸配列、又は配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、もしくは配列番号75と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含む、ベクター。
【請求項39】
(a)ポリペプチドをコードする核酸であって、該ポリペプチドが、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメインを含む、前記核酸;並びに
(b)AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントのカプシドタンパク質
を含む、組換えAAV(rAAV)粒子。
【請求項40】
(a)ポリペプチドをコードする核酸であって、該ポリペプチドが、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン;及び(iv)VEGFCに結合することができる第四のドメインを含む、前記核酸;並びに
(b)AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントのカプシドタンパク質
を含む、組換えAAV(rAAV)粒子。
【請求項41】
前記第三のドメインが前記第一のドメイン及び前記第二のドメインのN-末端にある、請求項39又は請求項40記載のrAAV粒子。
【請求項42】
前記カプシドタンパク質がAAV2カプシドタンパク質である、請求項39~41のいずれか一項記載のrAAV粒子。
【請求項43】
前記カプシドタンパク質がAAV8カプシドタンパク質である、請求項39~41のいずれか一項記載のrAAV粒子。
【請求項44】
前記カプシドタンパク質が配列番号48のアミノ酸配列を含むAAV2カプシドタンパク質のバリアントであり、ここで、該AAV2カプシドタンパク質のバリアントが、AAV2のカプシドタンパク質VP1のY444F、R487G、T491V、Y500F、R585S、R588T、及びY730Fというアミノ酸置換を含む、請求項39~41のいずれか一項記載のrAAV粒子。
【請求項45】
請求項1~25のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項27~38のいずれか一項記載のベクターもしくはrAAVベクター、又は請求項39~44のいずれか一項記載のrAAV粒子、及び医薬として許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項46】
対象の疾患又は障害を治療する方法であって、該対象に、請求項1~25のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項27~38のいずれか一項記載のベクターもしくはrAAVベクター、又は請求項39~44のいずれか一項記載のrAAV粒子、及び請求項45記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記疾患又は障害が血管新生性又は新生血管性疾患又は障害である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記疾患又は障害が炎症性疾患、眼疾患、自己免疫疾患、又は癌である、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記疾患又は障害が眼疾患又は眼障害である、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記眼疾患又は眼障害が、ぶどう膜炎、網膜色素変性症、新生血管緑内障、糖尿病性網膜症(DR)(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、虚血性網膜症、眼内新血管形成、加齢黄斑変性症(AMD)、網膜新血管形成、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜虚血、糖尿病性網膜浮腫、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症及び網膜静脈分岐閉塞症を含む)、黄斑浮腫、並びに網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫からなる群から選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記疾患又は障害が加齢黄斑変性症(AMD)である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記AMDが湿潤型AMD(wAMD)である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、前記対象の眼への硝子体内又は網膜下注射によって投与することを含む、請求項46~52のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる、2021年3月31日に出願されたPCT出願PCT/CN2021/084559号の恩典を主張する。
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、「14652-025-228_SEQ_LISTING.txt」というファイル及び2022年3月18日の作成日で、217,975バイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表として、EFS-Web経由で電子的に提出された配列表を含む。EFS-Web経由で提出された配列表は、本明細書の一部であり、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
(1.分野)
本開示は、血管内皮成長因子(VEGF)とアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)の両方に結合する融合分子(例えば、ポリペプチド)、そのような融合分子に基づく遺伝子療法、並びにこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景)
VEGF/VEGFR及びアンジオポエチン/Tie-2シグナル伝達経路は、血管内皮成長(血管新生)の過程及び血管新生関連血管の維持において重要である。Biela及びSiemannの文献、Cancer Lett. 380(2): 525-533(2016)を参照されたい。異常な血管新生は、糖尿病性網膜症、乾癬、滲出型又は「湿潤型」加齢黄斑変性症(「wAMD」)、関節リウマチ及び他の炎症性疾患、並びにほとんどの癌などの、多くの疾病に関係があるとされる。これらの疾病に関連する疾患組織又は腫瘍は、通常、異常に高いレベルのVEGFを発現し、高度の血管形成又は血管透過性を示す。例えば、wAMDは、年老いた個体の片眼又は両眼の脈絡膜新血管形成を特徴とする血管新生疾患であり、失明の主な原因となっている。Gehrsらの文献、Ann Med. 38(7): 450-471(2006)を参照されたい。VEGF又はアンジオポエチンを標的として、異常な血管新生を阻害するためのいくつかの治療戦略が存在する。Biela及びSiemannの文献、Cancer Lett. 380(2): 525-533(2016)を参照されたい。しかしながら、そのような治療は、通常、反復注射を必要とし、一部の患者において、炎症、感染、及び他の有害作用のリスクが増加する可能性がある。反復注射には、患者のコンプライアンス及びアドヒアランスの課題も付随し、ノンコンプライアンスは、視力低下及び眼疾患又は眼疾病の悪化を招く可能性がある。投与のために医療機関に繰り返し又は頻繁に行く必要がある治療レジメンに対するノンコンプライアンス及びノンアドヒアランスの割合は、AMDの影響を最も大きく受ける高齢患者の間で特に高い。特に、wAMDなどの疾患を治療するための遺伝子療法で使用するための、改善された治療用分子が当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
(3.概要)
一態様において、本明細書に提供されるのは、(i)VEGFに結合する第一のドメイン;(ii)VEGFに結合する第二のドメイン;並びに(iii)アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する第三のドメイン:を含むポリペプチドである。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、任意に、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。
【0004】
いくつかの実施態様において、第一のドメインは、VEGF受容体-1(VEGFR-1又はFLT-1)に由来する。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、VEGFR-1又はそのバリアントのドメイン2を含む。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。
【0005】
いくつかの実施態様において、第二のドメインは、VEGF受容体-2(VEGFR-2又はFlk-1)に由来する。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、VEGFR-2又はそのバリアントのドメイン3を含む。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。
【0006】
いくつかの実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号3のアミノ酸配列の1つ又は2つの反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号51のアミノ酸配列の1つ又は2つの反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号3のアミノ酸配列の2つの反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号51のアミノ酸配列の2つの反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号51のアミノ酸配列を含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は第三のドメインは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号52のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は第三のドメインは、配列番号52と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号53のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は第三のドメインは、配列番号53と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号54のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は第三のドメインは、配列番号54と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、(i)VEGFに結合する第一のドメインであって、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第一のドメイン;(ii)VEGFに結合する第二のドメインであって、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合する第三のドメインであって、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を各々含む2つのアミノ酸配列を含む第三のドメインを含むポリペプチドである。
【0012】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、(i)VEGFに結合する第一のドメインであって、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第一のドメイン;(ii)VEGFに結合する第二のドメインであって、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合する第三のドメインであって、配列番号51と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を各々含む2つのアミノ酸配列を含む第三のドメインを含むポリペプチドである。
【0013】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、(i)VEGFに結合する第一のドメインであって、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第一のドメイン;(ii)VEGFに結合する第二のドメインであって、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第二のドメイン;並びに(iii)アンジオポエチンに結合する第三のドメインであって、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有する1つのアミノ酸配列及び配列番号51と少なくとも80%、85%、90%、又は100%の同一性を有する1つのアミノ酸配列を含む第三のドメインを含むポリペプチドである。
【0014】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体のFc領域をさらに含む。いくつかの実施態様において、Fc領域は、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、シグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、1以上のリンカーをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、もしくは配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号7、配列番号8、配列番号9、もしくは配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0018】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、もしくは配列番号66のアミノ酸配列、又は配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、もしくは配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0019】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるポリペプチドは、VEGFC結合ドメインをさらに含む。いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、VEGFR-2に由来する。他の実施態様において、VEGFC結合ドメインは、VEGFR-3に由来する。
【0020】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号55と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号56と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号57と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、薬剤と遺伝的に融合されているか又は化学的にコンジュゲートされている。
【0024】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸である。
【0025】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される単離された核酸を含むベクターである。いくつかの実施態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施態様において、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらの組合せもしくはバリアントに由来する。いくつかの実施態様において、ベクターは、組換えAAV2(rAAV2)ベクター、組換えAAV8(rAAV8)ベクター、又はこれらのバリアントである。
【0026】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAAV(rAAV)ベクターであり、ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;並びに(iii)アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合することができる第三のドメインを含み、ここで、該rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらの組合せもしくはバリアント由来の逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施態様において、ITRは、AAV2由来のものである。他の実施態様において、ITRは、AAV8由来のものである。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。
【0027】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAAV(rAAV)ベクターであり、ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン;及び(iv)VEGFCに結合することができる第四のドメインを含み、ここで、該rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、又はAAV44-9由来の逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施態様において、ITRは、AAV2由来のものである。他の実施態様において、ITRは、AAV8由来のものである。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。
【0028】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、もしくは配列番号23の核酸配列、又は配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、もしくは配列番号23と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0029】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、もしくは配列番号75の核酸配列、又は配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、もしくは配列番号75と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0030】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ポリペプチドをコードする核酸(ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;並びに(iii)アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合することができる第三のドメインを含む);並びに(b)AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントのカプシドタンパク質を含む組換えAAV(rAAV)粒子である。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。いくつかの実施態様において、カプシドタンパク質は、AAV2カプシドタンパク質である。いくつかの実施態様において、カプシドタンパク質は、AAV8カプシドタンパク質である。いくつかの実施態様において、カプシドタンパク質は、配列番号48のアミノ酸配列を含むAAV2カプシドタンパク質のバリアントであり、ここで、該バリアントは、AAV2のカプシドタンパク質VP1のY444F、R487G、T491V、Y500F、R585S、R588T、及びY730Fというアミノ酸置換を含む。
【0031】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ポリペプチドをコードする核酸(ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン;及び(iv)VEGFCに結合することができる第四のドメインを含む);並びに(b)AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントのカプシドタンパク質を含む組換えAAV(rAAV)粒子である。
【0032】
本明細書に提供されるポリペプチド、ベクターもしくはrAAVベクター、又はrAAV粒子、及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物。
【0033】
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象の疾患又は障害を治療する方法であって、該対象に、本明細書に提供されるポリペプチド、ベクター、又は医薬組成物を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、血管新生性又は新生血管性疾患又は障害である。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、炎症性疾患、眼疾患、自己免疫疾患、又は癌である。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、眼疾患又は眼障害である。いくつかの実施態様において、眼疾患又は眼障害は、ぶどう膜炎、網膜色素変性症、新生血管緑内障、糖尿病性網膜症(DR)(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、虚血性網膜症、眼内新血管形成、加齢黄斑変性症(AMD)、網膜新血管形成、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜虚血、糖尿病性網膜浮腫、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞及び網膜静脈分岐閉塞を含む)、黄斑浮腫、並びに網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、加齢黄斑変性症(AMD)である。いくつかの実施態様において、AMDは、湿潤型AMD(wAMD)である。
【0034】
いくつかの実施態様において、本方法は、対象の眼への硝子体内又は網膜下注射によって投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
(4.図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、本明細書に提供される例示的な融合タンパク質コンストラクトを示している(Flt1シグナル: VEGFR1(Flt1)のシグナルペプチド配列; VEGFR1 D2: VEGF受容体1のIgG様ドメイン2; VEGFR2 D3: VEGF受容体2のIgG様ドメイン3; Ang BD:アンジオポエチン結合ドメイン; IgG Fc: ヒトIgGのFc断片)。
【0036】
【
図2】
図2は、本明細書に提供される例示的なrAAVベクターを示している。TRは、AAV2逆方向末端反復を表し、CBAは、1.68kbのニワトリβ-アクチンプロモーターであり、CBは、0.78kbの小さいニワトリβ-アクチンプロモーターであり、D2は、VEGFR-1のIgG様ドメイン2を表し、D3は、VEGFR-2のIgG様ドメイン3を表し、ABD(又はAng BD)は、アンジオポエチン結合ドメインを表し、IgG Fcは、ヒトIgGのFc断片であり、Fc-Hingerは、FcのN-末端の21アミノ酸+6アミノ酸のGSリンカーであり、WPREは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(600bp)を表し、ミニmWPREは、WPRE(240bp)であり、SV40pAは、サルウイルス40ポリアデニル化シグナルであり、bGHpAは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。
【0037】
【
図3】
図3A~3Bは、本明細書に提供されるコンストラクトの発現及び結合親和性を試験するための実験設計及びアッセイを示している。
【0038】
【
図4】
図4A~4Bは、C-末端のAng BDの位置がrVEGFに対する結合能力に影響を及ぼさなかったが、導入遺伝子発現レベルを低下させたことを示している。
【0039】
【
図5】
図5A~5Bは、VEGF結合ドメインとFc領域の中間のAng BDの位置がrVEGFに対する結合能力及び導入遺伝子発現に影響を及ぼさなかったことを示している。
【0040】
【
図6】
図6A~6Bは、VEGF結合ドメインとFc領域の中間のAng BDの位置がAng2への結合能力を阻害したことを示している。
図6Bの上のパネルにおいて、2つのペアの各々の右のバーは、EXG102-09についての結合を表し、2つのペアの各々の左のバーは、EXG102-04についての結合を表す。
【0041】
【
図7】
図7A~7Dは、N-末端にAng BDを有するコンストラクトが、導入遺伝子の高い発現レベルを維持しながら、VEGFとAng2の両方に強く結合することを示している。
図7Dにおいて、各々のEXGコンストラクトについて、左のバーは、rVEGFとの結合を、中央のバーは、Ang2との結合を、右のバーは、タンパク質発現レベルを表す。
【0042】
【
図8】
図8は、本明細書に提供されるVEGF-C結合ドメイン(Trap-C1、C2、又はC3)及びアンジオポエチン結合ドメイン(ABD又はABD2)を含むさらなる例示的な融合タンパク質コンストラクトの模式的設計を示している。TR、逆方向末端反復 配列; CBA、キメラCMV-ニワトリβ-アクチンプロモーター; ABD、アンジオポエチン結合ドメイン; D2、VEGF受容体1のIgG様ドメイン2; D3、VEGF受容体2のIgG様ドメイン3; Trap C、VEGFC結合ドメイン; Fc、IgG1の断片結晶化可能; bGHpA、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル; VEGF、血管内皮成長因子; IgG1、免疫グロブリンG1。
【0043】
【
図9】
図9A~9Iは、それぞれ、EXG102-24、EXG102-25、EXG102-26、EXG102-27、EXG102-28、EXG102-29、EXG102-30、EXG102-31、及びEXG102-32を示している。配列が示され、付番されている(
図9A~9Iに例示されている融合タンパク質は、それぞれ、配列番号58~66を含む)。シグナルペプチド、ABD、D2、D3、Trap C、及びFcコンストラクトも図に示されている。GSリンカーを強調表示した。TR、逆方向末端反復配列; CBA、キメラCMV-ニワトリβ-アクチンプロモーター; ABD、アンジオポエチン結合ドメイン; D2、VEGF受容体1のIgG様ドメイン2; D3、VEGF受容体2のIgG様ドメイン3; Trap C、VEGFC結合ドメイン; Fc、IgG1の断片結晶化可能; bGHpA、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル; VEGF、血管内皮成長因子; IgG1、免疫グロブリンG1。
【0044】
【
図10】
図10A~10Fは、ABD2を含有するコンストラクトが、タンパク質発現、VEGF-A結合、又はAng2結合において、ABDドメインを有するコンストラクトと同等であることを示している。
【0045】
【
図11】
図11は、レーザー誘導脈絡膜新血管形成(CNV)マウスモデルにおけるFFA平均スコアを示している。FFA平均スコアは、注射後29及び36日目に、AAV-GFP(陰性対照)、EXG102-02(陽性対照)、EXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置された眼で測定した。血管造影図は、次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。最も大きいCNV阻害を有する2つのコンストラクトは、矢印で強調表示されている。バーは、SD付きの平均値を示している。
【0046】
【
図12】
図12は、レーザー誘導CNVマウスモデルにおけるグレード3のCNV病変の比を示している。FFA平均スコアは、AAV-GFP(陰性対照)、EXG102-02(陽性対照)、EXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置された眼で測定した。血管造影図は、次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。バーは、SD付きの平均値を示している。
【0047】
【
図13】
図13A~13Cは、プラスミドDNAでトランスフェクトされたHEK293T細胞から発現された導入遺伝子産物のインビトロのVEGF-A、Ang2、又はVEGF-C結合親和性を示している。HEK293T細胞に、pEXG102-02、pEXG102-30、又はpEXG102-31のプラスミドDNAでトランスフェクトし、発現された標的タンパク質を細胞溶解物から親和性精製した。VEGF-A、Ang2、又はVEGF-Cに対するEXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31の結合能力を、それぞれ、ELISAによって測定した。バーは、SD付きの平均値を示している。
【0048】
【
図14】
図14は、レーザー誘導CNVマウスモデルにおけるFFA平均スコアを示している。FFA平均スコアは、ビヒクル対照(黒)、EXG102-02(中灰色)、EXG102-30(濃灰色)、又はEXG102-31(淡灰色)で処置された眼で測定した。フルオレセイン血管造影の前に、動物にフルオレセインナトリウム(100mg/ml、30μL/動物)の腹腔内注射を投与した。FFA画像は、注射から3分後に取得した。血管造影図は、次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。スコア3の病変の割合及び平均スコアを計算した。バーは、SD付きの平均値を示している。
【0049】
【
図15】
図15は、レーザー誘導CNVマウスモデルにおけるグレード3のCNV病変の比を示している。グレード3のCNV病変の比率は、ビヒクル対照、EXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31で処置された眼で測定した。フルオレセイン血管造影の前に、動物にフルオレセインナトリウム(100mg/ml、30μL/動物)を腹腔内注射した。FFA画像は、注射3分後に取得した。血管造影は、次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。スコア3の病変の割合及び平均スコアを計算した。バーは、SD付きの平均値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(5.詳細な説明)
本開示は、VEGFR-1、VEGFR-2、及び/又はVEGFR-3由来のドメイン、並びにアンジオポエチン結合ドメインを含む新規の融合タンパク質、そのような融合タンパク質をコードする核酸を含むAAVベクター、並びにその改善された特性に一部基づいている。
【0051】
(5.1.定義)
本明細書に記載又は言及される技法及び手順は、全体として、当業者によって十分に理解されており、かつ/又は従来の方法を用いて一般に利用されているもの、例えば、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(第3版、2001);分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(Ausubelら編、2003);治療用モノクローナル抗体:実験台から臨床まで(Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic)(An編、2009);モノクローナル抗体:方法及びプロトコル(Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols)(Albitar編、2010);及び抗体エンジニアリング(Antibody Engineering)、第1巻及び第2巻(Kontermann及びDubel編、第2版、2010)に記載されている広く使用されている方法などを含む。
【0052】
本明細書で別途定義されない限り、本説明で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書を解釈するために、以下の用語の説明が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆も同様である。示されている用語の任意の説明が、引用により本明細書中に組み込まれている任意の文書と矛盾する場合は、以下に示されている用語の説明が優先されるものとする。
【0053】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、線状であっても分岐状であってもよく、これは、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、かつこれは、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、天然に、或いは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。また本定義に含まれるのは、例えば、限定するものではないが、非天然アミノ酸、及び当技術分野で公知の他の修飾を含む、アミノ酸の1以上の類似体を含有するポリペプチドである。
【0054】
「結合する(binds)」又は「結合する(binding)」という用語は、例えば、複合体を形成することを含む、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、及び/又はファンデルワールス相互作用を含む、非共有結合的相互作用であることができる。複合体は、共有結合的又は非共有結合的な結合、相互作用、又は力によって結び付けられた2以上の分子の結合を含むこともできる。2分子間の全体的な非共有結合的相互作用の強度が一方の分子のもう一方に対する親和性である。別の分子に対する結合分子の解離速度(koff)と会合速度(kon)の比(koff/kon)が解離定数KDであり、これは、親和性と逆相関する。KD値が低ければ低いほど、親和性は高い。KDの値は、複合体の違いによって異なり、konとkoffの両方によって決まる。解離定数KDは、本明細書に提供される任意の方法又は当業者に周知の任意の他の方法を用いて決定することができる。
【0055】
本明細書に記載される結合分子との関連において、「に結合する」、「に特異的に結合する」などの用語及び類似の用語も本明細書で互換的に使用され、結合ドメインが、別の分子、例えば、ポリペプチドに特異的に結合することを指す。別の分子に結合する又は特異的に結合する結合分子又は結合ドメインは、例えば、免疫アッセイ、Octet(登録商標)、Biacore(登録商標)、又は当業者に公知の他の技法によって同定することができる。いくつかの実施態様において、結合分子又は結合ドメインは、それが、放射免疫アッセイ(RIA)及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験的技法を用いて決定したとき、任意の交差反応性分子に対するよりも高い親和性で分子に結合する場合、分子に結合する又は特異的に結合する。通常、特異的又は選択性反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を上回る場合もある。例えば、結合特異性に関する考察については、基礎免疫学(Fundamental Immunology)、332-36(Paul編、第2版、1989)を参照されたい。ある実施態様において、「非標的」タンパク質に対する結合分子又は結合ドメインの結合の程度は、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)解析又はRIAによって決定したとき、その特定の標的に対する結合分子又は結合ドメインの結合の約10%未満である。それに関して、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、又は「に特異的である」などの用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することにより測定することができ、この対照分子は、通常、結合活性を有さない類似構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似している対照分子、例えば、過剰の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、標識された標的とプローブとの結合が過剰の未標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。分子に結合する結合分子又は結合ドメインには、結合分子が、例えば、分子を標的とする際に診断剤又は治療剤として有用であるような十分な親和性で分子に結合することができるものが含まれる。ある実施態様において、標的分子に結合する結合分子又は結合ドメインは、1μM、800nM、600nM、550nM、500nM、300nM、250nM、100nM、50nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、又は0.1nM以下の解離定数(KD)を有する。
【0056】
「結合親和性」は、通常、分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用されるように、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定する種々の方法が当技術分野で公知であり、これらはいずれも、本開示の目的のために使用することができる。具体的で例示的な実施態様には、以下のものが含まれる。一実施態様において、「KD」又は「KD値」は、当技術分野で公知のアッセイによって、例えば、結合アッセイによって測定することができる。KD又はKD値は、例えば、Octet(登録商標) Red96システムを使用するOctet(登録商標)によるか、又は例えば、Biacore(登録商標) TM-2000もしくはBiacore(登録商標) TM-3000を使用するBiacore(登録商標)による、バイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを用いて測定することもできる。「結合速度(on-rate)」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」も、例えば、Octet(登録商標) Red96、Biacore(登録商標) TM-2000、又はBiacore(登録商標) TM-3000システムを使用する、上記の同じバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて決定することができる。
【0057】
「抗体」、「免疫グロブリン」、又は「Ig」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、かつ最も幅広い意味で使用されており、具体的には、例えば、下記のような、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長又は無傷のモノクローナル抗体を含む)、多エピトープ又は単一エピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル又は一価抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、それらが、所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)、単鎖抗体、並びにこれらの断片を対象とする。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び/又は親和性成熟抗体、並びに他の種、例えば、マウス、ウサギ、リャマなどに由来する抗体であることができる。「抗体」という用語は、特異的な分子抗原に結合することができ、かつ2つの同一のポリペプチド鎖対から構成される免疫グロブリンクラスのポリペプチド内のB細胞のポリペプチド産物を含むことが意図され、ここで、各々の対は、1つの重鎖(約50~70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各々の鎖の各々のアミノ末端部分は、約100~約130又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含み、各々の鎖の各々のカルボキシ末端部分は、定常領域を含む。例えば、抗体エンジニアリング(Antibody Engineering)(Borrebaeck編、第2版、1995);及びKubyの文献、免疫学(Immunology)(第3版、1997)を参照されたい。具体的な実施態様において、ポリペプチド又はエピトープを含む、特異的な分子抗原が、本明細書に提供される抗体によって結合されることができる。抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ科種(例えば、リャマもしくはアルパカ)由来のものを含む単一ドメイン抗体又はそのヒト化バリアント、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のもののいずれかの機能性断片(例えば、抗原結合断片)(これは、該断片が由来した抗体の結合活性の一部又は全てを保持する抗体重鎖又は軽鎖ポリペプチドの部分を指す)も含まれるが、これらに限定されない。機能性断片(例えば、抗原結合断片)の非限定的な例としては、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab')断片、F(ab)2断片、F(ab')2断片、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。特に、本明細書に提供される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、例えば、抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗体の1以上のCDR)を含有する抗原結合ドメイン又は分子が含まれる。そのような抗体断片は、例えば、Harlow及びLaneの文献、抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)(1989);分子生物学及び生命工学:包括的卓上参考書(Mol. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference)(Myers編、1995); Hustonらの文献、1993, Cell Biophysics 22:189-224; Pluckthun及びSkerraの文献、1989, Meth. Enzymol. 178:497-515;及びDayの文献、先端免疫化学(Advanced Immunochemistry)(第2版、1990)に見出すことができる。本明細書に提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のものであることができる。抗体は、作動性抗体であっても拮抗性抗体であってもよい。抗体は、作動性でも拮抗性でもない場合がある。
【0058】
本明細書における「Fc領域」という用語は、例えば、ネイティブ配列Fc領域、組換えFc領域、及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、多くの場合、位置Cys226のアミノ酸残基から又はPro230から、そのカルボキシル末端にまで及ぶと定義される。Fc領域のC-末端リジン(EU付番体系によれば、残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え技術によって操作することにより除去することができる。したがって、無傷抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基がある抗体とK447残基がない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合; CDC; Fc受容体結合; ADCC;貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合領域又は結合ドメイン(例えば、抗体可変領域又はドメイン)と組み合わされることを必要とし、当業者に公知の様々なアッセイを用いて評価することができる。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、又は欠失)によって、ネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、約1~約10個のアミノ酸置換、又は約1~約5個のアミノ酸置換をネイティブ配列Fc領域中又は親ポリペプチドのFc領域中に有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、又はそれらと少なくとも約90%の相同性、例えば、それらと少なくとも約95%の相同性を保有することができる。
【0059】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、これには、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/又はこれらの類似体、或いはDNAもしくはRNAポリメラーゼによるか又は合成反応によってポリマーに組み込むことができる任意の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びその類似体を含み得る。本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、短い、通常、一本鎖の合成ポリヌクレオチドを指し、これは、通常、長さが約200ヌクレオチド未満であるが、必ずしもそうとは限らない。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、オリゴヌクレオチドにも同等かつ完全に適用可能である。本開示の結合分子を産生する細胞には、親ハイブリドーマ細胞、並びにポリペプチドをコードする核酸が導入されている細菌及び真核生物宿主細胞が含まれ得る。別途規定されない限り、本明細書に開示される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の末端は、5'末端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の方向は、5'方向と呼ばれる。新生RNA転写物の5'から3'への付加の方向は、転写方向と呼ばれ; RNA転写物の5'末端に対して5'であるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ; RNA転写物の3'末端に対して3'であるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
【0060】
「単離された核酸」は、他のゲノムDNA配列、並びにネイティブ配列に天然に付随するタンパク質又は複合体、例えば、リボソーム及びポリメラーゼから通常は実質的に分離されている、核酸、例えば、RNA、DNA、又は混合核酸である。「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然の源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子である。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、他の細胞物質、もしくは組換え技法によって産生される場合は、培養培地を実質的に含まないものであることができ、又は化学合成される場合は、化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであることができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質をコードする1以上の核酸分子は、単離又は精製されている。この用語は、その天然の環境から取り出されている核酸配列を包含し、組換え又はクローニングされたDNA単離物及び化学合成された類似体又は異種システムによって生合成された類似体を含む。実質的に純粋な分子には、該分子の単離形態が含まれ得る。具体的には、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、特定され、かつそれが産生された環境内で通常関連する少なくとも1つの混入核酸分子から分離されている核酸分子である。
【0061】
ポリペプチド又はタンパク質に関して使用される「バリアント」という用語は、参照ポリペプチドと特定のパーセント配列同一性を有する、例えば、参照ポリペプチド、例えば、対応する全長のネイティブ配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを指す。そのようなポリペプチドバリアントには、例えば、1以上のアミノ酸残基が付加されているか又は欠失しているポリペプチドが含まれる。実施態様において、バリアントは、参照ポリペプチド、例えば、対応する全長のネイティブ配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、或いは、少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。実施態様において、バリアントポリペプチドは、長さが少なくとも約10アミノ酸、長さが少なくとも約20アミノ酸、長さが少なくとも約30アミノ酸、長さが少なくとも約40アミノ酸、長さが少なくとも約50アミノ酸、長さが少なくとも約60アミノ酸、長さが少なくとも約70アミノ酸、長さが少なくとも約80アミノ酸、長さが少なくとも約90アミノ酸、長さが少なくとも約100アミノ酸、長さが少なくとも約150アミノ酸、長さが少なくとも約200アミノ酸、長さが少なくとも約300アミノ酸であるか、又はそれより長い。バリアントは、保存的又は非保存的な性質である置換を含む。例えば、目的のポリペプチドは、最大約5~10個の保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換、又はさらには最大約15~25もしくは50個の保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換、又は5~50の間の任意の数を含むことができる。
【0062】
本明細書で使用される「相同性」という用語は、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド部分の間の同一性パーセントを指す。2つのDNA又は2つのポリペプチド配列は、該配列が、分子の定義された長さにわたって、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%~85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%~98%の配列同一性、少なくとも約99%、又はそれらの間の任意のパーセントを示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書で使用される場合、実質的に相同も、特定のDNA又はポリペプチド配列と完全な同一性を示す配列を指す。
【0063】
本明細書で使用される「同一性」という用語は、それぞれ、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の一致を指す。同一性パーセントを決定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、同一性パーセントは、配列を整列させ、2つの整列した配列間の正確な一致数をカウントし、短い方の配列の長さで除し、その結果に100を乗じることによる2分子間の配列情報の直接的な比較によって決定することができる。ALIGNなどの容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて、解析を助けることができ、例えば、ペプチド解析にSmith及びWatermanの文献、Advances in Appl. Math. 2:482-489、1981の局所相同性アルゴリズムを適用している、Dayhoff、M. O.の文献、タンパク質の配列と構造のアトラス(Atlas of Protein Sequence and Structure)所収、M. O. Dayhoff編、追補5版、3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.がある。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラム、例えば、BESTFIT、FASTA、及びGAPプログラムは、ウィスコンシン配列解析パッケージ、バージョン8(Genetics Computer Group, Madison, Wis.から入手可能)で利用可能であり、これらも、Smith及びWatermanアルゴリズムに依拠している。これらのプログラムは、製造者によって推奨され、上で言及されたウィスコンシン配列解析パッケージに記載されているデフォルトパラメータとともに容易に利用される。例えば、特定のヌクレオチド配列と参照配列との同一性パーセントは、Smith及びWatermanの相同性アルゴリズムを、デフォルトのスコアリング表及び6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティとともに用いて決定することができる。本発明との関連において同一性パーセントを確立する別の方法は、John F. Collins及びShane S. Sturrokにより開発され、IntelliGenetics社(Mountain View, Calif.)により流通されている、エディンバラ大学に著作権があるプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。このパッケージ一式から、デフォルトパラメータ(例えば、ギャップ開始ペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ1、ギャップ6)がスコアリング表に使用されるSmith-Watermanアルゴリズムを利用することができる。生成されたデータから、「一致」値は、「配列同一性」を反映する。配列間の同一性パーセント又は類似性パーセントを計算するための他の好適なプログラムは、当技術分野で一般的に公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータとともに使用される、BLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下のデフォルトパラメータ:遺伝暗号=標準;フィルタ=無し;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート方法=高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swiss-protein+Spupdate+PIRを用いて使用することができる。これらのプログラムの詳細は、当技術分野で周知である。或いは、相同性は、相同領域間の安定した二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、及び消化された断片のサイズ決定によって決定することができる。実質的に相同であるDNA配列は、その特定の系について規定される、例えば、ストリンジェントな条件下での、サザンハイブリダイゼーション実験で同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当業者の技術の範囲内である。例えば、Sambrookらの文献(上掲)、DNAクローニング(DNA Cloning)(上記)、核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)(上記)を参照されたい。
【0064】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、例えば、核酸配列を宿主細胞に導入するために、核酸配列を運搬又は含有するために使用される物質を指す。使用に適用可能なベクターとしては、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、及び人工染色体が挙げられ、これらは、宿主細胞の染色体への安定な組込みのために操作可能な選択配列又はマーカーを含むことができる。さらに、ベクターは、1以上の選択可能マーカー遺伝子及び適切な発現制御配列を含むことができる。含めることができる選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性を提供するか、栄養要求性欠損を相補するか、又は培養培地中に存在しない必須栄養素を供給する。発現制御配列は、構成的プロモーター及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むことができ、これらは、当技術分野で周知である。2以上の核酸分子を共発現させることになっている場合、両方の核酸分子を、例えば、単一の発現ベクターに、又は別々の発現ベクターに挿入することができる。宿主細胞への核酸分子の導入は、当技術分野で周知の方法を用いて確認することができる。そのような方法としては、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸解析、遺伝子産物発現のイムノブロッティング、又は導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の好適な分析方法が挙げられる。「ベクター」という用語には、クローニング及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターが含まれる。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、組換えAAVベクターである。
【0065】
本明細書で使用される「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」という用語は、AAV由来の核酸配列及び1以上の異種の配列(すなわち、AAV起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。いくつかの実施態様において、1以上の異種の配列は、少なくとも1つ、ある実施態様においては、2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接している。いくつかの実施態様において、そのようなrAAVベクターは、例えば、好適なヘルパーウイルスに感染していて(又は好適なヘルパー機能を発現していて)、かつAAV rep及びcap遺伝子産物(すなわち、AAV Rep及びCapタンパク質)を発現している宿主細胞内に存在するとき、複製されて、感染性ウイルスカプシド粒子内にパッケージングされることができる。rAAVベクターは、より大きなポリヌクレオチド中(例えば、染色体中、又はクローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込むことができ、AAVパッケージング機能及び好適なヘルパー機能の存在下での複製及びカプシド形成によって「レスキュー」することができる。rAAVベクターは、限定されないが、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体を形成したもの、リポソーム内に封入されたもの、及びウイルスカプシド粒子、特に、AAV粒子内にカプシド封入されたものを含む、多くの形態のいずれかであることができる。rAAVベクターをAAVカプシド内にパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルスカプシド粒子(rAAV粒子)」を生成させることができる。
【0066】
コード配列及び制御配列などの核酸配列に関して本明細書で使用される「異種」という用語は、通常は一緒に接続されていない、及び/又は通常は特定の細胞と関連していない配列を指す。したがって、核酸コンストラクト又はベクターの「異種」領域は、天然では他の分子と関連して見出されない別の核酸分子内の又は別の核酸分子に結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸コンストラクトの異種領域は、天然ではコード配列と関連して見出されない配列が隣接しているコード配列を含み得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然には見出されないコンストラクト(例えば、ネイティブの遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。
【0067】
他のエレメントが隣接している配列に関して本明細書で使用される「隣接している」という用語は、該配列に対して、上流及び/又は下流に、すなわち、5'及び/又は3'に、1以上の隣接エレメントが存在することを示す。「隣接している」という用語は、該配列が必ずしも連続していることを示すものではない。例えば、導入遺伝子をコードする核酸と隣接エレメントの間に介在配列があってもよい。他の2つのエレメント(例えば、TR)が「隣接している」配列(例えば、導入遺伝子)は、一方のエレメントが該配列の5'に位置し、もう一方が該配列の3'に位置するが;それらの間に介在配列があり得ることを示す。
【0068】
本明細書で使用される「逆方向末端反復」又は「ITR」配列という用語は、逆向きであるウイルスゲノムの末端に見出される比較的短い配列を指す。「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、当技術分野で周知であり、通常は、ネイティブな一本鎖AAVゲノムの両末端に存在する約145個のヌクレオチド配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、2つの二者択一の向きのうちのどちらかで存在することができ、異なるAAVゲノム間及び単一のAAVゲノムの2つの末端間の不均一性をもたらす。最も外側の125ヌクレオチドは、自己相補的ないくつかのより短い領域(A、A'、B、B'、C、C'、及びD領域と呼ばれる)も含有し、ITRのこの部分内で鎖内塩基対形成が起こるのを可能にする。
【0069】
「コード配列」又は選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれたとき、転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)されて、ポリペプチドになる核酸分子である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドン及び3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。転写終結配列は、コード配列の3'に位置していてもよい。
【0070】
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適である制御配列としては、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0071】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結された」という用語及び類似の語句(例えば、遺伝子的に融合された)は、核酸又はアミノ酸に関して使用される場合、それぞれ、互いに機能的な関係に置かれた、核酸配列又はアミノ酸配列の機能的な連結を指す。例えば、機能的に連結されたプロモーター、エンハンサーエレメント、オープンリーディングフレーム、5'及び3' UTR、並びにターミネーター配列は、核酸分子(例えば、RNA)の正確な産生をもたらす。いくつかの実施態様において、機能的に連結された核酸エレメントは、オープンリーディングフレームの転写をもたらし、最終的には、ポリペプチドの産生(すなわち、オープンリーディングフレームの発現)をもたらす。別の例として、機能的に連結されたペプチドは、機能的ドメインが、各々のドメインの意図された機能を付与するために互いに適切な距離を置いて配置されているペプチドである。
【0072】
その通常の意味で本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指し、ここで、該調節配列は、RNAポリメラーゼに結合して、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することができる遺伝子に由来する。転写プロモーターとしては、「誘導性プロモーター」(プロモーターに機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される場合)、「抑制性プロモーター」(プロモーターに機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される場合)、及び「構成的プロモーター」を挙げることができる。
【0073】
本明細書で広義に使用される「導入遺伝子」という用語は、例えば、標的細胞内での発現のための、ウイルスベクターに組み込まれた任意の異種ヌクレオチド配列を意味し、これは、プロモーターなどの発現制御配列と関連させることができる。発現制御配列は、標的細胞内で導入遺伝子発現を促進する能力に基づいて選択されることが当業者によって理解される。導入遺伝子の例は、治療用ポリペプチド又は検出可能なマーカーをコードする核酸である。
【0074】
本明細書で使用される「AAVカプシド」又は「AAVカプシドタンパク質」又は「AAV cap」という用語は、AAVカプシド(cap)遺伝子(例えば、VPI、VP2、及びVP3)又はそのバリアントによってコードされるタンパク質を指す。例えば、この用語は、任意のAAV血清型に由来するカプシドタンパク質、例えば、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV-2/1、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAVLK03、AAVrh10、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントを含むが、これらに限定されない。この用語は、キメラAAVなどの組換えAAVによって発現されるか、又はそれに由来するカプシドタンパク質も含む。
【0075】
本明細書で使用される「AAVカプシド粒子」又は「AAV粒子」という用語は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(例えば、VP1タンパク質、VP2タンパク質、VP3タンパク質、又はこれらのバリアント)を含み、任意に、AAVゲノム由来の核酸又はAAVゲノムに由来する核酸を封入する。
【0076】
ベクター又はウイルスカプシドに関して使用される「血清型」という用語は、カプシドタンパク質配列及びカプシド構造に基づく明確な免疫学的プロファイルによって定義される。
【0077】
本明細書で使用される「キメラ」という用語は、ウイルスカプシド又は粒子に関して、該カプシド又は粒子が、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Rabinowitzらの文献、米国特許第6,491,907号に記載されているような、異なるパルボウイルス、好ましくは、異なるAAV血清型由来の配列を含むことを意味する。
【0078】
「組換え」という用語は、通常天然に見出されるものとは異なる遺伝的実体を意味する。ポリヌクレオチド又は遺伝子に適用される場合、これは、ポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドと異なるコンストラクトの産生をもたらすクローニング、制限、及び/又はライゲーション工程、並びに他の手順の様々な組合せの産物であることを意味する。
【0079】
本明細書で使用される「組換えウイルス」という用語は、例えば、粒子への異種核酸コンストラクトの付加又は挿入によって遺伝的に改変されているウイルスを指す。例えば、本明細書で使用される「組換えAAV粒子」又は「rAAV」という用語は、例えば、内因性AAV遺伝子の欠失もしくは他の突然変異、及び/又はAAV粒子のポリヌクレオチドへの異種核酸コンストラクトの付加もしくは挿入によって遺伝的に改変されているAAVを指す。
【0080】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞内に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされているか、形質転換されているか、又は形質導入されている細胞である。例えば、「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取込みを指すために使用され、外因性DNAが細胞膜の内側に導入されている場合、細胞は「トランスフェクトされて」いる。いくつかのトランスフェクション技法が当技術分野で一般に公知である。例えば、Grahamらの文献(1973)、Virology, 52 :456、Sambrookらの文献(1989)、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, a laboratory manual)、Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davisらの文献(1986)、分子生物学の基本的方法(Basic Methods in Molecular Biology)、Elsevier、及びChuらの文献(1981)、Gene 13:197を参照されたい。そのような技法を用いて、1以上の外因性分子を好適な宿主細胞に導入することができる。ウイルスによる細胞の「形質導入」は、ウイルス粒子から細胞への核酸、例えば、DNA又はRNAの移入があることを意味する。
【0081】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされ得る特定の細胞及びそのような細胞の子孫又は潜在的な子孫を指す。宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞であり得る。
【0082】
「精製された」という用語は、目的の物質が、それが存在する試料の過半数のパーセントを構成するような物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)の単離を指す。通常、試料中で、実質的に精製された成分は、試料の50%、80%~85%、90~99%、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を構成する。目的のポリヌクレオチド及びポリペプチドを精製するための技法は、当技術分野で周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、及び密度による沈降を含む。
【0083】
本明細書で使用される「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。
【0084】
一実施態様において、各々の成分は、医薬製剤の他の成分と適合性があり、かつ過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、又は他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織又は器官に接触させて使用するのに好適であり、合理的な利益/リスク比に見合うという意味において、「医薬的に許容し得る」。例えば、Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2005; 医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、第6版; Roweら編; The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association: 2009;医薬添加物のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Additives)、第3版; Ash及びAsh編; Gower Publishing Company: 2007;医薬予備製剤及び製剤(Pharmaceutical Preformulation and Formulation)、第2版; Gibson編; CRC Press LLC: Boca Raton, FL, 2009を参照されたい。いくつかの実施態様において、医薬として許容し得る賦形剤は、利用される投薬量及び濃度でそれに曝露されている細胞又は哺乳動物にとって無毒である。いくつかの実施態様において、医薬として許容し得る賦形剤は、水性pH緩衝溶液である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、及び「治療すること(treating)」という用語は、1以上の療法の投与の結果として生じる疾患又は疾病の進行、重症度、及び/又は持続期間の低下又は改善を指す。治療すること(treating)は、患者がまだ原因となる障害に苦しむ可能性があるにもかかわらず、改善が患者で観察されるような、原因となる障害と関連する1以上の症状の減少、緩和、及び/又は軽減があるかどうかを評価することにより決定することができる。「治療すること(treating)」という用語には、疾患を管理することと改善することの両方が含まれる。「管理する(manage)」、「管理すること(managing)」、及び「管理(management)」という用語は、対象が療法から得る有益な効果を指し、該療法は、必ずしも、疾患の治癒をもたらすものではない。「治療(treatment)」及び「治療すること(treating)」には:(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患に曝される又は疾患に罹りやすい可能性があるが、まだ疾患の症状を経験していない又は示していない対象において、疾患の発生を予防すること又は疾患をより軽く発生させること、(2)疾患を阻害すること、すなわち、発症を停止させること、進行を予防しもしくは遅延させること、又は疾患状態を元に戻すこと、(3)疾患の症状を緩和すること、すなわち、対象が経験する症状の数を減少させること、及び(4)疾患又はその症状の進行を軽減し、予防し、又は遅延させることが含まれる。「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、及び「予防(prevention)」という用語は、疾患、障害、疾病、又は関連症状の発症(又は再発)の可能性を低下させることを指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「投与する(administer)」、「投与(administration)」、又は「投与すること(administering)」は、物質(例えば、本明細書に提供されるコンジュゲート又は医薬組成物)を、例えば、経口、粘膜、局所、皮内、非経口、静脈内、硝子体内、関節内、網膜下、筋肉内、髄腔内の送達によって、及び/又は本明細書に記載されるもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法によって、対象又は患者(例えば、ヒト)に注入するか又は別の形で物理的に送達する行為を指す。特定の実施態様において、投与は、静脈内注入によるものである。本明細書に提供されるコンジュゲート又は組成物は、全身に又は特定の組織に送達することができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所与の疾病、障害、もしくは疾患及び/又はこれらに関連する症状を治療し、診断し、予防し、その発症を遅延させ、軽減し、かつ/又はその重症度及び/もしくは持続期間を改善するのに十分である治療薬(例えば、本明細書に提供されるコンジュゲート又は医薬組成物)の量を指す。これらの用語は、所与の疾患の進展もしくは進行の軽減、減速、もしくは改善、所与の疾患の再発、発生、もしくは発症の軽減、減速、もしくは改善のために、及び/又は別の療法の予防的もしくは治療的効果を改善もしくは増強するために、又は別の療法への橋渡しの役割をするために必要な量も包含する。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される「有効量」は、指定された結果を達成するための本明細書に記載されるコンジュゲートの量も指す。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。
【0088】
本明細書で使用される場合、対象は、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)、例えば、ヒトである。ある実施態様において、対象は、本明細書に提供される疾患又は障害と診断された哺乳動物、例えば、ヒトである。別の実施態様において、対象は、本明細書に提供される疾患又は障害を発症するリスクのある哺乳動物、例えば、ヒトである。具体的な実施態様において、対象はヒトである。
【0089】
本明細書で使用される場合、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、疾患もしくは障害又はその症状(例えば、本明細書に提供される疾患もしくは障害又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態)の予防、治療、管理、又は改善において使用することができる、任意のプロトコル、方法、組成物、製剤、及び/又は薬剤を指すことができる。ある実施態様において、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、薬物療法、アジュバント療法、放射線、手術、生物療法、支持療法、及び/或いは疾患もしくは障害又はその1以上の症状の治療、管理、予防、又は改善において有用な他の療法を指す。ある実施態様において、「療法」という用語は、本明細書に記載されるコンジュゲート又はその医薬組成物以外の療法を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「血管新生と関連する疾患又は障害」という用語は、例えば、症状又は直接的もしくは間接的原因のいずれかとして、血管新生(異常な血管新生を含む)が関与する疾患又は障害を指す。この用語は、その発生に、例えば、癌及び眼疾患又は眼障害を含む、血管新生が関与する疾患又は障害を含む。
【0091】
「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、又はそれ未満を意味する。
【0092】
本開示及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形を含む。
【0093】
実施態様が「を含む」という用語を用いて本明細書に記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で記載される他の類似の実施態様も提供されることが理解される。実施態様が「から本質的になる」という語句を用いて本明細書に記載される場合はいつでも、「からなる」という用語で記載される他の類似の実施態様も提供されることも理解される。
【0094】
「AとBの間」又は「A~Bの間」などの語句で使用される「の間」という用語は、は、AとBの両方を含む範囲を指す。
【0095】
本明細書において「A及び/又はB」など語句で使用される「及び/又は」という用語は、AとBの両方; A又はB; A(のみ);及びB(のみ)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」など語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施態様: A、B、及びC; A、B、又はC; A又はC; A又はB; B又はC; A及びC; A及びB; B及びC; A(のみ); B(のみ);並びにC(のみ)の各々を包含することが意図される。
【0096】
(5.2.融合タンパク質又はそのバリアント)
(5.2.1.多重特異性融合タンパク質)
一態様において、本明細書に提供されるのは、複数のVEGF結合ドメイン(例えば、2つ又は3つのVEGF結合ドメイン)並びにアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合するドメインを含む多重特異性融合タンパク質(又はポリペプチド)である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、少なくとも3つの結合ドメイン-VEGFに結合する第一のドメイン、VEGFに結合する第二のドメイン、並びにアンジオポエチンに結合する第三のドメイン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)を含む。いくつかの実施態様において、多重特異性融合タンパク質は、VEGFに結合する第四のドメインをさらに含み、したがって、いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、少なくとも4つの結合ドメイン-VEGFに結合する第一のドメイン、VEGFに結合する第二のドメイン、アンジオポエチンに結合する第三のドメイン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)、並びにVEGF(より具体的には、VEGFC)に結合する第四のドメインを含む融合タンパク質である。
【0097】
血管内皮成長因子(VEGF)は、8つの保存されたシステインを特徴とするPDGFスーパー遺伝子ファミリーに属し、ホモ二量体構造として機能し、腫瘍細胞、マクロファージ、血小板、ケラチノサイト、及び腎メサンギウム細胞を含む多くの細胞型によって産生される。VEGF-Aは、VEGFR-1(Flt-1)及びVEGFR-2(KDR/Flk1)という2つの受容体を活性化することにより、血管新生及び血管透過性を調節する。血管系におけるその機能に加えて、VEGFは、骨形成、造血、創傷治癒、及び発生などの通常の生理機能において役割を果たす。例えば、VEGFなどの成長因子の過剰産生によって引き起こされる新しい血管の形成は、腫瘍成長、加齢黄斑変性症(AMD)、及び増殖性糖尿病性網膜症(PDR)のような疾患の重要な成分である。VEGF-VEGFR系は、癌における抗血管新生療法の重要な標的であり、かつ神経変性及び虚血性疾患の治療における血管新生促進療法のための魅力的な系でもある。Shibuyaの文献、Genes Cancer, 2(12): 1097-1105(2011)。VEGF-CとVEGFR-3との結合は、VEGFR-3の生物学的作用の大部分に関与し、かつ/又はその原因となっている。可溶性形態のVEGFR-3(sVEGFR-3)の発見及びこの遺伝子を発現するトランスジェニックマウスでの実験により、sVEGFR-3が、VEGF-C及びVEGF-Dによって媒介されるシグナルを阻害して、リンパ管の発生を阻害し、浮腫を誘導するという結論が導かれた。
【0098】
アンジオポエチンは、糖タンパク質アンジオポエチン1(ANGPT1又はAng1)及びアンジオポエチン2(ANGPT2又はAng2)並びにオルソログ3(マウス)及び4(ヒト)を含む成長因子のファミリーである。アンジオポエチンは、胚の血管発生に関与する。アンジオポエチン1が数多くの細胞型によって発現される一方、アンジオポエチン2は、内皮細胞にほぼ限定されている。どちらも、内皮細胞及び造血幹細胞に主に見出されるTIE2受容体チロシンキナーゼに対して作用する。これらのタンパク質は、血管新生及び血管完全性の維持の重要な調節因子である。本明細書で使用される「アンジオポエチン」は、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2を含む任意のアンジオポエチンペプチドを指し;「アンジオポエチンに結合するドメイン」は、アンジオポエチン1及び/又はアンジオポエチン2に結合するドメインを指す。
【0099】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第一及び第二のドメインは、ヒトVEGFに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第三のドメインは、ヒトアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第四のドメインは、ヒトVEGF(例えば、VEGFC)に結合する。
【0100】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、1以上のVEGF活性を調節する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、1以上のアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)活性を調節する。
【0101】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第一のドメインは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)で、VEGF(例えば、ヒトVEGF)に結合する。
【0102】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第二のドメインは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)で、VEGF(例えば、ヒトVEGF)に結合する。
【0103】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第三のドメインは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)で、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する。
【0104】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される第四のドメインは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)で、VEGF(例えば、ヒトVEGFC)に結合する。
【0105】
KDは、当技術分野の公知技術及び上の第5.1節に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0106】
いくつかの実施態様において、第一のドメインは、VEGF受容体-1(VEGFR-1又はFLT-1)に由来する。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、VEGFR-1又はそのバリアントのIgG様ドメイン2(又はドメイン2もしくはD2)を含む。したがって、このドメインは、本図において、例えば、
図1、
図2、
図8、及び
図9A~9Iにおいて、D2と呼ばれる。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第一のドメインは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。
【0107】
いくつかの実施態様において、第二のドメインは、VEGF受容体-2(VEGFR-2又はFlk-1)に由来する。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、VEGFR-2又はそのバリアントのIgG様ドメイン3(又はドメイン3もしくはD3)を含む。したがって、このドメインは、本図において、例えば、
図1、
図2、
図8、及び
図9A~9Iにおいて、D3と呼ばれる。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第二のドメインは、an 配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。
【0108】
いくつかの実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号3のアミノ酸配列の1以上の反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号51のアミノ酸配列の1以上の反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号3のアミノ酸配列の2つの反復を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号51のアミノ酸配列の2つの反復を含む。他の実施態様において、第三のドメインは、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号51のアミノ酸配列を含む。本融合タンパク質中のABDが配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号51のアミノ酸配列を含む場合、これら2つの配列は、任意の順序であることができ、例えば、配列番号3のアミノ酸配列は、配列番号51のアミノ酸配列のN-末端又はC-末端にあることができる。
【0109】
いくつかの具体的な実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン2又はAng2)に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0110】
いくつかの実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号52のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号52と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン2又はAng2)に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0111】
いくつかの実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号53と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン2又はAng2)に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0112】
いくつかの実施態様において、第三のドメイン(ABD)は、配列番号54のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、配列番号54と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつアンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン2又はAng2)に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0113】
ある実施態様において、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する第三のドメインは、第一のドメイン又は第二のドメインのN-末端にある。具体的な実施態様において、ポリペプチドは、N-末端からC-末端に向かって、第三のドメイン、第一のドメイン、及び第二のドメインを含む。別の具体的な実施態様において、ポリペプチドは、N-末端からC-末端に向かって、第三のドメイン、第二のドメイン、及び第一のドメインを含む。
【0114】
第四のドメイン、すなわち、VEGFC結合ドメイン(Trap Cとも呼ばれる)が融合タンパク質中にある場合、いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、VEGFR-2(例えば、ドメイン2)に由来する。他の実施態様において、VEGFC結合ドメインは、VEGFR-3(例えば、ドメイン1及び/又はドメイン2)に由来する。
【0115】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号55と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号56と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0117】
いくつかの実施態様において、VEGFC結合ドメインは、配列番号57と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0118】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体のFc領域をさらに含む。いくつかの実施態様において、Fc領域は、ヒトIgGに由来する。いくつかの実施態様において、Fc領域は、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、Fc領域は、ポリペプチドのC-末端にある。他の実施態様において、Fc領域は、ポリペプチドのC-末端にない。
【0119】
本融合タンパク質中の様々なドメインは、任意の順序で存在し得る。いくつかの実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図1、
図2、
図8、及び
図9A~9Iに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Aに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Bに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Cに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Dに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Eに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Fに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Gに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Hに示されているような順序のものである。いくつかのより具体的な実施態様において、D2、D3、ABD、Fc領域、及び/又はTrap Cは、
図9Iに示されているような順序のものである。
【0120】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、ポリペプチドのN-末端にシグナルペプチドをさらに含む。一般に、シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞内の所望の部位にターゲティングするペプチド配列である。いくつかの実施態様において、シグナルペプチドは、エフェクター分子を細胞の分泌経路にターゲティングし、エフェクター分子の脂質二重層への組込み及び固定を可能にする。本明細書に記載される融合タンパク質中での使用に適合している天然タンパク質のシグナル配列又は合成された非天然のシグナル配列を含むシグナルペプチドは、当業者にとって明白であろう。いくつかの具体的な実施態様において、シグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0121】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドは、上記の様々なドメインの間に1以上のリンカーをさらに含む。本明細書に記載される様々なドメインは、ペプチドリンカーを介して、互いに融合することができる。いくつかの実施態様において、特定のドメインは、任意のペプチドリンカーなしで、互いに直接融合される。異なるドメインを接続するペプチドリンカーは、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるポリペプチドは、特定のドメイン間にペプチドリンカーを含むが、その中の他のドメイン間には含まない。
【0122】
本明細書に提供されるポリペプチド中の各々のペプチドリンカーは、同じ又は異なる長さ及び/又は配列を含み得る。各々のペプチドリンカーは、独立に選択及び最適化され得る。本融合タンパク質で使用されるペプチドリンカーの長さ、柔軟性の程度、及び/又は他の特性は、限定されないが、1以上の特定の標的分子に対する親和性、特異性、又は結合力を含む特性に対して、ある程度の影響を有し得る。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、隣接するドメインが互いに対して自由に動くことができるように、柔軟な残基(例えば、グリシン及びセリン)を含む。例えば、グリシン-セリンダブレットは、好適なペプチドリンカーであることができる。
【0123】
ペプチドリンカーは、任意の好適な長さのものであることができる。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、又はそれを上回るアミノ酸長のいずれかである。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、約100、75、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、又はそれを下回るアミノ酸長のいずれかである。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーの長さは、約1アミノ酸~約10アミノ酸、約1アミノ酸~約20アミノ酸、約1アミノ酸~約30アミノ酸、約5アミノ酸~約15アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約5アミノ酸~約30アミノ酸、約10アミノ酸~約30アミノ酸長、又は約30アミノ酸~約50アミノ酸のいずれかである。
【0124】
ペプチドリンカーは、天然の配列、又は非天然の配列を有することができる。例えば、重鎖のみの抗体のヒンジ領域に由来する配列をリンカーとして使用することができる。例えば、WO1996/34103号を参照されたい。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、柔軟なリンカーである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるペプチドリンカーは、(GxS)nリンカー(ここで、x及びnは、独立に、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12を含む、3~12、又はそれより大きい整数であることができる)である。例示的な柔軟なリンカーとしては、グリシンポリマー(G)
n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n、GGGS)
n、及び(GGGGS)
n(ここで、nは、少なくとも1の整数である)を含む)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当技術分野で公知の他の柔軟なリンカーが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なペプチドリンカーは、下の表に掲載されている。
表1.例示的なペプチドリンカー
【表1】
【0125】
本開示の融合タンパク質は、上記のドメイン間に位置するヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、タンパク質の2つのドメインの間に通常見出されるアミノ酸セグメントであり、タンパク質の柔軟性及び該ドメインの一方又は両方の互いに対する移動を可能にし得る。
【0126】
ヒンジドメインは、約10~100アミノ酸、例えば、約15~75アミノ酸、20~50アミノ酸、又は30~60アミノ酸のいずれか1つを含有し得る。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、長さが少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75アミノ酸のいずれか1つである。
【0127】
いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、天然タンパク質のヒンジドメインである。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、天然タンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部である。抗体、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD抗体のヒンジドメインは、本明細書に記載される融合タンパク質での使用にも適合している。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1及びCH2を接続するヒンジドメインである。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、抗体のものであり、抗体のヒンジドメイン及び抗体の1以上の定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメイン及び抗体のCH3定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメイン並びに抗体のCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD抗体である。いくつかの実施態様において、抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施態様において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施態様において、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域並びにCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域及びCH3定常領域を含む。
【0128】
非天然ペプチドも、本明細書に記載される融合タンパク質のヒンジドメインとして使用し得る。いくつかの実施態様において、リンカーは、自己切断性リンカーである。
【0129】
当技術分野で公知の、例えば、その各々の開示が引用により本明細書中に組み込まれるWO2016014789号、WO2015158671号、WO2016102965号、US20150299317号、WO2018067992号、US7741465号、Colcherらの文献、J. Nat. Cancer Inst. 82:1191-1197(1990)、及びBirdらの文献、Science 242:423-426(1988)に記載されている他のリンカーも、本明細書に提供される融合タンパク質に含めることができる。
【0130】
ある実施態様において、本明細書に提供されるポリペプチドは、
図1に例示されている。
【0131】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0132】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号8のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0133】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0134】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0135】
ある実施態様において、本明細書に提供されるポリペプチドは、
図8に例示されている。
【0136】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号58のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0137】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0138】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号60のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0139】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号61のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0140】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号62のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0141】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0142】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0143】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号65のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0144】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号66のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0145】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、下の第6節に記載されているポリペプチドのいずれか1つに対する特定の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含む。
【0146】
2つの配列(例えば、アミノ酸配列又は核酸配列)間の同一性パーセントの決定は、数学アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較のために利用される数学アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin及びAltschulの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873 5877(1993)に見られるように改変された、Karlin及びAltschulの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264 2268(1990)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムを、Altschulらの文献、J. Mol. Biol. 215:403(1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込む。BLASTヌクレオチド検索を、例えば、スコア=100、ワード長=12に設定されたNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータで実施して、本明細書に記載される核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、例えば、スコア=50、ワード長=3に設定されたXBLASTプログラムパラメータを用いて実施して、本明細書に記載されるタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschulらの文献、Nucleic Acids Res. 25:3389 3402(1997)に記載されている通りに利用することができる。或いは、PSI BLASTを用いて、分子間の遠縁関係(distant relationship)を検出する反復検索を実施することができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLASTのもの)を使用することができる(例えば、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照)。配列の比較のために利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers及びMillerの文献、CABIOS 4:11-17(1998)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムを、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部である、ALIGNプログラム(バージョン 2.0)に組み込む。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用することができる。
【0147】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップ許容あり又はギャップ許容なしで、上記の技法と同様の技法を用いて決定することができる。同一性パーセントを計算する際、通常、完全一致のみがカウントされる。
【0148】
いくつかの実施態様において、配列番号7~10及び58~66から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドが提供される。いくつかの実施態様において、少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のうちのいずれか1つの同一性を有するポリペプチド配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含むポリペプチド内の2つのドメイン又は3つのドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、該ポリペプチド内の1つのドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0149】
いくつかの実施態様において、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号7~10及び58~66から選択されるアミノ酸配列中で置換され、挿入され、及び/又は欠失している。
【0150】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン及び第二のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0151】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン及び第二のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0152】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン及び第二のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチンに結合する能力を保持する。
【0153】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン及び第二のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0154】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0155】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0156】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0157】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号61のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0158】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号62のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0159】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0160】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0161】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0162】
ある実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質は、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインは、VEGFに結合する能力を保持し、第三のドメインは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合する能力を保持する。
【0163】
本明細書に提供される他の例示的な融合タンパク質は、以下の節でより詳細に記載されている。いくつかの実施態様において、上記の実施態様のいずれかによる融合タンパク質は、下の第5.2.2節~第5.2.4節に記載されている特徴のいずれかを、単独で又は組合せで組み込み得る。
【0164】
(5.2.2.ポリペプチドのバリアント及び修飾)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、限定されないが、特異性、熱安定性、発現レベル、グリコシル化、低下した免疫原性、又は溶解度を含む、融合タンパク質の結合親和性及び/又は他の生物学的特徴を最適化することが望ましい場合がある。したがって、本明細書に記載される融合タンパク質に加えて、本明細書に記載される融合タンパク質のバリアントを調製することができることが企図される。例えば、ペプチドバリアントは、適切なヌクレオチド変化をコードDNAに導入することにより、及び/又は所望のポリペプチドの合成により調製することができる。アミノ酸変化を理解している当業者は、ペプチドの翻訳後プロセスを改変することができる。
【0165】
変異は、もとのポリペプチドと比較したときにアミノ酸配列の変化をもたらす、ポリペプチドをコードする1以上のコドンの置換、欠失、又は挿入であることができる。
【0166】
アミノ酸置換は、ロイシンとセリンとの置換などの、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸と置き換える結果として生じるもの、例えば、保存的アミノ酸置換であることができる。例えば、アミノ酸置換をもたらす部位指向性突然変異誘発及びPCR媒介性突然変異誘発を含む、当業者に公知の標準的な技法を用いて、本明細書に提供される分子をコードするヌクレオチド配列中に突然変異を導入することができる。挿入又は欠失は、任意に、約1~5アミノ酸の範囲のものであってもよい。ある実施態様において、置換、欠失、又は挿入は、もとの分子と比べて、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、又は2未満のアミノ酸置換を含む。具体的な実施態様において、置換は、1以上の推定非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換である。許容される変異は、配列中でアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を系統的に行い、結果として得られるバリアントを親ペプチドによって示される活性について試験することにより決定することができる。
【0167】
アミノ酸配列挿入には、1残基から複数の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N-末端メチオニル残基を有するポリペプチドが挙げられる。
【0168】
保存的アミノ酸置換によって作製された融合タンパク質が本開示に含まれる。保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は、類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられる。上記のように、類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。或いは、突然変異を、例えば、飽和突然変異誘発により、コード配列の全て又は一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を特定することができる。突然変異誘発の後、コードされたタンパク質を発現させることができ、該タンパク質の活性を決定することができる。保存的な(例えば、類似の特性及び/又は側鎖を有するアミノ酸グループ内での)置換は、該特性を維持し、又はそれを著しくは変化させないように行うことができる。例示的な置換は、下の表に示されている。
表2.アミノ酸置換
【表2】
【0169】
アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性:(1)非極性: Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性: Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性: Asp(D)、Glu(E);及び(4)塩基性: Lys(K)、Arg(R)、His(H)に従ってグループ分けすることができる(例えば、Lehningerの文献、Biochemistry 73-75(第2版、1975)を参照)。或いは、天然の残基を、共通の側鎖特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性: Asp、Glu;(4)塩基性: His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基: Gly、Pro;及び(6)芳香族: Trp、Tyr、Pheに基づいてグループに分けることもできる。
【0170】
例えば、本明細書に提供されるポリペプチドの適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基を、例えば、アラニン又はセリンなどの別のアミノ酸で置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止することもできる。
【0171】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0172】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N-末端メチオニル残基を有するポリペプチドが含まれる。
【0173】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介性(部位指向性)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発などの当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。部位指向性突然変異誘発(例えば、Carterの文献、Biochem J. 237:1-7(1986)、及びZollerらの文献、Nucl. Acids Res. 10:6487-500(1982)を参照)、カセット突然変異誘発(例えば、Wellsらの文献、Gene 34:315-23(1985))、又は他の公知の技法を、クローン化されたDNAに対して実施して、ポリペプチドバリアントDNAを産生することができる。
【0174】
本明細書に提供される融合タンパク質の共有結合的修飾は、本開示の範囲内に含まれる。共有結合的修飾は、本明細書に提供されるポリペプチドの標的とされるアミノ酸残基を、該ポリペプチドの選択された側鎖又はN-末端もしくはC-末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることを含む。他の修飾には、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の、それぞれ、対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル残基又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、Creightonの文献、タンパク質:構造及び分子特性(Proteins: Structure and Molecular Properties)、79-86(1983)を参照)、N-末端アミンのアセチル化、並びに任意のC-末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0175】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、例えば、該融合タンパク質への任意のタイプの分子の共有結合的結合によって化学的に修飾される。ポリペプチド誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドもしくは他のタンパク質への結合、又は1以上の免疫グロブリンドメイン(例えば、FcもしくはFcの一部)へのコンジュゲーションによって化学的に修飾されているポリペプチドが含まれ得る。数多くの化学修飾はいずれも、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、既知の技法によって実施することができる。さらに、ポリペプチドは、1以上の非典型的アミノ酸を含有し得る。
【0176】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質を改変して、融合タンパク質がグリコシル化される度合いを増減させる。ポリペプチドに対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、1以上のグリコシル化部位が生成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、好都合に達成することができる。
【0177】
本明細書に提供される融合体がFc領域に融合される場合、それに取り付けられる炭水化物が改変され得る。哺乳動物によって産生されるネイティブ抗体は、通常、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN-結合によって通常取り付けられる分岐したバイアンテナ型のオリゴ糖を含む。例えば、Wrightらの文献、TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びにバイアンテナ型オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに取り付けられるフコースを挙げることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される結合分子中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有するバリアントを生成させるために行うことができる。
【0178】
Fc領域を含む分子において、1以上のアミノ酸修飾をFc領域に導入し、それにより、Fc領域バリアントを作製することができる。Fc領域バリアントは、1以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4Fc領域)を含むことができる。
【0179】
いくつかの実施態様において、本出願は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を保有するバリアントを企図しており、これにより、該バリアントは、インビボでの結合分子の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体及びADCC)が不必要又は有害である用途のための望ましい候補となる。インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc 受容体(FcR)結合アッセイを実施して、結合分子がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合活性を保持することを確かめることができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第 5,500,362号(例えば、Hellstrom, I.らの文献、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom, Iらの文献、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502(1985);第5,821,337号(Bruggemann, M.らの文献、J. Exp. Med. 166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を利用することができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology社、Mountain View, CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WIを参照)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。その代わりに、又はそれに加えて、目的の分子のADCC活性を、インビボで、例えば、Clynesらの文献、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656(1998)に開示されているモデルなどの動物モデルで評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、結合分子がC1qに結合することができず、したがって、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO 2006/029879号及びWO 2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoroらの文献、J. Immunol. Methods 202:163(1996); Cragg, M.S.らの文献、Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg, M.S.及びM.J. Glennieの分解、Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定を、当技術分野で公知の方法を用いて実施することもできる(例えば、Petkova, S.B.らの文献、Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769(2006)を参照)。
【0180】
低下したエフェクター機能を有する結合分子には、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ又は複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc突然変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を有する、いわゆる、「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0181】
FcRへの結合が改善されたか又は低減した特定のバリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号; WO 2004/056312号、及びShieldsらの文献、J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604(2001).を参照)。
【0182】
いくつかの実施態様において、バリアントは、ADCCを改善する1以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334(EUによる残基付番)における置換を有するFc領域を含む。
【0183】
いくつかの実施態様において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642号、及びIdusogieらの文献、J. Immunol. 164: 4178-4184(2000)に記載されているような、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)の改変(すなわち、改善又は低減いずれか)をもたらす改変がFc領域中で行われる。
【0184】
増加した半減期及び胎児への母性IgGの移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善した結合を有する結合分子(Guyerらの文献、J. Immunol. 117:587(1976) and Kimらの文献、J. Immunol. 24:249(1994))は、US2005/0014934A1号(Hintonらの文献)に記載されている。これらの分子は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1以上の置換をその中に有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基: 238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434のうちの1つ又は複数における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものが含まれる。Fc領域バリアント他の例に関しては、Duncan及びWinterの文献、Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO 94/29351号も参照されたい。
【0185】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドの1以上の残基がシステイン残基と置換されているシステイン改変ポリペプチドを生成させることが望ましい場合がある。いくつかの実施態様において、置換された残基は、ペプチドのアクセス可能な部位に生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによってペプチドのアクセス可能な部位に配置され、本明細書でさらに記載されるように、免疫コンジュゲートを生成させるために、ペプチドを他の部分、例えば、薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲートするために使用することができる。
【0186】
(5.2.3.融合タンパク質の調製)
また本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される様々な融合タンパク質を作製する方法である。
【0187】
具体的な実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、組換えによって発現される。本明細書に提供される融合タンパク質の組換え発現は、タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とし得る。ひとたび、本明細書に提供されるタンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドが得られたら、分子の産生のためのベクターを、当技術分野で周知の技法を用いる組換えDNA技術によって産生することができる。したがって、コードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによりタンパク質を調製する方法が本明細書に記載されている。当業者によく知られている方法を用いて、コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成的技法、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。また提供されるのは、プロモーターに機能的に連結された、本明細書に提供される融合タンパク質又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターである。
【0188】
発現ベクターを従来の技法によって宿主細胞に移入することができ、その後、トランスフェクトされた細胞を従来の技法によって培養して、本明細書に提供される融合タンパク質を産生する。したがって、また本明細書に提供されるのは、異種プロモーターに機能的に連結された本明細書に提供される融合タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞である。
【0189】
種々の宿主-発現ベクター系を利用して、本明細書に提供される融合タンパク質を発現させることができる。そのような宿主-発現系は、目的のコード配列を産生し、その後、精製し得るビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトされたときに、本明細書に提供される融合タンパク質をインサイチュで発現し得る細胞も表す。これらには、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌(B.subtilis))などの微生物;コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス・ピキア(Saccharomyces Pichia));コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したもしくはコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;又は哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0、及び3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。特に、組換え分子全体の発現のための、大腸菌などの細菌細胞、又は真核生物細胞を、組換え融合タンパク質の発現のために使用することができる。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要最初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せた、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体又はそのバリアントの有効な発現系である。具体的な実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0190】
細菌系では、いくつかの発現ベクターを、発現されている融合タンパク質に意図される用途に応じて、有利に選択することができる。例えば、融合タンパク質の医薬組成物の作製のために、大量のそのような融合タンパク質を産生することになっているとき、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとしては、融合タンパク質が産生されるように、コード配列をlac Zコード領域とインフレームにしてベクターに個別に連結することができる大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献、EMBO 12:1791(1983)); pIN ベクター(Inouye及びInouyeの文献、Nucleic Acids Res. 13:3101-3109(1985); Van Heeke及びSchusterの文献、J. Biol. Chem. 24:5503-5509(1989));などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターを用いて、外来ポリペプチドを、グルタチオン 5-トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として発現させることもできる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合と、その後の遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から遊離させることができるように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0191】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、目的のコード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三分節リーダー配列に連結することができる。その後、このキメラ遺伝子をインビトロ又はインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)における挿入は、感染宿主で生存可能であり、かつ融合タンパク質を発現することができる組換えウイルスを結果として生じさせる(例えば、Logan及びShenkの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:355-359(1984)を参照)。挿入されたコード配列の効率的な翻訳のために、特異的な開始シグナルが必要とされる場合もある。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと一致しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然と合成の両方の種々の起源のものであることができる。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどの包含によって増強することができる(例えば、Bittnerらの文献、Methods in Enzymol. 153:51-544(1987)を参照)。
【0192】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、又は遺伝子産物を望ましい特定の様式で修飾及びプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。発現される外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を保有する真核生物宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O、及びT47D、NS0(いかなる免疫グロブリン鎖も内因性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、並びにHsS78Bst細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
組換えタンパク質の長期にわたる高収率産生のために、安定発現を利用することができる。例えば、融合タンパク質を安定に発現する細胞株を人為作製することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりも、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNA、及び選択マーカーで形質転換することができる。外来DNAの導入後、人為作製した細胞を富化培地中で1~2日間増殖させることができ、その後、選択培地に移す。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体に安定に組み込み、増殖して増殖巣(foci)を形成することを可能にし、次に、この増殖巣をクローン化し、細胞株へと拡大することができる。この方法を有利に用いて、融合タンパク質を発現する細胞株を人為作製することができる。そのような人為作製された細胞株は、結合分子と直接的又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価において特に有用であり得る。
【0194】
いくつかの選択系を使用することができ、これには、限定されないが、それぞれ、tk-細胞、hgprt-細胞、又はaprt-細胞で利用することができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerらの文献、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska及びSzybalskiの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202(1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyらの文献、Cell 22:8-17(1980))遺伝子が含まれる。また、代謝拮抗薬耐性を以下の遺伝子の選択の基礎として使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与する、dhfr(Wiglerらの文献、Natl. Acad. Sci. USA 77:357(1980); O'Hareらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与する、gpt(Mulligan及びBergの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与する、neo(Wu及びWuの文献、Biotherapy 3:87-95(1991); Tolstoshevの文献、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596(1993); Mulliganの文献、Science 260:926-932(1993);並びにMorgan及びAndersonの文献、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217(1993); Mayの文献、TIB TECH 11(5):l55-2 15(1993));並びにハイグロマイシンに対する耐性を付与する、hygro(Santerreらの文献、1984, Gene 30:147)。組換えDNA技術の分野で一般に知られている方法をルーチンに適用して、所望の組換えクローンを選択することができ、そのような方法は、例えば、引用により本明細書中に完全に組み込まれる、Ausubelら(編)、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons, NY(1993); Krieglerの文献、遺伝子の移入及び発現、実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual)、Stockton Press, NY(1990);及びDracopoliら(編)、ヒト遺伝学の最新プロトコル(Current Protocols in Human Genetics)の第12章及び第13章、John Wiley & Sons, NY(1994); Colberre-Garapinらの文献、J. Mol. Biol. 150:1(1981)に記載されている。
【0195】
融合タンパク質の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington及びHentschelの文献、DNAクローニングにおけるクローニングされた遺伝子の哺乳動物細胞内での発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)、第3巻、Academic Press, New York, 1987を参照)。融合タンパク質を発現するベクター系のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルの上昇により、マーカー遺伝子のコピーの数が増加する。増幅される領域が融合タンパク質遺伝子と関連しているので、融合タンパク質の産生も増加することになる(Crouseらの文献、Mol. Cell. Biol. 3:257(1983))。
【0196】
宿主細胞は、本明細書に提供される複数の発現ベクターと共トランスフェクトすることができる。ベクターは、それぞれのコードしているポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含有することができる。或いは、複数のポリペプチドをコードし、かつ該ポリペプチドを発現することができる単一のベクターを使用することができる。コード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含むことができる。
【0197】
ひとたび、本明細書に提供される融合タンパク質が組換え発現によって産生されてしまえば、これを、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン分子)の精製のための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、プロテインAの後ろの特異的抗原に対する親和性によるもの、サイジングカラムクロマトグラフィー、及びカッパセレクト親和性クロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度によるか、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的技法によって精製することができる。さらに、本明細書に提供される融合タンパク質分子は、本明細書に記載されているか又は精製しやすくすることが当技術分野で別の形で知られている異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0198】
本明細書に提供される融合タンパク質の組換え産生の様々な態様は、原核生物細胞又は真核生物細胞との関連において、以下でより詳細に記載されている。
【0199】
(原核生物細胞における組換え産生)
本開示の融合タンパク質をコードするポリ核酸配列は、標準的な組換え技法を用いて得ることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成装置又はPCR技法を用いて合成することができる。ひとたび得られれば、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組換えベクターに挿入する。当技術分野で入手可能でありかつ公知である多くのベクターを本開示の目的で使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入されることになる核酸のサイズ及びベクターで形質転換されることになる特定の宿主細胞によって決まる。各々のベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、又はその両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその相性に応じて、様々な成分を含有する。ベクター成分としては、通常、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物、及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
一般に、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主との関連において使用される。ベクターは、通常、複製部位、及び形質転換細胞における表現型選択を提供することができるマーキング配列を保有する。例えば、大腸菌は、通常、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって、形質転換細胞を特定するための簡単な手段を提供する。pBR322、その派生物、もしくは他の微生物プラスミド、又はバクテリオファージはまた、内因性タンパク質の発現のために微生物によって使用されることができるプロモーターを含有していてもよく、又は該プロモーターを含有するように修飾されていてもよい。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322派生物の例は、Carterらの文献、米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0201】
さらに、宿主微生物と適合するレプリコン及び制御配列を含有するファージベクターは、これらの宿主との関連において、形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、GEM(商標)-11などのバクテリオファージは、大腸菌LE392などの感染しやすい宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターを作製するのに利用することができる。
【0202】
本出願の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5')に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、通常、誘導性及び構成的という2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の有無又は温度の変化に応答して、その制御下のシストロンの転写のレベルの増加を引き起こすプロモーターである。
【0203】
種々の潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によって供給源DNA由来のプロモーターを除去し、単離されたプロモーター配列を本出願のベクターに挿入することにより、本融合タンパク質をコードするシストロンDNAに機能的に連結することができる。ネイティブのプロモーター配列と多くの異種プロモーターの両方を用いて、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を導くことができる。いくつかの実施態様において、異種プロモーターが利用されるが、それは、これが、通常、ネイティブの標的ポリペプチドプロモーターと比較して、発現された標的遺伝子のより多くの転写及びより高い収率を可能にするためである。
【0204】
原核生物宿主とともに使用するのに好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、ガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、並びにtac又はtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能的である他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌又はファージプロモーター)も同様に好適である。これらの核酸配列は公開されており、それにより、当業者は、リンカー又はアダプターを用いて、それらを標的ペプチド(Siebenlistの文献、Cell 20:269-281(1980))をコードするシストロンに機能的に連結させて、任意の必要とされる制限部位を供給することが可能になる。
【0205】
一態様において、組換えベクター内の各々のシストロンは、発現ポリペプチドの膜を横切る移行を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であってもよいし、又はそれは、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識及び処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドに固有のシグナル配列を認識及び処理しない原核生物宿主細胞については、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。本開示のいくつかの実施態様において、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列又はそのバリアントである。
【0206】
いくつか実施態様において、本開示による融合タンパク質の産生は、宿主細胞の細胞質で生じることができ、それゆえ、各々のシストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。ある宿主株(例えば、大腸菌trxB-株)は、ジスルフィド結合形成に好都合である細胞質条件を提供し、それにより、発現されたタンパク質サブユニットの適切なフォールディング及び会合を可能にする。
【0207】
本開示の融合タンパク質を発現させるのに好適な原核生物宿主細胞としては、古細菌(Archaebacteria)及び真正細菌(Eubacteria)、例えば、グラム陰性又はグラム陽性生物が挙げられる。有用な細菌の例としては、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、大腸菌)、バシラス属(Bacilli)(例えば、枯草菌)、腸内細菌(Enterobacteria)、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(P.aeruginosa))、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセスカンス(Serratia marcescans)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、赤痢菌(Shigella)、根粒菌(Rhizobia)、ビトレオシラ属(Vitreoscilla)、又はパラコッカス属(Paracoccus)が挙げられる。いくつかの実施態様において、グラム陰性細胞が使用される。一実施態様において、大腸菌が宿主として使用される。大腸菌株の例としては、遺伝子型W3110 AfhuA(AtonA) ptr3 lac Iq lacL8 AompT A(nmpc-fepE) degP41 kanRを有する株33D3(米国特許第5,639,635号)を含む、株W3110(Bachmannの文献、Cellular and Molecular Biology、第2巻(Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), pp. 1190-1219; ATCC寄託番号27,325)及びその派生物が挙げられる。他の株及びその派生物、例えば、大腸菌294(ATCC 31,446)、大腸菌B、大腸菌1776(ATCC 31,537)、及び大腸菌RV308(ATCC 31,608)も好適である。これらの例は、限定的なものではなく、例示的なものである。規定の遺伝子型を有する上述の細菌のいずれかの派生物を構築する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Bassらの文献、Proteins, 8:309-314(1990)に記載されている。通常、細菌の細胞内でのレプリコンの複製可能性を考慮して、適切な細菌を選択する必要がある。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410などの周知のプラスミドを用いてレプリコンを供給する場合、大腸菌、セラチア属、又はサルモネラ属(Salmonella)種を宿主として好適に使用することができる。
【0208】
通常、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきであり、さらなるプロテアーゼ阻害剤が細胞培養物中に組み入れられることが望ましい。
【0209】
宿主細胞は、上記の発現ベクターで形質転換され、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜修飾された従来の栄養培地中で培養される。形質転換とは、DNAが染色体外エレメントとしてか又は染色体インテグラント(chromosomal integrant)によるかのいずれかで複製可能となるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技法を用いて行われる。塩化カルシウムを利用するカルシウム処理は、通常、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞に使用される。別の形質転換法は、ポリエチレングリコール/DMSOを利用する。使用されるまた別の技法は、エレクトロポレーションである。
【0210】
本出願の融合タンパク質を産生するために使用される原核生物細胞を、当技術分野で公知であり、かつ選択された宿主細胞の培養に好適な培地中で増殖させる。好適な培地の例としては、ルリアブロス(LB)+必要な栄養サプリメントが挙げられる。いくつかの実施態様において、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構造に基づいて選択された選択剤を含有し得る。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために培地に添加される。
【0211】
炭素、窒素、及び無機リン酸供給源以外の任意の必要なサプリメントを、単独で又は別のサプリメントもしくは培地、例えば、複合窒素源との混合物として導入される適切な濃度で含めることもできる。任意に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール、及びジチオスレイトールからなる群から選択される1以上の還元剤を含有し得る。
【0212】
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。大腸菌の増殖について、例えば、好ましい温度は、約20℃~約39℃、より好ましくは、約25℃~約37℃の範囲であり、一層より好ましくは、約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物によるが、約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。大腸菌について、pHは、好ましくは、約6.8~約7.4、より好ましくは、約7.0である。
【0213】
誘導性プロモーターが本出願の発現ベクターで使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本出願の一態様において、PhoAプロモーターがポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導用のリン酸制限培地中で培養される。好ましくは、リン酸制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmonsらの文献、J. Immunol. Methods 263:133-147(2002)を参照)。当技術分野で知られているように、利用されるベクターコンストラクトに応じて、種々の他の誘導物質を使用することができる。
【0214】
本開示の発現された融合タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そこから回収される。タンパク質回収は、通常は浸透圧ショック、超音波処理、又は溶解のような手段によって微生物を破壊することを典型的に含む。ひとたび、細胞を破壊すれば、細胞残屑又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによって、さらに精製することができる。或いは、タンパク質は、培養培地中に運ばれ、そこで単離されることもできる。細胞を培養物及び培養上清から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために濾過及び遠心分離することができる。発現されたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイなどの一般に知られている方法を用いて、さらに単離及び同定することができる。
【0215】
或いは、タンパク質産生は、発酵プロセスによって大量に実施される。様々な大規模フェッドバッチ発酵手順が組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量を有し、好ましくは、約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、撹拌羽根を用いて、酸素及び栄養素、特に、グルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分配する。小規模発酵は、通常、容積が約100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る培養槽での発酵を指す。
【0216】
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、通常、細胞が好適な条件下で、所望の密度、例えば、約180~220のOD550まで増殖した後に開始され、その段階では、細胞は初期静止期にある。当技術分野で知られているように、かつ上記のように、利用されるベクターコンストラクトに応じて、種々の誘導物質を使用することができる。細胞は、誘導前により短い期間増殖させてもよい。細胞は、通常、約12~50時間誘導されるが、より長い又はより短い誘導時間を使用してもよい。
【0217】
本開示の融合タンパク質の産生収率及び品質を向上させるために、様々な発酵条件を改変することができる。例えば、分泌されたポリペプチドの適切なアセンブリ及びフォールディングを向上させるために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及び/もしくはDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルcis,trans-イソメラーゼ)などのシャペロンタンパク質を過剰発現するさらなるベクターを用いて、宿主原核生物細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞で産生された異種タンパク質の適切なフォールディング及び可溶性を促進することが示されている。Chenらの文献、J Bio Chem 274:19601-19605(1999);米国特許第6,083,715号;米国特許第6,027,888号; Bothmann及びPluckthunの文献、J. Biol. Chem. 275:17100-17105(2000); Ramm及びPluckthunの文献、J. Biol. Chem. 275:17106-17113(2000); Arieらの文献、Mol. Microbiol. 39:199-210(2001)。
【0218】
発現された異種タンパク質(特に、タンパク質分解に感受性があるもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損している特定の宿主株を本発明に使用することができる。例えば、宿主細胞株を修飾して、既知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びこれらの組合せをコードする遺伝子の遺伝子突然変異を達成することができる。いくつかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、米国特許第5,264,365号;米国特許第5,508,192号; Haraらの文献、Microbial Drug Resistance, 2:63-72(1996)に記載されている。
【0219】
タンパク質分解酵素が欠損し、かつ1以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌株を、本出願の抗体をコードする発現系の宿主細胞として使用することができる。
【0220】
本明細書において産生される融合タンパク質をさらに精製して、さらなるアッセイ及び使用のために実質的に均質である調製物を得ることができる。当技術分野で公知の標準的なタンパク質精製法を利用することができる。以下の手順は、好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上での又はDEAEなどの陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えば、Sephadex G-75を用いるゲル濾過。
【0221】
例えば、固相に固定されたプロテインAは、いくつかの実施態様において、本開示の結合分子の免疫親和性精製に使用することができる。プロテインAが固定される固相は、好ましくは、ガラス又はシリカ表面を含むカラム、より好ましくは、制御細孔ガラスカラム又はケイ酸カラムである。いくつかの実施態様において、カラムは、汚染物質の非特異的接着を防止するために、グリセロールなどの試薬でコーティングされている。その後、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した汚染物質を除去する。最後に、目的の抗体を溶出によって固相から回収する。
【0222】
(真核生物細胞における組換え産生)
真核生物発現のために、ベクター成分には、通常、以下のもの、シグナル配列、複製起点、1以上のマーカー遺伝子、並びにエンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
真核生物宿主で使用するためのベクターは、成熟タンパク質又はポリペプチドのN-末端に特異的な切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドをコードする挿入物であってもよい。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及び処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物発現において、哺乳動物シグナル配列及びウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。そのような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム中で、本出願の抗体をコードするDNAに連結することができる。
【0224】
通常、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターに必要とされない(SV40起点は、通常、初期プロモーターを含有するという理由だけで使用することができる)。
【0225】
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有し得る。選択遺伝子は、抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか;栄養要求性欠損を相補するか;又は複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし得る。
【0226】
選択スキームの1つの例は、宿主細胞の増殖を停止させるための薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換が成功している細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって、選択レジメンから生き残る。そのような優性選択の例は、薬物のネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
【0227】
哺乳動物細胞のための好適な選択可能マーカーの別の例は、本出願の抗体をコードする核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするものである。例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で全ての形質転換体を培養することにより同定される。野生型DHFRが利用されるときの例示的で適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠損しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。或いは、ポリペプチドをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド 3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択可能マーカーで形質転換又は共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質などの選択可能マーカーのための選択剤を含有する培地中での細胞増殖によって選択することができる。
【0228】
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、かつ所望のポリペプチド配列をコードする核酸に機能的に連結されているプロモーターを含有する。真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始点から70~80塩基上流に見出される別の配列が含まれてもよい。大部分の真核生物の3'末端は、コード配列の3'末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであってもよい。これらの配列の全てを真核生物発現ベクターに挿入することができる。
【0229】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからのポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及びサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御されることができ、ただし、そのようなプロモーターは、宿主細胞系と適合する。
【0230】
高等真核生物による本開示の融合タンパク質をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在公知である。例として、複製起点の後方(late side)(bp 100~270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後方のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントに関しては、Yanivの文献、Nature 297:17-18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列の5'又は3'の位置でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5'の部位に位置している。
【0231】
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有する。そのような配列は、一般的に、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの5'非翻訳領域及び場合により3'非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分に、ポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。
【0232】
本明細書中のベクターでのDNAのクローニング又は発現に好適な宿主細胞には、脊椎動物宿主細胞を含む、本明細書に記載される高等真核生物細胞が含まれる。培養(組織培養)下での脊椎動物細胞の増殖は、ルーチンの手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児性腎臓株(懸濁培養下での増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞、Grahamの文献、J. Gen. Virol. 36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51); TR1細胞(Matherの文献、Annals. N.Y. Acad. Sci. 383:44-68(1982)); MRC 5細胞; FS4細胞;並びにヒト肝癌株(Hep G2)である。
【0233】
宿主細胞は、タンパク質産生用の上記の発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜改変された従来の栄養培地中で培養することができる。
【0234】
本出願の融合タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに好適である。さらに、Hamらの文献、Meth. Enz. 58:44(1979)、Barnesらの文献、Anal. Biochem. 102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;もしくは第5,122,469号; WO 90/03430号; WO 87/00195号;又は米国特許再出願30,985号に記載されている培地はいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用することができる。これらの培地はいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝剤(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬)、微量元素(マイクロモル濃度範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は等価なエネルギー源を補充することができる。任意の他の必要なサプリメントを当業者に公知の適切な濃度で含めることもできる。培養条件、例えば、温度、pHなどは、発現用に選択された宿主細胞とともに以前に使用された条件であり、当業者には明らかであろう。
【0235】
組換え技法を使用する場合、融合タンパク質は、ペリプラズム空間で細胞内産生されるか、又は培地中に直接的に分泌されることができる。融合タンパク質が細胞内産生される場合、第一の工程として、宿主細胞又は溶解された断片のいずれかの粒子状残屑は、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。融合タンパク質が培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、通常まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon製の限外濾過ユニットを用いて濃縮することができる。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を、タンパク質分解を阻害するために、前述の工程のいずれかに含めることができ、抗生物質を、偶発的な混入物の増加を防止するために含めることができる。
【0236】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを用いて精製することができ、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技法である。親和性リガンドが付着しているマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。制御細孔ガラス又はポリ(スチレン-ジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定的なマトリックスは、アガロースで達成され得るものよりも速い流速及び短い処理時間を可能にする。イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のための他の技法も、回収されることになるポリペプチドに応じて利用可能である。任意の予備的精製工程の後、目的のポリペプチド及び混入物質を含む混合物は、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0237】
(5.2.4.融合タンパク質を含む他の結合分子)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質を含む結合分子である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、他の結合分子の部分である。本開示の例示的な結合分子は、本明細書に記載されている。
【0238】
(他の融合タンパク質)
様々な実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、別の薬剤、例えば、タンパク質に基づく実体と遺伝的に融合するか又は化学的にコンジュゲートすることができる。融合タンパク質は、薬剤と化学的にコンジュゲートするか、又は別の方法で薬剤と非共有結合的にコンジュゲートすることができる。薬剤は、ペプチド又は抗体(もしくはその断片)であることができる。
【0239】
したがって、いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、融合タンパク質を作製するために、異種タンパク質又はポリペプチド(又はその断片、例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、もしくは約500アミノ酸、又は500アミノ酸を超えるポリペプチド)に組換えによって融合されているか又は化学的にコンジュゲート(共有結合的もしくは非共有結合的コンジュゲーション)されている上記の融合タンパク質、及びその使用である。
【0240】
さらに、本明細書に提供される融合タンパク質を、ペプチドなどのマーカー又は「タグ」配列に融合して、精製を容易にすることができる。具体的な実施態様において、マーカー又はタグアミノ酸配列は、ヘキサヒスチジンペプチド、ヘマグルチニン(「HA」)タグ、及び「FLAG」タグである。
【0241】
本明細書に提供される融合タンパク質を抗体に融合又はコンジュゲートすることができる。部分(ポリペプチドを含む)を抗体に融合又はコンジュゲートする方法は公知である(例えば、Arnonらの文献、癌療法における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy)、モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy) 243-56所収(Reisfeldら編、1985); Hellstromらの文献、薬物送達のための抗体(Antibodies for Drug Delivery)、制御薬物送達(Controlled Drug Delivery) 623-53所収(Robinsonら編、第2版、1987); Thorpeの文献、癌療法における細胞毒性剤の抗体担体:総説(Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review)、モノクローナル抗体:生物学的及び臨床的応用(Monoclonal Antibodies: Biological and Clinical Applications) 475-506所収(Pincheraら編、1985);癌療法における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果、及び将来的展望(Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy)、癌検出及び療法のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy) 303-16所収(Baldwinら編、1985); Thorpeらの文献、Immunol. Rev. 62:119-58(1982);米国特許第5,336,603号;第5,622,929号;第5,359,046号;第5,349,053号;第5,447,851号;第5,723,125号;第5,783,181号;第5,908,626号;第5,844,095号;及び5,112,946号; EP 307,434号; EP 367,166号; EP 394,827号; PCT公開WO 91/06570号、WO 96/04388号、WO 96/22024号、WO 97/34631号、及びWO 99/04813号; Ashkenaziらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 10535-39(1991); Trauneckerらの文献、Nature, 331:84-86(1988); Zhengらの文献、J. Immunol. 154:5590-600(1995);並びにVilらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-41(1992)を参照)。
【0242】
融合タンパク質は、例えば、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(「DNAシャッフリング」と総称される)の技法によって作製することができる。
【0243】
様々な実施態様において、融合タンパク質は、薬剤に遺伝的に融合することができる。遺伝的融合は、リンカー(例えば、ポリペプチド)を融合タンパク質と薬剤の間に配置することにより達成することができる。リンカーは、柔軟なリンカーであることができる。
【0244】
様々な実施態様において、融合タンパク質は、融合タンパク質を治療用分子と連結させることができるヒンジ領域を用いて、治療用分子に遺伝的にコンジュゲートすることができる。
【0245】
いくつかの実施態様において、リンカーは、上の第5.2.1節に記載されているペプチドリンカーである。これらの他の融合タンパク質は、当技術分野で周知の方法及び上の第5.2.3節に記載されている方法に従って作製することができる。
【0246】
(免疫コンジュゲート)
いくつかの実施態様において、本開示は、1以上の細胞毒性剤、例えば、化学療法剤又は化学療法薬、増殖抑制剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、又はこれらの断片)、或いは放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書に記載される融合タンパク質のいずれかを含む免疫コンジュゲートも提供する。
【0247】
薬物としては、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、及び欧州特許第0 425 235 B1号を参照);オーリスタチン、例えば、モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び第5,780,588号及び第7,498,298号を参照);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、及び第5,877,296号; Hinmanらの文献、Cancer Res. 53:3336-3342(1993);並びにLodeらの文献、Cancer Res. 58:2925-2928(1998));アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシン又はドキソルビシン(Kratzらの文献、Current Med. Chem. 13:477-523(2006); Jeffreyらの文献、Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362(2006); Torgovらの文献、Bioconj. Chem. 16:717-721(2005); Nagyらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834(2000); Dubowchikらの文献、Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532(2002); Kingらの文献、J. Med. Chem. 45:4336-4343(2002);及び米国特許第6,630,579号を参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、タセタキセル、及びオルタタキセル;トリコテセン;並びにCC1065が挙げられるが、これらに限定されない。
【0248】
いくつかの実施態様において、免疫コンジュゲートは、限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、並びにトリコテセン(tricothecenes)を含む、酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載される融合タンパク質を含む。
【0249】
いくつかの実施態様において、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて、放射性コンジュゲートを形成する本明細書に記載される融合タンパク質を含む。種々の放射性同位体が放射性コンジュゲートの産生に利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出に使用される場合、それは、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
【0250】
融合タンパク質と細胞毒性剤のコンジュゲートは、種々の二機能性タンパク質-カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン 2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaらの文献、Science, 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドとポリペプチドとのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026号を参照されたい。
【0251】
リンカーは、細胞内でのコンジュゲートされた薬剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であるが、切断不可能なリンカーも本明細書で企図される。本開示のコンジュゲートで使用するためのリンカーとしては、限定するものではないが、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾンリンカー)、ジスルフィド含有リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー(例えば、アミノ酸、例えば、バリン及び/もしくはシトルリン、例えば、シトルリン-バリン、又はフェニルアラニン-リジンを含むペプチドリンカー)、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、チオエーテルリンカー、或いは多剤輸送体媒介耐性を回避するように設計された親水性リンカーが挙げられる。
【0252】
本明細書に提供される免疫コンジュゲートは、限定されないが、クロスリンカー試薬で調製されるそのようなコンジュゲートを企図しており、このクロスリンカー試薬には、市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)(例えば、Pierce Biotechnology社、Rockford、IL.、U.S.A製)が含まれるが、これらに限定されない。
【0253】
(5.3.遺伝子療法のための組換えウイルスベクター及びウイルス粒子)
また本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質を送達するためのウイルスに基づく遺伝子療法である。したがって、別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質をコードする核酸を(導入遺伝子として)含むウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)である。また別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質をコードする核酸を(導入遺伝子として)含むウイルス粒子(例えば、rAAV又はrAAV粒子)である。
【0254】
(5.3.1.ウイルスに基づく遺伝子送達系)
哺乳動物細胞への遺伝子移入のために、多くのウイルスに基づく系が開発されてきた。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びこれらの派生物が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクター技術は、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookらの文献(2001、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。
【0255】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクター又はウイルス粒子は、アデノウイルスに由来する。例示的なベクターは、HAd5、ChAd3、HAd26、HAd6、AdCH3NSmut、HAd35、ChAd63、HAd4、rcAd26に基づくか、又はこれらに由来する。組換えアデノウイルスベクターは、当技術分野における公知の方法に従って構築することができる。例えば、O'Connorらの文献、Virology, 217(1):11-22(1996); Hardyらの文献、Journal of Virology, 73(9):7835-7841(1999); Hardyらの文献、Journal of Virology, 71(3):1842-1849(1997)を参照されたい。いくつかの実施態様において、第3世代アデノウイルスベクター(「大容量アデノウイルスベクター」(HCAd)、ヘルパー依存型又は「ガットレス」アデノウイルスベクターとも呼ばれる)を本明細書で用いて、より長い配列を送達することができる。いくつかの実施態様において、目的のポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子を、ITR及びパッケージングシグナルのみを含有するアデノウイルスベクターにクローニングする。ヘルパーアデノウイルスベクターをHEK細胞に同時トランスフェクトして、アデノウイルス粒子を生成させることができる。Leeらの文献、Genes and Diseases, 4(2):43-63(2007)を参照されたい。
【0256】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクター又はウイルス粒子は、レンチウイルスに由来する。例示的なベクターは、HIV-1、HIV-2、SIVSM、SIVAGM、EIAV、FIV、VNV、CAEV、もしくはBIVに基づくか、又はこれらに由来する。レンチウイルスベクターは、例えば、Cribbsらの文献、BMC Biotechnology, 13:98(2003); Mertenらの文献、Mol Ther Methods Clin Dev.,13(3):16017(2016); Durand及びCimarelliの文献、Viruses, 3:132-159(2011)に記載されている、当技術分野における公知の方法に基づいて産生することができる。いくつかの実施態様において、第3世代の自己不活化レンチウイルスベクターが本明細書で使用される。
【0257】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクター又はウイルス粒子は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来する。いくつかの実施態様において、単純ヘルペスウイルスは、単純ヘルペス1型ウイルス(HSV-1)、単純ヘルペス2型ウイルス(HSV-2)、又はこれらの任意の派生物である。例示的なベクターは、HSV-1、HSV-2、CMV、VZV、EBV、及びKSHVに基づくか、又はこれらに由来する。HSVに基づくベクターは、例えば、引用により本明細書中に完全に組み込まれる、米国特許第7,078,029号、6,261,552号、5,998,174号、5,879,934号、5,849,572号、5,849,571号、5,837,532号、5,804,413号、及び5,658,724号、並びに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637、及びWO99/06583号に記載されている、当技術分野で公知の方法に従って構築することができる。
【0258】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるHSVに基づくベクターは、アンプリコンベクターである。他の実施態様において、本明細書に提供されるHSVに基づくベクターは、複製欠損ベクターである。また他の実施態様において、本明細書に提供されるHSVに基づくベクターは、複製可能なベクターである。
【0259】
アンプリコンは、HSV DNA複製起点(ori)とHSV切断-パッケージング認識配列(pac)の両方を含有するように改変されたプラスミド由来のベクターである。アンプリコンがHSVヘルパー機能を有する哺乳動物細胞にトランスフェクトされると、それらは複製され、頭尾結合したコンカテマーを形成し、その後、ウイルス粒子内にパッケージングされる。2つの主要な方法がアンプリコン粒子を産生するために現在使用されており、1つは、欠損性ヘルパーHSVの感染に基づくものであり、もう1つは、HSV-1遺伝子、例えば、pac欠失型重複コスミドのセット又はpac欠失型かつICP27欠失型BAC-HSV-1のトランスフェクションに基づくものである。いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるアンプリコンは、導入遺伝子の複数のコピー(例えば、最大15コピー)を含む、外来DNAの巨大な断片(例えば、最大152kb)を収容することができ、かつ無毒である。
【0260】
いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるHSVに基づくベクターは、少なくとも1つの必須HSV遺伝子が欠損しており、該HSVに基づくベクターは、非必須遺伝子の1以上の欠失も含み得る。いくつかの実施態様において、HSVに基づくベクターは、複製欠損性である。ほとんどの複製欠損HSVに基づくベクターは、複製を妨げるための、1以上の最初期、初期、又は後期HSV遺伝子を除去する欠失を含有する。他の実施態様において、HSVに基づくベクターは、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、及びこれらの組合せからなる群から選択される最初期遺伝子が欠損している。具体的な実施態様において、HSVに基づくベクターは、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27、及びICP47の全てが欠損している。例示的な複製可能なベクターとしては、NV-1020(HSV-1)、RAV9395(HSV-2)、AD-472(HSV-2)、NS-gEnull(HSV-1)、及びImmunoVEX(HSV2)が挙げられる。例示的な複製欠損ベクターとしては、dl5-29(HSV-2)、dl5-29-41L(HSV-1)、DISC-dH(HSV-1及びHSV-2)、CJ9gD(HSV-1)、TOH-OVA(HSV-1)、d106(HSV-1)、d81(HSV-1)、HSV-SIV d106(HSV-1)、並びにd106(HSV-1)が挙げられる。
【0261】
複製欠損HSVに基づくベクターは、通常、複製欠損HSVに基づくベクター内には存在しないが、ウイルス増殖に必要な遺伝子機能を、高力価のウイルスベクターストックを生成させるために適切なレベルで提供する、相補細胞株で産生される。例示的な細胞株は、複製欠損HSVに基づくベクターには存在しない、少なくとも1つの、及びいくつかの実施態様においては、全ての複製に必須の遺伝子機能を相補する。例えば、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27、及びICP47が欠損しているHSVに基づくベクターは、ヒト骨肉腫株U2OSによって相補されることができる。該細胞株は、欠落している場合、増殖又は複製効率を低下させる非必須遺伝子(例えば、UL55)を相補することもできる。相補細胞株は、初期領域、最初期領域、後期領域、ウイルスパッケージング領域、ウイルス関連領域、又はこれらの組合せによってコードされる、少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠損を相補することができ、この複製必須遺伝子機能には、全てのHSV機能(例えば、逆方向末端反復及びパッケージングシグナルのみ、又はITR及びHSVプロモーターのみなどの、最小HSV配列を含むHSVアンプリコンの増殖を可能にする)が含まれる。いくつかの実施態様において、該細胞株はさらに、HSVに基づくベクターと重複しない様式で相補遺伝子を含有し、HSVに基づくベクターのゲノムが細胞のDNAと組み換わる可能性を最小限に抑え、実質的に排除することを特徴とする。したがって、複製可能なHSVの存在は、ベクターストック内で回避されなくても、最小化され、それゆえ、これは、特定の治療目的、特に、遺伝子治療目的に好適である。相補細胞株の構築は、当技術分野で周知の標準的な分子生物学及び細胞培養の技法を伴う。
【0262】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクター又はウイルス粒子は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来する。AAVに関するより詳細な説明は、下の第5.3.2節~第5.3.4節に提供されている。
【0263】
目的の核酸は、例えば、制限エンドヌクレアーゼ部位及び1以上の選択可能マーカーの使用を含む、当技術分野における任意の公知の分子クローニング法を用いて、ベクターにクローニングすることができる。いくつかの実施態様において、核酸は、プロモーターに機能的に連結される。哺乳動物細胞内での遺伝子発現のために、様々なプロモーターが探索されており、当技術分野で公知のプロモーターはいずれも、本開示で使用することができる。プロモーターは、構成的プロモーター又は調節型プロモーター、例えば、誘導性プロモーターとして大まかに分類することができる。
【0264】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質をコードする核酸は、構成的プロモーターに機能的に連結される。構成的プロモーターは、異種遺伝子(導入遺伝子とも呼ばれる)を宿主細胞内で構成的に発現させる。本明細書で企図される例示的な構成的プロモーターとしては、限定するものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒト伸長因子-1アルファ(hEF1α)、ユビキチンCプロモーター(UbiC)、ホスホグリセロキナーゼプロモーター(PGK)、サルウイルス40初期プロモーター(SV40)、及びCMV初期エンハンサーと組み合せたニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が挙げられる。導入遺伝子発現を駆動するときのそのような構成的プロモーターの効率は、膨大な数の研究において広く比較されている。
【0265】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質をコードする核酸は、誘導性プロモーターに機能的に連結される。誘導性プロモーターは、調節型プロモーターのカテゴリーに属する。誘導性プロモーターは、物理的条件、改変された免疫エフェクター細胞の微小環境、もしくは改変された免疫エフェクター細胞の生理的状態、誘導因子(すなわち、誘導剤)、又はこれらの組合せなどの1以上の条件によって誘導することができる。
【0266】
いくつかの実施態様において、誘導条件は、改変された哺乳動物細胞における及び/又は医薬組成物を受ける対象における内因性遺伝子の発現を誘導しない。いくつかの実施態様において、誘導条件は、誘導因子、放射線照射(例えば、電離放射線、光)、温度(例えば、熱)、レドックス状態、腫瘍環境、及び改変された哺乳動物細胞の活性化状態からなる群から選択される。
【0267】
いくつかの実施態様において、ベクターは、ベクターを介してトランスフェクトされた宿主細胞の集団から融合タンパク質を発現する細胞を選択するための選択可能マーカー遺伝子又はレポーター遺伝子も含有する。選択可能マーカーとレポーター遺伝子は両方とも、宿主細胞内での発現を可能にするための適切な調節配列が隣接していてもよい。例えば、ベクターは、核酸配列の発現の調節に有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びにプロモーターを含み得る。
【0268】
(5.3.2.組換えAAVベクター)
あるより具体的な実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、AAVに基づく系によって送達され、したがって、組換えAAVベクター中に含まれる。
【0269】
任意のAAV血清型又はそのバリアントを本開示で使用することができる。AAV血清型としては、AAV1(Genbank受託番号NC_002077.1; HC000057.1)、AAV2(Genbank受託番号NC_001401.2, JC527779.1)、AAV2i8(Asokan, A.の文献、2010, Discov. Med. 9:399)、AAV3(Genbank受託番号NC_001729.1)、AAV3-B(Genbank受託番号AF028705.1)、AAV4(Genbank受託番号NC_001829.1)、AAV5(Genbank受託番号NC_006152.1; JC527780.1)、AAV6(Genbank受託番号AF028704.1; JC527781.1)、AAV7(Genbank受託番号NC_006260.1; JC527782.1)、AAV8(Genbank受託番号NC_006261.1; JC527783.1)、AAV9(Genbank受託番号AX753250.1; JC527784.1)、AAV10(Genbank受託番号AY631965.1)、AAVrh10(Genbank受託番号AY243015.1)、AAV11(Genbank受託番号AY631966.1)、AAV12(Genbank受託番号DQ813647.1)、AAV13(Genbank受託番号EU285562.1)、AAV LK03、AAVrh74、AAV DJ(Wu Zらの文献、J Virol. 80:11393-7(2006))、AAVAnc81、Anc82、Anc83、Anc84、Anc110、Anc113、Anc126、もしくはAnc127(Zin, E.らの文献、Cell. Rep. 12:1056(2016))、AAV_go.1(Arbetum, A.E.らの文献、J. Virol. 79:15238(2005))、AAVhu.37、AAVrh8、AAVrh8R、及びAAV rh.8(Wangらの文献、Mol. Ther. 18:119-125(2010)、又はこれらのバリアントを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0270】
AAVバリアントとしては、AAV1バリアント(例えば、AAV1バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV2バリアント(例えば、AAV2バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV3バリアント(例えば、AAV3バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV3-Bバリアント(例えば、AAV3-Bバリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV4バリアント(例えば、AAV4バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV5バリアント(例えば、AAV5バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV6バリアント(例えば、AAV6バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV7バリアント(例えば、AAV7バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV8バリアント(例えば、AAV8バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAVrh8、AAVrh8R(例えば、AAVrh8もしくはAAVrh8Rバリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV9バリアント(例えば、AAV9バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV10バリアント(例えば、AAV10バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAVrh10バリアント(例えば、AAVrh10バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV11バリアント(例えば、AAV11バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV12バリアント(例えば、AAV12バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV13バリアント(例えば、AAV13バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、AAV LK03バリアント(例えば、AAV LK03バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)、又はAAVrh74バリアント(例えば、AAVrh74バリアントカプシドタンパク質を含むAAV)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0271】
本開示で使用される組換えAAV(rAAV)ベクターは、公知の技法に従って構築することができる。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、転写方向の機能的に連結された成分、転写開始領域を含む制御エレメント、本明細書に提供される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び転写終結領域を含むように構築される。制御エレメントは、目的の細胞に基づいて選択することができる。いくつかの実施態様において、機能的に連結された成分を含む得られたrAAVベクターコンストラクトは、機能的なAAV ITR配列と(5'及び3')隣接している。
【0272】
ある実施態様において、融合タンパク質をコードするポリペプチドは、少なくとも1つの調節配列に機能的に連結される。ある実施態様において、調節配列は、例えば、プロモーター配列、上流エンハンサー配列(USE)などのエンハンサー配列、スプライシングシグナルなどのRNAプロセシングシグナル、ポリアデニル化シグナル配列、細胞質mRNAを安定化する配列、転写後調節エレメント(PRE)、及び/又はマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み得る。ある実施態様において、調節配列は、翻訳効率を増強する配列(例えば、コザック配列)、タンパク質安定性を増強する配列、並びに/又はタンパク質のプロセシング及び/もしくは分泌を増強する配列を含み得る。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、調節性miRNAをコードし得る。
【0273】
ある実施態様において、調節配列は、構成的プロモーター及び/又は調節性制御エレメントを含む。ある実施態様において、調節配列は、調節可能なプロモーター及び/又は調節性制御エレメントを含む。ある実施態様において、調節配列は、偏在性プロモーター及び/又は調節性制御エレメントを含む。ある実施態様において、調節配列は、細胞又は組織特異的プロモーター及び/又は調節性制御エレメントを含む。ある実施態様において、調節性制御エレメントは、融合タンパク質のコード配列の5'にある(すなわち、5'非翻訳領域(5'UTR)に存在する)。他の実施態様において、調節性制御エレメントは、融合タンパク質のコード配列の3'にある(すなわち、3'非翻訳領域(3'UTR)に存在する)。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、複数の調節性制御エレメントを含み、例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つの制御エレメントを含み得る。ポリヌクレオチドが複数の制御エレメントを含む場合、各々の制御エレメントは、独立に、融合タンパク質のコード配列の5'に、該コード配列の3'に、該コード配列に隣接して、又は該コード配列の内部に存在し得る。
【0274】
ある実施態様において、制御エレメントは、エンハンサーである。いくつかの実施態様において、含まれる制御エレメントは、インビボで対象における融合タンパク質のポリヌクレオチドの転写又は発現を導く。制御エレメントは、選択された目的のポリヌクレオチドと通常関連する制御配列、又はその代わりに異種制御配列を含むことができる。
【0275】
例示的な制御配列としては、哺乳動物又はウイルス遺伝子をコードする配列に由来するもの、例えば、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、GFAPプロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、及びハイブリッドプロモーターが挙げられる。
【0276】
ある実施態様において、プロモーターは、細胞特異的でも組織特異的でもない。例えば、プロモーターは、偏在性プロモーターと考えられる。複数の細胞型又は組織型での発現を促進し得るプロモーター配列の例としては、例えば、ヒト伸長因子1a-サブユニット(EFla)、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー及び/もしくはプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)及びその派生物、例えば、CAG、例えば、S40イントロンを有するCBAプロモーター、βグルクロニダーゼ(GUSB)、又はユビキチンC(UBC)が挙げられる。
【0277】
ある実施態様において、プロモーター配列は、特定の細胞型又は組織内での発現を促進することができる。例えば、ある実施態様において、プロモーターは、筋肉特異的プロモーターであることができ、例えば、哺乳動物筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、哺乳動物トロポニンI(TNNI2)プロモーター、又は哺乳動物骨格α-アクチン(ASKA)プロモーターであることができる。他の実施態様において、プロモーター配列は、神経細胞又は神経細胞型内での発現を促進することができ、例えば、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、シナプシン(Syn)、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)、代謝型グルタミン酸受容体2(mGluR2)、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)もしくは重鎖(NFH)、β-グロビンミニ遺伝子hb2、プレプロエンケファリン(PPE)、エンケファリン(Enk)、又は興奮性アミノ酸トランスポーター2(EAAT2)プロモーターであることができる。他の実施態様において、プロモーター配列は、肝臓内での発現を促進することができ、例えば、α-1-アンチトリプシン(hAAT)又はチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターであることができる。また他の実施態様において、プロモーター配列は、心臓組織内での発現を促進することができ、例えば、MHC、cTnT、又はCMV-MUC2kプロモーターなどの心筋細胞特異的プロモーターであることができる。
【0278】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、当技術分野で周知である少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)シグナル配列を含むことができる。ポリアデニル化配列が存在する場合、それは、通常、導入遺伝子コード配列の3'末端と3'ITRの5'末端の間に位置する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ポリAシグナル配列の5'のポリA上流エンハンサー配列をさらに含む。ある例において、調節性配列は、翻訳効率を高める配列、例えば、コザック配列である。
【0279】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、イントロンを含む。ある実施態様において、イントロンは、本明細書に提供される融合タンパク質のコード配列内に存在する。ある実施態様において、イントロンは、融合タンパク質のコード配列の5'又は3'にある。ある実施態様において、イントロンは、融合タンパク質のコード配列の5'又は3'末端に隣接する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、2つのイントロンを含む。いくつかの実施態様において、1つのイントロンは、融合タンパク質のコード配列の5'にあり、かつ1つのイントロンは、該コード配列の3'にある。ある実施態様において、1つのイントロンは、融合タンパク質のコード配列の5'末端に隣接し、かつ第二のイントロンは、融合タンパク質のコード配列の3'末端に隣接する。ある実施態様において、イントロンは、SV40イントロン、例えば、5'UTR SV40イントロンである。
【0280】
当技術分野で公知のAAV ITR配列は、本rAAVベクターで使用することができる。いくつかの実施態様において、本ベクターで使用されるAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する。他の実施態様において、本ベクターで使用されるAAV ITR配列は、野生型配列ではなく、その代わりに、これは、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換を含む。本明細書に提供されるAAV ITRは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAVLK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらのバリアントを含む、任意のAAV血清型に由来することができる。
【0281】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のヌクレオチド配列に隣接する5'及び3'ITRは同一であり、同じAAV血清型に由来する。他の実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のヌクレオチド配列に隣接する5'及び3'ITRは異なり、かつ/又は異なるAAV血清型に由来する。
【0282】
いくつかの実施態様において、AAV ITRが隣接する融合タンパク質のポリヌクレオチドを含むrAAVベクターは、目的のポリヌクレオチドをAAVゲノムに、例えば、切り出されたAAVオープンリーディングフレームに直接挿入することにより構築することができ、かつAAVゲノムの特定の部分は、例えば、WO 1993/003769号; Kotinの文献(1994)、Human Gene Therapy 5:793-801; Shelling及びSmithの文献(1994)、Gene Therapy 1:165-169;並びに、Zhouらの文献(1994)、J. Exp. Med. 179:1867-1875に記載されているように、任意に欠失させることができる。
【0283】
他の実施態様において、AAV ITRは、AAVゲノムから、又はそのようなITRを含むAAVベクターから切り出され、その後、標準的なライゲーション技法を用いて、別のベクター中に存在する融合タンパク質のポリヌクレオチド配列の5'及び3'に融合される。
【0284】
ある実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクターは、組換え自己相補ゲノムを含む。自己相補ゲノムを含むrAAVは、通常、その部分的相補(例えば、導入遺伝子のコード鎖及び非コード鎖を相補する)配列によって、二本鎖DNA分子を迅速に形成することができる。より具体的には、いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクターは、第一の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療的導入遺伝子コード鎖)及び第二の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療的導入遺伝子の非コード鎖又はアンチセンス鎖)を含むrAAVゲノムを含み、該第一の異種ポリヌクレオチド配列は、該第二のポリヌクレオチド配列と鎖内塩基対を形成することができる。いくつかの実施態様において、第一の異種ポリヌクレオチド配列と第二の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内塩基対形成、例えば、ヘアピンDNA構造を促進する配列によって連結される。いくつかの実施態様において、第一の異種ポリヌクレオチド配列と第二の異種ポリヌクレオチド配列は、repタンパク質が突然変異したITRでウイルスゲノムを切断しないように、該突然変異したITRによって連結される。自己相補ゲノムを含むrAAVベクターは、例えば、米国特許第7,125,717号;第7,785,888号;第7,790,154号;第7,846,729号;第8,093,054号;及び第8,361,457号に記載されているような、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。
【0285】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約5キロベース(kb)未満のサイズである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約4.5kb未満のサイズである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約4.0kb未満のサイズである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約3.5kb未満のサイズである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約3.0kb未満のサイズである。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAVベクター中のポリヌクレオチド分子は、約2.5kb未満のサイズである。
【0286】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAAV(rAAV)ベクターであり、ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;及び(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)を含み、ここで、該rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらの組合せもしくはバリアント由来の逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。
【0287】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAAV(rAAV)ベクターであり、ここで、該ポリペプチドは、(i)VEGFR-1に由来する第一のドメイン;(ii)VEGFR-2に由来する第二のドメイン;(iii)アンジオポエチンに結合することができる第三のドメイン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)、並びに(iv)VEGFCに結合することができる第四のドメインを含み、ここで、該rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9、又はこれらの組合せもしくはバリアント由来の逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施態様において、第三のドメインは、第一のドメイン及び第二のドメインのN-末端にある。
【0288】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号7を有するポリペプチド又は配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0289】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号8を有するポリペプチド又は配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0290】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号9を有するポリペプチド又は配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0291】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号10を有するポリペプチド又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0292】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号58を有するポリペプチド又は配列番号58と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0293】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号59を有するポリペプチド又は配列番号59と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0294】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号60を有するポリペプチド又は配列番号60と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0295】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号61を有するポリペプチド又は配列番号61と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0296】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号62を有するポリペプチド又は配列番号62と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0297】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号63を有するポリペプチド又は配列番号63と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0298】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号64を有するポリペプチド又は配列番号64と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0299】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号65を有するポリペプチド又は配列番号65と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0300】
いくつかの具体的な実施態様において、rAAVベクターは、配列番号66を有するポリペプチド又は配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV1由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV2i8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV3-B由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV4由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV5由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV6由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV7由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh8R由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV9由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh10由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV11由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV12由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV13由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV-DJ由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAV LK03由来のITRを含む。いくつかの実施態様において、rAAVベクターは、AAVrh74由来のITRを含む。
【0301】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号11の核酸配列又は配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0302】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号12の核酸配列又は配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0303】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号13の核酸配列又は配列番号13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0304】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号14の核酸配列又は配列番号14と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0305】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号15の核酸配列又は配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0306】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号16の核酸配列又は配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0307】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号17の核酸配列又は配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0308】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号18の核酸配列又は配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0309】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号19の核酸配列又は配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0310】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号20の核酸配列又は配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0311】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号21の核酸配列又は配列番号21と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0312】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号22の核酸配列又は配列番号22と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0313】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号23の核酸配列又は配列番号23と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0314】
いくつかのより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号67~75のいずれか1つの核酸配列、又は配列番号67~75のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含むベクターである。
【0315】
また別の態様において、本明細書に提供されるrAAVベクターは、各々上でより詳細に記載されている、本明細書に提供されるVEGFR-1に由来する第一のドメイン、本明細書に提供されるVEGFR-2に由来する第二のドメイン、及び本明細書に提供されるアンジオポエチンに結合することができる第三のドメインをコードする核酸を含み;かつrAAVベクターは、単一の融合タンパク質の代わりに、2以上のペプチドが発現されるような方法で構築される。例えば、いくつかの実施態様において、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第三のドメインは、各々、別々のタンパク質として発現される。他の実施態様において、第一のドメインと第二のドメインが単一のポリペプチドとして発現され、第三のドメインが第二のポリペプチドとして発現される。
【0316】
1つのベクターを介して、例えば、IRESに基づく及び2Aペプチドに基づくベクター系又はインテイン媒介タンパク質スプライシング系を介して、そのような別々に発現されるポリペプチドを生成させるための方法は、当技術分野で公知である。いくつかの実施態様において、内部リボソーム侵入部位(IRES)は、1つのプロモーターから複数の遺伝子を発現させるために、本明細書で使用される。他の実施態様において、2A自己開裂ペプチドが本明細書で使用される。2Aペプチドのメンバーは、最初に記載されたウイルスに因んで命名される。例えば、最初に記載された2AペプチドであるF2Aは、足口病ウイルスに由来する。自己切断性の18~22アミノ酸長の2Aペプチドは、プロリン残基とグリシン残基の間での「リボソームスキッピング」を媒介し、下流の翻訳に影響を及ぼすことなく、ペプチド結合形成を阻害する。これらのペプチドは、複数のタンパク質が翻訳時に成分タンパク質に解離するポリタンパク質としてコードされることを可能にする。自己切断性ペプチドは、アフトウイルス、例えば、足口病ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、トセア・アシグナ(thosea asigna)ウイルス(TaV)、及びブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(Donnellyらの文献、J. Gen. Virol., 82: 1027-101(2001); Ryanらの文献、J. Gen. Virol., 72: 2727-2732(2001)を参照)、並びにカルジオウイルス、例えば、タイロウイルス(例えば、タイラーのマウス脳脊髄炎)及び脳心筋炎ウイルスを含む、ピコルナウイルス科ウイルスファミリーのメンバーに見られる。FMDV、ERAV、PTV-1、及びTaVに由来する2Aペプチドは、それぞれ、「F2A」、「E2A」、「P2A」、及び「T2A」と呼ばれる場合もあり、例えば、Donnellyらの文献、J. Gen. Virol., 78: 13-21(1997); Ryan and Drew, EMBO J., 13: 928-933(1994); Szymczakらの文献、Nature Biotech., 5: 589-594(2004); Hasegawaらの文献、Stem Cells, 25(7): 1707-12(2007)に記載されているように、本開示に含まれる。また他の実施態様において、インテイン媒介タンパク質スプライシング系は、例えば、Shah及びMuirの文献、Chem Sci., 5(1): 446-461(2014)並びにTopilina及びMillsの文献、Mobile DNA, 5(5)(2014)に記載されているように、本明細書で使用される。当技術分野で公知の他の方法を本コンストラクトで使用することもできる。
【0317】
(5.3.3.組換えAAV粒子)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質をコードする核酸、及び少なくともAAVカプシドタンパク質を含む組換えAAV(rAAV)又はrAAV粒子である。該核酸は、上の第5.3.2節に記載されている任意のrAAVベクターを含む。
【0318】
カプシドタンパク質は、ITRと同一の血清型に由来するもの、又はその誘導体であってもよい。カプシドは、ITRと異なる血清型のものであってもよい。例えば、ある実施態様において、AAV粒子は、AAV2 ITR及びAAV6カプシド(AAV2/6)、AAV2 ITR及びAAV7カプシド(AAV2/7)、AAV2 ITR及びAAV8カプシド(AAV2/8)、又はAAV2 ITR及びAAV9カプシド(AAV2/9)を含む。
【0319】
天然のAAVカプシドは、AAV cap遺伝子のスプライシングバリアントによって各々コードされる、AAV VP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質を含む。一般に、AAV粒子は、VP1、VP2、及びVP3の3つのタンパク質を含み、VP2及びVP3は、VP1の切断バージョンであり、そのため、VP1にも含まれる配列を有する。通常、VP1のアミノ酸配列がカプシドの血清型を規定する。したがって、例えば、VP1カプシドタンパク質がAAV2 VP1タンパク質をコードする場合、AAVは、AAV2血清型のものであるのに対し、VP1カプシドタンパク質がAAV8 VP1タンパク質をコードする場合、AAVはAAV8血清型のものになる。
【0320】
いくつかの実施態様において、本rAAV粒子中のAAVカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3)は、天然のカプシドタンパク質ではない。いくつかの実施態様において、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3)は、天然のカプシドタンパク質に由来する。
【0321】
いくつかの実施態様において、AAVカプシドタンパク質は、VP1カプシドタンパク質である。他の実施態様において、AAVカプシドタンパク質は、VP2カプシドタンパク質である。他の実施態様において、AAVカプシドタンパク質は、VP3カプシドタンパク質である。いくつかの実施態様において、rAAV粒子は、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。他の実施態様において、rAAV粒子は、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施態様において、rAAV粒子は、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含み、ここで、該rAAV粒子のカプシドタンパク質は、同じ血清型のものである。他の実施態様において、rAAV粒子は、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質を含み、ここで、該AAV粒子のカプシドタンパク質は、同じ血清型のものである。
【0322】
ある態様において、カプシドタンパク質は、バリアントカプシドタンパク質である。バリアントカプシドタンパク質は、天然の親カプシドタンパク質、すなわち、それが由来したカプシドタンパク質などの対応する参照カプシドタンパク質と比較して、1以上の突然変異、例えば、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、及び異種ペプチド挿入を含み得る。いくつかの実施態様において、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基を除けば、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基の置換を除けば、野生型、又は参照、又は親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と同一である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるカプシドタンパク質又はAAV粒子は、それぞれ、2以上のAAV血清型カプシドタンパク質又は粒子のタンパク質配列をそれぞれ含む、キメラカプシドタンパク質又はAAV粒子であってもよい。
【0323】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるrAAV粒子中のカプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9 カプシドタンパク質に由来する。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるrAAV粒子中のカプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV2i8、AAV3、AAV3-B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-DJ、AAV LK03、AAVrh74、AAV44-9 カプシドタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0324】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV1のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0325】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV2のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0326】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV2i8のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0327】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV3のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0328】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV3-BのVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0329】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV4のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0330】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV5のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0331】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV6のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0332】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV7のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0333】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV8のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0334】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAVrh8のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0335】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAVrh8RのVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0336】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV9のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0337】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV10のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0338】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAVrh10のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0339】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV11のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0340】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV12のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0341】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV13のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0342】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV-DJのVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0343】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV LK03のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0344】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAVrh74のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0345】
ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV粒子は、AAV44-9のVP1、VP2、又はVP3アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は100%の配列同一性を有するVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質配列を含むVP1、VP2、及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0346】
いくつかの具体的な実施態様において、本明細書に提供されるrAAV粒子は、本明細書に提供される融合タンパク質をコードする核酸及び配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、又は配列番号49のアミノ酸配列を含むAAVのVP1を含む。具体的な実施態様において、VP1は、配列番号43のアミノ酸配列を含む。具体的な実施態様において、VP1は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。具体的な実施態様において、VP1は、アミノ酸置換Y444F、R487G、T491V、Y500F、R585S、R588T、及びY730Fを含むAAV2のバリアントVP1である、配列番号48のアミノ酸配列を含む。また別の具体的な実施態様において、VP1は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。
表3.例示的なVP1、VP2、及びVP3タンパク質
【表3】
【0347】
本明細書に記載されるrAAV粒子は、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて産生することができる。例えば、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)を改変して、AAV粒子産生のための必要な成分を安定に発現させることができる。これは、AAV rep及びcap遺伝子、並びに抗生物質(例えば、ネオマイシン又はアンピシリン)耐性遺伝子などの選択可能マーカーを含むプラスミド(又は複数のプラスミド)を細胞のゲノムに組み込むことにより達成することができる。細胞は、例えば、昆虫又は哺乳動物細胞であることができ、その後、これをヘルパーウイルス(例えば、ヘルパー機能を提供するアデノウイルス又はバキュロウイルス)並びに5'及び3'AAV ITRを含むrAAVベクターに同時感染させることができる。選択可能マーカーの使用は、rAAVの大規模産生を可能にする。別の非限定的な例として、プラスミドではなく、アデノウイルス又はバキュロウイルスを用いて、rep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入することができる。また別の非限定的な例として、5'及び3' AAV ITR並びにrep及びcap遺伝子を含有する両方のウイルスベクターをプロデューサー細胞のDNAに安定に組み込むことができ、かつヘルパー機能を野生型アデノウイルスによって提供して、rAAVを産生することができる。
【0348】
AAV用のヘルパーウイルスは、AAVが宿主細胞によって複製及びパッケージ化されることを可能にするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にするヘルパー機能を提供する。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、及びポックスウイルス、例えば、ワクシニアを含む、いくつかのそのようなヘルパーウイルスが特定されている。アデノウイルスは、いくつかの異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用されている。ヒト、非ヒト哺乳動物、及び鳥類起源の数多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペス科のウイルス(これも、ATCCなどの寄託機関から入手可能である)としては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、及び仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。AAV複製のためのアデノウイルスヘルパー機能の例としては、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能、及びE4orf6機能が挙げられる。
【0349】
AAVの調製物は、感染性AAV粒子と感染性ヘルパーウイルス粒子の比が、少なくとも約102:1、少なくとも約104:1、少なくとも約106:1、又は少なくとも約108:1である場合に、ヘルパーウイルスを実質的に含まないと言われる。調製物は、同等量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上述のヘルパーウイルス粒子の不純物が破壊された形で存在するのであれば、そのようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在するタンパク質)を含まないこともあり得る。ウイルス及び/又は細胞タンパク質の混入は、通常、SDSゲル上のクマシー染色バンドの存在(例えば、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3に対応するもの以外のバンドの出現)として観察することができる。
【0350】
ある実施態様において、上記のrAAVベクターを含有する宿主細胞は、rAAV粒子を産生するようにAAV ITRが隣接している本明細書に提供される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを複製及び封入するAAVヘルパー機能を提供することができるようにされている。AAVヘルパー機能は、通常、AAV由来のコード配列であり、このコード配列を発現させて、AAV遺伝子産物を提供することができ、次に、このAAV遺伝子産物は、生産的AAV複製のためにトランスで機能する。AAVヘルパー機能は、rAAVベクターから欠落している必須のAAV機能を相補するために本明細書で使用される。いくつかの実施態様において、AAVヘルパー機能は、主要なAAV ORF、すなわち、rep及びcapコード領域、又はこれらの機能的ホモログの一方又は両方を含む。
【0351】
AAVヘルパー機能は、rAAVベクターのトランスフェクションの前か又はそれと同時かのいずれかで、宿主細胞をAAVヘルパーコンストラクトでトランスフェクトすることにより、宿主細胞内に導入することができる。例えば、AAVヘルパーコンストラクトを用いて、AAV rep及び/又はcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供し、生産的AAV感染に必要となる欠落しているAAV機能を相補することができる。通常、AAVヘルパーコンストラクトはAAV ITRを欠き、それ自体を複製することもパッケージングすることもできない。AAVヘルパーコンストラクトは、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態のものであることができる。
【0352】
ある実施態様において、宿主細胞はまた、rAAV粒子を産生するための非AAV由来機能もしくは「アクセサリ機能」を提供することができるか、又該機能が提供される。アクセサリ機能は、AAVがその複製を依存している非AAV由来のウイルス性及び/又は細胞性機能、例えば、AAV複製で必要とされる非AAVタンパク質及びRNAであり、これには、AAV遺伝子転写、段階特異的なAAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、及びAAVカプシドアセンブリの活性化に関与するものが含まれる。いくつかの実施態様において、ウイルスに基づくアクセサリ機能は、既知のヘルパーウイルスに由来することができる。
【0353】
いくつかの実施態様において、ヘルパーウイルス及び/又はアクセサリ機能ベクターによる宿主細胞の感染の結果として、組換えAAV粒子が産生され、産生されたrAAV粒子は、感染性の複製欠損ウイルスであり、AAV ITRが両側に隣接する目的の異種ヌクレオチド配列を封入するAAVタンパク質シェルを含む。
【0354】
rAAV粒子は、当技術分野で公知の精製方法、例えば、クロマトグラフィー、CsCl勾配、並びに例えば、米国特許第6,989,264号及び第8,137,948号、並びにWO 2010/148143号に記載されている他の方法を用いて、宿主細胞から精製することができる。いくつかの実施態様において、残存ヘルパーウイルスは、公知の方法を用いて、例えば、加熱によって不活化することができる。
【0355】
(5.3.4.細胞)
種々の宿主細胞を用いて、本明細書に記載されるrAAV粒子を産生することができる。本明細書に提供されるポリヌクレオチド及びAAVベクターからAAV粒子を産生するための好適な宿主細胞としては、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられる。典型的には、そのような細胞は、異種核酸分子のレシピエントとして使用することができるか、又は該レシピエントとして使用されており、例えば、懸濁培養及びバイオリアクターで増殖させることができる。
【0356】
いくつかの実施態様において、細胞は、哺乳動物宿主細胞、例えば、HEK293、HEK293-T、A549、WEHI、10T1/2、BHK、MDCK、COS1、COS7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、W138、HeLa、293、Jurkat、2V6.11、Saos、C2C12、L、HT1080、HepG2、初代線維芽細胞、肝細胞、及び筋芽細胞である。
【0357】
他の実施態様において、細胞は、昆虫細胞、例えば、Sf9、SF21、SF900+、又はショウジョウバエ細胞株、蚊細胞株、例えば、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)由来細胞株、カイコ細胞株、例えば、カイコガ(Bombyxmori)細胞株、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)細胞株、例えば、High Five細胞、又はチョウ目(Lepidoptera)細胞株、例えば、アスカラファ・オドラタ(Ascalapha odorata)細胞株である。いくつかの実施態様において、昆虫細胞は、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、及びAo38を含む、バキュロウイルス感染を起こしやすい昆虫種由来の細胞である。例えば、Sf9昆虫細胞を含む細胞内での組換えAAVの大規模産生は、Kotin RM.の文献、Hum Mol Genet. 20(R1):R2-R6(2011) doi:10.1093/hmg/ddr141によって記載されている。昆虫細胞内でのポリペプチドの分子エンジニアリング及び発現のための方法は、例えば、例えば、Summers及びSmithの文献、バキュロウイルスベクター及び昆虫培養手順の方法マニュアル(A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures)、Texas Agricultural Experimental Station Bull. No. 7555, College Station, Tex.(1986); King, L. A.及びR. D. Posseeの文献、バキュロウイルス発現系(The baculovirus expression system)、Chapman and Hall, United Kingdom(1992); O'Reilly, D. R.、L. K. Miller、V. A. Luckowの文献、バキュロウイルス発現ベクター:実験室マニュアル(Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual)、New York(1992); W.H. Freeman及びRichardson, C. D.の文献、バキュロウイルス発現プロトコル(Baculovirus Expression Protocols)、Methods in Molecular Biology, volume 39(1995)に記載されている。
【0358】
(5.4.ポリヌクレオチド)
ある実施態様において、本開示は、本明細書に提供される様々な融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号7の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号8の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号9の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号10の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号58の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号59の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号60の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号61の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号62の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号63の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号64の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号65の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。例示的な実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号66の配列を有する融合タンパク質をコードする配列を含む。
【0359】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号67を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号68を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号69を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号70を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号71を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号72を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号73を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号74を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される核酸分子は、配列番号75を含む。
【0360】
ある実施態様において、本開示は、例えば、配列番号11~23を含む、本明細書に提供される任意の組換えベクターのポリヌクレオチドを提供する。
【0361】
本開示のポリヌクレオチドは、RNAの形態のもの又はDNAの形態のものであることができる。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含み;二本鎖又は一本鎖であることができ、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であることができる。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、cDNAの形態のものである。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチドである。
【0362】
本開示はさらに、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのバリアントに関するものであり、ここで、該バリアントは、例えば、本開示の融合タンパク質の断片、類似体、及び/又は誘導体をコードする。ある実施態様において、本開示は、本開示の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドと少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、及びいくつかの実施態様において、少なくとも約96%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0363】
ある実施態様において、本開示は、本明細書に提供されるベクターのポリヌクレオチドと少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、及びいくつかの実施態様において、少なくとも約96%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0364】
本明細書で使用される場合、「参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」という語句は、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各々100個のヌクレオチド当たり最大5つの点突然変異を含むことができることを除き、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味することが意図される。すなわち、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドの最大5%を欠失させもしくは別のヌクレオチドと置換することができるか、又は参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%のいくつかのヌクレオチドを参照配列中に挿入することができる。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5'もしくは3'末端位置に、又は参照配列中のヌクレオチドの間に個々に分散してかもしくは参照配列内の1以上の連続基中で分散してかのいずれかで、これらの末端位置の間のどこかに存在することができる。
【0365】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、又はその両方の変化を含有することができる。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、又は欠失を生じるが、コードされるポリペプチドの特性又は活性を変化させない変化を含有することができる。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、(遺伝暗号の縮重が原因で)ポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらさないサイレント置換を含む。ポリヌクレオチドバリアントは、種々の理由で、例えば、特定の宿主に対するコドン発現を最適化するために(すなわち、ヒトmRNA中のコドンを、大腸菌などの細菌宿主によって好まれるコドンに変更するために)産生することができる。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、配列の非コード領域又はコード領域中に少なくとも1つのサイレント突然変異を含む。
【0366】
いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現(又は発現レベル)を調節又は改変するように産生される。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現を増加させるように産生される。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現を減少させるように産生される。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、親ポリヌクレオチド配列と比較して、コードされたポリペプチドの発現が増加している。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドバリアントは、親ポリヌクレオチド配列と比較して、コードされたポリペプチドの発現が減少している。
【0367】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、単離されている。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。
【0368】
(5.5.医薬組成物)
一態様において、本開示は、本開示の融合タンパク質、ベクター、又はウイルス粒子を含む医薬組成物をさらに提供する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、治療有効量の本明細書に提供される融合タンパク質、ベクター、又はウイルス粒子、及び医薬として許容し得る賦形剤を含む。
【0369】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、治療有効量の本明細書に提供される融合タンパク質及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0370】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、治療有効量の本明細書に提供されるrAAVベクター及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0371】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、治療有効量の本明細書に提供されるrAAV粒子及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0372】
具体的な実施態様において、「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えば、(完全もしくは不完全)フロイントアジュバント、担体、又はビヒクルも指すことができる。医薬賦形剤は、例えば、水及び油などの滅菌液であることができ、これには、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが含まれる。生理食塩水溶液並びに水性のグルコース及びグリセロール溶液も、液体賦形剤として利用することができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態を取ることができる。好適な医薬賦形剤の例は「レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(1990) Mack Publishing Co., Easton, PAに記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、予防又は治療有効量の本明細書に提供される活性成分を、例えば、精製された形態で、好適な量の賦形剤とともに含有する。製剤は、投与様式に適合するべきである。
【0373】
いくつかの実施態様において、賦形剤の選択は、ある程度、特定の細胞、結合分子、ウイルス粒子、及び/又は投与方法によって決定される。したがって、種々の好適な製剤が存在する。
【0374】
通常、許容し得る担体、賦形剤、又は安定化剤は、利用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、緩衝剤、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化剤;防腐剤、等張化剤、安定化剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体); EDTAなどのキレート剤、及び/又は非イオン性界面活性剤を含む。
【0375】
特に、安定性がpH依存的である場合、緩衝剤を用いて、治療的有効性を最適化する範囲でpHを調整することができる。本開示とともに使用するための好適な緩衝剤としては、有機酸と無機酸の両方、並びにこれらの塩が挙げられる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。さらに、緩衝剤は、ヒスチジン及びトリメチルアミン塩、例えば、トリスを含み得る。
【0376】
防腐剤を添加して、微生物の増殖を遅らせることができる。本開示とともに使用するための好適な防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、ヨウ化ベンザルコニウム)、ベンゼトニウム塩化物;チメロサール、フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
【0377】
「安定化剤」として知られることもある等張化剤は、組成物中の液体の張性を調整又は維持するために存在することができる。タンパク質及び抗体などの巨大な荷電性生体分子とともに使用する場合、それは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより、分子間及び分子内相互作用の可能性を減らすことができるので、しばしば「安定化剤」と称される。例示的な等張化剤としては、多価糖アルコール、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
【0378】
さらなる例示的な賦形剤としては:(1)充填剤、(2)溶解促進剤、(3)安定化剤、及び(4)変性又は容器壁への付着を防止する薬剤が挙げられる。そのような賦形剤としては:多価糖アルコール(上で列挙されている);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機酸又は糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン; 単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えば、ラフィノース;並びに多糖類、例えば、デキストリン又はデキストランが挙げられる。
【0379】
非イオン性界面活性剤又は洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助けるために、及び撹拌誘発性凝集から治療用タンパク質を保護するために存在することができ、これはまた、活性のある治療用タンパク質の変性を引き起こすことなく、製剤が剪断表面応力に曝されることを可能にする。好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80、など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができるアニオン性洗剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性洗剤としては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0380】
医薬組成物をインビボ投与に使用するために、それは、滅菌されていることが好ましい。医薬組成物は、滅菌濾過膜に通す濾過によって滅菌されてもよい。本明細書中の医薬組成物は、通常、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により穿刺可能な栓を有する静注液バッグ又はバイアルに入れることができる。
【0381】
投与経路は、公知かつ許容された方法に従うものであり、例えば、好適な様式での、単回もしくは長期間にわたる複数回のボーラスもしくは注入によるもの、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、もしくは関節内経路による注射もしくは注入、硝子体内、網膜下注射、局所投与、吸入、又は持続放出もしくは徐放手段によるものである。
【0382】
別の実施態様において、医薬組成物を制御放出又は持続放出系として提供することができる。一実施態様において、ポンプを用いて、制御又は持続放出を達成することができる(例えば、Seftonの文献、Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201-40(1987); Buchwaldらの文献、Surgery、88:507-16(1980);及びSaudekらの文献、N. Engl. J. Med. 321:569-74(1989)を参照)。別の実施態様において、ポリマー性材料を用いて、本明細書に提供される予防剤もしくは治療剤(例えば、本明細書に記載される融合タンパク質)又は組成物の制御又は持続放出を達成することができる(例えば、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)(Langer及びWise編、1974);制御型薬物バイオアベイラビリティ、製剤の設計及び性能(Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance)」(Smolen及びBall編、1984);Ranger及びPeppasの文献、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61-126(1983);Levyらの文献、Science 228:190-92(1985);Duringらの文献、Ann. Neurol. 25:351-56(1989);Howardらの文献、J. Neurosurg. 71:105-12(1989);米国特許第5,679,377号;第5,916,597号;第5,912,015号;第5,989,463号;及び5,128,326号; PCT公開WO 99/15154号及びWO 99/20253号を参照)。持続放出製剤において使用されるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、持続放出製剤において使用されるポリマーは、不活性であり、溶出不純物がなく、保存時に安定であり、滅菌されており、かつ生分解性である。
【0383】
また別の実施態様において、制御又は持続放出系は、特定の標的組織、例えば、鼻腔又は肺に近接して配置することができ、そのため、全身用量のごく一部しか必要としない(例えば、Goodsonの文献、Medical Applications of Controlled Release Vol. 2、115-38(1984)を参照)。制御放出系は、例えば、Langerの文献、Science 249:1527-33(1990)により考察されている。当業者に公知の任意の技法を用いて、本明細書に記載される1以上の薬剤を含む持続放出製剤を作製することができる(例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開WO 91/05548号及びWO 96/20698号、Ningらの文献、Radiotherapy & Oncology 39:179-89(1996); Songらの文献、PDA J. of Pharma. Sci. & Tech. 50:372-97(1995); Cleekらの文献、Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-54(1997)、並びにLamらの文献、Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-60(1997)を参照)。
【0384】
本明細書に記載される医薬組成物は、特定の適応を治療する必要に応じて、複数の活性化合物又は薬剤も含有し得る。その代わりに、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、又は増殖抑制剤を含み得る。そのような分子は、好適には、意図される目的のために効果的である量で組み合わせて存在する。
【0385】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法によるかもしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンに封入することもできる。そのような技法は、レミントンの医薬薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版に開示されている。
【0386】
限定されないが、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、本明細書に提供される治療用分子を発現することができる組換え細胞、ウイルスベクター又は他のベクターの一部としての核酸の構築を含む、様々な組成物及び送達系が公知であり、本明細書に提供される治療剤とともに使用することができる。
【0387】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、結合分子及び/又はウイルス粒子を、疾患又は障害を治療又は予防するのに有効な量、例えば、治療有効量又は予防有効量で含有する。いくつかの実施態様における治療又は予防効力を、治療を受けた対象の定期的な評価によってモニタリングする。数日間又はそれ以上にわたる反復投与については、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで治療が反復される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である場合があり、かつそれが決定されることがあり得る。
【0388】
具体的な実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、対象の目への硝子体内又は網膜下注射に好適である。
【0389】
(5.6.方法及び使用)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される融合タンパク質、ベクター、又はウイルス粒子(rAAV)の使用方法及び使用である。
【0390】
そのような方法及び使用には、例えば、疾患又は障害を有する対象への分子、rAAV、又はそれを含む組成物の投与を含む治療法及び使用が含まれる。いくつかの実施態様において、分子、ウイルス粒子、及び/又は組成物は、疾患又は障害の治療を達成するための有効量で投与される。使用には、そのような方法及び治療における、及びそのような治療法を実施するための医薬品の調製における融合タンパク質又はウイルス粒子の使用が含まれる。いくつかの実施態様において、本方法は、融合タンパク質もしくはウイルス粒子、又はこれらを含む組成物を、疾患もしくは疾病を有するか又は疾患もしくは疾病を有する疑いのある対象に投与することにより実施される。いくつかの実施態様において、本方法は、それにより、対象の疾患又は障害を治療する。
【0391】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される治療は、疾患もしくは障害、又は症状、有害な効果もしくは転帰、或いはこれらと関連する表現型の完全な又は部分的な改善又は軽減を引き起こす。治療の望ましい効果には、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の何らかの直接的又は間接的な病理学的結果の低減、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後改善が含まれるが、これらに限定されない。これらの用語は、疾患の完全な治癒又は何らかの症状の完全な排除又は全ての症状もしくは転帰に対する効果を含むが、これらを必然的に含むものではない。
【0392】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施態様において、本明細書に提供される治療は、疾患又は障害の発症を遅延させる、例えば、疾患(例えば、癌又は眼疾患)の発症を保留し、妨害し、減速し、遅延させ、安定化し、抑制し、及び/又は延期する。この遅延は、治療されている疾患及び/又は個体の履歴に応じて、様々な長さのものであり得る。当業者に明らかなように、十分な又は有意な遅延は、個体が疾患又は障害を発症しないという点で、実質的に、予防を包含することができる。
【0393】
他の実施態様において、本明細書に提供される方法又は使用は、疾患又は障害を予防する。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、VEGF及び/又はアンジオポエチンと関連する。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、血管新生と関連する。
【0394】
本明細書中の疾患又は障害としては、炎症性疾患、眼疾患、自己免疫疾患、又は癌が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、関節リウマチ、炎症性関節炎、変形性関節症、癌、加齢黄斑変性症(AMD)(例えば、湿潤型AMD又は乾燥型AMD)、新生血管形成(例えば、脈絡膜新血管形成)を特徴とする眼疾患、ぶどう膜炎(例えば、前部ぶどう膜炎又は後部ブドウ膜炎)、網膜色素変性症、及び糖尿病性網膜症からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、加齢黄斑変性症(AMD)(例えば、湿潤型AMD又は乾燥型AMD)である。
【0395】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを用いる治療は、CNV動物モデルにおいて、無治療又は陰性対照を用いる治療よりも低い病変レベルをもたらす。いくつかの実施態様において、CNV動物モデルは、マウスモデルである。いくつかの実施態様において、病変がグレード3病変であるのに対し、血管造影図は、次のように評価される:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。いくつかの実施態様において、融合タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを用いる治療は、CNV動物モデルにおいて、参照薬剤を用いる治療よりも低い病変レベルをもたらす。いくつかの実施態様において、参照薬剤は、AMDを治療する薬剤である。いくつかの実施態様において、参照薬剤は、AMDを治療する既知の薬物である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを用いる治療は、後期のCNV病変を阻害する。
【0396】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、VEGF-Aに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、Ang2に結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、VEGF-Cに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、VEGF-A、Ang2、及びVEGF-Cのうちのいずれか2つに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される融合タンパク質は、VEGF-A、Ang2、及びVEGF-Cのうちの3つ全てに結合する。
【0397】
いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、全身エリテマトーデス、血管炎(血管の炎症)、多発性神経障害、皮膚潰瘍形成、内臓梗塞、胸膜炎、間質線維化、カプラン症候群、胸膜肺結節、肺臓炎、リウマチ性肺疾患、又は動脈炎である。
【0398】
ある実施態様において、疾患又は障害は、炎症性疾患、例えば、炎症性関節炎、変形性関節症、乾癬、慢性炎症、過敏性腸疾患、肺炎症、又は喘息である。
【0399】
いくつかの実施態様において、疾患又は障害は、血液癌及び固形腫瘍癌を含む癌である。いくつかの実施態様において、癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、尿路癌(例えば、膀胱癌)、腎臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膵癌、胃癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、リンパもしくは骨髄系統の造血系癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌(NPC)、膠芽腫、奇形腫、神経芽腫、腺癌、間葉起源の癌、例えば、線維肉腫もしくは横紋筋肉腫、軟部組織肉腫及び癌腫、絨毛腫、肝芽腫、カポジ肉腫、又はウィルムス腫瘍である。
【0400】
限定されないが、アテローム性動脈硬化症、水晶体後線維増殖症、甲状腺過形成(グラーブ病を含む)、ネフローゼ症候群、妊娠高血圧腎症、腹水、心膜滲出(例えば、心膜炎と関連するもの)及び胸膜滲出含む、血管新生と関連する他の疾患は、本明細書に開示される方法及び組成物で治療することができる。
【0401】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法及び組成物を用いて、眼球又は眼の疾患又は障害を治療することができる。いくつかの実施態様において、眼疾患は、ぶどう膜炎、網膜色素変性症、新生血管緑内障、糖尿病性網膜症(DR)(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、虚血性網膜症、眼内新血管形成、湿潤型AMD及び乾燥型AMDを含む加齢黄斑変性症(AMD)、網膜新血管形成、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜虚血、糖尿病性網膜浮腫、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞及び網膜静脈分岐閉塞を含む)、又は黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される組成物又は方法は、限定されないが、眼内ドルーゼン(ocular drusen)の形成、眼又は眼組織の炎症、及び視力低下を含む、眼疾患の1以上の症状を治療又は予防する。
【0402】
ある具体的な実施態様において、本明細書に提供される方法及び組成物は、AMDを治療するために使用される。AMDは、黄斑と呼ばれる網膜の領域における光受容体細胞の損傷の結果として生じる、中心視力の進行性喪失を特徴とする。AMDは、湿潤型と乾燥型の2つの臨床状態に大別されている。湿潤型のAMDは乾燥型に先行し、乾燥型から生じるということが一般に受け入れられている。乾燥型AMDは、眼のブルッフ膜と網膜色素上皮の間に蓄積する細胞外物質の小さな黄色又は白色の蓄積物である黄斑ドルーゼンの形成を特徴とする。重篤な視力低下の大部分を占める湿潤型AMDは、血管が網膜下の脈絡膜から成長する新生血管形成及びこれらの新生血管の漏出に関連している。血液及び体液の蓄積は、網膜剥離を引き起こし、その後、どちらの形態のAMDにおいても、急速な光受容体変性及び視力低下を引き起こす。
【0403】
融合タンパク質は、組成物に入れて対象に送達することができる。融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVによって対象に送達することもできる。融合タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを含む医薬組成物は、本明細書に提供され、かつ上でより詳細に記載されている。
【0404】
本明細書に記載される医薬組成物は、任意の経路で、例えば、血管内に(例えば、静脈内(IV)もしくは動脈内に)、直接的に動脈内に、全身に(例えば、静脈内注射によって)、又は局所的に(例えば、動脈内もしくは眼内注射によって)、個体に投与することができる。非限定的で例示的な投与方法としては、静脈内(例えば、注入ポンプによる)、腹腔内、眼内、動脈内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経皮、経胸膜、動脈内、局所、吸入(例えば、スプレーミストとして)、粘膜(鼻粘膜経由)、皮下、経皮、消化器官、関節内、嚢内、脳室内、頭蓋内、尿道内、肝内、腫瘍内、硝子体内、及び網膜下注射が挙げられる。
【0405】
いくつかの実施態様において、組成物は、眼又は眼組織に直接、例えば、硝子体内又は網膜下注射を介して投与される。いくつかの実施態様において、組成物は、眼に局所的に、例えば、点眼薬で投与される。いくつかの実施態様において、組成物は、眼への注射(眼内注射)又は眼に関連する組織への注射によって投与される。組成物は、例えば、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、球周囲注射、又は後部強膜近傍送達によって投与することができる。
【0406】
組成物は、例えば、硝子体、房水、強膜、結膜、強膜と結膜の間の領域、網膜脈絡膜組織、黄斑、又は個体の眼内もしくは眼に近接する他の領域に投与することができる。組成物は、一定期間にわたって、化合物を徐々に放出する生体適合性及び/又は生分解性持続放出製剤などのインプラントとして個体に投与することもできる。組成物は、イオントフォレーシスを用いて個体に投与することもできる。
【0407】
組成物の有効量は、当業者によって経験的に決定されることができ、疾患の種類及び重症度、投与経路、疾患進行及び健康状態などによって決まる。例えば、眼内に投与する場合、本明細書に記載される融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVは、1×108~1×1015ベクターゲノム(vg)、例えば、1×109~1×1011ベクターゲノム(vg)又は1×1011~1×1013ベクターゲノム(vg)、及びincluding、例えば、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、9×1011、1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、9×1013、1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、9×1014ベクターゲノム(vg)の用量で、対象に投与することができる。
【0408】
いくつかの実施態様において、単位用量は、1mLを超えない容量を含む。いくつかの実施態様において、単位用量は、0.5~1.0mLを超えない容量を含む。いくつかの実施態様において、単位用量は、0.5mLを超えない容量を含む。いくつかの実施態様において、単位用量は、500μLを超えない容量を含む。
【0409】
融合タンパク質を含む医薬組成物は、1日1回の用量で投与されてもよく、又は1日の用量は、1日2回、3回、もしくは4回の分割投薬量で投与されてもよい。融合タンパク質を含む組成物は、一定期間(例えば、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、1年、2年、又は3年)内に、複数回(例えば、2回、3回、4回、又は5回)投与することができる。
【0410】
融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを含む医薬組成物は、より少ない頻度、例えば、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、7カ月に1回、8カ月に1回、9カ月に1回、10カ月に1回、11カ月に1回、1年に1回、2年に1回、3年に1回、4年に1回、5年に1回、又はさらに少ない頻度で投与することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVを含む組成物の単一用量が投与される。
【0411】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、懸濁液、例えば、冷蔵懸濁液である。いくつかの実施態様において、本方法は、投与工程の前に、懸濁液の均一な分布を確実にするために懸濁液を撹拌することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、投与工程の前に、医薬組成物を室温まで温めることをさらに含む。
【0412】
組成物は、持続放出製剤で投与することもできる。持続放出装置(ペレット、ナノ粒子、微粒子、ナノスフィア、マイクロスフィアなど)は、眼又は眼に関連する組織、例えば、眼内、硝子体内、網膜下、眼周囲、結膜下、又はテノン嚢下の様々な位置に注射又は外科的に埋め込むことにより投与することができる。
【0413】
融合タンパク質もしくは融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAV又はこれらを含む医薬組成物は、単独で、又は1以上の追加の治療薬もしくは他の療法と組み合わせて使用することができる。例示的な追加の治療剤としては、補体阻害剤、抗血管新生剤、及び抗VEGF剤、例えば、ルセンティス(登録商標)、アバスチン(登録商標)、トレバナニブ、及びコンベルセプトが挙げられる。いくつかの実施態様において、組合せは、同時投与として提供され、この場合、融合タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸を含むrAAVと少なくとも1つの治療剤は、同じ組成物中で一緒に投与されるか、又は異なる組成物中で同時に投与される。いくつかの実施態様において、組合せは、個別投与として提供され、この場合、融合タンパク質をコードする核酸を含む融合タンパク質又はrAAVの投与は、少なくとも1つの治療剤の投与の前に、それと同時に、及び/又はその投与後に起こり得る。
【0414】
(5.8.キット及び製造品)
さらに提供されるのは、本明細書に記載される組成物のいずれかを含むキット、単位投薬物、及び製造品である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される医薬組成物のいずれか1つを含有し、好ましくは、その使用のための使用説明書を提供するキットが提供される。
【0415】
本出願のキットは、好適なパッケージングに入っている。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟なパッケージング(例えば、密閉されたマイラーバッグ又はプラスチック)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、緩衝材及び説明用の情報などの追加の構成要素を任意に提供することができる。したがって、本出願は、バイアル(例えば、密閉バイアル)、ボトル、ジャー、柔軟なパッケージングなどを含む製造品も提供する。
【0416】
製造品は、容器、及び容器上又は容器に付随するラベル又はパッケージインサートを含むことができる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。通常、容器は、本明細書に記載される疾患又は障害(例えば、眼疾患又は眼障害)を治療するのに効果的である組成物を保持するものであり、かつ減菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な栓を有する静注液バッグ又はバイアルであってもよい)。ラベル又はパッケージインサートは、組成物が個体の特定の疾病を治療するために使用されることを示す。ラベル又はパッケージインサートは、組成物を個体に投与するための使用説明書をさらに含む。ラベルは、再構成及び/又は使用の指示を示してもよい。医薬組成物を保持する容器は、再構成された製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする多用途バイアルであってもよい。パッケージインサートは、治療用製品のコマーシャルパッケージに慣例的に含まれる使用説明書を指し、コマーシャルパッケージは、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌、及び/又は警告に関する情報を含む。加えて、製造品は、医薬として許容し得る緩衝液、例えば、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液を含む第二の容器をさらに含み得る。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的の観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0417】
キット又は製造品は、薬局、例えば、病院薬局及び調剤薬局での保管及び使用に十分な量でパッケージングされた、医薬組成物の複数単位用量及び使用説明書を含み得る。
【0418】
簡潔にするために、特定の略語が本明細書で使用される。1つの例は、アミノ酸残基を表す1文字略語である。アミノ酸並びにそれらに対応する3文字略語及び1文字略語は、次の通りである:
【表4】
【0419】
本開示は、一般に、多くの実施態様を説明するために断定的な言葉を用いて本明細書に開示されている。本開示は、物質もしくは材料、方法の工程及び条件、プロトコル、手順、アッセイ、又は分析などの特定の主題が完全に又は部分的に除外されている実施態様も具体的に含まれる。したがって、本開示は、本開示が含まないものに関して、本明細書で全般的に表現されていないとしても、本開示に明示的に含まれていない態様は、それにもかかわらず、本明細書に開示されている。
【0420】
本開示のいくつかの実施態様が記載されている。それにもかかわらず、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われ得ることが理解されるであろう。したがって、以下の実施例は、例示することを意図するものであり、特許請求の範囲に記載されている開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0421】
(6.実施例)
以下は、試験において使用される様々な方法及び材料の説明であり、当業者に本開示の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されており、本発明者らがその開示とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また以下の実験が実施され、かつ実施され得る実験の全てであることを表すことを意図するものでもない。現在形で書かれた例示的な記述は、必ずしも実施されたものではなく、むしろ、その記述は、本開示の教示に関連するデータなどを生成させるために実施され得るということが理解されるべきである。使用される数字(例えば、量、パーセンテージなど)に関して正確性を保証するための努力がなされているが、若干の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0422】
(6.1.実施例1-VEGF及びアンジオポエチンに結合することができる融合タンパク質の構築)
本開示による例示的な融合タンパク質を構築した。
図1は、これらの例示的なコンストラクト、すなわち、例示的なポリペプチド1、例示的なポリペプチド2、例示的なポリペプチド3、及び例示的なポリペプチド4を上から下に示している。
【0423】
具体的に、これらの融合タンパク質は、3つの結合ドメインを含み-1つはVEGFR-1(すなわち、VEGFR-1のIgG様ドメイン2)に由来するもの、1つはVEGFR-2(すなわち、VEGFR-2のIgG様ドメイン3)に由来するもの、1つは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合することができるドメインである。Flt-1シグナルドメインも、これらの例示的なコンストラクトのN-末端に含めた。あるコンストラクトにおいて、融合タンパク質は、ヒトIgG Fc断片をさらに含む。これらの例示的なドメイン及び例示的な融合タンパク質のこれらの配列は、下の表に提供されている。
表4.例示的な融合タンパク質及びそのドメイン
【表5】
【0424】
(6.2.実施例2-融合タンパク質をコードする核酸を含むAAVベクターの構築)
第6.1節に記載されている例示的な融合タンパク質をコードする核酸配列を、本実施例で、rAAV2に由来する例示的なrAAVベクターに導入して、rAAVベクターのEXG102-02、EXG102-03-01、EXG102-03-02、EXG102-04、EXG102-05、EXG102-06、EXG102-07、EXG102-08、EXG102-09、EXG102-10、EXG102-11、EXG102-12、及びEXG102-13を作製した。
【0425】
具体的に、例示的なポリペプチド1は、EXG102-04、EXG102-07、及びEXG102-08中の目的の遺伝子であり;例示的なポリペプチド2は、EXG102-09、EXG102-10中の目的の遺伝子であり;例示的なポリペプチド3は、EXG102-11、EXG102-12中の目的の遺伝子である。例示的なポリペプチド4は、EXG102-13中の目的の遺伝子であり; Ang BDを有さない対照ポリペプチドは、EXG102-02、EXG102-03-1、EXG102-03-2、EXG102-05、及びEXG102-06に入れて構築された。
【0426】
これらのベクターは、
図2に例示されている。
図2において、TRは、AAV2逆方向末端反復を表し、CBAは、1.68kbのニワトリβ-アクチンプロモーターであり、CBは、0.78kbの小さいニワトリβ-アクチンプロモーターであり、D2は、VEGFR-1のIgG様ドメイン2を表し、D3は、VEGFR-2のIgG様ドメイン3を表し、ABD(又はAng BD)は、アンジオポエチン結合ドメインを表し、IgG Fcは、ヒトIgGのFc断片であり、Fc-Hingerは、FcのN-末端の21アミノ酸+6アミノ酸GSリンカーであり、WPREは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(600bp)を表し、mWPREは、ミニWPRE(240bp)であり、SV40pAは、サルウイルス40ポリアデニル化シグナルであり、bGHpAは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。これらのコンストラクトにおいて、小さいCBプロモーターは、自己相補性AAV(scAAV)とのみ関連する。
【0427】
これらの例示的なrAAVベクターの核酸配列は、下の表に示されている。
表5.例示的なrAAVベクター
【表6】
【0428】
(6.3.実施例3-タンパク質発現及びリガンド結合アッセイ)
HEK293細胞を、プラスミドコンストラクトで一過性にトランスフェクトするか、又はD2D3もしくはD2D3/ABDを発現するAAVベクターに感染させた(
図3Aを参照)。D2D3又はD2D3/ABDを含有する培養培地を、それぞれ、D2D3又はABDを捕捉することができるVEGF又はAngでコーティングされたウェルに添加した。その後、捕捉されたD2D3又はD2D3/ABDを抗Fc-HRPとともにインキュベートし、OD450を読み取ることにより定量した(
図3Bを参照)。
【0429】
これらの結果は、EXG102-02、EXG102-03-01、及びEXG102-03-02という3つのコドン最適化バージョンからの導入遺伝子発現がscAAV102-06と同程度であったことを示している。
図4A~4B及び5A~5Bに示されているように、C-末端におけるAng BDの位置は、rVEGFに対するD2D3の結合能に影響を及ぼさなかったが、それは、導入遺伝子発現レベルを大幅に低下させた(EXG102-04、EXG102-07、及びEXG102-08を参照)。
【0430】
対照的に、
図5A~5Bに示されているように、D2D3とFcの中間のAng BDの位置は、rVEGFに対する結合能及び導入遺伝子発現に影響を及ぼさなかった(EXG102-09を参照)。しかしながら、
図6A~6Bに示されているように、中間のAng BDの位置は、Ang2に対する結合能を阻害した。
【0431】
図7A~7Cに示されているように、N-末端にAng BDを有するコンストラクト(例えば、EXG102-11)は、一過性トランスフェクションからの同じCMで、コンストラクトEXG102-09と同様にVEGFに結合することができ;さらに、EXG102-04及びEXG102-11は、一過性トランスフェクションからの同じCMで、Ang2に対する最も強い結合を示した。さらに、EXG102-11は、導入遺伝子発現を低下させなかった(
図7Dを参照)。まとめると、EXG102-11は、VEGFとAng2の両方に強く結合すると同時に、高い導入遺伝子発現レベルを維持することが示された。
【0432】
(6.4.実施例4-さらなるVEGFC結合ドメイン(Trap C)を含む融合タンパク質の構築)
本開示によるさらなる例示的な融合タンパク質を
図8に示されているように構築した。これらのさらなるコンストラクトは、さらなるVEGF結合ドメイン、すなわち、VEGFC結合ドメイン(Trap C)を含む。
図9A~9Iは、それぞれ、EXG102-24、EXG102-25、EXG102-26、EXG102-27、EXG102-28、及びEXG102-29中の核酸(導入遺伝子)によってコードされる本明細書に提供される例示的なポリペプチドコンストラクトを示している。シグナルペプチド、ABD、D2、D3、Trap C、及びFcコンストラクトが、これらの図に示されている。具体的に、これらの例示的な融合タンパク質は、4つの結合ドメイン-1つはVEGFR-1(すなわち、VEGFR-1のIgG様ドメイン2)に由来するもの、1つはVEGFR-2(すなわち、VEGFR-2のIgG様ドメイン3)に由来するもの、1つはVEGFC結合ドメインであり、1つは、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン1及びアンジオポエチン2)に結合することができるドメインである。これらの融合タンパク質は、ヒトIgGのFc断片をさらに含む。Flt-1シグナルドメインも、これらの例示的なコンストラクトのN-末端に含めた。
【0433】
本コンストラクトのいくつかにおいて、ABDは、配列番号3又は配列番号51を有するアミノ酸配列の1以上の反復を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号3の1つの反復を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号3の2つの反復を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号51の1つの反復を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号51の2つの反復を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号4を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号52を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号53を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、本明細書に提供されるABDは、配列番号54を含む。
【0434】
本コンストラクトに含めることができる例示的なTrap C配列は、以下に提供されている。いくつかのコンストラクトにおいて、Trap Cは、配列番号55のアミノ酸配列を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、Trap Cは、配列番号56のアミノ酸配列を含む。いくつかのコンストラクトにおいて、Trap Cは、配列番号57のアミノ酸配列を含む。
【0435】
これらの例示的なドメイン及び例示的な融合タンパク質のこれらの配列は、下の表に提供されている。
表6. Trap Cを含む例示的なドメイン及び例示的な融合タンパク質の配列
【表7】
表7.例示的な融合タンパク質の核酸配列
【表8】
【0436】
(6.5.実施例5-さらなるTrap Cドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を含むAAVベクターの構築)
第6.4節に記載されている例示的な融合タンパク質をコードする核酸配列を、本実施例で、例えば、rAAV2及びrAAV8に由来する例示的なrAAVベクターに導入して、
図8及び
図9A~9Iに示されているようなrAAVベクターを作製した。
【0437】
(6.6.実施例6-タンパク質発現、リガンド結合、及び他の機能アッセイ)
HEK293細胞を、プラスミドコンストラクトで一過性にトランスフェクトするか、又は上記のAAVベクターに感染させる。導入遺伝子発現を解析し、比較する。様々なインビトロ及びインビボアッセイをこれらのコンストラクトについて実施する。
【0438】
図10A~10Fに示されているように、ABD2を含有するコンストラクトは、タンパク質発現、VEGF-A結合、又はAng2結合に関してABDドメインを有するコンストラクトと同程度である。
【0439】
(6.7.実施例7-CNVマウスモデルにおけるCNV病変の阻害に対するANG-2結合ドメインの効果)
FFA平均スコアを、注射後29及び36日目に、CNVマウスモデルを用いて、AAV-GFP(陰性対照)、EXG102-02(陽性対照)、EXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置された目で測定した。血管造影図を次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。
【0440】
図11は、VEGF阻害剤のみを有する陽性対照と比較したときのCNV病変の阻害に対するANG-2結合ドメインの化合物効果を示している。EXG102-04及びEXG102-11は、CNV病変に対する最も効果的な阻害を示した(4つの幅の広い矢印)。
【0441】
(6.8.実施例8-CNVマウスモデルにおいてEXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置された目に、グレード3のCNV病変は見られない)
FFA平均スコアを、注射後29及び36日目に、AAV-GFP(陰性対照)、EXG102-02(陽性対照)、EXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置された目で測定した。血管造影図を次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。
【0442】
図12に示されているように、EXG102-04、EXG102-09、EXG102-10、又はEXG102-11で処置されたどの目にも、グレード3のCNV病変は見られないが、AAV2-GFP(陰性対照)を受けた目には、40~50%のグレード3病変が見られた。
【0443】
(6.9.実施例9-EXG102-31は、VEGF-A、Ang2、及びVEGF-Cに結合する)
HEK293T細胞から発現された導入遺伝子産物のインビトロでのVEGF-A、Ang2、又はVEGF-C結合親和性を測定した。HEK293T細胞を、pEXG102-02、pEXG102-30、又はpEXG102-31というプラスミドDNAでトランスフェクトした。発現された標的タンパク質を細胞溶解物から親和性精製した。VEGF-A、Ang2、及びVEGF-Cに対するEXG102-02、EXG102-30、及びEXG102-31の結合能を、それぞれ、ELISAにより測定した。
【0444】
図12A~12Cは、EXG102-31が、VEGF-A、Ang2、及びVEGF-Cの各々に結合することができたことを示している。驚くことに、EXG102-31のVEGF-A結合親和性は、陽性対照EXG102-02と同様である。
【0445】
(6.10.実施例10-CNV病変のスコアはCNVマウスモデルの処置群で減少した)
FFA平均スコアを、ビヒクル対照、EXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31で処置された目で測定した。フルオレセイン血管造影の前に、動物にフルオレセインナトリウム(100mg/ml、30μL/動物)の腹腔内注射を施した。FFA画像を注射から3分後に撮影した。血管造影図を次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。スコア3病変の割合及び平均スコアを計算した。
【0446】
図14は、レーザー誘導CNVマウスモデルにおけるFFA平均スコアを示している。ビヒクル処置群と比較して、全ての処置群におけるCNV病変のスコアは、29日目及び36日目の各々で有意に減少した(p≦0.001)。EXG102-31処置群におけるCNV病変のスコアは29日目にEXG102-02及びEXG102-30処置群のスコアよりも高いが、試験品で処置された群の間では36日目に有意差がなかった(p>0.05)。これは、個々のマウス間でのばらつきが大きいためである可能性が高い。特に、29日目と比較すると、EXG102-31処置群におけるCNV病変の体積の平均は36日目に有意に減少し(p≦0.05)、後期CNV病変の阻害に対するEXG102-31中のVEGF-C結合ドメインの化合物効果を示唆した。
図14は、EXG102-31が長期のCNV阻害についてEXG102-30よりも有利であることを示唆しているが、それは、CNV病変スコアが、EXG102-30のスコアと比較したとき、29日から36日まで有意に改善したためである。Cabral, T.らの文献、Ophthalmol Retina, 2018. 2(1): p. 31-37によれば、VEGF-C及びAng-2のレベルは、VEGF-Aが阻害された後に有意に増加した。EXG102-31は、VEGF-Cを含むほぼ全てのVEGFサブタイプ、及びAng-2を中和することができる。
【0447】
(6.11.実施例11-EXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31で処置された目に、グレード3のCNV病変は見られない)
グレード3 CNV病変の割合を、ビヒクル対照、EXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31で処置された目で測定した。フルオレセイン血管造影の前に、動物にフルオレセインナトリウム(100mg/ml、30μL/動物)の腹腔内注射を施した。FFA画像を注射から3分後に撮影した。血管造影図を次のように評価した:スコア0、染色なし;スコア1、わずかに染色される;スコア2、中程度に染色される;及びスコア3、強く染色される。スコア3病変の割合及び平均スコアを計算した。
【0448】
図15に示されているように、EXG102-02、EXG102-30、又はEXG102-31で処置されたどの目にも、グレード3のCNV病変は見られないが、ビヒクル対照を受けた目には、47個のCNVグレード3病変のうち、29個と21個が見られた。
【0449】
本明細書に引用される全ての特許、公開出願、及び参考文献の教示は、その全体が引用により組み込まれている。
【0450】
例となる実施態様が特別に示され、説明されているが、添付の特許請求の範囲によって包含される実施態様の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0451】
上述のことから、具体的な実施態様が説明を目的として本明細書に記載されているが、本明細書に提供されるものの趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることが理解されるであろう。上に言及された参考文献は全て、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】