IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-514074E.COLI O18バイオコンジュゲートの産生
<>
  • 特表-E.COLI  O18バイオコンジュゲートの産生 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】E.COLI O18バイオコンジュゲートの産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240321BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240321BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 39/108 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240321BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P1/04 Z
A61K47/64
A61P31/04
A61K39/108
C12N15/54
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023559726
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2022053013
(87)【国際公開番号】W WO2022208430
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166781.1
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ワールデンブルグ,エブリン,マーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ゲウルトセン,イェルーン
(72)【発明者】
【氏名】バーウト,ピーター ジャン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064AG01
4B064CA01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE08
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BC26
4B065BD16
4B065CA19
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BA21
4C085CC07
4C085CC21
4C085DD51
4C085DD59
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための宿主細胞に関する。宿主細胞は、配列番号1の野生型Wzy O-抗原ポリメラーゼと比較して、199位、377位及び395位のうちの1つ又は2つ以上におけるアミノ酸置換の特定の組み合わせを有する改変Wzy O-抗原ポリメラーゼを含むことを特徴とし、改変Wzy O-抗原ポリメラーゼは、宿主細胞によって産生されるO18バイオコンジュゲートの収率及びグリコシル化パターンを改善する。本発明は更に、宿主細胞を使用して、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する方法、追加のO抗原多糖血清型のバイオコンジュゲートを含む多価組成物を含む、これらのバイオコンジュゲートを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む担体タンパク質と、
(b)E.coli O18 rfb遺伝子座と、
(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼと、
を含む、グラム陰性細菌宿主細胞であって、
前記細胞が、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、
i)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
ii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、
iii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
iv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、又は
v)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のメチオニン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン
を含む、グラム陰性細菌宿主細胞。
【請求項2】
前記Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を含むが、前記アミノ酸配列が、
i)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
ii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、
iii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
iv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、又は
v)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のメチオニン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン
を含む場合を除く、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニンを含む、請求項1又は2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はベクターが、前記宿主細胞のゲノムに組み込まれている、請求項1~3のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記宿主細胞が、Escherichia coli宿主細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記宿主細胞が、E.coli K-12株、好ましくはW3110株である、請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
a)前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
b)前記担体タンパク質が配列番号3を含み、
c)前記E.coli O18 rfb遺伝子座が、血清型O18Aを有するE.coli株のrfb遺伝子座である、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞が、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有し、請求項1~3のいずれか一項に記載の配列を有するポリペプチドをコードするWzy O-抗原ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を有するE.coli O18 rfb遺伝子座を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項10】
担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養して前記バイオコンジュゲートを産生することを含む、方法。
【請求項11】
前記バイオコンジュゲートの回収を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回収された前記バイオコンジュゲートを医薬組成物に製剤化することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の1つ又は2つ以上の追加のバイオコンジュゲートを前記医薬組成物に添加して、多価バイオコンジュゲート組成物を得ることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は2つ以上の追加のバイオコンジュゲートが、E.coli血清型O1、O2、O4、O6、O8、O15、O16、O25及びO75からなる群から選択される少なくとも1つのO-抗原多糖を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多価バイオコンジュゲート組成物が、
(i)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18A抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(ii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(iii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(iv)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coliグルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(v)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(vi)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(vii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、
(viii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、及び
(ix)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O75抗原多糖のバイオコンジュゲート
を含み、
好ましくは、各バイオコンジュゲート中の前記担体タンパク質が配列番号3を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多価バイオコンジュゲート組成物が、
(x)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O8抗原多糖のバイオコンジュゲートを更に含み、
好ましくは、前記担体タンパク質が配列番号3を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療微生物学、免疫学及びワクチンの分野に関する。特に、本発明は、増加した収率及び増加したグリコシル化度を有するE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための改善されたWzy O-抗原ポリメラーゼを含む宿主細胞に関する。本発明は更に、本発明のバイオコンジュゲートを含む組成物、及びE.coli感染、特に侵襲性腸管外病原性E.coli(extra-intestinal pathogenic E. coli、ExPEC)疾患による感染の予防又は治療のためのE.coliに対する免疫応答を誘導するためのそのような組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腸管外病原性Escherichia coli(ExPEC)株は、共生E.coli株と並んで、通常、ヒト胃腸管の無害な居住者である。ExPEC分離株は、血清型によって共生分離株から容易に区別することができないが、多くのクローン系統は、O-抗原、莢膜及び鞭毛抗原血清型によって定義されるように、ExPECによって支配される(O:K:Hと略される、例えばO25:K1:H4)。共生E.coliとは対照的に、ExPEC株は、それらが胃腸管にコロニーを形成することを可能にし、また広範囲の腸管外感染を引き起こすことを可能にする広範な病原性因子を発現し、これは、入院による著しい医療費負担及び死亡に関連する。新生児、高齢者、及び免疫無防備状態の患者は、侵襲性ExPEC疾患(invasive ExPEC disease、IED)を含むExPEC感染に特に感受性である。
【0003】
O-抗原は、E.coliを含むグラム陰性細菌における細胞壁リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)の免疫優性成分を含む。現在、180を超える血清学的に特有なE.coli O-抗原が同定されており、ExPEC分離株の大部分は20未満のO-抗原血清型内に分類されている。完全長E.coli O-抗原は、典型的には、高度に保存されたLPSコア構造に結合した約10~25個の反復糖単位からなり、各成分は、それぞれ主にrfb及びrfa遺伝子クラスターでコードされる酵素によって別々に合成される。O-抗原の重合後、O-抗原多糖骨格は、典型的には、アセチル残基又はグルコース残基の付加を介して改変され得る。これらの改変は、共通の多糖骨格を共有するが、側鎖が異なる、抗原的に異なる血清型を作製することによって、血清型多様性を効果的に増加させる。O-抗原改変酵素をコードする遺伝子は、典型的に、染色体上のrfbクラスターの外側に存在し、そしていくつかの場合において、これらの遺伝子は、溶原性バクテリオファージ内に見出される。
【0004】
ExPEC感染を予防するためのワクチンの開発への努力は、O-抗原多糖コンジュゲートに焦点を当ててきた。12価のO-抗原コンジュゲートワクチンは、O-抗原多糖の抽出及び精製並びに解毒されたPseudomonas aeruginosa外毒素Aへの化学的コンジュゲーションを介して合成され、第1相臨床試験において安全性及び免疫原性について試験された(Cross et al.,J.Infect.Dis.(1994)v.170,pp.834-40)。この候補ワクチンは、臨床使用に認可されることはなかった。E.coliにおけるバイオコンジュゲーションシステムが最近開発されており、このシステムでは、抗原多糖及び担体タンパク質の両方がインビボで合成され、続いて、E.coliにおいて発現されるCampylobacter jejuni酵素であるオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの活性を介してインビボでコンジュゲートされる(Wacker et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(2006)v.103,pp.7088-93)。このN結合型タンパク質グリコシル化系は、多様な多糖を担体タンパク質に移入させることができ、それが発現される細菌からバイオコンジュゲートを精製する方法を可能にする。バイオコンジュゲーションは、E.coli 4価O-抗原候補ワクチンのためのコンジュゲート多糖を産生するための使用に成功している(Poolman and Wacker,J.Infect.Dis.(2016)v.213(1),pp.6-13、国際公開第2015/124769号、国際公開第2017/035181号)。
【0005】
10種のバイオコンジュゲートを含む組成物(O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25B及びO75、この組成物はExPEC10Vと称される)が記載されており、臨床試験中である(例えば、国際公開第2020/191082(A1)号)。
【0006】
O18A抗原多糖を有するバイオコンジュゲートについての産物収率は、ExPEC10Vについて調製された他の9つのバイオコンジュゲートと比較して最も低かったことが観察された(国際公開第2020/191082(A1)号)。更に、そのように産生されたO18Aバイオコンジュゲートは、「sEPA」と呼ばれる限られた数のO18A抗原多糖反復単位から構成される比較的高い量のグリカンを含有するようであり(すなわち、わずか約1~3反復単位を有する多糖鎖を有するEPA担体タンパク質であり、これは、O18Aバイオコンジュゲート原薬の産生プロセスにおける周辺質画分中のO18Aバイオコンジュゲートの20%超に対応する)、このsEPA産物は、O18A抗原多糖が少なくとも5反復単位から構成されるグリカンを主に含む好ましいバイオコンジュゲートから容易に分離されない。O18血清群に属するExPEC分離株は、米国及びEU血液分離株の現代のサーベイランス研究において一般的に同定されており、したがって、O18コンジュゲートは、ExPECワクチンの関連成分であると考えられる。したがって、O18抗原多糖のコンジュゲートの収率を改善することが所望されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、産生中にO18抗原多糖を含むバイオコンジュゲートの産物収率を増加させるための材料及び方法を提供すること、並びに/あるいは以前に記載された産生プロセスを使用して得られたO18バイオコンジュゲートと比較してsEPAの相対量が減少したO18バイオコンジュゲートを得るための材料及び方法を生成することである。本発明の別の目的は、以前に記載された材料及び方法を使用して得られたO18バイオコンジュゲートと比較して、グリコシル化の程度が増加したE.coli O18A抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための材料及び方法を提供することである。
【0008】
第1の態様において、本発明は、(a)少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む担体タンパク質、(b)E.coli O18 rfb遺伝子座、及び(c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含むグラム陰性細菌宿主細胞に関し、細胞は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、i)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン(Ile、I)、配列番号1の377位に対応する位置のリジン(Lys、K)、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン(Ala、A)、ii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン(Thr、T)、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン(Val、V)、iii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、iv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、又はv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のメチオニン(Met,M)、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、を含む、オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む。
【0009】
一実施形態では、宿主細胞において、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むが、このアミノ酸配列が、i)199位にIle、377位にLys、及び395位にAla、ii)199位にThr、377位にLys及び395位にVal、iii)199位にThr、377位にLys及び395位にAla、iv)199位にIle、377位にLys及び395位にVal、又はv)199位にIle、377位にMet及び395位にAlaを含むことを除き、ここで、全ての位置は配列番号1における位置に対応する。
【0010】
一実施形態では、宿主細胞において、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドは、199位にIle、377位にLys、及び395位にAlaを含み、これらの位置は、配列番号1における位置に対応する。
【0011】
一実施形態において、宿主細胞は、宿主細胞のゲノムに組み込まれたWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はベクターを含む。
【0012】
一実施形態では、宿主細胞はEscherichia coli宿主細胞である。好ましい実施形態において、宿主細胞はE.coli K-12株であり、より好ましくはE.coli K-12株W3110である。
【0013】
一実施形態では、宿主細胞において、a)オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、b)担体タンパク質が、配列番号3を含み、c)E.coli O18rfb遺伝子座が、血清型O18Aを有するE.coli株のrfb遺伝子座である、のうちの少なくとも1つである。好ましくは、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一実施形態において、宿主細胞は、本明細書において上で定義されたWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするWzy O-抗原ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を有するE.coli O18 rfb遺伝子座を含む。
【0015】
更なる態様において、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための方法であって、(a)本明細書において上で定義された本発明の宿主細胞を培養して、バイオコンジュゲートを産生することを含む方法に関する。好ましくは、本方法は、バイオコンジュゲートの回収を更に含む。
【0016】
一実施形態では、方法は、回収されたバイオコンジュゲートを医薬組成物に製剤化することを更に含む。
【0017】
一実施形態では、方法は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の1つ又は2つ以上の追加のバイオコンジュゲートを医薬組成物に添加して、多価バイオコンジュゲート組成物を得ることを更に含む。好ましくは、1つ又は2つ以上の追加のバイオコンジュゲートは、E.coli血清型O1、O2、O4、O6、O8、O15、O16、O25及びO75からなる群から選択される少なくとも1つのO-抗原多糖を含む。好ましい実施形態では、本方法で産生される多価バイオコンジュゲート組成物は、(i)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(ii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iv)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coliグルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート、(v)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vi)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、(viii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、及び(ix)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含み、好ましくは各バイオコンジュゲート中の担体タンパク質は、配列番号3を含む。より好ましい実施形態では、本方法で産生される多価バイオコンジュゲート組成物は、(x)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O8抗原多糖のバイオコンジュゲートを更に含み、好ましくは、担体タンパク質は配列番号3を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】配列番号1(レーン1及び3)又はO18A多糖バイオコンジュゲート発現のために誘導されたアミノ酸置換199I、377K、395A(レーン2及び4)を有するWzyバリアントを含有するO18Aバイオコンジュゲートについて、E.coli産生株W3110の振盪フラスコ培養物からの周辺質抽出物をロードしたクーマシー染色SDS-PAGEの図である。レーン1及び2にロードされた試料において、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素PglBはサイズ縮小発現プラスミドから発現されたが、レーン3及び4において、PglB発現プラスミドのベクター骨格は、非コードDNA及び産物発現に最適であると思われるlacリプレッサー遺伝子lacIを含む更なる4500bpのDNA配列を含んでいた。O18A多糖バイオコンジュゲート物質を示すバンドを矢印で示し、モノグリコシル化EPA(M)、ジグリコシル化EPA(D)及びトリグリコシル化EPA(T)のおよそのサイズを示す。
【発明の説明】
【0019】
別の定義がなされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で引用されるある特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0020】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上必要としない限り、「含む(comprise)」という用語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、指定の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意のその他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外するものではないことを意味すると、理解されよう。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語に置き換えることができ、又は場合によって本明細書で使用される場合、「有する(having)」という用語に置き換えることもできる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲の要素において指定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程は除外しない。本発明の態様又は実施形態に関連して本明細書で使用される場合、本開示の範囲を変化させるために、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する」という上記用語のいずれかを、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に置き換えることができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしの第1の要素の適用性を指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0023】
「約」又は「およそ」という語は、数値に関連して使用される場合、その値が、所与の値±その値の20%、好ましくは±その値の10%、より好ましくは±その値の5%であり得ることを意味する。
【0024】
配列同一性は、本明細書において、配列を比較することによって決定される、2つ又はそれ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)配列間又は2つ又はそれ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として定義される。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存的アミノ酸置換物を、第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」及び「類似性」は、公知の方法によって容易に計算することができる。
【0025】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて、グローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つのペプチド又は2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。同様の長さの配列は、好ましくは、全長にわたって配列を最適に整列するグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用してアライメントされ、一方で、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用して整列される。次いで、配列は、それらが(例えば、デフォルトパラメーターを使用してプログラムGAP又はBESTFITによって最適に整列される場合に)少なくともある特定の最小パーセンテージの配列同一性(以下に定義される)を共有する場合、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と称され得る。最も好ましくは、配列アラインメントは、デフォルト設定を使用してClustalW(1.83)配列アラインメントにおいて行われる。
【0026】
あるいは、類似性又は同一性パーセンテージは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公開データベースを検索することによって決定されてもよい。したがって、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、更に、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、公開データベースに対する検索を実施するための「問い合わせ配列」として使用され得る。そのような検索は、Altschul,et al.,(1990,J.Mol.Biol,215:403-10)のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いてBLASTヌクレオチド検索を実行して、本発明のwzy核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いてBLASTタンパク質検索を実施して、本発明のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、ギャップ付きBLASTを、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されるように利用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメーターを使用してもよい。National Center for Biotechnology Informationのホームページ、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照されたい。
【0027】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。
【発明の詳細な説明】
【0028】
本出願の発明者らは、驚くべきことに、1つ又は2つ以上の特定の位置で参照配列と異なるWzy O-抗原ポリメラーゼの使用が、O18抗原多糖バイオコンジュゲートの産生収率の有意な改善をもたらすことを見出した。更に、そのようなポリメラーゼの使用は、驚くべきことに、増加したグリカン対タンパク質比及び/又はグリコシル化部位の増加した占有率を有するO18抗原多糖コンジュゲートの産生を容易にすることが見出された。
【0029】
したがって、第1の態様において、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する際に使用するための宿主細胞を提供する。
【0030】
一実施形態では、本発明の宿主細胞は、少なくとも以下を含む:(a)少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む担体タンパク質、(b)E.coli O18 rfb遺伝子座;c)オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、及び(d)Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有する本発明のポリペプチド。
【0031】
宿主細胞において、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有する本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、更にO-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドがO-抗原ポリメラーゼ活性を有するか否かは、好適な宿主細胞においてWzy O-抗原ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を発現させ、当業者に公知の方法によって、又は例えば、全内容が本明細書に組み込まれている、Woodward et al.(2010,Nat Chem Biol.2010 Jun;6(6):418-423)に記載されるように、産生された重合O-抗原の量を決定することによってアッセイすることができる。
【0032】
一実施形態では、本発明の宿主細胞は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列は、
i)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
ii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、
iii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、
iv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、又は、
v)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のメチオニン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、を含む。
【0033】
それぞれ配列番号1のアミノ酸位置199、377又は395のうちの1つに対応するアミノ酸位置は、本明細書において、好ましくはデフォルト設定を使用して、配列番号1と配列番号1以外の配列との配列アラインメントにおいて、好ましくは配列番号1とのClustalW(1.83)配列アラインメントにおいて、それぞれ配列番号1の位置199、377又は395のうちの1つと整列する配列番号1以外のアミノ酸配列中の位置を指すと理解される。当業者は、本明細書で定義されるアミノ酸配列アラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号1以外のWzy O-抗原ポリメラーゼアミノ酸配列中の対応するアミノ酸位置を同定する方法を知るであろう。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むが、アミノ酸配列が、i)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、ii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、iii)配列番号1の199位に対応する位置のトレオニン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニン、iv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のバリン、又はv)配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のメチオニン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニンを含むことを除く。したがって、この実施形態では、本発明の宿主細胞は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むが、アミノ酸配列が、i)配列番号1の199位のイソロイシン、配列番号1の377位のリジン、及び配列番号1の395位のアラニン、ii)配列番号1の377位のリジン、iii)配列番号1の377位のリジン及び配列番号1の395位のアラニン、iv)配列番号1の199位のイソロイシン及び配列番号1の377位のリジン、又は、v)配列番号1の199位のイソロイシン及び配列番号1の395位のアラニンを含むことを除く。
【0035】
特に好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ポリペプチドは配列番号1の199位に対応する位置のイソロイシン、配列番号1の377位に対応する位置のリジン、及び配列番号1の395位に対応する位置のアラニンを含む。
【0036】
当業者に理解されるように、一実施形態において、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの発現のために、本発明の宿主細胞は、好ましくは、本明細書において上で定義された本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、それに作動可能に連結されたプロモーターによって先行され得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは、Wzy O-抗原ポリメラーゼコード配列に対して内因性である。ある特定の好ましい実施形態において、プロモーターは、腸内細菌科の細菌、好ましくはEscherichia属の細菌、より好ましくはE.coli種の細菌においてWzy O-抗原ポリメラーゼの発現を駆動する内因性プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは、Wzyコード配列に対して異種であり、例えば、組換え発現系における使用について当業者に公知の強力なプロモーターが使用される。例えば、プロモーターは、ara、phoA、tac、tet、trc、trp、PBAD、λPL、T5又はT7プロモーターなどの誘導性又は構成的原核生物プロモーターである。
【0037】
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明による宿主細胞の構築において使用することができる単離されたポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、組換え、合成、又は人工ポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチドは、任意の形態の核酸、例えば、DNA又はRNA、好ましくは、DNAであり得る。ポリヌクレオチドは、天然に存在するWzyコードポリヌクレオチド、例えば、配列番号2の天然に存在するWzyコードポリヌクレオチド中に存在しない1つ又は2つ以上のヌクレオチドを含み得る。具体的には、本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、配列番号1における199位、377位及び395位に対応するコドンのうちの1つ又は2つ以上において、配列番号2などの天然に存在するWzyコードポリヌクレオチドと少なくとも異なる。更に、本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、配列番号1における位置199、377及び395のうちの少なくとも1つに対応する位置以外のコドンにおいて、天然に存在するWzyコードポリヌクレオチドと異なり得る。ポリヌクレオチドは、その5’末端及び/又は3’末端に天然に存在するWzyコードポリヌクレオチド中に存在しない1つ又は2つ以上のヌクレオチドを有し得る。当業者は、日常的な技術を使用して、記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行って、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映することができる。したがって別途記載のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であるヌクレオチド配列及び同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列全てを含む。
【0038】
当業者によって更に理解されるように、一実施形態では、本明細書において上で定義された本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現構築物又はベクターに含まれ得る。好ましくは、発現構築物において、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば発現カセットにおいて、本発明の宿主細胞におけるポリペプチドの発現のための発現制御配列に作動可能に連結されている。そのような発現制御配列は、上で特定したプロモーターを含むことができ、Shine-Dalgarno配列、転写終結配列などを更に含むことができる。一実施形態では、発現構築物はベクターに含まれる。一実施形態では、ベクターは、エピソーマルベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクター、好ましくはプラスミドである。別の実施形態において、ポリヌクレオチド、ベクター、又は発現構築物は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。ある特定の実施形態において、ベクター又は発現構築物は、好ましくはDNAの形態である。ある特定の実施形態において、ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含み、これは、ポリヌクレオチドがプロモーターの制御下にあることを意味する。ある特定の実施形態では、本明細書で定義される本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム中のrfb遺伝子座におけるその天然の位置に組み込まれ、例えば、分子生物学の当業者に公知である相同組換えに基づく遺伝子改変技術を使用して、部位特異的突然変異誘発によって作製される。
【0039】
担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する際に使用するための本発明の宿主細胞は、細菌宿主細胞である。一実施形態では、宿主細胞はグラム陰性細菌宿主細胞である。E.coli O18抗原を含むバイオコンジュゲートの産生における使用に適した細菌又は原核宿主細胞としては、Escherichia種、Shigella種、Klebsiella種、Xhantomonas種、Salmonella種、Yersinia種、Lactococcus種、Lactobacillus種、Pseudomonas種、Corynebacterium種、Streptomyces種、Streptococcus種、Staphylococcus種、Bacillus種、及びClostridium種が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、Escherichia coli宿主細胞、より好ましくはW3110株などのE.coli K-12株であり、後者が特に好ましい。
【0040】
一実施形態では、宿主細胞は、天然に存在しない宿主細胞である。したがって、宿主細胞は、本明細書に記載されるWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを発現するように改変されており、好ましくは、i)本明細書に定義されるO18 rfb遺伝子座、ii)本明細書に定義される少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む担体タンパク質(の発現のための核酸構築物)、及びiii)本明細書に定義されるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(の発現のための核酸構築物)のうちの1つ又は2つ以上又は全てを含むように更に改変されている、天然に存在する単離物、例えば臨床単離物に由来し得る。
【0041】
担体タンパク質にコンジュゲートしたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する際に使用するための本発明の宿主細胞は、担体タンパク質上のN-グリコシル化部位へのオリゴ糖の移入のためのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(oligosaccharyl transferase、OST)を更に含むことが好ましい。したがって、好ましくは、本明細書において提供される宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)をコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書で使用されるオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、脂質結合オリゴ糖を、グリコシル化コンセンサスモチーフを含む新生ポリペプチド鎖の残基、例えば、N-グリコシル化コンセンサスモチーフを含む新生ポリペプチド鎖のアスパラギン(Asn、N)残基に移入させる酵素であり、このようなN-グリコシル化コンセンサスモチーフの例は、配列番号4又はAsn-X-Ser(Thr)である。本出願を通して、N-グリコシル化モチーフAsn-X-Ser(Thr)について、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり得ることが理解されるべきである。好ましくは、そのようなオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、本明細書に記載の担体タンパク質のポリペプチド鎖中の配列番号4のアスパラギン残基にオリゴ糖を移入させる。オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸は、宿主細胞に対してネイティブであり得るか、又は遺伝的アプローチを使用して宿主細胞に導入され得る。好ましい実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、宿主細胞に対して異種である。E.coliは、天然にはオリゴサッカリルトランスフェラーゼを含まず、したがって、E.coliがバイオコンジュゲートの産生のための宿主細胞として使用される場合、異種オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、例えば遺伝子工学による導入時に、そのような宿主細胞に含まれる。オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、本開示を考慮して当技術分野で公知の任意の供給源に由来し得る。
【0042】
ある特定の好ましい実施形態において、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、Campylobacter由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである。例えば、一実施形態において、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、Campylobacter jejuni由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである(すなわち、PglB;例えば、Wacker et al.,2002,Science 298:1790-1793を参照されたい;例えば、NCBI Gene ID:3231775、UniProt受託番号O86154も参照されたい)。別の実施形態において、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、Campylobacter lari由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである(例えば、NCBI Gene ID:7410986を参照されたい)。
【0043】
具体的な実施形態において、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、国際特許出願公開の国際公開第2016/107818号及び国際公開第2016/107819号に記載されているものなどの、天然(野生型)タンパク質又はその任意のバリアントを含むCampylobacter jejuni由来のPglBである。PglBは、脂質結合オリゴ糖をコンセンサス配列番号4及びAsn-X-Ser(Thr)中のアスパラギン残基に移入させることができる。特定の実施形態では、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、本明細書で定義されるオリゴサッカリルトランスフェラーゼを有するポリペプチドであり、このポリペプチドは、配列番号6と少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、配列番号6と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、野生型PglB中の1つ又は2つ以上の内因性グリコシル化コンセンサス配列が、PglB自己グリコシル化を回避するように変異されており、例えば変異N534Qを含む配列番号6である。本明細書において提供される宿主細胞における使用に適したバリアントPglBの例としては、変異N311Vを含む配列番号6のPglBが挙げられる。
【0044】
担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートの産生において使用するための本発明の宿主細胞は、更に好ましくは、グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)を含む少なくとも1つのグリコシル化部位、より好ましくは配列番号4を有する少なくとも1つのグリコシル化部位を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、P.aeruginosa(EPA)、E.coliフラジェリン(FliC)、CRM197、マルトース結合タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、S.aureusの解毒溶血素、クランピング因子A、クランピング因子B、E.coli熱不安定性エンテロトキシン、E.coli熱不安定性エンテロトキシンの解毒バリアント、コレラ毒素Bサブユニット(Cholera toxin B subunit、CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の解毒バリアント、E.coli Satタンパク質、E.coli Satタンパク質のパッセンジャードメイン、Streptococcus pneumoniaeニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン(Keyhole limpet hemocyanin、KLH)、P.aeruginosa PcrV、Neisseria meningitidisの外膜タンパク質(OMPC)、及びHaemophilus influenzae由来のプロテインDからなる群から選択される。
【0046】
ある特定の実施形態では、担体タンパク質は、Pseudomonas aeruginosaの無毒化外毒素A(EPA)、又はCRM197であり、好ましくは、担体タンパク質はEPAである。EPAについては、様々な解毒されたタンパク質変異体が文献に記載されており、担体タンパク質として使用することができる。ある特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートにおいて使用されるEPA担体タンパク質は、タンパク質がより毒性が低く、及び/又はグリコシル化に対してより感受性であるような様式で改変される。例えば、解毒は、Lukac et al.,1988,Infect Immun,56:3095-3098、及びHo et al.,2006,Hum Vaccin,2:89-98に従って、触媒的に必須の残基L552V及びΔE553を変異及び欠失させることによって達成することができる。特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートの生成において使用される担体タンパク質は、より低い濃度のタンパク質が、例えば、免疫原性組成物において、そのバイオコンジュゲート形態で投与されることを可能にする様式で、担体タンパク質中のグリコシル化部位の数が最適化されるように改変される。特定の実施形態では、宿主細胞は、配列番号4を有するグリコシル化コンセンサス配列を含む1~10個、好ましくは2~4つ、好ましくは4つのグリコシル化部位を含むEPAをコードする。一実施形態では、担体タンパク質は、配列番号3と少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)を含む、より好ましくは配列番号4を有する1~10個、好ましくは2~4つ、好ましくは4つのグリコシル化部位を含む。好ましい実施形態では、担体タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEPAを含む。
【0047】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明による宿主細胞は、配列番号6を含むオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列及び配列番号3を含む担体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0048】
担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する際に使用するための本発明の宿主細胞は、更に好ましくは、O18抗原多糖構造の合成のためのE.coli O18 rfb遺伝子座を含む。
【0049】
E.coliにおいて、O-抗原生合成に関与する遺伝子産物は、rfb遺伝子座によってコードされる。したがって、本明細書において提供される宿主細胞は、好ましくは、E.coli O18 rfb遺伝子座、好ましくは血清型O18Aを有するE.coli株のrfb遺伝子座のヌクレオチド配列を更に含む。本明細書で使用される場合、「O18 rfb遺伝子座」及び「O18 rfb遺伝子クラスター」は、O18抗原多糖構造を合成することができる酵素機構を一緒にコードする遺伝子のクラスターを含むグラム陰性細菌ゲノム中の遺伝子座を指す。rfb遺伝子座という用語は、好ましくは、Escherichia属、特にE.coli由来のゲノム遺伝子座を指す。
【0050】
ある特定の実施形態では、O18rfb遺伝子座は、宿主細胞に対して異種であり、例えば、宿主細胞の前駆細胞に導入され、好ましくはそのゲノムに組み込まれる。好ましくは、元のrfb遺伝子クラスターは、それが前駆細胞中に存在する場合、宿主細胞中でO18rfb遺伝子クラスターによって置換されて、O18のバイオコンジュゲートの産生を可能にする。
【0051】
ある特定の実施形態では、E.coli O18抗原多糖のrfb遺伝子クラスターは、E.coli O18A抗原多糖のrfb遺伝子クラスターである。したがって、好ましくは、E.coli O18A抗原多糖のrfb遺伝子クラスターは、配列番号5と少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%同一であるヌクレオチド配列を含み、このヌクレオチド配列は、E.coli O18A抗原多糖を作製する酵素をコードし、好ましくは、Wzy O-抗原ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書において上で定義した本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。ある特定の実施形態において、rfb遺伝子クラスターは、本明細書において上で定義されるような本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であるWzy O-抗原ポリメラーゼをコードする配列を除いて、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。E.coli O18A抗原多糖の反復単位の構造を表1にエントリー(O18A)として示す。
【0052】
したがって、ある特定の好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、E.coli rfb遺伝子クラスターを含み、Wzy O-抗原ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書において上で定義された本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。したがって、ある特定の好ましい実施形態では、内因性Wzy O-抗原ポリメラーゼコード配列は、本明細書において上で定義された本発明のWzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、本発明のWzyポリメラーゼによって置換されている。内因性Wzyコード配列の除去及び本発明のWzyポリメラーゼをコードする配列での置換は、当技術分野で一般に知られている遺伝子編集技術を使用することによって達成することができる。
【0053】
一実施形態では、waaL遺伝子は、本発明の宿主細胞のゲノムから欠失しているか、又はそのゲノムにおいて機能的に不活性化されている。「waaL」及び「waaL遺伝子」という用語は、周辺質に位置する活性部位を有する膜結合酵素をコードするO-抗原リガーゼ遺伝子を指す。waaL遺伝子がコードする酵素は、ウンデカプレニルリン酸(undecaprenylphosphate、UPP)結合O抗原をリピドAコアに移入させ、リポ多糖を形成する。内因性waaL遺伝子(例えば、ΔwaaL株)の欠失又は破壊は、リピドAへのO-抗原の移入を破壊し、代わりに、本発明の宿主細胞において発現される担体タンパク質などの別の利用可能な生体分子へのO-抗原の移入を増強することができる。
【0054】
本発明の宿主細胞の一実施形態において、O16 O-抗原グルコシル化に関与するE.coli gtrABS遺伝子は、宿主細胞ゲノムから欠失されるか、又は宿主細胞ゲノムにおいて機能的に不活性化される。好ましい実施形態において、E.coli gtrABS遺伝子は、E.coli W3110宿主細胞のゲノムから欠失されるか、又はそのゲノムにおいて機能的に不活性化される。異なる血清型におけるgtrA及びgtrB遺伝子は、高度に相同であり、交換可能であるが、gtrS遺伝子は、血清型特異的O-抗原グリコシルトランスフェラーゼをコードする。E.coli W3110において、GtrSは、グルコース(Glc)残基を、E.coli O16 O-抗原のa-L-Rha-(1→3)-D-G1cNAcモチーフのGlcNAc糖に移入し得る。
【0055】
当業者によって理解されるように、本発明の宿主細胞に含まれる本発明のポリペプチド、例えば担体タンパク質、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチド及びrfb遺伝子クラスターの他の酵素は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の形態で宿主細胞に好都合に提供される。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、好ましくは核酸構築物、具体的には本発明のポリペプチドの発現のための1つ又は2つ以上の発現カセットを含む発現構築物であり、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、本発明の宿主細胞におけるポリペプチドの発現のための発現制御配列に作動可能に連結されている。好適な発現制御配列は上で言及されており、通常、少なくともプロモーターを含む。プロモーターは、構成的プロモーターであってもよく、又はその活性が調節され得る、例えば、温度変化若しくは細胞内のある特定の化学物質若しくはタンパク質の存在などのある特定の条件下において抑制若しくは誘導され得るプロモーターであってもよく、これらは全て、当該技術分野において周知である。核酸構築物は、染色体外(例えば、プラスミド又は他のベクター)であり得るか、又は核酸構築物は、本発明の宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。本発明の宿主細胞におけるポリペプチドの発現のための核酸構築物の構築及び/又は合成のための分子生物学的方法は、一般に当技術分野において周知である。
【0056】
任意選択で、O-抗原の鎖長は、天然のWzz O-抗原鎖長調節機構を操作することによって、例えば、Wzz O-抗原鎖長調節因子を過剰発現又は補足することによって、例えば、E.coli wzzB遺伝子を、Salmonella及びShigella内の種、又はP.aeruginosa、例えばSalmonella enterica対応物、fepE又は他のwzzホモログ(例えば、米国特許出願公開第2018/0099038号、国際公開第2020/039359号を参照されたい)由来のその対応物のうちの1つで置き換えることによって操作することができ、それによって例えば、Wzyタンパク質の更なる過剰発現の有無にかかわらず、O-抗原の反復単位の数を増加させることができる。wzz様遺伝子の効果は、これらの種について文献に記載されている。しかしながら、これはいずれも、良好な免疫原性を有するバイオコンジュゲートを得るために必要とされず、好ましい実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートは、Wzz鎖長調節機構の操作なしに調製される。
【0057】
一実施形態では、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドと、本明細書において上で定義された示された位置における特定のアミノ酸とを含む本発明の宿主細胞を用いて産生されるE.coli O18抗原バイオコンジュゲートの収率は、配列番号1のアミノ酸配列を有する参照Wzy O-抗原ポリメラーゼを発現する他の点では同一の宿主細胞を用いて同じ条件を使用した場合に産生される収率の少なくとも105%、110%、120%、150%又は200%である。
【0058】
一実施形態では、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性を有するポリペプチドと、本明細書において上で定義された示された位置の特定のアミノ酸とを含む本発明の宿主細胞を用いて産生されたE.coli O18抗原バイオコンジュゲートのグリコシル化部位の占有率は、配列番号1のアミノ酸配列を有する参照Wzy O-抗原ポリメラーゼを発現する他の点では同一の宿主細胞を用いて同じ条件を使用した場合に産生されたバイオコンジュゲートのグリコシル化部位の占有率よりも改善される。したがって、一実施形態では、本発明の宿主細胞を用いて産生され、担体タンパク質が4つのグリコシル化部位を含むE.coli O18抗原バイオコンジュゲートを含む組成物において、バイオコンジュゲート分子の少なくとも50、55、60、65、又は70%が、ジ-、トリ-、又はテトラ-グリコシル化されている、すなわち、占有されているグリコシル化部位のうちの2~4つを有する。好ましくは、この実施形態において、担体タンパク質は、配列番号3に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有し、4つのグリコシル化部位を含み、グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)を含み、より好ましくは配列番号4を有するアミノ酸配列を含む。この実施形態において最も好ましくは、担体タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEPAを含む。ある特定の実施形態において、このような組成物は、O18バイオコンジュゲートを産生する宿主細胞の周辺質画分である。好ましくは、そのような組成物は、O18抗原(「sEPA」)の約1~3反復単位の平均数を有するバイオコンジュゲートを20%、15%、10%以下含む。
【0059】
更なる態様において、本発明は更に、本発明の宿主細胞を使用して、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生する方法に関する。したがって、一実施形態は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを産生するための方法に関し、好ましくは、方法は、a)本発明の宿主細胞を培養してバイオコンジュゲートを産生する工程を少なくとも含む。一実施形態では、工程a)において、本発明の宿主細胞は、バイオコンジュゲートの産生をもたらす条件下で培養される。ある特定の実施形態において、方法は、O18Aバイオコンジュゲートの産生に関する。本発明の宿主細胞は、E.coli O18抗原多糖に共有結合した担体タンパク質を含むバイオコンジュゲートの発現に適した条件下で培養され、そのような条件は当業者に公知であり、例えば、国際公開第2015/124769号又は国際公開第2020/191082号に以前に記載されているような方法を使用する。
【0060】
一実施形態において、O18バイオコンジュゲートを産生するための方法は、b)バイオコンジュゲートを回収する工程を更に含む。O18バイオコンジュゲートは本開示を考慮して当技術分野で公知の任意の方法を使用して、組換え宿主細胞又は培養培地から単離、分離、及び/又は精製することができる。例えば、O18バイオコンジュゲートは、タンパク質の精製のための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アニオン交換、親和性及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製することができる。例えば、Saraswat et al.,2013,Biomed.Res.Int.,(p.1-18)を参照されたく、国際公開第2009/104074号に記載されている方法も参照されたい。更に、バイオコンジュゲートは、精製を容易にするために異種ポリペプチド配列に融合され得る。バイオコンジュゲートを精製し、特徴付ける方法は、例えば、上記のIhssen et al.,2010、及び国際公開第2006/119987号、国際公開第2009/104074号、特に国際公開第2015/124769号及び国際公開第2017/035181号、並びに国際公開第2020/191082(A1)号に記載されており、これらの各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
一実施形態において、O18バイオコンジュゲートを産生するための方法は、c)回収されたバイオコンジュゲートを医薬組成物に製剤化する工程を更に含む。バイオコンジュゲートの医薬組成物への製剤化は、通常、本発明のバイオコンジュゲートと、本明細書において以下により詳細に記載される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物を調製することを含む。一実施形態において、O18バイオコンジュゲートを産生するための方法は、バイオコンジュゲートを含む医薬組成物へのアジュバントの添加を更に含む。医薬組成物への組み込みに適したアジュバントは、本明細書において以下により詳細に記載される。
【0062】
一実施形態では、O18バイオコンジュゲートを産生するための方法は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の1つ又は2つ以上の追加のコンジュゲート又はバイオコンジュゲートを医薬組成物に添加して、多価組成物、好ましくは多価バイオコンジュゲート組成物を得ることを更に含む。したがって、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の1つ又は2つ以上の追加のコンジュゲートは、好ましくは、O18以外、又はより好ましくはO18A以外の血清型のE.coli O-抗原多糖のバイオコンジュゲートである。好ましい実施形態において、1つ又は2つ以上の更なるコンジュゲート又はバイオコンジュゲートは、E.coli血清型O1、O2、O4、O6、O8、O15、O16、O25及びO75からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又は9つ全てのO-抗原多糖を含む。E.coli O-抗原多糖血清型の詳細な説明は、本明細書において以下に提供される(表1も参照されたい)。そのような追加のコンジュゲート又はバイオコンジュゲートは、以前に記載されているように、例えば、国際公開第2020/191082(A1)号に記載されているように得ることができる。
【0063】
したがって、好ましい一実施形態では、O18バイオコンジュゲートを産生するための方法は、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の追加のバイオコンジュゲートを医薬組成物に添加して多価組成物を得ることを更に含み、多価バイオコンジュゲート組成物は、(i)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(ii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O1A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O2抗原多糖のバイオコンジュゲート、(iv)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coliグルコシル化O4抗原多糖のバイオコンジュゲート、(v)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O6A抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vi)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O15抗原多糖のバイオコンジュゲート、(vii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O16抗原多糖のバイオコンジュゲート、(viii)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O25B抗原多糖のバイオコンジュゲート、及び(ix)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O75抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む。一実施形態では、多価バイオコンジュゲート組成物は、(x)担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O8抗原多糖のバイオコンジュゲートを更に含む。好ましくは、これらの実施形態において、各バイオコンジュゲート(i)~(ix)中の担体タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0064】
別の態様では、本発明は、Wzy O-抗原ポリメラーゼ活性及び本明細書において上に定義した表示の位置に特定のアミノ酸を有する(すなわち、(i)I199、K377及びA395、又は(ii)T199、K377、及びV395、又は(iii)T199、K377、及びA395、又は(iv)I199、K377、及びV395、又は(v)I199、M377、及びA395を有し、いずれの場合も、それらの位置は配列番号1の位置に対応する)、E.coli O18抗原バイオコンジュゲートのグリコシル化部位の占有率を改善するためのポリペプチドを含む本発明の宿主細胞の使用に関する。E.coli O18抗原バイオコンジュゲートのグリコシル化部位の占有率の改善は、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有する参照Wzy O-抗原ポリメラーゼを発現する他の点では同一の宿主細胞を用いた同じ条件を使用した場合に産生されるバイオコンジュゲートのグリコシル化部位の占有率と比較して、短い反復単位を有するバイオコンジュゲートの量の減少(表1のO18構造中のnはわずか約1~3である)及び/又は好ましくは担体タンパク質中の少なくとも2つ又はそれ以上のN-グリコシル化コンセンサス配列にコンジュゲートされたO18抗原多糖を含む担体タンパク質からなるバイオコンジュゲートの量の増加(好ましくは、表1のO18構造中のnは少なくとも5である)によって観察することができる。
【0065】
別の態様では、本発明は、本明細書で上述した本発明の宿主細胞を使用してバイオコンジュゲートを産生するための本発明の方法において得られるか、又は得ることができる担体タンパク質にコンジュゲートしたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートに関する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート」、「グリココンジュゲート」及び「バイオコンジュゲート」という用語は、担体タンパク質に共有結合したE.coli O-抗原を含むコンジュゲート化産物を指す。本発明のコンジュゲートは、好ましくは、宿主細胞において産生されるコンジュゲート化産物であるバイオコンジュゲートであり、ここで、O-抗原及び担体タンパク質は、宿主細胞の機構によって生合成的に産生され、そしてO-抗原はまた、担体タンパク質に酵素的に(例えば、宿主細胞の酵素によるN結合を介して)共有結合される。
【0067】
更に別の態様では、本発明は、本明細書で上述した本発明の宿主細胞を使用してバイオコンジュゲートを産生するための本発明の方法において得られる又は得ることができる担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原多糖のバイオコンジュゲートを含む組成物に関する。
【0068】
一実施形態では、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物は、担体タンパク質が4つのグリコシル化部位を含み、組成物中の担体タンパク質分子の少なくとも50、55、60、65、又は70%が、N-グリコシル化配列の少なくとも2つにおいてE.coli O18抗原反復でグリコシル化されている、すなわち、ジ-、トリ-、又はテトラ-グリコシル化されており、したがって、占有されたグリコシル化部位の2~4つを有するバイオコンジュゲートを含む組成物である。好ましくは、この実施形態において、担体タンパク質は、配列番号3に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有し、4つのグリコシル化部位を含み、グリコシル化コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)を含み、より好ましくは配列番号4を有するアミノ酸配列を含む。この実施形態において最も好ましくは、担体タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEPAを含む。ある特定の実施形態において、このような組成物は、O18バイオコンジュゲートを産生する宿主細胞の周辺質画分である。好ましくは、そのような組成物は、E.coli O18抗原多糖(「sEPA」)の約1~3反復単位の平均数を有するバイオコンジュゲートを20%、15%、10%以下含む。
【0069】
一実施形態では、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原のバイオコンジュゲートを含む組成物は、バイオコンジュゲートに加えて、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。本発明の(医薬)組成物は、担体、充填剤、保存剤、可溶化剤、及び/又は希釈剤を含む、任意の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射溶液用の液体担体として採用され得る。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。好適な医薬担体の更なる例は、当業者に周知であり、教科書に記載されている。
【0070】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」という用語は、本発明による組成物の有効性にも本発明による組成物の生物学的活性にも干渉しない非毒性性材料を指す。「薬学的に許容される担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム封入体、又は医薬製剤において使用するための当該技術分野において周知である他の材料を含み得る。薬学的に許容される担体の特性は、特定の用途の投与経路によって決まる点は理解されよう。特定の実施形態によれば、本開示を考慮して、ワクチンにおける使用に好適な任意の薬学的に許容される担体を本発明で使用することができる。好適な賦形剤としては、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせ、並びに安定剤、例えば、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin、HSA)又は他の好適なタンパク質及び還元糖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
好適な緩衝液としては、Tris緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝液、及びスクロースリン酸グルタミン酸緩衝液が挙げられる。例えば、トリス緩衝生理食塩水(Tris-buffered saline、TBS)pH7.4(例えば、トリス、NaCl及びKClを、例えば、それぞれ25mM、137mM及び2.7mMで含有する);pH約7.0の約10mMのKHPO/NaHPO緩衝液、約5%(w/v)のソルビトール、約10mMのメチオニン、及び約0.02%(w/v)のポリソルベート80を含むリン酸緩衝液;又はpH約7.0の約10mMのKHPO/NaHPO緩衝液、約8%(w/v)スクロース、約1mMのEDTA、及び約0.02%(w/v)ポリソルベート80を含むリン酸緩衝液。
【0072】
好適な塩には、例えば、トリス-塩酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸一ナトリウム及びアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、又はそのようなアルミニウム塩の混合物)のうちの1つ又は2つ以上が含まれる。
【0073】
好適な防腐剤としては、防腐剤の0.001%~0.01%(w/v)のフェノール、塩化ベンゼトニウム、2-フェノキシエタノール、又はチメロサールが挙げられる。他の実施形態では、防腐剤は含まれない。
【0074】
組成物は、対象への意図された投与経路に適するように製剤化され得る。例えば、組成物は、皮下、非経口、経口、皮内、経皮、結腸直腸、腹腔内、膣内、直腸、静脈内、頬側、鼻腔内、気管内、筋肉内、局所、経皮、又は肺投与、好ましくは筋肉内投与に適するように製剤化することができる。
【0075】
本発明の組成物は、投与の指示書とともに、容器、パック、又はディスペンサに入れることができる。
【0076】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、使用前に保管され得、例えば、組成物は、凍結保管(例えば、約-20℃又は約-70℃)され得るか、冷蔵条件(例えば、約2~8℃、例えば、約4℃)で保管され得るか、又は室温で保管され得る。
【0077】
医薬組成物は、任意選択で、アジュバントを含んでもよく、又は任意選択で、アジュバントと組み合わせて投与されてもよい。本発明の組成物と組み合わせて投与するためのアジュバントは、免疫原性組成物の投与の前に、それと同時に、又はその後に、投与することができる。他の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物はアジュバントを含まず、及び/又はアジュバントと組み合わせて投与されない。
【0078】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、本発明の組成物とともに又は組成物の一部として投与された場合、担体タンパク質に結合したE.coli O18抗原を含むコンジュゲートに対する免疫応答を増加、増強及び/又は高めるが、アジュバント化合物が単独で投与された場合、コンジュゲートに対する免疫応答を生成しない化合物を指す。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、B細胞及び/又はT細胞の刺激、並びに/あるいは抗原提示細胞の刺激を含むいくつかの機構によって免疫応答を増強することができる。
【0079】
アジュバントの具体例としては、アルミニウム塩(ミョウバン)(アルミニウム水酸化物、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムなど、これには、ミョウバン又はナノミョウバン製剤を含むナノ粒子が含まれる)、リン酸カルシウム、モノホスホリルリピドA(MPL)、又は3-de-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)(例えば、英国特許第2220211号、欧州特許第0971739号、欧州特許第1194166号、米国特許第6491919号を参照されたい)、AS01、AS02、AS03、及びAS04(全てGlaxoSmithKline;例えば、AS04については欧州特許第1126876号、米国特許第7357936号、AS02については、欧州特許第0671948号、欧州特許第0761231号、米国特許第5750110号を参照されたい)、イミダゾピリジン化合物(国際公開第2007/109812号を参照されたい)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開第2007/109813号を参照されたい)、デルタ-イヌリン、STING活性化合成環状ジ-ヌクレオチド(例えば、米国特許出願公開第2015/0056224号)、レシチンとカルボマーホモポリマーとの組み合わせ(例えば、米国特許第6676958号)、及び、任意選択でQS7と組み合わせた、Quil A及びQS21などのサポニン(例えば、米国特許第5,057,540号)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)である。ある特定の実施形態において、アジュバントは、Quil-A、例えば、Brenntag(現Croda)又はInvivogenから市販されているものなどを含む。QuilAは、キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の木に由来するサポニンの水抽出性画分を含有する。これらのサポニンは、共通のトリテルペノイド骨格構造を有する、トリテルペノイドサポニンの群に属する。サポニンは、T依存性抗原並びにT非依存性抗原に対する強力なアジュバント応答、並びに強力な細胞傷害性CD8+リンパ球応答を誘導し、粘膜抗原に対する応答を増強することが公知である。これらはまた、コレステロール及びリン脂質と組み合わされて、免疫刺激性複合体(immunostimulatory complexe、ISCOM)を形成し得、QuilAアジュバントは、異なる起源に由来する広範な抗原に対する抗体媒介性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答の両方を活性化し得る。ある特定の実施形態では、アジュバントはAS01、例えばAS01Bである。AS01は、MPL(3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA)、QS21(キラヤ・サポナリア・モリナ、画分21)、及びリポソームを含む、アジュバント系である。ある特定の実施形態において、AS01は、市販されているか(GSK)、又は参照により本明細書に組み込まれる国際公開第96/33739号に記載されるように作製され得る。ある特定のアジュバントは、エマルジョンを含み、これは、2つの非混和性流体、例えば、油及び水の混合物であり、そのうちの一方が、他方の内側に小滴として懸濁され、界面活性剤によって安定化されている。水中油型エマルジョンは、油の小滴を取り囲む連続相を形成する水を有するが、油中水型エマルジョンは、連続相を形成する油を有する。ある特定のエマルジョンは、スクアレン(代謝可能な油)を含む。ある特定のアジュバントは、ブロックコポリマーを含み、これは、2つのモノマーが一緒にクラスター化して繰り返し単位のブロックを形成する場合に形成されるコポリマーである。ブロックコポリマー、スクアレン、及び微粒子安定剤を含む油中水型エマルジョンの例は、TiterMax(登録商標)であり、これは、Sigma-Aldrichから商業的に入手することができる。任意選択で、エマルジョンは、更なる免疫刺激成分、例えば、TLR4アゴニストと組み合わせられ得るか、又はそれを含み得る。ある特定のアジュバントは、MF59(例えば、欧州特許第0399843号、米国特許第6299884号、米国特許第6451325号を参照されたい)及びAS03においても使用される水中油型エマルジョン(例えば、スクアレン又はラッカセイ油など)であり、任意選択で、免疫刺激剤、例えば、AS02におけるモノホスホリルリピドA及び/又はQS21と組み合わされる(Stoute et al.,1997,N.Engl.J.Med.336,86-91を参照されたい)。アジュバントの更なる例は、免疫刺激剤、例えば、例えばAS01E及びAS01BにおけるMPL及びQS21を含有するリポソームである(例えば、米国特許出願公開第2011/0206758号)。アジュバントの他の例は、CpG、並びにイミダゾキノリン(例えば、イミキモド及びR848)である。例えば、Reed G,et al.,2013,Nature Med,19:1597-1608を参照されたい。ある特定の実施形態では、アジュバントはTh1アジュバントである。
【0080】
ある特定の実施形態において、アジュバントは、サポニン、好ましくは、キラヤ・サポナリアから得られるサポニンの水抽出可能な画分を含む。ある特定の実施形態において、アジュバントは、QS-21を含む。
【0081】
ある特定の実施形態において、アジュバントは、toll様受容体4(TLR4)アゴニストを含有する。TLR4アゴニストは、当該技術分野において周知であり、例えば、Ireton GC and SG Reed,2013,Expert Rev Vaccines 12:793-807を参照されたい。ある特定の実施形態において、アジュバントは、リピドA、又はそのアナログ若しくは誘導体を含む、TLR4アゴニストである。
【0082】
例えば、TLR4アゴニストを含むアジュバントは、様々な手法で、例えば、油中水型(w/o)エマルジョン又は水中油型(o/w)エマルジョン(例は、MF59、AS03である)などのエマルジョン、安定(ナノ)エマルジョン(stable (nano-) emulsion、SE)、脂質懸濁液、リポソーム、(ポリマー)ナノ粒子、ビロソーム、吸着ミョウバン(alum adsorbed)、水性製剤(aqueous formulation、AF)などで製剤化することができ、アジュバント中の免疫調節分子及び/又は免疫原のための様々な送達系を表す。
【0083】
免疫刺激性TLR4アゴニストは、任意選択で、他の免疫調節成分、例えば、サポニン(例えば、QuilA、QS7、QS21、Matrix M、Iscoms、Iscomatrixなど)、アルミニウム塩、他のTLRのための活性化因子(例えば、イミダゾキノリン、フラジェリン、dsRNAアナログ、TLR9アゴニスト、例えばCpGなど)などと組み合わされ得る(例えば、Reed et al,2013(上記)を参照されたい)。
【0084】
本明細書で使用される場合、「リピドA」という用語は、LPS分子の疎水性脂質部分を指し、この部分は、グルコサミンを含み、ケトシド結合により、LPS分子の内部コアにおいてケト-デオキシオクツロソン酸塩に連結されており、LPS分子がグラム陰性菌の外膜の外葉に固定されている。LPS及びリピドA構造の合成の概要については、例えば、Raetz,1993,J.Bacteriology 175:5745-5753,Raetz CR and C Whitfield,2002,Annu Rev Biochem 71:635-700、米国特許第5,593,969号及び同第5,191,072号を参照されたい。リピドAは、本明細書で使用される場合、天然に存在するリピドA、その混合物、アナログ、誘導体、及び前駆体を含む。この用語は、単糖、例えば、リピドXと称されるリピドAの前駆体、二糖リピドA、ヘプタアシルリピドA、ヘキサアシルリピドA、ペンタアシルリピドA、テトラアシルリピドA、例えば、リピドIVAと称されるリピドAのテトラアシル前駆体、脱リン酸化リピドA、モノホスホリルリピドA、ジホスホリルリピドA、例えば、Escherichia coli及びRhodobacter sphaeroides由来のリピドAを含む。いくつかの免疫活性化リピドA構造は、6つのアシル鎖を含む。グルコサミン糖に直接的に結合された4つの一級アシル鎖は、通常、10~16炭素長の3-ヒドロキシアシル鎖である。2つの追加のアシル鎖が、多くの場合、一級アシル鎖の3-ヒドロキシ基に結合される。E.coliリピドAは、例として、典型的には、糖に結合した4つのC14 3-ヒドロキシアシル鎖、並びにそれぞれ、2’位及び3’位において一級アシル鎖の3-ヒドロキシ基に結合した1つのC12及び1つのC14を有する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「リピドAアナログ又は誘導体」という用語は、リピドAに構造及び免疫学的活性が類似しているが、必ずしも天然に存在するわけではない分子を指す。リピドAアナログ又は誘導体は、例えば、短縮若しくは縮合されるように、及び/又は別のアミン糖残基、例えば、ガラクトサミン残基で置換されたグルコサミン残基を有するように、還元末端にグルコサミン-1-リン酸の代わりに2-デオキシ-2-アミノグルコン酸を含有するように、4’位にリン酸の代わりにガラクツロン酸部分を有するように、改変されていてもよい。リピドAアナログ又は誘導体は、細菌から単離されたリピドAから、例えば、化学的誘導によって調製されてもよく、又は例えば、最初に好ましいリピドAの構造を決定し、そのアナログ若しくは誘導体を合成することによって化学的に合成されてもよい。リピドAアナログ又は誘導体もまた、TLR4アゴニストアジュバントとして有用である(例えば、Gregg KA et al,2017,MBio 8,eDD492-17,doi:10.1128/mBio.00492-17を参照されたい)。
【0086】
例えば、リピドAアナログ又は誘導体は、例えば、アルカリ処理によって、野生型リピドA分子の脱アシル化によって、得ることができる。リピドAアナログ又は誘導体は、例えば、細菌から単離されたリピドAから調製することができる。そのような分子はまた、化学的に合成することもできる。リピドAアナログ又は誘導体の別の例は、リピドA生合成及び/又はリピドA改変に関与する酵素の変異、又はその欠失若しくは挿入を有する細菌細胞から単離されたリピドA分子である。
【0087】
MPL及び3D-MPLは、リピドAの毒性を弱めるように改変されたリピドAアナログ又は誘導体である。リピドA、MPL、及び3D-MPLは、長鎖脂肪酸が結合した糖骨格を有し、この骨格は、グリコシド連結した2つの6炭糖、及び4位のホスホリル部分を含む。典型的には、5~8つの長鎖脂肪酸(通常、12~14個の炭素原子)が糖骨格に結合している。天然源の誘導に起因して、MPL又は3D-MPLは、様々な脂肪酸長を有するいくつかの脂肪酸置換パターン、例えば、ヘプタアシル、ヘキサアシル、ペンタアシルなどの複合体又は混合物として存在し得る。これはまた、本明細書に記載される他のリピドAアナログ又は誘導体のいくつかについても当てはまるが、合成リピドAバリアントもまた規定され得、そして均質であり得る。MPL及びその製造は、例えば、米国特許第4,436,727号に記載されている。3D-MPLは、例えば、米国特許第4,912,094(B1)号に記載されており、3位の還元末端グルコサミンにエステル結合している3-ヒドロキシミリスチン酸アシル残基の選択的除去によってMPLとは異なる(例えば、米国特許第4,912,094号(B1)号の第1欄のMPLの構造と第6欄の3D-MPLとを比較されたい)。当該技術分野では、3D-MPLが使用されることが多いが、MPLと呼ばれることもある(例えば、Ireton GC and SG Reed,2013(上記)の表1の最初の構造は、この構造をMPL(登録商標)と称しているが、実際には、3D-MPLの構造を示している)。
【0088】
リピドA(アナログ、誘導体)の例としては、MPL、3D-MPL、RC529(例えば、欧州特許第1385541号)、PET-リピドA、GLA(グリコピラノシル脂質アジュバント、合成二糖脂質;例えば、米国特許出願公開第2010/0310602号、米国特許第8722064号)、SLA(例えば、Carter D et al,2016,Clin Transl Immunology 5:e108(doi:10.1038/cti.2016.63)、ヒトワクチンのためにTLR4リガンドを最適化するための構造機能アプローチが記載されている)、PHAD(リン酸化ヘキサアシル二糖;その構造は、GLAの構造と同じである)、3D-PHAD、3D-(6-アシル)-PHAD(3D(6A)-PHAD)(PHAD、3D-PHAD、及び3D(6A)PHADは、合成リピドAバリアントであり、例えば、avantilipids.com/divisions/adjuvantsを参照されたく、これは、これらの分子の構造も提供する)、E6020(CAS番号287180-63-6)、ONO4007、OM-174などが挙げられる。3D-MPL、RC529、PET-リピドA、GLA/PHAD、E6020、ONO4007、及びOM-174の例示的な化学構造については、例えば、Ireton GC and SG Reed,2013(上記)の表1を参照されたい。SLAの構造については、例えば、Reed SG et al,2016,Curr Opin Immunol 41:85-90の図1を参照されたい。ある特定の好ましい実施形態において、TLR4アゴニストアジュバントは、3D-MPL、GLA、又はSLAから選択されるリピドAアナログ又は誘導体を含む。ある特定の実施形態では、リピドAアナログ又は誘導体はリポソーム中に製剤化される。
【0089】
リピドAアナログ又は誘導体を含む例示的なアジュバントとしては、GLA-LSQ(合成MPL[GLA]、QS21、リポソームとして製剤化された脂質)、SLA-LSQ(合成MPL[SLA]、QS21、リポソームとして製剤化された脂質)、GLA-SE(合成MPL[GLA]、スクアレン油/水エマルジョン)、SLA-SE(合成MPL[SLA]、スクアレン油/水エマルジョン)、SLA-ナノミョウバン(合成MPL[SLA]、アルミニウム塩)、GLA-ナノミョウバン(合成MPL[GLA]、アルミニウム塩)、SLA-AF(合成MPL[SLA]、水性懸濁液)、GLA-AF(合成MPL[GLA]、水性懸濁液)、SLA-ミョウバン(合成MPL[SLA]、アルミニウム塩)、GLA-ミョウバン(合成MPL[GLA]、アルミニウム塩)、並びにAS01(MPL、QS21、リポソーム)、AS02(MPL、QS21、油/水エマルジョン)、AS25(MPL、油/水エマルジョン)、AS04(MPL、アルミニウム塩)、及びAS15(MPL、QS21、CpG、リポソーム)を含むGSK ASxxシリーズのアジュバントのうちのいくつかが挙げられる。例えば、国際公開第2013/119856号、国際公開第2006/116423号、米国特許第4,987,237号、米国特許第4,436,727号、米国特許第4,877,611号、米国特許第4,866,034号、米国特許第4,912,094号、米国特許第4,987,237号、米国特許第5191072号、米国特許第5593969号、米国特許第6,759,241号、米国特許第9,017,698号、米国特許第9,149,521号、米国特許第9,149,522号、米国特許第9,415,097号、米国特許第9,415,101号、米国特許第9,504,743号、Reed G,et al.,2013、上記を参照されたい。
【0090】
非糖脂質分子、例えば、ネオセプチン-3などの合成分子又はLeIFなどの天然分子もまた、TLR4アゴニストアジュバントとして使用することができ、例えば、Reed SG et al,2016(上記)を参照されたい。
【0091】
一実施形態では、担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O18抗原のバイオコンジュゲートを含む本発明の組成物は、担体タンパク質に共有結合したE.coli O-抗原多糖を含む少なくとも1つの追加のコンジュゲートを更に含む。担体タンパク質にコンジュゲートされたE.coli O-抗原多糖の1つ又は2つ以上の追加のバイオコンジュゲートは、好ましくは、O18以外、又はより好ましくはO18A以外の血清型のE.coli O-抗原多糖のバイオコンジュゲートである。好ましい実施形態において、1つ又は2つ以上の更なるコンジュゲート又はバイオコンジュゲートは、E.coli血清型O1、O2、O4、O6、O8、O15、O16、O25及びO75からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又は9つ全てのO-抗原多糖を含む。
【0092】
好ましい実施形態では、追加のコンジュゲート中の1つ又は2つ以上の追加のE.coli O-抗原は、E.coli O1抗原多糖(例えば、O1A抗原多糖)、E.coli O2抗原多糖、E.coli O4抗原多糖(例えば、E.coliグルコシル化O4抗原多糖)、E.coli O6抗原多糖(例えば、O6A抗原多糖)、E.coli O8抗原多糖、E.coli O15抗原多糖、E.coli O16抗原多糖、E.coli O25抗原多糖(例えば、O25A又はO25B抗原多糖、好ましくはO25B抗原多糖)、及びE.coli O75抗原多糖からなる群から選択される。好ましくは、更なるO-抗原多糖の各々は、担体タンパク質に共有結合される。ある特定の実施形態では、担体タンパク質の各々、すなわち各コンジュゲートの担体タンパク質は、EPA担体タンパク質である。好ましくは、追加のコンジュゲートのうちの1つ又は2つ以上、好ましくは全てがバイオコンジュゲートである。
【0093】
本明細書で使用される場合、「O18」という用語は、E.coliのO18抗原(E.coli血清型O18)を指し、O18A、O18B、O18A1、又はO18B1抗原(E.coli血清型O18の4つのサブ血清型の各々)のいずれかであり得、好ましい実施形態において、O18は、O18Aを指す。O18A抗原多糖は、表1に示される式(O18A)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。「O1A」という用語は、E.coliのO1A抗原(E.coli血清型O1のサブ血清型)を指す。「O2」という用語は、E.coliのO2抗原(E.coli血清型O2)を指す。「O4」という用語は、E.coliのO4抗原(E.coli血清型O4)を指し、これはグルコース側鎖を含んでも含まなくてもよい(それぞれグルコシル化O4抗原多糖(O4-Glc+)及び非グルコシル化O4抗原多糖(O4-Glc-)と呼ばれ、好ましい実施形態において、O4はO4-Glc+である)。「O6A」という用語は、E.coliのO6A抗原(E.coli血清型O6のサブ血清型)を指す。「O8」という用語は、E.coliのO8抗原(E.coli血清型O8)を指す。「O15」という用語は、E.coliのO15抗原(E.coli血清型O15)を指す。「O16」という用語は、E.coliのO16抗原(E.coli血清型O16)を指す。「O25B」という用語は、E.coli由来のO25B抗原(E.coli血清型O25のサブ血清型)を指す。「O75」という用語は、E.coliのO75抗原(E.coli血清型O75)を指す。
【0094】
本出願を通して言及されるE.coli O-抗原多糖の構造を以下の表1に示す。各E.coli O-抗原多糖についての単一の繰り返し単位を示す。
【0095】
【表1-1】
【0096】
【表1-2】
各nは独立して、1~100の整数、例えば1~50、1~40、1~30、1~20及び1~10、3~50、3~40、例えば少なくとも5、例えば5~40、例えば7~30、例えば7~25、例えば10~20である。
【0097】
本明細書に記載される全ての単糖は、当該分野で公知のそれらの一般的な意味を有する。単糖は、D又はL配置を有し得る。D又はLが特定されていない場合、糖はD配置を有すると理解される。単糖は、典型的には、当技術分野で一般に知られており、使用されている略語によって呼ばれる。例えば、Glcはグルコースを指し、D-GlcはD-グルコースを指し、L-GlcはL-グルコースを指す。単糖の他の一般的な略語には、Rha、ラムノース;GlcNAc、N-アセチルグルコサミン;GalNAc、N-アセチルガラクトサミン;Fuc、フコース;Man、マンノース;Man3Me、3-O-メチル-マンノース;Gal、ガラクトース;FucNAc、N-アセチルフコシルアミン;及びRib、リボースが含まれる。接尾辞「f」はフラノースを意味し、接尾辞「p」はピラノースを意味する。
【0098】
本発明によるE.coli O18抗原多糖に共有結合した担体タンパク質のバイオコンジュゲートを含む組成物は、E.coli O-抗原多糖に共有結合した担体タンパク質の少なくとも1つの追加のコンジュゲートを更に含むことができ、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの追加のコンジュゲートは、E.coli O1A抗原多糖、E.coli O2抗原多糖、E.coli O4抗原多糖、E.coli O6A抗原多糖、E.coli O8抗原多糖、E.coli O15抗原多糖、E.coli O16抗原多糖、E.coli O25B抗原多糖、及びE.coli O75抗原多糖からなる群から選択されるE.coli O-抗原多糖を含む。このような組成物は、コンジュゲートを一緒に添加して多価コンジュゲート組成物を得ることによって調製することができる。好ましくは、追加のコンジュゲートの1つ又は2つ以上、好ましくは全てもバイオコンジュゲートである。
【0099】
ある特定の実施形態では、O1A抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O1A抗原多糖は、表1に示される式(O1A)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O1A抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0100】
ある特定の実施形態では、O2抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載の方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O2抗原多糖は、表1に示される式(O2)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O2抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えば、EPAに共有結合している。
【0101】
ある特定の実施形態では、O4抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O-抗原の構造的改変は、E.coli O4血清型内に存在することが知られている。特に、いくつかのO4血清型は、分枝グルコース単位を有する改変O-抗原を発現する。本明細書で使用される場合、「グルコシル化O4抗原」、「グルコシル化O4抗原多糖」、「グルコース分岐O4」、「O4-Glc+抗原多糖」、「Glc+O4」、及び「O4-Glc+抗原」は、グルコース分岐を有するO4抗原を指す。いくつかのO4血清型は、このような分枝グルコース単位を有さないO4抗原を有し、これは、本明細書において「非グルコシル化O4抗原」、「非グルコシル化O4抗原多糖」、「O4-Glc-抗原」、又は「O4-Glc-」と呼ばれる。本明細書において「O4抗原」を指す場合、これはO4-Glc+抗原又はO4-Glc-抗原のいずれかであり得る。好ましい実施形態において、O4は、O4-Glc+抗原を指す。E.coli非グルコシル化O4抗原及びE.coliグルコシル化O4抗原の構造は、それぞれ表1の式(O4-Glc-)及び(O4-Glc+)に示されており、式中、nは1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。O4-Glc+バイオコンジュゲートを特異的に産生する方法は、国際公開第2020/191082(A1)号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。好ましくは、O4抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えば、EPAに共有結合している。
【0102】
ある特定の実施形態では、O6A抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O6A抗原多糖は、表1に示される式(O6A)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O6A抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0103】
ある特定の実施形態では、O8抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O8抗原多糖は、表1に示される式(O8)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O8抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えば、EPAに共有結合している。
【0104】
ある特定の実施形態では、O15抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O15抗原多糖は、表1に示される式(O15)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O15抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0105】
ある特定の実施形態では、O16抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O16抗原多糖は、表1に示される式(O16)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O16抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。担体タンパク質に共有結合したE.coli O16抗原多糖のコンジュゲートは、L-Rha糖の2位にある程度のアセチル化を有し得る。コンジュゲート中のO16抗原多糖のこのO-アセチル化の程度は、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。
【0106】
ある特定の実施形態では、O25B抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載の方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O25B抗原多糖は、表1に示される式(O25B)の構造を含んでもよく、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O25B抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えば、EPAに共有結合している。上記のO16抗原多糖と同様に、担体タンパク質に共有結合したE.coli O25B抗原多糖のコンジュゲートは、L-Rha糖の2位にある程度のアセチル化を有することができる。コンジュゲート中のE.coli O25B抗原多糖のこのO-アセチル化の程度は、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。
【0107】
ある特定の実施形態において、O75抗原多糖(例えば、単離された形態で、又はグリココンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの一部として)は、本明細書で提供される(医薬)組成物(例えば、本明細書に記載される方法によって得られるE.coli O18バイオコンジュゲートを含む組成物)中に存在する。O75抗原多糖は、表1に示される式(O75)の構造を含み得、式中、nは、1~100、例えば3~50、好ましくは5~40、例えば7~25、例えば10~20の整数である。好ましくは、O75抗原多糖は、コンジュゲート、より好ましくはバイオコンジュゲートの一部であり、担体タンパク質、例えばEPAに共有結合している。
【0108】
ある特定の実施形態では、本発明による組成物は、本発明によるE.coli O18抗原多糖に共有結合した担体タンパク質を含むバイオコンジュゲートを含み、E.coli O-抗原多糖に共有結合した担体タンパク質を含む1つ又は2つ以上の追加のコンジュゲート、好ましくは4~25個のそのような追加のコンジュゲートを更に含む。好ましくは、更なるコンジュゲートは、上記のようなE.coli O-抗原多糖のうちの1つ又は2つ以上、最も好ましくは、少なくともO25B、O1A、O2、及びO6を含む。特に好ましいのは、少なくとも7つ、好ましくは少なくとも8つの追加のコンジュゲートを含む組成物であり、これらの追加のコンジュゲートの好ましくはいくつか、最も好ましくは全てがバイオコンジュゲートである。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、少なくともE.coli O1A、O2、O4(好ましくはグルコシル化O4)、O6A、O15、O16、O18(好ましくはO18A)、O25B及びO75抗原多糖、好ましくは、それぞれ独立して担体タンパク質、例えばEPAに共有結合したO1A、O2、グルコシル化O4、O6A、O15、O16、O18A、O25B及びO75抗原多糖のコンジュゲートを含む(すなわち、少なくとも9価の組成物)。ある特定の実施形態では、そのような組成物は、E.coli O8抗原多糖を、好ましくはコンジュゲート、好ましくはバイオコンジュゲートの形態で更に含む。ある特定の実施形態において、このような組成物(O8抗原多糖を含むか又は含まない)は、他の血清型由来の更なるE.coli O-抗原多糖、好ましくは担体タンパク質にコンジュゲート化されたもの、好ましくはバイオコンジュゲート、例えば、2~10の更なる血清型由来のものを含む。ある特定の実施形態では、少なくとも9つのバイオコンジュゲートを含む医薬組成物が提供され、各バイオコンジュゲートは、異なる血清型由来のE.coli O-抗原多糖に共有結合した担体タンパク質を含み、血清型は、O18A(及びO18Aバイオコンジュゲートは、本発明による方法を使用して調製された本発明によるバイオコンジュゲートである)、O1A、O2、O4-Glc+、O6A、O15、O16、O25B、及びO75を含む。ある特定の実施形態では、担体タンパク質はEPA、例えば配列番号3のアミノ酸配列を有するEPAである。
【0110】
本発明による組成物は、任意選択で、免疫応答が望まれる更なるタンパク質、炭水化物及びリポ多糖を含むか、それらと組み合わせられるか、又はそれらと一緒に投与されてもよい。
【0111】
別の態様では、本発明は、医薬品として使用するための本発明の医薬組成物に関する。
【0112】
更なる態様において、本発明は、E.coliに対する免疫応答を誘導するための医薬品としての、本明細書に記載の医薬組成物の使用に関する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「免疫原」又は「免疫原性」又は「抗原」という用語は、単独で、アジュバントと組み合わせて、又はディスプレイビヒクル上に提示されるかのいずれかで、レシピエントへの投与の際に、それ自体に対する免疫学的応答を生成することができる分子を記載するために、互換可能に使用される。
【0114】
本明細書で使用される場合、抗原又は組成物に対する「免疫学的応答」又は「免疫応答」は、対象における、抗原又は組成物中に存在する抗原に対する体液性及び/又は細胞性免疫応答の発生を指す。
【0115】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、E.coli感染によって引き起こされる疾患の予防又は治療における使用のためのものである。好ましい実施形態では、E.coli感染によって引き起こされる疾患は、侵襲性腸管外病原性E.coli(ExPEC)疾患(IED)である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「腸管外病原性E.coli」又は「ExPEC」という用語は、一般に、胃腸管の外側の身体部位に侵入し、コロニー形成し、疾患を誘導する遺伝的に関連する病原性E.coli株を指す。ExPEC細菌には、尿路疾患性(UPEC)E.coli、新生髄膜炎菌(NMEC)E.coli、敗血症関連(SePEC)E.coli、接着性侵襲的(AIEC)E.coli、及び鳥類病原性(APEC)E.coliが含まれる。ExPEC又はExPEC感染に関連する疾患には、尿路感染(urinary tract infection、UTI)、手術部位感染、菌血症、腹部又は骨盤内感染、例えば腹腔内感染(intra-abdominal infection、IAI)、肺炎、院内肺炎、骨髄炎、蜂巣炎、腎盂腎炎、創傷感染、髄膜炎、新生児髄膜炎、腹膜炎、胆管炎、軟部組織感染、化膿性筋炎、敗血症性関節炎及び敗血症が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
更なる態様において、本発明は、E.coli感染によって引き起こされる疾患、特に侵襲性腸管外病原性E.coli(ExPEC)疾患(IED)を、必要とする対象において予防又は治療する方法に関し、その方法は、有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0118】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、対象において所望される生物学的又は医薬的応答を誘起する活性成分又は構成成分の量を指す。有効量は、記載される目的に対して経験的及び日常的な方法で決定することができる。例えば、任意選択でインビトロアッセイを用いて、最適な用量範囲の特定に役立てることができる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」とは、本発明の実施形態による方法又は組成物によってワクチン接種される、又はワクチン接種された、任意の動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを意味する。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、最も好ましくは、ヒトが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、対象は、ヒト成人である。本明細書で使用される場合、「ヒト成人」という用語は、18歳以上のヒトを指す。ある特定の実施形態では、対象は、(i)約16~約50歳の間、例えば、約16~約35歳の間のヒト女性、
(ii)50歳超、又は55歳超、又は60歳超、又は65歳超のヒト成人、
(iii)再発UTIに罹患しているヒト対象、
(iv)E.coli菌血症若しくは敗血症を有するか、又はそれらになるリスクがあるヒト対象、
(v)カテーテル使用を必要とする状態を有するヒト対象、
(vi)事前にスケジュールされた手術を受けるヒト対象、
(vii)ヒト閉経後女性、又は
(viii)糖尿病を有するヒト対象、のうちの1つ又は2つ以上である。
【0120】
更に別の態様では、本発明はまた、E.coli感染によって引き起こされる疾患、特に侵襲性腸管外病原性E.coli(ExPEC)疾患(IED)を予防又は治療するためのワクチン又は医薬品の製造のための、本明細書に記載の医薬組成物の使用に関する。
【0121】
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載し、これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0122】
配列の説明:
【0123】
【表2-1】
【0124】
【表2-2】
【0125】
【表2-3】
【0126】
【表2-4】
【0127】
【表2-5】
【0128】
【表2-6】
【実施例
【0129】
以下の本発明の実施例は、本発明の本質を更に説明するためのものである。以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の請求項によって定められる点を理解されたい。
【0130】
E.coliにおけるバイオコンジュゲーションシステムが最近開発されており、このシステムでは、抗原多糖及び担体タンパク質の両方がインビボで合成され、続いて、E.coliにおいて発現されるCampylobacter jejuni酵素であるオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの活性を介してインビボでコンジュゲートされる(Wacker et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(2006)v.103,pp.7088-93)。このN結合型タンパク質グリコシル化系は、多様な多糖を担体タンパク質に移入させることができ、それが発現される細菌からバイオコンジュゲートを精製する方法を可能にする。バイオコンジュゲーションは、E.coli 4価O-抗原候補ワクチンのためのコンジュゲート多糖を産生するための使用に成功している(Poolman and Wacker,J.Infect.Dis.(2016)v.213(1),pp.6-13、国際公開第2015/124769号、国際公開第2017/035181号)。10種のバイオコンジュゲート(O1A、O2、O4、O6A、O8、O15、O16、O18A、O25B及びO75、ExPEC10Vと称される組成物)を含む組成物が記載されており、臨床試験中である(例えば、国際公開第2020/191082(A1)号)。バイオコンジュゲートの各々は、O血清型依存性収率変動を示す別個の産生株によって産生される。いくつかのO-血清型のO-抗原産生株について、基質特異性が改変されたC.jejuniグリコシルトランスフェラーゼPglBのバリアントを発現させることによって、収率の改善を得ることができた(例えば、国際公開第2016/107818号、国際公開第2016/107819号を参照されたい)。しかしながら、ExPEC10V組成物のためにバイオコンジュゲートが作製された10の血清型の中で最も低いバイオコンジュゲート産生収率を示したO18 O-血清型については、C.jejuni PglBタンパク質のバリアントの使用及び代替PglBホモログの使用は、収率の改善をもたらさなかった。更に、O18バイオコンジュゲーション収率を増加させることを目的とした更なるプラットフォーム改変は、この目標を達成するのに成功しなかった。これらの改変の中には、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-1-ホスファートのウンデカプレニルホスファート(Und-P)への移入を触媒してUnd-P-P-GlcNAcを形成することによってO単位生合成を開始するタンパク質であるWecAの過剰発現があった。加えて、E.coli K-12バイオコンジュゲーションプラットフォーム株に存在する天然Wzz O-抗原鎖長調節因子を他のグラム陰性細菌種のO-抗原鎖長調節因子に置き換えて、O18A O-抗原鎖長の増加をもたらしたが、産物収率の有意な増加はもたらされなかった。
【0131】
実施例1:収率が改善されたO18バイオコンジュゲート産生株
しかしながら、本発明者らは、O18バイオコンジュゲート産物収率が増加した株を得、これらの株におけるWzy O-抗原ポリメラーゼが、既存のO18バイオコンジュゲート産生株(配列番号1を有するWzy O-抗原ポリメラーゼを有していた)におけるWzyと比較してアミノ酸変異を有していたことを見出した。これに基づいて、本発明者らは、以前に記載された(国際公開第2020/191082号を参照されたい)O18バイオコンジュゲート産生株と比較して、そのWzy O-抗原ポリメラーゼにおける3つのアミノ酸変異を除いて他の点では同一である、O18バイオコンジュゲートの新規産生株を作製した。特に、以前に記載された株におけるWzy O-抗原ポリメラーゼは、アミノ酸トレオニン(T)、メチオニン(M)、及びバリン(V)を、それぞれ、199位、377位、及び395位に有した(すなわち、以前に記載された株のWzy O-抗原ポリメラーゼは、配列番号1に示される)が、新しい産生株は、アミノ酸イソロイシン(I)、リジン(K)、及びアラニン(A)を、これらのそれぞれの位置に有した。
【0132】
浸透圧ショック後(すなわち、収率の妥当な定量化が可能であるプロセスの初期の時点)に実施した200Lバイオリアクターの濾過した周辺質画分中のO18バイオコンジュゲートの収率は、以前に記載された株に対して新しい株については約2.4倍高かった。
【0133】
4つのN-グリコシル化コンセンサス配列を有するEPA担体タンパク質のグリコシル化部位の占有率は、以前に記載された株に対して新しい株において増加し、すなわち、新しい株は、より多くのジ-、トリ-、及びテトラ-グリコシル化EPA担体タンパク質を誘導した(例えば、図1)。
【0134】
実施例2:改変Wzy O-抗原ポリメラーゼの構築
次に、本発明者らは、Wzy O-抗原ポリメラーゼアミノ酸配列の突然変異誘発研究を行い、O18バイオコンジュゲートの収率及びグリコシル化パターンに影響を及ぼす、配列番号1のWzy O-抗原ポリメラーゼ配列中のこれら3つの位置におけるアミノ酸置換の特定の組み合わせを同定した。
【0135】
Wzy O-抗原ポリメラーゼの配列番号1のアミノ酸配列における199位、377位及び395位のうちの1つ又は2つ以上におけるアミノ酸置換の種々の組み合わせを、標準的な手順を用いる部位特異的変異誘発を用いて作製した。生成された様々な組み合わせを表3に示す。
【0136】
実施例3:改変Wzy O-抗原ポリメラーゼを用いたO-抗原多糖の産生
E.coli K-12バイオコンジュゲート産生株W3110の染色体に挿入されたE.coli血清型O18A(配列番号5として提供される例)由来のrfbクラスターに存在するwzy遺伝子を、相同組換えに基づく遺伝子改変技術によって、表3に示す変異を有する配列番号1を有する改変Wzy O-抗原ポリメラーゼをコードする遺伝子バリアントで置き換えた。E.coli血清型O18A由来のrfbクラスターに加えて、E.coliバイオコンジュゲート産生株W3110は、EPA担体タンパク質をコードする核酸(配列番号3を有する)、及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBをコードする核酸(配列番号6を有する)を更に含んでいた。O18A多糖バイオコンジュゲートを、例えば国際公開第2020/191082号に以前に記載されているように、振盪フラスコ培養物において産生し、浸透圧ショックを使用して抽出した。
【0137】
実施例4:O18-バイオコンジュゲートの特性評価
O18A多糖バイオコンジュゲート発現のために誘導されたWzyバリアント(表3に示される変異を有する)を含有するE.coli K-12バイオコンジュゲート産生株W3110の振盪フラスコ培養物からの周辺質抽出物を、バイオコンジュゲートの免疫検出のためにO18A特異的モノクローナル抗体を使用するキャピラリー電気泳動イムノアッセイに供した。総産物シグナルに対するMWによって決定されるsEPA、モノグリコシル化EPA及びより高次の形態のグリコシル化EPA(ジ-/トリ-/テトラグリコシル化EPA)に対応するピークのシグナル強度に基づいて、各試料について相対定量を行った(表3)。
【0138】
表3.野生型及び示されるように配列番号1の199、377及び395の位置のうちの1つ又は2つ以上にアミノ酸置換を有する変異型Wzy O抗原ポリメラーゼ、並びにO18バイオコンジュゲートのグリコシル化パターンに対するそれらの効果。改善されたグリコシル化パターンをもたらすバリアントを太字で示す。
【0139】
【表3】
【0140】
実施例5:新しい産生株によるO18バイオコンジュゲート、並びに免疫原性活性を有するExPEC9V及びExPEC10V多価産物の産生
O18Aバイオコンジュゲートを産生するための新しい株を使用してO18Aバイオコンジュゲートを産生し、浸透圧ショック後に周辺質からO18Aバイオコンジュゲートを抽出し、クロマトグラフィーに供して宿主細胞タンパク質を除去し、抽出したバイオコンジュゲートを使用して、本質的に国際公開第2020/191082号(その中の実施例8)に記載されているように、このO18Aバイオコンジュゲートを原薬として含む医薬組成物を調製した。
【0141】
新規O18A原薬を、E.coli O-抗原O1A、O2、O4(glc+)、O6A、O15、O16、O25B、及びO75の、場合によってはO8も含む他のバイオコンジュゲートの原薬とも混合して、多価(9価、それぞれ10価)製剤を得た。これらの製剤は、ウサギに投与すると、O-抗原が組成物中に存在するE.coli血清型に対する抗体を誘導した。したがって、本発明(の方法)に従って(得られた)バイオコンジュゲート及び組成物は、E.coliに対する免疫応答を誘導するのに好適であることが実証された。
図1
【配列表】
2024514074000001.app
【国際調査報告】