(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】IL-13RA2キメラ抗原受容体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240321BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240321BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240321BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240321BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240321BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240321BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240321BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240321BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240321BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240321BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240321BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240321BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240321BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240321BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240321BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240321BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/10
C07K16/28
C07K14/725
C07K16/30
C07K16/46
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560806
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022023112
(87)【国際公開番号】W WO2022212879
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324002926
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】プーリー, ラジ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ, バラトクマール エイチ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
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4C084MA66
4C084NA05
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4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
免疫療法、特にIL-13Rα2を標的とするキメラ抗原受容体およびがんを処置するためのそれらの使用を提供する。IL-13Rα2に特異的に結合する単鎖可変領域フラグメント(scFv)、IL-13Rα2 scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)、CARをコードする核酸、CARをコードする核酸を含むベクター、およびCARを発現する免疫細胞を提供する。IL-13Rα2 scFv-CARを発現する免疫細胞を単独でまたは他のがん治療と組み合わせて対象に投与することを含む、がんを有する対象を処置する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-13受容体α2(IL-13Rα2)に特異的に結合する単鎖可変領域フラグメント(scFv)であって、前記scFvが、それぞれ配列番号1のアミノ酸位置31~35、50~66、および99~107の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列、ならびにそれぞれ配列番号1のアミノ酸位置157~167、183~189、および222~229の可変軽鎖(VL)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、単鎖可変領域フラグメント(scFv)。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する、請求項1に記載のscFv。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、配列番号1を含む、請求項1または2に記載のscFv。
【請求項4】
前記scFvが、IL-13Rα2を発現する細胞に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載のscFv。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のscFvをコードする、核酸分子。
【請求項6】
配列番号2と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
配列番号2を含む、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項9】
キメラ抗原受容体であって、
(a)請求項1~4のいずれか1項に記載のscFvを含む抗原結合ドメインと、
(b)ヒンジドメインと、
(c)膜貫通ドメインと、
(d)1つまたはそれを超えるシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと、
を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項10】
シグナルペプチドを更に含む、請求項9に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記シグナルペプチドが、CD8αシグナルペプチドである、請求項10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
前記1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインが、CD28ドメイン、4-1BBドメイン、CD3ζドメイン、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
前記1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインが、CD28ドメイン、4-1BBドメインおよびCD3ζドメインを含む、請求項12に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項14】
前記ヒンジドメインが、CD8αヒンジドメインを含む、請求項9~13のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項15】
前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインである、請求項9~14のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項16】
配列番号3または配列番号3のアミノ酸22~538と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9~15のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項17】
配列番号3または配列番号3のアミノ酸22~538を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項18】
請求項9~17のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体をコードする、核酸分子。
【請求項19】
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項20】
配列番号4を含む、請求項19に記載の核酸分子。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項22】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項9~17のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体を発現する、免疫細胞。
【請求項25】
請求項18~20のいずれか1項に記載の核酸、または請求項21~23のいずれか1項に記載のベクターを含む、免疫細胞。
【請求項26】
前記免疫細胞が、末梢血試料から得られる、請求項24または請求項25に記載の免疫細胞。
【請求項27】
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージである、請求項24~26のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項28】
IL-13Rα2-CAR細胞を産生する方法であって、免疫細胞の集団を、請求項21~23のいずれか1項に記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトすることを含む、方法。
【請求項29】
前記免疫細胞の集団が、T細胞、NK細胞、NKT細胞、またはマクロファージの集団である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記T細胞、NK細胞、NKT細胞、またはマクロファージが、対象の末梢血試料から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
がんを有する対象を処置する方法であって、有効量の請求項24~27のいずれか1項に記載の免疫細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記免疫細胞が、がんを有する前記対象に対して自家である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、IL-13Rα2を発現するがんを有する、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、固形腫瘍を有する、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、膵臓がん、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、腎細胞癌、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、カポジ肉腫、または副腎癌を有する、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
手術、放射線、化学療法、または追加の免疫療法のうちの1またはそれより多くで前記対象を処置することを更に含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、細胞周期阻害剤もしくはチェックポイント阻害剤、アドレノメデュリン、IL-13-PE免疫毒素、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせを前記対象に投与することを更に含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、参照により本明細書に組み込まれる、2021年4月1日に出願された米国仮出願第63/169,575号の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、免疫療法、特にIL-13Rα2を標的とするキメラ抗原受容体およびがんを処置するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
IL-13Rα2は、サイトカインインターロイキン-13(IL-13)および既知の腫瘍抗原に対する高親和性受容体である。がんにおけるIL-13Rα2発現の重要性は完全には理解されていないが、IL-13Rα2は、悪性神経膠腫、頭頸部がん、カポジ肉腫、腎細胞癌、卵巣癌、乳がんおよび膵臓がんを含む様々なヒトがんにおいて過剰発現していることが示され、このことは、IL-13Rα2をがん免疫療法の潜在的な標的とする。
【0004】
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、様々な血液がんを処置するための有望な免疫療法戦略となっている。CAR-T細胞は白血病およびリンパ腫等の血液悪性疾患に有効であるが、今日まで、ヒト固形がんでは非常に限られた活性が見られている。固形腫瘍におけるCAR-T細胞の標的化の改善は、単独で、または腫瘍間質を標的化する他の薬剤(骨髄由来サプレッサー細胞、腫瘍関連マクロファージおよび線維芽細胞を含む腫瘍微小環境)と組み合わせて、CAR-T免疫療法の分野における大きな進歩を意味するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
IL-13Rα2は、いくつかのがんにおいて有意にアップレギュレートされており、したがって、IL-13Rα2は、様々ながんを処置するための免疫療法の標的である。IL-13Rα2を発現する細胞を特異的に標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を本明細書中に提供する。これらのCARは、IL-13Rα2を発現または過剰発現するがんを標的とする免疫療法に使用することができる。
【0006】
IL-13 Rα2に特異的に結合する単鎖可変領域フラグメント(scFv)が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、scFvは、配列番号1の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2およびCDR3アミノ酸配列、ならびに配列番号1の可変軽鎖(VL)ドメインCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有する。いくつかの例では、scFvは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、または配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる。いくつかの例では、scFvは、IL-13Rα2を発現する細胞に特異的に結合する。
【0007】
IL-13Rα2 scFvをコードする核酸および該核酸を含むベクター(ウイルスベクター等)も提供される。いくつかの実施形態では、IL-13Rα2 scFvをコードする核酸は、コドン最適化されている。いくつかの例では、IL-13Rα2 scFvは、配列番号2の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。他の例では、IL-13Rα2 scFvは、配列番号2の核酸配列を含むかまたはそれからなる核酸によってコードされる。
【0008】
IL-13Rα2 scFv、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインを有する細胞内ドメインを含むCARも提供される。いくつかの実施形態では、CARはシグナルペプチドを更に含む。いくつかの例では、シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチドである。いくつかの例では、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメインである。いくつかの例では、細胞内ドメインは、CD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインのうちの1またはそれより多く、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせを含む。非限定的な一実施形態では、IL-13 Rα2-CARは、IL-13Rα2 scFv、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、ならびにCD28ドメイン、4-1BBドメインおよびCD3ζドメインを含む細胞内ドメインを含む。いくつかの例では、IL-13Rα2-CARは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号3のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる。
【0009】
本明細書に開示されるIL-13Rα2-CARをコードする核酸、および核酸を含むベクター(ウイルスベクター等)も提供される。いくつかの実施形態では、IL-13Rα2-CARをコードする核酸は、特定の細胞型(例えば、細菌、yest、昆虫、マウス、ヒト)における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの例では、IL-13Rα2-CARは、配列番号4の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。他の例では、IL-13Rα2-CARは、配列番号4の核酸配列を含むかまたはそれからなる核酸によってコードされる。IL-13 Rα2-CARをコードする核酸分子を含むベクターも本明細書に開示される。いくつかの例では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0010】
開示されるIL-13Rα2-CARを発現する免疫細胞、例えば、開示されるIL-13Rα2-CARをコードする核酸または開示されるIL-13Rα2-CARをコードするベクターを含む免疫細胞も提供される。いくつかの例では、細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、またはマクロファージである。具体的な非限定的な例では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの例では、免疫細胞は末梢血から得られる。IL-13Rα2-CARを発現する細胞を産生する方法が提供される。これらの方法は、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ等の細胞を、開示されるIL-13Rα2-CARをコードするベクターで形質導入またはトランスフェクトすることを含む。
【0011】
例えば、IL-13Rα2-CARを発現する、またはIL-13Rα2-CARをコードするベクターを含む細胞(T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ等)を投与することによって、がんを有する対象を処置するための方法も提供される。いくつかの例では、対象は、IL-13Rα2を発現または過剰発現するがんを有する。特定の非限定的な例では、対象は、膵臓がん、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌、カポジ肉腫、または副腎癌を有する。いくつかの例では、方法は、手術、放射線、化学療法、または追加の免疫療法のうちの1またはそれより多くで対象を処置することを更に含む。さらなる例では、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、細胞周期および/またはチェックポイント阻害剤、アドレノメデュリン、IL-13-PE免疫毒素、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせが、IL-13Rα2-CAR免疫細胞と組み合わせて対象に投与される。
【0012】
本開示の上記および他の特徴は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、例示的なscFv-IL-13Rα2 CARコンストラクトの概略図を示す。コンストラクトは、5’-CD8αシグナルペプチド、scFv IL-13Rα2、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、ならびにCD28細胞質ドメイン、4-1BBおよびCD3ζに由来するエンドドメインを含む。
【
図2】
図2は、Kabatナンバリングスキームを使用したIL-13Rα2抗体の重鎖残基のアミノ酸ナンバリングを示す。示されている配列は、配列番号3の残基22~139である。
【
図3A】
図3A~
図3Bは、IL-13Rα2抗体の重鎖の分析を示す。
図3Aは、scFv-IL-13Rα2の重鎖アミノ酸の領域、配列、残基番号および長さを提供する表である。
図3Bは、アミノ酸残基の位置番号を有する重鎖CDRのループ構造である。示されている配列は、配列番号3の残基22~139である。
【
図3B】
図3A~
図3Bは、IL-13Rα2抗体の重鎖の分析を示す。
図3Aは、scFv-IL-13Rα2の重鎖アミノ酸の領域、配列、残基番号および長さを提供する表である。
図3Bは、アミノ酸残基の位置番号を有する重鎖CDRのループ構造である。示されている配列は、配列番号3の残基22~139である。
【
図4】
図4は、Kabatナンバリングスキームを使用したIL-13Rα2抗体の軽鎖残基のアミノ酸ナンバリングを示す。示されている配列は、配列番号3の残基155~263である。
【
図5A】
図5A~
図5Bは、IL-13Rα2抗体の軽鎖の分析を示す。
図5Aは、scFv-IL-13Rα2の軽鎖アミノ酸の領域、配列、残基番号および長さを提供する表である。
図5Bは、アミノ酸残基の位置番号を有する軽鎖CDRのループ構造である。示されている配列は、配列番号3の残基155~260である。
【
図5B】
図5A~
図5Bは、IL-13Rα2抗体の軽鎖の分析を示す。
図5Aは、scFv-IL-13Rα2の軽鎖アミノ酸の領域、配列、残基番号および長さを提供する表である。
図5Bは、アミノ酸残基の位置番号を有する軽鎖CDRのループ構造である。示されている配列は、配列番号3の残基155~260である。
【
図6】
図6は、IL-13Rα2抗体の重鎖アミノ酸の分布およびそれらのそれぞれの頻度を示す。
【
図7】
図7は、IL-13Rα2抗体の軽鎖アミノ酸の分布およびそれらのそれぞれの頻度を示す。
【
図8】
図8は、IMGT、Kabat、ChothiaおよびMartinのナンバリングスキーム(配列番号3、残基22~139)によるIL-13Rα2抗体の重鎖残基の比較配列アラインメントである。
【
図9】
図9は、IMGT、Kabat、ChothiaおよびMartinのナンバリングスキーム(配列番号3、残基155~260)によるIL-13Rα2抗体の軽鎖残基の比較配列アラインメントである。
【
図10】
図10は、例示的なscFv IL-13Rα2 CARのアミノ酸配列および各エレメント(配列番号18)の位置を示す。
【
図11】
図11は、scFv IL-13Rα2 CARを含むベクターの制限消化物を示す。およそ1.0μgのプラスミドDNAをBamH1およびNot1により37℃で1時間消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動し、次いで染色した。レーン1は未消化のscFv-IL-13Rα2 CARコンストラクトプラスミドであり、レーン2はBamH1およびNot1で消化したプラスミドDNAであり、レーン3はKB参照ラダーである。
【
図12】
図12A~
図12Bは、形質導入されたCAR-Jurkat細胞におけるCD28(細胞質)(
図12A)およびCD3ζ(
図12B)シグナル伝達ドメインの発現を示す。形質導入されたJurkat細胞を透過処理し、抗CD28(CD28.2)マウスmAb PEコンジュゲート(カタログ番号27826、Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ダンバーズ)およびCD3ζモノクローナル抗体PEコンジュゲート(カタログ番号12-2479-82、ThermoFisher eBioscience、カリフォルニア州カールスバッド)で免疫染色した後、CAR-Jurkat細胞のFACS分析を行った。データを、最頻値に正規化して表す。
【
図13】
図13A~
図13Bは、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)分析による、形質導入されたJurkat細胞およびT細胞におけるscFv IL-13Rα2 CAR導入遺伝子の同定を示す。形質導入されたJurkat細胞およびT細胞を、500ng/mlのビオチン化組換えヒトIL-13Rα2 Fcキメラタンパク質とインキュベートし、続いてストレプトアビジン-Alexa 594とインキュベートして、scFv-IL-13Rα2発現細胞において蛍光を発生させた。2+以上の蛍光強度を発現する細胞を、NIKON落射蛍光顕微鏡で見ることによって200倍の倍率で計数した。各値は、盲検様式で決定され、陽性細胞%として表される4回の実験の平均±SDである(
図13A)。
図13Bは、形質導入されたJurkat細胞の代表的なIFA画像を示す。
【
図14】
図14は、7日間にわたる細胞培養におけるscFv IL-13Rα2 CAR-Jurkat細胞およびscFv IL-13Rα2 CAR-T細胞の細胞生存度を示す。生存度をトリパンブルー排除によって決定し、生存細胞の数として表す。
【
図15】
図15は、MTSアッセイによるin vitroでのscFv IL-13Rα2 CAR-T細胞の細胞増殖を示す。形質導入されたJurkat細胞およびT細胞を、適切な培養培地中で最大7日間、細胞増殖についてモニターした。形質導入された細胞の増殖活性を、特定の時点で490nmにおいて、増殖している細胞によって還元されたMTSテトラゾリウムの光学密度を測定することによって評価した。各値は、4つの独立した実験の平均±SDである。
【
図16】
図16は、CAR-T細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現を示す。T細胞活性化マーカー(CD25、CD44、CD69)の発現および細胞内IFN-γ発現を7日目に測定した。
【
図17】
図17は、共培養におけるscFv IL-13Rα2 CAR-T細胞特異性およびIL-13Rα2+神経膠腫腫瘍細胞に対する細胞傷害を示す。様々なエフェクター対標的(E:T)比で標的細胞として固定数のカルセイン-バイオレット負荷腫瘍細胞(5000)と6時間共培養した後、蛍光色素の放出を測定してCAR-T細胞の細胞溶解活性を決定した。IL-13Rα2ノックアウト(KO)腫瘍細胞を陰性対照として使用した。各値は、4連で行われた3回の独立した実験の平均±SDである。
【
図18】
図18は、U251およびU87MG神経膠腫細胞株におけるIL-13Rα2のsiRNAサイレンシングを示す。IL-13Rα2/β-アクチンの相対蛍光単位をRT-qPCRアッセイによって測定した。各値は、独立して3連で行われた4回の実施の平均±SDを示す。
【
図19】
図19は、腫瘍細胞と共培養した場合のscFv IL-13Rα2 CAR-T細胞によるIFN-γ放出を示す。scFv IL-13Rα2 CAR-TをIL-13Rα2陽性腫瘍に曝露すると、CAR-T細胞は大量のIFN-γを産生した。しかしながら、IL-13Rα2陰性T98GまたはIL-13Rα2 KO腫瘍細胞に曝露された場合、それらは基底量のIFN-γのみを分泌した。4連で行われた3回の独立した実験の代表的なデータを示す。
【
図20】
図20は、ボイデンチャンバーアッセイ(Boyden chamber assay)を示す。in vitro遊走アッセイは、scFv-IL-13Rα2 CAR-T細胞が、様々な濃度のHuIL-13Rα2 Fcを含有する培地またはIL-13Rα2陽性U251腫瘍細胞培養物由来の馴化培地において濃度依存的様式で上部チャンバーから下部チャンバーに遊走し得ることを実証する。対照培地またはIL-13Rα2陰性T98G腫瘍細胞培養物由来の馴化培地では、遊走は観察されなかった。各値は、3連で行われた4つの独立した実験の平均±SDである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
配列表
本明細書または添付の配列表に列挙されている任意の核酸およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.§1.822で定義されているように、ヌクレオチド塩基およびアミノ酸の標準的な文字略語を使用して示されている。少なくともいくつかの場合、各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖に対する任意の参照によって含まれると理解される。配列表は、参照により本明細書に組み込まれる、2022年3月30日に作成された24,576バイトのASCIIテキストファイル「Sequence.txt」として提出される。添付の配列表において:
【0015】
配列番号1は、例示的なIL-13Rα2 scFvのアミノ酸配列である。
【化1】
【0016】
配列番号2は、配列番号1のIL-13Rα2 scFvをコードする例示的な核酸配列である。
【化2】
【0017】
配列番号3は、例示的なIL-13Rα2-CARのアミノ酸配列である。
【化3】
【0018】
配列番号4は、配列番号3のIL-13Rα2-CARコンストラクトをコードする例示的な核酸配列である。
【化4-1】
【化4-2】
【0019】
配列番号5は、例示的なCD8αシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
【化5】
【0020】
配列番号6は、例示的なCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。
【化6】
【0021】
配列番号7は、例示的なCD28膜貫通ドメイン(CD28TM)のアミノ酸配列である。
【化7】
【0022】
配列番号8は、例示的なCD28細胞質シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列である。
【化8】
【0023】
配列番号9は、例示的な4-1BB細胞質シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列である。
【化9】
【0024】
配列番号10は、例示的なCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列である。
【化10】
【0025】
配列番号11は、配列番号5のCD8αシグナルペプチドをコードする例示的な核酸配列である。
【化11】
【0026】
配列番号12は、配列番号6のCD8αヒンジドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【化12】
【0027】
配列番号13は、配列番号7のCD28膜貫通ドメイン(CD28TM)をコードする例示的な核酸配列である。
【化13】
【0028】
配列番号14は、配列番号8のCD28細胞質シグナル伝達ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【化14】
【0029】
配列番号15は、配列番号9の4-1BB細胞質シグナル伝達ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【化15】
【0030】
配列番号16は、配列番号10のCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【化16】
【0031】
配列番号17は、IL-13Rα2をサイレンシングするための例示的なsiRNAの核酸配列である。
【化17】
【0032】
配列番号18は、例示的なscFv IL-13Rα2 CARのアミノ酸配列である
【化18】
【0033】
詳細な説明
I.用語
特に明記しない限り、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Lewin’s Genes X,ed.Krebs et al.,Jones and Bartlett Publishers,2009(ISBN 0763766321);Kendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Publishers,1994(ISBN 0632021829);Robert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by Wiley,John&Sons,Inc.,1995(ISBN 0471186341);およびGeorge P.Redei,Encyclopedic Dictionary of Genetics,Genomics,Proteomics and Informatics,3rd Edition,Springer,2008(ISBN:1402067534)、ならびに他の同様の参考文献に見出され得る。
【0034】
他に説明されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語である「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられる全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供されることを理解されたい。
【0035】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0036】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定の用語の以下の説明が提供される。
【0037】
抗体:抗原のエピトープを認識して結合する(例えば、特異的に認識して特異的に結合する)少なくとも1つの可変領域を含むポリペプチドリガンド。哺乳動物免疫グロブリン分子は、重(H)鎖および軽(L)鎖から構成され、各々が可変重(VH)領域および可変軽(VL)領域とそれぞれ呼ばれる可変領域を有する。合わせて、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原の結合を担う。哺乳動物免疫グロブリンには、抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがある。
【0038】
抗体可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」として知られる「フレームワーク」領域および超可変領域を含む。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合を担う。抗体のフレームワーク領域は、CDRを三次元空間に配置し、整列させるのに役立つ。所与のCDRのアミノ酸配列境界は、Kabat et al.によって記載されたものを含む、いくつかの周知のナンバリングスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。(Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991;「Kabat」ナンバリングスキーム)、Chothia et al.(Chothia and Lesk,J Mol Biol 196:901-917,1987;Chothia et al.,Nature 342:877,1989;およびAl-Lazikani et al.,(JMB 273,927-948,1997を参照;「Chothia」ナンバリングスキーム)、およびthe ImMunoGeneTics(IMGT)database(Lefranc,Nucleic Acids Res 29:207-9,2001を参照;「IMGT」ナンバリングスキーム)。KabatおよびIMGTデータベースは、オンラインで維持される。
【0039】
単鎖可変領域フラグメント(scFv)抗体は、遺伝子融合された単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された1またはそれを超える抗体のVHおよびVLドメインを含む遺伝子操作された分子である(例えば、Bird et al.,Science,242:423-426,1988;Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,85:5879-5883,1988;Ahmad et al.,Clin.Dev.Immunol.,2012,doi:10.1155/2012/980250;Marbry,IDrugs,13:543-549,2010を参照)。scFvにおけるVHドメインおよびVLドメインの分子内配向は、典型的にはscFvにとって決定的ではない。したがって、両方の可能な配置(VHドメイン-リンカードメイン-VLドメイン;VLドメイン-リンカードメイン-VHドメイン)を有するscFvを使用することができる。dsFvでは、VHおよびVLは、ジスルフィド結合を導入して鎖の会合を安定化するように変異している。ダイアボディ(diabody)も含まれ、これは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによってドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作り出す二価二重特異性抗体である(例えば、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:6444-6448,1993;Poljak et al.,Structure,2:1121-1123,1994を参照)。
【0040】
抗体には、キメラ抗体(ヒト化マウス抗体等)およびヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体等)等の遺伝子操作された形態も含まれる。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997も参照されたい。
【0041】
がん:異常なまたは制御されない細胞の成長を特徴とする疾患。がんに関連することが多い他の特徴としては、転移、隣接細胞の正常な機能への干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症または免疫学的応答の抑制または悪化、リンパ節等の周囲または遠隔の組織または器官の浸潤等が挙げられる。「転移性疾患」は、元の腫瘍部位を離れ、例えば血流またはリンパ系を介して身体の他の部分に移動したがん細胞を指す。
【0042】
チェックポイント阻害剤:細胞周期チェックポイントならびに免疫チェックポイントの阻害剤を含む。細胞周期チェックポイントは、有糸分裂中に細胞が各細胞周期段階を正しく完了することを確実にする保護機構を指す。チェックポイント阻害剤は、DNA損傷を有する細胞にSおよびG2/M停止を迂回させて有糸分裂に入り、分裂期崩壊(mitotic catastrophe)による細胞死を引き起こすことによって、がん細胞をDNA損傷薬に感作させることができる。細胞周期チェックポイント阻害剤は、Visconti et al.,J Exp Clin Cancer Res.35(1):153,2016によってより詳細に記載されている。免疫チェックポイントは、自己反応性免疫細胞を防ぐ保護機構を指す。免疫チェックポイントは、免疫細胞(T細胞等)の阻害性受容体が細胞上の抗原を「自己」抗原として認識すると活性化する。免疫チェックポイントは自己免疫障害を予防するための重要な機構であるが、がん性細胞は免疫チェックポイントを利用して免疫認識を抑制または回避することができる。したがって、チェックポイント阻害剤は、免疫細胞ががん性細胞を認識して排除するのを助けることができる。
【0043】
多くのチェックポイント阻害剤が、当技術分野で公知である。いくつかの非限定的な例としては、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、アテゾリズマブ(Tencentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、パルボシクリブ(Ibrance(登録商標))、リボシクリブ(Kisquali(登録商標))、およびアベマシクリブ(Verzenio(登録商標))が挙げられる。さらなる例は、Qiu et al.,Journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology,126(3):450-464,2018;Visconti et al.,J Exp Clin Cancer Res.35(1):153,2016;およびMills et al.Cancer Res.77(23):6489-6498,2017に提供される。
【0044】
チェックポイント阻害剤はまた、紡錘体形成チェックポイント阻害剤を含み得る。例えば、紡錘体形成チェックポイント阻害剤には、MK-1775(AZD1775)、タキサンまたはビンカアルカロイド(Zhou and Giannakakou.Curr Med Chem Anticancer Agents.5:65-71,2005;and Visconti et al.,J Exp Clin Cancer Res.35(1):153,2016を参照)が含まれる。
【0045】
キメラ抗原受容体(CAR):抗原結合部分(単一ドメイン抗体またはscFv等)およびシグナル伝達ドメイン、例えば、T細胞受容体由来のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)を含むキメラ分子。典型的には、CARは、抗原結合部分、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、典型的には、CD3ζまたはFcεRIγ等の免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有するシグナル伝達鎖を含む。いくつかの例では、細胞内ドメインは、CD28、4-1BB(CD137)、ICOS、OX40(CD134)、CD27および/またはDAP10等の少なくとも1つの追加の共刺激ドメインの細胞内部分も含む。
【0046】
相補性決定領域(CDR):抗体の結合親和性および特異性を規定する超可変アミノ酸配列の領域。哺乳動物免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ、VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3およびVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3とそれぞれ呼ばれる3つのCDRを有する。
【0047】
有効量:対象におけるがん等の疾患または病理的状態の症状および/または根底にある原因を処置、低減および/または改善するのに十分な、開示されるIL-13Rα2-CAR-T細胞またはIL-13 Rα2-CAR-NK細胞等の作用物質の量。非限定的な例では、有効量は、対象の腫瘍成長を阻害または減少させるのに十分な量である。
【0048】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤:いくつかのHDAC阻害剤は、細胞成長の停止およびアポトーシスを誘導することが示されており、したがって潜在的な抗がん治療薬である。HDAC阻害剤のいくつかの非限定的な例としては、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、酪酸ナトリウム(NaB)、SP600125(Sigma-Aldrich)、SR11302(Tocris Bioscience)およびロミデプシン(Marks and Jiang,Cell Cycle 2005,4:549-551;Duvic et al.Blood 109:31-39,2007;およびFujisawa et al.Journal of Translational Medicine 9:37,2011を参照)が挙げられる。
【0049】
IL-13-PE免疫毒素:IL-13-PEは、IL-13および切断型シュードモナス外毒素からなる組換え免疫毒素である。IL-13-PEは、in vitroおよびin vivoの両方で、高レベルのIL-13 Rα2を発現する腫瘍細胞に対して高度に細胞傷害性であることが示されている(Debinski et al.,Clin Cancer Res.1:1253-1258,1995;Debinski et al.,Biol Chem.270:16775-16780,1995;およびJoshi et al.Clin Cancer Res.8:1948-1956,2002を参照)。
【0050】
インターロイキン-13受容体α2(IL-13 Rα2):IL-13Rα2は、多面的免疫調節性サイトカインインターロイキン-13(IL-13)および既知の腫瘍抗原に対する高親和性受容体である。がんにおけるIL-13Rα2発現の重要性は知られておらず、アップレギュレーションの機構は依然として不明であるが、IL-13Rα2は、悪性神経膠腫、頭頸部がん、カポジ肉腫、腎細胞癌、および卵巣癌を含む様々なヒトがんにおいて過剰発現されることが示されている。さらに、最近の研究では、膵臓腫瘍の71%がIL-13Rα2を過剰発現することが示されている(Fujisawa et al.Journal of Translational Medicine 9:37,2011)。
【0051】
単離された:「単離された」生物学的成分、例えば核酸、タンパク質(抗体を含む)または細胞は、その成分が存在する環境(細胞等)中の他の生物学的成分、例えば他の染色体ならび染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質および細胞から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸を包含する。
【0052】
マクロファージ:人体のほとんどの組織に見られる骨髄前駆体に由来する大きな遊走性単核食細胞。マクロファージは、Toll様受容体(TLR)、C型レクチン受容体、スカベンジャー受容体、レチノイン酸誘導性遺伝子1(RIG1)様ヘリカーゼ受容体(RLR)およびNOD様受容体を含むパターン認識受容体(PRR)を発現して、病原体、異物、および死細胞または瀕死の細胞に関連するシグナルを認識する。
【0053】
マクロファージは非常に不均一であり、いくつかのサブクラスを含む。古典的活性化マクロファージ(M1マクロファージ)は、様々な病原体(例えば、細菌、原虫、およびウイルス)からの宿主の防御を媒介し、抗腫瘍免疫応答も媒介する。あるいは、活性化マクロファージ(M2マクロファージ)は抗炎症の役割を有し、創傷治癒を調節する。制御性マクロファージは、Fc受容体-γライゲーションに応答して大量のインターロイキン-10(IL-10)を分泌する。あまり明確に規定されていないマクロファージサブセットには、抗腫瘍免疫を抑制する腫瘍関連マクロファージおよび骨髄由来サプレッサー細胞(Murray et al.(2011)Nat Rev Immunol 11:723-737)が含まれる。
【0054】
ナチュラルキラー(NK)細胞:特定の抗原刺激の非存在下で、MHCクラスによる制限なしに標的細胞を死滅させる免疫系の細胞。標的細胞は、腫瘍細胞またはウイルスを保有する細胞であり得る。NK細胞は、CD56の存在およびCD3表面マーカーの非存在を特徴とする。NK細胞は、典型的には、正常な末梢血中の単核細胞画分のおよそ10~15%を構成する。歴史的に、NK細胞は、事前の免疫化も活性化もなしに特定の腫瘍細胞を溶解する能力によって最初に同定された。NK細胞は、MHCクラスI提示をダウンレギュレートすることによってCTL応答から逃れる可能性があるウイルスおよび腫瘍に対する「バックアップ」防御機構を提供すると考えられている。NK細胞は、直接的な細胞傷害性死滅に関与することに加えて、がんおよび感染を制御するために重要であり得るサイトカイン産生においても役割を果たす。
【0055】
いくつかの例では、「改変NK細胞」は、異種核酸(例えば、本明細書に開示される核酸またはベクターのうちの1またはそれより多く)で形質導入またはトランスフェクトされた、または1もしくそれを超える異種タンパク質を発現するNK細胞である。「改変NK細胞」および「形質導入されたNK細胞」という用語は、本明細書のいくつかの例では互換的に使用される。
【0056】
薬学的に許容され得る担体:薬学的投与に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Adejare(Ed.),Academic Press,London,United Kingdom,23rd Edition(2021)を参照)。そのような担体または希釈剤の例には、水、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、平衡塩類溶液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されない。リポソームおよび固定油等の非水性ビヒクルも使用することができる。補助活性化合物も組成物に組み込むことができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法としては、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Adejare(Ed.),Academic Press,London,United Kingdom,23rd Edition(2021)を参照されたい。
【0057】
精製された:精製されたという用語は、絶対純度を必要とせず、むしろ、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製されたタンパク質、核酸または細胞調製物は、タンパク質、核酸または細胞がその初期環境にあるタンパク質、核酸または細胞よりも濃縮されているものである。一実施形態では、調製物は、タンパク質、核酸または細胞が調製物の総含有量の少なくとも50%を占めるように精製される。実質的に精製されたタンパク質または核酸は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%純粋である。したがって、具体的で非限定的な1つの例では、実質的に精製されたタンパク質または核酸は、他の成分を90%含まない。
【0058】
組換え:天然に存在しない配列を有するか、そうでなければ分離された2つの配列セグメント(例えば、「キメラ」配列)の人工的な組み合わせによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または例えば遺伝子工学技術による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成することができる。
【0059】
対象:生きている多細胞脊椎動物生物、限定されないが、非ヒト霊長類、げっ歯類等を含むヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー。本明細書に開示される特定の例では、対象はヒトである。
【0060】
T細胞:免疫応答の重要なメディエーターである白血球(リンパ球)。T細胞には、CD4+T細胞およびCD8+T細胞が含まれるが、これらに限定されない。CD4+T細胞は、「表面抗原分類4」(CD4)として知られるその表面にマーカーを有する免疫細胞である。ヘルパーT細胞としても知られるこれらの細胞は、抗体応答ならびにキラーT細胞応答を含む免疫応答を編成するのに役立つ。CD8+T細胞は、「表面抗原分類8」(CD8)マーカーを有する。一実施形態では、CD8+T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。別の実施形態では、CD8+細胞はサプレッサーT細胞である。
【0061】
活性化T細胞は、細胞増殖および/または1もしくそれを超えるサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γまたはTNFα等)の発現もしくは分泌の増加によって検出することができる。CD8+T細胞の活性化は、抗原に応答した細胞溶解活性の増加によっても検出することができる。
【0062】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、適応免疫に特徴的なT細胞受容体(TCR)と、自然免疫応答の一部であるNK細胞の表面受容体(例えば、α/β T細胞受容体と共にNK細胞に通常関連する細胞表面マーカーNK1.1)(Tupin et al.(2007)Nat Rev Microbiol 5:405-417)の両方を発現するT細胞のクラスである。
【0063】
いくつかの例では、「改変T細胞」は、異種核酸(例えば、本明細書に開示される核酸またはベクターのうちの1またはそれより多く)で形質導入またはトランスフェクトされた、または1もしくそれを超える異種タンパク質を発現するT細胞である。「改変T細胞」および「形質導入されたT細胞」という用語は、本明細書のいくつかの例では互換的に使用される。同様に、「改変NKT細胞」は、異種核酸(例えば、本明細書に開示される核酸またはベクターのうちの1またはそれより多く)で形質導入またはトランスフェクトされた、または1もしくそれを超える異種タンパク質を発現するNKT細胞である。
【0064】
形質導入されたまたは形質転換された:形質転換された細胞は、分子生物学技術によって核酸分子が導入された細胞である。本明細書で使用される場合、形質導入および形質転換という用語は、ウイルスベクターによる形質導入またはトランスフェクション、プラスミドベクターの使用、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、および粒子銃加速(particle gun acceleration)によるDNAの導入を含む、核酸分子がそのような細胞に導入され得る全ての技術を包含する。
【0065】
疾患の処置または改善:「処置する」とは、腫瘍サイズまたは腫瘍負荷の減少等、疾患または病理的状態が発症し始めた後に疾患または病理的状態の徴候または症状を減少または阻害する治療的介入を指す。「改善する」とは、がん等の疾患の徴候または症状の数または重症度の減少を指す。
【0066】
ベクター:宿主細胞(例えば、トランスフェクションまたは形質導入によって)に導入され、それによって形質転換された宿主細胞を産生することができる核酸分子。組換えDNAベクターは、組換えDNAを有するベクターである。ベクターは、複製起点等の宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列を含むことができる。ベクターはまた、1またはそれを超える選択マーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝要素を含むことができる。ウイルスベクターは、1またはそれを超えるウイルスに由来する少なくともいくつかの核酸配列を有する組換え核酸ベクターである。複製欠損ウイルスベクターは、少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠損に起因して、複製に必要なウイルスゲノムの1またはそれを超える領域の補完を必要とするベクターである。
【0067】
II.いくつかの実施形態の概要
scFvを含むインターロイキン-13受容体α2(IL-13Rα2)結合剤が本明細書に開示される。ヒンジ領域、膜貫通ドメインおよび1またはそれを超えるシグナル伝達ドメイン(例えば1またはそれを超える共刺激ドメイン)を含む細胞内ドメインに融合されたIL-13Rα2特異的結合剤(本明細書に開示されるIL-13Rα2 scFv等)を含むキメラ抗原受容体(CAR)も開示される。いくつかの例では、1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BBおよび/またはCD3ζに由来する。いくつかの例では、ヒンジ領域はCD8αに由来し、膜貫通領域はCD28に由来する。CARはまた、CD8αシグナルペプチド等のシグナルペプチドをコードし得る。IL-13Rα2特異的結合剤およびIL-13Rα2-CARをコードする核酸および該核酸を含むベクターも提供される。
【0068】
IL-13Rα2特異的結合剤またはIL-13Rα2-CARをコードする核酸またはベクターで形質転換された免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)も本明細書で提供される。いくつかの例では、免疫細胞はIL-13Rα2-CARを発現する。細胞は、核酸またはベクターで形質転換する前に、血液試料、例えば対象の末梢血から得ることができる。
【0069】
対象においてIL-13Rα2を発現するがんを処置する方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、IL-13Rα2-CARを発現する有効量の免疫細胞を対象に投与することを含む。いくつかの例では、免疫細胞は対象にとって自家である。他の例では、免疫細胞は同種異系である。いくつかの例では、対象は、手術、放射線、化学療法、追加の免疫療法、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の投与、細胞周期および/またはチェックポイント阻害剤の投与、アドレノメデュリンの投与、IL-13-PE免疫毒素の投与、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせ等の追加の処置を受ける。いくつかの例では、対象は、がん、例えば、膵臓がん、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌、カポジ肉腫、または副腎癌を有する。
【0070】
III.IL-13Rα2特異的結合剤
いくつかの例では、キメラ抗原受容体(CAR)の標的化部分として使用されるインターロイキン-13受容体α2(IL-13Rα2)結合剤が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、IL-13Rα2結合剤は、IL-13Rα2に特異的に結合する単鎖可変領域フラグメント(scFv)である。
【0071】
いくつかの実施形態では、IL13-Rα2結合剤は、表1に提供されるCDR配列を含む抗体またはscFvである。いくつかの例では、抗体またはscFvはIL-13Rα2に特異的に結合し、それぞれ配列番号1の可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列、ならびに配列番号1の可変軽鎖(VL)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの例では、抗体またはscFvは、本明細書中に開示されるVH配列およびVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、VHドメインは配列番号1のアミノ酸1~118を含み、VLドメインは配列番号1のアミノ酸134~239を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、結合剤は、表1に提供されるCDRアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有するscFvである。他の実施形態では、結合剤はscFvであり、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【表1-1】
【表1-2】
【0073】
いくつかの実施形態では、scFvは、IL-13Rα2を発現する細胞等の標的細胞に結合する。いくつかの例では、細胞は、膵臓がん、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌、カポジ肉腫、または副腎癌細胞等のがん細胞(腫瘍細胞を含む)である。scFv結合は、IL-13Rα2発現が標的細胞においてアップレギュレートされた場合に増加または改善され得る。
【0074】
IV.IL-13Rα2キメラ抗原受容体
本明細書では、セクションIIIに記載されるIL13-Rα2特異的結合剤を含むIL-13Rα2キメラ抗原受容体(IL-13Rα2-CAR)が提供される。いくつかの実施形態では、IL-13Rα2 CARは、(a)IL-13Rα2特異的scFv(例えば、配列番号1)を含む抗原結合ドメインと、(b)ヒンジドメインと、(c)膜貫通ドメインと、(d)1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインとを含む。CARはまた、シグナルペプチド、リンカー、および/または組換え構築のための配列(制限酵素部位等)を含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインはIL-13Rα2特異的scFvであり、例えば、セクションIIに記載されているもの等である。いくつかの例では、CARは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなるIL-13Rα2 scFvを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、例えば配列番号6のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるCD8αヒンジドメインである。他の免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG4、またはIgD)由来のヒンジ領域、またはCD28もしくはCD40由来のヒンジ領域等、他のヒンジドメインを使用することができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメインであり、例えば、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、配列番号7のアミノ酸配列からなる。膜貫通ドメインはまた、CD8、CD4、CD3ζ、CD40、OX40-L、4-1BB、ICOS、ICOS-L、CD80、CD86、ICAM-1、LFA-1、ICAM-1、CD56、CTLA-4、PD-1、TIM-3、NKP30、NKP44、NKP40、NKP46、B7-H3、PD-L1、PD-2,およびCD70等の他のT細胞タンパク質に由来し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインは、1またはそれを超えるCD28、4-1BB(CD137)、CD8、CD40、OX40(CD134)、ICOS、CD27、DAP10、DAP12、OX40-L、4-1BBL、ICOS-L、CD80、CD86、ICAM-1、LFA-1、CD56、CTLA-4、PD-1、PDK、TIM-3、NKP30、NKP44、NKP40、NKP46、B7-H3、PD-L1、PD-2、CD70、CD3ζ、およびFcεRIγドメインのうちの1つまたはそれより多く、あるいはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせを含む。具体的な非限定的な例において、1またはそれを超えるシグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインであり、例えば、それぞれ配列番号8、9および10のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、scFvのN末端に位置するシグナルペプチドを更に含む。いくつかの例では、シグナルペプチドは、例えば配列番号5のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるCD8αシグナルペプチドである。他のシグナルペプチドには、IgGシグナル配列またはGM-CSFシグナル配列が含まれる。
【0078】
特定の例では、IL-13Rα2-CARは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、IL-13Rα2-CARは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。他の例では、IL-13Rα2 CARはシグナルペプチドを含まず、例えば、配列番号3のアミノ酸1~21を含まない。
【0079】
他の実施形態では、IL-13Rα2-CARは、CARを発現する免疫細胞の生存または持続を増加させるドメインを更に含む。いくつかの例では、ドメインは、サイトカイン受容体由来の細胞内ドメイン、例えば、インターロイキン(IL)-15受容体、IL-12受容体またはIL-18受容体由来の細胞内ドメインである。他の例では、ドメインは、成長因子受容体由来の細胞内ドメイン、例えばCD40、NKG2D、NKP40またはNKP46由来の細胞内ドメインである。いくつかの例では、ドメインは、CARのCD3ζドメインのC末端に位置する。追加の実施形態では、IL-13Rα2-CARは、IL-13Rα2-CAR発現細胞を排除するために使用することができる誘導性遺伝子(カスパーゼ9等)を更に含む(例えば、「自殺」遺伝子)。誘導性遺伝子は、サイトカイン放出症候群(「サイトカインストーム」)等のオフターゲット副作用(またはオンターゲット/オフ腫瘍効果)の場合に活性化され得る。
【0080】
CARの生物学的活性を保持し、そのCARの生物学的活性が改変体であるか、または特定のドメインの生物学的活性を保持する、本明細書に記載のIL-13Rα2-CARまたはそのドメインの機能的改変体も提供される。機能的改変体は、親のCARまたはドメインとアミノ酸配列において少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれを超えて同一であり得る。置換は、例えば、細胞外標的化ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインのうちの1つまたはそれより多くにおいて行うことができる。
【0081】
いくつかの例では、機能的改変体は、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換(例えば最大10個の保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の保存的置換)を有する親のCARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。他の例では、機能的改変体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換(例えば最大10個の非保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の非保存的置換)を有する親のCARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的改変体の生物学的活性を妨害も阻害もしない。非保存的アミノ酸置換は、機能的改変体の生物学的活性が親のCARまたはドメインと比較して増加するように、機能的改変体の生物学的活性を増強し得る。
【0082】
CARまたはそのドメインは、いくつかの例では、1またはそれを超える天然に存在するアミノ酸の代わりに1またはそれを超える合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸としては、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、a-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、Ν’,Ν’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、oc-アミノシクロヘプタンカルボン酸、-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。CARは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えばジスルフィド架橋を介した環化、または酸付加塩への変換、および/または必要に応じて二量体化もしくは重合もしくはコンジュゲート化され得る。
【0083】
V.核酸およびベクター
本明細書に開示されるIL13-Rα2結合剤またはIL-13Rα2キメラ抗原受容体(IL-13Rα2-CAR)をコードする核酸も提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、核酸は、IL13-Rα2結合剤をコードする。いくつかの例では、核酸は、表1に提供されるCDR配列の各々をコードし、例えば、核酸は、配列番号1のVHドメインCDR1、CDR2およびCDR3をコードし、配列番号1のVLドメインCDR1、CDR2およびCDR3をそれぞれコードする。いくつかの例では、核酸は、表1に提供されるCDR配列の各々を含むアミノ酸配列をコードし、配列番号1と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの例では、核酸は、配列番号1を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列をコードする。さらなる例では、核酸は、表1に提供されるCDR配列の各々をコードし、配列番号2と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの例では、IL13-Rα2結合剤をコードする核酸は、配列番号2を含むか、または配列番号2からなる。
【0085】
いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に開示されるIL-13Rα2-CARをコードする。いくつかの例では、核酸分子は、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。いくつかの例では、核酸分子は、表1に提供されるCDR配列(核酸は、配列番号1のVHドメインCDR1、CDR2およびCDR3ならびにVLドメインCDR1、CDR2およびCDR3をコードする)の各々を含み、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。いくつかの例では、核酸分子は、配列番号3を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列をコードする。さらなる例では、IL-13Rα2-CARをコードする核酸分子は、配列番号4と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有する核酸配列を含む。いくつかの例では、IL-13Rα2-CARをコードする核酸分子は、表1に提供されるCDR配列の各々をコードする核酸配列を含み、核酸は配列番号4と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有する。他の例では、IL-13Rα2-CARをコードする核酸分子は、配列番号4を含むかまたはこれからなる。
【0086】
本明細書に開示される核酸(例えば、IL-13Rα2特異的結合剤またはIL-13Rα2-CARをコードする核酸)をコードするベクター(例えば、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、人工染色体)も提供される。特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、「発現ベクター」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、開示されるIL-13Rα2 scFvまたはIL-13Rα2-CARをコードする核酸分子は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)等の宿主細胞における発現のためのベクター(ウイルスベクター等)に含まれる。
【0087】
ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術等によって、追加のDNAセグメントを挿入することができる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ウイルス由来のDNAまたはRNA配列がウイルスにパッケージングするためにベクター中に存在する(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)。複製欠損ウイルスベクターは、少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠損に起因して、複製に必要なウイルスゲノムの1またはそれを超える領域の補完を必要とするベクターである。
【0088】
いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルス(例えば、MoMLVまたはレンチウイルス)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等のウイルスベクターである。他の適切なウイルスベクターには、ポリオーマ、SV40、ワクシニアウイルス、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、鳥類、ネズミおよびヒト起源のアルファウイルスおよびレトロウイルス、バキュロウイルス(オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス;AcMNPV)ベクター、レトロウイルスベクター、ポリオベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、水痘ベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびポリオウイルスベクターが含まれる。使用される具体的な例示的なポックスウイルスとしては、オルソポックス、水痘、アビポックスウイルスおよびカプリポックスのウイルスが挙げられる。オルトポックスには、ワクシニア、エクトロメリア、およびアライグマポックスが含まれる。使用のオルソボックスの一例はワクシニアである。アビポックスには、鶏痘、カナリア痘および鳩痘(pigeon pox)が含まれる。カプリポックスには、山羊痘および羊痘が含まれる。一例では、水痘は豚痘である。具体的な非限定的な例では、ベクターはpCDH-MSCV-MCS-EF1a-GFP-T2A-Puroレンチウイルスベクター(例えば、カタログ番号CD713B-1、System Biosciences、カリフォルニア州パロアルト94303)である。
【0089】
ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択され得る、発現される核酸配列に作動可能に連結された1またはそれを超える調節エレメント(例えば、プロモーター(CMV、SV40、EF1α、β-アクチン、hPGK、またはRPBSA等);転写開始部位(TSS);エンハンサー;インシュレーター;A/Tリッチ領域;転写因子(TF)結合部位;転写および/または翻訳ターミネーター;開始配列、または他の調節エレメント)を含み得る。「作動可能に連結される」は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列(例えば、ベクターが宿主細胞に導入される場合、in vitro転写/翻訳系において、または宿主細胞において)の発現を可能にする様式で調節エレメントに連結されていることを意味する。ベクター発現は、構成的(例えば、SV40、CMV、UBC、EF1α、PGK、およびCAGG)、誘導性(例えば、IPTG)、または細胞/組織特異的(例えば、T細胞特異的、例えばdLckまたはCD3δ)であり得る。いくつかの例では、プロモーターは、CAR T細胞またはTCR活性化時に誘導可能な合成プロモーターである(例えば、「iSynPro」プロモーター、国際公開第2018/213332号を参照)。ベクターを宿主細胞に導入して、本明細書に記載の核酸によってコードされる産物(例えば、IL13-Rα2結合剤またはIL-13Rα2-CAR)を発現させることができる。ベクターはまた、抗生物質(例えば、ピューロマイシン、ハイグロマイシン)または検出可能なマーカー(例えば、GFP、YFP、RFP、ルシフェラーゼ、X-gal)等の1またはそれを超える選択マーカー遺伝子を含むことができる。いくつかの例では、選択マーカーまたはレポーターはベクターに含まれない。
【0090】
ベクターは、誘導可能なアポトーシス促進性分子(例えば、Fas関連デスドメイン含有タンパク質(FADD)、Bcl-2関連デスプロモーター(BAD)または誘導性カスパーゼ9(iCasp9))または誘導性活性化系(例えば、My88/CD40(iMC))等の安全スイッチシステム(safety switch system)を含み得る。安全スイッチシステムに関するさらなる情報は、例えば、Gargett and Brown(2014)Front.Pharmacol.5:235 and Gerken et al.(2017)Cancer Discov.7(11):1306-1319に見出すことができる。いくつかの例では、安全スイッチをコードするベクターは、本明細書に開示されるIL-13Rα2-CARまたはIL13-Rα2結合剤をコードするベクターとは異なるベクターである。いくつかの例では、安全スイッチをコードするベクターは、IL-13Rα2-CARまたはIL13-Rα2結合剤もコードする。
【0091】
いくつかの例では、安全スイッチは、二量体化の化学誘導因子(CID)(例えば、AP1903、AP20187、AP21967)に結合するFKBP(FK 506結合タンパク質)改変体と融合したアポトーシス促進性分子である。いくつかの例では、アポトーシス促進性分子は、成長を制御するために、あるいは、本明細書中に開示されるIL-13Rα2-CARまたはIL13-Rα2結合剤をコードするベクター等のベクターにより形質導入または形質転換される細胞を排除するために活性化される。いくつかの例では、誘導可能なアポトーシス促進性分子の活性化は、例えば、形質導入または形質転換された細胞の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%を排除することによって、形質導入または形質転換された細胞を排除する。いくつかの例では、アポトーシス促進性分子は、形質導入または形質転換された細胞をCIDと接触させることによって活性化される。
【0092】
いくつかの例では、安全スイッチは誘導性活性化システム(例えば、My88/CD40(iMC))である。いくつかの例では、誘導性活性化システムは、ベクター(例えば、本明細書に開示されるIL-13Rα2-CARまたはIL13-Rα2結合剤をコードするベクター)により形質導入または形質転換される細胞の活性を増大させるために活性化される。いくつかの例では、誘導性活性化システムの活性化は、例えば、増殖、サイトカイン産生または腫瘍標的化を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも400%またはそれを超えて増加させることによって、形質転換された細胞の活性を増加させる。いくつかの例では、誘導性活性化システムは、形質転換された細胞をCID(例えば、AP1903、AP20187、AP21967)と接触させることによって活性化される。
【0093】
VI.IL-13Rα2 CARを発現する細胞
また、本明細書中には、開示のIL-13Rα2-CARを発現する細胞(例えば、免疫細胞)、例えば、本明細書に開示される核酸(例えば、本明細書に開示されるIL13-Rα2結合剤またはIL-13Rα2-CARをコードする核酸)またはその核酸をコードするベクターを含む細胞も提供される。例示的な免疫細胞には、T細胞、NK細胞、NKT細胞および/またはマクロファージが含まれる。いくつかの例では、細胞はT細胞である。いくつかの例では、細胞は、配列番号3または配列番号3のアミノ酸22~538と少なくとも90%の同一性を有するIL-13Rα2-CARを発現する。いくつかの例では、細胞は、配列番号3または配列番号3のアミノ酸22~538を含むかまたはそれからなるIL-13Rα2-CARを発現する。いくつかの例では、細胞は、配列番号3を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸22~538をコードする核酸配列で形質導入またはトランスフェクトされる。さらなる例では、細胞に、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を形質導入またはトランスフェクトする。いくつかの例では、核酸配列は、配列番号4を含むかまたはそれからなる。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞は、単離された免疫細胞、例えば単離されたT細胞(初代T細胞または対象から得られたT細胞等)、単離されたNK細胞(初代NK細胞または対象から得られたNK細胞等)、単離されたNKT細胞、または単離されたマクロファージである。細胞型は、発現マーカーの有無に基づいて同定することができ、例えば、NK細胞はCD56陽性かつCD3陰性であり、T細胞はCD4またはCD8陽性であり得、NKT細胞はNK1.1陽性かつα/β T細胞受容体陽性であり、マクロファージは、PRR、TLR、C型レクチン受容体、スカベンジャー受容体、RLRおよびNOD様受容体を含むいくつかの受容体を発現する。いくつかの例では、細胞は単離されたT細胞である。さらなる例では、細胞は単離されたCD8+T細胞である。いくつかの例では、細胞は単離されたナイーブT細胞である。ナイーブT細胞は、CD45RA、CCR7、CD62L、CD127、およびCD132表面マーカーを発現し、CD25、CD44、CD69、CD45RO、またはHLA-DRマーカーを欠く。いくつかの例では、免疫細胞は、対象の末梢血、リンパ節、胸腺、骨髄、腫瘍組織、脂肪組織、ヒト胚性幹細胞(hESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、または臍帯血から得られる。非限定的な例では、細胞は、対象の末梢血から単離されたT細胞である。さらなる例では、対象から得られた免疫細胞は、例えば、本明細書に開示されるベクターまたは核酸による形質転換または形質導入の前および/または後に、濃縮、精製および/または拡大培養される。いくつかの例では、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)は、がんを有する対象から採取および拡大培養される。いくつかの例では、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)は、がんを有していない対象から採取および拡大培養される。
【0095】
いくつかの実施形態では、細胞は、タンパク質発現および/またはウイルスの産生(例えば、レトロウイルスの産生)に適した細胞型である。例示的な細胞型としては、微生物(例えば、細菌または酵母)、古細菌、昆虫、真菌、植物または哺乳動物の細胞が挙げられる。特定の細胞株の非限定的な例としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、SF9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポラ(Neurospora)、ならび不死化哺乳動物骨髄系およびリンパ系細胞株が挙げられる。一般的に使用される哺乳動物宿主細胞株の非限定的な例には、VEROおよびHeLa、HEK293T、CHO、WI38、BHK、およびCOS細胞株が含まれるが、より高い発現、または望ましい翻訳後修飾(例えば、グリコシル化パターン)、または他の特徴を提供するように設計された細胞等の他の細胞株を使用してもよい。いくつかの例では、本明細書に開示される核酸またはベクター(例えば、本明細書に開示されるIL13-Rα2結合剤、またはIL-13Rα2-CARをコードする核酸もしくベクター)は、特定の生物、例えば細菌(例えば、大腸菌(E.coli))、真菌(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae))、植物(例えば、タバコ(N.tabacum NT-1))、または動物(例えば、ヒトHEK293T細胞またはT細胞)における発現のためにコドン最適化されている。ベクター(例えば、発現ベクター)の適切な例を上に提供する。
【0096】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に開示されるIL13-Rα2結合剤もしくはIL-13Rα2-CARをコードする核酸、または核酸をコードするベクターで形質導入または形質転換(トランスフェクトを含む)される。細胞(例えば、免疫細胞)を形質転換する例示的な方法には、化学形質転換(リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ヒートショック、リポフェクションおよび粒子衝突が含まれる。いくつかの例では、核酸またはベクターは、細胞を核酸またはベクターを含むナノ粒子と接触させることによって導入される。形質転換は、安定発現または一過性発現に使用することができる。形質転換または形質導入の後、IL-13Rα2-CARを発現する細胞を、例えば、IL-13Rα2に結合する標識抗体を使用するフローサイトメトリーによって検出および/または濃縮することができる。いくつかの例では、形質導入されたまたは形質転換された細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)は、例えば、形質転換または形質導入後のある期間にわたって細胞培養によって拡大培養される。いくつかの例では、形質導入または形質転換された免疫細胞の一部または全部を、後の使用のために凍結保存する。
【0097】
VII.免疫療法の方法
開示されるIL-13Rα2-CARを発現する有効量の細胞(例えば、IL-13Rα2-CARを発現する免疫細胞、例えば、IL-13Rα2-CAR-T細胞、IL-13Rα2-CAR-NK細胞、IL-13Rα2-CAR-NKT細胞またはIL-13Rα2-CAR-マクロファージ細胞)を投与することを含む、がんを有する対象を処置する方法も本明細書に開示される。具体的な非限定的な例では、有効量のIL-13Rα2-CAR-T細胞が、対象に投与される。開示されるIL-13Rα2-CARを発現する細胞は、試料、例えば対象の末梢血試料から単離された免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞またはマクロファージ)から作製され得、その後、IL-13Rα2-CARで形質転換または形質導入され得る。いくつかの例では、細胞は、対象に対して自家(対象由来)である。他の例では、細胞は同種異系(ドナー由来)である。いくつかの例では、試料は、がんを有する対象に由来する。いくつかの例では、細胞は、試料からの単離後および/またはIL-13Rα2-CARによる形質転換もしくはトランスフェクション後に、濃縮、精製および/または拡大培養される。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞および薬学的に許容され得る担体を含む組成物を対象に投与することを含む。いくつかの例では、細胞は、安全スイッチシステムをコードするベクターを含む。いくつかの実施形態では、方法は、IL-13Rα2-CARをコードするベクターおよび薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの例では、ベクターは安全スイッチシステムをコードする。
【0099】
「薬学的に許容され得る担体」は、薬学的投与に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Adejare(Ed.),Academic Press,London,United Kingdom,23rd Edition(2021)を参照)。そのような担体または希釈剤の例には、水、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、平衡塩類溶液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されない。リポソームおよび固定油等の非水性ビヒクルも使用することができる。補助活性化合物も組成物に組み込むことができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法としては、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Adejare(Ed.),Academic Press,London,United Kingdom,23rd Edition(2021)を参照されたい。
【0100】
いくつかの例では、組成物は、約104~1012個のIL-13Rα2-CAR細胞(例えば、約104~108個の細胞、約106~108個の細胞、または約106~1012個の細胞)を含む。いくつかの例では、組成物は、少なくとも約104、105、106または107個のIL-13Rα2-CAR細胞を含む。他の例では、組成物は、約104、105、106、107、108、109または1010個以下のIL-13Rα2-CAR細胞を含む。いくつかの例では、組成物は、約104~1010個のIL-13Rα2-CAR細胞/kg(例えば、約104、105、106、107、108、109、または1010細胞/kg)が対象に投与されるように調製され得る。適切な用量は、臨床試験を通して決定することができる。
【0101】
IL-13Rα2-CAR細胞の集団は、典型的には、非経口的に、例えば、静脈内投与されるが、腫瘍または腫瘍の近く(例えば、局所投与)への注射もしくは注入、または腹膜腔への投与も使用することができる。適切な投与経路は、対象、処置されている状態、および他の要因等の要因に基づいて、熟練した臨床医によって決定することができる。
【0102】
IL-13Rα2-CAR細胞の集団の複数回用量を対象に投与することができる。例えば、IL-13Rα2-CAR細胞を、毎日、1日おきに、1週間に2回、毎週、1週間おきに、3週間毎に、毎月、またはそれ未満の頻度で投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置されている状態、以前の治療歴、および他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。
【0103】
いくつかの例では、開示されるIL-13Rα2-CARを発現する細胞の有効量は、対象におけるがんの1またはそれを超える徴候または症状を予防するため、処置するため、低減するためおよび/または改善するために十分な量である。他の例では、有効量は、IL-13Rα2を発現する腫瘍細胞を標的化し、排除するのに十分な量である。いくつかの例では、有効量は、対象におけるがんの成長または転移を阻害または遅延させるのに十分な量である。別の例では、有効量は、対象における腫瘍量または腫瘍密度を低下させるのに十分な量である。
【0104】
いくつかの実施形態では、対象には、例えば、IL-13Rα2-CAR細胞の生存および/または成長を支援するために、1またはそれを超えるサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21および/またはIL-12のうちの1つまたはそれより多く)が更に投与される。サイトカイン(複数可)は、IL-13Rα2-CAR細胞の前、後、または実質的に同時に投与することができる。いくつかの例では、約1~約5のサイトカインが対象に投与され、例えば、約1~約4、約1~約3、約1~約2、約2~約5、約2~約4、約2~約3、約3~約5、約3~約4または約4~約5のサイトカインが、IL-13Rα2-CAR細胞の前、後または実質的に同時に投与される。いくつかの例では、IL-2、IL-7またはIL-15のうちの少なくとも1つが、IL-13Rα2-CAR細胞の前、後または実質的に同時に対象に投与される。いくつかの例では、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7および/またはIL-15)が、例えば、IL-13Rα2-CAR細胞と共に同時に投与される。
【0105】
いくつかの例では、開示のIL-13Rα2-CARを発現する細胞(例えば、IL-13Rα2-CAR-T細胞、IL-13Rα2-CAR-NK細胞、IL-13Rα2-CAR-NKT細胞またはIL-13Rα2-CAR-マクロファージ細胞)を、安全スイッチシステムをコードするベクターで形質転換またはトランスフェクトする。いくつかの例では、治療有効量のCID(例えば、AP1903、AP20187、AP21967)を対象に投与して安全スイッチシステムを活性化させる。安全スイッチシステムは、任意の所望の時間、例えば処置の終了時に活性化させることができる。いくつかの例では、CIDは、成長を制御するために、または対象における形質転換された細胞もしくはトランスフェクトされた細胞の活性を増加させるために投与される。いくつかの例では、安全スイッチは誘導可能なアポトーシス促進性分子であり、誘導可能なアポトーシス促進性分子は、治療有効量のCIDを対象に投与することによって活性化される。いくつかの例では、CIDを投与することは、例えば、対象における形質転換またはトランスフェクトされた細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%を排除することによって、対象において形質転換またはトランスフェクトされた細胞を排除する。他の例では、安全スイッチは誘導性活性化システムであり、誘導性活性化システムは、有効量のCIDを対象に投与することによって活性化される。いくつかの例では、CIDを投与することは、適切な対照と比較して、対象における形質転換またはトランスフェクト細胞の活性を増加させる。例えば、対象における形質転換された細胞またはトランスフェクト細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも400%またはそれを超える増殖、サイトカイン産生または腫瘍標的化を増加させることによる。安全スイッチシステムに関するさらなる情報は、例えば、Gargett and Brown(2014)Front.Pharmacol.5:235 and Gerken et al.(2017)Cancer Discov.7(11):1306-1319に見出すことができる。
【0106】
いくつかの例では、対象は、IL-13Rα2を発現するがんを有する。例示的ながんには、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、副腎癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭状癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合神経膠腫等)、神経膠芽腫(多形性神経膠芽腫としても知られる)星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、頭頸部がん、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移が含まれる。がんには、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行型または高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病または骨髄異形成等の白血病等の血液学的(または血行性)がんも含まれる。
【0107】
いくつかの例では、対象は、例えば、同じタイプの非がん性細胞と比較して、IL-13Rα2を過剰発現するがんを有する。いくつかの例では、対象は固形腫瘍を有する。更なる例では、対象は、膵臓がん、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌、カポジ肉腫、または副腎癌を有する。いくつかの実施形態では、IL-13Rα2を発現または過剰発現するがんを有する対象が、処置のために選択される。
【0108】
いくつかの実施形態では、対象は、手術、放射線、化学療法、追加の免疫療法または他の治療のうちの1つまたはそれより多く等のさらなる処置を受ける。例示的な化学療法剤としては(限定されるものではないが)、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードまたはクロラムブシル等)、アルキルスルホネート(ブスルファン等)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジン等);葉酸類似体(メトトレキサート等)、ピリミジン類似体(5-FUまたはシタラビン等)、およびプリン類似体(メルカプトプリンまたはチオグアニン等)等の代謝拮抗物質;または天然産物、例えばビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシン等)、エピポドフィロトキシン(エトポシドまたはテニポシド等)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシンC)、および酵素(L-アスパラギナーゼ等)が挙げられる。追加の薬剤としては、白金配位錯体(シスプラチンとしても知られているシス-ジアミン-ジクロロ白金II等)、置換尿素(ヒドロキシ尿素等)、メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン等)、および副腎皮質抑制剤(ミトタンおよびアミノグルテチミド等);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン等)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール等)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール等)、抗エストロゲン(タモキシフェン等)、およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン等)等のホルモンおよび拮抗薬が挙げられる。最も一般的に使用される化学療法薬の例としては、アドリアマイシン、メルファラン(Alkeran(登録商標))Ara-C(シタラビン)、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ダウノルビシン、ダカルバジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル(または他のタキサン、例えばドセタキセル)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP-16が挙げられるが、より新しい薬物としては、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、イリノテカン(CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))イマチニブ(STI-571)、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、カペシタビン、イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))およびカルシトリオールが挙げられる。熟練した臨床医は、対象、処置されているがん、処置歴、および他の要因等の要因に応じて、対象のための適切な追加の治療法(本明細書に列挙されているものまたは他の現在の治療法から)を選択することができる。
【0109】
いくつかの例では、対象には、追加の治療薬、例えば、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4、抗PD1または抗PDL1)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、細胞周期チェックポイント阻害剤、アドレノメデュリン、IL-13-PE免疫毒素、またはそれらの2もしくはそれより多くの任意の組み合わせが投与される。追加の治療薬の投与は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞の投与の前、後、または実質的に同時に行われ得る。
【0110】
いくつかの例では、追加の治療薬は、腫瘍細胞上のIL-13Rα2の発現を増加させる。例えば、HDAC阻害剤による処置は、IL-13Rα2をほとんどまたは全く発現しない膵臓がん細胞株においてIL-13Rα2を劇的にアップレギュレートすることが報告されている。これらの阻害剤はまた、より高いレベルのIL-13Rα2を発現する細胞においてIL-13Rα2を適度にアップレギュレートした。IL-13Rα2のアップレギュレーションは、膵臓腫瘍細胞を、IL-13Rα2を発現する細胞を標的とする免疫毒素であるIL-13-PEに対して感作させ、相乗的な抗腫瘍効果をもたらすことが見出された(Fujisawa et al.Journal of Translational Medicine 9:37,2011を参照)。したがって、いくつかの例では、対象に、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、酪酸ナトリウム(NaB)、SP600125(Sigma-Aldrich)、SR11302(Tocris Bioscience)、またはロミデプシンのうちの1つまたはそれより多く等のHDAC阻害剤を投与する。さらなる例では、対象には、IL-13Rα2発現を増加させることも示されているアドレノメデュリンが投与される(Joshi et al.,Cancer Res.68:9311-9317,2008)。いくつかの例では、HDAC阻害剤またはアドレノメデュリンは、IL-13Rα2-CARを発現する細胞と実質的に同時に投与される。他の例では、HDAC阻害剤またはアドレノメデュリンは、IL-13Rα2-CARを発現する細胞を投与する前に、例えば、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも7日前、少なくとも8日前、少なくとも9日前、少なくとも12日間、少なくとも14日間、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも1ヶ月前またはそれより前に投与される。複数回用量のHDAC阻害剤またはアドレノメデュリンを対象に投与することができ、例えば、1日2回、1日1回、1日おきに、週に2回、毎週、隔週に、3週ごとに、毎月、またはより少ない頻度で投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置されている状態、以前の処置歴、腫瘍量および種類、疾患の臨床病期およびグレード、対象の全身健康状態、ならびに他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。
【0111】
いくつかの例では、対象にはチェックポイント阻害剤が投与される。いくつかの例では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CDK4、および/またはCDK6を標的とする。例示的な阻害剤には、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブが含まれる。チェックポイント阻害剤は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞と実質的に同時に投与され得る。いくつかの例では、チェックポイント阻害剤は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞を投与する前に、例えば、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも7日前、少なくとも8日前、少なくとも9日前、少なくとも12日間、少なくとも14日間、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも1ヶ月前またはそれより前に投与される。複数回用量のチェックポイント阻害剤を対象に投与することができ、例えば、1日2回、1日1回、1日おきに、週に2回、毎週、隔週に、3週ごとに、毎月、またはより少ない頻度で投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置されている状態、以前の治療歴、腫瘍量および種類、疾患の臨床病期およびグレードおよび対象の全身健康状態、ならびに他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、対象に、切断型シュードモナス外毒素(例えば、Kioi et al.,Mol.Cancer Ther.7(6):1579-1587,2008を参照)にコンジュゲートされたIL-13を含む組換えタンパク質等のIL-13PE免疫毒素を投与する。IL-13PE免疫毒素は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞と実質的に同時に投与され得る。いくつかの例では、IL-13PE免疫毒素は、IL-13Rα2-CARを発現する細胞を投与する前に、例えば、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも7日前、少なくとも8日前、少なくとも9日前、少なくとも12日間、少なくとも14日間、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも1ヶ月前またはそれより前に投与される。複数回用量のIL-13PE免疫毒素を対象に投与することができ、例えば、1日2回、1日1回、1日おきに、週に2回、毎週、隔週に、3週ごとに、毎月、またはより少ない頻度で投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置されている状態、以前の治療歴、腫瘍量および種類、疾患の臨床病期およびグレードおよび対象の全身健康状態、ならびに他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。いかなる特定の理論にも拘束されないが、IL-13Rα2-CAR細胞の投与前にIL-13-PEを投与することにより、腫瘍間質細胞の密度が低下し、それにより、IL-13Rα2-CAR細胞が腫瘍に浸潤するための空間が腫瘍微小環境に作り出されると考えられる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、特定の特徴および/または実施形態を説明するために提供される。これらの例は、本開示を記載された特定の特徴または実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
【0114】
実施例1
材料および方法
細胞株:
ヒトJurkat-T細胞、A172、U87MGおよびT98G神経膠腫細胞株をATCCから入手し、供給業者の指示に従って増殖させた。U251神経膠腫細胞株をNational Cancer Instituteから入手し、10%FBSを含むRPMI完全培地で維持した。T98GおよびU87MG神経膠腫細胞株を、10%FBSを補充したEMEM完全培地において維持した。これらの細胞株は、mRNAのRT-PCRおよびタンパク質発現の免疫細胞化学(ICC)分析によってIL-13Rα2発現について以前に特徴づけられた(Joshi et al.(2000)Cancer Res.60:1168-1172)。2つのIL-13Rα2陽性神経膠腫細胞株、U251およびU87MGを、SureSilencing(登録商標)shRNAプラスミド(Qiagen(メリーランド州ゲーサーズバーグ))を製造業者の説明書に従って使用して、siRNA技術によるIL-13Rα2遺伝子サイレンシングのために使用した。これらの細胞株は、いくつかの生物学的アッセイにおいて陰性対照として役立った。
【0115】
scFv-IL-13Rα2-CARをコードするレンチウイルスベクターの設計:
IL-13Rα2に対する単鎖Fv(scFv)抗体配列(外部ドメインとして)、CD3ζならびにCD28および4-1BBエンドドメイン配列と共にCD28膜貫通ドメインからなる第3世代CARコンストラクトを設計し、コドン最適化し、pUC57単純サブクローニングベクター内でGenScript(登録商標)(GenScript、ニュージャージー州)によって合成した。新規scFvは、Griffin.1ライブラリー(合成v遺伝子セグメントから作製されたscFvライブラリー)を使用して以前にクローニングされ、VHおよびVLヒト合成Fab LoxライブラリーベクターをファージミドベクターpHEN2に以前に記載(Kioi et al.(2008)Mol Cancer Ther.7:1579-1587)されたように再クローニングすることによって誘導された。huIL-13Rα2 Fcキメラタンパク質に対する結合親和性を改善するためにセグメントを再パンニング(repanning)するための新規アプローチを使用した。CAR-Tコンストラクトをコドン最適化し、Bam HIおよびNotI部位に隣接させ、pCDH-MSCV-MCS-EF1-copGFP-T2A-Puroレンチウイルスベクター(システムバイオサイエンス、マサチューセッツ州)に入れた。この移入プラスミドを、3つのヘルパープラスミド(pCD/NL-BHΔ1、pCEF-VSV-GおよびpCMV-Rev)との同時トランスフェクションによって293T細胞にパッケージングして、CAR-IL13 Rα2-CAR擬似レンチベクターを発現する自己不活性化(SIN)レンチウイルスベクターを作製し、これを超遠心分離によって更に精製した。
【0116】
scFv IL-13Rα2における抗原結合残基および相補性決定領域(CDR)の分析:
標準化されたナンバリング方法を使用して、抗体のその標的抗原に対する相互作用および/または親和性に影響を及ぼす軽鎖および重鎖からのCDR、フレームワークおよび残基を規定した。Kabatナンバリングスキーム(ncbi.nlm.nih.gov/igblast)を使用してアミノ酸組成の統計的変動性を研究するために、抗体可変ドメインの一般的なナンバリングスキームを使用してアミノ酸配列を分析した。重鎖および軽鎖の両方の残基分布の分析、ならびにそれらの長さを含むCDR配列の分析を行った。
【0117】
これらのデータを、CDRを形成し、Chothiaナンバリングスキームに従ってCDRL1およびCDRH1内の点の位置番号を補正した抗体可変領域についての構造ベースのナンバリングスキーム、重鎖および軽鎖のフレームワーク領域内の挿入点の補正に使用されたMartinナンバリングスキーム、ならびに抗体軽鎖および重鎖ならびにT細胞受容体鎖由来の可変ドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質配列を強調するImMunoGeneTics(登録商標)(IMGT(登録商標)、The International ImMunoGeneTics(登録商標)information system、フランス国モンペリエ)ナンバリングスキーム(imgt.org;github.com/oxpig/ANARCI,academic.oup.com/ bioinformatics/article/32/2/298/1743894;abysis.org/abysis/sequence_input/ key_annotation/key_annotation.cgi;imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/Collier-de-Perles.cgi;and chemogenomix.com)により更に分析し、比較した。
【0118】
CAR-T細胞の製造:
ヒトPBMCを、NIHの輸血医学部門に血液を提供した正常な健康な血液ドナーのバフィーコートから単離した。StraightFrom(登録商標)Buffy Coatキット(Miltenyi Biotec、マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、正常ヒト血液ドナーバフィーコートから単離したCD4およびCD8陽性T細胞からCAR-T細胞を作製した。CD4/CD8 T細胞活性化のために、細胞を、抗CD3/CD28抗体でコーティングされた磁性Dynabeads(商標)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)により3:1の比(T細胞対ビーズ)で活性化し、レンチウイルスベクターにより異なる感染多重度(m.o.i.)で形質導入した。T細胞を、50ng/mlのIL-2ならびに10ng/mlの各IL-7およびIL-15(Miltenyi Biotec、マサチューセッツ州ウォルサム)を補充したT細胞培養培地(TCM)中、0.6~1×106細胞/mLで培養物中で維持した。これらのPBMC由来CAR-T細胞は、原稿全体を通してCAR-Tと称される。
【0119】
ヒトJurkat T細胞(CAR-Jurkatと呼ばれる)における導入遺伝子およびシグナル伝達ドメインの同一性を確認するために、並行したセットの実験を形質導入および拡大培養に使用した。
【0120】
形質導入されたCAR-Jurkat細胞およびCAR-T細胞における導入遺伝子についての間接免疫蛍光アッセイ:
形質導入されたJurkat細胞またはT細胞上のscFv-IL-13Rα2発現の検出のため、ポリ-L-リシン被覆4ウェルチャンバースライドにJurkat-CAR細胞またはCAR-T細胞のいずれかを75,000個播種することによって新規な間接免疫蛍光アッセイを使用した。簡潔には、ビオチン化組換えヒトIL-13Rα2 Fcキメラタンパク質(R&D Biosystems、ミネソタ州ミネアポリス)を、EZ-Link(商標)マイクロスルホ-NHS-ビオチン化キット(Thermo Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して生産した。次いで、形質導入されたJurkatおよびT細胞を、500ng/mlの精製ビオチン化組換えヒトIL-13Rα2 Fcキメラタンパク質とインキュベートし、続いてストレプトアビジン-Alexa 594(登録商標)(0.5μg/ml)とインキュベートして、scFv-IL-13Rα2発現細胞において赤色蛍光を発生させた。2+以上の蛍光強度を発現する細胞を、Nikon(登録商標)落射蛍光顕微鏡を使用して200倍の倍率で計数した。各値は、盲検様式で決定され、陽性細胞%として表される4回の実験の平均±SDである。
【0121】
フローサイトメトリー分析:
BD(登録商標)FACSCanto(商標)またはFACSCalibur(商標)(BD Bioscience、カリフォルニア州サンノゼ)機器を使用して免疫蛍光データを取得し、これを最終データ分析およびグラフ表示のためにCellQuest(商標)(BD Bioscience)またはFlowJo(登録商標)v.7(FlowJo,LLC、オレゴン州アシュランド)ソフトウェアで分析した。アイソタイプ対照は免疫グロブリンIgG1-PE(IgG1-PE、Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州デンバー(Denver))であった。CD28細胞質およびCD3ζエンドドメインを、抗CD28.2マウスmAb PEコンジュゲートまたはCD3ζモノクローナル抗体PEコンジュゲート(Thermofisher eBioscience、カリフォルニア州カールスバッド)で免疫染色した。透過処理したCAR-JurkatまたはCAR-T細胞を抗CD28およびCD3ζ抗体で免疫染色した。データを、最頻値に正規化して表した。
【0122】
CAR-T細胞におけるT細胞活性化マーカー発現の評価:
CAR-T細胞のT細胞活性化を、間接免疫蛍光アッセイ(IFA、abCAM、マサチューセッツ州ケンブリッジ)によって、細胞をブレフェルジンA(BioLegend、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理した後のT細胞活性化マーカーとしてのCD44、CD25、CD69およびインターフェロン-γの細胞内発現によって評価した。各値は、2+以上の免疫蛍光強度を発現する陽性細胞%について盲検様式でスコア化された4つの独立した読み取り値の平均±SDとして表される。
【0123】
CAR-T細胞の細胞生存度および増殖分析:
トリパンブルー排除技術によって細胞増殖中にCAR-T細胞培養物の細胞生存度を調べた。CAR-T細胞の健康を更に評価するために、CellTiter 96R(登録商標)AQueous one solution kit(Promega、ウィスコンシン州マディソン)によって細胞増殖を評価した。Fisher、米国マサチューセッツ州ウォルサム)。既知数のCAR-T細胞(2,500細胞/ウェル)を96ウェル培養プレートの4連ウェルに播種し、CO2インキュベーターにおいて37℃で維持した。3、5、および7日目に、20マイクロリットルのMTS試薬を各ウェルに添加した。490nmでの吸光度を測定することによって還元型MTSテトラゾリウムの光学密度を測定することによって、各ウェル中の増殖している細胞の数を決定した。実験を4連で行い、結果を平均±SDとして表した。
【0124】
CAR-T細胞の細胞遊走能および浸潤能の解析
CAR-T細胞の細胞遊走能および浸潤能を、5μmの孔径を有する24ウェルChemoTx(登録商標)プレート(abCam、マサチューセッツ州ケンブリッジ)において評価した(走化性アッセイ)。下部チャンバーに、10、50および1000ng/mlのhU-IL-13Rα2 Fcを含む600μLの非馴化ダルベッコ改変イーグル培地(R&D Systems)、1%ウシ胎仔血清を含むU251またはT98G腫瘍細胞培養馴化ダルベッコ改変イーグル培地、あるいは対照培地を添加した。上部チャンバーに500,000個のCAR-T細胞/200μlをロードした。37℃で6時間後および20時間後、残留細胞をポリカーボネートフィルターから掻き取り、プレートを400×gで2分間遠心分離した。フィルターを除去し、下部チャンバー中の細胞をトリパンブルー排除技術によって計数した。遊走パーセンテージは、下部チャンバー中の細胞の数をウェルあたりの播種された細胞の総数で割ったものとして計算した。各値は、4つの独立した実験の平均±SDとして表される。
【0125】
細胞傷害活性:
CAR-T細胞の細胞死滅活性を決定するために、ロバストな均一蛍光ベースの非同位体細胞傷害アッセイを行った。IL-13Rα2発現について陽性であるU251およびU87MG神経膠腫細胞株を試験した。さらに、製造業者のプロトコルに従ってU251およびU87 MG細胞株のトランスフェクションのため、以下のsiRNA配列GCTACCATTTGGTTTCATCTT(配列番号17)を使用してSureSilencing(商標)shRNAプラスミド技術によってIL-13Rα2遺伝子をサイレンシングした(カタログ番号336313 KH00597N、QIAGEN、メリーランド州ジャーマンタウン)。IL-13Rα2陽性腫瘍細胞およびIL-13Rα2サイレンシング腫瘍細胞を、細胞内カルセインバイオレット-アセトキシメチルエステル(Lichtenfels et al.(1994)J Immunol Methods 172:227-239;Neri et al.(2001)Clin Diagn Lab Immunol 8:1131-1135)によって標識した。1:10、1:20、1:30、1:40および1:50の比の標的:エフェクター細胞の6時間の共培養の終わりに回収された上清中のカルセインバイオレットの放出を、蛍光プレートリーダーで定量的に測定した。データは、標的CAR-T細胞とエフェクターCAR-T細胞との共培養を含む4連で行われた4回の独立した実験の平均±SDとして示されている。
【0126】
IFN-γ放出:
IL13 Rα2-CAR-T細胞(100,000)を、96ウェル丸底プレートにおいて20時間、IL-13Rα2陽性、IL-13Rα2陰性またはIL-13Rα2 KO腫瘍細胞と等しい部で共培養した。インキュベーション期間の終わりに、培養物を3,500×gで10分間遠心分離し、ELISAアッセイ(BioLegend)によるIFN-γ分泌の定量的測定のために上清を回収した。
【0127】
統計分析:
対応のないスチューデントt検定分析を使用してデータを比較した。P値を、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア(GraphPad Software、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して計算した。0.05未満のP値を有意差とみなした。二元配置分散分析を使用して、標識条件を比較し(n=4)、ウィルコクソン検定を使用して、細胞の生存または増殖についての両側グローバルP値を得た(n=4)。
【0128】
実施例2
scFv-IL-13Rα2の同定および特徴づけ
IL-13Rα2のscFvに対する遺伝子を、合成v遺伝子セグメントのscFvフェーズディスプレイライブラリー、ならびにヒト合成Fab Loxライブラリーからの超可変アミノ酸構造組成を示すVHおよびVLの改良バージョンを用いて同定した。4つの異なるスキームによるアミノ酸残基分析に基づいて最適な抗原結合を提供する新規な保存されたscFvフラグメントを選択した。分析により、構造ベースのscFv可変領域、CDRを形成する規定されたループ構造、および超可変アミノ酸組成を示すCDR内部の挿入点が明らかになった。クローン由来タンパク質は、先にクローン化されたscFv ECD-IL-13Rα2と比較して、組換えIL-13Rα2 Fcタンパク質に対して4倍を上回る高い結合親和性を示した(Kioi et al,Mol Cancer Ther,7(6):1579-87,2008)。
【0129】
改良されたscFv-IL-13Rα2は、より高い結合親和性に関して配列特異的であり、ヒト細胞におけるより良好な発現のためにコドン最適化されている。さらに、改善されたscFv-IL-13Rα2は、合成V遺伝子セグメントから作製されたライブラリーから生成されたため、IL-13Rα2に対するその結合スペクトルは、単一モノクローナル抗体に由来するscFvと比較してより特異的であると予想される(例えば、Balyasnikova,et al,J Biol Chem.,287(36):30215-30227,2012)。
【0130】
IL-13Rα2の可変ドメインを、結合親和性および特異性に影響を及ぼし得るCDR、フレームワーク、ならび軽鎖および重鎖からのアミノ酸残基を規定するための残基ナンバリングスキームによって分析した。分析により、重鎖について様々な数の残基および長さを有する8つの異なる領域が明らかになった(
図2および
図3A)。分析された配列は、挿入が正確な位置にのみ含まれ得る可変長のギャップを示した。重鎖中の残基の分布を
図3Aに示す。データ分析により、上行ループB(CDR1)中のアミノ酸残基27~38、上行Cループ中のアミノ酸残基55~59、下行CループC(CDR2)中のアミノ酸残基62~65、上行ループF中のアミノ酸残基105~110および下行ループF中のアミノ酸残基113~117(CDR3)が重鎖の構造成分であることが更に明らかになった(
図3B)。
【0131】
軽鎖の分析は、275アミノ酸のテール領域を含む9つの異なる領域を示した(
図5A)。アミノ酸残基の重鎖構造分析と同様に、上行Bループ中の軽鎖アミノ酸24~29および下行Cループ中のアミノ酸36~39はCDR1-軽に属し、上行Cループのアミノ酸56~57および下行Cループ中のアミノ酸65~69はCDR2-軽に属し、上行Fループ中のアミノ酸105~108および下行Gループ中のアミノ酸114~117はCDR3-軽に属し、保存されている(
図5B)。Kabatナンバリングスキームによる分析後の重鎖および軽鎖におけるアミノ酸の分布を、それぞれ
図6および
図7に示す。
【0132】
また、scFv残基配列のKabatナンバリングを、抗体可変領域、CDRを形成するループ構造、抗体重鎖(
図8)および軽鎖(
図9)由来の可変ドメインを含むCDR-H(重)およびCDR-L(軽)鎖内の挿入点の位置番号、ならびに生殖系列Vのアミノ酸配列アラインメントのためのIMGT、ChothiaおよびMartinナンバリングスキームを用いた比較アラインメント分析のために分析した。これらの分析により、抗原結合に関与し、超可変アミノ酸組成を示すアミノ酸の構造的位置が明らかになった。
【0133】
実施例3
scFv-IL-13Rα2 CARコンストラクトの開発
最適化されたCAR-Tコンストラクトを、pCDH-MSCV-MCS-EF1-copGFP-T2 A-Puroレンチウイルスベクター(System Biosciences、マサチューセッツ州)に入れた。配列決定データにより、CARコンストラクトが1631bp長であり、60.35%のGCを含有し、CD8シグナルペプチド、scFv-IL-13Rα2導入遺伝子、CD8ヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞質ドメイン、4-1BBおよびCD3ζドメインからなることが確認された。
図10は、5’BamH1制限部位を有するCAR-Tコンストラクトの対応するアミノ酸配列、ならびに各特徴またはドメインの位置および配列を示す。CAR-TプラスミドDNAの制限消化により、1640bpのバンドインサートおよび切断されたベクターの第2のバンドが明らかにされた(
図11)。
【0134】
組換えレンチウイルスベクターを3つのヘルパープラスミド(pCD/NL-BHΔ1、pCEF-VSV-GおよびpCMV-Rev)と共にパッケージングして、HEK293T産生細胞株において最終的なscFv-CAR-レンチウイルスを産生した。
【0135】
実施例4
IL-13Rα2-CAR-T細胞の作製および特徴
scFv-IL-13Rα2 CARコンストラクトをJurkat細胞(不死化T細胞株)に形質導入して、IL-13Rα2-CAR-Jurkat細胞を産生した。同様に、IL-13Rα2-CAR-T細胞を、活性化され、ベクターにより形質導入され、培養において拡大培養されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)から作製した。
【0136】
蛍光活性化細胞選別(FACS)分析により、形質導入されたCAR-Jurkat細胞におけるCD28およびCD3ζの発現を確認した(
図12Aおよび
図12B)。形質導入されたJurkat細胞を透過処理し、抗CD28(CD28.2)マウスmAb PEコンジュゲート(カタログ番号27826、Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ダンバーズ)およびCD3ζモノクローナル抗体PEコンジュゲート(カタログ番号12-2479-82、ThermoFisher eBioscience、カリフォルニア州カールスバッド)で免疫染色した後、FACS分析を行った。データを、最頻値に正規化して表した。CD28細胞質およびCD 3ζシグナル伝達ドメインの両方が検出された。
【0137】
scFv-IL-13Rα2-CAR導入遺伝子の発現を、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によって確認した(
図13Aおよび
図13B)。IFAアッセイを、形質導入されたJurkat細胞およびT細胞に対して行った。2+以上の蛍光強度を発現する細胞を、Nikon(登録商標)落射蛍光顕微鏡で見ることによって200倍の倍率で計数した。2+超の免疫染色強度を有する陽性細胞のパーセントは、CAR-T細胞よりもJurkat細胞においてわずかに高かった。形質導入されたJurkat細胞の代表的なIFA画像を
図13Bに示す。各値は、盲検様式で決定され、陽性細胞%として表される4回の実験の平均±SDである。
【0138】
細胞培養物中のIL-13Rα2-CAR-JurkatおよびCAR-T細胞の生存度を、トリパンブルー排除技術によって7日間の過程にわたって評価した。
図14に示されるように、CAR-Jurkat細胞およびCAR-T細胞の両方が7日間にわたって成長し続け、細胞生存度を維持した。同様に、CAR-JurkatおよびCAR-Tの両方が、MTSアッセイによって求められるように7日間にわたって代謝活性および増殖活性を維持した(
図15)。
【0139】
CAR-T細胞の細胞表現型および機能を、細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーのFACS分析によって評価し、休止T細胞と比較した。CAR-T細胞は、T細胞活性化を示すCD25、CD44およびCD69細胞表面マーカーを発現し、3つ全てのマーカーの発現は、7日目に測定されるように、CAR-T細胞培養物の増殖期の間保存された(
図16)。同様に、CAR-T細胞は細胞内インターフェロン-γを発現したが、休止T細胞はIFN-γの発現を何ら示さなかった(
図16)。
【0140】
実施例5
CAR-T細胞はin vitroでIL-13Rα2+神経膠腫腫瘍細胞に対して細胞傷害性である
IL-13Rα2-CAR-T細胞の有効性を、高レベルのIL-13Rα2を発現することが知られている2つのIL-13Rα2陽性悪性神経膠腫腫瘍細胞株(U251およびU87MG)に対する細胞傷害を測定することによって調べた。IL-13Rα2-CAR-T細胞は、エフェクター細胞の数に依存した様式でIL-13 Rα2発現腫瘍細胞(IL-13Rα2+)を特異的に死滅させことが見出された(
図17)。標的腫瘍細胞上のIL-13Rα2の遺伝子サイレンシングがCAR-T細胞の全ての細胞傷害活性をほぼ排除したことから、腫瘍細胞の死滅は、標的腫瘍細胞上のIL-13Rα2発現に高度に特異的であった。
【0141】
IL-13Rα2-CAR-T細胞の有効性および特異性も、IL-13Rα2発現腫瘍細胞への曝露時のIFN-γの放出に基づいて評価した。
図19に示されるように、CAR-T細胞は、3つのIL-13Rα2陽性神経膠腫細胞株(U251、A172、およびU87MG)と共培養されたとき、上清において、大量かつほぼ等しい量のIFN-γを産生した。対照的に、CAR-T細胞は、IL-13Rα2陰性またはIL-13Rα2 KO腫瘍細胞株と共培養した場合、基底量のIFN-γのみを分泌し、IL-13Rα2陽性腫瘍細胞に対する特異的応答を示した。
【0142】
最後に、IL-13Rα2-CAR-T細胞の遊走および浸潤を、ボイデンチャンバーアッセイを使用して調べた。CAR-T細胞を、3つの異なる濃度の組換えIL-13Rα2Fcキメラタンパク質、またはIL-13Rα2陽性およびIL-13Rα2陰性遺伝子サイレンシングヒト神経膠腫細胞株から得られる馴化培地に曝露した。
図20に示されるように、拡大期の8日目からのCAR-T細胞培養物が、6時間の時点および20時間の時点で、濃度依存的様式で浸潤し、ヒトIL-13Rα2Fcに遊走した。同様に、CAR-T細胞は浸潤し、IL-13Rα2陽性神経膠腫細胞からの馴化培地に遊走したが、IL-13Rα2陰性神経膠腫細胞からの馴化培地には遊走しなかった。
【0143】
実施例6
IL-13Rα2-CAR-T細胞のin vivo有効性の試験
この実施例は、IL-13Rα2-CAR細胞の有効性をin vivoで試験するために使用され得る方法を記載する。特定の方法が提供されるが、当業者は、1またはそれを超えるステップの追加または省略を含む、これらの特定の方法から逸脱する方法も使用できることを認識するであろう。
【0144】
マウス固形がんモデルを使用して、IL-13Rα2-CAR-T細胞の有効性を評価することができる。このモデルでは、免疫不全マウスに、脳がん、膵臓がん、前立腺がん、または他の腫瘍に由来するヒト腫瘍細胞を皮下移植または同所移植する。
【0145】
一例では、無胸腺ヌードマウスにヒト脳腫瘍細胞(U251およびU87MG神経膠腫)を移植する。別の例では、NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull(NOG)マウスに腫瘍細胞を移植する。NOGマウスは、NOD(非肥満性糖尿病)バックグラウンドおよびSCID変異のために、成熟T細胞、B細胞および単核細胞を欠いている。免疫不全に加えて、NOGマウスにおけるインターロイキン-2受容体ガンマ欠損は、生着したヒトT細胞がその後に分化することを可能にする。
【0146】
一例では、ヒト化PBMC再構成NOGマウスを使用する。ヒトPBMCで再構成されたNOGマウスは、末梢血および脾臓において成熟ヒト免疫細胞を発生させるBrady et al.(2014)Clin Transl Immunology 19:3(12))。これらのマウスに、U251およびU87神経膠腫腫瘍細胞、またはHS766、MiaPaca2、BXPC-3、Panc-1、HPAF-IIもしくASPC-1膵臓腫瘍細胞等の腫瘍細胞を皮下移植または同所移植する。次いで、マウスにIL-13-Rα2-CAR-T細胞を投与する。用量滴定研究(dose titration study)を使用して、各腫瘍モデルの最適な細胞用量を決定する。腫瘍標的としてのIL-13Rα2の役割を描写するためにIL-13Rα2遺伝子ノックアウト(KO)腫瘍細胞を注射されるNOGマウスの追加の群を含んでもよい。
【0147】
動物を、CAR-T細胞処置動物と一緒に、対照の確立された腫瘍の退縮、転移および生存について追跡する。動物の免疫応答は、CD4+およびCD8+細胞、制御性細胞(制御性T細胞(Treg)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、抗体レベル、および血清サイトカインレベル等のいくつかのパラメータを測定することによって評価される。各動物の全身健康状態は、体重を測定することによって、および屠殺時の重要な器官の組織学的研究を通して、様々な時点で評価される。
【0148】
IL-13Rα2-CAR-T細胞療法の有効性はまた、様々な腫瘍前処置と組み合わせて評価される。方法は、腫瘍を有する動物をCAR-T細胞投与の前にHDAC阻害剤(例えば、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム(NaB)、SP600125、SR11302、もしくスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))、アドレノメデュリン(AM)、またはIL-13-PEで前処置し、適切な対照処置(例えば、CAR-T療法を受けていない動物、併用療法を受けていない動物、および/またはIL-13Rα2ノックダウン腫瘍細胞を有する動物)と比較することを除いて、同様である。
【0149】
実施例7
HDAC阻害剤処置と組み合わせたIL-13Rα2-CAR-T細胞のin vivo有効性の試験
この実施例は、HDAC阻害剤との組み合わせたIL-13Rα2-CAR細胞の有効性をin vivoで試験するために使用され得る方法を記載する。特定の方法が提供されるが、当業者は、1またはそれを超えるステップの追加または省略を含む、これらの特定の方法から逸脱する方法も使用できることを認識するであろう。
【0150】
HDAC阻害剤と組み合わせたIL-13Rα2-CAR-T細胞療法の有効性は、免疫不全マウスにおける皮下および同所性腫瘍移植を用いたがんモデルにおいて評価することができる。この実施例では、膵臓がん細胞株(Panc-1またはASPC-1等)を使用して、雌性無胸腺ヌードマウスまたはNOGマウスの側腹部に皮下腫瘍インプラントを発生させる。腫瘍移植の約4~6日後、TSAまたはSAHAを投与する。TSAまたはSAHA投与開始から約5日後に、IL13Rα2-CAR-T細胞または対照も投与する。
【0151】
マウスの体重および腫瘍サイズをモニターし、定期的に測定する。CD4+、CD8+、およびTreg細胞数、ならびに血液中のサイトカインプロファイルも定期的に測定する。測定は、腫瘍サイズが直径20mm2に達するまで継続する。有害な毒性作用について実験全体の過程中に動物をモニターする。IL-13Rα2ノックダウン腫瘍細胞を移植し、IL-13Rα2-CAR-T細胞療法で処置した動物の追加の群も対照として含めることができる。
【0152】
実施例8
アドレノメデュリンと組み合わせたIL-13Rα2-CAR-T細胞療法のin vivo有効性の試験
この実施例は、アドレノメデュリン処置と組み合わせたIL-13Rα2-CAR細胞の有効性をin vivoで試験するために使用され得る方法を記載する。特定の方法が提供されるが、当業者は、1またはそれを超えるステップの追加または省略を含む、これらの特定の方法から逸脱する方法も使用できることを認識するであろう。
【0153】
一例では、AMでトランスフェクトした、または模擬トランスフェクトしたPC-3前立腺がん細胞、またはトランスフェクトされていない対照を、免疫不全マウス、例えば雄性無胸腺ヌードマウスの皮下に注射する。腫瘍サイズがおよそ20mm2(およそ1週間)に達したら、マウスにCAR-T細胞を投与し、その後、処置に対する応答についてモニターする。
【0154】
別の例では、マウスにPC-3腫瘍細胞を注射し、腫瘍サイズがおよそ20mm2に達すると、AMペプチド(または対照)を腫瘍内に定期的に注射する。最後のAM処置の約48時間後に、CAR-T細胞に対するPC-3腫瘍の感受性を調べる。PC-3細胞を注射した動物を追加の対照として含めることができる。
【0155】
マウスを数週間にわたって追跡して、CAR-T治療の有効性、例えば、腫瘍の縮小、動物の全般的な健康状態、CD4+、CD8+、T regおよび血中サイトカインレベルを評価する。
【0156】
実施例9
IL-13-PEと組み合わせたIL-13Rα2-CAR-T細胞療法のin vivo有効性の試験
この実施例は、IL-13PE処置との組み合わせたIL-13Rα2-CAR細胞の有効性をin vivoで試験するために使用され得る方法を記載する。特定の方法が提供されるが、当業者は、1またはそれを超えるステップの追加または省略を含む、これらの特定の方法から逸脱する方法も使用できることを認識するであろう。
【0157】
この実施例では、マウスを口腔上皮においてTGFβRIおよびPTENで処置し、頭頸部の自然発生扁平上皮癌を発生させる。次いで、マウスをIL-13-PEで処置する。約1週間後、マウスをIL-13Rα2-CAR-T細胞で処置する。
【0158】
マウスを、処置に応答した抗腫瘍活性および免疫学的変化について調べる。一部の動物を、脾細胞に対するFACS分析を行うために、CAR-T細胞療法の最後の用量の約3日後に屠殺する。MDSCを、単球/マクロファージマーカーCD11b+および顆粒球抗原Gr-1+を使用するFACS分析によって分析する。
【0159】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲および趣旨の範囲内に入る全てを本発明者らの発明として主張する。
【配列表】
【国際調査報告】