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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】抗CNTN4抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240321BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240321BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240321BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 M
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K47/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561099
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 KR2022004890
(87)【国際公開番号】W WO2022216014
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0044840
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ブ ナム
(72)【発明者】
【氏名】チョン, チュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン, スー ユング
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョヌク
(72)【発明者】
【氏名】チャ, ミ ヤング
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジン, ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェー, ジス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、それを含有する医薬組成物、及び細胞性免疫応答を上方制御するT細胞を活性化するための、例えば、がんを治療するための、その使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号88のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
解離定数(Kd)1×10-7M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
T細胞活性を増大させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記T細胞がCD4+T細胞又はCD8+T細胞である、請求項6に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体scFv、(Fab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、及び線状抗体からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体が多特異性抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が薬物と結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む、組換え発現ベクター。
【請求項14】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記がんがCNTN4を発現するがんである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
前記さらなる抗がん剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び前記さらなる抗がん剤が、単一の製剤として同時に投与されるか、又は別個の製剤として同時に若しくは順次投与される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、さらなる抗がん療法と組み合わせて使用される、医薬組成物。
【請求項21】
前記さらなる抗がん療法が、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、及び放射線療法からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
がんを予防又は治療するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項23】
がんを予防又は治療するための医薬の調製のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項24】
がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項25】
がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び有効量のさらなる抗がん剤を、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
前記さらなる抗がん剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び有効量のさらなる抗がん剤が、単一の製剤として対象に同時に投与されるか、又は別個の製剤として対象に同時に若しくは順次投与される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、それを含有する医薬組成物、及びT細胞を活性化するための、例えば、がんを治療するための、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体は、外部侵入物(ウイルス、毒素等)及び内部の有害な変化(がん細胞突然変異)から自身を保護する防御機構を有する。正常細胞とは異なり、がん細胞は、その表面に特定の抗原を有し、がん発生の初期段階で免疫機構により破壊される。すると、無限に増殖したいがん細胞と、がん細胞を攻撃したい免疫細胞との力のバランスが崩れると、がん細胞が実質的に増殖し始める。がん細胞がさらに成長すると、がん細胞は体内の免疫機構を妨害し、一部のがん細胞は、免疫細胞の免疫チェックポイントを使用することにより免疫を回避し、免疫チェックポイント阻害剤が免疫チェックポイントを抑制すると、免疫細胞の力が増大し、それによりがん細胞を死滅させる。
【0003】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞阻害に関与する免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断することによってT細胞を活性化することにより、がん細胞を攻撃する薬物であり、CTLA-4、PD-1、PD-L1阻害剤などを含む。現在市販されている代表的な薬物は、CTLA-4モノクローナル抗体としてのイピリムマブ(製品名:ヤーボイ(YERVOY)(登録商標))、PD-1モノクローナル抗体としてのニボルマブ(製品名:オプジーボ(OPDIVO)(登録商標))及びペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ(KEYTRUDA)(登録商標))、並びにPD-L1モノクローナル抗体としてのアテゾリズマブ(製品名:テセントリク(TECENTRIQ)(登録商標))及びデュルバルマブ(製品名:イミフィンジ(IMFINZI)(登録商標))を含む。
【0004】
しかし、既存の免疫チェックポイント阻害剤では治療されない癌が未だ存在し、ゆえに新規の抗がん治療の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供することである、特に、本発明は、CNTN4タンパク質に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供して、CNTN4の免疫逃避機序を中和することを意図する。
【0006】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することにより、T細胞活性の減少により引き起こされるがんなどの疾患を予防又は治療するための組成物を提供して、CNTN4の免疫逃避機序を遮断し、T細胞を活性化することを意図する。
【0007】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントを使用して、CNTN4タンパク質を分析又は検出するための組成物を提供することも意図する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。抗体又は抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質、例えば、ヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合して、CNTN4の免疫逃避機序を中和する。したがって、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、CNTN4により阻害された、CD4+T細胞又はCD8+T細胞などのT細胞の活性を増大させうる。
【0009】
一実施形態において、本発明は、
配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号88のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、
配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、
配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
一実施形態において、本発明の抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体scFv、(Fab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、又は線状抗体からなる群から選択される抗体フラグメントであってもよく、抗体はキメラ抗体又はヒト化抗体であってもよい。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子、及び核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明はまた、がんを予防又は治療するための組成物であって、活性成分として、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、組成物も提供する。医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤などのさらなる抗がん剤と組み合わせて使用されてもよく、放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、CNTN4タンパク質を分析又は検出するための組成物であって、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、組成物も提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための医薬の調製のための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを、対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び有効量のさらなる抗がん剤を、対象に投与するステップを含む、方法を提供する。さらなる抗がん剤として、例えば、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤が使用されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4の免疫逃避機序を遮断することによりT細胞を活性化し、ゆえにT細胞活性の減少により引き起こされる疾患、特にがんを予防又は治療するのに有効に使用可能である。したがって、本発明の抗CNTN4抗体が使用されると、既存の免疫療法では治療効果が達成されないがんに関して、優れた抗がん効果が発揮される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図1b】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図1c】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図1d】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図2a】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図2b】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図2c】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図2d】ファージディスプレイライブラリーから選択されたscFv抗体フラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。実線及び破線で示した配列は、各領域のCDR配列を表す。
図3】抗CNTN4ヒト化抗体を調製するのに使用された可変領域のアミノ酸配列を示す図である。
図4】本発明の抗体A-01及びL1H2が、CNTN4タンパク質を有効に中和して、T細胞を増殖させることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント
本発明は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0023】
一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、
配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号88のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む。
【0024】
表1は、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントについての、軽鎖及び重鎖可変領域の各々のCDR配列を示す。
【0025】
【表1】





【0026】
別の特定の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、表4及び5において示される軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の各対を含んでいてもよい。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい(S1)。同様に、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい(S2)。別の抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に軽鎖及び重鎖可変領域のうちの2対を含んでいてもよい。
【0027】
好ましい一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0028】
別の特定の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、表12に示される軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域のうちの各対を含んでいてもよい。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい(LAH2)。同様に、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい(L1H2)。或いは、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号158のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでいてもよい(L2H2)。
【0029】
好ましい一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、軽鎖又は重鎖可変領域が特定のアミノ酸配列を含むということは、軽鎖又は重鎖可変領域が、アミノ酸配列全体を含むか、アミノ酸配列全体を有するか、又はアミノ酸配列からなることを意味する。
【0031】
一例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号70のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号88のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、配列番号116のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、配列番号58のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号89のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号115のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む。
【0032】
別の例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号70のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR1、配列番号88のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR2、配列番号116のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR3、配列番号58のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR1、配列番号89のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR2、及び配列番号115のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR3を含む。
【0033】
別の例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号70のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号88のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、配列番号116のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3、配列番号58のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号89のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号115のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む。
【0034】
別の例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むか、又は配列番号156のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0035】
別の例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列から本質的になる重鎖可変領域を含むか、又は配列番号156のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列から本質的になる重鎖可変領域を含む。
【0036】
別の例として、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含むか、又は配列番号156のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」又はこれを改変した語は、オープンな意味を指す。一例として、列挙されるアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合フラグメントは、必須であってもなくても、列挙されていないさらなるアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる」又はこれを改変した句は、言及された要素のうちのいずれかを含み、実施形態の基本的な、新規の、又は機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない要素の存在を認める。一例として、列挙されるアミノ酸配列から本質的になる抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体又はそのフラグメントの特徴に実質的に影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「からなる」又はこれを改変した句は、本明細書で記載される各成分が、実施形態についてのその記載において記載又は列挙されていない任意の要素を認めない場合を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「相補性決定領域」(CDR;CDR1、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合に必要な、抗体可変領域内のアミノ酸残基を指す。各可変領域は通常、CDR1、CDR2、及びCDR3と識別される3つのCDR領域を有する。
【0041】
別の好ましい実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、scFvのフレームワーク領域が完全に又は部分的にヒト化された配列を含んでいてもよい。部分的にヒト化された配列は、完全にヒト化された配列と比較して、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%ヒト化されていてもよく、完全にヒト化された配列(例えば、1、2、3、4又は5など)のうちの一部は、復帰突然変異されていてもよい。ヒト化された配列を含む抗体又はその抗原結合フラグメントは、非ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントと比較された場合でも、CNTN-4に対する同等の結合能を有していてもよく、CNTN-4に対する結合能において実質的に大きな差を有しなくてもよい。
【0042】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド、タンパク質などの標的に、特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子を指す。用語「抗体」は、本明細書では、完全なポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合フラグメント、及び抗体フラグメントを含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された形状も包含する。
【0043】
抗体は、重鎖定常領域遺伝子μ、δ、γ、α、及びεからそれぞれ作られる重鎖を含む、5つのクラスの免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgG、IgA、及びIgEを含む。抗体の軽鎖及び重鎖は、各抗体について異なるアミノ酸配列を有する可変領域、及び同じアミノ酸配列を有する定常領域に分けられ、重鎖定常領域は、CH1、H(ヒンジ)、CH2、及びCH3ドメインを含む。各ドメインは2つのβ-シートからなり、その間で分子内ジスルフィド結合が連結されている。
【0044】
配列番号18のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗体は、本明細書では「A-01」と呼ばれる。
【0045】
さらに、配列番号156のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号159のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗体は、本明細書では「L1H2」と呼ばれる。
【0046】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、可変領域配列がある1つの種由来であり、定常領域配列が別の種由来である抗体、例えば可変領域配列がマウス又はニワトリ抗体由来であり、定常領域配列がヒト抗体由来である抗体を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、マウス又はニワトリなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を指す。フレームワーク配列は、例えば復帰突然変異によりさらに再改変されていてもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域の両方が、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変領域を含む抗体を指す。抗体の定常領域も、ヒト免疫グロブリン配列由来である。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」又は「抗体フラグメント」は、親抗体の抗原結合又は可変領域(例えば1つ又は複数のCDR)の少なくとも一部を通常含む、抗原結合フラグメント及び抗体のアナログを指す。抗体フラグメントは、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を維持する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、F(ab’)2フラグメント、単鎖抗体scFv、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、又は線状抗体を含むがこれらに限定されない。
【0051】
特に、Fabフラグメントは、VL、VH、CL、及びCH1ドメインから構成される一価のフラグメントを指す。
【0052】
Fab’フラグメントは、いくつかの残基が、抗体ヒンジ領域から、少なくとも1つのシステインを含むCH1ドメインのカルボキシル末端に付加されているという点で、Fabフラグメントとは異なる。
【0053】
Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’を指す。
【0054】
F(ab’)2抗体フラグメントは、Fab’フラグメント間のヒンジシステインを介する、Fab’フラグメントの対として産生される。
【0055】
Fvは、完全な抗原-認識部位及び-結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、緊密な非共有結合性会合での、1つの重鎖可変領域及び1つの軽鎖可変領域の二量体からなる。これら2つの領域のフォールディングから、抗体に、抗原結合のためのアミノ酸残基をもたらし、抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(それぞれ重鎖及び軽鎖由来の3つのループ)が生じる。しかし、単一の可変領域でも、抗原を認識し抗原と結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は小さい。
【0056】
単鎖抗体scFvは、単一のポリペプチド鎖に連結されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。本明細書でのscFvポリペプチドは、scFv抗体フラグメント、抗原結合フラグメントscFv、scFv抗体、抗体scFv、又は単にscFvとも呼ばれる。
【0057】
二重特異性抗体は、Vドメインの、鎖内ではなく鎖間の対形成が達成されるように、VH及びVLドメインの間の短いリンカー(約5~10残基)を使用してscFvフラグメントを構築することにより調製され、二価のフラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントをもたらす、低分子の抗体フラグメントを指す。二重特異性の二重特異性抗体は、2種の抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する、2つの「クロスオーバー」scFvフラグメントからなるヘテロ二量体である。
【0058】
本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質、好ましくはヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合することができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「に特異的に結合する」又は「に特異的な」は、生物分子を含む分子の不均一集団の存在下における標的の存在を決定する、標的及び抗体の間の結合などの、測定可能で再現性のある相互作用を指す。例えば、特定の標的(例えば、エピトープ)に特異的に結合する抗体は、それが他の標的に結合するよりも、より高い親和性、結合能で、より容易に、及び/又はより長い期間、この標的に結合する抗体である。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「ヒトCNTN4タンパク質に特異的に結合する」は、解離定数(Kd)5×10-7M以下、又は好ましくは1×10-7M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合する抗体を指しうる。したがって、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、解離定数(Kd)5×10-7M以下、好ましくは1×10-7M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合しうる。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指し、定数は単位Mを有する。抗体のKd値は、当技術分野で広く確立された方法を使用して決定可能である。抗体のKd値を決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(SRP)を使用すること、好ましくはビアコア(Biacore)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0062】
一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、単一特異性であり、単一のエピトープ、すなわちCNTN4タンパク質に特異的に結合する。
【0063】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、二重特異性又は三重特異性抗体分子などの多特異性抗体分子である。多特異性抗体分子は複数の可変領域を含み、各可変領域は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する。一実施形態において、二重特異性抗体分子の第1の可変領域は、第1のエピトープ、例えばCNTN4タンパク質に対する第1の結合特異性を有し、第2の可変領域は、第2のエピトープ、例えばCNTN4タンパク質以外の標的タンパク質(例えば、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1を含むがこれらに限定されない)に対する第2の結合特異性を有する。特定の一実施形態において、二重特異性抗体分子は、CNTN4、及びCTLA-4、PD-1又はPD-L1のうちのいずれか1つに特異的に結合する。別の実施形態において、上記分子の任意の組合せが、多特異性抗体分子、例えばCNTN4に対する第1の結合特異性、並びにCTLA-4、PD-1又はPD-L1のうちの少なくとも2つに対する第2及び第3の結合特異性を含む三重特異性抗体により調製されてもよい。本発明の多特異性抗体分子は、当業者に公知の標準的な分子生物学的技法(例えば、組換えDNA及びタンパク質発現技術)を使用して調製されてもよい。
【0064】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体薬物複合体(ADC)を形成していてもよい。本明細書で使用される場合、用語「抗体薬物複合体」又は「ADC」は、式M-[L-D]により表すことができ、Mは抗体分子、すなわち本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを表し、Lは任意のリンカー又はリンカーユニットであり、Dは好適な薬物又はプロドラッグであり、nは約1~約20の整数である。ADCに含まれる薬物は、薬物が本発明の抗体の特異的結合を妨害しない限り、治療又は診断用途に従って適切に選択されうる。一実施形態において、薬物は、細胞毒性薬剤(例えば、化学療法剤)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体若しくは化合物、又は毒素を含むがこれらに限定されない。ADC及びADCの調製方法に含まれうる薬物及びリンカーは、当技術分野で公知の方法に従ってもよい。
【0065】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、ELISAアッセイにより決定される、5nM以下、好ましくは3nM以下、より好ましくは2nM、さらにより好ましくは1nM以下のEC50で、CNTN4タンパク質(例えば、ヒト又はマウスCNTN4タンパク質)に結合する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「EC50」は、抗体を使用するin vitro又はin vivoアッセイに関連する用語であり、最大応答の50%、すなわち、最大応答及びベースラインの間の中間応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0067】
核酸分子及びベクター
本発明の別の態様は、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子に関する。
【0068】
核酸は、細胞全体中に、細胞ライセート中に、又は特に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態として存在しうる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で周知の他の技法を含む標準的な技法により、他の細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質から分離して精製されると、「単離されている」か又は「実質的に純粋となる」。
【0069】
本発明の核酸は、例えばDNA又はRNAであってもよく、イントロン配列を含有していても含有していなくてもよい。好ましい一実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0070】
一実施形態において、本発明の核酸分子は、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの、軽鎖領域、重鎖領域、又は軽鎖及び重鎖領域の両方をコードし、好ましくは、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、又は軽鎖及び重鎖可変領域の両方をコードする。一実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号18若しくは配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をコードするか、又は配列番号2若しくは配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードする。或いは、本発明の核酸分子は、抗体A-01又は抗体L1H2をコードする。
【0071】
VL及び/又はVH領域をコードするDNAフラグメントが得られると、そのようなDNAフラグメントは、標準的な組換えDNA技法によりさらに操作されて、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換されてもよい。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNAフラグメントは、別のタンパク質、例えば、hIgG1 Fc領域(hFc)若しくはhCκ領域などの抗体定常領域、又は可動性リンカーをコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結される」は、2つのDNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がインフレームに留まるように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味する。
【0072】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に結合させることにより、全長重鎖遺伝子に変換されうる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、又はIgD定常領域であってもよい。
【0073】
Fabフラグメント重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAが、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結されてもよい。
【0074】
scFv遺伝子を作製するには、VL及びVH配列が、VL及びVH領域が可動性リンカーにより連結された隣接する単鎖タンパク質として発現されうるように、VL及びVHをコードするDNAフラグメントが、可動性リンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結される。
【0075】
RNA又はDNAなどの本発明の核酸配列は、各種供給源から単離されてもよく、遺伝子改変されてもよく、増幅されてもよく、及び/又は組換えで発現されてもよい。細菌機構に加えて、例えば、酵母、昆虫又は哺乳動物機構を含む、任意の組換え発現機構が使用可能である。例えば、発現ベクターへのサブクローニング、標識プローブ、配列決定、及びハイブリダイゼーションなどの核酸の操作が、当技術分野で公知であるように実施されてもよい。
【0076】
したがって、本発明は、核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、原核及び/又は真核細胞において自己複製が可能なDNA分子を指し、細胞等に遺伝子又はDNAフラグメントを送達するための担体として一般的に使用される、組換えベクター、クローニングベクター、又は発現ベクターと互換可能に使用される。ベクターは、原核及び/又は真核細胞において複製可能な複製開始点、抗菌性分解酵素などの特定の条件/物質に対する耐性を付与することが可能な選択マーカー遺伝子、真核又は原核細胞における遺伝子の転写が可能なプロモーター、及び翻訳可能な配列を一般的に含むがこれらに限定されない。
【0078】
ベクターの1種は「プラスミド」であり、プラスミドは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされうる環状二本鎖DNAループを指す。別種のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされうる。ある特定のベクターは、ベクターが導入される宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーマル哺乳動物ベクター)。
【0079】
本発明は、ベクターを含む宿主細胞も提供する。宿主細胞は、哺乳動物、植物、昆虫、真菌、又は細菌起源の細胞を含むがこれらに限定されない。細菌細胞は、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌、例えば大腸菌(E.coli)などの大腸菌属(Escherichia)、及びシュードモナス属(Pseudomonas)のうちの数種由来の細胞を含む。真菌細胞の群では、好ましくは酵母細胞が使用される。酵母における発現は、酵母株、例えばとりわけ、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)を使用することにより達成可能である。さらに、昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)由来の細胞及びSf9が宿主細胞として使用されてもよい。
【0080】
さらに、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、BHK細胞、NSO細胞又はBowes黒色腫細胞を使用する発現機構が使用されてもよい。本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、最終的にヒトに投与されるため、完全なヒト発現機構が特に好ましい可能性がある。この場合、宿主細胞は、ヒト細胞、例えばHeLa、911、AT1080、A549、293及びHEK293細胞であってもよい。
【0081】
抗体又はその抗原結合フラグメントの調製
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、従来公知の方法に従って調製されてもよい。
【0082】
一実施形態において、本発明の抗体、例えばモノクローナル抗体は、当技術分野で公知の方法に従って、試験対象(例えば、マウス)にCNTN4抗原を注射し、次いで目的の配列又は機能的特徴を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離することにより調製可能である。
【0083】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として用意される。単離されると、DNAは発現ベクター中に配置されてもよく、次いでベクターが、免疫グロブリンタンパク質を別様に生成しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、CHO細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0084】
別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ファージライブラリー技法などの抗体ディスプレイ技法を使用して調製可能である。
【0085】
抗体のファージライブラリーは、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子が、大腸菌において発現されるファージミドベクターのファージ表面タンパク質(pIII)に融合された形態としてクローニングされ、次いで、M13ヘルパーファージが感染されて、重鎖及び軽鎖可変領域の各種組合せの配列を有する抗体フラグメント(scFv又はFab)がファージの表面に提示された抗体ライブラリーが調製される。このライブラリーから、特定の抗原に結合する抗体のフラグメントが、パニング法を使用して単離され、単離された抗体フラグメントが特性決定され、次いで全IgG形態に変換され、動物細胞において大量発現され、それにより特定のヒトモノクローナル抗体が生成される。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「ファージミドベクター」は、ファージ複製開始点を有するプラスミドDNAを指し、通常、選択マーカーとして抗生物質耐性遺伝子を有する。ファージディスプレイに使用されるファージミドベクターは、M13ファージのgIII遺伝子又はその一部を含み、ScFv遺伝子は、gIII遺伝子の5’末端にライゲーションされ、形質転換体により発現される。
【0087】
「ヘルパーファージ」は、ファージミドがファージ粒子にパッケージングされるように、必要な遺伝情報を供給するファージである。ファージミドはファージのgIII遺伝子又はその一部を含むため、ファージミドで形質転換された宿主細胞(形質転換体)は、残りのファージ遺伝子を供給するためヘルパーファージに感染される。ヘルパーファージは、M13K07又はVCSM13を含み、大部分が、ヘルパーファージに感染した形質転換体が選択されうるように、カナマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子を含む。さらに、パッケージングシグナルは不完全であり、ゆえにヘルパーファージ遺伝子よりもファージミド遺伝子が、ファージ粒子に選択的にパッケージングされる。
【0088】
使用及び方法
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質の結合により阻害される免疫応答を回復させる。CNTN4タンパク質が、T細胞、特にCD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖を阻害することが判明している。本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質に特異的に結合して、それによりT細胞活性、特にCD4+T細胞又はCD8+T細胞の活性を増大させることにより、免疫抑制に関連する疾患を治療するのに使用されてもよい。
【0089】
一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、T細胞活性を増大させる。したがって、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、T細胞、特にCD4+T細胞又はCD8+T細胞を活性化しうる。一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4により阻害されたT細胞の増殖を増大させうる。本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4を中和する優れた能力を有する。
【0090】
したがって、本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することによる、T細胞活性化の誘導に関する。一実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための方法を提供し、方法は、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。別の実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。別の実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための医薬組成物を提供し、組成物は抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0091】
したがって、本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することによる、免疫抑制関連疾患の予防、寛解、又は治療に関する。
【0092】
一実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患を予防するか、寛解させるか又は治療するための方法を提供し、方法は、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患を予防するか、寛解させるか又は治療するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患を予防するか、寛解させるか、又は治療するための医薬組成物を提供し、組成物は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト及び非ヒト動物の両方を含むことを意図される。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類及び爬虫類を含む哺乳動物及び非哺乳動物を含むが、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、及びウマが好ましい。好ましい対象は、免疫応答活性化又は増強を必要とするヒトである。
【0095】
好ましくは、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質の結合を遮断し、それにより、がん患者においてT細胞を活性化し、及び/又はがん細胞に対する免疫応答を増強し、ゆえにin vivoでのがん細胞の成長を阻害することができ、したがって、がんを予防するか、寛解させるか、又は治療するのに有効に使用されうる。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0097】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための医薬の調製のための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0098】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを、対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、がんを予防又は治療するための方法であって、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び有効量のさらなる抗がん剤を、対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0100】
さらなる抗がん剤は、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤であってもよく、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される1つ又は複数であってもよい。
【0101】
有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び有効量のさらなる抗がん剤は、単一の製剤として対象に同時に投与されてもよく、別個の製剤として対象に同時に又は順次投与されてもよい。
【0102】
本発明の抗体が使用されると成長が阻害されうる好ましいがんは、免疫療法に対し通常応答性であるがんを含む。例えば、本発明におけるがんは、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎がん(例えば、明細胞癌)、前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、及び肺がん(例えば、非小細胞肺がん)を含むがこれらに限定されない。さらに、本発明の治療されるべき対象は、本発明の抗体が使用されると成長が阻害されうる、難治性又は再発性悪性腫瘍を含む。
【0103】
本発明の方法を使用して治療されうる他のがんの例は、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼球内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性又は急性白血病、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎がん、尿管がん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平細胞がん、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘導されるがんを含む環境により誘導されるがん、及びこれらのがんの組合せを含む。
【0104】
別の実施形態において、がんは、CNTN4を発現するがんであってもよい。
【0105】
別の実施形態において、がんは、従来の免疫チェックポイント阻害剤に対して難治性又は耐性(例えば、PD-1経路阻害剤、PD-L1経路阻害剤、又はCTLA-4経路阻害剤に対して耐性)であってもよい。
【0106】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、単独で又は他の抗がん療法と組み合わせて使用されてもよい。他の抗がん療法は、例えば、標準的ながん療法(例えば、化学療法、放射線療法、又は外科手術)、又は他の抗がん剤、例えば、細胞毒性、細胞分裂阻害性、抗血管新生性又は代謝拮抗性薬剤、腫瘍指向性薬剤、免疫刺激若しくは免疫調節剤、又は細胞毒性、細胞分裂阻害性、又は他の毒性薬剤に結合した抗体、免疫チェックポイント阻害剤等を含んでいてもよい。
【0107】
好ましくは、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、又は放射線療法などの他の抗がん剤と組み合わせて使用されてもよい。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)であってもよい。化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、抗プロゲステロン薬、エストロゲン受容体下方制御因子(ERD)、エストロゲン受容体アンタゴニスト、黄体ホルモン放出ホルモンアゴニスト、抗アンドロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、異常な細胞増殖又は腫瘍成長に関連する遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。本発明の化学療法剤の特定の例は、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド(VP-16)、白金アナログ、例えばシスプラチン又はカルボプラチン、タキソイド、例えばパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びドキセタキセル等を含む。他のがん治療剤は、抗がん効果を呈するプロバイオティクス、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)GEN3013株(KCTC13426BP)、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033株(KCTC13684BP)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)MG731株(KCTC13452BP)等を含む。
【0108】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントが、他の抗がん剤と組み合わせて使用される場合、これらは別々に投与されてもよく、複数の活性成分が単一の医薬製剤中に存在する組み合わせ生成物の形態で投与されてもよい。これらが別個の製剤として投与される場合、2つの製剤は順次又は同時に投与されてもよい。同時投与では、これらは一緒に患者に投与される。順次投与では、これらは長くはない時間間隔で投与されてもよく、例えば、これらの製剤は、12時間以下、又は6時間以下の期間内に患者に投与されてもよい。
【0109】
一実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか又は治療する方法を提供し、方法は、さらなる抗がん剤と組み合わせた、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。実施形態は、さらなる抗がん剤とともに抗CNTN4抗体又は抗原結合フラグメントを含有する単一の組成物を、それを必要とする患者に同時に投与することだけでなく、抗CNTN4抗体又は抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤をそれぞれ別々に含有する組成物を、それを必要とする患者に同時に又は順次投与するステップも含む。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するため、さらなる抗がん剤と組み合わせて使用するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するための医薬組成物又は組合せを提供し、組成物又は組合せは、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む。抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む本明細書での医薬組成物又は組合せは、2つの成分が単一の製剤の形態で物理的に一緒に存在する場合だけでなく、2つの成分が別個の製剤として同時に又は順次投与され、2つの薬物が別々に又は単一のキットとして一緒に供給されうる場合も含む。したがって、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するためのキットを提供し、キットは、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント及びさらなる抗がん剤を含む。
【0112】
さらなる抗がん剤は、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤、より好ましくは、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ及びニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ)であってもよい。
【0113】
別の好ましいさらなる抗がん剤は、化学療法剤、例えばゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド(VP-16)、白金アナログ、例えばシスプラチン又はカルボプラチン、タキソイド、例えばパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、又はドキセタキセルを含んでいてもよい。
【0114】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントとともに使用される別の好ましいさらなる抗がん療法は、放射線療法を含んでいてもよい。
【0115】
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを活性成分として使用することにより、試料中のCNTN4タンパク質の存在を検出するか、又は抗CNTN4抗体の量を測定するための方法も提供する。方法は、抗体又はその抗原結合フラグメントが、CNTN4タンパク質に結合して複合体を形成しうる条件下で、抗体又はその抗原結合フラグメントを、試料及び対照試料と接触させることを含む。次いで、複合体が形成されたか否かが検出され、対照試料と比較された試料間の複合体形成の度合の差が、ヒト血中抗原が試料(例えば、血液)中に存在する証拠である。
【0116】
したがって、本発明は、がんを診断するための組成物を提供し、組成物は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0117】
医薬組成物
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。組成物は、不活性成分、すなわち、薬学的に許容できる賦形剤(Handbook of Pharmaceutical Excipients、などを参照のこと)を含有していてもよい。治療用及び診断用製剤の組成物は、生理的に許容できる担体、賦形剤、又は安定剤と製剤を混合することにより、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液又は懸濁液の形態で調製されてもよい。
【0118】
好適な投与経路は、非経口投与、例えば筋肉内、静脈内、又は皮下投与を含む。本発明の医薬組成物に使用されるか、又は本発明の方法を実行するのに使用される抗体の投与は、各種従来の方法、例えば局所適用、又は皮内、皮下、腹腔内、非経口、動脈内、若しくは静脈内注射により実施されてもよい。一実施形態において、本発明の抗体は、静脈内又は皮下投与される。
【0119】
以下では、本発明が、実施例に関連してより詳細に記載される。これらの実施例が、本発明についてより詳細に記載することのみ意図され、本発明の範囲が、本発明の主題に従ってこれらの実施例により限定されないことが、当業者にとって明らかであるはずである。
【実施例
【0120】
以下では、本発明が、実施例に関連してより詳細に記載される。以下の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【0121】
実施例1:CNTN4特異的結合scFv抗体選択
1.1 scFv抗体ライブラリー調製及び抗体選択
(1)ニワトリscFv抗体ライブラリーの調製
ニワトリ15羽を、各5羽の3つの群に分け、第1の群にマウスCNTN4を、第2の群にヒトCNTN4を、第3の群にマウスCNTN4及びヒトCNTN4を交互に、合計4回にわたって接種して、抗体を産生させた。接種された抗原の量は、1回目は各群20μg/ニワトリ、2回目は3週間後に10μg/ニワトリ、3回目は2週間後に10μg/ニワトリ、4回目は2週間後に10μg/ニワトリであり、各群がそれらの量で免疫となった。各時点での抗原接種前に、血液をシリンジで採取して、血清を抗原に結合させるELISAにより、抗体が産生されたか否かを確認した。3回目の接種後、ELISAにおいてヒトCNTN4及びマウスCNTN4の両方で反応性を示す合計4羽のニワトリを選択し、具体的には、第1の群の第3のニワトリ(以下では、1-3と呼ばれる)、1-4、3-2、及び3-5を選択した。屠殺後、血液、脾臓、骨髄、及びファブリキウス嚢を抽出し、全RNAを抽出した。主なRNA、28S rRNAを十分に特定し、免疫抗体ライブラリーの、PCRのために抽出されたRNAを鋳型として使用して、スーパースクリプト(SuperScript)(商標)IVファーストストランド合成システム(Invitrogen、#18091050)を使用することによりcDNAを合成した。PCRにより、抗体の軽鎖及び重鎖可変領域がリンカーにより連結されたscFvフラグメントを確保し、ファージディスプレイ用の制限酵素SfiIを使用することにより、ファージミドベクターであるpComb3Xに対しクローニングを実施し、M13ヘルパーファージによる感染が可能なF’線毛を有する大腸菌ER2738に対しエレクトロポレーションを実施した。scFvライブラリーの複雑性が、表2に示されるように確認される。
【0122】
【表2】
【0123】
(2)scFv抗体選択
表2のニワトリ番号1-3、1-4、3-2、及び3-5の各々について、プールすること及びファージ増幅によりバイオパニングを実施した。より具体的には、合計4つの条件(A~D)を設定し、以下の組合せにより実施した:ファージをプロテインA及び免疫グロブリン複合体50μLと混合し、インキュベーションを37℃で1時間実施することにより、非特異的結合(Fc結合物)を除去する条件(予備除去);PBS(pH7.4)又は50mM酢酸ナトリウム(pH5.5)を結合緩衝液として使用して、インキュベーションを37℃で4時間実施する条件;並びに溶出ステップにおいて抗原による競合溶出を実施し、PBS中0.5%tween20で洗浄し、次いで抗CNTN4ニワトリ血清100μLを添加し、追加溶出を洗浄する条件(表3)。各条件について、抗原に関してのファージ結合条件のストリンジェンシーを制御しながら(抗原20μg~1μg)、1巡~3巡又は最大5巡を実施した。
【0124】
【表3】
【0125】
候補抗体を選択するため、ファージレスキューが3又は5巡目のアウトプットコロニーにおいて行われた後、例えば、単一のコロニーを見出し、培地に配置し、OD600nm0.7~0.8まで培養し、ヘルパーファージを感染させ、次いで一晩培養し、遠心処理してファージ培養培地を得、次いでファージELISAを実施した。ファージELISAについては、まず、プレートを抗原(マウスCNTN4又はヒトCNTN4)により4℃で一晩コーティングし、その後PBS中3%BSAにより1時間ブロッキングした。その後、ファージ50μLを、抗原によりコーティングされたプレートに添加し、その後2時間インキュベーションした。プレートを二次抗体である抗HA-HRPとともに1時間インキュベートした後、ABTSをそこに添加し、発色させて405nmでの吸光度を測定した。ニワトリ番号1-4及び3-2ライブラリー由来の合計950コロニー、並びにニワトリ番号1-3及び3-5ライブラリー由来の合計380コロニーをELISAスクリーニングにかけ、138及び306コロニーを、抗原CNTN4に結合する陽性クローンとしてそれぞれ選択し、26及び35の独自のscFv配列を、scFv配列を特定するための配列決定により選択した。
【0126】
1.2 scFvの発現及び精製
実施例1.1において選択されたscFv抗体の機能性評価のため、融合タンパク質の形態の定常ヒトカッパ(hCk)で標識されたscFv、又はヒトIgG4(S228P)の形態でクローニングを実施し、一過性トランスフェクションをExpi293F細胞に対し実施した。分泌されたscFv-hCk又はIgGを、培養培地においてカッパ選択に結合させ、次いでpH溶出により精製し、透析によりPBS緩衝液に交換し、タンパク質を定量化してscFv-hCk又はIgGを確保した。
【0127】
結果として、合計25のscFv-hCk及び合計27のIgG4が発現されたことが確認され、発現されたscFvの各々の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を、図1a~1d及び2a~2d、並びに表4及び5に示した(実線及び破線により示される、図1a~1d及び2a~2dに示される配列は、各領域のCDR配列を表す)。
【0128】
【表4】




【0129】
【表5】




【0130】
1.3 選択されたscFv抗体のCNTN4結合能の確認
(1)ELISAによる、抗原性タンパク質に対するscFvの結合能の確認
発現が実施例1.2において確認された、合計25のscFv-hCk及び合計27のIgGに対し、ELISA試験を実施した。ELISAプレートを、抗原(ヒトCNTN4-ウサギFc又はマウスCNTN4-ウサギFc)200ngによりコーティングした。タグタンパク質についての陰性対照(ヒト抗原-ウサギFc)200ngを使用した。抗体結合については、抗CNTN4 scFv-hCkを、それぞれ1/10xずつ、最大1μMから0.001nMまで段階希釈し、抗CNTN4 IgGを、それぞれ1/10xずつ、最大10nMから0.00001nMまで段階希釈し、それにより抗原に結合させた。抗ヒトカッパ-HRP又は抗ヒトIgG Fc-HRPを、抗体検出用の二次抗体として使用した。発色試薬であるABTSを使用して発色を行い、405nmでの吸光度を測定した。
【0131】
表6及び7に示されるように、結果は、大部分の抗原に対する反応性が良好であり、ヒト及びマウス抗原の両方に対し同様の反応性を示す多くのクローンが存在することを示した。
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
(3)FACSによる、細胞表面に発現された抗原に対するscFvの結合能の確認
293FT細胞において、ヒトCNTN4抗原を、一過性トランスフェクションにより細胞膜上に発現させ、抗CNTN4 scFv-hCk又は抗CNTN4 IgGを、濃度40μg/mLでそこに結合させた。FACSを使用することによる、抗hCk-PE又は抗hFc-PEでの、抗原に結合した抗CNTN4の検出により、ドットシフト(dot shift)を確認した。
【0135】
表8及び9に示されるように、結果は、ヒトCNTN4に対する結合能を示すhCk-型scFvクローンの2、4、99、129、130、131、132、134、135、137、及び138が、多量のドットシフトで上位群(15.0%超)に属し、IgG-型抗CNTN4の全てが75%以上の優れた結合能を呈することを示す。
【0136】
【表8】
【0137】
【表9】
【0138】
実施例2:抗CNTN4ニワトリ-ヒトキメラIgG4抗体の調製及びその結合能の確認
2.1 抗CNTN4ニワトリ-ヒトキメラIgG4-S228P、A-01の調製
ヒトキメラIgGの形態の抗体の生成については、実施例1により結合能が確認されたS129を選択し、S129の軽鎖及び重鎖領域をバイシストロニック発現ベクターにクローニングした。DNAをExpi293F細胞に一過性トランスフェクトし、生存率50%まで培養してIgG発現を行わせ、培養培地をカッパ選択樹脂(カッパ領域捕捉)に結合させて溶出させ、IgGを1回目精製した。その後、SEC-HPLCで純度72.4%を有する抗CNTN4 129キメラIgG4-S228P(以下では「A-01」と呼ばれる)を、軽鎖不純物を除去するため、マブセレクト(Mabselect)(Fc領域捕捉)に結合させ、溶出させ、IgGを2回目精製することにより調製した。
【0139】
2.2 ELISAによる、抗原性タンパク質に対するA-01の結合能の確認
実施例2.1で調製されたA-01に対し、ELISA試験を実施した。ELISAプレートを、抗原(ヒトCNTN4-10xHis又はマウスCNTN4-10xHis)200ngによりコーティングした。抗体結合については、A-01を、最大1μMから0.0001nMまで段階希釈し、それにより抗原に結合させた。抗ヒトFc-HRPを、抗体検出用の二次抗体として使用した。発色試薬であるABTSを使用して発色を行い、405nmでの吸光度を測定した。生じた結合能が表10に示される。
【0140】
【表10】
【0141】
2.3 表面プラズモン共鳴(SPR)による、抗原性タンパク質に対するA-01の結合能の確認
実施例2.1で調製されたA-01に対し、SPR試験を実施した。
【0142】
具体的には、アミンカップリングを使用して抗ヒトIgG Fc(捕捉抗体)を結合させるため、CM5チップを載せ、泳動緩衝液を流し、チップを活性化させ、次いで捕捉抗体をチップに結合させた。捕捉抗体が結合しなかったデキストリンを、エタノールアミンを使用して不活性化させ、次いで3M塩化マグネシウムを使用して再生を実施して、捕捉抗体を除く分析物を除去した。濃度0.05μg/mLで調製されたA-01を、結合のため速度10μL/分で30秒間流した。その後、抗原として、連続希釈により調製されたヒトCNTN4(400nM~0.78nM)を速度30μL/分で3分間流して結合させ、5分間解離を実施した。次いで、捕捉抗体に結合した全ての分析物を除去するため、再生溶液(3M塩化マグネシウム)を速度20μL/分で30秒間流し、再生を実施した。各濃度の抗原について、A-01の結合、抗原の結合、解離、及び再生を順に繰り返した。結果が表11に示される。
【0143】
【表11】
【0144】
このことから、本発明の抗体が高い親和性でヒトCNTN4タンパク質に結合することが確認された。
【0145】
実施例3:抗CNTN4ヒト化抗体の調製及び結合能の確認
3.1 抗CNTN4ヒト化抗体の調製
ヒト化抗体を、A-01を使用して調製した。
【0146】
具体的には、A-01の可変領域の元の配列(VLA及びVHA)において、フレームワーク領域をヒトフレームワーク領域に完全に変化させた配列(VL1及びVH1)を、A-01の一部の元の配列がVL1及びVH1に残された配列(VL2及びVH2)と組み合わせた(表12及び図3)。A-01を完全にヒト化された抗体(VL1及びVH1)と比較すると、A-01は約78%のヒト化を示した。完全にヒト化された抗体(VL1及びVH1)を、いくつかの復帰突然変異配列を有するVL2及びVH2組合せの抗体と比較すると、配列のうちの少なくとも96%が同一であった。IgG4の形態の、A-01(LAHA)を除く合計8種のヒト化抗体(LAH1、LAH2、L1HA、L1H1、L1H2、L2HA、L2H1、及びL2H2)を調製するため、DNAをExpi293F細胞に一過性トランスフェクトし培養すると、重鎖可変領域が完全にヒト化されたVH1を有する抗体(LAH1、L1H1、及びL2H1)は発現されなかった。次いで、VH2を有する抗体である、LAH2、L1H2、及びL2H2を精製して、それぞれ4mg、11mg、及び12mgを確保した。
【0147】
【表12】
【0148】
3.2 ELISAによる、抗原性タンパク質に対するヒト化抗体の結合能の確認
実施例3.1で調製されたLAH2、L1H2、及びL2H2抗体を、A-01とともにELISA試験にかけた。ELISAプレートを抗原(ヒトCNTN4-10xHis又はマウスCNTN4-10xHis)200ngによりコーティングした。抗体結合については、抗体を、最大1μMから0.0001nMまで段階希釈し、それにより抗原に結合させた。抗ヒトFc-HRPを、抗体検出用の二次抗体として使用した。発色試薬であるABTSを使用して発色を行い、405nmでの吸光度を測定した。
【0149】
生じた結合能が表13に示される。最もヒト化されたL1H2が、A-01起源と比較して3倍以内の、CNTN4タンパク質との結合能の差を有することが確認された。
【0150】
【表13】
【0151】
3.3 表面プラズモン共鳴(SPR)による、抗原性タンパク質に対するヒト化抗体の結合能の確認
実施例3.1で調製された抗体の中で、約98%と最もヒト化されているL1H2に対し、SPR試験を実施した。より具体的には、アミンカップリングを使用して抗ヒトIgG Fc(捕捉抗体)を結合させるため、CM5チップを載せ、泳動緩衝液を流し、チップを活性化させ、次いで捕捉抗体をチップに結合させた。捕捉抗体が結合しなかったデキストリンを、エタノールアミンを使用して不活性化させ、次いで3M塩化マグネシウムを使用して再生を実施して、捕捉抗体を除く分析物を除去した。濃度0.05μg/mLで調製されたL1H2を、結合のため速度10μL/分で30秒間流した。その後、抗原として、連続希釈により調製されたヒトCNTN4(400nM~0.78nM)を速度30μL/分で3分間流して結合させ、5分間解離を実施した。次いで、捕捉抗体に結合した全ての分析物を除去するため、再生溶液(3M塩化マグネシウム)を速度20μL/分で30秒間流し、再生を実施した。各濃度の抗原について、L1H2の結合、抗原の結合、解離、及び再生を順に繰り返した。
【0152】
結果が表14に示される。
【表14】
【0153】
このことから、A-01抗体が98%ヒト化されていても、A-01抗体がCNTN4タンパク質に対する十分に高い結合能を有することが分かる可能性がある。
【0154】
実施例4:ヒトT細胞を使用する、A-01及びL1H2抗体のCNTN4中和能力についての試験
濃度4mg/mLのa-CD3抗体及び濃度150nMのCNTN4組換えタンパク質最終50mLを調製し、96ウェルプレート中に配置し、37℃で約16時間インキュベートした。
【0155】
ドナー1人あたり血液(ヘパリンナトリウムで処理された血液採取チューブ中に含有)50mL及びPBSを1:1の比で混合し、フィコール15mLを50mLチューブに予め含有させ、希釈された血液30mLを、フィコール層及び血液層が分離するように、フィコールの上に慎重に配置し、積み重ねた。遠心処理(加速及び減速速度は0に設定)を1,800rpmで25分間、20℃で実施し、白色のバフィー層が上昇しないように上清を取り除いた。バフィー層を新たな50mLチューブに移し、チューブをPBSで50mLまで満たし、1,800rpmで5分間、4℃で遠心処理した。1X RBC溶解緩衝液10mLを添加し、十分に溶解させ、室温で5分間放置した。PBSで50mLまで満たした後、遠心処理を1,800rpmで5分間、4℃で実施し、上清を取り除き、ペレットをPBSで溶解させ、次いで細胞(PBMC)を顕微鏡で観察し、細胞数を算出した。
【0156】
上記実験で得られたPBMC細胞2×10個あたりにMACS緩衝液1,000μLを添加し、その後再懸濁させた。溶液を2等分し、一方をCD4チューブに入れ、一方をCD8チューブに入れた。各群のPBMC1×10個あたりに抗体カクテル50μLを再懸濁させ、室温で10分間保存した。PBMC1×10個あたりに抗ビオチンマイクロビーズ100μLを再懸濁させ、室温で10分間保存した。その一方で、MACS磁場を消毒し、クリーンベンチ内に配置し、2つのLSカラム(CD4及びCD8用)を設置した。MACS緩衝液3mLを各カラムに流した後、各カラムを通った緩衝液を捨てた。反応が完了した後の各群の細胞を、磁場に載せた2つのLSカラムにそれぞれローディングした。細胞溶液が落ちてこなくなると、MACS緩衝液3mLを各カラムに流した。その後、各カラムから落ちた溶液中の細胞を顕微鏡で観察し、細胞数を算出した。
【0157】
DMSO18μLをCFSE50μgに添加し、ピペットで量って濃度5mMを作製し細胞を使用した。MTM培地1mLを、上記実験で得られたCD4細胞及びCD8細胞に添加し、CFSEを添加して最終濃度5μMに到達し、懸濁させ、次いで37℃のウォーターバス中で10分間保存した。溶液を1,800rpm、4℃で5分間遠心処理し、上清を取り除いた。次いで、MTM培地1mLをそこに添加し、再懸濁させ、次いで1,800rpm、4℃で5分間再度遠心処理し、上清を取り除いた。最後に、細胞をMTM培地で再懸濁させて、1ウェルあたり2×10細胞/200μLに到達して、実験に使用した。
【0158】
次いで、インキュベートされたプレートをPBS200μLで2回洗浄し、1.5mM及び3mMのA-01及びL1H2を最終的に50mLにして、CNTN4処理されたウェルにそれぞれ入れ、96ウェルプレート中に配置した。インキュベーションを37℃で約4時間実施した。
【0159】
その後、インキュベートされたプレートをPBS200mLで2回洗浄し、各ウェルあたりT細胞200mLを添加し、次いで37℃の5%COインキュベーター内で3日間保存した。3日後、T細胞を得、FACSチューブに移し、CFSEで染色された、分化した細胞の度合を、FACS機器を使用して観察した。
【0160】
結果が図4に示される。
【0161】
図4に示されるように、CNTN4組換えタンパク質が、CD4T細胞及びCD8T細胞の増殖を阻害することが確認された。CNTN4により阻害されたT細胞の増殖が、処理されたA-01及びL1H2の濃度とともに増大することが観察された。このことは、本発明のA-01及びL1H2が、CNTN4を中和する顕著に優れた能力を呈することを示す。
【0162】
このことから、本発明のCNTN4抗体が、CNTN4を有効に中和し、CNTN4のT細胞阻害機能を阻害することが確認された。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
【配列表】
2024514109000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号88のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
解離定数(Kd)1×10-7M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
T細胞活性を増大させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記T細胞がCD4+T細胞又はCD8+T細胞である、請求項6に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体scFv、(Fab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、及び線状抗体からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体が多特異性抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が薬物と結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む、組換え発現ベクター。
【請求項14】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記がんがCNTN4を発現するがんである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
前記さらなる抗がん剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び前記さらなる抗がん剤が、単一の製剤として同時に投与されるか、又は別個の製剤として同時に若しくは順次投与される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
がんを予防又は治療するための医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、さらなる抗がん療法と組み合わせて使用される、医薬組成物。
【請求項21】
前記さらなる抗がん療法が、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、及び放射線療法からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
がんを予防又は治療するための医薬の調製のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【国際調査報告】