(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】燃料電池スタック用バイポーラ板
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20240321BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20240321BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0258
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562530
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2022060207
(87)【国際公開番号】W WO2022223495
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021203965.0
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・ダン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA12
5H126DD04
5H126JJ03
(57)【要約】
本発明は、2つの層(2、3)を備え、それらの互いに面していない表面にそれぞれアノード側またはカソード側の流れ領域(9)を有する燃料電池スタック用バイポーラ板(1)であって、2つの層(2、3)において整列した媒体流入口(4、13、15)および媒体流出口(5、14、16)が設けられており、媒体流入口および流出口(4、5、13、14、15、16)の各々が、2つの層(2、3)の互いに面した内側の表面の間の通路(6)とつながっており、かつアノード側およびカソード側に割り当てられた通路(6)がそれぞれ、それぞれの層(2、3)内の開孔部(7)を介してアノード側またはカソード側の流れ領域とつながっている、バイポーラ板(1)に関する。本発明によるバイポーラ板は、それぞれの層(2、3)の材料が、それぞれもう一方の層(3、2)の開孔部(7)に向かい合う区域(17)内で強化されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの層(2、3)を備え、それらの互いに面していない表面にそれぞれアノード側またはカソード側の流れ領域(9)を有する燃料電池スタック用バイポーラ板(1)であって、前記2つの層(2、3)において整列した媒体流入口(4、13、15)および媒体流出口(5、14、16)が設けられており、前記媒体流入口および流出口(4、5、13、14、15、16)の各々が、前記2つの層(2、3)の内側の表面の少なくとも一方の通路(6)とつながっており、かつ前記アノード側および前記カソード側に割り当てられた前記通路(6)がそれぞれ、それぞれの前記層(2、3)内の開孔部(7)を介して前記アノード側またはカソード側の流れ領域とつながっており、
それぞれの前記層(2、3)の材料が、それぞれもう一方の前記層(3、2)の前記開孔部(7)に向かい合う区域(17)内で強化されており、
前記流れ領域(9)が、それぞれの前記層(2、3)の表面内の凹部によって形成されており、前記凹部が、その底から突き出ている流れ分散構造および/または流れ誘導構造(10、12)を有し、前記強化区域(17)が、それぞれの前記層(2、3)内の前記流れ領域(9)の最深部と、同じ層(2、3)の反対側の表面と、の間の材料厚と比較して、より大きな材料厚を有し、
前記より大きな材料厚が、前記流れ領域(9)の深さを減少させた前記区域(17)によって達成される、バイポーラ板(1)。
【請求項2】
深さを減少させた前記強化区域(17)が、前記流れ領域(9)の縁と結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項3】
前記強化区域(17)の前記より大きな材料厚が、前記強化区域(17)の領域から前記流れ領域(9)をずらすことによって実現されていることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項4】
前記強化区域(17)の前記より大きな材料厚が、前記通路(6)のより小さな深さによって、または前記強化区域(17)を有する前記層(2、3)内の前記通路(6)の省略によって実現されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項5】
前記強化区域(17)内の前記より大きな材料厚が、それぞれの前記層(2、3)内の前記流れ領域(9)の最深部と、同じ層(2、3)の反対側の表面と、の間の材料厚の1.5~2.5倍、好ましくは2~2.5倍を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項6】
前記強化区域(17)内の材料の強化が、さらなる材料(18)の適用または導入によって実現されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項7】
前記流れ領域(9)がそれぞれ、1つの流れ場(11)と、前記開孔部(7)を含む2つの分散領域(8)とを有し、前記流れ場(11)が、流れ誘導構造をとりわけリブ(12)の形態で、および前記分散領域(8)が、開放的な流れ分散構造をとりわけ瘤(10)の形態で有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項8】
前記2つの層(2、3)がそれぞれ、炭素含有材料で充填されたプラスチックマトリクスから形成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルでより詳しく定義された種類に基づく、2つの層を備えた燃料電池スタック用バイポーラ板に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用バイポーラ板は、原理的には一般的な先行技術から知られている。バイポーラ板は燃料電池内で、一方では燃料電池の電極の電気接触のために、他方では燃料電池に対する媒体の供給および搬出のために用いられる。また、バイポーラ板は、燃料電池スタックの冷却を併せて担うために冷媒流れ場を含むことが典型的である。
【0003】
一般的に、バイポーラ板は、例えば特許文献1から知られている。その際そこでは、2つの層または半体が、本来のバイポーラ板へと組み合わされている。媒体流入口および媒体流出口を介して媒体が板に供給される。これに関し、両方の層の間に通路が形成されており、これにより媒体がバイポーラ板のいわば内部に誘導される。そこから媒体は、バックフィード・スロットまたはバックフィード・チャネルとも呼ばれる開孔部を介してバイポーラ板の内部から、バイポーラ板のカソード側およびアノード側での媒体のための相応の流れ領域に達する。冷媒の流れは典型的には引き続きバイポーラ板の内部で起こるので、開孔部は、一方の半体内でアノード側の流れ領域に向かって、もう一方の半体内でカソード側の流れ領域に向かって形成されているだけである。
【特許文献1】WO 2008/061094 A1
【0004】
この技術を同様に用いる同等の構造は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5からも知られている。
【特許文献2】WO 03/083979 A2
【特許文献3】WO 2015/145233 A1
【特許文献4】US 9,105,883 B2
【特許文献5】US 2007/0117001 A1
【0005】
その他の先行技術について、またさらに特許文献6も指摘され得る。
【特許文献6】US 8,927,170 B2
【0006】
いまではこの構造が実際に原理的に実証されている。ただし、幾つかの状況ではこれは非常に故障が起きやすいことも分かった。つまり、例えば開孔部の領域内で氷が形成されると、凍結する水はその体積を相応に拡大し、それにより開孔部に隣接するバイポーラ板の半体または層の材料を非常に強く押すので、隣接するバイポーラ板の、その破壊にまで至るダメージが生じ得る。ここでは最悪の場合、亀裂が形成され、これがバイポーラ板を破壊する。また、これらの領域内では特に強い圧力差の場合にも、圧力が開孔部を通って伝播してバイポーラ板の隣接する層の向かい合う側が極端な圧力事象の際にダメージを受けると、上記の領域内でバイポーラ板のそこにある材料に亀裂が入り得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえここでの本発明の課題は、改良されたバイポーラ板を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は請求項1における特徴を有するバイポーラ板によって解決される。有利な形態および変形形態はこれに従属する従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明によるバイポーラ板は、冒頭に挙げた先行技術で説明したバイポーラ板と同等に、適切な開孔部を介した、流れ領域とバイポーラ板の内部とのつながりを有する2つの層から構成されている。ここでは本発明によれば、バイポーラ板のそれぞれの層の材料が、もう一方の層の開孔部にそれぞれ向かい合う区域内で強化されている。発明者には実際に、亀裂またはそれどころか開孔部によるバイポーラ板のダメージが、実際にはほとんどいつも開孔部が向かい合う領域内で発生していることが明らかであった。つまりここでは、開孔部に向かい合うバイポーラ板の層が開孔部に向かい合う領域内で相応に強化されることでバイポーラ板の材料が強化されることにより、バイポーラ板の構造全体が変更されるか、またはその他の適合が行われるような必要なく、効率的に是正することができる。
【0010】
これに関し、バイポーラ板の相応の区域の強化は様々な方式で行われ得る。特に簡単で効率的な解決策は、より大きな材料厚によって強化が実現されることを企図する。その他の可能性、例えば強化材料の導入、層構造を強化する塗料、樹脂、またはその類似物の導入も、原理的には考えられるし、可能であろう。
【0011】
このより大きな材料厚による強化についての好ましい形態は、本発明によるバイポーラ板の非常に有利な一変形形態に基づいて、より大きな材料厚によって強化が実現されることを企図する。その際、この材料厚は、典型的にはそれぞれの層の表面内の凹部によって形成された流れ領域の最深部と、の間の材料厚より大きい。この凹部には、この場合、凹部の底から突き出ている流れ分散構造および/または流れ誘導構造が配置されている。バイポーラ板のそれぞれの層の維持されている残存厚とは、流れ領域の最深部と、同じ層の反対側の表面との間で、それぞれの層の最小の材料厚を表している。つまり隣接する層の開孔部に向かい合う領域内でのこの最小の材料厚が相応に強化されれば、簡単で非常に効率的に、バイポーラ板の寿命の増大が達成され得る。開孔部面積は、バイポーラ板の全面またはその流れ領域に対して相対的に小さいので、つまり、小さな面区域が相応に強化されていれば、上記の利点を獲得するのに既に十分である。
【0012】
このアイデアの非常に好適な一変形形態によれば、これは例えば、より大きな材料厚が、流れ領域の深さを減少させた区域によって達成されることで実現され得る。つまり、この強化区域内では、流れ領域の残存壁厚が少し大きくなっており、これにより、この小さな区域における流れ領域内の深さ、したがって流れ断面積が減少されている。それでも、強化区域は典型的には非常に小さく、かつ流れ領域の縁領域内にあるので、これは流れ自体にほとんどまったく影響しないかまたは少なくともさほど大きな影響はない。
【0013】
これに関し、より小さな深さの流れ領域をもつ強化区域は、例えばこの領域内の流れ分散構造または流れ誘導構造の周りに、ある種の台座が生じることにより、原理的には流れ領域内で独立して実現され得る。ただし特に有利なのは、強化区域が、流れ領域の縁と相応に結合されている場合であり、なぜならこの場合、強化領域の、流れ領域の縁領域への、少なくとも1つの側でまたは角に配置される場合はまた2つの側で存在している結合が、さらにより適切な力の導出によるさらにより良い強化を達成し得るからである。
【0014】
これに対する1つの代替策はまた、より大きな材料厚が、強化区域から流れ領域をずらすことによって実現されることを企図してもよい。つまりこのバリエーションでは、強化区域内での完全な流れ領域が放棄され、したがって流れ領域が少し小さく形成され、かつ強化区域内では、隣接する層の開孔部に向かい合う層の完全な厚さが残っている。
【0015】
さらなる一形態はまた、より大きな材料厚が、通路のより小さな深さによって、または強化区域を有する層内の通路の省略によって行われることを企図してもよい。つまり、バイポーラ板の両方の層の間の内部にある通路が、いわば開孔部を有する層の方向にずらされ、それにより自動的に、隣接する層の領域内では、それぞれの開孔部に向かい合って、より大きな材料厚をもつ強化区域が生じる。
【0016】
その際強化区域内のより大きな材料厚は、この層内の流れ領域の最深部と、同じ層の反対側の表面と、の間の材料厚の1.5~2.5倍、好ましくは2~2.5倍を有し得る。つまり、相応に強化領域を提供するには、それぞれの層の残存材料厚に、例えば1.75の係数が乗じられる。こうして、通常のバイポーラ板の寸法および流れ領域の深さの場合、流れ領域の深さが半分または半分より少し大きく減少し、これは、流れ領域の面積に対して面積的に非常に小さな強化区域を典型的には流れ領域の縁に配置することで、確かに原理的には流れを妨げるが、しかしながら流れの均一な分散およびバイポーラ板の流れ領域を通る媒体の流れにさほど大きな影響はもたらさない。
【0017】
このようなより大きな材料厚による強化の代わりに、または原理的にはそれに加えてでもまた、強化区域内に、強化材料、例えば繊維、織布、ニット、またはその類似物が導入されることが企図されてもよい。これは、とりわけグラファイトまたは別の炭素含有材料で充填されたプラスチックマトリクスから個々の層を製造する場合、その製造において比較的簡単に実現され得る。
【0018】
その際流れ領域自体は、1つの流れ場と、開孔部を含む2つの分散領域とを有し得ることが好ましい。これに関し、有利な一変形形態によれば、流れ場が流路を、および分散領域が開放的な流れ分散構造をとりわけ瘤の形式で有することが企図されてもよい。なかでもこのような様式の流れ領域では、開孔部が、隣接する層の分散領域と向かい合っているのが典型的である。この分散領域は、材料厚がここで少し増大されることで比較的簡単に強化でき、これにより、例えば分散領域の瘤はもう流れ領域の底にではなく、強化区域内のある種の台座上に配置されている。流れは、これによって極僅かにのみ影響を及ぼされ、バイポーラ板の取付けは効率的に実現でき、かつ高い機械的信頼性および長寿命を達成する。
【0019】
これは原理的にバイポーラ板のすべての種類に当てはまる。しかしながら本発明によるバイポーラ板の特に好ましい一形態によれば、2つの層がそれぞれ、プラスチックマトリクス中の炭素含有材料から形成されていることが企図される。例えば適切なマトリクス中の充填剤としてのグラファイトが硬化される構造は、しばしばグラファイト・バイポーラ板または炭素・バイポーラ板とも呼ばれる。
【0020】
本発明によるバイポーラ板のさらなる有利な形態は、以下に図を参照しながらより詳しく説明する例示的実施形態からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】バイポーラ板の層の組立前のバイポーラ板の2つの反対側の表面を備えた先行技術に基づくバイポーラ板を示す図である。
【
図2】
図3に基づく層の組立後の線II-IIに基づく概略的な断面図である。
【
図3】バイポーラ板の層の組立前のバイポーラ板の2つの反対側の表面を備えたバイポーラ板を示す図である。
【
図4】
図1に基づく層の組立後の線IV-IVに基づく概略的な断面図である。
【
図5】
図4での表現に倣った表現で本発明によるバイポーラ板の代替的な一実施形態を示す図である。
【
図6】
図4での表現に倣った表現で本発明によるバイポーラ板のさらなる代替的な一形態を示す図である。
【
図7】
図4での表現に倣った表現で本発明によるバイポーラ板のまたさらなる代替的な一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の表現では、後に、湾曲した矢印に従ってバイポーラ板1へと組み立てられる2つのここではまだ別々の層2、3の平面図が認識され得る。これに関し、上の層2は後のバイポーラ板1のカソード側を、下の層3はアノード側を示す。その際バイポーラ板1の両方の層2、3のそれぞれの裏側には、ここでより詳しくは示さないが原理的に知られている冷媒用流れ場が配置されている。
【0023】
ここでアノード側の層2は、媒体流入口4および媒体流出口5を有する。これら媒体流入口4および媒体流出口5は、両方の層2、3において整列するように、およびここでは図示されていない燃料電池スタックへと後に積み重ねられる他のバイポーラ板1に対して整列するように形成されている。両方の層2、3の間では、つまりここでは
図1での表現によれば裏側では、この媒体流入口4も媒体流出口5も、6が付された通路を介し、それぞれ7が付された開孔部とつながれている。この開孔部7は、
図1の表現では層2の裏側にある通路6を、したがって媒体流入口4または媒体流出口5を、媒体流入口4に隣接して配置されている流れ用分散領域8とつなぐ。分散領域8では、流れが、その全体において9が付された流れ領域の断面全体にできるだけ均一に分散され、かつ媒体流出口5に隣接して相応に集められる。このために、ここでは例えば瘤の形態で形成されている開放的で、流れをブロックせず、かつ誘導しない構造10が、それぞれの分散領域8に配置されている。これらの分散領域8の間には、流れ領域9の面積的に最大の部分として、いわゆる流れ場11があり、流れ場11では、例えばリブ12のような流れ誘導構造により、後にバイポーラ板1のカソード側の層2の上に置かれる膜電極アセンブリのガス拡散層に沿って、流れの均一な案内が行われる。
【0024】
その際アノード側の層3の構造は実質的に類似しており、ここでは、水素用の媒体流入口13が、対応しているアノード排ガス用の媒体流出口14に斜めに向かい合っているという違いがある。その他の点で、一方ではカソード側のための、他方ではアノード側のためのそれぞれの流れ領域9に関するこれらの構造は同等であり、それぞれ同じ符号を備える。
【0025】
先行技術から原理的に知られているように、両方の層2、3内でそれぞれ15および16が付された媒体流入口および媒体流出口15、16を介し、冷媒が供給および再び搬出される。ここに図示した本発明にとって、冷媒の案内は重要でなく、よってこれをさらに取り上げる必要はない。
【0026】
内側にある通路6および開孔部7の原理が、
図2の表現での
図1の両方の層2、3内の線II-IIに基づく原理断面図を用いてもう一度示される。層2、3は、異なるハッチングで特徴づけられており、相互に結合している。媒体流入口4は、両方の層を貫通して整列して配置されている。媒体流入口4は横で通路6に通じており、通路6は、両方の層内に、この通路6の断面のそれぞれ一部が形成されるのが典型的である。次いで開孔部7は、流れ領域9、詳しくはカソード側で瘤10を備えたその分散領域8を媒体流入口4とつなぎ、空気または酸素はこの経路で分散領域8内に、およびそこから、それ自体で知られているやり方で流れ場11内に達し得る。もう一方の層3では、向かい合う領域内に、
図1の表現から分かるように、そこにあるアノード側の分散領域8がその瘤10を備えて配置されている。
【0027】
図3の表現では、ここでバイポーラ板1の改良形態が示されている。層2、3の、それぞれもう一方の層の開孔部7に向かい合うそれらの区域での機械的ダメージを防止するため、その他の点では
図1での表現に倣って理解されるべき
図3の表現では17で特徴づけられたこれらの領域では、ている。つまり、これらの強化区域17は、それぞれもう一方の層3、2のそれぞれの開孔部7に向かい合っており、よってつまりカソード側の層2内では、強化区域17は斜めに向かい合う隅に、ここでは左下および右上に配置されており、それに応じてカソード側の層3では、カソード側の媒体のためのそれぞれの媒体流入口4または媒体流出口5に隣接して配置されている。その際強化領域17は、できるだけ安定した構造を保証するため、流れ領域9の、つまりここではそれぞれの分散領域8の縁と結合されていることが好ましい。
【0028】
先行技術に基づくバイポーラ板1の構造に関する
図2での表現に倣って、
図3での線IV-IVに基づく相応の概略的な断面図が
図4でも示されている。この構造は、大体のところでは
図2の範囲内で説明した構造と一致する。ここでは強化領域17だけが、
図2での表現とは異なって追加的に存在している。ここで図示された例示的実施形態では、このために、アノード側の層2の開孔部7に向かい合うカソード側の層3の材料が、開孔部7に向かい合う瘤10の脇の流れ領域の塞がっていない深さが相応に減少するように強化されている。これにより、より大きな材料厚による、強化区域17内のバイポーラ板1の十分な強化が達成される。これは、とりわけ層3の製造時に直接的に、つまりとりわけプラスチックマトリクス中の炭素含有材料が成形され層3へと硬化される形態で、一緒に計画に入れられていてもよい。
【0029】
これより後の図では、それぞれ同様に
図4での表現に倣ってさらなる可能性が説明されている。そこでも、設計上の構造によって材料厚が相応に増大している。その代わりに、バイポーラ板1の相応の層2、3の製造時の、塗料、樹脂、中間層の導入、繊維材料の挿入により、この強化を相応に行うことも考えられるであろう。
【0030】
図5の表現では、強化区域17内で、アノード側の流れ領域9がいわば縮小され、これにより材料厚が、層3の隣接する領域の材料厚にまで持ち上げられている。その代わりに、またこれは原理的には両方の説明した実施バリエーションに加えてでも行い得るが、強化領域17を提供するために通路6の領域内の材料厚を相応に減らすこともでき、これは
図6の表現で概略的に示唆されている。
【0031】
また、
図6の表現では、純粋に例示的に強化繊維18が示唆されており、強化繊維18は、例えば炭素繊維、ケブラー(登録商標)繊維、ガラス繊維、またはその類似物として、強化区域17内に導入され得るであろう。
【0032】
区域17を強化するための、
図7で認識可能なさらなる可能性はまた、通路6全体が、一方の、つまりバイポーラ板1のここで図示された箇所ではカソード側の層2内にのみ配置されており、これにより、先行技術とは違い、層2内の開孔部7に向かい合う層3の流れ領域9の底領域内では、完全な材料厚が維持されたままであることを企図してもよいであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの層(2、3)を備え、それらの互いに面していない表面にそれぞれアノード側またはカソード側の流れ領域(9)を有する燃料電池スタック用バイポーラ板(1)であって、前記2つの層(2、3)において整列した媒体流入口(4、13、15)および媒体流出口(5、14、16)が設けられており、前記媒体流入口および流出口(4、5、13、14、15、16)の各々が、前記2つの層(2、3)の内側の表面の少なくとも一方の通路(6)とつながっており、かつ前記アノード側および前記カソード側に割り当てられた前記通路(6)がそれぞれ、それぞれの前記層(2、3)内の開孔部(7)を介して前記アノード側またはカソード側の流れ領域とつながっており、
それぞれの前記層(2、3)の材料が、それぞれもう一方の前記層(3、2)の前記開孔部(7)に向かい合う区域(17)内で強化されており、
前記流れ領域(9)が、それぞれの前記層(2、3)の表面内の凹部によって形成されており、前記凹部が、その底から突き出ている流れ分散構造および/または流れ誘導構造(10、12)を有し、前記強化区域(17)が、それぞれの前記層(2、3)内の前記流れ領域(9)の最深部と、同じ層(2、3)の反対側の表面と、の間の材料厚と比較して、より大きな材料厚を有し、
前記より大きな材料厚が、前記流れ領域(9)の深さを減少させた前記区域(17)によって達成される、バイポーラ板(1)。
【請求項2】
深さを減少させた前記強化区域(17)が、前記流れ領域(9)の縁と結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項3】
前記強化区域(17)
には、前記流れ領域(9)
の部分は形成されていないことを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項4】
前記強化区域(17)の前記より大きな材料厚が、前記通路(6)のより小さな深さによって、または前記強化区域(17)を有する前記層(2、3)内の前記通路(6)の省略によって実現されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項5】
前記強化区域(17)内の前記より大きな材料厚が、それぞれの前記層(2、3)内の前記流れ領域(9)の最深部と、同じ層(2、3)の反対側の表面と、の間の材料厚の1.5~2.5倍、好ましくは2~2.5倍を有することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項6】
前記流れ領域(9)がそれぞれ、1つの流れ場(11)と、前記開孔部(7)を含む2つの分散領域(8)とを有し、前記流れ場(11)が、流れ誘導構造をとりわけリブ(12)の形態で、および前記分散領域(8)が、開放的な流れ分散構造をとりわけ瘤(10)の形態で有することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項7】
前記2つの層(2、3)がそれぞれ、炭素含有材料で充填されたプラスチックマトリクスから形成されていることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項8】
前記強化区域(17)内の材料の強化が、さらなる材料(18)の適用または導入によって実現されていることを特徴とする、請求項7に記載のバイポーラ板(1)。
【国際調査報告】