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特表2024-514152原子炉を制御する方法およびアセンブリ、そのようなアセンブリを備えた原子炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】原子炉を制御する方法およびアセンブリ、そのようなアセンブリを備えた原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/00 20060101AFI20240321BHJP
   G21D 3/08 20060101ALI20240321BHJP
   G21C 7/36 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G21D3/00 A
G21D3/00 B
G21D3/08 G
G21C7/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562816
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022060008
(87)【国際公開番号】W WO2022219117
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】2103869
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593128105
【氏名又は名称】フラマトム
【氏名又は名称原語表記】FRAMATOME
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】グロステット,アラン
(72)【発明者】
【氏名】デュプレ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】フィアラ,シリル
(72)【発明者】
【氏名】シュヴレル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤグビ,モアメド
(57)【要約】
【課題】迅速に実装でき、原子炉の柔軟性を高めることができる低コストの技術的解決策を提供する。
【解決手段】 制御方法は、以下のステップを含む。S20/原子炉の運転パラメータの現在値を取得する。
S30/以下のサブステップを繰り返し実行する。S31/中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成する。S32/出力プログラム、運転パラメータの現在値および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心(3)の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算し、その発展は原子炉の炉心の予測モデルを使用して計算される。S33/計算された発展を使用して、コスト関数の値を求める。サブステップS31/からS33/は、コスト関数の収束基準が満たされるまで繰り返される。ステップS20/およびS30は、60分未満の周期で繰り返される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉(1)の制御方法であって、その原子炉(1)が、複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(3)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入するユニット(31)、および一次回路(7)に水を注入するために設けられたユニット(39)を有し、その方法が、以下のステップ、
S10/原子炉によって供給される原子炉出力プログラムを取得するステップで、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの原子炉出力変動を含むステップ、
S20/原子炉の炉心によって供給される炉心出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含む、原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するステップ、
S30/以下のサブステップを繰り返し実行するステップ、
S31/所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するステップ、
S32/取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値、および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心(3)の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するステップで、その発展は原子炉の炉心の予測モデルを利用して計算するステップ、
S33/計算された発展を使用して、コスト関数の値を求めるステップ、
サブステップS31/からS33/は、コスト関数の収束基準が満たされるまで繰り返されるステップ、
S40/最適な注入シーケンス、言い換えれば、収束基準を満たすことを可能にする注入シーケンスをオペレータに伝達し、オペレータは最適な注入シーケンスの関数として中性子毒および水の注入ユニット(31,39)を制御するステップ、
サブステップS20/およびS30は、60分未満の時間間隔(T)で繰り返されるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップS30/で計算された炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性が、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータを含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
コスト関数が、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔にわたる基準値との間の偏差の発展を特徴付ける、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
収束基準が、コスト関数の極値に到達することを含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項5】
収束基準には、以下のリスト、
-炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔中の基準値との間の偏差が、所定の極限値未満に常に留まる、
-前記所与の時間間隔中に単位時間当たりに注入される中性子毒の量が、所定の極限値未満に留まる、
-前記所与の時間間隔中の単位時間当たりに注入される水の量が、所定の極限値未満に留まる、
から選択された少なくとも一つの制約を満たすことが含まれる、請求項1~4のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項6】
サブステップS31/では、勾配降下アルゴリズムによって、前の反復で得られた結果を考察することによって、一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスが生成される、請求項1~5のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項7】
ステップS30/が、第1の出力から第2の出力への出力放出中の時間の関数として出力放出に最適なスロープを決定するためのサブステップS35/を含み、サブステップS35/が以下の運転、
-S351/単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値と常に等しいとみなして、複数のスロープ値について、原子炉の炉心の予測モデルを利用して、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性を計算する、
-S352/各スロープ値について計算された変動を使用して、コスト関数の値を求める、
S353/コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
を含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項8】
原子炉の炉心の予測モデルが非線形である、請求項1~7のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項9】
原子炉の炉心の予測モデルが複数のサブモデルを含み、各サブモデルが原子炉の炉心のレベルをモデル化し、前記レベルでの中性子密度の動力学を記述する少なくとも一つの方程式と、前記レベルでの一次熱伝達流体の温度を記述する方程式を含み、さらに、そのモデルは、レベル間の中性子交換を記述する方程式と、各レベルでの反応性を特徴付ける方程式とを含む、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
各レベルでの反応性を特徴付ける方程式では、単数または複数の以下の効果、
-前記レベルでの一次熱伝達流体の温度の変動による効果、
-前記レベルでの炉心によって供給される出力変動による効果、
-制御棒群の変位による効果、
-一次熱伝達流体中の中性子毒の濃度の変動による効果、
-前記レベルでの核燃料集合体中のキセノン濃度の変動による効果、
が考慮される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
中性子毒および/または水の一次液体への注入シーケンスが、複数の注入運転を含み、各運転は運転量および運転継続時間によって特徴付けられ、注入シーケンスでの運転の数は2~12の間であり、運転継続時間は2分~60分の間であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項12】
時間間隔(T)が、注入シーケンスでの1回の運転継続時間未満であるか、または実質的に等しい、請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
所与の時間間隔の総継続時間が、10分から出力プログラムの継続時間までの間である、請求項1~12のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項14】
原子炉用制御アセンブリであって、原子炉(1)が、複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(5)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入することができるユニット(31)および、水を一次回路(7)に注入するために設けられたユニット(39)を有し、中性子毒および水の注入ユニット(31、39)はオペレータによって制御され、制御アセンブリ(63)が、以下を含み、
a/ユーザーが原子炉によって供給される出力プログラムを入力するように構成されたユーザーインターフェース(65)であって、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの出力変動を含み、
b/原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するためのユニット(67)であって、原子炉の炉心(3)によって供給される出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心(3)内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含むユニット(67)、
c/以下を含む計算ユニット(69)、
-所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するようにプログラムされた最適化アルゴリズム(75)、
-取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するようにプログラムされた原子炉の炉心の予測モデル(71)、
-予測モデル(71)によって計算された発展を使用して、コスト関数を計算するように構成されたコストモジュール(73)、
最適化アルゴリズム(75)が、コスト関数収束基準が満たされるまで、注入シーケンスを反復的に生成し、炉心の予測モデル(71)によって少なくとも一つの対応する振幅特性の発展を計算し、コストモジュール(73)によって対応するコスト関数の値を求めるようにプログラムされ、
アセンブリ(63)が、また、最適な注入シーケンス、言い換えれば、コスト関数収束基準が満たされた注入シーケンスをユーザーインターフェース(65)上に表示し、その結果、最適な注入シーケンスがオペレータによって実行されるように構成されている原子炉用制御アセンブリ。
【請求項15】
計算ユニット(69)が、第1の出力から第2の出力までの出力変動中の時間の関数として原子炉出力放出に最適なスロープを決定するようにプログラムされたスロープモジュール(77)を備え、前記モジュールは、以下の、
-単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値に常に等しいとみなして、炉心の予測モデル(71)に、複数のスロープ値について、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算させる、
-各スロープ値について計算された発展を使用して、コストモジュール(73)に、各スロープ値に対応するコスト関数の値を求めさせる、
-コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
ようにプログラムされている、請求項14に記載の制御アセンブリ。
【請求項16】
複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(3)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入することができるユニット(31)、一次回路(7)に水を注入するために設けられたユニット(39)、および請求項14または15に記載の制御アセンブリ(63)を含む原子炉(1)であって、中性子毒および水の注入ユニット(31、39)がオペレータによって制御される、原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、原子炉の制御、特に出力過渡変動中の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多数の再生可能電力生産施設が電力供給網に接続されている。
その結果、太陽光発電や風力発電が顕著なときには、市場での電力価格がゼロを下回る可能性がある。
【0003】
電力の市場価格がゼロを下回ると、原子炉オペレータは原子炉で生成される電力を急速に削減するように促される。
これに対して、電力価格が再びプラスになったときには、高出力に戻ることが望ましい。
【0004】
世界中のほとんどのPWR(加圧水型原子炉)型原子炉は、概してモードAと呼ばれるモードで運転される。
これらの原子炉は、ベースロード運転、言い換えれば、本質的に一定の高い電力で運転するように設計されている。
モードAで運転中の原子炉では出力変動を達成することが困難であり、オペレータは警報や保護の作動を避けるために正確な措置を講じる必要がある。
【0005】
その結果、多くのオペレータは、たとえ電力価格がマイナスになったとしても、原子炉を常にベースロードで稼働させたままにしている。
【0006】
この状況は、シミュレーションツールを使用して、出力過渡変動の実現可能性を準備および検証することで改善できる。
最先端のシミュレーションツールは、オンラインCMS(Core Monitoring System、コアモニタリングシステム)である。
【0007】
これらのツールは、3D中性子コードに基づいており、優れた精度を提供する。
【0008】
しかしながら、これらのツールには、遅いという欠点がある。
さらに、たとえ計算コードが正確であっても、モデルの欠陥および、オペレータによるコマンドの適用でのランダム性により、実際の軌道は理論上の軌道に関して必然的に逸脱する。
【0009】
また、原子炉を変更して、制御モードAからG、X、TまたはALFCなどのより柔軟な制御モードに切り替えることも可能である。
【0010】
しかしながら、この運転モードの変更は非常にコストがかかり、迅速に実行できない。
実際、この解決策には原子炉計装の制御システムの完全な変更、また、特に、制御アルゴリズムとインターフェースの、センサとアクチュエータへの完全な交換が必要である。
【0011】
場合によっては、この解決策は、また、制御クラスタの交換も必要になる。
【0012】
さらに、原子炉の運転範囲が変更されるので、安全性調査を繰り返す必要があり、新たな運転許可を申請する必要がある。
【0013】
第3の可能性は、モードAからRMOSCタイプの運転方法に切り替えることである。
この方法は、本出願人の名前で国際公開第2019/149907号で提出された特許出願によって保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2019/149907号
【0015】
この方法は、2つのカスケードコントローラ、予測制御アルゴリズムを使用するスーパーバイザ、および多目的コントローラを有する炉心制御手段を実装する。
【0016】
この解決法は、モードAからG、X、TまたはALFCモードに切り替えるよりもコストがわずかに低くなる。
RMOSCは、原子炉の運転範囲を変更しないように適合させることができる。
しかしながら、計装および制御システムの大幅な変更が必要なため、依然としてコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、迅速に実装でき、原子炉の柔軟性を高めることができる低コストの技術的解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これに関連して、第1の態様によると、本発明は、原子炉の制御方法に関しており、その原子炉は、複数の核燃料集合体を含む炉心、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心を冷却する一次回路、中性子毒を一次熱伝達流体に注入するユニット、および一次回路に水を注入するために設けられたユニットを有し、その方法は、以下のステップ、
S10/原子炉によって供給される原子炉出力プログラムを取得するステップで、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの原子炉出力変動を含むステップ、
S20/原子炉の炉心によって供給される炉心出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含む、原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するステップ、
S30/以下のサブステップを繰り返し実行するステップ、
S31/所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するステップ、
S32/取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値、および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの変数特性の発展を計算するステップで、その発展は原子炉の炉心の予測モデルを利用して計算されるステップ、
S33/計算した発展を使用して、コスト関数の値を求めるステップ、
サブステップS31/からS33/は、コスト関数の収束基準が満たされるまで繰り返されるステップ、
S40/最適な注入シーケンス、言い換えれば、収束基準を満たすことを可能にする注入シーケンスをオペレータに伝達するステップで、オペレータは最適な注入シーケンスの関数として中性子毒および水の注入ユニットを制御するステップ、
サブステップS20/およびS30は、60分未満の時間間隔で繰り返されるステップ、
を含む方法である。
【0019】
この方法により、中性子毒および/または水を一次冷却材に注入するための最適なシーケンスを迅速に決定することができるので、オペレータは自信を持って出力過渡変動を実行できる。
【0020】
重要な点は、注入シーケンスが60分未満、例えば、10分程度の周期で繰り返し決定されることである。
【0021】
注入シーケンスは、したがって、原子炉の運転パラメータの取得した値に基づいて定期的に、例えば10分ごとに更新される。
【0022】
さらなる再較正の前に、注入シーケンスの開始のみが実行される。
【0023】
これにより、原子炉の炉心の予測モデルによって提供される計算結果の不確実性の影響を制限することができる。
また、それによりオペレータが前の反復で計算された注入シーケンスを厳密に適用しない場合のドリフトを制限することもできる。
【0024】
原子炉のシミュレーションによって得られた予測を使用して構築されたコスト関数の収束により、出力過渡変動を実行するための最適な注入シーケンスひいては、最適な軌道を決定することができる。
【0025】
これにより、オペレータは、警報や原子炉の保護の作動につながる状況に達することを心配する必要なく、この過渡変動を実行することができる。
【0026】
制御方法は、また、個別にまたは技術的に可能な組み合わせの、以下の単数または複数の特性を示すこともできる。
-ステップS30/で計算された炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性は、炉心内の中性子束の分布を特徴付ける前記パラメータを含む、
-コスト関数は、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔にわたる基準値との間の偏差の発展を特徴付ける、
-収束基準は、コスト関数の極値に到達することを含む、
-収束基準は、以下のリストから選択された少なくとも一つの制約を満たすことを含む、
-炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔中の基準値との間の偏差が、所定の極限値未満に常に留まる。
-前記所与の時間間隔中に単位時間当たりに注入される中性子毒の量が、所定の極限値未満に留まる。
-前記所与の時間間隔中の単位時間当たりに注入される水の量が、所定の極限値未満に留まる。
-サブステップS31/では、勾配降下アルゴリズムを使用して、前の反復で得られた結果を考察することによって、中性子毒および/または水を一次液体に注入するためのシーケンスが生成され、
-ステップS30/は、第1の出力から第2の出力への出力変動中の時間の関数として出力放出に最適なスロープを決定するためのサブステップS35/を含み、サブステップS35/は以下の運転を含む、
-S351/単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値と常に等しいとみなして、複数のスロープ値について、原子炉の炉心の予測モデルを利用して、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性を計算する、
S352/各スロープ値について計算された発展を使用して、コスト関数の値を求める、
S353/コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
-原子炉の炉心の予測モデルは非線形である、
-原子炉の炉心の予測モデルは複数のサブモデルを含み、各サブモデルは原子炉の炉心のレベルをモデル化し、前記レベルでの中性子密度の動力学を記述する少なくとも一つの方程式と、前記レベルでの一次熱伝達流体の温度を記述する方程式を含み、さらに、そのモデルは、レベル間の中性子交換を記述する方程式と、各レベルでの反応性を特徴付ける方程式とを含む。
-各レベルでの反応性を特徴付ける方程式では、単数または複数の以下の効果が考慮される、
-前記レベルでの一次熱伝達流体の温度変化による効果、
-前記レベルでの炉心によって供給される出力変動による効果、
-制御棒群の変位による効果、
-一次熱伝達流体中の中性子毒の濃度の変動による効果、
-前記レベルでの核燃料集合体中のキセノン濃度の変動による効果、
-中性子毒および/または水を一次液体に注入するシーケンスは、複数の注入運転を含み、各運転は運転量および運転継続時間によって特徴付けられ、注入シーケンスでの運転の数は2~12の間であり、運転継続時間は2分~60分の間である。
-時間間隔Tは、注入シーケンスでの1回の運転継続時間未満であるか、または実質的に等しい。
-所与の時間間隔の総継続時間は、10分から出力プログラムの継続時間までの間である。
【0027】
第2の態様によれば、本発明は、原子炉の制御アセンブリに関しており、その原子炉は、複数の核燃料集合体を含む炉心、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心を冷却する一次回路、中性子毒を一次熱伝達流体に注入するために設けられたユニットおよび、水を一次回路に注入するために設けられたユニットを有し、中性子毒および水の注入ユニットはオペレータによって制御され、制御アセンブリは、以下を含む。
a/ユーザーが原子炉によって供給される出力プログラムを入力するように構成されたユーザーインターフェースであって、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの出力変動を含む、
b/原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するためのユニットであって、原子炉の炉心によって供給される出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含む、原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するためのユニット、
c/以下を含む計算ユニット、
-所与の時間間隔をカバーする一次熱伝達流体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するようにプログラムされた最適化アルゴリズム、
-取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値および、検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するようにプログラムされた原子炉の炉心の予測モデル、
-予測モデルによって計算された発展を使用して、コスト関数を計算するように構成されたコストモジュール、
最適化アルゴリズムは、コスト関数収束基準が満たされるまで、注入シーケンスを反復的に生成し、炉心の予測モデルによって少なくとも一つの対応する振幅特性の変動を計算し、コストモジュールによって対応するコスト関数の値を求めるようにプログラムされる、
アセンブリは、また、最適な注入シーケンス、言い換えれば、コスト関数収束基準が満たされた注入シーケンスをユーザーインターフェース上に表示し、その結果、最適な注入シーケンスがオペレータによって実行されるように構成されている。
【0028】
有利には、制御アセンブリは、計算ユニットが、第1の出力から第2の出力までの出力変動中の時間の関数として原子炉出力放出に最適なスロープを決定するようにプログラムされたスロープモジュールを備え、前記モジュールは、以下の、
-単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値に常に等しいとみなして、炉心の予測モデルに、複数のスロープ値について、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算させる、
-各スロープ値について計算された発展を使用して、コストモジュールに、各スロープ値に対応するコスト関数の値を求めさせる、
-コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
ようにプログラムされている。
【0029】
第3の態様によれば、本発明は、複数の核燃料集合体を含む炉心、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心を冷却する一次回路、中性子毒を一次熱伝達流体に注入するためのユニット、一次熱伝達流体に水を注入するためのユニット、一次回路に水を注入するために設けられたユニット、および上記特性を有する制御アセンブリを含む原子炉に関し、中性子毒および水の注入ユニットはオペレータによって制御される。
【0030】
本発明のその他の特徴および利点は、参考としてかつ非限定的に、添付図面を参照して、以下に示す詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の制御ユニットアセンブリを備えた、配電ネットワークに接続される原子炉の概略図である。
図2】本発明の方法を示すステップ図である。
図3図2に示す方法で使用される原子炉の炉心の予測モデルの概略図である。
図4】本発明の方法によって計算された注入シーケンスおよびパラメータの発展を示す概略図である。
図5】サイクルの開始時に出力低下およびその後の出力上昇を連続的に含むプログラムについて、本発明の方法を実行したときに得られる軸方向出力不均衡(軸方向オフセットAO)の発展を示すグラフである。
図6図5と類似したグラフであり、図5と同じ例の、炉心内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoyと基準温度Trefとの差の経時的発展を示すグラフである。
図7】同じ例の、サイクル終了時での図5と類似したグラフである。
図8】同じ例の、サイクル終了時での図6と類似したグラフである。
図9図1に示した原子炉に取り付けられた制御アセンブリを構成するさまざまなモジュールの簡略化した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示した原子炉1は、従来の方法で、それ自体が複数の核燃料集合体5を含む炉心3を含む。
【0033】
原子炉1は、また、炉心3を冷却するために設けられ、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する一次回路7を含む。
【0034】
典型的には、この一次回路には複数のループが含まれており、各ループには蒸気発生器9と一次ポンプ11がある。
【0035】
原子炉は、また、二次熱伝達流体が内部を循環する二次回路13を含む。
二次熱伝達流体は、一次熱伝達流体によって放出される熱の作用を受けて、蒸気発生器9内で蒸発する。
【0036】
二次回路13は、少なくとも一つのタービン15、復水器17、供給タンク19、および二次ポンプ21、23を含む。
【0037】
蒸気の形態の二次熱伝達流体は、蒸気発生器9からタービン15に流れ、次に復水器17で凝縮される。
その後、液体の形態で蒸気発生器9に戻される。
【0038】
弁25は、蒸気発生器9をタービン15に接続する蒸気ラインに介在しており、タービンに供給される蒸気の流れを調節することができる。
【0039】
タービン15は、オルタネータ27を機械的に駆動する。
【0040】
オルタネータ27によって生成された電気は、配電ネットワーク29に供電する。
【0041】
原子炉1は、また、中性子毒を一次熱伝達流体に注入することを可能にするユニット31も含む。
中性子毒は、典型的には、ホウ素である。
【0042】
中性子毒、例えばホウ酸の濃縮溶液を収容するタンク32は、パイプ33によって一次回路7に接続されている。
ポンプ35およびバルブ37は、パイプ33に介在している。
ユニット31は、一次液体中の中性子毒の濃度を選択的に増加させる。
【0043】
原子炉は、また、一次回路に水を注入するために設けられたユニット39も含む。
【0044】
ユニット39は、ライン43によって一次回路7に接続されたタンク41を含む。
ポンプ45およびバルブ47は、ライン43に介在している。
【0045】
水は、典型的には、純粋な脱塩水である。
【0046】
ユニット39は、水を一次回路7に注入し、それによって、一次熱伝達流体中の中性子毒の濃度を低減するために設けられる。
【0047】
従来、原子炉1は、また、制御棒群49および、原子炉の炉心3内に制御棒群49を選択的に挿入または引き抜くことができるメカニズム51も備える。
【0048】
制御棒は、中性子吸収材でできている。
【0049】
制御棒群49は、炉心3内側の反応度を選択的に変更するように変位される。
【0050】
原子炉1は、また、計装および制御システム53も含む。
【0051】
この計装および制御システム53は、原子炉の複数の運転パラメータを直接測定または決定するための計装55を含む。
これらの運転パラメータには、少なくとも以下が含まれる、
-タービン15によって供給される出力、
-炉心3の入口および出口での一次熱伝達流体の温度、
-制御棒群49の位置、
-原子炉の炉心3によって供給される出力、
-炉心3内の中性子束分布。
【0052】
計装55は、特に、炉心3の外側に位置し、炉心の高さ全体にわたって分散された中性子検出器を含む。
これらの検出器は、炉心外チャンバとして知られている。
【0053】
炉心によって供給される出力は、例えば炉心の外側の中性子束を測定する検出器によって提供される情報に基づいて計算によって得られる。
【0054】
代替的には、炉心によって供給される出力は、タービンによって供給される出力を測定することによって決定される。
【0055】
炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータは、例えば軸方向出力分布、または軸方向オフセットAOである。
軸方向オフセットは、下記の式を使用して計算される。
AO=(Φh-Φb)/(Φh+Φb)
ただし、Φhは、炉心の上半分の中性子束、Φbは、炉心の下半分の中性子束である。
【0056】
炉心の上半分と下半分の中性子束は、典型的には、炉心3の外側に配置された中性子検出器によって取得される。
代替的には、それらは、炉心内検出器として知られる、炉心3の内側に配置された検出器によって取得される。
【0057】
代替的には、炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータは、Φh-Φb、または任意の他の適切なパラメータである。
【0058】
有利には、一次熱伝達流体に注入される中性子毒の流量および水の流量もまた、測定または決定される。
【0059】
計装および制御アセンブリ53は、また、原子炉の特定の数の運転パラメータを調整するように構成された制御装置57を含む。
【0060】
制御装置57は、一次熱伝達流体の温度を制御するための少なくとも一つのループ59を備える。
ループ59は、原子炉の炉心3内の一次熱伝達流体の現在の平均温度Tmoyを入力として受け取る。
【0061】
この値は、例えば、原子炉入口で測定された温度と炉心出口で測定された温度の平均に相当する。
【0062】
モードAによって運転される原子炉では、炉心内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoyは、制御棒群49を変位させることによって制御される。
A群、B群、C群、D群と呼ばれる4つの制御棒群は、温度Tmoyを制御するために変位させることができる。
【0063】
制御装置57は、また、タービン15によって供給される出力を制御するためのループ61を含む。
【0064】
ループ61は、タービン15によって供給される出力値を入力として受け取る。
ループ61は、また、タービン出力設定値および、タービン出力の任意の変動のためのスロープ設定値も受け取る。
【0065】
出力およびスロープ設定値は、典型的には、原子炉のオペレータによって設定される。
【0066】
ループ61は、出力およびスロープ設定値の関数として、および、現在のタービンの出力値の関数として、二次回路13の蒸気ライン内の弁25を制御する。
【0067】
さらに、オペレータは、中性子毒および水の注入ユニット31および39を直接制御する。
【0068】
オペレータは、一次熱伝達流体に単位時間当たりに注入される中性子毒の量および、一次熱伝達流体に単位時間当たりに注入される水の量を設定する。
典型的には、注入される中性子毒溶液の体積流量および、注入される水の体積流量を設定する。
【0069】
本発明は、原子炉が第1の出力から第2の出力までの、過渡変動とも呼ばれる少なくとも一つの出力変動を含む出力プログラムに従わなければならない場合に特に適している。
【0070】
これは、原子炉1が負荷追従モードで運転しなければならない場合に特に当てはまる。
【0071】
典型的には、この場合の出力スケジュールは、送電網29の管理責任者によって原子力発電所のオペレータに提供される。
【0072】
モードAによって運転する原子炉では、炉心内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoyは、制御棒群49を変位させることによって制御される。
【0073】
原子炉が負荷追従モードで運転しているとき、炉心内の中性子束分布の過度の摂動を避けるために、D群のみがループ59によって変位される。
【0074】
原子炉によって供給される出力レベルの変動は、一次熱伝達流体中の中性子毒の濃度を調整することによって達成される。
これは、ユニット31および39を使用して、中性子毒または水を一次回路7に注入することによって行われる。
【0075】
中性子毒濃度の調整による原子炉出力のこのような制御は、核燃料が減損するにつれて遅くなる。
理論的には、負荷変動の最大スロープは、サイクルの開始時に毎分定格出力の1.5%、サイクルの90%で毎分定格出力の0.10%になる。
さらに、これらの出力調整は、一次回路に注入される中性子毒の量を非常に正確に制御する必要があるので、達成するのが困難である。
【0076】
比較すると、モードGまたはモードTで最大可能スロープは、サイクルの80%までの毎分定格出力の5%である。
【0077】
本発明は、制御ユニット63を原子炉に追加することによってこれらの問題を克服することを目的とし、その制御ユニットは、供給される出力プログラムに特に適した、一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスをオペレータに提供することになる。
任意では、制御ユニット63は、また、出力プログラム中に実行されるべき、その出力変動、または各出力変動についての推奨されたスロープを提供する。
【0078】
制御ユニット63は、以下に記載することになる原子炉の制御方法を実施するために設けられる。
【0079】
図2に示す制御方法は、原子炉によって供給される原子炉出力プログラムを取得するステップS10を含む。
このプログラムには、第1出力から第2出力までの少なくとも一つの原子炉出力変動が含まれている。
【0080】
原子炉出力は、典型的には、タービンによって供給される機械的出力に対応する。
【0081】
原子炉出力変動は、典型的には、非ゼロ振幅である。
【0082】
言い換えれば、その制御方法は、出力過渡変動を有する出力プログラムに従う原子炉の場合に特に適している。
【0083】
これは、上述のように、原子炉が負荷追従モードで運転している場合である。
【0084】
この場合、従うべき出力プログラムは、上述のように、典型的には配電ネットワークオペレータ29によって提供される。
【0085】
その制御方法は、また、負荷追従モードで運転しないが、著しい出力過渡変動を管理しなくてはいけない原子炉にも適している。
【0086】
原子炉出力変動は、典型的には、原子炉の定格出力の数十パーセントである。
【0087】
しかしながら、その制御方法は、また、例えば原子炉が遠隔制御モードで運転している場合など、小さな振幅の出力変動にも適用できる。
この場合、出力変動は、原子炉の定格出力の数パーセント、例えば10%未満、さらには5%未満である。
【0088】
その制御方法は、また、原子炉が基本モードで運転している場合にも適用される。
出力変動は、したがって、ゼロとなり、第1の出力は第2の出力と等しい。
【0089】
この場合、原子炉は、一定の出力、典型的にはその定格出力レベル(RPL)の100%で運転する。そのような場合の燃料の減損は、一次熱伝達流体の平均温度の低下につながり、コスト関数での変化を引き起こす。
次に、制御方法は、最適な状況を回復するための中性子毒または水の注入の推奨事項を提案する。
【0090】
典型的には、原子炉出力プログラムは、24時間をカバーする。
それは、単一の原子炉出力変動を含むか、また代替的には、複数の原子炉出力変動を含む場合がある。
【0091】
例えば、原子炉出力プログラムは、初期に出力低減を含み、続いて数時間後に初期出力レベルに戻る(時間)ウィンドウである。
【0092】
その制御方法は、また、原子炉1の複数の運転パラメータの現在値を取得するステップS20を含む。
【0093】
運転パラメータは、原子炉の炉心3によって供給される炉心出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータPと、炉心3内の中性子束分布を特徴付けるパラメータRとを含む。
【0094】
好ましくは、単数または複数の以下の運転パラメータは、また、ステップS20で取得される、
-原子炉の炉心3内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoy、
-制御ユニット群49の位置Pbank、
-単位時間当たりの一次熱伝達流体に注入される中性子毒の量Qpn、
-単位時間当たりの一次熱伝達流体に注入される脱塩水の量Qw。
【0095】
これらの運転パラメータは、原子炉の計装および制御システム53から直接取得されるか、またはこのシステム53から取得した値から計算される。
【0096】
原子炉の炉心により供給される炉心出力Pを特徴付けるパラメータは、例えば、炉心により供給される熱出力である。
【0097】
このパラメータは、炉心の外側に配置された中性子検出器からの中性子束測定値を使用して、システム53によって再構成される。
【0098】
代替的には、このパラメータは、タービンによって供給される出力の測定値、または炉心の入口と出口、TinとToutでの一次熱伝達流体の温度の測定値から再構成することができる。
【0099】
代替的には、炉心出力を特徴付けるパラメータは、炉心内の総中性子束、またはタービンによって供給される出力、または他の任意の適切なパラメータである。
【0100】
炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータRは、典型的には、軸方向オフセットAOである。
それは、典型的には、上述のように、炉心の外側または内側の中性子束を測定する検出器によって提供される測定値から再構成される。
代替的には、このパラメータは、炉心の上部の中性子束と炉心の下部の中性子束との差である。
【0101】
一次熱伝達流体の平均温度Tmoyは、炉心出口での一次熱伝達流体の温度測定値Toutおよび炉心入口での一次熱伝達流体の測定値Tinを使用して計算される。
例えば、Tmoyは以下の方程式を使用して計算される。
Tmoy=(Tin+Tout)/2
【0102】
単位時間当たりに注入される中性子毒の量Qpnは、パイプ33に設置された流量センサを使用して決定される。
代替的には、ポンプロータ35の回転速度または他の任意の適切な振幅を使用して決定することもできる。
【0103】
同様に、単位時間当たりに注入される水の量Qwは、パイプ43に設置された流量センサによって提供される測定値を使用して決定される。
代替的には、それは、ポンプロータ55の回転速度、または他の任意の適切な振幅を使用して再構成される。
【0104】
その方法は、また、実行される原子炉出力プログラムを考慮して、所与の時間間隔で最適な中性子毒および/または水の注入シーケンスを決定するステップS30を含む。
【0105】
ステップS30は、反復的に実行される複数のサブステップを含む。
【0106】
ステップS30は、所与の時間間隔をカバーする、一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するためのサブステップS31を含む。
【0107】
中性子毒および/または水の注入シーケンスは、複数の注入運転を含み、各運転は、注入される中性子毒または水の量、および運転継続時間によって特徴付けられる。
【0108】
注入シーケンスでの運転の数は、2~12の間、好ましくは3~8の間であり、例えば6である。
【0109】
運転継続時間は、2~60分、好ましくは5~20分であり、例えば10分である。
【0110】
所与の時間間隔は、総継続時間が10分から出力プログラムの継続時間の間、好ましくは20分~3時間の間、さらに好ましくは30分~2時間の間であり、例えば1時間に相当する。
所与の時間間隔は、原子炉出力プログラムの一部をカバーする。
【0111】
各運転で注入される量は、体積または質量で表され、あるいは中性子毒溶液または水の流量に相当する。
【0112】
注入運転は、時間間隔全体をカバーする、互いにすぐに続く連続的な運転である。
同じ注入シーケンス中に、中性子毒の注入の運転のみ、または水の注入運転のみ、または異なる性質の運転(中性子毒の注入、水の注入、注入なし)が存在する。
【0113】
ステップS30は、また、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するためのサブステップS32も含む。
【0114】
炉心の計算された状態の少なくとも一つの振幅特性は、とりわけ、以下で説明する選択されたコスト関数に依存する。
【0115】
少なくとも一つの振幅特性は、少なくとも炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータR、例えば、軸方向オフセットAOを含む。
【0116】
炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性は、好ましくは、単数または複数の以下の振幅を含む。
-炉心によって供給される出力P、
-炉心内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoy、
-制御棒群の位置Pbank。
【0117】
典型的には、上記の振幅全部が計算される。
【0118】
この計算は、取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値、およびサブステップS31で生成された注入シーケンスを使用して、原子炉の炉心の予測モデルを利用して実行される。
【0119】
より具体的には、サブステップS32は、所与の時間間隔によってカバーされる出力プログラムの部分を使用する。
【0120】
原子炉の炉心の予測モデルは、非線形モデルである。
代替的には、モデルは、線形である。
このモデルは、したがって、例えば、以下で説明する非線形モデルを線形化することによって取得される。
【0121】
このモデルを図3に概略的に示す。
【0122】
炉心の予測モデルは、複数のサブモデルで構成され、各サブモデルは、炉心3のレベルをモデル化する。
【0123】
言い換えれば、炉心は、垂直方向に複数のスライスに分割され、各サブモデルは、炉心スライスの一つをモデル化する。
【0124】
典型的には、炉心の予測モデルは、2~20のサブモデル、好ましくは2~10のサブモデルを含み、例えば6つのサブモデルを含む。
【0125】
各サブモデルは、前記レベルでの中性子密度動力学を記述する少なくとも一つの方程式と、前記レベルでの一次熱伝達流体の温度を記述する一つの方程式とを含む。
【0126】
各レベルの出口での温度T2からT7は、各レベルでの中性子束から導かれる。
【0127】
方程式を以下に示す。
【0128】
レベル1
【数1】
【0129】
レベルi
【数2】
【0130】
最高レベル
【数3】
【0131】
ただし、上記式において
-nは、レベルiでの中性子密度、
-ρは、レベルiでの反応性、
-Dは、中性子交換係数、
-1は、中性子の平均寿命(即時および遅延)、
-KT/Hは、温度/エンタルピー変換係数、
-Kは、出力/中性子束変換係数、
-Qは、炉心内の一次熱伝達流体の質量流量、
-T1は、炉心入口温度、
-Tは、各レベルの出口での一次熱伝達流体の温度。
【0132】
したがって、各炉心レベルは、レベル間の中性子交換を説明するD係数を追加して、中性子点動力学のグループの1グループ近似値を使用してモデル化される。
【0133】
方法またはオペレータによって予想されるものを超えるダイナミクスを有する遅延中性子および前駆体は、モデル化されない。
これらの中性子の典型的なダイナミクスは、60秒程度の計算時間ステップについて10秒である。
【0134】
さらに、モデルには各レベルでの反応性を特徴付ける方程式が含まれている。
【0135】
これらの方程式では、単数または複数の以下の効果が考慮される。
-前記レベルでの一次熱伝達流体の温度変化による効果(緩和効果としても知られる)、
-前記レベルでの炉心によって供給される出力変動による効果(ドップラー効果)、
-制御棒群の変位による効果、
-一次熱伝達流体中の中性子毒濃度の変動による効果、
-前記レベルでの核燃料集合体中のキセノン濃度の変動による効果。
【0136】
方程式を以下に示す。
【0137】
【数4】
【0138】
また、下記の通りである。
【0139】
【数5】
【0140】
ただし、上記式において、
-ρi0は、炉心の予測モデルの初期状態が、取得した運転パラメータの現在値に基づいて調整された時点で決定されるレベルiでの初期反応度(以下を参照)、
-Pは、中性子密度に比例すると仮定される炉心のレベルiによって供給される熱出力、
-Xeは、レベルiの核燃料集合体中のキセノン濃度、
-lは、レベルiでのヨウ素濃度、
【数6】
は、核分裂ヨウ素生成係数、
-λは、キセノンでのヨウ素壊変定数、
【数7】
は、核分裂によるキセノン生成係数、
-λXeは、キセノン壊変定数、
【0141】
【数8】
は、キセノン135からキセノン136への中性子吸収変換係数。
【0142】
上記の方程式において、Δは、予測モデルの初期状態に関する変動を示す。
【0143】
炉心によって供給される出力変動による効果により、ドップラー効果としても知られる核燃料の温度変動の効果を特徴付けることができる。
【0144】
各レベルでのキセノン135の発展は、以下を考慮した従来の方程式を使用してモデル化される。
-核分裂によるヨウ素の生成、
-ヨウ素からキセノンへの放射性壊変、
-核分裂によるキセノンの生成、
-キセノンの放射性壊変、
-中性子吸収によるキセノン135からキセノン136への変換。
【0145】
ΔPbankは、ステップで表現される、レベルi内部のすべての制御群の変位に対応する。
このパラメータは、すべての制御群のレベルiでの挿入ステップ数の変動の合計に対応する。
【0146】
ΔPは、以下の式で求められる。
ΔP=Kn×Δn、式中、Knは所定の定数である。
【0147】
さらに、モデルには以下の一般方程式が統合される。
【0148】
【数9】
【0149】
Pは、炉心によって供給される総出力である。
【0150】
炉心によって供給される総出力放出は、以下で説明する出力変動について保持されるスロープを考慮して、出力プログラムによって課される。
【0151】
係数KT/H、Kn Kmod、Kdop、Kbor、Kbank、Kxenon、D、ヨウ素およびキセノンの発展係数
【0152】
【数10】
は、数値シミュレーションによって決定された。
いくつかは現場測定によって決定することも可能である。
係数l、λl、λXeは、既知の値である。
代替的には、lは計算によって決定される。
【0153】
ΔPbankの値は、炉心内の一次熱伝達流体の平均温度Tmoyの発展の関数として、モデルによって決定される。
このモジュールは、まず、次の方程式によってTmoyの値を決定する。
Tmoy=(T1+T2)/2
【0154】
次に、モデルは、出力プログラムによって供給される原子炉出力と過渡変動について選択されたスロープの関数として、平均基準温度Trefを決定する。
【0155】
次に、モデルは、Tmoyと平均基準温度Trefの差ΔTmoyを決定する。
【0156】
Tmoyが温度デッドゾーンの外側に降下した場合、言い換えれば、ΔTmoyが所定のしきい値を超える場合、モデルは、Tmoyの値をデッドゾーン極限値に設定し、制御ユニットを変位する必要があることを決定する。
それは、ΔTmoyの関数としてΔPbankの値を計算し、臨界の達成を可能にする。
【0157】
基準温度値および、原子炉出力の関数としての温度デッドゾーン幅は、モデルに格納されている所定の値であるか、または計装および制御システム53によって供給される。
【0158】
このモデルは、したがって、温度ループ59の運転をシミュレートする。
【0159】
ΔCpnは、一次熱伝達流体に注入された中性子毒および/または水の量を積分することによって得られる。
モデルでは以下の方程式が使用される。
dCpn/dt=-Cpn×Qw/Mt(水の注入の場合)
dCpn/dt=(Crea-Cpn)×Qw/Mt(中性子毒の注入の場合)
ただし、Mtは一次回路内の水の総質量、例えば、N4レベルの場合は260トン、Creaは注入される中性子毒溶液中の中性子毒の濃度、Cpnは一次熱伝達流体中の中性子毒の現在濃度、Qwは注入される脱塩水の流量、Qpnは注入される中性子毒溶液の流量。
【0160】
遅延は、脱塩水または中性子毒の注入の効果の値を求めるために考察される。
【0161】
Qpの値、言い換えれば、炉心内の一次熱伝達流体流量は、所定の値である。
【0162】
代替的には、取得ステップS20で計装および制御システム53から取得される。
【0163】
ステップS30の最初の反復の前、言い換えれば、運転パラメータの現在値を取得するステップの直後に、運転パラメータの取得した現在値を使用して炉心の予測モデルの初期状態が調整される。
【0164】
例えば、炉心が放出する出力PとTmoyの値は、T1~T7を設定するために使用される。
炉心によって放出される出力Pと軸方向のオフセットの値を使用して、n~nの値が決定される。
制御群の位置値は、Pbankの開始値を直接設定するために使用される。
【0165】
中性子密度の時間発展がゼロになるように、さまざまな反応度項を調整することによってモデル内の方程式のバランスが保持される。
【0166】
この初期調整の後、炉心の予測モデルは、炉心の各レベルについて、所定の時間間隔にわたる中性子濃度n、温度Tおよびキセノン濃度Xeiの時間発展を計算する。
【0167】
これらのパラメータから、モデルは平均温度Tmoyおよび、炉心内の中性子分布を特徴付けるパラメータR、例えば、軸方向オフセットAOなどのより包括的なパラメータの発展を再構築する。
【0168】
このモデルは、また、上述のように、Pbank群の位置の発展および中性子毒濃度Cpnも決定する。
【0169】
炉心によって放出される出力Pの発展は、出力変動について選択されるスロープを考慮して、所与の時間間隔中の出力プログラムに従う。
【0170】
ステップS30は、また、サブステップS32で決定される振幅特性の発展を使用して、コスト関数の値を求めるためのサブステップS33も含む。
【0171】
例えば、コスト関数は、前記所与の時間間隔にわたる、炉心内の中性子束の分布Rを特徴付けるパラメータ、典型的には軸方向オフセットと、基準値Rrefとの間の偏差δRの発展を特徴付ける。
【0172】
Rrefは、原子炉出力に応じてあらかじめ決められた値である。
【0173】
基準値Rrefは、オペレータによって手動で入力される。
代替的には、計装および制御システム53から検索することもできる。
実際、このシステムは、現在の原子炉出力の関数として基準値を直接与える基準曲線を備える。
【0174】
コスト関数を計算するには、Rrefを所与の時間間隔にわたって一定として取得するか、または、出力プログラムに応じて変数として取得する。
【0175】
したがって、コスト関数は、炉心内の中性子束の分布を特徴付けるパラメータRと基準値との間の偏差を最小限にするように選択される。
【0176】
コスト関数は、例えば、以下の通りである。
【0177】
【数11】
【0178】
ただし、δR=R-Rref、式中、t0は時間間隔の開始時、Tpredicは時間間隔の継続時間である。
【0179】
コスト関数の別の例を以下に示す。
【0180】
【数12】
【0181】
式中、
Rcor=R+K(Tmoy-Tref)、Kは定数、
および、δRcor=Rcor-Rref。
【0182】
原子炉の炉心に装填される集合体のサイクルの開始時であるか、サイクルの終了時であるかに応じて、定数Kに異なる値を割り当てることができる。
例えば、炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータが、軸方向オフセットAOである場合、Kに選択される値は、サイクルの開始時に-2%AO/℃、サイクルの80%で-6%AO/℃である。
【0183】
この第2の関数の利点は、Tmoyがデッドゾーン内に留まる場合でも、最適な注入シーケンスを決定できることである。
実際、この場合、制御棒群は変位せず、炉心内の中性子束分布を特徴付けるRパラメータの値は変化しないままである。
そのような状況で検討された第1のコスト関数は、注入されるQpnとQの値の如何に関わらず一定である。
一方、第2のコスト関数は変化し、考察中のさまざまな注入シーケンスを区別することができる。
【0184】
したがって、第2の関数により、そのデッドゾーン内のTmoyの変動によって導き出される、炉心内の中性子束の分布を特徴付けるパラメータRの変動を考慮することができる。
【0185】
次に、ステップS30は、コスト関数の収束基準が満たされていたかどうかを決定するサブステップS34を含む。
【0186】
図2に示すように、この収束基準が満たされない場合、新しい中性子毒および/または水の注入シーケンスとともに、サブステップS31、S32、およびS33が繰り返される。
【0187】
ステップS31では、前の反復で得られた結果を考察することによって、新しい反復での一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスが生成される。
【0188】
好ましくは、新しい反復の注入シーケンスは、勾配降下法アルゴリズムを使用して、典型的には、主双対内点法として知られる最適化方法を用いて生成される。
【0189】
この方法は周知であるため、ここでは詳述しない。
【0190】
逆に、収束基準が満たされている場合には、ステップS40が実行される。
ステップS40中に、最適な注入シーケンス、言い換えれば、収束基準を達成できる注入シーケンスがオペレータに伝達される。
【0191】
この最適な注入シーケンスに対応する炉心の状態の振幅特性の発展もまた、オペレータに伝達される。
【0192】
例えば、図3に示すように、注入シーケンスおよび所与の時間間隔中の炉心の状態の振幅特性の発展がユーザーインターフェース画面に表示される。
【0193】
収束基準は、少なくともコスト関数が極値に達するという事実を含む。
【0194】
上記の例では、この極値は最小値である。
【0195】
言い換えれば、炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータRと基準値との間の偏差は、前記所与の時間間隔にわたって最小でなければならない。
【0196】
さらに、収束基準では、以下の単数または複数の制約が満たされることを規定できる、
-炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータRと、前記所与の時間間隔中の基準値との間の偏差が、所定の極限値未満に常に留まる。
-前記所与の時間間隔中に単位時間当たりに注入される中性子毒の量が、所定の極限値未満に留まる。
-前記所与の時間間隔中の単位時間当たりに注入される水の量が、所定の極限値未満に留まる。
【0197】
第1の制約は、炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータR、典型的には軸方向オフセットAOが、所与の時間間隔中にその基準値Rref付近の極限値を超えてはならないという事実を反映している。
【0198】
この基準は、以下の方程式で表すことができる。
【0199】
【数13】
【0200】
式中、Lは超えてはならない極限値である。
【0201】
極限値は、原子炉の正常な運転条件によって定義される。
【0202】
単位時間当たりに注入される中性子毒の量に課せられる極限値は、典型的には、ユニット31によって供給できる最大体積流量に対応する。
【0203】
単位時間当たりに注入される水の量に課せられる極限値も同様に、ユニット39によって供給され得る最大体積流量に対応する。
【0204】
これらの極限値は、ポンプ35および45の最大可能流量の関数である。
【0205】
その方法によると、ステップS20およびS30は、60分未満、好ましくは20分未満、例えば10分間の時間間隔Tで繰り返される。
【0206】
言い換えれば、その方法は、オペレータに最適な注入シーケンスを短期間に繰り返し提供することを可能にする。
この注入シーケンスは、原子炉の運転パラメータの現在値に合わせて再較正される。
【0207】
間隔Tは、注入シーケンスの1回の運転の継続時間以下である。
【0208】
間隔Tは、原子炉オペレータによって調整され得るパラメータである。
【0209】
Tの最小値は、ステップS20およびS30の実行に必要な時間に相当する。
【0210】
典型的には、間隔Tは、注入シーケンス内の1回の運転継続時間に実質的に等しい。
【0211】
したがって、図4に示すように、オペレータは時刻t0でステップS20およびS30の実行を開始する。
t0とt0+Tの間では、前の反復で決定された設定値が、最適な注入シーケンスの最初の運転に実行される。
【0212】
オペレータは、現在の注入運転の終わり頃に、言い換えれば、t0+Tの直前に、再計算の結果、言い換えれば、新しい最適な注入シーケンスを受信する。
t0+Tとt0+2Tの間では、新しい最適な注入シーケンスの最初の運転について受け取った推奨事項が実行などされる。
【0213】
代替的には、間隔Tは、注入シーケンスの1回の運転継続時間よりも短い。
【0214】
ここで、DIは、注入シーケンス運転継続時間である。
【0215】
この選択肢は、ステップS20およびS30を実行するための計算時間が短い場合に選択される。
計算時間は、1分未満であり得る。
【0216】
この場合、t0とt0+DIの間で、オペレータは、最適な注入シーケンスの第1の運転について、前の反復(t0-DIとt0の間)で決定された設定値を実行する。
【0217】
t0において、オペレータは、ステップS20およびS30を開始する。
これらのステップは、t0からt0+DIまでの間で数回繰り返される。
オペレータは、最後の計算の結果、言い換えれば、現在の注入運転の終わり頃に、t0+DIの直前に受信した最適な注入シーケンスを保持する。
t0+DIとt0+2DIの間では、新しい最適な注入シーケンスの第1の運転について受け取った推奨事項が実行などされる。
【0218】
有利には、ステップS30は、第1の出力から第2の出力までの出力変動の間、時間の関数として出力放出に最適なスロープを決定するためのサブステップS35を含む。
【0219】
このサブステップS35は、図2に示すように、サブステップS31の直前に実行される。
【0220】
決定すべき最適なスロープは、オペレータが警報や原子炉の保護を作動させる危険を冒さずに実現可能な最大のスロープである。
【0221】
サブステップS35は、以下の運転を含む。
-S351は、原子炉の炉心の予測モデルを利用して、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を、複数のスロープ値について計算するステップであり、単位時間当たりの中性子毒または水の注入は、最大可能値に常に等しいとみなされる、
-S352は、検討された各スロープ値について計算された発展を使用して、コスト関数の値を求める、
-S353は、コスト関数を最小化または最大化するスロープ値を選択する。
【0222】
テストされたスロープ値は、検討された状況での原子炉の典型的なスロープ値である。これらのスロープ値は、周知である。それらは、状況に応じて、例えば、0.5~10%の間であり、典型的には0.1~5%の間で変化する。
【0223】
スロープ値は、出力変動の継続時間全体にわたって一定である。
【0224】
代替的には、スロープ値は過渡変動中に変化する。
例えば、過渡変動の異なる部分について異なるスロープ値を選択できる。
したがって、一つのスロープ値を80%RPL~90%RPL部分に選択し、別のスロープ値を90%RPL~100%RPL部分などに選択し得る。
【0225】
ステップS351は、ステップS20で取得した現在の値を用いて既に再較正された炉心の予測モデルを用いて実行される。
ここでの水平軸計算は、検討されたスロープを考慮して、第1の出力から第2の出力まで経過するのに必要な時間全体に対応する。
【0226】
ステップS352で使用されるコスト関数は、前述したものである。
【0227】
最適とみなされるスロープ値は、選択したコスト関数に応じてコスト関数が最小または最大となる値である。
【0228】
前述したコスト関数の場合、最適とみなされるスロープ値は、コスト関数を最小化する値である。
【0229】
オペレーションS353では、代替として、最適なスロープ値は、コスト関数を最小化または最大化するだけでなく、単数または複数の運転上の制約も尊重する値であると考えることが可能である。
これらの運転上の制約は、上記に列挙したものである。
【0230】
出力変動について選択された勾配値は、ステップS40でオペレータに伝達される。
例えば、選択されたスロープ値は、決定された最適なスロープから安全係数を差し引いた値に対応する。
安全係数は、例えば、30%である。
【0231】
ステップS32の各反復中に、サブステップS35で決定され、選択されたスロープ値を使用して、シミュレーションを実行するために検討された炉心出力放出が決定される。
【0232】
このスロープは、出力過渡変動全体にわたって一定であると考えられる。
それは、新しい出力プログラムがオペレータによって提案された場合にのみ変更される。
代替的には、上記に示したように、スロープは過渡変動中に変化する。
【0233】
代替的には、サブステップS35は、実施されない。
この場合、オペレータは、第1の出力から第2の出力までの出力過渡変動が実施されるスロープを設定する。
サブステップS32の各反復で考慮されることになるのは、この値である。
【0234】
出力プログラムでの各原子炉出力変動について、最適なスロープが、決定または設定される。
【0235】
図5から図8は、本発明の制御方法を実施することによって得られた結果を示す。
【0236】
これらの結果は、SOFIAシミュレータ(Simulator for Observation of Functionig during Incident and Accident)を用いたシミュレーションにより得られた。
Framatomeによって開発されたこのソフトウェアは、PWR型原子炉のすべての主要コンポーネントならびに、通常の原子炉運転中に関与する主な現象(炉心動力学、一次および二次回路の熱水力学、計装、制御システム、タービン駆動システムなど)を詳細にシミュレートする。
【0237】
シミュレーションでは、本発明の方法によって決定された注入シーケンスが、修正することなく直ちに原子炉に適用されると仮定される。
2つのシミュレーションが実行された。
【0238】
図5および図6では、炉心には燃焼率が実質的にゼロであり、一次熱伝達流体中のホウ素濃度が約1200ppmである新しい燃料集合体が装填されている。
図7および図8では、そのサイクルの80%、ホウ素濃度が約200ppの炉心についてシミュレーションが実行される。
【0239】
検討された出力プログラムを図5および図7に示す。
原子炉は、原子炉出力が最初に定格出力の100%から定格出力の50%まで減少し、その後再び定格出力の100%まで増加するという従来のサイクルに従って負荷追従モードで運転する。
負荷削減の開始と負荷増加の開始の間には、8時間の間隔がある。
【0240】
図5および図6の場合、本発明の方法は、負荷低減には毎分定格出力の1.6%のスロープが使用され、負荷増加には毎分定格出力の1%が使用されることを示している。
【0241】
これらの値は、ステップS35によって決定され、SOFIAによって受け入れられる値に四捨五入された最適なスロープの70%に相当する。
SOFIAは、離散スロープ値のみを受け入れる。
状況は現場でも同様で、特定のスロープ値のみを適用できる。
【0242】
図5は、最適な注入シーケンスが適用されたときの原子炉の炉心の軸方向オフセットの発展を示している。
図6は、最適な注入シーケンスが適用された場合のTmoyおよびTrefの間の偏差を示している。
【0243】
図5には、また、軸方向オフセットの基準値(図の中央の水平線)ならびに、軸方向オフセットのデッドゾーン極限値(図5の上下の水平破線)を示している。
この非限定的な例では、極限値は5%に設定されている。
【0244】
図5から明らかなように、出力過渡変動中さえも、軸方向オフセットは、その基準値から大幅に逸脱せず、デッドゾーン極限値から遠く離れたままである。
【0245】
図6では、Tmoy温度のデッドゾーン極限値が、図の上下の破線で示されている。
図6は、温度制御の結果として、Tmoyが、デッドゾーン内に留まり、出力過渡変動中に時折しか外れないことを明確に示している。
【0246】
図7および図8は、図5および図6と同様である。
本発明の方法によって選択されたスロープは、負荷低減の場合は毎分定格出力の1.6%、負荷増加の場合は毎分定格出力の0.3%である。
【0247】
図7は、軸方向のオフセットが負荷減少の終了時にデッドゾーンを時折離れることを示している。
しかしながら、このデッドゾーンからの脱出は短期間であるので、これはこの負荷過渡変動の実現可能性に疑問を投げかけるものではない。
Tmoyは、また、特に負荷が減少した瞬間に、デッドゾーンを時折離れることがある。
【0248】
以下に詳細に説明する制御アセンブリ63は、上述の制御方法を実施するのに特に適している。
【0249】
制御アセンブリ63は、図9に示すように、オペレータが原子炉によって供給される出力プログラムを入力できるように構成されたユーザーインターフェース65を備える。
【0250】
出力プログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの出力変動を含む。
【0251】
出力プログラムについては、制御方法に関して上述した通りである。
【0252】
ユーザーインターフェース65は、任意の適切なタイプである。
それは、例えば、コンピュータに接続されたキーボードとスクリーンを含む。
【0253】
アセンブリ63は、また、複数の原子炉運転パラメータの現在値を取得するためのユニット67も含む。
【0254】
このユニット67は、コンピュータ、またはコンピュータの一部である。
【0255】
典型的には、取得ユニット67は、計装および制御システム53から運転パラメータの現在値を回収する。
【0256】
複数の原子炉運転パラメータは、原子炉の炉心によって供給される出力Pを特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心内の中性子流体分布を特徴付けるパラメータRとを含む。
【0257】
ユニット67によって取得される運転パラメータは、制御方法に関して上述したものである。
【0258】
制御ユニット63は、また、計算ユニット69も含む。
【0259】
計算ユニット69は、原子炉の炉心の予測モデル71、コスト関数を計算するように構成されたモジュール73、および最適化アルゴリズム75を含む。
【0260】
ユニット67は、例えば、計算ユニット69に統合される。
【0261】
最適化アルゴリズム75は、所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するようにプログラムされる。
中性子毒および/または水を一次液体に注入するシーケンスは、複数の注入運転を含み、各運転は、運転量および運転継続時間によって特徴付けられる。
【0262】
注入シーケンスは、制御方法に関して上述した通りである。
【0263】
原子炉の炉心の予測モデル71は、取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値および検討された注入シーケンスを使用して、所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するようにプログラムされる。
【0264】
この予測モデル71は、上述したものである。
【0265】
予測モデル71は、注入シーケンスによってカバーされる時間間隔に対応する出力プログラムの部分を考察する。
【0266】
予測モデル71によって計算される炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性は、とりわけ、選択されたコスト関数に依存する。
典型的には、少なくとも炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータR、言い換えれば、軸方向オフセットAOを含む。
【0267】
予測モデル71により計算される炉心の状態の振幅特性は、制御方法に関して上述したものである。
【0268】
モジュール73によって計算されるコスト関数は、例えば、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータRと、所与の時間間隔にわたる基準値との間の偏差の発展を特徴付ける。
【0269】
コスト関数は、典型的には制御方法に関して前述した通りである。
以下で説明するように、他のコスト関数を考察することができる。
【0270】
コスト関数を計算するために、モジュール73は予測モデル71によって計算された発展を使用する。
【0271】
最適化アルゴリズム75は、コスト関数収束基準が満たされるまで、注入シーケンスを反復的に生成し、炉心の予測モデル71によって少なくとも一つの対応する振幅特性の発展を計算し、コストモジュール73によって対応するコスト関数の値を求めるようにプログラムされる。
【0272】
収束基準には、例えばコスト関数の極値に到達することが含まれる。
【0273】
上記のコスト関数の例の場合、この極値は最小値である。
【0274】
さらに、収束基準では、単数または複数の以下の制約が満たされることが規定される場合がある、
-炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータRと、前記所与の時間間隔中の基準値との間の偏差が、所定の極限値未満に常に留まる、
-前記所与の時間間隔中に単位時間当たりに注入される中性子毒の量が、所定の極限値未満に留まる、
-前記所与の時間間隔中の単位時間当たりに注入される水の量が、所定の極限値未満に留まる。
【0275】
収束基準、特に制約は、制御方法に関して上述した通りである。
【0276】
好ましくは、計算ユニット69は、また、第1出力から第2出力への出力変動中の時間の関数として原子炉出力放出に最適なスロープを決定するようにプログラムされたスロープモジュール77も含む。
【0277】
スロープモジュール77は、以下のようにプログラムされている、
-炉心の予測モデル71を使用して、単位時間当たりの中性子毒または水の注入を最大可能値と常に等しいとみなしながら、複数のスロープ値について、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算する、
-コストモジュール73を使用して、各スロープ値について計算された発展を使用して、各スロープ値に対応するコスト関数の値を求める、
-コスト関数を最小化するスロープ値を選択する。
【0278】
最適な注入シーケンスを決定するために予測モデル71によって選択されるスロープは、場合によっては安全係数を差し引いた最適なスロープである。
それは、またオペレータにも推奨される。
【0279】
それは、所与の出力プログラムについて1回だけ計算される。
しかしながら、それは、出力プログラムが変更されるたびに再計算される。
【0280】
出力プログラムが、複数の出力変動を含む場合、最適なスロープ値が各出力変動について計算される。
【0281】
この最適なスロープは、原子炉への既存の制約を考慮して取得できる最速のスロープである。
【0282】
代替的には、計算ユニット69は、スロープモジュール77を含まない。
予測モデル71によって使用されるスロープは、したがって、オペレータによって設定され、ユーザーインターフェース65を使用して入力される。
【0283】
スロープモジュール77は、制御方法について説明したように、好ましくは最適なスロープを決定する。
【0284】
アセンブリ63は、また、以下を表示するようにも構成されている。
-最適な中性子毒および/または水の注入シーケンス、言い換えれば、コスト関数の収束基準が満たされているもの、
-場合によっては、その出力変動、または各出力変動について選択されたスロープ、
-場合によっては、最適な注入シーケンスについての炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展。
【0285】
この情報は、典型的には、ユーザーインターフェース65に表示される。
【0286】
図4は、時刻t0でのユーザーインターフェース65の画面の例を示す。
画面の上部には、注入設定値が表示される。
水平線より上にある注入設定値は、中性子毒注入の設定値であり、水平線より下にある注入設定値は水の注入の設定値である。
【0287】
図4の下部は、時間の関数として、炉心パラメータの特徴的な状態のうちの一つの発展を示している。
一つ以上のパラメータを表示することができる。
上記のように、このパラメータまたはこれらのパラメータは、炉心内の中性子束分布を特徴付けるパラメータR、一次熱伝達流体の平均温度Tmoy、炉心の出力P、制御ユニットの位置Pbank、一次熱伝達流体中のキセノンXe濃度、または一次熱伝達流体中の中性子毒濃度Cpnの中から選択される。
【0288】
図4は、新しい注入シーケンスが、10分ごとに制御アセンブリ63で決定される状況を示す。
このシーケンスは、それぞれ10分間続く6回の注入運転を含み、したがって1時間の時間間隔をカバーする。
【0289】
t0+10分からt0+70分までの間、画面の上部には、t0で取得した運転パラメータを使用して計算された最適な注入シーケンスが表示される。
画面の下部には、最適な注入シーケンスについて計算された炉心の状態の特徴的なパラメータの発展が表示される。
t0とt0+10分の間で、図は、前の反復で計算された、言い換えれば、t0-10分で取得した運転パラメータに基づいて計算された注入を示している。
図4は、t0-10分とt0との間でオペレータによって実際に実行された注入および、計装55を使用して実際に測定された炉心の状態を特徴付けるパラメータの発展を示す。
【0290】
したがって、制御方法のステップS10は、ユーザーインターフェース65上で出力プログラムを入力するオペレータによって手動で実行される。
【0291】
ステップS20は、取得ユニット67によって実行される。
【0292】
ステップS30は、計算ユニット69によって実行される。
【0293】
サブステップS31は、最適化アルゴリズム75によって実行される。
【0294】
サブステップS32は、炉心の予測モデル71によって実行される。
【0295】
サブステップS33は、コスト関数73によって実行される。
【0296】
サブステップS34は、最適化アルゴリズム75によって実行される。
【0297】
サブステップS35は、スロープモジュール77によって実行される。
【0298】
ステップS40は、典型的には、ユーザーインターフェース65上で実行される。
【0299】
図1に示す実施形態では、制御アセンブリ63は、出力変動について選択されたスロープとともに、検討された時間間隔について決定された最適な中性子毒および/または水の注入シーケンスをオペレータに提供する。
【0300】
オペレータは、アセンブリ63によって供給される最適な注入シーケンスに応じて、ユニット31および39を直接制御する。
【0301】
典型的には、オペレータは、バルブ37と47および、ポンプ35と45を制御する。
【0302】
さらに、オペレータは、アセンブリ63によって決定された、選択されたスロープが存在する場合、それをタービン制御ループ61に知らせる。
【0303】
代替的な一実施形態によれば、コスト関数は上記のものとは異なる。
【0304】
さらに別の実施形態によると、炉心の予測モデルは、基準温度Trefの周囲のデッドゾーンを考慮しない。
したがって、制御棒群の変位は、TmoyがTrefから逸脱するとすぐに決定される。
【0305】
1 原子炉
3 炉心
5 核燃料集合体
7 一次回路
9 蒸気発生器
11 一次ポンプ
13 二次回路
15 タービン
17 復水器
19 供給タンク
21 二次ポンプ
23 二次ポンプ
25 弁
27 オルタネータ
29 送電網
31 注入ユニット
32 タンク
33 パイプ
35 ポンプ
37 バルブ
39 注入ユニット
43 ライン
45 ポンプ
47 バルブ
49 制御棒群
51 メカニズム
53 計装および制御システム
55 計装
57 制御装置
59 温度ループ
61 タービン制御ループ
63 制御ユニット
65 ユーザーインターフェース
67 取得ユニット
69 計算ユニット
71 予測モデル
73 コスト関数計算モジュール
75 最適化アルゴリズム
77 スロープモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉(1)の制御方法であって、その原子炉(1)が、複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(3)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入するユニット(31)、および一次回路(7)に水を注入するために設けられたユニット(39)を有し、その方法が、以下のステップ、
S10/原子炉によって供給される原子炉出力プログラムを取得するステップで、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの原子炉出力変動を含むステップ、
S20/原子炉の炉心によって供給される炉心出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含む、原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するステップ、
S30/以下のサブステップを繰り返し実行するステップ、
S31/所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するステップ、
S32/取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値、および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心(3)の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するステップで、その発展は原子炉の炉心の予測モデルを利用して計算するステップ、
S33/計算された発展を使用して、コスト関数の値を求めるステップ、
サブステップS31/からS33/は、コスト関数の収束基準が満たされるまで繰り返されるステップ、
S40/最適な注入シーケンス、言い換えれば、収束基準を満たすことを可能にする注入シーケンスをオペレータに伝達し、オペレータは最適な注入シーケンスの関数として中性子毒および水の注入ユニット(31,39)を制御するステップ、
サブステップS20/およびS30は、60分未満の時間間隔(T)で繰り返されるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップS30/で計算された炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性が、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータを含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
コスト関数が、炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔にわたる基準値との間の偏差の発展を特徴付ける、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
収束基準が、コスト関数の極値に到達することを含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項5】
収束基準には、以下のリスト、
-炉心内の中性子束分布を特徴付ける前記パラメータと、前記所与の時間間隔中の基準値との間の偏差が、所定の極限値未満に常に留まる、
-前記所与の時間間隔中に単位時間当たりに注入される中性子毒の量が、所定の極限値未満に留まる、
-前記所与の時間間隔中の単位時間当たりに注入される水の量が、所定の極限値未満に留まる、
から選択された少なくとも一つの制約を満たすことが含まれる、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項6】
サブステップS31/では、勾配降下アルゴリズムによって、前の反復で得られた結果を考察することによって、一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスが生成される、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項7】
ステップS30/が、第1の出力から第2の出力への出力放出中の時間の関数として出力放出に最適なスロープを決定するためのサブステップS35/を含み、サブステップS35/が以下の運転、
-S351/単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値と常に等しいとみなして、複数のスロープ値について、原子炉の炉心の予測モデルを利用して、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性を計算する、
-S352/各スロープ値について計算された変動を使用して、コスト関数の値を求める、
S353/コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
を含む、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項8】
原子炉の炉心の予測モデルが非線形である、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項9】
原子炉の炉心の予測モデルが複数のサブモデルを含み、各サブモデルが原子炉の炉心のレベルをモデル化し、前記レベルでの中性子密度の動力学を記述する少なくとも一つの方程式と、前記レベルでの一次熱伝達流体の温度を記述する方程式を含み、さらに、そのモデルは、レベル間の中性子交換を記述する方程式と、各レベルでの反応性を特徴付ける方程式とを含む、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
各レベルでの反応性を特徴付ける方程式では、単数または複数の以下の効果、
-前記レベルでの一次熱伝達流体の温度の変動による効果、
-前記レベルでの炉心によって供給される出力変動による効果、
-制御棒群の変位による効果、
-一次熱伝達流体中の中性子毒の濃度の変動による効果、
-前記レベルでの核燃料集合体中のキセノン濃度の変動による効果、
が考慮される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
中性子毒および/または水の一次液体への注入シーケンスが、複数の注入運転を含み、各運転は運転量および運転継続時間によって特徴付けられ、注入シーケンスでの運転の数は2~12の間であり、運転継続時間は2分~60分の間であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項12】
時間間隔(T)が、注入シーケンスでの1回の運転継続時間未満であるか、または実質的に等しい、請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
所与の時間間隔の総継続時間が、10分から出力プログラムの継続時間までの間である、請求項1~のいずれか一つに記載の制御方法。
【請求項14】
原子炉用制御アセンブリであって、原子炉(1)が、複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(5)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入することができるユニット(31)および、水を一次回路(7)に注入するために設けられたユニット(39)を有し、中性子毒および水の注入ユニット(31、39)はオペレータによって制御され、制御アセンブリ(63)が、以下を含み、
a/ユーザーが原子炉によって供給される出力プログラムを入力するように構成されたユーザーインターフェース(65)であって、このプログラムは、第1の出力から第2の出力までの少なくとも一つの出力変動を含み、
b/原子炉の複数の運転パラメータの現在値を取得するためのユニット(67)であって、原子炉の炉心(3)によって供給される出力を特徴付ける少なくとも一つのパラメータと、炉心(3)内の中性子束分布を特徴付ける一つのパラメータとを含むユニット(67)、
c/以下を含む計算ユニット(69)、
-所与の時間間隔をカバーする一次液体への中性子毒および/または水の注入シーケンスを生成するようにプログラムされた最適化アルゴリズム(75)、
-取得した出力プログラム、取得した運転パラメータの現在値および検討された注入シーケンスを使用して、前記所与の時間間隔中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算するようにプログラムされた原子炉の炉心の予測モデル(71)、
-予測モデル(71)によって計算された発展を使用して、コスト関数を計算するように構成されたコストモジュール(73)、
最適化アルゴリズム(75)が、コスト関数収束基準が満たされるまで、注入シーケンスを反復的に生成し、炉心の予測モデル(71)によって少なくとも一つの対応する振幅特性の発展を計算し、コストモジュール(73)によって対応するコスト関数の値を求めるようにプログラムされ、
アセンブリ(63)が、また、最適な注入シーケンス、言い換えれば、コスト関数収束基準が満たされた注入シーケンスをユーザーインターフェース(65)上に表示し、その結果、最適な注入シーケンスがオペレータによって実行されるように構成されている原子炉用制御アセンブリ。
【請求項15】
計算ユニット(69)が、第1の出力から第2の出力までの出力変動中の時間の関数として原子炉出力放出に最適なスロープを決定するようにプログラムされたスロープモジュール(77)を備え、前記モジュールは、以下の、
-単位時間当たりの中性子毒または水の注入は最大可能値に常に等しいとみなして、炉心の予測モデル(71)に、複数のスロープ値について、前記出力変動中の原子炉の炉心の状態の少なくとも一つの振幅特性の発展を計算させる、
-各スロープ値について計算された発展を使用して、コストモジュール(73)に、各スロープ値に対応するコスト関数の値を求めさせる、
-コスト関数を最小化するスロープ値を選択する、
ようにプログラムされている、請求項14に記載の制御アセンブリ。
【請求項16】
複数の核燃料集合体(5)を含む炉心(3)、中性子毒を含む一次熱伝達流体が内部を循環する炉心(3)を冷却する一次回路(7)、中性子毒を一次熱伝達流体に注入することができるユニット(31)、一次回路(7)に水を注入するために設けられたユニット(39)、および請求項14または15に記載の制御アセンブリ(63)を含む原子炉(1)であって、中性子毒および水の注入ユニット(31、39)がオペレータによって制御される、原子炉。
【国際調査報告】