(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】周期構造、特に歯部を成形するための方法、及びリフトカム
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20240321BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B23F5/16
G05B19/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562819
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022060233
(87)【国際公開番号】W WO2022223513
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021002058.8
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン - プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カート クラインバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アミーネ ザグビブ
(72)【発明者】
【氏名】シモン ケルン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン メイヤー
【テーマコード(参考)】
3C025
3C269
【Fターム(参考)】
3C025AA03
3C025AA13
3C269AB06
3C269BB05
3C269EF02
3C269EF20
(57)【要約】
本発明は、ワークピース上に周期構造、特に歯部を成形するための方法であって、リフト機構が、機械加工動作後の戻り行程のために、働き行程内で、成形工具をワークピースから持ち上げ、本方法が、リフトカムの周方向カムプロファイル領域に機能的に割り当てられた、リフトカムの回転角度領域を特徴とし、リフトカムが、リフト機構のモータによって回転駆動され、周方向カムプロファイル領域が、行程サイクルの働き行程部分における成形工具とワークピースとの間の係合距離を決定し、リフトカムの回転角度領域が、同じ行程サイクル中に、反対の回転方向ではあるが、更なる回数通過される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(50)上に周期構造、特に歯部(55)を成形するための方法であって、リフト機構(10、20、99)が、機械加工動作後の戻り行程(Mxv1)のために、成形工具(40)を働き行程(Mxc1)内で前記ワークピースから持ち上げ、
前記方法が、リフトカム(10)の周方向カムプロファイル領域(Dcf;2)に機能的に割り当てられた、前記リフトカムの回転角度領域([α2B; α2C])を特徴とし、前記リフトカムが、前記リフト機構のモータによって回転駆動され、前記周方向カムプロファイル領域が、行程サイクルの働き行程部分における前記成形工具と前記ワークピースとの間の係合距離を決定し、前記リフトカムの前記回転角度領域が、同じ行程サイクル中に、反対の回転方向ではあるが、更なる回数通過される、方法。
【請求項2】
前記働き行程部分における前記回転角領域が、少なくとも部分的に、方位角加速経路として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記戻り行程における運動反転点(D)及び/又は前記働き行程における運動反転点(B)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記リフトカム上の後方行程側の運動反転点の方位角位置が、可変的に調整することができ、特に、ワークピースの機械加工の後の行程サイクルにおいて、より低い持ち上げの程度をもたらす位置に調整される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記戻り行程側の前記運動反転点の前記方位角位置が、前記戻り行程の軸方向中心に対して、好ましくは少なくともπ/18、特に少なくともπ/12だけ、好ましくは戻り行程端の方向に位相シフトされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記戻り行程に割り当てられ、リフト運動を決定する前記リフトカムの周方向カムプロファイル領域が、前記働き行程に割り当てられた前記カムプロファイル領域とともに、360°未満、特に240°未満の方位角全体範囲を有し、したがって、第3の方位角領域をカバーしない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の方位角領域もまた、リフトプロセスのために、ただし異なるプロファイリングを用いて、特に別のワークピースタイプ、別のワークピース、又は同じワークピースのより早い、若しくはより遅い行程サイクルのリフトプロセスのために、及び/又はこのプロファイリングを介して少なくとも部分的に修正される前記成形された周期構造の側面修正を伴う働き行程のために、いくつかの領域においてプロファイリングされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
行程サイクルにおいて通過される前記リフトカムの前記角度領域が、時間の関数として、前記行程サイクルの周波数と相関する周期関数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記周期関数の時間導関数、特に前記周期関数自体が、正弦波であるか、又は変調された正弦波である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
角速度の最大振幅とサイクル時間との商が、rpm/秒で測定して、24未満、好ましくは16未満、特に8未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
行程速度が、行程/分で、50より大きく、好ましくは150より大きく、特に200より大きい、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
時間の関数としての前記リフトカムの角度の前記周期関数が、1周期における曲率の方向の4つの変化を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
成形ヘッドが、軸を中心に枢動可能に取り付けられており、前記リフト運動が、前記成形ヘッドを枢動させることによって行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記リフト機構が、前記リフトカムと前記成形ヘッドとの間に配置された予荷重加圧ローラを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
制御命令を含む制御プログラムであって、前記制御命令が、成形機械の制御デバイス(99)において実行されるときに、前記機械に請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を行わせる、制御プログラム。
【請求項16】
成形機械のリフト機構の回転リフトカム(10)であって、第1の動作モードにおいてシェーパカッタと成形されたワークピースとの間の相対距離を調整するための第1の周方向カムプロファイル領域(1、2)と、前記第1の動作モードと比較して、相対運動の異なる経路を有する第2の動作モードにおいて、そのような相対位置を調整するための第2の周方向カムプロファイル領域(2、3;1、6)と、を有する、回転リフトカム(10)。
【請求項17】
側面プロファイルライン修正を生成するために修正され、一定でない半径を有する、少なくとも1つのカムプロファイル領域(5)を備える、請求項16に記載の回転リフトカム。
【請求項18】
請求項15に記載の制御プログラムを有し、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計されており、特に請求項16又は17に記載の回転リフトカムを有する、制御装置を備える、成形機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピース上に周期構造、特に歯部を成形するための方法であって、リフト機構が、機械加工動作後の戻り行程のために、働き行程内で成形工具をワークピースから持ち上げる、方法に関する。本発明はまた、歯車成形機のリフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
成形のための、特に歯部を成形するためのそのような方法は、当該技術分野において周知である。それらの基本原理は、例えば、Thomas Bausch「Innovative gear manufacturing」第3版、第281頁以降に記載されている。成形中の切断速度は、行程サイクルの働き行程におけるシェーパカッタの実質的に垂直な運動によって生成される。回転及び係合は、成形される歯部の回転に同期される。しかしながら、戻り行程切断を防止するために、シェーパカッタは、戻り行程においてワークピース歯部から(半径方向に)持ち上げられなければならない。
【0003】
より長い機械加工時間にもかかわらず、ホブ切り及びスカイビングの方法と競合する歯車成形方法は、主に、ホブ切りがあまり適していない用途、例えば、内歯において、並びに、ホブ切り及びスカイビングの両方が軸交差角のためにあまり適していない干渉輪郭を含む用途において好まれる。それにもかかわらず、機械加工時間を十分に短く保つために、十分に高い行程速度が望まれる。
【0004】
リフト機構に関して、好ましい技術は、回転リフトカムの技術である。行程及び戻り行程からなる経路の所望のプロファイルは、行程速度に対応する回転速度で連続的に回転するリフトカムのプロファイリングを介して生成される。例えば独国特許出願公開第102019004299(A1)号に記載されているような典型的な設計では、実質的に一定の径を有するカムプロファイリングが働き行程のために設けられ、働き行程の直径に戻るために径が減少する領域と、それに続く径が増加する領域とが、戻り行程のために設けられている。
【0005】
更に、例えば米国特許出願公開第2005/0129474(A1)号に記載されているように、リニアモータに基づいており、かつ屈曲可能なプレートの複雑な配置によってリフト運動をもたらす他のリフト機構も知られている。しかしながら、この変形例は、好ましいアプローチになったとは思われない。独国特許出願公開第102006052474(A1)に開示されたリフト機構では、リフトカムによる実施は不利であると考えられている。その代わりに、中間レバーを介して成形ヘッドに連結されているモータ駆動クランクシャフトが教示されている。働き行程に対応する回転角基準位置から開始して、リフト運動の制御は、数値制御を有するNCモータを介して直接実行される。この変形例もまた、市場において著しく好まれてはおらず、いずれにしても出願人の認識の範囲内ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明によって解決される課題は、満足な機械加工速度と満足な機械加工精度との組み合わせに関して、最初に述べたタイプの方法を改善することである。
【0007】
本目的は、最初に述べたタイプによる成形方法であって、リフトカムの周方向カムプロファイル領域に機能的に割り当てられた、リフトカムの回転角度領域を実質的に特徴とし、リフトカムが、リフト機構のモータによって回転駆動され、周方向カムプロファイル領域が、行程サイクルの働き行程部分における成形工具とワークピースとの間の係合距離を決定し、リフトカムの回転角度領域が、同じ行程サイクル中に、反対の回転方向ではあるが、更なる回数通過される、方法によって達成される。
【0008】
本発明は、リフトカム(回転リフトカム)のプロファイルによる、働き行程における成形工具とワークピースとの間の係合距離の制御、及びリフト運動におけるワークピースからの成形工具のリフトにもかかわらず、リフト運動への影響が、従来のように同じ回転方向で連続的にではなく、行程サイクルにおいて少なくとも2回、特に正確に2回(すなわちダブル行程ごとに2回)変化する回転方向でリフトカムを駆動することによって達成することができるという発見に基づいている。この場合、働き行程部分におけるカムプロファイル領域に対応する回転角度領域は、第1の時間に対して逆の回転方向で、少なくとも2回、すなわち少なくとも第2の時間、通過される。好ましくは、働き行程部分には、好ましくは少なくとも5°、より好ましくは少なくとも10°、特に少なくとも20°であるリフトカムの回転角度領域が割り当てられ、すでに特定の角速度まで加速されたリフトカムから開始するリフト運動を可能にする。25°以上、更には30°以上の割り当てられた回転角領域も可能である。
【0009】
したがって、働き行程部分(少なくともその一部)における回転角領域は、方位角加速経路として使用することができる。持ち上げ中のリフトカムの角速度は、好ましくは少なくとも5rpm、より好ましくは少なくとも20rpm、特に少なくとも35rpmであるべきである。「方位角」という表現は、この場合及び以下では、回転カムの角回転(周方向の角度)を指し、したがって、角加速経路である。
【0010】
戻り行程においても、それに割り当てられたリフトカムの角度領域が2回通過されることは言うまでもない。この点に関して、戻り行程に運動反転点があり、働き行程に運動反転点があることが好ましい。これは、歯部との係合のための行程長の効率的な利用に有利である。原理的には、両方の反転点を成形ヘッドの上方への運動又は下方への運動に置くことも運動学的に考えられる。
【0011】
一実施形態では、2回通過される回転角領域に割り当てられ、かつ成形工具とワークピースとの間の係合距離を決定するカムプロファイル領域は、一定の直径であり得る。しかしながら、この係合決定カムプロファイル領域が、例えば成形された歯部の側面プロファイルライン変更のために、変調された直径を有することもできる変形例もある。
【0012】
歯部は、好ましくは、内歯であり得るが、本方法はまた、外歯にも適している。後でより詳細に説明するように、単一のカムによって、内歯の成形のためのリフト運動、及び外歯の成形のためのリフト運動を実現することができる。
【0013】
特に好ましい実施形態において、リフトカム上の戻り行程における運動反転点の方位角位置(反転点の角度位置)は、可変的に調整可能であり、特に、ワークピースの機械加工の、後の行程サイクルにおいて、より低い持ち上げの程度をもたらす位置に調整される。この方法構成により、本発明による構成は、異なるリフトの程度を達成することが容易であるという利点を有する。具体的には、戻り行程に割り当てられたカムプロファイル領域が、少なくとも特定の領域において、一方の回転方向の通過中に増加し、他方の回転方向の通過中にそれに応じて減少する直径(又は半径)を有し、したがって、1つの可能な実施形態では、特に線形であるランプを構成することによって達成することができる。運動反転点は、カム回転の数値制御によって、このランプ上で更に上方又は下方に変位される。このようにして、例えば、(前進運動のために使用される戦略に関係なく)複数の回転にわたって成形される歯部は、戻り行程において、より大きいリフトの程度を有する第1の数の荒機械加工行程で、かつ戻り行程における仕上げ機械加工行程で、又はより小さいリフト運動を有する第2の数の仕上げ機械加工行程で加工することができ、その結果、より高い機械加工精度を達成することができる。各行程サイクル(往復行程)の戻り行程におけるリフトの程度を、例えば、それぞれの働き行程において選択された前進の関数として、個々に、かつ異なるように調整することも考えられる。
【0014】
単純な位相関係では、行程運動の反転点は、カム回転の反転点に対してπ/2だけシフトされ得る。次いで、働き行程側の回転運動の運動反転点は、実質的に中心行程位置に対応し、カム回転の戻り行程側の反転点は、戻り行程の中心に対応する。この位相関係は、5π/12以下、好ましくはπ/3以下、特にπ/4以下だけずれることが好ましい。しかしながら、追加の又は代替の設計では、π/2オフセットを有するそのような基本配置と比較して、カム回転の追加の位相シフトは、戻り行程運動の終了の方向における逆行程側のカム回転の反転点の変位の方向に、好ましくは少なくともπ/18、特にπ/9、特に少なくともπ/6、又は更に少なくともπ/4だけ調整可能である。これにより、衝突の危険性が特に懸念される、成形された歯部の上端面の高さレベルに向かう最大リフト運動の変位が保証される。
【0015】
更なる設計オプションでは、働き行程側のカム回転の反転点は、同様に、方位角加速経路を拡大するために、成形された歯部の下端面の方向の行程に対して変位され得る。しかしながら、成形された歯部の幅(すなわち、軸方向行程方向における歯延長部)に応じて、特に比較的幅広の歯部の場合、運動反転の側のカム回転の反転点もまた、同じ位相で変位させることができ、戻り行程側の反転点は上端面の方向に変位され、したがって、πの対称角距離から可能な限りπ/2以下、好ましくはπ/3以下、より好ましくはπ/4以下、特にπ/6以下だけずれる。これにより、カム運動の滑らかさが増す。
【0016】
原理的には、カムの360°(2π)の回転角度領域全体を、働き行程のためのカムプロファイル領域、及び戻り行程のためのカムプロファイル領域で構成することが考えられ、これらのカムプロファイル領域は、その作動に応じて、所望のリフト運動に従って、その特定の割合までしか利用されない。しかしながら、更なる好ましい構成では、関連付けられた回転角度領域を有するこれらのカムプロファイル領域に加えて、1つ以上の異なるカムプロファイリングに使用することができ、それに応じて適用することができる残りの自由回転角度領域も存在することが提供される。
【0017】
例えば、関連付けられたカムプロファイル領域を有する3つの回転角度領域:単純な構成では、外歯又は内歯成形の働き行程のための一定半径を有する1つの領域、外歯を成形するための戻り行程のための1つの領域、及び内歯を成形するための戻り行程のための1つの領域を設けることができる。このようにして、外歯の成形から内歯の成形への機械加工変更のためにカムを交換する必要がなくなる。内歯の成形と外歯の成形の両方のためにリフトの程度を調整することができる可能性、特に連続的な調整を行う可能性は、上記の説明のように保たれる。言うまでもなく、この実施例では、内歯機械加工及び外歯機械加工のための働き行程のための別個の角度領域を設けることもできる。しかしながら、働き行程に関して両方の方法を一緒に使用することが可能である。
【0018】
上述した3つのセグメントが、上述したこの実施例のために、例えば180°(π)の総延長まで更に圧縮される場合、同じカム上に更なるカムプロファイリングを適用することも考えられ、それによって、幅クラウニング又は円錐度などの成形された歯部の側面プロファイルライン修正のための働き行程内で半径方向の変化も実現することができる。これらの設計はまた、例えば、内歯の機械加工及び外歯の機械加工の両方のために幅クラウニングを生成するように修正されたカムプロファイル領域を使用することによって、一方又は他方の側の戻り行程のための対応するプロファイリングを提供することによって、組み合わせることができる。
【0019】
したがって、この点において、この第3の方位角領域(角度領域)はまた、リフトプロセスのために、ただし異なるプロファイリングを用いて、特に、別のワークピースタイプ、他のワークピース、又は同じワークピースのより早い、若しくはより遅い行程サイクルのリフトプロセスのために、及び/又はこれらのプロファイリングを介して少なくとも部分的に修正される成形された歯部の側面修正を伴う働き行程のために、いくつかの領域においてプロファイリングされることが提供され得る。
【0020】
行程サイクルにおいて通過されるリフトカムの角度領域が時間の関数として考慮される場合、行程サイクルの周波数と相関する周期関数が提供される。
【0021】
この周期関数の時間導関数、特に周期関数自体は、特に好ましくは正弦波であるか、又は変調された正弦波である。すなわち、正弦波の1次が支配的であり、及び/又は1周期内に一方の曲率方向から他方の曲率方向への少なくとも2つの変化が存在し、少なくとも2つの連続した領域が存在し、その一方は中心線の上に位置し、他方は中心線の下に位置し、そのような中心線は周期内で少なくとも2回交差する。歯面修正が可能でなければ、そのような関数は、特に正確な正弦波半径に対応することもでき、すでに上で説明したように、振幅、位相シフト、及び振幅のゼロ点シフトを用いて、3つのパラメータが、行程運動の位相位置に対するカム回転の反転点を調整するために、カム回転の作動に利用可能である。更に、カム方向の変更だけでなくリフト運動も、可能な限り低い/最小のジャークで実行されることも提供される。この目的のために、好ましくは、周期関数及び特にその導関数も、特に2回連続微分可能である。
【0022】
更に好ましい構成では、角速度の最大振幅(リフトカムの回転角の関数の時間導関数)とサイクル時間との商は、24rpm/秒未満、好ましくは16rpm/秒未満、特に8rpm/秒未満であることが提供される。このようにして、機械加工品質に悪影響を及ぼす可能性のある過度の加速は生じない。
【0023】
更に有利な方法構成では、加工の行程速度は、行程/分で、50より大きく、好ましくは150より大きく、特に好ましくは200より大きく、特に250より大きいことが提供される。上述した利用可能な方位角加速経路により、確実なリフト運動を達成することができ、高い行程速度であっても、カム回転の運動方向の反転にもかかわらず、戻り行程パスを防止することができる。400以上、800以上、更には1200以上の著しく高い値を使用することができることを理解されたい。
【0024】
更に好ましい構成では、時間の関数としてのリフトカムの角度の周期関数は、成形された歯部の側面プロファイルライン修正を、例えば、1周期内の(少なくとも)4つの曲率変化の形態でも生成する役割を果たす修正を含む。このようにして、例えば正弦関数の変調を提供することができ、これは、歯の中心においてのみ所望される幅クラウニングを生成するときに、働き行程中に、一定でない行程速度を補償することができる。
【0025】
本方法を実施するための好ましい構造設計では、成形ヘッドが軸を中心として旋回可能であるように取り付けられており、成形ヘッドを旋回させることによってリフト運動が行われる。更に、リフト機構は、リフトカムと枢動可能な成形ヘッド領域との間に配置された予荷重加圧ローラを有することができる。
【0026】
本発明はまた、制御命令を有する制御プログラムであって、制御命令が、成形機械の制御デバイス上で実行されるときに、前述の態様のいずれかによる方法を実行するために成形機械を制御する、制御プログラムに関する。更に、本発明はまた、第1の動作モードにおいて、シェーパカッタと成形ワークピースとの間の相対距離を調整するための第1の周方向カムプロファイル領域と、第1の動作モードと比較して相対運動の異なる経路を有する第2の動作モードにおいてそのような相対位置を調整するための第2の周方向カムプロファイル領域と、を有する、成形機械のリフト機構の回転リフトカムを提供する。すでに上で説明したように、単一のリフトカム上に実現されるこれらの異なるカムプロファイル領域は、例えば、外歯の成形とは反対の内歯の成形中のリフト運動、例えば成形された歯部の修正のための修正された働き行程、特にクラウニング、端部テーパリング、若しくは円錐度などの側面プロファイルライン修正、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0027】
最後に、本発明はまた、そのような方法を実行するための制御プログラムを有する、及び/又はそのようなリフトカムを有する成形機械を提供する。回転カムを回転させるための数値制御回転モータは、好ましくは、例えばカップリングを有する同期モータ、又は関連する製造業者から市販されているようなアセンブリ同期モータである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の更なる特徴、細目、及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の説明に見出すことができる。
【
図2】時間の関数としてのカム角度の説明図である。
【
図5】異なるカムセグメントを有するカムの概略図である。
【
図6】
図5のカム領域VIのリフト運動の説明図である。
【
図7】
図5の領域VIIのリフト運動の説明図である。
【
図8】
図5の領域VIIIのリフト運動の説明図である。
【
図9】
図5の領域IXのリフト運動の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図4は、ワークピース50上に歯部55を生成するための歯部成形機械加工プロセスを実行するために、シェーパカッタ40を担持する成形ヘッド100を概略的に示す。この目的のために、成形ヘッドは、参照符号Zが付された二重矢印によって示される行程軸に沿って行程運動を実行する。これは、連続的に回転する回転軸である成形スピンドル軸(A軸)を有するクランク駆動部(図示せず)によって既知の方法で達成される。行程運動の図は、例として、α-Z図として
図12に示される。
【0030】
図4には成形ヘッドのサスペンションも示されておらず、このサスペンションは、戻り行程衝突を防止するために、参照符号xnを有する二重矢印によって示されるリフト運動を可能にする。リフトの程度は、プロファイルカム10の直径(及び/又は半径)に基づいており、プロファイルカム10は、
図4では、3時の角度位置において予荷重加圧ローラ20と接触しており、カムの1つの領域のみが
図4に示されている。したがって、成形ヘッドの構造は、独国特許出願公開第102019004429号の
図3のように設計することができ、これは、この基本設計に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
図4において、行程運動と同期してリフト運動を制御する、本明細書での先行技術文献において使用されるカムの連続回転の回転方向は、点線矢印11として描かれている。カム回転は、他の機械軸と同様に、数値制御によって制御され、このための制御装置が、
図4に参照符号99で示されている。
【0032】
対照的に、本発明による方法で使用されるカム回転運動は、回転二重矢印12によって表されている。したがって、カム回転は、同じ回転方向で連続的に行われるのではなく、むしろ、(往復)行程中の回転方向が変更され、(往復)行程における角度領域は、1回より多く、本例示的実施形態では、正確に2回、具体的には、各通過に対して回転カムの異なる回転方向で通過される。
【0033】
3回の完全な往復行程よりもいくらか多くにわたって延びる
図2のような経時的な表現において、これは、従来技術の細い破線の曲線Mt0と比較して、太い実線の曲線Mt1を有する例から容易に明らかである。従来技術からの曲線Mt0の鋸歯状の描写は、カム10が完全に回転した後、角度が、360°位置に対応するゼロ交差から再び特定されるという事実によるものである。対照的に、第1の動作の曲線Mt1については、約100°の1つの角度領域のみが、図示の例では、ダブル往復行程の周期に対応する周期持続時間を有する時間の周期関数として、この例示的な実施形態では正弦曲線の形態で通過される。
【0034】
図1は、カム半径がカム角度α2の関数としてプロットされている図において、
図2の曲線Mt1に対応する運動を示す。点線の曲線Dα2は、当該回転角度領域におけるカムのプロファイルを表す。それは、一定の半径Dcの領域と、半径がカム角度α2の関数として減少する領域Dvと、を有する。異なる回転方向の例解及び識別のために、曲線Mα21は、
図2においてカム曲線Dα2の上に示されており、下の一方の回転方向及び上の他方の回転方向に対する運動Mt1に対応している。実際には、曲線Mα21は、カム曲線Dα2上にあることは言うまでもない。
図2及び
図1からの経路Mt1及びMα21がリフト運動に及ぼす影響は、
図3の図、特に
図1及び
図2にも示されている瞬間的な状況A、B、C、及びDに最もよく見ることができる。
【0035】
瞬間的な状況Aは、働き行程としての運動の開始を説明し、リフト運動はなく、Cで終了する。働き行程中、ワークピース50からのシェーパカッタ40の半径方向距離は、加工動作中、一定であるべきである(幅クラウニング、又は円錐若しくは他の側面プロファイルライン修正が望ましくないと仮定する)。したがって、
図2からの曲線Mα21は、一定のカム半径の領域Dcにおいて、具体的には、可変半径領域Dvから、カムの回転速度が減速後にゼロに低減され、次いで逆方向の回転において再び上昇する瞬間的な状況Bを経た、一定半径領域Dcへの移行から、通過される。働き行程(修正なし)では、曲線Mα21上の所与の点における位置が従属的な役割を果たす。したがって、角速度ω2(=dα2/dt)の仕様は完全に可変であり、領域Dcにおけるω2=0である「反転点」Bは、
図3に示すように行程の中心にある必要はない。むしろ、それは、
図2に対する位相シフトに従って、軸方向行程方向Zにおける中心位置とは異なる位置に存在することができる。
【0036】
瞬間的な状況BとCとの間の
図1の角度領域[α2B;α2C]は、瞬間的な状況Cから始まる最初のリフト運動が、カムの角速度がすでに比較的高い値、特にその最大値に近い値を有することができるときに行われるように、加速経路として使用することができる。しかしながら、軸α2の数値制御によって、カムの最大速度も
図3のリフト運動に対してシフトすることができることも本明細書で理解されるべきである。例えば、角速度ω2は、リフト運動の開始の瞬間から減少し始める必要はない。むしろ、角速度の回転の方向に対する他の「反転点」である瞬間的な状況Dから、短時間で上昇し、その後減少し、再び上昇することもできる。
図3では、
図1によれば、選択されたカムプロファイルDα2の最大リフト運動に対応する反転点Dも、軸方向運動zの中心に描かれており、しかしながら、これは、例えば、戻り行程運動Mxv1の終わりの方向に同様に良好に変位され得る。
図1の瞬間的な状況Aにおいて、反転点Dから、領域DvがDcへ移行するまでのカム回転により、リフト運動が終了し、実施例の開始点に再び到達する。
【0037】
図3には、更なるリフト運動Mx2も示されており、これは、働き行程(Mxc2)において、上述のリフト運動Mx1(戻り行程Mxv1を伴う)の運動Mxc1と一致し、しかし、戻り行程において、破線の運動経路から分かるように、比較的大きなリフトの程度でリフトされる。これは、数値制御装置99によって、
図1の前述の運動Mα21の「反転点」Dの領域を超えてカム(カム角度α2)を回転させ、したがって、瞬間的な状況CとAとの間で(Dを介して)、可変カム半径を有する領域Dv内のより大きな角度領域を、回転の一方向に、次いで他の方向に通過させることによって達成される。したがって、
図2から分かるように、曲線Mt1に対して曲線Mt2の振幅を大きく設定することにより、より大きなリフト運動が可能になる。
図1のMα22経路では、カム半径が一定の領域Dcにおいても、より大きな角度領域を通過する。しかしながら、領域Dcに沿った「反転点」Bの位置決めは、シェーパカッタ40とワークピース50との間の半径方向距離に影響を及ぼさず、したがって、原理的に変更することもできる(垂直軸の方向における
図2からの曲線の伸張/圧縮に沿った変位に対応する)ことを本明細書で再び理解されたい。
【0038】
したがって、同じカムを用いて、すなわちカムを変更することなく、異なるリフト経路を実現することができ、角加速区間を通過した後にリフト運動を実現することもできる。
【0039】
リフトカムの全周囲領域も、リフト運動を実行するために必要とされず、曲線/経路Mt1/Mα21については約100°、Mt2/Mα22については約200°の、説明のために
図1及び
図2に示された角度領域は、確実に更に低減され得る。したがって、本発明の更なる態様では、異なるリフト運動及び/又は働き行程の変調(上述の振幅調整を超える)を実行するための異なるプロファイリング領域を有するリフトカムも実現することができる。
【0040】
これは、
図5を参照して以下に説明され、
図5は、非常に誇張された表現で、異なるセグメント1~6におけるカムのプロファイリングを示す。時計の時刻を角度位置として使用する図において、図面は、0時の位置と2時の位置との間の第1のセグメント1、2時の位置と4時の位置との間の第2のセグメント2、4時の位置と6時の位置との間の第3のセグメント3、6時の位置と8時の位置との間の第4のセグメント4、8時の位置と10時の位置との間の第5のセグメント5、及び10時の位置と12(0)時の位置との間の第6のセグメント6を示す。
【0041】
セグメント2は、一定の半径を有し、
図1の領域Dcに対応する。セグメント1は、反時計回り方向に減少する半径を有し、
図1の領域Dvに対応する。
図5において領域VIとして組み合わされた2つのセグメント1及び2は、
図6に示されるような外歯を成形するために使用され得る。
図3によるリフト運動Mx1又はMx2のタイプのリフト運動が結果として生じ、次に、数値制御(例えば、
図2による振幅調整)によって、異なる持ち上げの程度を設定することができる。
図3を参照して上述したように、これらは更に、反転点Dの位置決めを介して連続的に設定することができる。
【0042】
しかしながら、セグメント2は、半径方向のリフト運動が、外歯が成形される方向に対して反対方向に生じなければならない内歯を成形するために使用することもできる。このために、セグメント3が設けられており、このセグメント3は、セグメント1とは反対側でセグメント2に接続しており、時計回り方向に上昇するカム半径の領域を有する。したがって、
図5においてVIIで示されるセグメント2及びセグメント3の領域は、内歯を成形するために使用することができる。対応するリフト運動が
図7に示されている。ここでも、
図1~
図3を参照して説明したリフト運動の変化は、2回通過するカムの角度領域(異なる回転方向を有する)が、角速度の数値制御調整によって決定されることに加えて、これらの経路が通過される速度の更なる自由度(
図2の曲線Mt1の形状の変化)があるため、特にリフトの程度に関して調整することができる。
【0043】
セグメント4、5、及び6を有するカムの残りの角度領域は、
図5に示されるように、この目的のために使用されて、ワークピース50の歯部形状の位相修正を実現することができる。これは、側面プロファイルラインクラウニング又は幅クラウニングの例を使用して最初に説明される。セグメント6は、セグメント1に対して鏡面対称であるカムプロファイル、すなわち、カム半径が反時計回り方向に増加する領域を生成する。セグメント6は、セグメント5に隣接しているが、セグメント5は一定の半径を有していない。セグメント5は、最初に、セグメント6から来る半径が、更なる回転中にまずは減少し、次いで、セグメント5に割り当てられた角度領域のほぼ中間点から始まって再び増加するように設計されている。ここでも、一定の直径(二点鎖線で表されている)の偏差の表示は、説明のために非常に誇張して示されている。
図5においてIXによって一緒に示されるセグメント5及び6は、幅クラウニングを有する歯部修正を伴う外歯の成形のために一緒に使用される。これに関連するリフト運動が
図9に示されている。
図6と比較して、比較的小さな凸状のリフト運動が、働き行程においても見られることができる。
【0044】
最後に、セグメント3に対して鏡面反転されるように設計されたセグメント4は、幅クラウニングを伴う内歯を転造するために、
図5にVIIIによって示されているように、セグメント5とともに使用することができる。関連するリフト運動が
図8に示されている。
【0045】
クラウニングのこの例示的な実施形態では、戻り行程におけるリフト運動のリフトの程度は、セグメント4(
図8)、6(
図9)、3(
図7)、及び1(
図6)において通過される角度領域を介して設定され続けることができる。
【0046】
図1~
図3によって示される異なるリフトの程度を有する異なるリフト運動は、例えば、荒機械加工行程の戻り行程のための
図3からの戻り行程Mxv2におけるリフト経路を使用することによって、異なるワークピースの歯部を成形するためだけでなく、全く同一のワークピースの歯部を成形するためにも使用することができ、反転点及び/又は瞬間状況Dを一定カム半径の領域Dcの方向にシフトすることによって、1つ以上の仕上げ機械加工行程のための1つ以上の仕上げ機械加工パス後の戻り行程において、より小さいリフト運動を設定することができる。クラウニングの代わりに、又はクラウニングに加えて、円錐度又は端部テーパなどの明示的に図示されていない他の側面プロファイルライン修正が、回転カムの周方向領域を修正することによって実現されることができることを理解されたい。
【0047】
本発明の上記の詳細な説明から分かるように、成形プロセスにおける柔軟性が更に増大し、さもなければ、別のカムを取り外し、取り付けることによって生じるダウンタイムも低減することができる。
【0048】
更に、本発明は、前述の明細書に例解された詳細に限定されない。そうではなく、上記の明細書及び以下の特許請求の範囲の個々の特徴は、その異なる実施形態において本発明を実装するのに、個別に、及び組み合わせで不可欠であり得る。
【国際調査報告】